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1966-02-18 第51回国会 衆議院 農林水産委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年二月十八日(金曜日)    午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 中川 俊思君    理事 大石 武一君 理事 倉成  正君    理事 田口長治郎君 理事 舘林三喜男君    理事 本名  武君 理事 赤路 友藏君    理事 東海林 稔君 理事 芳賀  貢君       伊東 隆治君    池田 清志君       宇野 宗佑君    金子 岩三君       小枝 一雄君    小山 長規君       笹山茂太郎君    田邉 國男君       高見 三郎君    綱島 正興君       中川 一郎君    丹羽 兵助君       野原 正勝君    藤田 義光君       森田重次郎君    江田 三郎君       兒玉 末男君    西宮  弘君       松井  誠君    松浦 定義君       湯山  勇君    玉置 一徳君  出席国務大臣         農 林 大 臣 坂田 英一君  出席政府委員         農林政務次官  仮谷 忠男君         農林事務官         (大臣官房長) 大口 駿一君         農林事務官         (農林経済局         長)      森本  修君         農林事務官         (農政局長)  和田 正明君         農林事務官         (農地局長)  大和田啓気君         農林事務官         (畜産局長)  檜垣徳太郎君         農林事務官         (農林水産技術         会議事務局長) 久宗  高君         食糧庁長官   武田 誠三君         林野庁長官   田中 重五君         水産庁長官   丹羽雅次郎君  委員外出席者         農林事務官         (水産庁生産部         長)      亀長 友義君        専  門  員 松任谷健太郎君     ――――――――――――― 二月十六日  農林漁業団体職員共済組合法の一部を改正する  法律案湯山勇君外十二名提出衆法第一二  号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 二月十六日  松くい虫防除に関する陳情書  (第一七号)  早場米時期別格差金強化に関する陳情書外三件  (第一八  号)  昭和四十一年度農業委員会等予算確保に関する  陳情書外一件  (第一九号)  国営かんがい排水事業及び付帯県営事業の早期  完成等に関する陳情書  (第六〇号)  農業基盤整備事業に関する陳情書  (第六一号)  米穀配給利潤増額に関する陳情書  (第六二号)  蚕糸業振興対策等に関する陳情書  (第六三号)  公団造林事業推進に関する陳情書  (第六四号)  農地施設整備等に関する陳情書  (第六五号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件      ――――◇―――――
  2. 中川俊思

    中川委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを順次許可いたします。芳賀貢君。
  3. 芳賀貢

    芳賀委員 一昨日当委員会において行なわれました農林大臣所信表明に対して、主たる問題点について質問をいたしたいと思います。  まず第一にお尋ねしたい点は、農業基本法実施になりましてから、すでに五年を経過しておるわけでありますが、当時は政府としても盛んに農基法体制というような宣伝を試みられたわけでありますが、現在においては、農業基本法なることばさえも影をひそめて、しかも政府基本路線というものが、まことに不明確になっておるわけであります。すでに昭和四十年の農業白書も国会に提出をみておるわけでありますが、この際、農業基本法実施以降五カ年間にわたるわが国の農業全体の動向について、農林大臣から、最も重要と認められるような問題点について、まずお述べを願いたいと思います。
  4. 坂田英一

    坂田国務大臣 農業年次報告によって申し上げる場合において、特に重要な事柄はどういうことかという御質問であると思います。  まず第一は、やはり農村の労働力、いわゆる農業就業者が減っているということ。最近その減り方がやや微減しておるというふうに思われますけれども、やはり相変わらず減少いたしております。これは一つ大きな問題であります。  それから、労働就業者のほうはそうでありますが、戸数はどうかと申しますと、戸数も最近やはり就業者ほどは減りません。これは就業人口よりも減り方はきわめて少ないけれども、少しばかり減ってきている、こういう状態であることでございます。  それから生産状態はどうかと申しますと、これは種類によって非常に違いますけれども、たとえば米のような大きなものについては、相当大きく自給率を維持しておる。たとえば三十九年ならば、九六%の自給率を持ち、非常に大きな自給率であります。しかし、最近の数年間を見ますと、若干反収が微減いたしておる。それで、人口増加がありますし、加工食品増加等もありますので、需給関係からいうと、自給率は若干落ちておる。ごくわずかでございます。  それから、その他のいろいろのものについて、畜産品あるいは野菜あるいは果実といったようなものについての問題は、それぞれまた御質問があろうかと思いますが、その中で肉類においては、牛肉が一番著しく減りつつあるということが言えると思いますが、そのほかのものは、たとえば酪農のごときものにしても、ごくわずか酪農品については少しふえ方が減っておるという、いわゆる若干の停滞は見られますけれども、大きく増加いたしておる。肉類についてはこれは大きく伸びております。ただ、問題は、牛肉の問題だけがそうであります。  それから野菜の問題は、これはいつもの問題でありまして、やはり非常に価格も不安定でありますし、また供給もまだ十分に安定に向かっていない、こういうことがあると思う。これは生産面からいうとさようなことに相なっております。  それから、この農家の全体の経営の問題から見ますと、専業農家は減りまして、最近二一%ぐらいに減っておる。そして兼業農家がふえておる。特に第二種兼業農家がふえております。それで、この点は、農業経営から見ました場合に相当考えなければなりませんということでございます。  それから、先ほど生産の問題について申したのでありますが、それと関連してでございますが、いわゆる輸入が非常にふえておる。こういう問題をあわせて申し上げなきゃならぬと思います。この輸入ふえ方というものについては、これはいろいろの問題がございます。  その一つは、日本国内にあまり生産関係のないコーヒーココア……。
  5. 芳賀貢

    芳賀委員 大臣、せっかくですが、もう少し簡単にやってください。こういう問題があるということだけでけっこうです。
  6. 坂田英一

    坂田国務大臣 そういうこともありますが、飼料というものの関係があって、輸入が非常に著増しておるという問題であると思います。こういう問題、そういういろいろな問題がございます。  なお逐次それらの問題について、また申し上げることにいたそうと思います。
  7. 芳賀貢

    芳賀委員 ただいま、およそ四点にわたって述べられたわけでありますが、そのうち特に重要な点は、農業生産需要に対する供給が非常にアンバランスになっておる。いわゆる自給率の低下ということを率直に言われたわけでありますが、この点については、大体農畜産物全体を含めての自給率はおよそ八〇%に低下したわけです。このままいけば、これは明年度あたりは八〇%を割るような自給率になるのじゃないかということが心配されるわけでありますが、農業国民経済における使命というものは、もちろん、農業生産を通じて国民生活に対して食糧、あるいは生産物供給を行なうというところに最大使命があるわけでありまして、自給率が低下する、それも現在の自民党政府農政欠陥から自給度が下がるというようなことは、これは許されないと思うわけでありますが、この点はどうお考えになりますか。
  8. 坂田英一

    坂田国務大臣 あまり長くなってもまたあれですから、簡単に申します。  自給率はいまお話しのとおり、最近、計算のしかたにもよりますけれども、八〇%でございます。ところが、その内容を見ますと、問題を二つ申し上げなきゃならぬ。  一つコーヒーココア砂糖といったような、日本自給が非常にむずかしいものが相当多く輸入されておるということ、それがやはり入っておって計算されておるということが一つ。  それからもう一つは、畜産を奨励する。需要が非常にふえますから、その際に、草を食べるものは別として、豚とか鶏といったような、そういう濃厚飼料を食べる畜産飼料というものが非常にふえておる。  それ以外にもいろいろ問題がありますが、主としてそういう二つのことが大きな原因で、輸入増加、いわゆる自給率をだんだんと少しずつ減らしておるという計算になる、こういうふうに御了承願いたいと思います。したがって、そういうことは、自民党農業政策が間違っておるからであるとかいうこととは全然関係はございません。
  9. 芳賀貢

    芳賀委員 そうすると、政府には責任がない、農民努力しないから、自給度が低下しておるということになるのですか。
  10. 坂田英一

    坂田国務大臣 それは芳賀さんもよく御存じのことなんで、いま申しましたように、国民所得向上の結果、ココア需要が非常にふえる、あるいはコーヒー需要がふえる、砂糖需要がふえる、そういったようなことから、日本国内でいかに増産しようたって増産できないものがずっとふえれば、その点だけからいうと輸入がふえる。これはやはりそういう計算でいけば、自給率が減るということであって、そういう問題がある。  それから畜産の問題にしても、濃厚飼料というものがあります。これは、草の増産はどんどんやらなければいかぬけれども、濃厚飼料増産という問題になると、人間の食べる飼料もなかなか小さな国で大いに増産しなければならないのだからして、そういういろいろの点から見ますと、それはやはり非常な勢いでもって畜産が、肉類増産される際においては、過渡的にはそういう問題があり得る、こういうことでございます。
  11. 芳賀貢

    芳賀委員 では、政府においてはいささかも責任はない、農民努力しないから、自給度が下がるということですか。これは大事な点なんですよ。
  12. 坂田英一

    坂田国務大臣 農民努力いかんによるのではないので、私が申しました、自給率がそういうふうに下がっておるということの根本の原因は、そこにありまするからして、農民努力が減るということではありません。ただし、こういうことがいろいろの点においては関係が出てくると思うのは、所得関係において、農業はやはり所得格差が非常に多い。もっとどんどん近代化をはかるべきであるという点がある。そのためにこの就業者が減るといったような関係があり、第二種兼業者がふえるといったようなことからして、多少そういう点から見ての生産問題ということは、やはり注意すべき問題であるが、農民自身の怠慢からくるとか、そういう問題を論ずることは、これはありませんですから、その点は御了承願います。
  13. 芳賀貢

    芳賀委員 それは農民は勤勉で、これはまことに感謝しておる。しかし、政府政策努力が足りなかったことが次第に累積して、農業就業構造が悪化して、需要に対して供給が非常に不足するようなことになったということで、結局これは政府政策努力の不足あるいは欠陥から、かような事態がきたということは明確だと思うのです。その点はいかがですか。
  14. 坂田英一

    坂田国務大臣 いま芳賀さんは何でも御存じの上で御質問になっておるのですが、つまり、それは一つ一つの問題についてもっと掘り下げて論議すべきものであって、たとえば畜産品のごときは、需要が五、六年前に比較して四倍くらいになっておると思う。将来もまたこれは非常にふえると思う。大体生産がどうかというと、若干追いつかない点があろうと思うけれども、一応豚にしても鶏にしても、それはむしろ相当ふえておるという問題もある。果実にしても同様の点があります。野菜については、これは性質上これから大いに力を入れるべきであるが、それはなかなかむずかしい問題があって、不安定の姿であるが、去年の春以来は比較的安定しておるように思う。それから米について申すならば、とにかく小さい国でこれだけの増産をやってきたということは、やはりとうといことだと思うのです。これは別に政府がどうというのじゃありませんが、しかし、最近、これはさっきも申したように、反収が少し減っておる。もちろん、これは異常気象等が非常に大きく関係いたしておると思うのでありますが、そういう問題があって、その反収は若干微減しておる。しかし、一人当たりの需要は少しぐらいは米は減っておるようだが、人口増加を見ると、やはり生産が少し比率において減っておる。ごくわずかでありますが、そういう問題がありますので、それはさらに米の増産という問題についても力を注がなければならぬ、こう考えております。
  15. 芳賀貢

    芳賀委員 実例を一つあげると、一番自給率の高いといわれた米においても、最近は逐年輸入量が増大しておるわけです。過去三カ年間の実績を見ても、三十万トン、六十万トン、八十万トンというように、ほとんど毎年相当大幅な輸入に仰がなければ充足できない。四十一年度はおそらく百万トン程度の外米を輸入しなければ、食管制度のもとにおける需給確保はできない、そういうふうに考えられるわけですが、米においても生産がすでに停滞して、三十八年、三十九年、四十年にかけて総生産量も若干ずつ減少しておることは、大臣御存じのとおりであります。ですから、こういう状態をやむを得ないことであるということで放置しておくとすれば、明年は自給率は八〇%を割るということは必至であります。ですから、そこに政府政策上の努力責任というものがあるわけですからして、たとえば長期的な食糧需給農産物生産見通しに立った場合において、今後自給率というものを低下させない、これを最低限の線として、これからはやはり政策努力を通じて自給度を高める、そういう実をあげるというところに、政府責任あるいは農林大臣の必要であるという使命感があると思いますが、いかがですか。
  16. 坂田英一

    坂田国務大臣 お米の問題は、先ほどから繰り返して申しておるとおりでございますが、ただ、去年のごときは、非常な冷害が心配されたので、ちょうど三、四月ごろでありますが、天明以来の凶作にならぬかという問題がございました。北海道においても同様でございます。ところが、それらに対しては、農民も県の指導者も、それから農林省はもちろんでありまするが、相協力して、そうしてこの異常天候にもかかわらず、ほとんど平年作に近い生産を持ってきたということでありまして、しこうして北海道のごときも、現在は一千万俵ですか、これを突破しておるのは、新潟と北海道ということでございます。北海道予想以上に収穫が出ておるということは、これは北海道農民及び皆さんの非常な努力であったと思って、私は非常に感謝しておるのでございます。  なお、そういういろいろな問題がありますので、これはたくさんの農家が、いろいろの変わる異常天候のもとにおいて、年によるとわりあい平穏な年もあるけれども、そういうところにおいて営んでおるものであるだけに、それはますではかったようにきちんと工場生産のようなわけにはいかないことも、よく御存じであろうと思いますが、そういうわけで、非常な努力が積まれておる。米については特にそういう努力が積まれておる。ただ、最近、そういうぐあいで二、三年反収が減っておる、人口は逆にふえておるということから、いま言ったように、その輸入量は若干ふやしつつある、こういうわけでございます。これもできるだけひとつ自給方向に持っていくということを念願しておるわけであります。
  17. 芳賀貢

    芳賀委員 そこで、農業基本法の第八条第一項には、政府農産物需要生産長期見通しを定めてこれを公表しなければならぬということになっておるわけです。この規定に基づいて、三十七年五月十一日に政府は十カ年の長期見通しを公表されておるわけであります。それが半ばに至っておるわけですが、政府が公表した長期見通しというものが、現在の時点において需要見通し生産見通しがどういうような状態で発展しておるかということに対しては、これは農政のやはり一つの基礎的な判断材料になると思うわけでありますが、この点は、農林大臣として、需給長期見通しというものが、現在の時点にこれを照らした場合において、どういうような変動を示しておるかということについて、気のついた点を明らかにしてもらいたい。
  18. 坂田英一

    坂田国務大臣 農産物需給生産長期見通しの問題でございますが、今度この長期見通しについて中間的にトレースをやってみたわけでございます。これは農林省トレースをやってみたわけであります。ところが、このトレースの結果からいいますと、大体この長期見通し方向をたどっております。たとえば、詳細はまた必要があれば事務のほうから報告させますけれども、問題は、非常にたん白質ビタミン類需要がふえておる。その需要増加に対して生産もふえていっておる。それから今度はでん粉質穀物類については、これは減っておる。需要も若干ずつ減るし、生産も減っておる、こういうことであります。ただそこに、そのでん粉質を内部的に分解いたしますと、米は、そのうちでも需要も微増しておる、生産はそれに若干伴わないという、ごくわずか、きわめて微量でありますが、そういうことがあります。そういう点についてのなにはありますけれども、大体のところは、その長期見通しに即応しておるというように私は思っておるのでございます。  なお、これらについての詳細がもし御必要であれば、事務のほうから報告させます。
  19. 芳賀貢

    芳賀委員 いまの御答弁でありますが、長期見通しが中間的な現時点において大きな狂いがない、これは全く間違いですよ。農林省はこの中間検討の資料というものは、すでにこれは去年の十一月に出しておるわけです。われわれはそういうものに対して無関心ではありませんからして、少なくとも農林大臣よりは詳しく、そういう変動とかあるいは動向変化ということについては、見きわめておるわけですよ。それがただ答弁席からその場限りの答弁をすればいいということで、変わっておりませんとか、大体長期見通し予定の推移をたどっておりますというようなことは、何のためにこれを出したのですか。大きな経済事情変化あるいは生産面における変動が生じたので、これは心配である、どうなっておるかということで、中間的な検討を加えたわけでしょう。順調にいっていれば、こんなものは何も検討してみる必要はないじゃないですか。一体こういうものをごらんになっているのですか。
  20. 坂田英一

    坂田国務大臣 私はごく大ざっぱな問題を大ざっぱに申し上げたのでありますが、確かに大ざっぱな問題から入っていくというと、たとえば肉類なり、たん白の問題、脂肪の問題というものの需要は、予想よりも若干伸びています。それから生産はどうかというと、それに若干追いつかずにおる、こういう何がございます。それからでん粉関係は、先ほど申しましたとおりでございます。そういう実情でございます。
  21. 芳賀貢

    芳賀委員 その長期見通し変化を与えた最大原因は、これは経済成長見通しの誤りにあるわけですよ。もう一つは、需給関係から言うと、需要見通しというものを非常に低く見ておった関係があって、結果的には需要予想以上に各消費部門において、これは品目別に見ても伸びているわけです。ところが、生産の面においては、別に過大な生産を期待したわけではないが、先ほど言ったような政府政策努力の貧困から、ほとんどの各品目生産予定のコースをたどっていないのですよ。見通しよりも生産は減少しておる。需要のほうは見通しよりも伸びておるということになれば、需要生産の面において、一年一年だんだん隔たりというものが大きくなる、これは否定できないと思うのです。ですから、基本法の第八条第二項は、その長期見通しの途中において経済事情あるいは生産事情変動が生じた場合においては、検討を加えて、これを改定して公表しなければならぬということが明らかにされておるわけでしょう。ですから、中間検討の結果、われわれとしては、この長期見通しというものをこのままの状態でこれを持っておっても意味をなさぬわけでしょう。だから検討の結果、相当大きな変動があるということに結論は出ておるわけですからして、当然これは農林大臣責任において長期見通しをこの際改定する、そういうことをやらなければ、責任を持った施策が進まないと思うのですよ。社会党は農業基本法審議の際においても、党独自の案を出しまして、政府のほうはあくまでも責任を回避して、これは長期見通しでいく、われわれはこれは長期計画ということでいかなければいかぬということで、大きく論争したわけでありますが、この際、この大きな経済事情あるいは農業生産事情変化というものは否定できないわけですから、当然、この時点において、長期見通しを変更する、改定する、この言明を農林大臣からしていただきたいわけです。
  22. 坂田英一

    坂田国務大臣 いまお話のとおり、長期計画を立てて公表しておるのでありますが、ちょうどいま中途においてどうしてもこれを見る必要があるというので、中間検討をいたしたわけでございます。中間検討の結果としては、先ほど申しましたように、大きな——きわめてざっぱくですが、大きな方向としては間違いはない。ただし、物質その他の何は、あなたのおっしゃるとおり、また私も申し上げたとおりに、需要よりも生産が伸びていない、こういうことの結果があらわれておるわけでございます。そういうことは、私どもとしても中間検討を大いにやるという必要があるためにやったわけでございまして、なお、その中間検討の結果についていかにするかという問題については、いま調査検討を加えておるところであります。
  23. 芳賀貢

    芳賀委員 中間検討の結果が去年の十一月に、これは公表ではないが、外部に発表されているわけですよ。一番問題の点は、長期見通し需要部面においては変わりがないという場合は、生産見通しよりも低下しておるということになれば、生産面施策を相当強力に進めれば回復の余地はあるが、需要見通しよりも上回っておるということについては、これは抑制とか修正の方法はないでしょう。消費を規制するとか、食糧をもっと節約しろなんていうことはできないことですからね。やはり見通しというものは、需要というものの正確な動向というものを把握して、それに対応できる生産努力というものを行なうところに、長期見通し必要性があると思うのですよ。ところが、この内容を見ても、需要は、米をはじめあらゆる部面において、最初の見通しよりも上回っておるわけでしょう。そうなれば、需要予想以上の伸びに対して対応できる生産面努力というものをどうやるかということは、当然長期見通しを改定しなければ正確な方向というものが出てこないと思うのですよ、需要が狂っているわけだから。それはかまわないというわけにいかないでしょう。この点を明確にしてください。
  24. 坂田英一

    坂田国務大臣 全くごもっともでございます。したがって、酪農関係にいたしましても、酪農近代化酪農計画指標を立てて、それぞれ自発的にその指標に基づいて計画を立てることにいたしておることは御存じのとおりであります。それから蔬菜につきましても、なかなかむずかしいのでございますけれども、従来の施設をさらに強化して、安定的な供給という問題についてさらに努力を重ねていこう、こういう計画であります。それから米の生産につきましても、基盤整備をやるとか、また地力の保全の問題、技術的な問題さらに機械力によるところの近代化の問題、構造改善といったような政策をさらに一段と強力に進めていこうというわけであります。特に土地改良については、十カ年計画を立てて、これはもう近いうちにこの計画を実現することになると思いますが、今年度中にこの計画をそのまま実現することにいたしたいわけでございます。そういう方向にそれぞれ進んでまいります。また肉についても、特に今年は肉牛についての対策を立てる、こういうふうに、それぞれこの中間検討を加えたということもありますし、大体そういう方向に向かって努力すべきでありますので、そういう政策によってあなたのおっしゃるような御注意を十分心得て、大いにこれからやろう、こういうわけでございます。
  25. 芳賀貢

    芳賀委員 検討の結果、これは改定を要するということですか。
  26. 坂田英一

    坂田国務大臣 つまり、中間検討を加えてこの見通しをやるわけでございますが、以前のこの長期計画をやりまするときに、いわゆる生産意欲ということを入れずに、大体どういうふうになるかという見通しをこの前やったわけであります。今度は、そういう点について、たとえば酪農なら酪農生産について、非常に努力を払うという意欲的な面に向かっての努力を払う、そういうことにしてまいるのでございます。この中間検討によってどうだということをやる前に、政策をもう少し強めていくということと並行していかなければならぬ、こう思うのでございます。ただ、中間の数字だけぺらぺらとこう並べても何にもならぬことは、芳賀さんもよく御存じのことでありますので、むしろ、そういう点についてわれわれは政策面に努力を払っていこう、こういうふうに考えておるわけであります。もちろん、中間検討の結果の数字についての検討も加えてまいりたいと、こう思います。
  27. 芳賀貢

    芳賀委員 それは一つ事例をあげて、必要があるかないかということをもう一回ただしたいと思いますが、政府は去年の十月十二日に酪農近代化の基本方針というものを公表されましたね。これは御存じですか。酪農近代化方針をあなたが発表したはずだが、知っておるかと言うのです。
  28. 坂田英一

    坂田国務大臣 存じております。
  29. 芳賀貢

    芳賀委員 この計画は、ちょうど長期見通しの十カ年計画の終了する四十六年が、これが到達年次になっておるわけです。その場合、この酪農の面においては、総需要量を七百八万四千トンと見ておるわけです。これに対応できるような生産目標というものを立てて、これを都道府県、市町村におろして、そうして都道府県の酪農近代化計画あるいは市町村の酪農近代化計画を、都道府県においては今年の秋までに、市町村においては本年、明年の両年にかけてこれを策定して、都道府県の計画に対しては、農林大臣がことしの九月ごろにこれを認定しなければならぬということになっております。そこで、この七百八万四千トンの牛乳、乳製品全体の需要見通しというものは、長期見通しの場合から見ると、これは大きな変化を示しておるわけです。ですから、一々数えれば、これはもう相当矛盾だらけなものになるわけですが、このようにして個々の長期計画というものが出てくるわけですからして、これらとの関連において、長期見通しはかまわぬでもいい、そのかわり酪農とかいろいろな部面における需給計画というものを出すから差しつかえないというわけには、体系上いかないと思うわけです。この点はどう考えるわけですか。
  30. 坂田英一

    坂田国務大臣 長期見通しに対しての中間検討を加えて、これをどうするかという問題については検討中である、こういうことを申し上げておるのであります。  それから、全体の生産計画その他について、たとえばいままでの長期計画は、生産意欲という生産政策とかいろいろのそういう点について特別のことを考えないで、どういう見通しになるかという見通しでございまするから、今度はこれらに対して意欲的な政策を加えて、その上に立ってどういう生産になるかということも考えていかなければならぬ、こういうことを申しておるのであって、酪農近代化の基本方針についても、そういう点から計画の標準を各県並びに県からは町村に立てて、そしてその地方地方に即応してこれらの生産がこういうことをやればできるということができれば、それらの問題が集計されて全体の計画ができ上がる、こういうごとに相なることであろう、こう考えておるわけであります。
  31. 芳賀貢

    芳賀委員 この問題については、いままでは政府として生産面に対する意欲的な努力を全然しなかったが、これからは生産面に対する意欲的な努力をやる、そういう点が明らかになったわけですね。
  32. 坂田英一

    坂田国務大臣 非常に誤解があってはなりませんから、簡単に申せば——少し申せば長くなるし、そこはなんでありますが、前の長期見通しというのは、現在行なわれておる政策というものを見て、あれは四年前ですか、それを見て、その範囲内において、その後どういう政策を立てるとかということでなしに、その意味において意欲的でないというのであって、その当時の現状の中にはその当時の政策も入っておる、そういうことで見通しをつけたというものであります。そこで今度は、いろいろ生産政策については、米についてはかような政策を立てる、土地政策についても十カ年の長期計画を立てる、こういう計画一つ立てば、いままでの見通しよりも違ってくるのはあたりまえなんであって、そういう点から今度は今後における——いままである政策を無視したものではもちろんないのでありまして、今後にこれからやるところの政策というものを織り込んで見ていかなければならぬ、こう考えるわけであります。
  33. 芳賀貢

    芳賀委員 長期見通しの問題は次会でまたゆっくりお話をしたいと思います。  そこで、次に、大臣が指摘されました第二の問題点である、就業構造が現在悪化しておるという点についてお尋ねしたいと思いますが、いま全国の五百六十万農家の中で、農業所得だけで生活を維持しておる農家が一体どのぐらいあるか、お答えを願います。
  34. 坂田英一

    坂田国務大臣 まず専業農家ということでいきますと、現在は先ほど申しましたように、農家のうちの約二一%であると思います。
  35. 芳賀貢

    芳賀委員 私の聞いているのは、農家の収益だけで生活を維持している農家の数が一体どのぐらいあるか。専業農家の数と似通ったようなものであるかもしれぬが、もう少し純粋に。
  36. 坂田英一

    坂田国務大臣 この点を申し上げるとなかなか簡単にいかぬので、また長くなりますので、恐縮でありますけれども、たとえば私の県の例を申し上げますと、北陸地帯の米作単作地帯においては、農業近代化が相当進んだために、米作の期間は大体半年で済むのです、米作だけならば。ところが、単作地帯でございまするので、あとの半年をどうするかという問題が大きな問題になっております。したがって、それは生活からいうと、相当大きな所得をあげておる三町歩、四町歩の水田経営者であっても、実を言うと兼業をやっておるのです。そういうところは、生活が苦しいから兼業をやるのではなしに、そういう問題がいろいろありますから、そういうのを度外視してこうだ、ああだと言ってみても、なかなかむずかしいのであります。そこで、それを言うかわりに、簡単にたとえば七十万円以上の純所得がある農家は幾らか、こういうことになりますと、約六十万戸くらいでしょう。そういうことは言えると思うのですけれども、それだけで云々という問題になりますと、やかましく言わざるを得ぬようないろいろな事情がありますので、私もいろいろめんどくさいことを言うて恐縮でございますが、それを抽出して七十万円以上の純農業所得農家というものでいきますと、これは年々少しずつ増加いたしておりますことは、芳賀委員御存じだろうと思うのです。それは農家戸数の約一割でございます。
  37. 芳賀貢

    芳賀委員 いまの数字は、農業所得七十万円以上の農家戸数が六十万戸あるというのですか。
  38. 坂田英一

    坂田国務大臣 調査農家の一割にあたるから、全体から見ても一割になるのじゃないか、こう推測して申しておるわけであります。
  39. 芳賀貢

    芳賀委員 それじゃ農業所得七十万円以上が六十万戸はある——簡単に統計的なことでいいんですよ。
  40. 坂田英一

    坂田国務大臣 三十九年です。
  41. 芳賀貢

    芳賀委員 何年でもいいが、それは三十九年に農業所得七十万円以上の農家が六十万戸はある、こういうことですか。
  42. 坂田英一

    坂田国務大臣 それは大体そんなことになると思います。
  43. 芳賀貢

    芳賀委員 そこで、先日の農林大臣所信表明の中で、今後は第二種兼業農家を育成して、これを農業生産の範囲で助長していきたいということをことし初めて強調されたわけで、この点は新しい構想だと思うわけですが、そうすると、第二種兼業農家が現在全体の四二%ですね、これをどういう形で助長するということなのですか。
  44. 坂田英一

    坂田国務大臣 これは単に農業政策だけで考えるというのじゃなしに、これほどたくさんの人間が第二種農家として存在しておるものをそのままにほったらかすべきものじゃない、これは当然芳賀さんも同様の御意見だろうと思うのです。これは農業政策でどうするという問題でなしに、これらの問題も、やはり全体としていろいろ生活の向上、所得の増強という問題について考えていくべきであると思います。したがって、それが農業の面について言えば、あるいは共同作業という問題になり、あるいは協業という問題にもなり、いろいろの方法もありましょう。しかし、また一面においては、地方開発によって、外へ出かせぎせずに、その地帯で働き得るようにしてやるということもあるでしょう。それから兼業でありますから、そのほかの職業紹介ということもございましょう。そういういろいろな点についてそれらを考えるべきものであるのであって、これは何も私が最近になってそれを言うたのでなしに、これは当然そうあるべきであるということをはっきりさせたというべきでございます。
  45. 芳賀貢

    芳賀委員 ちょっとおかしいです。第二種兼業農家というものはどういうものだという説明は要らぬが、しかし、第二種兼業の所得の構成は農外所得が主ですから、農業所得というのはごく僅少なわけです。ですから、その第二種兼業農家から見れば、農業所得というものは付加価値的なことになるわけですね。これを育成するということになれば、農業の面から見れば、非常に零細な、自立性のない第二種兼業農家を当然温存するということになるのですね。こういう状態は、農業経営の面から見れば、零細過小農の土地の所有とか経営とかいうものをそのまま保護してやって、そうして農外収入をますますふやさせるようにするということに通ずると思うわけでありますが、ここに重点を入れた場合において、これからのわが国の農業の構造的な大きな発展というものを望むことはできないと思うのですよ。これは一見矛盾したように聞こえるが、農業の改革発展を考える場合においては、農林大臣が初めて打ち出した、特に第二種兼業を強調して育成するということについては、われわれとしては納得できない点があります。
  46. 坂田英一

    坂田国務大臣 お答えしますが、構造改善をどうするというときに第二種をどうという問題じゃなしに、第二種兼業というものも四十何%あるのだから、この四十何%ある第二種兼業というものを、少なくとも芳賀さんもこれをほったらかしておいていいというのじゃなかろうと思うのです。したがって、これによって農業構造改善を進めていくということに主眼を置くものでないことは当然です。ただし、やはり相当大きなものであるのでありまするから、これらにもやはり力が入るということになりまするならば、小さいものならば一緒に協業していく、あるいは共同作業で進めるということは、農業の面からいっても、そういう発展のしかたがあることは当然だ。しかし、ここに私がうたっておることは、それよりも、そういうたくさんの小さいものをほったらかしておいて、好きなようにせい、こういうことであっては、いわゆる小農首切り論になる。そういうことではないのであって、農村というものの全体の生活を考えて、そして農業から得られなければ、ほかの所得でもいいから、それは含めて増強していけばいいんじゃないか、こういうことを言う意味であって、構造改善を進めるときにその兼業を主眼にしてどうとかいうこととは、全然違うということでありまするから、その辺をよく誤解のないようにひとつ御了承を願いたいと思います。
  47. 芳賀貢

    芳賀委員 では、いままでどおりであるけれども、ただ思いつきに、とにかく四二%にもなっておるからして、一応所信表明に載せてみたというふうに軽く解釈していいわけですね。
  48. 坂田英一

    坂田国務大臣 軽く解釈すればそういうことになりましょうが、重く解釈もできると思う。つまり、それは農業だけでなしに、たとえば農業政策というものは、別に生産ばかりでなしに、農村地帯を充実していくことが非常に重要であると私は確信いたしておりまするがゆえに、そういうものに対しては、協業でいくとかそういうことでいけば別だが、そうでないときには、できるだけよその、ほかの所得によってそれを満たしていく、こういう問題も必要であり、そのほか、年金の問題あるいは社会保障制度の問題、そういう農村の環境問題だけでも、非常に大きな問題である。そういう点であって、これはやはりおろそかにすべきものではないことは、人類お互いの関係であることでありますから、当然であると思うので、そこは芳賀さんも私以上に考えておられるということを私も確信しておるのでございます。
  49. 芳賀貢

    芳賀委員 これは人類普遍の原理に基づいたものであるというわけですね。  そこで、お尋ねしたいのは、農地管理事業団法を再提案されると聞いておるわけでありますが、この法律のねらいは、一体、第二種兼業農家のような、こういう過小な農地の保有とか経営形態というものをそのまま守ってやる、温存させるという、そういう考え方に立った場合において、農地管理事業団が考えておる農地の流動化政策というものが、一体順調に進むかどうか。これは大臣の説からいうと、管理事業団は提出しないほうがいいということになるのじゃないですか。
  50. 坂田英一

    坂田国務大臣 農地管理事業団につきましては、近く皆さんの特別の御審議を得て、これはでき得る限りひとつ御協力を得て、早くこれを成立させていきたいということを念願しておるものでありまして、この点は特にこの機会に特別にひとつお願いを申し上げておきたいと思います。  これと別に、先ほど申しましたことでありますが、農業所得によって生活を維持していくような、いわゆる自立経営と申すか、名前は別として、そういう方向農業者が、でき得る限り多く農村に存在するということはきわめて必要である、こう私も確信いたしております。何も世の中をすべて自立経営で塗りつぶせというわけにもいかぬと思うけれども、でき得る限りそれが増加していくことは、喜ばしいことであり、また農村の発展のためには絶対必要である、こう考えておりますので、少しも矛盾はいたさない、こう考えております。
  51. 芳賀貢

    芳賀委員 非常な矛盾が出るのですがね。農地の流動化を進めるという政策をとる場合において、その対象をどこに置くかということになると、全体の二一%の専業農家の内部においてその所有形態を大きくするということになれば、ますます専業農家を減らすということになると思うわけです。したがって、兼業層における農地の流動化をやはり促進するということでなければ、この政策は進まないと思うのですね。それをことさらに第二種兼業農家を育成するということになれば、過小な土地に定着させて、そして農業の面においても農外収入の面においても増大させるという考えのようでありますが、これは非常に大きな問題になると思うわけです。そういう矛盾に気がつかないで、ただ人類普遍の原理だということだけでおやりになると、これはすぐつまずくと思うのですね。責めるわけではないですよ。農村に居住して、勤労収入だけではやはり生活が不十分である、残った家族が一生懸命で働いて、そうして農業の収入も得て、合算して兼業農家という形でなければ、人間的な生活ができないという実情はわかっておるが、農業政策の面から、たとえば一番大事な農地の流動化を進めるという場合に、いまの大臣の考え方というものは、当然これは矛盾を生んでくると思うわけなんですよ。しかし、これはまた次にやりましょう。そういうことになるということだけ申し上げておきます。  もう一つは、農業基本法にもうたっておる自立経営農家というものですね。専業的な自立経営農家というものが全体の二割程度しかないということになるわけですが、これも逐年減少しているわけですね。このまま放任しておくと、来年度は二〇%を割ると思うのですよ。二一%というのは、現在の農家戸数から見ると、大体百十万戸ぐらいということになるわけですが、一体農林大臣としては、今後の日本農業の中核となる自営農業を営む農家経営体というものを、一体どの程度に確保して、それが中心になってこれからの農業の発展を期そうとしておるか、その点はいかがですか。
  52. 坂田英一

    坂田国務大臣 その点はきわめて重要であると思います。これは芳賀さんの御意見に共鳴いたすものであります。ただ、その際に、私どもが考えますことは、第二種兼業農家が非常にふえるという傾向は確かにあります。こういうふえる傾向があるのを、私はそれを助長するなんという考えは毛頭ございません。それはもうそのとおりでございまして、そういう傾向があればあるほど、私は自立経営の育成という問題に力を注ぎたい、こう考えるのでございます。ただ、これが地域的にまた非常に違うということは、芳賀さんも御存じのとおりであろうと思います。たとえば、北海道においては、専業農家のパーセントはおそらく三〇%以上じゃないかと思う。東北は二一%か二二%の県もあろうかと思う。北陸にまいりますと、専業農家は一〇%切っています。それから今度は西のほうに行くと、またふえておる。こういうようなことで、農業の地域的な差異というものは非常に大きい。そういう大きな違いはどこからくるかという問題が非常に大きなのでございまして、北陸地帯のごときは、先ほど申しましたように、近代化が進むと、単作地帯であるだけに、どうしても早く仕事が終わるのです。そうすると、残りをどうするかという問題が起こる。その残りを花でもつくる、あるいは野菜をやるということであれば、米作についてやっぱり兼業ですけれども、統計上は農業専業者となる。けれども、米作にほかの農業以外のものをやりますと、それは兼業ということになるので、学理的には非常にそこにまた研究すべきことが残るとは思いますが、そんなことがあったりしますので、これはいろいろな問題があろうとは思いますけれども、原則については芳賀さんのおっしゃるとおりであります。
  53. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、農業労働力の不足、さらに後継者の不足を問題点として述べられておるわけでありますが、たとえば、本年の三月卒業する中学校、高等学校新規卒業者の中で、農業に就業する見込みの数は大体どのくらいであるか、お尋ねしたいと思います。
  54. 坂田英一

    坂田国務大臣 中学校、高等学校を卒業して農業に就業する人のパーセントは……。(芳賀委員「パーセントじゃない、頭数ですよ」と呼ぶ)頭数は六万一千人ぐらいであります。
  55. 芳賀貢

    芳賀委員 六万一千人というのは、去年じゃないですか。四十年の三月卒業が六万一千人、三十九年の卒業が六万八千人ですから、私の聞いておるのは、ことしの三月卒業の就業見込みです。どういうことになっておるか。
  56. 坂田英一

    坂田国務大臣 ことしのやつは、私は寡聞にしてまだ存じませんが、四十年度が六万一千人でございます。
  57. 芳賀貢

    芳賀委員 寡聞といったって、いいですか、大臣、四十一年に行なうべき施策というものを、年次報告と一緒に国会で説明するわけでしょう。そういう場合に、ことしの新規卒業生の就業人員は大体どのくらいであるか、寡聞にしてわかりませんなんという、そういう説明を本会議でやることはできないと思うのですよ。これは特に昨日、三十九年、四十年はこうなっておるが、四十一年三月卒業の見込みは一体どうなっておるかということをあらかじめ調べておいてもらいたいということを言ってあるのですよ。それを努力しないで、寡聞にして知りませんというのはおかしいじゃありませんか。何のためにどういう質問をするのですかということを聞きにくるのですか。——わからなければ、あとで正確な数字を述べてもらえばいいと思うのです。  そこで、大臣にお尋ねしたいことは、とにかく一年間に中学校、高等学校を入れて六万人程度しか農業に従事する者はいない。これも将来とも農村に残るというわけではないわけですね。その場合、今後の日本農業の後継者として最低必要な後継人口というものは、農林省においても把握されておると思うわけです。五年後、十年後あるいは三十年後におけるわが国の農業者の経営体というものをやはり見通しの上に立って把握して、それに充足すべき後継者というものは最低限どの程度必要であるか、そういう計算はできると思うのです。そういう計算方式はあるわけですよ。だから、この点に対して現状の六万人では、これはどうしようもないわけですね。ですから、長期の展望に立った場合において、農村における次代をになう後継者というものは、最低限どの程度後継人口として確保しなければならぬか、この点を理論的に明らかにしてもらいたい。
  58. 坂田英一

    坂田国務大臣 数をどれだけということはむずかしいと思いますが、私どもとしては、質を向上させて、でき得る限り多くとどめたいという方向に向かって努力したい、こう考えております。
  59. 芳賀貢

    芳賀委員 質だけでは解決できないんじゃないですか。全国の農業が全部共同体に移行するような場合は、これは質だけで解決できるかもしらぬが、個々の農業経営されている場合に、たとえば十軒の農家があった場合に、十人の後継者はむずかしいから、質を優秀なものにして五人で間に合わすというわけにはいかないと思うわけですよ。優秀なものにすれば二軒で一人の割りにできるのですか。その点はいかがです。
  60. 坂田英一

    坂田国務大臣 将来の数字をどれだけにするか、どういうふうになるかということは、これは非常にむずかしい問題で、計算的にこうすればこうなるとかいう問題もあろうと思いますが、それは私は非常に困難な問題であると思いますし、また、いま現在それを申し上げることは適当でない、こう考えます。これは非常に大事な問題だと思います。
  61. 芳賀貢

    芳賀委員 それはわからぬというわけにはいかぬでしょう。生産動向さえも長期見通しが立つわけですから。現在五百六十万戸ある、そのうち百十万戸がとにかく専業農家であるということはわかっておるわけですから、それが十年、二十年、三十年の将来において、現状から推測すればどういうような変化がくるかということは、おおよそ把握できると思うのですよ。そのくらいの掌握ができない者は、農林大臣とか総理大臣というものはつとまらぬですよ。自分がわからぬければ、官房長にでも局長にでも命令して、これをやってみろと言えばやりますよ。たとえば先年、檜垣局長が、いわゆるピーターソン方式なるもの、これは自分で発案した計算方式ではないが、とにかく飼料関係についてピーターソン方式というものを当委員会で発表した前例もあるわけですからして、後継人口計算が理論的にできないということはないのですよ。ただ、何年後に農家戸数が何百万戸あった場合という想定の上に立った計算しかできないわけだが、これはどういうふうにしてやっていますか。——わからぬければ、こっちから国際的な事例をお教えしますが、一国の農林大臣としてそういうことがわからぬというわけにはいかぬと思うのです。
  62. 坂田英一

    坂田国務大臣 それは計算すればどういう数字でも出ます。しかし、それを計算することは、大きな間違いを来たすことになることが多いのであります。でありますからして、傾向はわかります。傾向はよくわかりますけれども、それを数字にあらわすことは大きな弊害をもたらすと私は思っております。したがって、でき得る限りこれをふやし、そうしてでき得る限り質をよくするということに専心すべきものであると自分は感じておるのでございます。  なお現在、現実の農家についていろいろ調査をいたしました。三万幾らについて調査はいたしたのであります。それによりますと、この数字はあとからもし何ならば申し上げますけれども、大体後継者のきまっておるのは——数字はちょっと私がいまここに持っておらぬから、あるいはこれは違ったら事務のほうで訂正させますが、後継者のきまっておるのは六二%くらいだと記憶しております。それからきまらないのが十何%、それから大体何とかなるであろうというのが二〇%か何か。その詳細な数字は違いますが、現実に調べてみると、そういう実態に相なっておるのでございます。そんなようないろいろな問題がございますので、現在のわずかな経過を見て将来の数字をはじくということについては、なお慎重であるべきであるということを私は確信いたしております。
  63. 芳賀貢

    芳賀委員 それは毎年六万人程度ではまことに申しわけなくて、将来にわたってのことは言えないというわけでしょう。謙遜しておるのじゃないですか。
  64. 坂田英一

    坂田国務大臣 それは中学、同等学校卒業の問題でありまして、いま私が申しましたのは、現実の農家の子弟の後継者の問題であります。
  65. 芳賀貢

    芳賀委員 それは、大学卒業で農村に残る者は全国で百人もいないのですよ。高等学校卒業で、六万人の場合には、一万五千人ないし一万六千人しかおらないわけです。ですから、中学校、高等学校卒業を対象にする以外にないのじゃないですか。まさか義務教育を終わらない者が後継者になるべきであるというような、そういう暴論は、農林大臣としてもはくわけにはいかぬと思うのですよ。  そこで、一体、後継者というものは、一人一人の数で計算すれば六万とか七万になるが、後継者というものは、一農家に対して一人でいいものであるか、一組でなければならぬものであるか、その点はどうですか。それはいま農村には嫁さんに来手がないでしょう。これは農林大臣御存じのとおりでしょう。後継者ということになれば、まあ二十そこそこの場合には独身で一人でもいいが、二十五とか六になれば、やはり嫁さんをめあわせて、夫婦一組になってのあと取りでなければ完全なものでないと思うのです。そうでなければ子孫の繁栄ができないですし、種族保存もできないわけですからね。そうなれば、現在の六万人というものは、農村単位に考えれば、それが男女同数であって、いずれも農村にとどまって結婚して農業を継承するという場合には、三万組しかいないということになるでしょう。いいですか、将来農村戸数がたとえば三十年後に半減して、兼業も入れて三百万戸にしかならぬという場合であっても、一年三万組だけの後継者では、一回転するのに百年かかると思うのですよ。まさか百何十歳まであと取りが回ってくるまでがんばっておるというわけにはなかなかいかないと思うのですよ。ですから、おそろしくて将来のことに触れられぬということは、全く農政に自信のない証拠じゃないですか。そうなれば、一年きりの次の内閣改造まで何とか無難に済ませておればいい、将来のことは触れるわけにはいかないというような情けない農林大臣では、われわれは信頼することはできないわけです。どういうわけで将来に触れることができないのか、論及することができないのか、はっきりした説明を願いたいわけです。
  66. 坂田英一

    坂田国務大臣 先ほど申しましたように、農村の実際の調査によりますと、後継者がいまおそらく六十何%、きまらないのは十何%であって、その十何%がきまらないということ自体が大きな問題であります。  それから学卒者の問題としては、これは極端に申しますと、農村は都市との生活に対する比較において、過当に劣悪化しておる傾向がムードとして出ておる。こういうことがやはり大きな原因であろう。これについてはいろいろございますが、そういういろいろの点を考えまして、一時的な現象をもって、数字をもって将来の問題としてはこうだということを申し上げるということは、それは学者がいろいろ唱えてもらうことは差しつかえないのみならず、それはけっこうだ。甲論乙駁をやっていただくのはけっこうでありますけれども、現在の衝に当たっておる者として、将来これだけの農家ができないとか、これだけの多くの農家が養成できるとかいうようなことをここで数字をはっきりさせることは、弊害があって利益がない。そうじゃなしに、私どもは、質を向上させる。そして数字もでき得る限り多くとどめるようにする、こういうことに努力をするということを申し上げるわけでございます。
  67. 芳賀貢

    芳賀委員 大体基本的な、大臣がみずから指摘された問題点については触れたわけですが、あと各論的な問題については、理事会の申し合わせで午後にやりたいと思います。特に事前に申し上げておくのは、日ソ漁業の問題です。それから林業に関する問題とか酪農とか甘味とか、当面した重要課題が幾つかありますから、そういう問題を中心に質問をしたいと思いますから、あらかじめ準備をお願いしておきたいと思います。
  68. 中川俊思

    中川委員長 午後一時に再開することとし、これにて休憩いたします。    午後零時五分休憩      ————◇—————    午後一時五十分開議
  69. 中川俊思

    中川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前に引き続き質疑を続行いたします。芳賀貢君。
  70. 芳賀貢

    芳賀委員 日ソ漁業条約に関係する問題についてお尋ねしますが、ちょうど条約発効以来十年目ですからして、今度三月一日から行なわれる日ソ漁業委員会は、モスクワが開催地でありますが、第十回漁業委員会ということになるわけであります。そこで、当然本年度で現在の条約が期限到来ということになるわけでありますが、それと同時に、この条約の継続性については、日本側においてもソ連側においても、別に根本的な支障はないようでありますが、今度の日ソ漁業委員会においては、当然次回委員会の開催等にも関連して、条約の継続あるいは改定等の問題に対しても触れると思うわけであります。特にことしは偶数年ですからして、サケ・マスの不漁年ということが定説になっておるわけでありまして、交渉にあたっても決して楽観を許さぬと思うわけでありますが、この第十回の委員会に臨む政府としての心がまえ、準備等について、おおよその御説明を願いたい。  と同時に、もう一つは、従来懸案になっておりますところのオホーツク海の公海におけるサケ・マスの漁業等に対して、これは昭和三十四年一月以降禁止ということになっておるわけですが、それらも、その後の委員会等においてどういう問題としてこれを扱ってきたかも、あわせて報告を願いたいと思います。
  71. 坂田英一

    坂田国務大臣 芳賀委員のおっしゃるとおり、今年の十二月十一日で切れるわけであります。そこで、通告すれば一年間の後に破約されるわけであります。  まず第一に、その改定についてでございますが、改定をすることの是非、それがいいか悪いかというその是非を含めて、現在政府の態度としては、どうするかという問題はなお検討中でございます。  それからオホーツク海におけるサケ・マスの禁漁措置でございますが、資源の保存及び増大という見地から、昭和三十四年以降、日ソ漁業委員会の決定により実施されておるものでございまして、その解禁については、現在行なわれておる調査研究の結果を待って、今後検討の上善処していきたい、こう考えておるわけでございます。  それから今度の会議は、芳賀さんの言われたとおり、三月一日からモスクワにおいて行なわれるわけでございますが、確かに今年は不漁年に当たるわけでありますが、科学的論拠を尽くしまして、妥当な収穫量をきめるように進めていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  72. 芳賀貢

    芳賀委員 そこで、ソ連側においては、一九六六年のための極東鮭鱒資源の回復措置に関するソ連側の声明というものを昨年出しておるわけでありますが、これは主としてマスの資源に対して相当詳細にわたって資源論的な立場から論究しておるわけですが、この声明は、日本側においては、農林省としてはどういうふうな受け取り方をしておるのか。
  73. 亀長友義

    亀長説明員 これはソ連の声明でなくて、正確に申しますと、向こうからそういう提案があったわけであります。実は本来委員会内部のことでございますので、公式に私がここでそういうのが出たと言うことは、いささか差し控えなければならぬ筋でありますが、一般にすでに流れておりますし、確かにその提案がございましたのですが、今回の委員会において検討するということでございます。提案そのものはございましたけれども、提案そのものも含めまして、マス資源を今後どう回復するかという措置を日ソ両国委員で検討するというふうに決定をされておるわけであります。したがいまして、昨年のソ連提案をそのまま検討するということでなくて、私どもとしては、それより離れて、日本日本なりの立場に立ってどういう回復措置を考えるか、ソ連はソ連なりの立場に立ってどういう回復措置を考えるかということが、三月一日からの話し合いになろう、かように考えております。
  74. 芳賀貢

    芳賀委員 これは従来例にはないことですからして、生産部長の言われたように、これが単なる声明でない、提案というような形であるということになれば、日ソ漁業委員会においては、具体的な提案事項としてソ連側は提起してくると思うのです。もちろん、委員会の運営は、科学的な根拠の上に立って論議をする場所ということになっておるわけですからして、これを全面的に容認できないという立場があるとすれば、わがほうにおける科学的な調査等をもとにして論争しなければならないということになると思うのです。しかも、この提案を背景にして、たとえば九割減船の措置等もすでに伝えられておるわけですからして、相当きびしいものがあると考えられるわけです。そこで、三月一日からの開会ですからして、出発を前にして、もう少し具体的に日本側の態度とか、調査結果に基づく方針というようなものを当委員会に明らかにしていただきたい。
  75. 亀長友義

    亀長説明員 先ほど申し上げましたように、ソ連のこの提案は、公式には発表できない事柄のものでございますけれども、一応そういうものが出ておりますので——ただ、この前提になる本年度のマスの資源量というものにつきましては、ソ連側はいままでよりも非常に悪いという態度をとっております。日本の学者の見解では、程度の違いはございますけれども、近来非常に豊漁年のマス、特にそのうちの西カムチャッカ系のマスが依然として回復をしない、日本の科学者も研究の結果さように考えております。ただ、ソ連の提案が具体的に日本の中小企業者の多い企業にどのように経済的に受け入れられるかという問題、さらに、それが西カムの資源の回復上どの程度の実際的な効果をもたらすかという問題につきまして、私ども、ソ連側とは、率直に申しまして、若干考えを異にしているわけでございます。またさらに、減船という形になりますと、これは現在ある許されている人を企業的に排除するということになりまして、その点からも、現在までのところ、少なくとも以南サケ・マス等のB区域のサケ・マス漁業は、かなり有利な漁業であったように思いますので、経済的に採算が合わないならともかく、そうでないのに、漁業からさらに排除されるものを多くするということについては、やや行政的に疑問を感じております。そこで、漁業の規制法としては、必ずしもこういう形でないものを考えたいと思います。  資源の程度という点については、ソ連とかなり見解を異にしておるという点がございます。水準が低下しておるということについては、大体これは合っておりますが、その幅というものは非常に違っております。さらに具体的な漁業規制の方法につきましても、いま私が申しましたように、かなり違った立場をとっているわけでございます。日本としては、あくまでも日本の科学者の見解に立って、また日本の漁業者の経済的立場というものを考えて、資源に見合った漁業規制を考えるという立場でソ連と交渉をしたい、かように考えております。
  76. 芳賀貢

    芳賀委員 このたびの漁業交渉も、政治論的な立場は基礎にはならぬわけですからして、特に代表団等の出発前に、また本委員会において問題点を尋ねたいと思うわけでありますが、そこで、先ほどちょっと触れましたオホーツク海漁場におけるサケ・マスの漁業停止措置というものは、これは永久に及ぶということにはなっていないわけなのです。経過的には、第二回委員会に当時の赤城農林大臣が出席して、大体オホーツク海における漁獲あるいは船団数等もきめた直後に、本国から訓令が出て、一万トン漁業数量をふやすことを条件にして、オホーツク海の漁業を放棄する、こういうことの経過があるわけであって、これは国会においても、けしからぬと、政府の不当な措置をわれわれは追及した、そういう経過があるわけです。しかし、その後におきましても、たとえば第三回委員会においては、特にソ連側、日本側において、資源調査等の事項の中で、オホーツク海におけるサケ・マスの資源調査、あるいはこれに関連した調査を進めるということで、これは明らかに議事録にも残っておるわけですが、その後、政府においてオホーツク海の漁場において具体的な調査が行なわれて、その結果がどうなったという報告は、われわれ一向に受けていないわけです。そこで、この条約期間が終了するこの機会に、オホーツク海における漁場の資源状態というものは、水産庁の調査の結果、どういうことになっておるのか、あるいはソ連側におけるオホーツク海の漁場調査というものはどういう成果をあげておるのか、それらの点に対して、調査に基づいた説明を願いたいわけであります。  それからもう一つは、北海道庁においても、水産試験場等を通じて調査を行なっておることになっておりますが、一体それらの調査結果というものは、水産庁のほうに報告されておるかどうか、その点についても明らかにしていただきたいと思います。
  77. 坂田英一

    坂田国務大臣 いまの芳賀委員からのお話しの調査の点でございますが、これは日ソ両国によって共同調査計画を作成いたしまして、その共同調査計画に基づきまして、毎年、日ソ両国がサケ、マス、カニ等の資源について、海上、河川において調査研究を行なっておるわけであります。過去数カ年の資源調査研究の結果により、北西太平洋におけるサケ・マスの分布、回遊、それから遡上の状態などについて、ある程度明らかとなってきており、その調査研究結果は毎年の委員会に報告されまして、漁獲量の決定等に役立たせるようにいたしておるわけでありますが、なお、漁獲の資源に及ぼす影響等についての調査検討を要する点がまだ少なくないというのが現状でございます。すなわち、卵を生んで、四年目に帰ってくる、その途上においてどの程度のものを漁獲いたしましたら影響はどうかといった点についても、検討はいたしておるが、そういう点について調査検討を要する点が少なくない、こういう実情にあるわけであります。
  78. 芳賀貢

    芳賀委員 それで、端的に言って、資源的にはどういう状態を示しているのですか。
  79. 亀長友義

    亀長説明員 私からそれでは補足して御説明を申し上げますが、過去数年間の調査、もちろん、これはオホーツク海のみならず、広くベーリング海その他の回遊の結果、すでに相当部分が明らかになっておるのでございます。ただ、オホーツク海に独自のサケ・マス資源が存在するわけではございません。カムチャッカ、西カムチャッカ及びオホーツク、それから樺太等の河川で産卵をしたサケが、オホーツク海を通って千島列島を横断して太平洋に出る。そこで大きくなって、それから再びオホーツクを通って帰るのでございまして、オホーツクに独自の資源が、太平洋の、すなわち現在日本がとっておるサケ・マスと別のサケ・マスが存在しているわけではありません。それは一つの通路になっておるということが明らかになっております。  それから、北海道の試験場のみならず、さらに水産庁でも四隻、オホーツクだけで調査をいたしますものが四隻、それ以外に、オホーツクから来る魚をオホーツクよりも先で調査をしている、すなわち、ベーリング海、太平洋等で調査をしているものも含めますと、総計十四隻の調査船が活躍をしております。もちろん、こういうオホーツク、ベーリング、太平洋を通ずる調査の結果が、どこの河川で生まれたものがどのようにどこを通って、どういうように泳いでくるか、さらにその資源が毎年どの程度に考えられるかというふうな点は、これは相当程度に明らかになってきております。ただ、オホーツクで日本が漁獲をした場合に、それが資源に及ぼす影響はどうかという点については、まだ十分な調査ができておらない次第であります。  また、ソ連側の立場からいたしますと、オホーツクを禁漁にした当時のサケ・マス、特にマスでございますが、マスの資源の水準よりは、現在の水準のほうがまだはるかに低いという状態から、遺憾ながら、いままでオホーツクの禁漁がそのままになっておるという実情でございます。
  80. 芳賀貢

    芳賀委員 私どもの承知した範囲では、第三回の委員会以来、特に日本側からは、オホーツク海の漁業についての問題の提案を一度もしたことがないというふうに聞いておるわけです。会議に問題を提案とか提起をしないで、これは論議にも何にもならぬわけです。特にことしは第十回の委員会ですから、数年間にわたって調査が進められたわけです。相当根拠のある資料も整ったとすれば、これは永久に漁獲すべきでないということではないと思う。そこで、今回の委員会においては、そういう調査等に基づいて、オホーツク海の漁業問題については、やはり当然議題として取り上げて論議すべきだと思いますが、その点はどうなっているのでしょうか。
  81. 亀長友義

    亀長説明員 この委員会で、条約上きめられています禁止区域につきましては、毎年禁止区域の問題は議題になっております。またオホーツクの解除につきましても、いままでの年において数回日本側としては主張いたしております。ただ、全体の資源水準として、オホーツクが閉鎖されたときよりも、全般的に資源水準が低下をしておるということも事実でありまして、これはわれわれも客観的に言えることであります。そこで、具体的に提案をいたしましても、結局どこでとるかということが、一つのとり方の問題としては考えられるわけでありますけれども、資源が非常に豊富になったから解除をするという意味の迫力というものは、遺憾ながらいままで出るだけの材料がなかったということがありまして、遺憾ながら、ソ連側が解除を承諾するまでに至ってないという状況でございます。  もちろん、この解除の問題は、国民感情からいっても、非常な要望があることでございますので、いままでの委員会でも、日本は毎年禁止区域審議の際に、本来日本の立場からいえば、禁止区域というものは、河川の産卵場の前面であるとか、あるいは漁業規制の、一般的には稚魚の保護であるとか、そういう区域に限って設定すべきであるという日本の基本的な態度は、常に主張しておるわけであります。
  82. 芳賀貢

    芳賀委員 そこで、たとえば資源の確保の観点からいうと、北海道の、特にオホーツク海に面する十四の河川があるわけですが、ここでサケ・マスの採捕を行なって、そうしてふ化、放流等の事業が行なわれておるわけです。これは資源的に見れば、非常に大きな貢献をしておるわけです。ですから、オホーツク海において日本側が何ら資源増殖の努力をしていないというわけではないのです。これは明らかにやっておるわけです。ソ連側の河川においても、遡上するサケ・マスに対してふ化、放流は当然行なっておるわけです。だから、オホーツク海関係の河川から放流された稚魚が成長して、また産卵のために遡上してくるわけですから、資源的に見た場合に、オホーツク海というものは、全く価値のないものであるということにはならぬじゃないですか。何のために経費をかけてふ化、放流をやっておるのです。サケ・マスは習性としては、成長して遡上してくるのでしょう。そうじゃないですか。
  83. 亀長友義

    亀長説明員 北海道のオホーツク海に面する河川で増殖されたサケは、千島列島を通って、太平洋のほうへ全部出るわけでございます。そして再び帰ってくる。したがいまして、ソ連は公海では漁獲をいたしておりませんので、そのサケは日本の漁業者によって太平洋側で採捕されるというのが実情でございます。さらにその一部はオホーツク海の領海内で定置網等によって捕獲をされるというのが実情でございます。もちろん、北海道のオホーツク沿岸の漁業者なり河川で採捕されたものは、比較的どちらかといえば、千島列島を越えて太平洋側で多量にとられるために、根室、釧路方面の漁業者によってとられておるという事実はございます。もちろん、そこの各種国内間の調整というものはあるかと思いますけれども、増殖にいろいろ御協力をいただいておるというような点から、オホーツクでとらしてもらいたいという御希望が地元の方から非常にあるわけで、私どもも十分承知いたしております。しかし、少なくともオホーツク海の公海に関しては、禁漁問題がそういう状態でございますので、これについて、むしろそういう地元の立場よりも、日本全体なり、それからオホーツク、ベーリングを通ずる全体のサケ・マス資源の問題なりとして、ソ連側とも交渉した上でないと、地元の調整はなかなか困難であると考えております。
  84. 芳賀貢

    芳賀委員 交渉の結果といっても、交渉の意思がなければ何にもならぬじゃないですか。わが方においても、これは問題として提起して、交渉する努力をする、その結果こうなったということであれば、話はわかるが、努力もしないし、提起もしないということになれば、向こうは何も希望しているわけでないから、ことしの委員会においてはそういう問題を持ち出して、十分論議する必要があるというふうにわれわれは考えておる。特にオホーツク海沿岸において、漁業協同組合が中心になって、ふ化、放流等の増殖事業に積極的に連続的な協力をしているわけです。その結果が、成長してまた遡上する習性が、太平洋の地域においてそれが全部捕獲されてしまうということになれば、生産面に協力した沿岸の漁業関係者だけは、単に貢献のしっぱなしで、収獲をすることができないということは、大きな問題になると思うのです。だから、その過去の状態に漁業を回復させるというのではなく、そういう生産とか資源増殖の努力とか、あるいは北海道の地域における沿岸漁業の実態というものは十分掌握しているわけでしょう。したがって、漁獲においても、公平な漁獲努力というものが行なわれるような行政的な措置もまた必要だと思うのです。こういう点については、水産庁としても、農林省としても、まだ積極的な努力というものは全然していないのですから、今後前向きにこういう問題の処理に当たってもらいたいと思うわけです。  そこで、農林大臣にお尋ねしますが、昨年の暮れ以来、数次にわたって、たとえば北海道の知事とか北海道の道議会あるいはオホーツク海沿岸の漁業団体等から、この問題に対して切実な要請というものが繰り返されておることは御存じと思いますが、いかがですか。
  85. 坂田英一

    坂田国務大臣 ただいまの芳賀委員のお話のとおり、北海道方面、特にオホーツク海の面については、非常な熱意をもっての陳情を受けております。私どもとしても、この問題は等閑に付しておるわけではございませんで、極力検討を加えていきたい、こう考えておりますから、御了承願います。
  86. 芳賀貢

    芳賀委員 これは国際的な問題でもあるので、きょう直ちに政府に結論を出せとは申しませんが、国会においても、昭和三十四年の三月六日、これは正式に衆議院の議決にはなりませんでしたが、社会党から「オホーツク海におけるさけ、ます漁業に関する決議案」というものをぜひ国会の議決として、政府はもちろん、ソ連側においても実行に移すべきである、こういう提案をしたわけです。これは残念ながら与党自民党の同調を得られないままに、国会の議決ということにはならなかったわけですが、これは相当長文にわたっておりますが、いま私の指摘した問題が当時の決議案の中に盛り込まれておるわけです。ちょっと読んでみますと、   日本政府と、ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間において締結された「北西太平洋の公海における漁業に関する日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の条約」は、両締約国が関心を有する漁業の最大の持続的生産性を維持することを目的として両締約国の科学的研究を推進すべきことをその前文において明らかにしているにもかかわらず、政府は、昨年モスクワで開催された日ソ漁業委員会第二回会議の最終段階において、年間総漁獲量の増加を偏重する余り両国共同の科学的調査を推進することもなく、突如として昭和三十四年一月一日以降オホーツク海の公海におけるさけ・ます漁業の全面的な停止を決定したのである。   このことは、海洋漁業について従来堅持し来った日本の国際的主張を自ら放棄し、母船側の利益に奉仕して国民的利益を蹂躙したものと言わざるを得ない。   よって、政府は、過去の過誤を改め、漁民大衆の利益を増進するため、目下開催中の日ソ漁業委員会を通じ、左記の各項が実現するよう全力を傾注すべきである。     記  一、オホーツク海をはじめとする北海道沿岸における漁民が従来さけ・ます資源の保護増殖のため払ってきた犠牲と努力を尊重し、かつ、窮迫した漁民生活の向上に資するため、漁業協同組合自営漁業を中心とする沿岸小漁民によるいわゆる基地独航方式による出漁の途を開くこと。  二、オホーツク海におけるさけ・ます漁業資源について科学的調査を積極的かつ、大規模に推進することとし、これが態勢の整備を図ること。  基本的にはこれと同様なことを、北海道においても、また関係漁業団体においても、農林大臣に要請しておるわけですからして、これらをできるだけ尊重して、特に申し上げたいことは、日ソ漁業委員会において問題として取り上げなければ、これは何にもならぬわけですから、その努力をしていただきたいと思いますが、いかがですか。
  87. 坂田英一

    坂田国務大臣 お説のとおり、でき得る限りそういう方向努力したいと思いますが、国際問題でもあり、なおいろいろございますので、その点は十分熱意を持って検討さしていただく、こういうことで御了承願いたいと思います。
  88. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、林業問題についてお尋ねします。  その第一点は、昨年の三月末に中央森林審議会から答申が出されておるわけでありますが、われわれとしては、答申の内容については、政府に資料等を要求して検討をしておるわけです。しかし、いまだに当委員会において正式に中央森林審議会の答申の内容というものが説明されていないわけです。特にきょう指摘したい問題は、この中央森林審議会の答申については、政府としても、実行可能なものから漸次これを取り上げて行なう、そういう方針がのぼされておりますので、一体、その中央森林審議会の答申というものを受けて、重点的にはどういうことを施行して、国有林の経営とか林政の発展をはかろうとするのか、その点をお尋ねします。
  89. 田中重五

    ○田中(重)政府委員 中央森林審議会の答申の骨子は、国有林野事業を行政機構から分離して、そうして独立して人格を持つ公企業形態にするのが妥当であろうということでございます。その趣旨は、行政機構の中に組み込まれていることによって、行政機構としての煩瑣な事務の処理に非常に能率をそがれている面がある。経営者としてそういう事務から解放をされて、経営に徹すべきである、こういう考え方でございます。この考え方は、農林漁業基本問題調査会の答申の中の林業基本問題とその基本対策の中にも指摘をしてきた事項でありますので、中央森林審議会は、その趣旨を受けて答申をした、こういうふうに考えていいかと思います。審議会の答申でございますから、その趣旨を尊重して検討に入っているわけでございますけれども、なお申し上げられるような段階に至っておりません。
  90. 芳賀貢

    芳賀委員 いまのお話ですと、答申はわれわれは内容を見ておりますが、答申に至るまでの審議の経過等については、これは不明な点が多いわけです。これは森林法に基づいた委員会ですから、当然審議の内容等についても明らかにされるべき性質のものです。これを国会全部に配付せいというわけではありませんが、審議の必要上、中央森林審議会の審議録をぜひお出し願いたいと思います。この点はどうですか。
  91. 田中重五

    ○田中(重)政府委員 中央森林審議会の答申につきましては、もちろん公表もされておりますし、これは提出できるわけでございますが、ただ、この答申を出すに至った各委員の速記録につきましては、それぞれ各委員が自由な意見の交換をし合ったという内容でございますから、そこで、これは中央森林審議会の会長の意向を聞きまして、その了承が得られますならばお届けをいたしたい、こう思うわけであります。
  92. 芳賀貢

    芳賀委員 法律に基づく審議会は、最近、運営の形態としては非公開主義を政府側は無理にとっておるが、それは秘密会議ということはないわけですから、審議録については、これは整理して、当該委員に対してはもちろん配付をしておるし、政府側においても関係の担当者等はそれは必要ですから、みな所持しておるわけなんですが、われわれとしては、答申ももちろん大事だが、どういうような経過をたどってそのような答申が出されたかというところにむしろ関心があるわけです。これは委員長に申し上げますが、中央森林審議会の答申を行なった関係の審議録という名前になっておると思いますが、これを資料として速急に提出するように手配を願いたいと思います。
  93. 中川俊思

    中川委員長 善処いたします。
  94. 芳賀貢

    芳賀委員 次にお尋ねしたい点は、中央森林審議会は、昨年の三月でこれはもう審議会自身がなくなって、新たに林政審議会というものが林業基本法に基づいて発足しておるわけです。ですから、林業基本法が生まれる前は、森林法に基づいた審議会というものが活動しておったわけですが、現在においてはすでに林業基本法という基本的な制度があるわけですからして、この基本法に基づいて林政審議会というものが設置されておるわけです。だからむしろ、今後の国有林のあり方はもちろんでありますが、日本の林業の進むべき基本的な方向等については、林業基本法の制定を機会にして、それに基づいて設置された林政審議会にそれらの重要事項については当然政府は諮問をして、そうして答申を得て善処すべきと考えますが、農林大臣はいかように判断されておりますか、農林大臣にお尋ねします。
  95. 坂田英一

    坂田国務大臣 いま芳賀委員からおっしゃったとおり、林政審議会を通してこれらの問題を処理をしたいということであります。中央審議会の答申に基づいて、いま長官から申し上げたとおりのことでありまするが、これらを実現するかどうかという問題については、現在慎重に検討を加えておる。もちろん、これは林政審議会において審議した上でないときまらないわけでございます。言うまでもございません。
  96. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは大臣の説明によると、中央森林審議会の答申事項であっても、今後の運用上重要な基本的な問題については、当然なことであるから林政審議会にこれをかけて、その結論を得て政府としても対応する、こういうことですね。
  97. 坂田英一

    坂田国務大臣 そのとおりであります。ただ、中央森林審議会においても十分検討されたことでございますから、答申は私どもも尊重いたしますが、その実現については検討中でございます。重ねて……。
  98. 芳賀貢

    芳賀委員 中央森林審議会というものはもうなくなっておるのですね。これは去年の二月半ばに寿命が尽きたのを、答申を無理やり出させるために、三月末までカンフル注射をしてようやく命を持ちこたえさして、答申が出て、それで絶命したということになっておるのですね。そういう権威のある機関というものはないのですよ。答申を出すと同時に、もう命がなくなったわけです。これはもう血が通っていないわけですよ。そういうことから、いま生きておる、基本法に基づく林政審議会に、重要事項については当然はかって、間違いのない林政というものを進めるべきだということを言っておるわけで、これは先ほど農林大臣はそうするということですから、別に繰り返して確認する必要はないわけであります。
  99. 田中重五

    ○田中(重)政府委員 中央森林審議会はいまでも存在しております。それだけ申し上げておきます。
  100. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、公社化の準備をしておるという説が相当伝わっておるわけですが、実際はどうなのですか。
  101. 坂田英一

    坂田国務大臣 この問題については、いろいろ国有林の公共性という問題もありまするし、もちろん企業性の問題もございまするが、これらの問題を比較検討すべき問題でございまして、これこそ文字どおり慎重に検討いたします。
  102. 芳賀貢

    芳賀委員 大臣は経過を御存じなのですか。公社化の作業を林野庁において進めておるかおらぬか、あるいはそういう問題について当然大臣として何らかの指示を与えておるのか。これは大臣の言われるとおり重大な問題なのですよ。
  103. 坂田英一

    坂田国務大臣 先ほども繰り返して申しておりますとおりに、中央森林審議会の答申でありまするし、それはもちろん尊重をいたしておるわけでありますが、これが実行云々につきましては検討中でございまして、これをつくるとかつくらぬとかいうことは、全然まだ決定しておりませんから、その点はひとつ御了承願います。
  104. 芳賀貢

    芳賀委員 決定したらたいへんなことになるですよ。農林大臣の所管事項は林野庁まで及びますか。
  105. 坂田英一

    坂田国務大臣 及びます。
  106. 芳賀貢

    芳賀委員 そうであれば、これは重大な問題ですから、慎重に扱うとか、作業しておらぬという程度のことでなくて、やはり農林大臣責任において、今後の国有林の経営のあり方はもちろんでありますが、林業全体の当面した危機的な様相というものは、これははかり知れないものがあるわけですからして、十分大臣自身が関心を持って、これらの問題に慎重に対処するようにしてもらいたいと思いますが、いかがですか。
  107. 坂田英一

    坂田国務大臣 ずいぶん繰り返して申しておるのでございますから、よくおわかりかと思いますが、どんなものにするとか、いろいろな問題については、全然きめておりません。
  108. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、一昨年あたりから与党自民党の内部において、国有林を開放するとか処分するという動きが、相当進められておるわけです。これも非常に重大な問題であります。聞くところによると、議員提案であってもかまわぬからして、国有林処分法案を出すというような動きも私たち承知しておるわけですが、これは農林大臣としても関心を持っておられると思いますので、その動きは一体どうなっておるわけですか。
  109. 坂田英一

    坂田国務大臣 いまの御質問でございますが、現在の制度においても、国有林の活用という面になりますと、十分これはでき得る制度に相なっております。したがって、この立法云々の問題は別として、積極的にこの活用はいたしてまいりたい。特に農業構造改善といったような問題等を考えますと、その必要性のあるところがずいぶんあります。そういう点について十分国有林の活用をはかってまいりたい、こう考えております。
  110. 芳賀貢

    芳賀委員 その程度のことは、過般、次官通達で、国有林の活用というのは要綱的なものが出ておるわけだから、わざわざ与党が議員立法までして国有林を処分しなければならぬということには通じないと思うのです。そういう動きが活発化した場合には、農林大臣として、日本の林政を担当しておるわけですからして、そういう暴挙に対しては敢然として阻止する、こういう決意はあると思うのですが、いかがですか。
  111. 坂田英一

    坂田国務大臣 国有林の活用をうんとはかるという問題は、これは申し上げたとおりでございますが、ただ、議員立法で立法をするとかせぬとかいう、そういういろいろな問題については、私はそれをどうするという問題は具体的には考えておりません。
  112. 芳賀貢

    芳賀委員 それはどういうことですか。  次に、需給計画というものがあるわけですが、これはどうなっていますか。国内需給度が非常に逼迫して、成長量とアンバランスな増伐、過伐が行なわれておることはわれわれ承知しておるが、これも将来に対しては非常に重大な問題です。ただ、木材の国内需給ということになれば、当然不足分は外材輸入ということになるわけですから、この外材を含めた年次的な需給計画というものは明確に立っておるかどうか、あるいは五カ年、十カ年の見通し等はどうなっておるか、その点をお尋ねします。
  113. 坂田英一

    坂田国務大臣 その数字的なことは、いま長官から申させます。
  114. 田中重五

    ○田中(重)政府委員 木材の需給計画につきましては、一応翌年度の需要量を推定いたしまして、それに対する供給量を策定をいたしておりますけれども、将来にわたっての年度年度の短期の需給計画というのは、いま用意はしておりません。長期的にわたる分については、林業基本法の十条に基づいた森林資源の基本計画、それから重要な林産物の需要供給に関する見通しを本年度中に公表できる運びになると思います。それで明らかにしたいと思っております。
  115. 芳賀貢

    芳賀委員 最近、国有林経営が非常に赤字が増大する、そういう悲観的な説をことさらに宣伝しておるような向きもあるわけですが、これはどういう意図から出発していますか。ここ十年ぐらいは赤字がずっと増大して経営ができない、突如としてそういうことを強調されておるわけですが、これは何か政策的な意図があってそういうことを強調されておるかどうか、いかがですか。
  116. 田中重五

    ○田中(重)政府委員 その点につきましては、いま突如として農林省から言い出しているのではないのでございまして、昭和三十八年の、先ほどもお話のありました、中央森林審議会に国有林の将来におけるあり方を諮問いたしましたあの時点において、国有林野事業の収入と支出の関係が悪くなっていくという見通し等に立ちまして、諮問をしたわけでございますから、ただいま突如としてそういう問題提起をしているわけではございません。
  117. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、国有林事業について、毎年損益計算書を出しておるわけですね。この成長量の計算、あるいは伐採量の計算、あるいはそれに基づいた損益——財産がどうなっておるかというこれは、毎年正確にやっておるわけですか。
  118. 田中重五

    ○田中(重)政府委員 いまお話しの、国有林野事業におきまして、年々どれだけ切ってどれだけ植えるという計画は、森林法によるところの全国森林計画の十カ年計画に基づいて、年々予算を編成しているわけでございます。その予算の編成にあたりまして、その年度ごとの損益計算書を作成いたしております。
  119. 芳賀貢

    芳賀委員 それは資料として出せますね。
  120. 田中重五

    ○田中(重)政府委員 それは提出することができます。
  121. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、国有林経営の基本は林業基本法においても示されておるわけですが、原則は直営生産、直用方式ということになっておるわけですが、これに逆行するような考えを持っていますか。
  122. 田中重五

    ○田中(重)政府委員 国有林野事業の実行にあたりまして、直用、直営を原則とするという原則は別にございません。いままでの実行が、造林あるいは素材生産について主として直営方式をとってまいったということでございます。
  123. 芳賀貢

    芳賀委員 原則がないといっても、基本法の審議の場合にも、経営の基本はあくまでも直営直用方式でなければならぬということを当時長官も明らかにしておるわけですよ。赤城農林大臣もこれは明確にしておる点ですからね。これは論議の余地はないのです。ただ、その原則に対して非常に逆行するような運営をやっているのじゃないか、あるいは考えているのじゃないかということがわれわれは見受けられるので、そこを尋ねておるわけです。
  124. 田中重五

    ○田中(重)政府委員 国有林野事業の造林あるいは素材生産につきましては、その大部分を直営方式で行なっておりますけれども、また、事業の拡大あるいは臨時的な事業その他の部分につきましては、請負方式その他別の方式も採用いたしておるということでございます。
  125. 芳賀貢

    芳賀委員 雇用の安定について、農林大臣はどう対処されておりますか、特に国有林野事業の労働力確保ですね。
  126. 坂田英一

    坂田国務大臣 林業の関係でございますか。
  127. 芳賀貢

    芳賀委員 林業全体もそうだが、国有林野事業としてですね。
  128. 坂田英一

    坂田国務大臣 もちろん、雇用の安定という問題を十分考えていきたい、こう存じております。
  129. 芳賀貢

    芳賀委員 この問題は、一昨年の暮れの臨時国会において、当時の赤城農林大臣はもちろんですが、石田労働大臣からも明確な答弁が行なわれておるわけです。ところが、林野庁としてこの実行を怠っておる点が多々あるわけです。社会党としては、先日国有林労働者の雇用の安定に関する法律案提出いたしまして、現在社会労働委員会にこれが付託になっておるわけですが、具体的に制度的に国有林労働者の雇用の安定確保についてそういうようなことが実行されなければ——農林大臣所信表明の中で、林業従事者は他産業に相当大幅に流出しているという悲観的なことを述べられたわけですが、施策いかんによっては、林業の部面労働力確保することもできるし、国有林野事業の中に優秀な労働力を持続的に確保することも可能なわけです。それを可能にする努力を怠っておるから、現在のような状態になっておるので、これを速急に制度的に処置する、改善するということをこの際明らかにしてもらいたいのです。
  130. 田中重五

    ○田中(重)政府委員 労働者の雇用の安定につきましては、十分その趣旨を体して、民有林といわず、国有林といわず、進めてまいりたいと考えております。林業という産業の実態が、御承知のとおり、季節に支配される事業でございますから、そこで、どうしても年間を通じた通年的な雇用が困難なわけでございます。しかしながら、でき得る限り作業の仕組みその他仕事の合理化を考えまして、同一人が続いて雇用されるように持ってまいりたい、こういうふうに考えている次第でございます。また、国有林におきましては、その実態においても、月雇い作業員から定期作業員あるいは常用作業員というふうに、雇用の期間が長くなる雇用に進んでいくことが、実績から見て明らかでございます。
  131. 芳賀貢

    芳賀委員 きょうは問題提起の形でこの程度にしておきますが、次の機会に、これらの問題について、もう少し掘り下げて審議をぜひしたいと思っております。  次にお尋ねしたい点は、甘味関係の問題ですが、昨年砂糖価格安定法が当委員会で成立して以来、政府としても運営上の努力はされておると思いますが、最近の国内の糖価事情あるいは流通事情、さらに国産のてん菜糖あるいは甘蔗糖等の生産あるいは流通の状態等についても、決して糖安法に基づいた国内の糖価の安定あるいは需要の安定措置等は、これは期待に沿っていないと見受けられるわけです。ただ、糖価の面においては、非常に糖価が低落しておりまして、たとえば下限価格を下回るような状態でおりますので、消費者から見れば安いにこしたことはないということになると思いますが、しかし、国内政策の重点というものは、国内の甘味資源の増大を行なって、そして自給率を向上するというところにねらいがあるわけですから、この点について、最近の事情とこれに対処する政府努力のあとを明らかにしていただきたいと思います。
  132. 武田誠三

    ○武田(誠)政府委員 最近の糖価の事情その他につきましては、ただいま先生からお話しのようなことでございまして、糖価安定法を施行いたしまして、砂糖事業団が業務を開始いたし、昨年の十二月ごろには、一応下限価格程度の百十円ないし百十五円くらいの取引価格ということに相なったわけでございますが、その後また急速に下落をいたしまして、最近では九十五、六円ないし九十六、七円というような状況にございます。これに伴いまして、お話のように、国内産のビート糖の価格につきましても、あるいはまたブドウ糖の価格につきましても、必ずしもさえた値段ではないという状況でございます。  で、これらの問題の基本といたしましては、一つには、現在の輸入粗糖の精糖業界におきます設備過剰、あるいは現在手持ちをいたしております輸入粗糖の数量が非常に大きいというようなことが、基本的には一つの圧迫材料になっておるものと思っております。現在精糖メーカー二十五社におきまして不況カルテルを実施いたしておりますが、現在毎月の操業日数を十日ということで規制をいたしておるのでございますが、能力関係の問題等もございまして、必ずしも十分にその効果が出ておらないというような状態で、さらに数量割り当て等の方法について、現在私どもとしては、精糖業界のほうにいろいろ指導と申しますか、勧告と申しますか、いろいろ申し上げておるわけでありますが、なかなか業界内の十分な足並みの一致が見られないというような状態でございます。これらにつきましては、今後ともさらにできるだけの努力をいたしまして、現在の糖価が安定帯の中に入ってくるというような方向努力をいたしてまいりたいと思いますが、現在の段階では、なかなか各社各社それぞれの立場がございまして、いろいろな意見が出ており、十分に統一されたところまで意見の一致を見ていないということにつきましては、非常に遺憾に思っておる次第でございます。
  133. 芳賀貢

    芳賀委員 そこで、国産糖の政府の買い入れ、売り戻しの措置としては、いわゆる瞬間タッチ方式で、てん菜糖については、買い入れ価格がキロ当たり九十九円、十一月、十二月、一月の売り戻し価格はいずれも同様で八十四円ですか、というふうに承知しておるわけですが、この買い入れ価格についても、根拠があってそうきめたと思うわけです。売り戻し価格についても、もちろん慎重に定めておると思いますが、現在の砂糖の市場価格とそれを比較した場合に、売り戻し価格というものは、市場価格に対応して正常なものであるかどうかという点はいかがですか。
  134. 武田誠三

    ○武田(誠)政府委員 現在の糖価につきましては、先ほど申し上げましたように、百円を割り込んでおるというような状況でございます。現在の糖価というものと、砂糖事業団が売り戻しております国内産糖の糖価というものとの間では、現在の市価のほうがやや下回った水準にあるというように考えております。
  135. 芳賀貢

    芳賀委員 最近の消費価格は幾らになっておりますか。
  136. 武田誠三

    ○武田(誠)政府委員 小売り価格につきましては、大体百三十五円前後というふうに考えております。
  137. 芳賀貢

    芳賀委員 卸売り価格は……。
  138. 武田誠三

    ○武田(誠)政府委員 卸売り価格は大体九十九円ないし百円というところでございます。
  139. 芳賀貢

    芳賀委員 てん菜糖は幾らですか。
  140. 武田誠三

    ○武田(誠)政府委員 大体九十四、五円というふうに考えております。
  141. 芳賀貢

    芳賀委員 その価格が最近の市価ということになるわけですから、たとえば売り戻し価格が八十四円の場合、それに十六円の消費税と諸掛かり十円と見ると、二十六円ですから、それを加算すると、百十円ということになるわけですね。現在の市況から見ると、相当十四、五円の差があるということになるわけですからして、こういう状態が将来数カ月とかあるいは一年間も続くということになると、これは国産糖の育成であるとか自給率の向上ということは、また後退するということに当然なるわけです。これはむしろ精製糖の分野に問題があるわけですが、一体売り戻し価格をきめる場合に、砂糖価格安定法のいわゆる二十四条の規定である「市価を参酌して、」というこの規定は、現在までの売り戻しの価格算定には実際参酌されておるかどうか、いかがですか。
  142. 武田誠三

    ○武田(誠)政府委員 現在の売り戻し価格につきましては、先ほど申し上げましたように、砂糖の卸売り価格が、一番高いときは百十五円くらいまで行っておる。最近は百円というような水準に相なっておりまして、その間に相当の浮動をいたしております。したがいまして、市価の水準というものをどの程度であるかということの判定は、その現在の市価の変動の幅、あるいはそれが持続いたします期間といったような事態をどういうふうに見きわめていくかというようなことが必要なわけでございますが、これがなかなか不安定な状態にあるというようなことでございまして、技術的にいまいろいろと検討をいたしておるわけでございます。   〔委員長退席、舘林委員長代理着席〕 現在の八十四円の売り戻し価格が市価を全然参酌していないというようには必ずしも考えておりませんけれども、最近のような低水準というものが相当期間持続するというようなことでございますれば、これについては何らかのことを考えなければならないのではないかというように考えております。
  143. 芳賀貢

    芳賀委員 買い入れ価格については、これは政令に基づいて決定して、告示する時期が示されておるわけですから、一生産年度において大きな変動はないと思うのです。しかし、売り戻し価格については、毎月の事情を十分考慮して売り戻し価格をきめるわけですから、一年間変わってはならぬとか数カ月同様でなければならぬという規定はないわけなんですよ。ですから、毎月毎月きめる売り戻し価格の決定の場合に、法律にあるその参酌事項というものは、若干適用しておるというお話ですが、どういうような形でこれを生かして運用するのか、その点が不明なわけです。それから、いままでは方法が固まっていないからできなかったというのであれば、それでもいいが、すでに行なっておるということになれば、これは非常に問題になるわけですから、このあたりを明らかにしてもらいたいのですよ。
  144. 武田誠三

    ○武田(誠)政府委員 市価の参酌の基本的なルールを——これはやはり恣意的であっては困ると思いますので、基本的なルールというものをきめてかからねばならないというように実は考えております。先ほど私がちょっと申し上げました意味は、十二月ごろは百十五円というような、現在の売り戻し価格水準からすれば、高い水準の市価が現出したこともございますし、また百十円前後でしばらくの期間ございましたので、それらの点からいたしますれば、現在の売り戻しの八十四円というものが、市価水準というものと見比べてみて、必ずしも非常に大きく乖離しているというようなことではないというような趣旨で申し上げたわけでございます。今後この市価の参酌というものをどういうふうにやってまいりますかについては、いまいろいろ検討をいたしておりまして、こういう姿ということの確定方式というものが実はまだ生み出されておりません。一方で、これは理由になるならないという問題がございますと思いますが、現在の砂糖事業団が発足をいたしましてまだ日が非常に浅うございまして、この売り戻し価格につきましては、砂糖事業団で徴収をいたします調整資金が財源になるわけでございますが、これらの動きというものも、現実問題として私どもとしては頭の中に入れておかざるを得ないというような事情もございまして、現在市価参酌という問題につきまして鋭意検討中でございます。
  145. 芳賀貢

    芳賀委員 そういうことであれば了承しておきます。  そこで、安定価格の問題は、これは下限価格が百五円ですか、上限百二十六円ですね。
  146. 武田誠三

    ○武田(誠)政府委員 九円です。
  147. 芳賀貢

    芳賀委員 いまの糖価事情から見て、この上限、下限価格というものはこのままの状態でいいか、あるいはその市況にもう少し合わせるために下限価格を下げなければならぬという必要性を感じておるか、その辺はどうなんですか。
  148. 武田誠三

    ○武田(誠)政府委員 現在の百五円の下限価格を、いまの段階で直ちに変える必要はないというように私は考えております。
  149. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは下限価格を堅持するという努力は、もちろん政府として行なわなければならないわけですね。  そこで、売り戻し価格にまた戻るわけですが、どういう事態であっても、下限価格を下回るような計算に基づいた売り戻し価格の設定は至難でないかと私は思っておるわけですが、その点は関係がないですか、あるのですか。
  150. 武田誠三

    ○武田(誠)政府委員 いま先生の御質問がちょっと私のみ込めなかったのですが、売り戻し価格の水準が、百五円を下がるような売り戻し価格というものは考えられるかどうか、こういうお話でございますか。
  151. 芳賀貢

    芳賀委員 そうそう。
  152. 武田誠三

    ○武田(誠)政府委員 これは市価の参酌のしかたと関連をすることであると思います。この点につきましては、国としては、百五円というものを一応の下限価格というふうに考えておるわけでございまして、市価を維持していくということが一つ政策目標と申しますか、行政上の目標でもございますから、これを割るような水準が実現するような売り戻し価格ということについては、なかなか現実問題として問題があろうというように考えるわけでございます。
  153. 芳賀貢

    芳賀委員 もう一点お尋ねしたいのは、生産面における点ですが、昭和四十三年までの五カ年計画でありますが、これはすでに達成したわけですね、てん菜の面においても甘蔗糖の面においても。ですから、四十三年を目標にした計画はすでに四十年度において達成したということになると、この計画ももちろんそうですか、これによる連鎖的な変化が当然出てくると思うわけなんですが、この点はどういうように考えておるのですか。
  154. 武田誠三

    ○武田(誠)政府委員 昨年のてん菜の生産が、それ以前に比べまして、一挙に面積も、また反収も伸びまして、先生のお話のように、四十三年の目標水準というものに達したということでございます。ただ、これは今後ともその水準がそのまま上向きに維持ないし向上されていくかということにつきましては、御承知のように、天候その他の関係もございますので、安定した生産の姿として目標に達したかどうかということの判定は、別途いたしてみなければいけないというように思うわけでございます。それらの点につきましての自信が得られると申しますか、安定した水準として、すでに四十三年の目標を、てん菜につきましてもサトウキビにつきましても達したということでありますれば、甘味資源特別措置法に基づきまする生産計画なり何なりというものにつきましての検討をいたさねばなるまいというように考えます。
  155. 芳賀貢

    芳賀委員 それは当然なことですが、特に四月十日までにてん菜の原料価格の決定を政府が行なって、告示しなければならぬということになっておるわけです。そこで、これは昨年の甘味資源審議会においても論争した点ですが、政府は、五カ年計画が達成された場合の原料価格の設定の問題とか、操業度の向上による基準糖価の問題とか、いろいろありますが、原料価格面については、この計画が十分達成された場合には、これは非常に問題のある価格ですが、原料価格については、七千五十円というものが想定されるという政府側の主張であったわけです。そうすると、すでに四十年において、この生産目標というものは生産者の努力によって十分達成されたということになれば、原料価格というものは、七千五十円が妥当であるか、低過ぎるという議論は別の機会に譲るとしても、現行の六千五百五十円の最低生産者価格、七千二百円の取引価格というこの矛盾というものは、四十一年度の原料価格決定の場合においては、大幅に改善されると考えてさしつかえないかどうか、いかがでしょう。
  156. 武田誠三

    ○武田(誠)政府委員 先生御承知のように、四十三年の目標生産費というものをきめましたときの原料の生産者価格の見通しといたしましては、六千五百五十円というものを基礎に置きまして、その後の四十三年までのパリティの変化率というものに基づいて算定をいたしたのでございます。そこで、本年の四十一年、播種にかかりますてん菜の最低生産者価格につきましては、現在の糖価安定法に基づきまして、農業パリティ指数の今後の推移、また生産費、競合農産物の粗収入との対比等を勘案いたしまして、適正にきめてまいりたいという考え方でございます。
  157. 芳賀貢

    芳賀委員 農林大臣に直接答弁願いたいわけですが、甘味関係の事情は非常に悪化しているわけですから、そういう場合善処するために、甘味資源審議会という機関があるわけですから、これは正式な委員会を招集することは別としても、少なくとも懇談会等を開くことにして、事情の説明とか、それに対応するのにはどうしたらいいかという委員の意見等を反映させて、適切な措置を構ずべきである、私も委員の一人ですけれども、そう思っているわけですが、大臣としてはどう考えるのですか。
  158. 坂田英一

    坂田国務大臣 その点について検討いたしたいと思います。
  159. 芳賀貢

    芳賀委員 最後に、酪農関係について一点お聞きして終わりたいと思いますが、ことしの政府予算を見ても、去年法律が制定されましたいわゆる不足払いの制度について、国が負担すべきいわゆる補給金の金額というものが、予算面で三十億円計上されておるわけです。この経緯というものは、大体われわれ予算編成過程においても承知しておるわけですが、問題は、当然これは三月に予定される畜産審議会で論議されるわけですが、この政府確保した三十億円という補給金の財源は、どういう算定の基準で対象になる原料牛乳に対しては交付されることになるか、基本だけについてこの際説明を願いたいのです。
  160. 檜垣徳太郎

    ○檜垣政府委員 四十一年度予算に計上いたしました加工原料乳に対する不足払いの財源としての交付金の額の計上のしかたでございますが、四十一年度における不足払いの総額は、規模はおおむね四十四億ないし四十五億ということを想定いたしました。加工原料乳生産者補給金等暫定措置法の政令によりまして、交付金の対象となるべき数量の認定は、四半期別にやるということに相なっておりますので、四十一年度中に認定をすることになります。期間は四月から十二月の九カ月分でございます。そこで、四十四億ないし四十五億の補給金の額を想定いたしまして、第三・四半期までの数量を対象とするということで計算いたしますと、約三十三億の補給金を要するという計算が出るわけでございます。それに対して、同法に基づきます畜産振興事業団の買い入れ、売り渡しをいたします輸入乳製品の差益額、約三億円は確実に見込まれますので、これを差し引きまして、三十億円を四十一年度予算に計上いたしたという経緯でございます。
  161. 芳賀貢

    芳賀委員 それで大体明らかになりましたが、そうすると、通年ベースに直せば、これは四十二、三億円実行されることになるというわけですね。
  162. 檜垣徳太郎

    ○檜垣政府委員 通年に直しますれば、補給総額としては四十四億ないし四十五億ということでございます。予算計上の通年ベースに引き直しますと、お話のように、四十二億前後ということになるわけでございます。
  163. 芳賀貢

    芳賀委員 予算上からいうと、対象になる牛乳一キロについて五円ということになっておるわけですから、これを一升、一・八七五キロに直すと、一升当たりは九円三十八銭ということになるわけですね。これはやはり予算計上上の単価になるわけですから、この変化というものは実行される場合ないと生産者はみな期待しておるわけです。それが十分だということではないが、とにかく一升当たり九円三十八銭くれるそうだということで、これは間違いないと期待しておるわけですから、これが実行段階にいって大きく変化するということになると、ゆゆしい問題になるのです。もちろん、あとで審議される保証乳価の問題とも関連がありますが、しかし、政府が直接負担する補給金の取り扱いの問題については、この機会に、農林大臣から正直に実行するということを表明してもらいたいと思います。
  164. 坂田英一

    坂田国務大臣 保証価格の決定については、これは十分そのとおりやりたいと思います。ただ、これは御存じのとおりでございますが、乳製品の安定指標価格というものがきまり、それから基準取引価格がきまり、それから保証価格が主として生産費を土台としてきまるわけですから、その前の乳製品安定指標価格と基準取引価格との差額というものは、それは保証する、いわゆる不足払い、これはそのとおり法律に従って保証していくということでいきたいと思います。
  165. 芳賀貢

    芳賀委員 そうじゃないのですよ。まだ予算は審議中で、成立するはっきりした見通しは立っていないが、もし政府の提案した予算案が成立して実行せられるということになれば、あの中でも三十億円というものは計上されて、それは第三・四半期までに使うということが局長から説明されておるわけですから、そうなれば、最初想定された数量に対して、一キロ五円、一升あたり九円三十八銭の補給金が支払いできるということになるわけです。保証乳価の問題も、これは別の機会に十分議論するわけですが、政府が予算で確保したその補給金の実行については、あとでごまかしのないようにしてもらいたい。その点を念を押しているわけですから、そこだけはっきりしてもらえばいいわけです。
  166. 坂田英一

    坂田国務大臣 それは、数字の点はいま畜産局長から申しますけれども、八円幾らになるか九円になるかということは、畜産局長からお話しいたしますが、その仕組みについて、この予算の限度について、九カ月分として、これは予算を獲得しておるわけでありますから、十分それを保証いたします。
  167. 檜垣徳太郎

    ○檜垣政府委員 必ずキログラム当たり五円は補給単価として用いよというお話でございますが、大臣からのお答えにもありましたように、保証価格、基準取引価格がどうきまるかということで、この補給単価が出てまいるわけでございまして、現在資料に基づきまして準備を取り進めておる段階でございますので、現段階で、必ずこうするというようにはお約束申し上げるわけにまいらないのでございます。ただ、四十四億ないし四十五億というワクを考えました足がかりは、昨年の審議会で諮問をいたしまして決定いたしました原料乳価の基準価格でございます一・八七五キログラム当たり五十七円というものと、それからその審議会に参考資料として提出いたしました主要生産地の四十年度の推定生産費六十五円七十九銭というものの差額八円七十九銭というものが、唯一の手がかりでございます。これをキログラム当たりに直しますと、四円六十九銭という数字が出るのでございますが、明年度の需給の精密な計算は予算段階ではできなかったのでございますが、需給事情から考えて、保証対象となる加工原料乳の数量は、全国で約百万トンということが予想されるが、事業の実施率等を考慮して、約九十五万トン程度は保証の対象にあがってくるであろうという考え方で、四十四億五千万円余りの数字が出てまいったのでございます。そういう考え方をとっておりますので、その後の生産費の動き等を考慮いたしますれば、ただいま申し上げましたキログラム当たり四円六十九銭を下回るということはまずなかろうということだけは、確実に申し上げられるかと思います。
  168. 芳賀貢

    芳賀委員 その問題はまた別な機会に譲ることにして、あと酪農近代化計画に関する質問と土地改良十カ年計画に関する質問がまだ残っていますが、これは別の機会に計画内容をよく説明を聞いて、それから質問をしたいと思いますので、本日はこの程度にとどめます。
  169. 舘林三喜男

    ○舘林委員長代理 松井誠君。
  170. 松井誠

    ○松井(誠)委員 農業基本法が成立しましてから五年たったわけでありますけれども、その経過の中で、農業基本法が持っておった欠陥なり矛盾なりというものが、いろいろなところへ出てきたと思うのです。私は、この問題の中で、一つだけに限定をしてお尋ねをいたしたいと思うわけであります。   〔舘林委員長代理退席、委員長着席〕  それは米の問題です。米の問題で、特に生産の形態についていろいろ新しい形が出ておりますので、そういうものをどう位置づけてどう考えるかということを中心にお尋ねをいたしたいと思うのです。  最初に、米についての長期的な需給見通しのことを詳しくお尋ねしたいつもりでおりましたけれども、芳賀委員からいろいろお尋ねもございましたので、その点は簡単に一つだけお伺いをいたしたいと思うのです。  先ほどお聞きをしておりますと、大臣はあの三十七年の長期見通しを改定するということについてだいぶこだわっておいでのようでございましたけれども、最終的には改定をするかもしらぬというようにお答えになったと思うのです。それじゃ改定をするとすれば、具体的に申し上げますならば、その長期見通しと現実とのズレというのは、需要の点については大差はない。しかし、大きく狂ってきたのは供給の面。そうしますと、それを改定するというのは、いまのこの形でいけばもっと供給は少なくなるだろう、自給度は下がるだろうという形で改定をされるということになるのか、この点はどうなんですか。
  171. 坂田英一

    坂田国務大臣 それは先ほども申し上げたとおりに、やはり生産面を増強するということでございます。
  172. 松井誠

    ○松井(誠)委員 需給見通しというのは、文字どおり見通しであって、計画でないというところに問題があるわけですけれども、しかし、計画ではないといっても、何か自然現象のような見通しではなくて、政策なら政策が現在のままである限りは、そういう前提が当然あると思う。したがって、これを数字を改定されるのではなくて、いま大臣のお話のように、政策を改定をする、つまり、生産増強の政策をとることによって、長期見通し供給の数字に近づけていくのだ、こういう趣旨の改定でございますか。
  173. 坂田英一

    坂田国務大臣 政策を別に変えるというのじゃなしに、現在進めておった政策をさらに拡充強化するというふうに解釈していただくほうがいいのじゃないかと思います。
  174. 松井誠

    ○松井(誠)委員 変えるとかいうことばに非常にこだわっておられますけれども、私は率直にその点を認めたほうがいいと思う。認めるということをはっきりさせることが、私は非常に大事な問題だと思うのです。そういうことをこれからだんだんお伺いをしたいと思うのですが、ともかく長期見通し予想をしておった数字よりも、供給の面で大きくズレが出た。この原因は、主として一体どういうところにあるとお考えですか。
  175. 坂田英一

    坂田国務大臣 それは午前中も大体お話をしたつもりでおるのでございますが、さらに申し上げますれば、他産業との生産性の格差が非常に大きいといったような関係からくるところの一つの問題、それがどこにあらわれるかといえば、言うまでもなく、労働力、いわゆる農業従事者の減少という面においてあらわれておるのでございます。なおそのほかに、その点からくるところの、今度はいわゆる積極的にやらなければならない点でございますが、いわゆる近代化の問題を積極的にやるべきこと、これは農業の特質として、そう簡単にいかない問題からくると思いますが、そういう問題、その他いろいろあろうと思いますけれども、大体午前中に申し上げたようなことだと思うのでございます。
  176. 松井誠

    ○松井(誠)委員 労働力が非常に流出をする、特に基幹的な労働力がたくさん流出をする、あるいは第二種兼業が非常に多くなって、荒らしづくりがひどくなる、農地の壊廃が思ったよりも大きい、いろいろな問題があると思うのですけれども、これは農業基本法制定当時は考えられなかった事態なのか。私は、むしろ、それを積極的に予想はしなかったかもしらぬけれども、そういう事態もあり得るということをあの当時考えておったのじゃないか、農業基本法をつくりたときの姿勢はそういうものじゃなかったかと思うのですけれども、この点はどうです。
  177. 坂田英一

    坂田国務大臣 その基本法をつくりましたときとそう大きな違いはないと思いますが、程度はやはり違います。特に、この前いろいろの人とお話しをしたときに、労働従事者が減るということは予期しておったが、戸数の減り方が比較的思ったよりも少ないということを言った人がおるようなわけで、それは見る人によっていろいろ多少の違いはございますけれども、程度において多少の違いがあると思います。
  178. 松井誠

    ○松井(誠)委員 端的にお尋ねしますと、農業基本法で選択的拡大ということが非常に強調されて、いわば成長作目と斜陽作目とが区分けをされる。米は、あからさまには言われなかったけれども、その斜陽作目の部類に入らせられておったのじゃないですか。
  179. 坂田英一

    坂田国務大臣 選択的拡大の問題は、その当時から主張されたことであり、また現在もその必要があると思うのでありますが、米については、やはりきわめて重要な農村の基幹的作物である、国民経済から見ても、生活上の問題から見ても、非常に重要であるというので、これを軽視するという考えはその当時からなかったわけです。ただ、一応順調に進めば、多少余るようなことも起こりはせぬかといったような考え方を持った人もおったということであると思います。
  180. 松井誠

    ○松井(誠)委員 私の見た新聞は去年の十月二十三日の日本経済なんですけれども、その中に、農林省が見解を統一したというニュースが出ておる。米を増産するという姿勢をはっきりさせる、米の増産は必要があるということを、農林省は見解を統一して発表した、こういうニュースが出ておるわけです。それは詳しくは申し上げませんけれども、選択的拡大という陰に隠れて、米の位置というものがいままでは必ずしもはっきりしなかった——これは農林省の見解だから、はっきりしないという遠慮がちな表現でありますけれども、率直に言えば、これは斜陽視をされておったと思う。しかし、最近の食糧危機という事態に立ち至って、それではいけないということで、米は増産をすべきだというように見解を統一した、こういうニュースが出ておるのですけれども、これはもう大臣就任後でございますから、御存じだと思うのですが、そういう事実はありましたですか。
  181. 坂田英一

    坂田国務大臣 米を軽視しておったということからくるものじゃなしに、先ほど申しましたように、長期見通し検討を加える、中間検討を加えるということをいたしたわけでございます。そのときに、米の重要性というものは、これはその以前から別に軽視しておったわけじゃございませんが、計数の上において、長期見通しのときに出てきたよりも、生産が多少二、三年伸びないということから、自統率も減ってきておるといったようなことがはっきりいたしたということであります。そこで、なおさらこの増産生産増強という問題については十分考えなければならぬということで言ったわけでございます。
  182. 松井誠

    ○松井(誠)委員 まあ、人間だれでもあやまちがあるわけですから、あやまちがあったこと自体を私は責めるべきでなくて、やはりそのあやまちを率直に直すかどうかというところに、君子かどうかの違いがあって、大臣は君子だから、率直に誤りを改むるにはばかるところなく、やはりいままでは米麦軽視の政策だったのだ、しかし、それが壁にぶち当たったから、いままでの誤りというものを直して、米麦を尊重するという政策にもう一ぺん切りかえる、そういうことくらいをはっきり言っていかないと、この食糧の中の中心である米の問題について、農民が持っておる不安、疑惑というものはぬぐい去れないと私は思うのですよ。そういうことを率直にお認めになって、新しい政策に取り組むという姿勢が必要じゃないかと思うのですが、いかがですか。
  183. 坂田英一

    坂田国務大臣 申し上げますが、米の生産についてはうんと力を入れていきたいということで、いま進めております。
  184. 松井誠

    ○松井(誠)委員 まあ、間違っておったということはなかなか言いづらいでありましょうから、私はこれ以上追及をしませんけれども、ともかくいままでより以上に増産に精を出す、増産政策をより一そう強化をする、そういうように変わったことだけは間違いございませんね。
  185. 坂田英一

    坂田国務大臣 まあ、いわばそういうことでしょう。
  186. 松井誠

    ○松井(誠)委員 私は、ある農業技術の先生がこういうことを言っているのを聞いたことがあるのです。ほんとうかうそか、私は知りませんけれども、米の花が咲いて、それが結実をするのは半分くらいだ、もしこれが花がみんな結実をすれば、日本の水田の耕地は半分で済む、残りの半分は選択的拡大に使える、だから米の増産技術というものは、むしろ選択的拡大が必要であればあるほど大事なんじゃないか、そういう意見を聞いたことがあるのです。私も、やはり選択的拡大といえば、米がうしろにいくということではなしに、この狭い国土で選択的拡大の土地をさがそうとすればするほど、米の増産に精を出して、水田の耕作反別を減らしてもやっていけるということが必要じゃないかと思う。だから、選択的拡大と米麦重視——米麦というよりも米ですけれども、これは矛盾をするものではなしに、お互いに補いあっていくもあだ、そういうようにはっきり位置づけをするということも、私は必要だと思うのですが、どうでしょう。
  187. 坂田英一

    坂田国務大臣 ただいまの松井さんの御説は、私も大賛成であります。
  188. 松井誠

    ○松井(誠)委員 それではひとつそういう立場からいきますと、先ほど大臣のお話では、長期見通し供給量というものをいわば達成するように増産政策をとっていく、大体米についてはほとんど自給ができようという政策をとるわけですね。私ちょっと気になりますのは、おとといの大臣所信表明の中で、熱帯農業について研究をして経済協力をする。新聞で伝えられたところによると、東南アジアの米が非常に窮屈である、その米の増産技術というものを日本が教えてやって、そしてその米をいわば当てにして、日本食糧問題を解決する一つのめどにしよう、そのために日本の技術を東南アジアに教えるというように伝えられたことがありますものですから、経済協力という名前で熱帯農業の技術的な研究をするというこれは、米の自給度を上げるということとは関係はないわけですか、念のためにお伺いします。
  189. 坂田英一

    坂田国務大臣 熱帯農業の研究に力を入れるようにしてまいりたいということになりましたのについては、東南アジア等に対する技術協力という問題ももちろんあります。それと同時に、技術は相関連しておることは申すまでもございませんので、もう少し研究の範囲を拡大することによって、さらに一段と技術の発展をはかり得るということを私も確信しております。でありますから、一つは経済協力であり、一つ日本の技術向上の一つの大きな問題として価値ある、こういうふうに考えてやったわけでございます。
  190. 松井誠

    ○松井(誠)委員 私は、先ほど申しました米の生産の形態についてのいろいろな新しい問題についてお伺いしたいと思うのですけれども、いま二種兼業がとうとうたる勢いでふえてくる。機械、農業技術は発展をする。ところが、経営の規模は依然として零細のままだ。こういうちぐはぐな中で増産をするということは、一筋なわや二筋なわでいかない問題だと思う。言ってみれば、立ちおくれた農政の合い間をくぐって、農民は自分の知恵でいろいろな方法を考え出す。たとえば技術信託だとか請負耕作だとかいう問題があるわけです。技術信託というのは耳新しいことばでありますけれども、部分的な請負耕作のようですが、ともかくこの請負耕作というものが相当な勢いで広がっておる。これを一体どう考えてどう対処するのかということをお伺いをしたい。最初に、全国的な請負耕作の状況、こまかい数字はよろしゅうございますけれども、大体の形態、特徴、そういうものを簡単にひとつお示しをいただきたい。
  191. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 ただいまお尋ねのことにつきましては、非常に幅の広いいろいろな形態がございまして、統一的に申し上げることはなかなか困難ではございますけれども、今日、水田の農作業につきましては、御承知のように、兼業化が進行をいたしまして、農業労働力が減りました。単に減ったばかりでなしに、通俗的に三ちゃん農業とかかあちゃん農業とかいわれますような、質的な低下がございまして、生産の技術が非常にちぐはぐになってきております。でございますから、たとえば肥料の分施の技術とか早植えの技術とか、そういった技術につきましても、だんだん粗放化の傾向が目立っておるわけであります。そういうものをカバーいたしまして、生産を上げていくというふうな形で農家が対応しておる形態というふうに理解をいたしております。
  192. 松井誠

    ○松井(誠)委員 抽象的な定義だけではなしに、実態ですね。これも何か平たん部と山村、あるいは東北と西日本というように、多少の違いがあるように聞いておるのですけれども、この請負耕作のおよその形態というものはどういう形になっておるか。
  193. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 お答え申し上げます。  請負耕作と俗に呼ばれておりますものは、大別すると、私は二つあるだろうと思う。一つは、いま言われましたように、技術信託ということばで代表されているように、耕作者同士の相対の関係ではなくて、農協なりあるいは農事実行組合なりが機械を持ったり、あるいは持たなくて共同作業を進めるような形で、いわば一種の共同、非常にゆるい形の共同経営あるいは強い形の協業組織といったらいいのでしょうか、そういう一つの組織的な動きがあるわけでございます。それからもう一つは、請負耕作と呼ばれるもので、完全にというと多少語弊がありますけれども、いわば農地法の小作料統制なり耕作権の制限を脱法する相対の関係でございます。  それで、技術信託という形で代表されておりますものは、愛知県の西尾さんという技術者が米の集団栽培という形で始めまして、それが西のほうに現在相当伸びております。それから個人の相対売買で、いわば農地法の脱法の可能性があるというか、そういう問題を含めておりますものも、東日本よりは主として西日本に多いわけであります。私どもが調査いたしましても、これはかなり脱法的なものでございますから、農林省の正式な調査というのはなかなかむずかしいわけで、私どもが利用いたすことができますのは、最近農業会議所で行なわれました請負耕作に関する資料、それから毎年統計調査部で農業調査という形でやっておりますものと、両方ございます。農業会議所のものは、これは全国的なものではございませんけれども、幾つかの町村をまとめましたところ、農家の中で、委託をする農家が全体農家の〇・四%、受託をする農家が〇・三%で、大体大まかなところ、全農家の一%程度が請負耕作という形をやっているのではないかというふうに考えておるわけでございます。また、統計調査部の農業調査で申し上げますと、稲作関係で申し上げますと、都府県で、三十八年で、田植えを請負わせている農家が全体の戸数の二・四%、それから稲刈りを請負わせておる農家が全体の一・九%、田植えと稲刈りと両方請負わせている農家が全体の〇・六%という形で、大体農業会議所の請負に関する調査と見合っております。
  194. 松井誠

    ○松井(誠)委員 その中で、昔請負小作といわれた、つまりやみ小作、これは請負に出すほうの規模がむしろ大きくて、請け負うほうの規模が小さいという場合に、単に小作料の統制とかあるいは農地法のいろんな制限を免れるための請負小作、これならば、言ってみれば、うしろ向きの意味しかない。したがって、そういうものである限りは、それに対する対策はどうというほどの問題はないと思いますけれども、しかし、そうではなしに、かりに農民同士の相対であっても、小さな、たとえば山間地で、農業機械を持った。自分の耕地を耕してもまだ余る。一方の農家では労力が足りない。その自分の機械を完全燃焼させるためにほかの農地に手を出すというようなのは、それはそれなりに経営規模の拡大につながるわけでありますし、それよりも何よりも、いま言ったような農協とか、そういうものが集団的に請け負う。しかもその労力は、協業ということよりも、むしろ外部からの労力を入れるというような問題になると、これは農地法の関係がどうこうという問題よりも、そうしてやっていかなければしのげない、農業生産を落とさないためにはそれ以外にないのだ、そういう意味での必然性を持っているとすれば、これは一がいに農地法の関係でいいの悪いのといっておっても始まらないと思う。また、農地法の関係がありますから、公然とこれを合法的だということは農林省は言いづらいかもしれませんし、私はそれを言ってもらうつもりもありません。ただ、そういう農地法の関係を離れて、この請負耕作というものについて、その将来において普遍的になるかどうかという問題について、どう考えておるかということなんですね。それは単なる理論的な興味じゃなしに、これが、現在のこういうちぐはぐな技術と経営規模とのアンバランスの中でやっていく一つの方法としてどの程度の普遍性があるのか、そういうことをどういうように考えたらいいか、お伺いします。
  195. 坂田英一

    坂田国務大臣 農村の労力不足は、一面で不耕作地がふえるということになるわけですが、そういう実態の中で、いま松井さんがお話しのように、それはいわゆる請負耕作か何か知らぬけれども、一番いい形ならば、農業協同組合等が農作業を共同化して、さっき農地局長が言ったように、農業生産の維持拡大をはかっていく、そういうことができ上がってまいりますことは、ある意味においては、その地帯にさようなことが行なわれることは自然の行き方であるように思います。ただ、先ほどもその点についてお話がありましたように、普通の小作料の制限を免れる意味においてのような古い形のものは、いろいろの意味において批判すべき点はあろうと思うけれども、いま松井さんお話しのような形は、私どもも十分熱意を持ってあたたかい気持ちで検討すべきものであり、それは将来も伸びていくのではないかと思われる。また、事実伸びつつあるように思われます。それがどの程度に伸びて、非常に大きく伸びるかどうかという問題は別でありますけれども、確かにさような点については十分考えていくべきであろう、こう私は思います。
  196. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 いま大臣がおっしゃられたとおりでございます。  私も、請負耕作は大きく言って二つのものが含まれておりますが、農協あるいは農事実行組合等が機械を用いたりあるいは機械を用いなかったりして共同化していくようなものは、名前はどうあろうと、農地法をたてにとってこれを妨げるというようなことは事実やっておりません。それは、二種兼業農家生産力を伸ばすために、一つの有効な道であると私は思います。もう一つの、完全に相対で農地法を脱法することを目的とするものは、私はある意味で申し上げれば、統制している小作料の水準が非常に低いとか、あるいは一たん土地を貸せばもう返ってこない、そういう小作制度に対する農民的な批判であるかもわかりませんけれども、それはそれとして、正面から農地制度なり小作制度の問題として取り上げるべきであって、私がいま申し上げているような意味で小作制度なりあるいは農地法を脱法する意味の請負制度というのは、決して前向きではなくて、いわば農地法に咲いたあだ花で、それはちっとも将来性のあるものというふうには私は考えておりません。
  197. 松井誠

    ○松井(誠)委員 私も、大和田さんが農地小作を農地法の私生子だという言い方で、どこかで意見を言っておられたものですから、その私生子的な消極的な立場での評価だけしかないのかと思って、実はお伺いしたのですけれども、一昨日の新聞によりますと、千葉県では、今度は県の積極的な指導としてこの請負耕作を進めていく。それに対して、いままでやみ小作というようなことで、日陰者であった請負耕作がこういうことで公然と進められることについて、農林省の指導は一体どうなるのだろうかというようなニュースが出ておりましたが、これはお耳に入っておるだろうと思いますけれども、そうしますと、これもそういう意味で農業生産の発展に寄与する限りにおいては、大臣のことばをかりれば、熱意を持ってあたたかく指導する、こういうことになるわけですね。
  198. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 千葉県の請負耕作を進めるという根拠を確かめましたところ、千葉県の当局がいま予算の要求をしているという段階のようであります。中身は、私が申し上げました請負耕作第一といいますか、法人格を持つ団体、あるいは持たない団体でも、団体を中心としてトラクターを使用しての農作業の委託というようなものであって、それは私がけっこうではないかと申し上げたようなものであるようでございます。なお、農地法との関係で疑義があるならば、千葉県のほうも農林省とよく相談してやりますというお話であります。
  199. 松井誠

    ○松井(誠)委員 いわば前進的な意味を持った請負耕作というのは、現実の問題として都市近郊くらいしかあるいは普遍性がないかもしれませんけれども、しかし、それにしても、いまの二種兼業をそのままに固定化するという意味ではもちろんなくて、そうかといって、これが生産力の低下をそのままに放置するわけにもいかないという意味で、農林大臣ほど熱意を持ってじゃありませんけれども、やはり一つの方法として是認すべきではないかということを私は考えるわけでありますけれども、いまの請負耕作というのは、言ってみれば、農民の側から出た、その発意に基づく形態であります。これは同列に論ずるのは悪いかもしれませんけれども、四十年度から農林省がやっている高度集団栽培というこれのねらいは一体どこにあって、その現状は大体どんなになっておるか、これをひとつお示しいただきたいと思います。
  200. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 ただいまお尋ねのございました高度集団栽培は、四十年度から実施をいたしまして、最初に現状を申し上げますと、昨年の十二月末までにこの事業の実施の認定をいたしました地区総数は百八十二で、八千百ヘクタールでございます。関係の参加農家戸数は九千七百戸、一地区当たりの平均が五十三戸ということになっております。事業のねらいは、圃場整備がすでに完了いたした地区につきまして、大体四、五十ヘクタールの団地にトラクターその他の高性能の農業機械を積極的に導入いたしまして、集団栽培の方式で、たとえば品種の統一をいたしますとか、したがって作付の時期を統一いたしますとか、それから農薬による防除の時期の統一というようなことをいたしまして、関係農家の技術水準のばらばらでございますのを高水準に平準化をして、反収の高度化をはかろう、そういう考え方で始めたわけでございます。四十一年度の予算案にも昨年度と同金額の計上をいたしまして、同様に圃場整備事業の完了いたしました地区を対象に、同じねらいで事業を進めていきたいというふうに考えております。
  201. 松井誠

    ○松井(誠)委員 紋切り型でありますからよくわかりませんけれども、こういうように評価をしたら悪いですか。つまり、農業構造改善事業というのが、選択的拡大というものをねらってやったけれども、案外基盤整備というものにどうしても重点を現地の農民は置く。そこで、基盤整備だけを取り上げた一種の構造改善、つまり、構造改善事業の中の置き忘れられた基盤整備というものを一つ取り出して、それだけ重点的に推進をしようという、言ってみれば、構造改善事業の補完というか、欠陥の是正というか、そういうところから出てきたのじゃないですか。
  202. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 構造改善事業の補完というふうにおっしゃられると、若干私も首を傾けますが、事業対象として選びます地区は、構造改善事業の実施地区ではなくて、構造改善事業では、おっしゃいますように圃場整備をいたしまするほかに、近代化施設ということでトラクターの導入なり、そういう共同作業をいたしますことも、構造改善事業の対象にしておるわけでございますが、農地局で実施をいたします各所の圃場整備事業については、そういう近代化施設の助成がございませんので、大体農地局の前年度実施をいたしました圃場整備地区の全面積とはいきませんで、組織化その他の問題がございます約半分をこういう形で組織化をして、圃場整備が終わりました地区に、さらに高度の機械の導入なり、あるいは技術水準の平準化なりをはかって、生産性の向上をはかっていきたい、そういう考え方でやっておるわけでございます。
  203. 松井誠

    ○松井(誠)委員 構造改善事業の補完というのは、構造改善事業地区にやるという意味ではなしに、構造改善事業というワンセット主義というものでなかなか浸透しない、基盤整備の要求は非常に強い、そういうところへ構造改善事業を押しつけるわけにはいかぬから、この基盤整備事業を高度集団栽培という形でやろうとするのではないかという趣旨なんですよ。
  204. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 いま申しましたように、構造改善事業の地区とは全然違う地区で、土地改良事業のあと地を追っかけて技術の高水準化をはかろうということでございますから、考えようによっては、先生おっしゃるように、補完というふうに言ってもかまわないかと思います。
  205. 松井誠

    ○松井(誠)委員 技術の高水準の平準化というむずかしいことばをお使いになりましたけれども、つまり、技術水準のでこぼこなところに、高い技術水準で全部が生産できるようにするということでしょう。そういうところは、主としてやはり兼業農家で技術が落ちておる、専業農家で技術が高い、そういうでこぼこをこれで直そうという趣旨、主としてそういうことですか。
  206. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 必ずしも兼業農家を対象にしておるわけではございませんで、場所によっていろいろな事情がありますから、同じ専業農家の中でも御承知のように反収のいろいろ違っておる人もおりますし、技術水準の違っておる人もおりますから、それらの水準の差を技術水準の高い人の技術に合わせるように、品種の統一なり作付時期の統一なり、そういうことを考えたわけでございます。もちろん、対象として選びました地区に二種兼業農家等がもしおるといたしますれば、そういう人たちは、単に労力の提供をするとか肥料代を持つというような形において、専業農家の技術に平準化される、そういうことになると思います。
  207. 松井誠

    ○松井(誠)委員 私がわかりにくい高度集団栽培というもののねらいを聞こうとするのは、ここに岩本さんおりませんけれども、岩本さんがある座談会でこういうことを言っておるわけですよ。つまり、これは食糧増産、いわゆる高度集団栽培でやれば確かに生産性は上がる、しかし、そういうことを言ったのではなかなか大蔵省がうんと言わない、これは協業組織を助長するんだ、高度集団栽培で協業組織を助長すると言えば大蔵省はうんと言うかもしれないけれども、兼業対策だとかあるいは増産対策だということになると大蔵省はうんと言わないし、現にまた協業の助長という面もあるのだから、協業の助長ということで大蔵省から金を出すことを承知させよう。けしからぬ話だと思うのですけれども、大臣、いまの話を聞きましたか。食糧増産のために大蔵省は金を出さないという、そんな姿勢がある中で、しかしやはり食糧増産はやらざるを得ない、そこで高度集団栽培という方法を考える。考えるけれども、それを表面に出せばぐあいが悪いから、協業の助長でありますと言って予算をもらわなければならぬ、そういう状態にいまの日本農政はなっているのですか。
  208. 坂田英一

    坂田国務大臣 そういうことはないと思います。
  209. 松井誠

    ○松井(誠)委員 そういう事実があるということを、大臣もひとつぜひ認識をしていただきたい。  そこで、この高度集団栽培というのは、確かに協業組織の助長にはなる、それは間違いないと思うのです。ただ私は、農林省が、それではこの協業の助長から将来共同経営というところまで考えて、高度集団栽培というものを考えておるのか、あるいは高度集団栽培の経過の中で、大きな自立経営農家ができるということを期待してこれを進めておるのか。構造政策上どういう考え方でこれはやっておるのですか。
  210. 坂田英一

    坂田国務大臣 松井さんのおっしゃる点で、非常に私にも共鳴できる点がたくさんあるのであります。そこで、特に申し上げておきたいと思うのですが、私は、機械類の発展ができた場合に、それが技術的に十分でないというものであったならば、使わぬほうがいい、しかし、技術的に非常に進歩したりっぱなものであるならば、私は、やはりその進歩した機械をどんどん農業にも取り入れていきたい、こう考えております。ところが、それは簡単に言えば、これはよく存じておられる方にそんなことを申すことは恐縮ですが、たとえば汽車ができれば汽車を利用していきたい、これは当然のことであります。ところが、大きな機械ができたからその大きな機械に合わせて経営をどうしよう、こういうことを考える、これは大間違いです。だから、大きな機械ができて、それに合うような経営をやろうとすれば、それはおそらく日本でも五十町歩や六十町歩の経営にしなければならぬ。そうすると、一部落に一軒の農家ができるだけであって、それは何らの価値のないものです。しかし、りっぱな進歩したものを使っていきたいということになれば、それを使い得る、導入し得る、それを受け入れるところの態勢が必要である、こう私は思うのです。その態勢の一つがこれで、こういう方式による一つの態勢ということがあろうと思う。それから私は、それのみでなしに、たとえば開拓地などに行きますと、百五十町歩持っておる。そこへ相当有利なものを持っていこうとするときには、一人一人がそんなものを持ったら容易でないのです。そこに非常に間違えた指導をやって、大いに失敗した例がたくさんあるのです。これはよくないのであって、そういうところは、百五十ヘクタールぐらいならば大きなのが二台あればいい。これはだれでもそうです。二台あればいいということになれば、それは村で持つなり農協で持つなりすればいい、こういうことであろうと思います。もちろん、これはそれだけのことではないので、そういうことをやろうとすれば、時期を統一したり、品種を統一したり、それからいろいろその間においてまた十分協力していく面がなければやれないということもあろうと思いますが、そういうようなことで、これによって大きな発展を見ていき得るということが相当あろうかと思っております。しかしながら、日本の場合に、これだけで進むべきものではないと私は思います。それはやっぱり山村地帯においては、当然そんなことをやろうとしてもできはしません。だからいろいろな形が出てくる。よくわかっておられる松井さんに言うのは恐縮至極ですけれども、これは地帯によって全部違うということ、これほど違う姿はないと思う。これを一律にやろうとするところにいろいろな問題が起こるのであろうと思いまして、これは、そのうちの一つの構想であることは言うまでもないと思います。ひとつ御協力を願いたいと思います。
  211. 松井誠

    ○松井(誠)委員 大臣の持論がまた出たわけですけれども、この高度集団栽培を私がお聞きをしたのは、これが協業化、共同経営に発展をしていく過程としてつかまえるのか、あるいはそうじゃなくて、高度集団栽培の農民の中から、専業的な農民がだんだん大規模な自立経営農家として発展をしていく過程としてつかまえておるのか、どっちにするかによって多少の指導の違いがあろうかと思うのですよ。この高度集団栽培の機械を入れる入れ方にしても、その高度集団栽培の経営主体じゃなくて、農協なり役場なりに入れる場合と、高度集団栽培の経営主体そのものがその高性能な機械を買うという場合と、あり得るわけでしょう。それも、この高度集団栽培をどこに持っていこうとするのかという考え方によって、違ってくるんじゃないかという気が私はするのです。ですから、どっちに持っていこうとするのかということをお尋ねしたい。
  212. 坂田英一

    坂田国務大臣 これはもちろん共同によるところの、いわゆる進歩した機械の導入のしかたである、こういうふうに、機械のほうから見た場合ですね、共同です。
  213. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 松井委員の御質問は、行政庁として指導をいたします場合に、この中から自立経営を育てていく気なのか、協業経営の面で進めていく気なのか、こういう御趣旨だと思います。大体これは、機械その他は地元の農協等の所有にいたしておりまして、私どもとしては、一種の協業組織と申しますか、作業の共同事業と申しますか、そういう方向で育てていこうと考えております。
  214. 松井誠

    ○松井(誠)委員 この集団経営というのは、個別経営が集まっただけであって、協業組織であって、共同経営ではないわけです。ですから、この共同経営を発展させていくためには、一体機械をどっちに持たしたらいいかという問題が出てくるかと思ってお伺いをしたわけですが、私は、何も共同経営か自立経営か、二者択一でどっちかでなきやならぬというようには必ずしも考える必要はないんじゃないかと思います。しかし、高度集団栽培の中で、共同経営に発展していく条件のあるところはそれでいくでしょうし、しかし、たとえば運営の中心になっておる機械のオペレーターみたいな者も先進的な知識を持っておる、そういう者が大規模な自立経営にいく段階としての協業だってあり得るし、それがむしろ自然だという条件の場合もあり得るだろうと思う。しかし、どっちにしましても、それが経営の規模を飛躍的に拡大するという、そういう見通しがなければ、いつまでも個別経営の集団というだけではいずれは壁にぶつかるであろうと思う。高度集団栽培という形式だけでは、いまの生産力が低下をするという隘路はそれだけでは防げないのではないかと私は思うのですが、ひとつ、これはどういう形になるのかよくわかりませんけれども、ことしから、予算の説明書によりますと稲作の集約指導地域というものをつくってやる、これは米の増産政策一つであるように思うのですけれども、どういうことですか。
  215. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 四十一年度に米の生産対策の増強の一環として新規にとりました予算でございますが、非常に技術的な問題がございますので、詳細に申し上げることを省きますが、要するに、水田の反収を今後上げますためには、水の管理のしかたを適正にいたしますことと、土壌の肥沃化等について集中的にものを考えるという二つが、技術的には必要であるというふうにいわれておるわけであります。そこで、一定の団地について水のかけ引きの操作のできる地帯を選びまして、そこで現在稲作技術上考えられております水のかけ引きの技術を前提として、さらに土壌の改良資材等の助成をいたしまして、水の管理と土壌の肥沃化ということを中心にものを考えていけば相当反収が高くなるはずであるということを展示的にやってみたい。もちろん、その場合に、従前の展示圃のように一反や二反ということでありませんで、五十ヘクタールとか、そういう非常に大きな区画をとってやっていきたい。もしその中に組織化等の問題が可能であれば、先ほどの高度集団栽培事業等もダブらせて実習することは可能であろうというふうに考えております。要するに、水の管理と土壌の肥沃化というものを前提にして、その区域の中の水のかけ引きあるいは土壌の肥沃化を十分やれば、反収はまだ十分上げ得る余地があるということを集中的に指導をいたしまして、展示をしていく、それが逐次他へも広がっていくことを期待する、そういう事業でございます。
  216. 松井誠

    ○松井(誠)委員 協業組織が共同経営に発展をする、それの一番はっきりした形は農業生産法人だと思うのですが、この農業生産法人で最近非常に問題になっておるのがある。それは、一昨年に発足をした、庄内平野の地方で農業生産法人が六十幾つ一挙にできた。それはその後多少減ったのはありますけれども、まだ五十幾つか、りっぱに共同経営をやっておるわけです。ところが、この問題は日を改めて詳しくいずれお伺いをしたいと思うのですが、それは農業生産法人になったために、個別経営の場合よりは不利な問題が出てくる、あるいはその農業生産法人に労力を提供しておる農民が、ほかの企業の労働者と同じような社会保障を受けにくい、あるいは受けられない、失業保険がどうだとか、労災保険がどうだとか、あるいは法人税の問題がどうだとか、いろいろな問題をかかえておる。しかし、その中で農林省だけで考えられる問題としては、たとえばその土地改良区なら土地改良区に法人として加入する。土地改良区の議決権は法人も一個だということになると、個別経営で土地改良区に加入をしておった場合よりは、少なくとも議決権の面においては不利になる。そういうものを制度的にひとつ直すというようなことを考える必要はないか。あるいは農業金融について、共同化の場合には個人経営の場合よりも何がしかワクは多いようですけれども、しかし、それは共同化といっても三人や五人じゃなくて、庄内地方のように十何人、二十何人あるいは数十人というような大きな規模になると、いまの農業金融のワクではとてもまかない切れない。そういうものも特別な措置というものが必要ではないか。この農業生産法人というものが、大蔵省はどう見ておるかは別として、少なくとも農林省としては、これが共同経営の真正の形だというたてまえであれば、協業を助長するというたてまえからいっても、そういう隘路というものは除くべきじゃないか。概括的にひとつ大臣からお答え願いたいと思います。
  217. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 土地改良区と農業生産法人との関係についてお答え申し上げます。  土地改良法では一人一票主義で、農業生産法人だからといって複数の議決権を規定してないわけです。これは実はなかなかむずかしい問題がございまして、旧法でございますが、耕地整理法では、一人一票ということをたてまえとしながら、規約によって複数の議決権を認めていたわけです。土地改良法に乗りかえますときに、いわば組合員平等の原則ということで、一人一票に改めたわけです。現在でも、立場はやや違いますけれども、完全な一人一票よりも、むしろ耕作面積で多少のウェートをつけたらどうかという議論が実はいろいろあるわけでございますけれども、それも現在のところ一人一票という原則をくずしておりません。農業生産法人の問題は、私が申し上げました面積の問題とはやや違って、人の問題でございますから、場合によっては農業生産法人に複数の議決権を与えてもおかしくはないではないかという議論があり得るだろうと思います。   〔委員長退席、倉成委員長代理着席〕 この問題は、私は、土地改良法の将来の問題として検討をいたしたいというふうに思っております。ただ、非常にむずかしい問題は、農業生産法人といっても、まだいわば過程、つまり出たばかりで、それがどういうふうに成長していくかわからない状態でございますから、農家が完全に農業生産法人に組織されて、農家たるの実態を全然失っている場合は、御指摘のようなふうにしても実態としてかまいませんけれども、場合によりましては、農業生産法人を組織しながら、なお農家としての実態を残すという問題もございますから、法律上もなかなかむずかしい問題があるわけでございます。これは私は将来の問題として検討をいたしたいというふうに思います。
  218. 松井誠

    ○松井(誠)委員 私も、確かに、大農、中農、小農というようなものが、そういう経営規模の広さによって議決権というものが変わるのはおかしいと思うのです。しかし、農業生産法人の場合は全く違うわけですね。ですから、農業法人の場合に、面積を考慮して議決権をやったからといって、一般の農民の場合にまで影響するとは考えられないし、そういう区分けをしたたてまえでやるということがむしろ必要だと思う。それは技術的にも可能でもありますし、そしてそれが庄内地方の現状を見てみますと、そういうところから一つ一つ解決をしてやっていけば、この農業生産法人というのは、単に失業保険目当てだとか労災目当てだとかいうことじゃなしに、ほんとうに専業農家同士というものが機械の過剰投資を避けながら所得を上げていくという、そういう真剣な取り組みから生まれた組織であるだけに、農林省としてもぜひいろいろな点で注目をして、それこそ大臣、熱意を持って守っていってやっていただきたいと思うのですが、いかがなものでしょうか。
  219. 坂田英一

    坂田国務大臣 農地局長の申したとおりでございます。
  220. 松井誠

    ○松井(誠)委員 違いますよ。私がお尋ねをしたのは、この農業生産法人というのは、農業生産上やはり前進的な好ましい形なんだ、だから、これを育てるという姿勢で対処をするようにしてもらいたいと思う。その点については農地局長は別に答弁はしないのです。
  221. 坂田英一

    坂田国務大臣 その点は、松井さんのお説のとおり守っていきたい。いま特に果樹関係とか畜産関係に非常にそれが多くなってきておるというふうに思います。
  222. 松井誠

    ○松井(誠)委員 この庄内地方の農業生産法人の問題については、非常に大きな問題がありますし、いずれ別な機会にいろいろお伺いしたいと思いますが、最後に一つお尋ねをしたいのです。  私は、いままでは、言ってみれば、農業経営の条件が恵まれているところの問題を主としてお聞きをしたわけです。いろいろ問題があって、むずかしいには違いありませんけれども、しかし、この平坦部の農業、米作については、おぼろげながらレールが敷かれたような、あるいは敷かれるような気がするわけです。しかし、何とも手をあげざるを得ないというのは僻地だと思うのです。山村とか漁村とか、そういう僻地を一体どうするかという問題になる。そのことを私は最後にお尋ねをしたい。  今度山村振興法ができて、振興山村の指定があって、農林省はその振興山村についての特別な対策を考えているようでありますけれども、それを簡単に一通りお示しをいただきたい。
  223. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 山村振興法に基づきます特別開発事業は、新市町村の区域で一山村当たり三千万円の事業費を一応頭に置きまして、中身は三つ考えております。  一つは、従前の公共事業、たとえば圃場整備でございますとか、漁港でございますとか、あるいは林野庁の林道の事業でございますとかいうようなことで、それぞれ補助の採択の基準なり受益面積というものがございますが、そういう対象に乗らないような土地改良事業、あるいは小さな漁港の事業だとか、そういうようなものをやりますことが一つ。  それからもう一つは、やはり山村でございますので、農産物の集荷とか加工等のための施設も十分ではございませんので、そういう近代化のための施設の事業が一つ。  それからさらに、直接生産対策としての関係はございませんけれども、非常に通信が不便であるから、有線放送の施設が必要である、あるいは保育所、託児所、簡易水道といったようなものが必要であるという環境整備的な事業、そういうような事業を、いわゆるメニュー方式で地元の市町村長を通して計画を立ててまいりましたものを、五〇%補助率で四年間にわたって今後事業を実施してまいる、そういう内容でございます。
  224. 松井誠

    ○松井(誠)委員 それはかつての新農村建設事業のように、そのうちどこか一つ好きなものをお取りなさい、そういう形式になるわけですか。
  225. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 事業量の三千万円の範囲において、その村の事情に応じて必要な事業を選んでいく、そういうことでございます。
  226. 松井誠

    ○松井(誠)委員 それは指定山村ではない一般の地域の公共事業よりは、特別な配慮がされているわけですか。
  227. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 一般の公共事業につきましては、山村であるという理由で採択基準をそれぞれ下げているわけでございます。農地局は農地局で、林野庁は林野庁で。そのほかに、いま申しましたのは、一般の公共事業とは別に、一般会計で一町村当たり三千万円の事業量で、それらの公共事業でまだ救えないようなものについて、必要に応じてカバーしていく、そういうことでございます。昨年指定をいたしました以後、正式の計画がまだ年度末までに上がりてまいりますので、その上で細部の点はきめたいと考えております。
  228. 松井誠

    ○松井(誠)委員 山村振興法ができて、曲がりなりにもいまのような政策が出てきた。これは欲を言えば切りがありませんけれども、なきにまさるものだとは思う。しかし、大臣ひとつ聞いていただきたいのですけれども、山村とか漁村とか、そういうところに対する農林省の姿勢というのは、先ほど大臣自身が言われましたけれども、全国的にまずその原則をつくって、そうして山村や漁村はそれの例外だというような考え方では、私はとても救えないと思う。そうじゃなしに、山村や漁村に対する政策というものの原則は別につくる、そういうかまえでなければ、たとえば原則的な採択基準はこれだけだ、しかし、山村や漁村についてはその採択基準はこれだけ下げますというように、原則に対する例外的な扱い方をしておる限りは、いつまでたっても私はうまくいかないだろうと思う。つまり、山村なり漁村なりというものを、そこにおける農林水産業を発展をさせるためには、もっと恵まれておる地帯とは別な原則で初めから立ち向かわなければだめなんだ。たとえば具体的に申し上げますと、漁業の構造改善というのがあります。漁業の構造改善事業の中で、受益戸数何十戸というのがあるわけですけれども、その受益戸数計算するのには二種兼業は入らないのですね。一種兼業以上しか入らない。ところが、実際に僻地の漁村へ行ってみますと、二種兼業を除いたのではなかなかその基準に合う受益戸数というものがないという実情が多いのです。なぜそうなるかといえば、そういうところは半農半漁だからです。三割は漁業、三割は農業、三劇は山へ行く。したがって、専業というものがない。だから、農業構造改善もそこを素通りをする、漁業の構造改善も素通りをする、みんなそこを素通りをしてしまうわけですね。ですから、そういうところにはつまり総合的な施策というものを別な原則に基づいて立てなければ、いつまでたっても例外的な扱いしかしていけないのじゃないか、こういうように考えるわけですよ。この点についての大まかな意見としてはいかがですか。
  229. 坂田英一

    坂田国務大臣 あるいは答弁にならぬかもしれませんが、この山村振興法に例をとりますと、今度は林野庁に置くということでなしに、企画庁にその山村振興全体の総合的な企画を立てるために一つの課を設けたわけです。それで、その主力はもちろん農林省でやらなければなりませんけれども、そういうかまえの上に立ってやります。したがって、道路にしましても、町村道というのは、やはり山に持っていきますから、これはたとえば建設省のほうから、特別に山村については九億六千万円ぐらいのものはこの振興山村という、いわゆる指定した方面に使っていくというふうにする、そのほか、いま農地局長が言ったように、農地局として考えられた問題で自発的にいろいろ計画を立ててやるということもありますので、まあ、ある意味においては、松井さんのおっしゃったように、そういままでの型にはまった行き方というものでなしに、ひとつ総合的にこれらの問題に向かって努力をしていこうというかまえの上に立っておるわけです。ただし、実行第一年でございますから、まだ十分なわけではございませんでしょう。それでも相当これは効果をあげるのではないか、こう考えております。
  230. 倉成正

    ○倉成委員長代理 松井君の御質疑は、指定の基準についての御質疑が中心だったと思いますから、局長からひとつ補足して……。
  231. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 先ほど私申し上げましたことは、ことばが足りませんでしたかもしれませんが、御指摘のように、いままでこういう山村の地帯ではいろいろな公共事業の採択基準がございまして、それを少しやわらげたり、あるいは補助率を上げたり、そういう原則の例外として扱っておったのではないかということを御指摘になって、そういうことではなしに、山村は山村としての別個の立場で事業をやる、そういうことは考えられないか、こういうお尋ねであったと思います。  それで、先ほど私申し上げましたように、現在公共事業としてやっております事業につきましては、今回指定山村ができましたことに合わして、新たに採択基準の緩和をいたします。それはなるほどおっしゃるように例外部分でございますけれども、それとは別に、一市町村三千万円の事業費の範囲で、特に基準その他についてやかましいことを言わずに、地元の希望にこたえて事業をやっていきたいという形で、総合性を発揮することを山村振興では考えておる、こういうことでございます。
  232. 松井誠

    ○松井(誠)委員 私はもっと具体的にお聞きをしたのです。たとえば農業構造改善、漁業構造改善というようなばらばらなものでは、こういう半農半漁のところは適用の余地がない。だから、そういうところの構造改善事業というものは、初めから総合的な構造改善事業という別な原則を立てるべきではないか。つまり、半農半漁のところは、言ってみれば、漁業と農業との総合的な構造改善事業というようなことを考えなければ、それは労力の配分にしても何にしても、専業的な漁民のおる場合、専業的な農民のおる場合と違う。労力の配分もあるわけだし、いろんな問題を考えて、ともかく総合的な、たとえば構造改善に限って言えばいそういう総合的なものが初めから必要ではないか。あるいは農協とか、漁協とか、森林組合とかいうものがばらばらにあって、そのどこもほとんど人がいない。そういうくらいなら、むしろそういうものを一緒にして一つの協同組合にして、そこが総合開発のいわば拠点になるような、そういう構想だって必要ではないか。そうしなければ、いまの原則的な構造改善事業の例外的な扱い方を受けておる限りは、素通りしてしまう。そういうことについての基本的な御意見を実は聞きたいのです。私は持ち上げるつもりではありませんけれども、赤城さんはどっちかといえば経済合理主義者的なところがありましたけれども、坂田さんは農本主義的なところがあるので、そういう体質に期待するわけだけれども、たとえばそういう山村とか漁村とか、どうにも手のつかぬところはもうほうり出してしまうよりしようがないという合理主義からいくのではなしに、人間がそこに一人でも住んでおる限りは何とかしてやらなければならぬ、そういうところから、大臣在任中に、この僻地についてのそういう基本的な取り組み方について、新しい原則を打ち出してもらいたい。いかがです。
  233. 坂田英一

    坂田国務大臣 だから、いま申しましたように、答弁が合わぬかもしれませんが、構想を変えて総合的にやろう、だから、農林省だけでなしに、まず形を変えて、建設省は建設省で道路までもいこう、やはり山村をやるのには道路が要ります。それから林道も要るし、いろいろのものを総合的に考えていく、そういう意味の山村振興というものを今度はやろう、したがって、企画庁にそういうことを総合的に調査をしたりいろいろやるところの課を一つ置いたということで、これは全体が総合的にいこう、もっとも、その内容そのものについてはまだ貧弱なことは、第一年目ですからそうでもあろうが、こう思ってさっき申し上げたわけであります。
  234. 松井誠

    ○松井(誠)委員 これで最後にしますけれども、そういう僻地の振興というのは、やはり農林省が主管をしておる一次産業の振興以外にないわけであります。ですから、その計画がまずできて、その計画を実現するためには建設省は何をしろ、文部省は何をしろということでなければならぬと思うのです。ですから、やはり主体は農林省なんですから、よそさんと相談するということでなしに、農林省がやはりイニシアチブをとって、僻地の開発にぜひ情熱を傾けていただきたいと思います。  これだけで終わります。
  235. 倉成正

    ○倉成委員長代理 江田三郎君。
  236. 江田三郎

    ○江田委員 ちょっとさっきの松井さんの質問に関連してお尋ねをするのですが、先ほど松井さんが熱帯農業の試験研究のことについて触れられたのは、要するに、日本食糧の不足をカバーするだけの目的でやっているのではないかという質問があったのですが、大臣答弁は何かわけのわからぬようなことを言われたのですが、ここで熱帯というのは、具体的にはどこをさしているのですか。
  237. 坂田英一

    坂田国務大臣 やはり大体東南アジアを主として考えておりますけれども、別に深く区域をなにしようというのでもありません。それから経済問題は、それは関連してむずかしい場合があっても、これはあまり考えていかない、結局技術本位で研究をしていこう、こういうことでございます。つまり、それはどうかと申しますと、経済とか政治とか、そういう問題から全然離れまして、技術中心に考えていきたい、こういうことです。もっとも関連したことはありましょう。それはあると思うが、やむを得ず起こることでもありましょうけれども、技術中心、こういうことでございます。
  238. 江田三郎

    ○江田委員 そこで、東南アジア中心というふうに言われたのですが、沖繩はどう考えられるか、この際、沖繩を対象に入れて考えておられるのですか。
  239. 坂田英一

    坂田国務大臣 もちろん、これはそういう技術中心でございますから、いまも申しましたように、区域をどこからどこということでなしに、大体熱帯農業、こういう気持ちでおりまするから、もちろん沖繩なんかも入り得ると思います。
  240. 江田三郎

    ○江田委員 だからあなたの答えは、やはり東南アジアということが出てきて、沖繩と私が言えば、それも含むんだ、こう言われるのですけれども、実際沖繩の農業というものを見た場合、甘蔗にしたところで、あるいはパイナップルにしても、きわめてお粗末な農業です。しかも甘蔗をやったところで、家畜が全然いない。これは農業とは言えぬわけです。沖繩に対して社会保障その他の面においてわれわれも積極的な協力をしなければならぬ。いま植民地がどうとかいうむずかしい問題は一切触れませんけれども、そういう中で沖繩農業をどうするかということは、これは東南アジアよりもまっ先に取り上げなければならぬ問題じゃないかと思います。だから、そういう中でどれだけ沖繩のことを考えておるのか。かりに沖繩のことを考えておるのなら、あそこには大学もありますけれども、いろいろなことがありますが、具体的にはどういうことをしようとするのか、少なくとも大蔵省から新しい予算をとられた以上は、相当具体的なものを持って折衝されておると思うのです。その内容をちょっと知らしておいてください。
  241. 坂田英一

    坂田国務大臣 技術会議事務局長をいま呼んでありますので、近いうちに参りますから、なにしますが、沖繩の問題は特別になにというのじゃありませんで、現在沖繩の問題については、御存じのとおり、総理府で扱っております。私もこの前沖繩に行ってまいりまして、甘蔗の問題、パイナップルの問題等、島もずっとある程度回ってまいったのでございますが、ほんとうに主食にしたって一〇%程度でございます。食べ物のほうは輸入だけでございます。そういう関係で、畜産のほうもこれは相当進み得る素地を持っておりますが、それはまだ十分ではないといういろいろな点は、江田さんと私も同感でございます。したがって、そういう点は、政策としてあるいは経済政策としていろいろ問題はあろうと思いますが、私どもの今度のこの熱帯のほうは全く技術研究ということでございます。向こうで米をつくるときはどうか、何はどうか、こういうふうに技術研究ということでございます。いままでもいろいろ日本のほうから技術の人々がインドのほうまでも出かけておるわけでございます。御存じのとおり、いろいろやってはおります。現在日本の技術者も熱帯についての知識が全然ないことはない。相当持っておりますので、向こうでも相当効果をあげておると思います。沖繩も重要である。しかし、もっとそれらの問題に深く検討を加えておく必要がある、こういうことでございます。  それからなお、それは技術協力という問題だけでなしに、その範囲をずっと広げることによって、日本の技術陣営の技術をうんと進め得るであろう、こういうことも二面的には期待しておるわけでございます。ただ、それを当初予算要求におきまして、国立とかいうことにせずに、特殊法人にいたしましたのは、そこへ行ってきた、あるいはそこに使いする、あるいは派遣された人々が、帰ってきてからさっぱり連絡がなくて困るといったような、いろいろ問題があろうと思いまするので、これはいわゆる特殊法人にいたしまして、そうしてその点はある程度融通のつく方法で見ていこう、こういう考え方でございました。しかし、四十一年度は特殊法人の設立は認められませんでしたので、農林水産技術会議事務局の中にこれについての事務体制を整備することといたしております。
  242. 江田三郎

    ○江田委員 いま大臣のお答えを聞きましても、沖繩農業がこのまま捨ておけないんだということは十分に認識しておるようであります。したがって、私どもは、当然今度の新しい仕事の中に相当沖繩にウエートを置いたことを考えておられると思っておるわけです。だから、あの構想の中で、沖繩についてはどういうことをしようかという具体的なお答えだけ伺えばそれでけっこうです。
  243. 久宗高

    ○久宗政府委員 前の御質問の経緯を存じ上げないのでございますが、いまの御質問と関連いたしまして、沖繩は、熱帯及び亜熱帯の技術を対象にいたしておりますので、関係地区にはもちろん含まれるわけでございますが、沖繩自体の試験研究の組織につきましては、御存じのとおり、総理府のほうで総括してやっておりまして、それとの関連におきまして処理をいたしたいということで、熱帯農業研究と直接関連いたしまして施設を設けるとか、あるいは人を出すとかいうようなことは考えておらないわけでございます。
  244. 江田三郎

    ○江田委員 あといろいろ言いたいことがありますが、関連ですから、それだけ聞いておけばけっこうです。
  245. 倉成正

    ○倉成委員長代理 次会は、来たる二十三日水曜日午前十時から理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十八分散会