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1966-03-31 第51回国会 衆議院 社会労働委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年三月三十一日(木曜日)    午前十時十四分開議  出席委員    委員長 田中 正巳君    理事 藏内 修治君 理事 齋藤 邦吉君    理事 澁谷 直藏君 理事 竹内 黎一君    理事 松山千惠子君 理事 伊藤よし子君    理事 河野  正君 理事 吉村 吉雄君       大坪 保雄君    熊谷 義雄君      小宮山重四郎君    坂村 吉正君       西岡 武夫君    西村 英一君       橋本龍太郎君    藤本 孝雄君       粟山  秀君    山村新治郎君       淡谷 悠藏君    滝井 義高君       辻原 弘市君    八木 一男君       本島百合子君    吉川 兼光君       谷口善太郎君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 鈴木 善幸君  出席政府委員         大蔵事務官         (主計局次長) 岩尾  一君         厚生事務官         (大臣官房長) 梅本 純正君         厚生事務官         (大臣官房会計         課長)     戸澤 政方君         厚生事務官         (社会局長)  今村  譲君         厚生事務官         (保険局長)  熊崎 正夫君         社会保険庁長官 山本 正淑君         厚生事務官         (社会保険庁医         療保険部長)  加藤 威二君  委員外出席者         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 本日の会議に付した案件  健康保険法等の一部を改正する法律案内閣提  出第一七号)      ————◇—————
  2. 田中正巳

    田中委員長 これより会議を開きます。  内閣提出健康保険法等の一部を改正する法律案議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。八木一男君。
  3. 八木一男

    八木(一)委員 議題の件及び関連の件について御質問申し上げたいと思います。  まず、委員長にお伺いしたいのですが、きょうは私、内閣総理大臣大蔵大臣労働大臣厚生大臣出席を要求いたしておいたのでございます。いま厚生大臣だけ御出席でございますが、ほかの方々の御都合について伺っておきます。
  4. 田中正巳

    田中委員長 申し上げます。  昨日そういう出席要求がございましたが、それぞれ理由がありまして、理事懇談会において社会党の理事さんにもお願いをいたしましたが、総理大臣は本日急には間に合いません。したがって、これは後日に譲っていただきたいと思います。それから大蔵大臣については、参議院予算分科会出席をしなければなりませんので、これまた出席不可能でございますので、これについては、本件担当主計官ないしは主計局次長出席していただくようにいたしております。それから労働大臣は、参議院のほうにやはり用事がございますので、質問内容によって、場合によってはそれぞれ主管の局長出席するようにいたしますので、御了承賜わりたいということを昨日理事懇談会において申し上げておりますので、その範囲内においてひとつ質疑を続けていただきたいと思います。
  5. 八木一男

    八木(一)委員 では、御出席厚生大臣中心に御質問を申し上げます。なお、要望しました大臣については、ひとつ他の機会にまた質問をさしていただきたいと思います。  まず第一に、厚生大臣にお伺いするわけでございますが、今度御提出になりました健康保険法の一部を改正する法律案船員保険法の一部を改正する法律案につきましては、昨年以来非常な経緯があることは厚生大臣も御承知のとおりでございます。私どもも非常に頭を悩ましてきたところでございます。昨年のあのような非常に重大な経過から見まして、今度提出される政府提案健康保険法の一部改正案は、そのような状態を踏んまえて、スムーズに審議をされるような内容提出されることを非常に期待いたしておったわけでございますが、出てまいりました法律案を見ますると、これでは非常に世の中に問題が多い、われわれもこれは賛成することができないという、実に貧弱な曲がった内容になっていると思うわけであります。その間において、この前の通常国会においては総理大臣並びに厚生大臣が、あのような経過から見て、社会保障制度審議会社会保険審議会答申を十二分に尊重するということを、これは野党の質問に対してではなしに、政府のほうから、総理大臣厚生大臣からみずから再三繰り返して、であるからということで、今後のそういう進行についての協力を要請されたわけでございます。その経過を経て、社会保障制度審議会社会保険審議会においておのおの答申が出て、それを見られてからこれを出されたわけでございますが、その内容を、非常に重要な具体的な部分についてはなはだしく無視されている内容だろうと思います。そういうことでございますると、厚生大臣はおかわりになりましたけれども総理大臣は前から同じ方でありますし、厚生大臣がもしかわったとしても、政府厚生省という立場としては同じ立場でございますから、前の公約に大きく違反をされたということになろうと思います。そのような内容法案をなぜ出されたか、満足するような法案をなぜ出されなかったか、その経過についてひとつお答えをいただきたいと思います。
  6. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 今回国会提案をし、御審議をお願い申し上げております保険三法の改正案につきましては、政府といたしまして、御諮問をいたしました社会保険審議会並びに社会保障制度審議会の御答申並びに御意見を十分そしゃく玩味いたしまして、その御趣旨を体して今回の改正案を決定いたした次第でございます。  八木さんが御指摘になりますように、多少の御不満はあろうかと思うのでありますけれども政府といたしましても、この両審議会の御意見また御答申趣旨につきましては、私としても最善努力を払い、その精神を体しまして努力をいたしたところでございます。  すでに御承知のように、神田大臣当時両審議会諮問いたしました内容は、保険財政の建て直しをはかり、その医療保険制度の安定を期しまするために総報酬制、さらに薬価患者一部負担、こういうことを骨子とした諮問案であったわけでございます。しかるところ、両審議会におかれましては、総報酬制なり薬価患者一部負担ということは、制度の根本に触れる問題であるから、この際はこれを将来の検討事項として見送って、当面応急の対策として標準報酬制を引き続き採用し、その等級区分上限をいままでの五万二千円から十万四千円に引き上げる、保険料率については、法律改正をしないで、千分の六十三取っておりまするところを六十五まで取ったらどうだ、国庫負担につきましては大幅な国庫負担をやるべきである、こういう社会保険審議会の御答申でございます。これは多数意見。また、そのほかにもいろいろ御意見があることは、御承知のとおりであります。  また、社会保障制度審議会におきましては、総報酬制薬価患者一部負担ということにつきましては、社会保険審議会とほぼ同意見のように私ども承知いたしておるのでありますが、そのほかに今日までの累積赤字はこれをたな上げをして、将来この措置についてはあらためて検討をする、当面の措置としては、赤字のよって来たる原因及び経過にかんがみて、その財政に必要な収入を得るため、一方では被保険者事業主患者においても負担の多少の増加はやむを得ないところであり、他方では医療担当者においても合理化をはかって、そして医療保険制度が今後適正に行なわれるように、さらにそういう努力とともに政府においては大幅な国庫負担をやるべきである、こういう御趣旨答申であるわけでございます。  私は、この両審議会答申の御趣旨に沿うべく、微力ではありましたが最善努力をいたしてまいったつもりでありまして、標準報酬制につきましては、御答申のとおりに措置をいたした次第でございます。また、上限を十万四千円に引き上げますと同時に、下限は従前どおりにいたしまして、所得の低い方々保険料負担が急激に重くならないように配慮をいたしたつもりでございます。また、国庫負担につきましては、これも私の微力のいたすところで御不満な点はあろうかと思うのでありますけれども、百五十億を国庫から支出負担をすることに、財政当局折衝の上これを決定をいたしたところであります。保険料率につきましては千分の六十五まで、こういうことでございまして、足らざるところは借り入れ金措置しておくべきであるという御答申でございましたけれども、現在医療保険制度財政的に非常に崩壊の危機に直面しておるというような事態を考えまして、国におきましてもできるだけの財政負担をいたしますと同時に、医師、被保険者事業主等におきましても応分のひとつ御負担、御協力を願わなければいかぬ、こういうようなことで、千分の七十ということに御協力をお願いいたしたいと思うわけでございます。千分の七十というのは、労使で折半をいたします関係で千分の三十五、したがって御負担は〇・三五、こういうような負担に相なるのでございまして、これを数字の面で申し上げますと、標準報酬月額二万円の所得のあられる方は、大体月額七十円程度負担増になります。標準報酬三万円程度所得の方は、百五円というようなことになるのであります。全体の被保険者が、政管の場合におきましては、三万円以下の方が七〇%を占めておるというようなことで、おおむね大多数の被保険者方々は百円ないし七十円程度負担増、〇・三五の御負担、こういうことになるわけでございまして、私は、消費者米価でありますとかその他の公共料金等値上げをされます際に、さらに医療保険の面で御負担をお願いすることは、ほんとうにこれは恐縮なことであるわけでありますけれども、ほかの公共料金の場合には、そのものずばりの値上げでございます。しかし、医療保険の問題につきましては、八木さんも御承知のように、医学技術の進歩によりまして、給付内容も相当改善され、向上しております。また、受診率も上昇しておる。こういうようなことで保険給付内容そのものが実質的によくなっておるということでありまして、それからくるところの医療費増高は必然の結果であるわけであります。これに対して国も、また被保険者その他保険関係者が相協力して、国民の健康を保持するところの医療保険制度を守っていかなければいかぬ。財政的な面からこの制度がくずれるようなことがあってはいけない。みんなで協力してこれを守っていかなければいかぬのだ、こういうことで被保険者にもそういう御協力をお願いしたい。こういう趣旨で今回の改正案になったのであります。  また、この負担の面につきましては、各種医療保険における被保険者負担も実はいろいろ検討してみたのでございますが、他との均衡の面からいっても、政管が今回の千分の七十で、他の制度よりは特に重くなるということには相ならぬのでございます。他の公務員共済であるとかあるいは国民健康保険の被保険者自己負担の面、保険料率面等をいろいろ相互勘案いたしますと、政管の今回の千分の七十というのは、他の保険制度に比べて特に重いというような不均衡の点はない。であるから、この範囲内での負担を願うことはやむを得ないことである。ぜひこれを御理解の上御協力をいただきたいというのが、私の提案趣旨であります。
  7. 八木一男

    八木(一)委員 非常に懇切に御説明いただきまして、ありがとうございました。いまいろいろと厚生大臣は言われましたけれども、いろいろなほかとのバランスとか社会保障医療保障がどうあるべきかということも、それから現在の健康保険赤字の情勢も、全部からんでその点について配慮をした結果、社会保障制度審議会社会保険審議会答申が出ているわけです。ですから、社会保障制度審議会社会保険審議会答申を先年十二分に尊重するということを、内閣並びに厚生省として責任を持って国会で約束された以上、その制度審議会保険審議会答申をその後ほかの理屈をつけて変えることは、国会を通じて国民公約されたことに違反されておるということをどうしても言わなければならないと思います。いまの制度審議会保険審議会のほうで、総報酬制薬価の一部負担についてそういうやり方をやめる、保険料率値上げ標準報酬の引き上げを中心として改正をする、その方法については両審議会答申どおりやっておられます。しかし、一番問題は健康保険法赤字の問題でありますから、金の問題が、やはりもう一つの面から見て一番中心になろうと思う。その赤字の問題をどう解決するかということについて、関係者は、その負担がふえるのが非常に苦しい、だから困るということが底流にある問題であります。この負担の取り方をどうするかという問題も大事でありますが、それと同時に、そういうことがもう一つの大きな面であります。それをどうしてそれだけ負担をさせないかといえば、代替するものは国庫負担ということになるわけであります。このように、抜本的な改正の前の暫定的な措置として両方答申が出、政府もそういうことを考えている以上、国庫負担をどれだけ出すということが、ここの中の中心の問題でなければならないと思う。中心ほんとうに具体的な、資金をどうするかという問題について、両審議会意見に大きく違反をされているわけであります。厚生大臣は非常に詳しく述べられながら、社会保障制度審議会答申の中で、一番大事なところについて省略をしていま説明をされました。私はこの答申に参画をして、この答申内容に必ずしも満足ではありません。これがもっと強力な、政府の考えているのと違う方向の答申が出るように主張したわけでございますけれども、大ぜいの委員の中で最大公約数としてこういうことがきまったわけです。この最大公約数、私から見てはなはだ不満答申ですら、いま厚生大臣のおっしゃっている内容とは違った、はっきりしたことを書いてあるわけであります。一番大事なところを厚生大臣は抜かしてお答えになったのは、御存じないのではなくて、ぐあいが悪いからそこを省いてお答えになったと思う。大事なところは、こういうことであります。前におっしゃったように、大前提は省略しますが、「赤字のよってきたる原因および経過にかんがみ、その解消に必要な収入をうるため、一方では被保険者事業主患者においても負担の多少の増加はやむをえないところであり、他方では医療担当者においてもその運営をより合理化して社会的サービスにあたるのは当然のことであるが、」これは前提です。「国庫はこの際、右両者に比して大幅の負担に任ずべきものと考える。」右両者に比して大幅の負担に任ずべきものと考える、これが大事な点であります。厚生大臣は、「右両者に比して」を抜かしていまお述べになった。「大幅」というのは、大幅だけじゃ金額はわかりません。私どもは、これは政府が考えているような百五十億じゃなしに八百億とか千億でもまだ大幅とは言えないと思っておりますけれども世の中との関連で考えなければ、百五十億でも大きな金ですから大幅ということになる。ですから、それではわけがわからないから、「右両者に比して大幅の負担に任ずべきものと考える。」はっきりとここに規定をしているわけであります。この文言の一字一句は、非常に熱心な激しい議論の結果の最大公約数をここに入れるための文言であります。たとえば私どもは、少なくとも八百億円は定率にして出さなければならないということを主張いたしました。そこまではしなくてもいいでありましょうという委員もありました。そういうことを全部集約をして、「右両者に比して大幅の負担に任ずべきものと考える。」右両者というのは、前提でおわかりのように国民側ですね。これは被保険者事業主あるいはまた患者という名前で書いてありますけれども一つ国民がある。もう一つは、医療担当者の側であります。国民側医療担当者の側、その「両者に比して大幅の負担に任ずべきものと考える。」こういうふうに書いてある。  ところで、この政府のお出しになったものは何か。これはいろいろなところで申し上げなければならないから、最初はちょっとしたことですが、たとえば四十一年度において、今度の改正案では保険料値上げで二百九十億円の増収を見込んでおるわけであります。それから標準報酬上限改正で百三十八億の改正を見込んでおる。行政努力とか国庫負担とか薬価基準とか、一ぱいありますが、とにかくこの社会保障制度審議会における被保険者事業主患者と書いた国民側負担は、この両方で四十一年度においては四百二十八億という負担をすることになる。ところが、その右両者に比して大幅な、どんなに狭く解釈しても四百二十九億、はっきり言えば四百二十八億一円、それ以上の国庫負担をしなければ、制度審議会の一番中心の重点である答申を完全にじゅうりんしたということになるわけです。四百二十八億一円であれば、右両者に比して多いということになるわけであります。びた一文も切れては、制度審議会の一番中心の、さんざん議論したこの国庫負担についても——速記録にしてこんなに多くの内容議論をしたものの中で煮詰めて、みんなが議論をした最大公約数答申をした文言がここに集約されている。そのものをじゅうりんされては、先年の、社会保障制度審議会社会保険審議会答申を十二分に尊重するという公約に完全に違反をしたということになるわけであります。はっきり言えば、前の大臣がいろいろな騒ぎを起こされた。そのあとで、むずかしい問題について厚生大臣が一生懸命に努力をしておられる善意は、私十分にわかっております。その点は敬意は払いたいけれども、しかし、そのような、前に比してややましだったということであったら、日本の厚生行政なり社会保障なり医療保障なり、あるいは健康保険法の問題は解決しないのだ。厚生大臣がそれほど努力をされても、それに対しての国の負担が百五十億みたいなものを出すのにずいぶん時間がかかった。そういうような、こういうものの認識のない大蔵省に対して、なぜそんなに弱腰なんだ。閣議において、なぜ内閣総理大臣厚生大臣がこの前あれくらい自分のほうから公約したことを守ることが、具体的にできないか。そういう点で厚生大臣閣僚として、あるいは厚生省責任者としての努力が足りない。前者に比して最近いろいろのことについて鈴木さんが一生懸命やっておられることはわかる。しかし、厚生省というものは、前の人よりちょっとましだということで済む省ではない。国民の命と健康を守り、しあわせを守る省でありますから、前より少しよかったというのじゃいけない。完全によくなければ、国民のために責任を果たしたことにはならない。四百二十八億飛び飛び一円以上をどうして出されなかったか。どうしてだれが、大蔵省はどんなへ理屈を言ってこれを出さなかったか、閣議において、どんな連中が不熱意であってこれを出されなかったのか、そういう点について明らかにしていただきたいと思うのです。
  8. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は、八木さんが御指摘になりましたように審議会の御答申を尊重する、尊重しなければならぬという、その御趣旨とは全く同じ考えでございまして、この答申趣旨を体しまして、微力ではありましたが、私は最善を尽くしたところでございます。私どもは、この審議会の御趣旨を尊重いたしまして、また一面、国の財政全体をにらみ合わして、最善努力をした結果こういう結論に相なったのでありますが、このことを私は、国民の全体を代表するところの国会方々に御審議をお願いいたしておるところでございます。私は、政府審議会答申趣旨を体し、財政ともにらみ合わして最善努力をした、しかし、それは一〇〇%ではなかったけれども、そういうような内容のことであるということを十分国会に御説明申し上げ、国会の良識でこれに対する裁定を下していただく、これがわが国の議会政治民主政治のあり方であり、国会こそ最高の権威である、こういうことでございますので、どうかひとつ、審議会答申につきましては一〇〇%でないことは、先ほど来るる私も申し上げておるところでありますが、あと財政全般をもにらみ合わして賢明なる皆さんにこれを御審議を願い、裁定を下していただきたい、かように存ずるわけであります。
  9. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣の人柄には私尊敬をしておりますし、個人的にはもういろいろなことを御指導いただきたいと思うのですが、厚生省担当者としてはいまの御答弁はちょっと困ると思う。この前の国会でそれだけ——もちろん最高機関であります。国会が一番国民意見ほんとうに反映して、ものごとを進めていかなければならぬ機関であり、最高機関であります。その最高機関である国会の場において、行政府最高責任者である総理大臣、この健康保険法あるいは社会保障についての責任者である厚生大臣から、両審議会意見を十二分に尊重して次の法案を出すということを、再三自分のほうから公約をされたわけです。最高機関である国会の場において、行政府最高責任者とこの問題の具体的な最高責任者公約をされたわけです。国会はこれから審議をいたします。審議をいたしますけれども提案について、そのように両審議会意見を、十二分にですよ——十分とか大体とか言っていないのです。十二分に尊重して次に法案を出すことにいたしますということを確約された。そういうことになれば、非常に大切な問題だろうと思います。   〔委員長退席齋藤委員長代理着席最高機関である国会をごまかしたことになる。それだけでも内閣総理大臣以下責任をとってやめてしかるべきだ。公約をしたことができないような政府は、政治を担当する資格はない。そういうような重大な問題であります。そういう問題をなぜ公約どおりできなかったか。そこにこの問題に対する政府の本腰がない、無理解である、でたらめである、そういうところがある。そういうような閣僚がたくさんいるところで、なぜ厚生大臣は、これは内閣ほんとう責任なんだ、鈴木善幸氏の言うことを聞かないやつは、佐藤内閣をみずから中でつぶすものである、大蔵大臣であろうとほかの大臣であろうと、そういうような佐藤内閣をつぶすような者はやめるべきである、そのくらいの勢いでなぜ対決をしないか。事務局も、大蔵省折衝で、百五十億というようなものでしかたなしに泣き寝入りをする。そんなもので厚生省責任を担当できますか。  それから一つ、そういう問題の中で、解決の一つ方法を提示したいと思う。前から申し上げていたけれども、あなた方は、一生懸命やると言いながら、ほんとうに一生懸命やっていられない。七月、八月に予算最初に提示をするときに、大蔵省から、各省の予算は、おととしまでは前年度の五割以上出てもらったら困る、去年からは三割以上出てもらっては困る、そういうことを大蔵省は提示する。閣議でちょろちょろと、そういう方針でいきましょうというようなことをきめる。この五年間ほど、口をすっぱくして私は歴代の厚生大臣に、そんなことをやったならば職を賭してもそれに反対すべきだ、厚生大臣をやめるときには何をおいてもそのことを次の厚生大臣に申し送るべきである、事務局もそのことを忘れなく伝えるべきであるということを再三言っております。もしはっきりわからないといけないので、これも心外ですけれども、きょうの三倍ぐらいの声で何回も繰り返し言っているから、聞こえなかったというようなことはないはずです。それをなぜなさらなかったか。特に、五割から三割という制限が強化をされたときに、そういう制限を強化されたら厚生行政が進まない、社会保障が進まない、この健康保険の問題がスムーズに解決しないということがわかっておられながら、なぜ職を賭して反対をせられなかったか、鈴木厚生大臣の御答弁を伺いたいと思います。
  10. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 この問題につきましては、前に八木さんの御質問がありました際にもお答えをしたと思うのでありますが、なるほど今年は、昭和四十一年度の予算編成にあたりましては、税収その他の面からいたしまして、予算の編成が二、三年前のように非常に楽でない実情にありましたことは、御承知のとおりでございます。また、戦後初めて公債の発行もする、こういうような事態であったわけでございます。そこで、予算編成方針といたしまして、前年度当初予算に比して三〇%の増のワクで概算要求をしてほしい、こういうことになったのでございますが、その際に私は、厚生省のように自然増、当然増の多い性格の行政、そういう予算を持っておる省に対しては、その実態をよく御理解の上で、いまの原則である三割というようなことで機械的に押えるべきではない、こういうことを特に閣議において発言をいたし、財政当局にその辺の十分な理解協力を要請いたした次第であります。問題は、概算要求が五割とか三割とかいう問題よりもより大切なことは、予算が決定をいたしました結果、それがどういうぐあいこ、要求したものが最終的に実現をしておるか、認められておるか、そしてそれが最も必要な面に有効に予算がついておるかどうか、こういうことが私は一番大切な問題だ、こう思うのであります。概算要求のときのワクの大きいことも一つの問題ではありましょうが、結果として決定をしたところの予算がどれだけ前年度に比べて伸びており、伸びた予算がどういう面に有効に国民のために使われるか、こういう点がより私は大切な問題だ、こう思うわけであります。そういう観点からいたしますと、昭和四十一年度の予算におきましては、すでに御承知のように、前年度当初予算の一七・九%というのが全体の予算の伸び率でありますが、厚生省予算につきましては二〇・四%、こういうことになっており、いま御審議をいただいておりまする医療保険の問題、あるいはその他社会福祉の面等々、たとえばガン対策でありますとか、あるいは重症心身障害児等の、世論もその対策を強く要望しておる点等につきましては、重点的に予算の配分をした、私はこういうぐあいに考えておるのでありまして、もとよりこれでもって十分とは申せないのでありますけれども、私としては、当面の国の財政事情からいたしまして、厚生省予算がこの程度、しかも重点の面については予算がつけられた、厚生省の重点政策の柱が立った、不十分ではありますけれども、この四十一年度の予算一つの足がかりにしまして、私はそういう重点政策を今後拡大をし、充実をしていきたい、こう考えておるわけでございます。
  11. 八木一男

    八木(一)委員 まあ一通りの御説明がございました。厚生大臣、実は厚生省として、そういう答弁をしなきゃならないというワクにはめられないで答弁をしていただきたい。これは国権の最高機関であって、厚生省の問題や社会保障の問題を真剣に国会では討議をしなければならない。政府がきまったものを守るという立場で御答弁になっていれば、私どもば徹底的に大きな声を出して、その矛盾をつかなければならない。ここでりっぱな論議をして、それがほんとう政治に反映をするようにしなければならないので、厚生省をさんざんいじめたらしている大蔵省なり、無理解なほかの各省たちのそういうことを顧慮する必要はない。内閣総理大臣であってもこの問題に不熱心であったら、この論議を通じて総理大臣に考え方を直してもらわなければならない。ですから、そういう中の、何といいますか、対人関係の御配慮はなしに、あるいは対官庁関係の御配慮はなしに、どれが一番いいか、どういう方向が一番いいかということでひとつ御答弁を願いたいと思います。いま御答弁を伺っておりましたけれども、これは全然、一〇〇%納得ができません。全部それと裏返しの問題がございます。そういう問題がありますから、たくさんありますけれども社会局長の今村さんに伺っておきたいと思います。  身体障害者対策の予算は、昨年について私は一五%ちょっとしかふえなかったと思うが、ちょっと伺っておきたい。
  12. 今村譲

    ○今村政府委員 身体障害者の予算につきましては、国立の関係を除きます一般的な行政は十億八千六百万から十二億六千三百万、一億七千六百万増。それから国立施設の四億九千が五億四千というので、全部ひっくるめまして一四・四%という数字になります。ただ、そのほかに重症心身の部分が、子供とおとなが両方含まれますので、その部分の社会局担当分のおとなを入れますと、それが八千七百万というので、重症心身を含めますと全部で二〇・八%の増ということになります。それを除きますと一四・四%ということであります。
  13. 八木一男

    八木(一)委員 ちょっともう一回おっしゃってください。その前の一四・何%はどういうこととどういうことをやっているのか、あとの新しいものはどういうこととどういうことをやっているのか。
  14. 今村譲

    ○今村政府委員 いま申し上げました国立施設以外の一般の府県、民間対象の予算につきましては、重症者の保護費が、昨年が十億八千六百万、四十一年度が十二億六千三百万ということでございまして、その項目は十項目ほどいろいろございますけれども、たとえば義肢、補装具の交付あるいは更生医療というふうなものが、明年度におきましては四億五千四百万、それから施設が百何カ所ございまして、それの運営費につきまして施設事務費、これが昨年が六億二千三百万が七億七千六百万、約一億五千三百万くらいふえております。  パーセンテージは、施設関係の事務費は二四・七%ふえております。   〔齋藤委員長代理退席、委員長着席〕 これは新規増の部分でございます。それから国立の更生援護機関、これは全部で八カ所ございますけれども、大体新規施設なんかの整備が一応一段落しましたので、四億九千百万が五億四千二百万ということで、約五千万円の増、これは一〇・三%増で施設の補給、こういうことであります。
  15. 八木一男

    八木(一)委員 私の伺ったことの部分をちょっとはっきり、さっき一四・四%と言われたのと別なものを加えたら二〇幾つだと言われたのは、この一四・四%はおもにどういうことをするもの、それから別のものを加えればというのはどういうものか、そこだけ、中心地点だけひとつ。
  16. 今村譲

    ○今村政府委員 一四・四%と申しましたのは、これを二つに分けまして、国立施設関係が一〇・二%の増、それ以外の都道府県や民間の社会福祉法人なんかのいろいろな仕事がございます。それから社会福祉事務所、身体障害者更生相談所の行政事務費が一六・三%増、そういう一般行政費一六・三と国立部分の増一〇・三%、これを全部ひっくるめまして、四十年度と比べますと平均で一四・四%の増になる、こういうことでございまして、先に一般行政のほうを申し上げますと、やっておりますことは、一番大きなのは施設の運営事業費、これは十分の八国が出しておりますが、それの六億二千万が七億七千六百万というので、全部で百六十三施設、収容人員六千六百名というものの飯代から人件費から一切がっさいでありますが、それの十分の八として六億二千万が七億七千六百万ということで一億五千万ほどふえまして、この部分に関してだけはふえる率は二四%、それ以外につきましては、更生医療というのがございます。もう一ぺん切り直して、もう少し手が動くようにするという費用でございますが、それが大体六千六百万で、前年度の横ばい、それから補装具という義肢とか補聴器とかいうものがございます。それが三億八千七百万ということで、前年度より約五・三%増、これは府県補助金でございます。そういうふうなのは、更生、援護措置というふうなのは両方で四億五千万程度、それからあとは身体障害者の体育振興費とか更生相談所の事務費とか、金額としては一千万円前後というような小さなものでございます。  それから盲人のための点字図書、これは全国で相当数ございますけれども、それに対する事業委託費というのが、昨年千二百万がことしは千九百十九万というふうにして、これは相当な伸び率を示しております。  それから国立関係につきましては、盲人の施設が国立で四カ所、ろうあ者が一カ所、身体障害者中央のセンターが一カ所、それから重度の身体障害者のための施設が伊東と別府にございます。合計八カ所でございますか、それについての予算というのが四億九千万が五億四千万ということで、これは固定した施設、増設はございません、内部改造というかっこうでございまて、大体一〇%増、こういう中身に相なっております。
  17. 八木一男

    八木(一)委員 また間違っておったら詳しく御説明願いたいと思いますが、厚生省予算書の二十八項に身体障害者保護費というのがございます。昨年度の予算が十億九千九百万円、少し端数はありますが、今年度が十二億六千三百万円、増額一億六千四百万円。これは率にいたしますと一五%というふうに私どもは算定をいたしました。まあ方々であることですからいいのですが、厚生大臣、これは十分御承知のことだと思うのですが、いろんな問題がここにありますけれども、たとえば身体障害者の光明寮というのが東京にあり、塩原にあり、それから札幌、神戸にある。この施設は、おもに国立の盲人のセンターで、そこでやる仕事は、ほんとうは生まれつきじゃなしに、途中で失明した人たちをそこに入れて、いろいろリハビリテーションをやるという施設であります。こういう施設で、たとえば神戸のほうの施設に、九州の端から、四国から、あるいは山陰地方から神戸に収容されるということになります。特に最近交通事故で視力の障害がぐんぐんふえているということで、いま東京と塩原、関東には二カ所ありますが、志望者はほとんど入れない。そういうことで途中で両眼失明をして、その状態において何らか職業を得て人間として生活をしていきたい、国民として社会に貢献をしていきたいという施設が超満員で入れない。普通こういう施設については、九州にも一つあるわけなんですが、何らかの事情でこれはできておりません。民間の施設はあるようですけれども、民間でありますために十分な施設もできないし、その職員に対する給与もできないし、そういう点で九州のそういう途中失明の人が非常に困るという状態だ。それは非常にこまかい個々の問題ですが、こういう問題も、先ほど厚生大臣が言われた問題と同様に、至急にしなければならないことであります。ところが、一五%しか予算が上がらないために、一般の行政ベースよりも伸び方が少ない。予算全体の一七・九%とおっしゃいましたけれども、こういうふうに少ない。厚生省のほうで出された、いま例をあげられていろいろ言われましたものを厚生省として重点とされたかもしれないが、厚生省のほうで重点として考えておられない点、これが国民立場からいってやはり重点なんです。厚生大臣は、厚生省のあらゆる項目が国民のために重点であるという信念を持っていただきたいと思います。各省のいろんな行政があります中で、私どもはもうなくなってもいいと思う行政もある。防衛庁みたいになくなってもいいと思うものもあるけれども、それは議論のあることだからおいても、厚生省のものは大体においてこういうような状態である。命を大切にしなければならない。貧困がある。病気がある。それをなおさなければならないし、世の中が進展するに従って新しい病気ができる。新しい身体障害ができる。そういうことが起こらないようにすると同時に、起こった場合に能力を回復するようにしなければならぬというような問題、あるいは、だんだん寿命が伸びてきたことによって、老後の生活をどうするかというような問題、ありとあらゆる問題、たとえばガンを早くなおす方法をつくって、国民がガンの脅威からのがれるというような対策を至急に立てなければならない。いろいろなところで公害が起こる。そういうようなことをなくして、身体がむしばまれることを防いでいかなければならない。例をあげれば切りがありませんが、すべてがいますぐやらなければならない問題点、いままでに起こった問題、最近起こった問題であるとか、あるいは最近そういう問題を解決するめどがついた問題であるとか、いままで制度が少ないから最近飛躍的に拡充しなければならない問題とか、すべてがこれから前進をしなければならない問題である。国民にとって非常に大事な問題を全部かかえておるわけです。ですから、厚生省の各項目は全部が大事だと私は思うのです。ところが、厚生省については三割というワクをかぶせられておる。そういうワクをかぶせられた時点において、厚生省の中で大事なものばかりに重点を置かなければならない、そうなると厚生省の中で特に人為的に重点からはずされると、国民にとって非常に重点であるものが、伸びが少なくなるということになります。予算というものは、ある程度のワクをきめなければならない。だから、最終的に査定をすることはやむを得ないと思うけれども、そういうことになると、国民のために必要なものの伸びがとまってしまう。厚生大臣はしみじみ感じておるだろうと思うのです。それをベールをかぶせておいて、大蔵省のやり方、内閣全体のやり方を弁護するようなやり方では厚生行政は進みません。鈴木さんはいい方だから、大臣を十年もやってもらいたい。われわれが大臣になるまでやってもらってもけっこうです。あるいは総理大臣になってもらってもけっこうです。だけれども、その個人的な鈴木さんはいい方だということとは別に、ほんとうに決心を固めてもらわなければ国民のために困るのです。どんなに相手が無理解であっても、どんなに強力であっても、それをはじき飛ばすような勢いでやってもらわなければ困る。  ここでひとつ、厚生省なり鈴木さんのほうでどういうふうに研究しておられるか、ちょっと伺ってみたいと思うのです。私は資料はあるのですが、こういうことを研究しておられるかどうか。昨年の七月、八月に各省が第一次予算要求をしましたね。それがどういうふうに査定されたかということを厚生省は調べておられると思うが、各省がどのくらいの予算要求を出され、最終的にどういうふうに査定されたか、その点を調べておられるかどうか。厚生省の方でけっこうです。大蔵省の方は、またあとで伺います。
  18. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 会計課長からお答えいたします。
  19. 戸澤政方

    ○戸澤政府委員 一応各省の概算要求の内容、それからその結果について検討しております。予算の説明書の中に主要な事項を調べておるのが出ておりますが、それについて、たとえば一、二例をあげてみますと、来年度の予算の中で主要な事項としまして、社会保障関係費とか、文教科学振興費とか、公共事業関係費とか、いろいろ出ておりますが、たとえば金額において予算として大きいのは、公共事業費が八千七百六十二億、社会保障関係費が六千二百十七億、文教科学振興費が五千四百三十二億というようなものがございますが、その対前年比の伸び率について見ますと、公共事業費は対前年度比一九%の伸びに対して、社会保障関係費は二〇・三%と、公共事業費よりもやや高率を示しておるというような点を注目し、一応検討しておるわけであります。
  20. 八木一男

    八木(一)委員 そういうような予算項目別のことを調べるのは、これを見ればわけはないですよ。そういうことだから、厚生省がいつもしてやられているのです。社会保障関係費といえば失業対策費も出るわけです。労働省の関係もまぜこぜになるわけです。全部社会保障費ということで、厚生大臣労働大臣関係の人が一緒になって大蔵省折衝する、内閣で主張するのはそれはいい。ところが、失業対策費については労働大臣が主張され、ほかの問題については厚生大臣が主張される。残念ながらいまのところは各省別の予算要求、予算折衝になっている。そうしたら、各省で、ほかの省がどれだけ第一査定が通ったか、どれだけ要求したが最終的にどれだけ通ったか、厚生省がほかの省よりもどんなにしてやられたかということを研究しておかなければ、来年もしてやられますよ。また、どこの省も大事な仕事をしておられるから、どこの省がしてやられるということはことばが適当でないかもしれませんけれどもほんとう国民に密接に関係をした仕事をしておられる厚生省が、ほかの省よりどうなったか、伸び率も研究していない。そんな弱腰でやっていられたらますます国民の要望する厚生省関係の仕事が進まなくなる。どこかで研究しておられますか。
  21. 戸澤政方

    ○戸澤政府委員 要求の段階におきましても、社会保障関係費につきまして、たとえば厚生省の生活保護なり各種の社会保険の要求とのバランスを考えるために、労働省関係の失業対策費とか労災関係とかいうものに、要求の形として矛盾のないように打ち合わせをしてやっておるわけでございます。また、その結果につきましても、もちろん財政当局としてもそういう各方面の調整をとり、ながら編成をしているわけでございますので、結果的に見まして、その総額においてまだ不十分であるというようなことはあろうかと思いますけれども厚生省関係予算社会保障関係予算が特に見劣りするとか、他省に比べて非常に立ちおくれておるというようなことはないんじゃないかというように考えております。
  22. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私から、政府全体としての考え方につきまして、八木さんのお尋ねの件に触れて御答弁申し上げるのでありますが、御承知のように、わが国の社会資本の立ちおくれというものは、これは八木さんも常々お考えいただいておる点であろうと思うのでございます。北欧の諸国等におきましては、道路にしても住宅にしても、もうすでに何百年という蓄積がある。それに対して日本は、戦後廃墟の中から立ち上がって、道路とか鉄道とか住宅とか港湾とか、そういう社会資本の充実、公共投資の増強ということをやっていかなければ、国民の生活の向上なり、経済、産業の伸展等も期待できない。政府がこれに大きなウエートを置いておりますことは、御承知のとおりであります。また、近年の不況を脱却いたしますためにも、この際公共投資に相当の重点を置くということも私は間違った施策ではない、かように考えております。したがって、道路、住宅等の公共事業に相当のウエートが昭和四十一年度の予算に置かれておりますことは事実であります。  それから第二の点は、やはり今日の経済の不況にあえいでいるところの中小企業に対して相当大幅な財政資金等を投入する、また近代化をはかっていく、そういう中小企業対策ということに、政府として四十一年度予算に大きな重点を指向したことも事実であります。と同時に、社会保障の問題につきましても、私は政府全体として、個々の問題につきましてはいろいろ御不満な点があろうかと思うのでありますけれども社会保障全体から見ますと、これも政府の重点施策であり、公共投資、中小企業対策、社会保障、こういう面に四十一年度の予算の重点が置かれたということを、私は全体の立場から申し上げて、この考え方は決して間違っていない、こう私は思うのでございます。
  23. 八木一男

    八木(一)委員 いま事務局の会計課長さんのほうと、それから厚生大臣お答えをいただきましたが、両方について引き続き御質問を申し上げたいと思っております。  厚生大臣が言われたのは、普通いまの佐藤内閣がぺらぺらとしゃべられることを厚生大臣の誠意を込めてしゃべられたということで、誠意はわかりますが、そういうことです。通りことばでそういうことを言っておられる。そこに何でもそっちの大事なことを強調すれば——それは大事なことはわかります。すべて大事なことですけれども、やっぱり順序があると思う。たとえば社会資本が大事だ、日本の国を発展させるために大事だということ、それは一つ大事なことでしょう。それと同時に、道路があっても何があっても、大事なのは人間です。人間の命が尊重される、人間が後顧の憂いなしに働けるということが、それ以上に大事なこととして考えられなければならないと思う。不況の対策の問題があります。不況の対策、中小企業対策は必要でありましょう。しかし、不況の根本的な対策は何か。国民の購買力がふえることであります。労働者の賃金なり、あるいは中小企業者なり農民の人たちの収入がふえる。ふえたように見えたものが、物価の値上がりで実際はふえなかった、減っていたというようなことをしないということです。ですから、その不況をほんとうに直すには、国民の購買力をふやす。そのためには減税も必要でありましょう、大衆減税も必要でありましょうが、経済的な観点から見ても一番必要なのは社会保障です。それより前の次元において大切なことは、国民の健康なる命を、しあわせを守ることが大事です。公共投資も大事でしょうけれども、それ以上にみんなが安心して、病気がぴたりとなおる、そうしてどんどんと働ける、そういうことが大事であります。どうもいまの内閣では、いま鈴木さんのおっしゃったいわゆる公共投資あるいは産業上の援助、そういうことが先になって、ほんとうに大事なものがあと回しになるということに思えます。すべてが大事だから、ほかのことをやっちゃいけないとは思いませんけれども、そこにおのずから重点の差がある。会計課長、これは厚生大臣に伺うわけでありますが、質問関係がありますから、会計課長さん注意して聞いていてください。私は私なりにほかの用事があって、ちゃんとこういうものを責任のある官庁からもらっているのです。私どもでもそういうことを少し勉強しようという気があるわけです。厚生省のほうも、これだけでは各省別がわかりにくいわけです。もっと大きな予算書もありますが……。そこで言いますと、たとえば先ほど御説明があったと思うけれども、通商産業省では前年度に比較して予算が三〇・二%ふえている、厚生省では二〇・四%、そういうことです。通産省と厚生省で、こういう比率がこれであっていいものかどうか、具体的な問題がありますから、比率だけでは言えないと思いますが、こういうところに産業重視、社会保障がそれよりあと回しにされているということが出ていると思います。しかし、それはそのとおりことしはふえたけれども、来年はこっちがふえるというような問題もありましょう。ですから、そんなに重大な問題でありませんが、もっと重大な問題は大蔵省です。昨年度の大蔵省関係予算は二千八十八億九千四百万円、昨年度の当初予算です。今度の予算案は、まだきまっておりませんよ、この予算参議院で直さなければいけない、衆議院に持ち帰ってまたきめ直さなければならないけれども、この貧弱なるとんでもない予算は、もし通るとするならば三千九十七億九千四百万円、台がわりしていますね。そのふえ方の率は前の一四八・三%。これは大蔵省なりの事情があることはわかります。だけれども厚生大臣、これについてどうお考えになりますか。大蔵省は昨年も二千八十八億の予算であった。予算要求が三千三百二十九億だった。すでに予算要求は五〇%をこえていますね。三千三百二十九億、六〇%になっています。これできまった三千九十七億、これはほかの方の御答弁は要りません。厚生大臣、これをどうお考えになるか。大蔵省は第一次予算で昨年度の六割五分増しの要求をしている。厚生省には三割以下だとワクをはめている。それで厚生省として黙っていられるかどうか。
  24. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は、各省の予算内容を実はすべてをつまびらかにいたしておりません。大蔵省は国全体の財政のめんどうを見ておる立場にありますから、大蔵省プロパーの予算だけではなしに、各省の所管に専管できないような面、それから予備費の問題等、そういうような問題もあるわけでございまして、決して大蔵省はお手盛りをやっておる、各省には非常に強い規制をかげながら、大蔵省だけがお手盛りをやっておるというようなぐあいに見ることはいかがか、各省に専管をしない、また各省に必要があればそれを支出しなければならない予備費というようなもの等も、そこに計上されておるわけでございます。さように私、理解いたしております。
  25. 八木一男

    八木(一)委員 鈴木さん、ほんとう鈴木さんは人がよ過ぎるのか人が悪過ぎるのかわからないけれども、これは政府立場を聞いておるのじゃない。厚生省立場厚生大臣に聞いたのです。政府全体は、とにかく今度の予算案をぼくらはとんでもない、けしからぬ予算だと思うけれども政府としてはそれがいいと思って出された。だから、政府の統一見解ではそうなりますけれども厚生省ではどうお考えですかと私はわざわざ聞いたわけです。国務大臣としての鈴木さんが総理大臣にかわって答弁される立場答弁は、私はわかることもあります。だけれども、いまは厚生大臣として伺った。そういうことでは人がよ過ぎる。そんなことをすれば、厚生省はますます。あれはちょっとだめだといえばすぐ引っ込む、多いといえはすぐ減らすということになってしまう。歴代そうです。これは大蔵省に理由があるのは私だってわかります。わかるけれども、それならば、大蔵省にあるような理由がほかの省には一つもないか。同じことだと思うのです。国家財政全体のスケールと各省のそういうようなやりたいことの財政のスケール、スケールは違ったとしても、同じものがあるわけです。しかもこれは額で申したのじゃなくて、比率で申し上げた。予備費なんというものは去年もあった。おととしもあった。三年前でもずっとある。率で言ったのです。額じゃないのです。予備費のこういうことの必要性というものは同じです。おととしもさきおととしも、十年前でも同じです。ですから、鈴木さん、そんな人のいい、鈴木さんが一人で内閣全体の失敗をかぶろうなんということをなさらないで、もし失敗と考えていられるのなら、内閣のその方針を変えることを鈴木さんが閣議の中で主張される。それが佐藤内閣ほんとう国民の信頼のある内閣にすることであり、そしてまた、国民がそれでしあわせになることだ。ですから、いまきまった方針、不十分な、いろいろな欠点のある方針を守ろうという立場ではなしに、国民のために、あるいは佐藤内閣がいいとお思いになるなら、佐藤内閣国民の信頼を得るためにこういう論議があるという、ざっくばらんな論議をして、悪い点は直すのだというような論議を進めていただきたいと思う。原案を守ろう、予算案を守ろうということでは、国会審議は要らないじゃないですか。そういう立場でひとつ鈴木厚生大臣にこれから御答弁を願いたいと思いますが、そのお気持ちについて伺っておきたいと思います。
  26. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は厚生大臣として厚生行政に対しましてベストを尽くす、自分は微力なものでありますけれども最善を尽くすということで精一ぱいやっておるのであります。また他面、国務大臣として、全体の立場でこの予算というものを見ていかなければならない責任があるのであります。したがいまして、厚生省予算につきましては、先ほど来申し上げておりますように、八木さんから御指摘がありますように、不十分な点はなるほどあります。しかし、すべての面で十全の予算をこれにつけるというようなことは、これは一ぺんにはそこへ到達することはできないのでありまして、そういう努力を積み重ねてまいりまして、そして厚生行政全般の進展を期していきたい、このように考えておるわけであります。
  27. 八木一男

    八木(一)委員 非常に熱心に御答弁なさる気持ちはわかりますけれども予算の編成上の進め方がまずかった、それによって厚生省国民のために進めなければならないものがとまったということについて、やはり率直に認められた立場で御答弁を願いたいと要望いたしておきます。それは立場が違うから、そう思わないと言われればそれまでです。それだったらまた政府の、あるいは厚生省国民立場の政策に対する考え方の信念を伺わなければならないと思います。そこにいかなくていいようになさろうとお思いになるのでしたら、いまのところに非常に不十分な点がある、ひずみがある、予算の編成上悪いところがあるということをはっきり認めた立場でひとつ御答弁を願いたい。どちらでもけっこうです。絶対にそれはいいのだ、正しいのだとおっしゃるならば、その点国政のためにまた論議を展開いたします。  それから、こういうことです。大蔵省ではそういうように比率——これは計算してみなければわかりませんが、概算で二千八十八億の最初予算が三千三百二十九億、そうすると、差額が千二百億になるから六〇%前後、少しオーバーすると思いますが、そういう予算要求をしておられる。これは予備費もありますし、賠償もありますし、国債のなにもあるという話、そのくらいのことはわかっておる。だから、今度大蔵省がよけい金が要る、そういう内容はわかっているのですが、それと同じことが、大蔵省自分のほうで財政の編成をなさるから、これは大事なんだといって、それで一般のところに三〇%とかぶせられたところを、自分のところは六〇%かぶせてもあたりまえだとお思いになるかもしれない。しかし、ほかの省にしてみれば、鈴木さん、こういういろいろなものが出た——今度予算全部調べて続けて質問しますけれども、どこが伸びたけれどもどこはあまり伸び率がよくなかった。これは一々調べればわかりますが、ところが、伸び率があまりよくなかったものだって、厚生省の仕事はみな国民立場のものだから、これは一般の予算の伸び率よりも少なくとも下回ってはいけないというものばかりです。ところが、三割の総ワクをかぶせられて、その時点で一番問題になっているところを引き上げようとしたら、どうしてもほかをつづめなければならない。これは官庁の中の操作ですよ。そのために、その比率をつづめられたその対象者は一体どうなるかということになるでしょう。国民に対して、それだけのしなければならない行政を伸ばせなかったということになる。それがつまらぬ技術的なことから始まっているわけです。三割かぶせなければ予算編成ができないわけじゃない。厚生省が二十割の要求をすべきなら、二十割要求したらいい。あるいは要求する必要がないと思う省は、前年度よりも二割減で要求したっていいんだ。三割なんといったら、どこでも三割要求する。必要がないところでも三割まで要求します。十割、二十割必要のあるところも三割にとどめなければならない。それでは、ほんとうに必要なところに必要なものを出すということがうまくいかなくなる。そうお尋ねすると、鈴木さんは、おそらく政府のお立場で、予算編成は三割でもほんとうの決定のときにはアクセントを出します。出させますと言われると思う。大蔵大臣もそんなことを分科会で言いました。時間がなかったので、これは続けて大蔵大臣にその問題をみっちりと、納得のいくまで、二十時間かかっても五十時間かかっても、来年の予算をよくするために私は論議をしたいと思いますが、予算の査定でちゃんとやりますと言う。それでも中小企業が何とかというので、それだけ特別に運動して、三〇%を〇・二%オーバーして三〇・二%上がっていますけれども、元来三〇%が、二〇とか一五とか一四とかの増にとどまっているわけだ。そうしたら、厚生省ほんとうは八割ふやさなければならないと思っても、どんなにがんばっても、一番うまくいったところで三割でとまるじゃないですか。厚生省は、それでもほかの省よりよかったと自己満足していられるかもしれないけれども、身体障害者なりガン対策が早く進んで、ガンの脅威がなくなってほしいと思う人なり、公害がなくなってほしいと思う人なり、年金が早くよくなってほしいと思う人なり、企業者の負担で全部十割給付になってほしいと思う人なり、そういう人たちの要望がとまってしまうわけだ。なぜこんなばかなことをするのか。なぜこんなばかなことについてもっと強い抵抗をしないのか。二十割でも五十割でも要求したらいいのだ。それを国家の財政のワクで——インフレを起こさないように財政ワクはどのくらいにとどめるべきかということは、これは大蔵省責任を持って対処しなければならない。とどめたときに、各省のほんとうに国政に対する要求はこうだ、そこでこのワクにおさめなければならないという努力は、その時点でしたらいい。最初からそんなワクをかぶせるというようなことは、政治のアクセントを、事務的に便利にするためにつぶすことになるわけだ、大蔵省には有能な高級公務員の人がたくさんおる。一番頭のいい、それをする人がたくさんおる。厚生省にもたくさんおられるわけだ。第一次予算要求にもう一つのワクをかぶせなければ、最終的な縛りができないというようなことはないはずだ。できないといったら無能です。無能ではない、有能なはずの人がたくさんそろっている。第一次予算にワクをかぶせなくても、その年として当然の財政ワクの中に、重点に従って予算をおさめ得ることがなければいけない。それをするのが大蔵省の仕事です。これをできる能力を持っておられる。しかし、それをただお役人の仕事の能率化のためにだけそういうワクをかぶせられる。かぶせるほうの大蔵省は、自分の省だけの立場からすれば、それはいいかもしれない。厚生省はそれだけ国民のために責任あるものが伸びない。なぜそれを強く抵抗されないか。抵抗されるように、五年も六年も声をからして私は申し上げておる。それに対して厚生大臣は反対だとは言われない、そのとおりだと言っておられる。ところが、それを実行していない。鈴木さんが相当主張されたことは、私も傍受いたしております。しかし、その結果はどうですか。やはりこういうことになっておるでしょう。このような間違った、予算最初の要求を縛る方針、それから査定の順序、それを根本的に変えないと、厚生行政だけではない、いろいろな、国政上ほんとうに大事な問題が、その省内で固められるときには一部分がとまる、大事でもない問題が伸びる。国民の大切な税金がそういうようにほんとうに大切なところに早く使われないで、不必要なところに使われていくということになる。そのもとをつくっておる一つ原因がこれだと思う。それを指摘していないのならいいですが、いままでさんざん指摘をしているのに、一向なされない。このくらいの勢いで厚生大臣総理大臣に言われたのか。大蔵大臣に言われたのか。熱心な厚生大臣ですから、その三倍ぐらい言われたのか、あるいは三分の一しか言われなかったのか。どんなに言っても相手がいろいろな理屈を言って抵抗したのか、それともそんなことは慣例だからだめだというように、あっさり多数で押し切った形で、ほかの閣僚がぼんやりしていてそういうことになったのか。そういう経過を、一人一人の閣僚がどういう態度をとったか、腰抜けだったか、どういうぐあいにまっすぐ進んでいったか、ちょっと伺っておきたい。
  28. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 昭和四十一年度の予算は四兆三千億、前年度当初に比べて一七・九%、これは八木さんもお認めになっておると思うのでありますが、相当大型な予算でございます。しかも公債発行に財源を求めざるを得ないというような事態もございまして、大型予算といわれる四十一年度予算が全体として一七・九%、こういうことになるのでございます。私は、三〇%という一応のめどを置いたということにつきまして、八木さんの年来の御主張とそこが一致しない、そこに御不満のありますことは承知いたしておりますが、結局一七・九%でもかつて見ない大型予算、でありますから、私はそれが四〇%、五〇%というワクで当初予算を要求いたしましても、やはり四兆三千億なり四兆二千億なり、そういうところが財政規模として適正なものであるということに相なるのであります。でありますから、私は三〇%、四〇%、五〇%に押えることがいかぬという八木さんの御趣旨はわかります。またこれは年来のあなたの御主張であって、傾聴に値する御意見であるということはわかるのでありますが、結果的には、この大型予算といわれる四十一年度予算が一七・九%という平均的な伸び率になっておるわけでございます。ワクをはめなくとも、究極的には平均してやはりその辺に落ちつかざるを得ないというのが、日本の現在の経済の実態である、またそれが適正な規模である、こう私は思うわけでございます。  なお、冒頭に申し上げましたように、私は厚生省予算のように、自然増、当然増の多い性格の省の予算に対してはそういうワクをはむべきでない、こういうことは閣議においても主張し、また大きなウエートを持っておりまする医療費関係予算は、実は全体から一応はずしまして、別途これを要求しておるというようなことで、実質的には三割増の要求ということにとらわれないで、医療費等の特殊な問題につきましては別途の予算折衝をいたしておるわけでありまして、八木さんのお考えと、そう厚生省予算折衝経過においては違った考えでやっておるとは私は思っておりませんわけであります。八木さんの年来の御主張に対しましては、これは傾聴に値する御意見として私は耳を傾けておるところでございます。
  29. 八木一男

    八木(一)委員 何か非常にまるい御答弁なんで、大きな声を出してやろうとするのが気勢をそがれるのですけれども、そういうことじゃほんとうに実は困るのですよ。厚生大臣がいままでの、とんでもないやり方の中で努力をされたのはわかります。それは認めますけれども、それではいけないのだ。内閣全体の方針として、そういうほんとうに各省で国民のためにやらなければならないアクセントがそこで薄れてしまう。それに対しては、前の厚生大臣質問したときに、大蔵省のほうも大蔵大臣も、査定のときにそのアクセントはつぶさないようにいたしますというけれども、しかし、三〇%のワクということで、すでにアクセントはここでつづまってしまうわけです。後にまた厚生省社会保障予算がどうあるべきかということを申し上げますけれども、つづまってしまっているわけです。現に厚生省の中では、いまわかっておるだけでも全部おっしゃっていただきたいし、あと残っておる人は全部やっていただきたいけれども厚生省の各局各課で、本年度自分の担当しておるところでどういうことを国民のために進めなければならない任務があるか、そのためにどれだけ予算が要るかということを厚生省の各課あるいは各局で要求したか、ところが三割のためにどれだけつづめられたか、涙をのんで、国民のためにしなければならないと考えておるものをどうしてことしはあきらめたか、どれとどれをどのようにあきらめたかということを、いまここにおられる各局各課の人が全部おっしゃっていただきたい。いない人は、次に全部資料を持ってきていただきたい。初めに社会局からすべての項目についておっしゃっていただきたい。
  30. 田中正巳

    田中委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  31. 田中正巳

    田中委員長 速記を始めて。
  32. 八木一男

    八木(一)委員 それでは、委員長のあれもありますから、各局の中で——ここでいいかげんに厚生大臣のベースを援護しなければならないというような答弁をしたら、これは国会を侮辱したことになりますから、委員長が何をおっしゃっても徹底的に各局各課を追及しますからね。各特徴的なものでやりたいと思ったことで、予算厚生省の三割ワクのために要求をとめなければならなかったものについて、各局で重点的なものを二、三点ちょっとおっしゃってください。各局ですから、まず第一に今村君から……。
  33. 戸澤政方

    ○戸澤政府委員 厚生省の概算要求の総ワクは先ほどから論議がありましたとおり、前年度の当初予算の三割増しのワクでもって一応要求いたしまして、前年度四千八百億程度でございましたので、その三割増しの六千二百六十五億ほどで要求いたしたわけでございますが、社会保険、生活保護等につきましては、まだ要求の当時、具体的な要求の内容というものがきめられない状況でございましたので、ワクとして内容を示さずに要求したわけでございます。  それで、それ以外の経費についてでございますが、概算要求するについて、私のところで各局の要求を一応整理したわけでございますが、私のところで査定いたしました額が、二、三百億だったと記憶しております。各局も重点的に事項を整理して要求するようにだんだんなってきておりますので、私のところで、各局の要求の中でおもな項目あるいは大事な新規の政策、そういったようなものを落としたものはほとんどなかったように記憶しております。額、内容はともかくとして、新規のもの、必要なものは一応目は出すというかっこうでもって、一応おもなものはみな要求いたしたように記憶しております。
  34. 八木一男

    八木(一)委員 年金局長いますか。——いませんか。(発言する者あり)雑音がある間は質問しないからね。
  35. 田中正巳

    田中委員長 御静粛に願います。
  36. 八木一男

    八木(一)委員 いま会計課長は二、三百億つづめたと言う。だけれども、たとえばいろいろな審議会の中で、調べればたくさんあるけれども、たとえば国民年金の中で福祉年金について、七十歳ではいけない、それより前から支給しなければいけないということは、社会保障制度審議会のこの前の国民年金の審議のときに、これははっきり書いてある。ところが、それをやれば、たとえば、六十五歳でやればどのくらいの金額になるか。おそらく概算して、いまの金額で七十歳を六十五歳に変えればどのくらいになるかといえば、一千億ぐらいになる。ところが、そういうようなことも三割のワクでつづめられるわけです。国民年金の福祉年金だけで一千億出たら、これは三割をはみ出ますね。だから、そういうことはしかられると思って、その局としては当然推進をして原案を出さなければならないことだけれども、この三割というワクで、そんなに出したら年金局だけで何をやるかということでほかの局が文句を言うし、会計課長は、相手が局長でも、会計が持てないといって文句を言うだろうということが初めからわかるから、出てこないということだろうと思う。その遠慮がちのものを、あなたは二、三百億切った。資料でいいです。その二、三百億は何と何と何をどういう事情で切ったか、全部資料を出してもらいたい。ほんとうに各局各課としては最小限度の、おこられると思って、出したいものをつづめて、どうしてもことし必要だというものを出したのを、あなたのところでぶった切られた。それがほんとうに行なわれたら、国民のどの層がどういうことでどう助かるかということが明らかに出てくると思う。そういうようなことで、厚生大臣の三割壁というようなとんでもないことに対する抵抗が弱い、政府全体がくだらないようなそういうワクをはめるということが出てくるわけです。二百億つづめたことについて、厚生大臣厚生省自体で二百億つづめたものを、三割以上要求した二百億のものを認めてくれという交渉を大蔵大臣大蔵省にしたかどうか、それを伺っておきたいと思う。それをしたら、まだ、最初ワクをはめられたけれども、必要なものについては説明をし、内閣全体がそれをいいとしたならば、できる要素があるわけです。ところが、してないと思う。あなたは大蔵大臣に、ここで切った二百億について要求をしたかどうか、おっしゃっていただきたいと思う。二百億の内容厚生大臣に教えてあげてください。
  37. 戸澤政方

    ○戸澤政府委員 先ほど申し上げましたとおり、主として社会保険関係などの自然増経費等が非常に大きいために、ほかの経費に影響がまいるのはこれは避けられないところでございます。しかし、それにつきましても、どうしてもやらなければならない事業につきましては、新規の政策等についても目を出すように要求をいたしたわけでございます。それで、その二百億ほど切った内容と申しますのは、したがいまして、その自然増的経費の計算のしかたとか、あるいは新規の政策等についても、実施の時期等について、多少便宜的なことになりますが、操作を加えたりしてそのワク内におさめるようにいたしたわけでございます。先ほど例に出ました国民年金福祉年金の問題につきましては、まだ要求の段階では社会保険医療保険、年金を含めまして三割増しのワクでもって要求をいたして、内容についてはその後大蔵当局と話し合いをしてきめていくというようなかっこうにいたしましたために、必ずしも審議会答申内容を要求の段階でネグレクトしたというようなことはないわけでございます。  それからなお、その各局の要求を大蔵によく伝えたかというような御趣旨の話がございましたが、これは正式概算要求としましては一応三割のワクにおさめたわけでございますが、その前に、二回ほどにわたりまして各局の要求の概要というものを大蔵当局に私から説明いたしまして、厚生省の来年度の要求内容はこういうものがあるというようなことを話してございます。
  38. 八木一男

    八木(一)委員 その説明は大蔵省のだれにしたのですか。
  39. 戸澤政方

    ○戸澤政府委員 担当の主計官でございます。
  40. 八木一男

    八木(一)委員 何回しましたか。
  41. 戸澤政方

    ○戸澤政府委員 初め要求のあったものにつきまして、その各局の要求の概要を一回説明し、それからざらに、八月になってからと思いましたが、私が調整を加えた作業の中間においてもう一回、あるいは三回くらいやったかもしれません。
  42. 八木一男

    八木(一)委員 その主計官は何という名前ですか。
  43. 戸澤政方

    ○戸澤政府委員 ここにおられます岩尾主計官でございます。
  44. 八木一男

    八木(一)委員 その二百億の厚生省の第一次要求にはかったものはどういう項目があったか、いま主計官、ちょっと覚えておられたらおっしゃってください。
  45. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 いろいろ御議論がございましたが、いまの二百億の問題等につきまして、若干先生思い違いをされておられる点がございますので、御説明をいたします。  まず、三割ワクの問題から申さねばならぬわけでございますが、三割ワクというものを概算要求の際にやっておりますのは、決して各省の必要な政策というものが計上されないように、予算の総ワクというものを縮めようということでやっておるのではございません。この目的は、先ほど先生もおっしゃいましたように、ほっておけば各省は二十割でも五十割でも要求するじゃないかというのが現状でございまして、このワク制限をしないときにおきましては、厚生省部内におきましても、国立公園局でもどの局でも、あるいは各課ごとに非常に大きな額の要求が出てまいったわけでございます。それを厚生省のお立場において、実際に必要なものはどういうものがあるか、ほんとうに来年重点的にやるべきものはどういうものがあるかということを御調整願う、その意味で三割というワクを省として認めたわけでございます。  そこで、これにつきましても、先生お話しになりましたように、各省ごとのアクセントはございますから、三割というものでなかなか全部まかなえないということが、たとえば先ほど大臣のお話のございました当然増の問題とか、特殊な、ことしで申しますと健康保険の百五十億というような問題がまいります。そこで、そういう実際上機械的な三割の中に入ってこないようなものにつきましては、個別に協議を受けてきめようということにいたしております。したがいまして、その結果として、いま会計課長が申しました二百億という問題が出たわけでございますが、厚生省の要求は、全体のワクに対して三割という要求でまいりまして、そしてほかの局の積算というものを組んでまいります。さらに、いま申しました健康保険とか国民年金とか、そういうものを組んでまいりますと、これは非常に不安定な見込みだったものですから、うんと大きな額に出るかもわからない。そしてそのすき間はほんとうは大きなものに出るかもわからないのだけれども、一応健康保険国民年金については二百億残しておいてもらえばいいんじゃないか。これは実際の問題としてはもっと大きなものになると思います。それをそういう二百億のワクの中に入れておる、こういう趣旨でございます。そういう意味合いでいま会計課長のほうで御調整を願ったわけであります。  さらに、ちょっと、先ほど来お話もございましたので御説明をさしていただきたいと思いますが、各省の要求というのは、そういう意味で概算要求の際に全体として省の予算についての三割のワクを計上し、特殊なものについては個別に協議に応ずるということでやっておりますが、先生も御指摘になりました、たとえば予備費の問題とか、あるいは対外債務の問題とか、特に来年は国債費が、急に国債を出すものですから、これに対する利子の支払い等で膨大な額が出てくるというような問題がございますので、そういう別個のものは、当初の概算要求の三割ワクからはずしております。  そこで、先ほど御指摘がございましたが、大蔵省の要求でございます。実際に大蔵省が、そういった特殊な経費を除きまして、概算要求の際に要求をいたしました経費は一一九・四でございます。一九・四%増の経費を要求しておって、これはまあ三割のワク内に入っておったわけであります。しかし、実際に予算を所管に計上いたします場合には、先ほど申しました国債費、政府出資金、産投会計へ各省の経費を入れるわけですが、一応所管は大蔵省所管というものがございます。それから産投会計に繰り入れる出資金がございます。さらに、先ほどお話がございました予備費もございます。これは昨年は五百億、四十一年度は六百五十億、その前の年は三百億、その前は二百億というふうに、非常に大きく伸びてきておるわけですから、伸び率において大きな差を持ってくるわけでございます。そういう別個の、特に概算要求の際には、いま申しました政府出資金、産投繰り入れ、さらに昨年は沖繩の問題が急に起こりまして、先生も御承知のように、非常に多額の援助費を計上したわけでございます。ああいうものにつきまして、さらに一番経常的に起こる問題は、食管の繰り入れでございます。これは十月になりませんとその数字は出てまいらないということで、概算要求からワク外ということで調整をいたしております。そういうものが、実際に予算を組みましたときには全部入ってくる。先ほど御指摘のございました通産省の問題につきましても、商工中金の出資が、ワク外にしておりました出資金から通産省に計上することになったということでふえてくる分、あるいは石炭対策の答申がございまして、急に石炭の問題に関して金を積まねばならぬ。九十億ほど積んだわけでございますが、そういう問題、あるいは日本の貿易振興会の出資等がございますので、これを除きますと、従来通産省ベースの問題として要求しておりました一三〇、三〇%増に対しまして、実際に計上いたしました予算は二八・六%増でございます。さような状況でございます。
  46. 八木一男

    八木(一)委員 それはわかっておるのです。私はわかっておるけれども大蔵省のほうは、さっき私が説明いたしましたように予備費が要る、国債費が要る、賠償の金が要るということで、前よりも非常に大きな率になったということは、先ほどの質問の中でわかっておる。ところが、大蔵省はそういうような財政をするところだから、そういうものができてきたからということで操作ができる。ほかのほうでは操作ができにくい。いまおっしゃったように、年金に金がかかるから別ワクだということで操作をしておられるらしいけれども、その二百億くらい要るだろうということに大きな認識違いがあって、先ほど言ったように、たとえば福祉年金を六十五歳にしたら、その二百億の何倍も、それ以上にかかってしまう。医療保護に一文も出さないでもかかってしまう。そういうことを、大蔵省厚生省か知らぬけれども、そんなものは初めから二百億と、こういう特別に要るものでもワクをはめてしまっておる。特別に要るものでもそうですから、今度こっちのほうの総ワクをやったら、たとえばガンの問題で、ガンは伸び率がいいと思いますけれども、ガンの問題にしても公害の問題にしても、それから身体障害者の問題、精薄児の問題、全部いますぐしなければならぬ問題だ。そこで三割なりというワクをはめられるならば、その全体、厚生省の各局各課の問題は、五割もふやし、あるいは八割もふやし、ものによっては全然ゼロからだから、倍率にしたら何十倍となる、何万倍になるというようなものもしなければ、国民のために行政ができない問題がある。それを厚生省としてまとめてやっておられるから、厚生省が全部大事なものをかかえておられるときに、その三割ワクの中でどれかをとめなければならぬ。ところが、厚生省は全部大事だ。もちろんほかの省もみな大事だと思いますけれども、ほかの省ではやや制度が完成をしていて新しく発展をしなければならない要素の多いものがほとんどないような省もある。既定経費をちょっとベースアップ分だけ上回ったようなことで済む省もある。そういうところも三割、厚生省みたいに前進しなければならないものを全部かかえておるところも三割ということでは、査定の段階にいかにアクセントを出すと言われても、これはアクセントが出ない。曲げられてしまうということになる。現に具体的に一二〇・四%ということでアクセントが曲げられておるわけです。全体の予算の一七・九の増率、予算ワクが多いがいいか少ないがいいか、これは別の問題点であります。そこで、全体が一七・九のときに、厚生省予算は非常に新しく大きく発展をしなければならないし、厚生省の行政とは全部金を食うものであります。そこで、二〇・四というようなわずか二%程度のアクセントのつけ方では、日本の社会保障も、あるいは公衆衛生も、あるいは環境衛生もとまってしまうということになる。そういう点で、この三割ということがぐあいが悪いということでしょう。大蔵省の有能な人たちがいれば——さっきは問題をはっきりさせるために二十割、三十割と言いましたけれども、問題によって、ゼロのものをたとえば一億円出してもこれは何億倍になるけれども、そういうことは別にして、全体として三割というぐらいの予算ワクのときに、問題によっては十割のものが出ても、厚生省全体では五割ぐらいのものしか出てこないでしょう。こないでしょうけれども、五割か六割出てくるものが三割にとどまるということは、そういうアクセントがなくなって、国民に直結した大事な問題がブレーキをかけられる。大蔵省としてもそれは本意じゃないでしょう。国民の大切な資金を預かっていて、それを有効に、一番大事なところに早く出すということが大蔵省趣旨だと思う。大蔵省は非常に研究をしておられるけれどもほんとうに各省の緻密なところまで、どんなに有能な人でも全部勉強し切るだけの時間的余裕がないと思う。だから結局、各省で縮めてきたものを大まかに見て、これはどういう性質のものだから必要だろうというようなことで各省について判断をされる。各省の各局各課の、ほんとうにこれはこうこういう意味で必要なんだということが全部出て、そのデータに基づいてやれば、国民から預かった金を一番有効にやるのに便利なんだ。ところが、それがあまり繁雑だからということで三割に押えたら、ほんとう趣旨国民の税金を一番大事なところに有効に使うということがやりにくくなる。各省が必要なものを全部出してこない、押えて出してきたら、ほんとうのものがつかめない。あなた方の仕事が忙しくなるかもしれぬけれども、各省各課が行政上一生懸命考えて必要なものが全部出たデータを、そこで予算総ワクに対してどういうように縮めてこれをおさめるかということを、すべてのデータを集めてやるのが大蔵省ほんとうの道だと思う。それを前から三割、五割かぶせたら、アクセントが出なくなる。必要がないところだって三割出しておかなければ損だ、三割は出てくる、ほんとうの国政のアクセントが出なくなる、そういうところのやり方が困るということを言っておる。一四八%ということは、内容は私は知っています。そういう特別な例があるから、大蔵省自分のところのものだから、自分のところだけたくさんとろうということで考えたんじゃないということはわかっています。国家の大きなスケールで賠償とかあるいは国債の利子とか、そういうことで一時的にことしは伸び率が多かった。そういうことが各省なりにやはりあると思う。時点が同じに重なることがあると思う。それがまた厚生省には特に多い。各省各課ではいますぐ進めなければならないものが多い、それを一律にしたためにどこかが縮まってしまうということになる。ですから、その五割のワクとか三割のワクとか、それをたとえば医療保険、年金保険に二百億を別ワクで考えたといっても、欠点を、ごく一部分を直すための配慮だけであって、ほんとうのものではないわけです。ですから、各省の予算を縮めないで全部出させる。予算のワクは、争いが起こらないようにちゃんときめて、そこにおさめる。作業はむずかしくても、それのほうが大蔵省方々としても本懐だと思う。ほんとうに各省各課の考えていることを全部連絡を受け、説明を受けて、その中でどれが重点であるかということを大蔵省が考えを述べて、各省と折衝をして最終的に予算におさめる、それがほんとう財政編成の道だと思う。それをイージーゴーイングに五割、三割かぶせる、これはやり方が間違っておる。いまそういうふうに首を縦に振っておられて、この趣旨については主計局のほうも賛成だろうと思う。そういう被害を受けている厚生省が、そういうやり方を弁護するようなやり方をしては問題は進みません。ここにおられる方は理解をされても、ほかの大蔵省の方が完全に理解をされるかどうかわからないし、人がかわるかもしれない、役職がかわるかもしれない。被害を受ける立場にある厚生省が、それを弁護するようなやり方をしておれば問題は一向発展しない。これは厚生省のためにも、大蔵省のためにも悪い、内閣のためにも悪いわけです。その点で、鈴木厚生大臣のこの点に対する決心をほんとうに固め直していただいて、こういうワクをはめるような最初予算要求の編成の方針を改めることに命がけでやってもらわなければならぬと思う。鈴木善幸厚生大臣の御答弁を伺いたい。
  47. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 八木さんの言わんとする御趣旨は、十分私も理解をいたしております。これは内閣全体の問題でもあるわけでありますので、八木さんから総理大臣大蔵大臣等にもぜひその有力な御意見としてお述べをいただいて、そして、ともに研究をして、よりよい予算の編成に当たるように私ども研究していきたいと思います。
  48. 八木一男

    八木(一)委員 それでは、問題をちょっと変えて申します。  この健康保険法国庫負担の問題の背景として非常に大事な問題でございますが、昭和三十七年八月に「社会保障制度の総合調整に関する基本方策についての答申および社会保障制度の推進に関する勧告」というものが出ました。これは厚生省の方は全部御承知でございます。このときに、この計画をやるときに予算がどう変遷するかという、「十年後における社会保障総費用(暫定試算)」という表がついておったわけでございます。これは私、制度審議会委員をやっておりましたので、これを総理大臣答申するときにそれを間違いなしに説明するように意見を申し、そのとおりきまって、内閣総理大臣なりに説明のときにはその資料がついておるわけでございます。いま保険局長がお渡しになったようでございますが、ところがそれから一、二年後になると、厚生大臣はこのことを御存じないというような時点がございました。非常に残念に思いましたけれども、このごろはよく勉強しておいでになると思う。その暫定試算のほうに、三十六年度における状態から四十五年度に対する目標を書いてあるわけでございます。そこで、これは予算というよりは、項目としては一番最後に、社会保障総費用の国民所得に対する割合、昭和三十六年度は六・九、四十五年度は一四・三という目標が書いてございます。それから、社会保障総費用中国費の租税等収入に対する割合が、三十六年度は一一・〇、四十五年度は二七・〇というふうに書いてある。租税総収入予算の歳出とは必ずしもきちっと一致はしませんけれども、大体においてこれは一致したものと見て差しつかえないと思います。そういうことで、三十六年度に国家予算に対する比率が一一・〇%でございましたのを、昭和四十五年度には二七%までに上げなければならない。これは試算表でございますが、本文をごらんになりますと、これは全部最低要求でございまして、どんなことをしても少なくともここまでは到達しなければいかぬということを述べて、それの費用を書いてある。昭和四十五年度には国家予算の二七・〇にならなければならない。社会保障については、非常にその範疇を定めることについて問題がございます。しかし、ここで書いてあるのは、生活保護、公費医療、社会福祉、児童手当、医療保険、年金保険、失業保険、業務災害補償、公衆衛生という項目で書いてあるわけでございます。必ずしも政府予算書ときちっと一致をしないけれども、大体において政府社会保障費用として整理されておるものと一致しておる。ところで、四十五年度には少なくとも二七・〇にならなければならないということになりますが、ことしの総予算に対する社会保障費の比率は一体どのくらいになっておりますか、ちょっと計算してみてください。
  49. 戸澤政方

    ○戸澤政府委員 ことしの国家予算総額四兆三千百四十億のうち社会保障関係費としておもな項目をまとめてございますが、これが六千二百十七億円でございまして、総予算に対する社会保障費の比率は一四・四%でございます。
  50. 八木一男

    八木(一)委員 私も概算で一四・四と計算したのですが、間違うといけないからお尋ね申し上げたのです。そうすると昭和三十六年に一一・〇、四十五年に二七・〇にすると、等比級数にするか等差級数にするかという問題がありますけれども、少なくとも四十一年度で一四・四ならば、これではとんでもなくこの計画をはずれているということになろうと思う。そのことについて厚生大臣厚生省関係の方、ひとつお願いいたします。
  51. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 この社会保障制度審議会の昭和三十七年当時における暫定試算、これは私、事務当局から説明を受けまして、一応そういうものがありまして、大内会長から総理に答申の際に御説明をする場合の一つの説明資料というような形でこの暫定試算というものがあるということをお聞きしておりますが、私どもは概括的に申しますと、国民所得の中に占めるところの社会保障給付費の割合というものが、欧米先進国に比べまして相当見劣りがしておる。一九六〇年の数字でもって見てまいりましても、北欧の諸国のその割合は大体十数%、それに対して日本が五・五%、一九六三年でも六・四%、こういうことで国民所得に比べて社会保障給付費の割合が非常に低い、こういう実態を私も承知いたしておるのであります。この社会保障制度審議会におきましても、四十五年に到達すべき目標というのは、そういう欧米先進国の社会保障の水準に日本も近づけていこう、また所得倍増計画の経済の発展と見合って、そこへ目標を置いてやっていこう、こういうことであったと私は理解をいたしておるわけであります。そしていろいろの項目がございますが、項目全体といたしましては、いま八木さんの御指摘になりましたように、昭和四十五年度を目途としての二七%アップということにつきましては、相当おくれております。これは率直に私は認めるところでありますが、しかし、その中の各項目につきましては、順調に進んでおるものもあれば非常におくれておるものもある。たとえば医療保険関係におきましては、昭和四十一年度におきまして三・二%、これは暫定試算の昭和四十五年度の目標二・五%を上回っておるわけでございます。また、国庫負担の面からいたしまして、四十五年度の時点で国庫負担が三十六年度の三・三倍にすべきであるというのに対しまして、四十一年度におきましてちょうどすでに三・三倍、こういうぐあいに医療保険の面におきましては四十五年度の指標に対してもう到達をしておる、こういうものもございます。そういうものもありますと同時に、非常におくれておるのもございまして、私ども社会保障制度審議会のこの答申、これはほんの私どもが施策を進めてまいります際の一つの指標として、これが実現のために全体として均衡のとれるような努力を続けたい、かように考えておるわけであります。
  52. 八木一男

    八木(一)委員 問題をあまりそらさないで、質問のところだけお答えを願いたい。医療保険のことは、その中のものは伺っておりませんので、総体のことをまず申し上げて伺っているんです。実は三十六年に一一%で四十五年に二七%にすると、等比級数にするときと等差級数にするときとありますけれども、まず私が概算で等差級数で考えると、一六%を十年間にふやさなければならない、一年に一・六%をふやさなければならないということになれば、六年目ですから九・六、一一%に九・六を足しますと二〇・六%ふやさなければならない。いまが二〇・六%の比率になっていなければならない。等差級数で申しますと、そうすると、四兆三千億に概算すると約九千億になっていなければならない。ことしの厚生省予算は幾らですか、社会保障費用で……。
  53. 戸澤政方

    ○戸澤政府委員 六千二百億です。
  54. 八木一男

    八木(一)委員 九千億のところが六千二百億だとすると、二千八百億円減っているわけです。そういうところに大きな、こういう社会保障医療保障全体の進み方のブレーキがかかっておる。これは社会保障制度審議会が二年がかりで、二、三百回審議をいたしております。私ども全部その審議に参画をいたしました。これは全部最低の、少なくともということできめた方針に従った暫定試算なんです。しかもその方針は、あまりに遠慮がちだと私ども憤慨するほど遠慮がちの方針であります。昭和四十五年に欧米の三十六年の水準に追いつくということです。日本がいろいろな点で一生懸命やっている時代に、その五年前の三十六年、十年前の水準に四十五年に追いつくときのいろいろのやり方がこの内容であり、その暫定試算がこれであり、その制度審議会のような遠慮がちなところでも、少なくともこれはどうしてもやらなければいかぬといって、明確な指示をしているわけです。その指示に従ったこの予算の概算で、本年度は九千億にならなければいけない。それが六千二百億でとどまっている。二千八百億円少ない。そういうところに、この社会保障医療保障やすべての問題の進展がとまっている理由があるわけであります。社会保障制度審議会答申は、内閣総理大臣に対する答申、勧告であります。厚生省だけではありません。大蔵省もこれを尊重してやらなければならない。こういうようなものがあるのに、厚生省がへっぴり腰で三割増しぐらいでぼんやりしている。このとおりやろうとしたら、厚生省としては三割でなくて、十割や十五割を要求しなければ、このとおりやろうとする最初努力さえ払われていないということになるわけです。そういう点でほんとうにふんどしを締め直して、精神を入れかえてやっていただかなければならない。厚生大臣だけではありません。ここにおられる各局長、いままでとは違うのだ、厚生省は新しいものを進めるのだという勢いで、大蔵省主計官といろいろ論戦をされたときに、どんなことがあっても必要度を認めてもらう論戦をするのだ、そのような覚悟でやらなければならない。厚生大臣が三割増しで抵抗はされたけれども、しかたなしにのんでこられた。それでは困ります。厚生大臣厚生省局長以上は、全部辞表をたたきつけて、これでは社会保障がとまる、厚生行政がとまる、内閣がそれを改めてもらわなければ責任が持てないというような決心で当たってもらわなければならないと思う。いま医療保障のことを厚生大臣は言われました。そういうことを言われては困ると思う。全体のワクで厚生省の行政を伸ばす立場答弁をしていただきたいと思う。この医療保障の問題については、社会保障制度審議会でこれを審議しておったのは昭和三十五、六年であります。健康保険について赤字がない時代、黒字の時代にそのデータで審議をしたんだ。暫定試算と出ているのは、後の変化があるということからこういう遠慮した文言になったわけです。それから後に健康保険その他の赤字の要因が出たのだ、したがっていまの時点において、いまのデータにおいて皆さん方が出せば、その中のその部分の数字は変わる。大蔵省がそう言われても、厚生省は、そうではないんだ、この試算の出た時代と状態が違うんだ、したがって、この問題は社会保障制度審議会の精神をほんとうに尊重すれば、この医療保険の問題はもっとふえるんだという主張を厚生省がせられなければならない。それを厚生省みずからが、そのような医療保障をとめるような答弁をすることは、ほんとう責任を果たしたことにはならないと思う。鈴木厚生大臣の反省した上での御答弁を願いたいと思う。
  55. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 先ほども答弁申し上げましたように、全体としてこの暫定試算の昭和四十五年度の目標にはおくれをいたしております。この点は、私も御指摘の点につきまして率直にそれを認めておるところでございます。ただ、この中にはいろいろ政策が織り込まれておるわけでありますが、その中には諸般の事情から一様に進んではおりません。あるものはこの線に沿うて進んでおるものもあり、また非常におくれておるものもございます。こういうことを私申し上げまして、その一つの例といたしまして、きょう御審議中心の問題になっておりまする医療保険の問題に触れまして一つの例を申し上げた、こういうことでございまして、医療保険がおおむねその線に沿うておるからあとはおくれておっても差しつかえないんだ、こういうことを私は申し上げておるのではございません。その点は八木さんが御指摘になったとおり、私もこれがおくれておるということにつきましてさらに私ども決意を新たにして、このおくれを取り戻すように最善努力を払わにゃいかぬ、かように考えておるわけです。
  56. 八木一男

    八木(一)委員 全体の御答弁はそれでけっこうであります。医療保険については、その当時においては健康保険赤字ではなかったデータによってこれが出されたものである。制度審議会はその精神を最も重んじなければならないその時点で、さらにいまの時点でこれをつくった場合には医療保険に対する国庫支出がいかにあるべきかということは、これは飛躍的に多くなった金額になるということは厚生省方々はわかる。ですから、こういうことをブレーキをかける材料に使わないで、前進をさせる材料に使われるという決心で当たっていただかなければならないと思う。  それから健康保険の問題、もう少しまん中の問題に移ります。健康保険国庫負担の問題を中心に、きょう少しずつ質問を申し上げているわけですが、制度の問題については、私も五、六十時間は質問をしたい問題がありますので、またじっくりと申し上げますが、きょうは本会議がありますから、国庫負担の問題についてだけ進めていきたいと思います。  昭和三十二年にこの前の健康保険法改正、いわゆる改悪がございました。昭和三十年から始まって、三十年にそれが不成立に終わって、三十一年にまた不成立になって、三十二年に、改悪をしなくてもいいのに厚生省のメンツで無理やりに、改悪しないと三度目の法律が通らぬとたいへんだということでしゃにむに運動をされて、へんてこな状態で強行採決をされて健康保険法の改悪案が通った。その当時非常に問題がありました。私は、そのとき保険局長をしておられた高田さん、次長をしておられた小山さんを、この人たちが悪いのだ、この人たちが国民医療保障を後退させるんだと大きなことを言って、たいへん失礼なことを申し上げましたけれども、そのくらい激高してあのとき論戦をしたものであります。そのときにそのような改悪案でございましたけれども、いまのよりはましだった。ですから、今度どれだけ私どもがおこっているかを御想像願いたいと思う。そのとき赤字があるということで、最終的には四十八億の赤字であります。通ったときには、すでにほんとうは黒字に転換をしておりました。三十二年から、たくさん赤字があるから保険料率を上げなければいかぬ、一部負担をふやさなければいけない、これは初診時と入院時のものですね。それから医療担当者のほうもいろいろと審査、監査とかなんとかをして、もしむだづかいがあったならば、それがないようにしなければいかぬというようなことをしました。それで三泣きですね、ほんとう患者も入れますと四泣きになりますけれども、三泣きという大岡裁判のようなことで、そのかわり国のほうも三十億の国庫負担を出しましょう、それでこの赤字を解消しましょうという案でございました。最終的に通ったときには黒字になりましたけれども、一番最終の説明で赤字四十八億でございます。そのときの暮れには四十五億。四十八億の赤字のときに国庫負担を三十億出されたわけであります。ところがそれと今度の赤字と、これは平年度の一年分の赤字と今度の国庫負担を考えておられるところの比率の差をひとつ精密に計算をしていただきたい、計算をした結果を御答弁願いたい。
  57. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 三十年当時の赤字の解消につきましては、三十年から三十二年にわたりまして対策を継続的に行なったことは、先生御承知のとおりでございます。当初三十年度赤字見込み額が百十三億ございました。その対策といたしまして、三十年度の対策で予定をいたしましたものが、保険料率の引き上げ二十五億、それから等級改定による分が五億、つまり標準報酬の改定と保険料率の引き上げで三十億、それに国庫補助から当初十億を入れまして、あとは……
  58. 八木一男

    八木(一)委員 三十二年のを聞いておるんですよ。
  59. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 ちょっと継続的に申し上げますが、それから三十一年度におきましては赤字見込み額が六十七億でございまして、この三十一年度において一部負担を二十四億計上いたしたわけでございます。それから国庫補助を三十億という財政対策をいたしました。御質問の三十二年度におきましては、先生四十八億というふうにおっしゃいましたが、五十四億。
  60. 八木一男

    八木(一)委員 それは暮れの数字です。二月ごろの数字は四十八億なんです。
  61. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 私どもの申し上げましたのは、これば財政対策で公表されておる数字でありますが、五十四億の内訳といたしまして、標準報酬の改定として九億、それから一部負担として十二億、それから国庫補助が三十億ございました。当時の財政規模が、保険収入は御承知のように財政全体、特別会計としては現在の規模と相当違いまして、全体で六百億程度の規模でございましたので、当時の国庫負担率から申しますと、当時は国庫負担が五五・五%、現在は赤字額七百二十億について百五十億でございますから、二〇%というふうに数字は相なっております。
  62. 八木一男

    八木(一)委員 鈴木厚生大臣に伺うわけですが、この五十四億の中で、三十億と十二億、九億、あと行政努力ですか、ちょっと数字が合わない、三億は……。
  63. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 これは継続給付の資格の改正分として三億計上いたしております。
  64. 八木一男

    八木(一)委員 一応それでつじつまが合っておるようですが、これは昭和三十一年の暮れの数字で、健康保険法改正案の資料として出された。その間で質問をしたところが、二月発表された数字では四十八億、それは前の年の暮れぐらいの数字です。それからいよいよ強行採決で通されるときには、ほんとうは黒字になっているんです。赤字じゃなかった。それを、赤字でないのに、黒字なのに、むちゃくちゃに保険料を上げる、一部負担を上げるというようなことを強行された。非常にけしからぬことであったと思うのですが、その当時ですら、四十八億の赤字に対して三十億の国庫負担をしていく。五十四億という数字もありますから、まあかりにラウンドナンバーで勘定して六割というものを出された。今度四十一年度の、累積は抜きにして、もしいまのままでやって、改正案が通らないということになったときの赤字の見込み額はどのくらいになりますか。
  65. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 四十一年度に持ち越されます赤字が六百九十六億でございまして、四十一年度の赤字見込み額は七百二十億でございます。
  66. 八木一男

    八木(一)委員 そうすると、これは前にやったのと同じ比率で出すようなのが普通の状態じゃないかと思います。六割で計算しても四百三十億、これで国庫負担も少ないけれども、ほかのほうもがまんを願いたいというような案をまず最初に出してこられるのが至当だと思うのですが、厚生大臣局長はどうお思いになりますか。
  67. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 私どもの考えといたしましては、先ほども御説明申し上げましたように、厚生保険特別会計、特に健康保険勘定の規模というものが、当時と違いまして非常にふえてまいっておりますので、総額におきましては、確かに率としては先生のおっしゃられるような御意見もあることは私どもも重々わかるわけでございますけれども、何しろ全体から見まして、赤字程度、それから健康保険勘定のスケールその他が非常に変わってまいっておりますので、その辺は国家財政その他との関連で考えていかなければならないというようなことで、私どもは判断をいたしておるわけであります。
  68. 八木一男

    八木(一)委員 これはほんとうに困ると思うのですよ。憲法二十五条をひとつ読み直していただきたい。憲法をお持ちですか。——お持ちでないと思いますから、読みます。「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国はすべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」国は、社会保障の増進につとめなければならない。その国の行政の責任を持っておられるあなた方は、このために一生懸命やらなければならない。憲法九十九条で、あなた方は、厚生大臣はもちろんですが、保険局長も公務員として憲法を守って推進する任務がある。憲法にはこういうふうに、社会保障の向上及び増進につとめなければならないと、はっきり明記されているわけです。社会保障にはいろいろあります。その中で、一番国民にいま関心が深いのは病気の問題です。年金の問題も大事だけれども、いま病気の問題、その負担の問題、こういうことが非常に大切な問題であることは論をまたないと思う。そこで、向上及び増進につとめなければならない。前に赤字のときに、このような社会保障的な観点から、非常に貧弱な内容にわれわれは憤慨して反対はしましたけれども政府のほうとしては、この三十億の国庫負担社会保障の度合いをつけてこの問題に対処しなければならないという決心で出された。そのときは、三十二年は岸内閣でしたが、そういう状態だった。いま佐藤内閣にかわったって、内閣厚生大臣責任は同じですからね。前に赤字の六割は国庫負担をしておいて、赤字をたとえば国民なり勤労大衆にも少し負担をしてもらうけれども、しかし、国のほうで社会保障前進の意味からそれを見ましたと言われたのが六割の三十億。それも国会の中では、非常に少な過ぎる、国民負担が多いということで猛烈な論議になった。三年目に無理やりに通された。そのときに通した方も、これは十分じゃないけれども財政も考えて、まあ最小限度これだということで、ここにその当時委員におられた方々もおられますけれども、そういうことで通された。それは十分過ぎると思って通されたわけじゃない。財政も考えて、その赤字の六割程度でまあしんぼうしなければならない、われわれは全部国で持ったほうがいいと言ったのですが、そういうことで、ほんとうにしんぼうをなさったぎりぎりの案として、自民党の方も社会保障の前進と国家財政総ワクの両方を勘案されて、これが最低限ぎりぎりだということで賛成して通された。その当時から社会保障を前進するのは、憲法の精神からしたって向上しなければならない。その当時以後、内閣はずっと社会保障の前進について約束をされておる。約束をされて、各政党が選挙をされた。その約束された自民党が多数を持っておられる、約束をさせた社会党が第一野党として国会責任を分担をしておるということであります。その自民党によって内閣が形成されて、皆さん方はやられておるのですから、前よりは前進しなければならない。ですから、六割ではいかぬ、赤字の七割くらい、ちょうど五百億になりますね、五百億くらいの案を持って、これで財政を考えて非常にぎりぎりのところでございますけれども国会のほうではごしんぼういただけますでしょうかというような案が出てしかるべきです。それがちょうど、さっきの社会保障制度審議会の、あなた方の保険料とそれからあれを入れた四百二十三億を上回る数字になる。しかし、あなた方の予算の中では、千分の七十というけしからぬものがありますから、これはもっと減らさなければならない。しかし、社会保障制度審議会では、その国民負担よりもはるかに大きな国庫負担をすべしということをやっておるわけです。ちょうどこの数字に合っている。ひとついまから考え直して、これは国会提出されましたから、国会のほうの権限になりますけれども政府としては誤りをおかされました。厚生省は原案が誤った。大蔵省にもお話をすれば、大蔵省も了承をなさるでありましょう。ですから、この際はこれを撤回することをいたしたい、国会のほうにそういう要請をされる。自由民主党の社会保障に熱心な方々も、その撤回は全面的に賛成するでありましょう。あやまちをためることに勇敢でなければなりません。このような貧弱な内容健康保険改正案を撤回する気持ちを固められるということが必要だろうと思う。このことについて、鈴木厚生大臣の撤回する気持ちを固めた御答弁をひとつ願いたいと思う。
  69. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 社会保障政府国民のために前進させなければならぬ、充実させなければならぬ、こういう御趣旨は、八木さんのお説のとおり憲法の示すところでございます。私どもはそういう方向で努力をいたしておるのでありまして、社会保障は、医療保障のほかに所得保障の問題、いろいろあるわけでございますが、先ほども申し上げましたように、一九六〇年には国民所得の中に占める社会保障給付費の割合は五・五%でありましたものが、一九六三年には六・四%に伸びておる、さらに、四十一年度の予算につきましての計算はまだ精査いたしておりませんけれども、おそらくその割合は七%をこえるように前進をしておる、これは明らかに数字が示しておるところでございます。  さて、ただいまの政府管掌の健康保険につきましての赤字国庫負担の点につきまして、過去の対策との比較において下回っておるではないかという御指摘でございます。ただいま局長から御説明を申し上げましたように、昭和四十年度の赤字は六百九十六億、ざっと七百億でございます。この法案改正をせずにこのままでまいりますれば、四十一年度におきましても七百二十億の赤字が予想される。そこで、私どもは、まず四十年度の約千四百億余りの赤字のうち今日までの累積赤字は、答申の御趣旨もありましてこれをたな上げをいたしまして、ただいま政府財政資金その他余裕金等でその財政欠陥というものをカバーしながら、運用をいたしておるわけであります。いずれはこの七百億に近い累積赤字は、これは何らかの対策をもって措置せにゃいかぬ、こういうことになるわけであります。これが前回のように、幸いにして保険財政が黒字基調になってまいりますれば、これはその余裕分から逐次補てんをしていく、こういうことになろうかと思うのでありますが、もしもそういう黒字基調にならないで、相当保険財政がきつい状態が続くようになりますれば、何としてもこの累積赤字というものは国が大きな責任を持ちまして処理せざるを得ないような事態になるのではないか、私はこう思うわけでございます。八木さんは、この今日までの累積赤字の六百九十六億円というものに対しましてはお触れにならなかった。全体を千四百億として、その中で百五十億程度ということは問題にならぬじゃないかというその御指摘でございますが、それは今後国会の御意見も伺いながら、この累積赤字の処理というものは政府として考えなきゃいかぬ問題であります。そうなってまいりますと、当面御議論をいただかなきゃいかぬのは、昭和四十一年度の財政見通し、つまり七百二十億の赤字が出るであろうところの財政対策をどうするか、こういう問題にしぼられてくると私は思うのでありまして、これに対して私どもは、国の財政きわめて困難な、多端なおりからではありますけれども、不十分とは申しながら百五十億を計上いたしました。また総報酬制ということをやめまして、御趣旨を尊重して標準報酬上限の引き上げ、これによって一つの財源を見出していく。そうなりますと、問題は、先般も申し上げたのでありますが、ただ一点この料率の問題でございます。私は、この料率の千分の七十を組みます場合には、ほかの医療保険制度との負担の問題等も十分勘案をいたしまして、負担力の弱いところの国民健康保険の被保険者方々に現在負担をしていただいておる点等と比較勘案をしまして、この程度の御負担は、これは御協力いただかなきゃいかぬ、こういう結論に達したものでございます。したがいまして、政府といたしましては、国家財政その他全体の医療保険の面を勘案いたしまして、今回当面の対策としてこの保険三法は妥当なものである、私はかように考えておるのでありまして、これはどうかひとつ国会の場におきまして、賢明なる与野党の皆さんの高い立場からの御判断によってこれをすみやかに御可決あらんことを、切にお願いを申し上げる次第でございます。
  70. 八木一男

    八木(一)委員 いま撤回はできないで何とかということでありました。しかし、鈴木さんの人柄はわかっていますけれども政府の出したものは、欠点があっても出したものは頼みます。通してくださいじゃ、これは国会を無視したことになるわけです。国会は、いけない法律であったらこれは可決をしない、否定をする、あるいはまた次まで延ばす、あるいはまた修正をするというようなことになるわけです。政府案のほうには欠点がないとはお思いになっても、これは悪い点があったらぜひお直しください、悪い点があったら御指摘をください、悪い点を御指摘いただいて、ほんとうにそうだったら私のほうは出し直しますというような気持ちで、やはり法案提出に当たっていただかなくてはならないと思う。何が何でも通してくださいでは国会がないと同じ、社会労働委員会なんか要らない。それではちょっと憲法上たいへん問題になりますから、ひとつ悪い点があったら直す、ひどく悪かったらこれはやめますというふうな気持ちを持って、われわれと一緒に審議に当たっていただきたいと思うわけです。  そこで、いま鈴木厚生大臣がちょっとおっしゃいましたけれども、私は累積赤字両方足してかぶせて計算したのではないのです。七百三十億に対して〇・六倍をして、四百三十二億のラウンドナンバーで四百三十億と申し上げた。累積赤字のほうはまた別なわけです。累積赤字についてもやりますが、それは政府管掌ですから、政府が見られるのはあたりまえです。こういう赤字が出たのは政府責任ですから……。赤字の出た理由を、たとえばいろいろなことを言われます。いろいろなことを言われるけれども赤字というとすぐ悪いことのように見られるのは大間違いで、赤字が出るくらい医療費が出た、よい診療が行なわれた、よい薬が使われた、かなり前よりは多量に使われた、このことによって国民の病気がなおった、命は保たれたということで、赤字というと悪いことみたいに思うのは大間違い。医療保障がそれだけ伸びたという観点で考えておられると思いますが、そういうことです。ですから、何だか赤字というとどろぼうみたいな気持ちの発言が世の中にあるようですけれども、そういう問題ではないということをお互い確認の上、ひとつ問題を進めてまいりたいと思うのです。  それから、累積赤字について黒字に転換したらそれを埋める、それでなければ国が一般財政で持つというような御意見がありました。私はもうそんなことを待たないで、あっさり国の一般財政で持つ方策をもっと強力に進められるべきだと思うけれども累積赤字が出た原因一つにどういうことがあったか。三十二年に三十億の国庫負担をやられた、これは一部負担をする患者も泣いてください、保険料を上げる、被保険者も泣いてください、医療担当者もいろいろな意味で締めるから泣いてください、そういう三泣き、四泣きの方策でやったからということで、これは当時通された。ところが、保険料はもとに戻りましたが、一部負担は戻らない。そのままです。これは一部負担が五十円から百円になった。それから入院時の一部負担がなかったのがふえた。それは患者からそのままむしっているわけです。約束の黒字になっても戻さない。赤字の間と同じだ。これこそは、どろぼうと言っては語弊があるけれどもほんとう公約違反ですよ。もとに戻すという約束を破って、国民の声が小さいから、特に患者の声が小さいからいいだろう——保険者のほうはなくしたが、一部負担のほうを戻さなければいかぬ。医療保障については患者が一番大事です。順序を間違えておる。そういうことをして、患者の入院時の一部負担をなくするということをしないでほおかむりをしてこられた、そういうことです。それから国庫負担を知らない間にずっと縮めてきた。ですから、国庫負担を三十億出したでしょう。これは少ないけれどもかんべんしてくださいといって出した。出したやつをずっと続けていく、対象者がふえた、それをずっと出していればそれだけ赤字が出ない。赤字原因は、半分以上は国の責任ですよ。だから、そんなたな上げ赤字みたいなものを国が始末するのはあたりまえです。恩着せがましくではなしに、そう考えなきゃいかぬ。それを大蔵省のほうもよく聞いておいていただかなければならぬ。三十億を知らない間にどんどん減らしてきて、わが党の同士がさんざんそういうことはけしからぬと言っても、知らぬ顔でタヌキ寝入りをしたようなかっこうで、そしてだんだんもぎっていったわけです。そういうところに赤字原因がある。これは鈴木厚生大臣にぜひ聞いていただかなければならぬ。ちょっと水を飲んで待っております。
  71. 田中正巳

    田中委員長 速記をとめて。   〔速記中止〕
  72. 田中正巳

    田中委員長 速記を始めて。
  73. 八木一男

    八木(一)委員 いま鈴木厚生大臣の生理的な要求と私自身の要求で時間をとりました。  この赤字のことでございますが、厚生大臣、たな上げのところのことに触れたときに、一時中断になりました。実はこのたな上げの問題を将来黒字になったとき埋める、これだけは政府で処置をしなければならない、これは一応いいことですが、それよりももっと積極的に、早く国で埋めてしまうというような考え方でひとつ推進をしていただきたいと思います。というのは、この累積赤字が出たのは、前に国庫負担をなまけたから出たわけです。昭和三十二年に三十億の国庫負担があった。ところが、これをだんだんつづめてしまったわけですね。だんだんだんだんにつづめて、減ってしまったわけです。あのときには、一部負担をする、あるいはまた保険料率を上げる、あるいはまた医師のほうの監査をいろいろやるということで、患者と被保険者と、被保険者の中に使用主も入りますからそれと、それからお医者さんと国が、五人泣きというような状態で赤字を解消するためにぜひこれを了承してほしいということでございました。その中で保険料率はもとへ戻した。ところが一部負担と一番肝心なものはもとへ戻さないで、五十円を百円に上げて、入院料一部負担を新設したところをそのままほおかむりしてむしっているわけです。患者というものは非常に弱いものです。患者になってみるとわかりますが、私も患者になってみましたけれども患者になるとほんとうに金がかかる。病気のときに貧乏すると金がしんどいですが、といって命にかかわりますから、金をそんなに払うのじゃ入院しないなんて言えませんから、死んじゃっちゃたいへんですから、血の涙でそういうものを負担するということになるわけです。ほんとうは一番患者が気の毒なのに、患者負担をもとへ戻さないでほおかむりをしておられるわけです。ところが国庫負担のほうは、その間にずっと減らしてしまったわけです。それをずっとやっていますと、特に健康保険のスケールが大きくなったのですから、そういう比率を伸ばしていけばかなりの金額になっているわけです。それをやっておけば、今日のこんな大きな累積赤字が出なかった。累積赤字のものを、普通たとえば薬を使い過ぎたとか、あるいは何とかかんとかという理屈ばかり特に厚生省関係筋から流されますけれども、私の観点から言えば、累積赤字の最大の原因は、伸ばすべき国庫負担をつづめてしまったというところにある。ですから、こんな累積赤字は、国がいままで出さないで、心配かけただけで申しわけない、おそくなってすみませんでした、たな上げは全部一般会計から埋めます。防衛費か何かから削るか、金持ちから税金を取るかして、財政も考えて埋めますと言うのがあたりまえなんです。だからそういう恩着せがましいことではなくて、ぜひやっていただかなければならぬし、それからその問題とからめて鈴木さんが言われましたけれども、それはそれとして、やられることはいいことだけれども、やられるからこっちのほうをつづめていいという問題ではないわけです。七百二十億に対して六割ということになると、五百億近くのものを出さなければならいのに、こんなに貧弱な案では非常に情けないと思うわけです。出された以上、撤回といってもそれはなかなかできないと思いますけれども、ここでおそらく与党の委員さん方も、私が、があがあ言いますから、ときどき好意的なあるいは否定的なやじは飛ばされますけれども医療保障については私ども以上に熱心な方ですから、百五十億なんというものはとんでもないというお考えを内心は持っておると思う。そういう与党の方々の動きと私どもの推進で、どうしてもこの法案を通さないか、あるいは何百億という国庫負担をして、内容がやや満足できるものにしてという場合もあるかもしれません。少なくともこれは五百億ぐらい国庫負担を出さなければ、この法案はつぶすべきだ、通すべからざるものであるというふうに考えておるわけです。五百億ぐらい出せば、非常に問題になっております保険料率の引き上げなんというものは、五百億さらに出すことによって、二百九十億というものをなくすことができます。料率の上がることが非常に問題になっていることを、解消することができるわけです。そういうようなことを進めていかなければならないと思いますので、ぜひ厚生大臣も原案に固執しないで、いろいろの団体の意見なり議論を反映して、そのときの心準備をしていただきたいと思うのです。そういう点で、できましたならば考え直して、これを撤回されて、それで三日後にでも国庫負担五百億、保険料率の引き上げなしというような、みんなが喜んで通せるような法律をひとつ出していただくということを、ぜひこの一両日中に積極的に考えていただきたいと思うわけです。そういういまのことについて、ひとつ厚生大臣のお考えを伺っておきたいと思います。
  74. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 先ほど八木さんは、医療保険赤字は、何もこれは非難するに当たらない。むしろそれだけ国民医療が高まった、内容がよくなったんだ、こういう意味で、この赤字というのは決して非難されるべきものではないという御指摘があったのであります。これは私は、この医療保険の実態を非常によく御認識いただいておる結果であろう、こう思うのであります。でありますから、消費者米価でありますとかあるいは国鉄運賃でありますとかいう、いわゆる一般の公共料金、これは内容がよくなったために、それに見合って上がったということよりは、そうでなしに賃金その他諸般の事情から、内容は従前と同じであるけれども、これは公共料金を上げざるを得なかった、こういうことであろうかと思うのであります。ところが、医療保険の場合におきましては、八木さんが御指摘になりましたように、受診率を上昇した、給付内容も医学、医術の進歩に伴い、また医薬品の非常に質のいいものを使うようになって内容がよくなったのだ、その結果なんだ、ちっとも非難さるべきものでない、こういうことを是認いただくのであれば、やはり内容がよくなっておるのだから、被保険者の皆さんにもこういう財政困難な際であるから応分の御負担、御協力をいただこう、そういう論理の発展はこれは当然じゃありませんか。私はそういう意味合いからいたしまして、これが国保であるとかその他の共済保険であるとか、そういう面の他の制度の被保険者負担に比べてはなはだしく重い、もうこれ以上はどうにもならぬ限界にきておる、であるから、あと国庫負担でまかなえという御議論であれば、大いに私もその御主張の論点に対しましては賛意を表さざるを得ないわけなんでありますが、他の制度におきましては、今回私どもが御提案申し上げておる千分の七十、労使で折半いたしますと千分の三十五、この程度の御負担は、他の医療保険制度でもそれぞれ負担をしていただいておるわけであります。そういうような意味合いからいたしまして、私は、実質的な医療費内容もよくなっておるのでありますから、その受益者である被保険者方々にも応分の御負担を願いたいというのが今回の提案趣旨でございます。
  75. 八木一男

    八木(一)委員 たいへん厚生大臣本格的な論戦をされましたので、私も非常に張り切って本格的な論戦をいたしたいと思います。  実は、内容のよくなったことはいいことだ、これはもう厚生大臣のおっしゃるとおりで、私もその意見です。だから、その負担について負担したらいいじゃないか、そこからちょっと違ってくるわけです。何も保険料の負担だけではありません。負担というのは、一般財政から負担することでも、これは国民負担するのです。ところが、一般財政から国庫負担でやることは、負担能力の非常に多い高額所得者に対して、直接税の場合に累進税がかかっておる。そういう負担能力のある人から税金を取って、それで国庫に納めた、その国庫負担するのですから、このような医療内容のよくなったものについて、たとえば医薬品が高過ぎるのは困るけれども、非常にいい医薬品がりっぱな技術で開発をされて、それによって病気がなおったという場合だったら、その開発に要した費用が薬の単価にかかっているのはあたりまえですし、非常にいい機械を備えつけて非常にいい診療をしてもらったら、お医者さまにそれだけのいい技術に対して報酬を払うのはあたりまえです。そのよくなった医療に対していい報酬を払うのはあたりまえです。これは別に悪いことじゃありません。その分担をだれがするかというのが問題であります。その分担の問題は、保険料で上げるということよりも、国の負担で上げたほうが、いまの非常に物価高とか低賃金とか、そういうことで苦しんでいる人の負担にするのでなしに、多くの負担能力のある大きな金持ちだとか、そういう人から直接税で取った、累進課税で取った、それを充てるということが本筋であります。保険料を取るということは逆筋であります。これは残念ながら社会保険として発展をしております。しかし、憲法では、社会保障ということを規定してあるわけであります。社会保険の険の字も入ってない。それを厚生省は、社会保障と社会保険と、一つだけ違うのを取り違えてよくものをやられる。社会保険には二つ——もう一つありますよ。医療保障にもう一つ大きな問題がありますけれども、社会保険ということでは、そういうようなまずい点が起こるわけです。社会保障の社会保険でやっているのですから、それを社会保障の方向に向けてどんどん前進させる。そのことが国庫負担の増率であり、保険料を引き上げないことである。国庫負担というのは、負担能力に応じて高額所得者から原資を得て、全国民に回すということになるわけです。  いま受益者と言われました。受益者ということば、これが非常に間違ったと思います。鈴木さんは名の示すとおり善人でございますから、悪意で使っておられませんけども、受益者というとんでもない考え方が厚生省の中に蔓延をしている。これはペストみたいなものです。これはほんとうに千葉県やあそこのものじゃないけれども、衛生を守る根源においてその猛烈なペストというものが蔓延をしておる。この受益者ということばは、厚生省から、完全に払拭をされなければなりません。病気になってからだを見てもらう。確かに薬代が要る。お医者さんの診療費が要る。金を保険から払ってもらうことになるでしょう。しかし、だれが好んで病気になるのですか。命の心配をする、苦しい、痛い、そういうことをだれが好んでやりますか。受益者ではない。いろいろな労働条件が悪くて苦労する、そのためにからだを痛める、あるいは衛生環境が悪くていろいろな病気になる。国家行政が十分でないためにそういうしわ寄せを受ける。病気になる。病気になったことについて金を出してなおしてもらったからといって、なおらないよりはうれしいかもしれないけれども、病気になったことをだれが喜びますか。受益者ではない。家の前の道が舗装になってよくなったという問題とは違う。そんな建設省みたいに受益者というような考え方は、厚生省からは断じて払拭しなければならない、そういうことです。ですから、そういうものを得をしたのだからその金を負担しろというような考え方は、社会保障を論ずる立場からは不適当であります。益は受けていない。そうではない。ほんとう国民が、残念ながら健康ではない環境で病気になった、それをなおして早く働いてもらう、早く人間としての明るい生活をしてもらうということは、これは国の責任であります。憲法二十五条でそれを書いてある。それを進めるために新しい薬が開発をされた、新しい医療技術ができた、それには費用がかかる。お医者さんも生活をしなければならない。経営をしなければならない。薬品会社も少しもうけ過ぎていますが、それを抜きにして、基本的に考えれば、りっぱな薬を開発するには開発の費用が要る。製造の費用が要る。そのために機械が回るようにしてやらなければならない。だから、りっぱなものができたからそれだけ費用がふえるのはあたりまえです。ところが、それを受けるのは受益者ではないのです。健康で文化的な生活をするために、病気になったものをなおしてもらう国民の権利があるのです。それを扱っているのは国であります。したがって、その費用を出すのは、国庫負担で出すのは当然の筋であります。しかも具体的に高額所得者からたくさん取って、そうしてほかの人の必要なものに回す、所得再配分、そういう思想、そういうことが一番大事であります。受益者だから保険料を上げてもいいという考え方は、厚生省から払拭をしていただかなければ、厚生行政社会保障もとまってしまいます。どこのだれが、受益者というようなことを厚生省で蔓延をさしたか。厚生省局長や部長にそういう考えを一人でも持っている者があれば、直ちに直してもらわなければならないと思います。厚生大臣もぜひそのお考えを改めていただきたいと思います。厚生大臣の御答弁を願います。
  76. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は、医療保険制度保険主義でいくかあるいは社会保障でいくかというような、そういう議論をする意味合いで申し上げておるのではございません。憲法にうたっておりまする国民の最低生活の保障なりあるいは国民の福祉の向上というような面につきましては、これは生活保護を受けておりまするとかあるいは市町村民税の非課税者でありますとかいうような、低所得方々が病気をされました際におきましては、これは公費でもって負担をしたりあるいは公費で助成をしたり、そういうことは、現に国民健康保険制度のもとにおいても行なっておるわけでございます。しかし、そうでない一般の方々におきましては、これは社会保険とか社会保障とかいう議論は別といたしましても、現にやはり保険負担をし、また足らざるところは国から、一般会計からこれを助成をする、こういう制度でこの医療保険制度が実施されておりますことは、先刻御承知のとおりでございます。全部を国民の税金で医療保障制度をやる、日本はそこまでいっておりません。そういう現実の問題といたしましては、やはり医療費増高によって、近年急速に保険財政が悪化をしてまいった。そして、先ほど来申し上げるように、実際にその内容がよくなってきておる。そういうものに伴うところの赤字ということであれば、私は、この医療保険を利用する被保険者方々が応分の負担をするのは当然ではないか。それを全部税金でまかなえという主張は、医療保険制度が、これが全部国費でまかなうのだ、こういうことになればまた別問題でございますけれども、現在の制度のもとにおきましては、私は前段に申し上げたように考えるのが妥当ではないか、こう思うわけでございます。  ただ、今回の千分の七十、労使折半で千分の三十五、こういうものが他の医療保険の被保険者に比べて負担が重い、こういう御指摘でござますれば、なぜ政府管掌の医療保険だけが他の制度並み以上の重い負担をせねばいかぬかと、こういうことになるわけでありまして、私は、そういう場合におきましては、当然国においてもさらに国庫負担等を考えねばいかぬ、こう思うわけでございます。しかし、他制度との均衡等を考えましても、今回の千分の三十五というものはそう無理な負担ではない、かように考えておるのであります。
  77. 八木一男

    八木(一)委員 私も、先ほどから、その問題ははっきり触れませんでしたけれども、直ちにいまの保険料をゼロにしろとは言ってない。社会保険で、社会保障の精神が十分でないからけしからぬとは言ったけれども、社会保険をいま直ちにやめろとは一言も言ってない。やめて全部国にしていただいてもいいですよ。なかなか無理だということはわかっております。少なくとも、しかし社会保障の方向に従って前進をしなければならない、これが憲法の精神である。憲法の精神ですよ。そうなれば、そのような保険料負担分があっても、国庫負担の分を社会保障の精神に従って大幅に引き上げていく努力がされなければならない。また、そういうことをしなければ、現時点の赤字の問題についての解決もむずかしい、理念からいっても、現在の要請からいっても、そういう状態にある。しかも、前に、こんなに国家の規模が大きくなってないときに、赤字の六割、それも乏しいといってされた、そういう例があるわけです。それ以上に、赤字の七割か八割は国で持とうという気持ちをなぜ持たない。そういうところに社会保障の停とんがある。ほかの例を言って、あれだけでいいという理屈ばかり言っておられる。これは厚生省が原案を出されたから、それを守らないと立場上悪いでしょう。しかし、それは国民立場ではない。他の社会保険と比較をしてと言う。他の社会保険がこれより悪ければ、なぜそれを直さない。低いものに背並べをする必要は一つもない。結局、とどのつまりは、予算を要求しても大蔵省承知をしない、そういうことでできた原案を守ろうという理屈であります。そういうことでは問題が進みません。額で申されますけれども、なぜそれでは健康保険法に対して定率の国庫負担がないのか。これも、片方は本人は十割、家族は五割、国民健康保険では七割と、それからもう一つ、家族は七割が進展中である。給付が違うから実額が少ないから、あるいはほんとうに見てもらう回数が少ないから、実額が少ないから少ないというような理屈をきっとおっしゃるだろうと思いますが、その問題の前に、国民健康保険に今度は四割の国庫負担の案を出しておられる、調整交付金五分の案を出しておられる。同じ国民である農民の方々や中小企業の方々に、その医療保障のために国庫負担をどんどん出されるのはいい。四割と五分の調整交付金等、そんなけちなものではだめだとわれわれは思っておる。しかしそれは、出されるのはいいけれども、なぜ一般財政から同じ国民である労働者に出そうとされないのか、定率で出そうとされないのか。あとで根本的な討議をするから、いま腰だめだと言われる。腰だめだと言われても、当然そのときに定率の国庫負担が必要なんだ。いまからやっておいてもかまわない。根本的に討議をしてから、そこで改めてもかまわない。なぜ今度定率の国庫負担を出されないか。社会党の言うように三割、三割じゃ少ない、四割出そうというような決心をなぜ政府でせられないのか。国民健康保険に定率の国庫負担がある、この健康保険法に定率の国庫負担がない、それをどう考えておるか、ひとつ伺っておきたいと思います。
  78. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 その問題につきましては、社会党さんのほうで一つの案をお持ちになっておることも承知をいたしております。しかし、これらの問題は制度の根本に触れる問題でありまして、私は、今回の保険三法の改正は、冒頭に申し上げておりますように、この程度改正で十分とは考えられない、当面の財政対策を中心とした改正案である。引き続き制度の根本の問題に触れて抜本的な改正を必要とするということを、先日来るる社会党の代表の各委員方々に御答弁申し上げておるところでございます。私どもも、各制度間のアンバランス、負担の問題、給付内容の問題、さらに国庫負担の問題、そういう問題を、制度全体を見渡して、国庫負担はどうあるべきか、そういう点も検討することにいたしたいと考えておるのでありますが、いま直ちに、この当面の対策として出しましたものにつきまして、定率として幾らということでなしに、とりあえず社会保険審議会は二百億程度八木さんは四百億ということをおっしゃっておりますが、社会保険審議会では二百億程度と、こういうことでございますが、国家財政その他の関係からいたしまして、二百億には及びませんが、百五十億程度負担をやる、こういうことにいたした次第でございます。
  79. 八木一男

    八木(一)委員 私の答弁お答えになっていただかないと困るのです。国民健康保険に定率国庫負担があって、健康保険法にないのはどういうことかということを伺ったので、ほかのことを伺ってない。伺ってないことについて御答弁になったことは、私はそうとがめはしませんけれども、それも不正確なことを言ってもらっては困る。社会保険審議会が二百億と言っていますか。二百億とは言ってないでしょう。そういうことをそらして言われるのは非常に困る。これは保険局長がよく補佐しなければいかぬです。さっきも、制度審議会のときに、前二者に比してという一番肝心なところを抜かして厚生大臣答弁された、ここでもこういうところがある。保険審議会答申は、「昭和四〇年度予算においてわずか三〇億円を計上するにとどまっていることは甚だ了解に苦しむところであり、暫定対策実施期間につき平年度二〇〇億円に相当する国庫負担額を追加計上し」と書いてある。「追加」は読めないのですか。これは二百三十億ですよ。三十億に対して二百億を追加計上せよ、そういうことを値切ってばかりいては困りますよ。二百億じゃないのです。しかもこれは、お忘れになったかどうかわかりませんけれども、その次に、「昭和四十一年度においても、これに準じて措置すべきである。」と書いてある。これはあの時点が四十年度で、出してありますから四十一年度、今度から見れば四十二年度に当たるわけです。それについては、これは事務的な質問になりますが、四十二年度のことについて大蔵省とこの答申について話し合ったかどうか。ことし二百三十億が百五十億しか出なかったから、平年度二百三十億に加えてことしの足りない分八十億をふやして、四十二年度に三百十億はどんなに少なくても出してくれますかと約束をしたのですか、しないのですか。
  80. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 四十二年度におきましては、しばしば大臣からも御説明がございましたように抜本対策をやるということになっておりますので、百五十億の予算案は四十一年度ということで、四十二年度以降のことは考えておらないわけでございます。
  81. 八木一男

    八木(一)委員 もちろん二百三十億にことしの差額八十億を加えた三百十億なんて、そんなけちな金額ではいけないけれども、それは確定した金額として確保されて、それから何百億プラスをするかというような覚悟で交渉されなければ、そんなものはとんでもないですよ。大蔵省は値切ることが商売ですからね。それをどうしてもらうか、そういうことについて決心をきめて、ほぞをきめて交渉されたかどうか。これは厚生大臣でも保険局長でもいいです。
  82. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 国庫負担の問題につきましては、前段で八木さんから国保のほうには国庫負担の定率化があるが、政府管掌のほうにはなぜないか。また、それに関連をいたしまして、二百三十億とかいろいろの数字をあげてお話があったわけでありますが、私は、各制度間に、財政面におきましても、給付内容におきましても、負担の面におきましてもアンバランスがある。これを是正せなければいかぬ、総合調整をせなければいかぬ、あるいは必要なものは統合せなければいかぬ、そういう根本的な医療保険制度全体を再検討いたします。その際に国庫負担の定率化の問題についても検討いたします。いままではございません。だから、各制度間にアンバランスがある。国保のほうでは定率化がある、政管にはない、組合健保にも当然ないというようなことで、アンバランスがありますことは御指摘のとおりであります。だから、医療保険制度全体にこの際再検討を加えて、国庫負担はどうあるべきか、定率化の問題をどう扱うべきか、こういう問題を検討しましょうということを申し上げておるのでございます。
  83. 吉村吉雄

    ○吉村委員 いま八木委員質問している内容は、国保に対して国庫負担が定率化されておる、ところが政管健保についてはそれがない、その理由は一体どうかという質問をしているわけですから、今後の検討事項の対象になることは明らかでしょうけれども、いまの状態でそういう差があるのは一体どういうわけかということに対する質問ですから、その質問に対して答弁をしないとこの問題は前進しないと思うので、そこはやはり大臣の所見を明確にしてもらわなければいけないのじゃないかと思うのです。
  84. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 この問題は、伊藤さんの御質問でありましたかどなたの御質問でありましたか、その際にもお答えをしておるし、八木さんのようなベテランは先刻御承知だと思って、今後の検討事項として申し上げたのでありますが、組合健保あるいは政府管掌の健康保険におきましては、労使でもって保険料を折半し、負担をしておるわけであります。ところが、農民や自由業者におきましては、事業主というような形においてこれを折半負担するということになっておりません。そこで、どうしてもそれを全額農民や自由業者が負担するということになりますと、これは負担面からいっても非常にたいへんだ。そこで、国保のほうにおきましては、国がこれに対しまして一定の国庫負担をやっている。これはもうベテランの八木さんや吉村さんは先刻御承知の問題でありまして、私はそこはお話をせぬでも、アンバランスがある。国庫負担の問題は先ほど来強調しておりますから、国庫負担はどうあるべきかという問題は、今後各制度を全体的に検討して国庫負担のあるべき姿というものを検討したい、こう申し上げておるのであります。
  85. 八木一男

    八木(一)委員 いろいろなバランス、バランスと言われますけれども、バランスを言われるなら全部考えていただきたいのです。たとえば厚生年金法に国庫負担が二割ありますでしょう、国民年金法には保険料に対して五割、給付に対しては三分の一、これも農民と中小企業の人、労働者の問題でしょう。同じにしろと言っているわけじゃない。国民年金、厚生年金、国民健康保険にあって、なぜこっちのほうにないか。あなたはバランス、バランスと言われるけれども厚生省の中でいろいろそういうものがあることをひとつ御研究になっていただきたいと思う。まるでバランスを欠いているでしょう。  それから、いまの労働者のほうは使用主負担がある、これは工場法以来の伝統があるわけです。いろいろな経過を経てこういうことになっているわけです。ほんとうは使用主が全部持ってもいいという実質もあるわけです。経過を経てこういうことになっているので、これは労働条件の一つなんです。しかも労働条件の中心である賃金というのは、非常に精力的な働きをして日本の産業振興に功績を残している労働者に対して、ヨーロッパの三分の一くらいの賃金、それを埋める一つのものとしてあるわけです。一番最後の現象面だけとらえてものを考えるというのは、小学校の生徒ならしますよ。だけれども大臣がそういうことじゃ困る。国民に対して医療保障について国が負担をするという理念は、農民であろうと中小企業者であろうと労働者であろうと同じでなければならない。ただ、具体的な問題として使用主負担がないから、農民の諸君や何かは負担が苦しいから、その厚みがかかっていることは、私どもも現在の段階として是認をいたします。是認をするだけではなしに、四割の国庫負担と五分の調整交付金、あんなものじゃいかぬ、もっとふやさなければいかぬという主張をいたします。しかし、率の差はとにかくとして、同じ国民になぜ国がそのような国庫負担を、定率化を出せないか、国民年金と厚生年金の関係であるものを、なぜ健康保険については出せないか、そういうことを申し上げているのです。この点に非常にアンバランスがあることはお気づきだと思う。そうなれば、定率国庫負担を出せと言うのはあたりまえだという結論になる。それについての厚生大臣の御答弁を伺いたい。
  86. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 八木さんの言っておられることと私の申し上げていることはちっとも違いがないのであります。社会党さんにおきましても、政府管掌健康保険等の負担の定率化等の御提案があります。それは承知いたしております。そこで、国庫負担の面を一つ取り上げましても、各制度間に、定率化をしているところもあれば定率化をしていないところもある。しかし、定率化はしないけれども、今回のように大幅な国庫負担をやるという形もある。こういうことにつきましては御指摘のとおり御議論があります。そこで、国庫負担は今後どうあるべきか、各医療保険制度の間でどうあるべきかということを、私は制度の根本的な改正において前向きで検討しましょう、こういうことを申し上げておるのでありまして、決してあなたの御意見とまっこうから対立をしたりしておる問題ではございません。
  87. 八木一男

    八木(一)委員 それでは政府管掌の健康保険、組合管掌の健康保険、各共済組合の短期の給付について定率の国庫負担を推進される、やられる御意思があるわけですね。
  88. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 その問題につきましては、先ほど来申し上げておりますように、医療保険制度の中におきまして、被保険者負担の面、給付内容あるいは国庫からの助成の面、また各保険制度の中の財政事情、いろいろそこに不均衡がございます。そこで、こういう点を全部私は再検討を加えまして、そして各制度間において均衡のとれた医療国民に提供できるように、こういうことをぜひ実現したい、その一環として、国庫負担をどうなすべきか、どうあるべきかということを検討したい、こういうことであります。また一面、そういう収入の面だけでなしに、支出の合理化ということも必要であります。そういう面からいたしまして、診療報酬体系の適正化の問題が当然出てくるのであります。そういう支出の面の適正化、それから収入の面の適正化、アンバランスの是正、そういうことによって皆保険下における国民医療が、国民全体に均衡のとれた形で給付がなされるようにいたしたいというのが私の念願でございます。
  89. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣、ひとつ考え直していただきたいと思うのです。均衡均衡と何か五、六回言われました。それはアンバランスがあることはわかっております。アンバランスだから均衡だ、そのままでいきますと、鈴木厚生大臣あるいはその属しておられる佐藤内閣、あるいは自由民主党は、均衡ということばで医療保障なり社会保障をとめるのだということになりかねない。私は、ここにおられる社会保障に熱心な自民党の先生方のお気持ちを知っていますから、そういう気持ちは自民党の中の社会部会においてはないということを確信しております。しかし、そういうようなことを配慮しないで発言されると、佐藤内閣はそういうことになると思います。いま訂正されればいいですよ。もし訂正をされなければ、社会保障をとめられる御意思である、国会でそのような趣旨を確認されたとして、世の中にこれを報道しなければならぬ。(「だれもそんなこと思っていないよ」と呼ぶ者あり)思っていないという不規則発言、善意な発言があったが、均衡均衡ということで平均されてしまうことになる。社会保障の前進は一つもない。憲法二十五条の第二項を繰り返し百ぺんでも読んでください。その大事なことを忘れては、問題の大事なときに均衡ということはしか言わないということは、社会保障をとめることになる。そうじゃないと横に首を振っておられる。それなら非常にいい。それなら国民のために自由民主党が熱心であるということで、私は喜ばしいと思う。社会党より熱心であってもらいたい。佐藤内閣が熱心であるということなら、大いに社会保障を前進させる、その一つの焦点は国庫負担をうんと前進させることだ、平均をするということが重点ではなしに、前進させることが重点であるということをはっきりおっしゃってください。それを必ずやります。職を賭しても、内閣の運命を賭してもやるのだということを明言していただきたいと思う、国庫負担をふやすことを。全部について均衡というようなことで平均して、下がるところができたら、そういうことではいけない。全般的な点について前進をしなければいけない。その決心があるならはっきりおっしゃっていただきたい。決心がないなら、自民党あるいは佐藤内閣を代表して、社会保障をストップさせる意思であるということをはっきり言っていただきたい。どっちか明白にしていただきたい。
  90. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 だいぶ誤解があるようでございます。私は、政治の面において不公平な状態があってはいけない、やはり国民はひとしく同じような内容医療給付がなされるというようなぐあいに持っていくことが必要だと思います。ある面だけが非常に前進をし、ある制度においては非常なおくれを持っておるというようなことでは、私は皆保険下における国民医療の確保という面から言うと、それが早く是正をしなくちゃいかぬ、こう思います。そうして均衡のとれた形において前進をしていく、こういうことが必要だと思うのでございまして、アンバランスのままに放置できないというのが私の信念でございます。
  91. 八木一男

    八木(一)委員 前よりも少しいい御答弁です。それで、それをもう一つ変えていただいて、医療保険社会保障の精神に従って、具体的には国庫負担をうんとつぎ込むことによって前進をさせる、その前進の過程においてその不均衡を改めていくということが必要だと思う。それは均衡をとるのは急速でもいいです。前進がそれ以上に強力でなければならない。前進がまず先で、前進後ぐんぐんやる。そういう観点で進めていかなければならない。その点でまだ御答弁は、私の採点では零点から五十点に戻っただけである。百点のほうにひとつ戻していただきたい。そういう観点でやっていただけるかどうか。
  92. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は、社会保障の問題は現状より後退ということは許されない、かように考えておりますから、均衡ということは後退という意味ではないということをはっきり申し上げます。
  93. 八木一男

    八木(一)委員 均衡ということは後退という意味ではない、前進であるという意味でなければならないと思いますし、そうだと思うのですが、そこをはっきり言っていただきたい。
  94. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は、均衡のとれた形で前進をしていくということが望ましいと思います。
  95. 八木一男

    八木(一)委員 そこで、さっきの問題に戻りますが、国民健康保険に四割の国庫負担を提起されておる、健康保険法にはそういうような定率のものをされていない、それは抜本的にいろいろ研究してからと言われるけれども、とにかく理念としていま伺っておきたいと思う。どんな職種であっても、国民に対して国が責任を持つことは同じ理念でなければならない。具体的に必要度が非常に多いところには厚みがかかる。それは具体的な行政として差しつかえないと思いますけれども、片一方にはそういう理念があって、片一方にはないということはいけないことだと思います。それについて、はっきりその理念について伺っておきたいと思います。
  96. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 先ほど申し上げましたように、国民健康保険と組合健保との間には、八木さんも御指摘になりましたように、おい立ちにおいて、その沿革において歴史的に私は違うと思います。そういう意味合いからいたしまして、国保のほうに国庫負担の定率化ということが採用されてきた、これは御理解がいけると思うのであります。しかし、政府管掌健康保険等におきましても、定率化ではございませんけれども保険財政が非常に悪化をしたというような時点におきましては、常に政府がこれに対しまして財政的な援助を行ない、補助を行なって今日までまいったのでありまして、決してこれは組合健保であるからということで、そういう事態に当面いたしても政府は何らの措置を講じなかったということでないことは、御承知のとおりでございます。したがって、先ほど来申し上げておりまするように、今後、現実にこうやって今回も百五十億も国庫負担をやるのでありますから、この国庫負担のあるべき姿をどうすべきかという問題について、根本的な制度改正において検討したい、こういうことを申し上げておるのであります。
  97. 八木一男

    八木(一)委員 ちょっと問題を離れまして聞きますが、定率と定額とつまみ金の問題についてどういうふうに考えておられるか、厚生大臣のお考えを伺いたいと思います。
  98. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 定率ということになりますと、療養給付費に対しましての一定の率ということになるわけでございまして、これは国民健康保険あるいは日雇労働者健康保険等につきまして、法律でもって明定をいたしておるわけでございます。ところが定額ということになりますと、これは率ではございませんので、法律の根拠はございましたにしましても、率じゃなしに一定額の補助金を入れるということに相なるのじゃないかと思います。
  99. 八木一男

    八木(一)委員 つまみ金は……。定率と定額とつまみ金。
  100. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 つまみ金というのは、私は定額だというふうに思っております。
  101. 田中正巳

    田中委員長 午後二時十五分まで休憩いたします。    午後一時四十三分休憩      ————◇—————    午後二時二十七分開議
  102. 田中正巳

    田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続けます。八木一男君。
  103. 八木一男

    八木(一)委員 労働省の関係の方は来ておいでになりますか。実はきょう午前中、厚生大臣中心質問いたしましたことにつきまして、労働省の関係の人も、この健康保険法の被保険者が労働者であるということで、非常に関係が深い問題でございます。また質問をいたしますけれども、きょうの質問いたしましたことを、労働大臣はじめ労働省の各局長が勉強をしてこられるように、委員長から御指令をひとつお願いいたしたいと思います。  それから厚生大臣に引き続き御質問申し上げます。先ほどは、国庫負担をたくさん出さぬので、この議案はほんとう国民のためにけしからぬ案であるし、それから公約違反の案であるし、撤回をされるのが至当であろうということを中心に申し上げました。ところが、私どもは絶対に納得をいたしておりませんけれども、どうも国庫負担をいま直ちに定率化するとか、何百億ということについてまだ反省がお足りにならないようでございますから、今度はまた逆の面から質問をしてみたいと思います。もしかりに、百五十億という壁を破れなかったということは厚生省の甚大なる失態であり、また内閣自体の非常に反動的な姿勢であろうと思いますが、その時点において、なぜそれならば、百五十億しか四十一年度は出ないなら、社会保障制度審議会答申を守って、前両者よりも大幅に国庫負担をしなければならぬという答申を守ろうとするならば、国民負担のほうをふやさないということ、もちろんそういうことについては財政上の問題が出てきますけれども、いままでの逐年の累積赤字をたな上げしてああいう方法をとった以上、そして国庫負担大蔵省が出し渋って五百億、六百億くらいのちっぽけなものしか出さないという以上、そういう方法制度審議会答申なりを尊重される方法があったと思う。たとえば保険料率の引き上げで二百九十億円、標準報酬の引き上げで百四十三億円という予定をした案を出された。国庫負担がこんな貧弱な百五十億とするならば、それのほうが大幅であるとするならば、それより下の国民負担を考えなければならぬ。したがって、保険料率の引き上げは一切内容にしない内容にしたならば、ややつじつまが合う。標準報酬の引き上げ百十四億だけについて、国庫負担を百五十億にする、ちょっとオーバーをしておる、大幅にということですが、これじゃ答申を尊重したことになりませんけれども、そういうことをなぜ考えられなかったか、そういうことについてお答えを願いたい。
  104. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 この点につきましては、午前中も申し上げましたように、また八木さんのお認めになっておりますように、医療費増高をし、医療給付内容も向上しておる。一方において保険財政赤字の累積と、今後についても非常に困難な事態にある。そこで私は、国も大幅な国庫負担をいたすのでありますから、被保険者の各位にも、他の制度と比べてあまり過重にならない限度において御負担を願うということは、決して無理な対策ではない。公務員諸君の共済保険におきましても、また国保の被保険者におきましても、政管の今日までの負担から比べますとより多くの御協力を願っておるのでありますから、この際、国も被保険者も、また事業主も御協力を願って、そしてこの財政危機を突破したい、こういう考えでございます。
  105. 八木一男

    八木(一)委員 またもとへ戻らなければならないのですが、前に厚生省が、厚生省なりいまの政府の考え方でそういう案を出された、去年のとんでもない案ですね。ああいうものを計画されたときに、世の中はさんざんな騒ぎになった。それから社会保障制度審議会設置法や健康保険法にある社会保険審議会の、あらかじめそういう問題についてはからなければならないという法律条項を政府違反しているという問題になった。立法じゃない、企画についてもあらかじめはからなければならないのに、そういうようなものをしてしまった。そういうことで、企画をしてしまったことで大問題になった。政府法律違反をやったという問題になった。そこで、政府のほうが、悪意でしたことじゃない、間違いは改めますから、社会保障制度審議会社会保険審議会答申を十分に待って、それまでは法案を出しません、出ました答申については十二分に尊重をして、それで政府としては立案をして提出して、国会の御審議をいただきたいと思いますということを、総理大臣なり厚生大臣のほうがみずから、野党の追及ではなしに、みずからそういうことを繰り返し言われた。そういうことになると、社会保障制度審議会なり社会保険審議会答申を少しでもゆがめることは、政府としては、国民に対する国会を通じての約束に反したということになろうと思う。いま鈴木さんの言われたことは、片っ方のほうの曲げた理屈一つになるかもしれません。そういう曲げた理屈で、前にあのようなとんでもない薬価の一部負担だとか、そういうものを出した。それでああいう大問題が起こった。そのあとの処理を鈴木厚生大臣は一生懸命やられたはずなんだ。そこで、大ぜいのいろんなところの努力で最後にスムーズにいくはずのところで、社会保障制度審議会社会保険審議会答申ほんとうに十二分に尊重して出せばスムーズに問題が片づくところで、あの社会保険との比較とかなんとかでへんてこりんな、全部を比較しないで一部分を比較して、それでこれが妥当だと思うというようなことであれば、この一年間の各界の心配、努力、約束、国民の期待、すべてのものが裏切られることになるわけであります。そこで、大蔵省が頑迷固陋にして、また総理大臣以下閣僚がそういうことについて理解が少なくて、百五十億を上回るからむずかしいという結論になったならば、その時点において、それならばなぜ制度審議会答申を重んじて、前者よりも大幅にということを生かすとするならば、逆に百五十億が固定したならば、国民負担のほうをそれ以上ふやしてはならない。したがって、二百九十億の財源を補てんしようとする保険料率の引き上げはあきらめて、標準報酬のほうは百四十三億だけにとどめて、それでも不十分でありますが、なぜその法案を出さなかったか。それならば、四十一年度の財政がつじつまが合わないということは一つ理屈でありましょう。いままで赤字の問題をたな上げして、何百億というものをたな上げして別途処理するという条項がある以上、それをカバーするだけの本年度のたくさんの国庫負担が出ない以上、それはそれとしておいて、その問題はやはり累積赤字のたな上げの中に足りない分は埋める、入れるということをして国民負担をふやさぬ法案を出すべきだと思うわけです。どうしてそういうことを考えられなかったか。社会保障制度審議会社会保険審議会などというものは重視をしない、総理大臣や前の厚生大臣答弁とは違って、鈴木さんはそれを軽視するのだという気持ちであるのかどうか。国会答弁国会を通じての国民に対する約束は、これは軽視してもいいんだ、厚生省の中でごちゃごちゃとへ理屈をこねて、そのへ理届を出せばそれを軽視してもいいんだという考え方でおられるのかどうか、この点について伺っておきたいと思う。
  106. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 その点は、午前中の八木さんの御質問に対しまして私がお答えをいたしましたように、両審議会の御答申はこれを全体を十分熟読玩味いたしまして、この答申趣旨を体して私としても最善を尽くしてまいったのでございます。したがいまして、答申を無視したとかあるいは軽視したとか、さようなことはないことを御了承賜わりたいと思うのであります。私はこの趣旨を体して最善を尽くしてまいったのであります。ただ、政府といたしましては、これを一〇〇%実現できなかったのでありますけれども、これは国家財政その他の面からいたしまして、私としては力の及ばなかった点でございますが、あと国民の代表であり、国権の最高機関である国会の御審議によって御決定を願いたいということを申し上げておるのでありまして、保険料率の問題を先ほど御指摘がありまして、保険料の点については答申に沿わぬではないかという御趣旨があったのでありますが、国庫負担その他との見合いにおいて、ああいうことに落ちつかざるを得なかったということであります。この点を御理解を賜わりまして、当委員会において、また各党間において十分ひとつ御審議の上最終的な御決定をいただきたい、こう思うわけであります。
  107. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣は前の大臣に比べたらずいぶん御努力でございますし、非常にまじめに一生懸命推進をしておいでになりますので、ちょっと厚生大臣に大きな声で言いにくいのですけれども、しかし、非常に大事な省を預かっておられるし、大事な時点でございますから、一生懸命御努力されたことはわかりますけれども、その成果は非常に不十分だったということだろうと思う。  ここで、もちろん与野党の方々が論議をされまして、この不十分な欠点のある案を直すか、あるいは欠点のままであればこれはやめておこうということになろうかと思うのですが、そういうことについて、いま不十分であるということを認めておられるわけでございますから、国会の場において悪いものが通らない、悪いものがとめられるとか、あるいは悪いものが直される、そういうことについて政府自体もやはり影響力が多いわけでございまするから、せいぜいひとつ御努力になっていただく必要があろうと思う。どうかそういう意味で、この案の中の悪い点は大いに直す、あるいは悪いままで動かないならこれはあきらめるというような方向にひとつ御努力を願いたい、こういうふうに思うわけであります。ひとつその点についてもう一回意見を伺っておきたい。
  108. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 きわめて率直に申し上げますが、私といたしましては、この答申の御趣旨を十全に生かすべく、微力ながら最善努力をいたしたのであります。この上は、国会の御審議に待つほかはない、こう思うのでありまして、慎重に私ども検討したつもりでございますが、どうか当委員会において、また、委員審議の段階、また各党間の話し合いにおきまして、これに対する国民代表としての最終的な決定をひとつお願いいたしたい、こう思うわけであります。
  109. 八木一男

    八木(一)委員 少し問題ははずれますけれども厚生大臣は御努力を一生懸命なさったと思うのですが、私どもは、いまの総理大臣はじめ各閣僚国民のための行政をとるのに適任であるかどうかということをあらゆる面から判断をしてまいらなければならぬ。その判断によって、それが非常に不適任なものであれば、やはりそういうことについて不信任案ということも考えていかなければならないのであります。この問題について、制度審議会保険審議会答申に従って国庫負担をよけい出す、あるいはまた、社会保障医療保障を伸展するために国庫負担をよけいに出す、赤字の問題を解決するのに国庫負担中心としてやるというようなことを厚生大臣は当然主張をなさったと思いますが、それについて、同調された国務大臣が何人おるか、それについて反対をした人が何人おるか、ぼやっとして一つ理解も興味も示さないようななまけ国務大臣が何人おるか、その人数と、できればその名前をひとつあかしていただきたいと思います。
  110. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 閣議における発言とかそういう内容は、すべて内閣官房長官が閣議の司会者といたしまして取り扱うことになっておるのでありまして、私からはこの際御遠慮いたしたいと思います。
  111. 八木一男

    八木(一)委員 そういう御答弁をいただきますけれども、そういうことが法律的にどういう根拠があるのか。これはそんな根拠はないと思うのです。国務大臣として、この大事な国務についての審議を、どなたが賛成であったか、あるいはどういう理由で反対であったか、どういう理由で賛成だったか、そういうことは国会審議上当然答えていただかなければならない問題だと思うわけです。しかし、それはまあとにかくこの次にまた答えていただくことにしまして、特に労働大臣がこの問題についてどういう意見を持っておられたか、それをひとつ伺っておきたい。
  112. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 全閣僚が賛成でございます。
  113. 八木一男

    八木(一)委員 全閣僚が賛成ということであれば、鈴木厚生大臣も賛成なさったわけですね。
  114. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は先ほど来るる申し上げましたように、私としては全知全能を傾けて努力した結果がこの結論でございますので、私は、自分として最善を尽くした、これ以上は私の力ではできない。だから、ベストを尽くした案として、私は自分の案に賛成をしたわけであります。
  115. 八木一男

    八木(一)委員 これはほんとう厚生大臣の人柄が出ておりますけれども、全知全能を尽くされたけれども厚生大臣の要望どおりいかなければ、これは内閣で反対をされるべきだと思うのです。これは別にわれわれがそういう権限を持っておりませんけれども、普通の体制として、閣議が満場一致でなければならないということは一つもないわけです。そのきまったことについては閣僚として従わなければなりません。しかし、厚生大臣としては、これは不十分だとお考えになれば、ただ一票でも、それは反対だということであたりまえだと思う。このような不十分な案を厚生大臣が認められたということになったら、将来の前進がない。いままでの慣例もありますから、そう鈴木さんだけにきびしく申し上げても気の毒でありますけれども、それは不十分だとお思いになったら、それじゃいかぬのだということを最後まで主張されなければ問題の発展がないと思う。
  116. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 八木さんも閣議の取り運びのことにつきましてはよく御承知と思いますけれども厚生大臣の所管事項でございますから、厚生大臣閣議に請議をいたしまして、そして各閣僚の御賛成を求めるわけでございます。提案者は私でございます。そういうようなことで、私が先ほど申し上げましたように、私としてはあらゆる努力を傾け、全身全霊を傾けて努力した結果がこうである。これ以外には、国の財政その他諸般の事情からいって、これが当面考えられるところの最善の案である、こういうことで私が案をまとめまして、そして閣議に決定を請議して、閣議が満場一致御賛成を願ってきめた、こういう結果でございます。
  117. 八木一男

    八木(一)委員 そういう経過はわかります。普通何といいますか、イージーゴーイングでやっておるのはそういうことになります。その前に事前に打ち合わせをしておいて、そこで厚生大臣厚生省の所管について提案をされる。そうなれば、閣議は大体それで了承というか、満場一致決定ということになる。ただし、厚生大臣は、この予算大蔵省折衝されて、この問題について不十分であるということを明らかに考えておられるわけです。それで、大蔵大臣との折衝においてこれがいれられなかった。いれられたならばもっといい案を出されたと思う。それを厚生大臣大蔵大臣の交渉でどうしてもだめだからといってやられるということであってはならないと思う。厚生大臣が、ただしこれはもっと多くしなければならないという意見閣議で主張されて、たとえば労働大臣が賛成される、通産大臣も賛成される、総理大臣も賛成されるということになってものがきまるのがあたりまえだと思う。大蔵省厚生省予算折衝だけで、さんざん一生懸命言われたけれども、この程度ということでもってきまったものを持っていくということで閣議がされるというならば、行政府が、国務大臣が一番権限を持っておられる、その国務大臣の権限が、下の段階のいろいろな折衝でブレーキをかけられるということになろうと思う。これはいままでやっておられたのを鈴木さんだけに直してもらいたいということを言っても無理だと思いますけれども、そのように不足なものを厚生省が、厚生省ではこれが最善の案でございますとかいって提案をされること自体、そういう慣習自体がおかしいのであって、不満足であれば、大蔵省が何といっても、閣議の最後まで論戦をして、閣議全体で多数決できめる、そういう方向でいくのがあたりまえなんです。それを不満足のままにがまんさせられて、がまんをさせられた案を、いまの時点で最善の案でございますということで提案をされる。いままでそういう形式をとってこられたことはあろうと思いますけれども、そういうものを考え直さなければならない要素がある。諸官庁の中で大蔵省が一番大きな権限を持ってしまうということがあろうと思う。大蔵大臣が何と言おうとも、各省のものが大事だ、そうして予算の裏づけが大事だ、その予算の裏づけをもとにして法律案を出さなければならないということに、大蔵省との折衝でなしに、閣議で堂々と論戦が行なわれて、最後の決定は、一票でもいい、多数決でもそれをきめる。そういうことでなければほんとうの進み方がしないと思う。そういう点についてどうお考えになりますか。非常になまいきなことを申し上げましたけれども……。
  118. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 これは八木さんもよく御存じであろうと思うのでありますが、私と大蔵大臣だけの折衝ではございません。昭和四十年度の予算審議いたしました際におきまして保険財政の問題が国会の非常な大きな政治問題になりました。そうして自民、社会の国対委員長会談をやり、また、党三役もその際に十分この取り扱いにつきまして協議をされて、各党間の了解も成立をいたしました。そうしてやったいきさつがございます。そういう関係もありまして、今回の保険三法の財政対策につきましてはそういういきさつを受けましたあとでございますので、大蔵、厚生両大臣のほかに党三役もこれに入って、いままでの経緯等も十分考慮し、あらゆる観点から検討いたしました結果、この原案に落ちついたわけでございます。私は、この原案に落ちつくまでに私としてあとう限りの努力を払った、こういうことを申し上げておるのであります。そして決定を見た案は私は責任において閣議に請議をいたした。私が提案者でございます。私は他の閣僚に御賛成を求める立場にあるのでありまして、私がこれに反対をする立場にございません。私はベストを尽くしてこの案を最善の案として最終的に決定したものであり、これを閣議提案したものであり、したがって満場一致の御賛成を得て今回国会提案した、こういうことであります。
  119. 八木一男

    八木(一)委員 党三役と相談をした、それは社会党の国対委員長と自民党の国対委員長との約束がありました、その約束についても完全に弊履のごとく捨て去るという内容であります。そういうことでございますから、私はまた後日その点について続けて御質問を申し上げますし、また支払い三団体と政府とのお約束の点もあります。そのすべてについて、これは十分実行をしておられない、公約違反をしておられるということになるわけです。そういうことについて、厚生大臣は党三役と言われますけれども社会保障の問題についてそれほど権威者でない方々もおられますので、やはり厚生大臣最初の主張がきまるまで党三役は厚生大臣の言うことを聞くというふうにしなければ問題にならない。特に政府公約部分が多いのですから、政府公約部分については閣議で論戦が展開されなければなりません。  そこで、私は一つの小さな問題だけいま取り上げていきますが、労働大臣がこのことについてどのようなイニシアチブをとられ、どのように厚生大臣をバックアップしたか。労働者の問題についての責任を持つ労働大臣が、歴代の労働大臣はなまけ切っておりますけれども、私どもはいつも労働大臣について、このような問題、たとえば労政上の問題や基準の問題以外に、労働省の所管でなくても、労働者の福祉に関係のあるものについては、厚生省の所管であろうと、ほかの省の所管であろうと、労働大臣は一生懸命にこの問題を推進しなければいかぬということを申し上げておったわけであります。非常に御熱心で、非常に有能でございますが、お一人で鈴木厚生大臣がこの問題を推進されるのは御苦労であろうと思うわけでございますが、そこで関係の深い労働大臣がどのように努力をしたか、ひとつ具体的な事例があったら教えていただきたいと思いますし、もしそういう事例がなければ、労働大臣責任を徹底的に追及しなければならないと思うわけです。したがって、その前段として、ひとつ労働大臣の行動について伺いたいと思います。
  120. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 閣議のそれぞれの発言につきまして、私ここで申し上げる非常に正確な記録も持っておりませんし、いずれ御必要であれば労働大臣御本人に、あるいはまた内閣のスポークスマンである内閣官房長官にお尋ねいただくことのほうがいいと思うのでありますが、先ほど申し上げましたように、これは内閣としても最善を尽くした案と御認定をいただいて、満場一致で御決定をいただいたものでございます。
  121. 田中正巳

    田中委員長 ただいまの八木委員の御質問のうち、労働大臣云々については、いずれ労働大臣の都合を聞きまして御答弁相願うことといたします。  次会は来たる四月五日午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。    午後二時五十七分散会