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井上政府委員 鉱区調整の必要性につきましては
先生御
指摘のとおりでございまして、私
どもも、今回、六月に予定いたしております石炭鉱業の抜本的な安定対策に際しましては、
鉱区調整を思い切って断行するという方針を盛り込みたいというふうに考えております。ただいま御
指摘のありました北松炭田の総合
開発と申しますと、統合と申しますか、この問題につきましては、これは常磐炭鉱についても同様でございますが、昨年の夏に
関係の業者の方々に御参集をいただきまして、常磐地区全体の統合について
検討を要請したわけでございます。それから、同時に、北松炭田につきましても、同じような趣旨で、
鉱区調整によるメリットのある
区域について、これは御
承知のように
鉱区調整のメリットのないところにつきましてはいろいろ問題がありますが、ある地域については、やはり、統合といいますか合併といいますか、
鉱区調整を伴う統合を考慮してみたらどうかという
検討をお願いしたわけです。その後両地域につきましては各経営の責任者が相当真剣に
検討されました。
まず、北松炭田でございますが、北松炭田について私
どもがそういったことをしたほうがいいと思いますのは、御
承知の、里山鉱業の国見炭鉱、それから、飯野の松浦、久恒鉱業の楠久、実は江迎も考えておったのですが、江迎は今回閉山になったわけでございます。そういった
区域についてはやはり
鉱区調整を伴う
一つの総合
開発の可能性があるんではないか、またそれが炭鉱の経営としてもプラスになるんじゃないかという私
どもの見解を添えて
検討をお願いしたわけでございます。こういうことは申していいか悪いかちょっと疑問でございますが、炭鉱は、
先生御
承知のように、労働力に依存した産業でございまして、製鉄業やあるいは機械工業、造船業のようなものと違いまして、労働生産でございます。コストの半分以上は労務費だというようなこと。それから、原材料は使わない。
坑内においていろいろ機械も使いますが、要するに労働力によって炭を掘り出す。もちろんベルトコンベヤーその他の近代化はやっておりますけれ
ども、そういう業種でございまして、主として労働力に依存する産業である。したがいまして、働く者の気持ちが合致しませんと経営としてはうまくいかない。経営的に考えまして、私
ども計算をいろいろいたしてみますと、統合合併のメリットも計算上は出てくるわけですが、今日までの多年にわたる石炭経営を見ておりますと、やはり、働く者の気持ちが一体となって、節度を心得て、規律も守りやっていく、気合いが合いませんと、経営はうまくいかない、こういう例が枚挙にいとまないわけでありまして、なかなかそういう気合いがいまのところ合わない。
常磐炭鉱についてもやはりそういう問題はありますが、常磐炭鉱はもう
一つ別な要素がございます。働く者の気合いの合う合わぬというほかに、むしろ、常磐炭鉱については、それより経営者間の問題もございます。これは、御
承知のように、常磐の茨城炭鉱、宇部興産の向洋炭鉱、この
鉱区調整が一番メリットがあるというふうに考えておるわけですが、特に宇部興産側の事情もありまして、なかなか合意に達していない。しかしながら、私
どもはこの常磐の統合についてまだ絶望をいたしておりません。
条件が整えば成功する場合もあり得ると考えておりますので、そういった
条件を整えるにはどうしたらいいかという
検討をいたしております。しかしながら、現在のところは、特殊なそういう事情がありまして、その後進捗が見られていないという実情でございます。
それから、北空知の問題につきましても、これは
鉱区調整の必要性があることは
先生御
指摘のとおりでございますが、これについては、もう私
どももやっておりますけれ
ども、さらに、今後六月を目途にした抜本的安定対策を実施するに際しまして、客観的に見てそのほうが有利だというようなものにつきましては、断行してまいりたいと考えております。
ただ、
鉱区調整に限らず、企業統合について
先生いろいろ御意見を言われたわけでありますが、私の意見としましては、企業統合の必要性といいますか、そのメリットにつきまして認識をいたしておる者でございまして、できますればそういう政策も今後考慮してまいりたいと考えておりますが、
一般的な議論としましては、先ほ
ども言いましたように、炭鉱経営といいますか、あるいは石炭生産といいますか、そういった労働生産に依存しておる特殊な産業でございますので、やはり一番大事なものは働く者の気持ち、これがうまくいきませんと、せっかく形式的に統合がメリットがありあるいは経営上プラスがあるといっても、結果は逆になるおそれがあるということを
心配しておりまして、その辺の見きわめが今後の統合問題の一番大きなかぎになるのではないかと考えております。