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1966-04-27 第51回国会 衆議院 大蔵委員会 第37号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年四月二十七日(水曜日)    午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 三池  信君    理事 原田  憲君 理事 坊  秀男君    理事 山中 貞則君 理事 吉田 重延君    理事 平林  剛君 理事 堀  昌雄君    理事 武藤 山治君       岩動 道行君    大泉 寛三君       奥野 誠亮君    木村 剛輔君       木村武千代君    小山 省二君       砂田 重民君    田澤 吉郎君       谷川 和穗君    西岡 武夫君       毛利 松平君    山本 勝市君       渡辺 栄一君    渡辺美智雄君       佐藤觀次郎君    只松 祐治君       野口 忠夫君    日野 吉夫君       平岡忠次郎君    藤田 高敏君       山田 耻目君    横山 利秋君       竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君  出席政府委員         大蔵政務次官  藤井 勝志君         大蔵事務官         (主税局長)  塩崎  潤君         大蔵事務官         (証券局長)  松井 直行君         文部事務官         (管理局長)  天城  勲君  委員外出席者         大蔵事務官         (証券局企業財         務課長)    安井  誠君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 四月二十七日  委員砂田重民君及び永末英一君辞任につき、そ  の補欠として川野芳滿君及び竹本孫一君が議長  の指名で委員に選任された。     ————————————— 四月二十六日  戦傷病者恩給担保融資額の是正に関する請願  (植木庚子郎君紹介)(第三四五一号)  同(赤澤正道紹介)(第三五二三号)  同(丹羽喬四郎紹介)(第三五七九号)  同(野原正勝紹介)(第三五八〇号)  同(中野四郎紹介)(第三五八一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  公認会計士法の一部を改正する法律案内閣提  出第一〇二号)      ————◇—————
  2. 三池信

    ○三池委員長 これより会議を開きます。  公認会計士法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。只松祐治君。
  3. 只松祐治

    只松委員 経済界の公正妥当な運営、あるいは民主化、いろいろことばはありましょうが、近代化にとって公認会計士というものがたいへん重要な位置を占めておるわけです。しかし、まだ、公認会計士制度ができてから日が浅いこと等々のためにその目的を達成する段階に至っておりません。したがって、そういう趣旨を含んで今回の公認会計士法改正が行なわれるようになってきたと思います。したがって、法律案についてはきょう若干御質問をいたしますが、証券局あと国税庁主税局長お見えになりますが、実際上、この公認会計士が被監査団体に対してどの程度真実監査をしておるか。別の面で言うならば、力を持ち、権限を持っておるか、こういうことになると思うのです。まずそういう点について御所見を証券局のほうに、あるいは国税庁のほうがこれのほんとうのことはわかっておるかと思いますが、それぞれにひとつお答えをいただきたいと思います。
  4. 松井直行

    松井政府委員 公認会計士職業会計人として被監査会社監査にあたりまして、どの程度監査の深さと真実性把握しておるかという御質問でございます。残念ながら、只松委員おっしゃいましたとおり、まだ公認会計士制度発足後日が浅うございますことと、それから公認会計士職業会計人としての独立性というものがまだ十分でありません。一つには、これは報酬をもらって監査をやっているという観点から、どうしてもその従属性が払拭できないということ、それから、近代経営大会社でございましてもそれぞれ内部監査組織を持っておりますし、株主総会のときには決算書類株主総会の承認を得るという観点から、それぞれ責任を持って決算書類を処理しているところに第三者が来てひっくり返すということは、むしろ何かよけいなことではないか、それにまた、高い報酬を払うのはばからしいという誤った考え方をまだ一部に持っておられる経営者なきにしもあらずという状況でございます。したがいまして、公認会計士力量をあげ、徹底した監査ができるところまで資質、技量の向上、その社会的地位なり信用力を発揮するということが第一点でございますが、あわせて、事業経営者のほうにも、そうした公認会計士が社会的に果たすべき任務義務と、投資大衆のために果たすべき任務義務というもののほんとうの意義をしっかり認識してもらうことが大切であろうと思うわけであります。おっしゃるとおり、まだそういう理想の形態に至っておりません。したがいまして、昨年度三月期決算から有価証券報告書審査を非常に厳格に証券局でやり出しましたが、それ以前は、おそらく会社とのなれ合い的な監査報告を書いたという公認会計士も少数ながらあったのではなかろうかということが十分推定し得るわけでございます。しかしながら、大きな会社粉飾決算を問題の発点にいたしまして、その後、商法違反のみならず、証取法違反という観点で、会社及び監査をいたしました公認会計士両方とも刑事訴追を行なうという手も初めて打ってまいりました関係上、会社側考え方も幾分変わってきたことも事実でございます。また、公認会計士自身といたしましても、やはり不徹底な、あるいは故意に誤った証明をすれば身分を失うところまでの強い懲戒処分も受けるし、あるいは、場合によっては刑事罰も受けることがあるという強い認識に立ってまいりました関係上、できるだけ良心に恥じない監査をしたいという気持ちはみなぎってきておると言い得ると思います。あわせて、監査実施準則、すなわち、公認会計士がどの点に着目して、何を監査しなければならないか等の目のつけどころ等につきましても先般改正を見てまいりました。真実実体把握のために必要な措置がとれるよう監査実施準則改正もあった今日では、二、三年前と違いまして、公認会計士真実実体を発見したいという意欲及びその手続の面におきましておいおい充実してまいっておるということが言い得ると思います。あわせて、会社側の態度も非常に真剣になってきました証拠といたしまして、従来不適正または意見差し控えという監査意見がついておる場合が非常に多うございましたけれども、昨年を転機といたしまして、やはり公認会計士に不適正あるいは意見差し控えをつけられるということにつきまして非常に恥じと思う風習もできてまいり、公認会計士十分意見を調整して決算をやるという風習がわいてきたという証左でもありましょう、不適正または意見差し控えという場合が相当減ってきておるということでもっても了承し得るところじゃなかろうかと考えます。
  5. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私、国税局長も経験しましたときに申告面も見てまいったのでございますが、公認会計士方々が確かに企業経理に関与されておるのでございます。最近におきましては、種々の努力が積み重ねられまして、粉飾決算排除方向に向かっておることもまた事実だと思うのでございます。それがどの程度真実と違っているかという御質問かと思うのでございますが、私の印象では、やはり税務ほどの調査権限、たとえば、反面調査権限ももちろん公認会計士方々は持っておられませんので、そういった面から、税務調査に比べますと、徹底した面があるとも言えないような感じでございます。それもまた個々会社、あるいは公認会計士技量力量その他によって違いましょうけれども、一般的にはそういうふうなことが言えるのではないか、かように私は感じております。
  6. 只松祐治

    只松委員 極端に私が申すならば、ほとんどの会社が何らかの形において大なり小なり現在粉飾決算をしておる。このことは、ある意味では極端ではないと言っていいくらい行なっておるわけです。私がいま知っておるある会社、いわば超一流会社ですが、この会社で、たとえば架空数字です。ほんとう数字があるけれども架空数字にしておきますが、大蔵省証券局が監修した有価証券関係株主総会報告書がありますね。これによると、超一流会社で、しかも証券局で相当厳重に審査をしておっても、負債は一億円にしかなっておらぬ、その負債会社契約書を取りかわして、あなたの会社とは二億円ある、こう言っているが、実際上調べてみると十億円ある、こういうことがあるのですよ。これは山陽特殊鋼だけではない。たまたまあれは別な面から不正事件が出てまいりましてわかったからああいう問題が出ておるわけですけれども、多かれ少なかれこれに類したものがある。たとえば、政治献金もその一つの例ではございましょうが、合法的に届けられておる政治資金規正法に基づくもので日本の政界、財界、官界が動いておると思ったら大きな間違いです。相当表面に出ておらないものがあることも事実です。そういうものは決算上出てきておりませんから、こういうことを言えば、これは、大は政治資金における政党から、小は個々人のシンパ的な存在から、社長政治家との個人的なつながりということに及びまして、相当膨大なものが動いておるわけです。こういうものは、会計検査上ほとんど日本では姿をあらわしてきておらないわけですね。  そういう面から、これは大きな一、二の例でございますが、こまかいいろいろなことを言えば、私が税法上の場合いつも言うように、中小法人の場合、東京では調査率が低いから三〇%前後しか決定があらわれてきておりませんけれども、地方では四〇%、四五%の調査率の場合非常に高い更正決定率というものを発見されておる。さらにその場合に重加算税等も相当取られておる。こういう点、これは公認会計士も、中小法人大会社は本質的に違ってきますから、それをそのまま公認していくわけにいかないけれども、やはり大法人の場合にもそういうものは言い得るのだ。これをただ単に公認会計士制度だけをいじったり、あるいはあとで若干触れますけれども、公認会計士だけを懲罰していく、こういう形に追い込んでいって、公認会計士だけに責任を求めても、なかなか粉飾決算というものはなくならない、あるいは株式会社ほんとう近代化民主化ということはできていかない。証券局でいうならば、正しい会社の監督はできないし、国税庁なり主税局立場からするならば、完全な税の把握というものは容易ではない、そういうことがいえる。いままで私たちは、こういう税金面からだけ大会社のいわば調査漏れとか、あるいはいろいろなものがあるんじゃないかということをつついてきたわけでございますが、こういう機会でございますから、ひとつ徴税面という面だけでなくて、もう一段視野の広い立場から、もっと正しいといいますか、公正な会社経理というものが行なわれなければならぬ、こういうことを私は思っております。その中で私は一、二例をあげましたけれども、そういう面について、あるかないかということはどうかと思いますけれども、私はたくさんあると思うが、そういう弊害をなくしていく方向について、積極的な立場からのお答えをいただきたいと思います。
  7. 塩崎潤

    塩崎政府委員 先般、法人税法の御審議をお願いいたしまして、御賛成いただきまして、去る四月一日から実施しておるのでございます。その中に粉飾決算規定を入れさしていただきまして、これもいま只松委員のおっしゃったような方向会社経理をよくする方向で、粉飾決算をなくする方向で私どもが考えた規定一つだと思うのでございます。税金面で、申告におきましては比較的適正なる経理はするんだけれども、公開決算面におきまして粉飾決算が行なわれる、あるいは公開決算と同じように、申告面におきましても粉飾が行なわれまして、あと粉飾を訂正して税金を返してくれといったようなことまで起こりましたのがこの間までの状況であったのでございます。今回の改正によりまして、私は、粉飾決算がなくなることを期待しておるわけでございます。粉飾決算をいたしましても、直ちに税は返すものではないということで、一つの警告を与えたつもりでございます。しかし、これだけでは、私は、おっしゃるように高い立場からの経理がよくなるということには考えておりませんし、今後粉飾決算をなくするにはどうしたらいいか、税務がこれにどの程度役立つか、ひとつ大いに検討してみたい、かように考えております。課税所得企業所得との関係、あるいは商法による企業利益との関係、このあたりにまだまだ不突合がございますし、こういった面から、只松委員おっしゃられるように、企業経理にも無理がき、これがまた粉飾とも見られる点もございます。さらにまた、税務企業経理に干渉し過ぎるために企業経理がゆがむというような批判もございます。こういった角度もあわせまして企業経理が適正になるように、そして、私の理想といたしましては、企業会計による所得も、商法による所得も、課税所得もおおむね一致するような方向で、そして公開決算も、税の申告利益も合致する方向に持っていきたい、そして粉飾決算を防止し、経理が適正な方向にいくように持っていきたい、税務もその面にお役に立つことがあればどんどん利用していただきたい、こんなような気持ちで、証券局その他と協議していくつもりでございます。
  8. 松井直行

    松井政府委員 粉飾決算を徹底的になくするには、いま御審議願っています公認会計士制度改正だけでは不十分じゃないか、おっしゃるとおりでございまして、もっと総合的な施策が必要なことは仰せのとおりだと思います。  そこで繰り返しますが、どんな法制をつくり、どんな手を打ちましても、やはり何といいましても、会社経営者自己責任といいますか、この徹底をはかることが第一番だろう、これを、繰り返しでございますが、第一番にあげておきます。  第二点といたしましては、公認会計士監査体制の充実をはかるために今回の法案を提出しておるわけでありますが、このほかに、わがほうで企業会計審議会という制度をとっておりまして、公認会計士監査をやります手続基準であります監査実施準則改正したということも先ほど申し上げたのでございますが、あわせて、監査基準あるいは監査報告準則改正もおおむね成案を得ておりますので、同審議会の結論としてやがて実施に移される時期が近かろうと思います。  第三点といたしましては、御存じのように、企業は、独立で単独の経営をやるというより、むしろ親子会社あるいは関連会社を持っておる場合が多いので、それを総体として、全体としてつかまえなければ、個々企業だけを追っておっては、その実態、すなわち、財産状態及び営業成績がわからぬというほど複雑怪奇になってきております。これは申すまでもなく、御存じのとおり、そうしたグループを一体とした事業体として考えて会計処理の適否を判断するという観点から、連結貸借対照表という制度を導入しなければならぬとわれわれ考えておりまして、欧米の例に徴しまして、目下非常に研究をしておるところでございます。あわせて、証取法第二章にございます有価証券届出制度及び報告制度についても所要の改正をしたいと思っております。  そのほか、いま主税局長から話がありましたけれども、いわゆる税法による一つ会計処理のルールなり、あるいは企業会計原則なり、あるいは商法にいう計算規定という中に、それぞれの特殊の分野の性格によりまして幾ぶんの相違がございます。それが混乱を招いておる一つの原因であろうと思いますので、かねがねこの間の調整については努力が積み重ねられてきておりますけれども、この際思い切って、税法も、税法立法者立場から、塩崎局長からそういう御意見がありましたから、会計原則なり税法のルールなり、あるいは商法計算規定につきまして統一的な運用ができないかどうか、これについても徹底して勉強を進めていきたいと思っております。  一方、商法におきます監査役制度、あるいはその事業年度といいますか、半年がいいかあるいは一年がいいか、そういう問題についても、広く検討を加えてまいることによって、総合的な手段を検討する必要があると考えます。いまおっしゃったような、単に公認会計士だけの責任を求めるだけではほんとうの成果を期しがたいということは、おっしゃるとおりであろうと思います。  いま申し上げたようないろいろの観点から、総合的に今後とも検討してまいりたいと考えております。
  9. 只松祐治

    只松委員 いまお答えの中にもありましたが、私は次にその問題にいこうと思ったのですが、親子会社とか関連会社、こういうことで、親会社だけを調べても、下にいろんな抜け穴が通っておりまして、そこにもうけたやつがするすると抜けていったり、今度は損した場合でも、そっちに手形を割ったり、いろんなことで、損をそっちにかぶせてやって、会社があまり赤字になっておらないように株価操作やいろいろなことをやっておる、こういうようなことがある。そういうことの一つの象徴的なものに、大会社のほとんどは第二会社として土建会社ないし土地会社をつくっているのです。こういうことを御存じですか。ほとんどの会社が、生命保険にしても、全部何とか不動産というものをつくっていることを御存じですか。
  10. 松井直行

    松井政府委員 おっしゃるとおりであろうと思います。特に、会社固定比率改善をはかろうというところに、そういう別個の不動産会社を持つということの発端がありますが、同時に、昨今はそういうメリットが幾分なくなったかと思いますが、親会社営業用資産を持つほかに、一般的な宅地造成その他、いわゆる不動産業務をやることによって相当な収益をあげられるという時期がございましたので、それに拍車をかけまして、事業会社なりあるいは信用機関等関連不動産会社を持つことが一般の通例になってきておるという事実は承知いたしております。
  11. 只松祐治

    只松委員 いまは、たてまえは自由企業ですから、その会社不動産会社を持つことができるとかできないというのは、なかなか言えないかもしれませんけれども、指導上の問題、あるいは税金徴収される場合にも当然関連してくるわけですが、本来ならば、生保なり損保なり、あるいはまともな鉄鋼なり何なりをやる会社がこういう不動産業務などというものに手を出すのは、その意味で邪道です。しかも、相当多額なものが動いておって、そこの中の、いわば大株主といいますか、あるいは社主と申しますか、そういう立場にある人がその中のまた子会社の地所を持っているわけです。これは財界の中の人のうがった言い方をすれば、いま大会社社長、重役といえどもなかなか自分の自由になる金が取れない、そこで、一番簡単な道は、土建会社あるいは不動産会社をつくって、そこで操作をしていくことだ、そうすると、この場合には大会社ですから、大蔵省なり証券局なり、あるいは国税庁の目も届きかねるし、あるいは株主なりほかの取締役なり、そういう者の目もなかなかそこまでは回ってこない、しかも、一つ当たりの物件というのは、そういう大会社をバックにいたしておりますから、大きなものが動く、こういうことで、実際上、大会社の大株主や何かの私的な金は不動産関係によっていろいろ動かされておる、こういうことを言っておる人さえあるわけなのです。  したがって、皆さん方ほんとう粉飾決算をなくしていこうとするならば、もちろん公認会計士制度をやめろとか、そういうことは言いませんが、この制度を強めることはもちろんでございますけれども、皆さん方行政の衝に当たられるわけですから、経済全般行政をされ、あるいは徴税に当たられておる皆さんが、もっと角度を変えて、そういう面までも、いまの会社なら会社のどこに大きな抜け穴があるだろうか、あるいは抜け道があるのだろうか、そういうことも——あまりこまかいことをいびり散らかすということは行政面としていいことじゃないと思うのですけれども、しかし、私がいま言っているのはあまりこまかいことではない。一つの大きな問題として、ほとんどの会社が、いまお認めになりました不動産会社を持っておるという実態からするならば、このことは言えるわけです。したがって、私は最初に抽象的にお聞きいたしましたけれども、具体的な一つの問題として、その会社それ自体の粉飾決算ということとあわせて、親子会社関連会社、特に不動産を営んでおる会社の問題について、的確な把握に従って調査をし、それの課税ということについてひとつ皆さんの御指導をお願いしたいと思いますが、いかがですか。
  12. 松井直行

    松井政府委員 いま仰せのような実態から会社経理粉飾が行なわれやすいということは、まさにおっしゃるとおりであろうと思います。公認会計士監査という観点からだけ申しますと、先ほど私が申しました監査実施準則というところで、関連会社へも往査しなさい、みずから足を運んで調べに行きなさいということを最近つけ加えましたことが一点、それから第二点は、繰り返しですが、連結貸借対照表制度をぜひ早く導入するということでおっしゃる実をあげたいと考えております。  なお、特殊な業種につきましては、いまおっしゃったように、いろいろな会社を持つことは自由だとおっしゃいましたが、いまわがほうの証券業につきましては、免許制に相なります。そういう不動産会社を持つことは、一種の投資勘定を持ち、その会社の株を、たとえば全株を持つということにもなってくるわけでありまして、一体そういう投資勘定を持つことが、本業にとってどういう関係にあるのかどうかということを考えまして、本業営業用資産を持つ程度のものはいいといたしましても、一般的な土建業とか不動産業務を営むような膨大な投資勘定を持つということは、たとえば証券業なら証券業保険業なら保険業という立場から相当な規制が加えられるということをわれわれも相当期待もし、実施していくつもりでおります。特殊な営業体につきましては、そういう面からの行政指導も行なわれるのではないかと考えられます。監査という観点から申し上げますれば、先ほど申し上げた二点によって実をあげていきたいと考えております。
  13. 只松祐治

    只松委員 ちょっと話はそれますが、私は、地震法案のときに多少本問題を論議しようと思っておったんですが、いまの資産評価なり、会社の完全な経理内容をつかんでおらない一つの問題として、たとえば、十万円の生命保険に二十年前加入したとする。御承知のように、二十年前の貨幣価値と現在の貨幣価値とでは完全に違うわけです。よくいわれますように、たとえば、二十年前は、一万円の退職金があれば、やめたときに五軒の家作が建った、そして家作のめんどうを見ながら老後が暮らしていけた。その当時は平均寿命も短いわけです。いまはインフレになって、平均寿命は長くなってきましたが、そういう客観情勢がありますが、とにかく、インフレが進みまして、いま五軒の家作を建てようとするならば、これは土地を買わなくとも、借りて家を建てても、四、五百万円はかかるんです。皆さん方退職されるとすぐわかります。したがって、退職して、土地は手に入れても家は建たない、こういう状況が起こってきております。五百万円平均にいたしますと、五軒で二千五百万円、二十年前と今日を見るならば、少なくとも土地家屋に関する限りそういう計数が言える。そういう生命保険会社が二十年前に土地を購入しておった、あるいは建物を持っておった。そういうものの資産評価の問題です。二十年前と現在、あるいは二十年という開きでなくとも、五年前をとってもすぐわかります。五年前に坪四万円ないし五万円で普通の家屋が建った。鉄筋は約倍です。いまは八万円ないし十万円かかります。このわずかの間に貨幣価値というものはインフレ政策によって下落をしているわけです。ところが、生保はそれからいわゆる累進していくかというと、そうでなく、二十年前の十万円は依然として二十年たっても十万円しか支払いがない。今後ずっとインフレが進んでいってもそれだけしか支払いがない。ところが、非常に大きな保険会社関係というのは不動産をたくさん持っておるわけですね。そういうものに対する正しい資産評価なり何なり、あるいは不動産だけでなくて、株でも三〇%前後持っていますが、こういう問題についてもどういう評価をしておるか。株なんか常に変動もいたしておりますからなかなかむずかしい。私はそのとき質問しようと思って、多少そういうもののデータは用意しておった。きょうは持ってきておりませんけれども、そういう会社経理内容を料率や何かと関連さして調べていくということが本来は行なわれなければならない。ところが、相互保険という相互という名のもとに、その相互保険の形式的な代表者が行って、ちょこちょこっとするだけで、実際上は全部生保経営者にまかされている、自由裁量になっている。しかもこれは監査の対象になっておらないでしょう、生保は。そういうことで、全然こういう実態がわからない、こういうことである。  ちょっと話がそれましたけれども、こういうふうに、生命保険会社に例をとりましても、その会社自体、さっきちょっと言いました不動産会社をほとんど持っている。それで、そういう自分の会社土地とか建物を全部不動産会社が持った形にして、自分がそれを借りた形になっておる。それでやっておりますから、そこに利益というものがそのまま出てこない、こういうことにもなるわけであります。そういうあれやこれやいろいろな大会社実態というものを私たちが見る場合に、ただ単に、この公認会計士法をある程度強めるということだけでは、会社経理実態を国民の前に明らかにしていき、したがって、それを別な皆さん方立場からするならば、行政的な、大蔵省証券局を中心とした関係からの指導も完全にはできないし、主計局や国税庁のほうの完全な徴税把握も容易でない。逆な意味で言うならば、ほんとう意味公認会計士というものを諸外国のように、特にアメリカのように強くする、こういうことに成功するならば、大蔵省のほうでもその指導監督がもっと楽になる、あるいは主税局国税庁のほうでも、特捜班をやたらにつくって調べ回らなくても、そういう手間も省けてくる、別な面からもそういうことも出てくる。したがって、こういう大問題を五分や十分で論じ尽くしたり、その問題点を全部さらけ出して論議しようという私の論そのものが多少無謀でございますけれども、私は、わずかの時間の間にそういう大きな矛盾のあることをここで指摘して、それを公認会計士の面だけから求めたり、締め上げたりするということでなくて、もっと広い角度から、皆さん方のほうもそれぞれの立場からそういう面を研究し、御検討いただきたい、そういうことを重ねて要望しておきたいと思います。いますぐそれの妙案というものはお答えできないと思いますが、それぞれそういう面について努力することをお約束いただきたいと思いますが、いかがですか。
  14. 松井直行

    松井政府委員 いま、土地はじめ固定資産評価に関連しまして、一般的な商法計算規定でも、固定資産は取得価格とかあるいは製作価格を簿価にしまして、あとは動かさないということになっております。これは保守的な計算で企業の内部を非常に厚くするということもございましょうが、これが生命保険等に発展いたしますと、いわゆる加入者への配当の問題もいろいろ関連してくるのでありまして、不当にだれかがもうけるのではないかということにも関連してまいると思います。一般的に企業の財務体質を表示する場合に、いまの固定資産、特に土地等について二十八年からすでに十五倍も十六倍も上がっておりますが、それを簿価のまま表示することでもっていま企業の財産的実力をそのまま表示したと言えるかどうか、まさにおっしゃいますとおり非常に大きな問題であろうと思います。これは企業会計に関します固定資産の評価についての大きな問題でもありますので、いまおっしゃった趣旨をよく体しまして、こういう問題も含めまして、私が申し上げたとおり、非常に広い観点からいろいろな問題と総合的に取り組んでまいる強い決意をいたしておる次第でございます。
  15. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私も只松委員と同じ気持ちを持っております。租税の面からも適正な経理ができるようにあらゆる努力をしていきたい、かように考えております。
  16. 只松祐治

    只松委員 そういう観点からいたしますならば、税理士法の改正のときも税理士業務の問題についていろいろ論議がありましたが、この公認会計士のいろいろな懲罰、罰則、こういうものも、先ほど申しますように、公認会計士の歴史が浅くて、しかも現状においては登録が二千五百名、その中で加盟が千九百名、こういうことで、公認会計士あるいは公認会計士協会それ自体に権限を持たせることは実際上困難な状況にございます。しかし、今回協会も全公認会計士をもって組織できるようになるわけですし、いろいろ公認会計士の力を強化する、こういう立場も出てきておるわけですから、私は一歩譲りまして、直ちに弁護士と同じように自主性をすべて与えろ、自主権を与えろとまでは申しません。ただ、やり方として、こういう機会に先に自主権を与えて、多少の行き過ぎなりあるいは足らないところがあるかもしれませんけれども、子供でもそうですが、子供ではない、日本の、いわば難関を突破してきて公認会計士さんになられたという方々で、したがって相当の人格をお持ちの人たちが対象ですから、先に与えてもいいと私は思うのです。しかし、あなたたちの言い分を認めるといたしますならば、今日直ちにということではなくても、近い将来にこういうものは弁護士と同じように自主的な権限を持たしたほうが、大蔵省の監督下にあるのだということよりも、本人たちもそうですし、まわりの経済界その他の人々が見る目も、弁護士と同じように独自にそこに権限を持っていて、なかなかちゃんとしたものだ、それから、どこからもこの人たちはおどかされないし、侵されないのだ、こういうことになれば、公認会計士としても、いまほとんど完全な自由業となっておる弁護士と同じような立場が出てくると思う。そういう意味で、近い将来、罰則やあるいは懲罰等々の問題は公認会計士協会を中心とした公認会計士自体に与えたほうがいいのではないかと思いますが、お考えはどうですか。
  17. 松井直行

    松井政府委員 一般的に申し上げまして、会計士、弁護士あるいは税理士等、特殊な職業人が組織いたします団体が自主的にみずから内部規律、あるいは業務面にわたりまして責任体制を強化し、自律してやっていくということが民主主義社会の理想であろうと思います。そういう意味におきまして、弁護士は、日本におきましては現実において非常に高い社会的地位を占めておりますし、公認会計士もやがてはそういう社会的地位を占める時期がくると思いますが、そうした実体が備わりますならば、一般的に申し上げまして、いま只松委員がおっしゃったような方向に進むのが理想であろうと思います。ただ、そこにまいりますまでには、たとえば、協会が懲戒処分権を持ちますときには、争訟の手続とか、あるいは懲戒するについては事前に調査をやらねばならないというむずかしい手続もございます。それに不服があったときに、一体不服の申し立てをどこでどう処理するかというような問題、法律上、法制上あるいは運営上も非常にむずかしい問題が残っているということが一つございます。それから、公認会計士につきましては、もう一つ証券取引法の責任追及と不即不離の関係があります。公認会計士に対します懲戒処分というのは、監査証明業務に関するものが多いのでございますが、そのおもなものは、証取法に基づきます財務書類の監査証明業務であります。有価証券報告書等の審査は、御存じのとおり大蔵大臣がやっておるわけでありますが、この制度におきますそういう有価証券報告書等を提出した提出会社と、それから監査証明を行ないました公認会計士に対する責任追及というもの、それから公認会計士法上の懲戒処分としての責任追及、これも同じく会社の財務諸表の適否ということに関連しまして非常に関連が深いという特殊事情もございますので、いまにわかに協会に懲戒権をすべて委任するということは困難であると考えております。将来、自主責任体制にまかせていい時期になったときにおきまして、いま申し上げましたような争訟手続なりあるいは証取法に基づきます大蔵大臣の監督権に基づきます責任追及との関連をうまく調整いたしますならば、いまおっしゃったようなラインに沿って、全面的に公認会計士の懲戒を協会にまかすということが可能になる時期もくるのじゃないか、まあそれまでには相当日時はかかるでありましょうけれども、そういう方向に向かいまして、われわれ行政庁、それからこういう団体を組織します公認会計士一人一人につきましても、その自覚の高揚をはかっていくということが何よりも大事なことであろうといま考えております。
  18. 只松祐治

    只松委員 私は、公認会計士は、二千五百人もおれば、人間ですから、中には一人、二人悪いことをする人が出てくるかもしれないと思う。途中で精神異常者も出てきましょうし、いろいろ出てきますから。しかし、そういった特殊的な問題ではなくて、一般にいって、これだけの高度の試験を受けてこられる人たちです。実際上は大学を卒業した人々によってほとんど構成されてくるわけですから、そういう人々を前提にいたしますならば、いわば、あまりこまかいことを言わないで、さっきから言うように、公認会計士の地位を強化していく、あるいは立場を強めていく、こういう観点がいま一番大事じゃないかと思うのです。いま一番大事なことは、あまりにも公認会計士の力が弱過ぎるということで、これがいまの日本公認会計士制度上の問題じゃないか。よく、角をためて牛を殺すといいますけれども、あまりにまわりで縛り上げたり、大臣の監督下に置く、こういうことよりも、多少行き過ぎがあっても、ひとつ日本経済界の明朗化、公正化、あるいは日本のいろいろなこういう経済諸制度について、少なくとも西欧先進国並みに日本が上がってくる一つの要素として公認会計士制度を活用していこうという立場——政治というものは私はそういうものだと思うし、行政を行なっておる皆さん方もそういう大所高所から着目していかなければならぬと思うのです。そういたしますならば、あまり一人一人の公認会計士をいびったり、何とかかんとかするというような形でなくて、日本公認会計士制度をどう確立していくかという立場からするならば、ほかの関連やいろいろなことがあるかもしれませんが、もう少し大胆にやっていただきたい。まあ、あなたがおっしゃったようなことを認めるとしても、たとえば、その折衷案として、そういうものの調査、査察あるいはそういうことを決定する権限を一応公認会計士に与えて、最終的な権限だけを大蔵省なり大蔵大臣が持つ、こういうことも考えられると思うのです。だから、これはいろいろ法律上の問題、関係法との関係を調整しなければならぬと思いますけれども、もう少しいわゆる公認会計士の自主性というものを認めて、その立場を強めていくということが、行政指導立場に立たれるあなたたちとして大事なことじゃないか、こういうことを言っておるわけです。そういう観点から、すみやかな機会に自主性を与えていく、あるいは逆に、先に自主性をを与えて、若干の行き過ぎがあっても、それを指導していくということがいいんじゃないかという説をなす人も多いわけです。私も本質的にはそういう考えを持っておるのですが、こうやって法案が出ておる段階では、なかなかそれをいきなり修正もしないでしょうから、その折衷的な意見として私はそういうことを言っておるのです。そういう立場からのお答えをお聞きしたい。
  19. 松井直行

    松井政府委員 高度の知識人が組織します団体であり、しかも、社会的な評価が非常に高く評価されるという時期がまいりますならば、そうした自治団体が自主責任体制を強く持つということは、まさにおっしゃるとおり理想のことであろうと思います。いま私が申し上げましたのは、そこへ行くまでについて、いろいろ法制上、運用上も問題があるのでということを申し上げました。いまお話を伺いまして、そうした懲戒権を持たない場合に、特殊法人が会員に対する一種の規律保持といいますか、会員を統合していく機能に不十分な点が残りはせぬかという観点から私お答え申し上げたいと思うわけでございます。協会といたしましては、この会員に対する規律維持の担保といたしまして、会則で会員権の停止であるとかあるいは戒告ということを定めることができることはむろんでありますが、協会が自主的につくりました会則を会員が必ず順守しなければいけないという会則順守義務を法定いたしておるわけであります。したがって、法律上の義務としておりますので、会則違反を犯すような公認会計士があれば、すぐそのまま公認会計士法上の懲戒処分の対象にもなるということに相なるわけでありますし、また、会員に懲戒事由に該当するような事実があるということがわかったときには、協会から大蔵大臣に報告する制度を四十六条の十で設けております。この場合、大蔵大臣はこの協会からの報告に基づきまして懲戒処分を行なうということになっておりますので、これらの制度を運用いたしますことによりまして、特殊法人がたとえ懲戒処分権を持たなくても、会の規律保持ということに関しましては十分力を発揮し得るのではないかと考えております。現在の段階におきましての立法措置といたしましては、そうした意味における規律保持の機能が十分発揮できる体制をつくってありますので、いま直ちに懲戒処分権そのものを与えなくてもいいんじゃないかという気がいたしておりますが、長い将来を考えますと、こうした自主独立の団体に対する自治権の付与ということにつきましては、仰せ方向へ進むのが理想であろうと考えております。
  20. 只松祐治

    只松委員 私が論議している立場はちょっと違うのですよ。証券局長のほうは、何か起こったり何かしたときにこういうふうにしなければならない、その権限や何かはこういうふうに協会にもあるじゃないかというようなお話のようですが、私は、むしろそういうものをできるだけ取り払って、公認公計士にそれ自体の自主性をもっと大幅に認めたらいいじゃないか、ノーズロ式にしろとは言わないけれども、あまりそういうことを言わないで、とにかくもっと自主性を与えて、公認会計士というものの立場を強くしていったほうが、いまの公認会計士制度を云々する場合に一つの大きな要素ではないか、こういうことを言っているわけです。したがって、その手かせ足かせになるような問題があれば、できるだけあなた方のほうで多少は目をつぶってでもいくのがほんとうではないか、こういうことを言っているのです。問題を論じているところは違わないのですが、立場は多少違った立場から論じているわけです。私は、いまの公認会計士の置かれている立場というものを考えておる。あなた方は、取り締まりとか指導とかということをどうしても重点にお考えになるかもしれませんけれども、私たちは、それよりも客観的に置かれている公認会計士立場というものをもう少し大乗的にお考えいただきたい、こういうことを言っているわけです。  次に、幾ら抽象的に公認会計士制度を論じたり、あるいはまた公認会計士の問題を論じても、仕事がないことには——幾ら自主的になろうといったり、自主性を持とうといったりしたって、これは仕事がなくて、収入がなくてめしが食えなければどうにもならぬわけです。あなたのほうからいただいた資料によりましても、新しい資料でしょうが、公認会計士さんが二千四百九十四名、それに対して被監査会社数が二千二百二十六、したがって、平均いたしますならば、公認会計士さん一人に一社ないという、地域的にこれを見ましても、一人一社以上に及んでおるのは全国でせいぜい十県程度で、あとの三十何県は公認会計士さん一人当たり一社以下、〇・九社とか〇・八社とかいう数字になってきておるわけです。そういたしますならば、これは需要と供給の関係からだけ見たって、一人の公認会計士さんが仕事があり余ってしょうがないということはない。これからいくならば、平均して三とか五とか、一人でとにかく複数になる場合もあるわけです。重複する場合もあるわけですから。十社、十五社持つ、こういう形になりますれば、これは強い立場になるわけです。ところが、こうやって、一人一社以下では、いかに公認会計士法公認会計士に有利に、あるいはいまのその罰則の問題やなんかを全然抜きにして、もう公認会計士さんのやりたいほうだいやりなさい、こういうことにいたしましても、やはり会社に頭を下げていって仕事をもらわなければならない、こういうことになるのは理の当然であります。この公認会計士制度独立、それから日本の社会それ自体の近代化、そういういろいろなことを考えて、被監査会社あるいは団体等の拡大について、これもたびたびわが党の委員からも要望しておるところでございますけれども、お考えになっておりますか、ひとつお聞かせをいただきたい。
  21. 松井直行

    松井政府委員 お手元の資料で公認会計士の数と被監査会社の数を比較されておられますが、これもこれで非常に意味のある数字だろうと思います。特に、分布等の状況を見るときには意味を持ってまいると思いますが、この表によりますと、一人当たり一社にならない、〇・九社ぐらいにしかならないということに相なるわけでありますが、業務分野の実態は、この前ここでお話しいたしましたとおり、実は一人一人の公認会計士責任者として一人で監査をやっておるというのもむろん多くございますが、そもそも、公認会計士の中には、その発足の当初、監査の仕事よりもむしろ税務の仕事が多かったという歴史的な理由もございまして、実は公認会計士の中で監査証明それ自体を行なっておる公認会計士の数が八百人余りだということをここで申し上げたわけでございます。そういう観点から見ますときに、公認会計士責任者一人当たり一体幾ら契約会社を持っておるかということは、「公認会計士審査会の答申及びその関係資料集」というのを皆さんにお配りしてございますが、この六五ページをごらんになりますとおわかりになります。責任者というのは一人でございまして、それに有資格者たる公認会計士が補助者としてくっついている場合もあろうかと思いますが、公認会計士責任者八百人余り、それに対して契約の会社数が二千二百ございますので、責任者一名当たり二・七九社、大体三社近くのものは持っておる、こういう観点で営業範囲の実態をつかむのが適当じゃないかと考えます。いまおっしゃいましたこの表のほかに、私がいま申し上げました六五ページの表をあわせお考えいただくことが必要であろうかと思います。なお、一般的に公認会計士の職域につきましては、公認会計士が食えるようにとか、あるいは発展するために職域を広げるという観点からばかりではいけないのでありまして、そもそも、先ほどから論じ来たっておいでになりますとおり、企業体の真実の財産内容なり収益状態なりを広く一般の投資大衆に知らすという観点からいいますときには、証取法にきめました被監査会社を中心にした、それだけの監査では不十分であるということは仰せのとおりであります。そのほかに、われわれいろいろ考えられるところを仮定の問題として申し上げてみますと、いろいろな公庫、公団等の特殊法人がございます。それから民法人、学校法人、医療法人等につきましても、むしろこれらを管理する、あるいは監督しておる側の行政庁の了解及びそれぞれの法人の了解を得られますならば、こういう方面につきましても、公認会計士の職業人としての会計監査を受けるという態度は非常に望ましいことであろう、ひいては、それが公認会計士の職域の拡大にもつながる問題である、こういうふうに考えます。
  22. 只松祐治

    只松委員 いま前段に御説明のありました分は、それは読んでおるわけですが、これは一番最初ですから、単純平均数字を御質問したわけです。単純平均数字はこういうことで、実態数字は三社程度だ、したがって公認会計士は八百人が専業である。ここに逆な面で一つ問題があります。結局、単純数字で〇・幾らしか出てこないくらいですから、公認会計士になったって、それだけでめしが食えないというので、いま税理士さんから要望を出しておりますように、弁護士さんや公認会計士もたぶんそうだと思いますが、届け出を出せばすぐ税理士になれる。税理士のほうは二次試験を受けないと公認会計士になれない。実際税理士でめしを食っているのに、インターンをやっていかなければならない。よしんば試験に通ったとしても、公認会計士になかなかなれない。こういう悩みが税理士さんにあるようです。税理士協会あたりのこれに対する反対の理由はそういうところにもある。そういうところもあわせて解決してもらいたい、こういうことを言っておるようですね。それはそれといたしまして、単純数字がこうやって低いわけですから、それだけでめしが食えないから、税理士業なりほかの業務を勢いやらざるを得ない。やりたいのではなくて、やらざるを得ない。そうでないとめしが食えないというところに逆に一つの原因がありますね。そういう意味から私は、もう少し被監査団体をふやすべきではないか、いわゆる経済的な独立性がないところに、いかに抽象的な独立性、自主性を言ってみても始まらないわけですから、そのことを言っておる。現在八百人しかいないので三社持っている。これはあなたたちの指導する立場としてちょっと軽率だと思う。二千五百人からおって八百人、三分の一程度しか専業でやっておらない、せっかく難関の公認会計士試験を突破しておりながら、専業としてこれくらいしかできないというのは、被監査団体が少ないからだ、むしろこういうことをぼくは知っていただきたいと思う。公認会計士さんはそういう要望を出しておる。したがって、どういうところをふやすかということになりますと、いろいろありましょうが、理論的にも実際上からも、やはり公共といいますか、公の任務を持っておる、いま御説明になりましたけれども、学校とか公団とかなんとか、こういう公共性を持つものは皆さん方としても指導しやすいし、それから実際上の問題として、こういう公共の任務を持っておる団体、したがって、そういう人々というのは、当然これだけ自主性を強められた公認会計士監査を受けるべきだと思うのですね。だから、ぜひそういうふうにしてもらいたい。御承知のように、学校紛争等も早稲田大学をはじめとしていろいろありますが、こういうものも、裏を返せば、学生諸君やあるいは一般の理事、そういう人人にもなかなか学校の経理が明らかでないということに不満の要因があるようです。あるマンモス大学の一つでは、ほとんどそこの理事長の専権といいますか、専横といいますか、そういう者の手にゆだねられておって、へたにごちゃごちゃ言うとすぐ追い出されるということで、ものが言えない、言えないけれども、学校という特殊の隠れみのによって、膨大な額の工事の請負等々も一部の人々によって行なわれておる、こういうことを聞いております。私は、その学校の教授から聞くというより、むしろ訴えを受けております。もう少し国会は何らかの形で明らかにできないものだろうか、こういう相談を受けておりますけれども、私は、当然こういうところは受けさせるべきだと思います。お考えをお聞きしたい。
  23. 藤井勝志

    ○藤井(勝)政府委員 学校法人に対して公認会計士監査対象にすべきかどうかという問題につきましては、先般も当委員会で大蔵大臣から前向きの御答弁がございましたことは、御承知のとおりであります。ただいまお話の点、ごもっともでございますが、ただ、学校の場合は、文部省の監督下にあって、そこにしかるべき行政指導、監督ということがなされておれば、ある程度改善の方向が前進するのではないかという面もございますし、関係当局とよく連絡をとって、御趣旨を体して善処いたしたい、このように考えます。
  24. 只松祐治

    只松委員 主税局長がお帰りになりますので、その問題に関連する問題を一つだけ聞いておきたいのですが、結局、学校法人課税の対象にもなっていない。いま文部省ということばをお使いになりましたけれども、大学は御承知のとおりで、へたに文部省が関与いたしておりますと、これは一ぺんではねつけられる。そこいらがなかなかできないから早稲田の騒動もなかなかおさまらない、こういうことなんでしょう。ところが、警察権の関与も、へたにすると、大学だけではなくて、国民の批判もこうむるから、警察もうかつに手を出せない、こういうことなんです。したがって、いま最大の力を持っておる税務署でさえも、税金の対象になっておるなら、これは別な意味である程度のものを出さざるを得ないし、出てくるのです。ところが、全部が対象外になっておる。しかし、金もうけしていいということじゃない、学校は金もうけしないことになっておるのですから。したがって、その面については、やはりどこかが規制するといいますか、監督か何かする。そうすると、文部省なり国税庁なり証券局なり、そういうような官というものは監督の対象にならないとするならば、せめて、こういう民間人で幸いこういう機関があるのなら、公認会計士監査させるくらいの義務を負わせる、あるいは指導するということは、これは政府当局において当然なさるべきだと思う。もちろん社会党もそういうことに反対いたしません。それさえもしないというのは、さっきから私は公認会計士の自主性という面からこれをとらえて御質問をしておるわけですが、幾ら自主性を強めろの何のと言っても、仕事をつくってやらなくて——当然受くべきそういうところの監査、これは銀行や何かのこともそうですよ、私的な会社の面だけは強くして、公のそういうものについて公共的な立場公認会計士さんの監査も受けさせないというのでは——いままで公認会計士さんが信用を受けなかったといえば失礼でございますけれども、いろいろ内情、秘密を暴露したり何かして、公認会計士制度に対して信用がまだ置けなかったという段階なら別として、こうして一本立ちしてきて、皆さんのほうではこれだけ指導されておるというときに、せめてどこかの機関で監査をさせる、特にこれだけ会計に困って、高い授業料を納めてやっている。親元にも学生にも教授にも理事にもそういう内容がほとんどわからぬというのでは、あまりにもお粗末過ぎやしませんか。
  25. 藤井勝志

    ○藤井(勝)政府委員 私の答弁が、ことばが足らなくて再度の御質問でございます。学校法人——宗教法人もそうでございましょうが、そういった公共性の強い事業団体に対して、経理の明確化ないしは経営の健全化ということを求めることは、当然の要求だと思います。その点において、職業専門家である公認会計士を活用するということは、きわめて有益な御意見だと思うのでありますが、その意見を体して、前向きで善処する、このように御了解をいただきたいと思います。
  26. 只松祐治

    只松委員 いま、いままでにない前向きの御答弁をお聞きしたわけですが、ひとつ、ぜひこれは大臣のほうにも一ほんとうはいまごろぼつぼつ大臣もお見えになるだろうと思って、その点は大臣の確認をとっておきたいと思ったのです。私も間もなく質問を終わるわけですが、大臣お見えでございませんので、ひとつ、次官なり関係者のほうからこういう答弁をした、それは政務次官のことで、おれは関与しない、こういう形ではなくて、大臣のほうにもぜひお伝えをして、まだこれはすぐ通るわけじゃございませんから、証券局長のほうで、この公認会計士法案が通るまでに、この席上でいろいろなことがあって公開できないとするならば、意のあるところをそれぞれにお伝えいただいてもけっこうでございますが、そういう公認会計士の自主性を認める立場において、どういう方向でそういう分野を広げていくか、それからいま一つ、こういう公共的な立場あるいはそれに準ずるようなものは、少なくとも官の干渉というものは排除しても、公認会計士監査を受けて、近代化し、民主化していくということのために努力をする、こういうことについて、ひとつ意のあるところをお伝えいただきたいと思うのですが、いかがですか。
  27. 松井直行

    松井政府委員 政務次官からお答えになりました趣旨に沿いまして、具体的に関係方面と接触を持っていきたいと考えております。
  28. 只松祐治

    只松委員 これも今回私たちも初めて資料をお見せいただいて、なるほどといいますか、びっくりしておるわけですが、いま合弁会社等ができてまいりまして、外国の公認会計士日本に事務所を持ったり、あるいはおいでになって、いろいろお調べになって、公認会計士業務を行なっておられるわけですが、この人たちの報酬というのはきわめて高いわけですね。これを見ましても、これはいかに外国の公認会計士制度というものが財政的に確立されておるかということを裏づけるものだと思うのです。同じ検査をしながら、日本公認会計士さんは、アメリカなり外国の公認会計士の十分の一だというのではあまりにもひど過ぎると思うのです。これも一挙に値段を上げろということだけ私たち申しませんが、少なくとも、こういう外資等の導入がきわめて大きい現在、そういうもののアンバランスといいますか、そういうものをできるだけなくしていく、こういうことが  一つの問題としてあげられると思います。それともに、次には公認会計士報酬を引き上げていく、報酬を引き上げるというのは、ただ単に引き上げるのでなくて、それだけ厳密に調査をしていく、これがうらはらをなしていくことだと思います。そういう点についても、ひとつ指導といいますか、留意をしていっていただきたい。  それから、こういう資料は、こうやってたまたま公認会計士法の一部を改正するようなときにいろいろいただいたり、私たちも論議するわけですが、本質的に公認会計士を強めていく、制度を確立していくという立場からは、こういうものを、公認会計士さんにもそうですが、被監査団体あるいはそういうところにもPRとしてぜひお出しになって、諸外国の公認会計士制度のあり方、公認会計の実施状況等を知らされると——これの改正にあたってもいろいろ財界と折衝されて、容易じゃなかったというようなお話も聞いておるわけですが、そう無理をしなくてもこれはできていくと思うのですね。だから、ぜひひとつ、正しい意味公認会計士の諸外国の事情のPR、あるいは日本国内における公認会計士のあり方、そういうものについて、あまりやりますと、これはまた大蔵省の関与なり越権ということになって容易じゃないと思うのですが、いわゆる正しい意味のPRを行なっておいたならば、いきなりこういうときだけに困難をしたり、いろいろ問題を生じなくてもいいんじゃないか、こう私は思います。今後、これでりっぱな公認会計士制度ができ上がってしまうと、いろいろ部分的改正その他もあるということであります。そういうことのためにも、私は念のために申し添えておきたいと思います。
  29. 松井直行

    松井政府委員 公認会計士の地位の向上のためにとるべき方策としていまおっしゃったことは、まことに仰せのとおりであろうと思います。現に、われわれといたしましては、今回の法改正にあたりましても、経団連等被監査会社を代表します団体と特に密接な関連を持ってまいってきております。  それから、日本公認会計士に対する報酬等につきましても、そうした経団連からの理解も深まってまいっておりまして、つい昨今、監査報酬の引き上げについても了解をとったというところでございます。さらに、公認会計士のあり方及び公認会計士監査を受ける企業側のあり方につきまして、アメリカの実態等を見る必要があるというわけで、生産性本部から、すでに第一回の、公認会計士及び被監査会社を代表します十数名の人人によって、アメリカにおきます公認会計士制度及び監査を受ける会社側実態について、実情を視察するための視察団が行っております。近々また第二団が出発するということも予定されておるように聞いておるところであります。  アメリカ側の資本が入っている会社等について、アメリカの公認会計士監査証明がないと、アメリカの民衆を代表しますSECが信用しないということは、まさに国際的な恥であろうと思います。日本公認会計士が証明したものについても国際的に通用するというところまで引き上げるためには、やはり公認会計士の資質の向上はむろんのこと、監査を受けます会社側におきましてもこの制度の趣旨を十分理解するということが必要であろうと思います。いまおっしゃいました趣旨によりまして、監査を受けます会社側の団体等とも密接な連携を今後とも続けてとっていきたいと考えております。
  30. 只松祐治

    只松委員 ちょっと、さっき全国的な数字と被監査団体の単純な数字のときに申し忘れておったのですが、今度のいわゆる監査法人の社員の数が五名以上ということになっておるわけです。   〔委員長退席、吉田(重)委員長代理着席〕 以上ということになれば、そういうような論理からするならば、二人以上でも三人以上でも、五人なり十人で、実情に応じて監査法人をつくることができるわけです。この八百人という数字から見ましても、この監査法人が幾らできるかということはほぼ推定ができますが、二千四、五百人全部業務についておられるとして、なおかつ、この全国の表を見ましても、これは府県単位に表が出ておるわけですが、これを今度は市町村単位に直してまいりますと、非常に分散的であり、微々たる数字になっていく、同じ福岡県でも、門司市と大牟田市というのは非常に離れておるわけでございまして、そういう人々が一緒になって監査法人をつくるというのは、なかなか容易ではないわけです。私たちの党のほうでもまだ何名という確たる数字は出しておらないわけですが、この五名がいいかどうかということについても、もう少し私たちも検討したいと思います。皆さんのほうでも、いま一度御検討をお願いしたい、こういうふうに思います。政務次官からお考えを伺いたいと思います。
  31. 藤井勝志

    ○藤井(勝)政府委員 二人以上ということが、一応の考え方としては出発点だと思いますが、これを何名にとどめるかということの考え方は、私はいろいろ意見があろうと思うのであります。ただ、従来共同監査をやった実績が、三名以上ないと実際行なわれていないというこの実績を勘案し、せっかくこれから企業の規模の拡大という将来を考えて、五名、これは答申にもそういう線が出ておりますので、その答申を尊重して、とりあえず五名、こういう経緯があるわけでございます。
  32. 只松祐治

    只松委員 終わります。
  33. 吉田重延

    ○吉田(重)委員長代理 平岡忠次郎君。
  34. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 公認会計士法の一部を改正する法律案に関しまして、私は、本日、大体以下に述べる五つほどの問題につきまして質疑を行ないたいと思います。  その一つは、協会設立に関する件、二番目には、監査法人の業務の範囲、三番目には、監査法人の構成について、四番目には、監査法人及び社員等への懲戒権の所在はいかにあるべきかという問題、五番目に、公認会計士による監査証明の及ぶべき業種の拡大について、以上の五点にわたって質問いたしたいと思います。  順を追いまして、第一番目の協会設立に関する件でありますが、今回、特殊法人の設立に関しまして、附則第二項ないし第十四項に経過的措置が規定されておりますが、次の二、三点の問題につきまして政府の見解を明らかにせられたいと思います。  一つは、現在、公認会計士団体としては、社団法人日本公認会計士協会と任意団体の全日本公認会計士会との二つがあります。両団体の性格の相違、それから優劣、会員数等をまず明らかにせられたい。
  35. 安井誠

    ○安井説明員 数字の問題でございますので、私のほうからお答えさせていただきます。  民法法人でございます公認会計士協会のほうでございますが、現在、公認会計士協会に所属いたしております者の数は、公認会計士の登録者が約二千五百人中約千九百人でございます。これは昨年十二月の数字でございます。それから、お話のございました任意団体でございます全日本公認会計士会のほうでございますが、これの総数が三百十名でございます。これはことしの三月末の数字でございます。御承知のように、計理士と、計理士出身の方で特例試験に合格された公認会計士の方が中心に組織されている団体でございます。
  36. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 いまのお話で、メンバーの数からいいまして圧倒的に前者のほうが多いことはわかります。しかし、この後者の団体が、実は計理士会のメンバーからだんだん発展してそういった団体ができたいきさつがあります。これはわれわれの好むと好まざるとを問わず、過去におきまして、公認会計士と計理士さんの間で相当もんちゃくがあったことは御承知のとおりであります。そこで、今回新しい特殊法人としての日本公認会計士協会が設立されるときにあたりまして、やはり取り扱い上相当慎重にせぬといかぬように、経験上私は思えるのであります。  そこで、さらに質問を申し上げたいのでありますが、特殊法人の設立にあたりまして、これら両団体はいかなる関係に立って、いかなる役割りを果たすものなのかお教え願いたい。附則第二項におきましては、三十人以上の公認会計士及び外国公認会計士が設立委員となるとありますが、設立委員は両団体の実勢に応じ選出されることになるのかどうか、また、だれがこの設立委員を選任するのか、この辺につきまして政府のお考えを述べていただきたい。
  37. 松井直行

    松井政府委員 おっしゃいますとおり、この法律の附則第二項で「公認会計士協会を設立しようとするときは、三十人以上の公認会計士及び外国公認会計士が設立委員となり、設立に関する事務を行なわなければならない。」とございますが、法律では特に設立委員の選任方法をきめておりません。これはどこまでもでき上がります日本公認会計士協会の自主責任体制というものを尊重するところでございまして、現在の公認会計士がどんな団体をそれぞれ形成しておりましょうとも、全公認会計士の輿望をになったものとして、自主的に決定されるであろう三十人以上の方々に設立委員としてこの準備の仕事をやっていただくということを期待しておるわけでありまして、いまおっしゃいましたとおり、非常に大きな団体の公認会計士協会と全日本公認会計士会ですか、規模は小そうございますが、従来からいろいろ関連もあり、わだかまりもあった二つの団体があるわけではありますが、いよいよこれが発足しまして、大蔵大臣の認可を得るというときまでには——設立総会の議決は二分の一以上が出席し、かつ、その出席者の三分の二以上の多数によらなければ、設立総会の議決は有効でないという旨が第六項に書いてございます。したがいまして、全公認会計士の中で、いろんな小さな、たとえば小党分立しておるという場合を考えましても、この第六項の規定の充足を見ることができないときには、設立総会は成立しないということに相なるわけでありますので、事実上非常に大きく、かつ、入会率も高い現在の日本公認会計士協会が主体となるでありましょうが、あわせて、全日本公認会計士会の人々及び外国公認会計士の人々も自由に、自主的にこれに参加されることによって、全体としての創立総会の議決が有効になるという方法で、民主的にこの三十人が選ばれることを期待しておるわけでございます。
  38. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 松井さんはどうも階段を三段ほど飛び上がってしまっている。一段、二段のことを私は聞いたのですが、三段目ぐらいからのお話で、私の質問と違うわけです。要するに、三十名の公認会計士の資格を持った人が設立委員になる、そういう限定があるわけですよ。だから、その三十名を選ぶのは、だれが、どこで、どういう基準で選ぶのか、それを聞いておるわけです。
  39. 松井直行

    松井政府委員 特に法律でもって設立委員の選任方法をきめておりませんで、全公認会計士が自主的にこれをきめるということを期待しておる、こういうことでございます。
  40. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 抽象的な話ではなしに、相当いきさつのあった両団体が、好むと好まざるとにかかわらず、この設立に関して関連があるのです。だから、そこに初めから多少政府のほうで骨を折って、路線を引いておいてやったほうがいいのではないかということを私は申し上げた。実は、日本公認会計士協会のほうの、名前をあげていいかどうかわかりませんが、会長は辻真さんですか、これは当然公認会計士の資格を持っておられるでしょう。そういう方は当然入りますね。それから、片や、全日本公認会計士会ですか、そちらのほうの指導者はリッカーミシンの平木信二さんでしょう。それから副会長に加藤信一さん、この人たちは公認会計士の特別試験を受ける権利の上に眠っておられるわけだ。だから、結局いまの時点において、明確に三十人の中に入り得ないわけですね。そういうことで、どうもちょっと両団体の指導者が設立委員に入ってやれればいいのですけれども、法制上は、いま言ったように、公認会計士でなければならぬのです。私はそれはそれでいいと思いますが、それには設立委員を選考する予備段階を設けたらいいのではないかというお話をしておるわけですが、何か政府によい考えがありますか。
  41. 松井直行

    松井政府委員 私が申し上げましたのは、いまの法解釈といいますか、法律上どう読むか、非常に非人情なことを申し上げたわけでございますが、実際にこれをうまく持っていくためには、いま二つの勢力がある、それをどう調節するか、つまり、非常に具体的に考えねばならない実際の問題であろうと思います。そこで、二つの団体がいがみ合っておったということは、ある程度事実でございますが、実は、三十九年六月に特例試験法をお通し願いまして以来は、漸次こういう対立関係というのは解消してきておるように、少なくとも、表面的にはそういうふうになってきていると私たちは聞いております。現に、日本公認会計士協会では、それについては、ほかの会に入っておってはいかぬとかなんとかいう内部的な一札をとっておったというような例もございますが、そういうものも撤回してきておりまして、両団体の間におきまして昔のような対立関係は漸次なくなってきておる、特に特例試験を受けますにつきまして、事前に受験の講習会がある、そういうところへも日本公認会計士協会といたしましても極力講師派遣等について力を尽くしておるという関係がございますので、実質的に対立の方向が薄まってきた、この機会にまた新しい法制が出るわけでありますので、附則第二項をそのままずばり裸で出発させる前に、いまおっしゃったような両者のなごやかな握手というようなことができれば幸いだと思います。具体的に言えば、この小さいほうの団体は、できれば大きいほうの団体に、附則第二項が働く前に統合されるということができれば一番いいわけであります。もしそれができないといたしましても、公平にそれぞれの団体から設立委員が選任されるような方向に、われわれも表に立ってはなかなかやりにくい面がありますが、事実上の御相談なり指導なりしていくことが肝要であろうと考えております。
  42. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 松井さんのお答えが少しだれていたんですよ。事実問題として、あなたは冒頭に、逐次両者のみぞは埋まっておるというふうに言っておられますが、先ほど安井君のほうからの答弁の中にありました日本公認会計士協会の加入正会員の数は千九百人、片や全日本公認会計士会のほうに所属しておる人は三百数人ですね。先ほどそういう御答弁があったのですけれども、ちょっと違うように私の資料にはあるのです。特例試験を受けてきた人の合格者は三百余名であることは間違いない。そのうち、社団法人日本公認会計士協会のほうにすでにくらがえしたというのですか、所属しておる人の数は五十名ですね。所属してないのは二百四十余名おるわけですよ。ですから、大きいと小さいのには違いありませんけれども、しかし、やや比例的にでも設立委員が出ることが望ましことですから、その設立委員は約三十名ですか、三十名以上となっていますが、かりに三十名といたしますと、その三十名の設立委員を選考するために両団体から選考委員を出されたらいいではないかということを申し上げておるのです。
  43. 松井直行

    松井政府委員 現に二つの団体があるわけでありますので、公平に、平等に、しかもいい設立委員が選ばれるように——平等というのは、それぞれの勢力案分に応じてそうした委員が選ばれるということが適当であろうと思います。いまおっしゃったようなラインに沿って、この法律の趣旨に反しないよう事実上指導していきたい、こういうように考えております。
  44. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 法律には、あくまでも公認会計士である人が要件になっておるわけです。それで三十名以上で設立委員をつくるということが明記してあるわけです。それはそれでいいわけです。だけれども、その三十名をめどとする設立委員の選考にあたっては、この二つの団体の指導者等に委嘱して、そこで合議してきめていかれたほうがいいのではないかというのが私の意見です。ですから、その私の趣旨を了解された上で、御趣旨に沿うようにやっていきますというお答えなら、それでけっこうです。
  45. 松井直行

    松井政府委員 いまおっしゃったような御趣旨に沿いましてやってまいりたい、そういうふうに考えます。
  46. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 それでは、次の監査法人の業務の範囲につきましてお伺いをします。  税理士業務は、監査法人自体の業務とはなり得ないが、各社員の個人の立場で行なうことは当然できることといたしておるようであります。つまり、監査法人は、あくまでも監査証明を主体とする業務をやるのだということできめておられますが、監査法人結成にあたって、むしろ経営及び税務部門の併設を認めるべきではないかと私は思うのですが、それを不可とする理由は何であるかをお答えいただきたいと思います。
  47. 松井直行

    松井政府委員 御質問の趣旨はごもっともでございまして、監査法人をつくる趣旨といたしましては、本来の業務である監査証明業務を組織的にやるというところに主体があるわけでございまして、アメリカのパートナーシップ等にならってやったわけでございます。そこで、アメリカ等におきましては、そういうパートナーショップ体制をとりますときに、単に監査証明のみならず、税務サービスとかあるいはマネージメントサービスをあわせて行なうというのが、一つのパートナーシップの大きな部門になっておりまして、三者が一体になって監査パートナーとしての機能を果たしておるという観点から考えますときには、いま平岡議員のおっしゃいましたとおり、監査証明業務のみに限界を非常に強く限ってしまうというのは大勢に反することになるかと思います。ただ、日本の法制におきまして、税理士業務につきましては税理士法というものがございまして、税理士業務はどこまでも自然人たる資格を持った税理士のみが行ない得ることとされているのでありまして、法人形態で税理士業務を行ない得るという規定がございません。将来、税理士業務につきまして、こうした団体化、協業化、法人化というものがこの監査業務と同じように非常にいい制度であるというふうに考えられ、税理士業務につきましても、法人自体が税理士業務をできるというところまで立法政策が進んでまいりますならば、当然監査法人というものが税理士業も行ない得ることになるし、また、そうならねばならぬとわれわれは考えておりますが、現在においては税理士法の体系から支障がございまして、監査法人法人として税務代理ができるというふうには持っていきがたいところでございます。
  48. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 監査法人の構成員として公認会計士がある、その公認会計士がたまたま税理士であるということが問題なんですね。ですから、抽象的に、監査法人というのが単独に機能を発揮しておる、その構成メンバーに関係なしに機能していくのだという割り切り方が現実にはむずかしいのではないですか。むずかしいのなら、むしろ経営コンサルタント的な仕事も、あるいは税務部門の仕事も併設をするというほうがはっきりしていませんか。あなたは、日本で新しく独自の道を開くのだというような意気込みでおられるように見受けられるのですけれども、世界の立法例として、会計士業務と税理士業務の併設を認めない立法例があるのかどうか、逆にお聞きしたいと思います。
  49. 松井直行

    松井政府委員 法制上も事実上も、先ほど私が申し上げましたとおり、英国におきましても、アメリカにおきましても、職業会計人のパートナーシップは、会計監査税務と、それからマネージメントサービスですか、三つをやっておるというのが通例であります。
  50. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 そういう世界各国の現状というのは、それがいいとするから普遍的にそういうふうになっていると思うのです。それをあえて分けたという理由があるなら、おっしゃっていただきたいと思います。
  51. 松井直行

    松井政府委員 税務サービスにつきましては、税理士法という法体系が別にございます。税理士業務あるいはまたもっと広く、弁護士業務につきましても当然こういうことが問題になってくると私は思うのですが、一体個人個人の色彩をそのまま残しておくほうがいいのか、あるいは、こういう団体として監査なり税務代理ができるというところまで踏み込んだほうがいいのかどうなのか、業務それ自身の実体からもう少し検討される必要があるのじゃなかろうかと思います。われわれは、いまのところは、監査という業務の実体から見て、これを組織的に統一体として行なうことが非常に有効であり、そういう要請が強いという観点から、監査業務を中心に法人化を考えたわけでありますが、税務代理等の業務につきましても、それぞれの諸官庁において私と同じように考えるならば、(「それは大蔵省の問題だ」と呼ぶ者あり)近い将来税理士法等を改正する機運がわいてくるのじゃないか、そうなりますと、監査法人もあわせて税理士業務もできるようになる、いまはそれぞれの業務によってその業務を規制する法体系が別個になっておりますから、わがほうで一方的にきめるわけにいかないわけであります。
  52. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 いま、やじの中に、それは大蔵省の中の所管の区分であって、われわれの知ったことじゃないという声が出ましたが、そのほうが万人の声らしいのだな。この両者をさい然として区別をしていくこと自身に無理があるので、無理がないと考えるからには、あなた方の内部関係の管掌の区分という、そういうちっぽけな理由でなしに、われわれをはじめ、会計士さん等の関係者がなるほどと納得する積極的な理由がなければならぬと思うのです。そのような理由があるならお聞かせ願いたいというのが私の質問ですから、どうぞそういう趣旨を体してのお答えをいただきたいのです。
  53. 松井直行

    松井政府委員 税務代理という業務と、それから監査証明という業務、それぞれに法人化——組織的監査、組織的税務代理の必要性という観点から、一体、統一的にそういう作業をやる必要程度がいずれが強いかと聞かれますと、私は、正直に申しまして、まず公認会計士のやります監査業務であろう、こう考えまして、あわせて、われわれの所管でありますので踏み切ったわけでございます。税務代理につきましても、やはり組織的税務代理というものが一そう有効であり、適正であるということになりますならば、おそらく税理士法の改正も行なわれるのじゃなかろうか。税理士法はなかなかむずかしい法律でございまして、こういうことは申し上げるべきこと以外のことかと思うのでございますが、むしろ、それぞれの業務の本質から見て、いますみやかに組織化したほうがいいのかどうなのかという観点から考えますと、まず公認会計士監査業務、その実体から見て、わがほうが先行するということが必要であろうと考えたわけであります。
  54. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 松井局長から何ら私は説得されません。したがいまして、この問題はもう一歩下がって、さらに御検討いただきたいことを要望しておきます。  三番目の問題に入ります。監査法人の構成についてであります。監査法人の構成を五人以上とすべしという理由についても私は疑問があります。前回、佐藤観次郎委員と永末委員、それから先ほど只松委員からもこのことには触れておりますが、いずれにしましても、その質疑応答の中で、監査法人の認可要件として、社員の数を公認会計士による社員五名以上とすべしという理由が鮮明ではないように思います。五人未満の集団に監査法人組織の道を閉ざすことは、日本の実情からいって当たらぬと思っております。日本の実情は、あなた方からいただきました資料を見ましても、現状は、単独契約が共同契約に比較しまして圧倒的に多いわけです。共同契約が三百三十に対して、単独の契約が千八百九十三、こういう数字になっているわけですね。ですから、日本の現状、実情からいたしまして、五名未満の集団に監査法人組織の道を閉ざすということこそ、法制的に再検討する必要があるように私は思います。この監査法人の五人をどうしても必要とする、五人以上がどうしても望ましいのだとする理由をもう一回お聞かせ願いたいと思います。
  55. 松井直行

    松井政府委員 純法律的に論じまするならば、団体という以上は、二名以上あれば十分ではないかということも言い得るわけでございますが、実際、組織監査をやる場合にどれくらいの人数が必要か、事実上実際上の問題として考えてみますときには、法律問題を離れまして、十名以上である必要があるというような意見もあったくらいでございます。と申しますのは、こういう組織監査を行ないます以上は、——私どもここでいろいろ申し上げてきたわけでありますが、企業体が非常に大きくなる、それから多種多様の業務を扱う、と同時に、親子関係あるいは特別提携関係等、個体としての企業のみならず、グループとしての企業全体を監査しないと会計の実態がわからないという趨勢がどんどん進んできておるわけでありますので、各種専門的な分野を持っておる公認会計士がある程度の数以上集まるという要請が強いのでございます。コンソリデーテッドバランスシートも約二年か三年先にはおそらく実施されるようになってまいりましょうから、そういう趨勢も考え、かつまた、いまおっしゃったように、監査サービスのほかに税務サービスもやれ、経理サービスもやれというような、そういう将来のあるべき姿を考えますときには、法律上の二名以上というのがいかにも少な過ぎる、現在共同監査をやっておる例を見てみましても、そこにいろいろ資料もあるかと思いますが、やはり三人の共同監査というものも相当数見られておるわけでございます。しかも、いま申し上げましたように、企業自体が大きくなる、多角化する、監査もそうした企業グループを一つ監査対象として見ていかねばならないという要請がますます強くなってくるという観点からいたしますと、法律上いろいろ議論はあるでしょうが、二名以上でもいいじゃないか、そういう法律論はどうも現実には当たらないということが一点でございます。  第二点は、せっかくこうした組織体をつくる以上、組織的監査真実に可能であるという姿を実現していきたい。形は法人であるが、実際は個人の単なる集団にすぎない。たとえば、この前にもここでお話ししたと思いますが、いま日本商法の中に株式会社制度というものもございますけれども、商法がねらっておりますほんとうの株式会社らしい株式会社というものは、実はもう九牛の一毛といいますか、ほんの一部でございまして、大部分は株式会社らしい実態を失っているし、その限界的なものにつきましては、まさに個人の集団にすぎないというものもあります。したがって、株式会社らしいものについてのみ株式会社に関する法律を適用するためにはまた新たに法改正が必要じゃないかというようなことも論議されている現状でございますので、少なくとも監査法人制度をつくる以上は、実質的に実態法人らしい機能をするものに限定していくことによって、将来そういうよい法人組織を育成したいという希望といいますか、制度の運用をはかっていきたいと考えているのであります。この二つの観点から、少なくとも五名以上は必要とするのじゃなかろうかと考えたわけでございます。
  56. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 監査を受くべき法人の数が二千二百、それから現在公認会計士の数が二千五百、要するに、監査需要と監査供給がどういうように推移するかまだわからない状態ですね。従来の委員質問に対するあなた方の答えを聞いていますと、どうもきわめて流動的で、あなた方の申されたことを客観的に数字的に論証できないのです。非常に流動的だと思うのです。  そこで、別の規定で個人の公認会計士もむろん認めているわけですね。それならば、個人以外は二名以上なんですから、二名以上で発足さして、そてして経験を積んだ上で、ある時点で、それを五名以上にするとか十名以上にするとかいうことをしても、私は差しつかえないと思う。現に、アメリカの場合においては、法制的には二名以上です。しかし、実際には二名というのがなくて、何千人を擁しているモンゴメリーとか、いろいろなそういう公認会計士の共同組織ができているわけです。アメリカの法制自身が二名以上ですよ。ですから、二名以上というのは、二名になれという意味じゃないですから、そいう規定のしかたをしますれば、日本の現実のザインの要件も満たし得るし、あなた方の考えておるゾルレンの要求も満たし得る可能性があるのですから、そういう出発のしかたをしたほうがすなおだと思います。その点はどうですか。
  57. 松井直行

    松井政府委員 仰せのとおり、法制的には、団体という字は二名以上でいいのじゃないか、それで出発して、漸次その実を備えるように指導もしていく、そういう実態ができたときに、事実上五名以上でないと法人ができないという運用をしたらどうかというお話でございますが、やはり法律的に二名で足りるといたしますと、たとえば、もっと数が多くなければ認可しないということ——法律で二名以上とあるときに、将来認可基準として君名以上ないと実際認可しないということは、なかなかむずかしい問題であろうと思います。やはり、法人としての実態を備えるためには少なくとも何名くらいが必要かということを考えますときに、二名とか三名とか四名とかというものでしたら、いまやっております共同監査なり、あるいは彼らの内部で組合契約を結ぶことによって共同事務所等を持っておる例もありますので、二名とか三名とか四名とかというものでしたら、現在の彼らがやっておりますこれらの方法で十分やっていけるのじゃなかろうか、それを越えて、組織的な監査を行なうのに適した共同組織体というものになりますと、少なくとも君名はほしい、五名以上はほしいという気持ちといいますか、要請は依然としてわれわれはまだ変えておらないところでございます。
  58. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 目標として君名以上でありたいというあなた方の念願はわかります。ですから、それはそれでいいことにしましよう。けれども、補完的に二、三、四名程度の組織による監査、これは現実にもあり、また必要と思うのですが、その点をどういうふうに処理されるかをひとつ考えていただきましょう。
  59. 松井直行

    松井政府委員 いまおっしゃいましたとおり、法人を組織するまでには至らない段階におきまして、現に二人ないし三人、四人で共同監査というものがあるわけでございます。大法人につきまして一人で監査するのは非常に不徹底であるという要請からこういうことが起こっておるわけでありますので、共同監査なりあるいは共同事務所を持つという組合契約も大いにけっこうでございます。そういう方向で進んでまいり、さらに、ほんとう意味における組織的な監査をやる法人が必要だとなったならば、そこで生まれかわってもらう、要するに、一人おやじから監査法人への飛躍を考えておるわけじゃございません。中間にそうした監査法人になっていく実態がありますから、そういう方向にわれわれも進めていきたいと考えております。
  60. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 あなたのおっしゃるのは、中間的な、補完的な機関とすれば、民法上の監査組合ということでやり得るのじゃないか、こういう御意向と思います。ただ、そうなると、民法上の監査組合を中間的に認めているくらいなら、二名以上をもって監査法人の要件としたほうが手っとり早いのじゃないかということ、それから、なるべく五人にとどまらず、それ以上に大きくしていくというようなことは行政指導的にそれをやれば足りるのじゃないかと思うのです。その理由としては、アメリカ自身も、法制的には二名ということを規定している。しかも二名というようなことにはないわけです。だから、あなたのおっしゃるのは、五名以上をもって、やはり軌道に乗せたい、ただし、現実の救済としては、民法上の監査組合で二名ないし四名の共同組織で事に当たらせよう、こういう考えであるわけですが、私のほうがあなたと対立するのは、そんなややこしいことをやるなら、いっそのこと、法制的には二名以上としたほうがいいのじゃないかという意見です。議論を続けてもしようがありませんから、一応松井さんの顔を立てるということで終わりましょう。ただし、現実には、先ほど私が言ったように、共同監査を受けている例のほうがよほど少なくて、個人の監査のほうが圧倒的に多いという現状なのですから、その辺のところで、あなた方も飛躍し過ぎて足を踏みはずさないような御用意をお願いしたいと思います。  さらに進めまして、第四番目の課題であります監査法人及びこれを構成する社員等への懲戒権の所在はいかにあるべきか。この問題は、先ほど只松委員から意見がありまして、あなた方のお答えがありました。しかし、大事なことですから、私もさらに政府の御意向をお伺いしたいと思います。  監査法人及び社員の懲戒権につきましては、今回の改正案におきましては、依然として大蔵大臣が直接的権限を行使するということになっております。そして協会の権能は「会員の指導、連絡及び監督に関する事項並びに公認会計士等の登録に関する事務を行なうこと」、さらに運営の範囲としては「監査証明業務に関する紛議の調停、公認会計士制度に関する建議、答申等を行うこと」、こういうように限定しておるわけですが、私は、やはり竿頭一歩を進めて、協会そのものに懲戒権を委譲すべきではないかという意見であります。今回の公認会計士法の一部改正法律案の提案理由の説明で一番あなた方が力点を置いている最初の内容は「まず第一に、公認会計士の自主責任体制を通じてその資質の向上及び業務の改善進歩をはかる」ということになっておるわけですね。要するに、自主責任体制の確立を目ざしておるのですから、したがって、懲戒権を委譲することによってこれを完結していただきたいというのが私の念願であります。突拍子もなく飛躍的なことを私は申し上げておるわけではないと思うのです。私は、大蔵大臣に権限があるというようなことは、一つの官僚権威主義だと思う。一番民主化がおくれているのはやはり官僚機構それ自体であると私は思っている。やはり、民主的運営でできることはやらしたほうがいいのです。しかも、日本でその例がないわけじゃない。弁護士会というりっぱな先例があるわけですね。弁護士法による特別法人として、弁護士会は、法務省とか検察庁とかから離れて、不即不離な独立体を形成している。それで十分りっぱにやっているわけです。いままでのあなた方からの答弁では、この懲戒権を大蔵大臣に置くということは、従来もそうであったからということになっている。ところが、従来そうであったことは、一つの批判さるべき経験的事実なんで、従来あったことそれ自身が一つの公準になるわけじゃない。しかも、従来が実績上それで非常にりっぱだったかというと、そういう権能を大蔵大臣に持たせながら、実際的には、山陽特殊鋼とかそういういろいろな事例を見ましても、その厳正な大蔵大臣の懲戒権下、監督下にあるところの公認会計士自身が、決算における監査証明として、適正である、適正であったと、みんなでたらめを書いている。そういうところからいいますと、雲の上に懲戒権を置くというようなことより、自主的運営の中に持ち込んでおくほうが、ほんとの責任体制の確立ができて、そして自主的な運営の中でこそ十全に懲戒権の機能も発揮し得る、そういうように思わざるを得ません。私のは抽象議論ではなしに、弁護士会それ自身がそういう道をたどってりっぱな業績を残しておりますし、りっぱな運営をやっておりますから、この改正にあたって、やはり大胆にそれを取り入れるべきだと思っております。どうでしょうか。これは政務次官からお答えをいただきたい。
  61. 藤井勝志

    ○藤井(勝)政府委員 この問題については、先ほど証拳局長から答弁をいたしましたように、やはり一応懲戒権の行使ということは、個人の権利及び信用に対して重大な影響を与えるわけでございますから、これに対する不服の手続、こういう法律もうらはらとして整備しなければならぬ、こういうふうな問題もございますし、同時にまた、先ほど平岡委員から、大蔵大臣にこれが懲戒処分権を留保することは、官僚主義的な考えだというおとがめでございますけれども、これは、先ほど証券局長から答弁をいたしましたように、公認会計士の仕事は、いわゆる有価証券届出書等に記載されている財務諸表が適正に表示されているかどうかについて監査証明することであり、これを大蔵省審査、検討するわけでございますから、やはり大蔵大臣にその仕事の実態が反映されてくる、この点は弁護士とはちょっと趣が仕事の実情からして違う、だから大蔵大臣が直接懲戒処分権を持ったほうが行政執行上適当である、こういうふうに私は理解したらどうかというふうに思うわけでございます。同時に私は、今度は反対に、懲戒処分権をせっかく新しく公認会計士法で協会が特殊法人になる際に与えなかった場合に、十分内部の秩序が保て、規律が確立できるかどうかというこの問題に対して、できないということになればこれは考えなければならぬ、しかしそれは、この特殊法人が会則の規定により会員権を停止することによって公認会計士としての実際上の仕事がオミットされるわけでございます。会員としてその資格を制限されるということは、重大な懲戒処分的な実質を備える、したがって、規律の維持を間接ではあるけれども実際的に裏づけている、こういうふうに反面考えられ、また、公認会計士制度が発足してまだ日の浅い今日でございますので、理想からいえば、先ほどもお話がございましたように、自主責任体制からいえば、みずから律するということが、これはもう一番理想でございましょうけれども、いまの段階では、私は、とりあえず大蔵大臣に懲戒権を留保するということは現実に沿うておるというふうに理解いたしておるわけでございまして、御了承いただきたいと思います。
  62. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 松井さんからもひとつ御答弁願います。
  63. 松井直行

    松井政府委員 いま政務次官がお答えになりましたラインで尽きておると思いますし、民主主義の社会におきますこうした特定職業人の自律というのは、非常に高度の知識、教養と、社会的地位がある団体であればあるほど自律的な団体が組織され、それにほとんど大部分の権限がみずから律せられ、公の権能とういものが及ばないというのが私は理想であろうと思います。しかしながら、御存じのように、日本におきましては、弁護士法は例外でございますが、あと弁理士法、税理士法、それから司法書士法、いずれにおきましても行政庁が懲戒処分権を持っておるということは、日本の現状に即した要請から来ておる面もあるのじゃないか、将来の理想、ビジョンとしては、いま平岡委員がおっしゃったような趣旨、プリンシプルは決して間違ってない、そうあるべきだとは思いますが、最も普遍妥当といいますか、現実に妥当した措置としては何が一番いいかと考えます場合には、やはり弁理士法、税理士法に沿って立法するのが一番適当であろうと考えたわけでございます。  なお、民主主義が発達すれば、一切そうした団体に権限が委譲されるものかどうかということにつきましては、その国々の歴史なり、また民主団体のボス化ということが、ことばは適当かどうか、まだ不審がありますが、現に、アメリカの例を見てみましても、全く自主団体にまかしたという面もないようでございます。たとえば、アメリカにおきましても、非常に民主主義の発達をした国だといわれておるのですが、公認会計士に対する懲戒処分は各州ごとにボード・オブ・アカウンタンシーというものがありまして、これがやるということになっております。ドイツは、御存じのとおり、普通の裁判所その他に租税裁判所もあるがごとく、非常に裁判手続が発達しているというか、懲戒処分につきましては、会計士法の職務規律に関する法律というものがありまして、やはり特別の職業裁判というものがあるようでございます。そうした裁判所で懲戒処分が行なわれる。これはその国の特殊性といいますか、風土からくる面もあろうかと思います。いずれにいたしましても、日本の現実に合致した妥当なラインを選びながら、将来に向かってのビジョンとしては、そうしたいまおっしゃったような民主主義のプリンシプルは生かしていきたい、こういうふうに考えております。
  64. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 先ほど監査法人の構成において五名以上を主張された松井さんは非常に進歩的だと思ったのですけれども、今度は、監査法人及び会員等の懲戒権の所在論においては非常に保守性を発揮されたわけであります。現在も未来も清濁あわせのむという松井さんの矛盾に敬意を表しておきまして、次の質問に入りたいと思います。  私は、公認会計士によるところの監査証明の及ぶべき業種の範囲は拡大すべきだと思っております。結論を先に申しますと、現在証券業に対してだけ監査証明が強制されていますが、金融、保険、それから先ほど議論になりました私学、それに医療法人——医療法人も、無差別に医療法人というのではなしに、患者のオープションのきかない気違い病院なとの医療法人ですね——それから宗教法人、一歩踏み込めば政党、その辺にやはり監査証明活躍の分野があると思います。ですから、かなり積極的にこういう業種をお考えになる姿勢が必要だと思うのです。ところが、現状は、証券に対して監査証明が要求されておるにもかかわらず、同じ以上に、これに劣らざる社会的責任を持つ金融機関、保険業、そうしたものに対しまして現状免除している理由がわかりません。この点につきまして、ひとつ政府の見解をまずお伺いしたいと思います。
  65. 藤井勝志

    ○藤井(勝)政府委員 先ほどもこの問題に関連する御質問があって御答弁をいたしたわけでございますが、特にまたつけ加えて、金融機関、保険会社といったものに対して、公認会計士制度改正にあたって対象の事業として規制したらどうかという御趣旨でありまして、私は、やはりこういった機関がきわめて公共性の強い事業であるという点において、経理が明確にされ、これが内容が健全に推移するということが、これはわれわれの重大な関心事でなければならぬと思うのであります。ただ問題は、金融機関、保険会社の場合は、御承知のごとく免許制度をとっておるということ、同時に、金融機関あたりに銀行検査官というものが定期的な検査をやっておることも御承知のとおりでございまして、しかも、有能な人材を集めて適正にやるというような状態でございますから、いまの段階においていきなり金融機関あたりにこれが対象を拡大をするということは、慎重に検討すべき問題である。学校法人、宗教法人、こういったところをさしあたりまず対象として逐次前進をするということで、決してうしろ向きではないことは御了解を願いたいと思います。
  66. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 証券業と違って、銀行とか保険会社は、免許制のもとで大蔵省の厳重な検査と監督があるからそれは違うんだという趣旨のようですが、それですと、私ちょっとお伺いしたいことがあるのですよ。  証券取引法施行令の附則の第五項というのがあります。それによりますと、その前に、証券取引法八条におきまして、証券業というものは公認会計士監査証明を要するという趣旨があって、この「第八条の規定は、銀行、信託会社、保険会社及び公共工事の前払金保証事業に関する法律第二条第四項に規定する保証事業会社については、当分の問、適用しない。」こう書いてある。ところが、いま御答弁のうちには、別個に大蔵省の厳重な検査と監督を受けていますから、銀行、保険会社等に対してはこれは監査証明を要しない、こういうお答えであったわけですが、現状で、金融機関、保険会社等に対してこの監査証明の義務を免除しているのは、いま申したように「当分の間」適用しないという、この附則第五項によって免除しておるのですよ。ところが、おっしゃるようなことでしたら「当分の間」ということは意味がないんだ。あえて当分の間としている意味が、それなら那辺にあるか、御解明をいただかなければならないわけです。「当分の間」とはいつまでをいうのか、この際明確にお答えを願いたい。
  67. 藤井勝志

    ○藤井(勝)政府委員 この「当分の間」ということは、先ほど私が申し上げたように、銀行検査官、こういったものである程度用を足しておる。しかも、公認会計士制度はまだ発足後日が浅い、これらの成長を見ながら、行く行くは検討しなければならぬ、私はこういう理解のしかたでお答えをしたわけでございまして、やはり、国のお役人の公正な監査ということにまだ欠けた点、不十分の点がある、公認会計士制度がすくすくと成長して、これらの機関に監査をしてもらうことによってより適切な経理内容の改善ができる、こういうことになれば、当然対象を拡大をしていくべきだ、このように考えておる次第であります。
  68. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 私は特に銀行のことに触れたわけですけれども、銀行、特に都市銀行のオーバーローンの弊害は、これはっとに非難されているところであります。かかる金融の非正常な状態が国民経済の健全な運営を阻害してきたことは、いまさら言うまでもないのです。企業の銀行依存、それから銀行の日銀依存という間接金融方式偏重の背後には、私は、忌憚なく言いますと、大蔵省の独善的金融行政があったと思うのであります。この悪弊を是正するためにも、銀行等に対しての公認会計士監査証明は不可欠のものと私は考える。また、公認会計士監査証明を活用することによって、大蔵省の金融行政の負担も軽減されるばかりでなしに、金融行政民主化に資することもできると私は考える。ですから、どうしてもこの際、金融機関も監査証明の対象とすることには踏み切っていただかなければならぬと思っております。そういう点で大蔵省の見解と私は違うのですけれども、しかしこれは、私のほうに分があるように思うのです。ぜひおやりをいただきたいと思います。ですから、金融機関と一連の保険会社につきましても、そろそろ踏み切っていただきたい。これは現実の問題です。  それから第二段目としては、先ほど申したように、私学、それから気違い病院等の医療法人、それから宗教法人、その辺のところをどうお考えか。その展望もお聞かせ願いたいと思います。
  69. 藤井勝志

    ○藤井(勝)政府委員 御趣旨の点は十分理解いたしますし、貴重な御意見だと思います。私が先ほど申し上げたような実際の必要性というものは、片や、公認会計士制度の充実と同時に、いまおっしゃったような各金融機関とか保険会社、あるいはまた学校法人その他、それぞれの機関がきわめて公共性の強いものであるにかかわらず、経理内容においてきわめて不明確、不明瞭、改善すべき点が多々ある、これに職業的専門家を動員するというこの考え方は、私は大いに取り入れて検討すべきである、このように考えておる次第であります。
  70. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 本日はこのくらいで終わります。
  71. 吉田重延

    ○吉田(重)委員長代理 しばらく速記をやめてください。   〔速記中止〕
  72. 吉田重延

    ○吉田(重)委員長代理 速記を始めてください。
  73. 只松祐治

    只松委員 先ほどお聞きして、藤井政務次官のほうから御答弁があったわけでございますが、ずっと前提を置いて聞いてきましたが、結論だけ言いますから、わからなければまた再質問いたします。  要するに、公認会計士制度をもっとりっぱなものにしよう、強めようというようなことを含んで今度の公認会計士法改正がなされておる。ところが、公認会計士の歴史が浅いやら、いろいろなことがありますけれども、客観情勢としていろいろその成長をはばんておるものがある。そういうものの一つに、グラウンドが狭過ぎる、被監査会社数が二千二百二十六というのでは、公認会計士の登録人員二千四百九十四名からするならば、一社にも相当しない、〇・幾つである。もちろん、実際上公認会計士業務を行なっておるのは八百余人でございます。しかし、それは八百余人しか行なわないというのではなくて、逆にグラウンドが狭過ぎるから、専業として成り立たないから行なわない人も多いわけなんです。そういういろいろなこともありますし、さらに、公的な、あるいは公共団体に準ずるというようなこともありまして、あるいは、いままでの付帯事項やその他と関連しまして、たとえば、金融関係機関、あるいは私学の学校法人、あるいは医療法人、あるいは宗教団体、あるいは私は政党もやるべきだと思う。こういうグラウンドを広げることが大切ではないか。こういうことに関して、証券局長から具体的、次官のほうからそういう点をいたしますという答弁があったが、私は、大臣にもぜひ、これだけの次官の答弁で、大臣は知らぬということじゃなくて、大臣も言って、大蔵省全体としてそういうことをやっていただきたい、こういうことを、ずっと事例をあげて結論的にそこまできた。いま結論だけは私はそういうことを申し上げて、御理解しにくい点もあるかと思いますけれども、何だったら証券局長、さっきのことを説明して、単にグラウンドを広げるという意味だけではなくて、こういう点に御努力をお願いしたい。大臣のお考えを聞きたいと思います。
  74. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 只松さんの先ほど来の、また、ただいまの御意見の御趣旨は、私は賛成であり、そのようにしていきたい考えでございます。ただ、いま御指摘の金融機関なんかになりますと、たとえば、銀行について言いますれば、監査役監査もある。これは普通の会社でも同じでございますが、その上に日本銀行がこれを検査をする、あるいは大蔵省もまた検査をする。その検査も、ただ単に会計というばかりじゃありません。会計の問題も含めまして、会社全体の運営にわたって、相当厳重、精細な検査をとり行なうわけであります。そこへまた公認会計士監査ということになりますと、これは相当重複してくるのではあるまいか、そういうことも考えて、にわかにここでそこまで広げるという具体的なお答えはいたしかねますが、公的団体でありましても、その態様はまちまちでございまして、ただ単に、形式上その会計に政府がタッチをしておるというようなものもありますから、そういう政府の監督の濃薄の度合いに応じまして、まずさしあたり御趣旨のような努力をしてみたい、さように考える次第でございます。
  75. 只松祐治

    只松委員 私はそういう一つの前提で、たとえば生保、損保、金融機関等、そういうところで第二会社あるいは縁故会社として不動産会社を持っておる例を一、二あげたわけです。ほとんどあるわけですね。したがって、その会社は、表面上まともな決算をいたしておるとする。しかし、下に、モグラの抜け穴じゃございませんけれども、水の落っこちる穴がありまして、そこは漏ってしまう、こういうことを私は例をあげて話したわけです。事実、私が持っておる資料の中にもそういう会社があるわけです。したがって、いまおっしゃったようなところが、相当やっておってもなおかつ不十分な点がある。そういうこともお話をいたしましたし、それから、一歩譲りまして、そういう点はないとしましても、これはグラウンドを広げるとか、あるいは公認会計士制度を諸外国のように自主性を与えていく、もっと強いものにしていくというように、いろいろなことを考えましても、一挙に金融機関まですぐしろ、そこまでいかなくても、たとえば、初め私学の学校法人をやる、二、三年たちましたならばこれもやる、こういう形で、五年なら五年計画で金融機関まで全部やっていくとか、そういう点は、証券局長のほうに具体的に、できるならば、この国会中に、公表できなくても私的な面でもいいからひとつお考えを聞かしていただきたい、そこまでいわば折れてお話を申し上げた。そういうことに対して、次官のほうから、努力をいたします、こういうお話があった。そういう意味を含んで、いまの大臣の御答弁のような答弁ではなくて、ひとつ、そういうところを積極的にお認めいただいて、前向きの方向で御努力をしていただきたい、こう思っております。
  76. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 ただいまお話のとおりにいたします。
  77. 吉田重延

    ○吉田(重)委員長代理 横山利秋君。
  78. 横山利秋

    ○横山委員 なるべく同僚委員と重複しないようにお伺いするのですが、まず、監査証明は本来何のために行なわれるのかという点です。  この点は、理論的になるかもしれませんけれども、きわめて常識的に考えたいのです。選択を願いたいのは二つです。一つは、この法案の中の相当ウエートを置いております虚偽、錯誤、脱漏の有無、そういう目的です。それからもう一つの目的は、そういう何かきわもの的なものの考えでなくて、経営を試査するというのですか、経営全体の流れ、それが適正であるかどうかということに考えるか、内部統制、会社記録、それが正しく運営されているかどうかという観点からながめるかという二つのいずれであるかという点をまずお伺いします。
  79. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 監査の証明によりまして、第三者に会社に対する正当なる評価の資料を与える、こういうことだと思います。
  80. 横山利秋

    ○横山委員 にもかかわらず、この法案は、また粉飾決算があれほどやかましくなったために、公認会計士は何かこの帳簿のうそ、偽り、間違い、脱漏、こういう不正の事実を剔決するということだけに、どうも考えが社会常識的に向いているし、法案の作成もその方向に向き、そして、もしも間違いがあったら、公認会計士の職業的生命を絶つぞという点に力点があるように見えて、私はどうもこれは本道を誤るおそれがある、こう考えております。
  81. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 あくまで会社の健全経営ということが本体じゃないかと思います。しかし、それをとういうふうに具体的に——これは法律上の関係もずいぶんひっかかるものでありますから、具体的にこれをどういうふうに実現していくかということになると、ただいまのお話のように、虚偽、不正の記載というようなところにいくのだろうと思います。趣旨は、会社経営全体について第三者に正当な評価をしてもらう、こういうことにあるんだろうと思います。
  82. 横山利秋

    ○横山委員 ごもっともだと思います。  試みに、手元にありますアメリカの公認会計士協会の監査手続委員会監査手続に関する宣言綱領を見てみますと「財務諸表について意見の表明を伴う通常の調査は、横領行為とか、その他これに類する不正規な事柄を発見するために行なわれるものではなく、また、発見するものとの期待を持たれてはならない。もちろん、それらの発見はしばしば結果するものである。組織化が進んだ会社にあっては、かかる不正規な事実の発見に関する期待は、主として、適切な内部統制を伴う会計記録に関する正しい制度の維持に待つべきものである。もし、公認会計士が横領行為とか、その他これに類する不正規な事柄を発見しなければならないものであると仮定するならば、彼は、もはや収支が相償わない点まで、自分の業務範囲を拡大していかなければならなくなるのである。」私は、このアメリカの監査委員会の指摘はもっともだと思うのです。この法案でも、公認会計士が故意であった場合、あるいは重大な失策といいますか、そういう二つに分けてはありますけれども、どうしても法律の力点が、山陽特殊鋼を中心にして、公認会計士が結託するおそれがあるというところに力点が置かれますために、本来の道を離れて立案せられておる雰囲気がある。したがって、運用にあたっては、この本道を離れないようにしていく、粉飾決算の問題については結果的なものだ。すべからく、こういうふうな考えで法律の運用をすべきものであると考えるが、証券局長も御異存ございませんな。
  83. 松井直行

    松井政府委員 いまアメリカの綱領をお読みになりましたが、大臣もそういう線に沿ってお答えになったものとわれわれ考えております。おっしゃるとおり、その会社がつくりました財務諸表というものが、一体企業会計原則に準拠して作成されておるか、それが会社の財産状況及び経営成績を適正に表示しておるかどうかを証明するということは、一般の大衆にそれを公示するというところにこの監査の目的があるわけでありますので、まさに、監査の目的の本質はおっしゃるとおりであろうと思います。
  84. 横山利秋

    ○横山委員 それでは、第二番目はこういうことなんです。公認会計士懲戒処分を受けるということになる。これは故意の場合、あるいは重大な錯誤過失の場合ですね、まさに公認会計士は職業的生命を絶たれるわけですが、この真犯人は一体だれか。真犯人は会社なんですね。会社は、それではそれに対してどういう措置が行なわれるのかということです。会社は、今回の税法改正で、大臣も御存じのように、還付税金の還付の時期をずらす、山陽特殊鋼のように粉飾決算をした、そして赤字だといっていて、数年間黒字の申告をしておった、それがわかったから、今度は税金を返してもらいたい、それはちょっとやれないからということで、還付金を少しずらす、こういう制度に今度したわけです。これは悪いことではないと思う。そうして、そのほか、所得税額の控除の順序を変えるとか、将来の税額控除にかえて還付するとか、還付加算金の計算をどうするとかいうことだけであって、いわゆる普通の税金に戻るということだけである。公認会計士は、そういう粉飾決算責任を問われて、徹底的に職業的生命を問われるのに、会社は一体どういう処分を受けるのかという点はどうですか。
  85. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 ただいまお話のような粉飾決算をした場合には、多くの場合に商法の違反になる、その違反の責めを問われる、こういうことになるだろうと思います。なお、詳細は証券局長からお答えいたさせます。
  86. 松井直行

    松井政府委員 大臣の御説明に補足して申し上げます。  会社が、真実その事業年度赤字であるにもかかわらず、黒字であるとして配当をするという場合があり得るわけでございますが、商法四百八十九条の「会社財産を危くする罪」ということでもって「五年以下ノ懲役又ハ三十万円以下ノ罰金二処ス」というのが一つございます.そのほか、株式の募集等に際しまして、目論見書等にうその記載をいたしますと、商法四百九十条の「不実文書行使罪」というのがございます。これによりまして「五年以下ノ懲役又ハ三十万円以下ノ罰金二処ス」、こういう商法上の刑事罰があるわけでございます。
  87. 横山利秋

    ○横山委員 一応そういうことになっておるのですが、そうしますと、かりに公認会計士が、この公認会計士法の適用を受けて懲罰に該当した場合は、必然的にその会社はその商法違反の責めを負うというふうに、事実問題として考えてよろしいのであるかどうか。大蔵省公認会計士に対する監督官庁である、監督官庁が、その審査を通じて、その事実を承知した、その場合に、この会社に対する具体的な、自発的な手をとるわけですか。だれがその商法違反をやるんですか。
  88. 松井直行

    松井政府委員 公認会計士が処罰の対象になるとき、当然会社商法違反になるかどうかというお話でございますが、会社商法違反かどうかは、やはり行為者たる会社につきまして犯罪事実があるかどうかを、別の観点から、検察庁とかそういう司法警察職員において固める必要があろうかと思いますが、山陽特殊鋼の場合等につきましては、会社がそうした四百八十九条ないし四百九十条の違反を犯しますにつきまして、共同正犯たる事実があったと検察庁が考えましたので、商法違反として起訴したわけでございます。われわれは、公認会計士を一般的に監督する際に、会社側のこうした違法行為事実を発見したときはどうするか、そこらは一般的な刑事訴訟法の規定に基づきまして、告発の義務があるものとわれわれは考えております。
  89. 横山利秋

    ○横山委員 それでけっこうです。私の言いたい点はそういうことなんです。行政運営として公認会計士のみが罪を受け、そして犠牲を負うようなことのないようにしてもらいたい、真犯人を忘れないでもらいたい、こういうことであります。  その次は三十四条の四「監査法人は、次に掲げる要件を備えなければならない。」、「社員は、公認会計士のみであること。」、「社員の数は、五人以上であること。」とあります。五人の問題は、同僚諸君からやいやい言うて、五人は多過ぎると言っておるのでありますから、これは私も同意見でありますが、省略します。「社員は、公認会計士のみであること。」このことについてであります。少なくとも五人以上となって、マンモスの企業を相手に、補助者及び職員、それらを含めたら、監査法人は相当の陣容を要するものと思われる。いま、公認会計士で最も多くの人を雇っておるのは何人くらいのところですか。
  90. 松井直行

    松井政府委員 比較的大規模のところで大体二十人程度と承知しております。そのうち十人程度が有資格者たる公認会計士、そのほかは会計士補でございます。
  91. 横山利秋

    ○横山委員 そのほかの従業員、つまり、公認会計士及び会計士補以外の従業員は何人くらいおりますか。
  92. 松井直行

    松井政府委員 公認会計士及び会計士補二十人程度のほかに事務員が五名ないし六名という例がございます。
  93. 横山利秋

    ○横山委員 それが五人以上集まって監査法人を構成するときに、私はそれは一種の経営だと思うのです。相当のビルの一室なりなんなりを借りてだんだん発展していくのだと思うのです。そのときに、社員は公認会計士のみであるということが適当であるかどうか。監査法人自身の事業運営をはからなければならぬ、そして公認会計士は本来の会計士としての業務にすべて当たるようにしなければならぬ。ところが、それだけ大きくなってまいりますと、労働問題があり、監査法人自身の経営の問題がある。また、お金が要るとなれば、お金を出す人を考えなければならぬ。したがって私は、監査法人の社員は、公認会計士のみであることと限定をした理由については、情勢認識が少し足りないのではないかと思う。これは各国の例にもありますように、過半数なり四分の三なり、そういうような規定にすべきではなかったか。将来、これは、本来公認会計士たる本業をやるべき社員が、その監査法人である会社の運営にかかり切ってしまって、会計士の業務ができない、そのために、名前だけは責任を負わなければならぬということになってくる。したがって、私の考えは、社員の四分の三なり過半数は公認会計士であることということにするのが適当ではないかと思うが、いかがです。
  94. 松井直行

    松井政府委員 おそらく、おっしゃる趣旨は、公認会計士の業務を、法人組織で行なうということを考えた場合に、一種の経営でありますから、責任ある社員の中には、出資者たる社員であって監査はやらないという社員、たとえばそういう社員もあってもいいのではないかという御質問であろうかと思います。しかしながら、なるほど経営実態、しかもその経営が非常に大きくなるということを考えますときには、公認会計士が組織します法人、つまり監査法人監査業務自体を代表する社員のみならず、経営とか、あるいは労務関係とか、いろいろ広い仕事の分野が出てまいりますときには、あわせて、そうした出資者たる社員であって、資格を持った公認会計士でないという者をも考え得るかとも思います。しかしながら、われわれが、一人一人の自然人たる公認会計士が相集まりまして組織的な監査を行なうということを主体に、これに法人格を与え、かつ、法人の主たる業務が監査業務であるということを考えます場合には、いまの経営担当社員という問題のみならず、公認会計士のほかに、たとえば弁護士だとかあるいは税理士だとか、その他の技術者的な専門家も入れたらどうかという疑問が当然わいてくると思います。しかし、いまの段階におきましては、必要があれば、いま私が申しました弁護士だとか、税理士というものも、ある場合には補助者として協力を得ることは考え得ましょうけれども、公認会計士と同一の立場監査に従事するという必要はないので、ドイツ流に——ドイツは、この前も申し上げましたが、法人にしますには、株式会社でもよし、有限会社でもよし、何でもいい、どの法制を使ってもいいけれども、業務執行社員はすべて有資格者に限るということを条件にしておるのにならいまして、資格ある公認会計士のみを社員とするという構成をとるほうが、監査法人の純粋性を保持し、監査法人として公認会計士業務の組織体を考える趣旨に最もマッチしたものであろうと考えたわけでございます。
  95. 横山利秋

    ○横山委員 将来は必要性があるかもしれませんが、いまはこのほうがいいという御答弁でありますが、そうすると、いま、社員は公認会計士のみであることという制限を特につけなければならない積極的な理由はなさそうですね。少なくとも、純粋性を保持したいというならば、純粋性を保持する方法は、私が指摘したように、四分の三だとか、五分の三だとかいうようなやり方によってできるはずです。その余地、弾力性を残しておいても差しつかえがないはずです。こうしなければならない、いま完全純粋性でなければいけないという理由はありませんね。
  96. 松井直行

    松井政府委員 ドイツの例を申し上げましたが、本来、有資格者である自然人たる個人のなす業務というのが公認会計士業務であり、また税理士業務でもありますが、それが法人としてやっていいという場合に、そうした独立の存在として法人格を与えるわけでありますけれども、監査業務という個人の資格に非常に密接に関係のあるそうした業務であるという観点から、それを組成し、その業務を担当します個人の色彩を全く払拭してしまわずに、合名会社制度を準用して、それを構成する自然人たる公認会計士、社員の個人性を残しながら業務全体の組織化をはかろうというのが今回のねらいであります。おそらくドイツの法制もそういう観点に立ってできたものであろうと思います。
  97. 横山利秋

    ○横山委員 意見の分かれるところでありますが、これは将来この監査法人制度それ自身に問題が生ずる場合がある。公認会計士が懲戒に該当したような場合に、その監査法人の内部組織はどうなっているか、だれがその管理をしておるか、だれが責任をとるのかということで、必ず、本来の監査をやる仕事と監査法人自体の業務について責任の分野を明確にするという必要が起こってくる、そのときに私の指摘する三十四条の四「社員は、公認会計士のみであること。」について問題が起こってくることを私は予見をしておきます。  次の問題は、この法案の一番のチョンボといいますか、間違いがあることを指摘します。臨済録に「鵝王は乳を喫す」ということばがある。鵝王という鳥は水と乳が混淆されたつぼの中へ首を突っ込んで、うまいこと乳だけ飲んで水はちゃんと飲み残すという、こういうことができるのが鵝王であります。いま、公認会計士がこの会社へ行って何をするか。監査法人税金のことだけはやってはならぬ、税金のところだけ、水だけは飲んではいかぬ、ほかの問題は首を突っ込んで飲め、こう言うわけであります。一体、財務とは何か。この法第二条による財務書類の調製、財務に関する調査とありますが、財務ということばの意義はどういうことですか。税務は財務に入らないのか、語源的な説明を願いたい。
  98. 松井直行

    松井政府委員 財務書類といいますのは、広く一般に、およそ商人として、商法規定に基づきましてつくる一切の会計書類を言うわけであります。それが同時に、株主総会で公表される会社決算の基礎にもなってまいりますし、あるいは税務申告をする際の、課税標準を確定する際の基礎資料にもなる、そういう意味におきましては、株主総会にも使われるものでもありますから、税務申告の際にも基礎資料として使われるということは間違いありません。
  99. 横山利秋

    ○横山委員 大臣、本来この法律の改正は、山陽特殊鋼から起こった。山陽特殊鋼粉飾決算をして、赤字を出しておるのに、税金は黒字だ。この二つのかね合いをどう調整するかということから起こったわけですね。だからこそ、この企業会計審議会第三部会、昭和四十年九月三十日の監査実施準則ですか、これは大蔵省がお出しになっていますね。その中に「引当金の監査手続のうち、納税引当金の監査において吟味すべき証拠資料中には納税申告書等が含まれるものとする」と、追加になったわけですよ。つまり、監査をしますときには必ず税を見ろ、申告書がどうなっているか見ろと省いてあるわけですよ。書いてあるにもかかわらず、監査法人は鵝王になれと言っているわけです。税の相談にあずかってはならぬぞ。——会社が、ところで横山先生、それはわかったが、それに関連して税はどうするのですかと言ったら、監査法人として当社はそれに関与いたしません、どうしたらいいですか、ちょっと待て、一分間休憩だ、と言って、じゃ、今度は監査法人ではない横山公認会計士が御相談にあずかりましょう、ああ、そうですが、ありがとうございます、お礼はどうしたらよいでしょうか、こっちの銭は監査法人のほうに払って、そうして税金の分は私に払え、こういうことなんですね。これはどう考えてもおかしい。ばかばかしいですよ。さっきも同僚委員がそれを指摘をしたら、いや、ほかの局、ほかの省に関連することでありまして、という答弁があったが、これは大蔵省じゃないですか。大蔵省主税局証券局との間に調整ができないというばかげたことはない。これが税理士法に関係するというのなら、なぜ、大臣や政務次官はその調整にあたって、かかるばかばかしい、鵝王が乳を喫するようなできもせぬことをやらせたか。これは松井さんは松井さんでがんばっておるに違いない。主税局長主税局長で税理士法をもってがんばっておるに違いない。そのまん中におるあなた方が調整をしなければならないのじゃないですか。鵝王は乳を喫するけれども、監査法人は乳を喫せないのです。どうするのですか。
  100. 松井直行

    松井政府委員 大臣がお答えになる前にちょっと……。税理士業務と公認会計士業務の本質がどう違うか、それを法人という組織体で組織的に行なう必要性がどっちが強いかということでいろいろ考えました結果、いままで説明してまいりましたとおり、監査というものは、これを組織的に行なうためにやはり監査法人をつくったほうがいいという結論に達したわけでありますが、税理士業務というものが、はたして法人自体の組織として立法構成することが適当であるかどうか、その緊要性が強いかどうかにつきましては、いま主税局で、わがほうがこういう新しい立法をしたのをきっかけにいたしまして、鋭意前向きに検討したいと、この前もここで主税局長が言っておるところでありますが、少なくとも、現在の段階におきましては、税理士法によりまして、税理士業務を法人の業務として構成はできないということになっておりますので、今回はこの監査法人の中の業務として取り入れてないわけでございます。
  101. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 ただいま証券局長から申し上げたとおりであります。
  102. 横山利秋

    ○横山委員 その間が、事実問題としては、鵝王は乳を喫せられない。現に、公認会計士の七割か八割までですか、税理士業務でめしを食っておるのですよ。税理士業務でめしを食っておる人に、監査法人になるべく入れ、監査法人になったら、乳だけ喫して、水は飲んではいけない。そんならどうなるのですか。ですから、同じ会社で、いままでは監査法人として御相談を受けました、今度は公認会計士個人として御相談を受けます、銭は別々に払ってちょうだい。そういうばかばかしいことがあり得るかどうか。結局、同じように水もお乳も飲んでしまう。現に、公認会計士監査実施準則は水もやれと書いてある。こっちでは水をやれと言いながら、こっちの法律のほうは水は飲んではならないぞ、今度はいままでのお前とは別のお前なんだぞ。こういうばかげたことをやって、いつ税理士法が改正されるかわかりませんが、こんなことをやっておったのでは、みすみす大蔵省は恥をさらしておるだけであると私は嘆かざるを得ない。一体、大臣や政務次官や次官は何をしておったのだろうか。こんなことで法案を出してもらっては、迷惑をするのは公認会計士だけではないかと思われる。だから、実際問題としてはこの納税申告書が含まれるのだから、それも見て、税の相談にも実際にあずかる、そういうことを認められるのであるかどうか、事実問題としてそう行なわれることを認められるのであるかどうか、これを最後に承っておきたい。
  103. 藤井勝志

    ○藤井(勝)政府委員 先ほども松井局長から御答弁をいたしましたように、税理士法上、自然人としての税理士というものがこの職能をやっていくというので、公認会計士監査法人の場合は、これはいわゆる企業規模が大きくなって、やはり共同組織体で、これがこの監査に加わらなければ機能が発揮できないということで発足をいたしたわけでございまして、この必要性の前段階は共同組織で、現実に公認会計士の仕事をやっておる。税理士関係は共同作業というような事態にまでは進んでおらないわけでございますので、そういう実情も勘案して、とりあえず急ぐほうから手をつけた。だから、今後おっしゃる趣旨のことも検討事項として主税局のほうでやっておるというのが事実でございますから、決して、それを全然無視して一方的にきめたというわけではございませんことを御了承いただきたいと思うのであります。
  104. 横山利秋

    ○横山委員 私の聞いているのは、この検討をそちらがしておるということは聞いたが、事実上監査法人がこの監査手続によって税をなぶっている。あなたのほうはなぶれと言っているのです。やれと言っているのに、法律上は乳だけ喫せよと言っているところに矛盾がある。だから、実際問題として監査法人は税をやりますぞ、いいのでしょうな、こう言っているのです。
  105. 松井直行

    松井政府委員 実態ないし事実上の要請は、まさにおっしゃるとおりでありますが、法を犯すわけに私はまいりません。(「法はいま審議している」と呼ぶ者あり)いや、税理士法です。そこで、現在の法制の立場に立って考えますときには、監査法人は、法人たる名において税理士業務を行なうことは、これは一応できないと解する以外に方法はございませんが、事実上は、いまおっしゃいましたとおり、かつまた、私が申し上げておりますとおり、会計監査税務サービスとマネージメントサービスは不離一体であり、かつまた、監査を受ける会社側から見ましても、公認会計士からそうした総合的なサービスを受けたいというような希望もあろうと思いますし、現にアメリカ、イギリスにおきまして、パートナーシップはいくつかの部門を置いて統一的に法人の業務としてやっておるということは先ほど申し上げたとおりでありまして、日本も将来そういう方向になっていくべきであるし、持っていきたいという気持ちは、われわれの胸の中で燃えておることはよく御存じのとおりであります。ただ、監査法人の名において税理士業務を行なうことはできませんが、監査法人を構成しております社員たる公認会計士が、個人たる資格で、監査法人がタッチしております会社の税理士業務を個人たる税理士として行なうということでもって事実上の調整が行なわれるのではないか、こう考えております。
  106. 横山利秋

    ○横山委員 そういうのは、大臣お聞きのとおりですよ。これはだめなんです。なぜかというなら、この監査実施準則監査法人にも適用される。大蔵省から出されているものの中で、税のことについてもやれと書いてある。監査法人はやるのです。やれと言っておりながら、税理士法ではやってはいかぬぞ、こういうことになる。これはなるほど簡単には書いてあるけれども、しかも、罰則の例が、税と企業会計とのバランス、調整から始まってこの法律が改正になったのだから、乳だけ喫して、水を飲むな、税をやるなと言っても監査法人はやるのです。私は、この点はもう時間がありませんから言うておきますけれども、監査法人がここの申し合わせ事項に書いてある納税申告書等も吟味しろ、吟味する以上は、ここがいかぬ、あそこがいかぬ、こうしろ、ああしろということになるのは当然であって、それから引き続いて、先生よろしく頼みますというのは同じこと、それなら税だけは横山公認会計士、そしてお礼は別——それだからぼくは言うのです。そんなことをやったら、監査法人企業としての経理企業としての運用に差しつかえる、こういうことを言うのです。だから、そこまでいくと、さっきの話の、社員の中にも公認会計士でない人間をつくらざるを得ないということにも発展する。だから私は、いかぬとは言いながら、事実問題として監査法人税金の問題で相談にあずかり、意見を言い、そうしてやっていく、もう個人でやるというのは名目だけで、実際は同じことだ。こういうみすみす見え透いたことをやらせるということは、これは主税局証券局がお互いに角突き合わせて自説を固持して譲らず、そうして、大臣、政務次官が不在であったという結果であると痛嘆せざるを得ない。この点についての私の嘆きについて大臣の答弁を承って、次に移ります。
  107. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 横山さんのおっしゃることよくわかります。ただ、いま御指摘のように税理士法のたてまえというものがあるものですから、それとの調整という問題が残るわけであります。御事情よくわかりましたので、大蔵省としても検討をいたしてみることにいたします。
  108. 横山利秋

    ○横山委員 次は、横山公認会計士は、自分で事務所をここに一つ開く、横山公認会計士はまた共同で監査法人を開く、そういうことは可能ですか。
  109. 松井直行

    松井政府委員 監査業務につきましての競業禁止規定がありますので、監査業務につきまして両方——一つの社員であると同時に、自分がそれと同じ職業を独立してやることはできないことになっております。
  110. 横山利秋

    ○横山委員 その次は、この監査法人が支店、支部を設置することはできますね。
  111. 松井直行

    松井政府委員 可能であります。
  112. 横山利秋

    ○横山委員 そうすると、この五人以上の監査法人が全国に十人、二十人となってマンモスの監査法人になっていった場合、全国的に網を張って、支店、支部を設置をし、そうしてそこで横山公認会計士がそこでずっとやっておるのですから、個人として税務の相談を受けることはできますか。
  113. 松井直行

    松井政府委員 支店を無限に幾らつくってもいいというものではないと思います。(横山委員「それはあたりまえだけれども、理屈はできるじゃないですか」と呼ぶ)現に、アメリカの例を見ましても、支店事務所にはパートナーが必ずいるようでございます。したがいまして、少なくともアメリカ流に言いますならば、パートナーがそれぞれのブランチに一人以上は責任者としておるということが必要であろうと思います。したがって、五人しかパートナーがおらぬのに、十も二十も支店ができるということはあり得ないと思います。支店長——支店長ということばは悪いですが、そこの責任者であるパートナーが、今度は個人として税理士業務ができるということは先ほど申し上げたとおりであります。
  114. 横山利秋

    ○横山委員 そうすると、東京に本店のある監査法人が、全国で二十の事務所をつくった。その中で横山利秋公認会計士は二十の場合で税務代理業務ができるわけですね。
  115. 松井直行

    松井政府委員 それはまたおしかりを受けるかと思いますが、税理士業務をやる以上は、税理士法の規制を受けることになるかと思います。
  116. 横山利秋

    ○横山委員 そうすると、横山公認会計士は、税理士事務所と監査法人の社員になれる、この権限はできるのですか。横山税理士事務所、公認会計士なら公認会計士事務所であって、あなたの言うのは、公認会計士事務所と監査法人の社員は権限がないからこれ一本でなければいけないというのでしょう。そうすると、税理士業務はどこでやるのです。税理士業務は、この監査法人の中における横山公認会計士が税理士事務所を併設をしてやるということになるのですね。併設をするならば、これはその組織の中だから、二十カ所でできるということになる。
  117. 松井直行

    松井政府委員 監査法人法人体の中で税理士業務を税理士としておやりになろうと、別の事務所をおつくりになりまして、そこで税理士業務をおやりになりましょうと、税理士としておやりになる以上は税理士法の規定の適用を受けるということでございます。したがって、原則は一カ所、何か承認もらえば二カ所という規定がたしかあるかと思いますが、税理士法の規制を受けることはございます。
  118. 横山利秋

    ○横山委員 その辺はこの辺でとめておきますが、方法は幾らでもありそうな気がして、事実上の二十カ所というところへ問題がいく可能性がある。あなたの言うところによれば、監査法人の中でおまえは税理士業務をやれということのようです。それで、こちらのほうで横山税理士事務所を開くのは可能である。公認会計士事務所を開くのはいかぬけれども、税理士事務所を開くのは可能であるというわけですね。それはいまうなずいておられるからそうですね。そうすると、公認会計士の資格を持っている私は監査法人の社員となる。そこで税務代理業務も個人としてできる、それから個人で開いた税理士事務所、そこでもできる、そしてこのネットワークの中でまた新しい税務代理の仕事が事実上できる、そしてそこでいろんな問題が起こっていくということを予見をしておきます。松井さん、えらい考えているようだけれども、私の予見は大体当たっておるから、これは税理士法の改正の場合よく考えていただかなければなりません。  それから次は、先ほどから同僚諸君が盛んに主張しております公認会計士監査証明を受けなければならない部面を広げろという問題です。先般来、政府側の答弁を聞いておりますと、金融、保険、信託についてはなかなか考えがかたいようであります。先ほど政務次官の話を聞いておりますと、後向きではない、それなら前向きであるかというと、前向きでもない、横向きのように考えておる。ばかにしておると私は思っておる。本来、この三つのところが一応監査証明を受けなくてもいいという根拠は「当分の間」ということになっておる。一体「当分の間」ということの法律的語源というのはどういう意味でありましょうか。当分の間監査証明を受けなくてもよろしい、これはすでに十数年たっているんでしょう。「当分の間」という意味は、法律上どういう意味がありますか。
  119. 松井直行

    松井政府委員 特別に例外規定を設けますときに、あえて二年とか三年とか、明示の期限を設けるのを適当としないという場合に普通「当分の間」ということばを使っておりますのが例でございます。したがって、いつかの時期に大きな情勢の変化その他があれば、当然、さっそくそういう規定も考え直し、批判さるべき運命にあるというふうに考えております。
  120. 横山利秋

    ○横山委員 法令用語辞典を見ますと長々と書いてありますが、要するに、その「当分の間」という意味は、臨時的な措置であり、それから不確定な期限をあらわしたものであるということばに尽きるようであります。いろいろ例証をあげておりますけれども、この二つの解釈、つまり、臨時的な措置、本来あるべき姿ではないけれども、本来あるべき姿へ戻るために不確定の期限有効とする、こういう解釈であります。大臣は、この信託や金融や保険は、本来あるべき姿として公認会計士監査証明を受くべきであるとお考えでありましょうね。いまのは暫定的、臨時的、本来あるべき姿ではないとお考えでしょうね。
  121. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 いまの法的の立場はそういうふうになっておると思います。
  122. 横山利秋

    ○横山委員 そうすると、本来あるべき姿は公認会計士監査証明を受くべきであるという点について御同意なすったと思われます。ところが、先般来の政府側の答弁を聞きますと、要するに、監査証明をどうかというのは、大蔵省が非常に熱心に金融検査官を配置して検査をしておるからだ、だから二重に検査をするということもいかがなものであるかというような意見であります。私は、もしもそうだとするならば、二つの解釈をする。一つは、逐次大蔵省の直接監査のウエートを少なくする、そして本来の姿へ戻す、もう一つ考え方は、この公認会計士監査大蔵省の行なう検査とはベースが違うという考え方であります。その二つの考え方に沿って、逐次あるべき公認会計士監査証明を受くべきであるという点については、どういう意見でございますか。
  123. 松井直行

    松井政府委員 本来、公認会計士監査を受くべきものとして法律に書いてありまして、附則で、特に監査を要しないものとしてそこに列挙してあるということは、本来やはり受くべきのが原則であるが、例外として当分の間これを省いてございますという意味であろうと思います。したがいまして、情勢の変化その他がありますならば、当然本来の原則に返るべきかどうかを始終批判されてしかるべきものだと私は考えております。
  124. 横山利秋

    ○横山委員 同じような問題で、証券です。証券はいま公認会計士監査を受けていますね、一定基準以上は。
  125. 松井直行

    松井政府委員 仰せのとおりです。   〔吉田(重)委員長代理退席、委員長着席〕
  126. 横山利秋

    ○横山委員 証券はいま届け出制で、しかも、大蔵省の金融検査官の厳重な検査を受け、なおかつ公認会計士監査を受けておる、その事実をどう考えたらよろしいか。そして近く、再来年ですか、証券業者は免許制になる。そうすると、免許制になったら、金融機関や信託や保険と同じように、公認会計士監査証明を必要としなくなる論理になるのですか、ならないのですか。
  127. 松井直行

    松井政府委員 免許制がしかれますときに、そのときの社会的、経済的、いろいろな諸般の事情を考えまして、銀行と証券との違い、あるいは同一性等、その他権衡もいろいろございますので、証券業者が事実上免許制になるときに、証券業者がどうあるべきか、銀行との関係がどうあるべきかは、あらためて慎重に検討したいと考えております。
  128. 横山利秋

    ○横山委員 えらい慎重ですな。松井さんのは慎重ではなくて、緊張してものを言われますが、大蔵大臣、この点はどうでしょうか。いまは、とにかく証券会社はこれほど大蔵省から厳重にやられておる、財務局からもやられておるわけですよ。それで公認会計士監査証明をやはり受けておるわけですな。言うならば、二重ですよ。いま届け出制だといったって——再来年から免許制になるといったって、事実上、いま証券会社大蔵省からいろいろ調査、検査を受けておるウエートは銀行以上ですよ。時の問題ですからね。だから、二重という理屈なら成り立たぬじゃありませんか。二重理論はここでこわれるじゃありませんか、現に両方やっているのだから。だから、金融も信託も保険もやらしたって同じことですよ。もしも二重だという理論を固執すると、免許制になったら、証券会社公認会計士監査を必要としないという論理の中へ入っていってしまう。この辺は大臣どうですか。私の言いたいことの方向へ前向きに話してください。
  129. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 なかなかむずかしい問題のようです。つまり、金融機関と証券会社をどういうふうに理論づけるか、こういうことなんです。特に、免許制になった後における証券会社と金融機関はそう大きな差異はなくなる。ところが、証券取引法上の扱いは違ってくる、こういうふうになるわけでありますから、これは私どももよく考えてみる、こういうことにいたしたいと思います。
  130. 堀昌雄

    ○堀委員 関連。  四十三年四月から確かに免許制というのは一般的に行なわれるわけですけれども、御承知のように、いま新山一問題というような問題が提起されておるわけですね。新山一というものがもし設立されれば、これは免許制による第一号の免許会社です。そうすると、新山一は免許制だから監査が要らないけれども、その他の証券会社は全部監査は要るのだ。ですからこの問題は、大臣、この立法の当初の趣旨も、監査をしてならぬということでないと私は思うのですね。あなた方が監査の問題のディスクロージャーのあり方については、これまでの金融機関のいろいろなあり方として必要がない、こう認めたのは、当分の間それを必要としないという趣旨ではなかったのか、私はこういうふうな感じがしますので、ここまでくれば、もう金融機関もちゃんと基盤も整備されてきておることでもありますから、ある程度ディスクロージャーされても、それによって問題があるような金融機関では困るわけでもあります。私は大蔵省の検査という側面と監査という側面はやや違いがあると思います。検査のほうは、法律に基づく違法行為なりその他の法令に違反するものについての検査をするのがたてまえで、監査のほうは、財務その他のいろいろな状態についての適正、不適正の問題ですから、裏返して言うならば、大臣、もし証券会社の会計士の制度粉飾決算を認めない程度に確立をされていれば、山一問題のようなことは実は起きなかったのではないのか。これまでの大蔵行政が、残念ながら行政の中で粉飾決算を認めてきたからこういう問題が起きたわけだから、その点については、公認会計士監査が不十分であるという問題と同時に、大蔵省もこれまでいろいろ問題をかかえてきたという過去の経緯もありますから、そういう面については、逆に公認会計士監査にゆだねるほうがいいのではないか。免許制にしておることは、免許の諸条件に合致するかどうかについての検査権があるけれども、それから先は、実は私は、監査の問題として考えるほうが適正ではないか、こういうふうに思いますので、その点を踏まえて、ひとつたいへんしつこいようですけれども……。
  131. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 よく検討してみます。私もまだあまり考えたことのない問題でございますので、さようお願いします。
  132. 横山利秋

    ○横山委員 私が公認会計士監査証明の範囲を広げろと言う本来の趣旨は、民間企業なり、いろいろな組織に対する政府の直接監督権のあり方について考えさせられる点があるからであります。先般、銀行局の検査部から来てもらいまして、銀行検査のあり方についていろいろ実情を聞きました。それによると、相当周密な検査をやっている。そうして内部批判の会議もやって、間違いのないようにしておる、こういうことであります。しかしながら、昔年銀行検査官の汚職が出ました。そこで私は、銀行検査官を検査する検査官をつくらなければなるまいではないかという皮肉を言うたことがありますけれども、政府の直接監督はなるべくだんだん低くしていって、その企業なり法人の内部牽制制度を充実させていく、そして客観的な第三者の判断を受けて自主運営をはからせるように行政指導するのが本来の趣旨であるというところから発しておるわけでありますから、その点お含みを願いたい。  そこで今度は私学の問題に移るわけであります。本件は、大蔵大臣からすでに前向きの御答弁を伺ったのでありますが、文部省の御意見を伺いたいのであります。  先般、早稲田の紛争に際して、文部省としてはやや言語不明瞭ではありますけれども、政府の監督権を強めなければならないだろうという意味のことに受け取れました。ああいう私学の紛争は、早稲田は理事者と学生との間の問題でありますが、昔年文教委員会で大いに問題にいたしました名城大学の紛争をはじめといたしまして、全国津々浦々で私学の紛争は枚挙にいとまがないのであります。これを具体的に摘出するには時間がございませんが、あなたが御存じのとおりでございます。  そこで、あの私学の紛争処理に関する法律案をつくりましたときに、何人も名城大学の欠陥は認めるけれども、しかしながら、この法律が私学に対する政府の監督権強化になるのはどうしてもがまんができないという大勢のために法律の制定が非常におくれ、舞台裏では文部省をして名城大学以外の問題にこの法律を適用しないとまで言わせて、あの法律を通したのであります。しかるところ、今回早稲田大学の巨大な問題が世間の目を浴びまして、大浜総長は学生に対して経営の事情をお話しされましたけれども、しかしながら全部が全部お話をされたわけではない。しかも、全部が全部学生に話すべきことでもなかろう。多少は同情に値するわけであります。しかりといたしますならば、片や、ガラス張りには必ずしも適当でない部面があり、片や、政府の監督支配を強めるということについては私学の本質上妥当でない。でありますならば、この際、間接的な監督その他のために私学をして国の税金を——免税制度があり、財政投融資を受け、あるいは補助金を受け、  つまり、われわれ納税者の税金を、また積み立て金を運用しておるとするならば、この際、一つのクッションを設ける意味におきまして、公認会計士監査証明を受けるべきである、こういうふうに考えるのでありますが、御意見を伺いたいのであります。
  133. 天城勲

    ○天城政府委員 先生すでに私学の法制上の点は御存じだと思いますので、説明はごく簡略にいたしますが、現行私立学校法上におきまして、学校法人の財政面の業務執行の監査につきましては、法人には役員として監事二名以上を置くことといたしております。それから、所轄庁としての関係については文部大臣でございますが、現行法のもとでは、経理について直接監査を行なう権限を有しておりません。ただ、御指摘の補助金につきましては別でございますけれども、一般的な経理監査権を持っておりません。また、私学におきましても、俗に言う経理公開という義務も負っておらぬのが実情でございます。  そういう前提でいま御指摘の問題を私考えてみますと、早稲田の問題に限りませんで、私学で幾つかいわゆる私学紛争というものが起きております。これは原因は必ずしも同じではございませんし、またそれぞれ事情も違っておりますけれども、なお今日、私学の経営が一般的にきわめて困難だということから、私学の財政問題について学校及び世間から非常に注目を浴びていることは御存じのとおりでございます。そこで、私学の自主的な経営という前提ではございますけれども、できるだけ経営を合理化していく、あるいは公正にしていこうということで、法律的には監事の制度がございますが、なお、最近では公認会計士監査を求めたり、あるいは助言と指導を受けて法人内部の監査を進めている実情を私どももしばしば耳にしている状況でございます。そこで、いま私学の財政上の問題あるいは経営上の問題につきまして、きわめて多角的に議論が出ている段階でございまして、御承知のとおり、昨年度、臨時私立学校振興方策調査会を法律に基づいて設置しております。これは二年間の時間を切って私学の振興問題を検討しているわけでございますが、この調査会におきましても、かなり多角的な面で私学の経営上の問題が取り上げられてきております。御指摘のような監査と申しますか、私学の経営を合理化していくための担保する問題についても議論が出ているときでございますので、御趣旨の点につきましては、委員会等の審議の過程もございますので、十分反映しながら検討させていただきたいと思っております。
  134. 横山利秋

    ○横山委員 原則として、御同意と承ってよろしゅうございましょうか。この監査制度にはいろいろなやり方があるわけであります。監査役の機能を充実するということもあるわけであります。しかし、これは別の角度でぼくは思っておるのでありますが、株式会社や一般の法人監査役は何をしているか、何にもしてない。会社はむだ使いをしておる。監査役の機能は何ら果たしていない。それは社長の監督下にある監査役であるからだと思っておるのです。独立の機能を持っておる監査役じゃないから、まあ、重役にするにはちょっとあれだから、監査役ないしは飾りの監査役、えらそうな監査役、こういうように使われておるから、商法上の監査役というものが機能を果たしていない。そんなものを多少なぶったところで目的を達するわけにはいかぬのです。公認会計士監査証明を受くる方向について、原則として、御同意と承ってよろしいのでしょうね。
  135. 天城勲

    ○天城政府委員 いま申し上げましたように、調査会でいろいろな角度から検討しておりまして……。(横山委員「あなたの御意見を伺っておるのです」と呼ぶ)私学の経営状態の健全化の措置について検討しておりますので、そのための意見というのは、いろいろなものが各委員会で出ているわけであります。現在、私どもも調査会の結論を期待して待っている段階でございますので、私が結論的にいろいろなことを申し上げる段階でないので、その点は御了解願いたいと思いますが、私個人の意見ということでありましたならば、この問題も含めて、前向きに検討したいとお答えいたす次第であります。
  136. 横山利秋

    ○横山委員 技術的に証券局長かどなたかにお伺いしたいのですが、私学にこの監査証明を受けさせるにはどの法律を直すことになりますか。おわかりになりませんか。
  137. 天城勲

    ○天城政府委員 私の感じからいたしますと、やはり私立学校法を改正することが必要じゃないかと考えております。
  138. 横山利秋

    ○横山委員 わかりました。  次は、三十三条を中心にして私の解釈に誤りがあるかどうか、まず伺います。公認会計士に対しては立ち入り検査権あり、公認会計士協会にも立ち入り検査権設定、監査法人には立ち入り検査権なし、こういう法律構成ですか。
  139. 松井直行

    松井政府委員 個人たる公認会計士事務所及び監査法人には立ち入り検査権は規定してはございません。
  140. 横山利秋

    ○横山委員 そうすると、三十三条の四「事件に関係のある事務所その他の場所に立ち入り」云々は削除になっているのですか。
  141. 松井直行

    松井政府委員 三十三条「大蔵大臣は、前条第二項又は第三項の規定により事件について必要な調査」といいますと、懲戒の手続としてのことでございまして、最初の御質問は一般監督権としてのお話であろうと思って、そうお答えしたわけであります。
  142. 横山利秋

    ○横山委員 そうすると、一般的には協会にのみ立ち入り検査権あり、そして個人並びに監査法人には一般的な立ち入り権なし、そして懲戒の場合には、個人のところにのみ立ち入り検査権あり、こういうわけです。
  143. 松井直行

    松井政府委員 三十四条の二十一でございます。第二項に監査法人の準用規定がございます。
  144. 横山利秋

    ○横山委員 これはちゃんとありますね。そうしますと、その立ち入り検査権について聞くのですけれども「事件に関係のある事務所その他の場所」という「その他」は何ですか。どこでもいいのですか。
  145. 松井直行

    松井政府委員 これは公認会計士の事務所のほか、公認会計士監査を受けております被監査会社を予定いたしておりますが、どこでもいいというわけじゃないのでありまして、その四号にございますように「事件に関係のある」云々ということで読むことと、三十三条の本条にありますように、やはり「必要な調査をするため」ということでもって、不当に権限を拡張しないようにここでくさびが打ってあると解しております。
  146. 横山利秋

    ○横山委員 私は、この協会のみ一般立ち入り検査権を認め、個人並びに監査法人には認めずという点について、均衡上の問題を一つ、それからもう一つは、この「その他の場所」というのは、事件に関係があるかどうかの主観的判断が自由裁量にまかされるおそれがあるというのが二つ、三つ目には、この種の権限には、調査のための証票の提示——私はこういう者であるという証明書の提示、ないしは立ち入り検査権でありますから、しかるべき人の立ち入り検査を行なわせしめるべき書類、それらがこの三十三条の中にないということはいかがなものであるかと思っております。
  147. 松井直行

    松井政府委員 一般的監督権の発動として協会には立ち入り検査あり、それから自然人たると法人たるとを問わず、公認会計士事務所には立ち入り検査権がないというお話でございますが、協会につきましては、御存じのとおり、自主、自立機関として全体の公認会計士の組織しまする団体の規律維持という大きな任務を負わしておるほかに、公認会計士の登録等、非常に重要な公的な仕事もやってもらうわけであります。したがいまして、普通の一般の公益法人等につきましても、最小限度の一般監督の担保というものが必要なわけでありまして、わがほうの公認会計士協会につきましても、そういう例に従って立ち入り検査権を一般監督権の発動として残したわけでありますが、その会員であります公認会計士並びに公認会計士法人につきましては、これはどこまでも会の自主的な監督権限に委譲したい、協会の自主責任体制を生かす意味におきまして、立ち入って検査する等の問題につきましては、むしろ協会の規約の中におきまして、一般の会員が協会からそういう検査を受ける受任義務を書くことによりまして、協会自体の自主責任体制を明確にしたいというふうに考えたわけでございます。  それから、三十三条の「調査のための権限」でございますが、これは懲戒のための調査でございまして、特に権限ある職員の身分を証するものを提示しろとは言っておりませんが、一般的な監督権の発動として協会に立ち入り検査しまするときは、四十六条の十一の二項に当該……。(横山委員「協会の場合です」と呼ぶ)だから、協会の場合にのみ一般的監督権の発動として立ち入り検査権があるわけでありますが、立ち入り検査をするときには、職員はその身分を証する証票を携帯して、提示しなければならないという規定を四十六条の十一の二項に入れてございます。
  148. 横山利秋

    ○横山委員 大臣にお願いしたいのですが、おそらく政令が出ると思うのです。私は一貫して立ち入り検査権の設定については反対をしてきているわけであります。税法におきましても、特に立ち入り検査権については慎重であるべしという説をとり、一般調査は申すに及ばず、調査、査察におきましても、常に慎重な、人権じゅうりんその他のことのないようにということを希望してまいりました。したがいまして、一般調査であれ、あるいは懲戒の調査であれ、立ち入り検査というものがその社長並びに従業員はもとより、近所の皆さん、あるいはまた、それによって受くべかりし信用の失墜はもとより、あらゆる面において甚大な精神的ないしは物的な被害を受けるわけであります。したがいまして、私は立ち入り検査権の設定に反対ではありますけれども、しかしながら、やむを得ざる行使をする場合における制限については、乱用にならないように特に注意をしてほしいのであります。したがいまして、政令をおつくりになります場合には、公認会計士協会における身分証明書の提示のほかに、必ず上司の立ち入り検査をさせるという書類を渡せしめるようにし、個人並びに監査法人の立ち入り検査が、懲戒のときといえども、身分証明書の提示並びに上司の立ち入り検査をさせるという書類を提示して、その責任の分野を明らかにすることによって乱用を戒めてもらいたい。政令の作成の段階において善処をせられたいと思いますが、いかがでございますか。
  149. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 方法はいろいろ考えなければなりませんけれども、これがいやしくも乱用され、不当に個人あるいは会社に迷惑を及ぼすということがあっては、これはもちろん相ならぬわけでございますから、その辺の配意は十分いたしたいと存じます。
  150. 横山利秋

    ○横山委員 立ち入り検査権並びに一般調査権、すべて疑わしきものに行なわれるのであって、犯罪人に行なわれるものではない。したがって、これを犯罪捜査と解されてはならないというのはすべてにあるわけであります。したがって、犯罪捜査と解されてはならぬ。疑わしきときに行なうのでありますから、往々にして無実の罪である場合があるわけであります。税法においても同じであります。査察をやった、一般調査をしたけれども、何日も何人もかかってやったけれどもそれは白であったという場合があります。その場合に、国家賠償法がどの程度適用されるかにつきましては、きわめて希薄なものがあります。でありますから、この立ち入り検査権を行使するにあたっては特に慎重でなくてはいかぬ。特に慎重に、精神的訓辞のみならず、具体的な責任を明らかにしてもらいたい、こう私は言っておるのでございますから、この趣旨をおくみ取りの上、政令作成の段階において、身分証明書の提示並びに上司からこれをさせるという書類の提示を必要とすることは、けだし人格穏健にして、民主的な大臣にして当然御了解願えるものと確信するわけでありますが、重ねて御意見を伺いたい。
  151. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 政令が必要であるかどうか、そういう点は、私もどうも法律にあまり詳しくありませんので申し上げにくいのですが、御趣旨はよくわかっておりますから、そのようにいたします。
  152. 横山利秋

    ○横山委員 最後に、同僚委員が待っておりますので、もうこまかく申し上げるわけにはまいりません。会社更生法の問題について聞きたかったのでありますが、時間がございませんし、先般本会議におきまして、わが党提案の会社更生法五項目につきましては、法務大臣から、全く同感であって、法務省内部の委員会において十分審査をさせる旨お答えをいただきましたので、本日は一点にとどめます。  「有価証券報告書に対する所謂「法定監査」は会社更生法の適用とともにストップし、更生期間中長期にわたって裁判所の専決監督となるため裁判所の補助機関として公認会計士を活用し、更に「法定監査」に代る「公認会計士監査」を更生会社義務づけ、投資家ならびに債権者保護の万全を期する」旨陳情がございました。非常に問題だと思いますが、この点をどうお考えになりますか。
  153. 松井直行

    松井政府委員 会社厚生法は法務省の法制審議会でいま論議されておるところでございますが、大蔵省側といたしましてもいろいろ意見を申し述べておるところであります。特にいまおっしゃった職業会計人としての公認会計士の知能を活用するという意味におきまして、裁判官は一般的に経理にも非常に明るい方が多いようでありますけれども、専門家の知恵は大いに活用する必要があるという観点から、いまおっしゃいました趣旨のこと、あわせて、各方面からもそういう同種の趣旨の陳情もございましたので、十分いまおっしゃいました線に沿った趣旨が取り入れられるよう、われわれといたしましても意見をその席上で申し述べてきたところでありますし、また、今後とも続けて申し述べたいと思っております。
  154. 横山利秋

    ○横山委員 終わります。
  155. 三池信

    ○三池委員長 堀昌雄君。
  156. 堀昌雄

    ○堀委員 最初に、少し技術的な問題を事務当局に伺っておきます。  法第三十四条の十七「監査法人の社員は、次に掲げる理由によって脱退する。」この脱退するということは、監査法人の社員が脱退する、こういうふうに書かれておる感じがするのです。その四番目のところには、「除名」という項目があるのです。この除名というのは一体何ですか。
  157. 松井直行

    松井政府委員 それは商法の合名会社規定にのっとってつくったものでございまして、除名が脱退の原因になるということだけでございます。合名会社規定の八十五条に、法定脱退原因といたしまして、死亡とか、破産、禁治産のほかに、除名というのがございます。これが合名会社の法定脱退の原因になるというその思想をそのままとったものでございます。
  158. 堀昌雄

    ○堀委員 商法にあるからここにあげた、こういうことらしいですけれども、ここにいう除名とは、一体どういう場合を除名というのか。脱退というのは、自分がやめるほうのことだろうと思うのです。除名というのは、法人の側が、おまえさんはだめだというのが除名になるのではないかと思うのです。その法律解釈はともかく、一般常識としては、どうも自分でやめるほうを除名というのは、どういうことを意味し、事実としてはどういうことが当てはまるのか、ここに除名という項を起こした具体的な予想される事情をお伺いしたい。
  159. 松井直行

    松井政府委員 合名会社の例にのっとって申し上げたいと思いますが、商法の八十六条には「社員ニ付左ノ事由アルトキハ会社ハ他ノ社員の過半数ノ決議ヲ以テ其ノ社員ノ除名」を裁判所に請求することができるとありまして、例としましては「出資ノ義務ヲ履行セザルコト」、第二号に「第七十四条第一項ノ規定二違反シタルコト」——競業禁止の規定でございますが、これも監査法人の中には取り入れてございます。すなわち、「業務ヲ執行スルニ当リ不正ノ行為ヲ為シ又ハ権利ナクシテ業務ノ執行ニ干与シタルコト」、第五に「其ノ他重要ナル義務ヲ尽サザルコト」と、いろいろ除名原因があげてあるわけでございます。その除名が原因となって法定脱退ということに相なっております。
  160. 堀昌雄

    ○堀委員 商法規定を援用したということでありましょうけれども、もし除名が起こるという場合、五人の場合だったら、これは同時に、事実的に監査法人は解散になるわけです。そうでしょう。五人の監査法人で、一名除名すれば分解する、こういうことになりますね。
  161. 松井直行

    松井政府委員 三十四条の二十「要件を欠いたことによる設立の認可の取消し」という規定がございます。大蔵大臣がいまおっしゃいました「三十四条の四各号の一に掲げる要件」、つまり、五人というのが四人になった場合もこの中に入ると思います。「その設立の認可を取り消すことができる。」したがって、その間補充が急速にできない等の事情がありますれば、当然要件を欠いたことになって、認可の取り消しということに相なろうかと思っております。
  162. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、それはしばらく四人でもいけるという事実があるわけですね、いまの話からいきますと。
  163. 松井直行

    松井政府委員 いつまでもかかって待てるというものじゃないわけでありまして、条理上、特殊な原因があって補充までにひまがかかる、その間も相当な事由があり、相当な期間のうちに埋められるという要件があれば、すぐに認可の取り消しということにはいたさないほうが行政上妥当性があるのじゃないかと考えます。
  164. 堀昌雄

    ○堀委員 その次に、三十四条の十八に「破産」というのがありますね。これもおそらく商法に書いてある、こういうことなんでしょうけれども、監査法人の破産というのはどういう場合ですか。
  165. 安井誠

    ○安井説明員 堀先生の御指摘のとおり、商法と同じように考えたわけでございます。監査法人一つ法人格を持っております以上、たとえば、債務負担とか、あるいは物を買いまして金の支払いを怠ったというような場合に、支払い不能ということになりますれば、破産原因が生ずるわけでございまして、そのときには破産ということが法律的に考えられるということでございます。
  166. 堀昌雄

    ○堀委員 一般的に、合名会社というものは、その行為そのものが営利事業を営むかっこうになっておるわけですから、他の業態でこういうものは珍しい業態になると思うのです。第一、公認会計士というのは、よその会社の財務諸表をしょっちゅう監査をして、適正かどうかについて判断しなければならぬ連中が集まっておるところが破産するというのじゃ、とてもよその監査はできないことになりはしませんか。自分のところの監査は条件をつけられてはおらぬでしょうけれども、要するに、人相見は、他人の人相は見られるけれども自分の人相は見られなかったということと同じにはいかないと思う。その点、破産というのはなるほど商法を援用して書いたと言う、それはわからぬわけではないけれども、仕事の性格上、破産をする前にちゃんと処置ができないような公認会計士が五人も集まっておったのでは、よその監査について意見が述べられるはずがないと思うのですが。どうしようか。
  167. 松井直行

    松井政府委員 実際問題といたしまして、監査法人が破産になるということは、おそらく起こり得ないし、また、監督上もそういうことが起こらないようにしたいと思います。ただ、三十四条の十八は、解散原因は一応法的にいろいろな場合を想定して、法的な満足を与える必要があるわけでございまして、立法化のため、やかましいスクリーンにかかりまして、こういう場合も十分想定しておく必要があるわけであります。法的な安全性をここに確保したわけでございます。
  168. 堀昌雄

    ○堀委員 どうもあまり納得できないのです。書いた以上はしかたがないと思うのですが、破産するような公認会計士監査法人なんというのは、認可するほうの大蔵大臣にも責任があるわけですから、これは商法との運用の関係で書いたのでしょうけれども、しかし、実際に監査法人が破産をするようなことは一切ないという前提で大蔵大臣は認可をしてもらわぬと、自分の会社が破産するかもわからぬようないいかげんな公認会計士監査法人を認可してもらっては困りますが、その点はよろしゅうございますか。
  169. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 そのとおりだと思います。
  170. 堀昌雄

    ○堀委員 その次に、三十四条の二十一の三号「この法律若しくはこの法律に基づく命令に違反し、」ここまでは非常にはっきりしていますが、「又は運営が著しく不当と認められるとき。」という表現があるのです。一体この「運営が著しく不当」というのは、これはものさしは何ですか。
  171. 松井直行

    松井政府委員 一号、二号には、御存じのとおり構成員たる社員の故意あるいは相当の注意を怠ったことによります法人としての責任をきめたわけでありますが、この第三号は、監査法人について「業務の全部若しくは一部の停止を命じ、又は設立の認可を取り消すことができる。」というこの対象に運営の不当を加えたのであります。「運営が著しく不当と認められる」と申しますことは、監査法人としての運営が不当であるということでございまして、社員の使い方は申すに及ばず、監査法人は組織的な監査をやることを主体にいたしております関係上、組織的な監査実体をなしていない烏合の衆の社員の集まりであるということでありますならば、法人格を与え、法人自体に監査能力を付与するという趣旨に反することになりますので、このように運営が著しく不当と認められる場合におきましても、業務停止とか、あるいは認可の取り消し等、個々の社員の責任のほかに、こういうものを置いておく必要があるというわけでございます。
  172. 堀昌雄

    ○堀委員 置いてあることは、私はいいと思っているのです。しかし、ものさしがなければ、何が、どこまでが著しく不当なのか、非常に抽象的な表現になっていますから、前段に書いてあるように、具体的に「社員の故意により、虚偽、錯誤又は脱漏のある財務書類を虚偽、錯誤及び脱漏のないものとして証明したとき。」とか「社員が相当の注意を怠ったことにより、重大な虚偽、錯誤又は脱漏のある財務書類を重大な虚偽、錯誤及び脱漏のないものとして証明したとき。」とか「この法律若しくはこの法律に基づく命令に違反し、」とか、ここまでは非常にはっきり書いてあるわけです。だから、それならば疑いがないのですけれども、「又は運営が著しく不当と認められる」という表現は、何か少し例示なり、ものさしがないと、これは恣意的に、どうも不当だといえばそれまでということになりかねない表現になっていますから、その点はひとつ何らかのものさしか何かないと、一方的に、あなたのところは不当です、著しく不当だというと、それで終わりだということになると困ると思うので、伺っているわけです。私は、運営が著しく不当なら処分していいと思うのですけれども、それについては、何らかのものさしを考えておく必要はないのかということで、伺っておるわけです。
  173. 松井直行

    松井政府委員 こうした団体につきましてこういう規定を置きました例は、商工会議所法その他に例がございますので、例文を使ったわけでございますが、内容は、先ほど私が申し上げましたように、組織体として運営がうまくいっているかどうかということのほかに、公認会計士業務の本来の目的に沿ってやっているか、第一項の監査業務を主としてやらずに、第二項の付随的な業務のようなことばかりをやっているというような場合もあろうかと思います。そういう場合に、法人自身について、営業停止とか認可の取り消しというようなことがあることは御承知のとおりでありますが、運用につきましては、実際これが通りましたならば、少しこまかい運用規定その他、だれからも非難を受けない公正妥当な基準をつくりまして運用したいと考えております。
  174. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、今度は少し内容に入って伺いますけれども、四十四条に「協会は、会則を定め、これに次に掲げる事項を記載しなければならない。」こうなっておりまして、「会員の受ける報酬に関する標準を示す規定」とあるのです。ところが、私が実はこの前この法律がつくられるモメントとなったと思われる質問をいろいろしてきた過程の中では、報酬の問題は非常に重要でありますけれども、報酬というのは、監査行為に対する報酬ですから、監査行為がどういう形でされねばならないかというものの規定が先行しないで、ただ報酬規定があるというのは、私はあまり適当でないと思うです。  実は、皆さんのほうの資料を拝見しても、アメリカのある会社については延べ一万時間、あるものについては延べ五千時間が監査の所要時間として出されている資料があるわけです。資本金その他を見ますと、二百何十億の資本金の会社で、従業員二万何千人ということですから、日本でも十分あり得る会社です。そこでいまの一万時間というようになって、そうしてアメリカの資料を見ると、一時間当たりの報酬がそこで規定をされている。いまの日本監査報酬のあり方はどういうふうになっておるかつまびらかにしませんが、聞くところによれば、グロスで三十万円とか幾らとかのようで、必ずしも実働延べ時間当たり幾らというような報酬規定にはなっていないのではないか、こういうような感じがいたしますが、その点、要するに、資本金がどのくらいの会社で、支社あるいは事業所、工場等がどのくらいの範囲にわたっているものは少なくとも最低どのくらいの所要時間をその監査をするに要するかというような、モデル的な監査の所要時間といいますか、監査のあり方についての規定もないと、ただ報酬規定だけを設けてそれで済むというのでは、私はこれはやや問題があろうと思う。ここをずっと読んでみますと、この中にはそういう本来の公認会計士業務についての一番基本的な規定は設けられるようにはなっていない。この点、どんなふうに考えられますか。
  175. 松井直行

    松井政府委員 仰せのとおりでございまして、一括報酬幾らというきめ方は非常に不合理でございます。その前に、どういう会社、どういう大きさの会社、どんなむずかしい仕事をしている会社についてはどの点に何工数見るのがいいかという、そういう準則がまずあることが前提であるということは、まことに仰せのとおりでございます。日本の場合におきましてはまだそういうものができておりません。一般的に、監査実施準則によりまして抽象的には要請はいたしておるのですが、現在のところは、公認会計士と被監査会社との話し合いということでございまして、公認会計士は、良心に従って十分な監査をするべく、良心に従った監査ができるまでの工数を費やそうと各自が努力しているというのが現状でございます。アメリカ等におきましては、いまおっしゃった基本的な問題についてパートナーシップが大組織のもとに監督を行なっており、それぞれハンドマニュアルのようなものをつくっております。したがって、業種別、会社の大きさ別、あるいは監査の困難、非困難等に応じまして、パートナーシップの中で所要工数等につきましてそれぞれ規定を置いておるようでございます。日本の場合でも個人公認会計士はなかなかそこまでいきにくいところでありますが、この監査法人ができますならば、そうした業務の執行についてのマニュアルというようなものも当然つくらねばならないし、そのできたものによって監査が行なわれるということを期待したいと思っております。  現在の監査報酬基準でございますが、おっしゃいましたとおり、なるほど基本報酬というものがきめてございます。いま一部の上場会社でございますと、一事業年度三十万円、あとはそれに従事いたします人間の従事日数に応じて執務報酬というものを出すことになっておりまして、四十年十月に経団連との間において申し合わせでできました報酬基準によりますと、従来から相当引き上げられたかっこうになっておりますが、監査責任者として公認会計士が従事しますと、一日について一万円、監査補助者の場合には、それが公認会計士である場合には七千円、会計士補である場合には四千円ということで、一応提供した労務に対する反対給付という形、そういう要素も取り入れておるわけでございます。なるほど、おっしゃいましたように、どういう種類の会社についてはどういう性質の監査が必要か、そのためには何時間、何工数必要かということの規定といいますか、ルールをつくることのほうがより先決であるということは、まさにおっしゃったとおりであると考えます。
  176. 堀昌雄

    ○堀委員 私がこの前いろいろと議論をいたしましたのは、要するに、現在公認会計士会社に隷属する形になっておる点が改められなければ適正な監査ができない、ここを強く指摘したわけです。そこでできたのが強制加入のような特殊法人公認会計士協会で、クローズドにした。クローズドにしたということは、私が特に主張したのは、クローズドにすることによって、内部的な値下げ競争といいますか、そういうものの不当な影響力を防ぎたいということにあったわけですから、ここでこれだけの公認会計士制度改正をやろうとするならば、この目的は何かといえば、少なくとも、投資家の立場に立って、厳正、確実に財務諸表が明らかにされるということでなければならない。そうすると、たとえば八幡製鉄のような超大規模の会社監査するときに、実際、常識としてどのくらいかかるかということは当然一つのルールができてしかるべきで、そのルールこそ、私は公認会計士協会がつくるべきだと思う。どの監査法人がやろうとも、少なくとも最低これだけはやらなければいけない、そういうルールを各事業所別に考えるべきだ。現在資本金別被監査会社の数が出されておりますが、三十九年の十二月三十一日に、一億円未満が三十七、一億円以上三億円未満七百三十二、三億円以上五億円未満三百四十六、五億円以上十億円未満が三百四十九、十億円以上三十億円未満が四百十六、三十億円以上五十億円未満が百十三、五十億円以上百億円未満が八十五、百億円以上が九十五と、こういうふうに分類されておるわけです。そうしますと、私、これをずっと見ていて感じるのは、下のほうはいやにこまかく区切りがしてあるわけです。一億円から三億円、三億円から五億円、五億円から十億円、その次ぐらいから十億円から三十億円、三十億円から五十億円と、大体二十億円刻みになるのですね。その次は五十億円から百億円で、五十億円刻みになって、あとは百億円以上と、こうなっておるわけです。この中にも感じられるのですけれども、やはり大きな会社ほど実際は監査は非常に困難である。ですから、それについてのおのずからのルールがきまってこなければ、ただ経団連との話し合いなどというようなことでは、この公認会計士法をこれだけさわってもあまり意味がないのではないか、やはり適正な、事業規模に応じた密度のある監査を行なうという前提を、この法律には書いてないけれども、今度の公認会計士協会に何らかの方法によって行なわせるべきである、そのルールをつくらせるべきである、こういうふうに私は思いますけれども、大臣、これは政治的なお答えでけっこうですが、いかがでございましょうか。
  177. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 先ほども証券局長からお答え申し上げましたように、やはり、監査の仕事に従事する従事基準といいますか、それが必要だと思います。そういう基準からおのずから報酬の問題も解決されていく、これが適正なやり方である、かように考えます。
  178. 堀昌雄

    ○堀委員 アメリカの例として、一時間当たりの報酬がモードとして一番多いところは、これは私、ローカル・パートナーシップ、ナショナル・パートナーシップという意味がちょっとよくわからないのですけれども、いずれもパートナーシップという意味で理解すると、ローカル・パートナーシップのほうは大体十ドルから二十ドルというのが七二%、それからナショナル・パートナーシップというのは二十ドルから三十ドルの間が五五%ということですから、大体二十ドル内外というのが一時間当たりの報酬となっておるようです。アメリカと日本は違いがありますから、さっきのお話のように、とりあえず、公認会計士が一日業務に従事すれば一万円というのは、私は決して不十分だと思いませんけれども、その日数のとり方をひとつ総合的に勘案をして、できるだけ公認会計士協会あるいは企業会計審議会その他にもはかっていただいて、おおむねの目安を一つつけることによって、それをもとにして適正な報酬規定をきめるということにならないと論理が通らないし、この法律改正の主たる目的が果たせない、このように私は思いますので、この点はひとつ要望をいたしておきます。  その次に、先ほどからいろいろと監査対象の問題が議論をされてきておるわけでありますが、証取法の四条に関連して、百九十三条の二でありましたかに監査証明についての定めがあります。これを見ますと、原則としては五千万円以上の証券を発行する会社公認会計士監査を必要とする、こういうふうになっておるように思うのですが、その点はどうでしょうか。施行令第八条を含めて……。
  179. 松井直行

    松井政府委員 百九十三条の二の一項に規定いたします公認会計士監査証明を受けなければならない会社といたしまして、先ほどおっしゃいました法第四条第一項の規定によりまして有価証券の届け出をしようとする会社、そしてこの効力が発生した会社と、そのほかに取引所に上場されている株式会社を含むということに相なっております。
  180. 堀昌雄

    ○堀委員 要するにこのことは、「五千万円以下の有価証券で大蔵省令で定めるものの募集又は売出については、この限りでない。」こうなっておるわけですから、五千万円以上はみな一応これに入る、こう理解していいんじゃないですか。
  181. 松井直行

    松井政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  182. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、一億円未満でいまの被監査会社数字から三十七、こうなっているのですが、しかし、五千万円から一億円の間には相当数の会社があって、株式を発行しておるのではないかと思うのです。株が発行されてないというのはおかしいわけですから、五千万円から一億円の間の会社数は一体幾らありますか。
  183. 安井誠

    ○安井説明員 いまの資料のほうはいま手元にございませんので、早急に調べてお答え申し上げたいと思います。  ただ、五千万円と申しますのは、有価証券の募集をする場合に限って五千万円ということになっております。募集は、証券取引法の第二条の第三項に「この法律において有価証券の募集とは、不特定且つ多数の者に対し均一の条件で、あらたに発行される有価証券の取得の申込を勧誘することをいう。」と長々と書いてございますけれども、要するに、特定数——大体、運用をいたしまして五十人程度で考えておりますが、五十人未満のような者に有価証券をかりに五千万円以上のものを募集いたしましても、届け出書の提出の必要がない、こういうことになっているわけでございます。非常に極端な例になりますけれども、資本金百億円の会社でこの証券取引法にいうところの有価証券の募集というものに該当しない増資をしたような場合には、証取法の届け出会社になっておりません。
  184. 堀昌雄

    ○堀委員 いまのは、もっとも、一般不特定多数の株主を保護するために監査制度があるということでありますから、その点はあれですが、いまよくオーバー・ザ・カウンターで処置をされるものが相当ありますね。これの中には、監査証明のない、被監査会社でないものはオーバー・ザ・カウンターの処置をしないという規制はできないんじゃないですか。
  185. 松井直行

    松井政府委員 法令を調べますので、ちょっとお待ちを願います。
  186. 堀昌雄

    ○堀委員 それから大臣、いまちょっと話が出ましたけれども、実は、酒類の免許をしておるような会社でその株式が非公開になっておる株式会社があるのです、資本金も非常に大きいのですけれども。やはり、ある程度以上の資本金の会社がいま株式を非公開にしておるということは、どうも、株式会社のあり方から見て、小さいものは同族法人その他でよろしいと思いますけれども、資本金が相当巨額にのぼってきても、なおかつ非公開にしておるというのは適正でないと思いますが、この点、大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  187. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 なかなかむずかしい問題と思いますが、いまお尋ねの問題は、非公開にしておくこと自体が適正であるかどうかというお話のようでありますが、株式会社でありましても、それがそうたくさんの人の資本でなくて、ごく限られた同志的結合であるというような場合、あるいは同族的結合であるという際に非公開にしておくケースが多いように思いますが、そういう性格のものが非公開であるということが、一体、どういう不便といいますか、妥当でないところがあるのかどうか、いまちょっと私も判断しにくいのですが……。
  188. 堀昌雄

    ○堀委員 私は、株式会社というものは、小さい間は確かに同族的な処置をされても差しつかえないと思います。しかし、だんだんと資本金が大きくなるということは、その会社企業自体がやはり社会的ないろいろな責任を負わなければならぬ問題になってくると思うのです。そういうふうな場合に、それが依然として同族的な処置だけでいつまでもいいのかどうかという点につきましては多少問題があると私は思う。それは、私が一般論として言いますとあれですが、たとえば、酒類免許というようなもので非常に大きな会社ということになりますと、これはやはりある段階から株式も公開をされて、要するに、社会的にも認められるといいますか、そういうことになってきていいのではないか。例はいろいろあると思いますから、何も酒類免許に限ったことではないと思いますけれども、金融機関等においても実は相当同族的なものがあるわけです。こういうものもやはり公開をされる形、それは、公開にして大いに市場でどうこうしろというのではありませんけれども、やはりそういうようにクローズドになっておる中で金融機関というものの公的な性格がはたしてそれでいいのかどうかという点についても検討を要する問題ではないか、規模の小さいものならばけっこうですけれども、ある程度の大きさになってくれば、やはりそこには株式公開という原則が働いてきていいのではないか、そういう意味から、私が取り上げておりますのは、大蔵省がいろいろな形でかかわり合いを持っておる免許会社については、一ぺんこれは規模の問題とにらみ合わせて再検討をしていただく余地はないのか、こういうふうに思いますので、その点をひとつ、一般論でありますけれども……。
  189. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 よく考えてみることにいたします。
  190. 松井直行

    松井政府委員 先ほどの問題についてお答えいたします。  東京証券業協会の統一慣習規則第七、赤表紙の五三五ページでございます。店頭売買銘柄の値段の発表に関する規則というものがございます。この第三条に、非上場株でもって協会の登録の店頭売買銘柄というものに登録しようとする協会員は、申請書にこれこれのものを添付して協会に申請しなければならないという規定がございまして、ページを繰っていただきまして、別表(1)、別表(2)、別表(3)がございますが、別表(2)というところに添付書類というのがございまして、(7)に「直前事業年度末の貸借対照表、直前事業年度の損益計算書その他の財務計算に関する書類につき証券取引法第百九十三条の二の規定により、またはこれに準じて、信頼し得る会計士が作成した監査報告書。」とございます。なお、公認会計士及び現在ですと、計理士ですか、計理士もこの監査証明に参加できるということでございます。別表(3)には、それ以降続いて毎年同じ監査証明書をつけて出すという規定が、別表(3)の(2)の(ト)に書いてあるところでございます。
  191. 堀昌雄

    ○堀委員 やはりこれは、いまの証取法第四条の規定からすれば、これは不特定多数の人の手にかなり渡るわけですけれども、当然これはもうその他信頼できる会計士の云々という条項ははずして、これはやはり百九十三条の二の規定による会計士の監査報告があるということを前提にすべきだと思いますが、その点はどうですか。
  192. 松井直行

    松井政府委員 まだ計理士制度の最終的な始末はついておりませんので、来年の三月でもって計理士問題も全部決着がつきますので、自然それは全部公認会計士による監査証明ということに相なるはずでございます。
  193. 堀昌雄

    ○堀委員 大体私が伺いたいことの主たる点は以上でありますが、いま企業会計審議会ですかにも諮問されております連結財務諸表の問題その他を含めて、やはりここで形式的な法律改正をしましても、これは私はあまり大して意味はないと思っております。こういう制度にすることによって私たちの念願をしておる公正な監査が行なわれるということにならない限り、幾ら法律をかえても何ら意味がありませんので、ひとつそういう点については私は要望いたしておきます。監査基準は実地たなおろしその他、ここで要望いたした項目は全部実施をされることになりましたし、あわせて、現在残っておりますのがこの連結財務諸表の問題でありますから、これらを含めて、少なくとも、先般イギリスでありましたかの関係者が来て、日本会社には非常に投資しにくい、監査が不十分であるという指摘をされておる現状でもありますので、私は、早急に、この会計士制度改正を契機として、その内容の充実と、そういう対外信用を十分に——そういう過去の対外的な不信感をぬぐい去れるような公認会計士制度の総合的な運営について、大蔵省はこの際ひとつえりを正して指導していただきたいというふうに要望いたしまして、私の質問を終わることにいたします。これについての大臣の御所感だけを承っておきたいと思います。
  194. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 ただいまの堀委員のお話は、全く同感であります。非常にいい機会でありますから、これを契機といたしまして、ますますこの制度を国際的にも恥ずかしくないものにしていきたい、かように思います。
  195. 三池信

  196. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員 公認会計士法改正案が上程されたわけでございますが、特にその中で、公認会計士の特殊法人改正案の中心になっておるわけでございます。   〔委員長退席、吉田(重)委員長代理着席〕 ところが、いままでの大蔵省の答弁等を聞いてまいりますと、この特殊法人をつくった目的というものが、本来の公認会計士制度のあり方からどうも少し逸脱しているのじゃないかというような気がするわけであります。  そこでまずお尋ねをいたすわけでございますが、公認会計士制度というものは終戦後できたわけでございまして、一時は、公認会計士法ができたときには監査業務というものを公認会計士の独占業務にしたことがございます。しかし、そのあと幾たびか変遷を経まして、現在は監査業務というものは別に公認会計士の独占業務ではない。公認会計士という称号を用いて行なう云々という場合だけでありまして、特に独占業務ではないと思うのでありますが、その点の御見解をひとつ、これは局長でけっこうですから御答弁を願います。
  197. 松井直行

    松井政府委員 お答え申し上げます。その監査業務でございますが、第二条にございます公認会計士として監査証明を行ないますのは、やはり公認会計士の独占業務というふうに考えておるわけであります。
  198. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員 公認会計士の称号を用いないで監査証明をした場合はどうなりますか。
  199. 松井直行

    松井政府委員 この第二条にありますとおり、他人の求めに応じて、報酬を得て財務書類の監査または証明をすることを業とするのは公認会計士のみということに相なっておりますので、独占業務と申し上げたわけでございます。
  200. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員 そうすると、計理士の場合は、現在は差しつかえないわけですね。
  201. 松井直行

    松井政府委員 計理士の場合は、別に法の規定がございまして、特に暫定的にできるという特則が置かれておるわけでございます。
  202. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員 私は、この他人の求めに応じて反復継続して営業として監査証明を行なうのを業とするということは、あるいはそういう意味ならば公認会計士の独占業務であるかもしれませんけれども、報酬も得ないで監査証明を行なうということになってまいりますと、特別に公認会計士でなければならないということはないと思うのです。ただ、ここに一つだけ公認会計士でなくてはならないという問題がございます。それは、いま堀委員がおっしゃいましたように、証券取引法の百九十三条の二に「証券取引所に上場されている株式の発行会社その他の者で政令で定めるものが、この法律の規定により」云々という財務諸表を提出する場合には「公認会計士監査証明を受けなければならない。」こういうことで、純粋な意味での本来の実益からいっても、公認会計士でなければできないという監査証明というものは、私はここに書いてあるだけだと思いますが、そのほかにございましたらば御教示願いたいと存じます。
  203. 松井直行

    松井政府委員 いまおっしゃったとおりでございまして、それ以外にはいま考えられません。
  204. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員 ここで上場会社の財務諸表、これはわかりますが、「その他の者で政令で定めるもの」というのは何ですか。
  205. 松井直行

    松井政府委員 証券取引法施行令の第八条「公認会計士監査証明を必要とする会社」という条で、「法第百九十三条の二第一項に規定する者は、次に掲げる会社とする。」——赤い法規集の六五ページの右上のほうでございます。「一証券取引所に上場されている株式の発行会社」、二号に「法第四条第一項の規定による届出をしようとする株式又は社債の発行会社」、第三号で「法第四条第一項の規定による届出がその効力を生じた株式又は社債の発行会社」ということでございます。
  206. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員 要するに、結論は、上場会社の増資あるいは社債発行、こういうようなものに関連をして公認会計士監査証明を出す、常識的にいえば大体そういうことに尽きると思います。そうしますと、公認会計士法の問題を議論する場合は、その問題に限定をして議論をして大体その九〇%の目的が達せるのじゃないか、私はかように考えるわけであります。  そこで私が申し上げたいことは、今回監査法人をこしらえたということについては、いまいろいろな理由が述べられたわけでございますけれども、上場会社の財務諸表が適正であるということを職業会計人によって確認をさせると申しますか、認めてもらって、しかも、その信用によって世間に公表して、第三者の株主その他の債権者を保護するというような目的だろうと思うのでございます。したがいまして、どこまでも上場会社監査ということが公認会計士の本来の目的であるはずであります。公認会計士法には、そういうような監査をするということのほかに、求めに応じて、報酬を得て他人の財務諸表を作成するということも規定をしております。しかしながら、報酬を得て、会社の財務諸表をつくることは、何も公認会計士の独占の業務ではございません。計理士もやっていいし、税理士もやっていいし、一般の人もやって、何ら法律上規制をされることはないと思いますが、どうですか。
  207. 松井直行

    松井政府委員 おっしゃるとおりであります。
  208. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員 そうなってまいりますと、公認会計士法改正して大騒ぎをするという場合には、どこまでも、財務諸表をつくるというような問題でなくして、これは会社監査を行なわせるんだ、しかも上場会社監査を行なわせるんだ、こういうことに限定をされていいと私は思うのであります。したがいまして、今回の改正案というふうなものは、監査法人をつくって、上場会社監査、財務諸表の監査を厳格にするということに限定をすべきではなかったのか、それを、公認会計士法にいっておる財務諸表の作成、こういうようなところまでこの監査法人が行なうというように範囲を拡大をして、計理士や税理士や一般の人がやっていいようなことまでも監査法人の名においてやらせようとしたところに、いろいろなむずかしい税理士法との関係その他の問題点が出てきた、私はこういうふうに解釈するのですが、その点いかがでしょうか。
  209. 松井直行

    松井政府委員 公認会計士一人一人による本来の、いまおっしゃいました監査業務が不徹底である、これを組織化いたしまして、組織的な監査証明を行ない得るようにということでもってこの監査法人ができたわけでありますが、先ほどから申し上げておりますとおり、社員としては、どこまでも自然人としての公認会計士たる資格を持った者のみでこれを編成することに相なっておるわけでありますので、本来は、自然人たる公認会計士も、彼らが法人を組織したからといって、第二条第二項の業務を排除しなければならないという積極的な理由は少しもないと考えたわけでございます。
  210. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員 あなたのおっしゃることは、現在公認会計士がかりに五人おる、それぞれ事務所を持っておる、その人たちが監査法人をつくろうというようなことになった場合は、いままでの事務所を廃業して一カ所の事務所に統一しなければならないという意味ですか。
  211. 松井直行

    松井政府委員 おっしゃる意味がよくわかりませんが、いま一つの事務所でもって、たとえば、共同監査なり、あるいは事務所の経営を一種の組合規約か何かでおやりになっておりますならば、そういう現実はそのままでけっこうなんですが、それがそのまま監査法人になるためには、三十何条かの規定にありますとおりの要件を満たして、その認可を得る必要があるというわけでありまして、解散して、全く別の新しい事務所でなければいけないとかなんとかいうことを要請しているわけではないのでございまして、監査法人としての法的要件を充足すればいいと考えております。
  212. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員 証券局長は私の言うことをよく理解してないと思うのです。私の言うのは、あなたは、現在の公認会計士法の中で、公認会計士監査証明のほかに財務諸表をつくるというようなことも入っておるので、だから今度は、監査法人をつくる場合にもそのままの条項をそっくり入れたのだ、こういうふうなお話をしておるのだと思うのですけれども、私の聞いていることは違うのですよ。私の聞いていることは、わかりやすく言うと、現在かりに五人の公認会計士がばらばらで仕事をやっておる、その人たちが集まって、今度は監査法人をこしらえましょうといった場合においては、いままでの個人の事務所を廃止しなければなりませんか、その必要はないんじゃないですかと私は聞いているのですよ。
  213. 松井直行

    松井政府委員 どうもおっしゃることが私よくわかりませんが、監査法人をつくる以上は、監査証明業務を行なう事務所を別個に置くということは、この監査法人の法的要件違反になると思います。競業禁止の規定もありますので……。
  214. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員 それは私はおかしいんじゃないかと思うのですけれども、これは課長でもいいですよ、もっと事務に詳しい人でけっこうですが、現在公認会計士がそれぞれ独立した事務所を持っておりますね。その人たちが今度は監査法人をこしらえる場合は、既存の事務所を廃止しなければなりませんか、それとも、そのまま既存の事務所は事務所として置いても差しつかえないんじゃないですか、こういうことを私は聞いておるのですよ。
  215. 松井直行

    松井政府委員 繰り返しになりますが、従来の事務所において個人として公認会計士業務をやりますことは、すでに法人メンバーの中へ没入してしまった以上は、競業の禁止になりますから、公認会計士の業務を行なう事務所を設けること、そこで監査という公認会計士業務を行なうことは、競業禁止の規定から不可能になる、こういうふうに私申し上げているわけであります。
  216. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員 これは重大な問題ですから、間違いのないようにひとつお願いしますよ。間違いありませんか、それで。
  217. 松井直行

    松井政府委員 間違いはないと思います。
  218. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員 間違いはない。そうすると、要するに、現在公認会計士事務所を持っている人は、監査法人をこしらえようと思ったら、いまの事務所を廃止しなければならぬ。(松井政府委員「いや、そうは言っていない」と呼ぶ)いや、そういうことになるでしょう。競業禁止で二つは認められないというなら、公認会計士個人で事務所を方々に持っている場合には、今度は監査法人に加盟してその社員になった場合には個人の公認会計士事務所を廃止しなければならぬでしょう。あなたの競業禁止という議論からいうと、実際上個人の営業はできなくなるということでしょうね。
  219. 松井直行

    松井政府委員 従来の事務所でもって個人として公認会計士監査業務は行ない得ませんということだけを申し上げます。
  220. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員 従来の事務所では監査証明はできない。そうすると、結局はその事務所は廃止同様、監査証明もできなければ、財務諸表もつくれなければ、そういう公認会計士事務所の必要はないのですから、結局廃止ということになりますね。そういうふうなことになりますと、この監査法人というものの数はごく少数しかできません。おそらくできないでしょう。日本に幾つというようなものしか私はできなかろうと思います。なぜかと申しますと、たとえば黒沢清さんにいたしましても、あるいは太田さんにいたしましても、あるいはその他の方にいたしましても、自分の個人の本来のお得意さんが幾つかございます。それは上場会社ではありません。個人で財務諸表をつくってやったり、個人が監査証明をしたりするようなものがあります。そういう人たちが新しく今度は会社をつくるということになれば、いままでの自分のお得意を全部会社の中に入れて、別な他人とやるということになれば、ほかの人と同じ資格でやるということになりますから、まるっきりいままでの営業権は個人としては放てきしたようなかっこうになってくる。したがって、そういうことでは、なかなかこの監査法人に加入する公認会計士はないんじゃないかというような気がするのですが、それで間違いありませんか。
  221. 松井直行

    松井政府委員 法人たる公認会計士の事務所ができにくいということは間違いであろうと思います。決してできにくくはなかろうと考えております。
  222. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員 それは、しかし、個人の商売を持っておるやつを全然放てきして、この新しい監査法人というものに加入するということになったら、自分の商売は競業禁止で一切できないのですから、そこへ入っていく人が非常に少なくなるんじゃないか。完全なる企業合同みたいなものですからね。これは日本で一年以内に幾つくらい生まれると思いますか。私は、できたって、五つか六つ以上できないんじゃないかというような気がしますが、どうですか。
  223. 松井直行

    松井政府委員 何ぶん新しい制度の発足でございますので、一年以内に幾らできるか、的確には申しにくいと思いますが、少なくとも、この法案審議されておる途中におきましても、大体こういうニュースというものは非常によく流れておるわけでありますし、現在共同監査あるいは共同事務所を持っておられる等の人々につきましては監査法人に踏み切られるんじゃないかとわれわれ考えておりますが、その数は、一年ないし二年の間に十以上はできるのじゃないかと考えております。
  224. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員 被監査会社の本店は、東京、大阪で全国の何%を占めますか。大体大ざっぱでいいです。目見当でいいです。
  225. 安井誠

    ○安井説明員 被監査会社の総数が二千二百くらいでございますが、その中で、東京都にございますものが千ばかりございまして、四八%でございます。それから大阪が三百六十五でございまして一六%、その次になりますと、愛知県が百三十で五・八%、大体そんな程度であります。
  226. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員 そうすると、三県集めると大体六〇%くらいになりますか。
  227. 安井誠

    ○安井説明員 そうでございます。六〇%をこします。七〇%近くになるかと思います。
  228. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員 これを裏返しに言うと、いまいろいろ公認会計士が、東京ばかりではなくて全国各地におるわけですけれども、全国各地の公認会計士がおそらく加入しない。どうしてかというと、現在事務所を持ってやっておって、それが監査法人の社員になれば、要するに、自分の公認会計士事務所は開店休業しなければならぬということですから、おそらく参加する人は皆無にひとしいだろう、私はこういうように思っています。そういうふうなものでこれだけ血道をあげて大騒ぎをする必要が一体あるのかないのか、私はここに疑問を持っておるのであります。  それはそれといたしまして、この監査法人の内容についてはっきり承りたいと思いますが、監査法人は合名会社組織にするというようなお話がございました。令名会社組織にするということになれば、ここにも書いてあるように、すべての人が代表権を持つ、すべての業務を執行する権限を有する、すべていわゆる代表社員というような形になろうかと思います。したがって、そのいずれもが無限責任社員となる。したがって、その監査法人に生じた欠損等においては、不正不当なものがなくとも、欠損が生じたような場合は、これは自分の個人財産があれば、それは個人財産を出してそれを埋めなければならぬというように解釈してよろしゅうございますか。
  229. 松井直行

    松井政府委員 仰せのとおり、社員は法人の債務につきましては無限連帯責任を負うことに相なっております。
  230. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員 これもまた非常に監査法人に入りにくい一つの条件になろうかと存じます。現在、株式会社あるいは有限会社あるいは合資会社、合名会社、そういうふうなものがございますけれども、合名会社などがつくられている例というものは、全体の法人数の一%にも満たない、現実の個人の同族会社であっても一%にも満たないというような状態だろうと思います。まして、新しい企業を第三者と組んでこれから事業をやる、しかも共同責任である。第三者に対しては共同に無限責任である。そういうことになれば、かりに甲乙丙丁戊の公認会計士が一緒になってこの監査法人をつくって、そのうちの丙なら丙というものが何か失敗をやらかして会社に賠償責任を負わなければならぬというふうなことが起きてまいりますというと、その監査法人は被監査会社に対して賠償の責任を、しかも個人も連帯をして負うということになりますね。そういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
  231. 松井直行

    松井政府委員 仰せのとおりでございます、
  232. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員 したがって、この監査法人がもし成立をするとすれば、おそらく、五分っこの人が集まったのでは私はなかなか成立する見込みがないと思います。大ボスが一人中にいて、そうしてあとは自分の手先——大ボスといっても、悪い意味のボスという意味じゃありませんが、要するに、支配勢力があるという意味で大ボスということばを使ったのですけれども、そういうふうな中心人物がいて、そうして五人なり十人なりの自分の部下程度のもので何でも言うことを聞くような人が社員になるというようなかっこうにならないというと、私は、この監査法人というものはこれを育てていくことはきわめて困難ではないかというような気がするわけであります。  それから第二番目は、監査法人の業務の問題についてお尋ねするわけでありますが、私がなぜ、監査法人については、会社というものを限定をして、会社監査というものに限定をさせなかったかということを言ったのは、先ほど非常にいろいろな議論が出たからそういうことを言ったわけなんです。私の考えとしては、もし監査法人をつくるのであるならば、公認会計士の純然たる独占業務というものは、上場会社に対する財務諸表の監査、これだけなんですから、公認会計士の特色を生かして、しかも上場会社の株の監査をさせるというのは、これは監査法人で、一人ではだめだから監査法人をつくって、五人、六人という共同体をつくってやらせるというだけに限定をして、そうしてその他の財務諸表その他は、むしろ個人の事務所でやることも御随意にというようにしておいたほうが、ほんとうにこの監査法人をこしらえた意味が、本来の公認会計士法の意義とマッチするのじゃないかという気がしたから申し上げただけなんです。あなたのほうではそうじゃないんだ。個人の競業禁止だから、個人の事務所におけるいままでのお得意さんの財務諸表の作成というものも、監査法人に加入したら最後、自分ではできないで、全部監査法人に持ち込んで、みんな共同責任においてやらなければならないんだというようなことで、私の言うことは、この法律からすればできないらしいのでありますが、これはよほど検討すべき問題ではなかろうか、かように思うのであります。  それから、先ほども税理士業務との問題にからんでいろいろな質問があったわけでございますが、あなたのような立場をとれば、実際問題として非常にジレンマにおちいると思います。私の言うような立場をとればジレンマにおちいらないのです。大蔵省のような立場で、いままでの事務所は廃止させて、そうして監査法人一本にしてやる、しかも、監査法人の中には税務の業務も入らないということになってまいりますと、これは非常にジレンマにおちいるケースが多い。ことに、税務の問題というものは、監査法人の被監査会社となるようなところはあまり税務代理行為というものは頼んでいるものはないのですよ。ほとんど会社で全部やるのですよ。ですから私は、もっとこれは区分けをするべきではなかったか。どうしてそういうことを言うかというと、たとえば、公認会計士が財務諸表をつくって、自分がつくった財務諸表を自分で監査するということはあり得ないのだから、当然自分でつくった財務諸表というものは第三者の公認会計士にこれは監査をさすべきであるから、上場会社の場合は当然公認会計士に頼んで財務諸表をつくりません。自分の内部のスタッフで財務諸表をつくります。つくったものに対して公認会計士監査をして、それに対して意見をつけて出すというのが本来の業務で、監査法人というのに高度な仕事をやらせるのだったら、それだけに限定すべきではなかったか。そうすれば、税務の問題についてはごたごたの問題は何も起きないのじゃないかというような気がしているわけであります。あなたのおっしゃるようなことは全くのジレンマにおちいってしまうのですよ。いまの事務所は廃止をする、しかも、監査法人には税務はさせないということになってまいりますと、業務範囲の面で大多数の人は非常に少なくなるというようなことになってまいりますから、いろいろこれは問題があるのではなかろうか。今度逆に税理士の立場からいって、これに税務をさせるということになりますと、これは税理士協会からものすごい反対が出ます。なぜかと申しますと、一つ監査法人の本店だけでそういうことをおやりになるのでしたら文句はないのです。しかしながら、支店をつくる、出張所をつくるということになって、少なくとも五人いて、五人いた人が一人一つずつで五事務所というようなことでは意味がありませんから、結局その何倍かの支店、出張所あるいは連絡所というようなものをこしらえられるということになってまいりますと、これはもう税理士会としては、われわれに対しては原則として一カ所しか認めないのに監査法人には五カ所も十カ所も認めるのかと、必ずこれは大騒ぎになります。だから、やはり税務の問題とからんでこの問題を話をするということが非常にむずかしい。したがって、財務諸表の作成のごときはだれでもできる行為なんだから、だれでもできる行為を、何も私は監査法人の中にあえて列記をする必要はないのじゃないかという気がそこからも出てくるわけであります。  その次はこの業務の拡大の問題でございますが、先ほども社会党の方々からは、要するに、公認会計士の業務の拡大をして、学校法人、宗教法人あるいは銀行、保険会社というふうなものまで拡大すべきだというようなお話がございましたが、私は、趣旨としてはまことにけっこうだと思います。思いますが、現実問題として、たった二千人くらいでそこまで範囲を拡大をして、一体やれるのかどうかということになってまいりますと、私は非常に疑問があるのじゃないか。ですから、現実の問題として公認会計士の数が足らないのじゃないか、そこまでやらせようとしたらとても足りない、こう思いますが、証券局長どう思いますか。
  233. 松井直行

    松井政府委員 おっしゃるとおり、本来の監査業務だけにつきましても、もう少し深さを深くしろ、それから関係会社へも往査しなさいと、いろいろ監査の深さ、広さについてそれを拡大する要請がありますから、公認会計士の業務が余っているからほかの職業を与えたらどうかという論理には、すぐに結びついてこないのじゃなかろうかと思います。むしろ、先ほどから論議になっております学校あるいは宗教法人等の監査証明が必要かどうかという議論は、関係者が非常に多い場合には、そういう人たちに対して財務諸表の信憑性の担保をつけるという意味において、一般の関係者といいますか、投資対象も含めまして、それらのために監査証明を受けさしたらどうか、そういう理由からの前向きの業容拡張の御議論のように私承っておったところでございます。
  234. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員 まあ、学校法人、宗教法人監査の対象に入れることもけっこうと思いますが、そういう場合には、銀行、保険会社はいますぐどうこうという問題でないにしても、信用金庫くらい私はむしろ入れるべきだろうと思う。ことに労働金庫なんというのは入れるべきではないか。もともと労働組合というのは、職業会計人決算書を監査することに法律でなっておったのが、いつの間にかなくなってしまったわけでございますが、そういうふうに、もともと法律できまっておったものについて、労働組合といってもピンからキリまでありますけれども、そういうようなものこそ公認会計士監査の対象にすべきじゃないか、こうういうふうに思うのですが、どうですか。
  235. 松井直行

    松井政府委員 仰せのとおり、労働組合法の適用を受けます適格労働組合——適格ということばがいいかどうかわりませんが、適格労働組合の資格として、組合規約に次のような規定がなければならないという規定がございます。「すべての財源及び使途、主要な寄附者の氏名並びに現在の経理状況を示す会計報告は、組合員によって委嘱された職業的に資格がある会計監査人による正確であることの証明書とともに、少なくとも毎年一回組合員に公表されること」この制度は組合規約に大体こういう定めがあるだけで足りると労働省あたりは考えているようでありまして、現実にどれくらいの会計監査人が監査を行なっているかどうか、労働省等におきましても把握をいたしておらない実情であることはおっしゃるとおりでございます。
  236. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員 それじゃ、労働組合の話はその程度にして、別なほうへ進みますが、要するに、会計士の人不足だということは言えると思います。ところが、その会計士の問題では、最近第三次試験が非常にむずかし過ぎるということが議論をされております。第二次試験に合格して、いわゆる浪人の会計士補——会計士補になったけれども第三次試験が受からないで会計士になれないというような人がどのくらい現在おりますか。
  237. 安井誠

    ○安井説明員 三月末の数字でございますが、会計士補の資格を持っております者全部合わせますと千三百人ばかりいます。そのうち約六百人が会計士補として登録をいたしております。したがって、これらの人たちが、その中にはまだ二次試験を通ったばかりの人も含まれておりますが、三年たちまして、業務補助ないし実務補習をいたしますと第三次試験の受験資格が与えられる、こういうことでございます。
  238. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員 第三次試験がむずかし過ぎるというのは、どういうようなところが、どういうふうにむずかしいのか、私も勉強してないからさっぱりわからないのですが、要するに、実務本位——学問的なものよりももう少し実務本位の試験に変えて、そうして会計士補なんかでいつまでも第三次試験が受からないでいるということでなくて、第三次試験に受かるような道をもっと開いてやったらどうか。あるいはまた、税理士とか計理士とか、こういうような人にも第三次試験を受けさせて、そうして会計士というものをもう少し数をふやすようなことを考えてはどうかと思うのですが、その点、どういうふうにお考えになっておりますか。
  239. 松井直行

    松井政府委員 公認会計士の数が少ないからふやせ、ふやすためには、どんな人間でもいいというようなことはおっしゃってないと私も承知いたしております。したがって、それ相応の適格者を選ばなければならぬことはむろんでございますが、適格者を選ぶ方法として、いまの試験制度でいいかどうか、いまおっしゃるとおり十分問題があるとわれわれ考えております。したがって、この法律案を幸いにしてお通し願えますならば、自後すぐ追っつけまして、試験制度その他につきまして基本的に勉強をし直したいと考えております。
  240. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員 それでは、会計士の監督の点について一つお伺いいたします。現在上場会社が証券取引委員会ですか、書類を出すときに監査証明をつけて出すわけですね。そうすると、だれかがそれを一応チェックするわけですね。それで審査といいますか、そういうことをやるわけですね。どなたがおやりになるのですか。
  241. 安井誠

    ○安井説明員 現在の証券取引法の規定によりますと、届出書の場合でございます。つまり、増資をやります場合には、有価証券届出書を大蔵省に出していただくことになるわけでございます。その大蔵省に出していただくときには、届出書の中の財務書類につきまして、公認会計士監査証明を受けなければいかぬということになっておるわけでございます。その届出書につきまして大蔵省のほうで審査をするというたてまえになっております。ただ、この現行法のたえまえでは、全部の審査大蔵省側で完全にやり切れるというたてまえになっておりませんので、大蔵省審査を経たからといって、それが大蔵大臣が正確なものであると認めたことにはならないというような条文もついてございます。
  242. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員 そこで、私はおもしろいと思うのは、医者がいろいろな診断をした書類、診断書を出して、その診断書を無資格の人が鑑定をして、これは病気が間違っているんじゃないかとか、これはどうだとかいう理屈をつけると同じようなことが公認会計士の場合も行なわれているのじゃないか。大蔵省監査証明が出てきて、それをチェックする人が公認会計士の資格を持っていないということは、医者が出した診断書をしろうとの人がけちをつけて、この診断は間違っているから書き直せというようなものではないかと思いますが、いかがですか。
  243. 松井直行

    松井政府委員 仰せの趣旨もよくわかります。したがって、公認会計士監査証明をつけてきた財務諸表を審査する人間は、やはり公認会計士同等、もしくはそれ以上の能力のある人が当たるということが当然だと思います。現在、むろん公認会計士の資格をとった者もおりますが、全部が全部公認会計士の資格をとっておるわけではございません。将来アメリカのSECの制度その他を十分勉強する必要があるのでございます。少なくとも有資格者を相当程度行政官の中に入れることが必要であろうと思いますが、先生御承知のとおり、有資格者がこんなに安い月給で、なかなか公務員にもなってくれぬというまことに痛い隘路があるということもよく御存じであろうと思いますが、何らかの方法でこういう点を打開したいと思って、目下鋭意検討しておるところでございます。
  244. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員 税理士法では、主税局に十年以上とか三年以上とか立法事務に従事していると税理士の資格を与えるというようなことをやっているわけです。それがこの間は、役場の吏員まで、ともかく二十五年やれば全部税理士の資格を与えるというような法律案大蔵省が出してきたから大問題になってしまったのでありまして、いままでのように、主税局に十年以上とかあるいは直税が十年以上とかいうようなものに税理士の資格を与えるというようなことだったら、そんなに税理士八会でも血道をあげて反対をするということもなかったのではなかろうかと私は思うのです。確かに、あなたのおっしゃるように、一ぺん表で資格をとった人を安い月給で大蔵省の役人に採用して、課長補佐にもなれない、係長にもなれない身分で使うということは、これは現実の問題としてできないかもしれない。だから、内部の人に勉強してもらって、公認八会計士の試験を受けてもらうということが一番いいことでありますけれども、やはり災い間の経験があって、そうして公認会計士監査証明をした書類等につきまして、審査の事務に相当長い期間従事をしてきたという者に対しては、ある程度公認会計士と同等の資格を与えるということも、めちゃくちゃな話ではないのではなかろうかという気もするのですが、いかがですか。
  245. 松井直行

    松井政府委員 非常にけっこうな御意見だと思いますので、試験制度及びそうした特別任用制度を含めまして、基本的に検討したいと思っております。
  246. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員 特に財務諸表の中で、虚偽または不正の事実があったというようなことについては、財務諸表準則とかあるいは会計原則とか監査実施要領ですか、そういうようないろいろな規則がありまして、相当技術的な問題です。行政官といっても、言うならば会計の技官みたいなものじゃなかろうか。したがって、そういうふうな人たちは特殊な才能がやはり必要でございますから、そういうふうな人たちが、自分が資格を持って公認会計士のことをどうこう言うのでなければ、これはなかなか実際問題として納得しずらい。あまりにもはなはだしく間違ったような、だれが見ても間違ったようなものは別といたしまして、紙一重のものもずいぶんあろうと思います。したがって、そういうような虚偽とか不正とかいうようなものについて一々それを判断するという人が、無資格者であるということはきわめて適当でないと私は思います。したがって、そういうような会計士の監査した財務諸表を審査する人たちは、公認会計士と同等の資格を持たせるように、何らかの方法で御尽力を願いたい、かように強く要望いたしまして、まことに簡単明瞭でありますが、私の質問を終わりたいと思います。
  247. 吉田重延

    ○吉田(重)委員長代理 次会は、明二十八日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後四時六分散会