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1965-12-27 第51回国会 衆議院 大蔵委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年十二月二十七日(月曜日)     午後四時十五分開議  出席委員    委員長 吉田 重延君    理事 天野 公義君 理事 金子 一平君    理事 原田  憲君 理事 坊  秀男君    理事 山中 貞則君 理事 有馬 輝武君    理事 堀  昌雄君 理事 武藤 山治君       岩動 道行君    大泉 寛三君       奥野 誠亮君    押谷 富三君       木村 剛輔君    木村武千代君       小山 省二君    齋藤 邦吉君       砂田 重民君    田澤 吉郎君       谷川 和穗君    地崎宇三郎君       西岡 武夫君    藤枝 泉介君       村山 達雄君    毛利 松平君       渡辺 栄一君    渡辺美智雄君       岡  良一君    佐藤觀次郎君       只松 祐治君    日野 吉夫君       平岡忠次郎君    平林  剛君       藤田 高敏君    横山 利秋君       春日 一幸君    竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君  出席政府委員         大蔵政務次官  藤井 勝志君         大蔵事務官         (大臣官房長) 村上孝太郎君         大蔵事務官         (主計局次長) 岩尾  一君         大蔵事務官         (主税局長)  塩崎  潤君         大蔵事務官         (理財局長)  中尾 博之君         大蔵事務官         (銀行局長)  佐竹  浩君         国税庁長官   泉 美之松君         農林事務官         (農林経済局         長)      森本  修君         中小企業庁長官 山本 重信君  委員外出席者         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 十二月二十七日  委員岩動道行君及び西岡武夫辞任につき、そ  の補欠として周東英雄君及び森清君が議長の指  名で委員に選任された。 同日  委員周東英雄君及び森清辞任につき、その補  欠として岩動道行君及び西岡武夫君が議長の指  名で委員に選任された。     ————————————— 十二月二十七日  石油ガス税法案内閣提出第一三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十年度における財政処理特別措置に関  する法律案内閣提出第七号)  農業共済保険特別会計歳入不足をうめるた  めの一般会計からの繰入金に関する法律案(内  閣提出第八号)  石油ガス税法案内閣提出第一三号)      ————◇—————
  2. 吉田重延

    吉田委員長 これより会議を開きます。  昭和四十年度における財政処理特別措置に関する法律案農業共済保険特別会計歳入不足をうめるための一般会計からの繰入金に関する法律案及び本日付託になりました石油ガス税法案の各案を一括して議題といたします。
  3. 吉田重延

    吉田委員長 まず、石油ガス税法案について、政府より提案理由説明を聴取いたします。福田国務大臣
  4. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいま議題となりました石油ガス税法案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  政府は、最近における自動車燃料用石油ガスの消費の状況に顧み、揮発油に対する課税との権衡等を考慮して、新たに石油ガス税を設けることとするため、この法律案を提出した次第であります。  以下、この法律案内容についてその大要を申し上げます。  この法律案は、自動車用石油ガス容器に充てんされている石油ガスについて、石油ガス充てん場からの移出または保税地域からの引き取り課税原因として、その充てん者または引き取り者に対し、石油ガス一キログラムにつき十七円五十銭、一リットルに換算いたしますとほぼ十円の税率で石油ガス税を課することといたしております。  石油ガス税の申告及び納付、免税制度等の所要の規定につきましては、他の間接国税の例にならって定めることといたしております。  なお、石油ガス税収入額の二分の一は、道路整備緊急措置法規定により、国の道路整備財源に充当し、他の二分の一は、地方道路整備財源として、石油ガス譲与税法規定により、地方に譲与することといたしております。  以上が石油ガス税法案提案理由及び概要であります。  何とぞ御審議の上、すみやかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  5. 吉田重延

    吉田委員長 これにて提案理由説明は終わりました。     —————————————
  6. 吉田重延

    吉田委員長 引き続き各案に対し、質疑を続行いたします。  質疑の通告がありますので、これを許します。佐藤觀次郎君。
  7. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 高橋是清氏が大蔵大臣をやっておった当時、昭和七年と思うのですが、公債百億ということで、当時非常に問題になりました。ところが、戦後、財政法ができて、一度も赤字公債というのは出なかったのでありますが、どうもいままでの赤字公債というのは必ず戦争関係があったのでございます。ところが、この平和な時代赤字公債に踏み切らざるを得ないということは、これは前の田中大蔵大臣放漫政策をやったといえばそれまででありますけれども、何といってもこれはいま大蔵大臣がこの案を出される以上は、これは福田さんにいろいろこの公債についてのわれわれの見解をたださざるを得ないという立場に置かれておるわけです。  そこで、一体、こういうことになると、日本財政というのは健全財政といわれないような、そういう意見もあるわけですが、この辺について、大臣に率直な御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  8. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 均衡と健全とは、私は全く違った観念かと思うのです。均衡財政でも不健全な場合があるし、あるいは公債政策を取り入れた場合でも健全な場合がある、こういうふうに理解をいたしておるわけであります。公債政策を取り入れるにいたしましても、その公債を取り入れた予算が適正な規模が守られる、また、その支出の内容が適正である、こういう限りにおいては、健全な財政である、こういうふうに考えておるわけであります。
  9. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 御承知のように、福田さんは長い間大蔵省におられて、主計局長もやられたことがありますが、自然増収というのは、これは例外のことであって、実際は、予算ということになれば、これはもう入るをはかっていずるを制すということでありますけれども、そういう予算を組むのが至当だと思いますが、その点はどういうようにお考えになっておりますか。
  10. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 これは入るをはかっていずるを制すとか、いろいろいわれますが、私は、入るもはかり、いずるもはからなければいかぬ、こういうふうに考えます。両々見合いまして編成をするのが適正なやり方であると思います。
  11. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 これはいろいろ理屈はあとでつくのでありますけれども、しかし、あなたが大蔵大臣になられてから赤字公債をやったということになれば、これは高橋だるま大臣以来初めてのことを福田さんがやるわけですから、この点について大蔵大臣としてどういう見解を持っておられるのか。戦後二十年なかった新しいことをおやりになるのでありますから、この点について、これは政治理論でありますが、あなたの責任ということを言うのは、これは言い過ぎるかもしれませんけれども、しかし、何といってもインフレの影響の非常に強い赤字公債、二千五百九十億円というばく大な金を、これは御承知のように今年度でさえそういうことをやられるのでありますが、この点についてのあなたの率直な——もう前の大蔵大臣に文句を言うわけにいかぬでしょうけれども、少なくともそういうことについての御意見があってしかるべきだと思いますが、いかがでしょう。
  12. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 佐藤先生におかれては、高橋さんが何かえらい悪いことでもやったような前提でおられますが、私は見ておりまして、高橋さんというのはなかなかりっぱなすばらしいことをやった、こういうふうに考えております。つまり、あの昭和初期デフレですね。農村で娘を売るというくらいまで発展したあのデフレを一体どうやって直すか、これは時の大問題であったわけです。そのとき高橋さんは、ともかく日銀引き受け公債を発行するという非常に大胆な、日本で初めてのやり方をやったわけなんです。ちょうどあとでケインズが出てくる、あるいはニューディールが行なわれるというような、いろいろな新しい財政処理方式が出てきておりますが、そのときすでに高橋さんは、そういうものに連なるような、いわゆるフィスカルポリシーという考え方を出しておったわけなんです。財政経済を救うという考え方ですね。それで、私やり方を見ておりますと、決して不健全なやり方ではない。ことに公債政策を用いる場合において一番大事なのは何かというと、財政規模なんです。昭和十年の秋、十一月でしたか、昭和十一年度予算編成閣議が行なわれた。そのとき三十七時間閣議というのです。ここにおる坊さんなんか立ち会ってよく承知しておりますが、三十七時間何をやったかというと、高橋さんは軍部と財政のワクの問題について論争したわけなんです。そのやり方でいけばインフレということは絶対にない。日本経済史をずっと見てみまして、高橋さんが大蔵大臣になって倒れるまでの間というのは、日本経済史の中で最も安定した幾つかの時期の一つなんです。私は決して公債を使ったからそれがインフレになったというふうには考えておりません。高橋さんがその反動として二・二六事件で倒れる。そのあと、つまり軍事圧力というものがやってきたわけなんです。戦争インフレをもたらしたのであって、公債がもたらしたのじゃない、私はかたくそう信じております。
  13. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 高橋さんをほめるのはけっこうでありますけれども、高橋さんが偉かったということは、現実にあの時分にあって私たちも知っておるわけですが、そういうことが偉いのじゃなくて、借金で公債政策をやるということは偉いことだと思わないのです。それならば、あなた方自民党の総裁の佐藤さんが第一次佐藤内閣をつくるときにどういうことを言われたかというと、絶対に公債を出さぬ——そのときあなたは大蔵大臣じゃないのですけれども、公債を出さぬということも言われ、また、あなたも御承知のように、同じ党の中の党内野党におられたときにも、池田総理のやっておる経済政策については相当批判をされたことは、これは事実であります。それは認めますけれども、しかし公債がいいということならば、何でいままで公債を発行しないということを佐藤総理が言われてきたか。ところが、このごろになってから公債を出さざるを得なくなった。これは見込み違いじゃないか。少なくとも、この間社会党がもう少し野党として強ければ、これは佐藤さん、いまごろ内閣総辞職です。いまごろは号外が鳴るころなんです。けれども、こういう事態になって、前の池田内閣に次いで佐藤内閣が存続しているというのは、これは野党が弱いから存続しておるわけなんです。こういうことについては、あなたは大蔵省にずっとおられたし、いろいろ戦後におけるところの大蔵省中枢部をなしておられた方でありますから、十分に御存じだと思うのでありますが、しかし何のために財政法があるか。これはおそらく高橋是清さんの責任じゃないけれども、あの財政法のない時代には、かってに赤字公債をつくって、そして戦争に突入したという事実は——高橋さんが戦争に突入さしたのじゃないのですけれども、赤字公債が出てからこういうような事態が起きたということを考えるときに、私たち赤字公債というものは戦争につながるものだということを考えざるを得ないわけなんです。そういう点で、私はあなたが現在の財政法をどのように解釈されておるのか伺いたいと思います。
  14. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 財政法は昔の会計法のように憲法に付属するというくらい尊重すべき法規である、そういうふうに考えております。したがいまして、公債の規制をしておりますその第四条、第五条、これはあくまでも特に尊重していかなければならぬ。したがいまして、昭和四十一年以降発行せんとする公債は、現にこの第四条、第五条の趣旨にのっとったものである、かように御了承願います。
  15. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 それから、いろいろ公債が発行されれば、これはおそらく今年度は二千五百九十億円だけれども、来年度は御承知のとおり七千億円ともいわれております。それからうちの只松委員大蔵大臣に質問したところによると、四十三年度ももっと出すということなんです。これはいつまとまるかということが問題だと思うのです。そこで歯どめの議論をいろいろと大臣は言っておられますけれども、しかし、制度上の力があったり、また金融の力が、日本銀行が裏づけしてくれれば、これはもう歯どめのことは信用しますけれども、残念ながらいつ歯どめになるという保証はないわけです。そういう点について、いまの公債をいつごろとめるかという確信を持っておやりになっておられるかどうかということを、この際伺っておきたいと思います。
  16. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 経済が今日のように低圧型である間は公債を出していきたい、こういうふうに考えています。経済事情が変わってきて、特に昭和四十一年度予算の効果があらわれてきて、そして経済が非常に活気を呈するという時期になりますれば、だんだんとこれを縮小していく、こういう考え方であります。
  17. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 それでは、今度の予算の中で二千五百九十億円からの赤字が出る。赤字というのは、もちろん六千億円の自然増収というのを見込んでおったのでありますが、そういうことは見込み違いだと思うのですが、いま福田さんがそう言われても、あとは必ず景気が直って、こういうようなことをせぬでもいいという保証は何によって得られるかということの確信をひとつ伺いたいと思います。
  18. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 来年はおそらくまあ曇り後晴れといいますか、なだらかな成長で、下半期にはだいぶ明るい経済状況になってくると思うのです。その状況また成長の情勢というものかさらに再来年も続いていくと思う。私はこの三年間ぐらいはやはり低圧型の経済、つまり過剰の設備需要が埋めていくという時期に相当するのじゃないかというような感じがするわけであります。そういう過剰の設備がだんだんと需要によって補われていくに従いまして、企業の収益力等もついてまいりまして、六、七年前のような安定した経済状態を実現できる、こういうふうに見通しております。
  19. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 いまの経済事情は、政府が御承知のように、予想外不況だ、これは画期的な不況だと思われますが、しかしこういうことを一体福田さんは予想されておられたかどうか。佐藤内閣はこれほどの不況だということを一体予想されていままでやってこられたかどうかということをお伺いしたいと思います。
  20. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私は、三、四年前から、これは大デフレーションが来そうだという感じを持ってきたのです。これは早く設備投資に水をかけなければならぬ、こういうふうに思ってきたのですが、なかなかそういうわけにもまいらなかったようで、ついに今日の設備過剰時代になってしまった、こういうのです。私は数年前からそういうふうに考えておりました。
  21. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 そこで、福田さんが社会党ならいいのですけれども、少なくとも自民党の中におけるそういう御意見であったから、これはいま大臣になられたから、私はこういう意見を持っておったが、こうなったのはしかたがないんだということにはならぬと思う。そこで私たちは、いま福田大蔵大臣に全部責任を負わそうと思っていませんけれども、少なくとも第三次池田内閣のころからこういう傾向が出ておった、しかし六千億円に余るところの自然増収を安易に見て、その日その日を暮らしてきたという、こういう財政が、今日この昭和四十年の暮れになって赤字公債議論をやらなければならぬような状態に追い込んだということは、これはやはり自民党政府やり方がまずかったということになるわけてございます。この点について、過去をどうこういって責める必要はありませんけれども、これからこういう明るい見通しを持っておる一これに関連して地方財政の問題もたくさんございますが、そういう問題について確固たる、われわれが福田さんのことならば安心ができるというような議論ができるような根拠が一体どこにあるかということも、この際伺っておきたいと思います。
  22. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ことしの税収欠陥を来たしたのは、一に経済がどうなるかという見通しに根源があったわけであります。七・五%という成長を予想したところ、それが実際に二・五%ぐらいにとどまった。したがってそこに税収欠陥が出てきたわけですが、これはまことに政府としては申しわけない次第です。今後そういうことを再びしないようにつとめなければならぬことは当然でありますが、そういう意味合いからいいますと、今度公債政策を使う、財政経済の動きに対して非常に指導力を持つ形になってくるわけであります。おそらく景気浮揚力相当部分をこの財政がになうような性格を持っております。財政政府力そのものでございますがゆえに、これまでのように民間経済主導型、自由経済そのもので動くという状態ではないと思うのであります。そういうようなことを考えますときに、先般来申し上げておりますように、来年は何とかして七、八%の経済成長を達したい、この見方には、まあ見方ですから多少の狂いはあるかもしらぬが、そうえらい狂いは出てこないということを確信をいたしております。
  23. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 福田さんが大蔵大臣になられて——これは専門家でございますから、あまりこまかいことは問いませんけれども、一度この際内閣予算制度について検討する時期がきたのじゃないか。少なくとも第一次佐藤内閣——佐藤さんも福田さんも第三次池田内閣のときには相当批判を加えておられたのです。やり方がまずいということで、藤山さんもそういう意味であったこともわれわれは承知しております。しかし、本来からいえば、一体日本予算制度というものは、どう考えてみても解せないような問題が非常に多い。おそらくいままだ四十一年度の予算がきまりませんけれども、きまらない理由は、福田大蔵大臣がきめないのじゃなくて、やはり与党の方面からいろいろ批判が起きるのじゃないか。そこで、外国の例からすればかえって逆なあれで、大蔵省当局のほうが非常にじみな、わずかな予算を組んでおるのにかかわらず、与党からのいろいろな突き上げであの膨大な予算が積まれて今日のような赤字をつくらざるを得ないような状態に追い込まれたと思うのですが、こういう点について、この際予算制度について何か方向を変えるだけのお考えがあるかどうかということをまず伺いたいと思います。
  24. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 予算制度国民の生活に非常に関係の深いものであり、また国運の消長ともずいぶん関係の深いものでありますので、その制度はどうしても合理的なものでなければならぬ、そういう考え方で、何かいい考え方があれば何とかこれを改善していきたいと思っております。そういうようなことで、財政制度審議会というようなものもつくりまして、衆知をいま集めておるわけでありますが、四十一年度段階では、そうたくさんな改善案を盛り込むことができないのです。しかし、さらにこの努力を続けまして、逐次その努力の結果を実らしていきたい、こういうふうに考えております。どうかひとつベテランであられる佐藤先生におかれましても、いろいろお知恵をかしていただきたいと存じます。
  25. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 おだてられても喜びませんけれども、いままで田中さんは八万円満にやっていこうということで、与党のぶんどりの予算をどんどんやって、景気のいいことをやっておったのですが、そのあとを受けられて、福田さんには非常に気の毒だと思いますけれども、しかし予算制度というものは、いま高橋是清さんの話が出ましたけれども、あの人は予算をやっておるときにも、なかなか各省の言うことを聞かなかった。まして与党政友会の幹部の連中の言うことも聞かなかったというような、そういう大蔵大臣があったこともわれわれは承知しております。そこで、与党から非常に喜ばれるような大蔵大臣が国の財政をあずかることは非常に危険だと思う。福田さんは大蔵省の出身でもありますし、大蔵当局ともウマが合うと思うのでございますが、私は、少なくともこういう点を考えて、やはり一貫した一つ予算内閣にあるのでございますから、その点をひとつ堅持して、与党から幾ら何と言われても、やたらにひもをほどかないという制度がなければ、次々と赤字公債を出さざるを得ないような財政になると思う。その点は近々にも、おそらくこれが終わりましたならば二、三日中に来年度の予算に取りかかられるわけですが、そういう御決心を持っておられるのかどうか、これを伺っておきたい。
  26. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私は政策的また科学的に適正な予算規模をきめたい、こういうふうに考えています。私の手元できめられたその規模は、いかなる事態があっても動かさぬ、この方針は堅持してまいりたい、こういう考えであります。
  27. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 それから、日本予算の中でわれわれは非常に問題になっておると思うのは、大体三本立ての編成のためにいろいろな政治的な取引があるのではないか。だから特別会計がたくさんございますね。こういう点の整理をして、一本に予算を組むような、そういう形をつくることが必要じゃないか。少なくともいままでの財政投融資計画とかあるいはいままでのやり方については、いろいろなしきたりがあると思いますけれども、今度のような赤字公債を組まざるを得ないような財政に追い込んだというのは、やはり私はそれぞれいままでの予算編成に大きな欠陥があったのではないかと思うのですが、その点はどのように考えておられますか、伺いたいと思います。
  28. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 特別会計は、これは予算統一性を阻害するものでありますから、なるべく少ないほうがいい。私は特別会計で任務が終わったというものがあればどんどんやめなければいかぬと思いますし、それから新しくつくれというような要求もあります。これは必要のあるものもありますけれども、特別会計をつくらぬでやっていけるようなものもずいぶんあるわけです。また、特別会計じゃありませんけれども、実態は特別会計以上に政府独立運営をする公団、公庫、そういうようなものにつきましてもなるべく抑制するという方針で臨みたいと思っております。
  29. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 もう一点われわれが非常にふしぎに思うのは、自由主義経済の中であなた方のほうの中では、中期経済計画とか何年経済計画というような社会主義経済の中におけるところの計画経済のまねをするような傾向がこの二、三年見られます。こういうことは、いまそれがやはり予算のぶんどりの一つの要素となって、いろいろな悪影響を与えると思います。こういう点については、やはり私は資本主義資本主義自体の中にいいところもあるし、欠点もあると思いますけれども、そういうチャンポンをするところにいろんな無理があるのじゃないか。だから、いままでいろいろな計画の中に、この予算をちょっと取ったり、また向こうのところをちょっと取ったりというようなことで、全体としては片はんばなような、そういうことがしばしばあるように思っておりますが、こういうものをこの際ひとつ整理をする必要があるのじゃないかと思うのですが、この点はどうお考えになっておられますか。
  30. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 自由主義経済でも、ある見通しというものは国民が持たなければいかぬと思いますが、そういう意味において、たいがいの国で自由主義経済体制でありながら長期計画というものを持っておるわけです。私は社会主義というような体制のもとにおいて、これがすみからすみまで社会主義かというと、そうじゃないのであって、やはり自由にまかしておる範囲というものもあるわけです。その範囲の広さ狭さはありますけれども、あるのです。それは別に氷炭相いれず、相対立するということでなくて、考え方としては相交錯する部面もある、そういうふうに思っております。
  31. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 それから、いま補正予算が参議院で上がったらしいのでございますが、この補正予算の第一次補正とか第二次補正というようなことは、これも私はルーズな、自然増収の結果生まれたものじゃないかと思うのですが、戦前は予算が組まれれば、あとは御承知のように予備金から出すような制度がずっとあったわけです。このごろは補正があるのがあたりまえのような形になって、第一次補正、第二次補正というような形が出てきておるのですが、こういうことも予算制度の中において考えてみれば非常に矛盾があると思うのですが、この点はどのように思っておられますか。そういう予備金制度でやる方法がないのかというようなことについて伺っておきたいと思います。
  32. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 予算編成する場合には、あらゆる想像し得る事項を織り込んでいくべきものだと思います。しかし、予見しがたい問題もまたときに起こってきますものですから、そこで予備金という制度があるわけです。最近、佐藤さんのおっしゃるとおり補正、補正で補正続きでございますが、これが予備金ででもまかなわれればそういう事態は起こってこないわけでございます。私は、四十一年度の予算編成の際は予備金を少しふやして、予算に弾力性を持たしてみたい、こういう考えております。
  33. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 それから、これは来年の問題になるのでありますが、大体来年の六日に内示があると聞いておりますが、今度の予算編成の重点について、いろいろ赤字公債の問題をわれわれは考えるのでありますが、こういう点についてどのような見解を持って四十一年度の予算を組んでいかれるのか、この点をひとついろいろな関係上伺いたいと思います。
  34. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 社会開発投資を積極的にやるのが一つ、それから国民負担の軽減を行なう、こういうことが一つでございます。それから財政景気の調節に有効的な働きをするようにする、これが三つの柱かと思うのでありますが、そういう作用を実現するために公債発行を行なう、社会開発投資の最重点は住宅の建設に置こう、こういう考えであります。
  35. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 しかし私らは、社会開発とか人間尊重とかいうような抽象論は、佐藤総理のいろいろな言でありますが、どうもそういう点について私たち考える点と非常に違った点があることを残念に思います。しかし、福田さんは池田財政のひずみが起きるということを見ておられたが、そのひずみが今度のような赤字公債になってあらわれたということは、何といっても自民党政府責任だと思うのです。  そこで、財政法をこのまま存続させて、財政法の趣旨にのっとって公債を出すのか、それとも財政法を一時改正する——われわれは改正じゃなく改悪と言っておりますけれども、改正しておやりになる決心があるのか、その点についての御見解を伺いたいと思います。
  36. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 昭和四十年は財政法によらない公債を出します。しかし、昭和四十一年以降計画しております公債財政法第四条による公債であります。財政法第四条によらざる公債は出す考えはございません。
  37. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 しかし、建設公債といっても、これはただあなたのほうでていさいが悪いのでそういうことを言っておるだけで、実体は赤字公債にならざるを得ないと思いますが、その点はどういうように考えるのか。いまはそういうように言っておられますけれども、あとになってそれはそうだったということになるという心配がありますが、その点の真意はどうですか。
  38. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 財政法第四条による公債は、その公債金を使う対象は公共事業などの施設費です。それから出資金、貸し付け金、こういうふうになっておるわけでありまして、出す公債はその範囲に厳にこれを限定する、こういうことを言っておるわけであります。
  39. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 それはことばでは非常に穏当なことが言われておりますけれども、大体私たち考えでは、いまあなたのほうの前尾さんが四十一年度に一兆円の公債を出せということを言われておりますが、どうもこのままやっていくと、三年の間には五兆円に達するような公債が出るのじゃないかということが民間から心配されておるわけです。こういう点で、私は、四十三年度までの間でとめるかということは、これは景気関係にあると思うのですが、そういう点で福田さんはどこまで程度でおさまるものかというような見通しをつけておやりになっておるのか、やったとこ勝負で、また景気が悪いから出すというような、そういうその日暮らしの計画でおやりになるのかということをこの際伺っておきたい。
  40. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 経済成長しますから、したがって自然増収も伸びているわけであります。そういうようなことを考えますと、経常の歳出は経常の収入でこれをまかない得る、またまかなわなければいかぬ、こういうふうに考えておるわけであります。したがって、公債財政法第四条の対象だけにこれを限定する考えであります。景気がよくなって自然増収が相当伸びるという時期になれば、これは景気調整というような意味合いからいいましても、公債の発行額を縮小しなければならぬ、また財政負担という点からもこれを縮小するということが必要になるわけでありまして、まだどの時点に立ったらばということをここで申し上げることは不可能であることは御了解ができるかと思うのでありまするが、ある時期にはそういう方向への転換を考慮した考え方を持っておるわけであります。
  41. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 私たちが心配しておるのは、来年度における公債発行と同時に物価の問題です。これは御承知のように、政府が米の値上げから  一連の公共料金の値上げをずっとやらざるを得ないところに追い込まれておるのですが、これが非常に拍車をかけてインプレ——この公債発行と公共料金その他の値上がりというものが物価値上げに拍車をかけるのではないか。これはこの間小林参考人が来られましたときにも伺ったのでありますが、どうもムードが起きやせぬか、そうしてそのムードを起こして困っておる大企業のために、大産業のためにインフレの高い熱で帳消しにするのではないかということが心配されておるわけであります。こういう点について、物価の値上がりにどのような影響があるかということは、これは国民生活に重要な関係がありますので、大臣はどのような見解を持っておられるか、伺いたいと思います。
  42. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 物価の値上がりがなぜ起こるかというと、これは金融政策、財政政策、これが重大な関係を持つわけであります。金融政策の結果であっても、あるいは財政政策の結果であってもいいわけですが、ともかくその結果特定のだれかが物を買い過ぎる、お金を使い過ぎる、あるいは労働力を使い過ぎる、そういうようなことで他の需給を圧迫するという際には、これは物価騰貴になる。いま問題になっておる財政ですね。公債を増発して、その結果編成される財政規模が、民間の経済活動と見合った適正な規模をこえるという際におきましては、物資、資金、労務あるいは国際収支、そういう面で需給の不均衡を起こして、そこに物価騰貴の現象が起こってくる、こういうふうに思うのでありまするが、基本的にはそういうことを考えながら適正な規模予算編成されるという限りにおきましては、財政の面からインフレを起こすということは絶対にないわけであります。そういうふうに考えております。財政規模が非常に大きい、これは公債を使わぬでも、税を使ったって同じです。非常に過大に予算編成される、その財源が税であるということにいたしましても、これはまたインフレの要因になる、私はそう思っております。
  43. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 いろいろ議論をしても、考え方が違うので平行線になると思うのですが、過去に日本公債を出したという例は、日清戦争以来日露、第一次大戦、満州事変、第二次大戦というときに公債が出されておるわけです。だから、これはこの前平岡さんが本会議で、赤字公債は将来軍事公債になる心配があるということを——軍事といったって、いま戦争はやらなくなっておりますが、そういうにおいが非常に私はするのですが、この点について、こういう平時で公債を出すというような例があったかどうか、それから今度の例はどういう例に当たるかということを御説明していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  44. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 一番似ているのは高橋さんのころのことじゃないでしょうか。満州で建設をやっておりました。満州事変が済んで満州で建設をやっておったのですが、今日じゃ国内の建設を、あのような小さい規模じゃありません、もっと大きなスケールでやっておるわけでありますが、あのときの状態に非常に似ているんじゃないか、こういうふうに思います。
  45. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 どうも私たちは最近ベトナムの戦争、これは戦争に似たものでありますが、それから日韓条約の強行というようなことがどうも満州事変前の日本経済事情と似ておるような感じがしてならないのです。まあ、福田さんは戦争をやろうなんていうことはお考えになっておられませんけれども、どう考えてみても、最近のやり方の中にどこか戦争をにおわせるようないろいろなムードがある。これは私たちにわからぬけれども、しかしこういう点についてのやり方が何か非常に異常なやり方のように考えておるわけです。そういう点はあなた専門家でありますから、そういうことはないと言われるだろうと思いますが、そういうにおいのないような、そういう意見が起きそうなものじゃないかと思うのでございますが、その点はどうでございますか。
  46. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私は公債戦争につながるというふうなことは全然考えませんが、あれはたまたま高橋さんが公債を出して、高橋さんが倒れてから支那事変、満州事変、大東亜戦争とつながっておった歴史、これをみんなが頭に持っているのでそういうことを言われるのかと思いますが、今回公債は出します。出しますが、軍事費の目的にはいたしません。したがって、公債対象からは軍事費、つまり防衛庁経費は一切これを除外して考えよう、こういうことまでいたす考えでおります。
  47. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 同僚議員からもたくさん質問があるようでありますから、私だけであまり御質問を申し上げても悪いので申しませんが、ただ、今度の公債を一般の大衆に直接売り渡すのでなくて、やはり銀行に引き受けさせる、そういうことで相当な量の公債が市中銀行に割り当てられるわけですが、今年度はやむを得ないとしても、来年度の公債の割り当てはどのような方法でおやりになるのか、これも承っておきたいと思います。
  48. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 これはほとんど全額を市中公募、場合によりますと、もし資金運用部で余裕があればそれに持たせることもあるかもしれませんけれども、とにかく市中消化、日銀には一切これを引き受けさせないという方針は堅持してまいる考えです。それで、その市中公募のやり方は、これをシンジケートとそのつどそのつど相談する、こういうことであります。
  49. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 これはいま福田さんはそう言われるけれども、前の田中さんの大蔵大臣のときに山一証券の例があるように、結局日銀引き受けになったのですが、そういう事態が起きないとは保証できないと考えておりますが、そういう点はどうお考えになっておりますか。
  50. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 山一とこの公債の発行、消化の問題とはどういう関係があるのですか、ちょっと承っておきます。
  51. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 山一と公債とは関係ありませんけれども、日本銀行が山一に無担保、無利子で無制限に貸したという事実は、これは政府がやれということを言ったからやったのだと思うのです。だから、そういう点について私たち考えるのは、一応表向きは、日銀には迷惑をかけないというけれども、結局最後は、いまの宇佐美総裁といえども、福田さんがどんどんやれと言えば一これは市中で消化できないなら日銀で引き受けろと言えば、ああでもない、こうでもないと文句を言うかもしれませんけれども、必ず引き受けると思うのです。そうすると、これは紙幣の増発になって物価が上がるということになるのですが、そういう点で、私は、いま福田さんが日銀に迷惑をかけないと言われますが、その保証は得られないと思うのですが、これはどうですか。
  52. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 日本銀行の通貨は経済成長する結果、それに伴って膨張をする傾向をたどると思います。これは適正な、つまり成長に見合った規模で膨張するにおきましてはいささかの心配もない、こういうふうに考えておるわけですが、そういう適正成長通貨以上に通貨を増発するということはしない。これは予算委員会でも堀さんからちょうど同じような話がありまして、そういうことを約束を申し上げたわけなんでありますが、消化ということは、結局においてそういう通貨の膨張にしりがいかないようにすることなんであります。かようにしたいと思っております。
  53. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 同僚議員の質問もありますから、最後に、きょうの朝日新聞の論説の中に、公債インフレを予防せよということで、きつく規制を要望していると思うのですが、言論界があげて今度の赤字公債に反対しているというのは、これは相当理由があると思うのです。そこで、私たちとあなたたちと平行線になりますから、いろいろな議論を言ってもこれはあとの祭りになるわけでありますけれども、少なくともわれわれの観測によりますと、一九七〇年、これは安保改定の時期でありますが、そのころまでには、いまの保守政党というものは、こういうような放漫な財政政策によって経済的な破綻を来たしはしないかというような反面の観測があるわけです。そういう点について、各有力な論説の中にも公債インフレに対していろいろな意見があるのでございますが、その点はこれはもう心配ないということは——大蔵大臣が心配だと言ったら公債は出せないわけですからそうは言えませんけれども、少なくともそういう機運が全然ないとは言えないと思うのです。そういう点で、これは福田さんの御意見も、なかなかそういう強い意見があるのですが、こういうような一般の世論の公債発行に対する意見についてはどういうようにこれを受けとめていかれるのか、これも福田さんにお伺いしたいと思います。
  54. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 公債というものがきわめて安易なる財源調達手段である、そういう意味合いにおきまして、ややもすればこれが乱用されるおそれがある。私は公債というものは非常な良薬であると思うのです。しかし、同時にそういう意味においては劇薬だと思う。ですから、この使い方というものはよほど気をつけなければならぬ。これはもう高度の政治運営の問題と思いますが、あらゆる努力を尽くしてこの使い方が誤らないように、制度的にも、また運営の上におきましても全力を尽くして、細心にして最大の注意を払っていこう、こういう考えであります。
  55. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 まだ平岡、横山両委員が残っていますから、私はもうこれ以上聞きませんけれども、少なくともいま言われたような予備軍的な役目をするのじゃないかと言われています。そういう点について、大衆がこの公債の発行によりまして、インフレ傾向になって物価が上がって、生活に困らぬような制度をひとつぜひとも考えてもらいたい。そういうようなことについては、われわれも今後四十一年度予算のときにもいろいろお話が出ると思うのですが、そういう点については十分注意をしていただきたいということで、私の質問を終わりたいと思います。
  56. 吉田重延

    吉田委員長 横山利秋君。
  57. 横山利秋

    ○横山委員 いろいろの角度から同僚諸君が尋ねましたから、私は、公債を出した財政政策が中小企業にどういう角度から影響をするかという点を、できる限り例証をあげて端的に大臣の御意見を伺いたい。  申すまでもなく、いまの中小企業は金が借りられない、人が足りない、仕事がない、売り上げが少なくなった、手形のサイトが延びる、不渡りが出る。まさにこれは短期的な状況でなくして、中小企業の存立の基盤をゆり動かすような状況にあるわけであります。これは御存じのとおりだと思う。私きょうこの本をいただいた。大蔵省の若手スタッフが全力をあげて書いた。拝見したところ、大臣の御意向を参酌したかしらぬけれども、PRとしてはなかなかいいと思う。ただこの中に中小企業の中の字もないわけです。私はこれはアキレス腱だと思うのです。今日これだけ中小企業の問題があるにかかわらず、「公債のはなし」の中に国民生活からいろいろなことを取り上げながら、中小企業に一言半句も言及されないというのはどういうことであろうか。むずかしいからだろうと思う。救済の対策が之しいからだと思う。かりに政府の心がまえがあっても、現実問題として対処のしょうがいまの政策の中から吹き出ていないからではないかと思う。われわれはこの間本会議で信用保証の金融の問題を通しました。けれども、大臣も御存じだと思うのですが、いまは金はある程度借りられても仕事がないということです。最近は新聞やテレビや雑誌が中小企業の一家心中ということで、最初の間はどきっとしたけれども、このごろは何となくまたかというような感じをお互いに持つということは、私は非常に残念なことだと思う。いまこれほど深刻な状況の中で、中小企業の問題というものが、もっと大臣のことばや政策の中でクローズアップされてこなくてはおかしい。  その意味で、私はいろいろな角度から具体的に伺いたいと思うのですが、まず第一に、どうしたら仕事がふえるであろうか。あなたは、仕事はこれからふえていく、ふえていったら分けてやるというお気持ちらしいけれども、公債が金になって政府財政ないしは投融資で民間に流れる、流れて、金及び仕事も最初にもらうのはだれであろうかということですね。これは何の尺度もないのですから、圧倒的に大企業です。あなたの言うところの新しい社会基盤で仕事をするのは圧倒的に大企業です。その下請、また、その再下請、そこで初めて中小企業に届くのですから、ないとは言いません。言いませんけれどもほんとうに下まで、中小企業の仕事がふえるというところに至るにはずいぶん径庭があり、中間搾取があるのです。ですから、私の言いたいまず第一の点は、基本法にもあるじゃないですか。この際ひとつ官公需の確保に関する基本法の条項を百尺竿頭一歩を進めるべき時期ではないか。アメリカでもやっているではないか。これは憲法違反という問題も、この問題については自民党の中にはなかったではないか。産業分野には問題があったけれども、官公需については問題がなかったところです。したがって、これから大きくなる官公需については、この際ひとつ中小企業に仕事が流れるようにくふうをしたらどうかと思う。私は、この話は通産省ではないと思う。なぜならば、それは会計法ないしは予決令を改正しなければならぬからです。会計法や予決令は一般的な購入契約の条項をきめておるだけであって、別に中小企業擁護の点は何にもありません。したがって、もし大臣が中小企業に仕事をふやす、そして財政が膨張して、それで仕事までふやしていくというのであるならば、この際その配慮がなくてはならぬと思うのですが、いかがですか。
  58. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ちょうど私が考えておるのと同じことをおっしゃったと思います。ぜひそれをやっていきたい、こういう考えです。
  59. 横山利秋

    ○横山委員 御同感を得てけっこうであります。そこで、私が例をあげましたように、ただ官公需をなるべくということではだめなんです。そういう法体系に会計法、予決令はなっていないのですから。もしもそういうのであるならば、法改正をするか、あるいは行政指導を確実にするか、あるいは行政管理庁等で念査をして、それを監督指導する機構をつくるか、あるいは中小企業庁の中へその実行を担当するところをつくるか何かをしなければ、精神訓話ではこれは実現がされません。その具体策についてどうですか。
  60. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 この間から相当政府事業も活発になり、中小企業にどういうふうに均てんさせるかということを頭の中で考えているのです。財政制度審議会のほうでも制度的にどうしようかということを検討されておるようでありますが、あらゆる角度から検討してみたいと思っております。まことにごもっともなお話だと思っております。
  61. 横山利秋

    ○横山委員 御検討をくださるならば、ひとつなるべく早く、年の明けた国会で御説明ができるようにお願いしたいと思う。  それとあわせて、協同組合というものの問題であります。協同組合は中小企業庁が非常に育成しておる。政府の政策の中にも協同化ということがうたい文句になっておる。ところが、政府会計法、予決令、国有財産の措置その他の中では、協同組合を嫌悪しておるきらいがある。住宅金融公庫は、協同組合でもいかぬとは言わぬけれども、しかし株式会社にしてくれというような状況である。協同組合を一方では政府が盛んに慫慂しながら、協同組合に工事をやらせることを、協合組合から物を買うことを経済省では敬遠をしておる。なぜ敬遠するか、それは責任体制が確立されていないからだという。しかしながら、これは政府内部でも非常に矛盾があると私は思うのです。もしも協同化、組織化ということが中心であるならば、あらゆる政府機関の中で協同組合による受注、協同組合による仕事の運営、それを好意をもって応じさせるべきであって、法律及び規定の中で、協同組合についてはいかぬ、ないしは敬遠するというような法、令達があるならば、これを改正すべきである。この点はいかがですか。
  62. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私はそのことをよく承知しませんが、協同組合であるから、優秀で低廉である商品の買い入れを除外するというのは、ちょっと常識でも考えられませんが、なお、そんなことがあるのかないのか、あるとすればどういう事情なのか、調べてみます。
  63. 横山利秋

    ○横山委員 長官に率直にこの点お伺いをしたいのですが、私の体験するところは、まず第一に国有財産の払い下げについて、協同組合については、これはたしか本委員会で取り上げたことがあるのですけれども、だめです。それから行政運営としてもだめです。それから住宅金融公庫の中高層建築、共同建築においても、行政指導としては、これは協同組合でなくして、できるならば株式会社にしてくれといって、協同組合で認可されたことは一件か二件しかございません。長官、この点についてはどう思われますか。
  64. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 ただいまの御指摘の点につきましては、私のほうでは中小企業の体質改善、地位の向上のために組織化、組合の結成を慫慂しておるわけでございますが、いよいよ組合ができまして、仕事、注文をとろうという段階になりますと、実は遺憾ながら実際の面において先生が御指摘のような面がございます。私実は国有財産の問題をいまつまびらかにいたしませんが、物品購入の点につきましては、法令の上ではそういうことが可能になるように一応道ができております。ただ問題は、具体的に調達する官庁が運用のしかたとして、組合ということで寄り合い世帯ではどうも信頼度が十分でないということを言って、実は窓口でお話のように若干敬遠されておる向きがございます。具体的な案件について、私のほうでは関係官庁に実は懸命になってその点の折衝をしておるというのが正直な実情でございます。
  65. 横山利秋

    ○横山委員 お説のとおりであります。私は法令の中にも一部そういう残滓があると思っていますが、主としては行政運営の中で、一方では協同組合を非常に指導しながら、他方では協同組合では責任制が乏しいという言い方をして、この受注には応じさせようとしない。物品の購入も差し控えるという状況であります。この点について、私は、先般中小企業の問題を閣議議論なさって、仕事をふやすというお話があったように聞きまして、もしもそうであるならば、この際政府として中小企業庁なり各省で協同組合育成を指導しておるのであるから、零細な企業が集まって協同組合を運営するならば、ひとつどんどんと協同組合に仕事を出そう、こういう方向に大臣から十分関係の向きへ指導していただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  66. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 よく考えてみます。
  67. 横山利秋

    ○横山委員 もう一つ中小企業庁長官にお伺いしたいのですが、今日までの中小企業の政策は、端的に言いますと、近代化ないしは高度化でありました。つまり、この多くの中小企業の中に全部をやるのは財政もたいへんだし、実際として実益が乏しいから、この際この中で伸びる企業、つまり中企業を大企業に、小企業を中企業に、そして選ばれたものを団地に、こういう政策であったのであります。これは大臣が先ほど、私も聞いておったのですが、高度成長経済という一つのにしきの御旗の一環に乗っていった政策であります。当時から私どもはこの近代化ないし高度化というやり方について疑念を持っておった。なぜならば、いつまでたっても救われない層というものには日の光は当たらないからであります。だから、零細企業、小企業をもっと幅広くと主張しておったのであります。いま中小企業は一つの曲がりかどにあるのではないかと思います。これ以上に私はやっていかぬというわけではありませんが、角度を変えて、選ばれたる経済ベースに乗っておる中企業に選択的に金をやる、税金をまけるというようなことよりも、いまの毎月五百件、本年六千件になる倒産をしていく層、それから一番下の層に対してもう少し広範な中小企業政策に転換をしなければならないところだと思う。その点について、中小企業庁長官はどういうふうに考えておられるか、まず伺いたい。
  68. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 中小企業対策は、中小企業庁が昭和二十三年に発足しましてから約十七年間いろいろ創意くふうをこらしまして、おそらく発足当時に比べますと施策としてはかなり充実をしてまいっておると思います。しかしながら、ごく最近になりましてもよく中小企業の大会等で話を伺いますのは、なかなか零細企業、小規模企業のほうにまで行き届いていない、こういう批判といいますか、強い要望を私よく聞くのであります。私たまたま七月着任以来、やはりその点はよく考えなければいけないど思いまして、従来の政策を進めることは当然でございますが、それと並行しまして、どうしたらできるだけそういう施策が中小企業の中の底辺にあります膨大な数の小規模の層に行き渡らせることができるかということを考えておるわけでございます。ごく卑近な例で申し上げますと、同じ近代化、高度化でも、工場団地にはいれるところは比較的つぶの大きいところでございます。来年度はごくつぶの小さいところもそれと似た方法で、たとえば工場アパートをつくりまして、そこへ零細な三人、五人という人たちが入って、そして場所も同じところになる。そしてお互いに分業体制をつくっていけるような道を開きたいと思って、いま鋭意研究をしておるところでございまして、できるだけ小規模のほうにも行き届かせるようにいたしたいというのが私の念願でございます。
  69. 横山利秋

    ○横山委員 大臣、その点をよく財政編成されるときに念頭に入れていただきたいのであります。私は決して近代化、工業化がいかぬと言っているわけじゃない。しかし、その近代化、工業化の思想のもとになりますものは、小を中に、中を大に、とめどもなく中小企業が伸びて、工場を大きくすればいい、機械を備えつければいい、おれもあの大企業のようにということで、適正規模というものを考えないところに問題があると私は思う。この適正規模論についていろいろと議論するのは時間がありませんのでやめますけれども、中小企業の分野というものを着実に指導をしていく必要があると思うのです。ところが、政府の政策も何となく中を大に、小を中にという政策です。たとえば一例をあげると、昨年私ずいぶんおこったのでありますが、建設省の住宅でげたばきアパートというのがある。いままでは三百坪以上であった。大蔵省が去年建設省をいじめて、今度は千坪以上にしろ——こんな町並みのところでげた屋さんや八百屋さんやあるいは散髪屋さんが中高層をやるのに千坪にしなければならぬということでは、これはてんで問題にならぬ。大蔵省の言い分は、町をよくするためだ、電信柱みたいな建物よりももっと大きな建物にして、町の美観を建築行政として指導したというのであります。建設省に言わせれば、これは中小企業政策なんだという。ところが、とうとう負けた。負けたけれども、そのかわり、ある年次例外規定をつくって、三百坪でもある程度いいというようなことにしたのであります。このように、大蔵省の中小企業政策に対する考え方も、もうここ数年来小を中に、中を大にということで、中小企業政策というものの根幹に不十分な点があった、私はこう思うわけであります。ですから、いまいろいろと仕事の面であげましたけれども、明年度財政編成されるにあたって、いかにしたら中小企業に仕事が回っていくか、また中小企業をどう育成するか、適正規模の、または底辺の企業に仕事なりいろいろなものがどうしたら回っていくかという点をひとつ大臣として御勘案を願いたい。いかがでございましょうか。
  70. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 通産省の仕事ですが、できる限り協力してまいりたいと思います。
  71. 横山利秋

    ○横山委員 その次は、税制の問題であります。先日当委員会で聞いておりますと、大臣はこう答えられました。国債を発行する不況下であるから、税金を特にきびしくする気持ちはないとおっしゃった。まさに大臣はそうだろうと私は思う。ところが、私は税務署へ最近一、二回行ってみんなの話も聞きましたし、いろいろと体験もしてみました。ところが、税務署をおおう雰囲気はどういう雰囲気かといいますと、とにかく自然増収が二千五百億円足りない。足りない足りないという気持ちが上から下まで通っておるわけであります。うちの中で通っておるばかりでなく、外からもラジオ、新聞、テレビ、雑誌で税金が足りないという宣伝がされておる。ノルマは確かに第一線までいってない。けれども、課長以上になりますと、大体横山はどんな課税所得を持ってきたか、鈴木のこの間の脱税についての調査についてはどのくらいの増差額が出たという署員の調査実績一覧表をみんな持っておるわけであります。その一覧表がどんな精神的圧力を前線の税務職員に与えているかということなんであります。確かに自然増収がどんどん出ていくときには気が楽だ、こう言っています。けれども、中小企業のところに行けば、実際問題として帳簿がそんなにしっかりしちゃいませんから、重箱のすみっこをつつく気持ちになれば少しは出てくるのです。省へ帰れば課長や係長が聞こえよがしに、これだけ出たなという話をしている。どうしても徴税についてやらざるを得ぬというムードが税務署に一ばいあるわけであります。かてて加えて、これは私はいかぬとは言いませんが、国税庁から金融機関に対して架空名義の申し入れがありました。あそこには画一的に個人的に調査するようなことはしないと書いてある。ところが、あの申し入れがどんなに前線部隊に対して、銀行に対して、金融機関に対して心理的にてきぱきと問題を処理し得るようにしているかという点は、上層部であなたがお考えになる以上であります。私はその申し入れがいけないと言っているわけではない。しかし、この不況下において、中小企業に対する徴税というものは、大臣がそこでおっしゃるほどのムードではない。またそういうふうに前線の諸君はかり立てられる雰囲気にいまあるということであります。御感想を伺いたい。
  72. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 よくそういう話を聞くのです。一つはこういう話なんですが、どうも税収が落ち込んだ、そういうことで、それを取り戻すためにドライブをかけているんだということです。もう一つは、よく聞くことは、今度は日韓の関係で北鮮人のほうへ重くかけろ、こういうことを言っておる。そういうふうに指導しているのではないか。両方とも調べてみました。そうすると、北鮮のほうについては全然そういうことはないのです。ところが、中小企業につきまして一つ特殊な調査が行なわれたことが報告されておるのですが、そば屋が何かそば粉の使用量等から見て税が適正でないというような材料があったので、ある地区のそば屋についてずっと調べてみたということがあるほかは、一切特別なことはいたしておりません。これは特別に私が調査を命じての話でございます。上から特別にドライブをかけるというような事実は全然ないのですが、なお詳しくは、国税庁長官も見えていますから、お聞き取りのほどをお願いします。
  73. 横山利秋

    ○横山委員 私の言いますことは、ドライブをかけておるとは思われないというのです。しかしながら、そのムード、税金が足りない、国税庁の申し入れ等々からいって、ほかっておいても前線では重箱のすみっこをつつくような状況になっておると私は言っておるのです。  そこで、こんな抽象的な話ばかりでもいけませんから、一、二お伺いをしたいと思うのですが、まず第一に金利の問題です。滞納加算はいま四銭ですね。あなたは金利を下げるということで、商工中金や中小企業公庫の金利を下げられた。なぜ滞納加算の四銭も下げないのですか。これはおそらくお気づきにならなかったのではあるまいかと思うのです。金利全般を下げるということであるならば、いま中小企業の非常に苦しいときに、延滞加算やそういうものだけは放置さるべきものでないと私は思う。もしも市中金利を下げるというのであるならば、この際そういう税の延滞加算その他についてもつり合って下げるべきではないかと思う。いかがですか。
  74. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 局長が答弁します。
  75. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 延滞加算金の性格の問題にからむ非常に重要な問題でございます。私は金利との関係も十分あることと思いますけれども、同時に遅延利子的な性格がございまして、それを入れてどの程度にきめるのが妥当であるか、さらにまた、滞納を防止する角度から見まして、どういつだ見地からきめるべきかを考える、さらにまた徴収猶予をする場合には、御承知のように、大体法人税にいたしましても相続税にいたしましても、日歩二銭でございます。このあたりも現在の金利負担からみてどう考えるか。これはまさしく徴収の猶予をするという経済情勢に応じましたところの猶予措置でございますから、これは二銭でございます。これをあわせましてどういうふうに持っていきますかは、今後の金利事情を見ながら、同時に租税の滞納をどういうふうに考えていくか、これらをあわせまして検討しなければいけない、こんなふうに考えております。
  76. 横山利秋

    ○横山委員 あなたのおっしゃるように、市中金利とある程度見合って納税心理にどういう影響を与えるかということは、私だって知っている。けれども、こっちが下がったじゃないか、何でこっちばかりそう過酷にしていくのだというのが私の論点であります。きわめて常識的な話です。こちらが下がったらこちらも下げたらどうだ、簡単に言えばそういうことです。大臣、どうですか。
  77. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 これはなかなかむずかしい問題がありますので、なおよく考えてみます。即答はできません。
  78. 横山利秋

    ○横山委員 どうしてでしょう。あなたは低金利政策の主導者じゃないのですか。あとで時間があったらお伺いしたいのですが、国債の金利をきめた。それによってあなたは低金利政策はもうやめちゃった。あれが歯どめになって、もうとてもこれは低金利政策はとれないという考え方がどうもあるらしい。私は税金の滞納の金利と低金利政策と関係させるつもりは毛頭ないのですが、簡単な話です。市中金利とつり合っておった。市中金利が下がった。またあなたはさらに下げたいと思っている。それなら何でこっちを下げないのか。こんな簡単なことに何で考えますと言うのですか。
  79. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 それは、いま下がっているのは短期金利なんです。金利といっても、長期金利もありますれば預金金利もあるわけです。そういうものを総合的に考えなければならない。短期金利というものは、もうしょっちゅう上げたり下げたりするべきものなんです。そのときの金利情勢、金融情勢によってきめるので、それに税をスライドさすべきものであるか、どうか、これはなかなかむずかしい問題だから、したがって即答はできない、こういうことなんです。
  80. 横山利秋

    ○横山委員 あなたは税金のことをどうもあまり御存じないらしいですね。納税が長期金利と比較になりますか。税務署に行ってごらんなさい。署長さんや課長さんにあなた一ぺん聞いていらっしゃるといい。どんなにあったって、三年越し、五年越して納めてくれなんというはか——ばかというか、そういう署長さん、課長さんはおらぬですよ。そんなこと、あなた御存じないのですか。長期金利と比較されるというのは愚の骨頂ですよ。せいぜいことしじゅうに納めてちょうだい、せいぜい来年の三月三十一日まででなければいやですよ、これで一ばい一ばいですよ。そんな話と比較されたら迷惑千万です。
  81. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 横山委員も十分御承知の上で御論議されていると思います。徴収猶予等の場合には、ずいぶん長い滞納の形での徴収猶予があることも御存じのとおりでございます。さらにまた、先ほども申し上げましたように、延滞加算金というのは、単に金利だけではない、やはり滞納防止という見地の制裁、これがございますし、さらにまた、民間におきましても遅延利息という加算の問題もございます。現在下がっておりますのも確かに短期金利かもしれませんけれども、私はそういった滞納防止の見地、さらにまた銀行の遅延利子がどういうふうに動くかどうか、さらにまた金利全体が現在の情勢ではそういうふうな傾向がございまするけれども、何と申しましても、延滞加算金は法律で規定されました恒久的な制度上の問題でございます。この処理につきましてはよほど根本的に検討しなければならぬ。さらにまた、普通の金利にある分は二銭でございます。私はそのほうがむしろ金利に関連するかと思いますが、それもあわせまして総合的に検討する、こういうことになろうかと思います。
  82. 横山利秋

    ○横山委員 論争点が平行線になるようであります。けれども、大臣は一ぺんよく考えますと言ったから、それじゃ次に移りましょう。  その次は、中小企業がいま非常に人に困っておるという。人に困っておるから、家族専従者、家族が一緒になっておやじとがんばるというのが一般的な状況であります。これは何も中小企業ばかりでなく、医者もそうですね。女房が看護婦の資格はないが看護婦がわりでみんなやらざるを得ないというような状況なんです。それをまず頭に入れていただいて質問をするのですが、先般本委員会で私は青色専従控除の問題を議論しました。青色専従控除は年間十八万円、月にして一万五千円です。私が例を申し上げましたのは、私が六十だとする。六十で、からだがちょっと弱っている。むすこを働きに行かせておった。むすこが働きに行って五万円取っておった。同居の家族ですよ。むすこに、おやじが弱っているからうちへ来て働いてくれというので、五万円もらっておったのをやめさしてうちへ引っぱる。うちへ引っぱって、おやじが個人企業の大将ですね。むすこは来たけれども、五万円もらえないわけです。年間十八万円、月にして一万五千円、生計を一にしている限りにおいては。それではひどいじゃないかということだった。それに対して通牒を出されて、おやじがむすこの分を取って、その差額についてやっても贈与にはしないという措置をとられました。ところが、それは論理的には非常におかしいのです。どんな県であっても、適正な給与ならば贈与としない。そんなことはおかしいけれども、一応私の主張をくんでくださった。ところが、いま青色申告会は、さらに一歩を進めて、このむすこと私が一緒にめしを食べておっても、ちゃんと生計を別にしてきちんとやっておればこれはいいんじゃないかという説を立て、国税庁のほうでも、きちんとなっておればそれでもいいということで、きちんとなっておるかなっておらぬかということがいま各地における論争の一つのテーマになっておる。しかし、さらに一歩を進めていまや問題になってきた。それは個人企業の完全給与制という問題に発展をしてきたわけです。隣のむすこをうちで使えば三万円の給料を出せる。ところがうちのむすこを専従で使えば一万五千円しか損金にならない。むすこはうちのことだと思って一生懸命働くけれども一万五千円、隣のむすこは隣へ手伝いに行って、まあまあ適当にやっておっても三万円、これでは困る。しかもそれは、人が足りなくなって、家族みんなでうちを守って働くという体制になってきた今日においては、個人企業の完全給与制に踏み切るべきだ。この間もお願いしたけれども、いいかげんなまやかしのあの通牒や、一生懸命同じかまのめしを食べておりながら生計は別だというそろばんをはじいてみるようなことよりも、実際問題として、うちのむすこがうちで働いているじゃないか、そして隣のむすこもうちで働いているじゃないか、隣のむすこに三万円、うちのむすこに、同じように、さらに親身になって働いているのに一万五千円しか損金を見られないということは何としてもおかしい。ですから、うちのむすこにも隣のむすこと同じように三万円を出してくれ。生計を一にしておるかどうかは問題でない。問題は、野方図ではもちろんいかぬということは私も知っている。それが完全に専従でしておるか、半専従でしておるか、あるいは社会一般の給与と同じ適当な給与であるか、それは問題はあります。けれども、問題があるからといって、個人企業のこの家族従業員の完全給与制がいかぬという理屈は、もはや私はないと思う。青色申告の歴史というものは、いろいろな経緯を経て今日に来ましたけれども、あなたのほうでも、これはちょっとおかしい、何とかしてやらなければいかぬというので、せいぜい十八万円を二十万円にしたり二十一万円にするのが精一ばいで、私のお願いによって通牒を出して、そこでまた新しい問題が発生する。やればやるほど矛盾が大きくなるばかりであります。この際中小企業政策のためとしても個人企業の完全給与制に踏み切るべきだ。そうしてうちのむすこに三万円出しかやつは源泉を引く、源泉で税金を取る、こういうあたりまえの——隣のむすこであろうが、うちのむすこであろうが、同じように給料を出してやっていくというやり方に踏み切るべきときだ、こう考えるのでありますが、大臣の御意見をお願いします。専門家があまり言いますと、塩崎さん、ややこしくなるばかりですよ。
  83. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 あなたの言われることはわかりますよ。わかりますが、完全に制度を撤廃してしまうというのはどんなものでしょうか。私はそれじゃ適正な税はやっていけないと思います。やはりそういう制度は残して、そしていま十八万円ですか、それを適正な規模に近づけていくという考え方で一番合理的にやっていけるんじゃないか、こういうふうに思います。
  84. 横山利秋

    ○横山委員 大臣、あなたはどうも税を御存じたいから、もう一ぺん例を引きますが、たとえば私が社長である。社長の給料を私がきめるのです。私が十五万円もらうか二十万円もらうか、私がきめる。税務署はそれに対して、おまえさんもらい過ぎたといって十五万円に減らす場合があるわけですよ。現にそういうことをやっているのです。社長の報酬というものが適正かどうかは、その同業の水準、それからその会社の状況その他からいって適正と思われたならば、十五万円でもよろしい、二十万円でもよろしいというやり方をしているわけです。家族だけはそれはいかぬという理屈は私は成り立たぬと思う。もし三万円が普通だと思うのに六万円出しておったら、三万円に削ってもいいのですよ。私はあえていいと言う。ただ、二十歳の者も四十五歳の長男でも十八万円というばかげたやり方があるか、端的に言いますとね。おやじは七十歳で社長だ、そして四十五歳の専務が全部切り盛りしてやっているところがある。わかるでしょう、常識で。それでも十八万円ですよ。そんなばかげたことがありますかと言っているのですよ。あなたは例がないというような気持ちらしいが、いま話したように、社長自身が自分の給与をきめて、多過ぎた場合には税務署はいかぬといって削るしかけがあるのですから、同じように従業員諸君もやったらどうですか、家族もやったらどうですかというのです。
  85. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ですから、それを紛争とかそういうものがないようにするためには、一率の基準を置いて、そうしてその基準を引き上げていくというほうがいいじゃないか。これを、実際は同居家族でありまするから相当の作為もできます。その作為に従って幾らというような架空なきめ方というものがずいぶん多く行なわれるだろうと思うのです。そういうようなところに一率の基準がないという場合には、これは相当の紛議が起こるんじゃないか。それよりは十八万円というものを引き上げていく、このほうが税の執行上から見ると、はるかに合理的であり、かつ便宜である、こういうふうに考えます。
  86. 横山利秋

    ○横山委員 大臣は、個人企業の完全給与制ということについてお聞きになっておるかどうかわかりませんから、おそらく十分実態を御存じなくて、何とかここで横山に一本言質を与えるようなことは、大事なことだから避けたい、こういう消極的なお気持ちでお考えのようですけれども、かりにあなたの言うような言い方をとってみても、やはり十八万円とは一体何だ。架空ですよ。これはいろいろなことを適当にきめただけですよ。もっと実態に合うようにやったほうが合理的なんです。一人の人が、長男、次男が一生懸命働いて年間十八万円しか給与が認められないほど架空なことはないですよ。そうでしょう。しかし、あなたも現状は適当でないというような御意見ですから、この辺で専門家に発言を許します。
  87. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 発言を許されましたので、ぜひひとつ聞いていただきたいと思います。  ただいまおっしゃいましたように、家族労働報酬は税法上どういうように扱うのか、横山委員御存じのとおり非常にむずかしい問題でございます。私は、法人企業、しかもまた小さい法人企業、さらにまた青色個人企業、さらに白色個人企業、特に農業が多い白色申告者、これを全部連ねまして家族労働報酬をどういうふうに見るか、非常な問題だと思うのでございます。現在、おっしゃるとおり、青色申告者につきましては、企業と家計とが分離に近づいておるという理由で、家族労働報酬は給与の形をとるならば控除しよう、しかしながらその最高限度は十八万円、二十歳未満なら十五万円である、こういう限度を置いておりますのは、ただいま大臣が指摘されましたように、一つは横山先生のおっしゃるように、給与を認定することの繁雑さ、それに伴うところの納税者と税務署との間のトラブルを避ける趣旨だと思います。個人企業者の数は課税人員で百十八万ばかりありますが、おそらく専従者の数は三倍、全部の数はいないと思いますが、それに匹敵するくらいの数がおる。これを税務職員が一々調査いたしまして、同業種、年齢等も同じような方々の労働報酬、他人が使っている場合の賃金を調べまして適正なる評価をすることは、これは困難であろうと思うのであります。評価いたしましても、種種のトラブルが起きる、国民経済全体といたしましてもむだが多い、これが一つの観点でございます。  第二は、やはり何といっても賃金が純粋に他人のところで働いている場合の賃金と違う、労働条件も親子間の自然的な関係で結ばれました面が相当あるのではないか、こんなふうなところから、普通の他人企業に使われているところの労働者と違った給与、こういったところが出てくる一つの基準だろうと思います。現在では確かに十八万円というのは絶対的な基準とも思っておりません。現在では従業員の数を前提といたしまして、その平均的な給与推定をいたしまして一つの根拠をつくっております。これを幾らにしますかは、今後の賃金の伸びその他から考えてみなければならぬと思います。  もう一つ理由は、白色企業に使っておられますところの家族労働報酬をどう扱うか、これもまた帳簿が完全にないだけにむずかしい問題だと思うのでございます。事、農業をとっていただきましても、奥さんあるいは子供さんは何らかの形で農業に従事している、しかし、それがどの程度従事したか、あるいはまたどの程度の労働量を投下したか、それを評価することは不可能でございます。さらに農業には農業だけの別な賃金水準がございます。さらにまた、白色申告者は現在営業者の四割ございますが、その白色申告者も何がしかの帳簿をつけておりますが、この専従者の労働報酬というものは簡単に評価できないし、もう一つの悩みは、青色申告といい、白色申告といい、紙一重の問題とも考えられる、帳簿を青色にするならば、専従者控除が大幅に認められる、しかし帳簿をつけない場合は単に扶養控除で終わる、現在は、横山委員は取り上げられませんでしたが、白色の専従者控除は十二万円でございます。これも日本の青色申告企業の下に占める零細企業でございますが、農業はまた別個の事業形態でございますから、しかもその家族労働報酬の評価の困難性を考えますと、この点も課税の公平を考えますと、考えなければならぬ。法人企業、青色申告企業、白色企業全部の家族労働報酬をどういうふうに扱っていくか、現在の税法は、日本の企業形態の、まだまだ所得水準が低いことを反映いたしまして非常にむずかしい問題に当面していると思います。したがって、改正の方向は、先ほど大臣がおっしゃいました方向でだんだんと賃金形態の上昇に応じて改正していく、さらにまた青色申告の記帳要件についても、もう少し緩和していって、そこの人が青色申告に飛び込めるような、そして家計と企業が分離していくような、こうした方向で家族労働報酬が税法上取り扱える、こういうような形にすべきだ、かように考えております。
  88. 横山利秋

    ○横山委員 内容的に入りますと、あなたのおっしゃるような問題がずいぶんあることは百も千も承知して私はものを言っている。だからといって、むずかしいからといって、十二万円、十八万円のままに放置されることはもはや許されない問題なんです。絶対許されない問題なんです。十二万円、十八万円というものが不合理きわまるものであるということを、もう大臣、あなたもお認めだと思います。どうしたらいいかという理想的な案というものは私はないと思う。しかしながら、次善策は——税務署と納税者の間に多少はトラブルが起こる。これは、今日税制の全行政すべてにおいて共通することでありますからやむを得ない。やむを得ないけれども、一歩でもその次善策であろうと合理的な方向へ——私はあえて言いますが、いまは不合理だから合理的な方向へやらなければ、これはもはやいまは天の声、地の声、人の声になりつつある。この点を十分に念頭に入れて、ひとつすみやかな実現を要望いたしたいのであります。  国税庁長官にお伺いをするのですが、景気がいいとき、税収が上っていくときには標準率表、効率表というものはあまり問題にならないわけです。けれども、税収が減っていくときには効率表、標準率表というものは税務署のとらの巻であって、それを見ながら、ああこの床屋は、と、こういうわけです。この標準率表、効率表というものが非常な広範な調査をして一つの基準を置いたものだけに、簡単にそれが直らないわけです。したがって、不況になっていけばいくほど標準率表、効率表の存在が問題になってくる。納税者が、そんなにもうかりませんよと言うと、あんたのところの床屋さんはチェアが十あるじゃないか、従業員がこれだけいるじゃないか、これなら大体このくらいになる、どうしてそんなことをおっしゃるか、いや、それはあたりまえのことだ、こういうとらの巻が何としても問題になる。先ほどあなたに聞かなかったのですが、大臣に申し上げた点をよく御記憶になっておると思うのですけれども、不況下における徴税ということについてどうお考えでありますか。  それから、あわせてもう一問あなたにお伺いしたいのですが、本委員会で先般あなたが主税局長のときに取り上げたが、不渡り手形が発生したときに、その機に私は一〇〇%落とさせろと言った。いまは税務署で債権償却引き当て金勘定に充てて五〇%だけは自動的に引き落とせる、それ以上は局長の決裁を経なければならぬことになっている。何で局長が決裁しなければならぬのか。あとから手形で落ちて銭が入ってくる、よくいって大体二割、三割くらいしか入ってこないけれども、入ってきた場合に引き当て勘定から落とせばいいのだから、何も局長がふうふう言ってその不渡りになった得意先をさがす必要はないじゃないか、この際、本人の自由選択にまかせろ、八〇%であろうが一〇〇%であろうが、自由選択にまかせろ、納税者にとってみれば、五〇は落ちた、あと五〇については、銭が入ってこないのにもうかったことにして税金を納めなければならぬ。いまはそうでしょう。そういう矛盾はこの際納税者の選択にまかせろ、こういうふうに言ったのですが、これは運用でできないですか。
  89. 泉美之松

    ○泉政府委員 お話の第一点でございますが、不況下において、納税につきまして、私どもといたしましては、先ほど横山委員からお話がございましたように、税収が不足だから特に徴税をきつくしなければならぬというような考えは毛頭持っておりません。普通のように仕事をやってもらう、特に最近のような不況状態でありますから、納税者にはできるだけ親切に納税の困難な事情についてよくお聞きして、納税しやすいように仕事をやっていけというふうに命じておるのでございます。したがって、先ほど大臣からもお話がございましたが、特にトラブルの起きないように細心の注意を払っておるような次第でございます。  それから、お話の標準率表あるいは効率表につきましては、売り上げに対する利益率が、こういう不況のときになりますと落ちてまいります。したがって、一律に従来の効率表あるいは標準率表を厳格に適用するということになればいろいろ問題が出てまいります。したがいまして、そういった点につきましては十分考慮して、現在の不況の影響も業種業態によりましていろいろ違いますので、そういった点を十分考慮してやっていくように心がけております。  それから不渡り手形の点につきましては、お話のように先般横山委員から御発言がありまして、国税庁のほうといたしましても、田中大臣が御発言がございましたので十分検討いたしたのでございます。現在の制度は、横山委員すでに御承知のとおり、不渡り手形を受け取った場合に、その事業年度の申告期限までにその不渡り手形を発行した相手方が手形交換所から取引停止を受けるという場合におきましては、債権額の五〇%を債権償却特別勘定に入れることができる、そしてまた、特別の事情がある場合にはその五〇%をこえることができる、ただ、五〇%をこえる場合については国税局長の承認を得るということになっておるのでございますが、その点につきましていろいろ実例を集めまして検討いたしたのでございますが、その結果によりますと、不渡り手形が出ましても、その債権が貸し倒れになってしまって入ってこないというのは、相手方によっても多少違いはございますけれども、平均いたしますと二割ないし三割五分程度でございますので、五割の債権償却特別勘定を設けておきますと大体それでまかなえるのではないかという……。(「足らぬじゃないか、五割では足らない」、「逆じゃないのか」と呼ぶ者あり)取り立てることができないのが二割ないし三割五分であります。そういう現在の二分の一の債権償却特別勘定の規定を直す必要はない、こういう結論に達したのであります。
  90. 横山利秋

    ○横山委員 どういう資料でしょうかね。私はちょっとふしぎに思う。不渡りになったやつの七割から八割までが回収されるという資料ですか。その資料があったら、一ぺん本委員会に適当な機会に出してもらいたいと思う。資料論争をやろうと思わないけれども、そんなばかばかしいことがあるでしょうか。いずれにしても、あなたのおっしゃるのを百歩譲ってそうだとしても——中には論理上七、八〇%も回収できないのがあるのですね。だから、それは脱税をするわけじゃなくて、債権償却引き当て金の中に入れていくわけだから、回収されたらそれを見合いにして落とせばいいのだから、そのことが税の適正な、合理的なものになるのだから、納税者、不渡りを受けた人の判断にまかせてもいいではないか、私はこう言うのです。もしもそうでないならば、もうかっておりません、銭も入っておらぬのに益があるとみなして、あくる年税金を納めなければならぬ。もちろんそれが切りがつけば操作できるのですけれども、結局はもうかっておらぬものを出したということですよ。私はある局の法人税課長にこの話をしてみたら、驚いたことに、課長はこの制度があることを知らない。それからある税務署で、あなたのいま言った手形交換所の表をもらってこい、手形交換所は農村にはないんだよと言ったら、そんなことないでしょうと言う。これにもまた驚きましたよ。だから、一、二の例だけれども、不況下における徴税という心がまえについてどうもまだまだ徹底してないのではないかという感を強くいたします。いま税が少ないから何とかして少しでも集めてこなければいかぬという気持ちが先行して、不況下における徴税は、あなたのおっしゃるように効率表、標準率表はあるけれども、これは弾力性を持たなければいかぬぞとか、あるいは不渡りを受けた者に対しては、こういう制度があるよといって率直に教えるとか、手形交換所のないところはこういうふうにしなさいとか、こういう気持ちが毛頭ない。中にはある人もなくはないけれども、一般論としてですね。だからこれは長官によく申し上げて、不況下における税務行政のあり方については、私は、まけてやれとか、適当にしてやれというつもりで言っておるわけじゃないのですよ。しかしながら、どうも、ムードとしては、取れるだけいま取らなければ税収が足りないからという気持ちのほうがやはり先行しておる。この心がまえを、前線、第一線に至るまでひとつあなたの行政指導で直してもらいたい。
  91. 泉美之松

    ○泉政府委員 御趣旨の点はよくわかりますが、私、第一線の状況が、それほど税収不足ということにこだわっておることはないというふうに聞いておったものでございますから申し上げたのでございますが、そういった点につきましては、御飯旨を体しまして十分指導するように努力いたしたいと存じます。
  92. 横山利秋

    ○横山委員 次は、金融の問題であります。金融の問題については同僚委員からもいろいろ話が出ましたから、一つぐらいだけにとどめたいと思うのですが、結局、中小企業金融公庫、それから国民金融公庫、商工中金等、政府機関にどんなに令を出しても、どんなに増額しても、また信用保証制度をどんなに充実しても、それは全金融機関から中小企業に対する貸し出しの比率は一割せいぜいです。これは大臣御存じのとおりだと思うのです。歴年、不況になりましたときに私どもが体験いたしますのは、中小企業金融機関、それは確かに貸し出しがふえる。けれども、市中金融機関、市中銀行、都市銀行は激減する。合計いたしますと、不況下における大企業の貸し出しがふえて、中小企業の貸し出しが減る。統計の示すところであります。この点について、大臣はどうお考えになっていらっしゃいますか。
  93. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 設備投資が減りますから、大企業といわず中小企業といわず、総体的に減ってきております。現に、ことしの実績なんか見てみますと、貸し出しは昨年よりも減る、こういうような傾向を示しておるわけなんですが、その中の中小企業と大企業との比率は、多少中小企業のほうのあれが下がるような傾向がありますが、大体大きくいって横ばいのような調子かと見ておるのです。それで、中小企業、中小企業といって、金融問題が論議されますが、結局、私は、こういう際における中小企業問題というのは担保問題なんじゃないか、金を貸す、それについて、こういう時期になると、特別に不安を金融機関のほうで持つ、こういう傾向があるんじゃないかと、そんな感じがするのです。そういうような見地から、この間保険制度の改正をするとかいうようなこともやってみたのです。そういうことで、貸すべき資金はあるんだが、その対象として適格であるかどうかという金融機関の判断がなかなかむずかしいというのが実情じゃないか、そういうふうに判断しております。
  94. 横山利秋

    ○横山委員 適格であるかないかを言っておったんでは、中小企業にはなおさら私は流れないと思う。無担保、無保証制度を今度拡充をされたのも、適格であるかどうか、償還能力があるかないかという、純経済ベースだけではいかぬというお話から始まったんだと思うのです。その意味からいうならば、全体の資金量の中で、常に中小企業に一定の割合を確保しておくという仕組みにしなければ、中小企業金融機関に財政投融資をふやしたんだといっても、どんなにふえても、全貸し出し量の中の一割かそこらですから、全体を動かしていない。しかもそれがムードとなって、そういうことを口実にして、市中銀行は専門機関へ行ってちょうだいということになってしまっておるわけです。ですから、私どもが日ごろからよく言っておるのでありますけれども、銀行法を改正する、そうして一定の比率が中小企業のところへも、都市銀行、市中銀行にも流れるように、そういうようなやり方をしなければだめだ。この前私が銀行法の改正をと言ったら、行政指導でそれはいたしましょう、法律改正といってもなかなか困難だからとおっしゃった。私は、法律の中にパーセントをつくれと言っておるわけです。パーセントはある程度伸縮があっていいから、一々法律改正はしないでも、ある程度譲ってもいいと思う。しかし、その仕組みを、法律の中に原則を置いていただかなければいかぬのではないか。そして、政府の行政指導で五五が六〇になる、あるいは場合によって、中小企業専門機関が非常に大きくなった場合においては比率を下げることもあり得るだろう、そういうような方式をとらなければ、どんなに明年度予算——また中小企業団体からあなたのところへずいぶん行っておると思うのですが、まさに木を見て森を見ない意見だと私は思うのです。全体の森の中の分野をきめなければだめだと思うが、いかがでしょうか。
  95. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 幾らワクをきめましても、そのワクがそういう見地からだけではこなせないと私は思います。やはりあなたのいまの考え方をほんとうに実行するというためには、中小企業問題のもう少し根っこのほうの問題を解決しなければいかぬ。つまり、中小企業の今日の状態は何だ。先ほどあなたからもお話がありましたが、数年前までは金融問題だったのです。次いで労務問題になってきた。最近の問題は仕事の問題になってきた。仕事の量が足らぬ。こういうような問題になってきた。そういうようなことで、仕事を与えて、中小企業は、これはもう貸し出しの対象としては安心できる対象である、こういう状態がなければ、幾らワクをきめても、これは動きっこない、私はこういうふうに思います。  それから、ワクをきめるという問題は、また別にやはり金融の政策の硬直化ですね。こういう面からも私は支障があると思う。まあ、弾力的に行政指導でやっていくという辺が最も適切なところではあるまいか。もちろんそこへ力を入れなければならぬ。これは普通そういうふうには考えますけれども、その辺で金融面としてはいくべきじゃないかと思います。問題は、要は、中小企業がほんとうに活力を持ち得るような状態にしてやる、その基本問題にあると思うのです。
  96. 横山利秋

    ○横山委員 それはおっしゃるまでもなく、中小企業問題は、一服盛ればなおるようなペニシリンはないということを私も知っております。知っておればこそ、いろいろな角度からこれもやらなければなるまい。これも、といって、そういう意味でお願いをしているのですから、あなたのおっしゃるようなことはわかるけれども、しかしながら、金融の道をつけるという重要な根幹から言えばそうしなければなりませんぞ。もしも百歩譲って、あなたが行政指導でやるというならば、お伺いしますけれども、都市銀行、市中銀行等で、中小企業金融の水準が、財政投融資がふえても下がらざるようあなたは行政指導いたしてくれますか。
  97. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 ただいま大臣からお答え申しましたように、やはりあまり硬直した形になるということではいかぬと思いますが、私どもといたしましても、実は、市中金融機関に対しては、中小企業向けの融資の確保について常時指導いたしております。ただ、おっしゃるように、一定率でもって必ずきちっといくというのは、やはり現実の問題としてなかなかむずかしいと思います。おおよその幅を持って、それを割らないように、むしろできればそれをふやしていくよう、実行上今後とも極力やってまいりたいと思います。
  98. 横山利秋

    ○横山委員 私の質問に答えているのですか。財政投融資が中小企業金融機関にふえても、都市銀行、市中銀行は中小企業向けの比率が落ちないように指導する、こういうふうにおっしゃったわけですか。
  99. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 その点は、先ほどから横山先生もおっしゃいますように、全貸し出し量に占める中小企業金融の割合というものは大体四三%ぐらいで、実はずっと横ばいになっているわけです。その中で、いまの政府関係の部分というものは大体八%ないし九%ぐらいのところで、これまた大体安定しております。(「五%だよ」と呼ぶ者あり)いやいや、中小企業金融として全金融機関の中小企業向け貸し出し、これは政府関係機関も含みますが、それの中で占める政府機関の割合というものは大体八%から九%くらいなんです。しかもこれは、近年ずっと見てまいりまして、大体その位置というものは安定いたしております。つまり全体として経済が膨張する、資金需要がふえる、それに応じてやはり貸し出し量もふえております。その意味でウエートというものは安定をいたしております。したがって、これはつまり政府関係機関がふえたから市中が減るというものではないと思います。これは全体としての資金需要がどう動くかという問題かと思います。
  100. 横山利秋

    ○横山委員 あなたと論争したくないのですけれども、これは統計的数字——私の言うのは、全金融機関の貸し出し量、中小企業向け貸し出し量と大企業との比率を考えますときに、不況のときには、比率が大企業はふえ、中小企業は減る、こういうことを言っておるのです。最近におきましても、大臣ちょっとおっしゃったように、中小企業向けの比率が減っているというのです。あなたは横ばいと言うけれども、答弁のための答弁だったら、あなたの御答弁は要らないのです。私は、中小企業向けの金融というものをもっと厚くしたい、またしなければならぬときだ、なぜならば、先ほどから言ったように、不況下における一番問題のところじゃないか、それが、これから経済的に非常に大きく混乱をしていくときに配慮しなければならぬ問題だ。あなたは横ばいだから安定しているというが、私はそうは思わない。しかし、これは論争でありますからこのくらいにして、私の言いたい点、つまり銀行法を改正するか、行政指導でパーセントをつくるか、それでもいかなければ、財政投融資がふえても、都市銀行、市中銀行等、銀行関係においては中小企業の貸し出しの比率を落とさないように——私がせめて落とさないようにというこの点について、大臣の御答弁を得て、最後の質問に移ります。
  101. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 こういう際には中小企業金融には特例に気をつけなければならぬと思います。私は長期化した不況下では、抵抗力のない中小企業というものはほんとうに真剣に考えなければならない、そういう考えであります。いまいろいろお話がありましたが、最後の金融問題も含めて、最善の努力をいたしたいと思います。
  102. 横山利秋

    ○横山委員 じゃ最後に、中小企業問題ではありませんが、一つだけお伺いをしたいのですが、この公債がここ一、二、三年どんどん出ていく、そうして金融機関へ回っていって、一部は完全な意味の市中消化がされても、一部は日銀の担保貸し付けということになる、日銀券が増発をされるということについては、私どもは、財政インフレになる、結局公債を出す財政政策というものは、国家独占資本主義といいますか、この方向へ、いいも悪いも一歩ずつ行く、つまり、その意味におきましては、金融というものは、いままで日銀において貨幣価値の維持をはかっておったのが、金融をも含めて、政府の政策が非常にウエートを占める、こういう事態になっていくと思うのです。そうだとすれば、日銀の使命であります通貨価値の維持というものは一体どういうふうになっていくのか。あなたは先ほどから、いや、先ほどからでなく、一貫して、公債を出しても財政インフレにはならない、それは行政運営の態度でも、それから組織的にもそういうふうにする決心である、こうおっしゃった。私はそれが完全に行なわれることを望むわけであります。公債発行には反対ではあるけれども、かりに公債発行をするならば、その二つが厳重に行なわれなければならぬと思う。行なうについては、あなたもいつまでも大蔵大臣をやっていらっしゃるのではないのですから、あなたは過ぐる野にあるときには、いまの政府経済政策に反対であったのだから、その意味においては、あなたがおかわりになった場合にまた別な経済政策が出てこないとも限らない。あなたが、おれはこの歯どめを、行政運営の態度においても、仕組みにおいてもつくるというならば、仕組みをつくってもらわなければだめだ。行政運営の態度というものはいつも変わる。しかし仕組みはそう簡単には変わらない。その仕組み論、つまり歯どめ論についてはいろいろある。しかし、時間がありませんから、あなたはそれをお聞きになっておりますから言いませんが、私の最後の歯どめの問題というものは、やはり日銀法の改正だと思う。日銀法の改正ということはどういう意味があるか。それは、いかなる大蔵大臣に対しましても、また大臣がいかなることを言ってもチェックする機能であるということだと思うのです。今日の日銀法は、昭和十七年総動員体制がしかれたときの日銀法でありまして、法律上は大蔵大臣の言うままであります。しかし、現実運用は必ずしも大蔵大臣の言うままでないということです。最近におきましては、その主張も影が多少薄れてまいりましたけれども、いずれにしても、今日あるべき日銀というのは——政府経済政策を行なう、そうして新しく伸び出した金融政策の中においても、貨幣価値の維持という日銀の中立性、その中立性の仕組みの中で大蔵大臣に対してチェックをするという機能がつくられなければ、どんなに法律改正をしても大蔵大臣の言うままになり、そのときの大蔵大臣がやろうと思えば、またその仕組みが変えられる。しかし、日銀法というものはそんなに変えられるものではありません。この際私は、あなたがほんとうにこの公債発行がおかしなことにならないという保証をつくるというならば、あなたの機能を少し侵すことになるけれども、日本銀行というものに中立性を保持させる、貨幣価値の維持、中立性という意味において、きちんと政府に対してチェックをする機能を与えてやることが、むしろあなたの政策、あなたのお考えにマッチしたことではないか、こう思います。それで、すでに御存じのように、一昨年でありましたか、山際日銀総裁は、日本銀行法はなるべく早く全面的に再検討し、開放体制を迎えた新時代にふさわしいものに改正することが望ましいと答え、田中大蔵大臣も、山際総裁の意向がはっきりし、国会でも取り上げられた以上、政府としてもできるだけ早い機会に改正したい。これはおととしの三月であります。その後IMFが国際的にわが国に乗り出してきて、ますますその必要性が痛感される。ところが、今年の春になって自由民主党で一応の案がきまった。そうして大蔵省内部で一応案がきまった。しかし、参議院選挙を前にしてどうせ継続審議になるのだから、これはしばらく待っておこうということになった。そこへあなたが登場されて、公債発行をされる。ますますその日銀法の改正の必要性は、あなたの理論からいっても痛感をされると思うのです。日銀法を改正されるその焦点は、言うまでもないことでありますけれども、現行法の大蔵大臣政府の完全な包括的な指示、命令権に対してチェックをするということであります。自分のやったことについて、大蔵大臣から注意があれば、再審議その他はいたしますけれども、いずれにしても、日銀の権威というものを少し高めるということであります。この点について、本委員会、また他の委員会でも触れた人があるようでありますけれども、この際、あらためて、あなたの本年の公債政策の全きを期するとするならば、日銀法の改正についてあなたの所信を明確にしてもらいたい。
  103. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 日銀法は、お話のように、もう改正すべき段階に来ておるのです。また、公債政策を採用するというような局面に立ってもまた考えてみる必要がある。これはどうしても改正しなければならぬと思いますが、私はいま史上未曽有の大不況、この問題と取り組んでおる。いま精一ばいなんです。そういうようなことで、一応この不況段階がめどがついた上において日銀法の改正という問題に取り組んでまいりたい、そういう考えであります。ですから、いずれは御提案申し上げたいと思っておりますが、まだこの通常国会に提案をするという考えはございません。
  104. 横山利秋

    ○横山委員 いろいろ質問がありますが、もう時間が参りましたので、最後に、先般本委員会大蔵大臣に私の意見を強く申し上げたのでありますが、そのことをあらためて大臣に申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。  本来あなたは池田政策を批判された方である。それにもかかわりませず、大臣に就任をされて、一番悪い条件のもとに、一番あなたとしては不適当なといいますか、安定成長論者であるあなたが、何でもいいから不況を克服するためにあらゆることをやれというような立場におなりになった。私が言うのは失礼でありますが、本来から言うならば、あの高度成長経済下にあって、国の予算あるいは財政投融資、それを少し余らして、たな上げしておいて、こういう不況下に公債発行をせずに、たな上げしておいたお金を使うというのが、あなたのいわゆる安定成長の理論ではなかったかと思うのであります。しかし、不幸にしてあなたの主張されたことは実現をされずに、いま国内でごうごうたる問題と論争の中心となっておる公債に取りかからなければならぬということは、まことに妙な回り合わせだと私は思います。  ただ、私が申し上げたいのは、この不況を克服することが、いまの政治の、政策の唯一無二の最優先の問題である。それが済んだら、あなたは第二の命題、安定成長の問題にかかりたいというお話を何度も私は承りました。私どもは、安定成長という意味にもいろいろ議論はあるけれども、少くともつり合いのとれた経済成長ができ上がるならば、それはそれでよろしい。ことばに反対をする何ものもない。しかしながら、いまあらゆることを不況のためにやるという政策は、安定成長との間にかけ橋がない。それはなぜか。それは物価が上がっていくからである。物価が上がったものを追いつかせる方法がないではないか。物価が上がって、国民生活に非常に苦痛を与えて何の安定成長ぞや。あるいはまた、中小企業の政策が、るる申しましたように、足りないではないか。こういうようなことは忍べ、いましばらく忍んだらそのうちによくなるという説は、百年河清を待つようなものだ。いま経済構造が問題であるとするならば、いまの不況対策の中で、第二の安定成長へ通ずるかけ橋、布石を一つ一つ置いておかなければだめではないか。私が先般強く申し上げたのはその意味であります。その点について、これは私の意見でございますから、大臣の御答弁をいただこうとは思いませんが、私どもがいま公債政策なり、いまの不況対策に反発を感じますゆえんのものは、結局、これが回り回って大企業は減税をされ、そして仕事を与えられ、政府支出を受け、中小企業はそのおこぼれをもらい、そしてまた全国の働く家庭は物価騰貴だけに悩まされる、こういう心配をし、その心配がないように、いまの政策の中で終局へ行きつくかけ橋、布石というものを置いてもらわなければ、私どもの反対はとうてい変わるところがない、こう考えておるのであります。  時間がありませんので、御答弁をいただくことを省略いたしまして、私の質問を終わります。
  105. 吉田重延

  106. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 冒頭に大蔵省官房調査課長吉田太郎一氏編集の「公債のはなし」に著しく気にかかる点があるので、お尋ねをいたします。  この本は問答形式をとっていますが、その一一〇ページに次のようなくだりがあります。すなわち「公債発行による社会資本建設は世代間の負担公平が目的か」という設問を設定いたしまして、問うていわく「道路建設のようにその効果が将来に残るものについては、その費用を現在の世代だけで負担するのは世代間の負担公平の観点から望ましくないので、費用の一部を将来の世代にも分担させる方法として公債を活用すべきだ、という考え方が一部にあるようですが、今後のわが国における公債政策をこのような観点に立って考えるべきでしょうか。」それに対し「社会資本の充実というテーマは、それが完成した後における利用上の効用ばかりでなく、建設過程において生ずる有効需要効果の面についても、国民経済的な視野に立って重視することが必要です。将来の世代に費用の一部を分担させようなどというケチな考えでなく、公債政策国民経済的な効果の観点から、今後の公債発行について考えるべきでしょう。」と答え、その理由として「われわれ現在の世代が、過去の世代から受け継ぎ、そして将来の世代に引き継いでいくものは何も社会資本だけではありません。文明という名で呼ばれる科学技術や社会制度、生活様式など有形無形の人類の財産のすべてなのです。後の世代に効用を残すのは道路のような有形資産にかぎらず、技術研究や教育をはじめ社会制度や法律、慣習まで広い範囲の無形資産に及んでいます。こうした有形、無形の資産全部について、将来の世代に引き継ぐ効用を評価することはとうてい不可能な話です。そうだとすれば、道路のような社会資本だけにかぎって、局地的に世代間の負担公平などという合理性を持ち込むことは、問題の正しい解決にはなりません。極端な議論をすれば、戦争に勝つことこそ後の世代の国民の幸福につながるのだという理由で、戦費を公債によって調達することが正当化されることすら考えられうるわけです。」   〔委員長退席、金子(一)委員長代理着席〕  これは問題ですね。この本は、もともと政府のために公債PRを行なう本でありますが、植木等のごますり歌謡ならばあいきょうがございます。しかし、公務員の権限論、分限論から要注意ものだと思うのですよ。公務員は、これは申すまでもなく、憲法と法律の範囲内で服務する義務があるのではないでしょうか。戦争肯定論は現憲法下に許さざるところと思うのですが、どうでしょう。大臣、その次に直接責任の官房長からお答えをいただきたい。
  107. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 ただいまお引きになりました「公債のはなし」にはそういうことは書いてございますけれども、それは要するに、社会資本の建設に公債発行のいろいろな理由というものが、学説であるわけでございます。その中で、たとえばいまここに問い、答えの形で書いてございます世代間の負担の公平論ということで、公債の資本を借り入れによってまかなうべしという議論もありますけれども、これは在来の審議会その他で議論されたところでもわれわれは伺っておるのでありますが、七年ぐらいの公債でそうした世代間の負担の公平ということはあり得ない。これは学説としては、一つの理屈としては考えられるのですけれども、必ずしもそういうふうな学説は妥当とは思えないということで、その妥当でない説の極論的な、極限的な形をここで否定する意味において書いてあるわけでございます。私はこれについては決して文官分限を越えておるものとは思わないのでございます。
  108. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 突っ走りの議論は下村治氏だけだと思っておりましたが、大蔵省にもこのような突っ走りの思想の土壌があるのかということで私は非常に残念に思います。この間の私の本会議の質問に関し、軍事公債論それ自身は平岡君の論理の飛躍だという意見がずいぶんあるのです。ありますけれども、大蔵省の中にこういう土壌があるとするならば、私は皆さんに戒心していただくためにも、あのことを申し上げなければならぬ義務があったと思っております。そういうことに関連しまして、大蔵大臣からひとつ御所見を承りたいと思います。
  109. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 今度発行する公債は、戦争と何のつながりも持ちません。いまお話を承っておりますと、吉田調査課長の書かれた本の中で戦争のことが引用されておるようですが、これは設例としてあげたので、あげたものが問題になるもので、私は必ずしも適切であるとは思いませんけれども、設例としてあげたので、戦争肯定論に何のつながりも持っておるものとは考えません。
  110. 有馬輝武

    ○有馬委員 いま官房長、大臣の御答弁でありますけれども、「公債発行による社会資本建設は世代間の負担公平が目的か」ということで、肯定する立場においてここがずっと書かれておるのです。平岡委員が指摘いたしますように、私どもも飛躍した論議はしたくない。がしかし、こういったものの考え方が根底にあるとするならば非常に重大だから、本会議においても平岡委員が指摘したところなんです。それが具体的にこのような形であらわれてきておる。大蔵大臣はとにかく、高橋さんのときにも——きょうの佐藤委員の質問に対しましても、高橋さんは軍事公債という点について最後まで抵抗した。自分も事務官としてその姿を見ておったが、ということで話しておられる。また、あるときも私に対して、とにかく軍事公債に連ならない限りインフレにはならないのだ、この点ははっきりしたいということで言い続けてこられたはずです。がしかし、実際に大蔵省の中で公債に対する基本的な考え方を示すこの著書の中に戦争肯定の思想がはらんでおる。これは重大問題です。官房長はただ単なる言いわけじゃなくて、この問題に対する大蔵省としての責任ある答弁を願いたいと思います。
  111. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 これを肯定されるとおっしゃいますけれども、この一一〇ページを読んでいただきますと、将来に負担を分担させるという考え方は「まだ未熟な段階だと思われます。」ということで、この著書は決してその立場をとっておるわけじゃございません。それからそのあと一一一ページのところでも、公債について社会資本の建設という問題を対象とする場合に、その負担面ばかりに視野を限定するということは古典派や新古典派の議論になってしまいます。もっと国民経済的な視野に立って重視することが必要なんだ、たとえば、公債によって有効需要が起こるとか、そういう意味におきまして、この著者は決して負担を後代に分担するという意味から公債政策を理論づけるという説には加担をしていないわけです。したがって、後代に負担を分担させるというふうな説をもし肯定すると、その極端な場合にはこういうことになるからなおさらぐあいが悪いということで引いておるわけでございまして、私は、決してこれで戦争肯定になるとは思わないのであります。
  112. 有馬輝武

    ○有馬委員 問題は、そういう言いのがれの問題じゃないのです。こういうことをすら極言すればというような形で、公債発行を肯定する論議を展開するその姿勢についてわれわれは言っておるのです。そうでしょう。ずっと最初、冗長にわたったけれども、平岡委員が最初に読んだのは、いまのような官房長のような答弁があるからと思って質問をしておるわけです。この姿勢についてお伺いしておるわけです。
  113. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 私は戦争ということばを使っちゃいかぬということではないと思うのです。戦争というものは悲惨だという場合には、戦争ということばを使わざるを得ないのです。したがって、否定すべき議論の対象として、その極端な場合を設例することは、私は決して戦争肯定論にはつながらない、こう思っております。
  114. 有馬輝武

    ○有馬委員 この公債問題について、最終的な論議の過程で、この問題だけに重要な時間を費やすべきでないことはよくわかります。がしかし、これはとにかく一一〇ページの最初から最後まで読んだ場合に、いま官房長が答弁するような姿勢というものはわれわれには感じとられない。この問題については、厳重に警告すると同時に、この措置について機会をあらためてけりをつけたいと思いますから、このことを銘記しておいていただきたい。
  115. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 では、次に移ります。  去る十二月二十日本会議で、財政処理特別措置法案の趣旨説明に対しまして私が質問申し上げたわけですが、その中でお答えのなかった重要課題がありますので、きょうこの機会にお伺いしたいと存ずるのであります。  社会党は、公債政策はいまの経済情勢のもとでの発行は、インフレ傾向に拍車をかけ、物価の一そうの騰貴につながるばかりか、戦前のような軍事国債の性格を持つものになりかねないとの基本的立場に立っており、私自身も第三次防衛力整備計画の発展とからんで、その危惧なしとは考え得られませんでしたので、先般、はたしてこの公債政策が軍事公債政策に発展することがないのであるのかどうか、もしないとすれば、いつの時限でこの発行を停止し、終結せしめるつもりであるのか、国民の前にそのプログラムについて明確にせらるべきとの答弁を求めたわけであります。  さらにまた、政府は、四十年度における財源不足対策としての公債発行と、長期経済安定成長計画の一環としての公債発行とを区別しておられますが、その名目が赤字公債であろうと、建設公債であろうと、通常歳入の足らず前勘定が公債となるのですから、内容は同一であり、赤字公債の名を避けて建設公債とすることは、財政編成にあたって政府の裁量でいかようにもなるものであるという立場に立ちまして、政府が四十一年度以降は財政法第四条に立ち返って、赤字公債はこれを発行せず、建設公債のみを発行するといってみても、圧力団体の突き上げを食って、建設公債という名の赤字公債の乱発はこれを避け得ないのではないのか、また歯どめとされる市中消化はから念仏に終わるのではないかということを申し上げ、インフレによる生活の脅威におののいておる国民大衆の前にしからざるゆえんをしかと解明する責任政府にあるということ、さらに公債発行が雪だるまとはならないという保証政府国民に向かって明らかにする必要があるということお尋ねしたわけでありまして、佐藤総理並びに福田大蔵大臣からのそれぞれの見解をただしたのであります。国民は雪だるま式、無限発行を最も恐れているわけであります。この点についての御所見のない限り国民は納得できないのであります。現に日銀総裁が口をすべらしまして、十二月一日の午後、日銀の定例記者会見で、株が高いが、インフレ期待で買っている人がいるようだね。そこである新聞記者が、インフレ期待の株高は中央銀行への不信表明にはならないのかと突っ込んだ。一瞬宇佐美総裁は目玉がギョロリ、きびしい返事が戻ってきた。日銀はインフレにならぬよう断固たる政策をとっていく——総裁の表情はいつになくふきげんだった旨を十二月二十六日付日曜版で毎日新聞が書いておるのであります。それこそまさに語るに落ちたと言わざるを得ない。公債終結のプログラムを明確にしていただきたい。   〔金子(一)委員長代理退席、委員長着席〕 政府は、われわれ野党の質問に追い詰められまして、いわゆる市中消化の国債をある時間的経過の後に日銀に還流することのあるべきことを否定をしておりません。ただし、日銀は国債を担保として市中銀行等に金を貸すことはこれを控えて、債券の売買オペレーションを中心としようとする新金融調節方式を打ち出しておるわけでありますが、実情は、資金供給のためにはオペよりも貸し出しをふやさざるを得なくなっているはずであります。したがって、適正な通貨を供給しながら、増加していく国債を市中で円滑に消化することは、今朝の朝日の論説の指摘するまでもなく、決してなまやさしいことではありません。これには日銀の自主的判断、断固たる自主性が発揮されていなければならないのに、残念ながら日銀の政府に対する立場は決して強くはないのであります。政府の打ち出した担保貸付ではなしに、オペ操作という方式は、日銀総裁との打ち合わせ済みのものであるのかどうか、むしろ私は、日銀総裁自身の発議事項であると考えるのでありますが、その事情につきましてお答えを願いたい。  さらにもう一点お伺いしたいことは、公債市場の整備いまだき今日、国債は日銀と銀行との間の限定されたキャッチボールとなることが懸念されるのでありまして、国債市場の育成がどろなわ式ではありまするが急がれておりますが、それ以上に大切なのは、先ほど横山君も指摘をしたように、自主性を強める方向で日銀法を改正することが必要だと思うのであります。政府はこの方向で昨年の原案を修正した上で日銀法をすみやかに改正すべきだと思うが、その用意はあるのかどうか。先ほど横山君の質問に対しては、あなたは早急にはできないという趣旨を答えておりますが、これはまっ先に出していただかなければならぬと私は思います。御所見のほどをお伺いします。
  116. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 公債の発行をいつ停止するか、こういうのは第一義でありますが、私は公債発行の額を調節するという考え方で、停止するという考え方をとっておりません。つまり、こういう考え方ですね。民間の経済が非常に低調であるというときには、公債はこれを多額に出していく考え方です。しかし、好況の際におきましてはこれを引っ込める、減額をする、あるいはそれがゼロになるかもしれない。しかし公債をいつの時点で停止しなくちゃならないのだという考え方はとっていないのです。一に経済情勢と見合って公債財政運営の調節弁としていく、こういう考え方であります。  それから、建設公債はその額が自由自在にきめられるのじゃないか、こういうお話でありますが、財政法規定するところによって、建設公債の対象になる国の費目は何であるかということを明らかにいたします。その明らかにするところに従いますれば、これはどうにでもなるというようなものではない。公債の発行額に対しましてこれが大きなワクになる、こういうふうに考えておるわけであります。  それから、担保貸しがふえる傾向になるんじゃないかと言いますが、私は先般もここで申し上げたのですが、原則としてオペレーションの方法で国債のやりとりはすべきものだというふうに考えておるのです。しかし、これは日本銀行が貸し出し政策をとっております。またオペレーションもやっておるわけです。そういう道を通じまして金融の調節をするわけでありますが、時によりそのときの情勢によって、担保貸し出しは全然ないのだというわけではないのであります。  それから、日銀法の改正を、自主性を高める上において改正すべきではないかというお話であります。この点は、公債政策もやる、これから金融財政一体として景気の調整、経済の発展に当たらなければならぬという時期になりましたので、私は日銀法の改正はどうしてもやらなければならぬと考えております。しかし、先ほども申し上げたのですが、いま私としても、また大蔵省といたしましても、この経済不況克服のために手一ばいという形なんです。この国会に日銀法の改正を提案をするというようなタイミングに立ち至っておりません。十分検討いたしまして、また御審議をわずらわしたい、こういう考えでございます。
  117. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 あなたの御所見は、結局終結をいっするかということはきめていない。要するに、いままでの二千六百億円の赤字公債、これは田中角榮さんのときのことだからこれはかん詰めにしておく、ただし私の場合には、これはやはり財政法の第四条と第五条に立ち返って、それでその第四条の許容する範囲内でやるのだということをおっしゃっる、根本的なあなたの考えの中には、財政の適正規模は維持する、それから不況下では、国債を出して歳出をふやすが、好況になれば国債をとめたりあるいは減らしたりして、歳出規模を縮小していく、こういう背景があると思うのであります。結局、景気調節論を骨子とするものがあなたの公債政策論であると理解いたしておるわけであります。したがって、あなたの公債論は、緊急発行論ではなしに、常時発行論であると私は理解しますが、それでよろしゅうございますか。
  118. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 そういう面を持っておるということであります。
  119. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 大蔵大臣は、おおむねこれを肯定されたわけであります。それだけに膨張の危険があり、日銀による通貨価値維持のためのブレーキを必要とすると考えますので、日銀法の早期にして自主性確立の改正案提出に私は関心を持っておるわけであります。あなたの腹づもりでは、この通常国会には出せないけれども、なるべく早く出したいという。そこで私は注文をつけておきたいのでありますが、昨年の改正原案それ自体も、これは選挙等の展望から通過が困難であろうということで引っ込ましたのだそうですが、事情が変更したのですから、私は大きく内容的に再検討されなければならぬと考えておる者ですが、あなたの感触だけでもよろしいですから、その点につきましてお答えをいただきたいと思うのです。
  120. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まだ前の日銀法の改正案というものを私はよく承知しないのです。
  121. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 出す出さぬじゃなしに、内容を大幅に再検討しなさいということです。
  122. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 もちろんそうです。私の手元で再検討した上、提案することになると思います。
  123. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 私が言わんとすることは、要するに、財政規模は縮小しにくいものであるということ、それから第二に、財政操作は小回りはききにくく、あとには引けない性格があるということ、第三は、政府、国会に財政膨張の風土が強い、以上のことに留意すべきであるというのが私の主張であります。現に与党内に四十年度一兆円説もあり、また日経連の代表理事桜田武氏が十月の二十二日の総会で国債についての発言をしていますが、それを見ましても、初年度は一兆五千億円、二年度は一兆五千億円を道路、港湾整備に投資する。二カ年とも一兆五千億円ずつ投資する。第三年度に住宅投資一兆円を投ずべしという圧力的発言をいたしておるわけでありますが、これが今回の国債発行に関し政府に影響がなかったとはいえないと思うのであります。福田さん自身は六千億円から言うておるわけですが、いつの間にか約七千億円、しかもその約七千億円は上に出る七千億円らしいですね。そういうふうに相当圧力となってきたことは事実であります。私があえて極論するならば、論理的に公債のブレーキは政府では不可能である、こういうふうに考えております。現在の国民の苦悩はインフレによるものであります。すべての禍根は円の下落に発し、円の価値維持は日銀の制度的てこ入れなしには先行き危殆に瀕するといって過言ではないと思うのであります。そこで、日銀の権威を高め、政府の暴走を食いとめる必要が今日ほど痛感されることはないのであります。そのことについての理由あとから申し上げますが、ともかく、円の価値維持は、その前提として日銀の自主性、中立性を制度的に強めることをおいてほかにはないのであります。先ほどの宇佐美氏と記者団とのやりとりで宇佐美氏が開き直ったということは、むしろ日銀の政府に対するコンプレックスを示すものと理解しなければならないと思っております。この点を私は憂えるのであります。  そこで、この委員会ではたびたびやったことなのですけれども、福田さんには申し上げてないので、この際聞いていただきたいのであります。  第二次世界大戦後、フランクフルトのバンク・ドイッチェル・レンダーに君臨したヴイルヘルム・ホッケ初代総裁及びこれを引き継いだところのブンデス・バンクの総裁のプレッシング、彼らは日銀に相当するところの西ドイツの中央銀行の総裁でございますが、彼らは財政と金融とはおのずから別個の使命を持つという観念に徹しておりまして、その金融政策を行なってきたわけであります。ここで彼の使命観に触れることはきわめて意義が深いと思うのであります。彼らによりますと、議院内閣制の政府のもとにあっては、財政は膨張し続ける必然性を持っています。ときとして公債発行も辞さないということになりかねないのであります。政党政治である限り、選挙支持層の一挙手一投足に気を使って、あるいは圧力団体に対するところの迎合は不可避であります。財政は必ず膨張の一途をたどるものである。政府が保守党であれ、よし革新政党であれ、それは問うところではありません。予算はその国の経済成長の実勢以上にふくらんでいくことを阻止できないものである。これを阻止できるものは、通貨維持を至上命令とするところの、論理上政府と独立した別個の機関でなければならない。それが中央銀行であるべきである。第一次大戦後、ドイツは歴史上最高の通貨の乱発をあえてして、空前ともいわれるインフレーションを招来した。それによってドイツの復興は著しく阻止され、また年月も多くを要した。この経験に徴して、ドイツ中央銀行総裁としての彼らの使命は、ドイツマルクの価値維持のために身命を賭することだとしたわけであります。ドイツマルクの価値維持は、現在と将来のドイツ国民から託された国家の大事であって、一政党政府の、たとえばアデナウアー政権の恣意にゆだねられるべきものではない。すなわち、断片的、現象的なものの恣意にドイツマルクの永遠的価値をまかしてはいけない。財政と金融は同一の権威に立って併存する。言いかえれば、チェック・アンド・バランスの使命を双方でにない合うべきであると言っておるのであります。フランクフルトはボンに対して、昨年の日銀改正法第三十五条に頭を出しているような、政府をあくまでも優先とするがごとき、意見調整のための協議を義務づけられてはおりません。事実におきまして、フランクフルトの牙城によってボンと彼らは対決をいたしておったのであります。ドイツマルクの価値維持を国家の最高の使命として、中央銀行はアデナウアーの放漫、恣意に決して屈服しませんでした。いまなおこの姿勢はエアハルト政権に対しても持ち続けておるわけであります。当時アデナウアーはしばしば歯ぎしりをし、エアハルト商相、シェーファー蔵相などはむしろホッケに傾倒いたしましてアデナウアーを押える側に回った、ホッケの言う、いわゆる永遠的な国家に仕える使命観を彼とともに分かち合ったほどであります。ドイツ経済の着実なあぶなげのないところの伸展と、全国民が、ドルに対して四分の一の価値比率をぴたりと守り通したマルクのもとにおいてインフレ不在の生活を享受し得たのは、まさに理由なしとはしないのであります。ドイツ中央銀行戦後初代の総裁ヴイルヘルム・ホッケこそドイツ国民経済復興の中核的人物であり、これを継承するプレッシングまた当世の偉材であります。この見識はもって他山の石としなければならぬと思っておるのであります。戦後の財政金融の歴史的転換が、追い詰められた赤字公債政策であるという私の所論はおりておりません。私はこの所論をおりません。が、とにもかくにもこの大転換の時期に際会して、これに対処すべき使命をになった福田さんは、慎重の上にも慎重を期して、公債の最終的歯どめが日銀制度の自主性強化にあるとの制度的検討について格段の関心を持っていただくことを強く私は要望したいのであります。  このことを強く私は主張いたしまして、最後に大臣の所見をただし、私の質問を終わりたいと思います。
  124. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私は、公債が乱に流れないための最大の歯どめは、公債を使って運営する財政規模の適正というところにあると思います。しかし、同時に金融政策、これも非常に重要になってくると思います。財政と金融とが一体となって経済の調整に当たらなければならぬ。そういう新しい局面に臨みまして、日本銀行がいかがあるべきかということ、これは平岡さんがおっしゃるとおり、私も慎重に検討しているつもりであります。いろいろと御教示ありがとうございました。     —————————————
  125. 吉田重延

    吉田委員長 ただいま議題となっております各案中、石油ガス税法案に対しまして、山中貞則君外三十八名より、三党共同提案による修正案が提出されております。     —————————————     —————————————
  126. 吉田重延

    吉田委員長 この際、提出者の趣旨説明を求めます。山中貞則君。
  127. 山中貞則

    ○山中(貞)委員 私は、自民、社会、民社三党を代表し、三党共同提案にかかる石油ガス税法案に対する修正案を提出いたします。  修正案の内容につきましては、別途各委員のお手元に配付してございます詳細な資料がございますので、繁雑を避けるため省略をいたし、これまたお手元に配付いたしてあります要綱で御説明をしたいと存じます。  読みます。    石油ガス税法案に対する修正案要綱  一、税率の暫定的軽減   石油ガス税の税率(本則では、一キログラムにつき十七円五十銭)を、石油ガス税法の施行日(昭和四十一年二月一日)から昭和四十一年十二月三十一日までは、一キログラムにつき五円に、昭和四十二年一月一日から同年十二月三十一日までは、一キログラムにつき十円に軽減する。  二、施行期日の延期   石油ガス税法の施行期日(政府原案では、昭和四十一年一月一日)を昭和四十一年二月一日に延期する。また、これとの見合いにおいて、自動車用石油ガス容器である旨の表示義務の規定の施行期日(政府原案では、昭和四十一年二月一日)を昭和四十一年三月一日に延期する。  三、移出に係る課税石油ガスについての石油ガス税の納期限の延期   移出に係る課税石油ガスについての申告納税の石油ガス税の期限内申告による納付の期限(政府原案では、申告書の提出期限)を申告書の提出期限から一月以内に延期する。また、移出に係る課税石油ガスについての賦課課税石油ガス税の納期限(政府原案では、移出をした日の属する月の翌月末日)を移出をした日の属する月の翌翌月末日に延期する。  四、課税石油ガスの販売代金の領収不能の場合の税額の控除等   課税石油ガスの販売代金の領収不能の正当性について所轄税務署長承認を受けたときは、翌月以後の申告税額から領収不能分に対する税額を控除する。また、この場合、領収不能として税額の控除を受けた課税石油ガスの販売代金を領収したときは、その領収分に対する税額を申告納税しなければならないこととする。  五、関係規定整理   以上の修正に伴い、関係規定について、所要の整理を行なう。以上でありますが、簡単に趣旨についてさらに補足の説明をいたしたいと存じます。  私どもは、提案理由にもございますように、決して、今回の石油ガス税の新規課税については、新たなる財源を求めて行なおうとしたものでなく、また、特定の業界に対して新規の課税の重圧を背負わせようとした何らの意図もないものでございます。全く現在の道路の特定財源となっておりますガソリン税と同じ能力、あるいはまた同じ形態によって自動車の走る燃料でありますLPガスに非課税であるという現状がもたらす課税の不公平、またそれの及ぼすアンバランスというものを是正したいと考えて、これを提出することに踏み切ったわけでございます。しかしながら、この問題が当然今日まで課税されなかった状態においてLPガス自動車の普及が行なわれたという現実に顧みますならば、新規に課税の重圧を与えることにおいては変わりはないわけでございます。私ども自民党の内部におきましても、すでに提案の際においてこれらの点を配慮いたしまして、本来の税額にいたしましても、ガソリン税をそのままスライドいたしました税額より配慮いたしました金額とし、並びに施行期日にいたしましても、唐突の感のある、直ちに四月一日よりの施行日を三四半期延期をいたしまして、明年一月一日よりこれを実行する等の配慮はすでにいたしてまいった経過もあるわけでございます。しかしながら、今回与野党三党の話し合いの結果による修正によりまして、結果的に昭和四十三年一月一日から基本税率とする改正が行なわれますことは、われわれといたしましても、関係業界が新たに課税を受けるというものであります現実に立脚いたしまして、またそれ以上のわれわれの配慮がそこに修正案として盛られているという事態に対して、賛意を表明したいと思うのでございます。またこれを納税いたしますタクシー業界につきましては、このことが営業上、営利上のある意味のマイナスになり、また、今日楽でない営業についての相当な重圧を与えるであろうということについても、私どもは心配をいたしております。しかしながら、いかに公平の理論から課税するといたしましても、そのような現象を私どもは黙視し得ない現実の状態だと考えますので、直ちにこれを料金を引き上げて、この賦課されました新規税額分を大衆に転嫁するという措置もまた、これは一般の国民の立場から早急になし得ないところでございます。しかしながら、現実においてはそのような事態というものがあるわけでございますので、将来、この課税が行なわれたことによる業界の実態というものを、政府におかれましては関係各省連携の上つぶさに検討をいたしまして、しかるべき結論を得たならば、大衆転嫁の形式をなるべく排除しながらも、今回の新規課税による影響というものについて、料金改定等の配慮を将来において検討される必要があろうかと存じます。  また、これは提案者のあるいは私見に属するかもしれませんが、内々において各党の識者の賛同等も得ておることでありますだけに一言つけ加えておきますと、今日のわが国の料金メーターは走行キロ数応分メーターに相なっております。しかしながら、これも今日の都市の車両稠密過剰状況から見まして、一キロを走るのに、時期、場所においては数十分を要するような状態ということが予想される現状において、私どもは、単にこのキロ数においてのみの応分メーターというものについても詳細なる検討を加える必要があるのではないか。たとえば、これを時間制メーターの採用、もしくはまたアメリカ等に見られるような乗車人員がふえることに従ってメーター料金が加算されていくメーターの採用等、私どもといたしましては、なるべく直接一般大衆に迷惑をかけないような配慮においてこれを現実に処するような考え方というものも考えてみなければならぬと考えるわけであります。しかしながら、これらの案を検討するにあたりましても、結果的に見て、偶然ではございますが、LPによる新規課税をされます車の走っております地帯は、この車両稠密大都市地帯に集中いたしておる現状でございますので、かりにこの案のいずれかを検討して採択することがあるとしても、それは全国一律に行なうことなく、これらの地域についての制限、地域指定等の前提をもって検討さるべきものであろうと考える次第でございます。  次に、第二点の、施行期日を二月一日に変更するという点でございます。これは事実上年末においての審議が行なわれております現時点において、物理的に必要な修正と簡単に言えるわけでありますが、しかし、その内容に触れますと、実は施行期日を二月一日とすることによりまして、次の、先ほど申しました要綱第三点とからんで、税収の面において大きな影響をもたらしますので、第三点の問題について述べておきたいと思います。  すなわち、今回新たに納税義務者となりまする小売り業者、すなわちスタンド業の者でありますが、私どもは当然この性格から見て、蔵出し課税を念頭に置いて検討を進めてまいったわけでありまするけれども、一般家庭用のLPガスについて課税する意思もなく、またそれを検討するという意思すらございません今日において、蔵出し課税の段階において自動車用のLPガスというものについての色分けが事実上困難であるという点から、簡単に、ある意味において、表現を変えますれば、深い検討なしに小売りのスタンドにおいて課税することを適当と認めた次第であります。しかしながら、私どもはこの際率直に反省をしてみますと、スタンド業界の納税義務者となったあとの実態についての検討について、私どもはやや検討不足の点があったやの感があるのでございます。したがって、私どもは、新たに蔵出し課税ができないというだけの理由によって、小売りの業者であるスタンド業界が納税義務者となるこのような事態を、私どもとしてもさらに考えるところがなければならぬのではないかということを考えまして、いろいろ調査いたしてみますると、タクシー業界がスタンド業界に支払いまする手形のサイトは大体六十日から九十日が常識のようでございます。そういたしますると、現在の原案では一カ月の納税期限と、さらに三十日間の余裕ということを加味いたしましても六十日しかございませんので、これらの点を実態に合わせるべく、先ほど読みました要綱によって、石油ガス税の納期限を移出をした日の属する月の翌月末日を翌翌月末日とすることによりまして、実質二カ月とさらに三十日の余裕を与えることとなりまして、この現実の手形サイトの実態に合わせることが可能ではないか、このように考えた次第でございます。しかしながら、そのために、先ほど申しました第二点の、単純に物理的に変更いたしました施行期日の二月一日という点から、今四十年度の収入の面について目を転じますると、この延期を認めたことによりまする措置の結果として、四十年度予算の歳入面において十五億円余の歳入不足を現出するということを私どもは政府に指摘し、またそれに対する政府の善処を要望しておかなければならぬと考える次第でございます。  次に、第四点の、販売代金の領収不能の際における税額控除の措置についてで、ございます。これもまたスタンド業界の実態を検討いたしました結果、かりに貸し倒れが生じた場合においては、貸し倒れ金そのものは、一般税法の定めるところにより、損金その他の措置があるわけでございまするけれども、納税義務者という立場において、貸し倒れが招来した場合におきましては、国税の税金の部門につきましての何らの特典がない。もっともこの特典は、今日国税の体系の中において他の間接税の徴収義務者において何らの恩典が認められていない制度のもとにあるわけではございまするけれども、しかしながら、地方税におきましては、料理飲食等消費税のごとく一、二の例がございまするように、そのような実例も実は困難な環境において、すなわち料理飲食等消費税に例をとりまするならば、本来の納税者は料理飲食をした者その者であるはずでございまするけれども、便宜上話し合いによって特別納税義務者ということにいたしておりまするための反面の措置でございます。私どもはこの措置を採用することによって現在の間接税体系に特例が生ずるという点については、慎重なる検討もいたしたのでございますが、先ほど来申し述べますように、スタンド業者にとっては全く唐突の感のある納税義務者の立場ということがしいられるわけでございまするので、これらの点をとくと配慮をいたしまして、全くの特例として、貸し倒れ金そのものに加えまして、所轄の税務署長の承認を得たものに関しましては、その税金の徴収を結果的に免除するという措置をとった次第でございます。  次に、法律の段階ではございませんが、スタンド業界等におきましても、税法並びにそれに伴う政令等のある程度の輪郭は、すでに国会において、二国会流れておるわけでありまするので、種種検討をいたしておるようでありますが、その検討いたしました結果の共通の不安といたしまして、従量課税という形をとられた場合に、比重を加味して、温度その他の条件等を計算いたしながら課税をされることについては、地域あるいはまた気候等において著しく異なる条件下にある場合に問題が起こりはしないだろうか、あるいはまたその納税、徴収等の手続の複雑なために、計算方式の複雑なために、あるいはまた一部その充てん液を抽出いたしまして検査をするために、その充てん液はもとのボンベに返らないというような現実の問題等がからんで、トラブルに対する心配等があるやに承りました。したがってわれわれは、そのために、政令事項の中ではありますが、特に液容量で単純に課税する方式というものを新たに政令に設けまして、業界自体の立場による判定によっていずれかを選択する方法というものを設定することにいたしました。これによりまして、納税義務者としての納税者の納税に対する際の不安を私どもとしては一掃したつもりでおるわけでございます。  以上、法律並びに政令に関する問題の直接の修正点を御説明いたしましたが、さらにつけ加えて申し上げまするならば、四十一年度予定いたしておりまする税制の改正によりまして、これらのスタンド業者が高圧ガス取締法に基づいて強制的に設置をさせられまする近接民家に対する障壁あるいは事務所との間の隔壁あるいはまた爆発物地下貯蔵のための地下ピット、それらの問題につきましては、これらの今回のLPガス新規課税並びにそれに対する納税義務者の立場を与えられる意義を十分くみまして、われわれといたしましては、国税の面におきましては償却の特例措置、すなわち耐用年数の短縮、あるいはまた特別償却等の問題を実行に移したいと考えておりまするし、地方税におきましては、固定資産税をその部分については免除いたしたい、かような措置等を考えておる次第でございます。  以上のような措置をとりまして、今回各党全会一致で衆議院を通過いたすということになりましたことを、私どもといたしましては、せめて私どもの新しく踏み切りまする新規課税に伴うあらゆる手段を尽くしたということにおいて、ある意味の喜びを感じたいと存ずる次第でございます。  徴税当局におかれましては、この新規課税であるという事実に深く思いをいたしまして、税法そのものの周知徹底をはかるとともに、納税手続その他の指導に懇切丁寧な態度をもって接せられるよう、そして、その徴税当局の心がまえが、これらのわれわれ三党共同の修正の内容と相まって、納税者の協力をかちうる結果となりまするよう要望いたしまして、私の三党共同提案にかかる修正案の趣旨説明を終わる次第でございます。(拍手)
  128. 吉田重延

    吉田委員長 これにて修正案の趣旨説明は終わりました。     —————————————
  129. 吉田重延

    吉田委員長 質疑を続行いたします。只松祐治君。
  130. 只松祐治

    只松委員 ただいま山中委員からも詳細な御要望等がございましたが、税の新設でございますから、これには幾多の問題を含んでおります。したがいまして、国会は三国会非常に長きにわたりましたけれども、この本文の討議その他はいわばほとんど行なわれておりません。したがって、山中委員のいまの詳細な御要望、御説明等にあったと思いますが、それでもなおかつ幾多の問題を残しておることは事実でございます。したがいまして、今後の税の執行にあたりましては、ひとつそういう点を十分顧慮いたしまして、いろいろな面において留意し、御配慮をいただきたい。ただ、いま山中委員のおっしゃいました中に、いわば物価の値上がり要因になるような発言もあったかと思いますが、こういう点に関しましては、全会一致ということばがありましたけれども、必ずしもその点については全会一致でないというわが党の意見その他もございますので、ひとつその点のことを申し上げまして、いま申し上げました点に御留意いただき、特に、LPGのスタンド業者はほとんど中小企業者が多いわけでございますし、そういう新規課税でございますので、税の執行の、特に税務署のほうにおきましてはそういう点を十分懇談し、指導し、それから新法案を熟知するように必要な配慮をしていただきたい。また、新税でございますので、この新税の円滑な遂行と、税の正しい確保のために納税組合等をつくって、これが業者にとりましては大幅な課税にもなってまいります。それに新しいものでございますから、ひとつそういう点が円滑に行なわれるように特段の御配慮を——ほんとうはもっと討議をいたしまして、条文の中に設けるかどうか、私たちも討議を進めたいところでございます。こうやって円満に話し合いがつくということでございますので、要望、意見として、あるいは御質問として申し上げてお答えをいただきたい、このように思います。
  131. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 只松委員のお話、まことにごもっともだと思います。新税でございますから、これが執行には最大の注意を払ってまいります。特にPRと申しますか、スタンド業者に対する税法の懇切なる指導、また、解説その他努力をしてまいります。  また、納税貯蓄組合をつくったらどうだ、こういうお話でございますが、これも税務当局としては積極的に御協力を申し上げていきたい、そのように考えます。
  132. 吉田重延

    吉田委員長 各案並びに修正案に対する質疑はこれにて終了いたしました。     —————————————
  133. 吉田重延

    吉田委員長 この際、石油ガス税法案に対する山中貞則君外三十八名提出の修正案について、内閣において御意見があれば述べていただきます。
  134. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 政府原案を修正されるこは遺憾であります。しかしながら、道路整備五カ年計画の遂行のためにはぜひとも本法律案の成立を必要といたしますので、この程度の修正はやむを得ないものと考えます。     —————————————
  135. 吉田重延

    吉田委員長 これより各案について、順次討論、採決に入ります。  まず、昭和四十年度における財政処理特別措置に関する法律案について討論に入ります。  通告がありますので、順次これを許します。有馬輝武君。
  136. 有馬輝武

    ○有馬委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま提案になりました昭和四十年度における財政処理特別措置に関する法律案について、反対の討論をいたしたいと存じます。  まず第一に、政府の本法律案提出の姿勢についてであります。本委員会でも同僚各委員からしばしば指摘されましたように、佐藤総理は、第四十八国会において、本年度中は公債発行を絶対にいたさないということをしばしば言明されてまいりました。その後も大蔵大臣はじめこの政府見解を披瀝してこられたのでありまするが、この重要な財政法の大転換を年度中において豹変して実施される、この政府の態度というものは、国会並びに国民に対する冒涜であり、佐藤内閣財政方針の一貫性に欠けるきわめて重大な失態だと申さなければならないと存じます。さらに、この財政の大転換を意味する公債の発行について、今次国会のようなわずかな短期間の間に審議しなければならない、このような法案の提出のしかた自体も国会を冒涜するものでありまして、この際きわめて遺憾の意を表しておきたいと思うのであります。  第二に、本年度の公債発行について、昭和四十年度のこのような措置をしなければならない税収の落ち込み、これについて年度当初において予想し得なかったということは、これまた政府のその場当たりの財政運営の極端なあらわれでありまして、この点についても激しく指摘しておきたいと存じます。  第三点といたしまして、財政法は一般財源の不足を補うための公債の発行というものを厳に戒めておるのであります。にもかかわらず、この財政法の根本的な精神、立法の精神を踏みにじってこの挙に出でたことは、法を順守すべき政府の態度としてきわめて遺憾と申さなければなりません。  第四点といたしまして、一たび公債が発行されまするならば、これが雪だるま式に膨張していくことは、過去の歴史において私どもが現実に学び取ってきておるところであります。大正五年に寺内内閣、次の原内閣田中内閣、そして満州事変から日華事変までの高橋蔵相の公債政策あとを振り返ってみるとき、私たちはこの歴然たる事実に面をそむけざるを得ないのであります。私どもはこの点について、本委員会でもしばしば歯どめ論議について政府見解をただしましたけれども、単なる、市中償還その他というようなことで歯どめがきくものでないことは、これまたきわめて明らかであります。私どもは、将来増税によってしか救い得ない公債発行について、この歴史的な時期において、日本社会党として政府に対し大きな警告を発しておきたいと思うのであります。少なくとも、かっての昭和四年、五年におきまして、浜口内閣が、同年度の四半期を経過していたにもかかわらず、実行予算編成して、一般、特別両会計を通じて一億四千七百余万円の経常節約を実行いたしました。公債の新規発行額は、予定額よりも五千九百余万円を減じて一億三千八百万円に改めました。そして五年、井上蔵相は、当初の国債整理計画方針を貫くために、一般会計においては全然公債を発行しないこととし、特別会計においては、その発行予定額を半減した歴史があります。がしかし、現在の情勢において、このような措置が取られ得る情勢があるかどうかということを検討いたしました場合に、現在の予算規模その他から推しまして、このような勇断をふるい得る余地はみじんも存しないことを福田蔵相みずから御存じのはずであります。こういった意味合いにおきまして、私どもは雪だるま式にふえ、国民の負担を過重に過重を重ねていく本法律案に対して、断固反対の意思を表明するわけであります。  なお、さらに私どもがここで見のがすことができないのは、財政法第四条第二項に言うところの償還計画、これを明示しない公債の発行はとんでもない話であります。償還計画もなくて、このような大転換をする。いかにこれが追い詰められた公債の発行であるかということは、この一事をもってしても明瞭であろうと存じます。  さらに私どもは、やはりこういった措置をする前に、わが党が常に主張いたしておりますように、租税特別措置法の検討など、財源の検討について、政府は真摯な態度で検討をする、こういう態度を常に念頭に置いていないから、やはりこのような法をじゅうりんし、国民に負担をかける措置に出ざるを得ないのでありまして、このような佐藤内閣財政政策の欠陥について、この祭あらためて指摘いたしまして、私の反対討論を終わる次第であります。(拍手)
  137. 吉田重延

  138. 木村剛輔

    木村(剛)委員 私は、昭和四十年度における財政処理特別措置に関する法律案に関し、自由民主党を代表して、賛成の意思を表明せんとするものであります。  周知のとおり、現下の不況はきわめて深刻であります。これは不況の性格が単に循環的なものではなく、これに構造的なものが重なって供給の極度な過剰となり、いわゆる低圧経済の様相を呈しているからであります。この深刻な不況は必然的に財政面にも反映して、昭和四十年度におきまして、たとえば租税収入は二千五百億円と大幅な減少を来たす見通しとなりました。これは予想を絶するきわめて異常な事態というべきであります。これをこのままに放置いたしますと、国と地方公共団体の機能は全面的に阻害されるばかりか、不況はますます激化し、経済は混乱し、中小企業者や公務員等に及ぼす影響にははかり知れないものが憂慮されるのであります。  政府は、このきわめて異常な事態に対処するため、今国会に再び補正予算案を提出し、あわせてその執行に必要な諸法律案を提出されたのであります。これはきわめて時宜を得た、というよりはむしろおそきに失したともいえるものであります。  ただいま議題となっておりますこの法律案は、二千五百九十億円の国の税収不足等を国債によって補てんし、また、地方交付税交付金の減少と地方公務員の給与改定とに伴う地方財政の窮状を救わんとするものでありまして、言うまでもなく補正予算案と一体不可分の重要なものであります。すなわち、この法律案が一日も早く成立しませんと、せっかく補正予算に計上された公務員給与改定費、生産者米価値上げ費、災害対策費、義務的経費の不足額の補てん、中小企業信用保険公庫出資金等々の、現下最も緊要な支出の一切が歳入欠陥のために不可能となり、その及ぼす影響はまさにはだにアワを生ぜしめるものがあるのであります。また、地方公共団体におきましても、地方交付税交付金の激減により、事業費の支出はもとより、地方公務員の給与改定も実施不可能となり、地方財政は全く麻癒してしまうのであります。この法律案にいう国債の発行が、財政法第四条のじゅうりんであるとか、インフレ戦争につながるとかの心配をされる方もあります。しかし、この異常な年度における税収不足補てん公債は、佐藤総理大臣も繰り返しては行なわないと言明されていることでもあり、極力市中消化の原則を響こうとの努力がなされていることでもあり、これ自体が悪影響を残したり悪い先例となることは決してないことを確信するものであります。  これに関連して、昭和四十一年度以降における国債の発行につきましても、それが公共事業費のワク内にとどまり、市中消化の原則を貫く等、健全財政の原則を順守する限り、インフレとは無縁のものであり、むしろ財政に新時代が到来したことに大きな期待が寄せられるのであります。特に、福田蔵相は、国債を持つ新時代健全財政の構想を繰り返し表明されて、国債発行にも健全財政の原則を貫くことを約束されました。さすがに有能で、かつ良心的な蔵相であります。私は、この法律案審議の全過程に示された蔵相の精神が、この法律案の条文の間にも輝いているのをはっきりと確認して、安心と期待とをもって、この法律案に対して賛意を表明するものであります。(拍手)
  139. 吉田重延

    吉田委員長 次に、竹本孫一君。
  140. 竹本孫一

    ○竹本委員 私は、民主社会党を代表いたしまして、ただいま上程されております昭和四十年度における財政処理特別措置に関する法律案に対して、反対討論を行なわんとするものであります。  戦後、日本財政は、原則として健全財政主義を貫いてきたのでありますが、今回の一般会計赤字補てん国債によって、わが国の財政はいま百八十度の方向転換をいたそうとしておるのであります。  この際、私どもは次の五つの点を指摘したいと思います。  第一点は、かような深刻な不況を招いた政府自民党経済政策財政政策の失敗に対する点であります。日本経済が持つ過当競争的な体質と資本の利潤追求的な偏向を何ら変革することなくして政府は毎年財政を膨張させました。これはいよいよその矛盾を助長し、促進してきたところでありまして、政府の今日の不況に対する責任はまことに重大なものがあります。これにつきまして、政府の深刻なる反省の姿が見受けられないという点が第一点であります。  第二点は、政府経済計画見通しが従来あまりにもでたらめであった点であります。このようなでたらめな計画を推し進めてまいりまするならば、いま政府が四十年度に限っての特別措置とおっしゃっておりますけれども、おそらくはわれわれの心配するところでは、今日の景気の上昇も政府の期待されるところには沿いません。そういうような結果、四十年度だけにとどまらずして、四十一年度にもあるいはさらにその以後においても、また第二、第三の特例が必至であることを憂うるものであります。  第三点は、私は、今回の政府歳入不足の二千五百九十億円に直面いたしましてとった措置が、あまりにもイージーゴーイングであって、無責任であるという点を追及いたしたいと思うのであります。大体財政法第四条は、大幅な歳入不足が生じ、そしてその場合特例をつくって公債を出すというようなことは予定いたしておりません。大幅な歳入不足が生じてはじめて、むしろ第四条の真価が発揮されるものであろうと思うのであります。その根本のものを、かくも安易に特例法を設けることによって、その基本の精神を否定するということは、私どもの断じて納得のできない点であります。これでは一体財政法第四条は何のためにつくっておるのかということを疑いたくなるのであります。歳入不足にあたりましては、第四条の精神からして、当然冗費の節約その他に全力を尽くした上、減額修正を内容とした補正予算案を提出するのが法のたてまえではないでしょうか。これで景気をますます悪くするということであれば、あらためて第四条の是認する建設公債等によりまして、次の第四次補正予算を提出するのが財政法のあり方ではないかと思うのであります。  第四点は、今回の特例法には償還計画が全く示されていないということは、社会党からも強く指摘された点でありまして、私ども全く同感でありまして、わずかに二行だけ書いてある、四十七年度までにこの償還をするというだけでは、どう考えましても、償還計画という計画の名に値しないものでありまして、これは財政法違反であると思うのであります。  最後に、今回この公債が出されますことをきっかけにしまして、財政が方向転換をし、日本公債発行が次々に積み重ねられまして、あるいは近く十兆、十八兆円の公債が出されようとすることをわれわれは心配するのでありますが、先ほども御指摘のありましたような歯どめ方策についてのはっきりした御説明が伺えなかった点であります。特に第四条には公共事業ということが書いてありますけれども、何が公共事業であるかということについての定義は正確には示されておりません。したがいまして、公共事業の名において赤字公債が出される心配をわれわれは憂うるのであります。また、市中の消化ということが第五条の原則になっておりますけれども、民間の消化力自体が、あるいは政府の資金散布によりまして、あるいは日銀の信用造出の方法によりまして、これが幾らでも左右できるということを考える場合、また、日銀が事前において、事後において、その公債をみずから引き受ける間接な方法によって市中消化の原則をじゅりんする危険のあることを考えます場合に、私どもは公債インフレへの心配をやはりきびしく考えなければならぬと思うのであります。  以上のような点を考えまして、私ども民主社会党は、この特例法は、財政の基本原則をゆるがす、危うくするものであるという立場に立って、反対をいたしたいと思います。  以上で、ございます。(拍手)
  141. 吉田重延

    吉田委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。  本案を原案のとおり可決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  142. 吉田重延

    吉田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。  次に、石油ガス税法案及び同案に対する山中貞則君他三十八名提出の修正案につきましては、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ることといたします。まず、山中貞則君外三十八名提出の修正案について採決いたします。  本修正案を可決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  143. 吉田重延

    吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、本修正案は可決されました。  次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。  これを可決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  144. 吉田重延

    吉田委員長 起立多数。よって、本案は修正議決いたしました。  次に、農業共済保険特別会計歳入不足をうめるための一般会計からの繰入金に関する法律案につきましても、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ることといたします。  おはかりいたします。本案を原案のとおり可決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  145. 吉田重延

    吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。  ただいま議決いたしました各法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  146. 吉田重延

    吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  147. 吉田重延

    吉田委員長 この際、委員長として一言ごあいさつを申し上げます。  国民の負託にこたえるために、各委員の献身的な御努力に対して、心から感謝を申し上げます。(拍手)  本日は、これにて散会いたします。    午後七時四十三分散会