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1966-04-20 第51回国会 衆議院 大蔵委員会 第34号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年四月二十日(水曜日)    午前十一時十一分開議  出席委員    委員長 三池  信君    理事 金子 一平君 理事 原田  憲君    理事 坊  秀男君 理事 山中 貞則君    理事 吉田 重延君 理事 平林  剛君    理事 堀  昌雄君 理事 武藤 山治君       岩動 道行君    大泉 寛三君       奥野 誠亮君    押谷 富三君       砂田 重民君    田澤 吉郎君       谷川 和穗君    西岡 武夫君       福田 繁芳君    毛利 松平君       渡辺 栄一君    有馬 輝武君       佐藤觀次郎君    野口 忠夫君       平岡忠次郎君    藤田 高敏君       山田 耻目君    春日 一幸君       永末 英一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         郵 政 大 臣 郡  祐一君  出席政府委員         内閣官房長官 橋本登美三郎君         大蔵政務次官  藤井 勝志君         大蔵事務官         (主計局次長) 岩尾  一君         大蔵事務官         (主計局次長) 武藤謙二郎君         大蔵事務官         (銀行局保険部         長)      上林 英男君  委員外出席者         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 本日の会議に付した案件  地震保険に関する法律案内閣提出第七三号)  地震保険特別会計法案内閣提出第七四号)  昭和四十年度における旧令による共済組合等か  らの年金受給者のための特別措置法等の規定に  よる年金の額の改定に関する法律等の一部を改  正する法律案内閣提出第七七号)  昭和四十年度における公共企業体職員等共済組  合法に規定する共済組合が支給する年金の額の  改定に関する法律等の一部を改正する法律案(  内閣提出第一二三号)      ————◇—————
  2. 三池信

    ○三池委員長 これより会議を開きます。  地震保険に関する法律案及び地震保険特別会計法案の両案を一括して議題といたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。堀昌雄君。
  3. 堀昌雄

    堀委員 政府にお伺いをいたしますけれども、この間保険審議会の工藤さん及び料率算定会の村瀬さんにお越しをいただいて少し論議をいたしましたけれども、私は、いまのこの地震保険もさることながら、この間横山委員の指摘のありましたように、どうも現在の損害保険各種料率というものが、担保力をできるだけ早くつけたいということのほうに比重がかかり過ぎて、やや料率全体が少し高いのではないのか、こういうふうな感じがいたしてなりません。やはり担保力をふやしていくためには、当然多数の者が保険加入をするということが担保力をふやしていくことになるので、そのためには保険料を高くして、それが担保力を早くふやす方法であるのか、保険料をできるだけ安くして、広い人が加入をすることが担保力をふやすことであるのか、これは私は当然のことのような感じがするのでありますけれども政務次官、この問題についてはどういうふうにお考えになっておるか、ひとつ大蔵省としての見解を承りたい。
  4. 藤井勝志

    藤井(勝)政府委員 お話のように、できるだけすそ野を広くしていくことが、保険生保損保、いずれも御趣旨はごもっともだと思うのであります。したがって、契約者の負担を軽減して保険普及をはかる見地から、事故率経費率等実績をよく勘案いたしまして、政府昭和三十六年に一回やりましたし、昭和三十九年のときは、千円について二十六円八十銭ですか、こういう手直しをいたしておるわけでございまして、今後も保険料率の引き下げについては、事故率実績と、合理化努力によって引き続き努力をすべきである、このように考えておるわけであります。特にまた、今度新しく発足いたします地震保険につきましては、純保険料率とそれから人件費その他経費を含めたいわゆる付加保険料率、ここら辺もひとつよく今後の事態の推移を見まして、これが普及をはかることによって全体的な保険料率を下げ、保険料率を下げることによって一そう普及が促進される、こういう点については、今後十二分に配慮すべきである、このように考えております。
  5. 堀昌雄

    堀委員 そこで、現在御承知のように、火災共済というのが全国的に相当広範囲に設けられて、いずれも相当ないい成績をあげておるという実情があるわけであります。これは損保掛け金率に比べますと、総体に火災共済のほうが安いという一つのメリットがありまして、全国的にいま火災共済なるものは大きなウエートを占めてきておると思います。ちょっと事務当局でけっこうですが、現在火災共済加入をしておる全国世帯数というのは一体どのくらいになりますか。
  6. 上林英男

    上林政府委員 三十九年度末におきます火災共済協同組合元請け共済契約の件数は二十九万四千件でございます。契約金額にいたしまして二千五百九十七億円でございます。
  7. 堀昌雄

    堀委員 最近の傾向として、この火災共済協同組合というのはさらに広がりつつあるというふうに私ども考えておりますけれども、では、これは、本来損害保険というものがあるにかかわらず、なぜこういうふうに広がっていくと思いますか、この点をひとつ……。
  8. 上林英男

    上林政府委員 御承知のように、火災共済協同組合中小企業協同組合法に基づきまする火災共済を行なっておるものでございますが、この協同組合法精神に基づきまして、中小規模企業者お互いに助け合って、火災に対してもそのてん補をはかろう、こういう共済意識に燃えました運営を行なっておるわけでございますので、その意味におきまして、保険と申しますような、何と申しますか、そういう共済的な意識ではない、お互いに経済的にこういう事故損害てん補していこうという概念と、おのずから異なっておるわけでございます。中小企業者の団結と申しますか、共済意識の高揚に伴なってこういうものが発達してまいっておる、こういうふうに考えておるのでございます。
  9. 堀昌雄

    堀委員 いまのあなたの御答弁からすると、そういう人たち相互の助け合いという感じ主体だ、こういうことですけれども、やはりこれがだんだんこういうふうに広がってくるという中には、やはり損害保険の側として考えてみなければならぬ問題点というのはやはりあるのではないか。私はいまの事務当局考えがどうなっておるかわかりませんが、かって、できるだけ保険類似行為は取り締まりたいというような意向が伝えられた時期があったと思うのです。ところが、そういうことを言わなければならなくなったもとは一体何なのか。要するに、保険類似行為というかっこうのものがだんだんと広がってくるのは、一体どこに問題があるのか。ここから問題を考えてみないと、その原因考えずに、ただ結果だけで問題を処理しようというのでは、私は問題の解決にならないのではないのか、こう思うのです。その点について、いまのあなた方事務当局としての考え方は一体どういう考えに立っておるのか。
  10. 上林英男

    上林政府委員 おっしゃいますとおり、共済組合と申しまするのは、これは法律に基づきますもの、基づかないものもあるわけでありますが、その根源には自然発生的な要請があることも十分に存じておるわけでございます。ただ、その場合におきまして、やはり本来の共済というものにとどまるものでございますると、お互い靱帯が強固でございまするから、一たんその組合経営などがうまくいかなかった場合においても、お互いがまんをし合うという性質が実は共済の本来の性質であろうかと思うわけでございまして、そのがまんし合う程度共済の本質を備えておる、あるいは靱帯を備えておる、また、万が一破綻が起きましても、それほど大きな経済的な破綻が起こらないといういろいろな場合があり得ると思うのでございますが、そういう場合については、むしろ共済精神にのっとりまして、自由に運営していただくのも筋かと思うわけでございます。これがだんだんと規模が大きくなってまいりまして、範囲が拡大してまいりますと、そういう共済の気持ちはあったにいたしましても、おのずからいろいろな問題が起こってくる場合があるわけでございます。そういう場合におきましても、やはり適正な規制なり、あるいは共済掛け金者保護という観点にも相当の重点を置いた配慮が必要ではなかろうか、こう考えるわけでございまして、私どもが従来類似保険というものについていろいろ問題があると申し上げておりましたのは、一般の契約者保護という観点についても、十分配慮が要るものについてはそういう配慮をしていかなければならないのではないか、こういうような考え方に基づいているものでございます。したがいまして、一がいに類似保険はいけない、これは規制すべきものであるという概念をとっているものではございませんので、おのずからその共済規模に応じて適正な規制なり、適正な運営が行なわれて、共済組合のある意味では健全な発達を遂げていかれることを希望しておるわけでございます。
  11. 堀昌雄

    堀委員 いまの御答弁からすると、比較的組織をきちんとしておる共済組合、さらに、その組合員利益がある一つのそういう行為に対して十分守られるという条件というようなものが整っておれば、必ずしも現状ではそういう問題については反対ではない、結論的にはそういうことですね。ちょっと政務次官、それを確認しておいてください。
  12. 藤井勝志

    藤井(勝)政府委員 お話のとおりと確認いたします。
  13. 堀昌雄

    堀委員 その次に、私、この前ちょっと触れましたけれども生命保険につきましては、すでに私、当委員会保険外務員ターンオーバーの問題を取り上げてだいぶ議論をしてまいりました。しかし、この間も参考人の方に少しお聞きをしたわけですけれども損害保険の場合も、特A特B、甲、乙と、代理店には四つの代理店があるようであります。そうして、そのウエートは、甲が四四%、乙が五一・四%くらいで、その店数は、甲が四万、乙が四万七千、要するに、甲、乙という部分が非常に大きなウエートを占めておる。ところが、一店当たりの挙績というのですか、これは乙に至っては年間にわずか十一万五千円です。十一万五千円の年間挙績ということは、月一万円に満たないということですね。これでは保険代理店などというものの名に値しない。保険審議会でもこの問題に触れて、改善についての意見が出されておるわけですが、私はこの前も触れましたように、今後の日本のあるべき保険の姿というものを、これは生命保険損保も少しきちんと書いて、そうしてその方向に向かって保険自体が徐々にいい方向に進むべきではないのか。いたずらに過去の沿革や現状のままであることは、私は、やはり良質の保険を十分にとることができないのではないか、こういうふうに思うわけです。特Aとか特Bとかいうのは、ウエートは非常に小さいけれども、これはまた相当な事業成績があがっておる。ですから、この特A特Bくらいまでは保険代理店としてそのまま残っていいと思うのです。私は一つ事業形態だと思う。しかし、甲でも五十五万五千円で、一カ月に四万円余りという程度のことでありますから、甲でも必ずしも十分な状態ではない。こう考えてきますと、私は、生命保険損害保険も、この保険をとってくるセールスマンといいますか、そういうあり方というものは、この前から私が議論しておりますように、まず内勤職員が訓練をされて、十分な保険知識その他を持った者がやはりセールスとして勧誘をして、そうしてこの保険事業そのものが正常な形で発展をするようになるべきではないだろうか。たとえば、契約書の問題についても非常にこまかい字で裏に一ぱい印刷してある。しかし、私ども保険をやるときに、あれを全部克明に読んでおる人が一体どれだけあるかということについては、はなはだ疑問だと思う。ですから、そういう点について、やはりそういう取り扱い上、過去にはそれで済んでいたかもしれないけれども、これからは改めなければならぬ問題というものは相当たくさんにあると思うのです。ですから、そういう意味では、かつて三年くらい前ですが、保険業法そのものもたいへん古い法律になってきましたから、保険業法自体も少し書き改めてみたらどうなのか。金融関係諸立法というのは、いずれも非常に古いのです。ですから、できた時代と現在とは、そういう社会的ないろいろな変化もありますから、この社会的なそういう変化に応じ、そうして、私がこの前証取法の問題を提起をして、証券会社については、あるべき証券会社の姿というものを描きながら証取法改正をお願いをした経緯もあるわけですし、今週からかかります公認会計士の問題につきましても、やはり私は現状の分析の中から公認会計士のあるべき姿を当委員会で問題を提起をして、これも今日法律として出していただくところにきておるわけです。やはり私は、保険全体、生命保険損害保険につきましても、ここらで政府は、あるべき生命保険、あるべき損害保険の姿を明らかにして、そのもとに行政指導なり法律改正をしながらこのレベルアップをしていかないと、そういうことが十分に行なわれなかった結果が、各種保険類似行為が非常に広がってきた一つの基本的な原因なのではないか、こういう感じがするわけでありますが、その点についての政務次官の御答弁をいただきたいと思います。
  14. 藤井勝志

    藤井(勝)政府委員 お話どおり、私もやはり生保損保ともに、いわば生活の安定を保障する一つ組織体として、政府が一枚加わって、いま保険業法によってこれをやっておりますが、やはりもう少し——たとえば、生命保険会社において相互会社株式会社、これが二十社のうち相互会社は十八、株式会社は二、損保の場合は逆になっておる、こういった形態も、あるべき姿を考えた場合には、おのずから一つ方向にまとめるべきでないか。もともと、契約者が集まって相互に保障し合う、こういった目的のために生まれた組織でありますから、これは私の私見でありますが、相互会社組織のほうが理想である、こういうことも考えますし、先般来この場においていろいろな問題点が指摘されておりますが、御趣旨の点は私も全く同感でございまして、今後ひとつ真剣に検討すべきである、特に地震保険というものが新しく発足するこの機会をとらえてひとつ善処したい、しなければならぬ、このように思っておるわけでございます。
  15. 堀昌雄

    堀委員 この点は、大臣がおいでにならないから政務次官にお答えいただいているわけですが、これは私は政府見解として理解をいたしますから、ただこま切れに、代理店の問題がどうかとか、そういうこま切れの問題の答申あり方よりも、あるべき生命保険というものはどういうことであるのか、それから、損害保険もそうですが、そういう意味のビジョンを描くということがこの段階において非常に必要じゃないか。いまちょっとこの保険業法を見ますと、昭和十四年三月二十九日法第四十一号なんですね。こういうふうに、昭和十四年と現在とは、もういろいろな諸情勢というものは完全に変わっておる段階にありますから、しかし法律は依然として生きておるということでは、これは私は問題があると思う。だからその意味では、まあ、時間はいつとは言いませんけれども、やはり保険業法というものは、少なくとも全面的に一ぺん書きかえる、そうして、特に、この保険業法その他もそうでありますが、一般的には被保険者を守ることがやはり非常に重要でありますが、同時に、そういう保険会社が公共的な事業を営んでおるわけでありますから、やはりその公共性にかんがみ、要するに、社会的ないろいろな協力というものが当然行なわれるような形になってこなければいけないのではないか、私はこういうふうな感じがするわけであります。あとで同僚委員平林君がお尋ねをすると思いますけれども、いろいろな取得制限問題等についても、当時の概念がその後も修正、改正されておりますけれども資産の運用その他についても、この前私は一ぺん内閣委員会で議論したこともありますけれども、もう少し社会的な問題に対して協力があってしかるべきじゃないか。生命保険は最近はかなり協力をするようになられて、財投の中にも住宅公団債でありますか、相当な協力をされてきておりますけれども、やはり損保もただ担保力をふやしたらいいという段階はもう過ぎているのではないか。やはりそれらの資産がより公共的な目的に運用されるということも、私は非常に重要な段階に来ているのじゃないか、こう考えますので、それらの点を含めて、ひとつ、政府としては真剣にこの問題に取り組んでいただきたいということを要望いたしておきます。  そこで、そういう問題の中で、実は私この前議論しておりましてそのままになっておりますのは、保険審議会のメンバーの中に、外務員といいますか代理店といいますか、そういう人たちをも一応加えたらどうかということを三、四年前から申しておるのでありますが、一向にこの問題は解決がついておらないのであります。特にそういう外務員問題というのは、何といってもいまの保険問題の中の非常に大きな問題点であるということから考えますと、そういう保険外務員人たち代表を一人くらいはこの保険審議会の中に加えていいのじゃないかというふうに思って議論してきたのですが、この保険審議会のいまの方たち任期はどういう形になっておりますか。
  16. 上林英男

    上林政府委員 保険審議会委員任期は二年でございまして、昨年の七月に改選をいたしましたので来年の七月まででございます。
  17. 堀昌雄

    堀委員 昨年の七月にそうなったときに私の要望が依然としていれられていないのですけれども、これは現状は二十六人ですが、保険審議会委員の定数は何名ですか。
  18. 上林英男

    上林政府委員 審議会委員は、委員二十人以内で組織するということになっております。ただし、案件によりまして、必要に応じ臨時委員を置き、あるいは専門委員を置くことができるということになっておるわけでございまして、臨時委員の方あるいは専門委員の方を加えますといまおっしゃられたような数になるかと思います。
  19. 堀昌雄

    堀委員 そうすると、現在のこの中で、委員でない、臨時委員専門委員というのはどなたですか。
  20. 上林英男

    上林政府委員 臨時委員の方が三名でございます。一人は水牧さんと申されまして、全国中小企業団体中央会会長、それから上子さんは読売新聞の論説委員、それから佃さんが日経の常務でございます。そのほかの専門委員といたしましては、鴻さん、竹内さん、山内さん、種田さん、この四人で、大学教授方々、あるいは損保料率算定会専務理事、あるいは三井生命の専務という方々がなっておられます。
  21. 堀昌雄

    堀委員 保険審議会というのは、現在は生保損保と一緒になってできているわけでありますから、一ぺんに二人も入れるということが問題があるならば、とりあえず一番大きな問題のある生命保険外務に関する人たち代表をぜひ次回の保険審議会委員の中に一名ぐらい入れていただきたい。これを見れば、保険会社経営者の側の方はたくさん入れられておりますが、経営者の側の方たちだけでは問題が解決しないところにきていると思います。だから藤井さん、こういう場所でそういう人たちあり方をはっきりさせる意味でもこれは非常に重要な問題だと思うので、ひとつ、次回については十分検討してもらいたいと思いますが、いかがですか。
  22. 藤井勝志

    藤井(勝)政府委員 ただいまの問題は、以前から堀委員の御説もございまして、内部的にいろいろ検討したようでありますが、そういう方々意見代表する意味において、学識経験者にこれを含めて配置したということでございますが、せっかくの御意見でございますから、今後十分検討さしていただきたい、このように思います。
  23. 堀昌雄

    堀委員 それを学識経験者代表しておられると言うが、学識経験者ほんとう代表しておられるなら、保険審議会答申が変わっていいのじゃないかと思うのですが、この問題は依然として非常に遅々たる歩みなんです。ですから、その点はひとつ十分検討をして——私は何も外務員だけをどうしろというのじゃない。しかし生命保険で一番大きな問題は外務員問題なんですから、これが一応片づけば、外務員の方のかわりに今度は代理店関係人たちに入ってもらって、やはり少しそういうふうに積極的に一番問題点のあるところを掘り下げるような態度がなければ、私はこの問題は解決しないと思っております。どうかひとつその点はそういう形で処理をしていただきたいというふうに思います。  それから、いま損害保険は十八社が株式会社ですが、配当状態は一体どういうことになっているのでしょうか。現在の損害保険配当、十八社ですね、これは一律になっているのか、多少フラクチュエーションがあるのか、その点を伺いたい。
  24. 上林英男

    上林政府委員 各保険会社配当率は一様ではございません。最高一一%、最低五%、その間に九%の会社も一〇%の会社もございます。
  25. 堀昌雄

    堀委員 現在銀行配当はほぼ一律になっているのじゃないかと思うのです。あなた方は銀行局だけれども保険担当ですからあれでしょうけれども、私の記憶しておるところでは、都市銀行などの配当はみな同じようになっておると思いますが、その点どうですか。
  26. 上林英男

    上林政府委員 担当でございませんので、間違ったことを申し上げてもなんでございますから……。
  27. 堀昌雄

    堀委員 しかし、一一%から五%というような開きは、私はたしか銀行にはないと思っております。都市銀行なら都市銀行地方銀行なら地方銀行、あるいはそういうジャンル別にはある程度問題がございましょうけれども、少なくともそういう差はない。相互会社の場合にはよくわからないのですよ。株式会社利益というかっこうでこれが非常に端的にここへ出ているわけですけれども、この場合に、あなた方のほうは、こういういまの配当あり方については現状で何らかの指導か何かがあるのか。さっき藤井政務次官が言われるように、やはり相互会社としてもいろいろ問題はありますけれども、形としては、相互会社利益分配にあずかる者はその保険加入者だということが主体になっておりますが、少なくとも、損害保険については株式会社という形である以上、要するに、損害保険によって特定の者が利益を得ておるという問題が裏にあるわけです。だから、ここと地震保険との関連等から見ますと、やはりそこには多少の問題もあるし、裏返して言えば、地震保険のようなものをやるときに、それほど経営能力に差があるものが一体ほんとうにやれるのかどうかという問題点もここに出てくるのではないか、二十社ありますけれどもね。あなた方の配当に対する考え方というのはどういうことになっておるか、事務当局にお伺いしたい。
  28. 上林英男

    上林政府委員 保険会社は、御案内のとおり公共性の強い、かつまた、信用機関でもございますので、もちろん安定した配当水準を維持することも必要でございます。しかし、一方経営合理化などによりまして体質改善努力する必要もまたはなはだ強いわけでございます。したがいまして、配当率につきましては、固定いたしますと、ややもしますと経営が安易に流れるおそれもございますので、その体質改善いたしますために、経営実績に応じまして、配当についてはこれを固定化しないという方向個別化という考え方によって私どもは対処いたしておるわけでございます。同様なことは、生命保険の場合には相互会社が多いわけでありますから、生命保険契約者配当につきましても、同じような、一方の安定をした要請個別化要請とあるわけでございます。生命保険契約者配当につきましても、たとえば、利差益につきましては、四分一厘から七厘までの差があるわけであります。これにつきましても、同様な趣旨で、できるだけ安定をさせたいと思いますが、やはりその実績に応じまして個別化もはかっていきたい、こういうふうに考えております。
  29. 堀昌雄

    堀委員 いまの銀行配当、電話でいいから銀行課へちょっと聞いてください。  銀行保険会社とが同じような公共性を持っておって、しかし、片方ははっきりと金利は一種の公定をされているというか、そういう形になっておりますね。しかし、それでもなおかつ利益には差があるわけです。ずいぶんと差がある。しかし、配当は大体一律になっているということは公共性の問題として考えられているのではないか。要するに、配当をある一定にした残りは、やはり支払い準備として内部留保をしなさいということではないかと思うのです。そうすると、いまの生命保険の場合には、これはいろいろあってもみな加入者に返るということは、保険料率が安くなることなんですよ、裏返して言えば。火災保険の場合には、配当をたくさん出して、火災保険料率が下がるかといえば、そうはいきませんね。やはり配当がある一定のところにあって、残ったものは内部留保に回すか、安くするかというのが、保険公共性としてのあり方になるのではないか。だから、損害保険の一割一分の配当というものは、いま私ども考えている金融機関一般の常識からするならば、ややこれは少し高きに過ぎるのではないか、私はこういう感じがするのですが、その他の金融機関との権衡等を考えてみて、さらに生命保険とのそういう問題を考えてみて、片方は、配当することは保険料率が下がることになるのだ、片方は、配当したって保険料率は無縁であるという点には、根本的な株式会社としてのあり方の相違がある、こう考えるわけですが、これは一割を含めて、一割以上の配当というのは幾らくらいやっておりますか。
  30. 上林英男

    上林政府委員 一割を含めました一割以上のといいますか、一割と一割一分の配当でございますが、その会社は十八社のうち十五社でございます。
  31. 堀昌雄

    堀委員 十五社が一割及び一割以上ですね。
  32. 上林英男

    上林政府委員 はい。
  33. 堀昌雄

    堀委員 ですから、この点はひとつ今後の検討課題として、一割がもしここで常識的なものならば、一割一分のところはやはり一割にして、保険料率で競争させたほうがフェアなのではないか。要するに、いま生命保険のほうは、配当金で格差がつけば、裏返して言えば保険料で競争しているようなかっこうです。ところが、こちらのほうは料率はみな一定なんです。保険会社によって料率の差があるということにはなっていないと思う。損害保険の問題は、資本主義的な競争は一つも認めないでおいて、中の合理化とかなんとかいうことだけで、配当方向だけにメリットがいくということは、保険公共性という問題から見たら、これはちょっと検討に値する問題ではないのか。特にその他の金融機関との権衡を考えてみれば、やはりおのずからそこには指導方向があってしかるべきではないか、私はこういう感じがしますが、この点についての考えをひとつ政務次官に伺って、時間がありませんから、私の質問を終わります。
  34. 藤井勝志

    藤井(勝)政府委員 保険事業の本来のあり方から申しまして、お説のとおり、これが私はもともと株式会社組織であることが適当であるかどうかに疑問を持っております。これは根本問題として、別にいたしまして、やはり一応現在金融機関的な性格もかね備えておりますので、他の金融機関との比較からいえばそう配当が高いとも言えません。けれども、やはり十分検討に値する問題である。その検討に値する問題とは、私は、むしろ根本的に、株式会社組織でいいのか悪いのか、このことまで堀り下げて検討すべきである、このように考えております。
  35. 三池信

    ○三池委員長 平林剛君。
  36. 平林剛

    平林委員 私は、この間の委員会におきましてちょっと申し上げた点からお尋ねをしていきたいと思うのであります。  それは、保険会社、特にきょう問題になるのは損害保険会社でありますけれども、その財産の運用についてでございます。保険業法施行規則、財産利用割合の制限、第十九条によりますと、株式の所有は十分の三をこえることを得ずとなっておるのであります。ところが、大蔵省から提出をされました損害保険会社の株式所有状況を見ますと、二十社、A、B、C、D、E、F、Gと区別されておりますけれども、その割合は三十八年度末、三十九年度末、四十年九月末、いずれも三〇%をこえる割合となっておるのであります。これは保険業法施行規則第十九条に違反をするものと見なければならぬ。ただ、ただし書きがついておりまして、特別の事情により大蔵大臣が認可したものはこの限りにあらず、こうなっておりますから、逃げ道はあるけれども、どうも特例があたりまえの形になっているというのはやはり適当でないのじゃないかと思うのであります。ここに提出をされましたのは、三十八年度末以降でございますけれども、この以前については一体どういうふうになっておるのでしょうか。昭和三十年ころの傾向から少しひとつ明らかにしておいてもらいたいと思うのです。
  37. 上林英男

    上林政府委員 御質問のございました昭和三十年度末の株式の保有割合はちょうど三〇%でございます。それ以前の、たとえば二十八年度におきましては二七・三%でございます。三十年度を契機にいたしまして徐々に株式の保有割合が上がってきております。これにつきましては、当時の経済情勢その他からいいまして、増資の需要が非常に強うございましたことや、あるいは安定株主としての損保会社に期待する声が非常に強かったというような面もございまして、ことに第一点で申し上げました増資需要というものが非常に多かったということが一つ原因になっておるわけでございます。ちなみに、三十五年度から四十年九月末までの損保会社の株式の純増額を合計いたしてみますと、八百二十四億円ほどになっておりますが、それに対し、増資払い込みによりまして引き受けました株がちょうど八百三十四億円ございます。もちろんそのほかに増減の要因といたしましては買い入れ、売却等があるわけでございますが、純増額と増資の引き受けをした額とがほぼ見合っておる、こういう実情であります。
  38. 平林剛

    平林委員 結局、昭和三十年以降漸増して、今日なお多いところは三八%、あるいは三六・七%、三六・二%というぐあいに、特別の事情を認められてこれを許されておるわけでありますけれども、許可しなかったこともあるのですか。   〔委員長退席、吉田(重)委員長代理着席〕
  39. 上林英男

    上林政府委員 こういうような状態でございましたので、保険会社から一年間に三回に分けまして株式の取得見込みというようなものを提出をしてもらいまして、おのおのの理由を聞き、これを適正な限度におさめられるように、あるいはしかし、いま申しましたような増資支払い、その他のいろいろの要請ということもございますので、そういう点を勘案いたしまして、できるだけ原則に従うように、しかしあまり固定化することによりまして実情に合わないということも避けながらまいったわけでございます。今日におきましては、一方におきまして増資の支払いが鎮静をいたしておりますことと相まちましてだんだんと低下をしつつある、こういうのが実情でございます。
  40. 平林剛

    平林委員 だんだん減らしていくような努力はしておる、こういうわけですか。
  41. 上林英男

    上林政府委員 そのとおりでございまして、できるだけ原則に近づくように努力をいたしておるわけでございます。
  42. 平林剛

    平林委員 そのために何か具体的な計画か目標というようなものはきめてやっておりますか。ただ私は、おそらく三十年以降、こういう施行規則があっても、これはちょっと特別の事情を認められないといってだめだと言ったのは一つもないのじゃないかと思うのです。あなたはお答えにならなかったのだけれども、そういうことはあるのですか。あるなら、ひとつ答えてください。
  43. 上林英男

    上林政府委員 株式投資につきましては、反面、優良な株式に投資をするというような配慮も必要でございますので、いろいろな事情を聞きまして、たとえば、原則としてはなるべく上場株というようなものを持つように指導いたしております。非上場株あるいは配当率が低いというようなものについては、会社に再検討を申し入れまして、会社との話し合いにおきましてそういうものは落としてくるというようないろいろな方法をもちまして、そういう配慮も加えながら、しかしまた、先ほどから申し上げておりますように、一方、安定株主としての責任を果たすことに不円滑になってはいけないというような配慮も加えながら、できるだけ会社をいま申しましたような線で指導してまいっているわけでございます。
  44. 平林剛

    平林委員 それでは、株の増資引き受けの分と、積極的に株を買い付ける分とはどういう割合になっていますか。
  45. 上林英男

    上林政府委員 先ほど申しましたように、三十五年度末から四十年九月末までの間の集計を申し上げますと、増資払い込みに応じましたものが八百三十四億円でございます。それから買い入れをいたしましたのが三百三十二億円でございます。したがいまして、その計は千百六十六億円、それから売却評価損というものがございます。それが三百四十二億円でございます。したがって、増加額が八百二十四億円ということであります。   〔発言する者あり〕
  46. 平林剛

    平林委員 いま堀さんからの不規則発言にあるように、私はやはりこれでは保険業法施行規則第十九条の財産利用割合の制限というのは死文じゃないかと思うのです。政務次官、そうでしょう。死文でしょう。
  47. 上林英男

    上林政府委員 御存じのように、保険会社資産は毎年相当の上昇率がございます。したがいまして、絶対的な金額から申しますとお話のような点があるわけでございまするけれども、総資産に対する割合といたしましては、いま申し上げましたようなかっこうで低下の傾向をたどっておるわけでございます。もちろん絶対額を減らしてという御議論もよくわかるわけでございまするけれども、一方におきまして、損保経営をいたしてまいりますときに、契約書との関係を円滑に維持してまいる必要もございまするし、またその過程におきましては、株式市況が非常に不況でございまして、安定株主として損保会社ができるだけそれに協力をするようにというような、その必要のあった時代もあるわけでございます。そういういろいろな時代の要請にもこたえながら、またある意味では、この保険業法の施行規則に定められております原則にもできるだけ近づけるように、徐々にいろいろな配慮を加えながらやってまいったわけでございますので、一がいにこの施行規則にそのものずばりすぐいかなかったという点は確かにそのとおりでございますが、そういう配慮をしながら運営をしてきたということは事実でございます。
  48. 平林剛

    平林委員 結局、どうするつもりですか。こういう施行規則をつくっておいて、十分の三というふうにきめてある、ただし、特別の事情で大蔵大臣の認可をしたときはしようがないというのは、私は例外的なことだと思うのです。ですから、これが一年とか二年というなら別ですけれども、三十年からずっとふえつばなしになっているという状態をそのままにおいておくということは、どっちか違っているということになるのです。どうするつもりなんですか。
  49. 上林英男

    上林政府委員 率直に申し上げますと、株式の投資が三〇%という限界が、絶対的に三〇%をこえてはいけないということは必ずしも断言はできないわけでございます。ただ、大まかな見当といたしまして、損保会社資産というものは、流動性を持ち、安全確実でなければならないという観点から申しますと、おおむね三割見当というものが適当であろうというような感じがいたすわけでございます。これは外国に例をとりましても、たとえばアメリカにおきましては、損保会社につきましては、資産運用の面におきまして、株式については比較的ゆるやかでございます。もっとも、その資産の運用方法というものがちょっとわが国の場合と異なっております。損保会社につきましては、いま申しましたように、結果的には株式保有が比較的ゆるやかでございまして、アメリカにおきましては三〇数%でございます。ただ、アメリカにおきましては、そのほかに公社債等の有価証券というものに相当投資をいたしております。わが国の場合におきましては、こういうような面に、今後株式のみならず、一般的な公社債というようなものについても、資産の流動性、安全確実性というものを保つ意味におきまして、損保会社としてはそういう投資に重点を置いていくべきではなかろうかというような考え方をいたしております。いま申しましたようなことでございますので、こういうものにつきましては、損保会社としてどういう資産構成が適当であるかということは、いろいろな経済状況等を考えながら今後十分検討を進めてまいりたいと考えておるわけであります。
  50. 平林剛

    平林委員 そうすると、この施行規則の財産利用割合の制限——目標ではない、制限ですよ。この制限というのを変えるのですか。いまのあなたのお考えだと、株の十分の三というのは現状から必ずしも適当でない、大体この程度だというのですが、目標だということになると、この制限というのは変えるのですか。どうなんです。私は、やはりそのけじめというものをはっきりさせていかなかったら、結局混乱が起きるし、便宜主義になりますよ。変えるのですか。
  51. 上林英男

    上林政府委員 ただいまのところは変えるつもりはございません。長い目で見ましたときに、確かに三〇%程度というものが適当であろうと私も考えております。しかし、いろいろな経済情勢のもとでそういう事情があるわけでございます。その場合に、三〇%を絶対にこえてはいかぬということは必ずしも一がいに言えないということを申し上げたのは、少し説明がへたであったのかもしれませんが、そういう観点で、この点についてはやはり当面弾力的に考えていかざるを得なかったということを申し上げたつもりでございます。将来の資産構成といたしましては、公社債市場の発展その他いろいろな問題がございまするが、そういう面とともにあわせて考えていきたい、そちらのほうの資産運用の割合と申しますか投資物件というものについての対象について考えてまいりたい、こういう趣旨を申し上げたつもりなのでございます。
  52. 平林剛

    平林委員 不動産の所有などは十分の二と制限をされておるわけですね。それから同一会社の社債及び株式の所有並びにこれを担保とする貸し付けは十分の一という制限がある。同一人に対する貸し付けは十分の一である。同一銀行に対する預金または同一信託会社に対する信託は十分の一とあります。同一物権を担保とする貸し付けも十分の一である。これはいずれも制限ですね。これについては資料として御提出にならなかったのですけれども、この制限どおりにやられているのですか。
  53. 上林英男

    上林政府委員 その制限をこえているものはございません。たとえば、不動産につきましては、保険会社の総資産に占める割合はただいま一〇%程度でございます。
  54. 平林剛

    平林委員 不動産の所有は一〇%ですか。私は、やはりこの機会に、A、B、C、D、E、F、Gでもいいですから——こえていないんだかいるんだか、いま私は株式所有の点でながめたのですけれども、どうも実情がこういう結果になっています。はたしてその制限が守られているのかどうかという点についても、一度資料として出してもらいたいのです。あなたの言うのを信用しないわけではないけれども、どういう状況になっているか、一度確かめておきたいと思います。
  55. 堀昌雄

    堀委員 関連して。  不動産価格というのはどういう価格になるのか、これがもしも取得価格というようなことになっているとすれば、いまの不動産の値上がりは著しいものがあるわけですから、いまの十分の一という問題の目安になる価格はどういう価格ですか。
  56. 上林英男

    上林政府委員 帳簿価格は、御存じのように取得価格、それに減価償却がございますと、引いていくわけでございます。その価格を基準にして計算をいたしております。
  57. 堀昌雄

    堀委員 十分の一にきめた理由は、それでは一体何ですか、上林さん。
  58. 上林英男

    上林政府委員 総資産の運用を安全にかつ流動性を保つためにはどういう割合がいいかということでございます。したがいまして、総資産の大部分を不動産投資にしてしまうということは、流動性その他の観点から必ずしも望ましいわけではございません。もちろん、その不動産の中には投資用の資産も営業用の資産もございまいます。営業用資産がいたずらに多くなりますことは、資金効率を悪くするゆえんでございます。そういうような観点から考えまして、不動産の取得制限というものを置いているわけでございます。
  59. 堀昌雄

    堀委員 いまのように取得価格から減価償却を引いていくということになれば、これは価格としては非常に小さくなっている。実際にはしかし非常に大きなものが持たれておるということになっているんじゃないかと思います。いまのそういう問題は、そうしてくると、保険会社資産というもののものの見方に、やはりわれわれもう一ぺん考え直してみなければならぬ問題が出てくるんじゃないか。いま保険会社資産が三千何百億円ですか、ありますね。そういう問題というのは、そうすると、表に出ておるだけの簿価として見るだけであって、それは売る、売らないは別問題ですが、営業用不動産は売れないからいいですが、そうでなく、投資物件でしょうから、大体そこに書いておる十分の一というのは、営業用不動産は入っていなくて、投資物件の運用資産主体になっているんじゃないかと思いますが、そこはどうですか。はっきり確認をしておきたい。
  60. 上林英男

    上林政府委員 ただいま正確な資料を持っておりませんが、私の感じで申し上げますと、損保会社につきましては、むしろ営業用不動産のほうがはるかに多いという感じを持っております。
  61. 平林剛

    平林委員 これは資料を御提出願いまして、検討させてもらいたいと思うのであります。  次に、保険料率の問題について少し伺いたいと思うのですが、地震保険が今度実施されるということになりますと、これに付加する料金率の根拠というものはどういうふうに考えておられるか、一応地震保険料率の計算についての文書をいただいたのですけれども、読んだだけではちょっとよくわからないんですね。ですから、一体どういう根拠で、どのくらいのことを考えているのかということを、簡単に、要領を得て説明を願いたいと思います。
  62. 上林英男

    上林政府委員 地震保険料率につきましては、もちろん経験もございませんので、過去におきまして地震学者等がいろいろと研究してくれましたことをもとにいたしまして算出するより方法がなかったわけでございます。  その算出の方法を大ざっぱに申しますと、過去四百六十七年間の破壊的地震、三百二十地震でございますが、その地震につきまして、過去のいろいろな古文書等から現在の科学的知識を加えまして、地震の大きさというようなものを算出をいたしました。その地震の大きさ、すなわち震度が踏まえられますと、その大きさに基づきまして建物の損壊率というものが学問的にきまる方程式が出るわけでございまして、そういう倒壊率の方程式を用い、一定の倒壊が行なわれますと、その倒壊戸数から火事を出す函数というものが出るわけでございます。そういう函数を用い、その結果、一定の出火率が出ますと、さらにその出火率が多うございますと、消防力をもってしては消しとめられないという係数が出てまいります。そういうようないろいろな係数を使いまして、過去の三百二十地震昭和四十一年度に起こったならばどのくらいの被害額になるであろうという推定をいたすわけでございます。その被害額を総計いたしまして、四百六十年間で割り、さらにそれを四十一年度におきます契約額で割ってまいりますと、一契約金額当たりの事故率損害率というものが出てまいるわけでございます。   〔吉田(重)委員長代理退席、金子(一)委員長代理着席〕 それをもちまして地震保険の純率、こういうふうに定めようとするものでございます。具体的に申しますと、総合保険に自動付帯をすることを考えておりますが、ただいまの総合保険の純率は、全国平均いたしますと、住宅物件につきましては三円二十四銭でございます。この地震保険料率は、いま申しましたような計算に基づきましたものに付加率を加えまして、大体一円程度、正確に申しますと九十七銭程度になるのではないかと思っておりますが、そういう程度のものになろうかと思っておるわけでございます。
  63. 平林剛

    平林委員 概略のお話はわかりますけれども、一四九八年から一九六四年の四百六十七年間に記録された三百二十地震について、昭和四十一年度といろいろ引き比べて計算をしてみる、こういうことですけれども、昔の家と最近の建物との間には、木造だとかモルタルだとかあるいはコンクリートだとかいうふうに、建築様式が違っていますね。ですから、耐火性などについても変化があるわけですし、そういう点などはやはり合理的に計算の中に入るのですか。  それからもう一つは、この四百六十七年間の記録をとるということ自体、根拠があるものなんでしょうか。
  64. 上林英男

    上林政府委員 第一点につきましては、昔の地震の大きさというものをとりまして、それが四十一年度の家屋あるいは付保状況、そういう中でその大きさの地震が起こったらば幾らの損害が出たであろうという推定をするわけでございます。  第二の問題につきましては、地震学者が、過去のいろいろな文書から、たとえばその地震は壁が落ちたとか、屋根がわらが落ちたとか、あるいは人が幾人死んだとか、橋が落ちたとかいうような、そういう記録から現在のマグニチュードと申します地震規模というものを換算したものがございますが、それを用いておるわけでございます。
  65. 平林剛

    平林委員 あまりよくわからないのですが、とにかく私の言いたいところは、こういう新しい地震保険なり、あるいは津波とか風水害とか、こういういろいろなものが新たにできるときには、必ずそういう歴史的なものを調べて、損害額というのを計算して料金率をふやしていく、そういう考え方なんでしょうか。
  66. 上林英男

    上林政府委員 地震保険につきましては、これは御承知のとおりに、非常に長い周期をもってものを考えませんとできないものでございますし、また、過去の経験ももちろんないわけでございますので、こういうような方法が一番いい方法ではなかろうか、これによらざるを得ないということであったわけでございます。しかし、そのほかのいろいろなものにつきましては、比較的短期の統計によってまかなえる場合もございます。あるいは、ある程度そういうものから類推しました、またそれに類似するようないろいろな経験値というようなものもあるわけでございます。そういうものをもとにして新しい保険料率をきめていくという場合が多いわけでございます。地震保険の場合につきましてこういうやり方をいたしましたのが、ある意味では非常に変わっているということがいえるかと思います。
  67. 平林剛

    平林委員 私、ゆうべうちに帰って、火災保険に入っている自分の契約書の裏を読んでみた。こまかい字だから、このごろは少し目が上がったので、大きいレンズで読んでみたわけです。私もあまりこういう方面は知らなかったのですけれども火災保険といっても住宅総合保険というのがありまして、普通の火災だけだと思ったらそうでなくて、たとえば、落雷があったときも保険金がもらえるようになっている、それから破裂または爆発があったときも保険金をくれるようになっている、飛行機の墜落、落下物があったときも保険金を出す、それから自動車の飛び込み、これは時代の要請だろうと思いますが、自動車の飛び込みがあったときもいい、騒擾または労働争議に伴う暴行があったときももらえる、家財の盗難でもよろしい、それから傷害のときもいい、風水害もよろしい。私の住んでいるところは風水害、台風の通過地域でありませんし、また、車の飛び込みもあまりないし、飛行機などもその通過地になっていませんし、破裂、爆発なんかもちょっと近くにないものですから、あまり縁がないのが多いのですけれども、昔はこんなになかったと思うのです。損害保険会社は、こういう約款をつくるたびに、一々保険料率をいろいろ歴史的に計算をして積み上げていったのですか。そういう点は、皆さんのほうは約款を大体ながめておられると思うのですけれど、どういう割合になってふえていったか、そういうようなことは御説明できますか。
  68. 上林英男

    上林政府委員 ただいま御指摘の総合保険契約は、これまで申し上げましたように、一枚の保険証書であらゆる危険を担保するという、これは世界的にもこういう傾向でございまするし、わが国におきましてもこれが非常に普及してまいったわけでございます。もっとも、この一々の危険につきましては、たとえば火災につきましては火災保険、そのほか盗難については盗難保険と、いろいろ単独の保険があるわけでございます。そういう保険の経験を持っておりますので、そういうものを寄せ集めまして、ここに総合保険にするならばどういう料率がよかろうか、こういう計算をいたすということに相なるわけでございます。
  69. 平林剛

    平林委員 こまかく計算できないのですか。たとえば地震の場合には、いまあなたは九十七銭くらいだと言う、そうすると、自動車の飛び込みは幾らになっているか、あるいは飛行機の墜落及び落下物のときの損害は幾らになっているか、また落雷のときは幾らになっているか、こういうようなものの積算があるのでしょうか。
  70. 上林英男

    上林政府委員 そういう積算の根拠はもちろんとっております。
  71. 平林剛

    平林委員 金額をちょっと説明してください。
  72. 上林英男

    上林政府委員 総合保険料は、通常の火災保険に、住宅の場合におきましては三十銭加算をいたしております。その三十銭の根拠につきましては、落雷その他についてさきに申しましたような検討を加えました上できめておるわけでございます。それから、ただいま申しました三十銭は、住宅の場合の建物でございます。それから家財につきましては盗難が入っておりますので、盗難分を加えまして、火災保険に一円というものが付加されております。
  73. 平林剛

    平林委員 いまのお話だと、総合保険の中にはいろいろな保険があるから、普通の火災保険よりも住宅の場合は三十銭、盗難であるとか、落雷であるとか、いろいろなものを含めると一円多くなっておる、こういうお話ですか。
  74. 上林英男

    上林政府委員 いま申しましたように、火災保険に、建物につきましては三十銭、家財につきましては一円、これが付加されることになるわけでございます。
  75. 平林剛

    平林委員 内訳はわからないのですか、要するに、私が言いたいのは、保険会社がいろいろな約款をつくりますね。そのとき、これについては保険料率は幾らにするという申請があなたのほうにくるのでしょう。そのときに、今度は地震法律が出たからこうやって議論するが、そうでない場合は、あなたのほうがこれでよかろうといって認めるわけですね。そのときの申請によって内訳も出ておるのじゃないでしょうか。その内訳をひとつ聞かしてもらいたいのです。
  76. 上林英男

    上林政府委員 住宅総合保険につきまして申し上げますと、建物でございますが、落雷が一銭でございます。それから破裂、爆発の危険部分が一銭、航空機の墜落が一銭、車両の飛び込みが一銭、騒擾が一銭、それから臨時生計費と申しまして、たとえば、火事にあって、うちをかわらなければならない、うちの家賃その他の臨時生計費が要ります。それについての補償が九銭、それからまた、たとえば自動車が飛び込んできてけがをした、その傷害が一銭、さらに風水害の場合には保険金額の一割または十五万円という制限がございますけれども、その風水害の部分が十銭、それから経費部分が五銭ということで、合わせまして三十銭、こういうことになるわけでございます。
  77. 平林剛

    平林委員 私、地震保険制度に関する答申を読んだら「風水災保険は今後の検討にまつ」というようなことが書いてあったのですが、ゆうべ約款を読んでみた。ところが、風水害保険をすでにつけて、制限は十五万円となっておりますけれども、出ておるのですよ。これはこの答申に書いてあることとちょっと違うじゃないかというようにきのう考えたのですが、いかがですか。
  78. 上林英男

    上林政府委員 確かに、おっしゃるとおり、総合保険におきましていま免責になっておりますのは地震だけでございます。ただし、いまの総合保険についております風水害保険は、先生も御指摘のように、保険金額の一〇%または十五万円という限度が設けてあります。ある意味では非常に低いてん補割合でございます。保険金というよりもやや見舞い金に近いような感じのものでございます。したがいまして、私ども考えておりますのは、保険といえるような相当のてん補割合、あるいは一たん事故が起こりました場合に復旧に相当の寄与ができるような風水害保険、こういうものが実は私どもの研究の課題であります。しかし、それにつきましては、風水害保険の持ちます特性にかんがみてなかなかむずかしいということでございますが、なお、そういうものにつきましても、今後の研究課題として十分検討してまいりたい、こう思っておるわけでございます。
  79. 平林剛

    平林委員 そうすると、私きのう気がついたのですが、風水害について十銭払っておるという勘定になる。百万円保険かけるとすれば百円になるわけだ。この地震保険制度に関する答申には、「風水災は時期および地域について特定性があり、逆選択のおそれが極めて強く、またこれによる保険金支払額が巨額におよび、引受方法、料率等の点より見ても甚だ問題が多いので、当面は地震保険の創設に努力し、風水災保険は今後の検討にまつことが妥当であると考えた。」、こうありますね。あなたのほうでまた今後考えるというのは、これ以上にもっとたくさん出すというようなことを考える、そのときにまた料率もふやす、こういう考えですか。
  80. 上林英男

    上林政府委員 考え方の筋はそのとおりでございます。ただ、もちろんこの風水害につきましても、てん補率を上げ、あるいは保険金額を上げるに伴いまして保険料率を上げざるを得ない、またあるいは、逆選択を防止するためにどういう措置を講じたらいいか、これは非常にむずかしい問題でございます。かりに総合保険についております割合を上げていくというようなことが一つの方法として考えられました場合におきましても、もちろんその保険料率をどの程度上げなければならぬか、あるいは、上げることによって、保険をかけられる方の負担というものが過重になってはまたいけないわけでございますし、一方におきまして、保険の内容を充実するという使命と、保険料率をなるべく上げないようにという使命と二つの使命をどこで調和さしていくか、こういう問題であろうかと思いまするが、そういう問題も含めまして、風水害保険については非常にむずかしい問題があります。しかし、できますれば、日本もやはり地震国と同じように風水災に多く見舞われる国でございますので、将来の課題としては、むずかしい問題があることは承知しておりますけれども、なお研究したい、こう申し上げているわけでございます。
  81. 平林剛

    平林委員 先ほどあなたは、保険料率について九十七銭程度考えていると言われたのですが、私いまいろいろの例から見まして、ちょっと高過ぎるのじゃないだろうか、もう少し安くすべきであるという主張です。あるいはほんとうは、現在の保険会社の経理内容その他から見て、不測の事態はわかりませんけれども、普通の状態であれば、こんなに上げないで実施をしていくというような方向が望ましい、こう考えておるわけであります。これは、きょう私、他の点との比較をいただきましたが、いずれそれらをあわせて、どのぐらいが妥当かということは、もう少し政府の中においても検討してほしい問題であると実は考えておるわけです。  それからもう一つ、同じ九十七銭とか一円とか、いまの風水災ですが、私のところのように十銭で百円ずつ払っているにしても、危険度の多いところと少ないところがあるわけでしょう。そういう区分などというのはどの程度にするつもりなんですか。つまり、高いところもあるでしょう。それからあまり風水災と縁のないところもあるでしょう。私のところなんか、おそらくあまり縁のないところで十銭取られているから、縁のあるところはもっと高く取られているんじゃないか、そういうふうに思うのですが、そういう料率の区分というのは、地震についてどのぐらいつくるつもりですか。
  82. 上林英男

    上林政府委員 地震保険につきましても、過去の経験率によりますと、地域によりまして相当の差がございます。しかし、その点につきましては、保険審議会でも議論がございましたが、地震保険の性格にかんがみまして、自動的に付加するとか、あるいは国が介入をいたしまして、できるだけ普及をはかり、民生の安定をはかりたい、こういう意味もございまするので、その料率の開きにつきましては、できるだけ小さくとどめたいというふうに考えているわけでございます。したがいまして、まだ決定はいたしておりませんが、大体三つ程度の開きあるいは四つぐらいになるかもしれませんが、その程度の開きにとどめたいというふうに考えておるわけであります。
  83. 平林剛

    平林委員 地震のあるところと地震に縁のないところ、火山脈の通っているところと通っていないところとか、わが国には地震帯というようなものがあると思うんですよ。しかし、あまり縁のないところで——だれでもそんなことはわかりませんよ。しかし、歴史的に見て、その少ないような地域でたくさんの料率を取られるということになりますと、これはこの間堀委員が言われておりましたように、今後の普及の問題にも関係がございますし、また、普及する、しないにかかわらず、何か自動的に付加されるわけですから、保険料が高くなったという感じを国民に持たせて、せっかく政府のほうでは善政のつもりでおやりになるものが、そうではないということに受け取られるおそれも私は出てくると思うのです。そういうことを考えますと、その点はよほどよく検討して、うんと低目にしていくということを考える必要があると思うのでありまして、これは私特に強調しておきたいと思う。  そこで、私はこの約款を読んで気がついたのですけれども地震の場合のことは最近は書いてないですね。昔は地震による火災はその責めを負わないということが書いてあったと思いますが、最近の約款を見ると、地震によって火事のあったときにどうするとも書いてない。
  84. 上林英男

    上林政府委員 書いてあると思いますが……。
  85. 平林剛

    平林委員 私のを見てごらんなさい。私は実際国民の一人として入っているのですが、これには地震によって火事が起きたときはどうするということは書いてない。
  86. 上林英男

    上林政府委員 住宅総合保険の普通約款を私はここに持っておりますが、その第五条の二項に「当会社は、その原因が直接であると間接であるとを問わず、損害または傷害が次に掲げる事故によって生じたときは、保険金を支払う責に任じません。」と書いてありまして、一番目が「戦争、暴動その他の事変」二番目が「地震または噴火」こういうふうに書いてございます。
  87. 平林剛

    平林委員 あなた、保険会社は二十社もあるんですよ。それはどこの会社のものですか。しかし、私が契約している会社は何とも書いてない。だから、地震保険法なんかつくってもらわなくても、これは別に地震による火事のときには出さないなんて書いてないから、何もごやっかいにならなくてもいいと思っているんですよ。
  88. 上林英男

    上林政府委員 第五条二項に書いてあります。
  89. 平林剛

    平林委員 失礼しました。書いてあるね。しかし虫めがねで見ないとわからないほど小さい字で書いてあるね。  そこでお尋ねしますけれども、こういう約款ができたときは、約款の適否については、大蔵省としてはどういうふうにして精査するのですか。
  90. 上林英男

    上林政府委員 約款、料率等につきましては、すべて大蔵大臣の認可が必要でございまして、そういうものについて申請がありましたときは、いろいろな観点からこれを念査いたすわけでございます。
  91. 平林剛

    平林委員 設立認可のときには約款を認める、いまの保険業法を見ると、その後に変わる場合にはどう取り扱うかということは何に基づいておやりになっているのですか。
  92. 上林英男

    上林政府委員 保険業法の第十条に「保険会社が第一条第二項又は第五条第二項二掲グル書類」この書類と申しますのは、基礎書類でございまして、その基礎書類の中にはいろいろあるわけでございますが、「書類二定メタル事項ノ変更ヲ為スニハ主務大臣ノ認可ヲ受クルコトヲ要ス」こう書いてございます。したがいまして、約款、料率その他につきまして変更するときには大蔵大臣の認可が要るということでございます。
  93. 平林剛

    平林委員 そこで、地震による火災のときは、いままではだめであった。今度は、制限はあるけれども、それに対して損害の責めを負う、こういうことになるわけですが、今度は逆に——私はちょっと一つの例をあげてお尋ねしますが、そのときは保険金は支払ってもらえる、こんなときには支払わないということをひとつ答えてもらいたい。  一つは、地震が直接的原因でなく発生した火災に対しての取り扱いは、これは従来と同じように保険金は支払うのですね。
  94. 上林英男

    上林政府委員 そのとおりであります。直接間接地震とは全く無関係の通常の火災によります事故につきましては、その契約の全額を支払うということでございます。
  95. 平林剛

    平林委員 二、三例を言いますからそういうふうな要領で答えてもらいたい。  地震火災か生じても——地震でも震度五もあれば、六もあれは、四もあれば、三もありますね。たとえば震度五くらいだといたしますか、しかし、みんな火の用心をよくしているから火事が出なかった。ところが、地震によって倒壊して、ちょっと不注意で一軒火が出た。そのためにずっとほかのところまで延焼していった。一軒の人の不注意のために延焼をしていった。こういう場合には、延焼して焼失した場合の取り扱いはどうなるのですか。
  96. 上林英男

    上林政府委員 その問題は非常にいろいろなほかの要件がからみますので一がいに申し上げられないわけでありますが、要するに、その火災というものが地震と相当の因果関係があって起こったかどうか、こういう問題に帰着するわけでございます。したがいまして、過去におきましてもいろいろ争いもございましたし、また、場合によりましては、先生御承知のような判例が出ているような事態もございますので、こういうような扱いにつきましては、ともかく、こういう地震保険もできてきたわけでございますから、今後もいろいろ研究してまいります。そういう地震が起こりまして相当大きい被害が起こりましたときには、これの災害の復旧のためにいろいろ円滑な処理方法を考えていかなければならないというふうにも思っております。なお、今後十分そういう点の研究をいたしたいと思います。
  97. 平林剛

    平林委員 大臣も入られまして、次の問題についての質問が準備されていますから、私この辺で終わりますが、たとえば、こういうこともあるわけです。地震は、この法律によると七十二時間を一回とする。地震が終わってしまって、それでそのままの状態が戻ってきた。ところが、そのとき、実は電線が切れておって気がつかなかった。何日か後に漏電で火事になった。これは地震によって電線が切れたのだけれども、あとで気がつかなかった。何日かたって火事になったという例、こういうときは一体どうするのか。つまり私の心配は、地震保険が実施されたために、普通の火災として取り扱ってもらえるものまでだめになっちゃうというようなことになれば、これまたあまりいい法律でないということになるわけですね。こういうときはどうするか。  それから、一回の地震が終わった。しかし停電になってしまった。電力会社に申し入れたけれどもなかなか来てくれない。しょうがないからろうそくを立てた。そのろうそくが今度はほかの理由で倒れて火事になった。こういう場合は地震だから、制限した額しか払わないということになるのか、それとも、地震が終わったあとの不始末による火災であるから、普通の火災とみなして全額支払うのか、こういう問題もある。  長野県の松代の場合にかりに例をとると、毎日地震がある。人間に感ずると感じないとを問わず、何千回という地震があるわけですね。それは震度が一の場合もあるし、二の場合もあるし、感じないときもあるし、こういうぐあいに地震があります。それでは火事にならなかったけれども、たまたま他の理由で不始末があって、通常の地震がないときと同じような状態の不始末で火事になった。ところが、人体には感じないけれども、あれは地震による出火であるから支払わない、こういうことになると問題が起きてくるわけですね。これは一体どう取り扱うか。  あるいは、地震があったが、その地震は大した震度ではなかった。火事にならないで済む通常のものであった。あわて者が家を飛び出して、そのときの失敗で火事になった。これは、地震であわてちゃいけないということはないと思うのでありますけれども、中には、落ちついて家の中で天井をながめている人もあれば、飛び出していって近所のぐあいを見てくるというような人もあるわけですね。そのために結局火事が起こった。これは一体どうなるのか。  私は、この地震保険が実施されたがために、通常火災保険で受けるべき保険がもらえなくなるという事態がいろいろな形で想定されるということで、地震の情景をゆうべいろいろ考えてみたのです。何か、地震保険が実施されることによって、普通火災が適用にならないというようなことがあってはならない。そこで、こういう微妙な問題についてある程度あらかじめ想定をして、この場合はどうするというようなことをきめておいてやりませんと、地震保険をせっかくつくった、しかし、そのために多くの国民は実質的な損失を受けた。われわれが好意的にまとめようとしたものがそうではなかったということになってはならないので、私は、この法律案がまとまるまでにこうした事例についてある程度まとめて、そうして方向をきめておく必要があるのじゃないかと思うのです。きょう私があげた例をあなたは大体覚えているでしょうから、この次に、こういう点はこうだということを答えてもらいたい。これを明らかにして法律をつくってまいりたい、こう思っておるのでございまして、この回答は次回に留保いたしますが、どうかひとつせいぜい研究して、国民に有利な方向の結論を出して答えていただきたい、それをお願いいたしまして、私の質問を終わります。   〔金子(一)委員長代理退席、委員長着席〕      ————◇—————
  98. 三池信

    ○三池委員長 この際、あわせて、昭和四十年度における旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法等の規定による年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案及び昭和四十年度における公共企業体職員等共済組合法に規定する共済組合が支給する年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。山田耻目君。
  99. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 共済組合法の一部改正について、関連いたしまして、当面だいぶ社会問題化してまいりました三公社五現業の賃上げの紛争につきまして、問題点をしぼって少し御質問をしてみたいと思っております。  大体、いま三公社五現業の賃上げ要求が焦点になっておりまして、この焦点となっておるものの中に二つの性格があるように思います。  その一つは、物価が上がってきたので、この際勤労者の生活が十分ささえられていくような賃金、社会的な水準を守る賃金といいますか、いずれにしても、労働の再生産に必要な賃金がほしいという立場からの熾烈な欲求、いまひとつは、長い間手続の問題で窓口の争いが続いていたのでございますが、三公社五現業の経営当局と労働組合との間で公労法八条に示す団体交渉の対象事項、賃金などもそうでございますけれども、団体交渉を行なって、まとまったときには労働協約の締結をする、そういう憲法二十八条に定めておる団体交渉権の正当な行使というものを求めてきた労働組合に対して、経営当局のほうは、予算上、資金上を越えて、当該予算のきめられておる額を越えて支出を行なう意思を明らかにするということは、当事者能力の上からできないんだということで、法律では団体交渉の対象事項に賃金問題はきめられていながらも、実際には組合側は何千円かの金額を要求する、経営当局のほうは能力がないという立場でゼロの回答をする、こういう言い方で窓口で非常に陰惨な争いが続けられてまいっております。今回の賃上げ要求の中にもこの二つの問題点がからんで出ております。したがいまして、政府のほうで今日まで幾たびかの会合をお持ちになりまして、有額回答をさせるという指導をとっておられるようでございますけれども、この有額回答というものは、金額の多寡の問題と、経営当局とが組合に対して回答する能力を与える、この二つがからまってその中にあるというふうに私たちは理解をしておるわけであります。きょうはそういう二つの問題に対して焦点を当てながら質問をしていきたいと考えておるわけであります。  まず最初に、先般、武藤政府委員にお願いしておきました資金上、予算上を越えて労働協約が締結をされ得るということが公労法上は許されておるのでございますが、そうした場合、大蔵省としてどういう態度を経営当局にお示しになるのか。過去一、二の例を見ますと、ずいぶんきついおしかりをなさっておるようでございますが、当然、法の示すとおりに、資金上、予算上を越えて労働協約を締結したならば、公労法十六条に従って所要の手続をとるということの正当性をひとつ大臣に伺っておいてほしいといって、先般申し上げておいたのでございますけれども、その点について、大臣のほうからまず御答弁を伺っておきたいと思います。
  100. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 三公社五現業の給与は、お話のように、公労法によりまして両当事者間の団体協約できまる、こういうことになるわけでありまして、そういうことで、法的には当事者能力を三公社五現業は持っておる、そういう解釈をいたしております。ただ、この三公社五現業というものは、実際問題といたしますと、親方日の丸といいますか、政府がほとんどその財政に関与をしている、こういうようなものであり、したがいまして、団体協約をするにあたりましては、政府と緊密な関係があるということを無視してやるということはないだろうというふうに思うわけであります。法的な立場と実際上の問題とが違っておる面が出てくる。そこが山田さんあたりから見まして割り切れぬ、こういうことかと思いますが、これは三公社五現業の性格から見ましてやむを得ざるところである、かように考えております。
  101. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 大臣の御答弁は、予算上、資金上を越えて労働協約を締結する当事者の能力は持っておる、これはもう法律上間違いないところである、しかしながら、現実の問題として、政府と密接な関係があるので、政府と相談をしながら現実の問題については処理をしていきたい、そこに若干の格差がある、観念上の差もある、こういうおっしゃり方だと私は思うのですけれども、実際の問題といたしましては、前段の法律の正当な解釈が必ずしも今日まで有効に生かされていたという実績がないわけであります。だから、たとえば、今年の一つの例のように、物価が七・五ないし七・六%上がって、昨年の賃金引き上げの上昇分は税金と物価に食われてしまっておる。そのことは三公社五現業の企業当局は全部承知をしておる。労働者の生活は苦しいということも承知をしておる。そのことは、今月の十四日の社会労働委員会における郵政当局なり電電当局の回答の中にも明らかになっております。承知をしておる。承知をしておるけれどもゼロ回答という常識では理解できない回答をして団体交渉を決裂さしておる。それがあなたのおっしゃっているように、当事者能力というもので予算上、資金上を越えて労働協約を締結できるという正当な法律の解釈の道を閉ざしておる。ここに、団体交渉で有額回答しなさい、できない、しなさい、できないということで、俗に言われておる実力行使という争議が展開されてくる、こういう事実がある。私はことしの例だけ一つ申しげましたけれども、過去にたくさんあったわけでございます。この点がなぜ法律の示すとおりに行なわれなかったのかというところに、あなたの後段の、実際面においてというところにひっかかりが出てきたわけです。それが歯どめの役割りを果たし、ブレーキの役割りを果たしておる。この実際面にはということで、もちろん公労協の諸君も考えたことでございましょう。だから、昭和三十五年から、ここには橋本官房長官もお見えになっておりますけれども、三公社五現業は経営当局と団体交渉いたしながらも、片一方では官房長官のほうに賃金の要求をして、そして官房長官のほうを政府の窓口として、その両翼に給与担当大臣あるいは労働大臣とともに三公社五現業と折衝に当たるようになってきたというのは、いまの現実の問題をそれぞれが十分承知をし始めたからそうなっておるのだと思うのです。したがいまして、今日の焦点は、大蔵大臣を含めた政府当局の側が、現実の問題としてどういうふうに常識の回答を示されるのか、現実の回答が、三公社五現業、経営当局の相談の中で生まれてくるのか、ここに私は一つのかぎが隠されておるというふうに考えられてなりません。これは、いま大蔵大臣のことばをそのまま受けて中身を分析をしてまいりますと、その時点に到達をするわけであります。ですから、その時点について、今日、一体大蔵大臣はどのように具体的に解決の道を求めようとなさっておるのか、御答弁をいただきたいと思います。
  102. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私は、この問題が、労働協約で結ばれてきめられておるということで、労使双方の話し合いできめられるのが一番いい、そのとおりいくのがよろしい、そういうふうに念願をしておるわけです。ところが、いま経済政策の非常にむずかしい段階である。ことに、いま物価問題というきわめて困難な問題があるわけです。そういうときに七千円、八千円一挙に賃金を引き上げようということにいまなってきますと、これはたいへんなことになるだろう。そういう要求にこだわっておるということが、またこの問題の解決というものを妨げている。もう少し労使とも現実の立場に立って話し合いをし、話し合いの結果、これが調停も待たず、あるいは、ましてや職権裁定、仲裁裁定というようなことにもならずに解決されるということを念願しているのですが、実際はそうじゃない。いま七千円、八千円上げたら一体どうなります。私は、山田さんといえども、これは日本の今日の経済に相当大きな影響を与える問題であるということをお感じになっておるところじゃないか、そういうふうに思うのでありますが、しかし、遺憾ながらそういうふうになっておらないものですから今日まで双方にらみ合いの形できておる、こういうわけでございます。しかし、このにらみ合いの形で放置しておくわけにはいかない、もう調停の期限も切れてくる、何らかの措置をして切り開きのための方策を考えるべきときにきておる、こういうふうに考えておるわけであります。
  103. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 大蔵大臣、どうもかみ合いがうまくいかぬのですけど、やはり八千五百円という、これをいまあなたは非常におっしゃっている。あるいは、七千円とか八千円とかいう金額が、いまの日本の経済の現状では実現できると思うか、非常識な金額の要求だ、そこらあたりをもうちょっと考え直してくれぬか、そして現実の話に乗っかけてくれぬか、こういう意味だと私は善意にとるのですよ。どこへ乗っかけるのですか、その乗っかけるのは団体交渉なんですよ。三公社五現業と経営当局とやりますと、さっき私が言ったように、ゼロ回答だ、常識もくそもないゼロだ。こういうゼロの話が出ておるときに、統一要求八千五百円は、ではこの際、大蔵大臣の切なる意向もあるので、これはひとつ五千円にまけましょうという話はどこでするか。それをするのが団体交渉というものなんです。この団体交渉の門戸を閉ざしておいて、あなたのおっしゃっているようなきわめて常識的な話し合いのルールというものが育て上がっていくと思っておられるところに、私は今日のほんとう意味の労政がないと思う。それが、今日公労協をこのように、まあ、一般論でいえば、おこらすようにしてしまった、あるいは、あなた方のことばをかりると、たいへんな曲がりようだとおっしゃるけれども、そういうふうにしてしまったのだ。だから問題は、将来にわたってそこをひとつ解決しなくちゃいかぬのですよ。公労法八条にいう団体交渉、憲法二十八条でいう団結権と団体交渉権、これは保障されているのだから、その団体交渉権というものがまさに踏みにじられておるという現状をどう解決してやるかということが、この春闘の問題の一つ問題点でもあるのです。だから、当局と組合とがひざを交えて、今日の物価上昇の現状あるいはいろいろな経営能力状態等も話し合って、適当な金額が見つけ出されていくような団体交渉をやって、そうしてそこで、人間同士ですからまとまりますよ。まとまったときに、それが、あなた方が平素非常にきびしく監督なさっておる予算総則、給与準則の額を上回った場合、資金上、予算上不可能な金額で妥結した場合は、これは当然不可能なのですよ、当該年度の予算総額を越えて結ぶわけですから。資金上、予算上当然不可能でありますから、そのときには公労法十六条の手続に従って国会の承認を経る。だから、労働協約それ自身は印判を押しますと民法上の効力はあるでありましょう。あるいは、両当事者は協約に調印しますと、それによって拘束されるでしょうが、この十六条の法文の中には次のように書いてあるのです。予算上、資金上不可能なものを調印をしたときには、国会の承認を経なければ効力が発生しない、その手続をとることによって、予算上、資金上を越えて協約の締結をした経営当局の立場が保護されておるのです。その手続を経るような大蔵当局の指導がなぜ今日までなされなかったのか、ここに私は前段の団体交渉を未成熟に終わらせていった過去の大蔵当局の責任があるような気がしてなりません。この点についてどうお考えになっておるか、まず一点述べておいてほしいと思います。
  104. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 先ほど私は、すんなりと話し合いができるということが好ましいのであるというふうに申し上げたのですが、実際問題とすると、なかなかそういう雰囲気、環境というものが今日までないのですね。非常に残念なことです。そこで、制度的にも何か考える必要がある、こういうことから、今度ILOの勧告に基づきまして公務員制度審議会というものもでき、そういう場においてこの問題の根本的なレールをひとつ敷いてみよう、こういう考え方になっておるわけであります。そういう経過期間においてことしの問題は出てきておるわけです。ことしの問題はまたいままでとちょうど同じ形をとってきて、まあ、多額の要求、これに対してゼロ回答というものが今日まで続けられてきておるわけです。しかし、今日、こういう過渡期といえどもこの問題を解決しないわけにはいかない、そういうことからわれわれも寄り寄り相談をしておるのですが、しかし私は、あのILO精神というものがどうしても制度化されることがよろしいというふうに考えております。しかしそれはまだできてない。できてないが、一歩一歩ああいう方向に近づけるような努力を経過期間中といえどもしなければならぬというふうに考えておるわけであります。調停になってしまって、しかも、その期限が切迫しているという段階におきまして、何らかそういう考え方に基づきまして処置をすべきときに来ている、こういうふうに考えておるわけであります。
  105. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 これは大臣、少しお考え違いなさっておるのかとも思いますけれども、いま公務員制度審議会で議論されておりますのは、この部分については、日本の国内法ですでに整備されておりますから、それは制度審議会で議論にならぬと私は思うのです。制度審議会で議論するのは、仲裁という強制裁定が完全に政府を拘束し得るという立場が今度明らかに出てくるものでありまして、いまの団体交渉の妥結というのが、その他の力によって制限されてはいけない、これは団交権の否認になりますからね。両当事者の持っておる能力を否認することになりますから。いまの法律はその能力を否認しておりませんよ。予算上、資金上を越えて労働協約を締結してよろしい。ただし、その場合でも、あなたのほうの御関係の資金上、予算上を越えておるときには、予算審議権を持っておる国会の承認を得るのですよと書いてあるのです。この手続で私は当面いいと思うのです。それでいい。だから、たとえば、郵政と全逓、電通と電電公社、国労と国鉄当局が、四千円といい、五千円といい、賃金協定を締結してよろしい。大蔵大臣もその立場は肯定なさるでしょう。協定してよろしい、協定した場合に、国会できまりました、たとえば、国鉄の予算の中の給与準則、予算総額の中から見ると、それははみ出す金額ですから、予算がございません。予算がないから、予算上、資金上を越えたということになるわけです。その場合には、その労働協約を国会に付議をして、国会で承認を得たときにその労働協約は効力を生むのだと書いてあるのですよ。これが、私が言っておる予算上、資金上不可能な当事者能力を持っている経営者側を保護している十六条の規定だ、そして、労使紛争を解決していく規定である。その規定は、今日、厳然として昭和二十三年公労法が制定されて以来残っておる。厳然としてあるのです。第三回、第四回の国会で公労法は通過をしていったのですけれども、そのときの労働大臣は増田さんです。いま自民党の国会議員の中曾根さんがそのことを大臣に聞いておるんですよ。当事者能力がなくて協約を締結したときに、一体、政府はどういう態度をとる気かと言ったら、この十六条の規定というものは、団体交渉の能力を否定をしておりませんから、協約は協定できます、そうして、それは国会で承認を得たら効力を発生するんですよと、親切に述べておる。いま私はその議事録を読もうとは思いませんけれども、そういう法律があるのですから、それが忠実に実施されておったら、今日のような労使対決を窓口でやるという事態は解消されておったと私は見ておるのです。それがゼロ回答で終始をし、大蔵省のほうが、法律はそうだけれども、実際においてそれはできぬことだといって、有額回答を経営者がしょうとすれば、それを押えつける。こういう事態が発生をしてきて、敵は本能寺であり、敵は公社当局じゃなくて、政府当局であるというかっこうに公労協のほこ先が向いてきたことも、ある一時期にはあったと思いますが、これまた、私は、逃げることのできない、追い込まれた人々のやむを得ない立場だったと思うのです。だから、ここまでことしの春闘の中で当事者能力論争が激しくなってきたのですから、現行の団体交渉の対象事項の八条と、資金上、予算上を越えていった場合処理する十六条というものは、これからその手続に従って処理すべきことが正しいし、そのことについて、大蔵当局は意見を聞かれれば相談にのるけれども、直接当局として干渉していくという立場をとらないという立場を私はここでは明らかにされておく必要があろうと思う。これは純粋な法律論であります。この間の十四日の社会労働委員会でも、労働省なり、当時出席をしておりました郵政電電当局はそういう立場でこれから進めたいという立場を明らかにされました。そうして、出席しなかった残りの二公社四現業に対しても労働省のほうからそういう文書を出そうということになってきたのでありますから、大蔵省のほうでもそういうふうにお考えをいただいて、御指導をいただくということについて、大臣の見解を伺いたい。
  106. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 予算上、資金上という制約はあるわけですから、予算上、資金上の制約内でありましても、つまり、予算上、資金上ゆとりがあるのだという場合においても、適正なる賃金はどういうふうに考えるかということは、またおのずからこれは別の問題であろうと思うのです。私は、おそらく三公社五現業は自分のところの賃金体系をどうするか、それが事業の執行にどういう影響を及ぼすであろうかというようなことはつぶさに検討いたしておる、こういうふうに思うわけであります。それから同時に、予算上、資金上という問題もある。そういう面から考えて、自分たちはどういう態度をとるべきか、こういう配慮もあると思うのです。私は、あなたがおっしゃるとおり、これはILOの精神からいいましても、また公労法の精神からいいましても、当事者能力というものはある。あるが、政府まるがかえというような性格のこれら政府機関、三公社五現業といたしまして独自の判断をしていかなければならぬというふうに思うのです。国家全体の経済のことも考えなければならぬ、あるいは自分の企業のあり方、しかもそれは、将来にわたってのあり方、こういうことも考えなければならぬ、同時に、国家の一環であるという立場、こういうものも考えなければならぬ、そういう事実上の制約はあるわけでありますが、しかし、当事者能力、どこまでも自主的にそれらの要素も加えまして考えていくべき筋合いの問題である。そういう点につきましては、私は一点曇りもない考え方を持っておるわけであります。
  107. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 ですから、私も全然現実がわからないことはないのです。しかし、その現実というものが、あるべき労使紛争の原則をゆがめてしまってはいけない、つまり、原則は原則で正しいのですから、それを生かすように原則というものは組み合わせていかなければならぬということで、労使紛争の解決の原則である団交のルール、団交上持っておる両当事者能力というものを私はゆがめられずに育て上げられていかなければならぬ、こういう立場で申し上げておったのでありますが、大臣もその趣旨は御了解であるようですから、次に進めてまいります。  そこで、現実の問題が前面に出てきているのでありますが、具体的な今日の春闘をめぐる政府の態度ということについては——官房長官お見えになりますか。
  108. 三池信

    ○三池委員長 もうすぐ来ます。
  109. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 官房長官がお見えになってからお伺いしたいと思うのでありますが、実は、諸外国ではこういうふうな当事者能力の関係と団交権の関係、それらがかなり大蔵省当局の予算編成上の一つの位置というものとからみ合わされまして、賃金解決などの場合には、経営当局を団体交渉の相手にすることよりか、予算編成を手がけていく大蔵省当局と話し合いをすることのほうが、問題をゆがめずに解決することになるのじゃないかということで、比較的日本とよく似ておりますイギリスあたりではホイットレー委員会というのがありまして、ホイットレー方式というもので作業を続けておりますが、その場合の窓口は、いまのような公共企業体、公務員、こういう人々の賃上げの窓口は大蔵大臣になっております。さっき私ちょっと触れましたように、日本の場合は経営当局が、申し上げたような態度ですから、窓口を官房長官に求めたわけであります。これは昭和三十五年からです。しかし、官房長官の立場も、ある意味では政府代表する窓口として私は決して軽くは思っておりませんけれども、直接の予算編成上の立場にある大蔵大臣と折衝することのほうが、具体的で非常によろしい、解決するのにもむだがなくてよろしいという気持ちがいたしておるのでございますけれども、これが公務員制度審議会一つ問題点になるかどうか私わかりませんが、いままで付託された案件からはならないと思っております。しかし、必要ならばそういうものも議題にすることはいいわけですから、なるかもしれませんが、大蔵大臣として、年々歳々こういう問題にぶつかるのでありますけれども、この際、日本の特に公営企業の労使関係というものを解決をしていくのに、大蔵大臣の立場というものをそこに結びつけてこれから措置していくことが望ましいというふうにお感じになるかならないか、そこらあたりをひとつお考えをいただきたいと思うのです。
  110. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 この問題は、いまの日本の行政機構のあり方からいいますと、これは大蔵省が直接矢面に立つ問題じゃないと思います。これはよほど根本的な改正でもすれば格別ですが、イギリスの場合は、これは御承知のように、イギリスの大蔵大臣というのは実に強い権限を持っており、財務統制力、これは絶対的な統制力を持っておるわけです。いま問題になっているのは、これは労働協約を中心にした国全体の人事管理のあり方というような問題でありまして、これは労働省を中心にし、また、内閣の人事的な役割り、そういうものが中心の問題でございます。そういうところへ持っていって、大蔵省は資金上、予算上どういう判断をとるかという参考意見を求められるというような立場に立っておるわけです。国全体の仕組みがそういうふうになっておる今日といたしまして、大蔵省がこの問題の処理の第一線に立つというわけにはこれはいかない。そうするためには、よほど根本的に内閣機構全体の改正をしなければならぬというふうに考えております。
  111. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 たいへん御謙遜をなさっているわけでありますが、私は、やはりこの解決を円満にしようとすれば、いまの日本の各省の権限機構の中であっても、大蔵省が前面に出られて、そうして三公社五現業あたりの扱いについては窓口として御折衝なさるということが一番適切だと思っておるわけです。あなたも、大蔵省はそれほどイギリスと比べて強くないとおっしゃっていますけれども、私は若干ヒステリックぎみの強さがあるような気がしてならぬのです。昭和三十一年に例の賃金紛争の調停が出たわけですよ。私は正確に金額を覚えていませんけれども、たしか八百四、五十円じゃなかったかと思うのです。ところが、その当時三公社五現業のほうは、もうその調停で妥結をしようとする空気と、断固だめだという空気といろいろありました。ありましたけれども、国鉄、専売、電電は一応それを受諾をした。その調停を受諾をしたということは、労使双方が労働協約を結んで、調印をして初めて効力が生まれるのです。これは仲裁と違うのですから。そうしていまの国鉄、電電、専売は実施をした。ほかのところは実施をしなかったのでございます。ところが、翌年の三十二年の仲裁裁定が出まして、千二百円の仲裁裁定が出て、そうしてその仲裁裁定の中で調停部分を差し引く、差し引かぬという議論があったわけです。そこで、調停を受諾をして、実施をした人々に対しては、三年間にわたっておおむね半年分の所要額約六百円程度のものを、もっと下のところもありますけれども、三年間にわたって差し引いたという事件があるのです。これは大蔵省からたいへんなおしかりを受けて公社はやったという言い方の中で労使の紛争が出たのでありますけれども、これはやみ給与事件と言っております。大蔵省が認めない給与を実施したといって、やみ給与事件と言っております。これは私は、いまそのことを深くここで追及するという気持ちはございませんが、大蔵省の持っておる威令というものがかなり強い。それ以後、からきし団体交渉ではゼロ回答になっていっております。大蔵省の御許可をいただかなければ、一文たりとも回答できないというほど、団体交渉能力を失ってしまった。だから、私はイギリスほどのあれはないかもしらぬけれども、かなりのものがあると思いますよ、大蔵省のおやりになるやり方に対して。だから私は、やはりこの際すべての問題が法の示すところに従って正常なかっこうで発展をしていくためには、大蔵省のそういう点に対して与えておる印象というものを払拭していただきながら、一つは、大蔵大臣のほうで窓口になってもらって、もっと平たい気持ちで、国の経営する事業に携わっておる経営者、労働組合の労使の間柄というものが健全に伸びていくように配慮していただかなくちゃ困るという気持ちがするわけでございますけれども、最初申し上げましたように、団体交渉の能力は双方が持っておる。この点はあなたもお認めになっておる。しかも、そこで結ばれていく労働協約というものは、資金上、予算上越えておってもよろしい、これもお認めになっておる。ただ、それを、その労働協約というものは、国会の承認を経なければならないのだ、効力を生まないのだ、こういう点も法律どうりお認めになったということでございますので、やはりこの運用というものが正しく軌道に乗っていきますために、いま申し上げたような大蔵省の態度というものがそれに沿って、その面が成り立っていくように、ひとつ御協力を将来ともお願いしておきたいという気持ちで特に話を広げて申し上げたわけでございます。その点、最後にひとつ大蔵大臣の立場を述べていただきたいと思います。
  112. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 山田さんのお話精神については、私もそう思います。思いますが、自主的な意味において三公社五現業が行動する、その行動には、先ほど申し上げました国家的企業体であるという意味における制約があるのだということは、これは忘れてはならぬことだと思います。  それから、窓口としては、先ほども申し上げましたように、——いま窓口の官房長官かお見えになりましたが、これは、大蔵省はどこまでも今日の制度下においては窓口ではない。しかし、できる限りの御協力はしなければならぬ、かように考えておる次第であります。
  113. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 では、窓口のほうは長官のほうにお伺いすることにしまして、ひとつ大臣の前段のほうで、いわゆる幾つかの公営企業、国営企業として持っておる社会的な制約、予算的な制約もあることなんで、その面については、私も全然かぶりを横に振って聞かないという態度ではないのです。ただ、こういうふうに、この三公社五現業の事業法の中に公共企業体の職員の賃金はあるわけです。それは企業によって若干違いますけれども、おしなべていえば、公務員を下回ってはならない、民間賃金の動向を見てきめなくてはならない、いま一つはその他の事情、その他の事情の中には国営企業という事情もあろうし、そうして、企業の持っておる今日の収益採算というものもあるでしょう。あるでしょうが、おしなべて賃金論として言えますものは、公務員並びに民間給与を下回ってはならない。やはりこういうふうな思想というものはあるわけなんですよ。ですから、当然三公社五現業の賃金決定というものは、両当事者が団体交渉能力を持っておって行なう賃金決定の場合には、いまのような常識——民間給与の動向、国家公務員の賃金の動向、こういうものを基礎にして、両当事者が能力を発揮して労働協約を締結するということは、常識中の常識であるというように、これは大蔵大臣もおっしゃっておる、前段の意味はそのことなんだというふうに私は理解してよろしゅうございますか。
  114. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私もそのとおり考えております。
  115. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 それでは、長官にお伺いするわけでございますが、これは昨日の新聞の一面に大きく出ておるのですけれども、公労協のほうがだいぶ問題がぶち当ったために、みずからの行動力にたよらなくちゃならぬというふうな段階にまでなってきつつある現状を踏まえて、何とかして調停の段階解決をしてやりたい、あるいは解決するように三公社五現業の指導に乗り出したいという意味の打ち合わせを昨日夕刻おやりになったというふうに報道は伝えておりますが、それは当然いままで大蔵大臣とのやりとりをお聞きになっても御理解いただけると思いますけれども、ただ、何となく調停段階解決がされるように、不測の事態を回避できるようにということでないと私は思います。具体的なものを用意をして、これで事態を円満に解決をしたいということの御成案をお持ちの上で私は御相談になったものだと思いますけれども、国会も事態の成り行きを非常に心配をしておりますし、しかも、民間賃金の動向というのは、一昨日の鉄鋼の回答を一つの頂点といたしまして、あと私鉄が残っておりますけれども、大体出そろったという感じがいたします。したがいまして、今日まで政府並びに官房長官などのほうで時に用いられたことばの中に、民間賃金の動向があるということがあったやに見受けますけれども、大体条件が並べられてくるようになった。当然具体的にものをおまとめになっておるものだというふうに考えるわけでございますので、昨日の会議の模様なり、そこらあたりについて、ひとつお答えをいただきたいというふうに考えております。
  116. 橋本登美三郎

    ○橋本政府委員 先ほど大蔵大臣から、春闘の窓口は官房長官のようにおっしゃったが、職責上は、春闘の窓口は官房長官でもありません。これは所管大臣がその窓口であります。ただ、官房長官がこういう問題で列席をするといいますか、司会をするというのは、いわゆる内閣でいう調整の役目で出席をいたし、また調整の役目をとっておるわけであります。  これは、先ほど来から大蔵大臣と山田さんの質疑応答を聞いておりましてもわかりますように、当事者能力という問題がやかましく言われておる。事実、現在の法律からいうと、いわゆる形式論的には当事者能力がありながら、すぐその後段で、政府はこれに拘束されない、こう規定してある。またそのあとで、国会の承認がなければ一文も支出ができない。これは現行法の規定であります。私はここで、官房長官は法制局長官でありませんから法律上の説明をしようと思っておりませんけれども、官房長官がこれらの会合に出席をしておるゆえんのものは、やはりいまおっしゃるように、春闘問題は、ある意味においては政治問題である。これは広く交通機関なり通信機関が影響を受けることでありまして、政治問題でありますからして、そこで官房長官も列席をしておるような次第でありますが、この当事者能力の問題は、これはもうかねてから国会でいろいろ論議がされております。その中で、労働大臣あるいは私から答弁いたしておりますものは、いわゆる現実的にはこの当事者能力というものは制限をされておる、いいか悪いかは別として、法律上現行法から見ると、当事者能力というものは制限をされておる、いわゆる不完全なる当事者能力である、こういう答弁をいたしております。それが法律上の、これは十六条でしたか何ですかに規定されております。ただ、法律論的に言えばそうでありますけれども、実際問題として調停段階があり、その調停ととのわざるときにはいわゆる仲裁に持ち込まれる、こういう段階になっておりますが、実際問題として、できれば調停段階でこれが片をつけることが一番よろしいわけでありますけれども、しかし、現行の法律からいいますと、調停段階でいわゆる資金上これが上回る場合は、実際上当事者間だけではこれが解決できないような規定にもなっておる、そこの問題でいろいろ苦労があります。ただし、その中でも三公社の場合においては、五現業の場合にもそれぞれの規定がありますけれども、予算総則の中でいわゆる弾力条項というものがあります。しかし、この弾力条項を適用するにしても、主務大臣が大蔵大臣と協議をし、主務大臣がこれを決定するという条項になっておりますから、大蔵大臣がこれらに直接的にもあるいは間接的にも関係のあることはもちろんであります。そういう意味で、法理論的にいえばいろいろの障害がありますけれども、過去何年か続いてまいった状況から考えて、かつまた、この三公社五現業の労使関係というものができるだけスムーズに進むためには、法律を拡張解釈するわけではありませんけれども、できるだけお互いが話し合いのできる状態に持っていくことが必要である。しかし、根本的にはなかなかいまの現行法のもとではできないということで、当事者能力についても今回審議会の設置を見ました公務員制度審議会の席上で当事者能力の問題をも今後検討を加えていく、こういうことになっております。  昨日の関係閣僚会議の模様を具体的に申し上げるほどのこともありませんけれども、そこで論議されましたのは、この調停段階でどこまで有額回答ができるかという数字までは入っておりません。ただ、方針として、従来労働大臣なりあるいは官房長官が非公式に組合の当事者に対して有額回答を行なうという方針をとってまいりましたから、そこで、きのうは関係閣僚を集めまして、従来官房長官なり労働大臣は有額回答をするという方針をとっておるから、それをひとつ確認をしてもらいたいということが一つです。了承をしてもらいたい。これは有額回答をするといいましても、何も労働大臣なり官房長官が有額回答をするんじゃなくて、もちろん公社が有額回答をすることになるわけであります。そういう意味で、その間においていろいろこまかい技術的な問題としては、当然これは政府——というのは、大蔵大臣なりあるいは関係大臣というものがこれに関与せざるを得ないわけです。いま申したような予算総則の面から考えても、主務大臣が大蔵大臣と協議をするという事項がなければ、たとえば、独自にものを言うにしてもこれはできないわけでありまして、一応これは有額回答をするというたてまえで、その金額の大小を問わず、当然これは協議をしなければできませんので、そこで、政府の方針としては、その場合においては大蔵大臣が十分の協議をしてもらいたい、こういう意味での会議で、いわゆるこの金額云々という問題にはきのうは触れておらない。ただ、政府の当事者としては、この種の春闘というものは、一般の国民に迷惑をかけるようなことが出ることは非常に好ましくない、これが一つです。  第二には、御承知のように、この公企体、三公社五現業はストライキを禁止せられております。これを犯せば、これは当然この法律に触れる、さような事態が起きることは好ましくない。したがって、できるだけ誠意のある話し合い、団交を進めることによって、法律で禁止されておるところの争議に入らないことを希望する、かつまた、その結果国民に迷惑のかかるようなことの事態が起きないことを希望するわけであります。そういう意味で、当事者能力は、もちろんこれは完全なものではないけれども、最善を尽くして関係当局は十分に話し合いを進めるように、こういう趣旨がきのうの会議目的であります。いま有額回答をさせるという方針になったとしても、その金額が幾らであるかというところまでわれわれは関与しておらない。ある意味で内政干渉になりますからして、当事者能力にできるだけこれはまかせる、こういう方針でおるわけであります。
  117. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 おっしゃっておられることをそのままお受け取りしても、序論だけお書きになったということだけにしか私には聞こえないわけです。やはり序論をお書きになるときには、各論までお考えになっての序論でしょうから。有額回答の方針はきめた、しかし、金額まではまだとてもその段階になっていない、それは三公社五現業の意向もあることだろうからという気持ちは私はわかるわけですよ。ただ、今日まで大蔵大臣ともやりとりをしてきた中にもあるわけですし、ほかの委員会でもいろいろ話をしてきた経緯、議事録もあるわけでございますが、一応紛争を解決するために一つの回答を出す、その回答の中身というものは、少なくとも国で経営する事業に働く人々の賃金ですから、常識的なものであろう。その常識的なものの献立とは一体何だろう。それは民間賃金の動向を見て、ということが賃金査定の基本に明記してあるわけですよ。したがって、当然、有額回答をする方針をおきめになったという今日的な条件というものは常識的な賃金である、民間の動向を下回らない、そういうことが一つの方針の前提にあるものだというふうに私は理解をいたしておりますけれども、申し上げましたように、民間の関係につきましては大体昨年より若干上回っておるという程度の形がいま数字的にあらわれております。そういう民間賃金の動向を念頭に置かれて有額回答の方針というものは出されたものだと私は理解をするのですけれども、今日鉄鋼の問題が出ましたけれども、三公社五現業の経営実態というものは、別に操業短縮に入っているわけじゃございませんし、依然として生産性は高まっておる一方でございます。そういうふうな企業実態というものも明らかでございますので、当然民間給与のとられるべき基準というものも私は大体常識的に理解できるような気がいたしますので、そこらあたりを踏まえて問題をお考えになっておるものだというふうに理解をしておってよろしいのかどうか。あくまでも、具体的な数字はまだ用意なさっていないというのがほんとうでございましょうが、方針をお出しになった前提というものは、そこらあたりに一つ関係を持って方針をおきめになったのかどうかという点をひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  118. 橋本登美三郎

    ○橋本政府委員 こういう席上で議論になりますと、やはり法律に基づいて答弁をしなければならぬ。それは結果的にはあまり好ましいとは私は思いません。私は、運輸大臣なり郵政大臣であればまた別の答えがあろうと思う。私は政治的立場からものを判断して処理していく立場にあるものですから。しかし、御質問があれば、結局私は法律的に答えざるを得ない。  いまおっしゃったことですが、これをもっても御理解願える。だから、これは結局法律論争になりますと、お互いにかたいことを言わざるを得ないのです。これは国鉄関係の例で申し上げますれば、国鉄の十六条にこういうふうに書いてあります。「予算の基礎となった給与準則を実施するため必要を生じた場合、第十三条の規定により給与を支出する場合、又は給与に関する公共企業体等労働委員会の裁定を企業経営に及ぼす影響等を考慮し」——したがって、公共企業体等労働委員会で裁定ができた場合でも、いわゆる企業経営に及ぼす影響等を考慮した上で実施することが適当である、こういうぐあいに、法律はかなりしぼってあるのです。ですから、こういう公式の場合でこう言うと、どうしても公式のお互いの議論になってしまって、いわゆる政治的発言がしにくい、こういうことにもなるのですが、いまおっしゃったことは、なるほど公共企業体の賃金をきめる場合に、民間給与及び公務員給与を下回らない、同時に民間給与の状態を勘案してこれをきめる、これらの条件が最低になることは、もちろんこれは調停段階でも言えることではあります。言えることではありますけれども、その調停段階でこれを出す場合は、現行法から言えば、当然補正というものを前提にしなければできません。せっかく国会でもって給与総額をきめておりますから、そこで、そういうものを出す場合においては、当然これは補正予算が通るならばと、こういう前提で話し合いをつけざるを得ないだろうと思うのです。ただし、公労委で裁定があった場合は、これは御承知のように別問題になる。だから、どちらかといえば、国家公務員の給与を下回らない、あるいは民間給与を勘案してということが、大きな一つの給与内容を決定する条件になるのは、やはり公労委に与えられた一つの条件だと見ればよろしいと思うのです。もちろん、当事者同士においてもそういうことを勘案して話し合いに入るわけですが、入ったところで、実際は自分自身がそういうことでもって、たとえ協定ができましても、先ほどの法律にありますように、団体協約を結ぶことができる、しかし、政府はこれに拘束されない、また国会の承認を経なければ支出はできない、こういう法律上の制限を受けているわけであります。しかしながら、さような現行法上のいろいろのたてまえがありますけれども、先ほど来申しましたようないわゆる公共企業体というものが国民社会に及ぼす影響等を考慮して、そこで政治的にどう取り扱っていくべきか、こういう問題が別にあると思います。その場合においても、これを実施するということになれば、この規定をわれわれはどうしてもかぶせざるを得ない。そこで公社の使用者側と労働組合側、いろいろ話し合いを続けていきながら、そうした大きな見通しの上に立ってやはり話を進めていくということに実際上はなる。したがって、完全な当事者能力を認めるためには、現行法ではどうしてもできないということは、これはかねてからの定説であります。これをどうすべきかということになれば、いま申したいわゆる国会の予算審議権の問題、及び行政上のいわゆる団体協約権との競合、こういう問題をも検討しなければ、いわゆる組合側もあるいは使用者側も当事者能力がこれで発揮できるという状態が現行法ではなかなかむずかしい、こういうことが言えると思うのであります。その意味ではありますけれども、政治を扱い、いわゆる組合側という国民の一員としての生活権の問題等を考慮して組合との交渉等を考えてほしい、かような気持ちは持っておるのでありますが、いまおっしゃったような立場においてどのくらいの回答が出るであろうかということまではいま申し上げる段階でもない、かよう御了承願いたいと思います。
  119. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 最後に、一つだけお伺いして終わりたいと思いますが、いま官房長官がおっしゃっていました労働協約の締結というものは、両当事者を拘束するが、政府は拘束しない、強制仲裁の裁定というものは、両当事者は拘束するけれども政府は拘束しない、こういうふうに並べられて申されておるわけですが、後段に、仲裁裁定の場合は若干違うんだがとおっしゃっておられるのですけれども、ILOの五十四次報告の中には、もちろん仲裁の問題については、これはスト権を奪った代償の制度として生まれておるのであるから、仲裁裁定の結論というのは、両当事者はもちろん、政府をも拘束するものである、だから、国会に上程された場合には、追加予算でやるのか、補正でやるのか、移流用でやるのか、その方法を国会は見つけ出していくのが、スト権を奪った代償制度の措置としては正しいのではないかというふうにILOの報告書には書き上げられておるわけです。それと、当事者能力というものから出てまいりました労働協約、この労働協約の結論というのは、公労法の取り扱いの上から見ますと、仲裁裁定の結論も労働協約の結論も、そのことが予算上、資金上を越えておる場合については同じように国会の承認を経ると書いてあるわけです。そこで、これは将来の問題でしょうけれども、いまの官房長官の答弁で私若干気に食わない点がございますから申し上げておくわけでございますけれども、いまだ例はございません。例はございませんけれども、労使双方でまじめに団体交渉を憲法二十八条の示すとおりによって行なった結果、一つの結論を見つけ、労働協約を締結いたした場合には、両方が調印をいたしたときに民法上の拘束力が発生する、ただ、その中身が実現されるのは、十六条の規定に従って国会の承認を経るんだと書いてあるんです。その道筋が正しく育て上げられていかないと、団体交渉の入り口から実力行使に発展をする——実力行使がいい悪いは別ですよ。解決の道がないから実力行使に発展をするんです。ですから、団体交渉で両当事者が妥結をした結論というのは、きわめて私は現実的だと思いますけれども、その現実的な結論というものが労働協約として調印をされたときには、十六条の定めに従って国会の承認を経る、その承認を経る手続というのは公労法第三十五条による。強制仲裁の手続規定も十六条なんですから、団体交渉の手続規定も十六条、強制仲裁の手続規定も十六条、国会の承認を経る同じような性格でこれを取り扱っていくというのが、ストライキ権を奪った三公社五現業に対する労働法上の適切な取り扱いでなくてはならないということが、今日では、労働法学者の中でも、ILOのいわれておる精神の中でも同じ解釈がなされておると私は理解しておるのです。ですから私は、これから政府の皆さんたちの熱心な御指導によって適切な有額回答がなされ、それによってまとめられていった調停の結論というものが、よしんば生まれ得るといたしましたならば、この調停自身は拘束力ございませんよ。この調停は、労働協約を締結をして、調印をして拘束力を持つのです。団体交渉の結論と同じことなんですよ、調停段階では。その調停に対して有額回答を皆さんがお示しになって、一つのものがまとまったときは、労働協約を締結して、労使双方が調印をいたします。このときの結論というものは、十六条の規定に従って国会に承認を求められるでしょう。そのときには、追加予算でやるのか、補正でやるのか、移流用でやるのか、その方法だけを見つけて解決をしてあげるんだという保証がない限り、私はやはり労使紛争というものは円満に解決できないと思うんですよ。これが労働法上の示しておる精神だと思いますから、当事者能力の問題あるいは拘束性の問題についても、そのようにひとつ見解をただしていただきまして、これから精力的に事態の円満な解決を導き出されるように御努力を心からお願いをして、私の質問を終わりたいと思います。
  120. 三池信

    ○三池委員長 堀昌雄君。
  121. 堀昌雄

    堀委員 いま、専門家の山田さんが今度の春闘の公労協の問題についてお話しになりました。私は出身が医者でありますから、全然専門家ではありません。そこで、常識の問題が、しかし政治では一番中心になると思いますから、その常識の問題でちょっとお聞きをしたい点があるのですが、公共企業体等労働関係法に書いてございますところの「この法律は、公共企業体及び国の経営する企業の職員の」云々と書いてあるんですね。そこで、官房長官は、企業というのは、これは一体どういうものとお考えになっておりましょうか、これをちょっと伺いたいのです。
  122. 橋本登美三郎

    ○橋本政府委員 企業という意味の御質問、よくわからないのですが、その方面はどうも暗いほうですから、適切な答弁は大蔵大臣のほうがそのほうの主管でありますからよいと思いますけれども、まあ、企業というのは、一貫していえば、労使お互い協力することによって、その企業体がいわゆるつまずかないで成長していく形がやはり企業だろうと思います。公共企業体の場合は、それが国民というか一般に奉仕する、民間企業の場合はプラスアルファ、利潤をもうけるということで、性質が違うと思いますが、ある意味では、地域社会に奉仕し、円満に遂行される運営状態をいうのだろうと思うのです。
  123. 堀昌雄

    堀委員 私は、いまの資本主義の世の中で、企業といいますと、やはりここでは何か利潤の生まれる形態のあるものだ、こういうふうに考えたほうがいいのじゃないかと思います。それは、なぜ三公社五現業というものが政府の機関から分離をされたのかという沿革を考えてみますと、これらは何らかの形で利益が生まれる。一般職の国家公務員の場合は、これは純粋にサービス業務でありますから、ここには利益は生まれないのですけれども、少なくとも、ここにあるところの企業体というものは、その業を行なうことによって何らかの利益が資本主義社会では生まれるものをそう言っておる、私はこういうふうに理解をするのが常識じゃないかという感じがいたしますが、その点では専門の大蔵大臣は、いまの私の申したような概念、どういうふうにお考えになりますか。
  124. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 企業には私企業もあるし、公企業もありますが、両者をひっくるめていいますれば、一定の経済活動をする、そうして、その収支をバランスしながら事業を遂行していく、こういう一つの団体だと思います。私企業のほうは、あなたがおっしゃったように、それに利潤的要素というものが加わっておる、こういうふうに考えます。
  125. 堀昌雄

    堀委員 私がいまこれを伺っておりますのは、三公社五現業というものが分離をされて、御承知のように、いまソ連でも、社会主義の国でも、このごろは企業の中に利潤概念の導入ということがいわれるようになっておる段階であるわけです。ですから、たとえ公的なものであっても、企業というものはある程度の利潤が生まれないようなら、これは企業という形ではあまりメリットがないのではないか、そこで三公社五現業というものができた、こういう理解をいたしますと、もちろん民間の企業は利潤の追求が主たる目的でありましょう。公的な企業は公的なサービスというものが中心であります。けれども、しかし、結果としては、やはり利益が多少出るというのが運営上のたてまえになる。赤字をしょっちゅう出すように企業を運営するのが企業の目的ではないだろうと私は思いますけれども、収支きちんとまかなうようにはなかなかいかないとすれば、少し利益が出る方向運営がされるということは、私はやはり企業の本質的な性格である、こういうふうにまず考えるわけです。  そこで、きょうは問題をちょっと郵政省にしぼって、これは官房長官も非常にお詳しいゲビートですからちょっと議論をしたいのですが、郵政省設置法の第三条を見ますと、ここであげられておる郵政省の業務には、郵便の業務と、それから簡易保険、郵便貯金、郵便年金、振替貯金ですか、そういうふうな業務等に分かれておる。その前段の郵便の業務というのは、これは企業性の面から見ると、そういう点では非常に企業性が低くて、国民に対するサービスの部分のウエートのほうが非常に高い性格のものだ、こういう感じがいたします。しかし、片方の保険とか年金とか貯金というのは、これは実は民間企業と同じことを現状ではやっておるわけです。同じことをやっていて、片方は実は相当な収益があがっておる。きょうも先ほど地震保険等で保険会社等もやりましたけれども、相当な利益があがっている。ところが、その他の公社や現業に比べますと、郵政についてはそういう利益がこの特別会計の中にあまり生まれてきてないような感じがするわけです。  ちょっとここで伺っておきますけれども、たしか貯金と保険には余裕金というものがあるはずです。おそらく過去の運営上できてきておると思います。現在、この貯金と保険の余裕金というのはどれくらいございますか。
  126. 郡祐一

    ○郡国務大臣 貯金が三百二、十億円ばかりございます。
  127. 堀昌雄

    堀委員 そこで、いまの貯金とか保険とかというもののメリットはどうもみんな大蔵省の資金運用部のほうに吸い上げられてしまっていて、集めることだけが郵政にまかされておるという感じが非常にするのです。そこで、その他のものとのバランスを考えてみると、貯金とか保険とかというものの余裕金等をもう少しうまく運営することによってでも、もう少し郵政事業というものも利潤概念が導入されてきていいのではないだろうか。そうして、こういうふうな企業に分かたれている以上、さっき申し上げました利潤概念ではありませんが、ある程度やはり国と公的な機関との関係がありますから、外ワクはあると思います。外ワクはありますけれども、その中では、企業の生産性といいますか、それに伴ってその企業に働く労働者に配分があるということも、やはり本来の企業体が設けられた趣旨はそういうことにあるのではないのか、こういうふうに思うのですが、その点について大蔵大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  128. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 三公社五現業といいますが、それぞれ特色もあり、それからその中における効率、生産性、そういうものを比較判定することは非常にむずかしいが、差異はあると思います。そういうようなことから、そこの職場で働く人に対する報酬、これは理論上は差等があって一向差しつかえないものである、私はそういう.かうに考えております。
  129. 堀昌雄

    堀委員 官房長官とのお約束の時間が迫りますから先にちょっと官房長官に伺っておきますが、私が申し上げたいことは、先ほどから非常にこまかい、きちんとした法律論議がございました。私は法律は確かにそうだと思うのですが、私が常識的に非常に残念に思いますのは、団体交渉をする、そしてゼロの回答が出る。私はこれが第一わからないのです。団体交渉をしてゼロの回答を出すなら、初めからしなければいいと思うのです。した以上は、何かやはり誠意のある回答が出るのが常識だと思うのですが、そこがよくわかりませんのが一つ、もう一つは、調停段階でやはりたいていうまくいかないから仲裁へいく、ところが、仲裁できまるいろいろな費用についても、仲裁をなさる人たちが一方的には考えられないから、おそらくやはり多少政府の意向もお聞きになるのだろうと思うのです。そして、政府の意向をお聞きになった結果で、どこかで仲裁がきまると、それで最終的にはきまってくる。たいへん実は複雑な手数がかかっている。しかし、出るものは、どういう手続をしようと、やはり一つになるのではないのか。その複雑な手続のためにストライキというようなことが、結果としてはやはりそれをしないと何か出ないようなかっこうに思い込まれて、そしてそういうことが行なわれて、そういうことが行なわれた結果は、それをやった労働者には必ず何か処分とか、いろいろなことではね返ってくる。結局出るものが出るのなら、私はいろいろな法律論議はここではやりませんが、もうちょっと何かすなおな形でどこかで出すものをぽんと出して処理はできないのだろうか。どうもまずい慣行ができてしまっている。それは法律はいろいろありましょう。しかし、私は法律というのは法律のためにあるのじゃないと思うのです。これはやはりある一つのことをやるための一つの手だてとしてある以上、その手だてをいかに使うかということが政治の問題ではないのか、私はこう考えるのです。何とかここらで一ぺん先例を開いて、こういういつもの手続をやらないで、今度出る有額回答というものは仲裁が出ても同じだけのものがそこでぽんと出て、そして、さっき山田君が言いましたようなことで、みんなでひとつ誠意を持ってやるという一つの慣行が生まれれば労使双方にとって非常にいいし、ここで公労法第一条を読んでみますと、たいへんいいことが書いてあるんです。私がいま言ったようなことが第一条にずっと書いてあります。最大限の努力をしなさい、平和的にやりなさい、この第一条の趣旨をひとつ生かしながら、何とかそういう常識的な処理はできないのか。ですから、法律論議でなく、そういう私の政治的な質問に対しての官房長官の感じを承って、官房長官御退席を願ってけっこうです。
  130. 橋本登美三郎

    ○橋本政府委員 常識論といいますか、一種の政治論からいえば、おっしゃるように調停段階でおさまることが一番いいとわれわれ思っております。調停段階でおさまるためには、労使双方ともお互い現実的な態度で向かわなければできないわけです。そこで、現在、実際問題で申しますと、八千何百円という要求が出ておるわけですが、それに対して、ある程度調停段階で話し合いが済んだといっても、政府もこれを了承したとしても、今度は国会の承認を求めなければならぬ、こういうことで、将来この法律改正すれば別ですけれども、現在の法律でいいますと、実際上調停段階でまとまるということが非常にむずかしい問題があると思います。ただ、個人的な見解でいえば、仲裁に持っていけば相当の金額が出る、調停段階では出ないということについては、常識論からいうと少し変じゃないかという議論も成り立つと思います。そういう意味で、おそらく三公社五現業の当局者は最善の道を尽くしたい、こういう努力をしておられると思います。それについて、いろいろ大蔵大臣の御意見もあり、またわれわれの意見もありということで、将来この問題をどういう形で持っていくべきかということは、これからの一つの研究課題であって、いま直ちにことしの春闘についてそれが適用できるかどうかということは、国会の会期の問題もあります。会期の関係から見て、もし補正予算を必要とするような場合、それを補正予算として出し得る時間的な余裕があり得るかどうかということもあろうと思います。少なくとも、政府としては、労使のよき慣行を育成するためにも、前向きの姿勢で、これらの問題を、現実の問題及び法制問題をひっくるめて検討していかなければならぬ、かように考えており、今度の春闘に対しましても最善の努力を尽くしたい、かように考えておる次第であります。
  131. 堀昌雄

    堀委員 郵政大臣にお伺いをいたしますが、昨日、逓信委員会で郵便料金の値上げの法案が通りました。これが通ります審議の経過の中で、たしか、この値上げが通りますと、四十一年、四十二年については大体七・五%ぐらいの人件費の上昇が見込まれておる、こういうふうに逓信委員会で御答弁があったように聞いておりますが、その点はいかがでございましょうか。
  132. 郡祐一

    ○郡国務大臣 四十一年、四十二年を七・五%と見ております。
  133. 堀昌雄

    堀委員 大蔵大臣、いまお聞きになりましたように、郵政大臣は、逓信委員会で、今度の郵便料金の値上げについて、これが通ると、七月一日実施として大体五十四億円ぐらい収入が出てくる、それらをいろいろ勘案して消費的な経費を判断した場合には七・五%ぐらいという、いま御答弁になったような御答弁があるわけですね。そうしますと、いま私がちょっと申し上げているいろいろな議論の中で、さらっと考えてみると、その範囲では、今度の有額回答というのはそこまではお出しになっていいように思う。われわれはそれで法律を通したわけですから。郵便料金の値上げはわれわれも反対でしたけれども、審議を尽くしてこれが通ったということの中には、私どもはこういうものも含めて理解しておるわけですが、大蔵大臣、それに対してのお考えをちょっと伺っておきたい。
  134. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 有額回答ということを考えておるのですが、これは民間のいまの動きが一体どういうふうになるんだろうかというようなこともよく見なければならぬと思います。企業体自体の経理内容ということも、それはあります。ありますが、そういう他の点も考えなければならぬ。私は率直に申しまして、きのう会合があったわけですね。その会合でも申し上げたのですが、これはそれ自体の企業内容という点ももとより考えなければならぬ。しかし、今日非常に経済のむずかしい時期である。そういうことでありますから、経済全体の中においてこの問題をどういう位置づけをするかということをよほど考えてから結論を出そう、こういうふうに主張しておるわけです。そういうことで、特にそういう際に一番問題になりますのは、民間のほうの動きがどういうふうになるだろうか。いままでのいきさつ、また今後のいろいろの問題がありましょうが、そういうものを見当もつけ、そしてきめていきたい、かように考えておるわけです。
  135. 堀昌雄

    堀委員 私がいま伺ったこととちょっとお答えの角度が違うのですが、去年の暮れの予算委員会で、ことしの経済成長七・五%ということを見込んでおやりになっている中には、個人消費がやはり一一%近く上昇しなければまずい、そうしますと、賃金としては約九%くらい上がりませんと個人消費は一一%にならない、こういうことで議論したのは、大臣もあの席にいらしたから御記憶だろうと思います。ですから、民間、特に鉄鋼が、さっき山田君も触れましたように、御承知のような粗鋼減産をやりまして、八幡その他は減配に踏み切っておるという段階でもなおかつ昨年とほぼ同様の回答を出しておるということは、私はある意味では、鉄鋼の資本家というものは、やはり日本の総資本としての問題を理解してこういう回答が出されておる、こう考えておるわけです。ですから、そこらは賢明なる福田さんのことですから十分お考えになっておると思うのでありますが、やはり企業内の能力のある範囲で、しかし、日本の経済全体を見るということになれば、特に鉄鋼などというのは基幹産業でもありますから、その点は大きな目安になることでもあるし、私は前段でちょっと官房長官に申し上げたように、調停で出たものと仲裁で出たものに非常に差があって、その差がついたために、ここのまん中でストライキということが起きて、国民も迷惑をし、労働者もいろいろな処分を受けるし、一体だれが得するか、だれも得しない、しかし、結果は同じ額が出るんだということになったら、これはやはり政治の一つの貧困の姿になるんじゃないか。だから調停で出るものと仲裁で出るものと同じものが出るような額を調停で出せるような努力というものが、私は政治というものではないだろうかと思う。もしこれがいまのような、仲裁までいくためにストライキというようなことになれば、だれも得しないのです。これは全部が損する。公社が得するか、得しない。政府が得するか、そこも得しない。だれも得しない。すべてが損をすることは、やはり政治としてはできるだけ避けたい、こう考えますので、そういう点はひとつ十分お考え願いたいと思います。  それで、時間もありませんからあと五分で終わりますけれども、さっき私が触れました貯金、保険の余裕金の問題ですね。そういう意味で、郵政事業についてもう少しメリットがあっていいのではないか。郵便事業のほうは、どうしても人間によらないと合理化ができないと思うのです。郵便物がボタンか何か押したらぱっとどっかの家に飛んでいくということはできませんから、どうしても人間が区分けをし、配達をしなければならない。すべてが労働力に依存しておりますから、そういう面を見ても、あるいはその他の、いまの簡易保険年金貯金等に対するこういう郵政職員の努力を見ても、郵政職員に対する給与もそういう意味での企業性をもう少し付与した形で考えてみる必要があるのではないか、長期的な展望を含めての話でありますけれども。いま財政投融資計画というものが日本経済に大きなささえになっております。その原資というものは、郵政職員がこつこつ歩いて集めたものが非常に役立っておるわけでもありますから、そういう点について、少し大蔵省側として配慮があっていいのではないかと私は思うのです、この点についてはいかがですか。
  136. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 お話の点もわからないことはありません。しかし、郵政事業といい、あるいは国鉄といい、いま収支の状況きわめて困難な時期で、しかも国鉄はすでに値上げをする。皆さんからもいろいろと御批判もいただいたわけです。郵政はいま同じようなことをやろうとしておる際でもありまするものですから、そういう際の配慮も私どもの頭の中には働かざるを得ないのであります。しかし、これは一生懸命働いていただく方々の問題でありまするから、十分常識的な結果が出るように努力をいたしたい、かように考えております。
  137. 平林剛

    平林委員 ちょっと関連。  公共企業体の有額回答の問題についていま堀さんからいろいろお尋ねがありましたが、この間の委員会で私も大蔵大臣とお話したわけです。そのときに、組合のほうも八千何百円というようなことはちょっと多いし、常識的な話し合いでということが望ましいというお話があったわけです。いま堀さんがあげられた、たとえば郵政の場合に、料金の値上げに含まれる人件費の増というのは七・五%くらいに見るというような線であるとか、あるいはまた、経済の見通しの中に見られる有効需要を高めていく成長率の中で十何%見られるとか、あるいは民間企業の賃上げの状態を見ておりますと、大体三千円から三千五、六百円くらいが比較的多くなっているというようなことであるとか、いろいろなことを総合いたしますと、これは一つの常識を出す場合の参考の資料にはなるんじゃないか、こう思うのです。  そこで、これから政府考えておられる有額回答というものも、きょうは堀さんもさらりとお尋ねになっておりますから私もあまり深追いしませんけれども、常識的な有額回答をやはりお考えになっていただかなければならぬと思うのです。有額回答というものは、私もあまり詰めませんけれども、大臣も常識的なものをお考えになっているということは確認してよろしいでしょうか。
  138. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 先ほどいろいろ申し上げておりますが、いろいろな角度から総合いたしまして、常識的な結論を出したい、そういうふうに考えています。私も堀さんに先ほどから申し上げているのですが、どうもゼロと八千円とにらみ合いで、最後は断層的に仲裁裁定できまるという形はほんとうに好ましくないと思うのです。何とか労使双方が現実的なというか、そういう立場に立ちながら話し合いができるようなところへ持っていかなきゃならぬ、そういうふうに考えておるのです。ところが、現実にはなかなかそうはいかない。そこにまたむずかしさがあるわけでありまして、そこで中間的な有額回答というようなことになりますが、将来相協力してそういうロスのないように出したいものだと思います。
  139. 堀昌雄

    堀委員 時間がありませんから、最後にちょっと郵政大臣に一言伺います。  いまの問題を私考えておる中で、非常に残念な問題が私先週地元へ帰ってずっと一回歩いてみた中で起きているのです。兵庫県の三田という郵便局の局長さんが、四月の一日に郵便課の福山という人を、四月七日に土井という人を、これもやはり郵便課の人ですが、局長室に呼んで、全逓労働組合というのは非常に闘争第一主義である、どうもそういう組合というのは望ましくないという話、それから全逓労働組合組合費は第二組合に比べて高い、こういうのも好ましくないなというようなことを言っておられたという事実があるのです。私は労働者じゃありませんから、そういう意味では、何も一方的に労働組合の肩を持つというのじゃありませんけれども、しかし第三者的に見ても、やはり公労法その他はそういうことをやるようには書いてないわけです。やはり労使慣行というか、組合というものが認められておる以上は、局長がその組合員を呼んで、その組合員に不利なことを局長室で言うなどということは穏当を欠くことだと思いまして、この話を聞いて実は憤慨をしたわけです。これらについて、ひとつ郵政大臣のほうで事実を御調査をいただいて御報告をいただきたいということを最後に申し上げておきます。  私の申し上げた真意は、今日官房長官、大蔵大臣、郵政大臣、みな御了承いただいたと思うのです。それは、あるいは今度の春闘ではできないかもしれません。できないかもしれませんけれども、やはりここに書いてある最大限の努力をしろという公労法第一条の後段のことは生かしていただくように、これからあまり時間のないことですが、郵政の責任者である郵政大臣、大蔵大臣ともに十分心にとめて貴重なこの時間をむだにすることなく、精一ぱいやっていただきたい。できなければこれはしかたのないことでありますけれども、一日も早く私が申し上げたような、常識としてだれが考えても望ましい姿にこの問題をやっていただきたいということを要望いたしまして、質問を終わります。
  140. 郡祐一

    ○郡国務大臣 お話の点、よく私のほうも調査いたします。組合員同士が自己の主張を持つことは格別、管理者がさようなことに介入することは筋じゃございませんから、事態をよく調査いたします。      ————◇—————
  141. 三池信

    ○三池委員長 岩動道行君。
  142. 岩動道行

    岩動委員 私は、地震保険に関しまして若干の質問をいたしたいと思いますが、すでに同僚の委員諸君から各方面にわたっての詳細な質疑が行なわれておりますので、できるだけ重複を避けまして、おもな点についての政府側の方針をこの際明らかにしていただきたいと思いまして、質問を申し上げる次第でございます。したがいまして、ごく簡単に私も質問いたすつもりでおりまするので、明快な御答弁をいただきたい、かように思うわけであります。  この地震保険制度の創設につきましては、新潟地震を契機として急速にその実現の方向に向かってまいったのであります。しかしながら、これは民間の保険業界が押しつけられてやったのではないかといったような印象もあるかに議論する向きもございまするが、すでに昭和二十三年の福井地震を契機といたしまして、戦後はこの問題について業界もかなりの努力をしてまいってきたと私は承知いたしておるのでございます。特に、企業物件に関する地震保険につきましては、昭和三十一年にこれが実現を見るような段階に入ってきたわけでございまするが、家計保険分野においての地震保険というのは、いま申したように、新潟地震を契機として急速に業界においても努力をし、また、政府においても早急にこれを実現するという方向で動き、また、国会におきましてもこれを強く要望いたす附帯決議もいたしたのでございます。そのような意味におきまして、これがすみやかな実現を私どもは希望いたしておりましたが、ようやくここに法案を審議する段階になったわけでございます。  そこで、いろいろな問題がございまするが、ごく焦点をしぼって質問いたしまするが、まず保険の金額につきまして、建物については九十万円、家財については六十万円という金額でございます。これはしばしば同僚の議員諸君からも問題にされた点でございまするが、私どもも、きわめて不満足な、きわめて少額の金額ではないだろうか、今日の経済の実態から見ますると、もっと大きな金額が保険されてもよろしいのではないか、かように考えるわけでございます。しかしながら、この制度が今回新たに発足をいたし、また、国に対する再保険というようなかっこうで、国の財政に依存する面もきわめて大きいという観点から、まずすべり出しとしてはこの程度ということが大蔵大臣からも答弁されているのでありますが、保険をかける側から見ますると、もう少しがんばってもらいたい、もう少しよけいの金額を出してもらいたいという要望はきわめて強いのでございます。現在の保険会社の内容から見ましても、そう急にその金額をふやすということも困難かと存ずるのでありますが、将来これを実態に即してふやしてまいる、その金額を大きくしてまいるということについて、政府の御所信をまず承っておきたいと思います。
  143. 藤井勝志

    藤井(勝)政府委員 お話のとおり、このたび地震保険を制度化する御提案をいたしておるわけでございまして、その経過につきましては、ただいま岩動委員お話のとおりでございます。ともかく、何しろ非常に長期的な視野に立ってものごとを判断しなければならない。しかも、いろいろデータが具体的に正確なものがなかなか集まりにくい制度上の特質もございますので、いわゆる拙速主義といいますか、できるだけ早く、とりあえずスタートを切って、それから徐々に内容の整備をはからなければならぬ、こういう考え方をまず前提に置きまして、ただいまお話保険料率の問題につきましても、できるだけ契約者の負担を軽減することによってこれが普及をはかっていく、そうして、すそ野が広くなることによってまた保険料率が下がってくる、こういう関係でございますので、お説の点は今後十分に配慮していかなければならぬ、とりあえず事故率、それから経費率、こういった点から、先刻来保険部長が答弁をいたしておりますような案に一応いたしておるわけでございますけれども、今後においても、保険料率の引き下げにつきましては、事故率実績と、いわゆる合理化努力、こういうことによって極力料率の引き下げに政府としては努力をいたさなければならぬ、このように考えております。
  144. 岩動道行

    岩動委員 私が伺いましたのは、建物については九十万円、家財については六十万円、この金額がどうもまだ不十分なのではないかということを伺ったわけでありまして、ただいま政務次官のお答えは、保険料率のほうに重点を置いたお答えになっておりますが、これは、私次に御質問を申し上げて伺いたいと思っておった点でございまして、まずその保険金額の九十万円、六十万円という金額について、これを改善していくという御努力をなさるめどについて承ったわけであります。この点についての御答弁を承りたいと思います。
  145. 藤井勝志

    藤井(勝)政府委員 この点につきましても、考え方の根底は同じでございますが、ただ、地震保険の場合、被害の程度がどの程度になるか、実際起こってみないとわからない、こういうような点で、私は、保険料率よりは一そう取り扱いが慎重にならざるを得ない、できるだけ保険料率は安く、保険金額は高くいけるように持っていくのが理想でございましょうが、いまこれが発足を見ようという審議のまだ過程でございまして、いまこの保険金額の問題については、なかなか適当なときに改正するというところまでは踏み切りがたいのではないか、こういうふうに思うわけでございます。
  146. 岩動道行

    岩動委員 その点はもうしばしば私ども伺っておるのでよくわかっておるのであります。ただ、あまりおいしくもない商品を買え、買えといっておられるのもどうかと思うし、これも商売でもありまするから、やはり飛びつくような魅力のある商品を売っていただきたい、こういう気持ちもあるわけでございまするので、将来十分に経験率等も算定されまして、改善をするということを特に強く御要望を申し上げておきます。  次に、分損についてどうするかということ、これもすでにしばしば質疑の対象になっておりますので、いまさらこれをどうしろということは申し上げません。ただ、分損について将来やはり考えていかなければ、ただいまも申したように、商品として、保険としては少し魅力のないのではないかという点があるわけでございまして、これも発足の当初であるからやむを得ない。あるいは保険料率の問題、あるいは国の財政負担の問題、保険会社資産問題等、いろいろから見合って、今回はまず分損は見送った、こういうことになっておるものと私は承知をいたしまするが、将来の問題としては、これはぜひ考えていかなければならない。ただ、この場合、とりあえず経済的な全損ということで、実際的にはかなり救われる面もありはしないか。分損ということばは、制度として認められないけれども、経済的全損ということからある程度救われる面も出てきはしないか、この辺の運用のしかたあるいは業界に対する指導、こういう点について政府はどうお考えになっているか、承っておきたいと思います。
  147. 藤井勝志

    藤井(勝)政府委員 分損の問題の取り扱いにつきましては、先刻来御質疑の中で答弁をいたしておりますように、いわゆる経済的な全損は当然見る。経済的な全損の意味は、一応物理的にはまだ家はこわれておらない、しかし、実際建て直さなければどうにもならぬ、こういう種類の損害、これは経済的に見れば当然全損にみなさなければならぬ。そこで、これをどの程度から全損と判定するかというその査定の基準は、できるだけきめのこまかい査定基準をつくって、せっかくかけた地震保険が、そのことによってかえって隣近所と不均衡をもたらして、俗に言えば、けんかの種をまいてはいけない。それかといって、地震が起こったときの実態をいろいろ想定いたしますと、一々こまかくすべてを救済するというわけにはまいりませんでしょうから、ある程度のところで区切りをつけなければならぬ。しかし、行く行くはいずれ、不幸なことでありますけれども地震国である日本は地震が起こると覚悟しなければならぬ。そのような地震が起こるであろう実績をもとにして、今後やはりできるだけ実態に沿うように損害の補償をして、生活の安定のための制度の趣旨を生かしていかなければならない、このように考えておる次第でございます。
  148. 岩動道行

    岩動委員 この問題は、やはり将来十分に検討して、その実現に努力をしていただきたいということを御要望申し上げます。  次に、先ほど政務次官も触れられました、保険料率は低ければ低いほどいいわけでありますが、もちろんこれも限度があるわけでございます。そこで、ただいまのように、保険の支払い金額が、建物九十万円、家財六十万円、あるいは分損は認めない、こういったようなやり方でいまの保険料率を計算した場合に、保険会社はもうけることにならないのか、こういう疑問が一部にあるわけでございます。これは長い期間においては、もうけにもならなければ、損にもならない、こういうノーペイ、ノーロスといったような計算になっておるということで私どもは説明を聞いておりまするが、実際には、ごく世俗的な考え方としては、保険会社はもうけることにならないのか、こういう点、あるいは一方、業界のほうでは、むしろ一時的には赤字になるかもしれぬ、そういう心配もあるのだが、それに対してはどうするのだ、こういうことも、私どもは一面において検討してみなければならないわけでございます。そこで、この辺についての政府のお見通しと、そうして、保険料率は低ければ低いほど魅力のある商品として国民も買っていくのだ、こういう観点から、ただいまの料率について、もうけるか、もうけないのか、あるいは一時赤字になることについての心配があるのかないのか、また、あるとすれば、それに対する対策はどうかということについて、保険部長でもけっこうですからひとつ御答弁願いたい。
  149. 上林英男

    上林政府委員 地震保険料率につきましては、その性質にかんがみまして、適正な、合理的な算出の基礎によって、できるだけ低く定めるようにということが法律にもはっきりとうたわれておるわけでございます。実際の運用といたしましても、純率につきましては、この地震保険等は、御存じのようにきわめて息の長い保険でございますので、収支差額が出ました場合には、全部これを異常危険準備金として無税で積み立てていく道を開いておるわけでございます。したがいまして、収支の差額は全部異常危険準備金として長く保険会社の中に保存をいたします。そのかわり、一たん被害が起こりますと、非常に甚大になりまするので、それによって支障のないように準備をし、したがいまして、これによって利益を得るというようなことは考えておらないというわけでございます。
  150. 岩動道行

    岩動委員 次に、私は第八条の規定について伺いたいのでありますが、この第八条は、国の措置として「政府は、地震保険契約による保険金の支払のため特に必要があるときは、保険会社等に対し、資金のあっせん又は融通に努めるものとする。」こういう規定でございまするが、普通の地震で小範囲にとどまる限りにおいてはこのような問題はおそらく起こらない、特別に必要な事態も起こらぬと思うのでありまするが、異常な地震が起こったときにこういった規定の活用が予想されるわけでございます。異常な地震が起こりまして、巨額の保険金を支払わなければならないという事態が起きました場合には、これは民間の保険会社としては三百億円を限度としておるわけでありまして、これ自体は、あるいはこの規定の対象になるほどの金額ではない、かようにも考えられるわけであります。しかしながら、一方において、家計保険の分野でありまするとか、あるいは企業物件の分野でありまするとか、こういったようなものに対しての保険の支払いということも起こってまいる、したがいまして、三百億円だけを考えておったのでは問題にならないかもしれないけれども、全般を考えた場合にはかなりの資金が必要になってくる、したがいまして、手持ちの現金、預金あるいは有価証券等を処分する、こういったような事態も起こってまいるのでありまするが、特に有価証券も、これはそういう事態が起こりますれば、有価証券市場というものもかなり混乱をする、こういう事態も予想されて、その処分等が早急にはいかない、一方において、先ほど政務次官もお述べになりましたように、この地震保険は民生を安定さして、すみやかに立ら直るための資金を出してやるのだ、そういう点からいきますと、どうしても早急に資産を換価しなければならない、あるいは資金の手当てをしてやらなければならない、こういう事態が予想される、したがって、八条の存在価値というものがきわめて大きく浮かび上がってくるわけでございます。  なお、これに関連しまして、このように異常に大きな地震で災害が起こった場合には、特別会計のほうでの処理、負担、こういうこともまた起こってくるわけでありまして、まず第一段階として、特別会計の問題は引き続き御質問を申し上げるつもりでおりますので、第八条の運用についてどのような心がまえであるのか、特に、長期にわたる制度でありますので、一時的に金が要るから貸すといいましても、短期の、そして金利の高い金を貸すということでは、これはなかなか保険会社としてもつらいところも出てまいりましょう。したがいまして、長期低利の資金を供給する、こういう配慮も必要になってくるかと私は思うわけであります。したがいまして、その融資についての心がまえをひとつ伺っておきたいと思います。
  151. 上林英男

    上林政府委員 ただいまおっしゃいましたような事由で、一たん大地震が起こりますと、いろいろな面で保険会社の資金繰り等の観点からも、またそのために、一般の契約者、再保険契約者を含めまして保険金の支払いにこと欠くというようなことであってはたいへんな事態が起こるわけでございますので、そういう場合につきましては、政府といたしましても、必要資金の額の融通、あっせん等につきましてできるだけ努力をいたしたいと考えておるわけでございます。そういう趣旨からいいましても、またこの法律の条文が置かれているわけでございますので、そういう事態は好ましいことではございませんが、ありました場合には、全力をあげまして善処をいたしたいと思っておるわけであります。
  152. 岩動道行

    岩動委員 政府のこの規定の運用についての心がまえはわかったわけでありまするが、資金のあっせんはわかりますが、さらに融通、こういうことをお考えになってこの法律ができておるわけでありますが、これは日銀融資といったような事態も最終的には予想されないわけではないわけでございまして、この点について、いまから日銀融資にするのだ、こういうふうにおっしゃることは、あるいはなかなか言い切れないかもしれませんが、そういう心がまえぐらいはお持ちになっていないと、大きな地震災害に対しては対処できない、こういうことも考えられますので、この辺については、ひとつ政務次官から前向きの答弁を賜わっておきたいと思います。
  153. 藤井勝志

    藤井(勝)政府委員 お話のとおり、これは起こってみないとわからず、また、日本の国土の事情から申しまして十分配慮しておかなければならない問題だと思うのでありまして、事柄は違いますが、山一証券の問題を通じて日本の信用秩序維持という点から二十五条発動が行なわれたわけでございますので、事と次第では、当然日本銀行の特融ということも、不幸な事態ではあってもやはり想定しておかなければならぬ、このように思います。
  154. 岩動道行

    岩動委員 明確な答弁をいただきましてたいへん私ども心強くこの法律を進めてまいることができると思うのであります。  そこで、特別会計に関係して若干伺いたいのでありますが、特別会計におきましては一般会計からの繰り入れという条項があり、さらに、借り入れ金、一時借り入れというような条項もあるわけでございますが、私は、三百億円だけにとどまる限りにおいては、いまの八条の動きはそう必要ないと思いますが、むしろ異常災害が起こった場合には、たしか二千七百億円までは国で再保険関係で持たなければいけない。これは財政負担としてはきわめて大きな金額でございますので、これらについて、もし不幸にしてこのような最大限の支払い金額をしなければならないといったようなときには、どのような順序でこれを措置される御方針であるのか、それをひとつ承っておきたい。
  155. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 特別会計におきますこの再保険に関連いたしまして、国の措置に関するお話でございますが、ただいま先生のおっしゃいました二千七百億円と申しますのは、特別会計の支払い限度額といたしまして、一回の地震等により支払うべき再保険金額の総額は二千七百億円ということで国会の承認を得ておるわけでございます。先ほどから御議論ありましたように、この再保険というのは、結局、長い間の経験によりまして、どれくらいならばペイするであろうかということで保険料率を定め、あるいは保険金を定め、それによって長い年数の間には、必ずペイするということで出発をしておるわけであります。特別会計におきますいろいろの国の繰り入れ、あるいは借り入れ金の規定、あるいは一時借り入れと申しますのは、その長い平準化する途中におきます不慮の事態に対しての措置でございます。したがいまして、かりに二千七百億円−これは関東大震災を想定されたということでございますが、民間会社の負担まで入れますと三千億円でございます、三千億円程度の被害が出てきたというような場合には、全体といたしましての三千億円の支払いは、再保険会計からは二千七百億円、民間会社から三百億円の支払いをする。そこでその支払いをするため金はどうなるか。これはもちろんその当時の財政事情にもよりますけれども、二千七百億円というような金がすぐに右から左にあるわけではありませんから、どうしてもいろいろと資金のあっせん、借り入れということをやって、そういう借り入れ金によってさばいていく、その場合に、再保険料が非常にたまっておりまして、この特別会計の余裕金、危険準備金というものが相当額あれば、もちろんそれを取りくずして充てていくわけでございますから、そういった措置をとる金は少なくなるわけでございますが、年度発足当初のように、ほとんどそういう危険準備金がないというような場合ですと、どうしても一時借り入れをやってしのいでいく、そうして、その借り入れをやった金につきまして、なおその後の保険状況をにらんで、ある場合には一般会計から金を出していくということもあるわけでございます。しかし、これはこの規定にありますように、将来もしこの会計に余裕があれば一般会計に返すのだ、こういう趣旨になるわけでございます。二千七百億円というような非常な巨額ではなくて、かりに五十億円程度の被害が起きたというような場合でございますと、これは五十億円と申しますか、全体といたしますと三百億円でございますが、百億円は民間会社でやりますから、そうすると、二百億円の被害が起きたような場合に、百億円までは民間会社でやりまして、あとの百億円の中の半分を民間がやり、五十億円を再保険がするということになります。   〔委員長退席、金子(一)委員長代理着席〕 そうすると、五十億円の金は再保険で見なければならぬ、ところが、年度始まったばかりで保険料がかりに二十五億円くらいしか入っていないという状況ですと、五十億円の払いができませんので、その場合に、すぐに払わなければならぬというような場合があったとすれば、そういうときには一時借り入れをやって二十五億円を払って、年度内に保険料がたまればそれでペイしていくということも考えられましょうし、あるいは二十五億円程度であれば、予備費のほうから一応一般会計から繰り入れておいて、あと楽になったとき返してもらうというような措置もできるというような規定の内容であります。
  156. 岩動道行

    岩動委員 特別会計のほうにかなりの金がたまってきて、特別会計のほうとしてはそれほど負担ではない。ただ、民間のほうにあるいは資金が足りないという場合に、ただいまの規定では、特別会計から保険会社のほうに金を貸す、こういったような道は開け得るのかどうか、この点はどうなっておりますか。
  157. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 現在の特別会計の規定には貸し付ける規定はございませんので、貸し付けられないというふうに御了承いただきたいと思います。
  158. 岩動道行

    岩動委員 これは将来の問題として、必要があればそういう道もひとつ考えていただいて、そうして一方通行でないような制度も将来の改善の方途として御検討をいただいておく必要がありはしないか、かように考えるわけでございます。  そこで私は、今回のこの地震保険制度ができ上がるにつきまして、政府のほうの態勢は、特別会計をつくることによって十全の受け入れ態勢は整えられるわけでございますが、民間の保険業界においては、一体この地震保険を処理する機構をどういうふうにお考えになっておるのか。現在、たしか十九社保険会社があるわけでございますが、これらにつきましては業態の業容においてかなり格差があるわけでございます。しかも、国に再保険するという場合には、それにふさわしいような会社でなければ再保険をするのはいかがか。再保険するための基準というようなものも政府としてはお考えになっている、かように考えるのでありますが、したがって、ここに原子力保険でありますとか、あるいは航空保険におきますような例に見ますように、プール計算で、共同計算の方式で一つの再保険会社といったようなものをつくって、そうしてこの地震保険の処理に遺憾なきを期する、こういうような体制がとられることになるのかどうか、この点をまず承っておきたい。
  159. 上林英男

    上林政府委員 御趣旨のとおりに、地震のような巨額な危険を負担いたします場合、あるいは新しい、未経験の、しかもリスクの多い保険、こういうような場合には、通常、おっしゃいましたようにプール機構を設けまして、危険を均質化し、とにかく元請会社の能力に応じてその保険責任を引き受けさせるという手段を講ずるのが普通でございますが、この地震保険につきましても、同様の考え方によりまして、各社が引き受けました元請保険を共同計算いたしまして、全額共同保険機関に再保険するということを考えております。具体的には、このプール機構といたしまして、保険の再保険会社というものを業界が一致いたしまして設立をいたしまして、元請会社がこの再保険会社に再保険をし、政府への再々保険、これは、再保険はこの共同で設立をいたしました再保険会社政府に再保険をする、こういうような機構を考えておりまして、目下その準備も内々進めておるわけでございます。
  160. 岩動道行

    岩動委員 再保険会社を新しくつくって、そうして、政府への再保険への道を万全ならしめる、こういう構想が具体的に進んでおるということでありますので、これは構想としても非常にけっこうであります。ぜひそうならなければならないと私は考えておったわけでありますが、会社として設立する以上は、法人格を当然持つことになろうかと思いますし、また、そうなりますと、保険の免許を政府からもらうということにもなろうかと思います。また、それはどの程度の資本金をもって発足する構想であるのか。現在損保関係では再保険を専門としている会社がたしか一つ、東亜火災でございますか、そういう会社があるわけでありますが、既存のそういう会社を利用しないで、新たに再保険会社をつくるというような御構想のようでありますが、これについて、いま申したような諸点、法人格を持つことになるかという点、また、保険業法の免許を受けなければならないかどうかという点、また、既存の会社はなぜ利用しないのか、あるいはそれを改組するような考えはないのか、こういうような点についてひとつ御説明を承りたいと思います。
  161. 上林英男

    上林政府委員 私ども考えておりまする再保険会社は、保険業法に基づく保険会社考えているわけでありますので、法人格を持ち、かつ、保険業法による免許を要するものでございます。また、この再保険会社の資本金は、当面十億円を予定いたしております。  さらに、ただいま再保険を専門といたしております損保会社が一社ございますが、それにこのような仕事をさせてはどうかという御趣旨の議論もおありかと思いますけれども、この地震保険につきましては、かねてから御説明申し上げておりますように、非常に特殊な性格を持っておるものでございます。そういう意味におきまして、それとは別に、各保険会社が共同をいたしまして、おのおの持ち分を持ち、またその再配分がうまく行なわれまするように別個の会社をつくるつもりでおります。
  162. 岩動道行

    岩動委員 そこで、別個の会社を設ける趣旨は一応わかりましたが、これと元請会社との関係は一体どういうことになるのか、そして、融資を受けるためにこういう会社を特につくる必要があったのかどうか、その辺の機能の面においての目的という点をひとつこの際明らかにしていただきたいと思います。
  163. 上林英男

    上林政府委員 先ほどからお話がございますように、新しい、しかも危険の多い保険につきましては、その危険を均質化をし、あるいは元請会社に応分の負担を行なわしめる必要があるわけでございます。たとえて申しますと、今回の地震保険は家計保険でございますが、保険会社の中には、家計保険に非常に力を注いで、家計保険の分野が非常に会社ウエートとしては多いのがございます。しかし、家計保険が多い会社が、必ずしも資産なり担保力が多いとは限らないわけでございます。したがいまして、こういうような面を調節する意味におきましても、あるいは新しい保険でございますから、それがどのようなかっこうで起こってくるかということもよくわからないわけでございます。そういうような場合におきましては、すべての危険をプールをいたしまして、その危険を等質化をして、そういたしましたものをそれぞれの元請会社担保力等に応じまして適正に還元をするというやり方が必要なわけでございます。こういうやり方をこの地震保険についても採用をすることが適当である、こういうふうに考えるわけでございます。それを行ないますにつきましては、この地震保険の特殊性にかんがみまして、従来の保険会社ではない新しい保険会社、しかもそれは既存の保険会社全社が共同いたしまして設立をいたしました再保険会社においてこれを運営せしめよう、こういう考え方でございます。したがいまして、この再保険会社と元請会社との関係につきましては、元請会社が引き受けました地震保険につきましては、全額これをこの再保険会社に引き継ぎ、再保険をいたします。さらにこの再保険会社政府に再保険をいたします。そのようにして返ってまいりました危険をさらにおのおのの元請保険会社担保力その他いろいろなシェアに応じまして分けていく、そういうような機構をとるつもりでございます。
  164. 岩動道行

    岩動委員 そういう新しい機関をつくることによって中間的な経費が少しかかるのじゃないか、それがまた保険料率にもどの程度にはね返ってくるかという点もあろうかと思いまするが、この再保険会社は資本金は十億円ということでございますが、一体どの程度の機構で、どんな程度経費で仕事をおやりになっていく計画であるのか、そこら辺をひとつ伺いたいと思います。
  165. 上林英男

    上林政府委員 こういう制度につきましては、かりに再保険会社をつくりませんでも必要な機構でございます。それを非常にはっきり確立をいたします意味におきまして、再保険会社という形態をとり、これを円滑に運用いたしていきたいと思っておるわけでございまするので、再保険会社の事務機構といたしましては、各元請会社の職員の兼務なども考えまして、できるだけ簡素に、かつ経費その他はできるだけ節約をしていきたいと思っております。保険料率の算定におきましても、特にこういうようなことを設けるからといって、そのための経費というものを考えておらない状況でございます。
  166. 岩動道行

    岩動委員 そういう配慮はぜひ必要なわけでありますが、これは株式会社で設立されるわけでございますか。もしそうだとすると、やはり十億円だとすると、やはり十億円の出資に対しての配当ということも当然これは考えなければならない。そういうものははたして必要であるのかどうか。そういう意味において、株式会社形態がはたして妥当であるのかどうか。一つの共同計算機構といいますか、したがって、株式会社で営利を追求するような形式のもので、はたしてよろしいのかどうか。経費はなるべくかけないようにしてあるとおっしゃいますが、資本金十億円というものは、これはやはりただの金ではないはずです。そこら辺はどうお考えになっていらっしゃいますか。
  167. 上林英男

    上林政府委員 この再保険会社につきましては、当面、まず担保力の拡充が必要でもございまするので、少なくとも当面におきましては配当を全く考えておらないわけでございます。十億円に対しまする利息につきましても、すべて担保力に充当すべく、社内に残しておくというような方針で進むつもりでございます。
  168. 岩動道行

    岩動委員 それだけの御説明では、株式会社にしておくという考え方は、どうも少しまだよく理解ができないのでありまして、もう少し別の形態のものが考えられなかったのかどうか。元請会社自体はそれぞれ何億か——あるいは十九社でありまするから、平均しますとわずかな金ではありましょうけれども、やはり株式を保有して出資をするわけでありますから、この点については、やはりいまの御説明だけでは私どもはどうも納得がいかない。そして、そこに配当するということははたして適当であるかどうか、こういう問題もございますので、この点は一体根本的にどういうようなお考えであるのか。もう少し明確に、また全体の目的に沿うような考え方でいかなければならぬと思いますので、もう一度御説明をしていただきたいと思います。
  169. 上林英男

    上林政府委員 保険会社株式会社相互会社といずれかということになっておりますが、相互会社につきましては、社員の数が百人以上でございませんとできないということになっております。また、かりにこれが株式会社でありましても、設立の趣旨は、先ほどから申し上げておりますように、既存の損保会社全体の事務処理体制の一環としてこれをつくるわけでございまするし、また、地震保険公共性にもかんがみまして、当面十億円の出資につきましては、配当を各社とも期待をしておらない、むしろ地震保険制度の円滑な運営に資するために、各保険会社がおのおのの資金を拠出いたしまして、それによりまして地震保険制度の円滑な運営を願うという立場においてこういうことを考えておるわけでございまして、したがいまして、株式会社であるからといって、この再保険会社に適当ではないということではなかろうと私ども考えておるわけでございます。
  170. 岩動道行

    岩動委員 一つのプール計算をする機構は私も必要かと思いまするが、いまの御説明でも実はまだ十分に納得がいかない点があります。それならば、なぜこれを特殊法人としてそういう機構をつくり、それに人格を持たせ、そうして保険業法による免許も与え、いわば、保険業法における特殊な特例としてそういう機構を考えるということが考慮されなかったのか。これは今後十分に検討していただかなければならない問題で、ただいまここで直ちに、明確にどっちにするというようなこともできないと思いまするし、またこの法律は、後ほど触れまするが、早急に実施に移っていかなければならないわけでございます。したがいまして、とりあえずは、そういう新会社をつくらなくても地震保険が発足できるように考慮しつつ、その間において、この株式会社機構というようなもので、いわば営利会社をつくるという形式でなければいかぬということは私はないと思うのです。そこに一つ問題があろうと思いますので、この点は十分に再検討をしていただきたい、かように思うのでありますが、政務次官の御所見を承りたいと思います。
  171. 藤井勝志

    藤井(勝)政府委員 地震保険制度の本来の趣旨からいいまして、ただいまの岩動委員の御意見、十分貴重な御意見として、具体的にいま一応株式会社事務当局は案を進めておるわけでございますが、やはり一般の常識として、株式会社という経済組織は利潤というものに結びつくということが常識でございますので、いろいろこれは地震保険制度本来の趣旨に沿うて、どういう形態が最もふさわしいか、今後十分検討さしていただきたい、このように思います。
  172. 岩動道行

    岩動委員 十分な御検討と同時に、早急にひとつ御検討をいただきたいと思うわけでございます。  次に、この共同計算機構、ただいまでは地震保険会社、こういうことになろうかと思うのでありまするが、ここにたまってまいります資金というものが今後あるわけでございます。その資金の運用方針というものをどのようにお考えになっておられるのか。これは一般の元請保険会社の場合には、保険業法の施行細則によって、株式については二割、あるいは不動産については二割と、いろいろな制限がつけられておるわけでありますが、この再保険会社においてはどのような資金運用をしていく御方針であるのか、これをひとつ伺っておきたいと思うわけであります。特に、不動産などを、一般の元請会社と同じように二割まで持たせることが適当であるのかどうか。資金の流動性というものもきわめて必要であり、立ち直り資金として早急に出さなければいけない、こういう点からも、私は、不動産などに資金運用を他の元請会社と同じような準則で認めるということにはかなりの疑問を持つものでございます。そのような観点からしまして、資金運用方針をどういうようにお考えになって今後進めていかれるのか、この点について大蔵省の御見解を承っておきたいと思います。
  173. 上林英男

    上林政府委員 御趣旨のとおり、この再保険会社につきましては、一般元請会社と必ずしも一致しない点がございますので、ことにその性格にかんがみまして、資産の流動性の確保、確実性、安全性を考えながら、かつその使命にもかんがみまして、公共的な資金の運用を確保してまいりたい、かよう考えております。
  174. 岩動道行

    岩動委員 それでは、最後の質問でこれで終わりたいと思いますが、御承知のように、長野県の松代におきましては、連日連夜地震におびえた住民がおるわけでございます。したがいまして、そのような事態にもかんがみまして、この法律は一日もすみやかに成立をさせて、実施に移していかなければならない、かように考えておるわけでございます。すでに政府の原案におきましては、本年の四月一日からこれを施行する、こういう原案になっておるわけでありますが、これがすでにかなり日を経過しております。参議院の審議等も考えますれば、どんなに早くてもまず今月一ぱいくらいはかかる、あるいは五月に入るかもしれない、こういうことも予想されるわけであります。そこで、一体この法律が成立した後にどれくらいの期間で具体的に地震保険が実施に移り、国民が安心して地震にも対処していけるか。ことに松代地区においては一刻も早くこの法案の成立を待ち望んでおる、私はかようにも考えますので、その辺の具体的なめどをこの機会に明らかにしていただきたいと思います。
  175. 上林英男

    上林政府委員 仰せのような状態でございますので、私どももこの法律案を一日も早く御審議をいただきまして、成立をさしていただきたくお願いを申し上げているわけでございますが、かりに今月末にお通しをいただきますれば、少なくとも六月一日までにはこの実施ができますように、またできるだけもっと早くできるような努力をいたしたいと考えております。いままでにおきましても、この法案の準備に相伴いまして、保険約款あるいはいろいろの準備を進めておりますので、いま申しましたように、一カ月程度の御猶予をいただければこれが実行の運びに至るものと考えておるわけでございます。
  176. 岩動道行

    岩動委員 法律が成立してから大体一カ月程度で具体的に発足ができるということでございますが、さらにこれを縮めるという努力もしたいということで、これを了といたします。業界との連絡を緊密にして早急に実現を見るように、御努力を重ねて御要望申し上げまして、私の質問を終わります。
  177. 金子一平

    ○金子(一)委員長代理 次会は、明後二十二日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後三時二十五分散会