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松井政府委員 粉飾決算をなくする有効な手段いかん、今回の
公認会計士法の
改正だけで十分かどうか、こういうところに御
質問のポイントがあるように思います。
先ほども申し上げましたが、
有価証券という形で長期の金を
一般大衆から集める
方法でございますが、企業が正規の
方法でそうした長期の資金を集める、投資
大衆から見れば、そうした自分の家計の蓄積を証券という形で安心して投資できる、そういう
投資家保護の
観点か
らいいましても、またそうした家計の蓄積が
有価証券という形で転々流通いたしておるわけでありますので、そういう流通の
円滑化と
投資家保護の
観点から、絶対に
粉飾決算はあってはならないというのは、
仰せのとおりでありますが、先ほど大臣からお答えがありましたように、
制度的な面ではできるだけ手を打つが、あとは非常に道義的な面に期待しなければならない面も多いということをおっしゃったわけでありまして、まず第一番目は、その資金を集める企業家
自身が、企業の自己
責任、対社会
責任というものを十分徹底して認識するということが出発点だろうと思います。およそ商人として守るべき法規範は
商法というものがあるわけであります。
商法典をはじめ、商道義に徹するということがまず基本であろうと思います。したがって、企業みずからが真実な経営内容というものを公開するという、いわゆるディスクロージャーの原則を経営
責任の
観点に立って徹底させていくということが基本であろうと思いますが、それに加えまして、第三者的
立場からこれを保証し、
担保するものとしての
公認会計士の
監査、その
監査の体制の充実強化をはかろうというのが、今回のこの
法改正の趣旨でございます。
大蔵省といたしまして、従来
監査体制の充実強化をはかるために、今回の
法改正のほかにいろいろなことをやってきております。その第一番は、企業会計
審議会の答申に基づきまして、
公認会計士がどんな手続で
監査を進めるか、この
監査実施準則というものが不徹底であるという御
意見がございまして、
審議会で十分
審議して御答申をいただきまして、
監査の内容を充実するために、この
改正案というものをつくりまして、本年三月期の
監査から適用しております。この内容は、すでに
御存じのとおり、
会社の対外債権を実際に確認するということ、それから在庫品の検査についても必ず立ち会いをやるという問題、あるいは税務申告等についてもよくこれと符合して調べてくるというような問題、あるいは主要な取引先につきましては、その
会社だけとってもよくわからぬ、徹底して調べるためには、
関係先へ、必要があれば往査する等のことを中心にいたしまして、
監査実施準則の
改正が行なわれたわけでありますが、なお、これに続きまして、
監査基準、それから
監査報告準則の
改正につきましても現在同
審議会において検討中でありまして、新しい時代の要請に沿うようこれが
改正が行なわれる日も近いことだと考えております。
それから第二番目は、親
会社の経理の公開と申しましても、親
会社だけを徹底的に調べましても全体としての財務体質なり企業成績というものはなかなか把握しにくい、親子
会社を一体に含めまして、グループとしての
一つの企業体というものを考えまして、財務体質をあらわします財務諸表の
制度につきましても、いわゆるコンソリデーテッド・バランスシート、連結財務貸借対照表という
制度、これはすでに先進国では相当発達しておるところでございますので、その
制度の導入につきましてもわれわれ現在鋭意検討中であります。わが国の
実情に沿うようにそれを導入するにつきましてはなかなか問題の多いところであろうと思いますが、より一そう
監査を徹底し、ディスクロージャーの
制度を徹底するためには、ぜひとも先進国が行なっておりますこういう
制度の導入をするということもあわせ考えなければならないと思っています。
さらに第三番目は、これは行政の実施でございますが、証券取引法及び
公認会計士法が施行されてから相当年限はたつわけでありますが、事実上、
有価証券報告書とかいうものを中心にいたしまして実質審査をやり、
粉飾決算について訂正も命じ、あるいは場合によっては刑事訴追を行なうということは従来行なっておりませんでしたけれども、ほんとうの意味において
公認会計士法及び証券取引法の精神に基づいた行政を実施する決意を固めまして、御承知のとおり、昨年の三月期の決算以降のものにつきまして報告書、届け出書の審査体制を充実してまいったところでございます。
このような措置をとることによりまして、
粉飾決算に対するきびしい社会的な世論に十分にこたえていきたいというふうにいま考えておるところでございます。