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長谷川(保)
委員 私は、いまちょうど静岡がここへ出てきましたから申し上げますけれ
ども、ずいぶんひどいことをしている。どうも見ているに、大学病院の所在地のところは、そういう県は審査員の方がそういうものを援助してというか、あるいは
程度が高いというか、そういうことでわりあいゆるやかだ。けれ
ども、それがないようなところは実にひどいことをして、そしてやるのです。私は九十八億円の行政努力というものを非常に心配しているのです。そこへ集中していきはせぬか。いろんな理屈をつけてあります。こういうことで、行政努力、こういうことで行政努力と、四つ、五つあげておりますけれ
ども、そこに集中していきはせぬかということを非常に心配しているのです。たとえば、これは私の
関係する病院に、静岡県の社会
保険診療報酬支払基金事務所の相澤正雄という幹事長の名前ではがきが来ております。
昭和四十一年二月二十三日付です。これにはこういうことが書いてある。「本月の審査
委員会に於て貴殿御提出の診療報酬請求明細書を審査の結果下記の点につき今後特に御留意あるよう注意がありましたので御連絡申上げます。消化管XPの症例がめだちます。症例をえらび行うよう自粛して下さい。」私の
関係している病院は、おそらく全国でも例がないでありましょうが、成人病検診車一台で七千人の成人病検診をしております。静岡県下全体を走り回っておる。そればかりではなしに、向こう様の要求に応じて、ときには東京へも出てくる、ときには大阪にも出ていくというほどのことをいたしております。したがいまして、消化管のXPレントゲン写真をとらなければならぬところの症例というものは、
相当にたくさん出てくるのは当然である。症例が多いから気を
つけなさい、これはどういうことですか。この医療は間違っていますから直しなさいと言うならばわかります。おたくの病院にはその症例が多過ぎるから、自粛するようにしてください。患者が来るのをどうして自粛するのか。私はこれを受け取って、これは実に驚くべきことを言ってきたと思った。一体、症例がある病院に集まるから、気をつけなさいというようなことを言えるのかどうか言ってよいのかどうか。そういうことをして静岡県が全国最低だということであり、黒字県であるというならば、実にこれは不明朗である。かつて私
どもは奄美大島へ行政調査に行ったことがありますが、そのとき、奄美大島のあの町で
国民健康保険を調べたら、非常に大きな黒字であった。それでわれわれはすぐ言った。こんなばかなことがあるか、
保険税で取り上げておって、おそらく
受診率は非常に少ないに違いない、出してみろと言って、あそこの役場ですか、市役所ですか、あそこへ全部持ってこさせて調べてみた。そうしたら、
受診率が非常に低い。つまり、医者を呼びたくても往診料がかかるから呼べない。離島、僻地、ハブの住んでいるところで呼べない。それだから、
保険税だけは全く徴収されますけれ
ども、それを使うことができない。全くやらずぶったくりにふんだくっている。
先ほども静岡は
受診率が低いという話がありましたけれ
ども、こういうようなことが奄美大島にあった。私はがく然としたのであります。それで黒字とあると得々としているなんて、とんでもない話である。こういうふうに大病院にそういう患者がたくさん行くと、症例が多過ぎる、自粛してくださいと言う。こういうばかなことを言ってくるところに非常な問題があるのであります。私は、こういう形で、行政努力で持っていかれたんではたまったものじゃないというように
考えるのでありますが、今日の
健康保険の診療報酬は、はたしてどれだけ一体合理的であるかということにつきましては、私
ども非常に
考えなければならぬものがあるのであります。
これは先ころあった事件でありますけれ
ども、浜松のYという警察医をしている病院であるが、交通事故の救急の患者を、便利の点もあるのでありましょうけれ
ども、よくそこへかつぎ込む。救急車が連れていく。私の友人の長男、これは女房があり、子供が三人ほどあるが、オートバイに乗っておって、そうして交通事故をやって頭をぶっつけた。脳出血で意識不明でその病院にかつぎ込まれたが、ほとんど何もしない。ほったらかし、ついに、四十日ほど生きておりましたけれ
どもそのまま死んでしまった。同じ少しあとに、これまた私の知り合いである子供さんが二人おりまする奥さんであります婦人が、オートバイに今度ははね飛ばされて歩道へたたきつけられて、頭を打ちまして脳内出血、同じ病院に救急車で運ばれた。私は知り合いでありましたから三日目に行ってみて、何もしないので、それを私の
関係しているS病院に連れていった。目が見えない。意識が全く不明であります。半身が明らかに不随であります。重大な脳内出血をしているということは一目りょう然であります。目が見えないのでありますから、たぶんこの辺に重大な脳内出血をしているのであろうというので、ここに穴をあけてそうして中の血を出した。出すと一緒に今度は血がほとばしり出した。それはずっと下の、もっとこの辺でもって脳の動脈が切られておった。たいへんなことだということで、今度はもう、一方から出るだけひとつ輸血をしよう。輸血をじゃんじゃんいたしまして、そうしてもう
一つここに穴をあけて脳の動脈を結んで、ふたをして、麻酔がさめると一緒に目も見え、半身不随もなくなる、意識も返ってくる。そうして三十日後には何の後遺症もなく帰っていった。一方では、なるほど何もしないのでありますから、診療報酬、
医療給付は非常に低い。一方では、それだけするためには非常な努力をしている。手術後においても輸液その他あらゆる努力をしている。一体どっちをとるべきであるか。もし
健康保険の赤字だけを気にしていて、それを何とか埋めようとするならば前者のY病院に行きましょう。人の命を助けなければならぬということになりたら、幾らかかってもS病院をとるという形に私はなると思う。ことに、この間も私は私自身が開腹手術をいたしました。胆嚢の壊疽。開いてみたら胆嚢が溶けてなくなっておった。一巻の終わりというところでありましたけれ
ども、まああらゆる努力をしてくれて、そうしておかげさんで助かって、きょうここでこうやって
質問をしておる。私の手術を見ておると実に一まあ私の病院でありますから、特別にやったのだろうと思います。金はずいぶんかかったろうと思うのですが、私は払わぬから幾らかかったか知りませんけれ
ども、とにかく開腹をして、そうして手術をして、もう胆嚢が溶けてなくなっている。わずかの残存物と膿と胆汁が幸いにして脂肪の袋の中に包まれてこぼれずにあったということで、手術中はもちろん輸血をしながらやっておるわけでありますが、その他あらゆる手を打って、そのあとの処置、輸液等の処置等もたいへんなことで、一生懸命でやっておる。私は年来糖尿病を持っておりますから、ブドウ糖の注射はできない。そこで、金はかかるけれ
ども、フルクトンという果糖の輸液をさんざんやってくれた。これにビタミン剤その他必要なものをたくさん入れて、毎日二回ずつずいぶんたくさんやってもらった。そのおかげで私はもう手術後三日目には医者の命令でベッドの上に起きなさい、四日目にはベッドの回りを歩きなさい、五日目には病室じゅう歩きなさい、六日目には少し離れました便所へどんどん行ってやってきなさいということで、どんどんよくなってしまいました。ずいぶん金がかかっただろう。何十万円かかったか知りませんけれ
ども、ずいぶん金がかかった。けれ
ども、こうやって生きているのであります。だから問題は、いまのような静岡県は最低であるというようなことを喜ばれてはたまったものではない。こういうことを標準にされたのではたまったものではないのでございまして、私のやつをひとつ査定して切ってきたかどうかまだ聞いておりませんけれ
ども、切ってきたらこれはただことではない、こう思っておるわけであります。ずいぶん
進歩しておりますから、その
進歩したものを取り入れなければいかぬ。たとえば私も、最近の
医学の
進歩しておるのにほんとうにびっくりするのでありますが、病院を経営しておるという責任上、私もときどきどういう手術をするのかと思って手術室へもぐり込んで見てみる。最近やっている手術をこの間見ておりますと、定位脳手術というのをやっている。いわゆるステレオという手術であります。これを見ていると、レントゲン写真を三十枚くらいとっている。その手術をしながらとっている。これは脳の中枢のある細胞の核、そこを固定いたしましてそのところをさがし出す。見ていると、非常な熟練した医者が三人ほどそろい、そこで脳波計や筋電計やその他いろいろな新しい機械、レントゲン等を全部組み合わせまして、そしてその中枢の細胞をさがし出す。見ていると、そのところをさがし出すだけで四時間かかっている。さがし出しまして、そこに大きな針を入れて、そして電気で核を破壊したりあるいは薬剤を注入しまして氷結をしたりして、そうしてなおす。私が見ていたのはパーキンソン氏病という、からだがふるえる病気でありますが、その病気の細胞をさがし出して破壊することあるいは氷結することによって、その次の朝、その患者の病室に行ってみるときれいになおっておる。からだがふるえて、最後は精神病で死んでしまうパーキンソン氏病がなおっておる。あるいはまた、非常に狂暴性のあるてんかんの者が、細胞の核を破壊して狂暴性がなくなってしまっている。こういうようないろいろな非常に高度の手術がなされる。そのことによってその人間が生き返ってくる。でありますから、診療報酬が上がっていくのはあたりまえなんだ。これは喜ぶべき現象であります。でありますから、そのことばかりにひっかかると、一番やらなければならぬ中心の
目的を失うのです。私の
関係している病院も、よく心臓の外科手術をするのであります。いま心臓の外科手術になくてはならぬものはヘパリン血です。ヘパリン血というものを口の中に入れまして、つまり人工心肺というものを使いますから、心臓をとめて手術をします。心臓と肺臓にかわる機械を運転しなければならぬ。それにはヘパリン血というものがなくてはならぬ。このヘパリン血というものが、
健康保険の診療報酬の中では認められない。あるいはこれは数が少ないのでありますけれ
ども、Rhマイナスの血液、この血液代というものは認められない。それがなければその人を生かすことができないのに認められない。いまの人工心肺を使い、ヘパリン血を使って手術をする。それによって心臓の中隔欠損症その他心臓の中の壁に穴があいているという先天性の奇型児、こういうたぐいの子供をたくさん助けてきておるのでありますが、このへパリン血が認められていない。これはなぜ認められないか、
経済が先立って
生命が先に立たないからです。この間、私は、河野一郎君のあの御不幸のときに、榊原仟教授が別府に学会で行っておられた。あそこから特別飛行機でもって一人で呼び寄せられて、そして河野君のうちへ行って診察をした。ところが、動脈瘤破裂だから、もし開腹したら即死するから手がつけられない。でも自分がみずから河野家におり、大学から医局の者や看護婦や、あるいは機械を持ってきておられた。あの事件があった後にお目にかかりましたときに、
長谷川先生、一度国会でこういうことをちょっと追及してください。私
どもがそれだけのことをやって、そして
健康保険で幾らになるか調べてみようとしたら一万七千円でございます。だから私は、大学病院当局にとるな、そんなものは請求するなと、こう命じました。つまりどうしてこうなるかというと、いまの往診料は患者のうちに一時間おって八十三円、だれがおっても、榊原仟がおろうと河野正がおろうと、だれがおろうと患者のうちへ行って、とにかく一時間患者のうちに往診に行って患者が危険だからそこで診察をして、それが八十三円ですよ。一体、われわれが働いてもらっておりますお医者さん、どのお医者さんであろうと、勤務時間外のそういう勤務をしてくださる、患者のうちへ行って危険だからそこにいてくださる、どんなにしても五百円以上の給料を払っていますよ。どんな学校出たての医者であってもそれが一時間おって八十三円、榊原仟が河野一郎のうちにおっても八十三円、こういうようなことでは私はいけないと思うのです。だから何よりも先に、まず命を大事にするという
考え方がないと一そうしてそのためには国がやる。たとえば救急病院の指定でもそうです。静岡県ではいまでもまだできないのです。なぜできないか。
厚生省のほうはいい気なものです。ちゃんといつでも入れる病室を用意しておけ、いつも医者と看護婦は待機しておけ、ただし、それに対しては金は一銭も出しませんよ、これではやれないですよ。こんな救急病院の
関係などは、当然国がこれは背負うべきである。いろいろ実情を申し上げたのでございますが、静岡県がいま一番低いというお話が出たから、私は静岡県の実情を申し上げ、あわせてまた政管健保の問題に触れているのでありますけれ
ども、こういうようなことをされたんではたまりません。赤字になるのがあたりまえで、私的な病院や診療所は、どうしても赤字にするわけにいきませんから神風ドクターになるか、あるいはただいまお話しのような不正なところに追い込まれるということになってくる。これは、いまの
受診率の低いところややある政管建保が黒字になる府県は、特に当局としましてはこれを監督して、そういうような不当な診療が行なわれているのではないかということをお
考えになる必要があるし、絶えず
医学の
進歩、
薬学の
進歩に合わせて、ことに政管健保というようなものは
改善していく必要があるというように思うのです。一体こういうような低い県、黒字の県はこれでよろしいと思っていられるのか、そういうような大きな致命的欠陥というものが陰に伏在しているということをお
考えになるか、ちょっと
大臣、局長の御意見を伺いたいと思います。