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1966-03-08 第51回国会 衆議院 商工委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年三月八日(火曜日)    午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 天野 公義君    理事 小川 平二君 理事 河本 敏夫君    理事 田中 榮一君 理事 板川 正吾君    理事 中村 重光君       内田 常雄君    小笠 公韶君       小沢 辰男君    神田  博君      小宮山重四郎君    田中 六助君       中村 幸八君    二階堂 進君       三原 朝雄君  早稻田柳右エ門君       石野 久男君    沢田 政治君       島口重次郎君    田原 春次君       山崎 始男君    栗山 礼行君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     北島 武雄君         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局長)  竹中喜満太君         通商産業政務次         官       進藤 一馬君         通商産業事務官         (大臣官房長事         務代理)    吉光  久君         通商産業事務官         (重工業局長) 川出 千速君         通商産業事務官         (軽工業局長) 伊藤 三郎君         中小企業庁長官 山本 重信君         中小企業庁次長 影山 衛司君  委員外出席者         総理府事務官         (経済企画庁国         民生活局参事         官)      矢野 智雄君     ――――――――――――― 三月七日  昭和四十一年度中国貿易展覧会の北九州市開催  に関する陳情書外三件  (第一七〇号)  インドネシア向輸出保険停止に対する緊急措置  に関する陳情書  (第二一四号) は本委員会参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  私的独占禁止及び公正取引確保に関する法  律の一部を改正する法律案内閣提出第三二号)      ――――◇―――――
  2. 天野公義

    天野委員長 これより会議を開きます。  内閣提出私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。中村重光君。
  3. 中村重光

    中村(重)委員 公取委員長の御見解をただしたいと思いますが、御承知のとおり、ことしは合併の年だといわれております。昨年は不況カルテルというものがきわめて活発に行なわれたということばが適当かどうかわかりませんが、相当な不況カルテルが行なわれた。ことしはそういうことで合併集中の年であるといわれております。  そこで考えてみなければならないことは、企業動向というものはどういう方向にあるかというと、生産調整の域を越えて、そこで企業合併であるとか、あるいは企業提携あるいはグループ化、それから企業自主的判断というものもありましょうけれども、主として政府が積極的な指導を行なって、そうした合併あるいは提携というものが行なわれておる、こう思うわけです。そのことで、問題の勧告操短等に対しましても、政府公取見解というものは同一ではないというような形も実はあらわれておるわけです。そうした企業合併の年といわれるこの段階において公取はどういう態度で対処しようとしておられるのか、基本的な方針をひとつこの際伺っておきたいと思います。
  4. 北島武雄

    北島政府委員 昭和四十一年は企業合併の年であろうというような話がだいぶ出ております。ただ件数といたしましては、どういうことになりましょうか、昭和三十八年度が九百九十七件で、約千件、それから昭和三十九年度が八百六十四件、それで四十年度は大体三十九年度と同程度であろうと見込まれております。これが四十一年度になってどうなるかという問題でありますが、あるいは件数としてはそう大きな伸びはないかもしれませんけれども、この一、二年とまっておりました比較的規模の大きい企業合併というものが行なわれるのじゃないか、こういう予測がいたされます。その場合に公正取引委員会としてはどういう態度をとるかという問題でございますが、私どもは常に申しておるのですが、企業合併というのを決して否定するものではない。たとえば不況カルテルの認可をします際にも、構造的に欠陥のあるものについては、できるだけ早く構造を直してください、そうしないといつまでも不況カルテルが長続きしますからということを申しておりますから、それはやはり業界の再編成ということを認めるという意味ではございます。それからまた中小企業経営規模を拡大する、そういうための合併の必要のあることもありましょう。それからまたいわゆる国際競争力を強化するために合併するということの必要なこともあろうと思います。しかし合併というものは、あくまでもやはり企業の自主的な判断でやるべきであるという感じがいたします。もちろんこれをリードする、官庁として指導することは、これは御指摘にもあったけれども、あくまでも最後の責任企業自体判断して合併すべきである。しかも合併というのは何でもかんでもメリットがあるわけではない。合併に伴うデメリットというものもあるわけですから、企業自体においてそういう合併メリット合併によるデメリットというものをよく判断して、最終的にはやはり企業判断すべきである。その場合に合併の必要のあることも多かろうと一応考えます。  ただ合併が進みまして私ども最もおそれておりますのは、結局寡占化が進みまして、独占禁止法第十五条で禁止しておりますところの一定取引分野における競争を実質的に制限することにならないか、こういうことになることを一番おそれているわけであります。もちろん直接そういうふうなことになる合併独禁法禁止いたしております。そういう合併は私どものほうで認めないわけであります。ただ、だんだん寡占的状態になってくるということについて、現在の規定では、それを禁止する規定はないわけです。ないわけですが、寡占状態になりますと、えてして独禁法上問題になる事態も起こりやすい。価格協定も起こりやすければ、あるいはまた管理価格というような問題もある、そういう点もあるので、公取としましては、そういう状態については厳重に監視しなければならぬ、こういう感じでございます。
  5. 中村重光

    中村(重)委員 公取考え方としては一応わかるわけです。しかし具体的な問題になってくるとなかなかむずかしい。そこで問題は、公取の基本的な姿勢というものは、やはり独占禁止政策、そのことを十分踏まえて具体的な問題に対処していかなければならぬと思うわけです。それで再編成ということは必要であると思う、こういうことですね。これは再編成動向ということをどう評価していくかというようなことになってくるのですが、必ずしも企業合併がそのまま国際競争力に結びつくものだということは言えない。不況のてこ入れとして企業合併集中というものは、いま積極的に行なわれておるわけです。ところが景気の底入れといったような形が出てくる、不況を完全克服していないけれども不況、というものが一応克服されるという見通しが立ったというような形になってまいりますと、いわゆる不況をてことして進められている企業合併というものが、一応そこでダウンするというような形が出てこないとは言えない。そういうことで政府は必ずしも不況であるから合併をするということよりも、国際競争力を強化していくという形で積極的な指導が行なわれておるだろうと私は思う。しかし国際競争力を強化するからということで企業合併をどんどん進めていく、そういう場合に公取がこれはやむを得ないことだという形で進めてくるということになってくると、いわゆる独占禁止政策というものとぶつかってくるという形が必ず出てくる、私はこう思うわけです。そういったような関係から、従来公取が多数の企業合併というものを認めてきた。それがどういう結果を生んでおるのか。そのことを十分実績を見きわめながら企業合併の可否を公取立場からはきめていかなければならないのではなかろうか、こう思うわけです。従来、三菱重工合併が行なわれ、その他いま委員長からお答えがございましたような多数の合併が行なわれておる。具体的な問題としていままで公取が認めてきたいわゆる企業合併というものが、その方向一つの成果としてあらわれておるのかどうか、そこらあたり——これは具体的なすべての例を伺うわけにはまいりませんが、二、三でもけっこうでありますが、三菱重工合併その他公取として認めてこられた二、三の合併実績というものを伺うことができれば参考になると思うのですが、どうなんですか。
  6. 北島武雄

    北島政府委員 合併実績、どういう場合に合併を認めたかという御趣旨のように解釈してお答えしてよろしゅうございますか。——合併はあくまでも、結局公正取引委員会といたしましては独禁法十五条が基準になるわけです。そのために企業合理化ができるかどうかということは、私どもとしては実際直接はタッチすることができないわけで、当事者が合併をしたいと言ってきて届け出がありました場合に、それがはたして「一定取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合」であるか、あるいはまた「不公正な取引方法によるものである場合」であるのか、この二点についての調査公正取引委員会としては限られるわけです。その点まず御了承いただきたいと思います。その二点に該当さえしなければ独占禁止法では合併集中は許されるわけであります。その他私どもといたしましては、いろいろ外部から見まして、この合併ははたしてメリットがそう多い合併かどうかということを疑いを持つ場合もあります。しかし、それについて私どもでどうこう言うことはできない、こう思っております。  そこで、「一定取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合」、すなわち当該業界を支配するような状態になるかどうかという基準でございますが、これにつきましては大体市場占拠率合併によってシェアがどのくらいになるかということがまず一つの問題になるわけであります。その点については二五%から三〇%ぐらいのところが一応の危険点であろう。何も明らかな線ではございません。一応その線になると問題が多いという考え方でございます。ただし、もちろんそれ以下のシェアでありましても、他の業界なり業者零細業者ばかりであって、そのためにその合併によって、いま言った程度にならないものでも、「競争を実質的に制限することとなる場合」もあり得るわけです。そういった場合には、シェアがその程度にならなくても、これは独禁法に触れるわけであります。一方また、シェアがその程度以上、二五%とか三〇%以上になりましても、競争会社状態がまずございます。一体他にどういう競争会社があるか、それからまた当該合併会社が取引する相手方はどういうものであるか、それから当該業界というのは新規の企業が入りやすい業界であるかどうか、あるいは代替品との関係も考えなければならぬ。それからまた輸入品との競争という点も頭に入れまして、総合的な判断をいたしまして、その合併が「一定取引分野における競争を実質的に制限することとなる」かどうかという判断を下すことになるわけであります。これにつきましては、従来問題になりましたのは、ただいまお話しの三菱重工業、この場合には公聴会にまでかけまして各界の意見を聴取し、結局これは、他に重要な力のある競争相手がおるというようなこと、それから注文生産であって相当限られているというようなことなど総合的に判断して、「一定取引分野における競争を実質的に制限すること」にはならないと解釈したわけであります。  そのほかの例といたしましては、たとえば雪印乳業とクローバー乳業との合併、それから昭和三十二、三年ごろの、製紙メーカーの使う抄紙機に用いる金網を生産しておる金網会社の二つの合併問題、これは非常にシェアが大きかったわけですが、相手方が非常に強大な製紙メーカーであるために金網会社独占的な力をふるうことができないというふうに解釈してオーケーを与えたわけであります。そんなふうなあらゆる基準を考えまして、そうして総合的に判断して、はたしてその合併が「一定取引分野における競争を実質的に制限する」かどうかということを判断しておるわけでございます。
  7. 中村重光

    中村(重)委員 私はこの三菱重工合併のときも、渡邊委員長のときだったと思うのですが、合併を認めるという場合は積極的な意義を見出さなければいけない。ただ、一つ占拠率というもの、いま委員長お答えになったような一つ基準というものがあるわけですね。それを出ない場合、そういうことではなくて、この合併は何を目的に合併をしようとしておるか、そこでその合併によってもたらされる影響というものはどういうことになるであろうか、それはただ単に市場占拠率の問題ということだけでなくて、やはりそのことが系列化されている中小企業に対し、あるいは労働者に、あるいはまた地域社会の上にどういう影響をもたらしてくるのであるか、そういったようなあらゆる角度から検討して合併というものを認めていくという態度でなければならないのではなかろうか、そういうことを主張したわけであります。いままで幾多の合併のケースがあり、それがどういう方向に進められておるかということを私どもは見ておるのですが、必ずしもその合併企業体質改善に大きく役立ったということは考えられない。しいて言うならば、労働者に対するところの犠牲を強く要求してくる、そういうことが非常に表面にあらわれておるというような感じをどうしても見落とすことができない、こう思っておるのです。  そこで、そういったいろいろな問題をここで取り上げてみますと非常に参考になる点も出てこようかと思うのですが、時間の関係もございますから、きょうはそういったことには触れません。ただ、従来の合併というものは、大企業間の、三菱重工のような、ただいま私が申し上げましたような形の合併という点もありましょうが、そうでなくて、主として不況の中で経営が非常に困難になったというような弱い企業を大企業が吸収合併するといった形が非常に多かったと思う。ところが、最近の合併には大規模企業間の合併というものが多く出てきているわけですね。大体そういう方向にいまあるようです。そうなってくると、先ほど委員長お答えになりましたような寡占体制というものになることはどうしても避けられないと思うのです。寡占体制になることに対しましては、私ども管理価格の問題その他によってその弊害というものを強く主張しておるわけです。ところが通産省は、この寡占体制というものは健全な競争力をむしろ強化することになるのだ、こういう見解をとっておるように見受けております。そこで公取判断ですが、公取はこの寡占体制になるということは健全な競争力をむしろ強めてくるというように考えておられるのか、まずこの点に対するあなたの考え方というものを聞かしていただきたい。
  8. 北島武雄

    北島政府委員 これはたいへんむずかしい問題でございます。公正取引委員会といたしましては、現在の合併に対する態度といたしましては、独占禁止法十五条あるのみでございます。あくまでもそれが基準になるわけでございまして、先ほどお話のございました、合併による国民経済それから地域経済への影響、それから労働問題に対する影響など、いろいろ総合的に考えたらどうかというお話でございますが、これは私どものほうの独占禁止法立場からいたしますと、らち外になる場合が多いわけでございます。その点は御了承いただきたいと思います。あくまでもその合併独占になるかどうか、独占になるおそれがあるかどうか、こういうことでございます。お話のように、だんだん合併が進んでまいりますと寡占体制になっていく傾向にあることは事実でございます。これに対しては学者の間でもいろいろ意見がございます。シュンペーター氏などは独占寡占を呼ぶという説もあります。学説としてはいろいろあろうと思います。かえってまた寡占のほうが競争が激しいんだという説をとる方もあります。それに対して公正取引委員会としては、私、まだここでちょっと申し上げにくいのでありますが、しかし、いわば寡占状態になりますと、企業界における競争というものは減殺されるおそれは多分にあるのじゃないか、一方またその反面むだな競争も行なわれやすい、これはごらんのとおりであります。たとえばビール関係あたりは猛烈な競争をやっております。これは、いわば寡占があったがためにむだな競争も中にはあり得る。しかしその中に有効な競争もあるのじゃないかという説もあるわけです。この点については、学者その他識者の御判断にまかせるほかないわけでありますが、えてしてやはり競争条件に問題を起こすことが多いのではないかという感じがいたします。管理価格の問題などはやはり寡占状態から出てくるわけでありますが、寡占になれば勢い管理価格というものが起こりやすい。それはやはり競争条件にどこか欠けたところがあるのじゃないだろうか、こういうふうに私ども判断いたしておるわけであります。
  9. 中村重光

    中村(重)委員 委員長から先ほどお答えがありましたように、独禁法十五条というものがあるわけですね。それには、一定取引分野競争を実質的に制限することになる場合は、これは認めてはならない、こういうことになろうかと思います。しかし寡占体制というようなものが確かに管理価格を生み出すというような事実があるということは、委員長いまお認めになっておる、しかしそうでない場合もある、こういうことでございますけれども、どうしても寡占体制になってくると、必然的に管理体制を生み出すことは、私は避けられないと思うのです。したがって、公取としては合併を認めてきたというならば、その合併管理体制を生み出していないかどうかということを、やはり認めたという責任もあるわけなんですから、それを十分監視していくという態度がなければならぬと私は思うのです。私がいま申し上げた地域経済の問題であるとか、あるいは中小企業その他国民全般関係するいろんな影響というものが出ておるということを指摘をいたしましたが、まあ公取としてらち外になるような点もある、こういうことなんです。私はそれはそれなりに認めます。しかし、少なくとも現在の経済情勢下における公取に対する期待も非常に大きいと思う。したがってまた、公取自体といたしましても十分慎重な配慮というものがなければならぬ。合併を認める場合、あるいはこれを認めない場合、そのいずれの場合もそうだと思うのであります。したがって、先ほど申し上げましたように、これを認めた場合において、管理体制というものが非常に強められてきているのではないかということで、これを監視することにならなければならないと思う。しかし合併は認められた、やはり管理体制一つ弊害というものも出ておると思うのでありますけれども、今日まで公取がそういう問題にどう対処してきたのか、私どもはそれをつまびらかではありませんけれども、いつも私どもが主張する管理価格という問題に対しまして、公取指摘した事例というのはわりあいに少ないのではないか。それはどういうところに原因があるのか。人的な問題もあるでありましょうし、あるいはそういう管理価格といったような問題に対しまして、その事実を発見する、これに接近するといったようなかまえというのか、そういったところが欠けているという点もあるのではなかろうかと思うのであります。だからして、実際問題として公取合併を認めてきた、一つ管理体制というものがどうしても強化されて、管理価格というものが事実上出ておるのであろうけれども、それが比較的に発見されないというような原因はどこらにあるのか。実際公取としていろいろな問題にぶつかっておろうと思いますから、そういう具体的な点をひとつこの際聞かしていただきたいと思います。
  10. 北島武雄

    北島政府委員 管理価格調査は、実は最近しておらないのでありますが、これは全く手不足関係でございます。手不足のためにできないということは非常に申しわけないことでございます。三十八年度以降公正取引委員会といたしまして、いわゆる管理価格調査を実施いたしまして、十二品目について予備的な調査を行ない、そのうち一品目については精密調査を完了したわけですが、たまたまそこへもってきて、昨年からの不況でもって不況カルテル事務が急にふえてまいりました。それで管理価格調査を担当しておる課が不況カルテル事務に忙殺されまして、実は管理価格調査をする余裕がなかったというのが実情でございます。その点につきましては、私どもまことに反省しておるわけでありまして、来年度においてはぜひひとつ管理価格調査を充実するために、人を相当程度ふやしたいということで予算要求いたしまして、大体来年度五人程度あらためて管理価格調査のために向けることができる見込みでございます。こういう体制を整えまして、一方合併につきましては、独禁法十五条の要件に触れる、禁止要件に触れる場合は別でございますが、十五条に触れない場合は、合併はやむを得ないということになるわけでございますが、その場合に、寡占的な傾向になっていくときに、この管理価格調査をひとつ十分やっていき、その面からの牽制をやっていきたい。寡占体制になりますと、えてして業者間の協調が行なわれやすい。それから大きな力を背景にして、市場価格を支配しがちのような傾向が出てまいりますから、そういう点について実態を十分調査してチェックいたしたい。そうしてそれがもし価格協定などの方法によるならばこれは独禁法違反ではないか。それからあるいはまた、末端の販売店に対して、再販売価格維持行為などをしいるようなことがあれば、これはまた取り締まっていく、そういうような面で十分管理価格実態調査していく必要があろうかと思います。
  11. 中村重光

    中村(重)委員 あなたが委員長になられて取り組まれて、いろいろと感じられるところもあるんじゃなかろうか。かつて新聞販売事件というのが相当期待された。ところが、うやむやになってしまったというような事例も実はあるわけであります。それで、審査方法とか立証方法というような点にも私は問題があるのではないかと思う。必ずしも人が少ないということばかりに、そういう業者間協定価格協定というものを指摘する機会がなかったということは言えないのではないかと思う。やはりそうした従来のいき方というものを、何か検討を加えて、新機軸を出すということになりますか、そういうことがなければならないのではないかということを私は感じるのです。いろいろと検討しておられると思うのですが、従来のあり方がどうであったか、この重要な段階にあたって、公取機構改革あるいは人をふやすという問題と関連をして、これから先の取り組むかまえというものがなければならぬと思うのです。いまの御答弁の点でなくて、あなたが委員長になられて、従来の、いま私が触れました審査方法がどういうあり方であったか、あるいは立証方法というところに問題はなかったのかどうか、そこらあたりをざっくばらんにひとつこの際お聞かせ願って、これから先の取り組むかまえをひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  12. 北島武雄

    北島政府委員 審査方法には確かに改良を加える点が多かろうと思います。私もしろうとのことでよくわかりませんけれども……。ただ、独禁法価格協定証拠がつかめない場合が往々にあるわけであります。私も税金の査察を昔いたしましたが、脱税のほうでございますと、これは必ず何か証拠があるわけであります。脱税する人は。ところが、価格協定違反協定ならば電話一つでもできるということ、電話カルテル、それから、朝めし会でもって、ある程度相談してきめるということがある。速記録はない。そんな場合が多いのでございまして、私ども公取に参りましてから、審査方法というのはなかなかむずかしいな、証拠立証方法に相当むずかしい点があるとともに、何かもっとくふうしたらいいんじゃないのか、こういう感じがするわけであります。もちろん独禁法違反として問題にする場合には証拠がなければ、これは裁判所へいっても負けますので、立証方法はがっちり固めなければなりません。それから独禁法違反についての証拠について非常にむずかしい点があるというふうに私は感じるので、この点はさらにみなと相談して、ベテランを集め、それから私どももしろうとでございますが、しろうとなりにまた考え方もあるわけですから、ひとつ大いに知恵を持ち寄って、審査方法について改良を加えていきたい、こう考えておるわけであります。率直に申しまして私は、審査方法については相当問題があるという感じがいたしまして、今後大いに改善方法について検討いたしたいと思っております。
  13. 中村重光

    中村(重)委員 集排法、過度経済力集中排除法という法律があったわけですね。この法律によって企業が分割したものがある。ところが、これがまた合併をしておるものもあるわけですが、この集中排除法によって分割をされ、またこれがもとに戻ったといいますか、合併をされた企業と残っておるものもあるわけですか、その点を事務当局からでもけっこうですがお聞かせ願いたい。
  14. 北島武雄

    北島政府委員 事務局長から御説明いたします。
  15. 竹中喜満太

    ○竹中(喜)政府委員 過度経済力集中排除法で分割されました会社は、古いことですから、私、多少記憶に間違いがあるかもしれませんけれども、王子製紙株式会社、日本製鉄株式会社、三菱重工業株式会社、東洋製罐株式会社、それから北海道酪農株式会社、帝国繊維株式会社、それから大日本ビール株式会社などであると思いますが、そのうち、その後合併しました会社は、北海道酪農株式会社が、雪印乳業とクローバー乳業の二社になりましが、これが合併いたしましていま雪印乳業になっております。それから、帝国繊維株式会社が、帝国製麻株式会社、中央繊維株式会社及び東邦レーヨン株式会社に分割されましたが、そのうちの帝国製麻と中央繊維が合併をいたしまして帝国繊維株式会社となっております。それから、先ほどお話がありました三菱重工合併いたしまして三菱重工株式会社になっております。
  16. 中村重光

    中村(重)委員 この残った企業合併を申請してきておる企業といいますか、あるいはそういう動きのある企業はありませんか。
  17. 竹中喜満太

    ○竹中(喜)政府委員 ただいまございますけれども、当事者間でまだ外へ発表いたしておりませんようで、私のほうにも正式の書類が出ておりませんで、内々話を聞いておりますので、ここで名前を申し上げるのはちょっといかがかと思います。
  18. 中村重光

    中村(重)委員 委員長のほうの考え方を聞かしていただきたいと思うのですが、この集排法も、これはいまお答えがございましたように、分割をされた。ところが、もうすでにもとに戻った企業、それからまた、合併をしようというような動きもある、名前は言えない、こういうことでございますが、しいてそれをお尋ねしようとは思いません。独禁法も、大きな風穴をあけろというような、むしろこれを骨抜きにするような動きもある、こういうことで、もうどんどんもとに戻りつつあるわけですね。ところが、この集中排除法によって分割された企業というものも、これはあなたのほうで出しておられる資料を見ましても、相当なまだ集中力というものがあるわけですね。だからして、これをどんどんまだ認めていくということになっていくと、それらに非常な弊害というものが私は出てくると思う。だからして、この集排法というものに対する委員長考え方も聞かしていただきたいと思うのですが、こういう法律はまだ必要があるとお考えになっておるのか、もうそういう段階でないというようにお考えになっておられるのか。分割した企業がいまお答えがございましたように、そういう動きがあるということになってくると、具体的に私は出てくるであろう。そういう場合に、どういうかまえでこれに対処しようとお考えになっておられるのか、そこいらをひとつお聞かせ願いたいと思います。
  19. 北島武雄

    北島政府委員 これは集中排除法によりまして分割された会社が再び合併するというような場合には、特に注意をする必要があろうかと思いますが、要は結局、独占禁止法十五条の規定に触れるか触れないかということが私どもの唯一の基準でございます。かりにそれに該当しないことになれば、これはどうも私どもとしてはその合併についてノーというわけにはいかないのであります。ただ、その場合、寡占状態になる。それについてはまた別の見地から、管理価格調査なりあるいは常に監視を続けまして、独禁法違反の事実を起こすことがないかどうか、こういう点については十分注意しなければならぬとは思いますけれども、ただいまの独占にならないような合併、すなわち、独占禁止法十五条によって「一定取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合」以外の合併は、これは私どもとしてはオーケーしなければならない、こう思っております。
  20. 中村重光

    中村(重)委員 形式的なことになってくるといまあなたがお答えになったことになるわけですね。しかし、だから私は先ほど申し上げたように、従来この合併を認めてきた。その認めたことが実際どういうような影響というものがもたらされておるかというようなことを十分勘案しながら、やはりこの合併ということについては、きびしくもするしゆるやかにもするというような形にならなければならぬ。だからして、その点はあなたのほうに課せられた責任というものはきわめて重大である、こう私は申し上げておるわけです。したがって、集中排除法の問題にいたしましても、それはそれなりに必要であったからこの法律が制定され、それによって分割というものが行なわれてきた。だからして、これが事実上、法律はあるけれども、いまあなたがお答えになったような形でどんどんとまたもとに戻るという形になってくると、またそれなりの影響というものが出てくると思う。だからして、十分慎重な態度をもって取り組んでもらわなければならない、こう私は申し上げておるわけです。  この問題に対しましてもいろいろと議論もしてみたいと思いますけれども、時間の関係もありますから、ひとつ具体的な問題をお尋ねしたいと思う。  公取は二月一日であったと思うのですが、セメント業界を一斉に臨検され、そうして本店であるとかあるいは営業所というものの立ち入り検査をおやりになったようでございますが、おそらくこの審判が行なわれておるのではないかと思うのですが、現在の進行状態はどこまで進んでおるのか、まずその経過、状況をちょっとお聞かせ願いたい。
  21. 北島武雄

    北島政府委員 一月三十一日に審査開始いたしまして、二月二日、二月三日の両日、セメント協会、日本セメントの本社、あと約五十カ所を立ち入り検査いたしまして、証拠資料を領置いたしました。現在では参考人につきまして調査いたしております状況でございます。まだ審判までには至りません。おそらくなお若干の時日を要するかと思われます。調査が完了いたしましたその上で、また公正取引委員会としては態度をきめたいと思います。
  22. 中村重光

    中村(重)委員 それはメーカーだけですか。あるいは協会を対象にしておやりになっているのですか。
  23. 北島武雄

    北島政府委員 両方でございます。業者団体と業者両方調査いたします。
  24. 中村重光

    中村(重)委員 そうすると、あなたのほうではもちろん、いまこうした一斉臨検をやる、そうして審査に着手するということになってくると、相当な事前の調査なんというものも行なわれたのだろうと思うのですが、その影響というものがいかに大きいかということは、十分これはお考えになって取り組まれたわけでございますから、確信を持っておやりになっておることは間違いないと思うのですが、その点どうなんですか。
  25. 北島武雄

    北島政府委員 私ども独占禁止法違反の疑いの確信がなければ調査いたしません。
  26. 中村重光

    中村(重)委員 そこで通産省軽工業局長お見えですか。——あなたにお尋ねしますが、公取がセメント業界を一斉に立ち入り検査をやった。そしていまお答えがありましたようないわゆる事情聴取等が進められておる。この二月一日であったと思うのですが、私はテレビを見ておったところが、あなたの談話が出たんですね。そういう事実があるはずはないときっぱりあなたは——あなたの映像が出たけれども、そういうことを言われた。そして佐橋次官もこの公取のやった態度は納得できないと言ったというようなことを新聞で見たように記憶するのです。それであなたの考え方ですが、セメント業界に限ってそういうことをやるはずはない、こういうことをおっしゃられたあなたの真意はどこらあたりにあるんですか。まずその点をお聞かせ願いたい。
  27. 伊藤三郎

    ○伊藤政府委員 私は、実はそのテレビを見ておりませんので、どういうふうに私の言が伝わったのかわかりませんが、私は違反に対しまして、公取のほうで調査をされましたあと、通産省の記者クラブでセメント業界の実情をレクチュアしてもらいたいという話がありまして、そのときにいろいろ新聞記者の質問に答えたうちの一つをそういう報道をしたものと思いますが、そのときの記憶によりますと、通産省はそういう違反事実を知っておったのかという質問があったと思います。それに対しまして私が答えましたのは、そういう違反事実についてはわれわれのほうは承知をしていないということを答えたのでございまして、そういう違反があるはずはないというようなことを答えた記憶はございません。
  28. 中村重光

    中村(重)委員 まああなたはそういうようにお答えになったことはないと。ところが佐橋さんも、これは新聞に書いてある、公取のやっておる態度はどうも納得ができないということをですね。どうも、私は報道機関というものはそういう根拠もないことを報道するはずはないと思う。やはりあなたのほうでそういうようなことを受け取られるようなしゃべり方をされたのではないか、とこう思うのですね。少なくとも公取は、この経済界に重大な影響を及ぼすところの取り締まりに積極的に乗り出す、一斉臨検をするというからには、慎重な事前の調査というものがなされ、そうしてそれなりの事情聴取が行なわれる。あるいは審査、審判という形に私は入っていく、こう思うのです。ところが、通産省がどうもそうした公取の取り組む態度に対して批判的な考え方があるのではないかというように見受けられる。それがいまあなたは、はっきりそういう事実はあるはずはないと明確に言ったのではないとこう言っておられるのだけれども、やはりそういったような考え方というものがどうしても批判的な形でことばとして出てくるのではないかというように思う。現在あなたはどうお考えになっておるのですか。
  29. 伊藤三郎

    ○伊藤政府委員 セメントの独禁法違反の問題につきましては、現在公取調査中でございますので、その調査の結果にまつべきものであるというように考えております。
  30. 中村重光

    中村(重)委員 それから北島委員長は参議院の予算委員会かどこかでこの問題に対する質問があったとき、通産省の不満はこれは新聞のゴシップだというようにお答えになったということが伝えられておる。あなたのほんとうの考え方はどうなんですか、お気持ちは。
  31. 北島武雄

    北島政府委員 まあ私は新聞のゴシップというのはよくおもしろおかしく書かれますので、それをそのまま信用しておったらとんでもないことになる。ああいう場合ああいうお話のようなことがあるなら、私のほうにそういうお話があると思うが、私のほうには全然ございません、ああいうことを責任ある方がおっしゃったとは思えない、そういうふうに申し上げたわけであります。
  32. 中村重光

    中村(重)委員 次に再販価格の問題についてお尋ねしたいと思うのですが、最近公取は非常に積極的な態度をもって、ただいま私が幾つかの事例をあげましたような問題に対しましても積極的な取り組みをしておられる。また再販価格の問題に対しても消費者の大きな期待にこたえて、これまたある人は公取は非常に高姿勢に転じたと言う人もあるわけですが、熱意を持って取り組んでおられるように、まあそういう点で敬意を表しておるわけですが、そこで北島委員長がこの物価問題懇談会に御出席になって、必要があるならば単独法としてこの再販を考えるということを語っておられるようでございますが、現在はどういうお考え方ですか。
  33. 北島武雄

    北島政府委員 私はそういうようなことを物価懇談会で申し上げたことがないように思います。記憶としては、ございません。ただ再販売価格維持行為、実際行なわれている維持行為というものの実態をよく調査いたしまして、そうしてもし必要があるならば、これはあるいは法律改正ということもあり得るかもしれませんけれども、ただいまのところはそこまでは考えておらないわけであります。現在わが国の再販売価格維持契約の数が、ほかの国に比べまして非常に少ない、これはせめてもの幸いなわけであります。他の国に比べては非常に少ないのであります。ただ現在行なわれている、私どもで認めている商品について、はたしてそれが現在まで独禁法の認めておる条件に当てはまっているかどうかという点については、疑問のある商品もだいぶございます。指定した当時、認めた当時においては自由な競争が行なわれておったけれども、現在はその状態がどうかというようなことをもう一ぺん再検討する必要がある品目が多々ございます。それから品目の分類等についてもいろいろ問題がある。それからさらに実際に再販売価格維持行為が行なわれておる気配がある商品も相当ある。これについては実態をよく調査して、不公正な取引方法に該当するものについてはどしどし取り締まっていく、こういうように考えております。
  34. 中村重光

    中村(重)委員 なるほど再販売価格の指定というものはわずか九品目ですね。その中で三品目が取り消しの方針を決定なさったのだろうとこう思うのですが、外国、特に西ドイツなんかは非常に多いわけですね。その他欧米諸国は非常に再販売価格の指定も多いし、また規制も非常に強めつつある、こういうような情勢のようです。まあしかし、あなたも衆議院の大蔵委員会でも武藤君の質問に対してお答えになっておられる。大体やみ再販というものが二兆円くらいになるのじゃないかということを言っておられる。そうすると、いま指定している品目は九品目である、だけれどもやみ再販というものがあるのだ、こういうことになってくると、いまあなたがお答えになったように、いわゆる単独法というものが必要であるかどうかということについては、まあたいしたことはいまないのだからそこまで考えてない、こういうお答え。しかしやみ再販というものがあるということ自体がたいへん問題だと思う。いまの指定の申請があったということだけで、この再販価格の問題に対して取り組んでいく必要はないのであって、指定の申請はなされてはいない、いないけれども、事実上の再販の維持というもの、契約というものが実はなされておる。だから、これをどうするのか、どういうことでこれを取り締まっていったならばよろしいのかということ等について、私は真剣にお取り組みにならなければならないのではないか。そういうことで、いわゆる単独法というものが必要になってくることは、これは避けられない。むしろそういう形で取り組まれる必要があるのではないか、こう思う。だからあなたは、その物価問題懇談会の中において、必要であるならば単独法の制定も辞さないのだとお話しになっておるということが伝えられておるのですが、そういうことはないとあなたはおっしゃるのかどうか知りません。しかし、あるなしは別にして、こういう事態に臨んで、あなたとしてはどういう態度で取り組まれるのか、また、いま私の質問によってこれをどうするかということをお考えになるのではなくて、もう相当検討しておられるのではないかと思いますから、まずその点に対してお答えをこの際明らかにしていただきたい。
  35. 北島武雄

    北島政府委員 衆議院の大蔵委員会で武藤さんから御質問がございまして、小売価格九兆のうち二兆がやみ再販じゃないかというお話がありましたので、それはいささかオーバーと考えますと、私はお答えしております。ただ再販売価格維持行為が行なわれやすい品目というように考えてみると、商品の種類からいって、一兆六千億ぐらいありそうだ。それは現在行なっておるものも入れまして行なわれやすい商標——行なわれやすいと申しますのは、商標制度が発達しておって、そして品質が一様であることを容易に識別し得る商品、こういったものがその程度あるわけでございます。行なわれやすい、それが一兆六千億、その中で実際やみで行なわれているものも相当あろうと思われます。こういう点について、実態をよく調査してみて、それから私どもとしては態度をきめたい。何ぶんにも再販売価格維持契約について、現在担当しているのはたった二人なのでございます。まことに貧弱な陣容でございます。幸い来年度再販売価格維持契約を主として担当する課を一課創設いたしまして、さらに五人の新規増員をもちまして、この問題に真剣に取り組ませるつもりでございます。私自身もまた取り組むつもりでございます。  再販売価格維持行為で一番むずかしいのは、希望価格、推奨価格という、メーカーがこの程度で売ってもらいたいと言っておるが、その拘束はないといった場合のそれはどうするかという問題、その辺の実態が一番むずかしい。メーカーとしては別に拘束を加えてない、この程度で売ってもらいたい、その取り締まりをどうするかという問題があるわけでございます。これは欧州諸国でもだいぶ苦労をしているとは思いますけれども、そういう問題が確かにある。この問題はもっとひとつメスを入れていかないと、なかなか解決できない、そう感じております。
  36. 中村重光

    中村(重)委員 この再販価格の指定に対してのあなたの考え方をひとつ聞かしていただきたいと思うのですが、再販価格を指定をするということの目的というのは、やはり商標あるいは品質の保証、消費者に対するサービス、消費者の利益を守るということに、この制度の本来の目的があるだろう、こう思う。ところが九品目をあなたのほうで指定をしておられる。指定をしたけれども、一社しかなかったとか、あるいは事実上指定をしっぱなしということになって、これが活用されていないというようなことで、取り消しになっておられるということだろうと思うのですが、またこの指定を受けて、再販制度というものを活用するという向きに対しても、ほんとうに消費者の利益という形で再販指定というものを活用しておるのか、そうでなくて、むしろ価格を維持する、そして安くなる価格を下ざさえするといったようなこと、消費者の利益ということよりも企業自体の利益ということを中心にして、この再販制度というものを利用していこうというような傾向があるように見受けられるんですね。ですから、この再販制度というものは、その運用よろしきを得ないということになってくると、ある意味においては独占価格的な形になって、その制度自体のねらいであることとは逆の方向にこの制度が利用される懸念なしとしないというように思っておる。だからあなたの、外国はこうであるけれども、日本は非常に少ない、そしてやみ再販みたいなものが実はあるというような具体的な問題に対処して、これからも相当私は申請が行なわれるだろうと思うのですが、あなたはこれに対してどういう態度で臨もうとお考えになっておられるか、まずその点に対しての考え方を聞かせていただきたい。
  37. 北島武雄

    北島政府委員 これは再販売価格維持契約の本質いかんという問題になるわけですが、私はこれは消費者の利益のためよりも、むしろメーカーのためのもめだと思います。究極においては消費者のためになるというのは、これはむしろ私はおためごかしのような気がするのです。それは商標制度の発達に伴いまして、メーカーが直接自分でもって品質と価格について保証の責任を負う制度だというふうに考えております。売っているのは小売店が売っているのではなくて、メーカーが大きな力をもってその宣伝力と商標でもって売っておる。ですから価格が同じでないとぐあいが悪いということでございます。ただその間に、同様な商品の間に自由な競争が行なわれているならば、メーカー同士競争が行なわれておるならば、消費者の利益は害されることはないであろうという推定でやっている。自由な競争が行なわれている。そうすると、いたずらに再販の最後の価格もそう高くできないわけです。そういう点で、再販売価格維持契約が認められているわけであります。本質的には、結局それが消費者のためになるのだというこじつけではなくて、私はやはりメーカーの商標制度、のれんの尊重というものを目ざすものであって、しかも、こういう条件であるならば消費者の利益も害されないということであります。ただ現在の状況において、お前は、同じような指定申請が相当あるだろうが、それに対してどう対処するかということに対しては、私どもとしては、現在この指定を広めるというつもりはございません。再検討していって、むしろ縮小するようなかっこうへ持っていきたい、こういう考え方でおります。
  38. 中村重光

    中村(重)委員 森永とか、明治、雪印あるいは和光堂、これに対する再販価格維持行為が行なわれ、これに対しての審判をいまやっているのではないかと思うのですが、これらの経過、進行の状況をお聞かせ願いたい。
  39. 北島武雄

    北島政府委員 森永商事、明治商事につきましては、ともに昨年の十二月二十二日に勧告いたしましたが、この一月十四日に勧告を応諾しないという回答がありましたので、一月二十一日審判開始決定をいたしました。すでに明治、森永の二社につきましては、第一回の審判を二月二十二日にいたしました。これは冒頭陳述程度でございまして、あと第二回が、明治につきましては三月十日、森永商事につきましては三月十六日を予定しております。なお、和光堂につきましては、二月四日に勧告いたしまして、二月十九日になりまして勧告を応諾しないという回答がございました。二月二十二日に審判開始決定をいたしております。第一回の審判は三月中に行なう予定でございます。
  40. 中村重光

    中村(重)委員 この上位三社のシェアはどの程度になっておりますか。
  41. 北島武雄

    北島政府委員 ただいまちょっと確かな資料がございませんので、しっかりしたお答えをいたしかねますが、大体この三社で七、八〇%ではなかろうかという感じでございます。
  42. 中村重光

    中村(重)委員 私の調査では、大体明治と森永で七〇%程度、雪印が二〇%程度、大体上位三社で九〇%程度占拠率であろうと思っております。ところが、この乳業のメーカー全体から出ているのかどうかわかりませんが、再販の指定を行なうように要望書を提出しているということが伝えられておるのですが、そういう事実がありますか。
  43. 北島武雄

    北島政府委員 要望書が出ておるそうでございます。問題になりましてからあとで要望書が出たということであります。
  44. 中村重光

    中村(重)委員 先ほど再販指定というものを拡大する考え方はない、むしろこれを縮小しなければならない、こういうお答えであった。これに対しては、私は究極において消費者の利益というもの、私もそういう意味で申し上げたのですけれども、現在の再販指定というものが、実際はメーカーの利益、むしろ価格を維持するという方向で、本来の再販制度というものが生かされていないということで、慎重に取り組む必要があるということを指摘したわけです。同一な考え方もありましょうし、見解の違っている点も私はあると思うのですが、この三社が要望書を提出しておるということ、この再販指定についてどうお考えになっておられるか、まず御方針をひとつお聞かせいただきたい。
  45. 北島武雄

    北島政府委員 先ほどお答えいたしましたように、この問題に限らず、ただいまのところ新規指定をするつもりはございません。
  46. 中村重光

    中村(重)委員 そうなると、先ほど私が申し上げました武藤君の大蔵委員会での質問に対して、あなたは二兆円というのはオーバーであるというようにお答えになっておる。しかも武藤君は資料提出を求められて、公取としては、それは二兆円にはなっていないでしょうけれども、その資料をお出しになったのだろうと私は思うのです。それで完全にそうではないけれども、やみ再販というものが、そういう再販価格維持の方向に移行する可能性がある企業というものが相当あるということを、いまあなたはお認めになったわけです。そうなってくると、指定はしない、そこで事実上はそういう行為が行なわれている、これに対して、従来は二人くらいが再販価格のそういう調査に当たる職員であったのだろうと思うのですが、今度は一課を設ける、人員もふやす、こういうことで積極的な取り組みをなさるかまえはわかるのです。わかるのですが、これはあとで機構上の問題、あるいは今回の三十名の増員の問題に対しての御方針は伺うといたしましても、いまあなたのお答えの中でうかがわれる点では、まだ機構の面からいっても、人的構成の面からいっても、これじゃ非常に弱い、とうていそういったようなやみ再販というものを取り締まるということはなかなか言うべくして行ない得ないであろう、こう思うのです。それに対してあなたのほうとしてはお認めにならない、私はそれなりにけっこうであると思うのです。思うのだけれども、事実上そういう行為が行なわれるということに対しては、これまた積極的な形で取り締まっていかなければならない、そういう弊害を除去していかなければならないと思うのです。だからそこいら辺に対するあなたの取り組む態度というものが当然出てこなければいけないと思うのです。どういう態度でこういう弊害をなくしていくことにされますか。
  47. 北島武雄

    北島政府委員 全く御指摘のとおりでございまして、私どもといたしましては、当面は明らかなるやみ再販はどしどし取り締まっていく、こういうつもりでございます。
  48. 中村重光

    中村(重)委員 どうもいまのお答えだけでは、このやみ再販の問題は非常に重要であるということで質問した答えにしては、若干抽象的過ぎるというか、もう少しあなたとしての取り組む態度というものがあるのじゃありませんか。事務当局との間で検討もなされているのじゃありませんか。どうでしょうか。
  49. 北島武雄

    北島政府委員 やみ再販の取り締まりは、他の価格協定と同様に審査部でもって取り扱うわけでありますけれども審査関係は人員が現在中央、地方を通じて七十名程度でございます。これが来年度約十名ふえまして八十名程度の人員を擁することになります。一方また再販売価格維持行為そのものについての再検討をすることについて、それを主として担当するところの課を創設しまして実態調査に当たる、それとともに拡充された審査人員をもって、できるだけやみの再販売価格維持行為、それからやみの価格協定といったものの取り締まりに当たっていきたい、こう考えているわけであります。
  50. 中村重光

    中村(重)委員 最近の公取の積極的な取り組みというものに対して、産業界ではどうも好ましくないというように考える向きが出てくるのは、当然ということばを言うのは私自身の真意でもありませんが、全く間違った考え方で、あなたのほうの態度をあまりいい考え方をもって見ていないという傾向であろうと私は思う。そういうことから出てきているのか知りませんが、公取と産業界との間に仲裁裁判所をつくったらどうかというような動きも出ておるようでございますが、あなたもそのことはお耳に入っているだろうと思うが、どうですか。そういうことに対しての検討がなされておるかどうか知りませんが、どうですか。
  51. 北島武雄

    北島政府委員 そういう話は全然耳に入っておりません。公正取引委員会業界との間の仲裁裁判所というのは、率直に申しましておかしな感じだと思います。
  52. 中村重光

    中村(重)委員 おっしゃるとおりですね。ところがそれが報じられたことは事実なのです。いま私の指摘に対して、あなたは初めてそれを聞いたと言うが、そうじゃないでしょう。これは消団連はじめ消費者団体を相当刺激しているということは事実なのです。消費者団体なんかは、こういうでたらめなものをつくってはいかぬというような声が私どもの耳に入っているのだから、あなたも竹中事務局長もそれは知らぬのだと首を振るようなことはどうですか。どうも質問に対して——先ほどのあなたが物価懇談会に出席をして単独法をつくるということ、あなたはそういうことを話しているのだがどうなんだという質問に対しては、初めて聞いた、そういうことは考えていないというお答え、また、いまの仲裁裁判所の問題も初耳だ、全く意外なような顔つきでお答えになっているのですが、やはり公取としては、そうした公取の取り組んでおられる姿勢というか、そういう態度に対して、いろいろ注目の的となって、いろいろな動きが出てくるということは、あなたのほうでも関心を持っておられるのだろうと私は思うのです。初めてだということを、無理に、いやそうじゃないだろうといってあなたに押しつけていくのもどうかと思うのだけれども、どうなんですか。
  53. 北島武雄

    北島政府委員 私、全くうかつでございまして、そういうことが新聞記事に出ておったのを知りませんでした。竹中事務局長も知らなかったと申しておりますが、御承知のとおり連日国会に朝から参っておりますので、新聞を読む時間が制限されることもございますので、どうぞ御了承願います。
  54. 中村重光

    中村(重)委員 よろしいです。あなたが公取と産業界との間に仲裁裁判所なんてナンセンスだと言うのは、そのとおりです。それでけっこうですから、それ以上このことについては触れません。  そこで協同組合の価格協定ということに対して公取はどうお考えになっておられるか。協同組合の価格協定というものは独禁法の適用除外というようにお考えになっておられるのかどうか。一応法律的にはそうなのだけれども公取は必ずしもそういうような野放し的態度ではないのではないだろうかと思う。これに対しては中小企業庁のお考え方もありましょうし、あなたのほうの考え方をまずその点をひとつあなたのほうからお伺いいたしましょう。
  55. 北島武雄

    北島政府委員 これは実は最近、委員会でまだ論議したことはございませんので、私自身の見解ということで御了承願いたいと存じます。  私自身の考え方といたしますと、第一、中小企業等協同組合で共同事業——何といいますか共同施設として価格協定ができるという解釈が、私は実はおかしいような感じがいたします。共同施設というものはそういうものではないのじゃないだろうか、共同施設ということで価格協定を行なっているわけです、それが認められてきておる、その解釈自体にまず第一に私は問題があるように思います。これはずっと行なってきておるわけでありますから、なかなか問題がある。その解釈自体に私個人としては疑問を持っている。そうでなくて、まず協同組合が価格協定できるかどうかということ、それは共同施設でできるという解釈、それが一点。それから第二は、独禁法の二十四条で一応適用除外いたしまして、それから適用除外法の第二条でさらにまた書いてあります。その場合に第二十四条のほうのただし書きでございますね。一定取引分野における競争を実質的に制限することによって不当に価格をつり上げる場合はこの限りでない、そこの解釈がどうかという問題。これには二説あるわけでございまして、私自身の考え方は、かりに協同組合が一般的には適用除外になって、しかも協同組合の事業として共同施設として価格協定ができたとしても、もしそれが不当に高く価格が決定されて消費者の利益を不当に害する場合はこの限りでないという解釈でいけるのではないかという気がいたしておるわけであります。これについては部内にも議論が両論あるわけであります。
  56. 中村重光

    中村(重)委員 中小企業庁長官はどういう見解ですか。
  57. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 協同組合によります価格協定は現在六百をこえる組合が価格協定を実施しておるのが現状でございます。いろいろ問題がございますが、実際に運用にあたりましては、県に対しまして先般来通知を出しまして事前に届け出をするようにいたしております。また県ではそれが消費物資に関係がある、そしてまた適用範囲が県一円あるいはそれ以上の広域にわたるものにつきましては、事前に本省のほうに連絡をするようにという指導をいたしております。現にいままでにも若干のケースにつきましては、それぞれ物資所管の省と連絡をとりまして必要な修正の指導をいたしたりしておりまして、相手の数が多いものですから必ずしも十分に行き届いておりませんけれども、行政指導の面で少なくとも結果において不当なつり上げ等の起こらないようにというつもりで努力いたしておる次第でございます。
  58. 中村重光

    中村(重)委員 これに私の考え方もありますが、時間もございません。それで公取とあなたのほうとはまず十分意見を交換をし、不当に消費者の利益を害するという行為はそれなりに取り締まっていかなければならない、同時に考えていかなければならぬことは、中小企業不況の中に非常に苦しい経営状態の中にある、だからこの調整というものをやはり慎重に配慮して行なっていかなければならない、こう思うのです。だからしてその点に対しては十分ひとつ公取中小企業庁との間で利用者の利益という立場から配慮していただきたい、こう思うのです。  最後に、公取委員長に要望しておきますが、この集中合併の問題、独禁法十五条によって、違反にならないととであるならばこれは認めなければならないという基本的な態度で表明されたのです。従来もそういうことで取り組んでこられただろうと思う。しかしあなたのほうで合併を認められたそのことが、あなたのほうで期待されていない方向一つの大きな弊害という形であらわれてきたという事実も、やはりあなたのほうでは十分これを慎重にお考えになっていかなければならない、こう思う。それで、現在の企業集中度というものは非常に高くなっている。あなたのほうの資料で出ておりますところの上位百社、これは資本金の総額からいたしましても約六十五万程度企業の資本金額は五兆四千億、これに対して上位百社が二兆一千億、系列化された企業、これを含めますと二兆九千億という実に膨大な集中力をここであらわしておる、こういう状態にあるわけです。したがって、先ほど私は集排法の問題についても触れました。あなたのほうでは独占禁止というその命題というものを十分ひとつ踏まえて、弊害というものが大きくかもし出されてこないように配慮してもらわなければならないと思います。それから再販価格の問題にいたしましても、これは方向として、あなたが指定というものと慎重に取り組んでいくという態度は、私もそれなりに肯定をいたします。そういう態度でなければなりませんが、同時にやらなければならないことは、やみ再販をどうするか、この弊害を積極的に除去していくという態度でなければならないと思う。それについては、私が先ほど触れましたようないろいろな問題点もあるであろう、こう思います。いわゆる人的な問題もあるであろうし、あるいは管理価格の問題に対する審判の問題、あるいはその他そういう管理価格というものを十分発見をするために、これに接近するいろいろな技術的な研究というものもなされなければならないであろう、こう思うのです。十分それらの点に対して一そう積極的なかまえをもって、公取に期待されているこの役割を十二分にひとつ発揮していただきたいということを強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
  59. 天野公義

    天野委員長 板川正吾君。
  60. 板川正吾

    ○板川委員 独禁法の改正に関連しまして公取委員長、総務長官その他に若干伺いたいと思うのです。  まず公取委員長にお伺いいたしますが、実は公取委員長に当委員会として正式に意見を聞く機会は、まあかわりましてからこの国会が最初です。北島公取委員長が就任早々のときに新聞等の報道によって、実は私ども非常に気にかかることばがあったのであります。それは、話せる公取委員会を目ざす北島武雄氏、こういうふうに、たいへん話せるんだ、そして見出しが、独禁法は弾力的に運営するのだ、産業政策との関連を重視したいのだ、こういうような見出しがあって、新聞に報道されております。こういう新聞報道の印象から見ると、新任の北島公取委員長という方は、独禁法を財界の批判の方向にこたえて弾力的に運営し、まあなかなか話せる公取委員長になろうとしているんじゃないかというふうな印象を実は私ども受けておったのであります。これは非公式な報道ですが、私ども気にはしておりました。ところが今回の公取委員長として初めてのごあいさつの中に「このような複雑かつ困難な経済情勢のさなかに、独占禁止法の番人としての大役をお引き受けしたわけでありますが、独占禁止法が、自由主義経済の基本的法制であることにかんがみ、まことにその職責の重大なるを痛感いたしております。この上は、従来どおり独占禁止法の厳正な運用をはかる」のだということばが正式に述べられております。渡邊前委員長は、非常に独禁法というものを国民にわからせる努力をされた方であります。渡邊さんはある意味では、独禁法ができて今日まで独禁法と国民生活というものを結びつけた方であろうと思うのです。非常にりっぱな方で、他界されたことはわれわれまことに残念であると思うのですが、そのあとを受けて北島委員長がどうやるのかということを不安を持っておったのでありますが、正式に「厳正な運用をはかる」ということですから、大いに期待しておるわけであります。今後ともひとつまず御健闘を願いたいということを要望して質問に入ります。  まず第一は、今回の独禁法の改正について、改正の理由の要点はどこにあるのでしょう。これは総務長官から説明してください。——総務長官おりませんから、それではこれはいずれ総務長官に来てもらったときに質問いたしますが、今度の改正案の理由の中に、四十九国会の附帯決議の趣旨を尊重して「物価対策として違法な価格協定等の取り締まりの強化並びに再販売価格維持行為及び管理価格実態調査とその対策の強力な推進をはかり、あわせて、中小企業対策として特に下請代金支払い遅延防止に関する業務の強化をはかろう」こういう趣旨で定員の増加、それからもう一つは広島に支所を設けるという改正案が出されたわけであります。  私がこの際言いたいのは、このほか公取の任務としては、不当景品及び不当表示の防止の運用の強化等もあるのじゃないか。さらに国際契約の監視という仕事もあるのじゃないか。歩積み、両建てあるいは不公正取引等々、まだまだ公取として陣容を整えて積極的に取り組む課題があるのじゃないか。それが今回の人員増加の中には組み込まれていないのじゃないか、こういうことを一応聞いておきたいと思うのです。一体この三十三人程度公取が国民から期待されておる仕事が完遂できるかどうか、これは公取委員長に聞くのはまずいのだけれども、一応聞いておきましょう。
  61. 北島武雄

    北島政府委員 私、公正取引委員会に参りまして、公正取引委員会の仕事の内容及びその機構、定員等について一応調べてみたのですが、どう考えても公正取引委員会のなすべき仕事の質と量に比べて実際の人員が少ないということでございまして、ことに下請関係の下請代金支払遅延等防止法というのは非常にいい法律だが、残念ながら現在の人員でできるだろうかどうかという不安を非常に持ちました。聞いてみますと、実際十分な状態とは申せないということを私は発見したのであります。さらにまた、先ほど申しましたように、再販売価格維持契約の調査についてもたった二人しか働き手がない。あるいはまた違法な価格協定その他独禁法違反事件の取り締まりについても、全国合わせて七十人ぐらいしかいないということでございまして、これは何とかしてひとつ四十一年度においては定員の相当大幅な増加を実行する必要がある、こう考えまして、四十一年度の予算折衝に際しましては、特にその点に力を入れまして復活要求も六、七回いたしました。最後に七回ぐらいの復活要求で三十人までやっといったわけであります。私どもの希望から当初要求は五十七名でございましたが、それに対して予算的には三十三人、他の役所に比べまして相当認められてはおるわけでございますが、実際に私どもがやる仕事、理想形態を考えてみますと、とてもやはりこれでは足りないという感じでございましたが、当面実行する段になりますと、実人員三十人というのは充足が非常に大きな問題でございます。そういう点も頭に入れて、本年はとにかく三十名程度で、その陣容をフルに活用して公取の機構を充実させていきたい、こう考えております。
  62. 板川正吾

    ○板川委員 人員の問題についてはいずれ総務長官に出席を願って、その際伺うことにいたします。  そこで二、三独禁法運用の問題で伺っておきますが、管理価格について実態調査とその対策の推進をはかる、こういう方針でおやりになるそうであります。管理価格というものを狭く解釈して、カルテル価格と区分して、別なものとして一応定義しておきたいと思うのです。  カルテル価格は一応カルテル価格、管理価格というのは、いわゆる寡占状態において協定を結ぶ必要がなくて価格を維持することができる、あるいは引き上げることもできるし、下げないこともできる、こういうような管理された価格という前提で議論をしてみたいと思うのですが、独禁法では、カルテル価格については、これは違法だというたてまえをとっておりますね。管理価格について違法だという規定はありますか、ないですか。
  63. 北島武雄

    北島政府委員 いわゆる管理価格——寡占的業態に見られるわけでございますが、その管理価格自体を取り締まるという規定はないわけでございます。ただ、管理価格が行なわれているのが業者間の協定で行なわれていれば、これは独禁法違反ということになる。それから再販売価格維持行為等が行なわれておれば、これはまた不公正な取引方法として独禁法違反ということになる。あるいは新規企業の入ってくるのを妨害するというようなことになれば、また不公正な取引方法になるということでございまして、それぞれ事態に応じて独禁法に触れるかどうかという問題になってくるのでありまして、一般的に管理価格なるがゆえに独禁法違反ということにはならないわけでございます。
  64. 板川正吾

    ○板川委員 確かに独禁法から言うと、この管理価格については二条の5の私的独占にも当てはまらないですね。二条の5の「この法律において私的独占とは、事業者が、単独に、又は他の事業者と結合し、若しくは通謀し、その他いかなる方法を以てするかを問わず、」までは大体いいと思うが、「何の事業者の事業活動を排除し、又は支配することにより、」という点からいって、管理価格は二条の5の定義には当てはまらない。また二条の6の不当な取引制限にも当たらない、取引制限じゃないですから。そうすると、二条の7の五号ですね。「自己の取引上の地位を不当に利用して相手方と取引すること。」経済的な優越した地位の乱用ということが、一番ひっかければひっかかり得るところじゃないか、そう考えるのです。これは頭の中に入れておいてください。それはなぜかというと、独禁法の趣旨は、私的独占禁止することには間違いない。それを多数のものがカルテルを結んで、たとえば繊維関係にしろ何十社、鉄鋼関係にしても、百社近い、そういう多数のものが協定を結んで価格を維持すること、これはいかぬというのですね。しかし四社か五社の寡占状態において、協定を結ばなくたって、協定を結んだのよりも強力ないわゆる価格維持ができる、値上げもできる、こういう状態にあるものを、独禁法私的独占に当てはめないというのは、私は独禁法のいわゆる法の精神からいうと若干不備じゃないかなと思うのです。本来なら私は、管理価格というのは当然独禁法で規制し得る対象になっていいのじゃないかと思うのですが、どうですか。
  65. 北島武雄

    北島政府委員 そういうお話もございますが、現行法ではどうも入らないのじゃなかろうか、私はそう考えます。
  66. 板川正吾

    ○板川委員 現行法で入れるとすれば、さっき言った二条の7の五号ですね、いわゆる経済的な優越した地位の乱用、こういうことになるだろうと私は思うのです。これの解釈を拡大すればなり得るのじゃなかろうか、こう思うのです。管理価格について取り組んでくれるというのですから、これを大いに期待するわけですが、どうも管理価格に対する——管理価格私的独占として取り締まりの対象に入るべきであって、それには二条の7の五号でいいじゃないか、こう思うのです。  それで社会党は、さきに市場支配的事業者の経済力乱用規制に関する法律ですか、それを出したことがあるのです。いまも物価対策特別委員会の小笠委員長と話し合ったのですが、やはり貿易自由化になって、国際的な競争力も持たなくちゃいけない。そうすると、ある程度企業が大型化して、そして競争力を持つようなことになる。企業集中して大型化して寡占化してくると、そこに私的独占、この独禁法の趣旨にいう私的独占が行なわれる。これを何らかの形で規制することが独禁法に明確でなければ明確にされることのほうがいいじゃないか。私的独占、それから寡占状態による私的独占、たとえば一定期間における報告を聴取して、寡占状態における、管理価格をもって私的な独占をはかっておった場合には、それに公取が勧告なり、言うことを聞かなかった場合にはその事情を付して公表するなり、こういう制度を考えられることが必要じゃないか、こう考えるのですが、どうでしょう。
  67. 北島武雄

    北島政府委員 これはたいへんむずかしい問題でございます。アメリカでも実はこの管理価格調査は相当てこずっておるようであります。アメリカの上院の委員会、キフォーバー委員会ですか、これはいまから数年前、もっと前からでしょう、管理価格調査を、じっくり腰をつけてやっておりますが、なかなか結論が出てこない。それからまた市場支配的事業者の地位の乱用という問題これはまた現在の西ドイツの競争制限禁止法とかあるいはまたEECのローマ条約の八十六条ですか、にも規定があるようですが、実際となると実にむずかしいようであります。ドイツにおいても市場支配的事業者の地位の乱用ということについては、どうも実効があがってないというような話も聞いております。こういう点は各国の法制、それから実際の取り扱いなども今後十分調査して取り組んでみたいと思います。
  68. 板川正吾

    ○板川委員 むずかしい問題ですが、ひとつ法制的に十分取り組んでいただきたいと思うのです。  それから実態はひとつ早急に調査して報告を願いたいと思います。  それから次に、再販売価格維持契約の問題であります。いま中村委員からも若干質疑があったが、私は別の角度から議論してみたいと思う。この再販制度の概要をちょっと説明していただきたい。
  69. 北島武雄

    北島政府委員 再販売価格維持契約は、御案内のように独禁法第二十四条の二で昭和二十八年の改正のときに加えられたものでございます。この考え方は、先ほども中村委員の御質問のときにお答え申し上げましたが、結局商標制度の発達に伴って、メーカーの商標というものを重んじる必要がある。結局あるメーカー品が売れている場合に、それは小売り店の努力よりもメーカの商標で売れている。メーカーが末端におけるところの価格、それから品質自体についても直接責任を負うべきだという考え方でございまして、こういう商品はえてしてまた、小売り店においておとり廉売に使われやすい、優秀な有名なメーカーが宣伝している有名な商品でございます。消費者はだれでもわかる、そういう商品をおとり廉売に使ってそうして消費者をおびき寄せる、こういうことになりますと、小売り店間の秩序が乱れる、場合によってダンピング等の問題も起こすわけであります。そういった見地、メーカーののれんの保護、それから小売り店のそういったおとり廉売に使われることなどの防止、さらにひいては、消費者の利益のためにもということで設けられておるわけでございます。したがいまして、要件としては、その品質が一様であることを容易に識別することができる商品ということになっておりまして、しかもその商品は一般消費者により日常使用されるものであること、もう一つ、当該商品について自由な競争が行なわれていること、これを条件にしまして、公正取引委員会が商品を指定できることになっております。この商品については、再販売価格維持行為が行なわれても、これは独禁法に違反しない、こういうわけであります。  それからなお著作物につきましては、公正取引委員会が指定しなくても、法律上当然できる、こういうかっこうになっておるわけでございます。  再販売価格維持契約の考え方はそういうものではございますが、これは昭和二十八年にできまして、当初はあまり利用されておらなかったのですが、再販売価格維持契約というのは、実際実行するのはなかなかたいへんなことで、小売り店をしっかりつかんで、そうして小売り店が安売りした場合には、出荷停止などができるわけでございますから、そういった監視機構などもやる必要があるというようなことで、なかなかめんどうなことではございます。しかし、二、三のメーカーがこの再販売価格維持契約に真剣に取り組みまして、開拓しました結果は、非常にその人たちの業績が伸びてきた。と申しますと、もしそういった商品について、小売り店間において値引きがないということになれば、小売り店は安心して、お客様が買いに来たときに、これいかがですかといって出すかっこうになるわけで、そういったことで伸びてきたわけであります。マージンもわりあいに高いというようなことで伸びてきている。伸びてきているので、それに刺激されまして、この数年来、再販売価格維持契約を自分でもやってみようかというメーカーがだいぶふえています。現に昭和三十八年末では、再販売価格維持契約を実施しておりました商社は四十一社、これが三十九年末には五十社、それから昨年四十年末にはそれが六十五社、こういうふうにふえております。一般消費者からすれば、いままで割引で買えておったのが、ほとんど同じようなものが、レッテルが変わって、そのとたんに値引かなかったというようなことで、消費者としては非常に異常な感じを持ってくるのは事実でございまして、これは昨今の物価対策上大きな問題になってきたわけでございます。大体以上のとおりでございます。
  70. 板川正吾

    ○板川委員 再販売制度というのは、考えてみると、これは重要な独禁法とはまっこうから相反する規定だろうと私は思うのですね。たとえば本来取引の相手方、小売り業者なら小売り業者が値段をきめるべきものを、これを小売り業者の値段をメーカーがきめて売るのでしょう。ということは、ある意味では独禁法の相手の事業活動を拘束するという、不当なる取引制限の事項に該当する。独禁法的に言えば、この行為はいけないことですね。いま独禁法で許されていますが、独禁法の基本的な流れから言えば好ましい方向じゃない。不当な取引制限に当たる性質のものですね。  それから第二は、販売価格を守らない者にはあなたのところへ売らないのだ、百円なら百円でこの薬を買わない限り売らないのだという、商品の供給を停止することは、これは一種のボイコットになる。これまた独禁法にいう不公正取引の項目に該当する行為ですね。  第三として、取引の相手方に価格を守らせることは、取引上の相手が、小売り業者がもうかっているから、実は値引きして売りたいのだけれども、しかしこれこれで売らなくちゃならないのだということで価格を守らせることは、優越したところの、経済行為の乱用ということにもなる。これも不公正取引という項目に該当する。再販売価格は、結果においては競争を排除している、事業者の利益を確保する道に通じているのじゃないか。そういう商品があっても、実際他に似たような商品があるから、たとえば薬の場合にいたしましても、あるかぜ薬を再販売価格に乗せた一これは競争があるからいいじゃないか、しかしほかの会社も全部同じように、最低百円なら百円、二百円なら二百円できめてしまえば、自由な競争がなくなるということも考えられる。ですから、この再販売制度というのは独禁法の中心的な規定とまっこうから相反するものだ、こういう性質を持っている、傾向を持っている。ところがこの再販売価格を指定する規定というのはまことに不十分じゃないか、こう思うのですね。いま委員長言われましたように、これを指定する場合には、二十四条の二にありますが、「当該商品が一般消費者により日常使用されるものであること。」一般に使われているものであること。それから「当該商品について自由な競争が行われていること。」要するに自由な競争で、同じようなものが他で売られていればいい。一般に知られていて同じようなものが他にも売られているのだということであればいいという要件ですね。こういう要件があれば届け出をすれば商品を指定せざるを得ないでしょう。いまの公取の運用から言うと、その場合には公取の再販売価格維持契約の届け出に関する規則というのがあって、この規則でどういうふうな規定になっているかというと、これはメーカーと小売り業者が契約を結んだら契約書の写しを出しなさい、契約書がなかった場合、口頭で契約した場合にはその口頭の契約を文書にして出しなさいという程度のことで簡単に認められる制度を現在はとっておるのですね。こういう法の不備をついて実質的にはその競争がなくなる、あるいは消費者の利益を害してメーカーの利益に奉仕するという制度になってしまったのじゃないかと思うのです。だから現在の再販売価格制度というものは問題があるから検討するということにはなっておりますが、本来的に言うと、独禁法とまっこうから相反する性質のものですから、これを指定するにしても、あるいは指定されたものに対しても、指定する場合にはもっと要件をきびしくして、指定された後の監視を当然やってよいのじゃないですか。独禁法に定められた競争をしなくて済むのですから、そういう恩典を受けるのですから、書籍とか新聞とかは問題はございませんが、そうじゃなくていま一般にいわれておる化粧品とか薬とかをこの再販に乗せる場合には、もっと要件をきびしくし、そうして指定した場合には、これに対する報告なりを十分とって、そうしてもし消費者の利益を害するようなことがあれば、さっそくそれを取り消すなり勧告するなり、こういう制度に持っていくべきだと思いますが、いかがですか。
  71. 北島武雄

    北島政府委員 まことにごもっともな点でございまして、公正取引委員会が指定した商品については、契約が成立してから三十日以内に届け出るだけでよい、しかもその届け出規則が私ども考えましても残念ながら非常に不備であります。ただいまのところ届け出規則を改正することを検討いたしております。契約を受けたら届け出るというその届け出の内容もいままでと違いまして、その後の状況をフォローできるような届け出を徴することにいたしております。そうしてもしそれが不当に消費者の利益を害することになれば、除外例があるのですから、それをさらにはずせるわけでありますから、そういう方法も用いていきたいと考えております。
  72. 板川正吾

    ○板川委員 いまの再販売維持契約制度というものは、そういう意味で非常に重要な独禁法の除外を簡単に認める、こういう制度になっておるので、ぜひともこの点は早急に検討して対策を立ててもらいたい、こう要望いたします。  それから、時間がありませんから先を急ぎますが、下請関係でございます。昨年、下請代金支払遅延等防止法が改正になりましたが、その改正後の運用状況についてひとつ報告をしてもらいたいと思います。
  73. 竹中喜満太

    ○竹中(喜)政府委員 昨年の改正法案が施行されましたのは七月十日でございます。私のほうで説明会を開いたり、あるいはパンフレットをつくってこれを配布する、それから中小企業者の団体あるいは親事業者の団体に対しまして、改正の趣旨を徹底させるように文書を送りまして、新法の普及につとめました。それで最近の下請代金の支払いの状況がどうかということでございますが、三十九年の十月から昨年の七月までに四回の調査をやっております。その調査の結果を見ますと、滞留月数は四十年の一月とほとんど変わりはありません。それから手形払いの占める比率は多少よくなっておりますが、通常百二十日以上の手形を振り出す親事業者の数は四十年の一月に比べまして相当ふえております。それに四十年度の四月から十二月、昨年の四月から十二月までに私のほうで千二百六十五の親事業者調査いたしましたところ、その結果は十二月末日で違反の疑いのあるもの四百五十四ございますので、これに立ち入り検査を行なうことといたしました。この間下請業者からの申告は十八件でございまして、四月から十二月までに立ち入り検査を完了したものは百七十件でございます。その百七十件のうち、法七条による勧告をしたものは十五件、行政指導による改善の促進方を命じたものが九十二件、それから不問が六十三件ということになっております。それから十二月末でその後の監査をやっておりますのが三百四十一件ございます。それから御承知のように下請事業者団体十八を協力団体にお願いするとともに、本年度に入りまして、各地の下請問題についての学識経験者五十名を下請取引改善の協力委員というような名前で、下請取引改善のために公取との連絡のための仕事を委嘱いたしまして、先般もこの方々と会合したわけでございます。昨年議員修正もございまして、法律自体非常に強力なものになりましたので、この趣旨を徹底させ、その趣旨にのっとって法律を運用していきたいと考えております。
  74. 板川正吾

    ○板川委員 昨年法改正がありまして、問題の注文書を文書で親会社は出さなくちゃいけないということを明記しました。いままでは口頭でもよかったのですが、いまは口頭であろうが何であろうが文書で出す。それから支払いの期日はその給付を受けた日から六十日以内に支払いをするべし、これを明確に——これは従来も大体そうでしたのですが、明確にし、さらに割り引き困難な支払い手形は支払いとみなさないということを、これは改正ではっきりしました。通常の金融機関で割り引きできないものは支払いとみなさない。通常の金融機関の割り引きというのは、大体手形百二十日程度である。もしそれより遅延した場合には日歩四銭の利子を支払うべし、これは従来も規定がありましたが、今度は明確になったために日歩四銭の利子を払うことがはっきり区切りがついたわけです。そして文書を保存する中で遅延利子を払ったか払わないかということも記入しておくようになったと思うのです。こういうふうに、まあたいした改正ではないか知らぬが、しかしその運用を適正にすれば下請業者に対してはこの法改正というのは相当恩典になっただろうと思うのです。ところがいまの報告を聞くと、昨年法改正直後でありますからまだ十分な成果はあがってないかもしれませんが、下請代金の滞留月数はたいしてかわりはないとこう言う。さらに報告を見ると、百五十日以上の手形というのが相当枚数やはり出ておる。どうもこれから見ると、せっかく下請代金支払遅延等防止法ができたが、しかし運用が十分じゃないのじゃないか。まあこれはもっと厳正に適正に運用を指導すれば支払い状況の改善があるのじゃないか、こう思うのですが、一体公取はいまの若干人をふやした程度でそういったことができるかどうか、伺いたい。
  75. 北島武雄

    北島政府委員 全くお話のとおり下請代金支払遅延等防止法につきまして昨年の七月改正後私ども努力いたしておるのでございますが、何ぶんにも現在のところでは人員が非常に手薄でございまして、思うようにいっておりません。ただ来年度になりますと、この点相当の改善がある見込みでございます。私どもひとつ新しい陣容をもちまして、どしどしこれを実行していきたいと思いますが、しかし何ぶんにも約一万をこえると思われる親事業者に対しまして、来年度新しい陣容を持ちましても約四千の親事業者にしか書面の定期調査ができないという状況でございます。これはぜひとも年々率を高めていかなければなるまいと思います。来年度はさしあたり昭和四十年度二千五百の事業者に対しまして書面調査を実施いたしましたが、今度は六割増の四千に実施いたしたいと思います。書面調査をやればそれだけのことは出てまいります。まず書面調査の範囲を拡充して、そうして立ち入り検査をどしどしやっていきたい。それに基づいて勧告なり行政指導をやる、こういうように考えております。御承知のとおり現在の人員では非常に手薄でございます。
  76. 板川正吾

    ○板川委員 公取の事業の中で下請代金関係の事業というのは相当仕事の量が多いようですね。これは全国的にまたがっている。しかも親会社が全国で一万二千以上ある。これに対する子会社を数えたら無慮数万ということになるだろう。十万をこえるかどうか知りません。とにかく親会社だけで一万二千を数えるのですから、子会社を入れたら数十万かもしれません。いずれにしてもこの下請代金の支払いを適正にさせるということは、政府中小企業対策の上からいっても重要なことです。ところが今度六人ふえて十三人が十九人になる。いま委員長お話ですと、従来調査二千五百件くらいのやつを六割ふやして四千件くらいにしたいというのですが、どうも私は調査方法が、親会社から報告をとってそのうちの手抜かりのあったもののうちから一割か二割抽出してその立ち入り調査をするということになっておるようであります。どうも親会社から調査をとるということは、私はまあこれは加害者から調査をとって損害の程度を調べるようなものであって、本来からいえばこれは被害者である下請業者を調べて下請業者調査を待って親を調べるというならある程度わかる。ところが下請会社というのはこれも何十万ということになって、とても公取の手には負えない。ですから、せめて親会社を毎年一ぺんぐらい全部立ち入りなら立ち入り調査をし指導ができるというようなことにならないと、どうも加害者の報告をとって調査して、そのうちからしかるべく調査していくというようなことでは、下請代金支払遅延等防止法の趣旨を完全に生かすということはできないのじゃないですか。それから考えると、いまの公取の陣容で下請関係のものを十三名から十九名にする、こういう程度では、実際は運用の適正というものはできないのじゃないですか。どうですか。
  77. 北島武雄

    北島政府委員 お説のとおり、まだ不十分だと思います。
  78. 板川正吾

    ○板川委員 この下請代金の問題は、いずれ中小企業の諸法が出ますから、その際にまた公取に対して詳しく質問いたしますが、とにかくいまの公取の下請代金支払遅延等防止法の運用というものは全くなまぬるいのであって、こういうものを抜本的に改正しなくちゃいけないのではないか、私はこう思います。  次に移りますが、不当景品類及び不当表示防止法の運用について、公取に伺います。最近、はでな景品販売がまた復活しておるようであります。以前は、トリスを飲んでハワイに行こうとか、オーシャンを飲んでロンドンへ行こうとか、こういうような宣伝がありました。しかし不当景品類及び不当表示防止法が制定されてから、そういった過大な広告というものはなくなってきたのですが、最近また新聞広告などで、でかでか類似の広告を見るのであります。公取はこうした不当景品類及び不当表示防止法の運用から考えて、最近の景品販売についてどういうふうな考え方を持っておられますか。
  79. 北島武雄

    北島政府委員 不当景品類及び不当表示防止法が制定されまして、これに基づきまして不当景品類の取り締まりを実行するようになったのでございますが、これによりまして、最近はこの法自体に関する限り過大な景品というものは少なくなってきているのではないかと思います。ただし目につきますものは直接この法律には触れないと私どもは解釈されるのでありますが、この景品類は取引に付随して相手方に提供するのでなければならぬのでございますが、実際にテレビやラジオで行なわれているのは、買う人買わない人を問わず、一般的に聴取者あるいは視聴者に対しまして募集をして景品をやっておるという関係が相当目に映るのでございます。この点は、残念ながら現在の不当景品類及び不当表示防止法の規定上ではちょっと規制が無理ではなかろうか。この規制される範囲内に関する限り、現在は相当直ってきておると私は感じております。
  80. 板川正吾

    ○板川委員 これは不当景品類及び不当表示防止法、この法律を審議するときにも議論になったのですが、第二条に商品の取引に付随して、とこういうことが規定されております。だから、商品を買う。買ったものから何かを出して懸賞をつけるということは、この法律にひっかかる。ところが直接買わなくてもいいが、実質的には買わなければできないような、直接のひっかけは付随してはないが、実質的には付随せざるを得ないような販売方法で、最近新聞等で非常に大きくいわゆる誇大宣伝、広告をしておる。これはどうも不当景品類及び不当表示防止法の精神からいうと、法律が不備だと言えば若干不備でしょう。しかしこの精神からいうと、わずかの物を売って、たとえば洋服類を売って香港へ連れていくとかハワイへ連れていくとかいうような性質の売り方というのは、この法律を制定した趣旨はそういうものではなくて、ウイスキーを売るなら、いいウイスキーを大衆に売るようにしたらいいじゃないか。そういうウイスキーを飲むことによって、外国へばく大な金をかけた旅行招待というのは、やはり好ましい売り方ではないのではないか。しかし景品販売というのは、それをあくまでもやめさせろというわけではないから、一定の限度を設けろということでこの法律ができたのですね。ですから取引に付随してという法律規定がありますが、実質的には付随と同じような条件でやる。脱法的な抜け穴を通ってやっておるようなものは、この精神からいっても、好ましいことではない。これはひとつ不当表示法の付随してのところを若干改正する必要があるんじゃないですか、どうでしょう。改正して、あまりわずかな物を売って、えらい遠くのほうまで招待するような販売方法というのは好ましくないので、やはりやめさせる方向にいったほうがいいのではないかと思うのですが、どうでしょう。何か自主的にやっておる方法があるでしょう。公取で調べているのがあるでしょう。事務局長、ちょっと事例を言ってください。
  81. 北島武雄

    北島政府委員 とりあえず私からお答えいたしますが、ただいまお話の中にございました買わなければならないようにさせるということになると、これは取引に付随してということに解釈できると思います。ですから脱法的なものはこれで取り締まれると私は思いますが、そういうものにつきましても実態をよく調査いたしまして、できるだけ脱法的なものであれば、必ずこの中に触れるのだ、こういう考えで運用してまいりたいと考えます。
  82. 竹中喜満太

    ○竹中(喜)政府委員 ちょっと補足して申し上げますけれども、昨年懸賞の告示を改正いたしまして、いわゆる優等懸賞広告、商品名を募集するとか写真を募集するとか、そういうものを規制の対象にしたわけでございます。  それから板川さん先ほどおっしゃられました洋服で香港というお話がありましたけれども、いまの不当景品類及び不当表示防止法で、一定の地域のものがやる場合、それから一定の業種のものがやる場合は、一万円か二十倍か、いずれか低いほうが十万円まで上がっておりますので、これはそれに基づいてやったものと考えます。
  83. 北島武雄

    北島政府委員 いま事務局長申し上げましたのは、一万円が十万円になったということではなくて、地域的に業者が連合してやる場合は十万円までいいということであります。それによりまして、ただいまのお話のように、洋服業者が連合してそういうことをやるならば、十万円までいいわけですから、香港へも行けるということになるわけでございます。
  84. 板川正吾

    ○板川委員 何か新聞でウイスキーのことが出ておったね。直接じゃないのだけれども、まあいい。いずれにしてもこの不当景品問題も、どうも脱法的な行為があるように私は思うので、これはひとつお互いに具体的なものをつかんで議論してみたいと思います。  それから最近土地屋が誇大宣伝を——取り締まりが幾らかきびしくなって、紙上をにぎわしておるのですが、最近の土地屋の欺瞞的な誇大宣伝の取り締まり状況は、どういう状況ですか。
  85. 北島武雄

    北島政府委員 消費者を欺瞞して不当に誘引す不当表示につきましては、この不当景品類及び不当表示防止法制定以来鋭意取り締まりに当たってきておるわけでありまして、三十七年の制定以来現在までに、不当表示につきまして、ことに不動産につきまして排除命令を出しましたのが四十件ございます。それから文書により厳重に警告する措置をとったものが百十四件ございまして、このうちで昨年の一年間でいたしましたものが、排除命令全体で四十件のうち二十一件でございます。それから文書による警告百十四件のうち四十六件が昨年の一カ年間にかかるものでございます。こういう不当表示、ことに不動産に関する不当表示は非常に大衆に大きな迷惑をかけますので、どしどしこれは取り締まっていきたい、そう考えております。
  86. 板川正吾

    ○板川委員 これは都市中心で取り締まりが行なわれておるのですが、最近は地方でもやはり相当誇大広告が行なわれておるように思うので、東京周辺だけでなくて、地方の都市でもそういう点に目を光らせてもらいたいと思います。  時間がありませんから先へ急ぎますが、もう一つは誇大広告で、これは薬品の販売ですから、直接公取の担当ではなくなってしまうのかもしれません。これは薬事法による厚生省所管でしょう。しかしどうも公取としても一言あってもいいのじゃないかなと思う節がありますね。それはどうも薬の宣伝をテレビ等でまことしやかに宣伝しておって、いかにもきくような宣伝が行なわれておる。しかし実際きくかきかないかわからないので、飲んでみてからにしてくれということだろうけれども、どうも薬をテレビ等ででかでかと宣伝をするということは、やはり薬事法では誇大広告はいかぬと言っているのだし、厚生大臣の所管でもあるだろうけれども、どうもこれは問題であって、こういう誇大宣伝的なものは、一回公取でも実情を調べてもらえないだろうかという感じがします。あれは大原君がいつか議論したのですが、グロンサンというものは体力の回復には必要だが、しかしアンプルで飲んだグロンサンは体力の回復にはきかないのだそうですね。しかしテレビの説明を見ると、グロンサンというものはこういうことで必要であって、そして疲労の回復なり肝臓にはまことにきくのだ。グロンサンそのものはきくのだそうだけれども、飲んだものが必ずきくとは限らないのだそうですね。ところがいかにもその飲んだものがきくかのごとく宣伝する。そこに見る人をしてきくかのごとく誤認を起こさせる。こういう宣伝というのは、やはり不当表示防止法のたてまえからいっても問題じゃないかと思うのです。これは関連したものですから、ちょっと申し上げておきます。  そのほか最近公取でみやげもの屋の不当表示も取り締まるということが出ておりますから、ひとつしっかりやってもらいたいと思うのです、確かに私も例があるのですが、別府からザボンづけを送られた。大きなかごへ入って山盛りになっておる。山盛りになっておるから、これはずいぶんたくさんあるのだろうと思って見たらば、かわ一枚しかなくて、山の下はみんな紙が浮き上がっておって張りつけてあったのです。送ってくれた人は、これは意外と安いし、おいしそうだからということであろうけれども、もらってみると、何かペテンにひっかかったような感じがしますね。こういうみやげもの屋というのは、観光地なんかに相当あって、童心を傷つけたり善意の人に恥をかかせたりという結果になるので、ぜひひとつこの取り締まりにも公取はしっかりとやってもらいたいと思います。  それからもう一つ、鉄鋼の公開販売制度というものに対して公取は一体どういう考え方を持っておりますか。
  87. 北島武雄

    北島政府委員 鉄鋼の公開販売制度は、たしか昭和三十三年に始まって、その後三回程度変わりまして、現在いわゆる安定公販というのが実際に施行されているわけでございます。これに対しましては、たしか公正取引委員会といたしまして、それが起こりました当時通産省から御教示を受けまして、その御教示を受けました結果、やむを得ないということが公正取引委員会でもこれを承認した経緯があるようでございます。しかしその後、行政指導による勧告操短は一般的に好ましくないということで、公正取引委員会は終始行政指導による勧告操短の廃止を主張してまいりました。そういう関係もからみ合いまして、この鉄鋼の公販制度については再検討すべきものがあるのじゃないか、こういうふうに最近は考えております。
  88. 板川正吾

    ○板川委員 重工業局長に伺いますが、この公販制度の目的、それから制度の概要について若干説明をしていただきましょう。
  89. 川出千速

    ○川出政府委員 先ほど公取委員長から話がございましたように、三十五年から現在の鉄鋼価格安定対策要綱に基づく行政指導としていわゆる公販制度が行なわれておるわけでございますが、その目的は、鉄鋼は基礎商品、たとえばエネルギーみたいな基礎商品でございます。またそれを生産している産業は、いわゆる基幹産業といわれておるわけでございますが、この価格が低位に安定をすることが、鉄鋼産業のみならず、関連産業のために必要だと存じますので、そういう行政指導をするために設けられたものでございます。  鉄鋼製品の中で数品種を選びまして、たとえば小型棒鋼、中型棒鋼、中型形鋼、厚中板、薄板、線材等でございますが、この先物につきまして公に販売する価格、それから販売する数量を通商産業省に届け出ることにしておるわけでございます。それによりまして価格がみなにはっきりわかるようにし、どのくらいの数量を各事業者が販売するのかということが、需要者を含めた委員会で協議された上届けられることになっておるわけでございます。  目的は、ただいま申し上げましたように、鉄鋼価格の低位の安定をはかるということでございますが、実際の運用は、最近鉄鋼の需要が、過去に比べますと伸びが停滞をしておりますと同時に、供給能力のほうが非常にふえてまいったものですから、実勢価格のほうは届け出られた価格よりも相当下回っているというのが実情でありまして、そういうような点も考えまして、私どももこれはひとつ再検討をしたらどうだろうかという考えを持っておる次第でございます。
  90. 板川正吾

    ○板川委員 公販制度がとられて、これは三十八年からの資料しかありませんが、届け出価格に対して市中価格というのは相当な開きがありますね。これは大体初めから開きがあって、市中価格よりも若干高目に届け出をしておるのだろうと思うのです。公販制度の目的は、価格の著しい変動を防止するのだ、あるいは低位な安定をはかって経済の発展に寄与するのだ、こういう目的のもとに行なわれたと思う。しかし、これは届け出価格よりも安いから低安定ということになる炉もしれませんが、そういう目的で行なわれておる。しかし運用は、販売価格、生産数量を届け出して、そして市況対策委員会というのを設けてお互いに監視し合うのだというようなやり方ですね。実質的に届け出価格と市中価格というものは相当な開きがあるし、あまり効果がないなら、この際こういったカルテルを温存するあるいは培養するようなものならば、やめたほうがいいのじゃないか。しかし鉄鋼のような基幹産業を、この前も言いましたように野放しにしていいというわけじゃない。最近も、設備関係から業界でいろいろ議論があるということも報道されておりますが、やはり基幹産業に一つの秩序を持たせるというならば、設備の問題といい価格の問題といい、法的な規制に基づいてやらせたほうがいいのじゃないか。この鉄鋼公販制度というのをやめる、しかしやめるについては、将来の一つの産業の秩序ということのために、たとえば鉄鋼業法のようなもので設備の関係を調整するというような、一つ基準に基づいておやりになったほうがいいのじゃないか。いまの制度は、何も法律的には根拠はない。だから公取としては、こういう制度はやはり好ましくないと言わざるを得ないので丈ね。これはこの前と議論がやや似てますけれども、この前言い漏らしたから取り上げてみたのですが、どうですか。
  91. 川出千速

    ○川出政府委員 公販制度は御指摘のとおりに行政指導でございまして、強制力、拘束力はないわけでございます。現在までの運用におきましては、値段が高騰します際に勧告を出して増産させ、値段が低落するように運用し、非常に下がりました場合には減産の指導をしておるわけでございますが、確かに御指摘のような問題がございます。なお鉄鋼につきましては、設備投資のあり方の問題あるいは価格の安定の問題あるいは輸出秩序の問題等、非常に広範な問題がございますので、ただいま御指摘のような問題を含めまして、近く産業構造審議会の中で鉄鋼問題の基本的な問題を取り上げて語り方を検討する準備をしております。
  92. 板川正吾

    ○板川委員 独禁法の改正に関連して人員、仕事等の点については総務長官にいずれ来ていただきまして、総務長官に質疑をしたいと思います。  独禁法の運用に関する質疑は、本日は私はこれで一応打ち切ります。  なお、山崎委員の関連質問があるそうですから……o
  93. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 ちょっと関連質問をしたいと思います。時間もだいぶ過ぎておりますので、五分か十分で……。  いま板川委員から、誇大広告の取り締まりに関するお話が出ました。たまたまいま薬の広告のことを板川委員が論及されたのでありますが、私自身も、これは平生から日本の薬の広告くらい、宣伝くらい苦々しく感じたことがないのであります。たまたまいまグロンサンの話が出ましたので、私三年ほど前に調べた記憶がございますので、一言この際委員長の御見解を聞いてみたいと思うのです。それは厚生省の所管になると思いますが、あなたのほうはいまの誇大広告の取り締まりに関する御当局になるわけなんですが、一体グロンサンというものは、私が三年ほど前に調べた経験からいいますと、絶対にききません。これはしろうとが言うのじゃございません。私は興味を持っておりましたから、実は日本でも肝臓に対する大家、流行性肝炎に対しては世界的な大家がおります。私は名前を言うのは伏せておきますが、端的に申し上げますと、その研究室に行って見ますると、各薬会社からそういうプロフェッサーに対しては、薬を使ってくれといってたくさん無料の寄贈があるのであります。この人の説からいいますと、グロンサンというのはアルコールとカフェインだけであります。これは絶対きかないのです。これはあなたの所管ではございませんが、ここに日本の厚生行政、特に薬事行政に対する非常な大欠陥があるのであります。といいますことは、日本の薬事行政というものは薬の免許、許可をおろすのに、毒にならなければおろすということであります。言いかえますとハツカネズミがいままさに肝臓で死なんとしている。それに持っていってグロンサンを注射いたしますると、このハッカネズミは生き返るのであります。この現象から見ますると、なるほどきいたとこうなる。ところがグロンサンでなくて蒸留水を注射いたしましても、生き返るのです。ところが日本のいまの薬の新製品に対する免許、許可の基準というものは、毒にならなければおろすというのが基本的な厚生省の態度になっておるのであります。いま水をやっても生き返る。この一点をごらんになりましてもおわかりになるように、要するにきかないということなんです。そんなきかないグロンサンを並べて売っているが、私三年ほど前の調べですから、多少数字の間違いがあるかもしれませんが、小売りの価格は百円くらいだと思うのです。それが実際は小売り屋が割り引きをして、六十円か何ぼかで売っておるのじゃないかと思いますが、原価を調べてみますとアンプル代と中身で五円六十銭、宣伝費が驚くなかれ三十七円です。公取委員長に私がよくお考え願いたいことは、三十七円の宣伝費です。一体テレビや新聞広告で、あるいはグロンサンの会社がスポンサーとなって、民放をただで見せてもらっておるが、実際言いますと、高いものを見ておるのです。外国の例を見てみましても、あの自由主義経済の、資本主義の最も典型的なアメリカですら、薬の広告は禁止しておるはずなんです。ただ日本でいえば医師会、アメリカの医師会に相当するところの雑誌その他機関誌へは出していい。一般のものへは出しちゃならない、広告しちゃならないということにたしかなっているはずであります。ところが、日本は、御存じのように、いまも言いましたように、きかない薬でも毒にならなければ許可できるのだということで、約三年ほど前の日本の薬会社というのは約一千社あったはずであります。ところが驚くなかれ、その千社の薬会社の中でほとんど数社がボス的に牛耳っている。言いかえますと、薬品会社の大手というものは、日本の政治界まで牛耳っていると言っても過言ではないと私は思うのです。もとより、いわゆる民放にいたしましても新聞社にいたしましても、この薬の広告の収入というものは非常に大きな収入になっております。たしかいまから二年ほど前です。私、名前を言うのはこれもはばかりますが、日本の最右翼の大新聞がグロンサンはきかないということをちょっと書いたことがあるのです。ところが驚くなかれ、どういうふうに手が回ったのか知りませんが、いつの間にか消えてしまった。こういうふうにきかないものが、しかも宣伝費の内容を見てみますと三十六円からかかっている。そうすると、あなたの立場における誇大広告という意味は、どういうことを誇大広告というふうな解釈をされて取り締まりの基準にされておるのか。これは私はたいへんな問題だと思うのです、これは実際いいますと。結局いまの薬にいたしましても、中身を売るのではなくて、ムードを売っておるのであります。ききもせぬものをムードを売って、悪くいえば国民をごまかしている。そして高いものを飲ましているのです。したがって、私が一点だけあなたにお伺いしたいことは、いまも申しますように、誇大広告というものの定義なんです。私から言わせますと、法律に触れるか触れぬか知りませんが、実質的には非常な誇大広告なんです。ただ、表現上の誇大広告という解釈をされるのか、そこらに非常にデリケートな、考えなければならぬ問題があるのじゃないかと私は思うのですが、ひとつお聞かせ願いたいと思うのす。
  94. 北島武雄

    北島政府委員 不当景品類及び不当表示防止法第四条に「不当な表示の禁止」と規定いたしまして、不当表示とはどういうものかということを規定しております。それをごく簡単に申しますと品質、それから価格等の取引状況、これについて実際のものまたは競争社のものよりも著しく優秀または有利であると消費者を誤認せしめるような表示ということになるわけであります。したがいまして、たとえば原価幾らのものを幾らに売るということでなくて、品質について実際きかないのにきくような広告をすること。それからまた、価格の面につきましても実際はこれこれのところを幾らに割り引くというようなことが誇大広告になるわけでございます。
  95. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 最後です。これでやめますが、そういたしますと、私がいままで言いましたように、品質の点に重点が置かれておるということなんですが、とにかくいまのグロンサンのごとく、きかないということが事実なら、これは誇大広告になると解釈していいですね。いまグロンサンの例を出しましたが、グロンサンというものはきかないのだ、さっきの話を私ちょっと言い落としましたが、そのお医者さんのごときは実際の患者には一本も打たない、飲まさない。そして研究室や医大の学生あたりが来て、おまえ酒が好きだから酒を飲ましてやろうといって、グロンサンのアンプルをぽんぽん切ってコップについで飲む。要するにカフェインとアルコールです。そういうふうにきかないということが事実であるとするなら、いまのグロンサンの新聞広告やあるいはテレビ広告というものは、これは誇大表示だという解釈をしてもいいということになるわけですね。
  96. 北島武雄

    北島政府委員 ごく砕いて申しまして、きかないものをきくように広告するのは誇大広告になるわけでございます(山崎(始)委員「現実に出しているじゃないか」と呼ぶ)ただし、それは薬事法に規定がございまして、効能効果に関する誇大広告は薬事法で取り締まることになっております。もちろん不当表示防止法のほうも適用になるわけでありますけれども、ただし、薬関係につきましては、残念ながら公正取引委員会はそのスタッフもございませんし、知識も全然ございません。こういうことについては薬事行政を取り扱っておる厚生省において、そしてそのスタッフを動員して取り締まるのが私は本筋と考えておりますが、現在そういうふうになっておるわけでございます。先般の衆議院の予算委員会におきまして、厚生大臣もこの点に言及されまして、薬の誇大広告はどしどし取り締まる、そうおっしゃっておりますので、実際それがそうであるように期得しております。
  97. 天野公義

    天野委員長 次会は明九日水曜日、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時六分散会