○春日
委員 いま五時十五分で、五時半までというのはどういうことですか。そんなことは認めません。衆議院優位の
原則を忘れてもらっては困る。われわは歳入
委員会として、ここにいま重要なる
租税関係法案の審議もまさに大詰めに迫っておるのです。この重要なる段階において、衆議院における審議が阻害されるというがごときことは、当然衆議院大蔵
委員長の努力によって、参議院との間に調整をはかってもらわなければならぬ。すなわち、われわれが十分審議を尽くすだけの時間の確保
措置、これをとってもらわなければならぬ筋合いのものであると思いますので、わずか十五分間で退散するというがごときことあらば、
委員長不信任案を
提出いたします。よって、さよう御承知を願いたい。
そこで
質問をいたしまするが、しかし、私も意地悪くねばるものではございませんから、重要なる
政策問題を集約して、端的に
質問をいたしますから、ひとつ誠意ある御
答弁を願いたいと思います。
これは、本
委員会でここ数年来の懸案でありますが、
福田さんが大蔵
大臣になられましてから、いまだこの
議論はかわされておりませんので、ひとつ、あらためて提起して、
大臣の所見を伺いたいと思うのであります。それは小規模事業者に対する特別勤労控除の
制度を設ける必要がないかという問題についてであります。問題は、現在
租税の
体系、
所得税の
体系が資産
所得とそれから勤労
所得と、この
二つに分けられて税の
体系が組まれておるのでございます。すべての
所得課税というものは、この
二つの部分の中で組み立てられておるのであります。しかしながら、収入の実態がそのとおりであるならばそれでよろしい。すなわち、資産
所得に属するものか、あるいは勤労の対価として発生する給与
所得に属するものか、この
二つに明確に区分できるならば、私は現行体制でいいと思うのでありますが、
大臣も御承知のとおり、この実態はそうではないと思うのです。特に、ここに零細事業者と言っては語弊があるかもしれませんが、いわゆる法的にいう
中小企業者ですね。これらの諸君は、
自分の店舗なりあるいは
自分の工場なりを資産として彼らが提供しながら、彼ら
自体がまた労働者として労働力を提供する。だから、零細事業者の
所得は、すなわち資産から発生する
所得と、みずからの勤労の対価として発生する
所得との合算
所得である。そして、その合算
所得に対して
課税の方式は、ことごとくこれを資産
所得の
体系の中で処理がなされておる。これは私は、実態にそぐわないと思う。すなわち、その零細事業者が——極端な例を申し上げるならば、魚屋さんであるとか、旋盤が一台か二台で、従業員もなしにやっておるような町工場、あるいは勤労事業者として象徴的にいわれておる大工、左官、とび、板金というような人
たちですね。こういうような諸君の
所得というものは、資産
所得と勤労
所得の合算
所得であるとするならば、そのような構成によって発生してきた
所得に対しては、構成の淵源にさかのぼってそれぞれの区分
課税がされてしかるべきであろうと思う。けれ
ども、現実には一体どの部分が勤労の対価として発生した
所得であるのか、どの部分が資産から発生した
所得であるのか、これを区分けするということは、現実の問題としてなかなか困難ではないかと思われる。だとすれば、やはりこれを推計して、そして何らかの
政策的
措置をとるべきではないかというのが、冒頭申し上げた勤労事業者に対する特別勤労控除の創設を必要としないかという
政策理論の趣旨であります。私は、そういうような
意味合いにおいて、零細
所得者というよりも小額
所得者の下積み、少なくとも八十五万円、これは社会党も、私
どもも当面八十五万円までは夫婦子供三人の
標準世帯における生活実費とこれを目しておる。したがいまして、観念的にはこのように、健康にして文化的な生活を行ない得る最低限の生活実費、これを八十五万円と想定するならば——あるいはこれが六十三万円でもよろしい。とにかく、想定されたその生活実費を
一つの限界として、これに対しては——すなわち、勤労の対価として発生した
所得の中の下積み、これだけの分に対しては、それらの
所得を得るに必要なる経費として、これは勤労控除が十分の二引かれておる。その率を援用して八十五万円の十分の二、十七万円、これだけを特別勤労控除としてこれは控除すべき筋合いのものであると思うが、いかがでありますか。
若干説明をさらに加えますと、そのような経費が実際はかかるけれ
ども、なかなか計上しがたい面がある。ですからこの説をなすのでありますが、たとえば、とうふ屋さんがとうふをつくろうと思えば、朝早く起きて、そしてこれを売りに行かなければならない。あるいは、うどん屋さんが仕事を終わって、かまを洗って寝るというまでには相当時間がかかる。午後の九時か十時までやって、それからどんぶりやかまを洗って寝るのには十二時ころまでかかると思う。そのためにはいろいろからだを使う、腹もへる、補給をせなければならぬ。だから、そういうような
所得をすなわち勤労の対価として発生する
所得と
政治的に認証するならは——認証することが前提ですけれ
ども、認証するならば、そのような
所得を得るためには当然それぞれの経費が伴うてくる。だが、事業
所得に対してはそのような経費がいま見られていないですね。だから、これを勤労の対価として発生した
所得とみなし、そうして、みなした以上は、それを得るに必要なる経費というものを特別勤労控除として控除すべし、私はこの理論は筋が立っておると思うのです。そして、しょせんは、われわれは本
委員会において専門的にこのような
政策理論を十分煮詰めて、勤労事業者の要望にこたえなければならない大きな
政策問題であると思うが、これについて
福田大臣の御
意見はいかがでありますか。つまり、いま
所得のあるところに
課税をなす、
所得のある者にはことごとく
課税をするが、それが
二つに区分をされている。
一つは、資産
所得に対する
課税と、
一つは、われわれの歳費から給与、賃金、工賃、こういうような給与
所得的性格のものの
二つに分けられておる、二大区分がされている。そうして零細事業者
たちの
所得、
中小企業事業者のうちでも特に勤労事業者、大工だとか、一人親方とか、とうふ屋、魚屋、そういうおやじ
たちがみんな働いて
所得を得る、
自分自体が
自分の店で働いて、そうして
所得を得てしる。そういう資産
所得と勤労
所得との合算
所得というものは現実にある。それを十分認識するかしないかですね。三つあるのを
二つで処理している。このことは実態にそぐわない。だから実態に即して処理するとするならば、三区分の創設を新しくすべきであるが、そうすることはなかなか困難である。だから、
租税特別措置の形の中でそれに対して
政策的な救済を行なっていく必要がありはしないか、こういうことなんです。だから、とうふ屋ならとうふ屋、魚屋なら魚屋は
自分の店なんだ、だから
自分の店から
所得が発生するが、店からだけでは
所得が発生しない。おやじが働くことによって初めて——そんな零細な
企業で賃金を払って、給与を払っておったならば
所得が全然出てこない、赤字になってしまう。けれ
ども、女房や子供と一緒になって働くことによって初めてそこに
所得が発生してくるんだから、だとすれば、そのような労働に対して
所得があるのだから、その勤労
所得を事業
所得の中に含めてしまって
課税するということは実態にそぐわないではないか。しかもこれは、区分するというても区分しようがないから、したがって、何千万円という
所得を得るような人にそういうことを適用せよというのではない。少なくとも百五十万円以下の
所得を小額
所得とみなし、小額
所得の中の下積み八十五万円——われわれの主張は八十五万円であるが、あなた方は現時点で文化的に健康的な生活が行ない得る最低限度を六十三万円とするならば、六十三万でもよろしい。それに対して十分の二、すなわち給与控除十分の二をかけて十二万六千円というものを特別勤労控除として、各種控除のほかに新しくこの控除を認めたらどうか、認むべきじゃないか、こういうことなんです。
もう
一つ理論をふえんしたいと思うのですけれ
ども、このことは、国税収入に大きな
影響を与える面もあるでありましょうが、むしろ
政策の
効果は地方税にあるのです。というのは、あの事業税は給与
所得、勤労
所得にはかからない。ところが大工さんや左官屋さん、自転車の修理屋さんや洋服の仕立て屋さんは現実に働いてその
所得を得ておるのであるから、現実の実態は労働者なんです。他の純然たる
給与所得者には事業税がかからないけれ
ども、
自分の店で
自分のミシンで働いておるから、その
所得全部に事業税がかかってきておる。そのことは、これは深遠なる
徴税理論だと思うのでよく御理解を願いたいと思うのだが、洋服の仕立て屋さんも自転車の修理屋さんも大工もとびも現実に働いて
所得を得ておる、他の
給与所得者である工賃、給与、歳費をもらっておる者は事業税がかからないけれ
ども、
自分のミシン、
自分のスパナ、
自分の旋盤で働いておる者は事業税を納めておる。だから私は、いま国税のほうで、小額
所得者の中の下積み何十万円まではこれが勤労の対価として発生した
所得であると
法律的にみなされることになれば、そのみなされた額だけは事業税においても当然免税がされる形になってくると思う。免税点がいま事業税の二十三万円か何かが六十三万円なり八十五万円なり、設定された免税点までが事業税の非
課税措置が自動的にとられる形になると——
中小企業等協同組合法の二十三条でも
中小企業団体法でもそれぞれ国はそのような小規模事業者に対して税法上、金融上、
特別措置をとらなければならないと述べておるのでありますけれ
ども、そういうようなことは、
国民金融公庫のワクをふやしたとか、基礎控除、扶養控除を引き上げたとかいうようなことで政府は
答弁されておりますが、現実には特に彼らだけにフェーバーが与えられるような
政策というものは、いろいろ研究もし、勉強もしてきたのだが、このことなくしてほかのことをやったところで、それは通り一ぺんのことで、そのものずばりの対策を講じたことにならない。私はこれは長い間の懸案であるから、もっとすみやかに実現をはかられてしかるべき筋合いの問題であると思うが、
福田さんは
大臣に御就任になって、税の根本的改革まで大いにその決意を持って意気込んでおられるので、この機会にこの問題については十分御検討を願いたいと思うが、御所見はいかがでありますか。