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北島政府委員 昨年九月
公正取引委員会委員長を拝命いたしました
北島でございます。
あらためて申し上げるまでもございませんが、最近における
わが国経済は、一方では
高度経済成長のひずみによって生じた
過剰投資、
過剰設備の問題をかかえるとともに、他方では
消費者物価の高騰という問題をかかえ、きわめて複雑な
不況事態に直面しているのであります。
このような複雑かつ困難な
経済情勢のさなかに、
独占禁止法の番人としての大役をお引き受けしたわけでありますが、
独占禁止法が、
自由主義経済の
基本的法制であることにかんがみ、まことにその職責の重大なるを痛感いたしております。
この上は、従来
どおり独占禁止法の厳正な
運用をはかるとともに、同法が
経済の実態に即応して有効適切に作用するよう、その
運用に万全を期する
覚悟でありますので、何とぞよろしく御
指導御鞭撻のほどお願い申し上げます。
次に、
昭和四十年中の
公正取引委員会の
業務の概略につきまして、お手元に資料をお届けいたしましたが、そのうちおもな点につきまして御説明いたします。
まず、
昭和四十年には、本
委員会で御審議いただきました下請代金支払遅延等
防止法の一部を改正する法律及び
私的独占の
禁止及び
公正取引の
確保に関する法律の一部を改正する法律がそれぞれ施行され、下請関係
業務も従来にも増して一そう強力なものとなり、また仙台
地方事務所の設置、定員の十一名の
増加などにより、
公正取引委員会の活動も漸次
充実されてまいりました。
次に、
独占禁止法の施行に関する
業務といたしましては、まず国際契約等の届け出は六百四十件にのぼりましたが、
企業合理化をはかるための技術援助契約が七割以上を占めております。
会社の合併、営業譲り受け等の届け出は、それぞれ、八百八十六件、百九十八件となっており、前年に比較して合併届け出件数は若干減少しておりますが、依然として中小規模の会社の合併等が多く、特に問題となるものはございませんでした。
再販売価格維持契約の締結の届け出は、二十二件ありましたが、
公正取引委員会といたしましては、現在
物価対策等の見地からこの制度について再
検討を進めております。
次に、
昭和四十年は、
不況事態が一段と深刻化し、
公正取引委員会に対する
不況カルテルの申請は、
独占禁止法制定以来最高を数え、構造用合金鋼をはじめ十七品目について
不況カルテルを認可いたしましたが、
公正取引委員会といたしましては、一般消費者及び関連
事業者の
利益を不当に害するおそれがないかいなかについては特に十分な
検討を加えた上、
不況カルテルは
不況克服策としてもあくまで応急的なものであるとの見地から、必要最少限の業種についてなるべく短期間に限って認可することといたしており、認可後もその監視を厳重にいたしております。
合理化カルテルにつきましては、合成染料など七品目について、いずれもその継続を認可いたしました。
不公正な取引方法に関する
業務といたしましては、不当な歩積み、両建て預金につきまして、三月末及び十一月末の二回にわたり、貸し出し先の
中小企業者を対象として、その実態に関するアンケート調査を
実施いたしましたが、三月末現在においては、若干
改善のあとがうかがわれるものの、まだ十分満足すべき状態ではなく、また十一月末の結果につきましては、ただいま取りまとめ中であり、追って御報告できるものと思っております。
公正取引委員会といたしましては、大蔵省の行政
指導の成果をも勘案した上、なお
改善の実があがらないと認められれば、
独占禁止法に基づく適切な
措置をとる
所存であります。
次に、
独占禁止法違反被疑事件につきましては、
昭和四十年中に百九十九件につきまして審査を行ない、そのうち法的
措置をとったものは、審判開始決定を行なったもの一件、勧告を行なったもの三十二件、審決を行なったもの四十一件でありました。審決を行なったもの四十一件の内訳は、価格等の協定に関するもの三十件、不
公正取引に関するもの九件、その他二件となっております。
次に、下請代金支払遅延等
防止法の施行に関する
業務といたしましては、先般の改正法に基づきまして、同法第五条の規定に基づく書類の作成及び保存に関する規則及び同法第三条の規定に基づく書面の記載事項に関する規則を改正し、法改正の趣旨を十二分に発揮させるための態勢を整えました。
また、
昭和四十年には、下請代金の支払い状況を
中心に二千四百三十五の親
事業所の調査を行ないましたが、そのうち二十件につきまして法第七条の規定に基づく勧告を行ない、百三十八件につきまして行政
指導による支払い
改善措置をとりました。また、
民間の有識者からなる下請取引
改善協力者五十名を委嘱し、同法の
運用態勢の一そうの
強化をはかることといたしました。
次に、不当景品類及び不当表示
防止法の施行に関する
業務といたしましては、不当な景品類の提供を行なった販売業者二名及び不当な表示を行なった宅地建物取引業者二十一名に対して排除命令を行ない、また不当景品類の提供を行なった
事業者六十名及び宅地建物取引その他に関して不当な表示を行なった
事業者百名に対して厳重な警告を行なったほか、チョコレート業および写真機製造業につきまして公正
競争規約を認定いたしました。また、同法の
運用に消費者の意見を反映させるため、消費者モニターを二百名選定し、景品つき販売、不当表示等についての意見を求め、これを
公正取引委員会の行なう
消費者行政に反映するようにいたしました。
このほか、
経済実態に調査といたしまして、
昭和四十年一月末を時点として
企業間信用調査を、また資本金から見た上位百社につきまして、系列化と資本集中の実態調査を行ないました。
最後に
昭和四十一
年度の
公正取引委員会の
予算案でございますが、本国会にお願いいたしております
公正取引委員会関係の
予算は総額三億六百三万二千円でありまして、
昭和四十
年度と比較して四千三百二十六万七千円の増額となっており、広島
地方事務所の新設、定員三十名の増員がおもな内容となっております。機構、定員の
拡充につきましては、
独占禁止法の一部改正案を今国会にお願いいたしますので、よろしく御審議をお願い申し上げます。
今後、
公正取引委員会の
業務は、従来にも増して繁忙の度を加えるとともに重要性を増すものと考えられますが、皆様方の御支援を得まして重責を果たしたいと思っておりますので、どうぞよろしく御
指導御鞭撻のほどをお願いいたします。(
拍手)
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