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1966-06-10 第51回国会 衆議院 大蔵委員会 第50号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年六月十日(金曜日)     午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 三池  信君    理事 金子 一平君 理事 原田  憲君    理事 坊  秀男君 理事 吉田 重延君    理事 平林  剛君 理事 堀  昌雄君    理事 武藤 山治君       岩動 道行君    大泉 寛三君       押谷 富三君    木村 剛輔君       木村武千代君    小山 省二君       田澤 吉郎君    谷川 和穗君       地崎宇三郎君    西岡 武夫君       羽田武嗣郎君    村山 達雄君       毛利 松平君    山本 勝市君       渡辺 栄一君    渡辺美智雄君       小林  進君    佐藤觀次郎君       只松 祐治君    平岡忠次郎君       藤田 高敏君    山田 耻目君       永末 英一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 椎名悦三郎君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         国 務 大 臣 藤山愛一郎君  出席政府委員         外務事務官         (経済協力局         長)      西山  昭君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         外務事務官         (国際連合局長         事務代理)   滝川 正久君         大蔵政務次官  藤井 勝志君         大蔵事務官         (主計局次長) 岩尾  一君         大蔵事務官         (国際金融局         長)      鈴木 秀雄君         国税庁長官   泉 美之松君  委員外出席者         外務事務官         (条約局外務参         事官)     大和田 渉君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 六月十日  委員藤田高敏辞任につき、その補欠として山  口シヅエ君が議長指名委員に選任された。 同日  委員山口シヅエ辞任につき、その補欠として  藤田高敏君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 六月八日  所得に対する租税及びある種の他の租税に関す  る二重課税の回避のための日本国ドイツ連邦  共和国との間の協定の実施に伴う所得税法、法  人税法及び地方税法特例等に関する法律案  (内閣提出第一四六号)(参議院送付) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  小委員会における参考人出頭要求に関する件  外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律  案(内閣提出第四〇号)  アジア開発銀行への加盟に伴う措置に関する法  律案内閣提出第七六号)  税制に関する件      ————◇—————
  2. 坊秀男

    坊委員長代理 これより会議を開きます。  委員長所用のため、指名により、私が委員長の職務を行ないます。  参考人出席要求に関する件について、おはかりいたします。  金融及び証券に関する小委員会において、来たる十五日、金融に関する件について、全国銀行協会連合会会長田中久兵衛君、全国地方銀行協会会長平野繁太郎君、全国相互銀行協会会長尾川武夫君及び全国信用金庫協会会長小原鉄五郎君に参考人として出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 坊秀男

    坊委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 坊秀男

    坊委員長代理 外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案及びアジア開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律案の両案を一括して議題といたします。  質疑通告がありますので、順次これを許します。藤田高敏君。
  5. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は、一昨日に引き続きまして、一昨日の質問関連することを中心として、以下質問を続けたいと思います。  その前に、ちょっと私自身特に理解に苦しむことがありますので、お尋ねをしたいと思うのであります。  それは、過日来の当委員会における審議の中にも出てまいりましたが、いわゆる今回のアジア開発銀行設立関連をして、本店日本誘致するのかどうか、また、総裁がだれになるのかどうかというようなことで、すでに意見がかわされたところでございますけれども日本政府は相当の自信とまた異常な熱意で、これが本店誘致については東京にしたいということで努力をしてきたようでございますが、その結果は、いわゆる的はずれに終わっておるわけであります。そこで、私ども立場からいいますと、この開発銀行それ自体については、これからも質疑を通してその性格なりその当否をさらに明らかにしていく段階でございますが、少なくとも政府としてはこの開発銀行については異常な熱意設立努力をし、今日こういう形で協定なりその他の案件を出してきておるわけでありますから、政府としては銀行設立できるかどうか、また、その本店東京誘致することができるかどうかということは、たいへん重要な事項であったと私は思うわけです。ところが、結果的にはこういうふうに失敗をした。しかし、ここで私特に尋ねたいと思いますことは、それでは、最終的な昨年マニラ結論が出るまでの間、本店東京に大体誘致できるのではないか、こういう判断をした責任所在はどこなのか、これは省でいえば外務省か、それとも大蔵省か、その主たる責任所在はどちらであるのか、各省の局でいえば、いかなる局がこの種の問題についての政治判断なりあるいは外交交渉をやってきたのか、その責任所在をひとつ聞かしてもらいたいと思います。
  6. 鈴木秀雄

    鈴木(秀)政府委員 ただいまの御質問でございますが、日本本店を希望すると言いました際に、御存じのように、ほかの国も希望していたわけでございます。しかし、私ども立場といたしましては、日本という国が、やはり気候、風土あるいはいろいろな意味で、最も銀行運営において日本本店があったほうが望ましい、日本の利益といいますか、そういったことだけではなくて、銀行運営のために日本というアジアにおける唯一の先進国である国にあれば、東南アジアの総務である閣僚あるいは中央銀行総裁等日本に来られていろいろ学ぶ点もあるだろうし、また、気候もそう悪くないところのほうが銀行健全運営に望ましいという観点から立候補したわけでございまして、必ずしも、日本がそれをとらなければという——それでアジア開銀をコントロールしたいという、そういう意図だけではなかったわけでございます。  それで、ただいまの第二段の御質問の、どこの責任であるかと申しますことは、外務省大蔵省共同責任でございます。外務省でいえば、当時はエカフェ所管局であります国連局、それから大蔵省で申しますと、私が局長をやっております国際金融局がその責任者でございます。
  7. 藤田高敏

    藤田(高)委員 それでは、外務省エカフェを所管する国連局大蔵省国際金融局が、いわば本店は大体日本誘致できるだろう、大かただいじょうぶではないだろうか、こういう政治判断なり状況について、大蔵大臣なりあるいは外務大臣なりあるいはその政府機関に対して判断材料を提供してきた、したがって、局の段階でいえば、その局がその種の問題について責任があるのだというふうに理解していいわけですね。
  8. 鈴木秀雄

    鈴木(秀)政府委員 外務省の機構について、よその省についてどこが責任あるかということを申し上げますことはできませんが、大蔵省に関する限りは、私一身が責任を負っておるわけでございます。
  9. 滝川正久

    滝川政府委員 ちょっと補足させていただきます。  いま金融局長が言われたとおり、外務省側につきましては、今日までアジア開銀関係につきましては国際連合局主管局になっております。
  10. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私はここで、ある意味ではたいへんいやらしいことを言うようですけれども、この種の問題はかなり高度な政治判断をまじえた議論というものが起こると思うのです。また、私ども立場からもこの種の政治的な要素を入れた質問もたくさん出ると思うわけでありますが、端的に言って、その本店日本にくるかどうかというような事柄についての判断が十分できなかったというような、そういう局の代表者がこの委員会でわれわれと質疑応答をやって、私どもははたして信頼のできる答弁を受けることができるかどうかという点について私は非常に判断に苦しむわけです。役所の中の責任所在をどういうふうに明確にするかという点についてはいろいろ考えがあると思いますが、たとえば、民間の会社に例をとってみますと、この種の重大な問題についてここまで大きな判断誤りをしたということになれば、その営業担当の部長なりあるいは担当重役というものは、半年もその余も同じ地位にすわって、しかもこの種の重大な会議に列席をするというようなことは、よくよくの場合以外ないのじゃないかと私は思うのです。そういう責任所在というものを明確にしないまま、この重大なアジア開銀の問題について政府委員として答弁に立たれるという点については、私どもはいささか理解に苦しむものであります。そういう点については、少なくとも政府部内あるいは政府機関としてはこの銀行本店誘致については非常に重大な問題としてやっておるわけでありますから、その本店誘致失敗をしたということになれば、それぞれの責任ある立場の者に対する責任のとり方については具体的には何らかの処置があっていいのではないか。この点についての大臣の、大蔵省大蔵省としての見解をひとつ聞かしてもらいたい。
  11. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 責任外務大蔵両省にあるわけであります。そのだれに責任があるかといえば、外務大臣と私に責任があるのでありまして、決して一局、一課の局長だの課長だのにあるわけではございません。これはもともと日本の利害という立場が先行している問題ではないのであります。アジアのフィナンシャルセンターとしての東京、その東京本店が設置されることが適当である、こういう判断に従って東京を主張する、こういうことになったわけであります。この会議に臨むにあたりましても、私ども東京であるべしというふうに考えてはおりましたが、これが東京になるかという点になれば、絶対になるのだというふうな非常にかたい見通しではなくて、最後まで努力しなければならぬ問題である、こういうふうに考えておったわけです。それがああいうきわどい選挙の結果、東京誘致ということができなかった。これは非常に残念なことでありますが、そういう事態になりましたゆえんのものは、これは前々からあったのですが、本店東京になる、そうすると、総裁もどうもほかになりそうな人もいない、これは日本人である渡辺武という人が前々から浮かび上がっておる、そうすると、本店総裁東京ということでは、これは適当でないという空気が一般的であったわけであります。そういうことからただいま申し上げたような遺憾な結果になったというふうに思うわけでございますが、責任ということになりますると、外務大臣と私に責任があるわけであります。私もその責任を痛感し、今後ともこういう国際問題が私どもの希望するような筋で動くようにできるだけ努力をしていきたい、かように考えております。
  12. 藤田高敏

    藤田(高)委員 最終責任大蔵大臣外務大臣にある、これは私は形式論議としてはそのとおりだと思うのです。しかし、このことだけでなくて、少なくとも、事国政に重大な影響を与える問題については、いかなる部署といえども、いかなるポジションといえども、それぞれの部署においてその責任所在というものを明確にしていかなければ、行政秩序確立も、また、特に国際的に大きな影響を持つこの種の問題についてわが国の信用を確保していくという見地からも、十分その責任を果たすことができないという点から、この問題については責任所在だけを明確にしてもらえばいいと思うわけであります。その点では、形式論議として、最終的には大臣にあるのだということでなくて、やはりこの種の問題はそれぞれの省の局長なりあるいは部長なり、そういうところに実質的な責任があるということを認めてもらわなければ、この種の議案についての審議というものは、答弁に立つのは大蔵大臣だけじゃないわけで、局長もほとんど立たれておるわけですから、そういう点から責任所在だけは明確にする必要があるのではないかと思うのですが、そういう意味においてはどうですか。
  13. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 当該関係局長責任があるかどうか、こういうことになれば、これは局長としての責任は私はあると思います。しかし、大蔵省がこの問題に取り組む、外務省がこの問題に取り組む、そういう際には、当該主管局長ばかりではありません。次官もあり、官房長もあり、あるいは大蔵省でいいますれば、財務参事官というものもおり、その上に大臣もおって、みんな力を合わせてやっておるわけです。全力を尽くした結果がそういうふうになっておるわけで、決して国際金融局長がすべて責任を負っている、こういう問題ではないのであります。
  14. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は、大臣が自分の省の部下をかばう気持ちはわかりますけれども、決して私は大蔵省金融局長だけをやり玉に上げてどうこうというつもりで言っておるわけじゃないのです。いま言ったように、たとえばマニラ会談出席した方々のお名前もここにいまもらっておりますが、そういう人たちをはじめ、この問題であれば、この問題に中心的に取り組んできた者のそれぞれの立場における責任というものは明確にしていかなければいかぬじゃないか、こういうことを言っておるのでありまして、そういう意味において大いに責任を感じるか、感じないかという点をひとつ大臣立場からお答え願いたい。
  15. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私も責任は感じております。局長局長の分野において責任を感じておる、かように存じます。
  16. 藤田高敏

    藤田(高)委員 その責任所在というものが明確になりましたから、私としては、先ほどもちょっと触れたように、事この問題に限らず、重要な国政にまつわる問題について非常に大きな判断誤りをしたというような場合には、それぞれその責任についての良否を明らかにするような処置というものが今日及び将来にわたってやはりとられていかないと、本来的な意味における行政秩序確立もできないんじゃないかという点だけを申し上げておくのと同時に、非常にこれは不満でありますが、その程度のことが、私ども立場からいえば、わからなかったというような人たちを含めてこの議案審議に当たらなければいけないということは非常に残念だということだけ申し上げておきたいと思います。  そこで、時間の関係もありますから、私は具体的な内容に入りたいと思いますが、先日の委員会小林議員のほうからもお尋ねがあったと思いますが、そのことに関連をして、今度のアジア開銀加盟する域内加盟国アメリカと何らかの形における経済協力関係と申しますか、それよりも端的に言って軍事同盟相互援助条約を結んでおる国はどことどこなのか。その域内加盟国で、アメリカ軍事同盟ないしは相互援助条約を結んでおる国の今回の開発銀行加盟に伴う出資金負担割合はどういうことになっておるか。それとあわせて、域外の国々において、これまたアメリカ軍事同盟ないしは相互援助条約を結んでいる国と、その出資金比率ですね。これをひとつ教えてもらいたいと思うのです。
  17. 滝川正久

    滝川政府委員 ただいまの先生の御質問は、この前の小林先生の御質問のところで半分御返答申し上げたわけであります。域内につきましては、日本韓国フィリピンタイ豪州ニュージーランド南ベトナム中華民国ということを申し上げたわけでございますが、これらにつきまして、ただいま出資ということをおっしゃいましたのですが、出資につきましての比率金融局長から申し上げます。
  18. 鈴木秀雄

    鈴木(秀)政府委員 オーストラリアが八千五百万ドル、中国が千六百万ドル、日本が二億ドル、韓国が三千万ドル、ニュージーランドが二千二百五十六万ドル、フィリピンが三千五百万ドル、南ベトナムが七百万ドル、タイが二千万ドル、以上でございます。
  19. 滝川正久

    滝川政府委員 いま大蔵大臣から御指示がございましたが、これらの国がアメリカとどういう関係にあるかという点、この前ちょっと申し上げましたが、申し上げさせていただきます。  いずれも軍事同盟または安全保障条約というような関係で結ばれております。韓国、これは御承知のとおり米韓条約というものによって結ばれておるわけであります。それからフィリピンは個別的にアメリカと持っておりますが、同時にいわゆるSEATOメンバーでもございます。それからタイ、これもSEATOメンバーでございます。豪州ニュージーランド、これはアメリカとは例のANZUSというものによって結ばれております。南ベトナムは御承知のとおりアメリカ援助協定というようなものを結んでおります。それから中華民国、これまた個別的に持っておるわけであります。
  20. 藤田高敏

    藤田(高)委員 必ずしも明確でないのですが、この間の小林議員質問といま御答弁になりましたことをチェックしてみたいのですが、結果的にはこういうことに理解できると思うのですが、ちょっと確認を願いたいと思うのです。アメリカと何らかの形における軍事同盟相互援助条約を結んでおる国は、台湾、それからインドもありますね。それからイランもありましょう。この二つはいま答弁がなかったと思うのです。それから日本韓国、そしてニュージーランドパキスタンフィリピン、そして南ベトナムは実質的なこういう状態ですから南ベトナム、そしてタイ域内国では以上申し上げた国があると思うわけです。それと域外ではベルギー、カナダ、デンマーク、西ドイツ、イタリア、オランダ、ノルウェー、英国、これだけの国があるのではないですか、その点ちょっと確認をしてください。
  21. 滝川正久

    滝川政府委員 私、日本はもちろん除きまして申し上げたのでございますが、SEATOにたしかパキスタンが入っておりまして、中東のCENTOという機関がございますが、それにイランが入っておったと思います。ただ、これは形式的なあれでございまして、現在の実情から見ますと、パキスタンなどはメンバーとしては入っておりますけれども、実際上の動きから見ますと、必ずしもアメリカとの軍事同盟というような動き方はしておりません。たとえば、先般のインドパキスタンというようなときの動きを見ましても、むしろ米国と軍事同盟によって結ばれているという見方をしないほうがいいではないか、イランのいき方も最近はわりあいそういうことでございまして、いまおっしゃいました疑問をお持ちになるのは当然だと思いますが、そういうような関係で省いてある次第でございます。
  22. 藤田高敏

    藤田(高)委員 実質的に軍事同盟としての機能を発揮して、そうして相互協力関係条約締結当時の目的に合致するような共同行動をとっておるかどうか、このことについては、個々の面で若干の違いもありましょう。ただ、今度の場合に、直接加盟をいたしておりませんが、フランスのごときはSEATOに入っておっても、実質的にはむしろSEATOに背を向けるような状態にあるというような、そういう部分的ななにはありますけれども、いま私が指摘しましたように、全体的にはほとんどの国がアメリカとそういう協力関係を結んでおる。これを逆に拾いますと、現在、今回のアジア開銀加盟する域内加盟国十九カ国の中で、八カ国を除けば全部これはアメリカ軍事同盟を結んでおる。片や域外加盟国は、アメリカを含めて十二カ国のうち、わずかオーストリアとフィンランドとスウェーデンの三カ国だけが軍事同盟を結んでいない。先ほど私が質問をしたことに必ずしも的確な答弁はなかったわけでありますが、この大蔵省から出されておる資料にも明らかなように、この域内加盟国アメリカと直接軍事同盟を結んでいない国の今回の出資額というものは、トータルして四千百五十二万ドル、そして域外加盟国アメリカ軍事同盟を結んでいない先ほど指摘した三つの国のトータルは、それぞれ五百万ドルですから、千五百万ドルの出資しかしない。そうすると、いわばこの両方合わせまして、十億ドルの出資額の中でアメリカ軍事同盟を結んでおる国の出資額トータルはそのうちの九五%まで占めておる。そして、いわば軍事同盟を結んでいない国の出資額というのはわずか五%程度だ、こういう結論に内容的にはなっておると思うわけですが、この点は、ひとつ事実問題としてこれから論議を深めていくポイントになりますので、私はそういうふうに理解するわけですが、間違いないかどうか。
  23. 鈴木秀雄

    鈴木(秀)政府委員 ただいま外務省からお答えいたしましたように、インドとかイランとかパキスタンというようなものをどちらに入れるかという問題につきまして、外務省のほうは必ずしも藤田先生のおっしゃるように考えてないようでございますが、もし藤田先生のような前提に立つとすれば、大体数字としては先生のおっしゃったことが正しいのではないか、こういうふうに思っております。私、いま正確に計算したわけではございませんので、その点は留保さしていただきますが、そういったような状況でございます。ただ、御存じのように、西側の国というのは、大体そういったような関係にあるものでございますから、それはある意味では当然といいますか、そういったようなかっこうになっているのはいたしかたない、こういうふうに考えておるわけでございます。
  24. 藤田高敏

    藤田(高)委員 インドあるいはパキスタンについては、実質論議として軍事同盟的な機能を実質的に果たしておるかどうかという点については若干の問題点があるという主張でありますが、やはり条約として締結をして、そして一方的に破棄の通告をやればそれで効力が発揮するという、そういう条約の体裁になっておれば問題でありますけれども、そういう条項がない限り、条約の期限内の義務というものはおのずからあるわけですから、これはこの開銀の問題で都合の悪いところははずす、都合のいいときは入れる、そういうかってなことは私はできないと思います。ですからこの点は、軍事同盟を結んでいる国はどこかということになれば、おのずからこういう私が指摘した国は入るという解釈をとるのが正しいのではないか。この点をひとつ確認を願いたい。
  25. 滝川正久

    滝川政府委員 先生のおっしゃいました国の中で、パキスタンイランを形式的な形で押えますと、あるいはそうなるということは理由のあることだと思います。ただ、インドにつきましてはそうは言えないのではないか、その点は多少先生意見が違います。米印関係というものを軍事同盟というような、あるいはそれに近い見方をするのは当たっていないのではないか、御承知のように、インド同盟政策をとっておりまして、その方面の音頭とりでもございますので、その点はちょっと御意見と違うかと思います。
  26. 藤田高敏

    藤田(高)委員 ですから、私が当初質問をしたのは、軍事同盟ないしは何らかの形における強力な経済援助といいますか、相互援助条約を結んでいる国、こういうふうに言っているわけですから、そういうワクの中には当然インドも入ると思うのですが……。
  27. 滝川正久

    滝川政府委員 経済援助を受けていることは確実でございます。しかし、軍事同盟ということになりますと、入らないと思います。
  28. 藤田高敏

    藤田(高)委員 そのインド自体がこういう出資をすることについての決定的な条件にはなりませんので、大綱的な事情把握としては、いま答弁になられたことと私の言っていることとは一致するわけです。  そこで、私の特に主張したいのは、この前も質問しましたように、このアジア開発銀行というものは、アジア全体の平和目的を果たすために銀行としてその役割りを果たすのかどうか、それとも、今日の東南アジア中心とするアジアの情勢からいって、必ずしもそういった目的よりも、むしろ戦争目的なり、東西間の対立を結果的には激化するような経済機能金融機能を果たすことになるのではないかという将来の見通しを含めて私は質問をしたつもりでありますが、これは私の一つの見方でありますけれども、いま質問しましたように、アメリカと何らかの形における軍事同盟ないしは強力なる経済援助条約を結んでいる国をずっと結び合わしてみますと、いわゆる北大西洋条約加盟している国、そうしてANZUS条約加盟している国、それから東南アジア集団条約加盟している国、さらには、形式的にはできておりませんけれども、日韓条約の問題等を通じて一つの論議の前提になり、また、この来たる十四日から十六日にかけてソウルで外相会議が持たれるようでありますけれども、いわゆる東北アジア集団条約と申しますか、軍事同盟機構、こういう条約機構に関連をする国々が、はしなくも結果としてこのアジア開発銀行の主たる構成メンバーであり、しかも、その出資金はほとんどこれらの北大西洋条約機構、ANZUS条約機構、東南アジア条約機構、それから仮称でありますが、東北アジア軍事同盟と申しますか、そういう予見される各国が中心になって九割五分からの出資金を確保して、この種の経済組織、国際的な金融組織をつくるということは、これはどう見ても純然たるアジアの平和的な経済開発に取り組むためにできる銀行だとは思えないわけであります。やはり実質的な、歴史的な経過というもの、あるいは事実認識の上に立つ限り、これは非常に高度な政治的、軍事的な一つの背景というものがあって、その前提に立ってこの国際的な金融組織というものをつくっておるように考えざるを得ないわけです。われわれが、この大蔵委員会であれば大蔵委員会で、こうであろうああでないだろうという討論をやっても、こういう具体的な事実の上に立って判断する限り、特に一昨日も触れましたように、中国であるとか北ベトナム、北朝鮮であるといったような社会主義国家は、私がいま指摘しておるような見方をするのではなかろうか。少なくともそういう理解なり見方をされるような今回のアジア開発銀行設立というものは、決してアジアの諸民族全体のためにプラスにならぬのじゃないか、こういう考え方がどうしても私には抜け切れないわけであります。そういう点で、このアジア開発銀行の性格というものはそういうものになる危険性が非常に強いということを憂えるものでありますが、それに対する見解を大蔵大臣及び外務大臣からひとつお聞かせを願いたい。
  29. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 藤田さんの御所見を伺っておりますと、たいへん私ども見方と違うのであります。結局これは見解の相違である、こういうふうにお答えするほかはないように思います。私どもは、政治には関係がない、純粋にこれは経済の発展ということを考えているわけであります。アジア諸国の特色、新興諸国の共通の特色は、国を興そうと新興国としての意欲に燃えておる、しかし、同時に貧困にあえいでおる、これが二つの特色だと思うのです。どうしてもこの新興アジア諸国にほんとうの安定を与えるためには、貧困という問題を解決しなければならない。たまたまそういう考え方に立ってエカフェ銀行設立の議が始まった。これは非常にいい話であり、この話に日本が乗ってアジア諸国のために貢献する体制をとる、これは非常に当然なことであり、また自然なことである、こういうふうに考えておるのです。   〔坊委員長代理退席、委員長着席〕 それをどうも政治的に南北にブロックを形成するという動きのように見るのは、いささか当たらないのではないか、さように考えます。
  30. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 私の見解を述べろというお話でございますから申し上げますが、大体基本的にはいま大蔵大臣の御答弁申し上げた趣旨と同じでございます。戦争遂行のために銀行組織というものが一体どういうふうに、何の役に立つか、私にはとうてい理解できないのであります。  それから、今日の南北問題、これは同じ地球上に非常な貧困な国と富んだ国と隣合っておるというととは、これはいろいろなごたごたのもとになる。であるからして、やはり地球全体が繁栄するためには、比較的貧困な国をもっと育てなくちゃならない、こういう趣旨で南北問題というものが大きく取り上げられておるわけでありまして、そういったような趣旨からもこのアジア開銀は非常に将来役に立つと私は考えております。純粋に経済的な問題である、こう考えております。
  31. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は、先ほどあえてアメリカとの軍事同盟関係にある国、それらの国の今回の出資金状況というものを一つの角度から提供して、いま私が言っておるような政治判断の材料にしておるわけでありますが、結果的にはこの銀行の具体的な運営というものは総務会なり理事会を通じてやるでしょうけれども、どこの国においても出資金の多寡によって、その発言権まで大きくなるか小さくなるかというのは常識でありまして、いわんや、アメリカ軍事同盟を結んでおる国が九割五分まで出資金、実質的な出資の面における実権を握っておるということになれば、これらの国の意向、いわゆるアメリカと非常に結びつきの強い国々の意向というものがこの開発銀行運営の中にもあらわれてくるだろう、こういうふうに判断をするわけであります。ただこの際、先般来の質疑応答の中でも国連のエカフェからこの問題がずっと発展をして今日に至ったのだということで、国連ということを政府は非常に強調されるわけでありますけれども、私はきょうは時間がありませんから具体的な事実を数多く申し上げることはできませんが、国連ができた当初の目的は非常に崇高なものであるし、そのこと自身は私どもも非常に賛意を表するところであります。しかし、例の特に朝鮮動乱以降における国連のとった態度は、コンゴ問題についてもあるいはスエズ問題についても、アメリカが極端な大国主義のものの考え方を国連の中に持ち込んできて、国連というものを一つの隠れみの——今回の場合で言えば、国連のエカフェを隠れみのにして、私がいま指摘しておるような政治的、軍事的な役割りをも直接、間接に果たし得るであろうという、銀行の性格をベールで包んでおるのではなかろうか、こういうふうに私は思うわけであります。したがって、たまたまタイミングがそうなったというかもわかりませんけれども、私から言わしむれば、このアジア開発銀行というものは、先ほど指摘したような形における国際的な経済組織であって、いわばこれは一つの経済版だ。そうして、来たる十四日から十六日にかけてソウルで行なわれる外相会議というものは、このアジア開銀とうらはらな形の政治的な会議である、こういうふうに判断できると思うわけでありますが、このアジア開発銀行設立とこの外相会議との関連について政府の見解をただしたいと思うわけであります。新聞で見る限りにおいては、韓国やあるいは南ベトナムの側から東北アジア軍事同盟と申しますか、新太平洋条約機構と申しますか、そういう軍事的な問題をもこのソウルの会議の議題に供するということを言っておるようでありますけれども日本政府としては、表向きはそういう議題を出してもらっては困るというようなかっこうをとっておりますが、潜在的に実質的に動いておる今日のこの種の動きの中から、どうしてもアジア開銀というものと先ほど指摘をした私の考え方というものは来たるソウル会談につながっておる、こういうふうに見るわけであります。その点についての見解を承りたい。
  32. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 このソウルの会議は、これは二、三年来韓国が提唱し、これにタイ国なんかも同調しておったのでありますが、日本はこれに入ることを当初はお断わりしたのです。しかし、その後日韓条約も成立いたしまして、あらためてそういう勧誘を受けたのでございますが、いずれにしても、世間で言うように、ただ反共の会議であるとか、あるいはまた、そういったような趣旨の気勢をただ上げるというような空疎な会議であっては、かえってアジアのもっと広い見地からいって平和のためにはたしていいのかどうかというようないろいろな疑いがありまして、日本としては、まずとらわれない態度で準備会議には出る、そうして、その準備会議の模様いかんによっては、このほんとうの会議に参加するかどうかということは保留するかもしれない、そういうことで先般行なわれましたバンコクにおける準備会議にバンコク駐在の大使が出たわけであります。こちらの訓令に基づきまして日本の考え方を述べた、そういうようないきさつがございましたが、結局大多数がわがほうの主張に非常に同調いたしまして、建設的な政治、文化、経済、そういうものにわたってお互いに啓発して、そして共存共栄の目的をもって会議を開くというような性格のものに変わったのです。変わったというよりも、もとがはっきりしなかったのでございますが、非常に建設的な会議に変わってきております。今度のソウルの本格的な会議は、おそらくこのラインに沿うて開催されることになることをわれわれは確信をしております。したがって、この会議軍事同盟であるとか、あるいは反共思想の宣揚であるとか、そういうようなことでは一切ないのであります。きわめて穏健な、建設的な会議、こういうことになるのでありまして、あなたの想像されるような性格のものでは全然ございません。
  33. 藤田高敏

    藤田(高)委員 それでは、そのものずばりでお尋ねしますが、この十四日から開かれるこの外相会議には椎名外務大臣も御出席をされるようでありますが、ここで正式議題になるものは何と何なのか。いま椎名外相は、非常に穏健な会議、非常に建設的で共存共栄の会議なんであって、反共的な問題やあるいは軍事同盟的なあるいは軍事に関するような問題はこの会議の議題にはならぬのだ、いわゆる穏健にして共存共栄の方向の議題を論ずるように会議の性格が変わってきたんだと、こう言っておりますけれども、これは昨晩のニュースで見ますと、南ベトナムのグエン・カオ・キが依然としてこの会議に対して太平洋軍事同盟と申しますか、私が先ほどから心配しておりますような議題をこの会議にのせたい、そういうことを相談したいということを言っておりますし、また韓国の側においても、昨晩のニュースが伝えておるように、李東元にしてもあるいは朴にしても、大体私が心配しておるようなことが論議になるのではないだろうかというようなことを言っておるというニュースが一部流れておるわけでありますが、その点はどういうことなんでしょうか。
  34. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 けさの新聞私も見ましたが、全く私らの予期いたしません事実でありまして、まだ公電としてこれを確認しておりません。別に、それが事実となってあらわれようとどうしようと、とにかく会議の性格は私が申し上げたラインに沿うて開催されるということを、私はここではっきりと申し上げてもよろしいと思います。
  35. 藤田高敏

    藤田(高)委員 それでは、ソウルの外相会議にいま私が指摘したような問題が出た場合には、日本はそれらの議題については参画をしない、協議の対象にしない、こういう態度で対処されるわけですか。
  36. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 大体が、そこである特定の事項を決議をするというような性格のものじゃない、そうして、そこで私が申し上げたような特別の軍事同盟的な問題であるとかあるいは防衛問題であるとか、そういったようなきわめて政治的な問題を特に取り上げるというようなことはない、こういうたてまえで準備会議が終わったのでありますから、その線に沿うて会議が持たれることになります。
  37. 藤田高敏

    藤田(高)委員 準備会議はそういうことで終わったということでありますけれども、昨晩のニュースはグエン・カオ・キ自身が、私が指摘しておるようないわゆる太平洋軍事同盟といいますか、太平洋集団条約機構といいますか、そういうような問題についても議題に供するというようなことを言っておるという報道がなされておるわけなんです。したがって、椎名外務大臣はそういうことはやらないと言っておりましても、この外相会議出席をする一国の首相がそういうことを議題に出してくるということになれば、出てきたときには、それでは日本政府はどういう態度で対処するのか伺いたい。
  38. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 会議として処置すべきものであって、会議を離れて、私がここでそういうことを引き受けるという、わけにいきませんけれども、とにかく、会議はそういう問題を取り上げないはずでございます。
  39. 藤田高敏

    藤田(高)委員 取り上げないはずだということでありますが、この点については、四、五日先に行なわれることでありまして、結果を見なければわからないと思いますが、私、この問題については時間がありませんので、そういう問題を論議をするようなことはあってはならぬ、特にアジア開銀の問題等と関連をして私がいま心配をし、指摘をしておるような結びつきにおける外相会議にならないように、この点は強く要求をしまして、時間の関係で私の質問を終わりたいと思います。
  40. 三池信

    ○三池委員長 小林進君。
  41. 小林進

    小林委員 私がおとといの質問の中で明らかにいたしましたことは、何といっても、アジア開発銀行は、アジアの平和と、それからアジアにあるそれぞれの国の独立と、全般の利益のために奉仕をするものでなければならないということを質問をしてきたのでありまするが、その質問をいたしておりまする過程の中でだんだん明らかになったことは、いまも藤田君が質問をいたしておりましたけれども、その三十二カ国というものは、域内国域外国を問わず、そのほとんどがアメリカのひもつきの国であり、軍事援助を受けている。経済的の援助に至っては全部がアメリカ経済援助を受けている、あるいは狭い意味の債権債務の関係においてもアメリカから金を借りている債務国である。そういうような国々だけでこのアジア開発銀行が構成せられておるということが明らかになっておる。これはたいへんなことです。結局このことは、裏を返せばやはりアメリカの中国包囲作戦、ベトナム侵略の経済的な策謀の一つであるということは明らかです。私は、そういうことをたくみにカムフラージュして、そしてわれわれ国民をあざむいてこんなものをつくろうとしているというその陰謀がわからないとすれば、外務当局を中心とする日本政府は実に頭が悪いということになる。知っていてそれをやるとすれば、それはあまりにもこすからいやり方である、国民をないがしろにするやり方であると言わなければならない。  そこで私は、その観点に立ってお伺いをいたしまするけれども、まず、エカフェ加盟国は二十八カ国である。きょういただきました資料の中に明らかになっている。そのうち域外国が五カ国、その域外国の五カ国は別にいたしましても、その加盟国の中で、域内国の中でこの開発銀行加盟してないものはビルマとモンゴルであります。ビルマとモンゴルが入ってない。なぜビルマとモンゴルが入ってないのか。これは私はことばを加えますけれども外務委員会でこの質問が戸叶君や帆足君によって行なわれており、外務当局は答弁しておる。しかしあれは答弁になっていない。あらためていま少し権威のある、責任のある答弁をやってもらいたい。  それから二番目には、準加盟国の中でも香港とブルネイが入ってない。なぜ一体この国々は入らないのか、その理由を明らかにしてもらいたい。それからエカフェ加盟しておる域外国は五カ国です。この五カ国の中でも、最も入るべき国であるフランスが入ってない、それからソ連も入ってない。域外国だけれどもエカフェの中に入っているのは三カ国、オランダ、英国、アメリカの三カ国が入っているだけだ。なぜ一体フランスもソ連も入らないのか、そこら辺の事情を納得のいくようにひとつ責任のある答弁をしてもらいたい。しかも、域外国でもなければ、もちろん域内国でもない、エカフェには関係がない単なる国連の加盟国である、そういうだけの事情でこの中に入っている国が実に九カ国もある。オーストリア、ベルギー、カナダ、デンマーク、西独、フィンランド、イタリー、ノルウェー、スウェーデン、まるでエカフェとは縁もゆかりもない、しかしひるがえってみればみんなアメリカの頤使のもとに動くような、いわゆる経済援助を受けたとか、受けてないものも若干一、二あるけれども、ほとんどアメリカから何らかの形において世話を受けているが、アジアではエカフェ域外国等のそういう関係には何も縁もゆかりもないやつが九つも入っている。だから、このアジア開発銀行などという構成をかくのごとく分析をしていけば、何が何やらわけがわからぬ。せんじ詰めれば、そこに明確になっている一線はたった一つ、みんなアメリカのひもつきの国だ。これだけが明確なんだ。あとはみんな不明瞭そのものなんだ。まことに、研究すればますます奇々怪々であります。いまの私の質問に明快な御答弁をいただきたい。
  42. 大和田渉

    ○大和田説明員 エカフェ加盟国で、域内の国でこの銀行にまだ署名していないという国は、御指摘のようにビルマとモンゴルでございます。ビルマがなぜ入らないのかという御質問でございますが、この点につきましては、エカフェ関係国及び具体的にはエカフェ事務局長を含めまして説得につとめたわけでございます。それに対して、ビルマとしてはどうしても入るわけにはいかないという返答があったわけで、その際に理由は別に述べていないわけであります。ビルマの政策といたしまして、国連あるいはコロンボプランというようなもの以外には、なるべくそういう多数国間の問題には触れたくないというような政策をとっておるようでございまして、さらに、そういうことよりも、むしろ自分自身で国内の建設につとめたいというような政策のようにわれわれ推察しております。それからモンゴルの問題でございますが、との態度は大体ソ連と同じでございます。ソ連の態度といたしましては、先般のニューデリーで行なわれましたエカフェ総会でも自分の態度を述べておりますが、それによりますと、ソ連の考え方としては、銀行運営域内国にゆだねるべきである、先進国は資金だけは援助する必要はあるが、運営には立ち入るべきではないという態度で、自分は加入はできない、しかしながらその他の面で、たとえば技術援助その他の面で銀行を支援することにはやぶさかでないということを述べております。モンゴルも同じ態度でございます。このエカフェ総会におきましてアジア開銀の設置促進という決議案が採択されましたけれども、その決議案にはソ連もモンゴルも賛成いたしております。それから準加盟国のブルネイと香港、これは加盟しておりません。ただ、協定の第三条の三項に規定がございますけれども、準加盟国加盟は宗主国、具体的にはイギリスでございますが、イギリスが申請することになっております。まだ現在までにその申請がないということでございます。ただ、協定上は、準加盟国が将来入る道は認められているということでございます。それからフランスが入らない理由につきましては、フランスが述べておりますのは、ただ国内的理由によって参加し得ないということだけを述べております。  それから、いま先生のお話ですと、エカフェに直接縁のない、つまりエカフェ加盟国でない国が幾つか入っているという点の御指摘があったわけでございますが、この点につきましては、銀行そのものの考え方としては、むしろ国連加盟国あるいは国連の専門機関加盟国になるべくたくさん入ってもらいたいというのが銀行の態度でございます。現在までに先生御指摘の国のみが参加の意思を表明しているということで、銀行としては将来もっとふえることを期待しているということは規定上申せる、こう思います。
  43. 小林進

    小林委員 アジア開発銀行と銘打っているその銀行の中で、やれ国連のエカフェ中心に議論を進めたの何だのといいながら、そのエカフェ加盟している域内国の中でもビルマとかモンゴルも入っていない、準加盟国の香港もブルネイも入っていない、ましてやこの地域における最も大きな人口を占めているお隣の中国も入っていない、北鮮も入っていない、北ベトナムも入っていない。域外国でエカフェに入っているのは五つしかない、その五つの中でも有力なる加盟国のソ連もフランスも入っていない。そしてエカフェには縁もゆかりもない、ただ国連の加盟国だということで、そういう国々が九つも入っている。これでアジア開発銀行などという名称をつけてやって、それが一体意味をなすかと思うのです。アジア開発銀行などという、アジアの名称をとったらどうですか。  私はまた別な意味お尋ねするんだが、エカフェ域内における総人口は一体どれくらいありますか。そして、いま加盟をいたしました域内国二十カ国のうちの人口の比率はどれくらいか、お聞かせ願いたい。——時間もないんだから、大臣あたりは時間ばかりきめてやってきているんだから、そうそう時間を食われたら困るのですよ。ぼくはそれでこうやって質問を要領よくやっているんですから。全く問題にならない。だから委員長、この前も言ったでしょう。この前も答弁できないから、今度だけは答弁ができるようにちゃんと勉強していらっしゃいと、何回私は念を押したかわからないじゃありませんか。何ですか、こんなこと、あたりまえのことじゃないですか。エカフェ地域における人口がどれくらいあって、そのうち加盟した人口がどれくらいあるかなんという、そんなことはアジア開発銀行をやるためのイロハのイの字です。全く問題にならない。  それでは、もうその問題はあとでひとつ書面をもって研究をして、いただくことにいたしまして次へいきまするけれども、今度は、開発銀行に後日加盟するための手続というものは、一体いかなる方法によるのですか。手続の方法です。
  44. 大和田渉

    ○大和田説明員 具体的に加盟国となり得る資格といたしましては、先生承知のように、エカフェ加盟国及びその準加盟国、そのほか、その他の域内国及び域外先進国で国連もしくはその専門機関加盟国というものに対して開放されているわけでございます。手続といたしましては、この銀行発足後に入るという場合には、その申請書を出すわけでございます。その申請書を総務会にかけまして、これは具体的には第三条の二項にきめてございますが、「総務の総数の三分の二以上の多数であって加盟国の総投票権数の四分の三以上を代表するものによる賛成の表決」で加盟できるということになっております。もちろん、その総務会がその決定をいたします前に、その国が加盟する条件、たとえば、具体的にはどれだけの株数に応募するかというような問題についての条件をきめまして、その条件に基づいていまの決議が行なわれました場合に加盟が認められるわけでございます。  以上でございます。
  45. 小林進

    小林委員 いまあなたのおっしゃったのは、繰り返して言うが、それはエカフェ加盟国か準加盟国かあるいは域内国か、あるいは域外先進国で国連に関係するか、あるいは国連の専門委員会なんかに関係のあるそういう国々が発足後に加盟したいときには、その手続を必要とするのでございましょう。それでは、いま申し上げましたそういう国でない国々、国連にも関係がない、工カフェにも関係がない、しかしアジアには厳然として存在をしている、こういう国々が、あるいは気持ちを変えて、ひとつこういう開発銀行に入ってみたいという気持ちになったときに入る方法はありますか。それに対する道は開かれておりますか。
  46. 大和田渉

    ○大和田説明員 この協定の第三条によりますと、かりにそういう国があった場合には、加盟資格としては認められておりません。
  47. 小林進

    小林委員 そうでしょう。認められておらぬでしょう。だから、言いかえれば、このアジアの中に、エカフェ地域において一番大きな人口、しかも一番貧困であるかもしれない——むしろ貧困と平和のために望むとするならば、この銀行が一番活躍をしていかなければならない広大な地域を占めておるもの、たとえていえば中国、あるいは北ベトナム、あるいは北鮮、だれが何と言われたところで、これは歴史の上には厳然として事実のみが存在している。台湾なんというのは、自民党の諸君は頭が悪いからあれは国だと思っているけれども、あんなものは中国から追われた亡命政権です。政治学のイロハからいえば、あんなものは亡命政権です。地域政権の資格もないようなものだ。そういうような台湾政府を中国の人民政府だなどと考えているあなたたちと私は議論しようというのではない。いやしくも外務省やあるいは大蔵省の、少しは法律もやってきた、国際法もやってきた諸君ならば、こんなイロハのイの字はわかっているはずだ。そういうような厳然として存在をしておる国々、それがいま加入しよう——もちろん中国はいま加入しようという希望なんか出さぬだろうけれども、かりに加入しようという希望を出しても、それには永久に道が閉ざされているじゃないか。一体そんな協定がこれ以外にどこにありますか。国連の中においても、思想、信条を異にするという中国に対して、いまあなた方外務省が一生懸命苦労しておるように、過半数あれば思想、信条を異にする国でも国連に加盟することができる。その加盟をおそれるがゆえに、日本外務省は重要事項指定方式などとつまらないことを言って、この世界の国々が事実上認めておる中国の国連加入をもそういう手段、方法で拒否しようとつとめておるけれども、しかし、いずれにしても、中華人民共和国という思想、信条を異にする国に対しても国連には加入の道が開かれておる。困難な道であろうとも開かれておる。ところがこのアジア開発銀行においては、アジアにおいて一番重要なウエートを占めている中国あたりに対して、将来とも断じて加入する道を閉ざしている。どんなに細い道であろうともそれの加入を拒否している。こういうような不当なことがちゃんとこの条項の中にきめられているじゃないか。言いかえれば、これは国連よりももっともっと反動的な、その意味においてはもっともっと悪質な、アジアにおける国々の対立を激化せしめるためにちゃんととれができておる。何で一体これが、平和の協定です。何で一体これが平和のための、いわゆる経済援助になるのですか。  お聞きしますけれども、国連の中においても、思想、信条や国の形態を異にする社会主義国家、共産主義国家の加入を認めているという今日の世界の段階の中において、そういうような国々の加入を断じて拒否しているというこの形が一体正当であるとお考えになるかどうか、外務大臣
  48. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 できるだけ多くの国が入ることが望ましいのでありますが、手続上としては、まず国連に加盟して、それからこの開発銀行に参加する、こういう道が開かれております。
  49. 小林進

    小林委員 あなた方はその加盟することさえも重要事項指定方式などでみんな拒否しているじゃないですか。みんな断わっているじゃないですか。事実上この開発銀行の中には中華人民共和国や——あなた方が中華人民共和国をお認めにならなければ、中共でもよろしい。中共や北鮮やあるいは北ベトナムがこの開発銀行に加入するのを好まないのでしょう。好むのですか。イエスかノーでよろしいから御答弁願いたい。
  50. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 中共の国連加盟問題はきわめて重要な問題でありますから、国際世論の大多数の上に決定さるべきものである、こういうのが重要事項指定方式、これで国際世論の大多数が中共の加盟を支持するということになれば、当然入ってくるということになると思います。
  51. 小林進

    小林委員 私は国連加盟の問題をあなたに聞いているのじゃない。いまアジア開発銀行の問題を論じている。アジア開発銀行は、こういう中共やその他の国に対して、重要事項指定もない、四分の三もない、十分の一もない、いかなる方法をもってしても加入の道を閉ざされておるというこのアジア開発銀行協定のあり方は、これはあなた方の一番好ましい姿なんだろう、こう言っている。あなた方はこの開発銀行へあなた方の好ましからざる中共や北鮮や北ベトナムの入ることを承諾できないのだろう、はいれないようにできているのが一番好ましいことであると考えているのだろう、私はこうお聞きしているのです。国連問題じゃないのです。
  52. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 客観的に加入の道が全部閉ざされておるということじゃない。だから、まず国連に加盟をして、そうすれば加入資格が出てくる、こういうことになっております。
  53. 小林進

    小林委員 だんだんこの開発銀行の正体が明らかになった。この三十六条によれば、実に子供だましのように「政治活動の禁止及び銀行の国際的性格」などというものを銘打って、そして政治活動の禁止あるいは「銀行総裁、副総裁並びに役員及び職員は、いずれの加盟国の政治問題にも干渉してはならず、」云々と非常に政治的色彩が薄いような、こけおどかしのような表面上はうまいことばを使われているけれども、その発生の過程においてはこれくらい高度の政治のためにでき上がっているものはありませんよ。すなわち、アメリカの考えやあなた方の考えとその考えを異にするアジアの国々は断じて加盟せしめないという、こういう大きな政治的な立場に立っているじゃありませんか。これほど大きな政治問題がありますか。これほど大きな政治的に左右せられている銀行が一体どこにありますか。これを政治問題でないとあなたは一体お考えになるかどうか。この点を明確にお聞かせを願いたい。
  54. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 三十六条に書いてあるとおり読めば、これは政治的な性格を持ったものじゃないということになるわけであります。  それから、特殊の国を除外している、こうおっしゃるけれども、そうじゃなくて、国連に加盟してくれば加入資格が出てくるのだから、まず国連に加盟したらどうか、こういうことであります。
  55. 小林進

    小林委員 あなたなんかまっ先になって加盟することの反対をやっているじゃないですか。反対をしておいて、加盟したらどうですかとは何事です。あなたの先ほどの重要事項指定方式、世界の世論がどうの、そういうようなもはやインチキな説明に国民は納得はいたしておりませんよ。今度、来月の六日ですか、ラスクさんがおいでになる。佐藤さんも会う、あなたも会われる。その中に出てくるものはまた中国の国連加盟問題だ。重要事項指定方式を持っていっても、三分の二方式を持っていっても敗れるんじゃないか、今度はこれをどうして拒否したらいいかという新しい相談をおやりになることが今度のアメリカとの貿易経済会議の重点項目になろうと、今朝あたりからどんどんテレビもラジオも報道していますよ。あなたがこんなところへ来てうまいこと言ったところで、スイッチ一つひねってごらんなさい。アジアにおける中国封じ込め作戦を一体どうやるかという相談をするのだとみんな言っているじゃありませんか。そういう国民をないがしろにした答弁をしちゃいけません。このアジア開発銀行はその意味において、やれエカフェでございますの、国連加盟でございますのという、そういう自分たちの仲間だけでつくり上げて、その仲間の中だけでは技術的に政治的な取引しちゃいかぬ、差別してはいかぬ、そういうようなことばを用いておいて、大きく網を張って、いわゆるアメリカアジアにおける侵略政策、中国封じ込め政策、その中国封じ込め政策がもはや軍事的ではアジアの国民もアジアの国々も世界の国々も納得しなくなった。だんだんアメリカから離れていくようになった。そこで、焦燥を感じたアメリカがあらためて別な手続を考えてきたのが、経済的にいわゆる金持ち根性で十億ドルか二十億ドルの金で人のほっペたをなでながら、自分が経済的にあるいは軍事的に援助してやっている国々を仲間に入れて、そして経済の面と軍事の面と相マッチさせてアジアの分裂をはかろう、中国の包囲作戦を強めていこう、その何ものでもないじゃありませんか。このわれわれの主張が間違っていますか。  いま藤山経済企画庁長官がお見えになりましたが、長官、時間はいかがでございますか。時間がおありになりますならば半日でも一日でもゆっくりやらせていただきますし、お時間の都合があるならば、それによって質問の要旨も変えなければなりません。——一時までですか。  それでは、外務大臣に私はその結論から先に申し上げます。あなたは外務委員会においてわが党の帆足君の質問に答えていられるが、その中で、アメリカが、これは開発銀行関係する問題ですから言うんですけれども南ベトナムで内政干渉しているじゃないか、あらゆる橋梁やあらゆる建物をぶちこわしているじゃないか、ベトナム戦争だけで百億ドルの金を使って、そして人を殺し、農薬を散布して、山を焼き、家を焼き、ベトコンという名称で善良なアジアの人民を殺戮しているじゃないか、その百億ドルで失われているアジアの富とアジアの貧困は何百億ドルになっているかわからない、何十億ドルになっているかわからない。その焼けたあとをわずかに十億ドルや二十億ドルの金を出して、アメリカが焼いたその橋を直します、その道路を直します。そんなのはさいの川原ということだ。ほんとうにアジアの平和を愛するならば、そんな橋や道路をつくる金を十億ドル、二十億ドル出そうとせずに、焼かなければいいじゃないか、農民を殺さなければいいじゃないか、アジアの財産を失うような暴虐をやめさせればいいじゃないか、それが先決問題じゃないか。なぜそれをやらないのです。百億ドルの金を使ってこのアジアの平和を乱し、この貧しきベトナム人民を朝となく晩となく殺しているのだ。その金を持ってきて、そして平和のために使ったらいいじゃないか、貧困のために使ったらいいじゃないか。この十億ドルの金は、アメリカが焼いたその橋を、その道路を修理するために使われるのだ。そのお先棒を日本がかついでいるのだ。日本は平和憲法の九条で軍事力を持ちませんと言ったから、それでは経済のほうで戦争の協力をしなさい。それでアジア開発銀行に入っている。アメリカのエージェントになっている、代理になってその戦争のあと始末をしているかっこうじゃないか。その中で、せめてアメリカがベトナムにおいて使っている毒ガス、この毒ガスの使用だけでもやめさせたらどうだ。毒性の農薬を農地や山林に散布して一般人民に甚大な恐怖と飢餓を与えているじゃないか、せめてこういう問題でもやらせないようにアメリカに忠告したらどうかとあなたに言っているのに対して、あなたは何と答えているか。正確を期すために速記録を読みます。「人命にかかわるようなものでなくて、警察が使う催涙ガスの程度であるということを言っておりますが、実際どういうものであるか、科学的に証明された結果についてまだわれわれは何も聞いておりません。」こう言っておられる。これほど大きな問題が起きているのだから、もう帆足君が質問したのは五月十三日で、きょうは六月の十日、一カ月もたっているんだから、もう科学的にどれだけ有害であり、毒性を持っているかということを研究されてきたと思います。この点をひとつ御答弁をしていただきたい。
  56. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 人命に被害を与えるような程度の毒性を持っているものじゃないということだけは承知しております。
  57. 小林進

    小林委員 研究されましたか。いま少しそのデータをそろえて、具体的にお答え願いたいと思います。
  58. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 研究した人の話を聞きました。
  59. 小林進

    小林委員 研究した人というのは、外務省の何局のだれが説明をしたか、その資料をそろえて、詳しくお答えを願いたい。ここは国会の委員会です。人のうわさを私はあなたから答弁願っているんじゃない。科学的に根拠のある説明を聞いている。
  60. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 研究に基づいた報告がそこらじゅうにたくさんあります。それによって承知いたしました。
  61. 小林進

    小林委員 ここではまだ私はこの問題をやりますよ。ここに一体条約局長おりますか。——私は参事官じゃなくして、条約局長を呼んでいるのです。これはおとといからやっているんだ。なぜ来られないのです——その中に「毒ガスを禁止する条約の条文をただいま手元に持っておりませんので、正確な御答弁ができないことをまことに申しわけないと思いますが、あの条約のたてまえとして、いわゆる毒ガスと申しますのは、それ自身が有毒であって、」云々という、実にでたらめな答弁をしている。その答弁で間違いないのか。一体、人を殺し、人を苦しめているこういう重大な毒殺政策の中にあるときに、それを黙認しておいて、そしてアジア開発銀行をつくりますなんという、そういうようなふまじめな態度ではいけませんよ。
  62. 大和田渉

    ○大和田説明員 その答弁は私がいたしましたのですが、そのあとで補足して、条文をもとにして答弁をいたしております。あのときに帆足先生が御引用になりました条約と申しますのは、大正十四年ジュネーブで署名されました「戦争における窒息性、毒性又はその他のガス及び細菌学的戦争方法の使用禁止に関する議定書」というものでございます。この条約のできました目的と申しますのは、人間に対して直接窒息性、毒性またはその他の害を及ぼすもの、こういうふうに了解されますので、したがいまして、植物というものに対して害を及ぼすものはこの議定書の規定の範囲外でございましょうということをあのとき申し上げたわけでございます。
  63. 小林進

    小林委員 いみじくも犯人があらわれてきました。あなたか、あの悪い答弁をしたのは。実にけしからぬ。あの中にはいまあなたが言われたように「戦争における窒息性、毒性又はその他のガス」とある。「その他のガス」をあなたはとらえて、農薬のように毒ガスをまいて、そして山林を焼いたり、農作物を焼いている、その問題だけに関連をさして、そういう植物を枯渇せしめたりするようなガスは、この国際法にいうガス条約に基づく毒ガスではないだろうと、たくみに問題をすりかえておる。あのベトナムの人民たちがああやって毒ガスに苦しめられて、目をつぶしたり身体をそこなったりして苦しんでおったりする問題を農薬のために使っている毒ガスにあなたは問題をすりかえている。こういうずるい答弁をして、あなたは外務委員会を逃げている。けしからぬですよ。いまベトナムで使われているガスについては、外務大臣は研究していると言っている。研究しているからには、科学的にその調査ができ上がっているはずだ。いまアメリカがベトナムで使っているガスが、このジュネーブにおいて大正十四年に署名された国際協定の中にきめられた「その他のガス」というガスの中に入っているか入っていないか、明確に答弁しなさい。決してあの条約は窒息性あるいは毒性というだけじゃない。「又はそ他のガス」と規定している。その「その他のガス」の中にいまアメリカが使っている毒ガスが入っておるのか入っていないのか、明確に答えなさい。私は農薬として散布しているガスのことを言っているのじゃない。ベトナムの善良な人民や大衆をベトコンと称して、その人たちにまいているその毒ガスのことを聞いている。明確に言いなさい、研究しているんだろうから。
  64. 大和田渉

    ○大和田説明員 私自身は、その現在ベトナムで使われているガスの品質その他について研究をいたしたわけじゃございませんが、この議定書に関します限りは、この議定書がつくられた目的が、人間に直接毒性あるいは窒息性をもたらすガスというふうに了解されますので、したがって、植物に対して害を及ぼすものはこの議定書の範囲外であるということだけを申し上げたわけであります。
  65. 小林進

    小林委員 私は植物に及ぼしていることを聞いているのじゃない。何回も繰り返して言っているじゃないか。外務大臣答弁してから一カ月もたっている。研究しますと言っているんだから、その間に研究はしたろう、調査はしたろうと言っている。現実にアメリカがベトナムに毒ガスをまいて、人民は苦しめられて、被害が続々出ている。現に、豪州の兵隊がアメリカの使った毒ガスのために数人も死んでいる。みんな証拠があがっているじゃないか。それがここで言う「その他の毒ガス」の中に含まれているのかどうなのかとお尋ねしている。問題をすりかえてはいけませんよ。  まだ、私は言いますけれども、けさなんか見なさい。あのベトナムの仏教徒の化導院長のタム・チャウとかいう、これは穏健なほうだ。その穏健な統一仏教教会の化導院長が、あれだけの大きな証拠を求めた。あの南ベトナム政府軍が市民のデモ隊を圧迫するために催涙ガスを用いた。これはベトコンのために用いた毒ガスとは違う。一般市民のデモを押えるためにまいた催涙ガスだ。しかし、その催涙ガスは全部アメリカ製のものであった。その証拠は全部つかんである。そこで、アメリカのマークの入ったその容器を彼らは仏教徒の集会所である化導院ですか、そこへ蓄積をして、そうしてアメリカにその容器をつけて、この証拠物件を返します、送り届けます、こう言ったら、アメリカ側は強引に、それは受け取れないといって拒否した。こういうような残虐なやり方で市民のデモ隊にも干渉して、アメリカみずからがそういうガスを警察側に提供して、そうしてベトナムの善良なる人民を圧迫しているという、そういう明らかなる事実がニュースになって報ぜられ、テレビにその証拠物件が並べられて報ぜられている。そういうさ中に、日本政府がその毒性に対して、研究いたしますなどと言っている。国際毒ガス禁止協定に違反しているという、そのことば一つ言えないですか。それで日本外務省なんですか。イギリスは、日米関係アジア関係について何と言っていますか。イギリスのヒューム前首相が渡米したときだ。これに対してアメリカの新聞記者が聞いた。英国はなぜ米国の中国政策に協力できないのかということを米人の記者団が聞いたら、われわれは生きるためには貿易をしなければならない、むしろ貿易することによって共産圏を変えることができる、だからアメリカには協力できないのだと、ちゃんと答えておりますよ。労働党のスチュアートは外相だ。外務大臣、あなたと同じだ。現職の外務大臣アメリカに行ったときに、ベトナムでガスを使用していることを批判している。力だけでは解決しないと言って、訪問したアメリカの国民の前で英国の外相は力説している。アメリカのガスの使用をアメリカへ行って堂々と批判をしている英国の外相と比べて、日本の国会の中で、この非人道的な、このあまりにも残虐なるアメリカの毒ガスの使用を、まだおっかながって答弁一つできないような、そんな外務大臣で一体日本のどこに独立があるのです。そんなことで、アジアで経済の援助をしますの、貿易の援助をしますのという口幅ったいことが言えるのですか。せめて英国の外務大臣のつめのあかでも飲んで、三拝九拝して少しは自分のみじめさを反省なさいよ。それくらいのことがなければ、外務大臣なんていったって大きな話はできるものではありません。英国の外務大臣アメリカに行って、アメリカのベトナムにおける毒ガスの使用を批判したということは、これは私は決してうそを言っておるのではない。明らかになっておる事実だ。それをなぜ一体日本ができないのか。このアメリカの使っておる毒ガスが、国際協定に基づく「その他のガス」の中に含まれているか、含まれていないのか。もし、ここで答弁できないのなら、書面でひとつこの問題を回答していただきたい。委員長、この回答を約束してくれない限りは、私は、外務大臣の時間が来ようと、大臣を離すわけにはいきません。——外務大臣答弁を求めているのです。
  66. 大和田渉

    ○大和田説明員 先ほど申し上げました議定書にはアメリカ日本加盟しておりませんので、ちょっとその点を御参考までに申し上げます。
  67. 小林進

    小林委員 外務大臣答弁を求めているのですアメリカがいまベトナムで使っているベトナム人やベトコンの人体をそこなわせ、そこにいる豪州人までも殺したあのガスが、国際法であるジュネーブ協定にいういわゆる「その他の毒ガス」という条項の中に含まれているのか、含まれていないのか、その点、文書をもって回答してもらいたい。私はそれを要求します。それが、文書で出せない、返事もできないというなら、私は外務大臣を離すわけにはいきません。
  68. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 アメリカは、これは人体に危害を与えるような有力なものでないということを言っております。ガス協定アメリカは入っておらない。でありますから、アメリカはそう言っておるけれども、しかし、条約違反になるかならぬかということになると、条約加盟国じゃないから条約違反にはならない。それから日本もこれに加盟しておりません。そこで実際問題として「その他のガス」になるものか、有毒かどうかというような証明方法が、ちょっといまのところ的確にお答えすることができない。そういう証明を得るにはどうすればいいか、よく研究してみます。
  69. 小林進

    小林委員 私は、アメリカが使っているものが条約に違反したかどうかを聞いておるのではないのです。ジュネーブ協定にいう「窒息性、毒性、その他のガス」と称するジュネーブ協定で禁ぜられている「その他のガス」という中に含まれる性質を持つガスであるかどうかを調査したか。調査すると、あなたは一カ月前に約束をしているのです。その調査の結果、それに含まれるガスであるのかどうかということを私は聞いているのです。そんな、条約に違反しているかいないかという問題を聞いているのではない。
  70. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 毒ガス禁止宣言で、日本語訳でも「その他」といたしておりますが、この宣言の正文である英語では「その他」という表現になっておりますけれども、もう一つの正文であるフランス語ではそこが「類似の」となっておるわけであります。条理上から申しますと、もし「その他」というのがほんとうにその他というだけの意味でございましたら、ガスは、毒性でなくても何でも全部禁止されるということになるわけでございますが、この宣言の趣旨から申しましてそういうことじゃないわけでございまして、やはり窒息性とか毒性、それと類似のガスというフランス語の本文に従って解釈すべきものだろうと思うのでございまして、これは学者の説もすべて一致しておるところでございます。
  71. 小林進

    小林委員 君の三百代言みたいな話を私も安保条約や何かで聞いてきたわけだが、もうどこかそこらに飛んでいったろうと思ったら、まだのほほんと条約局長で、十年一日のごとくつまらない答弁をしておるが、私の言っておるのは、いま使っておる催涙ガスまでも「その他のガス」に入っておるのかどうかと聞いておるのではない。その催涙ガスをデモ隊を押えるためにアメリカ軍がベトナムの政府軍、かいらい政権に提供して、そして警察が仏教徒等のデモ圧迫に使った、その催涙ガスはジュネーブ協定に違反しておる毒ガスであると言っておるのではない。いいですか。「その他のガス」に入っていると言っているのではない。豪州の兵隊も数名そのアメリカのまいたガスのために現実に死んでいる、その死んでいる毒ガスを、ベトコン退治と称して、善良な人民やベトコンの生息基地と彼らが認定した場所に無制限にばらまいている、そのガスが、いまのジュネーブ協定、ジュネーブ宣言に基づく「その他のガス」の中に含まれているのかいないのか、五月十三日の外務委員会でこの問題をわが党の帆足君に質問されて、それは研究いたします、調査いたします、そう言っておるのだから、もう一カ月もたったんだから調査はできているだろう、その調査の結果はどうかと私は聞いているのです。同じことばかりしゃべらせないでもらいたい。それができなければ、文書でもって、該当している、していないを回答してください、回答すると言うなら、私は外務大臣に対する質問はまだたくさんあるけれども、用事があるそうだから中断することを了承するが、こんな簡単なことでも答弁できないのなら、外務大臣にいつまでもここにいてもらわなければならない、こういうことを申し上げているのです。
  72. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 「その他の」という宣言の意味につきましては、先ほど申し上げたとおりでございますが、現実に使われたガスがどういう種類のものであったかということにつきましては、私どもとしては何ら資料を持ち合わせておりません。
  73. 小林進

    小林委員 いまごろのこのこ出てきて……。だから君、前からいろと言うのです。呼んでいるときになぜ来ていないか。いままで何をやっているんだ、きのうから呼んでいるのに。来ていないでそういうとんちんかんな答弁ばかりしている。さっきも言ったように、五月十三日、その使ったガスが宣言に反しているガスかどうかということを言われて、調査をしてきます、研究しておきますと言ってからもう一カ月もたっているのだから研究はできているだろうと言っているのです。そのガスは「その他の」という中に含まれるかどうかということの回答を出しなさい。何もあなたに条文の解釈を聞いているのじゃない。その資料をお出しなさいと言っているのです。
  74. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 資料はありませんから、直接研究するめどはいまのところつきません。しかし、国際法で禁ぜられているようなものを使っておるとは私は考えておりません。  なお、この点を現物について研究して調査報告を出せとおっしゃるのですが、その適当な具体的な方法がさしあたりどうも見当がつかない。
  75. 小林進

    小林委員 私はそういう答弁に対しては了承することはできません。いま初めてそれを承るのならばよろしいけれども、もはやこの問題は一カ月前にちゃんとわが党の議員が質問して、その後調査します、研究しますと言っているのに、いまここであらためて研究の手がない、資料もとれない、だからわかりませんという答弁は、私は承服できない。それじゃ、前言を取り消して、ここで陳謝しますか。根拠のない、できないことを申し上げて申しわけないというてあやまりますか。
  76. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 直接その問題にタッチしておる国の意見を徴する程度ならわかりますが、それをその後いろいろやってみた結果、直接にそれを研究、調査するという手がかりはつかめないということがわかったので、それできょうの答弁になったわけであります。
  77. 小林進

    小林委員 日米安保条約を結んで同盟国になっておって、一切の交渉をしているのに、それがわからないということがあるか。それならば、一カ月の間、どういう経路で、どういう形で、どこまで調査をして、その結果どうなったか、いろいろやったその経過、それを順序を追って資料を提出していただけるかどうか。
  78. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 御趣旨の線に沿うて、なおよくひとつ手がかりを求めてさがしてみたいと思います。
  79. 小林進

    小林委員 私は、これからのことを聞いているのじゃない。いままで調査されたというその調査の経緯と結果、その資料を提出願いたい、こう言っている。
  80. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 御指摘の帆足君の質問に対して私は答えておりますが、これを見ても、調査するというお約束はしてないのですがね。私もついひっかかってしまった。(笑声)
  81. 小林進

    小林委員 あなたは、調査をしてみたと言ったじゃないですか。してみたと言ったのだから、それも一カ月かかって、調査したというのだから、してみたその結果を資料で提出しなさいと言っているのですよ。
  82. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 できるだけ真相をつかまえるように今後努力してみます。そして、その結果がわかりましたら、書面ででも何でも申し上げますということにいたしたいと思います。
  83. 小林進

    小林委員 それじゃ不満足でありますけれども、早急にその調査資料を出していただくことを私は要求いたしますし、委員長もその点はひとつ確認をしておいていただきたい。  それでは、外務大臣に対する質問はまだ残っておりますけれども、またその問題はあらためてやることにいたしまして、藤山企画庁長官にお尋ねいたします。  あなたは、事実上この銀行所在地を決定するときにマニラ会議には出席をしておいでになった。そうして、はからざりき、それが破れたということに対して、悲壮な顔面をしながら会場から出てこられたということを当時の新聞には報道せられております。あなたは本店所在地を東京に持ってくることをほんとうに真剣に取り組んだのか。その後のこの委員会における質問を聞いておりますと、所在地も持ってくる、総裁もとる、二つもとるということは欲ばり過ぎてどうかと思うから、むしろ所在地のほうは他国に譲って、そして総裁をとる点に主力を置いたというふうな答弁に変わっておるのでありまするけれども、まことに話の経緯を見たら違っている。あなたの真意は一体どこにあったのでありまするか、お聞かせ願いたい。
  84. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 いまお話の点は、私の答弁をあるいはお聞き違いになっているかと思います。私は、明らかに、一昨日かも申し上げましたように、訓令として、東京本店を招致すべしという訓令をもらっていったのですから、私はその訓令違反の行動をするわけにはまいりません。したがって、本店東京に招致すべく全力をあげてマニラにおいて活動をいたしたのでございます。
  85. 小林進

    小林委員 それであるならば、他の大臣答弁との間に食い違いがあります。これはあとで私はこの問題を追及さしていただきますが、もしあなたの答弁が正しいのであるとするならば、投票は三回やられたはずであります。これは平岡君も質問をいたしました。第一回に、わが日本東京に招致すべしという票数が八票、マニラが三票、次に過半数に至らざるということで投票したら、日本は依然として八票、今度はマニラが六票、まだ過半数に至らず、さらに投票したら、同じく日本は八票、マニラは九票になって、最終的には敗れた、こういうことになった。ところが、あくまでも日本に招致するという訓令を受けて、そのために最善の努力を払ったというならば、三回の投票の間に日本の投票数は依然としてたった八票、一票も加わらない、初回においてはわずかに三票であったマニラが九票にまで至っておる。その経緯をながめれば、あなたたちの招致したいという熱意がその後の運動の中にちっともあらわれていないことになるじゃありませんか。これは一体どうしたことなんですか。あなた自身の努力が足りなかったのか、あなたに随行していった諸君が何らの努力をしなかったのか。これは情勢の判断もしなければ、努力もしなかったという結果のあらわれでなくちゃならぬと私は思いますが、いかがでございましょう。
  86. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私についてまいりました各随員は、全部全力をあげて努力いたしました。したがって、結果がもし不適当であったとすれば、それを活動するようにする私の力の及ばなかったところ、こう思わざるを得ません。
  87. 小林進

    小林委員 もちろん、あなたは最高責任者で行かれたのでありますから、あなたの責任を問わなければならぬけれども、少なくとも、努力をしておきながら、三票が九票に上がる、六票の票がその間に動いておる、三票のマニラに六票も加わっているにもかかわらず、日本の八票にその六票の中から一票も加わらないというこの数字の中に一体努力の影を認めることができますか。それが努力をしたという証拠の裏づけになりますか。努力したということを信用してくれと言われても、われわれ信用することができますか。どういう努力をされたのか。あなたの責任は、国民に対して責任を負う、あるいは内閣の訓令に対して責任を負うとして、その前に、あなたに随行して、あなたの手足となってもろもろの活動をした諸君の責任がまず第一に私は糾弾されなければならないと思うが、それらの中にこの敗北に対して責任をとった者がございますか。責任を感じて、みずからあなたに辞表を提出するとか、あるいは責任をとってやめるとか、何らかそこにあらわれた形がありますか、お聞かせを願いたい。
  88. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 これは私がマニラに着きまして以来、全部の随員の指揮命令は私がとったのでありまして、したがって、随員の行動が、自発的に、恣意のままに行なわれたわけじゃございません。したがって、随員が責任をとるという必要を私は感じておりませんし、また、代表団一行の国際交渉というものはそういうものではないものだと思います。
  89. 小林進

    小林委員 そういうような努力をしたが敗れたという形で、責任をとる者もなければ、自分たちの無力を反省する者もない、これが日本の行政機構であり、あなたたちについていった外務官僚の考え方であり、大蔵官僚の考え方であるとするならば、われわれは非常に嘆かわしい次第です。高禄をはんで一体何をしておるのかと私は言いたくなる。残念にたえません。この問題はあらためて私は責任を追及することにいたします。あなたの答弁で満足するわけにはまいりません。この問題は留保いたしまして——もちろん留保するということは、これがもっと解明されるまではこの法案は通さぬということになる。あまり甘く見てもらっちゃ困ります。私は留保をいたしまして、次にお尋ねをいたします。  あなたは、六月八日大阪へおいでになりまして、関西財界人との懇談会に臨まれた。そのための用件を持ってお出かけになった。大阪の商工会議所において記者会見をされました。その中であなたはこういう発表をせられた。自民党は「アジアの平和を考えるなら、」中国問題に「積極的に取り組み、中国を国際舞台に出す努力をすべきだ。中国問題に取り組むとすぐアカというレッテルをはるようでは困る。米国でさえ徐々にではあるが中国にたいする態度が変わりつつある感じ」を受けている。これはあなたは変わりつつあるとは断言をしていられない。感じを受けている。「このさいわが国は米国にたいしてもアジア人の目でみた中国というものを説明しなければならない。また米国もそれを期待していると思う。」と語っておられる。これはあなたの談話に間違いございませんか。
  90. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私の談話を非常にうまく要約していると思います。
  91. 小林進

    小林委員 まことにあなたは良心的な政治家でいらっしゃる。自民党の中にもこういう進歩的な、近代的な感覚をお持ちになっている総裁候補がおいでになるということは、野党といたしましてもまことに喜びにたえない。私はその意味においてあなたにお尋ねいたしたい。  いまアジア開発銀行協定の問題に関してこの委員会審議をしている。私は、このアジア開発銀行もやはり国際的な、あなたの言われる国際舞台の一つであるので、それならば、このアジア開発銀行にも、この舞台に中国を加盟せしめるように努力をすべきが、あなたの談話から解釈するならば当然ではないかと思うが、いま言われておるこのアジア開発銀行は、先ほどからあなたここにすわっておってお聞きいただいておりますように、この中国並びにその衛星国といいますか、類似の国家を永久に加盟せしめない、加盟する道をこれは全部ふさいでいるという、こういう規約になっているのであります。これがあなたの考えから見て適当であると判断せられるやいなや、承っておきたいのであります。
  92. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今回アジア開発銀行ができました主体は、エカフェにおいてこの案をつくったわけです。したがって、エカフェ加盟国が主体となってまず出発することは当然のことだと思います。また、規約等についても、国連の加盟国あるいはエカフェの加入国ということでありますから、将来エカフェあるいは国連の加盟国になった場合に、それがはいれないという理由は私どもないと思います。問題は、そうした状況に中共がなるかならぬかという状況だと思います。
  93. 小林進

    小林委員 エカフェ中心にして会議を進めたといいながら、先ほど私が言いますように、そのエカフェの中の域内国であるビルマもモンゴルも入っておりません。そのビルマがなぜ入らないか、外務官僚一流の答弁で問題の本質をごまかしているけれども、ビルマは、やはりお隣の中国あるいはソ連等の加盟をしない、アジアの人口の大半を占めている国々を加盟せしめないで、社会主義国家群、資本主義国家群、そういうアジアにおける両体制の対立を激化せしめるような銀行の中に加盟をして、さらにアジアの紛争を激化することはビルマとして好む道ではない、こういう意味において入ってない。そして域外国の中においても、いまも言った域外国でエカフェの中に入っているのは五カ国でありますけれども、その五カ国の中の過半数には達しないけれども、重要なメンバーであるフランスもソ連も入ってない。インドネシアも入ってない。そういうさなかに、エカフェとは関係がない、域外国でもないそういう国々が九つも入っているのです。こういうような構成からながめて、真にアジアの平和を望むということであるならば、あなたの言われるように、国際舞台に中国も加盟せしめるべきであり、そして、早く統一の形をとるべきであるということをおっしゃるならば、エカフェだけの問題にとらわれるのではなしに、中国の加盟についても当然その道を開くような配慮がこの協定の中にあってしかるべきであると私は考えるが、いかがですか。
  94. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 御承知のとおり、これはエカフェの総会において取り上げられた問題で、そうして特別の委員会をつくってやってきたわけです。ですから、当初エカフェの範囲内でやりますということは、これは出発点においてはしかるべきことだと思います。しかし、将来これに入らない国を勧誘していく、できるだけアジアの諸国を入れていくということは大いにやってしかるべきであって、それをどこの国も禁じているとも封じているとも私は思いません。ただ、国連に加盟をしているというような、あるいは国連関係機関加盟しているという条件はありますけれども、そういう状況のもとにおいて加入を勧誘するということは差しつかえないことであります。おそらくこのメンバーになっておる国でも、できるだけたくさんの国が入って、多くの資金がここに集まって、域内各国の経済開発の面に役立つということを望んでいるのだと思います。
  95. 小林進

    小林委員 現実の問題といたしましては、域内にあるところのビルマ等に対しましては、あるいはモンゴルに対してもそうかもしれませんが、いわゆるエカフェの事務局長等を中心にして、あるいは日本も加わって、あらゆる方法で加入を勧誘している、あらゆる方法で奨励をいたしております。また、準加盟国の香港その他に対しても、英国等が責任をもって勧誘をするそうでありますけれども、まだ結論が出ておりませんけれども努力をして加入を勧告しておることは、他の情報によってもキャッチしておる。しかし、その中であなたの言われる中国その他の国々に対しては、むしろこれを拒否する方向に形はでき上がっているけれども、その加入に対して努力をしたとか、努力すべきが好ましいのだというような話は少しも出てない。日本政府はこれに対して努力をいたしましたか。いたした形跡がございますか。閣議の中でこういう国々の加入に対して議題になったことがございますか、お尋ねをしておきたいと思います。
  96. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私は、実はアジア開発銀行設立の過程においては一切関係がございませんでして、マニラ総会に全権として行くような命令を受けて初めて過去の経緯を知ったわけでございますから、十分なその間のあれは承知しておりません。ビルマ等は、御承知のとおりいつでも経済協力は二国間であって、マルチラテラルな経済会議にはなるべく入らぬというのが原則のようでございます。それを通している。しかし、こういう種類のアジア開発銀行というものが、現在もきらっておるような形のものであるかどうかということについては、おそらくビルマあたりも今後の運営の模様を見て考えるんじゃないかと思います。ですから、そういう意味において、アジア開発銀行が発足して、その後の状況に対して各国がそれぞれ考えて、入らなかった国も入ってくるというような状況にもなってくるでしょうし、また、こういう国がさらにこれを発展させるために努力していこうということだと思います。たとえば、パキスタンのような国は、中共に対して非常な、ある意味からいえば同情を持った国でありますが、それらの国もまだいまのところ中共加盟というようなことを言っておらないと私は思います。いままでのマニラ会議の討議の場合ではそういうことはまだ言っておりません。ですから問題は、今後の運営その他について考えることだと思います。また同時に、ソ連その他の域外国としての加入も、あるいは要請するような時期がくるかもしれないというふうにも考えられる。要は、これができまして、早期にとにかく運営に移って、そしてその実績を見ていくということが一番大事だと思います。それによって問題はすべて解決されていくんじゃないか、こういうふうに考えます。
  97. 小林進

    小林委員 ともかく発足したほうがよろしいということは、あなたも閣僚の一人として、政府の方針ですからそう言わなくちゃならぬと思いますが、私どもは、いままであらわれた現象、その内容、機構、組織、すべてを見た場合には、これはやはりアメリカ並びにこれに追随する一連の国家の中国包囲作戦の一環としてできた開発銀行であるという疑いを深めている。どうしてもこの疑いを払拭することができない。しかし、あなたが言われたように、日本も、中国を国際舞台に出すべきである、だから、日本もその加入に向かって努力をすべきであるというその考え方が日本政府の真意であるとするならば、われわれを中心とする国民の疑いは払拭せられると私は考えております。あなたは、閣議の中で、あるいは自民党の実力者の一員として、あなたの主張を閣議その他において力説、主張してくださる意思ありやいなや、承っておきたいと思うのであります。
  98. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私の政治的な考え方、政策的な考え方というのは、いずれのところ、いずれの場合においても変わらないのでございますから、いずれの場合でも私の意見を申し述べることに変わりはございません。
  99. 小林進

    小林委員 久方ぶりに、与党の中にも遺賢ありということで、非常に清純な御意見を承りまして、まことにけっこうでございました。時間もまいりましたので、どうぞひとつ……。  まだ私が用意をいたしてまいりました質問は十分の一も済んでおりません。これからいよいよ大蔵大臣に御質問申し上げたいと思うのでありますが、理事間のお約束で、この間約二十分前後、私の質問の中に平岡忠次郎委員が入りまして、緊急な問題を質問することになっておりますので、その間質問者を交代いたします。御了承をいただきまして、平岡君の質問が終わりましたらまたあらためて私が質問をいたします。      ————◇—————
  100. 三池信

    ○三池委員長 税制に関する件について、調査を進めます。  質疑通告がありますので、これを許します。平岡忠次郎君。
  101. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 東京京橋の貴金属商、合資会社「白金」の仕入れ係長の増淵信雄君をして去る六月八日青酸塩服毒自殺にまで追い込んだ査察調査事件はこの自殺が関東信越局内で行なわれたことだけに重大であると考えます。  「白金」 は、金銀細工を主とする貴金属商でありまして今回の調査は、原料金の仕入れ先に明確を欠くものがあるということであり、仕入れ係長であるところの増淵君が、責任者として関東信越局の査察担当官から追及された結果の自殺であります。六月九日の読売朝刊の報ずるところによりますと、事件の直後に谷川関東信越局長は次のように述べておるのであります。「脱税事件の調査については、とくに慎重にするよう日ごろから部下に注意している。査察中にこのようなことがおきたのは例をきかない。田中査察官はベテランでもあり、調べに行き過ぎがあったとは思われない。増淵さんの死因は解剖の結果が出なければ、なんともいえないが、もし自殺とすれば、特別な理由があったのではないかと思っている」こう述べておるわけであります。にっこり笑って税を取る税務署の機関が、いまや人を殺して税を取るに至っては言語道断であります。人一人が死を決行することは、まことに容易なことではないと考えます。妻子もあることでありましょう。一人の生命は地球よりも重い。国税局のこの不始末に対して、大蔵行政全般を掌握する最高の責任の地位にある大蔵大臣の陳謝が何をおいてもあってしかるべきと思うが、どうですか。「もし自殺とすれば、特別な理由があったのではないかと思っている」と、あたかも他人ごとのように言っている部下の谷川君とは違って、おそらく大蔵大臣としては心痛の極にあると思うが、どうでしょうか。
  102. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まず、事実をはっきり申し上げますが、五月二十五日に関東信越国税局におきましては、ただいまお話の「白金」につきまして、法人税法違反の疑いで査察調査に着手したわけです。これに関連いたしまして、六月八日午後二時三十分ごろ、同局査察課応接室で、同会社の仕入れ係長の増淵信雄氏が用便に立ちまして、そこで服毒後死亡した、こういうことが発生しておるわけであります。この会社に対する査察調査に関連いたしまして、国税局が増淵氏に対して行なった調査の経過は、詳細に長官のほうから申し上げます。  しかし、大体現在までに判明いたしておるところでは、調査の状況から見まして、査察官の調査は通常のごとくに行なわれておった模様であります。行き過ぎがあったような点はただいま認められておりません。しかし、いずれにいたしましても、国税局というその場におきまして、査察事件の過程においてこういうきわめて不例な事態が発生いたしましたことは、まことに残念なことでして、私もそのことにつきましては心痛をいたしておるわけであります。
  103. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 長官のほうから経過を詳細にお述べいただきたい。
  104. 泉美之松

    ○泉政府委員 先ほど大臣から申し上げましたように、五月二十五日に合資会社「白金」に対しまして、法人税法違反の容疑で査察調査に着手したわけでございます。その後、今般自殺されました増淵仕入れ係長につきましては、六月の三日に初めて「白金」の東京営業所の応接室におきまして、三日の午後から質問調査を開始したわけでございます。三日は午後一時から午後五時まで質問を行ないました。それから翌四日の土曜日には関東信越国税局の査察課の応接室へお越しを願って、午前九時三十分から、昼食後三十分ほど休みまして午後二時三十分まで質問調査を行なっております。五日は日曜日でございますので、当然調査はいたしておらないわけでございます。六日に、実は「白金」の副社長をしておられる保条氏が——この日は来局を求めたのではないのでありますが、副社長が仕入れ係長を帯同して自発的に局のほうへおいでになって、午前九時三十分から午後四時までは副社長がいろいろお話をされ、午後四時から増淵氏について事情聴取を行ないまして、四時から六時までで調査を打ち切っております。七日は来局を求めまして、午前九時三十分から質問調査を行ないまして、昼食後一時間十五分ほど休みまして午後五時三十分まで調査をいたしております。八日は、実は来局を求める予定でなかったわけでございますが、御本人がみずから関東信越国税局のほうにおいでになりまして、午前九時三十分から、話を聞いてくれということで国税局の応接室で話をしておったわけであります。十二時から一時まで昼食のために外出されまして、その後質問調査をいたしておったわけでありますが、午後二時半ごろ用便のためといって部屋を出ていかれまして、その後応接室に戻った後倒れられた。そこで、さっそく医務室に連絡して応急手当てを受けると同時に、医師の来診を請うたのでありますが、間に合わずに御本人はなくなられたという事情でございます。
  105. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 谷川局長は「特別な理由があったのではないかと思っている」そう言われておるのですが、何かその根拠がありますか。もしそうでないとすると、どうしても、局の担当官によって尋問をされて、それからノイローゼ的にでもなり、自殺をしたということになるのですよ。ですから、その辺が明らかにされる必要があるのです。どうですか。
  106. 泉美之松

    ○泉政府委員 増淵氏が自殺をされるに至った原因につきましては、まだ明確でございません。ただ、新聞で御承知になられたかと思いますが、副社長の言によりますと、御本人は仕入れを担当しておったわけでございますが、その仕入れ先から、国税局にいろいろのことを言うのならなぜわしのほうに連絡をしないんだというような電話があって、何か脅迫をされているような感じであった、こういうことを副社長が言っておられる模様でありますが、御家族の方は、御本人は仕事をうちに持って帰るということをなさらなかった方なので、家庭ではそういうあれはなかったということを言っておられました。何ぶん御当人がなくなられましたのでその関係がはっきりいたしません。査察官も、こういう事態になりまして相当興奮いたしておりますので、事実につきましてはまだ十分調査をいたしておりませんけれども、査察官に対しまして、自分が脅迫されているというようなことは申しておらなかったということでございます。  いずれにいたしましても、いま少し事実が明らかになりませんと、どういう理由で自殺をされるようになったのか明確になりませんので、はなはだ遺憾に存じております。
  107. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 私は、いろいろな理由があると思うのだけれども結論的には、とにかく局の中で自殺したわけですから、そのことは重大だと思うのです。泉さんは先ほどこの経過を日付を追って話されました。私が聞いていまして少し遺憾に思うのは、実は、新聞で日曜を抜かして五日間も毎日やられたのだということが書いてあるのですが、それは毎日やられたのじゃないというニュアンスであなたは答えておられる。そのためか、三日には局が呼んだ、四日の日にも局が呼んだのである、五日が休みで、六日には局が呼んだのではなしに先方からやってきたということが、一応ニュアンスをもってあなたから語られておる。それから七日には局のほうが呼んでおる、それから死んだ当日は局が呼んだのではなしに、自分が来ているのだ、こういう経過をことさらにと言っては悪いかもしれぬけれども、かなり念頭に置いて答弁をされております。しかし、連日拷問責めではないけれども、そういう非難をおそれて、自発的に来たのが五日のうち二日あるのだということをおっしゃっておりますが、こんなことはさまつ的なことだと思うのです。  それからもう一つ、いま言うたように特別な理由がありそうだというようなことも、そうたいした意味がないと思うのです。私もこの事情を多少よそからも聞いたのです。それで、金の取引というのは密輸品もあり得るわけですね。そういうことで、特定の連中とのコネクション等があるのかどうか知りませんが、そういう場合には相互に電話で確認し合って、上野の池の端に来い、そして自動車の中で金が取引されるのだというようなことも言うのですよ。しかし、にせものの純度の低い金をつかまされたらとても損しますから、金がそういう自動車の中で取引をされるようなことはないと私は思うのです。したがって、ミステリーではないけれども、あたかも第三国人でも介入しているようなニュアンスで話がつくられたのではぐあいが悪いと思うのです。死人に口なしですから、局のほうも極力逃げてしまえというようなことであってはいかぬ。要するに、死んだこと自体が重要なので、先ほども言うたように、一人の人の生命は地球より重いのですから、その観念に徹した税務行政が確立されなければならぬ、そういうきっかけにこのことをしてもらいたいというのが私の念願なんです。ですから、陳弁とかそういうことよりは、大蔵大臣をはじめとして税務行政当局が真剣に反省をしていただかなければならぬ。ですからこそ冒頭に、大蔵大臣からあまり陳弁まがいのことでなしに、率直にわびてほしい、そのことからわれわれは出発しなければならぬと思っているのです。大臣、いかがでございましょうか。
  108. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 税務執行、特に査察事件のような権力がつきまとう案件の処理につきましては、それが行き過ぎのないように極力戒心してやらなければならぬ、国税庁はそういうたてまえでやっておるわけです。こういう事件が起きた、その上、原因が那辺にあるか、これはまだ判明いたしませんけれども、こういう事態が起こったこういう機会に、さらにさらに権力的なことが行き過ぎのないように心がけていかなければならぬ、これは当然そういうふうに考えるべきである、かように考えております。
  109. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 司直がいま動いておりますし、調査もしております。ですから、そういう具体的な問題をトレースしていくことは私にとってはたいして意味がないと思っております。問題は、こういう自殺が取り調べの経過の中で行なわれるほどきつかったのではないかということになりますと、査察制度それ自身が体制的に再吟味されなければならぬという問題を含んでいるのですよ。こういう点を、ひとつ前向きに、ぜひ徹底的に検討していただきたいというのが、私がきょう時間をさいてあなたに申し上げたいと思った理由であります。具体的な問題等については同僚の只松君がこれから質問をしたいそうですから、私は飛び入りで、時間の割りつけのないのにやったことですから、一応これでやめておきます。
  110. 只松祐治

    ○只松委員 この増淵さん御本人は、居住が私の住んでおります同じ浦和でございますので、関連して若干お聞きしたいと思います。  私の印象として——印象ですから言い過ぎの場合もあるかもしれませんが、来たるべきものが来た、起こるべきものが起こった、こういう感じを持っているわけです。関東信越国税局長の谷川さんは、前から総務課長をおやりになっておりましたから、どういう人かは大蔵委員の各位は御存じだと思う。なかなかの人です。私がいろいろお話を申し上げても、馬耳東風かなにか知りませんが、なかなか剛のお方でございまして、こういう豪勇のもとには強い兵卒がおるから、当然にこれは何かしでかすだろう——こういうことが起こる前に皆さん方と、あの男は関東信越国税局で何か起こすぞと言っておったのですが、私がそういうことを言ってから一カ月たたずしてこういうことが起こったということは、原因は別です、原因は私もまたこれから調べますけれども、少なくとも前代未聞です。警察の署内においてこういう事件が起こっても、これはえらいことになるのです。まして、それほど強い調査権を持たない国税局の局内において五日間も取り調べを受けて、そのあげくの果てに自殺をしたということは、これはもう前代未聞のえらい問題です。こういうことが起きるんじゃないかという私の予感が当たったのかどうか知りませんけれども、そういうことを同僚諸君と話しておった。あそこは何か起きるぞ、いまに見ておれ、こういうことを言っておったらとうとう起こった、私はこういう気がいたしております。冒頭にそういうことを申し上げて失札でございますけれども、したがって、突然にこの問題が起こったのではなくて、税務行政全般なり、関東信越局のこういう問題として見ていかなければならないんじゃないか。結論として申しますと、すみやかに税小をお開きになるか、あるいは特別に、こういう前代未聞の問題でございますから、本委員会において、当局側だけの調査ではなくて、私たちも調査すべきだろう。いまおことばがありましたように、その前に当事者の谷川局長を呼んでよく聞いたらいいだろう、問題が明らかになるために公平に聞いたらいいだろう。そのためにも、私たちも個人でも調査をいたしますけれども、ひとつ本委員会として、前代未聞のこういう税務行政上の問題が起こったのですから、ひとつ取り調べたらいい、そういう点について、税務当局並びに委員長のお考えも聞いておきたいと思います。
  111. 三池信

    ○三池委員長 その問題は、いずれ理事会によくはかりまして措置をいたしたいと思います。
  112. 泉美之松

    ○泉政府委員 現在のところ、増淵氏が自殺されました原因が判明いたしておりませんので、私ども何とも申し上げかねるのでございますが、しかし、只松委員のおっしゃった関東信越局の局長がなんだからこういう事件が起きるというのは、少し事態をゆがめた御解釈ではないかと思うのであります。私どもといたしましては、査察事件につきましては、先ほど大蔵大臣から申し上げましたように、警察ほどではございませんけれども、強権を持って臨検、捜索を行なうものでございますから、この取り調べにあたりましては、相手方の人権を十分尊重して、手落ちのないようにということを常日ごろから申し伝えておるところでございます。したがって、そういうことのないように十分注意してやっておるはずでございますが、今回こういう事態が起きましたことは、まことに遺憾でございまして、今後ともそういう点につきまして十分配意いたしましてやってまいりたいと思っております。いずれにいたしましても、事態がもう少し明確になるのを待った上でどういうふうに措置するかを考えたい、かように思っております。
  113. 只松祐治

    ○只松委員 私の印象を言ったので、谷川さんに責任があるということを言っているわけじゃない。ただ、そういう気持ちが私はいたしました、感じがいたしました、こういうことを言ったわけです。というのは、突然にこれ一つだけ当たったわけではなく、私が少し前に関係した事件でもいろいろ問題がありまして、税務署の課長さんはこんなことを言わない、しかし、当事者の法人の社長さんはこういうことを言われました、こういうので、私が中に入りましていろいろ聞いたら、言った、言わないということになって、署長さんが、いや、まことに申しわけございませんがと陳謝されましたから済んだ事件もあります。現在私が知っておる事件で、税務署の激しい調査のためノイローゼになっているのが二人ある。一人は奥さんが医者通いをしております。これは少し前に私がそば屋の税金の問題で、あるところに行って話しました。これも何軒か抽出検査をやりまして、おいでをいただいて、こういうふうにほかのところはありますから、おたくもありませんか、こういうことで、何なら、こういうふうに御訂正なさったらいかがですかということで、修正申告さしております。こういうことは、ことばはまことにそうでしょうし、親切かもしれませんけれども、それをしなければやりますぞという、いんぎん無礼と申しますか、とにかく無言の脅迫というか、片一方で手を出して、片一方こうやっているのだから、そば屋さん聞くのはあたりまえです。聞かなければ、それで済まされますか。聞かなければ、あなた方たいへんなことをするでしょう。全都の、千葉、神奈川のそば屋さんがそういう目にあう。やがて埼玉もおやりになるでしょう。税収がなかなか伸びない。そういう段階でいま出ているのは、大法人も税収が伸びないし、給与所得というのはもう取れるだけ取ってあるから、あとは中小企業なり、こういう申告者やあるいは中小法人、こういうところが中心になってくるのは、だれが見ても当然なんです。そういうものに対する徴税の強化というのは、査察が約倍加されております。これも私はたびたび聞いております。そういう結果、幾つかの問題が出てきております。私たちは税務署に行ってお話を申し上げる。申し上げてもなかなか——私たち大蔵委員の、しかも税小委員が行ってもなかなかどうしてお聞きあそばされないのです。まして、そこいらの被疑者になっておる人が行ったら、それはたいへんな態度ですよ。これは行っておる人を呼んで聞いてごらんなさい。与野党を問わず、このことに対する問題があるというのです。だから、私たちが言っているときも与党側からも声援の声がかかるというようなことになる。いま雑談しておってもそういうことが出てきている。だから皆さん方は、税収が伸びないときにどうやって税金を取ってくるかということをよほどお考えにならないと、まともに——これはまともであったかどうか、あとでまた問題にするといたしまして、まともにのれんを張っておる、あるいは青色申告をやっておる、こういうところを非常にいびったり、きびしく調査する、ところがそうでないところを抜かしてある、こういう面がある。私は、そういうところの一例として高級ホステスの例を出したわけですけれども、こういう点、皆さんは徴税行政というのをもっとお考えにならないと、第二、第三の増淵事件というものが起こるだろう。現に私がいま知っているのは、ノイローゼになってお休みになっている方が二人あります。その事件はまだ続行いたしております。商売もできない、こういう状態でございます。いまここにおる理事の方にも申しておりまして、火曜日にも、さらに私たちの調査いたしました結果、続行して質問いたしたいと思います。きょうは、起こった直後でございますので、そういう事件が起きないように、いわば要望申し上げる程度にとどめておきたいと思います。  ただ、ここで三百だけ、強制調査権の範囲といいますか、これはあなたたちが請求すれば、警察権に類似したもの、あるいは警察権と同時行使することができますけれども、通常の場合において、こういうふうにほかのところも連日——一日、二日の呼び出しということはありますけれども、三日も四日も五日も呼び出してやるということを他にも類似しておやりになっておるのかどうか、調査権と調査の実態についてお伺いいたしたいと思います。
  114. 泉美之松

    ○泉政府委員 御承知のとおり、査察事案につきましては、国税犯則取締法におきまして、裁判官の許可を得て、臨検、捜索または差し押えをなすことができるということになっております。そして質問権に基づきまして質問を行なうわけでございますが、これは刑事事件の場合のように、質問を行なう場合に身柄を留置して質問するものではございません。したがいまして、先ほど申し上げましたように、一定時間質問調査をいたしますけれども、それが終わりますとお帰り願って、また翌日来ていただくということはございますが、身柄を拘束して取り調べるものではございません。  それからなお、同一人に対しまして何日も連続して調べることがあるかというお尋ねでございますが、これは事案の内容によって違ってくると思いますが、しかしそう連続して調べるということは比較的少ないのであります。一つのことをお聞きしまして、その反面調査を行なう、その結果、前にお話しになっておられることがそのまま正しく反面調査のほうで伺えますと、それで終わるわけであります。ただ、増淵氏の場合は調査の経過を聞きますと、御当人のおっしゃったことで相手方を調査しますと、相手方のほうのお話が二転、三転いたしまして、そのたびごとに増淵氏に、前のお話は相手方が違っていると言っているが、いかがですかということで、何回もお越し願ったようなことでございまして、増淵さん自身は一貫した主張をしておられたようでございましたが、ただ、相手方が二転、三転した供述をされたために何回もお越しいただかなければならないような事態になった、こういうふうに聞いております。したがいまして、これはいわば異例のことでございまして、同一人につきましてそう連続して長い期間お越し願うということは、実際はあまりない事例でございます。
  115. 只松祐治

    ○只松委員 最後に、大臣にお願いしておきたいと思うのですが、えてしてこういう事件というのは、政治的な圧力と申しますか、一方的な調査が行なわれがちでございますけれども、単に私は一刑事事件という問題じゃなくて、さっきから申しておりますように、税収の伸びない中において、皆さん方も御苦労だと思いますけれども、起こった一つの象徴的な事件だと思う。したがって、ぜひこの問題については公平な調査が行なわれるように、いわば政治的な圧力みたいな形でこれが片づけられないように、こういうことがあったならば、他山の石じゃない、自分の石でございますが、おのずから反省の資になるように、正しい調査が行なわれるようにひとつ御努力を願いたいということをお願いいたしまして、また私らもよく調査をいたしまして、来週の火曜日、次の委員会にでも質問を続行いたしたい。ぜひお願いいたします。
  116. 武藤山治

    ○武藤委員 ただいまの事件に関連して、大臣に誠意ある回答を求めたいのでありますが、いままで税務調査の途中で自殺をしたという例はありますか、国税庁長官
  117. 泉美之松

    ○泉政府委員 従来税務調査の段階で自殺事件があったことは若干事例がございます。かつて戦後の混乱期に調査のために自殺をされた方があったようでありますが、査察関係で申し上げますと、従来自殺された方が二人、自殺未遂の方が一人出ております。
  118. 武藤山治

    ○武藤委員 特に、今度の場合は自殺した人が社長とか専務とかいう責任者じゃないのですね。私はそこに非常に重大なウエートを置いているわけです。そこで、おそらく増淵君なる者は妻もあり、子もあるだろうと思う。国税庁として、大蔵大臣としては、見舞い金を出すとか、香典を包むとか、そういう思いやりのある措置は考えておるのですか、それはいかがですか。
  119. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 こういう事件が、その原因がどこにあるか、これは別ですが、国税局の構内において起こっておる、私もその点は非常に残念に思うわけであります。そういうようなことで、役所としてこの問題をどうするか、これは事件の成り行きというか、経過をよく調べてみなければならぬ問題でありますが、私としては、非常に残念な事件である、深甚な弔意を表したい、かように考えております。
  120. 武藤山治

    ○武藤委員 深甚な弔意を贈る気持ちがある。しかし、弔電は打ちましたか。国税庁長官なり大臣の名前で家族に対する弔電は打ちましたか。
  121. 泉美之松

    ○泉政府委員 関東信越国税局のほうから弔意を表しに参りました。私、実は今朝まで出張いたしておりまして、まだ弔意も表するに至っておりません。
  122. 武藤山治

    ○武藤委員 それは事のいかん、理由のいかんを問わず、庁内で死んだというこの事実、しかもその家族のことを考えた際には、これはやはり大蔵省としてはそういう思いやりのある姿勢というものは示さなければいかぬ。脱税は脱税、これはこれとして、人間一命を失うという重大な問題でございますから、それについて、やはり大蔵大臣並びに国税庁長官の弔電を打つなり、見舞いにいくなり、そういうことはすみやかな処置をとるべきである、こう考えますが、大蔵大臣、見解いかがですか。
  123. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ごもっともなことと存じます。ありがたく御忠告をお受けいたします。
  124. 武藤山治

    ○武藤委員 国税庁長官にもう一点伺っておきますが、なぜこの調査で増淵なる、会社の責任者でない者を数回にわたって出頭させ、調査をしたのか。元来、査察調査で手を入れる場合には、証拠というものがかなり確保されておると思う。したがって、こうしつっこく聞かなくとも、うちのほうはこれこれこういう調査ができておるぞ、これだけの脱税としてわれわれのほうでは証拠があがっておる、これに対する反論を一つ一つ言ってみろ、こういう形で、私どもの知っておる範囲内ではいつでも調査が行なわれておる。しかるに、今回は五月二十五日から始まって連日のように調査をしている。一体査察としては、この事件についてはきちっとした証拠というものを持っていないのではないか、そこに詰問が行なわれる原因があるのではないかと私は思うのですが、そこらの点は国税庁としてはどう報告を受けていますか。
  125. 泉美之松

    ○泉政府委員 もちろん武藤委員のおっしゃるとおり、査察事件でございますから相当の証拠資料を持って着手いたしております。増淵氏について連日取り調べ、調査をいたしましたのは、先ほど申し上げましたように、当初あるところからの仕入れにつきまして架空名義が使われておるわけであります。増淵氏に、これはほんとうの仕入れ先はどこですかということをお尋ねしました。その際に、どこそとだということでございますから、反面調査でその人について調査を行なったわけであります。ところが、相手方は当初否認をされたのであります。そこで増淵氏に、相手方は否認しているが、あなたのおっしゃることに間違いはありませんかということを申し上げたら、確かに間違いないということで、もう一度その取引の相手方のほうに伺ったら、いや、実は自分が取引したのだ、そこで、その取引内容について伺ったら、これまた増淵氏のお話と違ったお話でございましたから、もう一度増淵氏に、相手方は取引があったということは認めているが、取引内容が違っておるようだ、これは間違いございませんかと申し上げたら、増淵氏が前申したとおり間違いないということでございまして、そこでまた取引の相手方の反面調査をいたしたわけであります。そうしたら、今度は相手方は全然取引しないと、またもとに戻った主張がありまして、そうしたことのために増淵氏に何度もお尋ねするということになったように報告を受けております。相手方のほうで正しいことを言ってもらえればそんなに御迷惑をおかけするような事例ではないような問題でございます。
  126. 武藤山治

    ○武藤委員 いずれにしても、これは理事会ではっきり今後の取り扱いはきめるという委員長の発言もありましたし、税小でもみっちり調査しようという約束になったようでありますからこれ以上はお尋ねいたしませんが、先ほどの長官の御答弁の中でも、どうも常識では考えられぬですね。朝の九時半から五時まで、あるいは九時半から六時まで——いままで査察が入ったといっても、話を聞くところによると、たいがい三時間くらいでまた帰してくれたり、商売の都合で、これじゃ営業がストップしてしまうから帰してくださいと言えば、二、三時間で帰すのが常識ですよ。それを朝の九時半から六時までみっちりやる、しかも、昼休みも三十分だ。こういう責め方をしたんでは、これは詰問、拷問にやや似たような時間のとり方のように私は印象を受けておるわけです。その辺もひとつ上司の国税庁長官は、今回の調査に当たった係官から直接事情を聴取して、上官として——私はそこらの捜査のしかた、調査のしかたにもかなり人間性を没却した態度が見られるような気がいたすわけであります。この辺の点については、この次の委員会質問されるまでに十分ひとつ事実関係がはっきり報告できるように、私たちは無理があるような気がいたしますので、今後続行して尋ねますから、あなたとしては、ひとつ十分その点を調査しておいてほしい。  以上で質問を終わります。
  127. 三池信

    ○三池委員長 午後二時より委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後一時四十一分休憩      ————◇—————    午後二時二十分開議
  128. 三池信

    ○三池委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案及びアジア開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律案の両案を一括して議題といたします。  質疑を続行いたします。小林進君。
  129. 小林進

    小林委員 私の質問は終始一貫をいたしているのでございまして、この開発銀行は、せんずるところ、アメリカの中国包囲作戦、アジア侵略、武力攻勢のその裏側である経済的侵略と支配をねらった、そういう陰謀を含めた法案である、協定であるという疑問がどうしても払拭できないのでございまして、そういう観点からこの協定を見てまいりますと、この協定の中に含まれているアメリカのいわゆる指導力といいますか、発言力といいますか、これが実に巧妙に隠されておりながら、実に強大なものであるということが明らかにせられた。私はその点を中心にしてさらに質問を続行いたしていきたいと思うのであります。  午前中の藤田君の質問でも明らかになったように、この条約加盟国はそのほとんどがアメリカと軍事条約を結んでおる、アメリカから経済援助を受けておる、アメリカから金を借りている債務国である、こういう国々によって形成をせられているのでありますから、これは個人の場合においてもしかり、国と国との関係においてもしかりです。いかに債権者というものが強いか、いかに金貸しというものが強いか、これは明らかにこの銀行運営の中にあらわれてきている、かように私は考えている次第でございます。なお、アメリカ影響力というものがいかに強いかということは、次の投票権の問題の中にもこれが明らかにせられているというふうに私は考えるのでありまして、次にこの投票権の問題についてお尋ねをしていきたいと思うのであります。  これは第何条でありますか、それによると、大体一万ドルについて一票、こういうふうな規定になっておりまして、その中で比例票数が八〇%、基本票数が二〇%というふうにきめられておるのであります。この際、十億ドル全部を応募できたと仮定をいたしました場合にその投票総数は一体幾らになるか、まずここからお伺いをいたしていきたいと思います。
  130. 大和田渉

    ○大和田説明員 十二万五千票でございます。
  131. 小林進

    小林委員 どうして十二万五千票になるのですか、その内訳をお聞かせ願いたいと思います。
  132. 大和田渉

    ○大和田説明員 票数は基本票と比例票と分かれておりまして、比例票は一株につき一票、その一株は一万ドルからなっております。したがいまして十億ドルで出発する、授権資本十億ドルという前提で考えます場合に、比例票は十万票になるわけでございます。それから基本票は比例票と一対四の割合、全体の二割を占めるわけでございます。したがいまして、二万五千票が基本票になるわけでございます。合計の票数は十二万五千票ということになります。
  133. 小林進

    小林委員 そういたしますと、基本票数は二万五千票ということになりますか。
  134. 大和田渉

    ○大和田説明員 ただいま御説明申し上げましたとおり、二万五千票でございます。
  135. 小林進

    小林委員 そういたしますと、日本が、アメリカも同じでありまするが、二億ドルを全部応募したと仮定した場合に、日本の票は一体何万票になりますか。
  136. 大和田渉

    ○大和田説明員 二万八百六票余りになります。
  137. 小林進

    小林委員 二万票と八百票弱じゃありませんか。
  138. 大和田渉

    ○大和田説明員 二万五千票を三十一で割るわけでございます。したがいまして、基本票は各国均等に八百六票余になります。
  139. 小林進

    小林委員 そういたしますと、日本アメリカは同数でありまするから、アメリカも同数になりますか。
  140. 大和田渉

    ○大和田説明員 同じでございます。
  141. 小林進

    小林委員 そうすると、アメリカも全部応募せられた場合には、アメリカもまた二万八百六票の票を持つ、こういう勘定になりますな。
  142. 大和田渉

    ○大和田説明員 そのとおりでございます。
  143. 小林進

    小林委員 そういたしますと、先ほども言ったように、債務国あるいは経済的にアメリカに従属している国々、その大きな政治的関係においても、アメリカはその役員を出そうと出すまいと、かりに一票の投票権があろうとなかろうと、アメリカの支配力というものは強大であるにもかかわらず、加うるに、いまあなたが言われたように、投票権においても日本と相並んで第一である。実に驚くべき強力な投票権を持っているわけである、こういうことが言える。しかも、表面においては、日本アメリカは投票権において同数といえども、現実に日本アメリカ関係をながめれば、アメリカの前には、日本の二万八百有余票の投票などというものはあってなきがごとしである。また、アメリカはこの中で権力を行使しようとする場合には、アメリカの票に、そのまま日本の票を加えて、四万一千六百有余票もの票になるという勘定にも私どもは計算し得ると思うのであります。このように、銀行内部における投票の面においてもアメリカの支配力というものは実に強大であります。この意味において、私はますますもってアメリカというものがこの開発銀行の中に占めるその地位の強力さにまさに驚嘆せざるを得ないのであって、私は、投票権一つだけを考えてみても、この開発銀行はやはりアメリカの意のままに動く銀行であるという疑いを深うせざるを得ないのであります。  次に、問題が幾つもありまするから項目的に聞いていきまするけれども、組織、運営の面についてであります。第六章「組織及び運営」の面についてもお伺いをいたしたいのでありまするが、この組織、運営の面において、各国は総務一名、総務代理一名、合計六十四名をもって総務会というものが構成せられるたてまえになっております。もっとも、総務と代理は、決議権の問題でありますが、そこに若干の区別があるようでございますが、運営の面においては総務も代理も同じく総務会に出席し得る、発言もし得るという点においてこれは平等であると考えてよろしいかどうか。
  144. 鈴木秀雄

    鈴木(秀)政府委員 総務会の場合、総務と代理と出ます場合には、総務だけが発言権があるわけで、その総務がいない場合に代理が発言する、こういうことになっております。
  145. 小林進

    小林委員 そういたしますと、まずアメリカは総務においてもちゃんと一名、代理において一名ですね、これは各国並みにちゃんと自分たちの役員を確保し得るわけでございます。  次に、理事は十名になっております。その十名の理事のうちで、域内国は七名、域外国から三名の理事を選出する、計十名で理事会というものは構成されるようになっておりますが、その理事の選出はどういう形で行なわれるのでありますか。
  146. 鈴木秀雄

    鈴木(秀)政府委員 理事の選挙につきましては、附属書Bというものがございまして、その選挙手続に従いまして、総務が投票することになっております。
  147. 小林進

    小林委員 総務が投票するようになっておりまするが、その理事は、域外国は域外国、域内国域内国、それぞれ別個に総務が投票してきめることになっておりましょう。
  148. 鈴木秀雄

    鈴木(秀)政府委員 お説のとおりでございまして、附属書Bは「域内加盟国を代表する総務による理事の選挙」というAという項目と「域外加盟国を代表する総務による理事の選挙」Bというのがありまして、別個の選挙手続によって行なわれるわけであります。
  149. 小林進

    小林委員 その域外域内それぞれ別個に理事を選出いたしまするが、その理事の選出については同一国籍の者を二名までは選出されるような規定があるはずでございますが、いかがでございましょうか。
  150. 鈴木秀雄

    鈴木(秀)政府委員 理事に関して同一の国籍の者が二名になるということはございません。
  151. 小林進

    小林委員 ございませんか、そうですか。第三十条の「理事会の構成」の中のアラビア数字の2でありますが「各理事は、不在のときに自己に代わって行動する完全な権限を有する代理を任命する。理事及び代理は、加盟国の国民でなければならない。二人以上の理事が同一の国籍を有してはならず、」となっております。二人以上の者は同一の国籍を有してはならないというのは、二人までは同一の国籍を有してもよろしいという解釈にはなりませんか。
  152. 鈴木秀雄

    鈴木(秀)政府委員 これはまさしく二人であってはいけないということでございまして、附属書Bの、たとえば「域内加盟国を代表する総務による理事の選挙」のところの第一項をごらんになりますと「域内加盟国を代表する各総務は、各自が代表する加盟国のすべての票数を一人に投票しなければならない。」したがいまして、日本が投票する場合にはだれか一人にしか投票しないということは、ほかの二名以上の者がその国を代表するということはあり得ないので、日本語で二人以上というときに、二人が入るか入らないかということはございますが、私もこの条文の審議過程に参加しておりまして、二人であってはいけない、これは明確になっております。選挙手続の上からいいましても、日本の投票権を分割して行使するなどということはできないので、一人の人にだけしか投票できない、こういうふうになっておるわけであります。ここに書いてあります意味は、二人以上というのは、二人も含めてそういうことはあってはいけない、こういう意味でございます。
  153. 小林進

    小林委員 アラビア数字の2は、いま一回私の納得のできるように解釈してください。
  154. 鈴木秀雄

    鈴木(秀)政府委員 日本語のほうはもちろん条約の正文でございますが、国会の御審議に翻訳したものでございまして、英語で書いてありますのはノー・ツー・オア・モアと書いてあるわけです。これは二人もだめだという意味でございます。
  155. 小林進

    小林委員 ノー・ツー・オア・モア、「一人以上の理事が同一の国籍を有してはならず、また、二人以上の代理が同一の国籍を有してはならない。」この日本語は、従来われわれが使っている日本語と違うのでありますか。
  156. 鈴木秀雄

    鈴木(秀)政府委員 条約局の参事官からお答えいたします。
  157. 大和田渉

    ○大和田説明員 条約の場合、日本語の正文で読みますときに、二人以上という場合には、以上というのは二人目が入るわけでございます。したがって、二人以上がいけないということは、二人がいけない、こういうことになるわけでございます。
  158. 小林進

    小林委員 わかったような、わからないような話でございますが、どうもよわい六十に近くなって日本語の解釈を承るようで私もなんでございますが、ここに英語の原文があるわけじゃございません。あなたの解釈に一応屈服したことにいたしまして、それでは、そういうことで私のその点に対する質問は打ち切ることにいたしますけれども、それにしても、やはりアメリカ域外国総務にもなることができれば、域内国の中から選出をせられて理事になることも——二名になることはどうもいまの解釈ではできないようでありますけれども、一名はなれる、代理理事も一名は出すことができる、こういうことになっておるのでありますから、債権者たるアメリカがこの最高執行機関理事会の中に理事になって入っていくとすれば、事実上の総裁じゃないか。第三十四条に総裁域内加盟国から出す、こういう規定があって、お話によればわが日本渡辺武君が初代の総裁になるということでありますけれどもアメリカ理事として厳然としている以上は、これはアメリカのかいらい総裁になる以外にはないではないか、私はこう解釈をするのでありまして、この理事会、執行機関の構成の中でも事実上最高の支配力を持つものはちゃんとアメリカになっている、こう私はとらざるを得ないと思うのでありますが、この点いかがでございましょう。
  159. 鈴木秀雄

    鈴木(秀)政府委員 私ども先生の御意見と若干違うのでございます。このアジア開銀のすべての規則につきまして、これは大体何に基づいてできておるかといいますと、一昨日の御質問にも答えましたように、九人の、九カ国からなる諮問委員会というものがつくった案にほとんどよっているわけでございます、若干変わった点はございますが。その際にはアメリカがその専門委員会には加わっておりません。先進国として加わっていたのは日本だけなんでございますが、そういったことから、わりあいと申しますか、むしろアジア的性格というものを非常に強く出そうということで、たとえば、出資につきましては、六割は域内国でなければいけないということを一つの条件として考えたわけでございます。  それから、投票権につきましても、やはりこの基本票を二〇%やるか一五%やるかというようないろんな議論もあったわけですが、大体において、やはり金を出すものは債権者という立場じゃなくて、出資者という立場で適当な発言権を持つというのが、銀行という金融機関である以上ある程度そのことについては当然であるという考え方から、基本票を二〇%にいたしまして出資比例票を八〇%というふうにいたしたわけでございます。私どもの考えでは、たとえば総務というのは各国とも全部出るわけで、株主総会みたいなものでございますから、アメリカが出ることがアメリカの独裁になるということでもございませんし、理事といっても、アメリカの持っている投票数というのは一七%何がしのものでございまして、やはり中心的な力というのはアジア域内諸国が六〇%、いま現実の出資によりますれば六億五千万ドルをアジアが持っておりまして、域外国は三億五千万ドル、したがいまして、アメリカが支配するということは、その票数からいっても、またこれのできました由来——このアジア開銀協定をつくります段階におきましても、むしろ後進国側の意見とわれわれの意見によりましてこういったような規定ができたわけで、アメリカが最終的に出てまいりましたのはバンコク会議段階からでございまして、むしろそれ以前に大体の現在の協定の内容はきまっていたというのが実情でございます。したがいまして、私どもといたしましては、アメリカの道具であるとか、かいらいであるとかいうふうには考えておりませんので、後進国の切実な要望によりまして、後進国がみずからの経済開発を先進諸国から受け入れる、そういった一つの新しいタイプの国際機関としてうまくいくことを念願しているわけでございます。
  160. 小林進

    小林委員 それは、あなた方は事務屋としては事務の作業の中でそういう技術的な話し合いができたかもしれませんけれども、その問題はあなたから聞く必要は何もない。先ほどから繰り返しているように、九カ国の諮問委員会から出ようと、十カ国の諮問委員会から出ようと、後進国から出ようと、みんなアメリカのひもつきの国だけなんです。こういうこまかい技術上の話をするときに、大家さんだとか大どころのだんな衆が出てくる必要はないのであって、自分たちの部下や家来衆にやらしておけばいいのだ。アメリカの太い綱に縛られているそのひもつきの国の、そのまた事務屋が出ていって何やかやと運営手続上の問題をやって、そこら辺でアメリカの発言力を弱めようということは、われわれに言わせればちゃんちゃらおかしい主張です、そんなものは。ほんとうにアジアの後進国のめんどうを見る、世話をするというのは、先ほども藤山さんが言われたように、アジア全域のものを含めればいいじゃないですか。アメリカは自分の目的とする敵をちゃんと除外して、中国や自分たちと信条を異にする国々と敵対する、自分たちの団結をかためることをすれば、あとはそんなこまかいことはあなた方にまかせればよろしいという大きな腹を見せただけの話であって、それをもってアメリカの発言力がこの中で弱くなっているような話などというものは、まことに目くそ鼻くそを笑うたぐいで、笑止千万な話です。だから、何回も繰り返しているように、これはアメリカがこの中でせめて——まあ、総務は一国一人であり、代理を含めて二人だ、その総会くらいにはアメリカは出ておる、それ以外は、せめて理事や副総裁になるようなことも全然御遠慮いたそうというならまだ少しかわいいところがあるけれども、ちゃんと理事にも何もなっているじゃありませんか。自分たちの子分衆の中にちゃんと割り込んで理事にも何もなっているじゃありませんか。しかも、次に言う副総裁はどうですか。副総裁は一名ないし二名、理事会が任命することになっている。そうでしょう、総裁の勧告に基づいて。その総裁日本だ。ちゃんとアメリカ理事に入っておる。アメリカ理事日本総裁渡辺さんに、おい、理事を一名にしなさい、二名にしなさいと一言言えば、唯々諾々でこれをやらなければならない。そういう機構が実にちゃんとできているじゃないですか。しかも、その副総裁だってこのとおり、これはもう域内国域外国もない。アメリカ理事だってちゃんと副総裁になる権限があるでしょう。副総裁になることをアメリカに禁じてありますか。
  161. 鈴木秀雄

    鈴木(秀)政府委員 副総裁は一人または二人以上ということで、国籍につきまして域内加盟国でなければならないということはございません。したがいまして、理屈上アメリカ人でもなれるわけでございます。
  162. 小林進

    小林委員 そうでしょう。アメリカは総務か理事でいいのですよ。いいんだけれども、やっていて、そして運営の形跡を見て、もっと自分たちの権限を強めよう、事実上自分がこれをとろうと思ったら、ロボットの総裁に、今度は副総裁を一名にしましょう、二名にしましょうということを勧告をして——家主ですから、地主ですから、金貸しですから、アメリカは何でも言える。そしてやらして、今度は自分たちが必要なときになったら副総裁に乗り込んでいくだろう。副総裁になれば事実上の総裁だ。理事だって事実上の総裁だと思ってよろしい。ちゃんとそういう下ごしらえ、基盤ができているじゃないですか。何回も私たちが質問したように、全部できているんだ。自分たちの従属国にひとしい、経済的に、軍事的に、政治的に支配した国だけを自分の周囲に集めてこの銀行をつくっているのだから、その中でアメリカひとりが権限を持って乗り込んでいって、そして、必要になれば副総裁にもなれるという、この道が開かれているのでありますから、私はこの人的構成の上においてますますアメリカというものが必要に応じてどういうこともなし得るような、ちゃんと支配力を保存するような形ができ上がると考えている。だから、アメリカがあくまでもこのアジア開発銀行を完全にアメリカの支配からのがれた独立のものにするというならば、副総裁理事にはアメリカはならないという規定を設けたらどうです。そうして、形式的にも実質的にもアメリカの権限から離れているという形を示してみせたらどうですか。そういう議論がなされなかったのですか。アメリカが持っている株の支配力なんというものは、投票権は三七%でも一七%でも一%でもいいのです。アメリカがちゃんと支配力を持てるような一切の基盤ができている。そういう副総裁なんかアメリカから出さない。理事アメリカから出さない。そういう規定をつけるような話はありませんでしたか。将来ともそういうふうに改正するような考えはありませんか。
  163. 鈴木秀雄

    鈴木(秀)政府委員 議論の過程におきましては、先ほど申しましたように、アジア的性格ということで、総裁はともかく域内加盟国の国民にしょう、しかし、副総裁については、どの国と区別して特定の国はなれないというような書き方をするのはいかがかということで、そういう議論は全然ございませんで現在のような規定になっておるわけでございます。
  164. 小林進

    小林委員 私はこの点においても非常に不満です。私どもの疑いをだんだん濃厚ならしめこそすれ、これがアメリカからの支配をのがれて、アジア的色彩を濃くした独立のアジアのための機関だなどということは、この役員構成の面においても私どもはあなた方の説明をいささかも承服することはできない。でありますから、この点においても、日本政府の側でこれを修正をする、そういうようなお考えがおありにならぬ限りは私どもは賛成するわけにはまいりません。  話の途中ですけれども、ここで一つつけ加えておきます。外務省に先般の質問でジョンソン大統領の十億ドル構想についてという資料を要求しておきましたが、私はこんな資料を要求したのじゃありません。これは実に人をこばかにした資料です。こんなのは資料になりません。ジョンソンの構想を自分たちがかってに主観を入れて書いただけの話だ。私はジョンソンの演説の概要を——速記録全部といってはあまりお気の毒ですから、演説の概要をプリントにしてくださいと言っているのです。こういうような、構想を外務省がかってに解釈したものを私はくださいなんて言っているのじゃない。だから、全くこの前の答弁と内容が違っているじゃないですか。演説の内容が一ページも入っていないじゃないですか。こんなものはだめです。これは書き直して、ジョンソンの演説の概要、それを私は報告してくれというのでありますから、いかがでありますか。
  165. 西山昭

    ○西山政府委員 先日御要望のありましたとき、ジョンソンの十億ドルの件について説明をお求めになりましたので、私から口頭で説明を申し上げました。申し上げた点を書きものにして出せ、こういう御指示がございましたので、さように取り計らったわけでございます。あらためまして、ジョンソンの演説の内容を提出することはけっこうだと思います。
  166. 小林進

    小林委員 それじゃあなたの御答弁は非常にすなおでけっこうでございます。私はあなたの意見を聞いているのじゃないのだから、ジョンソンの演説の内容を、要点をはずさないように、つまびらかに御報告をいただきたいと思うのであります。  私は役員構成の問題についても、この点は非常に不満であることを表明いたしましたが、特にアメリカの支配力がさらに強まる懸念のある問題は、次の特別基金制度に関する問題であります。この規定について、一応解釈を承りたいと思うのであります。
  167. 鈴木秀雄

    鈴木(秀)政府委員 銀行が発足いたします場合に、この銀行の性格をどういうふうにすべきかという問題があったわけでございます。大多数の国民の代表の意見というのは、やはり銀行というものは将来外債等を出して資金を募集することもあるであろうし、やはりこれはサウンドバンキングと申しますか、健全金融立場に立ってやるべきだ、ということは、要するにある程度金利その他も高くなる、こういうことであるわけですが、しかしまた、一方におきまして、東南アジアの需要を見ます場合に、社会資本の充実とか、あるいは国際収支が非常によくないというような国に対しては、ある程度のソフトローンといいますか、そういう利子の安いあるいは償還期限の長いものをやらなければならない、こういったことで、一〇%をこえないものを十九条の一項でもって所定の手続をやって特別基金として設定する、それが特別基金の一つの形でございますが、それ以外に、ある国が特に出資という投票権を伴う行為でなくて、特定の信託基金といったような形の特別基金を銀行に貸すというようなかっこうで、そういった社会資本その他についての長い低利のものを出す、こういうのが特別基金の構想でございます。いわばアジア開銀の中における第二世銀——一つの銀行で二つの、世界銀行と、IDAと申しますが、第二世銀と同じものをこの中にやったわけでございまして、しかし、主流は世界銀行タイプのわりと金利の高いものに考えておるというのがこの特別基金の由来でございます。
  168. 小林進

    小林委員 この特別基金制度によって信託せられる金は一割でございますか。
  169. 鈴木秀雄

    鈴木(秀)政府委員 出資金の払い込み済み資本の中では一割でございますけれども、それ以外に外ワクと申しますか、要するに資本金と関係のない金がくる場合には、そこの二号に書いてございますが、「銀行目的に役だつことを意図し、かつ、銀行の任務の範囲内に入る特別基金の管理を受諾すること。」ということで、これはいわゆる払い込み資本金とは別の特別基金というもので、この二つの財源があるわけでございます。
  170. 小林進

    小林委員 払い込みの資本金とはかかわりなしに信託する金、預託をする金というものは、これは制限はありませんな。幾らでもよろしゅうございますね。
  171. 鈴木秀雄

    鈴木(秀)政府委員 数量的な制限はございません。ただ、目的としては、こういったものは「銀行目的及び当該特別基金に関する合意に矛盾しない」という方法、条件で管理されるということが書いてございまして、銀行自身が受け付けないものまで頼まれる筋のものではないというふうに考えます。
  172. 小林進

    小林委員 アメリカは一体幾らの金を信託してくれるといっておりますか。
  173. 鈴木秀雄

    鈴木(秀)政府委員 正式な意図かどうか私存じません。少なくともアジア開銀の公式な会議においてそういった表明はなかったのでございますが、一億ドル程度の信託金を、ほかの国も出すならば出すというふうに聞いております。これは正確には、あるいは外務省経済協力局長のほうがよく知っておるかもしれません。
  174. 小林進

    小林委員 それでは、外務省経済協力局長。
  175. 西山昭

    ○西山政府委員 ただいま鈴木局長から説明のありましたとおりでございまして、従来アメリカ側と話をしました段階におきましては、必ずしもはっきりきまったわけではございませんが、アメリカは一億ドル程度の金を出す用意があるということを申しております。
  176. 小林進

    小林委員 私はこういうところにもアメリカの危険な意図が含まれていると考えておる。皆さん方はお考えにならないならそれでよろしいが、私は考えておる。その中に、先ほど鈴木局長が言われたように、一つの条件があって、他の国が同様の特別基金を行なった場合にアメリカはその特別基金を出すというが、他の国とは一体どこをさすのでございますか。
  177. 西山昭

    ○西山政府委員 銀行と直接関係のない特別基金の構想につきまして、アメリカが一億ドルくらい考えておりまして、先ほど鈴木局長から話されましたように、他の国も同様な協力をする用意があるならばアメリカとしても出すという話でございますが、その意味の信託基金の内容とか手続だとか、そういう詳細につきましては、まだ何ら詰まっておらない状況と私は判断しております。
  178. 小林進

    小林委員 まだそれが動かないような確定したものでないことは、私も知っております。けれども、私は他の国というのは日本だと思っている。アメリカも一億ドル出すから日本も一億ドル出しなさい。日本が出したらアメリカも出す。ことばはそういうことだけれども、せんじ詰めていけば、私は日本をしてアメリカ同様に、アジアの経済支配といいますか——経済支配になるほどの大きな金ではありませんけれども、こうして日本を道連れにして、アメリカが行なうべき、アメリカのことばをもってすれば、アジアにおける自由陣営の強化——いまはアメリカはもう世界で孤立化しつつある。ベトナム戦争におけるアメリカの不評判は世界的になってきた。いまアメリカと戦争しているのは北ベトナムじゃないじゃないですか。ベトコンじゃないじゃないですか。南ベトナム内部のそのかいらい政権側に属する一般市民層に、午前中にも言ったように、もはや催涙ガス等を用いたりして、そういう自分たちの味方のほうからもヤンキー・ゴー・ホームなどというポスターを張られたり、反対運動をされて、まさに天が下に住む家もないような苦しい立場に追い込まれて非難をされておる。このアメリカのいわゆるベトナム戦争の失敗を、金でもって——成金根性だ、金でもってひとつアジアのいままでの支配力をくぎづけにしていこう、しかし金がないのだ。アメリカのドルもだんだん底をつきつつある。もはや保有金も百五十億ドル、底をついたのか、もうつきそうになっているのか、だんだん金も少なくなってきた。アメリカは軍事的に失敗してだんだん動揺している。日本は、アメリカのことばをもってすれば、助けてやったけれども軍事的に協力しない。アジアにおけるこのドル政策のつっかい俸を今度は日本にやらせよう、これは安上がりのアジア政策の一環ですよ。この一億ドルというのは、せんずるところ、ジョンソンのアジア経済開発のための十億ドルをこういう形で使おうというのでしょう。ただは使わぬぞ、まあ二億ドルは出資金として出す、あとの八億ドルか十億ドルは、そればかりじゃないだろうが、こういう特別基金の形で出してやるが、アメリカだけが出すんじゃないぞ、日本も出すんだぞ。これはアメリカアジア侵略のための基金の手伝いを日本にさせようというおとりの金じゃないのですか。そうじゃないのですか。こういう私の解釈は間違っておりますか。政務次官、副大臣、どうですか。
  179. 藤井勝志

    ○藤井(勝)政府委員 今朝来いろいろ御質問があり、当局から御答弁いたしておりますように、この銀行の発足する歴史的な沿革、同時にこれがねらいとする経済開発、経済協力、こういう面から見て、私はせっかく小林委員の御意見でございますけれども、これはやはりものの見方——裏からいろいろ見る場合と、すなおに表から見る場合と、いろいろ解釈は各自違うと思うのでありますけれども、われわれは小林委員のような解釈はとらない、あくまで前向きで経済協力、すなおな運営を私は期待いたしたい、このように考えるわけでございます。
  180. 小林進

    小林委員 一つの問題を裏から見るとか表から見るとかいう問題じゃないのですよ。一つの問題をどこまで掘り下げて研究したかという問題なんです。  一体、あなたはアメリカの米州銀行の内容を知っていますか。このアジア開発銀行の一つの前例となるべき米州銀行におけるアメリカの金の使い方、米州銀行設立したその趣旨、その発想、その後の実行行為、投資の状況、詳しく教えてください。
  181. 藤井勝志

    ○藤井(勝)政府委員 米州銀行運営がどのようになされてきておるか、私は詳しく御説明を申し上げる勉強をいたしておりませんことをお断わりを申し上げます。ただ私は、かりに米州銀行がどのような運営をなされておろうとも、これから発足しようとするアジア開発銀行は、やはりその設立の趣旨に沿うたいわゆるアジア的性格を持って、アジアの経済開発、経済協力にその使命を貫徹してもらいたい、このように期待いたすものであります。
  182. 小林進

    小林委員 あなたの期待はけっこうです。政務次官が幾ら期待したところで、現実の構想と内容はあなたの方向へ向いているんじゃないのですよ。期待だけは何ぼ期待したってよろしいが、米州銀行の内容を説明してください。あなたできなければ、係の局長、説明してください。
  183. 鈴木秀雄

    鈴木(秀)政府委員 米州銀行と今回御審議をいただいておりますアジア開発銀行の一番の差というのは、米州銀行につきましては、アメリカとラテンアメリカの国だけが加盟国になっているということでございます。しかも、アメリカ出資比率というのは、当初、授権資本が全体で八億五千万ドルのうち、三億五千万ドルであったわけでございまして、現在は二十一億五千万ドルの出資金のうち、七億六千万ドル余りの出資率を持っております。したがいまして、米州銀行というのは、いわばそういったある意味アメリカとラテンアメリカだけの銀行である、今回の銀行の特色は、私どもこれと同じものをつくるのはむしろいやだということでございまして、先ほどから繰り返し申し上げましたように、アジア的性格ということに主眼を置きまして、出資金におきましてもアジアの諸国が少なくとも六割は持つ、それから域外の国の出資につきましても、米州の開銀につきましては、日本がたとえば出資しようと思っても出資できないわけでございますが、アメリカのみならず、広く域外の資本輸出国をすべてできるだけ多く集めて資金を調達して、そういった観点からアジアに一つの新しい形の銀行をつくろうというのがねらいであったわけでございます。したがいまして、米州銀行と今回のアジア開発銀行というのは、その点で大きな私は差があると思っております。
  184. 小林進

    小林委員 結局同じことばかりの繰り返しで、あなた方の事務的段階答弁は私はもう聞きたくなくなってしまった。  それじゃお伺いしますが、先ほど説明したアジア的色彩を出すというそのアジアの人口は一体どれだけ含まれておるか。午前中答弁ができなかったが、いまは勉強されたでしょうから、言ってみてください。アジア的色彩があるというから、一体エカフェ地域の人口が幾らで、その中のどれだけの人口を持っておる国々が入っておるか言ってください。
  185. 大和田渉

    ○大和田説明員 国連の統計年報によりますと、アジア地域の国のうちでこの銀行加盟を予定されている国の人口は八億六千三百三十七万四千人でございます。それからこの地域に入りまして、先ほどから問題とされております具体的には中共、北朝鮮、北ベトナム及びインドネシアでございますが、その人口は、中共が六億九千九百万、北朝鮮が千百八十万、北ベトナムが千八百四十万、それからインドネシアが一億二百二十万、こういう数字でございます。合計いたしますと八億三千百四十万ということになります。
  186. 小林進

    小林委員 あなたの数字のとおりじゃないですか。アジア的色彩だ、アジアの開発だというけれどもアジア地域における人口の半分も占めていないじゃないですか。五割にも達していないじゃないですか。それでどうして一体アジア的色彩だの、アジアの後進国の利益に奉仕するのと言われますか。加盟していない国の人口のほうが多いじゃないですか。そういうものにアジアの名称を冠してくるなんというのは迷惑しごくだと私は言うのです。過半数にも達しないのですよ。米州地域における米州銀行加盟している国の人口と非加盟国の人口の比率はどのくらいでありますか。アフリカ開発銀行は、アフリカにおける加盟国と非加盟国の人口の比率は一体どのくらいになっておりますか。参考までにお聞かせ願いたい。
  187. 大和田渉

    ○大和田説明員 米州開発銀行の場合、加盟国は米国及び中南米諸国合計二十カ国、キューバだけは除かれると思います。したがいまして、その比率は、いまここに数字の手持ちはございませんけれども、おそらく九〇何%という国が加盟しておるという数字になると思います。  それからアフリカ開発銀行の場合でございますが、六四年現在で二十七カ国が加盟しております。南ア連邦等は除かれておるわけでございますが、この人口比率もいまここに数字がございませんが、おそらく八〇数%という数字が出るのではないかというふうに推定しております。
  188. 小林進

    小林委員 そうでしょう。あなたのその答弁によっても明らかです。いやしくも米州というからには米州地域における人口九〇%以上を包含しておる、それで初めて米州の名称が冠せられるのですよ。アフリカにおいてもしかり、アフリカ開発銀行と銘打つからには、アフリカ地域における人口が八〇%以上含まれておるならばそこにアフリカ開発銀行の名前を冠してもいいでしょう。アジアは何ですか。アジア地域の人口は五割も占めていないじゃないですか。五〇%を切っているじゃないですか。それでアジア開発銀行などという名称を冠して、アジア的色彩を出しますの、アジアのための開発銀行でございますのと、そういうことが一体言えますか。こういう明らかなことをみんなあなた方はごまかしているのですよ。そして域外国の縁もゆかりもないような国をみんな持ってきて、アジアのためでございますの、アジア開発銀行でございますのという。アジアなんて名前をとったらどうです。僣称するのもおこがましいじゃないですか。どうですか、そういう修正をおやりになる気はございませんか。
  189. 藤井勝志

    ○藤井(勝)政府委員 人口の割合で名前をつけるつけ方の是非論で御意見が出ておりますが、この銀行の起源、沿革というものはエカフェから端を発しておりますことは御案内のとおりでありまして、そのエカフェアジア開発銀行という名前をつけたわけでございますが、それじゃ、これはほかに何の名前があるかという別の角度から考えた場合、まさかこれをアメリカ銀行とかアフリカ銀行とは言えないと思うのでありまして、やはり一応藤山大臣答弁されたように、アジア銀行として、北ベトナムも中国も北鮮も入ってもらうということを将来展望する場合、アジア銀行の名前が適当であろう、このように私は判定せざるを得ないのでございます。
  190. 小林進

    小林委員 またあなたは同じことを繰り返すけれども、この協定の中に七億も八億も占めておる人口を将来ともにちゃんと入れるような道が一つもないじゃないですか。これは永久に締め出すような規定になっているじゃないですか。それとも、藤山さんが言われるように、そういうような条項も修正をして、アジア地域における国々が思想、信条のいかんを問わず全部が入れるような期待とその道を開いておいて、そしてそれが満願になることを祈るがゆえにアジア開発銀行という名称をつけたというならば了承できます。初めからこれを敵対視して、初めからこれをおっぽり出して断じて入れないようながんこな障壁をつくっておいて、名前だけアジア銀行というのは、これこそ羊頭を掲げて狗肉を売るのたぐいです。国民や世界をごまかすにしてもあまりにも幼稚なごまかし方法だと私は言っているんですよ。(「ごまかしてない」と呼ぶ者あり)ごまかしじゃないですか。アジアの中の一部分だけを入れておいてあとのものは全然入れないようにがんじょうな、刑務所の障壁よりもがんこな城壁をつくっておいて断じてその中に入れないようにして、そして名前だけはアジア全地域の人口に奉仕するようなアジア開発銀行などという名前をおこがましくも僣称している。ここにも私はインチキがあると言うんです。私をして言わしめるならば、正確な名称はアメリカアジア侵略のための開発銀行——少し長くなりまするけれども、こういう名称に改めたらどうかと言うのです。賛成しませんか。
  191. 藤井勝志

    ○藤井(勝)政府委員 先刻来大体同じような御意見中心質疑応答をなされておられるようでございますが、私は、お互い日本人として、アジアの一員としてこれがいかにもアメリカアジア戦略体制の一環であるという受け取り方は、自主性を持った日本の受け取り方ではない、かりにアメリカがそのような意図を持っておったと仮定しても、われわれは断じてそのようなかまえでものごとを考えるべきではない、堂々と日本的な立場において、アジア的な立場においてこれが運営の完ぺきを期すべきである、このように考えるわけでございます。
  192. 小林進

    小林委員 あなたの答弁は意気まことに壮なりといえども、ちょうど子供が六方を踏んでいるようなもので、それではとても力にはならぬ。ただ言ってみただけの話であって、内容はちっともあなたの言うような方向に動いていないことは言うまでもない。  それで、問題はもとに戻るが、米州銀行だって、事務屋の答弁を聞いてもそうなんだ。キューバの戦争が起きて、キューバの貧困やアメリカの独占のキューバ侵略のためにあの米州も非常に動揺した。それで第二、第三のキューバができてはたまらぬというので、アメリカがあわてて、ドルで人の顔をなでるように、キューバに同調するものを防ごうという形で米州銀行をつくったということは明らかだ。これは天下周知の事実だ。知らないのは大蔵省外務省の官僚だけだ。みんな知っている。そういうふうにでき上がっている。あのメキシコにおいてもしかりだ。アルゼンチンにおいてもしかりですよ。キューバに対して同情的な態度を示すときには金を貸してくれない。まことに金持ち根性のいやらしさであって、反キューバ的な色彩を出すと、きのう、おとといの質問にも出たように、一億五千万ドルもぱっと出して、ドルでほっぺたをなでながら、そういう反共システムというものを米州銀行を利用してアメリカはつくり上げている。これは明らかではないですか。その前例にならっていまこのアジア開発銀行というものを彼らはつくり上げた。米州銀行の前例の上にこのアジア開発銀行が成り立っているということを私は聞きたかったのだけれども、事務官僚ではこういうような崇高な、真相をうがったような言を聞き出すことは無理だから、やがて大臣が来たときにもつと詳しく事実を羅列して、肺臓をえぐるような質問をして屈服せしめる、こういうことにしておきます。  いま問題は、この一億ドルの特別基金の問題なんだ。この一億ドルは決してこれにとどまっているのではない。私はジョンソンの言う——ジョンソンの演説をよく聞かなければわからないけれども、ジョンソンの言う十億ドルをもってアジアを開発するというその十億ドルの使い方はこの特別基金の一億ドルから始まってくると私は見ている。間違いないです。出資金の面において十億ドルも出して、日本が二億ドル、あとの国は三千万ドルだ、千万ドルだ、これではアメリカの野望があまりにも明らかになるから、出資金の面だけでは日本と平等な二億ドルにして世間の目をごまかしておいて、こういう特別基金という信託の形にしてどんどん金を出してくる。しかしその金も、日本を道連れにして、アメリカだけでは出さぬ、日本も出せといって、日本に債権者としての、金持ちとしての心理的圧迫を加える。また、日本にはもう心理的圧迫なんか加えなくてもいい。日本も出しなさいと言われれば、唯々諾々とするのです。そうして、その金をもってアジアの反共勢力というものをつくり上げて、経済的にこれを拘束していこう、そして中国包囲作戦、社会主義陣営、共産主義陣営に対する包囲作戦を経済の面でも軍事面とともに進めていこうとする意図がこの特別基金制度の中に含まれておる、私はこう解釈をしておる。だから、これは一億ドルに限定しているものではありませんでしょう。将来はこれは何十億ドルにも基金を寄託し得る制度でございましょう。どうですか、これは。
  193. 鈴木秀雄

    鈴木(秀)政府委員 先ほど申し上げましたように、数量的な制限はございません。
  194. 小林進

    小林委員 制限はない、そのとおりです。こういうところで企図がだんだん明らかになってくる。いままではアメリカは個人で投資してきたが、ドルはなくなった。そしてその投資した金は、韓国において見られるがごとく、南ベトナムにおいて見られるがごとく、その人民を堕落させ、そして特権階級をつくり、インフレをつくり上げ、不正の政治を温存している。アメリカの貸し付け金や投資はみんな失敗している。そして国民の中からも批判されている。そこへ日本が戦争にも協力しないで、ぬくぬくと伸びておる。だから今度は、アメリカが個人で金を貸し付けて失敗をした韓国失敗やベトナムの失敗を繰り返さないように、日本を道連れにして、日本にこれをやらせて、安上がりなアジアの経済侵略を完成しようという意図が明白なんです。そういうことを読み取られないような政務次官では、大政務次官とは言われませんよ。そこまで問題の本質を突き詰めてもらわなければならぬ。私はこの基金制度は非常に危険であると思っています。もはやここまで問題がくれば、事務的段階ではなくなる。大臣をしてこの問題を掘り下げて反省を促さなければならぬ問題であります。  まだ問題は幾つも残っておりますけれども、わが党は三時から両院議員総会を開きまして、今次国会における最も重要問題について党の足固めをしなければならぬ会議の最中でございますので、残念ながら、残余の問題は後日に残しておきまして、本日はこれをもって私の質問を一時中断することにいたしたいと思います。
  195. 三池信

    ○三池委員長 次会は、来たる十四日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後三時二十四分散会