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大野参考人 ケーブルと衛星とがお互いに競争するものか、あるいは助け合うものかという問題に帰着すると思います。これはおっしゃるとおり
ジャカルタ-
東京間を衛星でもって
通信することは可能であります。しかしながら衛星は一個三百万ドル、しかしどうしても一個だけではいけません。いまの寿命はせいぜい長くても三年、それを五年までに延ばしたいというのがいま技術者の非常に研究努力しているところであります。しかしはたしてこの五年もつということを正確に保証できるかどうかということはだれも言い切れません。故障が起こったら、はしごをかけて修理に行くというわけにはまいりません。別の星を上げるのでなければなりません。いや別の星を上げるのでは間に合いません。星をつくるのにはどうしてもいいものになりますと、一年から二年かかります。そこで、いつでも予備の星をつくっておいて、一発は予備の衛星としてそばへ打ち上げておかなければなりません。地上にも予備のものを持っておかなければなりません。その上、地上局というような問題があります。この地上局一局つくるのに六百万ドルかかります。二十二億です。そうして、今度は地上局を操作するのには非常に高度の技術を必要といたします。そこでは非常に高度に訓練された要員を必要といたします。いろいろ考えてみますと、この
通信衛星というものは非常に優秀な
通信手段ではありますけれども、これを経済的に見たときに、将来の国際
通信は全部衛星一本でまかなえるのだということにはいろいろ未知の問題が多うございます。そこで現在の世界のまず共通した
意見は、衛星
通信はどうしてもさらに将来発達するものでありましょうから、将来の国際
通信の最も有力な手段としてこれは活用していかなければなりません。ことに大陸間
通信にはぜひ必要なものというふうにみな
意見は一致しておりますが、それのみではいけない。やはり
海底ケーブルという非常に安定した、技術も高度に発達し切ったものがある。しかも太平洋では真空管を便っておる
関係上、百二十八あるいは百三十八回線、それをせいぜい両方にある技術操作を加えまして、倍にまで回線をふやすことはできます。そして将来は真空管をトランジスターの中継器に変えることによりまして、現にフロリダからバージンアイランドに行かんとする
ケーブルは七百二十回線というような広い幅のものが取れつつあります。もっと広い幅の
海底ケーブルも開発されるでありましょう。そういたしますと、安定したそういう
海底ケーブルの軸と、それから何でもござれの衛星
通信と、この二つはどうしても両者共存、それにもう一つ従来からございます短波の
通信、これも短波には短波の長所がございますから、これも生かして使う。短波と衛星と
ケーブルとこの三者を組み合わせて、将来の国際
通信のネットワークはできるべきものであろうというのが世界の有力者の一致した
見解でありますが、問題は先生の御
意見は、そういう遠大なことはとにかくとして、現にやろうとする
東南アジアケーブルより衛星を使ったほうが早道ではないか、こういうお尋ねだと思いますが、いま申しましたようなわけで、衛星を
東南アジアと
東京との間に使うには、実は距離が少し短か過ぎます。使えないことはないけれどももったいないです。ですから、むしろ
東南アジアの
地域は
ケーブルで結んで、他の大陸への
通信にはどこかへ集中した
通信を衛星に持っていく、こういうコンビネーション、結び合わせで一応いいのではないかと、私どもはいまの段階で考えております。
これは実は決して空想ではないのです。一つの実例があるのです。それは何かと言いますと、現にアメリカの大陸と
ヨーロッパの大陸を結びますのに、さっき申しましたアーリーバードを使っておりますけれども、そのアーリーバードをどういうふうな使い方をしておるかというと、ドイツとフランスに地上局があり、それからイギリスにもう一つ地上局があります。この三つの主要地上局と、それからイタリアにございます。いわゆる補助的な地上局、これを組み合わせまして、
ヨーロッパの
通信はこの三つの地上局のどれか一つを使って、アメリカの大陸との
通信は衛星でやり、大陸内の
通信は主たる地上の、あるいは海底の
ケーブル網でつなぎ合わせて縦横無尽に疎通をいたしております。つまりイギリスとフランスとドイツの三国は、それぞれの地上局を一週間交代に使って、一つは衛星
通信をやり、他は
海底ケーブルあるいは地上の
ケーブルに使っておる、こういう実例がございます。これも賢明なやり方であります。私どもはそういうやり方が
東南アジアの
地域、われわれの隣の
地域に応用できないものであろうかということを考えておりますので、
海底ケーブルという
計画は、ただいま
政府で非常に熱心に御推奨いただいておりますから、これができればまことにけっこうでございまし、それだからといって、衛星
通信があればそれは無用の長物に変わるかというと、そうはならないと考えているわけであります。