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1966-06-10 第51回国会 衆議院 商工委員会 第42号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年六月十日(金曜日)     午前十時四十六分開議  出席委員    委員長 天野 公義君    理事 浦野 幸男君 理事 河本 敏夫君    理事 始関 伊平君 理事 田中 榮一君    理事 板川 正吾君 理事 加賀田 進君    理事 中村 重光君      稻村左近四郎君    内田 常雄君       遠藤 三郎君    小笠 公韶君       小沢 辰男君    海部 俊樹君       神田  博君   小宮山重四郎君       田中 六助君    中村 幸八君       三原 朝雄君    沢田 政治君       實川 清之君    田中 武夫君  出席国務大臣         通商産業大臣  三木 武夫君  出席政府委員         内閣法制局参事         官         (第四部長)  田中 康民君         検     事         (民事局長)  新谷 正夫君         通商産業事務官         (大臣官房長) 大慈彌嘉久君         通商産業事務官         (貿易振興局         長)      今村  昇君         通商産業事務官         (企業局長)  熊谷 典文君         通商産業事務官         (化学工業局         長)      吉光  久君         中小企業庁長官 影山 衛司君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      村上 茂利君         自治事務官         (選挙局長)  長野 士郎君  委員外出席者         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    村井 七郎君         農林事務官         (農政局参事         官)      横尾 正之君     ————————————— 六月九日  液化石油ガスの需給の安定及び取引の適正化に  関する法律案栗山礼行君外一名提出衆法第  四八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  通商産業基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 天野公義

    天野委員長 これより会議を開きます。  参考人出頭要求の件についておはかりいたします。  先ほど理事会において御協議を願いましたとおり、内閣提出日本万国博覧会の準備及び運営のために必要な特別措置に関する法律案審査のため、参考人から意見を聴取することとし、その人選、日時、手続等に関しましては委員長に御一任を願っておきたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 天野公義

    天野委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 天野公義

    天野委員長 通商産業基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。田中武夫君。
  5. 田中武夫

    田中(武)委員 きょうは一般的な質問を、ことに中小企業を中心として行ないたいと思いますが、その前に先日商法改正が成立いたしまして、それを衆議院法務委員会で審議中二回ばかり私参りましたが、まだ十分質問が終わらないのと一部答弁を保留せられたような点がありまして、法案とはまた別に質問を行ないますということで法案成立には協力したわけなんです。そこで商法改正のうち当委員会関係のある分だけにしぼってまず質問いたしたい、このように思います。  法務省にお伺いいたしたいのですが、今度の改正新株引き受け権が独立して流通するということになったはずなんですが、そうであるのかどうか。それからそうした場合に、この新株引き受け権というものの権利性格はどんなものなのかお伺いいたします。
  6. 新谷正夫

    新谷政府委員 今回の商法改正によりまして株主新株引き受け権を独立して譲渡できるようにいたしたわけでございます。これは一般の新株引き受け権をすべて譲渡し得るようにいたしたというのではございませんで、新しい規定の二百八十条ノ二の中にございますように、株主新株引き受け権を与えます場合にこれを譲渡し得るようにするかどうかという問題でございます。一般的に新株引き受け権譲渡できるというものではございません。これはなぜこういうことにいたしたかと申しますと、現在株主に対しまして新株引き受け権が与えられましても株式申し込みに要しまする資金の調達の面にいろいろ不便があるわけでございまして、現実の問題といたしましては、株主自分の持っております旧株を処分いたしましてそれによって新株申し込みをするというふうなことになっております。そこでそういった不便を避けますために、むしろ株主に与えられました新株引き受け権譲渡することを認めまして、これによって株主の利便をはかるというところにこの趣旨がございます。新株引き受け権そのもの株式とはもちろん違いまして、割り当てを受け得る優先的な権利でございます。いわばそういった優先的に割り当てを受ける権利譲渡し得る、こういうふうになるわけでございます。
  7. 田中武夫

    田中(武)委員 いや、優先的に割り当てられたものを引き受ける権利——私は、その新株引き受け権というのが独立して譲渡できる、そのいわゆる権利というのはどういう性格権利なのか、たとえば債権なのか何なのかとこう聞いておるわけです。
  8. 新谷正夫

    新谷政府委員 新株引き受け権と申しますのは、先ほどもちょっと申し上げましたが、割り当てを受ける権利でございます。これは発行会社に対して、自己に新株割り当てをしてもらいたいということを請求する権利でございます。そういう権利譲渡できるということでございます。
  9. 田中武夫

    田中(武)委員 そうすると、やはり一種の債権ですね、請求権
  10. 新谷正夫

    新谷政府委員 さようでございます。請求権でございます。
  11. 田中武夫

    田中(武)委員 ところが、改正前でも——もう改正案が通りましたが、いままだ施行になっていないと思うのですが、今日でも実際はそれが証券界流通していますね。そうじゃないですか。
  12. 新谷正夫

    新谷政府委員 その当事者の間では、一般的な契約といたしまして新株引き受け権譲渡するということは行なわれているようでございます。しかしこれは制度上認められたものではございません。したがいまして発行会社といたしましては、それを認める必要はないわけでございます。ただ当事者の間の一般的な債権契約として、そういうことが行なわれておるということでございます。
  13. 田中武夫

    田中(武)委員 そうすると、今日行なわれているのは会社に対する対抗要件は備えていないが、当事者間においては一つ債権として成立しておる、そう解していいわけですね。
  14. 新谷正夫

    新谷政府委員 そのとおりでございます。
  15. 田中武夫

    田中(武)委員 そこで、これは大蔵省になるだろうと思うのですが、あるいは企業局長でもけっこうですけれども、外資法関係なんです。外資法は通産省と大蔵省の共管になっております。そこで、いまの新株引き受け権の問題に関連をいたしまして、ADRすなわちアメリカン・デポジタリー・レシート、これはもう説明しなくてもいいと思いますが、今日アメリカ人日本の株を持っているといいますか、日本投資をする、これに二つ方法がありまして、直接本人が株主になる場合と、このADRを通じて株主になる場合と、二つ方法があります。たとえば東芝等で調べますと、アメリカ人が引き受けている金額は大体半々ということになっている。ところが外資法の十七条の二の二項によりますと、この引き受け権譲渡書面による会社承諾がなければ対抗要件を備えないと、こうなっているわけです。ところが今日までADRでは、商法改正になる以前から、新株引き受け権だけが独立したものとして流通をしております。しかもその場合は、外資法十七条の二の二項によって、発行会社承諾書面によってとらなくてはならないわけです。ところがその手続がなされていないと聞いております。そうするなら、今日までADRが行なっておりましたところの新株引き受け権流通、これは外資法十七条の二の二項の違反だというか、対抗要件を備えていないものであると言わなくてはならないと思いますが、そういうような事情を御存じだったのかどうか。知っておられたとして、どういう手を打たれたのか。あるいはこれは日本国内における会社との関係であるから、アメリカ国内においては自由であったということでほっておかれたのか。十七条の二の二項と関連して、ADRの今日まで行ないました行為、これをひとつ解明していただきたいと思います。
  16. 熊谷典文

    熊谷政府委員 私からお答えいたします。  御指摘のように、ADR引き受け権アメリカにおいて譲渡されておるというのは、これは大蔵省の所管でありますが、そういうことはあるようでございます。しからば、外資法との関係をどういうふうに解釈するかという問題でございますが、御質問にもございましたように、日本株式を取得しておりますものは、外資法関係では御承知のように向こうの受託銀行でございます。これは一人でございまして、その一人が引き受けましてADRを発行いたしまして、下に無数のいわゆる準株主的なものがおる、こういう実態でございます。その数は、おっしゃるように東芝の場合は直接の株主と同じ数おるわけでございますが、外資法解釈といたしましては、先ほど申し上げました受託銀行の一人の株主、これが外資法の適用を受けるわけでございまして、ADR自体を持っておる準株主的なものは、この外資法対象にならない、かように解釈いたしておるわけであります。  しからば、そういうADR譲渡されて非常に弊害を受けるかという問題でありますが、御承知のように外資法においては持株というものを許可制にいたしております。非常にたくさんのものを持たれて、それが日本会社運用に支障を来たすというようなことは、外資法の別個の十一条の規定で防いでおりますので、ADR自体引き受け権アメリカ国内において売買されても、実際上の弊害は現在のところ出ていない、かようにわれわれは見ておるわけでございます。
  17. 田中武夫

    田中(武)委員 国際金融局はどうですか。
  18. 村井七郎

    村井説明員 外資法十七条の二の二項におきましては、御指摘のように新株引き受け権譲渡書面による会社承諾がなければ第三者に対抗できないということになっておりますが、ADRの場合は、外国にございます預託銀行ノミニーと呼んでおりますが、ノミニー株主としてあらわれておりますので、その関係におきましては、ここにございます会社承諾ということがいまのところ起こっておりませんし、つまり預託銀行株主というものが動いておりません。したがいましてこの事態がいまのところ事実としては起こっておりません。かりにそれが動きますと、会社承諾がないと第三者に対抗できないという十七条の二の二項が発動されることになると思います。
  19. 田中武夫

    田中(武)委員 そこで、結局会社からの新株引き受け権ADRが持っておる。これが譲渡しておる場合、会社書面による承諾がなければ、対抗要件を備えない。ところがそのADRが別に何か証書でもつくるのでしょうね。それを発行して流通しておるのですね。したがって、いま企業局長は、株主はこのADR受託銀行であって、会社との関係においてはこの受託銀行一本である、したがってこれから先のことは関係がないのだ、こういうような説明なんですがね。これはアメリカ国内法関係になるのかどうか知りませんが、その場合対抗要件を持たないものを売り出しておるということになりますね。そういうことはどうなんですか。日本商法のたてまえからいってどうですかね、民事局長。なるほどいま企業局長が言ったように、株主としての権利義務、これは受託銀行。だから、会社との関係においてはこの受託銀行だけれども、これが新株引き受け権を別個な方法において流通さしておるわけですよ。これは十七条の二の二項による対抗要件を持たないものをやっておる、こういう関係になるのですね。それは商法上許されるのかどうか。実際にそういうことが問題に出ていないからかまわぬ、そういうことで済むのかどうか。なるほど熊谷さんの言うこと、わからぬことはないのですけれども、直接関係ADR受託銀行であるから、株主としての地位は変わらない、こういうことだけれども、どうもまだ割り切れぬのですが、どうですかね。
  20. 熊谷典文

    熊谷政府委員 実態を申し上げますと、先出御指摘のように、ADR自体外国で売買されておる、この事実はあるようでありますが、その場合に譲渡を受けて株主になる、準株主になりましても、日本に対する株主は、先ほど申し上げました一つ受託銀行という形になっております。したがいまして、日本発行会社との関係を考えます場合は、やはり受託銀行一本という——いかに国内譲渡されましょうとも——関係になっておるわけでございまして、受託銀行がさらに今度は、自分がほんとうの株主たる地位をほかに得るという場合には、これは先ほど大蔵省から御説明ございましたように、十七条の二の二項によって、これは書面による承諾を要するわけでありますので、国内発行会社との関係では、私は差しつかえないのじゃないか、かように考えておる次第でございます。
  21. 田中武夫

    田中(武)委員 結局はADRの発行する新株引き受け権譲渡ということは、株主としての新株引き受け権譲渡じゃない、そういうことなんですね。したがって、そこから先のことは、これは日本商法の問題ではない、あるいは外資法の問題ではない、こういう解釈なんですね。あなたはそういう解釈です。それで法務省いいですか。
  22. 新谷正夫

    新谷政府委員 多少ニュアンスは違うかもしれませんが、私はこのように考えます。  法律的には、その場合の株主アメリカ受託銀行でございます。これが名義人になっておるわけでございます。したがいまして、新株引き受け権を取得いたしますのは、その銀行新株引き受け権を取得いたします。ADR、つまり米国預託証券を持っておる人は、実質的には銀行を通じまして利益配当も受けますので、実質上の株主としての利益は受けておりますけれども、法律上の株主ではございません。したがいまして、新株引き受け権を与えられました銀行が、株主としてその新株引き受け権譲渡するかどうかということになるわけでございます。したがいまして、銀行がもし新しく発行される株式割り当てを受けて、その分についても株主になろうと思いますれば、その引き受け権の範囲内におきまして発行会社割り当てを求めまして、優先的な割り当てを受けて引き受け人になり、さらに株主になるということでございます。株主になりましたあげく、その新しく取得した株式につきまして別個にADR証券を発行していくかどうかという問題は、その次に出てまいります。現に持っておりますADR所持人が直ちに法律上の引き受け人になるわけではございません。
  23. 田中武夫

    田中(武)委員 大体わかりましたが、それでは、ADRから譲渡を受けた者が直接に会社になにした場合は、これによって対抗要件を持たない、そういうことですね。そうでない場合は、これはかってにおやりなさい、そういうように受け取るのだが、ちょっとまだひっかかるけれども、まあこの程度にしておきましょう。  それから、その次ですが、今度の商法改正株式譲渡を制限することができるようになっていますね。そこで、中小企業政策と今度の商法改正との関係なんですが、これも実は法務委員会で山本前長官に若干の質問をいたしまして、そして、根本的に考え直す必要があるのじゃないか、こういうことに対して、その必要を前長官は認められたわけなんです。そこで、長官更迭のときにそういうことを受けておられるかどうか、もう少し砕いて言うならば、今日中小企業の基本的な政策は何かといえば、近代化高度化共同化なんです。それに対して、株式譲渡制限ということは、それに逆行する。さらに、一番適例をあげますならば、中小企業投資育成株式会社、これは中小企業新株あるいは転換社債を引き受けて、それを第二上場株にまででも養成しようというわけです。したがって、これら一連の中小企業政策、これは高度化法律なり近代化促進法にも、それぞれそういう趣旨のことが出ておる。それと逆行するわけです。一番困るのは、中小企業投資育成株式会社業務において、いろいろな問題が出てくると思うのです。たとえば、ここに持っておるのは東京中小企業投資育成株式会社事業に関する規程なんです。それのたとえば第二章の新株引き受け事業五条の一号といいますか、これに、「相手方が将来その株式証券市場に公開する意思をを有していること」というのが条件になっているわけです。あるいはまた、その六条にも、あるいは七条にも、それに関連した規定があるわけなんです。したがって、商法改正で、ことに株式譲渡制限ということ——これは同族会社等弱小企業が多いと思うのです。これは一面において、いわゆる会社を乗っ取るとか乗っ取られるとかというようなことに対する商法上の一つ配慮だと思うのです。しかしながら、株式公開性からいえば、昭和二十五年に一たん開放しておいて今度締めたという、何といいますか、二十五年の改正からいえば逆の、もとに戻った規定なんですね。この辺が中小企業政策矛盾すると思いますが、いかがですか。ことに、中小企業投資育成株式会社法趣旨とするところ、あるいは投資育成株式会社業務上の規程、こういうものは再検討を要すると思いますが、いかがです。
  24. 影山衛司

    影山政府委員 先生指摘のとおり、中小企業投資育成会社設立趣旨と申しますのは、中小企業資本充実見地から、新株を引き受けまして中小企業会社育成いたしまして、さらにこれが株式公開ができる状態まで持っていくというのが趣旨でございまして、結局のところ、中小企業に多い同族会社性を払拭するという点にあることは、御指摘のとおりでございます。ただ、中小企業現実をながめてみますと、遺憾ながら、まだまだ同族会社というものの数が多うございまして、中小企業白書にも指摘してございますように、近代化促進法関係の十業種について調べましたところ、七八・一%というものがやはり同族会社で残っておるわけでございます。そういう同族会社が多い現状にかんがみまして、商法の今度の改正におきまして、そういう弱小同族会社について、大企業あたり買い占めをするということを保護してやろうという見地から、こういう規定ができておるわけでございます。  ただ、同族会社の中にも目ざめた会社、あるいは私たちの指導に乗ってきてくれる会社、そういうところは投資育成会社対象にいたしていきたいということでございまして、両者におきまして一見矛盾はあるようでございますけれども、趣旨とするところ、これはおのおの違うわけでございまして、正面から矛盾をするというようには考えないわけでございます。  投資育成株式会社が、今度いよいよ株式を公開するという段階になりました際におきましても、先生のお持ちの事業規程の第九条等におきましても、投資先中小企業株式買い占めが行なわれるおそれがある場合、その場合には旧株主に対して、処分をするというような配慮も加えてある状況から見まして、両者一見矛盾するようでございますけれども、必ずしも運用の面におきましては、矛盾するものではないというふうに考えております。  ただ、先生指摘のとおり、中小企業投資育成株式会社が保有をいたしております株式会社、これが第二部の上場にまで持っていくというその過程におきまして、最近、東京あるいは大阪、名古屋の第二部上場基準が相当引き上げられましたので、その間の問題をどうするかという点につきましては、前長官も、先生の御質問に対しまして、この点とのかね合いで根本的に検討をしていかなければいけないということを答弁いたしたようでございます。その点につきましては、私どもも今後検討いたしていきたいというように考えているわけでございます。
  25. 田中武夫

    田中(武)委員 あなたはうまく説明したと思うのですが、しかし、その中に見込みのあるというか、意欲があるということばで言われたが、それは育てていく、そうでないものはほっておくのだということであるならば、やはり政府施策の中に、中小企業切り捨て思想がある。そうでなくても、最初中小企業投資育成株式会社法設立のときに、われわれはその点を指摘したわけです。ところが、今度の商法改正と相まって、あなたの答弁もそれを裏づけたわけですが、より一そう優良というか、優等生教育にしかすぎないことになる。これは中小企業政策からいえば、そうほめたものではなかろうと私は思うのです。  そこで、こまかいことは別として、商法改正ということに関連して、中小企業政策根底から考え直す必要がある。またたとえば新株引き受け権独立性が今度認められた。そうすると、中小企業投資育成株式会社の引き受けた、あるいは引き受ける新株権利も独立して動くのかどうか、こういうような問題も出てきますが、そういうこまかい議論はやめましょう。  そこで、最後に、大臣、お聞きのように、一方においてはよかれということで商法改正をなされた。しかし、それが中小企業政策根底関係がある。これはいま私が申し上げておるのでおわかり願ったと思うのですが、その辺をうまく運営していく必要があると思うのですが、この点について大臣の御意見だけ伺って次にいきたいと思います。
  26. 三木武夫

    三木国務大臣 商法改正は、株の買い占めなどを防止しようという目的でありますから、いま御答弁しておりますように、運用の面でいろいろ検討する点はあると思いますが、真正面からこれが対立するとは考えておりません。したがって、今後運用の面において中小企業育成をしようというこの趣旨が阻害されないように、商法改正が阻害されないように、十分注意をいたしていく所存でございます。
  27. 田中武夫

    田中(武)委員 議論はやめますが、真正面から矛盾はしないということですが、中小企業政策根底は、中小企業閉鎖性開放性へ指導していって、近代化共同化をやれということです。それが基本精神でなければならぬ。ところが、一方において中小企業閉鎖性をなお一そう強めるような改正がなされた。このかね合いを考えなければならぬ、こう言っておるわけです。したがって、法の規定真正面に衝突しておるとか、そういうことでなく、考え方としていままで何年か——これは大臣もそうだし、中小企業庁長官もそうだし、中小企業政策は何かといったら、近代化高度化、そうして共同化だ。これは中小企業閉鎖性開放体制へ持っていくということなんです。ところが、一方それを妨げるというか、法律によって妨げないとしても、そういうことで閉鎖性をなお強めるような改正がなされるということは考えるべき点があるじゃないか、こう申し上げておる。
  28. 三木武夫

    三木国務大臣 閉鎖性を強めるという問題については、いろいろと議論の余地がございますが、しかし、要は、運用の面で、中小企業開放性といいますか、中小企業が育っていって、株式も公開できる、こういうふうなことに育っていくことが育成会社をつくった目的でございますから、運用を通じて田中さんの御指摘のような弊害のないように努力をいたしたいと思います。
  29. 田中武夫

    田中(武)委員 これは大臣なり長官の手腕、運営にまつことにいたして、この点はこれ以上深追いはやめたいと思います。  次に、中小企業団体政治中立性について若干お伺いいたしたいと思います。  御承知のように、たとえば商工会法の六条三項、あるいは中小企業等協同組合法五条三項、その他商店街振興組合法団体組織法等、あらゆる中小企業団体には政治中立性、すなわち特定の政党のために利用してはならない、こういう規定があるわけです。ところが、今日までわれわれこう見ておりますと、意識的にかそうでないのか知りませんが、往々にしてそういう中立性を疑うような行動をとる中小企業等の団体が間々あります。  そこでこの政治中立性の問題についていままで中小企業庁としてはどういう指導をしてきたか。たとえば機関紙におきましても、特定の政党の政策をぎょうぎょうしく発表してみたり、特定の政党に所属する人の宣伝をやってみたり、これまさに政治中立性を欠いたところの運営ではないかと思うのです。事実を指摘せよと言うならば、幾らでもあります。しかし、きょうはそういういやらしい事実の指摘はやめますが、どういう考えのもとにどう指導してきたか、今後どう指導しようとしておられるか、お伺いをいたします。
  30. 影山衛司

    影山政府委員 商工会、中央会、商工会議所等の中小企業の指導団体が政治的な中立を保つべきであるという点は、先生指摘のとおりに、法律にも規定してございまして、これは当然のことでございますが、どうもそれに矛盾するがごとき、まぎらわしき行為もございますので、先生承知のように、昭和三十八年に一番問題になったのでございますが、そのときに、各団体の長とか、通産局長に対しまして、各団体の政治的中立ということは厳守すべきであるということを厳重な通牒を出しまして、その後その趣旨に従いまして指導をいたしておるわけでございます。最近にも機関紙において、まぎらわしき行為があった例もあるわけでございますが、その点につきましては、私どもも直ちにその当該団体に対しまして厳重な警告を与えまして、それを改めるというふうにさせたわけでありまして、今後とも政治的中立ということの指導をはかっていくということには変わりはないわけでございます。
  31. 田中武夫

    田中(武)委員 特定の団体の機関紙は特定の政党のみの政策をぎょうぎょうしく発表する。あるいは特定の政党に所属する各種議員の経歴、写真入りでいろいろなことを紹介する。私はそういうことはしてはいかぬと思う。その関係ある団体のものについて、国会等でたとえばいまやっているような論議が行なわれている、そういうことを報道するのはいいと思う。しかし、あまり個人の宣伝なんかは——これはわが党の人もあるかもしれません。私はそういうことは好みません。そういうことについて、ひとつ今後とも十分厳格な指導をしてもらわなければいけないと思う。そこで大臣、ひとつ中小企業団体のあらゆる法律の中に政治性の中立、ことに協同組合精神からいうならば、いわゆるロッチデールというのですか、原則からいって、当然協同組合、あるいはそれに類似するものは、政治性の中立ということが必要である。これは原則です。そこで、長官からも答弁を得ましたが、大臣、一言でけっこうですが、決意をお願いします。
  32. 三木武夫

    三木国務大臣 これは商工会にしても、商工会議所、中央会にしても、みなやはり法律規定の中にもあるわけですから、いままでも長官がお答えしたように、われわれとして指導をいたしておるわけでございますが、政治的中立を守ることは法律規定からいっても、あるいはその団体の性格からいっても当然のことでございますので、今後十分強力な指導をいたすことにいたします。
  33. 田中武夫

    田中(武)委員 口先だけでなく、今後十分なる配慮と指導を願いたいと思います。われわれ、今後かかることがあれば、委員会、本会議等でその者を指名しながら追及をいたしますので、きょうはそういうような具体的例はあげません。しかし、幾らでも例は持っております。  そこで、大臣長官の指導理念というものを伺ったので次にまいりますが、この同じ協同組合でありながら、農業協同組合、あるいは水産業協同組合、これにはいわゆる特定の政党のために利用してはならぬということをうたっていない。うたっていないからといって、かってだとは言えないと思う。先ほど来申し上げておりますロッチデールの協同組合精神です。原則からいっても当然私は農協、あるいは水産協同組合等にうたっていなくても同じように解釈すべきであり、また同じように運営すべきだと考えておるのですが、それにつきまして農林省の御答弁を伺いまして、同時に法制局からの答弁をいただくと同時に、同じことでありながら、なぜ一方にはそういう政治的中立の規定が入り、一方は入っていないかということ。これはGHQの指導下といいますか、監督下にできた法律でありますので、その辺のところに原因があるようですけれども、簡単でけっこうですから、ひとつ入っていない経過を説明し、なお法制局の見解を示していただきたい。
  34. 横尾正之

    ○横尾説明員 先生指摘のごとく農業協同組合法等農林省関係の協同組合関係法律には、政治的中立の原則をうたった規定はございません。しかしながら、これまた先生指摘のとおり、農業協同組合法等は、ロッチデール等の古典的な協同組合の原則を忠実に受けとめまして、その前提のもとに法制化されておると理解をいたしております。したがいまして、明文上はございませんけれども、その精神、考え方というものは、そのような、と申しますのは、政治的中立の原則の上に立って運営さるべきものというふうに考え、そのような考え方のもとに私どもも農協等の指導にあたりましては、農協等の経営の健全性、事業運営の合理性は、そのような観点に立ってやってまいりましたし、今後もそういうふうにやってまいりたい、そういうふうに考えております。  なお、これは法制局のほうから御答弁がございますと思いますが、私どもが理解しておりますところでは、立法過程におきましての具体的な明文が入りません経緯は、現在のところ必ずしも明らかではございません。これは、一つは、必ずしも当たらないかもしれませんが、立法形式が中小企業等協同組合法に書かれておりますように原則、基準というものをまとめて立てて規定をするという形になっております。原則をのみ込んで、具体的な法律事項を規定するというような形になっておると思いますが、そういうことも関係があるのではないかというふうに思いますが、立法過程の詳細につきましては、先ほど申しましたように必ずしも現在明確ではございません。その点、御了承願いたいと思います。
  35. 田中康民

    田中(康)政府委員 ただいま農林省のほうから答弁をいたしましたところに従って解釈し、法を運用すべきである。これは私のほうも当然だと思っております。その前に、なぜ農林省関係におきます農業協同組合法と水産業協同組合法におきましては、政治的中立の原則をうたわなかったかということでございますが、これまた、いま農林省の申しましたようないきさつで、いろいろそういうことではっきりいたさないと同時に、いま一つの理由は申し述べられましたが、それ以外に私どもといたしましては、次のように考えるわけでございます。  それは当時この農協法——水産業協同組合法は農業協同組合法のあとに制定されましたので、まず農協法について申し上げますが、農業協同組合法は、昭和二十年に進駐軍が参りまして、総司令部が農業に関する民主化政策というものを示しまして、いわゆる農地改革と農業団体に関する民主化、この二つが行なわれたわけですが、その場合に、そういう農業改革の一環として行なわれました関係上、司令部の担当はNRS、天然資源局というところでございます。そういうところにおきます審査でございまして、当然農業改革の一環として行なわれまする関係上、政治的な中立の原則その他につきまして、もちろん考慮が払われたと思いますが、それを明文化するに至らずして、ただ、いま農林省から申しましたように具体的な立法事項だけについて規定を取り上げた、かようないきさつがあるというように実は聞いておるわけであります。そのあとで水産業協同組合法がつくられましたが、これは同じ農林省の担当であり、かつ司令部も同じ担当でございましたために、前のと変わるということはおかしいということで、そのまま引き継がれたというようなことがございまして、政治的中立の原則は、法文そのものの上にうたわれなかった、かように聞いておるわけであります。
  36. 田中武夫

    田中(武)委員 経過等はわかりましたが、中には、中小企業関係にあって、農協関係にはないというところから、そのゆえをもって農協等はそういうことが自由なんだ、こういうような考え方が間々あります。現にやっております。したがいまして、そういうことについて一応念のためにあらためて注意を喚起する方法、たとえば通達を出してもらいたいと思いますが、いかがですか。  現にわが党の内部においても、農協はかまわないんだというような意見すらあったわけなんです。しかし、これは法文上そういう違いがあったことは、いまの法制局の御答弁あるいは農林省の御答弁のように経過はあるわけであります。ところが、精神においては一緒なんで、明文があろうがなかろうが、同じように解さなければならない。これははっきりしておるわけです。そこで、念のためにでも、もう一度農協等に対して注意を促していただきたいと思いますが、いかがですか。
  37. 横尾正之

    ○横尾説明員 先ほど申し上げましたように、私どもといたしましては、当然の原則であるというふうに関係者の頭に入っておるという前提で、しかしながら、なおかつその前提を頭に置きつついろいろな指導をしてまいったのでございますが、御指摘のようなことがありますれば、そういった点につきましては、私どももさらに注意をいたさなければならないというふうに思うわけであります。したがいまして、どのようにその趣旨を徹底するかという点につきましては、恐縮でございますが、行政庁内部におまかせいただきまして、いろいろな機会に、そのような点につきましては、さらに私どもの考え方が十分に地につくようにやってまいりたい、こういうふうに思っておりますので、御了承願いたいと思います。
  38. 田中武夫

    田中(武)委員 一応誠意ある答弁だと受け取りまして、今後の成り行きを見詰めたい、こう思います。  自治省お見えですね。——そこで、お聞きのとおりなんですが、いざ鎌倉となれば、現にやるのでしょう。こういう団体が特定の政党に所属する者を公に推薦をし、その者のために選挙運動をする。個人ならいいですよ。あとで私まとめて質問いたしますが、中小企業経営指導員、この問題をきょうは中心に質問する予定だったのですが、こういう人を使って選挙運動をする事実もあるのです。そこで、きょう見えておるのは選挙管理委員会ですか、選挙局長さんはどういうようにいざ選挙のときに指導し、監督し、監視をするか、ひとつはっきりと言ってください。
  39. 長野士郎

    ○長野政府委員 お話しの商工会とかそういう協同組合の関係におきまして、その選挙に際しまして候補者を推薦し、支持するということがどういうふうな形で行なわれるかということにいろいろ問題があるということでございますが、元来いろいろな団体におきまして、候補者を推薦し支持するというようなことを決定すること自体は、選挙法上は少なくとも選挙運動とは考えられない。ただそれをいかなる形で相手方に働きかけるかあるいは有権者に働きかけるかという問題が、そのやり方のいかんによっては、これが選挙運動ということに相なるかと思います。したがいまして、いろいろな団体が機関の意思として、機関決定というのでございますか、そういうことで候補者の推薦を決定をいたしまして、それを機関紙等におきまして伝達をする。これは団体内部の連絡というふうに考えられる、団体の構成員に対する伝達だというふうに考えられる場合には、これは単なる働きかけというのじゃなく、いわゆる連絡事項として機関の中の、団体とその構成員との間の通常の連絡方法をとる限りにおいては、これは連絡ということで考えられておるわけであります。したがいまして、いろいろな機関紙、これは商工団体、協同組合等にもありましょうし、また労働組合等にもあると思いますけれども、そういう機関紙によりまして候補者を推薦をしたというようなことを構成員に連絡する、これ自身は選挙法上は少なくとも可能だということに実はなっております。したがいまして、その点ではまた機関紙ということになりますと、選挙法上では、新聞とか雑誌というような問題とも相関連をいたしまして、報道、評論の自由ということがございます。したがいまして、そういう機関におきましてこの候補者を推薦した、あるいは推薦を決定したということを構成員に機関紙等を通じまして伝達するということ自身は、それ自体をもって直ちにそれが選挙運動であるというふうには考えられないというのが、現在の選挙法上の考え方になっておるわけであります。ただ、お話のありましたように、この商工会議所とか労働組合との関係は、政治的中立ということが法文に書いてあるそうでございますが、そのことが具体的な関係としてどのようにあらわれるか、これはなお検討してみたいと思います。
  40. 田中武夫

    田中(武)委員 私の言っておるのを労働組合と同じように言われたのは心外だ。労働組合はそういうことはないのです。はっきりいま明らかになったように、協同組合と政治中立性というものが確認されたわけなんです。したがって、そういう団体が特定の政党に所属する人を推薦すること、そのことを機関紙に流すこと、あるいは特定の候補者のポスターの中に何々商工会推薦ということを入れること自体がいけないのではないか、こう私は申し上げておるのです。あなたは公職選挙法上だけの問題でいまお答えになりました。しかし、その以前にこれらの関係の組織法には、それぞれ政治中立性ということを、すなわち特定の政党に利用してはならない、こういう規定があるわけなんです。その点をもう一度答弁願います。
  41. 長野士郎

    ○長野政府委員 さいぜん申し上げましたように、選挙法上の観点から私は申し上げたわけでございますが、いろいろな協同組合関係政治中立性という問題がそれとの関係でどういうふうになるかということについては、なお検討してみたいと思います。
  42. 田中武夫

    田中(武)委員 なお検討じゃなくて、これはあなたでなかったかと思いますが、私はいつか、三十何年ですか、二回か三回前の参議院選挙のときに、党を代表してそういう申し入れをしたことがある。これは公職選挙法の文書その他というところの活動から判断するのでなくして、もう一つその団体の性格からくる問題なんです。だから、検討しますじゃ困る。はっきりと何々商工会推薦なんということを、あるいは何々協同組合推薦だ、あるいは特定の候補者に農業協同組合の事務所を提供する、その連合会の事務所を提供して選挙事務所にした、そういうことは許されない、私はこういう解釈なんですがどうなんですか。
  43. 長野士郎

    ○長野政府委員 特定の政党のために利用してはならないという関係の法文の規定の意味が、いまのお話しのような推薦とかポスターに掲示するというような点で、非常に明瞭に利用されておる状態としてあらわれておる場合には、この関係の法制によって禁止された行為を行なうというふうに考えられるだろうと思いますが、選挙法上の考え方だけを申し上げたのでございまして、選挙法上は、こういう団体員とこういう団体はどうであるというふうに実は区別をしておりませんというふうに申し上げたわけであります。
  44. 田中武夫

    田中(武)委員 選挙法上ではしていないけれども、その以前にそういうことができない性格を持つ団体なんですよ。いまあなたそうおっしゃるのだが、これはかって篠田さんが自治大臣のときですから、何年か知りませんが、予算委員会で私これをやったことがある。その後改まっていないからもう一度言っておるのですが、その当時の篠田さんの答弁と違います。何ならあらためて議事録を見て、もう一度これをやってもいいと思いますが、公職選挙法のことだけを聞いておるのじゃない。そういう資格のない団体がやる場合は、むしろそういう団体を管理監督するほうの側でしょうかな、そういうことをしてはいかぬというなには。その点だけはっきりしておいてもらいたいと思います。自治省のほうでまだ意見があるのなら、保留をしておきまして、篠田さんの自治大臣のときに、私予算委員会でこれをやったことがあるので、その議事録を対照しながらあらためて質問いたします。どうですか。
  45. 影山衛司

    影山政府委員 たしか先生先ほど指摘のケースが、私が先ほど答弁申し上げましたように昭和三十八年じゃなかったかと思いますが、そのときの先生質問に基づいて、先ほど申し上げた通牒が出ておるわけであります。そのときの考え方は変わっておらないわけであります。
  46. 田中武夫

    田中(武)委員 そうすると、自治省どうです。あなたはただ公職選挙法だけさえ守っておったらそれでいい、そういうことなのか。
  47. 長野士郎

    ○長野政府委員 先ほど来申し上げておりますのは、結局この問題は特定の政党のために利用してはならないという規定解釈の問題でありまして、したがってその政治的中立ということの一つの限界がどこかという問題であろうと思うのでありますが、いま中小企業庁長官より伺いますと、選挙事務所を提供するとか、あるいはそういうことの選挙運動類似の行為にわたるようなことが政治的中立を害するというようないきさつがあって、そういう通達が出ておるということであります。したがいまして、そうでありますならば、これらの関係法規の解釈はそういうふうに確定しておると思いますから、選挙法上の問題ではなくて、それ自身の解釈としてそうであるということであれば、私どももそれでよろしいのではないかと思います。
  48. 田中武夫

    田中(武)委員 何だかわかったようなところがあって、あなた自体逃げたということですが、しかしいまの答弁覚えておりますから、今後そういう上に立ってはっきりとやっていただきたい。それだけを念を押しておきます。  その次に、これはやはり政治中立性の問題について、実はこういう質問は、大臣、ぼくはあまりやりたくないのですが、党の立場からはやらざるを得ないので、ちょっといやらしい質問になりますが、人格はそういう人格者ではないことを断わっておきます。  実はことしの十月か十一月ごろに、中小企業中央会の総会が持たれます。したがいまして、そのときに全国から中小企業の代表者が続々と上京してくる。その前後に、これは自民党が持っておられる中小企業総連合という組織でありますが、これはかまいません。がしかしその席上で、聞くところによると、献金をした者、これは政治献金なのか選挙献金なのか知りませんが、した者を総理大臣あるいは通産大臣の名において表彰する、表彰状を乱発するということがいわれておるわけなんです。私は、自民党の中小企業総連合の中における功労者を表彰するのに、自民党の総裁佐藤榮作あるいは幹事長あるいはそれぞれの立場の人が党の資格においてやられることは、これはわれわれ何ら干渉すべきでないと思います。しかし総理大臣とか通産大臣の名のもとにおいてそういう席上において表彰し、表彰状を乱発せられることには問題がある。この点を強く、できれば総理をも来てもらって、総理と三木大臣に強く言えということが命ぜられた一つ質問になっておりますので、私は自民党の中のことにあまりいやらしいことを言いたくないのだが、この点はっきりしておいてください。
  49. 三木武夫

    三木国務大臣 私、そういう事実は実際知らないのです。しかしそういうことは厳に慎まなければならぬことだと思います。
  50. 田中武夫

    田中(武)委員 三木大臣答弁を信用しましょう。総裁佐藤が表彰することは、これはわれわれ何ら内政干渉はいたしません。しかし総理大臣という名のもとにやられるならば、大いに問題がある。できるならば総理も来てもらってだめを押せ、こういうことだったのですが、来てもらいましょうか。
  51. 三木武夫

    三木国務大臣 いや、もう私から……。
  52. 田中武夫

    田中(武)委員 じゃ実力者三木大臣の言を信用いたします。  それでは次に入りたいと思いますが、実は中小企業庁長官承知かと思いますが、今回社会党で、商工会議所、商工会に配属をせられておる中小企業経営指導員に対して、全国的にアンケートをとったわけです。それがまだすべて集約していないのですが、まず参りました六百ばかり集約したものに基づきまして、これから指導員の問題についてお伺いいたしたいと思うわけであります。  そのまず最初として、一体中小企業経営指導員の任務は何ですか。
  53. 影山衛司

    影山政府委員 商工会、商工会議所に配属されておりますところの経営指導員は、小規模事業所の経営関係の指導をやるわけでございます。それで先生承知のように、小規模零細層という人たちは、まだまだ経営合理化という線に乗らない人たちが多いわけでございまして、帳簿のつけ方からあるいは金の借り方から、親切に指導していくということが経営指導員の任務であろうかというふうに考えておるわけでございます。
  54. 田中武夫

    田中(武)委員 大臣、一緒に聞いておいてほしいのですが、いま指導員の本来の任務を長官は述べられました。われわれがアンケートを出してそれを集約した結果を見ますと、経営指導は一五%、労務のことについての問題が一二%、金融調達が三一%、雑務が三七%、税務関係が五%の結果が出たわけなんです。問題はこの雑務なんです。雑務が一番大きなウエートを占めておるわけなんです。一体この雑務は何かというと、これはいわゆる商工会議所あるいは商工会の役員さんの私的な仕事だとか秘書的な仕事だとかいろいろなことをやらされておるわけなんです。いまここに私二、三持ってきておりますが、切々と訴えたこういう手紙もたくさん来ておるわけです。  そこでまず、雑務に追われてどうも本来の仕事ができないという訴えに対しては、どうお考えになりますか。
  55. 影山衛司

    影山政府委員 雑務の問題でございますが、先ほど先生指摘のように、会長の個人的な私用に使われるということはもう論外でございまして、そういう点は、もしもそういう事実がありますならば、そういうことをしないように、私どもも厳に指導をしていきたいというふうに考えます。ただその庶務の内容でございますが、御承知のように商工会は地域商工団体としての、総合経済団体としての性格と、それから小規模事業者の指導団体としての性格があるわけでございまして、この両者は切っても切り離せない相互的な関連性があるわけでございます。たとえば商店街の大売り出しというようなものを経営指導員が雑務として手伝っていいかどうかということが問題になるわけでございますが、商店街の売り出しに指導員が手伝うということで、小規模事業者、小売り店の人たちも親近感を持つということによりまして、おのずと親切な指導もしくは心の通った指導ができるということにもなるかと思いますので、そういう点につきまして、厳密に雑務と指導事業というものを分離してしまうということは、ある程度問題があるかと思うわけでございます。
  56. 田中武夫

    田中(武)委員 大臣、これはきわめて遠慮した回答なんです。名は伏せてくれということで、職場の商工会議所なり商工会の監督の地位にある人に遠慮をして匿名で来ている手紙の一節をここで読みます。「私たちの配置場所である職場の管理者等、または管理者地域打ち合わせ会等におきまして、回答内容に稟議を得る」よう申し合わされた。われわれが出したアンケートに対して、その指導員が個々の立場で自由意思で回答してはいけない、こういうことを言われて、そして管理者の地域会合で稟議をして回答させたという事実がある。この一事を見ても、指導員がどういう立場におかれておるかということがうかがい知れると思うのです。そういうことにつきましては事実を知っておられるかどうか、どういうような措置をおとりになりますか。
  57. 影山衛司

    影山政府委員 会頭の個人的な私用などに利用されるということも聞かないでもないわけでございます。そういう点につきましては従来から専従義務ということで相当強力に指導をしておるわけでございますが、もしもそういう具体的なケースがございましたならば、教えていただけばその商工会に厳重に警告をいたします。
  58. 田中武夫

    田中(武)委員 渡してもいいのです。しかしそうすると、私の首があぶないと書いてあるのです。そこが問題なんです。御承知のように給与は国が大部分を出しておる。一部県が補助している。ところが任免権はどこにあるのか。監督権がどこにあるのか。ここに問題があるわけなんです。いわゆる団体職員としての立場しか持っていない。そこで、この種の経営指導員は、言うならば農業の改良普及員に準じたものとして、これは商工会法が成立した三十五年のときにわれわれも提唱して、こういう制度ができた。ところがそのままにほっておかれておるわけなんで、この身分をどうするのか、これが第一の問題なんです。農業改良普及員は公務員です。このアンケート等を見ますと、多くがやはり公務員あるいは地方公務員にしてもらいたいというのが多いわけです。その監督、任免がその職場において行なわれておるところに、自由にしてかつ公正な中小企業の指導ができない、こういうことなんです。これにつきましてはどのようにお考えになりますか。
  59. 三木武夫

    三木国務大臣 商工会法が審議されるときに、この問題は非常に論議された問題点だということを私も聞いております。しかしこれを地方公共団体あるいはまた国の公務員というような形で上から官僚的に指導するというよりか、やはり商工会の内部にあって組織の一員というような感覚で指導するほうが、経営指導にあたっては好ましいのじゃないかということで論議をされた結果、そういうことになっておると思います。これは田中さんのような議論のほうがいいのじゃないかという御意見もあり得ると思いますが、やはりああいう中小企業の指導が官僚化していくような傾向も好ましいことではないので、いまのような形でその指導員が、やはりいろいろサービスをやるわけですから、そのサービスという精神に徹して、心がけの悪い者があったり、あるいはまたそういう幹部の者が私用のために使ったりするような、そういう運用面における弊害を取り除いて、一つの方式としてはいまの方式のほうが好ましいのではないか。しかし、運用の面では、いま御指摘のようなこともあるのでしょう。これはやはり今後われわれとしても十分に指導を強化していかなければならぬ面があると思います。
  60. 田中武夫

    田中(武)委員 実はこの制度が置かれたときに、指導員の身分のことが問題になりました。そこで、この指導員を公務員とせよということに対して、全国の連合会等の反対で、それが修正されたわけです。  ひとつこの手紙の一節を読みますので、聞いていただきたいと思います。「第一の点は指導員の身分についてであります。指導員制度設置時の「指導員は公務員とする」の一項の全国商工会連合会の反対による修正の結果、採用、罷免は地元がやり、資格審査は県、そして認定は通産省という、三者分担のものとなりました。俸給及び指導費につきましても、国、県、地元の寄り合い世帯であり、たとえていえば、他人同士三人相部屋の下宿屋で居そうろうをしているような感じであります。」こう書いてある。これに対して、どうお考えになりますか。
  61. 影山衛司

    影山政府委員 商工会の成立の経緯から申しまして、先ほど大臣から御答弁がありましたように、商工会というものは民主的な団体である、小規模事業者のための団体であるということから申しまして、小規模事業者に対する指導は単に経営指導員だけの問題ではございませんで、会長から全部の職員がそれに従事すべきものというふうに考えておるわけでございまして、そういう点が、むしろ小規模事業者の中に飛び込んでいって指導する体系としては、天下りでない、民主的な制度として現在においても非常にいいのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。ただ、その経営指導員の身分の保障というような見地から会長に任免権がございますけれども、その任免権が恣意的に行なわれないために、県または通産局がその任免について認定ないし承認をするチェックシステムをとっておるわけであります。むしろそれは身分の安定をはかるための一つの手段であるというふうに考えております。
  62. 田中武夫

    田中(武)委員 やはり私は身分ははっきりとしてやる必要があると思う。現在のような状態であるならば、この人たちが高年齢に達したときにはだれがめんどうを見るか、退職金等についてもはっきりしていない。中には中小企業退職金共済事業団ですか、あれに入っているところもあるようです。あるいは独自のものがあるところもあるようですが、身分がはっきりしていないために、どの適用を受けるということもはっきりしない。ことに、退職あるいは病気、こういう場合に何らの保障がないわけなんです。私たちが年をとったときには、この三者のうち一体だれが責任を持ってめんどうを見てくれるのか、こういう訴えなんです。それについてはどうお考えになりますか。
  63. 三木武夫

    三木国務大臣 こちらの通産省としても、労働条件といいますか、給与規程、退職金の規程などについては、そういう問題の規程を設けるようにという指導はしておるのですが、実際問題としては、そういう労働条件に対するいろいろな規程は、御指摘のように不備な点が多いと思います。やはり今後中小企業対策の中での指導の面、これは非常に大事な施策の柱たり得ると思っております。そういう点で、指導員のあり方、そういうものについては今後検討をしたいと思っています。近代化などの施策と、一方においては中小企業の指導の面——中小企業政策の中では非常に大きなウエートを持っておる、そういう点でこの指導員のあり方に検討を加えるという考えでございます。
  64. 田中武夫

    田中(武)委員 これは、ここで直ちに公務員、ことに地方公務員にしなさい、よろしいという御答弁は得られないと思いますが、ここに集まっておるのは六百人の集会なんですが、その後も千人以上の者も集まっております。みんなそれを一番に訴えているわけなんです。だから、その点について、これは天下りがどうだとかなんとかいうような御答弁でなく、真剣にひとつ検討してください、どうですか。
  65. 三木武夫

    三木国務大臣 いま申し上げておるのは、私は真剣に検討しようと思っております。身分の安定ばかりでなしに、指導員のあり方全般について検討を加えたいと思います。
  66. 田中武夫

    田中(武)委員 このごろは大臣をあまり信用し過ぎる質問になって困るのですが、これはひとつ三木大臣を信用して次にいきたいと思います。  影山長官、今日給与の予算はたいてい月俸かける十二ではないですね。年末あるいは夏の期末手当、ボーナスというか、そういうものを含めて予算としてはどこでも給与かける十五ないし十八です。ところが、この指導員の給与の予算としては、給与かける十二しか出ていない。これに対して一体どうお考えになりますか。
  67. 影山衛司

    影山政府委員 先生承知のように、指導員の平均給与といたしまして、補助の基準といたしましては三万三千円でございます。この三万三千円には賞与は入っておりませんで、県と国とが半分ずつ負担をするということになっておるわけでございますが、その三万三千円に対するプラスアルファにつきましては、やはり商工会が自力で調達するとか、あるいはその所属するところの市町村が調達する。そういうところも商工会のあり方としましては、そうあるべきではないかというように考えております。
  68. 田中武夫

    田中(武)委員 そこに問題があるのです。地方財政で左右されるわけですね。しかも、その身分あるいは給与に、何らの法的なというか予算的な裏づけがないわけです。ただ単に補助金、補助費ということで出ておる。そこで、ほんとうにいい指導員が十分にやるためには、もっと裏づけのあるものにする。いま影山長官答弁のように、あとは地方にまかせるんだ、こうなると、地方の財政状態によって異なってくるわけです。それから給与等につきましても、大体甲乙地と分けて三万三千円とかなんとかになっております。それがはたしてそのまま支給されておるかどうかということも、調査の結果出ておりますが、疑問があります。同時に、ここで最低賃金制を云々するわけじゃないですが、指導員の給与は現在甲乙地で二段階になっておりますが、あるいは三段階くらいにしてもいいと思います。しかし、一番下はきめる必要があるのじゃないかと思いますが、いかがですか。
  69. 影山衛司

    影山政府委員 地方財政の問題もあるわけでございますが、結局のところ、私どもも指導員の待遇改善といたしまして、毎年度予算の単価等も引き上げていっておりましてベースアップもいたしております。毎年これはやっております。それからことしからは超過勤務手当もつけるということにいたしておるわけでありまして、その点につきましては逐次改善をいたしていきたい。その場合におきまして、先生指摘のように、給与の基準というようなものも、下をきめるかどうかは別といたしまして、もし少しきめこまかく指導をしていく必要があるというふうには考えております。
  70. 田中武夫

    田中(武)委員 大臣長官はそう言っておりますが、やはりどうしても最低基準はきめてやる必要があるのじゃないかと思うのです。しかも、それがもっと予算的にあるいは法的に裏づけのあるものにしてやる必要があるのじゃないかと思うのですが、いかがでしょう。
  71. 三木武夫

    三木国務大臣 いま申しておるように、あまり安い給与ではこういう仕事をする者としてなかなか積極的な仕事ぶりも生まれてこないでしょうから、待遇問題はいま長官が答えましたように、超過勤務手当とか寒冷地手当とかいろいろ改善を加えておるわけです。指導員のあり方を検討しようというときに、給与の問題もひっくるめて検討いたしたいと思います。
  72. 田中武夫

    田中(武)委員 すべてをひっくるめて検討しますというふうにうまく答弁されたら、次に質問ができないですよ。  そこで、労働省はお見えですね。この中小企業の経営指導員は労働基準法上の労働者である、適用を受けるものだと思いますが、いかがですか。
  73. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 私どもが承知いたしておりますのは、給与の財源負担についてはいろいろな形がとられておるようでございますが、要するに、商工関係団体の職員ではなかろうかというふうに考えておるわけでありまして、明らかに賃金が支払われる、しかも一定の指揮命令を受けるということになりますれば、労働者になるわけであります。ただ、その関係が区役所の場合に経済課長の指揮命令に従うという状態にあるようでありますが、その場合に区役所の経済課長としての指揮命令を受けるのか、そうではなくして、経済課長が商工会議所の参事という資格を持っておるようでありますので、参事たる商工会議所の上級職員から指揮を受けるというふうに解釈すべきか、この判断については検討を要するものがあると思います。私どもは労働者であるというふうに考えておるわけであります。
  74. 田中武夫

    田中(武)委員 あれは九条でしたか、九条のいわゆる労働者であるということは確認できますね。
  75. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 率直に申しまして、中小企業の経営指導に当たられるような方でありますので、労働法規についても、基準法の基礎的な条項くらいは御承知であろうと私ども考えておりまして、監督指導はこちらのほうではあまりいたしておらぬような実情にございます。したがいまして、いま私が申し上げましたのは、東京商工会議所の例につきまして申し上げたわけでありますが、その限りにおきましては、労働基準法第九条の労働者の定義に定めておりますところの「事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」という使用従属と賃金支払いの二つの条件は満たしておりますので、若干複雑な関係にあるようでございますけれども、実質的判断としては労働者であろうと考える次第でございます。
  76. 田中武夫

    田中(武)委員 労働基準法上の労働者ということははっきりしました。労働組合法上ではいかがでしょうか。
  77. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 御承知のように、労働組合法第三条の労働者の定義は労働基準法第九条の定義よりも広く、つまり現実の使用従属関係が特定の事業または事務所との間にあるかいなかということを要件にしておりません。したがって失業者も含む概念である、こういうふうに解釈されておりまして、これは異説のないところでありまして、労基法の第九条の労働者よりもなお広いということでありますから、あえてこれに差し加える必要はなかろうと思います。
  78. 田中武夫

    田中(武)委員 そこで、基準法の適用を受ける。すると、当然時間外超過勤務手当、有給休暇その他は基準法の定めるところによって与えられなくちゃならない。ところが、ことしから長官は超過勤務手当も若干考えたというが、現在では超過勤務手当はほとんど出ていないのですよ。これはあるいは指導員だから管理の職にあるので云々という逃げ道があるかもしれぬと思うのですが、これは当然支払ってやらなければならないと思います。同時に社会保険はどうなっています。失業保険、健康保険。当然労働基準法の適用があるならば、業務上でけがした場合は、労災の適用がある。モペットに乗って回っておるときの交通事故、これは当然労働基準法の適用のある労働者災害の保護を受けなくちゃならぬと思うのです。その点については議論の余地はないと思いますが、いかがですか。と同時に、現在、そういうことにおいてどれだけの配慮がなされ、どれだけの予算、どれだけの指導がなされておるかお伺いいたします。していないでしょう。
  79. 影山衛司

    影山政府委員 社会保険に指導員が加入しておるかどうかでございますが、これも、正直申しまして、まだ私どもの指導が至らない点がございまして、入っておるところもあれば入ってないところもあるということでございますので、それは今後ともその方向に従いまして指導していきたいというふうに考えております。  それから公務傷害に対しましては、公務傷害による指導員の長期欠勤に対しましては、補助の要件といたしましても、引き続き一年間国において人件費を見るというような配慮はいたしておるわけでございます。
  80. 田中武夫

    田中(武)委員 いやいや、そういうことがいかぬのですよ。当然労働基準法に基づく労働災害の適用を受けなくちゃいけないのです。だから公務傷害に対しては一カ年めんどう見ますということは違うのですよ。そうするならば、優秀な影山長官にして労働法の適用を誤ったということになるのですよ。知らずにやられたのか、知ってやられたのか知りませんが、どうです。これははっきりしておる。
  81. 影山衛司

    影山政府委員 実際問題として実益を考えたわけでございまして、商工会が成立いたしましてからまだ五年程度でございまして、力のあるところもあれば、社会保険加入の指導をしているところもあり、区々でございます。ところが、私ども基本的な指導方針といたしましては、社会保険への完全加入ということを目標にして強力に指導しておるわけでございますが、実際問題として、その間のつなぎ的な措置といたしまして、非常に気の毒な場合をほうっておくわけにいきませんので、やはり補助規定におきましても、一年間くらい引き続き人件費を見てあげるというような臨時措置をとっておるようなわけでございます。
  82. 田中武夫

    田中(武)委員 労働基準法違反ですね、中小企業庁の指導は。少なくとも力があるとかないとかいうことじゃなく、労働基準法は中小企業においても同じように適用せられるわけですよ。もしそうでないとするならば、経営者という立場、使用人という立場で労働災害保険法に入っておくべきです。そうするならば、公傷の場合何もそういうことをしなくったって、実力いかんにかかわらず、労災保険のめんどうを見られるわけです。したがって、大臣お聞きのように、いままで大臣の監督下にある中小企業庁の指導員に対する指導方針は、労働基準法その他労働法規違反であるという点を確認を願います。
  83. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 経営指導の中には労働条件に関する問題も含まれておるように私は存じておりまして、労働基準法の基本的な条件については承知されておるものと存じておりますので、あえて労働基準法違反を犯すというふうには私は解しがたいのでありますが、いまの労災保険の加入の問題につきましても任意加入になっておりまして、強制適用ではありません。したがって、任意加入の手続をとりまして労災保険に加入しておれば格別でございますが、しからざる場合には業務上の災害が発生した場合には労働基準法の災害補償条項に従いまして補償する、こういうふうになっておるわけであります。したがいまして、一年分云々ということはそのための財源確保としての意味であろう。ただ業務上災害がどのような場合にどう発生するか、ある程度の経験率を設定いたしませんと、補助をする等の場合に、金額が出てこないだろうと思います。したがって、いま影山長官が言われたのも、基準法上の災害補償をするとすれば、何らかの財源をふだんから準備しておかなければならぬ、そのメルクマールとして一年といったようなものをお考えになっておるということであるならば、財源確保のための一つの便宜的な措置であるわけでありまして、直ちにもって労働基準法違反になるという点についてはむしろ否定的ではなかろうかと考えます。
  84. 田中武夫

    田中(武)委員 役所間で少しカバーしたと思うのですが、その労災保険に入る義務云々については任意加入になっておる。これを私は言っておるのではない。労災保険というものは使用者のためにあるわけなんですよ。それがなくったって当然労働基準法上の補償をしなければならないわけです。それがなされていないということに対して、影山長官はそこまで財源的な実力を持たないのが多いから——こう言っておるのです。ならば、労災保険にお入りなさい、こう言っておるのです。労災保険に入っていないことがいけないとは言ってない。当然労基法上の災害の補償はすべきだ。ところが一年分云々というようなことであるならば、労働基準法からいって、それは間違いである。もしそういう指導をしておられるとするならば、あなたは財源確保としてというようなことを言っておるが、そういう指導をしておられるなら明らかに中小企業庁は労働基準法違反の指導をしておる。だからここで別にあなたに中小企業庁長官を告発せよとは言っていないのですよ。しかし、間違っておることは認めなさい、あなた。言いのがれしたってしょうがないでしょう、ここでは。
  85. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 間違いとか、言いのがれとかいうことはさらさらありません。業務上の災害が発生いたしまして法定の補償を行なわれなければ違反が生ずるのでありまして、業務上の災害が発生する以前に財源として幾ら準備しておくかということは、これは便宜の問題でございまして、法律上の問題ではございません。私ども、業務上の災害が発生いたしまして補償をしなかったということでありますれば、労働基準法違反といたしまして補償費を支払わしめるということになりますが、財源を一年間分準備するというようなことは、業務上の災害が発生しない限りにおきましては違反問題を生ずる余地はないわけであります。私どもはそういうふうに考えております。
  86. 田中武夫

    田中(武)委員 そうじゃない、財源確保じゃないのだ。現に十カ月分を支払うようにいたしておりますと、こう言っておるのでしょう。その十カ月分の支払いということ自体が労基法の労災からいえば違うと言っておるのです。財源確保じゃない。気の毒だから十カ月分を支払うようにしていますと、こう答えているじゃないですか。もうこれ以上追及はしません。中小企業庁長官は労働法に詳しいかどうか知りませんからあまり追及しませんが、すなおにあなた認めなさい。私は、実は労働法のほうが得意なんですよ。だからもしおやりになるなら幾らでもやりましょう。もうあなたのほうが誤っておったというか、不注意であったということを認めなさい。そうでなければ幾らでも論議を発展させます。労働法は私は得意中の得意なんですから。
  87. 影山衛司

    影山政府委員 先ほど申し上げましたように、私どもの社会保険関係の指導も不十分であったと思いますので、労働省ともよく相談いたしまして遺憾なきを期したいと思います。
  88. 田中武夫

    田中(武)委員 大臣いいですね。——そうすると、このアンケートを求めたときに、先ほども言ったように、職場においては管理者が寄って、こういうように回答しろ、こういう稟議を経なければいけないということをやった。そこである地域においては、それは一ところには数名あるいは一人か二人しかいない、その一つの地域、何とか地区で夜おそくひそかに寄ってこの回答を書きましたという手紙もあるわけなんです。そこで先ほど来、私が労働基準法九条及び労働組合法三条の労働者かと聞いたことは、当然団結権——直ちに私は指導員が横の労働組合をつくれとは言わないとしても、そういう団結権、団体行動権、団体交渉権がある、間違いなくあるのですよ。そのことについてはお認めになりますか。今日までそういうことを無視した管理が、ことにいなかにおいては行なわれておる。そういうことについてどう考え、今後どう指導しようと考えられておりますか。
  89. 影山衛司

    影山政府委員 そういう事実のありましたことがはっきりしましたならば、今後ともよく指導をしていきたいと思います。管理者のほうとしましてはできるだけぼろを出したくないというようなことで圧力を加えたのだろうと思いますけれども、団結権等々の関係はまた別といたしまして、当不当の問題といたしまして今後ともそういうことのないように指導いたしたいと思っております。
  90. 田中武夫

    田中(武)委員 これ以上深追いはしませんけれども、いま申しましたように、これは当然基本権なんです。それも押えるような監督が小さなところで実際行なわれておるわけです。だからそういうことのないような指導をひとつ十分やってもらいたい。大臣の決意をお伺いします。
  91. 三木武夫

    三木国務大臣 そういう指導を今後行なうようにいたします。
  92. 田中武夫

    田中(武)委員 どうもけんかにならないですね。  そこで集約して申し上げますが、指導員がいろいろ自分たちの問題あるいは商工会、商工会議所の問題等について、まだたくさんの意見を述べております。そのうちの一、二を申し上げますと、自分たちは中小企業のよりよき相談相手となりたいということで、非会員も同じように指導していきたい、あるいはその非会員に、会員になるように勧告する、ところが、たまたま非会員の相談に応じて金融のあっせんをしたところが、ものすごくおこられた、そういう事実の訴えもあるのです。それから商工会議所あるいは商工会の役員の選挙についても、公職選挙法によるとは言わなくても、公職選挙に準ずるような公平な選挙にしてもらいたいという訴え、あるいは先ほどちょっと問題にあげましたが、農業関係については町村でもやはり相当な補助等をやっておるようなんです。ところが商工会あるいは商工会議——町村ですからむしろ商工会でしょうね、これについてはそういう確固たる裏づけがないので、そういうことについて予算的といいますか、法的、あるいは条例といいますか、これは自治省の関係にもなりますが、そういう裏づけをしてもらいたい。共済制度をはっきりしてほしいとか、あるいは身分をはっきりしてくれとか、いろいろありますが、いま言った商工会、商工会議所の運営の問題についても訴えがあるわけなんです。三点ばかりいまあげましたが、会員だけじゃなしに非会員もめんどうを見たいが、やっておこられたという問題、それから役員の選挙ももっと公正にやるように指導してもらいたい、そうでなかったらボス支配があって、そのボスの言いなりにわれわれは遺憾ながら従わざるを得ないのだ、こういう問題、それから町村の補助について、これは通産省段階ではっきり言えないと思いますが、もっと裏づけのあるものにしてもらいたい、これらの点についてひとつお伺いします。
  93. 影山衛司

    影山政府委員 経営指導員は、商工会の会員であろうと会員でなかろうと全部公平に指導すべきものであると思います。ただ、商工会の会費がわずか年額七百円ぐらいでございますので、できるだけ全部会員にしていくという方向で指導したいと思っております。  それから役員選挙を公正にすべきであるという御意見でございますが、会長も役員も、小規模事業者の団体であり指導団体であるという商工会の使命に適した人を選ぶわけでございますので、そういうふうに指導いたしております。  それから市町村の商工会に対する補助でございますが、現在におきましても大体できるだけ補助をしていくようにという方向で指導いたしておりまして、商工会全体の経費のうちで平均しまして約二〇%が市町村の補助ということになっておりますが、それも増加をいたしていくように指導いたしていきたいと考えております。
  94. 田中武夫

    田中(武)委員 会員以外の指導をやってものすごくおこられて、お前のような指導員を養っておいても役に立たないと言われたとか、そういう事実をあげておる。それを読み上げてもいいのですが、何ならあとでまた見せます。それと同時に、会費が安い、その安い会費が一体何に使われておるかというと、総会における弁当代とか記念品代になっておるのだ、そういう訴えもあるのです。これはこういう席上でなく、何ならあなたに全部ぶちまけて見せてもいいと思うのです。まあときには大臣にも私、直接こういう問題を持ってお願いに行きます。長官とも話し合います。そういうことで、指導員問題は一応この程度で保留しておきます。まだまだあるのですが、あとはあまり公に読み上げると困るところが出てくるわけなんです。そこでそういうおとなの処置をとります。  それではあと一つだけお伺いします。これは大蔵省関係ですが、御承知のように地震保険法というものができましたね。その第二条、ここで申し上げるのはどうかと思うのだが、第二条の末尾のほうに「他の法律に基づき火災に係る共済事業を行なう法人で大蔵大臣の指定するもの」こういうのがある。これは「大蔵大臣の指定」ですからここでは問題にならぬと思うのですが、「他の法律に基づき火災に係る共済事業」ということであるならば、中小企業等協同組合法による火災共済も含まれる。それを大蔵大臣が指定するかどうかは通産大臣と大蔵大臣との間で話し合ってもらわなければならぬ。とにもかくにも昭和三十四年の団体法改正の際に火災共済組合が認められた。そのときは火災ということで、たとえば一口百五十万円とかあるいは百分の十五ですか、という制限は火災だけあるのだが、その後いろいろな経済関係の行き過ぎあるいは貨幣価値の変動といいますか、そういう点から中小企業等協同組合法による火災共済組合に対して火災だけではなく他のもの、傷害、あるいは地震等、火災に限定せず保険事故を広げる必要があるのではないか。同時に百五十万円という限度はとる必要があるのではないか。百分の十五とかいうのは、それだけでいいのではないかと思うのです。その他組織の変更等々についてまた機会を見て火災共済の問題をプロパーに取り扱いたいと思いますが、三十四年に団体法の成立と同時に火災共済ができてからすでに数年を経て経済情勢、中小企業の状態も変わってきておる。そこで火災共済を単なる火災だけにせず、今度地震保険法もできたのですから、そういうところまでこの窓口を広げるような、あるいは金額を百五十万円というようなところで押えない、そういう制限を撤廃して、一方における百分の十五という再保険の契約高を押えるということだけで、そういう改正等も必要だと思うのでありますが、こういうことをひっくるめて一言でけっこうですが、大臣あるいは中小企業庁長官からお答えを願います。
  95. 三木武夫

    三木国務大臣 どうも中小企業の事故発生がいろいろ多様化してまいりましたから、地震ばかりでなしにそういうもの全体をひっくるめて、いま中小企業政策審議会の組織小委員会でもうすでに検討を始めておるのです。そういうことの結論を待ちたいと思います。
  96. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは中小企業政策審議会で十分に検討に入っておるというなら、できるだけ早くまとめていただいて窓口を開いていく、こういうことで、それじゃきょうはこの程度にいたしましょう。
  97. 天野公義

    天野委員長 次会は来たる十四日火曜日午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十四分散会