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1966-04-07 第51回国会 衆議院 農林水産委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年四月七日(木曜日)    午前十時四十七分開議  出席委員    委員長 中川 俊思君    理事 大石 武一君 理事 倉成  正君    理事 小枝 一雄君 理事 舘林三喜男君    理事 本名  武君 理事 赤路 友藏君    理事 東海林 稔君 理事 芳賀  貢君       伊東 隆治君    池田 清志君       坂村 吉正君    高見 三郎君       綱島 正興君    中川 一郎君       野原 正勝君    野呂 恭一君       長谷川四郎君    藤田 義光君       松田 鐵藏君    森田重次郎君       卜部 政巳君    栗原 俊夫君       兒玉 末男君    高田 富之君       千葉 七郎君    西宮  弘君       松浦 定義君    森  義視君       湯山  勇君    中村 時雄君  出席政府委員         農林政務次官  仮谷 忠男君         農林事務官         (農政局長)  和田 正明君         農林事務官         (畜産局長)  檜垣徳太郎君         農林事務官         (蚕糸局長)  丸山 文雄君         食糧庁長官   武田 誠三君  委員外出席者         議     員 湯山  勇君         大蔵事務官         (主計官)   嶋崎  均君         農林事務官         (農林経済局統         計調査部長)  木田  繁君         農林事務官         (食糧庁業務第         二部長)    岡田 覚夫君         農林事務官         (食糧庁業務第         二部砂糖類課         長)      石田  徳君        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 四月七日  委員江田三郎君及び松井誠辞任につき、その  補欠として高田富之君及び栗原俊夫君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員栗原俊夫君及び高田富之辞任につき、そ  の補欠として松井誠君及び江田三郎君が議長の  指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林漁業団体職員共済組合法の一部を改正する  法律案湯山勇君外十三名提出衆法第一二号)  農林漁業団体職員共済組合法等の一部を改正す  る法律案内閣提出第一三八号)  農林水産業の振興に関する件(てん菜及び繭糸  価格等)      ————◇—————
  2. 中川俊思

    中川委員長 これより会議を開きます。  湯山勇君外十三名提出農林漁業団体職員共済組合法の一部を改正する法律案内閣提出農林漁業団体職員共済組合法等の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許可いたします。芳賀貢君。
  3. 芳賀貢

    芳賀委員 法案内容に入るに先立ちまして、一昨年の当委員会において農林年金法根本改正を行なったわけでありますが、その際、委員会としては附帯決議を付して、年金法のその後におけるすみやかなる改正をすべきであるという点を指摘しておるわけであります。審議の促進上、当時の附帯決議を申し上げますと、  第一は、新法給付旧法組合員期間にも適用すること。  第二は、物価変動等に対応する年金額スライド制実施すること。  第三は、最低保障額実情に合わせてすみやかに引き上げること。  第四は、組合経常事務費に対する国の補助を増額すること。  第五は、組合余裕金運用についてはその自主性を尊重し、組合員及び農山漁家福祉向上等のために積極的にこれを活用すること。  第六は、整理資源は国の負担とし、その他国の補助を増額して組合員掛け金負担軽減をはかること。  以上であります。  このわれわれの委員会における附帯決議趣旨というものを、当時農林大臣は尊重して実行するということを言明しておるわけでありますが、今回政府から提案された年金法改正案内容について、私が述べた六項目附帯決議趣旨がどの程度生かされておるか、この点を、きょうは大臣が出席されませんので、政務次官から明らかにしていただきたいと思います。
  4. 仮谷忠男

    仮谷政府委員 ただいまの御質問でありますが、この附帯条件につきましては、すでに芳賀先生承知のように、われわれも今回の法案提出につきましては、いろいろと予算の範囲内で苦心をいたしたわけでありまして、一、二、三、四、十分ではありませんけれども、一応趣旨に沿ったものが提案ができておるのじゃないかと思っております。  なお、その他のこまかい問題につきましては、局長より御答弁申し上げることにいたしますが、いずれにしましても、附帯決議趣旨には、十分とは申し上げませんけれども、可能なる限り沿って努力をいたしてまいった、こういう考え方を持っておる次第であります。
  5. 芳賀貢

    芳賀委員 それともう一点は、今回の政府改正案提出は、いささか常識を逸したような提出の経過になっておることは、政務次官も御承知のとおりであります。それは四十一年度の予算の中において、農林漁業共済年金に対する国の負担額を従来の百分の十五を百分の十六に引き上げて、百分の一の分だけについては、法律改正を怠って予算的な措置をしたことは御存じのとおりでありますが、その後、社会党において党独自の改正案提出され、あるいはまた委員会審議等において指摘された結果、政府もようやく改正案を出すということになったわけでありますが、社会党法案提出あるいは国会における政府に対する指摘等がなかった場合には、政府としては、今国会において年金法改正をする意思がなかったというふうに受け取れるわけでありますが、その間の事情について、仮谷次官から御説明を願いたいと思います。
  6. 仮谷忠男

    仮谷政府委員 補助率が一五%から一六%に予算措置で一応決定いたしましたことは御承知のとおりでありますが、われわれは、単に補助率引き上げるだけでなくして、内容についても、ただいま御指摘のありました附帯決議趣旨に沿って、できるだけ改善したいという考え方農林省としてはございまして、そういう改善内容も含めまして、補助率の問題もあわせて今国会中に何らかの形で検討をいたしたいという心組みを持っておったわけでありますけれども、たまたま予算委員会においてああいうふうな審議の状態になりましたので、これが急激に法案提出にまで相なったことは御指摘のとおりでありまして、決して今国会においてなおざりにしようという考え方で進んでおったわけではございません。結論的には、予算委員会での社会党のああいうふうな御質問によって法案提出が非常に早められたということについては、お説のとおりだと考えておるわけであります。
  7. 芳賀貢

    芳賀委員 仮谷さんに対して意地の悪い質問をする意思はありませんが、それでは社会党が理想的な改正案提出した、あるいはまた予算委員会等において、法律改正しないで、負担額の百分の一だけの引き上げを行なったということに対する違法的な指摘が行なわれたことが大きな力になって、政府としてもこの程度改正案を出すことになったというふうに善意に解釈してもいいわけですか。
  8. 仮谷忠男

    仮谷政府委員 補助率の問題が、予算委員会でも違法であるかないかということがいろいろ議論されたわけでありますが、これに対してはそれぞれ意見があるようでありますけれども、いずれにいたしましても、予算委員会の非常に白熱した論議が延長して、この法案を早期に提出することに相なったことは、事実として認めるべきだと思っております。
  9. 芳賀貢

    芳賀委員 内容に入るに先立って、先ほどの附帯決議項目のそれぞれの事項について、政府改正案がどの程度に充実しているかという点をまずお尋ねしたいと思います。  第一の、新法給付旧法組合員期間にも適用するということは、非常に重要な点でありまして、社会党改正案によると、これは旧法期間についても新法給付を一〇〇%完全実施するということになっておるわけでありますが、政府案については、昨日の農政局長説明等を聞いておると、必ずしも完全適用にはなっておらぬように思われるわけでありますが、この点、社会党改正点相当隔たりがあると思いますが、まず明らかにしてもらいたいと思います。
  10. 和田正明

    和田(正)政府委員 附帯決議にもございました、旧法期間完全実施、適用するということの中身には、いろいろな問題を含むわけでありますが、そのうち、特にただいま芳賀委員から御指摘のございました給付率の点につきましては、御承知のように、三十九年の法改正以後は、標準給与に対しまする給付率は四〇%ということになっております。その法律改正前の旧法期間は、標準給与につきまして三三・三という給付になっておりまして、社会党が御提案になりました法案では、その旧法期間も三三・三ではなしに、新法と同様に四〇%の給付率にするような改正案に相なっておるわけでございます。政府の案では、そこのところは、旧法期間については引き続き三三・三%ということで、四〇%の給付率には改正をいたしておらないのでございますが、改正をいたしません理由は、昨日もほかの先生の御質問のときにもちょっと申し上げたのでございますが、今回の改正にあたりまして、横のバランスを考えましたのは、各種共済組合制度、つまり、国家公務員共済組合でございますとか、あるいは地方公務員共済組合でございますとか、そういうものとの制度的な差を改善することを前提にして検討を進めてまいったわけでございますが、それらのいずれの制度におきましても、旧法期間は三三・三になっております。   〔委員長退席大石(武)委員長代理着席〕 たとえば国家公務員におきます旧法期間は、いろいろ複雑でございますが、その主流をなします恩給法におきましても、旧法期間給付率が三三・三でございまして、四〇になっておらないのでございます。政府といたしましては、そういうふうに他の共済組合制度との給付率バランスを考慮いたして改正をいたすことを念頭に置きましたので、御指摘のように、社会党提案は四〇ということになっておりますけれども政府提案では三三・三のままということで、他の共済組合制度とのバランスをとって御提案申し上げた、そういういきさつでございます。
  11. 芳賀貢

    芳賀委員 政府改正案の中においても、旧法期間について、従来の五年を三年に圧縮してある程度改善を行なう、あるいは五万二千円の頭打ちを廃止するというような是正の点は、われわれとしても認めておるわけでありますが、しかし、附帯決議趣旨は、あくまでも新法給付率旧法期間に対しても適用さすべきである、これはもう一昨年の国会相当議論を費やした結果、当時改正実施しなかった分を附帯決議ということで、これは各党の合意の上にこのような附帯決議としての表現を行なって、政府に実行を求めておるわけであります。  また、他の公的年金制度との均衡ということを言われたが、しかし、国家公務員にしても、あるいは地方公務員年金制度等についても、旧法期間の場合も、これは必ずしも三年立てということではないわけです。最終年給与額というものを基礎にしてやっておるわけですから、それと均衡をとるということになれば、たとえば旧法期間給付率を全面的に適用できない場合であっても、三年を最終年給与額ということに直せば、相当大幅な是正ができるというふうにわれわれは考えておるわけです。この点はどうですか。
  12. 和田正明

    和田(正)政府委員 芳賀委員からお話のございましたとおり、国家公務員共済組合法旧法期間でございます恩給法につきましては、最終俸給標準給与として、それに対する三三・三%が給付額になるような計算になっておるのは、そのとおりでございます。ところで、農林年金につきましては、最終俸給標準給与としてとりまして、それに対する三三・三%というふうにいたしますれば、その間のバランスと申しますか、平仄は全く合うのでございますが、御承知のように、この農林年金に加入しております団体の数は、全体として一万九千をこえる非常に多数の団体でございまして、それらの団体はそれぞれいろいろ大小もございますし、それから経理内容にいろいろな違いもございまして、それぞれの団体におきます給与改正を一律にいたすことは、現実問題として不可能であろうと思われます。ところで、国家公務員におきましては、芳賀委員も御承知のとおり、給与体系法律で定められておりますし、それの昇給基準等法律で定められておりまして、非常にはっきりとした全体の給与体系があるわけでございます。それに比較をいたしますと、何と申しましても、民間の団体でございます農林年金加入団体につきましては、そういう明白な給与基準もございませんし、昇給基準もございませんので、現実の問題としては、最終俸給をとることができがたいという事情がございますので、その点のバランスをとりますことは、現実にも理論的にも不可能ではないかというふうに私どもは考えざるを得ないわけでございます。そこで、そこのところには将来にわたってバランスのとれない部分がどうしても残りますので、その分を勘案いたしまして、他の共済組合制度における補助率一五%を一六%というふうにこの年金では引き上げることによって、そこのところの組合員給付に対するマイナス分負担をちょうどバランスをとることができるという考え方でおりまして、それは幾つかの実際の職員在職年数なり学歴を前提に置いて給付金額等計算をいたしてみますと、補助率を一%アップいたしますことによって、金銭面での負担分バランスがとれる計算になるわけでございます。そういう事情がございますので、三三・三はいじりませず、五年という平均を三年平均という新法期間の方向に合わせることにいたしまして、全体として、この部分だけではなしに、制度全体としてのバランスを考慮いたした次第でございます。
  13. 芳賀貢

    芳賀委員 この点は、年金のいわゆる数理的設計上、財源率の問題とか、あるいは掛け金率とか、整理資源率にも影響があるわけですから、少し具体的にお尋ねいたしますが、政府改正案によって平均給与を従来の五年を三年に直した場合、それから旧法期間の五万二千円の頭打ちを廃止した場合のいわゆる財源率の変化、それと、社会党案によるところの、新法給付率旧法期間に全面的に完全適用した場合の財源率、それから国家公務員あるいは地方公務員年金法によるところの、旧法期間平均標準給与最終年給与額にした場合のその財源率等、それぞれ違ってくると思いますが、これを数字的に説明してもらいたい。この三つの場合ですね。
  14. 和田正明

    和田(正)政府委員 平均標準給与算定基礎期間をやめる直前から五年間というのを三年に改めますことで、財源率としての差は千円に対して一円三十八銭、千分の一・三八になります。それから平均標準給与の五万二千円の頭打ちを廃止いたしますことに伴いましては、それは特別の所要財源率は必要ではございません。それから最終俸給でどうなるかというお尋ねでございますが、それは先ほども申しましたように、加入団体の数も非常に多く、給与体系もばらばらでございまして、計算の方法がございませんので、ちょっと計算をいたしておりません。
  15. 芳賀貢

    芳賀委員 計算ができないということはないでしょう。国家公務員にしたって地方公務員にしたって、計算なしにばく然とやっておるわけじゃないでしょう。それは三年が最終年の一年になるのだから、できないなんというものじゃないですよ。どうしてできないか、その理由を明らかにしてください。能力がなくてできないのか、それならばできる者にやらせればいいのだから、農林省でできなければ、厚生省でも労働省でもやらせたらいいと思う。
  16. 和田正明

    和田(正)政府委員 これは、新旧通算というのは現在おります人間についてでございますので、それぞれ三十五万からおります組合員の一人一人につきまして、いつやめるかということを推定して計算をいたさなければなりません。実際問題としては、個々の個票を洗いますことが時間的にも不可能でありましたので、いたしておらないのでございます。
  17. 芳賀貢

    芳賀委員 だから、その新法全面適用がちょっと能力不足でできないとすれば、この三年の期間を今度は最終給与額によるということにすれば、これはできるでしょう。それは、五年を三年にするのも三年を一年にするのも同じことじゃないですか。その場合は幾らか、これはわかるでしょう。
  18. 和田正明

    和田(正)政府委員 一年という標準給与での計算はちょっといたしておりませんので、早急に計算いたしてみます。
  19. 芳賀貢

    芳賀委員 それはやればできるが、やってないというのですね。そこらをはっきりしなさい。第一、資料提出にしても、きのう四つの法案提案理由説明があって、その四法案のうち三法案については、補足説明についても、必要な資料についても、相当内容豊富なものが出ておるが、農政局の場合には、午前中は何にも出てないでしょう。午後になってこんな二、三枚の紙をとじたようなものを出しただけじゃないですか。一昨年の年金法改正の際の資料を振り返ってみたらどうですか。あれは三部にわたった膨大な資料です。時の農政局長昌谷君でしょう。だから、準備も何もしないで、ただ政府委員席にだけすわって、やっていませんとか、わかりませんとか、そういう不熱心な政府委員の態度というのはないじゃないですか。準備ができていなければ、審議を延ばしてくださいとか、そういうことを最初に申し立てればいいのじゃないですか。内容説明も十分できないし、資料も整わないのに、先にやるということはできないですからね。準備不十分であれば、率直にそういうことを言ってもらえば、これはあと回しということでも差しつかえないわけです。何にも資料らしいものが出ていないじゃないですか。どうなんですか。準備不十分なら、そうはっきり言ったらいいじゃないですか。
  20. 和田正明

    和田(正)政府委員 五年を三年にいたしますことについては、当然法律改正をいたすわけでございますから、財源率計算等必要でございましたけれども、三年を一年にいたしますことは、先ほど来申し上げておりますように、他の共済組合制度とのバランスから考えて、三年というふうに直すこと以外のことは考えられませんでしたので、私どもとしては、その一年というお尋ねの点は計算をいたしておらないわけでございますが、ただいまお話もございましたので、早急に計算をいたしまして、でき次第資料として御提出を申し上げます。
  21. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは、啓蒙の意味で、社会党提案の場合には、これは新法給付額完全適用ですから、その点は湯山委員から財源率の関係は説明してもらう。われわれも提案者だから、私があなたに聞くのじゃなくて、政府委員にそういう点を十分指導的に啓蒙してもらいたいと思います。
  22. 湯山勇

    湯山議員 ただいま芳賀委員からああいう御要望がございましたので、申し上げますと、一つは、完全適用した場合の財源率は、われわれの案によれば、約千分の五になります。詳細に言えば、千分の五・〇五、これが完全通算財源率になります。なお、私のほうで計算してみますと、芳賀委員がいま政府に対してお尋ねになりました最終給与をとった場合と、三年をとった場合の差は、給付額にいたしまして大体一三・八四%最終年をとったほうがよくなります。
  23. 芳賀貢

    芳賀委員 どうですか、大体わかりますか。わからぬですか。
  24. 和田正明

    和田(正)政府委員 いま湯山先生がおっしゃいました新旧を完全に通算をすること、先ほど冒頭芳賀委員から御質問のございました、旧法期間にも新法給付率四〇%を適用いたしました場合の財源率は千分の三・七四で、それと先ほど申しました五年平均を三年平均に改めますことによる財源率千分の一・三八とを足しますれば、湯山先生お話しになりましたような、大体千分の五・一二くらいの数字になるということは計算上いたしております。
  25. 芳賀貢

    芳賀委員 次の附帯決議の第二点は、物価変動等に対応する年金額スライド制実施でありますが、この点は、社会党案には、法文上明らかに年金スライドをする場合の経済変動等についても詳しく示しているわけでありますが、政府の場合には、ただ単に既裁定年金に対する改定法律でも試みておるわけでありますが、この附帯決議スライド制趣旨は、一定の物価変動等が指数においてあらわれた場合においては、法律に基づいてスライドを行なうということになっておるわけでして、附帯決議の精神から見ると、政府においては、この点は実行されておらないというふうに判断されるわけであります。この点を説明願いたいと思います。
  26. 和田正明

    和田(正)政府委員 スライド制原則につきましては、去る二月十八日に国会提案をされ、現在衆議院の大蔵委員会付託をされております昭和四十年度における旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法等の規定による年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案の附則で、農林年金法律の中に一条の二という新しい条項を設けまして、スライド制原則を書き加えることにいたしております。その文章は、これも厚生年金法その他前例があるわけでございますが、それらの法律趣旨文章等と同一のものになっておりまして、政府としては、他の先例等に従ってバランスをとった法文として提案をいたしておる次第でございます。
  27. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは大蔵委員会付託法案が成立した場合には、これは当然のことでありますけれども農林年金に対するスライド制実施される、こういう判断で、年金法自体改正には取り上げていない、こういうことですね。
  28. 和田正明

    和田(正)政府委員 法律技術的にはそういうことでございます。
  29. 芳賀貢

    芳賀委員 第三の最低保障額の点については、これは昨年の厚生年金法改正の場合において、退職年金あるいは障害年金遺族年金等最低保障額引き上げになっておるわけですが、農林年金最低保障額社会党の場合は、その額をさらに実情に合致するように是正した改正点を示しておるわけでありますが、この点について、政府としては社会党案に対してどういうような判断をされておるか、明らかにしてもらいたい。
  30. 和田正明

    和田(正)政府委員 この点は、昨年の厚生年金法改正の機会に、たとえば退職年金につきましては、三万五千五百二十円でございましたのが、八万四千円に引き上げられたことは御承知のとおりであります。遺族年金障害年金等もそれぞれ引き上げになったわけでございますが、この最低保障額で、新法といたしましては他の各種共済制度とのバランスがとれておりますので、政府としては、それの改正の必要を認めなかった次第でございます。
  31. 芳賀貢

    芳賀委員 この点は、提案者湯山委員から、わがほうの最低保障額引き上げの必要を明らかにしておいてもらいたいと思います。
  32. 湯山勇

    湯山議員 いま芳賀委員から御指摘のありました最低保障額につきましては、前回の三十九年の改正案のときに、私ども最低賃金八千円というようなたてまえから、月額八千円を提案してまいりました。その後における物価の上昇その他から考えまして、そのまま据え置くということは、さきに御指摘になったスライド原則にも反することでございますし、また社会党としては、昭和四十五年までにこの最低保障額を一万円にするという方針がございますから、その一つの段階として、少なくとも最低保障額引き上げというものをやらなければならない、こういう立場をとってこういう提案をしたような次第でございます。
  33. 芳賀貢

    芳賀委員 第四の点は、組合経常事務費に対する国の補助の増額の点でありますが、もう一つ国負担としては、附帯決議の第六項目整理資源に対する国の負担、それからその他国庫として補助を増額しなければならないような分については、組合員掛け金負担軽減を旨として、これを具体的に是正すべきであるということになっておるわけでありますが、この点を四項、六項にわたって政府側から明らかにしてもらいたいと思います。
  34. 和田正明

    和田(正)政府委員 最初に、四項のほうの経常事務費につきましては、組合員の員数に対応いたしまして補助をいたしておりますが、四十年度の金額は三千五百九万円でございましたが、今回は必ずしも十分とはいえませんが、その金額を三千八百三十五万七千円に引き上げておるわけでございます。これを組合員一人当たりに一応換算をいたしてみますと、四十年度では一人当たり百円でございましたが、本年度につきましては百七円ということにいたしております。  それから六の整理資源等についての問題は、先ほど芳賀委員がおっしゃいましたように、現在の掛け金負担が千分の九十六でございますが、たとえば国家公務員は千分の八十八というような数字になっておりまして、いずれも厚生年金の時代あるいは旧法時代の給付内容のまだ改善をされません段階で計算をいたしました設計のものと掛け金を納めてきております関係で、掛け金部分が過去においてかけ足りなかった部分があるわけでございます。そのことがいまの組合員負担としてかかっておりますために、千分の九十六というような掛け金率になっておりますので、率直に申し上げますれば、政府当局としては、そのことのバランスをとることを前提にして、本年度の予算編成にあたっても努力をいたしたのでございますが、いろいろな事情で、先生承知のように、給付率に対する一六%ということにとどまりましたために、今回の改正によっては、掛け金率は上がりませんが、逆に下げることもできなかった事情に相なっておりますので、今後四十二年度以降の予算編成の段階におきましても、この整理資源率につきましては、国としても相当な努力を払ってまいりたいというふうに考えて、今後の問題として積極的に取り組みたいと考えておる次第でございます。
  35. 芳賀貢

    芳賀委員 社会党の場合は、改正案を全面的に実行する場合には、組合員掛け金負担をふやさないで行なうということになれば、どうしても国庫の負担を百分の二十に引き上げなければ実行できない、こういう点が明らかになっておるわけですが、政府は、改正内容が非常に貧弱な関係もあって、百分の十六で何とかやれるというようなことですが、一昨年の国会でも議論した点ですが、整理資源についての負担者をどうするかということについては、各年金制度についても、国家公務員地方公務員年金の場合には国あるいは地方団体、その他の年金の場合には事業者負担というようなことが通例になっておるわけです。農林年金の場合には必ずしもそうでないわけですね。ですから、これは国庫の負担を適正な水準に引き上げて処理する場合と、整理資源はあくまでも国が負担するならするというふうに明確な規定づけが行なわれれば、この点は解決できるというふうに思われるわけですが、どうも従来から農林当局の考え方というものは明確を欠いておるわけです。ですから、この際、この点について、もう少し理論的に掘り下げた見解を示してもらいたいと思います。
  36. 和田正明

    和田(正)政府委員 今回の改正内容が貧弱だという御指摘がございましたが、私どもとしては、ほかの共済組合制度とのバランスは十分これでとれるというふうに考えておりまして、現段階では、給付制度についての改善は最善のものであるというふうに確信をいたしておるのでございますが、御指摘整理資源の問題につきましては、先ほどもちょっと申しましたような事情で、掛け金率がやや高くなっておるわけでございます。たとえば国家公務員共済制度におきましては、同様にその後の給付内容改善に伴いまして、整理資源の必要を生じてまいりましたわけです。これは数年前に一定の金額を国庫から支出をいたしたのでございますが、それは国家公務員の雇い主としての国の立場で、そういう整理資源の国庫支出をいたしたということになっておるわけでございます。   〔大石(武)委員長代理退席、倉成委員長代理着席〕 大体この年金国家公務員の掛け金との差は、雇い主と組合員である本人が持ちますものとの両方の合計で千分の七くらいの差があるわけでございますが、その差を国が補助して埋めるのか、雇い主である団体自身も持つのか、そこらのところは、国家公務員共済におきます例が、雇い主としての国が支出したというようないきさつもございますが、今後検討を要する点かと思います。ただ、私どもとしては、今年度の予算要求にあたりましては、その整理資源に見合います部分を国が補てんをするという形での予算要求を一応いたしたのでございますが、残念ながら諸般の事情で実現をいたさなかったのでございます。それで、私どもといたしましては、四十二年度以降におきましても、国と雇い主の負担能力その他も十分検討いたしまして、でき得るだけ早い機会に整理資源の支出の方向を講じまして、掛け金率の引き下げには努力をいたしてまいりたいというように思っております。
  37. 芳賀貢

    芳賀委員 参考までに各共済組合整理資源に対する処理方針を申し上げますと、国家公務員の共済年金の場合には整理資源は事業主負担、それから公共企業体の共済年金の場合も整理資源は事業主負担地方公務員の共済年金の場合も整理資源は事業主負担である。それから厚生年金の場合は、これは国庫補助百分の二十ということで行なっておるわけであって、整理資源の全面的な事業主負担あるいは厚生年金による国庫負担百分の二十、いずれに比較しても、この今回の政府改正点というものは、他の年金に比べて、国の負担区分の点において非常におくれておる、差別があるということになるわけであります。特に農林年金は、その発生においては厚生年金から分かれたという経緯もあるわけですからして、それが国庫補助百分の二十ということにすでになっておるので、これとの均衡を考えた場合においても、国庫補助による場合においては、社会党改正案のごとく、少なくとも百分の二十にこれを引き上げるということは当然であると考えるわけですが、この点はいわゆる政治的な判断もあると思いますので、仮谷次官から答弁をお願いしたいと思います。
  38. 仮谷忠男

    仮谷政府委員 この国庫補助の問題につきましては、先ほど局長からもお話ししましたように、われわれとしても、予算要求ではぜひ実現をしたいと思って努力をいたしてまいったわけであります。もちろん、厚生年金の例もございますので、そういう例ももとにいたしまして交渉いたしたのでありますが、ただ、厚生年金の場合は、給付内容等において若干農林年金とは相違する点もありまして、一がいに厚生年金並みというふうな理論づけができない面もあったようでございます。ただ、事業主として公務員あるいは公共企業体の場合措置をしておるのでありますから、考え方によれば、農林年金の場合も、事業主もある程度負担すべきではないかという議論も、大蔵省にあることも御承知のとおりでありますが、しかし、われわれとしては、少なくとも整理資源に対するものは、国の補助によってまかなって、そうして内容も公務員並みにすると同時に、できれば組合員掛け金負担も引き下げていくということに最善の努力をいたしたいと思っているわけであります。ただ残念ながら、今年はそれが十分に実現することができなかったわけですが、将来の問題として、これはぜひ実現に向かって努力をいたしてまいりたいという所存であります。
  39. 芳賀貢

    芳賀委員 この点は、現段階で万一解決されない場合においても、次の時点で当然これは解決しなければならぬ課題になると思いますので、湯山委員からこの点を明確に述べていただきたいと思います。
  40. 湯山勇

    湯山議員 ただいまの整理資源の問題でございますが、実はその前提として、今度改正する要項はほとんど全部が整理資源である。つまり、新法旧法期間に適用する、そのための整理資源の要求でございますから、もし政府のほうで整理資源を国が見る、そういう前提にお立ちになるとすれば、当然そのために整理資源として必要な額にすれば、二〇%の国負担、これはしなければならない問題であると思います。  なおまた、政府がこの案をお出しになる条件として、社会保障制度審議会に諮問をされておりますが、それに対する社会保障制度審議会の大内会長からの答申は、この制度は厚生年金保険制度から分かれたものである、したがって、百分の十五を二十に引き上げる、この点についても考慮を払う必要がある、こうなっております。さらに先ほど御指摘になられましたように、掛け金の率が他の組合に比して高いにもかかわらず、整理資源の確保に欠けておるということについては、他の年金制度との均衡を考慮しつつ、国庫負担の増額を今後ともはかっていく必要がある、こういう指摘もされておりますので、この趣旨からいえば、この際、国負担をわれわれが提案しておるような額にまで引き上げる、これが妥当な措置である、このように考えております。
  41. 卜部政巳

    ○卜部委員 関連して、一点だけ御質問をいたします。  仮谷政務次官並びに和田農政局長のほうにちょっと質問をしてみたいのですが、先ほど芳賀理事のほうからの質問に答えた政治的な配慮の問題についてですが、御承知のように、いま大蔵委員会等におきますこの問題の取り上げ方については、ずいぶん論議をされておるところでありますし、十分御承知のとおりだと思うのです。現時点におきまして、公労協並びに公務員共済、こういうものについても、この国庫扶助というものに対する大幅な支出という問題がいま提起をされておるところです。しかも農林年金の場合においては、それよりも以下だという状態にあることを考えた場合に、単にいま局長なり仮谷政務次官がおっしゃったようなことでは、私は事済まない問題があるのではないかと思うのです。むしろ、そういう問題については、より積極的に掛け金の率を下げることはもちろんでありますが、いわゆる国庫支出の問題というものについては、農林省としては、当然、そういう劣悪な状態に置かれておる年金に対する措置というものを、私は強力に主張していいものだと思うのです。公務員でもいま上げようとしておる、公労協でもそういうものが支出されようとしておるのでありますから、その点をひとつはっきりとしていただきたい、こう思います。そういう点もあることも御承知かどうかをあわせて伺いたいと思います。
  42. 仮谷忠男

    仮谷政府委員 いろいろ御意見のあることは承知いたしております。ただ、私どもも、先ほど局長からも御答弁申し上げましたように、今回の改正案は、現在の時点においてはわれわれとしては最善を尽くしたと思っておりますし、少なくとも給付内容においては公務員並みのものになるという考え方を持っておるわけでありますが、ただ、基本的な給与体係において相違がありますので、そういう点において若干まだまだそこに開きがあることは、事実として率直に認めなければならぬ。ことに掛け金の問題については、高いことは承知の上でありまして、その掛け金を引き下げるためのいわゆる整理資源を確保するために、社会党と同じように二〇%の予算要求もいたしたわけでありますが、いろいろな事情からその実現ができなかったことは、まことに残念でありますが、今後の政治問題としては、当然所期の目的達成に向かって進んでいくことは既定の事実でありまして、そのように進めていきたいと思っております。
  43. 卜部政巳

    ○卜部委員 湯山委員質問をちょっといたしますが、いま仮谷政務次官がおっしゃったように、はたしてそういうような劣悪な状態にあって、二〇%のそういう要求が通らないような状態、背景であるのかどうか。同時にまた、公労協並びに公務員の共済におけるところの問題等をからめて、社会党の言っておることが無理なのかどうか、ひとつはっきりさせていだきたい。
  44. 湯山勇

    湯山議員 どういうふうにお答えしたらいいのか、ちょっとわかりかねるのですが、いま仮谷政務次官も、社会党と同じ要求を農林省としてはしてきた、しかし、それが実現を見なかったことはたいへん残念なことであって、今後とも全力をあげてその実情に努力をするということでございますから、これは政務次官の御言明を信頼して、ひとつ全責任を持ってやっていただくということではないかと思います。もちろん、いま御指摘のように、そういう整理資源を国が持つ、あるいは事業主が持つという原則については、私ども全く当初からそういう考えでございまして、なおその上に、事業主と組合員との掛け金の負担区分、そういうことも、現在の折半負担ということは、いまの趣旨から申しまして、よい方法ではありません。そこで、その率に差をつけるということを提案しておるのも、そういう趣旨からでございます。
  45. 卜部政巳

    ○卜部委員 仮谷政務次官に一言だけ申し上げたいのですが、いま湯山委員のほうからも出たように、政務次官のそういう長期展望に立った努力というものが確認をされたわけです。率直に申し上げて、この共済問題というものは、かなり各共済とのからみ合わせもあって、なかなか問題が進展をしない、私はこう思っております。しかしながら、いま大蔵委員会の中でも取り上げられておることではありますが、大蔵省自体の態度そのものについて、やはり農林省もしゃんとしなければいけないと思います。率直に言って、大蔵省自体がそういう問題についてそろばんをはじいたところが、大体掛け金が八千億というかっこうになる、さらに国庫負担という問題をからめて二割というかっこうで出す場合も千六百億、こういう状態になってくるというからみ合わせの中で、そういう弱い層に対する圧力というものが加わってきておることを私たちは知っておるわけであります。そういう状態のもとに、単にこの点を申請をした云云ということだけでは私は事足りないと思います。そういう点については、もう少しき然たる態度でそういう問題の措置を、率直に言って行なっていただいていないのじゃないか。同時に、いまそういう強硬なものを織り込まないと、いま政務次官のおっしゃっておる長期展望も、あくまでも長期展望に終わるのであるということを指摘して、ひとつ今回はさることながら、次回におきましては、そのことが実を結ぶように努力していただくよう要望いたして、私の質問を終わります。
  46. 芳賀貢

    芳賀委員 そこで、この点は、農林当局で明らかにしておいてもらいたいと思うわけでありますが、厚生年金における国の負担は百分の二十ということにすでになっておるわけですが、農林年金の場合には、今回の政府改正案においても百分の十六、これを比較した場合、厚生年金は百分の二十が当然で、農林年金は百分の十六が当然だという理論にはならないと思うのです。ここを明確にしておいてもらわぬといけないと思うのです。なぜ百分の二十と百分の十六でなければならぬかということです。
  47. 和田正明

    和田(正)政府委員 御指摘のように、厚生年金の国庫補助率は、昨年の法律改正で百分の二十になったわけでございます。  ところで、厚生年金におきます給付内容は、先生も御承知のように、給付基準が農林年金とは全然違いまして、農林年金は、今回の改正で、やめますときからの直前の三年の平均を基準として計算するわけでありますが、厚生年金は、最初から最後までの給与平均を基準にして算出をいたしております。給付のシステムそのものが基本的に違います。そういうふうに給付内容が、厚生年金においては農林年金に比較して低いことが頭にありまして、補助率が高められておるわけでございまして、先ほど湯山委員が引用されました、この法案提出するにあたって諮問をいたしました社会保障制度審議会でも、補助率の点については、給付内容が全く異なることがあるから、補助率を合わせるということについては、必ずしも積極的な御答申ではなくて、むしろ別の視野に立って整理資源の確保をはかるようにという趣旨のことが答申に盛られておるのも、そういう点を社会保障制度審議会としても指摘をされたものと私どもは理解をいたしておるわけでございます。
  48. 芳賀貢

    芳賀委員 それはおかしな答弁ですよ。いつですか、問題は、この年金の水準というものを他の公務員年金とかその他の年金均衡をとらせるということが、今回の改正の第一の趣旨でしょう。第二点は、そういうふうに内容是正が行なわれた場合であっても、掛け金の負担を他の年金組合に比較して、それを増額させるというやり方では、これはほんとうの改正にならぬわけですね。掛け金負担についても、他の年金と同じ水準の負担の以内でなければならぬというのは、これは言うまでもないことです。年金内容を抜本的に改めて、組合員負担軽減をはかりながら、この年金の運営をはかるということになれば、結局はその財源率とか資源率の問題になるんじゃないですか。掛け金負担をふやさないということになれば、これは組合員である農協の職員にしても、あるいは雇い主である農協自身にしても、他の年金よりも特別に負担がふえるということは、これはとるべき方法でないのですね。そうなると、資源率の増額分というものは、当然国がきめる法律であり、制度であるからして、その分は百分の二十になろうと百分の二十五になろうと、進んで国が負担するということでなければ、社会保障としてのこの年金の実はあがらぬじゃないですか。ここを私は言っているんですよ。
  49. 和田正明

    和田(正)政府委員 現在国が法律補助をいたしておりますのは、毎年の給付額に対する一五%、今回の改正法案がもし御採決がいただけますならば、本年の十月一日から毎年の給付に要する額の一六%ということになるわけでございます。先ほど来政務次官なり私がお答えを申し上げておりますが、整理資源は毎年の給付率とは別に、過去において掛け足りなかった掛け金部分、したがって、責任準備金等から生まれてまいります金利等が全体の設計の中に織り込めないという問題でございますから、補助率を二十に上げるとかいうことも、間接的には整理資源の助成にはなりますでしょうけれども整理資源補助するかどうかという問題は、現在の法律の規定にございます毎年の給付に要する経費の何%を補助するということとは別途の視野で、整理資源として補助することを考えても一向さしつかえない問題でございますので、直接補助率とは関係がないというふうに私は思います。
  50. 芳賀貢

    芳賀委員 それはおかしいじゃないですか。それは結局組合員負担にも関係があるわけでしょう。国の補助法律上百分の十五が十六になるということも、これも結局負担に関係があるわけでしょう。その国庫補助をしたとしないでは違ってくるじゃないですか。一定の給付を実行しようとする場合に、それを国も補助しない、資源率に対しても国が補助しないということになれば、これは自まかないでやらなければならぬということで、掛け金の大幅な増額をしなければ実施できないということになるじゃないか。  われわれはわからないで聞いているのではないのですよ。小学校の生徒が学校の先生に聞いているような、そういう質問というのは国会にはないのですからね。少なくともあなた方よりも、われわれのほうが、立法府におる以上、ものの判断とかけじめとか、そういうものをつける能力は持っているわけですよ。提案者側である内閣の法案内容等について、われわれとしては了解できない、不明な点があるのをただすのが質問ですから、だから正式には質疑と書いてあるでしょう。答弁する場合も、そういう姿勢で答弁してもらわぬと、法律の何条かに書いてあるようなことをわざわざ局長に言ってもらわぬでも、われわれのつくった法律を土台にして論議しておるのではないですか。もう少しまじめな態度で答弁をするならしなさいよ。しないならしないでいいですからね。
  51. 和田正明

    和田(正)政府委員 私は、おことばでございますが、ふまじめな御答弁を申し上げているつもりはございませんので、現在農林年金法に毎年の給付に要する額の一五%と書いてあるのを、今回の改正で一六に改めるわけでございますが、先ほど来御説明申し上げておりますように、整理資源の問題というのは、過去における掛け金の不足分をカバーする問題でございますから、直接毎年の補助率を上げていくということも、間接的には掛け金を引き下げる効果がございますが、そういう方法をとらないで、直接補助率をいじらないでも、整理資源としての補助をする方法もあり得るということを申し上げたわけでございます。  それで、二〇%が厚生年金にあるから二〇%にするということも、ある意味では一つの方法ではあろうと思いますが、それは国の制度としていろいろな共済組合制度があり、厚生年金制度があり、そうしてこの年金法は、今回の改正によって、給付内容についても、共済組合のほかの制度とのバランスをはかりました。厚生年金は、その給付内容に若干の差がございますことから、補助率が高められているわけでございますが、掛け金が高いということとそのこととは、直接理論的には関係がないことなので、補助率を上げるということばかりが整理資源補助する方法ではないのではないか、直接整理資源補助する方法もある、たとえば国家公務員には過去においてそういう方法をとった例がございます、こういうことを申し上げたわけでございます。
  52. 芳賀貢

    芳賀委員 国家公務員年金制度は、国が事業主体になっている。国自身がこれはやっているわけですからね。その場合には、これは事業主体負担ということで、事実上整理資源は国が負担していることになっております。私的年金の場合は、事業主体をそのまま解釈すれば、農林年金の場合は農業協同組合とか漁業協同組合が事業主ということにもなります。そういうことは避けなければならぬと思います。整理資源を全部農協である法人に背負わせるなんということは全く暴論だと思うのです。厚生年金の場合も、これは国庫負担を百分の二十ということにして、その他整理資源に対して国がどうするということは、ことさら明定されていないわけです。ですから、公的年金と私的年金の運営というものは、主体になるものが国か民間かということで、おのずから異なってくると思うのですよ。そういうことを考えた場合に、結局整理資源をどうするか。これをゼロにする方法もあるわけですからね。望ましい姿としては、国が制度上これは負担すべきであるというのがわれわれの主張でもあるし、大体これは定説になっているわけですね。その点をこの際明らかにしておかないと、ことしこの国会で問題が根本的に解決せられない場合であっても、次の時点でまたこれは問題になる点だから、基本的な態度として、原則論的にはどうしなければならぬかということを、この機会に政府としても明らかにしてもらいたいということを繰り返して言っているわけなんですよ。それは、その意味は政務次官はおわかりになると思うのです。これは次官からお答え願いたい。
  53. 仮谷忠男

    仮谷政府委員 いろいろ厚生年金との補助率均衡の問題がございましたが、これは先ほど局長から答弁をいたしましたようないろいろの議論が内部にもあるわけであります。ただ、私ども考え方は、少なくとも農林年金は公務員とレベルをそろえるということを私は一つの理想といたしておりますし、団体の要望もそこにあると思うのです。それを追い越すという考え方団体は持っていないようであります。したがって、そのレベルにそろえるために、私どもは今度の内容改善を実はやっているわけでございまして、ただ、それが十分でないことは、これはもう御承知のとおりでありまして、したがって、それを公務員並みに完全にレベルをそろえるということになれば、やはり整理資源的なその財源というものが必要だ。資源というよりも、むしろ整理資源としての財源が必要だということには当然なるわけです。ただ、整理資源として国が補助が出せるか出せないかという問題になりますと、公務員の場合は、雇い主だから当然出すという理論を持っているが、団体の場合は、国が雇い主に整理資源として出せるか出せないかという問題については、これはやはりまだ煮詰まっておらぬわけでございます。そういう観点から、やはり補助率アップによって整理資源的な資源というものをカバーしていこうという考え方のもとに、今年の二〇%アップの要望をいたしたわけでありまして、そういう方向で進んでおるわけでございます。したがって、どういう形で、整理資源という形で補助をもらうか、あるいは補助率アップによってやっていくか、これは別問題として、少なくともレベルをそろえるために国の補助を出さなければならぬ、あるいはその目的を達するまで補助をもらわなければならぬという考え方は、私どもは同じ考え方でございまして、その点に向かって努力をいたしてまいりたい、このように思っておるわけであります。
  54. 芳賀貢

    芳賀委員 いま次官から言われた発言の趣旨は、これはわが党から見てどうですか、湯山さん。
  55. 湯山勇

    湯山議員 おおむねわが党の考えと合致しておると思います。
  56. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、附帯決議の第五については、政府改正案においても述べられておりますから、これは省略します。  そこで、政府案の中で、特に社会党としては、農事組合法人の組合員である在籍職員に対して、一定年齢を経過した場合には、それは在職年金ということで、法律の対象にすべきであるという改正案を出しておるわけですが、政府案にはもちろんありませんが、これに対して農林当局としてはどういうような判断をしておられるか、この際、聞いておきたいと思います。
  57. 和田正明

    和田(正)政府委員 いろいろな理由が考えられると思うのでございますが、そのおもなことの一つは、御承知のように、この農林年金は、退職者に対する年金という考え方をとっておりますので、退職をしておらない者に退職年金を支給するという考え方は、この制度としてはなじみがたいのであります。また他の共済制度を見てみましても、在職中の者に退職年金を支給するという制度は現にないわけでございます。もう一つは、終生退職をしない者が存在するということは、何も農業法人に限りませず、現実にその他の組合の場合にもあろうかと思いますが、そういう場合にも、それは保険設計上としては、そういうものもあるということを前提としての設計がされておるということでございます。  そういうような二点から考えまして、政府案の中ではそういう問題を取り上げなかったのでございますが、しかし、実際問題としては、一部の組合法人等の中には、こういう老齢になるまで退職をしないでいく、もちろん、死亡後の遺族年金なりあるいはリタイアをいたしましたときの障害年金とか、そういうものの支払いが制度上あるわけでございますけれども、それだけでは十分でないではないかという面からの考え方もできるのでございますが、いま申しましたような二つの理由、さらに、現在他の共済制度には、やはり退職をした者に対する年金支給ということを前提としたものであります関係もありまして、前例もないものでございますから、今回は見送ったわけでございますが、また他面、老齢な農業者に早くリタイアをしてもらって世代の交代をはかる必要もあるというようなことも、他のほうではまたいろいろな説をなすものもあるわけでございますので、そういう面等もいろいろ合わせまして、今後さらに検討をいたしてまいりたいという立場でおるわけでございます。
  58. 芳賀貢

    芳賀委員 昨日湯山委員質問に答えて農政局長から、社会党改正案にない点だけを述べられたが、この際、社会党改正案と同様な改正点について、政府側から明らかにしておいてもらいたい。   〔倉成委員長代理退席、委員長着席〕
  59. 和田正明

    和田(正)政府委員 法文の順序にこだわらずに申し上げますと、まず、標準給与の月額の最低額が現在六千円でございますのを、政府案においても社会党案においても八千円に改めまして、標準俸給表の改正案が盛り込まれておることが第一でございます。  それから第二は、減額退職年金制度の創設をいたしたことが、政府案社会党案とも同様であり、またその給付率につきましても、同様の内容のものに相なっております。  それから業務委託の規定が、政府案にも社会党案にも入っております。  それからスライド制原則につきましては、社会党案には基準を数字的にお入れになっておりますことと、この改正法案の中へ直接入っております点が、政府案では、基準を入れずに、他の法律でほぼ同趣旨の、同文章にいたしましたことと、法律提案時期その他との単純な技術的関係で、別な法律案の中に入れて提案をしておるという違いはございますが、スライド制原則を盛り込みましたことについては同様でございます。  それから既裁定年金につきましては、社会党の御提案は全部新法ベースでというお考えになっておりますが、それらのうち、厚生年金期間の減額がありましたことを廃止をいたしております。  それから五万二千円の頭打ちを廃止をいたしました点は、社会党案も共通のことになろうかと思います。  それから新旧通算という関係で、平均標準給与を、旧法期間もやめます直前三年ということにベースを合わせましたことは、社会党の御提案も同趣旨だと思います。  大体それらの点がおもなところでございます。
  60. 芳賀貢

    芳賀委員 大まかに六点の改正点については、社会党と、若干不備な点は政府案にあるが、同様な点だと思います。これは二つの法案が出ておるわけですから、この両案をどういうように扱うかということは、今後当委員会にまかされた任務であるというふうに考えておるわけですが、並べてみると、社会党改正を百点とすれば、どういうようにいい点をお上げしても七十点程度のものじゃないかと思います。(「甘いぞ」と呼ぶ者あり)甘過ぎるかな。これは社会党として独自案を出していますから、ここで論争を展開するということはきょうは保留しておきます。  最後に、お尋ねしたい点は、最近の農林漁業団体職員給与の実態あるいは勤務年限等の実情を見ても、一昨年の法改正のときの状態と大きな変化というものはないわけです。そういうことになると、年金法根本改正ももちろんでありますが、その基礎をなす農林漁業団体職員のいわゆる給与に対する安定した基盤を確立するということになれば、当然その事業体である農業協同組合、漁業協同組合の事業というものが安定度を高めるということにならなければ、その職場で働いておる職員の生活上の保障あるいは社会保障の確立ということはなかなか不可能であるというふうに考えるわけであります。これは直接政府としても一〇〇%実効のある案をお持ちになってはいないと思いますが、今後の農林漁業団体の発展方向というものをやはり明らかにしておく必要があると思うわけです。したがって、抽象的なことになりますが、これらの基礎条件の整備ということに対して、農林省としてはどういうような考えを持っておられるか、この点は仮谷政務次官から明らかにしていただいて、これで本日の質問は終わりたいと思うわけであります。
  61. 仮谷忠男

    仮谷政府委員 これはたいへんむずかしい問題でありまして、なかなか具体的にあげて申し上げにくい面も現段階ではございます。農協あるいは農林漁業団体の強化が、今日きわめて必要な問題であることは申し上げるまでもございません。私どもも、今後こういう問題とどういう形で取り組んでいくかという点につきましては、研究会等を設けまして、実は慎重に討議をいたしておるわけであります。そういった面で、ひとつ今後一そう努力を続けてまいりたいと思っておりますので、御了承願いたいと思います。
  62. 中川俊思

    中川委員長 午後一時再開することにしまして、この際、暫時休憩いたします。    午後零時三分休憩      ————◇—————    午後一時三十九分開議
  63. 中川俊思

    中川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  農林水産業の振興に関する件につき、調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許可いたします。芳賀貢君。
  64. 芳賀貢

    芳賀委員 この際、昭和四十一年度のてん菜の最低生産者価格の決定時限でありますので、まず政府から、本年度の価格算定に対してどういうような方針で臨んでおるか、明らかにしてもらいたいと思います。
  65. 武田誠三

    ○武田(誠)政府委員 本年まきつけますてん菜の最低生産者価格につきましては、先生も御承知のように、糖価安定法の規定に基づきまして、農業パリティによります価格を基準にいたしまして、そのほか、てん菜の生産費あるいは競合農産物との価格の対応関係、さらに経済事情等を参酌してきめてまいりたいということで、目下鋭意検討中でございます。
  66. 芳賀貢

    芳賀委員 先般、甘味資源審議会が開催されましたが、ちょうど委員会の都合もありまして、審議委員である私も、また同僚である本名委員も終始審議会に出席しておれませんで、当日の各委員の発言の要旨等についても、完全に承知できなかったわけです。その際、農林大臣の冒頭のあいさつにも、昭和四十一年のてん菜最低生産者価格等について留意すべき事項についても各委員から貴重な意見を求めるという、そういうあいさつがあったわけですから、さだめし最低生産者価格の決定上重要な事項等については、関係の委員からの発言があったと思いますが、この際、その主たる発言の内容等について、整理されておると思いますので、その点を、まずお聞かせをいただきたいと思います。
  67. 岡田覚夫

    ○岡田説明員 それではお答えいたします。  速記がまだ完全に整理が終わっておりませんから、速記で御説明をいたすわけにまいりませんので、とりあえず手元でとりました資料で申し上げます。  審議会の委員のビート関係の方から特にお話があったわけでございます。その点につきましてはまず第一に、四十一年まきてん菜の最低生産者価格について、生産費所得補償方式による考えはないかというような質問、それから、そのほかの畑作物との収入について均衡のあるようにてん菜価格をきめるべきであるというふうな意見、それから、最近賃金が上がっておるので、そういうことを十分考慮して価格をきめるべきである、それから、取引価格が七千二百円ということになっておるわけでございますが、最低生産者価格は取引価格に近づけるようにきめるべきである、それから、七千二百円またはそれ以上にきめるべきではないかというふうな御意見もございました。それから、糖価が非常に低迷をいたしておりますので、糖価を安定させることに重点を置いて考えるべきであるというふうな御意見がございました。それから、売り戻し価格について、市価を参酌するように合わして考えるべきであろうというふうな御意見がございました。  そのほか、関連をいたします上下限価格だとか、合理化目標価格等について意見がございましたが、最終的に会長から取りまとめられましたところは、最低生産者価格決定にあたっては、生産者の意向を十分に取り入れてきめるように、第二点といたしまして、糖価安定対策に積極的に取り組むように、それから第三番目としまして、国内産糖を優先して諸対策を講ずるようにするということ、こういうふうな三点の要約によりまして御意見の開陳があったわけでございます。
  68. 芳賀貢

    芳賀委員 昨年の国会で砂糖価格安定法が成立いたしまして、従来甘味資源法で処理しておりました甘味の原料最低生産者価格は、ことしから砂糖価格安定法に基づいて政府が決定しなければならぬことになっておるわけです。  そこで、決定の方法については、従来の甘味資源法と同様でありまして、砂糖価格の安定法では、その十三条に、最低生産者価格の決定についての基本的な事項が示されておるわけであります。もちろん、この基本に基づいて価格算定をやられると思うわけでありますが、すでに告示すべき期限が四月十日でありますから、余日がないわけでありますが、現段階における作業の内容等について、できるだけ数字等を示せる限り明らかにして説明を願いたいと思うわけです。  この決定方法は、法律によれば、いわゆるパリティ方式ということが基本ですから、昭和四十年の最低生産者価格、この単年度の最低生産者価格にパリティの上昇指数をかけて、それを基準にしてきめることになるわけであって、この法律の十三条あるいはこれに基づいた政令、省令の規定等を準用して行なった場合のおおよその試算というものは出てくると思いますので、その点について長官から説明を願います。
  69. 武田誠三

    ○武田(誠)政府委員 本年まきのてん菜の最低生産者価格の算定に必要なと申しますか、主たる要素というのは、すでに先生承知のとおりでございますが、てん菜の最低生産者価格をきめますにつきまして、毎年同じようなルールというものが確立いたしますれば、ある意味で非常に機械的に算出ができるわけでございますけれども、生産費その他も年々非常に違っておりまするし、特に昨年は非常な大豊作ということもございまして、生産費は非常に下がっております。それらの関係等もございまして、現在どのように最終的な結論を得たらいいか、実はいろいろと検討中でございますので、いま直ちにこういうふうなことになるであろうということを申し上げかねるわけでございますが、その要素としてのパリティによりましてのいわば基準価格になりますものは、本年は六千七百九十八円という計算が出てまいります。それから、昨年のてん菜の生産費につきましては、トン当たりにいたしまして五千百三十八円ということに相なっております。また、競合農作物といたしましてバレイショをとりますると、これをてん菜のトン当たり換算をいたしますと六千三百三十円という算定数値に相なります。このほか、経済事情といたしまして、昨年のてん菜の取引基準価格でございます六千八百円というようなものが一つ基礎的な要素に相なってまいると思うのでございますが、これらの参酌のしかたなり、あるいはさらに、これ以外の要素というものをいろいろ検討いたしておりまして、ただいま直ちに明快に先生の御質問にお答えできませんのはまことに申しわけございませんが、そのような段階でございます。
  70. 芳賀貢

    芳賀委員 きょうは四月七日ですけれども、八日、九日、十日と、十日は日曜日ですね。ですからもう何日もないと思うのです。したがって、農林省単独できめるだけの力もないと思いますから、当然大蔵省と事前に話し合いをして、一応合意の上に告示をされるというふうに判断しておるわけですが、ことしの決定の場合は従来と違って、特に昨年、昭和四十三年を目途にした国産糖の合理化計画というものが審議会の議を経てすでに決定して公表されております。その際、昭和四十三年産の国内産糖の推定生産費、その基礎になる原料について、昭和四十三年産のてん菜あるいは甘蔗の推定生産費というものが、当時の審議会においても参考資料として長官から説明があったわけです。これに対する当、不当は別にして、とにかく昭和四十三年までの間の糖価の決定あるいは原料の最低生産者価格の決定等については、およそのルールが敷かれておるというふうに思われるわけです。そうでありますからして、毎年やり方が変わるということではなくて、基本的にはパリティ方式でいくということであれば、それをあくまで基礎にして貫いていくということでなければ、四十三年に到達する合理化計画というものも順調に進まぬのではないかというふうに思われるわけです。ただ問題は、従来、政府が最低生産者価格を決定、告示するわけでありますが、それと別個に、生産者と会社の間において原料の取引価格というものが事前に話し合いで決定されておるわけです。昨年、一昨年は、最低価格の告示前にその年度の取引価格が決定されておるわけであります。そういう場合には、最低価格というものは、政府が買い入れる原料の基礎的な数字というものに使われるだけであって、直接的には、生産者は、会社との間においてきめた取引価格が完全に実施されればそれで足りるということにもなるわけです。ことしの場合は、いろんな事情があってまだ取引価格の決定段階に至っておりませんから、したがって、最低生産者価格がいかように決定されるかということは、生産者の側から見ても非常に重大な点であります。そういう意味からいっても、最低生産者価格の決定にあたって、前年度行なわれた原料の取引価格というものをどの程度要素として取り入れるかということは非常に重要なことでありますので、この点をもう少し具体的に述べてもらいたいわけです。きょうは大蔵当局の出席も求めてありますので、必要な場合には大蔵当局からも発言をしてもらいたいと思います。
  71. 武田誠三

    ○武田(誠)政府委員 前年のてん菜の取引価格というものについて、経済事情もできるだけ参酌するように、また、していこうというようなことにつきましては、従来の甘味資源の審議会等におきましてもいろいろ御議論があったところでありまして、十分承知をしておるつもりであります。そこで、経済事情の参酌ということについてでございますけれども、いずれにいたしましても、てん菜の再生産というものを確保していくということが最終の目標でございます。同時にまた、これは一つの最低の支持価格という性格のものでございますので、この経済事情の参酌の度合いというようなものにつきましては、やはりその年々のその他の要素あるいは事情といったようなものを十分かみ合わせて考えていく以外にはなかろう、したがって、当初にも申し上げましたように、パリティによるもののウエートを幾らにするか、どういうものによるウェートをどうするというようなことは、画一的に必ずしもきめ得ない要素を含んでおるのではないかというように考えておるわけでございます。特に本年におきましては、昨年の生産費が五千百円というような数字も出ておりまして、経済事情その他の参酌等についてもどの程度のウエートを考えたらよろしいか非常に苦慮しておる段階でございますが、いずれにいたしましても、昨年の取引基準価格というものは算定の一要素として考えてまいりたいというように思っております。
  72. 芳賀貢

    芳賀委員 その生産費の、いまトン当たり五千百三十八円というように言われた、これはあとで詳しくお尋ねしたいと思いますが、いま尋ねておるのは、前年度における実際の取引価格というものを明らかに勘案要素として用いるということは、当時甘味資源法の審議の際、あるいは甘味資源審議会においても当時の赤城農林大臣からしばしば言明されたところです。われわれとしても、取引価格を全面的に次年度の最低価格に反映するということは、これは法律のたてまえ上も無理もあると思いますが、しかし、ある程度勘案されたという実が見えないと、勘案したといっても、さっぱりこれは明らかにされていないのじゃないかということになるわけですからして、特にこの点をことしは相当勘案要素として反映させるという点について、長官の意思をもう少し明確にしておいてもらいたい。
  73. 武田誠三

    ○武田(誠)政府委員 いまお話がございましたように、前年の取引価格というものを勘案すべしということにつきましては、十分承知をしておるつもりでございます。したがいまして、今年におきましては、昨年の生産費が非常に低い水準にあるというようなこともございますので、この取引価格というものについては、私どもとしても十分考慮に入れてまいりたいというふうに思っておりますが、現在、それが結果的にどのように出てまいりますか、まだ最終的な結論を得ておりませんので、何とも申し上げかねるのでありますけれども、気持ちとしては、お話のようなことで考えてまいりたいというふうに思っております。
  74. 芳賀貢

    芳賀委員 この際大蔵当局からも、直接大蔵省が最低価格を算定するわけではありませんが、告示前には必ず農林、大蔵で協議して、この程度ということで決定することはわれわれも承知しておるわけですし、大蔵省当局の態度いかんということも、ひとりてん菜の最低価格だけでなくて、農畜産物全体の各法律に基づいた価格決定の場合においても、これは重要な役割りを大蔵省が持っておるわけですからして、この際、特に大蔵省からこの問題について発言をしておいてもらいたい。
  75. 嶋崎均

    ○嶋崎説明員 御質問の点は二点あると思いますが、一つは、昨年合理化計画を策定したときの一つのめどというものがあるではないか、その点についてどういうぐあいに考えるか。それからもう一つは、経済事情一つとして、現在のてん菜の取引価格をどういうぐあいに参酌をしていくかという点だと思います。  まず第一点の、合理化計画の点については、すでに先生承知のとおりに、七千五十円という数字があるわけでございます。四十三年の目標生産としては、一応この四年間の目標としてきめておるわけでございますけれども、年々の合理化目標価格の設定につきましては、それぞれいろいろな経済事情も考え、さらにまた、てん菜の作付の状況、そういうようなことをいろいろ考えながら、また、砂糖の具体的な市価ということもにらみながらきめていかなければならぬ性格のものであろうと思っております。法律的には一応そういうぐあいになっておりますけれども、それじゃ、具体的にことしの価格決定にあたって、この七千五十円というのをどういうぐあいに考えるかということになりますと、御承知のように、現在の価格が六千五百五十円ということでございますので、それとのからみをどう考えるのかということでございます。パリティその他の動きというのは、将来を予測するということはなかなか困難でございます。現に出た数字を中心にして、それがその合理化の目標生産費を算定したときの価格とどういうような連なりを持っていくかということについて、われわれとしても慎重に考慮に入れて判断をしていかなければならぬというぐあいに思っておるわけであります。  それから第二点の、現在の取引価格を一つの経済事情として参酌をするということは、そのとおりだと思うのです。現に取引をされている価格があるわけでありますから、それが考慮に入れられて具体的な決定をしていくということは必要であると思うのでございますけれども、同時にまた、てん菜につきましては、すでに昨年の作付面積が四十三年の目標作付面積をオーバーするというような状況にもなっておりまして、生産の形というのが非常に発展的、あるいは流動的ということばが適当かもしれませんが、動いておる実情にあるわけでございます。そういう点を考えますと、そういう生産費が具体的にどういうぐあいに動いていくか、また、生産性がどういうぐあいに向上していくかというような点についての配意もまた必要であろうと思うのです。今度きめる最低生産者価格というのは、もう百も御承知のとおり、この価格を上回って買うてん菜につきましていろいろ買い入れその他の手当てをしていくという形になっておるわけでございまして、そういう性格のものとして、いま定めようとする価格があるということも配慮に入れて、それと現実の取引価格というものをにらみ合わせて判断をしていくべきものであるというふうに現在考えておるわけでございます。  さらにもう一点、質問として直接おありになったのかどうかわかりませんけれども、現在その日時も定まっておるのにどういうぐあいになっておるのかという点があろうかと思うのです。先ほど長官からお話がありましたとおり、実は食糧庁のほうからもいろいろな数字を持ち込まれて、ざっくばらんに言って、われわれはどうもその意見には賛成いたしかねる、そういうことで現在議論を戦わしておるような段階でございますので、具体的な数字につきましてこの段階で申し上げるわけにはいきませんけれども、いろいろな資料を求め、そういう資料を中心にしてわれわれの意見、それから農林省の意見ということで、昨日もおそくまで議論をしておるというような段階であることをお答え申し上げておきます。
  76. 芳賀貢

    芳賀委員 冒頭に、ことしの決定の重要さというものを私が申し上げたのは、昨年の九月八日の甘味資源審議会の答申の中にも、合理化目標についてはおおよそ妥当であるという結論が出たわけでありますが、その際、てん菜を原料とするてん菜糖の合理化目標価格は、四十三年がトン当たり九万三千円ということに一応定めてあるわけです。それとの見合いで政府の考えは、原料についてはトン当たり七千五十円ということでありましたが、この原料価格の点については審議会でも議論が相当活発に行なわれて、結局答申の中にも、「なお、原料作物の生産目標数量の確保を図るとともに、農業パリティ指数の上昇率のとり方について検討を行ない、特にてん菜糖の原料価格については現行取引価格七千二百円を目標価格に反映すべきであるとの意見があった。」というふうに、これは特記事項ということで原料価格の問題に触れておるわけです。したがいまして、七千五十円か七千二百円かということで、数字上は意見が分かれたままの答申ということになっておるわけで、この七千二百円というのは、いま私が指摘しております実際の取引価格の七千二百円を言っておるわけです。だから、これは四十三年の目標達成の年に、原料の生産の状態とか、あるいは糖業の合理化等が順調に進んだ場合、その際は糖価においては九十三円なら三円ということになるわけですね。九十三円の糖価になったとしても、その時点で七千二百円の最低生産者価格というものは実現可能である、こういう考えの上にわれわれは立っておるわけです。いまからそれを考慮に入れて四十一、四十二、四十三年の原料価格の算定をしておかぬと、またうそを言ったのではないかということに当然なるわけだから、この点は、特に農林、大蔵両当局においても、ほんとうに政府として国産糖の自給度を政策的に向上させなければならぬという政策上の一貫した方針があるとすれば、現在もそれを堅持しておるとすれば、その点は明らかにしておいてもらいたいと思うわけです。これは政務次官からお願いします。
  77. 仮谷忠男

    仮谷政府委員 この問題は昨年から議論をされておるのであって、四十三年度に合理化目標を定めて進んでおるわけでありますから、その目標達成のためには、われわれは段階を追って善処していかなければならぬことは当然でありまして、そういうつもりで努力いたしていきたいと考えておるわけであります。
  78. 芳賀貢

    芳賀委員 国産糖の自給度の向上は、これはいまの政府としても大目標としてやっていくのですか、もうやめるのですか。
  79. 武田誠三

    ○武田(誠)政府委員 国内産糖の自給率の向上と申しますか、増産という点につきましては、合理的な生産を確保し得る限り、できるだけこれを増強してまいりたいという考え方でございます。
  80. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、統計調査部長お尋ねしますが、四十年産のてん菜の生産費調査の結果が三月三十一日に公表されたわけです。内容は非常に簡単な一枚紙で、いままでよりは簡略になっておるようですが、この内容について、われわれとしてはどうもすなおに了承できがたい点があるので、一応その内容について説明してもらいたいと思います。
  81. 木田繁

    ○木田説明員 四十年産のてん菜の生産費につきまして御説明申し上げます。  昭和四十一年三月三十一日に公表したものでございますが、四十年産のてん菜の生産費は十アール当たりで一万七千三百六十三円となり、前年三十九年産は一万六千六百六十四円でございます。したがって、三%の増ということでございます。一トン当たりでは五千百三十八円ということでございまして、三十九年産では六千二百五十五円でございました。一トン当たりでは根部の肥大期が好気象に経過いたしまして、褐斑病でありますとか、あるいは葉腐病でありますとか、そういった被害がほとんどなく、大幅に増収いたしましたために約一八%減少した次第でございます。生産費を構成しております費目のうちで、前年に比べて増加したものは、動力機械によります賃耕料を主体とした賃料料金、それから種苗費、ぺ−パーポット、紙筒栽培の導入によります諸材料費、それから肥料費、こういうものが増加をいたしまして、他方、畜力費でありますとか、あるいは防除費でございますとか、労働時間の減少に伴います労働費というふうなものが減少しておるということでございます。この調査は、集計の戸数が九十八戸ということでございまして、全体北海道が標本農家でございます。この九十八戸のうちで、普通栽培でございますのが四十五戸、ペーパーポット栽培によりますのが三十九戸、それから普通栽培、紙筒栽培両方やっておりますのが十四戸、全体で九十八戸ということでございます。これは三十九年では普通栽培のものが六十四戸でございまして、ぺ−パーポット栽培が十五戸、両方の栽培が二十一戸、全体で百戸でございましたが、脱落が二戸あって、九十八戸ということになっております。さらに、三十九年度で紙筒栽培が十五戸でございましたが、四十年産のほうでは紙筒栽培が三十九戸ということで、この分が増加しております。種苗費は十アールあたりで申し上げますと約二百円の増加、肥料費では四百円の増加、それから諸材料費で百二十円の増、こういうことでございます。全体といたしまして、肥料の第一次生産費が十アールあたりで申しますと一万六千十円ということで、前年度の一万五千四百八円に対しまして約六百円の増、こういうことでございますが、資本利子なり資材なりを入れましたものとしての第二次生産費としましては一万七千三百六十三円でございまして、前年の一万六千六百六十四円に対しまして約七百円の増、こういうことに相なっております。  以上、簡単でございますが、生産費の、発表いたしました内容につきまして概要の御説明を終わります。
  82. 芳賀貢

    芳賀委員 それはこちらにもありますからわかっておるわけですが、問題は、砂糖価格安定法の施行規則の第十条に、甘味資源作物の生産費ということが明らかにされておるわけです。私の聞いたのは、省令の第十条による甘味資源作物の生産費調査、これに基づいて今回のてん菜の生産費調査というものが行なわれたかどうか。省令に基づく調査の結果であるかどうかということを明確にしてもらいたい。
  83. 木田繁

    ○木田説明員 お説のとおり、その規則に基づく調査でございます。
  84. 芳賀貢

    芳賀委員 そうなるとたいへんじゃないですか。たとえば、十アール当たりの収量にしても、この調査によると三・三八トンになっておるのですね。こういう反収というものは、実際に法律で定めた原料価格の算定の要素としてこれを利用することができるかということになると思うのです。法律にも何にも関係なしにやる場合には、わずか九十何戸の耕作農家を対象にして、その農家のてん菜の平均反収が幾らであったということでやられるのは差しつかえないかもしれませんが、砂糖価格安定法に基づいててん菜の生産費調査をやるということになれば、実態に即応しない反当収量をとるというようなことで、これは全く意味のないことだと思うのです。こういう生産費は勘案要素なんかに使いたくても使えないですね。
  85. 木田繁

    ○木田説明員 ここに申し上げます調査の集計戸数九十八戸ということでございますが、これは北海道におきまするてん菜の生産農家、これを公平に全部代表できますような標本戸数として九十八戸をとりまして、それの作付面積なり、あるいは生産物の数量なり、あるいは十アール当たりの収量を出しまして、それに基づいての費用計算を出しておる、こういうことでございますので、全体を代表しておるものと考えておる次第でございます。
  86. 芳賀貢

    芳賀委員 それじゃ、昨年のてん菜の十アール当たり平均収量というものは三・三八トンということになるわけですね。
  87. 木田繁

    ○木田説明員 いま申し上げますように、全体といたしまして、代表性のある九十八戸ということの調査の結果でございまして、全体としての総数量から具体的に当たるものとしては若干のズレがございますが、総体的に考えまして、妥当なる調査の結果が出るものとして設計されたものと考えております。
  88. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは、一反当たり収量の三・三八にてん菜の総作付面積をかければ全量の生産量ということになるので、それは符合するということになるのですね。
  89. 木田繁

    ○木田説明員 いまの二戸当たりの平均といたしましてのトン数と、それから全調査農家の九十八戸の分についての十アール当たりの平均の収量との間には、具体的に標本農家といいますものの作付面積との関係で若干差がございますが、全体としての調査の結果としましては、妥当なものであろうというふうに計算上考えておる次第でございます。
  90. 芳賀貢

    芳賀委員 私の聞いておるのは、四十年のてん菜の生産費調査ということになれば、これは十戸や十五戸の農家の生産費ということにはならぬわけです。それが全体に引き延ばして妥当であるということになれば、北海道あるいは東北の一部が区域になっておるこのてん菜の総作付面積、これは昨年は五万八千八十五ヘクタールということになるわけですから、そのうち北海道が五万三千七百八十六ヘクタール、東北が四千二百九十九ヘクタールで、合計五万八千八十五ヘクタールになるわけですね。との面積に対して、十アール当たりの平均収量が、いま統計調査部長の言われたように三・三八トンということになれば、相当膨大な総収量ということになるわけで、それが妥当であるということであれば、一体総収量が幾らで、処理した原料数量がどうであるかということも、あわせて数字をあげてもらいたいと思うわけです。
  91. 木田繁

    ○木田説明員 いまの反当の全体の実績としては三千キロということでございますが、実際に、現在のこの九十八戸の調査農家そのものの分としては三・三八トンということで、全体としての標本の選び方によりましての若干のズレがございまして、その間の差はあるということは、現実の調査の実態でございます。
  92. 芳賀貢

    芳賀委員 あなたのところは統計という仕事をやっておるわけでしょう。だから、ごまかしも何もできないのですよ。正直にやるのが統計であって、そこに政治的配慮が作用するということは断じて許されないわけですからね。九十八戸の農家の平均反収が三トン三八であれば、これはそういうことはあり得るわけだからいいが、それを五万八千町歩に引き延ばして妥当であるということになれば、これは重大問題なわけですよ。もちろん統計調査部は、米にしてもバレイショにしても、あるいはてん菜糖についても、実収高の調査とか発表ということはやっておるわけですから、現実に昨年てん菜がどれだけ耕作されて、反当たりの収量がどれだけであって、総収量が幾らであったか、それを原料としてどれだけ処理して、精糖がどれだけ産出されたかということは、これはもう統計上明らかにしなければならぬ義務があるわけですよ。それをやってもらうために、農林省に統計調査部というのが置いてあるわけですから、その点を、もう少し明確にしてもらいたいと思うのです。ありふれた調査であれば、何もここであらためて取り上げるわけではないが、砂糖価格安定法の施行規則の第十条に基づいて、生産費調査というものはこれこれの分類で調査しなければならぬということがきめられておるわけだから、本日われわれが問題にしておるのは、この砂糖価格安定法に基づいて農林省が行なった四十年産てん菜の生産費調査というものはどうなっておるかということを、いま尋ねておるわけです。
  93. 木田繁

    ○木田説明員 前にお答えしておりますように、全体としての集計の戸数が九十八戸ということでございまして、それだけの範囲の結果としての十アール当たりの収量が三・三八ということでございます。
  94. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは、食糧庁長官お尋ねしますが、いま統計調査部長の言われた生産費の説明というのは、これは糖価安定法に基づく生産費の調査とだいぶ質的に違うと思うのですね。そこで、食糧庁が所管されておるわけですから、昨年のてん菜の作付面積あるいはヘクタール当たりの収量、総数量、あるいは処理数量、産糖高、そういうものをこの際委員会に明らかにしてもらいたいと思います。
  95. 岡田覚夫

    ○岡田説明員 それでは、四十年産のてん菜並びにてん菜糖の製造実績について申し上げます。一応会社からの報告を基礎にいたしたものでございまして、最終的に、もうこれがかちっとしたものだというふうに公表いたすところまではまだまいっておりません。現在のところ、一応の集計をいたしたものでございます。  作付面積が、北海道だけ申し上げますが、五万三千七百八十五・九七ヘクタール、それからヘクタール当たりの収量が三十一・二八四、総収量が百六十八万二千六百二十六・三四ということになっておりまして、産糖量といたしましては二十四万六千七百九十五・八〇というふうに考えております。
  96. 芳賀貢

    芳賀委員 そうすると、だいぶ収量に差があるわけですね。統計調査部は、結局ヘクタール当たりにすると三三・八トン、それから、いま食糧庁から説明のあった数量は三十一・二八四ということになるわけですから、ヘクタール当たりにすると二・六トンの収量の差というものが出てくるわけなんです。だから、反収の面でこういう大きな差を設けるということは、一体それに基づいた生産費なるものが現実性がないということは、これはもう明らかになっておるわけであるし、そういうものを基礎にして今年度のてん菜の原料価格の算定の勘案すべき要素に使うということは、絶対にこれは不可能であると思いますが、いかがですか。無理にこういうものを使うということになれば、これは価格を引き下げるとか、特別の配慮があって、その材料に統計調査部に低い生産費を出させたということになると思うのですよ。
  97. 武田誠三

    ○武田(誠)政府委員 生産費調査といたしましては、先ほど来統計調査部長がお答え申し上げておりますように、全体のてん菜の生産農家の生産費をできるだけ代表し得るという設計のもとに農家を選定して、それからきわめて精密に報告を求め、かつ調査をして生産費を算定いたしておるわけでございます。これはてん菜に限らず、ほかのものの生産費調査においても同様のシステムでやっておりまするし、このことが同時にまた、省令の十条にきめております趣旨であろうと思います。  全体の実収高調査なり何なりというものは、いま第二部長から申し上げましたように、会社からの報告としての数字は、いま申し上げたようなことでございますが、これらにつきましては、最終的に多少の変動が今後あろうかというように思います。と同時に、米の場合におきましても、麦の場合におきましても、生産費調査と全体の面積で収穫量を割りました平均反収というものの間には常にある程度の差がございます。生産費として全部の農家を悉皆調査によりまして出します場合には、これはまさに実収高その他と全く対応したものが出てまいるというふうに思うのでございますが、先ほど統計調査部長が申し上げましたように、かりに九十八戸の農家の調査というもので全体の生産費というものを代表し得るという、統計業務上の代表性の理論で抽出をしておるわけでございまして、これらの農家につきまして、それの平均反収が全体の平均と同じでなければならないということには必ずしもならないと私は思うのであります。同時に、当該農家の肥料代でありますとか、施肥をしております状態でありますとか、あるいは機械の導入の状態でありますとか、労働時間のかけ方というようなものを、今度は別途に全部の北海道のてん菜の作付農家というものを克明に調べまして、それの平均というものをとりますれば、あるいは労働時間が下がっておるかもしれませんが、そういうような意味合いで、ただ単に反収というものだけを比較いたしまして、これがどうこうということは、やはりちょっと問題があるのではないかというように私は考えております。
  98. 芳賀貢

    芳賀委員 しかし、反収が一番ウエートを占めておるんじゃないですか。昨年までは二・四トンということできたのに、いきなり今度は三・四トンということになれば、一反歩で一トンよけいに取ったと取らぬでは生産費で重大な変化がくるんじゃないですか。これは肥料代とか労賃の関係とは違いますよ。実際に実績平均反収が三・一トンであれば、それと大体接近した数字を使うということであれば、概観しておおよそその程度であるということがわかりますが、それより一割も多いような反収をわざわざ取り上げて、それがおおむね傾向として妥当であるということは、価格決定上の生産費として判断する場合には当を得ないものだと思うのです。たとえば、あなたのところでやっている米の価格決定にしても、過去三カ年間の実績平均反収というものを基礎にして、それから標準偏差一五%を設けて、そして大体全国的に適用できる反収というものを取り上げて毎年の米価決定を行なっておるわけですね。同じ食糧庁長官のもとでやっているんじゃないですか。米価の場合は、過去三カ年の実績平均反収から、さらに標準偏差を設けて勘案して現実的にやっている。てん菜の場合は、実績平均反収より上回る反収というものを設定して、生産費を安くすることに役立つ資料をつくるということは、同じ食糧庁の中で所管が違うことによってやり方が全然別であるということになるんじゃないですか。これだけでいくんじゃないからまだいいといえばそれまでだが、しかし、これも勘案する一つ資料になるわけでしょう。大蔵省の主計官のところでも、こういうものは重要な資料としてやはり議論するんじゃないですか。五千百円じゃないかということを議論されれば、長官も二部長も、簡単に、いや、これは実態に合わないんだ、実際はまだ反収が低いが、一応統計調査部がこういうものをつくってくれて、あんたのほうに有利になっているということを言うわけにはいかぬのじゃないですか。これは単なる統計調査部が通例行なっておる各農産物の生産費調査であれば抽出農家の当該作物の平均反収ということでもいいが、法律に基づいて生産費調査を行なって、それを資料に使うということになっている場合には、やはり価格決定上役立つ調査をやってもらわなければいけないと思うのですよ。統計調査部は食糧庁長官の配下じゃないですから、あなたが指示するわけにはいかぬが、これは政務次官としては誤りは是正できると思うのですよ。この点は、昨年の牛乳の不足払い法のときにも、どうも農林省の統計調査のやり方は不備な点があったのではないか、是正すべきであるということはわれわれ委員として指摘してあるわけです。当時、赤城農林大臣も、その点は十分配慮して是正すべきものは是正するということを言明しておるわけですが、改善の余地がないというだけでなく、改悪の方向にこれはいっておるわけです。これは仮谷さんから、資料に値するとかしないとか、はっきりしておいてもらいたいと思う。
  99. 仮谷忠男

    仮谷政府委員 統計調査部の調査のあり方についてはいろいろあると思うのですけれども、ただ、調査の結果があらわれたことは、決して統計事務所自体が故意で、あるいは意図的にやったものではなしに、自然に数字としてあらわれたものをそのまま発表しておるということでありまして、そのこと自体を今度の価格決定の場合に取り入れてやるかやらないかという問題は、おのずから別問題ではないかと思うのであります。確かに先生のおっしゃるような理論があると思うわけです。ただし、実績平均反収でなければならぬという理論にもまたいろいろ議論もあるようでありますけれども、私ども自体もいつも米価決定の場合に言っておることは、生産性が向上したことがむしろ価格決定にマイナス要因になることは農民の努力を無視することじゃないかということをいままで言ってきたのでありまして、そういった面は、価格決定にあたっては十分に考慮しなければならない問題であろうと思うのであります。ただ、具体的に数字をどういうふうにして検討していくかということについては、いまここで私自体が申し上げる限りではございませんが、御趣旨の点は十分に了解ができると私は思っております。
  100. 芳賀貢

    芳賀委員 これは単にてん菜だけじゃないのですよ。後刻、また今年度の蚕繭の価格決定についての告示についての質疑も行なうことになっておりますが、たとえば繭の価格をきめる場合に、これはやはり生産費調査を基礎にして、その生産費の、たとえば八五%以上を確保しなければならぬという法律上の規定で行なわれておるわけです。そういう場合も、平均農家でなく、上位農家だけを前提として生産費を抽出するということになれば、これは価格上から見ると非常に生産費が安いということになるのです。こういうことで、統計調査部が法律に基づいた農畜産物の価格に関係のある資料として統計の調査をやっておるとすれば、今後これは非常に重大なことになるのです。統計調査部それ自体の機構についても、われわれとしては検討を要することに当然なるわけです。これは、大臣がきょうはおりませんから、そこまで掘り下げることはとどめておきますが、この点は、政務次官としても十分留意しておいてもらいたい。これは非常に問題になると思うのです。  そこで、これにさらに関連して、今年度の生産費調査の場合の、いわゆるこれも問題になる点ですが、自家労働費の計算はどういうことにやられておるわけですか。平均反収の場合には大体内容がわかったわけですが、労賃の評価というものは、五千百三十八円の中でどういう評価がえを行なったか説明を願いたいわけです。
  101. 木田繁

    ○木田説明員 いまおっしゃいますのは、十アール当たりの五千三百一円の基礎と存じますが、臨時雇用の労賃を用いて計算しておるものでございます。
  102. 芳賀貢

    芳賀委員 これも去年問題になった点なんですよ。どういうわけで農家の自家労賃を農業の日雇い労賃にしなければならぬのかということを委員会で各委員指摘しておるわけです。その場合に、特にそれは立法上の根拠があってそういうことをしなければならぬのかということを尋ねた場合に、法律上の根拠は何もありません、従来そうやっておりますから、継続的にやっておるにすぎないという部長の答弁であったわけです。何か法律の根拠があってやるのであれば、それはその法律是正しなければ改めるわけにいかぬが、何も法令上の根拠なしに日雇い労賃を自家労賃にあてはめなければならぬということにはならぬわけであるから、この点は、去年は赤城農林大臣に、十分検討して、今後生産費調査をやる場合の自家労働費の評価については、現実に適合した適切な方法に改善すべきであるということを大臣にも指摘しておるわけです。それを、また去年と同じように日雇い労賃ということになると、生産費の資料としてはこれも使えないということになる。それで、どのくらいの賃金で評価したらいいですか。一時間あるいは一日当たり、男女別等について説明願います。
  103. 木田繁

    ○木田説明員 男子につきましては八百五十九円、女子につきましては七百三十六円、これは一日当たりの経費でございます。
  104. 芳賀貢

    芳賀委員 時間当たりで幾らになりますか。
  105. 木田繁

    ○木田説明員 八時間で計算いたしますと、男子の場合が百七円、女子の場合が九十二円、こういうことになります。
  106. 芳賀貢

    芳賀委員 これは自家労働の男女それぞれに日雇いの男女賃金をあてはめたということになっておるわけですか、あるいは込みにしてやっておるか、その点はどうなんです。
  107. 木田繁

    ○木田説明員 男女別に計算をしてございます。
  108. 芳賀貢

    芳賀委員 そこで、昨年も問題にしたわけですが、賃金というのは、労働の能力とか成果に基づいて評価するのがたてまえになっておるわけですが、一体この専業の農業従事者の一時間当たりあるいは一日当たりの労働の能力あるいは成果と、それから日雇い賃金の対象になる臨時的な農作業労働の一時間当たりあるいは一日当たりとの比較はどういうことになっておるのですか。全く同じか、違うかですね。
  109. 木田繁

    ○木田説明員 ここでの計算は、それぞれの能力計算によってやっておるわけでございます。
  110. 芳賀貢

    芳賀委員 どういうような計算をしておるのですか。たとえば、専業の農業従事者一人は、臨時労働の二人に匹敵するか一・五人に匹敵するか、その評価の基準を示してもらいたい。
  111. 木田繁

    ○木田説明員 雇う者の一人前と、雇われる者の一人前を対照して計算して考えております。
  112. 芳賀貢

    芳賀委員 そうじゃないですよ。同じ作業をした場合、十五年も二十年も経験のある熟練した農家の労働と、それから臨時的に雇ってきて同じ作業をやらせるわけだから、仕事の能率とか成果において同様であるとか差があるとかという結果が出るわけですね。いわゆる賃金というものは、その労働の成果に対して適切な評価を行なって、一時間幾らとか一日幾らというふうにきめるわけだから、能率があがってもあがらなくても一時間、一日が全く同様でなければならぬということにはならぬわけですよ。特に農業の場合は、販売する農畜産物の価の中に自家労働の報酬というものが含まれているわけだから、労働者や皆さん公務員のように、賃金は月給で幾らとか一年幾らということがきまっているのとは違うわけです。その点は、労働の評価というものを、臨時と比較した場合にどういうことになるのかということは、これは当然統計調査部としては評価がえをしなければならぬ点じゃないですか。
  113. 木田繁

    ○木田説明員 私ども生産費を調査して、それぞれその計算をする場合には、御承知のとおり、当該生産品を生産するために投下したその費用は幾らであるかということを頭に置いて調査する次第であります。したがいまして、いまおっしゃいますように、労働について年雇いあるいは臨時、家族というふうに分けてございますが、それぞれ年雇いは年雇い、臨時は臨時、家族は家族として、その人々それぞれについての記録をしていただきます。その際に、家族の場合についても臨時の場合と同じような単価でもって計算するわけでございますが、年雇いなりあるいは臨時雇用の数というものについては、それぞれ年雇いは年雇いとして雇われている者何人、それから臨時については、それが一人前というふうに考えられた者については一人前ということであり、自分としては一人前でないというふうに考えられている、また相手もそういうふうに取り扱っている者については、それ相当の評価をして計算する、そういうふうな考え方にしているわけでございます。
  114. 芳賀貢

    芳賀委員 私の聞いているのは、同じ作業を専業の農家がやる、その場合に、手間が足らぬから一人臨時を雇い入れて行なう、これは同一作業を一時間とか一日やった場合に、その能力とか成果が必ずしも同様というわけにいかぬでしょう。能率のあがるほうは作業が進むし、熟練度の低い者は作業が進まないということに当然なるわけです。だから、臨時であろうが、年雇いであろうが、賃金を払う場合には、その者の持っている労働の能力なり成果に対して一定の賃金として評価して支払いをするわけですから、何でもかんでも雇ってきて、一日の時間がたてば同じ賃金というわけにはいかぬと思うのです。それなら、小学校や中学校の子供を連れてきても、一時間たてば、はい百円、八時間たてば八百円ということになりますが、そういうわけにいかないでしょう。だから、能力に差がある場合には、やはり一定の基準で評価がえをして、そして賃金を支払うとか生産費の調査の資料に充てるということであれば、それは話はわかるんですよ。たとえば、専業農家が臨時一人に対して一・五人の能力があるとすれば、臨時が八百円の場合は千二百円ということになるわけですから、評価がえをやれば、臨時一人に対して農家の一人は二倍に当たるということになれば、これは一日八時間で千六百円、こういうことになるんですよ。仮谷さんは頭を振っているが、これは、農林省からきた毎月の統計資料を見ても、産業別の賃金を見ても明らかなんですよ。製造業における日雇い労賃というものは、四十年度の平均が一日七百三十七円ですからね。そうすると、これは一時間百円にならないのですよ。ところが製造業の常用労働者の場合の月の賃金は三万六千百六円ですからね。これを月二十五日稼働としても、大体製造業の日雇い労賃の倍の賃金が常用の労働者には支払われておるということになるわけです。これは何によって。差ができるかというと、雇用が不安定であるという点もあるが、実際製造業の場合においては、その労働者の経験とか熟練とか労働の生産性というものに対して賃金の評価を行なうから、月三万六千円とか四万円ということになる。臨時的な不熟練労働者は、雇い入れてきても経験もないし、能率もあがらぬからして、やはり一時間百円程度しか支払いできないということで、同じ製造業の内部においても熟練者と臨時的なものの賃金差が出るというのは、これは当然じゃないですか。これを農家の場合に当てはめれば、専業農家の場合は固有の賃金というのはないのです。自分が働いておるわけですね。あれば、やはり製造業における常用と臨時の格差というようなものは当然農業生産の内部においてもあり得る、私はそういうように考えておるわけですよ。統計の皆さんだって、実際の作業実態というものを見ておるわけでしょう。いまの農村の日雇い労働の実態というのはどうなっておるのですか。実態調査の結果、どういう人たちが農家の臨時的な労働力の供給源になっておるかということはわかるでしょう。そういうことはわからぬですか。この実態を、まずお尋ねしたいと思うのです。
  115. 木田繁

    ○木田説明員 ただいまおっしゃるようなものにつきましてだけ、特に調査したものは持ち合わせておりません。
  116. 芳賀貢

    芳賀委員 どうして調査しないのですか。調査する場合は、対象農家が臨時雇いを月何日雇い入れたということは、これは記帳するわけでしょう。その場合、女を雇ったか、男を雇ったかということはわかるじゃないですか。その雇い入れた臨時の人がどういう職業に所属しておるか、専業の日雇い労働者であるか、あるいは主人公は給料取りであるとか、あるいは商店を経営しておるとか、そういうしっかりした生計の根拠というものが他にあって、そうして余裕のある家族の労働というものが季節的に農家の作業に出動して協力しておるという形が、いまの農村の臨時日雇い労働の実態だと思うのですよ。私は北海道で農業協同組合長をやっていますが、水田もあるし畑もありますね。田植えの場合は、ほとんど町の給料取りの細君とか、あるいは農業以外の中流の生活をしておるところの婦人が主体になって田植えとか、あるいはてん菜のいわゆる過密栽培の植えつけの労働とか、そういう給源になっておるのですよ。ほんとうにその日その日かぜがなければ食べられないという人よりも、ちゃんとした生業が主人公にはある。しかし、ぶらぶら遊んでいては申しわけない、だから一日八百円とか千円で、農家は全く手不足だから、手伝いというような意味を含めて作業に出動しておるわけですからね。これは仮谷さんのところの高知県でも——各局長や長官の出身も、大体百姓が多いと思うのですよ、農林省の高級官僚であっても。だから、くにに帰れば、そういう実態はわかると思うのです。それを統計調査部が実態調査をしていないというようなことは、ばかげているじゃないですか。ぜひこれは実態調査を、いままでやっていなければ、やるべきですよ。そうすると、そういう給料取りの細君たちの臨時的な労働と、十五年も二十年もの経験を持っている専業の農家のおやじさんとか嫁さんと比べて、同一作業をやった場合の能率が同じなんていうことはないと思うのですよ。違うから、これは安いのですよ。その安い賃金と同じでなければならぬというのはおかしいじゃないですか。そういうことになれば、いつまでたっても農民の所得というのはニコヨン並みから出ることはできないのですよ。製造業の臨時賃金とか、農業の臨時労賃が農業者の所得水準であたりまえであるというようなことになれば、ますます所得格差は拡大するじゃないですか、そうじゃないですか。何のために格差解消というのを、価格政策とか生産対策とかを講じてやられるわけですか。だから、昔からこういうようにやっておるから、そのままやっておこうじゃ済まないと思うのですよ。純粋にやった統計の結果というものはそれぞれ重要な意味を持って政策面に活用されるということを考えた場合、どうですか、統計調査部長
  117. 木田繁

    ○木田説明員 先ほども申し上げましたように、私どもの出しております生産費の調査は、生産物につきましてどの程度の費用を投下したかという原価の計算をいたすということでございます。したがいまして、ただいまおっしゃるような意見もあろうと存じますが、労働費につきましては、家族も、労賃そのものの計算としては臨時雇用の費用でやっておるというのが、われわれの計算の方法としては妥当であるというように考えております。
  118. 芳賀貢

    芳賀委員 そういう調査の内容ですから、反収については一反歩当たり三・三八トン、あるいは労賃については男一日が八百五十九円、女一日が七百三十六円、こういう計算をすれば、いろんな数字の使い方で、一トン当たり五千百三十八円というものが出てくるのですよ。しかし、そういうものが実際のてん菜の生産費として妥当な自家労賃であるか、あるいは適正な反当収量であるかということになりますと、ここに問題があるわけですね、そう思わぬですか。価格に関係ないといいったって、価格に直して一反歩幾ら、一トン幾らというようになっておるのじゃないですか。あなたのほうは作為的にやっていなくても、これはもう生産費調査の結果とか、あるいは食糧庁とか大蔵省でやる場合には、これはやはり去年の生産費はこうなっておるということに当然なるわけですよ。農民を苦しめるためにあなた方は営々として努力しておるということになるんじゃないですか。政治的にやってくれというのじゃないですよ。実態に即したようにやらなければ、せっかくの神聖な統計の結果というものが意味がないじゃないですか、この点はどうお考えですか。
  119. 木田繁

    ○木田説明員 いまの労賃の計算のしかたについていろいろ御異論はあろうと存じますが、われわれの考えといたしましては、生産そのもののコストを出す、こういうことでございますので、従来と変わりのない考え方ということでいくのが妥当であろうと考えておるわけであります。政治的に考えるとかいうようなことは一切いたしておらないのであります。
  120. 栗原俊夫

    栗原委員 関連して……。  あとから蚕糸の問題のときに少しくお聞きしようと思っておったけれども、どうも納得がいきません。これが自由価格なら、農産物が売れた金額の中からかかった経費を差し引いた残りが労賃だこれでやむを得ないと思うのですよ。これはそうじゃないのです。そうじゃなくて、価格支持制度をつくる。そこで、生産費は幾らかという積み上げをやっていくわけだから、上からおろしてきて、これだけが労賃だよということでは、これはだめなんだ。そこで、先ほどからちょいちょい発言していたけれども、農業基本法の精神は、他産業と格差を縮めつつ、劣らないような経済的な生活を保持しよう、こういう方向なのだから、かかった経費にそういう労賃を加えて、これが生産費ですと、こう持っていかなければ全然話にならぬじゃないですか。まるで話になりませんよ。これは大体価格支持制度の根本を間違っておる。これは政務次官、答弁だ。
  121. 仮谷忠男

    仮谷政府委員 この問題は、実は乳価の問題から関連をいたしまして十分委員会でも議論をして、大臣からも実はいろいろ御答弁申し上げたわけでありますが、ただ統計調査事務所としては、結局与えられた権限の範囲内においてその現実の数字を調査をして、それを出すということが調査事務所の現在の仕事じゃないかと思いますし、したがって、それが改善をする余地があるとすれば、やはり改善の方向に向かわなければならぬと思いますけれども、問題は、そういう農村の臨時雇用賃金というものを生産費の中に含めて、いわゆる生産価格を考えていくかどうかという問題になってまいりますと、いささかこれは統計事務所の域を抜けた問題ではないかというふうに考えます。そういう意味で前赤城大臣もいろいろと御答弁なされたと思うし、今回の乳価の問題につきましても現大臣からも御答弁を実はいろいろと申し上げたのでありまして、確かにこれは議論の余地はあると私どもも思っておるわけであります。したがいまして、そういった面は将来ぜひ改善する方向で努力しなければならぬということは、大臣もしばしば御答弁を申し上げておるとおりでありまして、そういう意味で善処をいたしてまいりたいと思っております。
  122. 栗原俊夫

    栗原委員 それは政務次官はそう答えておる。確かに、ここで統計調査部長を追及したって、それはかわいそうなんだ。言われるとおりにやっているのだから、それは部長がかわいそうなんだ。だから、われわれは部長を追及するよりも、そういうやり方を指示する農林省大臣政務次官、こういう人が大体よくない、また、そういうことをやらせない大蔵省もよくないと思う。だから、これはやはりはっきりとやらなければならぬし、しかも、私たちも、米の供出のときに、そんなことで全生産量がわかるかという中で、ランダム調査は間違いないのだということで、ずいぶん説得されたものですよ。だから、九十八軒のぐあいのいいものだけを拾い上げて、これだけよけいとれて、経費はこれだけしかかからないのだという九十八軒を拾い上げ調査なんかしないで、生産調査についても、かかる費用その他もランダム調査をやって、全反別にぴしゃりとかけたらこのとおりですというような、ほんとうに正しいものの出る方向を指示しなければ、統計調査部は全く指図どおりやっているのだから間違いないだろう、電子計算機じゃないけれども計算は間違わぬけれども、与えるカードが違っていれば、これは答えが違ったものが出てきますよ。だからこの点は、やはりはっきりと農業基本法の精神にのっとったカードを電子機械の、事務を担当する統計調査部へ与えていかなければ、幾ら本気になって間違いがない計算をしたって、与えるカードが違っているカードを突っ込んだら、出てくる答えは使える答えは出ませんよ。ひとつ、この点はしっかりとやってもらわなければいかぬですな。
  123. 芳賀貢

    芳賀委員 いま栗原委員からの指摘もありましたが、調査部長にもう一回尋ねておきます。まじめに仕事をやるのはけっこうですが、この生産費調査の場合も、ことしでその農家が農業を放棄すると考えて調査してはいないのでしょう。来年も再来年もやるということになれば、これは再生産が行なわれるという判断の上に立って調査を進めるわけですね。その場合、農家の自家労働というものを評価する場合に、男八百五十九円、女七百三十六円、この労働の評価で再生産が一体できるかという疑問をきっと持つと思うのです。また、これで専業農家として生計が維持できるかということの疑問も、末端の職員はきっと持ちながら命令どおりやっていると思うのですが、そういう点はいままで全然考えなかったですか。
  124. 木田繁

    ○木田説明員 先ほども申し上げましたように、私どもの生産費の計算では、あくまで生産品を生産するために投じた経済価値は幾らであるかということの計算でございまして、したがいまして、おっしゃるような再生産のためにこれが必要であるかどうかということについての考慮を、特にこの調査においていたしておるということはございません。
  125. 芳賀貢

    芳賀委員 じゃ、どういうわけで自家労働について日雇い賃金で評価しなければならぬですか。こういう必要はないじゃないですか。これは何のためにやるわけですか。
  126. 木田繁

    ○木田説明員 自家労賃の評価のしかたにつきましては、いわゆる農村におきます労働賃金の通常の時価と申しますのが臨時の雇用の賃金であろうという考え方のもとに、家族労賃につきましては臨時雇用の賃金を基準とするというのが従来の考えでございます。
  127. 芳賀貢

    芳賀委員 どういうわけでそうしなければならぬのですか、それをもう少し明らかにしてください。どういうわけで農家の自家労働というものを日雇い賃金で計算しなければならぬか、何か理由があると思うのです。
  128. 木田繁

    ○木田説明員 われわれの計算といたしましては、いろいろ労賃の基準というものがあるものだと思いますが、その際、普通、もし家族がなかったならば雇うであろうと思われるものに年雇いと臨時とがあるわけでありますけれども、通常そういった場合に、いまの労賃として考えられるものとしては臨時の費用が適当であるというふうに考えて、それを基礎にしておるというだけであります。
  129. 芳賀貢

    芳賀委員 たとえば、てん菜を生産しても、これは砂糖にしなければ生産の目的が何も達成されぬわけですね。だから、砂糖の原料であるてん菜を生産する農家の労働費は日雇い賃金でやる、そういうことであなた方やっているわけだから、それじゃ、それを原料にして砂糖を製造する、精製糖をやる場合の労賃というのは月当たりにしてどのくらいになっているのですか。これは製造業ということになりますけれども、しかし、農家が原料を生産するわけだし、その原料をさらに砂糖にするわけだから、一貫したものがあると思うのです。その製造費ですね、労賃はどうなっているのですか。  あわせて、これも関係があるが、農家が乳牛を飼育して生乳を生産する、それを原料にして乳製品をつくるわけですから、たとえば精製糖工場の労働賃金、乳製品工場における労働賃金はどうなっているということ。農業関係の製造業の賃金というのはわかるでしょう、それを参考までに知らしてもらいたいと思う。
  130. 石田徳

    ○石田説明員 直接ビートと関係ございませんが、精製糖企業の平均は、月にいたしまして約四万五千円くらいでございます。
  131. 芳賀貢

    芳賀委員 乳製品は幾らですか。
  132. 檜垣徳太郎

    ○檜垣政府委員 乳業会社の平均労賃は、私どものところで調べておりませんので、平均賃金額はわかりません。
  133. 芳賀貢

    芳賀委員 大体もわからぬですか、四大メーカーくらいの場合、統計調査部でわからぬはずはないだろう。
  134. 木田繁

    ○木田説明員 私どもとしましては、ただいまの御質問の点につきましては調査をいたしておりませんので、ただいま持ち合わせておりません。
  135. 芳賀貢

    芳賀委員 いま石田説明員が言ったとおり、てん菜を原料にして製造しておる、いわゆる砂糖の製造工業の平均賃金が月四万五千円、これは聞いたでしょう。二十五日働くとすれば、一日千八百円ということになるわけですね。原料生産者は八百円でいい。その原料を用いておる製造工場の労賃は一日千八百円ということになると、これは倍以上になるわけです。こういう点はどうなんですか、しょうがないということでおさまるのですか。砂糖の価格をきめるまでの経過としては、これは原料代金が当然入るわけですが、原料代金の中には自家労賃がまざっておる、その自家労賃は一日八百円、それから砂糖の製造過程における労賃は、八時間労働で千八百円、こういうものを全部合わせて、つまりトン当たりのてん菜糖幾ら、あるいは精製糖幾らということになるわけだから、これは問題があるじゃないですか。原料生産者は一日八百円でいい、月二万円でたくさんである、その次男坊、三男坊が砂糖会社に行って働けば二倍以上の賃金になる。
  136. 木田繁

    ○木田説明員 ただいまおっしゃいました製糖所の場合の労賃と申しますのは、企業者として労働者を雇う費用としてのものであると存じますが、私ども生産費で考えております労賃といいますのは、あくまで、先ほどからもるる御説明いたしましたように、生産物そのものを産出するのに投下した経済価値は幾らであるかという計算の方式でございますので、その点、ものの考え方が違うのでございます。
  137. 芳賀貢

    芳賀委員 どうも部長と議論しても果てしないのですが、あなたのそういう間違った考えを直すには、やはりあなたの上のほうから指示しなければだめだと思うのです。もしそうなれば、これはだれと議論するのがいいですか。あなたのところは経済局所管だが、われわれは、統計調査部というのは一応独立の機能を持っておるからして、局長や何かの指示で動かぬでもいいというように実は考えておるのです。しかし、そういうことがなかなか信用できないということになれば、職制からいうと、あなたの上には経済局長がおりますね、経済局長の指示であなたは仕事をされておるかどうか。そうでないとすれば、これは政務次官とか農林大臣とか、留守番には事務次官がおるわけですが、どういうところと論議をすればこういう誤りが是正されるか、その点をここで明らかにしてもらいたいのです。もうあなたのレベルでの議論というのはこの程度しか進まぬわけですからね、失礼なようですが。
  138. 木田繁

    ○木田説明員 ただいま農林省の設置法のたてまえといたしましては、農林経済局の統計調査部ということでございますが、御承知のとおり、統計調査部は昭和二十二年に統計調査局というふうになりまして、二十四年以降統計調査部でございますが、その当時から、内部といたしましては、局とは別個の存在ということの取り扱いになっておる次第でございます。
  139. 芳賀貢

    芳賀委員 そうすれば農林大臣じきじきということになるわけですね。農林大臣の迷妄を打破しなければだめだということになる、そうなるのですか。これは端的な質問だけれども、一体だれとかけ合えばいいかですね。それは政務次官からはっきりしてもらいたい。大臣が必要ならばこの次に大臣を呼んでこなければしょうがない。
  140. 仮谷忠男

    仮谷政府委員 臨時雇用労賃を価格決定の場合にいわゆる生産費の基礎にするかしないかという問題について、このビートの問題でなしに、乳価の問題にしましても、あるいはいわゆる蚕糸の問題にしましても、いろいろいま議論をされておる問題でありまして、この点については、昨年来、当委員会においても議論に議論を重ねてまいったところでありまして、それに対しては前赤城大臣も御答弁を申し上げておるし、その答弁を受けて、今年また現大臣も御答弁をいたしておる状態でありまして、直ちにそれを全面的に取り入れてということは、現段階ではきわめて至難でありますけれども、御趣旨の点は十分に体して今後努力をいたしてまいりたいということを大臣からもしばしば御答弁申し上げておるとおりでありまして、ぜひひとつその点で御理解をいただいて、これ以上私から御答弁申し上げる権限がございませんので御了承いただきたいと思います。
  141. 芳賀貢

    芳賀委員 最後に、政務次官に申し上げますが、先ほど来の質疑を通じて、食糧庁当局においてことしの価格算定上の作業、あるいは大蔵省においてもどういうような心がまえでこれに当たるかということがおおよそ理解されるわけです。したがって、問題点は、法律趣旨からいえば、前年度の最低生産者価格にパリティ指数の変化率を与えて、基礎的な価格をまず算定して、それに経済事情ということになれば、従来の、昨年の取引価格の一トン当たり七千二百円をどの程度配慮するかという問題が重要になるわけです。それから生産費等の問題については、究極は、いま論議しましたとおり、農家の自家労働をどういうふうに評価するかということが問題であって、そのいかんによって生産費の結果は大きな差異が出てくるわけですからして、やはり国産糖の自給率を大きく国の主要な政策として伸ばすということであり、あるいは専業農家の所得の向上をはかるという、そういう考えが政府の政策態度の中にはっきりあるとすれば、これはどちらと言わぬでも、政務次官としては判断がされると思うのです。ですから、再生産の面等については、去年の糖価安定法の附帯決議等においても、適正な農家の所得が確保されて、拡大再生産が生産面で講じられるように価格決定についても十分配慮すべきであるということになっておるわけですからして、あと数日しか時間的余裕はないわけですが、それらの事情というものを十分考慮に入れて、農林省はもちろんでありますが、大蔵省についても、主計官国会に出れば説明員ということになっておるが、実際に価格算定については発言権を持っておる任務にあるわけですからして、きょうの国会の論議等も認識して最善を尽くしてもらいたい。そういう御意思政務次官からはっきりしていただいて、きょうは質問は終わらしていただきます。
  142. 仮谷忠男

    仮谷政府委員 価格決定についての基本的な考え方は、先ほど長官からもお話し申し上げたとおりでありますが、本日いろいろ議論された問題につきましても、そういったいろいろな資料を十分に参酌をいたしまして、できるだけの善処をいたしてまいりたい、かように思います。
  143. 中川俊思

    中川委員長 松浦定義君。
  144. 松浦定義

    ○松浦(定)委員 本年度の原料価格の決定については、いま芳賀委員からいろいろ詳細な質問がございましたが、いま政務次官が言われましたように重要な問題でありますから、おそらく、再検討をして、発表については十分農民の意思が尊重される結果が出るだろうということをわれわれとしても期待しなければならぬと思うのであります。  そこで、私は、角度を変えましてちょっとお尋ねしておきたいと思うわけでございますが、現在のこのような形の糖業政策、昨年度つくりました事業団等の動きにつきましても、おそらく、今日の段階では、業者側においても実はたいへんな苦慮をしておると思うのです。生産者からすれば、業者は交渉相手だと単純に考えておるわけです。ところが、その交渉が、いま糖価安定についての政府の施策のまずさから現状のような形であるということで、農民に対しても十分にこたえようとしないような態度をしておる。同じ原料生産者とそれを製品にするものとは、これは労使提携というよりも、もっともっと一つのルールの中にあるのだと私は思うのです。いずれが欠けてもだめだと思うのです。ところがそれが、特に最近、そういうような形の中でいがみ合わなければならぬというようなことを政府は傍観しておるのかということを私は言いたいのであります。  そこで、先ほどからいろいろ御説明がありましたように、昨年は非常な増産をした。これは私は実際農業をやっておりまして、昨年の増産は、これはおそらく基準にはならないと思うのです。昨年これだけとれたから今年もとれるだろうというような考え方でやったのではいけないと私は思う。おそらく今年は、いまの情勢の中では作付は非常におくれます。今日、まだところによっては一メートルも雪がある。そういう状態の中で、ペーパーポットの育成等について農民は雪をのけて努力をしておるのです。それも予算の少ない中で非常に努力をしておる。ところが、それだけ努力しても、天候その他のあれが悪ければ昨年のような期待はできないわけであります。そういたしますと価格体系の中に相当響いてくるのではないか。四十年度がこの程度できたから四十一年度もこうであろうなどといったような、先ほど言われたような反収のとり方で今年度の決定に対して考慮されるならば、私は、またことしの秋になって非常な問題が起きるであろうと思う。だから、私が一言申し上げておきたいのは、昨年はそういうような空前の豊作だといっておりますが、おそらく、ことしは逆のことがくることもあり得るかもしれない。その場合にはどういう考慮をするか。たとえば、そうでなくても、平常な場合の反収が今年度あったとしても、これはやはり政府考え方から見れば相当価格体系の中では満足できないような状態のものであろうと思うわけです。ですから、たとえば今年度の生産の結果から見て、さらにこれは何とか考慮しなければならぬということはもう明らかであろうと思うのですが、ことしの価格決定にあたって、昨年度は従来にない増産をしたというような年においてきめて、もし通常のような状態がきたときには、秋の生産を見て、これに対して何とか政府は考慮する、態度としてはこういうような含みを持って当然おやりになると私は思うのでありますが、この点についてはどのようにお考えですか、お聞きしておきたいと思います。
  145. 武田誠三

    ○武田(誠)政府委員 本年まきつけのてん菜についての最低生産者価格をきめますに際しましては、お話のように、昨年のてん菜の生産については、気象条件が、最初は豪雪その他の問題もあったわけでございますけれども、ほぼ生育期間を通じて非常によかった、また、農民各位の御努力ももちろんあずかって大きな力があったわけでありますが、そういう意味での大豊作であったと思います。ことしまきつけのてん菜の最低生産者価格をきめるにつきまして、去年と同じような気象条件なり何なりを前提にしての大豊作ということを前提として私どもきめようというふうには考えておりません。現在、道庁その他からも生産見込み等のデータもいただいております。いわば普通の状態における生産ということを頭に置きまして、十分そのことを参酌してきめてまいりたいと考えております。   〔中川委員長退席、小枝委員長代理着席
  146. 松浦定義

    ○松浦(定)委員 この点は、非常に重大な問題があとに残りますので、慎重な態度をもって進めていただきたいと思うわけであります。  それから、農家にしてみますと、昨年は相当増産をした、であるから、ある程度昨年の製品についても原料についてもこれを上積みをしてほしい、こういうことを要請しておるわけですが、なかなかそれができないわけであります。こういう問題のできない理由としては、現在、北海道においては九工場あるわけですが、この九工場の操業能力は、現状でこれで満度であるのか、あるいはまたどの程度の操業能力があるのか、だとすれば、まだ生産はどのくらい高めていいのかというようなものを数字的にちょっと御説明願いたいと思います。
  147. 岡田覚夫

    ○岡田説明員 現在の工場が、一工場の能力が大体十八万トンあるわけでございます。これは通常のベースとして十八万トンということであるわけでございまするが、能力的には、まだ十分十八万トンをこえても発揮できる状態にございます。したがいまして、一工場あたりの生産が飛躍的に増大するということになれば、これはまた別でございますけれども、ここ当分、現在の工場で十分やっていけるものだというふうに考えております。
  148. 松浦定義

    ○松浦(定)委員 私の質問は、その工場をふやすとか何とかいう意味のものではないのです。昨年度の経過を見ましまも、もしこのような状態で来年度——これは去年のことですから、いまでいえば本年度、二割三割の増産をされたら、工場としてはもう手をあげるであろう、あるいは現在の糖価の事情では、むしろ増産をすることによって会社としてはかえって損をするのではないか、こういったような動きが実はあるわけです。ですから、農家にしてみても、工場能力があるからといってどんどん生産をすればもう値段が下がるのだ、また会社にしても、能力があるから手一ぱいやったけれどもかえってこれは損をした、こういうことでは、糖業政策上からいっても好ましくないのではないか。工場が合理化をされて、もっと工場を集約するなりいろいろな形でやって、適当な規模で適当な生産量を提供する、そうして最高の価格が維持されるということが一番いいわけですが、いまのところではそういう点についての一貫性がないのではなかろうか、こういう点を実は私はお聞きしたいわけです。ですから、もっとつくれということならば、価格の先ほどの矛盾の点が解消されれば、おそらくことしあたりでも私はある程度の増反増収は不可能ではないと思うのですが、その結果が貧乏するようなことでは、これは困るわけですから、そういう点についての糖業政策上からいった工場の合理化の問題とかあるいは生産の限度というものについて、先ほども三年後の云云というようなお話がちょっとありましたけれども、ある程度そういう点についてはっきりしたものを持てば、農家が喜んで、今年度の価格が幾らならつくるのだ、八千四百二十円というものが、もしかりにそこまで到達しなくても、将来に対する希望が持てれば、今年度の増産も決して無意味でないと私は思うのですが、そういう点についての方針はどういうようにお考えになっておりますか。
  149. 岡田覚夫

    ○岡田説明員 先ほど申し上げましたように、現在の能力のもとにおきましてはまだ相当増産されましても十分やっていける。御承知のように、操業量がふえますと工場のコストは下がってまいるということになるわけであります。そこで、工場の能力を越えるような生産が行なわれた場合にどうかというふうな問題も考えられるわけでありますけれども、まあ、その点につきましては、現在の各工場につきまして必ずしも能力一ぱいやっておるという状態でもございませんし、今年度の生産はふえていくということになれば、それが工場に悪影響を及ぼす、コストがかえって高くなるというふうなことがないような配慮は十分いたしていきたいというふうに考えます。
  150. 松浦定義

    ○松浦(定)委員 最後にもう一点。従来から問題になっております原料の出荷区域の問題です。これは工場をどんどん設置しようというときに、競争いたしまして、そのときの工場新設申請の地区がその区域になったといったようなこととか、いろいろありまして今日に至っておるわけです。今日、それでもなおかつその限度を、農民の意思に沿わないままに出荷調整といったようなもので糊塗されておるという点があるわけです。はなはだしい点は、御承知のとおり大日本製糖あたりは北見の一番奥から持ってくる。これは矛盾もはなはだしいわけであります。農民がビートをつくるのはどこへ行っても同じ価格なんですから、農民の立場からいけば一つも矛盾はないわけです。少しでも高く売れればいい、こう思っている。ところが、そういうことが人為的にあるいは政策的に行なわれることによってビートの価格は決して高くならないと思うのです。そんなことがあっても高くなるのだというなら、全然そういうことなしに、好きなところへ好きなものを出せばいいわけですけれども、そうでない証拠に区域を割っておる。しかし、それと正反対に、全然別なところへ、一番遠いところに、まだ今日そういう地域がある。これは私は、出荷する農民においてもいろいろな意味で不満だろうと思うし、会社自身に対してもいろいろ施策上不便があろうかと思うのですが、そういう点については農民の意思どおり——農民としては、自分たちの生産物はどこへやりたいのだという意思があるわけです。いままではなかなか農民の意思は尊重されないままにきておりますけれども、少なくとも、そういう大きな点についての改正は、私は、この機会にするべきでないか、こう思うのです。そういう点については、依然として昨年どおりで今年もお進めになるのか、あるいはその点については十分考慮するためにいろいろな対策を考えておるのだというようなお考えかどうか、この点をお聞かせ願いたいと思います。
  151. 岡田覚夫

    ○岡田説明員 現在きまっております集荷地域が非常に合理的なものであるかということになりますと、いろいろな点からいろいろな意見があろうと思います。しかし、ビート企業が成り立つ歴史的な事情がございまして、そういう歴史的な前提の上に立っていまの集荷地域がきまって、四十三年までは現在の集荷地域でいくというふうなたてまえになって、それぞれの地域において増産の努力がなされてまいっておるわけでございます。したがいまして、この集荷地域を現在のところ変更するというふうなことは、そういう歴史的な事実のもとにおきましてはなかなかむずかしいと考え、それぞれの定められた地域の中でいかに合理化するかということで各企業も努力いたしておられるわけですし、農民の各位にも生産を願っておるわけでございます。そこで、先ほど申し上げましたように、この集荷地域の生産が今後どういう形で発展するかということによりまして、先ほど申し上げましたようなことで、企業の生産が合理的に行なわれないような形になるというふうな想定になれば、これは何らかの形で対策を考えていかなければならぬと実は考えておるわけでございます。
  152. 松浦定義

    ○松浦(定)委員 四十三年までを限度にして、その後においてはこれは全面的に改正する、こういうことがそれぞれの立場、機関で確認されておれば、それをいますぐここで変えなければならぬということを申し上げるわけじゃないのですが、四十三年にそれを全面的に改正されるというならば、ことし変えたって、何もそれぞれの関係の会社の量が減るわけじゃないわけです。むしろ、実際問題としてふえると思うのです。そのことによって会社に不利な点が出るというなら別でありますけれども、むしろ私は一番有利な点に近づくと思うにかかわらず、四十三年という限度をお考えになっておるということは、農林省だけのお考えではできないことだろうと思いますが、もしかりに、これを四十三年度で改正するということになれば、今度こそやはり農民の意思を十分尊重して決定されないと、道なりあるいは中央なりだけでこれを決定するというようなことは絶対いけないと思うのであります。ですから、四十三年度までですか、四十四年からですか、お変えになるなら、事前に、いまから農民なりそれぞれの意思を聞いておいていいと思うのであります。その直前になってから陳情だ、交渉だというようなことをやらないように、いまからはっきりして、この次は、四十四年からは自分たちの原料はどの会社へ行くのだ、どの地帯はどうなるのだということくらいは農民は知っておく必要があろうかと思うので、そういう点についていまから——いまといってもきょう、あすというわけにはいきませんが、少なくとも、問題の起こらない程度の余裕期間を持ってこの問題について十分意見を聞くというようなことをお考えになっておるのかどうか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  153. 岡田覚夫

    ○岡田説明員 ただいま申し上げましたように、四十三年度までは現状のままでいく、いまの集荷地域でいくということが一応確認されておるわけです。四十四年からどういうふうな形になるかということにつきましては、現在まだ明確な考え方はないわけであります。四十三年までですから、その後はどうするかということにつきましては、これは影響するところが非常に大きいわけです。したがいまして、これはただ農林省だけでなくて、道庁の問題でもありますし、また企業の問題でもあるし、農民の問題でもあるわけでありますから、十分慎重に研究して対処しなければならぬ問題だというふうに考えております。
  154. 松浦定義

    ○松浦(定)委員 四十三年まではそういうふうにお考えになっておるが、四十四年から変えられるのですから、やはり慎重ということは——私は何も慎重にやらないでいいというのではないのですから、慎重に慎重を期していただくために、そういうことがあるということをはっきりしないと、これからの問題がいけないと思うのです。四十四年になって、いまのままでいいという結論が出るかもしれません。紋別地域は紋別の工場でいいのだということになるかもしれない。それにしても、納得しなければいかぬと思うので、再三くどいようですけれども申し上げておきます。私どもは、いまから関係省並びに農民はひとつ十分に考慮する期間を持つのだというふうに解釈してもよろしいわけですね——そういうふうに理解いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  155. 赤路友藏

    赤路委員 関連して。政府のほうはどなたでもいいですが、いままで芳賀委員から、このてん菜の問題について質問があったわけであります。どうも皆さんの答弁を聞いておると、ちょっと納得いたしかねる線があるわけです。資料としてこういうものがきておりますが、政府のものではないので、政府のほうからこれに対する資料は出ていないのだが、きょうじゅうに何とか作業をやって、そして芳賀君の質問等十分御了承願えたことと思うのでありますが、あすの朝、資料提出していただけますか、できますか、これをちょっと……。
  156. 小枝一雄

    ○小枝委員長代理 資料内容はどういうものですか。
  157. 赤路友藏

    赤路委員 要求すれば無理してでもつくりますか。てん菜に対する資料、もういままでの話でわかっておるのだから……。
  158. 武田誠三

    ○武田(誠)政府委員 今度のてん菜の価格をきめますについての主要な資料要求につきましては、先ほど芳賀先生の御質問にお答え申し上げまして、パリティによります価格あるいは生産費、競合農作物との対応のトン当たりの価格等を申し上げたわけでありますが、あの程度のものでありますればいつでもお出しできます。
  159. 赤路友藏

    赤路委員 いま、長官のおっしゃった程度でけっこうです。  それから統計調査のほうの問題、一応いままでの質問でわかるでしょう。あす十時半までにお出し願えますか。
  160. 小枝一雄

    ○小枝委員長代理 それでは、資料はあすの十時半までに提出されるようにお願いいたします。      ————◇—————
  161. 小枝一雄

    ○小枝委員長代理 この際、繭糸価格安定法及び日本蚕糸事業団法に基づく昭和四十一年度繭糸価格の告示に関し政府から報告を聴取いたします。丸山蚕糸局長
  162. 丸山文雄

    ○丸山政府委員 御参考といたしまして、繭糸価格安定審議会の答申の写し及び繭及び生糸の安定帯価格という表を差し上げてございます。  先月の経過を若干御説明いたしますと、先月の二十九日に繭糸価格安定審議会を開催いたしまして、その中で、四十一生糸年度に適用すべき生糸の最低、最高価格並びに最低繭価、それから事業団が今後定める価格の基準となる基準糸価につきまして諮問をいたしたわけでございますが、いろいろ議論の結果、この答申にございますように、「政府は、繭糸価格安定法の本来の趣旨に則り、最低価格は生糸生産費の八割五分をこえる額とし、最高価格、最低繭価および基準糸価はこれに照応するものとするよう努められたい。」という答申をいただいたわけでございます。この答申に基づきまして、われわれ内部でいろいろ検討いたしたわけでございますが、結果的には、そこにお配りいたしましたように、最高価格がキログラム当たり五千八百円、それから最低価格が四千三百円、最低繭価が五百四十円、基準糸価四千八百円ということに決定いたしました。これは若干答申の趣旨よりは、パーセンテージから申しますと、下がっておりますけれども、こういうことに決定いたしまして、それで直ちに事業団が決定すべき——この表で申しますと、基準繭価、それから買い入れ価格、標準売り渡し価格の三種類になるわけでございますが、この最高、最低価格の決定、告示と同時に、事業団に対しまして、基準糸価を四千八百円として通知をいたしたわけでございます。事業団においてこの基準糸価を受けまして、昨日事業団の内部でいろいろ検討いたしました結果、下の欄に書いてございますように、「日本蚕糸事業団の定めようとする価格」というところに書いてございますように、基準繭価につきましては六百十三円、それから買い入れ価格につきましては四千六百四十円、標準売り渡し価格につきましては五千三百円ということで決定いたしております。これはあと手続といたしましては、この価格によりまして、その中で若干作業が残りますのは、その買い入れ価格等いろいろ格差がございますので、これを中心にいたしまして、それぞれ格差をつけまして、それででき上がったところで農林大臣の認可を申請してくることに相なるわけでございます。形式手続といたしましては、そこで認可がありまして最終的にきまるということに相なるわけでございますが、ここに整理してございます数字は、これは事実上認可するものである、こういうことでございます。  簡単でございますけれども、大体の経過を申し上げます。
  163. 小枝一雄

    ○小枝委員長代理 栗原君。
  164. 栗原俊夫

    栗原委員 私は、蚕糸問題についてお尋ねをするわけでありますが、ただいま報告もありましたとおり、三月末に審議会が行なわれ、答申を待って、四月一日に告示がなされた、こういうことであります。本来的に言えば、ただいまビートについていろいろ論議がありましたとおり、告示前にいろいろと国会考え方も申し上げたかったわけでありますが、すでに告示も行なわれたので、主として告示をめぐって、今後どういう形で政府が蚕糸業に臨んでいくかという姿勢を中心にお尋ねをしていきたい、このように思うわけであります。  答申は具体的な数字を述べておりません。八割五分を割らない程度、こういうことでありますが、こういう答申を受けて、ただいま報告をいただいたような最高価格、最低価格、それから最低繭価、基準糸価、こういうものが告示になったわけでありますが、この告示決定は、必ずしも審議会のいろいろな要望にそのままぴたりときていないということは、ただいま丸山局長からもお話がありました。したがって、これはいろいろと政治的な意味もあろうと思いますが、こうした来たるべき生糸年度の生糸の値段、こうしたものを決定した姿勢、単に事務的にやったのではなくて、何か目的的な決定であるのか、この辺について、政務次官から、この決定はこういうことを目的としてきめたんだ、こういう点をひとつ明らかにしてもらいたいと思います。
  165. 仮谷忠男

    仮谷政府委員 この決定の問題については、答申の線には完全に届いてはいないのでありますけれども、現段階においては、昨年と比較いたしますと、相当程度上回った決定をいたしております。  なお、いろいろ生糸の今後の需給の問題、輸出の問題等考えてみますときに、価格の安定をはかっていくと同時に、さらに輸出の問題も考えていかなければならぬ、そういった諸般の事情を考慮いたしまして、現段階では、できる最善の方策として決定をいたしたわけでありまして、この問題について、格別政治的な、ことさらな他意があったとかいったような問題ではございません。
  166. 栗原俊夫

    栗原委員 私が聞きたいことに少し触れておるわけでありますが、御承知のとおり、現在生糸の相場は、現物が品がすれのためにかなり高いところにある。それから輸出の問題からいうと、輸出どころか、逆に他国の生糸が流れ込んできておる、こういうような事態の中で、やはり日本の蚕糸業というものは、もちろん国内消費もさることながら、基本的には輸出産業として伸びていかなければならぬ。こういうことをこういう値段の決定で伸ばしていくことができるか。あるいはまた先ほどもだいぶビートの問題で農民労賃問題が議論されておったけれども、他産業との格差を縮める、あるいは他産業と同等の経済地位、こういうものを獲得する、こういう農業基本法の精神にのっとった養蚕農民の経済生活、こういうものを確保できるか、あるいはまた品がすれのために、いま生糸というものは非常に高値を呼んでおるけれども、これを何とかするにはやはり増産が必要なんだが、こういう値ごろで、はたしてそういう増産をしなければならぬという至上命令ともいうべき要求が充足できるか、こういうようなことについて、八方にらみの政治的な姿勢で今度の糸価決定はしてもらわなければならぬ重要な立場にある、こう思うのですが、そういう立場に立って配慮された決定であるかどうか、あるいは単に事務的に、昨年と比べてパリティがどうであるからこういう形になってきたというような形できめられたのか、どちらへウエートを置いて御決定になったのか、こういうことをお聞きしたかったのです。
  167. 仮谷忠男

    仮谷政府委員 これは栗原先生お説のとおりでありまして、そういう考え方のもとに決定をいたしたわけであります。
  168. 栗原俊夫

    栗原委員 聞くところによると、今年の審議会における関係民間団体の要求というものが珍しく一致した。従来は養蚕農民側と製糸側、さらには製糸の背後にある織物業者、こういう側は、とかく売り買いという対立的な立場にある関係で、いろいろと意見が食い違う、こういうことがあったのですが、日本の現在置かれておる蚕糸業のあり方の認識について、これではたいへんだという大自覚の中から、養蚕農民も製糸業、織物業者も打って一丸となって、かつては夢にも考えられなかったような蚕糸事業団、こういうものができた、こういう中で、日本の蚕糸業を伸ばしていくための来たるべき生糸年度の最低価格は、少なくとも四千五百円以上でなくてはならぬ、こういう要望が非常に強かったということを聞いておるわけですが、もちろん農民と製糸が相対立したその中をとるという姿の中で、それぞれの要求糸価の中をとった値段、こういうきめ方が従来あったと思うのですが、今回のように業界が打って一丸となって四千五百円を主張する、求める、こういう中で、あえて二百円も下回る四千三百円を決定した、これは一体どういうわけなんです。この点をひとつ明らかにしてもらいたい。
  169. 丸山文雄

    ○丸山政府委員 審議会の中でそういう空気があったことは事実だと考えております。ただ、たとえば基準糸価等を考えますと、たとえば基準糸価が五千円という理論の出てきますもとは、やはり現在の実勢糸価というものは、お話しのとおり、いま大体低いところで五千七百円ないし五千八百円、高くて六千円あるいは若干切るというところで動いておりますので、そういう状況を頭に置きまして、今後ともそういう事態が続くという考え方からいたしまして、おそらく出てくる理論ではなかろうか、われわれはそう考えるわけでございます。  それが一つと、もう一つは、かりに基準糸価というものを相当高位に持ってまいりますと、別の角度としまして、いわゆる関連しまして、最低価格は当然ですけれども、最高価格につきましても、やはり相当高位に置かざるを得ないということが出てくるわけでございます。そこで、現在は輸出状況もそう活発とはいえず、むしろ前年に対して非常に減っております。しかしながら、政府のきめる最高価格そのものが高いということについての、やはり海外の需要家に対する心理的影響というものは、非常に大きいものがあるわけでございます。そういうことも考え、また、第一点として申しました現在の糸価というものは、あるいはことし一年続くかどうか、これは見通しの問題ですけれども、そういう問題もございます。それと、これも一つ計算上から出てくる数字でございまして、従来も使っておりますが、需給状況というものを一応試算した場合に、その数字は必ずしもぴたりぴたりと結果的に当たっておりませんけれども、大体五千二百円前後というものがたとえば四十一年度のおおよその傾向である。平均と申しますか、そういうことも片方あるわけでございます。そういうことをいろいろ勘案いたしますと、やはり現在の糸価というものを頭に置いて、それを基礎にいたしまして、四十一年度の、言うなれば保証価格と申しますか、そういうものを相当高位にきめるということにはやはり問題があるのではないかという意味で、先ほど御質問がありましたように、いろいろな角度から、風潮といたしましては、相当高くということがあったわけでございますが、こういうところが最もいいのではないかという考え方できめたわけでございます。
  170. 栗原俊夫

    栗原委員 利害の対立を越えて農民団体も製糸団体も、さらに織物団体も、四千五百円という高い糸価を求めたゆえんのものは、やはり物が足らない、何とか増産させなければだめだというところから出てきた業界あげての要求ですよ。特に織物業者などは、それはもう安いにこしたことはない。しかし、安いほうがいいといっても、生産ができなければこれは問題にならない。そこで、一切そうした利害の対立をこえて、全業界があげて四千五百円を求めておるときに、どうも政府のほうの立場で、しいて勘ぐって言えば、それは輸出のほうがこれでは進まぬだろうとか、あるいは物価値上げを抑制する一助にもというような配慮もあったのではないか、実はそういう説明があるだろうと思っておったのですが、私としては、やはり業界があげてこの値を求めるというときに、しかもそれが業界が生きていく前提であるものの増産ということを求めておるときに、これを冷やすということは、やはり政治としては感心しない、こう思うのですよ。この点どうですか、反省はございませんか。
  171. 丸山文雄

    ○丸山政府委員 これは私いまさら申し上げるまでもございませんけれども、御存じのとおり、この価格そのものが、実際に取引される価格ということにはならないわけでございまして、あるいはこれは好ましいと好ましくないとにかかわらず、現状を申し上げますと、久しくこういう価格が意味をなさない程度の取引価格になっておったということ、いよいよ下がってきたというときに、一つには、たとえば基準糸価あるいは最低価格を例にとりますと、そういう場合に作用する価格であるわけでございます。これ以上に売ってはならない、あるいは買ってはならないということではございませんので、こうきめたからといって、必ずしもここにすぐ実際の取引が落ちつくというものでもないかと思うわけでございます。  御参考までに申し上げますと、たとえば事業団できめようとする価格ということになっております六百十三円という価格は、これは平均品位の価格に直しますと六百五十八円くらいになります。六百十三円は繭格二等で糸歩一六%というのでございますから、平均品位はもっと上になりますので、大体四十年の例をとりますと、六百五十八円くらいに相なろうかと思います。そういうことを考えますと、御参考のために申し上げるわけですけれども、四十年度に取引されました製糸の支払い価格、これが年平均六百九十六円になっています。これは実績でございますけれども、三十九年度は五百八十一円ということをいろいろ考え合わせてみますと、この事業団が保証するいわゆる基準繭価というところに焦点を当てて考えますれば、これはいろいろな見方によって違いがあるかもしれませんけれども、われわれといたしましては、まあまあとにかく適当というか、ほどほどのところではなかろうかという考え方を持っておるわけでございます。
  172. 栗原俊夫

    栗原委員 少し口が悪くなるけれども、だから、お役人には百姓のことがわからぬ、こう言うのですよ。それは養蚕農民は、いまは来たるべき春繭は三貫目一万円くらいになるだろうというようなことで、非常にほおをゆすっていますよ。ゆすっているけれども、そういうときに常に忘れないのは、あの三十三年の大暴落ですよ。実際いって、上値にあっても、あのときのことを忘れません。したがって、われわれがこれから突っ込んで桑を植え、そして繭をとる。そのときに、下にいったときに、どこにささえがあるのかということは、養蚕農民がほんとうに安心して養蚕にいそしめるかどうかということの基準をなすものですよ。したがって、まああなたの言うとおり、いまの調子でいけば、おそらく下値に突き当たる、そんなことはなかろう、だからこれがどこにあってもいいじゃないかという議論は、極論すれば、下値ささえはなくてもいいじゃないかという議論になりますよ。それはやはりそういうものじゃありません。だから、農民が安心して、いま増産が必要なんだから、増産のできるような体制というものを制度的につくってやらなきゃいかぬと思うのですね。したがって、これはいまのような考え方をひとつ改めてもらいたい。養蚕農民と製糸家あるいは織物業者がそれぞれ相対立して、それぞれ高過ぎる安過ぎるという議論のあるときには、これをどう調節するかという形で、一方的な線に持っていけないことはわかりますよ。しかし、全関係団体があげて要求してきたものをにべなくけるということは、これは何としたって承知できませんよ。これはあるいはおっしゃるとおり、一カ年間の生糸年度でありますから、将来の一カ年間に実際にそれ見ろ、必要なかったではないかということになるかもしれません。またそうなることを心から祈念しますけれども、しかし、そういうものではないです。これは価格支持制度の本質というものをいま少しシビアに考えてもらって、関係農民のほんとうに安心のいくささえというものを制度的に守ってやってもらわなければならぬと思うのですね。この点、いませっかく決定し、告示したものを直せというわけにはまいらぬけれども、いささかそこにはどうもすき間もあったという反省が、われわれのこういう詰め寄り方の中で、心の一点に浮かんでくるかどうか、これはひとつ政務次官から政治的な発言として御答弁願いたい。
  173. 仮谷忠男

    仮谷政府委員 これは栗原先生のほうが専門家で、私は実はあまり十分に勉強もしておらぬのでありますが、少なくとも審議会において全会一致で決定されたとするならば、特別な事態がない限り、それを取り上げていくということが、一つの常識であり、政治的な配慮だと私は思います。ただ、事務当局のいろいろ意見を聞いてみますと、やはり最高価格の問題等によって、将来輸出のほうにもいろいろ影響する対外的な面も考慮の上で、この程度のものにきめた、こういうふうにいわれておる。その議論もわからぬことはございません。ただ、そのために農民の増産意欲を阻害するとか、あるいは最悪の場合に、それが農民の期待に沿わないというようなことになってはたいへんだということは十分考えなければならぬ問題でありまして、そういう意味において、決して申しわけではございませんが、事業団が買い入れをする場合には、答申の趣旨八割五分を十分に尊重した価格に基づいて買い入れをする、そして農民自体の増産意欲を阻害しないように努力していこう、こういう考え方に立って今後の処置はいたしていきたいというふうに存じておりますので、先生の御指摘については、われわれは十分了解できると思っております。
  174. 栗原俊夫

    栗原委員 いま輸出の問題に触れてきたわけですが、おそらく丸山局長が中心になって、蚕糸業を本来的な輸出産業に取り戻すにはどうしたらいいかということで苦労なさっておると思うのですよ。しかし私は、輸出が伸びない原因は、糸値が高いということも一つの原因ではあるだろうが、じゃ安く持っていったらきっと出るか、出ませんよ。私はそう思っておるのです。第一、今回のこの告示によって上値、下値がきまりました。これで一体、外国が日本の生糸値段の安定ということについて信頼ができますか。信頼はできません。幅が広いばかりじゃないのだ。最高五千八百円、こうきめて、これは六月一日から先の話ですが、現在は五千五百円、最高値段の上でもって、糸値がダンスをやっているじゃないですか。上値でこういう調子なら、下値も三十三年のときのように——当時は下値は十九万円であったのです。それを十九万円を割ってずるずると下がった。政府は手を打った。それは確かに百五十億の金は出したけれども、百五十億を出したということは、国内的な問題であって、海外で買う立場に立ってみれば、十九万円を割っておることは現実だったわけなんです。百五十億出すと同時に、十九万以下は  一切禁止するという手段が全然とられなかった。したがって、日本の政府法律によってきめておる最高、最低価格に信頼がない。この信頼のなさが、安心して買えないという事態を招来しておる。したがって、今回も五千八百円をきめてみても、すでに現生糸年度は五月一ぱいだけれども、五千五百円をきめて六千円以上、糸価がどんどん踊っておる。何ら手を打たない。もちろん、打ったとあとでこれは説明があるだろうと思うけれども、これで一体、どうして日本の法律によって糸価を安定するというその制度が信頼できますか。こんなことじゃ信頼できませんよ。ということは、数年前のように、いわゆる投機者流が仕手の操作として一時的な投機をする、こういうときには、ぴしゃりとこれは禁止価格でも何でも出してやるべきだ。禁止価格の問題の状況についてもこれから聞きたいと思いますが、今回はそうではなくて、内需が中心とはいいましても、実需がついてきて値が上がってきておる。こういう実態をまともにながめずして、実態と離れた最高価格を決定する、これは守れっこないのです。守れないものを初めからきめておる。こんなばかげたことはないでしょう。おそらく中共生糸が日本生糸の対抗馬である、中共生糸というものが安いから、高くては売れない、こう俗にはお互いに考えやすいのです。しかし、相手の中共の生糸なんというものは、経済的に国家生産という立場であって、値段がどこにあったって、こんなものはいつでも動かせる状態ですよ。現在は日本の生糸相場より低い。ある程度日本の生糸相場が下がったときでも、その百円ぐらい下を売る、こういうような話を聞いておる。けれども、私は、世界の生糸需要が中共の生糸だけで十分であるとは考えない。問題は、日本の生糸の安定性がないから、最終消費者は生糸生産品を望んでおるけれども、加工業者が危なくて扱えないということの中に、日本生糸というものが出ていかない最大の原因があるのだ、私はこう見ている。かりに生糸が一俵三十万か三十五万しても、相当高価な織物をする生糸の原価構成というものは、それほど大きな問題ではない。問題は、加工業者が本気になってまともに扱うような安定した日本の生糸の糸値が保持できるかどうかということが、一番問題点だと私は思っておる。この辺の丸山さんと私との認識の相違が、高いから売れないのだという認識なのか、ある程度高くても、極端に言えば、一本相場で日本の生糸は一俵三十五万円で一年じゅう通じて売ります、必要に応じて必ず供給しますと、こういう手段に出た場合に、高いから買わないと白い目で見るか、それならばその糸を使ってひとつ商売をやると出てくるか、私はあとのほうだと思っておる。この辺は認識が違うところですが、これらについて、ひとつ高値五千八百円にきめた、六月一日以降の問題だ、まあそのころにはかなり春繭も出回り、新しい糸もできるから、糸相場も鎮静するだろう、こういうことは考えられないでもありませんけれども、現に今生糸年度の中で、最高価格の五千五百円をはるかにこえて跳梁しておることをそのまま放置しておいて、海外からの日本生糸に対する信頼が得られるかどうか、このことについての御所見を承りたい。
  175. 丸山文雄

    ○丸山政府委員 その前に、先ほど申し上げましたことで、誤解があるといけませんので申し上げておきますけれども、私は、実勢糸価が高いからこれは意味がないのだということを申し上げたのではございませんので、実勢糸価があのまま維持するかどうかということも非常に疑問がある。そういうことも考え、かつ増産刺激的な因子も加味いたしまして、そういう意味で、この基準糸価なりあるいは事業団の支持価格なり、そういう角度から考えてきめたと申し上げたわけであります。  それからいろいろ輸出価格の問題につきましては、これは実際問題としますと、たとえば現在、先ほど申し上げましたように、六千円という相場が出ております場合でも、輸出がゼロにはなっておりません。いわゆる銘柄ものと申しますか、そういう特定のものにつきましては、まあわずかながらでも継続しておるわけでございます。そこで、ある程度高くとも安定さえすれば出るかどうかということが、いま申し上げました現実判断を普遍的に考えていいかどうかという問題につながるのだろうと思います。そういうことを考えますと、やはり昨年来いろいろ法案の御審議を願っておりましたときでも、五千円前後ということを申し上げておりましたけれども、これは幾らで安定すれば絶対だいじょうぶということは申し上げられませんが、しかし、少なくともたとえば政府できめました五千八百円というものは、これは異常変動防止価格でございますから、五千八百円までならこれは輸出はだいじょうぶだという価格ではないわけでございます。そういうことをいろいろ考えてみますと、やはり五千二百円とか五千三百円だとか、そのあたりのところがやはり一番——そのあたりで安定しますと、比較的出やすいものではないか。五千円ぐらいで安定すればなおけっこうでございますけれども、要するに、五千円中心くらいにやはり安定していくのが、輸出が今後回復できる一つのめどではなかろうかということを現段階では考えております。正確にそれならば絶対だいじょうぶか、それよりも高ければ絶対だめかということにつきましては、これはわれわれといたしましてもなかなか確信あることを申し上げられませんけれども一つ考え方でありますが、そういう考え方を持っておるわけでございます。  それからもう一つは、政府の最低、最高は、これもお話し申し上げるまでもなく、今後第一次的に動きますのは、ここの事業団の欄に書いてございます四千六百四十円と五千三百円の間、要するに、これを中心にしまして理想的に動きますと、大体この範囲内で一つの価格形成が行なわれるということでありますので、制度という面で考えますと、いわゆる最高、最低の幅が広過ぎるということは、こういう形でまず第一段に詰まっておるというふうに御理解願いたいと思うわけであります。
  176. 栗原俊夫

    栗原委員 商売のことですから、議員輩がいろいろ議論してもなかなか問題なんですが、糸価が安定するという問題ですが、生糸関係の雑誌等にも一時、安定が輸出の一番基本的な条件なんだという議論に対するやゆ的な論文を読んだこともあります。生糸の価格が四千二、三百円ぐらいでずっと横ばいをいたします。しかしさっぱり出ぬではないか、こういう議論なんですね。しかし、これはあとから見た安定なので、ほんとうの安定じゃないと私は思うのですよ。あとから見た安定なんだ。あとから見たら、ずっと横ばいだった、こういうことなんです。先行き横ばいでいけるかどうかという保証があるわけじゃない。だから、あとから見た横ばいの相場であったのに、輸出はそれではさっぱり伸びぬではないか、だから安定すれば輸出が伸びるというのは、これはどうもおかしい議論なんだという、一つのやゆの批評なんです。しかし、これはそこで安定するという保証がなくて、たまたまそういう経過をたどった、こういうことである。これで安定しているんだという保証とは全然違うのですよ。こういう点はやはりこれから峻別して考えなければならぬ、こう思うわけです。  そこで問題は、価格を安定する、上値をきめた、上値を乗り越えていく、一体これをどうするか、こういう問題です。下値は金があれば買い出動ができます。ところが、上値のほうは、現物がないと押えようがない。火消しの水が出ないわけなんですからね。これをどう押えるか、現にそれで手をこまねいておるというのが日本の生糸市場の現状です。繭糸価格安定法の第十条によれば、禁止価格というものもある、こういう禁止価格というものを発動したことが最近ありますか。これはどうなんですか。
  177. 丸山文雄

    ○丸山政府委員 二十八年に一度発動してございます。
  178. 栗原俊夫

    栗原委員 昨今の状態は、これははたしてそういう事情にあるのかないのか、私は、やはり法律によって最高、最低の価格がきまる、いろいろその安定帯を維持するために、汗水流して納めた税金というものを多額に投入するのだ、こういうことになれば、これは、きめた最高限、最低限をこえた取引というものは峻厳に取り締まらなければいかぬと思うのですよ。したがって、下値のほうは金を出せば買い出動でささえることができるけれども、高値は火消しの役がつとまらぬ、こういうことになれば、制度的にこれはぴしっとやっていく、その一つの弁として禁止価格制度というものもあるわけなんですが、それにはやはり実勢相場というものを無視した最高価格などというものをきめると、みなそういう事態に突入してしまう、ここにやはり問題点がある。したがって、ほんとうに政府が、上値を突破した場合に、これは物を持っていないのだから、制度的に禁止価格をもって対抗するぞ、こういう姿勢をとるならば、最高価格の限界というものは、実勢価格をかなり加味した高いものにならなければならぬのではないか、このように思うわけです。こういう点について、ひとつ御所見はいかがでしょうか。
  179. 丸山文雄

    ○丸山政府委員 禁止価格というのは、いまもあるわけでございますけれども、まあこの場合の経験から考えますと、実際問題としまして、需給のアンバラがある場合に、禁止価格、あるいは公定価格と考えてもいいのかもわかりませんけれども、そういうものを発動しても、これはなかなかそのとおりにならない、またはならなかったというような経験があるわけでございます。理論的には確かにそれは考えられますけれども、過去における一回の経験に徴しまして、なかなかそのとおりにはならないというのが経験的にあるわけでございます。そういう点から申しますと、まさに現物がないときにはどうするかという問題はきわめてむずかしい問題になるわけでございますが、御存じのとおり、いろいろ実際に形成されております価格が、現物相場あるいは取引相場、いろいろ相互に関連いたしまして問題があるわけでございますけれども、やはりいわゆる公開の価格形成というたてまえになっております。取引所等に、需給関係以上の、実際の需給関係を逸脱したような価格形成が行なわれないように、できるだけその方面で取り締まっていく。と申しましても、実勢がそうならばしょうがないじゃないかという反論を受けようかと思いますけれども、やはり現段階といたしましてはまずそのあたりでとにかくいろいろな対策なり監督指導なりをやっていくということ以外には、さしあたっての妙案というものがどうもないのではないかというような考え方になっておるわけでございます。
  180. 栗原俊夫

    栗原委員 そこで、丸山局長がたいへん苦吟しておるゆえんは、要するに、最高価格の決定と実勢価格との関係の中から、それははっきりいって出てくると思うのですよ。もちろん、いわゆる投機者流が玉を建てて、べらぼうな、実勢と遊離した騰貴を招来したときには、これはどんぴしゃりと禁止価格でやっていいと思うのですよ。また清算取引所においても、そういうものは一切取引を禁止してもいいと思うのですよ。しかし、それにはやはり実勢価格というものは相当重要な内容として、実勢価格を入れた最高価格を設定しなければならぬ。繭糸価格安定法でも、一度きめれば絶対にその年度内は考えられないものでもないと思うのです。ほんとうに実勢が変わってくれば、地殻変動があったという状態ならば、その時点において、実勢というものを加味した新たな上限、下限というものを設定して、しかもそれを踏みはずす者は、これは経済的には厳罰をもって臨んでいく、取引を一切認めない方法を制度的にやっていく、こう方法を変えていいのじゃないですか。それはもう商売の中の一こまなんですから、一ぺんきめたからといって、首をぶるぶる振って、もうこれきり動かぬというようなことをやる必要はないと思うのですよ。やはり経済なんだから、地殻変動のあるような実勢の変化が具体的に起こってきて、その実勢にそぐわない、あらかじめきめておいたワクがはみ出されるような場合には、それはやはり一つのときにつくってやった着物が五つになって着られなくなったら、五つのときの着物をつくって着せるよりしようがないじゃないですか。そうじゃなくて、もうきめたんだからこれ以上動かないのだ、法律できまっておる価格の外を平気で踊り歩かれて手が出ないんだ、こんなばかげた法治国はないですよ。これはどうですか。
  181. 丸山文雄

    ○丸山政府委員 補足いたしますと、最高価格の一つの性格にもなかろうかと思いますが、御存じのとおり、最高価格、最低価格というのを見ます場合の考え方といたしましては、でき得る措置を講じて、やはり最高価格よりは高くならないようにしたいという考え方はもちろんあるわけでございます。また一方、これは政府が手持ちをした場合に、市場を冷やすために売る価格であるという考え方もあるでございます。そういうことから考えますと、最高価格即禁止価格ということに結びつけることが適当であるかどうかという面も、理論的には出てこようかと思うわけでございます。そういう角度の点から申しますと、最高価格をこえて行なわれておる取引は、即必ずしも法律違反であるというふうに理解するのもどうかというような感じを持っておるわけでございます。
  182. 栗原俊夫

    栗原委員 これはなかなか一ぺんに結論の出ないことはわかります。わかるけれども、生産者とすれば、下値がささえてもらえれば、上値は青天井だっていいと腹の中では思いますけれども、しかし、下値をささえてもらうのだから、適正な上値も押えられることもやむを得ない、こう思って、要するに、下値ささえと上値の制限、こういうものは成立するものだと思うのです。それは売るほうの立場に立ってみれば、青天井だってけっこうなんだ。しかし、下値だけささえてもらっても、上値のほうは野っ原というのは虫がよ過ぎるし、そういうことではぐあいが悪いから、上値は押える、そういうことにはもちろん理解もして協力もする、こういうことなんです。しかし、先ほど来るる言うとおり、法律でもって上値、下値をきめて、しかも国費を投入してこれを守るのだというときに、これを平気で破ってほうっておくのでは話にならぬと思うのです。これは何とかするという姿勢で考えていってもらいたい。  あとでちょっと取引所に関連して質問したいのですが、その前に、今度の答申をしてきたその答申作成の過程で、関係業者の人たちが集まってやっているのですけれども、聞くところによれば——こう言うと、審議会の委員さんにおしかりを受けるかもしれぬけれども、それぞれ政府との関係でいろいろと立場のある人たちばかりの集まりなんで、はっきり言うと、どうも政府に押されると弱いというのだな。ということは、この審議会には国会議員が一人も入っていないのです。これはなぜ入れないのかということと、われわれが要求したら入れるように制度改正をする気持ちはないのかどうか、こういうことを政務次官から答弁してもらいたい。
  183. 仮谷忠男

    仮谷政府委員 どうもこれは即答申し上げることはできませんが、ひとつ検討させていただきたいと思います。
  184. 栗原俊夫

    栗原委員 即答はなかなかたいへんだろうと思いますが、あらゆる審議会に、国会議員も、特定の代表じゃなくて、国民の代表という姿で、与野党から適当な数が送り込まれております。珍しくこの繭糸価格安定審議会だけは全然入っていない。こういうことで、私たちも、初めて振興審議会をつくったときには、振興審議会のほうへ行ったのですけれども、振興審議会で幾ら議論しても、価格審議会のほうへ全然足がかりがない。こういうことで、実を言うと、遠くからゴマメの歯ぎしりをしているようで、ぜひとも次回の審議会には国会議員代表も入って審議に参加できるような改造をひとつしてもらいたい、こういうことを強く要望しながら、ひとつ検討をお願いいたします。  それではその点はそうしておいて、いわゆる最高限を乗り越えたときの措置として、これが一番端的に表現されるのは取引所です。乾繭では豊橋、前橋の乾繭取引所、生糸では神戸、横浜の生糸清算市場、これらに対して従来いろいろ手を打ってきて、そして証拠金の引き上げ最終的には現物を買うくらいまでの証拠金の引き上げ最終的には現物を買うぐらいまでの証拠金を積ませてチェックした。あるいは玉数でチェックする。いろいろの方法を講じたようですが、これはどこまでも間接的なチェックである。そこで、聞くところによると、豊橋乾繭でいわゆる基準価格を飛び越したときに、何らかの措置が行なわれた。しかし、これにはその後いろいろとごにゃごにゃがあったやに聞いておる。またこれを見て、横浜の生糸取引所では自粛をした。ところが、横浜腰が弱いではないかというので、なかなか勇ましい神戸の取引所では、のっぱらいの勝負をいどんできた、こういうようなことを伝え聞いております。これらの経過と当局の姿勢について御説明を願いたいと思う。
  185. 丸山文雄

    ○丸山政府委員 取引所対策につきましては、ただいま御指摘のとおり、いろいろ証拠金の値上げを中心といたしまして手を打ってきておるわけでございます。現状におきましては、われわれ最近の情勢もいろいろ分析してみておるわけでございますけれども、大口の仕手が入って、それで取引所の価格を操作しているということは、いまのところ、まだ徴候は必ずしもはっきりあらわれておりません。実際に入っておるかどうか、なかなかこれは調査方法もむずかしいわけでございますが、そういう現状でございます。  そこで、今後の問題といたしましても、われわれが必ずそうできるかどうかという問題はもちろん残りますけれども、やはり今後の方向として一そう研究を要することは、証拠金等の値上げだけではなかなかむずかしいのではないか。証拠金を上げますと、いわゆる金持ち相場、金持ち対策であるという逆のことが起こり、また逆のことをいわれるわけでございます。そういう点からいろいろ考えまして、やはり将来は御存じのとおり、いま委託者保護を中心としまして、一般的な取引所法の改正という問題が出ておるわけでございますけれども、生糸のように価格安定政策がうしろに控えておるものにつきましては、一般的な取引所という観点からだけ見ていいのかどうかという問題があるわけでございまして、この点につきましても、取引所法改正等とにらみ合わせながら、なおさらに有効適切な方法があるかどうか、その点について深く検討を続けていきたい、こう思っております。
  186. 栗原俊夫

    栗原委員 それは仕手の中にいわゆる投機者流が入ってきたかどうかということを分析して手を打つということは、実際問題としてはできないと思うのです。問題は、どうしてもはっきりと明定されておる最高限値段、最低限値段、こういう数字でぴしゃりときまったものをものさしとしてどう処置するか、こういうこと以外にはないと思う。私は、政府審議会の答申を待って、しかも政府で十分協議してきめて、自信と確信できめて告示した最高値、最低値というものは、大手を振って厳守する、確保する、こういうきびしい態度で出ていいと思うのですよ。もうこれを越えたものは一切取引させぬのだ、かりにその者があったら解け合いでも何でもさせるのだ、立ち会い停止をするのだ、こういう手を打って、そのくらいの自信を持った、法律に基づく最高限、最低限をきめてもらわなければ話になりません。きめだんだけれども、しょうがないというようなことで——実際道路交通法だって、黄色い線を引いたところでぷっぷくぷっぷくと追い越しなんかやられたんでは話にならぬですよ。だから、ぴしゃりとやって取り締まる、そのかわり、きめる値段というものはそれだけの自信と確信を持ったものをきめる、実情に合ったものをきめる、こういう態度でなくちゃならぬ、こう思うわけです。いまちょっと私が聞いたのだけれども、聞かぬようなふりをして局長は答えなんだのかもしれぬが、これ以上は聞きますまい。豊橋乾繭の問題なんかも、あまり言うとぐあいいが悪いから。私の言っているのは、これから将来のことなんだから、きめた以上はがっちり守っていくという姿勢がないと、何をきめたって、あったってなくたって同じなんだから問題じゃない。最高限というものは何にも支障がないのだからね。こんなものじゃしようがないですよ。むしろ、こんなものは実際をいえばきめぬほうがいいですよ。きめた以上はぴしゃりとやる、こういう方向でやってもらいたい。  この点はこれくらいにして、最後に、農民生活に立脚して、各農産物共通の先ほどの農民労賃の問題に戻るわけですが、ビートのほうではいろいろと家族労賃が日雇い労賃並みというようなことで積算される、こういうことだそうですが、私は途中で関連質問をやったものだから、局長もお聞きになっておったろうし、政務次官はよく聞いて答えてくれたわけです。やはり自由経済の中で販売される農産物の関係農民の労賃は、自由経済の価格形成の中で決定される農産物価格ですから、その売れた値段の中から諸経費を引いた残りが労賃に当たる部分である、こういうことについては、これは議論したってしょうがないと思うのです。そういうあり方がいいのだと了承する限りはやむを得なくて、引き合わなければやめていく、やめていけば、生産が少なくなるから、需要供給の関係でまた値が上がる、こういういわゆる自由経済の原則に基づいた需給均衡価格というものから、その中に含まれる労賃もおのずから適正に決定されてくると思うのです。しかし、そうではなくて、このように価格支持制度のもとで、価格支持というものをきめていく農産物価格をこういう観念、こういうものさしではかられたのでは、これはとんでもないものさし違いが出てくる。したがって、この生産費の計算にあたっての労賃というものはどこから出てくるかといえば、いままでの慣行であるところの労賃は幾らであるから、幾らでなくちゃならぬというようなはかり方ではなくて、私は、農業基本法の精神にのっとって労賃を積算すべきものだ、このように考えるのですが、この考え方はいかがでございましょう。政務次官、ひとつ……。
  187. 仮谷忠男

    仮谷政府委員 お説は私ども十分よくわかるわけであります。この点はいろいろ議論されております。たとえば日雇い労務賃をとる場合にいたしましても、私も実は農家の仕事をやっておりますけれども、単なる労賃だけではなくて、その人には食糧も支給して、朝晩食って、そして場合によっては送り迎えもして賃金を払っておるという状態、そういうふうに考えてくると、賃金の中には、正確に計算すれば三食の食糧費も入らなければならぬ、そういった問題もあるわけであって、必ずしもああいったとり方自体が適正であるかどうかということについては、われわれも大きな疑問があると思っておるわけでして、そういった点については、しばしば申し上げておりますように、十分今後検討しなければならぬ問題だと思っております。
  188. 栗原俊夫

    栗原委員 そこで、糸価の決定をするにあたって、原料である繭値段、そして繭を生糸に加工するところの加工費並びに販売諸費用、こういう形の中で糸代が出てくる。これは上からやっていくのでなくて、下から積算して積み上げていく、こういう中に当然加工段階における労賃、繭の生産段階におけるところの労賃、こういうものが浮かび上がってくるわけです。それはそちらにすわっていると、答弁につらいところはよくわかりますよ。つらいところはよくわかるけれども、そのつらさを乗り越えてこういう問題を解決していかなければ、政府が大きな旗じるしで打ち出した農業基本法の精神も全うできない、こういうことに当然これはなってくると思うのです。そこで、今回政府が糸価決定にあたって用いた原料繭の生産費の中に含まれる労賃というものは、どういう数字を用いて積算したのか、こういう点をひとつ説明がいただきたいと思います。
  189. 丸山文雄

    ○丸山政府委員 労賃の部分を申し上げますと、四十年生産費調査が基準になるわけでございますが、一日当たり賃金といたしまして男女平均八百十六円、それが繭の生産費の場合の労賃積算の基準になっております。
  190. 栗原俊夫

    栗原委員 八百十六円というものは、その根拠は何ですか。
  191. 丸山文雄

    ○丸山政府委員 根拠と申しますか、いろいろ御意見のございますいわゆる農業臨時日雇い賃金、そういうものが根拠になっているわけでございます。
  192. 栗原俊夫

    栗原委員 そうすると、これは先ほどの議論のビートと同じで、自家労賃というものはなかなか表へ出てこぬから、実際に支払いの行なわれる日雇い労賃というものの集計の中から、日雇い労賃の平均労賃を出して、これを養蚕人夫の労賃にあてておる、こういうことでございますか。
  193. 丸山文雄

    ○丸山政府委員 そのとおりでございます。
  194. 栗原俊夫

    栗原委員 政務次官お尋ねしますが、あなた方も非常に熱を入れて農業基本法をおつくりになったわけなんだが、農業基本法の精神にのっとれば、これは農業従事者と他産業従事者との格差をこれ以上広げないというのがほんとうの解釈なんだそうだけれども、われわれは同じに持っていくのだというような議論をしたわけですが、格差をこれ以上広げないということと理解しても、少なくとも農民にも他産業並みの生活をその地域においてさせよう、こういう精神に立脚して立法されておることは間違いないのですが、そういう精神に基づいて今時点において農民の労賃というものは、一体どのくらいがあの精神にのっとった労賃と考えられますか。これは少し難問になるかもわかりませんが、しかし、少なくとも一般労働者のベースというものがもう三万円をこえておる今時点で、農民の労賃というものをどの程度に見たら、まずまず当面農業基本法の精神にのっとった農民賃金といえるだろうか。これは必ずしも八時間労働といわず、農民一日当たり幾らくらいやったらいいだろうか、こういうととはおぼろげながらは頭の中にあるのだろうと思うのですよ。しかも、政務次官も先ほど来お話のあったとおり、農村出身の方だから、ほんとうの腹はかくかくでなければならぬというものを持っておるはずだと思うのですが、そこまでここで答弁をしてもらうのは少し無理かと思いますから、基本法の精神にのっとればどのくらいというようなお答えをひとつ願います。
  195. 仮谷忠男

    仮谷政府委員 農業労賃は幾らにすることがいいかという問題になりますと、少し具体的な数字を申し上げるところまでいささか用意も持っておりませんが、基本法の趣旨は、他産業と均衡をとっていこう、こういうことでありまして、その趣旨に向かって進まなければならぬということはわれわれも考えておる問題です。ただ、他産業労務者と均衡をとるということは、いわゆる農産物価格のみによって均衡をとるという意味にわれわれは少なくとも解釈いたしておりません。価格も非常に大きな一つの要素であることは間違いありませんけれども、その他のいろいろな施策等もあわせて他の労務者との均衡をとっていく、こういうところに一つの目標を置いて進めている、こういうようにわれわれ解釈いたしております。
  196. 栗原俊夫

    栗原委員 そこでお聞きしたいのは、農民の収入というものを他産業と均衡をとっていく、でき得れば他産業並みに漸次接近、引き上げていく、こういう方向であろうと思うのですよ。しからばと、こう開き直るわけなんだが、他産業と均衡をとり、これに近づけていく前にやらねばならぬ問題は、同じ農業に従事しておる農民の格差というものを、それ以前にまず排除していかなければならぬ問題ではないか、こう思うのですが、お考えはいかがですか。
  197. 仮谷忠男

    仮谷政府委員 同じ農民というのは、農民同士の均衡という意味でごさいましょうか。——それならそのとおりのことだと思います。
  198. 栗原俊夫

    栗原委員 統計局の人はいなくなってしまったようですが、聞きたいことは、いま農業の中で、八時間労働一日当たりの賃金の一番高い業種はどんなものか、こういうような系列の中で、養蚕の系列は何番目くらいに位するか、こういうことがおわかりですか。
  199. 丸山文雄

    ○丸山政府委員 これは三十九年の生産費調査によりますものをわれわれのほうでまとめたものでございますので、あるいは若干の違いはあるかもわかりませんが、たとえば繭を一〇〇といたしますと、これは家族労働報酬でございますが、水稲は三三七、大麦が九二、裸麦が四七、小麦が九七、ビール麦が一五二……。
  200. 栗原俊夫

    栗原委員 一〇〇以上のものをもう少し言ってみてください。
  201. 丸山文雄

    ○丸山政府委員 それでは一〇〇以上のものを申し上げます。バレイショ二三四、アズキ二二八、トマト一九八、キュウリ一八六、大根三〇三、ナシ一七三、リンゴ二六〇、ブドウ一〇六、ミカン五一七、ナツミカン六〇二、桃二九一、茶二二〇、大体そんなところです。
  202. 栗原俊夫

    栗原委員 政務次官、いまお聞きのとおり、いろいろ配慮はしておるのだろうと思うけれども、非常に低い。低いということは、これは言うならば、繭の価格形成の中に盛り込む農民労賃が低く抑えられておる、こういうことです。先ほどもおっしゃったとおり、農業基本法の精神によれば、できるだけ他産業との格差をなくしていこう、その前には、まず農民同士の格差からこれはなくしていかなければならぬ。そのことは、高いものを下へ下げて格差をなくすのではなくて、高いところへ近づけて格差をなくす、こういう方向であることは間違いないので、ひとつできるだけこれは努力してもらって——いままでの計算は、おそらく前々からずっと累積されてきた統計に全般的なパリティ係数をかけて算出されておる。惰性によっているのだと私は見ているのですよ。これでは政治がありません。やはり基本法というものをつくったあの立法精神にのっとって、ここに具体的な政治をぶち込んでいくという方向で、ひとつぜひ前向きな検討をしていただきたい、このように考えます。  最後にいま一点。いま価格支持制度がいろいろとつくられておりますが、価格支持の支持率の問題ですが、繭は生産費に対して、最低価格はどの程度の支持率になっておるか、この点を明らかにしていただきたいと思います。
  203. 丸山文雄

    ○丸山政府委員 四十年度の調査の結果と今回告示しました価格との関係になるわけでございますが、ここの最低繭価を見ますれば、この最低繭価は五百四十円に相当する。これを繭の標準品位に直しますと、五百四十円が五百七十円程度になりますので、これと生産費の関係が八四・一八という数字になっております。
  204. 栗原俊夫

    栗原委員 他の農産物支持制度に基づく支持率というものはそこにありますか。おわかりですか。
  205. 丸山文雄

    ○丸山政府委員 これも先ほど申しましたように、われわれのほうの調査ですから、はっきりいたしませんが、数字はございますけれども、率は出しておりませんので、すぐにはちょっと申し上げかねます。
  206. 栗原俊夫

    栗原委員 これはたまたま数字の率が出ていないけれども、私の持っておるある資料によりますと、生産費に対する最低価格の支持率というものは、繭は決して高いものじゃないのです。非常に低い。これはやはり農民に支持制度を用いて生産をさせておる以上、大体において支持率というものは、同じような支持率でやはり支持してやっていくべきものだと思うのですよ、たてまえは。それは具体的には幾ぶん事情による変わりはありましょうけれども、基本的にはやはり支持制度というものを持っている以上は、これだけは支持するのだというような方法を講じてもらいたい。本日具体的な数字がなければ、ひとつそうした支持率についてもちろん、繭よりも十分支持率のよいものがあります。おそらく米でもカンショでもバレイショでも、支持率は繭に比べてはるかに上だと思うのです。そういうことで、ひとつ十分検討されて、来たるべき段階には養蚕農民も安心して増産に励めるように、そして今回決定されたこの糸価を中心にして、輸出についても本来の蚕糸業の姿に戻って進めるように、ひとつ御尽力を願いたい、こう要望申し上げまして、私の質疑を終わらしていただきます。  ありがとうございました。
  207. 高田富之

    高田委員 関連。ただいま新たに発足いたしました事業団のこれからの仕事始めにあたりまして、きめられた価格につきまして、いろいろ適切な質問がございました。私もその趣旨に全面的に同意見でございます。問題は、せっかく発足しました事業団が、できたはいいけれども、仕事がない、肝心かなめの価格操作機能を果たすべきあれが全然ない、いままでの蚕繭事業団式に開店休業で終わるようなことがあったのでは、またこれは世間の大きな非難の的になる、批判の対象になると思うのですよ。せっかくつくりましたからには——まあつくるまでには、大事をとって、いろいろああだこうだと厳密な御議論もあった。これはよくわかると思うのです。要するに、私は、この機会に、養蚕と製糸という異なった業界が、大局的見地に立って、同じ立場に推進してこういう機関をつくり、これによって蚕糸業全体の安定発展をはかろうということになったというところに、非常に大きな意味があると思います。この芽をつんじゃいかぬ、これを育てろ、この力をもとにして、いままで政府ががんばったけれども、やれなかった価格安定を、業界の力で自主的にやれるならやらしてみようじゃないかというところに、発足の意味があると思うのです。それにしては、あまりにみみっちい発足なんで、だから、われわれがもっともっと将来力をつけなければいかぬぞということを附帯決議に申し上げておるわけであります。そういう点から見まして、今度の価格の決定ははなはだ憶病だと思うのです。いまは過渡期ですから、価格安定法と今度のこの制度と二つが併存しておりますけれども、これはもう理論的には、この前もいろいろ御議論があったとおり、批判にたえ得るものじゃないと思うのです。この二つの制度を置く必要はない、ほんとうはどっちか一つでいいと思うのです。せっかくつくったものですから、漸次、できればなるべく短期間の間にこの事業団の価格操作のほうへ重点を移していく、それで、もう有名無実になって試験済みの安定制度はやめちゃってもいいところまでくらいの腹づもりで、積極的な気がまえで、この発足した事業団に前向きの態度で政府は臨んでもらいたいわけなんです。それにしては、この価格のきめ方は非常に憶病過ぎると思う。やはりいまもるる質問がありましたように、きめた価格より上に実勢価格がいっちゃっている。これでは何にもならない。そこで、どうしても事業団がなるべく早い機会に手持ちを持たなければならぬと思うのです。できたのですから、持たせるような方法を考えてやって、相当量のものを手持ちしまして、そうして突拍子もない上値が飛び上がるのを押えてしまう、こういう力を持たなければ、やはり存在の意義がないし、これは政府の安定法による買った売ったと違いまして、業界がそういうものを反映してやるのですから、買ったり売ったり幾らやったって心配ないので、まかしておけばいい。何べん売ったって買ったってかまわないはずですから、なるべく値幅が狭いところで売ったり買ったりさせて、そうしてどれだけ安定機能を果たせるか、やらしてみたらいいと思うのですよ。そういう点では一・一二五ですか、何とか倍というようなのがあまりひっかかることはないと思うのでありまして、実勢はこんなに上にあるのですから、むしろいまの実勢価格程度のものを最高価格と考えて、やや低いぐらいのところで置いておいて、下がったらすぐ買いに出るぞ、この姿勢で買って出て、売って出ていくのだというような、極端に言えば、そのくらいの気持ちでなければ、これはつくった意味はないと思うのです。りっぱな人があそこに入って、そうして業界の長い経験を生かしてこれから価格の安定をはかろうというのに、まるで法律でがんじがらめに縛ってしまって、いままでの安定法を少し幅を狭めて、いままで政府がやってやれなかったことと同じことをやらせるのでは、ほんとうのことを言って意味がないのです。だから、私は、今回は発足早々ですからあまり強いことも言えませんが、考え方としては憶病過ぎるのです。これなら安定法の幅を狭めたのと同じなんです。幾らか幅を狭めて、法律で買ったり売ったりするのと同じです。もっと自由自在に狭い範囲で買ったり売ったりさせてみようというのが、この事業団のできた意味なんでありまして、そういう点で、この価格のきめ方は少し憶病過ぎた、こう思います。ですから、そのことをひとつよくお考えいただきまして、今後その点を思い切って改善する具体策を引き続き御検討願いたい。そうしてやはりできた事業団が開店休業で、全然仕事がなかったということにならぬように、この際、ひとつ抜本的な考え直しをしてもらわないと、いつまでも安定法とこの制度と二つ並べておくという考えは間違いです。いつかどっちかにしなければならぬ。やはり新たにつくったほうに置きかえるくらいの気持ちで考えていただきたいと思うのです。そういう点で、特にいまは実勢相場はかなり高いところで動いておりますが、これは内需が旺盛なので、言うまでもないですが、いまの糸では輸出がなくたって足りないです。それには相当思い切った大増産をやらなければならない。繭の大増産意欲を起こさせなければならないときですから、その意味でも、新たに発足した事業団に対する期待は、養蚕、製糸を通じて非常に大きいと思うのです。しかし、期待は大きかったけれども、中身は何もないということになる心配がいまはあると思うのです。そういうことがないように、期待にこたえるように、今後の運営においては相当大胆に——大胆といっても、これは政府がかってにやることでなくて、業界の総意でやらせる、業界が相当の責任を持ってやる体制なんですから、どうぞひとつそういう意味で、いままでの栗原さんの質問の要旨を今後の運用の面に十分に生かされますように御要望申し上げます。  きょうは時間もありませんし、質問は大体尽きておりますから、一言申し上げまして、関連質問を終わります。
  208. 仮谷忠男

    仮谷政府委員 高田委員のおっしゃるように、養蚕家と製糸業者一本になって事業団をつくる、これはほんとうに制度そのものは画期的なものだと私どもも思います。出発早々で、何さまそのスタートにおいて、確かに先生方専門家が見られれば、憶病だと思われる点もあると存じますが、そういった面は今後十分検討しなければなりませんし、せっかくできた事業団がほんとうに何も意味をなさぬことになるのは、これこそ私どもの大きな責任を感じなければならぬ問題でございますし、御趣旨の面は十分にわかります。また今後の事業団の運営の成り行き、方向によっては、さっき言われた法律を一本にしてまとめる必要もあると思います。そういう面で十分今後は考慮して運営に遺憾なきを期したい、かように考えるわけであります。
  209. 小枝一雄

    ○小枝委員長代理 本日はこれにて散会いたします。    午後五時四分散会