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1966-03-16 第51回国会 衆議院 大蔵委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年三月十六日(水曜日)    午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 三池  信君    理事 金子 一平君 理事 原田  憲君    理事 坊  秀男君 理事 山中 貞則君    理事 吉田 重延君 理事 平林  剛君    理事 堀  昌雄君 理事 武藤 山治君       岩動 道行君    大泉 寛三君       奥野 誠亮君    押谷 富三君       木村 剛輔君    小山 省二君       砂田 重民君    田澤 吉郎君       谷川 和穗君    地崎宇三郎君       羽田武嗣郎君    福田 繁芳君       藤枝 泉介君    村山 達雄君       毛利 松平君    山本 勝市君       渡辺 栄一君    渡辺美智雄君       有馬 輝武君    小林  進君       只松 祐治君    野口 忠夫君       日野 吉夫君    平岡忠次郎君       藤田 高敏君    山田 耻目君       横山 利秋君    春日 一幸君       永末 英一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君  出席政府委員         大蔵政務次官  藤井 勝志君         大蔵事務官         (主税局長)  塩崎  潤君         国税庁長官   泉 美之松君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計局法規課         長)      赤羽  桂君         厚 生 技 官         (国立栄養研究         所長)     大礒 敏雄君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 三月十四日  元室蘭税務署職員の遺族に見舞金支給等に関す  る請願泊谷裕夫紹介)(第一六八一号)  各種共済組合法増加恩給受給権者に対する不  均衡の是正に関する請願小川半次紹介)(第  一七三二号)  同(黒金泰美紹介)(第一七九六号)  同(高瀬傳紹介)(第一八五三号)  同(中曽根康弘紹介)(第一八五四号)  同(藤本孝雄君外一名紹介)(第一八五五号)  同(粟山秀紹介)(第一八五六号)  貸金営業法制定に関する請願鴨田宗一紹介)  (第一七三三号)  国民金融公庫法に基づく更生資金貸付限度額引  上げに関する請願木村剛輔君紹介)(第一八四  一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律  案(内閣提出第四〇号)  所得税法の一部を改正する法律案内閣提出第  二〇号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  二一号)  相続税法の一部を改正する法律案内閣提出第  五六号)      ————◇—————
  2. 三池信

    ○三池委員長 これより会議を開きます。  所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案及び相続税法の一部を改正する法律案の各案を一括議題といたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。平林剛君。
  3. 平林剛

    平林委員 長いこと大蔵大臣に質問を展開しようと考えておりまして、いろいろ準備をしたのでありますけれども、その間、なかなか質疑をする時間が経過して、私のほうも材料を集めたのだけれども、きょうは十分意を尽くしてお尋ねをすることができないかもしれませんが、最初に、所得税法中心にして、事務当局を含めて大臣お尋ねをしてまいりたいと考えておりますから、そのつもりでお答えをいただきたいと思うのであります。  私は、本会議においても、今度の税制改正は、金額においてその規模は大きいけれども、しかし、その大きい中においても低所得階層に対して必ずしも行き届いた減税になっておらない、そういう趣旨のことを指摘をいたしました。きょうはそういう低所得階層に対して十分行き届いた減税ではないという立場で幾つかの例をあげながら、政府にその善処を求めてまいりたいと考えておるわけであります。  そこで、最初の問題は、大蔵省が毎年発表しておりました献立表、これを本会議大臣に質問しましたら、私まだそういうことを知らないといって、お答えできませんでした。しかし、その後、三月七日に、四十一年度税制改正基礎になった生計費が公表になりまして、これによりますと、それぞれこまかく発表になっておりますが、試算をしてみると、独身者の場合は、一日当たり百八十六円八十七銭、一日二千五百カロリーを基礎にして数字が公表されたのでございます。まあ、結局これだけあればまず食べていかれるという趣旨であろうと思うのであります。ただ問題は、国立栄養研究所に、さて、この金額ではたして献立が編成できるかどうかというこまかい献立表発表がないということでございますけれども、ことしはこれはおやりにならないのかどうか、その点について伺いたいと思うのであります。
  4. 塩崎潤

    塩崎政府委員 お答え申し上げます。   一昨年来、所得税法課税最低限に関連いたしまして、食料費基礎といたしますところの消費支出、これが問題になったのでございます。私どもは、課税最低限のきめ方にいろいろな考え方があり、過去におきましても各種研究を進めてまいったのでございますが、こういう計算は、昭和三十三年ごろから私どもの内部におきまして課税最低限妥当性研究する一つ意味でやってきたのでございます。そんなような一つ方法でございましたので、別にそう世の中にこれが唯一の基準であるということで公表するつもりはなかったのでありますが、昨年、たまたま御要求によりまして御提出申し上げたのでございます。そこで、御承知のように、いろいろな批判を生んだのでございます。本年度もこの点につきましていろいろな考え方ができたのでございますが、私は、昨年度におきまして国立栄養研究所があれだけの責任をもってつくられました献立でございますので、いろいろな批判がございましたが、今年度におきましてそれを変えるだけの必要性はないものと考えたのでございます。そんなような意味で、本年度は昨年度献立基礎といたしまして、最近の食料費値上がり等を勘案いたしまして計算いたしましたのが、先ほど御指摘の百八十六円八十七銭というような数字になったのでございまして、種種の批判はございましたけれども、現在のところ、国立栄養研究所がつくられました献立は妥当なもの、かように考えております。
  5. 平林剛

    平林委員 今回発表された数字は、少なくとも昨年の物価基礎にされておりますし、この正月値上げになりました米代おおよそ八・六%の分は含まれておりませんし、    〔委員長退席吉田(重)委員長代理着席〕 最近特に高騰を続けております牛肉だとかあるいは卵、高低はありますけれども、そうしたものについても含まれておらない。いわんや、物価の上昇が五・五%をこえる、こういうようなことになりますれば、数字の上では一日百八十六円八十七銭とありましても、実際上、はたして献立ができるものかどうかという点で、私はやはり国民批判というものが集中すると思うのであります。これにこたえる意味では、できますぞということは、具体的献立表でつくってもらわなければならぬのではないか。私は別に意地悪な言い方をするわけではありませんが、政府減税政策においても、なおかつこの程度献立であるということは、やはり発表をする必要があると思うのです。私は、そういうことが、政府国民課税最低限というのはどの程度ということを絶えず自覚していく上において一番必要な手段であると考えておる。国民はむしろ一もちろん評判は悪いでしょう、こんなもので食えるか、だから、こんなことで献立が各家庭でできるかどうかという議論があることは当然だ。私もそれをつくらせるということじゃないですよ。問題は、課税最低限が低過ぎるということを絶えず実際の問題として実験をしていくという意味政府はおやりになる必要があるのではないか、それをことしやらないというのはいけない、発表すべきだ、こういう考えなんでごごいます。去年のやつで私十分だと思いません。思わないので、これをつくるべきだというのが私の要求なんです。これは意地悪で言うのじゃない。そういうことを絶えず実験をしていくことが、政治家としてあるいは政府としても、今日の課税最低限引き上げ一つの示唆になる、励ましになる、こういう意味で、私はどうしてもつくってもらいたい、こう思っておるのですが、いかがですか。
  6. 塩崎潤

    塩崎政府委員 確かに、去年の批判がありました結果から顧みまして、私ども国立栄養研究所につくっていただきました去年の献立が、絶対的にいまいいものだとは考えておりません。しかし、昨年初めての試みといたしまして、国立栄養研究所にお願いいたしましてでき上がりました献立でございます。本年度もその献立を全面的に改めるという考え方もございまするけれども、やはり私は、二、三年これを一定いたしまして、ただ、金額計算は私どもがする義務を負っておりますので、それをもって足りるのではないか。献立発表しないということではございません。発表いたしておりますものは、去年国立栄養研究所においてつくっていただきました成年男子一日二千五百カロリーというカロリーベースに基づきました献立、これは、私は、国立栄養研究所といたしましても自信のあるものだと、かように考えておりますので、それをもととしてやっておるのであります。発表してないということではなくて、去年の献立ベースにいたしまして、最近の食料費金額をかけて計算いたしましたらこういうふうになる、こういうふうに発表いたしておるのでございます。今後なお、これらの点につきまして種々の御批判もございましょうから、献立等につきましては、十分ひとつ国立栄養研究所等において研究していただきたい。何ぶんこういった税の問題を離れての基本的な問題でございますので、私どもしろうとでございます。しかし、なお研究さしていただきたい、かように考えております。   〔古田(重)委員長代理退席金子(一)委員長   代理着席
  7. 平林剛

    平林委員 この問題については、大臣、私はお遊びでひとつためしに国立栄養研究所につくらしたらいかがですかと言っておるのじゃないのです。しかし、ただいま申し上げたとおり、これは一つ実験を通じて絶えず政治家が心していかなければならぬ、そういう立場でことしもやらしたらいかがです、こういうことを申し上げておるわけです。そして、いまお話がありましたけれども、私は実際的に可能かどうかという点には疑問を持っておるのでございます。また、これらの調査総理府家計調査分析をしていろいろなことをおやりになったのでございますけれども、この総理府家計調査についても、分析をいたしますといろいろな問題があるのでございまして、そういういろいろな疑問を審査する上でも一つの対象になりますから、大臣、ことしもぜひそれをつくるようにお命じになっていただきたい。大臣の御見解を承りたいと思います。
  8. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 たいへん御親切なおすすめでございます。十分私ども検討してみます。
  9. 平林剛

    平林委員 大臣のいまの検討するということばは、私はきらいなんですよ。あなたの言うのはこの間から失敗しているんだ。先ごろ横山委員も言っているんだけれども、いまの雰囲気だと、検討するということはやらせますということになるわけなんだ、大体私はそういうふうに受け取るのだ、人間が善意にできているから。ところが、検討するという結果は、たいしてあれじゃないからということになったのでは、私は、いま短い時間大臣にせっかく出席していただいて大臣答弁を聞いたにしては、何も残らないのだから、検討するということは、それを実行するということだというふうに理解したいのですが、もう少しはっきり言ってください。横山委員も質問していたんだ。会議録読むと、一体何のことだか、ちっともわからない、あれでは意味がないじゃないか。私疑い深いわけじゃない。あなたが悪いんですよ、大臣答弁はどうも政治的過ぎるところがあるから。やると言って、約束してください。
  10. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 この問題は、ことしはつくらないほうが、いたずらな誤解を招かないことになるだろう、こういうふうに考えまして、まだ準備をしていないのです。そういうことで、ことしの問題としては間に合いかねるかもしれない。しかし、これはお話もありますし、そういうサイドの感覚、これもよくわかります。でありますから、前向きでひとつ検討してみる、かようにいたしたいと存じます。
  11. 平林剛

    平林委員 前向きで検討するということは、一歩進んだようだけれども、私の要求に達しているかどうかわからない。だけれども国民は四月一からこれで大体よろしゅうございますよということになるわけですよ、かりにこの税法が通ればですね。税法が通ればそうなるんです。私は、その前向きというやつを一歩進めて、時間的に余裕がなければ別だが、家庭の主婦は、税法がきまったら、その日にでもそれで食っていかなければならないということになるわけですから、ぜひひとつそれは実行していただきたいということを要望いたします。  ただいまの問題も十分じゃないけれども、次の問題に移りますが、納税人員の点であります。今回の所得税減税におきまして、納税人員はおおよそ二千万人程度にとどめることができたということになりました。もし税制改正が行なわれなければ二千二百万をこえるだろう、こういう推定でございましたのが、とどめることができたわけでございますけれども国税庁にちょっとお伺いしたいのです。この納税人員二千万人程度にとどめることができたという程度では、この税務署税務行政については、昨年税制調査会要望をされた税務行政がやりにくい、非常に納税者が多くて、徴税事務にも支障があるという趣旨要望書を出された国税庁としては、今後も同じ状態が続くのではないかということを私は指摘をしなければならぬと思っておるのです。なぜかというと、去年そういう納税者が多くて非常に困る、これはひとつ減少するような方向でやってもらいたいという要請といいますか、悪いことをいえば、悲鳴をあげたときには納税者おおよそ二千万人だったわけですね。それですから、何らかの体制なりその他の手段が講ぜられない限り、そのときの状態と同じなんですから、そういう意味では、国税庁長官たいへん困っておるんじゃないかと思うんですけれども、いかがなものでしょう。
  12. 泉美之松

    泉政府委員 お答え申し上げます。昨年国税庁のほうから税制調査会に対しましてお願いいたしましたのは、一つは、先ほどお話のように、納税者が最近非常にふえて、これに対して税務職員の数がふえませんので、なかなか税の執行調査の万全を期するのに骨が折れる、こういう点と、いま一つは、税制が非常に複雑で、納税者にとってもそうでありましょうが、その執行に当たる税務職員といたしましてもたいへん苦労が多い、この二点を何とか解決してもらいたい、こういうことを申し上げたわけでございます。で、今回の税制改正におきましては、お話のように、納税人員は二千六十四万五千人ということになっておりますが、税法改正しない前に比べますと、税法改正しない前は二千二百九万人という見込みでございますので、相当減少いたしておりますし、また、四十年度見込みでありまする二千百万人に対しましても減少する見込みということになっておりますので、納税人員の点からいたしますと、まあまあこの程度でやむを得ないのではないかと思っております。  また、税法簡素化の点につきましては、御案内のとおり、各種の点で簡素化措置がはかられておりますので、これで十分満足と言えるわけではございませんけれども、その方向を今後とも推し進めていただくならば、私ども執行面の負担は相当軽減されていくのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  13. 平林剛

    平林委員 これは、こういうところで話をするお役所的な答弁でございまして、いまのお話、そのお役所的答弁でも、やむを得ないとか、満足でないということは、昨年の悲鳴というものは解消しておらないということになると私は思うのです。そこで、去年問題になりました学校を卒業した子供ですね、高校とかあるいは大学——まあ最近の大学出初任給大体どのぐらいになりますかわかりませんが、なるべくならば、学校卒業したて子供たちには、あまり税金の苦しみは——勉強のためなら話は別でありますけれども低額所得層と見られるこの階層については、なるべくなら減らしていって、そして納税人員はそこからすくい上げていくということも一つ考え方であろうと思うのでありますが、現状は一体どういうふうになっておるか、御説明いただきたいと思います。
  14. 塩崎潤

    塩崎政府委員 お答え申し上げます。  納税人員が最近非常にふえてまいったことは、御指摘のとおりでございます。昭和三十一年が、私の記憶では最も納税人員の少なかった年じゃないかと思うのでございますが、そのときは千万人ちょっとこしたばかりの納税人員でございましたが、それが大体倍くらいになってきた、その倍になりました大部分給与所得者でございます。さらにまた、給与所得者納税人員のうちのまず六割までは独身者が占めている現状でございます。このことは、御指摘のように、学校を卒業した方方が相当納税人員に入り込んでいるのではないか、こういう御指摘がそのとおりだと思うのでございます。ちなみに、私は、昭和三十一年と現在との初任給比較し、さらにまた、それと課税最低限との比較をしてみたのでございますが、このあたり税制に対する考え方が非常に必要かと思うのでございます。中卒は、民間企業におきまして、三十一年−四十一年の初任給の上がりは、例の若年労働者の不足による初任給値上がりによりまして、年額で大体二八六%、二・八倍くらいに上がってございます。高校卒が二・五八倍、大学卒が二・二〇倍、こんなような傾向を示しております。一方、課税最低限は、三十一年から、御案内のように、世帯持ち扶養親族を持っている方々のほうに重点を置いてまいりまして、たとえば、昭和三十六年から配偶者控除の制度を設けまして、基礎控除に近づけてまいりました。このような関係が影響しまして、課税最低限は、昭和三十一年から比較いたしますと、二・一二倍にしかなっていない、このことが納税者増加した原因の大きなものであろうかと私は思います。ここは減税をどこに持っていくかという根本的な考え方があろうかと思います。それが一つでございます。  そのほかに、これはおそらくあとから御指摘があるかもわかりませんが、扶養親族所得限度五万円ということを据え置いております関係上、扶養親族納税者から落ちていくこと、さらにまた、扶養親族給与所得者に転換していくこと、さらにまた、農業専従者等給与所得者に転換していく、営業者法人成りをいたしまして給与所得者に転換していく、こんなような関係が、給与所得者中心といたしまして増加した大きな原因であろう、かように考えております。しかし、今後の所得税方向といたしまして、独身者あるいは世帯持ちにどの程度のウエートを置いていくか、これは担税力を示す大きな問題でありますので、今後慎重に検討してまいりたい、かように考えております。
  15. 平林剛

    平林委員 私は本会議のときにも指摘をしたのですけれども、昨年の税制調査会に対して政府が提出した東京都内法人を選定して行なった実態調査によりますと、高校を卒業した子供たちが、採用されたその翌年から七一・八%は税金をかけられておる、大学卒業者になりますと、もう最近では一〇〇%税金がかかる、こういう数字になっておるようでございます。これは東京都内法人調査でございますけれども、大体普遍的なものと考えてよろしいのではないだろうか、こう思います。そうなりますと、私はここに一つの社会的な問題を考えないわけにはいかないのです。なぜかというと、高校を卒業して職場に就職をするのは、いわば勤労学生です。大学進学をする家庭の子弟と比較をいたしますと、どちらかというと恵まれざる階層人たちでございます。相当数の人が父兄の保護や、あるいは自力もございましょうけれども大学進学をしていく時期において、実社会に出て勤労少年として働かねばならぬ。その勤労少年たちに対して、職場に入るとすぐ税金がかかっていく、こういうことは、私はやはり政府の低所得階層に対する課税のしかたが間違っておるのでないだろうか。少なくとも、こうした年少労働者に対しては、社会的な環境、状況等を考えれば、税金をかけないということから出発していかなければならぬのでないか。そういう配慮をすることによって、納税人員の縮小ということが一つ方法としてはかられるのだから、そういう意味では、こうしたところに対して何らかの措置をとっていかねばならぬと思うのです。まずここから始めるべきだと思うのですけれども、いまの場合ではどうも処置ないのでないか。何かいいくふうはないものかという点をひとつお尋ねしたいと思うのです。
  16. 塩崎潤

    塩崎政府委員 確かに、高校卒の七割が所得税を納めなければならぬという批判はずいぶん聞くところでございます。先ほど来申し上げておりますように、扶養親族の多い方々、あるいはまた教育費のかかるような、教育費控除が主張されるような場合におきまして、独身者と所帯持ちとどちらが担税力があるか、これはなかなかむずかしい考え方が要るところでございます。私どもは、過去におきましては、先ほど来申し上げておりますように、これは過去との比較でございますけれども世帯持ちのほうに重点を置いてまいったのでございますが、御指摘のような点もひとつ考えなければならぬ、その方法といたしまして、いろいろな方法がございましょう。私どもは、この納税人員増加の最大の原因が、御指摘のように、営業者農業所得者ではなくて、給与所得者増加であるということを考えまして、それもまた独身者増加であるということを考えまして、それを救うにはどうしたらいいかという点を考えておりましたのが、例の給与所得控除のうちの定額部分引き上げでございます。本年におきましても一万円の引き上げをはかっておるのでございますが、給与所得者独身者課税最低限引き上げる一番いい方法は、定額部分引き上げではなかろうか、基礎控除は、給与所得者のみならず、営業者農業者にも及びますので、給与所得者だけに及びますところの給与所得控除のうちの定額部分だけを引き上げることによってこれに対処できないか、かように考えているのでございます。現在三万円でございますが、本年度改正案におきましては、一万円引き上げまして、四万円、これは種々意味がございますけれども給与所得者独身者、働く人に対して最も大きな課税最低限、かように考えております。
  17. 平林剛

    平林委員 税制調査会でも今後の減税基準をどこに置くかという問題が議論されまして、これはまた大臣との間で私議論をしたい点の一つでございますけれども、その中に、納税者の割合をひとつめどにして考えたらどうだろうかということもございました。私は、低所得階層に末広がりに広がっておる最近の納税人員状況から考えてみますと、それも一つ方法ではないか、そう考えるのであります。  そこで、国税庁にちょっとお尋ねをしておきたいと思うのですけれども、一体、納税者一人当たり徴税費というのはどうなるのだろうか。私は、低所得階層課税をして得られるところの収入というものと、それから、今日国税庁の徴収のために使われる、いわゆる徴税費とを比較いたしますと、こういう下のほうにまでやたら税金を課しておるという現状は、徴税の経費などから考えてみても、必ずしも国家の収益を増加させるものでないのじゃないか、観念的にこう考えるわけでありますけれども、一人当たり納税者徴税事務はどういうふうになっているのか。そしてまた、たとえば、いま二千万人でございますけれども、これを千五百万人とかあるいは千六百万人とかというように、ぐっと下げるということによって、税収とかは下がるでしょうけれども、しかし、徴税事務はそれだけ簡素化されて、そして他の部門に回りますから、効率がよくなって、そんなに国家収入には大きな穴があかないのじゃないかというようなことも考えるわけですけれども、この関係は一体どういうふうになっておるか、ここを明らかにしてほしいと思います。
  18. 泉美之松

    泉政府委員 徴税費の問題でございますが、税収百円当たり徴税コストといたしましては、御承知のとおり、かつては二円をこえる状況でございましたが、近年租税収入が相当ふえてまいっておるにもかかわりませず、税務職員増加をいたしておりませんので、昨四十年度の補正後におきましては一円八十九銭になっております。これが四十一年の見込みでは、税収が、御承知のとおり、税制改正によってあまりふえませんのに、人件費のほうがベースアップによりましてふえる関係からいたしまして、一円九十五銭ということに相なっております。これをさらに納税者一人当たりというお話でございますが、この計算は、それぞれの税目によりまして納税者の数が違っておりまして、なかなかむずかしいわけでございます。ただ、私どものほうで、何といっても税務行政上問題が多いのは申告所得税でございます。源泉徴収のほうは、御案内のとおり、源泉徴収義務者のほうでそういう仕事をしていただきますので、源泉徴収義務者の源泉徴収に要する経費を見込みますと、これは相当多額な金がかかっていることは事実でございますが、国税庁徴税費としては予算に乗らないことになります。そういう源泉徴収義務者の源泉徴収に要する費用も、相当大きな社会的なコストとしては十分考えなければならないのでありますけれども、その資料はまだ十分つかんでおりません。  そこで、申告所得税納税者について検討いたしてみますと、これもいろいろ問題がございまして、申告所得税は、納税する人だけでなしに、源泉徴収あるいは予定納税の還付を受ける人、さらには申告の結果控除失格になる人、この人の分まで実は仕事としてやっておるわけでございますので、そういった面もあわせて考えなければならないと思いますけれども、ごく大ざっぱに、申告納税の所得者で、納税者だけについて見ますと、これは非常に大ざっぱな計算で、今後十分精査してまいらないといけないと思いますけれども、一人当たり約八千円余りの徴税コストがかかっておるわけであります。これに還付の人員を加えますと六千円余り、さらに控除失格をするものを考えてまいりますと五千円足らず、こういう程度徴税コストがかかっておるわけでございます。もっとも、所得税は、先ほど申し上げましたように、源泉徴収の分をあわせて考えなければなりませんので、何ぶん源泉徴収のほうの徴収義務者のコストが十分わかりかねますので、一応申告所得税の分だけを申し上げたわけでございます。
  19. 平林剛

    平林委員 かりにこれが、大づかみでありますけれども課税最低限を八十万円程度にした場合には、社会党としてはそれを主張しているんですけれども納税人員はどのくらいになると試算されたことがありますか。野党の言うことであるから、特に計算したことはないというお考えですか。
  20. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私ども種々計算をいたしまして、将来の改正案を検討いたしております。ただ、課税最低限を八十万円にするにいたしましても、基礎控除でやるか、あるいは配偶者でいたしますか、いろいろなやり方があろうかと思います。  そこで、これは研究の過程でございますので、これにあまりとらわれないで、率直に申し上げますと、たとえば、納税人員を一千万人くらいにするにはどの程度課税最低限にしたらいいかという研究をいたしたことがございます。そうなりますと、基礎控除を——基礎控除だけでいくということも考えられませんけれども、まあ三十万円くらいにすれば、一千万人くらいになるのではないか、そういたしますと、現在の所得水準で約二千七百億円ばかりの減収がある、こういうふうになろうかと思うのでございます。  さらにまた……。
  21. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと関連して。  いま三十万円まで基礎控除を置いたら、二千七百億ですか、減収になるというが、それは確かに上まですらっと持っていってしまうと二千七百億円くらい減税になります。ところが、それを大体二百万円超くらいのところで、そのところからだんだんカーブが消えていく、こういうふうにもし考えるとするならば、というのは、いまの問題というのは、低所得の者が非常にたくさん課税対象になっておるということが問題なんで、だから高額所得者のほうは、生計費に相当余裕のある収入があるわけですから、その分は担税能力ありと見るならば、そこまで減税する必要はない。であるから、趣旨として、われわれがいまそういう問題を提起しているのは、低所得のところに厚く、高額所得にはその効果は及ばなくともいいというような発想で考えてみるとすると、いまの二千七百億円というのは千五百億円くらいに下がり得るのではないか。これは私の目測ですけれども、その点はどうでしょうか。
  22. 塩崎潤

    塩崎政府委員 いま堀委員の御主張の、基礎控除あるいは扶養控除を一定限度こえました所得階層には全然適用しない、だんだんと上に行くに伴いまして、いわゆる消去していくという考え方、これはアメリカの学者が主張しておるところでございまして、最近の社会党の御提案にも出ております。私どもはそういった考え方を現在とっておりませんし、そのこと自体、いろいろな課税最低限をすべての人に適用することが公平という意味で、そのお考えには賛成しないのでございますが、おっしゃるとおりにやりますれば減収は防げる、こういうことは事実でございますが、どの程度に減収になるか、これもやり方一つでございますので、計算はできるかと思うのでありますが、まだ計算はしておりません。
  23. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっともう一ぺん。いま局長は公平でということを仰せられたのですが、公平ならそうすべきだと私は思うのです。なぜかというと、累進税率ですから、同じ三十万円引きましても、その三十万円の効果は上積み税率できいてくるわけですから、実際には低額所得者よりは高額所得者のほうが、同じ基礎控除によってたくさん減税を受けるわけです。そうすると、課税の公平ということから言えば、消去税率を使うほうが課税の公平になるんじゃないか。だから一千万円も二千万円もの所得のある人に三千万円の基礎控除なんというのは、これは私は公平もへったくれもあるもんじゃないと思うのです。要するに、そういうことじゃなくて、それが作用する範囲、二百万円とか三百万円とか、そこらまでは公平の原則をある程度考えなければいけないけれども、上積み税率の問題をあわせて検討して公平を考えるのが、私は、租税体系上は真の公平の原則じゃないかと思いますが、その点はどうですか。
  24. 塩崎潤

    塩崎政府委員 確かにおっしゃる点もあろうかと思います。限界税率、上積み税率は一〇〇%のところはないんだから、必ずそこに残るものがあり、その点で、その金額で生活費その他、あるいは貯蓄でもまかなえるではないか、よって、課税最低限は一定限度以下の所得層にだけ適用していいんじゃないかというお考えが私は成り立つかと思います。しかしながら、やはり私は、課税最低限課税最低限としてすべて控除することにして、しかし、一方上積み税率のきめ方、これをひとつきめるのが、より税制として適当ではなかろうか、かように考えております。現在のわが国の税率は七五%、地方税まで入れますと、限界税率では九〇%をこえるようなところでございます。そうなりますと、私は、単純なやり方で控除を上のほうにドロップさすということは相当な問題が起こりやしないかと思います。もう一つは、税制上もまたきわめて複雑な仕組みを設けなければならぬ、こんな点が問題点だろうと思いますが、しかし、アメリカの学者にも主張する人があり、さらにまた、私の読んだ本では、イギリスのある連邦の中に行なわれているところもありというふうに伺っております。もちろん大きな国ではないかと思いますが、そんなことをいっておりますので、研究問題としては爼上にのぼるだろう、かように考えております。  そこで、金の計算の議論になりましたが、税制研究意味で申し上げておるのでございます。三十万円に上げますと、そのときの課税最低限は八十二万五千円ということになります。さらにまた基礎控除だけ上げるということは、そういった政策を傾斜的にとることも可能でございましょうが、あまりにもそれもひど過ぎることでございましょうから、もう少し別な、配偶者あるいは給与所得控除、このあたりもひとつ加味して上げなければならぬということも考えますと、このほうがむしろ、先ほど若干申し間違えたかもしれませんが、配偶者控除あるいは扶養控除、これらを上げていくほうがよけい金がかかるようでございます。三千六、七百億円ばかりの減収が生じて、納税人員はやはり千万人、はかり減ってまいる、こういうところでございますが、そのときの基礎控除のモデルは、現在の十四万円を二十三万円にし、配偶者控除を十三万円から二十三万円にし、扶養控除を一律現在の六万円というのを十万円にする、給与所得控除も四万円を六万円にするといったようなオールラウンドの改正をしてまいりますと、約三千六百二十億円という計算が出てまいります。そういたしますと、納税者が約千万人ばかり減りますが、こういたしますと、課税最低限が百一万円ぐらいになろうかと思います。その他、私どものことでございますので、たとえば、納税人員を五百万人減らすにはどういったことになるかという計算しかございませんが、これはまた御質問に応じて答えたいと思います。
  25. 平林剛

    平林委員 はなはだ事務的なことですけれども、将来において八十万円程度までにはしたい、こういうのが、総理大臣並びに大蔵大臣などのお考えのようでございます。そこで、課税最低限を八十万円にするためにはどういう措置が考えられるか、その幾通りかの試算を御提出をいただきたいと思うのでございます。これはよろしゅうございますか。
  26. 塩崎潤

    塩崎政府委員 先ほど来申し上げておりますように、種々の前提があり、種々の組合わせがございますので、そういう前提を置いた一つ研究資料といたしまして御提出申し上げたいと思います
  27. 平林剛

    平林委員 この問題は資料をいただいて後さらに申し上げたいと思うのですが、いずれにしても、現在の納税者層を、税調でも指摘をしておりますように、今後の納税者の割合を一つのめどとして減税というものを考えたらどうかという示唆もございますし、また、国税庁においても、現在の納税人員ではとてもたまらない、ただいまの泉さんのほうは、去年自分が出したものでないものですから少し間接的になっていますけれども、それでもやむを得ない、あるいは満足ではないというようなお答えがございますように、やはりこれも今後減税をする場合の一つ基礎になる、また、いまお話のように、総理も大蔵大臣も八十万円程度をめどにするということを考えておるのですから、そういうことを通じても納税人員は少なくしていくことができると思うのです。  そこで、現状においても、政府の資料によっても明らかなとおり、三十九年度においては、平均国民所得に対する課税最低限の割合が四五・九%になっておる。これは三十九年度が平均国民所得が百二万六千三百六十円に対し、課税最低限が四十七万千三百七十七円でございますから、大体四五・九%、昭和二十五年当時でございますと、平均国民所得が三十二万千百八十六円でございまして、当時の課税最低限が十四万九千四百十四円ですから、四六・五%、大体四五・六%というところでございます。しかしながら、昭和九年ないし十一年当時は、平均国民所得が四十一万二千七百二十円のときに課税最低限度は七十八万八千四百三十七円となっておりまして、割合を見ますと一九一%、つまり、平均国民所得の二倍程度のところから納税人員になっておったということを考えますと、先ほど試算をされましたように、現状においても、少なくとも一千万人程度納税者に持っていくというようなことは、ここ近年における緊急不可欠の要請としておやりになる必要があるのではないか、こういうふうに考えるのでありますけれども大臣に直接お伺いできないで、あなたに聞くのは悪いけれども、八十万円程度にするというのは大体いつごろというような御計算でおるのでしょうか。
  28. 塩崎潤

    塩崎政府委員 所得税減税のめどを納税人員に置くという考え方、非常に有力な御意見でございます。私どももそういった目安は常に持っておらなければならぬ、かように考えております。ただ、御存じのように、所得税は、何といいましても税制中の最もいい税でございますし、私は、これによって民主国家ができる税らしき税だと思っております。そんなような意味で、納税者がふえることだけでこの所得税を考えていくこともどうか、かように考えております。ちなみに納税者数の有業者に対する割合は、先進国に比べてまいりますと、まだまだわが国は低いようでございます。いま御指摘の平均国民所得からのお話もございましたが、有業者と納税者比較していきますと、日本が四十一年度の改正後で五五・七%であり、少し数字が古いのでございますが、アメリカは納税者が非常に多うございます。そういった関係で六五・五%、イギリスは六九・八%、西ドイツは六九.二%と、こんなふうに所得税納税者は上昇しておるのでございます。アメリカにおきましても、六百ドルという基礎控除は一九四八年以来据え置き、そのため五千万人ばかりの納税者、一億五千万人の人口の三分の一が納税者で、まさしく所得税中心でございますが、私は、各国、各国の事情がございましょうし、わが国にはわが国の事情がございましょうから、別途に考えるべきだと思いますが、こんな点も、どういうふうに考えてまいりますか、ひとつ詳細に検討してまいりたい、かように考えております。  そこで、御質問の八十万円までにするのはいつごろかというお話でございますが、これも、幸い現在資料を持ち合わしておりますので、御参考までに申し上げたいと思いますが、先ほど来申し上げておりますように、同じ八十万円に課税最低限を持ってまいりますにいたしても種々方法がございますし、堀委員御指摘のように、それはいままでの計算方式であるから、もう少し減収を少ない方法で八十万円に持っていくことも可能であろう、こういうふうな考え方もございましょうが、一応いままでの考え方で私どもが試算したものがございますが、課税最低限八十万二千円にいたします方法といたしまして、基礎控除を、十四万円を十七万円に上げます。配偶者控除を、現在一方円の差がついておりますが、これを一万円の差を維持いたしまして十六万円にいたします。扶養控除を六万円から九万円に上げるといたしますと、約手七百億円ばかりの減収でございます。これが最も少ないのでございますが、そのほか、たとえば、配偶者控除基礎控除と同額にしろ、こんなような御意見もございますので、十七万円にいたしますと、課税最低限は八十一万三千円になり、減収といたしましては千八百億円になろうか、こんなところが現在のところ最低の減収額であろう、先ほど申し上げましたように、基礎控除を十四万円から三十万円に上げますと、二千七百億円ばかり要りまして、基礎控除一本立てにしますと、課税最低限は八十二万五千円、こんなような非常にバラエティーのある数字が出ましょうが、これだけの減収額を私どもは確保しなければならぬ、これがいつ行ない得ますか、これは大臣の政治的判断によりましょうし、政府の政策の結果によろうかと思いますが、こんなようなことを私どもは頭に置きながら、できる限り早く進んでまいりたい、かように考えております。
  29. 平林剛

    平林委員 これは政治的判断でございますから、大臣でないと困難かと思いますが、いまその前に例をおあげになりまして、有業人口と納税者との割合を諸外国の例でお話しになりましたが、どうもこういうときにそういう例をお話しになるのは、私適当じゃないと思うのです。少なくとも、現在の課税所得階級別の納税人員を見ますと、課税所得十万円程度の者が六百九十一万三千人もいるのですね。こっちのほうを例にあげてもらいたいのですよ。これは昭和三十九年度の資料で、最近の発表がございませんから三十九年の資料を使いますけれども課税所得十万円程度の者が六百九十一万人もいるのですよ。そうして、十万円から二十万円程度の者が六百二十七万四千人もいるわけだ。課税所得が二十万円以下の人であっても、約八〇%納税者は占めているわけですね。私は、諸外国における有業人口と納税人口の割合などをあなたがお示しになるとは思わなかった。やはり日本の場合には課税所得の階級別納税人員というのがこんなに低いのだ、こういう程度だということをわきまえて、ぜひ近い将来に課税最低限を八十万円程度に持っていくというくふうをしてもらいたい。大臣が諸外国、西ドイツとかイギリスとかアメリカを言われるのはいいけれども、私と話しているのは、何とか低所得階層を救っていくべきだ、諸般の事情からいってもこれは道理だ、こういうことで申し上げておるわけですから、そういう方面で話をしてもらいたいのです。  ついでですから、最近時における課税所得階級別納税人員はどうなっているか、この機会に聞かしていただきたい。
  30. 塩崎潤

    塩崎政府委員 まず、私が外国の納税人員を申し上げましたのは、別に減税する方向に反対という意味で申し上げたのではない、ただ、所得税というのはいかなる税制上地位を占めるか、非常にむずかしい問題がある、ドイツのような間接税の比較的多い国でもこんなような状況であることを申し上げたかったのでございまして、おっしゃるように、私どもは現在の所得税が多分に問題があることは存じておりますし、減税方向につきまして、別にやぶさかであるとか、ちゅうちょしている、こういう意味ではございませんので、ひとつ御了解願いたいと思います。  ただいま所得階層別の納税人員の御質問がございましたが、先ほど平林委員のおあげになった数字は、私ども数字のどれを申されたのかよく存じませんが、課税所得と申されましたことから見ますと、課税最低限を引いた残りの課税所得で分類された数字ではないかと思うのでございます。私どもは、所得税担税力一つの指標といたしましては、やはり総所得、これを階級別に見るのが一番いいのではないか、かように考えております。しかしながら、所得税納税人員は、先ほど申し上げましたように、有業人員の半分ちょっと越したところでございますし、失格者が比較的多いわけでございます。さらにまた、所得税納税者は、先ほど申し上げましたように、扶養控除とか基礎控除で失格した方があがっておりません。したがいまして、先ほど来申し上げておりますように、現在の所得税納税人員給与所得者で申しますと、五割二分が独身者であり、四割八分程度世帯持ちであるといたしますと、そこで独身者の数が非常に多い。独身者方々の所得は世帯持ちに比べまして少な目でございますから、納税者となってあらわれました階級の分類では比較的低額所得者が多くあらわれる結果になろうかと思います。こういった前提を一つお考えになっていただかなければなりませんが、私ども昭和三十九年度の実績で納税人員を見てまいりますと、先ほど来申し上げました、課税になった人員の中で、総所得で百万円以下の人員が九〇%ばかり占めておる、百万円をこえておりますのが一〇%、こんなような結果になっていることだけ申し上げ、こまかくは、いずれにいたしましてもこの際は御遠慮申し上げて、ただその読み方は、先ほど申し上げておりますように、独身者納税人員が非常に多い、したがいまして、低額所得者が比較的多くなっておることをひとつ御記憶になっていただきたい、かように思います。
  31. 平林剛

    平林委員 これも、いずれ資料をいただきまして承知をいたしたいと思います。  いずれにしても、私の言いたいことは、今日の課税所得階層を検討してみますと、きわめて低所得階層にかなり数が多い。また、同時に、納税人口の減少をはかるということを一つの将来の減税中心に置くということも考えられますので、そういう意味で、ぜひ政府でも検討を進めてもらいたいということが主眼でございます。  そこで、私、少しわきの話になるのですが、最近の経済事情を見ますと、サラリーマンの奥さんたちが、最近では内職をされる方が非常に多いわけでございます。この間も私いろいろな実態の調査をしてみたのでありますけれども、あなた方は、国民の中で、特にサラリーマン階層が多いのですけれども、各家庭で内職をやっているのは一体どのくらいいるというような御判断をしておりますか。
  32. 塩崎潤

    塩崎政府委員 平林委員から前もって御質問がございましたので、私どもも、内職人口がどの程度いるか研究したいと思いまして研究したのでございますが、この内職ということばの定義もなかなかむずかしい、さらにまた、統計資料もさまざまございますが、私どもの税務統計にはこれが確たる数字であがっておりません。そこで、他の資料から推測するしかないのでございますが、昭和三十五年の国勢調査によりますと、自宅で内職をしている人、主婦や老人などが、店や作業場などの設備を持たないで、家庭で行なう賃仕事という定義で内職者の数を調査しておりますが、そのときの数は三十二万四千人でございます。それから、昭和三十九年度国民所得の統計で一つの推定があるようでございますが、三十八万四千人、こんなような数字があがっております。税務統計では、内職人口という統計はあがっておりません。
  33. 平林剛

    平林委員 これは、私もその点でいろいろ調べてみたのですけれども、東京都の労働局が、昨年、昭和四十年の三月に「東京都内の家内労働従事者実態調査報告書」というのをまとめたのです。これを取り寄せてみましていろいろ読んでみましたところが、いまのような数字じゃないのですね。私の選挙区でもいろいろこの実態を調べて、家庭の主婦がどのくらい出動しているか、あるいは、うちの中で内職をしているかということをできるだけの数字を集めてみたら、とにかくいろんな名前があるのですな。パートタイマーというような名前で、大体工場へ働きにいく、三時間くらい働くのをパートタイマーというのだそうです。それから季節をきめて、そうして働きにきてもらうのは臨時というのだそうです。臨時、臨時、こう呼んでいる。そうかと思うと、スペシャル・ワーカーというのがあって、これもある特定の仕事だけをやらせるのでスペシャル・ワーカーといわれるのだそうです。それからアルバイトというのがある。いろいろな名前がある。アルバイト、スペシシャル・ワーカー、臨時、パートタイマー、家内でのいろいろの内職、いろいろあって、私も調査に取りかかったのですが、とても雲をつかむような話でわからない。そこで、東京都の家内労働従事者の実態調査報告が一つだけまとまっておるものだから、それを見せてもらいましたけれども東京都内の二十三区で八千世帯を調べた模様なんです。これによると、現在内職をしておるというのが、主婦の中の五・六%を占めておる。内職をしたいという希望の人が七・四%、内職は現在はしていないけれども、したことがございますというのが九%ございまして、この三つを合わせて内職関連世帯として、割合から世帯数を調べてみると、東京都内で約五十七万二千世帯は何らかの形で内職をやっておる、こういう調査になっておる。東京都の世帯数が四十年度において大体二百六十万世帯でございますから、そのうち五十七万二千世帯が内職関連世帯といたしますと、全体の二二%というのが内職と何らかの関係を持っているという計算になるわけなんです。これは八千世帯を調べたのでございまして、奥さんたちも、調査にこられた人に、ある程度プライドがございましょうし、家庭の事情もあって、内職をしていても、近所の手前があるからそれはしておりませんと言ったり、あるいはそれを明らかにすることを拒んだりするということを考えますと、相当の家庭の主婦が内職をしているのではないか。二二%というのは、おそらく最低の数字であって、四〇%程度までは何らかの形で内職をしておるということが実態ではないかというような感じがするのでございます。この意味から見ますと、東京都だけでなく、大阪にしても、名古屋にしても、神戸にしても、各都会、サラリーマンの存するところ家庭あり、家庭あるところ相当数の内職あり、こういうような現状が最近の実相である。内職をする人たちの目的はそれぞれございます。給料が足りないとか、特別の支出に備えるためとか、小づかいにしておるとか、ある意味では余暇利用という事情もございましょうが、いずれにしても、家計補助のために内職をせざるを得ないという実情は無視できないのです。このことは、大臣にもぜひ聞いてもらいたいことなんでございまして、こういう実情があるということが、私がこれから質問を展開する前提なんです。同時に、この東京都の家内労働の調査結果によりますと、どのくらいの月収があるかといいますと、三十九年当時におきまして、多いところは一万円から一万二千円、かなり数が多いところで七千円から八千円くらいの収入を得ている。そしてまた、その内職の種類もいろいろございますけれども家庭の主婦がやる仕事として大体ありそうだというものでも、私の選挙区で調べたものによりますと、四千円から五千円くらいの所得はあるという結果になっております。これは昭和三十九年度におけるところの調査の結果でございまして、最近から見ると、家内労働についていろいろ議論がございますから、手間賃の値上がり、いわゆる内職の報酬の上昇などもあって、平均数字というのは、これまたかなり数がふえてきておるのではないかと思うのでございます。  そうなると、ここに一つの問題があるわけです。それは、現在の税法によりますと、三月十五日までに確定申告をするわけです。この確定申告をする場合に、世帯主が中心にするわけですが、奥さんであるとか、あるいはまたその家族の者に所得があれば、それを申告せねばならぬ。この申告をせねばならぬ限度が現在五万一円以上は申告せねばならぬ、こういうことになっておるのでごごいます。そこで、五万一円以上の所得があれば申告せねばならぬ、こういうことになっておるのですけれども、実際はどうなんでしょうか。私の結論を言えば、五万円というのを引き上げたらよろしいという結論ですけれども国税庁長官、このサラリーマンの内職の実情から見ますと相当数やっておる。しかも、平均をしますと七、八千円くらいの所得がありますから、年間にしますと九万円から十万円近くになっておるわけですね。こういう人はおそらくうちの中ですから、近所の人にはわかっておっても、一般にはわからないということで、この世帯においては五万円以上あっても申告をしてないという実情じゃないかと思うのですけれども、実態はどうなんでしょうか。この内職の人口というのは、なかなか税務当局で調べられないということはわかっていますけれども、一応どういう状況か、あなたの総合的な判断を聞かしてもらいたいと思うのです。その結果、私は、きょう課題にしております問題について、ひとつ政府の善処を求めたいと思うのですが、まず一応その実情、ほんとうに申告しているかどうか、税法に基づいてやっているかどうかということをちょっと聞かしてもらいたいのです。
  34. 泉美之松

    泉政府委員 平林委員からすでに御質問の中にもございましたように、内職の問題は、なかなかその実態がつかみにくい問題でございまして、私も申告書を一々調べたわけではございませんけれども、相当多額の収入がある場合は格別といたしまして、いまお話のように、家庭の主婦がうちにあって内職をしたというもので申告になっているのはきわめて少ないと思っております。
  35. 平林剛

    平林委員 厳格に言えば、これは税務行政の違反ですね。捕捉できないということ、それは少額不追及主義とかいうのがあるという話ですけれども、それにしても、厳格に言えば、これは間違っておるわけでしょう。私は、そこで間違っておるから、それを捕捉して申告させるようにしなさいというのじゃないですよ。あべこべの立場なんです。この五万円というのが、現在の段階では少額に過ぎるのじゃないか、したがって、税法上の取り扱いの五万一円以上という措置については検討しなければならぬのじゃないかという趣旨で申し上げておるわけです。そこで、五万円以上というふうにきめたのはいつのことですか。
  36. 塩崎潤

    塩崎政府委員 扶養親族に五万円以上の所得があれば扶養控除を認めないという制度でございますが、過去におきましては、基礎控除と同じような上がりを示したこともございます。しかし、この限度は昭和三十三年からいままで全く据え置きの状態でございます。
  37. 平林剛

    平林委員 そういう意味では、三十三年当時に五万円以上の所得があれば、税法上あわせて申告をせねばならぬというその時期、今日は昭和四十一年ですから、八、九年たっておる。それが実際据え置きになっておるということは是正すべきものじゃないか、こう思うのですけれども、そういうお考えはありませんか。
  38. 塩崎潤

    塩崎政府委員 ただいまの平林委員の御主張、私も確かに考えなければならぬ問題だと思います。しかし、世帯単位としての課税ということをどういうふうに所得税で考えてまいりますか、こんな点もひとつ考えてまいらなければならぬと思います。ことに、二割二分くらいが内職を持ち、所得を持つ世帯であり、八割が持たない世帯であるといたしますと、やはりそこに担税力の相違が出てくる。必ずしも私は、この五万円ということを上げることがいいかどうか、これはよほど考えてみる必要がありはしないか、しかし、税務におきまして少額の所得を調査する、あるいは納税者におきましても、一々これを扶養親族から、扶養控除金額から自分の得た所得を引く、さらにまた、昭和二十五年のシャウプ勧告では、扶養親族の所得を世帯主の所得の上に合算いたしまして課税いたしておりましたが、こんなことをやること自体も技術的に複雑でございますし、やはりある程度金額は差っ引いたほうがいい、こんなような感じがいたします。しかしながら、こういった世帯も全世帯のうちではごく一部であるとともに、さらにまた、その所得は多分に資産所得的な分割可能な型の所得が多いので、ここにも問題がございます。平林委員のおっしゃる所得は、主婦が額に汗した所得であるから、こういったものは別の観点から考えたらどうか、こういうような御主張でございますが、これは私は一つ考え方であろうと思います。私ども昭和三十二年から資産合算をいたしておりますのは、やはり資産所得のほうは扶養親族に分割可能という点に着目いたしまして、世帯全体の担税力を見出そうとしたものでございますが、これあたりとの関係も十分考えて検討してまいりたい、また、あまりまじめに申告をした人だけが損をするということも、税制としておかしいことにもなろうかと思いますので、これは、先ほど申し上げておりますように、現在の五万円という制度が、例の給与所得者の雇用主以外のところから得た所得の五万円、さらにまた、資産合算の限度の五万円、資産所得である配当の資料提出限度の五万円、種々関係も持っておりますので、これらとあわせまして研究していきたい、かように考えております。しかし、何と申しましても、夫婦間の課税等につきましては、もういずれにいたしましても合算すべきではないか、しかしながら、その合算は、単に累進税率を適用するのでなくて、二分して課税するほうがより公平な方法ではないかという意見もあり、なかなかむずかしいところでございますので、これはひとつ税制調査会あたりで根本的に検討してもらいたい、かように考えております。
  39. 平林剛

    平林委員 私は、東京都では全世帯の二二%、実態は四〇%をこえると思いますが、四十万の主婦を代表して、これは東京都だけでなく、神奈川県でも、それから大阪でも京都でも、全国諸都市のサラリーマンの主婦、日本全国の主婦を代表して、声を大きくして、この問題はぜひひとつ早急に検討して改定すべきものである、できればもう四十一年度からやるべきだ、こういうふうに、大臣がいれば詰めるわけですが、これはまたあとでやりたいと思います。  それで、このことを私は考えるのですよ。たとえば、どっちかにせねばいかぬと思うのですね。あいまいな形というのはおかしいですよ。そうすれば、昭和三十三年当時から、五万円以上の所得があれば税法上申告せねばならぬというようなことは、四十一年度においては実態としてどうなのかということ、それだけじゃないですよ。五万円以上の所得があれば、正確にいえば配偶者控除を受けられないのですよ。だから、主婦は内職しながらびくびくしている心情ですよ。もし税務署が、まあこんなことをおやりにならぬと思いますけれども、意地の悪いのがいたら主婦をいじめることができるのですよ。五万円以上あったら申告せねばならぬのですよ。申告すれば配偶者控除は受けられないのですよ。配偶者控除を受けられないだけじゃないですよ。各官庁においては、家庭の主婦に五万円以上の所得があれば、今度は扶養手当なんというのは支給しないところもあるのですよ。そうすれば、会社の給与課長さんや何かは、おまえのところの奥さんは内職をやって所得があるんだから、今度扶養手当を出さぬよなんと言って、場所によっては現在扶養手当を月に二千円ぐらい出しているところがあるのですが、そうすると、年間二万四千円もらえなくなってしまうのですよ。配偶者控除を受けられないだけではなくて、各会社の特殊事情によっては、扶養手当を出しているところでも出してもらえないということになる。しかし、お目こぼしで、まあ、君のところは何とかするよということになっているけれども、しかし、実際にこういう問題を税法上あるいは法律上追及されると、何とも言えないわけですね。そこで、はなはだ問題がございますから、これについては、ぜひひとつ是正をしていかなければならぬ客観情勢にきているのだ、こういうことを私は申し上げたいのです。たとえば、国家公務員の場合もそうですね。国家公務員の場合でも扶養家族手当という制度がございます。これがもしかりに所得が八万円あれば、扶養家族手当は、厳格にいえば支給されなくなってしまう。内職であろうと何であろうと、八万円あればだめなんですよ。しかし、実態はどうですか。わからないということを理由で——わかればだめですよ。そうすると、私の現在の把握では、内職をしていても、大体月に六、七千円、八千円、これは三十九年度調査で、四十年、四十一年になればもっと家内労働についての議論がやかましくなっていますから上がる。八万円というものは、そういう意味だと、もうおそらく内職をしている半数くらいの人は官庁から扶養手当をもらっちゃいけぬということになる。でも現実はそんなことはないですね。そうなると、どっちか違っているわけですね。どっちかを直さないと、きびしくいえば間違いが続いておるということになるわけです。そこで、国家公務員の給与法のほうも改正せねばならぬ、こう思うのですけれども、御所見はいかがです。
  40. 塩崎潤

    塩崎政府委員 税の問題から波及いたしましたので、私の知り得る点についてお答えを申し上げたいと思います。  私も、過去におきまして、税法上の種々の制度が他の制度にはね返りまして迷惑をこうむるという事例の一つといたしまして、いまのお話があがったことがあると記憶しております。しかし、現在では税法上の扶養控除の制限が他の法律に影響しているものはないように私は伺っております。現在給与法における扶養手当支給の際の所得限度額は、昭和四十一年には十万一千円、こういうふうに伺っております。なお、御参考までに申し上げますと、昭和三十三年から五万円という限度は変わっておりませんが、これは所得が五万円という意味でございます。これを給与所得控除等の適用をいたしますと、六万二千五百円に三十三年にはなっておったのでございますが、その後、先ほど来申し上げておりますように、給与所得の定額控除その他が上がりましたので、現在では、給与でございますると、五万円というのが十万二千五百円になる、給与の収入では十万二千五百円までは五万円以下になる、こういう計算になるのでございます。しかしながら、世帯単位としての課税——主婦に所得のある方、ない方、これをどういうふうに考えるか、なかなかむずかしい問題でございまして、先ほど来申し上げております基礎控除のあり方、あるいは扶養控除のあり方、ことに配偶者につきましては、所得をあげていない主婦についても、夫の所得はその半分は主婦が得ているのだという考え方もございまして、ともかせぎ、あるいはともかせぎでない主婦の所得貢献度をどういうふうに見、どういうふうに課税するかは、これはよほど私どもも慎重に検討してまいらなければ、税制上変な制度ができはしないか、かように考えております。
  41. 平林剛

    平林委員 国家公務員の給与法をちょっとあとで調べてください。扶養家族手当を支給するという一つの限度は八万円、こういうふうに私は聞いたのでございまして、そういう意味では、この国家公務員給与法の点についても検討しなければならぬ。それだけでない。健康保険を受ける場合、健康保険の扶養家族の資格を得るためにも、これは会社によっても県によっても違うでしょうけれども、厳格にいえば、ここにも影響してくるんですね。ただ、いまのところは厳格にやらないだけのことで、厳格にやれば、健康保険の扶養親族の資格も剥脱されるわけです。そういうふうにこの問題は影響が大きいものであるから、私はひとつはっきりした返事をいただきたいのですよ。そこで、これは大臣がおいでになったときにこの問題について、もう一度よくわかるように説明しますから、そのときまでに大臣に少し知恵をつけておいて、明確な方向を——せっかく全国の主婦を代表して平林が質問しているんですから、明確な方向をひとつ出していただきたい。今後検討するということじゃなくて、これはどうする、こういうことで、ひとつ明確な方向を出していただきたい。これはあしたでも大臣がおいでになったときによくお話をいただいて、答弁をしてもらいたいと思うのですけれども、どうですか。
  42. 塩崎潤

    塩崎政府委員 御趣旨の点は大臣によく説明いたしまして、答弁をしていただくようにお願いしたいと思います。ただ、解決の方向はなかなかむずかしい点があり、さらにまた、平林委員のおっしゃっているように、少額のものについてだけの話であるか、主婦に所得のあるものについてどうしたらいいか、ここまで発展する問題でございますので、一がいにいまの時点においてどういうふうにするということは申し上げられないかもしれませんことをあらかじめ御了承をいただきたいと思います。  なお、健康保険あるいは給与法その他に税法上の制度が影響することのないように、私は他省にも常に要望しておるのでございますが、税法税法といたしまして、担税力を別途の角度から見出す、さらにまた、複雑なる税務行政の上に成り立っておる制度でございまして、おっしゃる点は確かにごもっともでございます。このあたりも加味して、他の制度に税法上の制度が、いい点は影響していただいてもいいのでありますが、悪い影響のないようにすることをひとつ各方面に要望してまいりたい、かように考えております。
  43. 平林剛

    平林委員 低額所得者の問題について、もう一つだけ問題を提起しておきたいと思うのです。それは日雇い労務者の課税についてでございます。実はこの問題は、昨年所得税法の改正がございまして、そのときに出された政令によって変化を来たしたわけであります。私は、これはあとで知りまして、実はびっくりしたのです。なぜびっくりしたかというと、去年もわれわれの意に満たない減税でございましたけれども減税が行なわれたわけだ。所得税でも、初年度、平年度ですと、額は少なかった。少なかったけれども、とにかく減税をやったという歴史的なステップは踏んだわけですね。ところが、その国民各層の中で、減税が行き渡らないで、かえって増税になってしまったという部面があるわけであります。それは日雇いの労働者です。日雇い労働者は、従来は税法上でいいますと丙欄が適用になっておりまして、大体日額千八百円までは課税の対象になっていなかったわけであります。日雇い労働者ですから、職安に行ったり、あるいは工場で働きましても、日限を切られておりまして、日給でたいがい働く、そういう人は、どちらかというと、家族手当もなければ、あるいは退職金もなければ、有給休暇の制度もなければ、いわんや生理休暇の制度もない。他の労働者から比べますと劣悪な労働条件下に置かれておる。社会的に見ても、比較すれば低所得階層に属する。これらの人は、昨年の所得税法の取り扱いまでは、日額千八百円までは税金が取られなかったのであります。ところが、その後に出された政令によって、今度は、これは独身者の場合ですけれども、五百八十円からは税金を取られるということになったわけです。この結果、一般においては所得税減税が行なわれたのにかかわらず、日雇い労働者に関する限りは、今度は甲欄が適用になって、五百八十円から税金を取られる。千八百円までは課税の対象にされていなかったのに、今度は五百八十円から税の対象になるのですから、この部分に関する限りは増税をされたということ、これは国会の意思ではありません。国会では、われわれ質問をいたしまして、十分な審議時間がなかったのですが、総括的に、今度の減税は総体的に減税になるのですねと言ったら、はい、さようでございます、こう言っておった。国会の総括的な質問に対しては、はい、さようでございますと、こう言っておったのに、あにはからんや、これらの部面については増税になっていたということがわかった。これは、少なくとも国会の意思ではない。国会の意思でないというと、だれの意思かというと、政令によってこれが行なわれた。政令によって増税が行なわれた。まことにけしからぬ話だと私は思うのです。国会で議論をしておったときには、少なくとも四十年度も、少額ではあるけれども、ある程度減税をした、その減税が各方面に行き渡るのですねという質問に対して、さようでございますと、こういう総括的な答弁をしたのに、政令でもって、たとえ少数であるといえども増税をはかったということは、まことにけしからぬ、こういうことで、これは一体どういうわけなのかということなんです。
  44. 塩崎潤

    塩崎政府委員 これは増税をはかった趣旨ではございまん。御承知のように、源泉徴収表の日額表の丙欄、この制度の趣旨は、先ほど来平林委員指摘の日雇い労務者の特殊性を考慮いたしました制度でございますが、その特殊性というのは、一般の給与所得者と違いまして、そのつど扶養親族の申告その他種々の控除の申告を出すものも繁雑であろうというようなことからも、概括的に、日雇い労務者につきましては、平均的な扶養親族を想定し、平均的な稼働日数を想定いたしましてそのテーブルをつくっているのでございます。趣旨はあくまでそういったものでございますから、そういうことのできない日雇い労務者に限ろうというのが、本来の法律の精神だろうと思うのでございます。そこで、去年の改正において行なわれましたことは、一つの給与の支払い者から継続して二カ月をこえて支払いを受ける給与は甲欄に回していただきまして、正確に扶養親族の控除を出していただく、あるいは生命保険料の申告をしていただく、こういうふうにしたのでございます。  問題は二つ指摘されておるのでございますが、一つは、私どもは、これは増税の趣旨ではなくて、やはり源泉徴収制度の本質に戻ってやっていただこうというのがねらいでございますので、その方にとっても、いままでが変なふうに乱用されておりますれば、結果としての負担が増加することになりましょうけれども、正確にやっていただいた方にとっては同じくこれは減税であろう、かように考えております。  第二に、政令でやること自体どうか、こういうお話でございますが、私ども考え方では、日雇い労務者の解釈、しかもまた、日雇い労務者の本質は何ぞやという点を政令において明らかにした、かように考えております。しかも、その制度の趣旨、制度のねいから見て、こういったものは丙欄の適用を受け、こういったものは甲欄であるということを明らかしたものでございまして、政令で増税をはかった気持ちは全くないのでございます。政令でどの程度のところを規定するか、なかなかむずかしい問題でございますけれども、技術的な点、あるいはまた、当然法律の委任に基づきまして、その法律本来の趣旨に合った点は政令で規定しなければ、かえって法律はきわめて複雑になり、適用もむずかしくなるという事例もございます。なお、しかし、二カ月という外形的な基準で切ったところに平林委員の御指摘の点があろうかと思うのでございますが、このあたり、実際問題といたしまして、私どもの気持ちはやはり乱用防止という気持ちでございます。乱用防止の一つ基準を、二カ月継続して給与の支給を受けているかどうか、こういった点に求めたのでございます。これは種々考え方が出てくるかと思います。実際どんな方々がこれによって実情にそぐわない課税を受けておるか、これは少しく慎重に検討してまいりたい、かようは思っております。
  45. 平林剛

    平林委員 にっこり笑って税金を取るというのが国税庁なら、あなたは穏やかに理屈で税金を取るような仕組みに切りかえたのですよ。政令で増税をはかることはないと言うけれども、結果的にはその部分については税金がたくさん取られるようになった。これを増税と言わなくて、何を増税と言うのですか。結局、いままでは千八百円までは課税の対象にならなかった日雇い労働者が、二カ月というのは、実態によっていろいろ違うかもしれないけれども、結果には甲欄適用になるから五百八十円から税金を取られるのです。だから、あなたは政令で増税をはかった気持ちはないと言うけれども、結果的には税金がふえているわけです。税金がたくさん取られる。こういうのを増税と言うのです。増税とは税がふえるということでしょう。これを増税と言うのです。結果的には増税になっているじゃありませんか。それで、大体こういうような政令でもって税額が上がったものは——低くなるのはまだ善政のほうになりますけれども、上がるようなものは、少なくとも国会の承認を得てもらいたい。私ら、去年は激しくその点を追及したのですよ。これをほかの人は聞いていたかどうか、こういうようなことをいつ私らに説明したか。私はいつ説明してもらったか、この政令の内容を聞いてないのだが、何月何日だったか、ひとつ説明してください。
  46. 塩崎潤

    塩崎政府委員 政令につきましては、御案内のように、政令を出すつど御了解を得ておるのでございます。私もこの点につきまして調べてみましたところ、政令案要綱といたしまして閣議にも出し、おそらく昨年の当委員会におきまして御説明があったのではないか、しかし、ただ数が多いためにその点が十分意識されなかった点があろうかと思うのでございます。  なお、いまの平林委員の巧みなる御質問で、皆さん方にはどういうふうな御印象を受けられたかわかりませんが、独身者につきまして千八百円まで所得税課税しないというのは、源泉徴収制度の丙欄の趣旨でもない、先ほど申し上げましたように、日雇い労務者は、配偶者及び子二人という具体的な数字を前提として組み立てられ、さらにまた、平均稼働日数は二十二日という数字で組み立てられておりますので、若干の違いがあっても、がまんすべき点はございましょうけれども、明白にそれが独身者であり、また、給与が一つの雇用主から継続して支払われておるような方が千八百円まではかからないという適用を受けられますと、これは法のねらいなり所得税法趣旨から見ておかしいし、やはりこれは一つの乱用が防がれたというふうにぜひひとつ御解釈を願いまして、政令で増税したというふうなことは、ひとつできる限り避けていただければしあわせだと思う次第でございます。
  47. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと関連して。いまの言い方は、裏返していくと、こういうことになりませんか。これまで乱用というけれども、これはやはり税務署として、源泉徴収をするときに、何でもよろしい、丙欄でよろしいということであったのか。これは税務行政上の問題があるのではないのか。要するに、これまではルーズにその点は認めておった、それを今度は、本来ならそれは税務行政上そうであっても、おそらく全部が千八百円でいいということにはなっていないのじゃないか。私、いまの問題ちょっと調べてないけれども、それを税務行政上適正にしていなくて、多少逸脱しておったものがあるというのを、政令によって処置をしたために、結果として増税になったというのなら、それは私は、手落ちは税務行政の側にあるんじゃないかと思うのだけれでも、その点、税務行政上その取り方はどうなっておるんですか。
  48. 泉美之松

    泉政府委員 お答えいたします。  従来は、日額表丙欄の適用を受けるいわゆる日雇い労務者の定義につきまして、日々雇い入れられる人というだけの簡単な定義しかございませんでしたので、そのために、実際問題として日雇い労務者に丙欄を適用するというのは、そういう人は扶養控除の申請など一々出すことができない、また、日々雇われ先が異なってきて、同じ雇われ先で継続して雇われることが少ない、こういった実態を考えて丙欄を適用しておったのでありますが、先ほど主税局長からもお答え申し上げましたように、場合によって二カ月をこえて同一の雇われ先から給与の支給を受けるという場合が見受けられますので、これは本来丙欄を適用する趣旨ではないというふうに考えられます。そこのところを政令で丙欄の適用を受ける日雇い労務者の範囲というのを明確にしたということでございます。
  49. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、結局、そのことはこれまではルーズであった、そういうことですね。税務行政上、あなた方が取るべきものを取っていなかった、責任はそういう税務行政の側にあるのだ、そういうことですね。税務署税務行政に間違いがあった。
  50. 泉美之松

    泉政府委員 おことばでございますが、税務行政に間違いがあったということでなしに、規定が明確でなかったために、これを執行する際に、そういうのは本来趣旨ではないといって断わり切ることができなかった事情にあったわけでございます。そこで今度は、日雇い労務者の受ける給与というものについて、明確な定義を設けて、そういう点について誤解あるいは乱用が起こらないようにする、こういう措置をとったわけでございます。
  51. 平林剛

    平林委員 少し実態を明らかにしてもらいたいと思うのです。というのは、われわれいま所得税法あるいは法人税法の審議をやっておるわけですけれども大臣の出席が悪いものだから審議が進まないで、場合によったら、委員長や与党が御希望のとおり三月三十一日に税法が国会を通過するかどうか、きわめて危ぶまれているわけですね。与党のほうからも、そんなことしたら日雇い労働者が困るから、ぜひひとつ上げてくれ、こういうふうに言っておるのです。その日雇い労働者は、昨年の税法改正の際に、政令でもって、私に言わせれば増税をはかったわけですね。こういう因果関係がございますので、この機会に、一体日雇い労務者というのは、実態はどういうふうになっているか、ひとつ実情を聞かしてもらいたいと思います。
  52. 塩崎潤

    塩崎政府委員 日雇い労務者の定義は、先ほど申し上げたようなところでございます。現在、私どもはそういった去年の改正に基づいて執行いたしておりますが、その実態につきましては、各方面からこの規定の適用につきまして種々の問い合わせがございます。しかしながら、できる限り便宜な方法で扱っているのが実態でございます。しかし、なお、昭和三十九年分の課税実績で、丙欄で徴収してありますところの税額は約十億円でございます。
  53. 平林剛

    平林委員 この人員はわかりませんか。延べでもけっこうですけれども……。
  54. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私どもも知りたいところでございますが、現在のところ、人員は統計をとっておりませんので不明でございます。
  55. 平林剛

    平林委員 私は、いずれにしても、この丙欄適用というのを設けたのは、これは雇用形態が日雇いということもあるかもしれませんけれども、大体こういう階層が低所得階層である、また、生活においても不安定であるということから考えて、ある程度この丙欄適用ということを考慮されたというものだと記憶するわけです。そういう趣旨からいきますと、しゃくし定木に二カ月というようなことに限定をすることについて適当であるかどうかという点があるのです。  それから、先ほど来私質疑を展開してまいりましたように、最近の雇用の形態というのは各種各様です。パートタイマーあり、アルバイトあり、スペシャル・ワーカーあり、いろいろな形でありますし、家庭の主婦の職場に対する出動は、最近の生計費の暴騰、物価の上昇に並んで、必然的に増加の傾向をたどるだろう、いろいろな形態があらわれてくると私思うのです。この場合に、一律にただ二カ月、こういうことに限定しておやりになることは、徴税上、少額不追及という趣旨からも、あるいは最近の事情から見ても適当でないのじゃないか、こう考えられますので、その点を追及をしなければならぬと考えております。  それから、先ほど来お答えがありませんけれども、何月何日にわれわれに政令でこういう結果になりますよということを説明してくださったのか。こういうことは国会でやったことと反するじゃないですか。私も政治家の一人として、私らの知らない間にこんなふうになったんだなんということを言うのは、ちょっと恥ずかしい話なんです。国会では、少なくとも今度の減税は各方面に行き渡るんですね、こういう質問に対し、はいさようでございます、こう言っておるから、総括的に短時日の審議でもこれを上げたのです。しかし、今後もこんなようなことが行なわれますと、これはもう毎日毎日一カ月ぐらい審議して、あらゆるところを検討してからでないと、うっかり通せない、こういうことにもなるわけですよ。あとのほうの責任追及についてはちっとも答えてないのだ。そういうことのかね合いから見て、これは何とか考えてもらわなければならぬ点だと思うのです。
  56. 塩崎潤

    塩崎政府委員 最初の点でございますが、確かに二カ月という問題、これは私どももいままでのところはこれが最善の案だと思いますけれども、御指摘のこともありますので、さらにまた、この適用につきましては種々要望も出ておりますので、実情に合うにはどうしたらいいか、ひとつ研究してまいりたい、かように思います。しかし、ただ、平林先生のおっしゃった日雇いについてのお考えでございますが、確かに日雇い労務者の弱い面、さらにまた所得の低い面、さらにまた扶養控除その他の申告書の提出のむずかしい面、これらの点があることは事実でございます。これらの点は税制上十分考えなければならない、執行上も私はそうだと思います。ただ、現在の税法は、日雇い労務者もやはり基礎控除は十四万円であり、給与所得控除は四万円、それから扶養控除はやはり一人六万円ということで考えざるを得ないようなたてまえになっておりますので、先生のおっしゃったように、独身者でも千八百円までは課税しないというふうに割り切ること自体多分に問題があろうかと思います。私どもの税額表は、大ざっぱな日雇い労務者のそういったむずかしい事情をしんしゃくした表でございますので、しかも、その表も、先ほど申し上げましたような概括的な、画一的な基準によっておりますところでございます。数字ははたしてそれがいいかどうか、そのあたりも担税力一つの指標といたしまして今後研究してみなければならない問題ではないか、かように考えております。  なお、説明したかどうかの点でございますが、これも調べまして——いきのところ私も去年主税局長になったばかりでございます。去年の改正は十分存じません。調べてまいりましてお答え申し上げたいと存じます。
  57. 平林剛

    平林委員 国税庁長官をやっている方がおるわけで、一番胸にぴんときているだろうと思うのです。私は聞いていませんよ。私は、そういう意味では政治的には相当責任を追及しなければいけないけれども国税庁長官になってしまったし、いまの主税局長はちょっと新しいというので、こういう点はどうもうまい組み合わせになったと思うのだけれども、それは別だ。別だけれども、私はこれを機械的に各税務署が適用いたしますと混乱が起きると思う。それから、こういう政令を出した趣旨は、悪い人を排除するためだ、こうおっしゃったのだけれども、そのためにいい人までも巻き添えを食うという結果になっているわけですよ。ですから、全般的な条件を考えて、そうして本来の趣旨、つまり、低所得階層であるし、生活においても安定のないものであるから、ここは情もあり、涙もあるというようなやり方をとられることが必要である。また、全国の主婦の立場から考えてみても、ここはちゃんと政府のほうでも考えてやってもらいたいと思うのです。  それでは、大臣せっかくおいでになったけれども、ちょっと相談をしてから答えてもらったほうがいいし、私も、相談をして、いい答えをしてもらいたいと思うので、大臣に対する質問はあした、お答えを待ってから若干さしてもらうということにしまして、堀委員に質問を譲りたいと思います。
  58. 金子一平

    金子(一)委員長代理 堀昌雄君。
  59. 堀昌雄

    ○堀委員 私は、ことしの税法も非常に重要でございますけれども、ことしの税法というのは、われわれがいまここでものを言いましても、すぐそれが思うように修正ができるというようには、過去の慣例からなかなかなりません。そこで、事務当局とはいろいろこまかい問題を論議いたしますけれども、私は、大臣にどうしても今後考えておいていただかなければならない問題について、二、三お伺いをいたします。  まず、大臣は長く大蔵省においでになりましたから、現在の税制というものが、主としてシャウプ税制をそのまま引き続いで今日に至っておる、こういうふうに私は理解をいたしておりますけれども、その点についての大臣のお考えをちょっと伺いたいと思います。
  60. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 シャウプ税制のあとがまだ相当残っておる、そういうふうに思います。
  61. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、シャウプ税制の一番中心になったものは、直接税で税を取っていこう、直接税の中でも、負担の公平という意味から、一番近代的な税制である所得税中心にして税を取っていこう、これが私はシャウプ税制の一番基本的な問題であったと思う。これは私今日も生きておるように思うのですけれども、その点についての大臣のお考えを伺いたいと思います。
  62. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私もそう思います。
  63. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、これは、私昨年の春の予算委員会で当時の田中大蔵大臣とずいぶん議論をした問題でありますけれども、この所得税中心としての税の体系というものは、その中ではずすべからざるものは総合課税、累進税率、この二本が、私は、そういう近代的な税制としての所得税から欠けてはならないものだ、こういうふうに考えておるわけですけれども大臣、その点はいかがでございましょうか。
  64. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 これも同感です。
  65. 堀昌雄

    ○堀委員 そこまで私と大臣のお考えとの間には差がないようですが、実は現状税制の中で、これは税制調査会もはっきりと指摘をいたしておりますけれども、私は、一番問題になりますのは、利子の分離課税の問題がこの近代的所得税の体系を根本的に乱しておる。   〔金子(一)委員長代理退席委員長着席〕 いま私が申し上げた総合と累進の両方から、現在の利子の分離課税というのははずれておりますね。その点は大臣はどういうふうに御理解いただいておりましょうか。
  66. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 確かにそのとおりはずれております。
  67. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、私どもはこれまで利子の分離課税についてずいずん議論をしてまいりました。税制調査会もこれについては私どもの意見と同じような立場に立って実は答申がされておるわけであります。昨年配当の分離課税が起きましたときにも、これは証券側の言い分は、利子に分離課税があるから、われわれもそれと権衡をとってもらいたい、こういう意向が非常に強かったわけであります。私は、利子と配当とはおのずから性格が違いますから、利子に分離課税があるから配当も分離課税にしなければならぬとは必ずしも思いませんけれども、しかし、そういう端緒を与えておることには間違いはないわけです。ですから、私は、やはり近代的な税制としての所得税というものが中心である限り——これか間接税が主体になって所得税補完であるというような体系になれば、また話は別でありますけれども、何と申しましても、現在の日本の税制所得税中心である限りは、総合と累進税率の適用という鉄則はどうしても守っていかない限り、税の公平の問題というものは全然守られない、私はこう考えるのですけれども大臣、その点いかがでありましょうか。
  68. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 御承知のように、いま貯蓄ということが非常に大事な一つの問題なんです。この貯蓄政策を進める上において、私は、利子に関する特例、配当に関する特例、これが相当大きな役割りをしておる、こういうふうに思います。一方、租税上いまおっしゃられるような要請もある、そういう間をどういうふうに調和していくか、こういう問題だろうと思うのです。これは、今後の経済は非常に流動的であります。その流動的な経済がどういうふうな落ちつきになっていくか、これを一方においてにらみながら、また、税制を総合的また累進的にやっていくという理想型、これもにらみながら、調和をとっていかなければならぬ、かように考えております。
  69. 堀昌雄

    ○堀委員 それでは、大臣にお伺いをいたしますけれども、租税特別措置というものは、本来これはそういう基本的な税制に対して、言うなれば、制限を与えておるといいますか、別途に特例として設けられている。特例として設けた以上は、その特例を行なう以外には代替ができないという何らかの明らかなメリットがあってしかるべきだろうと思うのですね。その場合、いまの利子の問題についてはこれまでしばしばいわれておりますけれども、利子が五%になったり一〇%になったりしているわけです。まあ、その前にはゼロのときもありました。一時はやめたときもあるわけです。それからずっといろいろ変遷がありますが、変遷についてはこまかくはいまは申し上げませんけれども、最近の実例としては、五%になっておりましたのが昨年一〇%に戻ったわけであります。そういうふうにしょっちゅう税率そのものは変更があるにもかかわらず、必ずしも貯蓄の問題というのはそれと並行してバランスをとっているように思わないのです。私はこれが貯蓄になくてはならないというほどのものでないと考えておるのですけれども大臣は、もしこれがなくなったら国民は貯蓄をしなくなると、こうお考えでしょう。
  70. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まあ、貯蓄をしなくなるとは考えません。しかし、この税制の改正があると、相当の影響があるのではないか、その辺もよく見きわめなければ判断をいたしかねる、こういうふうに考えています。
  71. 堀昌雄

    ○堀委員 税制調査会は、昨年の答申の中で、「個人可処分所得の伸長と個人貯蓄の増加について」、昭和二十五年度から昭和三十八年度までの相関度を見ると、〇・九八二という高い相関係数となってあらわれており、これは「個人の貯蓄は個人可処分所得の伸びに相関しつつ着実」に伸びることを示しておると——よろしゅうございますか、大臣、〇・九八二ということは、ほぼ一だということです。個人の可処分所得がふえればそれだけ貯蓄が——短期ではなくて、昭和二十五年から三十八年、おそらく今日までも引き続き同じことが出ていると思うのですけれども、少なくともこの間が十三年、最近まで三年ほどを入れれば十六年間ぐらいを通じて、戦後の主たるシャウプ税制がしかれて以来のそういう時期の経過をこう長く見ても、相関度がほぼ一であるということは、最も大きいのは、私どもがこれまで声を大にして言っております可処分所得の増加が貯蓄になる。これは当然のことなんですね。だから、その他のものは、私どもは、税の公平を乱し、脱税を助長しておる以外の何ものでもない。デメリットばかりあって、メリットがないと、こうわれわれは考えておるのです。この前私は、この問題について、一体脱税をしておった金がどういう形で保存というか、隠匿じゃないでしょうが、隠されておるのかということを調べてみました。ともかく、分離課税を利用したところの無記名預金、架空名義の預金によって逃避をしておるのが一番大きいわけです。こういうようなことは、私どもは、単に総合、累進という問題の範囲から、要するに、脱税をしてもあとから捕捉が困難なような片面の制度が残っておるわけですから、無記名及び架空名義の預金のようなものはやめろと言っていますけれども、これがまだなかなかやまりませんけれども、そういうものと関連をして、日本の税の公平の上に私はきわめて大きな汚点を残しておる、こう考えているわけです。ですから、相関度が、これが、まあ〇・七とか〇・六だとかいわれれば、私どもも、場合によってはそういうものの効果があるとみなしますけれども、〇・九八二ということはほぼ一だ。これは可処分所得がふえれば貯蓄はふえるんだ。もう現在たんす預金なんかする人間はいないわけです。一般的に非常に金利観念その他が国民の中に浸透しておる現在では、それが貯蓄にいくのか、あるいは証券を買うのか、まあ何かの投資になるのか、要するに貯蓄総体としてはこれは変わるはずのものではないんだ、私はこう考えておるんですけれども、そうなれば、ここで税制調査会が述べておりますように、現在とられておる資産所得に対する優遇措置については、その政策目的の合理性についても検討すべき面があり、さらに政策手段としての有効性や、付随して生ずる弊害との関係については、「一部の高額資産所得者を著しく優遇するものであり、この措置に伴って生ずる弊害が大きく、しかもその弊害を償うに足るほどの政策的効果も実証しがたい。」ので、これを廃止すべきものとの結論に達した、こうなっておるわけでありますけれども税制調査会の議論を待つまでもなく、これは特に福田さんのように長く大蔵省におられて、少なくとも税というものはどういうものかということを十分体得しておられる大蔵大臣の在任中にこのものの処置をきめていただかないと、これは私は日本の税制上の非常な不均衡及び不公平をいつまでも拡大しておくもとになると思う。特にこの利子、配当に対する分離課税の特別措置は明年の三月三十一日をもって終わることになっておるのでありますから、もちろんそれは皆さんのほうではいろいろとおっしゃることはありましょうけれども、こういうふうに客観的に明らかにされておる資料をもとにして考えれば、私は、やはり日本の近代的税制を守るためには、これらについては、ともかく現在の実施期間をもって終わりにするという英断があってしかるべきではないか、こう思いますけれども大臣いかがでしょうか。
  72. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 お話の問題は、先ほどもお答え申し上げましたが、いま貯蓄がどうなるか一これは銀行はかりじゃありませんけれども国民の貯蓄性向、貯蓄意欲というものが経済の動きを決定する非常に重大な要因になっておる時期であります。そういうことを考えまするときに、一つの既成事実みたいになって二年間この分離課税ということが行なわれておるわけなんです。この既成的な事実を変えることが重要な貯蓄政策にどういう影響を及ぼすか、これをよほどしっかりと見抜いて結論を出さぬと、経済政策自体に大きなひびが入る、こういうことにならぬとも限らぬ。しかし、お話のように、また御主張のように、税制は総合的であり、また、累進的でなければならぬ、これは私もそう考えておるのです。その辺の調和をどういうふうにとっていくか。これはちょうど時限立法の期限が昭和四十一年度には切れるのですから、まあ、いい機会です。その機会に十分掘り下げて検討してみる、かようにいたしたいと思います。
  73. 堀昌雄

    ○堀委員 実はいまの問題は、もし全廃をしてみて、それでは貯蓄が減るのかという問題ですね、総貯蓄として考えてみますと。それは行く先の問題のあり方は多少変わるかもしれません。しかし、私がさっき申し上げたように、日本の貯蓄性向はもう諸外国と比べて非常に高いのです。それはなぜ高いのかというと、やはり日本では、御承知のように、現在社会保障も非常に不十分でありますから、ひとつ病気になってもやはり金がどうしても相当要るわけであります。子供学校に入れようと思えば、多少の貯えを持っていなければ学校にも入れられない。少なくとも高等学校以上においては非常に多額の費用が現在かかるという実情でありますから、そのためにもやはり貯蓄をしなければならぬ。あるいは、現在はまあ十分な家屋を持っていない者たちのほうが多いわけでありますから、この人たちはせめて自分たちの家を持ちたいということで、非常に生活を切り詰めて、現状では日本の国民の水準というものは、少なく、ともいわゆる近代国家——外から見て、冷蔵庫だとかいろいろな耐久消費財が普及しておる割りに、内容においては全く貧困なものだと私は思うのです。私はいろいろなところで一ぺん冷蔵庫をあけて点検してみたいと思うのですが、一体、日本のいまの家計で電気冷蔵庫の中に何が入っているだろうか、おそらくこれは電気冷蔵庫の中に入るべきでないようなものが入っていて、実際電気冷蔵庫はほんとうにその用をなしていないと思う。そのことは、やはりそういう外形のほうには費用がかかっておるけれども、食生活その他、ほんとうの国民生活の中心になるべきところはまだ不十分な状態にある、にもかかわらず、非常に貯蓄性向は高いわけです。さっきからここで内職の話も出ておりましたけれども、最近大阪周辺の団地で実は献血のために血液の調査をいたしました。その団地の奥さん方の血液の比重がきわめて低いということが明らかになりました。このことは何を意味しておるかというと、特に団地ではいろいろな外形的な部分に費用がかかるために、食生活が意外に悪くて、栄養失調の状態がすでに起きておるということが、血液の比重から明らかになっておるというくらいの状態であるわけですけれども、なおかつ貯蓄は伸びつつある。こういう段階において総貯蓄が変わろうとはわれわれ考えられないわけです。だから、個々別々の問題は別としても、いまこの段階でこの問題はよほど税制全般の問題から考えていただかないと、もういまの水漏れがしておる状態、これはだんだん拡大をする方向にいきこそすれ、このままでは縮小の方向にいかない。だから、貯蓄が必要なのは、いま大臣が非常に重要なようにおっしゃいますが、日本の場合はずっと必要なんです。日本の場合は、私どもがこれまでこの委員会で議論をして、貯蓄はもういいのですなんという時期があったためしはないのですから、いまだけが重要なのではなくて、日本の状態というものは、今後五年先も十年先も貯蓄は重要だと私は思います。だから、常に貯蓄は重要だ。貯蓄は重要だということだけがこういうような税制のアンバランスをもたらしておるということでは、われわれは納得ができないわけですから、そこははっきりと、それではどういう時期になったらどうするのかというめどすらこれまで発言がないわけでありますので、今回はひとつそういう点を含めて、どういうことであればこういうことはやめられるのか、そこらのところにはっきりしためどが立たない限り、これはいつまでたってもますます悪いほうにだけ拡大をしていく、私はこう考えざるを得ませんので、特に私は福田さんを信頼して、ひとつあなたの英断をもって、日本の税制を——少なくとも、近代税制として諸外国と並べてみても遜色のない税制を日本の中に打ち立てるために勇気を持ってやってもらいたい、こう私は思いますけれども、重ねてその点をもう一ぺんお伺いをいたしておきたい。
  74. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 税制の合理化、また近代化ですね、これはほんとうに努力してみたいと思います。しかし、同時に、日本の経済自体を発展させるというための基本とまで私は思うのですが、貯蓄政策ですね。この点も考えなければならぬ。そういうようなことを両々見合わせながら、慎重に、しかも真剣に検討してみます。
  75. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの問題は一応そこまでにいたしまして、あと時間がありませんので、二、三ちょっとお伺いをしておきたいと思います。  実は、最近の日本の税制というのは、かなり減税を毎年繰り返してやってまいりましたけれども国民所得の平均値から見ますと、現在の標準世帯の課税最低限というのは、戦前から見ても著しく低いわけでありますし、特に戦後でも、最近は必ずしも十分な状態でない。数を申し上げますと、戦前は昭和九年−十一年で一九一%、約二倍くらいあったわけです。平均国民所得よりも倍ほどの高さに課税最低限があったわけです。それが昭和十五年くらいの戦争に入る直前でも七六・八%くらいあったのです。現在四十年では大体四七・一%くらいに下がってきている。これはやはりさっきからいろいろ議論があったわけでありますが、どうしてもやはり課税最低限はもう少し上げなければ、これは諸外国とのいろいろな比較その他を見ても、日本の場合は課税最低限が非常に高いと思うのです。課税最低限が高いし、もう一つの問題は、基礎控除と扶養家族の控除の状態が日本の場合また非常に少ないわけですね。日本は、基礎控除を一〇〇%としてみますと、妻の場合は、いまは配偶者控除というものが新たに設けられてきましたから、これは九二・三%くらいですけれども、二人目になると、その基礎控除一〇〇に対して四六・二、三人目が三八・五、こうなっています。アメリカの場合は、全部が一〇〇で同じになっていますし、イギリスの場合は、一人目は六〇、これはちょっと低いのですが、二人目は八二・五、三人目七〇、四人目五七・五、こういうふうに諸外国の例を見て、西独の例というのは非常に私はおもしろいと思う。西独は、基礎控除一〇〇に対して、一人目が一〇〇で、二人目が七一・四に下がるのですが、三人目は一〇〇になり、四人目は一〇七・一と上がっていくのです。私は、やはり日本の家族構成を見ましても、この配偶者控除の問題はいいとしましても、その次からががたんと下がって、その次がまだ下がるというのでなくて、子供が一人のとき、二人のとき、三人のときとなると家庭の負担はだんだんふえるわけですから、そうすると、扶養控除というのは、一人目よりは二人目、二人目よりは三人目と扶養控除をふやしてやっても、日本の家族構成の中では非常に負担がいろいろかかる。義務教育は無償といいながらも、実は負担をさせられておる。こういうような状態を見ますと、こういう控除のあり方というものを少しここらで根本的に再検討してみたらどうか。同時に、私さっきからちょっと主税局長と議論をしていますけれども、大体こういう基礎控除、家族的な控除というものは、やはり生計費見合いだと思うのです。だから、たとえば、年収が三百万円も五百万円にもなりますと、その三百万円全部生活に使わなくても生活ができるわけです。私はこういう考えなんですけれども、金などというものは必要においては限界がある。われわれは一ぺんに一枚しか衣服を着られない。一ぺんに十枚衣服を着るわけにいかぬのですから、十枚持つことと一枚ということは、結果としてみれば、余分なものがあるというだけであって、必要なのは一枚あればいいのです。その一枚をいつどの期間に着るかという期間の問題は別としてありましても、一枚あればいい。住むところも、自分が占拠できるところというのは、大体六十センチ平方くらいのところ以上には、立ったりすわったりしているときは寄られないで、横になって寝たところで畳一畳くらいです。それを五十坪、百坪の家に住まなければならぬことはないわけです。こういうふうに考えてくると、いま課税最低限としての標準世帯というのがありますが、これは課税最低限のほかに、要するに、われわれが現在の時点でこの物価の中でノーマルな生活をするとするならば、一体幾らなのかという一つの標準があってしかるべきじゃないか。そういう標準を越えていくと、ある程度のところはいいとしても、うんと越えたところまでがその標準にかかわりのあるような控除のあり方、基礎控除にしてもそうですし、配偶者控除にしてもその他控除にしても、それがいつまでも同じ形で一千万円の所得者にもいく、千五百万円でもいくというのは、いまのような段階で減税をするときにはどうも検討を要するところじゃないか。やはり下のほうがいま非常に幅広く課税されておるものをできるだけ縮めながら、しかし負担能力のある者はもう少し負担してもいいのではないか。いまのそういう問題の上に、利子配当の分離課税というのは不公平を上積みしているわけですから、そういう意味で、もし、いまの利子配当分離課税のようなものが続くとするならば、現在これに対して——本年度でどうでしょうね。幾らの減収になりますか。この前でたしか三百五十億円くらいの減収だったと思うが、四十一年度で利子配当の分離課税の減収、ちょっと言ってください。
  76. 塩崎潤

    塩崎政府委員 お答え申し上げます。  貯蓄の奨励の方法として各種方法がございます。そのうちで、利子と配当によって幾らの減収が生じているかという御質問でございますが、これにもまた種々方法がございまして、まず利子でございますが、利子所得の分離課税及び税率の軽減、これで四十一年度は二百七十億円と見積られております。それからもう一つ、元本百万円までの預金あるいは貯蓄の利子につきまして、非課税という少額貯蓄の制度がございますが、これが四百億円、これもやはりすべての所得を課税するという意味におきましては特例でございますので、特別措置に入れてございます。その次は配当所得に対しますところの減収でございますが、第一は配当所得につきまして本来二〇%という源泉徴収税率が本則でございますが、これは現在一〇%になっております。これが百七十億円に見積もられております。その次は、昨年行なわれましたところの源泉選択及び確定申告不要という制度によりますところの減収でございますが、これが百六十億円でございます。
  77. 堀昌雄

    ○堀委員 私はいま述べられました四つの中で少額貯蓄免税の問題は、百万円というのはちょっと高過ぎるのですけれども、しかし、低額の人も貯蓄をしておりますから、これについては一応全体としてメリットがある、こう思いますけれども、いまの利子の分離課税と配当の分離課税、税率の変更等によりまして、四十一年度は六百億円の減収になっておるわけです。この六百億円の減収というのは、私はよく申しておりますけれども、これの百万円以上、世帯的に貯蓄のある所得階層というのは年収二百万円以上なんです。これまでの資料で私が検討したところでは、二百万円以上が百万円の貯蓄を持てる、こうなっておるわけです。これは総理府統計その他ではっきり出ておるわけですが、そういたしますと、二百万円以上の所得の人たちに対して、ことし六百億円の減税をしておるわけです。そうして、さらにことしは相続税も、実は一千万円くらいの相続が行なわれる世帯というのは、やはりこれは二百万円くらいの所得のところにくるわけです。そうすると、これがことしは百五十億円減税になる。税率の変更が今度は二百万円、三百万円のところにくるわけです。税率の変更による減収は幾らでしたか、ちょっと……
  78. 塩崎潤

    塩崎政府委員 所得税の税率の緩和によりますところの減収は、平年度五百三十三億円でございます。
  79. 堀昌雄

    ○堀委員 税率緩和は全部が二百万円、三百万円にいっておるわけではありませんけれども、まあその三分の二くらいは高額のほうに影響が多いだろうと思います。かれこれ合わせまして、この層は一千億円からの減税を本年度は享受しておることになる。さっきからわれわれいろいろ課税最低限の議論をしましたけれども、それだけのものをその高いほうへ上積みしておるならば、私どもは、やはり課税最低限をもっと引き上げて、そうしていろいろな控除を、たとえば五百万円くらいからスタートをして一千万円くらいで消えてしまうというような消去控除方式というようなものを採用して、税収を確保しながら減税を行なう、こういうことによって、私は、所得の少ない人たちにさらに公平の原則の恩典を得さしめるべきではないか、こう思いますけれども大臣を参議院が呼んでおるそうですからこれで終わりますが、これについての、公平の原則を旨として考えた場合における、具体的ないまの減税の額から見て、来年度税制にはどういう態度で臨まれるのか、その点をひとつはっきりしていただきたい。
  80. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 第一点は、課税最低限は私はできる限り上げていきたい、こういうふうに考えるわけです。それから、その上げ方、これはやはり控除をどういうふうにするか、これは堀さんからも一つの御提案がありますが、皆さんの御意見をお伺いして、衆知を集めて、そうしてこれが一番控除のやり方としていいのだろう、こういうふうに持っていきたい、かように考えます。  なお、利子課税、配当課税の問題、これは先ほども申し上げましたが、慎重にかつ真剣に検討することにいたしたいと存じます。
  81. 三池信

    ○三池委員長 午後二時より委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後一時五分休憩      ————◇—————    午後二時十三分開議
  82. 三池信

    ○三池委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。堀昌雄君。
  83. 堀昌雄

    ○堀委員 先ほどは時間が制約をされておりましたから少しはしょって論議をいたしましたけれども、もう一つ先ほどの利子分離課税の問題について申し添えておかなければなりませんのは、貯蓄の問題は、現在は物価との関係も非常に重要な段階に来ておると思います。御承知のように、最近の物価の上昇は、本年は大体七・五、六%になるのではないかと思いますが、四十一年度政府は五・五%といっておられますけれども、最近の各種の公共料金の値上げがはね返りますから、私は、どうしてもこれも七%台に立ち至らざるを得ないような情勢になるのではないかと思います。この前、予算委員会の分科会で、藤山企画庁長官とこの問題に触れまして、七%台が二年も続くということは非常にたいへんなことだ、どうも政府は少し物価問題に慢性化しておるような感じがするけれども、もう少し真剣に考えてもらいたいという議論をいたしまして、藤山さんも同感の意を表しておられたのでございます。私は、皆さんのほうで貯蓄の問題がそれほど重要ならば——税の問題よりもさらに大きな影響力を、物価の問題というのは持っておると思うのでありまして、この点の問題を軽視をして貯蓄の問題は始まらない。貯蓄と物価はストレートに結びつくとは私も言いませんけれども、しかし、何はさておき、貯蓄したものよりも物価のほうが上がるということでは、特に長期の生命保険のようなものをとってみますと、非常に大きな影響を受けざるを得ない、こういうことにもなってまいりますので、そういう面におきまして、今後物価の上昇というようなものがあれば、これは貯蓄を非常に阻害をする。この面から考える必要もあるのではないか。だから、貯蓄というものは税だけで維持できるものではないと私は考えておりますが、その点についての大臣の御見解を承りたい。
  84. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 もちろんそのとおりでありまして、基本は私は物価の安定というところにあると思います。税はその補完的な役割りをする、そういう認識の上に立っております。
  85. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで次に入りますけれども、現在の——皆さんのほうでは何年度があるかわかりませんが、給与所得、農業所得、それから農業を除く事業所得について、その所得者に対する納税者の割合というのをちょっと先にお答えをいただきたいと思います。
  86. 塩崎潤

    塩崎政府委員 お答え申し上げます。  三十九年の実績でございます。給与所得者の所得者数は二千六百六十九万人でございまして、納税者数は千七百十八万四千人であります。割合は六四・四%でございます。農業所得者は、所得者の数が三百四十六万三千人でございまして、納税者数は二十五万人、割合は七・二%でございます。農業以外の事業所得者の数でございますが、所得者数は五百二十三万人でありまして、納税者数は百三十万二千人であります。割合は二四・九%となっております。その次は、その他所得者と私どもは申しておりますが、給与所得者で、かつその給与が二以上のところから支払われる者、あるいは不動産所得を持っている者、あるいは配当所得を持っている者、さらにまた、臨時的な所得でございますが、譲渡所得をあげた者、こういった方々でございますが、その他の所得者の数は、もうそのもの自体が納税者でございまして、百二十九万三千人となっておりまして、全体の納税者の合計は、三十九年におきまして二千二万九千人、かようになっております。
  87. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、いま大臣お聞きのように、いまの割合から見ますと、農業は七・二%、事業所得でも二四・九%に対して、給与所得者の場合は六四・四%というのですから、非常に高率の者が納税をしておる、こういう現状になっておるわけですね。この中に、私ちょっとこれを調べておりまして感じましたのは、農業なり事業所得は世帯単位になっておると思うのです。単独でやっておるというのは例外でしょう。しかし、給与所得者の場合には単独で勤務しておる者、要するに、世帯はおやじさんがまだやっていて、そこでむすこさんなり娘さんが勤めていく、給与があって課税されておる、こういうものがあると思いますから、これを機械的に比較するのは、ちょっと単位としてはどうかと思うのです。国税庁、どうですか。いまの問題について給与所得者を世帯で調べてみたという数字はありませんか。過去の例でもけっこうです。
  88. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私ども、全体的に給与所得者階層が、扶養人員別あるいは所得金額別にどの程度になっているか、一応計算したものがございます。御存じのように、先ほど午前中私が申し上げましたように、給与所得者納税人員は、三十二年から四十一年までに約九百万増加いたしております。そのうちの六百万人足らずは独身者でございまして、先ほど堀委員の御指摘のありましたように、最近の世帯の分割、さらにまた、私の申しました初任給が非常に上がりました。それに対しまして、課税最低限扶養親族のある者に置かれておりました結果、納税人員増加した。さらにまた、農業あるいは営業者方々の専従者が給与所得者に転換していった。さらにまた、この間におきまして営業者法人成りいたしまして給与所得者に転換した。こういった四つばかりの原因によりまして、給与所得者の数がふえ、さらにまた、いま言った税制上の理由も入りまして、給与所得者のうち独身者課税人員がふえてまいった、こういう状況でございます。
  89. 堀昌雄

    ○堀委員 そういうことですから、比率として計算して、いまので答えられますか。六四・四%の中で、独身者はそれじゃ何%になるのか。それを除いたほうが実はこの比較はいいと思うのですが、それが答えられますか。
  90. 塩崎潤

    塩崎政府委員 全体の二千万のうちでは独身者の世帯が約四割七分ぐらいでございまして、給与所得者のうちでは五割二分が独身世帯でございます。
  91. 堀昌雄

    ○堀委員 そうしますと、五割として考えれば、世帯数としては三二%ぐらいになりますから、事業所得と比較をして、まああまり格差がない、こうなってまいりますけれども、私はいまの独身者の問題というものを考えてみましたときに——このあとでずっとマーケットバスケットに入って、きょうは大礒国立栄養研究所長にも御出席をいただいておりますから、その面から議論をいたしたいと考えておりますけれども、まず皆さんのほうでつくっておられる基準生計費課税最低限との関係をずっと過去から調べてみますと、一番この間に差が少ないのは独身者と五人世帯になっておるわけです。二、三、四人のところは比較基準生計費課税最低限の間に差がある。これのもとは配偶者控除が大きく作用をしておるからこういうふうになっている、こういうふうに思います。  そこで問題は、いまの独身者という問題の中には、いま私が触れたように、親と世帯を同一にしておる者もあります。親と世帯を同一にしておる者の基準生計費というものは、いろいろな意味で私は内容が高くなっていいと思うのです。それは光熱費にしても何にしても、同一の処置をするわけです。物を買うにしても同一処置をする。ところが現在の独身の勤労者の中には、単身で生活をしておる者が相当広範囲にあるわけです。そこで、単身で現在生活をしておる人たちにとっては——昭和四十年の単身者の基準生計費は幾らになっておりますか。
  92. 塩崎潤

    塩崎政府委員 昨年例のマーケットバスケット方式による食料費基準にして推計した生計費という資料では、独身者消費支出金額は十八万五千二十五円となっております。
  93. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、いまの十八万五千二十五円というので一体現在単身者がほんとうに生活できるかどうか、この問題があるわけです。私、この前、予算委員会でもちょっと触れましたけれども、御承知のように、東京でアパートを借りるとすれば、民間アパートに入ろうとすれば、大体六畳で八千円ぐらいというのが普通です。独身者といえども、うまく二畳や三畳の部屋があるわけではありませんから、一般的に民営のアパートに入ろうとすれば六畳一間に入らざるを得ない。ここへ入ると、まず家賃で八千円、それから電気代あるいは衛生費、まあやはり生活をしなければいけませんからガス代もかかりますでしょう。かれこれ一万円というものはそこで飛んでしまうわけですね。そして今度はその一万円を除いた——この十八万円ということは、月額にすると約一万五千円ですから、あとの五千円で朝、昼、晩を食べて、そうして入浴もしなければいかぬでしょう。入浴は、この前申し上げたように、いま二十八円ですから、毎日ふろへ入るとすれば、大かたそれだけで千円近く出るわけですね。散髪に月に一回行くとすれば、これは三百円ぐらいは出る。こういうふうに現実に積み上げていきますと、食費として残るのは三千円ぐらいになるんじゃないか、朝、昼、晩を食べて一カ月で三千円ぐらいしか実際には出てこないんじゃないか。ですから、私は、いまの独身者の問題というのは、どういう形でこの十八万五千二十五円が出されたのか、これをひとつまず主税局のほうで、これで生活できるのかどうか、一体家賃はあなた方幾らに見たのか、入浴料を幾らに見たのか、散髪代は幾らに見たのか、要するに、衣服費その他生活の必要の便益は幾らに見たのか、娯楽費あるいは新聞——これは新聞もとれないんじゃないかと思うのだけれども、新聞をとるとしても、一人でも一世帯一つはとらなければならない。新聞は読めるのか読めないのか、ラジオは一体聞けるのか聞けないのか、ここらをずっとこの十八万五千二十五円について、単身世帯ではどういう生活なのか、一ぺん明らかにしてもらいたい。
  94. 塩崎潤

    塩崎政府委員 お答え申し上げます。  課税最低限がいかにあるべきか、また、いかに計算さるべきかにつきましていろいろな考えがあることは、午前中にも申し上げましたが、私どもは過去の研究におきましても、たとえば、貯蓄はどこから始まるかというようなことを課税最低限の目安にしたこともございます。三十三年ごろから種々方法があろうというようなことで、税制調査会で、委員の方の一人から、たとえば、このマーケットバスケット方式でやるならばどんなことになるかということを研究してみたらどうかという御提案を受け入れられまして、私ども内部で研究しておったものがこれでございますが、たまたま、昨年御要望によりましてこれを国会に御提出申し上げましたところ、非常な反響を呼んだわけでございます。大蔵省メニューという、全くどう申していいかわからない名前もちょうだいしたのでございますが、私どもといたしましてはこれは一つの目安でございますし、たとえば、有業人口対所得税納税人員、あるいは、先ほど堀委員から御指摘のありました所得者のうちどの程度のものを納税者とするかというようなきめ方も外国では行なわれておりますし、必ずしもこういった消費支出金額基礎にいたしまして課税最低限をきめるということは、一般的な方法でないように見受けられるのでございますが、一つ方法だろうと思います。  そこで、ただいま御質問になりました点でございます。昨年の消費支出金額を十八万五千二十五円と出し、本年度は二十万百四十三円という資料を御参考までに提出したいのでございますが、これは、堀委員御指摘のように、たとえばふろ代が幾らへ新聞代が幾らというふうな計算によっているのではございません。提出いたしました資料の二枚目にございますが、世帯の年齢別構成を一つの標準的なものとして選んでまいりまして、ここにありますように「家計調査の対象となった勤労世帯のうちから、有業人員一人で、かつ、夫婦又は夫婦と子とで構成する勤労世帯を抽出し、これについて世帯主の年齢別のモードを求め、そのモードに属する世帯について夫婦及び子の平均年齢を算出した。さらにこれらの夫婦の年齢に比準して一人世帯の年齢を想定した」。こういう想定がまずあるのでございまして、一人世帯は、そのものずばりが調査から抜き出した資料には入っておりませんので、一つの推計になっております。  そこで、食料費はもう御存じのとおりでございますが、食料費を除きます消費支出金額をどういうふうに計算したか。これは食料費をエンゲル係数で除して計算したものでございまして、したがいまして、おっしゃいましたふろ代、家賃、いずれにいたしましても、エンゲル係数の逆算した食料費を除いた金額の中に入っているというふうに考えざるを得ないものでございます。
  95. 堀昌雄

    ○堀委員 私はいま一人世帯を限って議論をしておりますのは、総理府のこの家計調査の中には、実は一人世帯というのはないのです。よろしいですか。だから、これは三人から五人世帯の問題についてエンゲル係数から割り戻したというところとは理解をいたします。しかし、それではどうやってこれにないものを一人世帯に推計を出したのですか。その推計の経過を明らかにしてもらいたい。これは家計調査にないものだ。それでは、それと一人の世帯とはどういう関係にあるのか。私が聞いているのは、一人世帯というのは実際に非常に費用がかかるわけですよ。だから、そういうものを推計するときは、推計と同時に積み上げて、それの状態をこうバランスをとってみないと、これは推計にならないわけだ。一体それはどうやって推計したのか、推計方法をちょっと明らかにしてもらいたい。これからは私は推計できない。私もたいてい統計に詳しいけれども、これだけは推計できない。
  96. 塩崎潤

    塩崎政府委員 お答え申し上げます。  確かにむずかしい点でございまして、おっしゃるように簡単には推計できないことはもう御存じのとおりでございます。先ほど読みましたように「これらの夫婦の年齢に比準して一人世帯の年齢を想定した。」ということでございます。資料を見ていただきますと、夫は二十八歳、妻は二十四歳というところを抜き出しまして、これから一人世帯を推定いたしますれば二十歳から二十七歳であろう、そこで例の成年男子一日二千五百カロリーというところを求めて計算いたしましたのがこの金額でございます。もちろん、おっしゃるように、おかしいではないか、いろんな考え方が出てまいりまして、私、完全とも思えませんが、まずまずこういったことが常識的とも考えられましたのでこういった推計を用いたのでございます。
  97. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの推計で、なるほど食費の推計だけはできるでしょう。これは食費が、二人世帯ならことしが十二万三千五自四日ですから、本来なら二人世帯のほうが一人当たり単価は実は安くなるのですよ。ですからこんな差ではないと思うが、そこは多少大目に見て、六万七千百二十八円というのが食費である。この六万七千百二十八円の食費、それが二十万百四十三円の消費支出にどうやって結びつくのですか。
  98. 塩崎潤

    塩崎政府委員 先ほど来申し上げておりますように、食料費か出てまいりますと、エンゲル係数を求めまして、それを逆算いたしましたのがこれでございます。  そこで、エンゲル係数をどう求めたか、こういう御質問が次に出ようかと思いますので、少し先回りましてお答え申し上げますが、これもまた一人世帯のエンゲル係数ということはないわけでございますので、やはり世帯持ちのエンゲル係数から推算した、こういうことになるのでございます。
  99. 堀昌雄

    ○堀委員 世帯持ちの生活様式と単身世帯の生活様式を同じとみなせば、それはあるいは成り立つかもしれない。しかし、私が最初に申し上げたように、いま東京の単身者が民営のアパートへ入ろうとすれば、二人でも六畳へはいれるのですよ。しかし、一人なら三畳にしてくれというわけにいかぬのですよ。一人でもやはり六畳の部屋に入らなければ部屋がないわけだ。いいですか、主税局長。一人でも八千円の家賃、二人でも八千円の家賃、よろしいですね。電灯は、つけておればつけておる時間に関係があるので、一人と二人で関係がないのだ。いいですか。そこをあなた方のほうはどうやって現実に推計できますか。一人世帯のエンゲル係数などというものはない。現在の日本の統計資料の中にはどこにもない。一人世帯のそういう家計の分析というものは実はないのです。ないのなら、やはり皆さん方はその調査をしてみるべきだと私は思うのだ。主税局というのは比較的合理的な推計をするところだと私は思っていたけれども、あとで触れますけれども、どうもこんないいかげんなものがたくさん出てくるわけだ。この推計などは明らかにひど過ぎる。この一人世帯問題は、どう思いますか。いまあなたの差し引いた中からいまの家賃や何から引いてみてください。食料費を引いたら残りは十三万三千円になるのですよ。一カ月にして一万一千円ぐらいですね。家賃をそこから大体八千円引くわけですね。光熱費、電灯代、ガス代、水道代、衛生費、大体二千円ぐらいかかる。これだけ全部差っ引いてしまうと一万円、残りが三千円幾らになるわけですね。これで、さっき言ったように、ふろへ毎日行ったら千円、散髪代、新聞代、ラジオ、ずっと引いていくと、一文も残らない。生活費以外は何も残らない。そういう点はどうですか。
  100. 塩崎潤

    塩崎政府委員 確かに統計学的に申し上げますと問題はあろうかと思います。私どもは、エンゲル係数を家計調査の結果から確かに二人世帯までは一応推定がつき、さらにまた、私どもは、課税最低限でございますから、実際にでき上がったエンゲル係数を採用するということじゃなくて、食料費の支出金額を標準的に求めますと、これと同じような食料費を出しておる世帯についてのエンゲル係数を求めまして、それから各世帯についての  エンゲル係数を推算しておるわけでございますが、確かに、おっしゃる固定的な費用部分、支出部分、これをどういうふうに見るかなかなかむずかしい。私もおっしゃる点も非常によくわかりますので、独身世帯につきましては、私ども大蔵省が調べるのがいいのか、統計局が調べるのがいいのか。私ども調査いたしますと、税のために調査したというふうに言われるおそれがありますので、むしろ統計局あたりにでもお願いしたらいいかと思います。しかし、人口五万以上の都市に居住する者のエンゲル係数を見ましても、やはり、五人世帯が三六というエンゲル係数ならば、二人世帯は三一というような趨勢線を描いておるところを見ますと、ある程度のエンゲル係数は想像つかないこともないということも言えましょうし、さらに、また、堀委員のおっしゃったように、確かにこの私ども課税最低限のきめ方は、私どもはこの程度でいいと思うのでございますけれども、個個の商品あるいは個々のサービスの価格を積み重ねて計算したものでございませんので、多分に問題がございますが、少なくとも東京だけ中心というものでもなさそうな感じがいたします。人口五万以上の都市の家計調査一つのモデルとなっておりますので、そのあたりが多分に影響いたしまして、東京などでは問題が出てくるかとも思います。
  101. 堀昌雄

    ○堀委員 いま私が言っていますのは、単身世帯で、家をそういうところでやっているのは大都会なんです。いなかのほうへ行って民間アパートへ下宿して働いている単身労働者というのはないのです。全部大都会へいなかから来て、住居がないから、単身でそういう世帯を持たなければならぬというのですから、東京並みで見ていいわけでして、東京、大阪、名古屋、要するに、京浜それから名古屋周辺、阪神、場合によっては北九州、ここら以外にはないのでして、そこらを十分頭に入れておいていただきたい。  もう一つ、これは参考にするという話で、参考でもいいのですが、じゃ一体課税最低限の一人世帯二十二万二百七十八円というのはどうやって割り出したのですか、このほうを聞きましょう。消費支出はいいですよ。目安ですから。課税最低限の一人世帯二十二万二百七十八円、八円までついているわけですから、これは一体どうやって計算ができたのか教えていただきたい。
  102. 塩崎潤

    塩崎政府委員 これは私どもが恣意的に計算したものではございません。御存じのように、基礎控除十三万円を一万上げまして十四万円、さらにまた、給与所得者の特典と申しますか、特殊の控除科目でございますところの給与所得控除につきまして、定額控除を三万円から四万円に上げ、さらにまた、給与所得控除の二割という金額計算いたし、さらにまた、社会保険料控除を差し引きましたところで計算いたしますとこんなところになるのでございます。
  103. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、結局、計算上いまのような控除をつくれば出てくる、その控除をつくるときにはどこが基準になるわけですか。要するに、何となく控除を置いたわけじゃないでしょう。何かの目安を置いてその控除を組み立てるわけでしょう。これを幾らにし、これを幾らにし、これを幾らにする、そのときの目安になるのは何ですか。何かの目安がなければ組み立てられません。
  104. 塩崎潤

    塩崎政府委員 確かにおっしゃるように、一つの目安を持っております。所得税減税を幾らにするかということが、まず最初の大きな目安でございますし、さらにまた、それを税率に幾ら振り分けるか、さらにまた、その次には控除をどういうふうに振り分けるか、私どもの長年の頭にありますのは、例の夫婦、子三人の標準世帯の課税最低限、現在の五十六万四千円ばかりを六十一万三千円、これは初年度でございまして、これを六十三万円程度にしようということも一つの目安にいたしまして、基礎控除配偶者控除、扶養控除、さらにまた給与所得控除をこの程度上げることにしようというようにいたしまして、それが基本となりますが、その結果、独身者につきましては、先ほども申し上げましたような引き上げ割合になり、課税最低限が出てくるのでございます。
  105. 堀昌雄

    ○堀委員 その初年度六十一万円、平年度六十三万円というのを出した目安は今度は何ですか。
  106. 塩崎潤

    塩崎政府委員 だんだんとむずかしい質問になってまいりますが、やはり所得税納税人員をどういうふうにするか、さらにまた、消費者物価値上がりがどの程度であるか、さらにまた、所得水準の上昇がどの程度であるかということを総合勘案いたしまして、ただいま申し上げましたような数字減税一つの目標として出てきた、かように言えると思います。
  107. 堀昌雄

    ○堀委員 いまのはちょっと私苦しいと思うのです。それはいろいろな要素を勘案すればするほど恣意的要素が入らざるを得ないのですよ。あれも勘案し、これも勘案しといったら、これをどう配分するかということになるわけですから、そうすると、ある程度の客観的目安がないと問題になる。その客観的目安が、昭和四十一年度改正の際の消費支出の五十八万六百九十八円がそういう客観的な一つの目安になったのではないのか、それを一つの目安にしながらその他のものをやらなければ、いまのあなたのお話は恣意的になりますよ。だから、客観的なものの土台はここに置かざるを得ないと思うのだけれども、どうですか。
  108. 塩崎潤

    塩崎政府委員 それも一つ考え方でございますが、私どもといたしましては、この課税最低限食料費あるいはまた、それから逆算いたしましたところの消費支出金額、これは一つの参考資料として考えておりますので、大きなファクターといたしまして、これがあるからこういうふうに限度を引き上げるということは、過去の例におきましてもいたしておりません。むしろ所得税の収入金額、さらにまた減税にどの程度引き当てられるか、そのうちで控除にどの程度引き当てられるか、さらにまた、皆さま方の種々要望がございまして、扶養親族の控除のほうがより基礎控除よりも上げられるべきであるという、世の中に強く見られますところの要請、これらを加味してでき上がり、さらにまた消費支出金額値上がり、これも一つの目安として出てきた、こういうふうなことが私は課税最低限の根拠であろうと思うのでございます。
  109. 堀昌雄

    ○堀委員 大臣がいらっしゃるのに、せっかくの大臣との質問ができないので、これはちょっとあとに延ばしますが、大臣、いま主税局長はいろいろ言っています。しかし私は、いまのああいう主税局長の話は、計算としてこういうものが出てこないと思うのです。やはり基礎控除をどうするか、配偶者控除をどうするか、扶養者控除をどうするかということにめどがなければできないし、それのめどになるものは、やはり客観的なものでないとまずいと思うのです。何となくことしはこのくらいにしょう。それはもちろん減税の額に問題がありましょう。しかし、私に言わせるならば、こういう減税というものは、減税ワクをきめてから課税最低限がきまるというものではないのではないかと思う。やはり客観的な諸情勢の中で、ここを課税最低限にしようというものがきまって、そこから減税の額をはじき出して、それがどうなるかということに一ぺんいって、その後にどうしても財源が足らないからまた戻ってくるなら別としても、考え方はやはり現在の生活というものを中心としながら考えるのが筋道ではないかと思います。  そこで、その点で私がいま非常に課税最低限にこだわっておりますのは、まず、いまの課税最低限の中で単身世帯は非常に無理があるということです。これが単独で世帯を持っておる場合には非常に無理がある。このことがまず第一点ですから、これはひとつ何らかの形で検討を必要とするだろう。特に、単身者の場合は給与所得者に限りますから、そこで給与所得控除の中には、特にそれが単身世帯であって、それによって家計が維持されておるものには多少別途に何らかのものを考えてやっていいのではないか、いきなりここでほかの者が全部継ぎ足すようなものにしますと問題があると思いますが、一人世帯というのは、いまのこういう全体の問題の中ではやや特殊な条件になっておる。しかし、課税最低限が非常に低いために、実は非常に費用がかかるにかかわらず課税がされるというさか立ちの問題がありますので、こういう点はひとつ検討を要する問題だろうと私は思う一点であります。その点について、ひとつ大臣の感触をちょっと伺っておきたい。
  110. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 最低限をどこに持っていくか、率直に言いまして、それをきめる一番の要因になりますのは、財源が一体どうだろうということだと思います。これは、いろいろあとで理由をつけます。つけますが、まず最初にどれだけの財源があるか、こういうことだと思う。大体このくらいの財源ならば最低限、つまり諸控除にどれくらい振り向ける、また、年来の懸案である税率控除をやるかやらないか、こういう問題、税率控除をやるとすれば、どのくらいの財源をさく、そうすると、おのずから最低限、つまり基礎控除に向け得る額というものが出てくる。自由民主党では、参議院選挙のときに、六十万円以上への引き上げを行なう、こう言っておる。これはどうしてもしなければならぬ筋なんでありますが、それを幾らかでもよけいこえたい。財源とにらみ合わせますと、初年度は六十一で、平年度は六十三だ、こういう形になってくるわけなんです。一方これを、従来メニュー論争がありますが、それから考えてみますると、まあまあメニューのほうではカバーできる数字じゃないか。ただ、独身者と五人世帯、これはあのメニューからの見当では非常に余裕が少ない、そういう感触は持つのでありますが、まあまあ五・五%という物価の上昇を考えても吸収できる最低限ではないか、こういうふうに考えておるわけであります。しかし、独身者あるいは五人世帯は他に比べますると非常に余裕が少ないわけです。そういうようなことは一体どこから出てくるのだ、また堀さんがおっしゃる、今度はエンゲル係数による換算ではなくて、一つ一つの積み上げからいうと非常に窮屈じゃないか、これも私わかるような感じがするのです。そういうようなことも考えながら今後の検討問題だ、こういうふうに考える次第でございます。
  111. 堀昌雄

    ○堀委員 何にしても、やはり課税最低限は、少なくともまともな生活はできるのだということになりませんと、私は、どうも頭に、一人世帯は自今で生計を維持してないというものの感触があるのじゃないかという感じがするのですが、しかし、やはりそういうものについては考慮をしないと、これでは都会では生活ができないという事実が明らかである点は、これは十分検討に値するものかと思います。  その次に、大臣がいらっしゃる間にはしょって詰めておきたいのは、国税庁長官にお伺いをいたしますけれども、現在事業所得者というのは、さっきもありましたが、この事業所得者と小法人、零細法人といいますか、これの百万円以下の所得の者は一体どのくらい税として調査ができておるのか、ちょっとそれをお伺いをしたいのです。
  112. 泉美之松

    泉政府委員 国税庁といたしましては、営庶業の所得者につきましては事業所得七十万円を区切りといたしまして、七十万円以上の者はいわゆる高額所得者として調査を十分に行なう、七十万円以下の所得者につきましては実調割合が若干落ちるのもやむを得ない、こういう態度をとっております。したがいまして、七十万円以上でございますと実調割合は五割をこえるくらいになりますが、七十万円以下になりますと実調割合は非常に減りまして、二割を切っております。
  113. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの国税庁がきめられた七十万円以下という問題ですが、これはいつから七十万円以下になったのでしょうか。
  114. 泉美之松

    泉政府委員 私の記憶に間違いなければ、三十七年からそうなっていると思います。
  115. 堀昌雄

    ○堀委員 三十七年当時の七十万円は、その後の物価上昇で見たら現在は幾らになっていますか。
  116. 泉美之松

    泉政府委員 こういった限度の問題は、物価の上昇割合で検討するよりも所得の伸び割合で見るのが正しいかと思います。そういう意味におきましては、いま七十万円というのはいささか低きに過ぎはしないかということ、確かにおっしゃるとおりだと思います。したがいまして、特に所得の伸びの大きいと思われまする大都市局におきましては、この七十万円というのを八十万円くらいに上げておるところもありますが、しかし、七十万円から八十万円というのは所得の三十七年から今日の伸びとしてはもっと上がっているわけでございまして、三割以上上げなければならぬ程度のものだと思っております。
  117. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで大臣、私がいまこの問題に触れておりますのは、申告所得が非常に逃避といいますか、申告が完全になされていないわけであります。そのもとは、やはり私は、かなり税の負担が重くなるものだから、その程度のところでは税金を払うのがたいへんだという面が一つあると思うのです。やはり日本の税率が高いわけですからね。そうすると、二〇%ということは、五年に一ぺんしか調査をしない、あとの四年間は言いなりで通っているということですね。これは私は租税の原則から見ますと非常に問題のあるところだと思う。しかし、そうは言っても、国税庁の職員の数をふやせないとなれば、そこはそうせざるを得ない。この両面から考えてみますと、やはり課税最低限が上がってきますと、下のほうは非課税になってしまうわけですね。どんどん非課税になってくる。そうすれば、いまの調査能力というものは、そういうものを見ないで、ほかの高額のほうを見られるということになって、私はやはり税務行政の合理化という面から見ても、課税最低限というものをできるだけ上げるということが非常に合理的な、公平な税ができるのじゃないか。だから、さっき前段で、午前中に触れましたように、いろいろな角度から私はその問題をしばっていきたいと思うのは、何にしても課税最低限はひとつもう少し大幅に上げたほうがいいのではないか。ただしかし、上げるからといって、税収が非常に足らなくなれば、これは財政の問題に直ちにはね返りますから、財政の面ではそういう課税最低限引き上げてもあまり影響がないという形を考えるとするならば、やはり私は、一つの問題というのは、さっき申し上げたような控除が消えていくような方法によって考えるということが一つと、もう一つは、いまのようにそれが上がったために上のほうの所得が正確に把握をされるということがより税収確保になるのではないか。その分の手が余るので、上のほうは密度が高くなるから……。実はあとでちょっと触れますけれども、主税局の歳入見込みが、法人税につきましては、更正決定によるところの税の増差を四十年度は一千億円見ております。それから四十一年度は八百五十億円ですか、見ているわけなんです。これほど更正をやって増差を税収の見積もりで最初にあげるなんということは、私は、いかに日本の国税庁というものの指導が不十分であるのか、まあ納税意識が低いのと両方だろうと思うのです。だから、そういうふうにならないようにしさえすれば、そういうものは更正による増差で見なくてもいいようになるわけですし、いろいろな面から考えてみて、私はどうしても基礎控除というものをもう少し大幅に上げることによって、負担の公平と、それから税務行政の合理化という問題を行ない得るのではないかと思うのですが、その点に対しての大臣のお考えを伺いたいと思います。
  118. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいま最後の堀さんのお話、私、ことごとく賛成です。財政の許す限り、最低限引き上げに向かって努力を尽くしていきたいと、かように考えます。
  119. 堀昌雄

    ○堀委員 財政の問題が片面にありますから、私どもがここで申すように簡単ではないと思いますけれども、そういう方向にひとつ十分に検討を進めていただきたいと思います。  それでは、国立栄養研究所長さんに御出席いただいておりますが、実は昨年研究所のほうにお伺いをいたしまして、私ども献立も試食さしていただいて非常に勉強になりました。ところが、私どもがそれを少しクローズアップをいたしましたところが、非常にいろいろな意見が出てきて、そこで主税局も少し憶病になったと見えて、何か初めは、ことしはこういうのはやらないのだというふうな話を実はしておったわけです。ところが、実は参議院のほうから御要求があったと見えて、先日「マーケット・バスケット方式による食料費基準にして推計した生計費課税最低限との比較」という表が当委員会に配られてきたわけであります。私は、初めに聞いていたときには、ことしはやらないということは、マーケットバスケット方式全部やらないのかと思っておりましたら、何のことはない、献立をつくらないというだけでこの制度はやる、こうなったわけであります。  そこで、私はいまの人間社会で一年一年われわれが生きていく中で、われわれの世帯が去年とことしで、何の発展といいますか、向上といいますか、そういうものがなくて生活が存在するのかどうか、われわれはやはり去年よりことしは生活内容が改善される、ことしよりは来年が改善されるということを楽しみにして生活しておると思うのです。ところが、私が大蔵省に聞いておりますところでは、さっきの午前中の答弁でもそうですが、去年と同じ献立で、これは内容に向上がないということです。去年と同じ献立で、物価上昇だけをぶっかけて実はこれを出してきた、こういうことですね。私は、大蔵省の主税局というところは、人間の生存といいますか、われわれは何のために生きておるのかということをどういうふうに考えておるのか、ちょっと一ぺん聞かなければいかぬと思うのですが、しかし、私は栄養の問題は、昨年、あの献立ではどうも栄養学上十分でないということを議論をしまして、あのときには、ことしはひとつ、さっき私はちょっと触れておりましたのですが、いまの日本の状態で、望むらくはこのくらいのところが標準的な世帯だ——これは標準世帯じゃございませんでして、最低限世帯のほうですから、私はいまの日本としての標準世帯では、どういう食事が一番望ましいかという献立と、この最低の分とを合わせてひとっことしはお願いをしたい、こういう話をしておったわけでございます。そこで、いま栄養上の問題でお伺いいたしますが、日本全体としては、やはり毎年そういう食生活というのは改善されつつあると思うのでございますが、その点いかがでございましょうか。
  120. 大礒敏雄

    ○大礒説明員 私、国立栄養研究所の大磯でございます。  ただいまのお話、これは国の経済状態も次第によくなってまいりますし、またいろいろ栄養の知識も入ってまいりますので、国民全体としての平均の食べ方というのは、次第に向上しております。ただし、それは国民平均でございまして、平均は上と下がございますので、下のところで非常にまだ改善されない部分もたくさんございます。
  121. 堀昌雄

    ○堀委員 国民所得も停滞をしておるとはいいながら、これは日本では前年比で下がった年はないわけです。要するに、全体として日本の経済、生活を含めて、マクロで見れば向上しつつあるわけです。ところが、主税局のほうでは、この問題に関しては向上させない、去年と同じ内容のものにストップをさせて物価だけをかけた、こうなってきたわけですね。私は、どうも栄養学の見地からしましたら、たとえわずかでもやはり内容的にレベルアップがなければこれはおかしいのじゃないか、こう思うのですね。  そこで、所長さんにお伺いをしたいのは、去年とことしのいろいろな諸情勢から見て、物価の問題は排除いたしまして、やはり私は、何%かの内容的上昇というものは、国民平均的に見てもあるだろうと思うのですが、大体それはどのくらいか。これはたいへんむずかしい問題だと思いますけれども、これは感じでお答えいただいてけっこうですが、私は少しはあるだろうと思うのです。どの程度のものでございましょうか。大蔵省に御遠慮要りませんから……。
  122. 大礒敏雄

    ○大礒説明員 国民の摂取しております食物の内容というものにつきましては、これは国民栄養調査というものがございまして、毎年やっておりますので、そこにこまかい数字が出ておりますが、ただいまは持っておりませんので、こまかいことを申し上げることができませんですが、これは一人ということになりますと、ごくわずかずつしか伸びていないことは事実でございます。これは、一人でございますから、カロリーにいたしましても、五十カロリーも伸びるということはなかなかできないことでございますから、ごくわずかなものでございます。たん白質もごくわずかずつ伸びておる。しかし、長い間の統計をとっておりますと、こういうふうに上昇はしておりますが、去年とことしで目立ってというわけにはまいらないと思います。
  123. 堀昌雄

    ○堀委員 目立ってということにはならないと思いますけれども、私は内容も変わりつつあると思いますから、カロリーだけではいかないのじゃないかと思います。そうすると、内容が変わるということは価格には影響するわけでございますね。現実には価格に影響してくる。問題は、実は大蔵省がほしいのは価格でありまして、内容ではないわけであります。内容は何食っていても、まあ二千五百カロリー、生きてくれればいいという感触のほうが私は強いのではないかと思う。皆さんのほうは栄養のほうが大事で、値段よりもやはり栄養のほう、こうなる。これは当然だと思うのです。そこで、いまおっしゃるように、五十カロリーにはならない、こうなりましても、まあ、かりに二千五百カロリーとして、カロリーだけで見て、二十五カロリーあったとしますと、約一%ぐらいは上がるわけでございますね。だから、そんなふうにして見ていくと、それがカロリーだけの分で、今度は内容の代替の分もおそらくあるだろう。いろいろな要素を加味してみれば、やはり三%や四%は、これは上がっていっていいのではないのか、こういうふうな、これは感触の話ですから、私も国民栄養調査の資料をこれから一ぺんよく調べてみて、少し具体的に研究をしてみますけれども、私ども、ここまでまいりましたので、もう一ぺんことしも、たいへん恐縮ですけれどもひとつ私が去年お願いした模範的なといいますか、日本の標準的世帯、あるべき世帯のあるべき食事という献立と、大蔵省のいう、去年の献立もたくさんございましたから、そのどれかまた別なものとでお願いをしたい、こう思っておるわけです。このことは、私は、やはり税というものが非常にむずかしいものですから、わかりやすい形で国民に理解をさせるということは、非常に重要な問題だと思っているのです。大蔵省もやや逃げ腰なんです、マーケットバスケットについては。しかし、私どもは逆に、こういうものを通じて国民に税に対する関心を深めさせないと、これは私はよくないと思うのです。私どもが幾らここで真剣に議論しても、国民のほうには、課税最低限が何円何十銭だなんといったって、これはなかなかわからないのですね。さっきもお聞きになっておったように、課税最低限の一人世帯を出すについても、どういうことをやられたのか、私は後刻ゆっくり聞きますけれども、われわれとして想像もできないようなことが出ておるわけだから、なかなかわかりっこない。われわれにもわからぬくらいのことが、国民大衆にわかるわけがない。どうしても、こういう非常に端的なものを通じて、やはり日本のいまの税のあり方というものを理解させるということが重要だと思うのです。そういう点で、たいへん国立栄養研究所の皆さんには御迷惑をかけるのですが、そういう意味で、私はひとつ国民のために栄養研究所としても御協力をいただきたい、こう考えますけれども、栄養の立場から、ひとつそういう問題についてのお考えを一ぺん聞いておきたいと思います。
  124. 大礒敏雄

    ○大礒説明員 おっしゃること、まことにごもっともだと思います。そのおっしゃるところはよくわかりますけれども、今回につきましては、御質問なさったようなぐあいでございまして、私のほうとは関係ございませんで、ただはじき出されたものに物価をかけたものであるから、去年の献立でもいいではないか——これは同じことなんでございますから、ただ物価をスライドさせるだけで、その物価の上がりぐあいがどうかということは、それは別でございますけれども、そういうことで、私のほうは何ら関係ございません。しかし、おっしゃられる点はごもっともでよくわかりますし、また、そうあるべきだと思います。でございますから、将来そういう方向に向かうために、私のほうも御利用いただくとか、私のほうに来ていただくとか、これは私ども非常に歓迎するところでございますので、どうぞ御利用いただきたいと思います。
  125. 堀昌雄

    ○堀委員 いまお話のように、ことしの問題は、皆さんのほうのは去年のやつを使ったのですから疎外をされたわけです。来年は、やはり疎外をされないで皆さんにつくっていただこうとわれわれは思うのです。そうして、先ほどから議論をお聞きになっていただいて——これは参考なんですから、参考なら参考でいいわけです。しかし、たまたま課税最低限の近くにある世帯はこういうものだということだけはわかるのですから、これがどっちでいくか卵が先か、鶏が先かという議論のほかに、こういうものですよということを簡明率直に国民に知らせるためには、来年度以降も、いずれお手数ですけれども、皆さんの御協力をひとつぜひいただきたいというふうに思っていますので、よろしくお願い申し上げます。どうもありがとうございました。
  126. 平林剛

    平林委員 関連して……。  けさ、私も大蔵大臣に、ぜひことしも大蔵省の献立国民にお目にかけたらどうか、そうすれば、机の上の計算では、これが課税最低限度だということで通ったとしても、実際の国民感情やあるいは最近の経済事情から見て大きな疑問が出てくるだろうと思う、将来の国民の栄養上あるいは体位向上ということも勘定すれば、とても現在の課税最低限というのは不当だと思う、生計費に食い込んでいる、だから、絶えず政治家はそういうことを実感として感ずるためには途中でやめちゃいかぬ、そのまま恥ずかしい思いをしても国民発表して批判を受けるべきだということを主張したわけで丈大蔵大臣も、御趣旨の点はよくわかるから、十分前向きでやります、こう言う。前向きでやるということは政治家のことばでして、皆さんのほうに聞くと、それをつくりなさいということで、おそらく指示がいくと思うのです。そういうことで、政治家というのは、前向きで検討するということを政治的に使いますけれども、実際には栄養研究所でつくってもらうということになると思うのですから、ぜひ用意はしておいていただきたいと思うのです。  そこで、私も昨年伺いましたとき感じたのですが、あの献立の中には、脂肪とかビタミンが足りないというお話がございまして、向こうの専門家の方からも国民栄養学上非常に貴重な意見を聞かしていただいたわけでございます。なるほど、そのとおりであると思うのです。ところが、なぜこんなものをつくるのですかと言ったら、内閣統計局の家計調査の中で大体卵とか牛乳とか、いろいろなものを使っている、平均数値でこういう献立をつくるのだから、結果的にはこうなるのですというお話があって、なるほど、そうかなと思いまして、帰ってきてから、私は内閣統計局の家計調査を全部取り寄せて調べてみたのです。ところが、あの内閣統計局の家計調査には非常な欠陥があるということに気がついた。これは一つの例なんですけれども、たとえば、あの家計調査の中には、サラリーマンがつとめに行きます。そうしておなかがすきますね。帰りに駅でもって牛乳をちょっと飲もうといって——このごろは一本二十円とか二十五円で売っていますが、ああいうやつは入っていないのですね。どの程度捕捉されているかということは疑問ですし、あの外で飲むような牛乳などについては、実際の家計調査のときに入っているかどうか疑問なんです。こういう点から見ると、牛乳が非常に少ないなと思うのは、案外駅やなんかで立ち売りで飲むものが漏れているのではないかという感じがする。そうでなければ、この間つくられた献立などで、あんなに少ない牛乳ということは——現在の国民生活の状態から見ても総体的に低いことは事実ですけれども、なお低くなっているのじゃないかという感じがしてならなかったのです。  それから、たばことか酒などをいろいろ調べてみたのであります。あの献立には、あんまりお銚子をつけたりなんというのはなかったのですけれども、しかし、実際には、うちへ帰ってくると、一ぱいつけねえかということで、奥さんにせびってつけさせるのが実態なんですね。ところが、これなどもいろいろ調べてみますと、所得が多くなるに従ってお酒の飲み方の量が少なくなっております。おかしいなと思って、私いろいろ調べてみましたら、所得が多くなると、もらいものが多いわけです。何かお世話をしてやると、ウイスキーを持ってきて、どうもありがとうございました、酒をお使いくださいということになりますから、これは家計調査の中には出てこないんですよ。それで、酒を飲む階層はどうかというと、年間所得が六十万円とか四十万円のほうに多いわけでして、これなども、ほんとうを言うと、金のある人は酒の飲み方もおじょうずなのかもしれませんけれども、どうも貧乏人のところに多くなっている感じですが、そんなところにも消費の実態の矛盾があることに気がつきます。これは酒だけではありません。たばこもそうです。たばこも、所得が多くなるに従ってその喫煙量が少なくなっていく、これもやはりもらいものがあるのじゃないですか。これも家計調査にあらわれてこない。こういうことで、内閣統計局の家計調査をこまかく調べてみますと、消費品目においてもいろいろな欠陥に気がつくわけです。こういうことを考えますと、それを基礎にしてつくられるいろいろな献立というものは、割り引いたものしか出てこない、こういうこともあるのでございます。そこで、今度おつくりになるときは、堀委員が言われたように、二通りやる、大蔵省がきめられた課税最低限度、冷酷非情、血も涙もないような低いやつをつくるが、しかし、同時に、国民栄養学上はこの程度が必要だという、栄養研究所は絶えず調査なさっておられるはずでありますから、そういう角度でつくれば、こうなければならぬはずだという、二通りつくってみたらいかがかと思うのでありまして、これは大臣のほうから御注文がなくても、あなたのほうでひとつやってみようということでやってもらいたいと思いますが、いかがでしょうか。
  127. 大礒敏雄

    ○大礒説明員 おっしゃられますとおり、家計調査は、いまのお考えのとおりなんでございまして、あれはがまぐちから出たものだけをつけるのでございまして、もらいものは一切入っておりませんから、全体の使ったものから見れば内輪になる、これはもう当然でございます。これは家計調査の本態でございます。  それから、いまの献立でつくってみろというお話でございますが、これはおいでくだされば、私どもできるだけの御協力はいたしたいと思います。去年のものと、ことしのものと、大蔵省のものは全く同じでございますから、去年ごらんになったら、それは要らないかと思いますが、私どものほうで考えるのはごらんに入れてもよろしいと思います。
  128. 堀昌雄

    ○堀委員 次に、所得税をだいぶやりましたから、法人税ですが、この法人税制で今度減税になる金額、これは、皆さんのほうの資料は企業減税という形になっておりまして、法人税と租税特別措置とが一体になってここへずっと書かれているものだから、今度の法人税によるところの減税はどういうふうになるのか、ちょっと最初に伺っておきたい。
  129. 塩崎潤

    塩崎政府委員 お手元に差し上げておりますのは、確かに所得減税と企業減税とを対比いたしておりますので、所得税法人税という税目別にはなっておりません。ただ、初年度につきましては、租税及び印紙収入予算の説明の三ページに税目別になっておりますので、この点は明らかになっておりますが、企業減税のうちで専従者控除の引き上げ、この分は、所得税から企業減税のほうに移しかえていただきますれば、残りは法人税、こういったことになろうかと思います。したがいまして、企業減税の中の専従者控除の引き上げの額は、初年度において五十三億九千五百万円、平年度におきまして七十一億九千三百万円引けば大体出てまいりますので、法人税の減税といたしましては千五億円ばかりになろうか、これは平年度でございます。
  130. 堀昌雄

    ○堀委員 そうしますと、法人税法の改正だけ見ておりますと、この中では、留保分に対する税率の引き下げ、それから中小法人の軽減税率の引き下げ、同族会社の留保所得税の軽減、これは税法改正に出ていますね。それ以外は税法改正には出ていないのですね。大体、法人税法の改正なくして何か減税が行なわれるということになるのですね。そうすると、これは租税法定主義ですから、私は、法人税法の改正があって千億円余りが減税になるのかと見ておったけれども、どうもそこらがはっきりしない。そこで、ちょっといまのを、法人税法の改正に基づく減税は幾らなのか、それから、その他どこかわからぬところでやるものは幾らなのか、それをちょっと明らかにしてもらいたいのです。
  131. 塩崎潤

    塩崎政府委員 法人税法の改正によりますところの法人税の減税は、おっしゃる三点でございまして、留保所得に対する税率の軽減、中小法人の軽減税率の引き下げ、同族会社の留保所得税の軽減の三つでございます。その他は、大部分租税特別措置法によりますところの法人税の減税でございます。  なお、建物の耐用年数の短縮が、御存じのように、初年度四十億四千六百万円、平年度百四十九億八千四百万円と出ておりますが、これは御存じのように、大蔵省省令の建物の耐用年数表の改定で行なわれますので、この点は法律には掲げられないのでございます。そこにつきまして異論がございましょうが、耐用年数自体、企業が見積もり、税務署がこれを適正と見積もるならば、本来、税法上の制度としてなくて済むものかもしれません。外国はそんなようになっておりますから、どんな国におきましても、耐用年数が法律上あらわれたところはございませんが、わが国は、昔から課税所得の一つ計算原理といたしまして、建物の耐用年数は法人税法の一部になっております。このことは、減価償却でいずれ損金になるものというようなこと、さらにまた、納税者との話し合いで耐用年数を見積もりいたしますことについてのトラブルが非常に多いこと等を考えまして、数百の種類に分けまして若干の画一的という非難はございますけれども、省令上の制度といたしております。したがいまして、最近の建物の耐用年数が外国に比べまして見劣りする際には短くすべしという議論もありましょうが、その際には、省令の改正という形で、この点が法律にはあらわれない減税でございます。
  132. 堀昌雄

    ○堀委員 実は、法律にあらわれない減税というものが、金額とたいしたものでなければ、これは私は、一々すべてを法律にしなくてもいいかと思うのですが、この項を見ると、実は平年度百五十億円の減税が単に事務的な処理で行ない得るということは——これはなるほど歳入予算として国会にかかりはしますけれども、これはやはり何らかの金額を限って処置をする方向に持っていくべきではないのか。租税法定主義といいながら、何百億円というものが、ただ一片の省令の改正によって行なわれるという点については、これは実は私は問題があろうかと思うのです。金額はどこがいいかということは議論になるでしょうが、一般的な常識として、現状の経済情勢あるいは減税の各項目別のいろいろなもの、その他から見て、五十億円以内ぐらいのところまでは、これは多少そういうものであってもいいけれども、それをこえるもの、特にこの例は百五十億円になっているのですが、そういうような大きな減税ということになると、これは当然その他のものなら全部税法の改正でなければできないものが、たまたま耐用年数の問題だけが非常に大幅な減税がこれだけでできるという点は、ちょっと私は問題があると思うので、これは事務当局の問題というよりも、政治的な問題でありますから、政務次官、ちょっとお答えください。
  133. 藤井勝志

    ○藤井(勝)政府委員 租税法定主義の原則というのは、お話のとおり、議会政治のたてまえからいっても当然でございます。いろいろ具体的ないま御指摘の問題につきましては、また大臣にも報告をいたしまして、御趣旨に沿うように努力をいたしたい、このように考えます。
  134. 堀昌雄

    ○堀委員 次に、法人税の収入の点を少し私は見ておりまして、昨年、四十年の見積もりは、法人税収入がやはりかなり落ちこぼれたという点に問題があったと思うのです。ことしは、その点を十分慎重にやられたというように感じているわけですけれども、ことしの積算の基礎になっている四十一年度の鉱工業生産の伸び四・七%というのは、一体どこからどこまでの間で推計をしたのか。私、何年か前にこの議論を一ぺんして、機械的に年度のものと比べたところが、これは税収の場合には、主たる決算が九月なので、そこで九月決算を中心として措置をしたということを聞いたのですが、私は手元に具体的な鉱工業生産指数を持っておりますから、一体、あなたのほうはどこからどこまでを見てこれをはじき出されたのか、この推計の基礎の期間はどこになっているかを、最初にお聞きしたい。
  135. 塩崎潤

    塩崎政府委員 この点は、堀委員のほうが私よりも詳しいかもしれません。私は、法人税の税収は、御存じのように、事業年度ごとに入っておりますので、一月が最後の事業年度になる、それに合わせまして鉱工業生産指数はつくられている、かように了解しております。
  136. 堀昌雄

    ○堀委員 一月が最後ということは、二月−一月という計算になるわけですか。
  137. 塩崎潤

    塩崎政府委員 そういうことです。
  138. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、二月−一月という計算で推計をした場合に、昭和三十九年の二月から四十年の一月まで、それから四十年の二月からことしの一月まで、こう二つあるわけですけれども、その点、私は、いま期間がどこで区切られるのかちょっとはっきりしなかったから計算していないのですが、その二月−一月で見た鉱工業生産の平均値、三十九年と四十年——四十年は一月が出ておりますが、まず、これをあなた方は幾らに置いて、推計の土台は幾らの数になっているかをお聞かせ願います。
  139. 塩崎潤

    塩崎政府委員 法人税は、最近の情勢で私ども見積もったのでございますが、先ほどの御質問について、もう少し詳細にお答え申し上げますれば、生産及び物価の伸びは、二月から翌年一月までに事業年度の終了する法人の事業活動期間に対応するものを見込んだ、こういうところが正確でございます。そこで、四十一年度の生産は、御存じのように企画庁がつくっておりますが、税制で一応法人税の見積もりをいたしましたのは、生産は四・七%、物価は一・七%、相乗積の一〇六・五%を採用いたしております。所得率は、これもいろいろな見方もできますけれども、一〇〇という数字を採用いたしておりますので、申告税額は、四十一年度の予算におきましては六・五%というところを目安に置いております。これをさらにまた上期、下期に分けまして、さらにまた大法人、中小法人、さらにまた、六カ月決算法人、一年決算法人に分けまして見積もりましたのが法人税の収入の根拠でございます。
  140. 堀昌雄

    ○堀委員 私は、それを聞いているのじゃない。一番肝心なのは、鉱工業生産指数の伸びがやはり生産に非常に関係があり、所得に関係があるわけですから、それは、いまの二月−一月で見たとしたら三十九年の分はどうなのか、四十年の分はどうなのか。これはもう実績がわかっているわけですからね。それは当然積算の基礎として使っておられなければその四・七%というのは出てこないのですよ。だから、四十年の二月から四十一年の一月というのの平均値というものは、一月まで鉱工業生産指数は出ていますからね。平均値がどうだということで、その上で四・七%上積みするわけですから、土台がきまらなければ上積みはできないわけです。そして上積みをした目安が幾らになるか、こうならないと話は詰まらないから、それはどういうふうに見てやられたのか、前との関係において聞いておるのです。三十九年を含めて……。
  141. 塩崎潤

    塩崎政府委員 三十九年度の実績でございますが、生産は一一八・四%、物価は一〇一・三%、相乗積一一九・九%となる見込みでございます。所得率は逆に下がりまして九五・八%で、総合いたしますと、一一四・九%がその根拠となっております。四十年度は、当初と補正後とで相当姿が変わったわけでございますが、最近までの見込みといたしましては、生産が一〇五・九%、物価が一〇一・五%、相乗積が一〇七・五%、所得率が九四・六%、総合一〇一・七%、こんなふうに見ておりまして四十一年度につないだものでございます。
  142. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、四十年度の誤差というのは約五%ぐらいあるということですね。鉱工業生産の伸びの誤差が五%ぐらい。私がいまこれをちょっと緻密に伺っておきたいと思うのは、法人税収というものはやはり非常に不安定で、非常に景気の影響を受けやすいから動きやすい。私は、はたしていま鉱工業生産指数のようなものだけで——これはもちろんスタンダードになりますけれども、日本の場合には、私この間本会議でも言いましたが、不均等発展をしていますから、ここまでくると、なるほどグロスとしての鉱工業生産指数というものはありますけれども、項目別にずいぶん中身が違うわけです。非常に中身が違う。そこで、法人税収というようなものをはじく場合には、私は、やはりある程度今後は業種別の鉱工業生産指数というものをもとにしないと、平均値だけでものを見ると、やはり非常に誤差が大きくなるのではないか、だから、ここへ出しておられるけれども、おそらく生産の伸びというのはこれがスタンダードになった、こうだろうと思うのです。これはやはり今後はちゃんと——現在でも通産省が出しておりますのは、御承知のように、品種別に、業種別になっておるわけですね。だから私は、せめてこの程度の業種別の鉱工業生産指数の推計をしないと現在では六〇%操短しておる企業もあるし、八〇%程度の操短の企業もあるし、あるいは、ものによって九〇%ぐらい動いているものもある、いろいろな操短状況がある。これが今後景気の動きに応じて操業率はいろいろ変わるわけですね。操短しておるところは、もしも景気がよくなれば非常に生産が上がるし、片一方は、生産が上がるといってもあまり上がらないものもあるわけですし、そこらの問題は、私は、今後法人税収の見積もりというものはもう少し緻密に、生産は各項目別にしておかないと誤差が大きくなるのではないか、こういうふうに思いますが、その点はどうですか。
  143. 塩崎潤

    塩崎政府委員 確かに法人税の税収が私どもの見積もりで一番むずかしい。過去におきましても、二千五百九十億円の減収の誤差のうち、千四百億円は法人税であった、こんなような状況であります。おっしゃる点も私ども十分考えて、できる限り個別的な妥当性をもって税収見込みをつくってまいりたい、かように考えます。
  144. 堀昌雄

    ○堀委員 その次は、さっき私がちょっと触れましたけれども、四十年度で更正決定増差分千億円、それの徴収見合いは八五%、それから四十一年度が八百五十億円、それの徴収見合いもやはり八五%、こういうふうに出されておるわけですね。一体これはどういうことなのか。先に国税庁のほうから、一体毎年更正決定で千億円も八百五十億円も増差が出るというのは、どこに問題があるのか、ちょっとそれから伺っておきたい。
  145. 泉美之松

    泉政府委員 御承知のように、法人税につきましては、申告納税していただきまして、そのあと調査をいたしまして、その調査の結果に基づきまして、更正、あるいは申告が出ておりません場合には決定を行なうわけでございますが、法人税の場合に決定を行なう件数は非常に少ないのでございまして、更正を行なう件数が多いわけでございます。その過去の実績によりますと、法人は、御承知のように、税務署所管と国税局所管と二つに分かれておりますが、その実績の更正決定による増差所得、これが年々かなりの額にのぼっておるわけでございまして、それを税率で税額に換算いたしますと、さっきお話の三十八年、三十九年くらいで六百八十億円とかいうくらいな金額になるわけでございます。それが四十年、四十一年と経済も伸びますから、その割合も多くなっていくだろうというふうな感じでございますが、四十年につきましては、当初予算でたしか千億円と見ておったと思います。当時わかっておりましたのは三十八年の実績、これが、先ほど申しましたように、約六百八十億円程度でございますが、それを基礎にして相当伸びるだろうという予測をしておったわけでございます。しかし、不況が意外に長引きまして、実際には千億円に達しない金額になるだろうということで補正減をいたしたようなわけでございます。
  146. 堀昌雄

    ○堀委員 私は、いまの税務署所管と調査課所管を見ると、調査課所管のほうは更正率が高いのですが、これは一体どういうところに原因があるのでしょうか。
  147. 泉美之松

    泉政府委員 この点は、私ども税務行政をやっていく際にいろいろ問題にいたしておるのでございますが、従来の法人税の調査におきましては、いわゆる期間損益という点にかなり重点を置いた調査が行なわれておりました。これは法人税のたてまえは、御承知のとおり、その事業年度事業年度に発生した所得が幾らであるかということが中心でございますので、その期間損益に中心を置いておったということは理解できるわけでありますが、あまり期間損益にこだわり過ぎるために、当期は否認するけれども、その分は翌期には認容する、少し長い目で見ると、否認、是認と繰り返しておりまして、トータルとして見ては、たいして違いはない、ただ、若干収入の時期が、更正するために一事業年度だけ前になる、こういった姿を繰り返しておるような状況がかなり見受けられるのであります。この点は、税務の執行上問題にすべき点でありまして、もちろん、期間損益の中にも、その際更正しないと、あとでもう更正できなくなってしまう、たとえば、繰り越し欠損の打ち切りの問題とかいうような関係で、どうしてもその際更正しないといけないというものもございましょうけれども、しかし、そういう必要のないものについては、あまり、期間損益で更正否認、またその翌期是認というようなことを繰り返すのは、適当ではない。むしろ法人税の調査にあたっては、不正所得が隠してある場合にそれを発見することに重点を置くべきであって、期間損益の点にあまりこだわることのないようにというふうな指導方針を打ち立てていきたいと考えて、目下そういう方向に進めていきたい。そうすれば、いまの更正による増差所得というものも姿が変わってまいる、このように考えております。
  148. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっとここで念のために、いまの税務署所管における更正割合と調査課所管による更正割合をちょっとお答えいただきたいのです。
  149. 泉美之松

    泉政府委員 お答えいたします。  税務署所管の分で申し上げますと、三十九事務年度において、更正決定の割合は二九・七%になっております。それから国税局所管のものについて見ますと、実調したものについての更正割合しか出てはおらないのでありますが、それによりますと、八八%ぐらいになっております。
  150. 堀昌雄

    ○堀委員 いまお話のように、片一方は実調でなしにでしょうが、実調で二〇%くらいしかないわけですから、実調の中でというわけにはいかないと思うのです、税務署所管のほうでは。片方は、実調が、さっき幾らと言いましたか、五〇%くらいと言ったですか、それの八八%ということは、全体で延ばしてみても四〇何%、倍以上あるということにはなるわけですから、調査課所管分の更正が非常に多いということは、これは私は四、五年前に一ぺん当委員会でやったことがあるのです。たしか、まだ原さんが長官のころですから、だいぶ前の話ですけれども、しかし、それ以来この更正の状態はほとんど改善されていない。こういうことでは、これは、特に局所管のものというのは比較的大きな法人だから、それが毎年毎年そういうことが行なわれる。いまあなたのおっしゃる期間損益の問題等もあろうと思いますが、それにしても私は問題があると思うのです。これはひとつ国税庁長官、何年かめどを限って、そう毎年毎年更正になるなら、青色申告取り消しとか、いろいろな租税特別措置は適用させぬとか、何か少しデメリットをきちんとしないことには姿勢が正しくならないと思うのです。これはデメリットなしに、ただはいはい言っておるだけでは済まぬですよ。
  151. 泉美之松

    泉政府委員 先ほど申し上げましたように、大法人調査の場合に、期間損益と申しましても、わりあい金額が大きくなりますので、調査官の調査は、本来は不正発見を目的にいたして調査に参るわけでございますけれども、どうしても不正発見ができなくて、いまの期間損益の更正だけに終わるというのがかなり出てきておるわけでございます。しかし、これは先ほども申し上げましたように、期間損益にこだわって、不正発見を十分できないようなことでありましては適当でございませんので、法人調査につきましては、あくまでも不正発見に重点を置いて、そういった期間損益の更正はできるだけしないような方向で進めていきたい、そうすれば、更正割合なんかもいまの割合がぐっと落ちてくる、それによって調査重点を不正発見に用いることができるだろう、このように考えておるわけでございます。ただ、そのような方向に持っていくについては、いま申し上げました調査官のほうの態度も直していく必要がありますし、同時に、申告納税をなさる法人のほうで、一度そういう更正を受けた期間損益の点については、二度と同じようなことは繰り返さないというふうにしていただく必要があると思うわけでございます。  その際にデメリットを与えて、たとえば、青色申告を取り消したらというようなお話でございますけれども、青色申告の取り消しにつきましては、御承知のように、要件がありまして、帳簿の記載が、たとえば二重帳簿を作成しておるとかいうようなことで、不正事実がないと取り消すことはできませんので、更正を受けたからすぐに青色申告を取り消すというわけにはちょっとまいりかねると思いますが、しかし、そういった税務官庁側の態度と納税者の態度がそういう方向に進んでいくことによって、いまの更正割合を少なくしていくという方向に進んでいきたい、かように考えておるのであります。
  152. 堀昌雄

    ○堀委員 まあ、しかし、その点は、毎年毎年同じことをやっても改まらぬものを何にも処置ができないということもいかがかと思うので、青色申告取り消しは別として、何らかやはり注意は喚起されて、毎年やったのではまずいということになるようにしないことには、裏返して言えば、そういうことをやっておいて、ほかの問題に目が届かぬようにしようという逆の問題もあると思いますので、その点は十分検討していただきたいと思います。  私が予定をした時間がまいりますが、さっき大臣との議論の中で、所得税法の中でちょっと抜けておる点があるので触れておきたいのですが、今度税率の改正を行なって、上のほうを減らしたのはいいですが、これまでの最低税率の八%が八・五%に上がって、この結果五十万円以下の所得の者と五十万円超百万円以下の所得の者との減税がきわめて不公平な状態になっておるという感じがいたします。そこで、五十万円以下の階層の今回における減税額とその減税割合、それから五十万円から百万円までの間の減税額とその減税割合について、ちょっとお答えをいただきたいと思います。
  153. 塩崎潤

    塩崎政府委員 今回の税率緩和、さらにまた、最低税率の〇・五%が五十万円のところを一つの低額所得者のめどにいたしまして不利に働いておるのではないか、こういうような御質問だったと思います。  そこで、今回の税率緩和の趣旨、さらにまた、〇・五%だけの税率引き上げ趣旨につきましては、堀委員御承知のとおりでございます。これまで控除に重点を置きました減税方向でございましたが、懸案でございます税率の改正を三十二年以来久しぶりで行なったのでございますし、三十二年の税率がこれまで維持されておるのでございますが、所得階級構成は当時とがらっと変わった姿になっております。そこで、去年も控除の引き上げを行ない、その前もまた行なってきたのでありますが、それをあわせてひとつ見ていただかないと、本年度だけの減税割合では若干のミスリードを起こすのではないかと思いますが、御存じのとおりでございますので、申し上げて参考にさしていただきたいと思います。  さらにまた、もう一点つけ加えさしていただきますのは、私どもが〇・五%の最低税率を引き上げたいというのは、堀委員御指摘のように、税負担というものは所得税だけで見るべきではない、ことに所得に対する課税ならば、住民税もあわせて見るべきであるという年来の御主張を私どもは取り入れまして、今回の住民税の減税が、これもまた久しぶりで行なわれるわけでありますが、そういった点を一つ加味して総合的に税率緩和、あるいは〇・五%の引き上げをひとつ見てまいりたい、こんなような趣旨で考えておりますので、その点もあわせて申し上げさせていただきたいと思います。  そこで、五十万円以下の所得税減税割合は、割合だけで恐縮でございますが、一八・四%であり、百万円以下は二五・六%でございます。二百万円以下は今度は一九%に下がり、三百万円になると一五%になります。一方、住民税の所得割りの減税を加味いたしますと、五十万円以下は二八・六%であり、百万円以下は一六・六%、二百万円以下は八・七%というふうに、住民税のほうはなだらかになっております。そこで、所得税と住民税とを合計いたしまして、やはり同様な階級区分で見てまいりますと、五十万円以下は二二・七%、百万円以下は二二・五%、二百万円以下は一六・四%、総合いたしますと、五十万円以下と百万円以下では近接いたしておりますけれども、上のほうに至って減税割合がだんだん減ってまいります。千万円超になりますと、減税割合は一・七%、こんなふうになるわけでございますが、この所得階級区分につきましては、けさほど来申し上げておりますように、さらにまた、堀委員が先刻来の御指摘にありますように、給与所得者納税者が八割五分を占めております所得税であり、その給与所得者のうちの五割二分は独身者でございます。ところが、その独身者についての課税最低限は、御指摘のような構成で、世帯持ちに比べますれば、配偶者控除関係で相対的に不利な面もございますので、この所得階級別表は、そういった所得者が残っておりますためにこういった結果が出るという点もあることをひとつ御記憶願いたいという点が第一点でございます。  第二点は、何と申しましても、先ほど来申し上げておりますように、控除を何年間続けてまいりまして、所得税減税のうち八割五分までは控除の減税で三十二年以降も来ております関係上、今年度だけで見るのではなくて、これは三十年の所得税の改正の際に大蔵委員会でも税率だけ引き下げをいたしました際に非常に問題になったのでございますが、やはり沿革的、歴史的な改正も考慮に入れていただきまして御判断願いたい、かように存ずるのでございます。
  154. 堀昌雄

    ○堀委員 ただ、いまの結果としては、地方税を含めますと、かろうじて〇・二%だけ五十万円以下のほうが多いわけですが、その上の階層との差なんかを見ますと、二百万円、三百万円というのは一六・四%、一三・〇%となっておりますから、やはり五十万円以下のところは、これでいくと、地方税と両方合わせて二五%くらいの減税になってしかるべきものではないのか。どうもそれのもとが八%を〇・五%上げたものが非常に働いておるのではないか、こういうふうな感じがするのですが、この〇・五%分の作用というものは、どのくらいになりますか、これがもしかりに最低税率をこれまでのように八%にして、それから次が一〇%になるということになれば、この問題はだいぶ違ったのではないかと思うのですが、その点の〇・五%の効用をちょっと伺っておきたい。
  155. 塩崎潤

    塩崎政府委員 十万円以下の課税所得につきまして〇・五%の引き上げは、これは御存じのように、五百円の引き上げでございます。これが、堀委員がいつも御指摘のように、上まで影響いたしまして、この減収額は約百億円でございます。しかし、減税割りに影響いたしますのは、御存じのように、下のほうは納める税額が少ないものでございますから、五百円でも減税割合としては相当な影響がございます。給与所得者基礎控除が一万円、これは給与控除の関係で一万円といえばもう少し高くなるのでございますが、かりに一万円と考え、定額部分を二万円と考えますと、これが二万円上がりますと、二万円の八%の千六百円軽減されることになります。そこで、五百円がそこで差し引かれるということになろうかと思いますが、このあたりの影響が出てまいりまして、おっしゃるように一八・四%は、この税率の〇・五%の引き上げが影響していることは言うまでもないところでございます。
  156. 堀昌雄

    ○堀委員 ですから、私は、何といってもやはり下のほうをできるだけ下げるということは、もう一つ原則として考えてもらいたい。そうすると、いろいろ議論はあろうけれども、次はともかく来年減税するときはこの八・五%のところだけは、これはもう一ぺん八%に戻す。これは一ぺん出てきて、こういうふうに非常にはっきりわかったわけですから、いろいろ調べてみた結果としてわかってきたわけですから、ここらのところに、実はさっきから私の議論しておる独身者、単身世帯というのがどさっと層を厚く入っているわけだから、この中にもし課税をされておるとすれば、そういう式のものが相当に入っているということを考えてみますと、やはりこの点についてはそれを含め、その他の低所得者の一番その幅の広いところがこれに該当することでは、八%の問題というのはもう一ぺんひとつ再検討してもらいたいというふうに思います。  最後に、相続税について、ちょっと触れておきます。相続税の問題で、私どもは昨年の配当分離課税のときにも非常に議論をいたしました。相続の問題の中で家屋及び宅地というようなものは、比較的これは秘匿がむずかしいものですから正親に相続をされますけれども、現金、預金、あるいは最近は国債が非常によく売れる、それを調べてみると、意外に地方に出て売れておる、地方で土地や何かいろいろなものを売ったりいろいろして金が入ってきた、それを国債にかえておいて、これを贈与をすれば、これは国債というものは無記名でありますから、要するに、遺産相続の場合には比較的うまくいくのじゃないか、こういうような発想に基づいて国債が売れておるそうでありますけれども、これらを含めて、私は、相続税というものの中には、はっきりしておるものとはっきりしないものとがあるのだということが一つ私は前提になると思うのです。そうすると、私は、今度の場合に、相続税というものはそれではどれとどれが対象かというわけにはいかないものでありますけれども、発想の趣旨として自分たちが住んでおる家を評価をした結果、相続税に取られて、金がないから家を明け渡すということでは困ると思うのでありますが、そういうものと隠れたる相続部分のあるものとが、実は私は今後の問題としてはあるのではないかと思うのです。そうなってくると、今回の控除も、結果としては、やはり上積み税率でかなりそういう高額所得者がやはり相続税としての恩典を——下のほうの一千万円まで無税になる人たちも恩典がありますけれども、これはやはり一種の基礎控除方式になっているから、上積み税率がまた上のほうへきいていくということになって、案外予想せざる形の減税効果が出てくるさっき私の触れた、要するに高額所得者に対する減税ということになるのではないか、こういう感じがするわけです。  ひとつ、私がここでお願いをしておきたいのは、相続税の問題を調べるときに、この相続金額はわかるけれども、一体相続をする人たち、その何といいますか、おやじさんのほうと、それから今度は受け取るほうと、こう二つあるわけですけれども、これのその年度における所得階層を、今後国税庁のほうで相続税の際にあわせて資料でとってもらいたい。一体、相続税というのは、一千万円の相続が起こるけれども、その受け取る人たち所得階層というのは、三人受け取る場合もあるし、いろいろあるでしょう。そこで、納税者である者の場合には、それはその年度における所得は、一体幾らであったのかということをあわせて出してもらい、遺産を残したほう、要するに、なくなったほうの所得はそのとき幾らであり——要するに、相続というものは、いまのこの形だけでは所得との間のつながりが、われわれのほうではちっともわからぬわけです。だから、やはり減税をする場合には、そういう問題を含めて減税の問題を考えておかないと、高額の所得の者だけにかなり有効に働くというふうに推定せざるを得ないことになると思う。その点について、ひとつ国税庁のほうで、相続税関係は今後そういう資料をそろえるという答弁をしてもらいたい、件数は多くないのだから。
  157. 泉美之松

    泉政府委員 お話のように、最近の課税実績によりますと、被相続人の数は年々約一万、これが今回の改正の結果、その六割程度に減少するだろうと見込まれておるわけでございますが、そういった被相続人及び相続人のそれぞれの所得と財産の状況、これは現在のところそういう資料はございませんが、その資料をとる場合にも、相続がいつ起きたか、被相続人がいつ死亡したかによることになりますので、相続の年の所得というのはなかなかむずかしい問題でありまして、おそらく相続した年の前年の所得でないとなかなか把握できないだろうと思います。そういった点につきましては、相続の前年とその年とでいろいろ変動のあることも予想されますけれども、そういったことは、ある程度誤差があるということを前提の上でのことにしないといかぬかと思いますが、いずれにしても、そういう資料はいままでとったことはございませんので、どういうふうにしたら集まるか、いろいろ問題もあろうかと思いますが、将来研究してみたいと考えます。
  158. 塩崎潤

    塩崎政府委員 確かに、堀委員のおっしゃるように、相続税の課税というものはむずかしい問題でございます。しかし、個人所得税と相続税というものがやはり一番大事な税金だと私は思うのでございます。そこで、堀委員は、ひとつ所得を参考にして相続税が適正であるかどうかを判断したらどうかということを言っておられる。私も全く同感でございまして、昭和三十三年の相続税の改正の際にも、税制調査会の委員の方々で、はたしてこういう改正をしても実際はどうであろうかというようなお話がございました。そこで、堀委員と同じような発想かもわかりませんけれども、やはり何といっても、毎年毎年所得の資料が、申告書を通じあるいは会社の配当資料を通じて出ておる、これを利用するのが一番いい方法ではないかという点が第一点であります。  第二点は、これはどうもしかし、そうかといって、消費に回る部分が所得のうちでは相当ございますので、はたして所得のうちから財産化されたものがそれでは簡単につかめないではないかというお話がございました。そこで、千万円以上の所得者については、財産、負債の明細書——これはシャウプ勧告の際に設けられたのでございますが、廃止したことがございます。しかし、これをひとつ復活したらどうだろうかということで、復活したのであります。シャウプ勧告によりますと、所得税、富裕税というものは、相関連せしめてお互いに完全なものにしていこう、こんなようなことがございました。おっしゃる点、まことにごもっともでございますので、私ども、制度といたしましても研究してまいりたい、かように思います。
  159. 堀昌雄

    ○堀委員 あわせて、もう一つお願いしておきたいのは、これは先ほど私は大臣と議論をいたしまして、非常に問題になっておる点でありますけれども、利子の分離課税、配当分離課税の減収の計算はできておりますが、さっきお話しになった減収分が所得階層別にはどういうふうに分配されておるのかいう点も、これもたぶん推計になると思いますけれども、必要なサンプル調査をやって、あわせて来年の税制ではこの問題はきわめて重大な税制上の問題になるのでありますから、本日、強く主税局及び国税庁に、この際議論をするにたえられる資料の準備をひとつお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  160. 武藤山治

    ○武藤委員 資料要求をしておきます。  例年いただいておるのですが、資本金の一番大きいランクから、たとえば五十億円以上、五十億円から十億円、十億円から一億円まで、それの資本金別の所得金額、それから、その中の赤字決算会社、公表は黒、税務申告は赤、こういうのがたくさんあるが、これをひとつ表にして提出を願いたい。
  161. 塩崎潤

    塩崎政府委員 資料は御提出申し上げたいと思います。ただ、公開決算等がうまく集まるかどうか、私もこれまで資料で公開決算を出した記憶がございません。最近出したことがありますれば参考にしたいと思いますが、税務決算にあらわれましたところの資本金額、所得金額、決算、これは提出できると思います。
  162. 武藤山治

    ○武藤委員 いままでの主税局長は名主税局長だから、全部わかっておって出したのであるから、あなたも出せるはずだと思います。
  163. 塩崎潤

    塩崎政府委員 いま前局長に伺いましたところ、資本金五十億円の法人だけにつきましては公表決算を調べた、こういうお話でございます。全法人につきまして公開決算をつかまえるのはたいへんでございます。おっしゃる過去の先例にならって提出をしたいと思います。
  164. 三池信

    ○三池委員長 永末英一君。
  165. 永末英一

    ○永末委員 私は、協同組合法が施行せられてもう十七年になるのでありますが、この間、企業組合に対する課税の取り扱いについては、いろいろな変遷等がございましたが、しかし、この機会に、一体どういうような基本的な観念でこれに臨んでおるかということを明らかにしつつ、企業組合に対する課税の内容について見解を明らかにいたしたいと存じます。  第一は、私どもは、企業組合は、協同組合法によって設置されたものであるから、その本質は協同組合であると考えておりますが、大蔵省はどうお考えか、お答えを願いたい。
  166. 塩崎潤

    塩崎政府委員 永末委員のおっしゃるように、確かに、企業組合は協同組合法に規定された企業組合でございます。その点は異存はございません。しかし、私どもの理解し、また私ども税制上とっております協同組合は、企業組合とは違ったものだと私は理解しております。  それで、協同組合の本質は何かという点は、なかなかむずかしい学問上のいろいろな見解があるところでございます。私の理解では、協同組合のメンバーである組合員は、これは事業主としての地位は維持しておる、ただ、その事業主の事業を円滑に、またその所得水準を上げるために事業の一部を協同化して、たとえば仕入れあるいは販売について協同化して、大企業あるいは過当競争に対処していく、こんなようなことが、私は協同組合の本質だと思うのでございます。協同組合はそもそも利益をあげるのが目的ではない。したがいまして、そのあげた利益は、本質的には事業利用分量分配金といたしまして組合員に還元されるものだ、かように了解しております。  したがいまして、協同組合の利益は、事業利用分量分配金からなっておりますので、それに対しますところの法人税は特別な税率を設けておりますし、事業利用分量分配金は、これは独立の地位を維持しておりますところの組合員に対しまして事業の利用量に応じまして返すものだ、ともかくも、おまえのところは仕入れたものは安く仕入れたために協同組に合利益を生じたのだ、さらにまた、販売、消費物資を売るものにつきましても、組合員に高く売り過ぎたから自分のところに利益が生じたのだというわけで、組合の利用量に応じまして配分をする、したがいまして、組合員に返りましたところの事業利用分量分配金は事業所得として課税する、そしてまた、それが事業主として地位を維持する以上、事業所得として課税するのが当然だ、こういう考え方が協同組合の本質にある、かように思っております。  一方、企業組合はそういったものではなくて、組合員が、御存じのように、もはや事業主たる地位を捨てまして、組合から得る所得は、大部分は給与の形をとっている。したがいまして、企業組合は協同組合と違った、過去におきまして組合員が行なっております事業の本質的な部分を企業組合が行なう、そして、そこで利益をあげましたものは、たとえ従事分量分配金として配分されましても、それはやはり企業として企業に生じた利益が組合員に還元される、それは一つの企業利益であり、普通の法人税を課税されるべきものである。そして、それから組合員に分配されたものは何かという点は問題でございます。いま給与所得者に転化した企業組合員でございまするから、賞与という考え方もできましょうが、現在の税制ではそこを中間的なものと見まして配当所得、したがいまして、二重課税排除の見地から配当控除の認められるものに従事分量分配金という形のものを認めておるのだ、これが企業組合の税制上の仕組みではないかと思うのでございます。もちろん、現実には種々の形の、さらにまた、いま私が申し上げました、私の考えかもしれませんけれども、協同組合の本質にかなったものだけでもなければ、また、企業組合の法律の本旨にかなったものだけが存在するという意味ではございませんが、大ざっぱに申しまして、協同組合と企業組合はそういった違いがあるのだろう、ことに税制上はそういった違いを認めるべきだということで、たてまえを違えておるのでございます。
  167. 永末英一

    ○永末委員 いま協同組合の本質を述べられて、それで、その企業組合は、第一に、それぞれの事業主が自分の固有の事業、主たる立場を全部捨ててしまって、企業組合という一法人の中に入ってしまった、こういう御見解をとられた。それならば、たとえば株式会社のいろいろな、たとえばサービス業なり販売業なりやっている株式会社の従業員と同じだ、こういう御見解ですか。
  168. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私は、従業員と同じという意味で申したのでございません。個人営業者が個人企業形態で事業を営んでおりまして、それが株式会社を設立して株主に転化したのとそう変わった——もちろん営利目的の株式会社と、中小企業等協同組合法に規定いたしますところの企業組合では種々の法制的な血におきましての違いはございますが、企業組合の組合員が過去の事業主という立場を捨てました点におきましては、個人形態の営業者が株式会社の出資者としての地位を取得したのと本税制上は変わらないというたてまえをとっておる、こういうことを申したつもりでございます。
  169. 永末英一

    ○永末委員 あなたは妙なことを言われる。株式会社の株主は、自分の出資した資本金、株式出資金だけの責任を負うのであって、したがって、株式会社の運営等については、いわば無関係でもいいわけだ。ところが、企業組合は、協同組合法の九条の十一によっていろいろな制限が加えられているでしょう。本質的に企業組合と株式会社は違い、しかもまた、企業組合の組合員と株式会社の出資者である株主とは本質的に違うからこそ、日本の法制はそういうたてまえをとっておるとわれわれは解釈しておる。ところが、あなたは何か株主と一緒だ、法制上そうみなされると言うのであるが、そんなことは現在の法制上ないのじゃないですか。
  170. 塩崎潤

    塩崎政府委員 株主ということばは、私もいま気がつきまして適当ではない感じがいたしたのでございます。申し上げたいことは、個人企業形態の営業者が株式会社を設立いたしまして、合名会社でも合資会社でも有限会社でもいいのでございますが、法人形態をとりまして、そこの業務の執行者と申しますか、役員ということになりますか、代表者でも社長でもけっこうでございますが、経営者となりまして事業を営んでいる場合があるわけでございますが、そのほうは、もはや自分が事業を営むのでなくて、株式会社が事業を営む、そこに得ました利益は株式会社のものであり、そこから得る所得は多分に給与が多いものでございます。さらにまた、それから得られるものは配当所得であり賞与であろうと思うのでございますが、それと似たような立場にあるのではないか、こういうことを申し上げたのでございます。もちろん、株式会社は企業組合に比べまして活動がもう少し自由かもしれませんし、また、資本調達の面においても有利さがあるかもわかりません。そういった意味で、企業組合を株式会社と同じように扱うこと自体おかしいではないかと御質問があるかもわかりませんが、多分に現在の所得の発生形態、所得の分配形態、さらにまた、それ以前に経済の実態面におきまして中小の企業者が事業面において競争いたしておりますのは株式会社であり、個人営業形態であり、企業組合だろう、その間のバランスを得て税制上の措置をするのは、いまの制度が最も適合したものではないかというふうに現在のところ考えております。
  171. 永末英一

    ○永末委員 株式会社は一経済単位として仕事をやるわけです。そこであがってきたものの利益の配分については、いわゆる株式出資金の程度に応じて配当金として渡される。ところが、企業組合は——法制上、協同組合にはいわゆる利用分量、利用した度合に応じて分配することが認められ、企業組合にはその企業組合の事業に寄与した分量、すなわち従事分量の剰余金の分配が認められておる。これは株式会社と違うでしょう。株式会社の出資金に対するその度合いだけで分配しているのでないでしょう。勤労に対する対価として与えられているでしょう。違いませんか。
  172. 塩崎潤

    塩崎政府委員 そこで、まず、法人税とは何ぞやという問題に関するかもわかりません。しかし、いろいろな法人税の考え方はございますけれども、ともかくも法人企業というものが存在し、これは法律上の擬制かもしれませんが、少なくとも経済活動を円滑にする意味におきまして商法あるいは民法によりまして認められておる法人企業があり、そこで人格が認められております。そういった法人企業に利益が生じた、その利益は、会社の経営者、執行者、さらにまた企業組合の組合員につきまして給与を支払った後のものが利益としてあらわれるわけでございます。この利益に対して公平に課税することが、私は、法人税として非常に大事なことではないかと思うのでございます。そういうふうに法人税を観念いたしますと、私は、現在の大法人と中小法人との間の税差も競争力の格差という意味において理解できますし、競争力が同じものならば、同じ収益に対しましては同じような税負担が望ましい、かように考えます。そうなりますと、現在の企業組合と、これも商法上いろいろな問題があるといわれております中小企業者が、株式会社形態あるいは合名会社形態をとっております法人につきまして、同じように給与を支払った残りと見られる法人の利益に対しまして、これは税率は同じということが税制上当然考えられるべきではないか、かように思います。  さらに、その後に分配せられるものをどういうふうに考えるか。これはまた別の問題でございます。株式会社は企業組合と違いまして、自分の働きに応じまして賞与を取る際には、これは益金処分の賞与しか認められません。そこが配当と違って二重課税が行なわれる点で、この面は企業組合よりも少し厳格でございますし、負担の多い面でございます。企業組合は、これは従事分量分配金、永末委員御指摘のとおりでございますが、しかし、現実には企業従事分量分配金をどういうふうに分配するか、なかなかむずかしいので、私どもの調べでは、従事分量分配金が分配せられた事例は少ないのでございます。しかし、分配された形態を見ますと、ともかくも給与に応じて支払うということがいまの基準のようでございます。会社の利益を、給与に応じて支払うものを損金に算入するということがはたしてできるかどうか、私は、やはり損金などというものは、初めからの契約的な、法律的な費用でございまして、利益をあげてから給与に応じて支払うということは、これは損金性の乏しいものだと思うのでございますけれども、ともかくも、企業組合は法人と個人との一体性の強いものでございますから、株式会社以上にそこは有利に見て、配当所得として配当控除を適用して、従事分量分配金につきましては二重課税を排除していく、こういったたてまえをとっております。したがって、株式会社とはそこの面では違っておりますが、永末先生のおっしゃるのは、もう少し株式会社と違えてもいい面があるのではなかろうかという御指摘だと思いますが、私は、法人税の本質的なたてまえから見まして、はたしてこれを同じに扱うかどうかは疑問だ、かように考えております。
  173. 永末英一

    ○永末委員 あなたは、株式会社というものの法制上の考え方と、それから企業組合というものが現行日本の協同組合法によってつくられているそういう構成のしかたというものとを初めはお認めになっておりながら、そして課税の面では所得の発生と分配ということだけに焦点を置いて、それで処置しようとされておる。そこに私は間違いがあると思う。つまり、株式会社の場合には、一定の金額を出資するだけであって、そこには勤労がないわけだ。したがって、企業組合が株式会社の形式をとろうとするならば、それぞれの事業主が自分の事業所というものを全額出資をして、その出資分だけで企業組合の出資額とする、そういう法制ならこれはきわめて株式会社に似ておる。そういう形をとっていないでしょう。とっていないというのは、株式会社と違う一つ法人格を持ち得る事業体だということを日本の法律が認めておるのでしょう。私はその点において本質が違うと思うが、もう一ぺんお答え願いたい。
  174. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私も、永末委員の御指摘のように、株式会社と企業組合が全く同じものであるとも思っておりませんし、法制上は相当違うものでございます。しかし、現実の中小企業者の事業を営む場合のとり得る法的な形態といたしましては二つありましても、それは税制上区別するだけの差異があるかどうか。それは、現在のところ、従事分量分配金を配当と見ることで足りるのではなかろうか。事業税の面を考えてまいりますと、ことに給与は、個人事業所ならばかかる事業税が、企業組合になりますと、組合員に支払われる給与は損金として経理され、事業税は組合に発生する利益だけでございます。これを考えますと、私はもう多数の中小企業者が——七十一万の法人の大部分は中小企業者でございます。それと競争関係にある企業組合、法制上のたてまえは若干の差、若干と申しますか、先生に言わせれば大きな差だというのでございましょうが、税制上でその差を認めるまでにはいかないのではなかろうか、そして、それは協同組合とけ違ったものではなかろうか、かように思うのでございます。
  175. 永末英一

    ○永末委員 私が言っておるのは、実定法上違うものとして日本の法律がきめておるのなら、大蔵省はそのまま受け取られるのが至当であって、その中で、単に所得の発生と分配というようなところにだけ焦点を置いて、そして株式会社に似ておるから、その課税の扱いは株式会社と同じようにする。それでは、最初の出発点が違っているにかかわらず、表面に出たところだけで処置をしようというのであるならば、たとえば企業組合側は、なぜわれわれが協同組合法で設立を認められ、なぜ株式会社等は商法で設立を認められておるか、ここのところに対して非常に疑惑を持ちますね。あなたの御意見なら、もう協同組合法からはずしてしまって、商法できめたらいい、そういうお考えになりはしませんか。
  176. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私は、税制上の理由から企業組合を協同組合法からはずせというつもりは毛頭ございません。私は、法的形態が企業組合と株式会社が同じであるということも、また申し上げているつもりはないのでございます。私の申し上げたいのは、現実に経済社会におきまして競争している中小企業者が、どういった法的形態をとった場合にどのような税制をとるのがいいのか、こういった角度から申し上げているつもりでございまして、法的形態の論議は、第二次の問題ではなかろうか。現実には、株式会社の形態をとっております大部分の中小企業は、御存じのようにほとんど出資も少なく、たとえば自分の所有する建物や土地は出資はしないで、会社から家賃を受け取るかっこうで、株式会社の形態をとっておるようでございます。商法上そういった株式会社は所期してないというような批判すらある状況でございますが、しかし、やはり事業を営む上においては、個人形態よりも株式形態のほうが便利であり、また、人の信用もあり、企業と家計を分離する意味において利点がある、こういった利点を利用されて、個人営業主が会社形態に転化しておるのだと思うのでございます。企業組合もまさしくそういった面が多いのではなかろうか。もちろん別なよさもございますけれども、現実の競争面を着目しますと、法的形態のよさを利用し、さらにまた、そのよさといいますのは、税制上から見ますと、組合から払われる所得が多分に給与所得として取り得る、そのことは、同時に、事業主たる地位を企業組合に譲ったものだと私は思うのでございますけれども、そういったことは、まさしく株式会社を組織する中小企業者の所得を得る形態と同じであり、所得の分配形態と同じではなかろうかという感じがするのでございます。   〔委員長退席吉田(重)委員長代理着席〕 協同組合は、御存じのように、たびたび申し上げておりますように、組合員自体、また事業主たる地位を利用し、さらにまた事業の一部が協同化されるだけでございます。協同組合の利益は大部分事業利用分量分配の形で還元されるべきであり、自分自体が利益をあげることが目的ではないという理想のもとに立っておるのでございまして、このようなたてまえから見ますと、私は、協同組合と企業組合は同じようなたてまえで取り扱うということはむずかしいのではないか。ただ、現在は、先ほど来申し上げておりますように、従事分量分配金につきまして、会社形態と違う配当所得と見るということでその面を処置している、これが現在のところ最も適当な方法ではなかろうか、かように考えるのでございます。
  177. 永末英一

    ○永末委員 協同組合の場合、いまその事業の一部を協同化してものをやっている、しかし、そのもの自体については、協同組合としては損をするつもりはございませんからね。営利の目的と言えば語弊があるかもしれぬけれども、それはやはり採算を合わせなくちゃならない。こういうことで、剰余金が出た場合には、利用分量分配金を配るわけですね。ところが企業組合の場合には、その協同化の度合いが非常に進んでおるわけである。いわば協同組合法による協同組合と企業組合とは協同化の分量の差である。しかし、これはあくまでも協同組合だということでこの組合法で設立を認めたものだと私は思うわけです。  そこで、論を進めて、利用分量分配金と従事分量分配金とにあなた方は税制上の課税上の差を設けておられますが、たとえば、あなたが言われたように、従事分量と言われるけれども、内容はよくわからない。給与でやっているではないか。しかし、その給与の出てくるのは、それぞれの事業所がその企業組合に対する収入の寄与に応じて給与が設けられておるのが普通の形ですね。そうしますと、事の根本は、明らかにその事業に従事している力の度合い、これがもとになってきめられておる。しかし、給与そのものは名前は給与でございますけれども、これは税制上いかなる形態の法人であろうとも損金扱いになっている。ところが、あなたのほうは利益金の配当だ、こう言うものだから、それではその損金扱いに従事分量分配金をするわけにはまいらない、こういう御見解をいまとっておられますが、しかし、いま申しましたように、これが発生いたしました基本的な考え方は、いま申しましたようなことで発達してきたものもあるし、さらにまた、これが分配されるというのを利益金処分なんていうようなことは協同組合は考えていない。法律はどう書いてありますか、剰余金の処分をどうするかということで考えておるわけである。それならば、法律上きめた本質が違うということを協同組合法が認めておるのに、あなたがそれをいいかげんにひっくり返して、株式会社における利益金処分、配当金だ、こういう解釈をとられるのは、協同組合法にこれは違反しておりませんか。
  178. 塩崎潤

    塩崎政府委員 永末委員は京都におられますので、私も大阪の国税局長、さらにまた直税部長で企業組合問題でずいぶんお教えを願ったのでございます。私は、企業組合の利益と協同組合の利益とは、やはり本質的に違ったものがあるであろう、かように考えるのであります。さらに、株式会社の利益と協同組合の利益とは違ったものであるであろう、かように考えるのであります。給与を取る方が、ことにまたその給与を取る方と申しましても、企業組合に雇われておる従業員とは違った組合員の方の給与でございますが、これはその地位を捨てておるならば、私は、当然給与であり、それは企業組合の利益の計算上損金にされて、普通の株式会社の役員の場合と同じでいいと思うのでございます。しかし私は、その給与、いま永末先生、力のある場合とかおっしゃられましたが、やはり給与と申しますのは、確かにそこであげる所得と密接な関連はございます。しかし、やはり給与というものは、雇用関係に基づくところの所得の分配といたしまして、社会的な平均的な水準があり、それはあらかじめ予見されたものとして、いかなる場合においても、損失があっても支払わなければならない。そんなような意味におきまして、契約的な費用でございます。これはまあ損金であろうと思うのでございます。これは私は、企業組合であろうと株式会社であろうと同じでございますが、協同組合につきましては、組合員の給与という問題はないのでございます。漁業生産組合あるいは森林組合につきまして給与を支払うものは、これは企業組合と同様に、協同組合と同じふうな扱いをしていないことからおわかりのとおりでございますが、それは協同組合と企業組合と違っておるわけでございます。それからまた、従事分量分配と申しましても、確かにむずかしい分配形態をとらざるを得ない。現実には、したがいまして、京都の企業組合のような方の中には分配されておるところもございますが、給与に応じて分配する。これが何を意味するか、私はなかなかむずかしいと思うのでございます。一方、協同組合の利用分量分配、これは利用量がはっきりいたしております。さらにまた、協同組合で得た利益というものは、組合員の商品が安く買われて、高く売られたために利益を生じたものではないか、さらにまた、組合員が協同組合から買ったものが高いために利益を生じたのではないか。したがいまして、員外利用が制限され、組合員の利用の程度が厳密に帳簿につけられておりますれば、これは分配はまた容易であり、さらにまた、分配の理由は、先ほど申し上げましたように、たとえ剰余金の処分という形をとりましてもよくわかるのでございます。さらにまた、組合員は事業主たる地位を利用しております。したがいまして、農民が肥料を高く買ったために農業協同組合に利益を生じたならば、農民にこれを返す、農民は農業所得の上にそれを上積みで追加されることも、これは十分私は協同組合の理論といたしまして理解できると思うのでございます。従事分量分配は、私はそういった点が少し理解のむずかしいシステムだと思うのでございますが、それよりもむしろ、何よりも現在の企業組合が競争しております株式会社その他の会社形態の企業、これとの類似性、競争性、これから見ましていまのような扱いをとらざるを得ない、こういうことを申し上げたいのでございます。
  179. 永末英一

    ○永末委員 私はまだ二時間くらい質問したいのでありますけれども、都合がございまして、これで春日委員にバトンを譲ります。ただ申し上げたいのは、協同組合と企業組合というのは、一つ法律の同一の目的のもとにつくられた二つの姿なんですね。したがって、この両者は、その内容において分量上の差はあれ、本質的な性質は差はないというのが、日本の国会で定めた考え方だと思う。ところが、いまの大蔵省の課税上の扱いでは、むしろ協同組合と企業組合との間の相似性よりは、企業組合と商法における会社との相似性を探求するに急であって、この協同組合法との間の相似性に眼をつぶっておる。これでは、この協同組合法によって設置された企業組合に対する課税の公平な取り扱いとはわれわれは考えられないということを申し上げて、ひとつ春日委員にバトンを譲ります。
  180. 吉田重延

    吉田(重)委員長代理 春日一幸君。
  181. 春日一幸

    ○春日委員 私はほかの質問をするつもりであったけれども塩崎主税局長の御答弁は、従来主税局がかちんかちんに頭の中で凝結せしめておるそのまま、これをあたかも謄写版のプリントを棒読みにするように同じようなことをしゃべりまくっておる。依然として一歩の前進もないし、せっかく永末君が研究をされて、問題の真髄に触れて質問を展開されておるのに、まるで自分の思ったことをひとりしゃべくりしておるみたいな形で、何らの反応を示されないということは、きわめて遺憾でございます。幸い十数年前主税局長でありましたわれらの親愛なる村山達雄君もここへ同席をされております。私は財政部長の坊君や藤井政務次官、みんなが心を開いてわれわれの固定の既存の観念はこれであった、けれども、その後において、わが国の政治は民主政治、民主政治は世論政治であるが、なかんずく中小企業団体としてのわが国内における代表的権威は中小企業団体中央会である、その中央会があらゆる角度から公正なる判断を遂げて、その結果得た結論としてこれが政府並びに国会に向って要請いたしておりますものは、すなわち、事業協同組合がする利用分量配当ですね、これは損金算入である、ところが、企業組合が行なう従事分量配当は益金処分である、このことは不当である、不合理である、だから是正してくれ、こう言ってきておる。しかも、中小企業団体中央会が責任を持ってそのようなことを言い始めてきたのは、これは去年からのことである。だから、そのような実態が大きく変わってきておるということ、すなわち、主権者、国民世論の動向というものが大きく変化をしてきておるのである。あなた方がどこぞからこつ然と落下傘で落下して、そうしてわが国の税制の編成をしておるのではない。国民世論に従って、民主的規模でいかに公正妥当な制度を国民のために制定するか、こういうところにあるのであって、最終的には、これは坊君や藤井君や村山君や、そういう人たちが、これは断をもって決すべき問題であるけれども、その論理を整理して、そうしてその可能の道を開いていくために、便宜上あなたとここで論議をしておるにとどまるのであるから、もう少しあなたの答弁は、そういう独断的というよりも、マニア的でなしに、ほんとうに政策の根源に触れて、そうして反省をしながら答弁をしてもらわなければ、これははなはだ有害であると思うんですね。国政審議のためにあなたの答弁ははなはだ有害である。あなたの答弁が有害であるということは、わが国政の中に主税局長の存在が有害であるということで、これはゆゆしい事柄である。そのようなことがあっては相ならぬので、いやしくもそのようなそしりを私に与えないように、これから心改めてひとつ御答弁を願いたい。  冒頭陳述は以上でありますが、そこで私は、いま相当の内容について永末君述べられてまいりましたが、重ねてお伺いをいたしますけれども、この事業協同組合と企業組合がはたして異質のものであるかどうか。異質のものであるならば、課税上の取り扱いが異になっておっても差しつかえはないであろう。けれども、その辺のことを明らかにするのでなければ、この結論は出ない。だから、企業組合の本質を究明することが先決問題だ、私はこう思うのです。この問題については、いま永末君も述べられていったけれども、事業協同組合と企業組合とが制度として設定されたのは、中小企業等協同組合法による。しかもこの法律の目的、第一条にはこういうことが書いてあるのですよ。   〔吉田(重)委員長代理退席委員長着席〕 株式会社の制度を設定した法律と、法の目的は違うのですよ。法律の目的、第一条「この法律は、中小規模」これは特定の限界を中小規模に定めて「商業、工業、鉱業、運送業、サービス業その他の事業を行う者、勤労者その他の者が相互扶助の精神に基き協同して事業を行うために必要な組織について定め、これらの者の公正な経済活動の機会を確保し、もってその自主的な経済活動を促進し、且つ、その経済的地位の向上を図る」、この政策によってこれをささえ、盛り立てるためにこういう法律ができて、この法律によって、その第二章には、一から四まで列記してある。事業協同組合、それから末尾に企業組合、何も変わるところはない。法律の設定は、株式会社なんというようなものがこの法律でできておるものじゃない。零細事業者たちは何らかの政策のささえを必要とするが、そのためには、この法律をもっていこう、この法律によって、税法上、金融上ここに発端をして、さまざまな施策のフェーバーがそこに及ぶことになっておるのである。一体どこが異質のものであるのか。この点について、まずあなたの見解を明らかにいたされたい。どこが異質であるのか。同質ではないか。本質、その淵源はことごとく同じではないか。いかがです。
  182. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私も、企業組合が中小企業協同組合法に基づいて設立され、さらにまた、それは中小企業の経済的地位の向上をはかることを目的とすることは認めるところでございます。法的にももちろん株式会社とも違いますし、協同組合とも違っております。協同組合の本質的な特徴は、先ほど来永末委員との間に申し上げたところでございます。しかし、企業組合は、御存じのように組合員としての立場にございますけれども、事業主としての立場は捨てたものだと私は解釈しております。したがいまして、その反映といたしまして、たとえば、中小企業協同組合法の二十二条の二を見てまいりますと、「企業組合の組合員が企業組合の行う事業に従事したことによって受ける所得のうち、企業組合が組合員以外の者であって、企業組合の行う事業に従事するものに対して支払う給料、賃金、費用弁償、賞与及び退職給与並びにこれらの性質を有する給与と同一の基準によって受けるものは、所得税法の適用については、給与所得又は退職所得とする。」ここに私は一つのあらわれがあると思うのでございます。私も春日先生ほど中小企業協同組合に詳しくはございませんが、過去において私どもが習いましたところは、企業組合についてだけこういった規定があり、協同組合につきましてはこういった規定がないことにその一つのあらわれがあるのではないか、かように考えております。
  183. 春日一幸

    ○春日委員 あなたのほうが一つの目的意識を持っていろんな字向をあちらこちらでさがしていけば、あなた方のその欲するところに合致するような条項もなくはないと私は思う。けれども、そのような枝葉末節の問題は、あるいはそういうような派生的な問題は、すべからく今後直していかなければならぬ。根本を正して、根本にさかのぼってすっきりしたものにしていかなければいけないと思う。だから、私がいまここで申し上げるのは、とにかくこの制度というものが設定された政策的意図は何であるかということですよ。これは中小企業者を政策によってささえていく、その政策とは何ぞや。すなわち、これは税制であり、金融であり、さまざまこれに随伴してくると思うのでありますが、これを助けなければならぬという立場からこれが元来設定された。ところが、いまあなたの言われたように、ああだこうだと間違ったことがあちらこちらに書きまくられておるから、これではならぬというので、数年前に設定された中小企業基本法二十三条には、国は中小企業者に対して、税法上、金融上特別の措置を講じなければならぬと、国家宣言をあえて行なっておる。あなたのほうはいろいろなことを言って、いろいろなことをやっておる。そして、苛斂誅求がはなはだしく、零細業者に及んでおるからこれを直さなければいかぬといって宣言しておるけれども、これを訓示的な規定だとかなんとかいって、柳に風と受け流して、あなたのほうは誠実な問題の解消に当たっていない。だから、このような機会に、ほんとうに国会が政治家的良心の上に立って、団体法や基本法が国家宣言として政府並びに国会に命令しておる、それを受けて誠実に正すべきものは正していかねばならぬ。誤っておるものはこれを直していかなければならぬ。私がいま申し上げたことは、あそこにこう書いてある、ここにこう書いてあるということではない。中小企業団体法、中小企業等協同組合法によれば、一緒に書いてあって、一緒の目的で設定されたら同じよような措置をとってしかるべきではないか、こういうことを言っておるのですよ。  さらに私は、あなたに、これは冗談じゃなしに申し上げるのでありますが、これは藤井政務次官もほんとうに聞いてもらいたいと思うのだが、片山内閣のときに水谷長三郎通産大臣のもとでこれが制度化されたことは御承知のとおりだろうと思う。その当時、これはいろいろと深く研究されて、現実の問題としてこの制度が初めて日本に制度化されたのです。その歴史的考察は、かねてあなたに提出をした私のパンフレットの中にも書いてあると思うのだけれども、これは十九世紀にヨーロッパでこういうものが発達した。最初はこれが配給を中心とした協同組合運動だったのだが、これが生産活動に重点が置かれるように変わっていった。そうしてこれがフランスに発展をして、そしてドイツに発展をして、イタリヤにおいて発展をして、中小企業者の協同組織として非常に経済効果をもたらしてきたのだ。そういうようないい点を取り上げて、当時片山内閣でいろいろな学者の諮問を経て、そうしてこれを日本の制度の中に実際に取り入れていったのですよ。そのときあなたはまだ大学で野球をやったりピンポンをやったりして走っておったものだから、全然苦労のほどがわかりはせぬ。だから、いまこつ然として酔ったような文章だけにとらわれてしまって、崇高なる政策の渕源というものをとんと御承知がない。それだから末梢にとらわれてしまって、根源を失われてしまっておる。だから、どうかひとつこの問題について私の申し上げることを端的に御理解願いたいと思うのだが、協同組合組織というものは、すなわち、各企業の宗主権を残存せしめて、そうして、部分的に協業の部分を別個に持っていく、こういう組織ですね。それから企業組合というものは、宗主権を全然なくしてしまう、全的に合併していってしまうということですね。しかも、その政策の根源をなすものは何であるかというと、これは協同組合である。国は、中小企業に対し、組織を助長するためにこういう制度を設けられた。だから、この政策に全面的に乗ったものは一〇〇%協業組織になってくるのですよ。中小企業者は弱き者である、一人では大企業に立ち向かえないのである、だから、その経済効果を高めていくためには協業しろというのが、協同組合法の指向する政策の方向である。それで、あるものは、自分というものを残しておいて、すなわち、宗主権を残しておいて、その中の二〇%、三〇%、四〇%、八〇%、あるいは九九%を協同組織に持っていく、それが協同組合である。ところが、この政策に対して、あるものは弱き者は全的に合体したほうがよいと思って、政府の施策のフェーバーを全面的に満喫しようということで、よってもって九九%では足らないといって一〇〇%そこへ乗りかかっていった。これがすなわち企業組合である。ところが、現行税法では、その剰余金の配分を損金算入にするけれども、一〇〇%のものはいけないことになっている。このような有利と不利との歴然たる変化があらわれてくるということは、これは法律の重大な手落ちであり、誤りです。大体、その当時、あなたの前の前の前の主税局長であった渡邊喜久造さん、いま故人となられたけれども、あの人は、私はほんとうに良心的な人だと思うのだけれども、あの人が、こういうわれわれの論難に対して答えられたことばの中に、こういうことがありました。あるいは村山君もそのような疑義を継承されて記憶があるかと思うのだが、一体、従事分母と利用分量ということばをあそこで二様に使ったことが、本日このような税制上のあやまちといいますか、二様の措置を発生せしめた原因である。あのとき両方とも利用分量という名前を使っておけば、同じような処理がなされていったと見るべきである。——どうしてあなた頭を傾けるのですか、ぼくが聞いて、ぼくが言っておるのですよ。私をうそつきだというのですか。不肖、春日一幸のごとき大人物の言うことを、なるほどといってうなずくなら、これはわかるけれども、あごを横に振るとは何たるあさましい根性だ。その協同組織の共同施設を利用する、そして、そこから利益を得ていく、便宜を得ていく、これは利用分量でいいじゃないですか。何にも違わない。だから、利用分量の配当という同一用語を用いておけば、私は、実際の話、同様の処理がなされたと思うのですよ。ことほどさようにこれは実際問題として非常にデリケートなんです。ですから、私はこの際あなたにお伺いをしたいのだが、あなたは、これは利益を追求する営利事業そのものであるということを言っておられて、その結果、処理はあたかも営利法人、会社と同じように扱われてしかるべきだと、こういうことを言っておられるけれども、そうは言い切れないでしょう。はっきりとそういうようには言い切れないと思う。なぜ言い切れないかといえば、株式会社というものは、資本の結合体である、資本の団体である。投下した資本に対する利潤の追求をはかって、その増殖だけを目的とするものであって、かつ、その株主相互間に何にも相互扶助の関係というものが存在をしていないのである。そういうものと、相互扶助そのものを基調とする企業組合、そのために組合員の職場を確保する、そして、その組合員の生活を守ることを目的とする、このような企業組合——株主相互間には、ほかに何らの連帯感はないのである。銭をもうける、この分だけ出しておいたからもうけてくれ、もうかったら、その分に対して配当してくれというものと、相互扶助を基調として、そうして組合間のそれぞれの職場を確保して、その生活の向上をはかっていこう、生活そのものを全的にそこにゆだねて向上をはかっていこうというものとが同じものではあり得ないではないか。全く同じものだとあなたは思いますか。要するに、株式会社と企業組合と同じものだと思いますか。同じものだと断定できるならば、ひとつ断定してください。もし、そのように断定できないものとするならば、課税のしかたが同じようになされておるということには疑義がある。これは何かしらすっきりしないものがある、少なくとも、そのような疑問があらわれてきて当然だと思うのですよ。これはいかがですか。ちょっとこの辺でひとつ藤井政務次官から政治家として御答弁を伺ってみたいと思う。
  184. 藤井勝志

    ○藤井(勝)政府委員 私も、実は、協同組合という考え方が、中小企業者が大企業に対処して経済活動の不利を補正し、発展していく基本的な経済組織であるというふうに、春日委員と同じ認識を持っております。これが、税法上の取り扱いについて、営利を目的とする株式会社と違った取り扱い、協同組合よりも一そう協同体制が完備した企業組合が、協同組合よりも不利な扱いに税制上なっておる、これは矛盾ではないかという御指摘に対しては、確かに傾聴に値する御意見だと思うのでありますけれども、ただ、実際所得あるところに課税するという、また税制上の別の観点からいろいろ検討してみなければならぬ疑問点も私は頭の中に浮かぶのでございまして、私、十二分に御意見を拝聴いたしまして、今後検討させていただきたい、このように思います。
  185. 春日一幸

    ○春日委員 非常に良心的な御答弁を伺ったのでありまするが、しかし、何といっても元凶は塩崎君です。副大臣も、政策的立場から判断をすれば、大いにこの問題は解剖して、分析して、判断し、検討しなければならぬと言われておるが、どうです。いまのこの時点において、このような背景の中において、あなたの所見は何ですか、あらためてひとつ御答弁願いたい。
  186. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私は、先ほど来の考えをあまり変える気持ちは持ちませんが、確かに、企業組合も協同組合法に掲げられております以上、一つの政策目的を持つものだと思います。したがいまして、その政策目的だから企業組合について特別な措置を講じろということならば、私は、ある程度政策的な意味として理解できるのでございます。したがいまして、たとえば、企業組合をつくったならば三年間どうするとかいうような、合併促進みたいな政策的見地を入れるならば、これは一つ考え方だと思うのでございます。しかし、これもまた多分に問題がございましょう。私は、先ほど来春日先生せっかくの御指摘でございますが、企業組合は協同組合と競争しているのではなくて、企業組合は、中小企業者としてたくさん組織しております株式会社形態あるいは合名会社形態をとっております中小企業と競争関係にあり、その競争関係にありますところの企業収益は、税制上、これは特別措置じゃございません。長い間の税でございます。毎年毎年納めてもらわなければいけない税でございますので、この間の税負担は同じにしたい、こういった趣旨で申し上げておるのでございます。そういった意味でございますので、私は、株式会社と企業組合というのは全く法的に同じであるとも思っておりませんし、分配形態も違う点もございます。しかしながら、大筋といたしまして、会社の経営者と企業組合の組合員とが、お互いに利益のうちから給与を差し引いた残りの企業収益は同じような税負担でいいではないか、これが税負担の公平というものであろう、かように考えておるのでございます。しかし、先ほど来申されましたように、企業組合の特殊な政策目的は私もあると思いますし、この政策目的に対しまして、税制上、ことに毎年毎年の収益に対しましてかかります法人税について、課税所得の計算から違えてまいりますことは、これは給与ということばがあらわしますように、事業主たる地位を捨てた場合にはむずかしいと思いますが、合併促進とかあるいは協業促進とか、こういった形での企業組合の政策措置は、これは別途の角度で慎重に検討しても、これは考えられるような気がするのでございます。
  187. 春日一幸

    ○春日委員 この問題は非常に歴史的な問題であり、企業組合当事者は、すでに十数年来これは求めてやまない要請の集約点でございます。しかし、これがすでに世論化してまいりまして、中央会がいま申し上げたようにこれをオーソライズしてきたということで、さらに権威づけられてきているということ、そういう点から考えて、いまわが国の税制の守護神である主税局長がそのような説を堅持されておるというその立場、これはわからぬではございません。けれども、私があなたに申し上げたいことは、私も十五年間いろいろ税制問題をともに勉強させていただいてまいったので、なるほど、負担均衡の原則、公平の原則というものは保たれなければならぬと思いますけれども、現実の問題として、実態というものは一体何であるかということなんですね。企業組合とはそもそもどのようなものであるのか。すなわち、コンペティターたちに対して、そのような協同組合であるならばこれは損金算入である、企業組合ならば益金処分であるというこのやり方は、実際問題として、企業組合なんかやるな、事業協同組合でやったらいいじゃないか、九九%事業協同組合でやって、一%だけ残しておいたら、それで税法上利益がその面において得られるではないか、こういう逃げ道だってできないことはないと思うのですよ、現実の問題として。なるほど、法人所得と企業組合の所得とが、そこで決算上損金算入、益金処理という違いが生じてくる。要するに負担の均衡がその面においてくずれる、そのことを心配することが一体政治的にどう評価されるかという問題ですよ。そもそも企業組合をつくったのは、そのような零細な諸君が本来的にそのような得をする。大企業たち、あるいは、単に金を出して、そうしてその利潤を座して待つという連中と、自分で働く勤労事業者たち、その諸君が合理的な経営によってその所得を満たしていくということですね。そういう政策目的、政策効果から判断して、一般会社に対しては益金処理、企業組合に対しては損金処理、だからそれは、最終的利益は企業組合の組合員に帰属する、だからそれは得をするわけだ、負担の均衡はその面においてくずれてくるわけだ、くずれてきたっていいじゃないですか。法律というものは必ずしも悪平等ではないのである。租税特別措置法は、年間二千何百億円というものを所得のある者に課税をなす、課税すべきものを、特別に法律を制定して減免措置を講じておるじゃありませんか。だから、政策の効果というものは、やはりそういうような高い立場に立って、達観してこれの処理がなされなければならぬ。あなたのように、既成の観念に固定してしまって、そうして、だれが何と言おうとも、彼が何と言おうとも聞く耳持たぬというような、これではもう願人坊主みたいなものである。私は、昔、村山達雄君が主税局長時代に、いや直税部長時代からいろいろ論じ合ってきたが、あの御仁は、とにかく正論に対してはこたえてきたものです。あなたも御承知だと思うけれども、大工、とび、左官、板金、植木職の問題も、いまにしては懐しき思い出だ。坊君も協力してやってくれたのだが、実際いまにして思えば、あのような一人親方の諸君がほんとうに働いて得た勤労所得部分があるであろう、このような部分がことごとく営業所得に課せられるということは過酷である。それは所得の源泉、実態、形態に沿わないものであるということで、法律によらずして、村山直税部長の独断専行みたいなもので、直税部長通達で現実にその政策を取り上げていったようなことは、実際の話としてなまなましい記憶なんですね。法律によらずしてやった村山君のいわば越権行為は、これは役所としては処断されなければならぬかもしれないが、政治家的には、これは高く評価されて、称賛に値するものである。はたせるかな、代議士になってしまって、栄光の座についておる。君、そんなことでは代議士になれぬよ。だから、この問題は、実際問題として私があなたに申し上げておることは、既成の観念に固執しておってはいけないということ、政治というものは、国民福祉のために、そしてこの福祉というものは悪平等ではないものであるということで、ある。働けない人にどんどん金をやっているじゃないか。つまり社会保障ですね。そういうような人人にはみんな最低限度の生活ができるように厚生保護をやっているのです。そうして、一方においては差し押え、競売をしながら税金を取っておるのである。政策に重点を置いて、適切なる政策を生み出していくというところに政治の要諦があるのである。したがって、協同組合法というものは、零細業者には特別の政策上のつえを与える、あるいはささえていくという必要があって、そうして協同組合をつくって、企業組合、何々組合、ずっとつくって、協同組合と企業組合とを同列のもとに置いておる。条文も違っていないのです。第二章、第三条、同じところに書いてあるのです。しかも、その深遠なる法理念というものは、あなたは知らない。片山内閣時代において、われわれが水谷長三郎君とともに、泰西のさまざまな政策や、政治原理、社会科学、これらをいろいろずっととって、そうしてこれを制度化したのだから、ほんとうにわれわれのことばを聞いてもらわなくてはならない。われわれの言うことはそんなに違っておるわけがない。違っておれば、こんな印刷するわけもないのです。あなたはこれをすらすらっと続んでしまって、十分に玩味されていないと思うのだけれども、とにかく、フランスそれからドイツ、それからイタリア、これが配給組合から生産組合にアウフヘーベンして、これがほんとうに理想的なスタイルであるという結論の上に立って、特にこれを企業組合として制度化したのです。この創始者の苦心というものをよく理解しなければいけません。ただ、前任者が変なことを書いていったから、それを棒読みしておるということではいけないのですよ。どうかそういうような意味合いで、なるほど負担均衡の原則を破るかもしれない。コンペティターである一般会社との間で、こちらが有利になるかもしれない。けれども、法意は有利にするようにこれをつくったんだ。大企業、大法人——小法人もありますけれども、そういうものと対等の立場では競争ができないから、できるようにしてやろう、おまえたちはこれをやればずいぶん得ができるんだからというて、そこに不公平というものをあらかじめ念頭に置いて、百も承知の上でこれを制定しておる。わかりましたか。きょうはぼくはあまり塩崎君を締めつけてはいかぬ理由があるので、この辺にしておきますが、大臣は一体どうしたのですか。藤井政務次官が言われたように、ひとつほんとうに研究してくださいよ。私は、坊君にも山中君にも、実際同僚でありながら哀訴嘆願するような形でよく頼んでおるのだけれども、主税局が暴論を吐いて、がんとして受けつけないから、春日君、次のときを待て、こういうごあいさつを承っておる。内輪の話まで申し上げて失礼だけれども。ぼくが一体何のためにこのことを何年間論じておるか。これは零細なる中小企業者たちが求めてやまないのだ。私はこんなことをだてや酔狂で言っておるのじゃない。事業協同組合は損金算入、企業組合は益金処分、これは不公正でございます。九九%協同組織によって、一%おくれておるものは得をしておる。政府の政策の呼びかけに応じて、一〇〇%乗っかっていった私たちは損です、こんなばかなアンバランスがございますかと言うてきておる。それに対して、政治家として何と答えられますか。それは君ら違っておるとは言えない。皆さんが正しいし、その法の制定の立案者として、諸君の言うとおりと言わざるを得ない。というて、あなた方に取りついても、全然あなたはつんぼで、おしで、めくらみたいなものだ。何にも聞きもしない。熱烈の文章をつづっても読みもしない。まるで極道の所業である。何とか返事をしたらどうです。
  188. 塩崎潤

    塩崎政府委員 租税特別措置お話が出ましたので、私も先ほど来申し上げておりますように、租税特別措置がいかなる趣旨ででき上がり、また、企業組合に絶対適用できないか、そういうことを申したつもりはございません。しかし、おっしゃる点は、課税所得の計算について、普通の中小企業者と違ったシステムを設けろ、こういうお話でございますので、その点は、どうも私どもといたしましては納得しがたい、こういう点を申し上げたのでございます。七十一万の法人、さらにまた百五十万ばかりの個人形態の中小企業者、それと二千の企業組合が競争しておるのでございます。これに対しまして、私は、発生いたしました企業取益、これについては同じような税負担を求めるのが、春日先生常に主張されておる税制の理想だと思うのでございます。私は、そういう意味で、企業組合と協同組合とはやはり別な関係にあり、企業組合と会社形態あるいはまた個人形態の中小企業者との間の競争関係がまた別にあると思うのでございます。しかし、中小企業対策が税制上全くとられていないかと申しますと、今度の税制では、御存じのように、中小企業対策を大いに取り入れたつもりでありますし、企業組合は当然またその適用を受ける。たとえば、軽減税率は、今回は資本金一億円超の法人につきましては適用しないことにいたしております。これは過去、三十年に、国会におきまして、法人税の一本税率につきまして御批判があり、中小企業と中小法人と大法人とはやはり税負担を違えて、競争上の弱さを救ったらどうか、こういうお話がございまして、それができ上がったのでございますが、でき上がった結果は、所得金額に応じまして大企業にも適用になるようなシステムでございまして、これはもったいない話だ、単に技術上の理由から軽減税率が大法人に適用されるならば、これは少し考え方を変えていこうではないかというわけで、今回は軽減税率は資本金一億円以下の法人についてだけ適用する、こんなふうなことにいたしましたし、さらにまた、資本金一億円以下の法人につきましては貸し倒れ引き当て金を二割増しにいたす、このあたりもいままでの考え方と非常な相違であろう、かように私は思います。そんなような中小企業対策はとられたのでございます。企業組合は当然その適用はあるわけでございまして、こういった角度からひとつ税制を見ていただきたい、かように思う次第でございます。
  189. 春日一幸

    ○春日委員 結局、これから一、二年間あなた相手にこの論議をやっていかなければならぬと思うのです。ばかなことを何べんか言わせないで、いま言われたように、政策的考慮でもいいのです。中小企業政策として租税特別措置的区分でもいいと思うのです。いずれにしても、これはどうしてもアンバランスだ。そして、これはよく理解を願いたいと思うんだけれども、特に自民党の皆さんに御理解願いたいと思うんだが、いまや、中小企業団体は日本に一つしかございません。中小企業団体中央会ですね。これがいろいろの角度から検討いたしまして、中小企業団体中央会の権威とその責任で、こうしてもらいたいと言ってきているのです。自由民主党の諸君だって、これを判断されて、しかるべしという御意見も私はあると思う。けれども、その既成の観念というものが強過ぎて、負担均衡、公平の原則などをいわれてくると、そこに均衡を失してくるというようなことで、この難解なる徴税理論というものがあなたの前にことごとく敗退して、そうして実を結ぶに至っていない。さすれば、いつまでもこんなことを言わなければならぬ。もう私は三べんくらい言っておると思うのです。ですからこの問題は、いま申し上げましたようなこと、さらに申し上げたようなことは全部文書に書いてございますから、ひとつもう一ぺん玩味願って、そして政策的考慮でよろしい。なぜかならば、中小企業者のために余分に得を与えてやろうというのが、そもそも企業組合というものが設置された最初の法目的である。法意はそこにあるのである。全面的になくなっておるといわれておりますけれども、企業組合の組合員に更正決定ができるのでございましょう。株式会社の株主に対するものとは違うのです。企業組合の組合員にはあなたのほうが更正決定ができるのでしょう。そんなものが宗主権がないなんというものではない。株式会社の株主に対する処置とは違うのだ。違うものを同じようにしなければならぬ。ならぬと言うて、取れるだけ何でも取り上げるというようなことなら、中小企業者に対してこんなさまざまな政策をとる必要は全然ない。中小企業のためにさまざまな政策がとられております。協同組合に対する共同設備の助成金だ、近代化の助成金だ、ああだ、こうだと、ずっとある。それは中小企業者が弱きものであるから、したがって、経済活動というものの力に国がこれを補強してやらねばならぬ、そういうことでやっておるのだから、そのやり方をここでやってどこが悪いかということなんです。その意味でもいいと思うのです。そういう意味でもこの問題はぜひとも御考慮が願いたい。そうして、すみやかにこの多年の懸案を御解決願いたいのですが、この問題について、藤井政務次官からひとつ大蔵省としての御所見をお伺いして、ほかの質問に入りたいと思います。
  190. 藤井勝志

    ○藤井(勝)政府委員 中小企業、わけても零細企業対策として、補助金政策あるいは金融政策、いろいろありますけれども、私は、税制のあり方がいかに弱い立場の企業に大きな影響を持つか、同時にまた、みずからの力で経済活動を活発に行ない、零細企業から中小企業、大企業へ発展していくというためには、租税のあり方が一番大切であるという認識は春日委員と、いろいろお話等を聞いておりまして一致いたしております。同時にまたいろいろ過去のいきさつをお話しになりまして、この問題に対して事業協同組合と企業組合との租税上の取り扱いの相違、この点については私も検討しなければならぬ、このように思うわけでございます。確かに、租税特別措置が片やあるわけでございまして、まあ、税の本来のあり方は所得のあるところに課税をするということ、同時にまた、負担の公平、こういうこともありますが、もう一つ、やはり租税特別措置に盛られたような政策的に税のあり方においてその企業を伸ばしていくという、この三つの点を合わせて考慮して、企業組合に対する租税のあり方はいま一度検討させていただきたい、このように思います。
  191. 春日一幸

    ○春日委員 どうもありがとうございました。ところが塩崎主税局長、大体いまのような御答弁で御協力願えますか。ちょっと心境のほどを。
  192. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私は、政務次官の言われました検討ということは常に行なわなければならぬと思うのでございまして、検討してまいりたいと思います。
  193. 春日一幸

    ○春日委員 なかなか志操堅固でよろしいが、しかし、われわれが荒唐無稽な議論をはいておるものではないのです。いいですか。ひざとも談合ということがある。そうしてもう一ぺん企業組合の諸君も呼んで、中央会の責任者も呼んで、ひとつしんみりと、こういうような公式な場面でなしに、胸襟を開いて十分彼らの要請をくまれて、適切公正な結論をすみやかに得られるように御努力を願いたい。このことを強く要望いたしておきます。  それでは、大臣が見えたので、大臣に質問をいたしますが、実は法人、個人の簿外資産に課税することを緩和する何らかの措置を講じてみたらどうか。わかりやすく言いますと、法人でも個人でも過年度の所得の中でこれを自家調節をしてやるやからが絶無ではない。ということは、脱税して、これを別の帳簿に隠匿しておく、それが多年の累積になって相当の額にのぼっておるものが絶無ではないと見るべきである。ところが、これらの諸君はこの金を使うことができない。事業上これを活用することができない。活用すれば、一体その金はどういう金だということで、税の対象になってしまうものですから、これを匿名預金で全くその個人との関係を凝装的に遮断した形で隠蔽されておる。現在わが国の経済が非常な信用経済で、その信用が膨張いたしておる。信用膨張は著しいものがあると思うのですね。銀行からこれらの諸君は借金をしておるけれども、借金の見返りみたいなものに、ほかに資産があるわけですね。これを表に出さしめるような措置をとるべきではないのか、そして、過度に膨張しておる信用をできる限りそのような措置によって収縮せしめる措置を講ずべきではないか、このことなんです。要するに、脱税を自首してこいということですね。自首してきたら、その分に対しては税法上特別の措置をとってやるということ、これは悪い者だから、それに対して正直に納めた者との間の均衡をどの点に求めていくか、これは政策的になかなか判断を要するところであろうけれども、しかし、手段方法は絶無ではないと思うのですよ。われわれが研修した範囲で想定できますことは、これの延納を認めてはどうか。たとえば、三百万円以下の金は三年間とか、あるいは二千万円まではこれを十年間とかいうことで、これは脱税だから納めさせる。納めさえるけれども、自首してきたのだから、一ぺんには納めさせないぞ、そういうようなことによって自己資本を充実せしめていこう。みんな資産がありながらもっともそれは不正な資産ではあるけれども、しかし、言うならば、これだって法律上五年の時効を経過すれば、その後は堂々と晴れて自己資産に編入されるべき筋合いのものなんですね。時効の救済がある。だから、そういうものを自首してきたものについては、これをひとつ納税させる。納税させるが、それを段階的に、三百万円までは三年間、五百万円までは七年間、二千万円までは十年間とかいう形で延納させていけば、少なくとも企業間信用の膨張度合いがそれだけ収縮してくる形にならないか。そうして、その企業が金がありながら、それでわずかな金利をもらって、高い金利で銀行から借りておる金利負担を軽減する、企業負担を軽からしめていくという、すなわち企業間信用の収縮、それから中小企業等の自己資本の充実、それから一方においては国税収入の増大、三拍子そろった効果が期待できると思うが、この問題について大臣の見解はいかがですか。
  194. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 初めて承る名案でございますが、脱税を容認するようないやなところがあるようですが、春日先生がそう言われるについては相当の理由があるだろう、こういうふうに思います。これはよく検討させていただきます。
  195. 春日一幸

    ○春日委員 もとより春日一幸ほどの大人物がこのような新しい提案を行なう限りには、それは提案せざるを得ないだけの理由があるし、また合理性があるのです。というのは、事実上いまこの企業間信用の膨張の度合いというものは、大臣調査のとおり非常に大きなものになっておる。銀行の匿名預金というものは膨大なものである。ほんとうにそういうものを実勢に応じてこれを収縮せしめていくということは必要なことだ、しかし、その脱税者に対して、すなわち悪人に対して、それでは恩恵をかけ過ぎないかという点があるけれども、この点は厳粛にして——これはもとより時限立法である。一年間に自首する者は全部せよ、そのことは、すなわち企業間信用収縮のため中小企業の自己資本充実をはかるための非常措置である、一年間の限定措置であるということでやっていけば、私は相当の効果があがってくると思うのです。それはあなたが赤字公債を出したよりよっぽどいいと思うのですが、これはひとつしんみりと考えてみませんか。これは唐突な提案みたいですけれども、実は私ども昨年の夏の研修会に、われわれはこういう問題について、経済学者やいろんな権威を集めて、四、五十人合宿してあらゆる角度から検討したのです。いま大臣指摘されたように、脱税者に延納の特典を与えるがごときはこれは許しがたいという意見の者もたくさんありました。けれども、ほかっておけば、一銭も税金は取れない。五年たてばオートマチックに免責財産になっていってしまうのでしょう。そうして、いつまでも隠し財産で、銀行に預金をしておいて、銀行から高い金利で借りておる、金利負担を増大せしめるばかりであるという、このような実態をあるがままにこれをながめて、そこから政策を編んでいくということになれば、じゃ、ひとつ国税収入をはかっていこうじゃないか、しかし、一ぺんに取るということだとみんなが自首するということの度合いが少なくなるから、延納を認めてやろうじゃないか、しかし、そんなことをしょっちゅうやられてはみんな脱税しだすから、一年だけ、あとはやらない。これならばいけるじゃないかというのが、その研修参加者、学者諸君たちの大まかな意見でございました。あわせて申し上げておきます。この問題は、私は相当の政策効果があがると思うけれども、何か政治道義、情義からするととっぴな提案みたいですから、十分政府部内おいても御研修の上、実情に即した対策が樹立されることを強く要望いたしまして、私の質問をこれで終わります。それで、私の残余の質問は、あさってにいたします。      ————◇—————
  196. 三池信

    ○三池委員長 外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案を議題といたします。     —————————————
  197. 三池信

    ○三池委員長 政府より提案理由の説明を聴取いたします。福田大蔵大臣
  198. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいま議題となりました外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由を御説明申し上げます。  本法律案は、アジア開発銀行への加盟に伴う出資の財源その他一般会計の歳出の財源に充てるため、外国為替資金から一般会計に繰り入れることができることとし、あわせて先般発効した財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定第二議定書に基づく対韓国清算勘定残高の処理に伴う外国為替資金の減額整理に関しまして、所要の規定を設けることとするものであります。  すなわち、第一はアジア開発銀行への加盟に伴う出資の財源に充てるための外国為替資金の一般会計への繰り入れであります。昨年十二月四日マニラにおいて調印されましたアジア開発銀行を設立する協定に基づいてアジア開発銀行が設立されることになりましたが、同銀行の授権資本総額は十億ドル、日本の出資額は二億ドルであり、うち払い込み資本額は一億ドル、その二分の一が現金による出資、残りの二分の一が国債による出資となっております。現金による出資五千万ドル、すなわち邦貨に換算して百八十億円は、昭和四十一年度から五カ年間に毎年度三十六億円ずつ分割して行なわれることになっております。この出資の財源に充てるため、昭和四十一年度から昭和四十五年度までの五カ年間において外国為替資金から総額百八十億円を限り、一般会計へ繰り入れることができることといたしております。  第二に、昭和四十一年度における一般会計の財源事情を勘案いたしまして、約百七億円を限り、外国為替資金から一般会計に繰り入れることができることといたしております。この金額は、いわゆるインベントリーの残額から、アジア開発銀行の出資財源に充てられる分及び次に述べます対韓国清算勘定残高に相当する分を差し引いたものでございます。  最後に、先般発効いたしました財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定第二議定書において、韓国の要請があるときは、清算勘定残高にかかわる債権の賦払い金について韓国からの支払い並びにわが国からの生産物及び役務の供与が同時に行なわれたものとみなすという処理を定めているのでございますが、これは当該債権について現実の支払いがないにもかかわらず、その支払いがあったものとみなされるわけでございまして、これにより外国為替資金に生ずる損失を同資金の額から減額して整理することといたしております。  以上がこの法律案を提出いたしました理由でございます。何とぞ御審議の上、すみやかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  199. 三池信

    ○三池委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。  本案に対する質疑は、後日に譲ります。  次会は、明十七日午前十時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時三十八分散会