○竹中龍雄君
郵便物の
料金は
昭和二十六年に全面的な
改正が行なわれて以来、
昭和三十六年に第
三種及び第五種
郵便物等の
料金について若干の調整を加えられたほか
改正が行なわれず、書状及びはがきの
料金は今日まで据え置かれていますが、
昭和四十
年度は当初
予算においてすでに五十六億円の
収入不足を生じているのみならず、このまま
経過すると、来
年度以降引き続き相当額の赤字が予想されるので、
料金の
改定を試みているのは一応妥当といえます。
ここで問題となる第一点は、いままでの
郵便事業の経営に対し改善を加える余地があり、またその必要が認められるということです。政府は、改善の必要を痛感し、調査
委員会を設け、すでに
郵政審議会から
郵便事業近代化に関する
答申と
郵便事業財政の改善方策に関する
答申を受け、その実行に努力されていますから、
料金引き上げの額をできるだけ減縮するよう努力されています。今後引き続きこの点について一そうの努力が行なわれるものと信じるとともに、それを切望します。
第二は、単に赤字解消を問題とせず、
料金体系の合理化をあわせ行なう必要がないかということです。ところがわが国の従来の
郵便料金体系は、政策的配慮に力を入れ過ぎ、コストに対する配慮に欠陥が認められます。そのため、
郵便事業の経済的独立採算制度の維持及び純化と矛盾する点が相当にあります。
昭和三十六年の
改正においてこの点につき一部の改善が試みられましたが、今回これと本格的に取り組んでいるのは大きな進歩と思います。この仕事は大事業で、一ぺんに完全なものはでき上がるわけではございませんから、試行錯誤を経てりっぱなものをつくり上げたい。その第一歩として、
改正案は全体的にいうと適当であると考えます。
第三に、
郵便料金を初めとして公益企業
料金を長期間安定することが望ましいのは申すまでもありませんが、安定した
料金は、健全にして安定した経営を基盤に持っていることが大切であります。もしも安定した
料金が不健全な経営や不安定な経営の犠牲の上に立っているとしたら、このような
料金は決して望ましくありません。今回の
郵便法の一部
改正案は、単純な
料金レベルの
引き上げにとどめないで、
郵便事業の経営の合理化と安定化に努力し、それを
郵便料金の構成の改革と競合しているのは大きな進歩で、敬意を表します。その例はいろいろのところにあらわれていますが、時間が制約されていますから一つ一つ取り上げて言うことはやめます。ただ一例だけをあげますと、経営を安定化してコストを下げるとともに、サービスの完全に役立てるために割引制度を導入しているのは賛成です。ここで問題となるのは、割引率についての検討と注意ですが、そこまで立ち入って説明する時間的余裕がありません。一般的にいうと、わが国の
郵便事業の運営においてはマネージメント的なアプローチが他の公企業と比較しておくれており、劣っています。今後この点に対し一大改善を加えることを切望します。
郵便事業近代化に対する
答申はこの点で非常に参考になりますが、依然として欠陥が認められます。これについては時間があったら
あとで再び論及します。
第三点はサービスの改善の問題であります。低
料金がサービスの犠牲のもとで維持されているとしたら、そのような低
料金は歓迎できません。また、
料金の表面的安定がサービスの低下を黙認することによって維持されている場合には、そのような表面的な安定
料金は適正
料金とはいえません。いうまでもなく
料金の
引き上げは
最低限サービスの維持を必要とし、通常はサービスの改善を伴うことが要望されます。今回の
料金の
改定は、このような条件を一応満たしています。ただその内容の吟味が必要となりますが、ここではそこまで立ち入って分析する余裕がありません。わが国の
郵便事業のサービスの現状は改善を必要とするところが多く、
改正案がその点に積極的に取り組む第一歩を踏み出しているのはうれしく思います。サービスの改善はなお
料金体系の
改正と結合して行なう必要があり、またその余地があることはあります。今度の
郵便法の一部
改正はこれを行なっており、本法案の進歩性が認められます。その内容も、全体的にいえば一応是認できます。ただ、部分的に研究を要すると思いますが、
陳述人はその研究を完成しているわけではありませんから、ここに積極的に
意見を述べることはいたしません。これを一つの手がかりとして実施に移した結果、さらに
改正すべき点、補正すべき点を注意深くフォローし、反省して、腰を据えて継続的に改善の努力を重ねられることを望みます。
第四は時期の問題であります。一般的にいうと、公企業にあっては
料金その他の
改正が後手後手に回り、すでに発生している問題の処理にのみ追われる危険があります。それは誤りであって、常に先を
見通して先手を取った経営を行なう必要があります。これが公企業のほんとうの姿です。
郵便事業のごとく世界的に官庁形態を取っている公企業にあっては、その経営が事後的になる危険が多くあります。わが国の
郵便事業も残念ながらその例外になっておりません。今回の
改正も事後的なものである傾きがあります。
料金値上げは消費者にとっては避けたいのが人情ですが、長期的に見ると、経営を近代化し、合理化することが、結局
料金をできるだけ安くし、安定化させるゆえんです。ゆえに私は、今回の
料金改定を認めることによって経営の近代他と合理化に努力する有力な手がかりを与え、前向きのほんとうの公企業らしい経営の実行を今後監視していきたいと思います。
今回の
改正案にはこのような経営の近代化と合理化を行なう多くの具体案が含まれていますから、それを促進したく考えます。いまもし必要
最低限を割るような
要求を強いますと、経営の合理化が阻害され、安定化が危うくなり、多くのひずみを伴生する危険があります。過去にわれわれが犯した誤りを再び繰り返すことは厳に避けねばなりません。
次に、物価の動きとの
関係、他の種の公企業
料金や公営企業
料金との
関係について、時期がはたして適切であるかいなかが問題であります。事前的措置の場合にはこの点について十分の配慮をすることができますが、今回のごとくどちらかといえば事後的な措置の場合には、適切な処理は事実上大きく制約されます。この点については問題とすべき点があまりに多いので、深く立ち入って説明することはできません。
今回の
改正案は、
郵政審議会の
郵便事業財政の改善方策に関する
答申を尊重され、それを具体化することに努力されています。
陳述人は、
審議会の
答申は一般的にいうとよくできていると思います。ゆえに、その線に沿った
改正案は賛成です。ただ、ここに注意を要するのは、両者は完全に一致しているわけではなく、若干の差異が認められます。その修正がすべて不適切であるというのではなくて、改善が認められるのはいうまでもありませんけれ
ども、修正を加える場合に注意を要する重要問題を指摘します。
料金レベルに政策的考慮から修正を加えることについては問題が少ないのでありますが、
料金体系に修正を加える場合にはより一そうの注意を要します。
料金体系が経済的独立採算制を前提としてコストを尊重して構成され、それが科学化され合理化されている場合特にそうです。このような場合、行政上の便宜や政治的取引から修正を加えますと、独立採算制がこの点からくずれてきたり、体系を支持している基礎理論が破壊されたりします。いわんや部分的修正はその限度に対する反省があまり注意されないで行き過ぎにおちいる危険があります。
郵便事業は過去そのような実例を有していますから、この注意は一そう重大な
意味を持ちます。もちろん過去の体系は、政策
料金が支柱となっていましたためそのような欠陥を生じたのであり、最近は、コストが重視され、近代的合理化が行なわれていますからそのような可能性は軽減されていますけれ
ども、危険がないとはいえません。一々例をあげることができませんから一例だけを示しますと、第四種に
学術雑誌が入っていますが、前回の
改正においては
学術雑誌に対する配慮が欠け、それに対する十分な研究が行なわれていませんでしたから、今回それを
改正したのは適正な措置で、賛成です。ただ、これを第四種に入れる便宜手段をとった結果、第四種の性格があいまいになり、政策
料金の寄せ集め、しかもこれは不徹底な行政的便宜措置となっています。
答申はこの点一応筋が通っています。このような例は他にも認められます。また、便宜措置はどこまで認められるか、その限度は何かについて研究する必要があります。しかしながら私は、このような研究をすべていま完成しているわけではなく、またそのような仕事は短時日にできるものではありません。ゆえに、時間的余裕のないいま、重大な欠陥が認められない限り、原案を一応認め、その是正と補完の作業が今後継続して力強く進められることを要望します。今回の
改正案は経営の合理化に努力し、幾多の具体案を持っていることは非常にけっこうです。
ただ一点強く要望したいのは、
法律案の原案になっている
郵便事業近代化に関する
答申が運営面の合理化を軽く評価している欠陥の是正です。運営面の合理化は、これを分析すると、第一は経営管理の合理化であり、
郵便事業はこの点に大きな欠陥が認められます。第二は行政管理の合理化であり、第三は第一のものと第二ものとの総合の合理化です。
郵便事業はこの第三の点にも大きな欠陥を包蔵しています。もちろん、
答申の主張しているところを第一義的に重点的に行ない、運営の合理化を第二義的に行なうほうが具体案としては適切でしょう。しかし、それは重要性が劣るからではなくて、短時間の間に効果をあげることが困難であり、時間をかけて持続的に行なう必要があるためです。しかし、それだからといって、重要性を見落としたり、その着手の時期を不当におくらせてはなりません。その必要性が大であり、緊急であるだけ、早く着手し、腰を据えて持続的実行をされることを強く望んでやみません。(拍手)