○萩田参考人 ただいま
委員長からお名ざしのございましたように、かつてございました
地方公営企業制度調査会のうち、第二部会に属しておりましたので、その模様を話せ、こういうことでございます。この内容につきましては、たしか
委員部を通じまして第二部会の報告書そのものもお配りしてあるはずでございますので、詳細はそれによってごらん願いたいと思いますが、その
審議の内容を申し
上げ、さらに何か
法案についての意見を個人的でいいから述べよという、こういう連絡でございましたので、そういう
趣旨でお話し申し
上げたいと思います。
それで、第二部会におきましては、御承知のように、
水道、工業用
水道、
病院、下
水道、この四つの
事業を主たる
対象にして
審議したのでございます。
それで、その中におきましては、もちろん部会でございますので、結論を得るというようなことではなしに、問題点あるいは意見の概要を報告する。これが報告書に出ておるわけでございまするが、大体これが骨子になりまして調査会そのものの答申ができ、そうして
政府の原案も大体それに沿ってできておるようでございますので、そういう経過を一方に申し
上げると同時に、
社会党から出ておりまする各種の
法案、これがいままで申し
上げたような方向と違っておるようでございますので、これについても申し述べよということでございますが、ただ、私不勉強でございまして、一昨日ですか、
委員部より送っていただきました
法案及び
説明、速記録を拝見しただけでございますので、的確なお話ができるかどうかわかりませんが、そういう順序で申し
上げたいと思います。
まず、第二部会でもそうでございますし、総会においてもそうでございますが、公営
企業の立て直しということについていろいろ議論したのでございますけれ
ども、冒頭に、特に二つのことを申し
上げたいと思います。
一つは、この調査会の内容と申しますか、目標と申しますか、これは当面大きな
赤字が出ておるのを、応急の
措置として助けるというようなことももちろんでざいますが、それよりもむしろ、公営
企業というものが現在非常に発展してきて、一般
住民のためになくてはならないものになっている。ところが、その制度というものは、終戦後自治法の
改正等と関連してできて、非常に古くなっておって、したがって、根本的にこれを再
検討する必要があるのじゃないか。今後将来ずっと、公営
企業を円滑に、
能率あるものとして
運営していくためにはどうしたらいいかという、そういう根本を考えておるのでありまして、決して当面の
赤字対策というようなことだけではなかった、これが大体調査会の考え方でございます。
それからもう一つは、この公営
企業というものが現在非常に悪化しておるのは、何も公営
企業自体だけの問題ではなくて、いろいろ全体の社会経済の変化、ことに都市をめぐるところの過度の集中化、あるいは
公共投資の一般的な不足というようなこと、いわば外的な条件が大きな原因をなしておりまするから、したがって、そういうものもあわせて改善されていかなければ、とうてい公営
企業だけでは健全な
運営になるとは考えないのであります。しかしながら、それはそれとして、公営
企業自体においても、ここに述べておるような程度のことはどうしてもやらなきゃならない。外的な条件が改善されるまで待つ、あるいはそちらに責任を転嫁して、こちらはのんべんとしている、こういうような
性格のものではない。少なくともここにあげてあることは、ほかのことがどうあろうともやらなければならない。そういう考え方でできております。
以上二点をまず前提として申し
上げておきます。
それから、内容にわたりますと、もうすでに御承知とも思いまするが、いろいろございますけれ
ども、大きなところを項目的に申し
上げますると、大体五つあるかと思います。
一つは、この
経営について、そもそもいかなる方向でいくかということでございまするが、これは結局、
企業としては当然
独立採算制ということを中心としてやっていかなければいけない、こういうことでございます。現に公営
企業法に
公共性と
経済性ということが書いてありまするが、この
公共性と
経済性ということが、
——これは私見てございまするが、少しく誤解されておるようでありまして、
公共性ということであると、どんなに金がかかっても、何が何でもやらなければいけないのだ、こういうふうにとっておるような意見もありまするが、それはそうではなくて、やはり
企業である以上は当然独立採算的である。しかしながら、そうかといって、いわゆる局側
企業のように利潤本位でもってやるのではないのだ、
公共ということを考えてやらなければいけないのだ、こういうところにこの条文をわざわざ置いた
趣旨があるのじゃないかと私は考えておるのであります。したがいまして、こういうことを前提にしまして、まず第一に、その
負担区分の適正化ということでございます。これはいわゆる民間
企業と違いまして、公営
企業でございまするから、単に
企業本来の仕事だけではなく、あるいは目的だけではなくて、ほかに一般行政的なもの、あるいは
先ほど申しました採算ということに抵触するようなこともやらなければならない。したがって、そういうものについてははっきりした
負担区分を考えて、
地方団体の
一般会計あるいは国において
負担すべきものは当然
負担すべきである、この点が第一でございます。
それから第一には、そういう
負担区分をした上、
企業経営に相当する部分につきましては適正な
料金——適正な
料金ということは、そういう
負担区分を明確にしたあとにおいて、しかも
能率ある
事業の執行をして、当然必要な
原価に織り込まれるところの
料金はそこに持っていくということでございます。
以上が
経営の、むしろ
財政面、経理面についての基本の二点でございます。
第三には、
経営管理の体制を強化することでございます。これにつきましては、やはり
企業として行なう以上、いかに公営
企業であっても、
企業にふさわしいような体制でなければならない。これが一般行政と違うところであります。そういう点から一番問題になりましたのは、いわゆる
企業管理者をどうするかということで、これにつきましては、その
企業管理者にかなり有能な人を迎え、その人の手腕の発揮ができるように、現在ありますいろいろな制肘をなるべく排除する、こう考えております。そうしてさらにそれを進めまして、いわゆる間接公営形式も考えられるのじゃないかということでございまするが、これにつきましては、ただ、私のいま担当する第三部会のほうの
水道以下の
事業につきましてはあまり問題はないので、むしろ
交通の問題じゃないのかという大体の空気だったように思っております。そのような方法もあったりしまして、
独立採算制を強化するのでありますが、しかし、あくまで
公共団体の行なう仕事である以上は、
住民のいわゆるコントロールというものがなければならない。それを首長なり
議会なりを通じて行なわれるのであって、それがいわゆる
経営の干渉になる、じゃまになるというようなことではなくて、
住民の正しい意思を代表したようなコントロールがその
管理者なり、あるいはかりに間接公営をとった場合には、その主体に対して加えられる、そういうふうに考えなければならない、こういう考えであります。
それから第四番目には
企業の
合理化でございます。
企業の
合理化につきましては、これはあくまで
合理化的な
経営をやるということが、これは
先ほども申し
上げました
地方公営企業法の
経済性というようなことから当然のことだと思います。これは何も公営
企業だけにかかわらず、およそ
地方団体の行政はすべて
能率的に行なうべきであって、
住民の
負担税の形をとるにしろ、
使用料、手数料の形をとるにしろ、
住民の金によって行なわれている
事業なのでありますが、これがいやしくもむだに使われる、非
能率に使われるというようなことはいけないので、あくまで
合理化をしなければいけない。ところが、この公営
企業の中には、それは多数でありますからいろいろあると思いますけれ
ども、総体的にいわゆるお役所仕事であって、民間
企業に比べて非常に非
能率なものがある。そこで、それをどうするかということが今後
企業経営を健全にやっていく上において非常に重要なことではないかと思います。民間の
委員の方々あたりから、その調査会に入っておられまして、やはり一番問題にされる点はこの点でありまして、民間とは非常に違うということを言われているのであります。報告書にもあったと思いますが、
公共性に名をかりて、
公共性だということによってその非
能率の
経営がいいということには決してならぬのだという
表現を使っておりますが、これはそのとおりだと思っております。
最後にいわゆる当面の
赤字解消の問題であります。
以上五つの項目を論議したのでありまするが、もう時間もございませんので、さらにもう少しく個々の
事業、四つの
事業について、特に強調しなければならないような点を申し
上げていきたいと思います。
まず第一の
負担区分の問題についてでありまするが、
水道については、これはもうむしろ
独立採算制が原則なのであって、きわめて例外的に、離れ島であるとか、どうにもこうにも水がなくて、一戸当たり何千円かかっても、生活を維持していくにはどうしても
水道をつくらなければならないというようなところは
一般会計負担もいいが、それ以外は、大体原則として、
水道については
一般会計の
負担とか
補助というものは要らないという考えであります。
それから工業用
水道でありまするが、これが非常に問題になって、しかも
政府案においては、この調査会の答申と少しくはずれているようでございます。これにつきましては、いわゆる地盤沈下の防止とか、あるいは地域の工業開発というような観点から行なわれておる、したがって現在
国庫補助金があるということでありますが、そういう意味において
国庫補助金がありますことは必要であろうと思いますけれ
ども、ただ一番われわれ問題にしましたのは、国が
補助金を出していながら、それだけでは十分でないにもかかわらず、
補助金を出した以上は
料金を決定しなければいけない、そしてそれでいかないところは当然地方の
一般会計が
負担する、こういう態度はおかしい。国が出すものは出す、地方がかりに地域開発のために出す必要があるなら出してもいい、しかしそれは地方の自治である。国は出した
範囲内においての監督をしておればいいのであって、少しばかりの
補助金を出しておいて、
料金全体を統制するような考えはいけない。こういうようなことであったわけでありますが、必ずしも
政府側としてはっきりしていないようでございます。
次の
病院でございますが、これは公営
企業の中でも非常にほかと違いまして、いわゆる衛生行政的なことをやり、しかも公立
病院でなければないような高度の潤沢な
病院施設あるいは治療をやっておるのでありまして、それに対してはかなり
一般会計の
負担ということが問題になるという感じでございます。たとえば、簡単に申しまして
建設費というようなものについての
一般会計負担というのは相当考えてもいいのじゃないか、こういうことでございます。
それから下水につきましても、
水道、
交通あたりと違いまして、いわゆる雨水を処理するのと、家庭汚水、工業汚水を処理する汚水の分とあるわけでございまして、汚水の分については独立採算的な考え方もいいけれ
ども、雨水の分については、これは河川みたいなものであって
一般会計負担、こういうような考え方でございます。
それから第二点の
料金問題についてでありますが、いま申しましたようなことと大体うらはらをなす点でございます。繰り返して申し
上げるようでありますが、工業用水に対する
補助金による
料金の統制ということは適当でないということでございます。それから
病院につきましては、
料金というものがいわゆる社会保険のワクの中に全部入っておりますから、結局
政府のきめる診療報酬のあり方ということが問題でありまして、公営
企業ひとりどうということはありませんが、これについても非常に問題があるように思われております。
それから管理体制の問題につきましては、もう
先ほどのあれで終わることにいたしまして、四番目の
合理化の問題でございます。これにつきまして非常に問題になりましたのは、いわゆる人件費の問題であります。これにつきましては、むしろ一番人件費の割合のウエートの高い
交通事業についての問題だと思いますけれ
ども、やはりこれらの四つの
企業においても問題があります。これに対する考え方は、やはり公務員でありますから、いわゆる一般の
企業とは違うのでありましょうけれ
ども、そこには公務員としても、
企業職員であるということによって一般行政
職員とは違った
給与体系でなければならない、そこが非常に問題になったわけでございます。そういうことは何も現在の
企業公務員の待遇を悪くしろということではないのでありまして、
企業会計にふさわしい、しかも公務員としてふさわしい体系を別途に考えるべきものであって、現在のような一般行政職のものをただ借りているというようなかっこうは適当でない、そういう方向において
解決すべきだ、こういう感じでございます。もちろん
企業一つ一つをとりますと、中にはこの人件費が民間
企業あたりと比べて非常に適当でないものがあります。この民間
企業と比べるということは公務員全体を通じて当然のことでございまして、国家公務員法でも
地方公務員法でも、やはり民間の
給与ということを非常に均衡として重視しているのでありますが、それについて適当でないものがあるだろうと思いますけれ
ども、全体の考えとしては、何も悪くすることをもってこの答申の
本旨としているわけじゃないので、いわゆる
企業会計にふさわしい
給与体系をつくるということを強く考えておるわけであります。
最後に、
再建の問題であります。これは何としても早く
再建しなければならないと思いますが、ただこれに関連しまして非常に問題でありますのは、いままでの経理の方式がいわゆる
企業会計方式であるべきにかかわらず、
先ほどの
料金計算とか、そういう問題のときも同じことでございますが、単に現金主義の計算というかっこうになっておる面があります。したがって、いわゆる
赤字という問題にも二重の意味があるようでありますが、少なくとも
企業会計方式でもってしっかり計算したあとにおいて
赤字が出ないようにする、そして別に
資金面の過不足というのは起債の操作等によって行なう、こういう考え方でございます。そこで
赤字は、大体かつて地方
財政の
一般会計について行ないましたような方式に準じた
再建方式をつくるということでございます。したかいまして、それに対しては相当の
政府の
援助があってしかるべきだ。しかもその場合、特にわれわれのこの四つの
事業ではありませんけれ
ども、いわゆる
交通事業なんかについてやりました、国が物価政策というような国策のために無理にその
料金を抑えておいたというようなものは、まさにこれは国家の責任なのでありますから、こういうものについては大幅に考えなければいかぬじゃないか、こういう考えであったと思います。
大体所定の時間のようでございますので、私の意見をこれをもって終わらせていただきます。