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1966-02-18 第51回国会 衆議院 大蔵委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年二月十八日(金曜日)    午前十時二十六分開議  出席委員    委員長 三池  信君    理事 金子 一平君 理事 坊  秀男君    理事 山中 貞則君 理事 吉田 重延君    理事 平林  剛君 理事 堀  昌雄君    理事 武藤 山治君       岩動 道行君    大泉 寛三君       奥野 誠亮君    押谷 富三君       木村 剛輔君    木村武千代君       砂田 重民君    田澤 吉郎君       福田 繁芳君    藤枝 泉介君       村山 達雄君    毛利 松平君       渡辺 栄一君    渡辺美智雄君       小林  進君    佐藤觀次郎君       只松 祐治君    野口 忠夫君       日野 吉夫君    平岡忠次郎君       藤田 高敏君    山田 耻目君       横山 利秋君    春日 一幸君       永末 英一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     北島 武雄君         大蔵政務次官  藤井 勝志君         大蔵事務官         (主税局長)  塩崎  潤君         大蔵事務官         (証券局長)  松井 直行君         大蔵事務官         (銀行局長)  佐竹  浩君         大蔵事務官         (国際金融局         長)      鈴木 秀雄君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      村上 茂利君  委員外出席者         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    亀徳 正之君         専  門  員 抜井 光三君     ――――――――――――― 二月十六日  委員渡辺栄一辞任につき、その補欠として重  政誠之君が議長指名委員に選任された。 同日  委員重政誠之辞任につき、その補欠として渡  辺栄一君が議長指名委員に選任された。 同月十七日  委員木村剛輔君木村武千代君、小山省二君及  び横山利秋辞任につき、その補欠として西村  直己君、野田卯一君、荒舩清十郎君及び山口シ  ヅエ君が議長指名委員に選任された。 同日  委員荒舩清十郎君、西村直己君、野田卯一君及  び山口シヅエ辞任につき、その補欠として小  山省二君、木村剛輔君木村武千代君及び横山  利秋君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 二月十七日  交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改  正する法律案内閣提出第七〇号)  地震保険に関する法律案内閣提出第七三号)  地震保険特別会計法案内閣提出第七四号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 二月十六日  都道府県職員の負担する互助会掛金社会保険  料の所得控除対象に関する陳情書  (第四六号)  外国為替資金貸付利息引上げ反対に関する陳  情書  (第四七号)  入場税の軽減に関する陳情書  (第一一七号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改  正する法律案内閣提出第七〇号)  地震保険に関する法律案内閣提出第七三号)  地震保険特別会計法案内閣提出第七四号)  税制金融証券取引及び外国為替に関する件      ――――◇―――――
  2. 三池信

    ○三池委員長 これより会議を開きます。  税制金融証券取引及び外国為替に関する件について、調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。武藤山治君。
  3. 武藤山治

    武藤委員 私は、きょうは公取委員長中心質問をする予定でありましたが、大臣がせっかく出席でありますから、交互に織りまぜてひとつお尋ねをいたしたいと思います。  いま国民が非常な大きな関心を寄せておる問題は、何といっても、生活がしやすいように物価上昇を押えてくれ、こんなに物価が上がったのではとてもたまらぬ、こういう空気が国内に充満しています。したがって、最近の県会議員補欠選挙市長選挙を見ていますと、かなり政府与党に対する批判的投票が投じられている趨勢がこれらの選挙を通じても見られております。私は、この物価問題について、一体内閣消費者立場に立つ物価対策——こういう方法で、こういう角度から視点を合わせて物価上昇を押えますよ、そういう政策消費者にはっきり聞かしてもらったことがないのであります。そこで、ひとつまず最初に、連帯責任のある内閣を代表して、閣僚の一人である大蔵大臣から、本年の物価問題について、内閣はこういうところに視点を合わせて消費者保護立場を貫いていきたい、それをひとつ最初に明らかにしてもらいたいと思うのであります。
  4. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 今日の経済情勢は非常に複雑異常であるのであります。普通の経済でありますれば、景気が悪いというと物価賃金が下がる傾向をとるわけであります。それがそういうふうにいかないで、不況であるにかかわらず、物価というものが景気動向とは遊離した動きを示しておる。そこに私は問題があると思うのであります。物価動きを見る場合におきましては、私は二つの要因があると思います。一つは、経済原則、つまり需給要因に従って動く要因が今日の物価動きにあると思います。同時に、もう一つ見のがすことのできない大きな要因は、これはいわゆる構造問題といわれる根の深いものに出発しておる、そういう動きであります。経済の面から見れば、たとえばネギが非常に不作だったといえばネギは高くなる、しかし、これに対して供給をするという面である程度消すことができる。ところが、ネギ価格の問題はそれだけでは解決しないので、ただいま申し上げますような構造的要因、すなわち、日本経済がいま二重構造的様相である、低生産性部門というものがなかなかコストプッシュというか、そういう問題に追いまくられておる、こういう事情であります。ですから、そういう分析に立って私どもは物価問題と取り組まなければならぬ、こういうふうに思うわけであります。  物価問題につきましては、卸売り物価は大体安定の基調である。しかし、消費者物価はこの六年ばかり上がり続けておる。卸売り物価が安定しておるんだからそれでいいじゃないかというような議論をなす者もありますが、私はそれは非常に危険な考え方であると思う。結局、消費者物価の上がりも、これを放置すれば卸売り物価に必ずいつの日にかはね返ってくる。また、これは賃金消費者物価の間に悪循環という問題もはらんでおる。これはいずれの日にか企業にも致命的な欠陥を持つようになってくる。そういうことを考えますときに、いまや消費者物価問題というものをどうしても放置することができない段階にきておる、こういうふうに考えますので、当面景気対策、つまり不況克服に全力をあげると同時に、この物価の安定問題にもこれにめどをつけるというための努力をしなければならぬ。そういう基本的な考え方で、ただいま経済政策全体の運営に当たっておる、こういうことでございます。
  5. 武藤山治

    武藤委員 不況対策のために、財政規模を拡大し、有効需要を喚起すれば、物価高騰にさらに拍車をかけるという矛盾政策をやらざるを得ない。そういう事態に今日の日本は追い込まれておるわけですね。私が聞きたいのは、そういうときに、消費者を保護する物価騰貴をできるだけ押える。そのじゃまをしている構造的な障害、あるいは人為的なカルテル管理価格再販制度、そういうような行政面におけるてこ入れによって解決のできる消費者保護、そういうようなものを、政府として、内閣として、具体的にこういう点ひとつ内閣消費者向け保護対策をやろうというようなことは聞いたことがないのですね。何か考えておるのですか。
  6. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 対策はいろいろあると思いますが、大きな問題は構造問題に根ざしておるとは申し上げましたが、同時に需給要因というものもあるわけです。肉が逼迫する、そういう際に、その肉の需給改善をはかるということは、これは消費者物価対策上非常に重要なことである。その需給問題というのが一つあるわけです。これは輸入政策におきましても、国内生産対策におきましても、それぞれ手を打っておるわけであります。これは武藤さんも御承知のとおりと思います。  それからもう一つの問題は、構造的の問題に対する措置であります。これは私は二つあると思います。一つは、長い目の問題であります。これは低生産性部門近代化合理化、よって生産性を上げるという問題、それからもう一つの問題は、そういう長い目の問題が基本ではありますけれども、同時に、短期的に解決し得るものがたくさんあると思うのです。つまり、流通機構のあり方の改善でありますとか、あるいは労働流動化の問題でありますとか、そういう当面やや短期的に手をつけ、また効果をあげ得る施策というものがいろいろあると思うのであります。ともかく、そういうようないろいろな問題、これは公取法運営にも関連してくる問題でありますが、焦点は、私はその三つにしぼられると思う。考えられるそういう角度のいろいろな問題、具体的な問題をできる限り粘り強く、また精力的にやっていかなければならない、政府の全機能をあげてこれに傾注するというくらいな覚悟でやらなければ、なかなか実効はあげられない、こういうふうに考えておるわけであります。現に昭和四十一年度の予算でも、そういう三つの面を、いろいろ方策はありますけれども、考え得るあらゆる手は打っておる、こういうことでございます。
  7. 武藤山治

    武藤委員 時間がたいへん経過しますから、個個の問題で論争できないのでありますが、たとえば、いま大臣は、いま緊急の問題として牛肉の問題がたいへんな高騰で、輸入をせざるを得ない。それは、現象面としては確かにそうなんですが、それではなぜ牛の肉が足りなくなったか、その根本を考えてみると、これは、政府飼料対策というものが非常におざなりで、農民にもうからぬような飼育をやらしたから、三年前ごろから牛を飼うやつがいなくなってしまった。ところが、さあ、牛が足りなくなったからふやせといっても、御承知のように、牛は妊娠期間が十カ月もあるのですね。そして生まれるのは一頭しか生まれないのですよ。ところが、豚の場合は、妊娠期間が三・五カ月で、一回に八頭から十頭できるわけですね。しかも、五カ月たてば豚はすぐ肉になる。牛の場合は一年飼わないと食えないわけですね。そうすると、牛が足りぬからさあふやそうというときには、二年かかるわけです。種をつけてから食べられるまで二年かかる。だから、今日こんなに牛が足りなくなったということは、二年前にそういう様相があったのをわれわれ指摘しておったわけですよ。いまのえさ価格では肥育牛をやる者はいなくなりますよ。——今日どうですか。北海道では乳牛をみな殺して肉牛にしている。今度は、三、四年たつと、乳をしぼる乳牛が足りなくなって大騒ぎになると私は農林省に警告しておる。すなわち、政府物価対策が、消費者向け需給体制というものを、長期的に、しかも科学的にメスを入れてやっていないというところにこういう問題が出てくる。やはりこれは大蔵省や通産省が生産費の問題までメスを入れて、飼料をどうするか、あるいは大農機具をどうするか——肥料は国がどうやら価格をきめておりますから、農民には生産要素の中では比較的コストは低いのでありますが、他の、農業の必要とする生産財というものが非常に高い。特にえさですよ。そういうところに今日の肉の問題にぶつかってきている原因があるわけです。だから、ここでニュージーランドやオーストラリアから緊急輸入をしてカバーすれば、牛の値段、肉の値段はストップできるのだなどという考えは、まさに小手先であって、根本対策にならぬのであります。私が言いたいのは、政府がほんとうに消費者向けの、消費者立場に立って物価安定をどうするかを真剣に考えておらぬのではないか、こういう点を指摘しておるのであります。しかし、ここでは論争の時間はありませんから、いまの牛の問題などは、大臣、特に農村出身でありますから、牛と豚と鶏と、いろいろな個別な農林省対策というものがまことにおざなりになるので、これを閣議で先生ひとつ発言をして、もう少し肉の問題なんかは国民が納得できる対策を立てなければいかぬと思う。  そこで、公取委員長にお尋ねしますが、私的独占禁止法というのは、一体何のために、だれを特に保護しようという立場からできた法律でありますか。
  8. 北島武雄

    北島政府委員 これは、私的独占禁止及び公正取引の確保に関する法律というのが独禁法の正式な名前でありますが、その第一条に目的がございまして、結局、最後のところは「一般消費者利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進する」こういうことが書いてあります。これが独禁法の二大目的でございます。
  9. 武藤山治

    武藤委員 そういたしますと、一般消費者利益を確保する、これが大きな目的一つであります。そこで、今日の日本経済の姿を見ますと、一般消費者利益を阻害をして、本来なら、不況なんですから物価は下がらなければならない。卸売り物価横ばいなんというのはおかしいのであります。本来なら、不況で生産過剰になって卸売り物価がだぶつくのでありますから、当然これは卸売り物価が順次下がらなければならぬ。それが逆に小売り物価のほうはどんどん上がっているが、卸売り物価横ばいだ、その現象はどうも経済原論からは出てこない現象であります。そこで、こういうような卸売り物価が停滞、横ばいでいるということは、人為的にどこかで価格を協定している、あるいは生産メーカー卸売り業卸売り業小売り業との間で約束ができている。すなわち、再販契約がある。そういうような姿、あるいはみだりに不況に名をかりてカルテルをやる、あるいはコストが非常に高くなるからという美名のもとに価格協定をやっている、こういうような事象が必要以上にいまの日本では多いんではないだろうか。その実態公取としては大体どんなように把握していらっしゃいますか。現在のそういう実態をひとつ明らかにしていただきたい。
  10. 北島武雄

    北島政府委員 お話の点はいろいろの問題に関係してくるのでございますが、まず第一に、いわゆる管理価格の問題でございます。まあ、管理価格管理価格と申しますと、なかなかわかりにくいのでございますが、結局、寡占的体系企業の業界に見られるのでありまして、生産性向上が著しいのにもかかわらず、価格下方硬直している、なかなか下がらない、こういった実態に関する価格調査の問題、この点につきましては、公正取引委員会といたしまして昭和三十八年度から調査をいたしまして、当時といたしまして、まず日銀卸売り物価指数を検討いたしまして、まあ旧指数でありますが、四百三十六品目たしかあったと思います。そのうちで、数年間生産性向上が著しいのにもかかわらず下方硬直性を持った価格というものを選んでみますと、やはり百六あったようであります。もちろん、百六といいましても、内容を調べてみますと、日銀物価指数のとり方にもだいぶ問題がありまして、実際には下がっているが、建て値はそのわりに下がらないといった場合に、その価格が下がらないかっこうになっているというようなものもずいぶんありました。その中から特にまた下方硬直性の著しいものと思われる品目十二品目あげまして、ここから予備的調査をやって、そのうち一品目については精密調査、これはブリキでございますが、調査しておる。これは三十八年度、三十九年度にかけて調査いたしまして、四十年度は、実は現在人員が手薄なのと臨時的な事務に忙殺されておりまして、ちょっと手がついておりませんが、個々問題点は何かというと、独占禁止法上では、もしその裏に違法な価格協定があれば独占禁止法の問題になるということが第一点、それから第二といたしまして、もしそれが末端価格を維持するために違法な再販売価格維持行為が行なわれていれば、これもまた独占禁止法に触れる。それからまた、新規の企業の入るのを妨害するというようなことでその寡占的体系が維持されるというようなことになりますと、これまた不公正な取引方法に該当するというようなことになるわけです。それに該当しなければ、公正取引委員会としては一応独占禁止法上では問題にならないわけであります。こういう調査をいたしておりましたさなかにおきまして、ある一品目につきましては、これは公正取引委員会調査したというわけではないと申しておりましたけれども、値段を下げまして、それからまた、調査の過程において不公正な取引方法に該当する事実を発見して、独占禁止法上の処置をいたした例がございます。これはまあ管理価格の問題であります。  それから、再販売価格維持行為についてもちょっとお触れになりました。この再販売価格維持契約独占法適用除外と認められておりますが、これは著作物と、それから公正取引委員会の指定した商品ということになる。それ以外に、実際は再販売価格維持行為が行なわれている疑いのある商品が相当見受けられる、こういうものについて、まず、やみの再販売価格維持行為——独占禁止法上不公正な取引方法と申しますのは、末端価格を維持させるために、もしそれを守らない場合には、出荷停止をするとか、リベートで操作するとか、不当な拘束をつけるわけで、それは独占禁止法上の不公正な取引方法に該当するというわけであります。実は再販売価格維持行為につきましては、やみで行なわれている疑いも多分にございます。そういう点について、現在どしどし調査をいたしております。それと、現在公正取引委員会で認めております商品、指定している商品、これについてだいぶ問題がありそうだと思います。とりあえずいままで指定しておりましたのが九品目ございますが、そのうちでほとんど行なわれていない、実効のあがってない三品目をまず取り消しまして、それから一品目につきましては、ごく範囲を狭めまして、海外旅行者の免税のようなものに限る、こういうようにいたしまして、残るのが五品目でございます。これにつきましては、はたして個々商品につきましてそれの自由な競争が行なわれているかどうか。独占禁止法上では自由な競争が行なわれている商品に限って認められるわけでありますから、自由な競争が行なわれていないと、指定の取り消しというような問題があります。こういう点について、今後じっくり腰を据えて調査いたしたいと思っております。
  11. 武藤山治

    武藤委員 いま、やみ再販契約というものが相当ある。新聞その他の報道によると、金額にして二兆円くらいあるだろうといわれておりますね。これはメーカー数からいうと、二兆円のやみ再販契約というとどのくらいの数になりますか。
  12. 北島武雄

    北島政府委員 二兆円という数字がよく使われますが、内容を見ますと、私は実際はオーバーだと思います。その意味は、再販売価格維持行為が行なわれやすい商品という意味であります。全部行なわれているとは私決して思っておりません。そういう商品の分類をいたしまして、これについて実態調査をしていく必要があるということでありまして、二兆円のものが全部やみ再販が行なわれているとは決して思っておりません。ただ、行なわれやすい商品というのを累計してみますと、小売り価格の中で二兆円くらい占めそうだということであります。なお、念のため申し上げますと、大体四十年度で小売り価格が一応八兆円から九兆円と推定されておりますが、そのうちで現在正式に再販売価格維持契約が認められておりますのは、著作物関係で約三千億円、それからその他の公取の指定する商品で約二千億円、大ざっぱに申しまして五千億円というのが、これが正当な再販売価格維持契約に基づく小売り価格、こういうふうに考えております。
  13. 武藤山治

    武藤委員 かりに現実に再販が二兆円ないにしても、やりやすい品目が、上げてくると金額にして二兆円くらいある。おそらく卸と小売りあるいはメーカーと卸、小売りとの関係では、小売り価格をとにかく下がらぬようにお互いがこの価格で売れという約束なり、あるいはプレミアムをつけて、実際上は消費者価格が下がらないような下方硬直性をますます強固にしている。そういう形が今日の実態ではないだろうか。これに真剣にメスを入れ、これをひとつ改善しなければ、消費者立場というものは保護できないのじゃないだろうか。これも一つ大きな物価問題として私は取り上げる必要のある問題点ではないかと思うが、一体委員長はどう考えますか。
  14. 北島武雄

    北島政府委員 全く御同感でございます。再販売価格維持契約そのものの存立の意味も、これは私どもよくわかっておりますけれども、現在の物価問題に直面いたしまして、やはり真剣にこういう問題に取り組んでいかないとぐあいが悪いんじゃなかろうか、こう思っております。ただ、残念ながら公正取引委員会はいままで再販売価格維持契約に従事しておった職員がわずか二人なんです。はなはだ乏しい陣容でございまして、来年席は大蔵省にお願いしまして、公取全体で三十名の純増の定員を認められましたので、そのうち若干の人員をさきまして再販売価格維持契約中心とする一課を創設しまして、そうして実態をよく把握したい、こう考えております。
  15. 武藤山治

    武藤委員 ただいまの質問でわかりますように、やみ再販契約というものが、企業ウエートでいくならばおそらく五〇%といわれておるわけであります。そのくらいが再販契約を結んで下方硬直小売り価格にしている。したがって、幾ら物価を安くしよう、高騰の率を下げようと政府経済見通しで五・五%ときめてみたところで、片方の他の多くの品目がストップされている形なんでありますから、上がり下がりしているのは野菜だけだ、生鮮食料品だけだと幾ら言ってみても、ほかのもっと下げられるものが下がらないでおるから、局部のものだけが騒がれている。私は、それよりやはりいまのような再販制というものにメスを入れて、これをひとつ根本的に改善をする、そのためには、いまの独禁法では事足りぬ、陣容も事足りぬ、こういうことならば、単独立法も辞さない、こういう態度をとってこの際は取っ組むべきだと思いますが、単独立法を制定してまでこれと取り組まなければならぬというような考え方大臣お持ちであるかどうか、大臣見解委員長見解を承りたい。
  16. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私は、再販売価格問題というものは、これは消費者価格問題上非常に重要な問題だ、こういうふうに考えておりますが、ただいまのところは人手もふやすというようなことも計画をいたしておるわけであります。そういうようなことで、これは運営方針いかんで解決できる、こういうふうな見解でございます。
  17. 北島武雄

    北島政府委員 まず、再販売価格維持契約につきましては、幸いと申しますとあれですが、日本はほかの国に比べて実は範囲が非常に狭かった、これが一つの正式に認められた再販売価格維持契約としては幸いだと現在では思っております。それで、ただいまのところにおきましては、やはり当面の問題として、やみの再販売価格行為、これをまずどんどん押えていくということ、それから、その上でもう一つ現在認められておる商品について再検討する、こういうことがまず先決の問題ではなかろうか、こう考えております。
  18. 武藤山治

    武藤委員 私はちょっと委員長資料を要求しておきますが、現在あなたたちが二兆円ぐらいは可能だと思われる、再販売価格維持契約をしやすい商品ですね、そういうようなもので、特に消費者の家計に響きが大きいと思われる品目、そういうようなものをひとつ抽出して、後日資料提出を願いたい。  それから、この年が明けてから、あれは明治と森永でございましたか、粉ミルクの再販売契約がけしからぬというので、公取から勧告を受けておるというような話を聞きました。和光堂という会社もそうでありましたか、これらのあと始末について会社側はどういう態度をとったか、公取とその後どういう話し合いがついてそういう不当な取引条件はやめると言っておるのかどうか、そういう点少しお尋ねをいたしたい。
  19. 北島武雄

    北島政府委員 森永商事と明治商事につきましては、昨年の暮れ一応勧告を出したわけであります。この勧告に対して受諾しないということになりましたので、審判開始決定といたしまして、正式に審判でもってその実態をきわめる、こういうことになりました。和光堂につきましては、勧告をいたしましたが、まだ正式な回答の機会がないのでございまして、受諾するとも受諾しないとも返事がございません。もし受諾しないということになりますれば、やはり同様に審判開始決定ということになろう、こういうふうに考えております。
  20. 武藤山治

    武藤委員 受諾をしない。非常に企業は力が強うございますから、大きい企業になりますとなかなか公取の言うことをすなおにさっと認めぬ。審判をした場合に、いまの公取考え方では、この法律に基づいて公取の主張が勝つ、正しいと判定を受けられる自信がありますか。
  21. 北島武雄

    北島政府委員 審判となりますと、今度は準司法的な段階に移りますので、審判官が審査官と相手方の上に立って審判を下して、それが正式に委員会に出てくることでありますから、目下のところ私がそれを申し上げるのは時期が早いのでございます。ただ、森永商事と明治商事が応諾しないのは、一応審判してもらって、そこで事情をよく述べたいということのようであります。事情をよく申し述べて、そして、もし自分の言い分を全部言わしてもらえるならば、同意審決という問題があります。よく審判開始決定いたしますが、自分の主張を一応全部聞いてもらった、それで公坂側の言い分もよくわかった、そしてやはりしかたがないということになりますと、途中で同意する場合があります。その場合には、同意に基づく審決ということでやるわけであります。いまのところ、とにかく審判廷で十分言わしてもらいたいという態度のようでございますので、今後の成り行きは、私どもは準司法的な問題でもございますので、ちょっと申し上げかねます。
  22. 武藤山治

    武藤委員 割り当て時間でありますから、簡単に最後にお伺いいたしますが、大蔵大臣、いま御承知のようにカルテルの件数が非常にふえてきている。さらに再販契約というものは、御承知のように、やみ契約を入れたら、これはもう全企業の半分を占めるであろうといわれるほど再販契約をいたしております。さらに寡占状態は一方どんどん進んでおる。政府みずからが資本の集中、企業の合同を促進をしている。いよいよ寡占の状態というものは強化されていく、こういう傾向は、日本の産業の基盤を強くする、体質を強化するという一面はありながら、同時に価格というものを硬直化させ、消費者に犠牲を与えるという面も見のがすわけにいかぬわけであります。そこで完全な自由競争をさせる、完全競争させるという資本主義のたてまえからいくならば、これらの無原則な、たとえば、一年間でカルテルをやめるといいながらも、三年たっても五年たってもそれを延長しておく、もう一回できてしまうと、それがずるずると不況が終わっても続いている、こういう傾向が日本にはある。だから、日本カルテル王国などといわれるゆえんもここにある。そこで私は、やはり国の財政や金融物価の問題を何とか切り抜けようと努力をしても他方企業側のこういうところを野放しにしておくということでは、なかなかうまい効果は出ないと思うのであります。より早く効率を高めるためには、このカルテルの問題寡占の問題あるいは再販の問題について、やはり大蔵省としても根本的にメスを入れる必要があろうと思います。いまおそらく質問しても、実態がどうなっておるかということも大蔵省では答弁できないと思うので、私は尋ねないのでありますが、これらの問題についても、大蔵省として、日本金融やあるいは財政を運営していく立場上、これがどう消費者価格に関連を持つかということをやはりしっかり把握をして、やがての委員会ではひとつ大蔵省としての態度を表明していただきますから、十分検討してもらいたいと思いますが、大臣見解を伺って、質問を終わりたいと思います。
  23. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 武藤君の話、まことにごもっともな点が多いのです。ただ、ただいま世界経済が開放体制下である、自由競争、また自由化の世界情勢である。こういうものに当面いたしまして、日本の国の全体の経済力を上げていくというためには、やはりこれに応ずる考え方対策というものも必要なんであります。まあ、角をためて牛を殺すようなことになっても困るので、両々相並立し得るような考え方でなければならぬと、こういうふうに思いますカルテルのごときが一度できたら十何年も続くというようなものは、私は、これは異常であり、不当であると思うのです。こういうものは二、三年で処置しなければならぬというような性格であろうと思います。それから、イギリスでも大いにやりましたが、再販売価格の問題、これも非常に重要な問題で、思いを新たにして検討しなければならぬ問題だと思います。大蔵省といたしましても、所管ではございませんけれども、経済政策全体の重要な問題でありますので、大いに検討してまいりたい、かように考えます。
  24. 武藤山治

    武藤委員 いま大臣がおっしゃいましたように、これは確かに開放経済で、世界経済の中で日本競争しなければならぬ。企業の体制を強化し、競争にうちかつための企業にしたい。あまりそれに急のために、今度はそれがやがて通貨インフレを引き起こし、物価高騰させているというのがいまの日本の姿なんです。そのことが悪循環をして物価がこんなにも上がる状態では、国際競争に勝てなくなるのですよ。国内物価がどんどん高くなれば、輸出競争においてもやがてこれが国際収支の問題にはね返ってくる。その点については、堀博士がこれから国際問題についてやりますが、とにかく物価が一年間に定期預金金利率よりも高くなるというような情勢では、日本の貿易問題にも大きなひびが入ってくるわけでありますから、これは政府としてもやはり真剣に消費者物価の問題も考えなければいかぬ、こういう点を強く要求をして質問を終わりたいと思います。この次にまた続いてやりたいと思います。
  25. 三池信

    ○三池委員長 堀昌雄君。
  26. 堀昌雄

    ○堀委員 本日は、金融の問題について大臣に少しお伺いをしておきたいと思いますが、ちょっと時間もございませんから、私も簡単にお伺いをいたしますので、大臣のほうもできるだけ時間を節約して御答弁をいただきたいのですが、いまの日本経済景気の現状、これをひとつ簡単に、どんなふうに見ていらっしゃるかをちょっとお答え願いたいと思います。
  27. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 非常に設備過剰の度合いが高い、潜在的な生産力があり余っておる、こういうことでございます。そこで、企業はその過剰な設備を何でつくったかというと、自己資本でなくて、おおむね他人資本でこれをつくっておる。今日金利の負担は非常に重い。それからもう一つは人件費ですね。物価が上がってくるということにも関連いたしまして人件費が上がってくる。それから、遊ばしておる。これがおおむね私は三〇%ぐらいの過剰設備があるのじゃないかというふうにも思いますが、その過剰設備に対する人件費は払わなければならぬ、こういう立場にあるわけであります。そういうようなことから企業の収益面が非常に悪くなる、こういうことかと思うのであります。そういうようなことがずうっと株価なんかにも反映して、低落の一途をたどってきたというような状態が続いたわけでありますけれども、そういう過剰設備の圧力、これがいま日本経済全面をおおっておると思うのであります。しかし同時に、そういう経済状態でありますれば物価が下がりそうなものであるというふうに考えられるのでありますが、それが下がってこない。それがまた企業自体の運営に非常に大きく影響をしてくる、こういう状態かと思うのであります。つまり、一口で言いますれば、過剰圧力の経済体制であるにかかわらず、構造的要因というものが根にあって、経済原則がうまく働かない、物価が下がらない、そういうところに私は日本経済の当面している悩みがある、こういうふうに考えます。
  28. 堀昌雄

    ○堀委員 何といいますか、非常に長期的にはそうでございます。しかし、いまの二月の経済状態といいますか、景気の状態といいますか、短期的に、もう一つ具体的にいえば、いよいよ三月決算がそろそろ始まってくるわけですが、今度の三月決算というのは九月比でどのくらいと大臣は見ていらっしゃるか。要するに、短期的な景気の現状、こういうことで少しお伺いしたい。
  29. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 昨年の経済がずっと横ばいである。当然昨年の十月から今日までの経済横ばい状態に推移しておる。三月期決算といいましてもあと一月余りしかないわけでありますから、大きな変化はないと思います。そういう状態で、決算はどういうふうになるか、私も的確な見当がつきかねます。というのは、決算をつくることには人為的な要素もありますからこれは予測ができませんけれども、大体企業の収益状態の実態横ばい程度じゃないか、そういうふうに思います。
  30. 堀昌雄

    ○堀委員 私も、いま大臣がお話のとおりに、いろいろな経済指標を見ておりましても、三月決算が九月よりよくなるということにはあまりならないだろう、こういうふうに思っております。  そこで、実はこれに関連して二、三問題があるわけですけれども、先に簡単なほうから始めておきたいと思うのですが、証券市場は、御承知のように、昨年の七月には千円台に近づこうというくらいになっておりましたが、二月にはついに旧ダウ千五百円まで回復をいたしました。中身は、いろいろと調べてみましても、全体としてかなり回復はしております。ごく最近はやや投機的な感じのする点もございましたけれども、回復をしてまいりました。昨日あたりはずっと下がって、千四百四十円台まできたということのようでありますけれども、これは大臣、どういうふうにお考えになりますか。こういうふうに株が高くなるということ、いまの経済実績は、三月決算は横ばいだ、大体これが常識だろうと思いますが、にもかかわらず株だけはどんどん上がってきた。どういうふうにお考えになりますか。
  31. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 株はよく先見性ということが言われますが、証券界が、またその背後にある役資家が、日本経済はいよいよ回復過程に入るという見通しを持ってきたのが私は根本的な原因だと思います。  それから第二の問題は、証券対策をいろいろ講じたわけであります。そういう証券対策も効果があらわれてきておる。特にその中で、株式自体の需給状態におきまして、証券の供給の面ですね、これが需要に対してやや足りないというか、そういう状態があるのじゃあるまいか。産業界でも証券界と一緒になって株式の発行を抑制しているというような問題もある。また、保有組合ができてたな上げ措置を講ずるというようなこともあったわけであります。そういうような関係で需給が梗塞しているということが一つの問題である。  それからもう一つは、一般の金融ですね。金融政策が緩和基調にずっと一貫して動いてくるような状態になってきておる、こういうことかと思うのです。そういうことが総合して株価の動きに反映されておる、こういう見方をいたしておるのであります。
  32. 堀昌雄

    ○堀委員 まあ、私も大体大臣の御判断と同じように考えておりますが、先見性の問題というのは、これはいろいろなことがあると思います。この前も予算委員会でちょっと申し上げましたけれども、どうも国債発行はインフレに連なる、私どもは一般的にそう言いますけれども、大衆もそう理解して、インフレ・ヘッジに出ているのじゃないかという感じがしておりますし、そのことは、経済の回復よりもどうもそのヘッジのほうが大きいのじゃないかという感じがいたしますが、二番目の証券対策の効果というのは、私は非常に大きなものがあると思います。御承知のように、約四千億円にのぼるところの日銀信用によってなお依然として証券市場をささえておる、私はこう考えておりまして、その点で私は、やや株式市場が現在の経済情勢と、幾ら先見性ありといえども、乖離し過ぎるような状態については、やはりいま大臣がおっしゃったように需給関係を見直してみる必要があるのじゃないか。需給関係の見直しは、これは私は共同証券の問題と、やはり次は増資の問題との二つの問題だろうと思いますから、この点について、昨日日本共同証券は取締役会を開いて、経常経費その他の補てんに充てるための部分については株の放出をしよう、しかしそれも慎重に時期を見てやろう、こういうことであるようでありますが、時期を見て慎重にやるのはけっこうですけれども、やはりあまりあそこがああいう形になることは必ずしも望ましい状態ではない、特に証券問題を過去何年かにわたっていろいろ私どもやってまいりましたけれども、助けてもらうときにはいろいろな形で国家信用にたより込み、そして上がるときは何か自分らのワクの中だけで上がるのだ、もうけるものはもうけておけというような感じでは、困るのであって、やはり健全投資というかっこうにこれがなってまいりませんと、証取法をここでつくったわれわれの真意も、どうも十分に証券界に通ってないような気がしてしかたがないのですが、そこらを含めて、いまの一番重要なのは需要供給の問題でありますが、さらにいまの株式価格が再び千五百円をこえるような場合には、私はそれをなおかつ日本銀行の信用できさえておくということは問題があろうかと思いますが、大蔵大臣はいかがお考えになりますか。
  33. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 株式の動き政府が関与するということはなるべくこれは避けなければならぬ、そういうふうに私は考えております。ただ、昨年の上半期の事態は、どうも株価が底知れず低落しそうである、場合によれば千円の大台も割りそうだ、そういうような事態において日本の信用が一体どうなるかということをおそれましたがゆえに株式対策というものはとられたわけであります。しかし、そういうことの効果もあずかって今日株価が回復してきておる、そういう際でありますが、これがある人為的なささえで動いておりますとか、あるいは投機的な要因が非常に強いとかいうことでありますれば、政府もこれを放置するわけにはまいりませんけれども、そういう要因がない限り、なるべく株価には政府がさわらぬがいい、証券界自体の自主的な判断において動いてもらうのがいい、こういうふうに考えておるわけであります。まあ、非常な投機的要因で混乱的な相場が出てくるというような際には、私は、政府も警告をするとか、いろいろなことが必要であろうかと思いまするが、なるべく自主的な動きにまかせるというのが、私の基本的な考え方であります。
  34. 堀昌雄

    ○堀委員 私は、いま大臣に、株の値段が上がったから政府が介入して下げろ、こう申しておるわけではない。要するに、日本経済政策の中で、特に日本銀行が現在四千億円に余る証券の信用を膨脹さしておることは、現状になってみると、それでもなおかつそのままでいいのかどうかという経済上の問題があると思うのです。この間千五百円をさらにこえようとするような動きがありましたときに、日本国民のほとんどすべての者が、千百円から千円を割り込もうとするあの状態、ああいうときまでの経過の中では、そういう日銀の信用のささえをやむを得ぬと思っておった者もあろうかと思いますけれども、それが一ぺんに五割も回復をして、なおかつ需給関係を締めて、狭い中でそういう価格が上がることを認めておくということはおかしい。やはり正常な状態の土俵を広げて——それを一ぺんに広げろと私は言うわけではありませんが、そうなれば、土俵を広げることによって、中で自主的な価格がきまるようにすることが当然であって、私は下げろというわけではありませんけれども、たな上げをして狭めたものは、ある程度徐々に広げることによって調節を考えなければ、これはますますホットマネーの流入を助けることになって、他企業とのバランスから見ても非常に重大な問題である、こう考えますので、その点で、要するに、私は具体的に伺っておるわけですけれども、いまやはり少し落ちつきかけておるようでありますが、さらにまたわれわれの現在の日本経済の現状から見てあまりに乖離し過ぎた株価になるような傾向になるときには、私は、共同証券にたな上げされておるものは当然日銀が引き揚げるかっこうによってそれが市場に放出される——そのしかたは、これは専門家にまかせるとしても、需給調整を考えるべきではないか。あるいは、いま制限されておる増資の問題も、資金需要がいまありませんから、企業側としてもそう増資を急いでおらぬと思いますけれども、しかし、片面、今度税法で皆さんのほうでは、自己資本比率が上がったら減税しようではないか、こういう法律を出す以上は、増資ストップの問題についてももう少し考えて、これが自己資本と借り入れ金との財務比率の好転に資するような処置がとられるのが当然ではないか、こういうふうに思いますから、大臣、その点については政府としても当然の見解を……。
  35. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 たとえば、保有組合の動きとか、あるいは増資を抑制しておる、これをだんだんとゆるやかにしていこうじゃないか、いろいろな動きが出てきておるのです。しかし、これを政府が積極的な形でやるのはよろしくない。これは政府がじっと見守っておる、そしてこれが民間の証券界の自主的な形で動く、こういうことを期待しておる。しかし、現にそういう動きは始まっておる、健全な動きが始まっておる、こういうふうに見ておるわけであります。
  36. 堀昌雄

    ○堀委員 政府が金を貸しておるわけではありませんから、近日中に日本銀行の総裁にここに来ていただいて、日本銀行としてそういうあり方がいいのかどうか、少しここでもう一ぺん詰めて議論をさしていただきますけれども、時間もありませんから次に入ります。  そこで、労働基準局長も入っていると思いますから……。一月十八日に中央労働基準審議会が社内預金問題について答申をいたしました。そこで、時間を省く都合上、私のほうからちょっと答申の内容に触れて申し上げておきますと、「労働基準法第十八条第二項に基づく協定について、労働基準法(以下「法」という。)第十八条第二項の協定を締結するに当っては、次の各項に掲げるところにより協定するものとする。  (1) 預金者の範囲労働者に限ること。  (2)預金の受入れに当っては、労働者の賃金、賞与以外のものを受け入れないこととするとともに、一人当りの預金総額を限定すること。」これはちょっと金額で目安をあなた方の考え方を承りたいのです。  その次に、「(3) 一般市中金利の水準からみて適当な預金利率を定めること。」これも利率ですから、具体的に願いたい。  「(4) 預金の受入れ、払戻し等の手続及び預金の保全の方法を明確にすること。」その中で、「イ預金の支払に関する金融機関による保証又は質権の設定、ロ その他これに準ずる有効な手段であって、労働基準監督署長の認めたもの」こういうのが主要な問題点だと思います。  そこで、現状で労働基準局長のほうでいま考えておる一人当たりの預金総額は大体どれくらいに限定しようと考えておるか、それから金利はどれくらいにしようと考えておるのか。要するに、金融機関による保証または質権の設定の関係の問題は、これはどういう形に考えておるか、先に基準局長のほうからちょっと答えてください。
  37. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 御指摘の点を逐次お答え申し上げますが、第一の、一人当たりの預金総額の問題でございます。中央労働基準審議会で審議を重ねる段階におきましては、たとえば百万円とかあるいは五十万円とかいうような数字が論議されたこともございます。  それから第三点の、適当な預金金利とはどれくらいであるか、一割であるか、以内かということも議論されたこともございます。ただ、事柄の性質上、ここにたとえば百万円とかあるいは一割といったような数字を明記いたしますと、いままでそれより低かったものが、ここに金額が出たからというので引き上げの働きを伴う、そういう結果になりますとかえって問題がある、そこで、この答申の中ではそういう金額は示すまいということに労、使、公益の意見が一致したわけであります。私どもといたしましては、今後届け出にあたりましては、いま申しましたような中央労働基準審議会の審議過程におきましていろいろ御議論になりました数字等を頭に置きまして指導いたしたい。なぜ数字を明記しなかったという点については、以上申し上げましたような理由でございますので、御了承いただきたいと思います。  それから、預金の保全の方法等について、この答申では「金融機関による保証又は質権の設定」という例示をしてございます。この具体的な内容についてはいろいろやり方がございますし、特に質権の設定というやり方につきましても、いろいろ法律上の構造としてどういうのが適当かという点については幾つかの型があろうかと思います。この答申の段階では「金融機関による保証又は質権の設定」、こういうふうに示しておるわけでありますが、こういう型が望ましいという例示をいたすことが適当であろうかという点について、なお慎重を要する、ある型をきめますと、それがいいんだというので、みんな右へならえする、こういう波及効果もあろうかと思いますので、私どもいま事務的にこの点を検討いたしておりますが、現状ではこの型がいいので、こういう型に右へならえしてほしいということは、まだそこまで固めておりません。
  38. 堀昌雄

    ○堀委員 大臣、実は私ども社内預金の問題は、前の田中さんのときにずいぶんやりまして、今日に至っておるわけですが、この答申の中にも、いみじくもこういうふうにいわれております。「本審議会としては、社内預金問題が預金者の保護その他労働基準法上の貯蓄金管理制度としての問題に止まらず、労働福祉政策労働者財産形成政策金融政策等において無視できない幅広い問題ともなっているので、今後なお慎重に検討するが、」云々、こうなっておるわけですね。そこで、ともかく一番この中で大事なのは、私どもこの社内預金はやめてもらいたいと思ってやってきていますけれども、現実になかなかそう簡単にいかない。それならば、とりあえず預金者の保護というのは徹底してもらわないと、非常に重大な問題でありますから困る。それが今度の金融機関によるところの保証または質権の設定、こういうかっこうになってきたわけですね。ですから、この問題については、労働大臣と十分ひとつお話し合いをしていただいて、やはり金融的側面からの預金者の保護という問題が一つ、それからそういう保全のあり方についても、ともかくも質権を設定したけれども、会社がつぶれてしまったらこの質権は実際には簡単には取れなかったというようなことになってもなかなか困るわけでありますので、ひとつそこらを含めて、労働者が乏しい中からたくわえた預金でありますから、それについてはひとつ十分大蔵省側としても責任を持って処置をしていただきたい、こう思いますが、大臣いかがでしょうか。
  39. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 せっかく審議会の答申も出た今日でありますから、私どもも積極的に取り組んでみたいと思います。
  40. 堀昌雄

    ○堀委員 特に、いま私は少し具体的に預金限度なり金利の問題に触れましたけれども、預金限度のことで、何か労働者の預金が全部その後社内預金に行ってしまったということは、やはりきわめて不安定な問題につながると思うのです。ですから、そこは私は一般の常識があろうかと思いますので、まあ、国民の総貯蓄の平均値が一人当たり三十何万円ということなら、一応そこらに線を引くとか、やはりこれは何となくということでなくて、明示すべき問題だと思う。それ以上はその他の貯蓄方法によりなさいといって私はちっともかまわない問題だと思いますから、その点を少しはっきりさせていただきたいことと、いま基準局長は一定の線を示すと、低いのがそこまで行くというお話でありますが、現状の幅をちょっと伺いますが、金利は現状は一体どれくらいの幅の中に入っておりますか。
  41. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 金利は、平均しますと八分二厘ということになっております。
  42. 堀昌雄

    ○堀委員 八分二厘の金利というと、現在定期預金が五分五厘でございますから、この八分二厘というのは、一年ものでも半年ものでも、平均すればそういうことになって、純粋の一年ものではないということになるのだと思いますが、その点もあわせて、平均八分二厘に見合う期間はどれくらいですか。
  43. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 先ほど申し上げましたのは、普通預金を申し上げたわけであります。それから定期預金は九分が平均になっております。それから、なお別に積み立て預金という形をとっておりますものはそれより若干高い、こういう形になっております。
  44. 堀昌雄

    ○堀委員 私は、いま八・二%というのは全部の平均値かと思ったら、何とまあ普通預金の金利が八・二%では、これはどうもべらぼうな問題だと思いますから、これもやはり一般の市中金利にせいぜい一%とかくらいの上のせ、それがいけなければ漸進的に、これは山中方式ではないのですが、八%なら次の年は七%、次の年は六%という漸減方式をとって、やはり適正な金利水準まで持っていくということは、私は国民平等ですから、国民の中のある一部の者だけが公然と高い金利のときに預金ができて、その他の者はそれ以下のものしかできないという、これは現在の臨時金利調整法の法律の趣旨から見ても、そういう意味では憲法の趣旨にも非常に反すると私は思うのです。だから、この点についてひとつ十分な措置を基準局長のほうでも考えてもらいたいし、同時に大蔵大臣としても考えてもらいたい。いかがですか。
  45. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ちょうどいい機会でございますから、よく考えてみたいと思います。
  46. 堀昌雄

    ○堀委員 その次に、大体、日本の金利が非常に低い状態に現在置かれております。ところが、諸外国、特にイギリス、西ドイツ、アメリカは、御承知のように、いずれも高金利の方向に動きつつあるわけであります。最近の特にアメリカのいろいろな経済情勢は、まさに景気過熱の方向に向かいつつあるというふうに私は判断をいたします。昨年の十二月六日に公定レートが引き上げられまして以来、現状の中でもいまどんどん市中金利一般が上昇を続けておる、こういうのが現在の姿でございます。すでにこの前公定レートが引き上げられたときには、それに先行してフェデラル・ファンドの金利が上がっておるし、財務省証券もすでにかなり上がっておったというところで公定レートを上げた、こういう経緯があるわけでございますが、その後もなおかつそういう金利がどんどん上昇している、こういうふうな状態でございますね。国際金融局長、非常に具体的ですから、アメリカで公定レートを引き上げてからその後のBAレートの上昇というのはどういうふうになっているのか、ごく最近のところまでを説明願います。
  47. 鈴木秀雄

    ○鈴木(秀)政府委員 十二月六日に公定歩合が〇・五%上がったわけでございますが、当時の、それ以前のBAレートというものは四・五%くらいであったわけですが、十二月の六日に四・七五%になりまして、十二月十六日に四・八七五%、それから十二月二十八日に五・〇%、二月三日に五・一二%、結局公定歩合が〇・五%上がりまして以来〇.六二五%、要するに公定歩合の上がりより〇・一二五%よけいに上がったということでございます。
  48. 堀昌雄

    ○堀委員 いま大臣お聞きのように、〇・五%引き上げる前にすでにその問題があったわけですが、その後にさらにBAレートはもう〇・六二五%上がってきたわけですね。それくらいでとまるかということになると、私はちょっと簡単にとまらないのじゃないかと思うのです。  そこで、ひとつ亀徳財務調査官にお伺いをいたしますが、今度の予算教書その他を通じて、アメリカの財政は過熱に対してやや消極的な予算を組んだと私は考えております。少し消極的な予算を組んだが、その予算の組み方が、かえってアメリカでは金融にしわを寄せる方向に向かってきておる、私はこういう判断をするのですが、その点について、私は少し具体的に持っておりますけれども、あなたのほうでお考えになっておる具体的な問題について少し御説明願います。
  49. 亀徳正之

    ○亀徳説明員 いま堀先生がおっしゃいましたように、本年の一般教書が発表になりまして、大体アメリカの予算規模、それからアメリカの現在の経済のバックグラウンドがいろいろ言われておりますが、それによりますと、アメリカのGNPは七千二百億ドル程度、前年に対して五・五%くらいのアップになるのではないか。一応経済のバックグラウンドとしてはそう考えられます。それから、予算規模といたしましては、本年の歳出総額は千百二十八億ドル、それから歳入が千百十億ドルでございまして、十八億ドルの赤字、まあ、ジョンソンは過去七年以来最低の赤字だ、こう一応言っております。問題は、やはりアメリカの国内的には偉大な社会、グレートソサエティを建設したい、それから外にはベトナム戦争を遂行していく、この見通しがなかなかわからないということでございまして、今後の動き次第ではベトナム戦争がさらに拡大するということになりますと、その面からの支出も多くなってくる。したがって、常に両面——もしもそれがうまく引っ込めば、やはり偉大なる社会の建設に金を回す、それからそうでなければ、ある程度カットしまして、ベトナム作戦遂行のために予算を回していかなければならぬというような状態、両様のかまえで臨んでおるというのが現実ではないか。それから同時に、国内的に見ますと、やはり昨年の金利引き上げということからわかりますように、だんだん金利が詰まるというか、それからもう一つ物価はやや上がりつつある。したがって、これだけの歳出規模を前にして、またやはりやや物価も上がっていく、そこである程度これだけの歳出をまかないながら、同時に、何とかしてインフレ的な傾向を押えていきたいというところで、財政はある程度極力赤字も少なくするというかまえで臨んでおる。それで、他方一応財務省とそれから連銀あたりの見解がいろいろ違っているじゃないかという議論もあるのでございますが、やはりある程度何というか、そういう面を押えていきたい。したがって、金融面でもある程度締めぎみ、したがって、ある程度金利が上がってもやむを得ないのじゃないかというような態度、考え方で臨んでいるのが現状ではないかと考えております。
  50. 堀昌雄

    ○堀委員 時間がありませんが、私もやはりいま亀徳さんの言われたように、総括的にはそういうことだと思いますし、個々のいろいろなデータを一つずつ見ましても、アメリカは、いまもお話があったように、物価も、卸売り物価が六四年の十二カ月間の上昇率は〇・四%、ところが六五年の十月までの十カ月間の上昇率は二・八%も上がっておる。ただし、この中には食料その他の問題がありますから、それを除いてみましても、六三年の卸売り物価上昇は〇・五%であった。六四年は〇・六%であった。それが今度は六五年の十カ月分で一%上がっておる。卸売り物価はこういうふうなかっこうで上がってきております。それから失業率が非常に減ってきて、完全雇用の極限に近くなってきた。ベトナムに軍隊を入れるために人間が外へほうり出されているわけですから、それでなくても労働需給が非常に逼迫しておるのに、これは労働力の関係から非常に問題が出てきたわけです。いまさっき私が触れたイギリス、西ドイツ、アメリカというのは、いずれも金利高の背景には労働力不足という問題が非常に大きなウエートを占めてきておる。これがコストプッシュのインフレになりやすい状態にいま追い込まれておる、こういうことでありますが、データとしても、六四年の十二月に五%であった失業率が、六五年の十一月には四・二%下がってきておる。それから、製品一単位当たりの賃金コストが、六四年の一年間はマイナス一・一%ということであったのが、六五年の十カ月はプラス一・七%、こういうふうに製品一単位当たりの賃金コストも上がってきておる。製造業の平均賃金は、一月から十月平均賃金で、ことしは時間当たりで三・二%、週当たりで四・六%すでに上がってきておる。これをこれまでに比べると、六二年、六三年では時間当たりが二・九%、六三年、六四年では時間当たりが二・八%であったのが、三・二%になった、こういうことでありまして、さらに週当たりは三.二%から三・四%へ、四・六%へと、賃金は非常に上昇しておる。そういう中で生産性のほうは今度はどうかというと、低下し始めておる。これは未熟練労働者が出てくる、あるいは遊休設備を稼働するということで、非常に生産性の悪いものまで稼働しておるという現状から、大体六五年のスリークォータまでの状態、二・五%くらいの生産性上昇にとどまるのではないか、こういわれておる。こういうふうないろいろな状態を見ておりますと、アメリカの景気過熱というものは、ベトナム戦争をやっておる限りは避けられぬということは明らかだと思います。  これを金融の面から見れば、設備投資がやはり非常にアメリカの景気をささえてきましたから、この設備投資の中における企業の総調達資金というのは、六四年が六百八十億ドルであったのが、六五年の上半期は年率で八百九十億ドル、三〇%も資金需要がふえておる。この中の内部と外部に分けてみれば、内部留保のふえ方は六十二億ドルであったけれども、外部のほうは約百五十億ドルから実はふえてきておる。その百五十億ドルも、外部調達資金がふえた中身の七〇%は銀行借り入れによっておる。やや日本に似たかっこうがアメリカで出てきておるわけです。やはり経済成長というものがある程度加速をしてくると、必ず銀行借り入れが膨張してくるというのは、やはり資本主義社会の一つの原則的なものではないかという感じがするわけです。そういうふうになった結果、外部調達資金の銀行借り入れ、社債、企業間信用の伸び率は、六四年、六五年で見ると、銀行借り入れば一九六%ふえておる、社債は二一%、企業間信用四九%、異常な形で、実はアメリカの経済成長は民間設備投資がやはりささえたという日本の姿に似たかっこうをとり、その民間設備投資をささえておる資金は何かというと、銀行借り入れだ、こういうことになった結果、主要都市連邦準備制度加盟銀行は預貸率が六〇・一%から六四・一%であり、手元流動性は極度に下がりつつある。こういうアメリカの金融の側面もあるわけですね。こういう資料をずっとながめてみれば、これはBAレートが上がるというのはあたりまえであって、ベトナム戦争の続く限りはアメリカの公定歩合引き上げは避けられない、私はこういうふうに判断をしているのですが、大蔵大臣いかがですか。
  51. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 アメリカのことまでそう勉強をしておりませんが、しかし、堀さんのお話のような傾向は私はあると思うのです。つまり、一番の問題は労働問題昨年は四・一%というので驚異的な失業率だった。ことしはそれがさらに三・五%というようなところにくるというふうに見通しておるようでありますが、そこが問題で、しかも、労働の逼迫がどこからくるかというと、二十代の若年労働者が逼迫する。これに対していろいろアメリカでは手を打っておるようでありますが、どういうようにこたえ得るか、こういうことかと思うのです。しかし、大体の傾向としてアメリカ経済上昇過程をとる、その原動力はベトナム戦争というところにあるということを考えますときに、金融の事情、それから物価動き、まあ、アメリカもなかなか容易じゃない、こういうふうに思っておるわけであります。注意深く見守っていきたいと思います。
  52. 堀昌雄

    ○堀委員 実は、私がきょうここでややこまかくアメリカ経済について触れておりますのは、日本の国際収支はいまや重大なところへきておるということを、私は少し当委員会でこれを内外に明らかにしておかなければいかぬと思うのです。そういうことで、いまの外貨準備は二十億八千五百万ドルくらいですか、ちょっと正確に国際金融局長答えてください。
  53. 鈴木秀雄

    ○鈴木(秀)政府委員 二十億八千二百万ドルでございます。この中で二億一千万ドルがゴールドトランシュでございます。
  54. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、国際金融局長、実はいまの日本の貿易量は非常に拡大をしてまいりましたね。しかし、ゴールドトランシュを差し引いて昔は計算しておりましたから、現状ではゴールドトランシュを差し引くと、十八億三千万ドルくらいですか、ゴールドトランシュを差し引いた昔のものと比較すると……。
  55. 鈴木秀雄

    ○鈴木(秀)政府委員 十八億七千二百万ドルでございます。
  56. 堀昌雄

    ○堀委員 現状はゴールドトランシュを差し引くと十八億七千二百万ドルというのが外貨保有高だ。そこで、私が当委員会に来たころ、大体いまから五年くらい前から十八億ドル台になると大騒ぎをしたものなんです。だから、五年前の貿易量といまの外貨保有高が幾らだったか、ちょっと答えてもらいたい。
  57. 鈴木秀雄

    ○鈴木(秀)政府委員 五年前というと、三十五年でございますから、当時の輸入量は、通関で申しますと四十四億九千百万ドルでございます。外貨準備が当時十八億二千四百万ドルでございます。
  58. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、いま、来年の経済見通しでは通関輸入幾らに見ていますか、比較上……。まあ、いま年度の終わりだけれども、四十年度でもいいです。
  59. 鈴木秀雄

    ○鈴木(秀)政府委員 来年の四十一年度の通関輸入は九十一億四千万ドルでございます。
  60. 堀昌雄

    ○堀委員 いまお聞きのように、日本の外貨準備というのは、貿易量が倍になったけれども、実は外貨保有高は同じですね。これは私は諸外国の状態をずっと調べてみても、こういう状態のところは実はないわけです。それから、よく日本経済の問題を論ずるときに、国際収支が天井だ、その天井の高さで議論をする、こう言うのですが、総体的のものの見方をすれば、実はもうこれだけで天井半分になってしまったわけですね。それが同じに、パラレルに動くのかどうかと見ても、これは現状としてもう非常に低くなっているわけです。そこで、このいまの十八億二千四百万ドルというのは、これはまさしく輸入ユーザンスの残高ぐらいのところにきているのではないか。私の資料はこの十月までしか出ていないのですが、ごく最近のところで輸入ユーザンスの残高は幾らですか。
  61. 鈴木秀雄

    ○鈴木(秀)政府委員 正確には、ここで数字を開けばわかりますが、大体十八億ドルから、とり方によりて、ユーザンス以外の輸入信用を入れますと二十億ドルくらいのものになるだろうと思います。
  62. 堀昌雄

    ○堀委員 ユーザンスとして普通に言っているものは……。
  63. 鈴木秀雄

    ○鈴木(秀)政府委員 ユーザンスは十八億ドルくらいでございます。
  64. 堀昌雄

    ○堀委員 要するに、いまの外貨保有高は、裏返して言えば、輸入ユーザンス分でもって持っているといっても言い過ぎではありませんね。そこで、いまのように、このBAレートがこういうかっこうになりましたから、日本の為銀の出しておりますところのレートはずいぶんいま上がってきておるということですね。いまそれに上積みをして、ライセンスのあるもので、それの四ヵ月ものはどのくらいの金利ですか、答えていただきたいと思います。
  65. 鈴木秀雄

    ○鈴木(秀)政府委員 七・二五%でございます。
  66. 堀昌雄

    ○堀委員 大臣、お聞きのように七・二五%です。まだ私はそう遠くない将来にアメリカの公定歩合はさらに〇・五%上がると思います。これは時間がたてばはっきりすることでありますが、遠くない将来に〇・五%必ず上がる。公定レート五%になる。そういう状態になると、現在でも七.二五%の金利がさらに上がるであろうことはもう間違いがありません。現在このユーザンスがともかく円にシフトする問題というのは、何か愛国心に訴えておるようですが、私は、これは企業の側からいいますと非常におかしいと思うのです。愛国心というものは、やはり国民ですから当然持つべきものだと思うのですが、この金利負担の高い中で、企業は非常に金利負担に苦しんでおる。大臣もさっきおっしゃったとおりです。その中で、はっきりと国内金融で安い金利があるのに、国内差が二%も違うユーザンスをとらなければならぬということになると、これは私は日本企業家としても重大な問題になってくると思うのです。金額が小さければいいですけれども、たとえば鉄鋼の輸入とか、大手筋であるところの商社とか、石油でもそうでありましょうが、大口の輸入をする者にとっては、この金利負担というのは非常に重大な問題になりますから、当然私はこれは円シフトは起こってくる。円シフトが起こってくれば、一体いま日本の国際収支をささえておるのは何かといえば、経常収支でささえておりますね。ことしも十億ドルくらいは黒字になるのかもしれません。私はここにもあとに疑問を提起しておきますけれども、そうすると、要するに、円シフトを起こしたら、輸入ユーザンスは御承知のように四カ月ですから、ざざっと減ってくれば、外貨保有高はざあっと減りますね。そうして、日本の公定レートは低いのですから、金利が低いわけですから、幾ら為銀の取り入れ規制措置の上限を上げたとしても、限界がありますから、ユーロダラーも出るでしょう。短資はどんどん出てしまう。一方、長期資本取引も非常に困難で、電電債その他一部のものは多少は出るでしょうけれども、長期資本取引もこれは期待はできない。そうなってくると、貿易外収支は赤字、資本収支は赤字、円シフトは起きる、そうして、さらに最後の経常収支のほうはどうかというと、これはあとその次に来る問題として、アメリカの最近の設備投資の中身というのは、かつては合理化投資が非常に主体であったものが、いまは、先ほど申し上げたような状態で、遊休設備まで使っておるということになっておるから、能力投資にどんどんかかってきておるので、どうしてもあるところで——ベトナム戦争の問題というのはそんなにエスカレーションするわけにはいかぬでしょうから、経済的な条件を含めてそういう問題も出てくるということになって、これが少しスローダウンしてきたときには、私は、日本の輸出というのは大体限界輸出だと思っていますから、なかなか経常収支の黒字というものは今日のような形を維持できるかどうか、非常に問題が出てくると思う。こうなってまいりますと、私は、今後の日本経済の前途にはきわめて深刻な状態があらわれておる、こう判断せざるを得ないわけです。一体、そういう場合に、片や外側がそうなってきたときには、日本は七千三百億円の公債を発行するんだから、人為的にひとつユールレートをゆるめていきましょうといっていけるかどうかという問題が、開放経済下の国際金融の側面から出てくるのではないか、私はこういうふうに思います。すでに直取りコールは最近上がってきているわけですね。それは五毛くらい上がったってたいしたことはない。直取りが五毛上がったということは、すでに国内的にも金融がタイトになりつつあるということではないか、こう考えてみますと、特に一月は皆さん方の思惑と違った。一月は散超だから、国債の特例法を無理やりに早く上げてくれ、そうして一月中に売り出すんだ。売り出そうと思ったころには何と揚げ超になってしまった。日本銀行はオペレーションしなければ金が出てこない。こういう情勢になった。その裏は何か。これは外為会計の揚げ超が強いからじゃないですか。国際金融局長どうですか。
  67. 鈴木秀雄

    ○鈴木(秀)政府委員 国庫収支全体のことでございますから、私がお答えするのもいかがかと思いますが、外為の分は確かに揚げ超になったことは事実でございます。
  68. 堀昌雄

    ○堀委員 さらに、最近のドルと円との関係から日銀はかなり操作をしていますね。これにかなりいまドルが出ているんじゃないですか。その点、国際金融局長どうですか。
  69. 鈴木秀雄

    ○鈴木(秀)政府委員 平衡操作というのは必要があればいつでもやっておりますが、その内容は、堀先生も御存じかと思いますが、世界の中央銀行がいずれも極秘にしておりまして、やっておる数字は申し上げられませんが、やっているということ自身は事実でございます。
  70. 堀昌雄

    ○堀委員 こういう事実もある。ずっとこう全体をながめまして、日本金融の今後の状態ということになりますと、私は、これはなかなかゆゆしき問題が四十一年度の日本経済の中には出てくる、こういう見通しを実はいま持っておるわけです。私は医者として長く診療しておりましたから、分析については正確に——分析を正確にしませんと診断が狂いますから、分析は正確に、そうして正確に分析したものを組み立てて、推理判断をするときには最低、最悪の線で、診断をする。もしこれが狂えば患者は死ぬんですからね。ところが、日本経済というのは、分析もあいまいで、いいかげんな見通しで診断をしてはしょっちゅう狂っておるわけですね。そのしわがいま国民大衆に寄っておるわけです。赤字公債の発行もその一つのあらわれですね。これは、要するに、劇薬を使わなければならぬところまで来たわけです。私は国債というものは劇薬だと思います。効果はあるけれども、一歩違えば死ぬんですから。そういうところに来た場合、特に現状では、政府はきびしい分析をした上に、それの最低のところで目安をつけて経済政策の運用をするというかまえがなければ、人間なら死ぬし、国の経済なら破産ですよ。こういうことになるわけですが、その点について、大臣、そういう世界的な経済の問題の中の一環に置かれておる日本経済は、金融の面からきわめて重大なところに来ている、こう思いますが、大臣の御所見をひとつ伺いたい。
  71. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 堀さんは、日本経済を見る場合に、国際収支ということを非常に重要視しております。私はこれに対しましては深く敬意を表します。しかし、ちょっと思い詰めた面もあるんじゃないかとも思うのであります。  いま、三十五年当時と今日とを比較されてのお話がありましたが、確かに三十六、七、八、九年と、国際収支は異常なパターンであったと思うのです。経常収支の赤字を資本収支でまかなう、つまり、その期間において外貨準備というもの、外貨保有高は、これはもう横ばいで推移したわけです。しかし、その内容は私は非常に悪化したと思う。ところが、昨年の七月ごろから形がすっかり変わってきている。経常収支は黒字になる、資本収支は減ってくる、ことに短期収支において減る、こういうことになる。ことしあたりの状況を見通してみますと、やはりどうしても八、九億ドルの経常収支の黒が出そうである、資本収支がマイナスになる、そういう傾向をとるようであります。私は、同じ二十億ドルの外貨保有高であるというけれども、その内容は、去年の六、七月ごろからことし、また来年と、非常に改善をされていくと思うのです。  それからもう一つ問題点ですね。堀さんは輸入ユーザンスばかりを見ておられるが、われわれは輸出ユーザンスも持っておるわけであります。それから、その他に短期資本の見合いというものがあるわけなんであります。そういうものを総合しての議論で心配されるなら、心配していただきたい、そういうふうに思うわけであります。そういうようなことを私どももいろいろ心配しておるのでございますが、しかし、私は、経常収支の黒字基調というものを堅持する、そういう政策を通じて外貨保有の内容改善をはかる。同時に、形式的な面におきましても、やはり御指摘がありましたように、いま二十億ドルというような外貨保有高というものは、わが国の貿易に対して十分なものと思いません。もう少しこれは充実していかなければならぬというふうに考えます。  それから第三点の、国内金融に圧迫があるのじゃないかというお話でございますが、これはある程度のことはあります。しかし、輸入ユーザンスを通じての円シフト、この問題には限界があると思うのです。それから、いま業界におきましても、日本の国際収支の立場から非常に協力的な立場をとっております。そういうようなことを考えまして、これはある程度の影響はあると思いますけれども、根本的な影響があるというふうには考えませんし、そういう事態がありますれば、それに応じていろいろと対策を講じなければならぬ、そういうふうに考えております。  たいへん重要な御指摘にあずかりましたが、今後も国際収支を日本経済運営のかなめとしていくということを申し上げて、お答えといたします。
  72. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの円シフトが起きなければいいんですけれども、起きると、要するに、輸入ユーザンスが減るだけでなくて、国内金融から吸い上げるわけですから、それだけタイトになる。一ぺんに両方来るわけです。国際収支の側面と、国内金融もタイトするというのが一ぺんに来る。これは非常に重大な問題でございますから、どうも愛国心に訴えたりいろいろしてみても、限界がある。だから、企業というのは、それは公共性もあるでしょうけれども、これだけ悪いときに、そういう、何というか、国策だけで問題は解決しないような気がしますので、まあ、かまいませんけれども、私に裏返して言わせてもらうならば、もしそういう高い金利を払ってやっているんなら、労働者の賃金を上げろ、こう言いたいわけですよ、実際は。アメリカの個人消費は六二%ぐらいですね。私ずっと国際比較統計を調べてみて、一つのポイントに気がついたのですけれども、日本は設備投資の中に占める住宅投資の比率というのは八%くらいです。ところが、イギリスが一九%くらい、アメリカが二三、四%ですか、西ドイツにいきますと四九%も実は住宅投資をしておる。フランス、イタリアが二三、四%になっており、フィリピンが八%ですね。私は、日本経済というものがこういうふうな非常なフラクチュエーションを起こすもとは、そういう政府の姿勢にあるという感じが非常にするのです。もちろん、それは後進性の問題で、追いつこうという問題も多少ありましょうけれども、やはり先進諸国では設備投資の中に住宅投資がそれだけの比重を占めている。西ドイツなんか五〇%近く占めているということは、これはやはり国民生活をまず充実することがその国の経済をささえることだ、こういう姿勢に基づくという感じが私はする。ところが、いまの日本の場合は、民間設備投資のほうに重点がいって、重点がいき過ぎるから生産力化してきて過剰生産になるのですから、住宅投資をやっておれば、需要の面では十分ありますけれども、供給面にははね返らない。これが、私は一つの側面として安定をもたらしておる非常に大きな原因になっておるというふうに思うんです。それと、個人消費がやはり六〇%台にずらっと並んでおるということは、国民の生活というもののその経済の中に占める位置が非常に重視されておる、私はこういうふうに見ざるを得ないと思うのでございます。ですから、そういう点を全体としてこう見てきますと、日本経済の今後のあり方というものは、やはりどうしても住宅投資というようなものをうんとふやすこと、私この前予算委員会でちょっと申し上げたように、要するに、低所得の者が高いふろ代を使ってふろ屋に行かなければいかぬ、低所得の者がわずか六畳一間で七千円、八千円もの金を出さなければならぬという、この矛盾のもとはどこにあるかといったら、明らかにいまの問題の中にあるんですね。私この前テレビを見ましたら、ローマ法王が、イタリアの建設労働者が働いておる場所に行って福音をたれておる。私は、ローマ法王というのはやはりたいしたもんだなと思うんですね。日本の総理大臣はあまりそういう住宅建設に関係しているところに行って福音をたれたことがないように聞いておるんですがね。やはりローマ法王は、イタリア国民のためにやっておる人たちのためには、現場に自分が出向いて福音をたれる。やはりそういう人間尊重の精神というのが西欧には基本的にあるけれども、日本では、佐藤さんは口ではおっしゃるけれども——これはことばとしてはあるけれども、どうも裏づけが十分でないのではないか、こういうところに私は実は非常に問題がある、こういうふうに考えておるわけであります。そういう面を含めて、大臣はできるだけそういうことにならぬようにしたいというお話でありますけれども、やはりものの考え方全体がかなり切りかわってこないと、これは技術的にその小さな部分だけをさわってもなかなかうまくいくものではないのではないか、私はこういうふうに思いますので、あわせて申し上げておきます。  最後に、実は懸案になっております歩積み、両建ての問題について、みなさん手元に資料が配られておりますが、実は時間の関係で報告を聞いておりませんけれども、この二つの、公取委員会から出されておりますものと、それから大蔵省から出されておりますものとの間には著しい食い違いがあるわけですね。そこで、銀行局長、ちょっとあなたのほうから、あなたのほうの資料に基づいて、なぜこんなに公取との間に差があるのか、その点をひとつ解明をしていただきたいと思います。
  73. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 この点は、堀先生十分御承知のごとく、大蔵省で整理の対象といたしておりますものは、いわゆる自粛対象預金と称しておりまして、これは三十九年の五、六月のころでございましたか、当大蔵委員会金融、証券小委員会の御了承を得て、実はその基準を定めた、その基準に基づいて整理を進めておるわけでございます。したがいまして、その対象というものは、一つの基準に基づいて比較的限定をされたものです。一方、公正取引委員会のほうは、ただいま委員長も御出席でございますが、これはいわゆる中小企業に対するアンケート調査ということでございまして、その場合に、いわゆる拘束預金——つまり拘束預金の定義は、先生御承知のように、当大蔵委員会でも御議論のございましたものと同様なものでございます。拘束預金というものを対象にしてアンケート調査をいたしたわけです。私どものほうは、拘束預金の中でさらに整理を要する、つまり、過当な歩積み、両建てとして基準を定められたものについてその整理をいたしております。したがいまして、実はその対象そのものがまず違う、こういうことでございます。
  74. 堀昌雄

    ○堀委員 そうしますと、比較をする必要上、公取のほうでお出しになっておる借り入れ額に対する拘束預金額の割合が、都市銀行、地方銀行、相互銀行、信用金庫で出ておりますが、ちょっとこれらをあなたのほうの都市銀行中、中小企業、地方銀行中、中小企業、相互銀行、信用金庫、こういう項目に従ってお答えをいただきたいのです。それを対照してみないと、ちょっと話が通じないと思いますから。
  75. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 拘束預金の額は、四十年十一月末現在で申しますと、額と申しますか、比率で申し上げますと、都市銀行におきましてこれは特に問題になっておりますので、中小企業のところを申し上げますと、中小企業分につきましては、都市銀行が二三・〇%でございます。地方銀行、これまた中小企業分二二・六%、それから相互銀行でございますが、相互銀行は三二・六%、さらに信用金庫におきまして三六・二%、以上でございます。
  76. 堀昌雄

    ○堀委員 いまのお話を聞くと、公取のほうで調査をされた金額よりは拘束預金というのはもう少しあるということになっておるわけですね。当委員会としては、実はいろいろ議論もありましたけれども、拘束預金の中で特に不当なもの——拘束預金は全体に不当だとわれわれは思いますけれども、そのパーセンテージの中で区切りをつけて、一応この前ルールをつくりました。このルールは私どもとしてつくったわけでありますから、私は、あのときの当委員会における経緯から見て、順序としてはまず不当なものをなくする、一年以内に、不当なものは都市銀行、地方銀行はなくしろ、それから相互銀行、信用金庫は二年以内に不当なものはまずゼロにしろ、これをやらなければその次の段階に入れないと思いますから、まずそれをやって、その次に残った拘束預金の中からやはり不当だとわれわれの考えるものをさらに減らしていく、こういうふうに現実にやっていく以外に手がないのではないかという判断をして、この取り上げ方をしてきたわけですね。  そこで、いまのお話をずっと伺ってみまして、私ちょっとふに落ちませんのは、都市銀行の中小企業分二三%、地方銀行が二二・六%、相互銀行が三二・六%、信用金庫が三六・二%、銀行のあり方からすれば、これは信用金庫にそういう拘束性預金が多いであろうことは理解できることだし、その次の順序が相互銀行で三二・六%、それも理解ができますね。その次、地方銀行が急激に一〇%も下がって二二・六%になっておるのに、なぜ都市銀行が逆に二三%も拘束預金があるのか。これは地方銀行と都市銀行の性格からすれば、こういうような姿からすれば、都市銀行は一四、五%くらいのところでいいのではないか。それが二三%で、地方銀行よりもたくさん拘束しておるというのは、これはどうもおかしいと思うのですが、銀行局長、これはどう思いますか。
  77. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 まことに堀先生おっしゃるように、一見奇異な感じを持つわけでございます。私どもも実はこれを見まして先生と全く同じ疑問を抱いたわけでございますが、いろいろと調べてみますと、どうも実はこういうことのようでございます。つまり、先生御承知のように、いわゆる割引手形、手形割り引きを行ないます場合には、根抵当預金ということで歩積み預金は認められておるわけでありますが、それの幅としては、これまた大蔵委員会における御議論で、大体企業の信用度によって差がございますが、おおむね一割ないし三〇%、こういうことで、まあまあこれなら妥当な線であろう、こういうことになっておる、その問題と実はこれはかなり関係があるということだと思います。すなわち、中小企業の取引で、都市銀行における場合に、割引手形による分が相当多い、そういうことが結局いまのような率の若干の差異になってあらわれたのではないか、ただ、これをごらんになりますと、都市銀行が多いとは申しますけれども、〇・六%でございますか、まあ、ほとんど似たような数字でございますが、どうも事情はただいま申し上げたようなことであろう、かように実は考えております。
  78. 堀昌雄

    ○堀委員 おそらく都市銀行が取る割引手形は、優良銘柄でなければ都市銀行は取っていないと思うのですよ。その優良銘柄で、必ず落ちるということがわかっておるものを取って、なお三〇%の歩積みを取るのは、これは都市銀行の立場からしたら、いまあなたのほうでは一〇%から三〇%は妥当だと言われたけれども、私は妥当とは思いませんね。地方銀行の場合には、あるいは三〇%くらいはやむを得ぬものがあるかもしれないけれども、都市銀行はそんなものは初めから相手にしないのですよ。相手にしないのが下に下にと落ちているから、これは信用金庫が一番リスク度の高いものを持つ、その次が相互銀行、地方銀行、都市銀行は一番リスクの小さい中小企業を相手にして、なおかつこういう三〇%もの歩積みを取るなどということは、現在あれだけ収益力が上がって、現在の日本企業の中で、その他の企業は青息吐息なのに、銀行の決算はまれに見る利益を計上しておるというときには、もう少し反省をしてもらって、当然この拘束預金は解くべきだ、こういうふうに思うのですが、いかがですか。
  79. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 ちょっと技術的な点でございますから補足させていただきます。  確かに先生おっしゃるように、都市銀のほうは、地銀に比べて取る手形が良好であろうということは言えると思います。そういう意味におきまして、根抵当預金として認められる限度におきましても、おのずから低かるべきものと、かように私どもは考えます。したがいまして、取引先なり、その手形の内容を十分洗いまして、そうしてその点で行き過ぎのないように今後とも十分厳重に指導してまいりたい、かように思います。
  80. 堀昌雄

    ○堀委員 大臣、実はこの歩積み、両建て問題というのは非常に長い歴史がございますが、しかし、私どもはこの前当委員会で約半年にわたって小委員会を開いて一応の結論に達したわけですね。そこで、この資料で拝見をいたしますと、なおかつまだ相互銀行、信用金庫にわずかに残っておりまするが、これは昨年の十一月の資料ですから、ことしの五月になればおそらくここはゼロになるだろうと思うのです。しかし、なおかつ中小企業者の中には歩積み、両建てに苦しんでおるという実態は、これは非常に強いわけなんですよ。ただ、私どもはあのときに、一部からは、ともかく公取のほうで特殊指定にしてやれという話がございましたけれども、さっき公取委員長のお話のように、公取委員会は残念ながら手足の少ないところでして、そこにおまかせするより、手足の多い銀行局で、ともかくやれるところまでやってもらおうという考え方で、実はこれをやってきたわけなんですね。しかし、なおかつそうやって、都市銀行、地方銀行は一応不当だというところで線を引いたものがほとんどゼロになったにもかかわらず、中小企業側からすると、やはり歩積み、両建てについての非難というのが非常に高いわけなんですね。ですから、そういう意味で、まあ、大口に対する貸し出し金利はどんどん下がるけれども、しかし、依然としてやはり中小企業に対しては、そういう問題を含めての実質金利というものは必ずしも下がっていないという問題があるわけですが、これらを含めて、これがゼロになったら、私はさらに当委員会でもう一ぺんこの次の段階の問題を取り上げて、今度はその中で、いまちょっと申し上げたように、はたして優良な手形について三〇%まで歩積みを認めるというのは妥当なのかどうか、個々の問題をもう一ぺん洗い直して、また前進するつもりでおりますけれども、大蔵大臣のそういう問題に対処される心がまえをひとつ伺っておきたいと思います。
  81. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 歩積み、両建て問題というのは、非常にその処置のむずかしい問題でありますので、苦慮いたしておるわけであります。で、スケジュールに従いましていま整理を進めておる過程でございます。それで満足するというわけではないのであります。お話のように、それが済みましても、さらに次の問題を進めていかなければならない、こういうふうに思いますが、ともかく、大蔵省としては相当強力な検査機能も持っておりますから、それの大きな一つの任務として、これが乱用されていないか、そういう点にも極力注意をいたしまして、この制度が不当に行なわれて、中小企業に迷惑を及ぼすということのないように今後とも努力を傾注してまいります。
  82. 堀昌雄

    ○堀委員 最後に、私は、運用預かりの問題についてちょっとお尋ねをいたしておきたいと思います。  御承知のように、運用預かりの問題というのは、歴史的な発展の形態がございます。そうして、昨年のあの山一特融のときに、いかにこの制度が危険な制度であるか——社内預金と同じなんですね。無担保で、何というか、いつつぶれるかわからないというような時期に置かれたときがあったわけですね。そこで、ああいう日銀特融という問題の性格は、いろいろわれわれは議論したことですから、きょうはその問題には触れませんけれども、そういうようなものが非常にあったのです。それで、田中さんは、制度としてはやめるのだと、はっきり当委員会でも発言をしておられたわけですが、ひとつ証券局長、その後の運用預かりの経過を御報告をいただきたい。——どうも私、この間予算委員会で、政府は、一人の大臣が答えたら、それは別に田中さんが答えたということではなくて、大蔵大臣の発言ですからね、次の大蔵大臣も当然守っていただかなければいかぬと思うのですが、いろいろニュアンスに相違が出てくるものですから、佐藤さん、あなたはもう二、三年はやるだろうから、あなたとひとつ全部話をきめましょうというようなことを言わざるを得ないというようなことは、私はまことに残念なことだと思います。そこで、大蔵大臣の権威の上からも、私は田中前大蔵大臣と同じ発言で、それを確認しながら問題をさらに進めていただきたいと思いますが、証券局長、ひとつ具体的な事情について御報告いただきたいと思います。
  83. 松井直行

    ○松井政府委員 まず計数から申し上げたいと思います。  発生原因なり、あるいはそれがどういう機能を果たしてきたかということにつきましては、すでに当委員会で相当御議論が済んでおるところでございますのであらためて申し上げませんが、一番最高に達しましたのは、四十年四月末、去年の山一再建策発表の直前の状態のときでございますが、二千九百三十二億円でございました。それが四十年の十二月末では二千六百五十億円というふうに落ちております。で、昨年問題が起こりました直後に、われわれといたしましては五月末の残高以上には絶対にふやさないということ、及び一般の投資家から消費寄託で預かっているものでありますから、いつ引き出しがあるかもしれぬということで、支払い準備の二割は必ず手元に置くべしという従来の指導方針を徹底していくということで指導してまいっております。したがって、残額といたしましては、いま申し上げたとおり幾ぶん漸減いたしておりますし、それから支払い準備率のほうも、実は担保使用率は七一%、大体三割近いものの支払い準備率を保っておるという状態になっておりまして、幾ぶん改善のあとが見られるということでございます。さらに、ことしに入りまして新たに国債の発行ということが行なわれたわけでありまして、発行額の一割は証券業者を通じて大衆に消化されるということで証券業者が扱っておりますが、従来の扱い方からいいますと、最も担保力のあるものは国債でありますので、国債がこの制度に乗ることを非常に心配いたしまして、これは禁止をしております。国債については運用預かり制度はないというふうに、これは協会の中でも厳格に守らせておるところでございます。  そこで、これをどう整理していくかという問題につきましては、もう大臣からもかねがねお話しになっておりますとおり、証券業者の業者金融のあり方からすれば、最も好ましくない制度であるという観点から、将来これを廃止する考えであるということを大臣からお話がありましたが、われわれもまさにその方針で進むことに間違いありません。将来廃止したいと思います。ただし、御存じのように、実際の企業が借り入れ金をいたしまして現実の経済が回っておる。企業の借り入れあるいは企業間信用と同じような状態にありまして、一挙にこれを返済するということは、現在の生きている企業を殺すことにも相なるわけでありますので、これが返済の原資は、堀議員がよくおわかりになりますとおり、資産の流動化流動化した資産の処分あるいは自己資本の充実、その後にあげます収益でもってこれをまかなう以外に方法はないわけでありますので、一挙にはまいりませんが、漸減方式をとりつつ、かつまた、ある時期に一括これが解決の方法がないかということで、いま鋭意具体的方策を検討いたしております。たまたま、再来年の四月一日には証券界が免許制に変わるわけでありますので、免許制までに体制として整備したいという強い希望を持っておるところでありますので、制度としての運用預かりというものはこの免許の機会にひとつ整理していく、ただし、先ほど申し上げましたとおり、漸減方式をとる以外に方法はないと思いますが、一種のスケジュール闘争ということばはあれですが、計画に従いましてこれを整理していくという方針を堅持していきたい。制度自身としては、免許制切りかえのときに、もはやこういう制度は証券金融としてとらないという基本的体制で持っていきたい、こういうふうにいま考えております。
  84. 堀昌雄

    ○堀委員 大臣事務当局がいまああいうように言っておりますが、これは私はあたりまえの、当然のことだと思うのですけれども、ひとつ大臣もこの点御確認をいただきたいと思います。
  85. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいま証券局長からの話は、これは前大臣のときからの方針であります。私もこれをまっしぐらに推進していくという方針でございます。
  86. 堀昌雄

    ○堀委員 それではちょっと公取委員長一つだけ……。  実はこの前渡邊さんが公取委員長でおられましたときにもいまの歩積み、両建ての問題をやりまして、公取委員長は非常に熱心に中小企業立場からいろいろとこの問題については協力していただき、アンケート調査その他いろいろやっていただいて今日に至っております。しかし、これは御承知のように、銀行局が調べますのは金融機関サイドでございまして、要するに、借り入れの側からの問題は、実は大蔵省では調べていないわけですが、しかし私たちは一応大蔵省を信用して、こういう計数についてはさようであろうと思っておりますが、しかし、実際ちまたにある声は、これはなかなかこういうふうにすっきりしたもののようにはなっていないということをわれわれは具体的に承知をしておるわけです。これはやはり公取委員長のほうでそういういろいろな具体例を調査をしていただく中で問題のありそうなものは出していただいて、やはり銀行局がそういう問題もあるかということに十分気のつくように、私どもこれからこの問題は引き続き、五月に一応のめどがつきましたら、その次の段階というものを当委員会でまた始めていきたいというふうに私は考えておりますけれども、ひとつ、そういう意味で中小企業立場からやはりきびしくこの問題は考えていただかないと、やや安易に流れやすい問題であります。その点についての公取委員長としての御見解を承っておきたい。
  87. 北島武雄

    北島政府委員 歩積み、両建て預金というのは、いわば独占禁止法の禁じております不公正な取引方法に、まさに私は該当すると思います。これに対して、公正取引委員会の前委員長が敢然としてメスを入れたのは、私はたいへんけっこうなことだと思います。私も、実はその当時公取にはおりませんでしたけれども、外部におりまして、渡邊前委員長大蔵省の者とよく論議をしておるときに、渡邊君はなかなかいいことをやっておるじゃないかと言って、私は陰から声援したこともあるのでございます。  で、ただいまの私どもの考えといたしまして、銀行局の調べは、これは金融機関を通じておるものでありますが、私どもはあくまでも中小企業者を直接対象にいたしまして、アンケート調査でやっております。しかもその場合に、匿名でけっこうでございますということで——記名いたしますと、やはりなかなか出しにくい、匿名でけっこうでございます、お差しつかえなければ名前を書いていただいてもけっこうでございますということでやっておりますが、それによりますと、前回の、四十年三月末の調査で一応三十九年九月末に比べましてある程度の改善は示しておりますけれども、内容を見ますと、中小業者のほうで改善されたという答えが四二、三%、改善されないというものが五〇%よりちょっと多い、それから、かえって悪くなったというようなものも中には二、三%ございます。しかも、歩積み、両建ては表面はなくなったけれども、その反面において歩積み預金のかわりに積み立て預金をさせられる。それから、あるいは貸し付けの際にタイミングをはずしてあとで両建てをするというような、いろいろなことをやっております。それから貸し付けの審査がきびしくなった、当座預金の残高を非常に気にするようになったということ、いろいろなことが書いてあります。それにつきましてはいろいろ問題ございますので、いままでの御方針の自粛対象預金はあのままでいいかということについては、私は非常に疑問を持っております。先ほど伺いますと、あの自粛対象預金については、あと第二段の措置として当委員会で御検討になるということでありますが、私もそれはぜひやる必要があるのではないかと思っております。それで、私どもといたしましては、ただいま昨年の十一月末現在でアンケート調査をいたしておりまして、目下とりまとめ中でございますが、内容を見ますと、やはり非常に銀行局の参考になるようなことがあるようでございますので、具体的に問題のありましたものについては、私どもは今度は積極的に銀行局のほうに御注意申し上げて——中には金融機関の名前の書いてあるものもございます。銀行局にひとつ御注意を申し上げて、ひとつ厳重に取り締まっていただいたらいいじゃないかと思っております。いままではそういう連絡がなかったようでありますが、私は今度は連絡をつけまして、具体的に名前のあがったものについては、銀行局で取り調べていただく、こういうふうにしたいと思います。
  88. 堀昌雄

    ○堀委員 大臣いまお聞きのように、この問題は非常に重要な問題でありますから、これは私どももひとつこちらでやりますけれども、政府としてはやはりわれわれがやると同じような熱意を持ってやっていただかなければ困ることですから、十分この点をお考え願いたい。こう要望いたしまして、私の質問を終わります。
  89. 三池信

    ○三池委員長 小林進君。
  90. 小林進

    ○小林委員 実は、二十二日に大臣がこの委員会へおいでになって所信表明に対する一般質問を聞いてくださるということで、私はそのときにあなたに御質問を申し上げるつもりでございます。きょうは歩積みと両建ての問題だけで質疑応答をするというふうに聞いておりましたが、私はその問題だけに限定して質問するのかと思いましたが、そうではなくて一般質問もやるんだということで、若干私どものほうの連絡が疎通を欠いたようであります。しかし、初心を変えるわけにはいきませんので、一般の質問は二十二日に大臣にやらせていただくことにしまして、きょうは私が理解をしておりました歩積みと両建ての問題だけについて実はお伺いいたしたいと思うのでありますが、いまも堀委員質問の中で、だいぶこの委員会の前からの経緯に基づいた質問があったようでございますので、私は前の経緯も、これは二、三日速記録をできるだけ読ませていただきましたけれども、なるべくそれにこだわらないで、私は私の立場で、斬新、精鋭の中でお伺いいたしたいと思うのであります。  前の大蔵大臣もこの歩積み、両建ての問題について御答弁になっておる。預金を集める本質からきているものであって、ある程度歩積み、両建ては許されるものであるというふうな答弁を田中さんはされているのであります。私はこれはどうも了承できないのであります。しかし、大臣はこの問題を本質的にいかにお考えになっておるか、まずそれからひとつ御答弁をいただきたい。
  91. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 これは金融機関と資金需要者との関係でございます。そこで、金を預けておいたり、借りたり、これは出入りが常時ひんぱんに行なわれるわけであります。そういうことでありますから、これは金を借りる人が預金は一切してはならぬというような意味において、歩積み、両建てがありてはならないという考え方は、私は正しくないと思います。これが過当に行なわれるというところに問題がある。その過当を正常な形に直していくというところにわれわれの任務がある、かような認識でございます。
  92. 小林進

    ○小林委員 あなたの答弁に落胆をいたしました。厳格にいえば、歩積みと両建てはその性格を異にしておるかもしれません。歩積みの問題は、これはあなたも過当であるとおっしゃる。いわゆる量に基づいて、二、三%ならば、あるいは信用度に基づいてよかろうけれども、三〇%、二〇%はいけないという一つの議論も、あるいは成り立つかもしれません。私はそれさえも認めるわけにいかぬけれども、両建てに至っては、完全ないわゆる二重金利ではないか、金利の二重性、搾取の二倍だ、私はそう考えるのです。この両建ては金利の二重性だ、二重金利だということをあなたは一体お認めになるかどうか。これはお認めにならなくちゃいけませんでしょう。二重金利でありやいなや、イエスかノーであります。
  93. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 これは預金は預金であり、借り入れば借り入れである。預金に対しては利息を取ります、また借り入れ金に対しましては利子を払う、これは別個の問題であります。
  94. 小林進

    ○小林委員 同一人、同一企業の場合でございますよ。大体三百億円の金をあなたから借りた。二百億円を、これは拘束預金でなくてもよろしい、債務者が二百億円を預金をした、そうして三百億円に対しては、これは春日君が前からしばしば論じておるようでありますが、九分五厘の利息を取られて、二百億円には五分五厘の金利しかもらえない、そんな矛盾は、子供だって勘定がわかるでしょう。差し引きしたら百億円、金利なら九分五厘でいいのだ。百億円の九分五厘で払っておけばいいものを、三百億円に九分五厘の利息を払って、自分の預けた二百億円に五分五厘の利息しかもらえないことをだれが一体喜んでやる人がありますか。これは拘束でないとか拘束預金だとか——先ほどの議論を聞いておると、その拘束の中にも強制的なものとしからざるものとがあるというような、児戯にひとしい議論じゃありませんか。こういうようなことを論議せられて、十年間堂々めぐりをせられておる。まことに大蔵委員会というものは、大宮人はいとまあれや桜かざして……(笑声)。こういうひまな委員会だ、実に私はあきれてものが言えない。こんな勘定がわからないのですか。小学校の子供だってわかりますよ。二重金利じゃないですか。あなたのおっしゃるように、借りるのは借りる、預けるのは、預けるでいいが、同一企業、同一人の場合には、二重金利じゃないですか。二重金利でございましょう。
  95. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 二重金利という意味でありますが、同一人が同一の銀行に預金も持っておる、またそれから借り入れも受けておるという際におきましては、預金はしないで、ただ単に借り入れをするというときに比べますと、利息の負担はそれだけ重くなるわけですね。それはそのとおりであります。しかしこれが、あなたがどういう意味で二重金利、二重金利とおっしゃいますか知りませんけれども、これは二重に取っておるというわけではないのであって、一は預金の利息として受け取り、一は貸し付け金の利息として支払う、こういう別個の問題であります。
  96. 小林進

    ○小林委員 まことにあなたは詭弁ですね。私はそういうような理屈では了承できませんから、いろいろこれはあなたに対してこれからけんかをする材料がふえまして、実は私は喜びにたえない。きょうは限られた時間で、時間に拘束がありますから、これはあなたには一つの救いです。けれども、そういうような理屈で私は了承できませんが、そのままにして次の機会の議論の楽しみにして次へ進みますけれども、私達この歩積み、両建ての問題に対する従来の経緯を調べるために、いまも言うように速記録を十年来全部読んできたのでありますが、これを見て率直に驚いた。まことに驚いた。何かというと、歴代大蔵大臣、特に銀行局長などの答弁は、終始一貫して銀行擁護論ですよ。銀行から借りて、苦しみ抜いて、痛めつけられながら、歩積みをしたり、両建てをしておるような一そういう企業者や借り主を幾らかでも弁護をして、これを助けてやろうなどという気持ちはいささかも見えない。若干の言いわけはあるけれども、いささかも見えない。これは驚くべきお役所だということをはだえに感じた。(「銀行の代理人だ」と呼ぶ者あり)まことにおっしゃるとおり、全銀連とか相銀等のエージェントですよ。大蔵省の銀行局なんというものはエージェントだ。そこでこれはたいへんなことだと私は思っているうちに、はからざりき、毎日新聞にこういう記事が二、三日前載っていた。そこを見ますと、「人事院は、国家公務員の〃天下り白書〃ともいうべき年次報告書を発表した。これによると、昨年中の高級官僚の〃天下り〃は百二十五人、」筆頭は大蔵省、次に「通産、建設、運輸の四省が、全体の七二パーセントを占めているということは、当然の一ことのようでもあるが、そこになにか問題がひそんでいるような気もする。国家公務員法は、在職中の地位と、退職後のポストとの腐れ縁を防ぐため「私企業からの隔離」の規定を設けている。退職前五年間のポストが、ある企業と密接な関係のある場合は、離職後二年間は天下り就職を禁ずる規定である。しかし、実際はこの規定にもいろいろの抜け道があり「隔離」はお題目だけになっているようだ。だいたいいまの高級公務員はむかしと違って、その地位は必ずしも安定していない。」この気持ちはわかる。「五十に近づく年ごろになれば、自分の昇進の見通しをつけて、第二の人生を考えねばならない。これは公務員に限ったことではない」。みんな同じです。われわれなんか一つ解散の風が吹けば首が切られる。五十までも身元を保証される者と違うのです。恩給をつけている者などとは違う。続けますよ。次に「公務員の場合は権力とつながる現職の間に、それを公然ないし半公然とやるところに弊害も出てくるわけだ。企業のほうでも、「監督官庁とのつながりの問題には、神経質にならざるを得ない。たとえば、昨年の第3四半期に、通産省の粗鋼生産指示を拒否して問題になった「住金」は、」——正確に言えば住友金属でございますが、「天下り官僚を入れていない数少ない大会社である。そこで問題がおこると、世間では、いろいろの取りざたも行なわれる。監督官庁からの高級官僚の天下りは、デリケートな問題で、そのために行政の公平が乱されなければ、プラスの面もあるかもしれない。しかし、天下りの役人の古手を受け入れなければ企業が損をする、ということになって、これが一般的風潮になると、行政の公正という点から、やはり問題だろう」。どうですか。「高級官僚の退職後の行き先は政界に出るか、民間会社に天下りするか、あるいは公庫、公団、外郭団体に横すべりか、ということで、それぞれ問題が多い。」私はきょうはこの歩積みだけに限定します。この両建ての問題の速記録を読みながら、これを痛切に感じたのだ。先ほども言うように、大蔵省銀行局は銀行のエージェントだ。それがやめていったときの身の振り方がやはり頭にある。どうです、大蔵大臣、これは各官庁に共通するのだ。厚生省の薬務局なんかに行くというと、薬務局の下の古手は全部薬屋に入っている。わが日本行政の中で一番乱れているのは薬行政です。この薬行政の乱脈は、銀行行政と東四相半ばする、こういうことだ。どういうことなんですか。みごとだよ。みんなそういう天下り人事が行なわれている。そこで、この委員会でも要求があったろうと思うけれども、斬新な資料をちょうだいしたい。過去さかのぼって二十年、その間に大蔵省からいわゆる各民間銀行に天下られた人の名簿をこの際ひとつ御提出をいただきたい。と同時に、いまここで読み上げられたこういう民間企業が、特に銀行等が、天下りの高級官僚と結びつかなければうまくはいかないという、こういう風潮を一体あなたはお認めになるかならないか。お認めになるならば、秋水一刀、断固としてこの禍根を断ち切るだけの勇気があるかどうか。聞けば、あなたも時めく将来の総理を予定せられる総理候補の一員である。こういう風評も飛んでおるようだが、だとすれば、なおさらいまは総理街道の修行中でありますから、ここでひとつ思い切って人心を収攪する策を講じておかなければならぬ、こういうことを断固としておやりになることは、ぼくはあなたの将来のためにプラスになってもマイナスにはならないと思う。これをおやりになるかどうか、ひとつお聞かせ願いたいと思うのであります。
  97. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まず第一点、資料を出せというお話でありますが、できる限りの資料を整えてごらんに入れます。  それから、その資料でもおそらくおわかりになると思いますが、大蔵省の役人が銀行に天下っていったという事例は、小林さんのおっしゃるような状況ではございません。あとでこれは資料でごらんいただきますが、そういう状況ではございません。ときにそういう人もありますが、しかし、これはもう特殊な事情、懇望されてその地位につくというような場合であります。ありますが、求めていくというようなケースはありません。したがいまして、今日のところそういう人事的なつながりができたから銀行行政に支障があるというような状態ではないと私は思います。私はそういう状況をよく承知しています。一々の、そういう大蔵省関係者が行っておる先と大蔵省とのつながりというようなものの関係を見ておりますが、決して弊害があるというような状態ではない、こういうふうに思っております。
  98. 小林進

    ○小林委員 山に入る者山を見ずといって、あなたはやはり大蔵省の主計局長をおやりになった、純粋の大蔵省出身でありますから、あなたのような頭脳明晰な方もやはり山に入る者山を見ざるの弊害に陥ることもあるかもしれませんけれども、そうあまり明快に、自信あるような御答弁をなされて、将来どうも悔いを残すことをなさらないほうがいい。あなたの将来のためにあえて御忠告を申し上げておきますが、それはひとつ資料をいただいてから、また私ども他から資料を求めて、いま一度再会をしてとの問題に結論を出すことにいたしましょう。  次に移りますが、一体日本のこの金利というもの、金利にもいろいろあります。預金金利もありましょうし、貸し付け金利もありましょうが、私の申しますのは貸し付け金利です。貸し付け金利は、後進国は別としまして、近代国家の中では一番高いんじゃありませんか。現に数日前の新聞にも、日本がアジア、アフリカの低開発国に対しまして、何か金を貸し付けてものを売るような交渉をせられた。大蔵省がおやりになったか、通産省がおやりになったか、外務省がおやりになったかわからぬけれども、そうしたら、アジアにおいて非常に不評判である。その不評判の原因は、大別すると二つあるが、第一番には日本の金利が高過ぎる。イギリスやアメリカは三分五厘、西独でも四分か五分ぐらいで貸す、日本は五分五厘の金利をつけてお貸しになる。高過ぎる、だからごめんこうむりたいといって、アジア諸国からキャンセルを食いつつあるというような報道もなされておる。かくのごとく後進国からも批判されている。その金利もわずかに五分五厘だ。国内においては、いま申し上げましたように、貸し付け金利のごときに至っては九分五厘なんて安いほうだ。ところによっては一割から一割二分……。(「日歩二十銭、二十五銭」と呼ぶ者あり)二十五銭から四十銭。まことに無制限な悪利、高利を取っているという現状です。それをさらに二重金利の形で取るなどというのは天下の悪政ですよ。一体日本の金利はどうですか。これは近代国家の中で、世界各国と比較いたしまして、日本の金利は高いか安いか、お聞かせを願いたいのであります。
  99. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 どちらかといえば、先進国の中では高いほうであります。私はこれが日本の産業の非常に大きな負担となるというふうに考えております。ことに開放体制下で外国と裸で競争していかなければならぬ、こういう際には競争力にも非常に関係がある、こういうふうに考えます。しかし、どうして高いのかという原因を考えてみまするときに、これは銀行の資金のコスト、そこに問題があるわけであります。ただ単に預金の金利だけを下げるというわけにはいかない。その根っこにあるコスト問題というものを解決しないとこの問題は解決とならないのであります。しかし、これはどうしてもそういう方向に進ませなければならぬというので、金融機関の近代化合理化、そうしてそのコストを下げるという方面につきまして私は最大の努力を尽くしていく、これが銀行行政の最も重要な点である、そういう認識でやっております。
  100. 小林進

    ○小林委員 コスト論議は、きょうは限られた時間でありますから後日に譲ることにいたしまして、あなたはこの高い金利が日本の産業の発展に重大なる悪影響を及ぼしていると言われたが、この点は全く同感です。これはあなたと私とは意気投合いたしました。けれども、それは産業だけではないと私は思う。これが今日の、きのうから論議が続けられているインフレの根本になっていると思う。これがインフレから物価高から、すべてにまたがっている弊害の最たるものですよ。あなたは、先ほども物価の値上がりが人件費だなどとおっしゃったが、人件費なるものが物価値上がりに占めている率というのは、世界各国からながめてみてもわずかなものだ。世界各国の企業内容から分析してみて、わずかなものだ。一番企業の中で悪のファクターをなしているものは、金利なんだ。その金利を統制し、監督すべきそのあなたが一番重点を置かれる金利問題、一番考えられると言われた金利問題は、言うならば罪悪だ。これはまたあとで公取委員長がおりますから聞きますけれども、こんなのは独禁法違反だとさえ私は思っている。思っておりますが、違反でなくても、すれすれのそういうことを公々然と許して、しかもやっている者の立場でこれを弁護することに終始しているなどという、そんな行政庁がどこの世界にありますか。速記録を読んでみると、先進国でも両建てはやっていますという。やっているといったって、やっているような国々の金利なんというものは非常に安い。安い中の、制限された中の両建てなんです。それを鬼の首でも取ったような言いわけをしておりますけれども、そんなことはけしからぬと思う。  そこで、私はお聞きしますけれども、国税庁の長官いらっしゃいますか。——いらっしゃらなければ、だれでもかわって答弁してもらってもよろしいが、最近の発表によりますと、昨年度ですか、忘れましたけれども、一年間のわが日本における企業の、国税庁に届け出た内容でございましょうけれども、営業費、これは予算委員会でも問題になりました交際費ですけれども、年間五千六百億円、利子の配当が六千億円だ、そういうことがいわれております。若干数字に間違いがあったらあとで御訂正願いたいが、それに比較して、この企業が一年間に支払っている支払い利息というものは総合計幾らになっておりますか、参考までにお聞かせを願いたい。
  101. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 各種の統計で、ございますが、国税庁の税務統計から見ました法人企業実態という統計資料の中で発表されました支払い利子の金額がございますので申し上げますと、三十九年におきまして支払いました支払い利子の金額は二兆六千八十五億九百万円でありまして、支払い配当は六千五百七十四億六千百万円でございます。
  102. 小林進

    ○小林委員 どうです。これは届け出られた利息だけですぞ。それが驚くなかれ二兆六千億円だ。しかも配当金が六千五百億円だ。合計したら幾らになるか。三兆三千億円近くの金だ。われわれに言わせれば、こういう利息だとか配当なんというものは、学問的にいえば不労所得です。これは不労所得じゃありませんか。学問的にこういう配当金や利息をいかに性格づけられるか、大蔵大臣からお聞かせを願いたい。
  103. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 不労所得という観念は、私もよくわかりませんが、たしかこれは資産、資本から生ずる所得である、そういうふうに考えます。
  104. 小林進

    ○小林委員 あなたのような学問にひいでた人がこの不労所得の性格までもお知りにならぬというようなことは嘆かわしいですよ。万物の霊長たる人間が労働した所産から出み出さざるものを不労所得というのです。金が金を生み、金利が金利を生むものを不労所得といって、われわれの社会主義からいうと、これを悪の根源と称する。こういうものは、社会主義の世の中になると全部なくなるとはいわぬけれども、こういう働かざるものが、金利が金利を生むようなものをなくしようというのが、近代的な国家に至る道なんですよ。好むと好まざるにかかわらず世の中はその方向に進んでいく、そのときは小林進あたりがかわりに大蔵大臣になる、あるいは総理大臣になるという循環がくるけれども、あなたを野党としていま一度この問題を論ずる機会がいまだきたらざるは、私は残念でたまらぬ。いまの計算にしても、こういう働かざるものが、利息において二兆六千億円、配当において六千五百億円、これは不労所得ではないけれども、これに準ずるものとして、いわゆる営業費とか交際費と称するもの、この中にはお客一ぱい、てまえ八はいなどという不当なやつも入っているが、飲み食いなどのまことに不生産的なものに使われている金が五千六百億円、これを合計いたしますと、それだけでも四兆近い。あなたたちがこの悪を断ち切るという正義観に基づいて押えていけば——四兆三千億円のわが日本の四十一年度の国家予算とほとんど同じだ。それだけのものが不労所得として不生産的なものに使われて、それがみんな世の中の罪悪を生み出している。銀行局長に言わせれば、銀行が貸し付けたから所得倍増もできた、高度成長もできたなどという、実に歯がゆいような答弁をしておるけれども、これは得ること小にして、実に国家を茶毒することの罪大なんです。われわれをして言わしむれば、あなたは根本的にメスを入れていかなければなりませんけれども、メスを入れていく第一段階としてやらなければならぬのが、いまも申し上げましたいわゆる歩積み、両建ての問題である。それさえもあなた方はできないじゃないですか。それで何が一体金利の統制ですか。何で一体金利に力を入れていると言い得るか。先ほどから聞いていれば、何にもやっていないといってもよろしい。自粛措置という。どろぼうにどろぼうの自粛をせしめるような話をして能事終われりとしておる。そんなことが問題の解決になりますか。どうです。こういう基本的な問題に、あなたは立ち上がって、ほんとうにメスを入れる勇気がありますかどうか、いま一度お伺いしたい。
  105. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 小林委員の御熱意には敬意を表しますが、しかし、実際問題とすると、この世の中から利息を全部なくしちゃう、そんなことはできるものじゃないのです。歩積み、両建ての問題につきましては、熱意を持ってこれが解決に取り組んでいくということは、先ほど申し上げたとおりでございます。
  106. 小林進

    ○小林委員 大臣、時間もありませんから、あなたのそのおことばだけでどうもきめ手にならぬのは私は残念ですけれども、これはまあ歳月は長いですから、ひとつおいおい進めていただくということにしまして、そこで公取委員長にお尋ねをいたしまするけれども、残念ながら、あなたは渡邊前委員長と交代をせられた。非常に残念であります。昭和三十九年三月十二日の大蔵委員会、この中で渡邊前公取委員長は、わが党の堀委員質問に答えて、歩積みと両建ての問題を二つに分けて、歩積みの問題は、先ほども言いましたように、これは量の問題で、不当であるとは考えられない、あるいは過当であるかもしれぬけれども、しかも両建ての問題については、堀委員の考えと私は同感であります、けれども、この問題については、私は目下鋭意研究中であります、いずれ研究の結果を御報告いたしたい、こういうことを言われているのであります。これは三十九年の三月十二日でございまするから、もはや二年に近い歳月が経過しようとしておるのでありまするから、私は、公取といたしまして、この両建ての性格問題、法規に照らして、違法なりや、あるいは適法なりや——好ましからざると、結論はもう出ているものと判断をいたすのでございまするが、どうか公取委員会としての、法律上の違法、不法の問題についての御所見を承っておきたいと思います。
  107. 北島武雄

    北島政府委員 独占禁止法上といたしましては、不公正な取引方法といたしまして公正取引委員会が指定しましたのが十二ございます。そのうちの第十に、取引上の優越した地位の乱用ということがあります。それに当たるか当たらないかという問題であります。歩積み預金につきましても、商慣習上ある程度のものはこれは適当であろうというのが、先ほどのお話かと思いますが、私もそれは同感であります。ただ、その範囲が、はたして一律に一〇%ないし三〇%でいいのかどうかという点については、 だいぶ問題がございます。それから両建て預金につきましても、これは正確に申しますと、私は全部悪いとは思いません。たとえば、定期預金をいたしている人が急に銀行から金を借りたくなって金を借りる場合に、期限が来ない定期預金を担保にして金を借りるということはあり得る。その際には、その定期預金の期限が来るまでは両建てになる。これは商慣習上別に誹議すべき点はないと思います。ただし、その他の点につきましてはだいぶ問題があると思いますが、借り入れ者が特に希望する場合も中にはあり得ます。同業者の関係あるいは取引先との関係から、自分の資産力を誇るために特に希望する場合もあり得る。これは優越した地位の乱用にはならぬかと思います。それからまた、あるいは銀行から金を借りまして、それを返済する場合に、ごくわずかな金しか返済がなかった、こういう場合に、一々そのつどこれを相殺するということでなくて、臨時にこれを積み立てするということもあり得るわけであります。こういった程度のものは、これは私はあえて不当とは感じないのであります。それ以外のものについては、これはだいぶ問題がありますから、具体的に事情に応じて考えなければならぬかと思います。
  108. 小林進

    ○小林委員 私は、ここでは原則論を承りたいと思っているのです。ですから、あなたはどうも何か個々の場合を——定期預金の場合に、必要があって金を借りる場合は、結果的に両建てになるじゃないか云々、あるいは業者の関係で借金があるようなかっこうを見せる必要もあるだろう、税金のがれのために何か借金のあることを見せる必要もあるだろう、そういうのは例外ですよ。私は、原則、例外を明確にいたしまして、むしろ希望を言わしていただくならば、公正取引委員会などというものは、やはり法規に基づかざるものは、学問を基礎にして論じなければならぬものでありますから、原則論をきちっと掲げて、原則としてはこれはどうも不当行為である、違法行為である、こういうふうにきめていただいて、しかし、例外の場合は、こういう例外は違法ではない、あるいは違法性を阻却する、こういうふうなことにしていただくことを実は期待したわけだ。ところが、あなたの御答弁を聞いていますと、まだそこまで至っていないようであります。まことに残念でありまするけれども、先ほどのお話では、前の渡邊公取委員長はこの問題に非常に熱意をお持ちになった。——私は速記録を見て、それほど熱意かあったとは思わないのでありまするけれども、皆さん方があったとおっしゃいますから、それは認めることといたしまして、いまあなたの御答弁を聞いていると、はたからながめて渡邊君はいいことをやっておる、あなたはさすがにおほめになって、渡邊君を賞揚賛嘆し、あるいはこれに協力をしたような御答弁があった。実に好ましい御答弁でありましたから、願わくばこの渡邊氏の遺志を継いで、彼の遺志をさらに徹底するようにひとつ御努力をいただきたい。もはや明確な結論が出ているかと思ったら、出ていないので、残念でありましたが、早急にひとつ私の希望するような結論をお出しいただくことをお願いしたいのであります。  それについても、あなた方は、三十八年の四月十一日、全国銀行協会、相互銀行協会、信用金庫協会等に対し、あるいは若干文章の内容が違うかもしれませんけれども、もしこのままの状態が続くなら、当委員会はこれを是正するための必要な処置をとらざるを得ずという強い勧告をお出しになっているということが、速記録に載っているのであります。ところが、現状はいささかも——いささかもと言ってはちょっと悪いかもしれぬけれども、改善をせられていないことは、あなたの先ほどの御答弁のとおりだ。そうでしょう。四〇何%は改善のあとはあったけれども、五〇%は現状のままだ、さらに改悪をせられているという答申もあったということでございまするから、総体的に見れば、私どもは改善のあと顕著なるものと認めるわけにいかない、あなたの答弁を聞いただけでも。それならば、こういう厳重な勧告をお出しになったのでありますから、何らかの処置はもはやいまのうちにとられていなければならないと私どもは常識的に考えるのでありますが、どういう処置をおとりになりましたか、お聞かせを願いたい。
  109. 北島武雄

    北島政府委員 まあ、この問題は前委員長時代の問題でございますが、いろいろいわれ因縁、故事来歴があるようでございまして、結局当大蔵委員会でいろいろ銀行局、大蔵省とお話し合いになりまして、たしか三十九年の六月に当委員会で御決議に相なった次第であります。その御決議に基づいて、大蔵省では銀行の自粛基準というものをつくりまして、これを各銀行に通達し、都市銀行及び地方銀行については、一年以内に過当な歩積み、両建ては解消する、それから相互銀行、信用金庫についてはおおむね二年を目標として解消する、こういうことになったのであります。その際に、公正取引委員会に対しては常時監視を続けて、もし改善の実があがらないという場合には直ちに特殊指定を考慮する、こういうことにたしかなったのであります。公正取引委員会といたしましても、その御趣旨に従って、常時歩積み、両建ての問題につきましては監視をいたしておりまして、先ほど申しましたように、ただいままでに四回にわたりまして加入者からのアンケート調査を実施いたして、その改善状況を見ているわけであります。昨年の十一月末現在はまだわかりませんが、昨年の三月末現在では、その前の年の九月末のに比べましてある程度の改善が出ておる。これはもう全然改善がないというのではございません。しかし、私どもはこの程度ではまだ十分に満足できるとは思っておりませんが、なお当委員会で御決議がありまして、それに基づいて、大蔵省か銀行局がまず第一に銀行を指導して、この過当な歩積み、全建ての解消を御指導なさっておるのでありますから、私どもといたしましては、まず監督官庁はほんとうに真剣になってこの問題に取り組まれて御指導なさるのが筋じゃないかと思います。もしそれでだめならば、私どものほうで、公正取引委員会といたしまして特殊指定をするのもやむを得ないことになるだろう、しかし、私はそういうことになろうとは思いません。おそらく大蔵省におかれましては、先ほども大蔵大臣から御答弁ありましたように、熱意を入れてこの問題と取り組んでくださるものと思います。しかし、私どもとしては決して監視の目をゆるめるのではございませんけれども、常時加入者のほうからの声を耳にいたしまして、必要な場合には特殊指定の措置を講じなければならぬ、こう思って、準備はいたしております。
  110. 小林進

    ○小林委員 ちょっと私が聞き違いだったら訂正していただきたい。三十九年の六月十九日の小委員会で、あなたの言われたようなそういう小委員長報告がなされて、この委員会で決定をしておる。そのときにはまず二つに対して指示が与えられた。大蔵省は、あなたの言われるように行政指導を強化する、強化してこの問題をなくするようにする。公正取引委員会は、必要と認める場合には特殊指定を行なうべきものとする。こういう決定がなされているわけです。その基準というのは、いまお話しになったように、三十九年の六月十九日をいわゆる基準日といたしまして、一年以内、相銀は二年以内に、三〇%を越えるものはその線まで引き下げて——大体三〇%なんて数字は気に入りませんけれども、前の方々はそういう一つの約束ごとに縛られましょうけれども、私はフリーでありますから、そういうような申し合わせにはこだわりません。けれども、そういう申し合わせだ。それから全銀が一年、そういうことになれば、昭和三十九年の六月十九日から一年といえば、昭和四十年の六月十八日が一年目であります。もはや一年の経過は夢のごとく過ぎ去っておる。やりましたか。ちょろちょろの実績じゃないですか。われわれから見れば、実績といえるような顕著な実績はあがっていない。相銀関係だって、もはや二年目に余すところわずかにもう四カ月もない。一年八カ月はそうそうの間に過ぎてしまったじゃないか。その間に見るべき実績がありますか。先ほどからあなたが言っているけれども、見るべき実績はないじゃないですか。大臣、厳重にこの問題はやりますなんという話は、前から耳にたこができるほど私は聞いたといえない。読んだ。しかし、何も実績はあがっていないじゃありませんか。このような遅々たる状況の中では、公取委としては、重大なる警告を発する意味においても、特殊指定は、少なくとも二、三回ぐらいはもうおやりになってしかるべきものと私は判断をしているのでありますが、せめて一回なりともおやりになりましたか。お聞かせを願いたいのであります。
  111. 北島武雄

    北島政府委員 この問題は、先ほども申しましたように、いろいろ経緯がございまして、結局二年の猶予期間を置いて全部過当なものをなくそう、こういうことで銀行局が指示して、当委員会においてもそれを御支持なさったように私は拝承しておるのであります。私どもといたしましては、その状況を見ておりまして、もしそれが逆転するようなことがあったら直ちに特殊指定をしなければならぬ、こう考えております。いままでにおきましては、一応ある程度の改善はしてきているというふうに考えております。  それから、第二点といたしましては、自粛対象というもの、これに対しては、私どもも非常に疑問を持っております。先ほど堀委員が、自粛対象基準については、一応期間をおいてからさらに第二段階として自粛対象基準というものをもう一ぺん再検討する、こういうお話がございましたので、これはやはりどうしても再検討していただく必要がある。私どもといたしましては、そういういきさつもございますので、厳重に推移を見守っておりまして、もし指定の必要があればいつでもできるように基準の検討はしております。
  112. 小林進

    ○小林委員 どうもあなたの答弁を聞いていると、銀行局、銀行局と言って、銀行局と銀行の都合ばかり気にされているようだ。公取委、独禁法などというものは、そういう銀行だとか、通産省に行けば通産省のお役人の意向ばかり聞いて公取委が仕事をやるならば、これは公取委の存在理由はありません。銀行や銀行局のやり方に重大なる監視、監督を加えながらその反対方向へ進んでいくところに、大衆はあなたたちの存在理由を認めている。通産省だって大企業の下請機関です。エージェトと大衆は見ている。その大衆の意向を見ながら、ともすればそういう大企業のエージェント化しつつあるような通産省の動きに、あなたたちは重大なる監視、監督をしているところに、公取委の独立性と崇高さがあるわけなんです。だから、私の前で銀行局なんてあまり話を出さぬでください。先ほどから言っているように、これがどうも表と裏が違って、うしろのほうでは一緒になっているのじゃないかという疑いを持っている。私が持っているのではない。大衆が持っている。庶民は持っている。中小企業は持っているのですから、そこにおいて、先ほどからのあなた方の調査方法も、一方は金融機関からとる、あなた方は現に借りている中小企業のほうから資料をおとりになっている。そういう資料のとり方は私は敬意を表している。常に反対側から問題を集約して問題を解決するというき然たる態度を持っていなければならない。その意味においても、銀行の思惑なんかどうでもいい。あなた方は独自の見解と独自の自信を持ってやっていただかなければ、百年たってもこの問題は解決いたしません。その意味において、いまもうしろのほうからも声がかかっておりますけれども、比率の面において、三〇%が二二%になった、三五%になったという比率だけを出しておりますけれども、いわゆる債務者預金だとか拘束預金だとか、その金額の総計はちっとも減っていない。金利も毎年ふえている。先ほども言いましたけれども、二兆六千億円の中にはこういう拘束預金や債務者預金が幾ら含まれているか。私は時間があれば聞いてまいりたいと思いますけれども、この二兆六千億円の中には、いま金を借りなければ首をつらなければならぬせつない人たちの、こういう両建ての血と涙と切々たる恨みの金が何億円入っているかわかりませんよ。私どもの推定をもってすれば、二兆六千億円の中には半分くらい入っているのではないかと思われる。トータルにおいて減っていない。勇気を持ってひとつやってください。ここでだけ言明して、今度はやりますの、厳重な警告をしますのと言わないで、要は実行あるのみですから、ひとつ大いに実行してくださることを要望いたしまして、私の質問をこれで終わることにいたします。      ————◇—————
  113. 三池信

    ○三池委員長 交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改正する法律案地震保険に関する法律案及び地震保険特別会計法案の各案を一括議題といたします。     —————————————
  114. 三池信

    ○三池委員長 政府より提案理由の説明を聴取いたします。藤井大蔵政務次官
  115. 藤井勝志

    ○藤井(勝)政府委員 ただいま議題となりました交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改正する法律案外二法律案について、提案の理由及び概要を御説明申し上げます。  初めに、交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改正する法律案について申し上げます。  昭和四十一年度の地方財政は、最近の経済情勢を反映して地方税、地方交付税等歳入の伸びが鈍化する一方、人件費、公共事業費等歳出の増加が見込まれることにより、きわめて困難な財政事情に立ち至るものと思われます。この対策として、政府におきましては、地方債計画において、地方財政特別対策分として政府資金債五百億円、縁故債七百億円、合計千二百億円の特別事業債を見込むとともに、交付税率の大幅引き上げ及び臨時地方特例交付金の交付により、合計一千億円の財源措置を講ずることといたしております。  まず第一は、交付税率の引き上げであります。これにつきましては、別途今国会に提案いたしております地方交付税法の一部を改正する法律案におきまして、地方交付税の算定率を、所得税、法人税及び酒税の収入見込み額のそれぞれ百分の二十九・五から百分の三十二に引き上げることとし、これにより、地方交付税交付金を五百八十六億円増額することといたしております。  第二に、昭和四十一年度における住民税の減税に伴う減収等を考慮して、別途今国会に昭和四十一年度における地方財政の特別措置に関する法律案を提案し、四十一年度限りの措置として臨時地方特例交付金四百十四億円を交付することとし、このうち二百四十億円は、第一種特例交付金として、たばこの売り上げ本数により案分して不交付団体を含め各地方公共団体に交付し、残りの百七十四億円は、第二種特例交付金として、普通交付税の配分方式に準じて交付することとしているのであります。  以上の措置に対応して、交付税及び譲与税配付金特別会計法においても、一般会計から交付税及び譲与税配付金特別会計に繰り入れる金額で、右の交付税に相当する金額の算定率を現行の百分の二十九・五から百分の三十二に引き上げることとし、また、昭和四十一年度の臨時地方特例交付金の交付に関する政府の経理を同特別会計において行ない、臨時地方特例交付金に相当する金額は、予算で定めるところにより、一般会計から同特別会計に繰り入れることができることとする等、所要の改正を行なおうとするものであります。  次に、地震保険に関する法律案について申し上げます。  わが国は、地震国といわれながら、これまで地震による被害を受けた一般国民が、その損害を補てんする手段としての普遍的な保険制度が存在せず、かねてから地震保険制度の確立が要望されておりましたが、地震災害は、その発生の頻度及び損害の程度が統計的に把握しがたく、その損害が時に異常巨大なものとなる可能性をもっておりますことから、保険制度によってその危険を担保するには種々問題があるため今日まで実現しなかったのであります。  昭和三十九年六月の新潟地震の際におきましても、焼失した民家が、火災保険をつけておりながら、その火災が地震を原因とするものであったために、保険金の支払いが受けられないという事態が生じ、衆議院大蔵委員会におきましても、この問題が取り上げられ、地震保険等の制度を根本的に検討すべき旨の決議が行なわれた次第であります。  政府といたしましては、すみやかに地震保険制度を確立して被災者の生活の安定に寄与すべく、同年七月保険審議会に具体的方策について諮問し四十年四月に答申を受けたのでありますが、この答申に基づいて検討を重ねました結果、ここに地震保険に関する法律案提出いたした次第であります。  以下、この法律案の概要について御説明申し上げます。  地震災害が、その特質上直ちには民間保険事業の対象となりがたい点を持っておりますので、まず、政府は、一定の要件を備える地震保険契約を民間の保険会社等が締結したときは、これを再保険できることといたしております。再保険の方式といたしましては、いわゆる超過損害額再保険方式によることとし、一定額以下の保険金支払いは、すべて民間保険会社等の負担とし、これをこえる部分について政府が再保険することといたしております。なお、一回の地震等について政府が支払うべき再保険金の総額は、毎年度、国会の議決を経た金額範囲内といたしております。  民間保険会社等が引き受けます一定の要件を備える地震保険とは、住宅または家財を対象とし、地震、噴火またはこれらによる津波を原因とする火災、損壊、埋没または流失を保険事故とし、それによる全損をてん補するもので、特定の損害保険契約に付帯して契約され、保険金額はその主契約の百分の三十に相当する額を原則とするものであります。もっとも、その金額が一定の限度をこえるときは、その限度によることとし、一方、異常巨大な地震災害が発生した場合で、支払うべき保険金総額が民間の負担限度と政府の負担限度との合計額をこえるときは、保険金が削減されることとしております。  以上のほか、再保険者としての政府の措置等につきまして、諸般の規定を設けております。  最後に地震保険特別会計法案について、申し上げます。  ただいま申し上げましたとおり、一定額以上の超過地震損害を国が再保険することにより、地震保険制度を実施するわけでありますが、この政府の再保険事業収支を明らかにするとともに、予測しがたい大地震の発生に際しまして、再保険金の支払いに支障を生じないよう弾力的に財政上の措置を講ずる必要がありますので、ここに地震保険特別会計法案を提案することといたした次第であります。  以下、この法律案の概要について御説明申し上げます。  第一に、この会計は、再保険料及び積み立て金の取りくずしによる受け入れ金を主たる財源とし、そのほか、借り入れ金または一般会計からの繰り入れ金等をもってその歳入とするものであります。他方、歳出は、再保険金または再保険金を支弁するため借り入れた借り入れ金等の償還金及び利子のほか、事務取り扱い費、一般会計への繰り入れ金等であります。  第二に、この会計において、再保険金を支弁するため必要があるときは、その年度の再保険料等の収入が再保険金額に不足する金額を限度として、借り入れ金をすることができることとしております。  第三に、再保険金または借り入れ金の償還金及び利子の財源等に充てるため必要があるときは、一般会計から繰り入れることができることとしております。なお、これらの繰り入れ金は、この保険計算の長期均衡性を考慮して、後日、この会計から一般会計に繰り戻すべきものとしております。  第四に、この会計の事務取り扱い費の財源は、毎年度、一般会計から繰り入れるものとしております。  第五に、この会計において、毎会計年度の歳入歳出の決算上剰余金を生じたときは、これを積み立て金として積み立て、将来この会計の歳出の財源に充てる必要が生じたときは、この会計の歳入に繰り入れて使用することができることとしております。  以上のほか、この会計の予算及び決算その他必要な事項を定めることとしております。  以上が、交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改正する法律案外二法律案の提案の理由及びその概要であります。  何とぞ、御審議の上、すみやかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  116. 三池信

    ○三池委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。  各案に対する質疑は、次会に譲ります。  次会は、来たる二十二日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後一時三十分散会