○
安田参考人 それでは御
指名に従いまして、私から最初に
意見を若干申し上げたいと存じます。
ただいま御
審議をいただいておりまするこの
法案の
目的といたしますところは、
糸価の安定ということと、それから
農家の
養蚕経営の安定ということに
目的がある、かように私は
理解をいたしております。
特に私
どもが最近
わが国の
養蚕業の
状況を見ておりますと、いろいろと
増産の施策をしておりますのにかかわらず、なかなか繭がふえない。むしろ減産の
傾向があるわけでございます。これは申すまでもなく、
わが国の
産業構造の
変化、簡単に申しますならば、
工業国にだんだん変わってきている、かように考えるのでございます。
生糸の
先進国でありまするフランスでありますとかイタリアも、ちょうどだだいまの
日本と同じような
傾向をたどりまして、現在では
輸入国になっておりますことは、
皆さま御存じのとおりでございます。
もっと具体的に申しますならば、
農村の
農業人口の減少、それに伴います
農家の労賃の高騰というようなものが、
蚕糸業の発展をはばんでいる、かように私は考えるのでございます。ことに最近は、
農家も非常に
経営につきましては、
進歩というとたいへん失礼でございますが、計画的になっておりますので、繭をつくりまして、これが
幾らで売れるかということがはっきりしない、できたときの相場で売買されるのだということでは、私は、昨今の
進歩した
農村ではなかなか
養蚕業に力を入れないのではないか、かように考えております。
この
法律を
提案をしていただきまする背景といたしましては、
製糸業と
養蚕業というものが緊密に手を握ったのでございます。
わが国のこの
業界の
歴史を考えますると、
製糸と
養蚕というものは常に
対立をいたしまして、繭の買い手と売り手、ただいまでも
立場は同じでございますが、
製糸のほうはなるべく繭を安く買いたい、
農家のほうはなるべく繭を高く売りたい、これが過去の
歴史でございます。しかしながら、ただいま冒頭に申し上げましたような
わが国の
養蚕業の
状況から考えますと、かような
対立をいたしておりましたのでは、繭はふえない。繭がふえなければ、
わが国の
蚕糸業はだんだん衰退をしていく、かように私
ども製糸業者も気がついたわけでございます。これは互いに手をとり合って、何とか繭をふやさなければならぬ、かような
意味におきまして、私
どもはかねてから
製糸養蚕懇談会というものを持ちまして、緊密な連絡をとっております。また、私いささか個人の
意見になりまするが、私は、
農家が繭を掃き立てまする前に、ことしの繭は
幾らくらいで買ってあげますよ、こういうことを約束しなければ、なかなか
養蚕をやる人がふえないだろう、かように考えております。私
どもはこれを
事前協定、こういう名前を使っておりますが、遺憾ながら、私がずいぶん口をすっぱくして言うのでございますが、まだまだ
製糸業者はそこまでは至っておらぬ。と申しますることは、
事前に
協定をいたしまして、実際に繭が出てくるまでの間にかなりの期間がかかりますので、どうしてもそれはリスクが大きい、こういうことでございます。しかし、今度ここでお取り上げを願っておりまするのは、もう少し繭の出回る近くになってひとつ繭の
価格を保証しょう、これは
農林大臣がお定めになります
基準糸価、そういうものでひとつ
製糸業者もその
価格を保証しよう、こういうことに踏み切ったのでございます。これは従来の
製糸業から申しますと、清水の舞台から飛びおりた、こういうことだと思います。しかしながら、こういうことによって、まず繭というものの
価格をこの
程度まではお買いいたしますということをお約束して、そうして繭を
増産しなければならない、これが現在の
状況でございます。
〔
倉成委員長代理退席、
委員長着席〕
いろいろすでに
関係の御
当局からこの内容につきましては御説明があったことと存じますが、これの
骨子といたしまする
日本蚕繭事業団、それは大体
繭糸価格安定法の定めておりまする
最低糸価の一割高がこの
蚕繭事業団の
発動の時期でございます。ただいま御
審議をいただいておりまするこの
蚕糸事業団といたしましては、それよりもうちょっと上のところでひとつ
基準価格というものを設けて、そうしてそれを
製糸のほうは
農家に約束をしよう、保証をしよう、こういうことでございます。私がこの
法律を御可決いただくことを
熱望をいたしておりますのは、かようにいたしまして、どうか
わが国の
蚕糸業、
養蚕業というものを
振興いたしてまいりたい、かように考えております。過去におきましては
生糸は
わが国の
輸出の大宗ということで、いろいろな
国家的保護を受けておったわけでございますが、時勢の移り変わり、
わが国の
輸出貿易の品目の中の
変化によりまして、その占めておりますシェアはたいへん小さくなっております。しかしながら、なおかつ
相当の外貨を獲得いたしてきております。さような
意味で、私はこの
法律で
繭価を保証することによって
増産を進めたい、そういう
意味で賛成でございます。
同時に、もう
一つの
目的でございまする
繭糸価格の安定の問題でございます。これはただいま
繭糸価格安定法並びに
糸価特別会計によりまして、
最高、
最低の——具体的にただいまきまっておりまする金額で申しますれば、キロ四千円と五千五百円の間でこれを安定させよう、いわゆる異常な
暴騰、
暴落をこの
法律で安定をさせよう、しかしながら、常にこれは内外の
業者から指摘をされておるのでございますが、その幅が大き過ぎるじゃないか、こういうことでございます。そこで、できますことならばもっとその間で、小幅の中で安定するような
方策がないものであろうか。もちろん、非常に大きな変動というものは、この最後の防波堤でありまする
安定法によってぜひとも守っていただかなければならぬ。しかし、実際に
生糸を扱います者、売る者から、これをつくって
織物にする者、また
織物を売る者、かような
段階の者といたしましては、もうちょっと小幅でこれを安定させてもらいたい、そういう
希望はもう
業界の悲願でございます。そういうような
意味におきまして、この
法律は、ただいま申し上げました
基準糸価というものをいうなれば
最低にいたしまして、五千五百円以下のところで、それがそのとき妥当であるということならばひとつ安定をさせよう、そういうことを
目的にしておるように思いますので、これまた言うまでもなく、私
ども製糸業者としてぜひとも
達成をいたしたい、かように
希望をいたしておる次第でございます。
また、
繭糸価格安定法というもので私
どもはこの
業界に生きてまいりましたが、ときどきこうしてもらいたいなと思うときがあるのでございます。それは、
輸出のためにもまた国内の
需要をまかなうためにも、五千五百円でなければ、いまの
繭糸価格安定法によりますと、
政府が糸を持っております場合これを売ることができないのでございます。しかしながら、
業界の
事情、特に
輸出の
振興というようなときには、五千五百円以下でもぜひ
政府に売ってもらいたい、売ることが適切である、かように判断をされますことがしばしばございます。そういうときに、やはりこの
法律を
改正をいたしまして、適時適切に
政府の糸が売れるようにしていただけるならばたいへん好都合だ、かように常日ごろ考えております。今回
政府当局におかれましても、私
どもの
希望をおくみ取りくださいまして、
関連法案として
繭糸価格安定法の一部
改正を御
提案を願っておるのでございまするが、これまた私
どもとしてはぜひひとつ
達成をしたい、かように考えておる
案件でございます。
たいへん簡単で大まかではございますが、私
どもの
熱望を申し上げまして、また何か御
質問がありましたら、後ほど知る限りのことは
お答えいたしたいと存じます。(
拍手)