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1966-04-27 第51回国会 衆議院 農林水産委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年四月二十七日(水曜日)    午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 中川 俊思君    理事 大石 武一君 理事 舘林三喜男君    理事 本名  武君 理事 赤路 友藏君    理事 東海林 稔君 理事 芳賀  貢君       伊東 隆治君    池田 清志君       金子 岩三君    坂村 吉正君       笹山茂太郎君    白浜 仁吉君       田邉 國男君    高見 三郎君       綱島 正興君    丹羽 兵助君       野原 正勝君    野呂 恭一君       長谷川四郎君    藤田 義光君       松田 鐵藏君    森田重次郎君       兒玉 末男君    西宮  弘君       森  義視君    湯山  勇君       玉置 一徳君    中村 時雄君       林  百郎君  出席国務大臣         農 林 大 臣 坂田 英一君  出席政府委員         農林政務次官  仮谷 忠男君         農林事務官         (農地局長)  大和田啓気君  委員外出席者        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 四月二十六日  農林漁業団体職員共済組合法改正に関する請  願外五十七件(周東英雄紹介)(第三四三八  号)  同(野原正勝紹介)(第三四九二号)  同外二十五件(千葉三郎紹介)(第三五一九  号)  同外三件(早稲田柳右エ門紹介)(第三五二  〇号)  同(丹羽喬四郎紹介)(第三五九七号)  同(今澄勇紹介)(第三五九八号)  八王子市板当国有林採石反対に関する請願(  長谷川正三紹介)(第三四九一号)  同(山花秀雄紹介)(第三五二一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農地管理事業団法案内閣提出第三六号)      ————◇—————
  2. 中川俊思

    中川委員長 これより会議を開きます。  農地管理事業団法案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許可いたします。東海林稔君。
  3. 東海林稔

    東海林委員 農地管理事業団法案につきましては、昨日も同僚松浦委員から相当幅広い質問があり、さらに私のあとにも同僚質問が予定されておりますので、私は、なるべく重複を避けながら、主として、前回提案をされて廃案になりました法案と、今回再び提案されました法案との間で、修正されて提案された点を中心に、数点御質問をしたいのでございますが、その前に、一つだけ農業基本法のことにつきまして、大臣にお伺いいたしたいと思うわけでございます。  昨年、私は、農業白書の報告に対して、党を代表して、本会議総理並びに時の赤城農相にお尋ねしたことがあるのでございますが、それは、政府農業基本法制定以来すでに五カ年たったわけでございますが、基本法目標として第一条に掲げてありますようなわが国の農業生産の増大、さらに農業従事者と他産業従事者との間の所得格差是正ということが、一向に進んでおらない。一面、だんだんと兼業農家がふえていって、いまでは農家の平均的な収入について見ると、むしろ農外収入が半分以上にもなっておる。そういうような関係で、農家後継者もほとんど農村に落ちつかない、こういうような状態であることは、これはやはり現在の農政基本をなしておる農業基本法考え方に間違いがあるというふうにわれわれは考えざるを得ないのだが、これについて政府はどう考えるかということを質問したのであります。そのとき佐藤総理は、基本法考え方は間違っておらぬ、したがって、自分としてはこれを修正するというような考え方は毛頭持っておらぬということをはっきりと答弁されました。ところが、ことしの農業白書に対するわが党の湯山委員質問に対して、本会議答弁において佐藤総理は、必要があれば基本法改正検討する、こういう趣旨答弁をされております。さらに参議院におきましても、予算委員会においてわが党の矢山委員質問に対して、同じ趣旨答弁をされておるわけでございます。私は、総理大臣答弁されるにあたっては、決して佐藤総理が思いつきで簡単にそういう答弁をされたとは理解しておりません。大体われわれが質問するということになりますと、委員会でも本会議でも、係が来まして、どういうことを質問されるかということを聞きまして、農業に関すれば農林省のほうで大体答弁の要旨を出しておるはずでございますから、おそらく佐藤総理の衆議院本会議あるいは参議院予算委員会における答弁につきまして、農林大臣としてもその考え方を聞いておられると思うわけであります。そこで、昨年までは、ただいま申しますように、絶対に変える意思はないという御答弁総理がされたにかかわらず、今年に至って、必要があれば改正については検討するということを答弁されておる。その考え方の変わってきたのは、どういう点からそういうことになっておるのか。また、必要があれば改正検討するというその内容は、もう少し具体的に言えば、どういうことなのか、その点について、農林大臣からお答えをいただきたいと思うわけでございます。
  4. 坂田英一

    坂田国務大臣 ただいまの御質問でございますが、総理も、農業基本法について、もちろんその改正の必要があれば、そういうことはこだわる必要はないということを申し上げた。その当時の速記録を十分見ておりませんが、そういう意味のことを申されておるわけでございますが、なお、あわせて、いましからばということになりますと、基本法改正はいまする意思はない、こういうことをつけ加えて申しておったように思うのであります。もちろん、それは、この農業基本法にいたしましても、全体のものをうたっておるわけでもございません。先ほど申されましたように、農業の総生産並びに所得格差是正という問題を中心にして、農業基本法ができておることは、東海林委員も十分御了承のことでございます。現在の情勢から申しまして、この格差是正、それから生産の増強という問題がやはり最も重要な問題でございますので、なおそれに向かって推し進めていく必要があることは言うまでもございません。しかし、農業政策は何もこれが全体ではもちろんないことは、これも東海林委員も十分御了承のことであり、農業政策はこれだけで終わるべきものではない。ただ、現在の情勢から申しますと、この格差是正という問題、それから生産性向上の問題、これが目下大きな問題であるがゆえに、基本法としてこれらの方向に向かっての努力は進めておるわけでございます。しかし、繰り返し申すようでございますが、農政はこれだけではないということをはっきりする意味において、基本法においても前文を置きまして、前文において、農業のその他の方面のきわめて重要性を述べながら、申しておるわけでございまして、ただ現実問題として、この二つの問題が非常に重要であり、その重要性を追うていこうというのがこの基本法というわけでございます。正確に言うと、あるいは基本法という名前が違ったのかもしれませんが、またこれは別に論ずることであろうと思いますから、申し上げませんが、目下のところ、きわめて重要な問題は、繰り返し申すようでありますが、格差是正生産性向上という問題が非常に重要性がある現状でありますがゆえに、その方向に向かっての施策を、ここに農業基本法として述べておるというふうに御了承を願いたいと思うのであります。
  5. 東海林稔

    東海林委員 総理発言は、またあとで聞かなければならないと思うのですが、いまの大臣発言の中で、非常にわれわれ聞き捨てならぬ点があるわけです。農政農業基本法だけでない、こういうことをいま繰り返しおっしゃいましたが、それはまことに変だと思うのです。御承知のように、農業基本法は具体的なこまかい施策を一々書いておるわけではございません。しかし、ごく短期な展望に立っての基本法ではなしに、もちろんこれは永久的なものではないにしましても、相当長期的な展望に立って、日本農政基本はかくあるべきだということをきめておるのが農業基本法なんです。何かいまの御答弁を聞いていますと、大臣自身基本法を読んでないのじゃないかというような疑問を持つわけですが、非常にその点は違うと思うのです。現在相当長期的な展望に立って、自民党がやろうとしておる農政基本はこういう方向なんだ、それを具体化する施策はいろいろあるにしましても、基本はこうなんだということでございますから、その点、非常にいまの発言では私は誤解を持ちますし、大臣基本法に対する認識まで疑わなければならぬということになりますので、その点もう少しはっきりしてもらいたい。
  6. 坂田英一

    坂田国務大臣 簡単に申し上げて、かえって誤解東海林委員に持たすようなことに相なったので、ことばが足らないと思うのであります。つまり、現在の実態、いわゆる現在の日本農業政策としては、一口で申しますと、現在の農業基本法というものによって進むということは、これはことばが足らぬようですけれども、こういう方向でいま進んでおるわけでございます。しかし、私のいま申しましたことは、長い間というか、あるいは現在のいろいろの実態からいいまして、この基本法の一番大きなねらいは、格差是正あるいは所得の均衡という問題に非常に中心を置いて、これらの問題をこの基本法に明記してあるわけでございます。したがいまして、第一条にその目的をはっきりしておるようなわけでございます。それは現在の現実の情勢から言えば、そのとおりであると私は思う。しかし、現在はそうでありますけれども、簡単に言えば、過去において農政問題といえば小作問題であるという時代もあり、農政も時の情勢によっていろいろ違ってくる場合があると思うのです。また、基本法はそういうことを主眼として、またそれが現在としては一番重要であるというので、基本法によってさような農政を進めておるということでございますが、これで全部の農政を網羅しておるというふうには私は見るべきではない、こういうことを簡単に申し上げて、かえって誤解東海林委員に持ってもらったようなことになりますが、そういう意味でございますので、その点御了承願いたいと思います。
  7. 東海林稔

    東海林委員 この農政目標が、いまの農業生産を拡大して、日本の食糧の自給率を高めるということ、非常に現在おくれておる農民所得の低さを生産性向上して高めて、農家と他産業従事者との所得格差をなくすということについては、私ども政府農業基本法反対しながらも、目標についてはわれわれも同じことを考えておるわけです。民社党の基本法案でもそうであったわけです。問題は、それを具体化するためにどういうふうな施策によってこれを実現するか、そこについての各党での意見の食い違いがあったわけです。政府の現在の基本法は、御承知のように、いろいろな政策を考えておりますが、その基本となる一つは、自立農家育成、片方においては選択的拡大というのが二本の大きな柱だということは、これは自他ともに認めているところなんです。そういう点から進めておる現在の自民党農政というものは、結果として、過去五、六年の実績を見てもわかるように、目標に書いておるものと違うような結果しか出ていないのじゃないか、そこで、再検討の必要があるということを私どもは主張しておるわけです。  その問題はそれとしまして、先ほどの問題に戻りますが、確かに佐藤総理の回答にも、必要があらばと、こういうことをおっしゃっているわけです。しかし、昨年は非常に自信を持っておられた。決して基本法方向は間違っておらぬ、したがって、変える意思は毛頭持たないということをきわめて明確に言ったわけです。それが必要があらばというまくらことばがっきながらも、改正について検討する用意があるということを言っておることは、現在の基本法について、総理みずからも若干の反省があるのではないかというふうに私としては受け取っておるわけです。そういう点、農林大臣佐藤総理と同じような考え方なのかどうか。私が新聞を見たところによりますと、坂田農林大臣は郷里に帰って、総理はああいうことをおっしゃっておるが、自分としては基本法は間違っておらぬから、変える意思はないというような御意見を発表された。これは新聞でございますから、どの程度正確であるかどうかわかりませんが、もしそういうことが事実であるとすれば、総理農林大臣と、一番農政に関する基本である農業基本法に対する見解が違う、こういうふうにわれわれは判断せざるを得ないので、そうなりますと、きわめて重大でございますので、この点をまずはっきりしていただきたい、こう思っておるわけであります。
  8. 坂田英一

    坂田国務大臣 東海林委員のいまの御質問でございますが、総理と私との間に基本法に対しての考え方の違いはございません。つまり、総理として——いま速記録を持っておりませんから、正確には申せませんが、総理としては、必要があればもちろんこれは改正するのは当然のことであるが、いまのところは改正する意思はない、こういうことを申しておるはずだと思います。私もさように考えております。それは同様でございます。ただし、いまこれに基づいてやっております政策そのものを個別的に考えますと、これについてはやはりよほど考えなければならぬ点もありますし、それから方向はいいけれども、その点において実際の効果が逆にあらわれておるという、少数の地方によってはそういう事例のあらわれておるところもあるように思いますので、これらの問題については、さらに実態によく即応して進めていくべきものである、かように私どもも考えておるわけでございます。
  9. 東海林稔

    東海林委員 今回の法案は、基本法にいう自立農家育成という規定を具体化するための手段としての考え方だというふうに一応理解されるわけでありますが、それに関連してもう一つお伺いしたいのは、基本法の十六条に、共同相続の場合になるべく細分化を防ぐための施策を講ずるということも一応書いてあるわけであります。この点については、基本法制定以来すでに相当年限がたっておるわけでありますが、こういうふうに法文に明記してあることについて、農林省は一体どのように考え、現在どういうような準備をして進めておられるかという点も、この法案に関連して明らかにしていただきたいと思います。
  10. 坂田英一

    坂田国務大臣 十六条のこの規定は、非常に重要な問題であると思います。この相続によっていろいろ問題が非常に変わってまいるわけでございまして、これは各国の例によりましても、一子相続をやった国においては、農地相続という問題については特別の規定を置いておる国が多い。ドイツの例にしてもさようでございますし、だからそういう意味において、東海林委員と同様に、この問題については十分検討を要すべき問題でございます。したがいまして、これについては、農林省全体といたしましても、検討は加えておるのでございますが、何と申しましても、この点につきまして憲法上のいろいろの問題なども加わりまして、これらの問題を十分検討する必要がありますので、いろいろと検討はしておるのでございます。したがって、これらについての法制の改正ができない場合においては、どういうふうにするかといったような実行上の問題等についても検討を加えておるようなわけでございます。
  11. 東海林稔

    東海林委員 いま御答弁のように、確かにこの問題は憲法上の問題とも関連しましてきわめて重要だが、なかなかむずかしい問題であるということは私もわかるのであります。しかし、基本法制定の際に、すでにそういうことはわかっておったわけでございますから、すでに五年もたった今日、検討はしておるというような抽象的なことだけでは、私は不十分ではないかと思うのですけれども、もしなんでしたら、農地局長からでもけっこうですが、どういうような方向検討されておるかという点をもう少し明確にしていただきたいと思います。
  12. 大和田啓気

    大和田政府委員 相続の問題は、所管は農政局でございますが、私から便宜お答えをいたしたいと思います。  私ども、戦後、農業資産相続特例に関する法律案というものを、たしか昭和二十四、五年でございますか、国会提案をいたしたことがございます。そのときも、農地改革によってつくられた農家が、相続によって土地を分散するということは好ましくないという考えで提案いたしたわけでございますけれども、先ほども大臣が言われたような均分相続といいますか、憲法の新しい精神との調和が問題になりまして、たしか審議未了になった記憶がございます。それで、基本法制定の際も、農林省内部ではずいぶんこの問題を議論いたしまして、農地が分散される、あるいは農業資産が分散して相続されることは好ましくないではないか、少なくとも均分相続の原則を尊重しながら、農業資産なりあるいは農地としてはまとまって相続されるような形が好ましいではないかという意識で、十六条の規定を置いたわけでございます。その後、農業資産なり農地なりが、一体どういう形で相続をされているかといこうとを実態調査相当こまかくいたしました。その結果は文書にも発表されておりますけれども農地の分散というのは、大部分といいますよりも、ほとんど全部は生前譲与の形であって、死後相続によって農地が分散される、あるいは経営が縮小されるという例は非常にわずかな事例であるわけでございます。それで、相続の際に、農地をまとめて相続させるということの特例について法的な制度を講ずることは、ただいまの時点で考えれば、あまり説得力がないのじゃないかという結論になったわけでございます。これは多少私見にわたりますけれども、ここ四、五年くらい前の調査としては、均分相続の例は比較的少ない、あるいは絶無に近いけれども、どうも最近における農村変化を見ますと、近い将来においてはこの問題が相当大きなウエートを占めてくるのではないか。したがって、調査を進めながら、ただいますぐということではございませんが、将来の問題としては、十分農業資産一括相続、特に農地相続によって分散されないような——それは必ずしも法的な制度ということを意味しませんけれども、何かの手当てが必要だろう、ただいまの時点に立って考えればこのままでいいだろうけれども、将来はやはり相当な心がまえが必要だろうというふうに考えております。
  13. 東海林稔

    東海林委員 私も、現在の農地相続の状況は、ただいま局長から報告されたようにも考えるわけですが、今後の問題を考えると、必ずしも従来どおりいかないだろうという局長考え方と、私も同じ考え方を持つものであります。同時に、せっかく基本法に、こういうことは必要な政策を講ずるものとするということが書いてあるわけなんです。現状はあまり心配ないから何もせぬでもいいということにはならない。そういうことであれば、この条文は削らなければならぬということになるわけです。これはせっかくこういう条文を盛ってあるのですし、将来の実情の変化ということも予想されますから、やはり慎重に検討をして、適当な対策を講ずべきである、こういう意見を持っておりますことを私も申し上げておきたいと思います。  それでは、農地管理事業団法案事業内容についての質問に入るわけですが、私どもは、御承知のように、前回事業団法は、一部の大規模な農家に対する手厚い施策ではあるが、他の中小以下の大部分農業については何ら益するところがない、非常に差別的な内容である、結局はわれわれが言っておるような小農切り捨て、あるいは安上がり農政とつながるものだというような立場から、強い反対をいたしまして、そうして参議院でこれが廃案になったわけでございます。今回の政府提案理由を見ますと、四点ばかり今度は前回法案を修正されております。しかもその修正点については、国会における審議経過等も考えて、こういうふうになったということでありまして、まあ国会審議で問題になったような点を相当考えたというふうに一応なっておるわけですが、しかし、昨日松浦委員も指摘しましたように、この前一番問題になったのは、農地相当規模取得して自立農家になろうとする人にはけっこうな案かもしれないが、反面農業を離れていこうという人たちに対して、何ら新しい生業といいますか、そういう対策がないというところに問題があるということが一番論議されたわけですが、その一番大事な点がまた今回の法案においても考えられていない。あるいはこの事業団法自体においてそれを直接考えることが困難であるとするならば、何らか別の立法によってそういう点を考慮して、あわせてこれが提案されますと、われわれとしてもある程度首肯する点があるわけですが、そういう一番前々から国会において議論になった点が除かれておる点において、われわれ非常に納得できない点があるわけでございます。私は、そういう基本的には今回の法案にも賛成はできないという立場で、質問を続けていきたいと思うわけです。  まず、お伺いいたすわけでございますが、今度前回に比べて変わっておる点の一つとして、前は全国のパイロット的な地区事業対象地区と考える、こういうことでございましたが、今回は一般にいわゆる純農業的な地帯中心とした、しかも自立農家育成熱意を持っておる地帯からやっていく、こういうようなことになったわけでございます。パイロット地区を一般に振りかえたその理由をもう少し明確にしていただきたいと、まずお願いしたいわけです。
  14. 坂田英一

    坂田国務大臣 昨年農地管理事業団法案審議いたしました当時におきましては、これについての実質、実体というものが、農村に十分理解されていない地域もあったように思われます。したがいまして、その当時は非常に心配する人もあるし、また非常に賛成する人もあったりして、その農村の受け取り方においてまちまちな状態があったように思われるのでございます。ところが、その後、現在の情勢から見ますと、事業団の行き方、この問題については、非常に農村全体によく趣旨が徹底しておるという状態に相なってまいりました。もちろん、まだ十分でない地帯もありましょうが、非常にその点は昨年と違う点であると思います。さような関係からいたしまして、今年は、いま申しましたようにパイロット式でなしに、初めは四百でございますが、五年間を通じて農村らしい農村に対しては全面的にこれを実施していこう、こういうことに相なったわけでございます。  なお、詳細は、もし必要なれば農地局長からお答えいたします。
  15. 東海林稔

    東海林委員 それじゃ局長にお伺いしますが、次年度以降の年度計画では、大体毎年どのくらいずつ新たに指定をしていくことになっておるのかということと、一度指定した農村は、この仕事をずっと続けるのか、それともある一定年限を終わればやめることになるのか、そこの点をまずお聞きしたいと思います。
  16. 大和田啓気

    大和田政府委員 全国にどういうテンポでこの仕事を広げるかということは、結局、農民あるいは農家の方がどういう形で支持するかということにかかるわけでございますけれども、幸いにして農家の支持あるいは市町村の要望が強くあるということでありますれば、私ども、大体農村らしい農村で、そういう農業構造改善に興味と関心を持つ農村は、全国で二千四百程度くらいというふうに踏んでおります。これはあくまで二千四百程度ということで、ふえたり減ったりすることは当然でございます。そうして四十一年度の初年度に四百をやるわけでございますから、あとの四十二、四十三、四十四、四十五の四年間でそれぞれ五百ずつ追加して指定して、四十五年におきましては、大体二千四百の農村らしい農村すべてにおいてこの事業は行き渡るというふうに考えております。そうして一たん指定をいたしますと、その市町村がもうわしのところは要らぬとか、あるいはかりに農家の評判が悪くて、もうこの仕事はやりたくないということであれば別ですけれども、この仕事を続ける意思熱意がある限りは、私ども何年というふうには切らないで、見通せる限りの相当長年月にわたってこの事業を進めていきたいというふうに思います。
  17. 東海林稔

    東海林委員 それから、今度前回と変わった点で非常に大きい点が、末端の実務を市町村農業委員会に担当させる、こういう点でございます。資料として配付されました「農地管理事業団運営の考え方」にある程度出ておるわけでありますが、末端のこの農業委員会で実際に買い取り、販売あるいは売買のあっせん等をするその具体的な手続を一応説明していただきたい。これは局長からでけっこうです。
  18. 大和田啓気

    大和田政府委員 まず農地管理事業団ができましてから、市町村指定をいたすわけでございます。それを十月以降、市町村の態勢といいますか、希望といいますか、熱意といいますか、市町村の意向が固まりましてから、知事から農林大臣に言ってまいるわけですが、そこで指定をいたしますと、市町村農業委員会の中に、村全体の農業について熱意と関心を持っている人、村長さんでありますとか、農協関係者でありますとか、あるいは農業委員はもちろんのこと、さらに私は実際農業を一生懸命やっている人を相当多数入れたほうがいいと思いますが、十五人程度農地管理協議会というものをまず村でつくってもらいます。農地管理協議会をまずつくりまして、そこで、一体その村において自立経営というものをどういうふうに考えるか。きのうも申し上げましたように、たとえば水田地帯であれば、三町歩なければ、一家が農業を一生懸命やって、それで相当収入があげられない、あるいは果樹地帯であれば、ミカン畑が一町五反とか、いろいろ現地の農業事情によって違いがあるわけですけれども、そこでどういう農家育成の当面の目標とするかというものをきめるわけでございます。そうしてその次には、その村で農地管理事業団が売買のあっせんなり、あるいは将来農地の売り渡しの対象になる農家というものをどういうふうに考えるか、これはいろいろ御議論のあるところでございますけれども、将来自立経営農家に達するために十分の熱意と、また可能性のある農家、具体的にはあまり小さな農家というのは実際はそれに該当しないと思いますけれども、しかし、それよりも、実際農業をやっている主人公なりあるいはそのあと継ぎなりが、とにかく農業に専念して、技術も相当高いし、能力もあるという、いわば自立経営の候補者群というものを想定をするわけであります。それが大体農地管理の方針になるわけでありますが、その農地管理の方針の中には、もとより一体その村において農業をどういうふうに引っぱっていくか、あるいは土地改良計画はどう考えるか、農地の造成計画はどうかというようなことが、当然考慮されるわけでございます。そうして農地管理事業団をどういう形で動かすかというのを農地管理の方針の中にきめて、それは十分村で討議をしていただきたいと思いますが、知事の許可というか、承認を受けて、それに基づいて売買のあっせんなり、あるいは小作地の貸し付け、あるいは農地の信託というのが始まるわけでございます。
  19. 東海林稔

    東海林委員 いまの御説明で、特に現在の経営者並びに後継者も、農業に将来とも熱心に精進するという意欲を持った者、こういうことでございますが、なかなか人間の心の中というものを見通すのは容易じゃないと思うのです。一定の具体的な形としての基準があるとわりかた判定が楽だが、しかし、そういうことになりますと、どうしてもそれを認定する協議会でありますか、そこの人選ということが非常に重要なことになってくると思うのですね。得てして、農村においていろいろな委員会とか何かつくるときになりますと、村の顔役、有力者がそういう委員になりがちだということは御承知のとおりです。したがって、この点については、よほどそういう点についての配慮なりがなければ、私は非常にむずかしい問題であろうと思うわけです。この点は、これは別に議論するわけじゃありませんが、前回は末端まで事業団で担当職員を置くという考え方であったわけです。それと比べてこのほうがうまくいくのだということで今度出したろうと思うのですが、そこらを比較して、どういう点が今度はすぐれておるとか、いや前のは悪いのだから、こういうふうに前の案を変えたのだという、その考え方もひとつ明らかにしてもらいたいと思うのです。
  20. 大和田啓気

    大和田政府委員 前回の案と変えましたことを、いまの農業委員会実態的に使うか、あるいは事業団の職員を村に張りつけてそれでやるかという点だけに限って申し上げますと、私は、考え方といたしましては、いわば国の機関的な農地管理事業団が職員を設置して、その線で相当強力に自立経営の育成という仕事をするのも、一つの行き方だと思います。それは国が責任を持つというたてまえからいって、また村にまかすとなかなかうまくいかない面もないことはございませんから、私はそれも一つの行き方だと思います。したがいまして、昨年の考え方でパイロット方式で百を指定して、そこに事業団の職員を置いて強力にやるということも、あながち私は間違っていたとか不適当であったというふうには考えません。しかし、日本農業振興の仕事をパイロット的な形でやるということについては、やはりある限界があって、全体で三千幾つの町村があるところ、あるいは六百万戸近い農家があるところで、非常に限られたところで国が責任を持っていい仕事をしても、なかなか全体に及ばないということもございましょうし、それから限られた人、限られた地域について国が相当な財政負担をするということ自体についても、批判がだんだん起こりましょうし、いわばパイロット的にやるということは、決して意味がないとは思いませんけれども、どうもなかなかやりづらい面があるわけです。  そうして、ただいま御提案いたしておりますような農地管理事業団考え方でやりますと、相当広い地域にわたって、そして現状にある程度まで即しながら、あまり無理をしない形でやっていく。村の人たちで集まって農地管理の協議会をつくるわけでございますから、そこで出される結論というのが、多少レベルが低い結果にかりになったとしても、それが日本農村のいわば実力であり、現状の反映であって、それに即して仕事を進めることがやはりいいではないか。経営規模の拡大ということも、別に国が力を加えて、強権を使って無理じいにやるべき筋合いのことではございませんから、村の人たちの話し合いで、方向だけは政府が責任を持ってきめますけれども、そのきめられた方向の中で、多少のでこぼこ、あるいは現地の実情に即しての余裕というものを残しながら、村の人たちにも納得づくで経営規模の拡大ということをやることが、現在の時点においてははるかにまさっているのではないか、そういう結論に達したわけでございます。
  21. 東海林稔

    東海林委員 局長前回のやり方も決して間違っておらないと考えるというふうなことを、いまの説明と関連して考えると、この対象となる町村の数が非常にふえたものだから、従来の方式でいくと、一人一人全部置くと、えらい予算がかかる。したがって、金がこれだけかかったんじゃかなわないから、もう少し理屈をつけて、安上がりな方法を考えたというふうに受け取れないこともない。そんな点があるのですが、そこらをもう少しはっきりひとつ説明してもらいたいと思います。
  22. 大和田啓気

    大和田政府委員 これはむしろ考え方なりたてまえの問題でありまして、ただ職員をおけば金がかかるし、農業委員会に頼めば多少安上がりだという、そういう金の問題できめたわけではございません。あくまでものの筋道の考え方でございます。
  23. 東海林稔

    東海林委員 あなたは、前の考え方も決して間違っておると思わないと言うものだから、そういうふうに私は思うので、やはり前のやり方は少しまずかったと言えば、そうは思わないのだけれども、両方弁解するから、そういうことになるわけです。  次に移ります。そこで、今度の四十一年度はあっせんだけとなっておるのですが、しかし、法律案では、買い取り、販売とあっせんと両方できることになっているわけです。これは実際に実施する場合に、これがどういうふうにあっせんと買い取り、販売ということが区別して起きてくるか、そういう点どういうふうに考えておられるか、説明してもらいたいと思います。
  24. 大和田啓気

    大和田政府委員 事業団が直接買い取って売り渡すことと、農地の売り渡しのあっせんとを比較いたしますと、一つの目的に向かって的確な効果を生じさせる、あるいは事業団が介入して農地の売買が行なわれる場合に、交換分合が確実に行なわれるという点で、私は、事業団による買い取り、売り渡しのほうがすぐれていると思います。しかし、きのうもお話ししましたように、事業団による農地の買い取り、売り渡しにつきましては、利点と同時に、なかなか行政上始末することがむずかしい問題が幾つかございます。たとえば差し迫っての問題といたしましては、農地の買い取りの価格をどういうふうにきめるか。事業団があっせんによって農地の売買をやります場合は、農地の売り手と買い手とがいわば需要供給の形でそこでぶつかるわけでございますから、大体の事業団がきめます標準的な地価を頭に置きながら、話し合いできまるわけです。あまり高い金で買うと、払うのに今度はたいへんでありますから、おのずと払い得る価格というものが実現するわけでありますけれども事業団が一方的な買い手の相手方になりますと、もちろん適正価格できめる筋合いでありますけれども、そこのところが農家といわば一応遮断されておりますから、価格決定することについては、あっせんの場合よりもさらにむずかしい問題があるわけです。  それからもう一つは、一体事業団農地を買ってどういうふうに管理するか、買った農地が売れない場合はどうするかということについての補償も十分済まさなければならないわけでございます。私は、事業団仕事を進める場合に、私どもがものを考える場合の一つの参考にいたしましたフランスの制度でありますか、ドイツの制度でありますか、そういうところはまさに農地の買い取り、売り渡しをやっておるわけでありますから、農地管理事業団農地の買い取り、売り渡しをやるのは毛頭不可能なことではございませんし、やるについての意味は十分ありますけれども、まず農地の価格の問題あるいは買った農地の管理の問題について、多少時間をかけて、事業団をまずつくって動かして、そこで農地の売買のあっせんでいわば事業団を鍛えながら、事業団の職員を訓練をしながら、四十二年度以降において事業団による農地の買い取り、売り渡しの仕事を始めたいというふうに考えております。
  25. 東海林稔

    東海林委員 さしあたって、大部分を買い取り、売り渡しするというようなことはなかなか容易じゃないということはわかりますが、しかし、将来の考え方としては、やはり私は、買い取り、販売というものを中心に考えるのが正しいんじゃないかというような気がするのです。確かに価格の問題等がございますが、しかし、一部を買うにしましても、やはり買う場合の基準とか売る場合の基準とかいうものはきめなければならぬわけですね。それを中心にして将来は考うべきではないかと思うのですが、その点はいかがですか。
  26. 大和田啓気

    大和田政府委員 これは事業団の階梯が進むとともに、また末端の農業委員会あるいは農協の仕事ぶりが整備をされるにつれて、農地の買い取り、売り渡しということが相当なウエートを占めてくることは、私も同感でございます。
  27. 東海林稔

    東海林委員 次に、この予算関係でございますが、まず今年のこの点から言うと、出資、それから財政投融資について、この融資の点はよくわかるのですが、国、県、それから市町村と農委は一本でいくのか、市町村、農委別に別々にいくのか、さらに農協、こういうような関係が予算的にこまかい点がよくわからないのですが、そこをひとつ説明してもらいたいと思います。現段階において受け持つ仕事と、それにあわせて予算がどうなるかという点を説明してもらいたいと思います。
  28. 大和田啓気

    大和田政府委員 事業団の農協系統に対する金が約二千万円で、市町村に対する委託費が八千万円でございます。そのほか、市町村には農地管理協議会等の費用が二、三千万円組まれておるわけでございます。  それで、農業委員会は、法律上の性格といたしまして、これは行政機関でございますが、国と農業委員会と直接事務の委託契約を結ぶことはできない状態にあります。したがいまして、事務の委託の当事者としては、国と市町村が行なって、市町村が内部的な問題として、農業委員会に実際仕事をやらせるという形になるわけでございます。したがいまして、全体として八千万円、一つ委員会に平均して申し上げれば、半年分で約二十万円というふうにきのうも申し上げましたけれども、これは市町村に対する委託費という形で流れるわけでございます。  それからあとの二千万円は、これは国と信連との委託契約になります。信連がまた単協に再委託するという形で、実際の資金の貸し出しなりあるいは年賦金等々の受け入れの仕事を単協にやってもらうということになりまして、二千万円ほどの金は国が信連に流す、信連と単協との関係で、内部配分をそこで行なうというふうに考えておるのでございます。  都道府県の補助金といたしましては、四十一年度の予算で千六百万円ほどございます。その中身といたしましては、普及経費でございますとか、あるいは指導調査の経費でございますとか、あるいは都道府県にも、農地管理の方針をきめ、あるいは市町村農地管理の協議会を指導するための協議会をつくりますので、その金が若干含まれて、合計千六百四十一万二千円でございます。  なお、先ほど市町村に対する補助金が二、三千万円と申し上げましたが、正確に申し上げますと、三千二百万円で、その内容は、農業集落の説明会の費用でありますとか、あるいは市町村農地管理方針の協議会の費用でありますとかというものでございます。
  29. 東海林稔

    東海林委員 一応四十一年度のはわかったわけですが、先ほどお伺いしましたところによると、次年度以降は五百町村ずつ新たに指定して、五年後においては二千四百町村になる、大体その程度を見込んでおる。そうして一度指定したものは、市町村でもうやめようということでなければ継続していく、こういうようなことになりますが、そういたしますと、五年後では相当多額の経費になるように思うわけですが、大体二千四百町村程度実施した場合に、総額予算はどの程度になるのかということと、そういうような点について、予算は単年度主義でありますから、はっきりしたことはともかくとしまして、大体大蔵省とも当然そういうことは了解済みであろうと思うわけでありますが、念のためにその点をお伺いしたいと思います。
  30. 大和田啓気

    大和田政府委員 農業委員会の費用として、半年に二十万円がいいか悪いか、それで十分かどうかということは、四十一年度仕事ぶりを見て、四十二年度の予算を要求するわけでございますから、四百の市町村を二千四百に拡大した場合に、正確にどのくらいになるかという推算はいまいたしかねます。しかし、大蔵省との話し合いは、頭から二千四百の町村を指定するのではなくて、要するに、機械的に毎年五百ずつやるというのではなくて、あくまでも下からの要望によって指定するということで、だんだんふやしていくことについての話し合いはもちろんできておるわけでございます。
  31. 東海林稔

    東海林委員 そうすると、指定して一年目と、二年目、三年目によって、一つ市町村当たりに対する委託費というものは、事業量が非常に変化する場合は別として、大体同じというふうに考えていいわけですか。同じ市町村に対しては、大体継続していくというふうに考えていいかどうか、そこを聞きたいと思います。
  32. 大和田啓気

    大和田政府委員 半年で二十万円がいいか悪いかということは別問題として、かりに二十万円で十分間に合ったということでありますれば、また農地の移動が飛躍的にふえるということでなければ、一年分の金としては平均四十万円ということになるわけです。それは事情が非常に変わらない限り、別にそれを削減したりするつもりはございません。
  33. 東海林稔

    東海林委員 次にもう一つ、これは非常に大事なことなんですが、一応今年度の計画を見ますと、半年で既耕地二千町歩、未墾地千町歩ということになるわけですが、そういうものがいま融資の対象として考えられておる、こういうことだと思うのです。まあ三分三十年となれば、農家にとっては非常に有利な融資でございますから、実際に土地を買う人はそれの融資を希望するでございましょうし、また売る人の側から見ますと、税制上のいろいろな利点がありますから、ぜひ事業団で取り扱ってほしいという希望が出るんじゃないか、こう思うわけです。しかし、この予算の面にあらわれている数量からいうと、それを全部取り扱うのではなしに、自立経営農家育成に役立つような分を取り上げるんだということにはなるわけですけれども、実際問題として非常にそこがむずかしいような気が私はするわけです。そこで、現在一年間に全国で七万ないし七万五千町歩の移動がある。しかし、さしあたって指定する農村では、大体純農村的なところで相当農地の移動があって、こういうような機構にある程度期待しているようなところが申し出てくるということになりますと、平均的な数字上りは、当該指定を受ける市町村の移動というものは相当大きくなる、こう思うわけです。そうなりますと、予算面から察せられる実際の取り扱い数量との間に相当な開きが出てくる。どの分を取り上げるか取り上げないかということによって、これは税制の保護を受けたり、あるいは融資を受けられるということになったりならなかったりするわけですから、非常にむずかしいわけだと思うのですが、そこらのことを、要するに自立農家のほうに売りやすいものだけを取り扱うというだけでは、これはきわめて抽象的で、私はむずかしいように思うのですが、具体的にはその点をどういうふうに指導するつもりなのか。これは実際やるとすれば、きわめて問題だと思うのです。そこをはっきりと説明していただきたいと思います。
  34. 大和田啓気

    大和田政府委員 先ほども申し上げました農地管理の方針の中で、事業団から農地を売り渡されるもの、あるいは事業団のあっせんによって農地を買い取るものがどういう農家であるということを規定するわけで、その農家は面積が幾ら以上というふうな規定のしかたは、私はいたさないほうがいいだろうというふうに思います。そうして、昨年の法律との違いを一点申し上げますれば、昨年の法律では、農地管理事業団が買い入れる農地についてだけ、農地の売り手に所得税のいわば軽減をやっておったわけですが、今回の法律におきましては、事業団に土地を売る者ばかりではなしに、事業団のあっせんによって土地を売る者にも譲渡所得税の減免をした。これは相当大きな税務当局の譲歩といいますか、理解であったと思います。そこで、農地管理事業団関係で租税の減免があるからということで、だれもかれも、要するに事業団が対象にしがたいような人までも出てくることは、これは私はおかしいというふうに思います。しかし、いま申し上げましたように、事業団のあっせんその他によって土地の買い取りをする人たちあるいは売り渡しをする人たち、特に買い取りをする人たちの範囲というのは、そう小さい一かたまりの、いわば富農層というものだけに限定するつもりはございません。多少の範囲をもってきめるわけでございますから、そう村で困った事態は起こらないのではないか。要するに、第二種兼業農家が小金をためて土地を買うという場合には、その適用はもちろん受けませんけれども農業を一生懸命やろうとする人である限りは、大体私はこの特典に当てはまるだろうというふうに思います。
  35. 東海林稔

    東海林委員 いまの点は非常に問題ですけれども、われわれは反対立場だから、これ以上この問題には触れなくていいのではないかと思います。  そこで、もう一つ、やはり売る場合には、もし自立農家に土地を集めるということになれば、なるべくこれを集団化して、機械も使い得る、作業能率を上げるというようなことも当然考えなければならないと思うわけです。そこで、もしこれをやるとすれば、実際問題として、ちょうどあっせんなり売りつける相手方になる人の農地と、たまたま売りに出て事業団があっせんする農地とが近くにあれば、その間にもう一つ土地がはさまっておるというような場合には、どうしても交換分合というような問題が起きてくる。それをやらなければどうもせっかくの集団化の目的が達し得ないのではないかというような疑問を持つわけです。しかし、全体的な説明を伺っておりますと、積極的に土地を手放すことをすすめることはいたさないんだ、現実に使う希望のある者の報告に基づいて取り扱うんだということになりますと、そこに何か実際問題として非常に不合理が出てくるんじゃないか。政府・与党は、積極的に土地を手放すことをすすめると、それは小農切り捨てだと言われるから、そこは言いたくないということのようにも考えられるのですが、われわれは反対立場ですけれども、これをやるとすれば、そこら辺のことを考えないと、また非常に中途はんぱな、あまり効果のないような形になるのではないかというような気がするのですが、そういう場合には、一体どういうふうに処理する考えであるか、はっきりしてもらいたい。
  36. 大和田啓気

    大和田政府委員 きのう申し上げましたことは、離農の奨励ということについては、そう積極的にこの事業団はやる筋合いのものではないということを申し上げたわけで、農地の交換のあっせんについては、法文でも売買及び交換のあっせんというふうにはっきり書いてございますから、売買のあっせんなりあるいは事業団による農地の買い取り、売り渡しの場合には、つとめて私は交換のあっせんはやりたいというふうに思います。
  37. 東海林稔

    東海林委員 それは交換のあっせんだけですか、売ることのあっせんはしないというのですか、やはり交換分合のあっせんだけなのか、売ることのあっせんもするのか、そこをやはりはっきりしてもらいたい。
  38. 大和田啓気

    大和田政府委員 なかなか二つの問題は分かちがたいかもわかりませんけれども、売ることの奨励あるいは売ることのあっせんということは、いわば離農に通ずる問題でございますし、交換のあっせんあるいは交換自体ということは、別に農地面積の縮小なりあるいは離農なりにつながる問題ではございませんから、そこのところはやはり区別して考えて、交換のあっせんについては相当積極的に事業団としてやってしかるべきである。交換というのは、なかなか事実問題としてむずかしいわけでありますから、事業団があっせんするといって、そう簡単に動くものではありませんけれども事業団の姿勢として、私は、交換について相当積極的にやってほしいというふうに思っております。
  39. 東海林稔

    東海林委員 どうもそこら辺が非常に自信のないような感じがするのです。別にあえてすすめるわけじゃないけれども、これはやるとすれば検討すべき問題だ、このように思います。  委員長農林大臣の御都合もあるそうですから、大臣質問を希望しておる林君のために、一応私はここで保留しまして、林君に譲って、また後ほど局長以下に質問したいと思います。
  40. 中川俊思

    中川委員長 わかりました。  では林百郎君。
  41. 林百郎

    ○林委員 時間の関係上、大臣だけにしぼってお聞きしたいわけです。  本法のこの事業団の「業務執行の方針」を見ますと、業務執行の目標として、「農業を営む個人にあっては、農業基本法第十五条に規定する自立経営」農家、自立経営の方向を目ざして事業運営の基本的な方向を持っていくのだ、こう書いてあるわけです。この自立経営というのは、どういう条件のものを考えているのか。   〔委員長退席、大石(武)委員長代理着席〕 もちろん、これは農基法の十五条に規定はあるわけなんですけれども、そうしますと、第二種兼業、場合によっては第一種兼業、これは自立経営の中に入るのかどうか。この事業の、育成される対象として入るのかどうか。その辺をまずお聞きしたいと思います。
  42. 坂田英一

    坂田国務大臣 自立経営というのは、簡単に申し上げれば、農業によって自立するということになるわけでございます。ただ、この事業団においてしからばそれをどうするかという問題でありますが、事業団においては、結局自立経営として立っていく見込みの非常に十分な人を選ぶわけでございますから、現状が兼業であろうと、そういうことは考えないわけであります。将来自立経営としてりっぱに立っていく、そういう人を選ぶということに進んでいきたいと思います。
  43. 林百郎

    ○林委員 そうすると、あなたの考えている自立経営というものは、経営の主たるにない手が男であり、一家の主人であり、一家の柱が農業経営を営んでいるということは、条件になるのですか、ならないのですか。将来この保護される対象の中に、そういう男の人が経営の主体になっている、主人が経営の主体になっている、一家の主長が経営の主体になっているということは、条件にならないのですか。ならないのならならないと、ここではっきり言ってくださればいいですよ。
  44. 坂田英一

    坂田国務大臣 自立経営としては、その点は、やはり御主人が一生懸命で農業をやるという場合、あるいは主人の場合でなくてもあと取りが一生懸命で農業をやろうというものも、やはり自立経営として考えていっていいと思っております。
  45. 林百郎

    ○林委員 だれも好んで兼業農家をやっているわけじゃありませんけれども、現在の経営規模、たとえば一町歩前後の規模では農業がやっていけない、やむを得ず主人が出かせぎに出ている、しかし、土地だけは何とか守っていきたい、そういう形で主人が出かせぎに通年あるいは農閑期に出ていく、こういうような条件の農家に対してはどうなるのですか。
  46. 坂田英一

    坂田国務大臣 この農地管理事業団でこの方策においてやりまする点は、将来農業によって熱心にやっていこう、自立していこうという人、そういう農家であれば、現実において兼業であろうと何であろうと、そういうことを特に問う必要はないと思います。
  47. 林百郎

    ○林委員 しかし、大臣はさっき、少なくとも一家の主人——主人といえば男の人が原則ですけれども、あるいは後継人、これが農業のにない手になっている、そういうところへこの育成目標を持っていきたい、こう言ったわけですね。そうしますと、大体第二種兼業というのははずされると考えるのが常識だと思うのですよ。それはいま大臣農林省の諸君も、社会党の東海林さんの質問にもありましたように、これは選択的な政策だから、選択から漏れるものがどうなるかと聞かれるのが一番痛いから、そとはそっとしておこうということで極力努力しているくらいのことは、われわれもわかっていますよ。わかっていますけれども、正直に言って、大臣がいま言った自立経営の見込みのある農家を対象にしていくということになると、第二種兼業は大体はずれると見るのが常識じゃないですか、幾ら皆さんが言いわけをしようと。そうすると、第二種兼業というのは、五百六十六万農家のうちの二百三十六万農家、約四割強、しかも第二種兼業は全耕地の四割くらいを持っている。というと、現在の政府農業政策の見通しとしては、大体これは育成するワクからはずすということになるじゃないですか。たとえば農基法の十五条を見ましても、「正常な構成の家族のうちの農業従事者が正常な能率を発揮しながらほぼ完全に就業することができる規模の家族農業経営」とある。この「ほぼ完全に就業することができる規模の家族農業経営」ということになりますと、もう兼業農家は、農基法の十五条、本法の二十六条一項一号からいっても、これははずされる、こう見るべきじゃないでしょうか。その点をもう一度大臣にお聞きしておきます。
  48. 坂田英一

    坂田国務大臣 第二種兼業農家農地、いわゆる耕作地は大体二割見当だと思いますが、それは別といたしまして、やはり熱心に農業をやろうという者でありますならば、これをはずしていくという考えは持ってはならぬと思いますし、持たない。しかし、第二種兼業の場合には、多くの事例としては、勤勉に続けていくという人は少ないであろうとは推測いたします。
  49. 林百郎

    ○林委員 何のことだかよくわからないのですが、あなたはさっきから、農業を熱心にやろうとする者に対しては、この事業団育成の対象として考えていきたいと言うけれども、熱心にやろうと思うなんということは主観的な考えでしょう。そんなものは農林省の計画の対象になりっこないじゃないですか。一々行って聞くわけですか。いま兼業農家で御主人が働きに出ていますけれども、一心に農業をやるつもりでありますかどうかなんて、聞くわけじゃないでしょう。具体的には、やはりそのうちの一家の主人公、客観的には農業の主たるにない手が兼業をしているというものは、やむを得ずはずす、やむを得ずだか、あるいは計画的かは別としてはずす、こういうことになるのじゃないかというふうに私は考えるのです。それで、あなたは熱心な者を育成すると言いますけれども、熱心にやろうと思ったって、農業の経営がやれなくて、農業の価格政策や貿易の自由化、いろいろなことで離農していく人があるわけです。だから、これをどうするか。この法案は、年間七万町歩くらいの土地が放棄されている。その放棄されている土地を合理的にコントロールしていくということを政府は言っているわけです。七万町歩もの土地が何で放棄されるのか、年間七十万や八十万の農民がどうして離農せざるを得ないか、離農させないようにするにはどうするかということが農業政策基本じゃないですか。ところが、去年からのこの質問に対する一貫した政府答弁は、現実にもう離農し、土地が放棄されている現状をそのまま認めて、これをどうするかという考え方なんです。そこにわれわれといまの政府が考えておる農業政策との基本的な対立点があるわけです。  そこで、この質問を次に発展させるためにお聞きしたいのですけれども、土地を手放すものを合理的にほしい者に集約していく、そして農業の自立経営を育成していくというのですけれども、そうしますと、どういう層がいま土地を手放していて、その手放している土地をどういう層に集約しようと考えておるわけですか。そして、農基法の十五条でいう自立経営のできる規模の農業というのは、どのくらいの土地が必要と大臣はお考えになっておりますか。
  50. 坂田英一

    坂田国務大臣 さっき申しましたように、農業を熱心に、また自立農業として十分に立っていきたい、そういう人を選ぶのであって、しかも、それは一時にでき上がるものではもちろんございません。漸進的にそれはいくわけです。そういうことを私どもは希望しておりますけれども、それを東京におって選ぶというのでないことは、林さんもよく御存じのとおりであります。これはやはり村の町村長あるいは農業委員会農業団体の人、精農家、そういう人々は、先ほど農地局長からもお話し申し上げたように、よくそれらの実情に通じておるはずでございますし、また常々それをよく調べておく必要もあるわけでございますので、それらの人々に選択をしていただくことになるわけでございます。こちらにおってそれがどうというようなことはないわけです。村の実態からそれらのものが選ばれてまいるという体制をとっていきたい、こう考えておるわけでございます。  それから、無理にその問題をでっち上げようというのではもちろんないわけでございまして、その点も十分御説明を申し上げておりますとおりに、現在すでに七万五千町歩くらいの売買が行なわれておるのでございます。その行なわれておるものを土台にいたしまして、それらをその方向にでき得る限り持っていくように努力を払う、こういうことなのでございます。
  51. 林百郎

    ○林委員 それは、去年以来この法案審議政府が一貫して答弁していることです。  それでは具体的に大臣にお聞きしますが、本法の二十六条の一号でいう農基法十五条の自立経営、これは大臣、どのくらいの耕作反別——北海道は別として、内地でどのくらいの耕作反別にしてやりたいか、具体的なことを言ってみてください。それが一つと、それから昨年以来——でっち上げるなんて、だれも言っておりません。でっち上げるのじゃないけれども、土地を手放すというのはやむを得ず手放しておるわけで、土地を手放さないような方策こそが、政府農業政策基本になるべきだということをわれわれは主張しているわけです。ところが、手放していることを前提として集約化していく。しかも実際は、この法律を見ますと、そんなのんきな、なるべくゆるやかに、自然にまかせていくということじゃないと思う。それは昨年よりはそういう要因を農林省の首脳部として考えている面は、若干見えますけれども、しかし、政府が都道府県知事や市町村長、こういう権力の末端機関をこの作業の中に繰り込んできて、資金の面やあっせんの面などいろいろして、単に自然に流れるものを自然に整理していくということじゃないというふうにわれわれは思うわけです。もし大臣の言うようなことだったら、何もここで農地管理事業団というものをつくらなくとも、現に農地法もありますし、農業委員会もあるのですから、その農業委員会農地法の機能に沿うようにしてやっていったらいいじゃないですか。こういう膨大な、国家から都道府県から市町村までが入り込んでくるような機構は必要ないのじゃないですか、どうでしょう。
  52. 坂田英一

    坂田国務大臣 まず面積のほうでございますが、これは私が常に申しておるとおり、何町歩ということをかりに言う場合があっても、それは私は用いるべきではないと思うのです。平均してどうという問題がかりに言えるならばいいと思う。これは常に私が申しておることであって、北海道の北見の辺になりますと、畑地ならばやはり二十町歩以上要ります。現にそういう方向へ進んでおる。そうかと思うと、広島県なんかは平均六反幾らですね。そういう実態であります。都会付近ならば、ビニールハウスをやったり、あるいは何か温室の方向に進んだりして、これは土地が非常に小さい。養鶏ならばもっと小さいかもしれません。だから経営の姿そのものによって一つ一つ違うのでございますし、それからまた地域によって非常に違う。これはもう林さんもよく御存じのことであって、それをあえて面積でどうかということを聞かれるのは、私は一番好まないことなんでございます。その点を御了承を願いたいと思います。  それから、現在七万五千町歩の売買が行なわれておるのでありますから、それらはその村の情勢から見て、せっかくそういうところがあるときに、村としても国としても、でき得る限りその方向へ持っていくということはいいのじゃないかということから進むことであって、それを強制的にあるいは強力に進めていくという考えは、いまのこの制度においては持っていないということを繰り返して申しておるのでございまして、何も隠しておりません。そのとおりのことを申しておるわけでございます。
  53. 林百郎

    ○林委員 昨年の審議以来、一貫して政府の言うことはそのことなんですよ。一つは、決して強制的にはやりません、自然の流れをそのままに整理していくだけですと言う。しかし、それならば、農業委員会農地法があるからそれでいいじゃないか、なぜこういう新しい機構を設けるか、それは強権を加えるということ以外にないじゃないですか。さて、強権を加えて、大体自立経営をいまの政府の考えておるような規模に持っていきたい、そうなりますと、自立経営の基盤を一戸当たりどのくらいのところに持っていくかという裏づけがないと、計画なんか立たないと考えておるわけです。昨年の私の質問に平均二・五ヘクタールと言っております。もし大臣が平均ということがいやなら、私の長野県で聞きましょう。もしそれで困るなら、私の選挙区でいい。諏訪と上下伊那——あなたが長野県でも一般的な数字を言うことがきらいというならば、具体的に言ってみてください。あなたがきらいだということは、それを言われると痛いからでしょう。少なくともいまの耕作反別よりか広げなければならぬ。広げるには、だれかのものを切り捨てさせ、だれかのところに持っていかなければならぬ。そうかといって、耕作反別がいまのままでいいなんてことは言えない。だから、あなたごまかして逃げているんじゃないですか。うまそうで、へたですよ。それでは具体的に長野県のたんぼをこの事業団の計画でどのくらいまで広げていくつもりですか。現在でいいのですか。
  54. 坂田英一

    坂田国務大臣 林さんは選挙区ですから、自分はよくおわかりでしょうけれども、私のほうはかえってわかりにくいのでございまして、それは先ほど申しましたようなことでございます。そしてまた、強権でそれをやるという考えは毛頭持っておりませんのでございますから、十分ひとつその点は誤解のないように、特別に頭へ入れておいていただきたい、こう思います。
  55. 林百郎

    ○林委員 のれんと腕押しですから、次に進みますが、今度はそこもあなた方は含んで、どうも野党の質問はそこに集中されそうだ。土地を拡大したいという要望は中農層にもある。これは御承知のとおり、私のほうの調査ですと、一町歩単位の農家が、譲るほうも譲り受けるほうも約五割から六割なのですね。この層の土地の移動が非常に多いわけです。やはり一町歩以下の農家が土地がほしいという意欲も非常に強いと思うのです。そうすると、この法案を通すためには、やはりその層まで入れていかないと、その層まで反対に回して三割農政ということじゃまずい。しかし、それには土地の限界があるから、それじゃ開拓ということを一つ入れておこう、開拓して土地を広げてくれてやると言ったら、その範囲の農家の連中もこの法案に関心を持つだろうという含みがあるように思うわけです。そこで、この法案で新しく盛り込みました開拓計画ですね、未墾地の開拓、これはどの程度の開拓を考え、どの程度の土地を新しく賦与することを考えているのか、具体的な計画を聞かしてもらいたいのです。
  56. 坂田英一

    坂田国務大臣 土地改良長期計画において、十年間に三十五万町歩の計画を現実に確定いたして進むことにいたしております。なおそのほかに、草地として四十万町歩を開拓していく、こういう考え方を持っておるわけでございます。
  57. 林百郎

    ○林委員 それは事業主体はどこがやって、予算措置はどうなるのですか。
  58. 坂田英一

    坂田国務大臣 数字はいま農地局長からお答えさせます。
  59. 大和田啓気

    大和田政府委員 開拓の主体は、規模によりまして国営なり県営なり団体営ということでやるわけでございまして、予算も、全体の二兆六千億の中にたしか四千五百億程度の計画を立てておるわけであります。
  60. 林百郎

    ○林委員 それでは局長に聞きますが、本年度の計画はどうなるのですか。とりあえず何町歩開拓して、予算措置はどうなっておりますか。
  61. 大和田啓気

    大和田政府委員 ことしは、開拓関係では、国営、県営、団体営等々について相当な新規の計画を立ててございます。しかし、国営にしろ五、六年かかるわけでございますから、ことし開拓地としてできる土地は、国なり県なりあるいは団体営の関係で、直轄及び補助事業関係では一万町歩ないし一万五千町歩というふうに推算いたしております。
  62. 林百郎

    ○林委員 大臣、そういうわけでね、あなた方抽象的なことは景気のいいことを言われて、三十五万ヘクタールを開墾し、採草地は四十万ヘクタールと言うけれども、本年度は一万五、六千ヘクタールでしょう。ですから、この法案を通過させるために、中間農民層を入れるためのさしみのつまとして加えたとしかわれわれには考えられないわけです。  そこで、質問をさらに進めてまいりますが、この資金関係で、二十七条に、貸し付け利率年三分、償還期間三十年、一農家当たり八十万円ですか、これがあるわけですが、そうしますと、従来の自作農維持資金制度の土地取得金の制度、これが三分五厘、二十五年、融資限度八十万、これは農地管理事業団事業施行地域には適用になるのですか、廃止になるのですか。
  63. 坂田英一

    坂田国務大臣 いまお尋ねの問題ですが、その地点については、三分五厘、二十五年がやめになるわけでございます。使わないわけでございます。
  64. 林百郎

    ○林委員 御承知のとおり、いろいろの資金制度がありますけれども、いま現実に農民が望んでいるのは、自作農維持制度の中の土地取得の資金制度、これを農民が非常に望んで、どこでもほしがっているわけです。しかし、この制度がやめになって、事業団のいろいろのむずかしい条件で、この資金制度がこれだけにしぼられてくるということになると、やはり上富農層へこの制度の資金が回って、現実にいま活用されている土地取得資金制度がやめになってしまうということは、やはり上富農層の利益にこそなれ、中農層の、土地をほしがっている一町歩前後の農民の土地取得の資金制度を制限することになる、こういうようにお考えになりませんか。
  65. 坂田英一

    坂田国務大臣 いま三分五厘、二十五年賦の資金にいたしましても、第二種的な農業を主たるものにしない、そういうものについては適用をいたしておらぬのであります。その点を御了承願いたいと思います。  なお、これによって問題をいろいろお考えになっておるようでございますが、この農地の取得の問題だけを通じていろいろの問題をお考えになる必要はないのでございまして、私は全般の農村の問題を十分考えていかなければならぬことは、この点は林さんとはそう違わないと思っております。
  66. 林百郎

    ○林委員 妙なところで私と違わないところが出てきたのですけれども、私は、やはり農民生産手段の基本である土地問題は、農業政策の土台にすわっておらなければならない、こう考えているわけです。政府やいまの農林省の考えは、離農した人たちあるいは土地を手放す人たち対策を考えてやる、それで本質をごまかしているようにわれわれは考えるわけです。その点は、大臣と私は基本的に考えが違います。現に実際土地をほしがっているのは、私幾度か申しますけれども、いま統計の数字が出てきたのですけれども、一ヘクタール未満の農家が、土地の売買件数のうち六〇%を占めているわけです。ということは、土地のほしい層もそういう層なんです。ここを守ってやらなければならない。ところが、昨年からのほんとうの政府の腹を聞いてみますと、内地では少なくとも二町五反前後の規模の農業経営の地盤を考えているということは、一貫した政府答弁なのです。そうすると、土地のことを考えてはやると言っているけれども、実際土地のほしい、やむを得ず土地を手放しているという一ヘクタール以下の農民のことが、この法案の主眼に置かれておらなくて、少なくとも二町前後の比較的土地をたくさん持っている富農的な条件にあるところ、あるいは将来農業労働者を雇って資本主義的な利潤を獲得することを目途とした、広い土地を基盤にした農業経営、そういうところを政府は考えているのじゃなかろうか。したがって、その一つのあらわれとして、この自作農維持資金の中の土地取得資金制度、これをどうして廃止するのでしょうか。これは両方並行してもいいのじゃないですか。そこをお聞きしておきます。
  67. 坂田英一

    坂田国務大臣 いま何も面積の小さいものにこの問題を適用しないというのではないのであって、先ほどから申しますように、人を主にして見るわけです。つまり、いま主人が非常に熱心に農業をやっている、あるいは後継者が非常に熱心に農業をやっている——御存じのとおり、現在農業を離れる人が非常に多いですから、こういうときにおいて、農業をみな捨ててしまうようになったらたいへんだ、だから、ほんとうに農業を熱心にやろうという者についてよく考えていこうという趣旨なのであって、現在のなには、財産があろうと、そういう問題をいうのじゃなくて、ほんとうに農業に専心して一生懸命やろうというところをできるだけ援助していこう、こういうことなのであります。それから、それもまた、一ぺんに一つの大きな経営をやるというところまでやるというわけにいかぬので、これはやはり自然のままに、ずっと年を追っていわゆる自立農家として立っていける方向に持っていこう、こういうのであって、この問題はそうあわてないのです。そういうことでありますから、あなたが考えておられることとたいへん違うように思うので、重ねてその点を申し上げるわけでございます。  それからこの資金の問題にしましても、そういうわけでございますから、でき得る限り安い、そして年限の長いものによって  これでも足らぬという意見がずいぶんあるのでございますが、特別にこの面に向かってはこういう安い長期の資金をそのかわり持っていこう、こういうことでございます。
  68. 林百郎

    ○林委員 資金制度からいってみましても、本法で見れば、いろいろの条件がついておって、その条件を満たさない場合は、資金の全面的な返還の要求もできる、あるいは買い戻し約款がついていて、買い戻しもできる、この資金で買った土地が一定の規模の面積以下になる場合は、その土地を取り戻すこともできるというような、いろいろのむずかしい条件があって、むしろ自作農維持資金の中の土地取得制度のほうが、これよりもずっと農民的な制度になっている。これを廃止してしまって、そしてむずかしい貸し付け条件、場合によっては全面的な返還も直ちに請求することができる、強制執行もできる、あるいは買い戻し約款を発動させることもできるということになると、幾ら政府大臣が急がなくてもいい、急がなくてもいいと言いましても、これは資金の面からも強制力を持っていることは、私は否定できないと思うのです。大臣がそう急がなくてもいい、急がなくてもいいと言うなら、私は率直に言いますが、それじゃこの法案審議も急がなくてもいいのでしょう、ゆっくりやっていけば。私はそう受けとめますよ。  その急がなくてもいいということは、事業計画の面でも若干そういう面が見えているので、その面もお聞きいたしますけれども、昨年は二十億で百町村というのですが、ことしは四十億で四百町村、そうすると、適用市町村は四倍にふえて、そうして予算措置は倍にすぎないということになりますと、これはやはり適用地域を広くするということは、扱う土地の面積は薄くするということになるのじゃないですか。広くするには薄くしなければならない。十アール二十万程度として、一市町村当たり約一千万ですから、五ヘクタール。一市町村当たり五ヘクタール程度の操作ということになるわけですけれども、こういうことになりますと、年間七、八万町歩の土地が移動していて、一市町村当たり五ヘクタールで平均いたしますと、これが二千ヘクタールくらいになるわけですけれども政府の考えでは、七、八十万ヘクタールくらいのものは農地管理事業団で手をつけたいというようにわれわれ聞いているわけですが、それが二千ヘクタール前後だということになりますと、二十五年から三十年くらいで計画を遂行するという数字が、こまかい数字は別として、一応試算ですけれども、出てくるようですが、その程度のことでいい、こういうようにお考えになっているわけですか。それなれば、何もぎょうぎょうしく農地管理事業団法を出して大きな宣伝をしたり、あるいは大げさな政策転換なんということを言うこともないと思うわけですけれども、その辺はどうですか。事業計画の遂行の見通しですが、年間どのくらいの土地を扱って、目標の全土地を扱うのは何年くらいかかると見ているのですか。
  69. 坂田英一

    坂田国務大臣 急がなくてもいいという意味は、強制してこれをやるという意味じゃないということです。現に七万五千町歩というものの売買が行なわれておるのであります。この行なわれておる売買のその機会を、村の多くの人々の意見によって、この人ならば農業をずっとりっぱに続けていくであろうという人を選択してもらって、その方向へいわゆる動くところの七万五千町歩というものをできるだけ持たせていこう、その地帯の村の人々の判断で、この人なら農業をずっと続ける、りっぱな農業家として進めていく人であるというふうに農村の人が見てくれる人々のところへ持たせていこう、何も急いで強制してどうするというような考えは毛頭ないということを申し上げたわけであります。七万五千町歩くらいあるとすれば、そのうちの四割くらいは少なくてもそういう方向に持っていこう、こういった考えを持っておるのであります。しかしながら、これは時代の動きあるいはいろいろな問題がありますので、早くからこれに着手して、政府としては十分かまえをいたしておかなければならぬことは言うまでもない、かように考えておるわけであります。
  70. 林百郎

    ○林委員 時間の関係でもう一問だけ。  大臣、この法案を通したい一心で、無理はしません、自然にやりますと、あなたは腹にもないことをここで言う。その苦衷のほどはよくわかりますよ。しかし、経済同友会だってあるいは経済団体だって、早急にやれという圧力が来ておるわけでしょう。資本主義的な経営のできるような日本農業の近代化ということをして、規模を拡大し、合理化し、利潤を生み出す農業にするんだ、それにはいまのような零細農業じゃだめなんだと、大きな圧力が来ていて、むしろ農林省のほうが考えざるを得ないほどの圧力が来ているわけでしょう。政府基本的な考えはそこにあるわけですよ。さらに自由化の波がどんどん押し寄せてきておる。こういう要因もありますし、高度経済成長政策のときには、農村から低賃金の労働者をつくり出さなければならないという要因があって、それはいまでもその要素は続いているわけです。だから、大臣がそういうことを言いましても、これは強制的な要因が十分あることは否定できない。これは私も、また野党の皆さんも、この点はついていくと思いますが、時間の関係で、私は最後にお尋ねしますけれども、私は、大臣の言う程度のことなら、何も農地管理事業団をつくらなくても、農業委員会あるいは農地法、こういうもので幾らでもできると思う。実情に沿った方向でできると思うのです。  そこで、先ほどの局長のお話にもありますように、この作業の末端機構が農地管理協議会方式をとる。その中には、市町村長をはじめとして、市町村農業委員会も入れるのだ、要するに、農業委員会もこの中にかかえ込んでいくのだ、こういう構想がさっき局長から答弁があった。これはまたあとで、局長には適当な機会に、私なり野党の皆さんがお聞きすると思います。  大臣にお聞きしたいのは、本法の中でも、この計画の遂行上業務実施地域の指定の場合に、農業委員会意見を聞かなければならない。意見程度でいいのか。それから農地管理協議会の中における農業委員会の機能はどういう機能を果たすのか、意見を聴取するということでいいのか。農業委員会がその計画は反対だ、あるいはこの土地移動についてはこういう方針をとるべきだという場合に、これは拒否権なりそういう権限を持っているのかどうかということが一つ。この農地管理事業団事業施行の中における農業委員会の機能、権限、それが一つと、それから農林省の一部から意見が出ておる。農地管理事業団の次には、農地法は廃止あるいは少なくとも改正して、農地の移動をもっと流動化することを自由にすべきだ、さらには小作料の問題についても手をつけるべきだ、こういう意見が強力に農林省の中に出てきておるわけですね。土地移動を流動化すために、農地法の改正、さらには小作料金の制度についてもこれを改正しようとしている、そういう意向があるのかどうか。この二つの問題について少しお聞きしたいと思うのです。
  71. 坂田英一

    坂田国務大臣 二つの問題についてお答えをする前に、経済団体の圧力はないか——圧力はありません。あっても、私は、そういうものにはこたえないからだですから、御了承を願います。そういう圧力は絶対受けません。  それから農業委員会の問題でありますが、これは、市町村長においてこれをやるわけでございますが、市町村から農業委員会にいろいろ仕事をやらしていくということでございます。農業委員会に対しては、市町村長からいろいろの問題が出てきて、それで話し合いをしていくのでございます。  小作料の問題については、これは先ほど来ずっといろいろお答えをしておるとおりでございまして、ここに重ねてお答えをしなくても、若干の改正をしたいとは思っておりますけれども、いろいろの考慮すべき問題がたくさんありますので、これは慎重に考えていきたいということをずっとお答えをしておるとおりでございますから、さように御了承を願いたいと思います。  なお、農業委員会について、さらに深く必要がある場合には農地局長からお答えをさせます。
  72. 林百郎

    ○林委員 それでは、私質問を終わりますけれども大臣、あなたは、経済団体の圧力を受けてないし、また受ける意思がないとか言われますけれども、これはことばだけではなくて、今後の具体的な政策で具体的に実証されると思いますし、また自民党政府の中で、大臣一人がそういうことを言っても、われわれはそれを信用するわけにはいきませんが、具体的な政策で、今後それじゃ対決していきます。  それでは、農業委員会の機能の問題ですね、どのような機能を果たすのかということについて、局長からこの点だけをお聞きして、私の質問を終わります。
  73. 大和田啓気

    大和田政府委員 法律の問題といたしましては、市町村農林省が事務を委託するわけでございます。市町村の内部問題として、農業委員会の書記等が——意見を聴取するのではございません。農業委員会の書記が事業団のいわば末端の機関として活動して、最終的な貸し付けの決定でありますとか、あるいはあっせんの最終的な決定でありますとか、それは県段階における農地管理事業団の支所がきめるということでございます。
  74. 林百郎

    ○林委員 市町村農業委員会の書記が事務をやる。事務をやるということだけで、市町村農業委員会意見が聴取され、尊重され、決定権を持つというわけではないのでしょう。だから事業団の最終的な事業の決定は、事業団のそれぞれの機関が決定をする、そういうことでしょう。だから、この法案を見ましても、地域設定には当該市町村農業委員会意見を聞くというだけでしょう。
  75. 大和田啓気

    大和田政府委員 地域を決定する場合に、知事が農林大臣と協議するわけですが、協議をする場合に、県の農業会議意見を聞くということでございます。村の農業委員会は、この仕事の末端の機関として、意見を聞くということではなくて、自分仕事をするということを私は考えております。
  76. 大石武一

    ○大石(武)委員長代理 午後一時に再開することとして、暫時休憩いたします。    午後零時二十八分休憩      ————◇—————    午後一時五十二分開議
  77. 大石武一

    ○大石(武)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前に引き続いて質疑を行ないます。東海林稔君。
  78. 東海林稔

    東海林委員 それでは質問をいたします。  農地管理事業団農地を買い取る、売り渡す場合の登記の関係でございますが、買い取ったものを一応国の所有にし、さらにそれをあらためて売り渡すという手続を経るのか、何か便法を講ずるのか、その点がまず一点と、それから実際の登記事務はどこでやるのか、だれがやるのかという点、それから登録税が今度の優遇措置で軽減されますが、それにいたしましても、その場合の登録税はだれが負担するのか、登記について、その三点をまずお伺いいたします。
  79. 大和田啓気

    大和田政府委員 登記は事業団の嘱託登記であります。それで、登記の登記料でございますけれども、これは普通の場合は千分の五十でございますが、事業団から金を借りて買い取った場合の登記料は千分の六まで引き下げられるわけであります。それから事業団が買い取って売り渡す場合は、中間省略の登記は残念ながらございません。しかし、嘱託登記で売り渡し、買い取りの手数は非常に省けるという状態でございます。
  80. 東海林稔

    東海林委員 その実務ですが、これは農業委員会がやるのですか、県がやりますか、そこらのところ……。
  81. 大和田啓気

    大和田政府委員 嘱託登記をやります場合の形式的な人は、農地管理事業団の役員または職員になっておりまして、実務は農業委員会の書記の人がやるでしょうけれども、書類の当事者としては事業団の役員または職員でございます。
  82. 東海林稔

    東海林委員 次に、融資の額の問題でございますが、昨日松浦委員もだいぶこの点を質問しまして、そのときの局長答弁によりますと、最高限度は別にきめないのだ、したがって、あっせんなりあるいは買い取り、販売なり、その面積に応じて必要な額は融資するのだというふうに一応聞いたわけでございますが、その点をもう少し突っ込んでお聞きしたいと思うわけです。  かりに十アール二十万円の水田だといたしまして、五十アールといたしますと百万円ということになるわけですが、その場合に、その全額を融資するのか、よくほかの融資にありますように、八〇%とか九〇%というような、何かそういう率の制限があるのかないのかという問題、それが一つ。  もう一つは、税金の額が優遇措置で軽減されるといいましても、買う場合に不動産取得税なり登録税が要るわけですが、その点に対してはその融資があるのかないのか。まずその二点をお伺いしたいと思います。
  83. 大和田啓気

    大和田政府委員 事業団が融資をいたします場合の額は、きのうもお話ししましたように、公庫の融資では八十万円が限度でございます。事業団の場合は八十万円とか百万円とかいう限度はつけないつもりです。したがって、二十万円の土地をかりに六反買う場合、百二十万円でもそれはそれでけっこうだと思います。それから融資率も八割とか七割とかいう融資率は設けないつもりであります。ただ、三分三十年でございますから、非常に有利な金融であります。相当金を持っていて、しかも全額を事業団から借りるということは必ずしも適当でありませんから、融資率を八割とか七割とかいうふうに固定しないで、必要な場合は全部貸すということにして、しかし、実態に即して一〇〇%貸さなくても済むような場合は、事実問題として七割とか八割とか九割とかいうこともあり得る。それは大体農業委員会なりあるいは農地管理協議会なりにまかせて運用をする、そういうことでございます。  それから税金は、不動産取得税の場合も、八割以上といいますか、事業団から全額融資を受けて買う場合は、不動産取得税は百分の三でして、それが百分の二に下がるわけです。(東海林委員「そういう場合に融資するかしないか」と呼ぶ)それは当然土地代金の融資であって、取得税の支払い分までも融資することは考えておりません。
  84. 東海林稔

    東海林委員 私も、その全額融資という点で、第二の質問で、余裕のある人の場合どうするかという問題が、具体的な問題として非常に重要だと思うわけです。この人は一体自己資金として持っておるか持っておらぬかということの見きわめというのは非常にむずかしいと思うのです。いまお話しのように、三分三十年というのは非常に有利でしょう。それで、一年定期にしましても五分五厘なり六分ということになりますから、借りるほうでは全額を借りたいという希望が出てくるわけです。しかし、普通、融資というのけどもかく必要であると同時に、その人がほんとうに自分で自己資金を持っておらぬ、どうしても貸さなければ支払いができないという最小限度の額に限定するのがたてまえであるべきだと思う。これは国の融資だから、その点は厳格でなければならぬと思うのだが、さて、その人は自己資金による支払い能力は何ぼかという認定は一体どうしてやるのか、この点をどういうふうに考えておられるか。それでないと、この三分三十年という融資を利用できるのは、皆さんが言う自立農家として農業に精進し得る者に限るということになっておって、一般に、たとえば農地を買う場合でも、その農業委員会中心とする協議会で適格者と認定されなければ、この融資の恩典にあずかれない。そういう意味で、非常に不公平ではないかということをわれわれは指摘しているわけです。その上に、いまのような点が的確に運用をされないと、なおさら不公平さが倍加されるという点に、私は問題があると思う。何か、そういう実際の問題を農業委員会にまかしておけば間違いなくいくだろうということだけでは不十分ではないか。そういう点について、もう少し明確にしてもらいたいと思います。
  85. 大和田啓気

    大和田政府委員 たとえば五反歩の土地を百万円で買う農家が、自己資金を全然持たないということは、普通は考えられないと思うのです。公庫が金を貸す場合、八割とか七割という融資率をきめる場合も、おそらくそういうことを前提にしてきめておるわけです。しかし、事業団が貸す場合に、頭から融資率八割とか七割をきめてかかることはどうだろうかという気が私はしておるわけであります。村のことでありますし、村の人がきめるわけですから、一〇〇%でなくても八割、七割で済むということが大体見当がつく。私は、事実問題として、そう無理なく融資率の問題も解決がつくだろうと思います。しかし、今年度四百の地域について、とにかく活動を始めるわけでありますから、頭から融資率をかりに百万円以上の場合は八割とか、百万円以下の場合は八割五分とかいうようなことでやることがいいかどうかも、今後の一つ検討問題にいたしたいというふうに私は思います。
  86. 東海林稔

    東海林委員 私も、この法案について、積極的にこうしたらいいという意見を申し述べるつもりはさらにないのですが、ただ、そういう八割とか七割の一律の限度を設けるということも、やるとすればやはり問題だろうと思う。しかし一面、そういう余裕のある者にまで、利率が安いからというので希望で全額貸すということに問題があると同時に、あまり自己資金を持っておるという者だけを重視しますと、またこの法案のねらいがおかしくなるという点で、私は非常にむずかしい問題だろう、こう思っておりますので、その点を指摘するにとどめておきます。  それから次に、もう一つ、今度の法案で、前回と違った点で、未墾地のあっせんということを取り上げてあるわけです。未墾地を取り上げた理由につきましては、いままでも説明があったわけでございますが、その点をもう一つ、今度取り上げた理由を明らかにしていただくと同時に、既墾地につきましては、買い取り、販売を今年はやらないとしましても、法律としてはそれを予定しておるわけです。未墾地についてはあっせんだけで、買い取り、売り渡しということを考えておらない。それはなぜかという点をあわせて説明してもらいたいと思います。
  87. 大和田啓気

    大和田政府委員 農業経営の基盤を強くするといいますか、経営規模を大きくするといいますか、既墾地の買い入れ取得が基本になることは当然でございますけれども、北海道、東北その他の地帯で、未墾地に関する権利を取得して、それを開拓したり、草地にしたりすることは、私は、経営をよくし、大きくするための有力な手段であろうと思います。それで、きのうも申し上げたわけですが、未墾地の問題につきましては、農地法で非常にきつい規定をいっておるわけです。強制買収の規定を置いておるわけです。しかし、どうも昭和三十年を過ぎますと、強制買収の規定をうまく運用し切れない面がだんだん出てきまして、たしか昭和三十六年だったと思いますけれども、開拓の方式を変えたり、政府が強制買収してそこで開拓を進めるのではなくて、農家が未墾地に関する権利を相対で取得して、所有権なりあるいは賃借り権を取得して、受益者が取得した未墾地について開拓を希望するのに応じて、国営なり県営なり団体営なりで開拓を進めるということに、制度を切りかえたわけです。これは開拓パイロット方式ということで、現在それで開拓を動かしておるわけです。そういう方式はそれで十分意味があると思うのですけれども、強制買収はやめた、完全に未墾地に関する権利は相対売買ということから、やはり農村の実情からいいますと、当然開拓し、あるいは草地造成してしかるべき民有地におきまして、相対売買なり、あるいは相対によって権利を取得するということから、なかなかそれが実現しないといううらみがあるわけです。われわれもときどき農村に入って、未墾地の問題について研究いたします場合に、どうも十分未墾地の取得が進んでいない感じを受けるわけです。したがいまして、相対売買が基本でありますけれども、その中に農地管理事業団という、いわば公的な機関があっせんをして、未墾地の取得に乗り出すならば、単に農家が土地の所有者と相対で協議するよりは、未墾地の取得あるいは農地の造成、草地の改良ということが相当進むのではないか。これが今回農地管理事業団の中に未墾地の取得のあっせん、融資の規定を入れた理由です。  そして第二の御質問は、その場合に、農地につきましては、四十一年は動かせないけれども農地事業団による買い取り、売り渡しの規定を置きながら、未墾地については、法律としても、未墾地の取得のあっせん、融資だけであって、事業団に対する買い取り、売り渡しをしないのはなぜかということですが、これは、私もその点についてはずいぶん検討もいたしたわけですけれども、未墾地を買い取って売り渡すというふうに考えますと、その中間にどうしても農地の造成なりあるいは草地の造成なりを事業団がやるという段階が入らないと、単に未墾地を買い取って売り渡すだけではあまり意味がないわけです。また、未墾地の買い取り、売り渡しについては、未墾地を買って、もう売れなくなった場合どうかというような行政的なめんどくさい問題も、多少ないことはございませんし、第一、農地なら農地の造成をするということを事業団がやらない限りは、どうも未墾地の買い取り、売り渡しということの意味はあまりなさそうだ。将来の問題として、事業団が、フランスでもやっておりますように、未墾地を買い取って、そこで造成して農家に売り渡すという方式が十分考えられ、その点についての検討をいたすべきだと思っておりますけれども農地管理事業団による農地の造成あるいは一般的な基盤整備の仕事をやるかどうかということを検討いたします際に、未墾地の買い取り、売り渡しという制度もあわせて検討したい。それまではどうも実質的には事業団による買い取り、売り渡しの意味はあまりないではないかという感じがいたすわけであります。
  88. 東海林稔

    東海林委員 まず第一段の点ですが、未墾地のあっせんを入れた理由は、現実に未墾地の相対売買というものがあまり行なわれておらない、そこで、事業団が介入して、それをある程度進めるのだ、こういう趣旨答弁と理解したわけです。そういたしますと、午前中、私なり林委員の既墾地についての質問に関する答弁では、大臣からも局長からも、自然と売りたい者と買いたい者の間を結ぶだけで、積極的な売り渡しを進めるようなことはしないのだ、こういうことでございました。いまの未墾地についての御答弁を聞いておりますと、未墾地については、ある程度積極的に取得を事業団が進んでやるんだというような感じを受けたのですが、その点はいかがですか。
  89. 大和田啓気

    大和田政府委員 先ほどの御質問で、農地の売買、それから交換、未墾地の売買ということをそれぞれ並べてのお考えだろうと思います。農地売買ということは、離農の問題に関連をしておりますから、これは政府として強力に進めるという体制はとっておりませんということを申し上げております。交換は、これはお互いの農業経営の改善に資する問題でございますから、またこれは離農の問題とは若干違うわけであります。交換については、私は、相当積極的に事業団が介入するということはけっこうだろうというふうに思います。未墾地の問題も、ただ土地を開きさえすれば農業経営がそこにおのずから入っていくということではございませんで、やはり買い手といいますか、実際そこを開いて農業をやろうとする人の意思が重大である。ただ土地を開くだけで、草あれど牛なしという状態になりかねないわけでありますから、買い主の希望が十分あることが前提でありますけれども、買い主の意向が十分あるということを前提にして、事業団としては、未墾地の取得についてはある程度積極的に介入をしてけっこうだと私は思っております。これもまた離農の問題とはディメンションが違うわけでございます。
  90. 東海林稔

    東海林委員 未墾地の場合は、所有者がその未墾地を売りたいなという場合もあまりございませんし、買い手からすれば、大体見当をつけて、あそこからやってみようかというようなことになりますから、やはりある程度事業団が積極的に出てこなければいけない。積極的に出るのでなければ、実際あっせんというものが行なわれる可能性がほとんどないのではないかと考えておったわけですが、これは離農ということにはならないのだから、この部面では積極的にやるのだ、こういうことは一応はわかるのです。しかし、そういうことをだんだんやっていくと、さっき言いましたように、既耕地についても交換分合だけでは不十分だから、片方もやりたいというようなところに将来ある程度進む一つの端緒になるということも私は考えて、さっきそういう質問をしたわけです。いずれにしても、そこは未墾地と既耕地を区別しているのだということだけはわかりました。  そこで、さっきの第二段の答弁に入りまして、なぜ買い取りをしないかということについては、買い取りをする場合は、やはり耕地化なり草地化してからでなければあまり意味がないではないか、これは私もわかるわけです。そこで、問題は、それならば、未墾地をあっせんする場合に、開墾費というようなことについても考えるのでなければ、その思想がまた一貫しないのじゃないかというふうにも考えるわけです。国営だとかあるいは県営、団体営ということになりますと、ある程度の面積がまとまった場合に、初めてそういうことが可能ですけれども、そうでなしに、部落において数ヘクタール程度の未墾地を取得したいという場合に、開墾費は一体どういうふうに考えておられますか。団体営の問題は一応別としまして、その点をお伺いしたい。
  91. 大和田啓気

    大和田政府委員 開拓パイロットで団体営の面積が十町歩以上は補助金が出るわけでございます。十町歩未満、数町歩の開拓につきましては、現在補助事業の対象にはなっておりません。しかし、農林漁業金融公庫から土地改良資金で三分五厘の金が出ておるわけであります。三分五厘の条件としましては、事業費が十二万五千円で、融資率が八割ですから、十万円を限度として公庫が金を出しているわけです。私も、実は開墾を進めるたてまえから、公庫の融資が比較的小さな開墾にどの程度出るだろうかということを調べたことがございますけれども、十万円以上で、数町歩あるいは二、三町歩程度の開墾についても、公庫の金は件数にして相当でておるわけですから、補助事業の対象ではございませんけれども、三分五厘の融資で、事業団のあっせんによって相当権利が取得できれば、開墾が相当進むのではないかというふうに思います。
  92. 東海林稔

    東海林委員 未墾地のあっせんを受ける、それを買い取る人の目的は、やはり耕地化なり、あるいは草地にして利用するところにあるわけです。そうすると、買い受ける人の立場からいえば、未墾地を買い受ける場合に、そう考え方に差がないわけですね。ところが、さっきのように、既墾地については、自己資金は別として、一応必要なだけは貸すというたてまえでしょう。利率も、若干の違いはあるが、安いということになる。そこの差があるということであります。特にわれわれは、耕地面積の拡大ということは、こういう既耕地よりは、むしろ積極的な未墾地の開拓にありということを常に主張している立場もありますが、少なくとも既耕地に劣らないだけの、あるいは少なくとも同等の国の措置があるのが正しいので、あっせんということを考えるならば、この中に、そのあっせんを受けた未墾地を耕地なり草地に造成する費用ということも当然考えなければ、私はその目的の趣旨が十分達成されないのではないかと思う。かりにここに入れることが困難だとすれば、公庫法の改正によって、少なくともこういう事業団を通ずる場合については、この融資の条件と同じようにするということを考えなければ、これまたそこに不公平が出てくるというような気がするのですが、そういう点についてのお考えはどうですか。
  93. 大和田啓気

    大和田政府委員 三分三十年、三分五厘二十五年、若干条件の開きはございますけれども、公庫から土地取得資金の融資を受けて未墾地を買っている値段は、大体反当たり三万三千円程度で、町に直して三十三万円程度、私どもが水田で反当二十万円、畑で十二万円というものに匹敵する。大体平均が反三万三千円程度で、価格も安いわけですから、それに三分五厘、二十五年の融資で土地改良資金がいけば、まあまあ開墾も進められるのではないかというふうに思っております。
  94. 東海林稔

    東海林委員 どうも私は、この未墾地の取り上げ方は、野党のほうでだいぶそういう主張があるものだから、言いわけにちょっと取り上げたような気がするのです。取り上げるとすれば、こんな取り上げ方では変ではないかと思うのですが、いずれにしても、未墾地をある程度考えたという点は、その点に関する限りは、ある程度前進と言えないこともないような気がするのです。しかし、そういう考え方がもしありとするならば、さっき言いました農地法の中の第三章でございますか、四十四条以下に未墾地の強制買収の規定があるわけですが、先ほどのお話のように、三十年以来の情勢も変わって、三十六年からですか、相対売買のほうに切りかえておるということですけれども、これは立法府の意思を行政庁がかってにやっている。非常にけしからぬことだと思うのです。よく政府が両うでしょう。法律を守らなければいけないということを盛んに言うでしょう。ところが、法律にちゃんとした規定があるのに、調査の費用を削ったり、職員の費用を削ったりして、実際動けないようにして、そうして未墾地の取得は困難でございますという言い方は、きわめてけしからぬと私はかねがね考えておったわけです。もしそういうことが実情に合わないならば、なぜ農地法の規定を変えないのか。これは一般国民に対して順法精神を説く上からいっても、はなはだけしからぬと考えておった。ところが、いま未墾地というものが経営面積を拡大するには必要だというので、こういうあっせんというようなことを考えてくるならば、やはりもう一度農地法の未墾地の取得問題も実情に合うように、あるいは修正をするかどうかは別としましても、やはりこういう規則を活用する面についても政府は当然努力すべきである。これはほんとうは大臣に聞いておくべきものであろうと思いますが、大臣に聞いてもはっきりしないと思いますので、局長がかわって——大臣にかわって答弁するのですから、しっかり答弁してもらいたいと思います。
  95. 大和田啓気

    大和田政府委員 農地法の第三章に、未墾地等の買収及び売り渡しの規定が確かにあるわけでございます。買収は事情の変化によってなかなか動かしにくい情勢でございますので、これを動かしておりませんが、売り渡しに関する規定は、農地法に基づいて未墾地の売り渡しを現在も続けておるわけであります。未墾地の買収を、一体実情に即して買収の形にするか、あるいは多少はゆるめるけれども、単なる相対売買ではなくて、何かたとえば行政機関の裁定制度というようなものを使って、この規定を書き改めるかどうかということは、私ども農地法について検討いたします場合の一つの項目であるわけでございます。しかし、農地法の改正につきましては、先ほど大臣からもお話がありましたように、ある部分については手直しすべき段階にきていて、いろいろむずかしい問題もあるので、なおいろいろ私ども検討も深めますし、また各界の御意見も伺って、慎重にやりたいということでございますから、未墾地の買収の規定だけを直すわけにも実はいかないわけであります。したがいまして、未墾地の買収の問題を含めて、いつの日にか農地法を相当大幅に変えることがありますれば、当然そのときの対象になるということでございます。
  96. 東海林稔

    東海林委員 私は、農地法の改正検討することをいまお尋ねしているわけではない。現に法律があるじゃないですか。特に農業委員会とか農協から、開墾するほうがいいんだというようなことで、その要請が出た場合には、国がやらなければならぬことになっている。ところが、現実の状態は、予算も配置していない、調査の職員も置いていないというようなことで、動かないような形になっているわけです。しかし、いまのこの法案で、未墾地の活用ということはやはり必要だということで、事業団のあっせんの中にも入れてきているのですから、そういう思想から言えば、現状で無理でない程度農地法の動かし方というものは、当然考えていいのじゃないか。法律の改正の問題は別としましても、現状において、戦争直後のような積極性を持った点は問題があるにしても、実情から見て、そんなに支障のないような場合もあり得るのです。そういうものまで予算も配置しない、人も配置しないということで、実際に動き得ないような形になっていることはけしからぬじゃないか。こういうふうな法案を出すならば、当然、その方面の活用も、ある程度現状に即した形においての活用ということを考えるべきではないか。それを行政庁の一方的なサボタージュを引き続き続けておりながら、ここにこんなものを持ち出すということは、きわめてけちな、社会党の反対に対する言いわけみたいなことでちょびっと出すというやり方であって、はなはだ農地局長としてひきょうじゃないかという感じがするのであります。もう一度重ねてそこを——私は農地法の改正のことを言っているわけじゃないのですよ。いまのままで、法律があるのだから、その範囲で、日常許す限りにおいての活用ということをやるべきじゃないか、こういうことを聞いておるわけです。
  97. 大和田啓気

    大和田政府委員 私の考えをもう一度申し上げますと、未墾地の買収を戦後相当やって、それで開拓も進みましたけれども、まだ買収した未墾地あるいは所管がえした未墾地について、その措置が非常におくれている実情でございます。したがいまして、私は、この未墾地の買収の規定を活用して相当無理な買収を続けるよりは、現在の開拓の方式としては、開拓営農パイロットの方式が大いに進んでおりますから、買収した未墾地について開墾を進めることと、それから未墾地として買収したけれども、もう耕地にする可能性もなくて、それを何かの形で処分せざるを得ないというものは、できるだけ早く処分をするということが、この未墾地に関する行政の基本であって、いま相当無理になった買収の規定を動かすことが、どうも本筋ではないというふうに私は考えておるわけです。しかし、農地の造成、あるいは草地の造成ということが、これからの農業の体質改善について非常に大きなエレメントであるということは、私もまったくそのとおりでございますから、いまのように完全な相対売買でいいかどうかということは、今後の十分検討すべき問題である。当面の問題としては、いわばさびた刀を振り回して未墾地の買収をやることが問題の基本でなさそうだという感じを私は持っております。
  98. 東海林稔

    東海林委員 さびた刀というのは、政府が怠慢でさびさしたので、元来ならさびてないのですよ。それをさびさしておきながら、さびた刀を使うのはどうかという言い方はおかしいと思います。それとこれは非常に矛盾があると思うが、事業団法によっては未墾地が相当円満にいくようなことを期待しているようなことを一方で説明しながら、一方では、農地法によってはそういうものはあまりいたしませんというようなものの言い方は、それは自己矛盾ですよ。農地法を活用しますというのは、ここでなかなか言いにくい点はわからぬでもないけれども、どうもそこらがおかしいですよ。そんなに無理なことは言ってない。実情に合う範囲において農地法の活用もあり得るのです。そういうことを言うておるのです。そういうものが全然ないというなら、ここだってそんなものは全然期待できないということになりますが、その点は私は納得できません。いずれにしても納得できぬ法案だから、ここであなたには無理に納得するような答弁を求めようとしませんけれども、これは私としては、きわめて趣旨がおかしいじゃないかということだけ言っておきます。これはもう決して答弁を納得しているのじゃありません。それから次に、今度の法案前回と違ったというよりは、むしろはっきりしたのが租税の優遇措置でありますが、この場合、これは事業団が実際に買い取り販売なりあるいはあっせんしたんだという税務署に対する連絡といいますか、証明といいますか、これは具体的にはどういうことになるのですか。
  99. 大和田啓気

    大和田政府委員 農地管理事業団があっせんしたり売り渡したという証明は、当然農地管理事業団が出すわけでありますから、これは具体的には農地管理事業団のその県の支所の署名捺印で出すということになるわけであります。
  100. 東海林稔

    東海林委員 その場合は、当事者から要求があって、県の支所から当事者に渡して、それから当事者が税務署に出すということになるのか、当事者のそういう要求的な手続がなくとも、県から直接やってそれでそのとおりになるのか、そこらをはっきりしてください。
  101. 大和田啓気

    大和田政府委員 これは普通は当然当事者からの要請もあるでしょうが、たてまえとしては、あっせんしたり、農地管理事業団が売り渡した土地つにいては、事業団のほうから税務署その他関係方面に証明書を出すということであります。
  102. 東海林稔

    東海林委員 この辺で質問を終わりたいのでありますが、この前の国会でも、今回の審議にあたっても、昨日も松浦君が離農対策ということばを使われたし、若干問題があると思いますが、しかし、いずれにいたしましても、現実に農地を純農村で手放すという農民は、非常に困っておる方だと思います。都市近郊で農地を手放す場合は、あるいは宅地として非常に高く売れるとか、他に転業するということがあるでしょうが、いま皆さんがこの事業団仕事を具体的にやるというところは、大体純農村地帯ということを一応考えておるわけですが、そういう地帯農民が先祖伝来の農地を売るというようなことはたいへんなことですよ。そういう農家がどうしても農地を手放さなければならない。もちろん、場合によってはあるいは農民自体の責めに帰すべきものがあろうと思うが、われわれの立場から言えば、これは現在の自民党農政の貧困がこういう窮乏した農家をたくさんつくらせ、そうして農地の移動をやむなくしておるというふうに考えざるを得ない。そういう場合に、これは積極的に土地を放せということを政府が言うのじゃないのだから、おまえたちかってにせいというのでは、農政としておかしいと思います。事業団法に直接入れろということを言うわけではないが少なくともそういう困った農民が先祖伝来の土地を手放しても他に行かなければならない、ほかの仕事に移らなければならない場合に、農民政策として見殺しにしてよいかということになると、これは非常に問題じゃないか。大和田局長に個人的にいろいろお話を聞いてみますと、農政の部面においては、農業経営の近代化、生産性向上という面での施策も大事であるが、農民の生活を安定させ、農民の人格を尊重する意味での政策もきわめて必要だということをしばしば聞いておるわけであります。それならば、こういうような非常に気の毒な農民に対して、今後一体どうして生きていったらよいかということについての指導なり、あるいはそれに対する国の経済的な援助なりというものが当然考えられるべきじゃないか。この事業団によって恩典を受けるのは、先ほども申しましたように、大きな農家で、また自分にも力がある農家です。そういう農家に対していま手厚い保護をしようとしておる。ところが一面、先祖伝来の土地を泣く泣く売って何とかしなければならないような人には、何らの国の政策というものがないということは、政策としてふつり合いではないか、こう思うわけでありますが、農地管理事業団に入れるとかなんとかいうことでなくて、そういうものに対する対策について、政府として一体どういう考え方を持っておるかということを最後にお聞きしたいと思います。
  103. 大和田啓気

    大和田政府委員 どうも大きな問題で、農地局長お答えするのは必ずしも適当でないと思いますが、きのうも申し上げましたように、農地管理事業団のいまの段階としては、特別に離農を要請するわけではございませんから、私は離農対策がないから事業団の活動が非常に不十分であるというふうにはならないと思います。そうしてまた、いまの段階では、土地を売る人に対する所得税の減免の問題と、それからきのうもお話ししましたけれども、中高年齢層が離農する場合に、他の職業に入るとき、単なる臨時雇い的なものではなくて、技能を十分備えた、ある意味の熟練労働者として、他の社会に入っていくことが一番望ましいわけでありますから、それがしやすいように、現在農家が家業を廃止するということを農村の実情に合わして、あまりすっからかんに農地を売らなければ家業を廃止したことにならない、したがって、中高年齢層の就労促進のための訓練手当を出さないということでないように、農村実態に即して活用できるようにという申し入れを労働省にして、だんだん話を詰めておるわけであります。私は、いまの段階としては、それで事業団の活動と合わせて考えますと、その点で決して十分とは思いませんけれども、まずまずではないかと思います。将来の問題として、かりに事業団自体が、農業自体が非常に変わる。何年か、十年先でありましょうか。いわゆる農家が地すべり的な減少をかりに起こして、ある程度まで離農の促進とか離農の援助とかいうことをしなければならないような事態になったか、あるいはそういう事態を予測しませんでも、とにかく農業から離れていく人ができるだけ将来生活の安定が得られるようにということが私たちの願いでもあるわけでありますから、そういう場合に対して、昨年も赤城農林大臣のところで検討いたしましたような離農年金でありますとか、離農奨励金でありますとか、そういうことについて、私は、農林省として今後十分検討していかなければならないと思います。これは単に弁解なりあるいは説明の便宜の問題じゃなくて、四十一年度におきましても、離農の実態調査等をやっておりますから、農林省としても、この離農対策といいますか——離農奨励とか離農援助とかいろいろな呼び方があって、そういうことを聞くとアレルギー症状を起こす人もあるし、いろいろ複雑な事情があるわけでありますけれども、私は、事業団の活動いかんにかかわらず、農業を離れていく人の生活の安定のために、農林省としては今後十分検討すべき問題があるというふうに思うわけでございます。
  104. 東海林稔

    東海林委員 私は、これは事業団の関連においてそういう離農者の対策ということでなしに、問題は、一方ではこの事業団で考えているのは、わりかた安定した農家をさらに安定させようというのです。われわれからいえば、わりかた農村における恵まれた人の対策だ。ところが、非常に恵まれない者に対する対策、働いてもついとうとう農家としてもやっていけない、こういった貧しい、あるいは困った気の毒な人に対する対策を先にやるのがほんとうの政治だ、こういうことなんです。われわれから言えば、やはり気の毒なそういう力の弱いものに対する対策を先にして、その上で余裕のあるものについての対策というふうにしていくのが順序じゃないか。まあ、いまいわば自民党政府だから、考え方は逆にいきがちだと思うのだけれども農民の味方だという立場をとらなければならない農林省としては、当然そういう点は十分考えなければいけないのじゃないか、こういうことを考えながらいまの質問をしたわけです。  以上で質問を終わります。
  105. 大石武一

    ○大石委員長代理 湯山勇君。
  106. 湯山勇

    湯山委員 もう時間の関係もありますし、昨日、本日とずいぶん内容について触れておられますから、非常に大ざっぱな問題だけお尋ねいたしたいと思います。  いま東海林君から御指摘がありましたが、離農対策というものは今後の検討事項になっているということですが、そのほかに、今後検討して結論を出さなければならないという問題は何々でしょうか。
  107. 大和田啓気

    大和田政府委員 ちょっと私御質問意味がわからなかったわけですが、農地管理事業団に関連してでございましょうか、あるいは農林省として農業を考える場合ということでございましょうか。
  108. 湯山勇

    湯山委員 管理事業団に関連して、先ほどの御答弁によっても、赤城農林大臣は、離農者対策というものはまあ来年は考える、ことしはパイロットだけれども、来年は考えるというようなお話がありました。これは直ちに農地管理事業団関係するとは言い切れないと思いますけれども、そうかといって、無関係農林省政策だということにもならないので、直接間接に関係のある事項で早急に検討を要する問題、以前の場合はたとえば先買い権ですね、そういうものも検討の余地があるというようなお話もありましたし、なお検討されていることがあるだろうと思います。それにはどういう項目のものがあるでしょうか。
  109. 大和田啓気

    大和田政府委員 農地管理事業団関係いたしまして、なお今後検討を要する問題を申し上げますと、これは必ずしもすぐにということではございませんが、先買い権の問題は御指摘のように一つございます。それからさしあたっての問題といたしましては、農地事業団による買い取り、売り渡しをどういうふうにして進めるかということを私ども検討をしなければならないだろうと思います。さらにこれは多少時間はおくと思いますけれども、先ほども申し上げました未墾地の問題で、未墾地を買って売ることの可否、あるいは基盤整備と申しますか、農地の造成あるいは草地の造成を事業団がやることの可否、あわせて外国でやっておりますように農場管理事業団が既墾地、未墾地を買って基盤整備をやることの可否、これらは私は相当先に送っての問題だろうと思いますけれども、十分今後検討する必要がある問題だろうと思います。
  110. 湯山勇

    湯山委員 いま東海林委員からの御指摘もありましたように、離農する人も、それから経営規模の拡大のために農地を買い入れる人も、おそらく一生の一番重要な決断をするということになると思うわけです。したがって、いまのことをお尋ねしたのは、もし検討しておることがあれば、こういうことはこういう方向でこう検討しているんだ、それからこのことについてはこうするんだ、いまかりに直ちに必要がなくても、将来にわたってのかなり具体的な対策が出てこないと、売るほうも買うほうも決断がしにくいのじゃないかという感じがいたします。一例をあげてみると、いまの御指摘の中にはありませんでしたが、農民年金というような制度も考える必要があるのではないかと思います。と申しますのは、このいただいた資料、「農地管理事業団運営の考え方」私は、こういう資料は非常にいいし、感心をしておりますが、今後もこういうふうにしていただけば非常に役に立つ、こう思いますが、この中にも、親子、それからその次の子も優先的に土地を買う対象に選ぶ、そういうこまかい順序が示してあります。ところが、他の職種の場合は、たとえば厚生年金とか共済年金とかで、直接親を扶養する義務がありましょうけれども、それに対する経済的な負担は相当軽いわけですが、現在の国民年金の中では、後継者に親を養うという物質的な負担が相当かかってくる。   〔大石委員長代理退席、委員長着席〕 そういうことになると、そのために、それはまあ借金も残る、それも払わなければなりませんし、親のめんどうも見なければならないというようなことになれば、そういうことが実は後継者難を拡大する。そうすると、すすめられても土地を買うのは見合わせてと、こういうことになりかねないと思うのです。ですから、そういうことについても、こういう方向でこう検討するということがあってしかるべきではないかというように思いますので、これもひとつお考えを承りたいと思います。
  111. 大和田啓気

    大和田政府委員 農民年金につきましては、農地局長お答えするのははなはだ不適当で恐縮でございますけれども、私がお答えすることをお許しいただきますならば、こういうふうな感じを持っております。  農地管理事業団その他農政の推進について、昨年、一昨年検討いたしましたときには、私ども若い人たちをヨーロッパへ送って、その地方における農民の社会保障について相当検討いたしたことがございます。まあ、ヨーロッパの国々でも、イギリスあるいはスカンジナビア諸国のように社会保障の水準が高いところは、農民に対する特別の制度はございません。フランスとかドイツとか、比較的社会保障の水準の低いところで、構造改善の必要から農民に対する特別の社会保障ができておるわけでございます。私は、日本がそのどちらに属するかといえば、当然社会保障の水準がそれほど高くないし、構造改善を進めることは必要でございましょうから、何らかの形で農民に対する社会保障の制度は今後充実すべき方向にあるというふうに考えます。したがいまして、農地局長が御答弁するのははなはだ不適当でございますけれども農林省としては、農民年金を含めて、農民の社会保障制度については今後十分検討すべき問題があろうというふうに考えております。
  112. 湯山勇

    湯山委員 そこで、この事業は、こう申してはあれですけれども農政局だけでやる一農政局の問題ではなくて、農林省全体でそういう総合対策の機関を持つとか、あるいはもっと言えば、政府全体でそういう機構を持つということでなければ、ほんとうの取り組みはできないのじゃないだろうかという心配がありますが、その点はいかがでしょうか。と申しますのは、農業基本法のできた当時は、おそらくいまのような兼業の拡大というようなことは予想していなかった。構造改善にしても、こんな足取りが鈍いということもお考えになっていなかったと思います。まして、農協による農地信託制度などは、かなり大きな期待をかけたと思うのですけれども、そのいずれもが決して予期した成果をあげていない。私が心配するのは、確かにこれの説明を読みますと、現在尽くされるだけの説明はできておると思います。しかし、いまのようなかまえがなければ、ちょうどシカを追う者山を見ず、そのシカは十分見ておるようですけれども、結局農業全体としてはお考えになっている方向に進まない。一番困るのは、農政局長が一番お困りになる。こういうことになるのではないかという心配をしておるわけです。そこで、いまのことをお尋ねしたいと思います。
  113. 大和田啓気

    大和田政府委員 農地管理事業団考え方でも明らかにしましたように、農地管理事業団の活動そのものは決して野心的なものではないわけです。特別に離農を促進させて自立経営を急速につくるという考えでもございませんし、私どもが考えておりますことは、現に動いている七、八万町歩の農地をもう少し方向づけて、農業を一生懸命やろうとする者にくっつけてやることが必要ではないかということでございますから、先ほどから申し上げておりますように、離農対策あるいは農民年金等々を含めてそれを用意しなければ、農地管理事業団が動かないというふうには、私は現在の段階で考えておりません。しかし、農地管理事業団を動かそうとするのは、自立経営なりあるいはそれに準ずるような協業経営をできるだけつくっていくということでございますから、その問題を解くためには、実は農地管理事業団の活動だけでは不十分であって、技術指導等を含めて、私は、農林省全体としてその方向に強力な施策を今後とも続けていく必要があるだろうと思います。農民年金等も、やはりそういうものとして考えるべきであろうと思います。したがいまして、いまの段階と、それから今後の農政の問題と切り離してお考えいただいてよろしいのではないかと思います。
  114. 湯山勇

    湯山委員 私は、またもうちょっと違った考えを持っているのです。と申しますのは、確かにこれにも無理はしないということが書いてございますし、御答弁も同じような御答弁ですが、この中に書いてあることで、山村はちょっと手のつけようがないということが書いてあります。これも率直でいいと思います。私どもが見て回って、山村にはずいぶんあき家ができています。こういうものは手のつけようがないというのですが、いまの日本農業状態から見て、はたしてあと二十年も三十年もこのままスロー、スローで行っていいだろうか。この管理事業団等の働きがずいぶん大きくなって、体制ができて進むというときには、それよりも先に農村崩壊がきているのではないか。そこで、急がないという意味は、無理をしないでという意味だと思います。テンポは早いほうがいいのではないでしょうか。完備した社会保障制度、完備した離農対策、そして完備した資金供給あるいは技術指導、そういうものが総合されて早くやらないと、もう手のつけようがなくなる。農家の九〇%以上もが兼業化してしまう。二町五反になっても三町になっても自立しない。そういう崩壊状態になったときにはどうにもならない。そこで、ただ単にスロー、スローだけではなくて、かまえとしては、いかなる状態にも対応できる、そういうことでなければならないと思うのですが、いかがでしょうか。
  115. 大和田啓気

    大和田政府委員 私も、農業構造改善仕事は、急ぐことができれば必要だろうというふうに思います。国際競争力といいますか、とにかく農業経営の力を強くする以外に道はないわけでありますから、そのためには、単にゆっくりやることがいいというふうには思いません。ただ、経営規模の拡大という仕事自体は、別に小さな農家を急に追い出して、その土地を有力な農家につけるというような形で行なえる問題ではございませんから、私どもが無理なくやりたいということもまた、それ以外に方法がないというふうに思うわけです。ただ、これからの農業情勢がどういうふうになるかということにも関連をいたすわけですが、農民年金あるいは離農奨励金等々含めて、農政として今後考えるべきことは多々あるだろうと思います。私ども自立経営を育成することにそれほど無理をして急にはやらないけれども、いまその体制をつくることは、農政として非常に大事ではないか。私どもが一番心配しておりますことは、とにかく兼業の勢いが非常に進んで、農家としては所得が上がってけっこうだろうけれども日本農業としてはどうも家庭菜園的なものがふえて、農業生産力を上げるとか、あるいは食糧の自給度を維持向上するとかいうことが不可能になるような事態がこないとも限らない。したがって、農地管理事業団をつくります趣旨も、とにかく現実に相当流れておる土地を方向づけて、農業を一生懸命やろうとする者にできるだけ土地を得やすい条件をつくる、それを早くつくるべきだ。結果として農地管理事業団が土地を握ることは、そんなに大きなものが期待できなくても、国の姿勢として、とにかく農業を一生懸命やろうとする者を守るという体制をつくるべきだというのが、この農地管理事業団提案いたしました私どものいわば心境であるわけであります。
  116. 湯山勇

    湯山委員 御心境として、そのことは理解できないことはありません。しかし、せっかくこれだけ御苦労になって出すものなら、もっと大きな期待をかけられるように完備したほうがいいのではないでしょうか。というのは、一体経営規模の拡大をいまの日本農業でやろうとすれば、やる方法がどれだけあるか。新たな土地造成というのもそう期待できるものじゃありません。そうすると、流動の中で経営規模を拡大していくことのウエートはかなり大きいと思うのです。ところが、いま狭いみぞでも先につくっておいて、そこを無理なく流していこうというのがいまの御答弁のお気持ちなんですけれども、幾ら流れてもいいようなかまえだけつくって、流すほうは無理はできませんけれども、そうしておかないと、ほんとうのことはできない。というのは、経営規模の拡大ということが、今日日本農業構造改善の上から一番大きい問題だ。零細性がいまの農業を困難にしている。それを克服しようというのがこの事業団であって、総理大臣も、私が質問申し上げたときに、昨年農地管理事業団ができておればうんと成績が上がっているはずだ、これによって経営規模の拡大、自立農家をつくっていくと、これは本会議ではっきり答弁されておるわけです。それに対して事務当局の局長のほうでは、いささか心配な点がある。それもよくわかりますけれども、そうだからといって、不備なものでまあ無理なくやっていこうというのでは、あまりにも消極的過ぎるということになるのじゃないでしょうか。これは私のほうの気持ちなんで、お考えを伺いたいと思います。
  117. 大和田啓気

    大和田政府委員 農業基本法をつくりまして、自立経営の育成と協業の助長ということを農業構造改善の有力な手段として取り上げたわけですけれども、ここ数年自立経営の育成ということで私どもがやってきた仕事というのは、露骨にいえばほんとどないわけです。私どもがやっておりますことは、構造改善事業をはじめとして、基盤整備をやって、そこに大きな機械を入れて共同利用をするということで、協業の助長ということについてはきわめて熱心であって、いろいろな手を講じておりますけれども、直接自立経営の育成といいますか、個別経営を大きくする、あるいは強くするということにつきましては、農業をよくすればおのずと自立経営が生まれるという、ある意味の楽観論に立っていたというふうに言ってもいいかもしれませんが、自立経営の育成という仕事については、それほど具体的な施策がなかったわけです。私は、農地管理事業団というのは、それ自体はそれほど大きな意味がないとしても、自立経営の育成という方向に向かって具体的な措置をとったものとしては、それなりの評価がされるであろうというふうに思っております。したがいまして、農地管理事業団自体あるいはそれをめぐる離農対策等を含めて、いろいろ御意見がありますことも、私はそれぞれ至当な御意見と思うことが多いわけでありますけれども、何もかもおぜん立てをつけてでないと農地管理事業団のような仕事が出発しないといいますと、これまた数年かかることも考えられまして、私が申し上げておりますことは、農地管理事業団も現在の姿でこれでもう十分で、今後これを直すつりはないのだというふうに申し上げているわけではないので、農村実態といいますか、農民の意向といいますか、事業団が動き出すにつれて、私はいろいろな要求なり要望なりが出てくるだろうと思います。それはそれなりの段階で仕事に生かして、直すべき点は今後直していったらいいので、あまり私自身も百点主義ではなくて、この辺で見切り発車をして、それで実態に応じながら改善をしていきたい。とにかく私どもがこの農地管理事業団に期待しておりますことは、これだけ農業に兼業がふえて、とにかく、うっかりすると家庭菜園的なものだけが残る——これは極端なことで、事実はそうならぬでしょうけれども農業を守るとかあるいは農業生産性向上するということは、やはり農業を一生懸命やる農家相当多数できて初めて可能なことでありますから、そういう方向に一歩踏み出すものとして、ひとつ御了承いただきたいというふうに思うわけでございます。
  118. 湯山勇

    湯山委員 せっかくですけれども、御了承できないので、私が最初申し上げたことは、いまこの段階で、農家にとってはまさにこれは死活問題です。ですから、一ぺん離農してかりに工場なら工場へ行った、工場がぐあいが悪いから、また帰ってもとのような農業をしようといってもできないですね。そうすれば一体どうなるか。私はもっといろいろ聞きたいのですが、第一、そうなったときにしても、貨幣価値は今後どうなるか、これも大きな問題です。手放す農民にとっても、農地を取得する農民にとっても、一体今後三十年間貨幣価値がどうなるだろうかというようなことを聞きたいです。これは農地局長に座談会でもやれば必ず出ます。どうお答えになるか。それから、一体払えなかったとき、子々孫々に債務は残るものなのかどうなのか、これも聞きたいでしょう。その場合には差し押えがあるのかどうか、これも聞きたいです。まさにそういう決断をしなければならないときに、まあとにかく一歩でも出ておいてというのでは、役所はそうでしょうけれども、その法律によって決断をしなければならない農民にとっては、そう甘いものではない。そうすると、将来にわたって全体の見通しを、こうこうこうだということで一応完備しないと、いま考えられる中では百点になっていない。それは不親切ということになるのじゃないかと思いますので、御了解できないということを申し上げたのです。そうじやないでしょうか。
  119. 大和田啓気

    大和田政府委員 農地を買ったり売ったりすることが一つの決断であって、将来にとって相当大きな影響がある大きな事件であることは、私もそのとおりであると思います。したがいまして、土地をそう簡単に手放す人もいないわけでしょう。しかし、それにもかかわらず、現実の問題として七万五、六千町歩の土地が動いておるわけでありまして、その七万五、六千町歩の土地が動きながら、しかも農業をほんとうに一生懸命やろうとする人の手元には、そう農地がたくさん集まっていない。それをできるだけ国として無理のない方法で、農業を一生懸命やろうとする人に土地を得られるようにしたいというのが、今度の農地管理事業団のねらいであるわけです。したがいまして、おぜん立ての内容もはなはだばく然としておりますけれども、無理にといいますか、すすめて離農をさせることをいまの段階で考えておらないわけでございますし、また、農地を買う人の立場から考えますと、三分三十年という融資条件は、前に二分四十年ということが原案としてございましたから、それに比べれば劣ることはもとよりでありますけれども、現在までのところ、三分三十年という融資条件はほかにございません。それで、かりに二十万円で水田を一反買うといたしますと、年の償還は一万二百円であります。一万二百円というものは、水田でいいますと、最近の生産調査等を使いまして米の価格をはじくのと大体同じやり方でやりましても、五、六反程度農家であれば、いままでの収益を下げないで、一反なり二反買い増しして、そこで生まれる限界収益で一万二百円程度の金は払えるという計算でございます。限界収益でなくて、平均収益でいきますと、最近の資料によりますと、大体一町五、六反程度農家であれば、平均収益として年一万二百円程度の年賦償還は可能でございます。したがいまして、将来の貨幣価値がどうなるかというむずかしい問題がございますけれども、いまの農業経営をやりながら、三分三十年という融資条件で土地を買うことは、農家にとって悔いを将来に残すことはまずないというふうに思っております。
  120. 湯山勇

    湯山委員 その辺もなお検討が要るのじゃないかと思います。さっきの御答弁によれば、全部をこれで見るというわけじゃない、自分の金のある者についてはこれはまた別だ。そうすると、かりに極端じゃなくて、半分見たとします。三分三十年とおっしゃいますけれども、半分だけ見たという場合には、一方は五分五厘でしょう。平均して五分五厘として、預けておけば五分五厘になる金を三分のかわりに使うわけですから、そうすると、結局実態は、四分二厘五毛の金を使った、決して三十年三分ということにはならないわけです。全部一〇〇%やってくれればそのとおりですけれども……。ですから、そういうことではいろいろ問題がある。それから農地が動いている中には、私の知っておるケースでいいますと、子供を大学にやる、そのためにどうしても土地を手放さなければならない。いま大学へ就学するのは非常に多いし、さっきのように取得していく農家というのは、大体一町四、五反程度の、農村ではよかったほうの部類で、子供が大学へ行くのを押えて農業をやるというようなうちではないのです。そうすると、そのために手放す農地だって決して少なくないのです。そういうことを考慮に入れますと、いま動いておるのが、何の抵抗もなく自然に動いておるのではなくて、それぞれ相当深刻な事情をかかえている。だから、三分三十年ということであっても、必ずしも実態はそうじゃない。そうすると、いまおっしゃったように、一万円払うのは簡単だということですけれども、そのために農地を売っている人もあるということなので、そう楽なものじゃないと思うのです。そこで、私は、いまの広いみぞにするひとつの内容として、いまの日本農家というもので大農というのはないでしょう。全部零細農です。こういう人から取る農地の固定資産税、こういうものはこの機会にやめてしまう。それから土地改良、これもお尋ねがあったかと思いますが、それは国が全部持つ。そういったようなことがちゃんとできて、そうして社会保障もできて、これでどちらでも選びなさいと言えば、その中をほんとうに無理なくて、しかも政府の意図する方向へ流れると思います。その辺ずっとたくさんいろいろお聞きしたいこともあるのですけれども、私の聞きたいポイントはいまの点なのです。もし時間があれば、あと保留さしていただいて聞くことにいたしますが、ひとついまの点真剣にお考えいただきたいと思います。  きょうはこれで終わります。
  121. 中川俊思

    中川委員長 次会は明二十八日開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時三分散会