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1966-02-25 第51回国会 衆議院 大蔵委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年二月二十五日(金曜日)     午前十時四十九分開議  出席委員    委員長 三池  信君    理事 金子 一平君 理事 原田  憲君    理事 坊  秀男君 理事 山中 貞則君    理事 吉田 重延君 理事 平林  剛君    理事 堀  昌雄君 理事 武藤 山治君       安藤  覺君    岩動 道行君       大泉 寛三君    奥野 誠亮君       押谷 富三君    木村武千代君       小山 省二君    砂田 重民君       谷川 和穗君    地崎宇三郎君       藤枝 泉介君    村山 達雄君       毛利 松平君    山本 勝市君       渡辺 栄一君    佐藤觀次郎君       只松 祐治君    日野 吉夫君       平岡忠次郎君    藤田 高敏君       山田 耻目君    横山 利秋君       春日 一幸君    永末 英一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     北島 武雄君         大蔵政務次官  藤井 勝志君         大蔵事務官         (主計局次長) 岩尾  一君         大蔵事務官         (主税局長)  塩崎  潤君         大蔵事務官         (理財局長)  中尾 博之君         大蔵事務官         (銀行局長)  佐竹  浩君         運輸政務次官  福井  勇君         運輸事務官         (鉄道監督局国         有鉄道部長)  原山 亮三君  委員外出席者         総理府事務官         (経済企画庁総         合計画局参事         官)      田口 三郎君         大蔵事務官         (主計局法規課         長)      赤羽  桂君         日本国有鉄道常         務理事     今村 義夫君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 二月二十四日  委員木村剛輔君辞任につき、その補欠として野  田卯一君が議長指名委員に選任された。 同月二十五日  委員田澤吉郎君及び西岡武夫辞任につき、そ  の補欠として安藤覺君及び谷川和穗君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員安藤覺君及び谷川和穗辞任につき、その  補欠として田澤吉郎君及び西岡武夫君が議長の  指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  通行税法の一部を改正する法律案内閣提出第  一九号)  国の会計税制及び金融に関する件      ————◇—————
  2. 三池信

    ○三池委員長 これより会議を開きます。  国の会計税制及び金融に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。平岡忠次郎君。
  3. 平岡忠次郎

    平岡委員 一昨日に引き続きまして質問を続けたいと思います。  去る二十二日、衆議院の予算委員会公聴会がありまして、四名ほどの公述人意見を述べておるわけですが、そのうちに税制問題に触れられた方が、高橋誠さんと紅林茂夫さんの両名であるように新聞承知したわけでありますが、この二名の方の御意見の中で、高橋さんはこういうふうに言うておられます。政府税制の特色は、大きく分けると、国債発行政策のもとでの減税、それから第二番目に大幅の減税、第三番目に企業減税重点、第四番目に広範囲の減税項目の四点をあげておられまして、問題は、税負担不況対策との関係をどう見るかであるという点に対して論述をされております。そして、所得減税にかなりの重点が置かれていることは評価するが、四十一年度物価上昇率は、政府努力目標でも五・五%なので、減税規模をもう少し広げるほか、対象も中低所得者層にしぼるべきだったのではないか、また、相続税贈与税財源難の現状において減税すべきではないという趣旨を述べておられます。それから、紅林茂夫氏は、減税はかなり大規模な画期的な減税ではあるが、内容を見ると、末端の最終需要の増加という当面の不況対策としてはなお検討の要があろう、四十一年度減税案不況対策見地をさらに強く織り込むことが望ましく、特に所得税減税政府案よりもさらに大きくすることが必要だ、こういうことを、税制に触れられて述べておられます。これは、自民党推薦とか、社会党推薦とか、そういうことにとらわれず、やはりつくところをついておると私は思っております。要するに、いろいろ混淆しておりますけれども、現在の経済危機を乗り越えるためには、景気刺激政策であってはならないのであって、需要刺激政策需要刺激にくっついてくるいろいろな施設とか、公共事業の投資とか、そういうことは肯定しますけれども、焦点は、やはり需要刺激という点に置かれなければならないと思うのであります。この意味におきまして、両氏はやはり核心をついておるというふうに覚えます。  前置きはそのくらいにしまして、相続税につきましてお伺いをしたいのであります。  政府相続税減税を行なうことにいたしておりますけれども、この財源こそ、これまた所得税の一そうの軽減に充てるべきではないかと私は思うのであります。今回の相続税減税は、初年度こそ五十億円ですが、平年度化して百五十億円と、決して少ない額ではございません。現行で四百八十億円ぐらいのところが、平年度化百五十億円の減額ということは、三分の一を切り取るわけですから、相当大きな額であります。中でも贈与税減税としての銀婚式減税の二百万円を含めまして、標準的な相続についての課税最低限現行五百万円から一躍一千万円に引き上げておるわけであります。銀婚式に近い人がだいぶおるので、こういう点は抽出して見ますればありがたいかもしれませんが、全体との均衡とか、優先順序という点からいきまして、これは少し飛躍し過ぎておると思うのであります。御承知のとおり、有効需要を刺激することも、そのねらいの一つであるところの今回の税制改正目的からいいまして、所得税大幅減税によって個人の可処分所得をふやし、国民の総需要の半ばを占める個人消費を伸ばすことこそ、政府税制改定の最重点とすべきであるところと存ずるわけであります。そこで、資産にかかわりの深い相続税贈与税よりも、まず所得税減税をということで一貫していただきたかったところであります。特に、減税需要としてはね返る度合いというものは、これは低額所得者層におきまして一そう強いことは明白なのでありますから、特にこの層に減税を集中して、個人消費を伸ばすことに政府は強く思いをいたすべきはずであったわけであります。  そこでお伺いいたしたいのは、その方法として、一つには、独身者課税最低限引き上げを一段と考慮すべきであるということ、二つには、課税最低限標準家族で八十万円ないし百万円程度にまで引き上げること、しかも、これは早急にやっていただきたいということであります。そのことは、同時にまた、二千万人に及ぶ所得税納税者の数を減少させまして、大蔵大臣、あなたの監督下にある税務当局徴収事務合理化を促進することにもつながるわけでありますから、こういう点を思い切ってやらなければならぬと思うのであります。私が特に独身者課税最低限引き上げをやらなければならないと言うのは、これは塩崎さんから数字の説明をいただけばよろしいのですが、春日君があとに控えておりますので、省略して、私のほうから申し上げます。違っておったらあなたのほうで指摘していただけばよい。独身者は、現行二十万二千五百二十四円が課税最低限でありますが、初年度ではこれが二万円ほどふえまして、二十二万二百七十八円、平年度化しまして二十二万六千百九十六円、二十二万六千百九十六円というのは、大体、給料年間三カ月のボーナスがつくとしまして、十五カ月で割りますと月額約一万五千円ですね。一万五千円というのは、大体高校卒業生給料——どのくらいか知りませんが、その辺のところが、当たらずといえども遠からざる数字だろうと思うのです。ですから、この辺から税金を取るというのは少し酷であるし、あまり妥当ではないと思いますので、このことを指摘しました。それから第二番目に指摘しましたところの、標準家族で八十万円ないし百万円程度まで引き上げるべきこと、これは当然過ぎるほど当然であると私は思うのであります。ちなみに、一昨日話として私が出しました、年間所得百万円で、奥さんと子供三人というサラリーマンの納める税金は、アメリカとフランスではございません。英国では一万六千円、西ドイツで二万二千五百円となっておりまして、日本では、そのときも申し述べたとおり、今度の減税が実施されてようやく三万七千九百十円となるのであります。しかも、国民所得はこれらの国よりも日本は低いのですから、そういう点で、この比較論は、ひとつ当局者である主税局長等は心して念頭に入れておいてほしいのであります。そこで、政府はさしあたり四十二年度で八十万円程度に、それからおそくも四十五年度までには百万円を標準家族での課税最低限とするがごとき考えはないのかどうか、もし減税プログラムがございますならば御提示をいただきたい。これは計画的に今後も減税をしていくということですから、そういうプログラムがあるのでしょうか、ひとつここで示していただきたいと思うのであります。
  4. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 平岡さんの話を聞いておりまして、ちょっと平岡さんと私と見解の違うところがあるのです。景気刺激ということばは使われませんが、需要刺激ですか、需要刺激政策をとるべきだ、こういうお話でありますが、私どもはそれだけでは満足しないのであります。つまり、今日われわれ当面の課題は、経済不況克服をする、その一つの有力なる方法として需要喚起ということをすると同時に、この不況克服の過程を通じて経済を正常な姿に持っていく、こういう二つの問題に当面しているわけです。そこで、財政面からそういう政策をやっていこうということを考える場合におきまして、一定の財源であります場合、需要喚起需要刺激ということをやろうと思いますれば、私は、歳出面にこれを振り向けるというほうがより有効である、こういうふうに考えるのであります。したがいまして、歳出規模は相当膨大化した、そういう考え方に基づくわけであります。ところが、われわれの期するところは、経済不況克服のほかに、また今後経済を安定的に発展させる基礎固めをしなければならぬ。それには国民全体、つまり個人企業を通じまして蓄積を与える、適正なる財産形成、この機会を与える、こういう政策もとられなければならぬわけであります。それには税という問題が非常に大きな働きを持つ、こういうふうに考えたわけであります。つまり、減税、今度非常に大規模にやりますが、この減税に期待するところは、これによって需要喚起するという働きも、もとよりあります。ことに所得税であるとかあるいは物品税、こういう面におきましてはその働きが多いと思いますが、同時に、この機会に、個人法人を通じての蓄積を高め、適正なる財産形成を刺激し、そして個人企業の安定というものに寄与していきたい、こういう二つ目標を持っておるわけであります。したがいまして、あなたのおっしゃるように、歳出よりは景気対策的要素、要因というものは少ない減税ですね。しかし、少ないといっても、全然ないわけじゃない。特に高いのは、私は所得税減税であり物品税減税であるというふうに考えますが、その所得税減税に全部というか、大半を振り向けないで、蓄積という方向にも振り向けたゆえんのものは、私がただいま申し上げたような趣旨に基づくものでありまして、減税は、景気刺激需要刺激政策一本の目的であるというふうに理解されておる平岡さんの御所見は、少し私ども考え方とは違うのであります。しかし、あなたが具体的に指摘をせられました独身者の問題、こういうことにつきましては、財源関係もありまして、お話のようなわけにはまいりませんでしたが、しかし、将来の問題といたしましては、私は、今日の課税最低限というものにつきましては、これをさらにさらに高めていきたい。あなたはいま八十万円とか百万円というふうにおっしゃいますが、私どもも同じような気持ちで、財政状況とにらみ合わせながら、なるべく冗費はこれを節し、そうして、せめて数年の間には八十万円というような目標が実現されるようにということを念願いたしております。  また、税制全体を長期にわたってどういうふうにというお話でございますが、やはり所得税のそういう方向への努力、さらに法人税なんかにつきましては、配当軽課というような問題をも含めて再検討いたし、やはり企業減税というものにもっとめていきたい。また、税制全般を通じまして、非常に税制が複雑になってきておりますので、これをどういうふうに簡素化して国民税法にしていくかという問題、そういう角度からの検討もしていきたい、かように考えておる次第でございます。  相続税を今度取り入れたことにつきまして御批判がありましたが、お話のように、標準家庭におきまする五百万円というのが千万円まで免税が拡大されるわけなんであります。これは非常に大幅ではないかという御意見でございますが、相続税というものは、毎年所得が起こって、それに対する課税が行なわれるという所得税とは違いまして、偶発的に何年かの間に起こる現象に対する課税なんです。そういう意味におきまして、毎年毎年課税標準を変えるというようなことを避けてきた結果少し大幅になっている。しかし、相続税が前回改正されましたのは昭和三十三年でありまするが、それ以来の税収を見てみますると、税収全体としては大体二倍半くらいの伸びになっております。相続税はどのくらいかというと、実に五倍の伸びになっておる。そういうところから見ても、今回の改正がそう大幅なものでないということは御了解でき得るのではないかと考えます。つまり、千万円の限度といいますと、これは標準家庭の坪五十万円、三十坪の建物の一つの住宅を持っているという人なんかから見まして、そう幅の多いものではない。私は、こういう措置によって、中産階級財産形成というものが非常に進められ、中産階級以下の国民に大きな希望を持っていただける、かように考え、適切な御提案であるという考えであります。
  5. 平岡忠次郎

    平岡委員 次に、間接税減税についてお伺いをいたしたいと存じます。  政府は、四十一年度税制改正の一環として、ミンクのコートからマッチまでという物品税について、三十七年以来行なわれなかったところの減税を今回行なわれようとしております。初年度で二百八十七億円、平年度化して三百四十七億円の、これまた巨額なものであります。そもそも、物品税は終局的には消費者に転嫁される性質の税金であるだけに、この課税廃止なり税率の軽減なりは、物価対策として理論的に認めらるべきものと私も思いますが、実際に減税分だけ小売り価格が安くなるかどうか、はなはだ疑問であります。すなわち、今回の改正では、物価引き下げ効果よりも、結局企業減税の色彩が濃厚ではないかという疑いを持つのであります。政府は、二月八日の閣議了解事項として、この疑問に対して一応の解明を与えた形をとっております。すなわち、物品税引き下げ分小売り価格引き下げに振り向けること、また、物品定価表カタログ等には、今回の小売り価格引き下げ物品税引き下げによるものであることを明示することを関係業界に呼びかけることとしているようでありますが、はたしてそのように事が円滑に運ぶかどうか、疑問であります。いまのところ値下げ可能と見られるものは、わずかに乗用車、小型電気冷蔵庫、扇風機、カメラ、フィルム等で、他のものはいずれもメーカーや販売店の手数料が上がってきているので、コストの軽減に充てたり、流通段階経費増に食われてしまうことになりそうであります。したがって、ここにおられる坊委員山中委員等がせっかく御努力された減税ではありますけれども、それほど積極的な効果はないのではないか。つまり、値下げに結びつかない物品税減税になり終わるのではないかと思われますが、どうでしょう。これが質問の第一点であります。  それからもう一点伺いたいのは、御承知のとおり、物品税免税点が設けられておる等のために、同じ間接税の中でも逆進性がきびしくはない税でございますが、酒税、砂糖消費税、それからたばこ小売り価格につきましては、特に——特にということもありませんけれども、いわゆるたばこ税金は、これはもうみな生活必需品でありまして、非常に逆進性が強いものでございます。間接税について考慮を払われるのであれば、これらのものについてもあわせて、いなむしろ、これらのものこそ減税さるべきではなかったかと思われるのでありますが、以上の二点について政府の御見解をお伺いいたしたいと存じます。
  6. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 物品税減税に伴ないまして、一体それだけ値段が下がるだろうか、こういうお尋ねでございますが、政府におきましては二月八日に、物品税減税による価格引き下げに関する措置要領という閣議了解を行ないまして、これに基づきまして、通産大臣などが各関係業界に呼びかけをいたしております。呼びかけの結果は、非常に良好であるという報告を受けております。したがいまして、物品税減税物価政策というような見地からも相当の効果をあげる、かように考えますが、しかし、この物品税減税物価ばかりじゃないのです。先ほども申し上げましたが、需要喚起ということ、それから同時にまた、それを通じて企業の援助になるという効果も持つわけでありまして、物価だけの見地から評価されるという性格のものでもないように思うのでありますが、物価政策的見地は、これは非常に大きいわけであります。今後とも、減税分がそのまま物価にはね返るように努力を続けていくというふうに御了承願いたいのであります。  また、第二点として、あるいはたばこでありますとか、あるいは酒、そういうようなものもあわせ考えるべきではあるまいか、こういうお話でございますが、これらは税額が非常に大きな問題であります。いま行なわんとしておる物品税は、初年度二百億円、平年度三百億円という規模のものであります。そのうち何がしかをこれに振り向けてみましても、そう価格に影響するようなたばこでもありませんし、あるいはビール、酒でもないのであります。同時に、われわれ国民全体の生活水準所得水準というものは相当上がってきておる。そういうことから見まするときに、ただいま御指摘のような消費税負担というものも相対的にだんだんと軽くなってきておる、こういうこともひとつ頭に置いていただきたい、かように存ずるわけでありまして、非常に乏しい財源をもって物品税消費税減税を行なわんとすれば、まずまず、いま御審議をいただいておる物品税減税の線に落ちつくのではあるまいか、かような結論であります。
  7. 平岡忠次郎

    平岡委員 いまのお答えは、酒とか、たばことか、砂糖というものは逆進性が非常に強い、むしろ物品税の場合にはクッションがある、すなわち、免税点というものがありますから、それほど逆進性が強くない。ですから、一番逆進性の強いものをこそ減税を行なうべきだということを申したら、これは非常に税額の多いもので、ちょっとでもいじったら減収になるから、そういうお答えなんですね。帳面操作国民生活と離れた抽象的な大蔵省的議論ではそういうことでしょう。大蔵省の歳入をつかさどる方々から見れば、そう簡単にはいかぬぞというお話は出るとは思いますけれども、しかし、心がけとしては、逆進性の強いものを心がけていくということでないと、いまのようなインフレの高進化に苦吟している低所得者層全般を救うわけにはいかぬのです。しかも、今度の減税が及ばぬ層、所得税減税等が及ばぬ層がやり間接税を同じに払っているわけですから、特段とこの問題には積極的に取り組んでいただきたいというのが私の趣旨であります。  この際お伺いしておきますが、以上のことを関連いたしまして、たばこ小売り価格について、たばこ消費税としての地方移譲が、年額四十一年度で二百四十億円であると算定され、今後も続いていくために、国税収入としての納付金保全のため小売り価格を上げるべきだという、消費者の立場を全く無視した暴論が頭をもたげかけましたが、さすがに参議院の関係委員会政府はこれを否定されました。ここで私は、竿頭一歩を進めまして、たばこを含めた間接税課税物品減税を行ない、物価上昇ムードをせきとめる勇断を求めるものでありますが、政府にその用意がありやいなや、もう一回お尋ねします。
  8. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 国の財政運営が非常にむずかしい、また、なかなか台所が窮屈であるという状況は、平岡さんもよく御承知のことであります。そういう際におきまして、なかなかお話のようなところまで回りかねるわけであります。財源が幾らでもあるというような状況でありますれば、お話のような点もごもっともなことかと思いますが、今日のいまの財政をしさいに御検討くださいますれば、そういう余裕はない、こういう状態でございます。
  9. 平岡忠次郎

    平岡委員 大体、税の問題については、私は質問を終わりたいと思いますが、私が政府に特に指摘したいのは、政府ですら物価上昇で四十一年年において五・五%では押え切れぬということ、五・五%は政府物価抑制努力目標である、こういうふうにおっしゃっています。たいへんインフレ化していると思うのです。英国の場合でしたら、まず、物価上昇が五%をこえるというようなことになりますれば、これは内閣は絶対に挂冠しますよ。ところが、日本の場合には、五・五%が政府努力目標だという。これはどういうことですかね。インフレ論争予算委員会でありまして、もうすでにインフレに入ったのではないかという野党質問に対して、まだインフレではないというようなお答えの応酬がありましたが、まさにインフレそのものではないでしょうか。きょう何かの新聞に非常にうまい比喩がありまして、池田さんは、おなくなりになりましてから、あれはガンであったと発表された。当時はいろいろなことを考慮しまして、前ガン症状であったということであった。ところが事実はガンであった。政府はこれはまだインフレではないと言いたいでしょうけれども、これは池田さんのいわゆる前ガン現象である。つまり、もうまさにインフレそのものであると私は思っております。こういう物価上昇の展望のもとに、年所得百万円の標準世帯で、私が例を申して述べたのですが、一日に直してピース一個にも当たらぬような減税額をもって、家庭にゆとりを与えるために減税をしているということは、これはオーバー過ぎるほどの表現でありまして、国民はそれはいただけません。この程度のことでは、減税額はすべて物価上昇に食われてしまって、たかだか物価調整減税にすぎません。物価調整減税にもならぬと思うのですよ。ただし、所得減税対象になっている階層はまだいいのですが、所得減税対象からもうすでに遠のいている一般の低所得層、膨大な低所得層がありますが、それは今度は間接税によって生活費それ自体が非常に影響されるわけですから、その辺の減税をしていかなければならない筋だと思うのです。そういうことになりますと、あなたのおっしゃる相当な財源が要るわけなんです。相当な財源——去年まではあなたのおっしゃるようなことでもよかったかもしれないけれども公債政策に踏み込んだわけですから、この機会に徹底的にそれをやって、最終需要喚起という路線を徹底的にしくべきであったということの指摘であります。  それからもう一つ財源の問題ですが、租税特別措置廃止による財源が存在します。あなたのほうから提出された資料からは出てこないのですけれども、租税特別措置という根っこがありまして、これが年々二千億円以上の大減税をしておるわけなのです。それがことごとくといっていいほど、大企業とそれに関連の高額所得層の偏向減税になっておる。その個々のものを抽出して見れば、それぞれ理屈があるのです。ありますけれども、現在の危機突破のためにはそれを打ち破っていかなければならぬだろうというのが私の考えです。この間の予算委員会における参考人の議論の中にはそれの指摘はなかったのですが、しかし、現在日本国民経済から要請されていることは、景気刺激需要喚起とでは私は違うと思う。それで、重点は後者、つまり需要喚起に置かれなければならぬというのが私の主張です。ということは、デフレギャップの状況なのですから、景気刺激ということ、特に企業関係に対する景気刺激的なものを税制でめんどうを見るというのは、この今日の機会では妥当ではないというのが私の主張です。  以上のことを申し足して、次の課題であるところの政府の国債政策に関する質問に入りたいと思います。  私は、四十一年度以降に発行される建設国債は、四十年度の二千六百億円の国債と同様、これまた事実上の赤字国債であり、したがって、今日の金融情勢のもとでは、実質上日銀引き受けとならざるを得ないと思っておりますので、インフレ物価高を今後さらに悪化させないためには、一たん出してしまった国債に歯どめをかけるために、これを日銀に引き受けさせまいという、ろくに効果もあがりそうもない、またできそうもない政策論議を戦わすよりも、結局、政府のかまえとしては、国債発行はこれを事前に制約すべきである。しかもこの制約は、財政当局者の恣意による制約ではなしに、体制的にこの制約を設けるべきであるという判断に立って政府の所見を伺いたいと思うのであります。くだいていいますと、産児制限は中絶よりもその前の受胎調節をという、いわゆる加藤シヅエさん方式による質問ともいえると思うのです。ここに言う受胎調節とは、公共事業の定義と範囲の明確化による建設公債発行の歯どめのことであります。出てしまったものを追っかけて、日銀引き受けさせる、させないというようなことは、これは策としては愚策です。インフレコースにきまっているのです。預貸率の逆な一つのポジションを見てもそのことは明確にわかることなのですから、日銀による歯どめ云々というよりは、建設公債発行の規模とか定義をはっきりさせておく必要があると思います。  そこでお伺いしたいのですが、まず第一に、財政法第四条第三項の規定による公共事業費の範囲として、予算総則の七条に項目がたくさんあげてありますね。この項目は一体いかなる基準によって選択されたものであるか、また、この項目は毎年追加ないし洗いかえが行なわれるものであるかどうか、この点につきましてお伺いします。
  10. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 財政法四条第三項に基づきましてただいま国会に提出しております費目は、これは金額に換算しますと、大体七千六百億円くらいになります。今回発行いたします公債は七千三百億円であります。いま国会に対する関係からいいますと、七千三百億円に相当する費目を提出いたしますればいいわけでございますが、そうちょっきりというわけにまいりません。でこぼこが出るわけであります。そういうようなことで七千六百億円という額に相当する費目を出したわけでありますが、その費目の出す基準は、国民、国家の財産として将来に残るものであり、かつ、その効果が回り回って国家の発展に役立ち得るものである、こういうことでございます。そういう基準で選んだのであります。  第二に、将来これが変えられるか、こういうことでございますが、将来といえどもこの基準を変える考えはございません。今日、昭和四十一年度の段階において、なお他にこの基準に相当するものがあるわけであります。しかし、国会の審議上必要のないものでありますから掲げておりませんが、それは官庁営繕費など、三費目となるわけであります。将来そういう基準に相当する費目が新たに設置されるというようなことがあれば当然追加されるわけでありますが、今日の予算の体系において見た場合においては、追加され得る資格のある費目というのは、提出いたしておる資料のほかに三費目だけである、そういう考え方以上に将来とも考え方として出る考えはありません。
  11. 平岡忠次郎

    平岡委員 要するに、一般会計予算の資料として出されております予算総則に書かれておる二ページから三ページにかけてのものに限定される、ただし、限定はされるけれども、官庁営繕費と社会福祉施設費と農林水産向上対策費、これは将来追加されることがある。この条件でこの費目は確定をするということですね。
  12. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 大事なことだからはっきりしておきたいと思いますが、四十一年度ベースでいいまして、もし洗いざらいにそれに該当する費目があるとすれば、ただいまの三費目である、三費目を追加して差しつかえないんだ、そういう考え方であります。しかし、昭和四十三年、昭和四十四、五年に、たとえば大震災対策費なんというのがあって、それがただいま申し上げました基準に相当するものである、そういうふうに考える場合には、これは追加される性格のものであります。しかし、四十一年度予算のベースとして考えた場合には、残されたものはその三つであり、その三つを加えて判断いたしました。将来、国家、国民の財産として残り、しかもそれが国民経済、国家の発展に貢献するものであるという、そういう基準の考え方につきましては、これは一寸も動かす考え方はございません。
  13. 平岡忠次郎

    平岡委員 基準としてこの対象項目をきちんときめてしまうという方法と、ある選択の基準ですね。あなたのいま言われたような、国家、国民の財産としてあとに残り、回り回って国民経済に寄与するもの、そういう方法的な規定のしかたもあるわけですね。あなたは両方ごちゃまぜにおっしゃって、まだ私必ずしも得心はいきません。四十一年度につきましては、かなり確定的なことをおっしゃった。しかし四十二年にいったらわからぬ。すっとんきょうに天災地変を出しましたが、これは例外的なことですから、議論の外におきましょう。そうでなしに、四十二年、四十三年、四十四年、四十五年、その中期的見通しと申しましょうか、永久的とはあえて言わぬまでも、財政規模の見通しを立て得るくらいの年度範囲において、やはりこの基準は変わらないとおっしゃっていただかないと、これは少しく議論がおかしくなるのです。というのは、やはり建設公債自身の歯どめということをあなたは言われているのだから、その歯どめ自体に対しては、これは論議の上でだんだん明確になっていく必要があるので、いま明確化の過程かもしれませんが、四十一年度だけでなしに、四十五、六年までは、やはり適債公共事業はここに書かれたものであるということ、むろん、三つは追加して差しつかえありませんが、そういうふうにひとつ御明言をいただきたいと思うのです。
  14. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 たとえば、四十一年度のことじゃございませんけれども、四、五年前に土地改良事業費というのが農林省で農業基盤整備費という費目の名前に変更があり、その中に草地改良というものも加えるという変更がありましたが、そういうことは、将来といえども間々あるのです。しかし、内容につきましては、ただいまも申し上げましたように、これは将来とも国家国民の財産として残り、また、国民経済の発展に貢献するような性質のものであることには違いはないのであります。そういうことがちょいちょいありますから、名前が違ったから、これは少し前と違うじゃないかということを言われても困るのです。しかし、性格としては、ただいま申し上げましたような基準のもの以外に一歩も出ないということは、これははっきり申し上げておきます。少しも不明瞭なところはないと思います。
  15. 平岡忠次郎

    平岡委員 お答えはやや明確になってまいりましたが、一つだけ聞いておきたいのです。この間勝間田さんが、たしか予算委員会でお聞きになったことですが、防衛庁関係の兵舎とか、そういうものはどうか、防衛庁支出にかかるものはどうかと言ったら、大体否定的にお答えになりました。ただ、私ちょっと疑点があるのは、防衛庁経費のうちから出せる防音校舎という名目での学校建築が、自衛隊関係と米軍の基地関係、両方で六十億円くらい、私の記憶に違いがあるかもしれませんが、大体その程度あるわけですが、そういう防衛庁費にかかわるものは、公共事業費ではないという言い切り方ができますか。もう一つ言っておきたいことは、米国のほうからの要請として、池田・ロバートソン会談で、国民総生産の三%くらい防衛費とするという大きな話し合いの土台があるわけです。そこで、現状では昨年、四十年度の防衛庁予算——国民所得ですか総生産ですか、それはあまり変わりはないでしょうから、総生産とかりにしておきましょう。総生産の中に占むる防衛庁費は一・三八%くらい。そこで、松野さんが防衛庁長官になられた直後に、第三次防衛計画においては、つまり四十二年から始まり四十六年に終わりますけれども、それには国民所得に対して二%程度には持っていきたいということをおっしゃっております。そういうことを見ますと、米国からの圧力が一般国民が普通考えているより以上であり、そういう要請が強いということは事実だと思うのです。そういうときに、日本の立場で、消耗品に回る弾丸とかそういうものをつくるよりは、防音校舎ということにすればあとに残る。そういうものにうんと金をかけて、文部省予算を削って、防衛庁のほうに、かまわぬからよけい出していけば、これは帳面づらは防衛庁費が二%に近づく、われわれは何もアメリカに対してどうということはありませんけれども政府の立場がそのことを考慮しなければならぬならば、数字上は防衛庁費として出せるわけですね。防衛庁費で、まさに国民の教育施設、教育環境づくりのために出せる支出は大いに出したほうがいいし、私は、日本に容喙して、防衛費に幾ら使えというようなことに対して是認しませんけれども、現実の日本の置かれた立場からそういうことが必要ならば、むしろ防衛費支出の中から学校の建築費等はじゃんじゃん出していっていいと思うのです。そういう点で、防衛費における学校施設が、適債公共事業として入るか入らないか。純防衛庁の支出費としての兵舎とかなんとか性質が違います。こういう点は将来どういうふうに処理していくか、どういう概念づけでいくか、適債公共事業費として見ていくかどうか、その点はどうでしょうか、念のためにお伺いしておきます。
  16. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まず防衛費ですが、これは再生産的な要素がない。極端に言うと、消耗的な性格を持つ、こういうことで、公共事業費というようなことを考える場合において、大体これを除外するのが国際的な通念でございます。大体の国でみな経済計画なり国民経済の計算をやっておりますが、そのときに、防衛費は、公共事業費、つまり資本的投資というようなものから除外しておる。そういう国際的通念に従って防衛費は公共事業費から除くべきものである、こういうふうに私ども考えたわけです。ただ、御指摘の施設庁のやっておる仕事の中には、学校のような問題があります。ありますが、これも本体は何かといえば、防衛費に連なるものです。そういうようなことから、これを公債対象費目としてははずす、こういうことに考えたわけです。はずすがいいか、はずさないがいいか、これは判断の問題でございますが、私どもははずすことが可である。そういうものも国債発行対象にすることは適当でない、こういうふうに考えまして、ただいま御審議をお願いしておる、こういうわけであります。
  17. 平岡忠次郎

    平岡委員 そうしますと、一応ここで適債公共事業の範囲はきまりましたね。そうすると、あとは算出さるべき金額の掛け算です。ここでもう一つの要因は何かといいますと、範囲とか項目はきまりましたから、今度は量の問題です。公共事業の範囲、すなわち、項目がきまっても、それぞれの適正事業量、これは個々の積み上げでもいいのですけれども、包括的にでも適正事業の量の規制基準がなければ、これはやはり野放しになり終わりまして、歯どめとはならないと考えます。よって、適正事業量の規制基準を示してもらいたいのであります。
  18. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 公債発行の対象になる公共事業費等は、経済の動きと最も関連の深い財政部門であります。したがいまして、それをどういうふうに量的にきめていくかということは、私が前から何回も申し上げておるわけですが、経済の動きとよく関連をとって、均衡を失しないようにきめなければならぬ、こういうふうに考えております。つまり、政府は安定成長ということを言っておるわけです。安定成長ということは、なおつけ加えて七、八%の経済成長ということである。ですから、国民経済全体の動きの中で、他の要因、つまり、設備投資でありますとか、国民消費だとか、そういうようなものを考えて、いかなる規模であれば大体七、八%の経済成長になるかということを基準といたしまして財政規模というものをきめていきたい。その中で一番大きな要因は、何といっても、公共事業費がどういうことになるか、こういうことかと思います。ですから、経済計画全体の中で財政を適正な位置に置く、こういうことが公債対象費目のスケールをきめる基準と相なる次第でございます。
  19. 平岡忠次郎

    平岡委員 抽象的なお答えならそんなことしかならぬと思うのです。もう少し具体的に、たとえば、予算総額に占める割合でどうであるかというようなことのきめ方もあると思うのです。あるいは税収に占める割合、要するに、適債公共事業の抱括的な適正量というものは、基準として、予算総額に占めるどのくらいのパーセンテージであるか、あるいはもう少し小さく、税収に占める割合としてはこうあるべきだという考え方はあると思うのですよ。あるいは、米国等の場合においては、国民総生産の中に占める割合というようなことでいろいろな参考の資料が出ておりますけれども、大体その辺のめどにつきましておっしゃっていただきたいのであります。私は予算総額に占める割合で今回の七千三百億円をはじいてみました。つまり、予算総額は四兆三千百四十二億円ですから、これを分母として七千三百億円を割りますと一八%、それから税収を基準にいたしますと、分母が三兆一千九百七十七億円、分子が七千三百億円で、このパーセンテージは二三%弱と出るわけなんです。だから、どこかにめどを置いていただけば、四十二年度になりまして、もう少し予算規模が大きくなっても、それにやや比例していくわけですからね。そういうおおよそのめどがないと、国民が心配するわけです。公債発行は建設公債ということで歯どめをするといっても、内容的には非常に不安なんです。ですから、この点につきましての政府のお考えをお示しいただきたい。
  20. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 先ほどは、公共事業費のきめ方はどうだ、こういうお話でしたが、今度は公債の量だ、こういうおことばですが、公債の量のきめ方、これはやはり公共事業費というものが最大の基準になるわけです。しかし、同時に、その公債をきめる基準といたしましては、後にお話があるかもしれませんけれども、市中消化の可能な限度というものもあり、また予算全体の中に占めるウエートというようなものもあるわけであります。それで、お話しのように、昭和四十一年度でいいますと、一七%なにがしかになるんじゃないかと思います。まあ、他のいろいろな情勢によって変わってくると思いますが、他の要因において大きな変化がない場合におきまして、まず大体四十二年度、四十三年度あたりはそんなところが一つ——これは一つのですよ、一つの目安になっていくのじゃないか、そんなふうに考えております。
  21. 平岡忠次郎

    平岡委員 私がお聞きせんとしたことは、要するに、適正事業量と申しましょうか、適正公共事業量の一定割合は将来にわたってどの程度のものを予想するかということでありまして、かく申し上げたゆえんは、公債が、大体四十一年度以降の予算においては政府の長期の展望に立つ経済計画の一翼をになうものでありまして、国債累積の展望を無視し得ないから私はこのことを聞いたわけであります。  次に、もう一点国債問題についてお伺いします。昭和四十八年度から本格的な国債元本の償還が始まります。累積国債総額の利払いに上乗せする、その財源調達は相当大きなものになると思うが、どのようにして行なうのかお示しを願いたいのであります。国債の累積総額を幾らに踏んでいるかもあわせ御答弁をいただきたい。
  22. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 今度出します公債は期限が七カ年ということであります。お話のように、その償還期限が四十八年に到来するわけであります。ところが、この国債の性格は、これは国家国民の財産として長期に残っていくものとの見合いとなっているわけであります。普通、そういう性格の国債でありますと、たいがいの国でそうでありますが、大体十五年とか二十年とか、長いものになりますともっと長い償還期限付の国債になるわけであります。ところが、今日の日本金融界の情勢からいいまして、そこまで長期の公債が出せない。そこで七カ年というような中途はんぱな国債を出すことになったのですが、ざっくばらんに申し上げまして、七年後の四十八年に、四十一年に出した公債が全部現金償還ができるかというと、私は、そういうことはなかなかむずかしいのじゃないか、しかし、できる限り償還にもつとめなければならぬというので、国債整理基金特別会計への積み立てなんかもやっておきまするし、なお、一つ一つの銘柄についての償還計画、つまり減債基金計画というようなものにつきましても、これが取り入れべきものであるかないかというような点も今後検討してみたい、こういうふうに考えておるわけなんですが、まあ、借りかえというのは、新しく経済上の変異を起こすものではない。でありますから、借りかえがそのときに行なわれましても、私は、さして問題とするに足らない、しかも七カ年の公債である、その借りかえであるというふうに考えておるわけであります。
  23. 平岡忠次郎

    平岡委員 四十八年に元本の償還があるということは、七千三百億円の元本の償還ということになっておりまして、そのころに至るまで毎年毎年国債が累積しているわけですから、それに対して利子を払わなければならない。その二つが大きな支出になるわけです。それがどのくらいのめどかということをお聞きしたわけでしたが、そのお答えはありませんでした。しかし、その点は時間上おきましょう。まだあとにそういう機会があると思いますからおきますが、いま大臣からも触れられました減債基金制度の方向はどうなるのか。昨年の通常国会で財政法第六条の改正によって、減債基金積み立て額が、四十一年度及び四十二年度に限って、二分の一を下らざる額から五分の一を下らざる額に改められたことは御承知のとおりであります。その間に減債方式を根本的に検討するということになっておるのでありますが、その点につきまして、現在どのような検討が加えられておるか、お伺いしたいのであります。
  24. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいまのところでは、現行法にのっとりまして、国債整理基金に毎年度剰余金の五分の一を入れるという仕組みをとっておるわけなんでありまするが、これじゃとうてい足りません。そういうようなことを考えまして、減債制度としてどういうものが適切であるかというのをこの一年かけて十分検討してみたい、そういうところであります。まだできておりません。
  25. 平岡忠次郎

    平岡委員 先ほど大蔵大臣は先回りをして、四十八年に大体書きかえということになりそうだということをおっしゃった。この四十一年度一般会計予算の七十九ページにうたっている昭和四十一年に発行を予定する公債の償還計画というのがあるわけですね。四十年度の二千六百億円のときは一行きり書いてないで、野党から文句を言われた。そんな計画表がありますと、今度は幾らか多く、十一行ほど書いてある。気は心ということですか、書いてあるのですが、これによりますと、返すこともよろしい、返さなくてもよろしいということが書いてある。それはとても計画表というほどのものじゃないんですね。せんじ詰めれば、返してもよろしい、返さなくてもいいと書いてある。だからこれは、財政法に規定している償還計画表とは私には思えないのです。先ほどのお答えでも、適債公共事業の範囲というのはかなり明確なんです。それに対応すべき償還計画に至っては、減債基金の積み方の方針もいまだきまっていない。それから問題の償還計画表は、いま言うたように、きわめて弾力性があって、何にも書かないのと同じことですね。こういう点は、公債それ自体がインフレ化する上においての拍車要因になるということを国民は心配しておるのですから、明確化の要がある。あなたは、公共事業に限るということ、それから日銀の引き受けはさせないという二つの歯どめがあると言うているが、内容的に検討すれば、これは全然そういう国民に納得させるだけのきちんとした計画になっておらない。私は、日銀の引き受けはせぬというのは最初からあり得ないとあきらめておって、議論の対象にしてもばかばかしいからしなかった。そういうことよりは、適債公共事業の範囲とその量、その点をしっかりしておけばいいという考え方と、それから減債基金等によって償還のめどをちゃんとつけてもらえばいい、こういう点から質問したのですが、きょうはことごとく不満足であります。こういうことで、結局、政府はコンパスも何にも持たずに航海に乗り出すみたいなものですね。政府のざっぱくな船長さんにまかして国民は船出していいかどうかということに非常に不安を感ずるのは当然であると思うのです。きょうの議論では、やはり国民の不安を解消してもらえるような、そういうお答えがなかったことを残念に思うわけであります。個人が金を借りる場合でも、返済のめどを説明しなければ貸す者はありません。国の借金たる公債も、長期展望において返済計画が示されなければ、債権者を代表する議員の責任はつとまらぬわけです。こういう点につきまして、私どもは債権者たる国民を代表する立場から、返還のめどについてお伺いしているわけですから、今後こうした問題につきまして、政府はまじめに検討を加えて、りっぱな計画表、予定計画をちゃんと出していただくようにお心がけのほどをお願いしておきます。この点は、結局中期経済計画と関連してくると思うのです。  そこで、質問の最後といたしましてお伺いいたします。  中期計画に対する今後三カ年間経済運営の基本的考え方、つまり、今後というのは、四十一年から四十三年まで、これが中間的に出されましたね。しかし私がここにお伺いしたいのは、この中間的に出されました基本的考え方に続くべき新経済計画はいつ提示されるかということで、これをお伺いしておきます。
  26. 田口三郎

    ○田口説明員 お答えいたします。  政府は、去る一月二十七日の閣議決定によりまして中期経済計画を廃止したのでございますが、公債政策の導入による財政金融政策の新たな転換にあたりまして、経済運営の指針の必要が出てまたというようなことによりまして、とりあえず、ただいまお話の今後三年程度の間におけるわが国の経済の権衡がとれ、安定した発展を確保するための望ましい経済発展の見通しを立てる、その見通しのもとにとるべき経済運営の基本的考え方を明らかにして、政策運営に資するために今後三年間経済運営の基本的考え方についてこの計画を立てたのでございます。同時に、政府は新たな計画を作成することとして、その検討に入っております。  新たな長期経済計画の策定にあたっては、従来同様、今後経済審議会にはかって慎重に検討を進める所存でございますが、今後の経済に課せられている基本的な課題は、経済の均衡がとれ、安定した成長を確保することによって健全な経営基盤を整えて、安定した国民生活を確保し、経済発展がそのまま企業の健全な発展やあるいは国民生活の向上をもたらすというような経済体質を実現するということにあると考えておるわけでございます。このためには、公債政策を導入した場合における財政金融政策のあり方とか、長期的、総合的な物価政策と、企業体質改善の方向、それから国際収支の望ましいあり方、こういう諸問題が重点的に取り上げられて新しい長期経済計画を作成するという考えでおるわけでございます。
  27. 平岡忠次郎

    平岡委員 私が聞いたのは、新経済計画はいつ提示できるかというこの一点だけなのです。
  28. 田口三郎

    ○田口説明員 この点につきましては、ただいまお話しましたように、検討に入っているということでありまして、現在いつというようなことをまだお話できる段階にないのでございます。
  29. 平岡忠次郎

    平岡委員 それじゃ答えにならぬですね。五月ごろまでとか、あるいは三月一ばいにはできるとか、三年先であるとか、いろいろな答え方があるでしょう。三年先じゃことは終わりますよ。三年先じゃ仕事は終わって、ナンセンスになります。いつですか。五月ごろできるのですか。
  30. 田口三郎

    ○田口説明員 私、答えられるものを持っておりませんです。
  31. 平岡忠次郎

    平岡委員 では、これでやめておきます。
  32. 三池信

    ○三池委員長 春日一幸君。
  33. 春日一幸

    春日委員 私は、本日は主として歩積み、両建ての問題並びに有価証券の運用預かりに関しまする諸問題について疑義をただしながら、その善処を求めたいと思うのでございます。  この問題については、本大蔵委員会はここ数年来熱心に、かつ鋭く検討を続けてまいりました。しかしながら、その後において一向改善の実があらわれてまいりませんので、これがいつしかわが国経済に大きな害毒を流し、また、わが国経済のひずみの中にたいへん悪い弊害を与えておる。こういうことで、本日は、予算委員会が政治委員会たるの使命感に立って、別室において懇談会が持たれておるようでございます。この問題は、本来的には本委員会で処理をせられなければならない問題でございますので、特に大蔵大臣が十分この問題について実態をよく認識されて、大臣みずから取り組むという姿勢でひとつお願いをいたしたいと思うのでございます。あなたは、かつて熱心な大蔵委員として、こういう問題についても本委員会に御出席になって検討されておりましたけれども、たまたまこの歩積み、両建ての問題が論じられましたこの数年間、岸内閣成立以来あなたがこの委員会を去られまして、特に党風刷新連盟であるとかなんとかというようなことで、その問題は十分あなたの見聞に達してはいない。だから、認識が不十分ではないかとおそれるのでございます。正確なる、的確なる認識なくしてこの大きな問題を解決することは困難であると思われます。しかし、本日は時間も十分にございませんが、私もその理論の真髄を抽出してここで論じてみたいと思いますので、どうかひとつ、真剣な気持ちでこの問題と取り組んでいただきたいと思います。特に公取委員長におかれましては、前委員長でありまする渡邊喜久造君が実にこの問題に尽瘁されて、そのためにあわれその天寿を縮められたと思われるくらい熱心に取り組まれた。当時銀行局長を交えた公取委員長との懇談会において、渡邊喜久造公取委員長高橋銀行局長を叱咤鞭撻したような幾つかの場面等もございましてそんな形でこの問題が本委員会で扱われておるのでございますから、どうかそのような趣旨で、ひとつ正確なる御答弁を願いながら、問題点についてはすみやかな是正の措置がとられたいと思うのであります。  まず最初にお伺いをいたしたいと思いまするが、この問題については、過ぐる三十九年六月の二十五日でございました。たしか山中貞則君が大蔵委員長の当時であったかと思うのでありまするが、山中君の努力と超党派的な協力によりまして、不当な歩積み、両建ての規制に関する委員会決議がなされておるのであります。その中には、大蔵省に対して次のことを言っております。すなわち、「不当な歩積・両建が完全に解消するよう行政指導を強化」せよということです。それから、公正取引委員会に対しては、「不公正な取引と認められる歩積・両建に関する具体的基準について検討を進めるとともに、金融機関の自粛状況を常時監視し、必要と認める場合には遅滞なく特殊指定を行なうべきである。」こういうことを言っておる。このような決議がなされてからすでに二年になんなんといたすのでございますが、その後、これらの決議に基づいて行政執行せられた結果、現在におけるこの不当、不公正な歩積み、両建ての実態はどのような形に改善、改革をされたのであるか。この点をひとつ大蔵大臣並びに公取委員長から御答弁を願いたい。と私が申し上げるのは、本日、政治委員会たるの使命感に立って予算委員会が別室においてこの問題について秘密懇談会が行なわれておるのである。すなわち、そのことの害毒と弊害がわが国経済に対して大きくおおいかぶさっておる事態にかんがみて、このことを見のがすことができないとしてそのような措置がとられておるのである。本委員会は、二年前このような決議を行なっておる。決議に基づいて大蔵省並びに公取の行政執行は今日どのような成果をあげておるものであるか、事実に基づいてひとつ正確なる御報告を国民の前につまびらかにされたい。
  34. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 歩積み、両建て問題につきましては、当委員会でも非常に御熱心な論議がありましたことは承知をいたしております。また、その御論議等に基づきまして、政府におきましてはこれが改善の具体案をつくりまして、ただいま進行中であります。すなわち、都市銀行につきましては、大体整理基準を示しまして、そして昨年の五月にその報告を受けております。その整理基準に対しましては、大体これを実行いたしました、こういうような報告であります。それから相互、信金等の地方、中小金融機関につきましては、本年の五月に報告を受けることになっております。中間的な見通しといたしましては、これも相当改善が進行しておる、整理基準に適合するための努力が行なわれておる、かように考えておる次第でございます。しかし、その報告されたところと実際が一体どうであるかという点につきましては、大蔵省の検査機能を通じましてこれが実情を把握し、なお、もし違う点があれば、これが是正につとめる、かような方針でございます。  さらに、この問題は非常に広範な問題でありますので、全国都道府県に各一カ所、歩積・両建苦情受付所というものを設置いたしまして、苦情のある方につきましてはそれを承って、そして執務の参考に供するというふうにいたしておりますが、このほうは成績があまり上がっておりません。卒直に申し上げます。
  35. 北島武雄

    ○北島政府委員 公正取引委員会といたしましては、本委員会の三十九年六月の御決議の趣旨に基づきまして、不公正な取引方法と認められる歩積み、両建てに関する具体的基準につきましては、種々討議を重ねておりまして、ほとんど成案を得ております。必要あれば直ちに指定し得る状況でございます。  なお、御決議の中にございました「金融機関の自粛状況を常時監視し」という点でございますが、この点につきましては、ただいままでに四回にわたりまして、直接中小企業者たる借り入れ者に対しまして、アンケート調査の方法により拘束預金の調査をいたしております。お手元に御配付申し上げておりますが、第一回が三十九年三月末、第二回が三十九年九月末、第三回が四十年三月末、第四回が四十年十一月末、おのおの四回にわたりまして調査いたしました。その結論を申しますと、借り入れ額に対する拘束預金額、これは借り入れ者のすべての拘束預金全部であります。借り入れ金に対する引き出せない拘束預金の額の割合でございますが、第一回の三十九年三月末におきましては、借り入れ額に対して拘束預金の額は二九・三%、それから三十九年九月末におきましては二八・九%でございまして、この間はほとんど改善のあとは認められなかったのでございますが、四十年三月末現在の調査におきましては、この率は二一・五%になり、さらに四十年十一月末現在の調査、最近まとまったのでございますが、これによると一九%というふうになっておりまして、改善のあとはございます。ただし、私の考えといたしまして、実際に具体的にアンケート調査をとりますと、その中では昨年の三月末現在の調査ではございましたが、改善されたと答えた方が四三%、それから改善されないという方が五四%、三%はむしろ悪くなったという答えが来ておる。それから、実際に拘束預金としては少なくなったけれども、たとえば歩積み預金はなくなったが、そのかわり定期積み金をさせられるとか、あるいは当座預金の額を非常にきびしく言われる、貸し出しの審査がきびしくなった、あるいはまた、借り入れる場合におきまして、時期をはずして拘束されるというようなこともだいぶ行なわれているようでありまして、実際には必ずしも十分満足すべき改善状態とは私ども考えられないところでございます。
  36. 春日一幸

    春日委員 ここに公取が無記名アンケート調査をとられた結果が明らかにされました。それによりますると、悪化されたものが三%である。全然改善のあとがないというのが五十何%であるという、そうして、公取委員長の達観した感覚と認識をもってすれば、その判断は、一向改善されていないものと見るべきものである、こういう御意見が述べられた。これは調査の結果に基づくところの御答弁であると思う。ところが、これに対して大蔵大臣の答弁は、都市銀行においては五月をもっておおむねその自粛措置は完了したものであるとの報告を受けた、こう言われておる。二つの相責任をにない合っておる行政官庁がこのような相反する報告をされるということは異様なことである。大蔵大臣、ただいまの公取委員長の報告に徴して、大蔵省見解をあらためてひとつお述べいただきたい。前の御答弁は、銀行業界からの自主的な大蔵省に対する報告であると述べられておるが、実態はどのようなものであるのか、そして、大臣としての認識はいまどのようなものであるのか、あらためて御答弁願いたいと思います。
  37. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いま公取委員長お答えは、改善されていないんだというお答えではないように私は承っております。つまり、この表を見ましても、公取委員会の「拘束預金に関するアンケート調査結果の概要」、これでも拘束預金が、三十九年三月末では二九・三%あったのが、昨年の十一月末では一九・〇%までいっておるということをいま公取委員長からお話があった。これは非常な改善だろうと思うのです。それから、なお悪化されたというものが三%、改善されないというものが五四%というお話でございますが、改善されたという回答は四三%あるそうでありまして、公取委員長の話は、私は、改善されたあとは顕著ではあるが、しかしなお問題は大いに残っている、こういうふうなお話だと思います。私といたしましても、決して歩積み、両建ての問題が解決になったというふうには考えておりません。ただ単に報告を受けておる、それを大蔵省の検査機構等を通じましてなおよくチェックをしていくのだ、こういうことを申し上げております。
  38. 春日一幸

    春日委員 われわれはことばじりをとらえようとは思わないし、ここで議論応酬を行なうことによって言論に花を咲かせようという意思もない。ただ問題は、実態を把握して、いけないものがあればこれを直さなければ、そのことに身をもって貢献しようという立場からお互いに問題を提起しているのでありますから、どうかひとつそのような気持ちで、実態に即してのお互いの判断を率直に述べ合ってものごとを建設的に処理してもらいたいと思う。ただいま大蔵大臣はお聞きのごとくに述べられましたが、公取委員長のいわば達観的な判断は何であるか、あらためてひとつお述べ願いたいと思う。
  39. 北島武雄

    ○北島政府委員 私も、先ほど申し上げましたように、改善されないと申し上げておるのではございません。改善のあとはございますが、まだ十分満足すべき状態には至っていないのではないか、こういう感じでございます。
  40. 春日一幸

    春日委員 都市銀行についてはいかがでございますか。
  41. 北島武雄

    ○北島政府委員 これは、銀行局の御調査は自粛対象預金に限られております。自粛対象預金の範囲についても、やはり私どもといたしましては問題の点があるかと考えております。実際借り入れ者からときどき私ども具体的な話を聞くのでございますが、都市銀行においても、借り入れ者はやはりまだまだ歩積み、両建てをしいられている面が相当あるようでございます。
  42. 春日一幸

    春日委員 これは大臣と同じ天皇の認証官である公取委員長は、この委員会においてその責任において答弁をされておる。  そこで私はお伺いをいたしますが、大蔵省銀行局長通達、蔵銀第一三三六号ですね。これは昭和四十年九月二十八日、各財務局長あてに通達が発せられておるが、それによりますと、冒頭にこういうことを述べられておる。「本年5月末をもって、」すなわち、昨年の五月末をもって、「銀行はほぼ整理を完了し、相互銀行および信用金庫は、ほぼ半減するに至ったものと認められる。」と銀行局長は認めたわけだ。お聞きのとおり公取委員長は改善のあとはある——あることは当然のことであります。本委員会があれくらい問題にして、独禁法違反の疑いがある、すみやかに是正しろ、是正しなければ、政府はこれこれの措置をとれ、これこれの措置とは何ぞや、一方においては特殊指定を行なう、行政監督者といたしましては厳格な措置をとれというてやったのですから、一年たてば改善のあとがあらわれてくることは当然の事項である。けれども、公取委員長はまだまだ問題がたくさんあるんだと認識されておる。ところが、銀行局長はほぼ整理を完了したと認識したが、その認識の根拠は何であるか、また、このような大いなる疎隔を何と見るか、御答弁を願いたい。
  43. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 これは、春日先生も十分御承知の点と存じますが、実は問題は二つあると思います。すなわち、当大蔵委員会のいろいろ御審議を経まして決定をいたしましたところの、いわゆる整理すべき自粛対象預金というものの整理状況いかんという問題と、さらには、いわゆる公取でアンケートでお調べになっておられますところの拘束預金の状態がどうか、つまり、この二つの問題に分かれるわけでございます。  私ども見ております点は、自粛対象預金というものの整理状況はどうか、ここに実は重点を置いて見ているわけでございます。先ほど大蔵大臣から御答弁がございましたように、銀行からの報告によれば、都市銀行並びに地方銀行においてはおおむね四十年五月末においてほぼ完了という形になっておりますが、それに対して、私たちは特別検査等を行ないまして、その報告の適正であるかどうかについて実は検証をいたしております。その検査の結果、若干のそごの存在することを発見いたしておりますが、それらについては、すみやかに是正を命じております。したがいまして、この定められましたるところの自粛対象預金、こういうものに限って申し上げます限りは、大臣の申されたとおり、全国銀行においてはほぼ整理を了した、ただ、拘束預金についてまだいろいろ問題はあろう、こういうことでございます。
  44. 春日一幸

    春日委員 私は、銀行局長の答弁は正確なものではないと思う。というのは、独禁法によってわれわれが指摘しておりまする批難さるべき、是正されなければならない歩積み、両建ては何であるかというと、それは独禁法が定めておるところの不当な歩積み、両建て、それから不公正な歩積み、両建て、このことを言っておるのであります。したがって、大蔵省としての権限範囲——行政指導の権限範囲内の事柄は、あるいは不当な歩積み、両建ての限界に限られるかもしれない。そうして不公正な問題、また不当な問題だって、これは独禁法で公正取引委員会の権限範囲内の事柄ではあろうと思うが、大蔵省としてはこの不当な問題について行政指導を行なうことができるし、行なわなければならぬと思う。不当な歩積み、両建てと、不公正な歩積み、両建てと、二つある。この二つともなくさなければならぬのが政治問題として論じられておるところである。それであるから公正取引委員会においてはこの二つの問題を全面的に取り扱っておるが、さりとて、大蔵省としての責任は、この二つのことをなくすることのために全的努力を進めていかなければならぬことは当然事項であると思う。この問題について、大蔵大臣見解はいかがでございますか。
  45. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 この問題は非常に重要な問題でありますが、一挙にこれを始末をするというわけにはいかぬ問題もあります。そこで、大蔵省では自粛対象預金を中心とする整理方針を立てまして、これをまず実行する、それが都市銀行においてはもう報告を受けており、チェックをしておるという段階にある。相互、信金等につきましては、それが目下進行中であり、五月に整理実施報告が期待されるという段階なんですが、そういう自粛対象預金を中心とする整理基準が、適正というか、当を得たものであるかどうかという点かと思うのです。まあ、それらの報告やあるいは銀行検査の結果等を見まして、そしてまだ適正な状態とは言えないという状況でありますれば、これは再検討しなければならぬ、大蔵省としては、どこまでも不当、不正な行為があってはならぬということを念願すべきことはもちろんであります。
  46. 春日一幸

    春日委員 これは、お互いに問題の解決をはからなければならぬから、私は、前にも申したように、あげ足をとるものでも何でもないのである。ただ、現実にいま予算委員会でいろいろな資料を集め、現状に基づいてこれが解決策のために熱心な論議がなされておるのである。本委員会において公取委員長は、なお全面的解決に至ってはいない、不当、不公正な歩積み、両建ては全的に解消されてはいないと述べておる。このような現状を踏まえて、大蔵行政はいかにあるべきか、私はここを論じたいのである。  あなたのこの通達を見れば——私はこれを求めたわけではないが、あなたのほうから自主的に御提出を願った。これを見ると、はなはだ文言が遺憾千万にたえないのであります。と申しますることは、こういうような文言が用いられておる。これは大蔵大臣、お聞き取りを願いたいと思うのだが、(3)の「留意事項」の中に「苦情を金融機関に取り次ぐにあたっては、」——例のあなた方のほうの苦情処理機関を設置するにあたって、各財務局長あてにその注意事項、取り扱い要領を通達されておるが、その中の第三項の「留意事項」については、「苦情を金融機関に取り次ぐにあたっては、申出人の氏名を明らかにせざるを得ない旨、申出人の了解を得ておくこと。」、そういうような苦情があったら、そして悪いと思ったら厳格に措置しなければいけない。それなのに、大蔵省はこれを銀行さんにお取り次ぎ申し上げる、そのような苦情があったらお取り次ぎを申し上げるけれども、事と次第によっては、あなたのお名前を銀行にあかさなければならぬような場合があるが、それでもよいかというようなばかげた態度である。本委員会の決議はそんなことをいっていないのです。銀行さまに大蔵省がかしずいて、行き違いなことがあったならば、それをお直しくださいといって、大蔵省が銀行に頼むような、そんな低姿勢じゃない。ちゃんと書いてあるのです。これは「金融機関に対しては、行政上厳格なる措置をとるべきである。」といっている。厳格なる措置をとるといっておいて、それに基づく苦情処理機関においては、そういう問題をお取り次ぎするにあたっては、被害者のお名前をあかさなければならぬような場合があるけれども、あらかじめ御了承願いたいとは、何たるたわごとであるか、とぼけた姿勢であるか。何がこんなものが厳格ですか。  それから、そのハを見てください。「苦情が申し出られた個々の事案について、当不当の見解を明らかにすることを避け」、とは何ごとか。当、不当の見解を明らかにしなければ、苦情処理を受け付ける資格はないじゃないか。(藤枝委員「そのとおり」と呼ぶ)前の政務次官藤枝泉介君だってちゃんと言っておるのです。そのとおりです。あなたは少なくとも苦情処理機関の担当者ですね。大蔵委員会ではこういう決定がなされておる。銀行協会や金融機関へは通達を出しておる。その苦情を受けるにあたって「当不当の見解を明らかにすることを避け、一般に、過当か否かは、取引先の信用状態、取引の経緯等によって判断される面の大きい旨を説明しておくこと。」こういうばかな姿勢でどうしてこれをなくすることができますか。  それから、3の「処理」のところの(2)を見ると、「処理にあたって、申出人と金融機関との間に立って裁断を下すような態度をとらないようにし、具体的解決は申出人と金融機関との交渉にゆだねるようにする。」本人同士話してくれ、私は聞いておくだけだ。何のために裁断ができないのか、何のために大蔵省は銀行法に基づいた監督権を全国民にかわって掌握しておるのであるか。裁断をできぬわけがないじゃありませんか。いかぬ点はいかぬ、悪いものは悪い、大蔵省がかわってこれを公取に告発するくらいの熱意、そのくらいの本腰を入れなくしてこの問題は解決されるはずがないではないか。  次に、(3)を見てみると、「自粛基準に照して過当と認められるものは、金融機関を指導して是正させることとするが、金融機関がなっとくして自主的に是正措置をとるよう配慮する。」と書いてある。このことは、過当と認められたら、厳格な措置をとれと書いてある。それが、厳格な措置も何もとってはいけませんと書いてある。銀行機関を指導して、自発的に指導されるよう、しかも金融機関が納得して、相手が自分で納得をなすって、そうして自主的にされるように措置すること、全くの話が公取委員長、こういうような姿勢でどうしてこの問題の解決がつきますか。つかないからこそ、非難がごうごうと巻き起こって、ついにこれが予算委員会の政治問題となって、別途の秘密会議が行なわれておる。これをあからさまに言えば、受信機関としての金融機関のメンツもさることながら、大きな政治問題が巻き起こるのおそれなしとはしない。だから、これをとっくりと、真相、真意をお互いに顧慮しながら問題の解決をはかろうといたしておる。かような問題を踏まえてその衝に当たらなければならない大蔵省——これをずっと読んでいけば果てしもないことなので、私はこの辺の限界にとどめておくけれども、判断を下さなければならない、指導、監督の責任者にありまする大蔵省が、決断をしてはいけない、そうして意見を述べてはいけない、銀行に向かってその態度を要求してはいけない、金融機関が自主的に措置されるようにはからえばよろしい。こんなもので苦情処理機関というものを設置したところで、実際効果があがるはずがないではないか。何にもならないからこそ、大臣みずからいま問わず語りに述べられたように、何にも効果があがっておらぬようだと言われておるが、あがるはずがない。そんなばかなことをやってあがるはずがないじゃないですか。あの苦情処理機関に行って、財務局の人に真相を言えば、そこでその場で解決がついたとか、一殺多生の剣で、その銀行がどんどん行政処罰を受けていくということになって初めて効果があるのではないか。何にも効果があがらぬように、銀行において何らの犠牲が生じないように、銀行本位の立場において苦情処理機関が設けられておる。本来的に苦情処理機関の意義と目的は預金者のためである。不当な、不公正な、独占禁止法に違反するとおぼしき過大な拘束預金をしいられておる人たちを救済するためにこの苦情処理機関が設置されたのではないか。藤井君どうです。あなたはその当時から大蔵委員として、ともにこの問題を取り扱ってきた当事者の一人である。いまや時めぐりきたって副大臣になられた。一体この通達は適当であると思われるか、不十分なものであると思われるか。まず藤井政務次官の御見解を承りたい。
  47. 藤井勝志

    ○藤井(勝)政府委員 先刻来歩積み、両建てをめぐっていろいろ質疑応答がありまして、ただいま春日委員御熱心に銀行局の行政指導のあり方についていろいろ具体的に御指摘があったわけでございますが、私も、御指摘のとおり、当時ともどもに、これは歩積み、両建ての廃止によって特に中小企業金融が実質的に改善されるということに対して努力をいたしてきたつもりでございます。いまお話を聞きますような状態に対しては、真相を確認いたしまして、大臣のもと、積極的にこれが改善につとめなければならない、このように思っておる次第であります。
  48. 春日一幸

    春日委員 私は、自民党のニューライトと言われる君が、実際問題として、信念に基づいて、当時山中大蔵名委員長のもとで、とにかく超党派的に譲り合うべきものを譲って、最大公約数でできたものがこれなんです。実際の話が、野党の要望というものは、もっともっと秋霜烈日なものである。けれども、これが与党の諸君の努力で、可能の限界において、いずこもいいというごとき最大公約数は、われわれにすれば、はなはだ微温的なものである。けれども、微温的なもの自体ですらなされてはいないという事態を、ほんとうに何と見るか。この際、その当時ともに苦労されたあなたとして——大臣はその当時おられなかった。党風刷新連盟などといって、いまや党風刷新連盟はとうふにかすがいみたいになってしまって、どっかへ行って、組織は何ら残されていないようだが……。(「派閥解消という派閥」と呼ぶ者あり)派閥解消で解散したか。一将功成って万骨枯れてしまった。党風刷新連盟のしかばねを乗り越えて大蔵大臣一人できた。けれども、その当時福田さんがここにおってくれたら、あなたの良心と政治的信条の固さに徴して、私はこんなばかな銀行通達は出し得ないと思うし、のみならず、このような憂うべき事態は残されていないと思う。だから、私は藤井君に期待します。あなたは自民党のニューライトである。だからこれは、あのような経過を御存じない大臣に、これではいけないといって、大臣に建言しなさい。いれられずんば、すなわち去る。これは職を賭してやらなければだめなんですよ。こんな大きな問題、日本経済が産業間、企業間、階層間において大きな所得格差ができて一できているじゃないか。金を借りたい人から高利を取って、銀行は宮殿、パレス、金殿玉楼だ。ずらっと銀行が建ち並んでしまって、中小企業は破産、倒産、昨年度は六千件、しかし、これは一千万円以上の負債で倒れたものが六千件、九百万、八百万、六百万の一千万円以下の負債で倒れたものは数知らずだ。そのような所得格差ができてきたのは、このような金を借りたい人から高い金利を取って、その人の金をせしめとって安い金利で与えておるという、このような不公正なインチキな経済行為が、大蔵当局の惰眠と公正取引委員会のサボタージュによってなされた結果、このような所得格差の断層ができたのであります。だからこれは、ほんとうに公取委員長と大臣が真剣になっていただいて解決をつけなければならない問題であると思うので、どうかひとつ真剣にお取り組みを願いたい。私は何もおこることはないものだから、ユーモアを交えてはおるけれども、これは実際の話が問題は大きいのだから、ほんとうに大蔵大臣はその当時いらっしゃらなかったのだから、これは超党派的な問題なんで、いま藤井政務次官もその当時の事実関係を想起されて、通達の文言と、それからその当時の決議と、そういうものと波長が合わないとすれば、精査の上、大臣の指揮を求めて善処したいと述べられておるが、いかがですか、大蔵大臣の所見をこの際お伺いいたしたい。
  49. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 苦情相談所につきましては、全く所期の成果があがってないということを申し上げたのですが、開設以来今日まで受付件数が十八件でございましたか、とにかく二十件にならないのです。そういうことはどこに欠陥があるかということをいま検討しておる。これの根本的な改正をしてみなければならぬ、こういうふうに考えておるわけでありますが、いずれにしても、この歩積み、両建ての問題というのは、その苦情の受付件数が少ないことに表現されるように、非常にむずかしい問題なんです。むずかしい問題でありますが、これは改善しなければならぬ、そういうふうな方針で、今後も相談所の改善を含め、鋭意行政に当たっていくつもりであります。
  50. 春日一幸

    春日委員 私はもう少しこれを詰めてみたいと思うのだが、この要領によると、中央でこういうものを開設する旨新聞広告をすると書いてあるが、実施状況はどうなんですか。ほんとうに全国に、当事者たちがそのような苦情処理機関というものが設置されておるということを承知することができるような規模で広告をしたかどうか、事実関係はどうです。  それからもう一つ私は希望を申し上げるが、中央で広告するといったって、こういう問題は、私は、財務局別に、地方紙も含めてその地域の当事者たちにあまねく周知徹底でき得るような規模で広告措置をとるべきであると思う。一体その事実関係は、どこのどういう新聞に、いつごろ広告したか。それから、いま申し上げるような、中央だけで広告するということでは——広告ということの目的は、当事者たちに知らしめることにある。だから、財務局別に日時、場所を指定してそういうことを広告すべきであると思うが、この点に対する局長の見解はいかん。
  51. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 この点は、確かに先生御指摘のように、やはりまず地方を中心にいかなければならぬということでございますので、実は各地の商工会議所に設置をいたしたものですから、その商工会議所を通じてその周知徹底をはかるということで実際はやっておるわけでございます。
  52. 春日一幸

    春日委員 それで、苦情の受付を行なうということを新聞発表すると書いてある。一般への周知としてそれをやりましたか。
  53. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 その点は、いま申し上げておりますように、商工会議所を通じて事実上の周知をはかるということで実際やってまいっておるわけであります。
  54. 春日一幸

    春日委員 だから、そういう、やることにするということはここに書いてある、書いてあるから私は知っておるが、そういう書いてあることに基づいて実行をしたかどうか、これを聞いておるのです。知らないならば知らないと言ってくださいよ。
  55. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 ちょっといまその新聞発表の日時を私記憶いたしておりませんので、後ほどお答えを申し上げます。
  56. 春日一幸

    春日委員 私は、各商工会議所別にそういうことを新聞発表をした、そしてこういう通知を出したら、どこがどういうぐあいに新聞発表したのであるかというくらいのことは、本省がこれを集約して、その効果というものをじっと見詰めていく、こういう態度でなければならぬと思う。苦情処理機関設置ということが大蔵委員会できまったのだから、あとは野となれ山となれ、ただ出しておけばいいという通達行政ではだめで、行政効果というものをねらいながら、これを確実に行なうことを念頭に置いていろんなことをやってもらわなければ何にもならないですよ。これは正確なる御報告を求めます。そうしてまた、こういう文面をあなたがお読みになれば、大蔵委員会のこの決議は、きわめて微温的な決議である、きわめて遠慮して、なし得る限界の最小限度のものが書いてある。それにもかかわらず、厳格な措置をとれ、ああだこうだといっておるにかかわらず、この文言は、自分で判断するな、見解を述べるな、銀行に命令するな、自主的な解決を求めていけというようなやり方で効果があがればよろしい、こういう態度で効果があがれば何をか言わんや、言う必要はない。けれども、公取委員長が、公取の機能をもって調査された結果に基づいて意見を述べられておるが、ここに冒頭に書いてあるとおりに、ほぼ整理を完了し、なんというようなことは、事実に反するもはなはだしいものである。現にこの統計でも一九%残っておるじゃありませんか。二九%あったものが一九%に減っただけなんです。現存しておるものを、ほぼ整理が完了したとは何事か。不実なことを言うもはなはだしい。そういうことですから、苦情処理機関をぜひひとつ徹底せしめてもらいたい。独禁法に基づいて、法律違反の事項がある場合には、国民は何人もこれを告発することができる、独禁法に基づいて、当事者以外の者もこれを告発することができる。だから、当時われわれは各政党が一緒になって、そのような違反者については被害者にかわって告発しようかというような話もしたのだが、その儀に及ばず、すなわち、苦情処理機関を大蔵省が財務局別に設置する、こういうことで、われわれはこのことをなくすることのために、国民にかわって公取に向かってじゃんじゃん告発する常設機関を設けようとしたことも、大蔵省の行政に期待をして、あえてこれを行なってはいないのです。にもかかわらず、大蔵省の通達がこのようなとぼけたことで、厳格な処理だとかなんとかいったところで、この中の文言は、うやうやしく銀行にこれかしずいておる。意見を述べてはならない、判断をしてはならない、銀行に命令してはならない、こんなことではだめなんですよ。だから、この点については、大蔵大臣が当時の速記録なんかでも読まれて、そうしてまた、実際これは超党派的な問題ですから、委員長においてもよく善処されたい。  そこで、私はちょっと具体的な問題に入りまするが、銀行局長、都市銀行、地方銀行、相互銀行、信用金庫の四十一年十一月末現在の債務者預金総額は幾らか、御答弁願いたい。
  57. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 都市銀行の債務者預金は四兆九千二百九十六億円、地方銀行二兆三千八百六十五億円、相互銀行一兆三千百五十二億円、信用金庫一兆七百一億円、合わせまして大体九兆円くらいです。
  58. 春日一幸

    春日委員 それでは、質疑の時間省略のため私のほうから資料を述べます。誤っておったら御発言願いたい。すなわち、これら都市銀行、地方銀行、相互銀行、信金の四十一年十一月末現在の債務者預金は九兆七千億円である。この中には当座預金三兆四千億円含むので、これを除いた債務者預金なるものは約六兆三千億円と見るべきである。この六兆三千億円の債務者預金は事実上両建て預金となっておるわけであって、実質的には、不当か不公正かは別にして、実質上は債務者の拘束預金である。当座預金三兆四千億円を除きますと、六兆三千億円というものが債務者預金、定期性の預金となってきておる。拘束預金になってきておる。だから、これだけ債務者の実質金利を高めておることは高めておる、これだけの拘束預金をして借りておるのでありますから。そういう形になると思うが、公取委員長、この点についての御見解はいかがですか。
  59. 北島武雄

    ○北島政府委員 当不当は別といたしまして、両建てになっておる分だけ金利が実際上高くなるということは申し上げられると思います。
  60. 春日一幸

    春日委員 そういたしますと、この六兆三千億円の債務者拘束預金がある。当不当あるいは公正不公正はあえて論じないのである。けれども、この六兆三千億円の中で、大蔵省が資料として検討されておるところの不当な拘束預金、不公正な拘束預金、これを一千百九十億円計上されておるが、この理論的根拠は一体何でありますか。この六兆三千億円の中が不当、不公正、自粛の対象となるものは千百九十億円、実に軽少なものである。これは一体どういうことでございましょう。
  61. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生御指摘になりましたように、債務者預金総額は九兆七千億円、そのうち当座を除けば六兆三千億円程度でございますが、そのうちさらに拘束性になっておる預金、拘束性預金は実は三兆二千億円でございます。さらにその拘束性預金のうちで、自粛対象、つまり整理すべきものとして、基準に定められております。すなわち一例を申しますと、貸し出しと同時に即時両建てになったものとか、過当なものといったような、五つばかりの基準がございますが、その基準に当てはめてみたその自粛対象部分、それが先生最後に非常に僅少なとおっしゃったその数字でございます。
  62. 春日一幸

    春日委員 このことは、すなわち、自粛の対象にされるものが極度に局限された結果と見るべきである。あなたのおっしゃるように、三兆何千億というような拘束預金がかりにあって、そこの中でなくさなければならないものは千百億円というようなことは、その算出の基礎となるいろいろな条件が、すなわち、不当とおぼしきもの、不公正とおぼしきものを極度に局限したものだからこんなに小さく圧縮されてしまったのであります。  そこで、私はその一つ二つの例を申し上げるから、これを材料にして今後の御検討を願いたいと思うのでありまするが、この通達の中を見ますると、そこの中の五項目、すなわち歩積み、両建ての自粛基準の第五項目に「貸付を伴う定期積金で、契約額が貸付の金額をこえるものおよび過度の一時先掛がなされているもの」、こういうものに自粛の対象になるとされておるのですね。そうすると、これは裏を返せば、掛け金契約額が貸し付け金額をこえない限り自粛対象預金には該当しないということになるのですね。よろしゅうございますか。そのとおりでございますね。御答弁願います。
  63. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 そのとおりでございます。
  64. 春日一幸

    春日委員 そういたしますると、私はここで一つ御計算を願いたいと思うのです。こういうことになるのです。私は熱心に計算をしてみた。これは、この青写真のほうは大蔵省で計算をしてもらったのだが、たとえば相互銀行なんかの例です。これはひとつ公取委員長にも大蔵大臣にも特に聞いてもらいたいと思うのだが、たとえば、相互銀行から相互掛け金契約で一千万円の契約を行なう、これを三年契約で行なうのですね。そうした場合、掛け金総額は九百三十六万四千七百五十二円になって、そうして給付補てん金が六十三万五千二百四十八円、いわゆる金利に該当するもの、三十六カ月で一千万円になって返ってくる。こういう相互掛け金契約を残債方式で掛け金を行なって、片方で一千万円の金を三年借りると金利はどういうことになるかというのでありますが、その表面利率を八分五厘と見た場合、こちらで一千万円の三年契約の相互掛け金契約を行ない、片方で一千万円の単名借り入れを行なった場合、実質金利は幾らになるか御計算願ったところによると、借りるほうは表面金利八・五%とするのだけれども、片方で相互掛け金契約を行なっておるのですね。その最終回の預金利回りが四・四%にしか当たらないので、したがって、片方で一千万円の掛け金契約を行なって、片方で一千万円の単名借り入れを行なうと、実資金利は一割二分三厘になるとあらわれてきておる。このとおりでございますか。
  65. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 そのとおりでございます。
  66. 春日一幸

    春日委員 そういたしますと、もう一つ御判断を願いたいと思うのでありまするが、かりに一方でこの禁止をしておる歩積み、両建てをやった場合、これはどういう利回りになるかというと、借り入れ金を一千万円、借り入れ利率を八分五厘で借りた場合、利息は八十五万円である。そこの中で、かりに禁止されておる両建てを二割、二百万円だとする、半年後で五分五厘の金利をもらうから十一万円入ってくる、差し引きその債務者の金利負担が七十四万円になりまして、その七十四万円が——その借り受け人が実際使用できるのは、二百万円というのは両建てにとられちゃっておるから八百万円、この八百万円に対しての実質利回りはどうなるかというと、九分二厘五毛となると思う。これはよろしゅうございますね。そうなると、こういう理論が立ちませんか。たとえば、歩積み、両建てはいけないと言っておる。どういうことか。金を貸し出すときに、そこの中で何割かのものを強要して両建て預金をせしめることはいけない、こういうのでございますね。いけないけれども、その実質利回りは九分二厘五毛にしか該当しないものである。これはいけない。けれども、片方は、いま申し上げたように、いいと言っておるものの、実質利回り、すなわち、掛け金契約が貸し付け金額をこえない限り自粛対象にならないと言うておるものの実質利回り、負担者の利回りは一割二分三厘になる。こんなことでいいと思いますか。この問題は、私が、三兆何千億という拘束預金がありながら、自粛の対象になるものはわずか千百何十億に極度に局限されておると言っておることの一つのあらわれである。すなわち、この第五項目に言うておること、千万円契約して、そうしてここで千万円の単名借り入れを行なう、これは差しつかえないとあなたのほうは言っておる。自粛対象にならないと言っておる。相互銀行において千万円の単名借り入れを行なって、千百万円の相互契約、これはいけない。けれども、千万円と千万円ならよろしいと言っておる。よろしいと言っておるものの実質利回りは一割二分三厘。片方でいけないといって禁止しておるものはそれをはるかに下回る九分二厘五毛ですね。こういうようなやり方は、いかにも表面的に、お役所的に、形式上よければ実質上それで差しつかえないのだという態度に通ずるものであって、私はこれも直していかなければならぬと思うのです。すなわち、相互銀行の掛け金契約は、両建て式から残債式に切りかえねばならないと、二、三年前に通達したのでございましょう。けれども、実質金利軽減措置がこんなふうにとられておるために、掛け金契約と別個に貸し付け契約が並行して行なわれることによって、すなわち、あなたが通達をして掛け金契約を残債式に移行しなければならないと指導したことが意味がなくなってしまうですね。明らかにこれは脱法行為である。これはやはり残債方式といいまするか、片方で掛け金がなされていったら、借り受けのほうの金額もそのつどその額だけを減じていくとか、あるいはこれに対する見返り措置をとって、特別貸し出し日歩をもってこれを処理するとか、借り受け人の負担を不公正に重からしめることのないように救済措置をとらなければならぬと思いますが、この辺の論理はどうでありますか。公取委員長の御見解伺いたいと思う。  私の申し上げたのは、この自粛通達で禁止されておるものは、たとえば一千万円借りて、二百万円両建てされたときには、八分五厘で借りても、五分五厘の金利が入ってくるから、九分二厘何毛にしかならない。片方は千万円の相互掛け金契約を行ない、千万円借りた場合、一割二分三厘になる。その一割二分三厘になるものはよろしい、九分二厘何毛のものはいけない。これは論理が合わない、こういうことを指摘しておるのでありますが、わかりますか。
  67. 北島武雄

    ○北島政府委員 ただいま非常に具体的なお話でございますので、ちょっとここでもって御答弁申し上げるのは差し控えさしていただきます。ただ、お話を承りますと、その点は非常に自粛対象基準というものについて私どもが抱いております疑問の一つに触れておるんじゃないか、こういう感じがいたします。
  68. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 ただいまの点を若干補足して申し上げますと、いわゆる定積みについて特に問題が多かろうと思いますが、相互銀行の場合におきましては、先生いま御指摘の、つまり残債方式に切りかえるということによって債務者の金利負担軽減をはかってきたわけです。したがって問題は、その残債式ではないけれども、いま御指摘のように、定積みを同額だけやったという場合の最終者利回り、最終の債務者の金利負担というものが、残債式における場合に比べて、もしこれが著しく高いということになると、これは非常に問題だと思います。したがって、実はいろいろ実情を見ておりますが、この点は、先生も御承知のように、残債式の場合のいわば最高金利というものを業務方法書において定めておりますが、これが百万円超の場合に一二%ということになっております。そこで、現実には、いわゆる約定金利というものを八分五厘程度にとどめておけば、ただいま先生の御計算のように、最終利回りとしては一割二分程度におさまるわけでございますので、現実にそういう形で行なわれている限りにおいては、この相互銀行に関しては、残債式の場合に比して債務者は不当に利益を害されるということにはならないということになろうかと思います。実際にあたりまして、もしそれよりも高いような利回りを取るようなものがあれば、これはやはり是正させていかなくちゃいかぬということで、今後とも十分指導をしてまいりたい、かように考えております。
  69. 春日一幸

    春日委員 これは問題が二つあると思うのであります。すなわち、残債方式がとられた精神は何であるかというと、借り受け人の金利負担軽減措置なんでございましょう。したがって、いま私が提示いたしましたような例によると、片一方に相互契約一千万円、片一方に単名借り受け一千万円、こういうふうになると、一割二分何厘という高いものになっていくということですね。だから、この残債方式の精神というものをふえんしていこうとするならば、貸し付けの場合にも、給付の場合と同様掛け込みのつど自分のその負債額を減らしていく、減らすことができなければ金利措置をとる。この金利措置が第四項目にございますね。一件の金額が百万円をこえるものは日歩一銭六厘以下、それ以下のものは一銭七厘と書いてあるから、そういうことによって負担の過重を排除していくということであるならば、私は差しつかえないと思うが、いまのように、一銭二厘前後というものは適正金利だから、これははみ出ないというようなことではいけない。中小企業金利は、中小企業金融公庫でも、国民金融公庫でも、商工中金でも八分七厘、実際苦心惨たんして下げてきている。大きな努力をして下げられてきておるときに、片一方で平気で一割二分三厘というような金利がそのやり方によってせしめとられておるのである。しかも、あなたのほうは、相互掛け金方式の融資というものは、これが借り受け人に対して非常な負担をかけるということで、これは残債方式に切りかえなければならないと行政指導をしたならば、そのポリシーはやはりふえんして生かしていかなければならない。だから、そのような場合には、貸し付けの場合にも、給付の場合と同じように、掛け込みのつど貸し付け元本からそれだけの額を減らしていかなければならぬ、そういう措置をとるべきであって、この第五項目はいまや修正を必要とする段階にあると思う。なぜかというと、いま現実にそれをやっておる。ということは、歩積み、両建てとむずかしいことをいっておるけれども、そんなややこしいことをいう必要はないのだ、千万円借りたいといったら、片一方千万円の相互契約をやればよろしいのだ。そうすれば、はかな歩積み、両建てよりも——いま歩積み、両建てをやると九分二厘何毛しか取れないやつが一割二分三厘も取れるのだからということで、脱法的行為が自由濶達に行なわれておる。ここで論じたことが何にも役に立たないではないか。われわれはここで政策を論ずる以上は、その政策効果というものの確保措置考えなければならない。この点については十分御検討を願いたいと思う。大臣、よろしいですね。  そこで私は、公取委員長にお伺いをいたしたいのであります。  このような両建ての契約——片方で相互契約、片方で単名借り入れ、同額ならば差しつかえないというような行政指導をやっておるが、このことは独占禁止法に照らして不公正な取引にならないか、それを強要した場合ですね。すなわち、みずからが有利な立場にあることを利用して相手に不利な立場をしいることにならないか、この点いかがですか。
  70. 北島武雄

    ○北島政府委員 お話のような事態は、取引上の地位の乱用という一般規定に当てはまると思います。
  71. 春日一幸

    春日委員 なかなかよろしい。そのとおりなのですから、少なくとも独占禁止法違反の疑いのあるような金融方式を見のがしてはならない。これはいま公取委員長が有利の地位の乱用事項に該当する、公正取引の基準に反するということを言っておるのですから、第五項目のこれは、相互銀行では相互掛け金、一般銀行は定期積み金、これは金融機関にはみな該当する普遍性を持つ問題でありますから、十分にひとつ御検討を願いたい。  それから、もう一つの問題点だけにとどめますが、こういうことがあるのです。第一に、二の(1)に、こういうものは除くとして、債務者が、その経理事情、経営事情等の理由により、自発的に当該拘束性預金を置くことを希望していることが具体的に証明される場合には歩積み、両建てをやってもいいということになっておる。私は、これは各議員の諸君も現地において御調査を願えば明確な答えが出てくると思いますが、これは非常に問題があると思うのです。自主的に拘束してくれと言ってきたらいいけれども、というこの条項を利用してどういうことが横行されておるかというと、たとえば、この拘束性預金の中には、担保預金、見返り預金、見合い預金、この三つの性格があると思うのですが、私がいま問題にするのは見返り預金なのですけれども、これは定期証書というものを発行する。ところが、この取り締まりの基準だとか、自粛基準の中では、拘束性がなければいいといっている。だから、定期をとっても、その定期証書というものが本人に渡っておれば、これは整理対象から除外される。その場合に、金融機関がいかなる手段をとっておるかというと、この証書を暗に銀行に預けるような、心理的にそのような影響を与える言動を行なうわけですね。これを銀行が預かりますといって預かると、これは見返り定期になって、拘束性になっていくから、ここに書いてあるような、すなわち、経理事情、経営事情で、こんな定期証書をうちに置いておくよりも、銀行に預かってちょうだい、と借り受け人をしてこれを言わしめる。言わしめたときに金融機関は、それじゃひとつ念書をちょうだい、あなたのほうが銀行に保管してくださいという希望を表明した、そういう念書をちょうだいといって、念書をとっておるのです。念書をとっておれば、銀行ではこれが一つの長期性の預金として運用できるものですから、これは対象にはならないけれども、実質的には拘束的性格を持っている。私は、このただし書きの第一項目もさらに本来的なものにその文面を改める必要があると思うのです。この問題についていかがでありますか、公取委員長。たとえば、拘束預金の中には、担保預金と見返り預金と見合い預金があって、その見合い預金の中で定期証書を本人が持っていくやつを、本人が自発的な意思なりと称して、そして念書をもって銀行に預けた、こんなことを認めていけば、借りたい人は弱い立場にあるから、貸す人のきげん気づまを取りつくろう一個の手段として預かってちょうだいといって、念書ぐらい百通でも書きますよ。そして現在そのような行為が行なわれておるのですね。こういうことは差しつかえないと思いますか、いかがでありますか。
  72. 北島武雄

    ○北島政府委員 私は、ほんとうに自発的にそれがなされるならば、これは違反しないと思います。しかし、威圧を加えまして、実際においては銀行がそれを無理に徴求しているということになりますと、これは、形はどうあろうともいかぬわけになると思います。
  73. 春日一幸

    春日委員 私はここに抽象的な理論で問題を表現しておりまするけれども、これは現実にそういう非難がごうごうたるものなんですね。歩積み、両建ては、大蔵委員会で皆さんの御努力でなくなったという形になっておるけれども、現実は同じことでございます。歩積み、両建て預金してちょうだい、別途預金してちょうだい、預金証書も持っていってちょうだい、けれども、お預かりをするならお預かりしますよ、それは念書をいただいておかないと財務局がうるさい、公取がうるさい、じゃ念書を書いてちょうだい、そういうことが横行しております。白昼堂々と脱法行為として行なわれておるという事態にかんがみまして、そのような念書を徴求して、そういうような貸し出しを行なっておる事実があるかないか、これはひとつ大蔵省で十分実態調査の上、もしあらばこれの対策を立ててもらいたい。そのような脱法行為を不可能ならしめるための完ぺきな行政措置、法的措置がとられてしかるべきである。書きようが悪いからそういうことをやられるのですよ。書きようをよくすれば、そういう余地をなからしめるのだから、そんなことは当然の事項だと思うのです。いかがですか。
  74. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 その点、全く御指摘のとおりと思います。この点は、検査等を通じて、いわゆる本人のその意に反して拘束をされておるというようなことでありますならば、それはびしびし是正をしていかなければならない。ただ問題は、判定が非常にむずかしい、微妙なところもございますので、今後十分くふうをいたしてまいりたいと思います。
  75. 春日一幸

    春日委員 私はほんとうにこの問題は判定がむずかしいと思うが、そのむずかしい判定は、この際いいものはいいのです、悪いものは悪いのだから、いいものを悪くわれわれは表現しておるわけではないのですから、どんどん公取へ告発したらどうですか。そうして、公取は検察権を持っておられるのだから、したがって、行政機関であると同時に検察機関なんだから、悪いかいいか、正邪の判別を厳粛に行なって、悪いものは法に照らしてこれを処断する。銀行の頭取であろうと何であろうと、これを懲役二年以下に処すとあるのだから、だれか頭取の一人や二人懲役へ入れてごらんなさい。一ぺんにこんなものは解決してしまう。一切告発してもらいたい。むずかしいからといって、何もやらない、判断もしない、意思表示もしないというようなことでは、私は実はあがらないと思うのです。  私は、本日はもう時間が参りましたので結論といたしまするけれども、ただ、この自粛通達をずっと読んでみて、現状に照らし、そうして独占禁止法と照合して判断すると、すらすらと読んでみただけでこの二つの問題がある。いまの相互掛け金方式あるいは定期積み金方式を、別途契約を行なった場合に、不公正なあるいは不当とおぼしき歩積み、両建てよりもはるかに高いところの金利負担を借り受け人にしいておるという現象がこういうふうにあらわれておることは、われわれがいまやあらためて事実としてこれを認識し、これに向かって対策を立てていかなければならない段階であると思う。この基準は、その当時、山中委員長のもとにおいて申し上げましたように、最大公約数でひとまずこれをやろう、これが角をためて牛を殺す形になっては相ならぬので、前駆的処理としてはとりあえずこのことをなそう、このことをやってみて、効果があがらずんば、一方公取においては特殊指定を行なう、あなたのほうにおいてはさらに厳格な措置を行なう、こういうことが予約されておる事柄であります。したがって、本委員がいま申し述べましたのは、言うならば、氷山の一角である。物理的に申し上げれば、氷山の水面の上にあらわれておる部分は、水面に沈下しておる部分の十分の一と、これは物理の法則が明確にこれをあらわしておる。いかに多くの不正が行なわれておるか、十分ひとつ想像し、判断し、事態を重視して善処いたされたい。  以上のことを強く大蔵大臣並びに新しい公取委員長に要望いたしまして、私は、あと、運用預かり、これは松井君に御出席を願っているんだが、銀行預金と同じように、現金預かりと同じように……。(山中(貞)委員「それはいい質問だからあとにしたら」と呼ぶ)それじゃ、山中君の保証に基づいて、運用預かりについての質問を留保して、いまの歩積み、両建てだけひとつしっかりやってもらう、こういうことにいたしまして、残余の質問は、次会にこれを回します。  以上で私の質問を終わります。
  76. 三池信

    ○三池委員長 本会議散会後委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後一時十七分休憩      ————◇—————    午後四時四十四分開議
  77. 三池信

    ○三池委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  通行税法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。山田耻目君。
  78. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 通行税法の一部を改正する法律案が提案されておるわけでありますが、今回提案をされました通行税法の一部を改正する法律案は、国鉄の運賃値上げが通ったものと一応仮定をいたしまして出されたものでございまして、利用者にとっては、その部分については利益が確保されますので、その部分についての質問は一応省略をいたしまして、通行税法そのものについて大蔵大臣見解をお伺いいたしたいと思います。  御存じのように、通行税というのは、満州事変からシナ事変に移行いたしまして、今回大蔵大臣がおとりになりましたと同様に、国債が戦費をまかなっていくために大幅に発行されておりました時代でありまして、軍費の調達を進めてまいりますために、昭和十三年にシナ事変の特別税として設けられたものでございます。昭和十五年に法律第四十三号で通行税法として独立いたしたわけでございますが、自来、シナ事変、第二次世界大戦と、不幸がずっと続いてきたのでございますが、戦後の復興期の過程を通りまして、こうした、ある意味では目的税でありました通行税というものが、逐次改変をされまして、今日残っておりますのは、鉄道に対する一等の料金に対して課税がなされる、あるいは航空機に五%の若干低い税が課税せられる、こういうふうな変遷を遂げてきたのでありますが、今日の段階でそういう歴史的な税設定の過程をも考えてみまして、なお存続する必要が一体どこにあるのであろうか、通行税設置の意義というものについて、まず御説明をいただきたいと思います。
  79. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 通行税は、お話のように戦時中につくられたものであります。自来ずっと通行税というものが存続しておるわけですが、税というものは、古い制度というもの、つまり、国民に慣熟をしておる、なじんでおる制度は、これは捨てがたい味を持っておるわけであります。そういうことで、私は必ずしもこの通行税が悪い税であるというふうには存じませんが、しかも、これが一等の料金にかかるわけであります。一等の客だけを対象としておるという点を考えてみましても、国民から非難を受けるというような点はない、もう自然のうちに五十億円くらい国庫に金が集まる、そういう非常に妥当な税である、こういうふうに考えておるわけであります。
  80. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 まあ、古いからなつかしい、だから残す理由の側面もあるかのごとき御発言でございますけれども、古ければ何でもいいというわけじゃございませんで、この種の税というものは、ある意味では目的を失った税でございますし、一等だからお金になるということでは、税本来の公平の原則という面から見て妥当を欠くということになるような気がしてなりません。一等だから課税するということではなくて、課税対象にするには、それにふさわしい根拠がなくては、それは多少にかかわらず、やはり税の公平性という面から見ますと、国民の不満というものは、私は解消されないものであるというふうに思うのでありますけれども課税対象としておる根拠というものが一等ということだけでは、私は、大蔵大臣の御答弁としては不明確のように思いますので、その点について、重ねて聞かしていただきたいと思います。
  81. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 物品税にも同じような問題があるわけです。この品物は物品税対象として、あの品物は対象としないのはどういうわけだというような、いろいろな判断の問題もあります。また、課税限度を物品税については設けまして、幾ら以上のものは課税をするというようなこともいたしておるわけであります。物品税あたりに比べまして、通行税がどこか何か欠点があるか、私も了解できないのでありますが、とにかく、多年なじんだ税でありまして、これをことさらに廃止するとか、そういうことを考える必要はない、こういうふうに考えております。
  82. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 なじんだ、なじまないということになりますと、新しく税金をおつくりになるときには、なじまない税の始まりであります。そうなりますと、やはり私は税制というものに、ついて、そんな安易な気持ちで創設をされていくというものであってはならぬと思います。しかし、あなたがおっしゃっているように、一等だから、なじんだ税であるからということの立場ということになりますと、一体船舶の一等船室というものは、国鉄のあの一等車などに比べて格段の違いがございます。その奢侈性から見ましても、格段の違いがございます。最近の自動車などにいたしましても、御存じのように、冷暖房つきで、しかも手をとるようにサービスをする案内嬢がつきまして、全部座席指定制で、そういうバスの発達に伴って見られていくような、あるいは国鉄の一等と対比できるようなものになぜ課税を免除されたのでございますか。なぜ国鉄の一等だけお残しになったのか。なじみ論からいってもそれはいただけませんし、そうして一等という概念からいってもいただけませんし、この点をひとつ御答弁を願いたいと思います。
  83. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 五十億円というふうに先ほど申し上げましたが、それは私ちょっと記憶違いで、国鉄だけとるとそういうことになります。そのほかに航空機、この旅客にも課税をいたしておるわけです。また船につきましても課税をいたしておるわけであります。決して国鉄だけじゃないのであります。
  84. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 大体、大臣は、こんなこまかいことはなじみ論だから、どっちでもいいというお気持ちでお答えになっておるのだろうと思いますが、国鉄の通行税の三十九年度の予定は二十七億円でございます。決して五十億円じゃございません。それから、かけられておる航空機の五%の税、これらを含めて見て、三十九年度は四十億二千四百万円、四十年度の補正後の予算で四十五億一千百万円、こういうふうに計上されておるというふうに記憶をいたしております。数字の間違いは、私ども専門家でございませんから、私が間違えておるなら御指摘いただきたいと思いますけれども、私は、そういうように通行税の多寡をいま申し上げているのじゃないわけです。いわゆる国鉄の通行税に対しては運賃料金の一割でございます。航空機の税は運賃料金の五%、船舶なりバスについては、一等でも課税がなされていないというふうに、私は通行税の歴史の変遷の中で承知をしておるのですけれども、なぜ一体そのように国鉄だけ一番重い課税対象になさっておるのか。その意味について、あなたのなじみ論では私はいただけないものがあると申し上げておるのですから、その点をひとつ答弁してください。
  85. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 政府委員から答弁させます。
  86. 塩崎潤

    塩崎政府委員 技術的な問題でもございますし、多分に沿革的なものでございますので、私から大臣にかわりましてお答えをさせていただきます。  まず第一に、通行税の課税の内容でございます。三十九年度の国鉄が納めていただきますところの通行税額は二十六億三千三百万円、航空機が十三億五千四百万円、電車が五百万円、汽船が二千九百万円、計四十億二千百万円と見ております。四十年度は、国鉄が三十億百万円、航空機が十四億七千六百万円、電軍が五百万円、汽船が二千九百万円、計四十五億一千百万円、四十一年度におきましては、運賃の値上げも見込んでおりますので、国鉄が四十七億四千八百万円、大体大臣のおっしゃいました五十億円というのがこの数字に該当するわけであります。航空機が十九億五千六百万円、電車が百万円、汽船が三千二百万円、計六十七億三千七百万円、こういう見積もりでございます。  そこで、第二の問題は、お尋ねの通行税の対象によりますところの税負担のバランスの問題であります。沿革的に種々の考え方がございますが、昔は、御存じのように、通行税が悪税といわれましたときには、もうすべての等級に対しまして、たとえば五%というような課税をいたしておりました。これが非常に悪税だということで非難をされておったのでございますが、昭和二十四年にシャウプ勧告が出まして、織物消費税廃止される際に、大衆的な課税につきまして全般的な検討が行なわれたのでございます。その際に通行税につきましても検討が行なわれまして、通行税を奢侈的な消費、高級な支出に対します課税というふうに観念しよう、こういうふうに考えまして、一等と二等、船ならば特等と一等というような課税のしかたをしたのでございます。そのかわり税率は二〇%というふうな税率を設けました。そのときには、やはり同じ交通手段を利用いたします際に、格差があって利用される、たとえば一等、二等、三等といった際には二等まで、船は、御承知のように、特等から一等、一等の甲乙とか、そんな差がありますので、一番最低のものから何倍以上のものを汽車の一等、二等に該当するような見方にしようというわけで、一つの税の技術的な見地から調整を加えまして課税をいたしておったのでございます。これが二〇%の税率で課税されておったのでございますが、昭和二十七年に、航空機につきましては、御存じのように、航空機事業は日本でまだ育成の段階であるということで、税率は国鉄、汽車あるいは汽船は二〇%でございますが、飛行機は一〇%、こういうふうにされまして、特別措置法の中で規定されて、いまでも期限つきでさようになっております。これは政策的な理由から——山田先生いま疑問を持たれました、バランスをくずしている、これは政策でございまして、育成の時代が過ぎますれば、当然現在ならば一〇%の率に上げられるのであろう、かように考えるのでございます。そこで、二〇%の率が反省されまして、結局これが三十七年に一〇%に引き下げられたのでございます。さらにまた、一時は遊興飲食税等の関係で、寝台料金も二等であっても課税するという時代がございましたが、これは大蔵委員会でも非常にやかましい論議になりまして、結局、寝台料金は三十五年に免税点千円未満ということで廃止されました。結局、国鉄ならば一等、船ならば特等というのが国鉄の一等に該当するということで通行税の対象として取り入れられて今日に至っておるのでございます。  そこで、私が先ほど申し上げましたように、課税の根拠に関連いたしまして、なぜ汽車では一等だけ、また船では特等だけを特に引き出して課税するかという根拠を、若干ふえんして申し上げたいと思います。この課税の根拠は、非常に基本的な問題であるだけに、なかなかむずかしい問題でございますが、私どもはかように考えております。いまでも直接税よりも間接税、あるいはまた、消費税へ少し重点を置くべきであるという声が強いことは御存じのとおりでございます。消費と貯蓄に分かれます所得の分配、このうちで、消費に対してもう少し重点を置き、ゆとりある家計をつくるというようなことが税制でとれないであろうか。そこで、消費をつかむ方法といたしまして、税制で種々の手段があるわけでございます。物品税あるいは酒税、たばこ専売益金等はその一つの手段でございます。本来ならば、外国の学者の言うごとく、個人所得のうち、消費に幾ら割り当てられて、幾ら貯蓄に向けられるとか、その消費全額をつかまえまして、そのうちの過度な消費の部分だけ一定の控除をいたしまして、その上回る部分の消費をつかまえて、あるいは累進税率で課税するというようなやり方ができますれば、これは本来的な消費税として一つ成り立つのではないかと思うのでございます。しかし、これはなかなか技術的にむずかしいし、貯蓄控除みたいなかっこうになりますし、現実どこの国でも行なわれません。そこで、その消費をつかむ一つの手段といたしまして、概括的な方法でございまして、若干便宜な方法でございますが、物品税のように、製造者の段階で、特定の商品を、一つのぜいたくな消費あるいは高級な消費と見て課税する、あるいは通行税もその一つの態様といたしまして、多分に事業の執行に関連する面もございますけれども、一等の消費、一等への支出というものは、やはり消費税対象といたしまして課税されるべき担税力のある対象ではないかというふうな考え方がとられているのが、現在の分類的な消費税の体系であると考えております。しかし、それは十分ではございません。先ほど大臣の申されましたように、たとえば、織物が落ちておるのではないか、また、消費のうちでもぜいたくな消費に対しましてまだまだ落ちているではないか、それをつかむ方法はなかなかございませんけれども、残念ながら、技術的に考えられる体系の一つとして現在通行税があるのではないか、こんなふうに考えております。
  87. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 たいへん苦しいお話のように聞きますけれども一つは、航空機は五%にして、鉄道のほうは一〇%である、この違いは、企業の育成ということで特別措置をしたのだ、しかし、もう最近では、航空機もこの間事故を起こしまして、運輸大臣の談話じゃないけれども、民間航空のほうはできるだけ統合運営をする時期にきたんだ、こういう御発言をなさっておるくらいで、もう大体運営なりあるいは制度なりの段階で統合運営されるべき時期にきつつある。だから、いま特段に通行税をまけてやって、企業育成をはからなくてはならぬというふうに私たちは航空機をながめていないわけです。むしろ、今回国鉄の運賃値上げの中に見られてまいりましたように、私たちはもちろん反対いたしておりますけれども、国鉄の経営事情というものは非常に苦しい、こういう段階で、なおかつ国鉄に一割の課税をし、航空機には五%にし、船は云々というように、そういう段階的差別を設けて徴収をしておる。バスのほうは、これは無税である。バスのほうも、御存じのように、ああいうふうに国道が整備され、舗装されまして、まさに国鉄に対する競争事業としては脅威に値する発展を遂げつつあるわけです。こういう段階で、ここは無税だ、こういうように考えてまいりますと、企業の育成ということばは、一つの差別をつくるかもしれませんけれども、これが現実に適合しておるかどうか、この点からいって、いまのあなたの御説明に一点私は納得しがたいものがあるのです。  それから二点目には、奢侈的なものである、しかも、寝台料金については、これは宿泊料など、遊興飲食税の基準のバランスをとってつけていったのだ、そういうようになりますと、御存じの国鉄を走っておる一等のB席上下寝台、カーテンで仕切られているやつでございますけれども、ホテルのほうは、最近は冷暖房、トイレ、テレビ、そうして冷蔵庫がついておる。あのB席をごらんなさい。隣のいびきがやかましくて寝られやせぬです。子供さんが最近多く乗っておりますので、夜中にむずかって寝られやしない。そうして、ちょっと足を出しておると、通路の人にけ飛ばされる。一体こういう奢侈性というものとどういうバランスがここでとれていくのであろうか。ことばの言い方としてはいろいろあるのでございましょうけれども、あの国鉄の一等寝台B席というものは、まさに国民宿舎以下なんですよ。一体こういうのはどこにバランスがあるのであろうか。だから、あなたの言っておる奢侈性なりバランス論というものからいっても、私はいただけないものがある。ところが、一等というものは、これは利用する旅客も少ないし、その意味での奢侈性があるかもしれぬということなんでございますが、国鉄の今村常務ですか、お伺いいたしますけれども、最近の社会情勢の変化あるいは経済変動、なかんずく高度経済成長政策というものが片側にひずみを生みましたけれども、片側では、起こってきた現象として、大都市集中に人口が変化しつつあります。経済圏と経済圏とが非常に結びついて動いてきた影響もございまして、国鉄の旅客輸送の中に占めておる一等旅客の数、そして、この一等旅客の中で、特に急行という問題を私たちは軽視できません。最近は非常に急行を利用する人がふえてまいりました。国鉄のダイヤを見ましても、俗にいう鈍行列車というものは、十対二の比率を占めておる現状であります。そのように急行列車がふえてきたということも、そういう社会的な要請あるいは経済的な変化による結果ということも言えるでございましょう。こういう急行列車を利用する旅客の平均乗車キロ、これはどのくらいに伸びてきているか、それをひとつ御説明いただきたいと思います。
  88. 今村義夫

    ○今村説明員 お話のように、最近の旅客の状態をながめてみますと、汽車、特に急行なり特急を利用されるお客さんが非常に多いわけでございまして、またその中でも、特に時間の関係から用務旅客というものが非常に多くなっております。もちろん観光客も多いわけでございますけれども、五〇%以上は用務旅客でございまして、そういう方々は、大体新幹線ができましてからは新幹線利用の皆さまも多いわけでございますけれども、寝台を利用するお客も非常に多いわけであります。それで、乗車キロも年々上がっておりまして、毎年十キロずつくらいは伸びておるような状態でございます。
  89. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 もう一つ答えていただきたいのですけれども、急行の利用度が非常にふえてまいりまして、一人の平均乗車キロがどれくらいになっておるかということと、それから一等旅客の質、どういうお客さんが多いか、物見遊山が多いのか、いま用務用の人が約五〇%とおっしゃっておりますが、この中にはどういう人々が多いのか。これは、国鉄は実態調査をなさっているはずでありますからおわかりだと思いますので、お知らせをいただきたいと思います。
  90. 今村義夫

    ○今村説明員 一等の旅行目的別の調査を国鉄でいたしました実績で申し上げますと、公用なり社用なり商用という関係のお客さんが大体五一%程度を占めております。それから研修あるいは修学、体育というような関係なり、あるいは家事用務、慰安関係というようなもので四六%程度を占めておりまして、その他の客が約三%ということでございまして、大半は公用、社用あるいは修学、研修というような、非常に必要なる旅行のお客さんが一等のあれでは大きな率を占めておるわけでございます。
  91. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 お答えになりましたように、最近の一等の旅客の内容というのは、五二%弱が公務員の公用旅行、それから会社員の社用旅行、残りの四五、六%が研修だとか用務、見学の旅行である。こうなってまいりますと、社会情勢の変化に伴いまして、この旅客の中に奢侈性というものがどれだけ見つけ出されるだろうか、一般化しておるのじゃないだろうか、こういう点を特にお考え願わないと、あなた方の課税対象の根拠になっておる、一つの習慣である奢侈性であるとか、こういうものはかなり変わってきておる。その意味では、今日課税対象にならぬのじゃないかということを、税制の上から考えていただかなくちゃいかぬ時期にきておるという気がしてならないんですよ。それから今村さん、平均乗車キロは一人二百七十八キロでございますから、一応よく御記憶になっていただければいいと思うのです。そのように、急行旅客も非常に乗車キロが伸びてきております。これは何かというと、社会情勢なり経済圏の変化、いなかから都会に人口が移動しつつある現象がこれを物語っているわけであります。これはあなた、政府政策の一環じゃないですか。寝台料金だけじゃなく、急行料金にまで課税をしておるのでございますよ。そうして、その根元の運賃にまで課税しているのでございますよ。これを三重パンチと私は言っているのです。一等運賃にも税金をかけ、そうして急行がふえてきて、遠距離旅客は急行に乗らなければならぬ、急行に乗れば一割の課税、あのB席の一等寝台もこれに一割の課税、そういうふうな課税のしかたというのは、あなた方がおっしゃっているような一つの通行税というものの目的が那辺にあるかは別として、私はとんでもない税のかけ方だという気がしてなりません。一つのセットでしょう。足に税金をかけ、胴体に税金をかけ、頭に税金をかけるのです。個々まちまちのかけ方なんですね。政策上、どんな申し開きをしても絶対当てはまらないじゃないか。特に急行を最近増発するというのは、ただ単なる国鉄の営利性に基づいたものじゃございませんよ。そういう社会的な要請、国家的な要請、国民的な要請に基づいて行なわれておる変化の中に起こった急行の増設でございますから、この点、少なくとも税の対象からはずされるということが、行政官としてあなた方の当然考慮されるべき仕事の大きな一つじゃないですか。この三重パンチの食わせ方というのは、どんな角度から見たっておかしい。その点について、いや、これが正しいものだという何かあれば、お話いただきたい。
  92. 塩崎潤

    塩崎政府委員 三重パンチというお話でございますが、私どもは次のように考えております。  先ほど申し上げましたように、消費支出、しかも、それが一つの高級なる消費支出と言ったほうがいいと思います。ぜいたくというと非常に語弊がございましょうが、一般の人が支出する以上の、一般の支出するのとはちょっと違った高級な支出、たとえば、一等旅客を私ども調べてまいりますと、国鉄の総旅客人員は、三十九年で十九億七千五百万人の乗客がございますが、そのうち、一等を利用された方は千九百二十七万三千人、まず一%、こういった方々の支出をつかまえて課税しようというのがねらいだと思うのです。その課税の根拠は、先ほど申し上げましたように、通行あるいは国鉄の利用という機会をつかんでおりますけれども、本来的には、普通の消費以上の、上回る消費支出、これをつかまえたい、こういう気持ちであります。しかし、先ほどおっしゃいましたように、社用があり研修がありというようなお話になりますけれども、その中にもやはり普通の消費支出と違った面があるとして、高級な支出の面でその点はある程度許されるのではないかという面がございます。  さらにもう一つ、いまの三重パンチの強烈なパンチ論でありますが、私どもは、いま申し上げました消費全体をつかんで課税すべきであろう、一等に乗られる方は、同時にまた、その利用の対価といたしまして、急行を利用いたしますその利用料金を含めたところの消費支出全体をつかまえて課税するほうが、通行税の目的に沿っておるのではないか、こんな考え方で、もちろん政策でありますから、少なくとも急行料金をはずせという議論はできると思います。しかし私どもは、消費支出全体を、しかもまた、高級な消費支出を課税対象とするのがよいという考え方でありますので、一体として課税するほうがよいかと思います。そういうふうにしないと、現在では、寝台料金、急行料金と密接な関係がありますところの船などでは、御存じのように、種々の部屋の利用のタイプが別途に区分されて要求されておりますが、これを含めて課税するということのほうが、変な課税の回避というものがなくて済むのじゃないか、こんなふうな考え方をとっておるのでございます。過去において、二等の料金を、基本料金をはずして寝台料金だけ課税しておりましたときには、逆な意味でおしかりがこの委員会でずいぶんございまして、二等をはずしたならば寝台料金もついでにはずしたらどうかというお話ではずしたのでありますが、いまは逆な論法で私に迫っておるのでありますが、私は、一体として一等旅客の利用料金に課税するほうが、通行税の本来の趣旨に合っておるのではないかと考えております。  もう一つふえんさせていただきますならば、とにかく、本委員会でいろいろおしかりを受けるのは、所得税法人税のように、所得に関連する、また支出に関連するそのための税でございます。その課税の適正をはかるために、現在のところ相当な調査をやらなければなかなか公平な課税ができないのが現状でございます。その調査のあり方についていつもおしかりを受けるのでありますが、こういうような通行税、消費税系統はその面のトラブルが少ない。そういうような面から別な利点のある税である。この点は、大臣の言われたなじみある税ということば、また、ことわざにも、旧税は良税、新税は悪税ということがいわれておりますので、かような意味一つ課税の論拠が考えられるのではないか、かように考えております。
  93. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 どうも説明として十分納得がいかない。全く必要な税金であるというふうにはどうしても受け取れない説明なんですよ。  そこで、国鉄のほうに伺っておきたいのでありますが、最近、新幹線ができてまいりまして、東京・大阪間を走っておるわけでありますが、航空機で東京・大阪を通う料金と、新幹線を一等で大阪に通う料金とを見てまいりますと、わずかに五、六百円の開きしかございません。国鉄がその程度安いだけでございます。したがって、鉄道と飛行機といったら、社会通念では飛行機がいいにきまっているし、早いにきまっているし、乗りますと、弁当まで食べさせてくれるのでありますから、サービスもいいということになります。その差がわずか五、六百円であるということ、時間的にも非常に違う。こういうことの中には、もちろん国鉄に課せられておる高い税金による顧客の喪失、客が航空機に流れていく、こういうのが、ただ単に新幹線だけに限らずに、バスとの関係、あるいは他の地域に及ぼしておる航空機との関係で、国鉄が企業として、あるいは、そういう競争の立場に立っておるバスなり航空機というものと並べてみて、国鉄経営上かなり負担になっておるのではないだろうかという気がしてなりませんが、これらに対してどのような理解をされておるのか、これについてお聞きしておきたいと思います。
  94. 今村義夫

    ○今村説明員 お話のように、航空機なりあるいはその他の交通機関と鉄道は、最近におきましては、一応競争的な立場に立っておるわけでございます。われわれも、サービスをよくすること、あるいはスピードを早くすることによって、いろいろ経営の努力をしておるわけでございますが、お話のように、航空機はもうスピードの点においては新幹線といえどもとうてい及ばないわけであります。この時間的な要素がお客さんに与える利用価値というものは、非常に大きいわけであります。したがって、東京・大阪ももちろんでございますが、特に激しいのは、東京・北海道間におきましては、全旅客の約一割ぐらいしか——一等のお客さんは航空機のお客さんの約一割ぐらいしか鉄道には乗っていただけないというようなことでございまして、そのような意味におきましても、かなり私どもとしては大きな影響を感じておるということでございます。
  95. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 お聞きのように、通行税というものが、国鉄の、特に新幹線の一等旅客を圧迫してきておる。よく見ますけれども、せっかく世銀から借金までしてつくった新幹線の一等客室を見ますと、五、六人で占有しておる状態を随所に見受けます。これは国鉄の出過ぎた新幹線建設だということになるかもしれませんけれども、しかし、御答弁になっておりまする企業育成という面から見ますと、これは国鉄に大きな負担をかけておるということになることは間違いないと思うのです。その意味で、特に航空機の場合と対比してながめてみますならば、この際やはりその立場からもこれを廃止していく、そうして、自由な立場で競争をさせるということのほうが正しいのじゃないか。だから、あなた方がおっしゃっているように、奢侈性なり企業育成ということで段差を設ける、あるいは課税をするという根本的な思想というものは、今日のこの段階では、国の税制のあり方としても、国民に対する課税のあり方としても通らない。しかも、利用者はかなり広くなってきておるという面から見て、ひとつ、この通行税というものは廃止なさる用意並びに検討というものはないのか、お答えいただきたい。大臣どうでございますか。
  96. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 将来の問題としてよく考えてみます。
  97. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 きょうも本会議で、総理から近い将来という御答弁がありましたし、あなたもいま将来ということでありますが、百年後も将来でありますし、来年も将来であります。これは今日の税制を議論するときには、そう抽象的なことばだけではいただけないものがあるような気がします。  そこで、昭和三十七年三月九日で、ございますが、この委員会で自民党の岡田修一さんが提案なさいまして、附帯決議として、通行税については、改廃について検討する、こうなっておりますけれども、一体この附帯決議というものは、形式的におつけになったのか、院議というものを尊重なさって、そのような検討をしているということがおありなのか、その立場をひとつ説明をしていただきたいと思います。
  98. 塩崎潤

    塩崎政府委員 税制問題につきまして、政府におきましても税制調査会がございまして、税制全般見地から検討し、その間の過程におきまして、各税目について検討していることはもちろんでございます。しかしながら、何と申しましても、現在の税制におきまして、常に検討対象として集中されるのは所得税であり、法人税であり、また相続税であるというように、直接税が多いわけでございます。むしろ、消費税を何かうまく円滑に徴収する方法はないかという声が強いのが実情でございまして、なかなか通行税の廃止というところまではまだまいっておらないのが、これまでの検討の結果でございます。しかしながら、そういいましても、個別的な消費税物品税のように、個別的に業者の負担も伴いがちの消費税については、相当検討すべき余地があるのではないかとかいうような声があり、またその検討が行なわれてきているのは事実でございます。そんな意味で、非常に通行税のあり方もむずかしいのでございますが、ただいま大臣のお話にもございましたように、今後税制全般のあり方から見まして、ことに直接税、間接税あるいは収得税、消費税といったような角度から検討してまいりたい、かように考えております。
  99. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 私がお伺いしたのは、三十七年の三月九日に次のような決議がなされているのです。「通行税については、現在の旅行目的その他諸般の状勢にかんがみ、政府において近い将来にこれが存廃について検討すべきである。」この近い将来がここではすでに四年目になろうとしているのです。また、きょう委員会で私の質問に対して、近い将来ということでございますが、一体その近い将来ということについて、それはものをおっしゃればそれで責任が終わったというふうなことに置きかえられることばであったとしたならば、私は、税の問題を取り扱っていく国会の審議は、これほどばかばかしいものはないと思うのです。だから、その近い将来について、私は、もっと真剣に、しかも具体性をもって近い将来という立場を明らかにしてもらわないと、審議するのにも熱が入りませんし、国民もあほらしいという感じを持ちますので、その点について御答弁を求めたわけであります。しかし、残念でございますが、それは近い将来でしょう。その点、大臣、やはり近い将来でございましょうか。
  100. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 最も近い将来でございます。
  101. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 その近い将来に「最も」がついたので、しんにゅうがついたのですが、その「最も」というのは、来年あたりの時期に検討されるという腹づもりを前提として「最も」ということばをつけ加えられたのか、それは表現として述べられたにすぎないのか、これはどうでございましょう。
  102. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 きょうも本会議で申し上げたのですが、税制改正を長期にわたってやっていこう、こういうわけです。そのプログラムは、そのときの経済情勢、したがって、それを反映しての財政状況というものとの関連でやらなければならぬ、こういうことになるわけでございます。その時点が、四十二年になりますか、四十三年になりますか、これはわかりませんが、そういう際には通行税問題を真剣に検討する、こういうことを申し上げておきます。
  103. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 まだかなり先の長い話だというふうなのが、「最も」という冠詞をかぶせられたことに通ずるというふうな気がしてなりませんが、一刻も早くひとつその時期を育て上げていただきますように要望いたしたいと思います。  最後に一つ、これは私の全く未熟な私案でございますが、国鉄にいたしましても、航空機にいたしましても、あるいは船舶の一部にいたしましても、こういう通行税が日支事変から始まった歴史的な背景の中で今日まで残存をいたしておるのでありますけれども、最近航空機のたいへんな事故がございましたし、鉄道のほうも、昭和三十七年に三河島で百六十一名という人が死んでいく大惨事が起こっております。その翌年の三十八年には鶴見で同じく百六十一名という死者を出す大惨事が起こっております。最近の国と国民の輸送要請を引き受けていくために国鉄が果たしている実態というものは、言語に絶する過密ダイヤの中で果たしておるわけであります。まさに平均乗車効率の四倍以上の積め込み主義をとっておるのでございます。依然として緩和をされません。これから事故が起こるといたしましたならば、いままでの死傷事故三けたの数は四けたになるのではないかと心配をされております。しかし、依然として国鉄の保安対策というものは、刮目していくような改善を見つけ出すことはできません。全く遅々とした進展の状態であります。ここで取られてまいります通行税というものが、ある意味では、ガソリン税と同じような目的税としてこれが使われていく、非常に徴税自身にもいわれなき根拠という形が明らかになっておるだけに、この際、やはり一日も早く廃止をしていただきまして、まさに名実どおりの悪法というものを解消していただくということが先決でございますけれども、その分については、税制検討の中で約束をしていただきましたので、私も今日ただいまの問題としてこれ以上追及することはいたしませんが、その過程まで、いまの通行税というものが、国鉄なり各輸送機関の保安整備を充実をさしていく、こういうことに限って還元投資をしていくという方向に回していくならば、安全輸送をきわめて重要視しておるそれぞれの輸送機関に対して、国として取り上げていった通行税が、まさにその限りにおいては効果を果たしていくものだと私は思うのです。そういうふうな還元融資措置というものがとられないものかどうか、この点を最後に一つお聞きしておきたいと思います。
  104. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 目的税までするのは、これはなかなか困難と思います。つまり、財政の弾力性をそれだけ拘束する、こういうことになるのですが、ただいま御指摘の安全という問題につきましては、御説はまことにごもっともでありますので、そういう方向努力をすることにいたします。
  105. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 そういう方向でひとつ検討をお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  106. 武藤山治

    ○武藤委員 関連。  いま、大臣、国鉄の通行税収入が二十六億三千三百万円ある。これを山田委員は、国鉄の今日の経営実態から見て、これを国鉄の収入になるように、目的税的にこれを変更したらどうか。——大前提は廃止ですよ。しかし、主税局長廃止は、と言って、いろいろ逃げておるから、廃止できるのなら、これを目的税として国鉄収入に入れたらどうか、こういういい意見を述べておる。近い将来に検討するといま申されましたが、国鉄当局、その案はどう思いますか、あなたいまうしろで聞いておって。
  107. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いま山田さんのお話は、そうじゃないのです。私もはっきり覚えておりますが、国鉄はじめ輸送機関に回すことを考えたらどうだ、こういうお話なんです。私は、目的税にすることは、これは財政の弾力性をなくす、こういうことでぐあいが悪い、しかし、安全問題は非常に重要な問題だから、お話の気持ちを十分私ども受けて行政に当たります、こういうことを申し上げておるわけです。
  108. 武藤山治

    ○武藤委員 関連ですからこれでやめますが、大臣も御承知のように、今回の予算書を見ると、国鉄の借金だけでも、短期、長期合わせて一兆四千二百六十億円、これだけの膨大な借り入れ金を国鉄は持っておる。これに三年計画の新しい計画がさらにつけ加わったら、国鉄の借金はたいへんなことです。これはどういう方法でなくせるという可能性——国鉄当局ですよ、この借金をなくせる方法、可能性というものはどう考えておるのですか。将来の青写真ですが、これだけの借金をどういう方法でなくせるのですか、ちょっと聞かしてもらいたい。
  109. 今村義夫

    ○今村説明員 お話のとおりに、膨大なる借金をかかえておるわけでございますが、国鉄といたしましては、今回の運賃の改正にあたりまして、第三次長期計画をいま立てておるわけでございますが、この過程を通じまして膨大な資金を要するわけでございますし、また、借金の重圧に苦しんでおることも事実でございます。したがいまして、これに対する財政措置といたしましては、政府のほうの御援助をお願いして、財政投融資なりあるいは出資ということをお願いしておったわけでございますが、さらに、国鉄基本問題懇談会の意見に従いまして、そういうこともいろいろお願いすると同時に、今回運賃の是正をお願いするということで考えておるわけでございます。しかし、これをお願いいたしましても、まだ大きな借金を背負う、しかし、経営的には何とかやっていけるというふうな考えに立っておるわけでございます。
  110. 三池信

    ○三池委員長 横山利秋君。
  111. 横山利秋

    ○横山委員 最初に、ちょっと気にかかることを大臣に伺うのですが、先ほど本会議で大臣の答弁を聞いていまして——歴代の大蔵大臣の中で、私は福田さんが一番理論的だと思っている。いや、決して持ち上げるわけじゃないのです。意見は違いますけれども、やはり一番理論的にお答えなさる。財政演説としてもたいへんよかったと思う。ただ、きょうは、それにもかかわらずラフなことを一つおっしゃって気にかかった。というのは、私のそばでも雑音がそれで起きたのですけれども、ピース一個の減税にも足りないという質問に対して、あなたは、百万円以下の人はピース三個しか税金を出していないのだから、三割三分三厘のピース一個ならいいほうだ、こういう御答弁があったのです。これは非常にラフな御意見で、しかも、よくわかる説明ですから、みんなもそういうものかなと思った。どういう確信と根拠があって、百万円以下の人がピース三個に該当する税金しか払わないとおっしゃったのですか。
  112. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 主税局長に詳細に御説明いたさせます。
  113. 塩崎潤

    塩崎政府委員 現行所得税で、年給与百万円の標準世帯の方の年税額は四万九千二百十五円でございます。そういたしますと、一日当たり百三十五円が所得税額になります。そうなりますと、ピース三個とちょっと、こういうふうになります。今度の減税額は、おっしゃるとおり初年度におきましてピース一個くらいでございますが、それを大臣がおっしゃったのだ、かように思っております。
  114. 横山利秋

    ○横山委員 そういう簡単な、概算的なやり方は、人をだますものです。私の持っているのは、政府が発行した租税及び印紙収入予算の説明である。この「改正案による所得税負担軽減調」のどこを聞いてみても、百万円以下の人で三割三分三厘三毛の人はないですよ。あなたはこれをおつくりになったのでしょうが、どこを開いても、独身者をもってしても、大体減税割合は一四%ないしは多くても一七%です。それから、夫婦子供の場合でも一九%、二五%というところです。中には三〇%、ないしは課税最低限にひっかかる人で一〇〇%という人はある。けれども、実際税金を出しておる個々の状況から考えると、政府のこの具体的な資料の中から、平均ピース三個であって、減税がピース一個である、そういう乱暴な意見というものは通用しないのです。大臣が国会の本会議を通じて言ったことは、百万円以下はピース三個を納めておって、ピース一個を減税する、つまり三割三分三厘三毛の減税であるというのだが、ここのどこにその三割三分三厘三毛があるのですか。
  115. 塩崎潤

    塩崎政府委員 大臣は、三個のうち一個を三割三分とおっしゃられたのかもしれませんが、三十七ページを見ていただきますと、「改正案による所得税負担軽減調」の「給与所得者」百万円のところの欄は五番目でございます。その一番下の欄に夫婦子三人、現行税額は、私が先ほど申し上げました四万九千二百十五円、改正案によりますと、昭和四十一年分が三万七千九百十円、平年分三万四千二百十五円、軽減額が一万一千三百五円、平年分一万五千円、軽減割合は、初年分は二三%でありますが、平年分になりますと三〇・五%と書いてございます。これを大臣はピース三個のうち一個というふうに比喩的に言われたのではないか、かように思います。
  116. 横山利秋

    ○横山委員 それは確かにあなたの言うとおりだ。しかし、この中で三割三分というのは一番いい統計ですよ。あとは一三%、一七%、配偶者で一五%、平年度で二〇%、配偶者子供一人で一六%、二一%、夫婦と子供二人で一九%、二五%じゃないか。そして夫婦子供三人で、初年度で二三%、平年度で三〇%だ。ピース三個の税金を払っておって、一個の減税だということは、いつもの理論的なあなたに比較しては非常に乱暴な意見で、しかもそれが、全部かのごとき錯覚を与える。これはよくないことだ。わかりましたか、大臣。ちょっと頭を下げてもらえば次に移ります。
  117. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ピース三個のうち一個というのを計算しますと、三割三分になるわけですね。実際は百万円の者で三〇・五%なのです。ちょっと三%近く違いがありますが、少しラフに申し上げたのです。(横山委員「そういうことじゃだめですよ」と呼ぶ)委員会ならもう少しすやりますが……。
  118. 横山利秋

    ○横山委員 あなたがそれで通り過ごそうというのなら、私は承知しません。本会議ですからね。ここなら笑いごとで済むと思う。しかし、あなたのはきわめてわかりやすい説明であったから、それでみんながそんなものかいなと思った。ぼくら大蔵委員としては、それはただで済ませませんよ。ですから私は、これがかりに三割三分三厘三毛であっても、承知をしない。なぜならば、あなたがごらんになってわかるように、これは夫婦子供三人だけであって、あとは全部一割から二割くらいのところにおるじゃありませんか。そうでしょう。三割が全平均ならともかく、あとは一割から二割、そのくらいの減税率です。これはいつものあなたに似合わない乱暴な意見で、しかも、ああいう問題はわかりやすいのだから、そんなものかなあと言われたのでは、税金を担当する私どもとしてはがまんのならぬところです。ですから、率直に数字のとり方が間違っておった、計算の統計のとり方が間違っておったと言ってもらわなければ困ります。
  119. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 所得税の階層にいろいろあるわけですから、平林さんがピース一個だと言ったのは、おそらく百万円前後の人をつかまえて、その例として引用されたのだろうと思ったのです。しかし、そういう際には、百万円といえば、いま申し上げたとおり、少し大ざっぱになりますが、ピース三個の納税者だということになるのでそう申し上げたのですが、それで誤解を招くおそれがあるならば、本席でまた詳しく申し上げますが、百五十万円の所得者はお話のとおり一九・三%の軽減であり、二百万円になりますと一六・六%、五百万円になりますと七・八%ということになるわけであります。  誤解を与えたことは遺憾に存じます。
  120. 横山利秋

    ○横山委員 それじゃ、次に移ります。  国鉄は、今度の予算の中で債務負担行為やあるいは継続費は、明年度予算でどのくらいありますか。
  121. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 四十一年度予算におきます債務負担行為と継続費ということでございますが、当初四十一年度に当該年度の国庫債務負担行為としてとりますものは、一般会計で千五十億円でございます。特別会計で千四百四十一億円、それから日本専売公社、国鉄、電電、いわゆる政府機関におきまして四千八十三億円でございます。
  122. 横山利秋

    ○横山委員 国鉄にお伺いしたいのですが、大蔵大臣のお声がかりの「公共事業等の事業施行の促進について」、国鉄もそのわくの中に入っておるのですが、この閣議決定によりますと、「政府関係については、毎四半期の資金計画を毎四半期の開始の日の二十日前までに提出し、遅滞なくこれを決定するものとする。」ということで、まず手始めといたしまして、上半期に六〇%の契約を完了する、現金の支出は四〇%まで行なうということであります。この閣議決定が国鉄において実行し得る体制であると考えるかどうかを伺いたいと思います。
  123. 今村義夫

    ○今村説明員 目下その線についていろいろ検討を進めておりますが、できるだけそういう線に沿うように努力したいと思っております。
  124. 横山利秋

    ○横山委員 これは、去る大蔵省の高官に言わせれば、今回の公共事業の施行の促進は、まさに財政史上革命的なことだとまで呼号しておる。しかも、福田大蔵大臣が、この不況克服のための重要なてこ入れの一環として考えておられることだ。それができるだけ努力をするということくらいでは、私は閣議の決定に忠実とは思われないのですが、できるかどうかということを率直に伺いたい。
  125. 今村義夫

    ○今村説明員 閣議決定の線に沿い得るようにやっていきたいと思っております。
  126. 横山利秋

    ○横山委員 私の言うことに対して十分なお答えがいただきたいのですが、総裁でも副総裁でもないのだから、これはお答えがしかねると思うのです。私が危惧することは、大臣、とてもできないのではあるまいかという感じなんです。この閣議決定、けさ話を聞いておりますと、物品税軽減による価格引き下げに関する閣議了解、ともに私は空文化するのではないか、物品税閣議了解に至っては、これは、ことばは悪いけれども、まあ、ていさいのいいアドバルーンにすぎない、こう思っている。それでも、これはまあこれで別の角度からいろいろ意見があるのですが、あなたの一番中心となっておる公共事業費の事業促進については、たしか昨年、あのにがい経験で一割の留保と相並んだ公共事業の促進が十一月ごろに初めて少し上回ったですね。それを承知の上で、本年大馬力をかけて推進本部を設け、そうして、さらにそれを念査する方式までやっておられるのですが、あなたがどのような決意でこれを推進されようとするのか、そのお考え伺いたい。
  127. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 事業の促進上非常に重大な問題は、予算の御審議は願えますけれども、具体的な個所別の配分ですね、これが従来非常に遅延をしたのです。たとえば、一番大口の建設省に例をとってみます。建設省に例をとってみますと、配分案が内定するというのが、普通でありますと、四月です。つまり、国会が終了しないと配分案をきめない、こういうわけだったのですが、これを一カ月繰り上げてきめよう、そういうふうに思っております。それから、その配分案がきまりますと、大蔵省に対しまして支出負担行為、実施計画の協議をいたすわけです。これが建設省でいいますと、補助事業は四月から六月の間に行なわれております。これを三月中、下旬にいたす、こういうふうになるのでございます。それで、その次に行なわれる計画が支出負担行為の実施計画の大蔵省の承認であります。これが大体建設省の補助事業が六月の上旬であります。それを今度は四月一日、予算が通ったら翌日やろう、こういうふうに考えております。補助金等につきましても、例年五、六月ごろに補助金の申請をいたすものを、今度は四月、予算が通った直後にいたす、それから補助金の交付の決定、これは例年六月、これを四月に行なう、また、支払い計画の示達、これまた六月でありますが、これを四月に行なう、こういうふうに、大体において二カ月従来のものを繰り上げる、こういうことを考えておるわけです。これは政府機関におきましても同様なんです。国有鉄道につきましては、三月下旬に例年配分案をきめておりますが、これを一カ月繰り上げて二月下旬、もう配分案も相当作業が進行している。それから、それを地方局に内示をするわけですが、それが例年は三月下旬になりますが、これも二月下旬に繰り上げる、そういうふうにいたしまして、これを的確に予定表——これは全部の費目についてあるわけですが、これを着実にやっていく、これは各省大臣が責任を持って行なう、公社、公団の長もこれに責任を持つ、こういう態勢でやっておるのです。
  128. 横山利秋

    ○横山委員 私がそれをお伺いをし、とてもできないだろうと言うたのは、もう一つ大きな意味があるわけです。といいますのは、大臣御存じないかもしれませんが、最近地方自治体に非常にたくさんの問題が発生しているわけです。それは、一つ公共事業の返上問題であるが、もう一つは汚職なんです。東京の汚職、それから新潟の御存じの知事の辞職事件を巻き起こした汚職、それから兵庫の山内派の選挙の前古未曽有の汚職、それから熊本県における汚職、それから香川県における汚職、そのほとんど全部が土建が何かかにかの関係関係があるわけです。新潟県は何に一番根本原因があるかといいますと、私現地に行った新聞記者と雑談をしたんですが、もとの原因は新潟大地震だ、新潟の震災だ、火事からだ。あれで土建が殺到して、そして全力をあげて復旧工事をする中に新潟の汚職発生の一番の原因があった。それから兵庫県のあれは山内派、もう御存じのように、建設省関係ですね。県会議員が県会議長室あるいは県会議員会館、そこへ土建業者を十四名集めて、入札資格の取得回数、それから落札回数で割り当てて、九百三十万円集めて、ばれたものですから、約六百万円くらい返した、こういう汚職です。それで、兵庫県は約二十名くらいの県会議員が起訴された。それから、熊本県におきましては、村山派の土建暴力が摘発が進んでおるのですが、県会から熊本市会、それから某商工会議所会頭に至るまでこれが剔抉をされて、たいへんな話題になっている。先ほど本会議で勝澤君とあなたの一問一答を聞きましたけれども会計検査院が摘発いたしました中で、これは建設省ばかりでなくて、各省の建設関係、農林省や運輸省も含みますが、やはり一番建設省関係が多いんですね。いま衆議院の解散、これが本年でしょうか、来年でしょうか、来年は地方議会の選挙がある。ここでいまあなたがそういうことに——閣議了解事項を見ますと、しゃにむに、とにかく公共事業の繰り上げ、これは私がいま申し上げている点について何らのチェックがない、何らの法律、政令の改正もない、現行体制の運用であくまでやろうというわけだ。私が心配しておりますことは、この繰り上げをしますためには、計画の確定から、設計から、用地取得から、それから入札資格の問題から、あらゆるものをどんどんと進めるということになる。いままで県庁や国やあるいは市役所の職員は、いまこの汚職の発生しておる状況について敏感ではあるけれども、しかしまあ、ていさいはなるべくそういうことのないようにというわけで、業者との接触を手控えている。でも、いま背後からもっと早くやれというプレッシャーがかかったのです。早くやれということは、積極的に業者と話し合ってやれということなんです。結果はそうなる。私が心配いたしますのは、いま全国にずっと蔓延しておると思われる土建業界とそれから地方自治体、国をも含むこの汚職と、それから公共事業の繰り上げと、本年及び明年に迫る選挙と、まさにその汚職の温床をいまあなたは知らず知らずのうちにつくり上げようとしておるのではないか。私は、あえて老婆心ながら、先見の明を持ってこれは非常に問題があると思う。もしもそれをやるならば、もっと法律を改正するとか、政令を直すとか、あるいはチェックをする方法考えるとか、こういうことなくして、これだけの財政史上革命的だといわれるようなばく大な公共事業の繰り上げ、そして概算払い、前払いの運用をしろと言っているんですね。概算払い、前払いの制度を運用しろというのでありますから、業者はもう至れり尽くせりです。いま土建業界が、民間に設備投資がないものですから、争って官庁の入札資格をもらうために殺到している。私はその事情を知っておるのですけれども、資格を取得するために官庁に殺到してきているのですよ。ですから私は、あなたがまさかそういうことを考慮していないとは言わないけれども、そのチェックをする方法についてあまりにも無関心ではなかろうか、こういう心配をしておるのです。
  129. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 お話、まことにごもっともでありまして、私も決して無関心じゃないのです。これは事業は促進しなければならぬ、そうすると、それが直接汚職問題につながるとは私は考えておりませんけれども、これはどうしても粗漏になりがちだということをおそれるわけであります。したがいまして、こういう際には、特に会計法、諸法規に準拠して適正な執行になるように、ということは、この実施を促進することを督励すると同時に、常に、あわせて適正なる執行、法律の効用、こういうことを督励をいたしておるわけであります。
  130. 横山利秋

    ○横山委員 それではだめだと私は申し上げておきます。もしも本気になってこれをやるようなら、そういう入り口をもう少し広げなさい。無理なことをさせないためには、無理でないように、法律なり政令なり、そういうものを改正をなさるべきだと言っておるのです。  もう一つ、あなたに先般お約束願ったことがあるわけです。これだけ公共事業が拡大するのであるならば、なぜ一体、その仕事をもっと中小企業に分けてやるように、もう一つは協同組合に分けてやるようになさらないかと言うたのです。いまの体制のまま進むならば、一つには、汚職の要因をつくっていき、一つには、それを早くやるのだから、大企業にしか流れない、この二つを私は提示しておるのですから、この現在の法規について改善すべきことは改善を即刻すべきではないか。もう少しそれが中小企業や協同組合に流れるようにお約束を願ったのだから、それをやってもらいたいと言っている。
  131. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 中小企業は長期にわたる不況で非常に困難な状態にある。私は中小企業の立場ということを非常に心配しているのです。この間あなたから四、五点御注文があった。ごもっともなものもあり、むずかしいものもあるのですが、その中で、いまお話の事業の執行を中小企業に分ける。これはもう非常にごもっともなことで、やらなければならぬ問題だというふうに考えまして、関係各省庁にそういう話をいたしております。
  132. 横山利秋

    ○横山委員 それでは、私の心配することが杞憂にならなければ幸いでございますが、公共事業の繰り上げ促進が、無理を手伝い、汚職の原因になり、選挙に結びつかないように、法規並びに運用の点について格段の努力をしてもらいたい。そして、それを単に国会においてあなたが言明をなすったということだけでは、私はいささか物足りないと思う。何らかの措置をしておくべきだ。これは特に注文はしませんけれども、私の希望することが必要ならば、すみやかに予決令なり会計法なりの検討をすること、それから、厳にだらしのないやり方にならないように、法規は守るようにという点については、続発する地方自治体の汚職の状況について十分に検査をしていただきたい、こう思いますが、よろしゅうございますか。
  133. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 けっこうであります。
  134. 横山利秋

    ○横山委員 先ほど継続費と債務負担行為の国鉄の事情を聞きましたけれども、次は、この点大蔵省にお尋ねしておきたいと思いますが、継続費と債務負担行為の相違点というものは一体どういうものであるか、まず伺いたいと思います。
  135. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 国庫債務負担行為と継続費の偉いということでございますが、いずれも、財政法にいいますところの単年度主義の例外でございます。年限については、どちらも五年でございまして、違いはございません。根本的に違いますのは、契約の時期の問題と、それから経費の対象の問題であろうかと思います。  時期の問題につきましては、国庫債務負担行為は、通常当該予算に計上した年度に契約をするということで、実際上契約をする時期を確定しております。これに対しまして、継続費のほうは、継続費でとりましても、その時期は五年間なら五年間のうちでいつ契約をしてもいいということで、不確定であるという点が違います。それからもう一つ、その時期の問題と関連をいたしまして、いわゆる支払い権限を継続費の場合には付与するわけでございます。事業全体の計画を御決議願うわけでございますから、したがって、債務権限だけでなくて、将来の支払い権限も付与する、この点、国庫債務負担行為は、いま申しましたように、債務権限だけを付与いたしまして、支払い権限は付与いたしておりません。これが性格的に違うところでございます。  それから第二点の、経費の内容でございますが、いま申しましたように、いずれも単年度主義の例外でございますが、私が申しましたように、継続費のほうが、実際上事業を確定し、あるいは円滑に執行するには便利なものでございますから、なるべく継続費でやりたいということになりますので、これは支払い権限を付与する点からいいましても、単年度主義からいうと、債務負担行為よりも非常に強い例外になりますので、なるべく制限的に行ないたいという意味で、経費を、工事、製造その他の事業というふうに限っております。国庫債務負担行為は、何でもやれるということになりますけれども、継続費の場合は、そういう意味対象経費をしぼっておる、こういう違いがあります。
  136. 横山利秋

    ○横山委員 国鉄の場合には明年度両方あるという話でありますが、一般会計の四十一年度予算参考書類の継続費の欄を見ますと、これは海上自衛隊でありますか、あるいは運輸省、防衛本庁ばかりですね。艦艇、潜水艦建造費、練習艦建造費、防衛本庁のものばかりであります。一方、債務負担行為を見ますと、各省各庁にわたってある。しかも、防衛本庁の航空機購入がこちらのほうに入っておる。艦船だけが継続費であって、防衛本庁の飛行機やあらゆる工事までが全部債務負担行為になっておるのはどういう理由ですか。
  137. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 ただいま申し上げましたように、国庫債務負担行為と継続費は、その内容的に非常に違った点があるわけでございます。いま申しましたように、片方は債務負担をする時期を確定していなくてはならぬ、それから支払い権限は付与されない、継続費のほうは時期も確定しないし、支払い権限も付与されるというふうになりますので、実際上の内容から申しますと、先ほど申しましたように、対象経費としてしぼっておる点もございますが、多くは、ある事業全体を一つ対象といたしまして、その事業を遂行するにはいろいろな契約、たとえば、船の場合でございますと船体、機関、武装といったような、いろいろな契約がある時期の間にいつ行なわれるかははっきりきめられないけれども、逐次行なわれていって、できかけていくというようなもの、そういうものを継続費としてはとり得るので、航空機につきましても、これは本来、継続しようと思えばできないこともありませんけれども、その性質からいうならば、航空機の契約をある時期にやって、そうして、その支払い権限につきましても、予算を編成いたしますときに、来年はこれだけ支払いが要るということをはっきり確定できるというような性質のものが多うございますので、これは全部予算に入れるのでございます。われわれの考え方といたしましては、できるだけ国庫債務負担行為でやりたい、しかし、いまここに出ておりますような艦船のように、いろいろな契約というものが集まってきて、そうして一つの大きな船というものができ上がっていくというものについては、これは継続費でやらないと、その効果的な事業の執行ができないと思います。また、技術も進歩いたしておりますし、契約も分かれておりますし、その時期もはっきりしないというようなものは継続費しかないのではないか、そういうようなことで考えておる、こういう状況でございます。
  138. 横山利秋

    ○横山委員 あなたの話を聞くと、理屈としてはわかるような気がせぬでもないのですが、しかし、この継続費と債務負担行為というものが、実質上どちらでもいい、どちらでやっても差しつかえないような感じがする。しかし、感覚的には債務負担行為のほうが、年割り額が出ないという意味においては、役所の自由裁量の幅がある、そういう感じがするわけであります。つまり、継続費として、継続費の欄にありますように、年割り額というものが年度別に確定されて出ておるものと、債務負担行為のように、これだけ債務負担行為をする、総額はこれだけ、そうして何年から何年までだ、そういうようなことでは、この間においては債務負担行為のほうが官僚の包括委任になる。国、国会は、役所に包括委任をするような結果になる。したがいまして、本来あるべき姿としては、国会で十分審議を求め、官庁の自由裁量を許さないためには、できる限り継続費のほうへ回すというのが忠実なやり方ではないか。いわんや、船は継続費だ、飛行機は債務負担行為だ。金額の上からいっても、巨大な金額が債務負担行為へ回って、年割り額を示さずに、一括して受認されるということは適当なやり方ではないと考えるが、いかがですか。
  139. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 飛行機と船のお話でございますけれども、いま先生は、国庫債務負担行為のほうが包括的ではないかということをおっしゃいましたが、実際の現状はそうではないのでありまして、たとえば、継続費の場合には、一応の事業の年割り額というものは示されておりますけれども、そのとおり実際上契約が行なわれ、支払いが行なわれるわけではないので、そこは支払いの権限を渡し、そうして事業としての債務権限を渡したということで、かえって自由なわけであります。自由というと語弊がありますけれども……。(横山委員、「どちらが」と呼ぶ)継続費のほうです。国庫債務負担行為は、なるほど総体の債務権限はここでちょうだいいたしますけれども、実際にそれでは、四十一年度に幾ら払い、四十二年度に幾ら払い、四十三年度に幾ら払うかというのは、その年度その年度の国会の予算で御承認をいただくということからいいますと、むしろ国庫債務負担行為のほうがきびしいといいますか、そういう感じがするわけでございます。  それから、総額のお話がございましたけれども一つの契約だけをごらんいただきますと、たとえば、船のように、先ほど私が申しましたように、船体の契約がどの程度実際上施行されたときに期間を契約してつくっていく、そうしてさらに武装もやっていくというのがなかなかはっきりきまらない。これは技術も進歩いたしますから、そういう段階できめていかなくてはならぬというものと、それから飛行機のように、総体計画というものは何機つくるかということで、金目は大きくなりますけれども、一機自体についていえば非常に小さい金でございますし、総体の契約で、四十二年に完成ということで、そのときに八十機全部入れてもらう、そうして四十一年には四十機入れるというような契約であれば、これは非常に確実といいますか、はっきり契約ができる、そういうものは、これは国庫債務負担行為でいこう、こういうことでございます。
  140. 横山利秋

    ○横山委員 国会と政府との関係は、この債務負担行為なりあるいは継続費を承認する、そうして翌年度、その承認をされた金額は再び一般会計の中に挿入されて、二度承認をされる。二度議決をするという意味は、どういう意味ですか。
  141. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 ただいまの御質問は、継続費でございますか。
  142. 横山利秋

    ○横山委員 両方です。
  143. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 実際上は、いま申しましたように、国庫債務負担行為は本年これだけの契約をとらしていただきたいということで御承認を願いましたならば、それはあらためて翌年からとっていくということはいたしません。そうして、その契約に基づいて、実際上その年に計上さるべき歳出額についての歳出予算としての御審議をその年にちょうだいする、こういうことでございます。  それから、継続費につきましては、継続費で総体の計画と年割り額についての御承認を一度いただきました分につきましては、その翌年からそれに伴う歳出額について歳出予算としての御審議を願うということでやっているわけでございます。
  144. 横山利秋

    ○横山委員 国と契約をした国民ないし法人は、国が権限を国会から受認をして、債務負担行為、つまり契約をする、そうすると、債権債務の関係は、国と、その法人なり個人なりにあらわれる。次の国会においてそれを議決できなかった場合には、国はどういう責任を負いますか。
  145. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 かりに四十一年度に契約権限がございまして、それを契約いたしましたところで、未払いの金額を四十一年度に払いまして、あと、次の金を四十二年に払うということで、契約だけを四十一年にやりました。しかし、四十二年にその未払い額の部分払いの金というものの予算の御審議ができなかった、そうして通らなかったという場合には、その金を払うことはできないということになります。
  146. 横山利秋

    ○横山委員 そういう場合が法律上あり得る。二度議決をする。国と、それから法人並びに個人の間にはすでに債権債務が確定しているけれども、あなたの説明によれば、これは国が絶対権限を国会から受け取っているわけではないわけですね。国会から受認をされて船を買う、それについて全責任を負うという体制にはないわけです。しかし、全責任を負う体制において契約が完了するわけだ。その矛盾はどうなるのか。国会が二回目に否決をした場合には、国はその人たちに対して、法人に対してどういう責任をおとりになるのか。
  147. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 最初に議決をいただきました契約というのは、国が将来これだけの債務を負担してもかまわないという御議決をいただいたわけであります。それはもう残っているわけであります。その国の債務に基づきまして、それに従った歳出予算というものを計上したのに、それを国会のほうで御議決にならないということは実際上あり得ないことです。すなわち、法律上は、民間と国との間には債務不履行の事態が生じますが、これはあくまでも観念上のことで、国会の良識から見て、実際はあり得ないことと思います。
  148. 横山利秋

    ○横山委員 あなたは答弁に困っていらっしゃるようだけれども、それは理論上はあり得るでしょう。だから、その場合には、この継続費並びに債務負担行為というものが二回議決をされるという矛盾がどこから生じたのか。もしも二回目のときに否決をする、ないし修正をするということによって、国民ないしは法人との間に起こる矛盾というのはどうなるのか。あなたはあり得ないと言っているのだけれども、法律上あり得るのだから、その点について聞いている。
  149. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 いま申されました、国が将来にわたって、四十二年度にこれだけの債務を負うということは、これは議決をいただいて、契約をそれに基づいてやっておるわけでございますから、その限りにおいては適法であり、何らの問題もない、ただ、それに対して払うべき歳出予算、これはいろいろ予算上の問題もございますので、あるいは流用その他の措置によって、歳出予算の中で、その項目についての御議決がなかった場合にも、実際上支払い得るということはあると思いますけれども、何といいますか、観念上、全然そういう歳出予算が計上されてないというようなことがあった場合には、それはやはり国の債務不履行ということになるわけでございまして、そういうことにはならないだろうというふうに私は考えております。
  150. 横山利秋

    ○横山委員 私は、債務負担行為と継続費の問題の理論的な矛盾、法律論としてやっているのですから、あり得ないとかあり得るとかいうことでなくして、法律論としてそこに矛盾が起こる。だから私は、あなたがこういう答弁をなさるだろうと思っていた。それは、契約としては有効なのだから、国は国会から全的な契約権限は持っていないけれども、しかし、国と、それから国民ないしは法人との間には全的な契約が行なわれたのだから、契約違反として国が責任を負わざるを得ないという明確な御答弁があると思ったのですが、いまあなたはそういうところまでは言い得られないのですか。
  151. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 もう一度……。
  152. 横山利秋

    ○横山委員 つまり、国民は、当然国は契約違反だと言う、その契約違反について全責任がある。損害賠償なりその他に応じなければならないということが、どうして言い得られないのであろうかと聞いているのです。
  153. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 いま申しましたような議決その他があったかどうかということは別にいたしまして、実際上、国が債務を契約をいたしまして、それで負うべき金額を払わなかったという場合には、それに応じた法律上の措置はあると思います。しかし、実際上債務負担権限としてちょうだいをしたものについて、今度はその債務権限というよりは、むしろ支出権の問題として国会で御議決を願う場合に、そういうものがあるのに、それを予算としての支出権を与えないというような事態が起こるということはあり得ないと私は考えております。
  154. 横山利秋

    ○横山委員 これは残念ながら次長の答弁では納得できません。法律論として、ひとつ大臣なりどなたかから明確な御答弁をいただきたいと思います。
  155. 三池信

    ○三池委員長 速記をちょっととめて。   〔速記中止〕
  156. 三池信

    ○三池委員長 速記を始めて。
  157. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいまの横山委員の御質問に対しましては、さらに検討の上、統一した見解をもってお答え申し上げます。
  158. 横山利秋

    ○横山委員 時間がありませんので、もう一つだけ、これも御検討の上でもいいですが、まあ、これはそんなにむずかしい問題じゃないと思うのですが、この債務負担行為の権限は、いまのお話だと、その年からでもよし、次の年度からでもいい、こういうわけですね。
  159. 赤羽桂

    ○赤羽説明員 債務負担行為のほうは、総額につきまして、当該年度において全部その権限を行使するということをたてまえにいたしております。五十億円なら五十億円四十一年度に取りましたら、五十億円の契約権限は、その当該年度において行使する、継続費のほうは、五十億円でとりましても、五カ年間にわたりまして、最初の年度は、たとえばその半分、次のものはあとの残ったものの半分、最後は全部というようなとり方ができる、かように思います。
  160. 横山利秋

    ○横山委員 そうすると、債務負担行為も継続費も、その年に支出をする部分がある、こういうわけですね。
  161. 赤羽桂

    ○赤羽説明員 おっしゃるとおりでございます。債務負担行為の場合並びに継続費の場合、その年に支出が起きる場合と起きない場合と、両方ございます。継続費のほうは、大体、実際の例といたしましては、最初からずっと出ております。債務負担行為のほうは、そもそも債務負担だけの目的でございますから、支出が最後まで起こり得ないということがあります。たとえば、債務保証、保証契約といったものにつきましては、これは起こるか起こらないか、全然わからないわけであります。権限だけをとる、かようなのが債務負担行為の本質であります。かような場合におきましては、支出は、まず当面の問題になって出てこないわけであります。
  162. 横山利秋

    ○横山委員 そうしますと、予算案の中で債務負担行為として五十億円なら五十億円、継続費が五十億円なら五十億円、そうして一方、支出のほうでその年度における金額十億円、両方で議決を求めるわけですか。
  163. 赤羽桂

    ○赤羽説明員 国庫債務負担行為の場合は、総額につきまして、まず国会の承認を求めるわけでございます。しこうして、当該年度歳出化分は、当該年度歳出予算の一環として受けるわけであります。それから継続費のほうは、まず総額において承認を受けます。それから、たとえば五カ年の継続費の場合でございますと、四十一年度から四十五年度までにわたりまして支出権限も同時に承認を受けるわけでございます。したがいまして、四十二年度以降の毎年毎年の普通の予算がございますが、継続費にかかる部分につきましては五カ年間昭和四十一年なら四十一年度において継続費として別ワクでとるわけです。
  164. 横山利秋

    ○横山委員 たとえば総額五十億円、その第一年度が十億円だとしますね。そうすると、その十億円の部分については二回議決を受けるわけですね。
  165. 赤羽桂

    ○赤羽説明員 継続費の場合の御質問かと存じます。継続費の場合におきましては、結果的に二回受けるというかっこうになります。しかしながら、その点につきましては、継続費の規定、これは昭和二十七年に新しく挿入された規定でございましたが、この継続費の本質にからみまして、二回受けるか受けないか、結果的に二回受けるわけであります。この継続費の規定は財政法第十四条の二にございますが、その最後に、当該継続費につき後年度において重ねて審議することを妨げない、こういう規定が置かれております。これは政府原案においてはなかった規定でございます。旧憲法におきます継続費はかような規定を置いておりません。おりませんということは、一たん議決をとりましたら、五カ年間にわたりましてそれは固定してしまう、次年度以降の普通の毎年度の歳入歳出予算の議決の対象外である、こういう解釈であったわけであります。新憲法におきましては、御承知のとおり、財政法全体の立て方が、国会中心主義ということで、非常に強化をされておりますので、その点、国会でいろいろと御真義がございまして、審議権の尊重というたてまえから、この四項の、重ねて審議することを妨げないという表現で国会修正がなされたわけであります。それで、ではしからば、再度やり直すか、こういうお話です。
  166. 横山利秋

    ○横山委員 はっきりしなさい。単年度の問題については、同じ国会で十億円については二回議決を受けるのだなと聞いておる。そこだけ聞いておるのですよ。総額五十億円、債務負担行為の場合には、その年に支出することもあり、支出しないこともある、継続費はその年に一部を支出する。そうすると、その年に支出する分が両方ともあり得る。そうすると、総額で一ぺん議決を受け、そのうちの一部についても同じ国会で議決を受けるのだなと聞いておる。
  167. 赤羽桂

    ○赤羽説明員 そう御了解していただいてけっこうでございます。
  168. 横山利秋

    ○横山委員 同じ予算を二回議決を受けるということに矛盾はないですか。片一方が否決され、片一方が生きるということの理論上の問題はありませんか。
  169. 赤羽桂

    ○赤羽説明員 国庫債務負担行為の場合におきましては、総額としての議決と、それから歳入歳出予算としての議決と、二つあるわけであります。継続費の場合におきましては、当該年度に関する限り同じでけっこうでございます。
  170. 横山利秋

    ○横山委員 同じだ、同じだと言って喜んでいるが、そういう矛盾がないかということを聞いておる。同じ一つの銭、十億円なら十億円について議決を二回受けることに矛盾はないかと、こう聞いておる。
  171. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 いまの御質問でございますが、二回ではないわけでございます。予算は一体といたしまして歳入歳出予算、それから継続費、債務負担行為、繰り越し明許費ということで、これを御審議願うわけであります。したがって、その場合に、いま申しましたように、継続費として五十億円、その分の年度割り額として四十一年度十億円というものがあり、それから国庫債務負担行為として五十億円というのが載っておる、こういうことであります。
  172. 横山利秋

    ○横山委員 これはずいぶん問題があると思うけれども、時間の関係で別の機会にします。  大蔵大臣にもう一つだけ伺いたいのですが、ことしの予算は四兆三千百四十二億円ですね。その中で繰り越し明許費が四十一年度一兆三千六百六十三億円あると私は理解しております。全予算の四分の一が繰り越し明許費だということに私は非常に抵抗を感ずる。これだけありながら、公共事業の繰り上げだなんて、ばかばかしいったら話にならぬと思いますが、この繰り越し明許費が一兆三千六百六十三億円、全予算の四分の一あるということについて、大臣の御意見伺いたい。
  173. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいまのお尋ね、ごもっともかとも思うのですが、それは費目を示しておるのです。その費目の合計を入れますとそういう大きな数字になりますが、しかし、実際繰り越されるものは、その中のごく一部分なのであります。こういう経費は繰り越し得ることがありますよ、御承認をお願いしますよという、つまり、執行できないような疑いのあるものがそこへ費目として掲げてある、金額は掲げてないのであります。
  174. 横山利秋

    ○横山委員 そんなことないですよ。一兆三千六百六十三億円という繰り越し明許費というものが、全部が全部繰り越されるとは私も思いません。思いませんけれども大蔵大臣として、四兆三千億円の予算の中で一兆三千億円は繰り越しを認めよう、そういうことが常識上おかしいと私は言っておるのです。公共事業の繰り上げだ、繰り上げだと言っておりながら、全予算の四分の一は繰り越しを認めようということがおかしいと言っておるのです。もちろん、これが全部繰り越されるものでないことは承知しておるのですが、財政的態度としておかしいと言っておるのです。
  175. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 繰り越し明許費のお話でございますが、ただいま大臣お答えになりましたように、これは繰り越す可能性があるというようなものについて、こういうものは繰り越す可能性がありますということでやっておるので、いま先生のおっしゃいますように、これだけを繰り越しするものだということで、特に認めるというような形ではないわけでございます。そこで、毎年の実行を見ましても、これは三十九年でございますけれども、繰り越し明許費でとりましたのは一兆円でございますが、実際上この中で繰り越されたものは三百九十九億円でございます。それから三十八年度におきましては、八千九百五十一億円明許費をとっておりますが、実際に繰り越されたのは三百八十八億円ということになっております。
  176. 横山利秋

    ○横山委員 あなたの言うことであるなら、よけいおかしくなる。おととし一兆円、去年八千億円、それで実際繰り越されたものは、あなたの理論によれば非常に少ないのだ、ところが、それをことしになって、福田さんの一番の命題である公共事業の繰り上げ促進という財政の中で、一兆円から八千億円に下がったやつを、今度は一兆三千六百六十三億円にふやしちゃった。それでもって公共事業の繰り上げだというのだから、てんでおかしいではないかと私は思う。なぜことしに限ってこんなに繰り越し明許を多くしたのですか。
  177. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 これはそうではございませんで、三十八年が八千九百五十一億円でございます。三十九年が一兆円でございます。四十年が一兆一千億円でございます。四十一年は、いまお願いしておるのが一兆三千億円、大体そういうことで、経済伸び等もにらんでふやしておるわけであります。
  178. 横山利秋

    ○横山委員 私の聞き間違いだけれども、理論は変わらないですね。大臣、理屈は変わらないですね。どうですか、大臣の御意見は。
  179. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 繰り越し明許というものが、費目をいっているのです。こういう費目は何かの事故があって繰り越される可能性がありますよ、こういうことを申し上げているので、実際の動きとこれは関係ないのです。
  180. 横山利秋

    ○横山委員 そういう説明では納得できませんね。大体単年度制度からいって、繰り越し明許というのは、特例的に、どうしてもというものに制限さるべきだ。しかも、実績は、次長も言うように、明許されたものよりも少ないじゃないか。そんなら、もっとそれを実情に合わして、公共事業の繰り上げ促進の時代であるならば、繰り越し明許費なんかどんどん実績において削ったらどうだ。それを、ことしは二千六百億円か多くなっておる。そういうことがおかしい。だから、言っていることと実際予算の態度とは違いやせぬかということを私は指摘しているわけです。ですから、私の意見に賛成ならば、それはちょっと悪かった、繰り越し明許費はもっと削るべきだったね、まずかったねと、こう言えば、質問は終わりなんです。
  181. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 これは予算の規模がふえたものですから、その費目に相当する数字は自然に大きくなっておるのです。あくまでもこれは繰り越されるおそれがあるという費目をいっているわけで、これが全部繰り越されるとか、そういうような性質のものじゃないのですから、費目の問題であります。
  182. 横山利秋

    ○横山委員 この辺でやめておきますが、大臣も顔色を見ると、腹の中では、おそらくちょっとまずいなと思っているだろうと私は思うのです。現に、この継続費だとか、債務負担行為だとか、あるいは繰り越し明許費については、私どももまだ時間がないので十分勉強してないけれども政府としてもこれはもう少し考えなければならぬところだと思う。しかも、あなたの命題である公共事業の繰り上げだと、あれだけ言っておりながら、予算の編成の中ではしりが抜けているじゃないかということを私は指摘したいのです。  少し話が発展して、実は通行税についてさらにお伺いしたがったのでありますが、先ほど山田君がいろいろ聞いて、あなたがごく最近、最も近い将来において通行税は廃止をしたいというお話をされましたので、二重になるのを省略いたしまして、これで質問を終わることにいたします。
  183. 三池信

    ○三池委員長 本案に対する質疑は、これにて終了いたしました。
  184. 三池信

    ○三池委員長 これより討論に入ります。  通告がありますので、順次これを許します。武藤山治君。
  185. 武藤山治

    ○武藤委員 私は、ただいま議題となりました通行税法の一部を改正する法律案について、社会党を代表して、反対の討論をいたすものであります。  もともと、私どもの立場は、通行税は全廃すべきであるという立場を長年主張してきたからであります。  まず、反対理由の第一は、通行税の沿革は、太平洋戦争、いなシナ事変当時の戦費調達をもくろんだ税制であります。したがって、国民のだれからでも取りやすい税を取ろうという当時の趨勢の中に生まれたという沿革が、今日の情勢に適合しないという立場を私たちは主張し続けております。したがって、本改正案の、大衆からの収奪を少しでも避けようとするねらいについては反対するものではありませんが、それを包摂するところの通行税法そのものに反対だということを強く主張するものであります。  第二に、今回この法案が出る前に、すでに昭和三十七年、私も当時審議に加わって、将来通行税は廃止すべきであるという方向検討せよと強く私たちは本院で主張したものであります。しかるに、政府は、三十七年から本年まで、これらの検討事項について誠意ある検討を怠ったのであります。私たちは、その怠った政治の姿勢に対して強く指弾をしなければなりません。これが第二の反対せざるを得ない理由であります。  第三は、今日、鉄道利用者というものはほとんど大衆化されております。決して急行に乗る人が特別の中産階級以上の人ではありません。そういう今日の生活様式や社会環境というものを見たときに、千四百円以上料金を取られれば税金をかけるというがごときは、文化国家の名に恥ずるとわれわれは言わなければなりません。先ほど主税局長は、千四百円の免税点というものは、ホテルの宿泊料の免税点に同列と考えて、飲食税が千二百円でそれ以上かかるから、宿泊を汽車の中でするのであるから、これとの見合いの上でやむを得ない課税だと、たいへん苦しい主張をいたしております。しかし、ホテルに宿泊するのと列車の中に寝るのとでは、たいへんこれは違うのであります。全く質の違う、がたがた音がして眠れないという寝台車の中で税金をかけられるというがごときは、まことに恥ずべきであると言わなければなりません。主税局もいまや姿勢を転換して、わが党の長年の主張である通行税の全廃のために前向きの努力をすべきであるという強い要求をいたしまして、本案に反対の討論をいたすものであります。(拍手)
  186. 三池信

    ○三池委員長 永末英一君。
  187. 永末英一

    ○永末委員 私は、民主社会党を代表いたしまして、ただいま議題となっております通行税法の一部を改正する法律案に対し、賛成の討論を行なわんとするものであります。  もともとわが党は、通行税は廃止をすべしという意見を持っております。なぜかならば、この通行税の設置目的はすでに終わったものでございまして、戦費調達などというような時代ではございません。終わった目的を持っておるものをなお存続せしめておるということは、全くけしからぬ話でございます。  第二に、その内容をつぶさに検討いたしましても、この課税対象課税標準、税率ともに矛盾に満ち満ちたものでございまして、これは課税公平の原則に適合しておるものとは、とうていわれわれとしては認めるわけにはまいりません。さらにまた、その法衣を見ましても、おかしな法文でございます。法律というのは、少なくとも、国民がこれを読み得る状態で、そうして、これをまず了解し得るものでなくてはならぬと考えます。それの賛否は国民がきめるのでございます。ところが、この法文は、まずかたかなで書かれておる。近代教育においてかたかなというのは、すでに古くさい文字になっておる。しかもまた、この法文の中には文語体が残っておる。こんなものをいまだれも使っておりません。字音かなづかいの現代に、なおこの文語体で麗々しく申し述べておる条文は古くさい条文であります。さらにまた、この中で使われておる漢字は非当用漢字が使われておる。こんなものは読めやしませんよ。すでに、そのていさいの上におきましても、通行税法というものは、もはや古き時代の遺物であって、一刻も早くなくすことが必要であるとわが党は考えます。大蔵大臣は、なじんでおるから捨てがたいというのでございますが、これは徴税者の論理でございます。われわれ納税者側の論理に従うならば、通行税は、強制徴収ができるからやっておるのだ、こういうようなことで、ございますから、この大蔵大臣の徴税者論理には断じて賛成するわけにはまいりません。大蔵大臣も、最も近い将来解消の検討をするというのでございますから、罪一等を減じまして、早くひとつ廃止すべきであると存じます。ただし、今回上程されておりますこの一部改正法案というものは、すでにわが衆議院段階におきましては、国鉄の運賃改正法案が、われわれは反対いたしましたが、院議で確定をいたしております。その段階の上にどう考えるかということでございまして、その内容を検討いたしましたら、いわば、通行税をふくらめる、並びに通行税の存続を前提とした内容であるとは、われわれは判断をいたしておりません。すなわち、これまで二等寝台を利用する一般大衆が既得権としてとっておりました課税最低限引き上げて、その既得権を守ろう、すなわち、その方向は、一番最初つくられましためちゃくちゃな目的によって税金がかけられたものをなくしていこうという基本方針に立っておるという判断をわれわれはいたします。その限りにおいては、この法案に反対をすることによって、二等寝台を利用する旅客がもし税金をかけられるならば、とんでもない話でありますから、わが民社党は、この限りにおいて、この法案に賛成をいたすものであります。(拍手)
  188. 三池信

    ○三池委員長 これにて討論は終局いたしました。  続いて、採決に入ります。  本案を原案のとおり可決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  189. 三池信

    ○三池委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  190. 三池信

    ○三池委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。   〔報告書は附録に掲載〕
  191. 三池信

    ○三池委員長 次会は、来たる三月一日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後六時四十八分散会