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1966-03-17 第51回国会 衆議院 大蔵委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年三月十七日(木曜日)    午前十時十六分開議  出席委員    委員長 三池  信君    理事 金子 一平君 理事 原田  憲君    理事 坊  秀男君 理事 山中 貞則君    理事 吉田 重延君 理事 平林  剛君    理事 堀  昌雄君 理事 武藤 山治君       岩動 道行君    大泉 寛三君       奥野 誠亮君    押谷 富三君       小山 省二君    砂田 重民君       田澤 吉郎君    谷川 和穗君       地崎宇三郎君    福田 繁芳君       藤枝 泉介君    村山 達雄君       毛利 松平君    山本 勝市君       渡辺 栄一君    渡辺美智雄君       小林  進君    只松 祐治君       野口 忠夫君    平岡忠次郎君       藤田 高敏君    山田 耻目君       横山 利秋君    竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君  出席政府委員         大蔵政務次官  藤井 勝志君         大蔵事務官         (主税局長)  塩崎  潤君         国税庁長官   泉 美之松君         厚生事務官         (医務局次長) 渥美 節夫君         厚生事務官         (社会局長)  今村  譲君  委員外出席者         国税庁次長   中嶋 晴雄君         厚 生 技 官         (国立栄養研究         所長)     大礒 敏雄君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 三月十七日  委員永末英一君辞任につき、その補欠として竹  本孫一君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  所得税法の一部を改正する法律案内閣提出第  二〇号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  二一号)  相続税法の一部を改正する法律案内閣提出第  五六号)      ————◇—————
  2. 三池信

    三池委員長 これより会議を開きます。  所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案及び相続税法の一部を改正する法律案の各案を一括議題といたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。平林剛君。
  3. 平林剛

    平林委員 私は、昨日、今度の税制改正を主として低所得階層の分野からのぞいてみることにいたしまして、たとえば、日雇い労務者課税の問題、それから勤労青少年税金の問題、それから家庭主婦内職の問題などを中心質疑を展開してまいったのであります。きょうは、その質問の中で、なお大蔵大臣からお答えをいただきたいと考えております点を初めに解決をいたしまして、なお残された問題点について移ってまいりたいと思うのであります。  そこで、主税局長とも一応御相談はしていただいたと思うのでありますけれども、初めに、主婦内職の問題から出発をして、私のぜひ考えてもらいたい点を申し上げたいと思うのであります。  これは、きのうも話したのでありますが、最近の経済事情から家庭主婦内職を始める、あるいは内職をやることが多くなるという現状は、大体大臣も想像がつくと思うのであります。世帯主である主人の給料の不足を補うためとか、あるいは特別の支出に充てるためとか、小づかいに充てる者もあれば、家庭によっては余暇の利用などございまして、一般的には、家計補助としての主婦内職というのは、最近の経済事情においては生活と切り離すことができなくなっていると思うのであります。家庭から職場に出て共かせぎをする人もあるでしょう。また、臨時的に収入を得るために、きのうもお話をしたのでありますが、パートタイムになったり、アルバイトになったり、スペシャルワーカーになったり、臨時雇いになったり、いろいろの形態はありますけれども、ともかく、臨時的に収入を得るために主婦職場に対する出動もあると思うのであります。家庭の中においても同じでありまして、きのうは申し上げなかったのでありますが、私いろいろの資料を見たら、毛糸の編みものをやっている者が、セーター一枚で工賃単価七百円、和裁の仕立て一枚千円、封筒のあて名書きが百枚で三十円、帯封が百枚で六十五円、造花などは一個三十五銭、雑誌の付録本折りは千個で二十五円というぐあいに、内職の態様というのはいろいろあるのですけれども平均をしてみると、大体最近の事情からいきますと・四千円、あるいは多いところでは一万円をこえるものもあるし、七、八千円のものもある、いろいろな形がある。これは昨年の十月、東京都の労働局都内二十三区八千世帯対象家内労働実態調査をしたのを例に申し上げたのであります。この調査資料によりますと、現在内職をしておる家庭主婦は五・六%、現在はしていないけれども内職をしたことがあるというのが九%、内職をしたいというのが七・四%、この三つを合わせた内職関連世帯は、実数によりますと、東京都の世帯数が二百六十万世帯ですから二二%になりまして、大体五十七万世帯、つまり、五人に一人の割合で何らかの形で内職関係がある。私も東京都の労働局へ行きまして資料をもらってきましたら、こういう一冊の本になって、全部まとまっているのです。これはたいへん興味深いので、いろいろ調べてみたわけです。私は、きのうも言ったのです。この調査では、内職関連世帯は二二%だけれども、実際にはもっと多いのじゃないか。プライドもありますし、調べに来ても、それをなるべくならば表に出したくないという気持ちなどから見て、おそらく四〇%程度のものは何らかの形で内職をしておる、こういう見方もできないわけではない。そして、これが平均月額四千円、年間でいえば約五万円、三十九年の調査でございますから、これは所得としては増加する傾向が私あると思います。最近では、こういう家内労働の手間賃の値上げの問題がやかましくなっておりますし、経済事情の変化に伴って、おそらく、平均数字をあげましても、まず五千円、あるいは五千五百円というふうに漸次上がってくる。また、かなり歩のいい内職をやっているところでは月収が一万円あるいは一万二、三千円、よくても一万五千円という程度までは上がってくる可能性がある、私はこう考えたわけであります。そこで、そうであるならば、現在の三月十五日に税務署確定申告をするときに、五万円以上の所得があれば確定申告書を提出せねばならぬということは、これらの主婦所得も、内職であろうと何であろうと、とにかく所得であることには間違いないし、それが発見される、されないにかかわらず、捕捉される、されないにかかわらず、いずれも税法上の取り扱いとしては、厳格に言えば、確定申告書を提出せねばならぬということになるわけであります。しかし、きのうも私は国税庁に聞いたのですけれども、実際上は、そういうことはまず捕捉されないということから、実数としては少ない。これは家庭主婦も、この確定申告の時期になりますと内心不安を隠せない。ということは、良心というか、そういう税に対する気持ちがあればあるほどある。家庭主婦に絶えずそういう気持ちを起こさせるというのは、結局、ここに五万円以上の所得があれば確定申告をしなければならぬという規定があるからでありまして、この点は、最近の実情から見て再検討する余地があるのではないかということを申し上げたわけであります。大臣、大体おわかりだと思うのであります。そこで、私は、それだけならいいけれども、もしこういうことになれば、主人である世帯主配偶者控除を受けられないことになるし、給与所得の場合でも、国家公務員などは扶養家族手当支給対象からはずされるし、県や会社によっては健康保険扶養親族の資格を失うというようなことに発展するのであるから、これはひとつ直すべきではないか、しかも、昭和三十三年に五万円であったものであるから、その後八年間経過している時期においては、やはり是正をする方向でなければならぬ、こう思いましていろいろ詰めたのです。きょうは、ダイジェストで要約をいたしまして大蔵大臣に申し上げたわけでありますけれども、これに対して大臣見解を承りたいと思います。
  4. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 結論から申し上げますと、平林さんのただいまの御指摘は十分わかるように思います。したがいまして、この問題は再検討することにいたしたいと存じます。つまり、そういう限度を設定している理由は、扶養親族等であって所得を有する者は、扶養控除適用を受けると同時に、その所得課税対象とされないことになるところから、限度額以下の所得を有する扶養親族と、所得を有しない扶養親族との間において実質的な控除額の差を増大させる、こういう理由、また第二には、税負担の回避をはかるため、納税者所得、特に資産所得の分散の具に利用される度合いを大きくするおそれがある。そういうような理由であったわけであります。しかしながら、最近における労働事情ないしは生活水準向上等を反映し、配偶者等がいわゆる。パートタイム等によって労働に従事し、給与等の支払いを受ける事例が多く見受けられる。このような配偶者等については五万円の限度額が据え置かれることによって、お説のように、配偶者控除扶養控除適用を受けられないことともなり、また、低額所得者負担が過重となるおそれがあるとの批判もあり、また、この限度額が、これまた御指摘のように、昭和三十三年度以降その引き上げが見送られている経緯等考えまして、たとえば、給与所得者確定申告を要しないその他の所得限度額をも含めまして、その引き上げについて検討する、そういうふうにいたしたいと存じます。
  5. 三池信

    三池委員長 平林委員にお願い申し上げますが、大臣は参議院のほうで短時間緊急要務があるそうですから、できるならば、事務当局にでもその間御質問をお願いして、大臣はちょっと……。
  6. 平林剛

    平林委員 待っていましょう。——先ほどの私の質問に対する大蔵大臣の答弁、大体方向において了といたしたいと思います。ただ、私は、いま御指摘になりましたように、こういう制度の改正といいますか、改革を悪用して資産所得を分散する人までを擁護しようとするものではありません。私の言わんとするところは、低所得階層、しかも、家計補助のためにそうしなければならぬ主婦のわずかな所得にまでいろいろな面の影響を与えないように配慮すべきである、こういう趣旨でございますから、ぜひひとつ善処をしてもらいたいと考える次第であります。  そこで、第二の問題に移りたいと思うのであります。  これはきのうも私申し上げたのでありますが、勤労青少年税金の問題についてであります。勤労しておるところの青少年、特に、高校を卒業して職場に入った程度の低所得層からは税金を取るなという点でございます。昨年、一昨年あたりまでは、中学校を卒業した程度までは税金を取るなということでございました。それが、しきりに同僚の横山委員お話になっておったのですけれども、私は、最近の経済事情から見ると、もう一歩進めて、高校を卒業して職場に入った程度の低所得層からは——所得層というか、収入の少ない者からは税金を取るな、こういうことをきのうは申し上げたわけであります。特に昨日、大蔵省税制調査会に提出した資料によりますと、東京都内法人調査による新規採用の職員の学歴及び採用年次別所得課税状況調べでは、高校を卒業してその翌年から税金を取られておりますのが調査対象の七一・八%、つまり、高校を卒業してその翌年から七一%程度税金を取られておるという現状でございます。私は、自分でも小さいときに勤労しながら夜学へ通った体験がございます。夜学へ行けなくなったときには独学でもって勉強してまいりました。そのころは昭和十一年当時ですから、もちろん税金のことなどは心配をしなかったわけであります。この間も大蔵委員会板橋税務署を視察に参りましたが、私は板橋税務署の近くで子供のころ遊んだことがあるのであります。あそこにしばらく住んでおったものです。しかし、税務署がどこにあるか知らなかった。こんなところに税務署があったかなと思ったくらい、当時は税金とは無縁でございまして、そういう意味では、税に関する限りはよき時代といえたのではないでしょうか。ところが、最近は、いま申し上げたとおりに、高校を卒業した翌年から税金を取られる勤労青少年が七一%もいる。これは東京都の調査ですから全般数字とはいえないでしょうが、大体の傾向はうかがうことができると思うのであります。普通ならば、高校を卒業したら、家庭事情が許しさえすれば大学へ行きたいというのが向学の志に燃える青少年考えであろうと思います。しかし、余儀ない家庭事情大学へ行けないという、この青少年のわずかな所得に対して税金を取る、その税金が、同年輩の——大学だけを目のかたきにするわけじゃありませんけれども大学その他の教育予算にいくというのは、どうしてもある意味では割り切れないものを感ずるわけであります。また、国鉄の割引運賃ですね、あれなど考えましても、学生に対しては学割りという一つ割引率がございますけれども、今度の運賃法改正でどうなったか、その差は小さくなったにいたしましても、勤労青少年はそういう学割りの恩典なんというものはあるわけございませんね。また、そういういろいろなことを考えますと、私は、最終的には、政府課税最低限を大幅に引き上げて、こうした勤労青少年からは税金を取らないことにすべきであるというふうに考えるわけでございまして、いろいろ議論はあると思いますけれども大臣もそういう方向については反対ではなかろうと思うのであります。大臣として、この問題について前向きの御見解をひとついただきまして、次の質問に移ってまいりたいと思います。
  7. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 たいへん人情機微に触れてのお話でありまして、私も十分そういう趣旨については考えてみたい、こういうふうに思っております。これは課税最低限の問題とも関係がありますので、直ちにここで結論を申し上げるわけにまいりませんけれどもお話のように、前向きでひとつ検討する、こういうことにいたしたいと存じます。
  8. 平林剛

    平林委員 きのう、この問題についても質疑を展開いたしましたから、きょうはもうダイジェストで次へ移ります。  そこで、私は、大臣はいまのそういう気持ちがあって、いずれ近い将来、これが一歩前進していくことを期待しておりますけれども、そのお気持ちがあるならば、今度税制調査会税率緩和が行なわれましたときに、最低税率の八%を八・五%に引き上げたということは、私は、たぶん大臣のお考えになった気持ちと反する方向にいったのではないか、最低税率を八%から八・五%に引き上げるという緊急性とかあるいは必要性が、それほど強いものであったかどうか、私は、今度の税制調査会案ではきわめて不満にたえないところなんであります。  そこで、この問題を中心に若干質疑を行ないまして、政府にお考えを願いたいと思っておるわけでありますが、この八%の最低税率を八・五%に引き上げることにいたしましたその対象人員は、大体納税者中どのくらいあるか、主税局長からお答えいただきたい。
  9. 塩崎潤

    塩崎政府委員 八%の最低税率を八・五%に引き上げました理由につきましては、私どもしばしば御説明申し上げているところでございます。最低税率幾らにするかは、なかなかむずかしい問題でございますが、きわめて常識的に申しますれば、課税最低限幾らにするかということと密接な関係があるのでございます。さらにまた、もう一つは、やはり最初税率は、徴税費用と申しますか、徴税にかかりますところの手数最初課税人員につきましてどの程度手数がかかるか、これとの相関関係できまるのでございます。各国とも、この最初税率高目にスタートしておりますし、所得税はそういった形のものが望ましいということは御存じのとおりでございますし、昭和二十五年のシャウプ勧告のときには二〇%の税率から始まったような経験がございます。アメリカでは、現在、二〇%の税率でありましたのを最近下げましたが、これも一四%でございます。イギリスは二〇%でございます。ドイツは最近引き下げましたが、一%だけ引き下げまして一九%、こんなようなことで最初税率ができ上がっておる。そんなような関係から見ますと、わが国の八%は少し低目であるということが税制調査会でも指摘されております。しかし、この最初税率は、御承知のように、低額所得者、さらにまた、課税最低限と密接な関係がございますので、一挙に引き上げることもむずかしい。しかし、今度は、私どもといたしましては、低額所得者についての配慮は課税最低限で相当されてきた、こんなような感じでございます。そこで、最小限度〇・五%程度引き上げまして、徐々に控除引き上げとにらみ合わせながら、理想的な、たとえば一〇%といったような姿に進めていきたい、かように考えております。  そこで、この対象人員がどの程度かというお話でございますが、その対象人員という意味を私十分理解してないかもしれませんけれども、これは課税人員全部に影響いたします。〇・五%と申しますと、十万円以下〇・五%でございますから、五百円分だけ全納税人員——これは最高の金持ちまで〇・五%の引き上げ影響いたします。しかし、その影響程度は、昨年堀委員にも申し上げましたように、上の方よりも、税金を納める金額の少ない方のほうに影響することはもちろんでございます。そこは控除引き上げと相殺されて税負担を見ていただきますればいいのではないか、かように思っておる次第でございます。
  10. 平林剛

    平林委員 結局、いまお話のとおりに、〇・五%ですから五百円ですか、それぞれの階層影響するわけです。しかし、大臣もおわかりのとおりに、たとえば、課税所得十万円程度の者は従来八%であったわけですね。その納税人員はどのくらいおるかというと、昭和四十年度の大蔵省資料によりますと、七百七十六万三千五百人おるわけなんです。そして、その構成は全納税者の三九・一%あるわけでございます。そうすると、各納税者から五百円ずつ取り上げるというのは行き渡りますけれども課税所得十万円の者が最低税率引き上げによって五百円よけい取られるのと、一千万円も課税所得がある者が五百円だけふえるのとでは、受け方というものが違ってくることはおわかりだと思うのであります。私は、そういう意味から考えまして、この八%から八・五%ということは、少なくとも、直接の対象である七百七十六万三千五百人の人たちには一番大きく響くということは言えると思うのであります。しかも、この措置によって税収はどのくらい増額になったかという点をひとつ調べなければならぬと思うのでありますが、この税額をちょっとはっきりさせていただきたいと思います。
  11. 塩崎潤

    塩崎政府委員 ただいま平林委員の御指摘で、課税所得十万円以下の方がどれだけおるかということがわかりましたのでお答え申し上げます。  私ども調べでは、現在の税法のもとでは、源泉所得税課税所得、すなわち、控除金額を引きましたほんとうの税率適用されるネットの部分でございますが、そういった方々の人員は四百九十八万二千人でございます。申告所得税のほうは三十八万四千人でございまして、両者を合わせますと約五百三十万ばかりの人になるかと思います。  そこで、先ほど申し上げましたように、確かに五百円の増税が出るように見えるのでございますが、これも昨日申し上げましたように、基礎控除が一万円、給与所得控除定額部分が一万円引き上げられますと二万円、これは給与所得控除関係でもう少し多目になりますけれども、簡単に申し上げまして、少し少な目でございますが二万円引き上がりまして、その八%の千六百円減税が行なわれる、それから五百円というのが差し引かれまして千百円というかっこうに、増減収の差し引きはそういうことになるかと思います。この〇・五%引き上げによりますところの増収額でございますが、私どもは百億円と見積もっております。私ども考えといたしましては、この百億円が税制合理化という形で増収になります。これをひとつ課税最低限のほうに振り向けまして低額所得者控除引き上げた、こういうふうな考え方を持っていただければと思うのでございます。もちろん、その一部は税率緩和のほうに向けられた面と考えてもいいわけでございますが、私どもの率直な気持ちは、そこの点は合理化し、その上げた増収になる部分は、控除引き上げあるいは税率合理化の形で所得税の中で還元した、こんなようなつもりを持っております。
  12. 平林剛

    平林委員 しかし、勤労控除基礎控除については全般に行き渡るものですし、また、給与所得控除も、これは最高限度額がございますけれども、相当のところに行き届くものですね。そうして、その税収がこの措置によって百億円ふえるということは、私はどうも理解がいきがたいのです。しかも、その百億円のうち五十億円程度、いまのお話ですと、課税所得十万円程度の者は五百三十万人、そうすれば、大体五十数億円はこの階層負担、ここから吸い上げられるものになっていくわけですね。私は、その低所得階層からたくさんの財源を生んで、そしてそれが基礎控除あるいは給与所得控除がふえたということの見合いで、ここがよけい負担をしておるということは、他の、これから申します高額所得者に対する手厚い保護と比べますと、一体いかがなものだろうかということなのであります。  もう一つの角度から申し上げますと、この結果、もし八%に据え置いたならば納税人員はかなり減少したのではないか。総体の納税者が、本来であれば二千二百万人くらいになるのを二千万人にとどめ得たというお話が昨日来ございましたけれども、もし、この八%と最低税率を据え置いたならばこの納税人員はさらに少なくなっていったのではないか、こう思うのですけれども、この措置によって、本来納税者が縮小すべきものが一体どのくらい縮小しなかったのであるか、こういう点をひとつ明らかにしてください。
  13. 塩崎潤

    塩崎政府委員 お答え申し上げます。  この措置は、課税所得適用になります税率部分でございますので、私が先ほど申し上げておりますように、控除金額を引いた残りが十万円までの方に適用になる税率のことでございます。したがいまして、八・五を八%に下げたところで、控除が現行のままならば、納税人員には影響しないということになります。たとえば、三十万円の年収のある給与所得者は、給与所得控除金額その他によりまして計算される課税最低限は、約二十二万円でございますから、八万円残ります。そういたしますと、八万円に対して、八%が適用になるか、八・五%が適用になるか、こういった計算上の問題でございますので、納税人員は、もう控除金額がきまりますれば、この〇・五%ということによりまして影響はしない、こういう計算でございます。   〔委員長退席吉田(重)委員長代理着席〕  なお、この〇・五%の引き上げが、ただいま申されました十万円までの課税所得階層と申しますのは、総所得では、独身者ならば三十二万円くらいまでいく方でございますけれども、その方は全部十万円フルに受け取るとは限りません。頭が出ておりますのは、一万円の方もおりますれば、二万円の方もおります。そんなような関係でございますので、納税人員五百三十万に五百円かけますと、フルにいって二十五、六億円くらいでございましょう。しかしながら、おそらくその全部が十万円じゃございませんで、百円や二百円のこともございましょうから、私は、いま正確に計算しておりませんが、二十億円足らずではないか、かように見ております。
  14. 平林剛

    平林委員 私は先ほど大蔵大臣勤労青少年税金の問題をお話したわけです。こういう下層は、もし最低税率を八%にしておいたならば、かなり救える人がいるのじゃないかということを申し上げているのですが、その点はいかがですか。
  15. 塩崎潤

    塩崎政府委員 その点はおっしゃるとおりでございます。〇・五%引き上げられないだけその方々は税負担が軽くなる、これは申すまでもありません。ただ、私が申し上げましたのは、こういった税負担とは別に、税率合理化という形で増収が生み出し得る部面がありますれば、その部分控除のほうに回った、所得税の中で、より合理化する形で控除のほうに回った、こういうふうなお考えをしていただければしあわせである、こういうふうに申し上げたつもりでございます。つまり、百億円の増収になった部分課税最低限引き上げに向かったというふうにお考え願えないだろうか、こういう意味でございます。
  16. 平林剛

    平林委員 残念ながら、私はそういう考えにはいかないのです。やはり、課税最低限全般のものであるし、それから、基礎控除考えなければいかぬといっても、これは全般のことを考えなければいかぬし、いまさしあたり、この結果、犠牲というとおかしいけれども、納税人口の縮小であるとか、勤労青少年税金問題について、もし大臣が前向きで解決をしたいという気持ちがおありならば、当然この点は配慮されてしかるべきものではなかったか。いろいろ税のバランスのとり方があるけれども、バランスをとるにはここからとる緊急性はなかったのではないか。そういうことを考えますと、確かに税制調査会の示唆もあるかもしれませんけれども、史上最大の減税と呼ばれる大幅減税をやられるときにこういうことをおやりになるのは、一体いかがなものであろうか。これは、私は政治的判断だと思うのです。大蔵大臣の御見解を承りたいと思います。
  17. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいま主税局長から申し上げましたように、どういうふうにして所得税全体を合理化するかという問題の一環としての最低税率引き上げ、こういうことになる。これは、そういう意味において課税最低限引き上げと非常に関係をしてくる問題だ、こういうふうに考えておるわけです。私どもは、課税最低限を、とにかくできる限り引き上げていきたい。いやしくも所得税納税者というランクに立った者につきましては、これは先進諸国でも二〇%内外のところまでやっている国が多いわけでございますから、そこまで一挙にということはいかがかと思いますが、しかし、課税最低限引き上げと見合いながら、税率をあまり下のほうで小刻みというのではなくて、最低限が引き上がるにつれまして調整をとっていきたい、こういうことなのでありまして、どこまでも税制全体の合理化というワク内でそういうことをやってみたわけでございます。これが、課税最低限引き上げがない、それ自体において税率引き上げをしたということであれば、これは問題なくあなたが御指摘のような問題にぶつかるわけですが、今回は五十六万円から六十三万円までの引き上げを行なう、これは画期的大幅な引き上げでございます。そういう際に、最低税率の調整をはかる、こういうことにいたしたわけでございます。
  18. 塩崎潤

    塩崎政府委員 一つ言い落としました。これは昨日も堀委員指摘であったところでございますが、所得税負担は、所得にかかる所得税だけではなくて、もう一つ、住民税という大きな要素を忘れてはいかぬ、住民税は、御存じのように、所得税以上に納税者が多い税でございます。私ども計算では、住民税のほうが所得税の失格者も対象といたしております関係上、所得税は二千万人くらいでございますけれども、住民税では二千三百五十万人くらいの納税者がおります。この住民税は、ここしばらく減税をしておりませんでしたけれども、四十一年度は、この住民税の減税が控除引き上げという形で大幅に行なわれる、そんなような関係ができ上がっております。そのような関係を考慮いたしましても、この際所得税税率自体は合理化したらどうか、こういう趣旨でございます。それも、一挙にまいりませんから、〇・五%にいたしておりますが、私ども計算で見てまいりましても、今度の住民税と所得税と合わして所得に対します税負担考えてみますと、昨日も五十万円以下の階層、百万円以下の階層、二百万円以下の階層と分けまして堀委員にお答えしたのでございますが、この程度税率引き上げは、控除引き上げという形で十分吸収できるのではないか、減税のバランスも、昨日読みましたように、適正なと申しますか、納得していただける、これは前年の減税あるいは前々年の減税、種々のこれまで行ないました減税と足していただけば、なおいいわけでございますけれども、そういった意味で御理解願えるのではないか、かように申し上げたいと思うのでございます。
  19. 平林剛

    平林委員 私は、これは何と言われても納得できない点でございまして、政府にも十分再検討を要請しておきたい。特に、納税人員を縮小するという方向においては、税制調査会も大いに努力をすべきであるというお話があったときでございますから、そういう意味で政治的な判断が必要なものであろう。私は、本来ならば、引き続き、それでは、高額所得者と比較した上において、最近の低所得層に対する課税のしかたとしては少し思いやりがなさ過ぎるのではないかということを申し上げたいのですが、これを展開していきますと、またしばらく時間がかかりますから省略をします。適当な時期に申し上げたいと思いますが、たぶん、大蔵大臣もその点おわかりのことと思います。そういう意味では、この問題については、史上最大の減税と呼ばれますけれども、そういう中になおこういう点があるのだということを十分頭に入れてもらいたいと思うのです。  最後になりますけれども、税の負担率の問題について、少し政府考え方をきちんとさせてもらいたいと思うのであります。それは、総理大臣の施政方針演説によりますと、今度の減税を説明するにあたりまして、国民所得に対する税負担率をあげましてこれを評価されておりました。すなわち、国民の税負担現状は、この減税の結果二〇・何%になった、こういうことを施政方針演説の冒頭に掲げられたのであります。私は、これはどうも総理大臣は非常に便宜主義的な説明をしておるのじゃないかということを感じたのであります。これは、申し上げるまでもなく、初め国民の税負担現状考える場合には、中山伊知郎さんが中心になって、大体国民の税負担は国民所得に対して二〇%程度が必要であるということを絶えず強調されてまいりまして、私も何回か、当分の間この程度にとどめていくようにと、そのための減税を要求し続けてまいったのでありますが、その後、明らかに税制調査会において方向転換が行なわれまして、政府の示唆もあるけれども、いや、これからは国民の税負担幾らということだけでは十分でないのだ、それであるから、いろいろな理由を説明しましたけれども、今後は自然増収の一定の割合をもって減税の基礎にしたらどうだろうか、そして長期税制答申の中には、これからは税の自然増収の何%というのを基準にして減税を考えなさい、こういう答申をして閉じました。その後、経済情勢の変化、不況、そして年間二千六百億円の税収不足という時代に入りますと、いままでの税制調査会の自然増収を基礎にしてやりなさいというやつは、これは結局絵にかいたもちになってしまったわけでありまして、税制調査会の幹部の方々は、大蔵委員会においでになって、どういうふうにこの間の事情を説明するのか、わずか一年にしてそういう考え方が消えたわけでございますから、どういう御意見をお持ちになるか、一度聞いてみたいと思っておるのでありますけれども、そういうやさきに、総理大臣の施政方針演説は、国民の税負担率が二〇・何%になったといって、これをものさしにしてお話しになったわけですね。そうなると、私はまた逆転して、国民の税負担現状をはかるものさしとして、この負担率というものを政府として正式に御採用になったのではないか、こういうふうに考えざるを得ないのです。  そこで大蔵大臣に伺いますが、これからは国民の税負担が重いとか軽いとか——軽いということはありませんけれども、それが適正であるかどうかという判断は何でおやりになるのか、総理大臣が施政方針演説で言われたように、税負担率ということで二一%とか二〇%、昔、自由民主党の長期税制計画によりますと、昭和四十五年度二〇%という案もありましたから、またこれに戻ったのじゃないかと思うのですけれども、これからどういうものさしで、国民の税負担が重いとか適正であるとかいうような判断をなさるおつもりなんでしょうか。
  20. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 総理大臣が、昭和四十一年度二一%、それから四十二年度、平年度になると四〇%になりますが、そういうことを言われた。これは、そういうふうに非常な減税になるのだという点を強調する一つの材料として申し上げたので、私は、その限りにおいては、総理がそういうことを申し上げることは、今度の税制の効果を明らかにする意味において当然のことだろうと思うのです。しかし、それだからといって、減税をするものさしを国民所得に置いたという方向づけをしたものではないと私は思います。減税はどうするか、国民の税負担が重いか軽いか、これは私は、経済の実態というものと非常に関係のある問題だ、こういうふうに考えております。かりに、国民所得計算税負担が少し上がってきたといいましても、経済の状況が非常に繁栄しておる、こういう状態で、国民の税負担がそうはだに感じないという状態でありますれば、国民所得に対する税の負担率というものが少し上がったといいましても、私は、そうこれを気に病む必要はない、こういうふうに考えます。つまり、私は、税を引いた、いわゆる可処分所得が国民生活から見てどういう状態になるか、それは、一つは、経済の発展ということが非常に大きな要因となるというふうに見ますが、それが端的に自然増収という形にもあらわれてくるだろうと思います。ですから、今後の税制考える場合におきましては、国民所得に対する税負担率ということも一方ににらんでおかなければならぬが、同時に、国民のふところ状態が一体どうなっておるだろうかという経済の動き、これもにらんでおかなければならぬ。いろいろな角度から考えまして、国民の蓄積を上げていくために適切な税制はどうだ、また一方、歳出の要請、そういうものも考えなければならぬ。いろいろな角度から検討さるべき問題だ、こういうふうに思います。
  21. 平林剛

    平林委員 税制調査会昭和四十一年度の税制改正についての答申を出されたときには、いまお述べになった考え方と、もう一つ言われておるわけですね。歳出の規模、それから経常収入、公債の発行額、こういうことを総合的に考えた上で減税の規模というものを考えるべきだ、この点についてはどうですか。
  22. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私もそういうふうに考えます。あらゆる問題を総合的に検討して、そして国民の可処分所得が増大し、国民の蓄積がふえるという状態を維持する、その一線が減税政策の規模をきめる要因だ、こういうふうに考えます。
  23. 平林剛

    平林委員 いまから来年のことを議論するのは適当でないかもしれませんけれども、総理大臣は万々一の場合のことを考えて参議院ではいろいろお話しになる時代でございますから、来年度の減税の問題について議論しても、そんなにふしぎじゃないと思うのです。  そこで、いまのお考えのようなものでありますと、私は、今回不十分であった部面に対する減税、課税最低限の低さであるとか、きのうきょうにわたって私の申し上げてまいりました、比較的低い部分所得者に対する税の再検討であるとか、あるいは納税人口を縮小していくという考え方に立ってどうあるべきか、また、総理並びに大蔵大臣も、課税最低限八十万円を近い将来に考えたい、こういうことまで具体的にお述べになっておることから考えまして、来年度減税、昭和四十二年度の減税は、ある程度国民に、この程度はやりたいということのお約束ができないものかどうか、大蔵大臣からひとつ伺っておきたいと思います。
  24. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まだ四十二年度の財政計画のはっきりした見通しは立っておりません。しかし、大まかに検討してみますと、昭和四十二年度、四十三年度というのは財政上非常に窮屈になる。この年には、建設費の財源としての公債が、私は、おそらく四十一年度よりはふえるのじゃないかというふうな見通しを持っておるわけであります。そういう状態でありまするから、経常経費を経常財源でまかなうということが非常に窮屈になる、最も苦しい財政上の立場、これが四十二年、三年度になるだろうと思うのです。したがいまして、減税に四十二、四十三年度で振り向けるべき財源、これがきわめて乏しい状態になるわけです。しかし、私は常々申し上げておるとおり、国民の税負担は極力これを軽減していきたい、そして、蓄積を持つような状態に企業も個人も置きたい、こういうふうに考える。そういうためには、できる限り努力をして、とにかく、個人につきましては課税最低限引き上げ、こういうことをやっていきたい、こういうふうに思うのですが、今日いま、ただいまお尋ねの四十二年度に一体どうするか、こういう問題になりますと、ここで具体的にどうというふうにお答えできないのです。ただ、全力を尽くしてそういう目的達成のために努力する、その努力は、四十二年度といえども、苦しいが、これを変えるという考えではない、これだけのことしか申し上げられないのであります。
  25. 平林剛

    平林委員 昭和四十二年度、四十三年度というのは、いまの経済の見通しからいっても低圧経済のもとでいくということは、しばしば大蔵大臣が述べられたとおりであります。そういう意味では、来年度は、ことしやられたものまでいかなくても、引き続き減税をするということがはたして可能かどうかという点が私ども一番心配なんであります。たとえば、流動的に経済を考えていけば、経済の回復によっては、ある程度の回復が見られるからという考え方もありましょうけれども、しかし、政府の見通しでは、自然増収は千億円程度しか考えられない、公債発行は、いろいろな角度から議論をしてまいりましたら七千三百億円程度である、来年度もこれは大幅に増額するなんということは考えないということを、前の大蔵委員会大臣は言明になられました。そうだとすれば、この公債発行は、主として建設公債という名のもとにおける範囲にとどまるだろうし、ここから必要な減税財源というものは見出すことはできない。税の自然増収が、かりに千億円あるいはやや上回ったといたしましても、経常支出の増加その他自然の歳出増ということを考えますと、おそらく、まず来年は減税できない、こういうことにならざるを得ないのじゃないかという心配をするのです。そうすれば、ことしの所得税減税の中で私らが指摘しておる点を是正しておくか、でなければ——いや、できますということなら、そういうことでけっこうでございますけれども、将来課税最低限を八十万円にするという、その将来というのは、一体来年じゅうにそういう方向に努力する一歩を踏み出すものか、お休みするものか、それは三年後くらいのものであるというのか、三年後になったら、佐藤総理大臣じゃなくなる場合もあるわけでございまして、そういうことを考えると、一体どうなのか。私は、そこら辺をもう少し国民は知りたがっていると思うのであります。来年はできないかもしれぬぞ、こういうふうにあきらめさせますか。   〔吉田(重)委員長代理退席、委員長着席〕
  26. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 来年は非常に苦しいのですね。それで、あなたのお話のような問題に回答するためには、来年の経済情勢が一体どうなるか、こういう問題なんです。したがって、その自然増収がどういうふうになるだろうか、大まかに申し上げますと、四十二年度も経常支出は経常歳入でまかなう、こういうことになるだろうと思う。その際に、自然増収が非常に多くて、経常歳出をまかなってなお余りあり、こういうような状態になるかどうか、こういう問題なんであります。その辺が非常にいま見方としてデリケートなことはおわかりかと思うのでありますが、とにかく、長期にわたって減税をしていきたいということにつきましては、これは一貫した方針としていきたいと思うのだが、何せ四十二、三年という年が最も財政計画上苦しい時期に当たりますので、この時期にどういう幅のものをやっていくかということは、今日まだここでお答えもできないような状態であります。
  27. 平林剛

    平林委員 なお、詰めたい点もあるのですけれども、時間もだいぶ経過いたしましたから、御迷惑をかけると思いますので、一応これで打ち切っておきます。時間の余裕がありますれば、なお用意したものがございますから、その機会にやりたいと思いますので、一応打ち切っておきたいと思います。
  28. 三池信

    三池委員長 只松祐治君。
  29. 只松祐治

    ○只松委員 本論に入る前に、一、二点お尋ねをしたいと思うのですが、新聞で御案内のように、韓国の警備艇に日本の漁船が拿捕されております。これはいろいろな関連がございまして、詰めれば大蔵委員会でも非常に関連が出てくるわけですが、そういうことではなくて、簡単にお尋ねをしておきたいと思う。  こういうことはたいへん遺憾だと思いますし、大臣も遺憾だとお思いだと思いますが、私が多少関連があるというのは、いわゆるこういうことがたび重なってまいれば、当然に、私たちは、賠償の支払い、あるいはそういう関係等も日本政府においても考慮をしていかなければならぬだろう、こういうことが考えられるわけであります。そういう点からお聞きしておきたいと思っております。大臣は遺憾だとお思いになりますかどうか。
  30. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 日韓国交正常化の途上におきましてこういう事件が起こったことは、きわめて遺憾であります。そう思います。
  31. 只松祐治

    ○只松委員 日本国民として当然のことばだと思いますが、したがって、こういうことが一件ですから、いきなり賠償を停止するとかなんとか、そういうことはいかがかと思いますけれども、たび重なって起こる——きょうも、日韓のときに、ある意味では強行されましたある議員の方が、こういうことになるとはわれわれはつゆ思わずというようなことで、朝めし食べながら笑ったわけでございますけれども、いわゆる、ああいう国家でございますから、こういうことの続発するということが懸念されるわけであります。そういう場合には、締結したいろいろな条約や賠償を破棄するということは、もちろん直ちにしないでしょうけれども、一時停止するとか、そういうことを考慮すべきだと思いますが、そういうことまでお考えになりますか。
  32. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 今回の事件の究明というものに、いま政府は全力を尽くしておるわけであります。これを適正に終末をつけるということが本筋でありまして、いま直ちに賠償というか、経済協力の停止だというようなことは、念頭に全然ございません。
  33. 只松祐治

    ○只松委員 そうだろうと思います。いま、ちょっと私は笑い話を引例したのですが、これは笑い話では済まされないことを含んだ話で、相手国の国内情勢、経済情勢、いろいろなものを私たちは顧慮して——そういうことを説明する時間がございませんが、そうすると、対外的に敵を求めたり、緊張をつくっていかなければならない、こういうことになりますと、こういうことの懸念が私たちは予想されるわけです。したがって、そういうことも含んで、これは本論ではございませんから、私はちょっと聞いておるわけでございまして、こういうことがたび重なった場合には、われわれとしても、政府としても、そういうものを当然にお考えにならなければならぬ。こういうことで、単なる外交手段だけでそういう韓国の国内情勢というものを見る場合に、済まされない問題が出てくるのじゃないか。そこまで申し上げませんけれども、そういうことを含んでお考えいただきたい、こういうことを申し上げておきます。  平林委員質問とも関連して、もう一つ、本論に入る前にお聞きしておきたいと思うのですが、けさの読売を見ましても、八十万二千円までですか、昭和四十三年度をめどに所得税を減税したい、こういうことが出ております。聞きますと、大蔵省のほうでは相当真剣に検討されておる、こういうふうに聞いておるわけでございます。いま、大臣の御答弁では、四十二、三年が一番苦しい状態である、こうお答えになりました。それを、私たちは、もちろん八十万円を本年度からしよう、こういうことを言っておるわけですが、なかなかできないできないと答弁されて、いまも昭和四十二、三年ごろは一番苦しい状態だ、こうおっしゃったけれども、大蔵事務当局としては、四十三年度を目標に相当真剣に研究されておるということでございますが、大臣からでも事務当局からでもけっこうでございます。それぞれにお答えをいただいたほうがいいと思いますが、お答えをいただきたいと思います。
  34. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 国会でも済みましたら税制調査会の再開方をお願いしたい、こういうふうに思っておるのです。その際には、長期の税制はどうあるべきであるか、そういう問題についての御検討をお願いしたい、かような考えであります。それをどういう年度割りでやっていくか、この年度割りはなかなかむずかしい、そこで、目標はどこに置くべきかということについての諮問となると思うのです。それを、そのときどきの経済情勢、また財政事情、そういうものを勘案して逐次実施に移したい、こういうふうに考えておるわけでございまして、したがって、ただいま、八十万円までの課税最低限引き上げを四十三年度までに行なう、こういうふうな固まった考え方を持っておるわけじゃございません。
  35. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私が昨日平林委員の御質問に答えまして、課税最低限を八十万円程度にするならば、どの程度の減収が生じ、どの程度の納税人口が減少するか、こういう御質問に対しまして答えたことが、新聞に出たかとも思うのでございます。大きな考え方は、大臣が申されたとおりでございます。何年度にこれを実施すべきであるかということは、財政問題との国連もございますので、私どもといたしましても、はっきりした考え方を持っておるわけじゃございません。ただ、何と申しましても、事務当局でございますし、こういった技術的な検討事項を常に私ども用意しておかなければならぬ、こういう意味で常に用意し、ときどき上司の方から聞かれますれば、こういうことになるということをお答え申し上げておるところでございます。昨日は、そういった意味で種々の前提を置きまして、たとえば、八十万円にするにしても、基礎控除配偶者控除扶養控除のいずれを上げるか、これによって相当減収額も違うし、納税人口の減り方も違う、減収額にいたしましても千七百億円から二千七百億円くらいの幅のある減収が生ずるであろう、こういうことを申し上げたのでございます。
  36. 只松祐治

    ○只松委員 大臣が打ち消しのような答弁をされたので、事務当局もしゅんとなったのではないかと思います。聞くところによると、これはあくまで事務段階の試案の試案だろうと思いますけれども、ほぼ昭和四十三年度にはそういうことができる見通しの案がある、こういうふうに私たちは聞いておるわけです。しかも、なおかつ、事務当局としては常に納税人口を事務上からも減らしたい、こういうお考えをお持ちなところでございますので、私は、当然に事務当局の案としてはそうあるべきだろう。これが政治的に、きのう大臣が明快に答えましたように、経済上必要か必要でないか、まず、それをきめてからワクをつくっていくわけですから、これはそのとおりだと思う。したがって、政治上できないということは、あるいは出てくるかもしれませんが、事務当局としては、ぼくはそうあるべきだろうと思う。それを今度は、だいぶ一歩後退したような御発言だったのですが、事務当局としては、そういうことが可能である、検討され得る、こういうふうに言えると私は思いますけれども、どうです。
  37. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私は、先ほど申し上げましたように、減収額も非常に大きい減税にもなりますし、財政問題にも非常に影響する問題でございます。先ほど大臣が申されましたように、長期税制構想の一つの支柱となるものでございます。四月から、税制調査会にこういった具体的なプランを少し出しまして、詳細に練っていただきたい、こういう気持ちでございます。もちろん、私どもといたしまして、現在の税務の実情と、さらに国民の声から見まして、できる限りの減税は進めるほうがいいし、さらにまた、納税者の人口は減らすほうが望ましいというような気持ちを持っておりますが、非常にむずかしい問題もございます。しかし、具体的なプランといたしまして、四月からはひとつ検討に入りたい、かように考えております。
  38. 只松祐治

    ○只松委員 検討にお入りになることと思いますが、いわゆる実現の可能性、たとえば、きょう、読売を全部お読みになったかどうか知りませんが、ああいう案が事務当局としては実現可能であるかどうか。それと政治的な判断というものはおのずから別ですよ。事務当局の案としてはどうお考えになりますか、こういうことを聞いている。
  39. 塩崎潤

    塩崎政府委員 先ほども申し上げましたように、千七百億円という減収を伴う減税、これは普通の方法ではなかなか容易ではなかろうという感じがいたしております。
  40. 只松祐治

    ○只松委員 これが本論でございますので、きょうは、これでやめておきます。  いまから所得税法人税等の問題について御質問をいたしたいと思います。  まず、源泉所得でございますけれども、源泉所得は十二月三十一日に確定して、政府に対していわゆる債務が発生すると申しますか、確定してくるわけでございます。しかし、勤労者は毎月の月給から差っ引かれているわけですから、先取りされておる、こういうことになるわけです。これは違憲だということで、そういうことを中心にして訴訟まで起こされたことがあるわけですが、そういう法律上のことはどうでもいいというわけじゃございませんけれども、その問題とともに、やはり他のいろいろな自主申告あるいは法人税その他と関連して、源泉所得者だけがひとつも逃げられないようになっておりますし、あるいは逃げられないだけではなくて、こうやって先に納めておる。いわゆる行政的な立場から見るならば非常にアンバランスであるし、源泉所得者だけが過酷な扱いを受けておると思うのです。だから、いろいろこうやって減免税しているのだ、こういう切り返しのことばもあるかと思いますけれども、とにかく、そういう源泉所得者だけが過酷な取り扱いを受けておる。それに、ちょっとでも何かものを書いたりなんかすれば、そういう人々はすぐまた税金を取られていく、いわゆるアリのはい出すすき間もないというくらい税金を持っていかれる。また、これをちょっとでも納税を怠りますと、加算税を取られたり、利子を取られたりしてくるわけなんです。しかし、先に払ったからといって、それに対する特典というものはないわけですね。たいへん不公平だとお思いになるならば、それに対する何らかの特典、そういうものを考慮すべきだと思いますが、そういう点についてお考えはございますか、ございませんか。
  41. 塩崎潤

    塩崎政府委員 源泉徴収につきまして、ただいま只松委員の御指摘の点、常に主張されるところでございます。私ども、源泉徴収という制度が非常に確実な方法であり、徴税コストのきわめて安く上がる方法といたしまして利点は認めるわけでございますが、一方、そういった批判のあることも十分存じております。  そこで、これに対しまして、税制上どんなような対策を講じておるかという点でございます。御存じのように、所得税法所得に対しまして課税するわけでございます。所得というのは、収入からその収入を上げるに必要な費用を控除した金額所得でございまして、これに対しましては、それから基礎控除配偶者控除扶養控除、いわゆる人的控除を引きまして、課税所得として課税するのでございますが、給与所得者につきましては、その所得のうちから特別な控除をする必要があるであろうということで、御存じのように、給与所得控除という特別な控除を、他の所得者と違って認めておる、これが一つの源泉徴収に対しますところの対価と申しますか、他の所得者に対しますところの源泉徴収の不利を補う意味の相殺要素、かように考えております。御承知のように、給与所得控除は、先般来申し上げておりますように、定額四万円を控除し、それから六十万円までは二〇%を控除し、八十万円までは一〇%を控除し、最高限度十八万円所得控除をすることにいたしております。こういった所得控除で源泉徴収の不利を補うというふうなことも考えられないかというふうに考えております。もちろん、給与所得控除につきましては、只松委員御存じのように、もう少し別な理由がございまして、営業所得者あるいは事業所得者と比べまして、資産所得ではない、一身でも、まさしく一身専属の全く肉体にたよる所得である、そういった意味で、担税力が少ないではないか、こういったことを相殺する意味において給与所得控除を認めろ、こういう御意見があり、それにも一つの根拠を置いているかと思います。  さらにまた、何と申しましても、実際の徴税上の面におきまして、毎日毎日事業所得者のところについておりまして税務官吏が調査することもできない、そこに種々の課税の問題についての不十分さが、現在の納税レベルでは起こる可能性が相当あるわけでございますから、これとの相殺も行なうという趣旨もございます。それからもう一つは、給与所得は、実は収入所得みたいな感じがいたしますが、これも堀委員の常に指摘されるように、費用の部分があるではないか、個人消費と多分に関連する部面でございますけれども給与所得といえども、勤務場所に通う、さらにまた、所得を上げるに必要な費用部分があるではないか、せびろにいたしましても、くつにいたしましても、減価償却部分は費用と考える要素がありはしないか、こんなような四点ばかりの理由給与所得控除を認め、その中の一つに、いま只松委員の御指摘になりました源泉徴収の不利を補う、利子を相殺する、早目に納めることに対します一つの相殺要素、かように考えております。ただ、金額の多寡につきましては、種々議論のあるところでございますが、現在は、かような考え方に立っておるのでございます。
  42. 只松祐治

    ○只松委員 大体話はわかりますというようなお答えでございますが、そういうことならば、ひとつ、明確に源泉徴収控除、こういうものを設けていくほうが、ほかの諸税とのつり合いもとれると思うのです。何と申しましても、納税というのは自主申告です。ところが、この源泉だけは自主申告ではないわけで、ある意味の賦課課税方式といっても過言ではない方式がとられておるわけでありますから、そういう面から見ると、自主申告者と同じように納得させて、本人が申告して、これだけ自分がもらっているんだ、こういう形で取るのが税法上のたてまえだろうと思う。ところが、源泉徴収の給与所得者だけがそういうふうになっていないのですから、実際上からも理論上からも、源泉徴収控除というようなものを設ける。たとえば、われわれ国会議員でもそうですが、皆さん方でも、額が大きくなると非常にたくさんのものを前払いするわけですから、それを年間十二カ月合わせますとばく大なものになる。この利子だけにしても相当なものになるわけでしょう。したがって、源泉徴収控除というようなものを新たに設けることがいいのではないかと私は思いますけれども、いかがですか。大臣からもお答えをいただきたい。
  43. 塩崎潤

    塩崎政府委員 確かに、私も源泉徴収につきましての問題点を認めるわけでございまして、現在の給与所得控除が十分であるとも思っておりません。財政事情が許すならば——ことに、先日来御議論になっておりますように、給与所得者が二千万人の納税者のうちに八割五分まで占めてきた状況でございます。三十一年が一番納税者の少ないときで、千万人でございましたが、それからふえました千万人の大部分給与所得者、それも独身者が六割ばかり占めておることをきのう申し上げましたけれども、かような関係から見まして、この源泉徴収を受ける給与所得についてどうするか、今後、もう少し検討してまいりたい。さらに、只松先生のおっしゃったように、現在、最高限度を置いてございます。先ほども申し上げましたように、十八万円が限度である。そうなると、いまの御質問の、利子だけでも損をしているではないかということを考えますと、それは源泉徴収を受ける相当な高額者についても源泉徴収の不利はあるんだから、給与所得控除について最高限度を置いておること自体がどんなことであろうかという御疑問が出てきたのではなかろうかと思います。このあたり、給与所得控除のあり方の問題として、ひとつ今後慎重に検討してまいりたい、かように思っております。
  44. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 勤労控除を源泉控除と名前を変えろというお話なんですか。実態を変えたらどうだというお話なんですか。——いま主税局長からお話のようなことで、なお今後とも検討いたします。
  45. 只松祐治

    ○只松委員 繰り返し申しますように、日本の納税制度は、世界でもそうですが、自主申告ですし、国民が納得して納めるべきものである。給与所得者だけがこういう圧力を受けておるわけですから、ひとつ、それになじまないで、やはり本来の税制のあり方、あるいは国民に納得して納めてもらう、こういう形からは、当然に趣旨がそういうことであるならば、名目を変えるのは簡単なことでございますから、皆さん御納得がいただけるならば、源泉徴収控除そのままずばりがいいかどうかは別にして、こういう趣旨のものを設けてするならば、よりよく、いま納税人口、額、ともに多くなっておるこの給与所得者税金がスムーズに納まっていくのではないかと思います。そのためにも、ぜひひとつ御研究、御努力をお願いしたい。  それから次に、所得の場合にいろいろ現物給与が行なわれるわけですが、これも通勤手当や食事手当あるいは社宅手当と、一定の額があって、なかなかやかましいわけです。ところが、外人の商社あるいは外国から来る人、そういう人に対してはいろんなことが非常におおらかなものだそうです。いろんなそういう諸費用、特にホテル代というものについては、何か無制限といってはなんですが、ほとんど手を触れない。こういうことで、多少飲み食いなんかしても、ほとんどホテル代の中につけてしまうそうですけれども、やはりこういうのも、あまり外人だけ野方図にしておくということになれば、いろんな問題が出てくるかと思います。これとの均衡をとってもらいたいと私は思うし、それから逆な面では、通勤手当なんか、もっと皆さんのほうで寛大な処置と申しますか、手当を上げて認めていく、こういうことを私はすべきだろうと思いますけれども、こういういわゆる現物給与について、ひとつお考えを承りたいと思います。
  46. 塩崎潤

    塩崎政府委員 只松委員の御指摘されましたように、現物の給与ということは非常にむずかしいし、現在の取り扱いも私は完全なものとも思いませんし、また、混乱した部面もあることは御存じのとおりでございます。できる限り、私どももそういった面の是正は情勢に応じましてはかってまいりたい、こんな気持ちでございます。今回、通勤費につきまして御提案申し上げましたのも、そういう趣旨でございますが、何ぶん現物給与は、御存じのように、雇い主から強制的に与えられる面もございまして、なかなか所得といたしましての評価が——所得の特色は、私は自由に処分できるところにあろうかと思うのでございますが、そういった面がなかなかつかめない。さらにまた、もう一つ、かりに課税するにいたしましても、評価が非常にむずかしい面もございます。先ほど御指摘の面は、こんなようなことにも関連しておる面がありはしないかと思うのでございます。こんなような点を考慮いたしまして、私どもは、現物給与につきましても、費用と見るのか、あるいは個人的な消費と見るのか、限界がむずかしい場合が多々ございます。ことに、外人というお話もございましたが、事業所得者、たとえば、演奏家が日本に参りまして、新聞社の招待で、ホテル代だけは新聞社が持つといった場合に、これをどの程度のものを費用と見るのがいいのか、収入には多分に関連いたしますが、そのあたりも非常にむずかしい問題もございます。そういった点、常に検討しておりますが、個人消費と、所得をあげる費用との限界、これはどこの国でも非常にむずかしいようでございまして、困っております。私どもも、できる限り実情に即した、今後の情勢に即した改善を常に行なってまいりたい、かように考えております。
  47. 只松祐治

    ○只松委員 外人の話が出ましたから、ついでに言っておきますと、いまのホテル代やなんかも、よそで飲んでおったのを全部ホテルに持ってきて詰め込んでしまっても、ほとんど調べられないそうです。それから、極端な例は、法人の場合でも、英語を使えば税務署の人がたいていで帰ってくれる、こういうことだそうです。別にいじめろとは申しませんけれども、アメリカだろうと、ドイツだろうと、どこの外人だろうと、そういう点はやはり——むしろ外国のほうが納税は完全にする、自分たちは正しくする、そういう概念を持っておるわけなんですから、あまりそうおそれないで、ひとつりっぱないわゆる調査徴税を行なっていただきたいと思うのです。あまり低過ぎるそうですね。私は例も持っておりますけれども、こういったいろいろな国際的な問題に及びますので話しませんが、ぜひお願いをしておきたいと思う。  それから次に、自主申告との関係で一番問題になってまいります問題に、給与の否認という問題があるわけです。特に、社長さんや重役の場合に否認の問題があるわけです。私はこの前もちょっと大臣に御質問したときに言ったのですが、私の知った会社の社長さんが十五万円月給を取った、それは高い、したがって、十二万円にしろと、三万円税務署から下げられまして、そして十五カ月バックいたしまして、四十五万円純益とみなす、純益というのは諸雑費を差し引いたわけですから、そこへ税金をかけられようとしておるわけでございます。こういう事例がたくさんございます。これはそういう実例とともに、法律解釈上のいろいろな問題が出てくるわけでございます。いわゆる税務署あるいは大蔵当局においては、適正な給与ということをおっしゃるわけですが、こういう場合の適正な給与とは一体何が適正であるか。まあ、結論を言えば、皆さんのほうの税務署の恣意による適正だ、こういうことに日本ではなっている。ところが、こういう恣意による適正というものはあり得ないわけです。適正な給与とは一体何か。これは全国の中小企業者に重大な影響を及ぼす問題で、これでみんなおそれおののき泣いているわけですから、適正な給与の解釈をひとつお願いしたいと思います。
  48. 中嶋晴雄

    ○中嶋説明員 ただいまのお尋ねが税の執行上の問題に関連いたしますので、国税庁のほうから御答弁申し上げます。  法人税法では、過大な給与については、これを否認して損金に算入しないことができるという場合が書いてございます。これを受けまして、政令でいろんな場合を規定しておるわけでございますが、端的に申しますと、形式的な基準と実体的な基準があろうかと存じます。  形式的な基準と申しますのは、この前も当委員会で長官から御答弁申し上げたと思いますが、たとえば、株主総会の決議できめられました場合、あるいは定款できまっておるような場合、これらにつきましては、それをこえた報酬が支払われておりますと、これは過大な報酬ということで、その部分を損金に算入しないという扱いをいたしております。  それから、ただいまのお尋ねは、おそらく実体的に何が過大かというお尋ねであろうかと思います。これは、実は非常にむずかしい問題でございまして、その職務の内容でございますとか、その法人の収益率がどうでありますとか、あるいは事業規模が類似しておる他の法人の役員の報酬と比べて著しく権衡を失しておるかどうかというような点が、一つの基準になろうかと思います。実際の扱いにつきましては、やはり役員の報酬を過大に出すことによりまして、法人の利益を調節すると申しますか、そういうことがあると、課税上の弊害が生じますので、そういう観点から、場合によりましては否認をいたしておる、かようなことになっております。
  49. 只松祐治

    ○只松委員 形式上のことはいいんです。実体上——まあ、これはなかなか、そこいらの八百屋やくだもの屋、魚屋さんの社長さんは、自分でもわからないわけですよ。板橋に見に行っても、ぼくらびっくりした。そんなにないかと思ったが、七、八〇%ぐらいは自分でつけていないと言っているんですね。あそこに来て書いてもらう。こんなことを見たって、わかる道理はない。そこで適正なものとは何だというわけで、税務署の署長なり課長なりに、ぜひひとつ教えてください、こう言っても、これは日本では絶対に教えないのです。教えないから自分で書く、書くと、それはけしからぬ、こうなる。せっかく中小企業のおやじさん、いわゆる社長さんやなんかが教えてくれと言ったら、なぜ教えないのですか。教えないで、出すと、それはだめだと否認して、いまの話じゃないけれども、バックプレーしよう、こういうことでしょう。こんなひどい話は、行政の指導上ないでしょう。どうやるんですか。
  50. 中嶋晴雄

    ○中嶋説明員 税務署のほうで、役員が尋ねてもはっきりした基準を教えてくれないという御質問でございます。昔は、資本階級別あるいは規模別に非常に詳細な基準がございまして、それによって、場合によっては否認をしておったわけでございますが、最近は、そういうあまり形式的な基準と申しますものは、むしろ弊害があるということで、先ほど申し上げましたように、やや抽象的な基準に切り変わったわけでございます。したがいまして、基準は何かということにつきましては、これは同業種の他の法人給与等との比較とかその他を見なければ、一がいにこうだということは申し上げられないということで御了解をいただきたいと思います。
  51. 只松祐治

    ○只松委員 とても了解なんかできるものですか。それは八百屋のおやじさん、社長が会社に来ておって、その社長さんが、Aという八百屋は十五万円だった、Bという八百屋は二十万円だった、Cという八百屋は三十万円だったと言ったって、話しゃしませんよ。教えやしませんよ。自分のものが十五万円が適正であるか、二十万円が適正かわからないでしょう。わからないから、税務署幾らくらいがいいでしょうと言っても、税務署は教えないわけです。それで、自分で適当にすれば、それはだめだ。しかも一年間、前年度申告してそれは認められておるのも、翌年度になってそれはだめだと否認されてきて、前年度までバックプレーしろ、こういう、いわばでたらめといいますか、出てくるでしょう。それでまごまごして、けんかしておれば、それならというわけで、重加算税かけるぞ、延滞利子かけるぞというわけで、税務署のほうはおどかすわけですからね。それを、いまあなたがおっしゃったような答弁でかんべんしてくれと言うが、私がしても、実際お支払いになる中小企業のおやじさん連中というのは、この問題でたいへん困っているわけですよ。
  52. 中嶋晴雄

    ○中嶋説明員 税務署ではどういう項目が益に入り、損に入るか、その点を認定しておるわけでございまして、給与そのものを税務署がきめておるわけではございません。これは、もう申し上げるまでもないことでございますが、税務署でどこまでの報酬が経費に入るかということの限界をきめておるわけでございます。したがいまして、全然基準を教えないということにつきましては、これは税務署に参りますと、その場で、あなたはこのくらいなら適当ですということを言っておると私は思いますけれども、抽象的な基準を申し上げていないという意味ではないかと想像しております。
  53. 只松祐治

    ○只松委員 それはあなたが実態を知らないからで、あなたたちの通達には直近上位、直近下位の間ということで通達をして、指導していますよね。しかし、実際上は、絶対教えないのですよ。しかし、ドイツでは教えなければならないという法律になっているでしょう。それで教えるわけですよ。日本ではそれがないから、絶対教えないのですよ。教えないから、自分ですれば、そういうふうに否認されてくる。これは賞与から何からずっといろいろなものが否認される場合が多いわけですけれども、自分の給料でさえも否認されてくる。あなたが言っているような、そういう答弁ではだめです。これはどうですか。じゃ、逆に、昔あったというが、ドイツのように教えなければならない、こういうふうにいたしますか。そうしたほうがいいですか。それとも、いまみたいに、やっぱり適当にやっておいて、適当に否認したり、適当に認めたり、いわゆる中小企業のおやじさんたちを戦々恐々とそのままにしておくほうが、これは税金を取り上げるには一番いい、こういうふうにお考えになるのですか、どうですか。
  54. 中嶋晴雄

    ○中嶋説明員 報酬を損金に算入しない限度のきめ方でございますけれども、かってに税務署できめておるというものではございません。これは法令によりまして一つの基準があるわけでございます。ただ、その基準が形式的に……。
  55. 只松祐治

    ○只松委員 法令というのは何ですか。
  56. 中嶋晴雄

    ○中嶋説明員 法人税法と施行令でございます。その基準が、いわば実体基準でありまして、形式的に資本階級別にきめていないというだけでございます。したがいまして、たとえば、その会社の所得金額の中で報酬の占める割合が著しく高い、報酬率と申しますか、そういうものが著しく高い場合には、これは否認する場合もあり得るということでございます。ただ、私ども調べております限りでは、これが非常に不権衡である場合に否認をいたしておるわけでございまして、大体の場合は——最近はこれを否認して非常に問題が起こったという事例は、私どもは多く聞いておりません。さような情勢でございます。
  57. 只松祐治

    ○只松委員 私は、あるからお聞きしているので、たとえば、こうやってあとで否認されるのは少なくなってきているのですよ。しかし、やはり申告する場合にはほとんど問題になるそうです。東京のある会社の社長さんは、六十万円だということで一応否認されたそうです。ところが、いや、実はこういうふうでと、いろいろ説明したら、その社長さんの六十万円を妥当だとして税務署のほうはお認めになったそうです。ところが、大宮の駅前のくだもの屋、大宮で超一流ですよ。埼玉で一等地、特等地、この駅前のわりと売れているくだもの屋さんが、十五万円じゃ高い、こういうことで否認されて、十二万円に下げられているわけです。これをあなたのほうで、いま施行令があるとか基準があるとかおっしゃいましたけれども、どういう施行令か、どういう基準があるか。私は、直近上位、直近下位というような通達が出ておることは知っておりますけれども、あなたたちの通達は非常に秘密が多いから——全部お出しいただいてもいいですけれども、そんなものはありますか。それから、いま言うように、六十万円の社長さんもいる、一方、十五万円は高過ぎる、十二万円でなければだめだ。これは税務職員の恣意によっているのですよ。何を基準にしてそれをいいと御判断になりますか。
  58. 中嶋晴雄

    ○中嶋説明員 法令と申し上げましたが、法人税法の三十四条に、過大な役員報酬について損金に算入をしない場合の規定がございます。それから、これを受けまして、法人税法の施行令の第六十九条にこの基準が書いてあるわけでございます。これは、先ほど申し上げましたように、一つは実体的な基準、一つは形式的な基準がこれに書いてございます。内容は、当該役員の職務の内容とか、あるいはその法人の収益、使用人に対する給料の支給の状況、その内国法人と同種の事業を営む法人で、その事業規模が類似するものの役員に対する報酬の支給の状況等に照らして著しく不相当であるというような場合に、そのこえる部分について否認をするということでございます。なお、先ほど具体的な例について只松先生お尋ねがございましたが、十五万円の給与を十二万円に査定と申しますか、税法上、差額の三万円を否認されたというお話がございました。いろいろな場合につきましていろいろなケースがあると考えられますが、くだもの屋につきまして私ども調べましたものを申し上げますと、報酬率について大体二%ないし三%、これは売り上げに対する役員の報酬の率で申し上げておりますが、その場合、六%ないし七%と、三倍程度の報酬率になっておるというようなものにつきまして否認した事例がございます。おそらく、只松先生の御質問はそれに関連しておるのじゃないかというように考えております。
  59. 只松祐治

    ○只松委員 私は法理論なり形式論議は多少わかっておりますし、それをしようと思ってない。実際上、私はいま二つの例しかあげませんけれども、あげればまだ一ぱい持ってきておりますよ。たくさんそういう例があるわけですよ。いわば恣意的なんです。あなたが言われておるように、法理論上はそういうふうになっております。それは認めたっていいですよ。しかし、実際上、六十万円でもいいというように認められたことがある。それは今度の、十五日締め切りのやつで、それを折衝された税理士さんから聞いた話です。しかし、十五万円でもだめだ。この六十万というのは、私たちは、そう言ってはなんだけれども、日本の官公吏なり、すべての例からいっても、六十万は高いと思いますよ。しかし、それでも認められるでしょう。何を基準に六十万円を妥当と見ておられるか。しかし、ぼくらが見ると、それは利潤率とかなんとかおっしゃるけれども、そういうところの店ならば、十五万円の月給くらいいいだろうとぼくらは思いますよ。ところが、十五万円は高い。あなたはきめないと言うけれども、実際上は、税務職員がこれは十二万円にしろと月給をきめてくれることじゃないですか、そういうことになるわけでしょう。これがほとんど全国の中小企業者の徴税される場合の一つ問題点になっておることは御承知のとおりだと思う。それならば、結論を言うならば、あまりにも税務署職員の恣意にまかせる、こういう形ではなくて、一定の基準をつくるなり——皆さん方が徴税される場合に、ないないとおっしゃるけれども徴税一つの基準というのをおつくりになっておるでしょう。それと同じように、こういうものは一定基準をつくるなり、あるいはドイツのように、教えなければならないということにするか、教えなければならないとしなくとも、教えるようにできるだけ指導して、この程度ならいいでしょうということで、相談づくでいくようにしてもらいたい。そのときは、幾ら聞きに行っても絶対に教えないんですよ。言っておくけれども、教えないで、あとで否認していくわけなんですから、教えるようにしていく。ドイツあたりでは、それは教えなければならないわけですから、教えておって、あとでそれを否認された場合は、裁判所で争ったって、財務高等裁判所で争ったって、国税庁側が負けるわけなんですからね。ドイツあたりはそこまで確定しておるのですよ。日本ではそれが全然なくて、税務職員の恣意でしょう。国家によって、そういう徴税問題や技術にそれだけの差異がある必要はないと思う。やはり先進的な国でそういうことをある程度——これは大きな会社の場合は、労働者が経営協議体の中に入ったり、全然違ってきておりますから、一がいに全部同じということは言えませんけれども、少なくとも、もう少しそういう中小企業のおやじさんたちが不安のないようにしていくことが、国税庁なり政治家の任務だと私は思っております。事務当局がお答えになったら、大臣、どうです。こういうふうにたいへん、びくびくということばでどうかと思いますけれども、中小企業者の頭を悩ましておるこういう問題について、もっと検討をする、こういうことを私はお約束いただきたいのです。法律上あしたからどうということじゃなくても、いまから確定申告についていろいろ調整が行なわれるわけですから、この機会において、そういう人たちにあまり——あなたたちがいじめるということじゃないけれども、結果的にはたいへんいじめられている、こういう形になっておる。ひとつ御善処をお願いいたしたいと思います。
  60. 中嶋晴雄

    ○中嶋説明員 先ほどからいろいろ役員報酬の否認の問題について御質問がございました。御趣旨は私どもよくわかりますので、税務官吏の現場におきます恣意によってこれが左右されませんように十分注意もし、監督もしてまいりたい、かように考えております。
  61. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいま国税庁から話のあったようにいたします。
  62. 只松祐治

    ○只松委員 ぜひ、ひとつ御努力をお願いしたいと思う。  次に、青色申告の問題についてお尋ねをいたします。これもたびたび申し上げておるように、自主申告のたてまえをとるならば、青色申告ぐらいは無条件に近くお認めになったほうがいいのではないか、こういうふうに申し上げておるわけでございます。ところが、近ごろ青色申告の取り消しというものがちょいちょい行なわれておる。あるいは取り消しが行なわれなくとも、そういうことをすると取り消しますぞという、いわばおどかしというものがよく行なわれるそうでございます。私たちがそういうことを言うからだけでもございませんが、青色申告を、いま国税庁当局は非常に奨励をされております。それでふえておるわけですが、一定期限たつと、これを減らしていく、切っていく、こういうことが行なわれる。これは言うならば、皆さん方の徴税技術上の問題でしょうが、やはり、青色申告をしろしろと言って、すると、大体そう違わない店の実態というものが把握されます。それを把握すると、今度はおどかしていく、それに従わなければ取り消すぞといっておどしたり、あるいは取り消しておいて、昔に遡及して取っていく、こういう形のものが出てきておるように聞いておりますけれども、そういうことがあるかどうか。青色申告に対して、皆さん方はどういうお考えなり、姿勢をとっておられるか、お聞きしたいと思います。
  63. 塩崎潤

    塩崎政府委員 青色申告という制度の問題といたしまして、私からお答え申し上げたいと思います。  この青色申告制度のおい立ちにつきましては、只松委員も深い御造詣をお持ちでございますので、くどくど述べる必要はないかと思います。昭和二十五年に、あの当時の税務行政の混乱を見まして、シャウプ勧告によりまして、企業の帳簿をつけることが税務署との間のトラブルをなくする最もいい方法である、それが、同時にまた、企業の経営の向上に役立つということで進められたわけでございます。特に問題は、御指摘のように、個人事業者のような、いままで記帳の慣習のきわめて乏しいところにあろうかと思います。そこで、昭和二十五年以来青色申告制度が果たした大きな功績は、私どもも高く評価しておるわけでございまして、おそらく、国税庁といたしましても——私も国税局長をいたしておりましたが、この青色申告制度の普及には、今後ますます力を入れていきたい、私の気持ちは、少なくとも、全納税者が青色申告になるということが理想だと思うのでございます。現在、営業者につきましては五〇%程度の青色申告者の割合となっておりますが、これが大体動かない、その原因はどこにあるか。これはやはり国税庁の行政も考えなければならぬ点もございますし、もう一点、只松先生が御指摘かと思いますけれども、いままでこれだけ普及し、さらにまた、私どもがすすめてまいりまして進歩しないのはなぜかという点は、やはり零細企業者にとつては、記帳の繁雑さもあるのではないか。確かに、発生主義あるいは実現主義、確定主義というような、むずかしい原理、原則を青色申告の中に実現することも大事でございますけれども、そういった原理、原則でない、ただ単に売り上げだけつけても、私は、いままでよりはより正確に所得の反映するような方もおるであろうし、さらにまた、そのことによって、税務署調査を受けた場合にいやな目にあわなくて済む場合もありはしないか、こんな気持ちを持っておるのでございます。しかしながら、一方、何と申しましても、農業のように記帳がなかなかなじまないところもございます。現在、青色と白色との間には専従者控除金額の開きがあり、このあたりどういうふうに調整してまいりますか、なかなかむずかしい問題があろうかと思います。さらにまた、私どものような給与所得者扶養親族の中にでも、家事労働等に従事する面もあり、それが生産労働との間に限界がつかない、そこでまた、青色、白色、給与所得者、これらの税負担のバランスを言われる場合もあります。非常にむずかしいのでございますが、私は、大筋といたしまして、現在のように青色申告と白色申告があり、ただいま御指摘のように青色を取り消す、そしてまた白色になるという、これは外国の税制にない、全く恥ずかしい部面がまだまだ残っておるのが実情だと思います。そこで私は、方向といたしましては、これから御指摘があろうかと思いますが、零細企業者につきましては記帳を緩和して——主義、主張も、原則、原理も大事でございます。会計原則も大事でございますが、ともかく、客観的な記帳を一歩でもすすめて、税務署とのトラブルをなくする方向に進んでまいりまして、できる限り早い時期にひとつ検討を進めてまいりたい、かように考えております。
  64. 只松祐治

    ○只松委員 確かに税金は、税法の困難さ、記帳の繁雑さということはありますけれども、私は、そこまではないと思ったのですが、いろいろ聞いてみますと、青色申告に一ぺんしておいて、税務署が故意にと申しますか、取り消す、こういうことが徴税技術上けっこうあるそうです。だから、こういうことは、ぜひなくしてもらいたいと思います。それこそ、自主申告制度というものは、これによって一歩も前進はしない。私は、多少いわばインチキと申しますか、皆さん方のほうから言えば脱税と申しますか、そういうものがあると仮定しても、やはり自主申告制度というたてまえにしておるならば、それが善導されるようにしていく、そのためには、一ぺんなったものを——きょう、私は、青色申告になった人が何%白色になっていっているか、データを出せというまで詰めませんけれども、青色申告になったのが白色申告にならないように、それから、何かあると、青色申告をやめてもらいますぞ、こういうふうにおっしゃるそうですけれども、そういうことばではなくて、青色申告のこういう点が不十分ですから、こういうふうにしていっていただきたい、こういうふうに指導するのが、私は、税務署の、あなたがいま御答弁になっておる趣旨を生かす道だと思う。末端は必ずしもそうではないそうです。きのうも訴えられたわけですけれども、ひとつ、ぜひ青色申告が減らないように、ふえるように、そのためには、そういう行政指導をする、こういうふうに、私はかたくお約束をいただきたいと思います。
  65. 中嶋晴雄

    ○中嶋説明員 ただいまの青色申告の問題につきましては、私ども全く同感でございまして、ここ二、三年、非常に青色申告の普及率は目ざましく伸びております。ただいま主税局長から御答弁がありましたように、ただいま申告所得税の有資格者の中で五四%のものが青色になっておる次第であります。八十万人程度になっております。これは今後も、私ども政策として大いに伸ばしていきたいというふうに考えております。これをただいま御指摘のように、青色申告を慫慂しておいて所得をつかんで、その上で白にまた突き離すというようなことは、私ども毛頭考えておりません。むしろ、青色の取り消しにつきましては一つの基準がございますけれども、慎重にこれを運用するように指導をいたしております。
  66. 只松祐治

    ○只松委員 ちょっと一つ忘れておりまして、あと先になって恐縮でございますが、法人税に入る前に源泉所得の問題でもう一つお尋ねしておきたいと思うのです。  私がこの前いわゆる高級バー、高級キャバレー等のホステスの問題についてお尋ねをした。そのときにいろいろお話がございましたが、そのときも時間がございませんでしたから関連するほかの問題は質問は省略したのですが、こういうものから、私は野党ですから、取れと言っておるのではないわけです。ただ、こういうところに課税されていない人々があるではないか、こういうことを言っておるわけなんです。それと反対に、そういたしましたところ、ある人が参りまして、実は千八百円までは取れませんのでと、こういうお話があったのです。私もいろいろ関連法律を調べたわけでございますけれども、確かにそういう面もございます。しかし、そういうことになるならば、日本にはたくさん経済の二重構造の結果臨時工というものがございます。あるいは日給月給というのがございます。こういう問題についても、まあ、それは公式の席上でございませんでしたから、私はあえてここで反論はいたしませんけれども、私におっしゃったような千八百円まではなかなか日給の場合は税金が取れません、こういう国税庁のお考えならば、当然に臨時工——さっき平林君が内職お話をいたしておりましたけれども内職はもちろんでございますけれども、臨時工その他も課税対象にならない、こういうことになると思う。しかし、臨時工の多くは二ヵ月以上継続して雇用されておる、こういうふうにおっしゃるならば、それはまた、私が言っているバーのホステスさんだって二カ月、三カ月でなくて、何年とおる人がたくさんおるわけですから、当然なるわけなんです。私はこういう人から取れと言っておるのではなくて、一方取らないでおきながら、こういう最低の、額に汗して働く者からは取っておるではないか、こういうことをこの前も言ったつもりです。ことばが足りないので、そこまで意を尽くせなかったわけですが、こういう臨時工、あるいは日給月給をもらっている人々、こういう人々に皆さん方はもっと考慮をしていただきたいと思いますが、そういう点について——あまりこういう問題をしつこく言うのはいかがかと思いますので、私はバーのホステスとか、そういう問題は重ねて申しませんけれども、そういうものと関連して、出せば、まだ私はたくさんありますよ。ただ、私が言えば、いかにもそれから取れと言うふうに皆さん方お考えになるし、何か取らなければならぬようにおっしゃるので、私は名前は出しませんけれども、こうやって高額所得者の中でひとつも税金を払っておらない人がたくさんおります。法人の問題はちょっとあとで私は聞きますけれども、にもかかわらず、一方、こういう臨時工や何かは一つも抜け目なくお取りになる、これは片手落ちではないか、こういうことを言っておるわけですが、臨時工やその他の問題について、皆さん方のほうで実態を把握しておられるか。私、きょう質問する予定でございませんでしたけれども、ついでに聞いておきたいと思います。お教えいただきたいと思います。
  67. 塩崎潤

    塩崎政府委員 先日来平林委員から御指摘がございまして、日雇い労務者につきましての丙欄の適用について昨年の政令改正がどんなような効果を生んだか、実際はどうであるか、こういう御指摘がございました。私どもも、法律の趣旨に照らしまして、日雇い労務者についての扶養控除申請その他の手続の繁雑さを避ける意味におきましてつくり上げましたところの丙欄、これが乱用されるのをおそれてこうしたのでございます。しかし、二カ月という一つの外形的な基準が、はたして実際調べてみまして、いいかどうか、これはもう少し実情に即して検討してみる必要があろう、こういうことを申し上げたのでございます。そんなような意味で、私は只松委員のおっしゃるようなこういった日雇い労務者あるいは臨時工の方々のような所得の低い方々に対する源泉徴収について、あたたかい目を持っていきたい、こんなような気持ちを申し上げたつもりでございます。一方、ホステスの問題でございます。扶養親族二人といった外形的な画一的な扶養親族を頭に浮かべ、稼働日数二十二日といった外形的なまた画一的な日数で組み立てております丙欄が、はたしてホステスにどの程度適用になるか、このあたり、もう少し検討してみなければならぬと思います。しかし、只松先生のおっしゃる点は、単にホステスという意味ではなくて、所得全般について、ひとつ公平に課税したらどうか、こういう趣旨に私も了解しておりますし、単にホステスの日給だけの問題ではないような気がいたします。それらを含めまして、全般的に所得の公平なる課税という意味で、税制も執行面も検討してまいりたい、かように思います。
  68. 只松祐治

    ○只松委員 次に、時間がございませんので、法人税を少しお聞きしたいと思います。一つは法理論上の問題、一つは実態上の問題です。  まず実態の問題からお尋ねをいたしますが、私は政治の民主化、近代化ということを常に念頭に置いております。政治の中で、予算、予算の裏づけをなす税金、これがやはりあらゆる意味で近代化し、民主化していかなければ、政治の基本もなかなか民主化し、近代化していかない。税金の場合に、その民主化や近代化というのはいろいろあると思いますが、そういう角度から私はいろいろ発言をずっと今日までしてきておる。その一つに、もっと機械化したり、いわゆるさっきから言っておる一つの例で、職員の恣意によらないで、公平にできるような方法を皆さん方としてもお考えになったらどうですか、こういうことも繰り返し私は言ってきておる。その一つに、電子計算機というものを現実に会社で使っておる。私が調べたときは二百八十社ですから、もう三百社をこしている会社が日本で電子計算機を使っておる。ところが、その当時税務署では電子計算機の操作ができる者は一人もいなかった。いまはだいぶ法人関係では幾つかの税務署がお入れになって、所得税でも麻布税務署か何かお入れになって、調査というか、実験をされておる、こういう段階だと思います。私は、やはりこういうものは、急いで近代化というか、機械化をしていかれる必要があるだろうと思います。ぜひ大臣にもそういう点御要望を申し上げておきたいと思います。皆さん方のほうでいま所得税計算の電子計算機をお入れになったということを聞いておりますけれども、ほかにそういう問題で近代化なり——私、この前ちょっと話しましたけれども、アメリカあたりでは、極端な例では、会社を調べるためには、まず公認会計士制度というものが発達しておりますから全然違いますよ。それから、会社が民主化しておりますから違いますけれども、それでもなおかつ、アメリカでもやはり脱税といいますか、しようとする。したがって、会社のロッカーの合いかぎとか、あぬいは双眼鏡で遠くから見たり何かしたり、いろいろ機械的なことをしておるようでございます。一例でございますが、日本の場合でも何かそういうものをお考えになっておられますかどうか、近代化についてお伺いしておきます。これは法人税と非常に関係がありますから、ひとつ……。
  69. 中嶋晴雄

    ○中嶋説明員 お答え申し上げます。  税務行政の合理化、機械化につきましては、昭和三十六年ごろから国税庁におきまして検討を重ねてまいりました。その間テストも種々やってきたわけでございますが、本年に入りまして、中型の電子計算機を国税庁に設置いたしまして、今後本格的に機械化に取り組むことになっております。ただいままでのところ、都内の数カ所におきまして法人税事務と所得税事務についてテストをやっておる段階でございますが、ただいまの予定では、四月から法人税事務につきましては、三十五署に拡大いたしまして、法人税決議書のうち主要な三表ぐらいのものにつきましては、すべて機械に持っていきたい、かように考えております。所得税につきましては、機械化がかなり問題がいろいろございまして、個人の申告書の様式等からも制約を受けるわけでございます。その辺から徐々に直していかなければならない問題もありますので、法人のような類型的な処理はできないかと思いますが、これも数年後に、都内はもちろん、徐々に全国に普及させていきたい、かように考えております。ただ、機械化をいたしましても、それによって人手が浮くという問題ではございませんで、むしろふえる人手をどの程度節約できるかというふうに私ども考えております。
  70. 只松祐治

    ○只松委員 ぜひそういう面についての御努力を進めていただきたいと思います。  そういう民主化、近代化とともに、現在の国税庁の機構、税務署の職員の能力、こういうものによりまして、同じ法律を適用しても、国民によってはたいへんに不公平な扱いを受けておる面がある。これも先日、私はちょっと調査率を話しましたけれども、埼玉の県民は大体四五%前後の調査率を受けておる。東京では平均二〇%か二五%です。ということは、平均ですから、まあ相当これは伸び方が悪いと見られるのは三年か四年に一ぺん受けているでしょう。しかし、受けないのは七年なり十年間も、もう大体これならだいじょうぶだというのは、調査されておりません。ところが、埼玉では、ひどいのは毎年やられている。四五%は、平均二年半に一ぺんですか。やらないので、四年か五年に一ぺんされておる。こういうことになるわけです。こういうふうにものすごく物価が上がり、インフレが進んでおるときに、この調査を受けるか受けないかというのは、課税対象者にとっては非常な影響を及ぼすわけですね。したがって、同じ法律を適用されても、実際上税金を納める納めないという問題については、国民側にとっては、同じ法のもとに悪平等である、こういうことが言えるわけなんですが、この前板橋税務署見学のときに、東京なら東京に職員をもっとふやすべきだという——単に職員をふやすだけではなくて、皆さん方は法の執行を国民に公平に行なう義務があるのですから、公務員ですから、そういう点をお考えになるべきだと思います。そういう点について、皆さん方のほうで本年度内に特段の配慮をされておるかどうか、お尋ねをしたいと思う。
  71. 中嶋晴雄

    ○中嶋説明員 ただいまのお尋ねは、法人税の調査のあり方についての問題だと存じます。法人税の調査につきましては、いわば循環調査と申しますか、循環周期で調査をするような調査体系も考えておるわけでございますが、仰せのように都市におきます法人の数が非常にふえ、その所得の内容も複雑になってまいりまして、相対的には都市所在の国税局、税務署に非常に負担がかかってまいっております。そのために、ただいま御指摘のようなアンバランスと申しますか、実調率のアンバランスが若干生じておることは、私どもも非常に遺憾に存じておる次第でございます。そこで、ここ数年来、地方の国税局、税務署から東京、大阪、名古屋等へ定員を配置がえをするということを進めてまいりまして、ここ数年で二千人ばかりが東京に集中してまいりました。また、その中でも、特に法人税事務にやはり同じく二千人ぐらいを集中しております。これはしかし、これで満足だという段階ではございませんので、御指摘の点を十分考えながら、今後も同じような方策を継続してまいりたい。かように考えております。
  72. 只松祐治

    ○只松委員 この点もぜひそういうふうにさらに進めていただきたいと思います。  そこで、できるだけ民主化し、機械化し、あるいは近代化をしていく、できるだけ税務職員の恣意によって国民が迷惑を受けないようにする、そういうことのまた一環としても、皆さん方がいろいろな業種別に収入金額に対する所得割合というものをおきめになっておるやに聞いておりますけれども徴税する場合にそういうものをおきめになっておりますか、あるいは、ないとおっしゃいますか。どうですか。
  73. 泉美之松

    ○泉政府委員 お話のとおり、業種、業態が異なるにつれまして、その収入金額に対する経費の率が違います。そこで、私どもといたしましては、調査上一応の目安といたしまして、所得標準率というものを目安に持っておりまして、これは収入金額百円当たりに対しまして、所得幾ら、したがって、逆にいえば経費は幾ら、こういうことを一つのめどにしておるわけでございます。これは個人について持っておりますが、法人につきましては、そのほかに効率表——これは個人にも両方通じておりますけれども、効率表というものもつくっております。法人の場合には必ずしも収入金額に対して同じような所得率にはなかなかならない。と申しますのは、経費がそれぞれの法人ごとにいろいろ違っておりますので、なかなか一律に律することができない。また、法人の場合には多く帳簿の記帳がございますし、したがって、調査の場合も、その帳簿の記載を基礎にいたしまして、それについて是否認を行なうという形になりますので、法人の場合には別段そういう標準率は持っておりません。
  74. 只松祐治

    ○只松委員 これは念のために申し上げてみますが、東京ではございません。東京以外のある国税局の割合がこういうものだと聞いておりますが、これに間違いありませんか。所得税ですね。日本料理が四〇%、芸者の花代が二%、待合が五一%、花代が一・五%、西洋料理が三五%、キャバレーは実査、バーは六五%、スタンドは五〇%、こういうことで大体皆さん方は見られておる、こういうふうに見て間違いございませんか。
  75. 泉美之松

    ○泉政府委員 ただいま申し上げました所得標準率、収入に対する所得の標準率は、私どもといたしましては、調査上の一つの目安としてはおりますが、それをもとに直ちに更正決定するというわけでもございません。したがって、それがいろいろ誤解を生むといけないという趣旨からいたしまして、この数字は、一部特定の業種に対しまして公開を要する場合は別といたしまして、極秘扱いといたしておりますので、いまおっしゃられました数字がそのままであるかどうかということについてお答え申し上げかねるのを御了承いただきたいのであります。
  76. 只松祐治

    ○只松委員 まあ、いまの御答弁わかりますので、それでけっこうでございますけれども、大体間違いないところだと思うのです。そういたしますと、一般の、いわゆるよほど特定でないところの人々は大体こういう数字によって課税がなされておるということだと思って間違いないだろうと思います。私が調べた、たとえば、これも赤坂の超一流の待合、料理屋ですか、ここのAという料理屋は九千万円の総収入に対して課税所得額が二千五百万円、Bというのは同じく九千万円に対して九百六十四万円、Cというのは一億一千万円に対して二千二百五十万円、こういうことになっておるやに聞いております。そういたしますと、一番少ない九千万円で九百六十万円というのは一〇%そこそこになるわけですね。全国の平均が四〇%というふうになっておるけれども、まあ、政治的や何かに非常に関係の深い赤坂かいわいの料理屋というのは、こういうふうに、課税対象額がきわめて低いということになるわけです。まあ、ここいらに調査に参りますと、私はよくわからぬからというわけで、そこのマダムかおばさんか何か知らぬけれども、そういう人がなかなか答えない。あとでお父さんにということで、電話をしたり何かしている。なかなか調査も困難なようでございます。それはそれなりに私たちも推察ができますけれども、ただ、全国平均に比してあまりにも低い。私は、さっきから言っておるように、バーのホステスさんなんかのことを言っているわけじゃないけれども、租税特別措置法の問題になっておる山林所得者、利子配当所得者あるいは株の配当所得者、こういう人のことを幾ら私たちが言っても、皆さん方は租税特別措置できまっておりますからいかんともいたし方ございません、こういう御答弁をなさいます。そこで、私はそういう問題だけで論争してもなかなか本委員会で白黒つきませんし、皆さん方の態度をお改めになりませんから、私はこういう顕著なものを調査して、ひとつこういうものは取るべきものは取るし、あるいはさっきから言う臨時工や家内労働者や、いろいろこうやって額に汗して働いたわずかなものでもお取り上げになる、そういうことはやめていただきたい、こういうことを言っておるわけなのですが、このかいわいのものについて発表できたら発表をしていただきたい。できなければしていただかなくてもけっこうですけれども、私がいま言った数字は大体間違いないだろうと思うのですけれども、こういうことでいいのかどうか。強い、あるいは大きな料理屋、こういうものは一〇%にも満たないような課税対象額にしかならない。それを税務署は認める。しかし、小さい日本料理屋あるいは小さい料理店や、そういう小商売をやっている人々は、やはり四〇%も五〇%も課税対象額として見られておる。こういうことでは、私はたいへん不公平だと思うのです。ひとつお答えをいただきたい。
  77. 泉美之松

    ○泉政府委員 いまのABCの各納税者の個別の事情は私存じませんのでございますが、個人にいたしましても法人にいたしましても、収入金額が同じであれば所得が同じというわけにはなかなかいかないだろうと思います。もちろん、収入金額が同程度でありますと、荒利益はそう変わったものではないと思います。ただ、その荒利益から純利益を導き出しますまでにいろいろな経費がございます。雇い人費でございますとか、減価償却でありますとか、そういったものが個々によって違い得ると思います。ただ、いまお話の例でございますと、いかにも極端に違うように見受けられます。しかし、それはいかなる事情か、個別に調査いたしてみませんとわかりかねますが、ただ、税務を執行するにあたりましては、大きなキャバレーやバーであるから課税をゆるやかにするとか、そういったことは毛頭いたしておらないはずでございますので、したがって、もしお話のような点がございますれば、個別に十分調査いたしまして、もし適正でない点がございますれば、十分是正をいたしたいと存じます。
  78. 只松祐治

    ○只松委員 私は、現実にあるから言っておる。これは名前を言わなければそのことを信用しないというなら、私は一々料理屋の名前言っていいですよ。それは関係者やらその料理屋やら迷惑をこうむるだろうと思って私は名前言わない。言わなければ答弁しないと言うなら、私は言っていいですよ。たとえば、この九千万円で九百六十四万円というのは、そこの役員をしておられるわけですね。これは通常、役員をされておると、いろいろ税務署のほうでもお手伝い願わなければなりませんから、多少のめんどう見るのは私も知っていますよ。それは組合長さんだか、役員だからなんだ。しかし、あまりにも額が違い過ぎる。皆さん方のほうで幾らかそういうものをめんどう見て、気は心ということは、それは行政上だってわかりますから、それはわかりますけれども、あまりにも違い過ぎる。いわゆる顔によってそういうものが違い過ぎることを意味しておるわけです。それだけじゃなくて、全体として高級料理店とかそういうところには、課税対象額というのは、私は総収入もこれで十分じゃないと思っております。総収入が十分でないのに、さらに課税率というのが——だから、さっきから言うように、東京は非常に調査が少ない。調査率が非常に低い。調査も十分行なわれておらない。したがって、総収入額が九千万円とかなんとかいうものではない。もっと私は多いと思う。総収入は、荒収入がこれだけあって、しかもなお荒利益というものがこんなに少ない。荒利益は課税対象額ですから、それがそんなに少ないということはけしからぬではないか。おかしいではないか。それも、私は重ねて言っておきますが、与党は税金取って政治を行なうわけですから、取れというか知らぬけれども、私は野党ですから、取れと言わない。国民はだれだって、一銭だって税金まけなさいと言いますよ。取れと言わない。しかし、逆にあなたたちは、零細企業者なり、さっき私質問したように、十五万円の月給は高いから十二万円にしろとか、臨時工から税金を取り上げるとか、全部取っておりながら、こういうところでは大きく魚をのがしておるではないか、こういうことを言っておるのですよ。だから、言えと言えば言いますが、いろいろ差しつかえあるから言いませんけれども、こういうことは適正に取っていただきたいということを重ねて要望いたします。大臣も、ぜひひとつこういう高額所得者には厳正な徴税をしていただきたいということをお願い申し上げたい。
  79. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 御趣旨ごもっともですから、できる限り努力します。
  80. 只松祐治

    ○只松委員 できるだけじゃなくて、ひとつ厳密にやっていただきたいと思います。  それから次に、時間がなくなってきましたから、法人税の中で、いわゆる利益がいつ確定するか、この問題について泉長官がお得意なところでありますから、ひとつお聞きしておきたいと思うのです。  国税通則法、それから商法の場合では、たとえば、一月に始まって十二月に決算が終わるとするならば、十二月の決算日をもって確定をする、こういうふうになっておりますね。ところが、法人税法では権利主義になっておって、株主総会のときに決定をする、こういうことに現在なっておるわけなんですが、そのようでございますか。
  81. 泉美之松

    ○泉政府委員 これは、私からお答えすべきかどうか問題かと思いますが、法人所得は、申し上げるまでもなく、決算開始の日から決算終了の日までの間に発生した損益に基づいてきまるわけでございます。したがって、本来は客観的には決算終了の日にきまっておるはずでありますが、その確認の方法といたしまして、会社が決算を作成いたしまして、株主総会にかけて、そこで金額がきまるということになるわけでございますが、しかし、申告をする場合には、その確定決算を基礎にいたしまして、税務法上の調整を加えてきめるということになるわけでございます。したがって、確定決算というのは、客観的に決算終了の日にきまっておるべき事柄の内容を確認するという行為であると思います。ただ、法人が行ないます配当につきまして個人の配当所得が確定いたしますのは、株主総会の日でないと確定しない、こういうことになるわけでございます。
  82. 只松祐治

    ○只松委員 いまはこの三法の中では一番商法が強行規定ですね。それから慣習法上も、いま大体決算日を確定日として税務署はおやりになっているわけです。けれども、理論上からいきますと、いまあなたが最後におっしゃったみたいに、日本のいまの資本家、株主は非常に弱くて、経営者が強いわけですから、株主総会で否決されることは少ないわけですよ。しかし、株主総会で、配当だけじゃなくて、いろいろなものが承認されなかった、否認された、こういうことになれば、これは決算の日ではなくて、株主総会の日、これが過半数の議決があったときに確定するというのが理論上は正しくなってくるわけです。しかもこれが、それぞれの法律によって違っておるわけですから、私は、きょうはこれを詰めようと思っておりませんけれども、皆さん方のほうでも御研究をいただいて、矛盾のないように、一本にしていただかないと、これは税法学上も一つの問題になっておるわけです。ある法律によれば決算日である、ある法律によれば株主総会の日である、こういうことでは、日本の国内法として困る。いままでは日本は大体独法が中心で法律がつくられてきておったわけです。そういうものと、それから戦後の税法や何か、 いろいろアメリカのものが適用され、シャウプさんが来て勧告されたりして、そういうものはまだこなし切れない、チャンポンになっておる面が幾つかある。そういうものの一つのあらわれだと思うのですが、ひとつ御検討いただいて、矛盾のないように一本にする。決算日なら決算日にする、あるいは株主総会の議決のあった日にする、こういうふうにしていただきたいと思いますが、いかがですか。
  83. 塩崎潤

    塩崎政府委員 おっしゃるように、配当軽課法という制度を昭和三十六年からとりまして、いままでと違って、配当が確定した際にまた税額がきまるというシステムが入りましたために、おっしゃるような疑問が多分に出てまいります。このあたり、制度的にひとつはっきりいたしまして、矛盾のないように、只松委員の御指摘のような方向で検討してまいりたい、かように思います。
  84. 只松祐治

    ○只松委員 大体どちらの方向をおとりになりますか。いまおっしゃったように、財主総会の日を中心、こういうことになりますか。
  85. 塩崎潤

    塩崎政府委員 御存じのように、配当軽課法は租税特別措置法でございます。しかし、現在のところは現存する、また、法人税負担にきわめて大きな影響を及ぼすものでございます。それを考えますと、配当確定の日が大事な時期になろうかと思いますが、このあたりは法制的にたくさんの問題もかかえておるかと思いますので、それも含めまして、ひとつ広範な角度から検討をしてまいりたい、かように考えております。
  86. 只松祐治

    ○只松委員 次に、贈与税の問題をちょっと聞いておきたいと思うのです。これも法律上の問題じゃなくて、実際上男女共かせぎで、学校の先生が男五万円、女三万円くらいで働いておった。二百万円ばかり一生懸命貯金したから、家を建てよう、こういうことになって、家を建てる。その場合に、主人の名義にするか、妻の名義にするか、これは問題が出てまいりますが、主人の名義にしても、これがいまの皆さん方のほうでは、十分の三、すなわち三割は贈与とみなす、こういう形で、勤労所得税で一ぺん引かれておりながら、こうやって共同で貯金をしてきて、そうしてまた、共同で家を建てても、三割は税金課税対象にする。二百万円なら六十万円になる。こういう皆さん方が現在実際上おやりになっている贈与税の扱い方、それに間違いございませんか。
  87. 泉美之松

    ○泉政府委員 おことばでございますが、そういった三割をやっているというようなことは、私は不敏にしてまだ知っておりません。只松委員がどこでお調べになりましたか、そういった事例をお聞きいたしました上で、調査いたしたいと存じます。
  88. 只松祐治

    ○只松委員 では、共かせぎして働いて貯金をして、家を建てた、その場合には贈与税は全然お取りになっておりませんか。
  89. 泉美之松

    ○泉政府委員 共かせぎで収入を得ました場合、日本のいまの夫婦財産制によりますと、それぞれの名義の所得者の収入になるわけでございます。したがいまして、その収入を積み立てておきまして、それによって、たとえば家屋を建てたという場合におきましては、その名義を二人の共有名義にいたしておきますれば、その建物を建てるに要した費用のためにそれぞれの収入のうちから拠出した割合で共有ということになるわけでございます。したがって、そういう場合には贈与税は取らない。ただし、それを一方の人の名義だけにいたしますと、他方の人の建築のために出した金が贈与になる、こういうことでございます。
  90. 只松祐治

    ○只松委員 よほど仲のいい夫婦でも、半分半分共有というのは少なくて、常識上は主人の名義にするわけですよ。それは、当然に奥さんの名前にするのは少ないと思うのです。たいてい主人の名前にする。そうすると、妻のほうから贈与がかかってくる。これが大体いま行なわれておる税務署の取り扱いですよ。調べてごらんなさい。少なくとも、共かせぎをして貯金をして家を建て、名前は幾ら仲のいい夫婦でも共有の家にしようというのは少ないと思うのです。それで、主人の名義にするということになったら、それくらいの贈与税は取らぬようにしたらどうです。これは長官だけでなく、大臣からも一ぺん御答弁願いたい。いまはほとんどといっていいくらい若い人は共かせぎをしておりますから、一定限度貯金をしたら家を建てよう、こういうことで、土地をやっと買い、おやじの名義にしても、今度は労金のほうから家の建築費を借りる、こういうことで建てておるわけです。その場合、よく二重課税を何とかかんとかおっしゃいますけれども、これは完全な二重課税です。所得税で払って、また贈与税で取られてしまう。これくらいおやめになったらいいと思うのですが、どうですか。
  91. 泉美之松

    ○泉政府委員 所得税と贈与税とはその目的が違いますので、所得税を払った後のできました資産を贈与すれば、これはまた贈与を受けた者が贈与税を受けることは当然でございます。いまお話の、夫婦共かせぎで金をためまして家をつくった、こういう場合、おことばではございますけれども、贈与税を取る場合は、つまり、妻の名義の建物にする、概していえば、夫のほうがかせぎが多いはずでございますから、したがって、家屋を建てるというような場合、夫のほうが金を出すのが多いはずでございます。したがいまして、その多いほうの金を出したにもかかわらず、妻の名義の家屋にする、それは夫から妻に贈与があった、こういうふうに見れることになるわけでございます。そこで、今度の相続税法改正で、贈与税につきまして、婚姻生活二十五年以上の場合におきましては、生前に居住用不動産を贈与した場合に、二百万円の特別の控除をする、こういうふうな軽減の道を開くことになっておるわけでございます。
  92. 只松祐治

    ○只松委員 ほかのことは私聞いていないので、いま言ったような問題が現実にあるから、そのくらいは取らないほうがいいじゃないかと言っておる。それを取るか取らないかだけ答えてください。
  93. 泉美之松

    ○泉政府委員 贈与税は、御承知のとおり、四十万円の控除ということになっておりますが、もっとも、それを同一人から継続して三年間にわたって二十万円以上の贈与がありますと、その二十万円をこえる部分課税ということになります。そこで、いまお尋ねの、夫婦共かせぎで家をつくったという場合に、問題は一年の収入ではなかなかそういうわけにいきません。年々共かせぎで得た収入をためておきまして、そして何年かかかって初めて家を建てるだけの資金がたまるわけでございます。そこで、年々共かせぎで得た収入を貯金にするとか、あるいは株を買うとかいうような形で運用していくことだと思うのでございますが、そういったことで各自の分が明確にされておるということが必要でございまして、そういうことになりますと、年々の収入を積み立てておったのだということで、それからその積み立てた金で家を建てたのだということになるわけでございます。その場合に、先ほども申し上げましたように、只松委員は夫婦共有にする場合は少ない、こういうおことばでございますが、もし、妻の名義にしたけれども、それについては贈与税がかかるということになりますれば、共有名義にお直しになれば贈与税は課税しないという扱いにいたしておるわけでございます。要は、その贈与と見られるような金がどういうふうにして蓄積されたかということの実証と、それからそのあとどういう趣旨でそういう名義にされたか、贈与税が課税になるということがわかっておられれば共有名義にされたであろうと思われますので、そういう場合には、共有名義にお直しになれば贈与税は課税しない、こういう扱いにしているわけでございまして、法律と実務との調和の点、これはなかなかやっかいでございますが、さりとて、贈与という事実があったにもかかわらず、そういった場合はほっとけというわけにもまいりかねるだろうと思います。やはり、贈与という法律の問題と実情とをあわせていくことが必要であろうと思うわけでございます。
  94. 只松祐治

    ○只松委員 国民はそんな税法やなんか知らないですよ。あなた方みたいに知っておると思ったら大きな間違いです。税法を知らない、そして家を建てる、建てると、税務署の人間が、どこから金が出ましたかと、こう来るから、いや、こうやって共かせぎでためたんですと、こう言ったら、そうですか、それなら二百万円なら六十万円こうですよ、こう言ってくるのですよ。さて、そこで共有名義にするのしないのと言って、とうちゃんとしておけばいいじゃないか、こういうことなんですよ。だから、あなた方みたいな説明したって、国民でわかる者は千人に一人もいないのですよ。だから、もっとわかりやすく、共かせぎしてためた金ぐらいは贈与税は取らないようにしたらどうですか、こう言っているのですよ。だから、共かせぎということが明確になって、それでためたのなら贈与税は取らない、こういうふうにおきめになって、通達を出したら、それできまるのです。  逆の問題をぼくが出しましょうか。銀座かいわいからそこらにバーやそういうものが何百軒、何千軒、何万軒とある。あなたたち贈与税取りにいきますか。取った件数言ってごらんなさい。昼間行ったら、バーあたりは店締まって、いないでしょう。税務職員は夜働かないから、夜調査しないでしょう。きのうもだれか言っていたけれども、それじゃ、国税局長やら署長あたりに交際費をもっとふやして実態調査に行かせようか、こういう話です。あそこらの店は権利金は全部一軒あたり何千万円ですよ。どこであなたたちお取りになりましたか。何の税金をお取りになりましたか。片一方そういう大きなところは全部抜け穴があるのだ。取らない。それで片一方は、一生懸命働いたこういう夫婦共かせぎの人まで——日本の政治が悪いから、共かせぎしなければ食えない。だから共かせぎしている。日本の住宅政策が悪いから、一生懸命働いて住宅を建てる。そうすると税金をかけてくる。片方、そうやって、東京のどまん中で堂々と店を張って、何千万円のバーを譲り受けるけれども、それでも贈与税はかかってこない。こういうでたらめな政治をやめなさい。税務行政というものは、いま政治の一番中枢をなしているのですよ。そういうことをぼくら言っているのです。だから、ぼくらこういうことを調べてきてなにするのは、幾らあなたたちにそういうことをどうですかともの静かに言っても、なかなか聞かないで、つべこべつべこべそういうふうな議論を展開していくからです。ぼくらそういうことを論議しているのじゃない。少なくとも、共かせぎをやっているそういう人ぐらいは、政治の力で税金をかけないようにしたらどうですかということを言ったら、大臣は、できるなり、できないとおっしゃったらいいし、あなただって、もう少し正直に言ったらいい。ぼくら論争もやりますが、論争をやったって、ここでは時間を空費するばかりだから、実態論を持ってきて、実態で言っているのです。こういうことだから、こんなわずかなもので、全国で何億円あるか知らないけれども、そんなものを取るのだったら、夜超勤手当を出して、銀座あたりを全部調べてごらんなさいよ、何十億の税金すぐ取れますから。しかし、それもぼくは野党ですから、取りなさいと言っているのじゃないですよ。とにかく、片一方では取らないでおいて、まじめに働く者だけから、取りやすい者だけからあなたたちは取るじゃないか、こういうことを常に言っている。だから、そんなことまでぼくは本論としては言わないけれども、少なくとも、共かせぎでやった分ぐらいは、それが明らかになったら免税にする、このぐらいしたらどうです、大臣
  95. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 今度法律の改正で、二十五年間一緒におったといういまお話のような夫婦間の問題は解決すると思いますが、とにかく、いまの法制ではなかなかそういうわけにはいかないわけです。今後の税制改正問題の一環として、ひとつ検討することにいたします。
  96. 只松祐治

    ○只松委員 そう明確な欠陥でもないとぼくは思うのですけれども、これは通達なりなんかでできる方法があるのじゃないかと思うのです。どうしても法律を変えなければならぬということならそうですけれども、その程度のことは何かできるのじゃないかと思う。ひとつ、御検討いただきたいと思う。  最後に、日本税務協会というのがございますけれども、この予算あるいは事務局機構、その他国税庁とどういう関係にいまあるか、ひとつお答えをいただきたい。
  97. 泉美之松

    ○泉政府委員 日本税務協会はたしか昭和十九年にできた財団法人でございまして、税の知識を国民一般に広げる、そうして納税者から税についていろいろ相談があった場合に、その相談に無料で応ずる、こういうことを目的としてできておるのでありまして、国税庁といたしましては、これに対しまして年々補助金を交付いたしまして、その活動を補助いたしております。この補助金は四十年度三千万円でございまして、四十一年度の予算におきましては四千万円近く予算が計上されております。
  98. 只松祐治

    ○只松委員 本部の事務機構はどういうふうになっていますか。それから末端の事務機構はどういうふうになっていますか。
  99. 泉美之松

    ○泉政府委員 内部の事務機構と申しますか、税務協会の会長とそれから理事理事の中に専務理事が一名おります。そして、全国で現在のところ十二カ所に支所を設けまして、その支所におきまして、いま申し上げました納税者から税についてのいろいろな相談があります場合に無料相談に応じております。また「税と財」という雑誌を発行いたしまして、税についての知識の普及をはかると同時に、いろいろな部外の講師などに依頼いたしまして、税法改正があります際などにおきましては、その改正の内容の周知徹底をはかる、こういった仕事をいたしております。
  100. 只松祐治

    ○只松委員 一年間の相談件数は、大体主として無料相談を中心におやりになっておられるのなら、相談件数はおよそどのくらいですか。
  101. 泉美之松

    ○泉政府委員 私いま記憶がさだかでございませんけれども、全国十二カ所と、それから東京には本部と、それ以外に、若干の特定の日にだけ相談をするところを設けておりますので、そういったものを全部合わせまして、年間の相談件数というのが十万件であったと思いますが、正確なことはあとで調査いたしまして、御報告申し上げます。
  102. 只松祐治

    ○只松委員 私も、時間もありませんし、これが本題でございませんので、きょうはこの程度質問をやめておきますけれども、この問題については、他日また質問をいたしますから、よく調査をしておいていただきたい、このことを要望いたしまして、質問を終わります。
  103. 三池信

    三池委員長 小林進君。
  104. 小林進

    ○小林委員 私は、税制改正問題点等についてお伺いをいたしたいと思うのでございますが、その前に、実は先般、大蔵委員長のお肝いりで板橋税務署一つ見てまいりました。見たのでありまするから、その所感を申し述べないのもいささか礼を失すると思いまするので、所感の一端を申し述べて、大臣のお考えもお聞きしておきたいと思うのであります。  私は率直に言って、あの状況をながめて、世の悲惨なる姿、悲壮なものの感じを受けたわけでございまして、一年間営々として働いたその所産を取られる話の会談が続けられているわけでございまするが、何かあの状況をながめていると、どうも刑務所の玄関から入って、刑務所の作業場をながめているというふうな感じです。私は社会労働委員会におりまして、低所得階層生活をながめたり、あるいは生活保護者の生活をながめたり、あるいはまたスラム街といわれるような地区をながめたりしてきましたけれども、そういう地区から受けるよりもさらに陰惨な気持ちをあの税務署の中で感じとったわけでございます。それは、税務署の職員が悪いというのじゃありませんよ。第一には、その建物から受ける感じ、第二番目は、やはりあのごちゃごちゃした狭い部屋の中で、何百人も押し込められたような形で順番を待ちながら、どれだけ取られるのかわからない心配顔をしながら自分の順番を待っているあの悲壮な顔だち——中には言っておりましたよ。もろ税務署へ来たら、判決の前に立った犯人と同じみたいなものでございまして、何ぼ私どもが正直な話をしたって、まだあるのだろう、まだあるのだろう、まだ隠しているのだろうと言われて、とても、正直なことを言ったってだれも信用してくれない、やけのやんぱちでございますよ、こういうような話を、視察の途上、私は待ち合い室の人たちの仲間と一諸になって話したときにしておりました。一体いまのようなああいう建物の中で、ああいう大勢の人たちを押し込めて、ああいう形で申告をさせている、この現状のままでよろしいと大蔵大臣はお考えになっておるかどうか、お答えを願いたいと思います。
  105. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 お答え申し上げます。  税務署は国民と非常に接触の深い場であります。この接触の状況は逐年改善をされてきておる。ことに、これを一年一年とってみるとそう気づきませんが、十年前はどうだったか、あるいは十五年前はどうだったか、私は雲泥の差があると思うのです。しかし、そうは申しましても、今日なお非常に親しみを持って接近していただくという状況になり切っておるとは思いません。そういう状態が、いま御指摘の建物の状況だとか、あるいは内部の手狭な状況とか、そういうようなところにもしありとすれば、それはそうむずかしい問題じゃない、そういうことで今後もそういう環境の改善につきましては努力をしていかなければならぬ、こういうふうに考えます。ただ、国民だれでも国家の運営というようなことばかりが頭にあるわけではございませんから、なるべく少なく納税するほうがいいという感じはあると思います。しかしわれわれは共同の家計として国家というものを経営しているのですから、これへ何がしかを拠出しなければならぬ、その拠出の基準に従いましてやるわけですが、その手続が繁雑にならぬように、これは私はそういうふうにしなければならぬと思います。税法が非常に繁雑だというような面で国民に迷惑を及ぼしておるということもあろうかと思います。税法自体の問題も検討していかなければならぬ。さらに、その税法を運用する税務当局の国民に接する態度、そういうものにつきましても、できる限りなごやかにやっていかなければならぬ、こういうふうに思います。できる限りそういう方面で努力していきたいと存じます。
  106. 小林進

    ○小林委員 私は、税法をわかりやすくするというふうな問題は、ここでしばしば論じられておりますので、この点は重複を避ける意味において省略をいたしたいと思います。税務署の職員の態度についても、それは私どもが十五年前あたり、あるいは十二、三年前ですか、農業課税の問題等を中心税務署へ大挙押しかけていった当時の税務署の職員の態度等からながむれば、確かに大臣のおっしゃるように、進歩のあと顕著なるものがある。その努力を認めるにやぶさかではございませんが、ただ私は、いまひとつ環境の整備、これは非常に重要じゃないかと思うのでございまして、何もあそこで努力をして、戦場のように働いている下級の税務職員の態度を私はここで云々しようなんという気はございません。ああいう人たちはもっとひとつその努力に報いるように、むしろあたたかいような経済的待遇あるいは時間的余裕等も与えてもらいたいというのが私の本旨ですが、きょうお願いしたいのは、環境の整備の問題です。あんなきたないバラックの中に入れて、満足に日の入らないようなところで半日も一日も待たされたら、全くこれはいやになってしまうと思うのです。ちょうと死刑の宣告——死刑と言っちゃ少し大げさですけれども、宣告を受ける前の罪人みたいなものだ。どうせ国民ですから、やはり納税の義務もあるでしょう。日本国民ですから、気が向けば寺院や教会等にばさばさと金を気持らよく出すという、人間には一面のそういう気持ちもあるのですから、その気持ちをやはり環境の中で育成をしながら同じ税金でも気持ちよく出して、ほがらかな気持ち税務署の窓口をあとにできるような、そういう心づかいができないか。まだまだあそこへ行ってみると権力支配の形だけが残っている。それは決して個々の税務職員を言うのじゃないですよ。国自体の姿勢、まあ大蔵大臣の姿勢ですね。まあ、権力支配だ、こっちはえらいんだから、どこへでも呼びつけておいて、痛いいすの上でも腰かけさせて、しびれを切らせておいて、いささか参っているところへひとつどすんと、おまえの課税はこれだから払っていけ、こういう強圧をかけたほうが取りやすいじゃないか、そういうふうに憶測されるような一切の環境があそこへでき上がっている。そういう意味において、第一番には、具体的に私の主観を述べれば、税務署なんというものはきれいにしたらいいですよ。もっとりっぱな建物を立てて、余裕のある形にして、そうして、あなたの腰かけているようないすにも腰かけさせて、コーヒーの接待ぐらいして、御苦労さまでございますと、こういうふうな形でひとつ税の交渉でもおやりになったらどうか、こういう私見を用意したわけですが、何か道々聞きますと、何しろ大蔵省というところは歳入歳出をあずかるところだから、大蔵省が先にそういう税務署なんかのりっぱな建物を建てたり、そういう余裕のある環境をつくると、他省あるいは他の官庁に対する示しがつかぬから、やはりこっちのほうの建物その他の内部の環境整備は一番あと回しだというふうな遠慮もあってというふうなお話がありましたが、もしそれが事実であるならば、そういう考え方はやめて、これは庶民との折衝の一番深い場所ですから、まずああいうところからひとつほんとうの民主主義らしい雰囲気をつくり上げ、権力支配の関係はなるべく隠しておいて、そういうのが形にあらわれないような心づかいをやってもらえないか。一体、今年度において税務署の建物や環境整備のために幾ばくの予算が計上せられているのか、お聞かせ願いたいと思います。
  107. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 政府委員からお答え申し上げます。
  108. 泉美之松

    ○泉政府委員 四十一年度予算におきましては、庁舎等の新営整備費といたしまして、二十九税務署分二十億八千四百万円を計上いたしております。なお、このほか名古屋国税局と中税務署の庁舎新営、これは継続事業でございます。それから醸造試験所の新営費が別途計上されております。なお、付属機関であります税務大学校の本校、広島研修所及び大阪研修所におきまして一部庁舎の建て増しをいたす予定になっております。
  109. 小林進

    ○小林委員 新設は二十九カ所で二十億円というのでありますから、大体一建物七、八千万円でございますか、そういう勘定でございましょうが、どうかひとつ、二、三年もいたしましたらまた手狭になるような、そういうかっこうじゃなしに、本格的に、皆が気持ちよく入って、気持ちよく税金の確定を受けて、気持ちよく帰れるような環境づくりをされるように、御努力をお願いいたしておきたいと思います。  次に、私は税制改正問題点についてお尋ねをいたしだいと思うのでございます。  今年度の減税の規模と公共料金の値上がりとの関係についてお尋ねいたしたいと思うのでございますが、今回の税制改正による減税の規模は、これはもう予算委員会でも何回も論ぜられたことでございましょうから、なるべく重複を避けるようにして問題の中心に近づいてみたいと思うのでございます。  国税、地方税及び関税を含めて、四十一年度が二千三百四十六億円、平年度が三千六百二十一億円の減税をやっていただく、そのうち、初年度の内訳が、国税が二千五十八億円、地方税が二百五十七億円、関税が三十一億円、平年度において、国税が三千六十九億円、地方税が五百十五億円、関税が三十七億円、こういうふうにきめられたのでございまするが、これに対して、主要な公共料金の改定に伴う四十一年度における見込み額が一体どういうぐあいになっているかと申し上げますると、約三千五百六十九億円でございまして、消費者米価が、これは今年の一月から値上がりをいたしまして、これに基づく増収といいまするか、これが六百二十四億円、平均八・六%の値上がり、私鉄運賃が一月から改定をせられて三百一億円、平均二〇・二%の値上がり、国鉄運賃は、これは若干期間がずれましたが、その見込み額が四十一年度一千六百三十億円、平均いたしまして二五%の値上がり、郵便料金は、まだきまりませんけれども、大体七月を目途にいたしまして今年度の増収二百八十六億円、それから政府管掌健康保険、これは社会労働委員会では保険三法の改正と称して、今次通常国会における重大な論争の焦点になりましょう。政府の思うままにいかぬかもしれませんが、政府側の計算に基づけば、やはりこれは四百二十八億円ふんだくろうという、それから国民健康保険、これも、ほんの概算でございましょうけれども、三百億円くらいの増収を見込んでおられまして、以上合計が三千五百六十九億円の見込み増収になっておるのでございまするが、この二つの数字を合わせてみますると、減税によって二千三百四十六億円だけ所得の増加を生ずるが、反面、公共料金の値上げ、いま申し上げました三千五百六十九億円によって、減税の効果は何にもあらわれてこない。むしろ差し引きずれば、実質的な赤字を生活の中に負わなければならないという結果になってくるのではないか。こういう問題を一体大蔵大臣はどういうふうにお考えになっているか。公共料金の値上げは国民全般影響する、減税は国民全般の問題でないかというふうなこともお考えになっているか知りませんが、いま少し科学的、論理的に、大衆が納得できるような御説明をお願いいたしたいと思います。
  110. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 お答えいたします。  いま減税と公共料金などとを対比して、国民の負担をというお話でございますが、これはそういう一角から見るとそういう数字が相対立するのであります。しかし、問題は、国民の所得が一体どうなるかということです。私どもは経済の基調を回復へ持っていく、こういう努力をしているわけで、来年度は何としても七・五%実質の国民総生産を上げるということを実現したいと思うのです。それに伴いまして国民所得も同様に上がっていく、こういうことになる。そういう全体の経済体制の中でお考えを願いたい。これがまず一点であります。  それからもう一つの問題は、いま小林さんの御指摘の公共料金などの問題でありますが、これはそれぞれみんな理由があってやっておるわけであります。たとえば、その中で一番大きな問題は、国鉄の運賃の問題だと思います。これは、ただ単に料金の引き上げをするというだけのものじゃないのでありまして、料金の引き上げによりまして何をするかというと、いまの過密ダイヤの解消、また、新線の建設、改良ですか、それからさらに、安全操業ができるようにという施設、こういうことをして、サービスとなってこれが国民に返っていくわけです。そこをまた考えていただきたいと思います。それからさらに、そのサービスとなって返っていく途中におきまして、これが物件費に使われる。物の費用に使われるものもあるし、人件費として使われるものもありますけれども、それらは給与として直接国民所得の増強につながるものもあるし、また物件費として使われるものも、回り回って、結局人件費に分化をされ、国民所得の向上につながって、先ほど申し上げましたような、総体として国民総生産七・五%というものにつながりを持つわけでありまして、決して、ただ単に国民の生活を圧迫するというだけのものではない。したがって、減税の問題とこれを対比することが理論的に困難がある問題じゃないか、私はそういうふうに考える次第でございます。その他の公共料金の問題、いずれもさような意味を持っているものでありまして、これを減税の額と相殺勘定をしようとするその発想自体が、私は問題がある、かように考えておる次第でございます。
  111. 小林進

    ○小林委員 これは何回も論ぜられた問題でございましょうから、ここでまたあなたと古い理論を繰り返しても、これは全く平行線ですよ。平行線ですが、国鉄がよくなったから、サービスがよくなったんだから、だから実質的税金の増額に対する苦痛がなくなるのだ——なくなるとはおっしゃらなかったけれども、間接的にやはりペイしておるから、それでいいじゃないかというそのあなたの考え方は、どうしても私は了承できない。これは国としてはあらゆる税金を、ただ国鉄のみならず、国民のしあわせと国民の生活の向上のために仕向けるというのはあたりまえなんです。むしろ、それあるがゆえに、公共料金が上がったからといって、それほど減税にならなくてもそれはあたりまえじゃないかというあなたの考え方自体は大きな間違いで、了承できません。  ただ、第一番目の、国民の総生産を上げることによって個々の所得がふえていくから、そのふえた所得の中からやはり定められた新しい税改正に基づく税金を納めることは、それほど苦痛ではなかろう、こうあなたはおっしゃるのでございますが、これは去年もおっしゃった。前の大蔵大臣もそういうことを言っている。ところが、いまも言うように、生産の実態からながめて、この税金と国民の生活関係を国民は一体どう受けとめておるかといえば、毎年毎年実質的に苦しくなってくる。これは実感を持って国民が言っておるのですが、これは間違いですか。実質上税金が高くなって、苦しくなって、そして自分たちの生活の中に占めるいわゆるエンゲル係数の食事代などというものが十一年越しに上がってきておる、こう言っておるのですから、その中であなたは決して国民の生活は苦しくなっていないのだ、そういうような確証をどこでお出しになるのか、お聞かせを願いたいと思います。
  112. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 昭和四十年度は国民総生産、したがって国民所得は伸び悩みであります。名目にすると伸びておりますが、しかし実質的には二・何%というような状態、これを大きく言いますと横ばいのような状態と言ってもいいと思うのです。ですから減税した、その減税の効果をはだに感じないようなところがあると思う。ところが、私どもはいま昭和四十一年度の問題を議論しておるわけです。四十一年度には、総出産を、したがって所得を七。五%ふやす、こういうことを申し上げておるわけです。そういう際に減税三千六百億円、初年度にするとそれが二千三百億円、そういうことでございますが、これは今日ただいまの時点ではまだ実施されていない。したがいまして、国民はその実感を持たぬかもしらぬが、今年度経過する、そういう時点になりますと、はだに感ずるような状態になる、かように考えます。
  113. 小林進

    ○小林委員 あなたは、四十一年度の減税を論ずるのだから、国民はそのうちにはだに感ずるだろう、こうおっしゃるが、また同じような繰り返しになりますから私もあまりこだわりたくないのでありますけれども、経済企画庁長官は、七・五%の中産の伸び、所得の伸びの中にインフレといいますか、物価の値上がりはことしは五・五%で押える、差し引きすれば実質二%くらいの伸びになるのではないかと言うのです。いままでこういう見通しが、ここ十年間——物価の値上がりを五・五%に押えるとか、四・五%に押えるとか言ってきたが、それが政府の予想どおりいった年がありましたか。参考までにお聞かせ願いたいのでございます。
  114. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 四十一年度は実質七・五%の成長を達成しよう、名目で言うと一一%ちょっととえる程度になるのです。実質で七・五%なのでありますから、これは相当の所得の増加となってあらわれる、かように考えておるわけであります。過去において経済計画の達成が、計画と実績がそごをしております。これは、民間経済の主導型の状態下におきましては、私はどうしてもそういう状況が出てくると思う。今回は財政主導型なんです。相当過去の事例とは変わってくる、かように考えているわけでありまして、私は、今日見通しといたしまして、企画庁で言う七・五%、これは相当確度の高いものである、こういうふうに考えております。
  115. 小林進

    ○小林委員 あなたは、過去のそういう経済の見通しが、私が言うまでもなく、間違っていたということを率直にお認めになりましたね。今年度はあなたの手で国家財政が組まれて、財政が表面に立って、民間投資や民間の設備資金では、高度経済成長政策の失敗で弱り切ってしまっている、もう民間の投資家もみずから経済を刺激するだけの力がなくなってしまった。野たれ死にした形だから、いよいよそういう独占や民間業者の陰にいて、彼らを援助し協力しながら日本の経済を独占の期待の中にやってきた大蔵当局、自民党政府ももう陰に隠れているわけにはいかない、みずから本体の姿をむき出して、今度は国自体、大蔵省自体が前面に立って、みずから国民のあらゆる金を全部しぼり取って、しぼり取る金がなくなったものだから、とうとう約束まで違反して、固定資産税なんというのは四十一年まで三年間据え置きにして、上げないという国家、国民に対する公約までも土足にけって、まるで草をむしるようにみんなしぼり取ってきて、そうしてあらゆる金を集めて進軍ラッパを吹こうというのだ。こういうのでありますから、今度はいわゆる財政経済の主導権は、民間業者にあらずして、あなたの手みずからで、あなたがおつくりになったのだから、これがもし見通しがまずかったら、ほんとうに腹を切らなくちゃいけないと思います。いままでは民間の財政投資の思惑なんだから、政府は経済の見通しを間違えました。昨年度は四・五%しか物価は上がりませんと言いながら、実績は七・八%も八%も値上がりしている。倍以上です。その倍以上だって、あなた方の統計ですから、この数字の中には相当からくりがあるらしい。実際はもっと上がって、もっとインフレで痛めつけられているのだけれども、残念ながら、こっちにはそれをこまかく統計する資料も金もないから、政府資料に依存しているだけの話だ。その政府の出した資料だけでも七・八%から八%というべらぼうな値上がりをしている。しかし、その責任を負おうとしない。だれも責任を負おうとしない。こういう無責任な政治のあり方というものは、断じて許されるべきではないというのが私の持論なんです。私がもし大蔵大臣あるいは企画庁長官ならば、これくらい大きな見通しの違いがあって、国民にこれだけの苦痛を与えれば、これは即時に辞表を提出して、責任を負って私はやめます。腹を切って国民に陳謝いたしますよ。いまの内閣に、そういうふうに、これほどの経済の見通しを立てて大きなめんどうをかけながら、腹を切って責任をとりますというのが一人もいない。まことに政治家の堕落ここにきわまれりと言わなければならぬのでありますけれども、まあしかし、いままではいわゆる民間の主導のもとに行なわれた経済財政の運営、経済の運営でありますから、見通しを誤った。今度は私がやるのだ、だからそれほどの見通しの誤りはあるまいと、いまここで大きくたんかをお切りになりました。この勝負は一年もたてば結果はおのずからあらわれてくるのであります。どうですか、そのときもしあなたのおっしゃるような見通しが間違った場合には、腹を切りますか、責任をとりますか。国民に向かって言明をしていただきたいのであります。
  116. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 政治は何ごとによらず責任政治の大道を歩まなければならぬと思います。財政についてもその例外ではない、かように考えております。
  117. 小林進

    ○小林委員 そうすると、名目一一%、実質七・五%、物価の値上がりが五・五%、この数字を逸脱した場合には、責任をとって、腹を切られますか。
  118. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 実質七・五%という経済計画、これは私は非常に確度の高いものである、かように確信しています。
  119. 小林進

    ○小林委員 私は説明はもう求めておりません。腹を切るか切らないか、責任をとるかとらないか、イエスかノーかだけをお伺いしておるのであります。どうですか。
  120. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 さようなそごが生ずるということは、私はゆめゆめ考えておりませんです。
  121. 小林進

    ○小林委員 生じた場合にはどうなりますか。
  122. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 生じないようにいたします。
  123. 小林進

    ○小林委員 経済は動いているのであります。神の力をもってしても間違いがあるかもしれません。見通しを誤ることがあるかもしれません。あなたの見通しが誤ったときにどういう態度をおとりになりますか。
  124. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 その際はその際に善処します。
  125. 小林進

    ○小林委員 そこで、委員長に私はお伺いいたしまするけれども、いまの大蔵大臣と私との応答はお聞きのとおりであります。大臣の御答弁はこれでよろしゅうございますか。私の質問に対して、大臣はお答えになっておるとお考えになりますか。委員長委員長の答弁をお尋ねいたしておきます。それによりましては、私はこの席を動きません。そういうような責任のない答弁を私どもは聞いておるわけにはいきません。国民の負託を受けてこの委員会の質問に立っておる以上は、やはり大臣から責任のある答弁をお尋ねしなければなりません。
  126. 三池信

    三池委員長 お答えいたします。  大臣の答弁の適否を私が判断する立場でありませんので、御納得がいかなかったら、何回でも繰り返し小林委員は御質問されるように申し上げます。
  127. 小林進

    ○小林委員 それでは何回もお尋ねいたしますが、大臣、ほんとうにもういままでの経済見通しや物価の値上がり等に対する政府の無責任な、私どもから言わせれば、放言ですよ。そういう放言のために国民はどれほど迷惑をこうむっておるかわからない。しかも、それに対して、政府はいつでもその責任をとるとかあるいは国民に経済の見通しを間違って申しわけないとか、あるいは迷惑をかけたとかいう、そういう反省の言をいままで一つも聞いたことがない。これは実に私は嘆かわしい政治の風潮だと思っておる。ほかの、何も政治の指導力もないようなおざなりの大臣ならともかく、せめてこれから総裁街道を急いで、末には総理大臣にもなろうというのだから、私は、あなたに少なくとも旧来のそうした政治家や為政者のそんな無責任な放言を幾らかでも改めていきたいという、国民に密着して、国民の前に、ほんとうになるほど福田さんはりっぱだわい、ほかの大臣とは違うというくらいのすっきりした姿を見せたいという好意的な質問をしているのです。その私の好意的な質問を、やはり一閣僚らしい責任をとらないじょうずな答弁で逃げようなどという、そういう形、姿勢をとるのを、あなたはおやめなさい。そういうことを聞いていると、さて、やっぱり福田さんも、せんじ詰めれば主税局長かな、責任をとらないこれはやはり官僚の上がりかなあと、そう私は考えざるを得ない。もはやあなたは官僚などという過去の経歴をしょって歩くような、そんな小さな人物ではありません。名実ともに政治の泥水も吸って、それはもう甘いもすいもかみ分けて、ひとつ国民の負託を双肩にになうという大政治家に脱皮しなければならぬ重大な時期でありまするから、責任ある回答をお願いいたしたいと思います。
  128. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私は、政治というものは責任政治でなければならない、こういうふうに確信しています。私は現在の国民経済の状態は深憂にたえない、日夜これをいかに打開するか努力をしておるわけでありまするが、ただいま私どもが御審議願っておるこの方式によって、必ずこの難局覇打開できる、こういうふうに確信をしております。確信をしておるが、それができなかった場合にはどうか、こういうお話でありますが、これは責任政治、その大道に従って善処をします。
  129. 小林進

    ○小林委員 政治は責任政治である、その大道に基づいて善処をするという、不満足でありまするけれども、やや前進した御答弁をいただきましたので、一応この問題はここでひとつほこをおさめまして、次に、同じく所得税関係でございまするが、今度は所得税の減税の規模と、消費者物価の上昇の問題であります。  これも、あなたのことばをもってすれば、直接関係がないとおっしゃるかもしれませんけれども、国民の側からは、これはやはり重大問題でございまして、どうしても大蔵大臣の明快な所信を承っておかなければならないと思うのであります。  今回の税制改正による所得税の減税規模は、平年度一千五百七十七億円、そのうちの所得減税が、四十一年度が一千二百八十九億円、平年度が一千五百五億円、企業減税のうち、専従者控除引き上げに基づく減税が、四十一年度五十四億円、平年度七十二億円、こういうことになっておるのでございまするが、これに対し、政府昭和四十一年度の経済の見通しによりますれば、個人の消費支出が十六兆六千億円、消費者物価の上昇率は、先ほど申し上げましたように五・五%、こういうことになりまするから、個人消費の支出のうち、この五・五%は九千百三十億円ということになるわけでございまして、この九千百三十億円が消費者物価の上昇によって食われてしまうという、こういう数字があらわれてくるわけでございまするが、この消費者物価の上昇に食われる部分をカバーするに足るだけの減税の規模が行なわれておるかどうかといいまするならば、それはいままでも質問応答の中にあらわれたとおり、これはとうていこれをカバーするには至っていない、まことに微々たるものでございまするが、この点を大臣先ほど毛若干触れましたが、どういうふうにお考えになっておりまするか、明快にお答えをいただきたいと思うのでございます。
  130. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 小林さんのお話、そういう問題があるのはよく承知しておりますが、所得が伸びる、その点を見のがしておられるのではあるまいか、そういうふうに思うわけであります。その点が基本的にあるのですが、その点をかりに除きましても、一体、消費者物価の上昇が減税とのからみつきはどうなるか、これは非常に広範な影響というか、関連が出てくるわけであります。それで、あなたがおっしゃられるのは、高額所得者ということが頭にないのじゃないか、低額所得者にどういうふうに影響してくるのだ、こういう御精神でお尋ねになられておるのじゃないかということでございますが、そうすると、一番問題になるのは、これは課税最低限と消費者物価の上昇の関連なんです。昭和四十年度における課税最低限、これを消費者物価の上昇にもかかわらず実質的に維持しようというふうに考えますと、幾らの減税をしなければならぬかといいますと、約三百億円であります。それに対しまして、ただいまお話のように大幅な所得税減税をする、しかも、課税最低限のために所得税減税の中で約八百九十七億円、約九百億円になるわけです。そういうようなことをお考えになりますると、あなたのお尋ねの御趣旨からいうと、消費者物価の上昇を消してなお余りあり、かように考える次第であります。
  131. 三池信

    三池委員長 小林委員に申し上げます。  二時から本会議でありますから、本会議散会後委員会を再開したいと思いますので、質問はその際続行にして、二時本会議ということを御承知の上ひとつ質問をお願いいたします。
  132. 小林進

    ○小林委員 それでは、残念ながら本会議でございますから、了承いたしまして、本会議終了後、あとはきょう一日、十二時までゆっくり時間をひとつおかりいたしまして、大臣の御高説を承ることにいたします。
  133. 三池信

    三池委員長 本会議散会後委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後一時五十七分休憩      ————◇—————    午後五時十八分開議
  134. 三池信

    三池委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。小林進君。
  135. 小林進

    ○小林委員 それでは、先ほどに引き続きまして御質問を申し上げたいと思うのでございますが、ひとつ、皆さん方もお急ぎのようでございますから、かいつまんで要点だけを項目的にお尋ねを申し上げたいと思うのでございます。  所得階層別減税の不公平、特に税率緩和問題点についてお尋ねをいたしたいと思うのでございますが、今年度の改正案による所得税負担軽減を所得階層別に見ますと、これは独身の場合と標準世帯の場合がございますが、これを独身者の場合で申し上げますと、三十万円に対しまして一千百五十九円の軽減額で、四十年度に比較いたしまして一九・五%の軽減の割合、六十万円は七千五百四十三円で、二一・八%、百万円の場合は一万七千五百円で、一七・四%、百五十万円の場合は、二万九千五百円で、一三・四%、二百万円の場合は、四万六千五百円で、一二・七%、五百万円超にまいりますと、九万七千五百円の軽減額で、六・三%、一千万円超に至りますと、九万九千五百円で、二・五%。標準世帯の場合に例をとりますと、五百万円超に至りますと、十一万一千円の軽減額で、七・八%の軽減の割合、一千万円超の場合には、十一万四千五百円の軽減額で、三%の軽減割合、こういうふうになっておるのでございまして、なるほど、政府の説明を聞いておりますと、三百万円までは所得税率を緩和をいたしているということを盛んに宣伝をされておりますが、その実情をくまなく計算をいたしてまいりますと、高額所得者五百万円超のものに対してもちゃんと軽減がされておる。一千万円超に至れば、驚くなかれ十一万四千五百円という、われわれの一年間の給料の何分の一かに相当するものがちゃんと軽減をされている。こういうことを少しも政府は説明をせられない。いわゆる看板に偽りありといわなければならぬのでありますが、こういう問題は一体どういうことになっておるのでありますか。大臣、御答弁をいただきたいと思います。
  136. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 改正案による所得税負担軽減の数字は、いまお話のとおりであります。お話のとおり、低額のものほどよけいに軽減をされておるわけでありまして、一千万円になりますと、標準家庭でわずかに三・〇%の軽減、それから独身者になりますと二・五%、そのとおりであります。それで、これは控除関係ももちろんあります。それから税率も動かしておるわけでありますが、そういう下のほうのものに厚くという趣旨を、この数字が端的に示しておる、こういうふうに御了承願います。
  137. 小林進

    ○小林委員 どうも、あなたの説明を聞いていると、今度は三十万円までは一九・五%の割合で軽減しておるではないか、一千万円以上に至れば、わずかに二・五%、標準家族の場合は三%じゃないかと、その軽減の割合だけに重点を置いておいでになりますけれども、私どもは割合はどうでもいいのだ。要は金額の問題なんです。玉の問題です。その玉の問題に至ると、三十万円以下の者にはわずかに一千百五十九円という小さなものしかまけていないで、それが一千万円以上になると、その何十倍というか、驚くなかれ、九万九千五百円もまけている。標準家族に至っては十一万四千五百円という、その金額の面において、これだけ大きなまけ方をしているではないか。私どもは、あなたのおっしゃるのは割合や比率の問題で数字をごまかしているが、金額の面において、こういう高額所得者になぜこれだけ多量な金をまける必要があるのか、これが私は問題だ。富の再分配という原則、所得の均衡という近代的な財政の運営からいくならば、私は一千万円以上の高額所得者なんかには、この比率はむしろ逆に三%や二・五%ぐらい引き上げて、そして国民生活の均衡、所得の均衡を保ちながら近代的な税制方向に進んでいくというのが、正しいものの考え方でなくちゃならないと思うのです。何で一体こういう階層に十万円、十一万円という多額のものをまけてやる必要があるのか、私はそういう意味でお聞きしている。
  138. 塩崎潤

    塩崎政府委員 税制の仕組みでございますので、私から御説明申し上げたいと思います。  昨日も堀委員が、小林先生のような、全く同じではございませんけれども一つの提案をされておりましたが、その案に似たようなことを小林委員もおっしゃっているのではないか、こういうふうに考えるのでございます。現在の所得税法は、御存じのように、たとえば一千万円という所得がございますれば、基礎控除その他の課税最低限控除いたしまして、その残りを課税所得と私どもは申しておりますが、それを十万円までは八%、二十万円までは一〇%というふうに階段的に刻みまして、それにおのおのの税率をかけまして、合計いたしましたものがこういうふうな税額になっているのでございます。したがいまして、標準世帯の一千万円の方の税額が三百八十五万三千円ということは、そういった計算に基づくものでございます。そこで、減税のときには、そういった控除引き上げが上のほうまで影響させないようなやり方はないであろうかということが、堀委員の御提案でもございましたし、小林先生もいま御主張されているのではなかろうか、かように思うのでございます。その点につきましては、昨日も申し上げましたが、これまでの考え方は、課税最低限につきましては、やはりすべてのものに適合するという考え方をとっております。しかし、御指摘の点は、たとえば五万円控除を上げますと、総所得一千万円の方であれば、上積み税率が五〇%といたしますと、二万五千円の税額が自動的にそこで軽減されるという仕組みでございます。しかし一方、そこらあたりの税率は相当高めでございます。したがって、控除税率とは相関関係にあり、さらにまた、きのうも申し上げましたが、控除をだんだん上のほうの上位の階層に応じまして消していく、アメリカの学者が言っておりますいわゆる消去控除、こういったことは、仕組みといたしましても、なかなか技術的にむずかしい、したがいまして、技術的な観点からもやはり控除は一率に適用し、税率も超過累進税率は、これはもうすべての国においてもこういったやり方をとっておるところでございまして、やはり課税所得三百万円のところまで税率緩和するのが趣旨でございますが、所得階級区分が変わってまいりますと、それは上のほうにも必然的に、自動的に適用せざるを得ない、こういった結果がいま御指摘の点になっておるのだと思うのでございます。しかし、これは所得税の仕組みをどういうことにするか、さらにまた、徴税技術上のむずかしい点、あるいは計算上のむずかしい点をどういうふうにするかにもからみますので、簡単にもまいりませんが、御主張の趣旨は、大臣が申されましたように、低額所得者のほうに厚く、しかし、上のほうの階層にはそれが比較的薄くなるように配慮したつもりでございます。
  139. 小林進

    ○小林委員 さっぱり配慮したことにならないのでございます。それは、事務当局がいまおっしゃったように、今回の課税所得三百万円以下の所得階層適用される税率緩和する、緩和することによって、四十一年度は四百四十六億円、平年度は五百三十三億円の減税を行なっておる、こういうことなのでありますけれども、その税率をあなたは変えることができない。だから、その税率緩和による減税の恩典ワクを——自動的にできておるでしょう。一率自動的にいくから、当然三百万円超の所得階層にもその税率はそのまま及んでいくことになるとあなたはおっしゃる。だから、三百万円超の所得階層には一率に八万円になるが、八・五%のうちの〇・五%分の五千円が引かれるから、七万五千円が三百万円超の者にも当然の減税の形でこれがまけていくように自動的になってくる。それをあなたのほうの説明によれば、自動的、必然的にそうなるのだとあっさり片づけておいて、それを上のほうまで自動的、いわゆる当然の形で減税をさせないためには、法律改正もやらなければいけないし、別の税率を用いなければならぬだろう、それはめんどうだ、めんどうだからやらないのだと言われる。めんどうだとおっしゃるならば、何もやらないほうがいいでしょう。何もやらないほうがよろしいのであって、いやしくも、それをキャッチフレーズにして、三百万円以下の中間階層や低所得階層にはおまけするんだ、おまけするんだと言ったら、その人たちだけに特別の税率を用いて、それ以上の人にはそういうような恩典に浴するような税率を与えないという考慮がなければ、何も三百万円以下ということを看板にして自慢するほどのことはないじゃないですかと言っているのです。だから、そういう説明は、私どもをして言わしむれば、ごまかしだ。困難でできません、むずかしくてできません、めんどうでできませんということで、どうもそういう独占階級というか、高所得階層にも恩典を与えておる。大臣がその考え方ならば、下これにならう。みんなそういう官僚の下々まで巧みな理屈を考えて、そうしてわれわれ庶民階級をごまかしたり搾取したりすることを考えておる。これはいかぬじゃありませんか。大臣高額所得者に対して、三百万円以下の諸君に与えているその緩慢なる税率をなぜ一率に適用するのですか。あなた方の庶民に訴えているその主張からいえば、当然それは適用しないというふうにならなければならない。事がめんどうだとかめんどうでないとか、私は一手続の問題ではないと思うのでありますが、大臣、いかがでありますか。
  140. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 この間も平林さんでしたか、本会議で小額所得者はピース一個しか減税にならぬじゃないか、こういうお話があったのですが、小額所得者のほうは納税の基本額が少ないのです。でありますから、額は小さいけれども、率においては、百万円に例をとっていえば、実に三〇%の減税をする、こういうことになっておるわけです。所得税には所得税の沿革もあり、仕組みもありまして、各階層ごとに区切って税率をきめていく、したがいまして、その影響、また基礎控除なんかの影響、これが高額所得者に出てくるわけでございますが、その影響はきわめて軽微である、こういうところでひとつ御了承を願いたいと思います。
  141. 小林進

    ○小林委員 どうもそういうことで御了承を与えるわけにはいかないんだ。低額所得者が、たとえば三十万以下で昨年度に比較してまけてもらう率が千百五十九円だ。確かに国家財政から見れば低額でありましょうけれども、払う者にしては、この千百五十九円は、一千万円以上のいわゆる高額所得者に今度まけておる九万九千五百円から見れば、まことに涙の出るようなありがたい減税です。あなた方ぶったくるほうからながめれば、千百五十九円を幾つ積み重ねてみたところで、国家財政の目的とする収入の面には、数多くして、手数多くして、それほどの蓄積にはならないけれども、こんな一千万円以上の諸君は、九万九千円とか十一万四千円なんか、まけてもらったって負けてもらわなくたってたいして影響はないが、国家財政の面から見れば、それを収入とする大蔵省のふところから見れば、こういう諸君の金は零細者の諸君の何百万人分、何千万人分だ。その何千万人分にも値して、しかも本人は痛くもかゆくもない、そういうものをあなた方はみんな取らないでおいて、零細な者にまけてやると同じ比率でそっちのほうの諸君もまけてやる。そういうありがたがらない階層の、しかも、その一人の税金があなたのおっしゃる低額所得者の大ぜいの者にも匹敵する、そういうものを一体なぜ自然増、当然増という形でまけてやっていらっしゃるかということです。こういうところにこそ締めて取って、国家財政の不足に充当していかれたらいいじゃないですか。そうお思いになりませんか。しかし、あなた方の一つの思想が、やはり貧乏人はにくいんだ、お金持ちはかわいいんだ、五百万円、一千万円の諸君には情をかけておいて、また選挙のときには裏口から政党献金もしてもらわなければならぬ、そういうような思惑でこれをおやりになるというなら、話はまた別であります。一体、大蔵大臣の真意いずこにありやを承っておきたいのであります。
  142. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいま小林委員が言われるような意図は毛頭持ち合わせておりません。私どもは、政治家として、弱い者、小さい者の常に味方でなければならぬ、こういうことを信条としております。あなたのいま言われることはよく私もわかるのです。つまり、それは裏を返して言えば、この際累進度を強化したらどうだ、こういうことなんです。いま、とにかく大幅の減税をする、そういう際に、高額所得者でありましても、累進度を強化するという考えは私は持っておりません。こういうことで御理解を願います。
  143. 武藤山治

    ○武藤委員 関連して。  主税局長の答弁が質問者と歯車が合っていないと思うのですよ。だから、いまの減税は、基礎控除、扶養家族、そういうものは一千万円の人も五百万円の人も十万円の人もみな同じに及ぶのですよと、その前提から話してやらぬから、小林さんのほうへの答えに対して、いまは累進度を強化しなければならないという受け取り方をするわけです。主税局長の答弁が歯車が合うようにしていないから、質問者がのみ込めないのですよ。もう少し私は歯車が合うようにやってもらいたいと思う。主税局長がそう答えていけば、だんだんわかって、先へ進んでいけるのですよ。
  144. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私の説明がへたなために若干の誤解が起こったのかもわかりませんが、所得税の構造が累進税率構造をとっておることは御存じのとおりでございます。先ほど来申し上げておりますように、千万円の所得のある方にも六十三万円の控除は差し引きまして、九百三十七万円の課税所得計算いたします。そして、税率といたしましては、八・五%の金額が十万円までに適用になり、それからまた三十万円までの金額につきましては一〇%が適用になる、だんだんとこういうふうに積み重ねて計算いたしました結果が三百万幾らの税額になるということでございます。したがいまして、超過累進税率構造をとっておりまして、また、控除も全部に適用いたしますとすればこういう計算にならざるを得ない、減税もまた同じ方向でやらざるを得ないというのが、現在の所得税の仕組みであろうと思うのであります。そしてまた、各国とも大体こういった方向をとっておりますし、堀委員の御提案の消去控除の問題は、昨日も申し上げましたが、アメリカの学者の提案でありますけれども、イギリス連邦の若干の国にありということを私は聞いてございます。こんなようなことだけ聞いておりますことを申し上げまして、説明を追加させていただきます。
  145. 小林進

    ○小林委員 結局、私の言うことは、高額所得者に対する税率をいま少し厳重にしなさいということなんです。さもなければ、何も意味がないじゃないかということなんです。大体、皆さん方の真意もわかりました。要するに、貧乏人に冷酷であり、あくまでも高額所得者に情けをかけていこうというそのお心持ちのほどは手にとるごとくわかりましたから、そこでひとつ対立点を明確にいたしておきます。  私の結論は、一千万円以上は九〇%くらいはさっとおやりなさいということを言いたいんだけれども、そこまでは、趣旨のほどは御了解を得たことにいたしまして、これは両者の対立点でございますから、私をして大蔵大臣とならせれば、私はこういう緩慢なことはやりません。  そこで、今回の税制改正による法人税減税、これは一々読み上げぬでもいいが、やはり参考までに読み上げたほうがいいと思う。主として、大企業の体質改善といたしまして、留保所得に対する税率の引き下げが、四十一年度が百八十三億円、平年度が三百六十五億円、建物の耐用年数の短縮で、これは初年度四十億円、平年度百五十億円のおまけだ。資本構成改善の促進のために、四十一年度二十六億円、平年度九十六億円、合併の助成——いよいよ国家独占企業に突進していくための四十一年度の減税が七億円、平年度三十億円、スクラップ化の促進、これなどは、四十一年度が六億円、平年度が二十九億円、小計いたしまして、初年度が二百六十二億円、平年度が六百七十億円、これは主として大企業の改善に基づく減税だ。それに比較いたしまして、中小企業の体質改善強化のために、中小企業法人税率の引き下げで、初年度が六十五億円、平年度が百三十億円、その他を含めまして、小計で中小企業関係が初年度九十七億円、平年度三百五十一億円、こういうことになっておるのでございますが、私は、この中で中小企業関係の減税が四十一年度いま申し上げました九十七億円、平年度三百五十一億円については、これは前にもわれわれの仲間から質問がありましたが、いかにも減税額が少ないのである。主として、必要でもないような大企業の減税については非常に親切である。一体、なぜ大企業に対してそれほど減税をしておやりになる必要性があるのか、私どもは了解に苦しむ。大臣、この問題はいかがですか。
  146. 塩崎潤

    塩崎政府委員 ちょっと数字が誤解を招かれるような数字になっていないかどうか疑問を起こしましたので、ちょっと御説明を申し上げたいと思います。  大企業の体質改善の促進という項目で小林委員がおあげになりました小計、平年度六百七十億円、初年度二百六十二億円、これと中小企業の体質強化という項目がありますところの中小企業の体質強化の減収額は、平年度三百五十一億円、初年度百五十二億円となっておりまして、第一の企業の体質改善の促進のほうがすべて大企業の適用になり、第二の中小企業の体質の強化のほうが、これがもっぱら中小企業の減税である、こういうふうな——これは私ともの出し方も若干適当じゃないかもわかりませんけれども、この第一のほうの企業の体質の改善の促進の中には同時に中小企業も入っておりますので、この点は両方対比されますと、私どもから見まして、少し変な感じが出るのでございまして、これを詳細に分析いたしますと、私ども計算では、大企業と中小企業との区別をどこに持っていくかむずかしいのでございますが、税法趣旨に従いまして、一億円超の法人を大企業と考え、一億円以下の法人を中小法人考えまして計算いたしますと、租税特別措置の整理を引きまして、大企業のほうは四百五十億円の減税でございます。中小企業は、これもたびたび私ども大臣が申しております七百二十五億円、こんなふうな減税になりますので、こういった数字で御議論願えればしあわせでございます。
  147. 小林進

    ○小林委員 主税局長は、大企業の問題をこちらが抗議するようになると、一生懸命にこれを擁護するお立場に立たれる。あなたの心情はわかります。わかりますが、私はたぶんあなたがそう言うだろうと思って、画然と私は大企業と中小企業と分けたわけじゃない。主として、こういうことばを入れて、それはいずれにもわたる部分もありますから、私は概算、主としてこういうふうに分類できるじゃないかというお話を申し上げておるのでありまして、何もそろばんを置いて、二一天作の五と画然と分けたわけではございません。御了承をいただきたい。そういうことで、やはりあなた方の主としたねらいは、若干の数字の入れ違いはあったとしても、その主たるねらいが大企業重点に減税をせられているということがはなはだ遺憾千万であるということを申し上げておるのでございます。大蔵省が参議院予算委員会に提出されました資料一つに「昭和三十五年度以降法人企業の減価償却費、支払利子率等の推移」がある。それによりますれば、売り上げ高に対する各項目の割合が示されている。それによりますると、減価償却費、支払い利子割引料、人件費、純利益、法人税等という五つのランクに分けて、三十五年度が減価償却費が一・九一%、三十六年度になりますると二・一六%、三十七年度に至ると二・四四%、三十八年度に至りますると二・四六%、三十九年に至ると、これがまたぱっと上がって二。五九%、支払い利子割引料に至りますると、三十五年度が二・二五%、順次年を追って、それが二・二九%、二・六五%、二・七一%、三十九年度に至っては、驚くなかれ二・七九%と、ずっと割引料をお上げになっておる。人件費に至りますると、三十五年度が八・五八%、次が八・四三%、九・三三%、九・六五%、三十九年度が九・六三%、こういうふうになってまいります。純利益は、景気不景気がございまするから、年次を追って比率が上がっていくわけじゃございません。三十五年度が三・〇六%、三十六年度が三・一〇%、三十七年度が二・七八%、三十八年度が二・九四%、三十九年度が、これは若干景気のせいでございましょう二・五八%。法人税等に至りましては、三十五年度が一。四二%、三十六年度が一・三九%、三十七年度が一・二七%、三十八年度が一・二四%、三十九年度が一・〇八%というふうになっておりまして、私の言いたいことは、皆さん方がお出しになったこの表によれば、法人企業の収益悪化の原因は、主として減価償却費及び支払い利子割引料の資本費用の負担増加によるところが非常に多い。反面、法人税等は年々減少して収益は悪化をしてきている。収益の悪化は、いまも言ったように、減価償却費、いわゆる支払い利子の割引料の問題こういうふうなことが言い得るのではないか、こういうふうに考えられるのであって、あまりにもこれは法人を擁護するところにきゅうきゅうとせられているんではないか、かように考えざるを得ないのでございまして、大臣、この点いかがでございましょうか。矛盾を感ぜられませんか。さっきから申し上げている減価償却費はだんだんよけい上げているんじゃないですか。そうでしょう。一体それほど企業を擁護する必要があるのかどうかということをお聞きしているのです。どうでございましょうか。
  148. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいま小林委員が読み上げられたような傾向があると私は思う。それはなぜかというと、この数年間、あなたが読み上げられたこの期間は設備投資が非常に行なわれたわけです。したがいまして、その固定設備に対する償却費がふえる。これは当然の趨勢です。それから、この設備投資が何で行なわれたかといえば、借り入れ資本で行なわれている。したがって、借り入れ資本に対する負担がふえてくる、これは当然の勢いなんです。別に大企業を擁護するというようなわけじゃない。資本費が、また償却費がふえてくる、こういうことなんです。
  149. 小林進

    ○小林委員 それは設備投資が多かろうと少なかろうと、一つの企業の減価償却の比率などというものは一定にきめたらいいじゃないですか。きめるわけにいかないですか。三十五年度一・九一%にしていたのなら、大体この計算に合うようにやっていかれたらいいじゃないですか。それが三十九年度に至ったら、驚くなかれ二・五九%まで減価償却費を厚く見ておられる。これはあまりめんどう見過ぎているじゃないですか。そういうことを言っておるのです。それほど減価償却費を見なくても、それほど利益があがっておれば、国家財政が不自由しているんだし、われわれ貧乏人まで税金をかけているんだから、そういう減価償却費をたくさんめんどうを見なくても、そっちのほうからいま少し正当な利益の中から法人税を持ってこられて、そうしてわれわれ庶民の払う所得税のほうをもう少し負けたらどうかという、実に子供の計算にも浮かんでくる明々白々の理論をあなたは頭をかかえてわからないというのは何事ですか。これは頭をかかえて考えておられるあなたの頭が私はわからない。どうですか。
  150. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 わからないと言っているんじゃないのです。この期間には設備投資が非常に多額に行なわれたわけです。これはたいへんな勢いで設備投資があったわけです。その償却ですから、当然ふえてくる。これは当然の結果です。もっとも、三十六年と三十九年に償却年限の短縮が行なわれたということをいま聞きましたが、それもあると思います。しかし、やはりそれだけの設備を企業がかかえる、したがってまた、その企業が借り入れ金でまかなわれる。そうすると、もう企業の資産内容は非常に悪化してくるわけです。いま不況だ不況だと騒いでおるその一つの大きな原因は、過剰投資、それが借金で行なわれたという点にあるわけでありまして、そういう点を考えますと、日本が自由競争下の世界市場においてやっていくためには、どうしても企業の体質改善をしなきゃならぬ、そういうようなことから償却年限の短縮というようなことが行なわれたと思います。今度四十一年度もそういう観点からこれを行ないたい、こういう考えで一貫をいたしておるわけであります。
  151. 小林進

    ○小林委員 だから、ここへいくと本質的な並行線なんですよ。実際、資本家なんというものは、何でもいい、借金政策をやって、設備過剰投資でもやって設備をつくればいい、何でもその事業をやってしまえば、あとは政府が助けてくれる、おまえのところは借金が多いから減価償却の面も余分に留保することを認めてやろう、これは一つの減税の変型ですからね。まあ、その分は税金から取らないように利益の面から省いてやろう、それでもなお企業がうまくいかなければ、山一証券じゃないけれども、よしよし政府の金を持っていって助けてやろう。だから、日本の大企業なんというものは事業をやったほうが得だ。借金するだけ借金して、あとは福田さんお願いしますと言えば、まずまず倒れっこない。それでうまくもうけがあがったら、いわゆる交際費でございます、営業費でございますと言って、どんちゃんどんちゃんやって騒いで、なるべく税金を払わないで、お客一ぱい、てまえ八ぱいで、飲むだけ飲んで、人生はおもしろいことだわ。それは利益が上がらなくて、借金したときになれば、政府のほうがこうやって、いや減価償却で幾らしなさい、やれ利息の面でめんどうを見てあげましょう。まるでこれじゃ、外国の企業家じゃないけれども、日本の資本家は世界一の天国だ。日本の企業家ほど政府に厚く守られ、恩恵を受けているものはない。日本で企業をするんなら、だれだってこれは成功しないものはない。その陰に、もののあわれをとどめているのが中小零細業者だ。親子兄弟夫婦、朝から晩まで汗水たらして働きながら、わずかの利益があってもみんな持っていかれる。倒れたら、それじゃ気の毒だといって、かねの一つもたたいてくれない。だから、ぼんぼん中小企業は倒れている。そういうやり方をあなたはちっともふしぎにお思いにならない。大きな投資をして、借金をしょっているんだから、それは減価償却でめんどうを見てやる以外にはなかろう、この方針は不動でございます、四十一年もなおこれを継続して、もっとまけてやりますなどというのは、全くわれわれの側からいえば、何という残酷非道だ。これは刃物を用いないで、中小零細業者や零細な所得者を痛めつけている功妙なる搾取政策であると断ぜざるを得ないわけでございます。私はあなたのこの考え方をどうしても改めてもらわなければならぬ。少なくとも、あなたも国民全般生活を守るなら、たまには大企業に対して——経済の趨勢もわからない、自分の実力も知らないでそんな大きな借金をしょって、そんな大きなむだな設備をして、それを半分も稼働せしめないような、そういう経営者のやり方が悪いんだから、そんなものには減価償却でまけるわけにいかない、倒れるなら倒れていらっしゃい、これくらいの見識ある主張を大企業家にも与えてもらわなければ、庶民の生活は助かりません。私は、あなたの主張に対して、これもやはり賛成できない。  それから、大蔵省のいまのその資料によりますれば、これは金利の水準が一厘低下した場合の金利負担の減少額を試算していらっしゃる。試算をしていらっしゃるが、三十九年度の法人企業の支払い利子の割引料は、驚くなかれ二兆七百四十四億なんです。これはたいしたもんだ。これに対する金利の一厘の低下による金利負担の減少額は九百五十億円と見込まれておるわけであります。これから見ると、法人税の減税よりも貸し出し金利の引き下げが——これは歩積み、両建ての問題にもからまってきますけれども、これは私は、貸し出し金利の引き下げが、いま法人税を論ずる場合の一番先に解決をしなければならない問題ではないかと思う。また、不況対策の焦点からすれば、法人税の減税よりも所得税の減税に最優先権を与えるという考え方、これはわが党の主張ですが、こういうふうに当然いって、まず個人の所得税を減税するところから経済を刺激する、いわゆる需要供給の効果を引き上げていくという考え方が、やはり税制改正には一番必要なものの見方ではないか。それをあなたはそういう方面をおやりにならないで、もっぱら減価償却だとか言われるが、利子とかという点をめんどうを見ようとされないのは、一体どういうことなのかということをお尋ねしたいわけです。この二兆七百四十四億円というおそるべきこの金利、これになぜ一体手を触れないのか、私はこれを申し上げたいのです。
  152. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いまお話の、減税をする場合に、所得税を優先する、私は、これは小林さんと意見一致です。賛成です。そういう考え方で従来もやってきて、ことしもやっていく。ただ、今日の状況では企業の財務内容が非常に悪い。そこで、同時に企業の体質改善政策もやらなければならぬ。これは税だけでやるわけにはいかないわけです。これは、何としても企業家の反省、企業家の努力、これが中心でなければならぬけれども、それを助成する意味において、税制上役に立てばというその補完的な役割を減税政策に持たせよう、こういう考え方をとっておるわけです。  それから第二の御指摘の金利の問題です。これは重大な問題です。でありますから、大蔵省の行政としては、金利が下がるようにと、こういう政策を一貫してとってきておるわけであります。いまここに正確な数字を持っておりませんけれども、ここ二、三年間をとってみましても、相当金利が下がっておるわけであります。長期金利につきましては、政府が最近率先しまして、開発銀行などの貸し出し金利の引き下げを行なう、それに連動して民間の長期信用諸銀行も利下げをするように勧誘をする。また、短期金利は、公定歩合の引き下げに伴いまして非常に低下を見ておるわけであります。まあ、表面的な金利のほかに、もう一つは実質金利の問題があります。いわゆる歩積み、両建てという問題があります。これに対しましても、目下真剣に努力を傾注しているわけであります。金利の負担をなるべく軽からしめて、産業が伸び伸びと活躍ができるようにというための努力は大いにいたしているところであります。
  153. 小林進

    ○小林委員 あなたは、金利が安くなるように努力している、企業の内容も悪いから、こちらのほうもひとつ減税でまけていく、個人の所得税も重過ぎるから、これも軽くする、みんな必要なことは並列的に述べられている。そんなことはだれでも言うことだ。言うんだが、その中で優先順位をきめるときに、私は、個人所得の問題にまず最重点を置くべきであるし、それから、法人関係においては、その減税よりは金利の軽減の問題に重点を指向するのがほんとうではないか、こういうことを申し上げているのでございまして、あなたが金利の問題に努力されていないとは一つも申し上げていない。いま言われました歩積み、両建ての問題は、きょうは申し上げません。これは日本の企業で最大の悪ですから、また別個の場合であくまでも追及いたしまして、撃ちてしやまぬの勢いで、これは絶対にやめてもらわなければならぬ。これはもう許さるべきものじゃございませんが、きょうはこの問題はやめておくが、ただ、あなたは、企業の内容が悪いから減税する、減税するとおっしゃるが、われわれの立場からいえば、悪いのは企業の内容よりも、もっとひどいのは個人の生活の内容です。これは生死、生活の問題だ。企業が悪かったら、そう言ってもあれだからあまり極端には言いませんが、倒れてしまったって、人命には影響ない。個人の所得の問題で、悪税がかけられることは、生活から生命に及ぶ問題だ。たいへんな問題だ。だから、こっちのほうにもう少し重点を置いてやってもらわなければいけないということを言っておるのであります。あなたは、これもやる、あれもやると並列的におっしゃる。それだからいけないとおっしゃる。ところが、その本心は、あにはからんや、企業の減税を主にしていこう、しかも、その企業の中でも、中小企業よりは大企業の減税に重点を置いていこう。せっかく所得の減税のほうにいかれるならば、その減税も一千万円、五百万円以上の問題に何もめんどうを見ないような形で、そうして、ないしょでちゃんと、自然増で、自然の形でございます、これは自然にそうなりますという形で大きくまけておいでになる。これはわれわれのとうてい了承し得ざるところであります。この問題は、あなたの考え方には了承できないということにいたしまして、次は庶民の問題に移っていきたいと思う。  一体庶民が、ほんとうに安じて、あなたのきめられた税率税金を納められるような、そういう環境であるのかどうか。問題は、大蔵省でお出しになりましたいわゆる基準生活費の百八十六円です。一体、この百八十六円でほんとうにわれわれの生活が毎日営んでいけるとあなたはお考えになりますか、大蔵大臣
  154. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 生活もいろいろの態様があるわけでございますが、私どもは、課税最低限というように問題を検討するわけです。課税最低限につきまして、どの辺まで持っていくか。私どもの自由民主党では、参議院選挙にあたって六十万円以上のものにする、こういうことを公約したわけです。これを政府として実行しなければならぬ。それが一体どういう生活体系の中で位置づけをさるべきものであるか、これも考えてみなければならぬ。そういう一つの検討材料として基準生計費というものをやってみたわけなんです。これは国立栄養研究所で調べてもらいまして、一体一日の食料費が幾らか、これは四十年のところで百八十六円で、それをエンゲル係数で換算してみると、年生計費というものが出るわけです。これが課税最低限とどういうバランスになるかということを一応考えてみる、これは一応の検討材料、一つの材料、こういう意味で、何もこれで国民の生計費を規定しようというような性格のものではございません。まあ、その一応の検討から見ると、四十年の百八十六円、それから換算した基準生計費、それは四十一年度になると消費者物価が五・五%上がりそうだ、それにしても、大体基準生計費のワク内にとどまる、こういうことを一応申しておるわけなんです。そういう一応の検討材料だという意味においてごらん願いたい、かように存じます。
  155. 小林進

    ○小林委員 しかし、その一応が非常に問題なんでございまして、これは前からもう質問があったと思いますから、人の言ったことを繰り返すことは避けなくちゃなりませんけれども、順序として申し上げると、今年度の米価の改定分はこの百八十六円に入っておりませんね。
  156. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 四十年度のことですから、それは入っておりません。
  157. 小林進

    ○小林委員 それでは、四十一年度の飲食費の値上がり、特に牛肉などは、ことしはおそらく貴重品扱いをされるほど手に入ることが困難ではないかと言われておりますが、こういうような価格はこの中に一体どんなぐあいに含まれているのか、それをお聞かせをいただきたいと思うのであります。
  158. 塩崎潤

    塩崎政府委員 非常に技術的な計算の根拠でございますので、私から御説明申し上げます。  大臣が先ほど申し上げましたように、昨年度の国会の御要求によりまして、昨年度基準生計費という観点から、国立栄養研究所にお願いしてつくっていただきました献立に基づきまして、食料費がどれぐらいかかるか、さらにまた、これをエンゲル係数から逆算いたしますと、消費支出金額幾らになるか、これと課税最低限と対比するとどういう関係になるか、こういうふうに計算したのでございます。そのときにも、金額につきましては、国立栄養研究所というよりも、私どもの中で計算いたしまして、国立栄養研究所につくっていただきました献立に基づきまして私どもが食料費を計算したのでございます。その際には、三十九年の価格しか実はわかりませんし、こういった詳細なる個々の品目について一々積算しなければならぬものでございますので、三十九年度の価格をつくったのでございますが、今度も同じような方式を使いました。昨日も御説明申し上げましたが、献立につきましては、せっかく一昨年国立栄養研究所がつくっていただきました献立でございますので、そこはもう直さない、ただ金額だけ、四十年度におきましては値上がりがあったということが顕著に認められるし、確実につかまえられますので、それをもとにいたしまして計算いたしましたのが、一日当たり百八十六円八十七銭という金額になるのでございます。  そこで、それには四十一年度の値上がりが入っていないではないか、こういう御質問でございますし、さしあたって米価はどうか、牛肉はどうか、こういうお話でございます。私どものこれをつくった気持ちは、先ほど来大臣が申し上げているところでございますが、確実を期する意味からはっきりした金額をもとといたしております。また金額も、エンゲル計数などは、いつも五月をもとといたしまして詳細に比較をいたしております。そんなような関係で、本年度四十一年度のこれから幾ら値上がりするか値下がりするか、ことに野菜なんかは変動が激しいものでございますが、そういったことを押えることができませんので、四十年度の確実なる計数を使って計算をしたが、しかし、先ほど来そういった計算しました消費支出金額に一たとえ消費者物価指数が五。五%程度上がったということにいたしましても、消費支出金額に五・五%乗じましても、それは課税最低限以内に入るではないか、こういう一つの目安が出るではないか、こういう大臣お話がございましたが、そんなような計算ででき上がっておりますので、小林委員お尋ねの、本年度の米がどうか、あるいは本年度の牛肉がどうかということになりますと、これは現在のところなかなか計算ができませんし、いたしましても、非常に不確実なものになります。一年間の見積もりといたしましては、やはり残念ながら過去の数字を使い、消費者物価の今年度の大ざっぱな見通しをもとにしたほうがいいのではないか、そうせざるを得ないのではないか、こういうことになろうかと思います。
  159. 小林進

    ○小林委員 その四十年度を標準にされただけでも——これはあなた方の発表ですか、昨年一年の食料費は二十七万八千五百六十一円、月には二万三千二百十四円、これに食料費以外の経費を加えた生計費は五十八万六百九十八円である、月に四万八千三百九十四円だ、こういうことで、これに若干、五・五%の値上がりを見ても、標準収入六十三万円ですか、これには至らないから課税してもやっていけるではないかということをあなたは言いたいのでございましょう。けれども、私どもがここでひとつあなたに申し上げたいことは、標準家族、これは子供三人夫婦で、初年度が六十三万円一千円でございますが、これはあなた方の計算によると、一カ月の月給は幾らになりますか。どうも年の収入で換算していただくと困難だから、月の収入に見ていただくと幾らになりますか。サラリーマンの場合を仮定いたしまして幾らになりますか。
  160. 塩崎潤

    塩崎政府委員 ボーナスの計算を除外いたしまして、十二で割りますと五万一千円ばかりになろうかと思います。
  161. 小林進

    ○小林委員 大体サラリーマンの生活は、ボーナスというものは普通は年二回で平均四カ月、こういうことになります。これは不時の収入で、これは毎月入ってくるわけじゃないのだから、そういうふうな計算で、これをたとえばボーナス四カ月分として、十六で割ったら一体幾らになりますか。
  162. 塩崎潤

    塩崎政府委員 いま計算いたします。いたしますが、課税最低限は、やはり年の所得に対しまして、年の控除でございますので、月々対比するのももちろんけっこうでございますが、生活費と関連する課税最低限考えますならば、やはり年額で、償与も入れて考えていただくのがより適当ではないか、ことに課税最低限は、やはり抽象的と申しますか、課税最低限あたりの方々の生活費を考える問題でございます。やはり年収として計算するのが適当かと思います。
  163. 小林進

    ○小林委員 私は、税金を取る側と支払う側からの立場でものを言うのでありますが、払う者にすれば、毎月の月収の中から税金を取られていくのでありますから、やはりその毎月の収入を基準にして、一体この人が払い得るか払い得ないかということも、これはあわせて考えていかなくちゃいけない。それでは月幾らになりますか。
  164. 塩崎潤

    塩崎政府委員 いま申されました四カ月のボーナスといたしまして計算して、十六分いたしますと、三万八千三百円になります。
  165. 小林進

    ○小林委員 三万八千三百円、この中であなた方は百八十六円、こんなのは今日の生活の中ではとうてい食っていけないが、一応二千五百カロリーで、百八十六円でまずあがるものと計算をして質問するのだが、この二千五百カロリーというのは、標準五人家族の中のだれのカロリーなんですか。私はここで、時間がないから簡単に申し上げまするが、一体、働いているおとなと妻と三人の子供のカロリーを、内容を別々にお聞きかせを願いたいと思います。
  166. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私は、栄養学はしろうとでございますけれども、成年男子、二十歳から三十九歳までの一日のカロリーでございます。
  167. 小林進

    ○小林委員 妻も同じですか。男女平等か。
  168. 塩崎潤

    塩崎政府委員 基準の二千五百カロリーは、いま申し上げました二十歳から三十九歳でございます。妻あるいはその年齢のそれに該当しない方につきましては、それと違ったカロリーに計算されているのでございます。
  169. 小林進

    ○小林委員 そのカロリーをお尋ねしているわけです。
  170. 塩崎潤

    塩崎政府委員 お示しの、来ております表にありますところを見ていただきますと、四十二歳の方、五人世帯でございますと、二千四百カロリー、妻三十八歳の方二千カロリー、十三歳の子供さんは二千四百五十カロリー、十一歳の子供さん二千五十カロリー、四歳の子供さんは千四百七十五カロリーというふうに計算してございます。
  171. 小林進

    ○小林委員 いまあなたは、二千五百カロリー基準で百八十六円だとおっしゃったのですが、この二千四百カロリーでは一日幾ら、二千カロリーでは幾ら、二千四百五十カロリーでは幾らと、これは一人々々の子供の一日の食事代をひとつお示しを願いたいと思います。
  172. 塩崎潤

    塩崎政府委員 非常に詳細な御質問でございまして、ただいまその詳しい計算根拠の資料を持っておりませんが、いま申しました五人の方のカロリーを総計いたしまして一万三百七十五カロリーといたしまして、一カロリー当たりの費用を出しまして計算いたしましたのがこれでございますが、なお、詳細な資料がどうしても必要だと申されますならば、あとで取り寄せて御説明申し上げたいと思います。
  173. 小林進

    ○小林委員 これは詳細に聞かなくちゃなりません。こういうような人間の生き死にに関する最低の食生活をあなた方のそんな合計でやられて、そして、それを基準にして税金をふんだくられたんじゃこれはたまったものではないですよ。でありますから、これはあくまでも詳細に聞かなければならぬけれども、これは栄養研究所の所長さんがいらっしゃるそうでありますからお聞きいたしますけれども、十三歳の子供が二千四百五十カロリーで、これで一体子供の成長に支障がないだろうか。カロリーだけでですよ。これはカロリーだけで一体子供の成長に支障はないか。また、十一歳の子供が二千五十カロリー、四歳の子供が千四百七十五カロリーで、これで一体子供が人並みに成長していけるものかどうか、お尋ねをしておきたいのであります。
  174. 大礒敏雄

    ○大磯説明員 ただいま御質問のございました日本人の年齢別、性別の基準のカロリーと申しますものは、これは、たくさんの学者が集まりまして検討いたしまして、昭和三十四年の二月に日本人の栄養所要量といたしまして、科学技術庁資源調査会から発表いたしまして、それを国民栄養の審議会が認めて、自来使っている数字でございまして、いま御質問の年齢によるカロリーに対しましては、これは十分の余裕をとっておりますので、私ども、これをもって子供の成長に間違いないと信じております。
  175. 小林進

    ○小林委員 これはたいへんなことを私はお聞きするのですが、カロリーを高めるということになれば、たとえて言えば、砂糖などというものはカロリーは高いから、砂糖を少し入れればカロリーはぐんと上がる。そこには、食料の量とか質とかいうものはあなた方には、全然問題にならない。その食料の中に含まれる量とか、熱とか、たん白質だとかいうものを一体どういうふうに見ておられますか。あなたのお話を聞いていると、カロリーだけで、私ははだ寒いような感じを覚えざるを得ないのであります。
  176. 大礒敏雄

    ○大磯説明員 ただいまの御質問で、カロリーだけとおっしゃいましたので、カロリーだけの御説明を申し上げたわけでございますが、人間の成長にはカロリーだけでは絶対にいけません。でございますから、たん白質、それから脂肪とか、あるいはミネラル、ビタミン、すべて規定をしておりまして、詳細な数字は全部できております。
  177. 小林進

    ○小林委員 私はそれは問題だと思う。税金を払うためには、カロリーだけで生きているものではないというならば、やはり食生活の中に、カロリー、イコールいま言われた生きるために必要なそういう部分が全部含まれていなければならぬと私は思う。あなた方はそれをお含みになりましたか。それをおきめになりましたか。いまのお話のとおり、百八十六円だけでは生きていけないとおっしゃった。人間が生きるためにはまだもろもろの食生活に必要な要素があるでしょう。それをお含みになりましたか。どの程度にそれは含まれておりますか。
  178. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私も栄養学のほうはしろうとでございますので、なかなか御満足のいく答弁ができるかどうかわかりませんが、今年度は提出いたしませんでしたけれども、先ほども申し上げましたように、昨年度は、春夏秋冬に分けまして、非常な御関心を仰いだようでございますが、献立を出したのでございます。献立の中には、イカのさしみというようなことで種々の御批判がございましたが、こういった献立を基礎といたしまして、個個の食料品につきまして計算いたしましたものが、一日当たり百八十六円八十七銭、こういうことになるのでございます。単純に抽象的なカロリーということでなくて、そのカロリーの基礎になるのは、春夏秋冬に分けられまして、朝昼晩に分けられました献立が基礎になっておるということを申し上げたいのでございます。  なお、ただ私どもは、この点で税金を取るか取らないかというようなことをきめる気持ちは毛頭ございませんので、この点だけ、くどいようでございますが、ひとつ何べんも申し添えさしていただきたいと思います。
  179. 小林進

    ○小林委員 私が申し上げているように、あなた方のおっしゃった一カ月三万八千三百円、あなたは、ボーナスも入れて、年収計算でいくのがほんとうだとおっしゃるけれども、それを含めたところで五万一千円であります。ボーナスは、これは不時の収入でありまするからこれは別にして、やはり日常生活を基準にして問題を研究していかなければならない。その三万八千三百円の月の収入の中で、標準家族五人です、五人で生きるだけの生活をして——食べるだけじゃないのだから、そのほかにもろもろの生活に必要な物資を購入しながら、なおこの中から税金を払えるという、悪代官以上のあなた方の考え方が、いかにひどいものであるかということを浮き彫りしたいために私は質問しているのです。この三万八千三百円の中で、しからば、エンゲル係数は一体どれくらいの比率を占めているのですか。
  180. 塩崎潤

    塩崎政府委員 エンゲル係数も一つの仮定に立っておりますが、去年に比べまして、エンゲル係数は若干消費者の家計調査で上がっておりますので、これを反映して上がったかっこうになっておりますが、五人世帯で四七・九七%でございます。
  181. 小林進

    ○小林委員 四七・九七%というのは、これはいまも言うように、生きていけないのです、百八十六円などという食費を基準にして出されたエンゲル計数だから。大体、生計費の中に占める食費、これを外国、WHOあたりの係数で、これに占める比率に基づいて上、中、下の三段階に分けているわけだ。四七・九七%というこの比率は、世界全般一つの標準の中でこういうふうな比率を占めているその人の生活は、一体極貧層ですか、貧層ですか、中間層か、あるいは豊かなる生活をしている内容かどうか、あなたにお聞かせを願いたいと思う。
  182. 大礒敏雄

    ○大磯説明員 ただいまの御質問の詳しい世界中の表はいま持っておりませんが、おっしゃる四七・九七は、まあ中より少し低いのではないかと思います。
  183. 小林進

    ○小林委員 あなたは、資料があったって、恥ずかしくて資料を出せないのだと私は思う。  そこで、厚生省の社会局長にお尋ねをいたしたいと思うのでありまするが、生活扶助費の中で占めるエンゲル係数は一体どの程度にいっておりますか。
  184. 今村譲

    ○今村政府委員 お答え申し上げます。  四十年度は五二・三一ということでございましたが、四十一年度は五二・二九というふうに、若干上げるようにしてございます。
  185. 小林進

    ○小林委員 その人たちの生計費の中で食費が五〇%をこえるというのは、世界の常識からいっても、これはもはや人間の生活じゃないのです。(「先進国じゃないよ」と呼ぶ者あり)先進国なんてものじゃない。人間の生活じゃない。犬か豚かの生活です。ましてや、生活扶助を受けている生活保護家庭のその中に占める五二%と、これから税金を払っていこうという、税金をふんだくられるという、そういう家庭の中に占めるいわゆる食費が四七・九七%、まあ四八%だ。それがたった四%しか違わないというのです。百分率でいって四%しか違わない。日本において生活扶助を受けている家庭は、大体六十万世帯人員にして百六十万人です。これはいわゆる日本における最低生活者です。その間にボーダーライン層というものがあって、またこれに準ずべき階層が、あるいは四百万人といわれ、あるいは六百万人ともいわれている。その人たち生活の扶助を受けられるんだから、いま社会局長の説明によれば、この人たちの生計費の中に占める食費は五〇%前後を上がったり下がったりしていると見てさしつかえない。なぜかなれば、苦しい、苦しいけれども、まだ五二%のところまでいかないから、生活扶助の恩典に浴していない勘定になる。そのボーダーライン層と、いまこれから税金を取り上げようという納税者とで何にも差がない。これは、言いかえれば、あなた方は、まるでボーダーライン層——生活扶助に近いすれすれの階層からも税金をふんだくろうという、こういうおそるべき税制改正をやろうとしておる。これは、私の言うことが一体間違いですか、大蔵大臣。これを悪代官と言わずして何と言うか。
  186. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 なるべく低所得者からは所得税は取らないというためにいま努力をしているのです。ですからこそ、五十六万円という課税最低限を、今度四十一年度では六十一万円、平年度では六十三万円まで持っていこう、こう辛苦粒々いたしているわけであります。
  187. 塩崎潤

    塩崎政府委員 数字のことが出ましたので、私から、どうせまたおしかりを受けると思いますが、御了解を得る意味で申し上げます。  いま四七・九七%と生活保護世帯のエンゲル係数との比較がございましたが、私どもの知り得ておりますところの生活保護の参考資料になりましたエンゲル係数は、四人世帯のエンゲル係数のようでございます。私ども、四人世帯で同じような計算でやりますと、四四上二六%でございます。したがいまして、そこには八%の開きができてこようかと思います。これは正確な御討論のためにひとつ御参考までに申し上げておきます。
  188. 小林進

    ○小林委員 そこに気がついたのはよろしい。生活扶助のほうは、標準は四人世帯、あなたのほうの租税対象は五人世帯、人数に一人の差がございますので、これを差し引いても八%です。それこそスズメの涙です。  そこで、私は社会局長にお伺いいたしまするけれども、あなた方は、四人世帯で、生活保護を受ける最高限度収入——収入はあるけれども、独立した生計を営めないから、部分的であろうとも、国家が生活保護法に基づいてそのめんどうを見るというその最高限度収入額は、一級地においてはどのくらいになりますか。
  189. 今村譲

    ○今村政府委員 お答え申し上げます。  先生御承知のように、生活保護法の場合には、生活扶助のほかに、教育扶助、住宅扶助、働いている場合は勤労控除、それを全部入れますと、四人世帯で、一級地では、それを全部足して、全部国が保障するとする場合には、明年度におきましては二万六千百四十二円、こういう計算になります。
  190. 小林進

    ○小林委員 どうですか。お聞きになりましたでしょう、大臣。わが日本の社会保障は、先進国より見て、それはまだ非常に低い。だから、三十七年度に、大内兵衛博士が会長をしておられまする社会保障制度審議会においては、その三十七年度を基準にして、四十五年度末にはその生活扶助費というものを三倍に引き上げなさい、こういう勧告をしている。三倍に引き上げても、しかし欧米先進国に比較いたしましてなお十年の開きがあるのですよ。その十年の開きがあるまで四十五年度を目途に追求をしなさい、そう言っておる。その貧弱な社会保障費の中の生活保護においても、四人世帯東京で住んでいれば、二万六千百四十二円の収入しかない四人の家庭では、いま申し上げましたように国家から生活扶助の恩典に浴する。これをもしあなた方の課税標準に基づく五人家庭にしたら、二万六千円を四で割ってみれば六千五百円になるのですが、これに六千五百円を足せば、大体計算をして、五人世帯ならば三万二千六百四十二円までは生活扶助の恩典を受ける、こういう計算が出てくるのですよ。三万二千六百四十二円まで生活扶助が受けられるというこの所得階層の者と、さっきのように月に見積って三万八千三百円などという収入との開きは幾らかありますが、わずかに五千円くらいの開きしかないのですよ。その人たちにもあなた方は税金をぶっかけていこうとする、こんな苛斂誅求の税金がありますか。おわかりになりますか、大臣。私は数字をもってあなたにいま質問をしているのです。いま一回申し上げましょうか、よろしゅうございますか。それほど、いかにわが国の個人に対する免税点というものが過酷であるかおわかりになりましたでしょう。時間がありませんから、あなたがよく反省してくださればそれでよろしい。  次に、いま一つ申し上げましょう。生活扶助を受けている者の中で、厚生省は事務員や内職等に対しては、一日のカロリーを一体幾らにお考えになっておりますか。生活扶助を受けている人たちの夫婦の基準になる一日のカロリーです。
  191. 今村譲

    ○今村政府委員 お答え申し上げます。  家族構成が千差万別でありますので、例を申し上げますと、三十五才の男、夫でありますが、この人が全然無稼働、いわゆる非稼働の場合には二千二百カロリー、それから非常に軽い、何といいますか、単に事務的な程度のものという場合には二千五百二十カロリー、それから日雇いさんのように、中程度よりちょっと重いですか、その辺が三千四十カロリー、それから沖仲仕のように、いわゆる重労働といいますか、そういう場合には三千五百八十カロリー、こういう計算をいたしております。
  192. 小林進

    ○小林委員 いまお聞きのとおりであります。生活の扶助を受けて、国家からお世話になっている人でも、その世話の基準として、全然働かない、それはもう老人とかあるいは一時の病弱、入院に至らざるような病弱で、うちで寝て休んでいられる、そういう方々だけでも、この生活扶助の基準といたしまして一日二千二百カロリー、この基準でめんどう見ているのです、人間の生きる最低限度のカロリー計算では。しかるに何ですか、あなたがたの税金対象にするカロリー計算は、健全なる妻にして年齢三十八才、家庭を切り回し、子供の養育に奔走し、あらゆる努力を重ねている者の一日のカロリー計算が二千カロリー、そういうような計算の違いはまことに重大だ。しかし、あなた方は、これだから生活扶助の基準カロリーを下げるなんと言うなら、大いにお下げなさい。下げてみられるなら下げてみたらよろしいです。ところが、いまも言うように、同じ国家の生活保護を受けながらも、あるいは日雇い、毎日道路の掃除をしたり、道路あるいは公園で運搬をしたりしているこの人たちになりますると、生活扶助者の一日のカロリー計算は三千四十カロリーですよ。それに対する一日の食費は百七十七円です。あなた方は、税金を納める人たちの一日の食費を百八十六円で見ておられる。生活扶助の対象になる、この道路や何かで働いている人夫は百七十七円です。同じ生活扶助を受けながら、しかし働いている沖仲仕とか採石夫等の重労働に従事する生活扶助者は一日のカロリー計算が三千五百八十カロリー、それに食事代として政府がめんどうを見ている一日の食事代が二百九円ですよ。健全にして、国家のために税金を納めようという方々の食費を百八十六円の計算とは何事です。私は、ここに、いかにあなた方が数字をもてあそぶとはいいながら、国民に対してあまりにも言語道断なやり方をしているではないか。天をおそれず、人をおそれず、何という思い上がった独善的な判断をしているかということを私は言わざるを得ないのです。私は、何も厚生省のちょうちん持ちをしようというつもりはない、同じ政府でありますから。しかし私は、きびすを返せば、厚生省に、一体何でこんなもので生きていけるかということを、十年一日のごとく弾劾をしてきた。こんなことで生活保護者の生活が保てますか。さっきも言うように、制度審議会がいまのめんどうを三倍に引き上げろと、大内博士以下の制度審議会——自民党の先生方も入っておられるその制度審議会が一致して、いわゆる答申をした勧告の中に含まれておる。それほど低下をしておるその生活保護者の食費を二百九円と見ている中で、これから税金をふんだくろうという、健全にしてわが日本をささえている重大な人々の食費を百八十六円とは一体何事です。そういう大きな間違いをやられておるところに、この金融本山を守ろうとする大蔵省、日本の独占を守ろうとする大蔵省、資本主義の中心を守ろうとする大蔵省のヘビのようなはだの冷めたさをわれわれは感ぜざるを得ないわけです。人間の妙味がひとつもないじゃありませんか。御答弁を願います。
  193. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いまいろいろ数字を並べてのお話でございますが、二万六千円の生活保護世帯、それに対するあれは、納税者のほうは月の収入は五万円です。そう御理解願いたいと思うのですが、とにかく、課税最低限は高いがいいわけです。だれも喜ぶことです。しかしながら、国家財政という面もあるわけなんです。そういう面から、国力、また国民総所得、これを培養しながら課税最低限をなるべくすみやかに八十万円程度までは持っていきたい、こういう考えなんです。お話気持ちはわかりますけれども、そう簡単には解決できない問題であります。
  194. 小林進

    ○小林委員 私もいま同僚の議員から、時間も経過しているからもうやめたらいいということで、資料もまだたくさん用意してありまするが、それでは、ひとつ問題を残して集約をいたしまするが、気持ちがわかるなどという、リンゴの気持ちがわかるような話をされたところで、これはとても私どもは了承できないのでありまして、大臣、これはひとつ真剣に考えてください。これは、私は言いますが、国立病院、国立療養所におけるカロリー計算もあるのです。国立療養所で寝たきりの患者、しかし、もちろんそれは体力の回復ということもありましょうけれども、それでも一日のカロリーが二千四百五十八カロリーです。それから、国立病院では二千四百十二カロリーというふうにみんなカロリー計算をして、そして食事代を百四十六円とか百七十九円とかという形でカロリー計算もしながらやっておる。これはしかし共同作業ですよ。大勢の者にこれは大量生産でやっている。それでも百七十九円とか百八十円の食費代を費やして病院がやっているのですよ。それを個人の家庭の奥さんが隣近所の店から買い集めてやるその日常の生活の中で、二千五百カロリー、百八十六円でやれます、それだからそれ以上は税金を払いなさいなどというようなことは、私が言わんでも、国民は納得しません。あなたは私に巧みな答弁をして、小林なんというのは調子よくごまかしてやったというふうにお考えになるかもしれませんけれども、私が許しても、天許さず、人許さず、大衆これ許さずだ。これは、あなたは深く反省をしていただきまして、こういうことはおやめなさい。もしどうしてもやめることができないならば、麗々しくそういうのを数字に出して発表するなどという厚かましい行為だけでもおやめになったらよろしい。だれもそんなことは言いません。  私の御質問いたしたいことはようやく半ばに達して、これからいよいよ深刻なる質問に入るところでございましたけれども、残念ながら、どうも時間もないようでありまするから、きょうは最後に、来年度は所得税に対してひとつ思いを新たにして、こういうように改正をして庶民の生活を守る。——わが社会党は、御承知のとおり、八十万円から税金をかける、民社党あるいは共産党の諸君は百万円から税金をかけるということを言っておるようでありますが、私どもはあらゆる緻密な計算をいたしました関係上、昭和四十一年度からでも八十万円から個人所得税をかけるということで、それはやり得るという確かなる確信を持っております。あなたは来年度これをいかに変更をしていくお考えをお持ちになっておるか。なお、これを変えないで、さらに庶民を痛めつけていくというお考えであるならば、それはまたそれでよろしい。明確な御答弁をお聞かせ願いたいと思うのであります。
  195. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいまも申し上げましたように、なるべくすみやかに八十万円までは持っていきたい。しかし、結局持っていけるか持っていけないかという速度の問題は、経済がいかに発展していくか、こういう問題と非常に大きな関連を持つと思うのです。私どもは、そういう目標になるべくすみやかにいくように、まず経済の回復、景気回復をはからなければならぬ、また、その上に立って経済の成長をはからなければならぬ、まず、いろいろないいことをやりたい、やるための財源、これを培養しなければならぬ、こういう基本的な考えであります。
  196. 小林進

    ○小林委員 私はこれで終わりますが、いまの大臣考え方には全く反対であります。それは皆さん方がいつもおっしゃる、経済が成長し、国が豊かになり、生産が増強するまでは食乏人はがまんせよ、これは、終戦直後から二十年、歴代の大蔵大臣、歴代の総理大臣からわれわれは聞いてまいりました。われわれはしんぼうしきれないから申し上げる。その経済の成長なんて、いつまでいったらあなた方の言われる経済の成長だ。いつまでいったら満足の時代がくるのだ。そんなことは二十年もだまされていれば、もう大衆はだまされません。そこで、ほんとうに庶民の生活を守るというならば、経済の成長は問題点じゃない。やはり人間の尊重です。経済もだが、文化も科学も政治も、みな人間を大切にし、人間の生活を守るということから始めなければならぬのです。まず、ひとつ人間の生活を守り、最低の保障をする、それからひとつ人間の力を活用し、総力を活用して経済の発展に立ち向かうという考えが逆になければならぬ。その逆の考え方があなたにない以上は、残念ながら、私はあなたの答弁に満足することはできません。きょうは両者対立のままで終わることにいたします。いずれまたお目にかかります。
  197. 三池信

    三池委員長 次会は、明十八日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後六時五十五分散会