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田中(重)
政府委員 ただいま
お話しの問題は、国有林野事業に従事する定期作業員の問題かと存じます。定期作業員は御承知のとおりに、六ヵ月以上一年未満の雇用契約をもって国有林野事業に従事している作業員でございますが、林業経営の特殊性から申しまして、その作業が季節に支配をされるという点がきわめて大きな特長でございます。植えたりあるいは切って出したりという仕事がそれぞれ季節に左右される。申すまでもなく、木を植える、あるいは植えた木に対して下刈りをする、これはそれぞれの作業の適期というものがございます。それから、一方、切って出す場合にも、材木を水へ流して運搬する、あるいは積雪を利用して雪のある間に作業を行なうというような形でございます。そういうような仕事でございますから、林業の作業員は、農業の閑期をうまく利用をいたしまして、農民の手によってその経営が行なわれてきたという
実態でございまして、国有林野事業といえども林業経営である以上はやはりそのような形で仕事を行なってまいったわけでございます。そこでこの定期作業員という作業員が生まれました理由も、いわゆるこま切れ雇用をするために定期作業員として雇用しているのではなくて、ある必要な期間であって、しかも農閑期の農民の余剰労力をあてにするということで行なわれてまいったわけでございます。しかしながら、近年におきましては、そういうような
労働者の雇用の
形態も、別の面から見まして、いわゆる不安定雇用であるという形として見られるようになっていることも事実でございます。そこで、私どもといたしましては、その農民が引き続いて国有林野事業に従事したいという希望がある場合に、国有林野事業といたしましても、でき得る限りその希望に沿いまして、またいわゆる不安定な雇用を解消をしていくという考え方で改善を加えてまいりたい、こう考えておるわけでございます。
〔竹内
委員長代理退席、
委員長着席〕
そこで、この定期作業員の雇用をできるだけ通年化してまいるためには、その
前提として仕事が継続して行なわれる必要がございまして、そういう
意味合いからも先般参議院の農林水産委員会でも農林
大臣から、直用事業を原則として、そういう
前提で雇用の安定に努力をしたいという
意味の態度表明を行なったわけでございます。
ところで、その仕事を続けてまいるというためには、造林と、切って出す仕事をできるだけつないでいくことによって事業をまず継続させていくくふうが必要でございます。それで、たとえば高知あるいは熊本両営林局の
地域等におきましては、造林なりあるいは伐木なりについての技術の開発その他いろいろくふうをこらしまして、造林等が植物生理上季節に支配されるとはいいながら、できる限りその適期の範囲を拡大するようなくふうをいたし、また伐木においても、雪に支配されることが少ない地方でございますから、できる限り
機械化された形で伐木事業につないでまいるくふうをいたしまして、いわゆる常用作業員が圧倒的に多いのがこの地帯でございます。これはやはり事業を継続して行なうことをくふうし得た成果だろう、こう考えているわけでございます。
そこで定期作業員の問題は、主として北海道あるいは東北地帯においての問題になってまいります。その北海道、東北地方では、積雪期間というのがございまして、以前はこの積雪を利用して先ほど申し上げましたように切って出す仕事を行なってまいりました。それはやはり積雪という季節に支配されるために、積雪の期間だけに限られた仕事として独立をしておったわけでございますが、この積雪期間の事業と申しますと、積雪の
状態が年によって非常に違ってまいりますから、まず事業の計画性がなかなか立ちにくいということがございます。あるいは積雪の中で仕事を行なうわけでございますから、能率があがらない。またその反面、労働安全の面からいいましても近代的でない面も多いというようなことで、積雪中の作業を漸次やめまして、積雪以外の期間に仕事をするようにくふうをした結果、逆に冬の仕事がなくなったというような
状態がございます。それで、これを継続して年間仕事をするためには、積雪中といえども仕事が行ない得るようなくふうが必要でございまして、それには
機械化等による技術の改善も相当必要でございますし、それから雪のないときから、雪が降ってから行なう仕事につないでいくようなくふうも必要かと思います。そういう点の技術上の改善がなお結論を得ていないという面で、造林と伐木をつなぐ東北、北海道地帯の問題の解決ができないでいるというのが実情でございます。
もう
一つの問題といたしまして、いまも申し上げましたように、
一つの適期の範囲で仕事を行なうために、その期間に集中的に作業員を必要とする。その適期が経過しますと、その作業員は要らなくなる。昔は、こちらのほうでは要らなくなったのが農家では自分の仕事に帰るという形で繰り返されたわけでございますが、その場合にこれを年間通じて仕事をつないでいくといたしますと、ある期間に集中的に必要な人全部の雇用を年間つなぐということに非常に無理が出てまいります。と申しますのは、仕事の量が一定いたしておりますから、そこで簡単に申しますと、現在の定期作業員をかりにそのまま年間通じて雇用したとした場合には、その伐採量を異常に増大をしなければ、かりに技術的に仕事がつながれても雇用を消化し得ないという問題が出てくるわけでございます。ところが、伐採量につきましては年々若干ずつふえておりますけれども、これは長期にわたった計画をもって木を切り、その
あとへ植える、これが国土の保全、治山治水上も必要なことでございますし、国の木材
需給の観点からいいましても、計画性をもって伐採しなければならないことはいうまでもないことでございますから、そこで現在の定期作業員全部をつなぐための仕事の拡大ということはきわめて困難であろうというふうな問題もございます。
しかしながら、先ほども申し上げましたように、いわゆるこま切れ雇用、いわゆる不安定雇用、これはたてまえとして解消しなければならない。この
雇用対策法案の示している
趣旨にも、国の措置として、そういう不安定雇用の解消につとめるように、そのたてまえを表明しております以上、私どもといたしましても、
労働者の
立場からいいまして、できるだけ安定した雇用に持っていくという熱意を持っているわけでございますが、いま申し上げましたように、国有林野事業の特殊性からいいまして、直ちに具体的な雇用安定の結論を出し得ない
状態でいるわけでございます。しかし、現在鋭意その対策を練っているというのが実情でございます。