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1966-04-07 第51回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年四月七日(木曜日)    午前十一時五十五分開議  出席委員    委員長 野田 武夫君    理事 有田 喜一君 理事 加藤 高藏君    理事 藏内 修治君 理事 多賀谷真稔君    理事 八木  昇君       大坪 保雄君    上林山榮吉君       神田  博君    中村 幸八君       西岡 武夫君    野見山清造君       廣瀬 正雄君    滝井 義高君       細谷 治嘉君  出席国務大臣         通商産業大臣  三木 武夫君  出席政府委員         農林事務官         (農地局長)  大和田啓気君         通商産業政務次         官       進藤 一馬君         通商産業事務官         (石炭局長)  井上  亮君         通商産業鉱務監         督官         (鉱山保安局         長)      森  五郎君  委員外出席者         通商産業事務官         (石炭局鉱害課         長)      佐成 重範君     ————————————— 本日の会議に付した案件  石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法  律案内閣提出第五三号)  産炭地域振興事業団法の一部を改正する法律案  (内閣提出第五四号)  産炭地域振興臨時措置法の一部を改正する法律  案(内閣提出第五五号)      ————◇—————
  2. 有田喜一

    有田委員長代理 これより会議を開きます。  委員長が所用のため、指名により、私が委員長の職務を行ないます。  内閣提出石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案産炭地域振興事業団法の一部を改正する法律案及び産炭地域振興臨時措置法の一部を改正する法律案を議題として、前会に引き続き質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。滝井義高君。
  3. 滝井義高

    滝井委員 昨日多賀谷君から石炭運賃延納の問題について御質問があったということを聞いておりますが、ちょうど私同席しておりませんでしたので、重複するかとも思いますけれども、ちょっと聞いておきたいのですが、過去において、三十六年に運賃改正があったときに、その値上げ分の半分について三カ年間にわたって延納を認めました。その滞納額がほんとうはもう支払ってしまっておらなければならぬはずですね。それが幾らいま残っておるか、それをちょっと先に御説明を願いたい。
  4. 井上亮

    井上政府委員 三十六年度の分が二億、三十七年度が十億、三十八年度が十億、合計二十二億が延納になっておりまして、これは四十三年度から二年間に支払うというようなことに相なっております。
  5. 滝井義高

    滝井委員 今度運賃が平均一四・七%引き上げとなりましたが、これによって年間負担増というのは幾らになるのですか。
  6. 井上亮

    井上政府委員 今回の措置によりますと、大体三十億程度延納に相なります。この三十億と申し上げましたのは全額でございます。
  7. 滝井義高

    滝井委員 今回の延納になる分についての支払い時期は、いつからいつまでの間に支払うことになりますか。
  8. 井上亮

    井上政府委員 一年間全額延納ということにいたしておりますので、昭和四十二年四月一日から本年の延納分は払うということに相なります。
  9. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、昭和四十二年四月一日から四十三年三月三十一日までに支払ってしまうわけですね。そうすると、この三十億を来年度じゅうに払ったら、すぐそのあとに二十二億の四十三年から払う分が続いてくるわけでしょう。そうなるわけですね。
  10. 井上亮

    井上政府委員 そのとおりでございます。
  11. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、一体これが順当に払えるのかどうかということです。昨年十一月に国鉄運賃改正案が国会に提出されたときに、政府と自民党の間では、これはいまこうやって延納しておるけれども、いずれにしても抜本策のときに考えざるを得ないだろうというようなことになっておるように聞いておるわけですが、二十二億と三十億、約五十二億の金というものは、これは抜本策で一体どういう形で考えようとしておるのか。
  12. 井上亮

    井上政府委員 本年度は、先ほど申しましたように、一カ年間全額延納ということになりますと、四十二年度以降、従来の延納分支払いがその後数年間にわたって続きますので、相当な負担になるわけでございます。しかし、とりあえずそういう延納措置を講じたわけでございまして、これは、先生承知のように、今日現在の石炭政策は、本年六月末を目途といたしまして将来の石炭対策についての抜本的な安定対策を立てようといま検討を進めておるわけでございまして、その間のつなぎ対策ということでやっておるわけでございまして、したがいまして、延納というようないわばこそくな手段によらざるを得なかったということでございますが、来年度以降につきましては、ただいま申しましたように、政府といたしましても、石炭についての長期安定対策を講じたい、その中でこの延納運賃についても支払いが可能になるような賃金経理上の対策を講じたいというふうに考えておるわけでございます。
  13. 滝井義高

    滝井委員 この五十二億という金は、いまの国鉄にとっては、赤字経営ですから、相当な金になるわけですが、延納分については利子はつけてやるのですか。
  14. 井上亮

    井上政府委員 無利子でございます。
  15. 滝井義高

    滝井委員 国鉄利子主張しておるのでしょう。
  16. 井上亮

    井上政府委員 主張はされましたが、御承知のように、三十六年度の運賃値上げに伴います延納措置に関連いたしましても、これは無利子にしていただきました。今回につきましても、国鉄の御主張先生指摘のとおりでございますが、これは話し合いの結果無利子ということで、石炭対策に御協力をいただくようにお願いいたした次第でございます。
  17. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、この五十二億の金は、各石炭山によってそれぞれ違うわけですね。まあ北海道九州のほうが炭鉱が多いのですが、そこら中央部石炭を送ってくるにはそれだけ運賃がよけいにかかるわけで、それぞれ九州北海道石炭山を持っておる鉱業権者がよけい負担をしなければならぬことになると思うのです。そうしますと、抜本策でやる場合に、これは一体炭価に織り込んでやることになるのか、それとも、開発銀行その他の国の機関が貸しておるものと同じような取り扱いをすることになるのか、これは一体どういう形になることが一番合理的だとお考えですか。
  18. 井上亮

    井上政府委員 いずれにいたしましても、この国鉄運賃延納されましたものが四十二年度以降支払い可能になるような資金経理上の対策を講じなければならぬわけでございますが、その方法論につきましては、まだ明確な政策を打ち出しておりません。しかし、いずれにいたしましても、先生指摘のように、炭価値上げということは、これはむずかしいと思いますが、やはり石炭産業経理面苦況に対する何らかの補助助成措置を講ずる必要がある、その中にこの負担分を考慮いたしまして、補助助成をしてまいりたいというふうに考えております。
  19. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、炭価値上げができないとすれば、国鉄にある程度泣いてもらうか、交付公債みたいなものをやって、それを今度は国鉄に払うようにするか、結局、そういうことでやることになれば、交付公債みたいなものでやる以外にないような感じがするわけです。この問題も、他の借金の問題と同じですから、ひとつ十分検討してもらわなければならぬですが、しかし、前に私が読んだものでは、ことしの延納分は、あなたは、四十二年四月から四十三年三月末までに払う、こういうことでしょう。そうすると、これは均等月割りで払うということになっておるのじゃないですか。   〔有田委員長代理退席委員長着席
  20. 井上亮

    井上政府委員 そのとおりでございます。
  21. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、均等月割りということになれば、何らか毎月財政措置をしてやらないと払えないことになるわけですね、各鉱業権者は毎月送る量が違ってくるわけですから。そうすると、均等月割りということになれば、石炭価格か何かにやらないとぐあいが悪いのではないかという感じもするし、あるいは、毎月一定の金は融資か何かしてやって、それで払わしていくとか。しかし、それにしても、やはり借金肩がわりで、鉱業権者の荷になっていくことは確実だしね。均等月割りということをきめたからには、一体その財源というものはどうするのか。いままでの分の二十二億についてはいいです。これはもう四十三年のことだから、あまり議論しなくてもいい。しかし、ことし延納するのは、額は非常に多くて三十億でしょう。あとのやつは二十二億で、二年で払えばいい。今度のやつは三十億を一年で払わなければならない。だから、相当額が多いわけです。そうしますと、月割りで払うということになりますと、抜本策というものは財源措置をしてやるだけのことになって、払い方はきまっておるわけです。毎月均等月割りで払いますということがきまっておるわけですから、約二億七、八千万ずつの金は毎月払わなければならないことになるわけです。そうすると、その財源措置というものを何らかの形で通産省がやってやらないことには、払い方が均等月割りときまったからには、抜本策とかなんとか言ったって、ことしのこの法案に関する限りは、なかなかのがれられないところじゃないですか。
  22. 井上亮

    井上政府委員 この支払い方法につきましては、まだ具体的に検討はいたしておりませんけれども、いずれにいたしましても、何らかの石炭鉱業に対する助成措置を講ずることによりまして、支払いが可能になるようにするということでございますが、その支払い方法といたしましては、先生ただいま交付公債も一案だというふうにおっしゃいましたが、そういう考え方もないわけではないと思いますけれども、一応、現在私ども考えておりますのは、そういった形ではなくて、もう少し別な、現実に確実に支払えるようにしたい。つまり、石炭鉱業会社経理が正常になれば、この程度のものは支払えるわけでございますから、そういう形に、国の補助策といいますか、助成策を講ずることによりまして、これが支払えるようにしたいということでございますから、そういう姿の中から、企業は毎月払っていくということになろうかと思います。
  23. 滝井義高

    滝井委員 企業に対する助成策の中から払えるようにするということは、結局、金を貸してやるか、炭価に織り込むか、二つしかないでしょう。何かほかにいい方法がありますか。
  24. 井上亮

    井上政府委員 金を貸してやるということも一つだろうと思います。しかし、炭価引き上げということは、先ほど申しましたように、いまの情勢ではなかなか困難だと思いますから、それにかわる国の助成策ということになろうかと思います。
  25. 滝井義高

    滝井委員 それにかわる助成策ということになりますと、どういうことになるのかわかりませんが、金を貸してやれば、結局やはり焦げついていくことになる。同じことですよ。国鉄から借りておったものを、開発銀行とか合理化事業団から金を借るということになるだけであって、たらい回しになるだけなんですよ。それではいつまでも借金がついて回ることになるわけでしょう。われわれ人類も、サルみたいなものからだんだん発達をして、初めはしっぽがあったんだけれども、いまや、人間さまになったからには、外にはしっぽは出ておらぬですよ、尾閭骨というのがあるんだけれども。だから、炭鉱もやはりそのくらいにしてやって、借金が外には見えないというくらいにしてやらないと、事業団から開発銀行にかわる、あるいは国鉄からそれにかわってくるというようなことだけでは、何か知恵がなさ過ぎる。これはまあ根本論になるのですが、結局、そういう政策というのは、石炭産業私企業として生かそうとするあまりに、非常に伸び伸びとした政策が出ないということなんですよ。私企業としてできるだけ保とうとするから、借金肩がわりをするうちに、だんだん借金というものは雪だるまのようにふくれちゃって、現状においては交付公債で千二百億もまかなってやらなければどうにもならぬということになってくるわけですから、だから、そこらをもう少し歯切れのいい何か方法はないんですかね。いま言ったような、借金一つ方法ですと言うのなら、積極的に炭価に織り込んでやる。どうせ同じですよ。どこかが背負わなければならぬのですからね。結局、われわれの税金で背負うか、価格で背負うかの問題だけでしょう。そうすると、価格で背負うところに対して、電力とか鉄鋼がその分だけ価格をよけい背負うならば、還付金を完全にしてやれば同じことなんですから。だから、どこか押し詰めたところできちんとしておかぬと、石炭産業にいつまでも借金肩がわりさしておくということは、いかないですよ。そんなら私企業はやめたほうがいいです。日本の石炭産業失敗をしたというのは、あまりにも私企業にこだわってきたということが失敗の大きな原因であるということは、学者等が最近明白に指摘し始めておる。もう一つ原因スクラップ・アンド・ビルド方式です。この二つというものがもう一番根本的な原因であるということは、学者その他が最近明白に指摘し始めておるわけです。だから、この運賃の問題をもう少しすっきりしてやっていかないと、意味ないんじゃないか。これを国有化政策でやれば、もうそれは国の事業なんだから、石炭産業には石炭運搬は無料にしますということにしてもらったらいいんです。だから、どこか、国鉄段階補助金なら補助金を出して片づけるか、それとも企業段階炭価で片づけてやるか、どこか片づけるところがないと、いつまでも借金がついて回るような政策を持ち回りでやったのでは、私はいかないんじゃないかと思うのですがね。その点、どうも井上さんの答弁は歯切れが悪いですよ。それじゃちょっとなかなかこれは納得ができないです。
  26. 井上亮

    井上政府委員 歯切れが悪いとおしかりを受けたわけですが、率直に言いまして、滝井先生がお考えになっていることと大差ないことを考えているわけですが、ただ、今日の段階で、この延納運賃支払いが可能になるような具体的方法ということについての政策がまだ政府として決定しておりませんので、今後抜本策検討の中でこの問題は当然入れまして検討する予定にしておりますので、どうしても私のお答えが歯切れが悪いようになるわけでございますが、もうちょっと歯切れよく申し上げますれば、たとえば、これはそうなるかどうかは今後の検討に待つわけでございますが、昨年の末に石炭鉱業調査団から政府に答申のありました、政府はそれを閣議決定してその趣旨を尊重してやるということになっております、その考え方からいたしますと、値上げはいたしませんかわりに、何らかの安定補給金あるいはこれにかわる助成策ということを言われておりますので、そういった助成策の中で支払いが可能になるように努力してまいりたいということになろうかと思います。
  27. 滝井義高

    滝井委員 いまのあなたの言われるようなことは、やはり私企業としての原則をあくまでも貫いていこうということですよ。そうしますと、だんだん国の助成策が多くなってくる。多くなると、企業はそれだけ、国鉄運賃はどうせ国が見てくれるのだからということで、支払う体制はできないのですよ。できなければ、だんだん借金も積もってくることになるわけです。一事が万事。石炭というのは、昔から石炭とは運搬業なりと言われているわけでしょう。その一番大事な石炭の生命である運搬業のところで運賃を国が助成をしてくれるということになれば、経営者企業努力というようなものが出てこないのですよ。だから、これはやはり、企業ベースでやらせるならば、思い切って炭価でやってやるのですよ。そして、その分だけ今度は鉄鋼電力助成してやったら、同じことなんですから、どうせどこかでやらなければならぬのですから。だから、石炭産業というものが独立自尊の精神が持てるような形は炭価しかない。炭価を安くしておいていろいろ助成策をつけてやる、私企業でいくなら、そんな助成策は要らぬということです。これはむしろ、炭価を上げてやる、これでいきなさい、こういうことでないと、どうも歯切れが悪いのですよ。そこまでいくなら、私企業はやめて国がやったほうがいいということになるのでしょう。だから、どうもそこらあたりがはっきりしないので、これはもう一ぺん大臣が来てからすることにして、その点をちょっと保留をしておきましょう。  次は、農地局長さん、来ていただいたから、これも最終的には大臣になるのですが、御存じのとおり、臨鉱法が四十七年七月三十一日には終わることになるわけです。そこで、各炭鉱はいまどういうように計画を立てておるかというと、四十一年、四十二年、四十三年、四十四年、四十五年、四十六年、四十七年と、この六年半程度で大体この臨鉱法は終わってしまうというので、各石炭山はいわば六年半の復旧計画を立てているわけです。ところが、国の予算が伴わないわけですね。炭鉱は、六年半で、四十七年七月三十一日で臨鉱法が終わるのですから、それまでにいまある既存鉱害、それから新しく四十七年までに発生する鉱害を大体目標を立てて、そしてそれを復旧する計画を立てておるわけです。ところが、国のほうはそういうベースでついてこないわけです。これを一体どうするつもりかということです。国のほうの予算ベースが、ことしは五十六億ぐらいでしょう。全然歯車が合わぬわけです。そうすると、われわれ住民も、四十七年に法律がなくなるのだから、四十七年までに復旧してください、こういう要求をするわけです。バスに乗りおくれたらたいへんですから、当然要求するわけです。そうすると、その歯車がかち合わない。これは一体どうすればいいのか、こういうことなのです。
  28. 井上亮

    井上政府委員 ただいま御指摘石炭鉱害復旧の問題につきましては、一応法律が限時法になっておりますので、その間に鉱害復旧を片づけなければいかぬというようなことで、そのことのためにまた現地でいろんな混乱や問題も起こっておるというような御指摘でございますが、一応法律といたしましてはそういう形態になっておりますので、そういうような事態、考え方が起こるかと思います。しかし、私どもとしましては、今後の鉱害復旧についての長期の見通しを考えてみまするに、四十六、七年くらいに全部鉱害が終わるというふうには必ずしも考えておりません。残存鉱害だけでも六百億もあり、かつまた、今度の調査によりますと、今後の鉱害等も含めまして八百九十億近い鉱害が予想されておるわけでございますから、残存鉱害と合わせまして相当な巨額な鉱害量があるわけでございまして、これを今後私ども計画的に復旧してまいりたいというふうに考えておるわけです。現地実情等からしまして、既存のものについてはできるだけ早期復旧しなければいけませんけれども、今後起こってきます鉱害について考えてみますと、石炭鉱業が今後十年、二十年と続いていく過程で、やはり鉱害問題というのは起こると思います。その場合には、やはり、限時法になっております法律を、必要に応じまして延長の措置を講ずるというようなことに当然なろうかと思います。ただ、しかし、その間、滝井先生承知のように、鉱害復旧の問題につきましては、より根本的な問題もございますので、そういった問題も今後検討していくつもりでございますので、やはり、そういった今後の鉱害復旧についての前向きの政策論とも合わせまして、この法律をどう改正するかというような問題もその間には起ころうかと思います。そういうふうに考えておりますので、鉱害復旧に関連して、限時法なるがゆえに混乱するというようなことがないように、私どもは指導してまいりたいというふうに考えております。
  29. 滝井義高

    滝井委員 既存鉱害は非常に早期にやりますとおっしゃっておるけれども、五十六億かそこらベースではどうにもならぬわけでしょう。  そこで、一体、現在有資力と無資力安定鉱害というのは幾らあるのですか。
  30. 井上亮

    井上政府委員 先生承知のように、昭和四十年度に全国鉱害量調査をいたしたわけでございまして、ただいま中間集計値が一応出ているわけでございますが、それによりますと、既採掘分につきましては六百七十億、それから、将来のものは大体百六十九億程度というふうに想定いたしております。
  31. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、既採掘分の六百七十億のうちの安定分幾らですか。
  32. 井上亮

    井上政府委員 これはまだ中間集計の問題でございますから最終にはなっておらぬと思いますが、一応私ども考えておりますのは、五百五十億程度というふうに考えております。
  33. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、五百五十億を少なくとも六カ年程度で完成しようとすれば、どんなに少なくても百億くらいはやらなければいかぬわけです。というのは、六百七十億のうち五百五十億安定しており、やっておるうちに六百七十億から五百五十億を引いた百二十億ばかりのものも安定をしてくるわけですから、どんなに少なくたって百億をこえるものはやっておかなければならぬ。ところが、それが半分でしょう。だから、六年かそこらでこれをやろうとすれば、いまの倍以上の予算というものを最小限度組まなければ、この法律の終わった時点で既発生鉱害を完了することはできない。そのとき完了したって、なお約百六十九億というものが残ってくるわけです。さらに、これは掘れば掘るほどまたずっとやっていくわけです。だから、まずこの法律期限を切ることがそもそもの間違いのもとなんですよ。しかし、これは期限を切っておかなければやらないということがありますから、それは期限を切っていいです。だから、少なくとも六百七十億という既発生鉱害だけは四十七年の七月末までにはやる体制というものはとってもらわなければいかぬと思うのですよ。炭鉱はそれをやろうとしているのですからね。一体だれがそれをやることをじゃましているかというと、いま国がじゃましているのです。国が予算をつけないでじゃましているわけです。だから、鉱害復旧妨害者はだれかといったら、犯人は国なんですよ。だから、この犯人をつかまえなければいけないのです。そうでないとだめなんです。その結果、一体どういうことが起こってきているかというと、これは、いま運賃延納分がございました。運賃延納分は、これはあと大臣が来たらもう少し詰めますが、これと同じことが起こってきているわけでしょう。それは、年年補償を払わなければならぬ。炭鉱は、復旧がおくれればおくれるほど、安定をした既発生鉱害について、少なくとも農地については年々補償を払っていかなければならぬ、こういう問題がある。そうすると、この額が非常に多くなれば、それだけ借金がふえてくることになるのですよ。だから、ピッチを上げるということが石炭鉱業安定化の上に非常に重要なことなんです。そこがいま抜けているのです。  農地局長さんにお尋ねいたしたいのですが、いまの六百七十億の既発生鉱害分で、農地分は一体幾らぐらいあるのでしょうか。
  34. 大和田啓気

    大和田政府委員 私ども承知いたしております農地関係鉱害量の数字は、約四百三十億ほどございます。
  35. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、既発生鉱害の七割というものは農地復旧です。そうすると、四百三十億の農地の中で年々補償というものは一体どの程度払うことになりますか。この四百三十億に有資力分と無資力分があるから、それを有資力と無資力とお分けになって、無資力分の年々補償がどの程度、有資力分がどの程度と、こうやって教えてもらいたい。
  36. 佐成重範

    佐成説明員 農地の未復旧の場合におきます年々の補償でございますが、有資力鉱害、すなわち、炭鉱が残存しております場合に支払っております金額は、年間約十億円と把握いたしております。それから、無資力の場合には、これは炭鉱が消減等いたしておりますので支払い者がおらないわけでございますが、炭鉱がもし残存しておりますれば当然支払うべき金額、これにつきましては、私ども、おおむね一億七千万程度というふうに考えております。
  37. 滝井義高

    滝井委員 井上さん、いまお聞きのとおり、有資力分で年々の補償十億円ですよ。これは相当大きいですよ。これは延納方法はないわけです。農民にやらなければならぬ金ですから。そうすると、金を貸してやるということになるんです。基金その他から金を貸す。そうすると、またその借りた金に利子がつくわけです。そうすると、今日、石炭山は、ニュースクラップ方式で、みずからの自立性を確立するために労働者の首を切ってみたところが、その首を切った退職金の支払いが、いまや自立を確立せんとする炭鉱の頭にのしかかって、みずからがその退職金の支払いのために借りた金で窒息をしようとしておる現状でしょう。だから、その復旧をやはりすみやかにやってやるということでないと、十億ずつ毎年金を払わなければならぬことになるわけです。しかも、農地は土地の生産性というものが非常に落ちるでしょう。日本農業というものは、労働の生産性と土地の生産性とを上げていかなければ食糧の自給率というものは確立できない状態なんです。だから、だんだん人造肥料をまく、金肥をまく、そして、そのためにまた土地の生産性というものは落ちてきつつあるわけでしょう。鉱害農地というのはもっと落ちて悪くなっておるでしょう。だから、この点は、農地局長さんのほうで、一体鉱害復旧にどういう対策をとって、四十七年末までに少なくとも農地を積極的にやろうとするのか。いまわれわれのところで一つの団地をつくって復旧しようとした。ところが、団地をつくって、そして同意をとって復旧しようとしたら、それに予算がつかないんです。予算がつかないためにできないのです。ところが、通産省はいままで何と言ったかというと、鉱害復旧というものは今後総合的にやらなければならぬ、総合的・一貫的にやらなければならぬということが鉱害復旧の基本方針だったのです。ところが、その一つの団地を復旧しようとしたときに、団地の三分の一とか二分の一しかできないといったら、総合的な復旧はできないですよ。だから、したがって、そこの農民というものに非常に迷惑をかける。半分だけ復旧するなら復旧してもらわなくてもよろしい、こうなるんです。なぜそうなるかというと、農民は復旧してもらうほうがいい。しかし、いいかげんな復旧なら、十億円の年々補償をもらっておったほうが得なんです。こうなっちまう。しかし、一つの団地全部復旧するというなら、かんがい水路の設計その他も全部きちっとやってうまくやれるので、一団地が新しく農村経営に立ち上がることができる。しかし、三分の一はことしやる、残りの三分の二はいつやれるかわからぬということでは、どうにもならぬわけです。こういう形ではいかぬので、四百三十億という、既発生鉱害の約七割近くになんなんとする鉱害復旧の非常に重要な中心的な役割りを演じておる農地復旧に対して、農林省としては一体どういう方向で四十七年度までにやろうとするのかということです。
  38. 大和田啓気

    大和田政府委員 私どもやっております農地あるいは農業用施設関係のいままでの鉱害復旧の実績を申し上げますと、たしか、昭和二十七年以降、復旧費で累計百十億程度、国庫補助金で約七十四億円というふうに記憶いたしております。最近の動きを申し上げますと、御承知と思いますけれども、たとえば三十七年で十一億ほどの事業費でございます。これに対しまして、補助金は六億九千万程度でございます。四十年度におきましては、事業費で約二十一億、補助金で十六億六千九百万でございます。四十一年度は、私どもいまお話のありましたような事情をもうよく了知いたしておりますので、できるだけ予算の増額に努力をいたしまして、事業費で三十三億、補助金で二十七億九千五百万円・相当に増額をいたしまして、農地及び農業用施設の復旧につとめておるわけでございます。私ども鉱害の現在の数字に比べまして、この四十年度なり四十一年度なりの事業費あるいは補助金が決して十分だというふうには存じておりませんで、いままでとにかく年々努力してふやしてまいったわけでございますけれども、今後もできるだけ現地の事情に即して事業費なりあるいは予算の増額に努力をして、鉱害復旧に遺憾のないようにいたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  39. 滝井義高

    滝井委員 いま、三十七年が十一億の事業費、四十年が二十一億、四十一年が三十三億ということですが、昨年鉱業権者負担を軽減することによって、鉱業権者というのは非常に農地復旧の意欲が高まってきたわけです。いままで三割五分ですね。それが一割五分になった。鉱業権者負担は半分以下になったんですから、したがって、いままでのお金を持っておれば倍の農地復旧ができることになるわけですよ。そうしますと、十億も年々補償を払うならば、この際炭鉱の経理をよくするために鉱害復旧をやったほうがいいという気持ちがごう然として起こっておるわけです。ところがいまの農地局長さんの御説明のように、ことし三十三億という予算は、これは農地復旧にとっては相当な飛躍ですよ。ところが、四百三十億の既存鉱害から考えたら、なお十三年かかるわけでしょう。そうすると、その半ばの六年近く、六年か六年半で法律が終わってしまうというなら、あとの半分のものはどうなるかわからないという運命になるわけです。そこで、この点について、どうしてもこれは予算をしなければいかぬ。予算をやらないとすればどういう方法があるのか。施越しをやる以外にはないんですよ。ところが、私はこれはきょうはちょっと巻き返しをやるわけですが、施越し工事というものは、有資力であろうと無資力であろうとできるものだと思っていたんです。また、その答弁もそういう答弁をしておったわけです。ところが、いよいよ見てみますと、無資力だけの通達になっておるのです。有資力は通達から落ちておるのです。これは実は私も全くうかつだった。これは私が詰めた。そうして、その施越し工事というものは農地についてはやらせると言ったんです。ところが、そのときの答弁にちょっとそこに何か一つのことばを入れて、有資力を落とすような答弁になっておるのです。したがって、それは無資力だけです、有資力は入らぬ、こういうあなたのほうの通達が下におりていっておるわけですね。ところが、御存じのとおり、農地復旧における無資力の地位というのは非常に高まってきたわけです。そうして、しかも一億七千万という年々補償を、これは今度予算がついたわけですね。鉱業権者が生きておるのと同じ形が無資力に出てきたわけです。そうすると、年々補償がついた無資力について施越し工事ができるのに、有資力でできないという理論的根拠はないはずなんです。だから、もし予算がつかないならば、これをやってくれれば、鉱業権者はどこからでも金を借りて、あるいは基金のワクをふやしてでもやることになるわけです。だから、この有資力の施越し工事をやるかやらぬかです。私は、きょうは大蔵省も呼んでおって、この問題の言質をとりたいと思うのです。いままでは、無資力のほうがずっと悪くて、有資力がよかった。有資力を上げたわけです。有資力がぐんと上がってきた。ところが、鉱業権者が貧乏になっちゃって、もはや年々補償もよう払えぬという状態になって、有資力も悪くなってきた。これは、施越し工事ができないという状況になるならば、むしろ条件が悪くなって逆転したかっこうになっているわけです。少なくとも無資力程度有資力引き上げていかなければならぬ。そのためには施越しを有資力についても認めるという考えをとらざるを得ないのではないか。それによって四十七年までの予算の不足、欠陥というものを補っていく、こういう政策をとる以外に私はないと思うのです。まず農地局長さんの御意見を聞いて、そして大蔵省の意見を聞いて、最後に三木さんの意見を聞かなければいけないと思うのです。
  40. 大和田啓気

    大和田政府委員 現在施越し工事は無資力だけでありますことは、お説のとおりでございます。私ども、施越し工事でやります予定は、大体、四十年度で、地域にして十ほど、金額にして三億ほどのものを見込んでございます。事業なりあるいは付近の農家その他の要望のやむを得ないところでやっておるわけでございます。有資力につきましては、実は前からいろいろ内部でも議論のありましたところでございますけれども、今後における鉱害復旧事業の実施の状況を見て私ども検討をいたしたいというふうに思っております。ただいま有資力のものも施越しでやるというふうには申し上げられない段階でございますけれども、十分検討はいたしたいと思います。
  41. 滝井義高

    滝井委員 実はこれはわれわれの現地でもすでに起こっているわけです。それが起こるとどういうことになるかというと、農民が非常に腹を立てるわけです。これは、御存じのとおり、鉱害復旧をやるためには農民の同意をとらなければならないわけです。同意をとってしまったわけです。とりましたら、これは予算がつかない。そうしますと、同意はとったわ、予算はつかないということになったら、一体どこへ押しかけてくるかというと、炭鉱と、それからわれわれ九州ですから熊本に押しかける、こういう形になるわけです。そうすると、熊本の農政局なり鉱業権者というものは一番お手あげになるわけです。そこで、これは何らかの形でやらないと、いまのように農地復旧の補助はつかない、年々補償はつかない、借金はうんとしょっているということになったら、悪循環が続いて、意味ないですよ。ちょうどいまの運賃延納と同じですよ。延納してくれたけれども、払う方法をきめてくれないから、払う方法がない。こういう形が鉱害復旧でも起こっているのですよ。これは大蔵省来ていますか。  そういう形で、もはや有資力、無資力に区別はなくなったんですよ。それを差別をするというのは、論理的にもはや成り立たなくなっている。それを、依然として、無資力だけは認めて、有資力は認めない。私は、これは有資力も認めるものだと思っておった。ほんとうに私自身もうかつ千万だと思うのですよ。だから、いま農地局長さんは、前向きに何とか検討したい、こうおっしゃっているのですが、これは、たとえば、ことしならことしでも、年々補償が、一億七千万と十億ですから、八対一くらいの割合ですね。そうしますと、施越しについて、片一方に三億を認めて、片一方に三十億認めよといっても無理ですから、やはり十億程度の施越しを認めて、そういう一団地をやらなければならぬという緊急事態のところは、これはやはりやるという権限を農地局長さんがもらう必要があると思うのです。そうしませんと、農地復旧はうまくいかないのですね。現地は非常に困っておるのです。だから、こういう点について、大蔵省が来たらもう少し詰めて、あと三木さんに要望したいと思いますが、大蔵省がまだ来ないものですから……。
  42. 野田武夫

    ○野田委員長 大臣は一時半までだそうですから、そのお含みでひとつ。
  43. 滝井義高

    滝井委員 大蔵省にひとつ来てもらってくれませんかね。それで、大和田さん、もうちょっと待ってください。あなたにとっても大事なところですし、われわれにとっても非常に大事なところですから。大蔵省が来るまで、そういうことでひとつ保留しておきます。そして、あと運賃の問題と一緒にいまのところは大臣に質問します。  そこで、鉱区の調整に先に入ります。  今度の法案で、旧方式で合理化事業団が鉱業権を獲得をした鉱区、あるいは新方式、ニュースクラップ方式で鉱業権を抹消して整理交付金をもらったそのかつての鉱区というものが、「隣接する採掘鉱区に係る鉱床を一体として開発することが著しく合理的である」と認める場合には、そこの採掘権を許すことになるわけですね。いままで禁止しておった採掘権を許すことになるわけです。この通産省令で定める基準に合致するというのは、一体どういう場合ですか。
  44. 井上亮

    井上政府委員 今回提出しました改正法案によりまして、従来合理化事業団が保有しております鉱区、それから消滅いたしました鉱区の再活用をはかりたい。その場合に、これは無条件ということはできません。たとえば、その鉱区を隣接の鉱業権者にいろいろ譲渡してあげるという場合に、やはり保安上に問題があってはいけませんので、まず第一に、私どもは、譲渡に際しまして保安上の配慮をいたしたいと思います。それから、同時に、この鉱業権者につきましては、消滅鉱区と自己の鉱区と合わせまして総合的にやはり開発ができて、しかもそれが経営の改善に裨益し、資源の活用に役立つというような場合にこれを認めてまいりたいというような考え方でおるわけでございまして、したがいまして、そういった趣旨に沿うような規定を盛ってまいりたいというふうに考えております。
  45. 滝井義高

    滝井委員 この問題は、数年前私は幾度か質問したことがあるのです。ところが、政府は、この問題についてはやる意思はございませんと、一貫した答弁をしてきたわけです。いまの段階になって、どうして百八十度政策を転換しなければならぬのか。その根本的に転換をしなければならぬ理由として、いまのような総合的な開発、いわゆる資源の活用と石炭産業の経営の安定化のためにそういうことが必要だと言っても、これは昔からそういうことは同じようにあったわけです。昔からわれわれはそういうことを主張したのです。隣まで来た、先には残っておる宝の山があるのだ、そいつを掘りたいのだけれども、それはやらせる意思があるのかないのかと言ったら、いや、それはもうありませんと言ってきた。いまのような理由だけで突如として鉱区調整がここに出てくるというのは、何かよほど大きな理由がないと、政策としてはいい政策なんだけれども、どうもわかりにくいのですよ。
  46. 井上亮

    井上政府委員 この問題は、隣接鉱区に消滅鉱区があった場合、あるいは合理化事業団が持っておる鉱区があった場合に、それを活用したいというような声は前々からあったわけでございまして、これをどうするかということは、先生指摘のように、従来ともに研究してまいったわけでございます。従来そういう意見があるにもかかわらず、この再活用について実現を見なかったわけでございますが、それは、一つ考え方としましては、私ども基本的にそれが反対だったというわけではないのですけれども、おくれました一つの大きな問題点としましては、やはり、御承知のように、石炭鉱業を合理化していきます場合に、スクラップ・ビルド政策というものが一つ大きな問題になるわけです。つまり、老朽炭鉱を整理して、新鋭のビルド炭鉱を育成していく、そういう体制をとりませんと、先生承知のような、エネルギー革命の渦中にありまして、重油に対抗し、あるいは需要を確保していくということはなかなか困難でございますので、老朽炭鉱を整理していく、新鋭ビルド炭鉱を育成していくという政策をとってまいったわけでございますが、今日でもその政策に変わりはございません。ございませんけれども、しかし、そういう過程で閉山政策が進められる、しかも、国が交付金といい、あるいは買収代金といい、相当額支払いまして整理してきた、その整理してきた山を生かすということは、スクラップ・ビルド政策の意義からしまして、特に石炭の今日置かれている需要問題あるいはその他の関係からいたしまして、漫然とつぶして漫然と生かすということは、はたしてどうかというような意見が従来ありまして、この法律をつくります当初におきまして、スクラップ・ビルド政策を厳密にやっていくという趣旨からしますと、消滅した鉱区を生かすということはおかしいという議論もあったわけでございます。本法制定の当時にはそういう思想であった。ところが、最近に至りまして、私ども、スクラップ政策の実施状況を見てまいりますと、何と言いますか、完全な意味のスクラップ炭鉱、もう残存炭量もほとんどないというようなところまで掘った山が閉山される場合には再活用の道は少ないわけでございますが、最近は、どちらかと言いますと、もちろん老朽炭鉱ではありますけれども、なお残存鉱量を残して閉山していくというような山も相当数見受けられるわけでございまして、そうなりますと、今度は、隣接鉱区で現に操業しております企業から見ますと、その残存鉱量を活用できれば非常に経営の改善に役立つ、あるいは資源の活用というような意味から言っても非常に有意義だというような事態が最近になって非常に増加してまいっております。したがいまして、そういった角度から、従来ともに問題ではありましたが、そういう実情からいたしまして、今回、そういった消滅鉱区あるいは買収鉱区の活用をはかることが国民経済的に見てもプラスであろうというふうに判断して、改正法案をお願いした次第でございます。
  47. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、消滅区域の活用が一応認められるという立場に立って議論を進めてみますと、その場合に、Aの地区から消滅鉱区Bに向かって採掘をやることは、国民経済上あるいはその企業の安定上非常に重要だ、あるいは資源の活用上きわめて必要がある、こういうことでやらしますね。そうすると、そのAからBに向かってやる場合に、これは有資力と無資力二つに分けて、B地区は有資力炭鉱のものであったとする。そうして、合理化事業団に買い上げてもらったり、あるいは消滅の手続をとっておった。その場合、全部鉱害復旧が完了してしまっておる場合と、なお鉱害復旧が完了していない場合とある。いずれにしても、Aから掘っていくことを許したという場合に、これはまた鉱害が起こってくるわけですね。この場合に、もうこのB地区の人は信用しないわけですよ。いわんや、有資力炭鉱の現状を考えると、掘られて後復旧できるかどうか疑問なので、ますます信用できない。また、無資力の場合で、鉱害は未復旧で、かつうんと債務が残っておるというときは、Aからやろうとすれば、そのB地区が無資力であった場合に、Aが全部やってくれなければ掘ることを了承しない、そういうのが出てくるわけです。これは、有資力、無資力、いわゆる復旧が完了していない場合と完了した場合とによってまた違ってくるわけでしょう。  それから、もう一つ違ってきたのは、これはぼく自身のものの考え方が違ってきたわけですが、たとえば、八幡製鉄が使っている貯水池がある。その貯水池の下を掘ることは、八幡製鉄という大企業に非常に致命的な欠陥を与えるから、これは掘ってはいかぬ、こういうことになったわけですね。そうして転換をさした、こういうことです。   〔委員長退席、加藤(高)委員長代理着席〕 ところが、筑豊で、たとえばぼくの地区で言えば、いまからわれわれのところに、生きている山が存続するためにまた新しくわれわれの下を掘ろうなんということになると、みんな住民は反対ですよ。なぜ反対するかというと、過去の賠償が十分なされていないということもあります。いまの農地の問題もあります。しかし、たとえば、東京ならば、私よく知りませんけれども、建築学会その他の意見によれば、日本で三十階か三十三階が建て得る。ところが、筑豊のわれわれのところは、いま二階建てが限界です。四階建てを建てようとすれば、専門家に見てもらって、ここは無炭地区で、そうして全然付近は掘っていない、こういうことの確認がないと四階建てができないのですよ。そうすると、同じ日本の国土でありながら、東京地区においては二十階も三十階も建物が建て得る、われわれのところでは二階しか建て得ないということになると、土地の所有権の価値というものが、下で石炭を掘られたためにうんと違ってきているのです。今度また掘られるということになると、四階どころではない、二階でも建て得ないという問題が出てくるわけですね。したがって、われわれは、こういう点があるので鉱業法の改正に反対してきているわけですが、最近は、借地借家法その他もだんだん変わってきまして、地上権、地中権というのがある。東京では、地下鉄が通る場合に、地下権というものがありますよ。ぼくの友だちなんか、地下鉄が通るというので五十万くらいとりましたよ。地下鉄が下を通る、そうすると、自分が下を利用することができなくなるというので、五十万の補償を出しなさい、こういうのがある。ところが、筑豊炭田はそんなものは何もないわけなんです。いまや鉱害賠償に対するものの考え方は違ってきた。  だから、採掘をやめたところを再び隣接鉱区から掘ろうなんて言ったって、簡単に許さぬですよ。それを許すとすれば、全部復旧の見積もりをして金を積みなさいと言いますよ。われわれ、そう言わなければ掘らせられぬです。というのは、最後はみんな投げ出されて、どうにもならぬようになっておるのです。そうして、祖先伝来の農地復旧するのに三拝九拝して頭を下げなければできないという事態になるわけです。炭鉱はみんな左前です。国から補助をもらわぬ限り炭鉱自身で復旧することができない、そういう実態ですから、いまからこれをやろうとすれば、いま言ったように、復旧してしまったものを掘った場合に対する処置を一体国が責任を持ってくれるかということです。あるいはまた、まだ未復旧のものについてやろうとすれば、これ幸いと思って、AからBに掘っていこうとすれば、全部Aに押しつけて、Bは逃げてしまう。いま大手の大企業はみなそれをやっている。明治以来掘り続けて、近代資本主義の確立をした大財閥の炭鉱屋の皆さんは、みんな逃げてしまって、そうして中小の山にみんな分割してしまっておるのでしょう。そうして、それらのものにみんな鉱区を安くやって、一筆書いて、全部私が責任を持ちます、こういうことにさせてしまっている。それは連帯責任はあります。連帯責任はあるけれども、筑豊を引き揚げて東京に来てしまう大企業に、いなかから十万、二十万の鉱害賠償金をもらうために来れませんよ。  だから、そういう点がありますので、この鉱区の調整をやろうとすれば、この法案の三十五条の六の一番しまいのほうに、「採掘鉱区に係る鉱床を一体として開発することが著しく合理的である旨の通商産業大臣の確認を受けているときは、この限りではない。」、こういういわゆる通商産業大臣の確認というのがあるわけですが、その確認をするときの条件に、鉱害復旧というものの全責任を鉱業権者に持たせただけでは話にならぬわけですよ。国が持つということにしてもらわなければならぬわけです。もう地域の住民はそれでなければ納得しない。そうでなければ住民の同意をとるとかしてもらわないと、簡単にいかないですよ。これは、御存じのとおり、もう今度は通産省はあきらめましたけれども、鉱業法の改正をやろうとしたときに、もう全国の炭鉱のある市町村が全部鉱業法の改正に反対だと言ってきたのも、そういう底流があるからですよ。  そこで、いまのような総合調整をやろうとする場合に、とにかく、抹消したり、合理化事業団に鉱業権を移したからには、これはもう終わっておることがたてまえです。一部終わってないのがあるけれども、そこをやるのですから、今度新しく鉱害を起こした場合には、これは合理化事業団の鉱区でなくなるのですよ。滝井義高なら滝井義高が新しく掘ろうとする場合には、滝井義高の鉱区になってしまう。そうすると、また個人になるのです。あるいはその会社のものになるのです。そうすると、それに不信感を持っておる人に簡単に譲ることを同意しないですよ。しかし、これは財産権、所有権を譲るのだから、第三者はいかんとも防止のしようがない。そうすると、また掘られたら泣き寝入り、こうなる。あんまり再三再四明治以来泣き寝入りを続けさせているわけですから、もう人工衛星の飛ぶ時代にまた泣き寝入りはしたくない、こういうことなんです。この処置を一体どうするつもりなのか。
  48. 井上亮

    井上政府委員 ただいま御指摘の点はごもっともの点が多いわけでございますが、私ども、この法律によりまして、近い将来鉱区調整をいたしたいと思います。大体の予定案件等を見ますと、必ずしも鉱害の地帯ばかりではございませんで、鉱害の少ない、あるいは鉱害の全然ない、たとえば海底炭鉱その他、たとえば松島炭鉱の大島と三菱の崎戸、崎戸の一部を閉山しましたが、それと大島との鉱区調整をやるというような事例もあるわけでございまして、全部が全部、滝井先生ただいまおっしゃったようなケースではないと思いますが、ただ、筑豊には、滝井先生がおっしゃいましたような事例も全然ないとは考えません。特に、私ども、ただいま滝井先生指摘になりました三十五条の六第一項ただし書きでこの出願の区域を許可いたしますときの考え方といたしまして、「隣接する採掘鉱区に係る鉱床を一体として開発することが著しく合理的である旨の通産大臣の確認」、御指摘の点でございますが、いろいろ出願を許可したり、あるいは合理化事業団が譲渡するというに際しましては、先ほど保安上の配慮もするということを申しましたが、単に保安上の配慮だけでなしに、鉱害につきましても、この鉱害をできるだけ起こさぬような予防措置を講ずるとか、あるいは、消滅鉱区の譲り受けを受けます鉱業権者については、やはり鉱害賠償を的確に行なえる資力を持つ者とかいうようなことで配慮してみたいと思っております。したがいまして、従来往々にして見られました、特に筑豊に間々見受けられました、いわゆる鉱害に対して不徳義な行為をするような鉱業権者、そういう者にはこの鉱区調整は認めないというような運用方針でまいりたいというふうに考えております。
  49. 滝井義高

    滝井委員 石炭の委員会には、石炭産業の比重がもう軽くなったから、なかなか政府委員が出てこない。主計官も病気でおらぬ、次長やその他も来れぬ、だから主査が来る、課長補佐級が来る、これでは意味がないですよ。だから、委員長、これはもう少し権威をもって呼んでもらわぬと困る。何だったら政務次官なら政務次官を呼ぶとか、そうしないと、法案を上げてくれといったって、一問一答で実行できる答弁がなかったら、意味がないのですね。われわれ一生懸命勉強してきてやるわけですから。
  50. 加藤高藏

    ○加藤(高)委員長代理 御趣旨を体しまして……。
  51. 滝井義高

    滝井委員 だから、政務次官を呼んでください。大臣が一時半までしかおれないのですから。  いまの御答弁、なかなか井上さん力んで言われるけれども、対中国問題ではないけれども、ある朝目がさめてみたらアメリカがお隣の中国を承認しておったというのと同じようなことが、鉱害ではよく起こるのですよ。というのは、ある朝目がさめてみたら、自分のうちの下は掘られてしまっておった。私のうちなんかそうなんです。目がさめてみたら、ふろ場のたたきがぽんと陥没しておる。だれもそこを掘った人がいないはずなのに陥没しておるから、おかしいなと思って調べてみたら、いや、先生のところの下は三年前に掘ったのですよ、こういうことなんだ。だから、A地区からB地区に掘ろうとする場合に、BをAに譲ったかどうかということは住民は知らないのです。これは上のほうで全部許可されてしまって、住民は知らない。自分らのところは、炭鉱が合理化をして閉山になったのだから、もうこれからは末まで掘ることはないぞ、家を立てようといって、なけなしの財布をはたいて、鉱害復旧と一緒に家を建ててみた、そうしたら、ある朝目がさめてみたら下を掘られておった、こういうことではいかぬわけです。だから、私は、こういう調整をやる場合には、その地域の住民にも告知をして、住民の同意をとりなさいと言うのです。これは相当抵抗はありますよ。しかし、そのときは鉱業権者に金を必ず積みなさいとかいうことにしておかないと、いま言ったように、もう筑豊の土地というものは、土地の価値が下がってしまって、少しいい精密工場でも来てもらおうと思ったら、来ないです。なぜかといったら、そこに行ったら地盤が狂って精密なものはできません、こう言うんだ。あるはなはだしい経営者は、いやあ、滝井君、君のところは人間がスクラップになっておるからいい製品ができないんだ、こう言った人がおるのです。土地もだめだ、人間もだめだと言う。いや、そうじゃないんだと説明したって、だめです。それは、来てボーリングしてみたら、下は結核で冒された肺みたいにみんな空洞になっているから。そういう形になってしまっておるところをこれから掘ろうというのですね。その中の一部の残っているのを掘ろうというのですから、これは何か対策をやらないと、ただ通産大臣が確認しただけでやるということでなくて、そのことを住民に周知徹底をせしめて、住民の納得のいく形にしないと、四年も五年も十年もかかってようやく復旧してもらったたんぼなり家が、またもとのもくあみに返ったといったら、あなたどうしますか。泣いても泣けませんよ。大企業の八幡製鉄の貯水場の下は掘りきらぬけれども滝井義高のような微弱なやつの家の下は黙って掘ってもいいという、そういういままでの石炭行政というものについて、これは反省をしてもらわなければいかぬし、私は非常に抵抗を感ずるのです。四十八歳の抵抗じゃないけれども、抵抗を感ずる。だから、この点については、大臣、一体どうしますか。簡単にさせるべきでないと私は思うのです。
  52. 三木武夫

    ○三木国務大臣 実情に即した滝井さんのお話、ごもっともなことが多いと思います。だから、通産大臣が確認をするときには、これは簡単にやらないように、確認のときに慎重を期するというよりほかにはないと私は思います。みんな寄せて住民の同意というようなやり方も、民主的なようですけれども、そういうことは実際の場合なかなかむずかしいですよ。だから、確認のときに慎重な態度を持する。そういうことで、地方民に非常な摩擦の起こらないような配慮をするということよりほかにはないと思います。
  53. 滝井義高

    滝井委員 この採掘図というのが、財産権になっておって、これは全然見せてもらえないわけです。これは少なくとも市町村長ぐらいが見せてもらえればいいけれども、これも見せてもらえないのです。鉱業権者の財産ですから、秘密を保持されるわけです。そうしますと、掘っていないと言えば、掘っていないということになってしまう。福岡通産局に昔からずいぶん古い採掘図があったわけですが、火事が起こって焼けちゃって、最近は昔の図がなくて非常に論争が起こる。ボーリングをやらなければいかぬといっても、ボーリングなんというのは、金がかかって、おいそれとどこもここもやれるものじゃないわけですね。だから、少なくとも採掘図を公開にするとかいうぐらいのことをしてもらわなければ、これは話にならぬ。鉱業法はそれは許してないです。だから、全部鉱業権者は秘密主義でやれるわけでしょう。だから、こういうようにすでに踏んだりけられたりしてみじめな姿になった地区がようやく復旧したのに、また掘っていくということは、よほどこれは注意をして鉱区の調整に当たっていただくように、これだけはひとつぜひ大臣も腹に置いていただきたいと思います。  それから、大蔵省はこの次しか来ないそうですから、大臣に先に見解を伺って、次の十三日にしたいと思うのですが、まず第一に、国鉄運賃延納です。  御存じのとおり、過去においてすでに、三十六年以来の三カ年間の分が、四十三年度から二年間で払わなければならぬというので、二十二億たまっています。それから、今度四十一年度に国鉄運賃一四・七%引き上げ分について延納される分が約三十億です。そうすると、この三十億というのは四十二年の四月から四十三年の三月末までに払ってしまうことになるわけです。すぐ引き続いて、四十三年度から、前の三ヵ年分の二十二億を払う。いわゆる五十二億の金を石炭産業は払うことになるわけです。その場合に一体これはどういうようにして払わせる形をつくるのかという点について、二、三十分石炭局長とやったのです。あとで質問しますけれども政府関係機関その他から金を借りているものは利子補給をしているわけです。しておりますけれども、しかし、利子補給をしてもらっても、借金借金で、やはり精神的に非常に重圧になって、炭鉱というものは苦しい状態になっておることは変わらないわけです。そうすると、今度も、これは延納してもらったけれども借金というものは肩にかかったままでいっておるわけです。延納してもらっておるだけであって、おろすことはできない。そうすると、これをやろうとすれば、もうこの際思い切って炭価に織り込むか、もうそんなものは全部国が補助金でやってやるようにしてしまうか、それよりないのではないか。融資では、開発銀行から融資するか、石炭鉱業合理化事業団から融資するかの違いだけだし、国鉄石炭企業運賃分を貸したままにしておいても、これは結局国の機関の中で回るだけで、石炭産業が背負っておるということはもう同じなんです。だから、合理化事業団に持っていくか、開発銀行に持っていくかという違いだけで、石炭業者にとっては借金であることに間違いないわけです。それならば、一挙に炭価で解決してやるか、もう棒引きをして、国鉄に別に補助金を出す以外にないんじゃないか。抜本政策・抜本政策と言っておるけれども抜本政策が一向立たぬじゃないかということをこの前も三木さんに何回も言っておるけれども、四度目の正直で、今度は間違いないと三木さんおっしゃるから、しばらくお待ちしておこう、こういうことになっているのですが、この石炭の問題は、ことしの分、四十一年度分については、もう井上さんから答弁がございましたが、四十二年四月から四十三年三月末までに均等分割払いをするということにきまっておるのです。支払い方法がきまったからには、問題は、この金を一体どう出してやるかということしかないわけです。そんなものを抜本政策まで待たなくても、これはここできまるじゃないかというのが私の主張です。これは一体どう三木さんとしては御解決になるか。
  54. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これを来年の四月から均等で払おうということですが、これは、前の例はあまりよくない例で、延ばし延ばししている。この問題は、国鉄も、ああいう事情で値上げをしたにかかわらず、石炭が非常な危機にあるので特例を設けたわけですから、これをまた延ばすというようなことは考えていない。これは実行したい。するにつけては、御承知のように、石炭全体の抜本策をいま検討を加えておるわけですから、来年の四月から始まるわけなんで、いまきめておけばいいじゃないかという滝井さんのお話もわからぬではないわけですけれども、まだ時間もありますし、その間に抜本策もひとつ出そうというわけでありますので、あわせてこの問題は検討をしたい、これは国鉄との約束はぜひ実行するようにいたしたい、こういうふうに考えております。
  55. 滝井義高

    滝井委員 それならば、均等月割りなんかというものも出さないほうがいいんです。均等月割りで払います、こうなっておるのですから、これはだれが払うかといえば石炭業者が払うわけです。だから、石炭業者が四十二年度中に均等月割りで払うと、こういうことをおきめになっておるのですから、そういうのをきめなくて、とにかくこれは抜本策のときに解決します、こういう方法がいいんですよ。支払い方法をきめておって、そうして、その金の処置というものだけは抜本策に待つというのは、何かおかしいんですよ。そうでしょう。支払い方法は均等で払うということにきめられておれば、その支払う金をどうして出すか、きめてやらなければいかぬわけです。そうでしょう。さもなければ、その抜本策が出るまでは、四十二年度だから、何もしなくてもいいということになる。そして、今後また石炭産業がということになれば、これはたいへんなことになるわけですよ。だから、そこを心配しておるんです。もちろん、政治家というのは、先に延ばし得る政治家ほど偉い政治家だといいます。むずかしい問題があれば、それをすぐ解決せずに、先へ先へ送って、他の人の肩に背負わしていくというのが偉い政治家だという。それは自分は傷つかぬから。三木さんがそういう悪意の人だとは思いませんけれども、むずかしいところは残しても、こういう簡単なところはやはり早く切り捨てておくほうがいいですよ。たとえば年々補償の無資力というのを切り捨てたと同じように。こういう点は、あまり抜本政策にこんな小さなものを持っていくと、大蔵省からこれをカタにとられて、大きなところですぽっと背負い投げを食わされるおそれがあるんですよ。だから、こんなものは炭価に織り込むならば織り込む。織り込んだって、二千億とか二千五百億の炭価の中の一%とかそこらにしか当たらぬものだから、これは薄くなるわけですよ。だから、そこらあたりは、あなたたちが何か指先で三千五百五十一円か二円につければこれは解決する問題ですよ。だから、そういう点は、あまり大臣の政治力をわずらわさずに、事務的にも頭をしぼって解決しておく。標準炭価というものをきめてそこに織り込んでおります、何かそういうようにしてもらわないと話にならぬと言うんです。それだけ言って、三木先生、あまり先に送らぬようにお願いいたしたい。ぜひこれはあまり抜本策に負わせずに解決してもらいたい。  それから、さいぜんの農地の問題ですが、大蔵省は来週にしてくれということですから、大蔵省の詰めは来週にすることにして、まず通産当局の見解というものをきちっと一ぺん固めておきたい。  農林省は、ぜひこれは前向きでやりたい、こうおっしゃるわけですね。既存の発生鉱害が六百七十億ある。そのうち安定分が五百五十億。そして、その六百七十億のうちに農地が四百三十億あるわけですね。だから、農地が約七割を占めておるわけです。その中で、有資力で十億、無資力で一億七千万円程度の年々補償を払わなければならぬ。そうすると、復旧が早く進めば進むほど、十億の金が六億になり五億になり、払わなくてもいいことになる。その払わなくていい四億、五億を今度は鉱害復旧に回してくれば、これは促進することになるわけです。そこで、そういう方法をとるためには、予算をよけいにつけてもらうことが必要なんですよ。いま一番農地が重圧ですから、三十七年が十一億、四十年が二十一億、四十一年が三十三億と、三十七年に比べたら約三倍程度に前進したわけであります。前進をいたしましたけれども、四百三十億も農地復旧しなければならぬものがあれば、三十三億ベースでいったら十三年かかるわけですよ。ところが、臨鉱法の寿命は四十七年で終わってしまうわけです。六年ちょっとで終わってしまう。そうすると、十三年しなければ復旧できないのに、法律が半ばでなくなるということになれば、あとの半分は復旧ができないということになる。このベースをずっと伸ばしたところで、いまのような伸びぐあいでは、とても四十七年までに終わらぬという見通しが確実につくわけです。ですから、その予算をここにつけていただくということが一つです。  しかし、そのほかにもう一つの解決の道は、施越し工事というものがある。これは来年やる工事をことしやるということですね。これは、無資力についてはなかなか頑強だったのですが了承したのです。私はそのとき有資力もやってもらえたと思っておったのですが、どうも大蔵省からごまかされて、無資力だけしかやっていないのです。ところが、さいぜん申しましたように、今度は、鉱業権者がたんぼのできが悪かった分を補償しますね、その分も無資力でつくことになったから、有資力と同じことになるわけです。しかも、無資力のほうは、国の力のほうが強いのですから、確実に年々補償をやる形ができてきた。予算も無資力のほうが飛躍的につきつつあるわけです。そうしますと、有資力のほうがだんだん不利になってき始めたわけです。そこで、この際、農地の窮状を打開するためには、早く復旧して農民にほんとうの生活の安定、農業の生産力の万全を発揮させるためには、有資力の分についても施越しをある程度認めていく必要があると思う。もちろん、二十億も三十億も認めろといったって、三十三億しか認めておらぬのにとても無理だ。そうすると、三分の一か四分の一くらいのワクはこの際政治的に毎年認めていく必要があるんじゃないか。そうしますと、だいぶん予算のつきが悪かったということについても不満がやわらぎますよ。これは、家屋なら、待てと言えば、水さえつかなければ何とか待てる。水のつくところを先にやれますからね。ところが、いま日本の農業の現状から考えても、やはり土地に対する観念というものが農村ではだんだん低くなりつつあるわけですから、この際やはり、農地というものは大事だということで国が復旧を積極的にやり始めれば、産炭地域における農民の土地と農業に対する考え方というものも違ってくると思うのです。そういう意味で、農林省としてはある程度の施越し工事はぜひやりたいと言っているんですから、通産省がもう一枚これに加わってもらえば、二人が位置を占めることになるから、大蔵省もわりあい陥落しやすくなるわけですね。ひとつ大臣の見解を伺っておきたい。
  56. 三木武夫

    ○三木国務大臣 通産省も一枚加わることにいたしましょう。加わります。大蔵省とも折衝いたします。
  57. 滝井義高

    滝井委員 これはぜひひとつ今年度から認めるようにしていただきたいと思うのです。それはもう筑豊その他の地区では大手はとてもたくさんの農地鉱害を起こしておって、その復旧が遅々として進まないのですよ。私も一つここで言いますが、三井田川は二百町歩ぐらいありますよ。ところが、ことしの復旧幾らするかというと、四千万円しか復旧しないのですよ。百町をこえる農地復旧をやるのに、四千万かそこらといったら、九牛の一毛ですよ。復旧したことにならぬわけですよ。そこで、農民は非常に不信感を持つわけです。これは予算がつかないからこうなってしまうのです。そうすると、これはいま言った施越し工事をやろうとしてもやみになるわけですね。だから、施越し工事を認めるということにしてもらえば、これはやみでも来年確実に補助金が来ますからいいわけです。ところが、いまの筑豊のように炭鉱が貧乏になると、国の許可を得なければ、やったわ、補助金はつかなかったということになると、どうにもならぬ。一割五分出せばとにかく十のものができるのですが、それをやって補助がつかなかったら、現地の責任者は切腹しなきゃならぬですよ。これは首ですよ。そういう現地の責任者の善意に対して、政治がやらなかったためにそういう良識の人に責任を負わせるいき方というのは、よくないと思うのです。しかもそれは農民政治に対する不信感を抱かせる。この道は正義の道だから、ぜひ歩いていただきたい。ぼくらも大蔵省に対しては来週やりますけれども、大和田さんにもひとつその方針でお願いをいたしたいと思うのですが、だいじょうぶですか。
  58. 大和田啓気

    大和田政府委員 先ほど申し上げましたことの繰り返しになりますけれども、施越しを一般的に認めることが非常にむずかしいことであることは御承知のとおりでございます。普通の農業土木について施越しを認めている例は一般にはございません。また、この問題に関して無資力についてだけ施越しを認めるということにつきましても、各省で話を詰めたところで、それから多少別の道を歩きますことはなかなかむずかしいことであることも御了承いただけるだろうと思います。すぐというふうにはなかなかまいらないでございましょうけれども、私ども現地実情等もよく調べて、関係各省とよく打ち合わせてまいりたいと思います。
  59. 滝井義高

    滝井委員 ぜひお願いします。  これで一時半で、大臣の切りがよくなりましたが、あと、五十億三千二百万円の利子補給の問題と、鉱害についての地方自治体の負担の問題がありますけれども、これはやりますとまたちょっと時間をとりますし、きょうは、大蔵省も来ていませんし、自治省もあれだそうですから、来週にさしてもらって、これでやめたいと思います。
  60. 加藤高藏

    ○加藤(高)委員長代理 本日はこれにて散会いたします。    午後一時二十八分散会