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1966-05-12 第51回国会 衆議院 地方行政委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年五月十二日(木曜日)    午前十時三十四分開議 出席委員    委員長 岡崎 英城君    理事 大石 八治君 理事 奥野 誠亮君    理事 渡海元三郎君 理事 和爾俊二郎君    理事 秋山 徳雄君 理事 華山 親義君    理事 細谷 治嘉君       亀山 孝一君    島村 一郎君       田村 良平君    藤田 義光君       村山 達雄君    森下 元晴君       山崎  巖君    島上善五郎君       重盛 寿治君    島上安太郎君       泊谷 裕夫君    西宮  弘君       野間千代三君    安井 吉典君       門司  亮君  出席政府委員         自治政務次官  大西 正男君         自治事務官         (財政局長)  柴田  護君  委員外出席者         議     員 安井 吉典君         参  考  人         (前地方公営企         業制度調査会委         員)      萩田  保君         参  考  人         (東京都副知         事)      鈴木 俊一君         参  考  人         (仙台市長)  島野  武君         参  考  人         (全日本水道労         働組合副委員         長)      中井 高明君         専  門  員 越村安太郎君     ――――――――――――― 五月十二日  委員井手以誠君久保田鶴松君及び阪上安太郎  君辞任につき、その補欠として野間千代三君、  泊谷裕夫君及び西宮弘君が議長指名委員に  選任された。 同日  委員泊谷裕夫君、西宮弘君及び野間千代三君辞  任につき、その補欠として久保田鶴松君、阪上  安太郎君及び井手以誠君議長指名委員に  選任された。 五月十日  地方財政確立に関する陳情書  (第三四〇号)  地方公営企業法の一部を改正する法律案に関す  る陳情書(第三四  一号)  町村議会議決権強化拡充に関する陳情書  (第三四二号)  県民税賦課徴収方法改正に関する陳情書  (第三四三号)  地方交付税算定における人口減少緩和対策に関  する陳情書外一件  (第三四四  号)  町村税財源拡充による財政確立に関する陳情  書外一件  (第三四五  号)  地方公務員定年制法制化に関する陳情書外一  件  (第三四六号)  小型軽四輪自動車税市町村移譲に関する陳情  書外一件  (第三四七号)  地方公務員共済組合短期給付に対する国庫負担  制度確立に関する陳情書  (第三四八号)  地方公共団体超過負担解消に関する陳情書  (第三四九号)  国、県費事業に対する地元負担金軽減に関する  陳情書  (第三五〇号)  町村開発に関する陳情書  (第三八三  号)  近畿圏都市開発区域に対する起債の特別許可等  に関する陳情書  (第三八七  号)  交通信号機設置費全額国庫負担に関する陳情書  (第四二三号)  警察署留置場使用に関する陳情書  (第四二四号)  地方公共団体消防力強化に関する陳情書  (第四二五号)  地方自治体に対する財政援助等に関する陳情書  (第四二六号)  医療機関施設に対する固定資産税免除に関する  陳情書  (第四二七号)  地方公営企業確立に関する陳情書  (第四二  八号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  地方公営企業法の一部を改正する法律案内閣  提出第一〇七号)  地方公営企業法の一部を改正する法律案安井  吉典君外九名提出衆法第三八号)  地方公営企業財政再建促進特別措置法案安井  吉典君外九名提出衆法第三九号)  公営企業金融公庫法の一部を改正する法律案安  井吉典君外九名提出衆法第四〇号)      ――――◇―――――
  2. 岡崎英城

    岡崎委員長 これより会議を開きます。  内閣提出にかかる地方公営企業法の一部を改正する法律案安井吉典君外九名提出にかかる地方公営企業法の一部を改正する法律案地方公営企業財政再建促進特別措置法案、及び公営企業金融公庫法の一部を改正する法律案、以上の四案を一括して議題とし、審議を進めます。
  3. 岡崎英城

    岡崎委員長 この際、安井吉典君外九名の提出にかかる地方公営企業法の一部を改正する法律案外二案について、提出者から提案理由説明を聴取いたします。安井吉典君。
  4. 安井吉典

    安井議員 ただいま議題となりました地方公営企業法の一部を改正する法律案外二法案に関し、提案者を代走し、その要旨につき御説明申し上げたいと思います。  資料につきましてはすでに配付済みと聞いておりますが、四月二十三日付の地方公営企業法等改正法案の要点という刷りものにつきまして申し上げたいと思います。  私ども社会党法案提案する趣旨は、今回の地方公営企業危機に対するための対策としての政府法案がきわめて多くの欠点を持っているからであります。したがって、それにかわるものとしてわれわれの長い間の検討の結果をまとめまして、これから申し上げる三法案という形に仕上げたわけであります。  私ども政府提案に対し、問題と考えております点は、次の五点であります。  第一は、地方公営企業公共性政府提案の中には無視され、独立採算制への道を一そう極めているという点であります。  第二点は、企業経済性をひたすら追求させるために、適性な原価という名前で料金上げの方向を」の物価騰貴段階におきまして方向づけているということであります。  第三点は、地方公営企業に対する自治体の主張や議会の権能を弱めているという点は、今日の危機打開代任骨立場を弱めるものとして賛成しかれ乙わけであります。  第四点は、この危機の原因は、政府経済成長政策地方公共団体にしわ寄せした結果としてあらわれておるのであり、したがって、政府自体代任を負うべき面が多く、かつまた地方公営企業本旨から考えまして、自治体自体の自主的な解決というのは当然ながら、地方自治財政が全体的に弱っております現在における対策としては、国の財政的援助措置は全く見るべきものがなく、既往債たな上げのための再建債等も内容が貧弱な上に、自治体に対する制限やあるいは要求が強く、中央統制強化口実となるおそれがあることであります。  第五点は、企業職員身分取り扱いについては、地方公務員とし、労働基本権を剥奪しておきながら、一方給与制度能率経営業績によるものに改め、かつ再建債と引きかえに合理化を強要しようとしておる、かような点であります。  これらの批判の上に立ちまして、わが党は地方公営企業法の一部を改正する法律案地方公営企業財政再建特別措置法案公営企業金融公庫法の一部を改正する法律案、並びに別途提出済み都市鉄道整備促進法案、この五法案政府法案に対比するものとして提案をいたした次第でございます。  以下、今次提案の三法案につき、順次御説明を申し上げたいと思います。  まず、地方公営企業法の一部を改正する法律案についてであります。  第一に、法適用事業範囲等につきましては、私どもは大きく分けて二種類、小さく分ければ三種類地方公営企業性格を分けたいと考えているわけであります。つまり法律で定める事業、その第一種類水道卒業軌道事業自動車運送事業地方鉄道事業及びガス事業で、いわゆる住民必需のもので住民に直結する性格事業であります。これにつきましては、独立採算制によらないものとして本法を適用することといたしました。  法定事業の第二は、工業用水道事業及び電気事業で、これは住民に直接つながらないで、他の営利事業を通じ、間接的につながるという性格事業でありますが、これらは独立採算制によるものとしてこの法律を適用することといたしました。  次に、条例事業であります。これはただいま申し上げました以外の事業については、この法律の全部または一部を適用することができるものといたしました。政府案では先ほどの第一種及び第二種の区別をいたしていないわけでありますが、私どもはその事業公共性問題等考慮に入れながら、かような分類をいたしたわけであります。  第二は、管理者についてでありますが、政府案は首長及び議会権限を縮小し、管理者特別職として権限拡大しているわけでありますが、わが党案では、法定事業管理者は必置制といたし、副知事または助役が兼ねることができないことといたしているだけでありまして、その他は現行どおりといたしております。このことは財政的な援助を十分に行なうことなしに管理者権限を強化いたしましても、それによって問題の基本的な解決にはならないからであります、今日のような段階におきまして、より多く理事者議会住民から選ばれた立場での真剣な取り組みをこそ期待をすべきではないかと考えるからであります。  第三は、企業会計の原則でありますが、法定事業として考えております住民直結的な襲業の経費は、その経営に伴う収入及び一般会計からの繰り入れ金をもって充てなければならないと規定し、その他の工業用水道等事業につきましては、あくまで経営に伴う収入をもって充てなければならない、かように定めているわけであります。一般会計からの繰り入れの問題につきましては、妥当な料金収入だけでは健全運営支障を生ずる場合、能率的経営を行なってもなお経営困難な業務を行なう場合、その他公共福祉増進のために必要な場合と限定をいたしております。このことは、一般会計自体も非常に窮屈な段階でございますので、漫然たる繰り入れには疑問があるからであります。  第四は、企業会計一般会計等との負担区分の問題でありますが、地方公営企業経費で、一、地方公営企業公共の場所において公衆に対し無償でする給付に要する経費、二、地方公営企業職員または施設が国または地方公共団体事務のために使用された場合に要する経費、三、国または地方公共団体事務のため必要を生じた地方公営企業施設の工事に要する経費、四、その他地方公営企業経営収入をもって充てることがその性質上適当でない経費政令で定めるもの、これらについてはすべてを地方公営企業の支出にゆだねるのではなしに、国または地方団体一般会計もしくは他の特別会計において負担するものとして、負担区分明確化をはかろうとしているわけであります。この点、政府案と似ておりますけれども、私ども一般会計企業会計だけではなしに、当然国が負担すべきものもあり得ると考えまして、国の負担の面をもあわせて規定している点において特徴があります。具体的には水道の消火せんや公衆便所水道使用交通の場合は、失対割り引きだとか病院看護婦養成等をさすわけであります。  第五は、料金規定でございますが、私ども法定第一種事業といたしております。住民に直接つながる交通水道等料金については、もとより原価基礎といたしますが、住民負担能力その他の経済事情を勘案し、公共福祉増進についても適切に考慮した妥当なものでなければならないと規定をいたしております。  なお、工業用水道等につきましては公正妥当なもので、かつ能率的な経営のもとの適正原価基礎とし、健全な運営を確保することができるものとするものとし、料金構成についても区別をいたしているわけであります。  第六は、地方公共団体財政援助の問題でございますが、まず一般会計からの繰り入れについては、先ほど申し上げたとおり、限定をいたしました上での繰り入れを認める規定といたしております。そのほか、地方公共団体は、企業施設建設または改良の場合及び災害復旧その他特殊な事情により必要がある場合は、予算の定めるところにより一般会計または他の特別会計から企業会計補助することができるものといたしてあります。政府案災害復旧等の場合だけの補助規定でございますが、私どものほうはそれよりも若干拡大をいたしているわけでございます。  第七は、国の財政援助であります。国の財政援助措置については、政府案はほとんどゼロにひとしいわけでありますが、社会党案のまず第一点は、国は公共料金に関する国の行なう抑制政策につき地方公共団体協力を求める場合は、企業の健全な運営のため、財政上適切な措置を講ずる等配慮しなければならないこととし、特に附則第四条で本法施行前の協力についても同様配慮をすべきものといたしており、したがって昭和三十九年度におけるバスの料金引き上げストップによる六十億円の地方公営企業の欠損については、当然この中から国庫補償義務が生ずるわけであります。この点は自治省もことしの予算要求にも要求したようでありますが、大蔵省の査定では削られておりますが、私どもはこれは当然な法律的な裏づけを持たせるべきだと考えるわけであります。  第二点、国は地方公営企業の健全な運営を確保するため必要があると認めるときには、企業債償還繰り延べ、借りかえ、その他特別の配慮をすべきものといたしました。政府案にはこの配慮は全くないわけでありますが、水道交通等のいわゆる住民直結事業企業債のうち六分五厘をこえる企業債は約三千億円あります。——二百三十六億というのは三千億の誤りです。これの六分五厘資金による借りかえ措置を講じなければならないと考えるわけであります。  第三点は、水道法の第四十四条を改正し、国は、水道施設新設増設または改造を行なう地方公共団体に対し、その新設増設または改造に要する費用の一部を補助することができるものといたしたことであります。現行水道法第四十四条では、簡易水道のしかも新設に対してのみ国庫補助の道があります。私どもは、これを広く水道一般拡大するもので、補助率につきましては、簡易水道が三分の一くらいなら一般水道は四分の一くらいであろうと一応のめどは持っておりますが、しかしながら、この場合、水源施設には全額補助をするとか、幹線施設には何割とか、そういうふうなこまかな具体的な措置につきましては、なお検討をいたしております点をつけ加えて申し上げます。  第四点は、先ほども申し上げましたように、すでに都市鉄道整備促進法案を私ども提案いたしておるのでありますが、それには、国は大都市及びその周辺地域における地下鉄または高架鉄道のトンネル及び高架橋建設に要する費用全額補助するものといたしてございますので、その成立を期待いたしているわけであります。私どもが特にこの財政措置の問題を水道地下鉄について提示いたしましたのは、今日の国全体の情勢の中で、設備投資費の膨張によって経営が非常に苦しくなっているのは、この二つの企業であるからであります。これに対しては国自体の積極的なてこ入れがなければ、問題の解決がないということを私どもはこの法案の形で提示いたしたわけであります。  第八は、職員給与等についてであります。これにつきましては、政府案では、職員身分関係現行どおりとしながら、給与には、能率の反映、企業経営状況考慮等要求いたしておりますが、私ども現行どおりとして改正をいたさないことといたしました。その理由は、先ほども申し上げましたように、現行企業職員身分取り扱いは、地方公営企業関係労働法、及び地方公務員法規定によるわけで、その労働基本権のほうの制限はそのままにしておきながら、給与体系だけを改正を行なうということでは、バランスがとれないではないか。特に、ILO八十七号条約の批准に伴って、公務員制度審議会がこれらの地方公務員の身分問題をも含めまして検討を進めております際でありますので、それらの検討が終わったあとからでもおそくはない、当面現状どおりとするということが正しいと考えたからであります。  第九に、附則に関する事項でありますか、この法律昭和四十二年四月一日から施行するものといたしますが、ただし、条項によっては、昭和四十二年一月一日または公布の日から施行するものといたしております。  なお、この法律改正に伴う経過規定並びに関係法関連条項につき整備を行なっております。  次に、地方公営企業財政再建促進特別措置法案について申し上げます。  第一に、この法律の目的は、赤字が累積している地方公営企業財政再建し、その健全な発展に資するため、この法律を制定するものとしたことであります。政府案では、地方公営企業法一部改正案の中に含め、その第七章として規定をいたしておりますが、基本法的なものと暫定特別措置法的なものとを混在するものとして、立法技術的にも問題があると考え、私ども単独法といたしております。  第二に、財政再建計画については、地方公営企業法法定事業または政令で定める病院その他の事業について、昭和四十一年三月三十一日現在で赤字を有する地方公共団体は、その議会議決を経て自治大臣に申し出、財政再建計画を定めなければならないものといたしました。政府案は、四十年三月三十一日現在で、三十九年度末の赤字対象といたしておりますが、これに対する地方団体側の不満は非常に大きいものであります。といいますのは、三十九年度末現在なら赤字額は六百六十億円ぐらいですが、四十年度末になりましたらこれは九百億円から一千億円に及ぶわけであります。したがって、政府案によりますと、一年間に増加いたしました政府案による額の五割ぐらいの額は全部対象外になります。これでは問題の解決に何らならないという点から、私どもはあくまで四十年度末現在に押えるべきだといたしたわけであります。  また、財政再建計画は、自治大臣の指定する日の属する年度及びこれに続くおおむね十五年度以内に不良債務を解消し、健全性を回復するよう、再建基本方針、各年度において解消する不良債務不良債務を解消し健全性回復のための具体的措置、並びに再建債の各年度償還額について定めるものといたしております。政府案はこの再建期間をおおむね五年といたしておりますが、この深刻な赤字の実態を五年ぐらいで解消するとすれば、無理だけがいって、問題の解決にならないと私どもは考えるからであります。  また、財政再建計画は、昭和四十年度赤字企業経営する地方公共団体の長が企業管理者資料に基づき作成し、その議会議決を経て自治大臣の承認を受けなければならないものといたしておりますが、これはおおむね政府案と同様であります。ただ、自治大臣計画を承認するにあたり、必要な条件を付することができるとしているのを削っております。  第三は、財政再建債についてであります。財政再建団体は、昭和四十年度末の不良債務範囲内における一時借り入れ金償還及び未払い金の支払いに充てるため、企業債を起こすことができるものといたしております。この点は先ほど申し上げたとおりであります。  財政再建債償還年限は、財政再建計画に基づき、おおむね十五年以内、これも御説明のとおりであります。  さらに、国は財政再建債利子に対し年三分五厘をこえるものにつき年四分五厘を限度として利子補給を行なうものといたしております点は、政府案においては年六分五厘をこえるものにつき年一分五厘を限度としております点と大きく違う点であります。一分五厘を限度とする利子補給程度では、問題の解決にはほとんどならないという点を、私どもはかような形で表現をいたしているわけであります。  なお、国は再建企業に対し、企業債償還繰り延べ、借りかえその他の財政再建促進措置につき配慮するものといたしております点は、政府案と違う点は、借りかえが追加されていることであります。  第四に、財政再建の確保について、財政再建団体の長は財政再建計画に従って予算を調整しなければならないとか、再建企業管理者財政再建計画に従って業務を執行しなければならないといたしております点は政府案と似ておりますが、ただ、政府案におきましては、再建対象企業は、財政再建を行なう場合でなければ、企業債を起こすことができないといたしており、これは赤字企業はすべて中央統制に服さなければならないとのかまえであり、きわめて問題の多い規定と考えまして、削っております。  第五に、財政再建に対する自治大臣権限についてはきわめて重大な問題でございますので、私どもは慎重な検討をいたしました。その結果、財政再建企業財政運営がその財政再建計画に適合しない場合の自治大臣の関与の問題でありますが、再建団体財政運営財政再建に著しく支障があると認める場合に限って、その財政運営に関し必要な措置につき自治大臣は助言または勧告することができるといたしました。このことは、政府案では地方財政再建促進特別措置法第二十一条をそのまま準用をしており、自治大臣財政運営再建計画に適合させるため、過大な予算執行停止、その他必要な措置を講ずることを求めることができ、これに応じなければ利子補給を停止させることができるというごとき懲罰的な意味の規定すら設けております。スズメの涙ほどの財政援助口実に、地方自治本旨にも触れるのではないかという規定になっております点は問題だと思います。憲法第九十二条の規定にも抵触するのではないかと考えられますので、私どもはこのように表現をいたしました。  また、自治大臣は、地方行政または助政の制度改正等の特別な理由により財政再建計画を変更する必要があると認めるときは、その再建計画の変更を求めることができるとする点は政府案と同様であります。  ただ自治大臣は、この法律に定める自治大臣権限の行使にあたっては、地方公営企業経営する地方公共団体自主性を尊重しなければならないということを明記し、あくまでも自主再建への趣旨を明確にいたしている点において特徴を持っております。  この法律に定める自治大臣権限の一部を都道府県知事に委任することができるものとする点は、政府案と同様であります。  第六に、準用再建その他でありますが、昭和四十一年度以降の年度において新たに再建対象企業となったものが財政再建を行なおうとする場合には、この法律財政再建債及び利子補給に関する規定等を除く規定準用するものとする。  財政再建団体財政再建計画の要領の住民への公表等普通会計財政再建における相当規定準用する点においても、これは大体政府案どおりであります。  最後附則に関する事項でありますが、公布の日からこの法律は施行すべきものといたしております。  公営企業金融公庫法の一部を改正する法律案について最後に申し上げます。  まず貸し付け対象事業拡大の点であります。これは、この公営企業金融公庫地方公営企業に対する公庫として発足をしておきながら、現行法では貸し付け対象事業については政令限定がございますので、地方公営企業のすべてに貸し付け対象拡大するものといたしております。  次に政府出資額の増額とその明確化でありますが、現行規定予算内で出資金を支出するとされており、四十一年度現実出資額は二十八億円であります。しかし私ども企業債についても少なくも六分五厘までの借りかえ債を発行すべきである、さらにまた新規の企業債については全額政府資金の六分五厘資金で見るべきであるが、しかしそれでも不足な分については公庫債の中に六分五厘資金をつくってこれを充てるべきだとの考え方であります。したがって、それに必要な公庫の七分三厘資金を薄めるために政府大幅出資が必要となります。私どもはそのために公庫資本金は百七十八億円とし——これは百六十八億円となっているかもしれませんが、百七十八億円であります。百七十八億円とし、政府がその全額を出資するものといたしたわけであります。  次に借り入れ緩和でありますが、現行法では公庫資金調達に制約が多いのでこれを撤廃し、長期及び短期政府資金借り入れもできることとし、地方公営企業の金融機関としての公庫の役割りを高めるという趣旨から、公庫は主務大臣の認可を受け、長期借り入れまたは短期借り入れをすることができるものといたしました。  最後に、この法律公布の日から施行するものといたしております。  以上が、今回提案法案の要旨でございますが、政府案は今日の地方公営企業危機をその企業の責任を強化する形で乗り切るよりほかないとし、政府自身の責任をとる立場からの財政支出についてはきわめて消極的であります。財政措置はゼロにひとしいわけでありますが、私どもはもちろん企業自体においても反省し、あらゆる努力を続けるべきことは当然だとは考えますけれども、しかしながら、それを激励し、みずからの力を振りしぼってこの危機に立ち向かっていくためには、国の財政的なあるいは金融的な手厚い措置地方公営企業になされなくてはならない。ただ単に企業管理者の責任を強化して、十分に努力をしないで赤字を出した場合にはその管理者を首にするといいましても、それだけでは問題の解決になりません。財政措置が十分でなければ、企業管理者の首が次から次に飛ばされるだけで、問題の解決にならないということを明確にいたしたいのであります。その意味におきまして、政府案が財源措置がゼロで、その反面、地方自治そのものに対する危険な内容すら持っております点を、私どもはあくまでも企業自身がふるい立ってこの危機突破、危機打開の努力をするという方向において法案をつくり上げたわけであります。ぜひ政府案にかわって社会党案の御審議と国会通過に御協力くださいますことをお願い申し上げて、提案理由説明を終わります。(拍手)
  5. 岡崎英城

    岡崎委員長 以上で提案理由説明は終わりました。     —————————————
  6. 岡崎英城

    岡崎委員長 次に、本日は内閣提出にかかる地方公営企業法の一部を改正する法律案、及び安井吉典君外九名提出にかかる地方公営企業法の一部を改正する法律案外二案について、参考人として、前地方公営企業制度調査会委員萩田保君、東京都副知事鈴木俊一君、仙台市長島野武君、全日本水道労働組合副委員長中井高明君の御出席を求め、それぞれの御意見を聴取することにいたしております。  この際一言ごあいさつを申し上げます。参考人各位には御多用中のところ、当委員会法案審査のため御出席いただき、まことにありがとうございました。  本委員会において審査中の各案について、萩田参考人には地方公営企業制度調査会第二部会における審議経過を、他の参考人の方々にはそれぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、法案審査の参考にいたしたいと存じます。  なお、議事の整理上、初めに御意見をそれぞれ約十五分程度にとりまとめてお述べ願い、次に委員諸君からの質疑につきお答えをお願いいたしたいと存じます。  それでは萩田参考人、鈴木参考人、島野参考人、中井参考人の順序でお願いいたします。  萩田参考人。
  7. 萩田保

    ○萩田参考人 ただいま委員長からお名ざしのございましたように、かつてございました地方公営企業制度調査会のうち、第二部会に属しておりましたので、その模様を話せ、こういうことでございます。この内容につきましては、たしか委員部を通じまして第二部会の報告書そのものもお配りしてあるはずでございますので、詳細はそれによってごらん願いたいと思いますが、その審議の内容を申し上げ、さらに何か法案についての意見を個人的でいいから述べよという、こういう連絡でございましたので、そういう趣旨でお話し申し上げたいと思います。  それで、第二部会におきましては、御承知のように、水道、工業用水道病院、下水道、この四つの事業を主たる対象にして審議したのでございます。  それで、その中におきましては、もちろん部会でございますので、結論を得るというようなことではなしに、問題点あるいは意見の概要を報告する。これが報告書に出ておるわけでございまするが、大体これが骨子になりまして調査会そのものの答申ができ、そうして政府の原案も大体それに沿ってできておるようでございますので、そういう経過を一方に申し上げると同時に、社会党から出ておりまする各種の法案、これがいままで申し上げたような方向と違っておるようでございますので、これについても申し述べよということでございますが、ただ、私不勉強でございまして、一昨日ですか、委員部より送っていただきました法案及び説明、速記録を拝見しただけでございますので、的確なお話ができるかどうかわかりませんが、そういう順序で申し上げたいと思います。  まず、第二部会でもそうでございますし、総会においてもそうでございますが、公営企業の立て直しということについていろいろ議論したのでございますけれども、冒頭に、特に二つのことを申し上げたいと思います。  一つは、この調査会の内容と申しますか、目標と申しますか、これは当面大きな赤字が出ておるのを、応急の措置として助けるというようなことももちろんでざいますが、それよりもむしろ、公営企業というものが現在非常に発展してきて、一般住民のためになくてはならないものになっている。ところが、その制度というものは、終戦後自治法の改正等と関連してできて、非常に古くなっておって、したがって、根本的にこれを再検討する必要があるのじゃないか。今後将来ずっと、公営企業を円滑に、能率あるものとして運営していくためにはどうしたらいいかという、そういう根本を考えておるのでありまして、決して当面の赤字対策というようなことだけではなかった、これが大体調査会の考え方でございます。  それからもう一つは、この公営企業というものが現在非常に悪化しておるのは、何も公営企業自体だけの問題ではなくて、いろいろ全体の社会経済の変化、ことに都市をめぐるところの過度の集中化、あるいは公共投資の一般的な不足というようなこと、いわば外的な条件が大きな原因をなしておりまするから、したがって、そういうものもあわせて改善されていかなければ、とうてい公営企業だけでは健全な運営になるとは考えないのであります。しかしながら、それはそれとして、公営企業自体においても、ここに述べておるような程度のことはどうしてもやらなきゃならない。外的な条件が改善されるまで待つ、あるいはそちらに責任を転嫁して、こちらはのんべんとしている、こういうような性格のものではない。少なくともここにあげてあることは、ほかのことがどうあろうともやらなければならない。そういう考え方でできております。  以上二点をまず前提として申し上げておきます。  それから、内容にわたりますと、もうすでに御承知とも思いまするが、いろいろございますけれども、大きなところを項目的に申し上げますると、大体五つあるかと思います。  一つは、この経営について、そもそもいかなる方向でいくかということでございまするが、これは結局、企業としては当然独立採算制ということを中心としてやっていかなければいけない、こういうことでございます。現に公営企業法に公共性経済性ということが書いてありまするが、この公共性経済性ということが、——これは私見てございまするが、少しく誤解されておるようでありまして、公共性ということであると、どんなに金がかかっても、何が何でもやらなければいけないのだ、こういうふうにとっておるような意見もありまするが、それはそうではなくて、やはり企業である以上は当然独立採算的である。しかしながら、そうかといって、いわゆる局側企業のように利潤本位でもってやるのではないのだ、公共ということを考えてやらなければいけないのだ、こういうところにこの条文をわざわざ置いた趣旨があるのじゃないかと私は考えておるのであります。したがいまして、こういうことを前提にしまして、まず第一に、その負担区分の適正化ということでございます。これはいわゆる民間企業と違いまして、公営企業でございまするから、単に企業本来の仕事だけではなく、あるいは目的だけではなくて、ほかに一般行政的なもの、あるいは先ほど申しました採算ということに抵触するようなこともやらなければならない。したがって、そういうものについてははっきりした負担区分を考えて、地方団体一般会計あるいは国において負担すべきものは当然負担すべきである、この点が第一でございます。  それから第一には、そういう負担区分をした上、企業経営に相当する部分につきましては適正な料金——適正な料金ということは、そういう負担区分を明確にしたあとにおいて、しかも能率ある事業の執行をして、当然必要な原価に織り込まれるところの料金はそこに持っていくということでございます。  以上が経営の、むしろ財政面、経理面についての基本の二点でございます。  第三には、経営管理の体制を強化することでございます。これにつきましては、やはり企業として行なう以上、いかに公営企業であっても、企業にふさわしいような体制でなければならない。これが一般行政と違うところであります。そういう点から一番問題になりましたのは、いわゆる企業管理者をどうするかということで、これにつきましては、その企業管理者にかなり有能な人を迎え、その人の手腕の発揮ができるように、現在ありますいろいろな制肘をなるべく排除する、こう考えております。そうしてさらにそれを進めまして、いわゆる間接公営形式も考えられるのじゃないかということでございまするが、これにつきましては、ただ、私のいま担当する第三部会のほうの水道以下の事業につきましてはあまり問題はないので、むしろ交通の問題じゃないのかという大体の空気だったように思っております。そのような方法もあったりしまして、独立採算制を強化するのでありますが、しかし、あくまで公共団体の行なう仕事である以上は、住民のいわゆるコントロールというものがなければならない。それを首長なり議会なりを通じて行なわれるのであって、それがいわゆる経営の干渉になる、じゃまになるというようなことではなくて、住民の正しい意思を代表したようなコントロールがその管理者なり、あるいはかりに間接公営をとった場合には、その主体に対して加えられる、そういうふうに考えなければならない、こういう考えであります。  それから第四番目には企業合理化でございます。企業合理化につきましては、これはあくまで合理化的な経営をやるということが、これは先ほども申し上げました地方公営企業法経済性というようなことから当然のことだと思います。これは何も公営企業だけにかかわらず、およそ地方団体の行政はすべて能率的に行なうべきであって、住民負担税の形をとるにしろ、使用料、手数料の形をとるにしろ、住民の金によって行なわれている事業なのでありますが、これがいやしくもむだに使われる、非能率に使われるというようなことはいけないので、あくまで合理化をしなければいけない。ところが、この公営企業の中には、それは多数でありますからいろいろあると思いますけれども、総体的にいわゆるお役所仕事であって、民間企業に比べて非常に非能率なものがある。そこで、それをどうするかということが今後企業経営を健全にやっていく上において非常に重要なことではないかと思います。民間の委員の方々あたりから、その調査会に入っておられまして、やはり一番問題にされる点はこの点でありまして、民間とは非常に違うということを言われているのであります。報告書にもあったと思いますが、公共性に名をかりて、公共性だということによってその非能率経営がいいということには決してならぬのだという表現を使っておりますが、これはそのとおりだと思っております。  最後にいわゆる当面の赤字解消の問題であります。  以上五つの項目を論議したのでありまするが、もう時間もございませんので、さらにもう少しく個々の事業、四つの事業について、特に強調しなければならないような点を申し上げていきたいと思います。  まず第一の負担区分の問題についてでありまするが、水道については、これはもうむしろ独立採算制が原則なのであって、きわめて例外的に、離れ島であるとか、どうにもこうにも水がなくて、一戸当たり何千円かかっても、生活を維持していくにはどうしても水道をつくらなければならないというようなところは一般会計負担もいいが、それ以外は、大体原則として、水道については一般会計負担とか補助というものは要らないという考えであります。  それから工業用水道でありまするが、これが非常に問題になって、しかも政府案においては、この調査会の答申と少しくはずれているようでございます。これにつきましては、いわゆる地盤沈下の防止とか、あるいは地域の工業開発というような観点から行なわれておる、したがって現在国庫補助金があるということでありますが、そういう意味において国庫補助金がありますことは必要であろうと思いますけれども、ただ一番われわれ問題にしましたのは、国が補助金を出していながら、それだけでは十分でないにもかかわらず、補助金を出した以上は料金を決定しなければいけない、そしてそれでいかないところは当然地方の一般会計負担する、こういう態度はおかしい。国が出すものは出す、地方がかりに地域開発のために出す必要があるなら出してもいい、しかしそれは地方の自治である。国は出した範囲内においての監督をしておればいいのであって、少しばかりの補助金を出しておいて、料金全体を統制するような考えはいけない。こういうようなことであったわけでありますが、必ずしも政府側としてはっきりしていないようでございます。  次の病院でございますが、これは公営企業の中でも非常にほかと違いまして、いわゆる衛生行政的なことをやり、しかも公立病院でなければないような高度の潤沢な病院施設あるいは治療をやっておるのでありまして、それに対してはかなり一般会計負担ということが問題になるという感じでございます。たとえば、簡単に申しまして建設費というようなものについての一般会計負担というのは相当考えてもいいのじゃないか、こういうことでございます。  それから下水につきましても、水道交通あたりと違いまして、いわゆる雨水を処理するのと、家庭汚水、工業汚水を処理する汚水の分とあるわけでございまして、汚水の分については独立採算的な考え方もいいけれども、雨水の分については、これは河川みたいなものであって一般会計負担、こういうような考え方でございます。  それから第二点の料金問題についてでありますが、いま申しましたようなことと大体うらはらをなす点でございます。繰り返して申し上げるようでありますが、工業用水に対する補助金による料金の統制ということは適当でないということでございます。それから病院につきましては、料金というものがいわゆる社会保険のワクの中に全部入っておりますから、結局政府のきめる診療報酬のあり方ということが問題でありまして、公営企業ひとりどうということはありませんが、これについても非常に問題があるように思われております。  それから管理体制の問題につきましては、もう先ほどのあれで終わることにいたしまして、四番目の合理化の問題でございます。これにつきまして非常に問題になりましたのは、いわゆる人件費の問題であります。これにつきましては、むしろ一番人件費の割合のウエートの高い交通事業についての問題だと思いますけれども、やはりこれらの四つの企業においても問題があります。これに対する考え方は、やはり公務員でありますから、いわゆる一般の企業とは違うのでありましょうけれども、そこには公務員としても、企業職員であるということによって一般行政職員とは違った給与体系でなければならない、そこが非常に問題になったわけでございます。そういうことは何も現在の企業公務員の待遇を悪くしろということではないのでありまして、企業会計にふさわしい、しかも公務員としてふさわしい体系を別途に考えるべきものであって、現在のような一般行政職のものをただ借りているというようなかっこうは適当でない、そういう方向において解決すべきだ、こういう感じでございます。もちろん企業一つ一つをとりますと、中にはこの人件費が民間企業あたりと比べて非常に適当でないものがあります。この民間企業と比べるということは公務員全体を通じて当然のことでございまして、国家公務員法でも地方公務員法でも、やはり民間の給与ということを非常に均衡として重視しているのでありますが、それについて適当でないものがあるだろうと思いますけれども、全体の考えとしては、何も悪くすることをもってこの答申の本旨としているわけじゃないので、いわゆる企業会計にふさわしい給与体系をつくるということを強く考えておるわけであります。  最後に、再建の問題であります。これは何としても早く再建しなければならないと思いますが、ただこれに関連しまして非常に問題でありますのは、いままでの経理の方式がいわゆる企業会計方式であるべきにかかわらず、先ほど料金計算とか、そういう問題のときも同じことでございますが、単に現金主義の計算というかっこうになっておる面があります。したがって、いわゆる赤字という問題にも二重の意味があるようでありますが、少なくとも企業会計方式でもってしっかり計算したあとにおいて赤字が出ないようにする、そして別に資金面の過不足というのは起債の操作等によって行なう、こういう考え方でございます。そこで赤字は、大体かつて地方財政一般会計について行ないましたような方式に準じた再建方式をつくるということでございます。したかいまして、それに対しては相当の政府援助があってしかるべきだ。しかもその場合、特にわれわれのこの四つの事業ではありませんけれども、いわゆる交通事業なんかについてやりました、国が物価政策というような国策のために無理にその料金を抑えておいたというようなものは、まさにこれは国家の責任なのでありますから、こういうものについては大幅に考えなければいかぬじゃないか、こういう考えであったと思います。  大体所定の時間のようでございますので、私の意見をこれをもって終わらせていただきます。
  8. 岡崎英城

    岡崎委員長 鈴木参考人。
  9. 鈴木俊一

    ○鈴木参考人 本日は、東京都の仕事を担当いたしております関係上、東京都の問題から観察をいたしました地方公営企業の御提案の問題について意見を申し上げ、御参考に供したいと存じます。  地方公営企業がここ数年来非常な赤字をかかえまして、ことに交通事業水道事業等、にっちもさっちもいかないというような状態でございまして、東京都の場合におきましてはその状況が最も端的に現われてきておったわけでございます。これに対する打開策として、今回政府地方公営企業法改正法案提案せられましたこと、また社会党から同じく地方公営企業の改善を目的とする案の御提案がございましたこと等によりまして、この地方公営企業の問題が政府段階におきまして前向きに積極的な方向で打開をせられつつあるということは、私ども関係者にとりましてまことにありがたい次第でございまして、どうぞひとつ今回の国会におきましてこの問題についての解決をしていただきまして、ぜひ関係法案を成立、施行するようにしていただきたいということを、まず第一に強くお願いを申し上げる次第でございます。  それから法案の内容につきましては、いろいろそれぞれのお立場での御提案でございますが、主として私どものほうの立場から特にお願いを申し上げる点を要点にして申し上げてみたいと思うのでございます。  まず第一に、経費負担のたてまえの問題でございますが、これはただいまもお話がございましたごとく、公共性経済性という抽象的な原則の明示が現在の法律の中にございまして、これがもし理想的な姿で運営せられておりますならば、法律改正というようなことも必要ないかと思うのでございますが、私は法律改正する以上は、できるだけ事柄を明確にしていただきたい。公共性という名のもとに、料金を引き上げることは極端に抑制すべきであるというような考え方になったり、あるいは経済性という名のもとに、すべて私企業と同じような方式で運営ができるというふうな極端な議論になりますことが間々あるのでございまして、自治体の実際の運営に当たっておりまする私どもといたしましては、非常にこれらの点に当惑いたすことが少なくないのでございます。そういう意味で、この関係の経費負担区分の原則あるいは料金の決定の原則というものにつきまして、それぞれ政府案におきましてもまた社会党提案の中にも、いろいろ改善のような御意見でございますが、何か従来ともすると、私ども料金改定の問題を現実に考えておりますと、どうしても抽象的な、いわば腰だめでいろいろの角度から利用されるようなことになりますので、問題を明確にしていただきたい。それには、後ほどお願いいたしますような国が国の立場財政的にも援助をするという問題につきましては、これを明確にしていただきますとともに、一般会計と公営企業特別会計との関係におきましては、やはりそれぞれの企業の実態に応じてある程度の違いがあると思うのですが、それらを通ずる基本的な原則を極力明確にしていただきたいと思うわけでございます。  それから、一般会計から公営企業会計繰り入れることにつきまして、私ども、現在の状況ではむしろこれは国のほうで財政援助をしていただきたいと思うようなことにつきましても、それがないものでございますから、やむを得ず若干の繰り入れをいたしておりますが、それらの点につきましては、ぜひひとつ運用の方針なりあるいは制度を明確にしていただきたいと思うのでございます。抽象的な話でございますが、経費負担の関係については以上の程度にとどめます。  次に、国の地方公営企業に対する財政援助の問題について申し上げたいと存じます。  これはいろいろございますけれども、まず水道事業について申し上げますと、東京都の場合におきましても、現在水資源公団が主として施工してくだすっております利根川からの水を持ってまいります各種の工事、ことにダムの築造の経費、これは上水道用水あるいは工業用水にもそれぞれアロケーションが行なわれるわけでございますが、このアロケーションにつきましては、現在政府の関係者間におきましてもお話し合いがあるそうでございますけれども、上水道等に対するアロケーションが若干高いのではないかということを私ども考えておるのでございまして、この点をすみやかに明確にしていただきたいと思うのでございます。また同時に、農業用水等につきましては、このアロケーションに基づく農業の負担につきましての補助金がございますが、水道につきましても、水資源開発のような非常に多額の経費を必要とするようなものにつきましては、やはり政府の何らかの補助金を考えていただいていいのではないかということを強く希望するのでございます。水の問題につきましては、そのような点について何らかの打開策を講じていただきたい。  それから交通の問題でございますが、これはさらに後刻も申し上げたいと思いますけれども、主としてこれは地下鉄の問題でございます。地下鉄につきましては、東京都の実績によりますと、キロ当たり約三十六億の経費を必要といたします。新幹線が複線にしてキロ当たり約七億強ということでございますから、五倍以上の金を必要とする事業でございまして、普通のいわゆる都電といいますか軌道は、道路上を無償で占用さしていただくわけでございますから、これとの関連から申しますると、地下に穴を掘って地下鉄をつくるということは、いわば道路築造に相当するような部分も地下鉄負担になるということでございますので、私どもは、その穴を掘っていくその構築の費用というものは、少なくとも道路と同じ程度に、たとえば三分の二程度に国が助成をしていただいていいのではないかということを思っておるわけでございます。地下鉄の工事につきましては、地上の交通規制の関係で、工事が夜間でなければいけないとか、あるいは一定の、たとえばオリンピック期間中はやってはいけないとかいうような、工事におきましても相当の負担がございます。そういうようなことでございまして、ぜひこの点も打開していただきたいと思う次第でございます。本年度はおかげさまで従来よりは、昨年度よりは相当地下鉄に対する補助金はふやしていただきましたけれども、まだまだこの点につきましては今後の御努力をお願いいたしたいと思うのでございます。  それからいま一つは、この国の物価政策に伴う地方公営企業に対する国の財政措置ということでございますが、これはバス料金の認可に関連をいたしまして、相当長期、約五年にわたりまして申請以来抑制をせられたのでございますが、そのために赤字が都の場合におきましても三十数億生じたというような明確な事実がございますが、これらの点につきましては、今後もやはり広い意味での政策的な物価対策ということから、公共料金に対する、ことにいまの水道交通等に対する抑制の場合におきましては、やはりそれに対応する手を打っていただいて、そういうことが現実に財政的にも可能であるような措置を講じつつ、もしおやりになるならやっていただくというふうにお願いをしたいと思うわけでございます。これらの点は、経費負担区分のたてまえからやはり国において限度を明確にして、この点はひとつ国でめんどうを見てやろうということを明確にしていただきたいと思う次第でございます。  それから第三に申し上げたい点は、財政再建の問題でございますが、この点につきましては、かねて書面をもってもお願いを申し上げておりますが、政府の案におきましては、昭和三十九年度赤字を何とかしてやろう、こういうことでございますけれども、私どもは、これをぜひ四十年度末の赤字基礎にして財政再建を立てることを認めるようにしていただきたいと思うのでございます。この一年間におきましても相当な赤字がふえてきておりまして、やはりこの一年の年度のずれというものは非常に大きな問題であると思う次第でございます。  なお、この再建債利子につきましては、年三分五厘をこえる全額を補給をしていただきたいと思うのでございます。政府案では六分五厘をこえる一分五厘ということのようでございますが、現在都の公営企業に対しまする金融機関の融資は、短期で申しますと五分六厘強ぐらいになっております。三カ月ぐらいのものでございますが、これらがころがしていくわけでございますが、そういうことを考えますと、六分五厘以上のものを再建債にした場合には利子補給をしてくださるという点はありがたくはございますが、実益が、都の場合の問題として考えますと、ございません。現在の金融情勢の特殊な事情からさような結果が起こっておるかと思いますけれども、ほかの地方団体におきましても同様の例が少なくないと思うのでございまして、この点はさらに数歩を進めていただきまして、三分五厘をこえる額についての補給をお願いしたいと思うのでございます。  それから第四に、最後のことでございますが、公営企業一般についてのお願いを申し上げておきたいと思うのでございます。  水道の問題につきましては先ほど申し上げたのでございますが、下水道を東京都では特にこれは地方公営企業法を適用することに条例できめておりまして、下水道建設の問題は、今日、東京都におきましては最も重大な問題の一つであると申し上げていいと思うのでございます。今後約三千億をこえる投資を必要とする事業でございまして、本年度約三百億で下水の拡張事業をいたしておりますが、十年前の三十二年にはこれが二十億程度でございまして、まさに十五倍の規模をもってやっておるのでございますけれども、それでも今年度の終わりにおきまして、面積におきまして三〇%台に普及するにすぎないのでございます。下水道の問題は一に財政的な問題がネックでございまして、これは補助金及び起債をよほど大幅に考えていただく必要があると思うのでございます。  それから、交通事業の問題におきましては、私ども公営企業内部の合理化の問題をいろいろといままでいたしてまいりました。たとえば交通につきましては組合との間のいきさつもございまして、一昨年は中央労働委員会にまで問題を持ち出して解決の曙光を見出そうと努力をいたし、また事実十数億の合理化を生み出したのでございますけれども、それにもかかわらず交通事業は今日、全体あわせまして二百三十億程度の赤字をかかえております。これはやはり地下鉄以外は地上交通におきまして、先ほど来の話で申せば、非常に外部的な条件が問題であるということでございます。東京都の交通事業は大阪などの場合と違いまして、大阪市内におけるような完全な独占的な立場でございません。地下鉄は東京都の権利を営団にかつて譲渡いたしましたが、地上交通について申しましても、私鉄バスとの相互乗り入れが百十九系統のうち四十系統ございます。約三分の一は私鉄バスと相互乗り入れをいたしておるわけでございます。また本来の都営交通の営業区域は、陸上交通事業調整法におきまして山手線の内側と荒川放水路によって囲まれる区域だけに限定されております。その区域の中にいま申し上げました私鉄バスが四十入っておる。都が今度は逆にその外の区域に出ます場合には、これはいずれも数個の私鉄会社の権益区域が、陸上交通事業調整法によって定められておりまして、そこに行く場合には必ず反対給付を必要とするわけであります。そういうようなわけで、路線の再編成をいたしたい、いまの交通事情に即応するような路線の再編成をしたいと思いましても、なかなか簡単にまいらないのでございまして、やはりこの陸上交通事業調整法の基本的な問題を打開しませんことには、東京の交通事業というものは地方公営企業法改正だけでは何とも解決できないのでございます。それが根本の問題でございまして、それに至ります方式としては地上、地下、少なくとも地下鉄と地上の都営バス、都電とを一体に経営することをまず第一段の段階として持っていきたい、それによって初めて大阪とやや類似した体系になるのでございます。しかも私鉄バスの乗り入れがその上になお乗っかっておるわけでございまして、この点は第二段の問題といたしましても、少なくとも二元的な現在の都内の交通体系を一元化するということが必要であろうと思います。民営に移管したらというようなお話もございますけれども先ほど申し上げましたような地下鉄経営というようなことを一体的に考えませんというと、とうてい民営でかような不採算の大都市交通を引き受けるものはあり得ないと思うわけでございまして、その意味におきまして、あくまでも国及び若干の一般会計からの財政的な繰り入れを前提とする大都市交通の一元化、東京都交通の一元化ということをぜひ実施をするようにお願いをしたいと思うのでございまして、これはいずれも法律に関係する問題でございます。政府各省に関連する問題でございますので、切にお願いを申し上げるような次第でございます。  以上、いささか具体的な法案の問題と離れたような点もございましたかと思いますが、なお御質問によりまして、それらの問題につきましてはお答えを申し上げたいと思います。
  10. 岡崎英城

    岡崎委員長 島野参考人。
  11. 島野武

    ○島野参考人 仙台市は、地方公営企業のうちでいま問題の焦点になっております交通水道、ガス、病院などを経営しております。私は、これらの公営企業を通じて市民サービスに責任を負っておる仙台市長としての立場と、約八年ほどの経験から、今度の地方公営企業法改正案について若干の意見を述べたいと思います。ただし与えられました時間が限られておりますので、ここでは切実なポイントだけにとどめることにいたします。詳しいことは、私も参加しております全国市長会、公営交通事業協会、日本水道協会などから要望書が出ておりますから、ぜひ御参照いただきたいと存じます。  現在国会に上程されておりますのは政府案社会党案の二つであります。公共性という面から見ましても、大筋においては社会党案のほうが正しい、これでなければ地方公営企業の存在意義は生かされませんし、企業経営危機の根本的解決にもならないと私は思います。お断わりいたしますが、私は私の政治的立場からそう申し上げるのではなく、市長として、都市行政の責任者としてそう申し上げたいのであります。しかも問題は急を要します。御承知のとおり、地方公営企業財政悪化は、もはや一日の猶予も許さないほど切迫しております。そこで、お許しをいただいて先に結論を申し上げれば、社会党案を率直に取り入れて、政府案を大幅に修正し、地方公営企業の当面の危機を救うとともに、将来の健全な発展を期するよう、今国会ではっきりした結論をぜひ出していただきたいと思うのであります。  では、改正すべき最も大事な点をどこに求めたらよいか、詳しく申し上げる時間的余裕のないのが残念でございますが、要するに地方公営企業の存在意義や役割り、すなわち公共性をあらためて認識し、政府におかれましても当然とるべき責任、特に財政上の責任を果たしてもらいたいということに尽きるのであります。われわれの苦しい経営事情につけ込んで、もっとずばりと言わせていただくならば、背に腹はかえられないという地方公共団体立場を逆用して、地方公営企業をあたかも準禁治産者扱いにするような再建方策を押しつけることは絶対にやめていただきたい、政府はわれわれをもっと信用してもらいたい、地方自治を尊重してもらいたいと申したいのでございます。  ここに私からあらためて申し上げるまでもなく、地方公営企業経営についてはどこの都市、どこの自治体管理者におきましても、真剣に経営の改善に努力してきておるのであります。合理化は言うに及ばず、料金の改定、苦しい一般会計からの名目の立つものについてのやりくりなど、われわれはあらゆる手を尽くしております。それにもかかわらず、なぜ地方公営企業が破産寸前の赤字を余儀なくされておるのか、私はこの際、次の点を強調するものであります。  公営企業のうち、いままで特に累積赤字がひどいのは、交通部門にあっては路面電車と地下鉄でありましょう。水道部門においては急激な施設の拡張卒業をどうしてもやらなければならない事情にある都市の上水道であります。すなわち、明らかに地方公共団体負担能力をこえた巨大な先行投資事業と不採算、だからといって市民サービスのたてまえから直ちにやめるわけにはいかないという事業などであります。これらは都市の経営上あるいは市民サービスの行政責任上、どうしてもやらなければならない事業であり、しかも民間資本が食指を動かすはずのない事業、いわば資本の回避個所といったらよいような事業でございましょう。地方公営企業の本質はもともとそういうものであると私は考えております。そういうものである限り、言いかえれば、企業性よりも公共性が優先するわけですから、たとえ独立採算が原則といいましても、当該公営企業の妥当な投資額をこえる部分については、政府が当然にめんどうを見るべきであると思います。ことに人口が急増し、産業の発展する都市ほど公営企業経営が困難になっているという事実を認めないわけにはまいりません。これは明らかに政府の政策的責任に帰すべき問題であって、地方自治体、いわんや一公営企業の努力では決して解決できることではございません。  ここで私は、仙台市の水道事業の例をあげさしていただきたい。仙台市は、戦後における人口の急増と市民生活水準の向上などによりまして、企業活動も旺盛になっております。すなわち高度経済成長と歩調を合わせて急激な膨張を続けており、その人口の上昇率は六大都市並みといえるでありましょう。そこで市の責任として、市民の水を確保するため、水道事業を拡張に次ぐ拡張でやらざるを得なかったわけであります。東京ほどではありませんでしたけれども、戦後引き続き、特に昭和三十五年、三十六年には仙台も深刻な水不足に見舞われました。私は市長として、あるいは自治体の市民に対する責任として、この水の不安を解消することが重大な義務でありますので、昭和三十三年度から七年間の計画で第三次拡張事業を行ない、これに約三十億三千九百万円の投資を行ないました。年間にすれば、算術平均にいたしましても四億三千万円くらいになるわけでございまして、これは仙台市の現在の水道料金収入の約六〇%に相当する額であります。また、昭和三十七年度から六カ年計画で総工費八億円の配水管整備拡充事業を実施中であります。もちろんこれらの事業費は企業債に依存したわけでありますが、その元利払いで水道事業経営は一そう苦しくなり、そのために水道局の体質改善、合理化を徹底して経費の節約をはかるとともに、どうしてもそれだけではやっていけませんので、市民の理解に訴えて、昭和三十七年には一般用十トン百五十円から二百五十円に、六六・七%の値上げを行なわざるを得なかったのであります。つけ加えますと、その前の昭和三十三年にも、十トン百円から百五十円に、五〇%の料金改定を行なっております。一体だれが好んで料金改定を実施するでしょう。私も決してそうした料金上げは好ましいことであるとは思っておりません。しかし一方では水の不安をなくさなければいけないという責任を考えますと、不本意ではありますが、やむを得ずこのような大幅な値上げをせざるを得なかったのであります。  ところで、これで水道の悩みが解決したわけではありません。というのは、仙台市の人口は年々増加の一途をたどり、水の需要も急増しております。この第三次拡張事業の完成によって、現在のところは一応水不足の心配はございません。しかし今後三、四年後には再び水不足の危機が予測されるのであります。  そこで仙台市といたしましては、建設省の直轄事業であります釜房ダムに水源を求める第四次拡張事業を行なうことになり、この計画を二月の臨時市議会議決を得まして、三月十二日、厚生大臣の認可をいただいたのでありますが、この拡張事業に要する総工費は約九十億二千六百万円を予定しております。これは全額企業債に求めるものでございますが、著しい先行投資となるものでございます。この事業は、昭和四十一年度から十年間の計画で実施してまいる予定ですか、さしあたりこの四年間、すなわち市民の水の確保に対処して一部通水する四十五年度までに要する資金が、実に約五十億七千万円であります。  このような事情から、このまま推移しますと、昭和四十四年度末では約二十一億円の累積赤字を生ずることになるのでございます。この巨額な先行投資を、もし政府のいうような厳密な独立採算で行なおうとするならば、どうしても三度目の料金改定として五八%の大幅値上げをしなければならないという立場に仙台市の水道事業は置かれておるのでございます。また事業水道の一トン当たりの原価昭和四十年度で三十七円三十五銭となっております。これを三十二円九十二銭で販売しておる。したがってトン当たり四円四十三銭の赤字を生みながら市民に供給している現状でございます。しかも、これらの巨大な先行投資はすべて償還期間のわりあいに短い、また利息の安くないものにたよるわけでありますから、料金の大部分は元利償還に充てなければならないという不合理的な結果にもなるのでございます。だからといって、市の責任上三、四年後に予想される水不足に対してこれをやらないというわけにはまいりません。私は、いまこの料金上げはやむを得ないとしても、何とかして値上げの幅を押え、ことに生活用水についてはできるならば据え置きたいというような考え方で対策に苦慮しておりますが、仙台市のような状態は決して例外ではなくて、発展する都市はどこでも同じような矛盾と困難に当面しておるものと思います。  さきの第三次拡張のときにもそうでございましたが、今度の第四次拡張計画においても、県の工業用水が水道と同じ多目的ダムに水源を求めておるのでございます。第四次拡張事業の釜房ダムのアロケーションの問題におきまして、工業用水は十万トンの取水に対して四億七千万円と比較的有利な条件になっております反面、上水道の用水は二十万トンの取水に対して十六億九千万円とはなはだ重い負担がかけられている。この点は全く納得ができないのであります。今度の地方公営企業法改正案におきましても、工業用水には依然として補助金政策が保障され、また料金も政策的に抑制されております。企業が必要としている水に対してとられている政府資金援助政策がなぜ市民の生活用水には適用されないのか、これらの点も私には理解できないところでございます。いずれにしましても、巨大な先行投資を必要とする上水道事業などに対しては大幅な国庫補助措置し、住民負担の軽減と財政の健全化をはかるため、政府の従来の政策を根本的に改めなければならないと私は考えるものでございます。この点において、今度の政府原案による改正ははなはだ不十分であるという感じが強いのでございます。  また交通事業については、御承知のとおり各都市とも多額の累積赤字をかかえて経営に苦慮しておるのでございまして、これが解消のために、やむを得ず利用者の負担、すなわち料金改定にその血路を求めざるを得ないという状態に追い込まれているのであります。しかるに交通事業ガス事業における料金については、現在、国の許認可制がとられておって、国の公共料金抑制措置と相まって多くの規制を受けておる実情であります。申すまでもなく地方公営企業は地域住民がその所有者であり、消費者でありますので、これら料金については、地域住民を代表する地方公共団体の長及び議会が決定するものでありますので、現行の国の許認可制を廃止して、地方公営企業制度調査会の答申にのっとった制度に改められたいのであります。  交通事業についてさらに申し上げるならば、路線の免許等についてはしばしば実態にそぐわないものがございまして、運営上の支障ともなっておりますので、企業の健全化のためにも、また恒久的な道路行政の見地からも、道路管理者の市長たちの意見に基づいて決定し、許認可さるるように、その改善をはかられたいのであります。  以上、地方公営企業の実態について申し述べたのでありますが、このような見地から、地方公営企業財政は悪化の一途をたどっておるものであり、これが再建については国が当然負担すべき財政措置を講ずるとともに、その実施については、一々政府企業自治体の内部にまで立ち入って引きかえ的な条件を押しつけるべきではないと思います。今度の改正案を見ますと、金を出す以上、企業再建について内部干渉するのはあたりまえではないかというような考え方がどこかにあるように感ぜられますが、それこそ地方自治に対する不信以外の何ものでもないと存じます。自主再建に全力を傾けているわれわれの誠意と責任を信じていただきたい。政府の原案でいきますと、再建措置を受ける地方公営企業は銀行管理を受ける会社同様の姿になってしまい、地方公営は看板だけで、実質的には政府の直轄事業化するおそれさえないとはいえないのであります。私は、あくまでも地方公共団体自主性を尊重して再建の方途を講ずるようにしなければいけないと信じております。  以上の趣旨に沿って、さしあたり具体的には次のような修正を強く希望いたしておきます。  第一、財政再建に対する措置については、昭和四十年度の実質赤字対象として、自主再建の団体についても再建債を認める措置を講ぜられるように、明確な改正をしてほしいこと。  第二、特に過去の累積赤字については相当期間たな上げにしてもらいたいこと。  第三、地方公営企業再建債に対する利率については、年三分五厘をこえるものについては全額国庫において利子補給をしてもらいたいこと。  第四、企業債の利率の引き下げと償還期間の延長については、既往債を含め現行政府債年六分五厘を五分に引き下げ、公庫債も同様に措置すること。  第五、償還期間については、交通事業の場合、現行五年でありますが、道路整備及び車両技術が向上しておるという実情にかんがみ、これを十年に、水道事業については、政府現行三十年、公庫債二十三年を、既往債を含め水道施設の耐用年数と見合う五十年程度に延長していただきたいこと。  さらにつけ加えて要望いたしたいことは、前に仙台市の水道拡張事業の例でも申し上げましたように、市の一般財源から当該地方公営企業補助等をする場合、それを地方公共団体の基準財政需要額として認め、国において財政援助措置を講ぜられたいということであります。そういう条項政府原案には全く見られないのはまことに遺憾であります。申すまでもなく、自治体の一般財源は非常に苦しいのでありまして、公営企業援助する余地などはないのが実情でありますが、しかし行政の責任として、たとえば水道の拡張事業や市民の足を確保するための交通事業に対し出すべき理由のあるものについては、どうしても一般財源から支出しなければなりません。要するに、国や市において当然かぶらなければならない分についてそういう財政措置ができるよう、実情に適した法改正について、法案の中に特に一章を設けて、この際ぜひ行なっていただきたいのであります。  私は、地方公営企業住民の日常生活に密着し、欠くことのできないサービス行政であるということを正しく認識し、経済性も軽視はできませんけれども公共性をより以上に重視するという考え方で法改正を行なってもらいたい、この点を最後に強調いたしまして、一応私の意見を終わらしていただきます。
  12. 岡崎英城

    岡崎委員長 中井参考人。
  13. 中井高明

    ○中井参考人 私は、全国の公営水道に携わる労働者の立場から、今回の地方公営企業法の一部を改正する法律案に関する意見を申し上げたいと思います。  私ども全日本水道労働組合は、日ごろから水道事業の民主的な発展と住民サービスの充実をめざして努力をいたしておりますが、今般、一段と深刻になっておる公営水道経営危機再建に関しまして、政府及び国会議員各位におかれましても非常な御苦労を願っておることに対しまして、心から敬意を表したいと思います。  さて、私どもは今般の政府拠出改正法案の内容につきまして、率直に申し上げて、不満であります。それは、これから申し述べますように、政府案をもってしましては、地域住民の利益に反することになり、地方公営企業の当面する深刻な危機打開は不可能であろうと考えるからであります。  まず第一番目といたしまして、今日の地方公営企業経営の悪化を招いた原因について論及をしてみたいと思います。  地方公営企業財政破綻が拡大深化をいたしまして、現在情勢が緊迫していますことについてはあらためて申すまでもありません。また、自治省におかれましても、事態の重要さを意識され、三十九年七月、自治大臣の諮問機関といたしまして地方公営企業制度調査会を発足させ、昨年十月十二日、その財政再建につきまして、料金の適正化と経営合理化の二点を骨子とする答申を出させました。その内容は高料金と低賃金とでも申しますか、当面する財政危機をそういった中で乗り切ろうとするものであり、政策の民主的な革新を要請する態度にきわめて弱く、法律の糊塗的な改悪で危機拡大再生産を助長させるような対策しか出ていないということが一貫した欠陥だといえると思います。今般の政府提出法案も、その答申を基礎に立案されている限りにおきまして、その欠陥を露呈していると言わざるを得ません。私どもは、地方公営企業財政赤字が単に料金が安いとか賃金が高いからだとかいう、ただ単に経営方策の欠陥といわれるがごとき事情によるものと認めることはできません。なぜなら、かりに料金上げ、たとえ賃金を低めても、決して解決するような性質の財政窮迫ではないからであります。  一方では、事業数が急増いたし、業務量も顕著にふくらんできましたが、ところが他方では、経営がますます窮迫し、赤字が累増しているのであります。このうらはらな事実の間にこそ、現実の趨勢に追いつけぬ経営政策のギャップと財政制度のからくりが深く横たわっているのだと見なければなりません。  それではそれは一体何であるか、まず独算制度の強制という経営原則の誤りが一つ、第一に、政府財政金融、都市計画、経済政策などにわたる政策上の欠陥の問題、少なくともこの二点が原因となって危機が深化したことを見のがすわけにはまいりません。  戦後の日本の産業は顕著に発展をいたしましたが、中でもこの十年来の増進にはまことに驚くべきものが見られました。特に池田内閣以来の高度成長政策は、工場の分散と集中、地域開発、新産業都市建設の推進という形で、産業基盤整備偏重のばく大な公共投資を強行し、独占資本に対する国家権力による強化育成政策が行なわれました。その結果、膨大な産業と人口の都市集中をもたらし、とりわけ京浜、名古屋、京阪神、北九州などの既成大都市圏への資本と労働の集中には目をみはるものがあります。それはすでに過密都市の弊害として指摘されていることに象徴されています。  このような政府の政策によって、都市における水需要人口増、需要区域の拡大、用水量の増大などをもたらした結果、生活用水の水源や給水施設の確保が緊急かつ重大な問題となってきたのであります。しかしながら、このように現段階で直面している水需要の増大につきまして、政府は期待できる何らの有効な解決策を講じようとしておりません。もっぱら財政力の貧弱な各地方自治体ないしは一公営水道企業にその責任を転嫁してきたのであります。このため各自治体は怒涛のように押し寄せてくる水需要にこたえるため、乏しい財政力を顧みるいとまもなく、巨億の建設、改良資金を借入金によってまかなわねばならない羽目に追い込まれたのが偽わりのない実態であります。水道事業における昭和三十年度の拡張工事費百五十九億円であったものが、九年後の昭和三十九年度一千二百二十一億円と、七・七倍も増大したこの一事をもってしても、いかに地方自治体や水道企業に対するしわ寄せが急激なものであったかが明らかであります。  赤字の原因について、さらに実証的に述べてみたいと思います。  水道事業は、法の全部適用も一部適用も、強制も任意も全部合わせますと、法適用水道企業数は、二十八年度末には七十六しかなかったものが、三十九年度末では四百七十九と、十一年間に六・三倍に膨張したわけで、特に目立ちますのは、条例適用の企業が三十七年度以降急増していることであります。これは政府、自治省の収支適合を強制する法適用化の行政指導が強化されたことを証明するものにほかなりません。  このように独算会計制度の採用を押しつけて、赤字がふえたとかあるいは赤字が減らないとか、危機の機運をあおってくるのですからたまったものではありません。水道の収益事業化、企業会計化を強制する政策を強行されたからこそ、赤字の累増があったといっても過言ではありません。まず第一の赤字原因がここにあります。それは三十五年度赤字十二億円であったものが、三十九年度決算では十一・四倍の百三十七億三千万円と、赤字が累加されてきた点からもうなずかれることです。  しかも注目すべきことは、給水人口規模によって赤字の比重がかなり違うという点です。たとえば三十九年度の全企業の純損失七十九億五千万円の七割以上が、東京と京都と大阪の三つの大都市水道だけによるものであります。しかも給水人口十五万以上の水道企業が四十三あるうち、十四が十億四千万円の欠損金を出しておるのでありまして、結局単年度欠損金の八割三分以上がこれら大規模水道企業体だけによるものであるということになっております。これは一体何を意味するものでしょうか。産業と人口の集中による需要増大に対応して、建設投資が短期集中的に巨大に膨張したからにほかなりません。これが第二の赤字原因だと言えます。  そしてそれは水道企業の元利償還の推移を見れば、一そう明らかにされます。料金収入に対する元利償還負担の割合は、三十五年度二三・八%だったのに、四年後の三十九年度にはついに三五・七%と、金額では三倍以上になり、その後も好転のきざしどころか悪化の様相を深めております。すなわち、三十九年度起債額九百五十億が四十年度千百六十五億と二二・六%増額したのに対して、それぞれから両年度償還負担を差し引いたいわゆる実際に使える実質起債額は、三十九年度六百三十億、四十年度七百四十億と、一七・四%と大幅に鈍化していることからもうなずかれるところであります。  さらにそれは次の点からも明らかになります。三十五年度を基準にいたしまして三十九年度の現況を見ますると、職員数は一・三倍弱、給水量は一・五倍弱なのに対しまして、料金収入は一・八倍強、有形固定資産は二・一倍強となり、決算規模が二・三倍近くで、建設投資が二・五倍近くに膨張しており、企業債が三倍強になっているのです。職員給与費は二・二倍弱しか伸びておりません。  今日水道事業に働く労働者の全国平均年齢三十九歳、平均勤続年数九年、扶養家族数三人強、七大都市の平均基準賃金は三万八千円強でございまして、中小都市におきましては三万二千円強であります。これだけの賃金で三人強もの扶養家族をかかえ、政府は、今日の天井知らずにはね上がっている物価騰貴の世の中で、また他の産業労働者と比較してみて、一体私どもの賃金は高過ぎるとでも言うのでしょうか。企業合理化の美名による私ども労働者に対するしわ寄せにはどうしても反対せざるを得ません。  すでに申し述べましたように、水道事業における建設投資が急激に強行されていますが、それはばく大な利子負担をもたらす企業債でのみ具体化ができたものでありまして、料金収入がそれほど伸びないのに決算規模が膨張したのもそのためであります。その重圧が人をふやさず、水をふやさず、労働者と住民からの収奪を徹底するという政策となってあらわれてきたわけであります。料金収入があまり伸びないのは、幾ら料金上げても給水量がふえないからであります。ここには歴代保守政府水道政策が露骨に示されておりまするし、この政策こそ赤字財政の根因、財政破綻の真因だと言わざるを得ません。  以上、要約いたしますれば、この十年間にわたって進められてきた政府の高度成長政策の結果、短期間に事業拡大業務の膨張を余儀なくさせられ、しかも政府が、政府の責任における何らの見るべき財政援助を行なわず、一地方自治体、一水道企業にのみ集中して巨額な投資を行なわせしめたところに、今日の財政危機を招いたという原因があるということになります。言いかえれば、独算制度を死守し、また借金政策に依存した水道政策のあり方が最大の原因となって現在の窮状を招いたのだということになります。たとえば、水道企業の自己資本構成比率が三十年度七三・一%であったのに、十年後の三十九年度には三二・七%に下落している一事をもってしても、今日の危機は容易に回避できるものではなかったことがわかります。だからこそ私どもは、独算制を強化し、したがって借金政策を一そう強制されることになるであろう今般の政府改正案では、水道事業を破局に追い込む危険をはらんでいるものとして反対せざるを得ないのであります。私どもは、原則として、政府の政策による都市の構造変動などに基因する需要増大にかかわる建設投資の財源は、国家の責任において資金を調達すべきであると主張します。  次に、地方公営水道の存在意義並びに公共性経済性の問題について若干の意見を述べてみたいと思います。  地方公営事業としての水道企業の存在理由は、何よりもまず行政的性格上の特質にあるわけでありまして、それは主として次の三つの点にあると言えます。まず第一は、地域的な固定性を持つ資本投下であることとともに、地域的な特殊性を持つ事業経営であるという特質が、そのまま地域的独占を許容し、民主的統制を要請することであります。にもかかわらず、民間資本の回避を公共投資でカバーすることによって、住民の利便、福祉の向上を達成していくことが、住民自治による地方公共団体の任務として最適であること、これが地方公営たる第二の理由を構成いたします。第三は、水道のように、地域経済の総合的な発展や、都市開発の一元的な計画に深く結びつく部門の事業は、地域住民のコントロールのきく制度と機関を保障された地方公共団体経営のもとに置くことが最良であるということであります。  以上のことこそが公共性の意義、内容を構成するものでありまして、この論理との連関でのみ経済性の意味が問題になるということであります。したがって、公共性が主であり、経済性はあくまで従でなければなりません。これまでの政府の政策は、経済性の内容を独算性だという論拠をもって地方公営企業の論理としてまいりました。そしてこのような論理で収支適合という無理な注文を地方行政公共部門に浸透させようとしてきたところに今日の事態を招来いたした最大の、原因があったことについては、すでに述べたとおりであります。  私どもが主張する水道企業における経済性は、第一に、独占の収奪から国民の利益を守ることを目的としたものであり、第二に、地域住民に対して最小の負担で最良のサービスを保障するために、能率的な経営を行なうことを目的としたものであります。経済性をこのような立場でとらえるならば、公共性と両立し、調和するものとなるでありましょう。すなわち、公共性を第一の原則、経済性を第二の原則という位置関係であります。地方公営水道企業経営原則については、一般的な公益事業概念論や、経済的な機能特質論で律することは誤りであり、住民の生活維持の最低要件としての必要のほか、保健、衛生、防火の上でも必需の水道は、経営性格よりも行政的性格の濃厚な意義と目的が優先されなければならないからであります。だからこそ私ども水道は、政府に対して現行独算性の廃止を強く要求して、国庫補助制度の確立、一般会計からの出資、負担、また長期低利の起債政策などの実際的、具体的提案を強調してやまない次第であります。  次に、国庫補助制度について上水道と工業用水道の比較について申し述べたいと思います。  かつて水道普及の目的で国庫補助の制度がございました。しかるに、独算制のたてまえが導入されて、これが打ち切られたままになっております。ところが、簡易水道と工業用水道には国庫補助かなされておりますので、上水道だけ補助しないという理由はすでになくなっているにもかかわらず、今般の政府改正案におきましても依然としてこの矛盾は解消されておりません。三十九年度決算によれば、上水道に対する国庫補助は九億八千六百三十六万円で、給水人口四千六百七十九万人でありますから、一人当たりの補助年額はわずか二十一円であります。これを七大都市だけについてみると、ただの三十八銭に満たぬ額になってしまうのであります。ところが工業用水道となると、給水会社数千百十三社に対し五十八億四千三百四十一万円、一社当たりの補助年額が五百二十五万円余の多額にのぼっております。この違いは一体何を意味するものでありましょうか。国民の生活用水の確保を軽視し、資本の利潤追求の用水を重視、保護する政府の政策がよくあらわれております。また、先般水道転業に対する電気税が撤回をされましたのにかかわらず、より公共性格の強い公共水道事業に対しては、依然として課税され続けている等の政府におきます上、下の水政策に対する誤りについても、この機会に強調せざるを得ないのであります。利潤をあげている民間企業使用する用水には多額の国庫補助を行ない、物価高に苦しむ国民の生活用水には補助の道を開こうとしない政府案に対し、私どもは重ねて反対の意見を表明するものであります。そして、かつて簡易水道国庫補助の道を開いたことにより、急速にその普及率が伸びたことからも明らかなごとく、上水道にも同じ道を講じることがわが国における水道事業の発展が一段と促進されることになるでありましょう。  最後に私は、私ども水道水道事業の政策方針にのっとり、今般の政府並びに社会党提出改正法案の両方を比較検討させていただきましたが、水道事業公共性を重視する立場改正に臨んでおられる社会党提出案によってこそ初めて現下の公営企業、なかんずく水道事業経営危機を真に打開し、長期安定的な企業経営を可能ならしめ、地域住民福祉増進につながるものとなるであろうことを明らかにいたしまして、私の意見を終わりたいと思います。     —————————————
  14. 岡崎英城

    岡崎委員長 以上で参考人の方々からの御意見の開陳は終わりました。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。なお、萩田参考人は所用がありますので、初めに萩田参考人に対し質疑をお願いいたします。奥野誠亮君。
  15. 奥野誠亮

    ○奥野委員 二点について萩田さんにお伺いをしておきたいと思います。  今度の調査会の答申の重要な部分として、負担区分を明確にするという点があるわけでございます。公営企業に要する経費のうちで、一般会計等負担すべき部分と、企業会計負担すべき部分とを明確に区分けをする、そうして企業会計に所属する負担分については自まかないでやりなさい、そういう意味の独立採算ということは、もっとはっきりさせていかなければならないのだという精神だと思うのであります。ところが独立採算ということばを、そうではなしに、何でもかんでも企業会計負担させるのだというように誤って世間で非難をして、今度の法律に対して反対意見が述べられている面がかなり多いように私思うのでございます。きょうの参考人の意見を伺っておりましても、特に中井さんの意見の中ではそういう部分があったように私には思われたわけでございます。この企業会計負担すべき部分、これが料金にそのまま反映されていかなければならない、こう考えておるわけでございます。その場合に、一体単年度主義で収支がとれるようにするのか、そうでなくて長期的に考えていってよろしいのか、ここに一つ問題があると思うのであります。一般会計の場合には単年度、単年度で収支が立っていくということでなければならない、これが一応基本的な原則だと思うのであります。私個人は、公営企業に関しては、たとえば現在の人口をたてまえにすればそれほどの規模の水道が必要でなくても、将来を考えてかなり大きな配水管等を使っていく、そうしますと、最初の場合にはべらぼうに商い料金をきめなければ、単年度ではバランスがとれないことになりますが、そういうことをしないで、もっと長期的に考えてバランスのとれるような料金をきめていいのじゃないか。そうしますと初年度、次年度赤字になるというようなことも考えられるわけでございます。あるいはまた国の料金政策に協力をして、さしあたりは料金の値上げをしない、しかし将来はもちろん料金会計に取り組むのだ、時期的にそれをずらすのだという問題もあるわけでございまして、長期的にバランスをとっていく、バランスはとっていかなければならない、こういうことだろうと思うのでございます。この点をひとつ明確にしていただきたいと思います。  もう一つは、職員給与をどうしてきめるのか。今度の政府案の中で、経営の状況も考慮するのだということばが入っているわけでございます。これが組合の諸君をかなり刺激している、かように私伺っているわけでございます。従来は政府の指導方針が、一般会計職員でありましても、あるいはまた企業会計職員でありましても、国家公務員並みということを強調してきたよりに承知しているのでございます。私はやはり企業会計職員について、職種のいかんも問わずただ国家公務員並みを強調したことに若干問題があったのじゃないか、かように感じておるわけでございまして、そういう意味では今度の政府案はかなり前進している、こういうように思っておるものでございます。そこで経営の状況も考慮するということ、おそらく調査会でも十分な論議があったと思うのでありますが、いい場合にはプラスして差しつかえないのだ、こう理解したいのであります。経営がいい場合には、それはやはり職員も相当な努力を尽くしていることでもございますので、当然プラスされてしかるべきだ、こう理解したいと思うのでございますが、その点についての御見解を伺っておきたいと思います。
  16. 萩田保

    ○萩田参考人 二点お尋ねがございましたが、お答えいたします。  第一の、独立採算制ということを非常に強調しておりますのは、おっしゃるとおり負担区分をはっきりした上、企業会計負担分については独立採算制をとるということ、それから第二に、その計算というのはあくまで企業会計方式によって行なう、したがっていま水道あたりに見られますように、現金主義でもって、いわゆる起債の償還費そのものをもうその場で料金に織り込んでいくといりような考えではなくて、やはり企業会計方式による経理を行なった上での採算であります。それで第三番目に、非常に重要な点を御質問あったのでございますが、全くおっしゃるとおり長期的な問題でございます。したがいまして、それは先ほど申した企業会計方式をとることによってもおのずから出てくると思うのでありまするが、そういり面においてバランスをとる、採算をとるということでございます。したがいまして、ことに問題でございます新興的な都市あるいは開発の行なわれるようなときにおきまする、ことに工業用水あるいは水道あるいは地下鉄と申しますか、そういうような面につきまして、建設の当初においてとても採算がとれないということは当然でございまして、その分につきましてはあくまで別個の方途を講ずる、こういうことは答申にもうたってあるはずでございます。  それから第二に給与の問題でございますが、これもおっしゃるとおりでございまして、われわれの申しますのは、一般的に公営企業職員の待遇を悪くしろというようなことを、先ほど申し上げたように一言も申してないのでありまして、むしろ企業経営にふさわしいような給与体系にする。それが現在、いまもおっしゃいましたように、単に国家公務員に準ずるというような形でもって押えていることが適当でない。したがって企業にふさわしいような体系、したがいましてそこに企業経営の状態というものも入ってくる。したがって、非常に悪いときにはあるいは満足といいますか十分なことはできないにしても、よいときによっては、つまり働く人たちの企業努力によってこれが収益を得まするならばそれは大いにそちらにも返す、したがって給与もよくなる、こういう面があってしかるべきだと思うのであります。  以上二点、十分じゃなかったかと思いますが、お答えいたします。
  17. 岡崎英城

    岡崎委員長 細谷治嘉君。
  18. 細谷治嘉

    ○細谷委員 荻田さん、所用で途中でお帰りになるようでありますから、二、三の点についてまとめて御質問いたしますから、まとめてお答えをいただきたいと思います。  第一点は、昨年の十月十二日に本答申が調査会から出たわけでございますが、先ほどの参考人としての発言、公営企業がここまできたのは外的な要因と内的な要因があるのだ、こういうことでございます。そのとおりだと思うのでありますが、この調査会の答申を見ますと、その内的な要因について、ある部分は非常に詳細に指摘をし、そしてもっと指摘をしなければならぬ内的部分については不十分な形で答申が行なわれていると思うのです。特に公営企業というのはやはり社会全体の中における問題でありますから、外的要因ということについてはほとんど触れておらない、こう申してよろしいと思うのでありますが、そういう点で私は、この調査会の答申というのはかなり不均衡な、これではほんとうに困難な地方公営企業を立て直すわけにはいかぬ、こう思っておるのでありますけれども、この点についてひとつ荻田さんの御意見をお聞きしたいと思うのであります。  それから第二点は、不完全でありますけれども、それなりに調査会は調査会らしい筋というと少しなんですが、ものを持った答申が行なわれているのでありますけれども、今度の政府案を見ますと、先ほど御指摘にありましたように、その調査会の指摘した点を妥協に妥協を重ねたというのか、筋も骨も全くなくなってしまった、こういうふうに申してもよろしいと思うのです。たとえば工業用水の例をとりますと、答申が全く無視されておる。あるいは先ほど仙台の市長さんがおっしゃったように、許認可等、外的なものについては完全にシャットアウトしてしまって、内部で努力する、その結果何かというと、料金上げか労働条件の切り下げに求める以外にない、こういうことになっておるわけでありますから、調査会としてこの政府案に対してどういりふうにながめているのか、どういうふうに評価しているのか、この点をお尋ねしたいと思うのであります。  第三点は、これに関連いたしまして、先ほど来参考人の御意見がありますが、構造的な赤字要因というのを今日の地方公営企業は持っておるわけであります。外的、内的含めまして、いろいろな意味の構造的赤字要因というものを持っておるわけでありますから、一体政府案のこういう財政再建措置、これを地方公営企業本法の中にまとめて、食い逃げでもされると困るのでしょう、とにかく本法と筋の違うものを本法の中へ財政再建のものを入れてきたわけですけれども、この政府案で今後地方公営企業が独算制という形で立っていけると思うのかどうか。立っていけないとすれば、私もちょっと申し上げたのでありますが、どういうことになるのか、その御意見をひとつ伺っておきたいと思う。  それからもう一つは、萩田さん等が調査会でいろいろと検討をしておる過程に、厚生省のほうでは公害審議会というものをつくられた。公害審議会の中には水道部会というのがある。これが水道経営問題というのを中心にして検討をしておるのです。いまもまだ続いております。しかし、調査会がやっているときにももうすでにこれは発足しておった。これとどういう関係があるのか、これに対してどういう御意見をお持ちなのか。たぶん御存じでしょう。  以上四点ばかりをお尋ねしたいと思うのです。
  19. 萩田保

    ○萩田参考人 お答え申し上げます。  第一番目に御質問になりました外的要因をどう考えているかということでございまするが、これはおっしゃるとおり、現在の公営企業がいろいろ問題が出ておりますのは、単に企業内部だけじゃなくて、ほかの諸条件に問題があるということは先ほども申し上げたとおりでございます。ところがわれわれの調査会といたしましては、あくまで公営企業の調査会でございますから、公営企業自体に関するものだけでなければ責務としておかしいと思います。したがいまして、それを主体に書いてありまして、しかもそのことは、外的要因が先ほども申し上げたようにいかにあろうとも、最小限度この程度はやらなければいけないという内容でございます。そこで調査会の答申においても最後にその点は強調いたしまして、ただいま申し上げましたように、調査会本来のことではございませんから、その点については最後に、「地方に対する国の行政の刷新が必要であることを附言したい。このことは、たとえば、人口の過度集中、交通の過密化、住宅の無計画建設など」云々、こういうことについて政府も大いにやらなければならないということはちゃんと書いておりますけれども、われわれの調査会の本体ではございませんから、それについて多くを触れるのは適当ではないということで、最後に強調するにとどめた次第でございます。  第二番目に、この答申が政府案においてどれだけ実現されたかということでございます。われわれあくまで諮問委員会でございますので、要するに最善の答申を書くということが職責でございまして、それから先は政府あるいは国会のお仕事だと思います。したがいまして、それについてとやかくわれわれ申し上げる限りではございませんが、批評をしろということでございますれば、いまも御指摘のありましたように、特に二点において私は漏れておるところがあるのじゃないかと思います。全体としては大体答申の線に沿っていることは申すまでもございませんが、その二点と申しますのは、やはり工業用水道の問題が答申の線とは非常に離れて不明確になっておるということであります。第二点は、交通事業に対する、むしろ運輸行政と申しますか、公営企業に対する対策、その点についての十分な措置がとられていない、あるいはこれは単に地方公営企業法の問題ではなくて、運輸行政全般の問題に関係するから、ここでは触れておらないで、別に御対策がおありになるかとは思いますが、私の特に気のつきますのはその二点でございます。  なお、もう一点つけ加えれば、再建に対する国の援助、これも先ほど強調いたしましたように、国の特に物価政策によって地方の公営企業赤字を出したような面に対する政府の責任を果たすという面において、きわめて不十分なような感じがしております。  それから第三番目に、再建についてこれでいくかどうかということでありますが、私はいま申しましたように、なお政府対策が不十分でございますから、あるいはこれによっては十分なことが、完全な再建とまでいかないかもしれませんけれども、おおむねこれによってできるのではないかと思います。  それからなおこれについて一言付言いたしますれば、再建については、先ほど申すように十分ではありませんけれども政府の相当の援助がある。政府援助があるということは、結局国民全体の納めた税金によってその地方団体が救われるということになる。したがいまして、国民全体の、税金を納めた納税者に対する責務として、政府がその地方団体に対してある程度の関与をすることは当然のことだと思っております。したがいまして、それが行き過ぎ、自治干渉ということにならぬ限りは、私は政府援助する以上は国民のかわりに監督するというのは当然のことだと思います。  それから第四点の公害対策委員会のことでありますが、これは私全然承知しませんし、そのとき調査会に対して政府側からも何も発言がございませんでしたので、私は全然存じませんので、遺憾ながらお答えできません。
  20. 岡崎英城

  21. 泊谷裕夫

    泊谷委員 調査会の運営は終わりになったというので、一つだけお尋ねしておきたいのですが、いまのお話によりますと、公営企業といえども採算ベースを度外視して考えるわけにいかぬ。利潤を求める行為ではないけれども、つじつまを合わせるべきだ、こういう説のようにお伺いをしたのでありますけれども、かりにその説に乗ったとしますと、いま東京都の副知事も指摘をしておりましたが、東京都内の交通一元化などは調査会として実際的問題として考えたものであろうか。すでに昭和三十五年に交通の総合政策というものが答申されております問題については手がつけられてなくて、投げておる。いま副知事が指摘したように、東京都の都営交通というものは山手線以内、これは往年と違いまして利用度が減っておる。団地はかってに民営の東急だ、京王だというものが宅地を造成していって、ポールを立てて、そうして住宅を二軒ぐらい建てて、土地の値段をつり上げていくから、それはそれで採算が合いましょう。私鉄経営は全部みずからの交通事業以外の他収入でそろばんを合わしているわけですか、あなたの説のとおり、かりに料金を値上げした、電車に客が乗らない、どうしてそのつじつまを合わせるというように調査会でお考えになっているのか。この私の端的な疑問にお答えをいただきたいと思うのです。
  22. 萩田保

    ○萩田参考人 東京都の電車のことを具体的に例をあげておられますけれども、この路面電車につきましては、調査会としましては、終局の形においては廃止して、地下鉄なりあるいはその他の近代的な交通機関にとってかわるべきものだと考えております。したがいまして、おそらくこの料金を、おっしゃいますとおり、だれも人が乗らないくらいに上げない限りは、理論的には数字が合わないような状態だろうと思います。したがいまして、そういうものはもう時代おくれであるから廃止して、むしろ近代的な交通機関にかえるというのが答申の内容であったと思っております。
  23. 泊谷裕夫

    泊谷委員 私は、答申はずっと読ましてもらったのですが、いまお話しのようなことは書いてありませんね。ずいぶん長い条文がありますが、末尾のほうに三行ほど、あなたの言われるようなことが抽象的なことばで書かれておるのですけれども、だとすれば、地下鉄に移行する場合、あなた方のつくられた答申と政府の関係はどういうことになりますか。政府が具体的に地下鉄を掘る場合、キロ三億円なら三億円に対して、元利償還で下積みになっているのは事実ですね。動きがつかないのは事実でしょう。地下鉄地下鉄で呼吸ができるような措置というものが出されない限り、あなたの説はお通夜に薬をもらうようなわけなんです。ですから、それはそれなりに、こうすることによって地下鉄に移行しなさい、その前段の議論はない。路面交通、都営バスは、この道路許容量の少ないところで、急増する車両によって全然走れない。青山一丁目などは、建設省の調べでも、交通量二という数字は自由走行が困難になったことを示す数字であるが、指数が昭和三十七年で九・三となっている。そうなれば電車自体も動けるものでもないし、都営のバスも動けるものでもない。それについても打開策については触れられない。資金の問題については、具体的に政府にげたを預ける措置をとってないとすれば、あなたの学説は学説としていただいても、調査会の説はいただいても、それはほんとうにお通夜に薬を投じてもらったような話で、すとんとこないのですが、どんなものですか。
  24. 萩田保

    ○萩田参考人 私、と申しますよりも調査会においては、それに対して正面から答えているわけでございますが、四五ページにおきまして、路面電車については廃止する云々については、当該道路管理者において負担するのが適当だ、あるいはその他からの代替交通機関の整備については、その独立採算制が差しあたり無理であろうから、その間生ずる赤字については地方団体一般会計において負担することもやむを得ないとか、あるいは地下鉄につきましては、きわめて強調して、特にある意味においては答申中の大きな項目だと思いますけれども、「地下鉄事業公共性にかんがみ、建設費そのものをすべて企業負担させることに本来問題があると思われる。地下鉄事業は大都市における都市改良事業にほかならないのであるから、地下構築物については、道路等公共施設に対する国庫負担制度を勘案のうえ国が建設費について負担する制度を確立する必要がある。」こういうふうに明瞭に書いてあるのでございます。  そこで先ほどから申したように、こういうことで二点だけ申し上げましたけれども、これが実現されてない一番大きな点だということもはっきり申し上げたのであります。
  25. 泊谷裕夫

    泊谷委員 これでおしまいでありますが、いまの説明からいきますと、私ども提出している都市鉄道整備促進法案と、大体大要似た考えをお持ちだというふうに理解をしたのですが、よろしいですか。
  26. 萩田保

    ○萩田参考人 いまの路面電車、地下鉄等都市の交通問題については、そのとおりだと思います。
  27. 岡崎英城

    岡崎委員長 門司亮君。
  28. 門司亮

    ○門司委員 ちょっと私、萩田参考人に一つだけ聞いておきたいと思います。  それは答申と法律との関係ですが、答申にはなるほど相違点も書いてありますし、それから企業のあり方等についても書いてある。同時に、法律も一本になって出てきております。私どもは、本来これは異質のものだと考えているのです。一方は恒久的な法律でなければならない性格を持っている。いまの赤字をどうするかということは臨時立法でいいのじゃないか。それを二つに分けたほうが案の審議に対しては非常に都合がいいのじゃないかという考えを持っている。その辺のところを、あなた方のほうから見た法のていさいというのはどういう考えがありますか。私は、法のていさいは非常にまずいと思って見ているのです。
  29. 萩田保

    ○萩田参考人 われわれ調査会におきましては、この内容の具体的な実態についての議論をしましたので、法形式までは、これは政府なり国会のおやりになることで、私は別に考えておりません。しいて批評をしろとおっしゃるならば、今回こういうことが機縁になってこの大改正が行なわれるのでありまするから、一緒の法律であっても差しつかえないように思われますが、その辺のところは私にはわかりません。
  30. 門司亮

    ○門司委員 じょうずに逃げられるのですが、萩田参考人はかつての自治省の次官であります。政府委員であったことは間違いない。どう考えても、私ども審議する場合に、非常に迷惑です。実際には、五年ならば五年で解消するというようなこと、いわゆる時限法に等しいものと恒久法と一緒にして審議するということは、法律の取り扱いとしては非常に迷惑しているのです。この辺は、いまのような逃げるようなことでなくて、審議会のたてまえとしては、これはやはり二つにして、画然としたものにしてやったほうがやりいいのではないか。  それから、われわれの取り扱いにしても、ほんとうに地方自治体が困っている、再建策をどうするかということについては、やはり真剣にこれを考えて、これを解消することに努力しなければならない。しかし、恒久法については、やはりある程度慎重に考えて法案審議をしても差しつかえないのじゃないか。この二つの問題が一つになり、われわれは取り扱い上実際は困っている。片方はかなり急を要するものであり、一方はじっくり考えてもという気持ちがあるのですから、ひとつもう一ぺん、調査会としてこうだということはどうかと思いますけれども、率直な意見を聞かしておいていただきたいのです。
  31. 萩田保

    ○萩田参考人 せっかくのお尋ねでございますが、調査会におきまして、その法形式のことまで議論いたしませんでしたので、それから先は私の議論になるわけでありますが、ただ、調査会としての気持ちは、現在赤字で非常に困っている、当面どうにかしなければいけない、こういうことがもちろんあったのでありますが、それ以外に、先ほど私が冒頭にお答えいたしましたように、地方公営企業制度そのものが古くさくなっているから、これを立て直さなければならない、こういう面と、二つあったのであります。その関連性としましては、根本的な改正をするのに、いまの赤字をどうにかしなければにっちもさっちもいかないのじゃないかというようなこと、逆にまた、当面の赤字を解消するには単にたな上げだけやってもしようがないので、根本的にメスを入れなければならない、そういうことで、両者があくまで関連しておりますので、あくまで関連した一つの答申で出したのであります。したがいまして、法案としても、形式上二つにするのがいいのかどうか私はわかりません。御一緒に考えていただくのがいいのだろうと思います。
  32. 岡崎英城

  33. 野間千代三

    ○野間委員 時間のないところを悪いのですが、萩田さんにお伺いしたいのですが、私は、水道というものは国民生活というか、人間にどうしてもなければならぬものだと思う。これは当然なことです。いわば空気と同じようなものです。したがって、水道事業というものは当然基本的には国の責任でやるべきである。ただ、自治体の、実際の市民に対するサービスとしての政治上の機構としてあるのですから、地方自治体が経営するのは当然だと思う。ただ、その料金が、独立採算制を基本にして、原価をもとにして料金をきめていく、そうして独立採算制を立てていくという方向で水道事業を考えることは、水というものが人間生活なり社会生活なり、そういうものに持っている基本的なあり方からすると非常に問題じゃないかというふうに思う。ですから、交通であるとか、他の問題はまたあらためて論議するにしても、水道というものに限った場合、つまり水の問題に限った場合には、料金の問題を、原価を基準にして算出をするとかということではなくて、できるだけ国民生活を基本にして料金を考えていくということに基本を置くべきだ。したがって、独立採算を基本にして考えるような企業態度というものはいけないのじゃないかというふうに思うのです。そういうふうな性格水道にはあると思うのですが、そういう面についてはどうお考えになりますか。
  34. 萩田保

    ○萩田参考人 いまお述べになりました御意見、確かにこの調査会においても一部の委員から、水道だけは別問題じゃないかという議論が出ました。しかし多数説と申しますか、私自身もそうですので、むしろ多数説と言わずに私の意見を率直に申し述べさせていただきますけれども、これは、やはり現在の状態においては独立採算制によるべきじゃないか。将来、社会の一切のものが非常に進歩して、ほんとうにもうただでも飲めるような時代になる、片一方、公経済も非常に楽になる、そういう時代がくれば別でありますけれども、現在の段階においてはやはり独立採算制でいいじゃないか、しかもその料金は、原則としましてそう高いものではないと私は思います。払うものは一銭でも安く、もらうものは一銭でも高くというのが人情かもしれませんけれども、しかし、それは具体的に考えれば電気料金、ガス料金に比べましてそう高いものでもない、しかも一番大事なものであるというようなことで、私は原則として先ほど申しましたように、別にこれに対して地方の一般会計あるいは国庫一般会計補助金というようなものは要らないと思います。そうしませんと、逆に、全国必ずしも水道があるわけじゃないので、水道のないところにおいては井戸を掘るわけです。あるいはそれにポンプを入れて電気代も払う。あるいはそこまでいかない人は、それこそ主婦が水をかついで過重労働をやっておる、こういうところと均衡が合わないようになって困る。同じ国税で納めたものを、かえってそういう便利なところにつぎ込んで、そういう不便なところはほうっておくということになるので、私は現在の状態では適当ではないと思います。したがいまして、先ほどお断わりいたしましたように、もうぎりぎり一ぱいでどうしてもこうしても水がない、不衛生であってどうにもならない、したがって、幾ら金がかかっても水道をつくらなければならないという特殊な地帯においては国庫補助金を出す、これが憲法の第二十五条ですか、国民は健康で文化的な最低限度の生活を営むということになる。これはあくまで国としてめんどうを見なければならぬ、私はこのように考えております。
  35. 野間千代三

    ○野間委員 最後のほうはやや感じるのですが、最初のほうの現在の情勢ですね。つまり、地方公営企業水道部門が非常に赤字で苦しんでおる。したがって、答申にしてもあるいは政府のほうにしても、その赤字を克服するために独立採算を強化しなさい、こういう方向です。こういう考え方は、つまり水の持っている特性というものを度外視して企業の独立だけを考える、つまり財政だけを考えているということになると思うのです。そういう意味で、いまの時勢であるからこそ、こういう時期であるからこそ、もう少し公共性を基本にした水道行政を考えるということに置くべきじゃないかというふうに思うのです。
  36. 萩田保

    ○萩田参考人 先ほども申し上げましたように、具体的の問題でございまして、私の認識では、現在の水道料を収支が合う程度、それはいろいろ例外がございますが、それはまあ別にいたしまして、原則としまして採算の合う程度に上げても差しつかえない。しかも、これをもしかりに国庫補助でも一般会計からの負担でもやりますことは、結局税の問題にかかってきます。税の問題につきましては、私は税政調査会に関係しておりますから、税をなるべく下げるように努力しておるのでありますが、何もかも税に持ち込まれては、税を下げることはできなくなってくる。結局水道料金というものは、水道全体に要する経費を税の形で負担するのがいいか使用料の形で負担するのがいいかという問題、択一的な問題。そうなりますと、私は現在の段階においては、やはり水道料のようなものは、米でも自分で金を出して払わなければならぬ時代でございますから、やはりそれは料金として払ったほうが負担の公平を期するゆえんだと思います。
  37. 野間千代三

    ○野間委員 私は水道をただにしろと言っているのではない。料金をある程度徴収するのはやむを得ない。ただその料金の取り方が、独立採算制という企業形態を基本にして料金をはじいてくるというところに問題がある、そう言っている。それで今回赤字問題から、その独立採算制を強化するために労働条件であるとか労働組合の問題であるとか、それの財政のあり方、そういう方面にまで政治を加えて料金問題を重視してくるところに問題がある、こう言っている。ただでやれと言っているのではない。
  38. 萩田保

    ○萩田参考人 先ほど来お答え申し上げておりますように、そういうおっしゃるような諸条件を全部考えた上で独立採算で、原則として、例外はございます。それは別問題でありますが、原則として独立採算制でやりたい、こう申しておるわけであります。
  39. 岡崎英城

  40. 島上善五郎

    ○島上委員 たいへん急いでいるようですから、私一点だけ伺っておきますが、萩田さんが会長をいたしました昭和三十八年十二月の公営交通事業財政調査会の意見書に「都市交通は電車、バス、地下鉄が一体として経営されることが最も望ましいと考えられる。」云々という愚見書を出されましたね。それから、その次の昭和四十年十月の地方公営企業制度調査会の答申では、このことがさらに前進した形で答申されております。前のほうは略しますが、「東京都においては、その交通事情にかんがみ、少なくとも区部における交通事業については公的事業主体による一元的経営が可能となるよう、すみやかに東京都の交通事業と帝都高速度交通営団の事業とを一元化する等各般の措置が強力に実施されることが必要である。」こういう答申が出されておりますね。ところが今回の政府法律改正は、こういうすみやかに必要だと答申されておる事柄をすっかりどこかへ忘れ去られた形になっておる。こういうことに対して、答申の起草に相当重要な役割りを果たされると思われる萩田さんはどのようにお考えになるか、ちょっとお伺いします。
  41. 萩田保

    ○萩田参考人 これは先ほども申し上げましたように、答申で実現されていない一番大きな点の二つの一つだというくらいに申しました。私は非常に遺憾に思っております。ぜひこれはやっていただきたいと思いますが、ただ善意をもって推測いたしますれば、今回はこの公営企業法だけの提案のようでございますから、これ以外に、これはおそらく公営企業法の外においておっつけあるんだろうと期待しております。
  42. 岡崎英城

    岡崎委員長 萩田参考人には長時間にわたり貴重な御意見を賜わり、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。
  43. 奥野誠亮

    ○奥野委員 鈴木さんにお尋ねしたいと思いますが一つは都の水道料金とバス料金、戦前と比較して現在どういう倍率になっているのか、これをお教えいただきたいと思います。  もう一つは、財政再建債に関連して四十年度末の赤字基礎にするようにというお話、法律が非常におくれてきておりますから、いまになればあれだと思いますが、同時に利子補給ももっと強化すべきだというお話もございます。けっこうなことだと思うのでありますが、現在都が借り入れ金に払っている利子から考えると、六分五厘以上について国が援助するというのはナンセンスだ、こういうような話も聞いているわけであります。ついては都の借り入れ金についての利子負担、長期の資金は別でございましょうが、短期のものについてどのような負担になっているのかということをお教え願っておきたい。  もう一つは、水道限定してお尋ねしておいたほうが簡単だと思うのでございますが、料金改定の時期をどうきめておられるか、おそらく給与改定とか減価償却費の増大とかいったことが料金改定の一番大きな原因になっているだろう、かように考えるわけでございます。今度法的に料金算定の基礎がかなり明確になってきておりますので、自然また料金のきめ方も比較的地方団体としてもよりどころができたということになるのじゃないか、かように思うわけでございます。いつも料金改定のときに大きな問題になるわけでありますが、建設計画議決するときに料金議決できないものだろうか、こういう感じがするのであります。建設計画を選ぶか料金改定をのむか、こういうほうが楽なように思うのであります。ただ建設の途上でございますと仮勘定でもございましょうし、減価償却費の計算も的確には出ないと思うのでございます。そういうこともございますけれども、従来繰り返されてきている料金改定のときのいろいろな紛糾を見ていますと、建設に根ざしている問題は建設計画をきめるときに解決できないものだろうかというふうに思うのでございますが、こういう問題についてお考えがあれば伺っておきたいと思うわけでござ、います。  なお、時間の関係から、島野さんに対する御質問も一緒にさせていただきたいと思います。島野さんの意見の要旨を見ますと、水道事業に対する国庫補助制度を強調されておったわけでございますが、簡易水道方式の一律的な国庫補助を求めておられるのではなかろう、かように思うわけでございますが、念のために確かめておきたいわけでございます。税金の形で国民に負担を求めるか、料金の形で国民に負担を求めるか、どっちにしても国民の負担には違いない。私見を差しはさんで恐縮ですけれども、やはりある程度利用がはっきりしているものですし、どちらかといいますと地方よりも都市の利用が多い、同時にまた利用の程度が負担能力にもある程度比例している、いろいろなことを考えてまいりますと、一律国庫負担というのはいかがものか、かように私は考えておるわけでございます。特に料金が高い地域については、それを下げる意味においても国が援助する、税金を使うということはわかりますけれども、一律に税金の金を使うということは、税金の使い方としてもったいない使い方だ、むしろ逆にいま言うような都市と地方とか、あるいは負担能力に比例する水の利用とか、いろいろなことを考えてまいりますと、どうも納得しかねるという感じかいたすわけでございます。そこで、どういう意味で国庫補助制度を強調されたか伺っておきたい、かように思うわけでございます。  もう一つ、政府案について、たとえば今度は管理者権限政府案ではかなり強化しているわけでございますが、この点について具体的にどうお考えになっているのか、ちょっとお話が明確でなかったのですけれども、項目的にごく簡単におっしゃっていただいたほうが時間的に都合がいいと思いますが、明らかにしていただきたい、かように考えるわけでございます。
  44. 鈴木俊一

    ○鈴木参考人 お答えいたします。  最初のお尋ねの、バス料金が戦前に比べてどうなっているか、水道料金がどうなっているかという点でございますが、昭和八年を一といたしますと、都バスの料金は一区間で比較いたしますと一八三・六になっております。それから水道のほうでございますが、これは値上げ前におきましては一五〇・五、値上げ後一八二・七、こういうことでございまして、たとえば鉄道などに比較いたしますと、これは二六三・八でございますし、電報が二四〇、これは今回の値上げ前の計算でございますが、入浴料が五六〇、理髪八九六、郵便はがきが三三三、その他いろいろございますが、こういうのに比較いたしますと、必ずしもそう高いということは言えないのではないかというふうに私ども思っております。  それから利子の問題でございますが、都が現在金融機関から借り入れておりますのは、民間の金融機関と、それから郵政、大蔵、いわゆる政府の金融機関、たとえば交通局に限定して申しますとこの二つから借りておるのでございますが、利子は民間の銀行から借りておりますものは五歩六厘五毛七五、一銭五厘五毛、こういうのが短期利子でございます。そういうものを合わせますと、全体では利子負担が年間にいたしまして十一億六千万ぐらいになるのではないかというふうに考えております。  第三番口の料金改定の時期の問題についてのお尋ねでございますが、料金の改定を建設計画をつくるときに同時にきめておいたらどうかというようなお話でございます。これも確かに一つの考え方と存じますが、しかし現実には、たとえばダムをつくって利根川から家庭まで水を持ってくるということになりますと、相当長期のことになりますので、全体の財政計画のめどは一応立てますけれども、それを条例において具体的にその水が参ります場合の料金が幾らということまで確定的にきめてしまうことは、ちょっと現在の推算をもっていたしますと困難を伴うのではないかと思うのでございます。ただ、都が昨年水道料金の改定を計画いたしまして実施いたしたわけでございますが、これは三年間の財政期間、一つの計画期間をとって収支を算定したわけでございまして、その一年間にバランスがとれるような程度に料金の改定をしたい、こういう計画であったのでございます。先ほども萩田参考人のお話にございましたように、そういう意味では単年度のバランスということではなく、一定の財政計画期間におけるバランスをとるようにはいたしておるわけでございます。
  45. 島野武

    ○島野参考人 国庫補助率は一律かどうかという御質問でございますが、一律に補助してほしいということは全国市長会の要望でもあり、また日本水道協会の要望でもあるので、その点を私は代表して申し上げたつもりでございますが、御説のような点ももちろんあると思います。しかし、東京の料金が改定されて何ぼになるだろうか、私はよく知りませんけれども、現在私どものほうでトン当たり平均三十二円何がし、これを五割値上げするということになれば、これは市民の負担に耐え得ない非常な高いものになる、私はそう思うのでありまして、まず市長会、日本水道協会の要望はそれとして、その次、それができぬとならば、私どものような非常につらい立場にあるものについては特に考えていただきたい。私、仙台市の隣の塩釜市などは、もっと高い、トン当たり六十円ぐらいの水を飲まざるを得ないというような実情にあることを申し添えます。  なお、管理者権限について、これは管理者の地位を強化することによって、一体現在の地方公営企業がよくなるかどうかということについては、少なくとも市長仲間は非常な疑問を持っておると思います。議会事項にしたらどうかという最初の案があったそうでございますが、そういうことになれば管理者はもう議員さんの鼻息ばかりうかがうというとおかしいですけれども、そういったような議会のほうに向いて行なうというようなことにもなりかねない。また、市長が任命する管理者であります以上、やはりすべての地方公営企業の事柄について責任者は市長であると思います。そういうことで、従来は決定権というものは市長が持っておって、市民から選ばれた市長が市民に責任を持つということのほうが私はよほどよくはないか。現在おそらくあらかたの市の企業管理者というものは市長がほんとうに責任を持って選んで、すぐ取っかえたり何かするということでなくて、ほんとうに打ち込んで仕事に携わっておるのでありまして、市長と相談もしながらやっていっておる、その権限をやたらに強化するよりは、もう少しこの問題は慎重に検討を進めるべきではないかというのが、私のみではなく、仲間の市長たちほとんど全部の意見であると思います。
  46. 奥野誠亮

    ○奥野委員 政府案はおっしゃるようにいまの点は直っておると思うのです。そのほかに、たとえば契約の問題あるいは物件の処分の問題、そういったものについて議会議決を相当部分についてはずしているわけであります。こういう点について御意見をお聞きしたいと思います。
  47. 島野武

    ○島野参考人 議会議決をはずすと、こまかいことについて一々議会にかけぬでもいい、その点については私は反対はございません。
  48. 岡崎英城

    岡崎委員長 重盛寿治君。
  49. 重盛壽治

    ○重盛委員 鈴木さんにちょっとお伺いします。最初からおらなかったので、たいへん失礼しました。今度の地方公営企業法の一部改正政府から出されて、いままでの論議の中でかなり明確にはなりましたが、あなたがごらんになった場合、こういう出し方ではたして——あなたの場合はかつては自治省においでになったし、いろいろ経験を積まれておると思うのだが、このような地方公営企業法の一部改正という出し方が妥当な出し方であるかどうか。たとえば交通から水道から病院から下水道からガスから電気から、一切を一つの公営企業ということにきめつけて、当然公営企業ではあるが、これを一本の法律にして出してきた、この点についてどういうふうにお考えになるかということが一つ。  それからもう一つは、いまのような公営企業水道交通のあり方等から考えるならば、先ほど来からかなり意見が出ておるように、当然財政再建の面と一般企業のあり方をどうするべきかということとは、二つの線にして法案を出すことが、私は法律家ではないが、正しいように考えるが、その点どういうふうにお考えであるか。  もう一つ言うならば、審議会の答申とにらみ合わせて、これが妥当なものであるとお考えとなるかどうか、こういう点、政府の者に質問するような言い方で恐縮ですが、鈴木さんはかつてからそういうほうのベテランだから、その点まずお伺いをしておきたいと思います。
  50. 鈴木俊一

    ○鈴木参考人 たいへんお答え申し上げにくい質問でございますが、この法案提案のしかたについて、各事業で相当に性格が違うから、むしろ各事業の特殊性を生かしたようなつくり方にすべきではないかというような意味のお尋ねが第一点のようでございますが、これはひとつ考えようだと思うのでございまして、たとえば地方自治法という一つの法律で東京都から小さい市町村に至るまで一本に規定をしておる。東京などについては少し無理だというような点もないわけじゃございませんけれども地方自治の理念並びに地方自治という立場から企業経営する場合の基本的な考え方、態度というものを立法化するという考え方で、いまの地方公営企業法現行法としてできておるわけでございますから、その考え方をさらに改称をしていく、こういう立場政府は立案をされたものと思うのでございます。ばらしてばらばらに書くという考え方もございましょうか、そうなると、これはむしろ電気事業とか、ガス事業とか、あるいは交通事業というように、各事業法規との関連がまたいろいろございまして、むしろ地方公営企業としては地方自治体の経営する企業という立場で一本で書くということが私はいいのではないかというふうに思うのです。ただその場合に、なるべく各事業に共通の苦き方でなければならぬのですけれども、できるだけ具体的に書いていただきたいというのが私の希望でございます。  それから第二点の、財政再建の立法と地方公営企業制度の基本的な立法とを別々にすべきではないかという、先ほどの御質問の趣旨と同じ趣旨のお尋ねでございますが、これは私も萩田参考人の考え方が妥当であろうと存じます。  それから第三点の、今回の地方公営企業制度調査会の答申を政府案が取り入れておる取り入れ方についての感想のようなお尋ねでございますが、この点は最初に実は公述に申し上げました点は、交通事業水道事業等について、やはり一般会計と公営企業会計との間の関連を明確にするのが、地方公営企業法の現在のたてまえとしては主でございますけれども、しかしそこに盛り込めないような問題が実は非常に重要な点であるということで、たとえば国に対してさらに地下鉄の問題、水源開発の問題等について特に負担区分を明確にするというような気持ちで、むしろこの際かような立法の際に一緒にはっきりしてもらえれば最も適当である。また大都市の、ことに東京都のような場合の交通の行政の構造的な状況が大阪市などと比べましても基本的に違っておりますので、やはり大都市の事業主体というものを解決することが基本的に大都市、ことに東京の交通事業再建のためには私どもはぜひとも必要な要件である、こういうふうに思っておるわけでございまして、そういうような点は答申の中に、本筋ではない問題ではございますが、若干触れておるわけでございます。今回の政府案に、これはいまの交通一元化の問題のための立法措置は別に法律の定めるところにより云々というような規定があるようでございますが、私はそれがやはり今回のせっかくの地方公営企業の改善の措置と、できれば同時並行してとっていただきたい問題である、こういうふうに考えるわけでございまして、今後できるだけ早い時期に、この問題につきましても国の段階でお考えを願いたいと思うのでございます。
  51. 重盛壽治

    ○重盛委員 私はこの法案は、法案審議の際に申し上げますけれども、こういう程度の法案の出し方であっては、抜本的に公営企業の立て直しもできないし、将来の運営も困難である。ただ政府が、答申も出た、何か出さなければならぬ、しかも赤字はどんどん累積されてくる、そういう際に、何か手を打たなければならぬということで打った事務的処置にすぎない。しかもきわめて微温的なものである。そうだとするならば、私は、これは島野さんにも中井さんにも聞いておきたいんだが、こういう程度のものをつくっても、——われわれは前々からこういう主張をしておった、公営企業法をやはり直さなければならぬ、これは古過ぎる、ただそれは単なる独立採算性ということのみでこれをやっていってはいけない、むしろ独立採算性は打破していかなければならない、そして公共企業体としての本来の姿から、たとえば交通機関でいう場合、あるいは水道でいう場合、病院その他に送る、あるいは重要なところに送っておる水道の問題、あるいは不採算路線を走ったり、いろんな割引をしたり、そういう公共性を持つ仕事である限りにおいては、一般会計からも、あるいは同じ国民の税金だからということになるかもしれませんが、国庫補助の面からも出して、ほんとうの公共性を確立をしていくというのが基本でなければならぬ。もちろん別にそういうものを社会党は出しておりまするけれども、そういう面からいくと、私は今度のようなこういう程度の案を出したのでは、かえって困るのではないか。特に経済の再建の面と切り離しをして、六分五厘以上を政府が持つというのは、これは一体何になりますか。一体どれだけの潤いになりますか。それでどれだけの再建が一体できますか。これは水道の労働組合の面から見ても、あるいは交通水道全般的な面から見ても、私は言うべくしてできない案が出ているんだ、こういうふうに考えますけれども、私の考えがいいか悪いかは別として、島野さんや中井さんが、いま鈴木さんにお尋ねしたように、一緒に出したことがいいか悪いかという面と、それからこれでいいとお思いになるのかどうなのか、こういう点、時間がありませんから、結論だけでけっこうですから、ぜひお聞かせを願いたいと思います。
  52. 島野武

    ○島野参考人 今度の政府提案法案再建ができるかどうかということになりますと、これはほかの参考人の話の中にもあったと思いますが、私ども水道管理者、それから交通管理者に聞いてみたというとおかしいのですが、再建団体になろうじゃないかというようなことを話してみたのであります。しかし今度の法案では足しになりません。六分五厘以上の分について、一分五厘を限度として利子補給をする、しかもその再建債償還期間はきわめて短い、これではどうも足しにならないというのであります。それで再建の問題はともかくといたしまして、実際この際に、私は先ほど申しましたように、せっかく二つの両方の法案が出ているという時期でありますから、先ほど申したことを繰り返すようでありますが、ひとつ社会党案の骨子を大幅に取り入れて、政府案を修正せられて、事は急を要するものであるから、これはぜひつくっていただきたいという考えを持っておるのであります。  なお、奥野さんお帰りになりましたが、先ほどの御質問の中で、ちょっと私言い足りなかった点は、一律に補助をするかどうか、これはあらかたのわれわれの団体の要望でもありますし、また一口に上下水道というのでありますが、下水道は雨水も流すから、これは水道とは違うじゃないかということでありますけれども、以前には水道建設事業に対しても補助がなされておった、いまはとだえておりますけれども、そういうこともあるので、少なくとも水道料金補助せよというのではなく、下水道建設には国の相当の補助をいただいてわれわれもやっておるのでありまして、水道建設先ほどから申しますような膨大な先行投資になるのでありますから、これに対してはやはり国もこの辺で踏み切って補助を出していただきたいというふうに考えます。
  53. 中井高明

    ○中井参考人 まず法案の一本化の是否の問題ですが、これにつきましては私どもかねてからいろいろ議論をしておったところでございますけれども、きわめておかしい、こういうふうに思っておるのであります。何となれば、簡単に申し上げまして、どうも政府の考えておるのは恒久法案のほうが本命でありまして、そのつけ馬として再建債のほうをくっつけた、こういう感じがしてならないのであります。何となれば、御承知のように恒久法案は文字どおり恒久法案性格を持っておるのでございまして、再建につきましてきわめて当面の措置を中心に考えておるわけであります。これを一本化せよということは、実は政府におきましては公営企業は独算制で収支がまかなえるのだといいながらも、片一方では絶えず恒久的に赤字のめんどうを見ていかなくちゃならないんだということを証言していることにほかならないと私は思います。したがってそういう論理自体の矛盾を政府自体もまず認めていただいて、この点はもう少しすっきり、恒久法案は恒久法案、当面の対策は当面の対策、こういうことで分けていかれることが、今日の公営企業危機を救う実態にマッチをするのではないか、こういうふうに思っております。  第三番目に、政府債の六分五厘の問題でございますが、六分五厘をこえるものは一分五厘の限度額でありますが、この程度の金額では今日の特に水道並びに交通における経営赤字というものは解消できないし、むしろ焼け石に水であろうというふうに判断しておるところであります。そして御承知のように水道は他に代替品のないところの必需品でありますから、商品価格というものにきわめて弾力性が乏しいわけであります。ところが今日の実態を見ますると、先ほど仙台の市長のお話もありましたように、ほとんど三年おきごとぐらいに水道料金上げざるを得ないという実態になっておりまするし、また東京都におきましても、おそらく鈴木副知事の心境は、きょうからでも再び料金上げをしたいというのが本意ではなかろうかというふうに私は思っておるわけであります。こういうふうに見てまいりますと、これは私が先ほど数字をいろいろあげてるる説明しましたように、そういう政府の政策によって構造的に生まれてきた原因があるわけでありまするから、各都市においてもほとんど二、三年を経ずして料金上げをしなければならなくなる。そうするとやがてその形が、水道料金というものが市民の負担に耐えられなくなる額に早晩なってきてしまうのではないか、こういうふうに非常に憂えておるものであります。したがって、この起伏の補給の問題ももちろんございましょうが、やはり国庫補助の道を大幅に開くということを基本にされる社会党案でぜひここのところはまとめていただきたいということを重ねて要望したいと思います。
  54. 重盛壽治

    ○重盛委員 どうもありがとうございました。  地方公営企業経費について、鈴木さんは、これは受益者負担である、たてまえとして、言い方としてはこれも当然ではないかというように私も考える。しかし、いまの地方公営企業の現状というものを掘り下げてみるとしますならば、あくまでこれは原則であろう、負担区分を明確にした上でと書いてあるので、ここにあなたの含みがあろうかと思います。たとえば私が先ほど指摘したような割引乗車の問題あるいは不採算路線を走らなければならぬ問題、水にしても交通にしても、ほんとうに公共的にあるいは政治的にやむなくやらなければならぬ部面もかなり六大都市を中心としてはあるはずであります。そういうものは当然別な面で考えるんだ、その他は独立採算制でいこうというお考えであるのかどうかという点が一点と、それから、過去においての政府政策あるいはいわゆる高度経済成長政策というようなことをいわれておりますが、そういう部面からくるしわ寄せといいますか、それから東京などでいうならば、六大都市は大体そうでありますが、戦後の政府の要請に応じての復旧期間、これは何もなくして軌道を復旧し、あるいは水道を復旧しやってきた。特に軌道なんかの面で見れば、そうしてどんどん復旧した軌道が、今度はいつの間にか専用軌道ではなくてあらゆる車両が自由に通行できるような形態になり、しかもその負担は関係当局が持っておる。こういうあり方であっては、やはり独立採算制という中にも、政府の出すべき、政府政策からくる支出をすべきもの、それから一般会計から出すべきものなど、これらのいわゆる三本立てを見た上での独立採算制でなければならぬのじゃないか。完全受益者負担ということにはこの問題は私はならぬと考えますけれども、その点を一体どのようにお考えになっておるのか、まず一つお聞きをしておきたいと思います。
  55. 鈴木俊一

    ○鈴木参考人 いまの経費負担区分並びに料金についての原則の問題でございますが、基本的な考え方はそう迷わないと思うのですが、お話のございましたように、たとえば水道にいたしましても交通にいたしましても、私どもはやはりこの部分は国が財政負担をしてくれる、この部分は一般会計が持つべきであるということを明確にいたしまして、そのあとはやはりそれを引いたコストで総括の原価を出して、その原価のワクの中でさばいていく、こういうのが原則として考えられるべきものではないかと私は思うのでございます。たとえば学生の割り引きにつきましても、義務教育の学生とそうでない学生などについて若干性格も違うかと思いますが、企業の採算を越えた学割りをもしその自治体としてやるということであるなら、これはやはり一般会計負担であるべきであろうと思うのであります。したがって、そういうことをやるかやらないかということは、一般会計においてそういうことが可能であるかどうかということをやはり考えていかなければならぬのではないか。企業のほうで適当に減らしておいて、そしてあとは一般会計がしりをぬぐえ、こういう考え方も困ると思うのでございまして、やはり公営企業としてはその辺の基本的な考え方を明確にしておく必要があると思うのです。地方団体の長といたしましては、そこに公共配慮によって特に割り引き料金要求するんだということであれば、それに対応する財政的な負担の問題も一般会計のほうで当然に考えていかなければならぬ、こう思うのでございます。国との関係においても、御指摘のように、私先ほど来いろいろ国に対して要請を申し上げましたようなことは、はっきりと国のほうでどこまで負担をするんだというようなことが、たとえば政令等において明確になれば一番望ましいわけでございまして、そういうワクの中で独立採算というものはやはりはっきりとしていく、独立採算制をとってもとらなくてもいいんだ、うまくいかない場合は、これは公共性でやむを得ずやっているんだというような態度では、やはりうまいこと企業運営というものはできないと思いますので、ワクを明確にいたしまして、そのワクの中ではあくまでも企業自主性というものを尊重し、同時に経済性というものも十分考慮してやっていくべきものであろうというふうに思うのでございます。
  56. 重盛壽治

    ○重盛委員 質問者がだいぶおって時間がないようでありますから、また法案の内容に入ったときに、たいへん御苦労でも鈴木さんその他関係者にお出ましを願うことにいたしておきたいと思いますが、一つ聞いておきたいことは、やはりこの公営企業の主体は地方団体が持っていくんだ、この原則はよろしいわけですね。これはひとつメモしておいていただきたい。それが一つ。  それから、あとのほうの国の財政援助措置についてという中に、道路、交通緩和のために地下鉄建設に対する国庫補助、これはかなり国が補助していると私は思うのですが、どういう点が足りないのか、それが一つ。  それから、あるいは多目的ダム等による水源開発事業等に対する国庫補助、これも水資源開発公団なんかをつくったりいろいろして、かなりな補助はしておるように思うのだが、さらにあなたの言う、ここであらわしている意味は何をお求めになっておるのか。  それからもう一つは、国の物価政策に伴う地方公営企業に対する国の財政措置ということがありますが、これは一口に言えば、国鉄運賃も上がった、あらゆるものが上がった、そしてすべてが上げられたけれども、バス料金、電車料金政府の政策上抑えられておる。そうすると、そこに当然大きな赤字が生まれてくるのだが、そうしたものは当然政府負担してくれるべきではないかということをいっておるのかどうか。その点ひとつこの際明確にしておいてもらいたいと思います。  それから四十年度赤字を含めること、私のほうも大体四十年度赤字がどのくらいになるという数字はわかっておりますが、それが九十億になるのか百億になるのか、その数字がおわかりになったら明確にしていただきたい。  それから財政再建債利子について、先ほど六分五厘云々ということがありましたが、三分五厘にしてくれということもあった。たとえばこの要望が果たされないのであるならば、このような法案は出してもらっても全くむだであるという、裏からいくとこんな言い方になるのではなかろうかと思うのですが、その点に対するお考えはどうであるか。みんな一ぺんに聞いておきますが、お答え願いたいと思います。
  57. 鈴木俊一

    ○鈴木参考人 最初の、公営企業の主体は地方自治体であるということを明確に考えておるのかというような意味のお話でございますが、御質問の趣旨が、財政再建に関連して国の干渉があまり強くなって自治体自主性を失うようなことになっては困るが、お前どう考えるか、そういう御趣旨……。
  58. 重盛壽治

    ○重盛委員 そうです。民間移行等のことも考えられるので、そういう両面を聞いておるのです。
  59. 鈴木俊一

    ○鈴木参考人 私は企業自主性というものはあくまでも尊重してもらいたいと存じますが、ただ国が融資をいたします場合におきましては、融資に伴う若干の国の立場からする制限といいますか、これは不可避であろうと思いますので、これはそれぞれの具体的な問題をどの程度まで考えるかという問題であろうと思います。また、民間にこの企業を移譲することにつきましては、これは先ほどもちょっと申し上げましたが、私は反対でございます。ことに問題になりますのは交通だと思いますが、バス、都電それから地下鉄というものは、私はそれぞれの自治体が三位一体で地土地下の交通事業を一元的に経営するというのが最も望ましい姿であると思うのでございます。そして、同時にこれは大都市構造の歴史、推移から申しまして、大都市にドーナツ現象と申しますか空洞化現象が起きるのは不可避でございますから、どうしてもこの区域の交通は黒字経営ということはなかなか困難でございます。そういうような場合に、これを民間企業において経営をするということは、かりに望みましても実際上引き受けるものはないのではないか。ことに地下鉄建設ということを並行して考えてまいりますと、民間でこれを経営するということは私は相当むずかしいと思います。私は必ずしも適当とは思わないのでございます。水道事業につきましては、事業の性質上、これは当然地方団体経営すべきものと思うのでございます。  それから第二のお尋ねの点でございますが、二の地下鉄建設につきましては、本年度政府の御努力によりまして、たしか八億余りの助成金が出るようになりましたが、私が先ほど申し上げましたのは、やはり地下の道路というような感覚で、三分の二ぐらいの国の援助地下鉄の穴ぐらの建設についてはいただきたい、こういうことを申し上げたわけでございます。  それから水資源開発の関係でございますが、水資源公団がいろいろ仕事をしてくだすっておりますけれども経費負担は、東京都の上水道事業工業用水道事業に関するものは全部東京都の負担でございます。したがって、これはただ工事の実施機関が存在するというだけで、負担は全部東京の水道にかかってくるわけでございます。したがってダムのような非常に多額な経費を必要とする水源開発事業につきましては、国のアロケーションをさらに合理化していただくとともに、国の補助金をお願いしたい、こういうふうに思うのでございます。  それから国の物価政策に伴う地方公営企業に対する国の財政措置と申しますのは、値上がりの分を何か国が考えろ、こういうことではございませんで、バス料金を東京都の場合三十六年に値上げの認可申請を出したのに、昨年になって初めてこれが認められた。その間三十数億のものが、入るであろうものが入らずにしまった、こういうものについて、やはりそういう料金の抑制をするからには、初めからそれに対応する何らかの地方に対する財政負担のかからぬような措置を講じつつやっていただきたい、こういうような趣旨のことを申したわけでございます。  それから四十年度赤字がどのくらいになるかということでございますが、こまかい点は省きますと、交通関係では約二百三十億になります。地下鉄、都電、バス、おおむね合わせまして二百三十億程度です。それから水道は百三十億程度になると思っております。  それからその次のお尋ねは、再建債利子の六分五厘をこえるものについて補給するということでは、今回の立法は役に立たぬではないかというふうに考えるかというお話でございますが、先ほど来、現実に東京都が短期借り入れをいたしております利子のことを申し上げましたが、これは今日の金融情勢がいわば投資する先がなくてだぶついておるので、コールといいますか、短期資金が比較的安いという一種の過渡的な金融情勢の結果の現象だと思います。いつまでもこの状態が続くとは思いませんので、私はやはり六分五厘超ということであってもなきにまさると思うのでございまして、またかような点を努力して、政府部内でなかなかむずかしい点をとにかくここまで持ってこられた政府関係者の努力は十分多といたしますが、さらに数歩前進していただきたいというのが私の考えでございます。
  60. 重盛壽治

    ○重盛委員 最後にお聞きしておきますが、この法案がかりに通ったと仮定すると、この法案の内容からいうと、水道の労働組合の諸君、それから交通の諸君、この法案に適応する公営企業に従事する諸君には、一般地方のこれに準ずるものと見合って給与等を支給していくのだということがいわれておるわけですね。そうだとすると、この事業は当分の間、いな私は永久にといってもいいと思うが、公共性を持つ事業であるとするならば、永久に黒字にはならぬのだ。極言すればそれほどの状態にある。したがって、利潤が出たら給与の改定をしようということにはなかなかならぬ。そうすると、御不満であるからといって、たとえばこの間の私鉄のようにストライキをぶって賃金の是正をせしめようということもできない。それは一方地方公務員という制度に拘束されておる。こういう事態になったときに、労働組合の立場は一体中井さん、どうなりますか。結論だけでけっこうです。  それから鈴木さん、そういう場合、どういう処置をしていくとお考えになっているか、ひとつお答えを願いたい。これで私の質問の最後にします。
  61. 中井高明

    ○中井参考人 いまお尋ねのように、当分公営企業というものはこの法案でやりましても好転しない、こういうふうにいわれるわけであります。したがいまして、従来から、経営成績がかりによかった時期でも決してプラスのほうは一向に、幾ら要求しても考慮しないというのが実情でありましたので、ここで経営成績がよい場合にはさらに一そうプラスをするんだという話がかりに出されましても、われわれの過去の運動の実績からいって、その信憑性はないということでございます。したがって、どうしても実力に訴えてということになりますと、いわゆる現行法のひずみに基づく弾圧ということで基本権を剥奪されておりますので、処分という形で相当労使関係は悪化をしてくるだろうというふうに考えております。また悪化をしても、われわれとしては断固突っ込まざるを得ない、こういうふうに考えております。  ただ最後に一点申し添えておきたいのは、御承知のようにそういういろいろな労使関係の問題があるからこそ、今日ILO条約との関係で目下公務員制度審議会で私どもの権利の問題について慎重に御審議を願っているところであるわけですから、少なくとも本委員会におきましても、この職員の労働条件あるいは権利に関する限りは、その結論が出るまで私は待っていただきたいし、待つのが至当ではなかろうか、こう思っておるわけです。
  62. 鈴木俊一

    ○鈴木参考人 公営企業がいまの赤字状態から一変して黒字に転換をするというような時期がまいりますれば、いまの弾力条項と申しますか、職員の皆さんが大いにやってくれたのですから、それに報いる意味をもって職員給与費につきましてもある程度これを考えていくべきものと思います。
  63. 島上善五郎

    ○島上委員 時間がないようですから、二点だけ鈴木さんに簡単に質問します。  委員長に希望しておきたいのですが、質問したいことが一ぱいあるので、私はぜひ参考人にもっと聞かしてもらうような次の機会をつくってほしい。これは理事会でよく相談してほしいということを希望しておきます。  そこで、私は鈴木副知事に二点だけ簡単に伺っておきますが、一つは先ほど荻田さんに質問して、またいまの重盛君の質問にも多少お答えになったようですけれども交通の一元化という問題です。これはもう東京市議会という時分から、高速度交通営団が発足当時から、衆議院でも希望条件をつけておりますし、審議会の決議とか要望とかいうことでも、いわば多年の懸案になっておる。それからさっき読み上げたように、すみやかにしなければならぬというのが答申の中にもあったですね。東京都の立場からこの問題に対してもう一度お考えをお聞かせ願いたい。  それから地方公営企業赤字が加速度的にふえておりますが、特に先ほどお述べになりましたところによりますと、昭和四十年度交通企業は二百三十億の赤字になった。この赤字の原因については、外部的事情によるものが非常に多い。荻田さんは外的条件ということばを言っておられましたが、外的条件でも外部的事情でもよろしいが、そういう赤字が非常に多い。ことばをかえて申しますれば、企業内努力ではどうにもならぬという部分が非常に多いということがいわれているわけです。それを項目的でよろしいから、外部的事情とか外部的条件といわれる赤字の原因になっているものはどういうこととどういうことであるのか。数字を並べて詳細に述べると時間がかかりますので、それは先ほど委員長に希望したように次の機会にさらにまた御意見を聞かしてもらいますが、きょうのところは時間がありませんから、項目的にいわゆる外部的事情による赤字の原因をお聞かせ願いたい。以上です。
  64. 鈴木俊一

    ○鈴木参考人 最初の交通一元化の点でございますが、これは先ほど来お答え申し上げましたように、あとから申し上げます外的条件の関係もあるわけでございますが、何ぶん山手線の内側、荒川放水路の内側、その両区域で囲まれているところは旧東京市の区域というのが主体でございますが、この区域の事業経営は東京市にまかせる、ことに、地上交通は東京市にまかせる、こういうのが陸上交通事業調整法による調整の際の考え方でございまして、地下は営団と、こういう形になってきたわけでございます。そして、その外回りのところは、それぞれ西武でございますとか京浜でございますとか京成でございますとかというぐあいに、私鉄の線路を中心にしまして、幾方面か方面を分けまして、それぞれの方面の事業活動範囲をきめたわけでございます。それは戦時中のことであったわけでございますが、その後交通事情が非常に変わってまいった。旧東京市の区域においては、やはり相互乗り入れにしなければ不便であるというようなことから、都営のバスが郊外のほうの通勤通学の者を運ぶために出ていくとともに、郊外のほうの私鉄バスも都心に乗り入れてくる。そうして、その間、乗降を一般的に認める、こういうことになりましたので、いわば都心の中の旧東京市の区域は、私鉄も事業経営主体として乗り込んできたわけでございます。ところが営団の地下鉄のほうは、地下鉄は営団が一本でやるということでございましたが、やはり東京都もこれに加わって、両方相提携をして二つの主体で事業をやったほうが早くいくだろうということで都営の一号線を始めたわけでございますが、そういうようなことで、今日この都心の旧東京市の区域で、事業主体が東京都のほかに営団それから私鉄バスの経営というようなものがあるわけでございまして、これらのものがいわば相競合し、相競っておるわけでございます。しかも、構造的には、今日通勤通学者というものが郊外から都心に入ってくる。郊外輸送というものを離れては交通事業はなかなか成り立たないということでございまして、その一番割りの悪い、都心のドーナツのいわば穴あきのところを受け持っておるのが東京都であって、しかも、そこへ郊外からのお客さんを私鉄のバスが運んでくるというようなことで、非常に経営状態がうまくいかない。しかし、大衆交通機関としてのバスなりあるいは都電というものは、一挙にこれをやめることはできない。ことに都電の場合一挙にやめることはできない、バスは維持していかなければならないというようなことで、これらをできるだけ合理化して、事業経営の主体がたくさんに分かれていることによって生ずるロスをなくすべきである。ことに、地上地下を一体に経営したほうがよろしい。それには、地下鉄建設というような多額の公共的な負担を必要とするものはとうてい私鉄にはやってもらえないから、これはやはり都がやるのが当然筋ではないか、世界各国の趨勢もそうであるというようなことが、知事の諮問機関におきましても運輸大臣の諮問機関におきましても答申をされておるわけでございまして、都としてはこのことを過去数年来あるいは十数年来いろいろ各方面にもお願いしてきたわけでございますが、まだ実現をしていない。これはぜひ実現をさしていただきたいというのが私どもの悲願でございます。  それから第二の御質問の点は、これは外的条件のお話でございますが、いまも若干触れましたように、やはり一つには、その大都市のドーナツ現象に伴って、要するに乗客の潮流が変わってきたということが外的条件の第一の問題だと思います。それから第二は、すべてそこから派生をしてくる問題でございますが、大都市の交通が人口の過密から非常に過密になってきておる。したがって、たとえば電車の速度にしても、十年前に時速十四キロぐらいのものが十二キロぐらいに落ちてしまう、あるいはバスが十六キロぐらいのものが十四キロぐらいに落ちてしまうというようなことで、要するに交通の渋滞という事態が人口の過密の現象の結果起こってきている。こういうことだと思うのであります。そのほかいろいろございますが、これらに対する対策としては、結局交通の渋滞を来たすような各種の流通機構というようなものをできるだけ大都市の外側に移して、都心への交通の誘発、ことに貨物輸送の誘発というものをなるべく郊外のほうに押えておきたい、こういうような考え方を持っておるわけでございます。そういったようなことがいわば大都市の交通情勢の構造的変化である、この構造的変化に対して手を打たなければ大都市の交通事業経営はうまくいかない、こういうように思うわけでございます。
  65. 門司亮

    ○門司委員 せっかく都から副知事がおいでになっておりますから、この機会に一つだけ。  ちょっと離れたことのようですが、東京都はいま水道あるいは交通についての外債をどのくらいお持ちになっているか、そしてその利息と償還年限がどうなっているか、これをひとつここでもしお話が願えるならば明らかにしておいていただきたいと思います。
  66. 鈴木俊一

    ○鈴木参考人 東京都は御承知のように昔仏貨公債を持っておりましたが、これは、戦後いろいろの交渉の経過を経まして、今日ではほとんど大部分買い入れ消却をいたしまして、手持ちといいますか未償還の分はほとんどございません。ただ、まだフランスの最高裁判所におきまして一部の債権者との間に争いがございますが、これも近く結論が出ると思っております。したがって、今日外債として残っておりますものは埋め立て事業の外債でございまして、これは第一回が千七百五十万ドル、昨年が二千二百五十万ドル、約四千万ドルの外債があるわけでございます。これの条件は、第一回と第二回で若干違います。第一回のほうが若干安かったと思いますが、昨年の分は、アメリカの金融情勢もございまして、発行者利回りは六分程度、ちょっと出るかと思いますが、その程度だと存じております。償還期限は十五年であったかと存じます。大体その程度でございます。
  67. 泊谷裕夫

    泊谷委員 副知事に一点だけ。  昭和三十七年のおたくさんの交通局で出した統計を見たのですが、そうしますと、一つは、いま副知事が指摘した路面交通における適正な営業単位を持たせてもらっていない。それから二つ目は、これは最も重要な点だと思うのですが、時速低下に伴う使用増加料は、バスで約七十六億、それから事業収入欠損が千九億、事業収入に対する使用増加分は七〇%、それから路面電車は四十八億の使用増加額、それに事業収入欠損が六十四億、この比七五%、こうなっています。これは時速低下に伴うところの余分にかかった金であって、大阪の交通局長が制度調査会で主張したように、かりにこれが従前の速度で車両が運行できるとすれば赤字にはならないと言い切っているんですね。でありますとすれば、東京都の場合もこれが最大の問題点で、いまの法案として出されてくる料金上げあるいは合理化によってこの赤字が解消されるというのでなくして、問題はここにあるというふうに私は思うのです。であれば、いまお話のありました、きのう閣議できまった郊外におけるトラックターミナルの問題も想定してでありましょうけれども、けさがたの説明を聞きますと、この路面交通について、道路交通緩和のために地下鉄建設に対する国庫補助という話なんですが、昭和三十二年は車両が十八万しか生産がなかった。昨年は百八十七万両。保有台数だって同じくらいですね。それが約一割東京へ入ってきているわけですから、国の政策で人がふえ、車がふえて、交通渋滞になって速度が出せない。さらに、キロ当たり六億もかかる地下鉄にということは、東京都の姿勢としては私はどうもおかしいと思う。これは国全体のために東京都がそれだけかぶっているものについて、この七五%もかぶり込んでいるものについて、国全体の政策なんだから国でそれは何らかの助成をするということを、ひざ元の東京都としては強く要請し、それを改善するほうがこの問題の解決策じゃないか。特に東交を中心にします交通関係の問題点はそこにあるのではないか。まあ一般論というお話でありましたから私は理解しますけれども地方公営企業経費については受益者負担をたてまえとし、なんという一般論的なもので東京都の場合は塗りつぶすのは誤りじゃないかという考えを持っておるのですけれども、いかがなものでしょう。  あわせて、路面電車、バスはいますぐ撤去することはできませんでしょう。また撤去して地下鉄を掘る金を東京都でかぶるというのは私は筋がおかしいと思う。この点について副知事はどう考えられるか。この電車、バス等の今後の措置の問題も含めてお答えをいただきたいと思います。
  68. 鈴木俊一

    ○鈴木参考人 最初の、負担区分の関連についてのお尋ねでございますが、私はこの料金の問題は、やはり先ほども申し上げましたように、お話のように地下鉄は非常に金がかかる、しかし、これはやはりいまの大都市の交通を考えれば、地下鉄というものは大都市交通の幹線を受け持つべきものである、こう思うわけでございまして、これは道路交通と地下交通というものが地土地下一体になって初めて大都市の交通網を形成するものと思うのでございます。したがって、これは料金はなるべく高くしないようにということも考え、またいかに料金上げようと思ってもそうは上げられないということで、やはり妥当投資額の限界というものが地下鉄についてはあると思うのです。まあこれはラフな、大ざっぱな話を申しますと、やはり四割とか五割というものは最小限度公共的な負担をしてもらわないと、企業の採算で地下鉄というものは成り立たないと思います。そういう国なりあるいは一般会計なりがそれぞれ持つべきものを除いた妥当投資額、要するに採算の合う投資額の限界の中におきましては、やはり料金ははっきりと原価基礎にして計算をしていくべきもの、まあこういうふうに思うのでございます。したがって、私は、その料金の算定の基礎になるものをできるだけひとつ明確に、御論議の上きめていただきたいし、またできれば政令等において明らかにしていただきたいと思うわけであります。  それから、その次の点は路面電車の将来の運命いかんというお話でございますが、これは路面電車と今日の自動車を中心といたします交通機関とは確かに性格が違うわけでございます。そこにいろいろの問題が起こってくるわけでございまして、大阪とか横浜のように、路面電車はこれを撤廃するという考え方が一つの方向であろう。これは公営企業制度調査会の答申にもある点でございまして、これは確かに一つの方向と思いますが、ただ東京の場合の問題として考えますと、地下鉄とダブっておるもの、これは要するに都電が地下に沈んだような形でございまして、そういうものがおおむね二五%くらいございます。しかしそれ以外の都電もまあ八割くらいは赤字でございます。そのうち、さらに一〇%くらいは赤字が相当に多い、そういうようなものについては、私どもはこれを逐次撤去していきたいというふうに考え、また将来の理想的な姿は撤去すべきものと思っておりますが、ただ都の場合の特殊の事情としては、いわゆる下町のほうの川向こうのほうは地下鉄建設も地盤の関係等でなかなか相当むずかしい地域でございます。そういうようなところはやはり路上の大衆交通機関というものがどうしても必要である。その場合にバスにするか、あるいはその他の近代的な交通機関というものが考えられるかということが一つの研究問題だと思います。神戸あたりで電車を地上に上げたらどうかというような提案もあるようでございますが、これは道路の幅員との関係あるいは光線の関係あるいは騒音の関係等いろいろ検討すべき点がありますから、一がいにそういうこともできないかと思いますが、まあとにかく今日の交通のスピード、速度から申しまして、異質の交通機関であるというのが都電の姿でございまして、これらの点を調整することは必要である、こういうふうに思っております。
  69. 泊谷裕夫

    泊谷委員 あなたのところの交通局の出しておる資料によると、最大の原因は速度低下による損失だ、それはバスも電車も七割から七割五分になっている。これは東京都だけでかぶる問題ではないでしょう。こんなのは日本一大きい東京都の知事さんも副知事さんも、政府に、おかしいじゃないかということで損害要求をするのが筋ではないですか。
  70. 鈴木俊一

    ○鈴木参考人 それは確かにいま一つの問題点ではございますけれども、そういうものの損害を政府に請求するといいましても、これはちょっとなかなか算定の基礎が困難でございましょうし、さような交通の過密、人口の過密による各種の国民生活に対する影響というものを考えれば、いろいろあろうと思いますが、そういうものを一々政府によこせという要求も私はいかがかと思うのであります。
  71. 細谷治嘉

    ○細谷委員 本会議が始まったので、要望だけしておきます。  副知事さんも仙台の市長さんも、アロケーション問題が出ておりましたから、そのアロケーションについての資料をこの委員会に後ほど提出願いたいと思います。
  72. 華山親義

    ○華山委員 私もいろいろな膨大な資料政府要求しようと思っておりますので、その際には東京都のほうにも御協力を願いたいと思いますので、ひとつよろしくお願いいたします。
  73. 岡崎英城

    岡崎委員長 参考人の方々には長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後二時九分散会