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1966-03-17 第51回国会 衆議院 内閣委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年三月十七日(木曜日)    午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 木村 武雄君    理事 伊能繁次郎君 理事 岩動 道行君    理事 辻  寛一君 理事 長谷川四郎君    理事 藤枝 泉介君 理事 大出  俊君    理事 田口 誠治君 理事 山内  広君       臼井 莊一君    小川 半次君       加藤 高藏君    金子 岩三君       纐纈 彌三君    塚田  徹君       野呂 恭一君    藤尾 正行君       保科善四郎君    堀内 一雄君       前田 正男君    湊  徹郎君       赤路 友藏君    稻村 隆一君       中村 高一君    村山 喜一君       楢崎弥之助君   米内山義一郎君       受田 新吉君  出席国務大臣         外 務 大 臣 椎名悦三郎君         農 林 大 臣 坂田 英一君         国 務 大 臣 藤山愛一郎君         国 務 大 臣 安井  謙君  出席政府委員         総理府事務官         (経済企画庁長         官官房長)   澄田  智君         総理府事務官         (経済企画庁国         民生活局長)  中西 一郎君         総理府事務官         (経済企画庁総         合計画局長)  鹿野 義夫君         外務政務次官  正示啓次郎君         外務事務官         (大臣官房長) 高野 藤吉君         外務事務官         (アジア局長) 小川平四郎君         外務事務官         (欧亜局長)  北原 秀雄君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         水産庁長官   丹羽雅次郎君         海上保安庁長官 栃内 一彦君  委員外出席者         海上保安官         (警備救難部         長)      猪口 猛夫君         専  門  員 茨木 純一君     ————————————— 三月十七日  委員海部俊樹君及び茜ケ久保重光辞任につき、  その補欠として金子岩三君及び赤路友藏君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員金子岩三君及び赤路友藏辞任につき、そ  の補欠として海部俊樹君及び茜ケ久保重光君が  議長の指名委員に選任された。     ————————————— 三月十七日  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法  律案内閣提出第一五号)  内閣法の一部を改正する法律案内閣提出第一  〇〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  経済企画庁設置法の一部を改正する法律案(内  閣提出第二五号)  外務省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第二八号)  在外公館名称及び位置を定める法律の一部を  改正する法律案内閣提出第二九号)  在外公館に勤務する外務公務員給与に関する  法律の一部を改正する法律案内閣提出第八三  号)      ————◇—————
  2. 木村武雄

    木村委員長 これより会議を開きます。  経済企画庁設置法の一部を改正する法律案議題とし、審査を進めます。  質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。伊能繁次郎君。
  3. 伊能繁次郎

    伊能委員 大臣まだお見えになりませんので、採決には若干時間があろうかと存じますので、中西国民生活局長出席ですから、一言。一昨日の物価問題懇談会においていろいろ論議をせられたことが新聞紙上伝えられておりますが、その際、公共料金、なかんずく公営企業あるいは民営企業運賃関係等についていろいろな論議が出たとか、そのうち都留委員から、運賃等公共料金については算定基準を設けたらどうかという意見があったとか伺っておりますが、この問題は経済企画庁自身においても、かねて政府内において基準運賃というような考え方で今後の処理をしていかれるというようなことも先般来伺っておりますので、これらの関係についての政府の御見解を伺っておきたい。
  4. 中西一郎

    中西政府委員 お話しの点、第五回目の物価問題懇談会議題に出ました。いまお話しのとおり、かねて運輸当局と農林省その他実需者関係考え方等を聞きながら、経済企画庁も入りまして、公共運賃問題についてはどういうふうにするかということを問題にしておったわけですが、たまたま物価問題懇談会に三つの専門委員会ができまして、その第三専門委員会で、公共料金運輸関係、あるいはサービス料金等をやろう。その主査に都留さんがおなりになりました。とりあえず年末来の国鉄その他私鉄の問題、さらに最近では新聞紙上バスの問題なんかが出ておるがどうかというお話になりました。そこで、客観的基準というものは設けられないかという御指摘がありました。非常にむずかしいのですけれども、やってみようではないかということでございます。きょう、その第三専門委員会がちょうど十時ごろから行なわれておるはずでございます。一回や二回で答えの出る問題でないとは思いますけれども、大筋でも把握できればというようなことで勉強を始めておる次第でございます。
  5. 伊能繁次郎

    伊能委員 それについて、こういうように経済が高度に成長し、その影響として全体としての物価、その一部を占める公共料金等がアンバランスになった結果、最近政府個々会社企業体運賃実態まで精査されるというような、政府全体の行き方としてはやや片寄った行き方に進んでおられると私は思うのです。こういうような時代でない、かつての平常の時代においては、基準運賃と目すべきものはあったわけです。それは、大都市大都市交通量等に応じて一定の基準を設ける。他の中都市、もしくは僻陬地、あるいは雪寒地、こういうような大体四つの基準運賃基準が定められて、大都市交通量の多いところは、全体として輸送費が大ぜいに分担される関係上、安かった。雪寒地のごときは、年に四カ月も動かないというようなことから、ある程度の運賃に差を設けるということで、理論的な基準運賃と目すべきものではなくても、一応常識的な意味での長い慣行基準というものがあったわけです。それが最近の公共料金政府規制によってすっかりこわれてしまって、個々会社の収益の多いところは、それが労使の非常な努力の結果によって生まれたものであっても、おまえのところは利益があるから上げない。一方、労使間がうまくいかない  でのべつにストライキをやっておるとか、あるいは経営が不十分であるとかいうようなところでも、赤字を出したところは優先的に上がるというようなことでは、私は政府政策というものがない感じがしますので、その辺のところについてはいろいろ御苦労はあろうかと思いますが、今後十分な御配慮を願って、単に物価問題懇談会だけでなく、政府自体としても、関係者一体となってこの問題に対する解決をはかるべきではないか、かように考えております。特に、当面公営企業の問題でありますが、大臣見えましたから、公営企業についても私は御意見を伺いたいと思いますが、公営企業については、公営企業合理化懇談会というものが政府設置されて、いろいろと結論を出された。この問題についても、かつては名古屋であるとか北海道の札幌であるとかいうようなところの公営企業は、非常にまじめにりっぱにやって、民間企業と同じようなある程度の、これは利益というよりも、成績をげておる。ところが最近は、もうそれらの企業においてもほとんど赤字を出しておる。ことに東京、横浜のごときは非常な赤字で、これはいずれも運賃値上げを申請しておる。これに対して、公営企業に対しては低利融資であるとか、利子のたな上げであるとか、いろいろな特段措置は講じられておりますが、民間企業公営企業とを、公共事業公共料金という立場から見て政府が規制されるという場合においては、私は特段差別があってはならぬ。これは政府監督下にある。ところが、一方において公営企業については特段利益を与え、民間のものについては何ら利益を与えないというようなやり方も、片手落ちだ。そういうことであれば、赤字のところには低利資金なり何なりも、一応民間に対しての融資全体として政府公共料金と称せられる事業についての統一的な方策というものをできるだけ樹立して——要するに運賃というものは、昔から世界じゅう公定ということが運賃原則です。それは対人的に差別があってはいけない、対物的に差別があってはいけない、こういうようなことで運賃公定ということが基本の原則なんですが、最近は個々の隣の会社と隣の会社と同じ地域でも、ラップしているところは同じ運賃だが、その他は違う運賃ということは、私は運賃基準算定の上からも重大な問題だと思いますので、これらの問題について、政府当局におかれては、ぜひひとつ明確な基準をおつくりになって、業界の指導並びに監督に万遺憾なきを期して、正直者がばかを見るというようなことのない方策をお立てを願いたい、この点だけを大臣に御質問申し上げまして、私は質問を終わりたいと思います。
  6. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私ども公共料金を扱っておりまして、いろいろな問題に考えさせられるところが非常に多いわけです。ただいま伊能委員お話のありましたように、たとえば従来の例から見ますと、非常に合理化をやっておる、そしてその結果が黒字になった、非常な放漫な経営をやって赤字になって、赤字になったから値上げをする、合理化をやって非常に企業努力をしたという人に対してボーナスが出ないというような形になることは、私は、経営実態からいっても、また政府政策からいっても、必ずしも妥当だとは思いません。したがって、何らかの形で、たとえばキロ当たりの収入と労働者の数、そういうものを基準にして、合理化が進んでいるのだ、そういうようないろいろのある程度基準をつくって、そうしてそれで判定するということが望ましいことではないか。またそのほかにもいろいろ問題があろうと思います。  そこで、物価問題懇談会等においても、公共料金の問題は非常に問題になっておりますので、先般もそういういろいろな話が出ました。そのときにも、たとえば現在の状況から見て、公営企業の中には当然上げてやらなければならぬものがたくさんある。ただその説明が明快について、国民に示す必要があるのじゃないか。こういう理由で上げざるを得ない、それはやむを得ないだろうというふうに国民も理解する、あるいは市民も理解する。したがって、何らかの形でそういうものが正確に出ることが望ましいのじゃないだろうかという御意見が、ほとんど皆さんの御意見であったわけでして、今日のような過大都市化、過密都市化しております都市公営企業等については、今日のような事情からいえば、必ずしも交通を緩和していくことが鉄道あるいは電車、バス等経営者自体責任じゃなくて……。そういうふうな問題もあるわけであります。そこらも考えていかなければならぬ。そういう意味におきましていろいろな御意見があったわけで、そういう問題としてはわれわれも御意見として、承って、政府のそうした公共料金判定等につきまして、当該運輸省なりあるいはその他関係各省と相談して、あるいは自治省あたりとも地方公営企業については御相談して、やはり何らかの目安をつけて、そしてその範囲内において、政府がどうしても先行投資としてやむを得ないものについてはある程度援助をしてやらなければならぬものがあれば、そういうことも、ただ公営企業であって、しかも独立採算だからということだけでなしに、その点は考えなければならぬじゃないだろうかというようなことが考えられる。そこで、そういうふうな御意見を承りながら、われわれも将来自治省なりあるいは運輸省なりと御相談をする、われわれの考え方を公正な立場でひとつ参考として出す、こういうつもりでいま私どもやっておるわけであります。いまのような御趣旨については、われわれも十分考えていかなければなりませんが、それからまた国鉄私鉄との競合線の問題の関係、その他いろいろございます。それからたとえば立体交差をするというような場合、これは鉄道会社責任でなくて立体交差をやらなければならぬところもございますから、いまでも三分の一くらいずつのあれはありますけれども、そういうものをどういうふうに見てやるのかというような問題も、いろいろあろうかと思います。そういう点について、十分ひとつ配慮をしていくというつもりでただいまやっておるわけであります。要は、結局公共的な料金の引き上げという場合に、やむを得ず引き上げる場合には、国民が納得する説明ができるような基礎をいまつくりたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  7. 木村武雄

    木村委員長 これにて本案についての質疑は終了いたしました。     —————————————
  8. 木村武雄

    木村委員長 次に、本案討論に付するのでありますが、討論申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  経済企画庁設置法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立
  9. 木村武雄

    木村委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  なお、ただいま議決いたしました法律案に対する委員会報告書作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 木村武雄

    木村委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  11. 木村武雄

    木村委員長 外務省設置法の一部を改正する法律案在外公館名称及び位置を定める法律の一部を改正する法律案、及び在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案の三案を一括して議題とし、審査を進めます。  質疑を行ないます。  質疑申し出がありますので、これを許します。稻村隆一君。
  12. 稻村隆一

    稻村(隆)委員 ただいま提案になっております外務省設置法の一部を改正する法律案の中に、ナホトカにこちらの総領事館を置くということをうたっておりますが、これは領事条約締結しなければならぬと思うのですが、その点はソ連との間に了解がついておりますか。
  13. 北原秀雄

    北原政府委員 領事条約締結後、具体的な領事館設置問題に関しましては、領事条約交渉が終わりましてから具体的にソ連側交渉に入るつもりでおります。
  14. 稻村隆一

    稻村(隆)委員 むろん今国会に提案する意向なんでしょうね。今度の国会に、その問題は。
  15. 北原秀雄

    北原政府委員 ほんとうを申しますれば、ソ連側と話し合いのつきましたあと領事館設置につきまして国会の御承認を得ますことが、最も適当な方法ではございますが、時期の関係がございますので、一応ナホトカ日本側としては予定いたしまして、今国会在外公館設置法の改正をお願いしておるわけでございます。大体領事館設置につきましては、相手国政府希望に沿いまして設置を認めるというのが大体の国際慣行でございますので、ナホトカにつきましては、先方も何ら問題ないとわれわれ考えております。
  16. 稻村隆一

    稻村(隆)委員 領事館は、シベリア開発だとかあるいはサハリンの天然ガス開発等が問題になっておりまして、現実化そうとしております。それで私は、どうしても一カ所ではやはり不足だと思うのですが、との点外務省のほうではどう考えられますか。
  17. 北原秀雄

    北原政府委員 ソ連の中に日本側設置いたします総領事館ないし領事館につきましては、日ソ関係全般から検討いたしまして、最も必要な個所につくりたいというのが根本的な考え方でございます。私どもその場合に、最近の日ソ間の経済交流という観点からいたしまして、極東方面に重点が置かれるべきだという考えでおります。数の問題につきましては、ソ連側といたしましては、その国の特殊性からいたしまして、なるべく自分の国には外国総領事館はたくさん置きたくないというのが、先方希望でございます。逆に相手国の中にはなるべくたくさん置きたい。現実ソ連内にございます総領事館ないし領事館の数は六つないし七つと私了解しておりますが、ソ連外国に持っております数はたしか二十六、七に達するんじゃないかと思います。そういう意味で、わが国といたしましては、どうしても先方同数主義双務主義というたてまえでこれに対処していくのが、わが国立場から見た場合には最も望ましいんじゃないかと考えております。
  18. 稻村隆一

    稻村(隆)委員 それで、私は、いま直ちにいろいろな経済的な活動を開始するために、少なくとも日本では三カ所ぐらい必要じゃないかと思うのです。むろんソ連希望どおり日本の至るところに領事館を置くなんということは、これはまあ日本政府としては困難な問題だと思うけれども、たとえば大阪でありますが、大阪にはソ連の船が始終修繕をしているとか貿易関係があるとかということで、ソ連人が毎日百人くらい滞在している。これはソ連大阪に置くことを希望していると思うんですね。それからあと新潟の問題ですが、裏日本全体から見て、新潟は最近ナホトカとそれから新潟定期航路が実現されようとしておりますし、これは十九時間ないし二十三時間しかかからない。横浜までは五十時間以上かかります。しかも関越自動車道路とかあるいは北越自動車道路とかいうものが、ようやくその緒についております。そうなりますと、交通関係も非常に便利になりますから、現状では全国集荷地にはなりませんけれども、近い将来にはこれは全国の貨物の集散地になることは、私は必然だと思うのです。そういう意味におきまして、やはり新潟にこれはどうしても設けなければいかぬと私は思うんです。もう一つは北海道ですが、北海道漁業問題がいろいろありますから、これはやはり、従来函館にありましたし、どこに置くにいたしましても、一カ所必要じゃないか。少なくとも三カ所くらいは、こっちの日本立場から考えましてソ連領事館を置く必要があると思うが、その点は外務省はどう考えておられますか。
  19. 北原秀雄

    北原政府委員 今回は、一応ナホトカに年間二百六十隻ですか、約二百二、三十隻の船が入る、それから常時大体商社駐在員旅行者等百名程度の日本人が滞在しておりますので、さしあたりとりあえずナホトカということを考えたわけでございます。先方は、いま御指摘のとおり、常時百名くらいの一これはもともと商社員に当たるべきものでございますが、先方は公団の要員でございます。そういう者が非常にたくさん大阪に滞在しております関係上、先方は一応大阪希望しているようでございます。御指摘のとおり、やはり経済関係がますます伸展いたしますれば、どうしてもわれわれとしてはこの数をふやしていきたいというふうに考えております。
  20. 稻村隆一

    稻村(隆)委員 最初から二カ所くらいはやはり外務省のほうで設置することを十分考えていただきたい。その点まだはっきりしておりませんか。最初新潟大阪くらいですね。
  21. 北原秀雄

    北原政府委員 これはいずれ領事条約締結が終わりまして、具体的に交渉に入ります際に、十分そういう点も考慮に入れた上で先方と折衝していきたいと思います。
  22. 稻村隆一

    稻村(隆)委員 質問を終わります。
  23. 木村武雄

  24. 楢崎弥之助

    楢崎委員 昨日に引き続いて、済州島の西方の漁船拿捕の問題について質問を続けたいと思います。  昨日、条約局長は、漁業専管水域における裁判管轄権は、沿岸国にあるのが通例であると言われました。実例をひとつあげて説明をしていただきたい。
  25. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 協定文言の上ではっきりしてない場合が多いわけでございますが、一番最近にできまして、多数の国が参加している欧州漁業条約というのがございます。これには、漁業を規制すること及びかかる規則を実施する権限を沿岸国が有する、こういうことになっておりまして、関係国当局にこちらの者が行きまして調査したところによりますと、この実施する、エンフォースという英語でございますが、これには裁判管轄権も含まれるということである、これがはっきりいたしております。それからイギリス・アイスランドの協定、これは一九六一年のものでございますが、これでございますと、処罰までも沿岸国でやっておるということが、具体的な例によってはっきりいたしております。こういうわけで、漁業制度というもの自身が、まだわりあいに新しい制度でございまして、協定文言の上でもはっきりしておりませんけれども、わかっているものに関する限りは、諸外国の例もすべてそうである、かように申し上げて差しつかえないと思います。  それから、ちょっとついででございますが、私、昨日は、漁業問題にお詳しい楢崎委員からの御質問であったものですから、何か私が知らないような交渉のいきさつを御存じでああいう御質問があったのかと思いまして、単純に条文解釈ではこうだと言って、断定的に申しませんで、ちょっと交渉の経緯を存じませんからということで含みを持たした答弁をいたしておりましたけれども、昨日交渉関係した者に聞いたところでも、何か楢崎委員がおっしゃるような筋の話はなかったようでございまして、そういうことがあれば日本に少しでも有利だと思いまして、ああいうふうに答弁いたしましたが、これははっきりやはり裁判管轄権沿岸国にある、そういうふうに条文上解釈せざるを得ないと、あらためて申し上げたいと思います。
  26. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いま条約局長は、裁判管轄権沿岸国にある例を二つだけ言われました。そして、すべてそうであると言われました。そうじゃないのです。たとえば、一九五九年四月二十七日に締結されました英国・デンマーク漁業協定、それから一九六〇年十一月十七日に締結をされましたイギリスノルウェー漁業協定、それらは旗国主義になっております。すべてそうではありません。  ただ、私がここで問題にしたいのは、社会党がかねてから問題にいたしておりましたいわゆるアウターシックスの入り会い権の問題を放棄をしておるから、こういうことになっているのです。これはあとで私は追及したいと思います。  そこで、農林大臣にお伺いをいたしますが、漁業専管水域における裁判管轄権は、沿岸国、つまり日韓漁業協定の場合は韓国にあるという交渉は、合意と見ておるのですか。
  27. 坂田英一

    坂田国務大臣 専管水域は、向こう側にあるわけであります。
  28. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 ちょっと補足させていただきます。  先ほど私が答弁いたしましたのは、ちょうど日韓間の漁業水域のように入り会い権を認めておらない場合の例でございまして、入り会い権を認めておる場合には、先生御指摘のとおりでございます。
  29. 楢崎弥之助

    楢崎委員 合意を見ておるならば、どうして合意議事録の中で明確にされなかったのですか。こういう裁判管轄権の問題というのは、非常に重大であります。特に、領海等で問題になるところであります。それをどうして合意議事録で明確にされませんでしたか。
  30. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 これは、昨日も申し上げましたように、条文上きわめてはっきりいたしておると思います。
  31. 楢崎弥之助

    楢崎委員 はっきりしておるから合意議事録に書かれなかったわけですか。——では、付属書等で明確にしておるところがありますですか。むしろ明確にすべきであろうと私は思う。たとえば、イギリスノルウェー漁業協定では、付属書で明確になっております。こういう重大なことは、少なくとも合意議事録——漁業取り締まりの点について、合意議事録でいろいろ書いてあります。あるいは暫定的な規制措置に対する違反取り締まりの問題、あるいは禁止区域における違反取り締まり問題等は、合意議事録で明確にしておきながら、どうして裁判管轄権という非常に重大な問題を合意議事録に載せられなかったのですか。
  32. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 管轄権と申しますと、裁判管轄権を除くと書いてない以上は、それを含むのは当然のことでございますが、しかもその上に排他的管轄権というふうに書いてあるわけでございまして、排他的という意味は、韓国以外のものはいかなる国も管轄権を持ち得ない、そういうことでございますから、第一条の規定だけで明確であって、これ以上細目のことをいろいろ規定する必要がない。付属文書では、ある大原則をきめまして、その原則のもとでこまかいことをいろいろはっきりさせる。こまかいことをきめる必要があるときにやるわけでございますが、もうあるかないかの問題だけでございまして、原則がこれこれと明らかになっております以上は、重ねてそのことを細目的に明らかにする必要はない、かように考えます。
  33. 楢崎弥之助

    楢崎委員 条約局長は、国際法の観点からいろいろものを判断されます。日韓漁業条約に限っては、国際海洋法会議の動向を非常にそれておるのです。あなたはいま、入り会い権を放棄しておる日韓漁業協定の場合はと言われます。これは明白にしておきたいと思いますが、一九五八年のジュネーブの国際海洋法会議では、二つ案が出ました。一つはカナダ案であります。それは領海六海里、その外に漁業水域六海里。それとアメリカ案が出ました。アメリカ案のカナダ案と違うところは、アウターシックスについては基礎期間、つまり過去五年間実績を持っておる国は漁業する権利を有する、これが一九五八年のカナダ案とアメリカ案です。そして一九六〇年になって、このカナダ案とアメリカ案が一緒になって、そして領海六海里、アウターシックスについては、過去五年間実績を持つ国は将来十年にわたって入り合い権を持つということを特に加えた。それは特別委員会で、日本は参加をしましたが、通りました。ところが修正カナダ・アメリカ案になって、日本は棄権をした。それは、沿岸国に一つの有利な条件を与えようとする趣旨であります。そこで否決された。御存じのとおりであります。日韓漁業協定の場合は、いわゆるカナダ案ですが、お認めになりますか。
  34. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 カナダ案のどういう点がこれに似ているかということかと思いますが、入り合い権というふうにいままで言われておりますけれども、あれは、つまり一応漁業専管水域というものを沿岸国に認めて、その上で沿岸国がほかの国に入っていくことを認める、そういうことで、何と言いますか、入り合い権を放棄すると言いますと、前から日本の持っていた権利を日本が放棄するというふうに聞こえますが、それよりも、入り合いが認められなかったというべきかと思います。そういう意味において、米加案程度の成果が、今度の日韓間では漁業専管水域の問題については得られなかったことは事実でございます。
  35. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私が聞いておるのは、いま申しましたカナダ案、アメリカ案、カナダ・アメリカ案、修正カナダ・アメリカ案、この四つの案を基礎にして考えた場合には、日韓漁業協定考え方は、カナダ案に一番近い案だ。カナダ案のケースだ。つまり入り合い権問題を放棄しておるのです。そういうことを聞いておるのですよ、私は。
  36. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 海洋法会議のあの段階で、カナダだけでそういう案を出したように私も記憶しておりますけれども、正確には記憶しておりませんが、しかし、カナダもそれはあの段階の案であって、米加案と申しますように、カナダ自身がもう米加案に乗り移ったわけでありますから、会議の最終段階までカナダ案が生きておったわけではないのでございす。   〔委員長退席、藤枝委員長代理着席〕
  37. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私が言っているのは、一九五八年のカナダ案を言っているのです。それはもうそうだと思うんですよ、あなたがどんなふうにおっしゃっても。そこで私はお伺いをしたいのです。いま各国の漁業協定の実例からいって、一九五八年のカナダ案を採用している漁業協定というのがありますか。
  38. 丹羽雅次郎

    ○丹羽政府委員 一九五八年の第一次海洋法会議の一番初めの時期におきまして、カナダが領海を三海里とするが、領海の基線から十二海里までの接続地域において領海におけると同一の権利を沿岸国に与える、こういう案をカナダが出しましたことは事実であります。それからその後、一九六〇年の段階におきまして、カナダ案のこういう案が引っ込められまして——第一回の際に引っ込められたというのも事実でございます。いま先生御指摘日韓の取りきめは、カナダ案であるかないのかというお話でございますが、カナダ案は、領海の基線から十二海里までは沿岸国の排他的権利を与えるという案でございますから、その実態の上からいえば、内容は同じであると存じます。  それから第二点のカナダ案を条約できめている形はあるかという御質問でございますが、御承知のとおり、十二海里を漁業専管水域といたしまして、その中にいろいろの実績に応じて相手国漁業の態様を認めるという形は多々ございます。と同時に、その以外のものを全然認めない、それから一方的に十二海里を宣言しておる国もあるということでございますから、御質問のように、カナダ案を協定できめた例はあるかというのは、一がいに言えない、かように存ずるわけであります。
  39. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そんなごまかしを言ってはいかぬですよ。漁業協定はたくさんはないですよ。限られておるじゃないですか。全部見たらわかるでしょう。ないですよ、カナダ案を採用しているところはないですよ。つまり実績国の入り会い権を認めないというような漁業協定を結んでおる国はないですよ。ありますか。条約局長でもいいです。
  40. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 私も、そういう協定があることは存じません。
  41. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そこで問題ははっきりしてきたのです。ただ一つ念のために申し上げておきますが、いいですか、一九六〇年十一月十七日に締結をされたイギリスノルウェー漁業協定は、いわゆる一九六〇年の米加案です。イギリス・アイスランドの、これは交換公文ですが、一九六一年三月十一日、これも六〇年のカナダ・アメリカ案です。ただし、これはアウターシックスについての入り会い期間は三年になっております。いま長官の説明にもいろいろあると言うが、三年になっております。それからソ連ノルウェー漁業協定は一九六二年四月十六日、これも六〇年の米加案です。それから条約局長がおっしゃいました一番新しい一九六四年三月二日締結されましたヨーロッパの漁業条約、これは五八年のアメリカ案です。つまり入り会い権について、将来にわたって期限を切っておりません。ただ一つ例があります。イギリスデンマーク漁業協定、これは一九五九年四月二十七日に締結されましたが、これもカナダ案じゃありません。暫定的に、五八年のアメリカ案であります。それで一九六〇年になって、いよいよ調整をして六〇年の米加案になりました。つまり世界の大勢は、いわゆる入り会い権を認めておる六〇年の米加案が大勢なんです。入り会い権を放棄しておる漁業協定はないのです。ただ一つあるのが日韓漁業協定なんです。ここに問題がある。入り会い権は主張しますと、ずっと歴代の農林大臣、赤城農林大臣も言ってきた。池田総理もそれを踏襲しました。そして妥結の段階において、坂田農林大臣によると、大局的な見地から入り会い権を放棄した。そういう入り会い権を放棄しておるから、裁判管轄権が韓国にあるという状態になってきた。もとをただせばそうです。これは入り会い権を世界の大勢のおもむくところの漁業協定にしておれば、管轄権は双方にある、そういう考え方です。これは重大な政府責任であると私は思う。こういう入り会い権の放棄をしたという事実が、そうしたわが国の漁民にとって非常に重大な影響のある裁判管轄権を韓国側に一方的にやらざるを得ない羽目になっておるのです。その点政府は重大な責任があると私は思う。一つの問題点はそこです。  次に、きのうも問題にいたしました追跡権の問題です。条約局長は、追跡権はないというのが国際的な通念だ、その点は合意されておりますか、農林大臣
  42. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 交渉の過程においては、そのことは特に論議されなかったというふうに聞いておりますが、条文の上では、昨日も申し上げましたように、この日韓漁業協定自体が、公海の自由という国際法の大原則に対するいわば日韓間の例外的な取りきめを規定しているわけでございます。そこに規定していないことはすべて一般国際法によるべきは当然のことでございますし、そのことはまた、この日韓漁業協定の、御存じのとおり第三条にも確認してあるわけでございますから、国際法の原則からいいますと、こういう場合に追跡権が沿岸国にあるという規則は何もありませんので、追跡権はない、法律上の見解はそうならざるを得ないと申し上げているわけでございます。
  43. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いまの問題は、私後ほど質問を続けますが、さっきの裁判管轄権の問題では、坂田農林大臣、あなたの前任者である赤城農林大臣は私にどう答弁しておるか、明らかにしておきたいと思います。これは三十九年の三月六日、農林水産委員会で私はこのような質問をいたしました。「では領海の点、あるいはそれと同時に裁判管轄権の問題も、今度の閣僚会議の重大な議題になりますか。」と私は質問しました。それに対して赤城農林大臣は、こう答弁しております。「裁判管轄の問題は、これは外務省のほうできめるわけですが、共同規制区域につきましては、お互いに旗国が裁判権を持つということになりまするし、専管区域におきましては、お互いにその所属国が持つということが例になっておるようでございます。」、こら答弁しておる。これは条約局長の見解と違いますね。「お互いにその所属国が持つということが例になっておるようでございます。」これはおそらく入り会い権の問題がはっきりしていなかった段階における答弁だと、私は善意に解釈します。しかし、裁判管轄権に対する当時の責任者であった赤城農林大臣の見解は、所属国双方にある、これが例である、こういう答弁をしております。念のために私はこれを明らかにしておきたい。いまのあなた方の態度と食い違っておるという点を明確にしておきたいと思います。  それから、いまの追跡権の問題、条文の解釈上こう解釈されると日本政府がいかに解釈しても、これは昨年秋の日韓特別委員会で明白にしたではありませんか。韓国の解釈と日本の解釈が違うのでしょう。いろいろ食い違っておるでしょう。管轄権の問題だってそうです。あるいは李ラインの問題だってそうです。竹島の問題だってそうです。条文からいっていかにあなた方が解釈をしても、向こうの解釈と食い違っておる。だから、こういった重大な問題については、交渉の過程で合意することが必要なんです。なぜそれを怠りたのですか。
  44. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 最初の赤城農林大臣裁判管轄権に関する御説明、いま拝聴しておりまして、その所属国というのは、ひょっとしたら漁業専管水域の所属国、われわれは普通沿岸国と言っておりますが、そういう意味でおっしゃったのじゃなかろうかというふうに私は思いましたけれども、これは推測でございます。  それから追跡権のことでございますが、そういうふうなだめ押しをすることが適当な場合と、その必要がない場合と、いろいろあるわけでございますが、さしあたっての問題に関しては、私どもが承知しておる事実関係では、直接関係のない問題かと思うのでございまして、いまもし向こうが取り締まり——専管水域外で事件が起こったとすれば、これは追跡権の問題じゃないはずだと存じます。
  45. 楢崎弥之助

    楢崎委員 どろぼうを見てなわをなうようなことを言っちゃいかぬです。起こり得る問題です。あなたたちは起こらないと言っておった問題が、起こったじゃありませんか。総理大臣だって、椎名大臣だって、安全操業はできますと言っておりながら、現実に起こっておるでしょう。また起こり得る問題なんだ。だから、私はこの問題を聞いておる。いまの問題じゃないから関係がないというのですか。
  46. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 ちょっと私のことばが足りなかったかもしれませんが、これがもし追跡権の問題だとすれば、日本の漁船は専管水域に入っておった、そして追いかけられて専管水域の外でつかまったのだということを私どもが認めることになるわけでございます。そういう事実は、私は存じませんので、私どもが承知しておる限りでは、追跡権の問題は今度の事件には関係ないのじゃなかろうかというふうに申し上げたわけでございます。
  47. 楢崎弥之助

    楢崎委員 その点は、私も同感です。だから、今度の事件と別個の問題として、ひとつこの問題に対する見解をお聞きしたい。追跡権というような問題は、重大な問題です。したがって、これは当然交渉をし、詰めをやっておかなければならない問題である。なぜそれをやらなかったのですか。
  48. 丹羽雅次郎

    ○丹羽政府委員 私どもは、追跡権は領海からということは、国際法の原則と心得ておるわけでございます。そこで両国の声明で、「水域の侵犯の事実の確認とその漁船及び乗組員の取扱いとについて、国際通念に従い公正妥当に処理する」ということを双方声明するということで、本件を処理いたしておるわけでございます。こういう事態が発生するおそれがあるから、追跡権の問題を詰めろという御意見でございますけれども、私どもとしては、入ったあとの追跡権の問題以前の問題として、やはり入らないということが問題であろう、かように考えて現在指導いたしておるわけであります。
  49. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それは当然のことです。そんなことを言ったら、刑法は要りませんよ。もし起こったときのことを想定をして、明確にすべきではないかということを言っておるのです。こういう事態が起こったから、今回は韓国側の誤認によると日本政府は言っていらっしゃる。したがって、直接本件とは関係はないけれども、将来のことも考えて、いまこういう問題が起こった時期に追跡権の問題を明確にする御所存はございませんか。
  50. 丹羽雅次郎

    ○丹羽政府委員 私どもただいまの時点では、この両国の声明で、国際法の原則でございますから、追跡権の問題を両国間で議論する時期ではない、かように考えております。
  51. 楢崎弥之助

    楢崎委員 外務大臣はどういうようにお考えですか。
  52. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 必要はないんじゃないかと思います、ちゃんと国際法にきまっている概念ですから。
  53. 赤路友藏

    赤路委員 ちょっと関連して。先ほどから答弁を聞いておりますと、条約局長のほうも、水産庁長官のほうも、ことばを少し注意して答弁をしていただきたいと思います。専管水域の中に入っていかぬということはない。操業はできません。だから、入っていかぬということになると、問題が出てくる。この問題は、国際法的な法律上の解釈と実際の条約のあり方との問題がありますから、よほどことばを注意していただきませんと困ると思います。それだけ注意しておきます。
  54. 丹羽雅次郎

    ○丹羽政府委員 ことばが不十分でございまして、専管水域に入って操業することはあってはならない、こういうことでございます。
  55. 楢崎弥之助

    楢崎委員 国際法の原則ということを言われますが、李ラインは実質的になくなるのだという政府側の答弁の根拠は、日韓漁業協定の前文に公海の自由ということをうたっておる。当然のことです。だから李ラインは実質的になくなるのだという御答弁ではございませんでしたか。ところが、いろいろいままで問題が起こってきておるのです。起こっていないならいいですよ。国際法の原則でいいです。いままで起こっておる。日韓漁業協定の最大の漁民にとっての念願は、安全操業の問題です。李ラインの問題です。これが中心です。それを確保するのに念には念を押す、これが私は日本政府立場でなくてはならないと思う。そういう安全操業の問題とも関連をして、追跡権の問題を韓国側との間に明白にすべきであろうと私は思う。それを必要がないと言うのは、どういうことなんでしょうか。なぜ必要がないのでしょう、外務大臣
  56. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 追跡権というものは、権利として認められていないのですから、それを国際法の原則をお互いに守るという約束をすれば、それについて取りきめの合意をする必要はない、こう思うのです。
  57. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私がくどく言うのは、韓国はいままで国際法の通念を非常に無視してきました。そういう実績があるのです。たとえば、外務大臣、あなたは日韓特別委員会の答弁で、私どもが韓国の国内法である漁業資源保護法の無効の問題を出したときに、高辻法制局長官も椎名大臣も言われました。条約は国内法に優先するという原則があるのだという答弁をなさいました。ところが、韓国という国はどういう国であるかというと、いいですか、韓国の憲法の第五条にどう書いてありますか。私はそのとおり読んでみます。韓国憲法の第五条は「この憲法により締結し、公布された条約及び一般に承認されに国際法規は、国内法と同一の効力を有する。」となっている。こういう国なんです。だから、国際法の一般通念だけでは非常に危険だから、重大な問題については十分韓国側と合意をしなくちゃならないということを私どもは重ねていままでやってきたわけです。私は、外務大臣にこの問題について御一考いただきたいと思うのです。どうでしょう。
  58. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 国と国との条約は一もちろんこれは国内法に優先する効力を持つとされておるのでありますが、ある国が他の国の国内法について、改廃せよとか、あるいは存続をせよとか、そういったようなことは、いわゆる内政干渉でございまして、そこまで立ち入る立場にないのであります。しかしながら、条約に抵触する国内法は、まぎらわしい事態が起こり得ると思うので、早期に改廃すべきであるというのが、私は一般の不文律ではないかと思います。でありますから、そういうことを私的に勧告するというくらいのことはできると思いますが、韓国としても、国内法をたてにとって漁業協定違反してやろうという考え方は、毛頭認められません。今度の問題は、李ラインの問題を前提とするのじゃなくて、専管水域を侵犯したということで臨検をやっておることは明らかなことでございまして、李ラインの問題とは関係ない、こう思っております。
  59. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私が御一考の余地はないですかと言ったのは、いまの韓国国内法の問題を言っておるのじゃないのです。それはあとからまたお尋ねします。   〔藤枝委員長代理退席、委員長着席〕  追跡権の詰めについて、大臣は必要ないんだとおっしゃいますが、先ほどから私がお訴えしておりますように、西日本の漁民にとっては、安全操業というのは非常に重大な問題ですから、こういった取り締まり問題等と関連をして、追跡権の問題等は重大な問題ですから、こういう詰めをやることについて、大臣は必要ないというような冷淡なことをおっしゃいますけれども、御一考する余地はございませんかということを言っているのです。
  60. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 別に権利があるとかないとかいうことじゃなしに、追跡権というものはないということが国際法上明瞭でありますから、国際法の原則にお互いにひとつ従おうじゃないかということは言えると思います。それは御指摘のとおり決してむだなことじゃないと思います。  それから李ラインを復活するようなことは勘違いで、そういったような考え方で漁船の取り締まりをするというようなことが、万一個別的な事実として起こり得る可能性もないことはないのですから、そういうことも十分に気をつけようじゃないか、そういうことはもう平生から大いに注意し合っていくととが必要である、こう思います。
  61. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それでは、いまの大臣の御答弁は、追跡権の問題等も含めて、国際原則をこの際忠実にお互いに守るという話し合いをもう一ぺんやるということでございますね。
  62. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 国際会議というような、そう四角ばったことじゃなしに、そういったような問題につきましては、絶えず注意を喚起する必要があるようにも思われます。
  63. 楢崎弥之助

    楢崎委員 この前の大臣の答弁と関連をしてくるのです。昨日の報道によりますと、第五十三海洋丸の船員は韓国の国内法で起訴をするという情報は、外務省に何か連絡があったのですか。
  64. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 向こうへ問い合わせてみましたところが、そういうことに対して該当する事実は全然ない、誤報であるということがわかりました。
  65. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それでは起訴をするということは誤報であるということを、外務省としては確認されたのですね。そこで、もしこういう事件について向こうが起訴をするとするならば、一体その韓国の国内法はどういう国内法が考えられるのですか。
  66. 丹羽雅次郎

    ○丹羽政府委員 どういう理由で臨検したのかという点は、海上保安庁からの連絡では、いろいろ理由がくるくる変わっております。したがいまして、仮定の問題でございますが、向こうが起訴をするとしても、理由そのものが現在正式に伝わってないわけであります。私のほうは、その理由そのものがないという立場でございますから、どういう根拠法でやるかという点については、ちょっとお答えしようがない次第であります。
  67. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私は、やはり心配なのは、韓国の漁業資源保護法であると思うのです。何としてもこれは心配の種になると思うのです。そこで椎名外務大臣は、先ほどの答弁の中で、私的には資源保護法の廃止を勧告してもいいとおっしゃいましたが、そのおつもりですか。
  68. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 これは公式にこういうことをやることはいわゆる内政干渉でございまして、やるべきことじゃないと思いますが、いまの私的な立場において適当な機会におきまして勧告したい、こう考えております。
  69. 楢崎弥之助

    楢崎委員 外務大臣でございますから、私的とおっしゃいましても、外務大臣個人としてそういう勧告をするというお考えですから、私はその点は明白にひとつやってもらいたい。外務大臣としての椎名悦三郎ということは、単なる個人ではございませんから、外務大臣椎名悦三郎ということで勧告されることはけっこうであると思います。これは非常な前進であろうと思います。  そこで、農林大臣が時間があるそうでございますから、農林大臣にいま一つお伺いをしておきたいと思います。  昨日、椎名外務大臣は、調査をよく行なった上で損害の賠償請求をやるということをおっしゃいました。そこで、過去の例によると、その損害賠償要求がいれられたためしがないわけですね。日韓漁業条約が発効して初の損害賠償要求でございますが、韓国側のこの要求に対する見通しは、どのような見通しを持っておられますか。
  70. 坂田英一

    坂田国務大臣 外務大臣と協議をして、この問題は強力に押して、最初の問題でありまするから、やってまいりたい、こういうふうに考えております。
  71. 楢崎弥之助

    楢崎委員 絶対に賠償を取る、そういうことですか。
  72. 坂田英一

    坂田国務大臣 これは外交ルートを通じてやることでありまして、私としては、外務大臣に対しては強く要請をいたし、協議をいたしておるところであります。
  73. 楢崎弥之助

    楢崎委員 外務大臣に強く言われるのもけっこうですが、向こうから取るのですからね。外務大臣から取るのではないのです。  そこで問題は、これは今後のためにもぜひこの損害賠償の点は明白にしてもらいたい。しかし、過去の例によると、なかなか早急に実現しにくいのではなかろうか。そういった場合に、あなた方は財産請求権の合意議事録の中で、大韓民国が成立して以来の漁船の損害賠償請求権を放棄をされました。そして、そのかわりに、あなた方は国内の関係漁民に対して、いわゆる特別交付金という名の見舞い金を出された。今回は賠償の見通しがはっきりしない限りは、そういった見舞い金は考えられないのですか。
  74. 丹羽雅次郎

    ○丹羽政府委員 御承知のとおり、国内措置を講じましたのは、請求権に関する協定ができましたので、その時点までの請求権を放棄したから国内措置を講じた。今回のは、全くノーマルな国際間におきます事件でございますから、当然国際間の交渉としてやるべきことである。国内措置云々ということは、毛頭考える段階ではない、かように考えます。
  75. 楢崎弥之助

    楢崎委員 すると、あくまでも韓国から損害賠償を取るのだ。それまでは被害を受けた船主なり漁船員は、何の見舞いも受けられないのですね。
  76. 丹羽雅次郎

    ○丹羽政府委員 事件そのものの真相も究明中でございます。被害の程度も究明中でございます。かつ外交交渉をスタートした時点でございます。当然いまの段階では対韓交渉一本やりということであるべきだ、かように存じます。
  77. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それではいま一つ、賠償問題と関連してお伺いしておきますが、あなた方は請求権及び経済協力の協定合意議事録において、先ほど申し上げました大韓民国による日本漁船拿捕から生じたすべての請求権を放棄された。そこで、これは日韓特別委員会でも少し問題にしたのですが、この大韓民国成立の時期は、最初農林大臣水産庁長官意見が違っておりました。農林大臣は、李ラインが設定された後と最初言われました。水産庁長官がそれを訂正されて、大韓民国成立の日、すなわち一九四八年八月十五日以降ということを答弁されました。間違いございませんか。
  78. 丹羽雅次郎

    ○丹羽政府委員 前回の委員会での御質問でございますが、請求権放棄の問題に関しましては「大韓民国による」と書いてございますから、韓国独立以後が請求権放棄の対象になる、かようにお答えしたわけでございます。
  79. 楢崎弥之助

    楢崎委員 すなわち一九四八年八月十五日以降ということですね。
  80. 丹羽雅次郎

    ○丹羽政府委員 韓国の独立は、ここに速記録にございますが、昭和二十三年八月十五日でございますから、これからでございますという御趣旨で御答弁申し上げました。
  81. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それでは私が言ったとおりですね。  そこで、明白にしておきたいのですが、一九四八年八月十五日以降の拿捕漁船に対する請求権は放棄される。では、一九四八年八月十五日以前の拿捕漁船に対する請求権はどうなっておりますか。
  82. 丹羽雅次郎

    ○丹羽政府委員 これは放棄の問題と拿捕漁船の補償の問題とを分けまして、放棄いたしましたものはいまのとおり。そこで放棄したものに対しましては補償することが本則でございます。それ以前のケースについて、今度は国内措置としての補償をいかに扱うかということにつきましては、個個のケースによりまして特別に審査して処理をいたしたい、かように考えております。
  83. 楢崎弥之助

    楢崎委員 大韓民国成立以前の拿捕漁船に対する請求権の法的な関係は、どうなっておりますか。
  84. 丹羽雅次郎

    ○丹羽政府委員 私の承知いたします限りにおきましては、その前の段階におきましての問題は、GHQを通じまして、GHQの手によって返ってきたものもございます。GHQを通じて返還その他の処置が講ぜられたものもございますし、それから、講ぜられることなく、船その他の現物がそのまま韓国人及び韓国官憲に引き継がれたケースがございます。
  85. 楢崎弥之助

    楢崎委員 請求権は法的にはどうなっておるのですかということを聞いているのです。
  86. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 ちょっと私も事実関係などをよく承知いたしておりませんので、別の機会に調査いたしてお答えいたしたいと思います。
  87. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それでは、請求権は一体どうなっておるのか、それはどこに対する請求権なのか、それをひとつ明白にしていただきたいと思います。  そこで、時間がいよいよまいりましたが、本件のような事件は、日韓漁業協定の第九条によると、まず外交交渉を通じて円満解決をはかることになっております。もしこれが早期に円満解決ができないときには、いわゆる仲裁に持ち込むことになるわけですが、そういうお気持ちがありますか。
  88. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 外交交渉を始めたばかりでございますので、まだそこまで考えておりません。おそらく解決がつくものと期待しております。
  89. 楢崎弥之助

    楢崎委員 政府のいまの見通しとしては、早急に解決するという自信がありますか。
  90. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 そういう決意をかたくして当たりますけれども、相手方のある問題でありますから、必ずしも予断を許しません。予断は許しませんが、私は早期に解決し得るものと考えております。
  91. 楢崎弥之助

    楢崎委員 ひとつ重大な決意をもって早期解決に当たってもういたいと思いますが、念を押すつもりで漁業協定合意議事録の8項のいわゆる漁業禁止水域の取り締まりの問題がここで合意を見ておるわけです。この韓国側及び日本側漁業禁止水域というのは、明白に確認されておりますか。
  92. 丹羽雅次郎

    ○丹羽政府委員 日本国の漁業禁止水域は、日本国の省令で明白でございますし、告示で明白でございます。それから韓国の禁止区域につきましては、韓国の法令に基づきまして、それを同時に日本の省令に引き写しまして、日本の船は日本の法令に従ってこれに入らないように農林省告示で出しております。その範囲等につきましては、韓国にも通告済みでございます。明確でございます。
  93. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それは関係漁民に明白にされておりますか。
  94. 丹羽雅次郎

    ○丹羽政府委員 官報で告示をいたしております。と同時に、行政指導として再三ブロック会議にかけ、連絡をとっております。
  95. 楢崎弥之助

    楢崎委員 今度の事件の起こった水域は、私どもが過去、関係委員会を通じて問題にいたしましたいわゆる赤城ラインの接点です。赤城農林大臣が国際法を無視して妥協に妥協を重ねて、そして国際法に慣例のない暫定的な漁業禁止区域を設けられた、その接点で起こっておるのです。これは非常に問題があるということを私どもはかねてより指摘をいたしております。一番問題のある水域であります。私は過去、漁業専管水域の問題、裁判管轄権の問題、あるいは追跡権の問題、入り会い権の問題、それからいまの赤城妥協ライン、すべて私どもが過去問題にして心配をしておったのが、今度の事件に集中的にあらわれておると私は思うのです。したがって、この際韓国側と合意されてない部分、おのおの解釈の違う部分、そういう点については、即刻強力な交渉を開始をして、もし今度のような事件が起こるならば、この協定は破棄するというくらいの決意で韓国側に私は当たってもらいたいと思うのです。  昨日も申し上げましたが、三十九年の三月二十五日の井手委員質問に対して、赤城農林大臣は、もしこの種の事件が再び起こるならば、これは国際法上認められない。そういった国際法を順守しないような相手側との協定は、これは御破算になると思わざるを得ないという明確な答弁をされております。椎名外務大臣も、ひとつそういう決意で今度の交渉に当たってもらいたいと思いますが、どうでしょう。
  96. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 漁業協定の細目につきましては、ただ当局がそういうことをのみ込んでおるというだけではいかぬのでありまして、やはり漁民の一人一人がそのことをかたく胸におさめて、そうしてそれを順奉するということでないと、国際協定を結んでも何にもならないということになりますから、御指摘のとおり、全くごもっともであります。その点の徹底を十分に行ならように、向こうに交渉したいと考えております。
  97. 木村武雄

  98. 金子岩三

    金子(岩)委員 まず、農林大臣が時間がないようでございますから、小さい問題のようでございますけれども、これは予算を持たなければならない大きな事柄だと思うので、お尋ねしますが、いまあの海域に七隻水産庁のチャーター船が出ておりますが、このチャーター船の動向を調べますと、これには通信士が一人乗っていて、ワッチもない。したがって、夜間漁船からいろいろな通報をしてものを尋ねると、おれの船は知らないから、あの船に聞け、この船に聞け、こういったようなことでこの海域の取り締まりをやっておるのでございますが、大体この水域における取り締まりは海上保安庁が責任を持っておられると思いますが、水産庁はどの程度これに協力をなさるつもりでいらっしゃるのか。また、かような七隻ものあまり優秀でない船をたくさんチャーターいたしまして、乗り組み員は雇われ船員でありますから、官船みたいに志気も上がらないし、取り締まり上この船が海上において活動する場合は、一体どの程度の効果をあげるかということはおよそ想像でわかるのでございますが、将来どういう考え方をしておるのか、その点をひとつ農林大臣のほうからお聞きしたいと思います。
  99. 坂田英一

    坂田国務大臣 御指摘の点については、極力その充実をはかってまいりたいと思います。
  100. 金子岩三

    金子(岩)委員 このたびの第五十三海洋丸の事件で、水産庁もいろいろこの水域における指導行政をやっておる立場上、今度の事件については、わがほうに手落ちもない、責任もないと私は確信いたしますけれども農林大臣が事件発生以来今日までに入手されましたこの事件の真相は、新聞等に報ぜられておりますとおり、間違いなく共同規制水域における事件であると大臣は確認されておりますかどうか。
  101. 坂田英一

    坂田国務大臣 現在までに情報によって、また海上保安庁の情報を本日の朝も得ましたわけでありますが、この情報によりまする範囲においては、確かだと思っております。
  102. 金子岩三

    金子(岩)委員 それでは海上保安庁に少しお尋ねしたいと思いますが、昨日この事件の第一線の責任者であります「せんだい」の外山船長が門司の七管基地に帰港いたしましていろいろな報告をなされたことと思いますが、昨日の夕刊あるいは本日の朝刊、こういった各紙に報道されておることは、すべて事実と相違ないかどうかをお尋ねしたいと思います。
  103. 栃内一彦

    ○栃内政府委員 昨日「せんだい」は十二時に門司に帰ってまいりました。その後、私どもの出先のほうでいま事情を聴取しております。私は、新聞記事に出ておることが全部真実かという問題につきましては、責任を持ってお答えしかねるわけでございますが、もし差しつかえなければ、私のほうの出先から受けておる報告を申し述べたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  104. 金子岩三

    金子(岩)委員 それではひとつ簡潔に御説明願います。
  105. 栃内一彦

    ○栃内政府委員 問題になりました臨検の位置でございますが、この点につきましては、当初私どもが情報として入手していた位置が、そのまま臨検を受けた位置であるという報告を受けております。具体的に申しますと、北緯三十三度二十分、東経百二十五度五十分ということでございます。これは申すまでもなく共同規制水域内の地点でございます。  それから、先方が臨検をしたということにつきまして、五十三海洋丸、また巡視船「せんだい」から、何がゆえに臨検する権限があるかというような点についていろいろ先方質問したわけでございますが、これにつきましては、先方の答弁は必ずしも終始一貫しておったというふうには考えておりません。  それから、当初私どもが得ました情報では、五十三海洋丸の船員が九名海に飛び込んで巡視船に泳ぎついたというふうに情報を受けておりましたが、昨日の報告によりますと、泳いで巡視船に来ましたのが八名でございまして、他の一名は、接舷と申しますか、結果的に接舷したような形になりましたときに——接舷というより接触と申したほうが正確と思いますが、接触した際に飛び移ったものであるということが判明いたしました。  なお、負傷者三名の状況でございますが、これも何名が負傷を受けておるか、あるいは負傷していないのではないかというようないろいろな情報がございましたが、昨日の報告では、三名負傷者が出たということが明確になりました。以上でございます。
  106. 金子岩三

    金子(岩)委員 参考までに昨日脱出して下関の基地に帰ってまいりました第五十二海洋丸の船長の報告の概要と、それから、拿捕された第五十三海洋丸の、いわゆる泳いで帰りました通信長の報告を、昨夜本人からじかに電話で話されまして、テープでとりましてそのまま筆記されたものを、私に以西底引協会長が持ってきたのですが、内容はなまのままですから、非常に方言まじりでお聞き取りにくいと思いますが、非常に重大な事柄ですから、これをひとつ読み上げてみたいと思います。「三月十四日十二時四十分、ウエスに投網しました。十二時四十五分、韓国警備艇が本船の横に来てから停止しました。相手が何か言ったけれど、よくわからなかったから、五十三海洋丸のほうに行ってくれと言いました。五十三海洋丸のほうに警備艇が行きました。「五十三」に接舷したので、曳網していましたが、エンジンを停止して、五十三海洋丸のほうが臨検を受けたわけであります。それが十三時ころと思います。それが終わってから、(この臨検は十五分ぐらいでした)われわれのうしろで網揚げをしていた喜代丸のほうに行きました。それで海洋丸は網を揚げました。網を揚げ終わった時間は十三時五十分ごろです。それから本船は流しておりました。喜代丸と警備艇との話は長くかかっておりました。それで五十三海洋丸がそのそばにつけていきました。五十三海洋丸の船長が警備艇に乗っていきました。それで話がつかないままでおり、すでに日本の巡視船「せんだい」が来ておりました。五十三海洋丸との話し合いがつかないので、巡視船の航海士二名が韓国の警備艇に行きましたが、話がつかないままその航海士は巡視船に帰りました。そして向こうは、島陰のほうに来いと言いましたので、その旨巡視船に伝えましたところ、ただいま七管本部を通じ外務省交渉中だから、その位置におれということでしたので、二十一時ごろまで流しておりましたが、警備艇から、船長を渡すから島陰に来いと言うので、ついていきました。「五十二」も「五十三」についていきました。午前一時半ごろに別の警備艇が来ました。そして巡視船の「せんだい」から、危険の状態だから電話の聞こえる範囲のところに避けているように言われたので、五十二海洋丸はウエスに三十分ほど走って流しておりました。それで五十三海洋を電話で呼んでも連絡がとれませんでした。それで片船をほったらかして逃げることもできないので、流しておりましたら、三時半ごろに、五十三海洋の九名を巡視船に乗っけてきているからというので、夜明け、七時ごろ九名を受け取りました。五十二海洋は七時四十分ごろ帰途につきました。」  次は、五十三海洋丸、いわゆる拿捕されました船の通信長であります。泳いで「せんだい」に乗り移った通信長の報告であります。「警備艇の一〇六号が五十三海洋丸に向かって激突してきました。そのとき一〇六号艇が、五十三海洋丸に乗り移っていた韓国の警備員にカービン銃を渡していました。そしてそのカービン銃を持っていた警備員(二席通信士と言っていた)が、五十三海洋丸の新岡という甲板員を銃床で三回ほど頭をたたいた。そして早川という甲板員にその足もとに向けて二発ほどたまを発射しました。そのたまは床に沿って白煙が舞い上がりました。そのあと一〇六号艇から、ピストルを持った人が船尾のほうから乗り移ってきました。その人が、私の見たのでは  一番初め「五十三に臨検に来た人で、その人はピストルを空に向けて威嚇射撃をしました。それは私が確認しておりました。なお古谷さんという機関部員がブリッジの出たところでなぐられているのを私は海の中で泳いでいて見ております。その古谷氏は連れていかれたままです。一〇六号艇との位置の確認は、私と相手とでやり、確認し合いました。その位置は、五十三海洋丸より飛揚島を見て、イース・ハフ・サウス十五マイルで、この位置が臨検を受けた位置であり、双方において確認し、そのことを五十三海洋丸の海図に記入しました。その位置は、専管水域の外三マイルに当たります。ただ相手側の言う専管水域は、日本政府のいうラインと違っていて、相手側の言うラインとは、済州島の馬羅島より晩才島を結んだ線より外十五マイル、これが専管水域だと相手側は言っておりました。したがって、相手の言うラインと違うのです。」こういう報告でありますが、この報告は事実に相違ないとお認めになるかどうか、海上保安庁に……。
  107. 栃内一彦

    ○栃内政府委員 ただいま拝承しておりましたが、数字その他、あるいは表現において一字一句事実であるかどうかにつきましては、私も自信がないわけでございますが、おおむね私が聞いておりますところと大部分一致しておる。それから、私がまだそこまで聞いておらない部分もあるように思いますが、おおむねそういうような状況ではなかったかというふうな感じを持ちました。一字一句、あるいは数字に至るまで正確であるかどうか、この点は御容赦願います。
  108. 金子岩三

    金子(岩)委員 海上保安庁長官にお尋ねしますが、十四日、この事件当時、あの海域に巡視船は何隻出ていらっしゃいましたか。
  109. 栃内一彦

    ○栃内政府委員 当時三隻が朝鮮海域に出ております。
  110. 金子岩三

    金子(岩)委員 事件発生当時の「せんだい」と五十三海洋丸との距離をお示しを願いたいと思います。
  111. 猪口猛夫

    ○猪口説明員 ちょうど臨検を受けました地点から北西方面約十海里ぐらいのところで「せんだい」は当時任務についておったと思います。
  112. 金子岩三

    金子(岩)委員 韓国警備艇の一〇六号艇が、この操業地点の船団の中に入ってきたという情報を「せんだい」がキャッチしたのは、何時でしょうか。
  113. 猪口猛夫

    ○猪口説明員 その前に、「せんだい」は十一時十四分ごろ専管水域の境界線付近を通ったのでございますが、その際、約四カ統の以西底びき船がその付近で操業しておったようでございます。その状況が専管水域の境界線にやや近いので、その旨を注意いたしまして、その注意を受けました以西底びき船も、それぞれその注意に従って、適正な行動をとったようでございます。その後「せんだい」は、先ほど申しましたように、北西方向約十海里ぐらいのところまで行きましたときに、指揮船の「くさかき」から五十三海洋丸が臨検を受けたという通報がありまして、それに対して対処する指令を受けたわけでございます。そして直ちにその臨検の場所に急行いたしまして、十五時に五十三海洋丸と邂逅いたしまして、その後一〇六号艇と種々交渉に当たったわけでございます。
  114. 金子岩三

    金子(岩)委員 この事件が十四日午後一時から発生いたしまして、「せんだい」が現場に到着したのは三時ごろでございます。その間二時間かかっておる。そこで、その二時間は、その付近に——私の資料では十六隻の以西底びきが二百八十四区において操業いたしておりますので、機敏な動作がとれなかったかもしれぬと想像もできますけれども、この事件発生以来十八時間余りかかりまして、しかもけさどの新聞にも報じておりますが、あの手前に喜代丸がおりまして、その次に韓国の一〇六艇がある。その向こうに五百メートルか七、八百メートルのところに五十三海洋丸がおる。しけているから島陰にこいと言われたということを「せんだい」の外山船長も言っていますけれども、この様子は、写真ではしけた様子もないのであります。したがって、その間やっさもっさをやりまして、まず外務省にただいま交渉中だから待機しておれと言って、約五、六時間待たしてみたり、あるいは拿捕されました五十三海洋丸と「せんだい」がロープによってもやいをとっておるのを、そこまで接舷して十時間余り、ムードとしては友好ムードではなかったかもしれませんが、洋上で交渉しておりながら、結局深夜になりましてからたくさんの人を海にほうり込んで泳がせたり、残った船員を乗せて、そうして向こうに曳航されるという事態、これは、私は一〇六艇の性能からいって、少し日本の巡視船にも見当違いがあったのじゃないか。決して第一線で活躍されておる巡視船の船長さんなり船員の責任を追及するわけではありませんが、この一切の状況判断からいたしますと、一昨日の事件については、多少第一線において手落ちがあったのではないか。あえて拿捕されぬでも、韓国の一〇六号艇が強行接舷する。いわゆるフルスピードで「五十三」と「せんだい」に割り込んでくるような、そういう気魄が日本の巡視船にありますならば、百トンそこそこの一〇六号老朽船です、性能からいうと。「せんだい」から見ると、まるで小さい伝馬を抱いているようなものであります。したがって、この事件のてんまつを考えてみて、いささか手落ちがあったのじゃないか。これは将来のことがありますからお伺いするのでありますが、この点について、海上保安庁では何も遺憾な点はありませんでしたでしょうか。
  115. 栃内一彦

    ○栃内政府委員 結果的に連行されたという点につきましては、まことに申しわけない、またお気の毒であったというふうに私は考えております。ただ、巡視船といたしましては、もちろん韓国の警備艇よりも、船の大きさなりあるいはその他の点で、今回の場合はまざっておったというととは私は認めます。ただ、先方が突っ込んできたような気魄をもってという点でございますが、日韓条約ができましたあとにおきまして、私どもとしましては、韓国警備艇との間でいわゆる実力行使——これはいろいろな段階があると思いますが、これはできるだけ避けて、外交交渉によって問題を解決するようにということを言っておりますので、先方が突っ込んできた場合に、こっちもまた突っ込み返すというふうには私ども指導いたしておりませんので、その点で第一線の巡視船の乗り組み員は非常にやりにくいのではないかというふうにもちろん考えておりますけれども、基本的な指導の方針としましては、実力的なことは極力避けるように、外交交渉によって問題を解決するというのが方針であるというふうに申しておりますので、手ぬるかったというような点は、あるいはそういう御感想もあるかとも思いますけれども、現場の職員の責任ではない、かように考えております。
  116. 金子岩三

    金子(岩)委員 いわゆる友好ムードによって事件の処理をしたいという、そういった指導を第一線になされておることも、よく承知いたしております。しかし、私はかつて、十幾年のあのけわしい海域における日韓間のトラブルは、この条約が締結されたからといって、あまりに安易な考え方をしておるとたいへんな間違いだ、相手が相手ですから、今後はもっと大きい事件が発生するかもしれない。したがって、海上保安庁におきましては、より以上にこの海域の警備体制を強化すべきであるということを、私は川上さんはもとより第一線の方々にも、絶えず機会あるごとに申し上げておるのであります。  そこで、漁閑期でありますから三隻でいいというお考え、あるいは水産庁の船がこの対島近海からずっと七隻出張っていますので、三隻でいいというお考え方に立っていたのか。あるいは、かねてのあそこの海域の警備体制のいわゆる海上保安庁の官船に何か移動があっておるのか、その点ひとつお伺いします。
  117. 栃内一彦

    ○栃内政府委員 私は、海上保安庁の船の絶対数がきわめて不足しておるという点を前提にして考えておりますが、そういうような観点から、現在の漁況その他から考えまして、三隻によってあの付近のパトロールをするということで大過ないのではないかというふうに判断してやっておったような次第でございます。
  118. 金子岩三

    金子(岩)委員 そこで、今度の五十三海洋丸が共同規制水域の中であったということは、海上保安庁におきましても確認されておるわけですね。
  119. 栃内一彦

    ○栃内政府委員 一番初めに申し上げましたように、臨検を受けた地点は共同規制水域内であるという点は確認しております。
  120. 金子岩三

    金子(岩)委員 以上の事実によりまして、事件発生以来十八時間経過したそのあげく、乗り組み員の一部と五十三海洋丸が拿捕されたという事件は、これは政府として、私はこの事件の処理の間に外務省と海上保安庁とのいろいろな交渉もおありであったと存じますが、その間十八時間余りの間には、当然外務省は韓国とも接触をしてこの事件の善処に努力されたことと想像するのでありますが、そういった間の経過をひとつ外務省から御報告を願います。
  121. 小川平四郎

    小川政府委員 ただいま海上保安庁からお話のありましたような状況でございまして、当日の夕刻、詳しく記憶いたしておりませんが、六時と七時の間であったと思います、現場において紛争が起きておる、現在巡視船が行って話をしておるけれども、あるいは話がつかない場合には外交交渉に移してもらう必要があるかもしれないから待機していてくれという御通報がありました。そこで、担当官が待機しておりましたところ、その後どうしても話がつかないから韓国側と折衝を始めてくれというお話がございまして、九時過ぎであったと思いますが、担当官が在京の韓国大使館に電話をいたしまして、こういう事件が起こった、至急韓国側からも出先に通報して、拿捕というようなことはやめるようにしてほしいということを申し入れました。同時に、ソウルにありますわが国の大使館に電話いたしまして、電話が通じたのが十時半ころだったのでございます。夜中であるけれども、至急同じようなことを韓国政府に申し入れるようにという指示をいたしました。担当官から先方に、夜中でありましたが、申し入れました。おそらく十一時ころになったかと思います。それが当夜の状況でございます。  引き続きまして翌日になりますと、いよいよ拿捕、連行されたという事情が判明いたしましたので、直ちに在京の金大使に対しまして事実の概要を申しまして、至急善処するように本国側に連絡を頼みました。同時に公使を招致いたしまして、さらに当時までに判明いたしておりました事実を詳しく通報いたしました。同じく本国に連絡して直ちに釈放してもらうようにということを申し入れました。いずれも直ちに本国に連絡して善処するということを申しております。以上でございます。
  122. 金子岩三

    金子(岩)委員 外務大臣は、この予備交渉からずっと本条約締結までたいへん日韓関係については御苦労なさっておるのでありますが、昨年の日韓特別国会、その特別委員会でも、大臣は審議の過程におきまして、安全操業は確保されたということをしばしば答弁されておるのでございますが、今回の事件をお考えになりましたときに、政府の見解は一体どういう見解ですか。いまでもやはり安全操業は確保されたという確信をお持ちになるかどうか。
  123. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 新しい秩序はできたと思うのです。ただこれを順法するかしないかということが、今度は問題になってきておる。やはりこれは両国の問で十分に詳細の検討を加えて協定が結ばれたのでありますけれども、結局この趣旨を、取り締まり当局はもとよりのこと、漁民にまで十分徹底させて、そしてこの秩序を守っていくということ、これを確保しなければいかぬ。この点について、いささか足りない点があるように私は考えられます。この問題の解決は解決として、今後かようなことの起こらぬようにするためには、でき上がった両国の国際的な秩序を守るように、その趣旨を徹底して、そしてこれを順法するように、そういうことを両国がおのおの努力すべきである、こう考えます。その点については、まだ多分に余地があるのではないかと考えます。
  124. 金子岩三

    金子(岩)委員 お考え方はよく了承いたしますが、両国の当事者が、順法精神を徹底して、日本政府はこの海域に出漁する漁船、船員にはよく指導しておりますから、日本の漁船は厳格にこの協定を守ろうとして努力しておるということを私は認めておるのでございますが、大臣お話を聞いておると、日本国の中にも順法精神に欠けておるような、絶えず両国の国民が、あるいは両国の漁民がということばを先ほどから使われておりますが、私らは今日、協定発効までいろいろな問題を提起してまいったのでございまして、小さいものを掘り下げて考えますと、解決しなければならぬ問題がたくさん山積しておりながら、条約を締結したといううらみがある。その一つは、先ほどから追跡権を盛んに楢崎委員からも質問されておりましたが、こういったものでも、いわゆる国際慣行、そんなものに従っておつき合いができる相手の国柄ならば、大臣の御意見のとおりでいいのでありますけれども、この国柄はたいへん違った国柄でございまして、そういった紳士的なものの言い方、考え方ではたしてこの海域における安全操業が今後確保されるかどうかということは、非常に疑問でございます。たくさんな問題が残っておるが、その一例を申し上げましても、かりに無害通航の問題でも、いわゆる専管水域の中は無害通航が公海自由の原則によってできるのです。この無害通航の場合は、漁具を格納することになっている。ところが、漁具の格納それ自体の定義に問題がある。これも煮詰めていない。たくさん煮詰めていない問題が山積していることは、大臣はよく承知しながらこの条約を締結されたと、私は承知いたしておるのでございます。かねて外務省でこの韓国の取り扱いについて長年苦労されておることも、私は百も承知いたしておるのでございます。そこで問題は、かような理不尽な国際条約を無視した行動に出る韓国に対して、この問題の解決について大臣はどのような決意を持たれておるか、ひとつお示しを願いたいと思います。
  125. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 あくまで協定の端々に至るまで関係の漁民に徹底をさせて、そしてこれをあくまで順法させるとい5強力な指導を韓国に要求する必要がある。またこっちのほうは、もう神様か仏様くらいに考えることも少し思い上がり過ぎた考え方だという批判が起こると、これまたおもしろくない影響がありますので、こっちはこっちでやはり大いに徹底して順法させるのだという姿勢をあくまでとるべきであると、私は考えます。そういう点では、あなた方はいま現場に対して非常な指導力を持っておられるので間違いないとは思うけれども、とにかくこれは双務的に——ものは言い方でございますが、そういうふうに申しておるわけであります。とにかく問題は先方のほうにかなり指導の徹底が必要である、こういうことは考えております。
  126. 金子岩三

    金子(岩)委員 私は、この事件の今後の取り扱い、解決いかんによって、将来起こる問題に非常に重大な影響があるのでございますから、ここでひとつ私見を提起してみたいと思います。私は、別に好戦思想を持ったものでもなければ何でもない平和論者であります。そこで、目下第一年度の昭和四十一年度の韓国の経済協力の協議が行なわれて、すでに煮詰まりつつあるということを承っておるのであります。そこで、さしあたっての問題点を簡単に申し上げます。韓国の漁業振興に対する経済協力は、いわゆる商業ベース、民間経済援助によるベースによって韓国の水産を興すというたてまえに立って長年の交渉が続けられておったのでございますが、このたびいよいよこの協議に入った内容を見ますと、これはいわゆる頭金が二割で、韓国ではそれに応ずる業界人はいない。したがって、全部無償供与三億ドルの中に切りかえてしまって、千五百数十万ドルの要求をされておる。この内容を見ますと、いや以西底びきの代船新造船が二百隻とか、あるいは以東が百隻とか、あるいはまき網が十九隻とか、いろいろな内容が明示されておるのでございます。これは国民感情から申しますと、われわれが艱難辛苦して納めた税金で韓国にたくさんの新しい船をつくってやって、韓国のいわゆる漁獲能力を上げようとして日本は援助しておるわけですね。そのかたわら、この協定締結された海域において、撃たれたり、銃を発砲されたり、一体こういうケースが世界にあるでしょうか。私は、国民感情はとうてい許さないと思う。一西日本の漁民の利害関係ではありません。私は、外務省の幹部の方から、昨年この交渉の過程において、武力なき外交は弱いのだ、限界点にきておるのだということを切々と説明を聞いたのでございますが、大臣もやはり武力なきわが国の外交はこれが限界だとおぼしめしになって、特に韓国には軟弱な態度をとっておるのであるかどうか。私はそういう感じがするのでございます。したがって、私が提議せんとするのは、このいわゆる経済協力の協議を、この事件が円満に解決するまではひとつ中止してもらいたいというのが、私のこの問題解決に対する政府に対する要望であります。この件について、ひとつ大臣の所見を伺いたいと思います。
  127. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 問題を突き詰めて考えると、際限なくいろいろな論議が出てくるわけでありますが、十分に御所見のほどは拝聴いたしまして、参考に資したいと存じます。
  128. 金子岩三

    金子(岩)委員 これで終わります。
  129. 木村武雄

  130. 赤路友藏

    赤路委員 大臣は時間の都合があるようでありますので、できるだけ私は重要な点だけを摘出いたしまして、御質問を申し上げたいと思うわけであります。  こういうような事態は、起こるべくして起こった事態である、こういうふうに私は解釈しております。この条約を締結いたしますときに、法律的な規定と政治的取引とを混同したところに問題がある。私は筋道だけを明確にこの際しておきたいと思うのですが、まず第一点の質問は、領海における沿岸国の権利について、どなたでもけっこうです、大要を御説明願います。
  131. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 領海に対しましては、外国の船舶に無害航行を認めなくてはならぬという点以外は、ほとんど何おも沿岸国はできる、こういうふうに国際法の一般原則はなっていると思います。
  132. 赤路友藏

    赤路委員 それでは、韓国の領海は何マイルですか。
  133. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 韓国は、これまで自分の国は国際法上領海は何海里であると思うという立場を一度も明らかにしたことはございません。ただ、過去に日本の船を拿捕したりした事例からいいますと、いつでも三海里以内に入ったというようなことをあげておることから見まして、そういう立場を暗々裏にとっているのではないかということだけが言える程度でございます。
  134. 赤路友藏

    赤路委員 そういう程度でこの重要な条約をおやりになった、ここに問題があると思う。かりにもこういうような条約を結ぶのに、相手国の領海がわからないままで結ぶというところに大きな間違いがある。これが一切の問題の起点だと私は思う。それでは、いまおっしゃったように、三海里以内だと思う、日本側はそう思ってこの条約をおやりになったのかどうか、これを明確にしていただきたい。
  135. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 先ほどは韓国の立場を申しましたが、日本立場は、日本の領海のみならず、世界じゅうの国の領海は、すべて国際法上三海里であるべきものである、国際法がそうである、したがって、それ以外のことを言っても国際法上は認められない、そういう立場でございます。
  136. 赤路友藏

    赤路委員 なかなか微妙な答弁、三海里であるべきであるという御答弁であります。しかしながら、国際法上、この領海は何ら明確になっていない。千八百何十年ですか、ヘーグ会議をやって以降、各国がそれぞれ領海宣言はしておりますが、国際法上正式に何海里ということをきめたケースはない。ただ三海里説が多かったというので、三海里を一つの慣習として持ってきましたが、法律的にはないはずなんです。ありますか。
  137. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 条約に成文化されたような規則としては、御指摘のとおり、ございません。
  138. 赤路友藏

    赤路委員 そこで、もう一度お尋ねいたします。もうごちゃごちゃ言わないで、日本政府は韓国の領海を何マイルと見たか、それだけ……。
  139. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 三海里と考えております。
  140. 赤路友藏

    赤路委員 そこで、私は先ほど来御答弁をお聞きいたしておりましたが、この専管水域の中における排他的管轄権、これは、先ほど来の御答弁によりますと、国際的な原則が明らかになっておる、こういうようなことであったと思う。そうしますと、この原則なるものの根拠は、一体どこにあるか。
  141. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 私のことばが足りなかった場合もあったかと存じますが、まず第一に、この漁業専管水域排他的管轄権と申しますのは、協定にございますように、漁業に関してのものである。これは、きのうは明確に申しましたけれども、きょうはあまりその点をはっきり申さなかったかもしれません。それから、排他的管轄権ということばの意味としては、管轄権ということばを使うときの意味としては、当然裁判管轄権も含まれる、こういうことを申したと思います。それからもう一つは、漁業水域制度をつくる場合に、そしてそこに外国の船を入れないで、つまり、いわゆる入り会いを認めない場合には、裁判管轄権沿岸国が行なら、これはいままでの例でございます。こういう三つぐらいのことを申し上げたと思いますが、いまほどはっきり区別して申さなかったので、あるいは誤解を与えたかと存じます。
  142. 赤路友藏

    赤路委員 いまの御答弁にありますように、今度の条約は漁業上の条約である。日韓条約というのは漁業上の条約であって、そしてその条約の中で専管水域を設定して、その専管水域の中では日本側は操業をしない、こういう約束が条約上できておるわけです。その専管水域十二海里の中では、漁業に関しては排他的管轄権がある、こういうことなんです。そこに一点問題があるわけです。これは専管水域の中に入って日本の船は操業をいたしませんという、こういう約束はあります。これは条約上できておる。ところがこの中には、いまあなたが先ほど御答弁になったように、韓国の領海が三海里。そうしますと、専管水域十二海里の領海の外九海里は、明らかに公海だ。これは公海でないとは言えない。公の海だ。そうすると、この公の海の中で法律的に刑事裁判権を沿岸国へ渡す、排他的管轄権という形の中で一切を向こうへ渡してしまうという法的な根拠が、一体あるのかどうか。先ほどあなたはこういうことをおっしゃった。専管水域での裁判管轄権には欧州条約がある。この欧州条約はいつ発効いたしましたか。
  143. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 欧州条約は、私、いま聞いたのではっきりいたしませんが、まだ発効しておらないということでございます。  それから、確かに裁判管轄権を他国に渡すということの重要なことは御指摘のとおりでございますが、この協定が本来自由であるべき公海につきまして、日韓間で国際法に対する特約をいましているわけでございます。こういうものがなければ、日本の船は自由に漁業ができ、また裁判管轄権もすべて旗国に帰すべきもので、他国の干渉を受くべき筋合いのものではないのでございますが、もうよく御存じのような事情で、こういう協定を結ぶことによって問題を円満に解決したということでございまして、国際法の本来の姿からいえば、非常な制限が含まれておる、これは事実でございます。
  144. 赤路友藏

    赤路委員 私が冒頭に言いましたように、そこが問題なんです。法律的な見解と申しますか、法律上の規定と政治的な配慮を一緒にしているから、問題が混乱してくるわけです。これは公海である以上は、公海における刑事裁判権は、明らかに旗国にあるわけです。  それから、先ほどの欧州条約をあなたはまだ発効していない、こうおっしゃった。そのとおり、発効しておりません。十二カ国のうちで署名しておるのは二カ国です。発効はしていない。したがって、日本が新たに専管水域の中において排他的管轄権を相手の沿岸国へ渡したという、新しい世界的な皮切りをやった。私はこの問題はわかるのです、十四年間韓国と日本との間で問題が積み重ね、積み重ねやられてきたという実績があるから。しかしながら、これだけで済まないということをなぜ考えなかったか。これが今後日本の全体としての国際漁業の各国との条約にどういうような影響を及ぼしてくるかということを、単に日韓間の問題とのみ考えてやったところに問題がある。しかもそういう重大な点をあやふやにしてしまっている。これは日本の漁民の権利、財産権の放棄になるんですよ。やられるというその気持ち、これは私はわかっている。わかっているが、事少なくとも将来にわたってまでいろいろな影響を持ってくるこういう重大な問題は、もっと慎重にやるべきだ、こういうような点をそのままにほうっておいて条約を締結したところに、今日のような事態が起こる原因がある。あまりにも条約締結を急ぎ過ぎた。もっと十分審議すべきであった。ここに問題点がある。大臣、あなたはどうお思いになりますか。あなたが当の責任者です。
  145. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 入り会い権を認めないということにして専管水域を設定した以上は、裁判管轄権もあるもの、こういう解釈は正しいと思います。これは別に締結の早いおそいに関係した問題ではないと思います。
  146. 赤路友藏

    赤路委員 大臣、あなたは従来それ一本で押してこられたわけです。とにかく日本のほうは十二海里の中に入って操業をしない、こう約束しているのだから入らないのだ、このことはわかるんですよ。約束したことは守りましょう、たとえそれがどらあろうとも。約束したことは守るが、事国際法上の法律的見解ということになると、違うんですよ。今度のこの前なされた日韓条約は、韓国側のほうの国会における答弁の中から見てみましても、国際海洋法のこの領海及び接続水域に関する条約というものが根底になった。あるいは公海に関する条約ですか、要するに一連の国際海洋法の条約が根底になってこれが話されている。たしか日韓特別委員会における御答弁の中にも、そのことがあったと思う。日本側も、そうした国際法上の立場を守ってやる、こういうことを言っておられるわけです。それでは国際法のどこに公海における裁判管轄権沿岸国に渡しているのがありますか。その根拠はない。
  147. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 国際法には、魚族資源の保護とか、共同規制水域とか、そういうことは何もなくて、全く自由でありまして、自由であるがゆえに、一国の船舶はすべて旗国の管轄権に服する、海賊行為でもしない限りは、外国の軍艦にもつかまることがない、そういうことになっているわけでございますが、しかしながら、魚族資源の保護とか、まあ国際間の漁業調整ということもあるかもしれませんが、こういうような漁業協定を結ぶということは、その国際法の原則はありながら、近来それに利害関係を有する諸国間で行なわれているわけでございます。また、先ほどおあげになりました海洋法の国際会議でも、公海における漁族資源保護のための多数国間協定も採択されておる。これは、いわば資源保護という点に非常に重点が置かれて、日本立場から言えば置かれ過ぎているような気がしますので、まだ日本がそれに入るとかというところまで踏み切っておりませんが、そういうものを一がいに国際法の一般原則にないことだときめつけてばかりいるわけにもいかないような国際的な趨勢になってまいっておるわけでございます。
  148. 赤路友藏

    赤路委員 何か答弁を聞いておりますと、何とかこの場のがれというと変ですけれども、実際言ってそういう感じがする。私は、あなたたちが日韓のあの条約のときにやられたことを頭から無視してやっておるのじゃない。私はわかった質問をしているつもりですよ。ただ、日韓条約だけでなしに将来及ぶであろうことを、なぜ考えないか。それを考えるというと、との点については十分慎重な態度をとらなければいけない。現にニュージーランドはどうです。この間どなたかおいでになったでしょう。だから、最近の世界の新興国が海に大きな関心を持ってきている。いまあなたのととろにきていますか、アフリカのモーリタニア政府が、領海侵犯だというので賠償金要求をしておる。これらの新興国の海に対する関心というものは、根底にあるものは、結局国際海洋法の諸条約の具体化なんです。こういう方向にいま向かいつつある。そのことが現在の日本漁業というものをかなり大きく圧迫してきている、そういう事態の中で、全体としてこれは考えなければならぬ。もうすでにやったことだからしかたがないんだなんて言って、それじゃ私は済まぬと思う。だからこそこういう事態が出てくるのだから、この際十分この面については、単にその場のがれでやるんでなしに、真剣になって取っ組んでもらいたい。このことを私は言いたいわけです。いま金子委員がかなり具体的な問題で言った。こういうことを何回も何回も繰り返すようじゃいけません。またこれが何回も繰り返されるよらじゃ、佐藤内閣は絶対責任を持たなければいけない。黙って繰り返されて、ほうっておって調査調査で事が済むと思うたら、大きな間違いだ。われわれが慎重に審議をしましょうというのを強行突破したんだから、やはり責任を感じなければいかぬと思います。だから、この点、領海が非常に不明確であり、領海を三海里と条約局長が言うように踏んだら、その外九海里は明らかに公海。そうすると、刑事裁判権は旗国にある。この点は明確にしておく。そのかわりに、入って操業をしませんと言っておるのだから、入って操業するようなことは、これはかりにも条約を締結した立場からいけば、取り締まらなければいけない。業者も考えなければいけないが、官庁も考えなければいけない。われわれは日韓条約に反対する。しかし、国と国とが条約を結んで現にやっておる。その中では一応守っていかなければならぬのです。ただ、その面でもこれをはっきりしておく。先ほど追跡権の問題があった。だから、問題になるわけです。領海及び専管水域の中で操業をしておる場合、これを韓国の巡視艇が見つけたといえば、これは明らかにその外まで追跡権はあります。ただし操業していない単なる航行であるとするなれば、これは絶対追跡権はないはずです。法的にそんな根拠はありません。そういう点があやふやであって、明確になっていないところに問題がある。先ほど金子君が言ったように、専管水域の中で臨検をしておる。これは昨年の十二月の二十八日、韓国政府専管水域の中における日本漁船臨検の緊急命令を発しておる。もう御承知でしょう。そうして大洋の船が臨検を受けておるわけです。これは問題がある。ことしに入ってから、追っかけられておる。そうして今度はこういう事態が起こってきたということは、法的なそういうような規定がしっかりできていないからだ。それをあやふやにしておるから、こういう問題が繰り返し行われておる。本来からいうならば、この時点でこうしたものを明確にするために、韓国との間に話し合いをすべきだと私は思う。大臣どうです、そういう意思はありますか。
  149. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 答弁漏れをいたすかもしれませんが、まず第一に、いま国際的に領海の範囲を広げ、あるいは漁業水域を広く主張する傾向があるということは、御指摘のとおりでございまして、そういうことも十分念頭に置いて、日韓協定交渉いたした次第でございます。  ニュージーランドの件につきましては、これはこういう協定も何も結ばないで、ニュージーランドの国内法で一方的に漁業水域を決定しようというところにおいて、これよりももっといわば罪が重いとわれわれは考えておるわけでありまして、せめてそういうものを設定する場合には、利害関係国との間の協定によって設定するということでやりたい。そういう交渉をニュージーランドといたしておったわけでありますが、それがいままで問題が解決しませんので、国際司法裁判所にでも持ち出そうかというところにまできておるような次第であります。  それから裁判管轄権の問題でも、追跡権の問題でも同様でございますが、これはいずれもわれわれが現在承知しておる限りの今度の事件とは関係のない問題として、はっきりした上でお答えいたしたいと思うのであります。裁判管轄権は、専管水域内で漁業についてのみあるわけであります。そこで、かりに操業いたしておったにいたしましても、韓国の船は漁業水域外まで追いかけてきてつかまえることはできない。追跡権がないというのは、そういう意味でございます。もろ今度の事件には関係ないこととして、一応それははっきり申し上げておきたいと思います。
  150. 赤路友藏

    赤路委員 それでは、これは公海に関する条約、一九六二年九月三十日に発効をしていますね。これの二十三条、「外国船の追跡は、沿岸国の権限のある当局が自国の法令に外国船舶が違反したと信ずる十分の理由があるときに、行なうことができる。このような追跡は、外国船舶又はその端艇が追跡国の内水、領海又は接続水域にある時に開始しなければならず、また、中断されない限り、領海又は接続水域の限界をこえて継続することができる。領海又は接続水域にある外国船舶が停船命令を受ける時に、停船命令を発する船舶もまた領海又は接続水域にあることは、必要でない。」追跡は、「外国船舶が領海及び接続水域に関する条約第二十四条に定める接続水域にあるときは、」その「接続水域の設定によって保護しようとする権利の侵害があった場合に限り、行なうことができる。」そうすると、私が先ほど言ったように、日本の船が接続水域内で操業をしておる場合は、追っかけられて、これを中断しない限り外までくるわけです。ところが問題は、この一番最後に書いておるように、権利の侵害があった場合に限るのであって、権利の侵害とは一体何かということが問題になる。今度の条約の場合でも、操業はしないということなんです。魚はとりませんということなんです。その中へ入って航行しないということじゃないのですよ。これは問題になる一点なんです。こういう点を私はやはりあやふやにしてはいかぬと思う。あなたはいまそうおっしゃったが……。
  151. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 接続水域の制度は、漁業水域とは別なものでございまして、いまお読み上げになりましたように、接続水域から追跡を開始する場合には、「接続水域の設定によって保護しようとする権利の侵害があった場合」に限る。その権利とは何かというのは、領海及び接続水域に関する条約の第二十四条に規定がございまして、これは「関税上、財政上、入国上又は衛生上」の理由からのみでございますから、漁業はこれに入らないわけであります。
  152. 赤路友藏

    赤路委員 それは変わった説ですね。そうすると、接続水域とは何ですか。
  153. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 接続水域とは、いま申し上げました四つの規則の違反を防止し、処罰するために、領海の外側九海里まで沿岸国がこういう防止、処罰の権限を及ぼすことができる、そういう制度でございます。
  154. 赤路友藏

    赤路委員 条約局長、あなたなかなかうまいことを言っている。接続水域と専管水域とは違うということです。確かに文字は違う。そうでしょう。あなたがそれほど法律的なものに固執されるなら、なぜもっと明確にしないのか、私はそう言いたい。領海及び接続水域に関する条約、これが中心になっておる。ただ、専管水域といい、この接続水域の場合でも、これを見てごらんなさい、二十四条。「接続水域は、領海の幅員を定めるための基線から十二海里をこえて拡張することはできない。」、こういうこと、これが要するに海洋国際法上の、あるいは国際漁業上の一つのポイントになっている、十二海里が。ただ、その十二海里を領海とするか、あるいは接続水域として、専管水域として魚をとるあれにするかという面が違うわけです。だから、いまあなたのおっしゃるように、この接続水域というのは全然漁業関係がないという法律的な解釈、これは一応成り立ちますね。この面からいって、これは何も魚のことは書いてないのだから。しかし、一般慣習的には、これははっきりしているわけです。十二海里、これがいまの国際的な慣行ですよ。だから、領海にいたしましても、十二海里をこえる場合は、かってに宣言していいとはいいながら、やはり国際法的には問題がある。だから、そういう点はやはりもう少し明確に押えてもらいたいと思うのです。
  155. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 十二海里という幅が同じであるということは、御指摘のとおりであります。ただ、制度といたしましては「関税上、財政上、入国上又は衛生上」というこの四つの分野に限りまして、この場合は沿岸国が一方的に協定などによらないで違反の防止、処罰ができる。しかもそれがいわば一般国際法上の制度として認められておるわけであります。漁業専管水域というものは、こういう一般条約、協定上何ら根拠のないものでございまして、ただ、いまの段階におきましては、ジュネーブ方式というものが国際約束として成立しなかった現在の段階におきましては、世界の国々の間で、漸次あるいは多数の国の間で、あるいは二国間において取り上げられつつある、いわば形成過程にある、そういうものでありまして、確立ざれた国際法上の制度というわけのものではないわけでございます。
  156. 赤路友藏

    赤路委員 そうすると、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。漁業専管水域というのは、国際法的には何ら根拠のないものである、こういうふうに理解していいですか。
  157. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 国際法上の制度として確立しているものではないということでございます。
  158. 赤路友藏

    赤路委員 そうすると、もう一度私はここではっきりしておきましょう。漁業専管水域というのは、国際的な制度として根拠のないものである、そういうことですか。
  159. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 私が申したような言い方で許していただきたいのですが、国際法上の制度として確立したものじゃない。国際的な制度としていわば形成過程にあるものである。国際的に漸次採用されつつある制度である、国際法上の制度として確立されたものじゃない、こういうことでございます。
  160. 赤路友藏

    赤路委員 先ほどからだいぶんことばを慎重に使っておられるので、それでいいでしょう。これは、何ぼここであなたと私とやってみたところで平行線、そういうことになろうかと思います。今後こうした問題がやはり表へ出てくる事態というものがあらわれてくる。またその際はその際として話し合ってまいりましょう。  今度の場合は、特に共同規制水域の中でこういうようなことが行なわれておる。そこで一つ問題になるのは、日韓特別委員会で外務大臣が御答弁になった李承晩ラインは一体なくなるのか、なくならないのかという議論が、かなり何回か重ねて行なわれてまいりましたが、そのときに答弁の中に、実質的に李承晩ラインはなくなる、これは漁業条約の条文からずっと検討してもらえば、そういうふうになっておる、こういうことをおっしゃっておる。それから条約は国内法に優先する、こういう答弁を外務大臣はなさっておる。今度の場合は、条約に優先して国内法でやられたという結果になっておるわけです。しかも国内法に基づいて起訴をしておるのですね。これはどういうことになりましょうか。これは何かあげ足取りのようなかっこうになりますが、あの条約締結の際の大臣の答弁と食い違いが出てきたわけなんです。ここはどういうふうに大臣、お感じになりますか。
  161. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 起訴をしておる事実はございません。また、当局がこれを起訴に持っていこうというような考え方は、少なくとも向こうの外務部等に当たったところではありません。  それからいま詳細にこの事実に当たって調査を進めておりますが、向こうの臨検でひっつかまえて連行したその根拠は、やはり専管水域を侵した、こういう認識でございまして、従来の李承晩ラインを想定して、これを侵犯したというような考え方で今度の事件が起とっておらない、それは関係はない、こういうふうに言っております。
  162. 赤路友藏

    赤路委員 今後これと似たような事態が起こってくるような感じがするわけでございます。先ほど金子委員から話がありましたが、ここらでよほど政府は、俗なことばで言うとふんどしを締めてと申しますか、これに対処していきませんと、同じような事態が繰り返されるおそれがあるわけです。いずれにいたしましても、韓国の一方的な見解と申しますか、それによって臨検することができるわけで、こちらのほうが何と言おうとも臨検することができる。向こうの一方的な形で行なわれてくるケースが、今度の場合もあらわれておると私は考えるわけです。そういうような事態がなお重ねて行なわれてくるということになりますと、重大なことになろうかと思います。いま完全に歯どめをしておきませんと、私はたいへんなことになると思いますから、いろいろな法的な解釈の疑問点については、また機会を得てひとつゆっくりやらしていただきたいと思う。  本日は、これで私の質問は終わります。
  163. 木村武雄

    木村委員長 次会は、明十八日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時二十三分散会