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田中参考人 私は、いま
日本栄養士会会長ということにもなっておりますけれども、
栄養学を専門といたしております医者の一人として、なおまた、
栄養士を養成いたしております神奈川県立
栄養短期大学の学長というような
立場、そのほかまた厚生省、
文部省その他のところで、いろいろな
勤労奉仕のお仕事をお引き受けしておる者といたしまして、
常々衆参両院の
先生たちにいろいろな
意味で陳情、請願などをいたしてお世話になっておる次第であります。ただ、私は個人として、少しも
自分のいわゆる利益とか、名誉とか何とかいうことには
関係なしにやっておるので、いろいろな場合におきまして、私の言動が非常に勇ましいというか、よくそういうふうにひやかされるのであります。そういう
意味で、きょうも遠慮のないことを申し上げたほうが御
参考になるのではないかと思いまして、ひとつ申し上げたいと思います。
まず第一、
体育振興という、こういう
特別委員会をお持ちくださいますこと、まことにけっこうであります。しかし、
日本人は字句というものに非常に引きつけられると申しますか、また、こだわりやすい習性を持っておると思います。
体育、こうなると、いかにももういわゆる
スポーツというものに力が入っておるように見えるわけであります。また、
体力ということになりましても、この
体力の
定義というものが、われわれ
学者ではありませんが、そういう者の中でもまだはっきりとしておらないような向きがあるわけです。
そこで健康の
定義ですが、この健康の
定義につきましては、
国連のほうで世界じゅうの
学者が寄って相談いたしました結果、皆さん御
承知のようなああいう
定義ができたのでありますが、私は
国連の
学者が寄ってきめたよりももっともっと前から、健康の
定義を唱えておるわけでありまして、それも遠慮なしに御
参考に申し上げると、ほとんど
国連の
定義と一致しておるようでありますが、何もパテント争いする必要はございませんので、笑いながらいつも申しておるわけで、学生にもそういうことを教え、
栄養士にもそれを教えておるわけであります。
私の健康の
定義は、そこへ「真の健康」というふうに「まことの」という字をつけて、「かなり無理をしても疲れを感じないで、いそいそ、にこにこ、生き生きと活動し得る心身の快適状態を真の健康という」、こういうふうにいっておるわけであります。ただ単に
病気であるとかないとか、そういう
程度でなくて、かなり無理をしても——あまり無理をし過ぎてもいけないのでしょうが、かなり無理をしても疲れを感じないというか、心と
からだと頭がいわゆる疲れを感じないで快適に活動することのできる状態をいう、こういうふうに申しておるわけであります。そういうことを唱えておる者として、私自身もそれの範を示さなければならないということで、非常に力を入れてそれの実行を続けておるわけでありますので、こうやってその健康の真の
定義にふさわしい健康を保持し、確保し、
増進しつつあるわけでありまして、
年齢を超越して、暦の
年齢などを数えないで、非常に元気で、
栄養士界の先頭はもちろん、
日本のいろいろな面におけるこういう
栄養問題につきましては、公私ともに力を入れ過ぎるほどやっておるつもりでおります。それでも少し頭が痛いとか、疲れるとか、
からだがだるいとかということはございません。こういう私がまことにうれしく味わっておる健康を、
日本全
国民に味わっていただきたいというのが私の念願でありまして、先ほど来、
スポーツのほうの御専門の方が申されましたような
スポーツ振興——
スポーツと申しますか、
体育振興ということにつきましては、これまた、もちろん大賛成であります。青
少年の不良化防止というような点から見ても、ただ単に
スポーツということにとどまらず、そういう精神面に及ぼす影響も大きいから、ますますこの方面に力を入れていただきたい。
なおまた、
清水先生のおっしゃるように、
学校給食、この重大さはもうすでに認識が深まりつつありますけれども、まだ一部におきましては、
学校給食はおなかを大きくする、いわゆるお弁当がわりのものを与えるのだという
程度しか考えておらない人もあるわけであります。
清水先生おっしゃるように、私も
日本学校給食会の評議員というのを
文部大臣から任命を続けて受けておりますが、そういう役を承っておるからというのではなくて、
学校給食こそはもっともっと国が力を入れていただいて、
学校給食法を改正
強化していただいて、そして、いわゆる
義務教育にはぜひとも
学校給食をやらなければならないということにして、そして国費をこのほうへ回していただきたい。大蔵省の
方々にお会いすれば、そういう
予算はないとおっしゃるけれども、ないのではなくて、回してくださるかくださらないかということであって、初めから
学校給食のほうに回す税金といって取っているわけじゃないのだから、そういう方面が、より以上に
日本を繁栄させる基に役立つのであるという御認識を、国会の
先生たち及び大蔵省当局にしていただいて、そのほうにもっともっと力を入れていただきたい、こういうふうに陳情、請願を続けておるわけであります。こういう
意味で、小
学校、中
学校の学童生徒全員に義務的に
学校給食を実施していただくような
日本学校給食会法、これの大改正、
強化をしていただきたい。
その次は、
栄養改善法を
昭和二十七年に、いまここにいらっしゃる
先生方のお力によりまして、議員立法としてつくっていただいたわけであります。
日本の画期的な文化立法でありまして、私
たちは大喜びしたわけであります。私は、そのときはほかの公職を持っておらなかったので、破防法で非常に長引きましたあの国会のときでありますが、八カ月間これに日夜専念いたしまして、そうして議員の
先生方に、たん白質がどうだとか、ビタミンがどうだとか、カロリーがどうだとかいうようなことまでもいろいろとお話を申し上げたり、陳情、請願をもうしつこいほど行ない、また全国的な
運動を展開して、そうしてやっとあの
栄養改善法というのをつくっていただいたわけであります。おかげによりまして、不十分であり、第一案から第七案までに修正されましたけれども、非常に
日本としては珍しいあの
栄養改善法ができたために、
栄養士を養成するというような
学校もたいへんふえたし、また、
栄養士の活動というものが合理的にやれるようにもなったわけでありました。そのときに
学校給食だけが、また別にということになって、少しおくれて
学校給食法ができたわけであります。
この
栄養改善法は、集団
給食施設における
給食をどういうふうにするかという、奨励はされておるわけでありますが、義務的にするわけにはいかないそうであります。もちろんそれは無理でありましょうが、こういう、ある何食以上の集団
給食施設において、いわゆる特定多数人がそこのその食べものを食べなければならないような場合、働いておる方に、同じ経費で食事をお上げするのなら、合理的な、
栄養学的な、衛生的な、しかも経済的なもので安いものをお上げしたほうがいい、こういうふうな
栄養改善法にしていただいたわけでありますけれども、まだまだこれが徹底いたしておりませんので、その
給食の単に人数、すなわち一回百食、一日二百五十食以上というところから始まっておりますが、そういう面で、まだまだ大きなところだけが大切で——小さいところは必要でないというわけではもちろんないのでありますが、しかし、こういう
栄養改善法の適用を受けるところであっても、まだ本式の
栄養食が提供されておらないところが多いわけであります。そういう
意味で、
先生方の議員立法によってしていただいたあの
栄養改善法を、もっともっと強力にしていただきたいわけであります。これは、ただ単にそこの集団
給食を受ける人だけでなくて、その家族にまで、その合理的な
栄養食が健康のためにいいということを認識していただくことが必要であります。
学校給食を通じて、家庭の食生活
改善の
教育になると同じように、集団
給食で受けたその合理的な
栄養食が家庭にまで及んで、何よりも
日本繁栄のもと——それは健康な人が一人でも多くなることが繁栄の基であると信ずるわけでありまして、病人が多いほど、一家にとりましても、また地域社会にとりましても、大きな国としても不幸でありますし、非常に暗くなるわけであります。その
意味で、明るくするためには、また繁栄さすためには、何としてもほんとうの健康を確保しておる
国民がふえなければならないということ、それには、合理的な食生活を実行してもらうようにしなければならないと思います。
そこで、厚生省が
昭和二十一年以来毎年何回も続けて、いまもなおやっております
国民栄養調査の
成績をごらんになるとおわかりのように、だんだん
改善はされつつありますけれども、いまだに四人に一人、五人に一人の割合で、へたな食生活をしておるために健康を害しておる、すなわち
栄養障害におちいっている病人がおるわけであります。二千万人も二千五百万人もの病人が
日本におる。これは
栄養的に診断しただけでの病人ですが、私の言う眠りにくいとか、いらいらしているとか、がつがつしているとか、くよくよするとか、そういう
国民栄養調査で診察するよりもう少し範囲の広い病人を加えたならば、もっともっと、
日本の
国民の中のもう六〇%は病人ではないかと思うわけであります。とげとげとした行動をし、すごい目つきをし、そうしてあの込んだ電車で押し合いをし、いろいろな面で——
国民の模範である
先生方の中でも、たまにはいろいろ乱暴されるような方もあるというのは、食物が不合理であるからである、こういうように思うわけでありまして、もう少し穏やかに議事も進め、模範を示していただきたいということも、私よく笑いながら申すわけであります。
そこで、こういう
意味で合理的な食生活をしておれば、
からだの健康がよくなるだけでなしに、頭と心の健康もよくなるのだということ、それを確信いたしておりますので、どうぞそういう点で
栄養改善法を
強化していただくこと、それと
学校給食法を
強化していただくこと、そういうことを
お願いしたい。
それから、これもまた実行に移していただきたいのですが、
体育振興のためのいろいろな施設とか、またそういうふうな
運動をなさるようなときには、それは決して私はブレーキをかけたりくさしたりいたしませんが、そういう場合には、必ずこの
栄養食というものを並行的にそこに供給できるようにしていただきたい。ただ
運動させさえすればいいのだということでなくて、トレーニングだけではいけないのだということをよく認識さして、そして
年齢に応じ、男女の性別、また
運動の種類、短時間、長時間のもの、またそのときの気候の温度とか湿度とか、いろいろな面で与える
栄養食の内容を違えなければならないのであります。それを、同じようなものを提供しておったのではだめであるから、そういう
スポーツ施設をする場合には、必ず
栄養の専門の者がそこにお手伝いのできる
給食施設を一緒につけるということ、これはぜひともやっていただきたいわけであります。そして、いわゆる
体力づくりの
国民会議というのが、ああやって昨年来活発に活動をされてきておるわけでありまして、ここにいらっしゃる古井
先生が議長さんで、大活躍をされて、今後ますますこれが発展しようとしておることはまことにおめでたいことでありますが、
体育は
文部省だけのものであるということのないように、厚生省も、労働省も、農林省も、いろんな省が加わって、加わるだけでなく団結をして、そうして総理府がまとめておられるということは、まことにこれは喜ばしいことでありますので、この
体力づくり
国民会議というものにもつともっと力を入れるように、
政府に
お願いいたしたいわけであります。一億何千万円をつけていただいたそうでありますけれども、まだまだ、もっともっと大きな
予算もいただき、そして熱意にあふれておる百六十八団体のいろいろな面における活動が、もっともっとやりやすいように、しかも、総理府の音頭とりが各省を超越して、また各省を網羅して、力強くやられるような組織にしていただきたいわけでありまして、それも
お願いいたしたい。
そこで、その場合にも食生活
改善という
栄養食のいわゆるセンターを、都道府県、市町村に置いていただきたい。そこへ行けば、たとえばどういう
スポーツをどのくらいの時間やるときに、何歳の子でどういう者にはどれだけの食べものを、どう食べればちょうどいいのかというようなこと、そういうことがわかるような献立表もでき、そしてそれのサンプルができ、実物も食べてみることができるというふうなセンターを、各都道府県、市町村に置いていただく、そういうのを年次
計画をもって、十年
計画でも百年
計画でもいいからやっていただきたいというようなことも申し上げたい。
そこで、もう
一つ申したいのは、この国
会議事堂内における食堂のあの献立をもう少し合理的にして、そしてそれに
栄養計算をして、それで価もももろん書いてありますが、これを、大切な
先生方がお食べになるものでもあり、またお客というか、全国から陳情に来た者も食べるものであるから、そこへ行けば、これは何歳ぐらいのどれぐらいの体重の者が食べてちょうどいいというようなことも書いて模範を示していただきたい。そういう
意味で、先ほど申したように、衆参両院のあの会館の食堂を国会直営と申しますか、国営にして、そして
栄養計算をしたもので合理的な値段で食べさせて、ひとつここで模範を示してもらって帰るということにさしていただきたい。これも前にも申しましたが、そういうふうな
意味で
お願いの
一つであります。
もう十五分過ぎましたので、これで終わります。ありがとうございました。よろしく
お願いいたします。