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1965-12-22 第51回国会 衆議院 大蔵委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年十二月二十二日(水曜日)     午後零時二十八分開議  出席委員    委員長 吉田 重延君    理事 天野 公義君 理事 金子 一平君    理事 原田  憲君 理事 坊  秀男君    理事 山中 貞則君 理事 有馬 輝武君    理事 武藤 山治君       岩動 道行君    大泉 寛三君       奥野 誠亮君    押谷 富三君       木村 剛輔君    木村武千代君       小山 省二君    斎藤 邦吉君       田澤 吉郎君    谷川 和穗君       地崎宇三郎君    西岡 武夫君       福田 繁芳君    藤枝 泉介君       村山 達雄君    毛利 松平君       森下 元晴君    渡辺 栄一君       渡辺美智雄君    岡  良一君       佐藤觀次郎君    只松 祐治君       日野 吉夫君    平岡忠次郎君       平林  剛君   米内山義一郎君       横山 利秋君    春日 一幸君       竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君  出席政府委員         内閣法制局参事         官         (第三部長)  荒井  勇君         人事院事務官         (給与局長)  瀧本 忠男君         大蔵政務次官  藤井 勝志君         大蔵事務官         (主計局長)  谷村  裕君         大蔵事務官         (主計局次長) 鳩山威一郎君         大蔵事務官         (主計局次長) 岩尾  一君         大蔵事務官         (主税局長)  塩崎  潤君         大蔵事務官         (理財局長)  中尾 博之君         大蔵事務官         (証券局長)  松井 直行君         大蔵事務官         (銀行局長)  佐竹  浩君  委員外出席者         総理府事務官         (経済企画庁調         整局参事官)  田中 弘一君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    青山  俊君         大蔵事務官         (主計局法規課         長)      赤羽  桂君         自治事務官         (財政局交付税         課長)     横手  正君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 十二月二十二日  委員砂田重民辞任につき、その補欠として森  下元晴君が議長指名委員に選任された。 同日  委員森下元晴辞任につき、その補欠として砂  田重民君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和四十年度における財政処理特別措置に関.  する法律案内閣提出第七号)  農業共済保険特別会計歳入不足をうめるた  めの一般会計からの繰入金に関する法律案(内  閣提出第八号)      ————◇—————
  2. 吉田重延

    吉田委員長 これより会議を開きます。  昭和四十年度における財政処理特別措置に関する法律案及び農業共済保険特別会計歳入不足をうめるための一般会計からの繰入金に関する法律案の両案を一括議題とし、審査を進めます。  これより質疑に入ります。質疑の通告がありますので、順次これを許します。武藤山治君。
  3. 武藤山治

    武藤委員 私は、大蔵大臣財政特例法に関しまして、社会党を代表してます御質問をいたしたいと思いますが、その前に、大臣に要望しておきたいのであります。   〔委員長退席金子(一)委員長代理着席〕  今回の法案は、戦後二十年間にわたる日本均衡財政主義というものを大転換をする公債発行という、重大な転機を迎えた財政転換でありまするから、大臣出席を十分求めて、大臣から答弁を求めるという基本的な態度を私たち社会党は立てましたので、ひとつ大臣にはできる限り大蔵委員会審議に協力を願いたい、こうお願いを申し上げておきます。  まず最初に、今回二千五百九十億円の財源不足公債でまかなう、これも国民の目から見るならば、国債発行する突破口にこの現実が悪用される、こういう点から、政府並びに大蔵省の非常な無能ぶりと申しますか、公債発行しないで何らかの切り抜ける方法を怠ったのではないだろうか、こういう批判があるのでありますが、一体、どうしても国債発行しなければ四十年度財源を見出すことはできなかったのかどうか、その辺の経過と、検討した状況についてひとつ大臣からますお答えを願いたいと思います。
  4. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 今年度予算の実施の途中におきまして二千六百億円前後の財源欠陥が生ずることが明らかになったわけであります。これにどういうふうに対処すべきかということでございますが、今日経済界が未曾有の不況状態にある、そういうことを考えますときに、財政規模を縮小する、つまり、歳出節減をやってこれに対処するということは、経済の実情から見て適切でない。それじゃここで増税をするかということになるわけでありまするが、税の負担感というものが、今日しばしば申し上げているように、わが日本国民には非常に重いというふうに認識をいたしておるわけであります。したがって、増税をもって対処するということもできない。臨時緊急の措置として財政法特例を設けまして、今回は公債財源をもってこれを支弁するということが最も適切である、かように判断をいたしたわけであります。
  5. 武藤山治

    武藤委員 そういたしますと、今回の国債発行は、財政法第四条に規定する公共事業費もしくは出資金貸し付け金、そういう科目に支出をするための公債ではない。そういたしますと、これはたとえ国会議決を経たにしても、財政法違反ではございませんか。財政法違反するのではないかと考えますが、大臣の見解はいかがでございますか。
  6. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 これを黙って公債を出すというようなことをいたしますれば、これは財政法違反をするわけであります。財政法第四条にいうところの公債ではないのであります。臨時緊急の措置として税収欠陥補てんのための公債である、こういうことでありまするから、そういうことを率直に認めまして、特に特例法をもって御審議をお願いする、かように考えておるのであります。
  7. 武藤山治

    武藤委員 特例法を設けるその考え方自体が、財政法第四条の公共事業費もしくは出資金貸し付け金ならば、国会議決を経て公債発行できるのでありますが、特別法をつくれば、その四条の精神から全くはみ出てしまって、一般財源国債発行というものが許されるのかどうか、そういう点を、基本法律があるにもかかわらず、法律精神に反する特例法というものは財政法精神を全くじゅうりんすると思いますが、大臣いかがでございましょう。
  8. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 財政法とはすれ違うものですからこそ、特に特例法の御審議をお願いする、こういうことであります。
  9. 武藤山治

    武藤委員 そういう窮余の一策としてやるとすれば、どうしても税収が確保できないという場合には、財政法はあってないにひとしい。特例法をつくれば、大蔵省都合のいいように、あるいは政府都合のいいように、国債発行でもどんどんこう簡単にやれるんだ、こういう考え方財政法を無視してしまう結果になると私は思います。こういう方法をとるということは、まことに私は許され得ない財政法の侵犯であると思いますが、その点、もう一回ひとつ確認しておきたいと思います。
  10. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 この事態をどういうふうに切り抜けるか、歳出節減もなかなか妥当でない、それから増税もできない、それじゃ借り入れ金または公債をもってするほかはないじゃないか、こういうことになるのですが、そこで財政法第四条というものがある。いま昭和四十年度予算には貸し付け金もあります。また出資金もあるわけであります。公共事業費は六千数百億円あるわけであります。ですから、それを見合いにこの際公債を出すというたてまえをとって、財政法第四条にのっとった公債だという解釈をとるべきだという意見もあったわけです。しかし、私は率直に考えまして、今度出す公債というものは、積極的な意味におきまして、公共事業をやるとか、あるいは出資金貸し付け金をやるというような意味合いじゃない。政府の主観におきましては、これは率直に表現いたしますると、どこまでも税収の落ち込みに対する措置としてのものであります。でありまするから、財政法第四条には当たらない、その当たらないものをこじつけて、それで財政法第四条に該当するのだというようなことは、私は民主国会のあり方として適当でない、こういうふうに考えまして、特に特例法を制定してその御審議をお願いする。何も政府がかってにやっているわけじゃない、御審議をお願いするということであります。
  11. 武藤山治

    武藤委員 私が言っておるのは、大蔵省部内にはかって第四条の規定に該当する国債でいこうという意見があったかもしれません。それは私が質問しておるところではない。私が言わんとしておるのは、戦後国債発行できないように、できるだけ均衡健全財政でいこうというたてまえをとらして、それを堅持してきたというのは、国債発行をできるだけしないことが望ましいのだ、その財政法規定を全く飛び出て、土俵から飛び出てしまったわけですから、今度の特例法のように財政法を全く飛び越えた処理のしかたというものは、財政法精神を全く無視し、じゅうりんしている、こういうことは弁解の余地がないのではないだろうか。財政法の中でやるならまた別ですよ。しかし、財政法とは全く別な特例法を多数決できめれば国債をどんどん出せるのだというこのものの考え方、これは法律を軽視している、財政法をという基本法律を軽視している、こういう判断は正しいのじゃないでしょうか。間違っておりますか。
  12. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 これは、政治現実の要請のためにあるわけであります。現実公債財源または借り入れ金ということを要請している、こういうふうに思うわけであります。そういうような考え方に立つときに、どうしてもこれは財政法第四条ではできないことではあるけれども、特に特例として本年度限りの措置としてお願いする、こういうことでありまして、武藤委員のお話のように、財政法第四条というものは私どもは非常に厳粛に解釈しております。しかし、国家の当面している現実、これに目をおおうわけにはまいらないわけであります。そういうようなことから厳粛の気持ちのうちに、特に今回限りの特例としてかような法案を御審議をお願いする、こういうことにお考え願いたいと思います。
  13. 武藤山治

    武藤委員 持ち時間が一時間でありますから、同じ問題をあまり追及しておりましても時間が経過いたしますから、これはあとでまた次のバッターが引き続いてこの点については疑点を晴らさなければならぬと思います。  第二点は、大臣大蔵大臣に就任されてから従来の財政方針というものを大転換をして、公債発行することは福田財政の特徴であるようなことをあらゆる機会に言明をしてきました。昨日の参議院の木村さんの質問に対しても、今日の日本経済は世界第五位の生産量を誇るまでに成長している、幾らか国債を出しても何らの支障はない、こういう判断を下されておりますが、国債発行雪だるま式に大きくなっていって何ら支障ないというのんきな判断で、一体国民が信頼するだろうか、安心するだろうか。  そこで私はお尋ねしたいのでありますが、明年は財政法第四条に基づいて、建設公債公共事業貸し付け金出資金、こういうものに該当する国債だけを出すのでありましょうか。これ、ちまたに聞くところによると、七千億円あるいは一兆円出さなければならぬ。来年度公債財政法第四条に基づいて発行することは間違いございませんね。来年度発行することは間違いございませんね。
  14. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 間違いありませんです。
  15. 武藤山治

    武藤委員 それは一体どの程度規模にすることが——福田大蔵大臣のときどきおっしゃる、ゆとりある家庭、貯蓄ある企業にするためには、日本の現在の経済情勢から見てどの程度国債を出すことが、早くあなたのこのビジョンを実現する道につながると思いますか。どのくらいの金額を想定できますか。
  16. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 これは、まず第一に財政規模一体どういう点に持っていくかということにあるわけであります。それから、適正にきめました財政規模の中で、公債に何がしを、また租税に何がしをという判断は、公債市中消化能力、また公債をもって財源となるべき公共事業出資金貸し付け金、そういうようなもの、それらを勘案して決定する、こういうことになると思うのです。  来年度予算ワクにつきましては、ただいま鋭意検討中でございますが、大体の考え方といたしましては、来年度における経済成長規模を本年に比べまして七%ないし八%実質において成長する、こういうことを考えるわけであります。国民消費動向なんかはことしの状態とそう変化はないかもしれません。輸出は鈍化しますが、しかしことしよりも相当伸びる、そういう情勢下において、他の重要経済要因である設備投資財政需要とのバランスをどうとるかということになってくると思うのであります。設備投資がそうふるうとは私は考えておりません。おそらくまあ横ばい程度活動じゃないか。そうすると、大きく見まして、設備投資の停滞を財政がカバーしてなおかつ実質七%ないし八%の成長を達成するという規模財政の高さをきめていきたい、こういうふうに考えるわけでございまするが、その財政規模がきまりますれば、租税収入というものも減税とにらみ合いまして推測できるわけであります。公債発行の一つのめどがつく、それから、同時に、これが私ども市中で消化されなければならぬという原則を堅持するつもりでございます。そういうようなことから、この額がなお裏打ちをされるということになるわけであります。それから、さらに財政法第四条のたてまえから建設事業一体どういう動向になるのだろうか。これも予算の査定が進むに従いまして明らかにされるわけであります。そういう過程を経て来年度発行さるべき公債の額は確定してくる、こういうふうに御了承願います。
  17. 武藤山治

    武藤委員 金額はとうとう大臣まだ発表されないのでありますが、七千億円以下でないことは、私たち新聞報道等でやや理解しておるのでありますが、あるいは前尾さんのように一兆円論もあります。あるいは下村治さんの言うように、いまの有効需要不足は三兆円に達する。もしそういうものを考慮するとすると、明年度は相当の国債発行される。そうなった場合、一度来年一兆円近い公債発行されたら、その翌年その建設部門に出したワクがさらに縮められるなんてことはちょっと考えられない。年々拡大されていくであろうことは間違いありません。福田大蔵大臣の構想では、あなたの考えている経済情勢は、何年後に自然増収が出るようになって、償還にこう充てられるようになって、何年後にはこうだという、公債発行するからには、その償還期限までの間の経済の推移についてはある程度把握しなければいけません。その点についてはどういうような経済情勢の把握をしておるのでありますか。
  18. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私ども公債発行いたしますのは、政府が借金をするが、政府をささえる企業家庭の安定を重視したい、こういうことであります。この公債発行によりまして、企業状態は相当改善されると思うのです。しかし、これが一挙に改善できるかというと、そういうなまやさしい経済状態ではないと私は思います。来年度の展望といたしまして、七%ないし八%実質において成長を期するということを申し上げたのでありますが、経済全体としては成長しますけれども個々企業状態を見ますると、いまたいへんな設備過剰の状態である。大企業をざっととったところで、三割も設備が過剰なんだという説もあるくらいであります。そうしますと、その三割遊んでおる設備に対する資本費負担、また人件費負担、これをはねのけて、そうして企業が晴れ晴れと高収益をあげるという状態、それはなかなか時間のかかる問題じゃないかと私は思う。これから昭和四十一年度にかけてそういういい状態に向かって歩み出すという時期に相当すると思うのです。非常に企業が繁栄した状態というのは、大体において設備過剰の状態から脱却し、個々企業収益状態が改善されるというときだ、こういうふうに思いますが、そういう時期になりますれば、今度とる公債政策の効果というものが、財政の面におきましても、租税収入の増加という形で浮かび上がってくる、こういうふうに見ておるわけであります。  それから、半面におきまして、公債一体どういうスケールで今後続くのだということになるわけでありますが、この点は私はこう考えているのです。経済界が活況な状態になれば公債の額を減らしていってよろしい。つまり、公債財源とし、また租税収入財源とする財政規模は、常に民間活動見合いをとる、そうして民間経済活動政府経済活動との総和がでこぼこがない状態に置く、これが私は安定成長路線のために不可欠の条件である、こういうふうに考えまするがゆえに、私がただいま申し上げましたように、民間企業がよくなるという状態になれば、公債発行額というものは逐次これを減らすことは可能になるし、また、どういう事情かで民間経済が落ち込むというような事態がありますれば、また公債政策を強化していく、こういうことになろう、かように考えております。
  19. 武藤山治

    武藤委員 そういたしますと、二千五百九十億円の本年度分国債は、一体どういう計画財源を確保できるという見通しで設定しておりますか。これは主計局長でもけっこうです。
  20. 谷村裕

    谷村政府委員 二千五百九十億円を七年先になって償還するという計画として償還計画表は一応提出してございますが、これにつきましては、結局七年先の全体として財政規模、それがどの程度の大きさかということにもよりますけれども、その七年目にぴったり二千五百九十億円というものをまとめて返すか、それともそれ以前の段階において多少なりとも国債償還平準化というものを考える意味で、ある程度金額を前々から用意しておくという形にするか、それからまたそのときの情勢に応じて、全体としての金融情勢なり何なりを見て、ある程度借りかえのものも出てくるか、そういうのはまあ先になって、そのときそのときの経済情勢を見なければわからないわけでありますが、いずれにいたしても、七年先には今日発行いたします二千五百九十億円のものは償還するという考え方で進めております。
  21. 武藤山治

    武藤委員 大蔵大臣、七年後の見通しとなるとわからぬ、そのときの経済状態になったらそのときに対処する。ですから、言うならば、福田さんが大蔵大臣をやっておるときには公債発行景気をよくして、あなたのやめたあと大蔵大臣になった人は、今度はこれを償還することにたいへんな苦労をしなければならぬ。たまたま七年後に福田さんが大蔵大臣から総理大臣にかわっておるならまたあなたの責任を引き続いて追及できますが、あなたがおやめになったあとだれかが——大蔵大臣山中貞則氏にでもかわったら責任の違う形になっていく。ですから私は、公債発行する大蔵大臣が無責任自分の任期中だけ人気取りにやられると、かっての日本大蔵大臣高度成長に浮かされてどんどん予算規模を拡大し、自分がその地位にあるときだけは人気を取ったが、やめてみたらとたんに国民に迷惑をかける、こういう事態が起こり得るわけでありますね。私たちが心配をしておるのは、そういうときのことを考えて、いまから最小限国民の犠牲と負担を食いとめなければならぬ、こういう立場から実は御注意を申し上げているわけであります。ですから、七年後にこれを償還するためには、おそらく手だてとして国債整理基金法改正をつい最近やった問題がまたもとへ戻って、二分の一繰り入れにするとか、何か大蔵省は考えていると思うのです。まさに朝令暮改ですよ。一体主計局はその整理基金繰り入れの限度をもっとふやすということを考えておるのかどうか、考えていないで、七年後になったらそのときにまた国債の借りかえをやる、あるいは国債をまた同額発行する、こういうことになるような気がするのです。これを税収で、自然増収でまかなっていけるなどという考え方は、いまの財政需要膨張傾向から見て、また政党政治の現下の情勢から見てなかなか容易なことではない。不可能事に近い。いま福田大蔵大臣お答えでは、来年はまあ無理だろう、四十一年度はどうも景気はややつま先上がりということばを最近言わなくなったのでありますが、ほんとうはいまあたりはつま先上がりからかなり上がっているころでしょう、福田さんの最初の就任ごろの見通しでいけば。それがいまの答弁では、来年一年景気はそうよくはならぬ、四十二年度からは自然増収が出るやの答弁をいましたわけであります。しかし、どうもそう簡単に自然増収が見込めるという情勢にはないような気がするわけであります。そこで、国債は四十一年度だけではなくして、四十二年度発行される、おそらくこれは雪だるま式に大きくなっていくと思うのです。その金利だけで六・八%ですか、そういたしますと、本年の税不足分と来年の分と含めて最低一兆円と見ても、一年間に六百八十億円の金利負担しなければならない。七年間見たらたいへんな金額です。四千七百億円の金利負担しなければならない。一兆円の元金プラス利息をだれの努力によって埋めるのか。全部やがては国民の富の生産によって埋める以外にないのであります。いつかはどこかで税金で取って埋め合わせなければならないわけでしょう。そうじゃないですか。この論理は間違っておりますか。いつかはこれは国民の富の中から取り上げなければ埋め合わせがつかない。この論理は間違いでしょうか。
  22. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 そのとおりです。
  23. 武藤山治

    武藤委員 そのとおりだということになりますと、この一兆円の元金金利国民負担させる場合に、その時点までに税収がないということになれば、やはり国債発行でこれを埋め合わせる、いやがおうでも雪だるま式国債の残額というものはふえていくと理解してよろしゅうございますか。
  24. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 戦後、特に最近の日本経済民間設備が非常に充実されてまいっております。つまり、潜在的な生産力がいま非常に高いわけであります。まあ高圧型というふうにもいわれておりますが、昨年を転機として低圧型に移って——そういう状態が露呈していまして、低圧型にいまなってきておる。この状態は、先ほど申し上げましたように、なかなかそう簡単には回復できないような事態である、こう思うのです。つまり、低圧型の状態というものはしばらく続かざるを得ない。そういう際にはどしても財政に資金を傾斜させるということが国の経済を発展させる上において必要である、こういうふうに考えるわけであります。しかし、そういう事態が克服されて、また平常の状態に戻る、あるいは、場合によりましては、この数ヵ年間のような高圧型ということがないとも限らぬ、そういう状態下におきましては財政活動は引っ込ませるべきである。そうして、できる限り経済変動に波が立たないように、景気変動の高さ、低さに変わりがないようにということを期しておるわけでありますが、ともかく、いま当面しておるこの経済状態不況を一刻も早く脱出しなければならぬというふうに考えますが、不況を脱出した後におきましては日本経済全体もどんどん成長をしていくわけであります。かりに七、八%という状態が続くというふうになれば、九年か十年で日本の総生産は倍になるわけであります。また、かりに一〇%成長ができるのだということであれば、七年で倍のスケールになるわけであります。そういう際における租税収入、これは御承知のとおり弾性値というようなことも考えるときには相当多額の租税収入を期待し得る、こういうふうに考えますので、七年後に二千六百億円程度償還、これはそう問題にするに足らないのじゃないかというふうに考えておるわけであります。また同時に、いま御指摘でありますが、これは租税の前取りではないかというようなお話でございますが、その点は私はそう思います。しかし、前取りをした金を有効に使う、これは私は国のためにいいことであると思います。また、後になって国民の税負担でこれを償還する、その税制を適正にするということがあれば、これはまた国民のためにいいことである、公債政策を続けて、国民の所得の再配分、そういうものに有効に働き得ることが可能である、かように考えておるわけであります。
  25. 武藤山治

    武藤委員 税金の前取りはいいという前提で大臣は言っておるわけでありますが、いいですか、いまそれでは物価が毎年何%上がっておるか、物価の問題がまず問題になりますね。おそらく八%も上がる、あるいはおそらく利回りよりも物価の騰貴率のほうが高い。そういうような現状で国債をこれだけ発行して、六分八厘でどんどん売りつける。最後には税でどうしても取れない。これは二千五百九十億円だけじゃないのですよ。来年また発行されるのですよ。再来年も発行されるのですよ。それがずっと連続して償還期がくる。そのときに税金で取れない、また国債発行になる。そうなったときに、その資本主義の終着駅は何によってこれを収束させるかといえば……(「戦争だ」と呼ぶ者あり)うしろで戦争ということばもありますが、戦争か、ばかげたインフレーション経済によって国民が塗炭の苦しみにあうか、いずれかである。その落ちつくところは、平価の切り下げ、貨幣価値の切りかえをせざるを得ないという場面に追い込まれて、だれが迷惑を受けるのでありますか。国民が最大の被害を受けるのであります。大蔵省の役人はそのころは退職をして、公団の理事か、あるいは他の何かになっておるでしょう。だからといって、いまの時代だけ乗り切ればいいという安易な考え方国民に多大の迷惑をかけるような国債発行に首を縦に振るべきではないのだと私は考える。そういう点から考えていくと、インフレということを福田さんは非常にいやがるのでありますが、物価騰貴はいかがでしょうか。国債発行することによって、物価騰貴には影響がないんだ、物価騰貴の要因にはならないのだと言い切れるとするならば、その過程を論理的に、納得できるようにひとつ御説明願いたいと思うのです。
  26. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 公債発行するとインフレになるというふうにすぐ直結して申す人がありますが、私はそうは思わない。公債によって一体どういう変化が起こってくるかというと、一面において、昭和四十一年度で例をとりますれば、国民負担の軽減が行なわれるわけでありますね。それから一面におきましては、公共事業がよけいに実施できるというような状態になるわけであります。そういう変化をにらんで財政活動民間活動、つまり日本経済の総活動において物とまた労働、さらに資金、さらに国際収支、そういう点においてバランスを失せしめないという状態でありますればインフレーションにつながるという危険は絶対にない、こういうふうに確信をいたしておるわけであります。もしそれ、公債発行が過大にきめられ、したがって財政規模が過大になって、民間経済活動とあわせて見たときに、それらの経済諸要素の均衡を乱すというような事態になれば、これはインフレにもなるわけであります。そういうことのないように、私は再々申し上げているのですが、財政規模は厳粛にこれをきめます。また公債規模につきましては、これを財政法第四条の趣旨にのっとって、建設費、投資、出資、すなわち、国民の財産として残るものの見合いの限度にこれを限定する。また市中消化の範囲内にこれをとめるということを申し上げておるわけであります。この方式を厳守していきますれば、国の要請に対してこたえるところがあっても、失うところはない、かように考えております。
  27. 武藤山治

    武藤委員 いまの福田さんの理論でいくと、それは国債が全部市中消化された、あるいは個人消化されたという前提なんです。しかも、国の経済全体の需給が均衡しているという前提がある。第三の前提は、通貨政策が適切であるという前提がある。この三つがある。この三つのどれをとってみても、あなたがいまおっしゃるようなきらっとした歯どめにならないのであります。なぜならないかというと、おそらく市中消化をして各銀行が国債を買ったと仮定をしても、今度は資金需要が旺盛になって、銀行は資金不足を現じてくればその国債日本銀行に持っていっておそらく借りるでありましょう。おそらく景気が上昇してき、設催投資が旺盛になり、資金需要が拡大をされてくれば、銀行の窓口は資金に不足をしてきて、またまた日本銀行に借り入れ依存にやってくる。その場合に大蔵大臣、だれが日本銀行の通貨量、発券の権限を持っておるか、通貨の発券の権限を持っておるか。いまそれは大蔵大臣ですよ。過去の高度経済成長政策時期の日本大蔵大臣のとった態度、日銀のとった態度を見ると、日銀は大蔵大臣の決意に追従してきている。またまたこれは通貨の膨張につながっていくことは明らかである。それがイギリスやフランスのように個人消化が非常に旺盛だという国は別ですよ。国債発行していても、日本の戦争中のように、隣組に全部通じて各家庭国債を買ったのなら話は別です。しかし、市中消化をやった場合には必ずこれは間接的にまたぐるぐると回って日銀の窓口にくるということが想像されます。絶対日銀の窓口にはこないような歯どめをするんだと確約できますか。
  28. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 そこが私の一番苦心をいたしておるところであります。つまり、この公債市中消化をしなければならない、日本銀行の引き受けにさせてはならないというのが鉄則なんです。それには、それができるような額にこれをとどめなければならぬ、できるような額は一体どうだ、こういうことでございまするが、これは預金の伸びでありますとか、そういう大きな角度からの観察もいたしまするが、同時に各金融機関等とも十分よく相談をいたしまして、どのくらい消化できるだろうかというあらかじめ見当をつけたいと思う。そういうための仕組みも準備をいたしておるわけなんです。そういうことから、まあ日本銀行に持ち込まぬでもいけそうな額というものが大体相当の確度をもって想定できると思う。それを基準といたしまして予算を編成する、こういうことになるのでありまして、決して日本銀行にはこれを持っていかないという方針で臨んでおるわけであります。
  29. 武藤山治

    武藤委員 それはあくまで現在の大蔵大臣福田赳夫と現在の銀行との間の話で、じゃ一年後、二年後、三年後の経済情勢というものまで的確に把握できないわけです。経済は幾ら総理大臣大蔵大臣が期待をしても、望んでもそのとおりには動かないのであります。自律進行運動をするのが経済であります。ですから、一年間は日本銀行に還流してこないという約束は取りつけても、そのあとの保証はないんですよ。そのあとの歯どめはないんです。結局資金需要が旺盛になり、民間の資金需要が旺盛になれば、銀行はどうしても日本銀行にたよってくるのが日本の今日の企業の体質でもあるし、銀行の経理上やってきたいままでの習性である。ですから私は、私の側から言わせるなら、一年間は日本銀行に国債が戻ってこなくとも、将来においては日本銀行の窓口へどんどん殺到してくるであろうことは想像にかたくない。ですから、国債は絶対に買いオペの対象にしない、市中消化したら、それは今度は市中消化を個人消化におろすのだ、そこまでスケジュールを立ててぴちっと通貨の膨張にならないという保証をしなければ、大臣の説明では、あなたがやめたあとまた私たちはそれが取りかえられるという心配があるわけです。この際思い切って日銀法の改正、買いオペの対象にしないとはっきり答弁いただけますか。
  30. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私は、あらゆる角度から検討して、消化可能の額をもって限度とするということを申し上げておるわけでありまして、それを確保するためにはいろいろな金融措置が要ると思う。思いますが、その一つの方法としてオペレーションはやらぬというような窮屈なことは考えておりません。まあ国債をオペレーションの対象にしないというようなことになると、これはかえって日本銀行の通貨調節機能に害があるんじゃないかというふうに考えますが、ともかく、御心配の点は将来ともないように、今回の方針としては公共事業費の範囲内にとどめる、また市中消化というものを原則にしてその範囲にとどめるという鉄則は、末々とも変えないというたてまえで臨みたいと思います。
  31. 武藤山治

    武藤委員 現在市中消化可能だ——民間側といろいろと打ち合わせをおそらくしておると思いますが、二千五百九十億円の分については新聞などに報道されておりますが、明年度市中消化が可能だという民間側の額、限度、そういうものは大体どの程度をめどにされておるわけでありますか。
  32. 中尾博之

    ○中尾政府委員 ただいま明確な御意見として承ったものはございません。要するに、予算の問題につきましては、ただいま大臣からもお答えがございましたように、いろいろ検討しておりますし、その基礎になりますところの客観的ないろいろな条件、事情等も広く知られておるところでございますから、あらましどの程度国債が必要になってくるであろうかというようなことにつきましては新聞等でも論議されておりまするし、したがって、関係各業界の方々も相当真剣にこれを御検討になっておるということは承っておりまするが、まだどのくらいまでならどうであるというような責任のある明確な御意見といったものは承っておりません。しかし、いずれ政府といたしましてこれを確定いたしまする場合には、それらにつきましても、相当確度の高いそれぞれの見通しにつきまして御意見を承った上で最後の決定が出される、こういうふうに考えます。
  33. 武藤山治

    武藤委員 現在政府保証債と地方債は、残高はどのくらいあって、さらに年々の発行高というのはどのくらいありますか。
  34. 中尾博之

    ○中尾政府委員 政保債の累積は大体六千億円程度になると思います。地方債の分はいろいろな形がございますので、こまかいことは資料であれしますが、大体二兆円前後と考えます。さらにそれのこまかいものは後ほど資料でお出ししてもいいと思います。  それから、今後の問題ですが、政保債につきましても、これは財政投融資計画の一環の原資になっております。これについては増加が見込まれます。それから地方債につきましても、やはり地方財政計画上その規模は、国の財政とともに、あるいは国民経済とともにこれが成長してまいりますので、やはりこれは増加してまいるということ  でございます。
  35. 武藤山治

    武藤委員 いま数字をお聞きしたように、政保債六千億円、地方債二兆円、これだけのもののうち、特に私は大臣に考慮してもらわなければならぬと思うのは、地方債というものは、ほとんど地方の銀行あるいは信用金庫、そういうようなところからかなり借りておるわけです。今度国債発行をされると、そういう機関の金が中央に吸い上げられるために、地方債が非常に苦しくなり、地方自治団体に及ぼす影響というものは非常に大きいわけであります。この辺は大蔵大臣一体どんな認識の上に立っておるのですか、その点をひとつ明らかにしていただきたい。   〔金子(一)委員長代理退席、委員長着席〕
  36. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 たとえば、ことし二千六百億円の公債発行する、こういう場合におきましても、政府保証債は一体どうなるのだろうか、あるいは地方債のほうの消化はどうなるのだろうかということを十分考えながらやっておるわけです。本年で申しますと、突如として国債が二千六百億円近く出るわけでありますが、政府保証債のほうも同時に増額をする。これは政府保証債が八百億円ばかりふえるわけであります。それから地方債は公募債その他の形のものがありますが、含めて千五百億円程度ふえるわけであります。それらを総合いたしまして勘案いたしますときには、国債を二千六百億円市中で消化すると、他に波及をするという状態になってくるわけであります。そういうようなことを考慮いたしまして、資金運用部において二千六百億円の約半額を引き受ける、こういうことにいたしまして、地方にも、また政府保証債その他の民間債等にも何らの影響がないという状態においてこれを消化していこう、こういう考え方をとったわけでありまして、昭和四十一年度以降のことを考えるにあたりましても、同様の考え方で、みんなが順調にいけるようにということも、また公債発行額規定する上の一つの基準となる、かようにお考え願いたいと思います。
  37. 武藤山治

    武藤委員 ことしの例をいま具体的にお話しになって明らかになったことは、二千五百九十億円の財源不足をカバーするのに資金運用部資金を千三百億円ばかり使わなければならない。それ以上に市中に出すと、どうも圧迫になる。そうなると、来年の公債発行というものもそう多額のものを出すわけにはいかないという制約が市中消化の場合にある。それで、あなたは、国会ではないが、新聞などで発表しておる七千億円程度というものはやはり可能だ、こう考えていらっしゃるわけですか。
  38. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 一応、ただいまお話のような程度のものは優にこれを消化し得るというふうに考えております。おりますが、なおこれは、これを消化する相手方、つまり金融機関でありますとか、証券界でありますとか、そういう方面とも十分相談をいたしまして、この程度はだいじょうぶだという見当をつけた上で最後的な決定をする、こういう考えでございます。
  39. 武藤山治

    武藤委員 それから、大臣はインフレにならぬと言うけれども、物価がどんどん上がるというこの事実は、これは隠すわけにいかない。明年度元旦早々から消費者米価が上がる、二月十五日から運賃が上がる。私鉄の十四社も上がる、こういう傾向になっていくのでありますから、来年の物価騰貴率というものは相当のものになりそうであります。そうすると、国債の利回りを上回るような物価騰貴の時代に、国債をさらにどんどん発行していくことが、一体国民の貯蓄熱をあおるか、あるいは国債消化というものが期待どおりいくか、そういうような点を考えていくと、どうも物価問題というものに対して、大蔵大臣はこれから一年、二年、三年間ぐらいの物価騰貴の趨勢というものも国民の前に明らかにする必要がある。物価騰貴の傾向というものについて、ひとつ大臣の正直な見解を明らかにしてもらいたいのです。
  40. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 物価は、御承知のとおり、また御理解のとおり、その上がる要因の中にはいわゆる構造的要因といわれるものがあるわけであります。でありますので、これを完全に横ばいにしちゃうというようなことは、私はこれは当分困難であるというふうに思います。二%だ、三%だという程度の上昇は、しばらくの間はやむを得ないのじゃないかと思うのです。しかし、いかにも、本年度に見られるように、それが七%台であるというようなことは、これはきわめて寒心しなければならない問題であるというふうに考えておるのです。私は、そういうことを考えますときに、物価問題というのが当面の経済問題の最大のものであるとまで考えておるわけなんでありますが、しかし、同時に、今日われわれは不況を克服しなければいかぬ、こういう問題にも当面をいたしておるわけであります。不況克服、つまり今日の事態から抜け出るというためには、経済を刺激するという政策をとらなければならないわけであります。それがある程度物価政策に対しましてマイナスの面が出てくるということは、これは否定できないと思うのです。私は物価問題を重視するがゆえに、一刻も早くこの不況を脱出して、そうして全面的に物価問題を中心とした施策に取り組みたい、こういうふうに考えておるわけでありますが、経済が上向きの調子になるという安定した傾向が出てまいりますれば、直ちにそういう考え方に移行をしたい。来年はある程度物価問題につきましてはこの上げ幅を縮め得る年になり得る、再来年はさらにそれを進め得る、こういうふうに考えております。これを実現できないと公債政策にも大きな影響があるということで非常にあせっておるわけであります。
  41. 武藤山治

    武藤委員 諸外国の国債発行情勢などを読んでみても、物価がこう日本のように八%近い騰貴を示すというような事態では、国債発行した場合に、さらに物価騰貴に拍車をかける。これは心理的な国民に与える影響という点からも、特にいまそのいい例証が株の上昇であります。株界においては、国債発行されるということで、もうインフレ必至だ、日本資本主義はインフレーションによってこれを拡大していくんだという考え方が株に反映をしておると思うのであります。そういうような情勢でありますから、特に国民生活を守るという立場から、物価騰貴の問題について政府は適切な処置をしなければならぬのに、さっぱり適切な処置は行なわれていない。次から次へと公共料金の引き上げを認めている。こういう態度では、来年は本年よりも騰貴率を引き下げるなどということは、ことばだけのことであって、明年の物価騰貴はさらに高まると私たちは憂えております。大臣明年度は絶対本年度だけの物価騰貴率にはならぬと言うが、何か政府の適切な対策というものを考えておるのですか。何か名案、妙薬があるのですか。あったらそれをひとつ示してもらいたいと思います。
  42. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 公共料金の問題が出ておるわけです。国鉄、私鉄というような、それから米価の問題それから郵便料金の問題というような問題が当面話題になり、それが私は物価の面にも悪い影響を及ぼしておるということは、これは争えない事実だろうと思います。しかし、私ども考え方は、もうそういう公共料金問題というのはこれで一段落だ、しばらくそういう問題を起こさないような事態において物価問題と取り組んでいきたい、こういう考え方なんです。そういうことになりますと、ことしの状態とは気分的に非常に変わってくるのではあるまいか。ことしは昨年に比べますと七%台というのでありますが、本年度になってからの姿というものは、これはずっと横ばいなんです。去年の平均に比べるものですからえらい高いところにきておりますが、四月ごろからの状態を見ますと、そう上がっていないというような状態もあるわけであります。そういうようなことを考えますときに、当面問題になっておる公共料金なんかが一巡した後におきましては、私は相当安定した気分が出てくるのじゃないかと思う。また、流通面の対策、生産面の対策、そういう面におきましてもできる限りの対策はあわせて講じ、恒久的な物価対策の面にも貢献をしていきたい、こういう考えであります。
  43. 武藤山治

    武藤委員 一時半までという約束でありますから、広範な質問ができなかったわけでありますが、最後に、来年度予算編成にあたって、新聞などの報ずるところや、あるいは政府部内においても、年の途中で補正予算を編成する、あるいは給与のベースアップがある、そういうようなものを当初予算の中にある程度もう見積もっておいたほうがいいという意見などが報道されております。来年度財政予算編成にあたって何か従来と違った取り扱いを新大蔵大臣はやるのか、そういう点、変わった点が何か生まれそうであるかどうか、その辺の財政予算編成方針について、ちょっとお尋ねしたいと思います。
  44. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 世の中は動いておりますから、年度の途中におきましてどういう事態が起こってくるか、これは予断はできません。しかしながら、ことしのように税の落ち込みのために補正をしなければならぬというようなことは断じてないように、厳格にひとつ見積もり等をいたしてまいりたい、こういうふうに考えておるわけであります。なお、できましたならば、歳出面におきましても、適正な方法によって弾力性を与えるということもあわせて検討しておる次第であります。
  45. 武藤山治

    武藤委員 約束の時間がまいりましたのでこれでやめますが、財政法違反の疑いの問題点、公債発行がインフレに通じないという大臣の主張、私どもと平行線の点がたくさんありますので、私は質問を留保して、後日また大蔵大臣出席のもとにただしたいと思います。  以上で終わりたいと思います。
  46. 吉田重延

    吉田委員長 岩動道行君。
  47. 岩動道行

    岩動委員 私は、今回の特例法はわが国の財政史上きわめて重要な意義を持つ法案であると考えるものでございます。特に戦後初めての本格的な公債発行でもございます。しかも、今日の経済情勢また財政収入等の現況から見まして、この法案の成立いかんは、わが国の経済不況を克服するためにも、また国庫の資金を補充する意味におきましても重大な影響を及ぼすものであることを思いまして、本法を提案されたことに対しては、私どもはきわめて賛意を表すると同時に、またこの法案が提案された背景について最初に伺っておきたいと思うのでございます。  提案理由等によりますると、経済状況の変化あるいは税収の不足というようなことが法案の趣旨にうたわれておりまするが、この辺の事情につきまして、一応全般的な御説明をます承っておきたいと思うのであります。
  48. 藤井勝志

    ○藤井(勝)政府委員 先刻来大蔵大臣からいろいろ御答弁がありました中に、御質問の線に沿うたお話もございましたが、すでに岩動委員御案内のとおり、現在の日本経済状態は、過去におきまするいわゆる高度経済成長のいわば裏が出たと申しましょうか、こういう点が構造的なひずみとなってあらわれてきておる、これをこのままに存置せんか、日本経済はいわゆる縮小均衡の方向に転落せざるを得ない、これにてこ入れをする、こういう時代の経済的背景があると私は考えるのでございます。そういう時期に直面いたしまして、四十年度補正予算にあたりまして二千五百九十億円の租税収入等の落ち込みに対処して、これが景気対策を兼ねた手配をしなければならぬ、こういうことに相なっておるわけでございまして、むしろこの措置は四十一年度予算編成がすぐあとに続く現時点に立って、いわゆる将来のビジョンとしては蓄積のある企業、ゆとりのある家計という方向に向かっての基礎固めをしょう、こういうふうな時代の要請に対する新しい財政政策の進路である、このように御承知おき願いたいと思うのでございます。
  49. 岩動道行

    岩動委員 たいへん適切な御説明をいただきましたが、私は大体年度当初から今日の経済状況になることはかなり予想もされており、またその状態政府において的確に、迅速につかんでこれに対処していくべきではなかったかということを強く感じるものでございます。特に公共事業費の一割削減といったような措置をおとりになったその当時におきまして、すでに私はそのようなことをはたしてやってよろしいかどうかということについては、真剣に経済状況をお考えになっておやりになるべきではなかったか。やがて補正財源の不足ということも当然起こってくるわけでありまするから、それに対処するのに、ただ既定予算の削減という消極的な考え方でこれに対処をしていかれる、これは私は日本経済のあり方に対する認識について非常に反省をしていただかなければならない点が多分にあったかと思うのでございます。したがいまして、今回の補正の措置あるいは赤字補てん対策ということ、七月の景気対策をおとりになったことはきわめて適切であったと思うのでございまするが、引き続いてこれを臨時国会、当時の参議院選挙に引き続いた臨時国会においてむしろ直ちに補正予算を計上して、しかもこれを赤字補てんの公債でなく、財政法四条による建設公債としてむしろ発行すべきではなかったか、かような考え方も出てくるわけでございまするが、この辺に関して政府当局の御所見を承っておきたいと思います。
  50. 藤井勝志

    ○藤井(勝)政府委員 前段の御意見でございますが全く私も同感でございまして、六月に御承知のように内閣が新しい再出発をいたしまして改造されたわけでございますが、あの一割留保の問題につきましては、ちょうどその境目に行なわれてまいりましたことは岩動委員御承知のとおりでございまして、このつなぎは、過ぎ去ったことでございまして、いまから取り戻しはつきませんけれども、非常に一貫しない考えであった、猛省をせなければならぬというふうに思うわけでございまして、これがためにその後福田大蔵大臣になりましてから積極的に景気対策を行なわれ、繰り上げ施行あるいはまた一連の景気対策がなかなか思ったように実効を上げ得なかった大きな原因の一つは、地方公共団体が一割留保の線に従って段取りを変えなければならぬ、この事務的混乱が最大原因の一つであるというふうに考えますときに、先ほど申されました御意見と全く同感でございます。  そこで、それならばもう少し早く臨時国会でも開いて、現在の不況を乗り切るための経済体制を整える補正予算を組むべきではないか、こういう御意見でございますが、これは私は、できればそういう早期の臨時国会も望ましいことは御意見のとおりでありますけれども、十四年にわたる日韓問題という国際問題をかかえて、この結論を急がなければならぬという別の大きな政治要請がございましたので、それを済まして後急ごうというので、われわれは臨時国会の後半においてぜひ補正予算は通過いたしたいという考えで、懸命の努力を御協力をいただいてやったわけでございますけれども、これがいかんせんこのような事態に相なってきておるわけでございまして、その点はひとつ御了承をいただきたいと思っておる次第でございます。
  51. 岩動道行

    岩動委員 日韓国会においての御説明はまさにそのとおりで、われわれもこの予算案が成立しなかったことをまことに遺憾に思っておる一人でございますが、私が申し上げたのは、七月の景気対策をおとりになったら直ちにこれにさらに追い打ちをかけて補正予算をその前の臨時国会においておやりになるべきではなかったか、かように実は感ずるのでございます。と申し上げまするのは、大蔵大臣がたびたびこの暮れごろになればつま先上がりだとおっしゃっておったけれども、一向にどうも上がってこない。これは先ほども武藤委員もおっしゃったとおりでありまして、これがもし夏ごろにはっきりとしたもっと大きな手が打たれておれば、まさに年末にはつま先上がりで明るい正月を迎えて、日本国民は喜んで昭和四十一年度を迎える、こういう態勢ができ上がったものと思うのであります。この意味におきまして、大蔵当局が均衡財政にこだわり過ぎたと申しますると語弊があるかもしれませんが、当然ではありまするが、強い伝統のもとになかなかそれを踏み切れなかった。こういうときにこそ政治家である大蔵大臣あるいは藤井政務次官が思い切った踏み切りをしていただかなければなかなか前進はできないので、特に今後この点については十分なる反省をひとつお願いを申し上げておきたい、かように考えるのでございます。そのような意味におきまして、今回の財政処理に関する法律はもちろんすみやかに成立させなければならないと思いまするし、今後の一つの大きな教訓として、機宜に即した財政措置をとっていただくことを強く御要望を申し上げるのでございます。  そこで、若干法律論になりまするが、財政法四条、これは建設公債を認めておる法律の条文でございまするが、一体財政法におきまして、歳入欠陥が起こった場合に、それに対処する条文があるのかないのか。私はどうもないように思う。これは絶えず均衡財政でいくという財政法ができた終戦後の当時からいいまして当然の姿ではあったと思いまするが、しかし、財政処理する基本法としては十分な法体系としてでき上がっておったかどうか、この点についていささかの疑問を持つものでございます。そのような赤字補てんに対する、歳入欠陥に対する措置に関する規定がなかったために、先ほど武藤委員も言ったように、土俵の外から出た勝負をしていかなければならない。四十年度限りの赤字補てんの対策であるとおっしゃるけれども、四十一年度にまた赤字が出たらどうするのか。現行の財政法においてはおそらく処理はできない。また特例、こういう事態が予想もされないわけではございません。これはもちろん財政の歳入歳出の見積もりその他経済変動にも関係するのでありまするから、その見積もりについては十分なる配慮をいたしましても、なおかつ本年度のような事態が生じないとは申し切れないわけでありますので、この財政法規定にはたして欠陥なきやいなや、この点についての御所見を承っておきたい。
  52. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 財政法に歳入欠陥と申しますか、いわゆる決算上の処理についての規定があるかないかということでございますが、率直に申しまして、現在そういう歳入欠陥に対処する規定はございません。ところで、ないということで財政法はそれでは歳入欠陥の場合にどういうふうにしようといっておるのかという点になりますと、これはありませんからはっきりしないわけでございますが、一つには、結局そういう場合には歳出を切り詰めて、そして赤字の出ないような決算をするべきであるという思想であるということが一つの考え方かと思います。  それからもう一つは、いまおっしゃいましたような意味で、ある程度法律自体にそういう規定を欠いたという意味で欠陥があった、であるから、これは補足しなくちゃならぬというような見方があるかと思います。われわれは現在財政の歳入欠陥の点につきましては、むしろ財政法はその規定を置いてないということが、歳入歳出について、たとえば歳入欠陥の場合には歳出を切り詰めるというような措置を必ずやって均衡をさすというのが財政法精神であるというふうに考えております。
  53. 岩動道行

    岩動委員 同じような状態が将来起こったときには、財政支出を切り詰めることによってつじつまを合わせていく、これも一つの考え方でございましょう。それも時の経済の状況に相応しておるならば、これはそれでうなずける問題でございまするが、しかし本年度のような、同じような経済情勢財政収入状況の場合にはやはり切り詰めるということには限度がある。私は、本年度の補正3号におきまして各省が節約をいたしまして、そして相当部分を節約によって新規の財政支出に振り向けたということは、これは大蔵省の努力もさることながら、各省は非常につらい予算の切り詰めをしたのであって、これは各省に対しては十分に敬意を払い、また大蔵省としても切り詰めさしたことに対しては十分なる反省もし、また将来お返しもあるいはしてあげなければいけないと思うのでありまするが、そのような切り詰めだけが赤字を修正していく方法であるという考え方自体に対しては、私はやはり何か割り切れないものがあるので、この点につきましては、いまここで大臣もおられませんのに結論を出していただくことはできないと思いまするが、将来の基本法としての財政法のあり方として十分に御検討をいただきたい。これは財政制度審議会においても御討議を賜わりたいと思う点でございます。  そこで、いまのに関連をした問題でありまするが、大蔵大臣は、年度がかなり過ぎたあとでの赤字であったからこれは特例法でいくのだ、もしも年度の初めのあたり、あるいは夏ごろまでであったならば建設公債でいけたかもわからぬというようなニュアンスを私は感じたのでありまするが、その辺の大蔵当局のお考えを承っておきたいのであります。建設公債ということであり、またその金額にもよりましょうが、これは年度当初であるならばそれでいけるけれども、そうでなかったならば、やはりこういったような特例法でまかなわざるを得ない、こういうお考えであるのかどうか。
  54. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 大臣が先ほど来申されましたように、特例法でいくということをおっしゃいましたのは、年度当初ということではなくて、当初にちゃんと建設公債を出すということで公債政策を採用しておるような場合であれば、その年に同じようにその政策を引き継いで公債を出していくということは考えられるけれども、本年のように公債発行しないという方針で予算を編成して、そしてたまたま年度中に歳入が減ってきたというような場合に、これをやはり公共事業ワクがあるから建設公債でいくというのは、いささか強弁に過ぎるのではなかろうかという趣旨で、特例法でいくべきであるということを申し上げたというふうに思います。
  55. 岩動道行

    岩動委員 それならば、年度当初から建設公債、四条公債発行するということで昭和四十一年度はおそらくそれで出発されるでしょう。そういう場合に、不幸にして再び同じような歳入欠陥が起こった場合に、もうすでに建設公債発行しておるんだから、赤字補てんの意味での実質的な赤字補てん公債もそれに乗っけてやる、こういうような便乗主義がまた発生してこないとも限らない。したがって私は、大臣がああいう答弁をされて、説明をされておることに対しては若干の疑義があるわけであります。この辺はもう少し思想をはっきりとしていただかなければならない、かように思うのでありまするが、政務次官、どうお考えになりますか。
  56. 藤井勝志

    ○藤井(勝)政府委員 ただいま岩尾次長から答弁をいたしましたように、年度当初において、四条一項のただし書きによって公債発行する、こういった予算編成の方針に従って新しくスタートを切ります。いま御質問の趣旨は、それから後に足りなくなったとき、それに便乗した赤字補てん債がまぎれ込むのはないか、こういうふうな御疑問でありますけれども、ここはやはり公共事業費というものの総額の中でそれが行なわれる場合は、決してまぎれ込んだものではない、財政法精神、ただし書きの線に沿うてこれが行なわれたものであるというふうに理解すべきである、こういうふうに思うわけでございまして、今後、最初公債発行するということをきめればあとはしかるべくやれる、安易な財政処理ができるという、こういう御心配はなくて、問題はやはり歯どめの問題で、市中消化、建設公債、こういう線に沿うて行なわれる以上は、健全な財政運営であるというふうに理解すべきであるというふうに思うわけでございます。
  57. 岩動道行

    岩動委員 どうもただいまの御説明では私まだ納得できるような線は出てこないのでございまするが、やはり建設公債建設公債として、これだけの公共事業を今年度はやるのだ、こういうことで出てくるわけであります。ところが、それとは全然別個の事由によって、また経済状況の変化によって税収が千億も二千億も減った、しかも節約でもまかない切れない、こういうときに、やはり赤字補てんの何らかの対策を講じなければいけない、その場合に、建設公債の額をふやすことによってやるということは、公債発行についてのすりかえであると申しますか、ごまかしであるというか、そういう印象を受けるのであります。この点は、やはり明確に公債発行の対象を、あるいは原因を突き詰めて、それに対応した公債発行を行なわなければ乱に流れるおそれがある。大蔵省としては十分にこの点を考えて、したがって私は、財政法四条の特例ということだけを考えるほうがむしろ歯どめになるというお考えが正しいか、あるいはそういう赤字補てんのためには新たに条文を起こしていくほうがよろしいのか、十分に検討に値する問題である、かように考えておるので、この点についての御検討をさらに、しかも早急にお考えいただかなければならない。四十一年度公債発行高がきわめて巨額にのぼり、しかも国民としてはインフレになるおそれも非常に心配をしておる今日でありますから、これは時間をかけて、一年も二年も先にやるのではなくて、やはり来年度公債発行とあわせて、この問題についての早急なる検討、そしてそれに対する措置をお考えいただかなければならない、かように思うのであります。
  58. 藤井勝志

    ○藤井(勝)政府委員 御意見でございますから、検討をするにやぶさかではございません。ただ、一つ御了解を得ておきたいと思いますことは、私が先刻答弁をいたしましたことと前提が違うわけでございます。ただいま岩動委員から御質問がありました前提は、また来年ことしのようなことがあった時分にはどうするかということが前提の御質問のようでございますが、私は、四十年度補正第3号が対処せんとする事態というのは、まさに臨時の異例の経済状態である、こういったことは今後来たらしめてはいけないし、同時におそらく来ぬであろうというふうに思うわけでございままして、四十一年度並びに今後は四十年度のこの苦い貴重な経験を十二分にしんしゃくをして、もちろん現在予算編成に取り組んでおります四十一年度においては税収の見積もりというものは十二分に慎重の上にも慎重を期して現在作業が進んでおるわけでございます。したがって、そういうふうなことを考えた場合、ことしのような異例な事態に対処するために新しく財源を別途得る法律をつけ加える、あるいは別個につくる、こういったことはむしろ財政法精神に相反する誤解を受ける、こういうふうに思うわけでございますので、私は、財政法の主として第四条一項ただし書き、こういった問題で今後は処理し、新しい財政政策というものはこの線に沿うて展開されるものである、このように考えておることを御了承願いたいと思うのであります。
  59. 岩動道行

    岩動委員 まさに政務次官のおっしゃるように、新たに赤字補てんに関する条項を設けるということは誤解を招くおそれもあろうかという議論も私にもわかります。したがいまして、この点については、財政基本法である財政法でありますから、十分に慎重に、しかも早急に御検討を賜わりたい。と申しまするのは、このほかに私は続いて御質問申し上げたいのでありまするが、予算の弾力性といまの単年度主義がはたして今日の流動する経済において十分に対処し得るような財政法であるかどうか。フィスカルポリシーを使っていかなければならないこういう事態におきまして、今日の基本法である財政法が適切な内容のものであるかどうか、こういう点からも財政法の根本的な再検討を実はお願いしたい、かように考えているわけであります。  そこで、ます今回赤字補てん公債発行するわけでありまして、これについては、先ほど申したように、各省の非常な涙の出るような予算の節約の協力があって初めてあの程度金額でおさまったわけでありまするが、今後来年度の巨額の公債発行をするにあたりましては、従来の既定経費と見られるような予算につきましては、さらに十分に検討して、冗費を省いて、そして国民の負託にこたえる、こういう予算をつくっていただかなければならないわけでありまして、これについては補助金の合理化に関する答申も大蔵省には出ているはずでありまするが、来年度予算編成におきまして、まずみずから経常費をどのように節約をして効率的にやっていかれるお考えであるか、これをひとつ承っておきたい。
  60. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 来年の予算の経常費の問題でありますが、われわれといたしましては、従来、たとえば一割削減というようなことで閣議で御方針をおきめいただいて、一様に補助金、庁費、旅費等を削減するというようなことをやったこともございます。しかし、来年につきましては、もちろん既定の経費で不要のもの、むだなものはできるだけ減らすというためには全力を尽くしますけれども、いまのような一律に全部やっていくということを頭からやっていこうということは考えておりません。経費の内容によって必要なものは計上し、必要でないものは計上しないということで査定をしていきたい、こういうふうに考えております。
  61. 岩動道行

    岩動委員 補助金の整理等についても伺いたい点もございますが、これはむしろ予算委員会のほうの分野かと思いまするので、ここでは質問を省略をいたしたいと存じますが、予算の弾力性の問題に関係しまして、予備費の計上金額を今年度はかなり大幅に見たわけであります。したがいまして、逆に補正3号においては、予備費からも五十億ですか普通財源に回した、こういうような措置がとれたわけでありまして、今後経済規模が拡大し、また経済変動がかなり予想される今日におきましては、予備費というものをさらに活用する余地を残す、予算に弾力性を残すという意味から、予備費の増額ということをさらに御検討をいただきたいと思うのであります。  また、予算の単年度主義ということも重要な課題であると思います。またあるいは臨時行政調査会におきまして、予算の効率的な使用、そして計画的な使用というような観点から、事業別予算制度を導入したらどうかという勧告が出ておるわけでありまするが、これらの点に関連しまして、大蔵省の今日の御所見を承りたい。
  62. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 第一点の予備費の問題でございますが、おっしゃるように来年の予算を検討いたしました場合に、来年のいろいろな補正財源というものをむしろ公債発行いたすわけでございますから、なかなか補正の機会もないということであれば、最初予算にその分を見込んでおく必要があるという意味で、その弾力を予備費に計上してはどうかという御意見があるかと思います。われわれもできるだけそういう意味で、来年は補正のチャンスもないと思われるので、予算自体にそういう要因を取り込んでいきたい、それには予備費に計上するのが一番いいのではないかという意味で、できるだけ予備費の増額をはかりたい、かように考えております。先生も御存じのように、予備費は、従来大体二百億円という程度でまいってきまして、だんだん予算全体の規模もふくらんでまいり、一昨年三百億円になりまして、去年五百億円ということにしたわけでございます。災害あるいは公務員のベースアップ等というようなことを考えますと、なかなか五百億円ではむずかしい。その辺全部盛り込めるような予備費が計上できるかというと、これもむずかしいかと思いますので、これはむしろ全体の規模がどういうふうにきまるかということできまっていく問題かと思いますが、事務当局といたしましては、できるだけ増額をしたいということで作成するつもりでございます。  それから、単年度主義の問題あるいは事業別予算についての御質問でございますが、これも主計局のほうでは、従来からいろいろと勉強いたしておるところでございまして、財政制度審議会においてもこの点について御諮問をいたしまして、特に法制部会では御議論をいただいております。なかなかいい制度であり、導入したいという気はあるのでございますけれども、何と申しましてもこの予算がずっとこういう形で従来からきておりますので、これを急に切りかえていくというのはいろいろな摩擦もございますし、なおもう少しよく検討して、その辺の関連を考えた上で見ていきたいというつもりで、目下鋭意検討しておるところでございます。
  63. 岩動道行

    岩動委員 いまの事業別予算制度でありますが、来年度は私は一つのチャンスではないかというふうにも考えるのであります。公共事業費をかなり大幅にふやしてまいるということ、しかもこれを公債発行によってまかなうという、そういう新事態に対処して、やはり新しい考え方公共事業を遂行するための予算制度というものを十分に検討しなければならない。いま岩尾次長が言われましたように、重大な問題であるから慎重に検討したい、これはもう常套語であって、こういうことでは年々が同じことになる。やはりこの際思い切った方向に向かってみる。私は公共事業を全部事業別予算制度に切りかえろということは、これはなるほど無理でもあるし、また経験もないわけでありますから、全部とは申しませんが、しかし、すでにある程度それの芽ばえみたいなものもあるわけでありますから、ひとつモデルケースでもいいからやってごらんになることも必要ではないか。一般の事務官庁においての事業別予算制度、これはもちろん今日においては考える筋のものではないと思いますが、公共事業、特に継続的な公共事業については、たとえば八郎潟の干拓事業といったような長期の、大規模なああいう事業についてはやはり取り上げていったらどうか、かように考えますので、この点も、来年度予算編成には間に合うかどうかわかりませんが、少なくとも真剣に取り組んで、その一つ二つをまずやってみる、これだけの努力と誠意をひとつお示しいただきたいと思うのでございます。
  64. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 先生、外国の制度をいろいろとごらんいただきまして、財政制度審議会でございますが、全部御意見をいただいておりますので、われわれも事業別予算についてはよくお気持ちは拝聴しておるわけでございますが、何と申しましても事業別予算の一番いいところは、その事業が実際上予算最初に考えた効果を発揮しておるかどうかということを測定するような要素を出していくというところにねらいがある。そういう意味では、現在ある各種の、たとえば決算の報告説明でありますとかそういったものに、事業ごとにどういう成果が上がっているかということをかなり報告しておりますので、外国で行なわれておるように、全然切り離した制度として予算上取り上げるかどうかという点はなお検討いたしたいと思いますが、御趣旨のように事業自体の効果というものを判定して予算を作成していくという要素は、できるだけ現在の制度を取り入れて達成できるような姿に持っていきたい、こういうことでございます。
  65. 岩動道行

    岩動委員 次に、減債基金制度に関して伺いたいのでありますが、これは先ほど武藤委員も若干触れられたのでありますが、ただいまは三十八年、三十九年に発生した剰余金についての繰り入れに対する特例法ができておるわけであります。これは二カ年限りでありますので、昭和四十一年度には失効してしまう。そうすると、また元に戻って、現在の特例である五分の一から二分の一に戻る、こういうことに相なるわけであります。ところで、この二分の一から五分の一に繰り入れ額を減らしたということは当時の説明の一つとしては、国債発行残高が少ないんだ、こういうことも一つの理由であったと思います。もちろんその背後には、当時の財源の苦しさというようなこともあったと思いますが、少なくとも大義名分としてはそういうこともあったと思うのであります。したがいまして、この制度は暫定的なことになっておりますので、今後相当な公債発行高になっていくので、この減債基金制度をどういうふうにしていかれるお考えであるのか、財政制度審議会等においても議論もあり、またそのようなものは必要ないんだという意見もあるかと思うのでありますが、この点に関連して、ひとつ政府の御意見を伺いたいと思います。
  66. 藤井勝志

    ○藤井(勝)政府委員 減債基金制度のいまの御意見ですね、これは今度いよいよ本格的な公債発行の年を迎えるわけでございますので、従来の減債基金制度の検討の上に、新たに発行される国債に対する償還計画、こういった問題を含めて、いま財政制度審議会でも御検討願っておりますので、ここ昭和四十一、二年以内にすっきりした線を出すべく現在検討中、こういうことでございますので御了承いただきたいと思います。
  67. 岩動道行

    岩動委員 この機会に伺っておきたいのですが、減債基金制度といったようなものは要らぬのだというような議論があるやに聞いておるのでありますが、これは一体どういう根拠からそういう意見があるのか、またこれに対しての今日の段階における大蔵省の御所見があったらひとつ承っておきたい。
  68. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 先ほど御質問にございました剰余金を含めまして。減債基金制度についてお尋ねでございますが、減債基金につきましては、一方におきましては、諸外国みな持っておるわけでありますがその公債制度を見ますると、ほとんど有名無実で実行していないか、あるいは全然そういう制度がないというところが大半でございます。そういうような情勢であるということ、それから実際に公債発行していきます場合に、たとえば剰余金の二分の一でございますとか、あるいは一定額、日本でやっておりましたように万分の百十六というものを入れるというようなことでいきました場合に、実際上公債がどんどん毎年出ておるようなときには、それで積み上げていきましても、むしろその金で新しい公債発行するよりむしろ新しい公債発行しないで減らすというほうに使ったほうがいいのではないかという意見もございます。まあ減債基金制度というものは、国債の信用力を確保するということ、あるいは実際に国債償還をやる場合に、その平準化をはかっていくというような趣旨で置かれるわけでございますけれども、実際上の運用を見ていけば、一方におきましていま申し上げたようなこともあり、また逆の議論でございますが、ある程度苦しい中で、もちろん新しい公債発行するよりも、その金で新しい公債発行するのをやめたほうがいいという意見もあります。公債自体の歯どめとしての一定額を繰り入れるということが、公債発行の歯どめになるのだというような意見もございます。そういったところがおもな意見でございます。
  69. 岩動道行

    岩動委員 そこで、これは多少将来にわたる問題にも関連するのですが、いまのような減債基金制度、あるいは一般会計からのそういう公債償還財源というものをどう見ていくのか。これは景気のいいときには大いに返すし、景気の悪いときには返さぬというようなアトランダムな考え方でいっていいものかどうかという問題があろうかと思いますが、国民所得、あるいは国民生産、GNPに対して一体どの程度公債が大体適当なものであるか、これはきわめてむずかしい問題でございまするが、諸外国の例等をあげまして、一つのめどをもしつけられるなら、ひとつこの機会にお答えをいただきたいと思うのです。  なお、昭和三十九年度あるいは昭和四十年度の今回の赤字公債発行した場合における公債発行残高、これは内国債、外国債合わせまして、さらにその場合には政保債を入れるか入れないかという問題もございますので、政保債を入れた場合にはその割合がどの程度になるか、これをひとつお答えいただきたい。
  70. 中尾博之

    ○中尾政府委員 公債発行残高と総生産あるいは財政規模との間にどの程度の割合があったらよろしいかという問題は、いろいろ学問的な御議論もあるようですけれども政府といたしましてそれらについて外国の資料あるいは実情等を十分に調べてはおります。おりますが、これはまたそれぞれの事情がございまして、わが国の場合にはたしてどこまでがよろしいかというようなことは、実は結論を持っておるわけではございません。これは諸外国に比べましてわが国におきましては、御承知のとおり終戦以来ほとんど公債を出しておりません関係上、公債残高がきわめて少ないのでございます。したがいまして、諸外国とは比較にならない低率にあるわけでございます。したがって平らに考えますれば、そういった意味からするところの国債に対する考え方といったようなものは、当分の間問題にならないというのが実情でございます。現在のところ、今回の公債発行いたしまして国民生産に対する割合は四・二%ということになっております。政保債を加えましてもこの数字はたいして変わりません。そういう状況からいたしまして、特にその点は問題はないと思います。ただ問題は、むしろ先ほど来御論議がございましたように、現実国民経済の状況あるいは金融的な資金の需給関係といったようなもの、金の面、物の面、両方から見まして、適正な財政規模の中におきまして、さらに金融的に適正な規模において公債発行する、しかもその残高が消化されているという状況が確保されることが一番大事なことがあるというふうに考えます。しかし、もちろん公債発行いたしますと利払いもかさんでまいりますし、いずれ元金償還も出てまいりますので、財政規模について長期にわたりまして常に慎重な考慮を払っていくということは当然でございます。それらの観点を決して忘れておるという意味ではございませんが、数字的に申しますとたいへん低いものでございますから申し上げた次第でございます。
  71. 岩動道行

    岩動委員 いま一問で私の質問の前段と申しますか、総論的なものを終わりたいと思います。  この法律が成立しない場合の影響と申しますか、いろいろな不測の事態が起こってくると思います。その点について少し詳しくお話を承りたいと思うのであります。成立するとして、これが年末きわめて押し迫った時期にあります。二十八日は御用おさめでもあります。そういったような点、あるいは公債発行をするための準備としての期間の問題もございましょうし、あるいは年内に成立した場合に、一月中に市中の金融状況を見て発行しなければならないというような問題もございますので、これらをひっくるめて、この法律が何日ごろまでに成立しないとこういうことになるというようなところを、ひとつはっきりとお示しをいただきたいと思います。
  72. 中尾博之

    ○中尾政府委員 御質問でございますので私どもの段取りについて申し上げます。  法律案審議についてお願いを申し上げる立場で申し上げさしていただくのでございますが、第一は、一番緊急の問題といたしまして交付税特別会計に対するところの借り入れ金規定がございます。これは前々国会ですでにからになっておるわけでございます。三百億円というものの支払いがございませんと、地方公共団体の最終的な収支のつじつまも合いませんが、同時にこの暮れの資金の手当てができないわけであります。現実にはこの法律が通りますと、これによって借り入れ金をさせませんで、資金運用部から借り入れをいたす前に、場合によりますれば国庫余裕金でつなければつなぐというような方法も考えられます。しかしながら、いずれにしましても、年度内の金しか政府にありませんから、この法律の成立がおくれますと、それもできない、したがって、金を借りることもできない、政府の内部でこの特別会計につなぎの金をつけてやることもできない、現実に地方に金が届かなくなります。また、地方におきましても、金がいずれ借りられる、特別会計で金が借りられるものである、その金は政府から届くものであるということが確定いたしておりますれば、また別途地方地方の金融もつくかと思いますが、それの担保もございませんという状況になります。そこで、二十八日が御用おさめでございますが、それまでの間に手続が済みまして、国からは金が届き、あるいは地方公共団体におきましてもこれを受けまして、同時にこれを民間に支払うという手はずが整っておりませんと、実は支払いに滞りが起きます。三百億円程度ということになりますと、全国にわたります支払いの遅延と申しますか、に対する影響は相当ございますと思います。支払いを受けますほうの業者といたしましても、立場の強い方はよろしゅうございますが、比較的経済的な立場の弱い方にとりましては、この決済関係の遅滞によりまして相当深刻な事態が予想されるわけでございます。この点をひとつよろしく御理解をいただきたいとお願いする次第でございます。  それから、その次は国債の問題でございますが、国債はこの年度の途中におきまして生じました税収の減少を補うというものでございますので、補正でお願いした次第でございますが、当然これは御審議議決を賜わらなければ実施ができないわけでございます。したがって、どうやりましても、段取りとして来年の一月から三月までの間、いわゆる第四四半期だけしか使えるマーケットがないのでございます。そのうちで、一月と申します時期が実は最も適当な時期でございます。と申しますのは、十二月におきまして、第三四半期の最後にこれが膨大なる財政の散超によりまして民間に資金が出てまいる、それが一番ピークに達するのが年末でございます。同時に、年末の決済資金といたしまして、日本銀行から特別の貸し出しワクを通じまして、また膨大な資金が散布されるのが年末でございまして、これが一月になりますと、ほっておきますと、自然に日本銀行に還流しあるいは回収されるという時期に当たりますので、この時期をねらいまして公債市中消化をはかります場合におきましては、最も円滑に、その波及する範囲が最も最小限度に、きわめてスムーズにまいるのであります。一方で、御承知のとおり、七月以来景気対策をやってまいったのでございますが、その関係上、従来ございました政保債の募集あたりも、これをなるべく繰り上げまして、この十二月までですでに御議決を得ておりますワクを全部消化をいたしております。そして、この一月−三月のマーケットをあけてあるわけでございます。しかし、なおこの追加をお願いしております約七百五十億円の——政保債と十億円の地方公募債、合わせて七百五十億円というものを消化しなければならないのでございます。これの関係も、予算がおくれますと非常にむずかしくなってくるわけでございます。これが予算のほうだけ通りましても、このほうはそれぞれの政府関係機関の手元の都合がございまして、これを一月にフルに利用するというわけに参らないのでございます。そういう関係がございまして、一月のマーケットが利用できないということになりますと、そういうきわめて良好な状態をほとんど見のがさざるを得ない。それから民間の社債につきましても、相当好調に発行いたしておりますが、調べてみましたところ、一月の需要はそう多くございません。特にこれをふやすというようなことは絶対にできないようでございます。そういうような状況でございますので、結局政保債もたいして出せない、国債も全然出せない、社債もふやすことができないということで、一月を過ごしますと、それらの関係の所要の民間資金の公募によるところの吸収はあげて二月ないし三月にかかることになります。結果におきましては、一月に四、五十億円ほど消化し、残りはあげて二、三月に消化するといたしますと、消化した最後の姿は同じといいますればそれまででありますが、マーケットの様相がだいぶ二月、三月になりますと一月とは変わってまいります。財政は揚げ超になってまいりますし、民間のほうは日銀から場合によりましては若干の資金が供給される時期になるわけであります。こういう時期に公債発行するということになりますと、非常にそこに取り扱い上むずかしい面が出てまいりますので、一月に発行いたします場合に比べますと、非常にまずい状況になるものでございますから、そういう点でぜひ一月に発行をいたしたい。一月の発行ということになりますと、どういたしましても、この一月の初め、五日から十五日あたりを募集期間に予定いたしまして、二十日に入金という姿が、一月の毎日毎日の金の流れからいたしまして、税金でございますとか、あるいはそのほかの支払い関係等を見まして、市中からあげるのに最もスムーズにいく時期にあたっております。そういうような関係でぜひそういう段取りにいたしたいと思うのでございます。また、それが政府にとりましても、また金融界あるいは国民各位の間の決済関係に対しまして最も親切な、ぐあいいい方法になるわけでございますから、そのためにはどういたしましても、この基本になりますところの法律をこの年内なるべく早く上げていただきまして、シンジケート関係の結成、これとの正式の調印ということをいたしませんと、こまかいことがきまりません。こまかいことさえきまりますれば、五日から証券業界の方々はお客さんからもう前金で金を受け取ってどんどん募集が進んでいくわけであります。ところが、それができませんと、その点が全然動きませんから、一、二月のマーケットは使えなくなるということになる。そういう事情がございますので、国債発行の段取りから申しまして、特に子、の消化、わけてもそのうちの個人消化ということについてお考えをいただきまして、まことにかってでございますが、ぜひとも一日も早くひとつ御審議をお願いいたしたいとお願いいたす次第であります。
  73. 岩動道行

    岩動委員 ただいま詳細な御説明を承りまして了承をするわけでございますが、私どもといたしましても、この法律が成立しない場合の影響を考えますと、国、地方を通じての財政に非常に重大な問題を起こすということ、あるいは経済不況を切り抜けるための重大な手段と時期を失してしまうということ、あるいはまた、国家公務員、地方公務員に対してせっかく人事院勧告が出て、九月からこれを実施してやろう、こういう気持ちで財政措置もとっているにもかかわらず、これも実行ができなくなってくる、非常に重大な問題をはらんでいると思うのであります。あるいはまた、ただいま御説明がありましたように、政府の支払いがストップする、年末に不払いになってしまう面が出てまいりますれば、大企業はまだしものこと、中小企業、零細な下請業者等が非常に困ってしまう、あるいは物品を納入した零細な小売り業者が参ってしまう、こういう事態も起こりかねない。したがいまして、私はこれらの点から見ましても、ぜひともこの法律は早急に成立させるべきものではないか、かような印象を持つのでございますが、さらにこの法律が年内に、しかも適切な時日の範囲内において成立しなければ消化もむずかしい、消化の面からも時期を失してしまう、タイミングを失うということになりますれば、非常に大きな社会問題まで引き起こすことになろうかと思いまするので、この点は、私もただいまの御説明は十分に了承ができるところでございます。  そこで、私は今度は公債の引き受け等に関して若干の質疑をいたしたいと思いまするが、今回の公債発行に関しましては、その利率、発行価格あるいは償還期限——償還期限は、補正3号ですでに七年ということで、わかっております。また、先ほど説明もございましたが、この利率について、あるいは発行価格について、すでにシンジケート団とある程度の話し合いができている。この法律が通過すれば、正式に契約を結ぶための内容の段階がある程度進んでいるとも聞いておるわけでございまするが、これらの点について説明をしていただきたい。  なお、これに関連しまして、この財政特例法の附則で、国債に関する法律の一部を改正する条項がございまするが、それの趣旨を御説明いただきたいと思います。
  74. 中尾博之

    ○中尾政府委員 公債発行条件に関しましてはただいま申し上げましたような段取りでございまするので、国会の御議決を待ちましてこれを実施に移すべきものであることは当然でございまするが、実際問題といたしまして、国債発行は久しぶりのことでございまするし、諸般の関係が、いろいろ初めてのことでございまするので、検討を要する点が多々ございます。そういうようなことから内部で準備を進めておる次第でございます。  なお、シンジケート団との間に条件をきめることに相なるわけでありまするが、これも実は、御議決をいただきませんとこれを正式にきめることはできないのでございます。それからまた、これがきまりませんとシンジケート団そのものの編成もできないわけであります。無条件でシ団を編成して、無条件で引き受けの責任をとるということは、これはあり得ないことでございまするので、これはいたし方ない次第でございます。したがいまして、御議決を賜わるということを期待いたしまして、事前にシンジケート団に加盟すべきところの希望を持っておられる各業界の代表の方といろいろ御相談は進めておるのでございまして、ただいまお話のございました条件といったような点も、実はそういう段階の話にとどまるものでございます。  条件につきましては、券面の利率は年利六分五厘、発行価格は百円につき九十八円六十銭、償還期限は七年という線で、大体この引き受けられるほうの側とそれから発行いたすほうの国の側との間で意見の一致を見ておる次第でございます。  なお、シ団の側におきましては、この条件を前提にいたしまして、加入のメンバー、あるいはそれぞれのメンバーがお引き受けになりまするところのシ団内部の約束によりますところの分担の割合というようなものも、お話が進んでおるようでございます。
  75. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 国債に関する法律についての改正をやっております点について御質問がございましたので、お答えいたします。  国債に関する法律と申しますのは明治三十九年の法律でございまして、従来、わが国で公債発行いたしました場合に、利率等の決定は、現在の憲法、財政法によりますれば、法律をもってきめなくちゃならぬということになっておりますので、そういう国の債務になるようなものの決定は法律に基づかねばならぬわけでございますが、その法律に基づいて大蔵大臣が定めておるのは、どの権限、法律に基づくのかということにつきましては、この三十九年の国債に関する法律第一条によって定めておったわけでございます。  ただし、この条文は、ちょっと読み上げてまいりますと、「国債ノ起債、元金償還、利子仕払、証券及登録二関スル取扱手続ハ大蔵大臣之ヲ定メ日本銀行ヲシテ其ノ事務ヲ取扱ハシム」、こういう規定になっておりまして、国債の利子支払いに関する取り扱い手続はというところで、はたして利率等の決定も定められるのかどうかという点にやや疑義もございまするので、この機会にこれをはっきりさせたいということで、「国債発行価格、利率、償還期限其ノ他起債二関シ必要ナル事項並二元金償還、利子仕払、証券及登録二関シ必要ナル事項ハ大蔵大臣之ヲ定メ」というふうに、はっきりと利率については大蔵大臣これを定むというふうにきめたわけでございます。
  76. 岩動道行

    岩動委員 そうしますと、いま岩尾次長の説明によれば、従来の法律でやれないことはなかったけれども、いよいよ本格的な公債発行になると、なかなか疑義も出てくる。こういうことから、この際、一応疑義のないように改めておこう、こういう趣旨であって、従来の大蔵大臣がきめておったことは間違いではない。なお、間違いでないことを今回の法律によって、何と申しますか、追認をするというかっこうではないと思うのですが、何かこれを直すということが、過去は間違っておったのじゃなかいという印象も与えないではないんですが、その点はどうなんですか。
  77. 中尾博之

    ○中尾政府委員 決してそういうことではございませんが、これは本来の意味実質的な改正ではございません。表現の改正でございます。何分にも明治三十九年の法律でございまして、この法律ができましたときは、当時いろいろな規則がございましたようですが、それを国債発行に関する基本法としてこれを定めたものでございまするが、いま申し上げましたような表現で、当時といたしましてはもちろんこれで疑いがなかった。「取扱手続」という中にすべてを含んでおったのでございますし、戦前の公債はすべてこの規定に従って発行いたしておりました。それから戦後の公債も、特に外債等特別な法律のあるものは別といたしまして、この規定によって実施いたしておりました。  そういう意味で、別に内容的にも、それから法律といたしましても疑いはないのでございますが、古い表現でございますから、現在の感覚から申しますと、もう少し明確にさらに内容を分解いたしまして、どなたがごらんになってもわかるようにという表現に直すことが適当であろう、しかも、戦前はこれでやっておったと申しましても、戦後だいぶ長い間、本格的な意味公債発行いたしておらなかった次第でございますが、今後、ことしまずこういう意味公債発行し、さらに来年度は積極的な意味公債政策を導入して、これによって財政を運営してまいるという際でございまするので、いろいろ検討いたしまして、このままにしておくという考え方もあったのでございますが、いまお話のような、かえっていままでのやり方に疑いがあるのではないかという新しい疑問を招くこともいかがかという考え方もございました。しかし、やはり新しい時代の財政を運営してまいります場合には、国民各位の十分な御認識と御理解を得てやっていただくべきものであろうというふうに考えまして、この表現を明確に、詳細に改めたということに尽きるのでございます。
  78. 岩動道行

    岩動委員 そこで、公債の消化の方法でございまするが、市中消化として、大体シンジケート団にまとめておやりになる。それが約半額になる。残りの半分が預金部引き受けと申しますか、そういうかっこうで処理をされるという形になると思うのでありますが、預金部のほうで引き受けるのには、手持ちの金融債を処分して国債を持つということになると実は聞いておるわけであります。はたしてそうでありますか。
  79. 中尾博之

    ○中尾政府委員 今回発行いたします国債につきましては、これを資金運用部を含めて市中消化に持っていきたい、日銀引き受けは絶対にとらないというのが当初からの方針でございました。しかしながら、金額におきまして、全体といたしますればいろいろ御議論もあろうと思いますが、しかし、何分にも第四四半期に集中いたしましてこれを発行いたします関係上、できればなるべく市中の消化の分は小額にとどめたいという気持ちがございましたのが一つ、それからもう一つは、政府内部におきまして、財政財源には使えない金でありましても、運用すべき資金として余裕があるならば、まず民間から拝借をいたします前に、政府において預託を受けております金でなるべくこれを引き受けていくということが、またさしあたりしかるべきことであろうということで、資金運用部で引き受けることにいたした次第でございます。  なお、資金運用部の金繰りといたしましては、たまたまそれとは必ずしも関係はないのでございますが、金融調節上、日本銀行におきましてオペレーションを行ないます場合、その材料といたしまして、資金運用部がたまたま持っておりますところの、市中に流通いたしておりますのと全く同質の金融債がございました。これらにつきまして日本銀行のほうから御所望がございました。そういうような関係がございましたので、それが見合った話になっております。別にその間にどっちが先であるというような関係はございません。しかし、たまたまそういう事情でございますので、政府といたしましても、かかる運用資金をもってこの過半を消化するという計画を立てることができたというのが実情でございます。
  80. 岩動道行

    岩動委員 そこで、今回の特例法ではもちろん日銀の引き受けはしない。つまり、財政法第五条の規定は、この特例法によって発行する公債についても当然適用がある、まずかように解釈してよろしいかどうか、また、解釈すべきだと思うのでありますが、この点について疑義は全然ないのかどうか。特例法によって発行した公債は、特例法であるから、したがって第五条の適用もない、かような解釈も成り立つという意見も必ずしもないわけではないので、その点についての御意見をお聞かせいただきたい。
  81. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 財政法第五条では、公債その他については日本銀行に引き受けさせてはいけないという規定がございます。ただし、国会議決を経た場合はかまわない、こういう規定でございまますが、その規定は、現在の特例法に適用があるかというお話でございますが、もちろん特例法でございますから、財政法規定を排除しておる面もございます。しかし、財政法規定を排除していない面におきましては、現在の財政法がそのまま適用されるわけでございますから、五条の規定は当然適用があって、やはり日銀に引き受けさせちゃいかぬという規定が動いておるというふうに解釈しております。
  82. 岩動道行

    岩動委員 そこで、日銀引き受けは、この特例法によるきわめて異例な公債発行についても、当然、基本法である財政法第五条の規定の適用があるというふうに解釈をすることについては私も同意をいたすものでございますが、いまの預金部の引き受けなども、実はいま巧みな御説明もあり、たまたま出合いがあったからよかったのでありますが、そういう出合いがなかったときには、どうも日銀引き受けの多少まやかしと申しますか、市中では千三百億円くらいしか消化できない、しかも短期間だからどうにもそれ以上は引き受けてもらえそうもないということで預金部にこれを押しつけて、そしてその預金部も、はけ口は日銀引き受けというかっこうでいく、たまたま日銀としては、売りオペ、買いオペの材料としてほしいんだというお話があったからこれは救われるようなものの、どうもそこら辺に日銀引き受けのにおいがしないでもないような感じがするので、この辺は、そうじゃないならそうじゃないということを、もう一度ひとつはっきりと御説明をいただきます。
  83. 中尾博之

    ○中尾政府委員 資金運用部におきまして引き受けまする方法は、これは一つの方法でございまして、たまたまそれの金繰りが、どの金がどういうふうに回っているということは決してないのでございますが、同時にまた、日銀からも御所望がありまして、もっともこれは、日銀以外からもこの金融債については、最近の情勢でございますから方々から引き合いはあったのでありますけれども、しかし、私どもといたしましては、やはりこれは運用物件でございまして、慎重に考えました結果、特に日銀さんのほうで御必要だということでございまするので、その話に応じたものであります。  なお、資金運用部では引き受けることがかりにできなかったらどうか、こういうお話でありますが、それはまたそういう条件の場合のことでございまして、今回も実は補正をお願いしておるわけでございまするが、公債発行額は、これは租税の減収見込みに限っておる次第でございまして、追加するところの補正による財政需要に対しまする財源は、その他いろいろな手段でこれを調達いたしておるのでございまいます。先ほど来お話がございました節約等もその一部でございまするが、そのほか、実はいろいろなやりくりをいたしておるわけでございます。したがいまして、そういうふうな与えられました条件におきまして今回の補正を組んだ、こういうことでございまして、与えられました条件が変わってまいりますれば、またそれに応じましていろいろな手段は講じなければならない。ただし、日銀の引き受けによるところの公債発行するという考え方は当初から全然とっておらないのでございまして、そういうことになるということでは決してございません。出資、融資の振りかえでありますとか、政府部内に蓄積されておりますような資金を利用する方法でありますとか、いろいろなものを組み合わせてやっておるのでございまして、その辺は、日銀の引き受けに持っていったであろうということでは決してございません。そういう方針は最初からとったことは一度もございません。むしろそういうことは適当でないという考え方で進めておったのでございます。
  84. 岩動道行

    岩動委員 ただ、預金部としては、金融債を持っておればそれだけ利回りがいい、運用上そのほうが有利である、こういう立場になったと思うのです。ところが、今回の新たに発行される公債を持てば、表面金利は六分五厘、利回りにしましても六分七厘九毛五糸ということが一応内定しているわけであります。そういたしますると、金融債と公債との関係において、非常なというか、ある程度運用利回りが悪くなって損をする。かなり無理をして引き受けさせるということにもなりかねないのでありまして、この点は預金部として、運用利回り上損はしましてもあまりたいした影響はないんだ、こういうふうに考えてよろしいのかどうか。また、預金部の手持ち金融債がどの程度に減ってしまうのか、この辺のところをひとつ伺いたい。
  85. 中尾博之

    ○中尾政府委員 予定されまする国債の条件と金融債の条件では格差がございまするわけで、その分でごく若干の得べかりし利益が減ることにはなりますが、資金運用部の経営上これが問題になるほどのことではございません。ごくささいなものであります。問題は、やはり資金運用部にいろいろな性格がございまして、一つの役割りは金融的な経営をいたしております。しかも利を生まなければならない。郵便貯金その他の金の信託を受けておるわけでございますから、これらのものに対しまするところの運用は確保しなければならないわけであります。同時に、経営である以上は、なるべく有利にということもございます。同時にまた、確実であるということも必要でありますし、同時にまた、公益のためにこれを役立たせなければいけないという考え方も、政府の資金である以上当然あるわけでありまして、これらの状況を彼此勘案いたしますると、ただいま申し上げましたように、政府の内部におきまする運用資金をもちまして、こういう不測の事態によって、きわめて異例の措置といたしまして年度の途中で発行いたします国債等につきましては、まず、できましたならば政府の部内のやりくりにおきましてこれを消化するということが適当な措置と考えた次第であります。もちろん、それによりまして、運用部に課せられましたところの全体としての収益の必要性というものを割り込むということは、これは問題でございます。決してそういう事態はございません。いずれも運用部の目的に即して考えておる次第でございます。  なお、国債の保有につきましては、法律上も当然運用部の運用の手段として考えられております。何しろこれは零細な国民各位の預託された金でありますから、なるべく有利であると同時に、また確実なるものに回すということが常に念頭になければならない次第でございまして、それらの線に沿いましてあんばいをいたしまして、処理をいたしました次第でございます。
  86. 岩動道行

    岩動委員 公債の消化計画は、一月に七百億円、残り二月、三月でそれぞれ三百億円と、こういうような新聞記事も出ているのでありますが、大体市中の金融の状況から見て、そのように理解をしておいてよろしいかどうか、お尋ねいたします。
  87. 中尾博之

    ○中尾政府委員 一月の七百億円という点につきましては、大体関係の方々も同じような御意見であるように理解いたしております。残りにつきましては、今回発行いたします国債の半額以下ということを目標にして市中消化を考えております。それにつきましては、二月と三月に分けて残りを引き受けていただく、こういう計画になっております。大体お話し合いによってこれはきまるものでありまして、シ団がいずれできますと、シ団とのお話し合いであります。それから、全体として年度内にこの程度大体お引き受け願えるであろうということにつきましては、金融界、証券界、財界等を集めましたそれぞれの方々の御意見も十分承りました結果、その見通しを得て計画を立てておることでございまして、大体お話のような筋に近いようなところにいこうかと存じます。ただし、額面どおり二月三百億円、三月三百億円というようなことに相なりますかどうですか、これは今後シ団との交渉によって固まる問題でございます。
  88. 岩動道行

    岩動委員 問題は、多少前に戻りますが、発行条件として表面金利は六分五厘、そうして発行価格が九十八円六十銭して、応募者利回りは六分七厘九毛五系というふうに伝えられておるわけであります。これは、一般の市中金利の実勢から見て、もちろんきめられたものと思うのでありますが、金融債あるいは政保債等に比べてなお高くはないか。これは、引き受けるほうの金融機関におきましてもいろいろ問題がございましょう。市中銀行の中でも、都市銀行については資金コストで十分買えるものであるけれども、その他の地方銀行等の受託金融機関におきましては持てない金利である、逆ざやになるという問題もあると思いますが、しかし、心配されますのは、こういう金融利回りからいった場合に、日本銀行から安い金を借りられる、担保として入れた場合に借りられるということになってくると、公債を持つことが利ざやかせぎになる、こういうおそれがないか。戦前においての金利公債等、一般のそういったような他の債券との金利の差が〇・五%ぐらいといわれておるわけでありますが、それをかなり上回っておるというようなところに一つの問題点があるようにも思うのであります。特に金融機関、引き受け側においていろいろと強い要望もあって、もっと高いものにしろというのを、大蔵省は、まあこの程度というふうに押えられたのかもしれないのであります。この辺は、今日の金融情勢においては、私は、相当金融もゆるんでいるので、もう少し考慮があってしかるべきじゃないかという感じもしないではないのでありますが、この辺についての大蔵省の御所見をひとつ承りたいと思います。
  89. 中尾博之

    ○中尾政府委員 国債発行条件、特に金利でございますが、これにつきましては一番大事な点は、先ほど来ございますように、まず円滑な市中消化をはかるという点にあるのでございます。もちろんこれと同時に、これは財政上の負担になるものでございます。その意味から申しまして、最も節約した姿でなければいけない、この二つをどこで調和をとるかという問題でございます。それらの点を彼此勘案いたしまして、先ほど申し上げましたようなレベルに実はきめたのでございますが、おのずからやはり現行の金利水準並びに金利体系というものが前提になりますから、市中の実勢というものに即応した条件のもので出してまいりませんと、これは発行する側といたましても無理が出てまいりまして、財政計画の運営に支障を来たすことになります。それからまた、引き受けられるほうに対しましても、これは不測の損害を与えることになりましょう。問題は、現行金利の体系のもとにおきまして、当面の資金の需給関係からこれが無理がなく、ロスがなく消化されるという線をねらってきめたということに尽きるのでございます。金融機関側から、資金コスト等の関係で条件のよいものを発行してくれという要望があったろうというお話でございますが、まあ商売でございますから、営業管理上そういうお考えを持たれる向きも出てくることは当然かと思いますが、われわれ、もちろんそういうものも計算には入れております。しかし、何分にも公債のことでございます。従来のものとは銘柄も違いますし、また現在の国民の貯蓄形態から見まして、これは金融機関が中心になってやらなければ国の財政は持っていかないということは、国民各位も御承知の上であります。その辺は、相当財政というものに御理解のある態度で御協力を願いたいと私は考えております。いまの関係で決して無理はいたしておりません。  なお、資金コストの高いほうの方々に対しましても、逆ざやになる面も平均的に見ればあるわけでございます。そこに問題がございますけれども、いずれ、この公債政策ということによって本格的な公債発行してまいります。当然ここに流通も出てまいります。換金性もきわめて高い流動資産ということに相なります。一方で支払い準備資産としての新しい機能がおのずから生まれてくるわけであります。そういう関係もございます。また、公債が特に平均の資金コストを割っては困るということがあらゆる場合に妥当するものでもございませんので、やはり金融機関といたしましても、なるべく有利で、しかも確実なものに全体としてその資金を運用することに全力を傾けられることは当然でございます。そういうような場合に、国債ということに相なりますると、これは久しぶりに発行いたしたものではございまするけれども、これはきわめて信用の高い確実なる運用でございまするので、そういう点を考慮いたしまして、相当部分をこれに投資されまするならば、その残りの部分におきまして相当果敢なる資金の運用も可能になるわけでございます。そういうような点もいろいろお考えの上御協力を願えたものと信じておる次第であります。  なお、日銀の国債担保貸し付けとの関係が順ざやに過ぎるという問題がございますが、この問題につきましては、実はどうしてもそういうことになりますので、片一方は短期的な資金、しかも公定レートの問題がございますし、こちらもまたこういう長期債の金利体系の一環として出てまいりますのでどうしてもそういうことになります。しかし、それだからと申しまして、日銀から金を貸してそれで買ってもらうとか、あるいは日銀から金を借りてこれを買うということにはつながらないものと私は考えております。日銀のほうの公定歩合は公定歩合としてこれを操作してもらう、また資金の調節は資金の調節としてそのルートでやっておられるわけでございます。公債発行はそういうふうにして調節されたその資金の需給の見合った市場の中でこれの消化がはかられておるものでございます。これは一応別のこととお考え願いたいのでございます。事実上そういうような動きといいますか、操作というものは行なわれないということは、たぶん先生も御承知の上であると存じます。
  90. 岩動道行

    岩動委員 そうしますと、日銀に担保に入れて、安い金利で金を借りて利ざやかせぎの種にはならない、こういうふうにおっしゃるわけですが、そうなった場合に、都市銀行はある程度の利ざやというか、資金コストから見て、買っても有利である。ところが地方銀行、相互銀行、信金等に至りますと、資金コストよりも高いものを持つというようなかっこうになってくるわけでありますが、これは一体どうしてそんな損してまで公債を持つのか、こういう疑問も出てまいりまするが、この辺は銀行局長どうお考えになっていますか。どういう趣旨で、あえて損してまで公債を持つのか。われわれとしては持っていただくことはたいへんけっこうだと思いますが、商売に最も敏感な金融機関がどうして損をして公債をお持ちになるのか、そこら辺の心理をひとつ解明していただきたいと思います。
  91. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 これは普通資金コストというふうにおっしゃるのは、それぞれの金融機関のいわば平均資金コストでございます。岩動先生はなかなかその道の専門家でいらっしゃいますし、釈迦に説法のようでございますが、同じ一口預金と申しましても、五分五厘の定期預金もございますれば、無利息の当座預金もある。当座預金の占めるウエートというのはかなりの部分がございます。一方、金融機関としては常に預金の支払いに備えまして支払い準備というものを充実すべきが当然でございます。その支払い準備の形としては、最も流動性の高いものとしては現金、次は預け金でありましょう。現金であればむろんこれは無利息であります。預け金にしても、普通は当座預金あるいは入れてもせいぜい通知預金くらいのもので、日歩七厘とか八厘とかいったようなものでございます。そういったようなものがいわば支払い準備でございますが、そういう支払い準備の資産の中にはいまのようないわば超流動性の高いもののみならず、やはり国債その他確実な有価証券というものは当然考えていかなくちゃならない、そういう意味で、支払い準備として持つということから申しますと、いわゆる平均資金コストと比べてこれは合わないとか合うとかいう考慮は、実は必ずしも必要ないわけでございます。ただ問題は、その場合に結局は量の問題になると思います。つまり、支払い準備として持つべき適正な部分というものはやはりおのずからあるわけでありまして、そういうものをこえて多量に持つということになれば、当然いまおっしゃったようないわゆる平均資金コストとの関係において問題が生じてこよう、したがって、その保有量というものが適正な支払い準備の範囲内にとどまっておる限りは、この点はさしてそう心配はないのじゃないか、かように実は思っておるわけでございます。
  92. 岩動道行

    岩動委員 私もそういったような支払い準備的な意味でお持ちになっているので、また将来日銀との取引などがそれを持つことによって開かれるとか、有利になるとか、そういうような将来も考慮していろいろと無理なところも持ったのじゃないかというふうにも考えられるわけでありますが、支払い準備だけで持つのだということになりますと、いまおっしゃったように限度が出てくる。したがって、将来相当多額の公債発行されていく場合に、一体その支払い準備的なものとしてはどの程度金額が一応考えられるか、その辺のめどは一応お立ちになっているかどうか。
  93. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 その点は、つまり流動資産というものの割合をどの程度に保つのが適正か、これはいろいろ見方がございまして、たとえばイギリスのごときは、御承知のようにこれは法規等はございませんが、全くの商慣行として少なくとも三〇%は流動資産として持つべきだということで行なわれておるようでございます。これは国によっていろいろ差もございます。わが国の場合にどの程度か、これはやはりそのときどきの経済金融情勢いかんによって非常に動いてくるものでございますので、現在のところで直ちに将来を見越してどのくらいがいいとか悪いとかいうのもいささか早計じゃないかというふうにも思いますし、その辺は今後ともいろいろ情勢を見ながらいろいろと研究をいたしていきたい、かように実は思っておるわけでございます。
  94. 岩動道行

    岩動委員 次の質問者の時間も迫っておりますので、簡単にあとはしょって申し上げますが、今度の発行価格が九十八円六十銭ということになりますと、発行価格差減額といいますか、これは予算補正3号でその分だけは公債を追加発行できると申しますか、そういう権限が与えられておるわけでありますが、その金額は九十八円六十銭とした場合には幾らになりますか。
  95. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 三十七億円程度になるかと思います。
  96. 岩動道行

    岩動委員 それから公債発行の券面券種はどのようなものを考えておられるのか。これは個人が持つようになるまでの小額券面券種までお考えになっておるのかどうか、そこら辺をひとつ……。
  97. 中尾博之

    ○中尾政府委員 券面金額は、現在のところ予定いたしておりますのは、千万円、五百万円、それから百万円、十万円ということで考えております。  いまの零細な分の個人消化というお話でありますが、これは現在シ団に当たるべき方々のお話し合いでは、大体証券業者がこれを引き受けになるようなことになっておるのであります。全体の一割程度をことしは個人消化として可能であるという見込みを立てておられるのであります。それらの分にいまの券種を充てていくわけでございます。十万円というのが一番こまかく、特にこれを潤沢に供給いたしたいと考えております。
  98. 岩動道行

    岩動委員 次に、これは主として証券局の関係になるかと思いますが、公債市中消化を原則とした場合に、金融機関あるいは系統金融機関、投資機関等の大口のもの、さらにまた預金部等が今度入っているわけですが、こういったようなところだけを中心にした公債消化政策といいますか、考え方を持っておられるのか。私どもは、公債発行する場合には公社債市場というものをどうしても育成しなければいかぬ、それが前提なんだというふうに、実は昨年あたりの公債論議でも強く言われておったわけでありますが、その後、個人消化はそう簡単にいかぬかもしれぬ、これは公債の安全性、有利性、換金性といったような問題がまだ戦後の国民にはなじみになっておりませんし、そういったような点から個人消化は時間がかかるにしましても、公社債市場の育成ということについては、どうも政府のほうでの手の打ち方がまだ不十分であるという感じがしてならないのでありますが、この公社債市場の育成、つまり流通市場をいかにして育成してまいるのか。今日までこれに対してとられた措置、また、今後とられるべき方策、措置、こういう点について御意見を伺いたい。
  99. 松井直行

    ○松井政府委員 お答え申し上げます。  お示しのとおり、戦後初めて公債発行されるわけでございますが、公債はその性格上、債券市場の中軸というか、中核たるべきものでございまして、最も信頼性があり、かつ最も流動性があるという性格を十分発揮するような流通市場の形成が前提であるということはお示しのとおりでございます。戦後長期資本市場、証券という形で調達され、かつ流通が行なわれております長期資本市場下におきまして、株式市場は一方において相当発達してまいりましたけれども、債券市場一般の発達が非常におくれてきたということはいなみ得ない事実でございますが、これは金融市場あるいは金利機能あるいは消化の広さあるいは多様化、いろいろ流通市場を取り巻きます諸環境の整備がおくれておったというところに一番大きな原因があったわけでありますが、過去数年来、まず事業債を中心にいたしまして、そうした困難はあるにしても債券に流通性をつけるという意味における公社債の育成ということが大きな課題でございまして、関係者集まりまして鋭意勉強もしてまいったわけでございますが、御存じのとおり、たとえば発行条件が固定化され、あるいは現実のマーケットの金利に比して発行条件にゆがみがあり過ぎる等、自由なプライス・メカニズムが生きるということであって初めて債券市場というものができるわけでありますので、そういう条件を欠いておったというので、非常に発達がおくれてまいっております。昨今ようやくそういう方面にも打開の道が開かれてまいりまして、実は三十一年に東京と大阪の証券取引所におきまして債券市場が開かれておったわけでありますが、先ほど申し上げたような金融情勢等によりまして、昭和三十七年には事実上閉鎖になっておったところ、本年八月十九日から事業債につきまして店頭気配の交換を実施をいたしております。さらに十二月二日に入りまして、政府保証債、地方債及び利付金融債につきましてもオーバー・ザ・カウンターの商いの気配を交換をするというような形で市場取引の前提条件としての気配交換というものを一歩前進した形で実施してまいったわけでございます。したがいまして、来年一−三に控えました公債発行を機に、まず事業債、政府保証債、地方債あるいは利付金融債等、すでに気配の交換をいたしております債券類につきまして、一そうその流通性をつけ、オーバー・ザ・カウンターの商いも円滑にする意味におきまして、これを取引所取引に持ってまいりまして、公定相場を発表するという方向に持っていくのが来年一−二月ごろの課題じゃなかろうかと思います。この機会に、証券取引所におきましても、上場条件、売買仕法その他の約束、あるいは上場手数料なりあるいは委託手数料を含めまして、取引所に上場されたときのいろんな場合の条件、規約等につきまして、いま鋭意勉強いたしておるところでありまして、これら債券類につきまして、おそらく来年早々には取引所あるいは証券業者の間において話がまとまり、大蔵省もそれに参加して方向づけができるという段階であろうと思います。なお、国債につきましても、こうした前駆的な手当てをいたしまして、広く大衆に消化された暁には、まずオーバー・ザ・カウンターの商いが徐々に起こってまいってくるだろうと思いますが、気配交換という段階を踏むかどうかまた問題でございますが、たとえばそれを踏むことによって、次には市場取引に持っていく、おそくとも来年の四月以降、最も近い機会にはおそらく市場取引が開始されるということに相なろうかと思いますが、お示しのとおり、債券市場の整備再開につきまして、この公債発行を機といたしまして、従来以上に熱を入れてやっていきたい。諸環境の整備が要ることでもありますので、また関係業界なり関係者の協力も十分要請申し上げねばなかなか実現し得ない。口で申しましても、すぐに市場へ上場すれば、円滑な市場が開設できるんだというように誤解される向きもありますが、ぼつぼつあちこちの困難を克服しながら、自然に自由な円滑な市場形成に持っていくために、全力をあげて努力をしていきたいというふうに考えております。
  100. 岩動道行

    岩動委員 これで私質問を終わらしていただきますが、今回のこの法律は、先ほど来の論議に明らかになりましたように、きわめて重大な内容を持った、意義のきわめて高い法律でございまするので、私どもも十分に審議を尽くして、しかもできるだけ早い機会にこれを成立させなければ、せっかくの法律意味がないという認識を新たにいたしたわけでございまするが、ただいまは景気がきわめて沈滞をしておりますので、財政政策によって景気を浮揚させていこうという措置が今後大幅にとられてまいらなければならぬ。ところが、日本経済の過去の経験におきましては、それが直ちにまた過熱の状態におちいっていくおそれも多分にないわけではないわけです。そこで財政当局、あるいは金融、通貨の番人としての日銀あたりがきわめて慎重であることもわかるのでありまするが、ひとつタイミングを失わないようにやっていただくことを特に御留意をいただきたいと思いまするし、今後公債発行の結果過熱の状態が起こったときに、これをいかにして引き締めていくのか、今日ではもはや金融の引き締め、金利の操作だけでは経済動向を左右するということはきわめて困難な状態になってきたのではないか。金利は国内金利のみならず、国際金利とのつながりがきわめて強くなってまいっております。最近のアメリカの金利の引き上げが日本の金融市場にも、あるいは外貨の事情にも大きな影響を与えようとするような時代になってまいっておりますので、この景気が過熱したときのこともいまから十分に対策を研究をしていただいて、ことに重要な設備投資については計画を立ててやっていくような必要もあろうかと思うのでありまして、この点については、ひとつ十分に公債発行と相合わせて御検討を進められて、インフレにならない確たる政策を実行に移していただかなければならない、かように考える次第でございますので、政務次官にひとつ最後にこの点に関するお答えをいただいて、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  101. 藤井勝志

    ○藤井(勝)政府委員 先刻来、るる御質疑を通じまして、非常に理解ある御鞭撻を得たわけでございまして、ただいま御指摘がございましたように、現下の不況のよって来たるゆえんのものは、先刻もお話を申し上げましたごとく、高度経済成長の裏目が出ておるわけでございまして、したがって、これが対策はどうしても日本経済の体質を改善していくというかまえを持って、したがってその対策も単なる景気循環的なものではなく、本格的に日本経済を直していく、体質を改善していく、こういう総合的な視野に立った長期的なかまえでいかなければならぬ。したがって、さしあたり、いま非常に苦しいからといって、いきなり景気対策ばかりに走っても、これまたたいへんなことになりますので、両々にらみながらやっていかなければならぬ。しかも、今度おはかりをし、御審議を願っております補正第3号は内容的に質的に非常に重大な問題を含んでおる法案でございますが、さらばといって、じっくり時間をかけてやる余裕がない、こういうまことにジレンマに立つ現在の状況でございますので、その点を十二分に御理解をいただきまして、御熱心にひとつスピードを上げて御審議賜わりますようにひとえにお願いを申し上げる次第でございます。
  102. 吉田重延

    吉田委員長 奥野誠亮君。
  103. 奥野誠亮

    ○奥野委員 国と地方の関係につきまして、財政処理特別措置法案の諸問題をお尋ねしたい、かように考えているものでございます。次の質問予定者がすでに見えておられますし、また、人事院の給与局長にずいぶん長い時間お待たせした結果になったわけでございます、そこで、人事院に関する質問だけを簡単に申し上げまして、委員長のお許しを得て、あと質問は後日におくらしていただきたい、かように考えるものでございます。  人事院の給与勧告を最大限度に尊重していきたい、それは政府の態度でもあり、与党の考え方でもあるということは御理解いただいていると思うのでございます。反面、年度の中途に勧告が出されて給与改定をさかのぼって実施すべきだということについて、このことがそのまま地方公務員にも関連を持ってまいりまして、三千数百の地方自治体の問題にもなっておることは御承知のとおりでございます。このことにつきましては、私は、すべての地方団体と、こう申し上げても過言ではないと思うのでありますが、困り抜いておるわけでございます。特に、財政当局者は悲鳴を上げております。同時にまた、議会に条例案を提案する、それについて住民の理解を得るにもだんだんと困ってきているということも率直に申し上げることができると思うのであります。今回も昨年同様、人事院の勧告にありまする五月にはとてもさかのぼれない、しかし無理をして、あえて九月にさかのぼって実施しようということになり、この委員会に付託されております法律案におきましても、交付税及び譲与税配付金特別会計の中で、三百億円の借り入れをして地方公務員の給与改定の財源に充てたいということになっておるわけでございます。この措置によりましても、地方交付税の不交付団体につきましては、現実問題として適用にならないわけでございますので、国としてのこの種の財源措置はすることができないわけであります。しかしながらこれらの不交付団体におきましても、全く財源捻出に手段を欠いているというような姿になっているのは一般的でございます。そういうような事情から、現実の人事院の勧告というものが財政当局者をも非常に困らしております。同時にまた、公務員にも結果的には不親切になっていると私は思うのでございます。これをどう打開していけばいいのか、人事院と一緒になって考えていきたいんだ、こういう気持ちで私は若干お尋ねをしておきたいのでございます。  まず第一に、人事院の給与勧告は、言うまでもなく形式的には国家公務員についての勧告でございます。しかしながら地方公務員である教育職員にいたしましても、あるいは警察職員にいたしましても、法律の上では明らかにその給与は、国家公務員である教育職員や警察職員に準ずべきものと定められておるわけでありますし、地方公務員の半ばはこれらの人で占められておるものでございますだけに、必然的に人事院の給与勧告は地方公務員にも非常に大きな関連を持ってまいるものだ、かように理解していただいていると思いますし、またそういう理解の上に立って勧告していただいていると思うのでございますが、この点についてまずただしておきたいと思います。
  104. 瀧本忠男

    瀧本政府委員 お示しのとおり、現在の状況におきまして、人事院の一般職国家公務員に対します給与改善の勧告が地方公務員にも非常に影響を持っておるという実情は、御指摘のとおりでございます。
  105. 奥野誠亮

    ○奥野委員 現在人事院の給与勧告は、四月末現在の民間給与を調査されて、これを基礎として勧告が行なわれているというように承知をいたしております。言いかえれば、民間給与と公務員との給与の間にどれだけの開きがあるか、これが勧告の基本になっている、かように私は考えておるのでございます。しかしながら、法律的に考えても、民間給与は国家公務員の給与の参考にはしなければならないけれども民間給与そのものが国家公務員の給与でなければならないということはどこにも書いていないはずじゃないか、かように考えるものでございます。民間給与を基礎として勧告をされていることと、同時にまた、民間給与そのものが公務員の給与の基本でなければならない、参考とすべきものであるけれども基本そのものではない、かように考えていいものかどうかについてお尋ねをしておきたいと思います。
  106. 瀧本忠男

    瀧本政府委員 人事院は、四月中に支払われました四月分の給与を調査いたしまして、それを基礎といたします。なお、もちろん御存じのことと思いまするけれども、生計費等につきましても配慮をいたし、現実には新制高等学校を卒業いたしました者、すなわち、われわれのほうで申します初級試験、これは新制高等学校卒業者を対象としておりますが、その初級試験合格者を採用いたしますときの給与というものを算定いたします場合には、民間のこの種の初任給を調査いたしますと同時に、標準生計費というものを人事院で算定をいたしまして、その裏打ちをしておる、したがいまして、現在やっておりますることは、おおむね民間給与を基本にいたしておりまするが、生計費の配慮も、そういう意味におきましてやっておるということでございます。御指摘のとおり、公務員法には民間給与を基礎としなければならないという旨は書いてございません。しかしながら人事院が従前、十数年やってまいりましたことは、それをやってまいったのでございます。なぜそういうことをやってまいっておるかと申しますると、民間給与というものの中に——民間給与がきまりますのは、団体交渉できまったりいろいろな要素できまるわけでございますが、その中にはやはり消費者物価がどういうふうに動いたというようなこと、その影響も入ってまいるでありましょうし、また生産性が上がったというようなことの問題も入ってまいるでありましょう。とにかく民間の給与を問題にするということは、これは一番寄りかかりやすいということがあるわけでございます。公務員法で民間給与を基礎としなければならないとは書いてございませんけれども、やはりそのことを十分考慮してという趣旨のことは書いてあるわけであります。最近は、各国におきましても、やはり公務員の給与を決定いたします際に、独自にきめたらいいじゃないかという考え方もあるわけでございまするけれども、やはりそれではささえが十分でございませんために、いろいろ議論を生ずるということで、イギリスにおきましても、アメリカの連邦政府におきましても、やはり同種の民間給与を参考にいたすというような方向にまいってきておるというのが現在の実情であります。
  107. 奥野誠亮

    ○奥野委員 高校卒の初任給について、生計費等を参酌しているというお話がございましたが、基本的には民間給与によっているのだということ、しかしながら法律的にはそれを参考にすればいいのであって、そのとおりでなければならないということはないのだ、こう私理解したのでございますが、そのとおりでよろしゅうございましょうか。
  108. 瀧本忠男

    瀧本政府委員 ちょっと理屈めいたことを申し上げて恐縮でございまするが、現在の一般職の給与法と申しますものは、これは国家公務員法が予定いたしております法律とちょっと違うのでございます。暫定的な法律ということに現在相なっております。そこで、国家公務員法の六十四条には、国家公務員法が要求いたしまする給与準則、給与法でございますが、これをつくるときにはこういう基準でつくりなさいということが書いてあります。それをちょっと読み上げてみますと「給与準則には、俸給表が規定されなければならない。」「俸給表は、生計費、民間における賃金その他人事院の決定する適当な事情を考慮して定められ、且つ、等級又は職級ごとに明確な俸給額の幅を定めていなければならない。」これは直接給与準則ではございませんけれども、それにかわる給与法であるという意味におきまして、この条文を根拠にいたしまして現在の考え方をいたしておる次第であります。
  109. 奥野誠亮

    ○奥野委員 時間の関係で端的にお尋ねををいたしますが、要するに、人事院はいままで四月末の現在で民間の給与を調査をされて、それに基づいて人事院勧告を出されておる。これが法律的にこれ以外にはよれないのだという性格のものではない、そう私は理解をしたいのですが、それはそれでよろしいのでございましょうか。
  110. 瀧本忠男

    瀧本政府委員 これが唯一絶対のものであるというわけではありません。
  111. 奥野誠亮

    ○奥野委員 私は、やはり人事院勧告がそのとおりに予算化されるということが一番大切なことじゃなかろうか、したがって、また人事院勧告の時期とか態度とかいうものは予算に盛り込まれやすいということを考えることが一つの重要な要素であるはずだ、かように考えるわけでございます。この点について御所見を伺っておきたい。
  112. 瀧本忠男

    瀧本政府委員 申し上げるまでもございませんが、公務員には現在団交権等労働基本権が制限されております。その代償といたしまして人事院の勧告機能というものがあるわけでございます。そういう観点から見まして、それが一番の骨子であるというふうには思いますけれども、ただいま御指摘の点等につきまして、これは十分研究をいたして、無用の摩擦を避けることができれば、これは最大限の努力をいたすべきである、このように考えます。
  113. 奥野誠亮

    ○奥野委員 人事院が自分の考えた時期、内容どおりに何でも財政当局者がやらなければいけないのだ、やらないことが間違っているのだということは、やはり反省をすべきではないか、私はこういう感じを抱いておるものでございます。特に人事院が八月に勧告をされて、五月にさかのぼって適用しろとおっしゃった。しかし、実際問題として財政的に不可能であって、十月ないし九月にさかのぼって適用されたというような食い違いが数年間続いておるわけでございます。数年間このような食い違いが続いたという事実は、次の人事院勧告にあたっては十分考えていただくべき材料じゃなかろうか、私はかように考えるものでございます。同時に、政府におきましても、与党におきましても、やはり公務の円滑な遂行をはかっていくためには、公務員の生活の安定を考えていかなければならない、これが基本だと考えているのでございます。にもかかわらず人事院勧告そのままに受け入れることができていない結果、公務員たちから政府や与党が不必要に誤解を受けているということを考えておるものでございまして、政府や与党は不当にむずかしい状態に追い込められているじゃないか、かように考えるわけでございまして、いま申し上げました数年同じ状態が続いているということを、今度の勧告にあたってはもう一ぺん深くお考えをいただきたい。そしてともどもに人事院勧告がそのまま採用され、公務員の生活改善にもそのとおりに役立っていくというような方向を見出していきたいものだ、かように考えるものでございます。  これできょうの質問を終わらしていただきます。
  114. 吉田重延

    吉田委員長 竹本孫一君。
  115. 竹本孫一

    ○竹本委員 私はこの際財政法特例法についていろいろとお伺いをいたしたいと思いますが、この法案の出し方等につきましても、われわれ野党として見ておりますと、非常にイージーゴーイングな大蔵当局の態度ではないかということを残念に思っております。そういう意味におきまして、財政法特例法に触れる前に、若干財政のあり方や景気見通し等についても政府のお考えを承っておきたいと思うのであります。  最近におきまして、大蔵大臣財政景気調整力というものを相当高く評価しておられるようであります。この際あらためて伺っておきたいと思うのでございますけれども政府財政の、日本経済景気の動きに対して持っている影響力、そのインフルエンスというものを、量的に、質的にどの程度にお考えになっておるかを伺っておきたいと思います。
  116. 藤井勝志

    ○藤井(勝)政府委員 劈頭からたいへん難問題の御質問でございまして、この答えがすっきりできればこれは相当なものだというふうに思うわけでございまして、私は一つ次元を下げて竹本委員に御理解をいただきたいと思いますが、やはり基本的には自由主義を前提にしておりますので、政府がいろいろ段取りを進めていきますのは、一つの土俵をつくるという、こういう進み方になるのではないかというふうに思うのでございます。したがって、いろいろの財政支出の、景気対策、経済成長にはね返る影響力というものは、政府側のみならず、国民側の総合的な努力の集積、こういうことにひとつ考え方を持つべきではないか、こういうことが第一点。それからやはり大蔵大臣が絶えず言われておりますことは、従来、景気が非常に上昇してくる、よくなってくる、税金は自然増収民間投資がどんどん進む、それでもって税金が相当入ってきますから財政支出も非常にふえてくる、そうすると追いかけてどんどん過熱になる、こういったことを、今度は財政というものがあえて経済に介入し、経済の動きに入り込むことによって加減ができる。こういうことで私が冒頭述べましたような土俵づくりの役割りは期待していいんではないかというふうに思うわけでございます。それともう一つ大前提といたしましては、敗戦後廃墟の中からここまで経済の復興ができたというこの民族的エネルギーは、これはそう見捨てたものではない。いまここ一年が非常に関頭に立って、せちがらい世の中になっておりますが、必ず復興できるという自信を持つべきではないか。その自信のもとに大蔵大臣はやはり先頭に立っておられますから、大臣が不景気風を吹かしたのではいけませんから、そこはひとつある程度以心伝心、賢明なる竹本委員は御理解いただける、このように思うわけでございまして、まあ答弁にはなりませんが、私の立場上この程度でお許し願いたいと思います。
  117. 竹本孫一

    ○竹本委員 ただいまのお答えでございますけれども、以心伝心の答弁でよくわかりませんが、特に私が指摘したいのは、財政は、質的に、量的にどれだけの影響力を持っていると考えられるのであるかということを伺ったわけであります。量的な分野については、あと経済企画庁もお見えのようですから経済企画庁からお考えをお示しいただきたいと思います。質的な問題についても、経済企画庁のお考えも伺いたいと思いますけれど、私は民間設備投資というようなものもいろいろ考えてみると、財政のあり方というものが決定的な要素になっておる。そういう意味から申しますと、交互にとか相互にとかいうようなことではなくて、財政には指導力がある、だからこそ今度の不景気の打開の問題につきましては、御承知のように、七月二十七日の経済政策会議等の決定もある程度株価等にも影響があったわけでございまして、民間経済というものは交互にとか相互にとかいうことではなくして、いまや財政は決定的な指導的な役割りを果たしておる。この認識が政府にあるのかないのか、その点を特に突っ込んで伺いたいのであります。  時間がありませんから、ついでにまとめて申し上げますが、もし私の考えるように指導的な決定的な影響力を財政が持っておるとするならば、少なくとも過去における昭和三十五年以来四十年度までを平均いたしましても、財政の膨張率は約一七%くらいになっておると思いますけれども、この財政のあり方はでたらめではなかったか。これは池田内閣や田中大蔵大臣責任の問題になると思いますけれども民間があれだけの設備投資をやろうという空気ができておるし、事実やっておる、しかもそれを量的に倍加する上において、さらにまた質的に指導力として引きずる意味においてこれだけの膨大な財政膨張をやってきたということが今日の不況の根本原因である。一番大事な問題は、そういう意味におきまして、私は財政のあり方が今日の不況というものに対して責任があると思うのだけれども、そういう問題についての反省というものは最近における政府の御説明やあるいはこの特例法の出し方のうちにはほとんどうかがえないと思いますので、重ねてお伺いしたいと思います。
  118. 藤井勝志

    ○藤井(勝)政府委員 私は、先ほど御答弁いたしました考え方が寸足らずで徹底しなかったような再質問であると思うのでありますが、やはりかって日本経済が御案内のような成長を遂げたというその原動力は、やはり私は国民の側に大きく評価されなければならない、このように思うわけでございまして、やはり政府はタクトを振るコンダクターでございまして、結局やはりオーケストラはそれぞれ持ち場の人たちがベストを尽くすことによって行なわれるわけでございまして、私はそういうコンダクターの限界をやはりわきまえ、今後も対処しなければならない。昼過ぎでございまいましたか、大蔵大臣いろいろ御答弁をされました。まあ四十七年が一応今度の二千五百九十億円の公債発行の目安でございますから、七年ということを前提といたしまして、年率一〇%の経済成長予算規模一二%。こういうごとになればGNPは二倍になる、そうして予算規模は二・五倍、こういった一応の目安がつくわけでございますけれども、その中身を形成するものは、やはりそれぞれの企業努力、国民各層の努力というものがその内容を形づくるわけでございます。特に御承知のように、個人消費と輸出と民間投資、それから財政支出、こういったところが大まかな経済の動きを知る目安になるわけでございますが、現在の状況、財政支出の占める役割りというものはその一つの端緒である、きっかけである、こういうふうに私は理解せなければならぬ、こういうふうに思いますから、ただ表現が違うだけで、きっかけが一つの勢いをつくるという意味においては大きな力になりますけれども、しかし、全体の経済を盛り上げていく中身はやはり国民側に大きく期待する。これは決して責任転嫁ではない、このように思うわけでございまして、まことに抽象的な話になって申しわけございませんけれども、御了承いただきたいと思うのであります。
  119. 竹本孫一

    ○竹本委員 ことばを返して恐縮ですが、簡単に申しますと、タクトを振るとか、いろいろお話がございましたけれども、私も、国民経済成長発展の基礎的な力、その総合的なエネルギーは、国民大衆のエネルギーである、これはわれわれむしろ次官以上に強調をいたしたい点でありますが、それを誘発し、それを躍動せしめて、あるいは過大な設備投資に持っていったそういう役割りが財政にあるのではないか。その指導的な影響力というものをお認めになるのかどうかという点を特に聞いておるのであります。  それから、その立場からすれば、今日の不況の原因をつくった過剰設備投資といったようなものは、一七%平均に伸びておる財政の膨張というものに大きな責任があると思うが、その点についての反省なりあるいは御意見なりをこの際あらためて伺いたいと思うのであります。過去五年間の財政のあり方というものは全部正しかったのか、あるいはこの一七%年平均の成長率というものが過大な日本設備投資を誘発した根本原因ではないか、その点についてのお考えを伺いたいのであります。
  120. 藤井勝志

    ○藤井(勝)政府委員 いま再度の御指摘がございましたが、まさに一つのきっかけをつくり、所得倍増というこういうもの、これが月給倍増に結びついて、それで生産性の向上よりも部面によっては一そう賃金が上がる、こういったことが物価の値上がりにはね返ってきていろいろひずみをもたらしておるし、また同時に、日本の現在の成長した経済というのが、生産部面においては近代化投資が積極的に行なわれましたけれども、生活に直結した部面、すなわち生鮮食料品であるとか、あるいはまたお互いが住む宅地造成であるとか、生活環境、こういった面に対して合理化資金というものが投入されておらない、こういうところに私は大きな経済のひずみと現在の日本経済の矛盾というものが御指摘のようにいろいろ出ておると思います。やや勢い余って行き過ぎたということについては、御指摘のとおりすなおに反省をしなければならぬ。福田財政はまさにその反省の上に立って、ゆとりある社会建設、豊かな社会建設をやろうというところにありますから、そのように御了解をいただきたいと思っておる次第であります。
  121. 竹本孫一

    ○竹本委員 第二の問題に移りますが、政府がそうした形で主導力を持っている財政についてのむしろ過小評価をしたのか、あるいはそれを忘れておるのかはとにかくわかりませんが、そのタクトの振り方によりまして、民間設備投資が私は過去五年間に約二十五兆円やったと思いますが、その結果、結論的に申しまして、たとえばことしの九月における主要業種の設備の操業率は六七・一%になっております。三割三分、三分の一が遊んでしまっておるということになっております。経済企画庁にもお伺いしたいのだけれども景気を直す、あるいは景気が立ち直るということは操業率においては何%くらい——たとえば三十六年は八五%でありましたが、それがいまは六七・一%に落ちておるのでありますけれども、どの辺まで操業率が返ってくれば日本経済は正常な姿に立ち戻ったというふうに考えられるのであるか、その辺をひとつ伺いたい。  これに関連をいたしまして、損益分岐点というものが最近は非常に上がってまいりました。ことに、こういうふうに三分の一は寝ておるなどということになりますと、経営者の立場においても苦しい悩みの条件がふえておると思うのでございますけれども、先日の本会議においても問題にされたようでございますけれども、この損益分岐点というものは最近においては何%くらい上がったと見ておられるか、またその結果、生産額において何兆円ぐらいは無理やりにでも生産をしなければならないというような矛盾に経済界をおとしいれておるか、その点についてのお考えを伺いたい。
  122. 田中弘一

    ○田中説明員 稼働率の問題でございますけれども、これは御存じのように、それぞれの業種で非常に異なるわけでありまして、全体として幾らの設備稼働率になれば景気がよくなった、あるいはそれが幾ら幾らだからまだよくない、そういうふうには一がいに言えないというふうに考えておるわけでございます。企画庁としては、稼働率の問題から全体を判断するのではなく、やはりいろいろの経済指標、たとえば鉱工業の生産指数、そういったものが徐々にでも上向くということになれば、あるいはまた商品の市況がやや安定する、ますます下がるということでなくて、回復していくということがありますれば、それでもって景気が回復してきた、こういうふうに判断しているわけでございます。
  123. 竹本孫一

    ○竹本委員 損益分岐点の問題は御答弁がなかったので、またあとでお伺いをいたしたいと思いますが、いまの答弁は私はほとんど答弁になっていないと思うのです。たとえば一がいに言えない、そんなことは常識でわかっておりますが、一がいに言えないということは、何にも言えないということではないのです。でありますから、鉄なら鉄あるいはセメントならセメント、そういうものを一つの具体的な例として言われてもいいのだけれども、いずれにしても、現在の六七・一%というものが八〇%になれば大体日本経済というものはやや健康状態に回復したのだというふうに言えるのか、あるいはそういうことは全然目安を持たず、ただ漫然と景気つま先上がりに上がるであろうというようなことを言っておられるのか、その辺のことを伺いたいのです。マクロとミクロの問題が出るのもその点なんです。でありますから、結局日本企業の実態が今日は予想以上に悪いので、二千五百九十億円の減収があるんじゃないですか。そうしてみれば、この減収の原因を考えてみれば、企業のそれぞれの内部における矛盾、悩みというものが問題なのです。その悩みと矛盾をどの程度に解決することをもって景気回復の目標にしておるかということをお伺いしておるのですから、一がいに言えないなんということは答弁にならないと思うのです。
  124. 田中弘一

    ○田中説明員 稼働率の問題につきましては、稼働率そのものの見方あるいは統計そのもののとり方が、ことに通産省でとっているわけでございますけれども、まだこれについて確たる自信のある統計数字を実は持っておらないわけでございます。したがいまして、先ほど申し上げましたように、全体としてどれだけになれば経済としては非常にいい状態である、幾ら幾らになれば悪い状態であるということは、いまの日本の稼働率の統計のとり方、あるいはいまの現状における不備と申しますか、そういったものからはなかなか判断できないというのが、残念ながらいまのわれわれ経済に従事しておる者の見方でございます。ただ、国際的に見ますと、稼働率が、かりに能力一〇〇といたしまして、何か特別の事情とか、あるいは御存じのように鉄鋼などは何年に一ぺん高炉の積み直しをやらなければいかぬというような問題、あるいは化学工業においてはパイプの中をきれいにしなければいかぬというような問題もございますので、そういったことを考えますれば、生産能力について一〇%ないし一五%くらいというところの予備を持っておることが必要だというふうにいわれておりまして、そういう点から申しますと、個々の業種についてそういうような程度ではないかというふうに思いますが、現在の日本の統計数字から直ちにそれをどこまでいけばいいということには申し上げかねるというのが実情でございます。
  125. 竹本孫一

    ○竹本委員 ただいまの参事官の御答弁ではちょっと納得できません。いまの統計のとり方、その他において客観的、科学的な正確を期しがたいものがあるということと、だからそんなものは信用しない、あるいはそんなものは目安にしようということも考えていないというような結論にちょっと受け取れるのですけれども、これはそういうふうなことは言い過ぎであって、そんなものならば、そんなに信用のできない稼働率なんという表は一切政府は発表しなければいい。全く役に立たないミスリーディングであって、すべての人の判断を誤らせるようなものであるならば、それはおやめになったほうがいいと思うのです。しかし、そうではなくて、この稼働率というものは、完全に一〇〇%正確ではないにしても、ある程度正確に景気の動きというものをあらわしておる。ただいまも御答弁がありましたように、現在の六七・一%といったようなものは問題にならない悪い状況であって、少なくとも八〇%までくらいには、不正確な数字ではあっても全体として八〇%をこすくらいのところまでは持っていかなければ、景気が回復するとか各企業の実態がよくなってくるとかいうことにはならない、私はそう思うのです。それに対しては、この操業率の数字はある一つの参考の指標になっておる。それを何だか科学的に満点でないからそんなものを目安には考えてないというのであるか。それならば、私はいま言ったように、そういう操業率の数字などというものを政府は一切発表を差し控えて、人を惑わすようなことはやめられたほうがいいと思う。そうでなければ、今度は逆にこの指標を現在は七〇%を割っておるが八〇%をこすところまでは、たとえば来年上半期までに持っていくとか、秋までに持っていくとかいうことを目標にして努力をしておるということでなければ、私は大きな経済政策のかじとりとしてははなはだ無責任なあり方になると思うのでありますが、意見を申し上げてこの上追及はいたしません。  そこで、第三番目の問題として伺いたいのでおりますが、税の落ち込み等の問題、また来年における税収入の問題と関連をいたしますが、七月二十七日以来特に強められておりまする政府不況克服についての方策というものは、私は大体三つであると思うのです。一つは輸出の振興、一つは金融の緩和、一つは財政によるてこ入れ、大体この三つと思いますけれども、その効果をどの程度政府は期待しておられるか。   〔委員長退席金子(一)委員長代理着席〕 逆に申しますと、私は、この三つの政策の効果は政府のお考えとだいぶ違っておるのじゃないか、距離が相当あるのではないか、政府の思われるようにうまくいっていないのではないか、またいき得ないのではないかという点を考えておるのでございます。  まず最初に、たとえば、輸出の振興ということで政府も力を入れておりますし、幸いにして最近は輸出は調子がいいのであります。しかし、その調子がいいという輸出も、実は伸び率を見てみますと、去年あたり三〇%伸びたものが、ことしは半分以下になっておる。一二、三%になっておるようであります。そうしてみると、輸出の振興はまず量的につまずいておる。次に質的な問題でございますけれども、投げ売りと申しますか、あるいは不景気の換金輸出と申しますか、そういう面で、私は先般アメリカに参りましたときにも見たのでありますけれども、五万円のテレビを二万円くらいで売っておるのがある。二万円の電気洗たく機を五千円で投げ売りしておるのがある。先だっては平岡議員がお話しになりましたように、ブルーバードも五十八万円するのを三十二万円で売っておるという例がある。こういうふうにして考えてみると、人によっては、輸出の三分の一までは換金のための輸出であって、日本の富をふやすという形における、したがってまた、日本景気を刺激するという形における輸出にはなっていないと言う。こういう輸出を幾ら増強してみても、それが九十五億ドルの輸出になったとしても、これは日本経済景気転換さしてよくする方向には作用しないと思うのでございますが、その数量的な見通し、いま申しました質的な矛盾の点についてのお考えを承りたいと思います。
  126. 田中弘一

    ○田中説明員 最近の日本の輸出は、御存じのように非常に伸びておるわけでございますが、これがこの不況の圧力による押し出しの輸出じゃないかというような御質問でございますけれども、われわれは必ずしもそうは考えておらないわけでございます。御存じのように、日本経済はこの五、六年、民間設備投資が非常にたくさん行なわれたわけでございます。このために供給力もふえましたことはもちろんでございますけれども、国際競争力というものが非常に強化されたことはまぎれもない事実でございます。また、その設備投資の導因となりましたものは、技術革新と申しますか、外国の技術あるいは国内技術の開発によるものでございまして、したがって、これが国際競争力の強化の裏打ちになっておることは一般の認めるところでございます。したがいまして、その基礎のもとに輸出が出たわけでございますが、また輸出が出るためにはもちろん相手側というものがないといかぬわけでございます。相手側の世界の輸入需要というものはことしあたりは非常に伸びておりまして、御存じのように、日本の輸出先としての大きなものであるアメリカ合衆国におきましては非常に経済が好況である。そういう点から申しまして、両々相まって日本の輸出が伸びておるわけでございまして、決して現在の輸出がいわばダンピング的な、コストを下げているというようなことはないわけでございます。
  127. 竹本孫一

    ○竹本委員 どうも答弁が食い違ってばかりおって残念でございますが、私は、供給力が日本において非常に伸びた、国際競争力が最近において伸びてきたということを否定した覚えは一つもありません。問題は、それにもかかわらず、国際経済のいろいろの動きの中から、現実日本の輸出の数量が、去年に比べてことしは伸び率がうんと減ってはいないか。幾らになっているか、それでは数字を聞きましょう。それで、その数字の変化の中から読みとれることは、政府が輸出を増強することが景気転換する大きな柱の一つに考えておられないのであるなら別ですよ。それが大きなささえの柱になっておるとするならば、その柱が予定どおりに伸びない矛盾を持っておるではないかということを聞いておるのです。それから、先ほどの投げ売り輸出みたいなものも、全部がそうだとは申しませんが、それは人によっては三分の一と見るが、政府一体それはないと言われるのであるか、あるとすれば、どの程度に見ておられるかということを聞いておるのです。きわめて数字的に、客観的に聞いておりますから、そういう意味で御答弁を願いたいと思います。
  128. 田中弘一

    ○田中説明員 輸出の数字でございますけれども、昨年は七十億ドルでございまして、前年比一二六%、本年度昭和四十年度の見込みでございますが、これは八十五億ドル、前年に比較しまし二一%近い伸びでございます。したがいまして、昨年に比してことし特に輸出が落ちているということはないわけでございます。
  129. 竹本孫一

    ○竹本委員 伸びが落ちておるということを言っておるのです。
  130. 田中弘一

    ○田中説明員 伸びが落ちておるということもさほどでないわけでございます。と申しますのは、たとえば三十九年度におきまして輸出が七十億ドルだという中身を見ますと、これは第三四半期、四四半期と、あとのほうで非常に伸びておる。平均いたしましたものと四十年度の四月からの高い水準と比較いたしますと伸びが少ないというようなことになるわけでございまして、必ずしもこの数字そのままを三十九年度の伸びに比して、四十年度が著しく落ちたということにはならないわけでございます。また、ダンピング輸出がどれくらいあるかということにつきましては、これは統計もございませんし、遺憾ながら数字は持っておりませんが、おそらくさようなものはそう多くはないと思っております。
  131. 竹本孫一

    ○竹本委員 輸出の問題につきましては、私は大ざっぱな見方じゃなくて、もう少し月々の動きというものを見なければならぬと思いますけれども、時間がありませんので省きます。ただ、いまのお話の中でもわかるように、昨年二六%ぐらいのものが、ことしは二一%ぐらいに伸びがとまっておるということは事実でございまして、これを来年は何%に見るべきかということについてはいろいろと討議さるべきだと思いますけれども、この辺で次の問題に移ります。  銀行局がお見えになったようでございますから伺いたいのでありますが、政府は、この不景気を直していくということについて、いま申しました輸出の振興を大きな柱、次は金融を緩和基調に持っていって、金利負担の軽減をするとともに、特に貸し出しその他金融を緩和して、これによって景気を大いに出していこう、こういうお考えのようでありますけれども、公定歩合が三厘下がった中において銀行の資金コストは平均幾ら下がったか、銀行の貸し出し金利は何耗下がったか、それは公定歩合との関係において何分の一になるか、伺いたいと思います。
  132. 青山俊

    ○青山説明員 金融機関の貸し出し金利につきましては、かねてからこの引き下げについて努力をいたしておるわけでございます。本年に入りまして公定歩合が三回下がったわけでございます。この間におきまして、市中金利は、一月から十月末までの計数をとってみますと、この十カ月間で、日歩にいたしまして一厘一毛八糸下がっております。これは都市銀行の例でございますが、十月末で、十カ月間で一厘一毛八糸下がっております。大体従来の経験でございますと、公定歩合が一厘下がりますと、いわゆる連動性ある貸し出しというものがある程度、全部ではございませんで、大体二分の一の五毛程度下がるというのが従来の大体の実績でございますが、その点で三厘下がりましたのに対して、十月までで一厘一毛八糸と、まだ全部金利引き下げの実績が出ているとは限りませんので、今後もさらにこれの引き下げについては努力をしてまいる考えでございます。  それから資金コストのほうでございますが、特に公定歩合に関係の深い都市銀行をとってみますと、三十九年の下期の資金コストが六分七厘でございます。それが四十年上期で六分三厘七毛、こういうふうになっております。
  133. 竹本孫一

    ○竹本委員 金利引き下げの効果がまだ半分以下であるというお話でございました。  そこで私二つ申し上げたいのでありますが、一つは、銀行が政府の方針にはなはだ非協力なのではないかということであります。一体銀行はどの程度熱意を持って資金コストの下がったのに相応じて貸し出し金利を下げる努力をしておるのか。それに対して、もう少し具体的に銀行の努力、また銀行に努力させるように大蔵省がどういう積極的な努力をされたのであるか。それからその引き下げの効果というもの、いまお話もありましたが、従来でも半分というのだけれども、その一定の目標までにはいつごろまでに持っていくお考えであるか、その指導の心がまえも承っておきたいと思います。
  134. 青山俊

    ○青山説明員 金融機関の貸し出し金利の引き下げにつきましては、従来から金融機関自体が経営の合理化を進めまして、極力自分の資金コストを下げ、貸し出し金利の引き下げに努力すべきであるというふうに、機会あるごとにわれわれは各金融機関に対して指導をいたしておるわけでございます。最近におきましては、いろいろの金融機関の会合等におきましても、たとえば全国銀行協会あるいは相銀協会、信金協会等を通じまして、極力貸し出し金利の引き下げに努力すべくこれを指導いたしております。金融機関のほうにおきましても、特に中小金融機関の場合は公定歩合との連動性が少ないわけでございますが、これにつきましても、歩積み、両建ての制度とともに、実質金利負担の軽減に努力を続けさしてきておるわけでございます。金融機関自体におきましても、なおわれわれとしては不十分な点があるので、さらに今後もこの金利引き下げについてはできるだけ努力するように指導いたしておりますが、大体いま申しましたように、日銀の公定歩合が三厘下がりましたので、都市銀行でありますと、その半分の一厘五毛というのが一つの目標になるわけでございます。これにつきましては、十月末では、いま申しましたようにまだ一厘一毛程度でございますが、ただ十一月の数字がまだはっきりいたしませんで、速報でございますが、大体九糸下がっておりますから、大体一厘二毛になるわけでございます。今後なお引き続いてできるだけ努力して下げさせるように持っていきたい、こういうふうに考えております。
  135. 竹本孫一

    ○竹本委員 大蔵省もお聞き及びだと思いますけれども、銀行は、この不景気の中に国民怨嗟と申しますか、あるいは中小企業その他からは非常に恨まれており、憎まれており、非常な反感をかっておると思うのです。これは銀行行政をあずかっておる大蔵省としても非常に責任のあるたいへんな問題だと思いますが、今後とも大いに努力をしていただかなければなりません。どうも銀行は大蔵省の言うことに対してはきわめて非協力であるという説があるが、はたしてどうであるか、これをひとつ伺いたい。  さらに、それと関連をいたしまして、いま機会あるごとに銀行には、金利を下げて、コストの下がった分だけは下げるように、公定歩合の半分は少なくとも貸し出し金利を引き下げるようにというお話がありましたけれども、十分下げていないし、またこれから努力の余地がたくさんある。そのおかげで、たとえば九月期決算でおもな会社が二一%ぐらい減益になっておるのに、銀行だけはもうけておると聞いておりますけれども大蔵省が押えておられる数字によればどれだけの増益になっておるか、伺いたい。
  136. 青山俊

    ○青山説明員 金融機関の決算のことにつきまして、非常に金融機関だけがもうけておるではないかという御批判がいろいろあるわけでございますが、御承知のとおり、金融機関と申しますのは、いまさら申し上げるまでもございませんが、預金者の大事な預金を預っておりまして、あくまでも健全にいかなければなりません。したがいまして、やはり毎期安定した収支というものが必要なわけでございます。したがいまして、いろいろほかの事業会社とはその点性格的にも異なる点があるわけでございます。景気の波によって、非常にもうかったりあるいは非常に損をしたりというふうなことがあってはならないわけで、と同時に、健全な経営というためには、相当内部留保を厚くして、預金者保護ということに徹底いたしていかなければならないわけでございます。そういう面で、外からごらんになりますと、景気の波と関係なく、まあ景気のいいときには目立たないわけでございますが、景気が悪くなりますと、何か金融機関だけがひとりもうかっているように見えるわけでございます。そこにやはり本来金融機関の特殊な性格というものがあるわけでございます。今期の決算につきましては、都市銀行のほうの決算が収益が高くなりました。この原因は、最近の金融情勢を反映いたしまして、都市銀行が非常にオーバーローンになっておる関係で、外部負債が非常に多いわけでございます。特にコールに依存する割合が高いわけでございまして、従来は、このコールが二銭五厘であるかあるいは三銭であるとかいうふうに非常に金利が高かったわけでございますが、最近の金融情勢を反映いたしましてこれが非常に下がりました。従いまして、外部負債に対する支払い利息というものが減ったことと、もう一つは、日本銀行からの借り入れ金に対する利息が減ったというふうな二つの原因が響きまして、都市銀行の決算は一応この九月期は収益がふえたわけでございます。同時に、相互銀行、信用金庫あるいは地方銀行の収益状態は、逆にそれだけコール等によります収入が減りまして、収支状態は悪くなっております。したがいまして、金融機関全体といたしまして、都市銀行、地方銀行、相互銀行、信用金庫等を総計いたしまして比べますと、都市銀行のような伸びを全部いたしているわけでございませんで、これはやはりこういう金融情勢の過渡期における一つの現象であるというふうにわれわれは考えておりますけれども、やはり金融機関としては極力いま申し上げましたように貸し出し金利の引き下げ、自分自身の経営の合理化ということをさらに徹底して努力すべきであるというふうに指導いたしております。  全国銀行の計上純益を申し上げますと、全国銀行の上期の計上純益は約一千四百億円でございまして、前期に比べまして百三十億円の増加で、増加率は一〇・二%になっております。前期の増加額は百四十五億円で、増加率は一二・九%ということで、前期のほうが絶対、相対の増加額はふえております。今期は都市銀行のほうがよかった反面、地銀の伸びが悪かったということがいえるわけでございます。それで、都市銀行の計上純益は今期七百四十八億円でございます。地方銀行の計上純益が四百四十三億円でございます。都市銀行のほうの伸びが百二十七億円、地方銀行のほうは三億円しか純益が伸びておりません。こういう状態になっております。
  137. 竹本孫一

    ○竹本委員 いまの御答弁の中にもちょっと受け取れないところがあるのですが、たとえば会社というものは、もうけるときもある、損するときもあっていいようなお話でありますけれども、銀行の場合にはそうではなくて、ある程度内部の蓄積もして安定させなければならぬという銀行の若干の特殊事情はわかりますけれども、しかし、私は、やはり会社といえども、その点は全く同じで、大蔵省銀行局が特に銀行の場合に寛大に見てやろうというお気持ちもわからぬではありませんけれども、しかし、その気持ちが逆に銀行を乗ぜしめることになりはしないかということをおそれるのであります。そこで、いま民間一般が二〇%もしくは二一%減益になっておるときに、事情はいかがありましょうとも、一〇%をこえる利益を計上しておる銀行のあり方に大蔵省としては何らの疑問を持たれないのかどうかということについては、政務次官から御答弁を願いたい。さらに、この一〇%の利益をあげておる一つの大きな原因として、中小企業等に対する貸し出しについては、ほとんど金利を下げていないということをわれわれは強く訴えられておるのでありますけれども大蔵省はどういうふうに見ておられるか、それを伺いたい。中小企業に対して、たとえば二銭三厘、二銭四厘といったようなものに対する貸し出しの金利はほとんど下がっておらぬ。大蔵省はどういう御指導をされておるか。さらに、量的に見ましても、中小企業基本法ができて以後におきまして、逆に中小企業の占めておる貸し出しの中のシェアは減っておる。ことに今日のような不景気の場合には、中小企業のために大いに金融も力を入れてやらなければならぬ、シェアはふえなければならぬと思うのに、逆に減っておるというふうに考える。二四・五%しかないと思いますけれども、そのシェアの動きについて具体的な御答弁を願いたい。
  138. 藤井勝志

    ○藤井(勝)政府委員 金融機関のあり方の問題についていろいろ御意見が出たわけでありますが、御意見、御質問の趣旨は私もよくわかるわけでございまして、やはり生産があって初めてその上に乗っかる金融機関という、こういう受け取り方もできるわけでございまして、やはり私自身、金融機関のあのりっぱな建物、容貌、こういったものを見るたびに、一体これをささえるものはだれかという反問が絶えず頭に浮かぶわけでございます。そういう精神からいたしまして、金融機関がその資金コストを下げて、日本経済、いなむしろ経済そのものに奉仕するというかまえを金融機関が徹底しなければならぬということは御趣旨の点、全く同感でございます。ただ問題は、先ほど銀行局の青山調査官から答弁をいたしましたように、反面貴重な預金者の金を預かっておるという面がございますので、その点が指導行政に当たる銀行局としてもいろいろ配慮し、苦慮をいたしておるところでございまして、その点を金融機関側が、その扱い方に便乗いたしまして安易な経営は断じて許されない、このように思うわけでございまして、御趣旨の点は、一そうこの不況時に対処すべき金融機関のあり方としてよく今後の施策に反映させなければならぬ、このように思うわけでございます。  それから、中小企業金融の金利が下がっておらないではないかという御質問でありますが、現に九月から商工組合中央金庫、これは全体平均いたしまして約三厘下げておりますことは御案内のとおりで、それを契機といたしまして、銀行局も市中銀行、地方銀行に対して中小企業向け金融条件の緩和、改善ということにいろいろ行政指導をやっております。  具体的な点は後刻青山調査官から答弁をいたしますが、もう一つ、中小企業金融のシェアが狭まってきておるのではないかという御指摘でありました。なるほどこの数字を見ますと、最近の数字はそのとおりであります。この点については、ひとつこういう事実を御理解いただきたいと思いますことは、御承知の中小企業金融として分類をいたしますものは、中小企業基本法にのっとりまして、資本金五千万円以下、従業員の数、こういう制約がございまして、かって中小企業であったものが高度経済成長政策に沿うて資本金を増して大企業の分類に入った、こういう面が相当あるようでございまして、この点も内容的にいろいろ私もシェアの下がった事実を見て、関係当局に指摘をし、いろいろ事情を調てべおる、こういう状態でございます。
  139. 青山俊

    ○青山説明員 中小企業向けの金利のお話しでございます。いま政務次官からお話し申し上げました政府金融機関につきましては、九月から年利三厘下げたわけであります。ただ、一般の金融機関につきましても、基本的には先ほどのような態度で臨んでおりますが、実際の問題といたしましては、全国銀行の金利別の貸し出し比率、割合がございます。それを見てまいりますと、全体の構成比が従来よりも低いほうにウエートが高まっておる。たとえば二銭四厘台はこの六月ごろには全体の一〇・三八%を占めたわけでございますが、それが九月には九・六一%の割合に落ちております。そのかわりに、たとえば二銭一厘台のほうが一〇・六八%から一一・九八%にふえるというふうに、低い方向にウエートが動いておる。こういうことによりまして、いわゆる公定歩合に直接連動する以外のものにつきましても極力引き下げるほうに動いておる、そういう姿がやはりこれによってうかがえるというように考えております。
  140. 竹本孫一

    ○竹本委員 いま政務次官のお答えの中に、シェアが減ったようだけれども、それは中のものが大の中に入ったのだという御答弁がありました。政府はよくそういう御答弁をなさるのでございますけれども、これはひとつお互いに冷静に考えてみたいと思うのです。小のあとへまたあとから入ってきたものもあるだろうし、大から中へ落ちたものもあるだろうし、いろいろ考え得ると思うのです。的確な問題は他日を期して議論いたしてみたいと思います。  それから、いまの中小企業金融は、確かに動きを見れば割り安のものがふえてきつつあることも事実でございますけれども、町で悩みを訴えている人たち、特に零細企業等の場合にはほとんど下がっていないというようなこともよく注意して見ていただきたい。これは希望を申し述べて次の問題に移りたいと思います。  第三の柱は、財政のてこ入れの問題でございますけれども、私は、これは十分にいっていない。これは大蔵大臣自身も、財政投融資の場合等につきましても、十一月ごろからやっと本格的にこれが作業を始めるんだというようなお話もありましたし、確かに手おくれでございます。時期的にもタイミングが非常に合っていないのみならず、量的にも、はたして十分であるかどうかということは、非常にこれは当時から議論がありました。しかしながらそのことはきょうは論ずる時間がありませんのでやめますが、結論として、輸出振興にしても、金融調整にしても、財政のてこ入れにいたしましても、少なくとも政府が考えておられることの実効をおさめ得るということは非常に困難だ。だから株は上がったり下がったりして、一時非常な勢いで盛り返したように見えたダウ平均もまた落ちた。最近はまた公債インフレ期待で上がっておりますけれども、少なくとも実需の裏づけというものが十分でないということだけは確かであります。  そこで私は次の問題に入るわけでございますが、こうした条件の中で、いま政府の考えておる、あるいは期待されておる三本の柱も、少なくとも十二分の効果を期待できないといったような条件の中で来年に経済が推移した場合に、来年の経済成長率は経済企画庁として何%に見ておられるのか、承りたいと思います。
  141. 田中弘一

    ○田中説明員 来年度経済成長率でございますが、これはまだ来年度予算規模あるいは財政投融資の規模がはっきりわれわれに報告されておりませんので、まだきまっておりませんので申し上げかねますけれども、大体実質七ないし八%くらいと考えております。
  142. 竹本孫一

    ○竹本委員 七%程度実質成長を期待されておるようでありますけれども、そのデータを論議する時間もありませんから、私はここで警告をしておきたいと思うのでございますけれども、従来、たとえば、ことしの経済成長だって、名目一一%などと言っておりました。しかし、現在具体的な動きを見ておりますと、おそらくその半分であろう、実質成長も三%に達することもできないというふうに、経済見通しが非常にでたらめとは申しませんけれども、いつも計算が違う。せんだっての本会議における藤山経済企画庁長官は若干違うという答弁をされました。私はちょっとびっくりしたのでありますが、確かに若干ということばの中にはいろいろ幅の広い解釈ができますけれども、しかしながら従来の政府の統計を見ておりますと、たとえば民間設備投資などというものは、この過程において六・九%くらい予定されておったものが一六、七%伸びた。物価は中期経済計画二・五%と思ったところが七、八%、ことしはもう八%、大体間違いなかろう。ことしの経済成長も二%と思ったら六%があぶない。まるで半分以下に変わったり、あるいは四倍近く上がったりしている。これは単語の使い方は自由でございますけれども、常識から見てこれでも若干の相違と言われるのかどうか、ひとつこの辺も伺ってみたいと思います。
  143. 田中弘一

    ○田中説明員 長官が若干の相違と申したのは、どの点について若干の相違と申されたか、私はつまびらかではございませんが、おそらくこの夏ごろわれわれが本年度昭和四十年度経済成長率を算定いたしまして、望ましい姿というものを考えましたときには四%から五%というところに持っていきたいということを言っておりましたのが、最近では二、三%ということにならざるを得ないということを言ったのではないかと思います。
  144. 竹本孫一

    ○竹本委員 これはむしろ長官に直接また予算委員会等で議論の場合があろうと思いますのでこの辺でやめますが、しかし、少なくとも結論的に若干の見当違いなんというものじゃないのです。何倍と違っておるのですから、物価にいたしましても。いまお話のありますように四倍にもなるということになれば、大幅な見当違いであります。そこでわれわれの立場から言えば、投資協議会をつくるとか、あるいはその他経済企画庁がやっておられる経済計画とかいうものは全く計画になっていない。この計画を実効的に裏づけていく機構も法的な措置も何ものも考えられていない。ただ行政指導上のわずかな努力に期待をしておるだけで、客観的に見れば、これは計算にすぎない。計画という以上は、計画をして計画たらしめるような実効を確保する法的な措置あるいは機構的な整備、いろいろな問題が要るわけでありますが、これは別の機会に論じてまいりたいと思います。  そこで、次の点に入りますが、こういう見通しは常に狂っておる。来年度経済見通し七%もまた狂うであろう、若干狂うであろう。そうした場合に、今度は大蔵省のほうに伺いたいのでありますが、この四十年度財政特例法についてはこれを四十年度に限ってということになっておるが、一体限り得るのであるか。四十年度以後四十一年、四十二年についてこうした赤字公債を出す心配、可能性が絶対にないと言い切れるのであるかどうか。その辺を伺いたいと思います。
  145. 中尾博之

    ○中尾政府委員 特例法をお願いしておるわけでありますが、こういう事態は前例もございませんし、まことに異例、特別なる事態であると存じます。しかし、そのよって来たるところは今後の分析によりましてだんだんと明らかになってくると思いまするが、しかし、すべて過去の経験はこれを貴重なる体験といたしまして、いわゆる高度成長政策からこれを安定成長に持っていく、これが今回の新しい考え方です。それに即応いたしました財政のあり方、よって、いまお話のございました公債の問題もそれにからんでくるわけでございます。しかしながら、これはあくまで前向きの安定成長路線に従いました財政政策によるところのものでございまして、いま御指摘のございましたような事態にかんがみまして、今後そういうことが絶対にないようにというのが、私ども考え方でございます。
  146. 竹本孫一

    ○竹本委員 私はこれはまた大臣がお見えになったときに十分に論議したいと思うのでございますけれども、いまの政府経済計画並びにその実績等から見れば、おそらく赤字公債というものは、これが始まりであって四十一年度にもまた思わない税収の落ち込みがあって、また赤字公債といったようなことになりはしないかということをほんとうに真剣に心配をするものであります。ぜひいまお話しのありましたように、これが最初にして最後、絶対にもう一度特例法をつくって赤字公債ということのないように、厳重これは政府に考えてもらわなければならぬと思うのであります。  そこで、次の財政法第四条の問題について、特に法制局に伺いたいと思います。法制局のお考えでは、現在の財政法第四条の規定にもかかわらず、こういう特例法を出すということが可能であるというお考えであるかどうか、専門的な、法律的な見解を承りたいと思います。
  147. 荒井勇

    ○荒井政府委員 ただいまの竹本委員の御質問で、この特別措置法というものが財政法規定にかかわらず制定することができるかということでございますが、その第二条第一項の面で見ますと、政府財政法第四条第一項の規定にかかわらず、一定の税収の減収を補うために、同年度予算をもって、国会議決を経た金額の範囲内で公債発行することができるということを規定しておりまして、両法律の矛盾抵触というものを避けるという形をとっておるわけでございます。すなわち、それは御承知のように、財政法第四条第一項の規定にかかわらずということで、これが財政法に対する一つの特例法である、一つの見方では後法であるということでございまして、法律相互間におきましては一般法と特別法、前法と後法というような関係がございます。財政法財政処理についての基本を定める法律でございますけれども、それについて一切の特例というものが許されないというわけではございません。財政法自体の中でも、第四十五条におきまして「各特別会計において必要がある場合には、この法律規定と異なる定めをなすことができる。」ということが書いてあります。それから先例といたしましても、財政法第三条の特例に関する法律というものが制定されておりますし、それから、かって財政法第四十二条の特例に関する法律というものもございます。それから本年春国会審議され成立いたしまして、法律第四六号として公布された財政法の一部を改正する法律におきましては、その附則を改正いたしまして、財政法第六条の剰余金の二分の一の公債償還財源繰り入れという点につきまして、三十八年度分、三十九年度分という二年度に限りまして、その二分の一とあるのを五分の一というふうに変更するという特例を定めております。このように、一般法に対しまして特例法がその例外を規定する、あるいは前法、後法というような関係によって、前法の規定をさらに後法という新しい国会の意思というものによって乗り越えてきめるという例は、これは法律一般の制度の問題といたしまして可能な問題であるということでございます。
  148. 竹本孫一

    ○竹本委員 いまの御答弁でまだ納得しかねるのですけれども、私のほうから伺いますが、第四条の規定にもかかわらず特例を設けるということが、法は予定しておるし、可能である。それでは、第四条は何のために役に立つかという問題について伺いたい。
  149. 荒井勇

    ○荒井政府委員 それは結局唯一の立法機関としての国会の御判断にかかわるものでございまして、それは政策決定の問題である。それが法制的に可能であるかどうかという点につきましては、法制局は先ほど申し上げましたような御回答をいたしておるわけでございます。この点につきましてなお若干補足して申し上げるならば、財政法第四条第一項は、少なくとも次の二つのことを規定しているわけでございます。すなわち、不特定財源というものに充てる公債借り入れ金は不可であるというのがその第一でありまして、次に特定財源に充てるものであっても、それは公共事業費出資金及び貸し付け金財源に充てる場合であって、なおかつ国会議決を経たものでなければならないということを規定しておる、これが第二でございます。今回の特例法による公債は、異常な税収減というものが見込まれることに伴いまして、その減収を補うことを目的とし、その充てる対象たるものは不特定財源になるというものでございますので、財政法第四条の公債に該当しないということで、先ほど申し上げましたような法律の一般原理に基づきまして、特例法としてこの案を提案をしたということでございまして、あとそれを成立させるかさせないかということは、国会の立法者としての政策的な御判断であろうと思います。
  150. 竹本孫一

    ○竹本委員 責任国会の政策判断に転嫁されるような議論では困るのでありまして、法律論を聞いているのです。財政法の第四条というもので、いまお話しのように、不特定なものに対して赤字公債を出すということは許さないという原則を確立しておる。この確立したものに例外ができるたらば、それでは一体赤字公債は出せないという第四条は完全に死んでしまうのではないか、この点についての実質的な内容を持った御答弁を願いたいと思うのです。  次に、同時に財政法は、第四条について言うならは、たとえばこれが改正される——今度のこの法律が通るか通らないか、だいぶ疑問があるようですが、この法律が今月末に通ってそういうふうに改正になったということにいたしましょう。その場合を前提にして考えてみた場合に、この財政法規定によって、ことしの四月から十二月までの財政の運営は財政法第四条の規定の拘束を受けるものであるかどうかを伺いたい。
  151. 荒井勇

    ○荒井政府委員 財政法第四条は、財政法一条に言っておりますように、国の予算その他財政基本を定めた規定であるという点はおっしゃるとおりでございまして、こういう大原則という規定がそう軽々に変更される、改正されるというようなことは、財政法の制定されました趣旨からいってそう簡単に見のがすことのできないものであるというふうに存じますが、また、経済なり財政というものは、生きたものである、それに対してほかに手段があり得るかということで、たとえば今回のような二千五百九十億円というような税収減の事態がありました場合には、それに対処する方法として、では歳出をそれだけ減少するか、あるいはそれを補正要因として、追加の財政需要があるものを含めまして、その財政需要を切るか、一方では増税をするなり、その他の一般歳入というものの増徴をはかるか、そのいずれかしか方法がないわけでございますけれども、その場合に、歳出を切るということが、また国民経済——先ほど竹本先生おっしゃいましたような、財政経済に対する指導性というような点からいいまして、非常なショックを与えるというものでありまして、それだけの税収の増加をはかるということが、またこれが現在落ち込んでいる国民経済というものに対して与える影響というものからいってどうかということからいいますと、やむを得ないということで、財政法第四条そのものを改正したわけではございませんで、四十年度に限ってのやむを得ざる特例として政府としては提案を申し上げた、こういうことであろうと思います。
  152. 竹本孫一

    ○竹本委員 いまお話の点が問題なんで、どうも答弁になりません。特に私のほうで具体的に伺ったのは、私はこう思うのです。財政法第四条の拘束のもとに、赤字公債を出してはならぬぞ、赤字公債は許さぬぞというたてまえのもとに今年の四月から今日までの財政運営は行なわるべきであり、実施されてきたのではないか。ところが、それにもかかわらず、それが赤字財政を必然ならしめるように持ってきて、今日はそのしりぬぐいの問題が出てきているわけですね。そうすると、赤字財政は許さないという第四条の拘束のもとに立ちながら、政府財政運営は赤字財政を準備してきたということになるではないか、その点はどうですか。
  153. 荒井勇

    ○荒井政府委員 その点は国会がこのような財政法四条に対する特例を制定されるということを前提として、政府はなし得る限りの措置をしてきたということでございまして、いままでとりましたことが、たとえば国会議決を経ました一時借り入れ金なり、大蔵省証券の発行限度をもぐってそういうものを発行するとか、あるいは税収の不足を埋めるために公債まがいのものを出してお茶を濁しているというようなことは一切ございませんで、これは国会議決を経ました予算及びその法律の誠実なる執行としてただいままでやってまいっているということでございまして、別にこの第四条の規定をじゅうりんするようなことは一切政府としていたしておらないというふうに思います。
  154. 竹本孫一

    ○竹本委員 四月から十二月までの財政の運営の中で、私が言うのは、赤字財政を必然ならしめてきておる。必然であったから赤字財政が出たのでしょう。赤字公債を出さなければならぬような条件になってきた。したがって、第四条をじゅうりんしながら運営してきたのだということになりませんか。それから、いまこれでこの特例法をつくっても、これからあとについては赤字財政も許されるし、四十年度に限っては許すということになる。しかし、さかのぼって四月から十二月までの運営についてまでそれでいいのか。たとえば例を申しますよ。ちょっと例が悪いので恐縮でございますけれども、選挙違反をやった。選挙違反をやっておいて、その人たちがこの選挙違反は選挙違反でないという特例法をつくったらどうなりますか。どろぼうをして、ものをとっておいて、それから刑法を改正するのとどこが違うかという点がぼくはよくわからないのです。
  155. 荒井勇

    ○荒井政府委員 ただいま先生が例にあげられましたものは、その実行しました時点において違法行為であるということでございます。ところが、ただいま四十年度予算の執行として政府がやっておりますことは、そのやっている時点におきまして違反行為であるというものに該当はしておらないわけでございます。ものをとるということは、刑法に該当するということで違法行為でございますけれども。そういうようなたとえになぞらえるようなことには該当しないということでございます。
  156. 竹本孫一

    ○竹本委員 そうすると、四月から十一月まで、あるいは経済の全体の収入というものは——二千五百九十億円というものが本年度経済全体の動きの中からそれだけの税収入の落ち込みがあるのだから、ことし全体の動きについては第四条との関係はどうなるのですか。
  157. 荒井勇

    ○荒井政府委員 財政法から言いますと、その年度歳出というものはその年度の歳入をもって充てなければならぬということでございます。その「歳入とは、一会計年度における一切の収入をいい、歳出とは、一会計年度における一長の支出をいう。」ということでございままして、この四月から十一月までの予算の執行というものは、昭和四十年度予算の会計年度というワク内におきますところの一切の収入をもって一切の支出をまかなってきているということでございまして、その中に特に現行の特定の法規に違反するといったようなことは、法律論として申し上げればないということでございます。   〔金子(一)委員長代理退席、委員長着席〕
  158. 竹本孫一

    ○竹本委員 私は毎月の個別のことを言っているのじゃないのですよ。しかし、全体的な流れとして、当面の歳入をもって当面の経費をまかなっていくというのが原則である。その原則によって運営されていないから、計算してみたら二千五百九十億円の不足が出るのです。二千五百九十億円が出た日に出るのではなくして、四月からの経済運営、財政運営全体の中で出てきているのです。でありますから、二千五百九十億円が出たときに、その赤字がこれだけ一ぺんに出たというような解釈ならばいいのだけれども、そうじゃない。二千五百九十億円は四月からの経済の運営、財政の運営の中から出てきた欠陥である。この点について、財政法第四条の拘束があるにもかかわらず、それをやらなかったのだから、その運営自身がもう財政法違反になっているではないかということを言っているのです。もしまたいまの法制局のお話のような議論が成り立つとするならば、赤字財政は原則として認めぬ、四十年度だけじゃありませんよ。一般の財政法基本、たてまえとして赤字公債による運営は認めないということを幾ら書いておいても、三月三十一日になって二千億、三千億の赤字を出して、それを特例法で認めれば、それまでの運営は全部みな無罪放免ということになる。そういうことが一体許されるかどうかということであります。
  159. 荒井勇

    ○荒井政府委員 財政法の執行なり予算の運営の問題としてはやる方法はいろいろあるわけでございまして、こういう方法措置をするということもありますし、将来歳出をいよいよ歳入の足りない分に対しては切るという財政の運営もできますし、それから可能であるとすれば、今後行なうような建設事業に対して建設公債を出すということも財政法はりっぱに認めておるわけでありまして、いままでやってきました運営が、財政法精神なりその規定に抵触するということはないのではないかというふうにまず第一に考えます。  それから、年度末の「三月三十一日になって公債発行いたしまして、それが赤字公債で一切のしりぬぐいをすればそれで一切終わりかと言われますが、それは非常な歳入の落ち込みがあるというようなときには、三月三十一日までそういう状態でつないでいくということは当然不可能でありまして、その財政法を忠実に執行するとなりますれば、それまでにあらかじめ所要の措置が講ぜられるということが財政法の執行として当然のことであろうと思います。
  160. 竹本孫一

    ○竹本委員 この点は重要な問題ですが、時間がもうまいりましたのでこの辺で打ち切ります。私はなお機会をあらためて法制局の御意見を伺いたいと思うのですけれども、念のため結論を申し上げますが、財政法というものは、第四条の精神は赤字公債は許さないということが根本原則でありますから、財政の運営は、当面の資金繰りは別ですよ、しかし実質的な赤字運営というものは許さないのです。でありますから、四月の財政も五月、六月、七月の財政運営も赤字公債を出さなければならないような矛盾を持った内容で運営されるということは、それ自身財政法違反なんです。ただ、それをあとで締めくくって二千億にするか三千億にするか、それを三月三十一日にするか十二月にするか一月にするか、そういうことは単なる行政の必要と便宜の問題であって、法の問題ではないと思うのです。財政法というものは四月一日から十一月の末まで常に生きておる、常に拘束をしておる。その拘束の中で行なわるべき財政の運営がそうなっていないからこれだけの赤字が出たのですから、これについては、私は財政法の根本問題だと思いますが、あらためて論議をいたしたい。  さらに一つだけ伺いたいのですが、財政法第四条は、こういう二千五百九十億円の落ち込みのある場合には、実行予算というものをむしろ必要と考えておるのではないか、減額修正をするほうをむしろ当然のことと考えておるのではないか。こういうようなやり方というものは、ただに政治道義の上からいって悪例であるだけではなくて、やはり財政法精神からいって、建設公債の出し方、また予算の編成、実行予算の組み方といったようなものは一応議論がまたありますから別にいたしまして、第四条の精神からいえば、実行予算を組むことのほうがまだほんとうではないかと思いますが、その点についての法制局の専門的な御意見も伺っておきたいと思います。
  161. 荒井勇

    ○荒井政府委員 一番財政法精神にのっとった措置というものは、いま竹本先生のおっしゃいましたような実行予算の問題ではなくて、これは財政法二十九条の補正予算というのが一番筋が通った方法である、その補正予算の中におきまして歳出額の減少をする、ほかで歳入の増徴をはかるというような方法をとってバランスをとらせるというのが最も筋の通ったやり方でございまして、当初国会議決を経ました予算はそのままにしておいたままで、非常に巨額な落ち込みのあるままの実行予算を組むということは、財政法精神からいっていかがであろうかと思います。
  162. 竹本孫一

    ○竹本委員 いま私が言ったのも法制局の御答弁のような内容で言っているつもりなんですけれども、たとえば補正予算という形においてそれだけの落ち込みを前提として減額したものを組み直して出すのだ、それを実行予算と簡単に呼んだのですけれども、そのほうが当然なさるべき努力ではないか。したがって私は、やはりそういう補正予算なり、私の言う実行予算を組むべきであって、今度のような特例法に訴えるということはイージーゴーイングであるだけでなくて、法の精神からいって非常に問題が多いというふうに思いますが、あらためて伺いたいと思います。  なお、時間がまいりましたのであと質問は留保するということにしたいと思うのでございますが、一度あらためて建設公債でいう公共事業ということの観念について、定義についてはっきり伺いたいと思います。  それから大蔵省のほうに、これは資料の要求でありますが、公債を六千億円、七千億円、一兆円と景気のよい話が出ておりますが、かりに来年六千億円出されるにしても七千億円出されるにしても、それを可能ならしめる資金の動きについての分析を数字的に一度お示しを願いたいと思うのです。それぞれの預金が幾らふえるのか、それぞれの起債、あるいは民間設備投資、あるいは政府保証債、そういうものがどういうふうになるから六千億円あるいは七千億円の公債発行が可能であるかということについてのやや科学的なデータをほしいと思うのです。これはあらためてまたお願いをいたしたいと思います。  一応この辺で質問を終わりたいと思います。      ————◇—————
  163. 吉田重延

    吉田委員長 参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  昭和四十年度における財政処理特別措置に関する法律案について、来たる二十四日参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  164. 吉田重延

    吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次会は、明二十三日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時一分散会