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1966-04-25 第51回国会 衆議院 社会労働委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年四月二十五日(月曜日)    午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 田中 正巳君    理事 藏内 修治君 理事 齋藤 邦吉君    理事 澁谷 直藏君 理事 竹内 黎一君    理事 松山千惠子君 理事 伊藤よし子君       大坪 保雄君    亀山 孝一君       熊谷 義雄君   小宮山重四郎君       中野 四郎君    西岡 武夫君       西村 英一君    藤本 孝雄君       粟山  秀君    山村治郎君       足鹿  覺君    淡谷 悠藏君       石橋 政嗣君    滝井 義高君       辻原 弘市君    吉川 兼光君       谷口善太郎君  出席国務大臣         文 部 大 臣 中村 梅吉君         厚 生 大 臣 鈴木 善幸君         国 務 大 臣 藤山愛一郎君  出席政府委員         総理府事務官         (経済企画庁総         合計画局長)  鹿野 義夫君         厚生政務次官  佐々木義武君         厚生事務官         (大臣官房長) 梅本 純正君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      中原龍之助君         厚 生 技 官         (医務局長)  若松 栄一君         厚生事務官         (薬務局長)  坂元貞一郎君         厚生事務官         (保険局長)  熊崎 正夫君         自治事務官         (財政局長)  柴田  護君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   平井 廸郎君         文部事務官         (大学学術局審         議官)     木田  宏君         厚 生 技 官         (保険局医療課         長)      浦田 純一君         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 四月二十二日  委員大原亨辞任につき、その補欠として松原  喜之次君が議長指名委員に選任された。 同日  委員松原喜之次辞任につき、その補欠として  大原亨君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 四月二十二日  雇用対策法案内閣提出第一三六号) 同月二十一日  戦傷病者特別援護法の一部改正に関する請願  (保科善四郎紹介)(第三二二二号)  同(小川半次紹介)(第三二七八号)  同(菅野和太郎紹介)(第三二七九号)  同(小坂善太郎紹介)(第三二八〇号)  同(遠藤三郎紹介)(第三三六四号)  同(砂原格紹介)(第三三六五号)  同(田澤吉郎紹介)(第三三六六号)  同(高瀬傳紹介)(第三三六七号)  戦傷病者に対する障害年金、一時金の不均衡是  正に関する請願保科善四郎紹介)(第三二  二三号)  同(小川半次紹介)(第三二八一号)  同(小坂善太郎紹介)(第三二八二号)  同(遠藤三郎紹介)(第三三六八号)  同(砂原格紹介)(第三三六九号)  同(田澤吉郎紹介)(第三三七〇号)  同(高瀬傳紹介)(第三三七一号)  戦没者等の妻に対する特別給付金の不均衡是正  に関する請願羽田武嗣郎紹介)(第三二二  四号)  同(保科善四郎紹介)(第三二二五号)  同(小川半次紹介)(第三二八三号)  同(和爾俊二郎紹介)(第三二八四号)  同(遠藤三郎紹介)(第三三七二号)  同(砂原格紹介)(第三三七三号)  同(田澤吉郎紹介)(第三三七四号)  同(高瀬傳紹介)(第三三七五号)  戦傷病者等の妻に対する特別給付金の不均衡是  正に関する請願羽田武嗣郎紹介)(第三二  二六号)  同(保科善四郎紹介)(第三二二七号)  同(小川半次紹介)(第三二八五号)  同(菅野和太郎紹介)(第三二八六号)  同(遠藤三郎紹介)(第三三七六号)  同(砂原格紹介)(第三三七七号)  同(田澤吉郎紹介)(第三三七八号)  同(高瀬傳紹介)(第三三七九号)  クリーニング業法の一部改正に関する請願(地  崎宇三郎紹介)(第三二二八号)  同(小渕恵三紹介)(第三二八七号)  同(小坂善太郎紹介)(第三二八八号)  同(重盛寿治紹介)(第三二八九号)  同(島村一郎紹介)(第三二九〇号)  同(田口誠治紹介)(第三二九一号)  同(増田甲子七君紹介)(第三二九二号)  同(松浦周太郎紹介)(第三二九三号)  同(塚田徹紹介)(第三三六〇号)  同(森義視紹介)(第三三六一号)  同(山村治郎紹介)(第三三六二号)  アルコール中毒者治療施設増設等に関する請  願(畑和紹介)(第三二二九号)  同(山中吾郎紹介)(第三二三〇号)  同外一件(柳田秀一紹介)(第三二九六号)  同(山中吾郎紹介)(第三二九七号)  同(戸叶里子紹介)(第三三五七号)  社会保険制度改善に関する請願重盛寿治君紹  介)(第三二九四号)  同(中嶋英夫紹介)(第三二九五号)  全国一律最低賃金制の確立に関する請願(加藤  進君紹介)(第三三〇一号)  同(川上貫一紹介)(第三三〇二号)  同(谷口善太郎紹介)(第三三〇三号)  同(林百郎君紹介)(第三三〇四号)  失業対策事業賃金引上げ等に関する請願(加  藤進紹介)(第三三〇五号)  同(川上貫一紹介)(第三三〇六号)  同(谷口善太郎紹介)(第三三〇七号)  同(林百郎君紹介)(第三三〇八号)  引揚医師の免許及び試験の特例に関する請願(  大坪保雄紹介)(第三三五八号)  日雇職人失業保険に関する請願塚田徹君紹  介)(第三三五九号)  老後の生活保障のため年金制度改革に関する請  願外二件(小川平二紹介)(第三三六三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国民健康保険法の一部を改正する法律案内閣  提出第五二号)      ————◇—————
  2. 田中正巳

    田中委員長 これより会議を開きます。  内閣提出国民健康保険法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。滝井義高君。
  3. 滝井義高

    滝井委員 国民健康保険法の一部を改正する法律案について御質問を申し上げます。まず初めに、健康保険法のときに質問をしたいと思っておりましたが、質問をさせていただけませんでしたので、健康保険のときには医療供給体制についてだけ、ほんとうに上すべりな質問をしておったのです。なお医療需要体制と、それから医療供給体制需要体制との橋渡しをやる診療報酬体系、これらの三つのものの概要を健康保険のときに質問することを目的としておりましたが、供給体制だけしかできておりませんので、きょうは診療報酬体系医療需要体制質問をして、そして国民健康保険の具体的な問題点質問に入りたいと思います。  その前に、御存じのとおり、こういう社会保障を担当する者がどうしてもお互いにふんどしを締めなければならぬ客観情勢が出てきたわけです。それは、大臣御存じのとおり、先日浅草の御老人が、わざわざ総理並びに厚生大臣に遺書を書き、しかも同時に、乏しいお金をつけて社会福祉の前進をこいねがう。一方においては、千葉大学で、鈴木というたぐいまれなる医師が出て世間を騒がせるという問題が出てきている。一方には、心臓病を早くなおさなければいかぬ、しかし、われわれは自分の産んだ子供心臓病をなおすことにもはや手も足も出なくなった、何とかして心臓病子供を守らなければならぬという切なる母親のつどい等もできているというように、まさに厚生行政四面楚歌なんです。そういう四面楚歌の中で、一体どう乗り切っていくかということは、いままでの常識、いままでのものの考え方ではだめであるということが、もうはっきりしてきておるわけです。相当の蛮勇、相当行動力を持って事態に当たらなければ、にっちもさっちもいかないということになっていることは、すでにもう再三再四にわたってわれわれが述べておるんですが、いまや述べるだけではだめです。一体どう実践していくかということがいまの問題です。このことはすでに私が指摘をいたしましたが、石炭産業も同じ。ちょうど医療石炭産業とは全く同じ状態だ。抜本改正をやるやると言いながらも、抜本改正がちっともできずにきている。こういうことなんです。  そこで、きょうは、その抜本的な問題にも触れながら、率直にひとつ大臣の見解を披瀝をしていただきたいと思うのです。歯に衣を着せずに、思ったことをずばりひとつ言ってもらって、そしてその上で世間の批判を受けるということにしていただきたいと思うのです。事態が重大になり、問題の核心に触れてくると、その問題は抜本改正になりますので、それぞれの諮問機関意見を聞きますなんということになれば、一体厚生大臣は勉強してないのか、こう疑いを持たれますから、やはりあなたはあなたなりの意見があるはずだ。私はこう思います、しかしこれはひとつ審議会にはかって結論を出していただきましょう、こういう答弁のしかたにひとつきょうはしていただきたい、こう思うわけです。まず冒頭に、われわれ社会保障に携わる者の心がまえを一応私なりに述べて、質問に入らしていただくわけです。  そこで、まず最初にお願いをいたしたいのは、技術尊重医療費体系というものをつくるんだということをしょっちゅう言われるわけです。技術尊重医療費体系というのは一体どういうことを言うのか、これをまずお聞かせ願いたい。
  4. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 医療にあたりまして、私は医師立場を尊重する。現在の診療報酬体系は、この医師技術という面におきまして十分これが正しく適正に評価されているかどうか、こういう面になりますと必ずしもその点が十分でない。物と技術が紛淆したり、また医師技術について画一的な評価がなされたり、そういう面につきましては、相当医師の方々の中にも御不満があるのではないか。また、医学技術が日進月歩の勢いで進んでまいるわけでありますが、その間において、この医師技術というものが、正しく適正に評価されていくことがわが国の医療の確保をはかる上から大切な問題である、私はこのように考えておるのであります。したがいまして、今後診療報酬体系を再検討し、適正化をはかります場合には、そういう心がまえ診療報酬体系適正化してまいるという基本的な考えを持っておるのであります。
  5. 滝井義高

    滝井委員 いま物と技術が混淆している、技術が画一的にしか評価されていないから医者不満だ、だから、医学技術進歩に支障を来たす状態になっておるから正しく評価がえをする、診療報酬体系を新しく検討するときはそういうことを考えておやりになる。そうすると、いまの体系の中で、具体的にどういう点がいまのようなことになっておるのですか。
  6. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 御承知のように、現在の点数表甲乙二表という形になっておりまして、甲表におきましては、完全ではございませんが、比較的物に対する対価が支払われるような形になっておる。たとえば薬の点数等につきましても、たま注射等につきましても、それぞれ物の対価技術というものが比較的分離できるような形になっておりますが、これが乙表におきましては、必ずしも物の対価技術とが完全に分離されておらないような形になっておる。これは御承知のように、発生的にやはり甲乙二表の分離をやりましたときのいきさつから申しまして、乙表につきましては、従来の点数表をそのまま踏襲したという形になっておるわけでございます。しかし、甲表必ずしも完全に物と技術が分離されておるとは私どもは思っておりませんので、その点は、今後いろいろと検討していく際に、物の部分技術部分が変わっていくような形で、分離できるような形で点数表の改定に当たってまいりたい、こういうふうに考えるわけでございます。
  7. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、一言に言いますと、いまの体系というのは物と技術が完全に分離されていない、だからいまの体系はだめだ、こういうことなんですか。
  8. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 必ずしも私どもはそのように全面的に考えておるわけでもございませんが、しかし、診療報酬に対する支払い方法といたしましては、やはり技術を適正に評価する、正当に評価するという立場で、技術評価すべきものについてはこれを現在以上に的確に評価する方法を考えてまいると同時に、物に対する支払いにつきましては実費弁償的な考え方に徹すべきではなかろうかという意味で、現在の診療報酬体系には改める余地が非常に多いというふうに考えておるわけでございます。
  9. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、これは国民のみんなにわかりやすいように整理して言いますと、技術というものには専門技術者として生活のできる、しかも医学技術進歩ができるような技術評価をやりたい、物というものは実費主義、ことばをかえて言うと、原価でひとつ使うようにする、こういう形のものを医療費体系の中に持ってくるのが一番理想的な厚生省の考えている姿である、こう理解して差しつかえないですね、もう一ぺんきちっと言ってください、一番大事なところだから。
  10. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 大体そういう考え方に立ちたいと思っています。
  11. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、これはもう非常にはっきりしてきたわけです。そうすると、一体物に入るものは何で、技術に入るものは何か。
  12. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 技術に入るものといたしまして申し上げてみますと、診察料、これは明らかに技術に入るものだと思います。それから検査のうちの検査に関連しての判断、こういったものは当然技術に入ると思います。しかし、検査の際にはいろいろと物を使いますので、その分は検査と物に分けるべきではないか。それから注射につきましても、注射に対しましての技術料、こういったものは当然分離できるというふうに考えております。したがいまして、大きく分けますと、いわゆる技術に該当するものとしまして、その他大きな部分処置手術等が入ってくるわけでございますが、物については薬剤その他の、処置その他に伴います材料費、こういうふうに私ども考えております。それから申し落としましたが、薬その他の材料費のほか、施設設備の使用の費用のごときものは、これは材料のほう、つまり物のほうに入るべきではないかというふうに考えます。
  13. 滝井義高

    滝井委員 だいぶはっきりしました。そうすると、物に入るものは薬とか包帯とかいうような材料費、それから建物等施設機械器具、こういうものが物に入る。それから技術に入るものは診察料注射料処置料手術料、それから検査——検査の中の物を除く、こういうように、大体これでしろうとにもはっきりわかります。  そこで、診療報酬を考える場合は、物と技術評価というものをどういうようにすることになるのですか。その場合に、物は原価主義ですから、これはもうはっきりするわけです。そうしますと、技術評価を、診療報酬を考える場合どういうようにするか。
  14. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 分離する場合に、技術評価につきましては、これは私どもが一方的にきめるわけじゃなしに、やはり専門家の御意見、たとえば各学会の御意見を聞いて、技術適正評価をやるというように私どもは考えております。
  15. 浦田純一

    浦田説明員 技術評価ということは非常に実際問題としてはむずかしいことでございますが、まず二つの点から考えるべきじゃないかと思っております。  第一は、技術の各行為間のバランスの問題でございます。たとえば虫垂炎の手術は何点であるとか、あるいは胃かいようの手術は何点であるとかいったような、各行為間のバランスを適正に評価するということが一点でございます。これはどうしても各専門家学会の御意見を尊重してきめていくべきじゃなかろうかと考えております。  第二点は、その個々評価されたものを、さらに実際上診療報酬としてお支払いをする場合に、つまり単価幾らにするかという問題でございます。これもまた非常にむずかしい問題でございますが、これらのことは、その国の経済状態その他いろいろの情勢に支配されると思いますけれども、また一面では国際的な比較、あるいはさらに国内で考えます場合には、同種の似たような職種の方に支払われている報酬、たとえば弁護士さんのような職種の方における収入といったようなものを参考にしながら、かつ医師の社会的な地位というものを勘案してきめていくといったような、実際的な方法を考えざるを得ないかと思っております。
  16. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、物は原価主義でいく、技術専門家意見を聞くけれども、二面からなって、個々行為というか、技術的な行為バランス、これはまあ学会意見を聞く。それから診療報酬として支払う場合には単価をどうするか、国の経済的な情勢技術国際的比較、それから同種職種技術評価、あるいは報酬収入医師の社会的な地位を勘案する。そうしますと、この第二の面はきわめて政治的な要素が入ることになるが、そういうことに考えても差しつかえないですか。
  17. 浦田純一

    浦田説明員 決して政治的な要素と申すのではございませんで、経済的な要因はもちろん考えますけれども、このような報酬という問題は、決定するのに非常にむずかしい点がございますので、ほかにいろいろと参考にする資料を集めまして、そして社会的に見ましても最も公正妥当な面で決定してまいりたいということでございます。
  18. 滝井義高

    滝井委員 国の経済状態なんというものは、ずいぶん見方が違うのですね。それから国際的な比較にしても、イギリスで比較するのか、西ドイツで比較するのか、アメリカで比較するのか、それとも日本と同じような国民所得の程度の、いまのベネズエラとか、チリとか、そういうようなところで比較するのか。それから同種職種評価でも、弁護士の中でも出たての弁護士をとるか、有能な高い弁護士をとるのかというので、取り方によってもずいぶん違うわけです。したがって、ここでは、客観性という名のもとにきわめて主観的な政治的な要素が入りやすいわけですね。いままでそうだったわけです。あなたの先輩はずいぶん客観的にやったと思っておった、客観的にやっていまの甲表に出てくる初診料というのは十二点しか出てこなかった。それがいつの間にか十八点になり、二十四点になっていったわけです。きょうは舘林さんを呼んでおく必要があったが、十二点だった、それをいつの間にか十八点にしてしまったというあれがあるわけです。これはいいことなんだ、国際的な比較ですると十八点でも低かったわけだから。ここが一番ポイントなんですよ。ここを一体どう、だれがどういうようにきめていくかということなんだ。  そこで、いまのようなことで、きわきて抽象的に言われておるけれども、これをもう少し具体的にしていく必要があるわけです。大臣、いま浦田君の言われた御答弁二つの側面をもってきめることになった一つ一つ技術行為については、これは他の技術とのバランスを聞いて学会でやってもらいますということであるので、これはわりあいにその専門学者がやることだから、そうわれわれしろうとがかれこれ言う必要はない。しかし、第二の要素経済状況とか国際比較とか、同種職種報酬参考にするとかいうような、あるいは医師の社会的な地位なんというものは、これはなかなか学者だけではできるわけにいかぬ。それは一国の国民の側の負担能力も十分考えなければいかぬわけです。いま負担能力のことは言わなかったのだけれでも、それは善意に解釈して、国の経済状況という中に入るんだろうと思うんです。そうしますと、この部面を一体どうするかということです。いまから十年前に医師技術料というものをだしたんです。Gを出したときに、どういうように出したかというと、G=(1+α)×gtとしたわけだ。その場合にアルファというのは技術差、gは単位時間当たり報酬、それからtは単位時間とやったわけだ。これは曽田さんのときにできた公式です。御存じのとおりです。ところが、そのときにアルファができなかったわけだ。アルファをいかんともしがたかった。だからアルファをゼロにした。ゼロにすると、Gはgtになったわけだ。これはマルクス余剰価値です。単位時間当たり報酬に時間をかけたものを医師技術評価したわけです。当時の自民党政府は、マルクス資本論をとったんでしょう。そうしてgは幾らと見たかというと、gを四円三十六銭と評価した。これがいまの甲表基礎なんです。だから技術料というものは四円三十六銭かけるtだから、これを健康保険へ持ってきたのでどういうことになったかというと、滝井義高のようなへたくそな医者は、盲腸手術に三十分かかるということになると、これは相当の金を取る。熊崎さんのような優秀な医者は十分でやると、じょうず医者のほうが盲腸手術料が安くなって、へたなほうが高くなる。盲腸手術をして治癒までの総和を見ると、治癒期間の短いほど報酬は少なくなる、治癒期間が長いほど報酬は多くなるという矛盾が出てきたわけです。これがいまの健康保険矛盾です。すなわち、四円三十六銭というのはどうしてできたかというと、やぶ医者滝井義高のところに患者が来ると、滝井義高聴診器を当ててぱっと見る。ストップウォッチを押す。そして診察をして初診の診療時間八分なら八分、こう出した。それが、滝井義高診療所の玄関を自転車に乗って往診にだっと出て、外へ出ると同時に、用意どんでぱっとストップウォッチを押す。そして患者さんを見て、だっと帰ってくると往診の時間が十八分なら十八分、こうやって出した。そして総点数を総時間で割ったら一分間が出る。それで四円三十六銭とこう出た。いま熱海に行ってごらんなさいよ。四十五分、四百五十円というのが出ている。何の広告かと思ったら、熱海あんまさんの広告です。ある人が私に教えてくれた。そしたら、考えてみたらあんまさんは一分間十円。医者は四円三十六銭、こう出たわけです。それが基礎になって甲表ができた。そうしますと、浦田さんがいろいろいいことを言ってくれた。いいことを言ってくれたが、こういう診療行為のそれぞれバランスをとることは学会に聞くとしても、診療報酬としてそれを具現する場合については、国際情勢国際比較医師社会的地位患者負担能力、被保険者負担能力等を考えてきめることになるんだが、この場合にアルファ技術差というものを大臣は一体どう考えておるのかということです。
  19. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 技術個人差ということを評価することは、私は非常にむずかしい問題だと思います。しかし、いま滝井さんの御指摘になりましたように、かりに盲腸手術を例にとりました場合に、ただそれに要した時間というものが大きなウェートを持って診療報酬評価される、計算されるというようなことは、これは私はやはりそこに矛盾を認めざるを得ない。長年こういうことをやっておりますから、盲腸なら盲腸手術し、それをなおすまでの間にどれくらいの治療費なり手術料なりあるいは薬なり、そういうことが大体把握できるものだ、私はこう考えております。そういうような意味合いからいたしまして、時間だけでもって、時間が大きなウェートを持って医療費が算定されるというようなことでなしに、短い時間で早くなおるというようなことになれば、これは患者も喜ぶことであり、また医療目的はそれによって達成されるわけでございますから、かりに盲腸の例をとりますと、盲腸診察し、それを手術してなおすまでに、幾らぐらいに医療費評価するかというようなこと等も検討に値する問題ではないか。その間に、技術というものについてのじょうずへたというような問題も、そこにおのずから評価の中に入ってくるのではないか、こういう点も私はしろうとながら考えさせられておるのであります。
  20. 滝井義高

    滝井委員 どうもいまの大臣の答えだと、物と技術が一緒になってしまっておる。物評価もせざるを得ないという形になる。私は、物と技術をあなた方が画然と分けるという前提に立って、いま裸にしてきたわけです。技術というものをお釈迦さまにして出してきた。これはお釈迦さまなら拝むようにとうといものだけれども、お釈迦さまにして出してきた。そうすると、技術料というものは(1+α)gtです。これ以外にない。物というものは原価でやるから、物は捨て去ってしまっていい。そうしますと、ここに出てくるものは、アルファをどう評価することになるのかということに帰着してしまう。いまのような大臣答弁になりますと、これは私の考えておることと同じことになる。私は、率直に言って、物と技術とは完全分離ができないという立場です。盲腸手術をします。そうしますと、この盲腸は、付近に少し膿が破れて出ているから、限局性の腹膜炎を起こしておる。ところが、いまこのものに抗生物質を大量に使っておれば、これは瘻孔をつくらない、いわゆるフィステルをつくらずに、縫ったところからうみが出なくてきちんとなおる、こういう評価をするわけです。その場合に、ここで抗生物質を使ったら非常に早くなおるという判断は、これは医者技術なんです。しかもその技術というものは、物と密着するわけです。なぜならば、この場合に他のものを、アスピリンを使うという判断をしてはだめだ、抗生物質を使うという判断が大事なんです。その場合に、抗生物質を使うといったときに、この抗生物質を原価評価してしまいますと、今度は頭の中で、抗生物質を使うという行為盲腸手術の中に止揚されてしまって、そこに、いい医者と悪い医者との区別は出てこない。この病気は感冒だ、軽いというと、いまの健康保険では、軽かったら注射なんかする必要はありません、そのときにはまず値段の安い内服薬でいきなさい、そしてどうしてもいかないときは、高い抗生物質をお使いなさいというのが療養担当の規定ですよ。   〔委員長退席、竹内委員長代理着席〕 ところが名医は、全身的な客観情勢から見て、この御老人の感冒というのは、やがて肺炎になる可能性が強い。そこで、いまの段階で抗生物質を使わなければ使う時期を失すると思って抗生物質を使うと、これは保険でちょん切られる。なぜならば、感冒なんかにそんな高貴薬を使う必要はない、こうなるわけです。だからそこでは、物と技術が完全に融合した形で行動する場合には認められていないのです。ここを言うわけです。これを一体どう打開していくかということになると、そのアルファというものを評価せざるを得ない。ところが、現実に国際的に見ても、このアルファ評価はいまないのです。ないので、一体いまどういう形になってきているかというと、アルファの役割りを果たすものがある。あなた方、何と思う。アルファの役割りを果たしておるものは、いまの診療体系で何と思うか。——だからあなた方は勉強不足なんだ。もう十年も保険局の飯を食っておって、それくらいのことがわからぬでどうしますか。いまの実態を見てごらんなさい。この前私はここで出した、いまの診療報酬の中でアルファの役割り、いま技術差の役割りをしているのは何か。この前私はここで心臓手術のことをちょっと出した。これは心室の中隔欠損症で非常に手術がむずかしいのです。日本でこういう手術をやれる人はそう多くない。たとえばこの前典型的に榊原先生を出したわけですが、この手術をやると、二カ月くらいは入院することになる。そうすると、いま普通にいったら幾らかかるかというと、八十万円くらいかかるわけです。二カ月入院して八十万円は取られますよ。いまは一体育成診療幾らでやっていますか。心臓病を持っている子供を守る会を梅崎さんとかいう人がやっているでしょう。自分の子供心臓病で死なせてしまって、どうもこうもならぬ、ひとつ厚生省頼みます、こういうことになった。ぼくらも地方でいろいろ頼まれるけれども、なかなか順番が回ってこない。県もなかなか予算をつけない。一体育成診療幾らでおやりになっていますか。
  21. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 これは三十九年度の給付内容につきましての実績で申し上げますと、一人当たり十五万四千九百円ということになっております。
  22. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、浦田さんのほうの育成医療の入院料、健康保険でやっているのを言ってください。
  23. 浦田純一

    浦田説明員 いまの心臓手術についての大体の経費でございますが、これは普通一カ月最高で二十五万円くらいかかっています。したがいまして、二カ月ですと五十万円近くになります。
  24. 滝井義高

    滝井委員 そうでしょう。健康保険で保険証を持って行って二十五万円です。安くたってこれは十万から十二、三万円かかっています。そうすると、厚生省で——育成医療というのは自由診療範疇に属しますよ。そうしますと、これは普通の自由診療でやったら八十万くらいかかる、健康保険でも五十万かかるのですから、予算を十五万円しか組んでなかったら番はこないのですよ。なぜならば、榊原先生のところの女子医大に行ってごらんなさい、殺到している、半年から一年も待たなければ順番がこないのです。そこで一体これでどういうことが行なわれるかというと、健康保険だけでは、八十万円かかるのを十万から二十五万の間であげなければならぬことになるので、差額徴収が行なわれる。この差額徴収がアルファの役割りをしているのです。  もう一つある。何か。それはベッドで差額徴収をする。だから大臣、虎の門病院に入院してごらんなさい。沖中さんはじめ、日本一流の医者がそろっていますよ。しかし、あそこへ保険証を持って行ったっていい部屋には入れません。人道と博愛をもって鳴る日赤でも同です。日赤に保険証を持って行ってごらんなさい。そんなものでは大部屋しか入れない。だから、アルファというものは健康保険ではやりようがないので、こういう差額徴収であらわれる。  いま一つは、入院の差額です。結局入院料を野放図に許しておるから、いまや公的医療機関は独立採算制をしいられて、病院の回転がうまくいかないのでデラックスな病棟をみなつくります。デラックスな病棟をつくって、病棟でかせぐわけです。天下の慶応病院に行ってごらんなさい。慶応病院は保険医療機関ですよ。しかし、その保険医療機関に保険で取り扱わない病棟があります。私の友だちが一カ月入院したら四十万円取られたのです。これは税金がかからないのです。そういう差額徴収があるわけです。  もう一つありますよ。もう一つは何か。高貴薬の使用です。技術尊重という形でつくった甲表を見てごらんなさい。甲表はいみじくもすでにわれわれの同僚の諸君が幾度か質問したように、甲表というものは、そんな薬でかせがない約束でつくったものですよ。当時の医療課長の舘林君は私に、滝井さん、これができたら絶対乙表のようなばかなことにはならぬですよと言われたが、私は、そうじゃない、やはり薬でかせぐようになると予言したが、私と舘林君の十年の論争は私の勝ちです。結局高貴薬です。技術尊重技術尊重でなかったわけです。薬でかせがざるを得なかった。だから一週間分も十日分も、この前言ったように、公的医療機関が、ふろしきで包んでよいさとかつがなければならぬほどくれるのはここです。高貴薬をやってかせがなければならぬことになった。  非常にわかりやすく大ざっぱに言えば、その三つにあらわれた。一番典型的にあらわれたのが心臓病です。これは大蔵省に予算要求したって十五万円がぎりぎりです。八十万も認めない。だから、どうも育成医療などというものには順番は回ってこない。病院は十五万円くらいでやったって赤字になっちゃう、できない、そうなるのです。これは大臣、私はきわめてわかりやすい説明をしたのです。あなた方はそういうことの研究が足りない。いまの保険の問題点は一体どこにあるかと言うと、ここなんです。しかもこれを大手を振ってやるのは、草深きいなかで細々とやっている私的医療機関じゃないのです、東京のどまん中で、どっかりとデラックスに腰を据えている公的医療機関、しかもそれは税金がない病院がやっている。こういうところにメスを入れずしてほおかむりできているところに、日本の保険医療の大きなミステークがある。だから、このアルファというものを一体どう解決していくかという回答を出してもらわなければいかぬ、国民健康保険が赤字だ、赤字だというけれども、ここのところの技術体系というものの一番根幹が確立されていないところに、日本の医療のむずかしさがある。たよりなさがある。これはどうですか、いま言った三つの側面というものをあなた方がやめさせるならば、やめさせる方向でアルファというものを確立しなければならぬ。それは別の形で出る。ちょうど火山が最も地盤のやわらかい、弱い弱点に向かってふき上げるのと同じ形が、アルファの変形として差額徴収なり入院料の差額徴収とか、あるいは高貴薬の高度使用となってあらわれてきているわけです。どうしますか。
  25. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 滝井先生おっしゃるような実態があることは、私どもむろん承知をいたしております。したがいまして、もともと一プラス・アルファ技術差をどのようにして導入するかということについては、これは診療報酬体系と取っ組む場合の基本的な問題でございまして、私どもとしては、御説明のとおりやはり現在の診療報酬体系の中で社会保険という前提のもとに考える限りにおいては、医療行為につきましての難易差というものは技術的な差として採用できるにしても、個個の医師に対する技術の差というものは、これは社会保険の中にはちょっと導入できないんではないかということで考えておるわけでございまして、それが結果的に差額徴収なりその他の議論が生まれる余地をつくってあることは、先生よく御存じのとおりでございます。したがいまして、私どもとしては、そういう個々医師につきましての行為の難易差でなしに、個々医師技術の差を社会保険の経済の中でどのように診療報酬として考えていくかという問題については、基本的な問題でございますので、そういう点を含めまして現在中央医療協議会で、技術の正当評価をどのようにやっていくかということについて、今後審議を続けていくということになっておるわけでございますので、それが結果的にどういう形になるかということは、ただいま断定的なことを申し上げることは私は少し無理ではないか、こういうふうに思います。
  26. 滝井義高

    滝井委員 断定的なことをいまから中央医療協議会で……、それなら来年、四十二年にはできはしないでしょう。御存じのとおり、二千年前の床屋さんの技術評価と、いまの技術評価はあまり変わりはないのですよ。このごろ郷司浩平さんか何かが朝日新聞に書いているが、変わらぬ。それと同じで、医師技術なんというものも、床屋さんのサービス業と類型としては同じ類型に見ているわけです。そんなマスプロダクションができるわけじゃないですよ。だから、明治の時代の技術評価もいまの評価も、これはもうインフレを排除してしまえば相対的にはそう変わりはしないのですよ。昔のほうがよかったですよ。少なくとも初診のときには米一升だったが、いま米一升ないですよ。だから、ここらあたりが、まだ全然手がつけられておらない、皆目わかりません。いま中央医療協議会でやっておりますということでは、話にならぬですよ。もう少しふんどしを締め直して、それだけでも専門機関をつくってやってもいいですよ。何か上のほうだけで、ぽあっとしょっちゅうアドバルーンを上げて、何とか審議会をつくる、何とか審議会をつくる——こういうじみな地の塩となって検討していくというところがないわけです。これは少しもやられてない。十年前から同じじゃないですか。いまの議論じゃだめですよ。むしろもう少し、あなたは曽田さんのところに三顧の礼を持っていって、公衆衛生院に行って習ってくる必要がある。そういうことではだめですよ。保険局長つとまらぬですよ。こういう根本のところがはっきりしないと、いま言ったように差額徴収の問題も、病院の入院料における差額の問題も、それから高貴薬の、特に甲表における利用頻度が高くなったというような問題の解決ができないままでこれは進むことになるわけです。もうちょっとしっかり勉強してもらわぬとこれは話にならぬ、こういうことです。  次に進みますが、そうすると、医師技術料のほかに、病院の経営費というものは、物に入るのですか技術に入るのですか。
  27. 浦田純一

    浦田説明員 経営費というものの中身をもう少し具体的におっしゃっていただかないと、経営費でも、場合によりましては、そこで働いている従業員の人件費とかあるいは建物に対する償却費とか、いろいろとあると思いますけれども、ちょっと先生の御質問の意味が……。
  28. 滝井義高

    滝井委員 たとえば少し具体的に言ってみますと、診療報酬というのは、医師技術料と、それから病院の経営費というようなものになるのですね。そうすると、病院の医師技術料を除いてしまいますと、病院の経営費の中には、医師以外の看護婦の人件費とか、レントゲン技師の人件費とか、薬剤師の人件費とかいうものが入ってくるわけですね。薬剤費は、医師、歯科医師、薬剤師の技術費で別にしていいでしょう。とにかく医師以外の人件費が入りますよ。それから衛生材料費、薬の買い入れとか、建物、機械器具も経営費の中に入ります。それは減価償却費として計上します。そのほかに研修費みたいなのがあるわけでしょう、医師、看護婦の研修費がある。それからそういうもの以外に、病院全体を運営していく経費がありますね。食料費とか交際費とか、いろいろありますよ。そういう経費的なものがある。そのほかに、そういう範疇に入らない別の資本利子があるわけです。そうしますと、病院の経営費、すなわち経営原価というものは、いまのようなものから医師技術料を除いたものからなっておるわけですね。建物その他は、あなた方は物の中に入ると言われる。そうすると、医師以外の人件費というものはどちらに入るのか。研究費やら研修費というものは一体どこに入るのか。個々の病院、診療所でもって、研究費研修費の出し方もいろいろアンバランスがあるわけですよ。こういうものの包括した診療報酬という体系の中にあらわすときには、物と技術を分離するというならば、それは物の面に入るのか技術の面に入るのかということです。
  29. 浦田純一

    浦田説明員 通常、病院あるいは診療所医療サービスを行ないます場合に、もちろん病院あるいは診療所におきましては、病院、診療所がその使命を達成するために、直接の患者さんに対するサービス以外に、いろいろの活動をしなくてはならないのは当然のことであろうと思います。しかしながら、その全部をそのような患者さん、あるいは医療保険におきましては保険のほうからお支払いするかどうかということになりますと、少し問題があるかと思います。いま御指摘のような研修費あるいはその他、たとえば公的病院におきまするようないろいろな公衆衛生活動、あるいはその他の研究活動といったようなものになりますと、これを直接患者さんのほうが負担すべきかどうか、あるいはいわゆる保険のほうでもってお支払いすべき経費かどうかということは問題がございますが、しかしながら、医療サービスに伴います直接の活動といたしまして、たとえば検査技師の方々がいろいろな臨床検査に従事したときの、その方の人件費とか、あるいは看護婦さんが看護サービスした場合のいろいろな経費といったようなものを、一体医師技術料との関連においてどのように考えるかということは、実は二つほど意見が分かれております。当然そういったようないわゆる医療補助者と申しますか、パラメディカル・パーソネルの人件費につきましても、医師技術料もしくはそれに準じてそちらのほうで考えるべきであるという御意見と、それからそれは本来病院あるいは診療所の当然の診療のサービスとして含まれる問題であって、病院、診療所経営上の問題であるということにして、そちらのほうで見るべきであるという御意見もあるわけでございます。したがって、個々の問題につきましては、一がいにこれを技術料のほうで見る、あるいはこれは物であるというふうに的確に分けていくことはむずかしいかと思いますけれども、これらはいずれもケース・バイ・ケース、その場面によりまして十分に検討して、どちらに入れたほうがより物と技術の分離の原則に当てはまるか、あるいはまた、先ほど先生が御指摘のように、いわゆる医師技術評価してできるだけ医師の本来の専門職業的な使命を達成するように、また患者さん方がそれにょって、あるいは国民全体がそれによって一そうの福祉を受けるようにという方向で、これらの点については私どもはなお慎重に研究、検討してまいりたいと思っております。
  30. 滝井義高

    滝井委員 いまの考え方では全然答えにならぬわけです。それでは現在は一体、医師以外の看護婦さんやら、レントゲン技師さんやら、衛生検査技師さんの人件費というものは何に入っておるのですか。医師技術料に入っているのですか、物に入っているのですか。
  31. 浦田純一

    浦田説明員 ただいまの診療報酬体系におきましてはその辺が必ずしも明確でございませんで、先生のおことばをそのまま使わせていただきますと、これはやはり経費ということで、医師の物と技術といった分け方ではございませんで、いわゆる経費というふうに考えていただければけっこうだと思います。   〔竹内委員長代理退席、委員長着席〕
  32. 滝井義高

    滝井委員 もうちょっとしろうとわかりのするように説明してくださいよ。甲表技術中心の体系である、十分ではないけれども、物と技術とを分離をいたしましたという場合に、一体甲表ではそれは技術料の中に入っておるのですかどうですか、こういうことなんです。乙表の中では、一体そういう看護婦さんや何かの人件費というものはどこに入っておるのですか、これを説明してもらえばいいのです。今後ケース・バイ・ケースで検討すると言ったって、これはケース・バイ・ケースなんということではないですよ。どこだって看護婦さんは必要だし、それから病院、診療所では、看護婦さんのほかにレントゲン技師だって、衛生検査技師だって必要なんです。現実におるんですよ。だからケース・バイ・ケースではだめなんですよ。普遍的にそういうものはどうする、どこに一体それは入っておるということが明確でないと、いまの甲乙二表では必ずしも明確ではございませんというような答えでは、まるきりいまの体系には入っておらぬと主張したら、それじゃ入っておらぬということになるんですね。一体甲表ではどういうところに入っておるのですか、乙表ではどういうところに入っておるのですか。
  33. 浦田純一

    浦田説明員 先ほどの説明が明確を欠きまして、その辺先生におわかりいただけなくて恐縮に存じます。  現行の診療報酬点数表は、実は個々診療行為についてどのように報酬をお支払いするかという、いわば病院または診療所における収入の面からの収入を規定しておるといったような役割りを持っておるかと思います。さて、この診療報酬点数表をつくります場合の基礎の段階におきまして、先生の御指摘のようなことを、どのようにその中でもって取り入れていくかということになろうかと思っております。これらを考える場合に、先ほどの看護婦さんあるいは技術員の人件費、あるいは研修費、あるいは資本利子といったようなものがどのように考えられておるかということでございますが、私どもは、この基礎の計算をいたします場合に、先生がおっしゃいましたのと多少違った分け方でもって計上しているわけでございます。それは、まず分け方といたしまして、人件費、人件費の中には看護婦さんあるいは技術員及び事務職員その他の職員の方々の給与あるいは法定福利施設、こういったようなものが入っております。それから衛生材料費、これは医薬品あるいは包帯材料その他でございます。それから給食のあります場合にはこの材料も入ってまいります。それからその他の経費といたしまして、固定費的なものでございますが、この中には光熱給水費、事務消耗品費、通信運搬費、雑費、会議費、図書費、研究費、被服費、減価償却費、修理費、不動産賃借料、火災保険料、固定資産税、その他の税、それから支払い利子、また看護婦さんの宿舎があるような場合にはこれも考えなくちゃなりませんので、看護婦さんの宿舎費、これらのものがいずれも平均化された数字といたしまして支出する経費の中に計上されております。これらをもとといたしまして、あとは個々診療行為についてどのように配分してお支払いをしていくかという問題になっていくわけでございます。
  34. 滝井義高

    滝井委員 結局、客観的に見て、大体医者収入は、どのくらいの患者があってどのくらいの収入があれば、適正な専門職としての待遇になるのかということをおおよそ腰だめ的に先にきめて、いまのようなことでは、下から積み上げたのではなくて、逆におろしていったというようなことですよ。そうでしょう。だから、実態をストップウォッチでやってみたら十二点、百二十円にしか初診料はならなかった。ところが実際は、百二十円でやったのではまだ金が余るから、余るということは配分が不足するから、ひとつ配分をもう少しうまくやるために十二点を十八点にせい、こういうことだった。なぜ一体、十二点と科学的に出たものを六点も初診料をふやすことができたのか。いや別にそれは根拠がございません、つまみ金でそうしましたというのが、私から詰められて、当時の保険局長、いまの年金福祉事業団の理事長の高田さんの答弁なんです。私、ちゃんと覚えておる。そういうことだった。だから、あなた方いま説明したのも、人件費と衛生材料その他の経費で十ぱ一からげで平均的なものを入れたようなかっこうになっているが、十ぱ一からげに入れたのでは何も科学的根拠がないのですよ。だから一つ一つ問い詰められていくと、まだアルファもはっきりしないし、大事なところになるとケース・バイ・ケースでやります。大事な衛生検査技師とかレントゲン技師とか看護婦の経費を、ケース・バイ・ケースでやるなんというものの考え方ではだめですよ。しかも十ぱ一からげで入れておるでしょう。そういうことでいまの診療報酬体系がいかに人間を尊重しない、技術を尊重しない体系であるかということが、いまの答弁を聞いてみても一目りょう然です。だから、こういういままでの行き方ではどうにもならぬ。それで国際比較なんかは全然やられてないわけです。そうでしょう。アメリカに行ったら十ドルも取る初診料が、日本では二百四十円で十分の一にも当たらぬという実態ですから、国際比較なんかないわけです。そうしますと、いまのような形でやっていくと、いまのような診療報酬体系でいくと、人件費も、衛生材料費も、その他の経費も平均的なものを入れてきた。しかもこの前熊崎さんが明白にここで言ったように、単純再生産でしょう。そうすると、急激な技術革新が行なわれるときに、単純再生産では追いついていけないでしょう。技術進歩に追いついていけない。すなわち、大臣が冒頭にどう言ったかというと、いまの診療報酬体系というのは医学、医術の進歩に順応できない、だから、すみやかに適正化されなければならぬ、こうおっしゃっておる。そうすると、医学、技術進歩に順応していくためには、縮小再生産的ら状態ではだめなんですね。単純再生産というのは進歩する方向に適応してないから、進歩した時点から見たらこれは縮小ですよ。だから、これをある程度国民所得の上昇なり、それから生活水準の向上なり、物価の上昇に適応した状況に、診療報酬が自動的に変わる体系をつくらなければいかぬ。そうでしょう。これがいわゆるスライドです。そういうものが全然考えられていないでしょう。だから、しょっちゅうもめる。一割三分程度生活保護費を上げたら、すぐ入院料を上げてくれという要求になるんです。スライドするファクターを診療報酬に何も入れてない。すなわち進歩した状態から見ると、はるかかなた、おくれた状態診療報酬がついてきているという状態でしょう。だから、拡大再生産的な要素をある程度加味せざるを得ないわけです。これはそれをされていないです。それは今井先生なんかに聞いてごらんなさい。いや、単純再生産でよろしい、こうおっしゃる。それが単純再生産でよろしいということでいくのか、それとも大臣が言明されたように、医学、医術の進歩に適応した形で技術評価をしようとするならば、拡大再生産的な要素を加味しなければならないと思う。これは大臣、一体どっちを選ぶことになるのですか。
  35. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は、先ほど申し上げましたように、やはり国民によき医療を提供する、こういう意味合いからいたしますと、どうしても医学、医術の進歩に伴うところの適正な技術評価ということがなされなければならない、このように考えておりますし、また、国民生活水準でありますとか、あるいは経済情勢でありますとか、そういうものもやはり診療報酬体系の中にある程度加味されるということが必要であると、こういうぐあいに考えております。それが滝井さんのおっしゃる拡大再生産といいますか、新しい技術革新に即応して医療がなされていくという結果になるのである、私はこのように考えております。
  36. 滝井義高

    滝井委員 そういう形になると、あとでも触れてきますが、必然的に医療費はいまより増加する傾向になることは明らかですが、それでも差しつかえないということになるわけですか。そういう形になれば、いまより医療費は明らかに増加しますよ。
  37. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は、そういう意味における医療費の増高はやむを得ないことである、こう思うのでありますが、しかし、一面において医療費体系というものが再検討され、また、先ほどお話にもありましたけれども、薬等の乱診乱療といいますか、あるいはまた差額ベッドでありますとか、差額徴収でありますとか、そういうようなものも、今度は診療報酬体系適正化によって是正される面もあるわけでありますから、そういう合理的な診療報酬体系を目ざして改善を加えていきたい、こういう考えであります。
  38. 滝井義高

    滝井委員 乱診乱療は、これを抑制すれば保険経済に反映するけれども、差額徴収やベッド差額は、保険経済とは無関係に進行しておるのです。全然保険経済にあらわれていない。医療全体から言うと、そういうところにメスを入れれば、国民医療費の負担というものは軽くなる可能性が出てくるわけです。たとえば榊原さんのところでやっておる手術も、国がある程度見るから、育成医療と同じように十五万円でやってくれということになると、五十万円かかるのが十五万円でできるわけです。そういうところをきちっとやるというなら、これも一つの方向です。しかし、そういうときには技術を適正に、八十万を必要とするなら八十万は技術料を認めてもらわなければならぬ。いま二カ月で八十万かかるなら、保険でやったら五十万だから、三十万だけは損をするという形になるわけですよ。だから、それは損をしてはいけないから、別の方法で差額徴収が行なわれるわけです。それは保険経済には何も関係ないが、個人の家計には大きな影響を与えておる、こういうことになるのです。だから、大臣の言うように、医療費はそういう形で国際比較をやって技術評価をぐっと上げる——あとで触れてきますけれども、薬でやる分というのは、そんなにかねや太鼓で言うほど多くはないのですよ。薬を使わなくなればそれだけ治療日数が長くなるから、技術でよけい取られていくのですから同じことなんです。だから、何か薬がうんと問題のように言うけれども、薬の問題は別のところにあるのですよ。私はあとで指摘していきますが、そこらあたり、みな見当違いの議論をしておる。だから、大臣もそういう形でやるときには、医療費の増加はやむを得ないという、こういう形は了承できますね。
  39. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、医学、医術の進歩に伴って技術は向上し、また正当に評価されていくということになれば、技術料はだんだん高くなっていく傾向は、これは否定できない、こう私は思います。しかし、そういう正しい意味における技術評価、その結果としてあらわれる医療費という問題は、私どもはこれを尊重しなければいかぬ。それをチェックすることによって無理が出てまいりまして、その結果が、濃厚診療であるとかあるいは乱診乱療であるとか、いろいろな面で今度は保険経済にロスが出てくるのではないか、こういう一面もあるわけであります。だから、技術を高く正当に評価をして、そういう濃厚診療だとか乱診乱療だとか、そういうようなことをしなくても、りっぱにやっていけるように診療報酬体系を正していく、こういうことが望ましいのではないか、かように私は考えておるのであります。
  40. 滝井義高

    滝井委員 ぜひひとつ、そういうことでやってもらいたいと思います。そうしますと、診療報酬体系の中で、技術尊重の形で体系をつくると、医療費が増加する可能性がある。しかし、それは正当の増加であるから、乱診乱療その他と違うのだからその方向でいくのだ、これははっきりいたしました。拡大再生産についても、そういう方向の拡大再生産ならばよろしい、こういうことです。そうしますと、何もかにも診療報酬というわけにはいかぬ、こうなるのです。  そこで、この前問題になったいわゆる負担区分、特に公的医療機関における負担区分の問題で、一般会計から持つものは病院の建設費、高度医療、不採算医療、看護婦等の養成事業、リハビリテーション、こういうものは一般会計から持つ、こういうことになったわけですね。そうすると、一体いまの医療費の中で、当然一般会計で持たなければならぬものは、一兆一千億の医療費の中でどの程度そういうものがありますか。当然一般会計で持たなければならぬものを、いま病院の診療報酬の中に入れているものはどの程度のものがありますか。
  41. 若松栄一

    ○若松政府委員 先ほど来問題になっております一般会計で持つものという種類の費目でございますが、これは私どもが議論をしております段階におきましては、いわゆる公営企業の問題、あるいは公的病院、国立病院というような公的な性格を持ち、しかも一般財源等の繰り入れが可能であるような、そういう病院の経営についての話をいたしておるわけでございまして、私的の医療機関全部を包括した問題を論じているわけではございません。そういう意味で、公的な病院の任務というものが、おのずから私的な病院とは異なっている。私的な病院というものはある程度採算をとり、医師生活をするに足る利潤を上げなければならぬことは当然でございます。したがって、そのような医療機関につきましては、これはいわゆる不採算医療とか、高度医療とか、あるいは診療報酬に見合わないようなリハビリテーションをやるというようなことは事実上期待できないことでございます。また、医療機関の分布から申しましても、不採算地域において医療機関を経営するということは、個人の医療機関には期待することはできない。したがって、自然的な状態におきまして、個人の医療機関、医療施設の分布、機能そのままにおいては期待することができないような医療の量と質とを補充する意味で、公的医療機関というものの存在意義を認めておるわけでございます。そういう意味で、そのような公的医療機関については、このような不採算医療あるいは特殊な問題について一般会計から繰り入れるべきであるというように考えておるわけでございまして、したがって、すべての医療機関全部を対象にいたしましてその医療費の一兆一千億の中のどれだけというようなことは、これは計算できる筋合いのものではございませんので、やはりこの問題は公的医療機関あるいは公営企業というような問題に限って話をすべきものであろうと存じております。
  42. 滝井義高

    滝井委員 それはおかしいですよ。公的医療機関がいま診療報酬の中に相当なものを受け取っておるわけですよ。公的と名のつく日赤、済生会まで入れてどうですか。五割ちょっとぐらいは受け取っておるのじゃないですか。
  43. 若松栄一

    ○若松政府委員 入院医療についてはほぼ半分でございますが、外来診療につきましては、その公的医療機関の占める率ははるかに少のうございます。
  44. 滝井義高

    滝井委員 入院と外来と分ける必要はない。総医療費の中で、公的医療機関と名のつくものが、私的医療機関と比べて受け取っておる額というのは約五割近いと思うのですよ。見てみてください。
  45. 浦田純一

    浦田説明員 いま私どものほうにある資料は国庫を含んでない数字でございますが、基金で取り扱っております社会保険におきます全被用者保険のうち、基金委託分及び生活保護法、結核予防法の関係の診療報酬確定状況の区分を申し上げたいと思います。調査時点は四十年五月でございます。  区分といたしまして、まず病院と診療所に大きく分けますと、支払い機関数は、病院の数が六千七百七十三でございます。診療所が五万六千五百八十七でございます。総計いたしまして、支払い医療機関数は六万三千三百六十でございます。  そのうち支払いの金額で申し上げますと、病院に支払われる金額は、総計を一〇〇といたしまして五七・九%が病院に受けて支払われております。残りの四二・一%が療養所に受けて支払われております。この病院のうち国立病院、国立療養所及び公的病院の三つを取り上げて合計いたしますと、全体の一〇〇に対しまして二六・五%がこの三つの種類の病院に支払われております。したがいまして、病院全体の割合が五七・九%でございますので、半分には達しませんけれども、ほぼ半分に近い割合が支払われておる。  金額で申しますと、病院に支払われました総金額は二百三十九億八千八百三十五万五千円でございまして、その中で国立病院、国立療養所、公的病院の三つの種別の病院に支払われておりますのは、国立病院に対しましては十億六千五百七十九万四千円、国立療養所におきましては九億四千七百三十五万円、公的病院に八十九億三千三百八十万三千円、合計いたしまして約百億円ほど支払われておるわけでございます。  以上でございます。
  46. 滝井義高

    滝井委員 病院が五七・九ですね。そうしますと、公的医療機関もひっくるめて病院が五割七分というのは、半数以上受け取っておるわけです。そうすると、国立病院も私的医療機関の病院も、病院の実体は変わりないんですよ。点数も同じなんです。診療報酬点数でやっておることも同じです。いま公的医療機関が私的の病院とどこが違うかというと、税金を納めていない点だけですよ。私的医療機関は税金を納めている。そうしますと、診療報酬の半分以上を受け取っておるものは——公的だけをいまあなたのように不採算医療だなんて言って、一般会計の中から入れて優遇をするわけにいかないわけです。これは私的病院も同じように優遇をしなければいかぬ。たとえば東京のまん中にある共済組合の病院が公的医療機関だからといってこれを優遇すれば、隣の病院も優遇しないわけにいかない。それだったら優遇するだけそれだけ点数を下げろという問題が起こる。同じことをやっているんです。私的、公的という区別はどこでやるかというと、それは税金を納めるか納めないかだけです。それ以外のことは全部同じです。いまは不採算のところには公的医療機関はいかないのだから同じです。そうしますと、病院というものが半分以上受け取っておるというのは、この病院について、まずどうするかということを考えてみればいいわけです。そうすればそのあとで療養所の答えは出てきますよ。だから、一般会計から一体何と何とをどの程度入れるかということは、いまの現実の中から見ていかなければ出ないですよ。たとえば厚生省が医療機関の実態調査をやりたい、やりたいと言うのと同じです。それはやっぱりいま月に二百三十九億程度、国民健康保険を除いて被用者保険、生活保護その他から、支払いが一カ月に行なわれるわけでしょう。そのうちの半数、五割七分というものは病院関係が取っておるわけです。したがって、その病院関係の一〇〇の中の二割三分を取っておる。公的医療機関の中で百億ちょっとの金を受け取っておるんだが、その中で当然一般会計が持たなければならぬとあなた方の言う、こういう不採算医療とか、リハビリテーションとかいう経費が一体幾ら診療報酬の中に含まれているか、それをきわめなければならぬわけです。それがわからなければ議論が進まないんです。口先だけで政令でつくりますと言ったって、その実態がわからなければ国会の議論にならぬでしょう。それは当然あなた方が調べておかなければならぬわけです。これだけの具体的な答弁を国会の中で——病院の建設、高度医療、不採算医療、看護婦等の養成、リハビリテーション等の費用を一般会計から見ますと言うからには、いまの百億の中に一体どの程度こういう経費が含まれておるかということが調査されて、ここに報告されなければ議論が進まないんですよ、抽象論では。だから、私はこの前からそれを言っているんだ。政令を出すなら、その具体的内容を出しなさい、われわれはばかじゃないんですから。当然、これがあれば他の病院との関係が出てくる。関係が出れば、他の私的医療機関、診療所との関係が出てくるんです。いかがですか。やっていなければ次回までにやってみてください。そうしなければ、一番大事なポイントが、技術者もわからなければ、それから物に入るものが何かもはっきりしない。一般会計から公営企業の特別会計を分離いたしますと言うけれども、一体その分離する経費はどの程度入っておるかもちっともわからぬというのでは、だめですよ。あなた方は組織でやりよるんでしょう。私は個人で勉強しているんです。滝井義高個人であれこれ材料を集めてやっておるんです。あなた方、たくさん部下と組織を持っている。神崎さんの言うように、いま組織医療だ、これは私的医療機関と違うんだと言って病院関係者はいばっておるでしょう。それと同じように、厚生省は大きな組織を持っているから、こんなものはやってみればすぐわかる。全国でどれくらいあるかということがわからなければ、そうでしょう。きょうわからなければ、次回にひとつやってきてください。
  47. 若松栄一

    ○若松政府委員 滝井先生おっしゃるように、簡単に計算できるものとは、私は存じておりません。おっしゃるように、公的医療機関におきましても、私的医療機関におきましても、診療行為に対する報酬というものは同じでございます。税金を払う、払わぬということは別にいたしまして、診療報酬の立て方は同じでございますので、この公的医療機関が特殊な使命、あるいは特殊な条件を備えているからといって、診医報酬それ自体に差をつけるということは適当な方法ではないと思います。結果におきまして、同じような診療報酬体系のもとにおいてどのくらい赤字が出る、あるいはどのぐらい採算できないということを結果的に判断いたしまして、むしろ個々施設ごとにつきまして、それぞれの性格によってどういうような赤字が出てくるかということを検討すべきものでございまして、リハビリテーションに幾ら、あるいは不採算医療幾ら、高度医療幾らというような勘定は、そう簡単に出てくるものではないと思います。といいますのは、不採算医療といいましても、地域によりましてそれぞれピンからキリまであることでございますし、あるいは高度医療というものも、どの程度の機械をどういうふうに入れるかということは、やはりこれもピンからキリまでございますし、したもそれぞれの地域の医療需要というものが可動的、変動的でございますし、同じ機械を入れても、それが十分に利用されればかなりの採算がとれますし、利用度が低ければどうしても採算がとれなくなる。また、同じ赤字を出しております医療機関でも、これが経営努力を十分にやってなお来たるべき赤字であるのか、あるいは多少経営努力の足りない点に基づく赤字であるのかというようなことも判定しなければなりませんので、これはやはりどうしても個々医療機関の特性を十分検討した上で、その医療機関について公的な経費に依存しなければならないものがどの程度あるかということを、個別に判定しなければならぬわけでございまして、診療報酬としてどれだけが足らない、どれだけを公的負担で、あるいは一般会計でやるべきかということは、これは計算ができない性質のものであろうと私は存じております。
  48. 滝井義高

    滝井委員 計算のできないものなら、どうして、病院の建設、高度医療、不採算医療、看護婦等の養成事業、リハビリテーション等病院において負担することが適当でない経費について自治省と協議し、政令で負担区分を明確にするなんという答弁をしたのですか。そんなもの、しなかったらいいのです。あなたのほうがしたからこそ、こっちのほうは質問しているのですよ。私は、こういう答弁が出たから、現実はこういうものがどの程度ありますかという、現実を尋ねているのです。だから、現実に一つ一つケース・バイ・ケースに当たってみたら、たとえば一つがんセンターに行って、がんセンターの中でこれはとても診療報酬ではまかない得ないというものはどういうものがあるか、その経費はどれだけ一体赤字の要素として出てきておるかということを見てもらったらいいのです。それぐらい見てもらわぬと、こんな堂々たる答弁をしながら——これはおたくのほうから資料として配付されたものですよ。それをいまになって計算できませんというのは、これは大臣、撤回してください。大臣答弁したのですよ。私は二度もこの前念を押して尋ねて、そしてきょうまた尋ねるから調べてきてくださいと言っているのです。それだったら、公営企業の負担区分というものは、まるっきり雲のようなものじゃないですか。つかんだって何も出てきやしない。だから、もう少しそういう点は、私はそっちが答弁したからまじめに聞いて、まじめに考えよるのだから、もうちょっとあなた方もまじめにやってもらわなければ話にならぬ。私はこの前コバルトならコバルトをした場合に、これはどうなりますかということを尋ねておる。リニアックならリニアックをした場合に、これは健康保険は適用しないのです。しかし、これは今後適用せざるを得ないでしょう。ガンの対策というものを前進させようとすれば、健康保険でできないようなものは、幾らつくったって皆保険下ではナンセンスです。そういうものは当然国が買うて、民間に委託する以外にないでしょう。その経費は全部国が持ってやるという以外にないですよ。だから私は、あなた方のものの考え方というものは、こういう負担区分を明確にしていくというなら、いわゆる施設というものは国が全部つくる、国有民営をやるのかと思っておった。全部国が出す、そしてあとは民間にまかせる。そんなことはイギリスだってやっていますよ。イギリスでも、不況地域、たとえば産炭地などのような不況地域には、全部都市と工場を立ててやるわけです。そして、私企業に行きなさい、この工場を使っておやりなさい、もうけるようになったら減価償却をやってくれたらよろしいと言っていますよ。イギリスもやっている。それを、われわれは日本では産炭地でやってもらうように主張しているが、やっていない。だから、われわれは、病院でそういうことをやるのじゃないかと実は考えて、きょうは質問しているわけです。すなわち、リニアックのようなもの、コバルトのようなもの、非常に高度な、健康保険支払い能力を越えるような高度の設備、機械器具というものを国が買うて、病院に全部貸与する。いまは中小企業だって炭鉱だって、機械の貸与をしていますからね。貸しているのですよ。そういうように国有の形で貸す、しかし、それは民間で全部——医療というのは、必ずしも国営でやってうまくいかない部面があるので、そういうことだってできるわけでしょう。一般会計から持つということは、いわばそういう変形ですよ、形を変えたものですよ、建物もみな一般会計から見ますというのですから。いまになってそういうことは不可能でございますというのは、この前二度も三度も言っているのですから、出したこの文書を取り消してくださいよ。そんなもの、話にならぬじゃないですか。だから、もう少し、現実の一兆一千億の経費の中で、少なくとも月割りにしたら二百二十九億を公的医療機関が受け取っております。その中の百億程度は純粋の公的医療機関が受け取っておるというなら、その中にこういうものがどの程度入っておるかぐらいは、二、三日作業したら出ますよ。そんなものは、いまのように電子計算機もあるのだから、ただどういうものをそれに見るかということをあなた方が決心すればいいのですよ。そうでしょう。出ないことはないですよ。あなたのほうで四、五人貸してくれたら、私がやってみせますよ。そんなもの、二つ、三つ病院に行って、抜き取りで調査してみたらすぐできるですよ。そしてあとは大数の推計をやったらいいのです。統計学の大家があなたのほうには幾らもおるじゃないですか。そういうことさえわからずに国会で堂々と答弁しておって、今度いよいよ詰めてみると、それはできませんと言うなら答弁を撤回してください。われわれはまともに受けて勉強して、考えて質問しておるのに、いまになったらだめだ。しかもそれは大臣もごまかされた。大臣もごまかしている。それは鈴木さんは六月になったらやめてしまうからいいかもしれないけれども、そんなことは許されぬですよ。国会で答弁しておって、今度われわれはこれで地方公営企業に行ってやるのですからね、自治省に質問するのですから。どうですか、いまのいわゆる百何十億の中にこういうものがどの程度入っておるかということをやることは、これは今後の負担区分をする上に非常に重要な点ですよ。ポイントですよ。やってなければ、ひとつやってみてくださいよ。そんなにはよけいにやる必要はないから、何だったら、共済組合、東京第一、第二、健康保険の模範的な病院である全社連の傘下の病院の二つ、三つ、日赤、済生会、こういう五つ、六つを抜き取りでやってみたらいい。一体こういう病院の建設費、高度医療、それから日赤なんか不採算医療をやっておるわけです、看護婦の養成もやっているわけです、リハビリテーションもやっていますから、そういう経費が一体どの程度病院の経費の中に入っているかということは、やろうと思ったらすぐできるのじゃないですか。——答弁ができなければあとでいいですから、そういうことをやるのかやらないのかということを聞いているのです。自治省と協議し、政令で負担区分を明確にする、こうおっしゃったからには、明確にしてもらわなければ話にならぬですよ。ただアドバルーンをあげただけではだめですよ。アドバルーンは、風が吹いたら吹き飛ばされちゃうのです。根をはやしてもらわなければいかぬですよ。いま若松さん、答弁ができなければいいですから。そういうことができるのかできないのかということですよ。負担区分を明確にするなら、きょうは宿題にして、あとに延ばしてもいいですよ。
  49. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私が先般公営企業の病院の問題につきまして御答弁申し上げたことは、政府の方針として今後やってまいる所存でございます。ただ、過去におきましては、その負担区分が明確でなかった、そして独立採算制という名のもとに病院にその財政負担がかかってきた、こういうことであるわけであります。  そこで、いま医務局長が、滝井さんのせっかくの御質問でありましたけれども、そういうものはどれだけあるのかということが直ちに御答弁できなかったのは、過去における実態がそう明確にされていなかった、ここに問題があるのでありまして、今後私どもは、先般御答弁を申し上げたような政府の方針のもとに明確にしていこう。そのためには、御指摘のように、その実態を把握する、そういうことが必要になってくるのでありまして、私どもはそういう方向で今後努力をしてまいりたいと思います。
  50. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、いま大臣の言われたように、結局いままでの診療報酬の中にはそういうものが入っていなかったにもかかわらず、それを病院は診療報酬からまかなっておったわけです。だから、独立採算制は不可能になってきておったわけです。したがって、今後は、医務局長のいままでの答弁のニュアンスから考えると、公的医療機関にはそういうことはやらせます、リハビリテーションとか、不採算医療とか、看護婦の養成はやらせる。私的医療機関には、それならば、今後やらせぬということになる。やらせるとすれば、私的医療機関にも一般会計から入れなければならぬということになる。そうでなくて、私的医療機関は自分の経費で独立採算的におやりなさい、こういうことになれば、私的医療機関にはどういうことが起こってくるかというと、まず第一に労働の強化が起こります。労働の強化をやらなければできない。八時間労働を九時間とか十時間働いてかせがなければならぬということになる。そうしないと、いま言ったような救急医療なんというものはやれなくなる。  私、福岡県で調べたら、いま、百十一救急医療に指定されています。ところが、その中で公的なものは十一しかない。私のところの市立病院なんかやってない。なぜならば、そんなベットはないのです。余裕がない。救急医療に協力してないのは、公的医療機関のほうが協力してないのですよ。それは大臣も知らないかもしれないが、公的医療機関のほうが救急医療に協力してないのです。そういう実態なんです。それはどうしてかというと、あきベッドなんかつくれぬというのです。独立採算制を強要されるのだから、借りた金を返さなければならぬから、そんなに十も十五もあけて待っておれません、こういうことです。そういう実態で、公的医療機関のほうが協力してないのです。福岡県の実態を調べてごらんなさい、そう簡単にできるわけじゃない。私的医療機関のほうがむしろやっているのです。そうしますと、私的医療機関というのは診療所、病院ですね。公的医療機関と同じことをやっている私的な病院というものは、一般会計から入れてもらえないのですから、明確な負担区分をすることになると、一般会計から入れた分をこちらは自分でかせぎ出さなければならぬ。診療報酬でかせぎ出してくる。診療報酬からかせぐとすれば、労働強化か、施設設備の更新を延長するか、レントゲンは十年ぐらいでかえなければならぬのを十五年使うか、それとも診療内容を低下させるか、あるいは大臣のいう乱診乱療をやるかです。これに追い込まれちゃうのです。同じ診療報酬体系の中で、公的医療機関だけはとにかく負担区分を明確にする、こうやるのですけれども、他の病院は、いまのあなたの答弁のニュアンスでは、私的なものは自分でおやりなさい、こういう形になる。だからこれは私的、公的ということを分けずに、やはりここらは——公営企業の問題は分けられますよ、しかし、現実の診療報酬体系を議論するときには、この議論は分けられないのですよ。なぜなら、同じことをやっているのだから。だから、ここに一つ大きな問題があるということですよ。これは一体あなた方はどう解決していくかということ。いわゆる技術尊重診療報酬体系をおつくりになるというならば、その技術尊重診療報酬体系の中に、不採算医療とかその他のものは全部排除してしまうということになれば、もう診療報酬の中にはそういう要素は入ってこないのですから、したがって、私的医療機間については一般会計から入れるわけにはいかぬということなら、何か別な形でつくらなければならぬ。そうすると、いまのようなことになっていけば、公的医療機間の診療報酬と私的医療機関の診療報酬を二本立てにしなければならぬということになるのです。論理を進めていくとそうなるでしょう。そうでなければ、いま国立の結核療養所がやっているように、一〇〇%の診療報酬の請求をせずに、八割とか九割診療報酬の請求をしてやっていくとかいうような形にならざるを得ないわけです。診療報酬を同じにしても、一般会計からその分を入れた、不採算医療を入れたというような形で、そういうような形にせざるを得ない。ここらの関係というものを、こういう負担区分を明確にする際にどう考えているかということです。
  51. 若松栄一

    ○若松政府委員 少し議論の焦点がはずれているような感じがいたしますが、私ども考え方と多少ニュアンスが違っておりますけれども、先ほど二百何十億の中の幾らが不採算医療、あるいは一般会計からつぎ込むべき金であるのかというお話がございましたが、現在、公的医療機関も私的医療機関も同じ診療報酬体系のもとでやっておりますので、先ほど申されましたような公的医療機関が現在入手しております医療報酬の中に不採算医療的なものがある、あるいはリハビリテーション的なものがあるというふうに考えることは、適当じゃないのであろうと私は考えます。そのような不採算医療、あるいはリハビリテーション、あるいは看護婦養成等の行政的な任務を行ないますために、診療報酬にあらわれてこない出費が要る。したがって、それに対しては一般会計等の公費をもってこれを補てんしなければならないということでございまして、現在の診療報酬体系というもの、あるいは将来あるべき診療報酬体系というものは、正常の経営努力をし、正常の診療行為を営んでいる場合の個人の病院、診療所というものは、採算が大部分においてとれるべきものでなければならないと思います。  そのような診療報酬体系ができ上がったといたしましても、なおかつ、公的医療機関においては採算がとれないようなことをやらざるを得ない、その結果としては、診療報酬に上がってくるのではなくて、赤字という支出の増大という形であらわれてくると思います。したがって、その診療報酬でカバーできないような増大した支出を一般会計から補完するものである。たとえば国立病院で申しますと、そのような不採算医療あるいは高度医療というようなものがどういう形で補てんされるか。たとえば設備投資であるとか、あるいは高度医療に要する経費、リハビリテーションに要する経費、養成に要する経費云々というものを赤字分として一般会計から継ぎ足す。したがって、四十一年度の国立病院の特別会計におきましても、たとえば設備に関し現在借り入れをやっておりますけれども、その利息は全部一般会計で支払っております。また、看護婦の養成の費用は全部一般会計で払っております。また、国立ガンセンターのような特殊な施設であるために、運営部というような特殊な組織をもって教育訓練その他もやっていかなければなりませんので、その運営部の経費は一切一般会計でまかなう。また、国立病院一般につきましても、医療機械というものは高度のものをやっておりますために、医療機械の償却を診療報酬からまかなうことができないということで、医療機械の経費は全部一般会計でまかなう。また、新しく病院をつくりました場合にも、その初度設備であるとか、あるいは特別な病室を整備した場合の費用というようなものは、たとえば特別の病室といいますと差額病室みたいなものを整備するために金がかかるとすれば、これは一般の診療報酬でカバーすべきものでございませんので、これは一般会計の費用でまかなっております。また、一億近い研究費というものも一般会計で、まかなうというようなことで、先ほどのような公営企業の場合の負担区分にあらわれておりますような費目がそういうような形で補てんされるわけでございまして、病院、診療所、国立病院等が得ました診療報酬の中のどの部分が、一般会計あるいは公営負担部分であるかということではなかろうかと存ずるわけでございます。
  52. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、こういうことですか。結局国立病院も公的医療機関も私的な病院、診療所も、とにかく診療報酬はやはりいままでどおり一本でいくのです、そして結論的に言えば、私的医療機関がやれぬ部面だけを一般会計でまかなう、こういうことですね。
  53. 若松栄一

    ○若松政府委員 私的医療機関に依存するのが適当でないような部面について、これを公的医療機関に負担させ、その必要経費について公費をもつてまかなっていくという考え方であります。
  54. 滝井義高

    滝井委員 それならその区分を、この前のをもうちょっと検討してきちっとしたものを出してください。たとえばこの前、公衆衛生活動も言いました。救急医療施設も言いました。伝染病の病棟の経費等も言ったでしょう、これには書いておりませんけれども。そうすると、公衆衛生活動というものは、何も公的医療機関だけがやるものじゃありません。私的医療機関もやります。それから伝染病だって、ときには入れますよ。公の病床が満床になった場合に、文化村みたいにたくさん出てしまうと、私的医療機関にも何とかして入れなければ、入れられないことになる。救急医療は、福岡県では百十一のうち、とにかく十一しかやっておらない、協力していない。私的のほうが協力しているのに、公のほうが協力していないという実態もあるわけです。そうすると、救急医療とか公衆衛生活動というようなものは、一般会計からほんとうはやるべきものだけれども、私的なものがやっているからやることにならぬわけです。もしそれが、公のものをやるからということで私的にやらなければ、診療報酬にアンバランスができる。そうでしょう。だから、こういう点がありますから、もう少し猶予を与えますよ。地方行政当局、きょう財政課長に来てもらって、この点に関してどういう考えか、君のほうはどの程度公営企業に見るつもりなのか聞こうと思ったけれども、いまのようなあいまいたる答弁ではとてもだめですよ。専門家の厚生省がはっきりしていなければ、受け入れ側の地方自治体のほうはとてもだめです。だから、次会でけっこうですから、もう少しそこを詰めてみてください。そうしてきちっとした項目、分担する区分を、あいまいなことでなくて、いまのように具体的にあげてみてください。そうしてあなたのほうの予算面から出ている項目はどういう項目がそれに当たる、国立病院なら国立病院でいいですから、そうしてくれませんか。そのときそのときの答弁の内容が違っておりますし、一つ一つ詰めてみると、私的病院と公的病院の機能が明確でないわけですから……。  御存じのとおり、私的医療機関の中にも、民法三十四条にいうもっぱら学術を研究するものもあるのです。同時に、無料経費の診療をやっている社会福祉の病院もあるのですから、そういうものは公的医療機関と同じように非課税なんですよ。公的医療機関のやることを私的医療機関がやっているわけなのです。私的医療機関類似のものがやっているのがあるのです。だから、もう少しそこらを洗って、いざというときには明確にできるようにしておいてください。  それから、もうやめろと言っておるから、もう一項目でやめます。これで技術尊重診療体系の中の物と技術のところが一項目だけ済んだ。今度は二番目に甲乙二表の一本化の問題、三十四年の十一月に、委員長田中さんの絶大な御協力を得て、当社会労働委員会甲乙二表の一本化をやれという決議をした。だから、当委員会の意思はきまっておるのです。自来厚生省は甲乙二表の一本化をやろうとしない。三十四、三十五、三十六、三十七、三十八、三十九、四十、四十一、足かけ八年ですよ。一体その努力をしているのですか。
  55. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 甲乙二表につきまして非常に問題が多いことは、先生も御承知のところだろうと思います。それで厚生省におきましても、甲乙二本を、どういう方向で一本化していくかという点を含めまして、現実に甲表矛盾あるいは乙表矛盾について分析をいたしまして、機会があればそれを一本化することに努力をするということで検討を進めておるところでございます。
  56. 滝井義高

    滝井委員 いま乙表を採用しておる数は保険医療機関でどのくらいあり、甲表を採用しておるのがどのくらいあるのですか。
  57. 浦田純一

    浦田説明員 昭和四十年の数でございますが、病院及び診療所、分けて申しますと、病院は三六・一一%、それから診療所は四・八六%が甲表を採択しております。したがいまして、乙表を採択しております病院は、比率で申しますと六三・八二、診療所におきましては九五・一四%となっております。
  58. 滝井義高

    滝井委員 甲表というのは、厚生省のスローガンは病院に非常に有利なものであるということであったわけですね。有利なはずの病院が少ないというのは、どういう理由によるのですか。しかも最近病院の甲表採用の状況はどうですか、増加の傾向にありますか減少の傾向にありますか。
  59. 浦田純一

    浦田説明員 過去数年の経緯を見ますと、昭和三十七年度までは、どちらかといえば大体ふえる傾向にございましたが、三十八年度以降におきましては比率が減りつつございます。病院における甲表選択の数の比率でございますが、三十八年度は四一・一一%でございます。それが三十九年度には三九・六四%、四十年度におきましてはさらに下がりまして三六・一一%となったわけでございます。したがいまして、先生おっしゃるとおり逐次比率は下がりつつございます。
  60. 滝井義高

    滝井委員 その理由はどうしてですか。
  61. 浦田純一

    浦田説明員 近ごろ、この甲表乙表の選択につきまして、いろいろと、どちらをとるのが有利であるかといったようなことを民間病院あるいは自治体病院あたりで研究しておるようでございます。その結果を私どもはいろいろの機会に聞いたり見たりしておりますが、それによりますと、乙表の病院のほうが病院の収入面から見ました場合に有利である。入院におきましてはほとんど変わりがないのでございますけれども、ことに外来の収入におきましては、乙表を選択したほうが有利だという理由から、漸次甲表のほうから乙表のほうに移りつつあるという状況じゃなかろうかと思います。
  62. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、厚生省は甲表採用の病院をだましたことになる。乙表よりも甲表のほうが病院には有利でございますと言って、あれだけここで宣伝したじゃないですか。ところが、うしろを向いたら大衆はついてきていない。減りつつある。だから、こういうようにやったことが間違っておったら、やはり責任を明らかにしなければいかぬですよ。そうでしょう。  そこで、あなた方は今度の点数を直すときに対策をとったでしょう。甲表の一番の欠陥はどこにあったのですか。これは甲表のほうが不利だから乙表に移るということが、研究した結果わかってみんな移っているということですが、それは民間の人が研究するのじゃない、あなた方も研究しておるはずですよ。昨年の点数改正のときに、それを防ぐためにあなた方はどういう手を打ったのですか。
  63. 浦田純一

    浦田説明員 確かに甲表乙表の二本立ての点数表をとります場合には、甲表につきましてはできるだけ物と技術を分離する、そして技術料を尊重するというたてまえで作成したはずでございます。また、乙表におきましては、これはどちらかと申しますと、戦前から日本医師会の中でもって採用しておりました点数表を、戦後もそのまま厚生省のほうで引き継いでいったといったようないきさつもございまして、必ずしも乙表点数表の配分につきましてはその理由が明確ではございませんが、従来のそういったいわば慣習的なものをそのまま引き継いできたということだったわけでございます。ところで、甲表を新しく採用いたしましたときはそういうようなことでございましたが、その後数次の点数表改正もございまして、そのたびに甲表乙表両方とも点数が変わってきたのでございますが、その改正の作業の基礎となる資料につきましては、実はその後詳しい調査資料を用意するということが困難でございました点もございまして、乙表におきまする点数の改定は、物価その他の騰貴に見合いまする諸材料費の高騰あるいは人件費の高騰をカバーするための点数表改正といったようなことで、従来の線をそのまま延ばすような形で考えられたのでございますが、甲表におきましては、やはり当初考えておりました物と技術と分離するというその基礎の資料においていささか欠けるところもございまして、私どもといたしましては、甲表におきまする基本診療料につきましてできるだけ乙表とのバランスを考えながら改定に努力したつもりでございますけれども、そのような理由から、その後の甲表を算定する基礎の資料が年月の経過によって変わってきている事情が詳しくわかっていないというようなことで、必ずしも現実において、私どもが企図をしておったような甲表乙表両方のバランスのとれた改定を行なうことが結果においてできなかった、こういうことであろうと思います。
  64. 滝井義高

    滝井委員 結局、基礎資料が不足をして、物と技術をうまく分離ができなかった、すなわち技術尊重の形ができなかったので、甲表にみんなあいそづかしてきた、こういうことですよね、結論的に言うと。それで、いまから材料を集めて甲表の補強をやりたいと思っても、なかなか材料も集まらぬから間に合わぬ。間に合わぬ、間に合わぬと言っておるうちに甲表はだんだん崩壊しつつある、こういう姿ですよ。私は十年前にこれを舘林君に予告したのですよ。君そんなこと言っておったって、結局甲表も同じことになるぞと言ったのです。その端的なあらわれはどこであったかというと、あなたはいま言わなかったけれども、実は薬剤料の物の見積もりが平均薬価一本にしておったのですよ。当時薬は、いま十九円になっておりますが、十七円だったのです。十七円を十九円にして、今度幾らにしましたか。今度は、あなたのほうは一本ではだめだということになった。一本ではみんなあいそをつかしてしまったのですよ。したがって、十二円と四十三円に分けた。結局乙表と同じことになってきた。乙表はこれを十五円、三十円、四十五円、六十円、六十円以上という十五円刻みになっておる。すなわち段階がこうあった。そうして平均薬価をとっておった甲表は、物は原価主義だ——これはあとで出てきますよ。それで十七円一本であった。ところが、十七円では安くてだめだということになった。そんな十七円以下の薬は認められぬから使えぬということになった。みんな六十円以上を使っちゃったのです。ここで甲表について言えば、保険経済の赤字の原因が出てきた。そこで、それはたいへんだ、少しは安い薬を使ってもらわなければいかぬというので、十九円に上げたでしょう。やっぱりだめだ。とうとうたるこの甲表不信感は、いかんともすることができない。そうして結局乙表に近寄った。投薬の薬剤料を十二円と四十三円にしちゃった。注射も同じようにしたでしょう。注射は初めは、平均薬価は二十三円だったとぼくは記憶している。その二十三円が二十七円くらいだったと思う。それを今度、あなたのほうはどうしたかというと、十九円と四十一円に分けた。二つにしたでしょう、昨年の十月の改正で。これも同じように乙表に近づいてきたわけだ。何ということはない、実態は乙表と同じになった。物と技術を分離するという甲表は、少なくとも投薬、注射の面では乙表と本質は同じ形になった。根本的に制度を改革したと同じですよ。物と技術を分離するのに甲表乙表どこが違ってきたかというと、乙表というものは物にたよる、というのは、すなわちその違いは段階を設けておったということだけだったのです。もちろんこれは手術料その他、その分だけ少し色をつけておりましたよ。しかし、根本的には、もはや甲表というものは崩壊して乙表の思想に帰ったのです。いわば王政復古したわけだ。昔に帰った。(「そう、そう」と呼ぶ者あり)そう、そうと言っている。だからこれは、三十四年十一月に当委員会がやったように、乙表一本にしたらいいんですよ。天下の有名な病院がみんなくずれて、乙表一本にいっているんですよ。最近有名な病院がいったでしょう。東京のここらあたりの病院でどういうところが乙表になったか、言ってごらんなさい。
  65. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 甲表で最近変わった病院につきましては、先生御存じですから、この近くにもあったと私ども承知いたしております。
  66. 滝井義高

    滝井委員 ぼくはわからぬから言ってごらんなさいよ。
  67. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 結核予防会の清瀬の病院等であると私ども聞いておるわけでございますが、ただいま医療課長が申し上げましたように、私ども甲表乙表点数改定をやるつど、いかにして甲表の精神を生かし、また乙表についてどのように考えていくかということを常に留意してまいっておるわけでございますが、何しろ甲表点数の作成実態が、先生御存じのように点数払い的な考え方をとっておりまして、基本診療料その他につきましては一括払い的な考え方をとっておるわけでございますが、その実態というものはなかなか実は明確にならない。その明確にする材料もない。しかも片一方におきまして、御承知のように、そのつど、いわゆる実態調査がやられないまでの間は緊急是正的な点数改正にしかならない。しかも項目もしぼって点数改正を行なわなければならないような事情もございまして、どうしても甲表乙表とのバランスのある改正を、なかなかやろうとしてもやれないような情勢にあったということは、先生よく御承知のところだろうと思うわけでございます。  また、御指摘の平均薬価につきまして甲表について二段階を設けたということは、何も乙表に近づけるという意図でもって私どもやったわけでもございません。これは実態が、ほとんど現在六十円以上という形でつくられておるにしても、やはり六十円と十九円の間に非常に差がある。これは甲表の病院自体においても、その中間的なものをもう一つつくってもらいたいという強い要望もございまして、それに合わせて二段階にいたしたわけでございまして、これでもって甲表乙表に近づいたというふうに私どもは別に考えておるわけではないわけでございます。御指摘のように乙表の中については、注射料その他につきまして、非常に固定点数と薬剤が一緒になっておって現実に合わないという実態もあるわけでありますから、そういういろいろの矛盾の点をあわせて事務的に検討して、機会を見て一本化することに努力をしたいというのが、私どもの偽らざる気持ちでございます。
  68. 滝井義高

    滝井委員 薬剤の問題はこれから午後本格的に入ります。まだ技術のことをやっておるわけだから……。  それで、いま、とうとうたる支持はもはや甲表を去って、天下の大勢は乙表に向かいつつある。この天下の大勢を早く見抜かれないとだめなんですよ。ぐずぐずしていると、浅草のおじいさんが死ぬように死んでしまうんですよ。遺書を残して二万円の金を送ってきてはっと気づくのでは、政治家としては下の下なんだ。大医は国の病をなおし、中医は人の心をなおし、小医は人の病をなおす。人の病すらなおし切らぬというような状態です。だから、早くすぱっと思い切って一本にするんですよ。いまが一番いい機会だ、天下の有名な病院が乙表に変えつつあるのだから。それで私は、二つに分けたのは要望があったからと言うけれども、要望はもはや薬を乙表のようにしてもらわなければ困るということだ、注射も……。だから四段階にしてやったらもっと喜ぶんですよ。そのかわり乙表と実態は同じだ。うまいことばをいろいろ言っておりますけれども点数払い的な思想だとか言ってますが、いまや点数払い的な思想ではなくなっているのですよ。やはり技術評価がないので、乙表と同じように投薬と検査でかせがざるを得ないということになっているのです。そうでなかったら入院でかせぐのですよ。もうきまっておるんだ。だから、その実態を知らない病院の経営者なんというものは、これはもう失格ですよ。そういうところに目をつける病院の経営者のみが生き残っておる。だから、生き残ろうとすれば乙表にいかざるを得ないのですよ。そういう実態。その実態を早く見きわめなければいかぬですよ、ほんとうに組織を持って、統計を握っておるのだから。  大臣おわかりのとおり、もはや甲表というものの精神は崩壊した、もう死んだんですよ。残っているのは乙表の精神だけ。ところが乙表は、これは物でかせいでおるからいかぬという考え方を伝統的に厚生省はお持ちなんだ。それだったら、今度は一体どうするかということが問題になる。だから、どうするかということを前もって先に言ったわけですよ。こういうところをひとつ考えてもらわなければいかぬ。そこで、時間が来つつありますし、生理的に空腹感も覚えつつあるでしょう、局長も課長も大臣も頭を冷してもらわなければいぬでしょうが、私は御存じのとおりまだからだがいいですから……。  最後に尋ねたいのは、いままでは、こういう技術を検討する場所をどこでやっておったかというと、保険局の医療課の浦田君が中心でやっておるのだ。だから浦田君は保険局長の横にすわってこまかく言っている。ここのすわり方を見ても、医務局長はどこにいるかというとわき役です、アウトサイダーです。技術答弁をするときに、浦田君にかわって医務局長大臣の横にすわるということはない。もし公衆衛生なり病院に関する法律が出てきたらすぐに医務局長は課長とかわるでしょう。ところが、技術のことを論議しておっても手をこまねいて、客観的に見て、窓側にすわっておるというのが医務局長である。これがいまの日本の医療技術の姿ですよ。それをはしなくもあらわしているのです。(笑声)  そこで、経済を担当している保険局が医療技術をやっている、ここに問題があるのです。技術の面は医務局がやらなければうそなんです。保険局は、最近機構の改革をやって、御存じのとおり現業の部分の保険庁というものを外に出しました。そして熊崎さんのほうは、非常に身が軽くなって、もはや保険行政一本でいくことになっておるわけです。現業部門は社会保険庁にした。ところが、若松さんのほうを見ますとどういうことになっておるか、まだ現業部門を持っておるのです。まだ国立病院をかかえておる。あなたが今度医療の根本的な問題を改革しようとするならば、経済の問題と技術の問題を一緒にやらしたのでは解決しないんです。もう私は予言しておく。このままでは解決しない。どうして解決の基礎をつくっていくかというと、技術面は保険局から移して、そして浦田君を苦松さんの所管に入れてしまうのです、医療の面を。それをやらなければうそです。そうして同時に、現業部門を切り離してしまうのです。国立病院を切り離して、国立病院庁でも何でもいいです。たくさんの結核療養所と病院を持っているのですから、これはもう専任する長官を一人つくってもいいと思うのです。厚生省は、他の役所と比べて私ら同情しているのです。首切られてやめても、いいポストはない。だから、もう役所の中に一つくらいつくったっていいでしょう。おつくりになって、そして医務局の技官関係の栄進の道を開いてやならければいかぬ。そうして若松さんのほうは医療行政を専門にしてやるわけです。そしてここで技術評価をやるわけです。そうすると熊崎さんのほうは、日本の経済状態、被保険者負担能力その他を見て、いまの日本の保険財政としてはこの程度のものは耐え得るという、経済的な側面をもってつくっていくわけです。それから若松さんのほうは、国際的な技術評価比較——日本経済状態その他は熊崎さんがやっているのだから、国際的な技術評価や日本の専門技術者としての評価はどの程度他のものと比較してあるべきかという、ザインからゾルレンへ向かっての作業をやるわけです。そうして、その二つのものをあなたのところへ持ってくるのです。熊崎さんは経済的な側面を持ってくる、向こうは技術的な側面を持ってくる。そうして、これであなたが判断するのです。あなたの前で二人にかんかんがくがく議論さしたらいい。そしてその帰趨はあなたが政治的にぴしゃっときめて、そして医療協議会に出していくわけです。ところが、いまは、御存じのとおり、窓ぎわにすわっておるこの姿そのままが日本の医療技術の姿ですよ。医務局長は保険については何の発言もないのです。いまや医師は、大学を卒業して免許をもらったら、医務局にウインクを使う必要はちょともない。熊崎さんのほうの一挙手一投足を見詰めておりさえすれば食っていけるのです、そうでしょう。それじゃいかぬのですよ。やはり一つのところに権力が集中すると、これはいいことにはならぬのです。外国をごらんなったらわかる。技術の側面は、絶対に経済の側面から口を出さないのです。全部技術技術でやっている、経済経済でやっている。そうして、この両者があって、一体どうするかということの話し合いで行なわれておるわけです。ところが、いま経済の側面が全部技術を握っているでしょう。だから、いわば技術の人質に浦田君がなっているようなものです。封建的な形で日本の医療が決定されておるということなんです。だから、この点はひとつ切り離してやる。そして国立病院の問題は、あそこに置いておくと、あそこは国立病院の経営までやらなければならぬ。これを切り離してやることが抜本改正への非常な近道として通じているわけです。だから、この点は、大臣がいろいろなことをおやりになる前にやる必要がある。だから、いま答弁をさしても、熊崎さんは技術的な側面は何も答えられないでしょう。人質になっている浦田君が答えるのです。人質はほんとうのことを言えないのです。言えば局長からおこられるのです。おまえ、滝井さんにあんなことを言ってけしからぬじゃないか、経済の問題を考えてもみろとおこられますよ。こちらの若松さんのほうならば、そうはいかぬ。十分学会意見も聞くし、医界の意見も聞く。そうして持ってくるから不満がない。大臣、これをやらなければうそですよ。技術体系を確立しようとすれば、まずここらの機構の最小限度の改革をやって、そしてとらわれの身の浦田君を自由の身にしてやって、自由の中から新しい方向を打ち出さなければいかぬわけです。これがほんとうなんです。だから、いまの答弁をお聞きになっておっても、非常にたよりない答弁でしょう。なってからまだ間もないからそういうところがあるかもしれぬが、たよりない。真実が言えないのです。この点は、大臣、厚生省のこの医療問題を扱った先輩諸君、そこにおられる役人諸公の先輩諸君にお聞きになっても、みんな分かれなければならぬという意見です。私もきょう発言するからには、でたらめなことは言いたくないから、専門家意見を聞いてみましたが、そうです。私もそうなければいかぬと思う。十年前からいろいろ何回もそれを言ったのです。  そうして、もう一つは、次官を建設省と同じように、技官とそれから法学士と、交互になさなければうそなんです。そこまでやらないと、技術系統はものを言えないのです。なぜならば、人事権は次官が握っているのです。だから、変なことを言うと何だと言ってにらまれる。やはり交互にしなければならぬ。建設省は交互にやっている。建設省ほど技官が多くなければ、三回に一回は技術系統の者にやらせる。失礼ですけれども、若松さんの大学の卒業年次は何年ですか。
  69. 若松栄一

    ○若松政府委員 昭和十三年であります。
  70. 滝井義高

    滝井委員 熊崎さんは何年ですか。
  71. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 十六年です。
  72. 滝井義高

    滝井委員 十三年と十六年、これほどの違いがある。そして次官にはなれないのです。もう太鼓判を押してなれない。前例がないからです。だから、これどまりですよ。私がこのことを言うたのは三回目か四回目です。厚生省の中で技術が尊重されていなくて、どうして技術尊重体系をつくることができますか。そんなことは木によって魚を求めるのと同じことです。技術尊重体系をつくろうとすれば、サムスが言うように、日本に行ったら医者が薬を売っておる、歯科医師が金を売っておる、薬剤師がクマのいを売っておる、昭和二十年から二十二年の段階です。あれからもはや二十年の歳月が流れても、技術尊重の形はできていない。依然として薬剤師がクマのいを売っておる、歯科医師が金を売っておる、医者が薬を売っておるからこそ、薬がいまや赤字の原因である、赤字の犯人だとあなた方みずから言っておる。二十年前にアメリカのサムスがやってきたときと、ちっとも日本の医療は変わっていない。それは厚生省の姿が変わらないからです。だから、少なくとも三回に一回は技術官を次官にする。技術官を次官にしたら、技術官に燃えるような情熱を持ってあなたの医療行政に協力する形になる。それがない。だから、こういう点はじっくり考えてやっていただくということで、ひとつ大臣の最後の御答弁をいただきたいと思う。
  73. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 滝井さんの、技術を尊重し、医療保険の問題を検討する場合には十分技術者の活用、その意見を生かしていくという御趣旨につきましては、全く私も同感でございます。今回中央医療協議会等におきまして、診療報酬体系の根本的な改善をいたします際には、そういう心がまえでやってまいる所存でございます。
  74. 滝井義高

    滝井委員 問題の核心は、医務局に医療課を移すか移さぬかという問題です。この問題は非常に簡単な問題のように大臣はお考えになっておるが、これは簡単じゃないですよ。だから、この点を慎重に御検討いただかなければならぬと思う。経済のもとにあればもう経済的に縛られてしまうのですよ。ゾルレンが出てこない。あるべき姿が出てこない。あるべき姿を出して、そしていまの日本の経済状態ではこれだけしかできません、たとえば初診料が五百円と出た、しかし日本経済の実態では三百円しかできません、こういうことを言うことがやはり政治の一つの道です。ところが、そのゾルレンを全然出さないでしょう。出せないのですよ。それは熊崎さんのもとにあったら、さいぜんから言うように出せない。だから、これを切り離して若松さんのほうにやる。若松さんのほうは自由濶達に方針をきめて出してこれる。大臣は下情に通じてないですよ。私もだてに十年飯を食っておるわけじゃない。厚生省の行政を見詰めてきておる。だから、これを慎重に御検討いただきたいと思う。冗談じゃない、ほんとうのことを言っておるのですから……。
  75. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 その点は、私も技術畑を出ておりますので、十分技術に対する理解、また技術を尊重するということにつきましては、滝井さんと全く同感でございます。私は熊崎保険局長医療保険の問題をしばしば討議をしておるのでありますが、熊崎局長も医師技術の尊重、こういう面につきましては非常な理解者であり、またそういう方向で診療報酬体系を検討しよう、こういうことでございますので、医務局とも緊密な連携をとりながら、いま御指摘になりました御趣旨を生かすように努力をしていく所存でございます。
  76. 滝井義高

    滝井委員 昭和三十三年に現在の点数が根本的に改定をされたのです。その当時、この基礎はだれがつくったかと言うと、医務局の曽田さんがつくったのです。曽田さんは、新しい医療費体系を自分でっくったけれども、敗れたのです。われわれも当時それは反対だった。自来もはや医務局から今度の保険局にその主導権が移って、全部保険局がやっているのです。だから、これはもとに返すべきだ。少なくとも浦田君を医務局に移すことができないならば、医療課を移すことができないならば、技術の側面というものは、責任を熊崎君が持つのではなくて、若松君のほうの医務局が持つ。少なくともこういう体系でやらなければうそです。ところが、いま保険局のほうで全部やっているのです。それではいけないのですよ。これはやはりそこの技術というものを、技術専門家を一ぺん出させてくるのですよ。それでやらないと、経済を受け持っておるほうがやれば、保険経済というものは——政府官掌の健康保険の政府というのは、特に保険局というのは、いままでずっと伝統的に保険者立場にあった。いまは保険庁ですが、保険者立場にあった。ところが、保険庁に行っているのはだれかというと、長官は保険局のはえ抜きが行っている。山本君が行っている。だから、技術より経済のほうが重点になってしまう。それでは今度はいつも担当側が疑いを持つのです。そういう疑念を持たせてはいけないのですよ。だから、そういう意味では、ひとつなまはんかの返事ではなくて、積極的にやる。この機構改革はすぐできますよ、移すだけですから。あるいは熊崎君のほうの抵抗があるかもしれないけれども、抵抗があればあることのほうがますますおかしい。だから、この際は、城を明け渡せとは言わないけれども、人質だけはひとつ豊臣方に返してやりなさい、こういうことです。そのくらいの勇断が、ここで答弁ができないことでは話にならない。あなたも技術者、水産講習所を御卒業になって、マスの養殖その他には非常に詳しいと聞いている。だから、それがおわかりならば、やはりこの私の気持ちが以心伝心わかってもらえると思って私は言っているのです。いままで歴代の大臣に言ったのですよ。言ったのだけれども、なるほどいいお考えです、検討します、検討しますと言うだけなんです。神田さんにも言いました。この意見に賛成をしたのは、加藤鐐五郎さんが法務大臣のときに来て賛成した。彼は医者だったから大賛成だ、ぜひやらなければならぬ、おれも法務大臣をやめてから努力しようと言ったけれども、議員をやめられて、中途でその努力ができなくなったのですね。だから、そのくらいの努力はやる必要があるのですよ。私は、次官になすのはすぐとは言いません。しかし、医療課は医務局に移して、そこで専門的に技術評価をやらせる、点数表の作業をやらせるということは、あなたの所管のもとでただ分けてやるだけのことだから、あなたから見れば変わらないのですよ。しかし、これは社会的に見れば非常に違った面が出てくるのです。だからひとつ慎重に御検討願いたいと思うのですが、もう一回……。
  77. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は、きょう滝井さんから非常に専門的な、また傾聴に値する御意見を拝聴いたしました。十分検討いたしたいと思います。
  78. 滝井義高

    滝井委員 それでは、甲乙二表の一本化のところをちょっと聞きましたから、午後から医薬の分業に入ります。私、きょう、いままだ一枚の半分もいかないのですけれども、十分体調を整えてきておりますから、ひとつマラソンのつもりで、夜八時かそこらくらいまではやるつもりで、それでもまだ終わらぬかもしれぬけれども、ときにはこのくらいの論争をやはり国会でやる必要があると思う。だから、私は全部質問する項目は言っています。勉強してきてくれ、大臣も十分睡眠をとってスタミナをつけてきてください、こう言っているのですから……。午後またやります。
  79. 田中正巳

    田中委員長 午後二時まで休憩いたします。    午後一時五分休憩      ————◇—————    午後二時十二分開議
  80. 田中正巳

    田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続けます。滝井義高君。
  81. 滝井義高

    滝井委員 国民健康保険法の一部を改正する法律案に関連をして、午前中に引き続いて御質問申し上げるわけですが、ちょうどお忙しい中を藤山経済企画庁長官においでをいただきましたので、医薬分業のほうは、その質問を終わったあとにましていただきます。  そこで藤山さんと鈴木さんと両方に質問をすることになるのですが、実はけさ「私たちのことば」という六時五十分からのラジオ、たぶんあれは国民からの投書をNHKが読んでいるのだと思うのですが、その中でこういうことが言われておったわけです。いまちょうど春闘だ、この春闘の姿というのは、毎年今ごろ同じことが繰り返される、わかり切ったことなんだから、内閣としては、どうして根本的なことをやらないのだろうか、ちょうどそれと同じように、健康保険も同じことをやっておる、抜本改正抜本改正と言うけれども、目先のことばかりで、健康保険もちっとも本腰になってやっていない、この二つのことを考えると、ちょうど日本の台風と同じだ、日本列島というのはモンスーン地帯にある、季節風がやってくる、たとえば鹿児島のごとき、宮崎のごときは台風銀座といわれている、そこで毎年台風が来れば、ちゃちな原形復旧では全部押し流されてしまうことがわかっておっても、ちゃちな原形復旧をやっておって、むだな金を使っておる、こういう知恵のない政治というのが日本の政治で行なわれているのだが、これは政治家がこの際勇断を持ってこういうことをやめてもらわなければならぬという「私たちのことば」がけさ放送されておったわけです。なるほど私はほんとうだと思ったのです。  そこで、私はまず藤山さんに、そういう前提に立ってお尋ねをしたいのは、いままで日本で経済計画を幾度かお立てになったわけです。その経済計画が——もちろんこれは化学の試験管の中の実験と違うので、社会現象ですから、それを明確に把握をして、それに対応して計画を立てていくことは非常に困難です。しかし、いつも私、ここで言うのですが、鳩山さんのときも、新しい経済五カ年計画をお立てになった。そのうち池田さんになって、所得倍増計画をお立てになり、それから中期経済計画をお立てになった。今度は、また御破算にして新経済計画をお立てになろうとしているわけです。その場合に、いままで当たったものは何かというと、人口問題研究所から出ている日本の人口の伸びだけが当たったのですけれども、あとは何にも当たらなかったのです。そこで、また今度おつくりになる計画においても、そういう人口の伸びだけが当たったので、あとのものは当たらなかったなんという悪口を私たちから言われないように、ひとつりっぱなものをつくっていただきたいのです。  そこで新しい経済計画をお立てになる場合に、きょうの新聞等を見ると、三つの柱を立てられておるわけです。一つは、国債発行で経済を過度に刺激することのないような方策が必要だ。いま一つは、物価の安定をやらなければならぬ。これはどうしても必要だ。いま一つは、都市と農村のような地域の格差あるいは大企業と中小企業の企業の格差、それから社会保障から取り残された階層に対するあたたかい手を差し伸べるということは、これは人間的な格差を縮めることになるでしょう。こういうすべてのものをひっくるめたものが経済のひずみの是正ということになるでしょうが、そういう経済のひずみの是正の方策、こういうものが今度の新しい経済計画の重要な焦点となるのだというようなことを新聞にも書いておりましたが、一体藤山さんとしては、中期経済計画を御破算にした新経済計画というのは、そういうことになるのかどうか。
  82. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今度の中期経済計画は、大体目標として、ただいまおあげになった四つの点とわれわれも思っております。ただ前三つのほうは、経済そのものに直接関係しておりますから、あるいは柱からいえば三つが二つになるかどうか、そういうような変化はございましょうが、大体そういうようなことになっております。
  83. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、大臣御存じのとおり、道路の計画等は、河野さんが建設大臣のときには、二分か三分か当時の田中大蔵大臣と折衝しますと、二兆一千億くらいが四兆一千億くらいになるというふうに、道路の五カ年計画というのができておりますね。それから港湾等も、港湾整備の五カ年計画があるわけです。治山治水等も、五カ年計画があるわけです。それで、そういうような社会的な基盤を強化する面というものについては、日本の予算の中で確実に五カ年計画が組まれて、予算を食っていくわけです。ところが、一方それらの道路を使い、あるいは港を使う人間のほうの社会保障の面になりますと、いままで一回も長期計画ができたことがない。たぶん昭和三十六年であったと記憶いたしますが、厚生行政の長期計画の基本構想というものをつくったのです。そこで、これはなかなかいいものができたというので、当時私は厚生省の企画室長に、それをくれ、われわれも研究するからと言ったら、なかなかくれないんですね。いや、これは先生、まだ全く内輪のものです、出せません、こういうわけです。ところが、もらいたいと言ってくれなかったのですが、当時の大臣は、長期構想のアドバルーンをぱっと新聞の第一面に打ち上げてしまうわけですね。それで、それがこれからうまく長期決定をされ、閣議にまで持ち込まれるものになるのかと思って見ていると、そうではない。いつの間にか朝露のごとくはかなく消え去ってしまう、こういうことになるわけです。何回か予算委員会でこの長期計画、特に社会保障の長期計画を経済計画とどう一貫して組み合わせていくのかということを質問しても、明確な答弁ができないわけです。そこで、今度新計画をおつくりになる場合には、社会保障から取り残された階層などの問題というものが重要な問題になってくるわけですが、そういう長期の社会保障計画というのを、道路の計画とか治山治水の計画とか港湾の整備計画とあわせて位置づけをすることになるのかどうかということです。
  84. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 経済計画を考えてまいります場合に、経済というのは機械だけが動かすだけではなくて、人が動かすものでございますから、ことに日本の今後の状況を私なりに、推算してみますると、必ずしも労働力過剰だという状態が続いていくということではないと思います。したがって、労働力の配置関係というものを考えなければ経済計画の大きな穴がそこにあくのではないか、これが一つです。  それから同時に、そういう経済計画をやります上における人の力が大事であると同時に、経済計画そのものは、終局的には国民の安定した生活を確保していく、そうして各界各層がその計画の発展の余沢をこうむるという考え方でつくらなければならぬと思います。したがって、両面からこの人の問題というのは考えていかなければならぬ。したがって、経済計画の中において——経済計画と申しますから経済だけのようですが、そういうような意味において、ただいま申し上げた問題を位置づけていきたい、こういうふうに考えておりますので、従来ございますような各省の、お話しのような道路計画とか港湾計画とかいうもの、すでにございます計画を頭に入れながら、同時にお話しのような厚生大臣とも十分御相談をし、厚生省とも協議の上で新しいそうした計画が確定的にできますか、あるいは確定的にできないまでも、それを今後厚生行政をなさる上における重要な参考として計画の中に織り込んでいきたい、われわれはこういうふうに考えております。   〔委員長退席、竹内委員長代理着席〕
  85. 滝井義高

    滝井委員 社会保障の計画を幾らつくっても、それは社会保障の費用というものが利潤と賃金の中から究極においては出てくるということになると、これは経済計画にその基盤を置いておかなければナンセンスなんです。ところがいままでは、厚生省は厚生省でかってにおつくりになる、経済企画庁は経済企画庁で計画をおつくりになるというように、ここに有機的な連携がないのです。したがって、いつも厚生行政の計画というものは浮き草のように、あるいは風にそよぐアシのような状態であったわけです。したがって、私は、今度は新計画をおつくりになる段階でぜひひとつ計画の中にきちっと入れていただきたい、こう思うわけです。  そこで、いま国民健康保険を審議しておるので、国民健康保険に関連したことに次には入りますが、その前にひとつお聞きしておきたいのは、鈴木厚生大臣は、四月六日のここの委員会健康保険の審議をするときに、新しくできる長期計画の中には必ず社会保障の経費、すなわち振替所得を、三十九年十一月十七日にできた中期経済計画に盛り込まれておるそのワクよりか、もっと多いものを自分はやるつもりでございます。こういうことを発言しておるわけです。しからば、一体、中期経済計画にどういう形で盛り込まれておるかというと、昭和三十年以降において——日本の振替所得の規模というのは、相当程度にテンポとしては拡大をしていった。しかし、それは三十年以降は五%内外の横ばいであった。国際的に見ても、先進諸国に比べて日本の振替所得は非常に低い。そこで、この際、社会保障の所得再分配の効果の役割りを十分に活用する必要がある。同時に、日本の人口構造が老人人口化してきておるし、世帯は細分化されておる。すなわち、核家族、夫婦と子供一人というような、こういう核家族が多くなってきておるということのために、どうしてもやはり社会保障というものは充実しなければいかぬ。  そこで、もう一つの側面としては、そういう面もあるけれども、労働力の流動化、いま言ったような四十二年以降になると新規若年の労働力が不足しますから、この労働力の流動化を促進する、同時に、低生産部門の近代化というものをやるためには、社会保障の効果というものが非常に大きいから、ぜひひとつ振替所得を増加したい、そのためには、これでは四十三年、すなわち中期経済計画の終期には、三十八年度の五・三%の国民所得に対する振替所得の比率を七%に引き上げる、こういうことになっておるわけです。  そこで、鈴木さんはこの七%よりかもっと引き上げたい、こういう意向なんです。御存じのとおり、国民総所得が三十兆くらいになると、一%と言っても三千億なんですよ。だから、この言明というのは、私たちも簡単に見過ごして、そうですかと言うわけにはいかぬわけで、やはりここは、その計画の急所、首根っこを押えておる企画庁長官の意見もこの際はっきりしておかぬと、鈴木さんが幾ら力んでみたって、あなたの御協力がなければこの計画は立たぬわけです。そこで、鈴木さんの言明は必ず七%を上回ったものでやります、こういう言明をしておる。まだ具体的な内容の構想はわかりませんが、しかし、一応そう言っておるわけですから、企画庁長官のひとつ見解をあわせてお聞きしたいと思います。
  86. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 ただいまお話しのように、振替所得を増大していくということは社会保障の面から考えて必要でございますし、現状において私どももそう考えております。三十五年から必ずしも横ばいじゃございません。若干上昇はしておりますけれども、まだ目標に達したとも言えないかと思います。したがいまして、われわれとしてももっと力を入れてまいらなければなりませんから、新しい計画を考えてまいりますときに、鈴木厚生大臣が言われましたように、私どもといたしましてもできるだけ中期経済計画の四十三年度七%という数字を上回った数字に持っていきたい。現在、四十一年度でもって六・三%でございますから、まずこの七%以上の数字を庶幾していくことは、私ども経済拡大の今日ではできると思いますし、また、しなければならぬことだと思います。ただ、どの程度にこれを増加させるか、欧米では一七、八%くらいになっておるようでございますが、それにどれだけ近づけられるかということが、私どもの今後の経済全般の計画の中における位置づけとして考えていかなければなりませんけれども、少なくもそれだけの考え方をもちまして、そうして今度の計画をつくっていくつもりでございます。
  87. 滝井義高

    滝井委員 実は、三十七年に社会保障制度審議会が、社会保障の総合調整という勧告を出したときには、十年したらいまのヨーロッパ並みにする、こういうことだったのです。三十七、八、九、四十、四十一年、もう半分過ぎておるわけです。いまの六%そこそこでは、これを二倍にしたって一割二分そこそこにしかならぬわけで、ヨーロッパよりかはるかにおくれた形なんです。よほど努力してもらわなければいかぬことになるわけです。ぜひひとつ藤山長官も御協力を願って、これを前進させていただきたいと思うのです。  そこで、少しいまの日本における国の予算と社会保障との関係を見てみますと、どういう形になっておるかというと、こういう形になっておるのです。社会保障費は、四十年の例で見ますと、一般会計予算の一四・一%で、文教予算が一三%程度、それから住宅、環境衛生関係の予算が一・三%です。そうしますと、二八・四というのが、国の予算におけるいわば個人向けサービスの費用だと見ていいのです。そうすると、歳入予算の中で所得税が幾らを占めておるかというと、歳入予算の二七・二を占めています。したがって、一般会計に関する限りは、所得税と個人サービスの費用とがほぼ一致しているのです。文教、厚生、住宅、環境衛生等の経費が二八・四%、所得税が二七・二ですから、一%ちょっと支出が多いのですが、大体均衡がとれておるのです。  そこで、二七・二の所得税の負担分布を見てみますと、所得二百万円以下の納税人員が全納税者の九八・三%を占めておるのです。ところが、二百万円以下の所得税額を見ると六六・五%になるわけです。所得二百万円以下といいますと、部長クラスくらいまで入ることになる。これを昭和九年、十年の戦前段階に比べ——昭和十年だけとってみますと、二百万円以下に相当する納税人員は、現在四十年が九八・三ですが、昭和十年だと八八・二です。二百万円以下の比率は少ない。その納税額を見ると、昭和十年の納税額は何と二〇・八%なんです。非常に低いのです。だから、いま戦前に比べてこの状態から明白になることは、今日の所得税が、かなり大衆課税の性質を持っているということです。  そうすると、いまの所得税の状態が、二百万円以下が九八%も占めている、所得税額の六六%も占めています。昭和十年には二〇%だったということは、いまの税は大衆課税であるということとともに、もう一つ突っ込んで考えると、結局いまの社会保障というのは、中期経済計画に「所得格差の縮小が大きな課題となった今日、社会保障の所得再配分効果の役割は大きく、また肉体的、社会的条件によって国民全般の生活水準向上からとり残される人々」云々と書いておる、この「社会保障の所得再配分効果の役割は大きく」というこの点が、いまの日本の予算の支出を見ると、全然無視されておることになるわけです。何を無視されておるかというと、結局所得二百万円以下の大衆課税になっておる。しかもその大衆から取り上げた税金というものだけしか、国は大衆のためにサービスしていないわけです。したがって、そこでは所得水平分配になっておるわけです。ドングリの背比べになっておるわけです。ドングリころころという歌があります。ドジョウが出てきてこんにちは。これはドングリだけで、ドジョウやウナギがこれに分担をしていないのです。したがって、所得の分配というのは水平の分配であって、お金持ちから貧しいところに持ってくる垂直の分配機能というのが日本の社会保障にはないということなんです。予算にはっきりあらわれておるのです。これを直さなければいかぬわけです。長期の経済計画をおつくりになるときに、個人サービスというものを全部われわれ大衆の税金でまかなっておる、こういうことなのです。  それならば、他の税金は一体どこに行っているのだ、こういうことが問題なのです。他の税金とは何があるか、法人税と間接税です。その法人税と間接税は、結局個人サービスでなく、対企業のサービスをやっている、あるいは一般行政のサービスの費用になって、個人サービスに回っていないのです。  そこで、いまの振替所得を考えるときに、この方向を是正しなければならぬのじゃないかということです。これは、私はいろいろ本も読んでみましたが、大体間違いない。こういう方向ですから、ドングリ同士でなく、ここにウナギかドジョウが加わって垂直の分配になる、水平だけでなくなる、これが私は社会保障だと思うのです。ところが、日本のいまの状態はそういうようになっていない。これを一体、新計画をつくるときに、是正をすることになるのかどうかということです。
  88. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 ただいまお話しがございまして、今日大衆の課税が相当きついということは、これは私どももそう考えております。ただ、戦前の昭和十年当時と比較されますと、私は誤りをおかすのではないか。昭和十年当時は、御承知のとおり財閥というものがあって、非常に大きな所得を取って、そうして税負担をしてきた。ですから、今日のように、戦前と違いまして、非常に大きな金を持っている人とそうでない非常に貧乏な人があるというよりも、むしろ所得はだんだん——まだ格差はございますけれども、全体をながめれば、やや平準化してきているという状態のときでございますから、そのまま比較していただいたのでは、私はちょっと誤りではないかと思います。したがって、今後われわれがそういう意味で所得税の減税というものも考えていかなければならぬということは、当然のことであると思います。  同時に、いま御指摘のございましたように、今日までは、税金でもって道路でございますとか港湾でございますとかをつくってきた。今度は公債でこれに振り向けてまいりますから、税金の持っております機能が、一般行政費その他と同時に、社会保障関係に回っていくということになるわけでありまして、その点は、いままでの財政計画の中とは若干違った面が私は出てくるのではないかと思います。したがって、そういう意味からいいまして、お話しのように、高額所得者から取った金を低額所得者に回すというようなことが、いままでは道路や港湾にもそれが回っておったわけでございまして、そういうような意味からいいまして、今度はよほど改善されていかなければならぬと思います。また、改善をわれわれもしていくような考え方でやってまいる。したがって、公債導入後の財政と公債導入前のそれとは違います。また、戦前との比較におきまして、いま御指摘のようなことについては、若干私は滝井さんの見方と違った見方をいたしておるわけでございます。しかし、いまのように社会保障を充実さしていかなければならぬということについては、私は同感でございますから、できるだけのことはやるつもりでございます。
  89. 滝井義高

    滝井委員 鈴木さん、いまの企画庁長官の御答弁をよく聞いておいていただきたいと思うのです。ことしは七千三百億円の公債が歳入に重要な補てん的な役割りを演ずることになったわけですが、四十二年、三年は、福田大蔵大臣のことばをかりれば、なおここ一両年は増加する傾向にあるということも言っておるわけですから、それだけに、いま藤山長官も言われたように、対企業に、あるいは一般行政的なサービスに向けておった経費は、今度は社会保障に幾ぶん回せるということをおっしゃっておるわけです。そこで、そういういい発言を長官がされたんですから、ぜひひとつその発言をとらえて、ドングリばかりじゃなくて、ひとつ栄養たっぷりのウナギもドジョウも導入して、社会保障の前進をはかってもらいたいと思うのです。  そこで、今度はそういう前提に立って、国民健康保険の具体的な問題に入るわけです。御存じのとおり、国民健康保険の被保険者は現在四千三百万人程度おります。そして、その被保険者の世帯を調べると、農林水産業が四二・六二を占めているわけです。その他の自営業、中小企業とか弁護士とか医師とかいうような自営業が二六・六四%です。雇用者が一割八分程度まぎれ込んでおります。しかし、とにかく主流は四二・六二%を占めている農林水産業でございます。そうしますと、いま国民健康保険の被保険者は、一体年間どの程度減少しつつあるかということです。これをひとつ厚生省から先に答えてください。
  90. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 大体百万人くらいでございます。
  91. 滝井義高

    滝井委員 大体百万人ずつ減っておるのです。三、四年前は二百万人ずつ減っておったわけです。そうして、その百万人は一体どういう質の者が減っておるかというと、これは非常に労働能力の高い人が減りつつあるわけです。いわば今後の日本の農業をになっていくだけの力を持っている人が農村では食えない、新規若年労働力、それから出かせぎの形で比較的壮年層が出ていっているわけです。それが百万出ていっているわけですね。したがって、まず第一に、その農村から優秀な労働力が出ていくということは、国民健康保険の基盤であるにない手というものが減りつつあるということが一つです。それから同時に、そのことは、裏を返して言うと、日本農業のにない手がじいちゃん、ばあちゃん、かあちゃんの三ちゃん農業になりつつある。最近はそのじいちゃん、ばあちゃんがだんだん年とって死亡して、もはやかあちゃんだけがになうという一ちゃん農業になりつつあるということは、大臣御存じのとおり。したがって、力強い労働力が出ていくということは、農村における国民健康保険経済基盤が弱体化しつつあるということを意味するわけです。弱体化するということは、ひいてはどういうことになるかというと、じいちゃん、ばあちゃん、かあちゃんの労働の過重になって、疾病が増加をするわけです。したがって、疾病が増加することは、国民健康保険経済に非常に大きな悪い影響を与えてくることになるわけです。同時に、出費のほうは、国民健康保険料は非常に上げなければならないことになるわけです。事実上げている。三割も、はなはだしいところは二倍半から三倍になったところもある。上げているわけです。同時に、国民年金の保険料も上げなければならぬ、こういうように出費は多くなるわけです。したがって、こういう形になるときに、一体日本の農村の姿というものを、経済的に経済企画庁はどういうように見ておるかということです。この農村の姿というものがどうなるかということと、国民健康保険の今後のあり方とが密接に結びついてくるわけです。農村の姿がどうなるかによって国民健康保険の運命がきまるし、国民健康保険の政策が変えられなければならぬことになるわけです。これを経済企画庁としては一体どう見るのかということです。最近、私たちに、松永安左衛門さんのところから、十五年後の農村の姿なんというのを産業計画会議から送ってまいりまして、ちょっと読みましたけれども、詳しいそういうビジョンまではきちっとしていないのです。非常に抽象的にずっとおおまかな示唆を与えてくれておるので、こまかい数字上のものは、あの資料をつくるときにはおそらくあったのだと思うのですが、われわれのところにはエッセンスだけしか来ていないので、はっきりしないのですが、経済企画庁としては一体どういうように農村のビジョンを見るのか。
  92. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私どもは、三ちゃん農業あるいはお話のように一ちゃん農業になっては、日本の農業の生産力というものが維持していけないと思います。したがって、農業政策の上で言えば、たとえば五反歩というようなものを平均した単位にしてやっておるような農業をやはり拡大して、そうして若い世代の層が農業自身に興味を持ち、また、農村の環境の改善によって農村に落ちついて、広域的な、拡大された農地の中で機械も使いますし、新しい耕作法も導入するし、あるいは科学的な研究によって増産もはかるというような方向に日本の農業を持ってまいりませんければ、ただ現状のままをながめておって、若い世代の人が都会に流出する、そうしてあれよあれよと言ってそれだけを見ていたのでは、私は、日本の農業というものは十分健全な発展をしていかないということを考えておるのでございまして、できるだけやはり農業政策の上において耕地面積の拡大、あるいはそれに伴って機械を導入することもできるようにする。そういうことによって技術改善をさらに加えて、そうして若い世代の人が喜んで農業経営に従事していく。その人数というものは、従来から見れば、生産性も上がってまいりますから少ない人数にはなってまいりましょうけれども、喜んで若い世代の人が働けるような状態をつくり上げる。これが私は農業の基本的な考え方でなければならぬ、こういうふうに考えております。
  93. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、政府がいま国会に農地管理事業団法というのを出しております。農協等を通じてだんだん農地の集約化をはかろうとしておるわけですね。特にいま百万ずつ農村から流出することによって、国民健康保険の被保険者の数が減りつつあるわけですが、厚生省としては、一体究極的に国民健康保険の実態、運命というのはどの程度のものになると見ておるのですか。たとえばここ五年くらいの間に、国民健康保険、これは年々減っているわけですが、四十一年度中の平均被保険者数は四千百八十万七千人になっておるのです。おそらく来年になりますと、へまをするとこれは四千万を割りますよ。   〔竹内委員長代理退席、委員長着席〕 だから、厚生省としては一体どういうようにこれを見ておるかということです。御承知のように、ここの数がぐっと急激に減っていくということはどういうことを意味するかというと、振替所得が減ることを意味するわけです。なぜならば、いままでの日本の個人サービスにおける費用の一番大きなものは国民健康保険なんですね。したがって、ここがぐっと減ることは、振替所得がふえることを意味しないわけですよ。だから、一体厚生省はどういうように今後の推移を見るかということをつかんで、経済企画庁と話をしていかなければならぬことになるわけです。御承知のとおり、経済企画庁は、この中期経済計画を見ても、将来出る新計画を見ても、この傾向は変わらないと私は見ておるのですが、それは今後、この振替所得では、重点を置かなければならぬところはどこに重点を置くかというと、家族の七割給付、家族給付が低いからこれを前進させる、それからあと日本でおくれているのは児童手当と年金、この三つのところにやはり重点を置かなければならないと中期経済計画は書いておるのです。なるほど、われわれもそうだと思うのです。そうしますと、医療の側面で、いまのようにずっと働き手が減っていくということになって、基盤が弱くなると、ここに対して国庫負担をうんと入れるという傾向は必ずしも出てこないですよ。いまの状態では出てこない。そうすると、振替所得は、いま医療が太宗になっておるから減る。しかし、年金や児童手当が拡大される段階になると、ずっと上がってくる。ところが、児童手当その他が確立されるのは、ここ一、二年でと言ってみてもすっとできる状態ではない。しかし、昭和四十二年とか四十三年とか厚生省は書いておられるけれども、それがいつの間にかほっぽらかされてしまったわけです、また鈴木さんやるとおっしゃるかもしれないけれども。だから、一体この国民健康保険の将来の被保険者の動向というものは、あなた方どう見ておるかということです。そのことが、藤山さんのほうの経済の計画なり農村の施策とマッチして計画が立てられて、見通しがきまらなければならぬわけです。藤山さんのほうは、結局ある程度農業の集約化をはかる方向で農業に食える形をつくろう、農業を魅力のある形にしよう、こういうのならば五反百姓ではだめなんですよ。少なくともやはり、初めのうちは二町五反くらいと言っておるけれども、三町、四町ないと農業は食っていけないんです。いわゆる免税点を八十万円までにすれば——標準世帯八十万円、二、三年でする。八十万円クラスになる所得があって、さらに都市サラリーマンと同じような形になるためには、まあ百万か百四、五十万程度の農家になるんですよ。現実の問題としては、農家の世帯の数は減っていないのですよ。優秀なところは出ていくけれども、人口は減っていない。じいちゃん、ばあちゃんがちゃんと残って、細々ながら小作をやみでやってもらったり何かしていながら生き延びていっているわけです。だから、一体あなた方はこの運命をどう見るかということを、まず経済企画庁に明白にする必要があるわけです。あなた方の立場も明白にする、あちらの立場も明白にしてもらって、そうして両者できちっと方向をきめてもらわなければいかぬということです。
  94. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 御指摘のように、国民健康保険の加入者の実態が毎年変わってきておることは事実でございます。いろいろと先生御指摘いただきましたが、たとえば三十九年度、特に国民健康保険の被保険者に老齢人口がふえておる。六十歳以上が二二・八%を占めております。しかし、まだまだ平均年齢から申しますと、全被保険者の平均年齢は三十二歳ということでございまして、確かに老齢人口がふえておる。これはまあ全体的な傾向でもございますけれども、農村を主体とした国民健康保険について、そういう傾向が顕著にあらわれつつあるということは、いなめない事実ではないかと思います。しかし、さればといって、現在の国民健康保険は市町村単位で運営されております。経営主体をどのように持っていくか、現在のような単位でいいのかどうか、また給付内容等につきましても、七割を当面の目標として、それが四十二年度に完了した以降どのようにしていくかということにつきましては、ただいまのところ、さしあたり四十二年度までの計画を全力をあげて遂行するということに集中しておりまして、実現後の問題につきましては、これはまた滝井先生から笑われるかもしれませんけれども、やはり保険全体の問題とあわせて検討する問題ではなかろうか、こういうふうに思っております。
  95. 滝井義高

    滝井委員 六十歳以上が二二・八%、平均年齢三十二歳ということは、結局中核になる子供が多いんですよね。だんだんこれから日にちがたちますと、最近も起こっておりますが、二重加入が起こりつつあるわけです。国民健康保険の保険証はそのままにしておって、出かせぎに行ったら日雇いにみななってしまう、日雇い健康保険になる。こういう形が進行しつつあるわけでしょう。すでにあなたのほうの資料で見て明らかなように、雇用者が一八・一四、職業別の世帯数の国民健康保険における分布を見ると、一割八分は雇用者ですからね。本来これは健康保険に加入しなければならぬのだけれども、五人未満だとかなんとかいう理由で結局国保に加入しておる。出かせぎに行くとだんだんこういう数がふえてくる。しかし、それらのものは、日雇いとの二重加入になってくる者が出てくる。こういう問題が出てくる。だから、もう少し正確に今後の国民健康保険の運命というものを、やはり早期に見通しを立てる必要があると思うんですよ。同時に、経済企画庁としても、農村の社会保障の実態というものはいま非常に不完全です。不完全だから、国民健康保険の被保険者であるお年寄りが自殺することになるわけですよ。朝も言いましたが、老人福祉が悪いということで自殺をする形になる。核家族になってお年寄りだけはほっぽり出して置いておく。そうして夫婦と子供だけがアパートに住む。お年寄りは呼べないですよ。だから見てやれない。年寄りは、ほんとうはみそ汁の冷えない範囲に家を持っておればいいが、住宅の実情は、二DKのところに年寄り夫婦を呼ぶことは不可能だというところに住宅問題が出てくる。その背後には国民健康保険の問題があるんですよ。藤山さんのほうですみやかに計画をお立てになるときには、ひとつぜひ国民健康保険の問題を十分に頭に置いていただいて、そうしてこれらの諸君が長期経済計画の中で冷遇をされないように、十分ひとつ御協力をお願いをいたしたいと思います。これでけっこうでございます。どうもありがとうございました。  それでは、医薬分業に入ります。  午前中に診療報酬考え方甲乙二表の一本化の問題等について御質問を申し上げました。そこでさらに、これは技術尊重医療費体系の一環としての医薬分業についてでございますが、医薬分業については、御存じのとおり、すでに十年も前に一応この問題は解決をした形になっております。すなわち患者が中心になって、患者の意思表示によって自由に処方せんを出せる形になっているわけです。すべて患者を見たら医師は処方せんを書かなければならぬ、処方せんを出さなければならぬという強制の分業形態にはなっていないわけです。最近の日本の医療費の増加の原因というのが薬にある。だから、この薬というものを犯人として捕えなければならぬけれども、しかし、捕えるにしてもその条件というものはいろいろ整えなければならぬ。その一つとして、医薬分業というものをやはり推進しなければならぬという意見が巷間あるわけです。そこで、医薬分業に対して、一体厚生省としては基本的にどういう考えを持っておるかということを、まず大臣からお述べいただきたいと思うのです。
  96. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 ただいま滝井さんからお話がありましたように、医薬分業につきましても、わが国のたてまえというのはすでにきまっておるわけであります。ただ、医薬分業を実際に実行に移してまいりますための諸般の体制をまず整備する必要があるわけであります。政府におきましても、この医薬分業がスムーズに行なわれてまいりまするように、薬局の整備でありますとか、あるいはまた、医師の協力を求める面等につきまして努力してまいりました結果、都市等におきましてはだいぶこの制度が普及をし、浸透をしてきておる、こう思うわけであります。ただ、まだ農村並びに地方におきましては、薬局その他の配置、普及というものが立ちおくれでございますので、そういう方面の実際の普及、浸透がおくれておるということ、これは事実であるわけであります。今後とも私どもは、医薬分業が円滑にだんだん浸透してまいりますように努力を積み重ねてまいりたい、こう考えておるわけであります。
  97. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、厚生省の基本的な態度としては医薬分業はぜひやっていきたい。そのためには前提条件を急速に整えなければならぬ。その前提条件となるのは薬局の整備、それからその配置の適正化、それから医師の協力等をやらなければならぬ。すでに都市では分業がだんだん進行しつつある、こういう御答弁でございます。  そこで、少し分業の中身に入っていくわけですが、まず分業をやるときには、いまもちょっと食堂で話したのですけれども、お医者さんに処方せんをくれぬかと言っても、いやいやこの薬は非常に劇薬だから、処方せんを書いて、それで君が野方図にその薬ばかりもらって飲んでおったらいかぬから、その薬は、この処方は簡単にはどこへもやれぬぞ、こう言ってなかなか処方せんをくれないといま新聞記者さんから言われたんですが、そういう処方せんの問題があるわけです。御存じのとおり、薬剤師さんに処方せんを出してやってもらう調剤料と医者のやる調剤料と違いますね。これをひとつ医者のほうが幾ら、薬剤師さんのほうが幾らと、ちょっと言ってください。
  98. 浦田純一

    浦田説明員 保険薬局におきます調剤報酬は、確かに医療機関で行ないます調剤料と違っておりますが、具体的に申しますと、保険薬局におきます調剤報酬料は、内用薬一剤一日分につきましては十七円、それから乙表につきましては、たとえて申しますと、内服薬の場合は一剤一日分が八円というふうに違っております。
  99. 滝井義高

    滝井委員 大臣お聞きのとおり、医薬分業をやるときにここに一つ問題が出てきたわけですね。お医者さんのところでやってもらったら八円なんです。薬剤師さんのところへ行くと十七円です。倍以上になるわけです。このことは何をすぐに意味してくるかというと、保険経済を意味してくるわけです。保険者側からいうと、それは医者のところでもらったほうがいいということになるわけです。ここに一つ問題点があるわけです。物は原価主義でいくといえば、医者のところも薬剤師のところも同じですか、物の価格は。
  100. 浦田純一

    浦田説明員 先ほどの説明が足りませんで少し……。
  101. 滝井義高

    滝井委員 いや、間違ってないですよ。
  102. 浦田純一

    浦田説明員 金額で申しますと、確かに先ほど申した金額でございますが、これはやはりその報酬体系をつくるときの基礎考え方が別個でございます。たとえば医療機関におきましては、医療機関における診療体系全般のワクの中でもって考えてございますので、必ずしも薬局におきます調剤料のその部分医療機関の調剤料の部門というものが対応できるようなたてまえではございませんで、表面にあらわれた数字はそのように違うわけでございます。ちょっといま御質問の中身をどうと言うようなことは、説明がむずかしゅうございますので……。
  103. 滝井義高

    滝井委員 いいです、それは。医薬分業をやるとすれば、私が言いたいのは、八円と十七円になっておるが、当然これは医者のほうではもう薬をもらわなくなるわけです。そうでしょう。だから、医者の調剤料というのはなくなる。零になるわけです、処方だけしか出さないのですから。その場合、十七円で今度薬剤師さんは調剤一本で生きていこうということになる。薬剤師さんはクマのいを売ることができなくなるわけです。したがって、十七円というものを上げなければならぬという問題が出てくると思うが、そういう理解でよろしいか、こういうことです。
  104. 浦田純一

    浦田説明員 分業になりました場合には、また今後診療報酬点数表の全体の改正作業を行ないます場合にも、これらの不合理といった点を十分に検討して、均斉のとれた、アンバランスのないような方法で処理すべきものと思います。
  105. 滝井義高

    滝井委員 そういうことを聞いておるのではなくて、均斉のとれたものをやらなければならぬことは当然なんですが、医薬分業をやれば、医師の八円というものは、今後調剤をしないことになるのだから——これはいまのような任意分業の形ならありますよ。一応たとえば強制的に医薬分業をやると仮定して議論をしていけば、その八円というものは、今度はもう医者にやる必要がなくなるわけです。薬剤師さんは、いま十七円ではクマのいを売らなければ食っていけないのです。ところが、これは強制の分業の形態になって分業がどっと進んできますと、その処方せんによって調剤をする場合に、技術料で食っていくわけですから、十七円の技術評価というものは低い。だから、これを少し上げなければならぬという客観的な情勢になるのじゃないか。その均衡のとれたということは、上げなければならぬのじゃないかということを私は聞いておるわけです。
  106. 浦田純一

    浦田説明員 やはり上げなくてはならないのではないかというふうに考えております。ただし、ただいま処方せん料というものが調剤料のほかにございますので、それをどのような形で処方せん料……。
  107. 滝井義高

    滝井委員 それは医者のほうだ。薬剤師のことですよ。
  108. 浦田純一

    浦田説明員 言い直させていただきます。当然やはり上げていかなくてはならないと思います。
  109. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 実は昨年の点数表改正の際に、薬剤師会のほうからも、先生の主張されておるような医薬分業を促進するために調剤料をふやしたらどうだというふうな要望がございました。それで私どもとしましては、全体の点数の中でどの程度保険薬局のほうに薬剤料として支出すべきかということを計算いたしまして、当時まだ十円以下の金額でありましたのを若干ふやしたわけでございますけれども、何ぶんにもいま任意分業の形をとっておりまして、実際に処方せんが出て保険薬局で調剤される件数は非常に少ないわけでございます。これは全体の件数から見てわずかに〇・四、五%ということでございますので、そういう点を考えて、いわば薬剤料をある程度高く見るというふうな考え方をその際にもとったわけでございますが、今後件数はふえていくということで、全体から見てみた場合に、はたして医師の薬剤料と保険薬局の薬剤料をどの程度にバランスをとっていくかということは、これはまた別個の考え方で、その際に逐次考え直していかなければならぬ問題だというふうに私どもは考えておる次第であります。
  110. 滝井義高

    滝井委員 そこで、いろいろぐたぐた述べましたが、結論的には、浦田さんの言うとおり、十七円ではどうにもならぬので上げなければならぬということは確実なんでしょうということを言っているわけなんです。
  111. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 件数との関係……。
  112. 滝井義高

    滝井委員 件数と関係があるといって、それだったら、技術尊重の形というのは、件数が多くなったら十七円を減らすということですか。
  113. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 つまり、現在の保険点数の中身が、御承知のように経費をどの程度見て、それに見合うどの程度の点数をきめていくかという意味におきまして私は申し上げているわけでございます。その際にも、やはり薬剤師会のほうとそういう意味での考え方の整理をいたして、十七円が適当だというふうにしたわけでございます。
  114. 滝井義高

    滝井委員 大臣、いまお聞きのとおり、こういうように技術評価をする場合に、件数を中心にものを考えていく、きわめて経済的に考える、専門技術者としての薬剤師の地位というものは非常に薄くしか考えていないわけです。そういうものの考え方だから、話にならぬわけですよ。これはやはり調剤の能力というものがあるわけです。いまから二千年前の散髪屋さんの能力といまの能力は変わらないのだから、分業になったからといって件数が多くなったって、一日に千も二千も一人の薬剤師がつくり得るものじゃないわけです。一人の薬剤師の技術料というのは、件数が多くなったからといって、そんなにいまの十七円が千円や二千円になるというものじゃないですよ。十七円からプラスアルファで上がったり下がったりするものというのはわずかなものですから、むしろ常識で考えれば、浦田君が技術者でやはり正直です。上がると考える。そうすると、経済的な面しかひらめかぬ熊崎君は、件数でちょっと待て、いま上げるなんて言ったら、この次、上げると言ったじゃないかといってまた滝井からやられるから、すぐほかのことを考える。もうちょっと純粋にものを考えなければいかぬ。だから、むしろそういうときは、純粋に医務局長がこれをやらなければいかぬですよ。いまのように、すぐに衣の下によろいが見えることになるのですよ。そうすると、薬は、物と技術を分離したときに、原価主義でいくとこうなるわけですね、いま医者の出す薬と薬局で薬剤師さんの出す薬の値段は同じですか。
  115. 浦田純一

    浦田説明員 同じでございます。
  116. 滝井義高

    滝井委員 違うのじゃないですか、価格は。使用する薬は、それぞれアスピリンをどっちも使っても、値段は違うのじゃないですか。同じですか。
  117. 浦田純一

    浦田説明員 保険に使用いたしております薬剤の費用は、薬価基準によって定められておりますので、いずれも薬価基準によって支払われるわけでございます。その意味では同じでございます。
  118. 滝井義高

    滝井委員 その場合に、薬価基準は同じだけれども患者からもらうお金は違うでしょう。購入価格は違うでしょう。平均薬価というのは違うでしょう。そこを教えておかなければいかぬのだ。そこが大事なところで、しろうとが間違えるところなんだ。
  119. 浦田純一

    浦田説明員 個々によっては、いわゆる平均薬価という考え方がございますので、薬局の場合と医療機関の場合とでは違う場合がございます。
  120. 滝井義高

    滝井委員 薬はどっちが高くやっていますか。医者のほうが薬を高く売っておりますか、薬剤師さんのほうが高く売っていますか。どちらが高く売っているか。たとえば十五円以下の薬でいいです。十五円以下の薬を例にとった場合に、どっちが高く売っていますか。
  121. 浦田純一

    浦田説明員 平均的に、診療報酬体系では一つのモデル的な施設を考えまして所要経費の計算をやっておりますので、そういった平均的な意味で申しますと、薬局と医療機関で支払われる薬剤費というものは同じというわけでございますが、医療施設あるいは薬局におきます個々の場合の比較でございますと、乙表ではたとえば十五円以下でございますと七円といったようなことで、薬局では十円までは五円、二十円までは十五円というようなことで、比較する次元が、くくり方が多少違いますのでむずかしゅうございますが、二十円のところで見ますと、二十円以下では、薬局では十五円のものを、乙表では十五円のところが七円というようなことで、その意味では薬局のほうがやや有利ではないかと思います。
  122. 滝井義高

    滝井委員 大臣、いまお聞きになったように、これ専門にやっておる浦田君でも、薬局の値段と乙表の値段と甲表の値段とみんな違うのですから、比較ができないのですよ。日本ではこういう仕組みになっておるのです。これを昔から分割支配と言うのです。何でも国民にはわからぬようにして、一握りの役人だけがわかればいいような形で医療費体系が、物の仕組みが組まれておるのですよ。こういう実態なんです。だから、十五円で買った薬が十五円患者からもらえるのじゃないのです。七円しかもらえない。十五円以下は薬価基準でいってみんな七円です。医療は薬価基準どおりに動いてないのです。だから、大臣ごまかされないようにしないといけない。実に複雑で、質問をしても、このもとをつくった本人が、間髪を入れずさっさと答弁ができない。やはりこれを首っ引きで見ないとわからぬような仕組みになっておるのです。こんなものは、アスピリンならアスピリンというものは薬局へ行っても五円、医者でも五円、それが病院であろうと診療所であろうと、同じに五円にしておくのが普通なんです。それをしてない。いま言うようにしてないのです。だから、さあ薬剤師さんとお医者さんとどっちに行って薬をもらおうか患者が考えた場合に、患者はわからないのです。薬価基準を見て、そしてこの薬の値段は、一体十五円以下か十五円以上か見なければわからぬ。薬剤師に行くときは、これは十五円以上か十五円以下か見なければわからぬじゃないか。そういう仕組みになっておる。だから、こういう複雑怪奇な状態というものはやめなければいかぬ。そういうものがやめられない。これが分割支配というのです。ほかの者にはわからぬようにしておって、何人かの専門家がわかるような状態にしておくのはいかぬ。原価主義でいくなら一本にすべきです。どこでも十円のものは十円、五円のものは五円にしなければならぬ。それを五円のものを五円にしてないところに問題があるのです。こういうようにあなた方自身がここで明確に答弁できぬように、全国の医者やら薬剤師やら全部がこれを首っ引きでやらなければできない、そういうむちゃくちゃなことを技術者にやらしておったら、技術尊重にならぬ。みんな薬価基準と点数表を見ながら、そろばんを片手に持ちながら計算していくということになる。だから、天下の公的医療機関もそろばんを持って、乙表を選ぶか甲表を選ぶか、これを算術計算をやってみると、いままで厚生省が得だと言うから、技術尊重だから厚生省の言うとおりだと思ったらまっかなうそで、そろばんをとったら乙表が得だ、こういうことになる。これはこういうからくりがあるからです。だから、医薬分業をやろうという場合にだって、いまのように非常に複雑ですね。薬局のほうが少し得でしょう、こういうことになるのですよ。それも正確にはわからぬ、こういうことなんですね。  そうしますと、医薬分業をやった場合に、処方料は一体どういうことになりますか。処方料というのは技術料でしょう。それをはっきり聞いておきます。
  123. 浦田純一

    浦田説明員 処方料は医者報酬として考えられております。したがって技術料になります。
  124. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、薬代というものは平均薬価と、十五円以下ならば乙表で七円なら七円という薬代と、それから処方料が二十円と、乳ばちに入れてごしごしこする調剤技術料の八円がありますね。薬剤師さんのところに行けば十七円ということになるわけです。そこで医薬分業なら、この三つのものをばらさなければいかぬわけです。一律三十五円ということです。薬代の内容は、七円の薬代と、二十円の処方料と、八円の調剤技術料が入っている。これをばらさなければいかぬ。ばらすと薬は原価。だから、薬剤師に行こうと医者に行こうと、薬は原価で同じになるわけです。そうすると、分離するところは処方料と調剤料だけです。医者なら八円だが、薬剤師のところに行くと十七円になる。この十七円を、技術尊重立場ですから、技術料を上げなければならぬ。同時に、処方料も当然上げなければならぬ。こういうことが出るでしょう、処方せんで医者は食うことになるのですから。物では食わないのです。物では一銭の利益もとれない。処方せんで食う。薬剤師の調剤技術料が上がるように、分業になれば処方料が上がる、こうなるわけですね。常識論としてそうなるでしょう。浦田さん、あんまり考えぬで純粋に言いなさいよ。
  125. 浦田純一

    浦田説明員 今後の診療報酬点数表改正のときに、当然技術料というものが尊重されなければならぬ。適正に評価されなくちゃならないという意味合いで、処方料というものも、この場合にそれと歩調を合わせて適正な評価をされるべきであると思います。
  126. 滝井義高

    滝井委員 そういう形になると、医薬分業をやれば薬は原価になる。薬が原価になれば、下がる可能性が出てくるわけです。これはあとでまた薬のところの内容に入っていきます。そうすると、調剤技術料も処方料も上がらなければこれは食っていけない、それは知識の結集を紙に書くわけですから。薬剤師の皆さんは、長年習った薬剤の知識を、この処方せんで調剤するわけですから、ここに結集してくる。ここが一番大事な出発点ですから、ここから始まるわけです。内科的な技術というものは、診察からこれにいくわけですから、診察した結論が処方に出てくる。この病気は何と見るから、何という薬をやらなければならぬ、こうなってくる。そうしますと、そういう形に分離していくと、一体薬代の中には技術料は入っていなかったかどうかということです。
  127. 浦田純一

    浦田説明員 現行の診療報酬点数表の中では、御承知のように、乙表は従来からのいきさつもありまして、その点は必ずしも明確ではないわけであります。甲表につきましては、診療報酬点数表をつくります作業の中で、構成部門の中で技術料というものを取り入れてあるわけでございまして、それが個々診療行為について振り分けられておるわけでございますので、甲表としては、その意味では技術料と薬価が分離されておるということで、考え方としは、薬代の中には技術料は入っていないわけでありますが、ただ、今後の診療報酬点数表適正化していくということの中では、物と技術を分離すると申しますが、その作業を進めていくときには、個々の経費の構成要素として、物の点、技術の点ということを一応分けて計算をし、考えてまいるわけでございますが、なおこれらを今度は診療報酬として支払う点数表のほうから申し上げますと、ある程度は事務簡素化ということも考えなくてはなりませんので、個々点数というものにつきましては、外見から見た場合には、技術料、物の部分というものが一緒に含まれておるといったようなことも起こってくるのではないかというふうに考えるわけであります。
  128. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、いまのあなたの答弁で言うと、物の中に技術料が潜在的に入り得るということなんですね。先のことはいいです。いまの甲表は、あなたは入っていないと明言された。それは認めましょう。乙表は入っているのか入っていないのか。
  129. 浦田純一

    浦田説明員 乙表のほうは、午前中にも御説明いたしましたように、経過的にできておるものでございまして、その点明確にわかっていないのでございます。
  130. 滝井義高

    滝井委員 乙表は入っておるか入っていないかわからぬ。ずっと昔に、日本医師会に北島多一さんという会長がおりました。実は私、前に、小山保険局長のときに論争したことがある。私は物の中には技術料は入っていないという立場を初めとっていた。ところが、小山君から、昭和の初めに健康保険ができたときに、物の中に技術料は入っているという北島会長の演説があるのです、実はそれを突きつけられた。ぼくもそのころは健康保険のことは勉強していなかったものだから、それで認識を新たにして、私もいろいろ点数表を考えてみた。ところが、いま十五円以下の薬をやった場合に、一律三十五円の薬価を分析していくと、やはり技術料は薬の中に入っているのです。入っておるからこそ、物を原価主義にしてしまうと、別のことばで言えば、調剤料やら処方料を上げざるを得ないことになる。そのことは入っておるということです。あなたは、乙表は明確でないと言うけれども、結局乙表の中に入っておる。物の中に潜在技術料があるということです。あなたは、縦に頭を振っておるから認めておるということです。大臣、よくひとつ頭に入れておいてください。  だんだん薬の中に入っていきますよ。さて、その場合に、今度は薬をごらんになると、薬というものは、薬価基準で原価主義でやった場合に一体どういうことになるかというと、薬というものは一年に一回しか使わぬ薬もある、毎月使う薬もある、薬によって使用の頻度が違う。薬を原価主義でやった場合に、一体一年に一回しか使わぬ薬を——あとで私、非常に具体的に出していきますが、一年に一回しか使わなかったその薬は、一年の後には古くなって廃棄してしまう、こういう問題がざらです。薬剤師でも医者でも、薬室に行ってごらんなさい、調剤室に行ってごらんなさい、たくさんの薬が並んでおります。しかし、一年に一回か二回しか使わない薬も、医薬分業を実施すれば、いま医療機関が持っておると同じように、全部薬局は持たなければならないことになる。その場合に、薬の廃棄のロスをどう考えるかということです。現在富山の配置薬が、農村なり都市の繁華街にずっと配置されております。富山の廣貫堂その他の大きな製薬のところに行ってごらんなさい。あの配置薬を持って回る配置員が、一年たって悪くなった薬をたくさん持って帰っております。その企業にとっては、これはロスです。もうこれは使えない。しかし、薬局で封を切ったら、もうかえてくれない、その薬はだめになる。こういうものの評価というものを、一体あなた方がどうするかということです。こういうものは、薬が原価主義になった場合には、何も診療報酬評価の中にあらわれてこないでしょう。
  131. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 先生の御質問は、原価主義になった場合の仮定のお尋ねでございます。この点は、現在の診療報酬の立て方について、たとえば甲表をとった場合に、薬価基準で払う場合の問題についてもやはりその問題は同じように当てはまるわけでございます。つまり一年に一回くらいしか使わないものについての薬の支払いというものについては、その間のロスをどうするかという問題は、やはり同じように当てはまる議論ではないかと思います。現在、御承知のように、点数表の作成の経費の算出の中には、薬のロス分については、一割増しにこれを見るという経費の積算をいたしておるわけでございますが、その他の薬の支払いにつきましては、数量バルクラインによって九〇%バルクラインを見るということが、薬価基準の登載の方法となっておるわけでございまして、それ以外に、いわば非常に診しい薬を購入しておる場合、これが使われないままで、そのまま一年間経過する、それについての費用を見るということは入ってないわけで、一般的に一割増しの廃棄率を見ておる、こういうことしか言えないと思います。
  132. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、経費の算出の中に一割見るということは、百円で買った薬は百十円で売ってもいいということではないわけでしょう。それはただ大ざっぱに、さいぜん言ったその他の経費の中で入るのか知らぬが、あるいは物と技術を分けた、物の中の材料費の中に一割よけいに見ておるというのか。その材料費の中で、平均して一割よけいに見ておるのですか。
  133. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 さようでございます。
  134. 滝井義高

    滝井委員 どうもそこらあたりは怪しいものですよ。いまバルクラインの問題も出ましたが、それならもうちょっと具体的に入ってみましょう。  いま盛んにバルクライン九〇%——いま保険局長もバルクライン九〇%、こう言ったのですが、まずバルクライン九〇%というものを、先にこここでちょっと説明をしてください。これはこの前あなたとも論争したけれども、新聞記者諸君も、私のいままで見た限りでは全部間違った記事を書いている。ちょっと説明してください。
  135. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 現在の薬価基準のきめ方は、いわゆる九〇%バルクラインを数量バルクラインということできめておるわけでございますが、簡単に御説明申し上げますと、薬価調査を行ないます場合に、全部の病院、診療所が購入した数量のうちで、九〇%の数量が買える値段で薬価基準の価格をきめておる、こういうことでございます。
  136. 滝井義高

    滝井委員 大臣御存じだと思うのですが、バルクラインには数量バルクと価格バルクと二つあるわけです。いままで保険局長答弁では、九〇%の価格バルクで説明してきたのです。新聞社もみんなそう書いています。九十番目に買う価格を九〇%バルクラインというふうにみな書いてある。新聞記事、開いてごらんになってみなさい。いまみたいに九割の数量の買える価格なんて、どの新聞にもどの解説にも書いておらぬです。私もいままでは、ほんの最近までは九〇%の価格バルクと考えていた。そこへ行って議論をふっかけたら、保険局長保険局長になったばかりで、あいまいもこたるものだった。薬務局の専門家が来て、初めて数量ということがわかった。そうしますと、一体九〇%の数量バルクでやるとした場合に、その調査は具体的にどうやっておるかということです。実際にわれわれがやるときには、価格は書くけれども数量なんか書いておりませんよ。私たちの調査を受けたのでは書いてない。
  137. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 御承知のように、薬価調査に基づきまして、薬価基準を九〇%数量バルクできめておるわけでございますが、調査の中身としては、三十八年の九月まで大体二百品目につきまして、病院は抽出三分の一、それから診療所につきましては抽出の三十分の一につきまして、二カ月分についての購入数量と購入の価格とを調べまして、それを積み上げていって九〇%目に当たる値段をきめる、こういう措置をとっておるわけでございます。
  138. 滝井義高

    滝井委員 二カ月分の病院と診療所の三分の一なり三十分の一の購入数量と価格を調べていると言うけれども、実際に病院が価格と購入数量を出しておるかというと、出してないですよ。これは購入する数量と価格とは極秘ですよ、どこもみんな。全部極秘です、絶対出さないですよ、それを出したら手のうちがわかっちゃうから。それは病院協会に集まる座談会をやらしてごらんなさい。私のうちはどういう方法で購入しておるという、方法は言いますよ。しかし、AならAという薬を、価格は幾らで、数量はどのくらい買っておるということは絶対言わないですよ。だから、こんな調査なんというものは全部でたらめで、当てになりませんよ。しかも六千品目の中から二百品目くらい調査したって、実態がわかるはずはないですよ。だから、きょう私は内容を暴露するつもりはございませんが、バルクライン九〇%なんというのはナンセンスです。むしろそういうことをあなた方おやりになるなら、もうちょっと前をおやりにならなければいかぬですよ。薬はこれから原価主義でいくわけでしょう。そうすると、薬が医療機関の窓口に入ったときに、バルクライン九〇だとか八〇だとか七〇だとかいったって、そんなものは問題にならぬですよ。一体その薬を十円でAならA、熊崎病院なら熊崎病院が買い入れた、その十円という価格が正当であるかということが検討されていないのです。そうでしょう。入った薬の値段だけ、幾らで買うたかというせんさくだけはするけれども、その買うた値段が一体適正な値段であるかどうかということは、せんさくされていないでしょうが。だから、いわゆる統制経済というのは、医療機関の薬局の窓口を入ったところから行なわれておるが、その前は全部自由放任の資本主義経済です。そうでしょう。だから、こんなことでバルクライン九〇だ、何だといったってナンセンスです。その医療機関に入る前のほうが問題なんですよ。しかもバルクライン九〇は、薬価基準登載は六千品目もある、それをたった二百品目です。そうして調査をして総量幾らだというけれども、そんなものは、一つも正確なものは報告しておらぬ。みんな不正確です。私、いまから具体的にやって、大臣の前に明らかにしていいですよ。ひとつ、あなた方が調べた東京第一国立病院でパスならパス、マイシンならマイシンを幾らで買っておるか、出してごらんなさい。
  139. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 滝井先生十分御承知の上であれだと思いますが、実はちょうど一昨日ですか、中央医療協議会の懇談会におきましても薬価基準の説明を私どもいたしまして、従来の調査方法の一つの例をあげましてこれを説明したのでございますが、現実にやはり、一つの品目につきまして数量を、一番安い値段で買ったところから一番高い値段で買ったところまで、大体七十円ぐらいの開きのある品目につきまして数量バルクの計算をいたしましたところについて、たまたまその中間の百三十円の薬価基準がきまったというふうな例もあげて説明したこともございますが、これはやはり現実にそういうふうな調査をやりました結果につきまして私は申し上げておるわけでございます。現実に医療機関がそれよりも安い値段で買っておるか買ってないかということじゃなしに、いわゆる薬価調査というものは、抽出されました病院、診療所におきまして、たとえば何月にどれだけの数量をどういう値段で買ったということを自計で調査するわけでございまして、一番安いところから高いところまでの値段というものも非常に大きなばらつきがあることは間違いないわけでございます。それが現実の調査の結果の数字でございますから、それに当てはめて私どもは数量バルクで価格をきめるわけでございますが、ただ御承知のように、たまたま調査をした時点と、それから薬価基準を改正する場合にこれを告示する時点との時間的な差があることは御承知のところでございまして、たとえば昨年の薬価基準の改正の際には、調査を三十八年の九月、それがすでに四十年に入ったわけでございますから、その間の時の流れ、それに応じて当然薬は下がってくる、それについてはやはり下がっただけの分は下げなければならないということで、東京なり大阪の卸売り業者から相場の価格をとりまして、それによって値下げ率をかけるというふうな時差的な補正をやっておるわけでございまして、これは私どもの作業の過程でございますが、事実、薬につきまして、大量に購入するところと少量しか購入していない地方の診療所等につきまして、価格のばらつきがあることは御承知のところでございます。これをどういうふうに薬価基準として価格をきめていくかという技術的な問題になりますと、従来とも中央医療協議会で承認されております九〇%バルクラインによる価格表示方法をそのままやっておるということだけでございます。ただ、これを政策的にどういうふうに変えていくかということになりますと、これは今後の問題というふうに私どもは理解いたしております。
  140. 滝井義高

    滝井委員 バルクラインというのが非常にナンセンスだということの理由を私が具体的に説明します。いいですか。まず国立病院みたような大きなところを例にとります。どういうふうにやるかというと、これは製薬会社みな集めたらいいのです。集めて入札さしたらいいのです。そうすると製薬企業はわれ競って来ますよ。どうして来るかというと、それは、大きな病院をきちっと握れば、その病院の系列下をみな牽制することができるわけです。御存じのとおり、日本の製薬というものは国内市場しかないのです。輸出というものは、わずかしか出ていないのですね。五千億の生産があっても、そのうち、どうでしょうか、百四、五十億か二百億にならぬでしょう、輸出は。二%から四%の間くらいですから、ならないですよ。そうしますと、国内市場を確立すれば、シェアさえ確立すれば、もう安心なのです。安泰なのですよ。だから、国立病院とか公的医療機関とかいうものには、ダンピングやったって競争入札するわけです。競争入札さして、とる。だから一番安く買っているのはどういうところが買っているかというと、税金のかからない公的医療機関が入札ということで一番安く買っている。どの程度に安く買っているかということは極秘ですから、絶対あかさない。だれが行ったってあかさないのです。出すのはいいかげんに出していますよ、率直に言って。だから、バルクラインというものはナンセンスです。そういう形がまず行なわれている。それから製薬の側も、大学とかそういう大きな病院をきちっと確立することは、いま言ったように国内の市場の占拠を意味しますから、その競争にはできるだけの犠牲を払いますよ。こういう形が出ているわけです。したがって、いまのバルクラインの方式をざっと安く下げて、六〇とか七〇に下げた場合にはどういう結果がでてくるかというと、同じような薬をたくさん日本の中小の製薬企業はつくっているから、この中小の製薬企業はばたばた倒れてしまいます。こういう形になる。そうすると、大病院は入札をして安く買ったが、今度は山深きいなかの医療、むしろ安く提供しなければならぬという不採算地区はどういうことになるかというと、そういうところは入札の力がないから町の小売り店から買うので、高い薬を買っておる、こういう形です。医療はさか立ちしておる。町で運賃のかからないところが薬をうんと安く買って、運賃がかかって、そうして患者負担能力のないところが高い薬を買って、患者から高く取らなければならぬ、こういう形になっておるわけです。だから、バルクラインを下げれば、大きな製薬と大きな病院と大都市の患者はもうかります。しかし、小さな製薬と小さな病院といなかの患者はあわれなものです。いわゆる医療の格差をこれでつくるわけです。だから、問題はバルクラインにないのですよ。それならばこれを一体どうするかというと、議論がバルクラインなんかに行っておるからだめなのです。これはまだあなた方が経済中心にものを考えておるからです。技術中心に考えれば、そんなバルクラインなんかやる必要はない。都会のまん中のビタミンも草深きいなかのビタミンの値段も、全部十円のものは十円です、これがいいのです。それをおやりにならなければいかぬです。それを極秘で、六千もあるうちわずか二百ぐらいを、しかもその三分の一と三十分の一を調査して、そうして科学的に正確なものだなんと思うことが間違いのもとだ。出したのはみんなうそっぱち、ほんとうのものはないです。そこらに行ってほんとうのものを調べてごらんなさいよ、入札させるところはまだ安くなっているから。だから、そういう仮面をかぶった状態でこのバルクラインの議論にこだわっておったら、医療の問題の根本的解決はできない。これにメスを入れなければいけないですよ。バルクラインなんかやめちゃって、思い切って技術料を五百円なら五百円の初診料にします、しかし薬は原価でいってください、これを製薬企業に頼んだらいいのです。適正な利潤を保証します、投げ売りなんかやらずに、十円のビタミンは東京の第一病院も虎の門病院も十円でひとつやってください、しかし鹿児島の奄美群島の草深きいなかにおけるビタミンも十円です、これでなければいかぬです。なるほどここで十円のビタミンは二円、三円で買っておるかもしれぬが、はるかかなたは八円とか九円とか十円で買っておるのです。大臣、そういう形です。あなた国立病院に行って、全部秘密なものを、おれに見せいと言って見てごらんなさいよ、国立病院は、驚くようにうんと安く買っておるから。そうすれば、バルクライン九〇を七〇に下げられても、国立病院は痛くもかゆくもない。まあ少しは痛い、二割か三割ぐらい痛いか知らぬが、いなかほど痛くないです。そういう実態ですよ。ここらあたりをやるためには、医者の窓口に入ってからの薬の値段ではだめなのです。そのもとをやらなければいかぬです。  そこで私は、そのもとのところを少し言ってみます。いいですか。使用の頻度が非常に高くて、その包装が大包装になっておる、小さな包装はない、たとえば百錠とか千錠入りしかない、十錠とか二十錠はないというのがあります。たとえば、これは一つの薬の名前をあげるとその製薬会社は非常に迷惑ですけれども大臣に知っていただかなければなりませんから。この前、佐賀県で問題になっているアリナミンですね。アリナミンは、御存じのとおり薬価基準は三円十銭です。ところが、これが百錠入りでは損をするわけです。百錠入りでは三円三十銭になる。で、千錠入りを買わなければならぬ。千錠入りだと三円五銭になるのです。だから、われわれのいなかでは、千錠入りを買わないと薬価基準の三円十銭にならないわけです。損するわけです。こういうことになっている。百錠と千錠しかつくっていない。包装を小さくすればするほど値段が高くなっちゃう、こういうからくりがあるのです。これが一つです。非常に使用頻度が高い、たとえばビタミン剤、アリナミンなんか——それは大臣、製薬企業者というのは政治家よりえらいですよ。たとえば、池田さんが高度経済成長政策をとって景気を上げようとする、インフレ政策的な状態、高度経済成長政策をとろうとするときには、製薬企業は逆の薬をつくるんです。どういうものをつくるかというと、人間がばっと景気をよくしようとするときには、人間の気持ちを静めてやらなければいかぬということで精神安定剤をつくるんです。いわゆるトランキライザーみたいなものをつくる。景気上昇時には安定剤をつくる。佐藤内閣になってぐっと不景気になったら、今度は人間の気持ちを高揚させなければいかぬというので、ノイビタとかあるいはアスパラで生き抜こうと、こうなるんです。製薬業者のほうが政治家よりも二歩も三歩も先を見て薬をつくるんですよ。だから、経済が鎮静するときにはアスパラで生き抜こう、ノイビタで生き抜こう、こうなるのです。厚生省は、アスパラで生き抜こう、そういう宣伝をしてはいかぬと、宣伝の取り締まりをしているけれども、もう製薬企業ははるかかなたを行っていますよ。それくらい優秀なんですからね、日本の製薬企業は。私は、製薬企業をこなすわけではない、優秀だとほめているのです。だから、いま言ったように、薬価基準の問題を何か金科玉条のように考えているが、そんなものは何もない。私に言わせるとナンセンス、からくりですよ。だから、使用頻度が高いが大包装のものというのは、大包装のものを買わなければ損をするのです。草深きいなかでそんな千錠入りのアリナミンを買うたって、あるいはイルガピリンならイルガピリンの薬を二十錠も買うて、それを全部使い切れないですよ。三錠か四錠かやったらそれで終わっちゃう。小さな錠剤というものはない。大きい包装を買わないと薬価基準は損をするということになっている。小さいものはみんな損なんです。薬価基準の価格から言うと、そういう形になっているんですよ。それが一つ。  それから今度は、頻度はたまにしか使わぬ。しかし、それが、たまにしか使わぬけれども大包装でなければないものがあるわけです。大包装でなければないものがある。たとえば、ヒルナミンなんという薬がある。これは、薬価基準は五円八十銭でしょう。ところが、これは千錠入りしかない。そうすると、手錠入りが五千円です。千錠入りを買えば何とか損をせぬで済む。   〔委員長退席、竹内委員長代理着席〕 これは全く薬価基準の比較で、これは平均薬価にするとみんなもうけたり損をしたり、いろいろ格差が出てきますがね。そういう形です。  それから、有効期限があって大包装のものがあるわけです。この薬は一年しか有効でありません、そうして大包装ですね。これは抗生物質がみん介そうですよ。抗生物質は大包装を買わぬと損なんです。それは千錠入りくらい買わないと損なんです。十二錠入りとか二十五錠入りとか十錠入りとかいうのを買うたら、これは損になるわけです。薬価基準に比べたら損になる。だから、大包装を買わなければならぬ。ところが、アイロタイシンとかククロマイセチンとかの千錠入りを買うたって、そんなものは保険でずっとずっと使うというわけにはいかぬでしょう。だから、こういうように有効期間があって大包装のものを買わなければいかぬとなれば、これは買うた医者は使わなければならぬことになるわけです。使えば保険で切られるという形になるから、病気を重いように書いて使わなければならぬということになっちゃうんです。だから、乱診乱療を抑制してと言ったって、こういうところにそういう要素があるんですよ。  それから、薬価基準に錠剤の収載がなくて、粉末、散剤しかないものがあるわけです。そういうものがある。そうすると、最近は御承知のとおり、ごしごしと乳ばちでするというのははやらないのです。これは薬にも流行というのがある。何もファッションモードだけではない。薬にも流行というのがある。粉の薬をくれると、先生こんな昔の粉薬がきくのですかと聞くのです。やはり赤い色、青い色、黄色い色で、きれいなぴらぴらしたビニールみたいなものに包んでくれるほうがいい。そうすると、これはポケットに入れておいて、昼にでもちょっと昼食のあとに飲まれる。そんな薬包紙みたいなもので、口をあけて飲むのはいかぬという、やはり流行というのがある。ところが、それは錠剤は認めていない。そこで錠剤を認めていないからどういうことになるかというと、これが錠剤になって今度はずっと町に出てしまう。お医者さんも、粉末とか散剤を使うよりも、町の薬局に行けば錠剤があるし、錠剤のほうが飲みやすいから、錠剤を買ってしまう、こういうことになる。薬価基準そのものにそういうことがある。そうなると、バルクラインなんか意味ないのです。そういう形になっている。そうして、あなた方はバルクライン九〇があたかも日本の医療における最大の問題であるがごとくに論議しているけれども、これは私から言わせればナンセンスです。だから、そんなバルクラインを言うならば、まずお薬屋さんに適正な利潤を評価して、保険に使う二百種類か三百種類のものはひとつ原価でください、適正利潤は認めます、そうしてどこでもみんな同じ割合でやったらどうですか。適正利潤にして、それだけは税金を取らぬようにしてやったらどうですか。そうしたら、あなた方が一生懸命になって調査する必要も何もない。百も二百もの病院に、たいして信憑性のないものをやるよりか、製薬企業とあなた方がしたほうが早いですよ。大きな製薬企業は十一社ぐらいしかないでしょう。保険で非常に流行する薬をつくっている製薬企業というのは、そんなにないです。指折り数えるほどしかないでしょう。そういうところで話したほうが、もっと合理的な医療費体系をつくるのにすみやかにいきますよ。どうですか。いま私の指摘したようなことは、別に科学的な根拠でこんなものを千錠にしなければならぬとかなんとかいうものでも何でもないですよ。これは一体、買うた数量と使用頻度が非常に高くて大包装のものと、どういう関係がありますか。何の関係もない。そんなことはまるきり無関係に、製薬会社が百錠入りとか手錠入りをつくっているのです。千錠入りにしたほうがもうかるから千錠入りにしているのかもしれぬ。小さくすればややこしくなるから、やらないのかもしれぬけれども、バルクラインと百錠とか千錠というのは、何か関係がありますか。こんなものは何も関係ないですよ。どうですか、あなた方は薬価基準を何か金科玉条のごとく言われているけれども、ちっとも科学的根拠はないですよ。
  141. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 お答えいたします。  薬価基準の登載につきまして、九〇バルクを先生御指摘いただいておりますが、私どもは、現在の薬価基準の登載方法について、多年九〇バルクで登載をするという原則に従って、その原則に従った薬価調査を行なった上で、薬価基準を改正するということを私どもはやっておるわけでございます。九〇バルク云々につきまして論議が出ておりますのは、中央医療協議会の懇談会の席で、薬価基準の価格の適正化という問題にからみまして論議をしたいという要望が、片一方の一号側の委員のほうから出ておりますので、それにつきましての私どもの従来の経緯を説明しているだけでありまして、私どもとしましてはあくまでも、九〇バルクをどうするか、薬価基準の登載方法をどうするかということは、私どもの先入観じゃなしに、ただ従来の経過としてやっているだけであって、これをどのように変えていくか、どのような方法が最も適正なものであるかどうかということは、あくまでも中央医療協議会で御論議を願うという態度を貫いているわけでございます。私どもとしては、したがってその論議と別に、やはり毎年薬価基準の改定を行なうべきでありますがために、薬価調査をやりたいということを言っておるだけでありまして、その辺は先生もよく御了解の上でお話をしておられると思いますけれども、私どもとしてはあくまでも、原則が九〇バルクでいままでやっているのだという経過を申し上げているだけであります。したがいまして、現在の薬価基準の登載方法として、包装単位の問題、あるいは錠、末、散の登載方法等について御疑問も出ましたけれども、その点については、従来の薬価基準の登載方法が、包装単位につきましてはいろいろと包装の中身があることは御指摘のとおりでございますが、しかし、一応調査対象になる場合に、いわゆる繁用包装といいますか、医療機関で最も多く使われておる繁用包装を指定いたしまして、その繁用包装の値段に従って調査をした上で価格をきめていくという方法をとっておるのが現実でございまして、これをたとえば繁用包装によって値段が変わるのはおかしいじゃないか、百錠についても千錠についても同一の値段にすべきであるというふうな議論も出ておることは、私も承知をいたしております。しかし、製薬メーカーにとっては、あるいはそれが医療機関に対する販売方針といいますか、販売政策というふうな問題もありまして、いろいろと議論があることを承知いたしておりますけれども、私どもとしましては、やはり薬価調査の従来の経緯が、繁用包装を主体にしてやっておるということになっておりますので、それに従っておるまででございます。したがいまして、そういう問題も御指摘のようにいろいろあるわけでありますから、これはやはり薬価基準の調査方法自体の問題として今後とも早急に検討して、改めるべきは改めていきたいというふうに考えておるのでございます。
  142. 滝井義高

    滝井委員 過去において九〇%のバルクラインをとって、しかも根本的な問題は医療協議会で論議をしていただきます、私たちは九〇%でずっとやってきましたからと、何かよその馬がころげておるようなことを言うておるけれども、あなたたち自身が主体的なものなので、一番よく知っているのです、あなた方しか統計資料を持たないのだから。いまの九〇%のバルクラインなんというのはナンセンスだ、こう私は言っているのです。そんなもの、何も科学的根拠はない。それはどうしてないのかというと、医療機関がそれぞれ千差万別に製薬のメーカーから売られた小売りなり卸から買ったものを、その買った時点で調査しているけれども、そんなものはナンセンスじゃないかというのです。なぜもっと前の状態の、製薬の段階までいかないのかと言っている。そうでしょう。物は原価主義でいくというからには、医療機関に入ったときは原価じゃないわけだから。たとえば五管入りのブドウ糖があります。このブドウ糖というのは実にりっぱな箱に入っている。きちっとした、かたい箱の中にアンプルが入っているわけですから、ちょっと押えたぐらいでは割れない。その箱の封を切ってごらんなさい。何が入っておるかというと、ブドウ糖の効能書きが入っております。そして一つハート型のやすり——昔は金のやすりが入っておった、その効能書きの下には五本のブドウ糖が入っているわけです。そうしますと、それは一体箱代が幾らかかるのか、効能書きが幾らかかるのか、やすりが幾らかかるのか、アンプルが幾らかかるのか。中の二〇%のブドウ糖の値段がどれだけかかるのかというと、蒸留水で薄めた二〇プロのブドウ糖が一番安いのですよ。これを五管入りを十箱買うと五十管です。五十管買う医者に効能書きをつけて、アンプルカットをつけてやる必要はないわけです。これは五十管入りの簡単な箱にして医者にやったらいいのです。そうすれば、値段がずっと安くっくわけです。中の値段というのは、そんなもの一円か二円しかしないのですよ。ブドウ糖を蒸留水に溶いてごらんなさい、何ぼになりますか、原価は一円か、二円ですよ。高いのは何かというと箱代ですよ、箱のところに手がかかるのですから。いまアンプルにブドウ糖の薬を入れるのは全部オートメでできておるのだから、この箱をつくったり効能書きを入れて封をしたりするところに人間の手がかかるのですよ。最終的な包装段階で人間の手がかかる。そこが一番高くなっておるのです。薬のところは安いのですよ。そして必要なのはどこかというと、箱が必要じゃない。アンプルが必要じゃない。中身の二〇プロのブドウ糖の蒸留水に溶かされておるその水が必要なんです。それなら何も、保険医療機関に配付する薬は、効能書きやら何やら、そんなものは入れなくていい。一番小さい包装を五十管にしたらいいのです。ところが、それが五管入りや十管入りをつくられているじゃないですか。そういう指導をしなければだめだと言うのです。そういうところに医療費の高騰する原因があるのです。薬というものの実態はそういうことなんですよ。それをどうしてやらないのかと言うのです。今度はダンピングをやらせて、そして安く買いたたかれたものをあなた方が一生懸命調査したって、そんなものは何も科学的な根拠がないわけです。ナンセンスです。だから、そこにひとつ製薬企業と話し合いなさい、そういうことになるわけですよ。私はそれを言っておるのです。それがどうしてできないのかと言うのです。医療機関には行って綿密な調査をするのだから、製薬企業の段階で調査したらいいじゃないか。そして武田なら武田、塩野義なら塩野義の薬は、保険に非常に頻度の高いブドウ糖ならブドウ糖、ザルソグレランならザルソグレランというものはこういう価格にしてください、そして損をさしてはいかぬから適正な利潤をつけます、こうすれば、聖路加病院であろうと、国立東京第一病院であろうと、虎の門病院であろうと、草深き奄美大島のちゃちな滝井診療所であろうと、みな同じ価格でやりますよ。違うとすれば、奄美大島へ送る運賃が違うだけですよ。保険薬価というものは、そういう形にやるのがほんとうじゃないかと言うのです。これは何も国家統制でも何でもない、必要なところだけやるのですから。しかも頻度の高いところだけをおやりなさいと、こう言うのです。  熊崎さん、大臣も知っておるかどうか知りませんが、これをひとつ御答弁願いたいと思うのです。一体日本の昭和四十年度における製薬の原価の総額は幾らか。これは四十年度はまだ出ておらぬかもしれぬから、四十年度でなくてもいい、いつでもいいですが、三十九年なら三十九年の製薬原価幾らで、そのうち医師、歯科医師幾ら使って、売薬で幾ら売られて、消毒薬とか保健薬等として一体幾らいっておりますか。
  143. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 昭和三十九年の場合は、医薬品の生産高は四千二百億円、それから四十年になりますと四千五百億円前後でございます。これはまだ、かちっとした正確な数字ではございませんが、大体四千五百億円前後になるのじゃなかろうか、こういう推測を加えております。
  144. 滝井義高

    滝井委員 だから、その三十九年の四千二百億、四十年の四千五百億が、医師、歯科医師の使用分が幾らで、売薬に売られているものが幾らで、保健薬、消毒薬として使われているものが幾らかと、こう言うのです。われわれが問題にするのは、医師、歯科医師が一体どのくらい使っておるかということが問題なんですよ。それはわかるはずだ。推計できるわけだ。あなた方のところは、いま日本の医療の中で一番の赤字の原因というのは薬だと、こう言っておるわけですから、医者と歯科医師でどのくらい使っておるか、それから売薬でどのくらい売られておるか、保健薬として大衆がどのくらい購入して、家計の保健衛生費の中に大きな位置を占めつつあるかということぐらいはわかっておるはずですよ。
  145. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 いま滝井先生がおっしゃられるような数字は、的確に私はつかめられないと思います。といいますのは、御承知のように、いま薬務局長が申し上げましたのは生産額でございますから、これはおそらく蔵出し価格ですか、仕切り価格で計算をされたものだと思いますし、それが医療機関に渡る場合には、それに何割かの手数料その他を加えましたいわゆるB価、卸売り価格になって、それで医療機関のほうに渡ってくるわけでございますので、これが商品によって、B価を幾らにするかということはそれぞれの会社の営業政策上違ってまいりますし、ただ私のほうでは、総点数中に占める投薬、注射材料費の割合は、三十九年に全体で三六%程度という数字は先般来申し上げましたが、これから類推をして、保険のほうでどのくらい投薬、注射材料費が使われておるかということは言えるわけでございますが、ただ、総生産額四千五百億の内訳がどうなるということと、このパーセントとは必ずしも一致してない、こういうふうに私どもは考えるわけでございます。  それから、さかのぼって恐縮でございますが、薬価基準のきめ方といたしまして、点数表の中で、医療機関使用薬剤の購入価格は、医療機関の購入価格によって支払うんだということは点数表の中にはっきりうたわれておりますので、私どもとしましては、やはり医療機関がどの程度の価格で購入しておるかということを調べた上で薬価基準をきめていくというルールがございますので、それに従っておるわけでございます。したがいまして、御指摘のように、製薬業と話し合って、個個の品目についてどの程度のマージンを保証していくとか、これは現在のところ根本的にルールを変えることになりますので、そういう方法もあろうかとは思うのでございますが、現在の各会社が営業政策でいろいろの品目を、一社によっては数千品目生産をし、主体を置いた品目によっていろいろと価格構成も違ってくるわけでございますので、現在の段階では、やはり医療機関の購入価格で薬価基準をきめていくという原則以外には、私どもはちょっと考えられないんじゃないかということを申し上げておるわけでございます。
  146. 滝井義高

    滝井委員 そのあとのほうから反論しますが、医療機関の購入価格でやるということになれば、医療機関を自由競争させるということですよ。物は原価主義だということを貫いていきますと言いながら、物というものを今度は自由競争させるということですよ。安く買えるやつのほうが腕がいいということになる。したがって、さいぜんから言うように、病院長は、安く買う競争に負ければどこで金を取るかというと、高貴薬を患者によけい使って取る、物を安く買うことに負けた病院長は、ベッドでよけい取るか、高貴薬をよけい使うかしてその穴埋めをしなければならぬ。それで、たとえば国立病院にAとBがあって、Aが一円、Bが五円、その四円という格差をどこかで償わなければ、この院長は能力がないから左遷されてしまいますよ。若松さんから左遷されてしまうのです。そういうものの考え方が間違いじゃないかと言うのです。それならば、全部自由医業にしたらいい。全部競争せい。そうすれば、われわれみたいなものは安くやりますよ。それじゃ、使うものを自由競争にするという概念です。しかも医療機関の窓口に入ったとたんに、これは統制価格です、こういうわけですからね。そういうものの考え方はおかしいですよ。  それから、三十九年に四千二百億、四十年は四千五百億ということがわかっておりながら、医療機関がどのくらい使っておるか、売薬はどういうようになっておるかということはわかりません、総医療費の中で薬が三六%を占めております。こういうことでしょう。しかし、あなた方は、薬価基準の調査をしておるじゃありませんか。薬価基準を調査して、アクロマイシンならアクロマイシンという薬は、全国の医療機関はどの程度のものを買っておるということを把握しておるわけでしょう。しかもその価格は幾らかということはわかっておるわけだから、そうしますと、アクロマイシンというものが幾ら生産されて、医療機関は幾ら使っておるんだということはわかるはずですよ。それがわからなければ、総生産の中の九割が買った値段ということと結びついてこないですよ。それは総生産高を薬務局が押えておって、使用したところはあなたのほうが押えておるわけだから、両方が話し合ってみたらわかるはずですよ。それはいまわからぬですか。情けないな。そういうことがわからぬで、薬が医療費増加の犯人だなんて言ったってナンセンスじゃないですか。大村潤四郎さんのところへ行って勉強してきなさい。いま経済企画庁に行っておる。彼はちゃんと分析しておる。前に医薬分業のときは、それはわかりましたよ。私もやってみた。そうしたら、いまから十年前に、二百億くらいの薬がどこへ行ったかどうしてもわからなかった。しかし、大村さんの分析によると——これは大村さんの分析だから正確かどうかわからぬのだけれども医師、歯科医師の使用分が三千億、売薬が三百億、消毒薬、保健薬が二千億、こうなっておる。これは、昭和四十年五千三百億と推計しておる。いま薬務局長は四十年四千五百億と言ったけれども、大村君は五千三百億と推計しておる。約八百億の差がある。そうすると、薬の原価で言うと医師、歯科医師の使用分が三百億となれば、問題はここです。いま統制はどういうところに統制がきておるかというと、医療機関の窓口からしか統制がやられてないわけです。そうすると、統制するときにバルクラインを設けておる。ところが、そのバルクラインが、今度は具体的な診療の段階になると、もう一ぺん変化が出てくるわけです。どういうふうに変化が出てくるかというと、アリナミンならアリナミンを三円十銭で買い入れた。薬価基準三円十銭と載っておるから買い入れて、それを二円で買おうと、一円で買おうと、これは何も薬価基準とは無関係に、今度患者にやる場合には、さいぜん指摘したように七円になるわけです。だから大臣、この前、神田さんと田中さんとが、薬代の二分の一を患者に負担させるという秘密文書を結んだわけです。そこで私は、予算委員会田中さんと神田さんに、あなた方薬代と言うけれども、薬代というのは何ですか、薬代とは何か御答弁願いたいと言ったら、二人とも答弁できなかった。薬代とは何か、二人ともわからなかったのです。わからない二人が、薬代の二分の一を患者負担させるという秘密協定を結んだのです。みな大笑いした。そこで、薬代というのは三つある。一つは、薬価基準に載っておる、アリナミンは一錠三円十銭だ、こういう薬代、いま一つは、患者さんが医者の窓口でお金を払う一律三十五円というこの薬代と、もう一つ薬代は、十五円以下の薬は——アリナミンはいま三円十銭で買える。十五円以下です。十五円以下の薬は、これは七円ですよ。こういう平均薬価。薬代にはこの三つがあるわけです。あなたが二分の一負担させる、その薬代というのは一体どれですか、これも答弁できなかった。保険局長が出てきて、私はその秘密協定をするときには参画はしておりませんけれども、私の感じでは七円というのが薬価でございます。こうなったのです。それなら事務がたいへんだからだめだと言ったら、与党の連中も、なるほどそれはたいへんだ、そんな平均薬価の半分を一つ一つとるのではとてもだめだ、一体厚生省は事務的にほんとうに検討してこんな案を出したのか、があがあとなってしまった。三つある。いま世間で非常に問題にされておるのは、薬価基準です。窓口のも、平均薬価も問題にされていないのです。そこで平均薬価という七円が、またいかなる根拠によってきめられたかということです。
  147. 浦田純一

    浦田説明員 これらは、使用薬価の調査をやっておりまして、その結果に基づいてその分布の状況から全体の平均、その辺でよろしいということできめられておるものでございます。
  148. 滝井義高

    滝井委員 バルクラインをきめるときは、非常に頻度の高い薬だけをとってやるわけです。しかもそれも二百品目ですよ。ところが、価格が十五円以下のものは、十ぱ一からげに平均的なところの七円できめてしまうわけですよ。しかも甲表はいままでは十九円、今度はまた、それを十九円一本ではいかぬというので二段階に分けておるわけです。きめ方が甲表乙表で全然違うわけですよ。それじゃ、甲表は一体いかなる理由でいままで一本のものを、今度は、投薬で言えば十九円一本のものを、いかなる理論的な根拠で十二円と四十三円に分けたか、こういうことになる。
  149. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 いわゆる平均薬価の問題につきましては、御承知のように、私どものほうでは、薬価基準の調査と別個にやはり平均薬価調査というものを毎年やっておるわけでございまして、この平均薬価調査には、各医療機関におきましての処方の内容が全部出てくるわけでございます。それに基づきまして甲表の病院、それから乙表の病院、診療所等々につきまして、使用薬価調査に基づきまして、どこで頻度が多くて、十五円以下のものは頻度が多いのはどうだというような結果に基づきましてこれをやっておるわけでございます。
  150. 滝井義高

    滝井委員 この十五円以下の薬は薬名を書かなくてもいいのですよ、請求書に。だから、どんな薬を使ったかわからないのですよ。十五円以上になれば書きます。だから、何の薬をどのくらい使っておるか、全然わからないですよ。調査のしようがないのだ。だから、これはちっとも科学的な根拠がない。逆算をしてこのくらいの金を配分するなら、甲表は十三円と四十三円でいいだろう、それから頻度から見て、大体このくらいのところできめたらいいんじゃないかということで、首を横に振っておるけれども、そういうことですよ。たとえば今度だって、技術料に回すというときに薬の値段を下げちゃったじゃないですか、あなた方は。薬の値段を、一方上げるのもあるし、一方下げるのもある。たとえば乙表でいきますと、十五円以下のものは、六円だったのを七円にしたのですね。それから三十円以下というのは、ここは非常に頻度が高いのですよ。ここのところが一番頻度が高い。それを、二十二円だったのを二十一円に下げちゃった。そうして四十五円以下は三十六円と三十六円、同じにする。六十円以下の場合は、五十一円を五十二円に今度上げたわけです。一番頻度の高いところの三十円のところを下げちゃた。こういうことをやっておるが、これは別に科学的根拠がないですよ。
  151. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 私どもは、そういう価格をきめる場合に腰だめでやっておるということでは全然ございませんので、先生誤解されておるのじゃないかと思いますが、平均薬価調査といいますのは、各医療機関におきまして、十五円以下の薬をどれだけの頻度でもって使っておるかということで、その平均値を厳正に計算してみたところ、そういうふうになったということでこれを実施しておるわけでございますから、しっかりした調査表に基づいて、それで計算した結果でございます。
  152. 滝井義高

    滝井委員 それなら、三十円以下の場合が〇・一、きちっとやるような数字が出ておるのですか。そんなものは出ていやしないですよ。だから、そういうところは腰だめ的に、ここらあたりが頻度が多いので、ここらあたり下げておれば、薬代が少し下がるだろうということだけです。第一、甲表をいままで十九円一本でいっていたのを、突如として二本にすること自体が非科学的です。何も科学的根拠がない。ですから、どうして一体、それならば甲表注射もいままで一本であったものを、皮下注射を十九円と四十一円にし、それから投薬の場合に十二円と四十三円にしなければならないかということです。二円とか三円とかはしたをつけて、いかにも科学的な根拠があるような装いをしておるだけのことですよ。そもそも初診料が十二円だったのを、いつの間にかぼろっと六円つけて十八円にしたのだから。あなた方の先輩がそういうことをやって、ぼくから問い詰められて、何もこれは根拠はありません、滝井さん、かぶとを脱ぎます、これはつまみ金ですと言っておるのです。こんなものなんかなおむずかしいです。なお根拠のないものですよ。
  153. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 先生、腰だめとおっしゃいますけれども、この平均薬価を変えました際には、昨年の中央医療協議会におきまして、厚生省側も年次別の平均薬価の調査の結果を出しておるわけであります。それに基づきまして、たとえば例を申しますと、投薬分については、甲表、三十三年十月に十七円だったのが、三十六年七月に十九円になるというふうな数字を出しておる。また乙表については、投薬について、十五円以下のものにつきましては三十三年十月が六円だったのを、これは同じく六円、それぞれ変動がありますけれども、ほとんどその分についてはあまり変動がない。注射の分に多少二、三円の変動がございます。それからまた、甲表における六十円以下の薬剤について二階級にしなければならなかったという場合も、平均薬価の年次別推移も、三十三年から三十七年にかけまして三十円まで、それから三十円から六十円までのそれぞれの価格を全部上げて資料を全部出した上で、相談の結果、やはり二階級にしたほうがいいだろうということで結論を得たわけでございまして、決して私どもが腰だめ式に数字をいじったということにはなっておらないわけであります。
  154. 滝井義高

    滝井委員 いいですか、そもそもバルクラインを調査するときに出す資料というものが、みんな秘密になっています。   〔竹内委員長代理退席、委員長着席〕 そのとおり出しておらないのです。出さないのですよ。大病院はうんと安く買っておるわけですよ。ほとんど大病院が大量に買っておる。六割とか七割というのは大病院で占めておる、あとのちょっぴりした二割か三割くらいを小さな病院が買っておる。たとえば、パス、マイシンみたいな特別の結核薬を見てごらんなさい、国立療養所とかその他結核の大きな病院が全部買っておるわけですから。そうすると、そこの価格というものは、非常に安いものを買ってきておるわけでしょう。そうすると、あなた方が平均薬価をとる場合には、そんなものも一、小さなわれわれの草深きいなかの診療所も一でとるわけですよ。そうしてそれを薬で平均してくる。そんな平均というものは、ナンセンスの平均なんです。そもそもバルクラインをとるもとは、ダンピングでもって入札をやらせて安く買っておる。それを今度十五円以下だからといって、そういうところをどういうようにもうけようとしておるかというと、いま言ったように、入札で平均薬価以下で買ってその差額をもうけて、その七円と十五円の差額でまたもうけるわけですよ。そういう形になっておるのです。だから、もうけるところはそういうところと組んでおる製薬業と大病院だけであって、平均薬価でもうかっておるというのはそういうところで、普通の病院というのはもうかっていないわけですよ。そういう矛盾したことは、それは池田内閣は大企業優先だからいいかもしれませんが、ぼくらはそれで了承できない。そういうことであるならば、こんなややこしい、しかもその薬価だって、さいぜん証明したように薬剤師と甲表乙表みんな違うでしょう。そんなややこしいことをやらずに平均薬価も一本にする。それからその薬価基準なんというものをやめてしまって、重要な薬というのは全部ひとつ適正な価格で——保険医療なんですよ、国民皆年金、皆保険ですよ、それをやるのが当然じゃないですか。それを医療機関の中に入ったら厳重な統制をやるけれども、その前の製薬は野放しでいいというようなばかなことはない。製薬がそれで困るなら国がどしどし助成してやりなさい。その助成政策は、保健薬とか消毒薬とか売薬とかは、みんながかってに買うのだからそのままでいい。しかし、国民皆保険になって、その皆保険の中で使う薬で頻度の高いものだけは、国が責任を持って供給するのは当然のことじゃないかということです、私の言うのは。この議論は私は間違っていないと思う。これは医療国営にも、あるいは製薬国営にも通じていないのですよ。保守党でもできるのです。鈴木さんでも、やろうと思ったらこれはできるのですよ。少なくとも医療制度を根本的に改革しよう、今度は抜本的な対策をやるのだというなら、この薬のここに手をつけずにそのままにしておって、医療機関に入ってからだけやろうなんというのは、私は太鼓判を押しておくが、できない。抜本改正は絶対にできない。薬のいまの問題の解決も不可能だというのが私の意見なんです。だから、あなた方は製薬企業の中だけを問題にしておるけれども、前の段階というものを野放しにしておいて、幾ら議論をしたってナンセンスです。
  155. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 先生の御意見にお答えいたしますけれども、ごもっともな点も多々あることは私も承知いたしておりますが、ただ、ちょっと誤解もございますので、いまの平均薬価の問題につきまして重ねて御説明申し上げますけれども、病院が安い値段で買ったから、したがって平均薬価調査によります平均薬価が、安く値段が出てくるということではないのでございまして、これはあくまでも薬価基準で請求をします価格に従って調剤をいたしましたその分の平均薬価をつかまえておりますから、あくまでも基礎は薬価基準価格、したがって九〇バルクで計算をされております薬価基準の、いわゆるその病院が購入した価格よりもはるかに高い価格で出てきておるわけでございますから、もしそういうふうに安いところは安い値段であらわれてくるということになれば、平均薬価という考え方はむろんなくなってしまうわけでございますから、その点はひとつ私どもの説明を了としていただきたいと思います。  それからまた、薬品基準の登載方法その他につきましての御指摘でございますけれども、これは私は、やはり基本的な医療費体系考え方を変える考え方につながる問題だと思います。現在の医療費のきめ方は、あくまでも中央医療協議会においてきまった線に基づいて私どもは薬価基準の改正をやり、薬価基準の調査を行なわなければならないわけでございまして、御指摘のような考え方をとるとすれば、これは根本的に議論を尽くさなければならない問題でございますので、その点はやはり関係者が十分納得した上で実施に移さなければならない問題だというふうに私どもは了解しておるわけでございます。
  156. 滝井義高

    滝井委員 政府は、医療保険制度の抜本改正をやろうというわけでしょう。だから私は、きょうは将来の展望に立って抜本改正の問題を議論しているのですよ。だから、まず第一に事務の簡素化の点からいっても、いま患者側の状態から見ても、薬剤師さんに行ったときの薬の値段と甲表の値段と乙表の値段とが違うというだけでも、すでにこれは事務的にいっても非常に煩瑣であるし、審査をする上からいっても実にややこしいことですよ。こういう矛盾が一つあるでしょう。しかもその薬価基準というものの上に、今度は平均薬価というものがかぶさってきておるわけでしょう。これはまた違うわけでしょう。甲表乙表とで違うし、薬局でも違うわけです。だから、そういう二重にも三重にもややこしいことをやっておって、そしてそのややこしいことがどこから始まっておるかというと、病院の窓口に薬が入ってから始まるわけでしょう。製薬企業がどんなにもうけようと、どんなに損しようと、そんなものはおかまいなしに、入ったところから薬価の調査は始まる。そうして、バルクラインというものをおつくりになった。それは間違いじゃないか、もうちょっと先にいくべきじゃないかと言うのです。医者の窓口もお出なさいと言っているわけです。抜本改正をやろうとすれば、それをやらなければだめですよ。これをやるためには、医療機関がどの程度の薬を使っているかをよく掌握しなさい、そして、その中で特に重要な頻度の高いものは——二百品目でいいですよ、二百品目なら二百品目については、これは何もアンプルに入れたり、包装に効能書きを入れたり、小さな包装にする必要はない、頻度の高いものは五十なら五十くらい、それから期限のあるようなものは、いなかの診療所なり今後医薬分業をやる場合に小さないなかの薬局が使えるように、もう少し指導行政をやって抜本改正をやる必要があるのじゃないか、こういう意見なのです。これは何も、いますぐにあなたにやれと言ったってやれるはずはない、いままで十年かかってやれないのだから。こういう点を言っている。何かそういう前向きの合理的なものをやらなければだめですよ。医療協議会でやるから——医療協議会で論議してもらうのは当然のことです。医療協議会にあなた方が案を出して論議してもらったらいい。あなた方の案をつくったらいい。この前、鈴木さんもそう言っておったでしょう、今度はわれわれの案をつくってそれぞれの審議会意見を尋ねます、見ておってください、こういうことだったでしょう。それを、いまになって医療協議会があるからそんなものはやれないと言うのなら、もうあなたはやめたほうがいい。保険局長やめて、もう少し若手の、ちゃきちゃきやる人にかわりなさい。そしてあなたは、早く次官になってもらったらいい。そういう言い方はないですよ。もう少しきちっとやらなければだめですよ。
  157. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 確かに、薬価調査自体について非常に問題があることは、私どもも、先生御指摘のとおり、問題があろうということを申し上げておるわけでございます。したがいまして、医薬品目の調査につきましても、これは三十八年度までは二百品目いたしましたが、当時二百品目といいますのは、まだ薬価基準の登載品目が二千品目程度でありました。昭和二十八年、九年ごろから始めた調査でありますので、その後品目が六千品目になりましたので、この品目をさらに三倍以上広げる。七百品目以上の品目につきまして——大体六千品目全部を調べる必要はないわけでございますから、そのうち六、七割がわかるようなものであればけっこうであろうと思いまして、七百以上の品目について調べたいということで、三十九年以来その方法を、現在医師会等々と相談をしながらやっておるわけでございまして、いずれ相談ができました場合には、御指摘の点もいろいろと勘案をいたしまして、そういう調査をやるというふうな方針になっておるわけでございます。決して私どもは、やらないということを申し上げておるのじゃなしに、やりたい、やるについては学問的あるいは学術的な了解を得た上でやりたいということで、現在準備をいたしておるところでございます。
  158. 滝井義高

    滝井委員 二百品目を七百品目にしたって、いまのバルクラインの制度で九〇を七〇とか八〇にしたって、矛盾というものはちっとも解決しないわけですよ。いまの矛盾を幾ぶん小さくすることはできるかもしれないが、根本的に矛盾は解決しないままでいく。そうすると、依然として薬が医療費の中で占めることは同じです。バルクラインを下げれば、医者はそれだけ安く買う方法をとる。だから、ずっと前にも井堀君がよく言っておった。医者と法学士との競争は、行けば行くほど法学士の負けになるのだ、こういうことを言っおった。だから、だんだん医療というものが仁術てから算術になってくる。天下の大病院の院長がそろばんをとって、乙表が有利か甲表が有利かとやらなければならぬ事態に一体だれがしてしまったのかということです。そうでしょう。そういう経済主義的なものの考え方が、千葉大学の鈴木充君を生むのです。その根本を考えなければいかぬですよ。  それから、医療費体系の中で、一体あなた方は、薬をどういうように今後位置づけすることになるのかということです。まず原価主義だということになれば——平均薬価というのは利益があるんですよ。物は利潤を取ってもいいという考え方ですよ。平均薬価はそうでしょう。物は原価主義だ。たとえば、国立病院がアクロマイシン百円のものを三十円で買った。そうしたら、百円なら六十円以上だから十点だ。ところが、それは三十円で買ったら、そこに、あなたがさいぜん言っておったように、七十円とか百三十円の利益が出てくるわけだ。そうすると、それは物は原価主義でないわけですよ。バルクラインというべールに隠れて原価主義でない、利潤を取っているわけですよ、そうでしょう。だから一体、新しい鈴木構想における医療費体系のもとにおいては、薬というものはどういう位置づけをするのかということです。こういう形で尋ねてみたらはっきりするでしょう。
  159. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 いまここで、医療費の中における薬の位置づけをどういうふうにするかということを申し上げることは遠慮させていただきたいと思いますけれども、ただ、平均薬価論が必ずしも医者のもうけになるというふうには、私どもは考えておらないわけでありまして、いわば平均薬価論が出てまいりました理論的な根拠といいますのは、やはり支払い請求を簡素化し、支払うほうもこれを簡便にするということで、請求事務の問題も含めて考えられた考え方だと私どもは了解いたしております。したがいまして、高い薬を買った場合にも平均薬価であるとすれば安く払われるし、また、安く買った薬についても平均薬価ですから高く支払う。平均してみて、安くても高くても大体平均の分だけは支払うというふうな、そういう支払い方法の便宜的な方法としても、これは適当だろうということで考えられたわけであります。しかし、根本的に医療費改定を行なう場合に、さらに徹底して、どういうふうな方法で薬の支払いをやっていくかということについては、なおいろいろと御意見もあろうかと思いますが、これはその際に検討すべきであって、ただいまのところ、根本問題と関連をいたしまして医療費の問題を、薬についてどういう考え方でやるかということを申し上げる段階ではないと思います。ただ、先ほど申し上げましたなるべく原価主義を貫きたいといいますのは、それはいわば現在の九〇バルクラインに対しましての一つの批判に対する答え的な意味もありまして、なるべく物によって医師収入がふえていくという形を捨象しまして、あくまでも技術報酬を得るような形に改める。そのためにはたとえば九〇バルクラインであるとすれば、四〇で買った人はそれだけもうけが入る、そういうことはなるべくないような方法で考えていくのが適当ではないかというふうに私どもは考えました一つの具体的な理由でございます。それだけ申し上げておきます。
  160. 滝井義高

    滝井委員 その抜本的改正をやるといって、薬の位置づけと物と技術を分離する、その場合に、物の一番典型的な代表である薬というものをどういうようにしていくかということは、非常に今後の医療費体系を展開する上に重要な点ですよ。それをあなた方がまだ検討しておらぬなら、方向さえもわからぬというならば、鈴木さんの意図する臨時医療保険審議会を出したって、これは来年の三月三十一日まで、いまの状態ならできないですよ。だから、何か牛丸君のところにああいう牛丸委員会をつくっておやりになっておるんですから、できなきゃうそですよ。何かなければ、こういう二つか三つくらいの方向は考えております。それで検討していただきたいとか、何か出てこないと薬の位置づけが——薬が一番犯人だといって、健康保険の審議からずっと今日まで言い続けてきておって、それじゃその犯人をとらえて一体どういうように処罰するか、どういう位置づけをやってやるかということがかいもくわからないのでは、話にならぬじゃないですか。大臣、どうするつもりですか。薬というものが非常に大きな役割りを演じておるということは、大臣も再々言われている。ところが、その薬というものを一体医療費体系の中でどういう位置づけをしようとするのか。いままでどおりのバルクラインで、平均薬価でいけば、いままでと変わらないのですよ。何も抜本改正でも何でもないのですよ。しかも製薬企業というものは野放しでしょう、何も手を触れないのですから。では、これはしばらくたな上げしておきます。これから大事なところへ入るのだが、文部大臣がいらっしゃったから、先に国民健康保険のほうへ入ります。これは鈴木さんにも関係がありますから、途中でやるのはぐあいが悪いのですけれども大臣が非常に御親切に来ていただきましたので、御質問申し上げるわけです。  まず第一に、国立大学の付属病院というのは、千葉大学の鈴木事件以来、九千万の国民の眼が注目をしておるところです。いま私たちが国民健康保険法の一部を改正する法律案を審議中なんですが、大臣にお尋ねしたいのは、国民健康保険法の三十七条の五項に「療養取扱機関は、その所在地の都道府県及びその開設者が所在地の都道府県知事に申し出たその他の都道府県の区域内の保険者及びその保険者に係る被保険者に対する関係においてのみ、療養取扱機関たるものとする。」こうなっているわけです。したがって、大学病院が国民健康保険の療養取り扱い機関になるためには、申し出をしなければならぬことになっているわけです。現在、一体国立大学病院は、国民健康保険法の三十七条五項の申し出をしておるかどうかということです。療養取り扱い機関としての申し出をしておるかどうかということです。
  161. 木田宏

    ○木田説明員 いまお尋ねの点につきましては、それぞれ大学病院並びに担当いたします保険医の両方から所定の手続をいたしております。
  162. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、各大学はみな療養取り扱いになっておりますか。
  163. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 各大学病院全部なっております。ただ、取り扱い県が若干違っておりますけれども……。
  164. 滝井義高

    滝井委員 何が違っているというのですか。
  165. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 全国的な取り扱い県といいますか、被保険者の所属する県、全国的な取り扱い県を指定しておるのじゃなしに、一部県内とかあるいは隣接県というふうな取り扱い県がそれぞれ違っているということを申し上げたわけであります。
  166. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、たとえば東京大学ならば東京都だけの住民を見る、こういう形になっておるわけですね。
  167. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 さようでございます。
  168. 滝井義高

    滝井委員 大臣、いまのとおりでございます。きわめて局部的にしか大学は見ない。これは普通のそこらの医療機関も同じですね。ところが、普通のそこらの医療機関と大学病院というのは違うわけですね。それならば、国立大学病院は結核予防法の取り扱いをしておりますか。
  169. 木田宏

    ○木田説明員 ほとんどの大学がそのような取り扱いをしていると思います。
  170. 滝井義高

    滝井委員 逆でしょう。ほとんどがしてないのです。東京大学は生活保護の取り扱いをしておりますか。
  171. 木田宏

    ○木田説明員 私のほうで、いまちょっと手元に正確なデータを持ってまいりませんでしたが、してないようでございます。
  172. 滝井義高

    滝井委員 完全看護の取り扱いはしておりますか。
  173. 木田宏

    ○木田説明員 東大につきましてはちょっとはっきりいたしませんが、他は全部その取り扱いをいたしております。
  174. 滝井義高

    滝井委員 東大はしていないですね。全部付添婦をつけさせる。そうしますと、国立大学の病院がみんな国の皆保険政策に協力していないのですよ。生活保護や結核予防法ももちろん、積極的にやらないのです。  この前の千葉の鈴木充君は、保険医の登録はしておりますか。
  175. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 千葉でいたしております。
  176. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、三島の病院に行って診療できますか。
  177. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 保険医の届け出は、登録は主たる業務をやっておる場所において届け出をすることになっておりますので、鈴木医師の場合には千葉に届け出をいたしておるわけでございますが、三島のほうでは届け出はいたしておりません。しかし、三島病院自体療養取り扱い機関並びに保険医療機関でございますので、そこで保険診療はできるわけでございます。しかし、保険医の届け出をやる義務は千葉において発生する、こういうふうに私ども考えております。
  178. 滝井義高

    滝井委員 大体いま大学で、御存じのとおり、無給の医局員というのは、一週間に一回かちょこちょこ来る人も加えると一万二、三千人おるわけですが、これらの人たちはみんな国民健康保険の保険医の登録をしておるでしょうね。
  179. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 全部いたしております。
  180. 滝井義高

    滝井委員 これはしておかなければ私からやかましく言われる。いままでしておかなかったが、私が数年前にやかましく言って、みんなしておるわけですから……。  そこで、問題はどういうところに起こってくるかというと、国立大学の病院が、保険医療機関には全部なっておるのです。ところが、国民健康保険の療養取り扱い機関になっていないところがあるわけです。あるいはなっておっても、局部的にその県だけの患者しか見ない、こういう形があるわけです。そうしますと、保険医の療養担当規則の十六条で、保険医が転医または対診を求めるときは、これは保険医療機関でなければだめなんですね。転医をさせます。たとえば九州から東京大学、千葉大学、大阪大学というように国立の大学病院に転医をさせるわけです。そのときに、いま言ったように大阪の病院は大阪だけ、東京は東京だけ、あるいは千葉は千葉だけだということになると見てもらえないわけです。添書をもらって——保険を取り扱うものだと思い込んで、医者は添書を書いて紹介をするわけです。そうして行ってみますと、わしのところは、おまえのところのそういう遠い患者は見ませんと言って断わられるわけです。一体この場合にどういうことになるのかということです。そこで断わられた患者は、もとの医者を訴えた。私は旅費を使って東京まで来ました、あるいは千葉まで行きました、ところが行ったら他県の者を見ないのだ、こういうことだ、だから、ひとつあなたは損害賠償をくれ、こういうことになるのです。皆保険になりましたら国民健康保険というものは四千三百万、ことしの予算平均したら四千百万になるわけですが、四千百万の、国民の約半数が入っておる国民健康保険が、権威ある大学病院に医者紹介をした場合に見てもらえなかったというようなことになれば、これは皆保険に対する夢が一朝にして消えてしまうことになるわけです。幸い文部大臣にきょう来ていただきましたので、両大臣はこれを一体どう解決してくれるかということなんです。
  181. 木田宏

    ○木田説明員 ただいまお尋ねの点につきましては、たいへん恐縮なんですが、私自身不勉強でございまして、その実態をよく承知いたしておりませんけれども、前からの課題として提起されておるようでございまして、取り扱いがいろいろと府県別の支払いの関係等もありまして、事務的に検討しなければならぬということできておるようでございまして、しばらく関係者と相談をいたしてみたいと思います。
  182. 滝井義高

    滝井委員 大臣、これはそれぞれ大学の出身の医師というものが全国に散らばっておるわけです。そのことは同時に、鈴木さんみたいな人は別としても、大学がやはり非常に珍しい疾患を研究する上に非常に重要な点なんです。そこで千葉なら千葉、東大なら東大を卒業した人が、自身の出身の教室に向かって添書を書いて紹介をするわけです。その場合に、医者というのは、自分が保険医であるから大学も保険医であるということが先入観にあるわけです。そこで添書を簡単に書く。そこで大学に行ってみると、それは療養取り扱い機関になっていないわけです。大学病院が療養取り扱い機関になっておるかどうかということを告知する方法はどういう方法でやっておるかというと、各府県の公報にそのつど掲載されるわけです。ところが、各府県の公報なんというものは、県会議員なんかに配付されます。私も県会議員をやっておりましたけれども、公報なんか見やしない、たくさんくれますが、何か関係のあるものは見ますが、保険医療機関の療養取り扱い機関になったというような登載のところは見ないわけです。見ないから、なっておるものだという先入観、大学病院がまさか療養取り扱い機関になっていたいなどということは常識で考えない。あなた方もそうだと思う。そこで添書を書く、そうするとだめだ、こういうことになるわけです。これは医師会か何かに周知徹底させる必要があるわけです。そうすると、添書を書くときに、あの大学病院は療養取り扱い機関でなかったからだめだ、こういって患者さんにすぐ言えるわけです。ところが、行けるというのではるばるやってきた。ところがだめだ。いつか鈴木さんのところの岩手大学で起こりましたね。あれと同じことになってしまう。あの事件が前例として起こったわけです。しかし、これは被保険者に意外に経済的負担を負わせるのですが、一つの救済方法がある。それは全部現金で払う。そうして領収書を持って保険者に言って支払ってもらうという方法もあります。しかし、はるばるいなかから出てきて見てもらうような病気というのは、長くかかる病気ですよ。そうしますと、意外に経済的な負担がかかってどうにもならなくなるわけです。だから、私は、これはすみやかに検討していただいて、国の政策が皆保険政策になっておるのですから、健康保険のほうはわりあい簡単に見るが、国民健康保険はそうではないのです。だから、今後、国民健康保険がほんとうに家族七割給付を四カ年計画で実施して全国的な根をおろさせようとすれば、やはり権威ある大学が見れる体制をつくらなければいかぬ。せめてまず大学からやる、それから公的医療機関が全部それを見るというような形に持っていくことが親切ですよ。(「賛成」と呼ぶ者あり)与党でも賛成と言っているんですよ。だから、これはひとつ文部大臣と両者御協議の上——お互いになま身を持っているんですから、いつ東大なりがんセンターに行かなければならぬことになるかもしれない。そのときになって、保険証がきかないなんといったら、それは相撲に負けた力士が土俵をたたく以上に残念なことになってしまう。鈴木さんも文部大臣も恨まれますよ。恨まれないうちに、政策として実行してあげる必要があると思うのです。今度、在日韓国人の問題なんかも国民健康保険で解決しようとしているわけですから、ひとつ一緒にやっていただきたいと思いますが、文部大臣の御所見をお伺いします。それで文部大臣はけっこうでございます。
  183. 中村梅吉

    ○中村(梅)国務大臣 滝井さんは専門家でございますので、非常に実情に即した御質問をいただきまして、私どもとしましては、御指摘の点は非常にごもっともに思います。従来、大学付属病院は、こういう皆保険制度が十分に発達する前からのしきたりで改善ができていないように思います。この点につきましては、われわれのほうと厚生省と十分とくと相談をしまして、改善に向かってひとつ検討を至急にいたしたいと思っております。
  184. 滝井義高

    滝井委員 それからもう一つは、さいぜん御指摘申し上げましたように、結核予防法の取り扱いを大学病院がしないわけです。それから東大等は、生活保護法と看護の取り扱いをしないですね。こういう点についても国の政策で——これは貧乏でも東大病院に見てもらいたいという人が、重くなればおりますよ。いまは、むしろ東大病院は、感冒とか胃炎とか軽いのが殺到しているのです。こういうものはある程度断わらなければならぬ、断わってもいいと思うのです。しかし、生活保護の医療扶助でも、これは重くなればぜひ東大に見てもらって死にたいという人があるんです。ところが、末期の水を飲むにも、東大病院で見てもらえないとなったらのどを通らぬですよ。だから、こういう点も厚生省と文部省ともう少しひざを交えて相談をされて、国民皆保険ですから、国民健康保険のほうは早急にやってもらって、生活保護、結核予防法、看護等は幾ぶん時間を置いてもいいですから、ぜひひとつ検討していただくように要望しておきます。  文部大臣、すみませんでした。  次は、医薬分業の中における薬の位置づけというものについての質問中に文部大臣が参りましたが、大学病院が国民健康保険でそれぞれ全国的に見てもらえることになれば、被保険者にとっては非常な福音ですから祝福されていいことですが、薬の位置づけの問題についてはどうも明確でない。ここらあたりを明確にしないと話にならぬわけです。この薬をどう位置づけするかが医薬分業にも関係してくるし、技術評価の問題にも関係してくる。同時に、製薬企業のあり方についても重要な関係を持つわけですよ。熊崎さん、体系の中における薬の位置づけについて、もう少し明快に所信を明らかにしてもらいたいと思うのです。あなたが明らかでないので、いま大臣答弁を求めておるうちに文部大臣が参りましたので、大臣考え方をひとつお伺いしたい。
  185. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は、薬の位置づけにつきましてどうあるべきかという基本的な考え方は、滝井さんと隔たりがないのであります。私どもも、できるだけ薬価基準の改定にあたりましては実勢薬価に一致するようにということで、先般薬価基準の改定をいたしたわけでございます。今後におきましても、毎年一回、また大きな変動があります場合には二回でも三回でも薬価基準の改定をいたしまして、実勢薬価と一致するようにしてまいりたい。この考え方は、その他の甲乙二表で採用されておりまする薬価につきましても同様に考えておるところでございまして、そういう意味合いからいって薬価調査というものを毎年ぜひ実施いたしまして、そうして薬の価格を適正に医療の上できめてまいりたい、かように考えておるわけであります。
  186. 滝井義高

    滝井委員 大臣の言う実勢価格というものの実態は何ですか。これは私はよくわからぬ。大臣は一つ覚えのように実勢価格、実勢価格としょっちゅう言われますが、実勢価格というのは何ですか。薬価基準ですか。それとも、バルクラインというものは一から九十まで千差万別です。九十種類ありますから、それの九十番目の高いほうの価格と量をとるわけでしょう。量をとって価格をきめるわけでしょう。そのうちの実勢価格は、一体どれを実勢価格というのか、九十番目を実勢価格というのか、こういうように実勢価格ははっきりしない。
  187. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 御承知のように、いわゆる薬の値段につきましては、相場品目とB価品目とがございまして、相場品目につきましては薬務局長の権限になるのですが、相場品目については、これは二社以上が製品を出しておるわけでございまして、大体そのときの、その時点における相場価格がどのくらいということがわかるわけでございます。それからまた、B価品目につきましては、これは一社のいわば寡占品目といいますか、独占品目といいますか、一社限りで値段をつけておる価格でございまして、大体いま申し上げました価格といいますのは全部B価の、つまり卸価格でございます。その実際に取引をされておる価格というのを私どもは実勢価格というふうに申し上げておるわけでございますが、御指摘のような実勢価格につきまして、特に相場品目等については、非常に変動が激しいことは御指摘のとおりでございます。医療機関によっても違うし、また時と場所によっても違う。しかし、その時と場所によって違うものになるべく合わせていくということになるとすれば、これは毎年薬価基準を改正しておれば実勢価格というものは比較的楽につかめる。ところが薬価基準の改正がないと、実勢価格と薬価基準との間に非常な開きが出てくるということであります。
  188. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、実際に取引しておる価格、これを実勢価格と言えば、それはどこのところの部面の取引をさしておるのですか。メーカーと卸の取引の段階ですか、卸と小売りの段階ですか、小売りあるいは卸と医療機関との取引の段階ですか。
  189. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 大部の医療機関が全部卸から買っておるわけでございまして、大体卸価格というふうに申し上げてよろしいかと思います。ただ、一部薬局から買っておる場合もございます。小売り価格の分も中には若干入ると思いますが、大部は卸価格、いわゆるB価といいますか、A、B、Cというふうに価格を分けておりますが、Aが件切り価格、Bが卸価格、それからCが小売り価格、こういうふうに業界では言っておりますが、そのB価というふうに考えていただいていいかと思います。
  190. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、あなた方の言う実勢価格というのは、卸が小売りに売る価格、これが中勢価格ですね。
  191. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 私どもも、薬価調査をする場合に大体卸価格を調査するわけでございまして、実勢価格といいますのは、卸価格の実勢価格というふうに考えていただいてけっこうだと思います。
  192. 滝井義高

    滝井委員 卸価格の実勢価格なんて、みんなわからぬで笑っていますよ。卸から小売りに売る値段ですかと、こう言っているのです。
  193. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 そういうことでございます。
  194. 滝井義高

    滝井委員 それが実勢価格、そうしますと、卸から小売りに売る姿を見てみますと、この前辻原君がここで再販売維持契約論を少し展開しておった。あれからもうちょっと掘り下げなければいかぬわけですが、いまの大手の製薬会社、名前を言うと、この前ベストン、ハイベストンを辻原君が名前をあげたら、田辺から、あなたのほうは私の製薬会社に何の恨みがあってのことでしょうかという手紙がきたそうですか、名前をあげると、恨みがあったかということで痛くもない腹を探られなければなりませんし、製薬企業も育てなければいかぬし、同時に、医療費の中で非常に大きな比重を占めている薬の問題についても前進的な、前向きの体制をつくらなければいかぬ、そして日本の医療をよくしなければいかぬ、こういう観点でやっているのですから、決して製薬会社に恨みな持っているわけでもないし、何かうんとこきおろして国営でもやろう、そういう気持ちも持ちません。きわめてすなおに前向きでひとつ製薬企業にも協力してもらおう、こういう気持ちです。  そこで、大手十一社というものは、それぞれその〇〇会というものをみんな持っていますね。これは御存じでしょう。系列をして会をつくっていますね。知っていますか。
  195. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 再販維持契約でございますが、いまお尋ねのように、大手の十二社の大部分のものが再販維持契約を現在のところ締結しているようでございます。
  196. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、これは名前を言うとぐあいが悪いから、まずA会としますかね。そのA会を例にとってみますと、これは四十年十二月一日につくっていますよ。加盟の卸店は百五十社です。だから。この百五十社の卸から小売りに売る値段というものが実勢価格だというならば、その実勢価格というものは、きわめて自然な、経済的な流れのものでないわけです。A会の加盟店は百五十社です。そうして将来これはどの程度を目標にしようとしておるかというと、会員数を、卸店が百五十社ですが、今度は卸の下に会員をだんだん拡大していくことになると思うのです。大体三万七千店ぐらいを目標にしているのです。そうして、これは支払いのものをきめてしまうのですね。毎月十五日締め切り翌月十五日支払い、発注、受注の方法は月に一回だけ、そうして経由はその卸を経由して全部注文するわけです。ほかのところを経由してはやらない。卸でやるわけです。そうしてリベートまたは割り戻しが月額二万円以上あるわけです。B価は三カ月ごとの累進制で、最低三%、平均四%ないし五%のリベートがあるわけです。小売り店の利益は二割五分から三割、そうして今度はその会員になりますと、系列の中に入るわけですから、販売店の援助の優先的な提供をやるわけです。金融的な援助その他をやってくれるわけです。そうして価格体系は、一〇〇が七〇と七五の二本立てになる。三割から二割五分の利潤を保証するわけです。そうして品目がきまるわけです。たとえば二十品目なら二十品目、この品目は何と何と何、こうなるわけです。そのきまった品目、この前ベストン、ハイベストンが出ましたが、非常によく売れるやつをぴしゃっとやるわけです。そうしますと、たとえば滝井義高がAならAという薬を買いたいと思います。そうすると、その系列に入っている薬局に行かないと、どこの薬局に行ってもAという薬はない、こうなっておるわけです。その系列に入っているところでなければ、いまの二十品目の薬はないことになるわけです。こういうものがみんなできておるでしょう。薬務局長、みんなできておるでしょう。
  197. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 御存じのように、再販維持契約は、いわゆる独禁法という法律に基づきまして公正取引委員会のほうで指定をしているわけでございますが、この指定の条件としまして、法律のほうに明示しておりますのは、当該商品が一般消費者によって日常使用されるものであること、ということが第一点でございます。それから当該商品について、いわゆる自由な競争というものが確実に行なわれていることという二つの要件を法律上規定しまして、再販維持契約の対象たる商品を指定しているわけでございます。したがいまして、純理論的に申し上げますならば、世上言われております大衆薬といわれているものが、再販維持契約の対象になる医薬品になるわけでございます。そういうような仕組みで現在医薬品業界は、大体最近のデータによりますと、三十社ぐらいがこの再販契約の指定を受けております。品目数にいたしますと、九百七十品目くらいのものが再販契約の対象になって指定を受けている、こういう状況でございます。それからいまお述べになりました取引の条件でございますが、これはそれぞれのメーカーによっていろいろ千差万別であるようでございます。メーカーから卸を通じないで直接小売り店へ直送している、いわゆる特約店と申しますか、そういうようなものに直送しているところのものも相当あるようでございます。それから問屋段階を経て小売りのほうに送っているというようなところもあります。それから取引の条件としましても、先生お述べになったようないろいろな種別が各メーカーによって異なっているようでございます。一がいに申し上げられませんが、それぞれのメーカーが自分のところのそれぞれの特約店等の実情をよく見まして、取引条件というものをきめているように伺っております。
  198. 滝井義高

    滝井委員 したがって、それぞれ大手製薬メーカーは、この系列化をずっと卸から末端の小売りに至るまでしているわけでしょう。それは間違いないですね。
  199. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 再販維持契約というたてまえのもとにおいて、そのたてまえを実施しているメーカーは、おっしゃいますようにメーカーから卸、小売りというふうに系列化をしているというのが実情であります。
  200. 滝井義高

    滝井委員 大臣、いまの答弁のとおりです。系列化しているわけです。そうしますと、実勢価格というのは卸から小売りへの価格だといっても、これは自然の経済の流れの価格ではない。ここでは一番ピラミッドの頂点に立っている企業からきちっと統制されてしまっている。系列化されているわけです。それより安く売るなんていうことは絶対にできない。安く売ったらぴしゃっとやられてしまう。そういう形になっているので、実勢価格だなんて言ってもだめです。そこで末端の卸から小売りの段階ではそういう統制をやります。しかし、病院では大戦争をやるわけです。どうして大戦争をやるかというと、大学の病院や国立病院では大戦争をやってもいい、やりがいがある。そこで勝ちさえすれば、その大学の、東大の第一内科なら第一内科へAという薬をきちっと入れさせれば、大学病院から全国の病院というものは、Aという薬をきちっと使わせることができるのです。末端の小売りについてはきちっと統制がいっているのです。こういうことで、実勢価格だ、バルクラインだなんて言っても全くナンセンスなわけです。こちらのほうが、資本主議の弱肉強食の競争が行なわれている。そこから入ってきた医療機関の薬だけはきちっと統制をやるということは、これは全く弱い者いじめです。結局私の言いたいのは、あなたのほうが資本主義の旗振りになっているということなんです。したがって、この薬を買いたいと思っても、この系列下にある店でなければ買いたいと思う薬はないわけです。買いたいと思う薬は大手のメーカーの系列下にある。大手のメーカーのつくっている薬を買いたいと思っても、その系列下の薬店に行かなければその薬はないわけなんです。どこに行ってもその薬があるわけではない。医療機関というものはどこでも自由に、好きな医者に見てもらえるというのが、最も安い価格で、いい医療を受けるというのが医療の理想です。ところが、薬はそうなっていないのです。医療における一番の弾薬の役割りをする薬というものは、そういうことになっていないのです。きちっとしたもので、いま言ったように系列化の中に入って、その薬品はそこに行かなければだめだ。これでは医薬分業はできない。だから、このもとをやっぱり製薬業と話さなければならない。話さなければならないが、製薬業は意見を述べるところがない。社会保障制度審議会にも製薬企業は入っていない。医療協議会にも入っていない。社会保険審議会にも入っていない。製薬企業と大臣がひざを交えて話す公の場所がない、こういう実態です。だから、日本の医療は片ちんばなんです。日本の医療費で一兆千億要るならば、その中で、少なくとも小売り価格でいえば、いま卸原価で三千億くらいですから、小売りでいえば五千億か六千億くらい入るでしょう。一兆一千億の四割入れば四千四百億あるわけです。医療費の少なくとも四割近くを占めているものについて、大臣が公の場で意見を聞くのがないなんていうばかなことはないのです。ところが、そういう実態です。だから、製薬企業のそういう実態というものをやはり直さなければいかぬのじゃないか。少なくとも保険で使う薬については、医師、歯科医師の使う、あるいは薬剤師が調剤に使う薬だけは、やはりえりを正して、そう商売にしてもらわないという態勢をつくってくれないと、皆保険体制というものを自由民主党が言ってもナンセンスですよ。それをやるかやらぬかということですよ。医療費の抜本的な対策をやると言うからには、ここをやらずしては木によって魚を求むるたぐいで、そこを鈴木大臣がやらないと言うならば、私なんかは問題にしない。
  201. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私も、再販の方式がとられておりますことは承知をいたしておるのでありまするが、その取り扱っておりまする大部分の薬は大衆薬がおもであって、治療薬のほうは、そういう再販方式をとっておるのは少ないのではないか、かように見ておるわけであります。これが全部の治療薬につきましてそういう再販組織がとられておって、そこに公正な取引が阻害されておる、そして正しい価格というものが形成されるようになっていない、こういうことでありますれば、私は、これは国民医療の面からいってゆゆしき問題である、かように考えるわけであります。いまのところは大衆薬が大部分でありまして、治療薬のほうはそういう形では私は販売されていない、このように考えるわけであります。実勢価格ということを申し上げておりますのは、薬は定価でもって販売をされておりませんから、できるだけ実際に病院や診療所等が買っておりまするところの価格、B価、これを薬価基準をできるだけ近づける、一致させるように努力をしていくということが、今後の医療保険のもとにおける薬に対する考え方の基本だと思います。
  202. 滝井義高

    滝井委員 大臣、少し認識不足です。大衆薬はいまのような形で公然とやっておるわけです。しかし、医師、歯科医師の使う薬もそのルートを伝わって流れてくるのです。たとえば私の町に卸が二軒あります。一軒は、特殊の大きな会社のものを専門に扱います。一つは、やっぱり特殊の会社の卸の基盤になっておるわけです。このAというほうに行きますと、有名な製薬の薬はあるのです。Bに行ったら、ないのです。やっぱりその薬が大衆薬と一緒に流れてくるのですね。うしろにお聞きになったらわかるのです。薬務局長、そうですね。卸は、そういう小売りに流すときには、大衆薬のほかに、同時に医師、歯科医師の使う薬もその系列の小売り店に伝わって流れていますよ。そのとおりでしょう。どこの小売り店でも、めくらめっぽうにやっていないのですよ。買いたいと思っても、やっていないのですよ。ちゃんときまっているのです。系列化されていますよ。そのとおりでしょう。大臣は大衆薬だけで、医薬品はそうじやないとおっしゃるけれども、そうですよ。
  203. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 再販契約の対象になっておりますのは、大臣申し上げましたように、いわゆる薬価基準収載の医家向けの薬ではなく、いわゆる大衆医薬品の部類に属するものであるので、大臣はその事実を申し上げたわけでありまして、ただ、実際の流通段階における医薬品の流れ方は、先生おっしゃるように、メーカーからそれぞれの特約の卸なり、特約の小売り、こういうところに流れていくというのは非常に多いようでございます。
  204. 滝井義高

    滝井委員 大臣、そのとおりなんです。多いのですよ。  そこで、今度は、製薬は自分の系列を強化するためにはどういう手を打つかということです。いま言ったように、医薬品については大学とか大きな病院を陥落させれば、大体国内市場というものを確立することができるのです。それは開業医だって、病院の医者だって、みんな大学とか公的医療機関につながりを持っているのです。医師自身もその系列下にあるわけですよ。だから、日医大を出た鈴木さんが、千葉大学に行って千葉の系列に入ってひとついい道を歩もうと思っていること、それが具体的に示しているのです。そういう形なんです。そこで製薬というものは、いま言ったように、国内市場を確立するためには、大学とか公的医療機関にダンピングをやってでも、そこの薬の位置を確立するわけです。その病院における自分の会社の薬の位置を確立してしまう。と同時に、大衆薬については何でやるかというと、これはマスコミを通ずるわけです。宣伝広告ですよ。大体生産費の八%から一割近くはこれに使いますよ。薬のカーブはどういうようになるかというと、まず薬が出たときに売れないですよ。このカーブというものはゆるやかにしか上がらない。売れないです。ところが、このゆるやかなカーブを、少なくとも急カーブに販売を上昇させなければいかぬわけです。売れない薬を売れるようにするためには、広告費をぐっと入れなければいかぬわけですよ。そこで、初めは広告費をぐっと入れるわけです。ラジオ、テレビのスポットを通じてうんと入れるのです。うんと入れると、ぐっと広告費が上がります。広告費がうんと上がる状態につれて、薬の販売も上がってくるわけです。そして広告費の曲線と販売数量の曲線がクロスする。クロスしたら、そろそろ広告費を少しずつ下げていくわけです。下げていき始めますと、販売の数量というものはプラトーを歩み始める。いわゆる高原の状態でずっといくわけです。そうして一定のところにいくと、大衆は忘れやすいから曲線がおり始める。おり始めるとまた広告を入れ始めるわけです。こういう形になるわけですよ。だから、全国の広告費のトップを見てごらんなさい。トップはどこか、製薬企業ですよ。大体、大臣、トップはどの程度広告しておるか御存じですか。あなた、ひとつ大臣に言ってごらんなさい、どの程度出しておるか。驚くでしょう。名前を言ったらぐあいが悪いから、名前は言わなくてもいい。
  205. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 トップの業種の広告高は、ちょっと私いま資料がございませんが、医薬品の広告高は第二位になっております。三百四十億程度のものでございます。
  206. 滝井義高

    滝井委員 医薬の全体が三百四十億、広告の全体が五千億として、八%ならば四百億ですね。いいですか。トップは九十億円ですよ。それから製薬は七番目があります。七番目が三十六億、これだけしておるのですよ。そこで、このごろ、鈴木厚生大臣もここで広告は規制しなければいかぬ、こういうことになったのです。ところが、これに一番だれが反対するかということです。広告を規制しなければいかぬといったときに、製薬企業は反対しないです。一番反対するのは、新聞、テレビ、ラジオが反対します。新聞、テレビ、ラジオは、これを規制したらつぶれてしまいます。特に民間放送はつぶれてしまうのです。お手あげになるのですよ。だから、ここに矛盾があるわけです。新聞その他は、医療で薬がうんと使われてけしからぬ、こう頭をたたくわけです。たたくと、結局広告費その他を削らなければならぬ。というと、たたいておった新聞社は困ってしまう。そこで、先日「厚生省の医薬品広告を切れ」というので小汀利得さんが書いていますよ。「広告料への干渉は厚生省の権限外だ。官僚統制に断固立ち向かえ。」こう書いてある。あなたのほうが、製薬企業はそんなに三十億も九十億も薬の広告を出すというならこれは困る、ラジオに三十秒、四十秒、少しぱっぱと出すスポットというのですか、ああいうものはやめなければいかぬと言ったら、新聞社から逆にねじ込まれたでしょう。そういうことなんですよ。だから、薬の位置づけをやれと私が言っても、なかなか熊崎さんがこれは言えないのも明らかです、日本の独占が目を光らしておるのだから。しかし、これをあなた方が勇気をもってやれなかったら、医療の抜本政策をやるというようなことは言わないほうがいい。三十億とか九十億の広告費を使わなければ、日本の製薬会社が生きていけないなんというばかなことはないわけです。私は、必要なものは大いに広告をやってもいいと思うのです。専門的なものは医学の雑誌にやるとか、いろいろやってもいいと思いますけれども、何かそこにちょっと間違ったものがあると思うのですよ。だから、そこで民間のテレビその他がある程度衰微してもやむを得ぬのじゃないでしょうか。命の問題にはかえ得ないのですよ。率直に言って命のほうが大事ですよ。だから、これを勇断をもってやって、そうしてその分だけを、ひとつ製薬企業の内部における技術者の待遇の改善とか研究費にそれを回させるということにしたほうが、私はいいんじゃないかという感じがするのですよ。三十億も九十億も広告費に使う。この製薬原価の一割程度を広告に持っていくということは、問題があるのじゃないかという感じがするのです。それは外国でもどこでもみなしておるから、全然広告せぬというわけにはいかぬ。だけれども、やはりむだな広告をできるだけやめていくということにしたほうが、私はいいんじゃないかという感じがするのです。医療費のロスを出すという、そういうところから始まるのじゃないか。そうして製薬がそれだけの内部体制を固める方向に持っていって、職員の給与の改善、勤労者の給与の改善をやるとか、研究費に持っていくとかいうことにしたほうが、いいんじゃないかという感じがするのですがね。大臣は、きょう、それじゃそういうものをやると言うと、また広告社のほうから文句を言われるかもしれません。それはすでに、医療費広告自粛問題で、政府自民党に全広協というのが申し出ておるのです。だから、これは相当の勇気が要るわけですよ。しかし、これは、この際は蛮勇をふるわざるを得ないのじゃないですか。こういうこともやれぬで、小さな医療機関のバルクラインがどうだこうだということを言うのはナンセンスだ。私が言いたいことは、ここなんですよ。こういうことはナンセンスです。こういう金があったら、あとで触れますけれども、一割税金で取って、国民健康保険の一割から五%に削ったやつを、一割に直してもらうほうがいい。信沢さんのほうは、ほんとうにうれしいことになるわけです。そうでしょう。だから、この点、鈴木さんは一体どう考えるのですか。こういう額さえも知らぬ。薬務局長も、もうちょっと勉強しておかなければいかぬですよ。広告のトップのものがどこだということぐらいは、注目をしておかぬといかぬですよ。前年度トップのところは、前年度より二割四分も広告費は増加しておるのですよ。こういう実態を、ただここで規制します、やりますと言うておって、すぐに小汀利得さんを先頭にして一この人は国家公安委員だけれども、先頭にしてきてやられたら厚生省はすぐに黙ってしまって、貝のからの中に閉じこもってふたを閉じるということではいかぬと思う。言ったことはやはり政治家だから実行してもらわなければいかぬと思うのです。だから、その経費が四百億近くもあるとするならば、その二割を削っても八十億から百億あるのですから、その分をぽんと信沢さんのほうの一割の調整交付金を五分に削った分に回してもらえば、これは非常に助かるわけです。税金を取ってもいいですよ。何なら広告費で取ってもいいですよ。何千億と広告費があるのですからね。これについて厚生大臣の所見をひとつお伺いしたい。
  207. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 この広告の問題でありますが、誇大広告でありますとか、そういう行き過ぎの面につきましては、薬事法によりましてこの誇大広告等は規制を受けておるわけでございます。したがいまして、政府といたしましては、この薬事法に基づくところの誇大広告等につきましては、法の趣旨に基づきまして厳正にこれを指導しておる、こういうことであるわけであります。その他の面につきましては、厚生省といたしましては、有権的にこれを規制したりするようなことはたてまえ上できないのでありまして、業界の自粛、自制によりまして、滝井さんのいまおっしゃったように、できるだけこれが研究、開発というような方面に使われまして、わが国のよき医薬品が開発、生産されるようにしたい。また、そういうことを通じて国民医療が確保されるように、こういうことを私ども念願をいたしておる次第でありまして、薬事法による誇大広告の規制というのは、私ども厳正にやっております。その他の面につきましては業界の自粛にまつ。こういう面につきましては、業界ともしばしば懇談の機会等を持ちまして、いま滝井さんのおっしゃったような各方面の御意見、特に国会の論議というものは、これを業界にも十分反映せしむるようにいたしておるところでございます。
  208. 滝井義高

    滝井委員 抜本的な医療費体系をつくろうという場合に、薬というものが非常に重要なんですね。そうすると、薬の中においてその生産費の一割程度が薬の広告にいっているということは、やはり相当考えなければならぬ問題です。だから、そこを、一割程度いっているものを一挙に五%にしようとか四%にしようといったって、なかなかむずかしいですよ。だから、たとえば年次的に一%ないし二%ずつひとつやめてもらえぬかというようなことで、徐々にいく必要があると私は思うのです。いまのままだとどんどんふえちゃいますよ。したがって、二割ずつやめてもらっても、五十億、六十億の金はすぐ出てくるわけですから、その分だけは内部の待遇の改善とか研究体制の確立とかという方向に持っていってもらうようにすれば、非常にいいわけですよ。そんなに金は要らぬというならば、それはひとつ国民健康保険のほうに寄付してくれと言うことだっていい。そのかわり、それは全部非課税だということもできるわけです。医療費の中のワク内の操作です。これは医療費に属する分でしょう。だから、そういう点をもう少し科学的にすみからすみまで検討してもらって、ロスと思われるものはできるだけ出してやっていくということでないと、日本の医療の前進はできないと私は思うのですよ。もう少しそこらあたり腹を締めて、蛮勇をふるってもらわなければいかぬと思うのです。製薬企業の社長さんたちは、話せばみんなものわかりのいい人たちばかりです。大臣、懇談しておるというのですから、ひとつしっかり話し合ってやってもらう必要があると私は思うのです。ゆゆしきことだと言ったって、現実にそうなんですから……。これはゆゆしきことかもしれないけれども、製薬企業をいじめる必要はないですから、そのかわり製薬企業に発言する場を与えなければならぬ。どこも与えていないでしょう。日本の製薬企業の中でその発言の場を同時に与えなければいかぬ、こう思うのですが、この点についてはどうですか。今度臨時医療保険審議会というのをおつくりになるならば、そういうところに製薬の代表を学識経験者として入れて、発言をさせる機会でも与えるつもりがあるのですか。社会保険審議会にもいないし、全然いないですよ。
  209. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 製薬団体は、製薬団体連合会でいろいろと医療費に関係する部門も相談をいただいておるわけでございますが、中央医療協議会あるいは社会保険審議会等に製薬団体としての代表は出ておらないことは、御指摘のとおりでございます。しかし、中央医療協議会には、薬剤師の代表として日本薬剤師会の方が出ておられますし、また、製薬団体の意向といいますのは、日本医師会あるいは薬剤師会を通じてそれぞれの場所で反映できると思いますし、また、私ども、いろいろと薬価基準の問題を論議する場合にも薬務局とよく相談しまして、事実上製薬企業の意向が正しく反映されるような運営をやりたいと思っておりますので、御指摘の点はごもっともだとは思いますが、いま直ちにこれら審議会に入ることが適当かどうかということにつきましては、なお慎重に検討さしていただきたいと思います。
  210. 滝井義高

    滝井委員 そういう答弁なら何も答弁しないのと同じなんです、何もないのだから。広告費を九十億も使わなければならぬような状態に追い込んでおり、しかも薬というものは実勢価格にしなければいかぬ、しかも卸、小売りをメーカーが統制しておるのはゆゆしき問題である、それはたいへんなことであると言っておっても、公の発言の場所を一つも与えずに、ゆゆしい問題だ、実勢価格でやれとかなんとか言っても、そんなものはナシのつぶてです。それなら、おれらにも発言する場所をつくってくれと言ったらどうしますか。やはりその恋を得んとすれば恋に向って努力しなければならぬし、お金をもうけようとすればお金に向かって努力しなければならぬから、製薬企業の薬の問題を解決しようとするならば、つくるもとに向かって何か働きかけなければいかぬ。昔からの有名なことばがあるでしょう、たたけよ、さらば開かれん。恋なら恋に向かって努力しなければいかぬです。だからその点、大臣もそう局長ばかりに尋ねなくても、どこにも意見を聞いてないのですから、一番大事な焦点において、製薬企業にどこか公の場で意見を言わせるくらいなことをしてやることは当然ですよ。これは民主主義というものです。そんなものは切り捨てごめんで、おまえたちのつくった薬は安く取り上げると言っても、それは納得しないですよ。やはり納得をしてもらって、広告費その他についても懇談をして——懇談するにも公の場所で懇談しなければいかぬ。たまに国会に呼んできて会長の武田長兵衛さんの意見を聞くだけで、あとは政府が公の場で聞くことがないというなら、製薬企業だって協力する気持ちにならぬですよ。そうでしょう。どこかに公の場所をつくってやる必要があるのです。どこにもしてないでしょう。どうですか。これは大臣、いままでいろいろ言いましたけれども、ここらあたりで、やはりどこかで意見を聞かなければいかぬわけですよ。
  211. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 先ほど来滝井さんから、薬務行政全般にわたりまして、また価格の形成の問題について、また医療保険のもとにおける医薬品の位置づけの問題につきまして、るる御意見の開陳がありました。私も薬の問題は非常に重要な問題であると考えておりますが、それだけに今後改善を要する点が多々あるように私自身も痛感をいたしております。今後厚生省としても、この医薬品のあり方、こういう問題につきましてはぜひ系統的な、全体にわたっての再検討が必要である、こういうぐあいに考えておりますので、必要なる、いま御提案のあったようなことにつきましても、十分考えてみたいと考えております。
  212. 田中正巳

    田中委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  213. 田中正巳

    田中委員長 速記を始めて。
  214. 滝井義高

    滝井委員 やめよということでございますが、やはりお互いに議員ですからね、こういう非常に国民的な規模で問題になっている問題点については、お互いに真剣に討議をして、そしてやる。からだを張るとか、質疑を打ち切るとかいうことでなくて、堂々と議論を戦わしていくという態勢を国会は今後とるべきだと思うのです。これが国会正常化の道だと思うのです。それから役所も、審議会審議会と言って審議会にまかせず、やはり国会で、勉強していって真剣勝負をやっていく。審議会の意向は国会に持ってきて、そうして最終的にきめる、こういう態勢をつくらなければうそですよ。国会というものは、何が何でも頭を下げて、いいかげんなことを言うて通ればいい、そしてあとは審議会に行って適当にお茶を濁すということではやはりいかぬと思うのですよ。われわれもこうして一生懸命になって勉強してきているのだから、あなた方ももう少し勉強して、統計の数字その他もきちっとそろえてきてやるという態勢でなければいかぬですよ、これはやみくもにやっているのじゃないのですから。もうこの前から予告をして、これだけのことはやりますぞと言うておるのですからね。需要体制供給体制と橋渡しの診療報酬体系をやる。診療報酬体系の中に何が入っているかということは、あなた方専門家だから、その表裏を知り尽くしているはずですよ。だからこれは、お互いに生理的な限界もありますから、三十分休めと言うなら休みます。だけれども、こういう忍耐でがんばるということも、政策を前進させる一つの大きな位置づけだということを考えておかなければならぬのです。この粘りがなければ、厚生省はだめなんです。大蔵省にやられるのです。最後まで粘っていく。そして社会保障のために粘る。私は、社会保障を前進させるために代議士になってきたのですからね。選挙のスローガンはこれ一つだ。あなた方も、大学を卒業して、少なくとも厚生省に入ったからには、やはり医療保険を前進させるという情熱を持ってきていると思うのですよ。そういう点では、鈴木さんは、大臣に志願したのだからその情熱を持っておることは明らかなんです、担当大臣ですからね。だからその点を十分にやって——きょうできなければ、皆さんいやならば私はやめてけっこうです。それで、水曜日、木曜日、まだありますし、どうせ与党のほうは、会期を一カ月ぐらい延長されるのでしょうから、そうあわてることはないと思うのです。だからゆっくり、きょういやならやめますが、きょうやるならばやる。こういうことで、いまの鈴木さんの御答弁で、製薬企業については十分それぞれ所を得させよう、公の場で何か意見を聞く場所は考えてみようという御意見ですから、ちょうどそうい御答弁があれば切りがいいので、そこでその後は、事務の簡素化、支払い方式、こういうところにいきます。こういうところは非常に問題があるところですから、これでひとつ……。
  215. 田中正巳

    田中委員長 午後六時三十分まで休憩いたします。    午後五時五十五分休憩      ————◇—————    午後六時三十九分開議
  216. 田中正巳

    田中委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  質疑を続行いたします。滝井義高君。
  217. 滝井義高

    滝井委員 技術尊重医療費体系の中における医薬分業の問題についてお尋ねをいたしました。特にその中において薬の位置づけをどうするかということでございます。   〔委員長退席、竹内委員長代理着席〕 薬の位置づけをするにあたっては、われわれは薬に宿るロスというものをできるだけ排除していかなければならぬ、こういう観点から、その販売機構なり広告等についてもいろいろ議論もしましたが、どうも現在の機構のとりこになって厚生省の答弁はビジョンがないのです。だから議論がかみ合わぬわけですが、やはり大臣の意図するところは臨時医療保険審議会でもつくって、そして抜本的な改正をやろうという相当雄大な構想を持っておるわけです。やはりその雄大な構想にマッチするような事務当局の考え方というものを大臣に提供しないと、鈴木大臣はミイラ取りがミイラになるかっこうになるおそれがあるわけです。大臣をしてミイラとさせないためにも、少し雄大な構想を思い切って言ってもらう必要があると思う。行政のワクにとらわれておったのでは前進はできないと思うのです。  そこで、いま薬のことについていろいろ調査もされておるようなお話がございました。そうすると、一体その抜本的な改正をおやりになるという場合に、いままでの答弁を聞いてみると、十分な素材の持ち合わせがないようにある。家を建てる場合には材料がなかったならばりっぱな家は建たないわけですが、どうも厚生省は古材料でりっぱな家を建てようとするような気持ちを持っているようなんですよ。それではいけない。少しいろいろ調査をして新しい材料を集めてもらわなければならぬことになる。そうすると、最近医療経済の実態調査の問題が巷間論議をされておるのですが、この医療経済の実態調査をやる場合においては、単に医療機関の調査ばかりではなくして、共済組合なり健康保険組合なり公的医療機関なり私的医療機関なり、広範な調査をやることが必要だと思うのですね。あなた方の医業経済実態調査というものは私的医療機関だけを調査するのか、それともそういう広範な調査をやろうとするのか、これは一体どういうことなんですか。
  218. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 昨年の薬価基準改正の際の中央医療協議会の意見書の中にも、特に医業経済に関する実態調査というふうに東畑会長の意見書の中に入っておるわけでございますが、その際にも論議されたことでございますけれども、公私の医療機関だけの実態調査以外にやはり保険者の実態調査等も十分考えなければならないというふうな御意見もそのとおりに出たわけでございまして、私どもも灘尾大臣のときに医療懇談会をやりまして、そのときにやはり医業経営実態調査以外に、その方面の調査もやらなければならぬというふうな考え方も出ておりますので、そういう点も含めて調査をやりたいというふうに考えておるわけであります。
  219. 滝井義高

    滝井委員 その場合に、現在、いまあなたの御答弁のように公私の医療機関なり共済組合なり健康保険組合なり広く調査をするということになりますと、大きな公的な病院は調査ができると思いますが、私企業の経理内容の調査をやっている前例がありますが。国が私企業に入って、そしてその経理内容の実態調査をやっているという前例がありますか。
  220. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 御承知のように医業経営実態調査につきましては、二十七年の三月と十月に行ないましてその後行なわれていないわけでございますが、こういう実態調査の中身につきましては、たとえば農家経済調査あたりは、性質は違いますけれども、やはり他計調査的な意味で中身のほうは全部調査しておるというふうに私どもは聞いておるわけでございます。
  221. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、それは農家に行って立ち入り検査でなくて、農家の縁側にすわって、そして、あなたの家族は何人ですか、どの程度のたんぼをおつくりですか、畑は幾らですか、山林は幾らお持ちですか、どういう作物をつくって一年どの程度の収入があるのですかと、こういうような聞き取り調査じゃないですか。入って、たんぼから山林から、畑、家の中のかまどの灰まで調べるということはないわけでしょう。
  222. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 実態がどういうふうな中身になっておるか、実はつまびらかにいたしておりませんので、詳しくは申し上げられないのですが、ただこういう調査につきましては他計調査がいいのか、あるいは自計調査がいいのか、その辺はいろいろ問題があるところだろうと思います。やはり他計の調査の範囲と、それから自計調査の範囲とおのずから区分けされてくるだろうと思うわけでございまして、他計しなければならない部分と自計しなければならない部分とがはっきり分かれると思います。農家実態調査につきましても、自計の部分相当あるというふうに私どもは聞いております。
  223. 滝井義高

    滝井委員 あなたたちが意図するこの医業経済の実態調査というのは、どういう方法でおやりになろうというお考えなんですか。
  224. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 実は実態調査の中身をどういうふうにするかということは、二十七年以来厚生省としては行なっておりませんし、またその方法等につきましても、やはり厚生省側での独断的な調査ということではなしに、関係団体の十分な協力を得まして調査をしなければならないというふうに考えておりまして、具体的にこういうふうな形というものを現実にあらわすことは、まだやっておらないわけでございます。したがいまして、実態調査の話し合いがつきました場合に、関係団体と学者専門家の方々とよく相談をしまして、その中身をきわめていくというふうな気持ちを現在持っておるわけであります。
  225. 滝井義高

    滝井委員 これは幾度か予算をおとりになったですね。そうして流れたわけですね。これは小山さんのときもとったと思いますが、予算をおとりになったことがあるでしょう。何回かとって流れたでしょう。
  226. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 実態調査の予算を要求いたしまして、それが入りましたのが、たしかもう四年くらい前になると思いますが、これは企画室で一応やるということにしまして、実態調査をやるという形で予算を三千万近くいただいたわけでございますが、結局、私企業のほうの調査をやれないままに公的医療機関だけの調査をやったという例がございました。それ以後予算要求はいたしておりません。しかし、大蔵当局との間では実態調査の話し合いがついた場合には、その段階において予算措置は講じていただくように従来とも話し合いができておるわけでございます。
  227. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、いまどういうことを調査するかかいもくわからぬ。二十七年の三月、十月調査というのは、それぞれ病院の百分の一ですか、診療所は五百分の一ですか何かでやりましたね。そのやり方は——救急医療の調査を最近おやりになりましたが、これは文書でわれわれのところに配付されただけですね。そしてそれをわれわれが書いて出したわけです。ああいう形になるのですか、それともまだ全然何らの構想も持たない、まあ話し合いがまとまったらやろうというような、そういうあいまいなものなんですか。
  228. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 御承知のようにこの医業経営実態調査は私どものほうの局の所管ではなしに、医務局のほうの病院指導課のほうでやることになっておるわけでございますが、二、三年前実態調査の話が、ある程度関係団体との了解が逐次できつつある段階におきまして実態調査の中身の項目その他につきましても相当突っ込んだ議論が行なわれたやに私どもは聞いております。その調査の項目等も、私は不敏ではございますが多少聞いてはおるわけでございますが、二十七年ころの調査よりもざらにいろいろと、あのころ調査いたしました欠陥その他を考えまして、反省し直しまして、相当信頼できる中身のもので、できましたならば、費用の原価の分まで、費消額の原価までやろうというふうな中身にすらなっておったようでございます。しかしいまここで、それじゃどういう調査をやるかということにつきましては、御承知のように片一方で日本医師会におきましては相当金をかけまして、非常に詳細な調査も毎年行なわれておるやに聞いておりますし、その調査方法と、それから新たに実態調査をやる場合の調査方法をどうするかというふうな問題を含めまして、やはり現在の最も適当とする調査内容を関係団体も了解していただけるならば、完全に了解をつけていただいた上でやるのが適当ではなかろうかというふうに私どもは考えておりますので、調査項目自体について、こういうものでなければならないというはっきりした方針をいま申し上げる段階ではないと思います。しかし、こういうことをやりたいという調査項目を持っておることは事実でございます。それだけ申し上げたいと思います。
  229. 滝井義高

    滝井委員 実態調査をやるといっても、調査項目さえ言える段階じゃないということならば、鈴木さんが意図する抜本改正というものは、少なくとも四十二年度の予算を編成することしの十一月から十二月までに間に合わせようとすれば、実態調査というのは抜本改正に寄与する資料にはならぬわけですね。そうですね。そういう理解をして差しつかえないですね。話もまとまらぬし、まだ方針もきめていないというならば、今度の厚生大臣の意図する医療費の抜本的な改正には役立たない、資料はできない、間に合わない、こう理解して差しつかえないですね。
  230. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 医業経営の実態調査につきましては、中央医療協議会の場におきましても、先般保険三法につきまして答申並びに意見書をちょうだいいたしました際に、中医協におきましてもぜひこれを行ないまして、そして診療報酬体系適正化等をはかっていきたい、こういう御趣旨でありまして、その点私どもと全く考え方をひとしくいたしておるわけであります。ただいま中医協におきまして、その進め方等につきまして関係団体との間に話し合いを進めておる段階でございます。  なお厚生省といたしましては、国立病院あるいは国立療養所その他の公的医療機関につきましても調査を進めておるわけでありまして、またただいま保険局長から申し上げましたように、医師会におきましても、相当権威のある大学の教授その他を委嘱されまして客観的な調査を、相当の費用を使いまして実態調査をやっておられるのであります。私は、こういう貴重な調査の結果もあるわけでありますから、こういうものを活用して、いかにこれを分析し活用していくか。そうして足らざるところを補足的に調査を進める、こういうようなことが関係者の間に円満に話し合いがつきますれば、調査の結果を把握できる、抜本改正に活用できる、こういうことになるのではないか、こう考えておるのでございます。
  231. 滝井義高

    滝井委員 いまの御答弁は、いままでの答弁とは非常に違った注目すべき答弁ですよ。これは、先般来公的医療機関なり国立病院の実態調査をやる——自治体の病院は自主的にわれわれやろうじゃないかというアドバルーンをあげていますね。医師会は数年来ずっとやっておる。そうしますと、何もここであらためて予算を計上をして新しい実態調査をやらなくたって、それらのものを、すでにやっておる実態調査を活用したらよろしい。そうして足らないところは補足的に足らない分について話し合いの上で調査したらいいじゃないか、こういう話ならば、これはきわめてわかりのいい話ですよ。それならば、あるいは抜本改正に間に合うかもしれないです。大臣御存じのとおり、昭和二十七年の三月、十月調査をまとめるのに二年くらいかかったでしょう。
  232. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 二十九年の九月ごろにやっと新医療費体系という形で発表できたというふうに覚えております。
  233. 滝井義高

    滝井委員 大臣御存じのとおり二十七年三月、十月調査がとにかく二十九年の九月ぐらいにようやく集積、分析の結論が出て使われることになったわけですからね。だから、ことし医療に関する実態調査をおやりになっても、これはもう四十三年か四十四年の初めくらいでないとものにならぬわけですよ。さらに詳細なものをやろうとすればそのくらいかかるわけです。そうしますと、いま大臣が言うように、少なくとも来年度予算編成に間に合うような資料を得ようとすれば、現実にやっているものを活用してやるということのほうが資料としては早く役立つし、信憑性はその統計のとり方なり分析のしかたを十分検討すれば、現実に公的医療機関というものをおやりになっておるのだから、それから類推すれば——私的医療機関と公的医療機関はさいぜん以来私が述べますように、違っておるところは税金を払うか払わぬかの違いだけなんです。実態は同じことをやっておる。だからむきになって私的医療機関をみなもう一ぺん洗い直さなければならぬということでもないわけです。ひとつ確信を持っていまのような方向で実態調査の問題をすみやかに片づけてもらうことのほうが今後の抜本策を講ずる上に非常に時間を省けるのではないか、トラブルも少なくて済むのではないかと思うのですが、再度大臣の見解を伺っておきたいと思います。
  234. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私はかねがねそういうことを考えておるのでありますが、こういうことは関係団体の理解と協力を得なければこれを実際に行なっていくことが非常にむずかしい。今日国民医療ということが非常に重大な時期であり、根本的な改善策を迫られているのでありますから、こういう事情を関係団体がよく御理解を願い、また御協力願って、いま申し上げたようなことについてお互いの了解が話し合いの上でついて、そして現在ありますところの資料は私は非常に貴重な資料であると思うのでありますが、そういうものを活用して、足らざるところはこれを補足的に調査して一日も早く根本的な改正に向かって前進できるようにしたいものだ、また私はそういう方向で中医協等におきましても円満に話し合いがつくことを期待をいたし、その方面に努力をしてまいりたいと考えております。
  235. 滝井義高

    滝井委員 保険局長、いまの大臣のことばを十分拳々服膺して、ひとつすみやかに実態調査をいまからやって、二年も三年もかかるよりも直ちにその改正ができる形で資料を収集してもらうことを要望しておきます。  それで実態調査は大体方向が出ましたから次に進みますが、事務の問題です。御存じのとおり、保険の請求事務というものは非常に複雑なんです。私が代議士になった目的の一つは、保険事務を簡素化するということです。健康保険だけではなくて、この健康保険患者生活保護なり結核予防法等と重なった場合の事務の複雑さというものはたいへんなものです。そこでいままでずいぶん事務の簡素化を主張しました。そしていまの年金福祉事業団の理事長の高田さんが保険局長のときに私強硬に言いましてちょっとだけ事務が簡素化したのです。ところが現在依然として事務が複雑でたいへんな状態ですが、やはり今後ある程度医療費のロスをなくそうとすれば、この事務を簡素化するということが非常に大きな利益をもたらすことになるわけなんです。この前も基金のことについて問題にしましたがきょうも少し問題にしますけれども、いま御存じのとおり全国にばく大な審査委員を置いて審査をしておるわけですが、もともと机上審査ですから、書いて出しているものを見るのですからそんなに眼光紙背に徹するというわけにはいかぬと思うんですよ。これは怪しいと思ったら一々本人を呼んで聞く以外にない。それを聞くのに、県庁所在地に審査機構があって、そしてそれぞれの保険医というものが県下に散らばっておる、その県下のすみずみから一々保険医を呼びつけて聞くというわけにはなかなかいかぬわけですよ。そうすると、やはり勢い少数の者に重点を置いて聞くということになるわけです。審査というものはただもう何かまじないみたいな形でやるようなことになっちゃうのですね。そこで私はいつも言っているのですが、この審査のためにいま経費はどの程度のものを使っておりますか。審査の事務経費、いわゆる基金の事務費の総額はことし幾らですか。
  236. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 四十一年度で四十二億の予算を計上しております。
  237. 滝井義高

    滝井委員 大臣、この前も予算委員会でちょっと触れましたが四十二億ですよ。この単価幾らになりますか。
  238. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 十四円二十銭でございます。
  239. 滝井義高

    滝井委員 請求書一枚から十四円二十銭ずつ取るわけですね。そして査定率は幾らですか。
  240. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 大体〇・九九五ですから、〇・〇〇五ぐらいと思います。
  241. 滝井義高

    滝井委員 そうするとその〇・〇〇五の査定率は金額にして何億ぐらいありますか。
  242. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 大体二十億ちょっとオーバーしていると思います。
  243. 滝井義高

    滝井委員 二十億の金を削るために四十二億の金を使っているわけですね。私の知っている公的医療機関は百円の金をかせぐために百四十三円使っているわけです。だから赤字で四苦八苦しているのです。百円の金をかせぐのに百四十三円使っておる。二十億削るために四十二億の金を使っておる。世の中にはときにはむだも必要です。そこで、私が審査事務を簡素化する必要があるというのは、やはりこの際医師の人間性、医師のモラルというものを高めていくためには保険者患者医師を信頼するということですよ。これが近ごろ地を払ってない。皆保険政策というものはもはや医師を召使だと思っておるのです。保険証を持っていったら当然見るべきだ、おれがおまえを養っておるんだぞ、こういう形になったわけです。医は仁術から医は算術に転化した。養われるならよけいに給料を取らなきゃいかぬという形になっておるのですよ。だから、鈴木医師みたいな者が出てくるわけで、そういうことから社会保険が流す害毒というものは相当のものですよ。だから、その害毒をどこから防いでいくかということですよ。そのふせいでいくのはまず審査のところからやっていく必要があると思うのです。それには、まずお互いの信頼関係のないところにりっぱな医療というものはできないですよ。われわれがこの医者にかかろうというのは、この医者はわれわれの命を預けるのに足る人格と技術を持っておるというところから保険証を預け、命を預けるわけですからね。その医者がやったことがけしからぬといってあたかもどろぼうのごとき見方をして審査、監査をやるということが問題なんです。私は審査や監査を廃止せよと言うんじゃない。やり方をひとつ変えたらどうだということです。それはどういう形でやるかというと、やはり医学におけるモラルを確立するためには医者自身の中から確立させる機運をつくるということですよ。主体性を確立させなければいかぬわけですよ。人間というものは他の者から言われるとなかなかうまくいかぬものです。医者自身も一城一国のあるじなんですから、一国一城のあるじはみずからえりを正しくする道を知っておるはおだと思うのですよ。また知らなきゃならぬ。だから私は地方の医師会ごとにこの際、第一年度は四十一年度四十二億程度ありますから、この中から十億でいいです、四分の一の十億を全国の郡市の医師会にやったらいいと思うのです。そうしてあなた方がこの十億でひとつ自主的に審査してください、こうやるのです。郡市の医師会で一体どの医師がインチキな医者か、どの医者がどういう診療方針でやっておるかということはその地区の医者が一番よく知っていますよ。何も県の審査会に持っていかなくても、基金の審査会に持っていかなくても、その地区の医者が一番知っておるのです。そこで、まず保険者患者の信頼を確立するために、あなた方みずからが、あなた方の中で医師の品位を傷つける人があったらひとつ自主的に審査をしてください、こういう形でやらしてみたらいいと思うのですよ。これは法律的にできないことはないと思うのです。前にわれわれはやっておったのですからできないことはないのです。それをやらしてみるべきだと思うのですよ。やらして、そしてその上で県の審査会がもう少し簡単に審査をしていく。怪しいのは赤でチェックをつけてもらっておいたらいい。そのチェックをつけてあるところだけずっと見ていく、こういう形をやることのほうが私はいいと思うのです。あとで基金のことをいろいろ質問しますが、いまのようにかみしもを着て、そして呼びつけてやるよりかそれのほうがはるかに能率があがる。そのかわりに、同時に、もっと事務を簡素化するわけですよ。そして、ああいう一枚一枚の紙——あの一枚の紙が、たぶん三十銭か四十銭かしますよ。だから、ああいう請求を——これは、もう午前中に問題にした先天性の弁膜症とか心房中隔の欠損症というようなところは、何十本、はなはだしいときは百本以上も注射をしますから、そういう特殊のものは、きちっと打った注射の名前をつけてもらってもいいと私は思うけれども、普通の胃炎とか感冒とかいうのに一々明細書を、備考を書いて、そして注射の名前なんか書く必要はないと思うのですよ。記号、番号、氏名、病名を書いて、そして請求点数だけ出したらいいのです。そんな一々注射名なんか書いてやる必要はちっともないのです。そして、重症のものだけは、たとえば全国平均点数以上のもの——全国の平均点数が、いま、それぞれの地域によって違いますが、一日五、六百円というところでしょう。一日五十点か六十点です。だから、それ以上のものは四日ないし五日でなおってしまうのですから、五日としても二千五百円かそこらです。だから、たとえば二千円以上のものは、ひとついまのような一枚の紙につけてください、それ以下のものは全部一連番号をつけて、記号、番号、病名、氏名、点数、それだけでいいんだ、こうやったらわかるでしょう。そして、医師会に自身に審査させる。そして、医師会で審査してみて、どうも点数の多い三千点、四千点のものに怪しいものがあるといったときには、抜き取って、その簡単な一覧表の中から出したカードを何枚か持ってきてください、こういうようにしてやるべきだと私は思うのですよ。いまのように、一々保険者別に出さして、総括表をつけて、そろばんをさして、まるきり保険者がやらなければならぬ事務を療養担当者にやらしておるわけです。そして、保険者は、事務は医者にやらせるかわりに、審査の料金として一件当たり十四円二十銭を出している、こういうことですよ。二十億を審査するのに四十二億の金を使うなんて、こんなばかげた非合理的なことはないわけです。だから、この際十億ぐらいやって、やらしてみたらどうですか。こういうことが抜本的な改正に通じてくるのですよ。こういう、あのぴらぴらとした一枚の請求書から十四円二十銭取って、そして、それに対して四千人の人がぶら下がって食わなければならぬという制度なんというものは、あほらしくて見ておれぬですよ。昔はそんなものはなくって医療がけっこううまく仁術としてやっていけとったのだから。ところが、うまくやっていけておった仁術を、こんなに道徳が低下するような状態にしたというのは、結局保険ですよ。いまの保険が、もはや医学、医術を無視して、そして、経済中心主義、保険主義で貫かれてきたからこんなことになってしまった。そこらは反省をして、もう一ぺんもとの状態に返す必要がある。そのためには、ひとつ医者自身に、全権をまかせるわけにはいかぬが、四分か五分くらいはまかしてみたらどだ、こういうことなんです。どうですか、それに対する意見は。
  244. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 滝井先生の御意見、私はきわめてごもっともな中身の御意見だろうと思うのでございますが、ただ、現在支払基金は、御承知のように、いわゆる支払い団体側といいますか、被保険者代表、保険者代表を含めまして理事会の構成を持っておりまして、関係団体が全部入って運営されておるわけでございます。したがいまして、一つのものごとを運ぶにつきましても、やはりその運営をはかるために、円満に了解を得た上で議事を進めていく、したがって、それに基づいて事務も進められていく、こういう方法をとっておるわけでございますので、私ども、御指摘のように、たとえば事務簡素化の問題等につきましても、確かにここ数年来御指摘を受けながらなお十分な改善が行なわれておらない事実は認めます。しかし、私どもとしましては、何とかして簡素化の方向に向けるということで、現在、医務局を中心にいたしまして、お医者さんの負担を軽くするような方法を鋭意検討中でございます。まとまり次第支払基金の理事会のほうできめていくという方法をとりたいということでやっておるわけでございまして、もう少し結果を待たせていただきたいと思うのです。  それから、また、先ほど四十億の予算で二十億しか査定をしてないというふうに御説明申し上げましたけれども、支払基金におきましては、実は、先生御承知と思いますけれども、ほんとうに審査をして請求の悪いものを切っていくということ以外に、やはり非常に事務的なミス等が多いわけでございまして、レセプトを送ってもらって、そこで事前点検をいたしまして、非常に誤記があったり、あるいは少ない請求をもう少し多く、これは請求が少な過ぎるというような、そういう医師のほうでのミスを発見してこれを返戻していくという返戻率がずいぶん多いわけでございまして、そういう点も含めまして、実際に審査委員会にかける場合に、事務的には一応整備された中身でかけていくという方法をとっておりますから、その点では関係医療団体の方々も、支払基金のほうである程度ミスを発見していただいてそれを訂正していただくような方法を期待いたしております。そういう点では喜ばれておる面もあるわけでございます。しかし、何と申しましても、根本的に現在のような方法がいいかどうかということにつきましては、私どもも十分反省しなければならぬ点が多々あると思いますので、これは、先生の御指摘を待つまでもなく、私どもとしましても逐次事務的に改正の方向には十分努力してまいりたいと思っております。
  245. 滝井義高

    滝井委員 返戻その他で、基金の職員が見なくなって、末端の医者が見て発見してやるほうがもっと能率的なんです。そして翌々月末に基金まで持ってきて、月の中ごろになってこれを見て、そしてだめだとなって返ってくるわけです。そうすると、その請求書というものはまた二カ月ぐらいおくれて翌々々々月末ぐらいになってしまう。二カ月後に払うのが今度は四カ月後にしか支払われない。それがまた返ってくるのです。返ってくると基金は痛くもない腹を探られ、うんと返せば返すだけ支払い額は減るのですから、赤字の苦しいときはうんと返せばいい。ちょっとしたことでも返すわけでしょう。そうでしょう。そうなる。現地の医師会で全部の医者が寄って見てやると、その場で判こを持ってこいと直される。ところがいま全部返すでしょう。しかも返戻の多いものは監査の対象、審査の対象にするわけです。そういうことになっておるのです。だから、そういうあやまちを防ぐためにも現地でやらしたほうが能率的なんです。何も基金の事務が見なくたって専門家医者が見たらもっと早く見つけ得るわけだから、そういう点からいっても、何も県庁の所在地まで送らなくたっていいのですよ。地元の医師会で審査委員会を構成して見たらいい。こういうことになる。そこらのところは、何回言っても、いや先生の御意見傾聴に値しますとかなんとか言うけれども、左の耳から聞いて右の耳から抜けてしまっておるのです。だから馬耳東風、ここでうまく答えて、きょうこういうことを言うておかぬと滝井のやつうるさくて長く質問するかもしれぬから、適当に言って、八時か九時でやめてもらおう、あなたの心の中を見ると、こういうことしか考えておらぬようだ。そういうことでなくて、やったらいいと思ったら実行する体制をとらなくてはいかぬ。一回だって保険局長は実行したことないですよ。あなたの前に小山君からみなおりました。実行したのは高田さんだけです。生活保護なんかは保険者と関係なく厚生省だけでできるものなんですが、やらないのです。きょうは社会局長来ておらぬですけれでも、あなたのほうとの関係があるからやらない。やはり事務の簡素化をやることが必要です。医者のうちは、行ってごらんなさい、とにかく月末は女性の生理日と同じです。もはや月末から月の初めの五日までは往診患者を見るのも遠慮してしまうのですよ。そして一家をあげてやっておるわけでしょう。科学者にそういう事務を一週間も十日も一生懸命向こうはち巻きで徹夜の状態でやらせるなんということはばかげていることですよ。もちろんしかし科学者でもビジネスには通じなければならぬ。政治家が事務的な能力がなければ、近代の二十世紀後半の政治家はだめであるように、医者も事務的な処理能力がなかったらだめです。しかしこんなくだらない、自分の診療したのをまた写して、そしてときには適当な作文もして出す。そういうことをさせるように追い込むことの制度がよくないのですよ。こういうことはわかり切っておって、だれもやめさせようとしない。あなたの役人の側もやめようとしない。何も保険者のごきげんをとる必要はない。堂堂とこれはやらせるべきだと思うのです。不正が直れば保険者も文句はないはずなんだから、不正を直す方向でやる。しかし一挙に全部やらせるのじゃない。まず隗より始めよで、試験的に医師会に四十億のうち十億を事務費として出してみる。そういう形でやるべきだ。だんだん審査機構がふくれて、あそこにたくさんの人がおるということは——あのぴらぴらした一枚の請求書の中から十四円二十銭取って、何千人の人がそれにぶら下がって食わなければならぬという、こういう不安定な機構をつくるべきものじゃないですよ。われわれが知らないうちにうんとふえてきておるわけですからね。そうでしょう。どうですか。ほんとうにあなたが、抜本改正の中で事務的な処理をうんと前進した形でやる意思があるのかどうか。たとえば、平均点以下のものは簡単な記号番号と氏名と病名と点数だけでよろしい、こういうくらいのことが言えるのかどうかですよ。それも保険者の鼻息をうかがわなければだめですというようなことでは、これはもうやめたらいいです。保険庁やめて、民間に全部移したらいいです。とうですか。
  246. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 また私が申し上げますとへ理屈だといわれるかもしれませんけれども、現在の出来高払い制度によります点数表の構成を持っておる限り、やはり医療内容の多様性というものがあることは厳然たる事実でございまして、それに基づいて請求書をつくり、その請求書について多様性を持つ医療内容をどのように簡素化していくか、これはやはり二律背反的な意味があるわけでございます。そういう意味で事務簡素化をやるということにつきましても、現在の点数表をもとにして考える限りにおいては、ある程度限度があるのはやむを得ないところではないかと思っておるわけでございます。したがいまして、その与えられたワク内でどのようにして保険医の方々の負担を軽くしていくかということが、私どもの与えられた命題でございまして、これにつきましては、私どもとしましても十分検討して、御要望に沿うような形で改善の方向に極力努力をしていくということで臨んでおりますので、もう少し時日を待っていただきたいと思います。
  247. 滝井義高

    滝井委員 泣く子と地頭には勝てぬというが、何回同じことを言うかわからぬですね。私はもう代議士に出たときからこれを言っているのです。私は、社会党の杉本勝次さんが福岡県知事のときも、県会議員のときから実はこれを言うてきているのですよ。ちっとも進まないのです。みんな同情しますよ。おれのうちにも医者の親類があるが、滝井君ほんとうに君の言うとおりだと、医師を親戚に持っている代議士、政治家諸君はみんな同情しますよ。しかし、ではどうして手を下してこうしようという人は一人もいないのです。あなたもまたあなたの前任者と同じように、ひとつ御期待に沿うように抜本的な検討をやりましょうといううちに保険局長はかわってしまって次官になってしまう。こういうことです。だからやっぱりやるのなら、ここでひとつやってみましょう。抜本改正のときにはやります、このくらいのことを言えなかったら、何のためにこんなおそくまでやるかということですよ。あなたが一番専門家です。あなたがそのかぎを握っているのですよ。キーポイントはあなたなんです。あなたが腹をきめて大臣に献策をするところがなかったら話にならぬですよ。私は何もいまの制度をくずせと言っているわけじゃない。いまの制度のワクの中で、四十二億の基金を使うのはもったいないから、そのうち十億を事務的な形で全医師会にやってみる。十億をやるから自粛自戒の態勢をとりなさいと、保険制度を抜本的に改正しよう、診療報酬体系の合理化と適正化をはかろうというときに、そのくらいのことも言えぬのでは、これは何もできないですよ。私は太鼓判を押しておくよ。そういう態度であれば、鈴木さんの構想は夢に終わる。いまから予言しておきますよ。  それならお尋ねしますが、基金で保険医を呼んで面接指導をやりますね。そのときに医者は基金にのこのこと汽車や電車に乗って出てこなければならぬわけですね。この費用は払っていますか。
  248. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 そういう関係の経費は払っておりません。
  249. 滝井義高

    滝井委員 人を呼んで一銭も金をやらぬで帰してしまうのですか。はるばると三多摩の奥から東京都の保険部に出てくるのに、一文もやらずに追い帰してしまうのですか。
  250. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 支払基金の審査の際に一保険医の方々を審査委員が呼んでいろいろと話をする場合には、大体不正、不当、不備の場合に呼び出していろいろと聞く場合が多いわけでございます。そういう点でいろいろと今後保険医療機関として仕事を継続していく場合の注意事項、その他も指示すると思いますが、そういう点も含めまして現在のところ実施をいたしておるわけでございまして、それに対しての交通費その他については、現在のところ基金の予算の範囲内でやるようにはとても予算がございませんので、やっておらないわけでございます。
  251. 滝井義高

    滝井委員 大臣、いまお聞きのような状態です。はるばると県庁の所在地まで呼んできて面接指導をした。何でもなかったというときは、おまえは何でもなかった、帰りなさい、これでしょう。そういうばかなことがありますか。こういうところが、非常に小さな何でもないことのようでありますけれども、その予算を一文も組んでいないのですよ。そして、ただで呼びつけて、ただで帰すのですよ。忙しい医者が、往診診察もやめて、のこのこと東京都のまん中まで出てくるのです。そして、用件を聞いたら、帰れ、こういうことでしょう。そんなばかなことがありますか。そういうことをやるから、医者は角をはやすわけですよ。だから当然こういうものは予算を組んで、そしてはなはだしく不当でなかったら、不備くらいで、たとえば生年月日を間違えておったというので呼んだら、これは不備で金をやらぬということになるのですよ。そんなばかなことはないですよ。やせても枯れても一国一城のあるじじゃないですか。しかも最高学府を出て、そして人間の命を預かる医者が、呼びつけられて面接指導を受けて、何も悪いことはなかった、どうぞ帰りなさいということで、それでいいのですか。何も予算を組んでなくたって、これは法律では日当をやることになっているのですよ。どうするのですか。
  252. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 法律的には、先生ただいま言われましたとおり。ただ例外があることは、法律にはちゃんと書いてあります。基金の運営上、ずっと慣例に従いまして従来そういう経費は計上してなかったと私は聞いておりますが、御指摘の点もありますし、この面はやはりそういう問題を含めてどういうふうにするかということは、全部支払基金の理事会の運営の問題でもございまするので、今後その処理につきまして誠意を持って解決するように努力したいと思います。
  253. 滝井義高

    滝井委員 あなた、理事会、理事会と言うけれども、そんなものは法律できまっておるんですよ。法律の、基金法の十四条の三の二項を読んでごらんなさい。知っておるでしょう。旅費、日当、宿泊料を出さなければならぬことになっておるんですよ。出していないですよ、これは。予算を組んでいないから出されないですよ。こういうことは、もう初めから医者を悪人扱いにして、もう人格を無視しておるというあらわれですよ。私から指摘されて、いやこれから気をつけて善処します、それは理事会のことです、そんなばかなことはないですよ。これは国民健康保険だって同じことです。健康保険国民健康保険も同じですから、やっていないわけです。こういう一方的な——こういうのを官僚的態度というのです。呼びつけておいて、そして弊履のごとく帰れ、こういうことです。もうおまえ、用がなくなった、帰れ、こういうことです。そういうばかなことはないですよ。これではわれわれ国会でつくった法律がまるっきりあなた方によって無視されてしまっておる。何のために国会があったかということです。そうでしょう。だから私は言うんですよ。県庁のまん中まで呼んでやる前に、現地の医師会だったら何も要らないんだから。自転車やオートバイに乗れば医師会の事務所に行けるわけだから。そういうことをおやりにならなければいかぬですよ。そうでしょう。だから面接指導をやる場合に、もうよほどこれは激しいもの以外はそういうことをしなくて、請求書については現地で見させてやる、こういうことが必要なんですよ。そんなに信頼ができなかったら、もう保険なんか医者に頼まぬでいいですよ。みんなあなた方がやってみたらいい。(「しろうとがやられたらたまらない」と呼ぶ者あり)だから、しろうとがいいのか、専門医者がいいのか、やってみたらわかるのです。むちゃなことを言うようだけれども、むちゃなことをしておるんですよ。法治国家で、法律に書いてあることを予算にも計上せぬで、そして出てきたら、不備がなかったから帰れ、こういうことでしょう。不備がない場合だってあるのですよ。これはある。それから、払うまいと思って、ちょっとでもそれは不備を見つけようと思っておったら見つけられますよ。何十枚という請求書の中からどこかちょっとでも不備があっても、たとえば、二月一日というのを二月二日と書き違えておったということだけで——そんなものは請求に何にも金銭の上では関係ないのに、これはだめじゃ、おまえは二と一を間違えておったからもう金を払わぬ、この法律は不備のあったときはとなっておるからだめじゃ、こういうことにもなるのですよ。そんなばかなことはないですよ。それは保険医の人格を無視しておることですよ。初めから不正があるという先入観を持って事態を処理しようとしているんですね。  それで大臣、いまお聞きのとおりです。法律にあるのにもかかわらず、予算も計上していない、支払ってもいない。こういうばかなことはないわけですよ。大臣、ひとつすみやかに、これは抜本改正を待たなくてできるはずですよ。これは補正予算でも組んでもらわなければいかぬです。どんどん、いま呼んでおるでしょう。一体面接指導をどの程度やりますか、一年に全国で。
  254. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 ただいまのところデータを持っておりませんので、正確な数字はわかりません。恐縮でございますが、いずれ後ほど調べて御報告申し上げます。
  255. 滝井義高

    滝井委員 まあ予算も計上しておらぬから、無視しておるから、そんなものはかげろうのごときものとしか思っておらぬのでしょう。そういうように、あなたがとにかく頭をかかなければならぬほど底が抜けておるんですよ。われわれのほうもそういう底の抜けた者に抜本改正なんかやってもろうたらたいへんだということになるのです。どう底を抜くかわからぬ。どうかすると、鈴木充より激しく命をとられるかもしれぬということになるんですよ。そういう点、もう少しきちっとしなければいかぬですよ。この前基金の問題は予算委員会であれだけごたごたしているのですから。またきょうは私が基金の問題をやるというのだから、すみからすみまでちゃんと読んできておかなければならぬ。こういうことだから何ぼ質問したって終わらぬですよ。少ししっかりしてくださいよ。  それから、この前審査事務嘱託の秘密の問題を論議しましたね。これはまあいずれ抜本的な改正をやりますという大臣答弁があったわけです。とりあえずは審査事務の嘱託がずっとやっていくわけです。この場合に秘密を漏らした場合はだれが責任をとりますか。責任をとる人はだれです。それだけはっきりしておいてもらいたい。法律を改正するまでの過渡的な処置として、審査事務嘱託が秘密を漏らした場合はだれが一体最高責任をとるか。これは国民健康保険の連合会でも審査をやっておりますし、県でもやっております。だから、だれが最高責任をとるかということです。
  256. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 御承知のように、審査を行ないます場合には審査委員会が行なうことになっております。この審査委員会は合議制になっておりますので、究極的な責任問題になりますと、審査委員会の責任になるのではないかというふうに解釈されるわけでございます。
  257. 滝井義高

    滝井委員 審査委員会というのは多数の人でしょう。三者構成になれば二十七人おるわけです。その会が責任をとるというのはどういう形でとるのですか。事務嘱託が秘密を漏らした場合にどういう形で責任をとりますか。
  258. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 結局、委員会は合議制になっておりますので、究極的な責任というのは審査委員会委員長ということになるでありましょうし、また審査委員の補助をやっております補助者につきましても、私どもとしましては、なるべく秘密を漏らさないようにということをよく徹底するようにはいたしておりますが、漏らしたことにつきましての遺憾な事態につきましては、漏らした本人自身も十分戒心しなければならぬ点が多いというふうに私どもは考えざるを得ないと思います。
  259. 滝井義高

    滝井委員 いや、審査委員会、究極的には審査委員長、こういうわけでしょう。ところが法律の十四条の五をごらんになると、「審査委員若しくは幹事又はこれらの職にあった者は、診療報酬請求書の審査に関して知得した医師若しくは歯科医師の業務上の秘密又は個人の秘密を漏らしてはならない。」と書いてあるわけです。審査事務嘱託はこういうものがないわけです。その審査委員とか幹事とかが秘密を漏らしたときは——それは個人ですよ。個人が罰せられることになる。はっきりしておるのです。ところが、審査事務嘱託がやったときには——それならばはっきりさせてもらう。委員長が漏らしたときは懲役か罰金になりますね。これを確認しておいていいですね。この答弁というものは重大な裁判上の判例と同じ形になるのですよ。国会の答弁がそうなっておると言えば、裁判所はそのとおりやるのですから、はっきりしておかぬといかぬですよ。
  260. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 ただいま議論になっておりますのは、審査委員の補助者が漏らした場合の責任の問題でございまして、確かに法律的な不備の点がありますことは、先般委員会大臣が御答弁されたとおりでございます。ただ審査委員長なりあるいは審査委員の方々が漏らした場合には、この法律に基づきます秘密漏洩の責任を問われるわけでございますが、補助者として仕事をやっております審査委員補助者が漏らした場合の責任問題につきましては、これはただいま申し上げましたように、審査委員、究極的には審査委員長の責任になるわけでございますけれども、しかし審査委員長の責任は、自分がやったことにつきましての秘密を漏らした場合の個人的な責任、これは法律的な責任問題がありますけれども、しかし補助者の漏らしたことにつきまして法律的に審査委員長が秘密漏洩の責任を負うかどうかということにつきましては、私どもはこれは法律的には負うという形にはならないと思います。ただそういう十分監督しなければならない補助者がそういうことを漏らしたということにつきましての道義的な責任問題は残るだろう、こういうふうに私どもは考えておるわけでございます。なお、詳細につきましては、きわめて重大な問題でもございますので、もう少し法律的な解釈の検討は留保させていただきたいと思います。
  261. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、道義的な責任を負うだけで、実態は何も責任を負う人はない、こういうことですね。結論的にはそういうことになるのです。だから非常におかしいことになる。そうしますと、もう少しふえんしていきますと、それならば健康保険組合の職員が診療報酬請求明細書の点検をやりますね。書いてきたものをまた再審査しますよ。そして間違っておったらまた基金に持っていきますよ。そういう場合が一つと、さいぜんあなたが言ったように、基金の職員がミステークがあるかどうかということを点検しますね。健康保険組合の職員が秘密を漏らした場合、それから基金の職員が請求明細書の点検をやって秘密を漏らした場合——今度は行政努力でうんと金を倹約するわけですから、三十億くらい出すのですから、この秘密を漏らした場合はだれが責任を持つのですか。
  262. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 基金の事務点検をやります職員やあるいは健保組合が支払われたあとのレセプトの点検をするような場合につきましては、これは秘密保持の義務は適用されないというふうに解釈をいたしております。ただ、業務上仕事をやる場合におきまして、それぞれの規則によりまして、基金の人事規則なりあるいは組合の規則によりまして、職務上知り得たものをみだりに外部に出すということにつきまして厳重注意されなければならぬ点はあるわけでございますから、そういう意味での職務上の理由に基づく処分なり何なりはあり得る、こういうふうに解釈いたします。
  263. 滝井義高

    滝井委員 大臣、いまお聞きのとおりですよ。いいですか。基金なら基金の審査委員なり幹事なりが診療報酬請求書を見て秘密を知って漏らした場合は、これは懲役または罰金です。ところが同じその書類を健康保険組合の職員なり基金の職員が見、あるいは審査事務嘱託が見て、秘密を幾ら漏らしたって何にもないのですよ。道義的な責任だけなんですよ。非常に片手落ちです。同じ一枚の紙を見るときに、審査委員と幹事それからその職にあった者は、秘密を漏らしたら五万円以下の罰金なり六カ月以下の懲役に処せられるわけです。他の者は何にもないのです。これは一体どうしてこうなったかというと、できた初めはそんな健康保険組合の職員や何かが審査内容まで点検するというシステムではなかったのですよ。ところがそれが最近は越権でやり得るわけです。越権でやっているのですよ。私に言わせるならば越権ですよ。もしそれが越権でなければ秘密保持の義務があって、五万円の罰金なり六カ月の懲役がなければいかぬ。基金法にはそれが書いてなければならぬのですよ。いま健康保険組合は再審査をやっているでしょう。それは越権です。基金法で、そういうものをやればこれに書かなければいかぬ。そうでしょう大臣、それでは理屈に合わぬでしょう。局長の答弁は聞きましたから、大臣の見解をただしておかなければならぬ。抜本改正をやることになるのですから。審査委員と幹事あるいはその職にあった者は秘密保持の義務は課せられているけれども、他の者はいままではほんとうはそういう請求書の中身まで見ることはできなかったのです。ところがいつの間にかそれがかってに見始めている。かってにですよ。そういうことをやめさせなければいかぬわけですよ。法律にないのですから。それをもしやるならば、基金の審査委員も幹事もみんな秘密保持の義務を取っ払ってしまうか、医者にも秘密保持の義務がないようにするか、どっちかでいくより以外にないわけです。だから大臣、この点をどうするかということですよ。
  264. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 事務点検という形でやっておりますのは、これは事務上のミスといいますか、つけ間違いあるいは足し算、掛け算の間違い等を発見するだけでございまして、いわば審査委員の方々がやります技術内容にわたる、たとえば注射が二本が多いとか、あるいは十本が多いというふうな形でやるものとは違うというふうに私どもは解釈をいたしておるわけでございまして、そのあらゆる文書につきまして正誤を正す、数字的なあやまちを発見してこれを正すということにつきましては、これは法律でいう秘密保持の規定には当たらないのじゃないか、こういうふうに考えます。
  265. 滝井義高

    滝井委員 そういうことはないですよ。同じ請求書を見て、Aという注射が、これは平均薬価が七点であるということがわかって、その七点を三倍にしておるということは見てしまうのですから、しかもそのAという注射をしている病名は一体何だとこう見る、そうすると胃ガンである、あるいは軟性下疳であると書いてある。それを見て、おれの隣のやつは軟性下疳か、隣のやつは性病にかかっておるということがすぐわかってしまうわけです。そうすると、私がもし隣のやつと仲が悪くて、あの人は性病にかかっているという秘密を私がどんどん触れ回ったらどうしますか。お嫁さんは来ないですよ。今度は政府の政策で梅毒の血液検査でもやろうというときに、そういうものが出てきてごらんなさい、どうなりますか。だからそういうものをおやりになるならば、やるように法律上のていさいを整えなければいかぬわけです。それを整えずに、審査委員と幹事とは秘密保持の義務がある、あとの健康保険組合の職員や基金の職員や審査事務嘱託はどんな秘密を漏らそうとかってだ、そんなばかな法律構成はないですよ。だれが聞いたってそうでしょう。だからこの基金法ができたときにはそういう制度ではなかった、そういうものの考え方はしていなかったのです。初めはしていなかったのだから、われわれがやるときには、健康保険組合の職員には診療報酬の請求書というものは見させるものではないということだったのです。それがいまはかってに審査しているのですよ。保険局長、審査しているでしょう。健康保険組合の職員が見て返してきておりますよ。審査しているはずですよ。
  266. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 審査ということばを使われるのは——私はむしろ審査という形ではなしに、事務上のミスを発見するということで、審査という概念には当たらない、つまり記載の間違いを発見するというとことであります。技術の部門にわたる中身ではございませんので、したがいまして、私どもは事務点検というふうなことばも使っておるわけでございますが、審査とは全く別なものであるというふうに解釈をいたしておるわけでございます。
  267. 滝井義高

    滝井委員 基金の審査委員も、たとえば八点なら八点の注射を七点で請求しておったら、七点を八点に書きかえてくれますよ。事務点検というのは審査のうちに入るのですよ。それだったら、もし間違って、たとえばアリナミンならアリナミンという注射をする。それはかっけにきくのですが、それを脳溢血にしておったというときには、これはどうもおかしいじゃないかということになる。もちろん、アリナミンが脳溢血にきかないことはないですよ。しかしアリナミンばかりしておったら、どうもちょっとおかしいじゃないかというときには審査はやります。同時に審査委員はそのアリナミンの注射の本数が間違っておるときには、これは直してくれますよ。よけいに請求しているときにはちょん切って少なくしますよ。ちゃんと赤い鉛筆で直してくれるのですよ。だからその事務点検も広い意味の審査になるのです。あなたの言うように、事務点検をやるならどんなことをやってもいい——これは間違っておったらまた返ってきますよ。審査委員がやったものをもう一ぺんやるんですから。審査委員会で通ったら、あとのものはそんな内容を扱うことはできないでしょう。法律のたてまえは。そんな権限は基金法のどこにも与えていない。健康保険組合の職員が、審査委員会をパスしたものをまた戻してやり返していいという法律の根拠はどこにありますか。
  268. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 先ほど言われましたお医者さんが点数の書きかえがある。これを直すというのは審査に付随して行なわれる仕事でございまして、私はそれをもって審査の中身というふうには解釈をいたしておらないわけでございまして、あくまでも事務点検は事務点検で、事務的なミスを直すというふうに考えなければならない、そういう性質のものだと思っております。それからまた、健康保険組合のほうで請求されたあとにつきまして、一応点検をするということにつきましては、もともと健康保険組合である保険者は、支払い事務を支払基金のほうに委託をいたしておるわけでございまして、支払基金がかわって払うという形をとっておりますので、保険者自体が、自分のところの組合員がどういうふうな病気にかかってどういうふうな治療を受けておるかということにつきまして、健康管理上これを知っておるということについては、私は、保険者としてそれをしもやってはいかぬということにはならないのじゃないかというふうに解釈いたします。
  269. 滝井義高

    滝井委員 私はやって悪いとは言っておらぬ。おやりになるなら秘密保持の義務を課しなさいと言っておる。秘密保持の義務も何にも課していなくて、基金が審査してパスしてしまったものでしょう、それを今度は送り返すのですから。こういうようにパスしました。そうしたら向こうが事務的に見てこれはおかしい。おかしいからもう一ぺんけしからぬと言って戻してくるわけでしょう。それならば、その内容を見たという証拠でしょう。だから戻してくるからには、それを見る人は特定の人をきめて、その人には秘密保持の義務を課しなさい、こういうことです。論理的に間違っていない。見て悪いとは言っていない。当然でしょう。同じ請求書を見て、見る審査委員と幹事とは秘密保持の義務を課しておって、審査事務嘱託もそれから基金の職員も健康保険組合の職員も秘密保持の義務を課していないのがおかしい。だから、それを課しなさい。やって悪いとは言わない。おやりになるのはけっこうだから、そのかわり秘密保持の義務を課しなさい、こういうことです。そうしないと、いま言ったように、私が軟性下疳だったら、私の隣に健康保険組合の職員がおって、何だ、隣の先生は軟性下疳だと村じゆうに言われてごらんなさい。どういうことになりますか。そういうことをこっちは言っているわけです。当然秘密保持の義務をやってもらわなければいかぬ。これは公のものを見るわけですから。そうでしょう。無理な要求ではないと思うのです。どうですか。
  270. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 立法論としてそういうことを検討しなければならぬという滝井先生の御意見は、私はきわめてもっともだと思います。ただ私が申し上げましたのは、現在の実定法上の解釈論としてはこうだということを申し上げておるわけでございまして、御指摘のように、そういう機密漏洩の問題が社会問題として重要な問題であるとするならば、立法論としてはまさに検討しなければならない問題でございますので、十分検討してまいりたいと思います。
  271. 滝井義高

    滝井委員 審査をやりますね。そして減点をしますね。この責任者は一体だれですか。
  272. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 審査委員会でございます。
  273. 滝井義高

    滝井委員 私が審査委員をしておったときは、減点するときは、あなたはここが悪いから私はこう削りましたよといって堂々と自分の名前を書いてやっておった。文句があるなら私に言ってきてください。いま、文句があるならおれに言ってこいという人はいない。削っておって、そしておれに文句を言ってこいという人がいなくて、審査委員会なんといったって、審査する人は一人しかしていない。滝井義高が三多摩を受け持つなら滝井義高は三多摩を受け持って、滝井義高という審査委員が審査しているから、審査委員会の他の人は何もやっているわけじゃない。他の人は何も知らない。滝井義高はどんなことをしておるか、何も知らない。知らないところに言ってもしようがない。だから、審査委員会かもしれないけれども、削ったら削った人の名前を明らかにしなければいかぬ。それを明らかにしていない。私はこれは明らかにしていいんじゃないかと思う。どうして明らかにできないのですか。審査委員会なんという、多数の人をいうのですか。二十七人に言って責任をとれと言ってもどうにもならぬでしょう。いま言ったように、面接指導をやっても、予算も組んでいないし、かげろうのごとく扱われておるんだから。責任は審査した人でしょう。審査した人が一応第一義の責任を持たなければいかぬでしょう。他の者はわからないんだから削っていないんだから。
  274. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 法律的にはあくまでも合議体である審査委員会の責任ということになるわけでございます。したがいまして、審査委員の名前をはっきり書いて、自分の権限でやったということをもしやったとすれば、これは越権行為だと思います。あくまでも合議体である審査委員が責任を負うというのが正当な法律解釈だと私ども思っております。
  275. 滝井義高

    滝井委員 それなら審査委員会は、減点するときには合同討議をやっていますか。やっていないでしょう。私も審査委員だったけれども、そんなことをやったことは一回もない。私は、たとえば、あなたの治療傾向というものは他の医者と非常に違います、こういう点は御注意くださいというときには、審査委員滝井義高と書いて、保険医にちゃんとはがきを出しました。それがほんとうです。これは金券ですよ。請求書というのは手形と同じです。一種の小切手ですよ、これで金が払われるのですから。だから、人の請求した小切手を無断で切るからには、その切った人が責任を明らかにしなかったらたいへんです。これはあと払いの一種の小切手なんです。これがパスすれば、そのとおりの金が銀行に払われるのですから。その小切手の金を無断で切るのですよ。切ったときに、だれが切ったかということも明らかにせずしてやる手はない。それなら審査委員会委員長の責任なら委員長ということを言ってください。審査委員会だといっても、二十七人もいるから、だれかわからぬ。私の請求書を直してくださいということは、だれに言ったらいいのですか。会に言うといっても、会というのは二十七人もおる。しかも、それが一体のものじゃないわけでしょう。だれに言ったらいいんですか。
  276. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 あくまでも審査委員会という合議体の責任でございますが、ただ審査委員会を統括するのは審査委員長でございまして、もし切られたことに対していろいろただしたい点があれば、審査委員長に申し出れば、審査委員会の議に付して、それをどうするかということをきめるわけでございます。あくまでも法律的には審査委員会が責任を負うという形が現在の取り扱いでございます。
  277. 滝井義高

    滝井委員 減点をして返ってくるのは翌々月に返ってくる。翌々月に金が支払われるから、それよりかおくれることになる。そうしますと、基金に行きますと、請求書はもうない。どこに行っておるかというと、健康保険組合に返されてしまっておる。あるいは政府のほうの保険者に返してしまう。行ってみてない。ないので、どういうことになるかというと、当該保険医は今度はまた返ってくるのを待たなければならぬ。半年か一年かかる。そのうち忘れてしまう。これはもともとかげろうみたいに扱われておるのですから、そういうことになるかもしれないけれども、そんなばかなことないでしょう。減点したものは基金に残しておって、減点したらすぐに通知してやるのがほんとうです。あなたの言うように、審査委員会、その代表する委員長なら委員長名で、滝井義高にはがきで、お前の請求書の何月分の何の何兵衛の請求書のここが間違っておったから五十点削ったぞ、異議があったらすみやかに出てこい、それくらいのことはしなければならぬ。人の小切手を切っておって、通知もせぬでもとの保険者にぼっと返してしまうというばかなことはないでしょう。いまはそうやっておる。そうやっておるでしょうが、そうすると、基金というのはきわめて官僚的じゃないですか。人の金券を黙って切っておって、そうして切った請求書をぽんと返して、そうしてその間通知も何もしてくれないですよ。こういうところは直さなければだめですよ。それでは医師患者との人間関係をもう少しよくしなさいと言ったってとてもできない。そうするとどういうことになるかというと、そうする人がおるかどうか知らぬけれども、気持ちとしては減点された患者が来たら医者患者につらく当たりますよ。私は一生懸命治療してやったけれども、あなたの保険者のほうは削ってしまった、こういうことになってしまう。ちょうど会社で、重役に課長がおこられる。そうすると今度は課長が課員をおこる。課員はおこる人がおらぬから、帰ってから奥さんをおこる。奥さんは今度は女中さんをおこる。女中さんは今度はネコをおこって、ネコは障子を破ることになってしまう。回り回ってそういうことになるのです。それでもう少しそういうところはすみやかにやってやらなければいかぬわけです。そうでしょう。少しは事務がかかったってしょうがないです。あなた方が事務がかかってめんどうくさいというなら、私が一番初めに言ったように、現地でやらせなさいということです。そしてできるだけ基金で返されたり、減点されぬように現地で削ってしまうのです。そして現地の医師会で納得させてしまうのです。それが自浄作用というものです。私どもの肉体でもばい菌が入ってくれば、赤血球、白血球がそのばい菌を食い殺してしまうでしょう。だからその過程で発熱があるでしょう。熱が出てくる。それはばい菌との戦いでしょう。ばい菌との戦いはやはり医師会にやらせるべきです。何もあなた方が手を下す必要はない。最後にあなた方が手を下したらいい。伝家の宝刀というのは最後にあなた方が抜いたらいい。医師会に、事務的にも、それから内容も全部やらしたらいい。お医者さんはお医者同士の秘密を守れということを法律に書いたっていいじゃないですか。だから、そのくらいのことをやらなかったら話にならぬですね。今度は、いまのように削られたので基金に文句を言いに行きますね。だが、基金は請求書をもう保険者に返してしまった。そうすると、今度は基金から保険者に送り返せという通知を出しますね。これで大体一年かかります。   〔竹内委員長代理退席、委員長着席〕 人の小切手類似の金券をかってに削っておって、その削ったことも十分に通知せずに、きてみて金が少ないからおかしいなということで合わしてみて、ははあここが削られたな、こういうことになるような不親切というのはいけない。その事務の能力がなければ、私がいま言うように医師会にやらせなさいということです。そこらのことを直す意思があるかどうかということです。こういうことは抜本改正じゃないからここで答弁ができると思う。重要だから理事会で意見を聞かなければならぬというようなばかなことはない。監督官庁でびしゃっとやらせることができる。来月からすぐやりなさいよ。来月からすぐやらせますか。
  278. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 基金の審査につきまして、それぞれ各県におきましてもいろいろと問題があることは私ども承知いたしております。したがいまして基金のそういう審査につきましての苦情処理につきましては、審査会のほうで十分苦情を聞いた上で処理するという方法をとっておるわけでございまして、いま審査で査定をされたものが、一年たってからでないと返ってこないという事実は私どもはまだ聞いておりませんので、その点は実態をよく調べた上でやりたいと思うのですが、苦情処理の取り扱いにつきましては、それぞれ各県におきましてここ数年来相当徹底して行なうように基金のほうを指導いたしておるわけでございます。
  279. 滝井義高

    滝井委員 足元の東京はやっていないでしょう。京都あたりはやっていますが、足元の東京がやっていないのです。東京を来月からきちっとやらせますか。いまの苦情処理、請求書を減点されて、減点されたものに異議があるといったらやってくれますか。東京は苦情処理をやっていないですよ。
  280. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 あくまで苦情処理につきましては、これはそういう非常に御不満のある保険医の方々に対しましての処置をどうするかということでございまして、私どもとしましては、あくまでも苦情処理を円満に処理していくということは、基金の運営上重要な仕事だと思いますので、その徹底を期するように指導いたしてまいる所存でございます。
  281. 滝井義高

    滝井委員 最近、そういうようにまるきりかげろうみたように保険医があしらわれるものだから、保険医の中に基金に対する反感が非常に起こってきた。そこで減点されたものが相語らって基金に押しかけていくようになった。いままでは医者はそういうことはしなかった。ところが人格を認めてくれないものだから——面接指導で呼びつけられる。呼びつけられたら、何でもなかったときにはちりあくたのように帰れと言われて帰らせられる。旅費や何かをくれるようになっているけれども一文もくれないというので、だんだん強硬に押しかけていくようになった。ところがそれに対処する通達をあなた方出しているでしょう。そういうふうに三人も、四人も、五人も押しかけてきたときにはどうせいというように通知していますか。
  282. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 実はどういう通知になっているか、寡聞にしてまだ私承知いたしておりませんが、おそらくそれは支払い基金のほうで、基金の事務処理の方法として出した中身ではないかと思いますが、なお調べたいと思います。
  283. 滝井義高

    滝井委員 「陳情または抗議に多数のものが加わっている場合は、県当局及び警察当局にあらかじめ電話連絡をする等の措置を講じ、退所命令を発するときにも時宜の連絡をすること、」こういうことになっている。自分のほうは呼びつけておって、旅費も予算に計上しなければ日当も出さぬ。そうして医者が腹を立てて何ごとじゃと言えば警察に連絡して退所命令を出す、こういうことです。それから「応対の時間にも、約束の時間を過ぎ、執務の障害となる場合は応対を打ち切り、明確に退所すべきことを告げ、応じないときは張り紙によりこれを示し、写真の撮影を行なうとともに必要ある場合は警察当局の指導を求めること、」こうなっている。これではむちゃくちゃです。こういう基金というものはもはや完全に官僚化しておるのです。こういうばかなことはないですよ。だからもう少しこういうことをさせないためには、医学においては予防が治療にまさる最高のものであるように、やはりこういうように医者をハッスルさせないように処置を講じなければいかぬわけです。ハッスルすればかんかんになって、かえって誤診をしますよ。被害は患者に及ぶ。だからそういうことをさせないように、やはり穏やかにしてやらなければいかぬわけです。不平があって来る者は診療を休んでくるのですから、よほどしゃくにさわった者でなければ来ないわけです。だからこういう通達、これはいつ出しているかというと、三十九年の十月に出している。こういうことをあなた方は知らないはずはない。こういうことをあなた方にも相談せぬで基金本部というのは出せますか。
  284. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 その文書は、集団陳情等が行なわれる場合の注意事項であろうかと思います。支払い基金の運営につきましては、むろん私どもが監督官庁で、支払い基金の全般的な業務の監督をやっておるわけでございますが、基金内部の問題につきましては、これは互選された基金の理事長が責任持って運営に当たっておるわけでございまして、通牒その他審査の方法等につきましても、これを実施に移す場合には、理事会にかけてきめる、その理事会の中にはお医者さんも入っておられるし、労働組合の代表も入っておられるし、日経連の代表も入っておられまして、そこで円満に民主的に運営されるような方式をとられておるわけでございますので、それぞれの代表の方々が納得しないままにいろいろな業務運営が行なわれるということは、私どもはそうとはとっておりませんで、あくまでもやはり基金の自主的な判断のもとで、民主的に業務運営が行なわれるというふうに私どもは考えておるわけでございます。
  285. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、そのいまのような通牒は、基金の理事会にかけて労働組合から出ている代表も納得しておる、こういう言明をするのですか。
  286. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 そういう通牒が理事会にかかったかどうかということについては、私どもはつまびらかにいたしておりません。しかし、少なくとも基金の業務運営につきまして理事長がこのような方針でやりたいという態度は、それぞれの場合場合の理事会の空気その他からおのずからキャッチできることでございまして、きわめて非常識にわたるような通牒、指導等が出るはずのものでもございませんので、やはり関係者の方々も十分納得した上で、そういう空気の上に立って業務指導が行なわれるというふうに解釈をいたしておりますので、私どもはそのような通知が出ても、決してそれが官僚的あるいは独善的な処置であるとは毛頭思いたくないわけでございます。
  287. 滝井義高

    滝井委員 基金のことはこれでやめますが、いま私がるる述べたように、あるいは予算委員会でも指摘したように、基金というものはいろいろな点においてたくさんの問題点をかかえております。そこで、もう少し基金法を洗って、そうして予算的にもしっかりしたものにして、抜本的な改正をやらなければならぬ時期が来ているわけですよ。もうこれはいまから六、七年前の健康保険法改正のときにも来ておったわけですよ。しかし、それはあなた方が積極的にやろうとしなかった。今度はひとつ抜本改正をやって、いまのような医師を虫けらのように扱うようなことのないように、宿泊料なり日当なりはきちっと組んで、そして減点をしたら減点者の名前を、もし審査委員でないとすれば、基金の審査委員長の名前を書いて、そして通知をする、そうして何日までに異議があれば申し出てこい、これくらいするのがこれはエチケットですよ。当然のことですよ。そういうことできますね。いまからだってそんなものは抜本改正をやらなくたってできるのですよ。それは当然やることのほうがほんとうでしょうが……。やれない理由は何もないはずです。われわれの時代にはやっておったのだから。いまは数が多くなったからそれがやれないというのかもしれませんけれども、それは一件当たりに十四円二十銭の事務費を取っておられるから四十二億の中でやろうと思えばやれますよ。だから、少なくとも減点したものについては減点通知を出す。そして何日までに不平があればやっておいで、場所はどこどこ、こういうようにきちっとしてやらなければうそでしょう。そのくらいのことはやれるでしょう。
  288. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 支払い基金の法律自体は、御承知のようにずいぶん前にできました法律でございますし、私どももいま滝井先生の御指摘を待つまでもなく、やはり法律改正をしなければなうぬ時期に際会をいたしておると思いますので、その点鋭意法律改正につきまして根本的な検討を重ねたいと思っております。  なお、御指摘の審査委員の審査の中身を明白にする、その他につきましては、今後十分に慎重に検討してまいりたいと思います。
  289. 滝井義高

    滝井委員 検討ではだめなんですよ。やっておるところもあるんだから、全国それをやらせますかということですよ。減点をしたら減点通知を出して、何日までに異議があれば申し出てこい、場所はどこどこ、こういうことをいってもらわなければいかぬわけですよ。それを検討する検討するで、ここでネコばばしていったら、人の金を黙って削ったことになりますよ。そんなことは許されぬですよ。
  290. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 基金のそういう問題につきましては、常に理事会において相談をしてきめるということになっておりまして、私がここでそういうことをやりますというふうに言明しても、これが理事会で検討されなければ何もならぬわけでございますから、至急理事会でそういう点を検討して、実現に移せるものとすれば移す、あるいは実現不可能であるとすれば、どういう理由で不可能かというような点も含めまして私どもは検討する、こういうふうに申し上げておるわけでございますから、その点御了承いただきたいと思います。
  291. 滝井義高

    滝井委員 それは積極的にあなたのほうで行政指導するわけでしょう。——ぜひひとつそういうことできちっとやってください。  次は、県の保険課です。県の保険課に今後事務上の処理その他をやる上に、やはり技官がいなければだめなんですね。一体、各県に技官が何人おるのか。それから社会保険出張所には、一体技官がおるのかおらぬのかということです。政府管掌健康保険の事務点検をやる場合に、医師のよき相談相手として事務官僚ではだめなんです。やはり医師の技官がおって、かゆいところに手の届くような相談をやらなければだめなんですね。一体全国の保険課にどの程度の技官がおるのか。社会保険出張所におるのかおらぬのか。
  292. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 保険課で医師たる技官は全国でたしか八十三名おると思いますが、ただ社会保険事務所のほうは、これは直接医療機関とそのような関係で接触したり何かする場所でもございませんので、技官は全部本庁のほうの勤務になっております。
  293. 滝井義高

    滝井委員 社会保険出張所が医療機関と接触しないことはないですよ。しょっちゅう接触しますよ。たとえば保健所が日雇労働者健康保険の保険証に判を十分押された受診証を持ってきておるかどうかということをしょっちゅう聞きに来ますよ。事務職員に聞きに来るのですよ。だからそういう医療機関との接触は絶えずあるのです。出張所とその地区の医師会とは絶えず接触があるのです。その場合に、これはあなたの所管より大臣です。大臣、いま全国で八十三人しか技官がいないのです。政府管掌健康保険医療費の総額は三千三百億です。三千三百億のものを扱って、そしてやっている第一線の技官というのが八十三人ですよ。そうすると一県に二人いないですよ。そうしてこれが国民健康保険健康保険とをやっておるわけでしょう。そうすると、国民健康保険が三千億ちょっと、政府管掌が三千三百億、六千億ですよ。日本の総医療費の六割を扱う第一線の県の保険課に八十三人、暁の星より少ないですよ。日本全国に八十三人しかいない。だから、こういう実態でやるのはだれが全部やっておるのかというと、結局医学を学んでいない事務官僚が事務的に処理していく、こういうことですよ。だから、中央においてはさいぜん言ったように、医務局長は保険局の医務課になり下がり、第一線における保険の実態指導というものは全部事務官僚がやっておる。そうして技術官僚は暁の星のごとくまばたきをしておるにすぎない、こういう実態ですよ。これでは日本の保険医療行政というものはほんとうにやろうなんていったってできないですよ。それは保険医療行政ではなくて、全く保険行政だけだ。それなら民間にやらしたらいい。民間の保険会社にやらしたほうが、能率があがってもうちょっと少ない金でやれますよ。民間の三井か三菱の保険会社にやらしてごらんなさい。もっと能率的にやりますよ。もっとうまくやりますよ。だから、こういうように基金はきわめてでたらめで、呼びつけて予算化もしておらぬ。審査事務の嘱託なりその他の秘密保持の義務も何もない、盲点のままでふくれ上がってきているということは、まるっきり三つのときの着物を十五になって、思春期になっても着せておるのと同じですよ。そういう姿が日本の社会保険の姿ですよ。だからマッカーサーが言った戦後十二歳が二十歳になったら、二十歳の着物を着せなければうそですよ。そういう点でもう少し優遇をして、第一線に優秀な技官を配置したらどうですか。そしてレセプトの点検、その他もう少しあたたかい気持ちで医療技官の相談相手になってやる、こういう形をつくらなかったら話にならぬですよ。第一線は全部事務的な処理です。そして、課長が医者ではないですから技官というのはすみっこにおります。行ってごらんなさい。しかも、県の技官になっている人は御老体が多いですよ。若いはつらつたる人は待遇が悪いから来ない。そういう実態で日本の医療保険が論議され、推進されているというのは実に情けないことです。だから、優秀な意見が現地から上がってこないのですよ。上のほうだけで架空なことを考えて、現実にマッチしない政策が出てくるから、いつもぽんとけられてしまって、抜本改正は宙に浮くという形になっている。私に言わせればそういう実態ですよ。まずやろうとすれば大蔵省と折衝して、第一線は、少なくとも一挙に倍にはなりませんから、やはり三人か五人くらい、大きな県では五人くらいは技官を配置してやる、そういう体制をとらなければうそですよ。しかもこれは課長補佐にもなっていない。どこか技官で課長補佐がありますか。
  294. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 各県の保険課に配属されております技管は、いわゆる専門技術職として、専門官として配置されておりまして、これは補佐と全く同じような取り扱いになっておるわけでございます。ただ、現在技官の数は、私どもが期待するよりも少ないことは御指摘のとおりでございます。何とかして優秀な技官を保険医療に従事さしたいということで、歴代保険局長は常にこの点については苦慮いたしておりますし、私になりましても何とか保険医療技官の人材を求めるということで、たびたび技官会議を開いたり、あるいは各ブロックごとの技官の会同を数回開きまして、いろいろと対策を練っておるわけでございます。しかし、私の目から見たところでは、非常に年配の方もおられますが、中には若い方もおられます。事務的にも非常に情熱を持ち、また何とか保険医療の中身をよくしていくことに日夜非常に苦労いたしておりまして、その苦労に報いるだけの待遇は、まさに御指摘のとおり十分なものではございません。何とか努力をいたしまして、彼らの努力が行政に反映するように、また保険医療の面でますます改善の余地が多くなるように、大いに努力いたすつもりでおります。
  295. 滝井義高

    滝井委員 大臣、いまお聞きのように、歴代保険局長は非常に努力したというのです。私は寡聞にして努力したということを一回も聞いたことがない。十四年代議士をしておるけれども、初めて聞いたのです。そのことばはほんとうに珠玉のような、真珠のようなとうといことばです。だから大臣、いまのおことばがあるのですから、歴代の保険局長はやっておったそうだから、これはひとつ鈴木さんのときに……。これは医療課長をなさっている浦田さんの手足です。ところが、いま言ったように、第一線では暁の星のまばたきよりも少ない数しかないのです。一県に一人か二人しかいない。したがって、東京に来て浦田さんとひざを交えて第一線の情熱をぶつけるだけの時間的余裕がないのです。だから、浦田さんは頭の中でものを考えるだけで、やはり下から吸い上げるいい意見が少ないわけです。浦田さんをほんとうにささえて、ほんとうにいい献策をさせるためには、やはり配置をしておるところの技官が俊秀雲のごとくあふれる状態でなければならぬ。これは一挙につくれぬのですから、来年は各県一人くらいずつふやしてやるというくらいの前進が必要である。穏歩前進でいいと思う。社会党も一挙に天下を取ろうと思っておりません。一九七〇年に向かって徐々に社会党政権を確立をしていく。そのためには保守党のときにやはりいいことをしておいてもらわなければ、社会党は天下を取れないのですから、鈴木さん、いかがですか、やはり来年は一人ずつ各県にふやすという情熱を持ち得るかどうか、大蔵省はそのくらいの良心があるかどうかということです。
  296. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 医療保険を適正にやってまいりますために、医学、医術に通じましたところの技官を必要とする、こういう御意見につきましては、私も全く同感でございます。今後、局長からも申し上げましたように、保険局としてもその必要を痛感し、技官の配置ということに努力をしてまいる、こういうことでございますので、私もその面につきまして事務当局を督励して努力いたしたいと存じます。
  297. 平井廸郎

    ○平井説明員 四十二年度予算のことでございますから、いまここでお約束を申し上げるわけにはまいりませんが、先生のお気持ちもよくわかりましたので、要求を待ちまして慎重に検討いたしたいと思います。
  298. 滝井義高

    滝井委員 要求を待って検討するそうですから、ひとつ来年は一人か二人、必ず請求してください。忘れぬよう大きく書いておきますから……。  次は支払い方式です。支払い方式はいまの出来高払いの支払い方式を抜本改正においても堅持していく方針なのかどうか。
  299. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 抜本対策の検討事項としてどういうものがあるかという場合に、各種の保険制度のあり方あるいは国庫負担、保険料負担をどの程度にするかという問題に加えまして、やはり診療報酬のあり方をどうするかという問題は抜本問題の一つの項目に入るとは思っております。しかし、いま直ちに出来高払い制度をどういう方向で検討するかということにつきましては、まだ成案も何も持っておりませんので、ただ抜本問題の検討の中には入り得るというふうにしかお答えができないと思います。
  300. 滝井義高

    滝井委員 抜本改正をやる場合に、いまある制度を変えるということになれば、支払い方式も当然検討の対象になるわけです。これは簡単に言いますと、人頭式にするか、総額式にするか、いまのように出来高払いというか、おおよそ三つくらいしかないですよ。イギリスの人頭方式、西ドイツの総額制ですか、フランスの償還方式、日本の出来高払いというのは典型的なものですよ。そうしますと、それを人頭式とか総額式とかいうような方向に持っていくことになるのか、それとも支払い制度だけはいまの出来高払いでいこうという方向にあるのか、これを聞きたいわけですよ。これは根本的なことですから、できれば大臣に言ってもらえば……・。
  301. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 抜本対策の問題の主要議題が現在の保険制度をどのようにしていくか、国庫負担その他の問題を含めまして、それが主題でございまして、支払い方式をどうこうするかということは抜本問題としてはむしろ付随的と言ったら語弊があるかもしれませんが、抜本問題の中身としてはむしろ従的な態度で考えていくというのが、現在私どもの頭に描いておる考え方でございまして、これはいずれにしても今度の臨時保険審議会を成立させていただくとすれば、その審議の過程におきまして各委員の方々と相談をして検討していくことに相なろうかと思います。
  302. 滝井義高

    滝井委員 あなた方の考えでは、支払い方式というのは抜本問題の改正の中のさしみのつまのようなものだ、付随的なものだ、こういうことですから、これは時間をはしよって、そういうふうに軽く扱っておるならば、こっちも軽く扱って次にいきます。  大体いまのところで第二番目の医療費体系の問題、診療報酬の問題は大きなところずっといきました。答えはきわめてあいまいもこ、少しも一貫性がないですね。もう少し勉強して一貫性のあるものをつくらないと、臨時医療保険審議会をこの国会に出すにしたって、いまのような答弁といまのような勉強の態度ではとても抜本改正はできません。鈴木さんの顔にどろを塗るばかりですよ。私もいまから言っておきます。私のきょうの入学試験にあなたは落第だ。勉強不足ですよ。鈴木さんがあれだけのアドバルーンを上げたらスタッフはもう少ししっかり勉強しなければだめですよ。(「あまりきびしく言うな」と呼ぶ者あり)こういうことはきびしく言っておかないとだめです。私は歯に衣を着せるのはいけないと思うのです。勉強不足だからもう少しやらないといかぬ、鈴木さんの顔にどろを塗りますよということは、ここ七、八カ月ばかりすればわかることですから、きょうの私のこのことばを真に受けてひとつがんばってください。  次は、医療需要体制です。この医療需要体制の問題は、鈴木厚生大臣は社会保険の総合調整をやりたい、こう言っております。大蔵大臣は総合調整もいいができれば統合を手がけたい、こういうことをおっしゃっておるわけです。幾ぶん大蔵省と厚生省とのニュアンスが違うわけです。そこで、私は実は福田構想については福田大蔵大臣に来てもらうことを再三にわたって要請したけれども、きょうも用件があって出てこない。健康保険の審議のときも出てきておりません。そこで、これは委員長にお願いしておきますが、この国民健康保険法が衆議院の当委員会を通過する前に、採決する前にぜひひとつ大蔵大臣に来てもらうように要請いたしておきます。  そこで、厚生大臣にお尋ねするのですが、一体あなたの総合調整というのは内容はどういうことですか。
  303. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私がここで申し上げるまでもなく、わが国の医療保険制度は非常に多岐にわたっております。そしてこれらの各制度は、今日までの沿革的な、歴史的な、また発展の経過等からいたしまして、被保険者の負担の面でも、また給付の内容におきましても、また財政の面におきましても、そこに非常な格差、アンバランスが存在をいたしておるわけでございます。国民皆保険の制度のもとでございますから、私はできるだけそういう面の格差があってはいけない、やはり平等な医療の給付が受けられるように、そして長期的に安定をし、前進をしていくような医療保険制度の確立か必要である、こういうぐあいに基本的に考えておるわけでございます。そういう意味合いからいたしまして、各制度に根本的に検討のメスを加えまして、ただいま申し上げましたように負担の面、給付の面、財政の面等におきましてそのアンバランスが解消するように各制度の調整をしたいというのが私の申し上げておるところであります。
  304. 滝井義高

    滝井委員 各保険制度が負担の面や給付の面で違う、したがってそのアンバランスを解消することが総合調整だということですが、そうしますと、統合とはどういう点で違うのですか。
  305. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 それは私は統合できればそれが望ましいことである、こう考えておりますが、はたして一ぺんに各医療保険制度を一つの制度に統合できるかどうか、こういう問題につきましては、いまの段階では軽々に申し上げられない、こう思うわけでありまして、現実にはいま申し上げましたように、まず各制度間の格差を是正する。そして各制度が長期的に安定し、前進していくような保険制度にしたい、こう考えておりますが、もとよりその間におきまして統合できるものはこれは統合が望ましい、こう考えております。   〔委員長退席、松山委員長代理着席〕
  306. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、格差を是正することと、制度が長期的に安定、前進するようにする。きわめて抽象的ではっきりしないですが、総合調整というものをあれだけ予算委員会から健康保険の審議を通じて言うからには、総合調整のもう少し具体的なプランがないと、これもまたどこかに聞かなければ言えないのだというのでは、ぼくらは国民健康保険通しませんよ。もう少し具体的にひとつ言ってくださいよ。
  307. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 それはただいま牛丸委員会で検討を進めさしておるのでありまして、私はまだ最終的なそれに対しましてこれでいくという結論は出しておりません。そういう方向で検討さしておる、こういう段階であります。
  308. 滝井義高

    滝井委員 格差を是正する、各制度間の長期的な安定と前進をはかるというのは、これは大臣が言わなくたってみんな言っているのですよ。少なくとも専門大臣になられて総合調整と言うからには、総合調整はこういう内容のものだくらいのことは言ってもらわぬと、いまのようなことでは何にもならぬですよ。それでは、神田厚生大臣のときに総合調整の神田構想というのを出しましたね。知っておりますか、ちょっと言ってみてください。
  309. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 総合調整の試案という形で一応世上に発表いたしましたのは小林大臣のときでございまして、これは事務的に考えました試案という形で出したのでございますが、いわゆるプール制をしくということで、失業者あるいは老齢者につきまして、退職した方に対して給付をやるためにプール基金を置きまして、そこで調整していくというふうな構想を一時発表したことがございますが、あれはあのときの時点の一つの試案でございまして、必ずしもそれが今回の場合に総合調整の中に入るかどうかということについては、なお検討しなければならぬ部分が非常に多いというふうに私どもは考えております。
  310. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、小林——静岡選出の参議院の小林さんですね。小林さんは鋳物屋さんの小林さんと二人おったのですが、静岡選出の参議院の小林さんのときの構想ですね。これはいま言ったように、失業者や老齢者が全部国民健康保険になだれ込んでしまう。それでは国保がたいへんだ。そこで健康保険から一定の金を出さしてプールの基金をつくって、それで失業者なり老齢者の保険を一定の期間を定めてやろう、こういうことだった。そのときはそのときでやはり抜本改正の一環としてそういう構想を出したわけだ。私は、いまになって、鈴木さんのときになって、いやどうも牛丸委員会でやっておって、私は何も聞いておらぬというようようなことなら、あまり総合調整とか何とか言わぬほうがいいのじゃないかと思うのですよ。今度の国民健康保険法というものは中途はんぱな改正ではないのですよ。相当抜本的な改正を行なう内容を持っておると称せられておるわけであります。そうじゃないですか。二割五分にわれわれは賛成してやまなかったものを、政府管掌健康保険はやらなかった。国民健康保険はやっておるのですからこれは抜本改正ですよ。二割五分を四割にするというのは抜本改正です。そしていままでの調整交付金制度というものはばっさりと一割から五分に削っておる。五分を一割にするのにわれわれはどれだけ苦心をして努力をしたかわからない。そして一割にしたのです。またそれをもとのもくあみに返しておるのですよ。だから制度的にはその分については逆行しておるわけです。しかし、一方においては二割五分を四割にするという一つの大きな前進を示してくれておる。もちろん五割を七割に引き上げる分については零にしてしまいましたけれども。そういう大きな後退、いわば制度の抜本的な改正に類することをこっちではおやりになっている。国民健康保険では国庫負担を入れなさいと言っても、これは抜本改正をやるまでは入れられないと言って、結局六十五に返った。六十五にするなら、去年くらいにやってくれておったらそんなにがたがたしなくてもよかったといって厚生省のお役人諸君も不満を言っている。与党の諸君も不満を言っているけれども、総合調整というものの内容は全然わからぬ。それは牛丸委員会でやっているというならわれわれは牛丸委員会から出るまで待ちますよ。きょうはこれでやめます。国民健康保険もそれまではひとつたな上げしてもらって次の年金をやらしてもらいますよ。私たちも一生懸命勉強してやっておるのに、ここにきて何もかも国会では言えません、結論が出るまではわかりません、審議会にかけるというなら審議会にかけ終わるまで待ちます。そういうことなら何も言えないからやめます。私は理事諸君に言ってやめます。そんなばかな審議はできない。権威は一つもないじゃないですか。朝から七時間も八時間もやるけれども重要な核心点に触れると何一つ答弁が出てこないのです。そういう委員会なら国会というものは権威がないですよ。だから出てくるまで待ちますよ。徳川家康ですよ。鳴くまで待とうホトトギス。大臣が言われなければ待ちますよ。抜本改正が出るまで——これは抜本改正ですからたな上げします。あわてることはない。だから総合調整総合調整というのに、総合調整とは格差を是正すること、各制度の長期の安定をはかること、当然のことですよ。長期の安定をはからないで抜本改正というものはあり得ない。不安定なる改正というものはありはしない。その安定をする内容は何であり、そして格差を是正するのは具体的にどう是正するか。一つの方法としてはプール資金というものを前に出したわけです。厚生省が出したのですよ。堂々と発表したのです。支払い側はこれは反対でした。堂々と出しておって、今度いまになったら、それは時代が変わって昔のことでございますと言うけれども、二代前の厚生大臣じゃないですか、そのときは。熊崎さんなんか厚生省の幹部として責任がある。当時ちょっと前にあなたは保険局長だった。責任がある。あなたのまいた種をいま刈らなきゃならなくなっておる。だからもう少し大臣、総合調整をはっきりしてください。それをはっきりしないと言うのならば、まだぼくはこれ一枚しか終わっておらぬのです。いままでの質問で、けさから七時間も八時間もしましたが、たった一枚。これからまだ二枚、三枚、四枚ある。だから、総合調整をもう少し明らかにしてもらわなかったら話にならぬですよ。どうですか。総合調整を、もう少しプール制ならプール制をする。プール制だってやり方はいろいろあるのですから、言ってもちっとも差しつかえないわけですよ。がんとして口を緘して語らぬというならば、ぼくもこれでやめます。理事に言って、あげてもらいたくない、抜本改正なんですから……。
  311. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 先ほど申し上げましたような基本的な考え方について、ただいま牛丸委員会で鋭意具体的な案の研究を進めておるわけであります。まだ最終的に結論を得ておりませんから、ここで申し上げる段階になっておりません。今回の国民健康保険改正案は、それに到達するまでの段階的な改正でございますが、私は、この家族七割給付を実施いたします場合におきまして、多年の要望であります四割の定率国庫負担の実現ということは、これは抜本的な改正に至る前の段階におきましてもぜひ必要な改善策である、かように考えまして本国会に提案をし御審議を願っておるところであります。   〔松山委員長代理退席、委員長着席〕
  312. 滝井義高

    滝井委員 総合調整の答えがないのですが、七割給付を実現するために二割五分を四割にするのは抜本改正の前段階である。私たちは、政府管掌健康保険を百五十億予算を組んでおるんだから、それを二百億にふやしてもことしは一文の予算の計上も要らないんだからと言ったけれども、それは抜本改正になるからのむわけにまいらぬと、人のときにはひじ鉄砲をくらわしておいて、自分のときにはこれは前段階でございます。そういう言いわけはないですよ。そういうのを代官様のことばというのですよ。そういうことはわれわれは納得できないです。だからそういう答えをするならやめます。やめて党に帰ってこんな国民健康保険は通さぬようにやります。そんな不誠意な答弁なんかありません。総合調整の答えはないじゃないですか。
  313. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 健康保険法の問題につきましては、滝井さんもよく御承知のとおり、大幅な国庫負担、できれば二百億程度の国庫負担をやるべきである、こういう社会保険審議会等からの答申がございまして、私も、財政きわめて困難な際でありましたけれども、できるだけの努力を払いまして、二百億という御要求に対して百五十億を計上した、こういうことでございまして、定率化の問題につきましては、これは制度の根本的な改正の際に前向きで検討いたしましょう、こういうことを申し上げておるのでありまして、決して答申の御趣旨に大きく違うものではない、こういうことに私は考えておるのでありまして、その点につきましては、先般当委員会におきましても御協力いただきまして円満に三党共同修正で衆議院を通った、こういうことであるわけであります。で、いまの医療保険全体の制度の抜本的な改正につきましては、先ほど来申し上げましたような基本的な考え方を事務当局に指示いたしまして、その具体策の成案を目下急いでおる段階でございます。まだ結論が出ておりませんのでいま発表する段階でございませんが、これは成案を得次第審議会におはかりをし、そうして国会の審議をお願い申し上げ、昭和四十二年度の予算編成を目途にいたしましてそういう努力をいたしたい、こう考えております。また、当委員会におきましても、国庫負担定率化等を含めて昭和四十二年度にはぜひこの抜本的な改正をやれ、こういう附帯決議もついておりますので、この方向で努力をいたしたいと考えております。
  314. 滝井義高

    滝井委員 二代も三代も前、小林さんのとき総合調整というアドバルーンを上げて、その内容のプール制というものを具体的に世間に訴えたわけです。これは抜本改正の一環としてやったんですよ。当時その総合調整の内容が言えたのに、いまになったら口をふさいで、総合調整の内容を何も言わぬというのなら、私たちも国民健康保険については待ちましょう、こういうことです。野党というのはそういうものなんですよ。こういうものをたてにとって大臣の口を割らなければ、割るときはないのですよ。野党というものはそういうものなんです。だから、大臣が口を緘して言わぬなら、われわれもここですわって待つのですよ。待ちましょう。これは一番大事なところなんですから。何もそんなにおそくまでやる必要はない。総合調整をやると自分で言われておって、その内容は何かわからぬと言うのなら、総合調整をやらぬということを言うてくださいよ。  私はいま、定率化のことを言っているのじゃないですよ。総合調整のことを、ひとつ総合調整というのは一体どういうことですかということを言っている。総合調整とは、格差を是正して、各制度の長期的な安定と前進をするのが総合調整ですと言ったって、そんな抽象的なことでは、頭が悪いからわからぬですよ。総合調整というのは、たとえばプール制をとるならとるとか、総合調整の中には、日雇いの健康保険と政府管掌を統合することを総合調整というんならいうんだとか、という内容ぐらいは明らかにしないと——何にも言わぬで、総合調整はいま牛丸委員会でやっております。審議会の議を経て、いずれ国会に出しますと言うのなら、結論は出ている。国会というところは、結論が出たのを持ってくるところじゃない。国会は結論の出てくるのを待つところではないと、少なくともわれわれは思っておる。総合調整というものはこういう方向だと、方向ぐらい示さないと、東に行くのか西に行くのかわからぬような、波間に漂う小舟みたいな、状態では、われわれは納得できないですよ。しかも、国民健康保険というものを、これから総合調整の中でどういう位置づけをするかということは、きわめて重要なことなんですよ。ところが、それを言わぬというのは、これも総合調整が出るまで待ってもらいましょうというのは、論理が通っていないですよ。  委員長、きょう、私もこれでやめますよ、総合調整の内容も何も言えないんなら。私としてはこれを通すのは反対だ。党に帰って党議決定しますから。強行するならやってください。
  315. 田中正巳

    田中委員長 速記をとめて。   〔速記中止〕
  316. 田中正巳

    田中委員長 速記を始めて。
  317. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 大臣が申し上げました省内の次官を委員長とする医療保険の基本問題の委員会におきまして議論されております中身につきましては、こういう問題があるわけでございます。順序立てて申し上げます。  第一に、制度の体系に関する事項といたしまして、制度の統合、それから各制度間の総合調整、いわゆる健康保険についての経営主体、それから最後に、組合制度のあり方。制度の統合の問題につきましては、これは全部の制度を一本化するか、あるいは社会保障制度審議会医療保障の勧告にありましたように被用者保険と地域保険のそれぞれについて統合するかという問題。それから第二番目の各制度間の総合調整の問題は、先ほどお話し申し上げましたように、いわゆる老齢者、失業者につきましてどのような取り扱いをするか、プール資金の構想等もこの総合調整の中には入ってくるわけでございます。またことばをかえていえば、現在市町村が国保のアンバランスな経営をやっておりますのを、どういうふうに経営主体を変えるかということになれば、これも総合調整の一つになるかと思います。それから組合制度のあり方につきましては、現在の政府管掌、組合管掌、共済組合といった制度につきまして、組合主義に徹するかどうか。これもかつて社会保障制度審議会では組合主義をうたったこともございます。そういう点も考えて、これをどうするかという問題が第一番目の制度の体系に関する事項でございます。  それから第二番目は、申すまでもなく給付の基本的なあり方に関する事項でございます。第一は、給付水準の最終目標をどこまで持っていくか、社会保障制度審議会では九割という線が出ておりますが、これを年次的にどういう方向に持っていくかという問題があるわけでございます。第二番目に、カバーすべき医療給付の範囲をどこまでするか。これはもちろん差額調整等の問題も含んでございます。三番目は、一部負担のあり方をどうするか。現在国保におきましては七割、五割、政管において十割、五割という、問題の一部負担をどうするか。また一部負担のあり方につきましても、一律一部負担か、あるいは対象による一部負担かという問題があるわけでございます。それから第二の基本的なあり方の問題の中に、むろん療養費払い制度の再検討の問題もあります。現在きわめて限られた範囲での療養費払い制度を採用いたしておりますが、制度の問題を論ずる場合は療養費払い制度を再検討する必要がある、こういうことでございます。  それから第三番目は、負担の基本的なあり方に関する事項でございまして、保険料の国庫負担及び患者負担の負担区分を明白にさせる必要がある。それから二番目に保険料の負担の公平を考えなければならない。むろん事業主負担の公平をどうするかという問題も含めます。それから三番目に、基本的に、国庫負担を医療保険としてどのように持っていくか。第一番目については、保険料負担と国庫負担と患者負担の三者の負担のあり方で、いま申し上げましたように、最終的に定率国庫負担をどうするかという問題があるわけでございます。  それから、その他の問題として、公費負担医療制度、結核予防法、精神衛生法等で公費負担医療制度がありますが、それと医療保険との関係をどうするか、現在問題が非常に混淆いたしておりますが、それをこの際はっきりすべきではないかという問題があるわけでございます。  最後に、診療報酬のあり方、支払い方式の再検討等も出てくるわけでございます。  以上大体五つくらいの主要な柱につきまして、それぞれの問題について、長所も短所もお互いに議論し合い、抜本対策として打ち出す構想は、このうちのどこを主体に置いて、どういうふうに持っていくかという点を検討いたしているところでございます。
  318. 滝井義高

    滝井委員 そういうことは、いま聞かなくたってもう全部三月五日に書いてある。いまあなたは項目だけ言ったんですよ。もうそれは七人委員会で論議されているんです。その中の、あなたが二番目に言われる健康保険制度の体系に関する事項の中の各種医療保険制度の統合というのはとてもむずかしい。これはできれば一番いいけれども、その前に各種の保険制度の総合調整をやりたい、こういうことでしょう。統合の前の段階ですよ。統合の段階しかいけないというのが大臣答弁なんです。だから、その総合調整というのは一体どうやりますかということを聞いている。小林さんのときには、プール制というものを出したけれども、それはいまは時代おくれだとあなたは答弁をした。それで、いま総合調整とはどういう内容のものですかと聞いておるのです。やっておるならやっておることを言ったらいいじゃないですか。検討しておるなら検討しておると言ってどうして悪いのですか。いま言った中には、私がこれから聞くものもずいぶんあります。いまあなたの言ったことも、私のノートに全部書いてある。それは三月五日の健康保険のニュース、それから社会保険旬報、みんな載っていますよ。三百八十一号、八百十七号。みんな聞かなくたってノートに書いてある。そういう項目を私は聞いておるのじゃないのです。その項目の総合調整の内容というものはどういう構想ですかということを聞いておる。構想がいろいろあるなら、いろいろ述べたらいいじゃないですか。その中でどれをとるかは審議会にまかしたらいい。それを聞いておるんです。あなたは牛丸委員会の重要なメンバーだ。どういうことをやっておるか言ってごらんなさい。言ったって、何にも恥ずかしいことはないはずです。もし私から笑われるようなことをやっておれば、恥ずかしいかもしれませんが、いまやっておる項目を言うことは恥ずかしいことではない。もうこれは三月の初めにみんな雑誌に出ておりましたよ。だから、総合調整をやっておるのですけれどもと、あなたのいま言うそんな子供だましで私はだまされぬですよ。総合調整の内容を言いなさい。そこだけは何かあたかもうまく切り抜けようと思って、老齢者とか失業者の取り扱い、プール資金の構想もあります、そんなことは、ひとつも厚生省の発表したものの中には書いてないですよ。雑誌の発表した中にはない。それこそ具体的に内容を言いなさい。プール制を言ったら、それはもう時代おくれだという答弁をあなたはしたでしょう。それは小林さんの時代のものだから、いまはもう時代が変わった、鈴木さんの時代だ、月まで人工衛星が行こうといういまの時代に、総合調整というのは、どういうことになるのですか。それが言えなければ、もうあした一日与えますから、あさってでけっこうです。それから先はまたやりましょう。よく大臣と相談され、牛丸君とも相談をして、何なら牛丸君に来てもらってもいいですよ。ひとつ牛丸事務次官を呼んでいただきたいと思います。
  319. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 総合調整の中身といいますものをはっきりさせろという御意見でございますけれども、総合調整のあり方自体については、考えられるいろいろな問題があることはもちろんでございまして、小林大臣のときに試案として発表しました中身は、まさに総合調整の一つの試案でございますが、それ以外に、たとえば現在の各保険につきまして入院だけを取り上げて、入院につきまして別個の制度をつくるとか、あるいは現在の制度はそのままにしておいて、老齢者だけの特別の保険制度をつくるとか、そういう問題が幾多あるわけでございます。これは老齢者に限らず、たとえば乳幼児につきましては、普通の成人の場合と違った制度をつくるとかいう問題は、もうすでにしばしば学者の方々の中でも意見として出ておるところでございまして、そういう問題を含めて抜本対策のときにどれがいいかということを検討するわけでございます。その総合調整を絶対的なものというふうに私どもは考えておるわけではないのでございまして、あるいは、総合調整がいいのか、場合によっては一本化という形がいいのかという問題もあげてやはり今後の検討事項ということで検討いたしておる、こういうことでございます。
  320. 滝井義高

    滝井委員 子供じゃないですから、総合調整をやるからには財源措置というものを考えなければいかぬわけですよ、そうでしょうが。そうしますと、小林さんの構想というものはプール資金というものをつくる。そのプール資金というものは老人やあるいは失業者のために使う。しかし、その金というものは各種の保険から持ってくるという構想なんですね。いま、あなたのように入院だけを取り上げるとか、あるいは老齢とか乳幼児を別個の制度にしようというような場合には、老人はどこに多いかというと、これは当然国民健康保険に多いわけです。そうすると、国民健康保険からそういう老人だけを持ってくるということだって考えられる。そうしますと、これは財源は一体どうするかという問題が当然一番先論議されるのですよ。そういう財源問題もあわせてやはり言うなら言わなければいかんですよ。そうでしょう。しろうとじゃないのだから。もう少しそこらあたりの総合調整——これだけ大臣か国会の予算委員会から社会労働委員会健康保険を通すときまでは総合調整、総合調整というにしきの御旗を掲げたでしょう。だから、そのにしきの御旗は単なるアドバルーンであってはいけないわけです。いままでわれわれはそれでごまかされてきた。いつもアドバルーンをあげて、そのアドバルーンどおりやるであろうと期待をして法案を通してきた。ところがそれは全部アドバルーンで、六月か七月になって改造するときは、あと足でけって全部、厚生大臣はやめていったじゃないですか。そういう過去の扱い、過去のふしだらな状態をいまの保険経済が赤字のときに繰り返してはいかぬと思うのです。これは野党であっても与党であっても同じことです。すべての国民がそう思っておるのです。だからその内容くらいここで明らかにできぬというなら、それは話にならぬわけですよ。何で国民健康保険を一生懸命審議しますか。そんな海のものとも山のものともわからぬような医療保険の状態の中でこういう大改正をやるのですから、これは過渡的、前段階のものだということは、これは皆さんのほうはそう思っているかもしれないけれども、われわれはそう思っていない。だからもう少し財源もひっくるめて総合調整をやるときはこうだ——とても統合はやれぬでしょう。  それならここでちょっと先に聞きますが、日雇い労働者健康保険は一体どうするつもりですか。
  321. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 前の小林大臣のときの試案といいますものは、プール資金をつくると同時に、やはりある程度国のほうも資金的な手当をすべきだというふうな中身になっておったわけでございますが、総合調整をやる場合に、むろん保険料の負担がどのようになるかということは十分検討しなければならない問題であります。私どもも検討をいたしておるわけでございますけれども、それをどのような形にするのかということは、ただいま申し上げる段階ではないと思います。  それから日雇い労働者健康保険の問題をどうするかというのも、むろん総合調整なり統合の問題として考えなければならない問題でございまして、これも現状のままでいくのがいいか、あるいは制度的にもう少しよりよい方法で給付内容をよくしていく方向で考えるのがいいかという問題も含めて検討いたしておるところでございます。
  322. 滝井義高

    滝井委員 この日雇い労働者の健康保険というものは、御存じのとおり三百二十五億の借り入れ金をしておるのですよ。そうして保険料は幾らかというと、五十二億しか集まらないのですよ。保険料の六倍の借り入れ金をしておる。国庫は三割五分から一歩だって動かないでしょう、ことしは。そうしますと、これは来年は一体どうなるか。これは来年の抜本改正でおやりになる、こういうことを言うわけでしょう。現実に日雇い労働者健康保険というのはこういう実態で、われわれは黙って見ておるわけにはいかぬわけです。総合調整という問題が出るときにはこういう低所得階層の問題というものも同時に問題にしていかなければならぬわけです。これは現実の問題ですよ。何もそれはあなた方が審議会で答申が出てこなければ何も発言ができない。それまではあなた方が黙っておる。おしのような状態をわれわれもおしのように黙って見ておらなければならぬということは許されぬと思うのですよ。審議会はたな上げしても国会はたなあげしておくわけではないから、三百二十五億の借り入れ金をして予算措置をしてやっておるから、したがって、この運命がどうなるのかということを問うことは当然です。問われたらあなた方が審議会にはかるなら早くはかって、国会に答えなければならぬわけです。何ぞ来年を待たんやです。そうでしょう。こういう日雇いの問題だって、火がついておる。現実に国会で日雇い労働者の失業保険が出てきておる。当然健康保険と関係ありますよ。そうすると、そういうものも何も答えももらえずにほおかぶりして、ただ入院について別個の制度を考えております。それから子供の問題も考えておりますということだけでは、それは子供だましですよ。そういう制度を言うのならば、やはりいまとしてはこういうものと、こういうものと考えております。問題点はここにあります、まだ固まっておりません、財政的にはこういう二つ三つの方法が考えられます、このくらいの誠意のある答弁をしなかったら、あほらしくてこんな夜おそくまでやる気はしないですよ。それはあなた方がそういうことさえもやっていないのならば、いままで一体何をしておったかということです。もう大臣は何回、総合調整ということばを使いましたか。予算委員会から今日まで数えてごらんなさい。速記を読んでごらんなさい。屋根まで届くような総合調整のことばが連なっておるじゃないですか。そうして、その内容は何かというと、格差の是正です。長期安定的な制度にしたい、当然のことですよ。そんなものは総合調整でなくてもいまの制度だって格差のないようにしなければならぬ。当面の段階的な対策でも格差のないような政策は立てられるわけですよ。だから、もう少し学問的に、科学的に、行政官らしい答弁をしてくださいよ。どうもそういうあいまいな馬に乗っておる鈴木さんもあぶないものですよ。気の毒ですよ、私に言わせれば。もう少しはっきりしてください。
  323. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 抜本的な制度の検討事項として、先ほど申し上げましたのは、われわれが審議会に臨む態度として最終案を固めるときにそういう中身を検討したいということでございまして、個々の問題につきまして、制度的な検討あるいは財政的な検討を現在作業を続けておるわけでございます。これをこの席で明らかにしろとおっしゃいましても、私どもとしましてはまだ成案が得られないのに、その過程を御報告をするということは適当でない、この際は適当でないというふうに考えておりますので、まだ成案を得つつある段階であるということしか御報告ができないことをまことに残念に存じます。
  324. 滝井義高

    滝井委員 いや、検討しておる内容さえも言えないという、そういう秘密主義がぼくらにはわからぬです。何も検討してないなら検討しておりません、それでいいですよ。しかし、検討はいたしております。牛丸委員会で鋭意検討しております。その検討しておる内容さえも言えぬという秘密主義を国会でとるなら、秘密会を要求します。委員長、秘密会を要求します、そんな検討しておることさえ言えなかったら。それなら私たちもこの審議はできませんよ、率直に言って。どうしてそんなに秘密主義にしなければならぬのですか。だれかあなたにかみつく者がおるのですか。あなたの命でもとる人がおるのですか。だれかおるのですか。審議会はまだないのですよ。何もないのです。新聞には堂々と、大臣としばしば相談して発表した。あの十くらいの項目のことは、あなた方は全部発表しておるのですよ。新聞にも雑誌にもみな発表しているんだ。知らないのはわれわれだけだ。もったいぶって、あたかもいま初めて発表するようなぐあいに言っておるけれども、そんなものはみんなもう三月に出てしまっておるじゃないか。だから、もう少し総合調整という内容をはっきりしなかったら話にならぬのです。何も総合調整というのは一つじゃないでしょう。プール制というものが一つあった。しかもそれは御説明になったように、他の保険から幾分の金を集めてくる。それから失業者や老人にも幾分の軽い保険料を負担させる、国も出す、こういう形でやったのでしょう。それが総合調整だったのですよ。ところがそんなものは古いというから、それ以外に一体総合調整というものはどういうものがありますかということを聞いているのです。ところがそれは言えませんということでは納得ができないのです言ってくださいよ。がんばるようだけれども、こんなときがんばらぬとだめです。くせがつくのです。国会はいつも秘密主義でいけるというくせになるのです。言わなければいかぬのです。私が問題にするのは、予算委員会で堂々と大蔵大臣が言っているのですよ、総合調整をやるのだと。しかも総合調整はなまぬるいので、できれば統合をやりたいと福田構想を発表しているのだから、いずれ福田大蔵大臣に来てもらうためには、あなたのほうの構想を聞かなければいかぬわけですよ。いまここで主計官に総合調整は何だということを聞くことは、大蔵大臣の存在を無視するということになるから私は遠慮しているのです。大蔵大臣は歯どめとして三つ出しているのです。どういうものを出していかるというと、審査を強化するということです。医療機関については審査をやる。いわゆる需要体制については、総合調整をやりたい。しかし、これよりか統合のほうがいいのじゃないかこう言っているのです。それから患者に対しては歯どめとして乱受診を防ぐために一部負担を断行する、これは福田構想の三要素ですよ。大蔵大臣はきちっと予算委員会で私に答弁しているのだから、そういうように大蔵大臣が総合調整を明白に言っているのに、厚生省がそれを、まだ海のものとも山のものともわからぬ、何が何だかわからぬというようなことでは許されぬわけです。大蔵省でさえもそういって、主計局は医療費に対する構想をいろいろ発表しているのです。大蔵省があれほどの文書を発表できるのに、厚生省が何にも発表できぬなんというばかなことはないです。大蔵省は審議会も何もあったものじゃない、どんどん発表していますよ。あなたのところが何も発表できぬ、審議会はまだ国会にも出しておりません。できるものかできないものか、わかりもしないじゃないですか。そういうときに総合調整の構想も言えぬなんという、構想はABCDEと幾らあってもいいです、四案あろうと五案あろうと十案あろうとかまわぬです、あなたが考え得ることを言ってもらったらいい。こういうことを考えられます、こういうことを考えられますということ、その場合の財政措置はこういう方法がございます。こういう方法がございますということを言ってくれたらいい。それから先は、そのどれをとるかはあなたのほうの判断と審議会にまかしたらいい。それを何にも言えないということはおかしいです。そんな国会をばかにしたことはないですよ。これは何も外交問題じゃないですから秘密にする必要も何もない。
  325. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 私どもが発表しないというふうに申し上げておるわけじゃございませんので、ただいま発表することは適当でない、いずれ発表する機会を見た上で発表したい、それまでの間なお検討するということを申し上げておるわけでございまして、ただいまのところは発表できる段階にはなっておらないわけでございます。
  326. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、それは大体いつごろまでに出るのですか。
  327. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 ただいまのところは臨時医療保険審議会に具体案をもって諮問をしたいというふうに考えておりますので、臨時医療保険審議会が成立しまして委員が選考されました暁においてその案を発表するという考え方を持っております。
  328. 滝井義高

    滝井委員 その案を発表するのじゃなくて、いつまでにできますか。およそどの程度かかれば牛丸委員会というものは総合調整に関する構想ができるのですか、こういうことを聞いているのです。
  329. 田中正巳

    田中委員長 暫時休憩いたします。    午後九時三十一分休憩      ————◇—————    午後九時四十七分開議
  330. 田中正巳

    田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続けます。滝井義高君。
  331. 滝井義高

    滝井委員 抜本改正の中における一番重要な総合調整の問題については、カキのように口をふさいで厚生省はそれを明らかにいたしません。そこで、泣く子と地頭に勝てぬということばがございますが、私は、きょうはあえて泣く子と地頭に挑戦しなければならぬわけです。そこで挑戦いたしますが、きょうの段階ではこれは答弁を求めません。そこで、一日、二日冷却期間をあげますから、保険局長大臣、牛丸さん、よく相談をして、健康保険か本委員会を通過するまでに——総合調整のいろいろ構想があると思うのです。いろいろある構想、考え得る構想をひとつ明らかにしておいていただきたいと思います。それは、大蔵大臣にいずれ当委員会に来てもらいますから、大蔵大臣も総合調整なり統合の問題を言っておりますから、この問題をどうしても大臣に聞かなければならぬ。そのときまで留保いたして、きょうは先に進みます。  そこで、総合調整とも幾ぶん関連をしますが、国民健康保険の運営主体というものは、いまの市町村のままで支障がないのかどうかということです。
  332. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 私どもは、現在の国保の運営は、現段階では市町村で運営するのが適当だというふうに考えております。
  333. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、抜本的な対策の場合においてもそういうことになるのかどうかということです。御存じのとおり、全国の市町村というものは、財政的に非常はアンバランスが強いわけです。しかも最近における人口移動の状況というものは、午前中に藤山経済企画庁長官を呼んでお尋ねしたように、ますます老齢化傾向が激しくなりつつあるわけです。そこで、運営の主体というものを、市町村から県あるいは国家管掌の保険に移せという論が最近ごう然と起こりつつあるわけです。この際、料率その他の改定の問題と、あわせて運営主体の問題というものを当然討議すべきだと思うのです。これはあなた方は討議したのかどうかということです。
  334. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 現段階で市町村運営が適当であるというふうに私が応対いたしましたのは、個々の市町村の財政的なアンバランスがあることは御指摘のとおりでありますが、最近の決算その他を見ましても、保険料引き上げその他に伴いまして財政事情は多少好転しつつありますし、また、アンバランスのある点につきましては、財政調整でもってある程度カバーしていく方法があるということを申し上げておるわけでございますが、しかし、医療保険制度全般の根本的な検討を行なう際には、やはり国保の経営主体につきましては、国がいいか市町村がいいか、あるいは中間段階の都道府県がいいかということは、十分検討しなくちゃならない問題であるということは先ほど申し上げたとおりでございます。ただ、その段階におきまして、都道府県段階で経営に移するということは、これは財政調整を国でやっておる限りにおいては、都道府県に移しても、あまりそうたいした効果があるかどうかにつきましてはいろいろと検討すべき点も多いのではなかろうか。したがいまして、国保の経営主体を論ずる場合には、国か市町村かという二者択一を選ばなければならない問題も出てくるわけでございますが、いまこの段階では私は市町村でやるのが適当である、こういうふうに申し上げておるわけでございます。
  335. 滝井義高

    滝井委員 国保の経営主体の問題について、県が客観的に見て無理だ、市町村か国の二者択一だ、それほどまでに国民健康保険の問題については答弁ができるのですよ。ところが、総合調整の問題になりますと、そこまで言えないというのがおかしいですね。  そこで、次に入りますよ。そうすると、御存じのとおり、いま国民健康保険組合、それから共済組合、健康保険組合とありますね。こういうところは、財政状態が、日雇いとか政府管掌の健康保険とか国民健康保険に比べて、いわば運営主体が公のものであるものに比べていいですね。したがって、政府としては、財政負担を軽くするという意味も加えて、組合主義というものを拡大していく意思があるのですか。
  336. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 その点は方針の問題だろうと思うわけでございまして、やはり現在の組合主義をそのまま堅持していくのか、あるいはその組合主義をさらに再検討する方向で考えていくかということについては、なお慎重に検討しなければならないと思います。
  337. 滝井義高

    滝井委員 抜本改正をやる場合に、その問題は一体どういうことになるのですか。総合調整との関連はどういうことになるのですか。
  338. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 組合主義といいますのは、もともと発生史的に、やはり大企業につきましては健康保険組合をもって処理していく、また国家公務員共済組合等につきましては、これも歴史的な理由がございまして、ずっと長い間伝統的にこのような形で運営されてきたわけでございますが、しかし、わが国の医療保険制度を根本的に再検討しなければならない場合に、組合主義オンリーが適当であるとは必ずしも言えないというのが私ども考え方でございまして、しかし中には、やはり組合主義に徹すべきだという御議論を持っておられる方も多々あるわけでございますので、そういう点はいま早急にここで結論を申し上げる段階ではない、こう私どもは考えておるわけでございます。
  339. 滝井義高

    滝井委員 厚生省としては、一体共済組合とか健康保険組合とかいうのを将来ずっと残していく方針なんですか。大臣は、格差是正をすることが総合調整の一番大事なところである、中期経済計画においても社会保険の格差を是正しなければならないということは言っておるわけです。その場合に、格差があるのはどことどこに格差があるかというと、一番典型的には、組合の保険と政府管掌の健康保険、政府管掌日雇い健康保険との間に格差があります。あるいは国民健康保険との間にある。その格差を是正するためには、組合との関係というものを調整せずして総合調整はできないはずです。これはどういう方向でやるつもりですか。
  340. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 現在健康保険法におきましても、健康保険組合につきましては、付加給付という形におきまして料率その他も政府管掌保険と変わった取り扱いをいたしておるわけであります。したがいまして、大企業の組合においては——と言うよりは、大体組合主義をとっておりますところは、付加給付組合として、政府管掌の十割、五割を一つの最低のランクにいたしまして、何らかの家族給付なりその他の付加給付が行なわれておるわけであります。したがいまして、抜本問題の検討の際にも、付加給付をどのように考えていくかということが、あわせて議論の対象になってくるわけでございます。政府管掌健康保険の中身をよくしていくということと、あわせて付加給付の内容をどのようにして考えていくかということが、あわせて論議されなければならないというふうに私どもは思っておる次第であります。
  341. 滝井義高

    滝井委員 いやいや、それじゃ総合調整の答弁にならない。付加給付をどう考えるか、政府管掌の給付内容をどう上げるかということにつきましては、個々の組合保険なり政府管掌健康保険の問題であって、両者を橋渡しをする総合調整の問題とは何も関係はないわけです。組合管掌の保険と政府管掌の保険との総合調整のやり方は、どういう方法でやりますかということです。財政的にも、また、具体的な方法論としてもそれを聞いておるのです。
  342. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 抜本問題の際に、その問題を含めて検討したいということを先ほどから申し上げておる次第でございます。
  343. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、健康保険組合についてもタブーだ、こういうことですね。それじゃ、いま巷間に国民健康保険と政府管掌健康保険あるいは健康保険組合の家族と統合しろという議論が具体的にあらわれておりますが、これについてはどう対処する方針ですか。
  344. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 いろいろと、そういう御主張をする場合にも立場がそれぞれあると思います。たとえば地域保険を主体にしてやるか、地域保険を主体にして統合していくという議論が行なわれたり、あるいは地域保険を全然考えずに別個の形で考えていくという考え方も成り立つと思います。したがいまして、これは長短いずれもあるわけでございますので、あわせて全般的な問題として考えていかなければならないと思っております。
  345. 滝井義高

    滝井委員 どれを聞いても具体的なものは何も出てこないのですね。根本的な検討に関連をいたします、こういうことになって、ぬかにくぎより悪いですな。ちっとも答弁が出てこない。医療需要体制の問題は、今まで三時間ぐらい質問したけれども、全然白紙です。それならば、統合論をとる場合に、具体的には統合というものは——総合調整じゃありませんよ。統合論をとる場合には、日雇い労働者健康保険と政府管掌保険との統合というのは可能ですか不可能ですか。
  346. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 現在日雇い健康保険は、法律は日雇い健康保険ということになっておりますが、政府管掌健康保険の中で勘定を別にして運営されておるわけでございます。ただ、給付内容が健康勘定の場合と違っておることは先生御承知のとおりでございまして、日雇い勘定が非常な赤字をかかえていることも私ども憂慮いたしておりますので、この日雇い健康保険につきまして今後どのように処理していくかということについては、政府管掌に入れるのがいいのか、あるいはその他の保険に入れるのがいいのか、あるいは全部統合するのがいいのか、その点も全部含めまして検討しておるわけでございます。
  347. 滝井義高

    滝井委員 検討はしておると言うけれども、さいぜんの大臣答弁では、総合調整がやれればいいんで、とても統合までは困難ですという御答弁だったのです。検討しておるだけです。困難だからできないわけでしょう。そうすると、日雇い健康保険というものは、将来、いまのままでいけば三百億をこえる赤字があって、もはや保険の体をなしてないわけですね。保険の体をなしていないものを一体あなた方、どうしようというのですか。これは抜本改正以外に、現実に火の燃えておる問題ですから消さなければいかぬですよ。これはどうするつもりですか。四十三年まで待てなんて言っても、これは待てないですね。どうするつもりですか。
  348. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 日雇い健康保険改正をやりたいということで、私ども、しばしばその中身につきまして論議を重ねたわけでございますが、何ぶんにも非常に低所得の多い日雇いを対象にする保険制度でございますので、保険料の引き上げもなかなか困難であるというようなことで、現在まで非常に多額の赤字をかかえておるような状況になっておるわけでございます。むしろことばをかえて言えば、日雇い健康保険の問題がさしあたって四十二年度からの焦眉の問題として、抜本改正の一環として考えなければならないというふうに私ども考えておるわけでございまして、やはり全体の医療保険の問題の一環として考えていく、日雇いだけの対策として終わるべき筋のものではないというふうに考えているわけでございます。
  349. 滝井義高

    滝井委員 もう何もかにもみんな抜本改正、しかし、同時にまゆは焦げておる。焦眉というのはまゆが焦げることです。まゆが焦げると頭の毛まで焦げてくるのです。前々任者の小林厚生大臣は、日雇い健康保険の赤字の問題についてここで質問したときに、いや滝井君、そんなにこれは重大な赤字だということを私は知らなかった、来年は、滝井君、全部赤字は政府の負担で、国庫負担でとってやっていくのだということを私に言明しておったのですよ。ちっともとっておらぬ。三割五分から一つも前進しておらぬわけです。三百億から全部借り入れ金です。小林さんの言っておったこととまるきり違っておる。速記を調べてみてもわかりますが、小林さんはそう言っておった。四十年度予算を編成するときに、そういう形をとるということを言っておった。そういうことは何もない、もとのもくあみです。借り入れ金でまかなっているだけでしょう。今度あなた方は、四十二年度には抜本改正をやる——きょうは黙って下がっておきますがね、できなかったときに今度は責任をとらせますよ。何もかにもいいかげんにこの場さえのがれればいい、うまく国民健康保険を通せば、あとは野となれ山となれというようなものじゃないですよ。とにかく医療需要体制については全然白紙、何らの前進的な答弁が出てこない。すべて根本的な改定を待たなければ、需要体制というものはわからないということですね。星雲状態です。私、それをよく肝に銘じておきます。  次は、御存じのとおり、医療費の増加を抑制しようとする、少なくとも悪い意味でなくて、いい意味で少なくしょうとすれば、低減させようとすれば、予防活動というものが非常に必要になるわけです。予防にまさる治療はない、こういうように昔から言われているわけですね。あなた方の先輩の高野さんという予防局長か何かおりましたが、その人がやっぱり結核問題に取り組んで、結核の予防について非常に成果をあげたことを私は学生のときに読んで知っています。そうすると、保健所の活動と医療機関との関係ですね、これをあなた方は一体どう考えているのかということです。医療問題を論議するときに、いままではほんとうに保険の問題とかなんとかいうことだけが考えられて、非常に幅広く、非常に深く総合的なものが考えられていないのですよ。そこで私は、きょうはこういうように闘志を燃やしてやっておるわけです。私はあなた方を少し教育しなければいかぬという気持ちですよ。もう厚生省は、近ごろはふんどしがゆるんでだめだ。ゆるふんになっているという気持ちです。ちっとも日本の社会保障を前進させようとする情熱がないですよ。みんな見ておっても、失礼な言い分だけれども、情熱がない。もう少し情熱を持ってもらわなければいかぬのじゃないか。なぜ私がこういうことを言うかというと、御存じのとおり、この予防衛生活動というものは非常に重要なんですね。これを徹底すると、医療というものの面に出てくる患者の数は非常に少なくなってくるわけです。その面が、保健所の医者がいないために不徹底だという面もありますが、たとえば伝染病予防の関係です。これで鈴木大臣にぜひ聞いてもらわなければならぬのは、予防接種です。これは国民健康保険の段階で予防接種のことなんか何で言うかというけれども国民健康保険というのはコミュニティーにおける保険なんです。だから、地域活動に非常に密接に結びついておるわけです。その場合に予防接種です。先日、私に二月ころ、夜中に北九州の吉田市長から電話がかかってきた。何でかかってきたかというと、滝井君、おまえけしからぬ、代議士に出て十四年一生懸命厚生行政をやっておるが、大事なところをおまえ落としておるぞという電話です。夜中なんですよ。びっくりして飛び起きた。何かと思ったところが、いまおれは予算の査定をやっておるというのですよ。予算の査定をやっておるが、このおれのところには小学校、中学校、保育所、幼稚園、それから生活保護家庭と、二十万人に日本脳炎の予防接種をやらなければいかぬ、ところが、去年までは一回一ccが百二十円だった、そうして二回目は〇・一cc三十円でやった、ところがことしはどうなったかと言うと、一回一cc百五十円に手数料が五十円要って二百円、二回目は、いままでは〇・一cc二回目にやればよかったのが、今度は二回目は一ccやることになったのだ、したがって、百五十円プラス五十円で二百円要る、こうなると、とても小学校、中学校、保育所、幼稚園等に、金が四百円もかかるのだからうんと負担させなければいかぬ、そうすると、みな予防接種をやらぬことになる、そうすると、真夏になると日本脳炎が流行してきて、たいへんな市の出費が要るのだ、君、こういうところを何とかしてくれぬか、十四年も出て何をしておる、こう言う。夜中に電話でたたき起こされた。夜中によく往診でたたき起こされておるから、そう苦痛でもないけれども、こういうことで起こされた。そこで、私、すぐあくる日の朝早く厚生省に電話してみたところが、ことしはだめです、日本脳炎の補助金の予算はついておらぬと言うのです。それは、インフルエンザや何かはあるらしいのですが、よけいについておらぬ、だからあれはだめだ、こういうことなんですね。私は、日本の医療費というものは、こういうところから積み上げてこなければだめだという意見なんです。単にわれわれが保険行政の赤字に目がくらんでおるうちに、もはやそういう予防接種というものは放置されてしまっているということですよ。だから、厚生行政は底抜けですよ。こういうところをもう少しやって、日本脳炎がはやらないような態勢をつくれば、日本脳炎の医療費というものは要らないわけです。ところが、北九州ではその金が出せないのです。そこで、何とかやりくりをして、一cc二百円かかるのを一cc百二十円と、二回目を八十円くらいで何とかやるような態勢を整えた。あとで聞いてみたら、もう無理やりしてそうやった、こういうことなんですね。こういうように、保健所には医師が不足をして本来の予防のサービス活動ができていない。保健所というものは、全国で七百有余あるというだけです。いまや保健所というものは、保健のサービス機構から監督機構に転化してしまっておるでしょう。だから、地方の旅館とかなんとかの人に聞いてごらんなさい。おそろしいのはどこかというと、消防署と税務署と保健所と言いますよ。消防署は何でおそろしいかというと、建築で最近やかましい。税務署は税金。保健所は、台所や何かにさっさと来て検査して、優とか良とかいうような紙を張っていきます。その監督がうるさい。だから、おそろしいのはこの三つだと言っている。いま保健所は監督行政になって、サービス的な機能は非常に低下しておる。なぜか。保健所の中心である技術者がいないのです。青森や秋田へ行ってごらんなさい、充足率は二割五分か三割でしょう。そうでしょう。治療よりか一番大事な予防の面について、大きな欠陥があらわれてきているわけです。したがって、そういう状態ですから、厚生省は予防接種の予算なんというものはとれていないわけです。こういうことがここで指摘をされないからぼやっとしておるのだから、これは指摘しておきます。こういうところをやはり大臣がきちっと固めることですよ。その上に日本の医療保険制度がそびえ立つという状態になっていないのですね。だから、大事なところは全部抜けてしまっている。抜けるから、みんな医療機関に殺到せざるを得ないのです。唯一の救いは医療機関、唯一の救いは健康保険であり国民健康保険である、こういう形になってしまったわけですね。これは保険局長に文句を言ってもしかたがないが、あなたのほうにみんな洪水のごとく殺到してしまっているということです。だから、どこかで堤防を築いていかなければいかぬわけですよ。その堤防は、第一線の保健所から築いていく以外にないでしょう。それがやられていない。いま私は日本脳炎で夜中に起こされたから文句言うわけじゃないけれども、そういう状態です。そこで聞いてみましたら、日本脳炎は手数料も入れて二百円にもなるが、原価は一cc百九十七円五十銭かかるのだそうです。これはもう、いまさら公衆衛生局長を呼んでもしようがないから、それだけ言いますが…。おりますか。中原さんいらっしゃるか、うしろ向いてじっとしておるからわからなかった。もう少し前に来て答弁してください。これはあなたのほうが、もう少しふんどしを締めてやればいいわけですから……。そういう状態でしょう。ちょっと日本脳炎の状態をごく簡単に、大臣に知っていただかなければならぬのだから、言ってみてください。いまのとおりだと思う。
  350. 中原龍之助

    ○中原政府委員 現在の日本脳炎の予防接種につきましては、希望者に任意で市町村がやっておるというかっこうになっておりまして、したがいまして、これにつきましての補助金等は全然ございません。
  351. 滝井義高

    滝井委員 大臣、いま聞いたとおりですよ。ないのです。だから自治体がやるわけです。  そうしますと、これは毎年、たとえば、いま夜中に起こされた北九州では、去年だって何人と出ておるのです。十人か十四、五人出ておるわけです。そうすると、小中学校、幼稚園、保育所というものにはぜひやってくれ、こうなるわけです。そうすると、市費の補助金でやる以外にないわけですね。そういうところに国が抜けてしまっているのです。予防接種の予算の総額は、たぶん四十一年は八千百八十五万ですよ。去年よりか減っておるでしょう。予防接種は去年より減っておるのですよ。去年は八千二百六十万八千円で、七十五万八千円減っているのです。だから、そういうように保険財政の赤字の問題でもはやみんなが注目をしておるときに、大蔵省は一番大事な、いわば基盤のところの予算はすぱっすぱっと切ってしまった。だから、保険経済というものは砂上の楼閣に立っておるわけです。砂上の楼閣に立っておる保険経済をこれから抜本的に直そうというならば、まず下から、土台から築いてこなければ家は建たぬですよ。ピラミッドが高くそびえるためには、基盤ががっちりしておらなければそびえ立たないです。底辺ががっちりしておらなければ、ピラミットは建たないのです。これはもうイロハです。それがない。みんな基盤がうつろです。保健所には医者がいない。社会保険の出張所なり保険課にも技官はいない。伝染病の予防接種というものの予算は、削られて少なくなっておる。こういう形で、幾ら熊崎さんが抜本対策をやろうやろうと言ったって、砂上の楼閣しかできないということですよ。  そこで、医療需要体制は、保健所までひっくるめていま日本脳炎までいきましたけれども、こういう予防接種の金等も非常に少なくなって、昨年よりか、経済は成長して病気はふえつつあるにもかかわらず、削られている。こういう実態を大臣よく知っていただいて、来年度はひとつ基盤固めをやっていただきたい。いまや日本経済というものは、社会的資本の充実が諸外国におくれているというので、道路、港湾に一生懸命になっておると同じように、少なくともその医療保険を高くそびえ立たせる、不均衡を是正しょうとすれば、基盤を固める以外にないわけです。  そこで、今度はいよいよ各論に入るわけです。各論は重要な要点だけ聞いていきます。  各論のまず第一にお聞きをいたしたいのは、一部負担についてです。そもそも、日本で健康保険の一部負担を始めるようになったのは、いつごろ始めるようになったのですか。——わからなければいいです。昭和十七年からです。昭和十七年の四月以降に、定額負担で内服薬や処置が五銭ですよ。五円じゃなくて五銭。注射手術が十銭。入院は一日三十銭という、三種類があったのです。これは昭和十七年に一部負担ができ、昭和二十三年に一ぺん廃止されましたね。そうして二十四年からまた一部負担として、これは初診についてだけ出たのです。甲地が五十円で、乙地が四十六円です。それから三十二年に、御存じのとおり、現在の一カ月以内入院一日二十円という制度ができましたね。一体この一部負担というものは、どういう背景から出てきたのですか。
  352. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 当時の三十二年に一部負担が導入されました考え方は、当時健康保険の赤字対策といたしまして、国が多額の国庫補助を出さなければならない。したがって、片一方におきまして、保険料についても料率を上げるということで、千分の六十を千分の六十五に引き上げたのでございますけれども、なお、被保険者医療機関のお世話になるときに一部負担をしていただくということでもって、何とか当面の財政対策をやってまいりたいということで、初診料並びに入院料につきましての一部負担を設けたわけでございます。しかし、現実にその後の推移をたどってみますと、四十一年度では、一部負担によります財政効果といいますものは、現実には入院で五億程度、外来で三十六億程度で、全体で四十一億ということになっておりまして、当時考えられました一部負担制度によります財政面からのみの効果といったものは、今日においてはあまり効果は果たしてないというのが実情ではないかと思います。
  353. 滝井義高

    滝井委員 私は効果を言うのではなくて、別な言い方をすれば、一部負担から何を期待して一部負担制度というのができてきたのでしょうかということです。というのは、あなた方も、抜本改正の中では、一部負担というのは重要な討議材料でしょう。福田大蔵大臣は——これは福田さんの意見を一ぺん聞くつもりですが、一部負担というものを言明しておるわけですね。福田さんの歯どめの構想の三本のうちの、一部負担というのは重要な被保険者に対する支柱ですね。一部負担から、あなた方保険当局としては何を期待するのかということです。
  354. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 先ほどの私の説明の中にも入っておるわけでございますが、保険料といいますのは、病気になっておるとなっておらぬとにかかわらず、一律に保険料を納めておるわけでございます。しかし、病気になった場合に、やはり保険料を納めておって医者に全然かからない人と、それから医者にかかる場合とのケースを考えてみますと、その意味において、ある程度負担の公平といいますか、用語につきましてはいろいろ言い方はあると思いますが、そういう点も考えて、一部負担というものが必要ではなかろうかということで私どもも議論をいたしておりますから、昨年の社会保険審議会におきましても、一部負担論は、数時間にわたって激しい議論を戦わしたところでございます。しかし、一部負担につきましては、抜本的な対策の際に検討すべきであるということで、健康保険法等の一部改正の中には盛られてないというような経緯に相なっておるわけでございます。
  355. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、簡単に言うと受益者負担ということですね。あなた方の一部負担は受益者に——保険料はみんな納めておる。しかし、病気になったときに、健康な人は保険料を納めておるけれども医療機関の恩恵を受けないのだから、医療機関の恩恵を受ける患者が当然一部を負担する、すなわち受益者負担ですね。そういう考え方ですか。それだけですか。
  356. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 私が用語につきましてとお答え申し上げましたのは、いろいろとそのことば自体について御批判のある方もおりますので申し上げたわけでございますが、まあいわば受益者負担というふうに申し上げてもいいんじゃないかと思います。
  357. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、一部負担をやって、入院五億、外来三十六億、これは福田さんのことばをかりれば、歯どめの、その役割りをしておらぬと言うのですよ。四十一億入ってきておるわけですよ。それともう一つ、そういう四十一億入ったという限度においては、財政的な効果があったわけですね。それからもう一つ、一部負担をやるということは、受診の抑制に非常に大きな役割りを演ずるわけでしょう。そういう三つの効果があるわけです。  まず第一は、受診の抑制、第二は受益者負担、第三番目は、保険財政への貢献という三つの側面が期待をされるのじゃないですか。そうじゃないですか。あなたたちの期待するのは、受益者負担だけですか。
  358. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 私どもは、一部負担によって受診の抑制をするというふうなことは考えておらないわけでございまして、この点は、過去において、そういうふうな論議があったのかもしれませんけれども、受診の抑制というふうなことは毛頭考えておりません。
  359. 滝井義高

    滝井委員 まあ受診の抑制をやる意思はなくても、制度ができると、制度はみずからの目的を貫徹していくわけですね。そうすると、あなた方は、いま抜本改正を検討する場合に、一部負担というものについての深い検討をやっていないのですか。これはもうたいして問題じゃない、いまのままの制度でいいんだ。大蔵省は、一部負担というのは歯どめとして非常に重要視し、高く評価しておるが、あなたのほうの保険局としては、一部負担というものは、前に薬価の一部負担というものを総報酬制と一緒に出したけれども、今度は、そういうものはしばらくたな上げするということではないわけでしょう。そうすると、一部負担というものについてどういうようなことを考えておるのですか。考え得る一部負担の制度というものは、どういうものが考えられるのですか。検討しておるものはどれどれというのじゃなくて、考え得る一部負担の制度というものは、どういうものがありますか。
  360. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 一部負担につきましては、一律負担をするという考え方と、診療行為のそれぞれの項目について一部負担をするという考え方と、両方あると思います。診療行為のそれぞれにつきまして一部負担をするやり方としましては、過去におきまして論議された中身は、現在の制度に採用されております。その以外に、たとえば入院料につきましては食事代を一部負担すべきではないかというふうな考え方、また、往診等については、これを一部負担を考えてもいいのじゃないかという考え方、あるいは入院の際のそれぞれの項目につきまして、直接医療技術的な中身と関係のないものにつきまして一部負担をやるべきであるというふうな考え方もあります。それから代表的なものとしては、やはり薬剤材料費について一部負担をすべきじゃないかという考え方もあるわけでございまして、いろいろと一部負担につきましては議論の多いところだろうと思います。私どもも、抜本的検討の際には、一部負担は重要な項目に一つとして検討しなければならないと思っております。
  361. 滝井義高

    滝井委員 この定額、たとえばいまのような三十円とか、初診百円とか、あるいは初診を二百円とか三百円にするとか、定額制がありますね、わかりやすく言うと。それからあなた方が薬価の二分の一というようなものを出しましたね、これは定率ですね。それから、いまあなたが御指摘になりました、薬剤費とかあるいは入院とか往診とかいうような特定の給付に対して、定額か定率か、どっちかを用いる方法がありますね。これは二つあると思うのですよ。それからもう一つ、たとえば足切りといいますか、五百円なら五百円、六百円なら六百円とありますね。大体あなた方が専門的に検討したうちで、そういう四つのものがあるのですよ。それはどれが一番いいのですか。専門的に保険局長として長い経験の上から見て、どういう制度が一番いいのですか。これも抜本的なものでなければ答えられぬことになるのですか。いま定額制です。いまのは、大蔵省は歯どめの役はしないと、こうおっしゃっている、否定的です。いまのものについては大蔵当局が否定的なものを、厚生省というのはどうするのかということです。御存じのとおり、国民健康保険は、本人、家族だんだんと七割給付になると、三割は定率の負担ということになるのですよ。この制度を確立するというのは、いわば抜本的なこれは方向ですよ、三割というのはきちっとおやりになるわけですから。そして御存じのとおり、政府管掌健康保険が本人と家族とを合わせたら、これは八割五分になりますよ。ところが、抜本改正をこれから四年間七割でいくということになると、現実の八割よりか格差があるわけですよ。この格差を是正することが総合調整であるというならば、これをやらなければならぬわけですよ。ところが、四年間はこのままいくわけでしょう、この法律で。これでいくのですよ。だから、この法律は、当初の四十年からいえば、四年間でこれはいくのですよ。ただ、いま過渡的な処置としてもう過ぎたからそうなっておるだけで、当初は四年計画でいく。それから二年でいいですよ。しかし、この二年間は格差のままでいくのですよ、抜本改正をやったっていくんですよ。そうすると、あなた方は抜本改正をやるというならば、この法律をこのままでおいてもいいことになるわけです。そうして抜本改正をやって八割五分にしなければ格差是正にならぬ、総合調整にならぬわけです、そうですよ。八割五分、これはこの資料できちっと八割五分。だから、そういう八割五分をおやりになろうという、定率の国民健康保険に三割の負担を実現していくわけですよ、三割ですよ。そういう関係が出てくるわけです。だから、国民健康保険だけはすっと通せ、そして抜本改正はあとであとでと斎藤君が言っているけれども、すでにこの関係が出てくるわけですよ。そうでしょう、一部負担論の中から出てくる。そうすると、一部負担というのは、さいぜん私が言うように定額、定率、足切り、特定給付に対して定率または定額の負担という四つの方式しかないのですよ。一体制度として、四つのうちのどれをあなた方は選んだら日本の社会保障が前進の形をとるか、前向きの形をとるか私は聞きたい。それとも全部これをやめてしまうという方法もあります、もう一部負担なんかやらないという方法もあります。しかし、各制度を通じて一部負担制度をとるとするなら、一体どういう制度をとるか。健康保険はいま定額です。国民健康保険は定率です。違うのです、制度として。いまこれを根本的にそういう一部負担制度を検討しようとするならば、この三割のほうはちょっと待ってもらいたいということになる。ひとつ方針が出るまで待ってもらいたい、定額にするならひとつ一緒にこれも定額にしてください、こういうことになる。そうでしょう。だから、これは抜本対策に連なっておる。これは二年間はこのままでいくのですから、途中からこれを八割にするとか、政府管掌健康保険と同じ八割五分にするということは不可能なんですね、いまの段階では。そうすると、そういうものをいま通して総合調整をやる、審議会を待てといっても、これとの連関でだめになる。そうすると、これは置いてきぼりを食うことになる、置いてきぼりを食わせないためには、ひとつ、じゃ、いまからこれを政府管掌と同じように八割五分にしましょうか、何なら修正しておけば一番いいのです。政府管掌健康保険は八割五分でしょう。いま本人と家族と平均したら八割五分でしょう。それを先に答弁してください。
  362. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 八割五分にはちょっと切れると思いますが、八割三分から四分くらいだろうと思います。
  363. 滝井義高

    滝井委員 八割五分をちょっと切れるにしても、とにかく三十九年の政府健保の医療給付費は一人当たり、本人一万四千五百七十八円、家族三千四十円、家族は別に五割の自己負担があるので、それを加えて二万六百五十八円、そのうち保険で払う分が大体一万七千六百十八円、大体八割五分ですね。日雇い健保が約八割、国保は家族、本人五割、こうなるわけです。これから七割給付になるのです。この法律が通ると七割給付になるわけです。ところが、政府管掌健康保険は八割五分、格差がそこに一割五分ある、この格差を是正をするということが総合調整の最大の目的であるということは、大臣がいま言明したわけです。これをわれわれが通してしまうと、七割で固定化してしまう。一割五分の状態を認めたことになるわけです。だから、それではいかぬわけです。もう現実に八割五分なら、いまからこれを直して八割五分にしておく必要がある。そうでしょう。そうしないと、二年先でなければ追いつかないのですよ。そうなれば、大臣の総合調整の目的が達成できないことになる。一部負担論からそういうことになる。定率の三割負担です。矛盾するのです。自己矛盾におちいっておる。この法律を出すことによって自己矛盾におちいって、鈴木厚生大臣の構想の総合調整をこの法律では否定しておる。これは格差を是正していない、格差をつくることになっている、格差は幾ぶん縮まるけれども、格差は固定化する。二年間はこれは固定化するのですよ。だから、初めから言うように、この法律というものは、この国会で通さずに、足踏みさせておいたほうがいいということになる。それがこの法律を前進させようとすれば、もう一割五分これに上積みするほうがいい、こういうことになる。二者択一に迫られるのですよ。いまのような形になっています。  それで、何かいまの自己矛盾に御答弁があればしておいていただきたい、答弁しなければ矛盾を認めたことになって、これは修正しますよ。
  364. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 国民健康保険の七割給付に対しまして、七割給付を前提としたときの定率四割ということでございまして、今回の法律は、従来特別補助金あるいは調整交付金の中に入っておりました二割分の四分の三を定率化するということでございますので、七割目標の際の定率化をどうするか、これを定率という形で二割五分だったのを四割にするということでございますので、抜本対策につきましての給付内容をどういうふうにするかという考え方とは、関係はありますけれども、直接の関係はない、抜本対策は抜本対策としてまた別個に検討しなければならない、こういうふうに解釈いたします。
  365. 田中正巳

    田中委員長 速記をとめて。   〔速記中止〕
  366. 田中正巳

    田中委員長 速記を始めて。  次会は明二十六日午後一時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。   午後十時四十三分散会