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1966-06-08 第51回国会 衆議院 大蔵委員会 第49号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年六月八日(水曜日)    午前十時五十五分開議  出席委員    委員長代理 理事 金子 一平君    理事 原田  憲君 理事 吉田 重延君    理事 平林  剛君 理事 堀  昌雄君    理事 武藤 山治君       岩動 道行君    大泉 寛三君       押谷 富三君    木村 剛輔君       木村武千代君    小山 省二君       砂田 重民君    田澤 吉郎君       谷川 和穗君    羽田武嗣郎君       福田 繁芳君    村山 達雄君       毛利 松平君    山本 勝市君       渡辺 栄一君    渡辺美智雄君       有馬 輝武君    小林  進君       佐藤觀次郎君    平岡忠次郎君       藤田 高敏君    山田 耻目君       永末 英一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 椎名悦三郎君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君  出席政府委員         外務事務官         (経済協力局         長)      西山  昭君         外務事務官         (国際連合局長         事務代理)   滝川 正久君         大蔵政務次官  藤井 勝志君         大蔵事務官         (主計局次長) 岩尾  一君         大蔵事務官         (主計局次長) 武藤謙次郎君         大蔵事務官         (理財局長)  中尾 博之君         大蔵事務官         (証券局長)  加治木俊道君         大蔵事務官         (国際金融局         長)      鈴木 秀雄君  委員外出席者         外務事務官         (条約局外務参         事官)     大和田 渉君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    青山  俊君         参  考  人         (日本道路公団         総裁)     富樫 凱一君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 本日の会議に付した案件  外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律  案(内閣提出第四〇号)  アジア開発銀行への加盟に伴う措置に関する法  律案内閣提出第七六号)  金融証券取引及び外国為替に関する件  国の会計に関する件      ————◇—————
  2. 金子一平

    金子(一)委員長代理 これより会議を開きます。  本日は、委員長が所用のため出席できませんので、指名により私が委員長の職務を行ないます。  外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案及びアジア開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律案の両案を一括して議題といたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。藤田高敏君。
  3. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は、主としてアジア開銀に関する問題について質問をしたいと思います。  まず第一に、アジア地域というものについての一般的な概念、アジア開銀設立目的、これとの関連等についてお尋ねをしたいわけでありますが、私どもがごく常識的に、社会通念として理解をいたしておりますアジア及び極東地域というものに対する考え方と、この協定にいうところの「アジア及び極東地域」というものの間にはかなりな違いがあるように思うわけであります。そこで、まず、半ば事務的なお尋ねになりますが、聞かしてもらいたいのは、一般的な社会常識でいうアジア及び極東地域に入る国名をひとつ聞かしてもらいたい。
  4. 鈴木秀雄

    鈴木(秀)政府委員 一般的と申しますと、私、どういうお答えをしていいんだかわかりませんが、御承知のように、アジア開銀発足は、エカフェ中心になってできたものでございまして、現在のアジア開発銀行協定によりますと「アジア及び極東地域」というのは、国連エカフェ地域として指定した地域ということになっておりまして、一般的な常識というのは、むしろ客観的にそういうものがあるのかどうかわかりませんが、結局、そういうものがないからこそ、エカフェというものが、国連がそういう付託条項をつけまして、一定の地域をきめたわけでございます。エカフェ地域というのは全部で二十一カ国ございます。東のほうからまいりますと、日本がまず入りますが、それ以外に現在の韓国あるいは朝鮮といったあの地域、それから中国、台湾、フィリピンオーストラリアニュージーランドタイマレーシアビルマインドネシア、インドパキスタンイランアフガニスタンネパール、こういったような、全部二十一カ国を申し上げたかどうか存じませんが、それ以外にセイロンカンボジアラオス、南ベトナム西サモア、そういったようなととろがあるわけでございます。一般的に日本人の感覚でいうと、たとえばイランとかそういった国は中近東でないかというお感じがあるかと思いますが、それはエカフェ付託条項によりましては、イランアフガニスタン等、すべてアジア及び極東地域ということに入っているわけであります。
  5. 藤田高敏

    藤田(高)委員 必ずしも明確でないわけですが、私は、やはり基礎的な問題として、この協定でいういわゆる「アジア及び極東地域」というもののワクの中に入る国と、一般社会常識としていうアジア及び極東地域に入る国とは違うわけですから、この協定でいう国以外に、それでは社会通念上いうところのアジア及び極東地域に入る国はどことどこか、こういうふうにお尋ねしましょう。その国はどことどこか、追加して聞かしてもらいたい。
  6. 鈴木秀雄

    鈴木(秀)政府委員 この協定に入っております「アジア及び極東」というのは、われわれ少なくとも、一般にどうか存じませんが、私の考えますアジア及び極東よりむしろ広いわけでございまして、それ以外の国というのは私としてはないのではないか——地域でございますね、国ではなくて地域という意味でございます。
  7. 藤田高敏

    藤田(高)委員 たいへん私はおかしな答弁をすると思うのです。これはこの協定を審議するイロハのイの字の質問を私はしておるわけですね。この前文から第一章の目的の中にはっきりうたっておるわけですね。ここでいう「アジア及び極東地域」又は「地域」の用語を使用するときは、いつでも国際連合アジア極東経済委員会付託条項に規定するアジア及び極東地域をさすものとする。」こういうふうに限定しておるわけですから、ここでいうこの「地域」の国の名前はどことどこか。それ以外の社会常識的にいう国家名との間に違いがあるはずですよ。そういう基礎的な、一番初歩的なことが具体的に答弁できないということであれば、これはこれ自体審議できないですよ。
  8. 鈴木秀雄

    鈴木(秀)政府委員 私の申しましたのは、地域としてはそういったことで、いまおそらく御質問意味は、たとえば中共がこういうものに入るか入らないかとか、北鮮が入るか入らないかとかいうことかと存じますが、そういったものは地域としては入っている、これは外務省のほうが専門でございますが、私のほうはそういうように理解しております。
  9. 藤田高敏

    藤田(高)委員 それではお尋ねしますが、これほど重大な議案を審議するのに、外務省見解大蔵省見解というものはきちっとそういう点の認識について一致してないのですか。
  10. 鈴木秀雄

    鈴木(秀)政府委員 一致しておりますが、公的な見解外務省がやるということを申し上げたわけでございます。
  11. 藤田高敏

    藤田(高)委員 そういう法的なことを含めて、ですから、法的にどうだこうだということを除いて、たとえば国の名前をずっとあげてもらったら一番早いわけですよ。
  12. 大和田渉

  13. 藤田高敏

    藤田(高)委員 ようやく一番最初の質問に答えてくれたような気がするわけですが、それでは、いわゆる一般的な社会常識からいうアジア地域には、社会主義国家としての中華人民共和国あるいは北朝鮮あるいは北ベトナム、こういった一連の社会主義国家が入ると思うわけですが、こういう社会主義国家と目される国家だけがこのアジア開銀加盟をしてない理由はどこにあるのか。これは政策的にこういう社会主義国家に対しては全然加盟の呼びかけ、働きかけをしなかったのかどうか、そのあたり考え方について聞かしてもらいたいと思います。
  14. 鈴木秀雄

    鈴木(秀)政府委員 加盟国の範囲につきましては、第三条に「銀行加盟国の地位は、(i)国際連合アジア極東経済委員会加盟国及び準加盟国並びに(ii)にその他の域内国及び域外先進国国際連合又はそのいずれかの専門機関加盟国であるものに対して開放される。」ということになっておりまして、したがいまして、国連あるいは国連専門機関といったもののメンバー国だけに開放される、こういうことになっているわけでございます。したがいまして、中共北鮮というものがはいれないといいますか、入らないことになっておるわけでございます。
  15. 藤田高敏

    藤田(高)委員 これははいれないのか、入らさないのか、どちらですか。
  16. 鈴木秀雄

    鈴木(秀)政府委員 非常にデリケートな問題でございますが、私ども考えではアジア開発銀行というのは一つ経済協力機関でございますし、こういったものに政治の問題を持ち込むということはいかがかということに感ずるわけでございます。現在これはエカフェによって推進されたということもございまして、したがいまして、エカフェの大体加盟国であるということが常識的に普通の議論として、一般に各代表からそういった議論が多かったわけでございまして、日本もその点については賛成をしたわけでございます。
  17. 藤田高敏

    藤田(高)委員 このアジア開銀が今日に至りました経過については私自身も理解をいたしておるわけでありますが、国連舞台で、いわゆるエカフェ中心にして今日に至ったということは理解するわけなんですけれども、いま私が質問をしておるのは、そういう経過は事実問題としてあったにしても、いま私が指摘をした主たる社会主義国家と目されるこれらの国がこのアジア開銀にはいれないのか、それともいまここに加盟をしようとしておる国々によって、主としてこれはエカフェの九カ国が中心であったと思いますけれども、そういった準備委員会に参画をした国の申し合わせとして、入らさないようにしておるのかどうか。はいれないのか、加盟しようとすれば加盟することができるのかどうか、いわゆる中国なり北鮮なりあるいは北ベトナムという社会主義国家加盟する意思があって、その手続をとろうとしても入らさないのかどうか、その点をひとつ明確にしてもらいたい。入らさないというのであれば、加盟ささないというのであれば、いかなる理由によって加盟をささないのか、この点をひとつ明らかにしてもらいたい。
  18. 鈴木秀雄

    鈴木(秀)政府委員 先ほど申し上げましたように、現在の協定上は国連または専門機関加盟国であるということになっております。したがいまして、中共北鮮国連あるいはいずれかの国際専門機関加盟国になった暁にはもちろんはいれるわけでございますが、現時点で申せばはいれないということでございます。  それから、なぜこういうことになったかと申しますのは、先ほど申し上げましたように、私どもこういう金融機関をつくりますときに非常に高度の政治的な問題をそこに持ち込むということは、設立をかえってむずかしくする、その問題はいずれ国連の場で議論されるべき問題だ、したがってこういった金融機関にそういうむずかしい政治的な問題を入れないほうがすみやかにアジア開発銀行というのができる、こういう考えからこういったものに賛成したわけでございます。
  19. 藤田高敏

    藤田(高)委員 次にお尋ねします。  アジア開銀設立に至るまでの経過なり今日段階のそういう性格は、一つの流れとして一応理解することはできるわけですけれども、それでは、このアジア開銀国連の正式な機関として見るべきものか、それとも正式な下部機関といいますか、国連組織機能上の機関として見るべきものか、その点についての見解を聞かしてもらいたい。
  20. 大和田渉

    大和田説明員 御存じのとおり、この銀行ができるまでの経緯といたしましては、国連下部機関であるエカフェ中心になりまして準備委員会その他の作業を続けてまいったわけでございます。ただ、これが独立、つまり効力を発生しまして発足いたしますと、これは独立法人格国連と直接の関係はないというふうに言えると思います。ただ、協定の中にもございますとおり、国連あるいはその下部機関と大いに協力するということはうたってございます。具体的にはエカフェ事務局長国連事務総長との書簡の交換によりまして、お互いに協力しようということはすでに確認されております。そういうことでございます。
  21. 藤田高敏

    藤田(高)委員 非常にはっきりしたと思うのですが、お互いに協力し合う、いわゆる正式に設立発足をみた暁には、国連とこの開銀とは協力し合っていこうという関係にあっても、正式な国連機関ではない、こういうことになれば、変なたとえでありますけれども結婚ではないが、だれが仲人をしようと、正式に結婚が成立したら、あとはその夫婦が独自の人間生活をやっていくように、だれが正式な結婚が成立するまでにお世話役をやったにしても、結果として、このアジア開銀というものが国連正式機関でなければ、この設立協定前文にうたっておりますように、アジア及び極東の資源の最も効果的な利用を達成して、アジアのいわゆる経済開発を促進するためには、客観的に見て、中国なりあるいは北鮮なり北ベトナムというようなものをこのアジア開銀加盟をさしていく、そういうアジア一体という形の銀行設立することのほうが、よりアジア及び極東経済開発の本旨に沿うのではないかと思うわけですが、その点についての見解はどうでしょうか。
  22. 鈴木秀雄

    鈴木(秀)政府委員 実態的にそういった御議論もあろうかと思いますが、私ども判断といたしましては、先ほど繰り返し申し上げましたように、国連という高度の政治機関でもって解決されるべきものを、こういった銀行という一種の金融的な機関で解決するということは、実際問題としては非常に不可能である、実際的なアプローチとして考えますときには、やはり現状の国連のすべての現実をわきまえまして発足するということが、こういったアジアの諸国のいろいろな早期の要望に一番沿えるのではないか、もしその問題を解決しようとしますれば、非常な困難に立ち至って、結局この銀行というのはできなくなるというような判断を持っておったわけであります。したがいまして、日本立場もそうでございましたが、よその国、たとえば中立国等カンボジアあたりでもそういった問題について別に異議はなかった、こういうふうに考えております。
  23. 藤田高敏

    藤田(高)委員 社会主義国家加盟国とすることについては、非常に高度な政治問題がこのアジア開銀運営の中に入ってくる、したがって、政治問題を排除していくためには、いまここに提案をされておるような、域内加盟国をもってこのアジア開銀発足さしていこう、こういう見解のようですね。しかし、これは私は非常に一方的な考え方だと思うのです。むしろ、政治的という判断ないしはそういう見解をとるとするのであれば、こういう形の加盟国だけでアジア開銀設立するというその意図自体こそが非常に政治的なものではないか。結果的にはどうでしょうか。先ほどから言っておりますように、形の上ででき上ったものは、いわゆるアジア開銀加盟する国家名前をずっと見てみますと、いわゆる反共国家群といいますか、反社会主義国家群といいますか、そういうものだけによってこのアジア開銀設立さしていこう、したがって、政治的云々という見解大蔵省なり外務省がおとりになるという立場からいくなれば、こういうアジアを反共産国家群社会主義国家群というように二分するような政策こそ、それ自体が非常に政治的ではないか、こういうふうに私は思うのです。そのことについて御見解をただしたいと同時に、あくまでもアジアというものは一体でなければいけない、そういう観点からいくなれば、日本が七百二十億円もの財政投資をして、そうしてアジアを二分するような、そういう経済開発なり開発銀行手だてをする、しかも、その日本とアメリカ、わけても域内加盟国としては、日本がそのイニシアチブをとった形でアジアを二分するような政策をとることは、現在及び将来にわたる日本外交立場から見ても、アジア経済開発という観点から考えても、これは日本のとるべき政策ではないと私は思うわけですが、その点についての見解をひとつ聞かしてもらいたい。この点は、先ほどの質問との関連がありますので、事務当局から見解をいただくと同時に、政治的な問題になってきておりますので、あとから大臣見解もぜひ承りたいと思います。
  24. 鈴木秀雄

    鈴木(秀)政府委員 繰り返し申し上げましたことを特につけ加えることはないわけでございますが、私ども判断は、もちろんそういったお考えもあるかと思いますけれども現実アジア発展途上にある国というものが早急にこういったものをつくってくれということがエカフェの総会できまりまして、したがって、そういった歴史的な背景をも考えまして、その問題は、先生のおっしゃるような解決方法もあろうかとは思いますけどれも、そういったことを議論している場合にはこういったものが非常におくれてしまう、そういうことは、いま現実社会開発の資本を要求しておりますこれらの低開発国のためにもならない、こういう判断をしてこういったものに賛成をしたわけでございます。
  25. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいま局長からお答え申し上げたとおり、この話は、そもそも国連から出てきているわけです。エカフェはもとより国連機構でございまするし、また、エカフェ機構の一環として今度の銀行というものができるわけであります。そういうようなことで、中共国連に入っていない現実から見ますると、中共がこの機構に参加するということは困難であろうことは御了解がいくのじゃないか、そういうふうに思います。中共アジアのこういう種類の機構にどういうふうに位置づけていくか、これはいろいろ御意見もありましょうが、現実は、そういう議論とは違いまして国連に入っていない、こういう点で非常に困難な問題である、かように考えているわけであります。
  26. 藤田高敏

    藤田(高)委員 くどいようでありますけれども大臣がお見えになる前に私は質問したわけですが、なるほど、開銀設立発足に至ろうとしているまでの経過は私もあらかた承知をしているわけであります。しかし、いま発足しようとしている開銀は、国連舞台による手だてによっていまの段階を迎えているわけですけれども発足した後においては、国連との関係においては、先ほどの答弁にもありましたように、お互いに協力し合っていこうという関係を持続するにしても、正式な国連下部機関ではない、正式な機関でないということであれば、アジアはあくまでも一体のものであるという観点から、特にアジア開銀目的なり運営にあたっては、政治的なものは極力排除していくという観点から、このアジア開銀というものを設立し、発展をさしていくという立場をとる限り、私は、社会主義国家群といわれる中共なり北ベトナムなりあるいは北朝鮮というものを加盟さすことのほうがよりアジア及び極東経済開発にとってはプラスになるのではないか、こういうふうに思うわけであります。そういう点から、できるまでの経過エカフェ中心にしてやってきたのだ、できた暁にもこれは国連の正式な下部機関として、国連機能を果たす組織として存立をするのだということであれば、私は、これは事実問題として、ある場合には国連加盟国だけでこの開銀設立するということについては、事の良否を抜きにして理解することもできるわけですけれども、正式な国連下部機関でないということであれば、ものには例外ということもありますし、本来的なアジア地域経済開発をやるという観点から考えた場合には、これらの社会主義国家にも呼びかける必要が、少なくとも日本立場としてはあるのではないか、そういう方向をとることが、アジアの諸国民に対して日本の国際的な信用というものが高まる方向ではないかと思うわけですが、それについての見解をもう一度聞かしてもらいたい。
  27. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 そういうお考えもあろうかと思います。しかし、現実はそうはなかなかうまくいかないのは、今度できる銀行国連機構ではないというお話でありますが、これを私は、法律的に国連機構でない、あるという議論は別といたしまして、国連機構群一つである、こういうふうに見ておるわけであります。法律上の主体は別でありましても、これは国連を基底としてできている機構である、その国連中共が参加してない、したがって、そういう性格銀行中共が参加するというのは非常に困難なことではあるまいか、そういうふうに考えておるわけであります。
  28. 藤田高敏

    藤田(高)委員 国連中共加盟しておる、してないということになれば、これはそのこと自体外交問題になりますし、いわゆる重要指定方式の問題にも言及しなければいかぬことになりますが、きょうはそういう面に議論発展さす時間の持ち合わせがないので、それは留保します。しかし、少なくともアジア経済開発をやる、主として低開発国——いま南北問題というものが国際政治舞台においても非常に大きくクローズアップされてきておる。日本がかつてアジアに対する侵略政策をとってきた過去の歴史を振り返ってみても、この種の経済的な機構なり組織というものをつくる場合には、日本が過去の歴史の反省の中から考えても、さらには、今日非常に激動いたしております東南アジアの情勢から判断をしても、私は、との種の経済組織といいますか、金融組織というか、そういうものについては、やはり社会主義国家をも含めたアジアというものを一本にまとめていくという方向日本政府イニシアチブを発揮することが時代の要請ではないかと思うわけです。少なくともそういう努力をした上で、結果としてこうなったというのであれば、まだしも常識論としては理解することができるにしても、全然そういう面の努力をしないのみか、むしろ、こういう開発銀行設立というものを一つの手段として、結果的には反共国家群というものをさらに強化するといいますか、そういう組織をつくって、そしてアジアの中に一つ東西対立というようなものをつくっていくようなことは、これはもう日本政府としてはとるべきでないと思うのです。そういう点について、アジアを一本のものにしていくのだという観点からの努力をされたことがあるのかないのか、その点についてお尋ねをしたいと思います。
  29. 西山昭

    西山政府委員 先ほど大蔵大臣がお話しになったとおりに考えております。私どもは、経済協力を進めますにあたりましては、いろいろの政治環境抜きにしまして、民生の安定ということを重点に考えておりますが、そのやり方につきましても、日本の与えられた外交的な姿勢の中から行なっておるわけでございまして、現実中共その他の国とは現在におきましてはまだそういう段階に至っていない状況でございます。
  30. 藤田高敏

    藤田(高)委員 それでは、そのものずばりでお尋ねしますが、結果としてこういう社会主義国家群を排除した形でアジア開発銀行設立していくということになると、アジアにおいて社会主義国家群と称するものと、このアジア開銀加盟しておる域内反共国家群といいますか、そういう一つのブロックとの間の対立関係というものは、少なくとも私は激化する方向をたどると思うわけですけれども、その点についての見方はどうでしょうか。
  31. 西山昭

    西山政府委員 アジア開発銀行の参加国の中におきましても、経済体制あるいは政治体制がいろいろ異なっておりまして、国によりましては、非常に国家が主導権を握りまして、社会主義的な施策といいますか、そういうことばが当てはまるかどうかわかりませんが、そういう色彩が強い国もありますれば、民間のイニシアチブを尊重してやるという、いろいろの体制の差はございます。私どもは、そういう国内の体制というものはその国の事情であって、外からとやかく言うべきではない、ただし、経済の安定、伸展という面から見ましていろいろの検討は加えるべきであると思っておりまして、考え方といたしまして、御指摘のような社会主義体制とそうでないというような角度から特に考えてない状況でございます。
  32. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私がいま質問しているような角度からの検討はしてないということですが、私は、この種の経済問題を論じる場合に、紙の上で線を引いたように、経済問題と政治問題、経済問題と軍事問題を切り離して結論を導き出すようなことはできないと思う。しかも、今日、東南アジアは、特にベトナム中心としてああいう戦争状態が続いておる。また、インドネシアは御承知のような状態になってきておる。この加盟国であるパキスタンなりあるいはインドにおいてもついこの間まで国家間の紛争状態が続いた。こういう地域においてこの種の国際的な経済組織をつくれば、その結果は、社会主義国家に対してどういう反響なり影響を与えるだろうか、そしてまた、加盟国それ自体のほうにとってはどういう状態になるだろうか、あるいは南ベトナムであれば南ベトナム加盟国になっておるが、そういう加盟国に対しても具体的にどういう援助をしていくことが望ましいのか、それとも融資をしないほうがよろしいのかどうか、そういういろいろな条件を想定してこの種の国際組織をつくるというのが私は常識だと思うのです。ところが、あなたがいま御答弁になったことを聞いておると、そういうことは全然判断のうちには入ってない、検討の対象にはしてないというような、ごくすげない答弁でありますが、私は、まさかそういう薄っぺらなもので今日のこの問題に対して外務省なり大蔵省が取り組んできたものでない、むしろ逆に言えば、もっともっと高度な政治判断というようなものを要素に入れてこの開銀設立問題については対処してきたと思うのですが、いま言われたような御答弁では私は納得がいかない。どうしてその政治的な条件というものをいま言ったような形で切り離すことができるのかどうか。切り離すことができるというのであれば、具体的にこの協定の中にそういう保証ができるような条件というものはどこにあるのか、私は教えてもらいたいと思うのです。
  33. 大和田渉

    大和田説明員 協定の中の点についてのみとりあえず御説明申し上げますと、第三十六条に「政治活動の禁止及び銀行の国際的性格」という条文がございます。その中で「銀行、総裁、副総裁並びに役員及び職員は、いずれの加盟国政治問題にも干渉してはならず、また、いずれかの決定を行なうにあたっては、関係加盟国政治性格によって影響されてはならない。」という規定がございます。この規定によりまして、具体的に銀行は融資を行なうあるいは保証を行なう、いろいろな業務を行ないます際に、そういう政治的なインプリケーションを持ったことは断じてならない、純粋に経済的な問題のみを考慮して融資その他を決定しなければならない、こういう規定になっております。
  34. 藤田高敏

    藤田(高)委員 いよいよ問題の、ある意味においては核心に触れた答弁をされたと思うわけですが、私はそれでは具体的にお尋ねをしたいのです。  これは結果として、現実の問題として国連加盟国だけに限定をした形のアジア開銀というものを設立をしていく、そうして、そういうものによるアジア経済開発をやっていこうということになりますと、今日のアジア及び東南アジアの情勢から見て、特に私は一つの具体的な例を引きますなれば、何といっても、これはベトナム問題だと思うわけですが、ベトナムでああいう侵略戦争が続いておる、こういう場合に南ベトナム加盟国ですね。そうすると、南ベトナムからこの開銀に対して融資をしてもらいたいということでいろいろな計画を出してくるでしょう。その場合に、政治的なものであるか、軍事的なものであるか、あるいは純然たる経済的なものであるかなどということは、私は事実問題としてむずかしいと思うわけですけれども、そういういま皆さんが答弁をされたような経済的な問題と、政治的な問題ないしは軍事的な問題との境界線といいますか、区分をする限界線というものは、それでは何によって区別をするのでしょうか。
  35. 大和田渉

    大和田説明員 協定それ自身には、何が政治であり、何が経済であるという限界線の規定はございません。実際に融資を行ないます際に、事実上は銀行の役職員によってあらゆる検討を加え、それが理事会によって決定されるという形をとることと思いますが、その理事会の決定の際に、その限界について話し合いが行なわれて、これは確かに経済的なプロジェクトであるという認定がなされて初めて融資が行なわれる、こういう経過をたどるものと思われます。
  36. 藤田高敏

    藤田(高)委員 非常に抽象的な答弁で、私自身はこれはどうせ納得はできないと思うわけですが、私は、やはり戦争をしておるような国に対しては、これは道路にしても、港湾にしても、ダムの建設にしても、あるいは電源開発にしても、それが平和目的に利用されるのか軍事的目的に使用されるのかということになると、戦争をしておる国では、これはもう実際問題として、そのダムだったらダム、その道路であれば道路を建設するという主体的な、主観的な意図は、たとえ平和目的に利用してもらいたい、そういうものにこの開銀の金を使ってもらいたいと思っても、結果的には、戦争をしておるのですから軍事目的に利用されますね、ですから、実際問題としてはそういう区分ができないと思う。ですから、いま答弁になられたような、政治的な問題には開銀は介入しないのだ、いわんや、軍事的な問題にも干渉したり介入をしないのだということであれば、この三十六条の規定の中にあるいは融資基準の中に、この開銀の融資といいますか、開銀機能というものは平和目的にのみ限定をして運営をしていくのだというようなことをいま少し明確に入れる必要があると思うのですが、その点についての見解はどうでしょう。これは大臣どうですか。
  37. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 恐縮ですが、いまちょっと聞き漏らしましたので……。
  38. 大和田渉

    大和田説明員 融資の基準というものにつきましては、これは銀行発足後に作成していくわけでございまして、まだ現段階ではできておりません。その際に、どういう点が政治であるか、あるいはどういう点が経済であるかということまできまるかどうか、現段階ではまだ何とも申し上げられませんが、実際にそういうプロジェクトについてはどういう調査をやるとか、あるいは大体の基準としてどういうような金利を考えるとか、返済の条件は、というような大筋をきめるような結果になるのではないかと思います。
  39. 藤田高敏

    藤田(高)委員 大臣、新人議員ですけれども、やはり国を憂うる気持ちは、大臣も八期もつとめた議員も私も一緒ですから、ひとつ、せっかく御出席いただいておる以上は、議員の質問についてはもう少し真剣な態度で御答弁を願いたい。  いまの答弁によりますと、なるほど融資基準というものは設立をされてから後にきめるものだということでありますけれども、私自身一番憂うるのは、せっかくアジア地域にこの種の経済開発目的とする銀行をつくるというのですから、私はやはりアジアの全体的な諸国民に喜ばれるような銀行をつくりたいものだ、また、そのために日本中心的な役割りを果たすのであれば、その銀行性格なり運営方向というものは、どこに焦点を合わせて日本がそのイニシアチブをとるべきかということをまず基本的に考えるべきであろう、そういう観点からいくならば、ごく大ざっぱな言い方でありますが、この開発銀行というものは、いわゆるアジア諸国民の平和目的に利用され、運営される銀行でなければならない、具体的にはそれぞれの国の国民生活の向上と福祉に直結するような融資を行なう、そういう機能を果たす銀行でなければならない。逆に言えば、いやしくもこの開発銀行が軍事目的に利用され運営をされるようなことがあってはならぬ、こういう基準は、この三十六条の「政治活動の禁止及び銀行の国際的性格」というものをことに入れるのであれば、今日のアジアの情勢からいえば、むしろ一般的な政治目的という概念の中にいま少し具体的に、軍事目的に利用されてはならないとか、あるいは逆に言えば、平和目的にのみ限定してこの銀行というものが運営をされるのだという、そういう基本的な基準をこの三十六条であれば三十六条の中に入れるなり、あるいは融資基準というものが発足してから後の課題になるとすれば、日本の主張すべき条件としてそういうものを具体的に主張することが、日本外交のあるべき方向でありますし、また、日本アジアに対する、主としてこの東南アジアに対する日本の対外的な経済政策としては、当然そういう基準を設けるべきだと思うわけですが、そういうお考えがあるかどうか、その点についてのお考えを聞かしてもらいたいと思います。
  40. 鈴木秀雄

    鈴木(秀)政府委員 ただいまの融資基準の具体的な問題については、銀行独立機関でございますから、発足してからという外務省から答弁がございましたが、御承知のように、この協定の第二条あたりを読みましても、まず第二条の二号でございますが、「地域の全部若しくは一部又は一国を対象とする事業計画及び総合計画であって地域全体としての調和のとれた経済成長に最も効果的に寄与するものを優先させ、」といったような経済効果ということをうたっているわけでございます。また三号にもそういった趣旨のことが書いてございますし、また十四条の「業務の原則」を見ましても、これの十一号には「銀行は、銀行が行ない、保証し、又は参加した貸付けの資金が、その貸付けが行なわれた目的のためにのみ使用されること並びに使用にあたり経済性及び有効性の問題に妥当な注意が払われることを確保するため必要な措置を執るものとする。」また、一国に、たとえば南ベトナムだけに貸すのではないかという御懸念かもしれませんが、その点は十二号に「銀行は、銀行の財源の一部がいずれかの加盟国の利益のために均衡を失するほどに使用されることを回避することが望ましいことについて、妥当な考慮を払わなければならない。」それから第十四号には「銀行は、健全な銀行経営の原則をその業務の指針としなければならない。」こういったように、具体的にはやはり経済効果ということを考えておりますから、軍事目的といいますか、そういう経済効果、経済成長と関係のないものに使われるということは、私はあり得ないと思いますし、また、銀行現実運営もそういったことになるのではないかというふうに期待をしております。
  41. 藤田高敏

    藤田(高)委員 答弁のありましたように、発足後の運営方向なりあるいはアジア開銀それ自体の任務については、この協定の二条にも明記されておるように、できるだけ、地域の一部または一国に融資する場合といえども、その経済的な効果というものは地域全体に、いわば広域的な経済的な効果あるいは多角的経済効果といいますか、そういうような経済効果を発揮する方向に使うのだということがここでうたわれておる。それ自体私は当然だと思うのですよ。しかし、私がいまここであえて問題にしているのは、これができたから、この十億ドルの金がもう大半以上が南ベトナムにつぎ込まれるだろう、私はそんな一方的な判断は決してしておりません。また、そんなことはできるものでもないと思うのです。また、アジア経済開発にしても、このアジ銀だけでどうこうするという性質のものでないので、いわゆる一種の、かつて日本開発銀行をつくったときのように、一つの補完的な役割りを果たすものだという理解に私は立っておりますから、だからそういうオーバーなことは考えてないわけですけれども、少なくとも、アジア開発銀行の基本的な性格としては、なるほどいまここにうたっておるような地域全体の調和のとれた経済成長に最も効果的に寄与するような運営をする、このことは当然そうあるべきだと思うのだけれども、しかし、今日の置かれておる東南アジアの情勢から見て、このアジア開発銀行というものの実際的な運営の中には、軍事目的に利用されるような資金融資、資金運営というものが事実問題として起こってくるのではないか。これは私は起こってくると思うのですよ。そのファクターがどの程度のものであるかは、これは私のようなしろうとには想定はつきません。しかし、事実問題としては起こってくるだろう、少なくとも起こってくる危険性というものは非常に大きい、そういう前提に私は立つわけであります。そういうものに少なくともアジア開発銀行というものは融資をすべきでない。そういう軍事目的にはこのアジア開発銀行というものは利用をされたり、融資値札たりすることはできないんだという歯どめの条件をこの協定の中に具体的に明記すべきではないか。また、これから正式に発足をして、融資基準というものがきめられるというのであれば、そういう歯どめ条件というものは融資基準の中にも入れていく、たとえば、非常に素朴な言い方でありますけれども、端的に言うば、ベトナムのように戦争をしておる国には融資をしない、そして、先般のインドパキスタンのような紛争が起こったような場合は、融資した段階ではそういう戦争状態は起こってなかったけれども、その後戦争が起こったという場合には、一カ月といいますか、二カ月の間に、アジ銀から融資をしておる資金は返済をしなければならない、こういうような条件を入れることによって、このアジア開発銀行というものに少なくとも平和銀行的な性格を持たすべきではないか、日本が特にこのアジア開銀に参加をする以上は、そういうものが保障をされない限り、われわれ日本はこのアジア開銀には参加ができない、いわゆる日本国民の血税を二億ドルも分割払いにせよ出していくわけですから、いささかたりともアジアの緊張を激化したり、戦争協力になるような条件というものは、この開発銀行の条件の中から全部削除していくべきではないかと思うわけですが、そのことについての見解を聞かしてもらいたいと思うわけです。
  42. 鈴木秀雄

    鈴木(秀)政府委員 先ほど申し上げましたように、銀行というものが貸しますときには、その個個のプロジェクトについての償還能力その他を考えて貸すわけでございます。したがいまして、軍事目的というようなことにつきましては、逆の解釈として当然そういう償還能力がないわけでございますから貸すわけはないと私は信じております。したがいまして、それを表面からそういうふうに書くか、銀行は健全な銀行経営の原則を堅持しなければならないというような言い方をするかという問題でありまして、御趣旨のような点は私は入っているのではないか、ただ、軍事目的とか政治目的とかいうデフィニションになりますと、これは非常に困難な問題でございますが、これを広く見れば、すべての経済成長というのは軍事目的だという議論にもなろうかと思いますが、私どもはそうは解しておりませんので、やはり現実におきまして貸し出しを行ないます際に、銀行の貸し付けが必ず投資した効果によって返済される、そういったプロジェクトの自己償還性というものに中心を置いて銀行としてはやっていくべきだ、それはすでに現在の協定の、先ほど申し上げましたような、たとえば業務の原則というようなところに繰り返し述べているわけでございます。
  43. 藤田高敏

    藤田(高)委員 先ほどから私がしつこく質問をしておりますのは、いま出されておる協定の内容なり、あるいは答弁をされた過程から理解ができないので、このアジア開銀というのが戦争目的に利用されたり、あるいは政治目的に融資をしたりしないんだということであれば、そういう大蔵省なり外務省のものの考え方というものをさらにより徹底さす形の条件というものをこの協定の中に、あるいはこれから作業に入るであろう融資基準の中に入れるべきではないかということを主張しておるわけです。私は、これはたしか堀先生が本会議質問で触れられたような気もするわけでありますが、日本は今日、なるほど東南アジアとの対比において、その工業水準なり鉱工業の発展の状態からいえば、確かに私は先進国としての条件を備えておると思うのです。しかし、国民所得という観点から見れば、アメリカのいまだ五分の一、世界で二十一位でしたか、まだそういうような地位にあるのだ、また、池田内閣以来の高度経済成長政策ではありませんけれども、大企業と中小企業の格差、あるいは第一次産業の非常な立ちおくれというような問題があるわけですから、この七百二十億円からの日本財政投資をする限りにおいては、その日本国民の血税というものは、いささかたりともアジアの国民、アジアの人民に対して銃を向ける、あるいは同じアジア人同士が銃を向け合うようなものに使わるべきでない、そんな金は、私は一銭一厘たりとも融資すべきでないと思うのです。そんな金があるんだったら、いわゆる日本の国内の立ちおくれておる産業なり、そういう国民の生活水準を上げるための金に日本自身が使うべきだと思うのですよ。しかし、なけなしの金ではあるけれどもアジア全体の諸国民が平和的な経済建設をやって、そうして人間的な、文化的な生活水準というものを確保していくという目的にそれが使われるのであれば——日本もひとつえらいけれども、七百億円なりあるいは七百五十億円の金で相当負担になっても、そういう金を出して、アジアの諸国が手を携えてやっていこうじゃないかというのであれば、私はわかると思う。しかし、結果的に、アジアの今日の情勢から見て、軍事目的にこの金が使用されてはならぬ。使用しないという厳格な保証条件というものはないのですよ。この協定の中を見ても、これは三十六条にごく抽象的に政治目的に云々ということはあるけれども、そういう戦争目的なり、軍事目的に使用してはならぬという保証条件、歯どめはどこにもない。そうすると、現実の問題として、先ほどから答弁される側は、いわゆる事実問題としてこのアジア開銀はこういう形で発足をしてきた、だから社会主義国家なんかは入れることができなかったんだという現実論を主張されてきたわけですが、そういう現実論を主張される立場からいっても、南ベトナム加盟国でしょう、そうすると、南ベトナムアジア開銀に対して融資の申し込みをやってくる、その場合に、戦争目的であるか戦争目的でないかという線の引き方はむずかしいじゃないですか。ですから、そういう点については、戦争しておる国に対しては、このアジア開銀は事のいかんを問わず融資をしない、そしてもう融資をしておるものは、戦争状態が発生した国から引き揚げる、こういうような性格のものにすれば、私は、結論として、このアジア開銀にソ連がいまだ足踏み状態であるとか、あるいはフランスが加盟をしないという立場をとっておるようでありますけれども、そういう問題も解決するでありましょうし、そうして、いわゆる社会主義国家自体もこういう機構に入ってくることのできる窓口を開くことにもなるのではないか、そういう方向イニシアチブを絶対日本政府はとるべきだと思うのですよ。その点についての見解を、これはやはり政治的な問題ですから、大蔵大臣なり、あるいは、いまお見えになったようでありますが、ひとつ外務大臣あたり見解も聞かしてもらいたいと思うのです。
  44. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 この銀行が平和目的に奉仕しなければならぬ、私はもう当然だと思うのです。そういう精神でこの協定はできておるわけであります。条文からいいましても、三十六条の「政治活動の禁止」というものがはっきりとそれを書いておるわけであります。経済上の考慮のみに基づいてその運営が行なわれなければならない、また、いずれの加盟国政治問題にも干渉してはならない、もう非常に明確にいたしておるわけです。藤田さんたいへん御心配のようですが、これが戦争目的に利用されるというようなことはあり得ない、またわが国としても、そういうことにつきましては厳重に考え方を堅持していくべきである、かように私は考えております。
  45. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私がこのことを特にしつこく質問しますのは、昨日も先輩平岡議員が質問をしましたように、きょうの新聞にも大臣答弁として載っておりますが、本店はああいう大きな日本政府のミステークによって失敗をした、しかし、事実問題として、まあこれは絶対という保証はないわけですけれども日本渡辺代表が総裁になるだろう、こういうことを前提にしていまここで論議をする限りにおいては、やはり総務会や理事会でその銀行運営なり融資の方向がきまるにしても、それを代表する者はだれかといえば、日本から出ておる総裁がこれを代表すると思うのです。そういうことであればあるほど、このアジア開銀には域内域外を含めて三十何カ国が入っておるから、結果として起こるのは、加盟国全体の連帯責任であるというようなことではなくて、やはりそのイニシアチブをとるべき国にその責任というものはより大きくかかってくるべきものであろうということを前提にすればするほど、この開発銀行運営については、ぜひ私が主張をしておるような、シビアーな上にもシビアーな条件を入れていく必要があると私は思う。いまの大蔵大臣答弁では、そういう心配はありませんと言うけれども、私は絶対あると思う。なぜなれば、早い話が、このブロック的な開発銀行に似通ったいわゆる米州開発銀行の融資の条件を見てもそうじゃないですか。この開発銀行性格なり条件というのは、アフリカにおける開発銀行なり米州開発銀行と大体内容は大綱的には一緒なんですよ。システムも一緒なんですよ。ところが、その銀行がどういうことをしてきたかというと、たとえば例のキューバ事件に関連して、ベネズエラあるいはコロンビアがキューバと断交したとたんに、この米州開発銀行が多額の投資を与えておりますね。これはもう事実として出てきた。また、メキシコやアルゼンチンが米州の外相会議でキューバに対する集団的な制裁に反対をしたとたんに、実にきわめて冷淡に取り扱われてきた。ところがどうでしょうか。反対をしたとたんには非常に冷淡に、冷酷に扱ってきたけれども、アルゼンチンがその後キューバとの国交断絶に踏み切ったら、その翌日に一億五千万ドルの融資をしておるじゃないですか。これはこのアジア開銀協定の中に盛られておるような、いま私が一番問題にしておる「政治活動の禁止及び銀行の国際的性格」で銀行運営方針なり性格というものが大体似たり寄ったりの銀行においてすでにそういう先例があるのですよ。ですから私は、大蔵大臣がないと言うのであれば、軍事目的にこの銀行は融資をしない、そういう運用をしないという保証条件——この銀行設立する協定に参画したわれわれ国会議員自身が納得のできるような保証条件をさらに入れることが大切じゃないですか。大臣がそこまで絶対心配ありませんと言うのであれば、私は心配あると言うのだから、それでは心配がないような条件を入れましょう、あるいは、これから設立した後において融資基準をきめる場合に、ひとつ社会党のいま藤田君が言っておるそういう条件を積極的に入れましょう、こういう答弁があってしかるべきだと私は思うのですが、大蔵大臣どうでしょうか。
  46. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 この銀行ができる過程でもおそらくそういう議論があったのだと思いますから、三十六条に「政治活動の禁止及び銀行の国際的性格」と、特に一条を設けましてさような点について非常に明確な方針を示しておるわけであります。この協定を基軸としてこの銀行運営が行なわれるわけでありまして、もとよりわが日本から総裁が出るということがありましても、その総裁は日本の利益を代表する、こういうことじゃありません。すでに国際的性格を持つわけでありますが、しかしわが日本から出るというのでありますから、私どももこの三十六条の趣旨が貫かれるようにできる限りの配意はしてみたい、かように考えます。
  47. 藤田高敏

    藤田(高)委員 外務大臣の出席時間との関係もありますので、私の質問を一たん留保しまして、小林委員が主として外務大臣質問される内容を持たれておるようでありますから、ここで一時交代をしたいと思います。
  48. 金子一平

    金子(一)委員長代理 小林進君。
  49. 小林進

    ○小林委員 私は、このアジア開発銀行設立する協定の締結について承認を求めるの件という議案につきまして実は勉強をしてみたのでありますが、この膨大な協定の内容を見れば見るほど、実に問題の重要性に、新緑の候はだなお寒さを感ずるような驚きを感じておる次第でございます。  現在アジアの中にありまする問題の重点は、いろいろございましょうけれども、要約すれば私は二つあると思う。一つは、アジアの貧困の問題であります。しかし、その貧困の問題よりもさらに重要であると解せらるる問題は、長い間帝国主義の侵略を受けて植民地の悲哀の中に泣いておりましたこのアジアの国々が、いま独立を目ざして、一民族一国家をつくるための苦悶を続けておる。このアジアの民族の独立だ。この悲願を先進国や独立国家がいかにしてこれを助成をし、いかにこれに協力をして、そしてその民族それぞれところを得た真の平和をつくり上げてやるかということは、私は貧困追放の問題よりさらに重要な問題だと思っている。こういう二つの観点から、このアジアの現状におけるこの重大な二つの問題を鏡にしてこの法案を見る場合に、私はこの中に隠されているおそるべき政治的陰謀を感知せざるを得ないのであります。  そこで、私はまず外務大臣にお伺いをいたすのでありますが、このアジア開発銀行設立目的はここにありますけれどもアジア開発銀行設立する協定の第一章に「目的、任務及び加盟国の地位」というふうなものがありますが、こういうようなことではなしに、真に含まれているその目的一体那辺にあるのかということを、椎名君の口を通じてお聞かせ願いたいのであります。
  50. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 あなたは植民地からの脱却の苦悶、すなわちそれは独立の完成である、こういうことをお述べになりましたが、独立の完成というのは、結局、ことばをかえて言うと、政治的には独立したけれども経済的にはまだ独立しておらぬということなんです。でありますから、政治独立はしたが、ほんとうの独立は完成されておらない、それはなぜであるか、すなわち、経済的な建設、経済的な独立、そういうものが完成されておらぬということにあるのでありまして、そういうことを助成するためにアジア開銀というものがここに生まれてきたのである、こういうふうに私は見ております。
  51. 小林進

    ○小林委員 独立問題は、単に経済だけではございません。独立というのは、その国が政治的に——まず政治的にです。それから軍事的に、それからあなたの言われる経済的に、この三つがそれぞれ、あるいは大きな国の支配や干渉を受けないで、みずから自主的にその国を運営する形ができ上がったのが独立国家である。決して経済だけではございません。ただし、経済、軍事、政治の中のその一つの経済部門を独立せしめるためにこの開発銀行目的があるとあなたの説明を好意的に解釈をするとしても、一体この協定が、それぞれ貧困に悩み、それぞれ独立を目ざしているアジア全般の国々にひとしく恩典を与えるようなそういう趣旨になっているのかどうか、いかがですか。
  52. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 アジアエカフェのメンバーである国が参加することが許される、そういうことでございまして、まずエカフェのメンバーである国に対しては何ら甲乙をつけない、その内容によって融資をし、これを助成する、こういう仕組みになっております。
  53. 小林進

    ○小林委員 どうも、あなたのそのことばはふろの中でへをひっているような話で、半分聞き取れない。それから同時に、いつでも説明が半分だ。(「いい答弁だ」と呼ぶ者あり)いい答弁じゃない、間違っておる。そんな答弁がありますか。この協定の第三条に何とありますか。エカフェと書いてありますか。第三条「加盟国の地位」の中にエカフェ加盟国だけに甲乙をつけない、こう書いてありますか。そういう不明瞭な、そういうごまかしの答弁をしてはいけませんよ。ごまかしじゃない、勉強が足りない。一国の外務を預かる外務大臣として、何という不備なる、不完全なる答弁をしているか。いいですか。第三条、加盟国の地位の中には、銀行加盟国の地位は、一つはあなたの言われる国際連合アジア極東経済委員会加盟国だ。あなたはそれだけしか言われない。「及び準加盟国」というのが次にある。それから「並びに」とあって、第二番としては「その他の域内国及び域外先進国国際連合又はそのいずれかの専門機関加盟国であるものに対して開放される。」何ですか、あなた、こういう加盟国の地位や条件ぐらいでも正確に答弁できないのですか。委員長、笑っているんじゃない。注意しなさい、こういう不完全な答弁を。
  54. 大和田渉

    大和田説明員 外務大臣答弁を補足させていただきます。  大臣の言われるエカフェ加盟国云々という意味は、エカフェ地域というふうな観念でおっしゃったのだと思います。(小林委員地域だけですか」と呼ぶ)この開発銀行目的という点が第一条にうたわれておりますが、その第一条には「アジア及び極東地域」つまりエカフェ地域でございますが、この「地域における経済成長及び経済協力を助長し、並びに」云々という規定がございます。先ほど先生の御質問で、アジア全体をカバーする経済開発をやるのか云々という趣旨のあれがあったと思いますが、その点につきましては、この第一条の目的の点からいいまして、アジア及び極東地域全体の経済成長及び経済協力というのが目的になっております。  それから、大臣の言われました第三条の点は、加盟国にはどういう国があるかということが規定されているのでございまして、その加盟国になり得るあれといたしましては、エカフェ加盟国及び準加盟国並びにその他の域内国及び域外国で国連またはその専門機関加盟国、こういうふうに規定されております。
  55. 小林進

    ○小林委員 大和田渉何がしの者が答弁しているが、これは一体政府委員かね。私はこういう者の答弁を求めてはいない。いやしくも本委員会は政府委員をもって答弁をするのを本義とする。これは一体何者ですか。
  56. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 外務省から派遣されておる説明員でございまして、私の答弁を補足する任務を持っております。
  57. 小林進

    ○小林委員 それならば大臣、ちゃんと断わりなさい。これは私は満足な説明はできませんから、説明員をして答弁させますと断わりなさい。のこのこえたいの知れない者が出てきてしゃべっているのでは国会の権威を失する。  そこで、ひとつ大臣お尋ねしますけれども、しからば一体、「加盟国の地位は、国際連合アジア極東委員会」とあるが、このいわゆるエカフェ加盟している国はどことどこか、その国の名前をここでお聞かせいただきたい。
  58. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 大和田事官をして説明いたさせます。
  59. 大和田渉

    大和田説明員 アフガニスタンオーストラリアビルマカンボジアセイロン中国インドイラン日本韓国ラオスマレーシア、モンゴル、ネパールニュージーランドパキスタンフィリピンタイ、シンガポール、ベトナム西サモア、以上がエカフェ地域内の加盟国でございます。地域外の加盟国としては、フランス、オランダ、ソ連、連合王国、米国、この五カ国がございます。なおこのほかに、香港、ブルネイの二つございます。
  60. 小林進

    ○小林委員 その他の地域内で「国際連合又はそのいずれかの専門機関加盟国であるもの」となっておりまするが、それらの国はどこでありますか。
  61. 大和田渉

    大和田説明員 その他の域内国と申しますのは、具体的にはインドネシアでございます。それから「域外先進国国際連合又はそのいずれかの専門機関加盟国であるもの」というのは非常にたくさんあるわけでございます。
  62. 小林進

    ○小林委員 それでは、域外先進国の問題についてはあとでまたお尋ねいたすことにいたしまして、第三条のいわゆる地位、条件を備えていない、該当しない国は一体どことどことどこですか。
  63. 大和田渉

    大和田説明員 該当していないと申しますと、それを国と言うかどうかは一つの問題だと思いますが、事実上のあれといたしましては、中共とか北鮮とか北ベトナムとかいうものが入ってくると思います。ただ、これを国と観念するかどうかというのは別の問題でございますが、いずれにしても、エカフェ地域内に含まれているということは言えると思います。
  64. 小林進

    ○小林委員 そういう解釈論争は別として、これを正確に言ってください。中共とか北鮮とか北ベトナムとか言わないで、そのほかまだあるかないか、正確に言ってください。
  65. 大和田渉

    大和田説明員 中共北鮮北ベトナム、先ほど申しましたインドネシアを除きまして、それ以外にはエカフェ地域内であって、国として認められず、かつメンバーになっている国というのはございません。
  66. 小林進

    ○小林委員 この問題は、正確にはまた調査をして、もしあなたの答弁に間違いがあれば、そのときひとつ反論することにいたしますが、いまの御答弁でもわかっているように、このアジアのいわゆるエカフェ地域内というのは、あなた方の説明によれば一体何と言っているか。実に人を嘲弄するような、こういう説明をしている。アジア開発銀行は、東は日本から西はイランまで、北はモンゴルから南はニュージーランドに至るアジア及び極東地域経済開発経済協力を一そう促進するために云々と言っている。しかし、いま話してみると、何だ、そういうような地域の中に中共が入っていないじゃないか。七億の人口を擁する中共が入っていないじゃないか。一千二百万人を擁する北鮮が入っていないじゃないか。君は北ベトナムと言ったが、ベトナム一つです。たまたまベトナムという国の中にいわゆる一つの十七度線という戦争の線を引いて、ベトナム民族は一国家の中で南北に分かれておる。大国の支配のもとに争っているにすぎないので、ベトナム一つです。しかし、その中で北ベトナムがのけられている。これだけの大きなものをこの地域の中から除いておいて、こんな銀行によって何で一体アジアの平和が求められるか、何で一体アジアの全人民から貧困の追放ができるのだ。言いかえれば、やはりこういう中共北鮮北ベトナムの、異民族からの独立を目ざして戦っている人民を敵に回して、そうしてアメリカの支配下にある自分たちの都合のいい国を集めて金を出して、これでアジアの貧困を追放しようなどというこんなものが、一体アジアの平和の経済的援助になるのですか、アジアの平和の援助になるのですか。アジアに分裂を持ち込むだけじゃないか。アジア全般の統一を分裂させる協定以外の何ものでもないじゃないですか。問題はとれなんです。アメリカがいるところ、みんなこういうおそるべき陰謀が含まれている。これは国といわれるかいえないかわからぬけれどもと言う。私はこういうところから問題を掘り下げていかなければ、重大な法案の審議にはならないと言うのだけれども、外務大臣は時間になりましたので退席してよろしいでしょうかというお伺いの紙が私のところに来たのです。あなたは急場に追い込まれると、自民党や委員長があなたにこういう使いを出してくれるものだから、あなたは急場をのがれていかれる。しかたない。きょうのところは、理事同士の約束だそうでありますから、お引きとめいたしませんけれども、しかし、質問はやはり順序を追うていかなければならないので、こうやって逃げられると、どうも質問の順序が狂って困るのですよ。  大蔵大臣にそれではお伺いいたしまするけれども、外務大臣、経済企画庁長官、あるいは建設大臣、厚生大臣等、一緒に並べていかないと問題の中心をつくことになりませんので、そのときにあらためて基本的な問題はお伺いをすることにいたしまして、それに至るつなぎ質問として、ごく小さなところを大蔵大臣にお伺いをいたしておきまするが、ひとつ日本の二億ドルの払い込みの方法についてお聞かせを願いたいと思います。
  67. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 国際金融局長からお答え申し上げます。
  68. 鈴木秀雄

    鈴木(秀)政府委員 日本の払い込みにつきましては、協定にございますように、五回の分割で払うことになっております。したがいまして、二億ドルというものにつきまして五回分割でございますが、そのうち一億ドルというものは、将来銀行の債務履行のために必要が生じた場合に請求を受けて初めて払い込む、いわゆる請求払い資本でございまして、これは現実に払い込む必要がないわけでございます。ただ、こういった銀行がたとえば外債を出した、ところが貸し付けた国が返さないというようなことがあった場合に、外債を返さなければならないといった場合に、いわゆる請求払い、英語でコーラブルといっておりますが、あとの一億ドルにつきまして五回分割でございまして、第一回の払い込みは、原則として協定発効後三十日以内ということになっております。それから第二回以降は協定発効後一年以降順次一年目ごとに払うことになっております。その一億ドルの五分の一の二千万ドルでございますが、そのうちの千万ドル相当の円貨、これは現金で払い込む、それからそれ以外のものは、法案に御提出いたしましたように、無利子、無期限の国債ということで払い込む、こういうことになっております。
  69. 小林進

    ○小林委員 そこでお伺いいたします。日本の払い込み金の中で、なぜ一体国債をもって一部を充当されたかというその問題なんです。何で一体そんな必要があるのだというのです。これを私はお尋ねをいたしたい。
  70. 鈴木秀雄

    鈴木(秀)政府委員 銀行の経営といたしまして健全経営をたてまえとしております以上、資金の目当てがなくしてはいわゆる貸し付け承諾というのはできないわけでございます。しかしながら、たとえば某国の電力開発に幾らかの金を貸す約束をするというときに、直ちにその金が要るわけではございません。貸し付けが実行されてから購買が行なわれて、そうして建設が進む、したがいましてそれに応じて現金が要るわけですから、現金としてはすぐは要らない。しかし、必ずそれは、銀行が資金化する必要があったらば、請求したら直ちに現金にかえる、こういう意味で、むしろ国内の財政上の事情からいっても、向こうが要らない金を現実に払い込む必要がないということで国債という形をとっているわけで、これは各国ともそういったことになっているわけでございます。
  71. 小林進

    ○小林委員 わが国の国債発行の予定していられる総額はお幾らですか。
  72. 鈴木秀雄

    鈴木(秀)政府委員 二億ドルのうち、先ほど申し上げましたように、一億ドルはいわゆる請求払い資本でございます。あとの一億ドルの半額の五千万ドルに相当する円貨が国債になるわけでございます。
  73. 小林進

    ○小林委員 これは、そういう現金を積んで遊ばしておく必要がないから国債を発行しようというので、日本で事実上ドルが行き詰まっているから、国内においても国債、国際的な負担金においても国債、何でも国債で処置しようという、そういう安易な考え方でないのでございますか。
  74. 鈴木秀雄

    鈴木(秀)政府委員 現金を向こうが直ちに必要としないから国債にしておるわけでございまして、これは一般の国際機関すべてそういった形をとっております。
  75. 小林進

    ○小林委員 大臣、それで間違いありませんか。
  76. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 間違いはございません。
  77. 小林進

    ○小林委員 それならばお伺いしますけれども、従来でもそういう国際の基金に出資する金なんか、それは規定もありましょうけれども、今度は、国債を発行してもよろしい云々と法案の中にありますけれども、過去にもそういう例はありますか。私の言いたいことは、どうも福田大蔵大臣が出てから何でも安易な道を国債に求めて、内外ともに国債を発行していこうという悪いくせがある、どうもこういうくせがついているのじゃないかということを心配して私は質問しているのです。いかがですか、こういう点は過去の例があるかないか。
  78. 鈴木秀雄

    鈴木(秀)政府委員 過去の例も全部そういうふうになっておりまして、いわゆる世界銀行でございますね、国際復興開発銀行、それから第二世銀と称せられております国際開発協会、それから国際金融公社、すべてそういったような規定がございます。あるいはIMF(国際通貨基金)、これも国債を発行しております。
  79. 小林進

    ○小林委員 この点を私はまだ詳しく研究しておりませんので、あらためて研究して、あなたの答弁に間違いがあるかないか、確証をつかんでからあらためてひとつ出直すことにいたしましょう。しかし、政府の国債発行計画には、国債と聞いただけでもわれわれはどうもりつ然とするものがありますので、念を押してお尋ねをしているわけでございます。これはなお大臣お尋ねしたいことはたくさんありまするが……。  それでは、一体どれだけ外務省大蔵省関係官が勉強をしているか確かめる意味において、アジア開発銀行発足をする経過を承りたい。経過といってもばく然といたしておりますから、私がいまその年代を申し上げる。  一九六〇年の春、六回のエカフェの総会で初めてアジア開発の問題に対する構想が打ち出されて、三人委員会というものが設けられることになった。三人委員会の国籍とメンバーを承りたい。一九六一年に三人委員会が設けられた。その次には、続いて七人委員会というものが設けられて、さらにこの問題を進展していった。この七人委員会の国籍とメンバーを承りたい。アジア局長でもよろしいし、西山経済協力局長でもよろしい。
  80. 滝川正久

    ○滝川政府委員 ただいま先生のおっしゃいました六一年の三人委員会、続いて七人委員会というものは確かにあったようでございます。これはただしアジア開銀そのものを設立するという目的ではなくて、域内の貿易関係のためにやったものでございまして、アジア開銀設立しようということになりました最初は一九六三年十二月の閣僚会議からでございます。
  81. 小林進

    ○小林委員 そんなことを聞いているんじゃない。何を言ってるんだ。私は一九六一年にできた三人委員会の国籍と名前を聞いているんだ。その次に行なわれた七人委員会の国籍と名前を聞いておる。
  82. 滝川正久

    ○滝川政府委員 それは存じません。
  83. 小林進

    ○小林委員 はっきり言えばいいじゃないか。わからぬじゃないか。失敬千万だ。こういう失敬なのがいるから委員会が進展をしないんだ。わからぬならわからぬと言えばいいじゃないか。  それなら、あらためて書面をもって回答するように、委員長ひとつ要望してください。
  84. 金子一平

    金子(一)委員長代理 滝川局長、ただいま小林委員からの要求の資料は後刻連絡をしてください。
  85. 滝川正久

    ○滝川政府委員 承知いたしました。
  86. 小林進

    ○小林委員 外務省国際連合局長星文七氏がいるんでしょう。これは局長ですか。
  87. 金子一平

    金子(一)委員長代理 局長事務代理と申し上げました。
  88. 小林進

    ○小林委員 事務代理なら事務代理とはっきり言ってください、局長なんて言わないで。それでは、事務代理をして本日の問題を提出させてください。  それでは、次に一九六三年、第一回のエカフェ地域経済閣僚会議が行なわれて、そこで初めてアジア開発銀行の構想というものが打ち出された。そのときの閣僚会議の国籍とメンバーを承りたい。なお、わが日本を代表して閣僚会議に出席したものがあれば、その日本の代表の名前も特に明らかにつけ加えてお聞かせを願いたい。——何にも勉強していない。
  89. 滝川正久

    ○滝川政府委員 後刻、取り調べまして名前その他お知らせいたします。
  90. 小林進

    ○小林委員 それでは、同じく一九六三年の十二月第一回アジア地域経済協力閣僚会議ができ上がった。そこでエカフェ事務局長に対して、こういうような開発銀行を設けるべきである、必要であるというふうな要請を発している。そのときの閣僚会議に出席した人の国籍とメンバー、特にわが日本から一体だれが国を代表して出席したか、これをお聞かせ願いたい。
  91. 滝川正久

    ○滝川政府委員 ただいまの資料でございますが、全部お尋ねになりましたものは本省にあると思いますので、ただいま手元にございませんから、取り調べました上で……。
  92. 小林進

    ○小林委員 それでは、一九六四年十月、これは閣僚会議ではなくて、十月には専門家グループができ上がっておる。そしてアジア開発銀行の具体的な構想というものを生み出している。そしてエカフェ事務局長にそれを提出している。専門家グループだから、それには当然外務省関係の事務官や官僚が出たに違いない。そのときのメンバーをお知らせ願いたい。
  93. 鈴木秀雄

    鈴木(秀)政府委員 専門家グループの他国のメンバーについては私ここでわかりませんが、日本からは渡辺武氏が出ました。
  94. 小林進

    ○小林委員 一九六五年の三月ウエリントンにおいて第二十一回エカフェの総会が行なわれて、政府任命の専門委員会というものがそこで初めて設置をせられた。その専門委員会の委員に任命をせられた各国の専門委員の国籍、氏名、並びにわが日本専門委員の氏名をお伺いしたい。
  95. 鈴木秀雄

    鈴木(秀)政府委員 日本からは渡辺大蔵省顧問が代表として専門委員会に出ております。渡辺誠前国際金融局長が代表代理として出ております。それから、全部で九カ国でございまして、インドはクルシナムルティーという人が出ております。イランはファルマン・ファルマイアン、これは国立銀行の副総裁、それからセイロンはグナセケラ、これも国立銀行の副総裁であります。タイはソンマィという国立銀行理事でございます。マレーシアはチョイという国立銀行理事でございます。フィリピンはバルマセダ、当時の商工大臣です。ベトナムはハックというベトナムの大学の法学部長か何か先生でございます。パキスタンはクレシというたしか大蔵省の顧問をしている人でございます。これら九カ国でございます。
  96. 小林進

    ○小林委員 そうすると、いまあなたのお話の中にはインドイランセイロンタイマレーシアフィリピンベトナムパキスタン日本、九カ国ありましたね。これほどの質問をする中でたった一つしか正確な回答ができないということは、日本外務省がいかに勉強していないかという何よりの証拠である。私は、こういうようなことであるならば、一体外務省に何を質問していいか、これは質問のしょうがない。国籍も氏名もわからない。何をやっているのかわからぬ。  それでは、いよいよこの問題が具体化したジョンソンの演説、これはあとでお伺いいたしまするが、一九六五年の四月七日ボルチモアで演説があった。その後六月から八月にかけてこの専門委員会の会議というものが持たれたのでありますけれども、この会議日本から出席した者はだれか、いまのメンバーと変わりがあるのかないのか、伺いたい。
  97. 鈴木秀雄

    鈴木(秀)政府委員 一九六五年十月のバンコク会議は政府代表者会議でございまして、日本からは首席代表として牛場外務審議官でございます。それから私が次席で参りました。
  98. 小林進

    ○小林委員 私ってだれだ。
  99. 鈴木秀雄

    鈴木(秀)政府委員 鈴木国際金融局長でございます。
  100. 小林進

    ○小林委員 私があなたに聞いたのは十月のバンコク会議をお聞きしたのではないのです。六月から八月の二カ月にかけて専門委員会の会議というものが継続して行なわれていた。そこでいよいよ問題が最終的に具体化して、十月のバンコク会議というものが開かれた。その六月から八月の草案をつくり上げる会議にだれが行ったかと聞いているのです。
  101. 鈴木秀雄

    鈴木(秀)政府委員 先ほど申し上げましたのが六月から八月までの専門会議のメンバーでございます。
  102. 小林進

    ○小林委員 それでは、わが党の諸君の要望もありますので、私の質問の中には入っておりませんけれども、ここで参考までにひとつ外務省に聞いてみましょう。  その四月の七日、ボルチモアにおけるジョンソン大統領のアジア開発の構想、それをひとつ微に入り細に入って詳しくお伺いいたしたい。これはアジア歴史に重大なる影響がある問題でありますから詳しくお聞かせいただきたい。
  103. 西山昭

    西山政府委員 昨年の四月にジョンソン大統領がボルチモアの大学で十億ドルのアメリカの東南アジアに対する経済援助の構想を発表いたしました。この内容は、いつからいつまで十億ドルを支出する、それからまた、東南アジアと申しましても、地域はどこどこの地域で、どこの国が入っておるというような詳細な内容はないのでございまして、一般的に東南アジア、そしてその趣旨は、現在ベトナムで戦争が行なわれておるけれども、結局民生の安定、経済の発展が恒久的な平和に資するゆえんであるし、また、そのほうの努力を怠ってはいけないという意味におきまして、アメリカは、関係国がそういう要望を具体的に出して、経済建設のプログラムができるならば十億ドルを応援する用意があるという趣旨のものでございまして、具体的にはメコン委員会がこの問題を取り上げまして、そしていろいろの開発計画というものをメコン委員会の内部で検討したことはございますが、これらの計画は実行性におきましてまだ成熟しておる計画でもない事情にございまして、現状におきましてはナムグムダムの建設に使われた以外には、八千九百万ドルの予算を昨年その一環としてアメリカ政府は予算に計上いたしましたけれども、多国間の計画といたしましては、私どもが了解する限りにおきましてはナムグムダムの建設以外にはまだ使われていないと了解しております。
  104. 小林進

    ○小林委員 あなたの言うことで聞き取れないことがあったから、いま一回聞きます。  一体どこで計画をつくって十億ドルの金を出すというのですか。八千九百万ドルは、どことかのダムに計画ができたけれどもまだ使っていない。そこら辺、いま一回明確に言ってください。
  105. 西山昭

    西山政府委員 アメリカの十億ドルの構想は、先ほど申し上げましたように、関係国、なかんずくリージョナルということばを使っておりますが、関係国が、一国のみならず多数の国が共通して利益を受けるような計画を希望する、そうしまして、そういう計画が関係国の間から盛り上がってくれば、アメリカとしては、そういう関係国のイニシアチブでそういう計画ができてくれば、アメリカとしては応援する用意があるという趣旨のものでございまして、また、そういう重点としましては、多数国関係のプロジェクトに重点を置いておりますけれども、それ以外には、二国間の関係も除外するものではないという趣旨のこともうたわれております。八千九百万ドルの予算の使途につきましては、詳細は不明でございますが、その相当の部分がベトナムにおける医療等、メディカルの関係でございますけれども、そういう民生のほうの費用に使われておるものと了解しております。多数国関係のプロジェクトとしましては、先ほど申し上げましたように、私どもが了解する限りにおきましては、現実に使われると確定しておりますのは、ラオスにおきまするナムグムダムの建設の費用でございます。
  106. 小林進

    ○小林委員 どうでしょうか。あなたの御説明になりましたことをいま少しく具体的に文章にしていただけませんか。そのようにひとつ資料を私要求いたしたいと思います。
  107. 金子一平

    金子(一)委員長代理 後刻資料として提出するように取り計らいます。
  108. 小林進

    ○小林委員 そこで私は、実は忘れておりましたが、外務委員会において五月十一日の日に戸叶里子委員が資料を要求しておられる後進国に対する日本の投資額に対するその資料は、外務委員会にはもう配付になったと思いますから、外務省も控えがあると思いますので、これもひとつこの委員会に御提出方をお願いいたしたい。  なお、第二の資料といたしましては、同じくその当日に三原委員エカフェの任務と活動についての資料を要望しておられる。これも私は外務委員会にはもう御提出になったのじゃないかと思います。控えがあるのじゃないかと思いますから、これもあわせて当委員会に御配付のほどをお願いいたします。委員長、よろしゅうございますか。ちょっと確認をしておきます。
  109. 金子一平

    金子(一)委員長代理 よろしいそうです。
  110. 小林進

    ○小林委員 それではいま一つ、これは来たついでですから、いまのお話の中で、私はこのジョンソン構想が十億ドルの金をやるのは、アメリカ自身がアジアの開発や貧困追放のために十億ドルの金を出すのかと思ったら、あなたのお話のように、多数国間の話しい合いの上で計画ができたときにその金を出してもよろしいという話があったということは、これはどうもやはりいまのアジア開発銀行の構想とまことに相通ずるものがある。あなた方外務委員会の答弁の中でも、一生懸命になってジョンソンのアジア構想の発言とこのアジア開発銀行との関係は全くないということを言っていられるけれども、それを立証するような反証は一つもあがっていない。どうもくさいと思ったけれども、いまのあなたのお話を聞くと、やはりあなた方の証言の逆説で、ますますもってこれはジョンソン発言とこの開発銀行が不離一体をなしておるという、そういう疑問を濃厚ならしめたのでありますから、これは資料をちょうだいして、その資料に基づいて私は質問をいたしたい。  そこで私は、この問題は大臣がおいでになるときに特に聞きたいと思っているのだけれども、こういう銀行ができた場合に、この銀行の中で一番指導力を握るのはどこの国かということなんです。その問題はどこから推していってもやはりアメリカなんだ。そこで私はお聞きするけれども、この加盟国の中で——加盟国は三十二カ国ですか、そのうちの域外の加盟国は十二カ国ですか、十二カ国を別にして、域内における加盟国の中でアメリカの軍事援助を受けている国は何カ国ありますか。
  111. 滝川正久

    ○滝川政府委員 私が申し上げますのは、軍事援助の意味は、軍事同盟を結んでおる、あるいは安保条約を結んでおるというような形におけるものを申し上げるわけでございますが、日本韓国フィリピンタイ、豪州、ニュージーランド、これはANZUSの関係であります。それから南ベトナム、それから国府がございます。
  112. 小林進

    ○小林委員 カンボジアセイロン、これはどうですか。
  113. 滝川正久

    ○滝川政府委員 いまのような意味では入らないと思います。
  114. 小林進

    ○小林委員 それでは、次に域内国でアメリカから経済的な援助を受けている国……。
  115. 滝川正久

    ○滝川政府委員 経済援助の意味でございますけれども、広い意味におきましてはほとんど全部だろうと思います。
  116. 小林進

    ○小林委員 それでは、狭い意味でアメリカに対して債務国になっている国はどこですか。みな域内国ですよ。
  117. 西山昭

    西山政府委員 アメリカから経済援助ないし経済協力を受けておる国は、ほとんど全部が債務国になっておると思います。
  118. 小林進

    ○小林委員 どうですか、こういう開発銀行の構成メンバーは。聞けば聞くほど実におそろしい陰謀が明らかになってくる。そういう因果関係の中で表だけをじょうずに隠したって、頭隠してしり隠さずというのは、これのことなんです。  それではお聞きしますけれども、域外の十二カ国でアメリカと軍事同盟を結んでおる国はどことどこでございますか。——こういうような外務省の不勉強の局長を相手にしておっては、とても私はこの委員会で質問をしていくわけにはまいりません。これはまだほんの序の口でございます。こういうようなことでこの委員会でやったっておさまりませんから、ひとつ、外務省は帰って、大いに勉強をしてきていただきまして、あらためて次の委員会で、こうもたもたしないで、ゆうゆうと答弁をしていただくようにお願いいたします。私はきょうはこれで終わります。これ以上質問をするわけにはまいりません。
  119. 滝川正久

    ○滝川政府委員 オーストリアは中立、スウェーデンが中立政策をとっております。あとの国は、ソ連は別といたしまして、NATOの加盟国でございます。
  120. 小林進

    ○小林委員 先ほど申し上げたとおりであります。私の質問申し上げたことは、勧進帳のまだほんの表の一ページもとかないうちにこういうもたもたして答弁されたのじゃ、とても私は質問を続ける気になれませんので、後日、大蔵省外務省から、うんと勉強をしていただきまして、快刀乱麻を断つ答弁をいただく御準備あらんことを強く要望いたしまして、本日は私の質問を留保いたします。
  121. 金子一平

    金子(一)委員長代理 午後一時四十分より委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後零時五十九分休憩      ————◇—————    午後一時五十一分開議
  122. 吉田重延

    ○吉田(重)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  国の会計金融証券取引及び外国為替に関する件について、調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。佐藤觀次郎君。
  123. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 久方ぶりの大蔵大臣の出席でございますので伺いますが、あなたのほうの田中幹事長が、米価問題について、生産者米価を上げても消費者米価は上げぬというような発言をされて非常に問題になっておる、大臣のお気持ちはどうでございますか。
  124. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 その発言は新聞で私も見ております。米価は、本年は特別その決定に慎重を期さなければならぬ、こういうふうに考えております。そういうことから、私もこの扱いには特に慎重を期して、私の一言隻句、これにもまた慎重に配意をいたしておるわけでございます。私は、この米価問題がいよいよ出される、これはいつになりますか、おそらく今月というわけにはなかなかまいらぬのじゃないか、こういうふうに思いますが、それに備えまして私がどういう態度をとるべきか、私も検討いたしております。しかしまだ、党の幹事長と打ち合わせをいたしますとか、また農林大臣と協議をいたしますとか、企画庁長官と相談いたしますとか、そういうところまでいっておらないのであります。生産者米価、これを決定すべきことはもちろんでありますが、その際に消費者米価をどうするかというようなことにつきまして、きょうは発言をひとつ差し控えさせていただきたい、かように存じます。
  125. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 米価の決定は、これは農民ばかりでなく、日本国民全体の大きな問題でありますからあまり深追いはしませんが、私も長い間大蔵委員をやっておりますが、食糧管理の赤字の問題について、いつまでもこれが一つの障害となって米価の問題がいつもうやむやにされるということになっておるわけです。一体福田大蔵大臣は食管の赤字の問題についてどんなような見解を持っておられるのか、これをひとつ率直に、あなたも大蔵省に長くおられたので、この問題については長年手がけられたと思いますので、食管の赤字の問題についてひとつ御意見を承りたいと思います。
  126. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 食管赤字の背景には食管特別会計の問題があるわけです。食管特別会計におきましては、米の収買また販売、こういう両面をやっておるわけですが、同時に米穀行政的な機能も営んでおるわけです。そういうようないろいろな多岐の仕事をやっておりますが、そういう事情を考慮いたしますときに、食管会計に赤字が出る、これはやむを得ない一面がある、そういうふうに思います。従来も赤字が出てまいり、現に昭和四十一年度も千二百億円の赤字が出てきております。そういうような状態でありますが、食管会計性格から見まして、ある程度これを一般会計において負担をするということはやむを得ないことかと、かように考えておる次第でございます。しかし、大筋におきましては、食管会計が特別会計の原則に立って収支相償うという状態であるべきことが望ましい、かような考えであります。
  127. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 毎年食管会計の赤字が出るのですが、これはいま大筋の立場からは、一般会計に繰り入れるというような、そういう考え方もあっていいという大臣の話でありますが、これは毎年この問題にからまって非常にはっきりした回答を得られなくて何年間も続いておるわけです。これは農民の立場から言えば、食管の赤字は農民の責任じゃなくて、やはり消費者に対する一つの救いの手のように思われるのですが、この点について、いつかは何らかの形で解決すべき問題だ、こう思うのですが、その点について福田大蔵大臣はどのような見解を持っておられますか、これは大きな問題でありますけれども、やはり将来毎年この問題が起こるので承っておきたいと思います。
  128. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 米の生産者価格に対する決定の方式はすでに確立をされておるわけであります。あとは、消費者米価をどうするか、こういう問題と、国庫が幾ばくを負担するか、こういうことだろうと思います。ただいま申し上げましたように、国庫が幾ら負担すべきか、あるいは消費者が幾ら負担すべきか、こういう生産費以外の問題につきましては、そのときどきの経済情勢等も参酌し、また財政の状況また食管会計の担当しておる任務、そういうものも考えて適正にきめていくべきものだ、かように考えておる次第でございます。
  129. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 本年度はまた米が非常に足りなくて、御承知のように八十万トンから百万トン近く不足じゃないかと言われております。全体として言えば三カ月くらいの不足が起こるのではないかと思います。これは私らの立場からすれば、米の自給自足ということが多年言われておりますし、これは農林大臣に聞きたいのですけれども、農林大臣をわずらわさないでも、福田さんはそういういろんな理解があると思うのですが、この点について外米の輸入という問題がいろいろ問題になってくるのですが、こういうものの輸入をどんどんするということは、前の池田さんがたしかそういう意見であったと思うのですが、外国の米をどんどん輸入するということは、当面の救急策としてはいいけれども日本の農村を救うという意味においては非常に重要な問題だと思うのです。この点については、大臣はどんな所見を持っておられるか伺いたいと思います。
  130. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 米ばかりではございませんが、米その他食糧全般ですね。私は、わが国の貿易構造として相当高い自給度を持つべきだ、大体八割というようなことが言われておりますが、そのくらいの見当で自給を目標にした農村政策というものが必要である、かように考えております。特に、そのうち米は自給度は現在でも高いわけでございます。しかし、なぜそういう自給度を高く維持しなければならぬか、食糧というものは再生産性がないわけであります。鉄だとか石炭だとかいうようなものを輸入する、そういう場合にはわが国の経済の拡大発展に貢献をする、食糧はただ単に食べて消費しちゃうだけのものである、そういう品物の輸入が多くなるということは、これは日本の貿易構造上好ましくないことである、そういうふうに考えるわけです。  それからもう一つは、まあ、国際情勢はいま平穏でありまするが、どういう事態が起こるかもしれない。これはもう食糧はどうしても自給されなければならぬたてまえでございまするから、食糧の確保が維持されなければならぬたてまえでございまするから、政治の大きな角度から見ましても、ただいま申し上げた程度の食糧の自給度ということは考えておかなければならぬ、こういうふうに考えておるわけであります。その辺を目標にして農村政策を進むべきである、かような考えであります。
  131. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 アジアの外相会議ビルマタイから長期的に日本に米の買い上げをしてくれというような要求があったと聞いておりますし、私、数年前に東南アジアに行きましたときにもそういう声が非常にきびしかった。もしそういうことになると、日本の農民はビルマタイの米を多量に輸入されることになれば、ますます勤労意欲がなくなって、米をつくる人がますます減ると思うのですが、その点についてはどのような見解を持っておられますか。
  132. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 アジア経済開発会議でそういう話題が出たことは、私は承知しておりません。おそらくそういう話題が向こうから出たということはないかと思います。ただ、日本も米はわずかながら不足しておる、そういう状態下においては、毎年毎年ある程度の米の輸入というものは続くんじゃないか、そうなれば、米の安定的な、また品質のいいものを日本に供給する場があっていいのじゃないかという議論をなす人があるわけであります。これがつまり長期契約論でございますが、まあ、それも一利一害ですね。ただいま申し上げましたような利点もあるが、同時に、日本が海外から調達するにあたっての日本のフリーハンドというか、自由がそれによって拘束される、こういう不利もありますので、これをどうすべきかということにつきましてはよほど慎重に考えなければならぬ、私はそう考えております。
  133. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 もう一点そのことについてお伺いしたいのですが、御承知のように、飼料の輸入量、これはまあ畜産の関係であります。それから米の不足に対する輸入等、相当ばく大なものが食糧の輸入となってあらわれているのですが、こういう問題について、これは相当関心を持たざるを得ないような状態になっておりますが、その点は大臣はどのようにお考えになっておられますか。
  134. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 飼料の輸入が逐年相当の速度で拡大されておる、またわが国の輸入の中で相当大きなシェアを占めるような状態にまでなってきておるわけであります。この飼料にどうやって対処していくか。私は、まず第一に、国においてできるだけの手当てをすべきである、国内においてこれを供給するたてまえを推し進めていくべきかと思います。しかし、それじゃもう当分足りそうもないわけであります。そういう場合に対しましては、安いものが安定して入るような考え方考えていかなければならぬ、それには飼料を供給する。たとえばメーズについてはインドネシアとかいろいろな国があります。そういうような国のそういう生産が合理化される、近代化される、そういうためにわが国が技術的な協力をして差し上げるということをもっと積極的にやっていくべきではないか、さように考えておるわけであります。
  135. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 米価の問題についてはいろいろ伺いたいことがありますが、大臣が慎重論で、なかなか具体的なことを言われないのでございますから、まあこれ以上大臣にいろいろなことを申し上げません。  御承知のように、公債の問題についていろいろ計画をされておるようでありますが、私の見解によれば、福田大蔵大臣が当初お考えになったような国債発行という問題は、必ずしも順調にはいかぬような傾向が出てきておる。そこで具体的な問題になってあらわれてきたのでございますが、この国債を買った人が売りたいという問題についていろいろ物議をかもしておるのです。そこで、一体この公債の市場の問題というのは、おそらく大臣考えておられると思うのでございますが、いつ公債の市場を開いてその価値をきめていかれるのか、この点についての見解を伺いたいのでございます。
  136. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 公債政策はただいまうまくいっていないのではないかというような御見解でしたが、そうじゃない、私は、非常に順調に進行しておる、ことにその政策のねらいとするところは、インフレに堕せずデフレに堕せず、とにかく日本の経済を正常ルートに乗っける、そういうような面におきましては非常な効果を発揮しておると思っております。目下公債財政を中心とする経済の動きというものは理想的な形で、つまり、インフレなき拡大という方向で着々進行しておる、こういうふうに見ております。  それから、公債の売れ行きにつきましても、これもきわめて順調であります。その大体九割までは金融機関がこなすわけでありますが、その他の一割、これは個人消化を目標にしております。この面もきわめて順調である。最近公債を買いたいというような意欲もちょいちょいと見受けられるわけでありまして、逆に売りというような面、これは買いが先にあって売りが出るわけであります。売りがあって買いが出るわけじゃない。そういう売り意欲というようなものにつきましては、私どもはほとんどそういう動きを見ておりませんです。現に、今月のごときは、一応証券会社が六十億円でありましたか、七十億円でありましたか、ほしい、こういう話があった。ところが、最近なかなか公債の個人消化の状況はいい、もう少しほしいというような要請さえあるような状態であります。私は、本年度予算できめられたこの七千三百億円の公債の消化、これはきわめて順調に実施される、かように考えております。
  137. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 公債を発行する大臣が売れ行きが悪いと言ったらたいへんなことになると思うから、自画自賛されることはあなたのかってでありますけれども、しかし、電話公債との関係で、利回り等の問題についていろいろ議論があるわけです。ところが、いま公債自身は、御承知のように減税の恩典もありませんし、それからおそらく未解決の問題をそのままにしておられるわけですが、証券界の中でも、民間人の公債を売りたいというようなお客が相当あるということを、私は名古屋の証券会社から直接聞いて、何とかしてくれという話も伺っておるわけですが、この点について、いっこの公債の値段をきめるような市場をお開きになるのか、なぜ早く開かれないのか、今後陸続として公債が出ますから、その点についての大臣の御所見を伺いたいと思います。
  138. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 公債を公式の市場に上場することにつきましては、私も非常に慎重にかまえておるわけであります。御承知のように、政府保証債の上場についても非常に慎重であった、それ以上の重さがなければならない、こういうふうに考えております。しかし、公債の大衆による消化を促進するためには、どうしても公社債市場、特にその中でも公債の正式上場というものがなければならぬ、こういうふうに考えておるわけでありまして、慎重の中にも事を急ぎたい、こういう気持ちを持っておるわけです。近く気配交換を始めてみたい、かような考えであります。気配交換の様子を見て国債の正式上場を行なう、これもなるべく早くやりたい、かように考えておる次第でございます。
  139. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 なるべく早くやりたいというのは、いつごろとお考えですか。公債市場の売り買いというものがなければなかなか市場価値がないというような意見もありますので、この点についての具体的なことを大臣に伺いたいと思うのです。
  140. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まず気配交換をぽつぽつ始めてみようか、こういうふうに考えておるわけでございます。気配交換の状況を見てなるべく早めに国債の正式上場というものに移りたい、かように考えておるわけでございます。
  141. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 この金融関係のことで、この間参議院でわが党の木村君から質問がございましたが、日銀法の改正というものが四、五年間山際前総裁時代からいろいろ問題になっておるわけです。そこで、田中前大蔵大臣もよう解決をしないで福田大蔵大臣にかわったのでございますが、日銀法の改正という問題について大臣はどのような処理をされるのか、日銀法については長い問題でありますから、私たちも少なくとも懸案を解決してもらう必要があると思うのですが、その点はどうお考えになっておられますか。
  142. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 日銀法の改正につきましては金融制度調査会にもはかりまして、一昨年一応の大蔵省の原案というものができた。それで、それを去年の通常国会に提案するかどうかという、そこまでの運びまでいったのでありますが、国会の関係等も考慮いたしまして提出には至らなかった、そういう案が今日残っておる。私はまだその案につきまして詳細な検討をいたしておりません。しかし、そういう動きもすでにあり、また原案もある、そういうようなものでありますので、私もこの夏にはその原案につきまして、十分自分としての検討をしてみたいというふうに考えております。それで、もしこの原案について手直しをするというような必要がないという際には、あらためて金融制度調査会におはかりするような必要はなかろう、こういうような考えでありますが、もし重要な部分について手直しの必要があるという際には、もう一度金融制度調査会におはかりをしたい、こういうように考えております。いずれにいたしましても、国の金融基本法とも申すべき性格のものでありますから、これが扱いは慎重が上にも慎重を期してまいりたい、さような考えでありまして、最終的に考えがまとまりますれば、もちろんこれは皆さんに御相談をしなければならぬ、かように考えておる次第でございます。
  143. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 少なくとも、日銀法改正の問題は多年の懸案でありますから、なるべく早急にひとつ処理をして、中央銀行のあり方についての構想を明らかにしていただきたいと思います。  それからもう一つは、御承知のとおり、ことしは金融の年といわれておりますが、いま相互銀行、信用金庫などの編成がえの問題が話題になっておりますけれども、そこで、いろいろ議論がありますが、しかし、こういう銀行の処理について、一体大臣はどのように考えてこれらの銀行の処理をされるのか。御承知のように、信用金庫、それから相互銀行のコールが非常に安くなったのでこのごろ経営上非常に困難な状態にあるということを聞いておりますが、この点についての再編成の問題についての大臣の構想はいかがですか、伺いたいと思います。
  144. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 金融機関は、私は、産業界または国民に対しまして、豊富低廉な資金を供給するということを旨としなければならない、そのためには、貯蓄の増強ですね、これに専念をしなければならない、と同時に、なるべく低利な金が出せるような仕組みにならなければならない、こういうふうに考えております。そういう角度から考えまする際に、一体銀行の店舗の配置は今日適正であるかどうかというようなことも考えるわけであります。それからまた、金融機関が近代化、合理化、そうして経費を切り詰めて預金のコストを上げるという方向において、あるべき姿にあるかというと、私はまだまだ反省すべき点がずいぶんあろうと思います。これは機構の面においても、銀行の業務の運営の上におきましてもいろいろ考えるべきところがあるかと思います。そういうふうに、預金の増強、それから資金コストの低下というこの二つの点を眼目として金融行政を進めていきたい、かように考えておる次第であります。
  145. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 その構想の中に、都市銀行と相互銀行、相互銀行と信用金庫の異質のものを一緒にして、そうして新しい構想でやられるというようなうわさもあるのですが、その点はどうなっておるか、伺いたいと思います。
  146. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いま中小金融を担当する機関といたしまして政府関係の三機関がありますが、そのほかに、相互銀行また信用金庫、信用組合、そういうものがあるわけであります。これらの動きを見ておりますと、たとえば信用組合、信用金庫、これはメンバーを基盤とするところの機構でありまするが、しかし、実際の動きは必ずしもそうでないような面も出てきております。それから、相互銀行と普通の銀行との動きですね、これもずいぶんと似通った面が強く出てきておる。そういうようなことを考えまするときに、これらの金融機関全体のあり方がどういうふうにあることがいいか、これらの制度ができてからもう年がたっておりますので、一応見直していく必要がある、こういうふうに考えまして、金融制度調査会などにもお願いいたしまして、ひとつこれでいいのか悪いのか見直してみよう、こういう段階にきておるわけであります。
  147. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 こういう銀行が、現在のところは金利の引き下げの問題についてなかなか抵抗を示しておるようでありますが、政府は金利の引き下げをやろうというような意図もあるやに聞いております。ところが、アメリカをはじめ西ドイツとかいうような方面では金利がますます上がってくる傾向があるわけですが、国際関係から考えて、日本で単独に金利の引き下げをやっていくということができるのかどうか、また、いろんな矛盾が起きるのではないかと思うのですが、この点は一体どのように考えておられるか、伺いたいと思います。
  148. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 金利も一つの国際的傾向というものを持つわけであります。ところが、国際的傾向を持つのは一体どういうことかというと、これは国際収支との関連というものがあるわけなんです。いま諸外国、特にアメリカにおいて金利が高くなりつつある、そういう際に日本が国際的な趨勢と離れて低金利政策をやっておるということになりますと、日本に投ぜられておる短期資本、こういうものがアメリカやその他の国に逃げ出す、こういう傾向が出てくる。これは自然の勢いであります。そういうようなことになりますとたいへんでありますから、したがって、日本においても防衛的措置をとる、つまり、金利が国際水準に追随するというようなことになるわけです。これが普通の場合です。ところが、今日これは私は天祐だと思う。日本の国は国際収支がきわめて好調なんです。   〔吉田(重)委員長代理退席、金子(一)委員長代理着席〕 ことに経常収支がいい、その中でも貿易収支が非常な黒字状態である、そういう状態でありますから、多少短期資本が日本から流出いたしまして本日本の国際収支はびくともしない、こういう状態にあるわけであります。したがいまして、世界各国、特にアメリカにおいて高金利の傾向がありますけれども日本がその傾向とは違って低金利政策をとり、したがって、その影響として短期資本が出るということがありましても日本にはさして痛痒を感じない、さようなことから、私は非常にしあわせな状態だと思うのでありますが、低金利政策を遂行し得る、かように考えておるわけであります。
  149. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 それに関連して、いま国際収支のことを言われましたが、この国際収支は、なるほどいままではアメリカなどベトナム戦争の関係でストックがほとんどはけた、それから、ややインフレ傾向にあるアメリカとの関係で好調であることも事実でありますが、しかし、これが将来楽観ができるかどうか。国際収支の黒字ということがずっと継続していけばいいけれども、必ずしも本年度はそうは楽観できないように考えておりますが、この点の見通しはどうでありますか、伺いたいと思います。
  150. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いま日本の輸出が非常な好調であり、それから輸入は停滞している、そこで十数億ドルという貿易黒字が出るわけでございますが、私は、日本の経済が発展してもう少し景気が回復する、そういうような段階になりますと輸入がもう少しふえてくるというふうに見ております。それから輸出の中では、これは特需面ではそうあらわれておりませんけれどもベトナムの間接的な影響というものがある程度含まれておる、こういうふうに見ております。そういうことから貿易収支がただいま非常に好調であるが、これで楽観をしておるわけじゃないのです。基本は、わが国がますます新市場を開拓して輸出をふやすというところに専念する、これが私は治にいて乱を忘れずという心がまえだ、かように考え努力をいたしておるわけであります。
  151. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 最近貿易外収支の赤字がだいぶ黒字に変わってきたということを聞いておりますが、それはどういう原因であるのか。これは大臣以外の局長に伺いたい。
  152. 金子一平

    金子(一)委員長代理 局長が来るまでちょっとほかの質問を進めていただきたいと思います。
  153. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 いま大蔵大臣非常に楽観論で、前の田中さんも楽観論だったけれどもこんな不景気になってしまったのですが、現在必ずしも私はあなた方がお考えになっているほど景気の上昇というものはそんなに末端まで響いていない。どこへいきましても、景気の見通しについては非常に悲観的な意見が多い。これは御承知のように経済規模が大きくなったので、政府が四兆円や五兆円ぐらい出しても、それが浸透して景気がよくなるというような見通しが非常にむずかしくなったと思うのですが、その景気の見通しについて、これは企画庁長官がいいのですけれども大蔵大臣にひとつ伺いたいと思います。
  154. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 景気につきましては、私は、私ども考えているとおりの筋をいま進行しておる、こういうふうに見ております。つまり、非常に極端な刺激政策をとってはいかぬ、これは過去において経験したようないろいろなひずみをもっと拡大された形でかもし出すであろう、これはなかなか重大問題である、そういうふうに考えまして、国債を二兆円も出して一挙にデフレギャップを埋めるというような景気回復策をとったらいいじゃないかというような議論もありましたが、私はそれはとらなかった。逆に、公債政策なんかとったらインフレになるぞというような公債恐怖論的な意見もありましたが、これもいかぬ、これはいまほうっておいたら日本の経済は冷え切ってしまう、冷え切らしたら一体どうなる、これはとても再起不能のような混乱状態になる、これもいかぬ、そこで、インフレにもならず、デフレにもならずというぎりぎりのところの政策ということを考えて、まあいわゆるデフレギャップを二、三年で埋めよう、つまり、いま三〇%のデフレギャップがあるといわれておる、それを七、八%ずつ埋めていく、そういう考え方をとったわけでございます。その線をいまいっていると思うのです。現に、昨年の十一月から、最も重大な指標である鉱工業生産が上向きに転じまして、四月もまだその趨勢が続いておるということが明らかになったわけです。鉱工業生産が伸びているばかりじゃない、荷動きが盛んになってきておる、つまり、出荷指数というものも十二月からずっと改善の一途をたどっておる、それから、さらに、そういう状態でありますから、製品の在庫も著減をするというような状態になってきておるわけでございます。私は、昭和四十一年度予算の実施が始まった、これに乗っかってこの勢いが着実に固定化されていくもの、こういうふうに考えておるわけであります。私は、年度を通じて私どもが見ておるような動きに経済界はいくであろう、かような観察であります。
  155. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 ところが、先月は、御承知のように中小企業の倒産の数はあまり減っていないのです。これはいま福田さんの言われるのと反対の現象が出ておると思うのですが、この点はどういうふうに見ておられますか、伺いたいと思います。
  156. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 中小企業の倒産件数が、三月に比べますと四月は相当減っております。滅っておりまするけれども、まだなかなか高い数字にきておることはお話のとおりです。これは、その内容を分析しでみますと、業種もそのときどきで違うわけです。一貫性がない、また、倒産原因というようなものにつきましても、統一した原因はない、ないが、とにかく二年有余続いたこの不況に対する抵抗力、これが中小企業は大企業に比べて非常に微弱である、そういうことで、景気は上向きに転じておるというが息が切れるものが出てきておるのだ、こういうふうに見ておるのですが、詳細なことにつきましては、実に雑多というか、各種類の企業が各種類のまちまちの原因で倒産が起こっておりますので、統一した見解は申し上げにくいのであります。
  157. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 このごろ私らが町に行きますと、物価高の不景気ということが中小企業でいわれております。これは銀座あたりの店を五、六軒回ってみましたが、福田大蔵大臣が言っておられるような、そういう枯れ木に花が咲くようなそんな景気はないと私は見ておる。少なくとも、農村地帯の中小企業はまだまだ福田さんが言われるような景気上向きなんということは言っていられないような深刻な様相が出ておるわけですが、この点は一体どういうように御説明願えるか。福田さんも選挙区がいなかでありますから御存じだと思いますが、底はついたといわれますが、景気がよくなったというような声を聞くことは、上のほうの人はそういうことを言っておりますけれども、中小企業の多くの人にはそういう声が全然聞かれないと言っていいくらい——一時よりは幾ぶんか明るさが見えてきましたけれども、現在の情勢は必ずしもそういうような楽観論はできないというような傾向にある。この点は一体どういうような見通しを持っておられるのか。私は大臣と意見が違いますが、その点について、われわれが納得のいくような状態をひとつお知らせ願いたいと思います。
  158. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 景気がどうなるかというのは、言う人によって意味が違うと思うのですが、いわゆるデフレギャップが解消され、資本費の負担、人件費の負担、そういうものでそう重荷を感じない、つまり、会社の収益が非常に好転する、こういう状態になるには時間がかかる、こういうふうに見ております。二、三年はどうしてもかかるのじゃないか。しかし今日の時点で、そういう方向に向かって経済が停滞から脱して動きだしておるか、こういうと、現にそういうふうな方向で動きだしておる、こういうふうに私は見ておるわけです。ですから、デフレギャップが解消され、高収益な企業状態が実現をするという状態をとって好景気と言うならば、まだそういう状態じゃない。しかし、そうじゃなくて、ともかく上向きに脱したのだ、将来は明るいのだ、それに向かって経済が活発に動きだしておるという状態をもって好景気と言うならば、まさに今日そういう動きをしつつある、こういうふうに見ておるわけであります。  中小企業のほうに響きが少ないというお話のようでありますが、私どもの見ておるところでは、中小企業の受注、そういうものには相当大きな改善の変化があらわれておるわけであります。逐次中小企業のほうにもあまねく浸潤をしていく、かように見ております。
  159. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 それから、これは公債がどんどん発行されていく反面、最近の物価高というものが国民の生活を非常に圧迫しているように感じられますが、そこで、一応公共料金の値上げが終わりましたが、おそらくきょう福田さんから返事はいただけないと思いますが、米価の値上げということが問題になって、これをきっかけにして、この秋ごろには相当インフレの傾向が出てくるのではないかということが心配されておるわけです。そこで、大臣は大体が楽観論でございますからそんな心配はないと言われそうでありますけれども、きょうの日経の「景気の上昇のテンポを探る」で、日銀の吉野さんとかその他の人の意見では、本年は六%ぐらい上がるだろうと言われておりますが、私たちが心配をしておるのは、秋あたりから相当インフレ的な様相を帯びるのじゃないかということを懸念しておるのですが、その点は大臣はどのようにお考えになっておられますか、お伺いしたいと思います。
  160. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 インフレという意味が、物価が毎年毎年上がり、そしてとめどがない、こういうような意味だとすると、私は、そういう懸念はない、こういうふうに申し上げます。ただ、物価上昇、特に消費者物価の上昇という速度からのお話でありますと、これはなかなかむずかしい問題です。構造的要因というようなことが言われますが、いま消費者物価が上がる、その根本にはむずかしい問題が含まれておる。おくれた中小企業あるいは農村の生産性というような問題ですね、これを解決しないとほんとうにきれいな物価状態というものは出てこないと思う。しかし、それを待っておるわけにはいかぬ、そこで当面できるだけの努力はしてみなければいかぬというので、政府もいま全力をあげて物価問題と取り組んでおるわけなんでありますが、ことしという年は、物価の上がり基調が変わったというわけではないけれども、上げ幅が少なくなって、まあ物価は時間をかければ落ちつくなというような実感を国民に持っていただく、そういうところまではぜひ持っていきたい、また持っていける、こういうふうに見ておるわけであります。
  161. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 同僚の委員質問もありますから最後にお伺いするのでありますが、私は、当初佐藤内閣は、政府資金の散布によって相当景気は出る、そうして景気の出るところを考えて、どうせあとは長続きはしないから、これを契機に解散でもやろうというような考えでおられた、ところが問屋はそうはおろさない、それぐらいの金を出してもなかなか景気というものはよくならないので、いま解散したら負けるというような形で相当慎重論が出たと思うのですが、この点で、大蔵大臣に責任はないけれども、少なくとも景気の上昇率というものと、それから大衆の購買力というものは、なかなか政府が思っておるようにいかないというような事実が現実にあらわれているのじゃないかと思う。その点について、藤山企画庁長官でも呼んで大蔵大臣と一緒に意見を伺うといいけれども、そういう時間がないから、最後に、そういう見通しについて大臣はどのようにお考えになっておられますか、お伺いいたします。
  162. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ことしになってからの鉱工業生産の動きは相当活発になってきておるわけです。これを基本といたしまして成長率というようなことを考えますと、これはかなりの高さになる、今日のところではこう見ております。それは国民の所得がふえる、こういうことなんです。一方、消費者物価につきましては、私どもは全力をあげてこれが上げ基調が緩和されるようにというふうにつとめておりますが、両々相まって見まするときに、私は、国民一人一人の所得というものは相当向上する、こういうふうに見ております。昨年は、一年間消費者物価の上がりと鉱工業生産の伸びというものを見てみますと、国民所得、ことに勤労者のごときはほとんどとんとんだというようなところが出てきておりますが、ことしは様相がまるっきり違ってくる、国民に期待を持っていただいてよろしい、こういうふうに見ております。
  163. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 鈴木国際金融局長がおられますから一言お伺いするのですが、私は数年前に池田総理大臣に貿易外収支の赤字のことについて質問をしたことがあります。そのとき総理は、五、六年間は国際収支の貿易外収支の赤字は解消されないのだ、そのために貿易収支の黒字が消されるのは残念だということを言っておられましたが、最近貿易外収支の赤字がだいぶ減ったということを伺っておるのですが、その大きな原因はどういうところにあるのか、これを鈴木さんにひとつお伺いしたい。
  164. 鈴木秀雄

    鈴木(秀)政府委員 まだ貿易外収支の赤字が減ったという段階ではございませんが、いままでのようなテンポの悪化が若干スローダウンしたという感じでございます。いろいろな原因はございますが、貿易外収支の赤字といいますか、貿易外の受け取り、支払いの大きな要素を持っております運輸というようなものは、やはり輸入の規模あたりが一番大きな問題になるわけでございますので、これが昨年以来輸入がそうふえなかった、こういったことから赤字の原因が減ってきている、しかも、日本の自国船建造政策というものもだんだんにうまくいってそういった効果もあらわれておる、これが一つの原因かと思います。  もう一つの悪化がとまったという若干の根拠かと思いますが、それは、いままでたとえば資本の利子とかなんとかというもの、外銀から借ります利息というようなものをどんどん出しておった、これが昨年以来、御承知のとおり資本収支が赤字ということは、逆に日本が資本を輸出をし、あるいは外国の借金を返しておるという事態でありますから、利息の支払い、もちろんそれは金利の高くなったという面でマイナスの面もございますけれども、その面からも悪化の要因として減少傾向がある、それから、たとえば技術導入につきましても、いわゆる特許料あるいはノーハウの使用料、こういったものも、日本の設備投資が非常に盛んでありました際、あるいはどんどんと鉱工業生産が伸びた際には、大体技術特許使用料というものは生産の出来高払いに応じて払うようなものが多うございますから、払うわけでございます。しかし、これもそういった関係から支払いが減る、それから、特需等につきましても従来よりは少しいいといういろいろな要因がございまして、悪化の程度がとまった、しかしまだマイナスがなくなったとかあるいは減ったという事態ではございません。
  165. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 もう一点鈴木局長お尋ねするのですが、海外渡航の自由化ということができまして、相当多数の日本人が海外に出るような傾向が見えておるわけです。これは五百ドルという制限がありますからそうたくさんのことはないと思いますが、外人の客もふえると同時に、日本から外国へ行く人もふえたと思いますが、そういう予算のあり方というものはこういうことに影響があるものかどうか、また、今後どれほどまでに日本の海外に行く伸びがあるのかということについて、大ざっぱなところ——これは統計の関係できちっとというわけにいきませんけれども、そういうことについてはどういうようにお考えになっておりますか。
  166. 鈴木秀雄

    鈴木(秀)政府委員 海外渡航につきましては、現在の私どもがとっております為替収支というのは、日本人が外国へ行きます際に円をドルにかえていったもの、あるいは外人が日本へ参りましたときにドルを円にかえる、そういった数字をとっているわけでございます。これは両方とももちろん伸びておるわけでございます。いま御心配の点は三十九年度の支払いの点かと思いますが、三十九年度九千六百万ドル、それが四十年度は一億一千九百万ドル、四十一年度の数字は出ておりませんが、そう大してふえているわけではございません。したがいまして、もちろん飛行機運賃は円払いで行くわけでございまして、これはいわば航空会社の交互計算のほうに載ってくるわけで、これは日本航空を使えばそれだけ赤字がないとかいう問題がございますが、それを除外した場合にはそう急激なテンポで悪くなっているわけではございません。たとえば、アメリカの海外渡航は、一説によれば十七億ドルの赤字だとかなんとかいいますが、それに比べれば日本の赤字というのは、まだこのベースでいいますと二千万か三千万ぐらいのところだろうと思います。
  167. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 もう一点伺いますが、いま日本の保有ドルはどのくらいにのぼっておりますか。それから、その点について、最近の傾向としてはどういうふうになっておりますか。日本の保有ドルのことについて伺いたい。
  168. 鈴木秀雄

    鈴木(秀)政府委員 日本の総外貨準備は、先月末で二十億九千六百万ドルでございます。その中にゴールドトランシュというIMFの自動引き出しですね、いつでも引き出せるというのが二億七千六百万ドルございますから、十八億二千万ドルの金及び外貨がございまして、そのうちの約三億ドルが金でございます。その他のものはドルという形態で持っております。  それで、最近の傾向は、これは御承知のとおり、季節的に上半期というのは日本は外貨準備のあまりふえる月でないわけでございまして、大体横ばいという現実でございます。
  169. 金子一平

    金子(一)委員長代理 有馬輝武君。
  170. 有馬輝武

    ○有馬委員 本日は、大蔵大臣に証券の問題について二、三お伺いをいたしたいと存じます。これはきわめて常識的なことでありまして、証券局長出るまでもないことばかりでありますので、そこに控えておっていただいてもけっこうであります。  きのうの日本経済新聞が証券十四社の三月の仮決算の状況を伝えておりますけれども、四大証券をはじめ各社が非常に好調であって、出来高も昨年のいまごろは、中ごろには一日四、五千万株に落ち込んだものが、東証の第一部でことしの一月には一億五千七百万株、二月には一億八千百万株、三月には二億二百万株というぐあいに急増しておりまして、また大手四社でも手数料収入が、前半六カ月で野村が約百四十七億円、日興が百十七億円、山一が九十三億円弱、大和証券が八十九億円で、いずれも六カ月間で前期実績の七、八割を達成するというような状況になっておるようであります。私昨年山一の問題についてお伺いをいたしましたときにも、一般投資家に及ぼす影響等を考えまして、私も私なりに慎重な配慮をそのタイミングなりなんなりに加えたつもりであります。その後、五月二十九日だったですか、日銀の特別融資が行なわれたわけでありますが、私は、信用恐慌を防ぐという立場から特融が行なわれましただけに、やはり証券界全体として、また山一としてもこれに対する公的な責任というものを相当持っていなければならぬと思うのであります。また、これは大蔵大臣もお聞きになったと思うのですが、産業界なり金融界なりの中では、日銀のこの二十五条の適用について必ずしもやむを得なかったというぐあいには見てない向きが相当あるように思うのであります。大蔵大臣には遠慮して言わないかもしれませんが、私が聞く範囲内におきましては、まあまあと、決してほめる人は一人もおりません。それだけに、この問題の処理に当たる大蔵省としては相当の決意と、まただれが見ても納得できるような——もともと出発点から納得できないものですから、納得できはせぬでしょうけれども、相当の筋が通ってまいらなきゃならぬと思うのでありますが、そういう意味で、九月一日発足を予定されております山一の再建策というものが最終的に煮詰まったやに聞いておりますので、それをお聞かせいただきたい。それと、この前、前証券局長の際に、当時私が人員整理なり店舗の縮小なり、こういう問題については伺いましたので大体の見当はついておりますが、旧役員からの退職金なりその他の返済についてそのとき明らかにされませんでしたので、こういう問題についてもあわせてお聞かせをいただきたいと思うのであります。
  171. 加治木俊道

    ○加治木政府委員 山一の再建案につきましては、幹事銀行三行を中心にして話が進められておりますけれども、まだ最終案までには立ち至っていないようであります。しかし、かなり近い機会に煮詰まるであろうということはほぼ予想されております。その骨子は、新会社方式でいくのがいいのではないかということでございます。しかし、いずれにしましても特融を完済する、また、せっかく新会社をこしらえるということであるならば、新会社が十分自立可能である、こういう二つのことをめどにして、それが可能なような条件は、山一の合理化及び関係金融機関あるいは株主等の協力によってそれを達成する、こういうことで作業が進められております。お話にありましたけれども、一応九月一日を発足のめどで再建案が固められつつありますけれども、具体的に、たとえば金利負担等がどういうふうになるか、あるいは新山一に対する出資関係がどういうふうになるかということは、もう少し時間をかけませんと固まらないようでありますが、きわめて近い将来に案を固めて大蔵省にも了承を求めることと思います。  それから、現山一でございますが、旧役員の特融についてのいわば道義的な責任という意味からの私財の提供は、日本銀行中心にして進められております。ただいま手元に資料がございませんけれども、旧役員の自主的な責任ある措置を期待したわけでありますけれども、われわれの聞くところによりますと、私財でございますから、特融の金額に比較してどうこうというような程度のものではありませんけれども、少なくとも相当程度の責任ある処置をとったように私は聞いております。
  172. 有馬輝武

    ○有馬委員 大蔵大臣がいまみたいなことを言うなら話がわかる。証券局長が、日刊新聞にも雑誌にも発表されているようなことまでなぜここで伏せなければならぬのですか。私の質問はわかっておるはずだから、もう少し具体的に答弁しなさい。
  173. 加治木俊道

    ○加治木政府委員 自主的に措置してもらうという前提で旧役員の措置をとっていただいておりますので、各人別の具体的な資産提供の状況等については、外部に私は発表したことはございません。また、一体だれがどういうふうな財産をどの程度出したかということは、道義的な責任の処理という形でやっておりますので、こういう機会に発表することは御容赦願いたいと思います。
  174. 有馬輝武

    ○有馬委員 本委員会において昨年再建案が論議されたときに、店舗の整理、人員の整理とともに、旧役員のそういった返還問題等についても論議され、日銀総裁もこれについて触れられたわけです。それをなぜ言えないのですか。また、大井証券においては、会長が自分の持ち株を全部無償で提供するというようなこともやられておる。そういった意味で私はお伺いしておるのです。
  175. 加治木俊道

    ○加治木政府委員 全体の数字は約二億円前後であった——現山一の旧役員でございますね、提供された私財の総額は約二億円であったと記憶いたしております。
  176. 有馬輝武

    ○有馬委員 何人から、どういう形で出されたのですか、その二億円は。
  177. 加治木俊道

    ○加治木政府委員 これはわれわれのほうも、だれからどういうふうにとるべきだというような形で問題を処理するのは必ずしも適当でないということで、われわれのほうでも、具体的にどのような資産内容、だれから、またどの範囲の役員がこれに参加したかということは明らかにされておりません。われわれのほうにも通知いたしておりません。少なくとも旧役員で責任あると思う者は責任ある措置をとってもらいたい、この程度に承知いたしております。
  178. 有馬輝武

    ○有馬委員 次にお伺いいたしますが、五月半ば過ぎに主力三行から公表されました山一の再建案の中に減資に全く触れられてない。これは赤字企業を再建する場合の常識から全くはずれているように感じられてならないのであります。最終計画は、証券局長の話ではまだ煮詰まってないということでありますが、もう煮詰まったはずでありまして、こういう点については具体的にお話できる段階にもうきておると思いますのでお聞かせをいただきたいと思います。
  179. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私は、この問題の処理にあたりましては筋を通す、こういうことを旨としてやるように指示しております。筋を通すというのは何かというと、とにかく国家資金というか、日銀の特融を仰いでおるのですから、これを一刻も早く返済する、これが一つの筋だと思う。それからもう一つは、これだけの大きな問題になったのでありますが、資本家の責任を明らかにしなければならぬ、こういう問題であります。それからもう一つは、この事業の運営に関与した金融機関、これも犠牲を分担すべきである。この三つを主眼として整理を進めるように私は指示してあるわけなんです。大体その方向で特融もある程度のめどがつきつつあります。それから金融機関の責任の分担、こういう問題も煮詰まってきておるわけです。今度は、最後の資本家の、つまり株主の責任という問題この株主の責任のとり方はいろいろありますが、その一つの行き方は、ただいま御指摘の減資の問題、そういうことになるわけであります。これがまだ今日この段階におきましてはここで申し上げるところまできていないのです。しかし、これは早急に結論を出したい、かように考えておりますが、ともかく、私がそういう方向で事を考えておるということだけを御理解願いたいと思います。
  180. 有馬輝武

    ○有馬委員 大蔵大臣の言われることはわかるわけです。少なくとも共同証券、保有組合などで余剰株の大量たな上げを行なった上に、とにかく二十五条の発動があったということに対しては、先ほど佐藤委員も触れられたようでありますけれども、これは国民にとっては割り切れないですよ。そのためには、いま大蔵大臣が言われるように筋を通さなければならぬと思うのでありますが、私が聞きました限りの再建案では筋の通らないところが多過ぎるように思うのであります。それをいまから二、三の点についてお伺いをいたしたいと思います。  まず第一は日銀特融の返済についてでありますが、まず新、旧山一と不動産会社に分離するというような再建案らしいですけれども、この二百八十億円の特融に対する担保の問題は、もうすでに論議されましたからここでは触れませんけれども、当初十年くらいで返済するというその返済期間が、いま伝えられるところでは十八、九年もかかる。これはどうも納得いきませんね。これはどういうことになっておるのですか。
  181. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 これはどうやって返すか、その返す原資であります。これは新山一であげる利益の一部、もう一つは、旧山一に対する建物等不動産の借料を新会社から払う、それから営業権的なものの支払いをする、そういうようなものが特融返済の原資になるわけなんです。ところが、利益——利益といっても、手数料収入、そういうようなものの見方になりますと、株式の取引の出来高が一体どういうふうになるだろうかということと非常に関連を持つわけであります。その取引高の見方が、これは非常に低い水準であるということになれば、あるいは十数年も返済にかかるかもしれない、しかし、今日のような傾向が続くというような見方をいたしますと、案外これは早く返済ができるかもしれない、こういうふうに考えておるわけでございまして、私は、実際問題として十年もかかるというようなことはないのじゃないか、こういうふうに見ておりますが、十七、八年というような計算は、私はまだ見たこともございませんけれども、案外これは早く返し得るという見通しを持っておるわけであります。
  182. 有馬輝武

    ○有馬委員 これは一般に伝えられておる見通しで、大蔵大臣のも一つの見通しかもしれませんが、伝えられるところでは、大体、当初出来高一億二千万株というようなことで十八、九年かかるということになっておるらしいですけれども、やはり筋を通すためには、いま大蔵大臣の言うように、その返済期間をできるだけ短縮するということが、清算会社である旧山一としての公的責任であろうと思うのであります。  それから、いま一つ聞こえませんのは、四年目には復配するということが伝えられておるのですが、これはどうなんですか。
  183. 加治木俊道

    ○加治木政府委員 新山一は新たな出資を求めるわけでございます。現山一の出資者とは人はダブっておりましても、出資される資金は全く別途に調達されることになるわけでございますので、新山一の業務の状況が、計画どおりの特融返済のための収入の繰り入れ等をやってなおかつ余剰が出るような場合であれば、配当は認めざるを得ないかと思います。これはあくまで新山一に対して出資してくれた株主に対する報酬として考えざるを得ないというふうに考えております。ただし、それでは新山一発足早々に一体そういうことが可能であるかということになりますと、なかなかむずかしい問題だと思います。少なくとも三年くらいは、新山一自身が自立の基盤を固めるということを主眼に置くならば、再び問題を起こすようなことのないように、余剰がある場合にはできるだけ内部留保につとめる、こういうふうに考えるべきではないかと考えておりますが、配当は、あくまで新山一の資産内容の充実ということとにらみ合わせながら、しかも、特融の返済には計画どおりの措置をとりながら、なおかつ余剰がある場合には新出資者に対してそれ相応の報酬を払う、こういうことで考えるべきではないかと思っております。具体的に、いつから配当するか、何ぼ配当するかということは、われわれとしても聞いておりませんし、また要求もいたしておりません。
  184. 有馬輝武

    ○有馬委員 その旧山一、新山一の性格の問題についてはあとでまたお伺いしますが、少なくとも社会的な責任からいうならば、ここで配当ということばが出てくること自体がおかしいのでありまして、やはり特融返済を最優先させるというものの考え方で貫き通さないことには、私は世間は納得しないのじゃないかと思うのですが、いま一度それをお聞かせいただきたい。
  185. 加治木俊道

    ○加治木政府委員 分離した場合に、旧山一の資産処分の状況あるいは新山一からのたとえば不動産賃借料の収入いかんにかかわらず、旧山一が配当するということはとうていあり得ないことであります。そういう状況であれば、特融負債が残っている場合は当然優先的に特融返済に充てるべきだと思いますが、新規に設立された会社の場合、その新山一の体質強化ということ、あるいは自立可能な基盤を早くつくり上げる、こういうことは考えざるを得ないわけでございますけれども、だからといって、新山一に出資された株主に対して全然何らの配当を与えないというような措置は、これは現実に出資してもらわなければならない現実問題としてもなかなかむずかしいと思うのであります。しかし、旧会社に対して払うべきものを支払い、それから新山一の基礎に対して十分自信のあるような状況までいってなおかつ余剰が出るような場合には、出資者に対してそれ相応の報酬を支払うことについてこれをいつまでも拒否するということはできないだろうと思います。
  186. 有馬輝武

    ○有馬委員 それでは、先ほど大蔵大臣お尋ねいたしまして、あなたがきわめて抽象的にお答えになった山一再建の方途について、何といいますか、概要だけ、いま一度確認する意味でお伺いいたしますが、これには間違いないでしょうね。  一、現在の山一を旧山一、新山一の新旧勘定に分離し、主力三行の融資、日銀特別融資などは旧山一に残し、関係十五行融資その他営業用資産、負債は新山一に移す、二、新山一は資本金九十倍円程度で九月一日に発足させ、その営業利益から旧山一に対して店舗などの賃借料を支払い、これを旧山一が日銀特融の返済に充てる、三、十五行の融資については、九月までは金利たな上げを継続し、以後日歩一銭七厘の金利を支払うが、三行融資分については当分の間金利たな上げを継続する、そして、先ほど申し上げましたように、大体新山一の営業収入は一日の平均出来高一億二千万株、市場シェアを一〇・五%として、月大体十二億五千万円を予定して、旧会社への賃借料の支払いは月間三億円が見込まれる、こういうことで、先ほど私が申し上げましたように十八、九年の期間がかかる、こういう案で進められておるのかどうか、いま一度確認の意味でお伺いをしたいと思います。もし違っておるところがあれば指摘を願いたい。
  187. 加治木俊道

    ○加治木政府委員 まだ最終的に案がきまっておりませんので、月々の支払い額、あるいは金利をどのようにするか、それから三行金利と十五行金利をどういうふうにするか、この辺はもう少し関係者間の話が煮詰まらないと最終案をわれわれのほうへ提示してこないと思います。基本的な線は、大体そういう方向考えられておるというふうに理解していただいてけっこうでございますが、月間の水揚げを一体どの程度予定しておるか、これとの関連でございますが、不動産会社に対する賃借料をどういうように払うべきか、これももう少し詰めてみないとはっきりした数字は出てこないかと思います。それと、三行、十五行の協力——協力ということは、金利をどの程度たな上げするか、あるいは切り下げるかという最終の段階でございますので、当事者間の話は進行中でございますので、これ以上のことは御容赦願いたいと思います。
  188. 有馬輝武

    ○有馬委員 それでは、関連して大臣にお伺いをいたしたいと思うのでありますが、本委員会でも、また金融委員会でも、大臣は運用預かりの廃止の問題について言明をされておられるのでありますが、今後、国債発行や日銀法改正なども話題になっておりますときに、いま申し上げました証券業融資のあと始末ということが私は非常に問題になってくるのではないかと思いますので、運用預かりの問題について一点お伺いをしたいと思うのであります。  最近証券界が運用料を一厘を五毛にするというようなことで、この廃止について一つの前向きの姿勢がとられておるのであります。しかし私は、この問題は非常に困難ではないか、このように見ておるのでありますが、四十三年までに具体的にはどのような指導をしていかれるのか、これをこの際お聞かせいただきたいと思うのであります。
  189. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 運用預かりは、これは申し上げるまでもなく実際の証券会社の経営上、金融的な役割りにおいてかなりの役割りを果たしてきたと思うのです。しかし、運用預かりということ自体、私は適当な制度ではない、こういうふうに考えておるのであります。そこで、これは漸を追うてではありますが、なるべく少なく、終局的にはなくなるというふうにしていきたいと思うのでありますが、同時に、それには証券会社の金融をどうするかという問題もあわせて考えなければならぬ、こういうふうに考えておるわけであります。ただいまそれらの問題につきましても検討をいたしておるわけなんですが、ともかく、運用頂かり自体は逐次これを廃止する方向で、漸を追うてではあるが、持っていきたい、かような考えであります。
  190. 有馬輝武

    ○有馬委員 漸を追うてということでありますが、それでは証券局長にお伺いしますけれども大蔵省は、昨年山一の問題を契機にして運用預かりの純増を認めない、それから割引金融債を販売するときに運用預かりという制度があることを積極的に投資家に言わない、それから、運用預かりの総額の二割を支払い準備金にする、大体この三つで指導してこられたやに聞いておるのでありますが、ただ、ことしの三月末残高が昨年の同期と同じ二千六百二十九億円というぐあいになっておるのでありますが、この大蔵省の指導と残高の関連について、わかりやすいようにお聞かせをいただきたい。
  191. 加治木俊道

    ○加治木政府委員 いま仰せられたような指導を証券局としてはやってまいったのであります。ただ、微妙な時期でありましたので、実際の運用預かりの残高を機械的に減らすということに若干勇気がなかったわけでありますが、再来年の三月、この免許を機に、少なくとも新規の運用預かりは認めないということにしていきたいという方向でただいまのところ考えております。大臣も言いましたように、ではその金融的なギャップをどうするかということで、同時に解決しなければならない問題がありますが、それを考えながらそういう措置をとりたい、したがって、これから個別の証券会社——いろいろな事情がありますから必ずしも機械的にいきませんが、原則としてはもちろん減る方向に持っていく、個々の会社につきましては、個別の金繰り、資金繰りの状況等を見まして、三月末までの具体的な圧縮の計画をとりたい、かように考えております。しかし、三月末に千五百億円にするかどうするかということは、いまの段階で責任あるそういう数字的な作業はむずかしいかと思いますが、方向としてはそういう方向でいきたいと思います。
  192. 有馬輝武

    ○有馬委員 大臣の言われるように、運用預かりを廃止するという方向で進めていく、ぜひそうなきゃいかぬと思うのでありますが、その際起こってくる問題は資金調達の問題であります。これを担保にして大体千六百億円の資金が調達されて、有価証券、不動産を持つ繰り越し増に伴う赤字金融に使う、こういう形で運営されておるわけでありますが、これを廃止する方向でいく場合に、この資金調達の面についてはどのような指導をされるのか、これをお聞かせいただきたいと思います。
  193. 加治木俊道

    ○加治木政府委員 三月までの圧縮過程では自力でそのギャップは埋めていく、自力でというのは、内部留保で、要するに自己の企業内の蓄積資金でまかなうことになるわけですが、そのほかに、市中ベースで金融が可能な限り、市中ベースの運用預かりという無担保で不特定多数からの顧客の預かりに依存しないで、特定の金融機関に相対で自己の信用を基礎にして金融をつけていく、これが通常の正常な金融の姿だと思うのでありますが、そういう措置を講じながら圧縮していく、さて、その三月三十一日以降新規の預かりを認めないということにかりに踏み切るとしますと、あるいはここでギャップが現実の問題として生じてくる可能性があると思うのでありますけれども、今後の市況のいかんにもよりますが、基本的な考え方としては、不動産にしましても、これは長期に固定する資金を必要とする、それから株式は非常にリスキィな商品である、こういうものは自己の資本の範囲内でまかなうのが健全な経営の姿だと思うのであります。したがって、内部留保に重点を置きながらこの問題を吸収さしていく、そうしてなお足りない部分は蓄積された内部留保の信用を基礎にして、できるだけ市中ベースでこれをつながせる、なおかつ、もしそこでギャップが残るとすれば、これは関係方面と相談してみなければなりませんけれども、たとえば証券金融会社等の機能を活用といいますか、利用してそのギャップを埋めることを考えざるを得ないだろうと思いますが、むしろこれは最後の手段でありまして、できるだけ自力、あるいは市中ベースに切りかえるような方向で指導していくべきじゃないかと考えております。
  194. 有馬輝武

    ○有馬委員 そこで、大蔵省としても、それがうまくいかなければまたいろいろ手を打たざるを得ないだろうと思うし、新局長としても構想を持っておられるだろうと思うのでここでお伺いをしたいと思いますが、このような状態で進んでいく場合には、やはり支払い準備の率を引き上げるか、あるいは三十八年に出た坂野通達ですか、再度こういうものを出すか、こういうことになってくるだろうと思いますが、この二つについてどのように考えておるか、この際お聞かせをいただきたい。
  195. 加治木俊道

    ○加治木政府委員 運用預かりは総額を圧縮していく、総額を圧縮しないで支払い準備を厚くするということでもいいけれども、しかし、いずれにしましても、支払い準備を厚くするという方向考えるということは、お客に対する預かり残はあまり減らないということになりますから、やはりお客に対する預り残を減らさせるということに重点を置きまして、できるだけ総額を圧縮するという方向で持っていきたいと考えております。  それから、言い落としましたけれども、いま御指摘がありましたように、不動産と有価証券が主として外部からの金融に依存しているということになるわけでございますが、証券会社の商品、有価証券はできるだけ圧縮したい、これは、証券会社は、少なくともブローカーを主体とする証券会社については、ディーラー機能はブローカー業務を遂行する範囲に漸次圧縮せしむべきではないか、そういう職能の純化という意味からと、もう一つは、非常に危険性の高い商品でございますから、経営体質を改善するという意味においてもこれは圧縮するつもりでおります。ただし、これもまだやっと正常化の緒についたような状況でございます、市場もまた証券会社も。したがって、機械的に一律に圧縮するということが、いまこの際踏み切れるかどうかという点については、若干私は自信を持っておりませんが、少なくとも個別に呼んで具体的な計画を出させる、そして現実に、再来年の一斉免許制切りかえの際には、権衡のとれた、たとえば資本金に対する一定の比率でもってそれが可能なように、そういうところに持っていきたいと思います。いずれにしましてもその辺かなりむずかしい点ではありますけれども、だからといって運用預かり廃止の方針を動揺させるということは全然考えておりません。
  196. 有馬輝武

    ○有馬委員 次に、保有組合が凍結株の処理を考えておるようであります。これは投信からの肩がわりの、簿価で一千八百二十七億円のものを売却するということらしいのですけれども、これもまた及ぼす影響というものとの兼ね合いでなかなかむずかしい問題を含んでおるようでありまするし、特に四社あたりがその金融機関や事業法人に対しまして値引きや買い戻し条件つきで交渉しておるようでありますが、これは問題が相当からみ合っているんじゃないかと思うのでありますけれども、この相場に及ぼす影響等をどのように見ておるか、これをお聞かせいただきたいと思います。
  197. 加治木俊道

    ○加治木政府委員 市場は凍結株をそのままの形で継続しなければならないような異常な事態を脱したと思いますけれども、何せ大きな凍結株でございますから、これを解消する過程では相当市場に影響があるだろうということはよくわかるのでありますけれども、いまおっしゃったような、これを市場で消化させるために、証券会社が買い戻し条件をつけるとか、特別な値引きをやるというようなことは私聞いておりませんし、また、そういうことはさせるべきではないというふうに考えております。凍結株の放出分がそれだけ市場の需給関係にプラスアルファとなって需給関係に妙な圧力をかけるというようなことはできるだけ避けたい、そのためには、市場に潜在する需要が売りに対応するよう、買い需要を発掘しながらそれに対応さしてこれを処理していくということができれば、市場に対する影響はかなり緩和されるんじゃないか、これは銘柄と値段によっては、一般投資家あるいは機関投資家等が買い注文を出してくるというものはあり得ると思うのであります。しかし、まだ放出のしかたをどういうようにするかは、できるだけ市場の関係者の意見を聞いた上できめたいと思っておりますが、大体市場の関係者も、一般投資家の買い需要というものと対照させながらさばいていこうという方向で研究いたしておるようでございます。
  198. 有馬輝武

    ○有馬委員 生保なり産業界なり金融界にはめ込もうとしているんじゃないですか。
  199. 加治木俊道

    ○加治木政府委員 ホットマネーを入れて持たした株が妙な形で再び市場に出てくる、あるいは業者に対して売り戻しとなって業者の経理を圧迫する、そういうやり方は考えていないと思いますし、かりに考えておるとすれば、われわれ拒否せざを得ないと思います。しかし、潜在する需要をさがしてくるということを、もしはめ込みと言わざるを得ないということであれば、それははめ込みということばが適当な表現かどうかわかりませんが、要するに、注文をとってくるということであります。これは正常なとり方である限りは、注文をとってきてそれに対応させることは、私は凍結株の解消のしかたとして悪いことではないと考えております。
  200. 有馬輝武

    ○有馬委員 結論を言われたのでそれを信頼しておきたいと思いますが、とにかく、産業界なり金融界なりに保有組合が考えておるような余裕があるとは私は見ていないわけです。ですから、いまの結論をしっかり覚えておいていただきたいと思います。  冒頭にお尋ねをいたしました山一の問題に再び返りますけれども、私たち見ておりまして、これも前の局長のときから私お伺いしたのですが、旧山一、新山一ということで新山一をつくられる理由がぼくにはどうもわからなかった。いまもってわからないのです。再建案というものは見せてもらいましたが、その再建案以前の問題が私にはわからないのです。結局は免許基準で規定された負債比率の十倍以内、これを表面上ごまかすために新山一をつくったとしか私には考えられないのでありますが、いま一度ここで新山一をつくる理由についてお聞かせいただきたい。
  201. 加治木俊道

    ○加治木政府委員 関係者間で考えられております新山一をつくって会社を分離する、ということは、残る会社は整理会社になるわけでございますが、この趣旨は、まず実質的には整理資産負債というものと、顧客につながっている営業関係の資産負債というものは分離したほうが信用関係が安定するのではないかということが一つでございます。したがって、整理資産負債の動向によって顧客につながる営業関係は影響を受けないような体制のもとにするためには分離したほうがいい、もう一つ、いまのままでおきますと、特融関係をどういうふうに整理するか、整理に踏み切れるか、あるいは特融は終わったのかということは何ら不明確であります。これを分離することによって整理資産負債を明らかにして、この整理を進捗させながら特融の返済計画に具体的に一歩踏み出す、こういう意味でもこの両者の関係を分離したほうがいいのではないか、それともう一つ、免許——再来年には免許制にどうしても切りかわらざるを得ないのでございますけれども、現状のままではとうてい免許資格が得られない、これは実質的に信用関係が不安定なものに対して免許を与えるということはとうていできないことでございますので、したがって、免許の対象とする以上は、免許基準に合致するような負債比率等を持った新山一にせざるを得ない、こういうことでございます。
  202. 有馬輝武

    ○有馬委員 大臣、いまの証券局長のことばを聞いておりまして、特融も受けられないで免許資格を獲得するために悪戦苦闘しておる他の証券会社は、幾ら考えてもこれはぴんとこないのじゃないかと私は思うのですが、どうでしょうか。その名目は確かに証券恐慌を防止するのが目的であったということであっても、これも先ほど佐藤委員も触れられたのですが、昨年一年間で六千件をこえる企業倒産があった中で、いわば体質改善のために、簡単明瞭なだれが見てもすっきりしたような形で行なわれておりますけれども、しかし、そのすっきりした姿がいまの空気の中ではすなおに受け取れないものが残るのではないかと思うのでありますが、これに対する大臣の御見解をお聞かせいただきたいと思うのであります。
  203. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 一つの企業が行き詰まりました場合、しかし、その企業には何らか立ち上がりの基盤というものもあるという際のやり方といたしましては、新会社をつくって、そこに新しい会社の営業に必要な資産負債を譲渡する、こういう行き方が通例でございます。これは御承知のとおりだと思います。そういうような考え方関係者が新山一構想というものをつくったんだろう、私はすなおにそれを受け取って、その構想で先ほど申し上げましたような三つの原則が貫けるというならばそれでけっこうじゃないか、そういうふうに考えておるわけであります。どういう底意があるのかというようなことは、私は毛頭考えていない、すなおに、常識的にやればこういうことになる、そういう方向で適正にやろう、こういうことでございます。
  204. 有馬輝武

    ○有馬委員 私が尋ねた意味は、やはりこういった異常な事態、だれもが納得できないような事態を惹起した原因は、やはり大蔵省に証券行政不在、この結果がやはりこういった形になって出てきたのではないか。たとえば運用預かりについて、いまごろになってああでもない、こうでもないと言う前に、ちゃんと指示しておればああいう事態にならなかっただろうと思う。やはり責任を転嫁するということでなしに、自分の行政のまずさというものを反省してからものにかからなければ一歩も前進しない、これは私の感想です。これだけ言っておきまして、本日は証券の問題については以上で終わりたいと思います。  次に、道路公団総裁にお伺いしたいと思います。  総裁、お忙しい中を非常に恐縮でございます。  最初に、総裁の関係のところでの各地区、各公団に投下されました資金内容について、概要でけっこうでありますからお聞かせをいただきたいと思います。
  205. 富樫凱一

    ○富樫参考人 日本道路公団の資金構成についてお尋ねがございました。道路公団の資金は、料金収入のほかに、政府出資金、それから政府資金の借り入れ金、これは資金運用部からの借り入れ金と産業投資特別会計からの借り入れ金とございますが、政府資金の借り入れ金、それから道路債券と、いわゆる世銀、国際復興開発銀行からの借り入れ金からなっております。
  206. 有馬輝武

    ○有馬委員 大まかでけっこうでございますから、この額を。
  207. 富樫凱一

    ○富樫参考人 四十年度末の資金を申し上げますと、政府出資金が四百五十億円、それから、これはかつて前にありましたのですが、政府補助金が五十五億円、それから資金運用部資金借り入れ金が百九十七億円、産業投資特別会計から百八十七億円、道路債券が二千三百七十九億円、世銀からの借り入れ金が四百三十六億円で、計三千七百四億円となっておりましたが、昭和四十一年度におきましても、政府出資金が百五十四億円、産業投資特別会計借り入れ金が百七十億円、道路債券が九百九十六億円、それから世銀の借り入れ金が百十七億円、計千四百三十七億円を受け入れる予定にいたしております。
  208. 有馬輝武

    ○有馬委員 そのうちの道路債券の消化はどういうぐあいになっておりますか。
  209. 富樫凱一

    ○富樫参考人 道路債券の消化は、公募いたしまして消化いたしておりますが、幹事銀行をきめまして、銀行のシンジケートに引き受けをお願いいたしております。
  210. 有馬輝武

    ○有馬委員 そのシンジケート団は何行ですか。
  211. 富樫凱一

    ○富樫参考人 二十四行でございます。
  212. 有馬輝武

    ○有馬委員 次に、その投下資金の償還計画のあらましをお聞かせいただきたいと思うのです。
  213. 富樫凱一

    ○富樫参考人 道路債券の償還計画でございますが、いずれも七年で償還するように考えております。その七年のうち二年は据え置きでございまして、その後半年ごとに発行総額の三%を償還いたしまして、残額を最終の償還日に償還する、こういたしております。利率は七分でございます。
  214. 有馬輝武

    ○有馬委員 その償還は計画どおり現在進行いたしておりますか。
  215. 富樫凱一

    ○富樫参考人 計画どおり進行いたしております。
  216. 有馬輝武

    ○有馬委員 次に、各地区別に、各公団別に分かれておると思うのでありますが、その一地区でとらえてみますと、事業を全体の計画の中でプールされていかれるわけですか。
  217. 富樫凱一

    ○富樫参考人 いまは路線ごとに経理いたしておりまして、路線ごとに償還計画を立ててございます。プール制はとっておりません。
  218. 有馬輝武

    ○有馬委員 そういたしますと、路線ごとにやりますと、その償還が非常に困難なところも出てくるのじゃないかと思いますが、その実態はどうなっておるのですか。
  219. 富樫凱一

    ○富樫参考人 公団のいま営業いたしております路線、これは高速道路を除きまして六十五本ございます。そのうち十九本が、いまの状態で参りますと償還がなかなかむずかしい、こう思われます。実はこれらの償還不能のと申しますか、償還のむずかしい路線につきましては、料金の一〇%を損失負担金として積み立てておりまして、償還期限が来ましたときにまだ償還する額が残っておりましたときは、それに入れまして償還するという考え方に立っております。
  220. 有馬輝武

    ○有馬委員 次にお伺いいたしたいと思うのでありますが、その通行料金の管理の面で、私たちも実際に利用いたしましてときどき感ずることがあるのですが、通行券が偽造されるとか、あるいは使用済みの券が再び他に流出して使用されるというような事態は皆無というような状態で、すっかり完備されておるものかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  221. 富樫凱一

    ○富樫参考人 いまお話の点は、公団といたしましても一番気を使っておる点でございます。これは皆無とは申し上げられません。そういう事態があったことがございますけれども、これは通行券と収入金とのチェックを厳重にやるということで、各収受員なり管理事務所の職員が十分戒心してやらなければ徹底をし得ないわけでございますが、その点はやかましいように指導しておるのでございます。なお、この点につきまして、もっと機械的な収受方法をとりまして誤りのないようにできないかを現在検討いたしております。
  222. 有馬輝武

    ○有馬委員 総裁からも皆無とはいえないというような御答弁でございましたが、皆無といえないということであれば、ある程度の実態はつかんでおられると思うのでありますが、許されるならばその実態をお聞かせいただきたいと思うのであります。
  223. 富樫凱一

    ○富樫参考人 これはほんのわずかの例でございますが、通行券の偽造ということはまだございません。ただ、通行券を渡さずに料金を取ったのではないか、これも確証があるわけではございませんが、そう疑われることが一、二ございました。その程度でございます。
  224. 有馬輝武

    ○有馬委員 次にお伺いしたいと思うのでありますが、出札係なり何なりのあの待遇は大体どういうぐあいになっておりますか。
  225. 富樫凱一

    ○富樫参考人 収受員の給与は一般の公団職員並みでございまして、それに料金徴収手当というのを支給いたしております。
  226. 有馬輝武

    ○有馬委員 私しょっちゅう有料道路を通りながら感ずるのですが、若い元気な人たちがあの出札係に立っておる。どうも就労の問題と関連してぴんとこない場合が多いわけです。やはりああいった点については身体障害者なり何なり十二分に活用できる分野があるような気がいたすのでありますが、総裁もこれには同感だろうと思います。それで、具体的にそういった面について検討された経緯があるならばお聞かせをいただきたいと思うのであります。
  227. 富樫凱一

    ○富樫参考人 実は、料金収受員については女子でもいいではないかというような議論もありましたし、お話のように身体障害者でもこれはできるのではないかというお話もございました。しかし、あの料金収受の事務はなかなか大きな労働力が要るのでございます。それは、労働科学研究所だったと思いますが、そこに頼みましてどれだけのエネルギーが要るかというようなことを調べてもらったこともございます。ただ、路線によりましてはそれほど過重な労働でなく、交通量の閑散なところは簡単な労働で済むわけでございます。こういうところにつきましては壮年者を置くというようなことはもったいないと思いまして、実はそういう閑散な道路についてはこの事務を委託いたしまして、地方のその土地の方にやっていただくというような方法をとっております。高速道路などでは、料金収受といいましても、簡単な事務のようでありますけれども、なかなかに労力も要り、それに忙しい、また危険を伴う仕事でもありますので、路線の性格に応じて配置をいたしていきたいと考えております。
  228. 有馬輝武

    ○有馬委員 実は、本日質問いたします前に資料を御提出願えばよかったのでありますが、いまの労働条件の問題につきましてもそうでありますが、ここでお願いをしておきたいと思います。  先ほど総裁が御答弁になりました六十五線の投下資金と、それから償還計画、これを文書にして御提出をいただきまして、機会をあらためてお伺いしたいと思いますので、お願いをいたしておきます。  本日の質問はこれで終わります。
  229. 金子一平

    金子(一)委員長代理 次会は、明後十日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後三時五十分散会