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1966-06-21 第51回国会 衆議院 大蔵委員会 第51号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年六月二十一日(火曜日)    午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 三池  信君    理事 金子 一平君 理事 原田  憲君    理事 坊  秀男君 理事 山中 貞則君    理事 吉田 重延君 理事 平林  剛君    理事 堀  昌雄君 理事 武藤 山治君       岩動 道行君    大泉 寛三君       奥野 誠亮君    押谷 富三君       木村 剛輔君    木村武千代君       小山 省二君    砂田 重民君       田澤 吉郎君    谷川 和穗君       地崎宇三郎君    西岡 武夫君       羽田武嗣郎君    福田 繁芳君       村山 達雄君    毛利 松平君       山本 勝市君    渡辺 栄一君       渡辺美智雄君    有馬 輝武君       小林  進君    佐藤觀次郎君       只松 祐治君    野口 忠夫君       平岡忠次郎君    藤田 高敏君       山田 耻目君    横山 利秋君       春日 一幸君    永末 英一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 椎名悦三郎君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君  出席政府委員         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    宮沢 鉄蔵君         外務政務次官  正示啓次郎君         外務事務官         (アジア局長) 小川平四郎君         外務事務官         (経済協力局         長)      西山  昭君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         外務事務官         (国際連合局長         事務代理)   滝川 正久君         大蔵政務次官  藤井 勝志君         大蔵事務官         (主計局次長) 岩尾  一君         大蔵事務官         (主税局長)  塩崎  潤君         大蔵事務官         (国際金融局長         事務代理)   村井 七郎君  委員外出席者         外務事務官         (条約局外務参         事官)     大和田 渉君         外務事務官         (国際連合局外         務参事官)   松井佐七郎君         専  門  員 抜井 光三君     ――――――――――――― 六月十七日  委員毛利松平君及び渡辺栄一辞任につき、そ  の補欠として野田卯一君及び船田中君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員野田卯一君及び船田中辞任につき、その  補欠として毛利松平君及び渡辺栄一君が議長の  指名委員に選任された。 同月二十一日  委員野口忠夫君、日野吉夫君及び山田耻目君辞  任につき、その補欠として中澤茂一君、西宮弘  君及び足鹿覺君が議長指名委員に選任され  た。 同日  委員足鹿覺君、中澤茂一君及び西宮弘辞任に  つき、その補欠として山田耻目君野口忠夫君  及び日野吉夫君が議長指名委員に選任され  た。     ――――――――――――― 六月十五日  土地対策のための税制改正に関する請願福田  篤泰君紹介)(第五三一八号)  国民金融公庫環境衛生部融資による公衆浴場業  者の借入金利子減免に関する請願山本幸雄君  紹介)(第五三一九号)  同(竹内黎一君紹介)(第五三六五号)  同(廣瀬正雄紹介)(第五三九一号)  同(八木徹雄紹介)(第五三九二号)  同(江崎真澄紹介)(第五四三九号)  公衆浴場業に対する所得税及び法人税減免に関  する請願山本幸雄紹介)(第五三二〇号)  同(廣瀬正雄紹介)(第五三九〇号)  同(江崎真澄紹介)(第五四四〇号)  同(田澤吉郎紹介)(第五四四一号)  入場税軽減に関する請願佐藤觀次郎紹介)  (第五三七三号)  同(江崎真澄紹介)(第五四六九号)  国民金融公庫法に基づく更生資金貸付限度額引  上げに関する請願木村剛輔君紹介)(第五三八  九号)  税制改正に関する請願外十九件(堀昌雄紹介)  (第五四一二号)  都市近郊農地相続税軽減に関する請願外二件  (賀屋興宣紹介)(第五四四二号) 同月二十日  国民金融公庫環境衛生部融資による公衆浴場業  者の借入金利子減免に関する請願辻寛一君紹  介)(第五五二八号)  同(中垣國男紹介)(第五五二九号)  同(中野四郎紹介)(第五五三〇号)  同(大野明紹介)(第五五七一号)  同(春日一幸紹介)(第五五九六号)  公衆浴場業に対する所得税及び法人税減免に関  する請願辻寛一紹介)(第五五三一号)  同(中垣國男紹介)(第五五三二号)  同(中野四郎紹介)(第五五三三号)  同(大野明紹介)(第五五七二号)  都市近郊農地相続税軽減に関する請願外二件  (鯨岡兵輔紹介)(第五五七三号)  同(福田篤泰紹介)(第五五九七号)  同(中村高一君紹介)(第五六六五号)  同(岡崎英城紹介)(第五六八三号)  入場税軽減に関する請願天野公義紹介)(第  五六三七号)  同(古川丈吉紹介)(第五六六六号)  土地対策のための税制改正に関する請願原田  憲君紹介)(第五六八四号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 六月十六日  土地対策のための税制改正に関する陳情書外一  件  (第五〇一号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律  案(内閣提出第四〇号)  アジア開発銀行への加盟に伴う措置に関する法  律案内閣提出第七六号)      ――――◇―――――
  2. 三池信

    三池委員長 これより会議を開きます。  外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案及びアジア開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律案の両案を一括して議題といたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。佐藤觀次郎
  3. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 大蔵大臣に最初に質問したいのは、インドネシア借款の問題であります。これはまた、佐藤総理ブオノ首相とのお話があったそうでありますが、従来インドネシア借款の問題では、御承知のように、焦げつき債権の問題があっていろいろな問題があったのでございますが、いままでのインドネシアのそういう借款の赤字というものはうまく解決されておるのかどうか、まず伺いたいと思います。
  4. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 インドネシアに対しましては、ただいまわが国としては債権が二億六、七千万ドルになりましょうか、その程度のものがあるのであります。その履行期が逐次やってくる、こういう関係になるわけであります。それで、インドネシアはわが日本ばかりじゃありません、ソビエトロシアその他の国々に対しまして相当多額債務を持っておるわけであります。その総額が二十七億ドルぐらいになります。日本が一割程度ソビエトロシアが非常に多いのでありまして、大体半分ぐらいになるわけであります。そういう状態でありますが、昨今非常な経済窮乏状態であり、しかも貿易が萎縮をいたし、これらの負債に対する弁済が期限どおりにはまいりかねるような状態であります。そういう経済情勢に対しまして、昨年九月に御承知のように政変が行なわれまして、インドネシア政府内容に非常な変化がきておるわけであります。この新しいインドネシア政府は、経済再建がまず第一である、こういうふうな考え方に立ちまして、そして、まず財政のバランスを得なければならぬ、こういうようなことから相当思い切った財政整理の計画を立てておるようであります。それから対外経済政策といたしましては、輸入の抑制という政策を掲げて、国際収支改善のための努力をする、こういう姿勢を示しておるわけであります。しかし、当面するそれらの債務履行期限がやってくる、それに対する支払いが困難である、そこでその支払いを延期しなければ経済再建もできない、こういう状況になりまして、日本を皮切りといたしまして、債権国使節団を派遣し、これに対する協力を求めておるというのが現在の段階でございます。その一環とし、またその先走りとしてブオノ第四副首相を長とする使節団わが国に参りまして、そしてわが国協力を求める、こういうことになりまして、わが国としてもできる限り協力しよう、こういうお約束をいたしておる次第でございます。
  5. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 今回、一声三千万ドルといわれておりますが、この根拠はどこにあるのかということと同時に、御承知のように、昨年の暮れから貿易が停止されて、日本から行くところの綿糸、自動車、製紙プラントなどで四千五百万ドルくらいの滞貨があるといわれております。こういう問題をどのように解決されるのか、その点のこともひとつ詳しく伺いたいと思います。
  6. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ブオノ使節団に対するわが国の回答は、協力をするが、わが日本協力だけではこの問題は解決しない、これは債権国を主体とする国際的ベースにおいてのみ初めて解決し得る問題である、したがいまして、債権国会議という性格の国際会議の開催を強く要請をいたしたわけであります。この債権国会議の場においてわが国の……。   〔発言する者あり〕
  7. 三池信

    三池委員長 御静粛にお願いします。
  8. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 わが国インドネシアに対する債権処置については最終的な態度をきめたい、もとより債権国各国と協調いたしましてインドネシア経済再建には協力する、こういう意思表示をいたしておるわけであります。しかし、インドネシア側といたしましては、その債権国会議を待つわけにいかぬ、債権国会議において日本協力はもとより期待するところではあるけれども、それまでのつなぎとして、債権国会議の決定が予定される九月以前においても何らかの協力を要請する、こういうことになりまして、わが国といたしましては、そのつなぎといたしまして、債権会国議における日本のシェアの前払いというような意味をもちまして三千万ドル、こういうふうにいたしたわけであります。
  9. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 私は、インドネシア経済的に悪いということについては大臣の言われるとおりだと思うのですが、しかし、日本の立場としては、インドネシア経済が悪いから日本が救わなければならぬという理屈にはならぬと思うのです。しかも今度の借款が、そろばんを無視した、要するに政治的な借款であるというようなことが言われておるのですが、こういう非難に対してはどういうお考えをお持ちでございましょうか。
  10. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 わが国は、インドネシアに対して二億六、七千万ドルもの債権を持っているわけであります。この債権を確保しなければならぬ、それにはインドネシア経済が安定をしなければならぬ、こういうふうに考えるわけであります。そういう考え方に立つときに、わが国だけではやっていけない、やはり国際的コンソーシアム方式というものを取り入れて初めてインドネシア経済は安定する、インドネシア政府も非常にそれを期待いたしており、かつ、主要な債権国におきましてもわが日本と同じような考え方をいたしておるようであります。そういうことからいうと、このコンソーシアム国際協調方式は可能である、私はこういうふうに見ております。そうすると、期限の問題は格別として、私は、インドネシアに対する債権は、長期にわたるかもしらぬけれどもこれは回収し得る、こういうふうに考えるわけであります。ところが、そのつなぎまでの間にインドネシア経済が崩壊するというようなことになりますれば、元も子もなくなる、こういうふうにも考えられるわけであります。まあ、日本政府といたしましては、コンソーシアムを早く結成いたしまして、そうして日本の対インドネシア債権を確保する、これは可能である、そのつなぎである、こういう考え方のもとに三千万ドルの借款を供与する、そのようなことに相なった次第であります。
  11. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 まあいろいろ大臣の説明でわかるのですが、しかし、今度輸銀の金を使うのでしょう。ところが、輸銀の金を使うには、御存じのように、対象が大体耐久消費財中心として輸銀の金を使うということになっておるのですが、こういう点についてはどのように解釈されておられますか。
  12. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 輸出入銀行回収確実なものでなければならぬ、これはお話のようにそのとおりであります。ただいま申し上げましたように、回収は時間の点もあります。ありますが、これは可能である、こういうたてまえ、確信を持って、今回の借款に応じた次第であります。
  13. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 輸銀法の第十八条には信用不安のあるものには融資ができないということになっておるのです。三千万ドルという金はそう簡単に貸すべきものじゃないと思うのですが、この点は総理に聞かなければならぬけれども、大臣としてはどのようにこれを解釈されますか、前のような、いわゆるこげつきも非常に多いインドネシアでありますからこの点についての不安があるわけですが、この点はどのように解釈されますか。
  14. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 さような問題に対しまして、わが国として考えて、インドネシア経済再建は可能であり、かつ、回収は確実である、こういうふうに見ました根拠は三つあるのです。  第一は、インドネシア自体が非常な熱意を持って経済再建努力を始めた。ただいま申し上げましたように、財政の均衡に向かって馬力をかけ出しておる、それからさらに国際収支改善について努力を傾けつつある、このインドネシア自体経済再建に対する非常に熱心な意欲、これが認められることが第一点であります。  それから第二点といたしましては、久しく国際機構、ことに国際金融機構から遠ざかっておりましたインドネシアがこれにまた復帰する動きであります。特にIMFへの復帰に対しましては非常に意欲的な態度を示して、IMFともその接触を始めておる、こういう点であります。  それからさらに国際ベースによる解決、つまり利害関係国がこの方式について積極的な姿勢を示している。  これだけの条件が整えばインドネシアの不安というものはなくなる、こういうふうに見ておるわけであります。
  15. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 この三千万ドルだけならいいけれども、先ほど大臣お話しになりました債権国会議でもっとワクをふやせというような意見が出ると予想されますが、そういう場合にはどういう処置をされますか。
  16. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 債権国会議におきましては、二十七億ドルの債務をいかに繰り延べ償還していくかという問題と、それから償還し得る経済体制に持っていくための新規借款、こういう二つの問題が中心になるだろうと思うのであります。そのいずれに対しましても日本協力をしなければならぬが、これは応分のものでなければならぬ、こういうふうに考えております。その債権国会議の場に臨み、各国動向等もにらみ合わせながら、日本の負うべき負担、犠牲というものをきめていかなければならぬ、いまその問題はここで予断をしがたい問題でございます。
  17. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 これは私の愛知県に関係のあるトヨタ自動車の問題ですが、これはいろいろ紛糾している問題があるのですが、大臣でなくて村井さんでもいいのですけれども、この問題はどういうふうに片づいたか、ひとつ伺いたい。
  18. 村井七郎

    村井政府委員 インドネシアに対しますトヨタ自動車輸出は、承認したものがございますが、一部未船積みのまま現在に至っております。これはいろいろな事情、ことに保険その他の事情からいまだ船積みができない状態でございますが、この問題はほかの一般の輸出船積みと同じ問題でございまして、現在輸出の本格的な再開がいまだ行なわれない状態におきましてはやむを得ない状態と思っております。
  19. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 もう一点、未解決の問題の中で、昨年の夏川島総裁スカルノ大統領の会談で問題になりました綿糸などの延べ払いの問題ですね、この問題は一体どういうようになっておるのか、こういう未解決の問題があると思うのですが、この点はどういうようになっておりますか、伺いたいと思います。
  20. 村井七郎

    村井政府委員 昨年八月川島総裁インドネシアを訪問された際にそういう話があったことは事実と承知いたしておりますが、その後、昨年末になりまして輸出保険免責条項の適用が起こりまして事実上インドネシア輸出が停止されまして現在に至っておりますのは御承知のとおりでございますが、いまや、新しい借款その他の問題が起っております現状におきましては、すでに状態が非常に異なっておりまして、また、インドネシア側といたしましてもこれを固執するという考えでもございませんので、今回の緊急借款と、いわゆる川島借款とは一応別個の問題として考えていいと思っております。
  21. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 もう一点村井さんにお伺いしますが、先ほど大臣にちょっとお伺いしたのですが、インドネシアとの貿易関係で未解決の問題が相当あるといわれておりまして、この問題の中で解決がされ得ないような問題がたくさんあると思いますが、その点はどういうようになっておりますか、伺いたいと思います。
  22. 村井七郎

    村井政府委員 これは私たちといたしましてもなるべく早く従来の案件の話を軌道に乗せたいという考えを持っておりますので、そのいう考えのもとに今回の話も進んだわけでございます。したがいまして、なるべく早くそういう状態に至るように、いまの日本借款あるいは債権国会議話等、早期にそういう状態が実現するように私たちも希望いたしております。
  23. 小林進

    小林委員 議事進行。  これは委員会なんでございましょうから、やはり各委員に、質問も明瞭に聞こえれば政府側答弁も明確に入るように、委員長委員会の構成から何から十分気をつけてお考えになっておると思うのです。単なる個人的な受け答えならば、何もこの委員会を開いてここでやる必要はない。大蔵省にでも行って、大臣室でコーヒー飲んだりウイスキー飲んでやられたらいい。ここで質疑応答しているということは、各委員、少なくともこの会場にいる者に、傍聴人もひっくるめて全部にその趣旨内容が徹底するための委員会なんですから、一体、委員長はいまの答弁質問がこの委員会全部に徹底するとお考えになりますか。私はここなんですよ。三分の一以上前のほうにいて、こんなにして一生懸命になってもなおかつ私に聞こえないのですから、そういうようなむだな会議の運営のしかたはやめてもらわなくちゃいけないと思うのです。そんなことに気のつかないような委員長では、いささか常識を逸しられていると考えなければならぬし、承知していながらやっていると言われれば、これはタヌキもはなはだしいと言わなければならない。  いずれにしても正常なる状態ではございませんので、早急にひとつ処置をして、われわれ委員はもちろん、傍聴人にも質疑応答が明確に聞こえるような緊急的措置をとっていただきたいと思います。さもなければ、その次の質問も思うように私はできない。
  24. 三池信

    三池委員長 小林君の発言委員長において了解いたしました。  委員の諸君は御静粛にお願いします。
  25. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 福田大蔵大臣にお尋ねするのですが、ただいま申し上げましたように、インドネシアのいままでの借款の問題、その他いろいろな焦げつき債権問題等たくさんあるのですが、しかし、そういうものに対して、いま経済的に非常にインドネシアが困っておるということの理由で、回収不可能のようなものでも、やはりこの際インドネシアが苦しいからお助けになるという政府の御意思があるかどうか、その辺のことをはっきりしていただきたい。
  26. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 回収可能と確信をいたしまして借款を供与するものであります。
  27. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 回収可能でない、不可能な場合はどういう処置をされるか。
  28. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 回収不可能の場合には借款は供与いたしませんです。
  29. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 戦後、いろいろインドネシアとの関係がありまして、そういうつもりで、福田さんの責任じゃないけれども、いままでやっておられた例があるわけだと思うのです。これは、御承知のように、インドネシアに限らず、やはり韓国あたりでも非常に未払いの債権があったと思うのですが、そういうものに対して、せっかく大臣から発言がありましたからお尋ねするのですが、そういう外国との借款の問題ですべて決済がうまくいっておりますかどうか。未解決のところがあるのじゃないかと思うのですが、その点はどういうふうになっておりますか。
  30. 村井七郎

    村井政府委員 各国と新しい話も進んでおることは事実でございますが、すでに過去の借款におきましてそれが償還不能におちいったという事例は、いままでのところまだございません。
  31. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 いままでいろいろ未解決の問題があればこそわれわれが質問するのであって、みなスムーズにいっている、全部が全部決済済みになっているのか、あるいはだいぶ延びているものがあるのじゃないかと思うのですが、その点はどうなっておりますか。
  32. 村井七郎

    村井政府委員 相手国状況によりまして、無制限に船積みをするということが、輸出業者にとりましてもあるいは銀行等関係者にとりましても、商業取引上非常に好ましくないというような場合のときは、商業上の考慮に基づきましてその船積みを一部控えるという事態はございます。そういう意味のもの以外は、いまのところ普通の商業上の慣行によりまして進行しておるという現状と存じます。
  33. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 先ほど大臣から、そういう不安なものはないという話でございますが、しかし私は、総理なんというものは政治家ですから、相手国を助けるために金を貸したり、またそういう方法をとるということは、あながちこれは悪いことだとは思っておりません。しかし、初めから予定もなしに、向こうが困っておるからということで輸銀の金を使わせるということについては、きょう新聞で輸銀法の問題についてもいろいろ議論はされておるようであります。そういう点について、政治的に貸す問題と経済的に貸す問題という区別があるべきだと思うのですが、その点はどのように使い分けをされておりますか、伺いたい。
  34. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 輸銀はどこまでも商業ベースの問題で、回収可能な場合に借款を供与する、延べ払い融資をやる、こういうことになるわけであります。そういうような場合でない場合には、グラントと申しますか、無償供与というようなことをいたす場合もあります。また、輸銀ベースには乗りにくい、しかし日本としてはいろいろな角度から考えて貸さなければならぬというようなプロジェクトがありました場合におきまして基金を利用する、こういうケースもあるわけでございます。輸銀はどこまでも回収可能な場合にのみこれを発動する、こういうたてまえであります。
  35. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 もう少しあとでまた聞きたいと思うのですが、その問題についてはあとにいたしまして、先日、わが平岡委員質問に対しまして、今度は総裁に必ず渡辺武さんが当選するという答弁をされておりますが、どういう根拠でこれが確実だということが言われますか、その点を伺いたいと思います。
  36. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 これはずうっといきさつがあるわけでありまして、アジア国際金融人というものを見回すときに、わが渡辺武君というものがまっ先に浮かんでくるような状態でございます。そういうようなことで、開銀の本店を東京に置けば、総裁はどうも渡辺さんしか候補者がないのだから、本店総裁日本というようなことになる、こういうような観測が一般的であり、したがって、そういうダブった状態を避けるために本店はマニラ、こういう空気が支配的だったことはすでに申し上げたとおりであります。  その後の推移を見てみますると、やはり渡辺君が総裁適格者であるという関係者の支配的な空気でございますると同時に、これに対立して立候補する動きがない。そこで、わが日本といたしましては、渡辺武君の意向も確かめた上、立候補を声明いたしまして今日に及んでおるわけでありますが、その声明をいたした後におきましても変わった事情がないのです。これはもう大勢として渡辺君が推されることになるであろう、こういうふうに見通しをいたしておるわけであります。
  37. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 これは福田さんにお尋ねするのは酷かもしれませんけれども、閣僚の一人として、この前、実はマニラにとられる前に、必ず東京にくるという確信を持ってやっておられたようでございますが、この点は一体どういうようになったのですか。私はそれと同じような心配を持っているのですが、その点はどうですか。
  38. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 本店の場合には必ずくるのだというふうには申し上げなかったかと思います。東京が一番よろしい、東京誘致に最善の努力をする、また、その結果はそういうふうになるであろうと期待しておる、こうふうに申し上げておったかと思うのであります。今回はそれとはだいぶ事情が違うように思います。私どもは、渡辺総裁が実現する、こういうことにつきまして一点の疑いも持っておらぬ、こういうふうに申し上げたいのであります。
  39. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 これは前も予想どおりうまくいっておりますれば私ども信用しますけれども、これはなかなか簡単にいかない。それは、日本のほうで二億ドル出しているからというような思い上がりもあったと思うし、同時に、マニラの地元では非常に猛烈な運動があって、いろいろ裏のうわさも聞いておりますけれども、そういうようなことがあってああいう結果になったと思うのであります。しかし、今度は、いまそうであるからといって、必ずしも渡辺武さんが総裁になるという確信の点については、しつこく言うようですけれども、信用できないような点がある。それは日本の東南アジアにおけるそういう信頼性が薄いという面も一面はあるのじゃないかというような反省は持たなければならぬと思うのですが、その点は一体どうお考えになっておりますか。
  40. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 アジアに臨む態度といたしましては、私は、事あるごとに日本として反省しながらいくべき問題だと思います。もちろん、アジア開発銀行本店が東京に来なかったことにつきましても、その事情につきましては深く反省しなければならぬというふうに考えております。また、そういう反省の上にも立って今度の総裁問題にも臨まなければならぬ、これはもちろんのことでありまして、そういう態度で臨んでおる次第でございます。
  41. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 それからもう一つ、これは私ども東南アジアに行っていろいろ経験したのですが、はたしてアジア開発銀行日本経済的な問題について将来性があるかどうかということに疑問があると思うのですが、こういう点についての根拠、一体これほど力を入れておやりになっておっても、実際は、一面においてはアメリカがバックにおって、そして日本経済のことより、そういう日本以外のことについて努力させる。われわれはそう疑いたくないけれども、ちょうど日韓会談なんかも、ある程度までは日本を犠牲にして、表で日本にいろいろなことをやらして、実際は裏でアメリカがあやつる、こういう疑いがいままであるのでわれわれは日韓会談に反対したのでありますが、そういう点についての懸念はないのか。アメリカが二億ドルの金を出すということも、これはアメリカにしてみればわずかなことでありますけれども、そういう点の疑惑を持たせる原因になると思うのですが、この点はどういうようにお考えになっていますか。
  42. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 アジア開銀はもともとエカフェ、つまり国連の機構からその開設の議が始まっておるわけであります。国連はアメリカのかいらい機構だと言ってしまえばそれまででございますが、私はそうは考えておりません。今日東西の主要国がこれに参加をしておる、こういう世界的な機構でありまして、その世界的機構の中ではからずもアジア開発という議が持ち上がってきた。アジアという国は国際的な援助が今日まで非常に少なかった地域でございます。そういうことから考えアジア開発ということが今日取り上げられておる。これは世界の当然の帰趨であるというふうに考えるわけであります。わが日本といたしましては国連の一員でもあり、また、わが日本自体のナショナルインタレストというようなことを考えましても、わが日本がわが日本だけで繁栄していく、それにはおのずから限界があると私は思う。やはり近隣諸国、アジアの諸国とともに繁栄するというかたい考え方を持っていくべきだ、私はこういうふうに思います。そういうようなことで、何もアメリカの意向に支配されておるわけじゃない。これは日本独自の国際連合の一員としての立場から先進国としてわりあいに多い出資をいたすという決意をいたしたわけであります。
  43. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 これは大臣考え方と私は多少違うのです。マニラに開銀の本店が置かれるということで、いま福田さんが何と言われても、初めは東京に当然来るものだと思われたと思うのですが、しかし、総裁渡辺さんだからといって必ずしも日本に有利であるとは限らない。と同時に、日本経済の立場から二億ドルを出してやっても、いまの国際関係からいえば、必ずしも日本経済に有利にならぬように私は考えておるわけですが、この点について、大臣はどのような確信があって、こういうことはこうやればいいというようにお考えになりますか、お伺いしたいと思います。
  44. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私は、もう今日の科学技術、特に交通のような状態考えますと、だんだんと世界というものが接近をしていく、ことに経済の面においてしかりと思います。私は、わが日本だけがひとりで繁栄しようという道を求めましても不可能であると思う。やはり世界とともに日本は繁栄しなければならぬという考え方をかたくとるべきである、世界とともにと申しましても、しかし世界は広うございますから、まず近隣からアジアの諸国に繁栄と平和をもたらす、それによってわが日本もともに繁栄していくという考え方、この考え方はゆるがすことのできない日本の基本的立場でなければならぬ、私はこういうふうに考えます。そういうことから申しまして、アジア開発銀行日本が参加する、しかも、アジアのただ一つの先進国として先進国にふさわしい参加のしかたをする、これはきわめて自然なことじゃないか、かように私は考えております。
  45. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 ことばを返すわけじゃないけれども、一番近い国で、一番経済的に日本関係のあるのは中共でございます。その中共はほかっておいて、そしてほかのことだけおやりになるということに私は疑問を持つので、その点は一体どういうようにお考えですか。一番近い、一番経済的に多かった中共との貿易をやらないで——これはいろいろ裏貿易はありますけれども、実際にはいま佐藤内閣は中共貿易のことについてあまり熱心でないということだけは事実でありますが、そういう点の矛盾はどういうようにお考えになっておられますか。
  46. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 中共は国連に入っていないのです。中共が国連に入る、これは非常に問題の多い、むずかしい問題ですが、つまり中華民国という問題をかかえておる、こういうことからむずかしい問題でありますが、これが解決いたしますれば、アジア開銀に中共も入ってくるだろう、私はこういうふうに思います。しかし、今日中共は国連に参加していない、そういう状態において国連の一つの外郭機構としてでき上がるアジア開銀に中共が参加しないというのもやむを得ざるところである、かように考えております。
  47. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 中共がはいれないのはアメリカや日本が入れないからですよ。これは間違ってもらっては困る。アメリカや日本が入れないでおいて、入っていないからという現実でそれを押えるのは無理じゃないかと思うのです。たとえばイギリスでもフランスでも国連に入っていなくてもやはり貿易や何かをやっておる。日本の名古屋から西の九州とか四国とかあるいは中国というようなところは一番貿易関係が親しくて、しかも長年の伝統があるわけですが、そういうところはたいへんなことだと思うのです。こういう点で、いま大臣が言われるように、国連に入れないでおいて入っていないということは言えない。日本はアメリカと同じような形式をとっている。この間も、佐藤総理が言わぬでもいいのに、今度また前と同じような方式をとって中共を入れないというようなことを言って、そして向こうが入っていないということを言うのは少し無理だと思いますが、その点はどうですか。
  48. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 国連に中共がなぜ入らないのか。これは中華民国の問題が非常に大きな焦点となっておる、こういうふうに私は思うのです。同じ問題が国連の外郭機構であるアジア開発銀行にもあるわけです。でありますから、私は、国連に中共が入るという問題が解決すれば、アジア開銀に入るという問題も自然に解決する、そういうふうに考えております。
  49. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 これは福田さんにお尋ねしても平行線になると思うのですが、台湾というのは、アメリカがカンフル注射をやって生きている国です。これはわずか四百万くらいの人口であって、あそこに逃げた政権、残存政権を御承知のようにアメリカがああいうようにやっておる。しかし、日本はアメリカとは立場が違うと思うのです。つまり、アメリカは、中共との関係で、自分が蒋介石をかかえておるからある程度アメリカはアメリカとしての方向があると思いますが、日本の国は、いまは中国本土の毛沢東の国に対してアメリカとは違うと思うのです。  そこで、私たちがいま考えておるところは、やはりイギリスやあるいはフランスまでも、御承知のように承認をしてどんどん貿易をやっておる。あなたの党の松村さん自身が言っておられるように、現実的にある程度までどんどん貿易をやっておる。そうでないと、次第に日本の地位が経済的にも不安定になるということは、これは福田さんのような頭のいい人は考えないわけがないと思うのです。しかるに、そういうことがわかっておってアジア銀行のほうでやっているということは、アメリカの片棒をかつぐと言われても——私はすべてアメリカの片棒をかつぐとは申しませんけれども、しかし、ある程度これはわれわれとしては納得できないような問題だと思うのですが、この点はいかがでしょうか。
  50. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 アジア開発銀行はアメリカからの発想じゃないのです。これは繰り返して申し上げますが、国際連合の発想なんです。その国際連合の機構であるエカフェを舞台としてこの銀行ができるわけであります。決してアメリカがスポンサーであるというような性格のものじゃありません。ただ、アメリカも域外国として金を出す、これは持てる国アメリカですから、これから金を出してもらうことは、私は非常にけっこうなことだと思うのです。アメリカからでも金を引き出さぬと、アジアアジアといったって、から念仏みたいなもんで、なかなか復興はいたしがたいんじゃないかと思うのです。アジアの自主性を害しないで、そうしてアメリカから金がやってくる、私は、これは何もそうゆがんだ目で見る必要はないんじゃないか、そういうふうに考えております。
  51. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 これも大臣と意見が違うんですけれども、アメリカだって金を捨てるわけはないと思うのです。東南アジアに出すのには出す理由があって、中共との対抗上の問題があると思うのですよ。こういう点は、福田さんもアメリカ人じゃないですから、やはりアメリカと中共がどうあろうとも、日本の立場を考えて積極的にやるべきであって、私はアジア開発銀行というものが悪いことだと考えるのは、そういうアメリカが——発想は国際連合だと言われますけれども、アメリカが実際国際連合の実権を握っておって、自分の好きなやつは入れるけれども、いやなやつは入れないのです。そういう点を、日本とアメリカは同じじゃありませんから考えてやるべきじゃないかということを考えておるわけです。この点は、福田さんなんか将来のある大蔵大臣ですから、佐藤さんのようにがんこな——佐藤さんは、御承知のように吉田さんと懇意で、吉田書簡というものを持ち出されてああいうふうに変わっていったんだけれども、佐藤さんが総理大臣になる前には、久野さんと中共貿易で、わざわざ晴海埠頭までおいでになったんですよ。ところが、そういうことをやりながら、政権をとってしまうと、吉田さんに叱られて、そうして中共との貿易はいかぬというようなことを言っておるわけです。あなたのほうも、御承知のように松村さんのような、中国と日本は共同しなければならぬというような意見の人は、やはり正しいことをやるわけです。こういう点については、私がアジア開発銀行に反対する理由はそういう片手落ちだというところにあるのであって、これが公平な立場でアメリカが金を捨ててしまうというようなやり方でない。アメリカはアメリカで、南ベトナムを通じ、あるいはタイを通じ、マレーシアを通じ、あらゆる東南アジアの国々を通じて中共との対立的な立場をどんどんつくっておるのですよ。これは、アメリカはアメリカの立場でやるのはいいけれども、日本はアメリカの言ったとおり聞く必要はないと思うのです。その点は一体どういうふうに考えておられるか、お伺いしたいと思います。
  52. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 日本がアメリカの言うことを聞かなければならぬという理由はありません。日本日本の国益を中心として、しかもそれが世界の平和と繁栄に合致するような方向で行動すべきである、こういうふうに考えます。私は、このアジア開銀がアメリカの何か息がかりでできておるというような見方をすることは少し片寄っておるんじゃないかと思う。これはあくまでも国際連合を基盤としてできておるものであります。国際連合がアメリカの機関だというふうな見方をするならば格別でありますが、これはいま世界のただ一つの平和維持機構である、こういうふうに考えるにおきましては、いささかの疑問も持つ余地はないんだ、こういうふうに考えております。
  53. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 これは大臣と議論をしても平行線になりますが、福田さんといえども、佐藤政府の閣僚でございますから、腹の中で思っておっても、なかなか言えない立場があると思います。  そこで、もう一つお伺いするんですが、残念ながら、日本本店をマニラにとられました。しかし、開発銀行の総裁は必ずとれるという確信のようでありますから、いまさらどうかと思うのですが、どちらがよかったですか。本店はマニラにとられてもいいけれども、総裁さえとれればいいというのか、この点はおそらく政府でも方針はきまっておると思うのですが、どうですか。
  54. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 アジア開発銀行本店をつくるのに、公平に考えて——日本はかりの立場じゃありません、公平に考えてどこがいいのか、こういう考え方をいたしたわけなんです。つまり、アジアのフィナンシャルセンターと申しますか、金融の最も中枢的な場所はどこになるかというと、これは東京じゃないか、こういう考え方に立って東京誘致ということを主張したわけであります。かたがた、そういう考え方からすれば、距離の点、しかも低俗な考え方でございますが、日本の人もずいぶん参加する、そういう参加する場合に都合がいいんじゃないかというような考え方もありますが、ともかく、そういうこまかい点は別として、アジアの金融中心地はどこであるかという際には東京が一番適格じゃないか、こういうことで東京誘致を主張して、またそれができるであろうという考えも持ったわけであります。しかし、それは実際はできなかった。そこで今度は、渡辺さんという人が総裁候補として有力視されておる。そういうことになるとどうかというと、本店のことはやむを得ないことでございましたが、しかし、アジア国際金融人として広く、最も信頼をされておるという渡辺さんが総裁の地位につく、こういうようなことになりますれば、私はアジアの開発のためにこの銀行が大いに貢献する上に力があるだろう、これをまた大いに期待をいたしておるわけであります。
  55. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 渡辺さんはアメリカにも長くおられたし、それから大蔵省にも長くおられた人でありますから、そういう点の手腕力量については、私も直接知っておりますからだいじょうぶだと思うのですが、ただ、御承知のように、今度の開発銀行の大口の出資者は日本とアメリカなんですね。そういうような二億ドルずつ出しておるといえば、日本発言権があると同じように、アメリカはもっと発言権があると思うのです。そうなれば、結局アメリカのかいらい銀行ということになりかねないと思うのですが、その点はどのように解釈されておりますか、お伺いしたい。
  56. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 アメリカは出資者としての発言権は持っております。しかし、これは域外国なんです。域内国じゃないのであります。域内国であり、また最大の出資者であるわが日本、これは私は非常に大きな発言権を持ち得る立場にある、しかも、日本は借りる国じゃないのでありますから、大きな発言権と同時に公平な発言のできる立場にある、そういうふうに考えております。
  57. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 それは日本に有利に大臣が解釈されておるわけですが、しかし、各加盟国の投票権数が表決の問題で定められておると思うのです。それから、融資を行なう場合には、この投票権数に従って決定されるものであるかどうか、その点の内容はどうなっておるか、大臣でなくても、村井さんでもいいですけれども、伺いたい。
  58. 村井七郎

    村井政府委員 銀行の、いわばアジア的な性格と申しますか、そういった面はこの協定を通じまして諸所において確保されておると考えております。たとえば、出資割合が域内加盟国が六割に達しないといけないということもその一つかと思いますし、理事も、域内国が七名に対しまして域外は三名だというふうになっておりますし、また発効要件といたしましても、寄託国の十五カ国のうち、域内国は十カ国以上でなければならないというふうになっておりますし、先ほど来問題になっております総裁の人選にあたりましても、アジアの域内加盟国民の中から選ばれなければならないということになっております。したがいまして、いろいろな融資等にあたりましても、こういった面は実際問題といたしまして相当アジア的な性格をもって行なわれる、銀行の運営もそういった線に従って行なわれるということは十分予想されるかと思います。
  59. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 これは大臣でもいいのですが、総裁日本がとると、副総裁はどこで、実際の事務をやる人はどういうふうになるかというあらかじめの構想がおありでございますか。
  60. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 日本から総裁ということになれば、副総裁はおそらく他の国が、ということになると思います。しかし、総裁がわが日本である、つまり、この銀行運営について全責任を負うという以上、総裁をして誤りなからしめるという補佐機構は私は必要だというふうに考えております。そういうことを考えながら、総裁渡辺氏がきまるということになりますれば、十分の人的配置もしていかなければいかぬ、こういうふうに考え、その準備もしておりますが、まだ本式にきまったわけでもない今日の段階においてどうこうするのだというようなことはとうてい申し上げられることではないのであります。その点は御容赦を願いたいと存じます。
  61. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 村井さんにお尋ねするのですが、この銀行に総務会と理事会とが機構としてあるようですが、両者の権限、それから構成の問題、そういうような問題についておわかりでしたら、ひとつここで発表していただきたいと思います。
  62. 村井七郎

    村井政府委員 総務会は加盟国の総務の集会でございますので、この総務は、日本で申しますれば大蔵大臣とか、そういったことになると思いますが、理事会のほうは、先ほど申しましたように、十人で構成いたしまして、その総務会と全然別個であることは言うまでもございませんが、選出は総務がそれぞれ選挙いたします。それで権限、規則それぞれ協定においては定まっております。たとえば、総務会におきましては、定足数は、総務の過半数で、加盟国の総投票権数の三分の二以上を代表するものでなければならない、それから理事会は、そういう総務で選出された理事でもって構成され、理事は、経済及び金融に関する問題について有能な者でなければならないというようなことがございますが、要は、理事会は結局アジア開銀の運営にあたりましてその運営をきめるということでございますが、総務会はもう一つ大きい大方針と申しますか、それをきめていく、その大方針の中で理事会が日々の運営を決定していく、大ざっぱにいってそういう権限の相違かと思います。
  63. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 それからもう一点、渡辺武さんが総裁になった場合の、日本の機構の中に入っていける可能性、それから、いま福田さんが言われましたように、アジア加盟国の中では日本の国が一番大きいのですし、しかも二億ドルの出資をしているということになれば、当然ある点まで機構に応じて人的な配置をしなければならぬと思うが、そういう構想がおありでしたら、これも重ねてお伺いしたい。
  64. 村井七郎

    村井政府委員 いろいろな機構その他はこれからの問題でございまして、現に準備委員会が数回開かれておりまして、そこで原案をきめて、それで総会にはかって決定する、こういうことに今後の問題としてなっていく段取りでございまして、まだ、詳細にわたってすでにきまっているという問題ではございません。
  65. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 この前の平岡さんの質問のように、絶対に渡辺さんは間違いないということになっている以上は、総裁がきまっておれば、当然こちらもある程度その構想があってしかるべきだと思うのでありますが、そんなことはどうでもいいという考え方なのか、あるいは、やってみなければまだわからぬという不安の面があるのか、これをひとつ大臣から伺いたいと思います。
  66. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 渡辺総裁がもしきまった以上、この銀行については日本としても非常に責任を持つわけであります。したがいまして、これをどういう下部機構にするかということは銀行の運営にも重大な関係がありますので、私どもは深甚の関心を払っているわけであります。ただ、これは関係国がある問題でありますので、いまここでこういうふうにしたい構想であるというようなことを申し上げる段階まできておらぬ、それを御容赦願いたい、かように申し上げているわけであります。
  67. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 それから、もう一つこれと関連してお伺いしたいのは、御承知のように、アメリカのジョンソン大統領が東南アジアに十億ドルの経済開発資金を援助するというようなことを発表しております。この十億ドルという中に開銀の出資の二億ドルが入っているのかどうか。あるいはそのほかについてどういうような構想があるのか。これは向こうのほうの考えでございますから不明な点があるかもしれませんけれども、その点をひとつ伺いたいと思います。
  68. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いわゆるジョンソン構想は、これは性格がアジア開発銀行とはまるきり違うのです。つまり、アジア開発銀行アジアの全域を対象にいたしております。ところが、ジョンソン構想というのは、これは東南アジアの安定のために協力するということを目的としておるようであります。そういうことで、全然性格が違うのでございまして、したがいまして、アジア開発銀行に対するアメリカの二億ドルの出資、これはジョンソン構想の十億ドルの中には入っておりません。ジョンソン構想は、十億ドルの資金をもって、メコンの開発でありますとか、あるいはその他の東南アジア諸国の開発に貢献したい、こういう考え方であり、また、場合によっては開発銀行に対して一部の基金を信託してもよろしいというようなことを言われておったのです。これはちょうど昨年のいまごろ盛んに唱道されておったわけでありまするが、しかし、その後一向具体化の話というものがないわけでありまして、今日どうなっておりますか——まあ、アメリカがどういう考えであるか、こういうようなことははかり知れないものがあるように私は感じております。
  69. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 御承知のように、フランスのドゴール大統領がきのうからモスクワへ行っております。あの人は陸軍中将でございますが、民族主義者と言われておりましたドゴールでも中共を認め、それからフランスの国民のためにソ連のほうへ行って新しい関係をつくろうとしておるわけであります。ところが、日本の国は御承知のように中共の近隣国であり、あなたのほうの一部にはAA会議に反対をするような者もおりますが、しかし党内には、社会党と同じように中共との貿易をやれという声が非常に高いわけでございます。この点については、大蔵大臣経済的な考えを持つ人でありますから、十分に検討を加えていただきたいと同時に、私たちアジア開発銀行に非常に疑惑を持ちますのは、御承知のように、いまアメリカが三十五万にも及ぶような大軍隊を南ベトナムに派遣しておるわけであります。開発銀行は直接経済的なことだけやるということではありますけれども、何かアメリカが東南アジアに野心があるのじゃないかというような疑惑が日本の国民にもあり、またアジアの中にもそういう考え方があると思うのです。  この際ひとつはっきりしていただきたいのは、この開発銀行はそういうアメリカの東南アジア作戦と関連のないものであるということをはっきりとわれわれが理解できるような御説明を願わないと、せっかく開発銀行がマニラにできましてもなかなか国民は納得しないと思うのです。アメリカは現在ベトナムで戦争をやっている。これは私は、キューバだとかあるいはドミニカというようなアメリカの圏内に近いところならやむを得ないとしても、非常に遠い東南アジアのベトナムに来て、しかも、かつて自分の植民地であったところのフィリピンのマニラに銀行の中心を置いたというところにいろいろ国民の疑惑があると思うのです。こういう点について、そういうことのないような自信が一体持てるのかどうか、大臣の御決心を伺いたいと思います。
  70. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 アジア開銀は、そもそもその発足は国連にあるわけであります。これはアメリカの発意に基づくものではないのであります。そういうことでありますが、特にこの銀行の運営につきましては注意してまいろう、つまり、これが政治的な動きとならぬように注意しようというので、協定第三十六条という一項を設けまして、そのことを明白にしておるわけであります。この点の御疑念はなきようにお願いしたいと思います。
  71. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 実はジョンソン大統領は、アジア開発銀行のことについてソ連に参加をしてほしいという希望を述べたと言われております。だから、そういうことを考えれば、私は、もっと日本がこういう点について関心を持ってやるべきであるのにかかわらず何かもたもたしておるような感じがいたすわけでございます。こういう点について、もっとアジアの開発をやるということならば、広く、アメリカが参加しても、ソ連が参加してもいいと思うのです。そういう点について、やはりもっと大きな構想を抱いて後進国の多い東南アジアの開発をやるべきじゃないかと思うのですが、その点は、福田さんはよそにとらわれずに、あなたの独自の意見としてどのような考えを持っておられるのか、ひとつ構想を伺いたいと思います。
  72. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私は、アジア開発銀行が、アジアのおくれた経済の復興を促進させるという目的を持って設置され、しかもそれが政治的な動きとなってはならぬというようにみずからを縛っておる、この姿はどこまでも推し進めていくべきものじゃないか。わが日本としても、アジア開発銀行経済中心とした復興の体制にあり、これが政治的な動きをしてはならぬという、この一点につきましてはかたく守っていかなければならぬ、かように考えております。
  73. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 アジア開発銀行融資の対象になる国は、自由圏、共産圏あるいは中立圏というようにいろいろ区別されるものかどうか、これも伺いたいと思います。
  74. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 これは、政治的な立場に立っての区別はないと思います。アジア開銀に参加している諸国はひとしく処遇を受くべきものである、かように考えております。
  75. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 それから、最近の傾向として、きのうイシコフ漁業相も来ておりますが、日本とソ連との関係が非常に好転したということは事実であります。こういうような場合に、アジア開発銀行にソ連が参加するという問題について、椎名外務大臣は、入ってもいいようなことを外務委員会で言われたようでありますが、そういう点について大臣はどのようにお考えになりますか、伺いたいと思います。
  76. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ソビエト・ロシヤは、私が聞くところによると、アジア開発銀行には非常な関心を示しておる、また、これに対して協力的であるという話でございます。ただ、出資だけはごめんこうむりたい、しかし永久にごめんこうむりたいというようなことじゃないようでございますが、さしあたり創立当時の出資国としての立場は辞退したい、こういうことでございます。しかし、いずれにしてもアジアの開発には好意的に協力するという態勢ではあるのであります。
  77. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 日本が今度総裁をとるということになれば、開発銀行の上に相当日本のウエートがあると思うのです。そういう場合に、日本はソ連に対しても、いまの福田さんが言われるような援助なり参加なり——出資しないということになりましても参加をするような道をつけられていくのかどうか、この点について日ソの問題が今後出てきますので、ひとつ伺っておきたいと思います。
  78. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ソビエト・ロシヤがそういう態度でございますので、永久にソビエト・ロシヤがこの銀行にはいられないかというと、私は必ずしもそうは思っておりません。私ども日本としても、ソビエト・ロシヤがこれに参加するということにつきましては積極的なかまえで臨むべきものである、かように考えております。
  79. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 あとインドネシアその他の問題についていろいろ大臣の意見を伺いたい点もありますが、きょうは同僚委員が大勢質問があるのでありまして、私一人だけでもう一時間半やりましたから、これで終わりますが、ただ問題は、この開発銀行などの問題についても、どうも割り切れない。日本独自の考え方が非常に少ないように考える。これは日本がアメリカに占領されたという原因もありますが、ややもするとアメリカに比重がかかり過ぎるというような非難を受けたり、また、現実的にそういうようなことが多いと思う。私はかつて主計大尉でフィリピンを占領していたことがあります。それだから、アメリカに対してはいま非常に好意を持つ人があるそうでありますけれども、どうも何か割り切れないものを持っておるわけです。私たち日本人でありますから、やはりアメリカだけに片寄るような経済や政治をやるということに対して、日本の将来が案ぜられるように思うと同時に、私たちは、中共でもソ連でもありません。けれども、少なくともこういうような経済的な進出については、やはり国の内外を問わず、共産圏であろうが、あるいは民族主義の国であろうが、経済的な発展ということになればそういうことはかまっておれないという現実があると思うのです。特に日本のような人口の多い国では、当然経済的な問題については独自の立場でやっていかなければ、私はアメリカにしてやられてしまうと思うのです。  こういう点について、国際的な開発銀行の参加者として、しかも二億ドルもの出資者として十分なあれが必要だと思うのですが、その点の決意をお伺いして、私は質問を終わりたいと思います。
  80. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 わが日本は、いま国際社会において何ものにも制肘をされるという立場ではないと思います。アジア開発銀行についても同様である。しかも、アジア開発銀行は、御承知のようにこれは国連という機構の場において発想されたものであり、国連の熱心な一員としてのわが日本がこれに賛成していかなければならぬ、また同時に、わが日本アジアの一員でありますから、アジアの一員としての、しかもアジアのすぐれた工業国としての立場を踏んまえて独自の立場で行動すべきものである、これも言うをまたないところであります。さような方針で今後のこの銀行の創立、運営に参加していきたい、かように確信を持っておるわけであります。
  81. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 ちょっと一つ気にかかることがあるのですが、いつも福田さんは国連、国連と言われますが、国連はアメリカのかいらいのようなものです。これは私は現地へ行きましてそれを感ずる、同時にどうも国連を隠れみのにされると思うのです。これらはひとつ十分に検討して、国連については何も全部反対しませんけれども、いまの国連はアメリカ一国が指導権を持ってやっておるのです。その飛ばっちりがキューバやドミニカへ来て、また南ベトナムへ来ておると思うのです。アメリカの世界政策の中にこういう非常にみにくい点があって、最後になると国連をその隠れみのにして、国連の場で、国連の場でということでごまかされると思うのですが、これはあなたに言っても、あなたと主張が違うわけですが、ひとつ独立国の大蔵大臣として、あまり国連を隠れみのに使わないようにお願いいたします。
  82. 三池信

    三池委員長 小林進君。
  83. 小林進

    小林委員 私は、アジア開発銀行の問題については前から質問をさせていただいておりまして、その継続であります。私の継続の質問の間へ、わが社会党の作戦上佐藤さんが中へ入っていいところを質問されたということでございますので、そこら辺ひとつ誤解のないように、あいつはどうも何回も質問ばかりやっているじゃないかというふうにお考えになるかもしれませんが、決してそういうことではない。継続でございまして、いままでやってまいりましたのが総論でございまして、これから各論をやらせていただく、こういう順序でございますので、御了承をいただきたいと思うのであります。  まず問題を十二ばかりに集約いたしてまいりましたが、第一の問題といたしまして、役員の構成について承りたいと思うのであります。  なお、今朝の新聞によりますと、何とかという外務省の公使が開発銀行の理事に予定されておるというふうに載っておりました。それらも含めて役員の構成について承りたいと思うのであります。
  84. 村井七郎

    村井政府委員 いまきまっておりますのは、協定で十人の理事理事会を構成するということと、総裁のほかに副総裁は一人あるいは二人以上であるということがきまっておるだけでございまして、その中でだれがどうということは、これはもちろん今後の問題でございます。
  85. 小林進

    小林委員 そんなことはないでしょう。総裁は一人で、副総裁は一人ないし二人にする、そのほか理事は十名にする、その理事も域内国が何名、域外国が何名、それから理事選挙はどうする、総裁選挙のやり方はどうするというようなことがきまっておりましょう。それを聞いておるのです。ごまかしてはいけません。
  86. 村井七郎

    村井政府委員 まず理事でございますが、理事会は十人の理事で構成いたしまして、これらのうち三人は域外加盟国を代表いたします総務が選挙いたします。七人は域内加盟国を代表いたします総務が選挙いたします。それから総裁は、総務の総数の過半数でありまして、加盟国の総投票権数の過半数を代表するものによる表決をもちまして選挙いたします。そのときに先ほど申しましたように、総裁は域内加盟国の国民でなければならないという制約がございます。総裁の任期は五年ということでございます。それから副総裁でございますが、理事会は、総裁の勧告に基づきまして、一人または二人以上の副総裁を任命するということになっております。副総裁は、理事会が定める期間在任期間を有することになっております。また、副総裁は、総裁が不在のとき、あるいは健康その他ぐあいが悪いとき、故障の場合に総裁の権限を代行するということになっております。
  87. 平岡忠次郎

    平岡委員 関連で伺いたいのですが、いまお答えの中に、総裁選挙につきまして一国一票を投ずるということ、それから各国の持ち株分によるマジョリティーをきめるということ、この二つの投票が行なわれるというように伺ったのですが、これが両方一致した結果が出ればいいのですけれども、違った結果が出た場合にはどうなるのですか。
  88. 村井七郎

    村井政府委員 これは各国の基本票がございまして、そのほかに出資額に応じまして票数が割り当てられますので、各国はその合計をもって投票するということに相なりますので、その過半数がございました場合にやるわけでございますが、かりに御指摘のように総務の過半数以下ということになりますと、選挙をもう一度やるということになろうかと思います。
  89. 平岡忠次郎

    平岡委員 私が聞いているのは、一国一票で、たとえば三十カ国なら三十カ国が投票したといたしました場合、そこで日本渡辺さんがそのうちの十七票なら十七票をとる、それから今度持ち株分によるマジョリティーもやはり渡辺さんにきまったということになれば問題ではないのです。ところが、一国一票のほうは、どうしたはずみか三十カ国投票したうちで十三票ぐらいきり日本に入らずに、他のどこかから立候補者があって、そちらに十七票入ってしまった、ところが次の段階で持ち株数によるところのマジョリティーは日本渡辺さんにきたということですと、片や他国の候補者がとり、マジョリティー部分に対しては日本渡辺さんが最高点をとったということになりますと、結果が一致しないわけですね。その場合はどういうように最終的にきめられるのか、そのことをお伺いしているわけです。
  90. 村井七郎

    村井政府委員 先ほども申し上げましたが、各国の基本票がございます。八百という基本票がございまして、それと出資額との合計票数がその国の投票になるわけでございます。したがいまして、その合計をもちまして投票いたしますので、その総務の総数の過半数であって、かつその投票が過半数を代表するという場合には、これはその総裁が当選するというわけでございまして、いま御指摘の場合は、「おそらく総投票数は過半数ではあるが、総務が過半数にならないという場合の御指摘かと思いますが、そのときはやり直すというふうに承知しております。何回でも……。
  91. 平岡忠次郎

    平岡委員 総裁候補が三名ぐらい出ているときには、やり直しのとき一人の総裁候補が退く、そういうときは変化が出てきますが、初めから総裁候補者が二名というようなときには、一国一票のほうの結果と、それから持ち株数によるところの結果と違うことがあり得ると思うのですよ。何回投票してもそれは変わらないということになることもあると思うのです。ところが、三十四条の一かなんか、見ましても決着の方法が書いてないのです。ですから、その点であと選挙管理委員会みたいなものを発足さして、この場合はどうするというようなことをその時点できめるのかどうか。少なくともこの開銀の定款ですか、これによると、そうした場合の決着の方法が一つも出てないですね。しかも、そのことがちょっと見通しとしてあり得ると思うので特にお伺いしたわけです。
  92. 村井七郎

    村井政府委員 平岡先生の御指摘の点はあり得ることかと思いますが、おっしゃるようにこの協定にはそれを予定しておりませんで、おそらく二回とか三回とかそういうことが行なわれて、どうしてもそれできまらないというときには、これはまた新事態ということで、新しい規則をつくるなり話し合いが行なわれるなり、そういう新事態に対処する措置がとられることになろうかと思いますが、先ほど来話がございましたように、また大蔵大臣がるる御説明されましたように、各国状況は、渡辺武氏個人をいまのところは公式、非公式に絶対支持という表明をしておりまして、おそらくそういう事態はないというふうに私たち考えております。
  93. 小林進

    小林委員 ちょっと最初に言い忘れましたが、私はこの開発銀行の問題について、対アメリカと域内、域外加盟国との経済的政治的軍事的な主従関係といいますか、支配、被支配の関係その他を明らかにして、これはほんとうのアジアのための自主的な銀行でない、それからまた、アジアの銀行の過半数、過半数の国民が入っていないでどうしてこれが一体アジアを代表する開発銀行だというのかというようないろいろな問題を含めて総理大臣の出席、それから、一体開発銀行は何をやるのかというそういう問題に関連して厚生大臣、これを私は前から要望いたしておるのでございまして、私がいま初めてここに質問に立ったというならば別でございましょうけれども、継続質問中でございますから、私がここで質問することがわかっておりましたら、前々から要望しておる大臣並びに政府委員の御出席はちゃんとここになくちゃならぬと思うのでありますが、委員長から何もお話がない。これは一体どうしたことでございましょう。
  94. 三池信

    三池委員長 小林君にお答えいたします。  厚生大臣はいま参議院の社労の委員会のほうへ出席しているので、それが済まなければ出席できないということで、時間のほどはまだ不明という事情であります。総理大臣の要求は、本日はいたしておりません。
  95. 小林進

    小林委員 そういう御事情でありますれば、いますぐ首になわをつけて引っぱってこいというわけにもまいりません。しかし、この法律を最終的に仕上げをするまでの間に、やはり私が要望しております各関係大臣はぜひ出ていただくように、委員長は特別の御努力をいただきたいと思う。もしその人たちに対する質問が許されない限りは、私は、残念ながらこの法案は、賛否のいかんを問わず、採決に入られることに対しては絶対に賛成をするわけにはまいりません。この点、委員長はしかとお含みおきのほどをお願いいたします。  そこで問題に移りますが、いま平岡委員質問をいたしましたが、その第三十四条「総裁」の中の総裁選挙に関する規定は別といたしまして、こういう明白な規定があるならば、先ほどからの大蔵大臣の御答弁の中にも、この渡辺武総裁はきまったとおっしゃるが、一体どういう手続できまったのか。この三十四条の規定に基づいて総裁を選ぶ以外に、他に総裁選挙の方法があるのか。どういう形で渡辺総裁が選ばれたのか。その選挙のやり方あるいは票数をお伺いいたしたいと思うのであります。
  96. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 小林さんに申し上げますが、きまったと申し上げているわけではない。きまりそうだと申し上げているのです。その点ひとつお含みの上、御質問願います。
  97. 小林進

    小林委員 私はまだ大臣答弁を正確に把握したわけじゃありませんが、いまのお話によりますと、きまったとは言わない、きまりそうだという話でありますが、そういうような答弁でございましたか。——これはあとで速記録を見ていただければそこの点は明確になるのでございますが、間違いございませんか。私はそういう意味において、先ほどからどうも声が聞えない、聞えないとやかましく言ったのでありますが、私があそこにすわってお聞きした範囲においては、総裁渡辺武氏にきまったんだ、何回も繰り返し言っていたというふうに記憶をいたしますが、いかがでありますか。
  98. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私の発言に間違いございません。
  99. 小林進

    小林委員 それでは、いずれあとでひとつ速記録を見せていただいて、この問題についてはあらためてお話を申し上げることにして、この点は留保しておきます。  そこで私は、域外の理事を三名あるいは域内の理事を七名にした、この七対三という根拠はどこにあるのかという問題が一つ——時間の関係もございましょうからなるべく要約して申し上げますが、それから任期を二年にした理由、なぜ一体任期を二年にしたのか。総裁の任期は五年であります。理事の任期は二年、副総裁の任期については規定の中にないようでありますが、もし副総裁が選任をせられた場合には、副総裁の任期は一体何年になるのか、お伺いをいたしたいと思います。
  100. 村井七郎

    村井政府委員 域内、域外の理事を七対三にいたしましたのは、発足当初におきまして、出資額を域内、域外でもって大体六対四ぐらいが適当ではなかろうかという話がございまして、したがいまして、理事の場合はそれを多少上回った、域内に重点を置く置き方がよかろうということでもって七対三というふうになったと承知いたしております。  それから、理事の任期の二年でございますが、これは世銀等も二年でございますが、そういう慣例のほかに、なるべく多数の加盟国から理事を出したいという配慮から、あまり短くても不都合でございましょうが、二年というのは比較的短い期間であるという観点からさようにきまったと承知しております。
  101. 小林進

    小林委員 現在アジア開発銀行理事ももはや日本で内定をして、人名までも出ているのだから、それが一体どういうことにきまっておるのかという先ほどの私の質問にまだ答弁がない。これは外務省なら外務省で答弁していただきたいと思います。  それから、七対三という問題も、私どもの聞いたところでは、何も最初から七対三で決定したわけじゃない。これはまだ最終的な決定ではないというふうな意見もあって、七対二、そういうふうな意見も強く出ているのだというふうに聞いているのであります。あなたの答弁と少し違うようだが、この点どうなっているのか、聞かせていただきたい。いいですか、何とかという公使を理事にする問題と、いまの問題、それからいま一つ、期間の問題も、世銀は二年でありましょうけれども、この種の銀行といたしましては、米州開発銀行は任期が三年、それからアフリカ開発銀行も同じく理事の任期は三年、そういう類似の銀行が三年の理事の任期をきめているのに、このアジ銀だけが二年にされたというその理由です。同時に、三年説と二年説、どちらが一体目的を達成する上において有利か不利か、こういうことも科学的にひとつ承りたいと思います。
  102. 村井七郎

    村井政府委員 理事の任期を二年にするかあるいは三年にするかということは、実際問題といたしまして、準備段階におきまして議論はされたわけでございますが、結局は加盟国をなるべく多数理事に参加させるという趣旨から短いほうがいいのではないかということになりまして、二年ということに原案としてはきまったわけでございます。  それから、本朝新聞に出ておりました記事、私も実は読みましたが、これは私何もそこら辺のあれは承知しておりませんし、かりにそういうことがございましても、全然単なる予定ではないかというふうに想像いたしております。
  103. 小林進

    小林委員 名前はどなたでしたか。
  104. 村井七郎

    村井政府委員 けさの新聞、私が読みましたのは、福田勝という記事を読んだわけでございます。
  105. 小林進

    小林委員 現職は何でございますか。
  106. 村井七郎

    村井政府委員 現在駐英公使でございます。
  107. 小林進

    小林委員 こういう人事のあり方にも若干疑問があるからお聞きしているのでありますが、あなたがおわかりにならなければ、どなたか外務省でこの人選に至る経過を御存じの方はありませんか。
  108. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 別にまだ人選をいたしておるわけではないのです。ただ、先ほど申し上げましたように、総裁渡辺さんにきまったとした場合、その総裁の職務執行に遺憾なきを期さなければならぬ、そういうときには補佐的立場にどういう人を送るかというようなことは、これは外務省としても、また大蔵省といたしましても真剣に考えておるわけであります。そういう考え方があるということで、こんな人が物色されるだろうということを新聞社の人が記事にした、こういうことじゃないかと思うのです。私その記事を見ておりませんので、どんなような書き方をしているか承知しませんが、まだ、こうきめて、こういうふうに申し入れるのだというところまではいっておらぬのです。
  109. 小林進

    小林委員 銀行ですから、銀行屋が入っていくとか事業家が入っていくというならいいのですけれども、いまの現役の英国の公使を持ってきて、そしてこれを理事にしようというそのような中にも、私は、この銀行が経済の開発じゃなくて、やはり二つの勢力の対立の中にそういう政治的、外交的問題でこれを処理しようという色彩を強く感じているわけです。私は特にこれを興味を持ってお尋ねをしたわけであります。大蔵大臣、新聞をお読みにならなければ——しかし、内定したと新聞には書いてあります。天下の新聞がうそを言うわけはないだろう。現役の公使を引っぱってきて入れようというわけだから、そうでたらめな記事を帯けるわけではないのです。そういう問題も、あとで外務大臣がおいでになったら外務大臣にお尋ねすることにいたしまして、この問題も留保をいたしておきます。  まだ役員構成の問題についてはいろいろ疑点はありまするけれども、この問題は留保の点は留保にいたしまして、次に第二の問題といたして、私は加盟国の出資額の問題についてお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、この加盟国の出資額というものの標準は何を標準としてきめられたのか、承りたいと思うのであります。
  110. 村井七郎

    村井政府委員 発足にあたりましていろいろな角度からの試算が行なわれたわけでございますが、結局は、各国の国民総生産あるいは税収あるいは輸出金額というものを基準にとりまして、それで試算をいたしたわけでございます。その中でやはり国民総生産というもののウエートをわりに高く見まして域内六億ドルという金額に達したわけでございます。
  111. 小林進

    小林委員 あなたのおっしゃるように、その各国の国民総生産あるいは輸出額その他を調査して、特に国民総生産に主力を置いておきめになったというのでございまするが、これをおきめになるときに、国連に対する分担金等を参考にせられたというふうなことはございませんでしたか。あなた方のおっしゃるところは何でも国連なんですから。
  112. 村井七郎

    村井政府委員 その場合に分担金が基準になったことはございません。
  113. 小林進

    小林委員 何でも国連を基準におやりになって、何を質問しても国連国連といって、国連を神さまのように答弁せられるあなた方が、この出資額の問題について国連の分担金等を参考にされなかったというのは、これは二律違背じゃないですか。矛盾がありませんか。というのは、私はこの出資額のきめ方に非常に大きな疑問を持っているからお尋ねをしたのでありまするが、いかがでございましょうか。
  114. 村井七郎

    村井政府委員 国連分担金を一つの基準にするというのも、確かに一つの考え方であろうかと思います。しかし、それは各国の国民総生産あるいは輸出というものにすでに反映されておるということで、非常にダブった基準になるという考え方から、分担金という基準をとらないで、根っこのそういう数字をとって計算したと了解しております。
  115. 小林進

    小林委員 そういたしますると、この出資金額は、俗に言って、その国の国力、その国の経済力をそのまま反映している、この分担金を見ればその国の実力は大体わかる、こう判断してよろしゅうございますか。
  116. 村井七郎

    村井政府委員 私たちが各加盟国を並べましてそういう比率で置いてみましたときに、大体そういう感じになっておるというふうに了解いたします。
  117. 小林進

    小林委員 参考までに国連の分担金の額をお尋ねいたしたいと思います。
  118. 松井佐七郎

    ○松井説明員 アジア開発銀行加盟国の国連の分担金のリストは、いま資料が手元にございませんで取り寄せ中でございます。来次第お答え申し上げます。
  119. 小林進

    小林委員 これは表があるのでしょうからすぐいただけますね。——では、きょうの午後からでもちょうだいすることにいたしますが、そのときにまた質問をさせていただくことにいたしまして、これも留保いたしておきます。  国連の分担金とこのアジア開発銀行に出す出資金とはあまりにもでこぼこがあり過ぎて、開銀やその他におけるこういうものの基準額は一体どこにあるのか私どもは非常に迷っているのです。将来も大いにあることですから……。これほどでこぼこのあるものはない。この問題はあとでまた質問するとして、ざっと大まかに見たところ、国連の分担金は、アメリカは大体三〇%、ソ連が一二%、英国が八%、中国——といっても中共じゃございません。台湾の亡命政権、これが四・五%、日本はわずかに二%、二倍以上の国連の分担金を出して、いわゆる大国の地位をほしいままにしている。大国の発言力を持っているその中華民国はこのアジア開発銀行の出資金がわずかに千六百万ドルです。国連内部における大国的分担金とこのアジア開発銀行におけるわずかの出資金ででは、これはあまりにも差があり過ぎるじゃないですか。この矛盾を一体どうお考えになりますか。
  120. 村井七郎

    村井政府委員 中国の出資は千六百万ドルでございますが、この基礎になります比率は、国連分担金の金額は私よく承知いたしておりませんが、これは、たとえばIMF、国際通貨基金のやり方とか、従来こういう場合にいろいろなやり方があり得るわけでございますが、データによりまして多少のでこぼこがあるかと思います。中国につきましては、そのほかに、どの地域、どの国力を対象にするかというむずかしい政治問題がございますので、国連分担金決定の当時とは状況があるいは違っているかとも思いますが、これは数字を見てからでないと私どもとしても確たることは申し上げにくいと存じます。
  121. 小林進

    小林委員 それでは、その点は午後資料をいただいてからまた御質問をすることにいたしまして、あなたの御答弁に従って質問をいたしまするけれども、その国の総生産、輸出額等を基準にしておきめになる、いわば国力というもの、国の実力というものを反映しているんだというお話に基づいて問うならば、中華民国は応募額が一千六百万ドル、大韓民国は三千万ドルそうすると総生産高や国力において台湾政府は大韓民国のざっと半分くらいの国力、実力しかない、こう判断してよろしゅうございますか。
  122. 村井七郎

    村井政府委員 私が現在持っております資料によりますと、総生産を比較いたしますと、二倍とはまいりませんが、いまの台湾というものと韓国というものとの国民総生産の開きはかなりあると思っております。
  123. 小林進

    小林委員 まあ三千万ドルと千六百万ドルですから、正確に二分の一ではないけれども、二分の一近い力しかない国だということになるわけでございます。マレーシアは同じく二千万ドルの出資をいたしておりまするが、そうすると、中華民国はマレーシアよりも貧弱な国である、貧弱な力しかない、こう解釈してよろしゅうございますかどうか。
  124. 村井七郎

    村井政府委員 なるほどマレーシアは二千万ドル、台湾が千六百万ドルでございます。国民総生産というものを比べますと、御承知のように、マレーシアはアジア地域におきましては比較的国民所得も高い国でございまして、総生産の数字といたしましても台湾の約一倍半以上の国力を持っておるのではないかと、数字上からは推定いたしております。
  125. 小林進

    小林委員 そうすると、あなたの論拠に基づいて言えば、中華民国にこだわるわけではございませんが、国連の中において大国的地位と分担金を持っているこの中葉民国という国は、実はその国力と実力においてはタイ、マレーシアよりも貧弱な国だ、力がない国だ、ニュージーランド、パキスタン、フィリピン等に比較しては問題にならないほど経済力の実力の貧弱な国だ、こういうふうに解釈をしてよろしゅうございますか。
  126. 村井七郎

    村井政府委員 アジアにおきまして台湾が非常な速度で生産力を高めておるわけでございますが、この時点においてとりました国民総生産の数字によりますと、いま御指摘のありました国よりも確かに低いという数字になっておりますが、これは問題にならないほど低いかどうかといいますよりも、この程度の格差はアジア地域としてあり得る程度ではないかというふうに考えております。
  127. 小林進

    小林委員 その意味において、どうも出資金の問題も、あなたのおっしゃるように、その国の総生産、輸出高、その他経済力等を技術的に科学的に公正に判断したのではなくて、出資金をきめる中にも何か大きく政治的な判断が加わっているんじゃないか、そういうふうに感じておったわけであります。その点は、あなたがそうでないとおっしゃるならば、あなたに対する質問はこの程度にして、また外務大臣等にあらためてお尋ねいたします。これはこの点で留保いたします。  なお続いてお尋ねしたいことは、開発銀行から金を借りる場合には、加盟国以外が金を借りることができるのかどうか、お尋ねをいたしておきたいと思います。
  128. 村井七郎

    村井政府委員 協定上それは可能ではございません。
  129. 小林進

    小林委員 まさにアジアの過半数を占めているそういう国々を、国連というワク、エカフェというワク、あるいはまたこういう加盟国ならざる国は借りることもできないという二重、三重、四重、五重に全くほうり出しておいているということが明らかになって、私どもまことにますますもってこの銀行の性格のただならぬものであることを痛感する次第でありますが、これは一応このぐらいにいたしておきまして、第三問としてお伺いいたしたい。  それは、域外の先進国ということばがこの協定の中によく使われているのでありますが、先進国と後進国の区別というものは一体何を基準でおきめになっているのか、お聞かせを願いたい。
  130. 村井七郎

    村井政府委員 協定の二十八条によりまして、総務会は、先進国あるいは開発途上にある国あるいはその区別というようなものを随時決定することができる。その場合、適当な経済的考慮を払った上で、三分の二以上の多数であって四分の三以上の総投票権数できめるんだという規定がございます。
  131. 小林進

    小林委員 私のお尋ねするのは、二十八条の第四項の規定の説明を求めているのではない。われわれは国会で論じている。あなた方のおっしゃる先進国と後進国という概念を承っているんですよ。一体どこにその基準を置いているのか、三分の二であろうと四分の三であろうといいが、それをきめるときの基本的な概念はどこにあるかということなんです。
  132. 村井七郎

    村井政府委員 先進国、開発途上にある国というのは、従来非常に議論のある概念でございまして、現にOECDのDAC、これは御承知のように、開発途上にある国、後進国の援助を専門に担当しておる機関でございますが、その機関ですらなかなか一義的にきめ得ない、実際問題といたしましては、社会通念によりまして、大体後進国あるいは開発途上にある国という分類が何となくされておるという現状でございますので、この協定に適用いたしまして域外国は先進国かということになりますと、これは出資を受けまして、しかもそこに別に融資するという対象国ではございませんので、そういう意味からいきまして、域外国は一応社会概念上先進国という範疇に入ります。また通念上入れてもいいという国々かと思います。
  133. 小林進

    小林委員 社会通念上とおっしゃるものの、日本加盟国の一番有力な国なんですから、行って投票もしなければならぬし、先進国、後進国の区別をするときも発言をしなければいけない。やはりそれに対する考え方というものは、外務省なり日本政府になければならないはずである。それでは社会通念で一体どこが先進国で、どの程度のものが後進国なのか。あなたのおっしゃる開発途上にあるものが後進国というなら、日本だって開発途上にある。日本は社会通念上一体先進国なのか、後進国なのか、中進国なのか。人によっては、この日本さえも決して先進国ときめているわけではない。日本は中進国だと言っている人もある。その社会通念をお聞かせを願いたい。
  134. 村井七郎

    村井政府委員 結局、この社会通念を突き詰めてまいりますと、国民総生産なり、一人当たりの国民所得なり、あるいはそれだけでもほんとうは不十分で、将来の見通し等も加えました経済力の測定ということになるわけでございますが、日本は、DACその他におきましてやはり援助するという立場に置かれておりますし、私たちも、どっちかというと、やはり援助すべき立場であるという考えをとっておりますが、どこかで線を引くということになりますと、そういった経済力の側定というものを的確に行なわないとはっきりした結論が出てこないと存じますので、その点は全く御意見と同じであると存じます。
  135. 小林進

    小林委員 御意見と同じなんて言われたら迷惑しごくだ。ちっともあなたの意見と同じじゃない。いまDACに加入している日本が援助国のほうだというのは、一体だれがきめたのか。政府がきめたのか。私どもに言わせるなら、背伸びし過ぎているのではないか。あなたは先ほど先進国、後進国の区別は国の総生産と個人当たりの所得その他を勘案してきめると、いみじくもおっしゃった。私はこれが問題だと思う。なるほど総生産においては日本は先進国であるかもしれない。私はそれは否定いたしません。しかし、国民の膏血をしぼって、いわゆる資本主義の搾取の中で、労働者や農民の犠牲の中でどんどん総生産を上げていったから、総生産においてはあなたの言われる先進国のカテゴリーの中に入るかもしれませんが、個人の一人当たりの所得はどうですか。世界で何番目ですか。
  136. 村井七郎

    村井政府委員 たしか二十一番目であったかと思います。
  137. 小林進

    小林委員 私の記憶じゃ二十三番目なんだけれども、若干上げて、あなたに譲って二十一番目にしても、その日本の上にはグァテマラがある。グァテマラなんという汽車も回らぬくらい世界の知らぬ国々でも個人所得においては日本の上にあるわけだ。ベネズエラ、こういう国々もわが国よりも個人所得において上のはずだ。グァテマラあるいはベネズエラ、これらの国々がいわゆるあなたの言われる社会通念で先進国の扱いを受けているのか、中進国の扱いを受けているのか、後進国の扱いを受けているのか、お聞かせを願いたい。
  138. 村井七郎

    村井政府委員 私が先ほど来申し上げておりますのは、国民総生産あるいは国民一人当たりの所得というものだけではなくて、もっと広い経済力の測定、ことに将来の見通しまでも含めました測定がなされなければ、援助、被援助という問題を決定いたします先進、後進の国の区別というものはつきにくい、たとえば、具体的な例で申しますと、やはり援助を行なう方法といたしましては、投資なりあるいは物を輸出するなり、あるいは長期にわたるいろいろな贈与その他の経済のつながりを持つわけでございますので、これが絶えず累積的に行なわれるということがないと、この援助、被援助の問題はなかなか決定しにくいという関係にある点から申しましても、単にある時点におきます国民所得というものを並列的に並べまして、これでもって援助、被援助を決定する一つの基準にすることは、この問題の決定からはやや狭過ぎるのではないかという感じが私はいたすわけでございます。
  139. 小林進

    小林委員 私はその問題をあなたに聞いているのじゃないのです。私は、日本としては、個人所得や個人の生活、個人の暮らしが、ベネズエラやグァテマラの下にいて、国民が貧乏であえいている中で、何で一体そんなに背伸びをして大国のようなまねをして、外国へ投資しますの、出資しますのと、思い上がった態度を続ける必要があるのかということを私の意見として述べたのであって、あなたに聞いているのじゃないのです。これは私の意見です。それよりはスイスのごとく、あるいはデンマークのごとく、あるいはノルウェーのごとく、国の規模が小さかろうとも、国民一人一人が所を得て、社会保障も充実して、豊かな中に暮らせるような、そういう国をつくり上げたらいいじゃないか。わが党に政権を譲ってくれれば直ちにそれをつくり上げてみせる。そして、国民みんな所を得しめて喜ばせるような政治をやる。しかし、それをあなたに質問しているのじゃない。私は、日本よりは個人所得の多い、ランクにおいて上にあるそういうベネズエラなどという国が、あなたの言われる社会通念上、これが先進国といわれているのかどうかということをお聞きしているのです。
  140. 村井七郎

    村井政府委員 問題をさように限定いたしますと、グァテマラ、ベネズエラ等は、そういう意味で先進国といわれていないというふうに私は了解いたしております。
  141. 小林進

    小林委員 それでは私は、時間がたつと何ですから、きょうはもう引き延ばしをしないで的確に質問することになっていますから協力する意味において私から問題を提起していきます。  これは重大なことです。私ども政治を論ずる者は、先進国、中進国、後進国の明確な政府考えの概念ぐらい明らかにしなければ政治を論ずるわけにはいかない。  それでは、メキシコはどうか、ポーランドはどうか、アルゼンチン、ブラジル、スペイン、ポルトガル、ハンガリー——ハンガリーは共産圏国家ですけれども、それからユーゴスラビア、アイスランド、こういうような国々は、その一つ一つについて、先進国の範疇に入るのか、中進国の範疇に入るのか、後進国の範疇に入るのか、あなたの御所見を承りたい。
  142. 村井七郎

    村井政府委員 なかなか難問でございまして、たとえばメキシコあたりは、場合によっては先進国といわれたり、そうでなく中進国という名のもとに呼ばれたり、いろいろの目的によりまして概念をそれぞれ違ったふうにとるという場合があると思います。それと、ポーランドとかハンガリー、ユーゴというように、共産圏あるいは共産圏に近い政治経済体制の国におきましては先進国というふうに呼ばれたことはもちろんないと私は思います。したがいまして、いまおっしゃいましたいろいろな国につきましては、大体先進国という名のもとに包括し得る、ことに援助、被援助という関係において包括し得る国は、メキシコの場合を除きまして、大体ない、援助、被援助の関係におきましては、先進国ということは大体ないというふうに私は了解しております。
  143. 小林進

    小林委員 ブラジル、アルゼンチンは……。
  144. 村井七郎

    村井政府委員 同様でございます。   〔「定足数が足りないぞ」と呼ぶ者あり〕
  145. 三池信

    三池委員長 しばらくお待ちください。
  146. 小林進

    小林委員 いままで質問を繰り返してまいりましたが、これはアジア開発銀行も、将来はいまのとおり域外国においても第二十八条の規定によって、三分の二以上の多数、あるいは総投票権数の四分の三以上を代表するものによって新しく加えられてくるのだから、それは投票によって加入、不加入がきまるにいたしましても、われわれはこの問題に対して先進国という概念をばくぜんとしておくわけにはまいりません。  そこで、いま世界にありまする国々の中で、あなたのおっしゃった定義に基づいて、どことどこの国が先進国の範疇に入り、中進国の範疇に入り、後進国の範疇に入るかということを一覧表をつくって早急に提出をしてもらいたい。もちろんこれは科学的なものじゃありません。それは政府考えでよろしい、政府の見方でよろしい。その政府の見方による先進国、中進国、後進国の区別を一覧表にして出してください。もちろん日本も含めてであります。それを出していただきたい。委員長、私の要望に対して政府側の回答を促していただきたいと思います。
  147. 村井七郎

    村井政府委員 重ねての御要望でございますので、われわれといたしましては、そういうきまった基準というものはございませんが、国際機関、国連に低開発国の経済開発委員会、そういう委員会がございますが、そういったところで具体的に国というものを取り扱いましたその実例があるかと思いますので何らかの御参考にできるかと思いますが、外務省の方が見えておりますので、そちらから答弁さしていただきたいと思います。
  148. 松井佐七郎

    ○松井説明員 お答え申し上げます。  先進国と後進国の概念は、最近大きな脚光を浴びました南北問題の連関において重要な、ある意味において政治的な重要性を持っておる用語でございます。しかしながら、これに関して的確なる解釈というものは必ずしも成立していないように思っております。南北問題を取り扱うウンクタッドでは国別の個々のケース、あるいはパー・キャピタル・インカム等の問題があり複雑となるので、大体大ざっばに地域別にグループを四つに分けて、そのうちBグルーブというのが西欧グループ、日本それから太平洋における英連邦諸国及び米加、これがBグルーブに入っております。大体これが先進国といっております。共産圏は低開発国ではございませんで、おのずからグループと称しております。したがって、残るAグループ、これはアジア・アフリカグループでございます。それからCグループ、これはラテンアメリカでございます。これがいわゆる七十七カ国と称しております。  さらに補足しますと、アフリカとアジアと中南米は大体低開発国の地域に入っておる、ただし、アジアにおける日本、アフリカにおける南ア連邦、これは一応先進国と見られております。その間の、たとえはBグループの中でも国民所得なり、あるいは個人キャピタル・インカムの低い国もあることは確かにありますが、これは一応国際水準の中で大まかなところをきめております。将来、これをはっきりする必要が起こる問題は、たとえば低開発国に対する特恵をやる場合に、どこかボーダーラインのケースが起こるわけです。そういうときには今後議論が起こるかと思いますが、現在のところはそういうような大まかなところできまっております。もちろん、概念はさっき大蔵省から御説明があったように、国民総生産とか、工業化の程度とか、あるいは世界貿易に占めるシェアとか、あるいは個人所得とか、そういうふうな概念を総合しまして勘考した概念でありますが、それを非常に厳密にきめたというわけではございません。
  149. 小林進

    小林委員 私は先ほどからお伺いしておるように、これが物理的、科学的、幾何学的にきまるとは思っていない。だから、日本政府の見解を承りたいと私は言っておる。資料にして答えてもらいたい。あなたはABCDと分けられて、共産圏がDのグループに入る、Bが先進国だ云々というお話がありました。それをひとつ資料にして早急に提出していただきたい。というのは、アジア開発銀行の問題、先進国の問題は銀行の設立と同時に将来も必要な問題ですから。同時に、私どもはやはりこの問題を論議する上においてその概念を持っていなければとても国会の中でこういう問題を論議するわけにいかぬのです。早急にお出しをいただきたいと思います。出てまいりましたら、またそれに基づいて問題を解明していきたいと思います。  次いで、第四問に移りたいと思うのでございますが、この協定の第二条の中で「小加盟国」と「低開発加盟国」ということばが使われている。この地域内の小加盟国と低開発加盟国との区別は一体どこにあるのか、その概念、区別を具体的にお聞かせを願いたいと思う。
  150. 村井七郎

    村井政府委員 二条にあります小加盟国及び低開発国という概念につきましては、はっきりした定義はございませんが、私たちが了解しておりますのは、「小加盟国」と申します場合は、地域的に非常に小さい国、ネパールとか、そういった国をさしております。「低開発加盟国」といいますのは、むしろ地域的な場合よりも、国力が低いという場合を主としてさしておるというふうに了解しております。
  151. 小林進

    小林委員 一体、なぜこの協定の中に「小加盟国」と「低開発加盟国」などという二つの区別をする必要があるかという点にも疑問があるのであります。なぜ一体これを分ける必要があるのですか。銀行運営上において、区別してどういう利害得失があるか、どういう点においてこの必要があるか。どうも、われわれは世界各国状況を把握するときに、いまも言うように、先進国があったり、後進国があったり、中進国があったり、これでいいのかと思ったら、今度は低開発国があったり、小加盟国という幾つもの概念が出てきて、いたずらに混乱を来たすだけである。このアジア開発銀行を将来運営していく面において、なぜこういう区別をする必要があるのかということを的確にお聞かせをいただきたい。
  152. 村井七郎

    村井政府委員 論理的な必要と申しますよりも、これは一部私の想像が入って恐縮でございますが、小加盟国と申しますのは、どうも大国、大地域国に比べまして無視、軽視されはしないかという感じがある場合があるので、それで「小加盟国」というような文字を挿入するということが、感触上入れないよりいいのではないかという感じで入ったと了解しております。
  153. 小林進

    小林委員 小国ときめつけると、大国ということばに対して相手を軽べつしたように見えるから、それで小国と言わぬで、加盟を入れて「小加盟国」としたということですか。私の言うのは、低開発国なら低開発国でいいじゃないか、なぜ「小加盟国及び低開発加盟国」とこうやって区別をする必要があるか、その区別をした根拠はどこにあるのか、銀行の運営上どういう支障があるのかということをお聞きしているのであります。
  154. 村井七郎

    村井政府委員 先ほど来申し上げますように、経済力が低い、あるいは低開発国という概念自体が非常に社会通念的な概念でございますので、これでもってカバーし切れない感じの問題が残るといけないということが理由でございますが、おっしゃるように、この目的は域内開発にあるわけでございますから、低開発国であれば大小を問わずこれは入れていいわけでありますが、これは小国がいらざる不安を持つということのないように、念のための感触上の規定というふうに私は了解いたしております。
  155. 小林進

    小林委員 銀行の業務運営上これを区別していく理由がどこにあるのでありますか。区別しなければならぬどういう支障があるのかということをお尋ねしておるのでございます。  確かに、あなたのおっしゃるように、前段の説明は正しい。これは低開発国のために経済援助するのが目的なんだから、低開発国で私はいいと思う。それをなぜ「低開発加盟国」と区別して「小加盟国」などということばを用いて区別をする必要が銀行運営上あるかということをお尋ねしているわけです。矛盾がありましょう。矛盾があるなら、矛盾がある、こんなことは区別する必要がないなら、ないと的確におっしゃい。
  156. 村井七郎

    村井政府委員 私は、論理だけでこの協定があるという問題よりも、域内の各国がそれぞれ安心して出資する、またこの協定を安心して順守していくということのほうが非常に重要でございますから、「小加盟国」という文字の挿入によりまして、先ほど申しましたような小地域国が一種の安心感を持つという効果が実際問題としてございますれば、協定上あっていいのではないか、これは繰り返しで恐縮でございますが、そういうふうに私は考えております
  157. 小林進

    小林委員 私はあなたの説明では何にもわからない。一体こういう「小加盟国及び低開発加盟国」などということばを使っている国際協定が他にありますか。参考までにお聞かせを願いたい。
  158. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 そういう協定は承知いたしておりません。
  159. 小林進

    小林委員 ないとおっしゃる。条約局長には珍しく歯切れのいい答弁をされた。そういうことならば、国際慣例にも前例がないのに、アジア開発銀行の中で、いまおっしゃるように区別をしてどれだけの現実の利益があるのか、支障があるのかと言っているにもかかわらず、あなた方は具体的に御答弁がない。それならば、こういう二重のことばをあえて使う必要はないじゃないか、むだな表現じゃないか。私が小国の立場にあれば、「小加盟国」などということばできめつけられるほうがむしろ国民感情に大きく影響すると私は思っている。こんな「小加盟国」と銘を打たれることによって、よけいに金を出してもらえる、出資金もなしにめんどうを見てもらえるというなら別だけれども、実質上において何らの差別がないというならば、ことばの上においてなぜ一体こんなややこしい区別をする必要があるのか。私の納得するような答弁をしていただきたい。
  160. 村井七郎

    村井政府委員 非常に論理的な場合と実際問題、あるいはいきさつからこういう「小加盟国」という文字が挿入された場合とあるわけでございまして、実は「低開発加盟国」というふうに呼びましたときに、どうも大国——国の名前をあげてあれでございますが、インドとか、そういった大国の低開発国に資金が主として行くのではなかろうかという空気が、準備段階におきまして一部にあったように聞いております。したがいまして、「小加盟国」という文句はそういういきさつを反映いたしまして、むしろそうではない、小加盟国といえどもやはり基本票はあるし、また、それにプラス出資に応じた票数があるんだということで念のために入れたほうが、小加盟国側といたしましてもより満足であるという感じが一部にあったと承知いたしております。
  161. 小林進

    小林委員 それでは具体的にお尋ねしましょう。  二つのいまの区別の中で、アフガニスタン、オーストラリア、カンボジア、セイロン、中華民国、インド、イラン、日本国、大韓民国、ラオス、マレーシア、ネパール、ニュージーランド、パキスタン、フィリピン、ベトナム共和国、シンガポール、タイ、西サモアのうちのどれが小加盟国で、どれがあなたのおっしゃる低開発国か、一々具体的にお示しをいただきたい。
  162. 村井七郎

    村井政府委員 私がここで申し上げるようなふうにきまってはおりません。常識通念上小地域国がどういう国かということで判断するよりほかないのではないかというふうに私は思います。
  163. 小林進

    小林委員 そういうあいまいな答弁ではいけませんよ。実際上何も伴わないようなことばを一体なぜこういう国際協約の中に入れるのですか。それでは、あなたのおっしゃるのは実体がないのでしょう。架空のことばでしょう。架空じゃないのですか。
  164. 村井七郎

    村井政府委員 私は架空だと申し上げたことは一度もございませんで、小加盟国というのは、小地域国であって、文理的には低開発国でカバーされますが、しかしながら小加盟国の空気もあり、その不安、あるいは文字の挿入によりまして、より小加盟国が満足するという感じ、感触から入ったわけでございますから、これが論理上あるいは協定遂行上非常に矛盾があるとかいう場合であれはともかく、そうでないといたしますと、小加盟国という文字があってもいいんではないかというふうに私は考えております。
  165. 小林進

    小林委員 それならば、私がお尋ねしたように、いま一々名前をあげてお聞きしたのですから、その国に対して、どれが小加盟国か、どれが低開発国か、それくらいの答弁をしてもらわなくては私どもは質問を続けるわけにはいきませんよ。その必要があるというなら、小加盟国というのが感情的にさわりがいいとおっしゃるなら、そのさわりのいい小加盟国はどことどこの国であるか言えないわけはないじゃありませんか。言ってください。
  166. 村井七郎

    村井政府委員 そういう感じからまいりますと、ネパールとか西サモアとかいう国は小加盟国ということになろうかと思います。
  167. 小林進

    小林委員 それはネパールと西サモアだけでございますな。それではセイロンはどうなりますか、シンガポールはどうなりますか、アフガニスタンはどうなりますか。
  168. 村井七郎

    村井政府委員 この経緯から申しまして、先ほど申し上げましたように、低開発国といいますと、むしろ大国が予想されるという空気でございまして、インドとかパキスタンとか、そういう国は、もうこれが地域が大きいということだけでもって融資の独占を受けるということのないようにしてもらいたいという空気が強かったわけでございますから、お尋ねのセイロンの場合は、これはあるいは中地域国かもしれませんが、一般にそういう空気から分類をいたしますと大加盟国ではない…。(小林委員「小だな」と呼ぶ)私の個人的な感じでは小といっていいと思います。したがいまして、そのほかにもいろいろ私例示的に申上げたわけでございまして、シンガポールも、そういう観点から小加盟国というふうに呼んでいいのではないか、私はそう思います。
  169. 小林進

    小林委員 アフガニスタンは。
  170. 村井七郎

    村井政府委員 先ほど申し上げましたように、小加盟国あるいは非小加盟国というような分類をここですることの意義は、私も論理的、文理的には必ずしも十分よくわかりませんが、ただそういう感触上の問題がございますので、アフガニスタンが入るかどうかというのは非常に難問ですが、入れてもよいのではないかという感じが個人的にはしております。
  171. 小林進

    小林委員 難問ということはないだろう。議事が進まないから、小か大か言いなさい。小でしょう。
  172. 村井七郎

    村井政府委員 私は小加盟国だと思いますか、いまちょうど外務省の条約局長発言を求められております。
  173. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 小加盟国であったらどういう取り扱いになり、低開発加盟国だったらどういう取り扱いになるという取り扱いの区別がございましたら、特定の国がそのいずれに該当するかということをこまかく一々の国にわたって論ずる意味があるわけでございますが、先ほど来大蔵省の当局から御説明がありますように、小国だからといって忘れられちゃ困るという気持ちをくんでこういう字が加わっただけのことでございまして、「特別の考慮を払うものとする。」という対象としては全然同じでございますから、個々の国が小加盟に該当するかどうかは特に論じなくてもよろしいのではないか、かように考えます。
  174. 小林進

    小林委員 それを聞いておるのではない。それは前からの答弁があったのだ。具体的にはいまアフガニスタンが小加盟国か低開発国かというそれだけを聞いておるのですよ。
  175. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 そういうことを検討の上この字がこの協定作成にあたって入れられたわけではないわけでございまして、ここで個々のものが、これは入ると思いますとか、入らないと思いますとか言っても何ら権威のないことでございますし、この条約の運営上必要のないことである、かように考える次第でございます。
  176. 小林進

    小林委員 それでは、いまのあなたの答弁のとおりだと、必要のないものならなぜ一体こういう国際協定の文書に——美文でもなければラブレターでもない、協定文や法律文というものは余分なことばや実質の伴わないものをなるべく入れないのが立法者の考え方でなければならない。それでは小加盟国だの低開発国だの言わないで、小加盟国というのをとったらいいじゃないですか。単なる感情の問題だとか人の気持ちの問題だという、実質上何もないものなら区別する必要はない。私はとるべきがほんとうだと思いますがどうですか。あなたの答弁ではもうとる以外にないですよ。
  177. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 国内法でございますと、おっしゃるとおり、非常に厳密にそういう感情などはまじえないで法文を作成されるのが筋でございますが、条約協定の場合には、それぞれの会議に参加しておる国を満足させるために、特にそれの結果弊害が起こらない場合にはこういうような無害な文句が入れられるということはあるわけでございまして、この小加盟国という字入ったがために特に弊害がなければこれをとるという必要もないかと存じます。
  178. 小林進

    小林委員 弊害がなければ何でもいいという、これも三百代言的なあなたの答弁ですよ。弊害がなければ何でもいい。あなた、そんな理屈がありますか。利益があるから入れるという話なんでしょう。弊害がないのなら、飾りことばみたいなものをなぜ一体入れておく必要があるのですか。私は、あなたの答弁を聞けばますますこういこうようなむだなことばはとるべきだと思う。特に私をして言わしめれば、小なりといえども一つの国ですよ。歴史がありますよ。誇りがありますよ。それを、おまえの国は小加盟国だ、小国だと言われて、それで気持ちがいいなんという国があるというあなた方の考え方が、先ほどからも聞いているけれども、さらに私はおかしい。しかも、そういう例が国際慣行上あったかというと、過去にはないという。前例もない中で、相手の国をきめつけて小加盟国だ、小国だなどとなぜ入れる必要があるのか。低開発国というのはもう世界的なことばになっているのだから、低開発国で実力もない、国力もない、生産力もない、工業力もない、これから後進国として開発が必要なんだ、このことばでいいじゃないですか。弊害がないなら入れる必要はない。私は、この協定の中から、いままでの質問の中でも言ったが、このことばを削除する、削除すべきが私は当然だと思います。外務大臣、いかがでございましょうか。
  179. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 削除する必要はないと思います。
  180. 小林進

    小林委員 その理由を承っておるのです。
  181. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 これは国内法と違って国際条約であって、条約に加盟している国の好みにやはり沿わなければならぬ。その好みに沿うたからといって他の国の利益を害するようなことはないのですから、できるだけその好みを生かしてやったほうがいいじゃないか、こう思います。
  182. 小林進

    小林委員 私は、こういうことばは、一国の独立に対する害のないことばではなくして、むしろ尊厳を冒涜することはだと思っている。  では、この協定をつくる過程において、小加盟国ということばを入れてもらって満足でございます、このことばはけっこうですと言った国はどことどこですか、具体的にその国をお示しいただきたい。
  183. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 他の政府委員から答えるのがなんだと思いますが、私からお答えします。  これに署名した国はみなこれを認めたわけです。だから条約が成立したのです。
  184. 小林進

    小林委員 認めれば、全部その条文の個々に満足したという理屈になりますか。そんなことがありますか。それは子供だましの理屈じゃありませんか。この部分には不満足だけれども全般として了承しようとか、アメリカからお金の世話になっているから、軍事的に世話になっているから、いやだけれども入っていようという国もあるかもしれないし、そんな一律に人を頭ごなしに押えつけるような答弁であなたは能事終われりとお考えになっているのですか。先ほど現にお話があったでしょう。小国の中にも開発国とは別個にわれわれの気持ちにも沿うようにしてもらいたいという国なきにしもあらずだということをおっしゃった。具体的にどの国とどの国が小加盟国という名前を使ってくれと言ったのかということを私は聞いている。
  185. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 みな満足しておるかどうかというが、これはみな満足したから条約として成立したのだ、こう答えたのです。ただしかし、条約をつくる道程においてどの国が小加盟国ということを主張したかということは、私は知りません。他の政府委員からお答えさせます。
  186. 村井七郎

    村井政府委員 そういう空気があったというふうには聞いておりますが、具体的にどの国どの国という国の名前は聞いておりません。
  187. 小林進

    小林委員 私は質問すればするほどいよいよ不可解だ。突き詰めれば何にも根拠がないじゃないか。そういう空気があったというとらえどころのない話をもって私の質問に答えようとする。私は、こういう問題は国内の問題じゃないから聞いておくのですよ。世界じゅうに百何十の国があるか知らぬけれども、その国その国の民族をとらえ、国民をとらえてみれば、みな独立国家としての誇りがある。おまえの国は小国だときめつけられて、そのことばでほんとうに満足しておるのかどうか。そういうような根拠のないことばをなぜ一体新しく使う必要があるかと私は言いたい。それを言っているのであって、その根拠を示せというのに、根拠を示せないじゃないか。そういう空気があったとか、みな満足したとか、そういう失礼な答弁をしてはいけませんよ。いやしくも大国になってこういう開発銀行の指導力でも握らうというなら、そういう国を規定づけるような、格づけするようなことは、少し勉強すれば、だれが質問したって必ず質問には出ますよ。そういう世界の国々を、先進国だの中進国だの後進国だの、あるいは低開発国だ、小加盟国だというきめつけ方に対しては、国際問題なのだからわれわれは最も敏感であるべきである。それをそんな空々寂々たる答弁でこの問題を通り過ぎていこうなんというのは、あなた方はあまりにも国会を甘く見ておいでになりますよ。いま少し明確にお答えをいただきたい。
  188. 三池信

    三池委員長 小林委員に申し上げます。  質問の要旨がはっきりのみ込めなかったそうでありまするから、再度御質問をお願いいたします。
  189. 小林進

    小林委員 つまり、その国自身が客観的にどう小さかろうとも、その国民、民族から言わせれば、お前の国は小国だとか小加盟国だとかいうことを言われて、一体だれが喜ぶ人がいますか。それを、あなた方の先ほどの答弁の中で、低開発国ではわれわれ小国はどうも置いていかれて特別めんどうをみてもらえぬような懸念があるから特に小国という名前を入れてもらいたいという空気があったとおっしゃるから、その国は一体どことどこでありましたか、ほんとうにあったのかなかったのか、われわれのほうもそれをひとつ聞いてみたいから、その国の名前を具体的に聞かせてくれ、もし具体的にその話がないならば、国際慣行で用いられぬようなこういうことばは日本政府の責任において削除することを、アジア開銀の発起人会か何かに申し入れられたらどうかというのが私の趣旨なんでございます。目的は、いまも言うように、どことどこが小国という名前を入れてくれと言ったか、それを具体的にお示しいただきたい。
  190. 村井七郎

    村井政府委員 小加盟国の文言は、協定作成が専門家会議に諮問されまして、その諮問の答申から小加盟国という文句が入っておりました。なぜ小加盟国が入ったのかという問題につきましては、先ほど来申し上げましたとおり、低開発国だけでは小国としてはやや満足ではないという空気があったので、それで小加盟国という原案になって入ってきたというふうに説明を聞いておりました。これが去年の夏の答申のときの話でございます。したがいまして、どの国がこの主張をしたかという点につきましては、国の名前は私聞いておりませんが、専門家諮問委員会空気としてこれは入れたい、入れたほうが満足感をより与えられるという空気であったという話でございました。
  191. 小林進

    小林委員 私はそんな答弁で了承するわけにいかないのですよ。けれども、これ以上やると、どうもあまり意地の悪い質問をするじゃないかといって、皆さん方もお困りであろうから——けれども私は妥協するわけじゃありません。とてもこういうことで満足できない。小学校の子供が受け答えしているわけじゃないのですよ。国の運命、世界の運命、アジアの運命をいかにすべきや、いかにわれわれは貧弱であろうとも、国会の中でわれわれ以外にこれをやる者がないじゃないですか。こういう問題をわれわれが取り扱わない限り、どこで一体取り扱うのですか。そこでどういう激しい意見が出ようとも、それはしかし力にならない。弱くても、国権の最高機関である国会の中で私どもがこの問題を掘り下げて論ずる以外にないじゃないですか。それをそういう答弁でほったらかしていく、これがみんな積み重なっていってだんだん国が間違った方向にいくのです。私どもはそれをおそれるから、こういうような法律が出てくると、微に入り細に入りこの条文の一節一節までも見て、その問題の重要性を掘り下げていかなければならないのだ。こういう私どもの気持ちがあなた方はわからないのです。意地の悪い質問ばかりしていると思っているのでしょう。こういう小加盟国などということばを使う裏に何があるか、私はまだいろいろのことを考えている。しかし、この問題にだけこだわっているわけにいきませんからこれも留保しておきます。採決をする前にこの問題はいま少し解明してもらわなければならぬ。  それから次に第六問に移りますが、その六問の前に、いま専門委員会の話が出ましたが、最初に私がここで質問したときに一九六一年の三人委員会、その次の七人委員会、一九六四年の十月の専門家グループができたときのメンバー、それからいまおっしゃいましたが、一九六五年の六月から八月における専門委員の名前、これは一九六五年の分は名前をお聞かせいただきましたが、その前の分は答弁を得ていない。資料は出しますといって、まだその資料もいただいておらない。私がその資料要求をいたしましたことは、その名前が非常に必要ですから要求したのであって、決してむだなものを要求しているのではありませんから、出していただくまでは忘れておりません。お答えくださいますか、資料をいただけますか。
  192. 村井七郎

    村井政府委員 お答え申し上げます。  いま御要求の資料は、外務省からとっくにお手元に差し上げてあるはずでございます。
  193. 小林進

    小林委員 まだ私の手元にきていない。それでは、私もあらためてこの箱の中などにあるかどうか調査してみることにいたしましょう。  これはささいな問題でありますけれども、やはりこの際お聞きいたしておきたいのは、この銀行の役職員の給与は非課税とするという規定がありまするが、これはどういうことを意味しているのかお聞かせいただきたい。外務大臣でも大蔵大臣でもよろしゅうございます。
  194. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 協定の五十六条第二項に、小林委員おっしゃるような銀行の役職員給与に対します非課税の規定がございます。ただし、例外規定がございまして、「加盟国が自国の市民又は国民に銀行から支払われる給料その他の給与に対して自国及びその行政区画が課税する権利を留保する旨の宣言を批准書又は受諾書とともに寄託する場合は、この限りでない。」こういう例外がついてございます。私どもは、この協定の成立にあたりましては、批准書とともにこの課税権を留保する気持ちでございます。  この考え方は、御存じのように、国際機関の役職員に対しますところの課税は、まず第一には、国際機関であるということ、さらにまた、一国のいろいろ社会的な事情のもとにおきましてでき上がっております税法を国際機関に対しまして適用することは種々の無理が伴う、そんなような理由から国際的に国際機関の役職員につきましては非課税規定を設ける、しかし一方、ただいま申し上げました例外規定によりまして、現在のところではその人が属するところの国の課税権に服するようなことで処理する、こういうふうになっておるのでございます。
  195. 小林進

    小林委員 参考までにお聞かせいただきたいのでございますが、この開発銀行の総裁の俸給というのは大体どれくらいとされておりますか。総裁、副総裁理事、総務の俸給——わが日本から役員が大体何人ぐらい常時参加することになるのか。総裁はいまきまりつつあるという話でございますが、そういう点お聞かせをいただきたいと思います。
  196. 村井七郎

    村井政府委員 日本から参加いたします役職員の数、あるいは総裁その他の役職員の給料等についてはきまっておりません。
  197. 小林進

    小林委員 それではそれでよろしゅうございます。  給料は、専門委員会からここに至る準備過程においてどれくらいのものを差し上げるようにできておりますか、お聞かせいただきたいと思います。
  198. 村井七郎

    村井政府委員 これからいろいろ準備委員会におきまして議論が行なわれる段階でございます。それで、原案としてつくりまして、それを総務会、総会に提出する、そこで最終決定をするという段取りでございます。
  199. 小林進

    小林委員 それでは大蔵大臣にお尋ねいたしますけれども、第五十六条の第二項の規定の後段に基づいて、「自国の市民又は国民に銀行から支払われる給料その他の給与に対して自国及びその行政区画が課税する権利を留保する旨の宣言を批准書又は受諾書」云々という場合がありますから、そうすると、わが日本では、かりにこの協定が今次国会で成立をして批准書をお出しになる場合には、その権利を留保する旨を批准書に寄託せられるというお考えに間違いがないのかどうか。もし寄託をせられるとするならば、その理由は一体どこにあるのですか、お聞かせをいただきたいと思うのであります。
  200. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいま五十六条第二項ただし書きに基づく権利の留保の宣言をする方向で準備中でございます。その理由は、自国の市民に対する問題でありまするから、その権利を、フリーハンドをわが日本ではとっておこう、こういう趣旨でございます。
  201. 小林進

    小林委員 そうすると、ざっくばらんに言って、総裁あるいは理事、総務等が入った場合には、日本の国内法に基づいて税金を取るということですか。所得税を取るということですか。
  202. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 ただいま大臣が申されましたように、自国民に対しまして課税する権利は留保するつもりでございます。留保いたしますとどういった結果になるかという問題でございますが、所得税法の規定が当然適用されることになります。したがいまして、アジア開銀の役職員の方々がかりに日本に居住されまして、しかもまた、その方が日本国民であるというような場合には、居住者としてただいま小林先生のおっしゃったような所得税法の課税は当然適用になる、このことは、日本という社会の中におきまして住みます人の地位あるいは経済状態を考慮いたしますと課税するのが当然だ、こういうことでございます。そういった意味で、各国とも非課税規定はございますが、大部分の国はこういった居住者につきましては課税権を留保する、こういう慣習でございます。  しかし一方、このアジア開銀の役職員の方々が所得税法の適用を受けるにいたしましても、外国に居住されるとなりますと、非居住者ということになります。その非居住者の課税にも種々ございますが、非居住者といたしまして外国で給与を受けます際には、これは外国発生の所得でございますので、日本所得税法によりまして所得税は課税されぬ、したがいまして、役職員の方、たとえばその方が日本に国籍を持っておられましても、日本以外のところに住まれて外国の居住者になる、日本の税法で非居住者になる際には、東南アジア開銀から支払われる給与につきましては課税にならない、こういうことになる予定でございます。
  203. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと関連して。あとで私も質問をするのですが、ここだけもう問題が出ていますから伺いますが、五十六条の二は「銀行が理事、代理、役員又は使用人」とこうなっておる。総裁と副総裁というのはこの中で何ですか。
  204. 村井七郎

    村井政府委員 総裁、副総裁はこの中の役員に含まれます。
  205. 小林進

    小林委員 実にこの協定はおもしろい協定で、入れぬでもいい「小加盟国」などという余分なことばを入れて、これは国際的慣行だなんておっしゃるが、今度は一方で理事、副総裁総裁などという条項まで設けておきながら、ここへ来たら、総裁、副総裁も入れないで、理事だけのことばにしておいて、そうして理事の中に当然総裁、副総裁も入るという……。(堀委員理事じゃない、役員だ。」と呼ぶ)理事じゃない役員か。「理事、代理、役員又は使用人」ということばを使っておいて、ほかの条項でちゃんと総裁、副総裁というこういう明確な条文まで規定しているものを、あえてここは不明確にしておいて、拡張解釈ですか、類推解釈ですか、役員の中には総裁も副総裁も入るのだというようなものの言い方は、前後の矛盾が実にはなはだしいではないですか。法文のていさいとしても実に散漫きわまると思うのですが、いかがでございましょうか。この中には総裁、副総裁は入らないのじゃないですか。どうです。
  206. 村井七郎

    村井政府委員 役員の中に総裁、副総裁が入りますのは、世銀その他米州開発銀行の協定におきましてもさようになっておりますが、この協定におきましても当然その役職員の中に包含されるという解釈をわれわれはとっております。
  207. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっといまの答弁、こじつけの感じがするのですが、五十五条は「銀行の総務、理事、代理、役員及び使用人」とあって、総務から始まって理事へいって、総裁、副総裁が下のほうの役員の中へ入るなどというのは、協定のたてまえから見てもおかしいじゃないですか。ここの五十五条の「銀行員の免除及び特権」は「銀行の総務、理事、代理、役員及び使用人は、」とあって、次にこう書いてあるのです。それでこの協定の中にちゃんと「総裁」という条項が設けてあるわけですよ。しかも「総務会の手続」、「理事会の構成」というところで理事なりその他の者は規定をして、そうして三十四条には「総裁」、三十五条「副総裁」と、ここまで規定がある、こういう協定の書き方の中で、一番先に総務、理事、代理、役員及び使用人というのがその下にくっついている。これは本来的にはこの理事会なりその他が決定をして役員をさすべきものであって、こういうたてまえなら、当然銀行が総裁、副総裁、総務、理事、代理、こう書くのが本来じゃないですか。これはちょっとあなたのいまの答弁では、今度は「理事、代理、役員又は使用人」となっておるから、総務は抜けることになるのですよ。そうなれば、今度はそこはどうなりますか。
  208. 村井七郎

    村井政府委員 五十六条は課税権の問題でございますが、五十五条は特権、免除の関係でございます。総務は各国大蔵大臣を予定しておる場合が通例でございますので、旅行その他における特権、免除という場合は五十五条で規定しておるわけでございますが、五十六条ではその問題が起こらないという関係もございまして、五十五条は総務というものを頭に持ってきたわけでございます。
  209. 堀昌雄

    ○堀委員 私が言っておるのは、もちろんいまのところもありますけれども、要するに、五十五条の「銀行員の免除及び特権」というところでは「銀行の総務、理事、代理、役員及び使用人」という順序で書いておるわけでしょう。ここの機構の仕組みというのは、何といっても総裁、副総裁になるのじゃないですか。その次に理事会でしょう、順序として。その下にこれらの任命する代理があって、役員というのは、書いてある書き方の順序から見れば、その代理の下ですよ。それから見れば、あなたはいま最初に役員の中に入ると言われたけれども、役員の中に入るというなら、五十五条でも役員の中に入るべきであるにかかわらず、そこでは総務というものを別に書いて順序を立てておるという点から見ると、これは書き方のたてまえから見ればちょっとおかしいのじゃないか。いまあなたは役員に入る、役員の中に入れられないことはないと言うけれども、一体役員は、総裁、副総裁のほかにどういうものがありますか。
  210. 村井七郎

    村井政府委員 役員は、銀行運営の執行機関の上級責任者でございますので、総裁、副総裁のほかに部長が入ると私は考えております。
  211. 堀昌雄

    ○堀委員 これはあなたが考えれば済むことですか、どういうことですか。客観的な事実に基づいてこういう協定が行なわれるのじゃないですか。村井さんが恣意的に判断したからといって協定がどうこうなったんじゃ、困るのですよ。
  212. 村井七郎

    村井政府委員 これは私の解釈ではございませんので、世銀その他の国際金融機関におきまして役員と申しますときには、そういう上級職員、一つの部局の責任者も包含されております。
  213. 堀昌雄

    ○堀委員 どうも私よくわからないのです。この法律自体、ずっと書かれてきておる書き方は、確かに第二十六条「機構」というところには「銀行に、総務会、理事会、総裁、一人又は二人以上の副総裁並びに必要と認められるその他の役員及び職員を置く。」こうなっておるわけです。ここでちゃんとこういうふうに書かれている以上、本来的な書き方として言うならば、これと同じことがうしろへ来たっていいはずじゃないですか。だから、五十五条はやはりこの書き方からすれば、総務、理事、その次に総裁、一人又は二人以上の副総裁並びに必要と認められるその他の役員及び使用人、こうあってしかるべきような感じが私はするのです。ここにはこう書き、次に総裁を書き、副総裁を書きしてきて、五十五条に来たら、総務から始まって、第五十六条に来たら、総務はなくて理事から始まっている、こうなっておるわけですね。それはどっちだっていいですよ。いいけれども、取り扱い上としては、いまの総裁、副総裁も役員だということは、それを理解できないわけではないけれども、私どものこういうものから見た感触からしたら、ちょっと私としてはおかしいのじゃないかという感じはする。まあいいです。
  214. 小林進

    小林委員 これはおかしいですよ。  そこで、一体総裁、副総裁は常勤ですか、非常勤ですか。
  215. 村井七郎

    村井政府委員 これは銀行の執行機関でございまして、当然常勤でございます。
  216. 小林進

    小林委員 そうすると、五十五条の「銀行員の免除及び特権」ですね。この中の総務、理事、代理、役員という、この役員の中には五十六条と同じく総裁、副総裁も入るというあなたの解釈のしかたですか。
  217. 村井七郎

    村井政府委員 さようでございます。
  218. 小林進

    小林委員 先ほどから堀委員も言われたように、これは条文、協定、国際条約の内容としては、実に散漫です。混乱をしておる。先ほどから言っておるように、入れなくていいことばまで入れて、そうして当然入れなければならないそういうことばも省いているんだから、どうもこのことばも、もし厳格に解釈していったら、総裁、副総裁には五十六条の課税の免除などというものは適用にならないのじゃないか、私はそういうふうな論争が起きる懸念も十分あるものと思わざるを得ません。ここら辺をひとつ修正をしてもらわなくちゃいけない。一体わが日本から専門家、委員なんというものはだれが行っていましたか。こういうようなことをさっぱり勉強もしてない。まことに残念しごくです。こういう国際条約は、いま少し問題を掘り下げて、きめのこまかい条文をつくり上げていただかなければならないと思うのでありますが、この点も留保いたしておきます。とても納得するわけにいきません。  事務的な問題でございますが、投資、貸し付け、それから技術援助等は一体どのように行なわれるのかということをお尋ねいたしたいのであります。この銀行の具体的な活動方針でありますけれでも、そこに至る前に、先ほども佐藤委員がお尋ねになっていた開発銀行は何を開発するかという問題、まずこの事業内容から質問をしていきたいと思いますが、お答えをいただきたいと思う。
  219. 村井七郎

    村井政府委員 十一条に規定がございますが、直接貸し付けあるいは直接貸し付けに参加する、これが第一でございます。これが主たる業務でございますが、そのほか、銀行といたしましては、出資額以外の財源調達のために借り入れ等ができる規定がございます。これが銀行業務の第二番目でございます。それから第三番目には、開発事業のために保証ができることに相なっておるわけでございます。  主としてそういう事業でございますが、なおこまかい点を申しますと、いろいろ担保をとるとか、あるいは債務証書を加盟国内で売却するとか、いろいろこまかい運用上の規定がございますが、主たる業務は、先ほど申しました諸点でございます。
  220. 小林進

    小林委員 この業務の内容についてもいろいろの問題がありますが、二時から暫時休憩をするという理事間の話し合いができているそうでありますから、この問題はそのあとでお伺いいたします。  ただその前に一言でありますが、外務大臣にお尋ねしておきたいと思います。これはジョンソン大統領閣下の東南アジアに関する演説の全文を外務省からちょうだいしたのでありますが、その中に、北ベトナムが独立国南ベトナムを攻撃をした云々とある。私は、北ベトナム、南ベトナムを加えて、ベトナムは一国である、一つの国であると考えておるのでありますが、ベトナムは南ベトナムだけが独立国で、北ベトナムという別個の国が国際法上存在しておるのかどうか、これはやはりアジア開発銀行加盟国に関する問題でありますから、お尋ねをしておきたいと思います。
  221. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 国際法上の問題でございますので、条約局長から詳しく申し上げます。
  222. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 北ベトナム、南ベトナムという二つの国があるということは、一般的にはなっておらないわけでございます。ただ、武力使用の禁止とか、そういう関係におきましては、これはそれぞれ独立の単位として考える。これは朝鮮の場合でも同じことでございまして、休戦ラインでございますとか、そういうものもあたかも国境であるかのごとく考えて、これを武力をもって侵してはならないということが国際的な常識になっておるわけでございます。
  223. 小林進

    小林委員 そういたしますと、ベトナムにおける十七度線は、それは休戦条約の線であって、ベトナムは一つだ、十七度線は国境線ではない。そうすると、北ベトナムと南ベトナムにいま行なわれているこの戦争状態は内乱である、一つの国の中における地域的——それは地域的に分かれているか思想的に分かれているか知りませんが、これは内乱であって、独立国家と独立国との戦争でないことは明らかでございますね。
  224. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 独立国同士間の戦争でないことは明らかでございますが、それじゃ純然たる一国内の内乱と同一視していいかというと、そうじゃないのでございまして、十七度線に引かれておる休戦ラインというものは、ほかの国も参加した国際会議で引かれた線でございます。これはあたかも、たとえばいまの朝鮮でどっちか一方が休戦ラインを侵したら、それは単なる内乱とは認められないのと全く同じことでございます。したがって、いまのこのすべての戦闘状態というものは、国家間の戦争か内乱か二つに一つしかないというふうに考えないで、これはこういうものとして特別に現在の世界ではある事態である、こういうふうに理解したほうが現実に即する、かように考えます。
  225. 小林進

    小林委員 あなたは内乱か独立国同士の戦争かという範疇には入らない特異の現象だとおっしゃった、その特異の現象であるところの理由は、すなわち、国際間において他の国々も参加してでき上がった休戦ラインだから、これは国際的に国境に準ずべき権威のある線だ、あなたのおっしゃることはこういうことでございましょう。しかし、その国際間に協定をせられた十七度線のいわゆる休戦条約の線、その線を引いたものはジュネーブ協定でございましょう。そのジュネーブ協定は、その線を引いただけじゃない、その線を引いて、北は南を侵さず、南は北を侵さずというその中には、他に幾つかの条件があるはずだ。その参加した国々たちがその他に加えられている条件を正しく履行していない限りは、たとえば南北ベトナムの統一選挙等は、当然一年以内ですか二年以内ですかに行なわるべきそういう国際間の協定も行なわれていないのだ。アメリカはまっ先きになってこわしているのだ。こわしている限りは、十七度線などというものを国際的な権威のある線であるとは言い得ない。またもとに返って、ベトナムという一つの国の中における内戦であると規定づけるのが正しいのではないかと私は思いますが、どうでありますか。
  226. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 ジュネーブ協定というものは、単一の協定ではなくて、いろいろ政治的なことも盛り込んだ文書等も休戦協定の中にあることは事実であります。ただ、そういう選挙のことなどに関しましては、南ベトナムやアメリカはこれに参加しておらない、休戦協定自身にも参加しておらないわけでございますが、休戦協定についてはこれを尊重するということを一方的な宣言で別に誓約をしておる、こういう関係に相なっておるわけでございます。
  227. 小林進

    小林委員 尊重するというものを尊重しない。ジュネーブ協定が一つも行なわれていない。だから私どもは、やはりベトナムは一つであるという考え方に立たなければ問題の正しいとらえ方にはならないと思う。ここにおけるベトナムという共和国、この中には当然ベトナムは一つなんだから、南北のベトナム、われわれが俗に言う南北のベトナムは当然一つとして加盟すべきことが正しい解釈ではないかと私は思うが、いかがでございますか。
  228. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 二つの国がないことも事実でございますし、その領域内に二つの政権があって、そのいずれもが全体に現実に支配を及ぼしていないのも事実でございます。これは分裂国家という、最近の世界において生じた特異な事態なわけでございます。協定の内容その他によりまして、現実の支配を及ぼしていない限りは、加盟したといっても実効が及ばないような協定もあるわけでございます。このアジア開銀の場合には、実効の及んでいない地域も含めて入っているんだと観念してもこの協定の運用はできないだろう、かように考えるわけでございます。これはそれぞれの協定なり条約の性質によって判断せざるを得ない問題だと存じます。
  229. 小林進

    小林委員 時間がまいりましたから、私はこの問題を留保しておきまするけれども、あなたの解釈では私は満足することはできません。日本だって、明治維新のときには薩長土肥を中心にする争いがあった。あのときだって外国はみな干渉したんだ。ただ、その干渉がいまの朝鮮やベトナムのような大きな干渉に至らないうちに日本の内戦というものがうまく収拾せられて、江戸城が明け渡されたから、日本の中にいわゆる幕府と天皇制の中におけるそういう境界線はできなかったのだが、私は日本の場合を考えてみても、ベトナムも朝鮮も同じだと思うのです。ただ外国の干渉が入り過ぎただけの話であって、それをあえて二つの独立国があるような扱い方をして、二つの国の対立をだんだんと深めていくようなことは、われわれの過去の歴史に顧みても、いかにこれが理不尽なものであるか明らかなんですよ。それをあなたたちはみんな認めようとしないで、だんだん北ベトナムだとか、一つの国を向こうのほうへ追いやって、この対立や内乱を激化せしめて、永遠の分裂国家をつくるような策謀をあえてしている。その策謀の根源が外務省であり、日本政府であり、それのちょうちん持ちをして、それをまた固定化するようなこういうアジア開発銀行なんというものをおつくりになってくるのでありますから、何ぼあなたが詭弁を弄されても了承をするわけにはいきませんけれども、ちょうど時間となりましたので、また午後ひとつこれをやることにいたします。
  230. 三池信

    三池委員長 午後三時より委員会を再開することとし、この際暫時休憩いたします。    午後二時十分休憩      ————◇—————    午後五時七分開議
  231. 三池信

    三池委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。小林進君。
  232. 小林進

    小林委員 外務大臣がおいでにならなければ、大蔵大臣にお伺いをいたしますが、午前中の佐藤委員質問の中にもございましたけれども、私どもはどうも了承することができなかった問題、それはアジア開発銀行は一体何を開発しようとしているのかという問題であります。これは先ほど政府委員から答弁がありましたが、あれは単なる条文の朗読であって、ちゃんとした答えにはならない。いま少し実のある御答弁をお願いをいたしたいと思うのでございます。
  233. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 アジア開銀の任務は、協定第二条に詳細に掲げてあるとおりであります。アジア地域は世界の中においても非常に立ちおくれていることは小林委員もよく御承知かと思います。そのおくれておるアジアに対する国際機関からの援助が他の地域に比べまして非常に少ない。そういうことから、国連におきましてアジアに特別の開発銀行をつくりたい、こういう意向が出てきたわけであります。これはアジア全域を対象とし、アジアの国々のそれぞれ持っておる経済の脆弱な部面を補完し、アジアの全体の向上に資したい、こういう目的でございます。
  234. 小林進

    小林委員 大臣の御答弁の中にアジア全域ということがございましたが、これはこの委員会で何回も繰り返されておりますように、アジアの総人口の中の五割以上のものは加入いたしておりません。この点、正確に御訂正をいただきたいと思います。
  235. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私は、東南アジアとかあるいは中近東とか、局地的な意味ではないので、これはアジアにおける全域の経済の発展ということを考えておるということを申し上げたわけであります。ただ、これは国連の発想で始まった事業であります。したがいまして、中共等幾つかの国が除かれておる、これはあなたの御指摘のとおりでございます。
  236. 小林進

    小林委員 それで、アジアの貧困地域のために開発をするとおっしゃるのでございますが、その開発の方法でございます。投資、貸し付け、技術援助等の手段によることが協定の中にも明らかになっておりますが、その投資あるいは貸し付けあるいは技術援助というものをもう少し具体的にお聞かせをいただきたいと思うのでございます。
  237. 村井七郎

    村井政府委員 銀行の行ないます業務活動、したがいまして、一番主たるものになりますのは直接に企業に貸し付けるという場合でございますが、そのほかにも株式や持ち分で投資する場合もございますし、貸し付けの保証をすることもございます。また、開発投資の性格にかんがみまして、御指摘のように技術の援助を行なうという必要性もこの銀行の業務活動に予定されておるわけでございますし、なお、そのほかにもこまかい点、たとえば証券を発行いたします場合の引き受け及び証券の、つまり投資先企業が発行いたします証券の保証もございますし、それの売買もできるということに相なっております。
  238. 小林進

    小林委員 たとえていえば、技術援助の場合でございますが、その技術援助というのは、普通私どもの理解のもとではあるいは直接技術指導員を派遣して援助するというふうに解釈いたしておるのでありますが、開発銀行の技術援助というと、そういう技術屋を養成する、あるいは人的構成をつくりあげる、そうしてその人を派遣して技術援助をやるのかどうか、そういう点をいま少し具体的にお聞かせを願いたい。
  239. 村井七郎

    村井政府委員 現在世界銀行等におきまして行なっております技術援助等を参考にいたしますと、おそらく技術専門家がこのスタッフの中に養成されまして、各国の要請に応じまして、青写真から始まっていろいろ計画を作成する、また相談にも応ずる、また必要な付随資金の調達方法についても相談に応ずるという意味の広い意味の事業計画の相談に応ずる人的な用意がこの銀行のスタッフとして養成されるというふうに考えております。
  240. 小林進

    小林委員 まことに珍しい御答弁をお聞きしたのでございますが、普通われわれは、開発銀行といえば、銀行というものは、金を預かって金を貸すところだと単純に考えておる。その面においては、あるいは投資とか債権とかいうことは考えられるのでございますけれども、普通銀行が技術屋を養成をする、そういうようなことは、あるいは一つの事業の後進国開発のための青写真をつくるとか、計画を作成するとかというような仕事は、私は銀行本来の業務から見れば非常に離れた別個の企業に属するものではないかというふうに考えるのでございますが、この点いかがでございましょう。
  241. 村井七郎

    村井政府委員 御指摘のとおりに、銀行本来の、本格的な意味の本来の性格から申しますと、やや奇異な感じを受ける点もあろうかと思いますが、ただアジア各国の実際の問題からいたしますとなかなか事業計画等がつくれない、したがって、せっかくこうすればいい事業計画がつくれただろうにという、つまりいいチャンスを逸する、計画がつくり得ないために開発計画のチャンスを逸するという場合が実際問題としてはあり得るわけでございまして、そういう場合を補うために、相談に応ずる、あるいは必要がある場合はアドバイスもするということが、この銀行の補完的な意味といたしましてやはりあったほうがいいのではないかということだろうと思います。
  242. 小林進

    小林委員 それはあるにこしたことはないでしょうけれども、銀行という範囲の中にそういう事業が一体含まれるべきものかどうか。一体銀行という名称を付するに適当かどうか、私はお伺いしておるのでありまして、アジアの後進国の開発のために技術屋を派遣することも、計画をつくることも、そのための技術者を養成することもけっこうでございましょうけれども、剛発銀行という名称と、そういう形の中でこれを行なうという考え方は一体それでいいのかどうか、いまの問題について、外務大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  243. 村井七郎

    村井政府委員 単なる技術でもございますので補足いたしますが、世界銀行でもこういうことをやっておりますし、この銀行の本来の目的が、第一条、第二条にございますように地域開発にある、したがいまして、普通の金融機関の金融業務で金を貸して利益をあげるというものとは違った面があるわけでございますので、この地域開発という究極の目標に貢献するために、国際機関の例にもありますのでこういう任務を業務活動の中に含ましめたというふうに考えております。
  244. 小林進

    小林委員 それでは、具体的に、アジアの開発のための必要なそういう計画立案、事業の指導等を行なうためにそういう人材の養成機関も銀行の付属機関として設けられる、そういうのがつくられる、こういうふうに考えてよろしゅうございますか。
  245. 村井七郎

    村井政府委員 いまのところは付属機関としてその養成所を予定いたしておりませんが、これは将来の問題として解決されるわけでございます。当初の発足といたしましては、すでに相当な経験を有する技術家がこの銀行の職員に入るということが考えられております。
  246. 小林進

    小林委員 それではお伺いしますけれども、銀行の中にそういう技術屋も含めてやるということになれば相当膨大な人員を要すると思いますが、一体構成、人員はどれくらいを予定せられておるものか、お聞かせを願いたいのであります。
  247. 村井七郎

    村井政府委員 この問題は今後いろいろ立案されまして、秋の総会でもってきまる事柄でございますが、いままでに準備委員会の段階で抽象的に議論されておりますのは、発足時に百五十人程度の職員でもって発足する、その中でいろいろ事務あるいはいまの技術家というようないわゆる職業的な、普通の掃除その他の雑役等ではございませんで、あるいは運転手とかそういったものを除いた普通の職業的な人、まあ百五十人見当というふうに非公式に議論されておるわけでございますが、その中に入ってくるということになろうかと思います。
  248. 小林進

    小林委員 まあ百五十人くらいのメンバーでは、規模は広壮でも、実際に行なわれる事業なんというものは全く中小銀行みたいなもので、たいしたことはないという感じしか受けないのでありますけれども、これはでき上がってからの話にして、大体の構想はわかりました。  そこで問題は、アジアでいま一番困っておる問題は貧困です。飢えに苦しんでいるという人たちをどうするかという問題、それから第二番目は病気です。病気で苦しんでいる人間をどうするかという衛生上の問題、こういう大きな問題があげられておるわけですが、そのために一体開発銀行はどういうことを具体的に行なわれる考え方なのか。私は技術援助とかいろいろなことをお聞きしました。しかし、わが日本国内における銀行の考え方からいけば、そういう病気の問題だとか、あるいは貧困の救済等の問題に銀行の果たす役割りなんというものはほとんどない、利益のないところに金を貸さないのだから。大体銀行の対象は事業だ。しかし、いまあなたのお話を承っているとそうでもなさそうなのでお尋ねするのでありますが、貧困の撃滅、病気の撃滅に対して具体的にどういう処置をとるのか、伺いたい。
  249. 村井七郎

    村井政府委員 この究極の目的は、域内におきまする事業計画あるいは総合計画を通じまして、地域全体として調和がとれた経済成長をどうやったら最も効果的に発揮するかということでございますので、これが貧困とか衛生とかに間接に寄与するという面は、これは否定し得ない面かと思います。現にこの銀行が担当いたします融資部門といたしましては、社会開発、これは非常に基礎的な社会開発部門でございますが、それにもやはり考慮を十分払うということをうたっておりまして、そういった面を通じまして貧困とか衛生とかいうものに銀行が近づき得る限り極力その解決に貢献するという体制でございます。
  250. 小林進

    小林委員 答弁はそれだけでございますか。
  251. 村井七郎

    村井政府委員 それだけでございます。
  252. 小林進

    小林委員 いま少し具体的な答弁があるかと思って私は緊張して聞いていたのでありますが、それではまるで答弁にならぬ。  ここでジョンソン大統領の例の問題の演説の写しがあるのでございますが、その一節の中に、開発のための協力と称して、アジア及び東南アジアの開発のための第一歩は、それらの「東南アジア諸国自身が、大々的な開発協力努力に参加することである。われわれは、平和的な協力ができるようになると同時に、北ベトナムがこの共同努力に加わることを望みたい。この地域の開発には、すでに国連が積極的に活動している。私は、国連事務総長が、その権威ある職責——そしてアジアに対する深い知識——を活用して、可及的すみやかに、開発促進の協力計画を、同地域諸国とともに開始することを望みたい。」これは英語の例において、望みたいということはおやりなさいということだ。なかなかジョンソンさんは明確な命令を発しておる。「米国としては、このような計画が着手されたとき、これに十億ドルの投資を行なえるよう、議会に私から要請するつもりである。」こういうことを言われておるのでございますが、そもそもこの開発銀行の促進達成に対してアメリカ大統領が公式に見解を発表したというよりは、むしろ積極的・指令的威力を持った演説をしているものというふうに私は解釈をしているのでございまするが、この点いかがでございましょうか。開発銀行とこの大統領の演説との関係でございます。なお、これに加うるに、この中には、この経済開発のためにみんなが参加をするその協力努力に北ベトナムも参加することを私は望んでいる、こういうことを言っておるのでございまするが、この点を一体政府当局はいかようにお考えになっているのかどうか、お聞かせをいただきたい。
  253. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 アジア開銀とジョンソン構想とは全く別ものであります。アジア開銀は、もう数年前からそういう議がありまして、そして今回実ってきた、こういうものでありまするが、ジョンソン構想というのは、昨年にわかにジョンソン大統領によって発表せられた構想でございます。したがいまして、これは発想のもとが全然違う。したがいまして、いろいろな違うところはありますが、アジア開銀はその対象とする地域はアジア全域です。ジョンソンの構想は東南アジアにこれを限定をいたしておるわけであります。そういうようなことでありますが、しかし、アジアの開発といっても、アジア開銀ができてそれで万事終われりというわけじゃないのであります。いろいろな形のバイラテラルな援助、こういうことも必要であろう、こういうふうに考えます。ジョンソン大統領の構想が発表されてから、その具体化につきましてはわれわれは何ら聞くところがないのでありまするが、そういう援助がアジア開発銀行と並び行なわれるということは、アジアの開発のためには有効であろう、かように考えております。
  254. 小林進

    小林委員 私はこの問題については、すでに何回もここで繰り返されたことでありまするから、これを繰り返すことをやめます。やめますが、いまの大蔵大臣のおっしゃったような答弁は、外務大臣も外務委員会で何回も言われている。この計画が一九六〇年から始まって、六一年、六二年と進んできている。去年の春ごろからちょっとダウンした。そこでジョンソンさんが四月ごろアドバルーン演説をやって、そこで問題がぐっぐっとはね上がってきた。六月か七月に専門委員会がつくられて問題が具体化してきた。どうしてもこのジョンソンの演説が大きな刺激になっているとわれわれは解釈しているけれども、大蔵大臣は、それは前のアジ銀の構想とジョンソンの東南アジアの開発の構想とは全然別個のものだ、こうおっしゃる。そのとおり別なものであるとするならば、ジョンソンさんがそこで言っている、「米国としては、このような計画が着手されたときこれに十億ドルの投資を行なえるよう議会に私から要請する」こういうようなことを言っておられるのでありまするけれども、ともかくこの問題が具体化したのは、このアジ銀の中に二億ドルの金を入れるということが具体化しただけでありますから、ジョンソン自身にすれば、この演説の公約は二億ドルで、あと残りの八億ドルは特別基金の形でアジ銀に入れて自分の構想を進めていくのだ、私どもはそう解釈している。別個のものなら別個のものが出ていいはずだけれども、出てこないじゃありませんか。具体的には何も進んでない。アジ銀に肩がわりしておるから、ほかのものは進める必要はない。しかし、これはお互いに論点の相違でありまするから、この問題を繰り返すとまた質問の振り出しに戻りますので私はこれはやめますが、ただ、皆さま方が尊敬をしていらっしゃるジョンソン先生がその演説の中で「東南アジアのこれらの諸国は、何百万という貧困者の祖国なのである。来る日も来る日もこれらの人々は夜明けに起き、大地から生存のかてを得るために長い時間営々として働いている。病気に痛められ、飢えに苦しめられ、四十という若さで死が訪れることもしばしばである。」と言っている。なかなか名調子です。こういう名調子の演説をしていられて、こういうような貧困と病気で若死にをしているこのアジアを、十億ドルなり二十億ドルなりの投資をしながらこれを助けていきたいという構想を明らかにせられているのであります。この開銀というものが、皆さん方のおっしゃるようにアメリカのお気に召すように持っていこうというお考えがないにしても、アジアを苦しめるものはこの貧困と病気と若死になのであります。アジア開銀の構想がほんとうにアジアの貧困からの解放のために行なわれるのならば、こういう方面に具体的な投資とか援助や貸し付けの形が進められなければならないと思うのでありますが、一体これに対する政府のお考えはいかがですか。どういうようにこれを具体化そうとするのか、いかがでありますか。
  255. 村井七郎

    村井政府委員 御指摘の点は、このアジア開銀が誕生いたします際にやはり十分考慮されておりまして、社会開発的な投資というものは相当優先的に考慮していくのだということになっておるわけでございます。したがって、これは貧困とか衛生とかいうことは十分考慮されていくと思いますが、他面、銀行の採算性という制約もございますので、無制限にそれに投入するというわけにもまいらないかと思いますが、その間にありまして、この協定にもうたってございますように、毀損されざる出資額の一割まではそういう社会開発に向けるのだということがうたわれておるわけでございます。
  256. 小林進

    小林委員 そういうふうに問題がそこにあるとするならば、この開銀の構成の中にも、ましてこれをつくり上げる経過の中にもやはりわが日本におけるそういう厚生行政や環境衛生や貧困退治に対する専門家もちゃんと入っておらなければならぬ。政府の中のそういう部門を分担する人が入っておらなければならぬ。厚生大臣が来ないから私はやきもきしているのでありますけれども、今日のこの計画で一体そういう問題の中心に触れる厚生大臣がこの計画の作業の中に入っておりましたか。こういう厚生行政の専門家はこの中に入っておりましたか。
  257. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 銀行業務の一環としていろいろな技術が要るわけでありまして、特に御指摘の医療だとかあるいは農業だとか、いろいろな関係の技術がこの銀行としては必要であります。日本からも組織の構成員を出さなければならぬ、そういうときにはそういう点に配意をいたしまして日本からも人選を進める、こういうふうにいたしたいと思います。
  258. 小林進

    小林委員 残念ながら厚生大臣参りませんから、私はこれ以上質問を続けるわけにはいきません。来ましたら、現在厚生省がやっておる、アジアにおけるこういう病気の問題や医療の問題や貧困退治に対する厚生行政のあり方、政府のあり方に対して私は非常に文句を言いたいのでありますが、ただいま大蔵大臣はこの構成になった場合に、日本からもその点の技術者を含めて重点的にこれを施行するように努力するとおっしゃる。重点的とはおっしゃいませんでしたが、ですから今後の成り行きを見せていただきますが、一体この開発銀行はほんとうにそういう人道的な立場に立って、いまアジアが要求しているそういう医療の問題等解決するために強力なスタッフをわが日本の中からも必ず入れるということを確約されるならば、私は、この問題はこれで打ち切ります。いかがですか、約束していただけますか。
  259. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 これはアジアと申しましても、参加国はたくさんあるのです。それから域外国もある。この構成員の中には、そういういろいろな技術を持った人が入る、こういうことになりましょうが、その割り当てがわが日本にくるかどうか、これはここでお約束をするわけにはまいらない問題であります。しかし、この銀行にはいろいろの角度の技術者を配置するという点につきましては最大の努力をいたす、かように御了承願います。
  260. 小林進

    小林委員 あなたは最後になるとじょうずに答弁を濁して足をとられないようにされますけれども、いま少し勇気を持って答弁してください。  それじゃ、他の同僚諸君の関係もありましょうから、私はいま一問簡単に質問をして、あと留保の問題は留保のままにしておいてきょうの質問を終わることにいたしますが、その最後の一問は、これは事務的な問題でありますが、批准または受諾が九月三十日を過ぎたとき、これはこの協定の中にありますが、協定にきめられている最終日の今年の九月三十日を経過した場合一体どういうような結果になるのか。
  261. 大和田渉

    ○大和田説明員 九月三十日を過ぎました場合には、三条の二項に返りまして、「銀行が決定する条件に従い、かつ、総務の総数の三分の二以上の多数であって加盟国の総投票権数の四分の三以上を代表するものによる賛成の表決をもって、銀行への加盟を承認される。」この手続を踏むことになります。
  262. 小林進

    小林委員 そうすると、この手続は新しくこの銀行に加入しようとするそういう域外、域内国の取り扱いと同じような形の取り扱いを受けるもの、こう判断してよろしいかどう。
  263. 大和田渉

    ○大和田説明員 そのとおりでございます。
  264. 小林進

    小林委員 わかりました。  質問は残っておりますけれども、一応私はこれで質問を打ち切ります。
  265. 三池信

    三池委員長 平林剛君。
  266. 平林剛

    ○平林委員 ただいま議題になっている法律案につきまして、私から若干の質問を行ないたいと思います。  第一に、アジア開発銀行を設立する協定は域内十カ国以上を含む十五カ国以上の批准書の寄託があり、これらの出資額の合計が六億五千万ドル以上になった場合発効するとあるのであります。わが国においても目下この大蔵委員会において審議が続けられておるわけでありますが、他の諸国においての実情はどういうふうになっておるでしょうか。
  267. 大和田渉

    ○大和田説明員 現在まで国内手続を了しました国は、インド、韓国、フィリピン、米国、パキスタンでございます。そのうちパキスタンについてはすでに批准も了しているというふうに了解しております。それ以外の国につきましては、おのおの国内法の定めるところによって手続を進めているというふうに了解しております。
  268. 平林剛

    ○平林委員 それらの諸国は大体いつごろまでにこの批准をしていくだろうか。またその見通しは大体あるのでしょうか。
  269. 大和田渉

    ○大和田説明員 これはお説のとおり見通しの問題になりますが、われわれの見通しといたしましては、従来この協定を署名いたしますまでに何回も作業部会その他の部会で内容を検討しておりますし、内容を各自納得しているわけでございます。したがいまして、見通しといたしましては九月三十日までには必要な批准数が得られるというふうに考えております。
  270. 平林剛

    ○平林委員 見通しの問題だと思いますけれども、かりにその批准が得られない国があった場合にはどうなるのですか。
  271. 大和田渉

    ○大和田説明員 九月三十日までに手続が了し得なかったという国の場合は、先ほど御説明申し上げました第三条二項によりまして、銀行の定める条件で、かつ、三分の二、四分の三の多数の承認があって加入が認められるということになります。
  272. 平林剛

    ○平林委員 今日までの質疑の中で私が承知しておることは、創立総会は大体十月中旬にイランのテヘランにおいて行なわれると聞いておるわけでありますが、かりに、このアジア開銀加盟予定国の現在の状況を見ますと、ただいまお話しになりましたように、わが国を除いては四カ国程度でございますね。しかし、まだその半分程度とかあるいは半分を少しこえた程度の批准の状態でありましたときも予定どおりこの会議は開かれるのでしょうか。
  273. 大和田渉

    ○大和田説明員 先ほど見通しといたしまして九月三十日までには発効するだろうということを申し上げたわけでございますが、もし何らかの事情で発効しなかったという場合には、現在創立総会は十月の十一日から三日間テヘランで開かれる予定になっておりますけれども、その創立総会それ自身も開かれないことになるのではないかというふうに考えております。
  274. 平林剛

    ○平林委員 そういう場合は想定されますか、されませんか、どうでしょうか。
  275. 大和田渉

    ○大和田説明員 先ほど申し上げましたように、われわれの見通しといたしましては九月三十日までに発効するであろうという見通しでございます。したがいまして、十月に予定されている創立総会は開かれるだろうというふうに見ております。
  276. 平林剛

    ○平林委員 創立総会がかりに予想どおり十月中旬に行なわれたといたしましても、このアジア開発銀行が実際にその活動を開始できるというのは、いつごろに見ておりますか。
  277. 村井七郎

    村井政府委員 創立総会が十月の半ばごろ行なわれまして、そのあとマニラの本店で開所式が行なわれるのが十一月というふうに予定されておりますが、いままでの世銀その他の例から申しまして、開所あるいは創立総会が行なわれましてから大体半年ぐらいはいろいろの内部の整備等で時間がかかって、実際の貸し付けが行なわれるのは若干期間、その程度の期間が経過後というふうになっております。
  278. 平林剛

    ○平林委員 来年の春ごろ実際の貸し出しが行なわれるというお話でございますが、どうでしょうか、これが開設されると同時に融資の希望というものは殺到するでしょうか、それとも期待に反するようなことになるでしょうか。この辺の見通しはいかがですか。
  279. 村井七郎

    村井政府委員 いままでエカフェその他の場におきましてアジア開銀の設立の必要性というものが議論された雰囲気あるいはいろいろな計画等が存在しておりますことも事実でございますので、かなりの申し込みがあるのではないかというふうに考えておりますが、それがどの程度かということにつきましてははっきりした見通しはございません。
  280. 平林剛

    ○平林委員 少し抽象的だと思いますけれども、日本が今後、少なくとも総裁をとられ、このアジア開発銀行の法案を審議しておる際にもいろいろとアジアにおける開発の重要性が指摘されておるわけであります。大体そうだろうということでなくて、すでにのどから手が出ているような国々はどういうものがあるかということをやはりある程度国民の前にも御紹介をいただきたいと思うのでありまして、私は、具体的な動きだとか、あるいは今日まで総裁国としてつかんでおる情報についてやはり国民に知らせる義務があるのじゃないかと思うのです。この点をひとつこまかくお話をいただきたいと思います。
  281. 村井七郎

    村井政府委員 いままで具体的にこういうプロジェクトを融資してもらいたいという話が、実際問題といたしまして準備事務局等に提出された、あるいは話があったということはまだございません。したがいまして、抽象的な雰囲気だけを申し上げておるわけでございます。
  282. 平林剛

    ○平林委員 私は実は具体的なお話を国民にも御紹介いただけると思ったのであります。少なくともこの開発銀行の設立の目的あるいは趣旨から申し上げまして、そうした高まった要望のある中に必然的にこれが生まれたという理解を政府の御答弁の中からはせざるを得ないのですね。ほうはいとしてわき上がるアジア各国、先ほど小国とか低開発国というお話がございましたけれども、そうした方面からかなり具体的に要望があって、そうして、アジア開銀が集中的にその必要性に基づいて生まれたという理解を私は先ほどの答弁からはせざるを得なかったのです。しかし、いまのお話を聞いておりますと、かいもくない、こういうことなんですが、これはどうなんでしょうか。私はその点、外務大臣、このアジア開銀の必要性について多少疑問を感ずるのでございます。大臣の政治的な感覚はいかがですか。
  283. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 すでにラテンアメリカ、中南米のほうにこういう開発銀行ができております。アフリカはアフリカでできております。アジアのみが立ちおくれておるという状況でありまして、しかも諸般の経済開発もしたがっておくれておる。これを助長する意味において、私は潜在的な需要は相当にある、こう考えております。
  284. 平林剛

    ○平林委員 私も、アジア状況から見まして、これを開発し、少なくともアジアにおける貧困を解決していくという意義はあると思いますし、潜在的にその状況があるということはわかるのであります。しかし、いま事務当局と私との質疑応答をお聞きのとおり、何かアジア開銀に緊迫性というものを感ぜられないのです。そのことについて私は疑問を感じたのですが、そのことに対してお答えをいただきたい。
  285. 村井七郎

    村井政府委員 私の先ほどの答弁にも関連しておりますので補足いたしますが、いろいろ潜在的な需要というものは確かに私は存在すると思います。そういう点におきましては、これが発足いたしますとかなりの申し込みがあるだろうというふうに私も想像しております。ただ、私が申し上げましたのは、いままでこういうプロジェクト、こういう事業計画にひとつ融資してもらいたい、銀行が発足すればこれをやってもらいたいという意味の事前の申し込み的な話が具体的にはなかった、しかし、潜在的な需要あるいは要望というものは十分察知されるということを申し上げたつもりでございまして、補足いたします。
  286. 平林剛

    ○平林委員 外務大臣でも大蔵大臣でもけっこうですけれども、アジアの貧困を解決するために、少なくともどの程度の金額があれば、大体これらの各低開発国の希望というものが充足できるか。それは資金を調達するのはなかなか容易じゃございませんけれども、全般的に、このアジア開発銀行を設立し、そうした地域を開発していかなければならぬという根本的な動機、潜在的な開発要望というものは、金額にしたらどのくらい見込まれるのでしょうか。
  287. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 これはその推定はなかなか困難でございます。しかし、こういうことがあるのですね。タイ国で、産業開発のための直接の目的はないけれども、いろいろな意味の道路、未開発の地方の道路開発をやった。そうしたところが、運輸、交通の便が飛躍的にそこに実現をいたしまして、それで、だれもそれを積極的に進めたというようなことでなしに、農産物の増産がすばらしく行なわれた。そして、日本でも家畜の飼料としては多々ますます弁ずという状況でありまして、段がついて対日輸出が相当実現をした、こういうようなことがありました。  そういうわけで、産業開発ということからいうと、いろいろな河川の開発もありましょうし、あるいは港湾、いまの道路、その他鉄道の問題がありましょうし、それから直接の問題としては、私はしろうとだからまだよくわかりませんが、少なくとも太陽の熱なり光というものは非常に恵まれておる。しかし、雨季と乾季と俄然と分かれておって、そして乾季には、イリゲーションが十分に行なわれておらないというために、みすみす水がないために二毛作ができない、こういったようなところがたくさんある。これは一朝一夕に、ちょっとした資金なんかではできるものではございませんので、相当大規模なプロジェクトをここに適用するということによって食糧の増産が行なわれるのじゃないか。こういういろいろな意味におきまして、私は、これはやり始めれば幾らでもあるのじゃないか、こう考えております。
  288. 平林剛

    ○平林委員 私どもも、東南アジアの貧困を解決するためにどのくらいの計画があるか、あるいはそれを解決するためにはどのくらいの資金が必要であるか、総体的な展望に立ちまして、そうして世界の各国がそれに乗り出していくというかまえがなければならぬ、少なくとも総裁国をとる日本として、東南アジアの開発について熱意を持てば持つほど、そうした一つの総体的な青写真というものを持つくらいな覚悟があって乗り出さなければならぬ問題だと私は思うのです。そうでないと、今日この大蔵委員会においていろいろ議論されておりますように、何か時の世界政策とか戦略に利用される道具、こうみなされるわけです。私は日本の国家が東南アジアという近い、しかも低開発国に対して援助の手を差し伸べる——もちろん日本には国力も限度がありますから、日本国をほっておいて何でもやるというわけにいきませんけれども、やはりそういう一つの世界観といいますか、同じアジア民族救済という考えはあってもいい、あってもいいけれども、それにはやはりもっと具体的なものを持って臨んでもらいたいと私は考えるのです。それがいまのお答えからは少しも伺えない。その点は非常に残念だと思います。  そこで、今度のアジア開発銀行の資本金は出資額十億ドルというお話でございます。しかし、実際に開発のために、つまりこの開発銀行の目的であるたいへんりっぱな目的のために実際に貸し付けられる限度額というものがあろうと思うのです。それについてはどの程度見たらよろしいですか。
  289. 村井七郎

    村井政府委員 御承知のように、この十億ドルの資本金は半分が払い込みということになっておりまして、なお、それを五年で分割払い込みを行なう、しかもそのさらに半分は自国通貨の代用証券をもちまして、請求があるまではそのままの形態の出資でございますので、さしあたり、たとえば初年度といたしますと五千万ドル程度の資金が運用されるわけでございますので、いろんな経費あるいは運用等の計画等からおのずからその範囲内での制約というものがあるわけでございますし、かりに非常ないい事業計画等がございまして、それを突破いたしますれば、借り入れ金等の道はございますけれども、さしあたりの発足といたしましてはその範囲内でスタートしていくということになろうかと思っております。
  290. 平林剛

    ○平林委員 いまのお話ではアウトラインはわかるのですが、この間外務委員会でこの問題について椎名外務大臣がお答えになっているのは、大体使用可能なというか、融資可能なのは五億ドルだという答弁がございました。つまり、出資額十億ドルの五〇%、五億ドルだ、これに対して実際に五億ドルは動かせないのではないか。わが国の場合でも総額二億ドルを応募することになりますけれども、そのうち払い込みは一億ドル、しかもその一億ドルの五〇%は現金であるが、他の五〇%は国債で代用する、こういうことになりますと、実際に五億ドルは動かせないのじゃないか、こういう疑問を感ずるのでございますけれども、その点は外務大臣どういう根拠で五億ドルが動かせるとお答えになったのですか。
  291. 村井七郎

    村井政府委員 外務大臣のお答えになりましたのは、これが五年間で毎年継続払い込みが行なわれましたときのあるべき姿を描かれてお答えされたわけであろうと思いますが、そういった意味におきましては、数年先にはそういうかっこうの業務規模というものが考えられると私も考えます。
  292. 平林剛

    ○平林委員 数年先というと五年くらいのことを普通常識的にいいます。この場合でも、日本の場合を例にとりますと、毎年一千万ドル、五年かかって五千万ドルということになるわけでしょう。五年先になっても私は五億ドルがアジア開発のために動かせる金になるとはちょっと考えられないのですけれども、その点はいかがですか。
  293. 村井七郎

    村井政府委員 確かに、五億ドルといいます数字は自国通貨建ての国債等を含んだ数字であるわけでございますが、それが引き出しが行なわれるということは当然予想されると思います。それから、この運用の状況によりましてはもちろん借り入れ金も行なうということにもなるわけでございまして、五年くらいの将来におきましては、五億ドル見当というものが運用資金として計上されることは一つのあり得べき姿ではないかというふうに思います。そういったいろいろな要素をあれしましての規模という意味でございます。
  294. 平林剛

    ○平林委員 私ども今度の出資額の応募の状況その他から見ますと、五年たった後においても、いろいろ計算してみても三億五千万ドル程度しか動かせない、結局、いまお答えにありましたような借り入れ金その他をやるということでございまして、この借り入れ金というのが、実はこのアジア開発銀行に対するいろいろな疑問となりこれに対する批判になってくるおそれがあると私は思うのです。  特に、いろいろなお話を聞いておりますと、アメリカの信託基金を勘定に入れて今後のアジア開発銀行の運営をしていくのだというような話もあるわけであります。そうなりますと、今日まで私どもの同僚議員から指摘しておりますように、結局、これはいろいろ大きな理想を掲げて議論はしておるけれども、当座ひとつアメリカの世界戦略の道具として使われるのではないか、こういう疑問にもなってくる。いわんや、アメリカの信託基金を勘定に入れてアジア開発銀行を運営していくということが初めから前提に入っておりますと、これはあれじゃないでしょうか、結局、アメリカの信託基金の性質から見まして、アメリカの資本のひもつきという形でアジアの開発が進められる、こういう批判を免れることはできないのじゃないかと思うのですけれども、この点はいかがでしょう。これはむしろ外務大臣の政治的な判断、御意見を聞かしていただかなければならぬ問題だと思います。
  295. 村井七郎

    村井政府委員 外務大臣のお答えになります前に、事務的にちょっとあれさしておいていただきますが、これは言うまでもなく信託基金でございますので、特定の信託条件によりまして特定の計画に融資するということになるわけでございますので、受託者、信託者の具体的なそこに条件が出るわけでございまして、銀行一般の融資とは切り離してそういう勘定を設けるということになっておるわけでございます。したがいまして、銀行全体の一般的な融資といたしましては、信託基金があるから、またこれがアメリカから信託されるから一般の銀行業務が影響を受けるかということには必ずしもならないというふうに私たちは了解いたしております。
  296. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 いまアメリカの世界政策というお話がございましたが、この世の中を住みよい世界にするという善意の動機に基づく協力であるならば、私はそれを受け入れていいのではないか。いろいろな角度から世の中をどうしようというような目的を持って、いわゆる世界政策と申しますか、そういうものを行なっておる他の国もございますが、別にそれによって政治的な制約を与えるとか、あるいは独立を棄損するとかいうことでなければ、やはり善意の協力としてこれを受け入れることができるのじゃないか、こう思います。アメリカがその持っておる富をもって、結局は長い目で見ると自分のところへ振りかかってくるんだ、返ってくるんだ、そういう意味で、例のヨーロッパにおいてはマーシャルプランを実行したわけでございます。それによって欧州が復興した。そういったような意味において、世界の貧困に苦しんでおる地域を何とか早く立ち上がらせたいという意味で、特別のその他の政治的な目的を達成しようというのでなければ、私はそれはそれで受け入れてよいのではないか、こう考えております。  しかし、今回のアジア開銀の問題が直接そういうアメリカの独壇場として、それが言うがままに切り回される、そしてアジアの復興もさることながら、いろいろなそこに意図がからんでくるというのでは私はないと思う。そしてまた、この機構からいって、アメリカの思いのままに動かせるものじゃございません。でありますから、そういう点はそう御心配になる必要はないのじゃないか。もしそういうことがかりにあるとすれば、これはそういう特殊の意図をからましてくるということに対しては、われわれとしては十分にこれを警戒して、これを是正するという考えでこれに臨みたいと考えます。
  297. 平林剛

    ○平林委員 私は、外務大臣のお答え、ある分は了としますけれども、ただ、五年くらい先に実際に動かせる金が三億五千万ドル、そしてアメリカの信託基金、おそらく二億ドルくらいは勘定に入れて先ほどの五億ドル動かせるというお答えになっているのじゃないでしょうか。その場合に、ラテンアメリカのほうの開発銀行の例を見ましても、信託基金という一つの性質から考えてみまして、実際上行なわれているアメリカの運営のしかたを見ますと、かなり露骨なやり方がとられているということを考える。もちろんどこの国でも自分のきらいな国に対しては貸さぬ、これは国に限らず人間でも同じでしょう。同じではありますけれども、特に極東における状態から見ますと、私はアジア開発銀行アジアの地域開発のためだという善意な考えだけでできないことをおそれている。それは外務大臣は、そんなことはさせない、そういうときには十分警戒してやるというお話がありますけれども、私は、そこに幾ら善意を持っていても、受けとめ方は各国各人によって違ってくるわけでありまして、その場合に、このアジア開発銀行の名目というものがそこにゆがんだ形に残される。相当の覚悟を持ってこれをやらなければならぬのじゃないかと思うのですが、その点は外務大臣のいまのお答え、もう一度ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  298. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 繰り返しになりますが、ほんとうに純粋な意味における国際銀行の機能を発揮してもらいたい。それがゆがめられるというようなことにつきましては、十分な是正あるいはこれを排除する手段は幾らでもある、私はこう考えております。
  299. 平林剛

    ○平林委員 五億ドル程度アジア開発銀行の資金運用で、これは国によって規模が違いますけれども、さっき外務大臣が言われたように、その金を借りただけで独立が棄損されるというようなものにならぬということはわかります。それからまた、そうかといってすべてを善意の援助だとは考えておりません。私も昨年アメリカに参りまして、アメリカ人の国民性というか、性格というものをいろいろな角度で観察したのですけれども、よく言えば善意と言えましょうけれども、悪く言えばおせっかいなところがあるわけですね。私がたまたまカメラで景色を写しておりましたら、あそこは何といっても記念になるからおまえとっておけ——そんなところをとってもおもしろくないと何人も言う。自分がこれはいいのだと思ったら他人にそれを押しつける。それから、ある意味では共産主義は一番きらっておるわけでございますから、共産主義というものは悪いものだ、おれのほうが正しいんだ、世界の中でおれほど正しいものはない、こんな考え方が非常に強い国民性を持っておる。これはアメリカだけではなく、世界の国それぞれ自分の自国意識のあることは当然ですけれども、特にそれが強い。  ですから、そういう意味では、名目はアジアにおけるところの開発ということでございます。そしてまた、善意に金を貸そうとしておるかもしれませんけれども、実際その根底にある考え方は、私は非常に危険なものがある、こう考えるのです。ですから、アジア開発銀行の運営についても、私はそれを相当警戒をしてかからなければ、われわれがこの委員会において批判しておるように、そういう結果をたどらざるを得ないと考えるのであります。ですから、そういう意味では、今度のアジア開発銀行の設立については、強い疑いを持って私は見ておるわけです。残念ながらそういう疑いを持って見ておるわけです。この点については今後の運営——少なくとも外務大臣がお答えになったことに対して、野党はただ攻撃するだけで言っておるわけじゃない。そういう国民性をある程度知っておりますし、そういう運営がラテンアメリカ等にも行われておるという実績などを考えますと、やはりそういう傾向はあらわれてくるに違いない、こう見ておるから批判をしておるわけでございまして、私はその点はよく頭に入れてもらいたいと考えるわけであります。  そこで、次にお尋ねしますけれども、このアジア開発銀行と世界銀行との関係、世界銀行との関係というよりは、今日まで国際的には世界銀行や、あるいは、いわゆる第二世銀と呼ばれるものもございますし、その他国際的な金融の公社のような機関もございますし、いろいろあるわけです。そしてそれぞれ後進国の開発について活動が開始されておる。世銀があれば、あるいはそうしたものがあれば、それ以外に地域的な開発機関は不必要ではないかという議論さえあるわけですが、これについてどうお考えになりますか。
  300. 村井七郎

    村井政府委員 御指摘のように、地域開発銀行はいろいろあるわけでございます。対象地域がこれはアジアでないわけでございますので、世界銀行あるいは第二世銀という場合におきましても、全体の四割ぐらいでございますかしかアジアに回っていないという実情でもございますので、やはりアジアにはアジアの地域をもっぱら対象とした地域開発銀行があったほうがいいのではないかという考えに基づいて設立されたわけでございますので、もう一つあるから、世界銀行、第二世銀があるからいいではないかという考え方も可能ではありましょうけれども、これはほかの地域はそういう意味で重なっているわけでありますので、アジアにつきましても重なっていいのではないかという考えをいたしております。
  301. 平林剛

    ○平林委員 私は、お金はたくさんなければ、アジアの根本的な開発というか、そういうものはできませんから、各国アジアの貧困を解決するために協力し合うということは、そのこと自体にはちっとも悪いことはないし、むしろ積極的になってよろしい。もちろん各国事情はそれぞれありますし、財政的な限界というものがありますから、それはそれを越えてはならぬということは言えますけれども、方向としては正しい。ただしかし、世界銀行あり、第二世銀あり、いろいろな機構がある、そのほかに今回のアジア開銀があるということになりますと、少し幅が広まり過ぎたというか、その調整を一体どうするのかという点について、むしろ新しい問題が起きてきていると思うのです。政府の大方針としては大蔵大臣、あるいは外務大臣としては、世銀とか第二世銀というものと比較いたしまして、今後アジア開銀というものに力を入れていくのか、同じようにばらばらにやっていくのか、そこいらは一体何か基本的なものをお持ちなんでしょう。大蔵大臣と外務大臣にひとつ聞かせてもらいたいと思います。
  302. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私は、アジア開発銀行というものがアジアだけをにらんで濃密な経済協力ができるという体制はアジアのために非常に喜ばしい、そういうふうに考えております。したがって、これには日本協力すべきものである、こういうふうに思いますが、さらばといって、世界銀行だ、第二世界銀行だと、いろいろの世界金融機構があります。これに対する協力はこれをゆるめるというようなわけにいかぬだろうと思います。また、それに対しては世界全体の立場から協力する、それに対して日本が先進工業国として応分の協力をしなければならぬ、その理由が、アジア開発銀行ができたからといって減殺されるという関係にはならない、こういうふうに考えております。
  303. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 いま御指摘のとおり、世銀、第二世銀等がございますが、今度のアジア開銀は、御承知のとおりこの協約にもうたっておりますが、アジア的ということばを使ってあります。つまり、理事のほとんど大多数がアジアの域内から選ばれる、そうしてほんとうに自分らの住んでおるアジアというものをどうすれば最も繁栄せしめることができるか、その方法等について、外部からいろいろお世話をしてもらうこともそれはいいけれども、やはりみずからほんとうにからだで感じておるものが集まって、そうして開銀の運営に当たるということが、また資本金の多寡をこえて非常に適切な機能を発揮するもとではないか、こう考えております。
  304. 平林剛

    ○平林委員 まあニュアンスはありますけれども、何か同じようにやっていくというようなこと、外務大臣のは幾らかアジア開銀に力を入れたそうな感じがするのですけれども、こうしたことについては、政府はまとまった検討をしたことはないのですか。
  305. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 これは十分に関係者との間で協議をして、そうしてこの問題に対処しておる次第でございます。
  306. 平林剛

    ○平林委員 私は、アジア援助全般の心がまえというか、その取り組み方についてイージーゴーイングのような感じがするのです。アジア開発銀行の設立というものが、特にアジアにおける日本としてなかなかいい構想であるとするならば、太い線を入れてそれにやるとか、あるいはこうしたものについて、国の考え方というものにむしろ重点を置いてやるとかいう考えが何かあってわれわれに提案をされたり、国民を説得されるということが必要なんじゃないでしょうか。第二世銀もやります。それから世銀のほうもやります——日本経済力があって、そして幾らでもアメリカのようにそれを有効に使って、私たちのことばでいえば、世界政策的な一つの配慮があって使える国ならともかくとして、日本の場合にはさか立ちしてもあまりお金が出ない。なかなか苦労の多いところですが、しかし、アジアの国として何らかの積極的な姿勢を示したいという場合には、やはり力を集中していくという考え方が、少ないお金を有効に使うということになるのではないでしょうか。私らは、この場合には、やはりそうした検討が政府には必要だと思うのですが、外務大臣のお答えは、そうしたことをほんとうに検討しているのじゃない、まあ適当にそれぞれ相談してやっていこうという程度のことで、根本的な構想、基本的な理念がないように伺うのですが、どうですか。
  307. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 いま私の申し上げ方が少し足りなかったのかもしれませんが、とにかく世銀あるいは第二世銀はアジア的とは言えない。今度はアジア的な銀行、アジア的な運営をするということになっております。  でありますから、ちょうどいわば東京の大銀行が地方にくるのもそれはいい、しかしながら、やはり地元の乏しい金を寄せ集めて、そして相互銀行をつくる、そうしてきわめてきめのこまかい点に触れた金融をする、これもまた必要なんですね。私は必ずしもアジア開銀というものは相互銀行に該当するものだということを申し上げておるわけではないけれども、地元本位の開銀、銀行というものの特徴からいうと、まあ大体同じような理屈で説けるのではないか、こう考えております。  でありますから、どっちがどうということはございませんけれども、アジア開銀はアジア開銀としての特徴を発揮するように、これはぜひ力を入れなければならない。それからまた、世銀、第二世銀、こういうものの注意をアジアに振り向ける、そういう努力もしなければならぬ、こう考えております。
  308. 平林剛

    ○平林委員 この際、日本アジア地域に対するいわゆる経済的援助の実情について少し伺っておきたいと思うのであります。  日本として、このアジア地域全般の諸国に対する援助額の実情はどういうふうになっておりますか。
  309. 西山昭

    ○西山政府委員 昨年の実績から申し上げますと、日本経済協力は、四億一千万ドルに対しまして、アジアの地域が二億七千万ドルでございまして、六五・四%ということになります。
  310. 平林剛

    ○平林委員 ちょっとここ三、四年の経過を追って、いまの要領でひとつお話をいただきたいと思うのです。
  311. 西山昭

    ○西山政府委員 日本の一九六一年の実績が三億六千八百万ドルでございます。そのうち一億五千三百万ドルがアジア地域でございます。パーセントから申しますと四一・七%、それから六二年が二億八千二百万ドルでございまして、そのうちアジア地域が一億四千万ドルでございまして、四九%、六三年が二億六千四百万ドルでございまして、そのうちアジア地域が一億八千万ドルで六八%でございます。それから六四年は二億四千五百万ドル、そのうちアジア地域が一億九千九百万ドルでございまして、八一・二%、六五年は先ほど申し上げました数字でございます。
  312. 平林剛

    ○平林委員 いま援助総額のお話がございましたけれども、日本の国民所得から比べますと、この金額は大体どのくらいのパーセントになるのですか。
  313. 西山昭

    ○西山政府委員 国民所得につきましては、一九六三年が〇・五%、それから一九六四年が〇・四一%、それから昨年の六五年が〇・六三%でございます。
  314. 平林剛

    ○平林委員 国連か何かの決議でこうした援助については国民所得の一%を目標にしようではないかというようなことがあったと聞いておるわけであります。ただいまのお話によりますと、六三年で〇・五%、六四年で〇・四一%、六五年で〇・六三%ということで、いずれも援助の目標額に達しておらない。これに対して日本政府としてはどういう考えであるか、お聞かせいただきたい。大蔵大臣でも外務大臣でもけっこうであります。
  315. 村井七郎

    村井政府委員 国民所得の一%に達しますように、なるべく早い期間にこの実現をはかるというUNCTADの決議に賛成投票いたしたことは事実でございます。したがいまして、この目標に向かいまして、なるべく早い時期に、ここ数年のうちに達成すべく、私たちも国力の許す範囲内で最大の努力をしてまいりたいと思っております。
  316. 平林剛

    ○平林委員 外務大臣の都合があるようでありますから、外務大臣のほうに質問を集中することにいたしまして、ただいまのことはちょっとあとに回します。  インドネシアの問題についてちょっと外務大臣にお尋ねしたいと思います。  インドネシアは、申し上げるまでもなく、昨年の九月三十日、いわゆるスカルノ体制の危機と呼ばれる一つの事件がございまして、今日まで経過しております。一応大統領は健在でございますけれども、主導権はすでに陸軍にある。スカルノ大統領のいわゆるナサコム体制というものは実際問題として方向転換しつつある。この一つのインドネシアにおける政変につきしては、私どもいろいろな意味で関心を払っておるわけであります。外務大臣としては、最近の実情を見まして、あの九月三十日の事件以降、インドネシアの政情というものは安定したものと見ておられるのでしょうか、あるいは不安定な要素がなお残っておるものと見なければならぬのでしょうか、この点を一つお聞かせいただきたいと思います。
  317. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 まだ完全に安定したものとは言えないと私は考えます。ということは、マレーシアとの対決政策にいたしましても、軍事使節団が訪問し、さらに外務大臣が向こうの要人とバンコクにおいて会談をして、大体において見通しはついたとはいうものの、まだインドネシアに持ち帰って完全に大統領との話し合いがついたという段階ではないようであります。  御承知のとおり、スカルノ大統領は終身大統領というようなことになっております。憲法上はこれは許されないもののようでありますけれども、とにかくそういうことになっておる。そうして大統領であり、同時に首相でもある、こういうような関係からいたしまして、十分に国内体制がしっくりといっているということはどうしても言えないだろうと思う。どういうように国内の体制を整え、意見を一致さしてこの問題を処理するか、まだ結論は出ていない。しかし、きのうあたりから招集されました暫定国民協議会——これは暫定でありまして、本来の姿の国民協議会ではないが、国民協議会というものは国家の最高機関でありまして、大統領の選任権を持っている、憲法上はそういうことになっております。いま、選任の方法等が憲法できまったような方法でないために暫定ということばを使っておるようでありますが、その暫定国民協議会を開いて、そして国内の体制をもう少しがっちりしたものにするということになるのではないかと思いますが、まだその見通しが、われわれから見るとはっきりつかめない、こういう状況でありますから、きわめて安定し得るような方向にはいま推移しつつありますけれども、完全にすわったということはまだ言えないのではないかと私は考えております。
  318. 平林剛

    ○平林委員 包括的にいえばインドネシアの政情が安定をしていないのではないかという見方、私も何かそんな気がするのです。外務大臣のような専門家じゃありませんけれども、最近の新聞を見ると、またスカルノ支援というような学生たちの動きが、ジャカルタから発せられている報道によるとある。ついこの間まではスカルノ大統領の人気はがた落ちだったのが、今度はその急先鋒であった学生の中から逆な動きが出るということから、何か不安定なものがあるんじゃないか、まあ私ら、人の国の政権に対して、どちらがいいとかどちらが悪いとかいうことを軽々に申すべきではないと思うのでありますけれども、しかし、一般的にながめれば、国民の立場から見れば、まあデビさんというような日本人がいるとか、インドネシアの従来の関係から特別な親近感を持つ人もあるでしょうし、また、これらと貿易をやろうとする者にとっては、インドネシアの政情というものは非常に関心が深いということは事実であります。同時に、私これから質問を始めようとするインドネシアに対する緊急援助の問題もいろいろな意味で検討しなければならぬことがあるのではないかと思うのであります。  いろいろお尋ねしたいことはございますけれども、その点だけを少し確認をしておきまして、他の外務大臣に対する質問がありますから、私はあとでこの問題に関連をしてインドネシアの緊急援助の問題に関し、政府に対していろいろお尋ねしたいと思いますが、とりあえず外務大臣質問をこれではしょっておきます。
  319. 三池信

    三池委員長 武藤山治君。
  320. 武藤山治

    ○武藤委員 外務大臣が退席されるので、質問が前後しますが、一、二点大臣の認識のほどを伺っておきたいのであります。  今度アジア開発銀行加盟する国で、ソ連圏から援助を受けている国はどことどこだと大臣は知っておりますか。
  321. 西山昭

    ○西山政府委員 アジア地域の国でソ連から援助、経済協力を受けておる国といたしましては、インド、パキスタン、アフガニスタン、イラン、カンボジア等の国々がございます。
  322. 武藤山治

    ○武藤委員 まだインドネシアが落ちておるでしょう。
  323. 西山昭

    ○西山政府委員 インドネシアはいまのところアジア開発銀行にまだ加盟意思表示をいたしておりません。
  324. 武藤山治

    ○武藤委員 時間がないので詰めた質問をできませんが、ソ連の援助、あるいは融資、いろいろな種類の援助がありますが、条件は日本、あるいは他の資本主義自由国家群と比較した場合にどうですか。
  325. 西山昭

    ○西山政府委員 それぞれの国々によって違うかと思いますが、比較的低利の条件でこの融資をしているように承知いたしております。
  326. 武藤山治

    ○武藤委員 低利ばかりではない。贈与が非常に多いのであります。  大臣、贈与が多いという一般的趨勢については、その認識は間違いありませんか、いかがですか。
  327. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 贈与がどの程度か、私も正確な数字をよくつかんでおりませんが、かなり共産圏のほうは思い切ったことをやりますから、贈与も相当にあるかもしれない。
  328. 武藤山治

    ○武藤委員 そうなりますと、いま自由主義陣営と、ソ連を中心にしたブロックとの間の援助協定が行なわれておる。これはここ四、五年間世界の政治上の問題としてはかなり大きな問題になっておるわけですね。私はここで常識的に大臣の意見を伺いたいのは、片方は非常に低利で、くれるにひとしいような安い金利で、長期で出している、あるいはかなりの部分を贈与に充てる。片方、自由主義陣営は、アジア開発銀行をつくって、商業ベースで、しかも返済の要求をする。こういう形の援助競争を続けていった場合に、将来長い見通しに立ってものを考えた場合、一体どちらが援助競争でイニシアを握り、援助を受けた国々はどちら側にかなり向きを変えていくか、この面を考えた場合、そういう点、とどのつまりこの低開発国援助競争においてソ連圏、社会主義圏と自由主義圏との競争というものは将来どちらが勝つか。これは世界分割のやはり大きな一つの政治的戦略になるわけですからね。大政治家はそれを頭の中では考えてやっておるわけですから、そういう場合に、一体いまのような条件で競争していって、自由主義陣営というものが競争に勝っていくだろうか、それとも打ちのめされるだろうか。あなたの見解はいかがですか。あなたの感じとしての見通しはいかがですか。
  329. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 援助といいましても、ソ連等の共産圏の援助は主として、多分に政治的なものがある。そうして、ほとんど大部分が軍事援助ではないかと思うのです。ですから、軍事援助を受ける場合に、金を借りて——軍備をするということは新しい国にはなかなかできません。でありますから、軍備はしたいが金はない、普通の金じゃなかなか軍備というものには使えるものじゃない。そこをねらってと言っちゃちょっと語弊があるかもしれませんが、そこへソ連圏、共産圏から思い切った援助をやる、こういうのが従来の実績だと思います。しかしこれは、そう長い間の競争にはたして耐え得るかどうか。やはり合理的な借款の供与ということにして、そうして、たとえ乏しいながらも順繰りに返してもらうということになれば長続きする。私は、そういう意味においては長続きはしないのではないか、息が切れるじゃないか、こう考えております。
  330. 武藤山治

    ○武藤委員 結論において私も同感です。  そうなった場合、やはりそういう協定ができることになれば、息の切れないように、お互いが摩擦を最小限に食いとめるためには、やはり国連中心で低開発国の開発はしなければならない。やはり国連という場を通じてのみ低開発国の公平な援助開発というものが可能である。こういう地域的にブロック経済的につくっていくと、これは将来力の衝突を引き起こすような場面を生んでくる、そういう危険は皆無とは言えないわけですね。私ども社会党がアジア開発銀行に反対をしているゆえんのものも、国連を通じてそういうことはやるべきだ。中国もインドネシアもあるいは朝鮮も国連にすべて加入するであろうということはそう遠くない将来としてわれわれは考えられるわけでありますから、世界がそういう一つになるという可能性はあるわけですから、そういうときに障害になるものをそのときにぶちこわさなくてもいいように、初めから国連中心の低開発国援助の機関というものを整備し、そこから出発をすべきである、これが正しい姿勢ではないかと私は思うのですが、大臣の見解はいかがですか。
  331. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 私よりも大蔵大臣のほうが専門家でございますが、御指名でございますから私から申し上げます。まあ、いまでも国連の外郭機関でやっております。これはやはりだんだん強化することが望ましいと思っております。
  332. 武藤山治

    ○武藤委員 第二に、もう時間がとにかくありませんから詰めてお尋ねしますが、いま外務省がやっておる海外技術協力事業団、これは外務省の管轄で、外務省が低開発国に何をやっているかというと、この機構を通じて研修生をとにかく養成をする、あるいは技術者を派遣する、さらに民間とタイアップして何名かの派遣や研修生の受け入れをやる、主として教育の部門を担当しておるわけですね。技術教育部門の担当を外務省はしている。私は、いまのアジアの情勢というものを見たときに、それぞれ独立国家を目ざし、文盲をどうして退治するか、あるいは宗教の相克、他の近代国家には見られない要素というものがアジアには非常に多いわけであります。したがって、金さえ出せばアジアは何とかなるという状態ではないと思うのであります。こういう宗教の対立や、非常に水準の低い、文盲率の高いアジアに対して、特に黄色人種である日本として最も力を入れ、直ちにやり得べきことは何か、そういう点から私は十分低開発国援助というものは検討し直す必要があると思うのであります。外務省のいままでの実績を見ると、ビルマに対して研修生が、一九六四年までの間百三十三名、あるいはベトナムに二百名、ラオスに三十七名、カンボジアに二百二十七名というように、それぞれ一昨年までの間に研修生を受け入れておりますが、私はこの際思い切って、教育制度、いわゆる技術教育によるアジアの開発に日本が最大の貢献をしてみようじゃないか、そのために国立のアジア専門の技術大学を日本につくって、これはアジアの子弟で頭の優秀なのを、貧乏であろうが何であろうが、日本政府が一切三食まかなって、衣類を着せて、日本でひとつ技術教育をしてやろうじゃないか、一年に三千人くらいずつやってごらんなさい。二十年後、三十年後のアジアというものはどういう姿に変わっていくか。日本に対する感情をどう持ち、日本の製品に対する見識をどう持つかということは、教えずして私はアジアに根が張ると思うのであります。  かつて、私どもの大先輩である大山郁夫先生が衆議院本会議場において田中義一内閣を糾弾したときの演説文章を読みました。そのときに大山先生は、田中内閣がだんだん軍事費を増大し、戦争の方向に進むのは危険である、このことは日本をほろぼします、それだけの金をアジアの子弟を教育するために、また、日本の優秀な子供を育英制度によって教育をしてアジアに派遣することによって、戦わずしてアジアは黄色人種のアジアとなって、日本の血筋というものがこの中にぶち込められてって、大きな根を張るものであると言われて、戦争政策反対だという理由の一つにそういう大構想を打ち出したのを、私は先見の羽ありといま読んで感激をいたしております。いま、三十年を経過した今日、日本アジアに対する今日の政策はまことに貧困といわなければなりません。  この辺で外務大臣、年々受け入れている研修生を各大学にばらばらに請け負わせるよりも、ひとつ、国がアジア諸国の青年教育をする技術大学をつくって、もっと統一的に根本的にこれらのものに対する力を入れたらどうか、こう考えるのでありますが、この私の構想に対して外務大臣の御見解をひとつ承りたいのであります。
  333. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 この間の東南アジア開発閣僚会議におきましてもこういったようなアイデアがちらりとほのめいておったのであります。しかし、それはほんとうのアイデアでありまして、時間もありませんので掘り下げた協議はできなかったのでありますが、そういったような考え方を持っている人もだんだん出てまいっておりますので、趣旨としてはまことにけっこうなことであり、そのねらいとしてはまことに適切である、こう考えておる次第であります。  さて、どういう方法、手段でその目的を達成するかということにつきましては、実際問題としてはなかなかむずかしい問題もございます。まあ、最初にことばの問題等もある。しかし、こういうことはもちろん克服できない障害ではございません。十分に御説を拝承いたしましたので、今後研究したいと思っております。
  334. 武藤山治

    ○武藤委員 外務省の役人にお尋ねしますが、現在の研修生は、比率は大体どういう大学にどの程度配分をしているのですか。また、アジア各国からの日本に来ている各国の研修生の数は、一年間まとめるとどのくらいになりますか。
  335. 西山昭

    ○西山政府委員 三十数種のコースがございまして、それぞれの研修のセンター——関係各省と協力しましてそれぞれの研修センターに配属いたしまして研修を実施するわけでございまして、年間の人数は全部で千名以内でございます。
  336. 武藤山治

    ○武藤委員 一年間に千名程度ですね。
  337. 西山昭

    ○西山政府委員 千名弱です。
  338. 武藤山治

    ○武藤委員 年限はどのくらい日本で研修をしていきますか。
  339. 西山昭

    ○西山政府委員 その種類によりまして非常に違うわけでございますが、数ヵ月を大体基準にいたしております。半年ぐらいでございます。
  340. 武藤山治

    ○武藤委員 現在ですら年間千名前後の若い人たちが、あるいは中年で研究しようという人もおると思いますが、こういう人が日本に来て勉強しておる。これにもつともっと力を入れることが、時間はかかるようであるけれども、アジアの真の意味の低開発国に対する日本の貢献という点からいって、将来なるほどと思う実りある方法であると私は考える。ぜひひとつそういうことについては真剣に検討願いたいと思います。  大蔵大臣、いまの構想については、金を縛るほうの立場に立つあなたとして、そういう構想に対してはどんなお感じを持ちますか。
  341. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 金を預かるほうの立場といたしましては、あれもやれこれもやれと言われても、全部が全部はできません。しかし、あなたのおっしゃるように、人的な技術協力、これは非常に大事なことだ、いまいろいろばらばらないき方になっておりまして、私はこれは残念なことだ、こういうふうに思います。あなたのおっしゃるような方向を考えてみたい、かように考えております。
  342. 武藤山治

    ○武藤委員 第三問は、いま日本の借金、債務は、賠償を含めて総額は現在どのくらいありますか。
  343. 西山昭

    ○西山政府委員 賠償につきましては、総額十億ドル程度でございまして、その履行率はほぼ半分でございます。
  344. 武藤山治

    ○武藤委員 賠償残額は五億ドル、こういうことですか、いまの答弁は。
  345. 西山昭

    ○西山政府委員 正確に申し上げますと、賠償の残額は約三億七千万ドルでございます。先ほどの説明は間違いでございました。
  346. 武藤山治

    ○武藤委員 それ以外にアメリカのガリオア、エロア資金の返済、これがまだあるわけですね。これは、いまガリオア、エロアのアメリカに対する債務の残額は幾らありますか。
  347. 村井七郎

    村井政府委員 ガリオアの残高は三億七千五百万ドル相当額、千三百五十億円であります。
  348. 武藤山治

    ○武藤委員 アメリカに返す金だけでも三億七千五百万ドル千三百五十億円、これはまだ膨大なものが残っておるわけです。これをいまアメリカが非帯に国際収支が悪いというので、従来約束した年限では長過ぎるからもっと一括支払ってほしいというような要望が日本政府にきている、こういう話を聞いておりますが、そういう話は外務省に入っておるのですか。もし入っておるとしたら、それに対する日本政府態度はどういう態度をとろうとしておるのか。
  349. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 さような話はございませんです。また、ありましても、わが国の外貨事情はこれを受け入れるような状態ではございませんです。
  350. 武藤山治

    ○武藤委員 外務大臣、世界会議日本は一応先進国の仲間入りをさせられたというような取り扱いで、低開発国に対する援助も国民所得の一%程度を出す、金利も、昨年七月のDACの本会議で採択をされた八〇%以上を贈与、または二十五年以上、金利は三%以下、こういうきつい条件で日本も低開発国の援助の仲間入りをしなければならぬ、こういう範疇に日本は入れられたわけでございますね。ところが、いま申し上げたように、賠償は三億七千万ドル、借金はガリオアだけでも三億七千五百ドルもある。日本という国は、他の国と比較して、まだ戦後処理のこういうものもあるし、先進国の仲間入りをして一%の負担を持つということはまだたいへんなんだ、特殊事情があるのである、こういうことを外務省は国際会議でもっと主張すべきではないか。国民所得は世界各国の比較をして二十一番目でしょう。そういう状態で、しかもこういう処理未済のものが残されている状態でありまするから、あまり大国意識にとらわれて、実力以上の背伸びをして後進国援助の仲間入りをさせられるというのは、どうも不合理だと思うのですが、外務大臣の御見解はいかがですか。
  351. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 賠償等その他の無償供与ですか、それはすべて経済援助の中に入っております。しかし、これはまあやむを得ずやっているのでありまして、日本としては決して十分な余裕があってやっておるわけでもない、そういう点ももちろん考慮しなければならぬと考えます。
  352. 武藤山治

    ○武藤委員 そういう考慮をしなければならぬけれども、そういうことを国際会議の席上で、日本は国民所得も世界でまだ二十一番目だ、それから戦後処理のこういう問題もある、アメリカに対するガリオア返済もまだ相当の年月かかる、そういうような状態であるから、科学水準が高くなり、造船技術は世界一だ、鉄鋼は第三位だというような、そういうはなやかな部門だけを見てものを言わないで、もっと低い底辺のもの、そういう悪条件のもの、そういうものをやはりもっと力説すべき段階だろうと私は思うのです。そういう点、外務省は少々弱腰過ぎて、あるいはみえを張り過ぎて、実力以上の背伸びをし過ぎて負担が過重になっているうらみがあるのではないか、こういう感じを受けるわけであります。そういう点について、もっと外務省としては国際会議の場でいま私が申し上げたような点を力説してほしい、すべきである、それは国民の声だと思います。そういう点はいかがでございますか。
  353. 西山昭

    ○西山政府委員 国際会議におきましては、御指摘のような日本事情は十分に説明しておるわけでございます。昨年のDACの決議におきましても、日本のような金利が高い国を一ぺんに低くするわけにもなかなかいかないだろうということで、例外が若干認められました。ただし、毎年その目標に達成するようにどういうような努力をするか、その努力の報告をしてもらいたい、こういうようないきさつもあったわけであります。外務省といたしましてもこの点は十分注意して国際会議には対処している次第であります。
  354. 武藤山治

    ○武藤委員 次に第四問は、対インドネシアに対する緊急援助の問題は、九月三十日の政変が起こり、インドネシアが自由主義陣営に近づいてきたというので急にだいぶ政府は思い切った措置をとった。新聞の報ずるところによると、三千万ドルを気前よくぽんと貸そうということをきめた。しかもそれは八年の期限で四年間据え置きにしている、金利は五・五%である、そういう条件で貸すことをきめたというのであります。ところが、その貸した金が取りやすいように代金積み立て方式をとって、日本から輸出をしたものを積み立てておいて、向こうが買ったものを積み立てておいてこれを返済させようと考えている。こういうような制度がとられるというので、アメリカと西ドイツから日本の外務省に、ライシャワー大使からも申し入れがあって、これはどうもIMFの約束に違反する、こういうような申し入れがあったと聞いております。大蔵省はまだ具体的にそういう話は聞いておらぬからということで新聞に談話を発表しておりますが、その後のこれの抗議についての処理は一体どうなったか。その辺のことを明らかにしていただきたい。
  355. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いまお話の積み立て方式ですね、これはちょっと意味をお取り違いになっておられるのじゃないかと思います。三千万ドルの借款を供与いたしますのは、これは国際ベースインドネシアの既存の債務のたな上げ問題、それから新規借款問題、これをやろう、それが、大体九月にならぬと実施できないのじゃないかという見通しなんです。それまでのつなぎに何とか金がほしい。なぜほしいかというと、いま輸入がなかなか円滑にできないような外貨事情でございますので、新しい外資を緊急に必要とする、そういうことになっておるのです。つまり、インドネシアの要求するところは、物がほしいのです。そこで物を買うための資金を供与する、こういうことになるわけなんです。ところが、三千万ドルの借款を供与するといいますと、その三千万ドルのものは買えるでありましょう。しかし、それっきりの話なんです。私は、政府としてはそれじゃいかぬ。これは経常貿易、いま日本インドネシアの間はとだえておるような状態です。変則的な香港貿易とか、そういうものはあります。ありますが、正常のルートの貿易はとだえておる。これを再開するということをこの際考えるべきではないかというふうに思うのでありますが、この三千万ドルの借款インドネシアに対しましても、日本インドネシア貿易再開にきわめていい雰囲気を与える。そこで、インドネシアの銀行と日本の東京銀行との間にインドネシナから輸入する代金の一部を積み立てておく、それを日本から輸出する物品の決済に充てる、こういうふうな機運ができ上がったわけであります。これは三千万ドル借款の反射的効果であります。そういうルートで貿易が開かれていくということになりますれば、これはインドネシアの要望する、つまり物を取得する道が——日本インドネシア貿易で最も高いシェアを持っているわけでありまするが、その日本との間におきまして、保険なんか再開はなかなかむずかしい状態であるその中において正常貿易が再開される、私はこれはインドネシア経済再建のためにきわめて有意義なことになっていこう、こういうふうに考えておるのです。  それに対して、アメリカあたりでは何か勘違いをされたようであります。何か日本インドネシアだけが貿易をする、うまいことをやる、こういうふうに勘違いされたようでありまするが、そうじゃない。日本の意図するところは、日本の利益というよりは、インドネシアの欲しておる物を与えてやるその道を開く、これは非常にけっこうだというふうに考えるのですが、これがたまたま三千万ドル借款の反射的効果として銀行の間で盛り上がってきた、こういうことであります。おそらくこの誤解は氷解されることであろう、こういうふうに思います。
  356. 武藤山治

    ○武藤委員 しかし、ドイツやアメリカが日本に抗議を申し込むというからには、何かの根拠がある。それはIMFの規定によれば、経常的国際取引には制限をしてはならぬという一応の基準があるわけですね。そういう経常的国際取引であるという貿易を、積み立て方式でもってやるということは、向こうに自分だけで買える力を与えてやるのだというけれども、やはり債権を将来確保するという一つの道になるわけですね。積み立てておいて、将来その分だけ新たに貿易をする分についての債権確保というものは保全できる。そうなると、まだインドネシア債権会議を開いていない。方々の国が貸しておる、それなのに、日本だけはそういう形で、将来の貿易だけはきちんと確保しておこうという意図があると思われるならば、私はIMFから違反だと言われる筋はあると思うのですね。そこらを大蔵省の談話を読むと、銀行間でやったのだ、政府がやったのじゃない、だからこれは違反にはならぬだろう、こう逃げた発言をいたしているわけであります。しかし、これは一体西ドイツもアメリカもすっきり了解がついたのかどうか。大臣のいまの答弁では、つくであろうという見通しを述べておるのですが、現状ではどうなのですか。ついたのですか、まだつかぬのですか。
  357. 村井七郎

    村井政府委員 技術的な点にわたりますので、私から答えさせていただきます。  いまの御質問の趣旨には問題が二つございまして、一つは、将来の債権国会議において、ほかの債権国をある意味では阻害しないかという点が一点、第二点は、日本が八条国の義務違反にならないかという点かと思います。  第一点につきましては、将来の債権国会議におきまして対象となりますのは、延べ払いの残高をどう処理するかという問題でありますので、これは長期の債権というものでございますが、いま大臣お話しになりました輸出入の決済というものは、非常に短期の、普通の現金決算の話でございます。そういう意味におきまして、将来の債権国会議関係におきまして他を阻害するという関係は全く出てこない、全然違った範疇の問題であるというのが第一点でございます。  第二点の、八条国の義務違反につきましては、なるほど経営取引において、もし全輸入代金を日本からの全輸出代金に充てるということが銀行間の取りきめ等できまっておりますれば問題がありますが、そうではございませんで、輸入代金を積み立てまして、日本輸出が行なわれますときは、そこから引き落とされる、つまり、日本輸出業者にとりましては、東京にそういう勘定がございますので安心して輸出する、したがって、保険等が再開しておりません現在の段階におきまして、それにかわる安心感を与える一つの方法ということになっておるだけでございまして、これは必ず日本輸出代金は日本輸出にしか充てられないという、何といいますか、エスクローと申しますか、そういう非常に限定的な、制限的な約束ではないわけであります。したがいまして、これは八条国違反にはならないということでございます。現に、アメリカ等が多少そうじゃないかという軽い気持ちでおりましたけれども、その間の話をいたしましたら、直ちに氷解いたしまして、これは全然問題がないということで了解し合っております。
  358. 武藤山治

    ○武藤委員 西ドイツはどうですか。
  359. 村井七郎

    村井政府委員 西ドイツも同様でございます。
  360. 武藤山治

    ○武藤委員 よろしゅうございます。
  361. 平林剛

    ○平林委員 ただいまのインドネシアに対する緊急援助の問題について、いまのお答えですと、日本から輸出する物品の資金に充てるために三千万ドルまず積み立てる。確かに経常貿易を開かせていくためには必要な措置かもしれませんし、また、日本としては安心して輸出できるという考えも一面にありますけれども、現在のインドネシアの政情、経済情勢その他から見まして、国民の側に立つと非常に理解できない問題が多い。そこで、いろいろ政府に、これから私はお尋ねをしてまいりたいと思うのであります。  先ほど外務大臣にお尋ねをいたしましたところ、インドネシアの政情はきわめてまだ不安定なものがある、そして、今後なおマレーシアの問題につきましても、それから肝心のいわゆるスカルノ大統領の指導するナサコム体制のくつがえったことに対してもどうなるか見通しがわからない、こういう状態でございます。ところが、今度のインドネシアに対する緊急援助を見ますと、大蔵大臣がお答えになったように、インドネシアに対するいまの経常貿易のルートをつけるだけでなくて政治的なものがある、こういうふうに見ておるわけであります。そこで、これらの問題についていろいろお尋ねをしてまいりたいと思うのであります。  最初に、インドネシアの外貨事情についてどうなっておるか、そのことを明らかにしてもらいたいと思います。
  362. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 インドネシアは外貨事情が非常に悪化しておりまして、今日では外貨の手持ちはきわめて乏しい状態になっておる、こういうふうに思います。これは外国の外貨事情のことでありますから、数字等をもって申し上げることは差し控えたいと思います。
  363. 平林剛

    ○平林委員 インドネシアの外貨事情については、大臣は数字は避けられたのでありますが、ここ三、四年急速に悪化してまいりまして、一九六四年の九月当時はもう千五百万ドルというような事情にあると聞いておるのであります。これは今度のインドネシアの緊急援助の要請等から考えますと、さらに悪化したように思われるのでございますけれども、きわめて乏しいという意味は、大体その辺をさすと理解してよろしいのでしょうか。
  364. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 非常に悪化しているということは申し上げられると思うのですが、これはどの程度に数字で悪化しておるのかということは、外貨事情というのは、御承知のとおりわが国の問題としても、わが国がこれを発表するというのはきわめてデリケートな問題でありますが、そういうことで、外国事情をここで数字的に申し上げることは差し控えさしていただきたい、かように存じます。
  365. 平林剛

    ○平林委員 ただ私ら、この際インドネシアに緊急援助をする以上は、そうした事情承知の上でやられた、こう見なければならぬ。それだけに重要視するわけです。同時に、近く債権国会議が開かれる。ただいまの武藤さんの質問に対しては、九月ごろ開かれるようです。債権国会議の開催を待たずに日本が独自でこの措置をとられたというところには、やはり私たち批判の余地があると思いますし、同時に、インドネシアには膨大な対外債務がある。こうした事情については御存じであろうし、お調べがついておると思いますけれども、国費を緊急援助として三千万ドルやる以上は、そうした問題について不安ないかどうかという点を国民は心配をすると思うのでございまして、インドネシアの対外債務状況、こういう点についてひとつ明らかにしてもらいたいと思うのです。
  366. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 インドネシアの対外債務は、長期、短期合わせて大体二十七億ドルというふうにいわれております。そのうち二億ドル弱くらいが短期債務で、残りの二十五億ドル程度が長期債務である、かように見られております。
  367. 平林剛

    ○平林委員 今度のインドネシアに対する三千万ドル相当の円借款したということは、その目的は何ですか。
  368. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 目的は、八月までに必要とする物資の輸入代金であります。インドネシアから見た輸入代金であります。
  369. 平林剛

    ○平林委員 五月の二十八日に、日本インドネシア両国の共同声明が発表されました。私もこれを一度読んで見たのですが、これによりますと、日本側は、インドネシアにおける安定が東南アジア、ひいてはアジア全体の平和に寄与すること大なるものありとの見地から、同国の政治経済の安定に多大の関心を有するものである旨を表明する、日本側としても真摯な協力を惜しまない、そしてなお、日本側は当面のつなぎとしてインドネシアが緊急に必要な物資を供給するため、同国に対しとりあえず三千万ドル相当の円借款を供与することを約した、こうあるのですね。  そこで、一つには、インドネシアの政情が不安定なときに、そしていまの情勢から見ると、従来の大統領のいわゆるナサコム体制というのですか、宗教と共産主義とか、そうした全般の調和をとってやるという考え方に対して、それの反対の方向の政治勢力が動いて九月三十日の事件になったのですが、こういうような、国の一つの方向が変わりつつあるときにこの緊急援助をやられたということに一つの政治的な色彩を感ずるのであります。これは外務大臣に聞こうと思っていたのですが、そういうことをおやりになるのはいかがなものであろうかということが一つあるわけです。  それからもう一つは、ただいまの三千万ドルの緊急援助というものが、八月までの経常貿易の数字と大体合わしたような形でこれのつなぎとしてやるということでございますけれども、そういうことをおやりになって、インドネシア経済事情——ドルの手持ちであるとか、あるいはいろいろな輸出各国とも事実上ストップになっておるような経済状態悪化のときに、はたして償還の見込みがあるのかどうかという点にも問題がある。  この二つの意味では非常に私ら疑問を感じておるのですが、その点はどういうふうにお考えになっておりますか。前半はたぶん外務大臣の見解をお聞きするようになりますけれども、大蔵大臣もこの間まで臨時外相代理をやったのですから、そういうお気持ちでお答えをいただいて、二つの疑問に答えてもらいたいと思う。
  370. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 日本側のインドネシアに対する立場は、どういう政権ができたからどういう援助をするというふうなことではない。今度三千万ドルの借款供与をし、なおその後は引き続いて長期的な観点で国際的に協力してやろうという態度を示したわけですが、それはあの九月三十日の事件が起こった後においてインドネシア経済事情というものは非常に悪化しておるわけです。昨年の暮れに至りまして諸外国との間に正常貿易が途絶するに至った、これは御承知のとおりでありまするが、その事態を放置することはできない。しかも、いま申し上げましたように、各国は二十七億ドルにも及ぶ債権を持っておる、わが日本もその一割程度債権を持っておる、そういうことにも関心を払わなければならぬわけであります。そういうことでありまするが、ともかく政治情勢は、外務大臣からもお話がありましたが、いまはっきり安定したとはいえない、しかし安定に向かいつつある、こういう判断であります。  それから、経済情勢はどうだというと、私は、三つの根拠に立ってインドネシア経済再建に期待が持てる。  一つは、インドネシアの新しい政権が内政面におきましても非常な勇断をもって財政の収支均衡に乗り出した、こういう点です。それから国際収支面の改善、このために輸入を節し、輸出を増進するというためにいろいろな施策を打ち出してきておる。そういうインドネシア政府経済の自力再建についての意欲、これが第一点です。  それから第二点は、しかしそうはいってもなかなかインドネシアは一人では歩けない、そこで国際機構に復帰するという問題があるわけです。特にIMF国際金融機構に復帰するという問題、これがなくてはならない。ところが、すでにそういう方針をきめ、もうIMF当局とも接触を始めておる。これは私は、インドネシアの長期の安定のために大きな支柱となるであろうというふうに見ておるわけです。  それから第三は、いま申し上げました二十七億ドルの債務を一体どういうふうに処理するかという問題、また、その債務処理に関連いたしまして、新規借款を必要とするということについて国際的にインドネシア協力しようという機運が盛り上がり、国際コンソーシアムの結成というようなところに動きつつある。  これらの点を考えまするときに、私は、インドネシアにこの際それまでのつなぎとして借款を供与することは必要であり、また、これが償還は不安はない、こういうふうに考えておるわけであります。
  371. 平林剛

    ○平林委員 いまあげられたいろいろな事情というものは、私は非常に政治的なものでないか、という疑いをよけい強くするのです。  第一に、新しい政権ができた、これに対して内政面にいろいろ努力しているから、これをあと押しするんだということは、まだインドネシアのいろいろな国民の気持ちが実際上安定していない。スカルノ大統領を支持する者、それから九月三十日以降新しく実権を握ったスハルト陸相の勢力を支持する者、いろいろあると思うのです。それは大局的に見れば、前者はどちらかというとアメリカにあまり好意的でなかったし、そのゆえにいろいろな国際的な機関から脱退をしたりするような動きを見せた。今度の新政権は、どちらかというと、IMFにも復帰を見せようとするし、中国との関係もうまくいかない、極端に言えば、たくさんの共産主義者を殺して、何十万といわれておりますけれども、新しい体制をしこうとしておる。そうかと思うと、先ほど私が申し上げたように、今度はスカルノ大統領支持というような動きもあらわれている。外相のことばをかりれば、きわめて不安定なものである。そういうときに三千万ドルの緊急援助をやることは、福田大蔵大臣のことばで言えば、新政権に対するプッシングになる。これはきわめて国の政治的、国際政策的方向に影響を与えようとすることに日本が力をかしておる、こういう姿勢にとられはしませんか。私は、そこの点が問題だと思うのです。そういうねらいを持って行なわれる援助というものは、何か日本独自のものよりも、国際的ないろいろな相談の結果によるものとみなされるおそれがあると思うのです。きわめて政治的だと思うのですが、これはどうなんでしょう。
  372. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 三千万ドルにつきましては、他のどこにも相談をいたしておりません。これはもうどこの国に聞いていただいても、日本から相談を受けませんということがはっきりしております。ただ、日本が三千万ドル出したといって、インドネシア解決できるものではないのです。そこで、やはり国際的ベース解決をするというので、ただいまそういう方向の動きをいたしておる。これは三千万ドル以後の問題であります。  政権によって金を出すのじゃないか、出し方が違うのじゃないかというお話ですが、そうじゃない。川島さんが先般インドネシアへ行った。これはスカルノ政権のときです。そのときでも三千七百万ドルの借款の約束をしてきております。これは全部実行には至っておりませんが、そういうふうに、スカルノ政権下でも日本はやるべきだと考えた場合にはやっておるのです。今度は政権が安定するかどうか、これはもうスカルノであろうがだれであろうが、その政権の安定が経済の安定と非常に結びついている。経済の安定と政治の安定がなければ日本貿易も正常にはやっていけない、また、債権も確保できない、こういうような状態になるのであります。そういうようなことから、経済の危機を切り抜けて正常の貿易を拡大し、また、債権を確保する、そういう意図を持ちまして今回つなぎ融資三千万ドルを行なうということにいたしたわけであります。
  373. 平林剛

    ○平林委員 いまのお話、これは主として大蔵大臣より外務大臣と議論しなければならぬ問題だと思いますけれども、今度の経済援助というものが、他の国、具体的に言えばアメリカとの間にいろいろな話し合いがないままに行なわれたものとは見ていません。   〔委員長退席、金子(一)委員長代理着席〕 この問題について関心のある国民は、そういうことをうすうす感じておる。  現に、今度の経済援助は日本だけが行なったのではない。イギリスも行ない、その他の国も行なったと聞いておる。そのイギリスが行なったのにはイギリスが行なっただけの一つの政策意図というものがあるように聞いておるわけであります。たとえば、いまインドネシアとマレーシアとの間に国際的な紛争がある、これを何とか解決をしなければインドネシア経済というものはいよいよ破綻してしまう、そこで、このインドネシア経済的援助をする前提としてイギリス側から主として主張したのは、マレーシアの問題を解決してもらいたい、イギリスでもマレーシア紛争のためにいろいろ使っているお金、兵力は相当な数があるし、それに要する経費もたくさん要る、イギリス自体は自分の国の国策を考えて、そうしてマレーシア問題の解決についていろいろ注文をつけておる、そうして先回インドネシアとマレーシアとの間の握手ができたことは事実です。これは先ほどの外務大臣お話ですと、まだなかなかそう簡単にはいかない要素があるようにお聞きしましたけれども、しかし、一応イギリスはイギリスとして自分の国の経済ということを考えながら、同時に、これはことばで言えば、アジアにおける平和問題ということを考えながらインドネシアに対する経済援助というのを考えておる。  私は、日本の場合はそれがないような気がする。いま大蔵大臣は、アメリカとの間に話し合いはないと言われましたけれども、ほんとうにそう言えるでしょうか。先ほどお述べになりましたことは、日本の国民経済から見てどういう点に利益があるかという点をもう一度明らかにしてもらわなければ納得できないような気がするのです。
  374. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 第一は、アメリカと話はしておりません。これは全く日本単独の見解でやったのであります。  それから第二は、どういう国益があるか、これは、日本貿易で立っておる国と言っても支障はないと思いますが、その日本日本だけの力で貿易を伸ばしていくことはとうていできない、やはりこれは世界の国々とともに繁栄するという考え方、特にアジアの近隣諸国との間に貿易を伸ばすという基本的な考え方をとらなければならぬと思うのです。アジアの諸国は、御承知のように新興独立国が多いわけでありますから、いずれもこれは貧困です。その貧困な過程において政治の不安定というものも生まれるというようなことからますます貧困になる。それが端的にまたインドネシアに最近はあらわれてきたわけです。そういう事態に当面いたしまして、世界各国協力をいたしましてこれが経済の安定に努力してやる、これはもう日本の国益を考えても、また、もう少し広い意味においてアジアの安定ということを考えてみましても、これはもう当然日本がやらなければならぬことだ、こういうふうに思います。  そのやり方いかん、こういうことになりまするが、さしあたり三千万ドルの借款を供与して、これを崩壊寸前においてつなぎとめる、しかる後において国際ベース会議を持って恒久的な再建策を講ずるようにしてやることに協力をする、これはもういま日本アジアにおいてともかく先進工業国といわれるただ一つの国である、その一つの国の立場としてはこれはしなければならぬ当然のことである、そういうふうに確信をいたしております。
  375. 平林剛

    ○平林委員 ただいまの大蔵大臣確信には私はあまり信頼を置けないのです。ほかのことは別にしても、これはあまり信頼を置けないのです。同時にまた、国益を考える場合輸出を増強させることは日本の国是、これは私もわかります。しかし、インドネシアは、先ほど申し上げましたように外貨事情が非常に悪い、それからまたマレーシア紛争のために軍事費の調達が非常に困難である、また、そのために経済は破局に近いところまでいった、おまけに現在インドネシアにおけるインフレーションというのは驚くべきものがある、そして先ほどお話がありましたように、対外債務も二十七億ドルある、一説には五十億ドルくらいあるという説があるのです。私はよくわかりませんけれども、国会で答弁をなさっておる政府お話ですと二十七億ドルある。おまけに輸出、輸入の状況をながめてみますと、現状況インドネシア輸出は石油関係を含めても年間大体五億ドルくらい、輸入はかりに昨年並みに見ましても三億ドル、こういう状況でございますと、膨大な債権、外貨危機、そしてインフレ、軍事費の状況考えまして、私は、金額は三千万ドルでございますけれども、一体どこを押したらこうしたお金の返済の見通しがあるのか、返済計画について政府は自信を持ってこういうような措置をおやりになったのかわからないです。どこに根拠があるのか、そういうことなんです。返済計画の見通しというのがちゃんとあって援助をされるのか。日本の国是として輸出振興ということは私は否定しませんけれども、これも輸出振興になるのですか。私はその点が今度の三千万ドル援助についてはどうも理解できないのです。
  376. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 返済と申しましても、もちろんこの代金につきましては据え置き期間があります。その先数ヵ年間に返済をするということになるのが常識的な結論だと思います。まだそういう細目はきめておりませんからそういうふうに抽象的に言うほかないのですが、ともかく先のことなんです。先のことを考えますと、先ほど申し上げましたように、これはインドネシア経済というものは再建の見通しというものはある、こういうふうに考えわけなんです。しかも、先ほども申し上げましたが、この三千万ドルの反射的効果として正常貿易日本との間に始まろうとしておる。しかも日本の危険なしに始まろうとしておる。それによって短期の貿易決済というものが順調にできていこうとしておるのであります。そういうことを考えますときに私はこの三千万ドル借款というものはこれは非常に有効に働いていくであろう、こういうふうに確信をいたしております。
  377. 平林剛

    ○平林委員 一体この三千万ドルというのは、どういう使い道がされるのでしょう。
  378. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 この三千万ドルで物を買うということなんです。インドネシアインドネシア経済運転のために必要な物資を買う、こういうことです。聞くところによりますと、米のほうは大体手当てができた。そこで三千万ドルの中で大きなものは、一つは繊維、それからもう一つは肥料、これがまあ大口なんです。あと工場を動かすためのいろいろな原材料、こういうことになるわけでありますが、それらは向こうから申し入れがすでにあります。それを日本側で見て、意見を述べて、そして相談してきめる、こういうことに相なります。
  379. 平林剛

    ○平林委員 インドネシア経済再建というものは消費財によって行なうべきものか、あるいは港湾とか道路、船舶、こうしたものを重要視すべきかということでずいぶん議論があります。いまのお話ですと、繊維だとか肥料、繊維は消耗品と見ていいでしょうね。肥料は、それはあそこの米が足りないということで、とりあえずそうした問題についての協力ということはできるかもしれませんけれども、全貌を見ないとまだそれがどういうふうになっておるかわからぬし、三千万ドル全般の状況というのはいまのお答えではわかりません。一体この三千万ドルというのは、日本として、日本の国是も考えてやるとするならば、どういう方向に持っていこうとしておりますか。消費財専門でいきますか。インドネシアの注文によってもうそのとおりやっていくつもりなんですか。
  380. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 インドネシアからは三千万ドル以上のいろいろな希望のリストを出してもらうというふうにしておるのです。その中でなるべくこちらからも意見を述べて、インドネシア経済再建に残るようなもの、そういうようなものにいたしたい、さように考えております。
  381. 平林剛

    ○平林委員 融資の条件は。
  382. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まだきめておりません。
  383. 平林剛

    ○平林委員 融資の条件をきめていないということは、両国の間で合意に達しないということだと思いますが、日本としてはどのくらいのことを考えておりますか。
  384. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まだこれから——ぽつぽつ始まっているかもしれませんが、日本ではこういう条件で話をしてみたいというのをきめております。きめておりますが、まだ話の過程、最中の問題でありますので、ここで申し上げることは差し控えさしていただきます。
  385. 平林剛

    ○平林委員 そうすると、合意に達しなければこの融資は行なわれない、こう考えてよろしいのですか。
  386. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 そうお考えになってよろしゅうございます。
  387. 平林剛

    ○平林委員 緊急援助というからには、そうした問題についていつまでもというわけにいかないわけですね。向こう側はどういう希望を持っておられますか。
  388. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 なるべく早くきめたいと思います。もうそう遠くない時期にきまるのではないか、さように考えております。
  389. 平林剛

    ○平林委員 日本の国民の気持ちとしては、かなり政情不安、経済的にも不安、従来の焦げつき債権も未払い、債権国会議を開かねばならぬというようなところに日本が三千万ドルの融資をする以上、こういう条件でやってもらいたい、日本国としてはどういう考えがあるかということは聞きたい、いや聞かなければならぬと思うのですけれども、幾ら交渉であるからといっても、日本としての態度はやはり一つの限界を持ってもらわなければなりません。そういう意味では、これは交渉だから発表できないというけれども、日本だって何もそんなに——日本の国是として、あなたのお話ですと、りっぱな御意見をお持ちなんですから、どの程度のことを考えておるということは国民に話す義務があるのではないでしょうか。
  390. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 大体、通常の輸銀融資を基準にしていたしたい、かように考えています。利率、それから据え置き期間、償還の年限、さようなものであります。これはすでに方針をこちらとしてはこういうふうにしたいということをきめて、向こうにタッチを始めております。大体日本側の意見で落ちつくのではないか、かように考えております。
  391. 平林剛

    ○平林委員 インドネシアは、先ほどお話があったように、大体五千万ドル程度融資を希望しておったと聞いておるのでありますけれども、この三千万ドルというのはその五千万ドルの中での問題、こういうふうに考えていいんですか。
  392. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 五千万ドルというのは、こういうことは聞いております。債権国会議が開かれて、そうして二十七億ドルの債務償還、繰り延べですね、これがきまる、同時に新規借款を諸外国に対して要請したい、その際には日本に五千万ドルくらいはどうでしょうかというような話は、軽い話として聞いております。しかし、今回のものはそれとは関係ないんです。とにかく債権国会議新規借款が得られる、債務の繰り延べがきまる、それまでのつなぎとして緊急に必要なんだ、こういうことで三千万ドルを供与する、こういうことにいたしたわけであります。
  393. 平林剛

    ○平林委員 わからないんですけれども、結局債権国会議でいろいろな問題を協議して、そこでたな上げとか繰り延べとか、それから新しい借款とかというのを相談をする。それを待てない。待てないから日本が緊急援助を三千万ドルした。しかし、本来であれば、その債権国会議各国と相談をして、日本としてはどういう措置をとるかきめてやることが順序である。しかしそれを待てない、三千万ドルやった。こうなれば、この大体予想されておる五千万ドルというワク内に入るだろうと思うのですけれども、そこはどうなんですか。
  394. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 それとこれとは関係ないのです、つまり、債権国会議はいつ実際問題としてなるかまだ見通しがはっきりはしませんけれども、インドネシアの予定としては、八月中にはできて、九月から債権国ペースの新規借款、また既存債務の繰り延べという段階に移るであろう、その九月段階になると新規借款ができるだろうと、こういうふうに踏んでおる。しかし、それまでどうしても待つことができない、さしあたり一億ドルぐらいはどうしても輸入しなければならぬ、いろいろな必要物資が調達できないんだ、そのうち何がしかを日本に持ってくれ、こういうことなんです。そこで、わが日本としてはその三千万ドルをひとつ借款供与しましょう、こういうことになったわけなんです。日本とインドネシとの貿易の総量とかそういうものを見まして、まあ大体そのくらいかと、こういうふうに判断したわけであります。
  395. 平林剛

    ○平林委員 もう少し聞いておきたいんですが、そうすると、かりに債権国会議日本のほうはひとつ五千万ドルくらい持ってくれということになった場合、これとは別個だということになると、結局インドネシアに対しては八千万ドルいく、こういうふうにわれわれは覚悟しなければならないんですか。
  396. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 これは大体前貸し的な性格です。がっちりというわけじゃありませんけれども、大体において前貸し的な性格になるであろう、こういうふうに見ております。つまり、私どもがインドネシアに言っておるわけですが、債権国会議において新規借款という問題が起こるでしょう、これはものによって違いますが、大体において前貸し的な意味があるんですよということを念を押して出しておるわけであります。
  397. 平林剛

    ○平林委員 いまのお話で、大体前貸し的なものであるということでありますが、外務省はそれでいいんですか。
  398. 西山昭

    ○西山政府委員 大蔵大臣の御説明のとおりであります。
  399. 平林剛

    ○平林委員 いずれにしても私は、財界の中に今度のインドネシアの緊急援助についていろいろなねらいを持っているというお話を聞いておるわけであります。財界の中には、焦げついた旧債権なんてのは取れやしないから、取れないものを無理に取ろうと考えるなという気前のいい意見が出たり、あるいは昨年来の不況で相当品物がたまっておる、そういうものをこの際はいていこうというような考えがあったり、いずれにしても、政府が保証してくれる輸出だからこんなうまい話はないということで、そうしたことにおんぶしての輸出、つまり、先ほど大蔵大臣は安心して輸出ができるというけれども、これこそ端的に表現したもので、商社としては安心して輸出できる、国民全般の負担において安心して、極端なことをいえばもうけることができる、こういうものになりはしないかをおそれるのですけれども、そういうおかしなことにならないでしょうか。
  400. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まあ、輸出ができるのだから輸出関係する人は歓迎する、これは私は当然だと思います。しかし、それだからといってこれをしたのではないのです。これをしたゆえんのものは、先ほどから申し上げておりますとおり、インドネシア経済安定、これはつなぎ措置をとらなければ、もう息が切れてしまう、国際ベースコンソーシアムができるというのを待たずして崩壊するような状態である、これは何としても緊急的な措置をとる必要がある、こういうふうに考えて、それが将来の日本債権の確保、また日本アジアにおける使命というものに照らして妥当な措置である、こういう見解から出発しているのです。
  401. 平林剛

    ○平林委員 いろいろ政治的な目的はあるでしょうけれども、私どもの立場から言うと、貿易を国是とする以上は、日本が全般において利益を得ていく、貿易である以上は国が富んでいく、国が富んでいくということは、商社がもうけるということとは私は違うと思うのです。この場合にインドネシア貿易考えますと、近く債権国会議が開かれるということでも明瞭なように、その輸出代金が回収できるかどうか大きな不安がある。代金が回収できないということを承知輸出をするということが国益になるかどうか。私は、通産省がある程度期限延べ払いについては、輸出貿易管理令で許可をし、許可を受ければ自動的に輸銀融資がきまっていく、この輸銀融資には輸出保険がつけられる。極端な言い方をすれば、輸出振興政策という手厚い保護のもとで、商社は契約だけとれば、危険を負担しないでもうけることができる、そしてそのお金は国民全体の負担になる。こんなおかしなことを認めていくということは、私は国民が承知しないだろうと思う。今度の三千万ドルの緊急援助については、こういう疑惑を率直に国民は持つのではないかと私は思うのです。こうした素朴な疑いに対して大蔵大臣はどうお答えになりますか。
  402. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 インドネシアから貸した金を返してもらう、これはもう四年から五年先の話なんです。そのころにはわれわれはインドネシアというものは、国際的協力のもとにちゃんと支払い能力はできるだろう、こういうふうに見通しておるわけなんです。その見通しに立って償還は可能である、かように考え、今回の借款を供与する、こういうことになったわけです。しかも、これを供与しないと一体どうなるかというと、おそらく私はインドネシア経済というものはコンソーシアムを待たずして崩壊するようなことになるかもしれない、そうなったら二億七千万ドルもある日本債権、これは一体どうなるか、そういうことを総合して考えて今回の措置は妥当である、こういう判断をしたわけです。
  403. 平林剛

    ○平林委員 そのお話はわからないことはありませんけれども、先ほど私が言ったように、輸出貿易を国是とする国で、こういう手厚いいろいろな政治的な援助とか、政治的ないろいろな裏打ちで一部商社がもうける、こういうことは国民としてはあまり愉快な話ではないです。こうした状態のもとに行なわれるいろいろな援助が五年たてばなるというようなこと、あるいは二億何千万ドルのやつをどうするか、こういうことももちろんわれわれ考えなければなりませんけれども、いつも国民全般の負担において一部商社がもうける、こういう形については、私は政府としても何か考えてもらいたい。国民感情の上から見ても考えてもらわなければならぬ。これはこの問題に派生して私は申し上げておきたいと思うのです。  それから債権国会議が九月ごろ開催をされるということでございますが、二十七億ドルの債権を持つ国というのはどういう国ですか。そしてその金額は、それぞれどの程度でございましょうか。
  404. 村井七郎

    村井政府委員 債権債務残高でございますので、国別の数字は御容赦願いたいのでございますが、すでに資料としてお手元に差し上げておりますように、共産圏が半分程度ございます。自由圏が十二億ドル、共産圏が十四、五億ドルという程度、合計いたしまして二十七億ドルということに相なっております。
  405. 平林剛

    ○平林委員 ちょっと聞こえなかったのですが、ソ連圏が大体二十七億ドルの二分の一で十五億ドルですか、それから日本が二億七千万ドル、アメリカは……。なぜ各国のことを発表することができないのですか。
  406. 村井七郎

    村井政府委員 これは従来のコンソーシアム等の場合でもそうでございましたが、   〔金子(一)委員長代理退席、委員長着席〕 これはほかの国の債務残高は言わないというのが慣例にもなっておりますし、いろいろこの数字が固まると、債権国会議におきましてさらに詰めて、多少は動くということもあり得るかと思います。
  407. 平林剛

    ○平林委員 こまかいことなんかわからなくたっていいのですよ。大体各国状況によっては、日本はまた新しい供与をしなければならぬかもしれない。国がそういう負担をしなければならぬ、国民がそういうものを負担しなければならぬということになりますから、私はその関連でお伺いしているのです。  ですから、いまお話しになったのは、日本の場合はわかっております。ソ連圏のことは聞きました。ほかにどういう国があるのですか。そのことも言えないのですか。
  408. 西山昭

    ○西山政府委員 債権国といたしましては、日本以外にはアメリカ、西独、フランス、イタリア、イギリス、オランダ等がございます。
  409. 平林剛

    ○平林委員 今度の債権国会議は、日本、アメリカ、西ドイツ、フランス、イタリア、イギリス、オランダ——ソ連は参加しないのですか。
  410. 西山昭

    ○西山政府委員 日本といたしましては、ほかの諸国も大体同じような考えを持っておりますが、IMF等の国際機関を中心にいたしまして、公正な判断によりましてインドネシアの問題を解決することが妥当ではないかという考えを持っております。IMFの調査団は、今月の下旬にジャカルタに参りまして、二、三週間滞在しまして調査をする予定になっているように了解いたしております。日本といたしましては、非公式に関係国と債権国会議の話をいたしておりますが、どういう規模でやったらいいのか、あるいはどういう方針でやったらいいのか、そういうものをすべてまだ何ら決定しておらない状況でございます。
  411. 平林剛

    ○平林委員 ソ連圏は参加させない、しない、こういうふうにこの間の政府のお答えがあったように記憶しておるのですが、いまのお話ですと、きまっていないのですか。
  412. 西山昭

    ○西山政府委員 先ほど御説明がありましたように、二十七億ドルのうちの約半数が軍事的な援助の結果生じました債務の残高でございまして、日本といたしましては、そういう性質の債務の残高と、商業ベースによって生じました債務の残高と同一基礎において議論すべきかどうか、そういう問題はまだ結論に達しない次第でございます。
  413. 平林剛

    ○平林委員 まだ結論に達していないというお話でありますけれども、アメリカの債権の中には軍事的な援助がないと言えるのでしょうか。
  414. 西山昭

    ○西山政府委員 私どもがアメリカから聞きましたところによりますと、債務の残高といたしましては、ないように聞いております。
  415. 平林剛

    ○平林委員 ないと聞いておるというだけで、これはインドネシアとアメリカのことでございますからわからないというのがほんとうですか。
  416. 西山昭

    ○西山政府委員 軍事上の債務の残高はないというぐあいに了解しております。
  417. 平林剛

    ○平林委員 聞いておるとか、了解しておるということと、真実であるかどうかということとは別問題だと私は思うのです。日本の場合、日本債権の中に、たとえば例を言いますと、ある自動車メーカーがインドネシアの軍事用としての自動車も出していますね。こういうものは、軍事的な援助ときめつけるわけにもいかぬでしょうけれども、しかし商業ベースといえども、軍需物資の輸出ということでそれが残っておれば、ソ連の場合の軍事援助と比較してどういうふうに違うのか、こういう疑問は残りますね。私は、そういう従来のインドネシアにおけるところの輸入とか輸出とかいうこまかいいろいろなのを見ますと、直接の武器、弾薬、飛行機でなくとも、軍需用物質は相当あるのですよ。そうすれば、今度の場合にソ連圏は除くということは理屈に合わないような気がする。まだきまってないということは、そうした事情も勘案をして、あるいはソ連圏とも一緒にやるというようなことも可能性がある、こう見てよろしいのでしょうか。
  418. 西山昭

    ○西山政府委員 そういう問題もあわせて今後さらに検討する必要があると思っております。
  419. 平林剛

    ○平林委員 どうも外務大臣がいないと、これから先いろいろお尋ねしたいことが十分に意を尽くせない、まことに遺憾でありますけれども、この点について債権国会議の主催国は日本である——日本じゃないですか。私は日本であるというふうに聞いておるのです。しかも東京で開かれるということになりますと、こうした点についてやはり政治的配慮か必要でないだろうか、こういう考えを持っておるのです。  そこで、この問題について、実は政府からお答えを聞きたいと思ったのでありますけれども、十分できません。あとでちょっと理事さんとも相談しまして、これ以降の質問については、もし許されればする、こういうことにいたしまして、一応留保しておきたいと思います。   〔「議事進行について」と呼び、その他発言する者あり〕
  420. 三池信

    三池委員長 藤田君。
  421. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 私に指名があるのが非常におそかったと思うのです。  私は委員長にたいへんいやなことを言うようでありますけれども、議事進行についての発言要求が出れば、それも質問の途中であればいざ知らず、平林議員が一応質問を留保して、いわば質問についても区切りのついたところですから、そういうときには、委員長は事務当局の見解を聞くまでもなく、適切に指名するのが当然じゃないですか。そういう点については、私は将来の問題を含めて、もっと自主性のある運営をしてもらいたいというのが一つであります。  それと、私が質問をしたいと思っておりましたことは、なるほど一昨日から今日の終末国会における国会運営について各党間でいろいろな協議がなされ、最終的には、俗に言う正常化という方針に沿って精力的に審議をやっていこう、こういうことについては、われわれも各党間で相談のできたことでありますから、その線について協力することはやぶさかでありません。しかしながら、各委員会の基本的な正常化というものに値する審議方法としては、私は原則的には六時ぐらいまでで終わるのが常識じゃないかと思うのです。七時も八時までもやって、晩めしをどうするのか、あるいはどういう理由で無制限に審議を継続しなければならないのか、そういうことは委員会自体として何らわれわれに話がない。そういうものに対して私ども委員がなぜ無条件で審議に協力しなければならないのか、この点私ははなはだ遺憾であります。  したがって、あすは議院運営委員会における申し合わせによりましても、本会議はないということを聞いておるのでありますから、こんなに大蔵委員会だけが八時以降にもわたって審議を継続しなくとも、理事間でお互いに相談をして、そうして適切な結論が出るような審議方法をとってはどうだろうか、こういう意味において、私は委員長の適切なひとつ決断と判断を求めるものであります。
  422. 三池信

    三池委員長 藤田君にお答えいたします。  委員長としては、諸般の事情を考慮の上に、審議を続行したいと思います。
  423. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 委員長、諸般の事情とは、どういう事情でしょうか、ひとつ納得のいくように説明してください。
  424. 三池信

    三池委員長 会期末でもありますし、まだほかに法案もかかえておることでありますから、審議を促進させる意味において質疑の続行をやりたいと思います。
  425. 只松祐治

    ○只松委員 関連。  藤田君がいま質問というより、若干意見を申し上げましたけれども、大蔵委員会がずっと他の委員会に比べてうまくいっておると申しますか、さしたる混乱もなくてきておるということは御承知のとおりだと思います。そういう事態の中でいまの発言が出ておるわけなんですから、たいへんに混乱をしたり、たとえばこの法案を絶対に野党が阻止するとかなんとか、そういう状況のもとではないわけです。したがって、そういうことを勘案されるならば、たとえば、理事間でどういう話し合いがあったか私たちには知らないわけです。そういう点をちゃんと私たちも存じて、そうして、協力といいますか、とにかく夜おそくまで大蔵委員会だけが審議を続行していくということなら、これはそれでわからぬことはないけれども、全然委員のわれわれが知らないでやるということで、こうやってやっておるわけなんですが、ほかの委員会に比べていかに協力するといえども、あるいはまた、いかにうまくいっておるといえども、そこらは多少お考えいただきまして、きょうはこの程度でひとつ打ち切り——いきなりできませんでしょうから、暫時休憩して理事会でも開いて、それでどうするかというふうにお取り計らいをいただきたいと思います。   〔「賛成」、「続行」と呼び、その他発言する者あり〕
  426. 三池信

    三池委員長 御静粛にお願いします。  先ほど武藤委員から御要望のありました外務政務次官がしばらくして見えるそうですから、それまで休憩をいたします。    午後八時十八分休憩      ————◇—————    午後八時二十九分開議
  427. 三池信

    三池委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。平林剛君。
  428. 平林剛

    ○平林委員 外務政務次官、あなたにはきょうは外務大臣が途中で退席をされたので、私は質問のケリをつけたいと思ったけれども、最終的に政府考えというものを聞く必要が生まれたので急遽おいでをいただいたわけであります。  私がいま質問を展開しておりましたのは、インドネシアに対する緊急援助に関連をいたしまして、近く債権国会議が開かれる、この債権国会議はいろいろな意味においてわれわれ注目をしておるわけであります。いま議論しておりました三千万ドルの緊急援助の問題もさることながら、新たに債権のたな上げあるいは新しい借款、こうした問題がここで議論をされるということになるそうであります。ところが、この債権国会議に集まるのは、いままでの政府の説明によりますと、日本、アメリカ、イギリス、フランス、イタリア、西ドイツなどの諸国であります。そして、これにはソ連圏は呼ばない考えであるというのが答弁であったわけです。私はきょう、その理由はどこにあるのかと尋ねましたが、ソ連の債権は主として軍事的な援助である、だから一応区別をする、こういうお話であります。しかし、それならば、アメリカの債権は多分三億ドルくらい、あるいはそれ以上あるかもしれませんが、はっきりした答弁がございませんからわかりませんが、かなりある。その中に軍事的な援助というものはないかどうか。それはないと聞いておりますとか、了承していますとかというお話があったが、実体はわからない。日本の場合に、純粋な意味で議論すれば別でありますけれども、しかし、中にはインドネシアから軍需品の要請を受けて、それが輸出をされている例をわれわれは承知しておるわけです。厳格に言えば、そういう区別でもってソ連圏を呼ばないという理屈は成り立たない。さてそこで、ソ連圏はどうするかといったら、いや実はまだきまっておらないのだ、これから検討するのだ、こういうお話であります。それならば私は、外務大臣として、政府としてどうするのかということを聞かなければならぬ。ソ連圏も一緒にこの債権国会議に加わるような外交折衝があるのかないのか、やろうとしておるのかどうか、これをひとつ明らかにしてもらわなければならぬのです。外務省の見解をひとつ伺いたい。
  429. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 お答えいたします。  いまお話のように、インドネシアに対する債権、ソ連の債権日本債権、これは性質が非常に違うというということは、平林委員すでに御承知のとおりでございます。そこで、普通の立場、日本の立場からいいますると、性質が違うから、まあ日本のような債権の整理ということであればソ連は別でございましょうというふうなお話もあるいは出たかもしれませんが、しかしながらこれは日本だけの意思によってきまるものではございません。結局、インドネシアに対する全体の債権をどうするかということは、国際的な相談によってきまっていくことは当然でございます。  したがいまして、率直に申しまして、ただいまのところはソ連をこの債権国会議のメンバーにお呼びするかどうかというふうなことは、実は確定をしておらないわけでございまして、今後いろいろの情勢を判断いたしまして決定すべき事柄である、かように考えておる次第であります。
  430. 平林剛

    ○平林委員 インドネシア債権二十七億ドル、そのほぼ半分はソ連圏の債権でありまして、かりにいわゆる西側の陣営だけが集まってそのインドネシア債権の半分の問題についてどうするか、こうするか考えましても、インドネシア債権全般から見れば二分の一の問題の協議です。いや二分の一の問題の協議になるかどうかわからない。かりに西側の陣営がこの問題についてインドネシア経済援助を考える、繰り延べなり、たな上げなり、新しい借款なりを考えるにいたしましても、ソ連圏がもしこれと全く違う考えをいたした場合には一体どういうことになるのか。私はこの場合に、日本国が少なくとも三億七千万ドルの債権を持っているだけに、この考えというものを無視して債権国会議をやっても無意味である。無意味とは言わないけれども、大きな経済的な差異というものが生ずる。こういうことを考えますと、やはりソ連圏の参加もこれを希望し、あるいはそうした話し合いを進めるというのが今日の外交における一つの政治的センスでなければならぬ、こう考えておるのであります。ですから、軍事上の債権であるからということで切り離すということは間違っておると考えておるわけでありまして、その点、私は政府にもちゃんと筋の通ったことをしていただかないと日本国全般の損害にもなりかねない、こういうことを考えるのであります。そういう意味で、もう一度政務次官のお答えを聞きたいし、この問題は国の損得を目の子で言うわけにもいきませんけれども、大蔵大臣もそうした問題については一半の責任を負ってもらわなければならぬと思いますので、大蔵大臣からもそのお考えをあわせてお聞かせをいただきたい。
  431. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 お話のように、ソビエトが二十七億ドルの半分以上の債権国である。このソビエトの問題か解決しないでほかが幾ら話が進んでも、お話のように実効ある効果はあがらないというふうに思うわけです。インドネシア側もそう考えていると思うのです。現に、インドネシアソビエトと話すことがきわめて重大であるというので、日本にはブオノ第四副首相が来ましたが、ソビエトに対しましてはマリク第六副首相を近く送るようであります。そのソビエト側の考え方をただし、またソビエト側に協力を要請する、こういうふうに承っておるわけです。  ざっくばらんに申し上げますと、債権国会議を早く招集したらどうでしょうかということを、ブオノ首相が参った際に日本側から提案したわけです。それに対してブオノ首相は、ちょっと待ってほしい、つまりマリク外相兼副首相ソビエトに派遣するのだ、私自身もこれから西ヨーロッパの諸国を訪問するのだ、インドネシア自身がまだごあいさつも申し上げないのに、日本側が動いて債権国会議の呼びかけをする、それはインドネシアとしては仁義に、反するような気持ちがいたします、ですから、一わたり回るまで待ってください、こういう御意見だったわけです。さらに執拗に日本側から早くしたほうがいいんじゃないかということを申し上げたのですが、そのつど同じような態度をもってインドネシアは応酬してまいってきておるわけなのであります。  そういうようなことで、インドネシア使節団関係各国を回ります。回りますから、関係各国の意向がわかってくるわけです。これが債権国会議を正式に招集する場合の大きな材料になる、こういうとかうに私は考えるわけであります。ただしかし、時間的に九月から新しいベースでこの問題を動かすということを考えますと、そうじんぜん日を送るわけにはまいらぬ。そこで、よりより、インドネシアには関係なく、一体どうしたものだろうという話し合いが始まっておるというのが今日の段階でございます。  したがいまして、開催される債権国会議ソビエトも参加するのかしないのか、これはマリク外相の構想、その後の様子等も大きな材料になるだろう、こういうふうに思いますが、今日の段階では、正示政務次官のお話のようにまだきまっておらぬ、これが実情だと思います。
  432. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 実態のお話は、いま大蔵大臣から御答弁がございましたとおりでございます。われわれといたしましては、そういう実態を踏えままして、その上に諸般の国際的な関係を考慮いたしまして最終的に決定されることと思いまするが、いま大蔵大臣のお述べのような実態でございまするから、平林委員が御心配していただいておるような線も十分考慮されて最終的に決定されるもの、かように考えておる次第でございます。
  433. 平林剛

    ○平林委員 それでは、私の申し上げたような点を十分考慮して最終的に日本側の考えをきめていきたいということは、もっと具体的に言いますと、その特質にかんがみ、ソ連圏の参加もあることが望ましいというのが、日本の外務省としての考え方とお聞きしてよろしゅうございましょうか。
  434. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 要するに、インドネシアのこれからの新しい建設に最も有効に債権国会議が活用されることが一番望ましいわけであります。それに対しまして、非常に大きな部分を占めるソ連の問題を除外してきめるというふうなことはいかがであろうかという点は、これは当然に考えなければならない問題であろうかと存じます。ただ、日本とソ連との債権の相違という点については、先ほども申し上げましたとおりであり、いままでもいろいろ御議論があったかと存じます。しかし、最終的にインドネシア再建し、建設していくという見地からいえば、その債権の多くの部分を占めるソ連というものを無視できないという点についても、これは当然のことでございます。いまだわれわれももちろん決定をいたしておるわけではございませんが、そういう点も十分考慮しなければならぬという意味で、お答えを申し上げる次第であります。
  435. 平林剛

    ○平林委員 私、なお若干の質問はございますけれども、大体私の意図したところはいまのお答えで尽きました。  ただ、質問をいたしました中で、私の考えもそれぞれの分野において私の希望的な意見を申し上げておいたのでございまして、そうした点については、大蔵大臣も、また外務当局も私どもの希望した点は十分考えながらやってもらいたい。アジア開発銀行についての批判、それからまたインドネシアの緊急援助に対するわれわれの関心、また、国民からながめた今回の緊急援助に対する疑問などについては、どうかひとつ、その疑問が悪い発展をせないように十分心してやってもらいたい。これはきょう私はこまかくは申し上げませんけれども、そうした疑惑を増大させないような配慮を十分とってもらわなければならぬ、こういうことを最後に強調いたしまして、私の質問は終わっておきたいと思います。
  436. 三池信

    三池委員長 武藤山治君。
  437. 武藤山治

    ○武藤委員 ただいま審議いたしておりますアジア開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律案並びに外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案について、同僚議員からかなり質問がなされておりますが、まだ質問されていない問題点が幾つかあると思いますので、それらの問題点について質疑を続けたいと存じます。  第一の、外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案の中身は、一つは、アジア開銀に対する出資金として百八十億円を出す、第二は、外為資金を百六億九千二百万円一般会計に繰り入れる、第三は、韓国との条約締結に基づいて、かつての清算勘定の残高を清算をする、そのために百六十四億六千三百万円の資金を外為資金から出す、こういう措置が今回の措置の大きな柱であります。  したがって、この法案を議論するにあたっては、アジア全般の問題、今後の低開発国に対する日本態度の問題や、さらに日本財政のあり方の問題や、韓国と日本の問題など、多岐にわたり質疑をしなければならない性質を含んでおります。したがって、広い意味でこれらの三つの問題についても尋ねたいと思うわけでありますが、まず最初に、今回のこの措置によってインベントリーファイナンス、外為資金は全部取りくずされるのか、残額があるのか、その点はいかがでございますか。
  438. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 今回の外為会計におきますインベントリーの取りくずしによりまして、実際上は今後百八十億円のアジア開銀への出資がございます。これは続きます。それから、先ほど先生のおっしゃいましたいわゆる大韓民国のオープン勘定におきます債権の取りくずし、これがあります。これも十年間続いていくわけでございます。それが全部完結をしましたときには、今回の一般会計に取りくずしました分を入れてインベントリーが全部なくなる、こういうことでございます。
  439. 武藤山治

    ○武藤委員 大蔵大臣、こういう財源の捻出をインベントリーファイナンスから取りくずさなければならないという事情はどういうことでございますか。
  440. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 御承知のように、昭和四十年度におきまして税収に非常な欠額を生じたわけです。その欠額を生じたという事実が、また昭和四十一年度にも反映してくるわけであります。そういうようなことで、一般会計の経常行政費ですね、その財源がまことに窮屈な状態である。しかも、昭和四十一年度におきましては、経済情勢その他も考えまして、減税も大幅にしたい、こういうことになりました。したがって、一般財源がさなきだに窮屈なところへさらに窮屈を加えたわけであります。しかしそれはやらなければならぬというふうに考えますので、いろいろな財源も物色する、インベントリーをこの際将来の使用見込み額以外のものはこれを取りくずす、こういう考え方に基づくものであります。
  441. 武藤山治

    ○武藤委員 財源がそんなに膨大に欠額になったのは、これは雷や地震のような自然現象ではなくて、やはりそれは見積もりの誤り、従来その担当責任者であった者の失敗と断定して間違いないと思いますが、そういう断定は間違いでございましょうか。
  442. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 経済の見方がこれを実行してみると非常に狂ってきた、こういうことかと思います。租税収入の見方というよりは経済の見方、そこに非常な変化が起きてきた、こういうことかと思います。
  443. 武藤山治

    ○武藤委員 そういう経済の変化をキャッチできなかった責任は、やはり閣僚の連帯責任だと思いますが、そういう習慣をきちっとつけて、やはり内閣できめた経済見通しというものがこんなにも狂うという場合には、私は政治責任をとるべきだと思いますが、あなたの見解はいかがですか。
  444. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 今回の経済の変化は非常に異質なものと思うのです。それだけに、責任論というようなお話が出ますと、どういうふうにお答えしていいか当惑をする次第でございますが、今後は経済見通しに狂いのないようにいたしていく、これがその責任をとる最大のゆえんである、かように考えます。
  445. 武藤山治

    ○武藤委員 次に、今回の措置の中に韓国に対する百六十四億六千三百万円の支出が含まれるわけでありますが、韓国の今日の経済ですね、こういう状態から見て、一体日本からつぎ込まれる今度の資金というものがほんとうに有効に使われるかどうか、私非常に疑問とするのでありますが、その辺の韓国経済状況というものはどのように認識されておりますか。
  446. 西山昭

    ○西山政府委員 韓国につきましては、世銀が中心になりまして韓国に関しまする関係国の協議グループというものを結成する機運にございます。五月にロンドンでその会合があったような次第でございます。さらに、この冬にまた会合をいたしまして、正式にそういう協議グループを開催することになっております。韓国の五カ年計画は、この秋に第二次五カ年計画が作成される予定になっておりまして、目下韓国政府はその作業をやっておるというふうに了解いたしております。韓国政府は非常に輸出促進のドライブをいたしておりまして、なかんずく中小企業の育成、そして失業者の吸収という方面に非常な努力をいたしますと同時に、農業等の基幹産業につきまして非常な力を入れまして、経済の建設的な方向に努力いたしておると了解しております。
  447. 武藤山治

    ○武藤委員 有効にその資金が働くかどうかという問題点を尋ねておるわけでありますが、それらの点については答えておらぬのでありますが、有償借款を十年間に二億ドル行なうという約束で、それの第一回が今月の八日に海外経済協力基金から支出するということが約束されたようであります。海外経済協力資金というのは、そう膨大な資金はないのでありますが、これからはずっと対韓有償借款のものはすべて海外経済協力基金から支出するのか、それも一般予算の中から出していくのか、そこらの、これからの支出予定というのはどういうことになるのですか。
  448. 西山昭

    ○西山政府委員 日韓経済協力協定によりますと、三億ドルの無償供与と二億ドルの有償貸し付けとからなっております。その二億ドルの有償の貸し付けにつきましては、経済協力基金をして貸し付けせしめるというぐあいになっておりまして、毎年二千万ドルに必要な資金を政府が予算から支出することになっておる次第でございます。
  449. 武藤山治

    ○武藤委員 海外経済協力基金の規則、それは東南アジアの開発を中心にこの制度というものはつくる、できたときの経過はそうですね。私が国会に出てきた年に、鳴りもの入りで、これはこれから低開発国援助に大いに貢献をするんだといってできた制度でございます。その制度の中から大半が韓国に向けられていくということは、どうもその設立の精神から見ても邪道のような気がするのでありますが、大蔵大臣いかがでありますか。
  450. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 当時のいきさつは、私はよく承知しませんけれども、おそらくアジア諸国に対するソフトローンということを考えておったんだろうと思います。しかし、韓国との間にこういう協定ができた、そういう協定をどこで一体実行するかということになりますと、いまの日本の制度とすれば基金である、こういうことになりますので、基金が有償借款の道になるということは、これはやむを得ないことではないか、さように考える次第でございます。
  451. 武藤山治

    ○武藤委員 協力基金の担当者、どなたか来ておりますね。現在、海外経済協力基金の資金量というのは一体どのくらいあって、いままでの海外に投資している総金額は幾らぐらいあるのですか。現在使える資金の額、残っている残額、それとすでに投資した総額は幾らありますか。
  452. 宮沢鉄蔵

    ○宮沢政府委員 今年度幾ら使えるかということを申しますと、大体二百二十億円ないし二百三十億円くらいの金が使えるということになっております。  それから、いままでにどれだけのものを貸し付けているかと申しますと、五月末現在で貸し付け残高が百四十八億円ということになっております。
  453. 武藤山治

    ○武藤委員 大蔵大臣、いまの数字でわかるように、五年間で貸し付けた残高が百四十八億円、それでも日本は低開発国に対する援助は非常に少ない、あるいは海外に対する日本の開発というものは非常に微々たるものだったわけであります。そこに今度は、対韓有償援助はことごとく協力基金に政府が一般会計から入れて、ただトンネルにするだけですね。そして韓国に大半は行ってしまう。とにかく、従来の構想というものはこれによって進捗しないのではないだろうか、それは大蔵省はよほど思い切って基金に多額にぶち込んでいけば別でありますが、いまの財政状態からいってなかなかそれはできない、こういう状況にあるわけであります。従来の目標どおり、海外経済協力基金の実効があがるようにして、さらに韓国の分は別のワクとして年々ふやしていく、こういう方針に今後進めていけるのかどうか、単なるトンネルで韓国の問題を通っていくだけだ、実際は従来の目標どおり資金量をふやしていって東南アジアへは大いに貢献できるんだ、こういうことですか。
  454. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 協力基金は、韓国以外においてだんだんとこれも資金の需要がふえてくると思います。いままではなかなかいいプロジェクトがなかった、そういうようなことで貸し出しも少なかったわけでございますが、今後アジア諸国からもいろいろな要請があります。そういうようなことを考えてみますると、韓国以外の基金の所要額というものは増加する傾向にある、これは財政上充足していかなければならぬ、さように考えています。
  455. 武藤山治

    ○武藤委員 しかし、いまの海外経済協力基金の貸し付け先などを調べてみますと、中南米が十一件、アジア全体で十九件、こういうことになっておりますね。パーセントで見ると、中南米で三八%余、アジア全体で四八%、こういう趨勢を見ると、アジア開発、アジア開発と、銀行までつくって大騒ぎをいましておるのでありますが、どうもその貸し付け先なんか見ると、アメリカが全部めんどう見ているような中南米のほうに約四割がいっている。これは海外経済協力基金から出した資料でありますから間違いないと思います。そういうような点なども十分これは検討し直さなければならぬ問題があるような気がするわけであります。特に韓国へこれだけの有償援助をやって、まあ約束したんだから何に使おうが、どうなろうが、それはこっちの知ったことじゃないといえばそれっきりですが、私はそんな無責任なものであってはいけないと思う。いま韓国は御承知のようにベトナム戦争に兵員を派遣して戦争をやっているわけですね。韓国のベトナム戦争始まって以来これらの出兵に要した費用、ベトナムに対する韓国の総予算というものは一年間にどのくらいかかっておるか、人間を殺し合うための不生産的な支出に韓国はどのくらい使っていますか。
  456. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 これは私どもつまびらかにいたしておりませんが、さっそく取り調べましてお答えいたします。
  457. 武藤山治

    ○武藤委員 それは、政務次官は知らないけれども、海外技術関係や海外経済を専門としてサラリーをもらっておる役人がおるわけでありますから、そういう人は当然そのくらいのことはわからなければならないと思う。外務省ひとつ答えてください、政務次官でなくて。
  458. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 調査の上、できるだけ早くお答えを申し上げます。
  459. 武藤山治

    ○武藤委員 しかし、兵員五千人とか七千人とか、それがどういう部隊であるからどのくらいというようなことは、日本と韓国は、もう与党の皆さんは親戚づき合い、兄弟になったつもりでおるのですから、そのくらいの内輪のことはすぐわからなければならぬと思うのです。これはすぐ調べて、できれば今晩の質疑中にひとつその回答をもらいたいのであります。(「意地の悪いことを言うな」と呼ぶ者あり)私は、それは意地の悪い質問じゃなくて、そういうように戦争に支出のウエートをかなり占められておる国に日本が援助をやっても、その援助が有効に働かぬ。結局、そういう浪費がこういうものを打ち消してしまって、どうもむだになるのじゃないか。だから、隣の国だったら、ベトナムに出かけていくのはおやめになったほうがいいのじゃありませんか、あなたの国は、とにかく経済開発に力を入れて、生活水準を高め、そして日本のような戦争を放棄した国と兄弟になるのなら、ベトナムのほうまでわざわざ出かけていかなくてもいいのじゃないかということを、もう少し外務省あたりが入れ知恵をする、そういう外交に転換をしなければ、日本は湯水のごとく金があるわけじゃないですから、国民はどうも日本の外務省はつまらぬ、ああいう韓国に、海外経済協力基金にせっかく入ってくる金がみんないってしまう、それよりも、もっと日本貿易を振興するために広く方々の国にばらまいたほうがいい、こういう意見になるのは、これは国民の常識ですよ。どうもそこらが私は、いまの韓国との関係を見ると非常にむだが多いのじゃないだろうか、こういう感じがいたすわけであります。  いま韓国と日本の民間延べ払い貿易、あるいは有償の資材、役務を提供する、すでにその約束が実行されておるわけでありますが、韓国経済に限って、今回の措置のように、いままでの焦げつき債権を全部差し引き勘定にできたけれども、これからはもうそういう差し引き勘定はできませんね。もう日本はこれから賠償をもう一回よこせなんということはやられないでしょうから、そうなった場合に、いまのような韓国経済で進んでいって、ほんとうに日本の民間業者が貿易をした資金というものは確保されるだろうか、そういうものが焦げついてしまって、過去のような経験をまた踏むようなことは断じてないだろうか、そういう点は政府としてどういう見通しに立たれておりますか。
  460. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 いろいろお話がございましたが、韓国に対する有償無償の協力につきましては、前の国会におきまして十分御議論をいただいたわけであります。  いまベトナム派兵の問題と韓国に対する経済協力問題と関連をしてお話でございますが、これは武藤委員承知のように、全然別個の問題であり、われわれといたしましては、韓国の経済の建設にその有償、無償の経済協力が非常な役割りを果たしまして、いま御心配のように再び日本と韓国との貿易じりが焦げつきを来たすというようなことのないように持っていくということが経済協力の本旨である。かように考えておる次第であります。
  461. 武藤山治

    ○武藤委員 民間の延べ払い取引の三億ドルのこれからの約束を果たすわけでありますが、現在の進捗状況はどんな見通しになっておりますか。
  462. 西山昭

    ○西山政府委員 今日までの民間の延べ払いの総計は八千九百万ドルでございます。
  463. 武藤山治

    ○武藤委員 そうすると、当初考えた計画を基準に考えた場合には、進捗率はいいと見ますか、それとも、まあまあというところですか、どの程度ですか。
  464. 西山昭

    ○西山政府委員 三億ドル以上の民間信用供与と申しますのは、御承知のとおりに、日本の業者と先方の間で延べ払いの契約ができました際に、日本政府といたしましては、諸般の条件を考慮いたしまして、適当なものであるという結論が出ました場合に、それについて輸出の許可を与えるという性質のものでございまして、具体的に一年間に幾ら、これをまた何年間で消化する、そういうはっきりした目標を持った性質のものではないわけでございます。
  465. 武藤山治

    ○武藤委員 世銀、第二世銀とありますが、第二世銀というのは、どういう目的でつくられた銀行ですか。
  466. 村井七郎

    村井政府委員 御承知のように、世銀は構造的な不均衡というものを対象にしたわけでございますが、それだけでは低開発国に対しましてソフトローンを供給する余力がなかなか出てこないという実際上の必要性からつくられ、ソフトローンを主体とした補完的な銀行として第二世銀のものができたというふうに承知いたしております。
  467. 武藤山治

    ○武藤委員 一口に言うならば、第二世銀は低開発国向けの国際銀行として誕生した、こう理解してよろしいですか。
  468. 村井七郎

    村井政府委員 大体そういうふうに御了解いただいていいのじゃないかと思います。
  469. 武藤山治

    ○武藤委員 そういたしますと、第二世銀があるのに、なぜ中南米に新たに銀行ができ、アフリカにでき、今回アジアにできるのか、なぜ第二世銀では世界の低開発国に対する援助の手がその機構を生かしながらやっていけないのか、その原因は何ですか。
  470. 村井七郎

    村井政府委員 第二世銀は、そういうわけで全世界を対象といたしておりますし、ある程度の実績をあげておりますが、それだけではなく、もう少しきめのこまかいと申しますか、地域の実情にも応じたさらに一段こまかい開発計画の資金調達という要請に応じるために、補完的に地域開発銀行がアフリカ、中南米等にできておるわけでございまして、実際問題といたしまして、第二世銀、世銀、開発公社等のアジアに対する融資割合というものを見ましても、もう一つやはり何かあったほうが十分ではないか、しかも、きめこまかくできるのではないかという要請から今回のアジア開銀が発足するというふうに承知いたしております。
  471. 武藤山治

    ○武藤委員 そこで、せっかくつくった世界の機構で、多くの国が加盟している世界銀行、第二世銀があるならば、その世銀の機構をさらに拡大をし、アフリカ支店、中南米支店、アジア支店、そして世界各国から資金を公平に集めて、これらの国々をひとつ開発していこう、これが私は世界が一つに向かっていく方向であり、やがては国連が世界連邦政府になろうという歴史の方向をたどりつつある段階で、さらに細分化していくというのは、どうも私としては——きめのこまかい施策をやるというならば、支店を各ブロックにつくったっていいじゃないか。それをつくらずに、なぜ、また人件費をかけ、新たに事務諸費をかけてアジア銀行をつくらなければならぬか。中南米につくり、アフリカにつくるということは、特にそのきめこまかい施策をやることによって、いずれかの国が発言力を強化し、自分の経済的影響力を深め拡大する、そういう方向に意図されている。言うならば、それはアメリカを中心にしたそういう勢力である、こう考えざるを得ないのであります。私の考えが間違っていたら、間違っている点を指摘してください。
  472. 村井七郎

    村井政府委員 事実は、私は必ずしもそうではなくて、第二世銀の出資の比率というものを見ますと、これはむしろ英米のほうが大きい。しかしながら、それよりももっとアジア的な性格を出す銀行があったほうがいいということで、この十億ドルの資本金のうち六五%はやはり域内国で確保しようという趣旨の、非常にアジア的な性格を持った銀行ができて、それが運営される、そうすれば、アジア的性格を持って運営されるということがより確保されるのじゃないかという観点で、アジア開銀が発足しておるというふうに了解いたしております。
  473. 武藤山治

    ○武藤委員 アジア開発銀行はそうでしょう。というのは、中南米やアフリカにそういうブロック経済的な銀行ができたのにここだけがないから今度はここにつくらなければならぬ。渡辺さんあたりはそういう考えで一生懸命説得して歩いたわけです。しかし、その裏には、では、なぜアメリカが中南米につくったか、アフリカにつくったか。そのねらいは、やはりアメリカが世界戦略上世界制覇の一つのポイント、くさびをぶち込んでいこう、経済的な力で各地域に根をおろしていこう、こういう大脳の働きがアメリカにあるからじゃありませんか。そういう考え方は少し皮肉な解釈ということになりますか。
  474. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 どうも私はあなたの見方には賛成できないのです。アジア開発銀行は、国際連合の場で発想されておるわけです。しかも、数年前からそういう話があって今日に至ってきておるわけであります。国際連合については、あなたもこれは世界統一政府へ発展せしめたいという御意図のようで、その点は私と一緒なんですが、その国際連合というものが、アメリカの出先だ、世界制覇の機関だというならば、私は国際連合から発想されたアジア開発銀行もそういうものだろうということに結論づけられると思います。しかし、私は国際連合はそうは思いません。これはソビエトも入っておるわけでありますし、いま世界の唯一の統一機構である、こういうふうに考えておるわけであります。したがって、そのスポンサーのもとにできるアジア開発銀行、これはそういう崇高な世界平和目的に合致しておるものである、かようにかたく信じて疑わないものであります。
  475. 武藤山治

    ○武藤委員 そうなると福田さんと私の見解の相違ですから、これは論争の歯車がかみ合わないことは私も承知をいたします。しかし、ほんとうにこれが世界は一つであるという認識の土台に立ってつくられるものならば、かりにいま国連に入っていなくとも、北朝鮮あるいは北ベトナムあるいは中国、こういうようなものに対しても、こういう制度ができるのだがと、積極的にやはり呼びかけをして、世界の歴史はやがて将来一つのこういう方向にいくのであって、こういう低開発国に対しては、一切イデオロギーを抜きにして、お互いが開発に協力しよう、そういう話し合いをしかけてしかるべきだと思う。ソ連に対してはしかけたけれども、ソ連のほうで応じなかったという理由があるのでありましょうが、私の言いたいのは、やはり世界がほんとうに将来いつかどこかで激突をしないためには、できる限り現状であらゆる配慮をして、両勢力が入れる一つの機関、そういうものの誕生がほんとうに望ましいのではないだろうか。  それでは、一体日本政府は、そういう国連に入っていない北ベトナムやあるいは北朝鮮、中国、こういう国に、こういう銀行をつくるからひとつどうだろうかという親切な呼びかけはしたのですか。日本政府としてはしておりますか。
  476. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 おそらくそういう話はしておらぬと思います。これは中京なり北鮮なり北ベトナムが国連に入るということになれば、これはもう自然にその問題は解決してしまうのです。ところが、それがはいれない現状、これは何であるか。中共については、中華民国国民政府の存在というむずかしい問題がある。二つの中国か一つの中国かということは、なかなか当面解決困難な問題です。その問題がやはりアジア開発銀行をつくろうという場合にもあるわけなんです。そういうことで、この開発銀行が国際連合を基盤としてできた。そうすると、国民政府がこれに参加してくる、これは自然だと思う。そこにまた中共が入ってくると、もとの根っ子の問題が解決されない今日においてはとうてい不可能であり、また、入ってくると、これはいろいろ摩擦もでき、不幸なことになる、かように考えております。
  477. 武藤山治

    ○武藤委員 それは大臣、国連に入らないから、いや入れないから——これは両方とも理屈がありますね。片方、台湾のほうだけ入れれば相手を刺激しないかというと、やはり刺激しますよ。両方入れればお互いがけんかし、やり合うからというのがいま大臣の言われたゆえんだと思います。一つだったら反発するのは当然であります。もしそういう配慮から入れないなら、分裂国家で両方ともまだ統一されぬなら、話が決着つくまで、国際連合の舞台に出るまでは両方ともアジア開発銀行に入れない、この議論なら公平です。しかし、片方は力のあるものが入れないようにしておいて、世界の大勢はこうだ、国連の資格はこうだという——これはやはり人間がきめていることですからね。中国を入れないとか、北朝鮮を入れない、北ベトナムを入れないということは人間がきめていることなんですからね。私は、やはりそれを除去しようという方向の機関に努力をしなければならぬ、努力しないでこういうものをつくろうということは、幾ら弁解しても、やはりアメリカの大きな世界戦略の一環としてつくられるということは払拭されないと思う。しかし、これは平行線になりますから、この議論はやめます。  第二世銀の資本金は幾らで、現在動かしている資金の残というのはどのくらいあるのですか。現在は開店休業なのですか。どういう状況になっておりますか。
  478. 村井七郎

    村井政府委員 受権資本金は十七億五千万ドルでございまして、すでに払い込まれた資本金は十二億ドルでございます。
  479. 武藤山治

    ○武藤委員 そうすると、すでに払い込まれた十二億ドルは全部もう融資をしてしまって残高がないのか、それとも、これは今後世界の各地にできたブロック銀行に貸す、相変わらず第二世銀は直接個々の国に融資をするのか、それとも、アフリカ銀行や中南米銀行やアジア銀行、その上に乗っかった銀行として、銀行間の融資にこれから性質が変わっていくのか、それとも、従来どおり十二億ドルを直接融資していくのか、そこらはどうなんですか。
  480. 村井七郎

    村井政府委員 これは従来どおりの方針でもって、原則といたしまして、各国の企業に直接投資されるという方針が継続されると思います。
  481. 武藤山治

    ○武藤委員 そうなれば、やはりこれは屋上屋ですね。だから、やはり第二世銀の性格というものもこの辺で私は再検討する必要があると思うのです。そういう点についても、日本政府として、あまりアジアにそれが使われていないということになったら、やはり公平な機関だったらアジアにもこれだけのパーセンテージは当然出すべきであるという主張をしてしかるべきだと思うのでありますが、見解はいかがですか。
  482. 村井七郎

    村井政府委員 従来の実績は、大体四割見当がアジア地域に融資されておりますが、この点につきまして、各国を代表いたします理事が絶えずやはり各地域の合理的なシェアというものを注意しておりますので、これが著しく減少するということは、あらゆる機会をもちまして避けるのが当然だと考えております。
  483. 武藤山治

    ○武藤委員 もう時間の都合がございまして、いろいろ各国別に十三カ国についての内容をお尋ねしようと思っておったのでありますが、これは法案に関係しないで、あとでひとつゆっくり質問をしたいと思います。  私は最後にひとつ、インドの問題ですね、インドの状況を見ますと、日本は一九五八年に五千万ドル、以後ずっと長期信用供与をいたしております。これはばく大な金額になりますが、インドは完全に自由主義陣営ではなくて、ソ連からもかなりの借款を受けている国でありますし、この債権というものは将来焦げつきになるような心配はないのか。インドと日本との関係というものだけを考えた場合にどういうことになりますか。将来焦げつき債権になるなんという心配はない、そういうことは断言できるような状態にございますか。
  484. 村井七郎

    村井政府委員 御指摘のように、日本は数年前から五千万ドル、また最近に至りましては六千万ドルの円借款をインドに供与いたしております。これは世界銀行が主宰いたしまして各国が集まりまして供与いたしておるわけでございますが、インドの経済状態は、従来のところ必ずしも十分好転しているというふうには思っておりませんが、これは今後工業化のスピードをどうするか、その規模をどうするか、あるいは農業開発をどういう程度に織り込んでいくかということは、絶えず世界銀行が中心になりまして検討を続けております。また、最近それをより効果あらしめるためにルピーの切り下げということも行なわれたわけでございますので、将来の問題といたしましてはおそらくインドの経済というものは再建されて、条件どおり、約束どおりの返済が行なわれることを十分期待しております。
  485. 武藤山治

    ○武藤委員 期待しているのじゃなくて、そういう心配は全くないと断言できるか、こう聞いているわけなんです。債権が焦げつくようなことは断じて起こらぬ、そういう見通しかどうか、期待じゃなくて。これで終わります、明確に答えてください。
  486. 村井七郎

    村井政府委員 断じてというふうに申し上げたのでございますが、まあ経済の運営よろしきを得れば、また各国協力がよろしきを得れば、十分に立ち直って、債権の確保、償還能力が生じる、それだけの資源を持った国であるというふうに私たち考えております。
  487. 武藤山治

    ○武藤委員 残余の問題は、一般質問のときにまた閉会中にでもゆっくりお尋ねをしたいと思います。終わります。
  488. 三池信

    三池委員長 永末英一君。
  489. 永末英一

    ○永末委員 私は、民社党の立場に立ちまして、今回のアジア開銀の問題を考えました場合に、日本政府アジアのいわゆる新興諸国の援助に対し、あるいは経済協力に対しどういう基本的立場に立っておるかということについて、きわめてあいまいな点があるというこの一点を解明するのが本委員会の任務であると思いますので、この点に焦点を置いて御質問を申し上げたいと思います。  第一点は、自民党政府は、アジアにおける新興諸国の経済協力ないしは経済援助に対して、どういうかまえで、どういう機関をつくり、そしてどういう手術を通じつつこれに接近しようとしておるか、その中でアジア開銀において果たそうとしている寄与はどの程度のものであるか、この点をひとつ明らかにしていただきたい。
  490. 西山昭

    ○西山政府委員 アジアの諸国に対しましては、現在までにおきましては、各国と二国間でいろいろの問題を通じまして話し合いをいたしまして、そして日本政府の能力の範囲に応じまして経済協力を実行しておる次第でございます。現在までのところ、アジア地域におきましてそういう経済協力関係を適当にまとめるような機関が特別にあるわけではございません。先般の閣僚会議のときに経済協力の調節機関をつくったらどうだという提案が一部から行なわれましたけれども、具体的な内容が欠けておりましたので、さらに将来において検討するというような事情になったわけでございます。アジア開銀につきましては、私どもはアジア開銀の特長を生かしまして、そしてアジア開銀にふさわしい機能を発揮させながら、二国間の経済協力がこれらと矛盾しなく、相提携しまして実行できるようなことを期待いたしておるわけでございます。
  491. 永末英一

    ○永末委員 私の伺いたのは、アジアの新興諸国に対する日本の寄与のしかたについて日本政府の立場というものを明確にしなければ、これらの地域に対する日本の真意を完全に受け取られ得ないのではないかということについて、わが党としてはきわめて懸念を持っております。したがって、そういう角度に立って考えまするならば、アジア開銀に参加する諸国は、アジアのみならずいろいろな国々が入っておる、そしてわがアジアの地域においてこれに参加する国は、たとえば軍事的に他の国と同盟関係を結んでいる国もあるし、あるいは非同盟政策を自国の国是としている国もあるわけです。したがって、そういう角度から考えます場合に、わが国がどういう態度でこれらの国々に対処するかという、いわば旗じるしを明確にしておくことが、これからのアジア開銀について、日本国のこれらの地域に対する経済の結びつきを考える場合にあたってきわめて重要な問題だと考えます。その意味合いにおいて、あなたの御答弁ではございますが、その手がかりとして明らかにしていただきたいのは、たとえば四月に東南アジア開発閣僚会議が持たれました。そのときのスポンサーは、言うまでもなくわが日本であります。その日本が四月にこの会議にかかった態度と、今回ソウルで行なわれましたアジア・太平洋閣僚会議に対して日本政府のとった態度との間には開きがある、いわんや離れがあると私どもは考えます。その点をひとつお伺いしたい。  そこで、ばく然たる質問ではなくて明確にいたしたいのでありますが、東南アジア開発閣僚会議に出席した国と、それから今回ソウルで会合した国と並べてみてください。食い違いがあるのはどことどこか、それを明確にしていただきたい。
  492. 西山昭

    ○西山政府委員 東南アジアアの経済開発閣僚会議にはカンボジア、タイ、マレーシア、シンガポール、フィリピン、それからベトナム、ラオス、インドネシアが出席いたしました。これに対しまして、韓国において開催されました会議におきましては、豪州、ニュージランド、中国、それから韓国が出席しておりまして、インドネシアは出席いたしておりません。それからカンボジアも出席いたしておりません。
  493. 永末英一

    ○永末委員 いまの御答弁は省いたところがございますが、省いたところはどうでもいいといたしまして、共通のところは日本、タイ、 フィリピン、 マレーシア、南ベトナム、変わったところは、四月の会議におきましてはインドネシア、カンボジア、シンガポール、オブザーバーとしてラオス、今回のソウルの会議は、中華民国という台湾、オーストラリア、ニュージランド、韓国、これが加わっておるわけです。  そこで問題は、四月において日本政府が東南アジア開発と称して集めた場合には、いわゆる軍事的にコミットをしていない国々を呼んだわけです。ところが今回は、軍事的にコミットをしていない国は、韓国がスポンサーとして呼んだ場合には参加していない。しかも、まさしくそこには台湾、韓国という東洋におけるいわば緊張の焦点である分裂国家が参加をしておる。この二つの会議日本政府が臨むについては、日本政府のこの地域における経済援助なり経済協力というものについていろいろな問題があったはずだとわれわれは考える。この辺のことを明らかにしていただかなければ、アジア開銀に対して日本政府がこれから行なおうとする基本方針についてわれわれはいろいろな疑点を持つわけであります。  そこでお伺いいたしたいのは、日本政府が四月の東南アジア開発閣僚会議に際して台湾、韓国を呼ばなかった理由をひとつお伺いしたい。
  494. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 ただいまの永末委員の御質問でございますが、東南アジア開発閣僚会議は、椎名外務大臣がよく申し上げましたように、いわばゆかたがけというか、非常に軽い気持ちで東南アジア経済の開発につきましてざっくばらんに話し合おう、こういう趣旨で開催をいたしたような次第でございます。これに対しまして韓国、台湾をどうして呼ばなかったかというお話でございますが、これはすでに御承知のように、韓国には特別の経済協力、また台湾との間にもそういう特別の関係があるわけでございまして、そういう意味から韓国につきましては別途の問題、こういう考え方をとったわけであります。なお、いまいろいろ御心配で御指摘でございますが、ソウルにおける外相会議、この外相会議に対しましても、日本は極力その準備会議及び本会議において日本の立場を強く反映をいたしまして、いわゆる御心配のような軍事的とかそういうふうな色彩というものは非常に薄くなったことは御承知のとおりであります。われわれといたしましては、東南アジア経済協力関係は、どこまでも民生の安定という点に重点を置いて今後も進めていく、この方針には変わりはないわけでありますから、念のためにお答えを申し上げておきます。
  495. 永末英一

    ○永末委員 日本語で言えばゆかたがけ、しかし、四月に集まった各国の代表者は日本のゆかたなんて着たことはない。四月は日本ではゆかたがない。そこで、日本経済力というものが自分たちの国にどういうようにいわば結びつけられ得るかということを考えて来たと思います。しかも、今回のソウルの会議におきましては、会議の前に伝えられておりましたように、いわば軍事的な結びつきあるいは政治的な結びつきということについては、日本政府は極力抵抗を試みられたようであります。そうして、その結果共同声明にあらわれたものは、きわめて経済的あるいは社会的、文化的なつながりをこれからやっていくのだ、このようにまとめられたように共同声明ではわれわれも拝聴いたしております。であるならば、日本政府が主導権をとって行なった四月のこの会議は、まさしくアジア開銀とにらみ合いつつ持たれたということはその共同声明にも明らかである。ところが、それから月ならずして持たれましたソウルのこの会議において、いわばアジアにおける軍事的なコミットの立場に西側と立っている国々だけの会合に参加をしてきた。しかも、その内容として示されたことは、最初標榜された軍事的、政治的な表題を薄めて、何か経済的、社会的、文化的なつながりをやっていく、こういうことになっておる。  そこで伺いたいのは、日本がリーダーシップをとった四月の会議においては、経常的な事務局も持たず、そしてこれからのプランなるものも、具体的に言えば農業水産センターをつくるというような話であって、二年後にマニラで開くという程度しかまとまりがない。ところが、ソウルの会議におきましては、五つも六つもいろいろなセンターをつくるということをきめ、さらにまた、これに対して常時これを検討することを内容とするいわゆるスタンディング・コミッティーをつくる、こういうことになりますと、この声明に賛成をした日本政府としては、四月にみずから行なった会議よりは今回のソウルの会議のほうに重点を置いた、このようにとられてもしかたがないと思いますが、いかがですか。
  496. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 日本政府がみずから主役を演じました東南アジア開発閣僚会議、これは日本政府の発意によるものでございまして、もとよりこれにわれわれとしては最重点を置いておるのであります。ソウルにおける会議につきまして、いま永末委員のお立場からのコメントがございましたが、これは私どもといたしましては、お話もございましたように、どこまでもアジア状態に応じまして、経済、民生、文化、そういう面における連帯観念を強化する、さらにこれを高揚していく、こういう見地から、やはりこの会議が非常な成功をおさめたものと考えております。  なお、引き続き常設的な委員会を設けたというお話でございますが、これは私どもはさようには考えておりませんで、常時これらの問題について関係各国において検討していく、そういう一つの、いわば方法論が論ぜられた、かように理解をいたしておるわけであります。  なお、再来年マニラにおいてというおことばでございますが、これは来年マニラで東南アジア開発閣僚会議を開催したい、かように考えておることは御承知のとおりでございます。
  497. 永末英一

    ○永末委員 再来年か来年か、一年違いなら、私のほうが間違っておってあなたの言うことが確かであれば、それはいいです。私のお伺いしたいところは、今回のソウルの会議におきましては、スタンディング・コミッティー・フォア・スタディーというものをつくるということをきめたわけです。そうしますと、スタンディング・コミッティーというものは、日本政府の仮訳によりますと連絡委員会、こうなっているわけだ。わが大蔵委員会は、これはおかしなことだけれども、英語で表現しますとスタンディング・コミッティーなんですね。スタンディング・コミッティーという以上は、それに対する事務局が必要になってまいる。ソウルの会議もその事務局をどこへ置くかということについて韓国側に強い希望があった。そういう希望を実現するならば、その会議の成果が規制されるということで、おそらく常設の委員会ではだめだ、こういう意向が日本政府側にあったのではないかと私どもは推測をするわけなんです。しかし、日本側の正文というものはないのであって、日本政府が連絡委員会と訳していることは翻訳であります。しかし各国はこれに対してスタンディング・コミッティーということばで了解しておるのであって、この連絡委員会が常任機関でない限りにおいては、これは一つの恒常的な機関であると解釈をするのが、スタンディング・コミティーということばによって理解をする限り私は当然のことではないかと思う。  そこで問題のポイントは、ソウル会議においてはそこまで日本政府は足を踏み込んだ、ところが、われわれがやった四月会議においてはそういうことまでやらず、ゆかたがけの、いわば事あるときに集まってくる気軽な会議でやっていくのだということになりますと、日本政府は四月の会議よりは六月のソウル会議に重点を置くと解釈する国があっても、あるいは人があってもしかたがないのではないか、そのように解してよろしいか。
  498. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 この問題につきましては、私先ほどお答えいたしたとおりでありますが、なお詳しく、ソウル会議に参加をいたしました小川アジア局長からお答え申し上げます。
  499. 小川平四郎

    ○小川政府委員 ただいま御指摘のスタンディング・コミッティーでございますが、これはあくまでも、ここに書いてございますように次期の閣僚会議のためのものでございまして、したがいまして、今回の第一回が行なわれます前にバンコクで駐在各大使が集まりまして行ないました準備委員会というようなものが、二回目、三回目と行なわれます閣僚会議のためにできたものでございまして、したがいまして、場所もそのつど移動していくわけでございます。ソウルの会議におきましては、恒久的なパーマネント・コミッティーあるいはパーマネント・セクレタリーというものをつくるということにつきましては、全参加国がまだ時期尚早であるという態度をとっております。このスタンディング・コミッティーの訳し方をどうするかということは別といたしまして、性質はそういうものでございますので、固定した委員会ということではないと申せると思います。
  500. 永末英一

    ○永末委員 パーマネント・コミッティーに対しては全参加国は反対したと言われましたが、私は参加したわけではございませんからわかりませんが、伝えられるところでは反対した国も、複数ではなくてそれ以上あるということを承っております。しかし、この共同声明の八項に日本訳でいえば「各国閣僚は定期的に継続的な協議を行いたいとの要望を実施に移すために、」こうなっておる。その英文を見ますと、まさしくこれは継続的に行なっていくことを共通のベースでやっていくのだという意向があらわれている。これがある期日を、次の年にやるための連絡機関だけではなくて、このあとの九項目にあらわれたようないろいろな問題を処理するための恒常的な協議のための一つの機関であるということを前提にした表現でなくてはならぬ、このように考えるわけであります。そうではございませんか。
  501. 小川平四郎

    ○小川政府委員 ただいま御指摘のとおり、レギュラーベースによって継続するという点は意見が一致したわけでございます。したがいまして、明年以降同様の閣僚会議が大体毎年開かれることは同意されたわけでございます。そこで、その閣僚会議で前回において出ました問題を次の会議においてさらに詳しく掘り下げる必要があるわけでございます。そのためにこのスタンディング・コミッティーが活用される、こういう考えでございます。
  502. 永末英一

    ○永末委員 そうだといたしますと、四月にわれわれのほうがやりました会議は、そこまで全然取りきめもせず、次期の開催国だけをきめて、そこで別れておる。そうしますと、日本政府といたしましては、四月の会議に置いた重点と、そして今回の会議で引きずり込まれた力の量と比べまして、どっちが多いですか。
  503. 小川平四郎

    ○小川政府委員 先ほど先生の御指摘の第九項にはいろんなものが並んでおります。これは各国がいわば思いつきにいろいろ述べたものを総花的に並べたものでございまして、これがどのように実現されていくかということは、今後二回、三回と会議が積み重なっていく上において実現されるわけでございまして、いずれもコンクリートなものはございません。いわば各国が出し合ったものを並べたという程度でございまして、そういう意味から、この並べられておるものが多い、少ないによって日本政府の熱意の度をはかるのはちょっと無理かと存じます。
  504. 永末英一

    ○永末委員 今回のソウル会議では、自今アジア・太平洋地域の他の自由諸国が将来の協議に参加するようできる限りやるんだ、こういうことが共同声明に盛られておる。四月の会議では、非同盟諸国の一つであるビルマ等もひとつ入ってほしいというようなことが相談になり、日本の外務大臣の話みたいなところにもそれが出ておるわけですね。そうしますと、今回のソウル会議に関する限り、参加したものはすべてアメリカとの軍事的なコミットをやっておる国々だけである。そしてそのベースにおいて他の自由諸国の参加を求める、こうなっておる。この自由諸国という中には非同盟諸国を入れておられるのですか、入れておられないのですか、伺いたい。
  505. 小川平四郎

    ○小川政府委員 その点はたしかアザー・フリーカントリーズということになっておると思います。これは決して自由陣営あるいは共産陣営という意味ではございませんで、いわば平和愛好国というような意味のもので、自由諸国と訳すことが、ただいま先生の御指摘になったようなやや誤解を与えておるのかもしれませんが、すなおに訳せば自由な国々と訳すべきものかと思うのでございまして、当然非同盟の諸国を含むものでございます。
  506. 永末英一

    ○永末委員 その点は重要な御表明でございますので、外務大臣おりませんが、考慮にとどめておきます。  もう一つ伺いたいのは、この十項に、日本訳では「本会議参加国のすべてが各種の国際機関および地域的機関の加盟国であることを想起し、これらの諸機関の有する価値をさらに高め、」云々と、こうなっておるわけです。一体この中に書いてございます各種の国際機関、特に地域的機関の加盟国、この意味を明らかにしていただきたい。
  507. 小川平四郎

    ○小川政府委員 特定の機関が論ぜられたわけではございませんが、まず国連、それから国連の専門機関でございまする各種の、FAOあるいはその他のもの、地域的機関といたしましてはエカフェ、そういうようなものを想定しておるわけでございます。
  508. 永末英一

    ○永末委員 私はそのフリーカントリーズという中で、問題にいたしました非同盟諸国の問題はこの十項目と関連をさせて考えますと、まあ各種の国際機関ならそういう御答弁もいいでしょう。しかし地域的機関の加盟国、つまり「本会議参加国のすべてが」まん中を省きますと「地域的機関の加盟国であることを想起し、」そうなりますと、普通の感覚では、わが国はアメリカとの二国間の地域的機関の一カ国である、韓国はアメリカと韓国との間の二国間の地域的機関の一カ国である、ANZUSの機関に入っているものもある、SEATOに入っているものもある、こういうように考えられるわけですね。その他はないわけだ。したがって、そういうことを前提にした場合に、一体これはそういう軍事的にコミットしたものたちの参加することに価値があるということを認めた、こういうふうに解釈ができるわけですか。いかがですか。
  509. 小川平四郎

    ○小川政府委員 SEATOのごとき軍事的なグループは全く想像しておらなかったわけでございまして、会議におきましても、軍事的な結びつきというようなことを言ったものは全くございませんし、むしろ軍事同盟のようなものはこの会議で議論するつもりは全くないという発言をした国があったほどでございます。したがいまして、ここで申し上げましたのは、先ほど申し上げましたような機関でございまして、国際連合というだけでいいわけでございますけれども、実は国際連合に正式に加盟していない国もございましたので、特にその他というものをつけたわけでございまして、主として国際連合の下部機関であります地域的な専門機関、エカフェをさしているわけであります。
  510. 永末英一

    ○永末委員 小川さん、言いのがれはいろいろできますが、なるほど会議の席上では、公式の発言としてはいまのような軍事的なというようなことは各国は言わなかったかもしれません。私速記録を持っておりません、新聞報道だけでございますので知りません。しかし、当初韓国の朴正煕大統領が各国を経めぐって、アメリカまで行って、何とかして韓国でこれを開きたいと訴えた過程においてはそういうことが一つの焦点であったことは、だれ知らぬ者もない事実だと思います。しかし、私はそこに問題があるのではなくて、そういう経過でできた会議日本政府は参加するということをいろいろ御検討になったでしょう。なったなればこそ、そういう表現が出ないようにという根回しをまた日本政府はやられたと思う。その根回しがきいて、ソウルの会議では公式にはそういうことは出せなかったかもしれません。私が伺いたいのは、四月に日本政府がやった場合には、インドネシア、カンボジア、シンガポールという国を呼ばれたわけだ。しかし、今回は韓国が一定の目的のもとに集めたのだから、こういう国々は参加をしなかった。日本はまさに両道をかけて参加したわけです。参加したというよりは、四月には日本政府独自の外交方針があったわけだ。今回は韓国の立てた方針の中に、いろいろの論議の末参加をしていったわけです。しかし、参加した以上は、日本というのはアジアにおける力のある最大の国であることは間違いございません。その国が一体四月を重点に置いてこれから進めるのか、六月基盤で進めるのかということは、非常に重要な影響を、特にソウル会議に出席しなかった国々、また軍事的コミットをしていない国々に対して及ぼすと私は思う。その方針を伺いたい。
  511. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 永末委員はよく御承知の上でお尋ねになっておられると思うのでありまして、もちろん、日本がイニシアチブをとりました四月の会議にわれわれは非常な重点を置いていることは、先ほどお答え申し上げたとおりであります。なお、本会議に関連をいたしまして、いわゆる農業開発会議というようなことも具体的に日程にのぼっていることも御承知のとおりでございます。われわれはどこまでもじみちにこういう面に重点を置いて、今回お願いいたしておりまするアジア開発銀行、その他一切の経済開発の力を東南アジアに集中してまいりたい、こういう考えでございます。いわばソウル会議は、わが国のそういう意図を反映いたしまして、いまいろいろお話がございましたが、当初のような構想が相当程度に薄められ、日本考え方に近いものになった、かように御理解をいただければけっこうではないか、かように存じます。
  512. 永末英一

    ○永末委員 アジア開銀の問題点は、これはアメリカが参加するわけだ。したがって、アジア開銀というものは、アメリカが従来まで第二世銀あるいは世銀を通じて行なってきたアジアの新興諸国に対する経済協力ないしは経済援助、その大部分は著しく軍事的援助であります。そういうことを進めるべく、日本政府が、いわばアメリカの身がわりになってアジア開銀の主導権をとるような姿をとったといたしましても、その日本に対して非同盟諸国のほうは、一体日本はどういう立場でこのアジア開銀に入ってくるかという政治的な性格を判断しようとかまえているわけだ。そこで、これは重大だというので、日本政府は四月に少なくとも東南アジアに関する会議をやったんじゃないですか。さればこそ、いろいろな問題がございましたけれども、インドネシア、カンボジア、シンガポールというものを呼び、軍事的にきわめて強いコミットをしている国は呼ばなかったとわれわれは思うのです。しかし、今回、そういう経過にかかわらずアジア開銀の発足の直前にソウル会議に入っていったということについては、日本政府としては、いわば四月会議に出て、ソウル会議に出ない国に対しては、自分の立場を明確にする責任があると私は思う。そういう御用意があるかどうか、伺いたい。
  513. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 繰り返し申し上げましたように、日本態度は、四月会議、今回のソウル会議を一貫して明確でございまして、この点は御参加をいただいた国々にも十分徹底をいたしているものと考えております。
  514. 永末英一

    ○永末委員 語尾がよく聞き取れなかったのですが、一貫しておるものと考えておるのか、一貫している態度を知らせたいと言われるのか、明確に願いたい。
  515. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 一貫しておるのでございます。なお、その点は各国に周知されておるものと考えております。
  516. 永末英一

    ○永末委員 国際政治というのは、主観的な判断では動きません。自分がどう考えておろうと、相手方が自分をどう見ておるかということを的確に判断しなければひとりよがりでは間違うのでありまして、政府は、映っておるはずだというようなことでなくて、映らせるように努力をしなければなりませんね。  そういう一つの過去の経緯をながめつつ大蔵大臣に伺いたいのですが、四月会議のとき、日本政府はジュネーブ以来二へん目でございますが、わが日本国民所得の一%以上を新興国、開発途上にある国々の援助に出すのだ、こういうことを大蔵大臣も言われた。この決意に間違いございませんか、伺いたい。
  517. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 なるべくすみやかに一%に達するように努力したいのだ、こういうことをしばしば明言しております。
  518. 永末英一

    ○永末委員 わが民社党は早くより社会主義インター加盟の一政党といたしまして、ともかく工業力の進んだ国が自分の国民所得の一%を開発途上にある国々に出すべしと主張してまいりました。わが国政府はこのことを言明するのはきわめておそかったのでありますが、今回その一番関係の深い東南アジア各国の閣僚に対して大蔵大臣みずからそういう言明をされたことをきわめて多といたしております。  それでは伺いますが、国民所得の一%、ことばはいいですが、どういう形で出すのですか。いま出しておるものは、比率は御承知のとおりですが、これからアジア開銀へ出すものを入れられるのですか、それをまず第一に伺いたい。
  519. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 もちろん国際機関に出すものもそれは入れるわけです。それから民間で出すものも入れます。政府のものはもとよりであります。それらを全部ひっくるめまして、昨年あたりは〇・六三くらいになっております。なるべくすみやかに一%まで持っていきたい、かように考えております。
  520. 永末英一

    ○永末委員 アフリカ、南アメリカ等のエマージング・カントリー、新興諸国を含めて〇・六三、わが東南アジアだけに局限いたしますと、国民所得との割合というものは現在どうなっておりますか。
  521. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 対外援助の中で大体七割から八割はアジア向けのものである、かのように御理解願っていいと思うのです。
  522. 永末英一

    ○永末委員 これらの国々が日本を見ます場合に一番釈然としない点はどこかと申しますと、日本はなるほどそういうことを言っておる、しかし日本国がこれらの国がこれらの国々に対して経済協力をしたやり方は、たとえば日本国内におきます海外経済協力基金の扱い方にしろ、すべてこれ商業ベースである。つまりくれるのじゃないのだ、必ず取り返すのだ、こういう形でやってきておる。アジア開銀におきましても、これは金融でございすから、必ず取り返すということは、これは前提になっておる。わが国のいま申しました資金も、日本の商社がそれぞれの新興国に対して行なう商売について、日本政府がいわば時間かせぎの金を貸すということがたてまえになっておる、しかもその期間は他国に比べて短く、その条件は他国に比べて高いということでございますから、一体日本は本気になってこの東南アジアの一国として経済振興を考えておるのだろうかということを、彼らはきわめて疑問に思っておる。この疑問を解くかぎは、ことばは悪うございますけれども、一種の政治借款というものを日本がやる以外に方法はないと私ども民社党は考えておるが、大蔵大臣どう思われますか。
  523. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 政治借款というと、どういうものであろうか、いろいろな政治的な意図があると思いますが、しかし、経済ベースに乗りにくいようなものでも相当出しておるわけです。いわゆるグラント方式のものも出しておるわけでありまするし、また海外経済協力基金のごときは、一般の金融に乗りにくいような性格のものも出す、こういうたてまえをとっておるわけでありまして、そういうものを政治借款と言うならば、まさにわが日本は相当の政治借款をやっておる、こう御理解願ってよいと思います。アジアばかりではありませんけれども、戦後の新興諸国に共通した点は、何といっても、独立を完成させたいという熱烈な民族意識を持ちながら、それを完成するに足る経済力を持たない、貧困である、こういう点にあると思います。やはりわが日本は一人で生きていくわけにはいかないので、これらの国々にも協力して、これらの国々を一緒に繁栄させていくのだ、そういう考え方をとる以外に日本の国をほんとうに育てていく道はない、こういうふうに私は思います。ただ、日本は世界第五の生産国だというけれども、何といっても人口が多い。一人当たりにいたしますれば、きょうも言われましたが、二十一番目の所得の国である、こういうような状態です。海外に援助するということは、その一人一人の日本国民の可処分所得をさいてやるわけでございますから、したがって、これは国の政治情勢とも見合っていかなければならぬ。そこに非常にむずかしさがあると思いますが、私は海外に力を注ぐということを心がけていく以外に、長い目で見て、日本の生きる道はないのじゃないか、さように考えております。
  524. 永末英一

    ○永末委員 私どもは、現在の日本の政治で一番欠けておるものは、日本の平和と安全に関する基本方針について自民党政府がきわめてぼやっとしていることで、これをきわめて遺憾に考えております。  そこで、この問題に対して一番私どもとして主張したいことは、わが周辺にある東南アジア新興諸国に対する経済安定のための日本の寄与、努力というものを明確にしていくことが、われわれの平和と安全を守るためにきわめて必要だと思います。そこで、大蔵大臣としては、なるほど国民総生産の比率、各国に対する比較で、パーヘッドの一人当たりのものと比べてきわめてアンバランスであるというので、可処分所得をどう振り向けるかということについて、わが国内に振り向けずして国外に振り向けるということは、きわめてぐあいが悪いと思われるかもしれませんが、これは自民党政府としてはふんどしを締め直して、平和と安全を守るためには重要な条件なんだということをやはり訴えられなければならぬ、私どもはそう思っております。  そこで伺いたいのは、そういうかまえに立った場合に、新興諸国は長年植民地としてやってきた国でありますから、くくられたローンというものがいやでございます。したがって、ゆるやかな形でないと、新しい植民地主義で日本がまたやってきた、こうなるのでございますから、その点はきわめて慎重な配慮を要するとは思います。しかし、いままでやってきたような、すべて金融ベース商業ベース的なことで日本経済協力と言ったって受け取れないということは、さいふのひもを締めておられる大蔵大臣としては心がけていただきたい。いままで国民所得の一%という場合に賠償が入っておるというのは、日本政府考え方です。賠償を加えると一%に近づく、しかし、賠償は毎年期限が近づきつつあるということで、いまわれわれが持っておるようないろいろな経済協力のしかたのほかに、もっと政治的な経済協力考えなければ一%にはならない。先ほどは、きわめて早くとか、非常に慎重に答えられたと思いますが、しかし、賠償も期限の来ているものがあるのだから、そこで、一体どういう内容を含ませるのですか、ちょっと御構想を承りたいと思います。
  525. 村井七郎

    村井政府委員 仰せのように、賠償はそのうちに期限が到来するものがございます。しかしながら、他面インド、パキスタンに見られますように、円借款というような直接借款が始まりまして、これがまた一つの方式といたしまして、今後アジア地域を主軸といたしましてそういう方式が用いられますし、その条件をなるべくソフトにいたしまして、先生が御指摘のように、金融的あるいは商業的なベースとは必ずしも言えない援助的な性格を条件の中に職り込ませるというものが次第にふえていく、しかしながら、これは急につくるわけにもまいりませんので、国力の許す限りなるべく早く、大臣が言われましたようなテンポでもって一%に追いついていくということになろうかと思います。
  526. 永末英一

    ○永末委員 大蔵大臣に伺いますが、きわめて早くでございますが、日本のほうはまた経済計画を立てておるわけであって、そこでわが民社党としましては、自主防衛のためにさき得る経済量、そしてまた、特に東南アジア周辺の諸国の経済協力のためにさき得る経済量、こういうものを勘案しなければ日本経済計画は立たぬ、こういう角度でものを考えております。そういたしますと、わが国の防衛計画は、三次防というものが来年から始まるわけでありまして、おそらく国会が終わればこれは日程に上がってくる。そこで、きわめて早くとおっしゃいますが、一%というのは、遠い将来の目標ではなくて、日本政府がこの義務を果たすことによって、いわばそれを誘い水にして世界の諸国に対しても呼びかけ得るきずなになると思います。どうですか、いまの見通しとしてどの程度いけば一%はやれるとお考えですか。
  527. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 結局、対外経済協力というものは、そのしりが財政負担にくるのです。財政負担ということは、国民の使い分をそれだけ海外にさく、こういうことになるわけであります。一体、国の財政状態はじゃどうだ、こういうと、四十二年、三年というのが非常に苦しいのです。したがいまして、四十二年、三年に大幅に対外経済協力を伸ばすという余地は、私はないのじゃないか。それ以降の問題です。経済が本格的に回復し、財政もそれの影響を受けて楽になるという時期には、私は積極的に対外経済協力をやるべきである、こういうふうに考えておるわけであります。何とかして数年中にはこれを実現したい、こういう考えでございます。
  528. 永末英一

    ○永末委員 大蔵大臣のいまの御決心のほどは一応承りました。そこで、わが国はこれらの諸国に対して、ある一定の政治的な意味において経済協力を行なっていく時期がきわめて近いと私どもは判断をいたしております。したがって、いまはアジア開銀というもの、これは一つのくさびかもしれませんが、東南アジア閣僚会議や、あるいはソウルにおけるアジア・太平洋閣僚会議という二頭の馬に乗りながら、これらの諸国に相対していくわけでありますが、日本の政治的立場というものは、ぼくはきわめて重要な問題だと思うのです。  そこで、けさの参議院の外務委員会で奇妙なことを外務大臣が言われたと伺った。外務大臣おらぬので困るのでありますけれども、日本政府の見解として聞いたところでは、アジア閣僚会議の決定などについて拘束されないということを言ったというのですが、正示次官はお聞き及びでありますか。
  529. 小川平四郎

    ○小川政府委員 そういうことを言われたのではないと思います。私、ただいまの御質問に該当すると思われましたのは、この会議に出席したことによって、日本の外交方針が影響ないしは拘束されたのではないかという御質問に対して、そういうことは全くないとお答えになったのが、ただいま御指摘のようにとられたのではないかと思います。
  530. 永末英一

    ○永末委員 諸国家間の会議というのは、私どもも政党ベースではございますけれども、会議に参加をいたします。これは決定権はございません。しかし、お互いが話し合って、一つの決議文あるのはコミュニケという形で出しました以上は、お互いにその会議に参加している者はその決議文には縛られるのだという前提がなければこの種の会議を自今開くことに対して非常に支障がくる、いわば意味がなくなるはずでございます。したがって、少なくともソウルにおけるこの種の共同コミュニケが出たということであるならば、日本政府は、まあこの翻訳を変えられるのは問題がございますけれども、この趣旨だけは日本政府としてはやっていくのだということを日本の国会で言われなければ、そういうものはあるかもしれぬが、そいつに拘束されるわけではないというようなことが、もしこれに参加した各国に響いたら、日本という国は一体どういうつもりでこの共同コミュニケにサインをしたのか、こういうことになりはせぬかと思われますが、小川さん、どう思われますか。
  531. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 先ほど来申し上げましたように、わが国の方針は一貫しておるわけであります。今度の会議によって非常な変更を受けたというようなことはない。したがって、われわれはどこまでも従来の外交方針を堅持していくのだ、こういう趣旨の答弁でございまして、それに対する解釈はいまおっしゃられるような趣旨ではないわけでありますから、どうかその点は御理解をいただきたいと思います。
  532. 永末英一

    ○永末委員 だいぶ時間も費やしまして、大体人間が質疑を行なっている時間ではございません。そこで、大体これでやめたいと思いますが、もし参議院における外務大臣答弁のしかたが、各国に望まざる反響を及ぼすとするならば、これは適当な機会に政府においてその真意を明らかにしておいていただきたい。これは民社党の要求です。  それから、正示次官が言われますけれども、一貫した方針もですが、思っていることと相手が受け取ることは違うのでございますから、今後この種の会議に参加する場合には、やはりその基本方針が一貫しておるとするならば、それが国外はおろか国内にもわかるように、ちゃんと整理をしてかかっていただきたい。特に国際会議においては、集まる者によってその性格が判定せられるわけでございまして、そういう点について慎重にこれには配慮を加えて、そうして参加、不参加をきめ、参加するならば自分の所信のほどだけは貫き、そうして貫き得なければ会議から帰ってくる、これくらいの決意がなければ、ことばだけで自主外交なんといったって自主にはならぬ、われわれはそのように考えます。  そういう角度で、アジア開銀というものは本質的にわれわれとしては賛成をいたしております。賛成をいたしておりますが、この開銀が発足をいたしまして、これにいろいろな種類の政治的性格の国々が入ってくる過程において、わが日本政府の持っておる政治的立場というものを考えなければ、単に経済量を移動するだけであって、余った日本経済量で寄与するんだ、こういう立場では日本の国際的信用を著しく失墜することがあるということを警告申し上げて、私の質問を終わります。
  533. 三池信

    三池委員長 これにて両案に対する質疑は終了いたしました。  次会は、明二十二日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後十時十五分散会