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1965-12-23 第51回国会 衆議院 商工委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年十二月二十三日(木曜日)     午前十時四十六分開議  出席委員    委員長 内田 常雄君    理事 浦野 幸男君 理事 小川 平二君    理事 始関 伊平君 理事 田中 榮一君    理事 中川 俊思君 理事 板川 正吾君    理事 加賀田 進君 理事 中村 重光君      稻村左近四郎君    遠藤 三郎君       小笠 公韶君    海部 俊樹君       黒金 泰美君   小宮山重四郎君       佐々木秀世君    田中 龍夫君       田中 正巳君    田中 六助君       中村 幸八君  早稻田柳右エ門君       大村 邦夫君    桜井 茂尚君       沢田 政治君    田原 春次君       麻生 良方君    山下 榮二君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     北島 武雄君         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局長)  竹中喜満太君         通商産業政務次         官       進藤 一馬君         中小企業庁長官 山本 重信君         中小企業庁次長 影山 衛司君  委員外出席者         総理府事務官         (経済企画庁調         整局参事官)  田中 弘一君         労働事務官         (職業安定局雇         用調整課長)  広政 順一君         国民金融公庫理         事       油谷 精夫君         中小企業金融公         庫理事     馬場 靖文君         中小企業信用保         険公庫理事   菅博 太郎君         参  考  人         (商工組合中央         金庫理事長)  北野 重雄君         参  考  人         (全国信用保証         協会連合会常務         理事)     河村 篤信君     ————————————— 十二月二十三日  委員松井政吉辞任につき、その補欠として田  原春次君が議長指名委員に選任された。 同日  委員田原春次辞任につき、その補欠として松  井政吉君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  中小企業信用保険法の一部を改正する法律案(  内閣提出第九号)  中小企業信用保険臨時措置法案内閣提出第一  〇号)      ————◇—————
  2. 内田常雄

    内田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出中小企業信用保険法の一部を改正する法律案並びに中小企業信用保険臨時措置法案を議題といたします。  本日は、両案審査のため、参考人として全国信用保証協会連合会常務理事河村篤信君、商工組合中央金庫理事長北野重雄君の御両氏が出席されております。  参考人の各位におかれましては、御多用中のところ御出席をいただきまして、まことにありがたく存じます。  政府当局並びに参考人に対して質疑の申し出がありますので、これを許します。大村邦夫君。
  3. 大村邦夫

    大村委員 これは通産省と、それから経済企画庁関係があるのですが、御承知のように、政府は去年の暮れには、春ごろから景気が上向く、そういうことを言っておりました。それがはずれると、今度は春ごろになると、秋口から上向く、こういうように言ったわけです。ところが、事実は、予想外に深刻な不況から抜け出すことができませんでした。  思うに、一九六五年の日本経済というものは、日銀公定歩合引き下げから始まって、三月には山陽特殊鋼倒産をした。四月になりますと、さらに公定歩合引き下げが行なわれました。ここで前年以来の金融引き締めは全面的に緩和をされたことになるのでありますが、五月には証券業界危機が訪れました。そして山一証券に対する異例の日銀融資が行なわれたのでありますが、同じころ鉱工業生産下降カーブを描き始めました。そして六月にはさらに公定歩合引き下げが行なわれましたが、なお景気回復見込みがつかなかった。  七月には財界からの突き上げがありまして、政府財政面からの景気てこ入れ政策をとりました。そしていま問題になっておりますところの年内に公債を発行するということに踏み切ったわけでありますが、この間におきまして企業収益はふるわない、倒産は昨年を上回る、それから消費者物価のみが著しく高騰した、個人生活所得伸び悩みと消費者物価高騰とのはさみ打ちになって、個人消費はほとんど伸びなかった。設備投資も振わず、輸出だけが異常な伸びを見せましたが、しかしこれも自動車の輸出や鉄鋼に見られますように、国内価格を割るダンヒング的な要素がかなり含まれております。一方税収は伸びない。御承知のように国税だけで二千六百億からの不足が予想されております。また昨日も島口委員からの質問の中にありましたが、四十年度の経済成長率は実質二%台と見られております。このような落ち込み方というのは三十三年以来七年ぶりであるということでありますが、まさにこの一年間というのは初めから終わりまで不況の年であったと言わざるを得ないのであります。そうして、いま国民大衆物価上昇に、あるいはまた財界佐藤内閣景気対策消極性に大きな不満を持っております。少々財政面からのてこ入れをしたところでも景気は上向かない。物価のほうは、当面安定するどころか上昇を押えるのさえ困難であります。こうした状況というものは一体どこから起きたのか、その要因というものについて、本来これは経済企画庁関係ですが、通産省お尋ねをしたいと思います。
  4. 山本重信

    山本(重)政府委員 若干私の守備範囲を越える点ですが、私の立場から観測しておりますことを申し上げます。  ただいまお話がございましたように、当初の政府景気動向についての見通しは、率直に言って若干甘かった点があったと反省しなければならないと感じます。それから、昨年の春ごろに景気対策といたしまして、金融面対策とそれから財政面対策とにつきましてどういう方針をとるべきかについていろいろな論議が行なわれましたが、当時、最初のころはどちらかといいますと、従来の経験から見まして金融さえゆるめていけば景気はそれによって上昇するのではないか、こういう見方が実は多かったように思います。ところが、実際には案に相違してそういう期待ははずれまして、金融はゆるんだけれども景気上昇しないという現実にぶつかったわけであります。私は当時から中小企業立場で見ておりまして、やはりこれは需要喚起する以外に景気上昇のかぎはないというふうに考えて、そういう意見を持っておったのでありますが、なかなか政府部内の見解もそういう方向に統一できませんで、そのために景気対策としての需要喚起という手が実はだいぶおくれたように思います。その間に過去の高度成長過程におきまして企業がいろいろ設備投資その他を大幅にいたしました一つの反動があらわれまして、先生がいま御指摘のような足取りをたどった次第であります。私は、端的に申し上げまして、やはり最終需要が現在不足しているというところに現在の景気がもたついている、なかなか上昇しない根本の原因があると思います。したがいまして、この最終需要をいかにして拡大していくかということが景気対策の基本であろうかと思います。政府としましては、そういう方向をはっきりと打ち出しましたのが七月の末でございまして、それ以来財政及び財政投融資の面でいろいろな方針を打ち出したのでありますが、ようやくそれが実施に移ってまいりましたのが十一月ごろでございますので、その効果が今日までまだあらわれていないというのが実情であろうかと存じます。
  5. 大村邦夫

    大村委員 私のただいまの質問は、るる申し上げました不況というのは一体どこからきたのか、それを克服する対策としてはどうかというところまではまだいかなかったわけです。不況原因には私はいろいろあると思います。昨日も大臣が御答弁になりましたように、日本経済過熱化、そこからまたいろいろな現象が起きて財政的にも行き詰まりを来たした、こういうことも言えるのですが、具体的に言えば高度成長の中心の柱である過剰設備投資、そこから生まれるところの過剰生産、これがやはり私は一番大きな原因ではないかと思うのです。もっと言えば、需給のバランスがくずれたということであります。したがってこの主因であるところの過剰投資なり設備なりあるいは過剰生産、これを克服していかないと不況というものはなかなか克服できないのではないか、こういうように考えるのです。もちろんどんどん品物はできる、製品はできる、それに見合って需要があれば問題はないのでありますが、過剰生産ということになれば、そこに何らかの対策をとらなければならない。したがってこの過剰投資なり設備なり過剰生産について政府はどういうような手を打つのか、どの企業もみんなかかえて、倒産しては困る、そこで全部めんどうをみるのか、私どもめんどうをみる、こういう思想に立っておりますが、そうしていきますと一体過剰生産というもの、あるいは過剰設備というものが解消していくのかどうか、ここに私は大きな問題があると思うのです。そういう点についてお尋ねをしたいのです。
  6. 山本重信

    山本(重)政府委員 現在の景気の停滞が需要と供給のアンバランスにあるという点は、先生指摘のとおりであろうと存じます。それに対する対策でございますが、私は業種部門によってかなり事情は違うと思います。全部同じようには考えられないと思いますけれども、ある部門におきましては確かに設備が過剰になっておりまして、ある程度スクラップにしてそして需要とマッチさしていくという措置が必要であろうかと思います。たとえば繊維のある業界等にはそういうことが言えるかと思います。また他面ある業種におきましては、設備そのものは現在は若干余っているけれども需要が上向いてくればそう過剰にならないというような分野もあろうかと思います。したがいまして業種業種によりまして、またそれぞれ程度も違いますので、ある部門ではスクラップ化を推進する、またある部門では設備の方面にはそれほどの手を加えないで、やはり全体としての需要喚起をはかっていく、こういう両面の対策が必要であろうかと存じます。
  7. 大村邦夫

    大村委員 その最終需要喚起ですね。末端需要喚起、そういうものはまず第一に私ども考えられるのは賃金の引き上げ、それから大幅の所得減税、さらに物価の安定、また政府が若干考えておられる住宅建設とか生活環境投資拡大、さらに農業、中小企業など低生産部門への国の積極的な援助、あるいは政経分離と言いながらもなかなか実行の伴わない社会主義国圏との貿易拡大、そういうものが必要になってくると思うのです。ところが先ほどもちょっと御答弁の中にありましたある部門においてはある程度のスクラップ化はやむを得ない、こういうことが言われましたが、生産調整勧告操短、この生産調整あるいはそのために起きる労働者整理さらに今日実施をされておる賃金の切り下げ、首切り、一時帰休、そういう措置をとっておるわけでありますが、これは、いま言われた最終需要喚起どころか縮小経済の道じゃないですか。むしろ私は、最終需要というものはこういう縮小経済をたどる限りにおいては喚起をされない、そういうように考えるのですが、その点はどうなんですか。
  8. 山本重信

    山本(重)政府委員 ただいま若干の業種で行なわれております生産調整、減産の動きは、確かに最終需要という面から見ますとマイナス方向であろうかと思います。それらの業界があえてそういう方向に動いております直接の原因は、生産過剰のために在庫がふえ、売れ行きが悪いために値段が下がってコストを割っている、とてもそういう値段では経営ができないという危機に直面して、全くやむを得ない、緊急避難的な措置としてやむを得ないというふうに私は考えます。したがいまして、これは、景気全体の動向を押し上げていくという面から見ますれば、むしろマイナスの効果炉ある措置でございますので、その緊急避難的な措置はできるだけ早目に解消するのがいいのではないか、そのためには全体としての需要を早く喚起していくという手を早く打って、それを実施に移していくということがより根本的な解決策である、こういうふうに考えます。
  9. 大村邦夫

    大村委員 できるだけ早くということなんですが、できるだけ早く景気回復して、生産調整なりあるいは労働者整理、そういうものを行なわないようにして、そうして個人消費需要増大をする。その間においてはどうなるのですか。御承知のように今日政府不況対策をやるとおっしゃいますが、学卒新規労働者あたり就職難です。就職しようにもなかなかそれが見つからない。また一方、労働者は、いま申しましたように帰休制度あるいは首切り等でちまたにあふれておる。こういう形では最終需要喚起はできませんが、それをすみやかに景気回復によって解消していくというが、その間におけるこれらの人々の立場というのはどういうようになるのですか。やむを得ないのですか。
  10. 山本重信

    山本(重)政府委員 いまお話しの点が実は現在の経済情勢のもとにおいては非常にむずかしい問題の一つであろうかと思います。中小企業立場から考えてみましても、親会社あるいは大企業生産調整をしますために仕事が逆に減りまして、非常な苦況に立っておるという現象方々に出ておるのでございます。これはまことに緊急避難的なものとして一応やむを得ないと思いますけれども、これを打開する措置として、先ほど申し上げましたように政府財政あるいは財政投融資を早く実施に移す、促進するという措置をもっともっと馬力をかける必要があろうと思いますし、また輸出の面におきましても、可能な範囲でさらに輸出を伸ばして、そして需要喚起して仕事をつくり出していく、これが必要であろうかと思います。中小企業はそういう場合に当面非常な苦況に立つわけでございまして、方々で話を聞きましても、いまはもう仕事がないということが一番つらい点だというふうに訴えを聞くのであります。何とかしてその仕事をつくりたいわけですが、それには景気全体が上昇しなければできない。その間にまじめに経営しておる中小企業零細企業倒産するというようなことは、まことに見るに忍びないわけでありまして、やむを得ず、その段階をつなぐために相当思い切った金融をしていくということが、これは次善の策としてではございますけれども、積極的にやって、つなぎをしていきたい、かように考えております。
  11. 大村邦夫

    大村委員 ただいまの御答弁によりますと、生産調整は一時的な措置だ、こうおっしゃいます。よしんばそれが一時的な措置であるにしろ、そのほかに企業合併とか合同とかいう問題があります。これらは私は一時的な措置ではないと思うのです。この点につきましてはあとで触れることにいたしますが、さらにまた労働者整理ですね。整理された労働者がまたいつでもその企業に帰られる体制ができるとは私は断言できないと思う。そうしますと、これらの整理された労働者というものは一体どこに行くのか、この点についても実は労働省お尋ねしたいのですが、その前にちょっと長官お尋ねしますが、あなたは輸出増大ということを言われましたね。輸出は当初の予定よりずいぶん伸びました。これから先、輸出がそんなに伸び見通しがあるのですか。私はあまりないと思うのです。そこら辺についてひとつお尋ねしたいのです。言うことはいろいろ羅列はできますが、現実輸出伸びるか、私はそう伸びないと思う。
  12. 山本重信

    山本(重)政府委員 ただいま輸出は非常に順調に伸びておりますので、いまのような伸び率をさらにふやしていくということは、これはなかなかたいへんなことかと思います。しかしながら、努力をいたしませんと逆に伸び率が非常に落ちてくることもまた心配しなければならないわけでありまして、やはり輸出にはできるだけたゆまざる努力を続けることが必要であろうかと思います。一つの例といたしまして、たとえば低開発国等プラント類機械等輸出します場合も、延べ払いでありますが、とかく最近は国際競争が激しいために条件で負けて日本が注文がとれないというようなケースもございます。また相手の国も外貨事情が必ずしも信頼できないというようなことから、つい消極的になっておる面もございます。そういう点でさらに一歩進めまして、積極的な運用をすることによってそういう部門への輸出を伸ばすこともまたする余地があろうかと考えております。
  13. 大村邦夫

    大村委員 輸出を伸ばすためには次のことが考えられると思うのです。まず第一には、その企業活動力を強めるといいますか、それによって国際競争力を強化する、これが一つあると思うのです。その経済活動力を強めるということになると、おのずから近代化とか合理化とか、あるいは合併とか合同とか——最近行なわれておりますね、そういうことが進められていくと思うわけでありますが、そうしますと、やはり先ほど申し上げましたように、労働者整理というものは必然的に私は行なわれると思うのです。それからさらに、輸出を伸ばすという二つ目の問題は、先ほど申しました社会主義国との貿易圏拡大ですね。そういう問題についても積極的にやらなければならない。ところがいまそういう態勢にあるのですか。私はないと思うのです。その点どうですか。
  14. 山本重信

    山本(重)政府委員 社会主義国との貿易につきましては、いろいろ国際外交上の問題等もからみますので、単に商売の観点だけからいけない面もございますけれども、そういう情勢の許す範囲において、やはりできるだけ社会主義国との貿易を盛んにするということが必要であろうかと存じます。  具体的に申し上げますと、たとえば中共との関係は国交にも回復しておりませんし、いろいろ問題がございますけれども、ソ連との関係につきましては、すでにことしまで三年間の貿易協定がありまして、この三年間に相当大幅な伸長を示してきておりますし、また今後来年から五年間の貿易協定をつくるべく、いま話が進んでおりますので、そうした貿易協定をベースにして相当貿易拡大が期待できるのじゃないか、かように考えます。
  15. 大村邦夫

    大村委員 貿易関係中小企業庁長官に聞いてもしようがありません。大臣に聞きたいのです。  そこで先ほど労働省お尋ねしました整理された労働者はどういうふうに吸収をしていくのか、その具体策をひとつお尋ねします。
  16. 広政順一

    ○広政説明員 中小企業におきまして整理された労働者をどういうふうに吸収するか、こういうお尋ねでございますが、一般的に申しまして、ただいま中小企業については特に労働力不足だというのが、一般的な風潮かと存じます。その中におきまして、私どもは特に若年労働力の場合でございますれば、これは特に中小企業のほうでほしがっているという実情がございますので、職業安定官署におきまして、積極的にこれが職業紹介につとめることはもちろんでございます。  同時に中高年齢層の者になりました場合に、中高年齢者につきましては、私ども特別に職業安定法に基づきまして、中高年齢者就職促進措置ということで、国が特別な御援助を申し上げて、就職促進をはかっております。こういうことで私ども職業安定官署におきます種々援助対策を通じて、これらの就職をさらに促進するようにいたしたい、このように考えております。
  17. 大村邦夫

    大村委員 中高年齢層雇用促進ですが、私はおっしゃるように、法律的な裏づけは幾らかできておるようですが、そう促進されていないと思うのです。第一、今日これらの中高年齢層雇用対象ですが、大企業はそんなに雇わないです。中小企業はこれまた家族構成がかなりあるのですから、いろいろ厚生福利施設とか、あるいは給与の面でもかなりの高額といいますか、一般の新規学卒よりも多く出さなければならないし、あるいは家族手当も出さなければならない。そういう実態です。だからこそ政府としては国の援助的な、雇用促進的な法律をつくられたと思うのですが、なおかつ私は実態としては促進をしていないと思うのですが、どうなんですか。  それからもう一つ中小企業人手不足だとおっしゃいました。しかし私はここ一年前の実情と今日の実情はかなり違うと思うのです。なるほどここ一年くらい前には、中小企業等においては人手不足で悩んでおりました。学卒新規労働者というものはほとんど大企業吸収をされておる。ところがこういうように不況になってきますと、大企業はそう雇用しない。それじゃそれが中小企業のほうにいくかというと、賃金関係もあるが、不況のしわ寄せが中小企業に相当きておるのですから、中小企業といえどもそう雇用をしない。そこに私は問題があると思うのですが、どうなんですか。
  18. 広政順一

    ○広政説明員 中高年齢措置につきましては、制度が発足いたしましてからことしで三年ということで、私どものほうでこれは力を入れて進めているわけでございますが、いずれにいたしましても、特に私ども中高年措置ということで、その労働者労働者一人一人にそれぞれ応じた職場ということで、賃金の問題なりあるいは家族の問題なりあるいはその他種々環境の問題、あるいは教育の問題ということについて、一人一人について当たりまして、それにおのおの適したというところで就職先をいろいろごあっせん申し上げている。その過程におきまして、場合によりましては転職するために職業訓練ということも必要でございましょうし、あるいはある企業との間で雇用の予約ということを通じまして、何と申しますか、職場に適応するための訓練という手もございますし、あらゆる手を講じまして、どの手が一番その労働者によろしいか、向くかという点でお世話申し上げているということでございまして、実績的には次第に上がってまいってきておる、こういうふうに申し上げることができるかと存じます。
  19. 大村邦夫

    大村委員 御答弁にありましたように、実績は幾らか上がっておると思います。それは当然そのことだと思いますね。国家的にめんどうを見ていなかった場合と、それから見るようになった場合と、それは違うと思うのです。早い話が職安窓口へ行って見られると一番よくわかります。いまごろはぐっとふえていますね。だから政府めんどうを見る数そのものはふえておっても、不況倒産あるいは整理等によってあふれるところの労働力というものは、政府の取り扱った実績と見合う以上のものがある。これは今日非常に深刻な問題だと私は思うのです。そういう点について、政府としてなお今後どういう手を打つのか。ただ、いまあるものを個々に検討して、そしてできるだけ話が折り合えばお世話をするということなんですか。世話をするにしても、それを引き受ける企業がなければならないわけですね。企業経営実態というのは、そう人をどんどん入れるほど景気がよくはないと私は思うのですが、そういう点はどうなんですか。
  20. 広政順一

    ○広政説明員 求人につきましては先生おっしゃいますとおり、ことしに入りましてから幾らかずつ落ちてまいっているということは御指摘のとおりでございます。しかしながらこの求人が数の上で落ちてまいってはおりますけれども、私どものほうといたしましては、中高年の先ほど申し上げました措置ということで、これは十分お世話申し上げられるというふうに存じて、この対策をさらに強力に進めてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  21. 大村邦夫

    大村委員 高年齢層めんどうは十分見られるとおっしゃいますが、また見られる見込みとおっしゃいますが、くどいようですが、先ほどの職安等窓口を見られたらわかると思うのですが、そう簡単にいかない。それから新規労働者については、御承知のように今日現在で、学卒あたり就職率は昨年に比べてかなり低下しておりますね。本人ももとより、父兄もずいぶん深刻な問題として悩んでおるのですが、そういう新規労働者についての雇用が、今後十分いくのかどうなのか、それは景気がよくなればもちろんそうでありましょう。ここ当分景気も立ち直りそうにもないし、うまくいかないと思うのですが、その辺についてはどうお考えなのですか。それがただ、就職希望者が職業あるいは職場を厳選するためにそれで就職難だというだけではないと私は思うのです。私ども郷里におりましても、どこでもいいからひとつお世話してください、そういう声がかなり高い、去年に比べてそれが非常に高いわけであります。私どもは頭が痛いところでありますが、政府はそういう点についてどうお考えですか。
  22. 広政順一

    ○広政説明員 おっしゃるとおり、現時点におきまして求人が減ってきた、それから求職は大体横ばいか幾らか上がっている程度という状態で、求人、求職の結合が幾らか下がり傾向にあるということは御指摘のとおりで、安定所の窓口にもそれがあらわれているものと存じます。  ただ、いま先生指摘の新規労働力の問題につきましては、四十一年三月に卒業する中卒あるいは高卒の人たちにつきまして、私ども安定所の窓口を通じて調べました結果によりますと、大体中学につきましてはそれぞれ就職できるのではないか、それから高校についても大体まいれますが、ただ問題は高校の女子の場合、事務の労働だけしか私はいきたくないというようなことで、いわゆる職場転換と申しますか、その転換について私どもがいろいろ苦慮いたしておるところでございます。けれども、そこいらは就職される方と安定所あるいは事業場との連絡を密接にしながら求人と求職がうまく結びつきますように努力を重ねてまいりたい、このように存じております。
  23. 大村邦夫

    大村委員 最終需要喚起ということから、余剰労働力をどうするか、このことも最終需要喚起には非常に密接な関係があるので御質問申し上げましたが、時間の関係で少し先を急ぎます。  通産省お尋ねをしたいのですが、勧告操短ですね、今日鉄鋼はじめかなり行なわれておりますが、この実態実情というものはどういうようになっておるか、ちょっと概要をお尋ねしたい。
  24. 山本重信

    山本(重)政府委員 勧告操短は、ただいま鋼材について行なっております。中厚板、それから中型形鋼、普通線材、それから粗鋼につきまして、それぞれ生産数量を一定の限度内に押えるように通産省から関係会社に指示をいたしまして、そして減産をいたしております。
  25. 大村邦夫

    大村委員 わかりました。  そこで、これをちょっとたな上げしておきますが、御承知のように、第四十六通常国会以来三たび提案されました特定産業振興法ですね、これのねらいといいますか目的は、私が説明しなくともおわかりと思いますが、いわゆるEECの躍進とかあるいは貿易自由化の展開に伴ってそれに対処するために企業合同、それから企業間の提携、こういうものを促進をして企業国際競争力を強化しようという、こういう考え方だったと思うのです。私どもは、この法案が現行の独占禁止法によって容易でないと見られておるところの企業合同合併、そういうものをスムーズにする、あるいは合理化カルテルの名のもとにおけるカルテル規定の緩和、そういうこともねらっておるので反対をいたしまして、ついに日の目を見ることができませんでした。法案が達成しなかったといっても、通産省はこれではしょうがない、万策尽きたということで、手をこまねいておくわけにはいかなかったと思うのです。何とかして企業活動力を国家的あるいは国民の利益と合致する方向で強めていかなければならない、そうお考えになったと思うのです。したがって、経済が民間の自主的な発意と責任において動くにしても、そこに政府の意思というものが当然からんでくると思う。その意思の一つとしていま勧告操短という問題が私は出たと思うのですが、この政府の意思というものは、単に勧告操短だけではなしに、企業合同合併という形でも出てくると私は思うのですが、そういう意思はいまどういう形で進められておりますか。
  26. 山本重信

    山本(重)政府委員 企業合併等は、国際情勢その他からいって競争力を強化するために必要な場合が出ていると思います。ただいまそういう情勢下にありまして、通産省としましては、そういう方向に必要があれば進むことについては、これを指示する考えは持っておりますけれども、具体的に行政措置として、あるいは法律に基づきましてそういうことを直接指示したり何かするということは特にすべきではない、また終局的には業界の自主的な判断によるものでございますから、その辺は一つの行政の限界がございますので、ただいままでにはっきりそうした指導を具体的にやっておるという段階ではございません。
  27. 大村邦夫

    大村委員 その行政の指導の限界と言いましたが、ここが問題なんです、勧告操短との関係で。先ほど長官は指示をしておるとおっしゃいましたね、そうなんですか。勧告操短、これは指示ですか、——もちろん指示ですね。
  28. 山本重信

    山本(重)政府委員 具体的に生産数量を各社に通知をいたしまして、そしてそれに基づいて会社のほうに減産を要請しております。
  29. 大村邦夫

    大村委員 独禁法との関係をどうお考えですか。
  30. 山本重信

    山本(重)政府委員 独占禁止法の関係におきましては、行政官庁の行為は直接その対象になっておりませんので、特に独禁法との関係はないというふうに考えております。
  31. 大村邦夫

    大村委員 独禁法との関係はないということですが、あなたたちが指示をしたりあるいはその他の方法でその目的を達成するといいますか、操短をさせたり、あるいは合併をする場合に、官民協調方式というのが一つありますね。これは従来から佐橋さんを筆頭として強調されてきたところで、特振法があろうがなかろうが、官民協調方式で達成するのだ、こういうことがいわれてきたと思うのです。政府企業が共通の目的に向かって努力をしていく、そのためには政府企業が常に接触をする、接触をして、協議と情報の交換を行なって生産の検討を行なう、これはある程度私は了解ができるのです。また場合によっては投資調整、生産調整の指導も政府は行なう、これがいま言われた点だと思うのです。もともと投資とか生産を需要に合わせていくということは、企業自体が考えていく問題だと思うのです。それぞれの企業が、自分の持つ需要が将来どういうふうに伸びていくかということを見通しながら、それぞれの企業の判断においてまずやるべき問題であります。ところが一企業ではなかなかそういう判断がむずかしい。だから数企業が集まって、お互いに資料を出し合って判断をする、そういうことは私は許されると思うのです。また通産省がそれに対してある程度の意見を述べるということも私は問題がないと思うのですが、これを通産省の指示に基づいてやるということになると、これは問題があると思うのですが、ないですか。
  32. 山本重信

    山本(重)政府委員 具体的に、鉄鋼の場合について申し上げますと、生産過剰の状態から価格が非常に下がりまして、経営にきわめて深刻な影響を与えるような状態になったのでございます。本来ならば、法律的には、独占禁止法に基づいて、あるいは不況カルテルを結成するという手続もあるのでございますけれども、業者の数が非常に多くて、業界のそういう話し合いができるのを待っておることは、事実上、百年河清を待つような状況でございますので、目的は同じでありますが、緊急を要するということで、行政官庁が乗り出して、具体的に生産の指示をする。それによって減産をして、市況を、最小限度コストを割らない状態に維持しようという措置をとった次第でございます。
  33. 大村邦夫

    大村委員 公取委にお尋ねしたいのです。いまの問題ですが、四月の二十七日ですから四十八通常国会です。このときに、私は問題を取り上げて指摘をしたのですが、公正取引の委員長——なくなりました渡邊さん、それから通産省企業局の島田局長、その他佐橋さん等も含まれまして、いろいろ勧告操短、独禁法との関係等について話し合われたようです。そのことが新聞に載りまして、「官民協調懇談会で行なう投資調整は通産省の責任の限界さえはっきりすれば認める。即ち通産省が責任を以て行なう行政指導による投資調整は独禁法の違反にしない。」それから、「(2) 民間業者の協定による投資調整のうち適法なものには公取委が事前了解を示すようにする。」「投資調整カルテルには、現行独禁法の認めている不況乃至合理化カルテルの規定を適用して、その認否を決定する。」こういうように新聞に出たわけであります。さらに新聞では、「投資調整問題をめぐる独禁法的混迷に一つの終止符を打ったものであり、準司法的官庁としての性格上、ともすれば国の産業政策には理解不充分といわれていた公取が、投資調整に関する限り極めて前進的姿勢を示したものといっていいのではあるまいか。」こういうことが出まして問題になりました。結局、渡邊委員長は、私はそういうことを言った覚えはありません。通産省のほうも、またそういうことを確認した覚えもありません、こういうことになったわけですね。先ほど長官とお話をしたのは勧告操短なんです。それで、官民協調懇談会の中で、あるいは行政指導といってもそういう形もとられる、あるいは文書通達もあると思うのですが、そういう形で勧告操短をやる、場合によっては投資調整まで私は発展をしておると思うのです。そういうものに対して公取委はどういう見解を持っておられますか。行政指導ならいいですか、緊急やむを得ない場合。
  34. 北島武雄

    ○北島政府委員 私、九月十四日に、いまはなき渡邊委員長のあとを継ぎまして、公正取引委員長を拝命いたしたのでございますが、ただいまお話の四月中における公正取引委員会通産省の首脳部の方々との懇談会の模様につきましては、渡邊さんからも話を承るすべももうございませんので、その当時どんな模様であったか実は存じないのでございますが、公正取引委員会立場といたしましては、操短なりあるいは投資の調整ということは、本来、業者の自主的な判断と責任において行なわるべきものである。こういう考え方を持っておるわけであります。ただし、行政官庁といたしまして、業界を指導する権限と責任を有することもまたもちろんでございます。行政官庁が、その責任と権限の範囲内において行政指導をするという場合においては、独占禁止法は私的独占の禁止でありまして、事業者または事業者団体を拘束するものでございます。行政官庁を拘束するものではございませんので、公正取引委員会といたしましては、通産省がその責任と権限の範囲内においておやりになるなら、公正取引委員会としては口を出す余地がない、こう一応考えておるわけでございます。ただし、その場合におきましても、あるいは勧告操短などということが、えてして業者間のカルテルの隠れみのになりやすいといういままでの実情でございますので、勧告操短につきましても、その実情、推移を見守って、もし必要あればそこに申し入れをするというようなことに相なっておるわけでございます。この態度はいまもってずっと続けてきておるわけでございます。
  35. 大村邦夫

    大村委員 ちょっと聞き漏らしましたが、投資調整ですね、これは通産省の責任の限界さえはっきりすれば認められるのですか、独禁法との関係は問題はございませんか。
  36. 北島武雄

    ○北島政府委員 問題は勧告操短、さらに投資調整まで発展いたしておりますが、いまは投資調整の場合に限って申し上げますと、投資調整につきましても、もちろん先ほどお話しのように、業者が自主的に判断して、その責任において、将来の需給状況を一応見通しの上、投資を調整するのが本来のたてまえでございますが、業者、団体が集まってお互いに情報を交換して、その交換に基づいて業者がそれぞれ意思決定する。これもまた独占禁止法の禁ずるところではございません。その間におきまして、行政官庁がこれに介入いたしまして、行政官庁としての意見を述べて、そうして個々別々の企業者に対して行政指導する、これは行政官庁の権限の範囲内であるかと考えておるのであります。
  37. 大村邦夫

    大村委員 そうしますと、カルテルによってそういう投資調整をやる場合、行政指導によってやる場合と実質的には同じなんですね、結果としては。そうしますと、官民協調の懇談会あたりで、民間企業通産省が盛んに意見の交換をやる。そうしますと、カルテルというものの隠れみのですか、行政指導の……。そういうことになる可能性が私は強いと思うのです。そういう点について、公取委はどういうようにそこら辺を査察するんですか。
  38. 北島武雄

    ○北島政府委員 この点は、勧告操短、過去の不況時期において、昭和三十二、三年ごろの不況時期において、約三十に近い勧告操短が行なわれておったわけでございますが、勧告操短は先ほどお話しのように、また私も申しましたように、えてして業者団体がほしいままにお互いに協定して、それを行政官庁がそのまままるまるのんで、行政指導という名のもとに行なわれますと、カルテルの隠れみの、こういうことになるわけであります。こういうことは物価対策上おもしろくない。官庁が勧告操短をする場合には、これは多くは独禁法上の不況カルテルの要件を備えておることが多いのでございますが、そういう場合には、独禁法上の不況カルテルでやっていただきたい、こういうことをずっと通産省に昔から申し入れておりまして、前池田内閣においても、その趣旨を採択になられまして、通産省勧告操短は今後やめにする、こういうことになってきておるわけであります。ただ最近の鋼材問題につきましては、これがわが国の重要な基幹産業でございますし、そうして早急に生産を調整する必要がある。しかも業者間のまとまりはきわめて困難であるというような状況で、通産省がその権限と責任において勧告操短を現在やっておる、こういう状況でございまして、現在、勧告、操短のほうは鋼材関係だけでございます。
  39. 大村邦夫

    大村委員 私の聞いたのは、いまの隠れみのですね。そういうことでやられた場合に、それは公取委と通産省関係でお互いに信頼はあると思うのですけれども、しかし公取委には独自な立場があるのですから、それがはたして隠れみのになっておるかどうかということを十分査察しなければならぬでしょう。それをただ信頼だけでということでは済まされない。どういうようなめどをつけてあなたたちは査察をしておられるのか、このことをお尋ねしている。
  40. 北島武雄

    ○北島政府委員 勧告操短はえてしてカルテルの隠れみのになりがちでございますので、粗鋼の減産勧告の際におきましても、公正取引委員会といたしましては、厳重にそれを見守って、そしてもしそれが業者間においてもカルテル行為があるならば、独禁法上の問題として取り上げる。それからあるいはまた勧告操短の結果、著しく一般消費者のあるいは関連事業者の利益を害するということになりますれば、責任官庁に申し入れる、こういうことにいたしておる次第でございます。
  41. 大村邦夫

    大村委員 要するに消費者の云々というよりもあらわれた実態ですね。これが隠れみのになったのかどうなのか、行政指導という名のもとにおいて、実際はカルテル行為なのかどうなのか。それはたとえば一斉に操短をやる、あるいはまた設備の調整を同じ時期にやる、そういう実態を見てあなたたちはお考えになるんじゃないですか。
  42. 北島武雄

    ○北島政府委員 あくまでも実態を見て、私のほうは監視を続けるわけでございます。単に行政官庁が勧告したというそれだけによって、直ちにこれは独禁法上問題ないということにはいたしておりません。その実態に基づき、その裏にカルテルがありますれば、これは独禁法上の問題として取り扱う、こういうことでございます。
  43. 大村邦夫

    大村委員 この問題は非常にデリケートな問題でありまして、私どもがここで論じても、実際に事象の指摘をしないと、あるとかないとかいうことになると思うのです。しかし今日のように不況が深刻化してきますと、こういう懸念というのは多分に予想されるんです。そこら辺については公取として、今後ともひとつ十分監視してもらいたいと思うのです。  それから、企業合同ですが、最近では合併劇といわれるくらい、あるいはまた日本経済の動きを変えるような規模で、盛んに合併が行なわれておるわけです。たとえば、十一月から十二月にかけて具体化したおもな合併だけをあげましても、東洋紡と呉羽紡の合併をはじめ、それから東化工、鉄興社、東芝電興の合金鉄三社の合併、それから住友セメントと野澤石綿セメントの合併、それから丸紅と東通、川崎重工と横山工業の合併、そのほかいろいろうわさされておるものをあげるとずいぶんあるようですね、私の知っておる範囲内では。というのは、この前の商工委員会でお尋ねをしたのですが、昭和三十五年ごろまでは三、四百件であったものが、三十六年には五百九十一件、三十七年には七百十五件、三十八年に入ると九百九十七件というふうに大幅にふえております。三十九年には多少落ちまして八百六十四件ということになっておりますが、この合併景気循環との関係ですね。それは一体どういうようになっておりますか。いわば不況のときには合併が多いのかどうなのか。そこら辺を合併の推移からひとつお尋ねしたいのです。
  44. 北島武雄

    ○北島政府委員 過去における合併の推移につきましては、ただいま御指摘のとおりの数字がございます。いままでの公取委に届け出のありました合併の件数によりましてその推移をうかがいますと、昭和三十五年度までは比較的合併の件数に増減がないという状況でまいりました。その後急速にふえてまいっております。三十五年度あたりまでの合併は、主として大部分が中小企業同士の合併でございます。これはその当時の二、三回の不況期におきまして、不況に対して中小企業が耐えられないで合併した事例が多いように考えられます。その後、三十六年以後の合併になりますと、これは不況の場合もありますけれども、一方におきまして、いわゆる開放経済体制に即応して将来の国際競争力を強化する、こういう意味におきまして、大企業合併がだんだんと見られてくるようになったのであります。一般的に不況期におきましては合併が進展する、こういわれておりますが、ただ昨年、三十九年度は、御指摘のように八百六十四件、三十八年度の約千件に比べますと、若干落ちておりますが、これは多少不況期において合併が進むといういままでの公式に対する例外のような感じもいたしますけれども、内容を見ますと、この不況期におきまして直ちに大企業合併がちゅうちょされる、将来の見通しをつけた上で合併をする、こういう状況にきておるのではないかと思われます。ただいまの状況では、本年度におきましては、一応十一月末までの数字が六百四十件でございますので、年度内におきまして大体三十九年度程度の合併になるのではなかろかと考えております。これが四十一年度になるとどういうことになりますか、最近の過剰設備等をかかえております業界の再編成もいろいろ問題がございますので、四十一年度になりますとあるいは合併がさらに進展することになるか、こういうような感じをいたしております。
  45. 大村邦夫

    大村委員 合併景気変動とはあまり関係がなかったということなんですが、さらに三十五年からは開放経済体制に備えて合併がだんだんふえてきた。私は、この合併の推移を見てみると、要するに不況が非常に深刻でなかったということが言えるのじゃないかと思うのです。企業経営者として、死活のせとぎわまでというような逼迫感はなかった。そういうところが、景気変動によって合併が必ずしも促進されたということにはならないと思うのです。ところが今日では非常に不況が深刻なんですね。その不況の深刻さを反映して合併促進されておる。これは開放経済体制に備えてという国際競争力の強化ということもあるのですけれども、もう企業自体がかなり経営的な困難を来たしておるのですから、国際競争力どころじゃない。国内的にも問題がある。そこで合併がどんどん促進をされておる。いわば今日の不況というのは非常に深刻だということが、この推移から言えるのじゃないか。なお、さかのばって三十五年あるいは六、七年あたりを見ると、やはり企業の系列化というのがかなり盛んに行なわれたのじゃないでしょうか、こういう形で企業集中というものが……、合併でなしに。そういう点はどうお考えですか。
  46. 北島武雄

    ○北島政府委員 企業の系列化にはいろいろあろうかと思います。金融、融資関係に基づく系列化、あるいは大企業中小企業、下請企業との間の系列化、あるいは取引の相手方の系列化、いろいろあると思います。この系列化がこの数年間次第に進展して進められつつあるものと私は考えております。ことに不況の深刻化に伴いまして、企業の提携等の状況もこれから推進されるのではないか、こういうふうに考えております。
  47. 大村邦夫

    大村委員 最近の合併は、私が先ほど申しました企業系列関係整理統合、こういう形で進められておると思うのですが、その点はいかがですか。
  48. 北島武雄

    ○北島政府委員 最近の合併は必ずしも系列化に沿った合併ばかりでもないようでありまして、あるいは融資の系列を離れた合併どももちろんあるわけであります。おおむねお話のような系列に伴うところの合併が多いように私は考えております。
  49. 大村邦夫

    大村委員 私は、いま御答弁になりましたように、企業系列関係整理統合というものが主要部分だと思うのです。それは第一に下請中小企業、それから原材料系列企業関係分野、系列企業等の系列内部の重合部門の統合、併合と、不良企業の切り捨て、こういうことに沿っていま盛んに合併が進められ、あるいは系列の整理というものが行なわれておると思うのです。これは私が説明しなくても御承知と思いますが、たとえば八幡、それから富士、日本鋼管、川崎製鉄などの鉄鋼会社による系列特殊メーカーの統合、それから二次製品メーカーの整理など、こういうものが典型的なこの型の合併ということになると思うのです。そのほか東芝とか日立、こういう電機機械メーカーも、重電、軽電、両部門の下況に当面して、関連会社の整理統合をやっておる。  そこで問題は、企業合併と独禁法との関係ですね。そもそも企業合併というのは、活動力の強化とか国際競争力の強化とか、何とかいってみてもやはり寡占への道を進んでおると私は思うのです。この寡占の道を進むことは、結局シェアの拡大ということに通じていくと思うのです。そこで、この合併の限界が独禁法では抽象的にうたわれでおりまして、必ずしもはっきりしていない。運用では、三〇%とか、いや必ずしも三〇%ではないとか、いろいろ言われておるのですが、そこ辺のめどはどこにあるのですか。
  50. 北島武雄

    ○北島政府委員 合併につきましては、独禁法の第十五条におきまして、抽象的に、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合と、それから合併が不公正な取引方法によって行なわれる場合、この二つによる合併を禁止いたしているわけでございます。ただ、抽象的にただいまの一定の取引分野における競争を実質的に制限することになる場合という判断は、具体的に当てはめてみますと、なかなかむずかしいのであります。従来、公正取引委員会といたしましては、もちろんこれは合併会社の市場の占拠率——どの程度の市場におけるシェアを持っているか。それから合併によってシェアがどの程度拡大されるか。あるいは合併によって、資金面とかあるいは営業面でどの程度強化されるか。あるいはまた、競争会社の状況はどうか。あるいはまた、合併会社の取引の相手方となる会社はどんな会社であろうか。あるいはそういう業界に対して新しい企業が容易に入り得るであろうかどうかなど、いろいろ広い見地から具体的にこれを検討して適用しておるわけでありまして、結局、その合併によって、一定の取引分野における競争が実質的に制限されることになる場合、その判断でもって最後のものさしを当てはめておるわけでございます。最近の状況によりまして、次第に大企業合併が行なわれ、いわゆる寡占体制へとおもむく傾向がございますが一この場合におきましても、判断の基準といたしまして、あくまでもそれが一定の取引分野における競争を実質的に制限することになるかどうか、こういう見地から判断いたしておるつもりでございます。
  51. 大村邦夫

    大村委員 その一定の取引分野における競争を実質的に制限することになるかどうかという点で、総合的にいろいろ判断されるようですが、市場の占拠率は一体どの辺なんですか。いろいろ要素はあると思うのですけれども、市場の占拠率は一応のめどは立てられるでしょう。
  52. 北島武雄

    ○北島政府委員 これは単純に占拠率だけでは申せないのでございますが、ただいままでの公正取引委員会の取り扱いといたしましては、一応シェアは三〇%程度のところだと問題点になる。それから他のいろいろな条件を判断して、はたしてそれが一定の取引分野における競争を実質的に制限することになるかどうか、こういうことを判断いたしております。大体三〇%見当が一応のシェアの問題点というふうに考えております。もちろんシェアだけではございませんで、先ほど申し上げたようなこともあるわけでございます。
  53. 大村邦夫

    大村委員 そこでお尋ねしたいのですが、幾つかの企業を資本支配のもとにおいて行なっておるところのコンツェルンですね。これに対して市場の占拠率の計算の際、傘下の企業を含めて、それではかられるわけですか。その辺についてお尋ねしたい。これはドイツあたりではやっておるようです。
  54. 北島武雄

    ○北島政府委員 同じ業態、同じ業界でないと、いまの独占禁止法ではこれは押えることはできないのであります。同じ業態、同じ業界においてこれを見るというやり方でございます。
  55. 大村邦夫

    大村委員 同じ業態においては、これが行なわれておるのですね。そうじゃありませんか。
  56. 北島武雄

    ○北島政府委員 昔のいわゆる財閥のように、財閥の中心部があって、それが各企業、各業界に対して支配しておった、こういう状態は現在はなくなっております。現在の独占禁止法では、あくまでも一定の取引分野における競争を実質的に制限するということになるのでございまして、同じ業態——業界ですね、同じ業界において、そういう条件が行なわれることを防止する、こういうような独禁法の趣旨でございます。
  57. 大村邦夫

    大村委員 私の尋ねるのは、形態としてはそれぞれ一企業、独立した形をとっておるように見えるのです。しかし実際にはコンツェルンを形成して、資本的にそれを支配しておる、そういう場合には、私は、当然三〇%程度云々の問題は総合的に考えるべきだと思うのです。その辺といま御答弁になった辺との関係はどうなんですか。そこがようわからない。
  58. 北島武雄

    ○北島政府委員 やはり業界が違えば、これをまとめて判断することは無理かと思います。業界ごとに、これは判断しなければならない問題だと思います。
  59. 大村邦夫

    大村委員 業界とは企業ですか。
  60. 北島武雄

    ○北島政府委員 業種です。
  61. 大村邦夫

    大村委員 そうすると、富士銀行なら富士銀行というものがありますね。そうしてそれが幾つか企業を傘下におさめてコンツェルンを形成して、いろいろやっておるわけですね。そういう場合におけるところの独禁法との関係ですね。市場占拠率等との関係はどうなるかということを聞いているのです。
  62. 北島武雄

    ○北島政府委員 金融機関につきましては、独禁法で、金融機関が産業会社の一〇%以上の株式を所有することは原則としてできない、こういうことになっております。ただいまのお話は、融資の力によって系列に置いている場合のお話でございますが、これにつきましては、独禁法に、もしそれが不公正な取引方法に該当する場合になりますと、独禁法の対象になるわけでございます。融資の力を利用して不当にその会社を支配する、こういう場合には不公正な取引になり、独禁法の対象になるわけであります。
  63. 大村邦夫

    大村委員 その場合、金融機関でなしに、金融機関と密着した大企業ですね、それが中心になってコンツェルンを結成するという場合はないのですか。形の上では個々です。しかし実際には系列ということになるのかもしれませんが、その場合には、やはり資本系統は同じなんですね。これは運用のしかたによれば隠れみのになっていくと思うのです。そこら辺はどのようにお考えなんですか。
  64. 北島武雄

    ○北島政府委員 もちろんそれが持ち株会社ということになりますと、独禁法が完全にこれを排除しておりまして、株式を所有することによって事業会社を支配することは禁止されているわけでございます。持ち株会社でなくてそして株を所有する場合におきましても、もしそれが競争会社であるとかいうような場合になりますと、それが一定の取引分野における競争を実質的に制限することに当たる場合もありましょうし、あるいはまた、その株の保有関係が不公正な取引方法と認定される場合もあるかと思います。それは具体的な事例によって判断いたすよりほかないと思います。
  65. 大村邦夫

    大村委員 独禁法の関係はやめて、法案に入ります。  若干、昨日の島口委員質問とダブる点があるかもしれませんが、しかし私が聞いておった答弁の程度では、必ずしも納得がいきませんので、重ねてお尋ねをすることになります。御了承いただきたいと思います。  特別小口保険ですが、これの付保限度が当初百四十億、これに対して十月までの実績が七億円であった。それの利用されない原因としては、資格要件が非常にきびしかったということがいわれております。これが第一の問題だと思います。しかしこれがすべてではないと私は思うわけです。  そこでお尋ねをしたいのは、なぜ利用者が少なかったか、実績伸びなかったか、その点について主要項目をお尋ねしたいのです。
  66. 山本重信

    山本(重)政府委員 特別小口保険が、当初の目標額に対しましてきわめて低調に推移してまいりましたその理由として、私たちが考えておりますのは、まず第一に資格要件がきびしかったことでございまして、実際に信用保証協会の窓口の状況を聞いてみましても、特に納税条件が所得税及び事業税を完納するということになっておりますために、かなり適用範囲がしぼられる、何とかしてこれを緩和してほしいという要望が強かったのでございます。これが第一でございます。  それから第二には、宣伝といいますか、普及が必ずしも行き届かなかった、一般の人に、こういう制度ができて非常に利用しやすいものがありますよということが、必ずしも周知徹底できなかったという点が一つあろうかと思います。最近になりまして、だんだんにこういう制度があるということが一般にも知れてまいりましたので、その点は今後だんだんに改善されるかと思います。  それから、特に第一の資格要件の点につきましては、先般省令改正によって、居住条件及び納税条件を大幅に緩和いたしましたので、その点からも今後の利用度は相当高まるものと期待いたしております。
  67. 大村邦夫

    大村委員 最近、十月以降ですか、実績伸びたというのは、これは資格要件を緩和したことによるものが主としてあると思うのですが、今度の資格要件からして、一体政府は十分な需要があるとお考えになっておるかどうかという質問をしたってしょうがないのですが、その点は自信がありますか。
  68. 山本重信

    山本(重)政府委員 昭和四十年度もすでにあと三ヵ月余りでございますので、当初予定したほどの伸びはいまになってはもう期待できないと思いますが、ただいま私たちの腹づもりでは、本年度内で五十億円程度まではいくのではないかというふうに考えております。
  69. 大村邦夫

    大村委員 その、同一都道府県に一年以上居住する者、あるいはまた、国税または地方税を過去一年間完納しておる者、さらにまた地方税については区分けがありますが、そういう基準を設けられた、つまり資格要件を緩和されたその基礎というもの、それはどういう調査方法をやられたんですか。
  70. 山本重信

    山本(重)政府委員 当委員会におきまして、前回、特別小口保険の新設をいたしますときに附帯決議がございまして、その中にも、この資格要件の緩和をするようにという御要望がございました。その後も、いま申し上げましたように、予定どおりになかなか伸びないということから、今回の改正をいたしたのでございますが、この改正によりまして、対象企業は約五十万企業ぐらい拡大されるのではないか、適用可能対象企業の数が五十万程度増加するものと、統計上計算をいたしております。
  71. 大村邦夫

    大村委員 その五十万ぐらいの対象になるということについて、これには企業の信用度とか、経営内容とか、そういうことも含まれておると思います。しかし、実際に、今後これを資格要件を緩和して運用した場合に、はたしてそれが可能かどうかというのは、これはもちろん結果を見なければわからないわけですが、今日中小企業が、特に零細企業が金繰り難で困っておるし、場合によっては税金の滞納というのも考えられるわけですね。それは納めようとしても納められない。そこでひとつ金を借りて経営内容をよくして、あるいはまた運転資金等について実績をあげ、その後でまた税金等も納めよう、こういうような意欲を持っておる人もあると思うのです。したがってこの一年とか、あるいはまた国税または地方税を完納するとか、こういうしみったれた資格要件というものはもういっそはずしてしまったらいいと思うのですが、そういう考え方はございませんか。
  72. 山本重信

    山本(重)政府委員 納税要件を撤廃するということはどうかという御意見でございました。立法論としては十分に検討に値する問題であろうかと存じますが、ただいま私たちが考えておりますのは、この特別小口保険は実質審査をいたしませんで、形式要件で居住条件と納税条件があれば、あと経営の内容その他特に審査をしないで貸すというところに非常な特色があるわけでございまして、もしかりに納税条件をはずすといたしますと、それではこの企業ははたしてほんとうに信用があるかどうか、返済能力があるかどうかという実質審査を、保証協会としてはどうしてもせざるを得ないことになってまいるのではないかと思います。そういたしますと、その審査のためにいろいろな手数もかかりますし、またそのために、この簡易な特別小口保険という制度の特色が失われるおそれもございますので、その辺、御指摘のように納税条件を緩和するといいますか、あるいはいまの所得税、事業税を納めていない人にも均てんさせるのに何かいい方法はないかという点には、確かに問題はあると思いますけれども、いま申し上げましたような点で、にわかにただ廃止するだけでは問題が解決しない、かように思いまして、今後研究させていただきたい、かように存じます。
  73. 大村邦夫

    大村委員 当初伸び悩みの原因の中に、宣伝が足らなかったということを言われましたね。その宣伝が足らなかったというのは、目的意識的に宣伝の不十分さが——政府ではございませんよ、金融機関等を通じてもやられたと思うのですが、あったんじゃないですか。それはてん補率等を見ましても、今年は若干上がりましたけれども、やはり焦げついたような場合には信用保証協会がかぶらなければならぬですね。そういうことを考慮すると、そうあまり大々的に宣伝をして、いらっしゃいいらっしゃいで金を貸したくない、そういう気持ちもあったんじゃないかと私は推測するのですが、そういう点はないのでしょうか。  それから、いま御答弁の中に、今度資格要件が緩和されて、同一都道府県一年云々、国税または地方税等、この資格要件が満たされれば無条件で貸す、全然ほかに審査しない、こういうことを言われましたが、それはそのとおりなんですか。
  74. 山本重信

    山本(重)政府委員 第一の、PRの点につきまして、関係金融機関なり保証協会の第一線で、あまり活用したくないというような気持ちが働いたのではないかというお話でございますが、私はそういうことはよもやないと思っておりますし、そういうことについては何ら聞き及んでおりません。それから、実際に最近の信用保証協会の動き等を見ましても、きわめて積極的にこれを活用しようと努力いたしております。
  75. 大村邦夫

    大村委員 信用保証協会の方、来ておられますね。  長官が言われたように、宣伝の不十分さですが、保証協会としては、いまの御答弁では意欲的にやられたと思いますということですが、この宣伝はどういう方法をやられたか、具体的にお尋ねをしたいです。積極的にどんどんやられたのかどうか。
  76. 河村篤信

    河村参考人 御承知のように、いろいろな準備がございますので、実際に発足いたしましたのは七月からでございます。その間、保証協会といたしましては、各支所、出張所あるいはまた金融機関、各中小企業の団体、そういった機会をとらえまして、この制度の内容その他につきまして、十分なPRをしたわけでございます。ただPRをいたしましたが、個々の小企業の場合の受け取り方が、必ずしも十分その精神がほんとうに浸透しなかった面があるやに聞いておりますので、その面ももう少しやはり小企業者にこの制度が十分に利用できるように、この制度を利用する小企業者の立場に立って、ただいま申しましたような団体その他を通しまして、現在もなお普及に力をいたしておる状況でございます。最善をいたしたつもりでございます。
  77. 大村邦夫

    大村委員 重ねてお尋ねいたしますが、不良債権というのがございませんか、焦げつきですね。それは一体どれくらい、この法が実施されてから、あったか、つかんでおられませんですか。
  78. 河村篤信

    河村参考人 現在までこの無担保保険制度によって保証しております実績は約十億円でございます。したがって、まだ保証の期間が経過しておりませんので、これによって事故が生じたというケースは私のほうで持ち合わせておりません。期間が半年あるいは八ヵ月というふうに長くなっておりますので、まだその保証の期間を満了していないという状況でございますので、その実績は持ち合わせておりません。
  79. 大村邦夫

    大村委員 そうすると、焦げついたときを考慮して、目的意識的に、特に弱小の零細企業については貸したくないという気持ちがあったとは、必ずしも言えないかもしれませんが、いまの御答弁の中で、なお借りる者の立場に立ってということをおっしゃいましたね。その借りる者の立場に立って宣伝はしたのだが、借りる者の立場に立ってもう少し何か配慮すべきものがあった、それは一体何をさすのですか。手続ですか。手続きが非常に煩瑣であった、そういうことなのですか。
  80. 河村篤信

    河村参考人 ただいま御指摘になりましたように、小企業者の立場としましては、できるだけ手続を簡便にしてもらいたいというのが一番大きなポイントであります。私どものほうとしましても、そういった融資を受ける小企業者の立場に立ちまして、できるだけやっかいな手続を省きまして、簡易迅速を旨としてやっているわけでございます。しかしながら、先ほどからお話がございましたように、資格要件としましては、租税要件、居住要件、この手続だけは最小限度踏んでもらわないと要件を具備しない。したがってこの二つの要件を具備すれば即刻保証するという立場でございますが、小企業者のそういった手続を簡便にしてもらえないかというのが、今度の小企業者の声でございます。これは、しかし、われわれのほうとしましては、この要件まで具備さしてやるというわけにいきませんので、最少限度この要件を満たした場合には、敏速に保証するという立場に立っております。
  81. 大村邦夫

    大村委員 長官お尋ねいたします。  この手続の中には、納税証明といいますか、あるいは居住証明、そういうものも含まれるわけですね。市役所に行ったり、税務署に行ったり、保証協会に行ったり、あちらこちら飛び回って、加えてその保証協会というのは支所もあるようですし、出張所もあるようですが、大体県に一ヵ所でしょう。そうしますと、距離的にそこに問題が起きてくると思うのです。わざわざ泊まりがけで行かなければならない。そして、それで一ぺんで用事が済めばいいが、また、いま言いましたように市町村役場に行ったり、税務署に行ったり、場合によっては再度足を運ばなければならない。わずかな金を借りるのに、それほど非常に煩瑣である。したがって、これを一ヵ所でお世話をするような、いわゆる手続を非常に簡便にするという意味で、そういう措置は考えられないのか、どうなのか、そこら辺はどうなんですか。
  82. 山本重信

    山本(重)政府委員 ただいま御指摘の点は、非常に重要な点だと思います。零細企業の数が非常に多くて、そういう人たちに行き届いたサービスをするためには、十分な網を張らなければいけないわけでございます。現在、信用保証協会は五十一ございますが、それぞれできるだけ網を張ろうというので、支所が百六十七、出張所が八、それから連絡所が六十八というふうに、それぞれ自分の所管区域に網を張るようにいたしております。これで十分かどうかという点になりますと、おそらく零細企業の数からいって、十分ということは言えないと思います。今後もますますこの網を張るようにしていかなければならないと思います。実際には、また各市町村の商工課あたりにもこの関係仕事のあっせんをしてもらうようにいたしたりしておりますが、今後ますますそういう方向で、このサービス網の拡充には力を尽くしていきたい、かように存じます。
  83. 大村邦夫

    大村委員 いま申し上げました点は、今後十分検討してほしいと思います。  それから次に移りますが、倒産関連の中小企業者の範囲ですね。これは親企業倒産をして、その申し立てをやった。今度は第一次下請企業ですか、これまでが入るわけですが、この第一次の下請企業が、もし親企業倒産のあおりを食らって倒産をした、そこでまた申し立てをした、そういう場合には、第二次下請企業、こういう形態は多いと思いますね。親企業があって、下請企業は第一次だけではなしに、その下に、第二次、第三次というものがいろいろ連なっておると思うのです。そういう場合には、第二次下請企業を含める御意思はないのかどうか。この法律では含めてあるのかどうか、それをお尋ねしたいのです。
  84. 山本重信

    山本(重)政府委員 ただいまの、法律の運用上私たちが考えておりまするのは、第一次の下請を考えておるのでありまして、第一次を完全に救済すれば、第二次、第三次への波及はそこで食いとめられる、こういうふうに考えております。したがいまして、もしその手が十分打てなくて第二次も倒れたという場合のことにつきましては、運用上特別な配慮をしなければならないというふうに考えますが、具体的にどのようにするかについては、早急にひとつ検討をいたしたいと存じます。
  85. 大村邦夫

    大村委員 理屈の上では、第一次の下請企業がよくなれば、それに連なる第二次、第三次の下請企業もよくなるということになるのですけれども、しかし、実態は必ずしもそうならないと私は思うのですよ。下請代金は、親企業はなかなか支払わないのですね。それから買いたたく。これが普通の状態なんですから、第一次下請企業といえども、第二次に対してはそういうこともあり得ると思うのです。したがって、第一次を救えば、第二次、第三次はみんなよくなる、そういうことにはならないと私は思う。それから、第一次の下請企業が親企業と同じように倒産の申し立てをやった場合ですね。そういう場合にはどうなるのですか。第二次は含まれませんか。当然含めるべきじゃないですか。第一次は親企業とみなすべきだと私は思うのですがね。
  86. 山本重信

    山本(重)政府委員 ただいま、倒産企業というのをどういう範囲のものを指定するかという問題にも関連すると思うのであります。私たちのいま考えております運用基準では、ある程度規模の大きな企業で、それが倒産をしたことによって、かなりの範囲にその影響があらわれるということを考えておりますので、負債総額が、金融機関からの借り入れを除きまして十億円以上の企業、そうして関連中小企業者の経営に重大な影響を及ぼすものということを考えておるのであります。したがいまして、いまの御設問の中の、第一次の下請がこの指定基準に合致しておりますれば、これはもう文句なしに指定ができるわけであります。しかし、この基準に合致していない場合につきましては、いまの運用基準では指定ができない。したがいまして、それにつながっておる第二次あるいは第三次につきましては、このいわゆる関連倒産制度でない、一般の信用保証の制度を適用するということになるわけでございます。しかし、その辺は運用上かなり——ちょうど御質問いただきまして、確かに問題があるなというふうに感じたわけでありまして、ひとつ早急に検討さしていただきたいと思います。
  87. 大村邦夫

    大村委員 いま、十億云々と言われましたね。負債ですね。この十億というのは何できめるのですか。
  88. 山本重信

    山本(重)政府委員 今回の倒産関連防止の目的は、ある程度、ある時期に、ある地域に集中的に連鎖倒産が起きる、それを防ぐというねらいでございますので、全部の倒産のケースに適用するというのでなしに、ある程度まとまった——まとまったといいますか、規模の大きい企業が倒れたために、その関連が幾つか数多く影響を受けるという場合を救済しようということでございまして、これは便宜の基準でありますけれども、負債総額で十億円というのを一応のめどに置きまして、それ以上の規模の大きい企業倒産に適用したい、こう考えておる次第でございます。
  89. 大村邦夫

    大村委員 その十億は何ですか。政令ですか、省令ですか、行政通達、指示ですか。何ですか。内規ですか。
  90. 山本重信

    山本(重)政府委員 これは内部的な運用基準でございまして、特に外部に対して政令を出すとかなんとかいうことは必要がないのでございます。
  91. 大村邦夫

    大村委員 そうしますと、その十億の基準については、かなり弾力性があると理解しても差しつかえないですか。
  92. 山本重信

    山本(重)政府委員 現在は十億円という線を一応考えておりますが、実際に適用いたしまして、その運用の実態を見て、さらに検討いたしたいというふうに考えます。その場合に、特に法律改正とか政令改正とかいうような手続は必要といたさないと考えます。
  93. 大村邦夫

    大村委員 そこでちょっと先ほどの私の質問に関連をするのですが、今日企業の操短なりあるいは合併なり合同なり、そういうものがかなり急テンポで進められております。これはもちろん不況克服という立場からだと思いますが、そうしますと、そのあおりを食らって中小企業整理倒産というものが予想されます。で、その整理倒産をされる中小企業については、一定の基準を設けて、そうして第一次までの下請企業については救済しよう、こういうことになっておると思いますが、そうしますと、考えようによると、本来親企業めんどうを見なければならないその任務を国が肩がわりをしてやる、関連倒産をする中小企業の救済ということもさることながら、親企業が安心して中小企業整理、淘汰ができるという、そういう側面を私は助長するようになると思うのですが、その点はどうなんですか。
  94. 山本重信

    山本(重)政府委員 いまの御質問の趣旨が私十分に了解できないのでありますが、もちろんそういう意図はございませんし、やむを得ず大企業倒産をするという場合に、それに関連しておる中小企業が関連倒産をするのを防ぐというのが目的でございます。また、減産の場合は、やむを得ず減産をする、そのために関連の企業が影響を受ける、そういう場合に緊急融資をするということであります。
  95. 大村邦夫

    大村委員 やむを得ずとおっしゃいましたが、東発、山陽特殊鋼、こういう問題は、かなり計画的な倒産のにおいが強いというので問題になったところなんです。しかし、いまかりに東発なりあるいは山陽特殊鋼のような倒産が同じようなケースで出て、そこに下請企業がたくさんありますが、一定の基準に合っていた場合には、これを救済するということになるんでしょう。全面的な救済じゃありませんけれども、救済することになるんしょう。そうしますと、すべてはそうではないにしても、計画倒産、悪らつなそういう計画倒産というものを、ある面では助長することになるんです。なぜならば、歯どめがない。もし政府がそういう施策を、関連倒産中小企業の救済臨時措置法というものをつくっていなければ、親企業が簡単に倒産をしたり、あるいは計画的に倒産をしたりすると、社会的にいろいろ問題が起きるけれども政府がある程度めんどうを見てくれれば、そういう心配が幾らかやわらいでいく、こういうことになると思うのです。したがって、それをさせないためには、歯どめをしておかなければならぬ。会社更生法はずいぶん政府が検討すると言っておったが、いまだにやっていない。あるいは粉飾決算に対するところの査察の仕方、監督、こういうものについても強化すると言っておったが、いまだに全然やられていない。これじゃ中小企業の救済と言いながらも、その実は、裏を返せば、大企業整理統合なり、あるいはまた倒産のお手助けをしてやるような面があるといってもしょうがないじゃないですか。なぜその会社更生法とかいうものにメスを入れて歯どめをしておかないか、その上でこういうものをやるべきではないか、私はそう思うのです。
  96. 山本重信

    山本(重)政府委員 いま先生の御意見ようやくよくわかりましたが、会社更生法自体の問題であろうかと存じます。会社更生法の申請をややイージーゴーイングにやったために、関連の中小企業者その他が困るという批判が相当強くあります。私たちも、中小企業立場からいいまして、現在の会社更生法がそのままではぐあいが悪いというふうに考えます。ただいま法務省で会社更生法の改正案を検討中でありますが、私のほうの立場からも、特に中小企業立場を守る意見を提出いたしておるのであります。したがいまして、会社更生法自体の問題としてそれは解決を要するかと思いますが、今日お願いをいたしておりますこの信用保険のほうの制度は、そういう事態の是正を待ってゆっくりやるというようなわけにいかない切迫した問題でございますので、現実の事態に対処するために、早急にこういう救済体制を整備いたしたいというところに私たちの趣旨があるわけでございますので、その点は御了承いただきたいと存じます。
  97. 大村邦夫

    大村委員 通産省でもそれぞれの部局に分かれておりますが、それぞれが独立をして他の関連というものは何ら考慮しないというたてまえは、私はおかしいと思うのです。あるいは各省が独立をしておる。しかし政治という立場に立てば、その政治をつかさどるのは政府なんで、政府という立場から考えるならば、やはりこの中小企業対策については、こういう施策を講ずると同時に、また、会社更生法のように、一方では歯どめを行なうということが必要だと私は思います。それはそれで片をつけてもらうとして、当面こっちが急ぎますから、このほうだけやらせていただきますということでは、あまりにも無責任だと私は思いますが、どうなんでしょうか。こんなことはないでしょうか。
  98. 山本重信

    山本(重)政府委員 今回の措置は、必ずしもこの会社更生法の適用の場合だけではございませんで、いわゆる破産等の場合も、もちろんその対象になっておるのでありまして、最近の深刻な不況の事態を考えますと、ともかく早急にこういう体制をつくりまして、その波及を防ぎ、中小企業者を救うということが焦眉の急であろうと存ずる次第であります。会社更生法の問題はその一部になるわけでございますが、そちらのほうは、こういう法律問題でいろいろ関連の多い問題でございますから、早いほうがいいのでありますけれども、それを待っておったのでは、この差し迫った、たとえば年末対策なんかにはとうてい間に合わないので、こちらのほうは、早急に実際の処理を急いでやるために御審議、御承認をお願いいたしたいというような次第であります。
  99. 大村邦夫

    大村委員 会社更生法の関係はあなたにそう言ってもしょうがないかもしれませんが、しかし一部、一部とおっしゃいますけれども、この法案を見ますと、第二条の二項、「一 破産、和議開始、更生手続開始、整理開始又は特別清算開始の申立て」、かなり比重は重いのです。企業が債務たなあげをした場合に、会社更生法に基づいて更生手続の開始をするということがたくさんあるのですよ。ないことはないのです。そういう場合にそこに連なる第一次下請企業等については、従来親企業が食い逃げみたいな形になっていろいろ問題になったのですが、今度はこれで関連の中小企業は、ある一定の基準が満たされるならば救済されるでしょう。しかし本来ならば、そういうものは国がめんどう見るというよりも、親企業めんどう見なければならない。ならないが倒産をしたのだからめんどうが見られない。こういう形になるわけですね。そういう倒産、破産をして更生手続を行なう企業の中には、東発とかあるいは山陽特殊鋼とかいう計画的なにおいの強い倒産もあるわけですね。そういうものについては簡単にやらせないように、政府めんどう見さえすればいいというものじゃないのですから、会社更生法については徹底的なメスを入れて、歯どめを講じなければならないということを、私は口を強くして言っておるのです。その点についてはあなたは別に異存もないようですけれども、異存がないだけでなしに、東発のほうの倒産というのはだいぶ前の話ですから、あのころから会社更生法についてはかなり検討すべきだということを、私ども社会党は強調いたしました。あれから長いのですよ。この制度よりも前なんです。いまだにそれが行なわれていないから、私どもはそれを言うのです。おわかりですか。  いろいろ質問がありますが、以上でやめます。
  100. 内田常雄

    内田委員長 海部俊樹君。
  101. 海部俊樹

    ○海部委員 最初に保険法の一部改正法律案についてお尋ねするわけでありますが、実はことしの初めに、この特別小口保険の制度ができましたときに、一般の小規模企業者は、これはたいへんけっこうなことだといってもろ手をあげて喜んだわけであります。特に私どもが毎週土曜、日曜郷里へ帰りまして、繊維産業のほんとうの零細業者と懇談、座談会をやっておりますと、なかなかお金は借りたいが貸してくれない。やれ担保だ、やれ保証人だと言われたんでは、せっかく中小企業対策のお金を政府がつくってくれたって、われわれはうれしくないのだという不平不満がたいへん強かったのです。それが解消されるということで私どもも非常に喜んで、このことを無慮数千人の郷里の人に宣伝しました。だからPR不足だといわれますけれども、信用保証協会さん覚えておいてほしいことは、われわれ国会議員も第一線で非常にPRのお手伝いをしてきたわけなんであります。  ところがせっかくの善政であり、これは昭和の御代の仁徳天皇があらわれた。これくらい喜ばれても、お客さんの集まりが非常に悪い。きのうからの本委員会の論議を聞いておりましても、資格要件がきびし過ぎるということが相当議論されております。私が郷里を回ってはだで感じてきた結果によると、これは明らかに資格要件のきびしさの前に、PR不足という問題が多分にある。こういう話をしますと、そんないい制度があるのですか、それでは私もすぐ行きたいが、どういうことでしょうかと聞く人が非常に多いのです。そういう意味で今後PRに一そうの努力をしていただきませんと、せっかくの効果も上がらぬというわけです。  信用保証協会の方にお尋ねしたいわけですが、たとえば町村の商工課というようなものを頼んだり使ったりしている。そこへあるいは国民金融公庫や中小企業金融公庫が出張してきて、日をきめて希望者を集めて役場の窓口でやっていらっしゃいます。役場の商工課といえば、住民と親しいので、しょっちゅう出入りしておりますが、信用保証協会というと、ことば自体にもなかなかなじめないし、どこにあるかわからないし、こわくて行けないという印象があると思うのですが、そういうPR方法をお考えになったことがあるのかどうか、あるいはこれからおやりになるおつもりがあるかどうか、お気持ちがあったらひとつ前向きでお答えを願いたいと思います。   〔委員長退席、加賀田委員長代理着席〕
  102. 河村篤信

    河村参考人 具体的な例で申しますと、たとえば大阪市の例で申し上げます。  大阪市の保証協会は、各区役所に窓口を設けてこの保証協会の業務をやっております。したがいまして、いまお話しのような例は、PRあるいは事務手続も区役所の窓口へ行けば、この話がすぐ通ずるという体制になっております。これは大阪市だけの例でございます。それからある県によりますと、各県内にございます商工会議所を窓口にしまして、この窓口を通して保証業務の手続を進めるということもやっております。それからほとんど大部分の保証協会は、みずからの支所、出張所を持つかわりに、各市町村に会議所ないし商工会がございますから、この組織を通じて保証業務の推進をはかるということもやっております。何といいましても一番問題は、結局金融を受ける立場からいいますと、金融機関との連携といいますか、それが一番大事なわけです。最終的には金融機関から金を借りるわけですから、したがって金融機関にもそういった相談業務をあわせて行なっていく。そうしてもしその人が担保がない、保証人がないというので非常に困っている場合には、こういう制度があるからぜひこれを利用くださいという線で、金融機関を通じてのPRもやっております。それから先ほど申し上げましたように、業者関係その他いろいろ各保証協会の実態がそれぞれ違いますから、自分の保証協会等の最も実態に合ったような形で、いま申し上げましたようないろいろな方法を使いまして、PRにつとめておるというのが現状でございます。
  103. 海部俊樹

    ○海部委員 そういうおつもりで上のほうではおやり願っておるのでありますが、実はこの制度が発足しました当初、私は具体的な問題を持って協会のところに御相談に行ったときもありますが、私の後援者で若い仲間が数名の人を使って染色整理業をやっておるのですから、まさにこの法で救済される対象者でありますけれども金融機関へ直接飛び込んだら——飛び込んだほうが悪いのですが、そんなうまい制度があるのですかとこう言われた。私は、いやそこに行ってはだめなんだ、いろいろ教えましたら、今度はあなたのところはどうも金融機関といままで一回も取引がないからだめなんだということで断わられてきた例が現実にございました。ある座談会の大ぜいの席の前で、私が絵に書いたもちじゃないかと言われたので、これは長官に申し上げて、その後改善はされてきておりますけれども、少なくとも出発当時においてもそういう食い違いもだいぶあったので、資格要件以前の問題として、効果が上がらなかったということがあると思いますので、今後は十分ひとつ末端までうまく統一されていきますようにお願いしたいと思っております。これは希望であります。  今回改正で、三十万のアッパーリミットが五十万円になるということであります。これは第四十八回国会のこの委員会における附帯決議の趣旨が実現されることでありますから、これはまことにけっこうなことだと私は思うのです。ただ議論としては、五十万円といわずに六十万円にしたらどうかとか、あるいは百万円にしたらどうかという議論も本会議でなされたくらいでありますけれども、やはりそういう議論が非常にありますから、付保限度を五十万円にされた理由と、それから将来弾力的にまた時期が変わってきたら六十万なり八十万なりに上げていくお考えがあるのかどうか。それは中小企業庁長官答弁をお願いしたいと思います。
  104. 山本重信

    山本(重)政府委員 今回三十万から五十万にいたしました一番強い原因といいますか、動機は、当委員会における附帯決議でございまして、その決議の御趣旨を尊重してできるだけ早く実施いたしたいというので、改正をお願いいたすということにした次第でございます。今後さらにこれを引き上げるべきかどうかにつきましては、また早急にひとつ検討を続けさせていただきたいと存じます。
  105. 海部俊樹

    ○海部委員 国民金融公庫にお尋ねしますが、いまほんとうの小さい業者が一番たよりにして殺到するのが、国民金融公庫の窓口であります。国民金融公庫で資金需要実態は一体どのようなものになっておりますか。大体その三十万で満足したか、五十万で完全に満足するのか、あるいはもっとこの限度を上げなければ満足しないのか、この貸し出しの状況の実態から御意見を承りたいと思います。
  106. 油谷精夫

    ○油谷説明員 ただいまの御質問でございますが、国民金融公庫の大体一口当たりの申し込みの状況でございますが、年々少しずつそういう状況でありますから上がってきておりますが、現在のところ大体六十万前後というのがごく大ざっぱな限度であります。   〔加賀田委員長代理退席、始関委員長代理着席〕 したがいまして貸し出しの実績もほぼそれに近いような、五十万から六十万くらいを前後しておる、そういう状況でございます。ただ、これを現在残高としてあります全体を平均いたしますと、もっと低いのでありまして、四十数万になるわけでございます。
  107. 海部俊樹

    ○海部委員 国民金融公庫にときどきお供をしていったり、あるいはいろいろ借りてきた人の話を聞きますと、当たらないかもしれませんが、大体五十万借りたかったら、百万申し込まなければならない。申し込み金額の半分になってくるのが現実だといううわさを聞くわけであります。ですから五十万で満足するのではなくて、やむを得ずこれだけしか貸してもらえないから五十万であるけれども、できたら百万ほしいのだという声がずいぶんあるわけであります。ですから小規模業者がほんとうに資金を必要としますときの最も親切な限度は、やはり百万くらいではないかという気がするのですけれども、そういう点で中小企業庁長官もこの点よく情勢を御判断願いまして、なるべく多くの人が、せっかくの善政でありますから、魂まで入って、喜んでくれるように今後前向きで金額の点は御検討願いたいと思います。そうしますと、現実にこれが五十万円に限度額が上がることによりましてどの程度付保額が上がってくるという見通しをお立てになっておるか、お聞きしたいと思います。
  108. 山本重信

    山本(重)政府委員 推定は、実はなかなかむずかしいのでありますけれども、一応四十年度、来年三月末までの期間について一応の試算をしてみましたが、それによりますと、総額で約五十億円程度これによる保証ができるのではないか、そうなりますと、そのうちの約二十億円程度は、今度の限度引き上げによる分というふうに考えられるかと思います。
  109. 海部俊樹

    ○海部委員 次に、本法で言いますいわゆる小規模企業者というのは、大体私どものあれによると、全国で二百二十七万あるわけでありますが、その資格要件をこの間緩和されまして、納税要件と居住要件がそれぞれ緩和されてまいりました。ところが一般の声を聞いてみると、居住要件というのはあれでいいんじゃないか。一年間同一都道府県というのはむしろ非常にゆるきに失するような感さえする緩和であり、問題はないが、納税要件のほうは、できればそのものを撤廃してほしいという声が非常に強いわけであります。そして要件緩和によってまだ救われない人がかなり残っておると思うのでありますけれども中小企業庁のほうの調査では、要件緩和をされてどれくらいの企業が救われて、なおどれくらいのものがこの網に入っておらぬか、数字がわかっておりましたら言っていただきたいと思います。
  110. 山本重信

    山本(重)政府委員 ただいまお話のように、中小企業者のちょうどこの保険の対象になります企業数は二百二十七万程度であります。その中で今度の緩和された納税要件に該当しますものが百三十三万程度でございますので、その差額の部分はまだ適用の対象にならないというわけでございます。ただ今度の緩和によりまして約五十四万ほど適用可能の企業の数がふえました次第でございます。
  111. 海部俊樹

    ○海部委員 そうしますと、大半が今度の条件緩和で網の目の中に入ってくるわけでありますが、それでもやはり十五万ほど、計算上、理屈上は救済の対象にならぬ企業もまだ現実にあるわけでありますから、こういう点もひとつ今後の問題として御検討いただきたいと思います。  次に信用保険の臨時措置法のことについてお尋ねいたしますが、この臨時措置法というのはどういうものか非常にPRが行き届いておりまして、全国の零細業者が待ちかまえておるようであります。特に昨日もNHKのテレビで、年末の不況をどうするかという対談がございまして、通産大臣出席しておられましたが、北九州のある小規模企業経営者の人が早く八〇%にてん補率をしなさい、あなた方は強行採決をやる問題を間違えていやしませんか、こういう問題こそ強行採決をやって、反対があろうがなかろうが、政府はすぐに八〇%にすべきだ、こういうことをテレビを通じまして真剣に全国に訴えておったものですから、この問題は私は非常にPRが行き届いておる、そうであればあるほどより完ぺきなものにして、一日も早くこの効果が一般に及ぶようにしていただきたいと思いますが、このてん補率を八〇%に引き上げるということでありますが、これは信用力が非常に弱い中小企業にとっては、大きな福音であることは間違いございません。ただ従来災害とか産炭地域の場合の保証、保険のてん補率が一般より一〇%高い八〇%であった、そうすると今度の措置で、これは一年間の措置だということでありますが、それと頭を並べてしまうわけであります。そうしますとやはり災害の場合あるいは産炭地域の特別の場合の一〇%の幅というものがなくなるわけですが、中小企業庁の考えというものは、この一年間の臨時措置は災害の場合と同じような感覚でやっておるから、それが頭が並んでもいいとおっしゃるが、あるいはもしそうなれば、災害とか産炭地域の場合にはさらに一〇%上積みして九〇%にする、このほうがより親切ではないかというような印象を持ちますけれども、この考えについて御意見を聞きたいと思います。
  112. 山本重信

    山本(重)政府委員 今回の法律制定の動機といいますか、趣旨は、現在の困難なる経済情勢に直面しております中小企業に救いの手を差し伸べようというのでございまして、いわゆる臨時法になっておるのでございます。したがいましてやや非常の措置という考え方で、災害に準じて八〇%にするということでございますので、こちらを八〇%にすることによりまして、直ちにまた災害、産炭地のほうを引き上げるという考えは持っておりません。
  113. 海部俊樹

    ○海部委員 今度の臨時措置法の第二の柱は無担保保険というものの新設でありますけれども、その無担保保険を設ける目的と概要、それからこれは二百万円が限度になっておるそうでありますが、二百万円とおきめになった理由、簡単でよろしいから御説明いただきたいと思います。
  114. 山本重信

    山本(重)政府委員 今度設けようとしております無担保保険の制定の趣旨は、現在の信用保証の制度につきまして、一千万円という第二種のほうの限度がございますが、そこまで一ぱいに保証をしてもらってその上ちょっとでいいからほしいというときに非常に困るという要望が各地で強く聞かれましたので、これを何とかして救済したい、しかもそのときにもう出すべき担保は出してしまって、手元にはないというようなケースが多うございますので、条件としては無担保にするということが必要であると考えた次第であります。  それから金額を二百万円にいたしましたのは、無担保でございますので、おのずからそこに無担保で貸し付け得る一つの限界があろうかと思いますのと、現実政府系でない民間の中小企業専門の金融機関——信用金庫とか相互銀行等々で貸し付けております金額の実績がおおむね二百万円前後という実績でございますので、その辺を勘案いたしまして、金額を二百万円と決定いたしたのであります。
  115. 海部俊樹

    ○海部委員 そうしますと、先ほど議論になっておりました特別小口保険という制度とこの措置法で臨時に行なわれる無担保保険というものとは、重複して利用できるものかできないものなのか、あるいはもう一つ第一種保険というのが今度てん補率は八〇%に上がり保険料率は一厘五毛に下がりまして、その点では無担保保険と全く同じなのでありますけれども、第一種保険のほうは限度額が百万円で何か担保も保証人も要るということになりますと、金額は安いのに厳格な要件を要求しますと、第一種保険をせっかくこの臨時措置法でてん補率を上げたりあるいは保険料率を下げたりしましても、みんな無担保保険のほうへいってしまって実際の効果があらわれにくいのじゃないかというような気も、しろうとでありますから、私は素朴な気持ちでするのですが、そうなれば何も臨時措置法で第一種保険のてこ入れをしなくても、無担保保険の新設だけでこれは救えるのじゃないかという気持ちもするのですが、その辺はいかがしよう。
  116. 山本重信

    山本(重)政府委員 御指摘のように、私は傾向としましては、今度のこの制度ができますと、まずやはり無担保保険のほうにいくケースが多くなると思います。その場合にこの第一種のほうも若干手直しをいたしました趣旨は、中には担保はまだ自分のところにある、特に人に頼んで保証人になってもらったりするよりも自分で担保を提供して百万でも借りたいという方もあり得るわけでございますので、その場合にてん補率とか保証料の条件とかを第一種のほうが不利のままにしておくのでは、バランスがとれない、こういう配慮からその点も同じように手直しをいたした次第でございます。
  117. 海部俊樹

    ○海部委員 担保があるから出そうというような仏さまみたいな人がたくさんおれば、それでけっこうでありますけれども…。  それからもう一つ、特別小口保険と重複して使えるかどうか、第一種保険と無担保保険と重複してやる場合には、どちらが優先してくるかということです。
  118. 山本重信

    山本(重)政府委員 特別小口保険はごく零細な、従業員五人以下という層を対象にした制度でございますので、これはいわば別格でございますので、特別小口保険と無担保保険とは、これは重複しては使えないたてまえにいたしております。したがいまして、もし相当な金額を必要とすることになりますれば、特別小口でなくても無担保のほうに直接いっていただくということになります。  それから無担保と第一種との関係でございますが、原則として今度の新設の無担保保険のほうが優先するという関係になっております。
  119. 海部俊樹

    ○海部委員 それでは今度の臨時措置法の三番目の柱であります倒産関連保証の特例についてお尋ねいたしますが、実はこの倒産関連保証の特例というところがこの臨時措置法の一番大きな山である、これがこの法律の最も大きな問題だと思いますけれども、やはりこの制度そのものが一体どのように効果をあらわしていくか、これは倒産企業というものをどういう限度できめるかということで大きく変わってくると思うのです。むしろ率直に中小企業の皆さんに今度この臨時措置法で倒産関連保証の特例ができますよ、こう言いますと、世の中の一切がっさいの倒産にこれが適用されるのだというふうにみなが理解して期待すると思うのです。それは無理のないことだと思うのです。先ほど大村委員の質疑を承っておりますと、大体負債総額は借り入れ金を除いて十億以上だ、こういうことが長官のほうの答弁から出たわけでありますが、最近の倒産実態を見ていただいて、去年一年間でもよろしいし、あるいはもっと資料があったら、一年以上でもよろしいが、倒産した件数が全部で何件であって、うち負債総額十億円以上の倒産が何件あったかということを、資料がございましたらお答えいただきたいと思います。
  120. 山本重信

    山本(重)政府委員 この制度は、発想の趣旨といたしましては、いわゆる激甚災害に大体比較して考えまして、ある地域で多発するおそれのある場合に発動しようということで出発しておりますので、こういう限度を設けておる次第でございます。先ほども申し上げましたように、実際に運用いたしまして、実情に応じてまた検討を加えたいと思っております。  それから倒産の件数でございますが、現に手元にございます資料、昭和三十九年の一月から四十年の九月までの倒産件数について申し上げますと、全体が四千四百九十四件の倒産がありまして、そのうちで負債総額十億円以上のものが九十一件ございます。ただし先ほども申し上げましたように、負債総額を、金額をいいます場合に金融機関からの借り入れ金を除いておりますが、この統計ではそれが入っておりますので、この九十一件のうちのある部分のものは今度の基準からいうと適用外になると思います。
  121. 海部俊樹

    ○海部委員 そうしますと、その四千四百九十四件の倒産のうち、十億以上のものが九十一件といいますことは、百分率にしますと二%ということでありますが、このうちの幾らかがまた適用外になるということになりますと、およそ名の知れた大きな倒産に適用されるだけで、それ以外のものにはほとんど期待可能性がないというような結果になるわけであります。では念のため倒産をせめて五億円くらいまで下げたらどの程度のものが救われるかということを数字があったらちょっと言ってください。
  122. 山本重信

    山本(重)政府委員 五億円までになりますと、五億円から十億円までの倒産件数が、先ほど申し上げました期間で百二十九件ございます。これはいずれも金融機関からの借り入れ金を含んだ金額でございます。
  123. 海部俊樹

    ○海部委員 これはせっかく、中小企業者が、自分の責任じゃなく親企業倒産によってわれわれも倒れるべきところが救われそうだという期待をこの基準を発表することによって何か失わせるようなものだと思うのです。だからやはり十億円以上ということは、法律的にいうと通産大臣が指定されるその指定の基準だと私は理解したいのであります。もっとこれを下にお下げいただいて、せめて、いま中小企業基本法なんかでいきまして、一体どの程度まで下げたら満足するかということは、これはもう理屈を言い出せば切りがありませんけれども、十億というのはあまりにも上過ぎるような気がするのです。だから、政府中小企業対策というものが上のものには厚いが、下のものには思いやりがないという公式論的ないやみを私どもいつも聞くのでありますけれども、こういうところにもやっぱりそう言われてもしかたがないんじゃないかという数字が現実にあらわれてくるのであります。だから、この通産大臣の指定というものを十億ときめずに、もっと、せめて五億なり三億なり、下のほうに下げるということは、これは言えぬことかもしれませんが、省内で議論されたことがあったのかどうか、十億というところにきまった理由は何であるのか、二%しかないということも御承知の上で、十億でやむを得ないということをおきめになったのか、その辺のところ、言える限度でけっこうですから、お知らせいただきたいと思います。
  124. 山本重信

    山本(重)政府委員 実は内部でその点は相当に議論をいたしたのでございまして、いまの御意見は、私は傾聴に値する非常に貴重な御意見だと拝聴いたしております。いろいろ内部の事情もございますが、ちょっとこの席では申し上げかねますのでお許しをいただきます。一応十億円という基準をつくりまして、しかし今後の倒産の状況の推移を見まして、そしてできるだけ実情にあったように、御趣旨のように運用していきたい、その辺はひとつできるだけ弾力的に考えたいと思います。
  125. 海部俊樹

    ○海部委員 むしろ、われわれが聞いておった情報では、初めのころは大体指定基準が三十億以上になるとか五十億以上になるとかとんでもない意見が流れてきておったのですが、十億ということはそれから見れば大幅な進歩でありますけれども、それではあまりにも倒産関連中小企業者を救うんだという看板にしては、どうもお粗末なような気もいたしますので、今後機会があったらさらにこれは十分御検討をいただきたい問題として、逆にお願いをしておきます。  そうしますと、通産大臣倒産企業というものを一応十億なら十億以上のめどで指定をいたします。そうすると、それの下請になっておる関連中小企業者というものは無条件で救われるのかというと、そうじゃございません。何かこれを読んでおりますと、「通商産業大臣が指定するものを実施していることにより、」これは法文ですと、第二条第二項になるのですが、何か理解しにくいような文字が出てくるのでありますが、「取引の相手方たる事業者が事業活動の制限であって通商産業大臣が指定するものを実施していることにより、」というのは、一体具体的にどういうことなんでしょう。
  126. 山本重信

    山本(重)政府委員 この第二項の一号は倒産の場合の規定でございまして、その場合は、ただいまも申し上げましたような基準に合致しておる倒産に関連しておる中小企業者が、その対象になるわけでございます。その場合に、関連する中小企業者と申しますと、市町村長の認定を受けることにいたしております。その認定の基準は、倒産企業に対して五十万円以上の売り掛け債権等を持っておる、それから取引依存度が二〇%以上ある、この二つの要件を満たしておれば、倒産関連のほうの適用が受けられるわけでありまして、私は、その場合の関連中小企業者の範囲はかなり広く適用できるのではないかと考えております。  それから、ただいまお読みいただきました第二号のほうは事業活動の制限、いわゆる親企業、大企業の減産によりまして、その関連あるいは下請企業が深刻な影響を受けるという場合の規定でございます。その場合に、親企業あるいは大企業が相当の期間計画的に減産をする、その結果、その関連下請が注文が減ってきた、こういう場合に適用することにいたしております。この基準をちょっと申し上げますと、事業活動の制限ということばで言っておりますのは、俗にいういわゆる減産でありますが、過去一年間の生産実績に比べまして、生産が六ヵ月以上の期間一〇%以上減少する、一割以上の減産を行なう。それから過去一年間の実績に比べまして関連中小企業者のうちの相当数のものの受注量が二〇%以上減少する。こういう場合に、この事業活動の制限というのを通産大臣が指定するわけでございます。その指定がありますと、それに関連しておる中小企業者、つまり取引の依存度が二〇%以上ある、そしてその企業の親企業に対する取引量が過去一年間の実績に比べて二〇%以上減少すると見込まれる中小企業にこれが適用になる、こういうことでございます。
  127. 海部俊樹

    ○海部委員 よくのみ込めない点がありましたので、さらに重ねてお尋ねしますけれども、一体倒産関連保証の制度というものの一番のみそは、親企業倒産したときに、その責任が直接ないにかかわらず将棋倒しに倒れる小さいのを助けてやろう、こういうことだと思うのです。そうしますと、まず第一点で、親企業そのものの通産大臣の認定基準というものが非常に高いところにあって、全倒産件数の二%内外しか認定できないというように非常に制約されてくる。それにも、言うならば非常に不満はあるのですけれども、百歩譲って、ならば、それについておる中小企業者は全部関連企業として救われるものであろうと思っておったら、そうでなくて、関連中小企業者というものに対しても、今度は市町村長の側からの指定が要る、こういうことのようでありますから、ワクがさらにしぼられてくる。そうしますと、市町村長が関連中小企業の認定をする際に、倒産によって経営の安定に支障を来たしているかどうかというその認定基準が、いまの長官のお話ですと、倒産企業に対し五十万円以上の債権を有すること、取引依存度が二〇%以上であること、こうおっしゃるわけですが、こうなりますと、それ以下のものは、せっかくというと変な話ですが、せっかくその通産大臣の指定を親企業のほうは受けたんだけれども、自分のほうは依存度が一八%であったがために町村長の認定が受けられない。御利益は回ってこないという結果になるのでありますけれども、これは両方にわたってあまりにも条件がきびし過ぎるのではないでしょうか。通産大臣倒産企業というものを認定されたならば、それに関連するものは、債権額とか依存度とか、そういうことまで要求しなくてもいいのではないか。むしろ、それを要求することによって、救われるよりは中小企業者が救われないようになってしまって、この臨時措置法のほんとうの精神がかすんでいくのではないかというようなおそれを感ずるのでありますが、どうでしょうか。
  128. 山本重信

    山本(重)政府委員 ただいま申し上げましたように、五十万以上の債権ということと、関連企業者のその倒産企業に対する取引依存度が二〇%ということでございます。いままでの実績等から見まして、この程度の制約でしたら、まあそこと取引しているといえるところは大体実際上入り得るのではないか。ある企業倒産しまして、そことはほんのわずかしか取引してないというようなものまで、何でもかんでも対象にするというのもいかがかというので、一応こういう認定基準をつくった次第であります。この点につきましても、もし、実際に運用してみまして御指摘のような懸念が出てまいりますれば、その点は検討さしていただきたい、このように思います。
  129. 海部俊樹

    ○海部委員 議論はたくさんあるわけでありますが、やはり小規模企業にとっては、五十万円以下だといっても、四十万円とか四十五万円というのは相当な金額になると思います。それによって経営に支障がくるかこないかということよりも、それが全部だめになるということは相当な痛手だと思いますので、それはお考えおき願いたい問題として提起しておきます。  それから具体的な運用の問題ですが、市町村長の認定でありますから、市町村長が、これはかわいそうだ、債権は四十万円しかなかったけれども、なるほどこの町工場はこれを救ってやらなければたいへんだというふうに認定した場合には市町村長の認定となっておりますから、市町村長の責任において、通産省がきめておられる認定基準を少し幅を広げて、弾力的に運営した場合、どういうことになるでしょう。それは絶対認めないという考えですか。
  130. 山本重信

    山本(重)政府委員 市町村長に対しましては、できるだけ簡素な形式審査といいますか、それで済まそうということを考えておりますので、一応こういう基準をつくりましたら、やはりこの基準を市町村長によく徹底させて、そしてその基準に沿って運用していってもらおう、こう思います。もし具体的に、これではとても救えないものがたくさんあって気の毒だ、困るという状況になりますれば、この基準自体を変えていきたい、こういうふうに考えております。
  131. 海部俊樹

    ○海部委員 そうしましたら、今度問題は百歩譲って、企業に対する依存度は二〇%以上であり、倒産企業に対して五十万以上の売り掛け債権というものが、一応市町村長に対する、認定基準になって、これは動かないものであるということでありますが、そうしましたら、先ほどの、下請と第二次下請の問題になるわけでありますけれども倒産企業に直接債権は持っておらぬけれども、それの第二次的な下請業者であることが明らかであって、かつ債権額は五十万円以上であり、依存度が二〇%以上であるというケースが、具体的に、理屈の上では考えられるわけでありますが、これはもう少し簡単な手続で救う。先ほどの長官の御答弁ですと、第一次下請さえ救済しておけば、第二次以下はよくなるであろうということで、第二次下請以下のことは考えておられぬような印象を私は受けたのですけれども、やはり第二次下請以下でも、そういう市町村長の認定の基準に合うぐらいのダメージといいますか、損害を受けるものが現実に出てくると思いますが、そういうものまで救おうという拡張解釈はできぬものでしょうか。
  132. 山本重信

    山本(重)政府委員 現在考えております運用の基準は、親会社といいますか、大企業倒産をしまして、それの第一次の関連のところをテコ入れしょうというわけでありますが、第一次下請はちゃんとあるわけですから、それに対する第二次の下請は、債権の回収不能とかなんとかという状態には直ちにはなっていないわけでございますので、一次によく手当てをしてやれば第二次は救えるのじゃないかという前提で考えておる次第であります。  それから先ほど、そうして手当てをしたのだけれども、第一次が実は倒産してしまったという場合のお話がありましたので、その点につきましては、運用上どうも考えなくてはいけない問題があるのじゃないかと、率直に申しまして、さっき気づいた点でございますので、なお検討いたしたいと思います。
  133. 海部俊樹

    ○海部委員 それはつき詰めて理想論を言い出せばきりのない問題でありますので、私も御検討願うという長官の御答弁を信用しまして、その問題はこれでやめることにいたします。  信用保険公庫に対してですが、いままでいろいろと融資基金が出ておるわけでありますが、現在の運用状況はどうなっておりますでしょうか。
  134. 山本重信

    山本(重)政府委員 保険公庫の融資基金ですが、十月末現在で二百四十八億円となっておりまして、これは各県、市の保証協会の保証業務の増大をはかりますために、長期資金としまして期間二年以内の融資をしております。また、保証債務の履行の円滑化を目的とする短期資金、これは六ヵ月以内のものでありますが、それを区分して、運用をいたしておるのが実情でございます。
  135. 海部俊樹

    ○海部委員 今回の政府出資の予定額が十億となっておりますが、その十億のお金で、すべていま当面の状況がうまくいくのでしょうか。目的及びその使途のお考えがあったら言っていただきたいと思います。
  136. 山本重信

    山本(重)政府委員 今度の制度によりまして保証協会が積極的に活動するとなりますと、やはり相当の融資基金を補給していく必要があろうかと思います。ただ、もうすでに年度末に近くなってもおりますので、とりあえず年度内は十億円を配分することでどうやら間に合うのではないか。ただし、来年度の予算では相当額を確保して配分することが必要であろう、このように考えております。
  137. 海部俊樹

    ○海部委員 この臨時措置法全般の問題でありますけれども、これはたいへんけっこうな政策である。ところが、四十二年三月三十一日までの臨時措置となっております。さきにも申しましたように、多くの業者が、これは昭和の御代の仁徳天皇だといって喜んでおるようないいことを、なぜ初めから一年やそこらでやめてしまうという腹で提案されたのか、その理由を言っていただきたいと思います。
  138. 山本重信

    山本(重)政府委員 今回の措置法のねらいは、当面の不況対策というところに力点を置いて考えましたので、おおむね現在の不況が克服されて景気上昇に転ずる、そうして中小企業に対するいまのような緊迫した状況が解消するという時期を考えまして、一年あればまずだいじょうぶだろうということで臨時法にいたした次第でございます。もちろん、景気動向見通しはなかなかむずかしい点でございますので、実際の経済の動向を見まして、この期限の切れる前にさらに延長する必要があるかどうかを検討いたしたいと思います。また、いろいろ現在の制度と関連を持っておる点がございますので、中には、あるいは恒久法の中に繰り入れることがよりいいというようなものもあるのじゃないかと思います。その辺も、実施の状況を見まして検討した上で、この期限が切れるまでに間に合うように結論を出したいと考えます。
  139. 海部俊樹

    ○海部委員 これは当面の不況対策である、こういうことでありますけれども、実は、ことしの春ごろから、権威ある学者の論文や新聞論調その他いろんなものを読んでおったら、大体、ことしの年末ごろには不況を脱却して調子がよくなるのじゃないかというような観測もだいぶありまして、われわれもそれを大いに期待してがんばってきたわけでありますが、日本の経済というものはムードによって動く面が非常にたくさんありますので、そういう見通しを立てられたからといって、必ずしもそうなるものとは限らない。むしろ、そういうときに不況の一番しわ寄せを食う小規模企業者を救済しようというこの態度でありますから、常に最悪の場合を予想して、常に一番ぎりぎりの状態までの手当てを考えておやりになるのが私は親切な中小企業対策ではないか、こう思うわけであります。百歩譲って、それでは不況さえ克服したならば中小企業の問題というのは救われるのかどうか、私はもうちょっとほかのところにも原因があるような気持ちもするのです。そういった意味で、この一年間というのは、やはり短過ぎるような気がいたしますので、取り入れるものがあったならば検討するというのではなくて、これは将来恒久立法に持っていけるような努力とかあるいは研究などをすでに今日の段階でもおやりになっておるのじゃないかと私は思うのですが、おやりになっておる点やお考えがあったらお聞かせを願いたいと思います。
  140. 山本重信

    山本(重)政府委員 現在の時点においては、実はまだ検討を必ずしも進めておらないのが真相でございます。運用の実態を見まして、いまの先生の御趣旨もよく考慮させていただいて、結論を出すようにいたしたいと思います。
  141. 海部俊樹

    ○海部委員 それから一つ非常に素朴な質問で恐縮ですが、「この法律は、昭和四十年十二月十七日から適用し、」こうなっておりますけれども、いかなる理由で十七日とされたか、そのメリットをお答え願いたいと思います。できたらもう少し切りのいい日に変えたほうがいいのじゃないかという素朴な気持ちもしますけれども、何か理由があったらお聞かせをいただきたいと思います。
  142. 山本重信

    山本(重)政府委員 この法案は御存じのように、臨時国会に提出いたしました法案でございまして、十二月一日から施行を期待しておったのでございます。審議未了になりまして、その審議未了が確定いたしましたのが十三日でございます。できるだけ早く再提出をしたい、再提出をいたします際に、できるだけ早く適用するようにいたしたいと考えたのでございます。そういう方針を決定する日よりもさらにさかのぼらせるというのはいかがかという配慮から、閣議決定をする予定の十七日という日にちをきめた次第でございます。
  143. 海部俊樹

    ○海部委員 これは最初から何回も申しておりますように、悪い法律じゃなくていわゆるいい法律でありますから、なるべくそういうふうに早く効力が発生して多くの人が救われるならいいだろうということでありますが、やはり法治国家の法律の理屈というものは、法律には不遡及の原則というものがあって、さかのぼらないということになっております。特にこの問題は刑法の面なんかでは、罪刑法定主義なんというその原則が貫いておって、絶対許されないところでありますが、まあいいことだからさかのぼってもいいことだし、原則をくずしてもいいということがあまりたび重なってまいりますと、やはり法治国家の精神からいってどうかと思われるような点もございますので、たとえ内容はいいことであり、多くの人が待望しておる問題であっても、これはできるだけ慎重にお取り扱いを願いたい。この問題ですでに方々、たとえば法制局とか内閣あたりと御相談の上でおとりになった処置とは思いますが、法的に疑義だとか、あるいは手続上の問題の手落ちは全くなかったでしょうか、今後心配の起こるようなことがないでしょうか、明確なお答えをいただいておきたいと思います。
  144. 山本重信

    山本(重)政府委員 その点はまことに異例なことでございますので、法制局の専門家の意見も十分に聴取いたしまして検討していただきました結論として、これは差しつかえないという公式の見解を得ましたので、提出をいたしておる次第であります。  また、実務の面につきましても予定をしないで仕事をしておって、急に遡及するのではいろいろ混乱も起こるおそれもありますので、その点につきましては第一線の信用保証協会のほうにも十七日付にするということを即刻通知をいたしまして、そのつもりでいま仕事をしてもらっておりますので、たとえ十七日にさかのぼりましてもそのために実務の面でも混乱の起こることはございません。
  145. 海部俊樹

    ○海部委員 私はいささか心配しておったのでありますが、そういう明快なことであれば了解をいたします。  最後に、私はやはり今後前向きの姿勢でこの五十万円に上がりました特別小口条件の限度額をできるだけ上げていくという努力を重ねていただくと同時に、やはりこの臨時措置法というものの内容がせっかくいいものでありますから、一年間でまた消えてなくなるということでは、あまりにも中小企業者に与えた夢や希望をはかないものとしてしまうわけでありますから、恒久化するような努力を重ねていただきたい。同時にきのうのテレビで、ほんとうに中小企業経営者が泣くような思いで早くこの臨時措置法を通してください、こういうものこそ強行突破してもらってわれわれのために政治をやってほしいという声も強く出ておるわけでありますから、そういった声も十分おくみ取りの上、早くこれが実行されますように、また、実行にあたっては各窓口がこの法の精神を十分会得いただきまして、当初起こりましたようないろいろなトラブルが起こらないように格段の御努力をお願いいたしまして私の質問は終わりたいと思います。
  146. 始関伊平

    始関委員長代理 参考人におかれましては、長時間にわたり御出席をいただき、まことにありがとうございました。  次会は明二十四日午前十時十五分理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時三十六分散会