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1966-03-23 第51回国会 衆議院 社会労働委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年三月二十三日(水曜日)    午前十時九分開議  出席委員    委員長 田中 正巳君    理事 齋藤 邦吉君 理事 澁谷 直藏君    理事 竹内 黎一君 理事 松山千惠子君    理事 伊藤よし子君 理事 河野  正君    理事 吉村 吉雄君       伊東 正義君    大坪 保雄君       大橋 武夫君    熊谷 義雄君      小宮山重四郎君    坂村 吉正君       地崎宇三郎君    西村 英一君       橋本龍太郎君    藤本 孝雄君       粟山  秀君    淡谷 悠藏君       滝井 義高君    辻原 弘市君       長谷川 保君    八木 一男君       吉川 兼光君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 鈴木 善幸君  出席政府委員         総理府事務官         (恩給局長)  矢倉 一郎君         厚生政務次官  佐々木義武君         厚生事務官         (大臣官房長) 梅本 純正君         厚 生 技 官         (環境衛生局         長)      舘林 宣夫君         厚 生 技 官         (医務局長)  若松 栄一君         厚生事務官         (薬務局長)  坂元貞一郎君         厚生事務官         (保険局長)  熊崎 正夫君         厚生事務官         (援護局長)  実本 博次君         社会保険庁長官 山本 正淑君         厚生事務官         (社会保険庁医         療保険部長)  加藤 威二君         農林政務次官  仮谷 忠男君         農林事務官         (農政局長)  和田 正明君         農林事務官         (園芸局長)  小林 誠一君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   平井 廸郎君         農 林 技 官         (農政局参事         官)      河原卯太郎君         農 林 技 官         (農政局植物防         疫課長)    安尾  俊君         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 三月二十三日  委員亘四郎君辞任につき、その補欠として大橋  武夫君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  健康保険法等の一部を改正する法律案内閣提  出第一七号)      ————◇—————
  2. 田中正巳

    田中委員長 これより会議を開きます。  内閣提出健康保険法等の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。長谷川保君。
  3. 長谷川保

    長谷川(保)委員 この前、私は基本施策に関する質問のときに念を押したのでありますけれども、そのときは大臣がおいでになりませんでしたから、もう一度、これは私ども質問の一応根本に関する問題でありますので、大臣がきょう御出席ですから、繰り返すようでありますが、ひとつ最初に念を押す意味で御質問をしておきたいと思うのであります。  私は、政治究極目的は、国民生命を守り、その可能性をできるだけ発展させるということにあると思うのでありますが、大臣はどういうようにお考えになりますか、伺いたいのであります。
  4. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 長谷川さんがただいま御指摘になりましたように、政治究極理想は、国民の健康を守り、そして文化的で健康で豊かな生活ができるように、福祉国家の建設を目ざして、あらゆる施策推進するということでなければならぬと私は考えるのであります。政府におきましては、戦後、経済の目ざましい発展国民皆さんの御協力によってできたと思うのでありますが、この経済発展に即応して社会開発というものが推進をされなければならない。この経済開発社会開発というものが車の両輪のごとく進められて、初めてしあわせな国民生活を確保し、安定が期せられ、また、そういう基盤の上に立って国民の健康が増進され、生命も延びる。現に戦後におきますところのわが国民の寿命が非常に目ざましい延びを示しておるということは、そういうような背景、また前提の上に日本国民寿命が著しく延びてきたというように思うわけでございます。私は、今後におきましてもそういう心組みで社会保障に重点を置いてまいりたい、こう思うわけであります。
  5. 長谷川保

    長谷川(保)委員 いろいろな言い方はありましょうけれども究極的に考えていけば、私はやはり、国民生命を守るということ、また、それを可能な限り発展させるということにあると思う。でありますから、いまお話しのような、戦後の日本国民寿命が非常に延びたということは、これは私ども政治理想究極目的を果たすものとして非常に重んじなければならぬ、重要視しなければならぬと思うのであります。おたくのほうで出しておられる「健康と福祉」という雑誌を見ますと、そこに明治四十一年以来の日本人の寿命の延びてまいりましたグラフが出ておるのであります。これを見てまいりますと、そう古いことはとにかくといたしまして、昭和二十五年から三十九年の十五年間に、男の寿命は五十七・六年から六十七・七年に延びた。婦人の寿命は六十三年から七十二・九年に延びている。ちょうど十年ずつ十五年間に延びている。その後と申しますか、最近の五年間のものを調べましても、三十五年から三十九年までの間、毎年毎年前年に対して延びてまいりまして、この間に、私の見ている限りでは、男の方で二・三四年延びておる。女の方で二・一四年延びておる。いずれにいたしましても、最近は、世界文明国のもっと上のほうの水準に近づいてきておるということになってきておるわけです。こういうようになってまいりましたのは、いろいろの原因がありましょうけれども大臣は、そのおもな原因としては、どういうところにその延びてまいりました原因となったものがあったと思われるか、それを伺いたい。
  6. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 日本国民寿命が戦後急速に延びました要因は、いろいろあげられると思うのでございます。まず考えられますことは、国民栄養が近年相当改善をされておる、向上しておる、こういうことも青少年の体位向上に寄与して、そして、国民寿命の一番基礎になる若い世代の体位が非常に充実されてきたという面もあげられると思うのであります。また、環境衛生公衆衛生等の面でもいろいろな進歩向上が見られまして、そういう面から言って、国民伝染病その他の罹病率というようなものも激減をしてきておる。そういう公衆衛生及び環境衛生面の整備ということもあげられると思うのであります。  それから、さらに重要なことは、国民保険のもとに医療給付——私は完全とは言いませんけれども、全国民医療給付相当向上し、また内容的にも非常によくなってきておる。一面、保険財政は、受診率向上であるとか給付内容改善によりまして相当苦しいのでありますけれども健康勘定の面におきましては相当プラスになっておる、こういうことが言われるのではないか、かように存ずるわけであります。いろいろその他要因もあろうかと思うのでありますが、そういう点がおもな原因ではなかろうか、こう考えます。
  7. 長谷川保

    長谷川(保)委員 私も大臣と思いを同じくするのであります。いま言われましたように、最も大きな重要な要因としましては、非常に進歩いたしました医学薬学、その成果を皆保険の形において、国民全体に医療給付という形でこれを及ぼしていった、こういうことが私は大きな要因であろうと思うのです。先ほど申しましたように、こんなに短期間の間に日本国民寿命が非常に延びた、それには明らかに、最近におきまする医学薬学の著しい進歩とこの応用というものがあずかって力がある。もちろん環境衛生の問題、公衆衛生の問題、あるいは栄養改善の問題、みんなそうでありますけれども、やはり最も大きな問題は、進歩した医学薬学というものを皆保険の形で国民全体に及ぼしていったというところに大き一な原因があった、要因があったと私は思うのでありまして、そういたしますると、この医療費増高ということが非常に問題になり、それが保険財政というものを危機におとしいれるということについて、根本的には私は、そうこれはあわてるべき問題ではない、むしろ積極的にこの傾向というものをどんどん助長していく、そのためには、国は費用を惜しんではならない、政治究極目的というものは、国民生命を守り、これを発展させる、豊かなる生活を、しあわせな生活を得せしめる、その根本は肉体的な生命である、一切の活動の根本は肉体的な生命でありますから、その肉体の生命というものを大事にすることのために、金を惜しんではならないと思うのであります。これは社会保障制度審議会などでも勧告をしてきているところでありますが、どうも政府が管掌している三つの保険というようなもののことにだけ目がついて、そうして最も大きな視野でもりて全体を見ることが欠けておると指摘しているように読むのでありますけれども、私も全く同感であります。  そこで、まず私は、日本社会保障水準というものは、一体世界主要諸国社会保障給付水準に比べてどういうような事情になっているかということを伺いたいのでありますが、私の持っている資料は、残念ながら一九六〇年までの資料しかないのであります。今日はもっと進んだ新しい資料がなければならぬと思うのでありますが、厚生省当局としては、当然そういうものを積極的にお調べになっていると思うのであります。私の持っている資料では、まあ日本に近い国々を見てみますと、たとえば西ドイツ、一九六〇年の資料では、国際連合資料から持ってきたようでありますが、厚生白書の中に出ているところを見ますと、一人当たりの給付は百八十七ドル、フランスは百六十七ドル、イギリスは百四十ドル、イタリアは七十五ドル、日本は十九・七ドル、約二十ドル、日本の一九六三年が出ておりますが、それによっても三十三・六ドルということになっておる。国民所得割合から見ますと、西ドイツは一九・九%、フランスは一七・四%、イギリスは一二・九%、イタリアは一五・二%、日本は五・五%、六三年になって六・四%、同じ厚生白書は、西欧先進国の三分の一ないし六分の一程度にすぎないということを書いておるのであります。また、主要諸国におきます社会保障財源別構成公費負担を見ますと、これまた白書であったと思いますけれども白書の中にいろいろな図表が載っておりますが、平均して、いま申しましたイギリスその他世界国々は、公費負担割合は四〇・九、日本は二四・五、六三年になって二五という数字が書かれておるのであります。こう見てまいりますと、どうも日本社会保障への給付というものはいかにも低い。もちろん、この中には年金問題等も含まれるのではありますけれども、いかにも低いと思うのでありますが、大臣閣僚のお一人といたしまして、これは日本の国力にふさわしい相応のものであるとお考えになるのか、いまなお非常に低いとお考えになるのか。その後、日本のほうでも幾。ぶんの改善はなされておると思うのでありますが、同時にまた、主要諸国においてもさらに改善がなされておるわけでありましょうから、最近の事情はどういうようになっているか、伺いたいのであります。
  8. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 長谷川さんがただいまいろいろお述べになりましたが、私は、その中できわめて貴重な御意見、また分析がなされておるのでありまして、非常にありがたいと思うのでありますが、第一の点は、医療給付内容が、医学進歩なり薬学進歩なり、また受診率向上給付内容改善というようなことで保険財政が赤字になっているということは、これは当然なことであり、むしろ内容が充実したという意味で喜ぶべき現象ではないか、何もあわてる必要がない、こういう御指摘がまずあったのでありますが、私も全く同感でございます。したがって、よく今回の保険財政対策保険料率の改定の問題なんかをとらえて、消費者米価であるとか国鉄運賃であるとか、あるいは郵便料金であるとか、そういう公共料金値上げの概念の中に一緒くたに入れて論議をされる傾向があるのでありますが、私は、長谷川さんの御指摘のとおり全然これは違う、給付内容や何かがよくなっておるのでありますから、現にまたその効果は、先ほどお話がありましたように、国民寿命が非常に延びておるということでも効果がはっきりあらわれておりますように、内容がよくなっておるのであります。でありますから、これに対するところの被保険者の応分の負担、あるいは国におきましてもこれに対するできるだけの財政負担をする、国を含めまして関係者がみんなで協力してこの国民の健康を守る制度をあくまで守っていかなければいかぬ、崩壊の危機からこれを守っていかなければいかぬという結論が、私はそこから出てくるだろうと思うのでありまして、一般の公共料金値上げというような、そういう考え方でこの保険料の問題を律すべきではない、かように私も思うのでありまして、社会党の皆さんも、そこまで御理解をいただいておりますことはまことに心強い次第でございます。  それから次に、社会保障給付費西欧先進諸国に比べての問題につきましてどうなっているかという御指摘がございましたが、一九六〇年の数字長谷川さんの御指摘のとおりでございます。また、その公費負担、また被保険者負担事業主負担、そういうような点につきましてもお触れになったのでありますが、日本の場合、西欧諸国に比べまして確かに国民所得に対する給付割合が低い、いまだ十分でないという点は御指摘のとおりであるわけでありますが、私はこれにはいろいろ原因があると思います。戦後ああいう敗戦による痛手、廃墟の中から立ち上がって国の再建復興をやっているというようなことで、そこで社会資本の立ちおくれを早く取り戻す、回復するために、道路であるとかあるいは港湾であるとか鉄道であるとか住宅であるとか、そういう面に西欧諸国とは違って相当国費というものを投入せねばいかぬ、そういう国の再建をしながら社会保障の面も充実していかなければならぬという悩みがそこにあるわけであります。しかし、私どもも、先ほど来申し上げますように、最近における経済発展国民所得向上に見合って社会保障の面にも力をいま入れておるのであります。昭和四十一年度の予算におきましても、予算伸び昭和四十年度の当初予算に比べまして一七・九%であるのに対し、厚生省関係予算は二〇・四%というぐあいに力を入れておるのであります。  それからもう一つ、別の面から見た場合に、国民所得に対する社会保障給付率が低いというのには、この所得保障年金制度が、北欧諸国におきましては早くこれが出発をし、相当の年月を経て蓄積がなされておる、また、相当給付ができるようにこの社会保障制度が充実しておるというのに対しまして、わが国所得保障は近年ようやく緒についた。厚生年金が、昨年の皆さん方の御審議によって一万円年金が実現をした、ことしうやく国民年金が夫婦一万円年金を実現しようとしておる、こういう段階にあるのであります。  それからもう一つは、児童手当制度をまだやってないという点でございます。私も、一日も早く児童手当制度実施に移したい、かように念願しておるのでありますが、何しろ中学校以下の子供さん一人に対しまして月額千円を給付するといたしましても三千億の膨大な財源を必要とするのでございます。こういう一人に対してわずか月額千円を支給するというだけでも三千億の財源を必要とする。そこで、全部の児童に一挙にこれを行なうか、あるいは低所得の階層から逐次年次的に実行していくか、さらにまた、現在労使の間で行なわれておるところの給与の中にある家族手当というような既存の制度との関連をどうするか、こういう点もいろいろ検討を要する点がございまして、まだ児童手当制度実施に踏み切れないでおる、準備の段階にあるわけであります。こういう児童手当制度日本では実施されていない。そして所得保障である年金制度が発足して間もない、こういうような点等がございまして、北欧諸国に比べまして国民所得に対する社会保障給付の率が低いということは、御指摘のとおりでございます。私は、今後こういう点によく注意を払いまして、今後の社会保障の充実をはかってまいる考えでございます。
  9. 長谷川保

    長谷川(保)委員 大臣心がまえについては一応了とはいたしますけれども、しかし、三十九年度版の厚生白書の八二ページに、「社会保障給付率経済成長率との関連」という図がございます。第2−1−2図ですが、この図を見ましても、いかにもみすぼらしい。六三年、ともかく経済相当発展してきておるが、西ドイツなどと比べて雲泥の差です。だから、なるほど児童手当の問題もあり、年金の問題もありましょう。けれども根本的には、経済がこれだけ発展してきておるというときの心がまえの問題が大きな問題だと思うのです。人間というのはおそろしいもので、マンネリズムということばがあるけれども、いま急に三千億円の金を出すとなるといかにも大きなことをするようだけれども、事前に早くなすべきものをなしておらぬということなのであります。それだから私が最初に念を押しました、生命というもののとうとさをどう考えるかということの心がまえ、この心がまえのあり方で社会保障給付の問題というようなことはずいぶん違ってくる。ですから、大臣一人と言わず、内閣の全閣僚、あるいは、ことに大蔵省当局——きょうは主計官にもおいでいただいておるはずでありますけれども大蔵省当局心がまえ、ことにまた推進力となるべき厚生省当局気魄、こういうものがこの問題に対する取り組み方成果にずいぶん大きな影響を与えてくる。だから、白書の中のどこのデータを見ましても、私は、その気魄の足りなさ、心がまえというものについて、近代文化国家といたしましての、あるいは福祉国家といたしましての進め方というものに対して、気魄が足りないということをしみじみと思うのであります。  きょうは健康保険の問題で御質問を申しておるのでありますから、問題を医療問題にしぼって御質問を進めてみたいと思うのでありますが、最近における医療費増高ということが確かに非常に著しいものがあり、それが大きな問題になってこの数年間混乱混乱を重ねておるのでありますけれども、まず医療費増高傾向、これは私の承知しておる限りでは、欧米諸国におきましてもずいぶんこれには悩まされておるようであります。大体日本医療費増高傾向というもの、これは欧米各国に比べてどういうことになるか、さらに大きなことになっているか、あるいは欧米各国のほうが大きなことになっているか、あるいは同じようなことであるか、その増高の状況を知りたい。
  10. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 長谷川先生承知のとおり、わが国医療費増高は、一九六〇年から増高傾向が目立ってまいりまして、大体毎年二〇ないし多いときには三〇%ぐらいの増高があったわけでございます。これに対しまして、各国医療費がどうなっておるかという御質問でございますけれども、まことに残念でございますが、各国医療給付年次別の推移というのは、私どものところでは資料として持っておりません。ただ、御参考までに私のほうで前々から西ドイツのほうの関係給付の動向をつかんではおるわけでございますが、これはたった一国の例でありまして、しかも年次的に古い例でございますので、あるいは御参考にはならないかもしれませんが、大体一九五六、七年、ころから一九六二年ごろまでの数字をつかんでおりますが、この年次別伸び率考えてみますると、毎年一〇ないし一一、二というところで漸増しておるというふうな数字を私どもはつかんでおるわけでございます。
  11. 長谷川保

    長谷川(保)委員 まあ英国あたりでも、あるいはフランスあたりでも、私も正確なデータは持っておりませんけれども、いろいろな情報によりますれば、この増高には相当経済の面では苦しんでおるようでありますけれども、それではさらに具体的なことを伺うといたしまして、各国国民所得と総医療費との関係、そのパーセントを最近のものがわかっておりましょうか。大体先ほども申しましたが、フランスとか西独とかイギリスイタリアというようなものと日本関係ですね。
  12. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 これも的確な資料自体は私ども持っておりませんで、推計程度数字で算定いたしたことはございますが、イギリスにおきましては、一九五七年の推定でございますけれども、大体国民所得に対しまして四・二七%、それからアメリカになりますと、これは医療保険が完全にできておらない国の例でございますが、大体五%から六%をオーバーしておるというところでございまして、あとフランスドイツ等につきましては、総医療費把握自体がなかなかわが国と対比するような資料として出ておりませんので、私どもの予定では三ないし四%ぐらいの推定をいたしております。わが国の現在の総医療費は、先生承知のように毎年ふえてまいっておりまして、四十年度におきまして五・三、五%をオーバーいたしております。三十七、八年ごろは四%ちょっとだったのが、最近は五%をオーバーしておる、こういう数字になっております。
  13. 長谷川保

    長谷川(保)委員 今日、非常に医療費問題が大きな問題となっておりますから、厚生省としては、もっと積極的にやはり海外事情も十分調べておくべきだと思います。そうしないと、日本の国のことが、はたして今日の文化の進んでまいります時代に、また国民生活水準が非常に上がっていくときにおきまして、また経済の非常に発展をしていくときにおきまして、どの程度までは可能であるか、どの程度までこれを改善していくべきであるかというようなことが十分つかめないと思うのです。ですから、やはり厚生省は、こういう方面にひとつ惜しみなく金を使って、もっと海外の問題も十分研究していただきたいと思います。そうしないと、私どもも正確な討議ができないという形になりますから。何と申しましても、私ども資料厚生省当局からいただくのが一番中心になりますから、ひとつぜひこういう問題は十分に今後研究していただきたいと思います。  それでは、国内の問題にしぼってまいりまして、昭和四十一年度の予算からでけっこうでありますが、大体ことしはどうするんだという前向きの考え方政府管掌健康保険関係する医療費負担割合、たとえば保険料負担は幾らで何%になるつもりか、それから患者負担はそのほかにどれくらいあるのか、何%ぐらいに当たるのか、国庫負担は、今度は百五十億円ということでありますが、これが何%ぐらいになるのか、そういう保険料負担患者負担国庫負担等々の四十一年度の予想される金額と。パーセンテージを教えてもらいたいと思うのです。
  14. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 保険料負担におきまして数字を申し上げます。金額で二千六百四十六億、端数は省略させていただきます。それから患者負担におきまして五百二十億、国庫負担が御指摘のとおり百五十億、計三千三百十六億。パーセントは、保険料負担が七九…八%、患者負担が一五・七%、それから国庫負担が四・五%です。
  15. 長谷川保

    長谷川(保)委員 そうしてみると、いかにも国庫負担が全体から見て小さいのですね。百五十億円。これは社会保険審議会のほうでも、勧告の中には、当分の間二百億というような数字が出ておりますけれども、いかにも少ないと思うのです。私は、二百億でもいかにも少ないと思うのでありますけれども、どうしてこんなような重大なときに百五十億ばかりの金、しかも御承知のように、政府管掌健康保険関係する人員は約二千三百万、国民健康保険のほうは四千百万くらいでしょうか、四千二百万くらいでしょうか、国民健康保険のほうは、御承知のとおり千何百億という国庫負担が出ているわけです。それと比べてもいかにも小さい。これまた、社会保障制度審議会勧告の中でも指摘していると私記憶していますが、社会保険審議会のほうでも、これを当分の間二百億というようなことにしたのに、先ほど大臣は、厚生省予算が非常に大きくなってきた、六千億というような大きなものになってきたということを誇られておりましたけれども、いかにも少ないと思うのです。全体から見て、バランスから見て、どっちから見ても少ないと思うのだが、この点については大臣としては十分だと思っていられるのか、それともまた、どうも力足らずして刀折れ矢尽きてやむを得なかった、こう思われるのか、伺いたい。
  16. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 社会保険審議会あるいは社会保障制度審議会の御答申につきましては、できるだけ国庫負担は大幅に増額すべきである、こういう勧告をちょうだいいたしておったのでありますが、私はこの趣旨を体しまして、極力予算折衝におきまして努力をいたしたつもりでございます。すでに長谷川さん御承知のように、昭和四十年度におきましては六百九十数億、約七百億近い累積赤字が予想されておりましたが、それに対しまして国庫負担が三十億ということでございました。私は今回答申の御趣旨をできるだけ実現いたしたいということで努力をいたしました結果、前年度の五倍、百五十億という国庫負担を計上することができたのでございますが、もとより私はこれをもって十分とは考えておりません。できることならもっとこれを増額したい、こういうことでございましたが、一方におきましては公債発行、借金をしてやっていくというような際でもございますので、この程度に実は落ちつかざるを得なかった、こう思うわけであります。  一面、国保との関係につきましてお触れになりましたが、国保のほうは、政管と違いまして被用者保険でございません関係もありまして、事業主の分まで国がこれを見ていかなければいかぬということ、なお政管健保の被保険者よりは、何といっても負担力の弱い、所得の低い階層の農山漁村民その他の自由業者という人を対象としておりまする関係から、やはり国において大幅な負担をする、こういうことに相なっておるわけでございますし、また、生活保護世帯その他市町村民税均等割り程度しか納めていない階層につきましては、保険料の軽減措置等も講じておるというような事情等もありまして、事務補助費を含めまして、国民健康保険におきましては千四百五十億というものが四十一年度におきまして計上をされる、こういうことになったのでありまして、国保と政管を並べて、そして国庫負担のことを論ずることは事情もちょっと違うように思いますけれども、しかし、いずれにいたしましても、私は百五十億ということにつきましては十分だとは考えておりませんし、今後におきましても、さらに基本的な制度改善等の際に、国庫負担はどうあるべきかという問題につきましても十分検討してまいりたいと考えております。
  17. 長谷川保

    長谷川(保)委員 私は国保の補助金等が多過ぎると言っているのではないのであって、もちろん、いま大臣お話しのようないろいろな事情があります。また、たとえば今日問題にもなっておりまする健康保険の被保険者が退職をして、それが結局国保のほうに入っていくとか、いろいろなあと始末をあそこで拾うということにもなっておりますから、決してあれに対する補助金が多いと言っているのではない。ただ問題は、いまちょっとお話にもありましたけれども健康保険事業主負担分は、これは労働賃金の変形と見るべきだと私は思うのです。でありますから、事業主が半分負担している、だから勤労者のほうはそうたくさん、半分しか負担しないのだからという議論がよくなされるのでありますけれども、私は間違いだと思っております。これは賃金の変形です。でありますから、いま局長から伺いました数字を見ても、いかにも国庫負担のパーセンテージが少ないではないか。しかも今日、厚生年金保険料、また健康保険料率等が上がっていく。いままででも勤労者のほうは、毎月の月給袋から差し引かれておりまするそれらの数字を見ると、被保険者もその奥さんもため息をついている。こんなに取られるのだからという感じは、もうおおえないものがあります。だから、国庫負担をわずかに百五十億円、いまお話しのように、ことしの政管健保の給付費から見ればわずかに四・五%、こういうようなものをもってしておいて、いま保険料率を引き上げるというようなことは、これは慎むべきである。もちろん、薬代の半額負担だとか何だというようなことは慎しむべきであるというように考えるのでありまして、きょうは主計官もおいででありますが、いま世界各国との関係を見ながら、国内の政管健保の問題にしぼってきたのでありますけれども、いかにも日本の政管健保に対する国庫負担というのが非常に少ないと思う。主計官はどういうお考えであられるか、大蔵省の考えをひとつ聞きたい。
  18. 平井廸郎

    ○平井説明員 先ほど先生指摘のとおり、全体としての社会保障費の国民所得に対する比率は、諸外国に比べて低いということも事実でございます。ただその中には、厚生大臣から御答弁ございましたように、所得保障部分についての制度が実質的に発足して間がないために、その結果として国民所得に対する比率がかなり少ないという面もございます。したがいまして、そういった制度が本格的に給付を開始して平準化する段階になりますと、現在の制度のままでも、おそらく国民所得に対する比率は一〇%をこえるものであろうというふうに、私どもは大ざっぱな試算をしたこともございます。  そこで、そういった全体としての社会保障の中で医療保障についてどのように考えるかという問題でございますが、基本的には、私どもといたしましては、医療保障は保険制度によって運営すべきものであると考えております。ただ、その場合におきまして、諸外国との比較という点からいたしますと、諸外国の場合におきましては、医療保険部分については比較的国庫負担は少ないというのが実態でございます。もちろん古い数字しか持っておりませんので、最近の数字がどんどん動いておりますれば別でございますが、非常に大きな制度的変革もないようでございますから、そういった点からすれば、日本の医療保障における国庫負担割合というのは、世界的に見てもそう低いものではない。ただ、イギリスのように医療国営をとっておるような国の場合は別でございますが、保険制度をとっている諸外国の例としては、低いものではないと考えております。  そこで、こういった状況におきまして、国民健康保険等のいわゆる低所得層を中心とした保険につきましては、これはやはり、先ほど厚生大臣から御答弁のございましたように、かなりの程度に国が補助していくという考え方をとらなければ、なかなか保険の運営はうまくいかないということもございまして、国としてはそういった部面に重点的に国費を投入するという形をとっておるわけでございます。  そこでさらに、それでは政管健保についてどのように考えるべきかという問題でございますが、先生の御意見によれば、政府管掌健康保険における事業主負担というのは、これは賃金の変形であるから、そういったものは別として、国庫負担をふやすべきではないかという御意見のようでございます。同じ健康保険制度の中で、政府管掌健康保険の場合と組合管掌健康保険の場合と、ものの考え方を基本的に変えるということは、私どもとしては必ずしもとりがたい考え方でございます。これは見解の相違でございますから、いろいろお考え方はあると思いますが、私どもの立場としては、そう違った考え方はとり得ない。そういった前提で考えますと、組合管掌健康保険政府管掌健康保険との間にきわめて大きな差異を設けるような制度というのは、今後の運営面におきましても、なかなかむずかしいのではないかというふうに考えております。ただ、これから、もちろん医療問題について基本的な御検討を、各種の委員会なりあるいは審議会なりで始められておるわけでございますから、その結果を見て、私どものほうも判断をいたしたいと考えておる次第でございます。
  19. 長谷川保

    長谷川(保)委員 政管健保の被保険者の報酬月額の点を見ていきますと、三万一千五百円以下の被保険者が全体の七五%あるのだ、こういう点を考えると、これはやはり、政管健保の構成人員というものが、ほんとうのぎりぎりの生活をしているという点が私どもには非常に心配されるわけです。よく私は仕事柄労働者の諸君と一緒になるのでありますけれども、いまの厚生年金保険料健康保険保険料等々を月給袋から差し引かれる額を見て、ほんとうに奥さんはため息をついているのです。もちろん、あなたのおっしゃるとおり、組合健保と政管健保とを全然別のものにしようというような考え方は正しくないと思います。全然それを別扱いするという考え方は正しくないと思いますけれども、政管健保は、いまお話しのように、国民健保と組合健保のいわばまん中にはさまっているような階層が大部分です。ですから、三万「千円以下の報酬の人が非常に多いという事例等から見ますと、これはやはり政管健保に対する国庫負担というものはずいぶん考えるべきではないか。政府の体面からいっても、私どもは、こんなことをよくも言ったものだと思う。社会保険審議会のほうの二百億という数字考えるのでありますけれども、よくもこんなことを言ったものだと思うのでありますが、しかし、少なくとも政府は、体面からいっても、少なくとも二百億ぐらいのものはこれを今年度に計上して当然であったと私は思うのです。しかし、大蔵大臣相手の答弁ならこれはもっと突っ込んでしていきたいと思いますけれども主計官がかわって出ておられるわけでありますから、この議論はそう進めませんけれども、いずれにしても今日、私は、日本がこれだけ戦後の経済発展をしてきた大きなファクターになったものは、やはり平和憲法によって軍隊を持たなかった——軍隊らしいものは持ってきたけれども、軍隊は持たなかった、防衛費というものが四千億円程度に今日もなおとめられているところに大きな原因があったと思います。これが私は最大の原因だろうと思うのです。もしこれが韓国などのように、四〇%も五〇%も、ひどいときには六〇%も軍事費に使っておったということなら、これはなかなか立ち上がれるものではない。したがって、防衛費が今日非常に少なくなっておるのでありますから、こういう面を、いわば直接の生命を守る医療−来るか来ぬかわからぬ、水爆戦争になれば何の役にも立たぬと考えられるような今日の通常兵器の自衛隊というものと比べて、直接に生命危機を守っておりまするこの医療、ことに政管健保はそのほかの一切の医療関係の基礎になる問題でありますから、この政管健保などは一番模範として、もっと多くの金を国庫から支出すべきである。それから後に、なお要すれば非常に高度の医療をするためのものを考えるべきである。一般的には、まずこの国庫負担を十分に考えていくということをすべきである。そこらに対する政府心がまえというものが違っているのじゃないかというように私は考えるのであります。しかし、さらにもう少し議論を進めてみたいと思います。  次に、私は考えますことは、今日の医療費の問題を解決しようとするときに、医業の経営実態を調査するということは当然なことであります。しかし、私の見るところによれば、政府はこれはできているのじゃないか。できていないというのは変だ、いまさらこれをしなければならぬというのは変だと私は思うのであります。理解できないと思うのであります。なぜかならば、公的な医療機関というものは、政府は当然調査が十分できているはずであります。してなければ怠慢であります。まず、政府直接おやりになっておりまする国立病院の関係を見ましても、これは今度の予算を見ましてもはっきりしておりますことは、一般会計からの繰り入れ金は約四十五億円、借り入れ金が三十億円、ちょっと大ざっぱに見ただけでも七十五億円ばかりのものが入っております。診療収入を二百六十一億としてございますから、約三〇%の赤字ということになっているわけです。こういう国立病院の経営実態というものは、これはピンからキリまで、すみからすみまで全部政府はお調べになっているはずである。それならば、もうだいぶんわかっているじゃないか、こういうように思うのです。さらに、公的な病院につきましても、当然政府はいつでもこれを調べられるという立場に立っているわけでありまして、したがいまして、わかっているのじゃないのかというように思います。  まず伺いたいことは、国立病院の全体の特別会計で見ると、いま申しましたように三〇%ぐらいの赤字に、ごく大ざっぱに申しますと、なっているわけなんです。このほかに国立療養所がありますけれども、国立療養所は論外といたしまして、病院としてのものを見ていきたいと思うのでありますが、国立病院の中で黒字の病院の数というのはどれくらいあるのか、赤字の病院の数はどれくらいあるのか。また、黒字の病院の所在地はどういうところにあるのか、赤字病院の所在はどういうところにあるのか。全部を伺うことはできないでありましょうから、大体のところでけっこうでありますけれども、お聞かせをいただきたいのであります。
  20. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 医業経営の実態調査につきましての私の考え方をまずお話を申し上げまして、さらに具体的な事項につきましては事務当局から御答弁をさせたいと思います。  私も厚生省に参りまして、この医業経営の実態調査につきましていろいろ意見が分かれておりまして、この二、三年の間、実態調査がなされていないというようなことの説明を受けました際に、長谷川さんと同じように、厚生省自体だけでも相当資料が集まるのではないか、調査ができるのではないか、それに前回の全体についての実態調査をした際の資料もあることであるから、その国立なり公的医療機関の実態調査をやったものに対して、ある程度の補正系数で調整することによって十分把握できるのではないかという考え方で、国立あるいは公立の実態調査を急ぐようにということを指示いたしておるのであります。しかし、長谷川さんも御承知のように、現在の皆保険下におきます療養給付は、国立の病院をはじめといたしまして、いろいろの医療機関によってこれがなされておる。開業医あるいは診療所というような民間の機関によるところの療養給付の提供が、全体から見ましてもやはり圧倒的に多い。こういう状況下におきましては、やはり国公立の医療機関だけでなしに、開業医その他の民間の医療機関の実態調査というものを把握しませんと、診療報酬体系の適正化等を検討いたします際に、どうしても十分とは言えない。収入の面は把握できますけれども、支出のこまかい面につきましてはやはり実態調査が必要であろう、かように私は考えておるのであります。幸いにいたしまして中央医療協におきましても同様の考え方に立ちまして、暮れの、中医協が自主的にまとめましたところの意見書の中にも、この医業経営の実態調査を行なうということに意見が一致をいたしまして、その実施の時期、方法等につきまして、いま診療者側、支払い者側が東畑会長を中心にいろいろ話し合いを進めておる。私は関係者の円満なる話し合い、協力によって、医業の実態調査が一日も早く行なわれるように指導してまいりたい、かように考えておるわけであります。  あとは事務当局のほうから……。
  21. 若松栄一

    ○若松政府委員 国立病院の経営の実態といたしまして、どのくらいの施設が黒字であり、どのくらいの施設が赤字であるかというお話でございますが、この問題は、どういう標準で赤字、黒字を論ずるかということによって、これも違ってまいります。お話がありましたように、三十数億円の借り入れ金をして施設の整備をやっておりますので、これらの病院の建設というような資本投資までを全部計上して、その償還あるいは利払いというものまで全部損益計算に入れて見るか、あるいは単純にランニングコストだけで比較して見るかという、いろいろ問題がございますが、国立病院におきましては本質的に営利あるいは独立採算を目途とすべきものでないというたてまえから、私どもの国立病院における収支計算を行ないます場合には、通常、そのような資本投資的な面あるいは本来診療収入でまかなうべき性質のものでない看護婦養成とかいうものを除外した計算方法があるわけであります。そういう意味で減価償却というようなものまでも除きまして、一般的な経常的な診療収入と雑収入、それに対して経常的な支出——資本投資あるいは高額機械等を除きまして、経常的な支出というものを比較する方法をとってみますと、三十九年度におきまして——三十九年度は特に財政が悪化したのでございますが、黒字病院が三十四カ所、赤字病院が五十二カ所という状況でございます。
  22. 長谷川保

    長谷川(保)委員 いまのランユングコストだけですか。
  23. 若松栄一

    ○若松政府委員 そうです。なお、三十八年度におきましては五十一病院が黒字、三十三病院が赤字という状態でございました。所在地は、八十幾つもございますので、大体で申しますと、比較的人口稠密な大都市にあるものは大体黒字の傾向でございますし、中都市以下のところが大体赤字でございます。しかし、東一のように、大都市のまん中にございましてもいろいろな経費をつぎ込んでおります関係上赤字、東二は黒字になっております。仙台、名古屋あるいは大阪というような大都市の病院は黒字でございます。札幌、函館あるいは水戸、習志野、立川、横須賀、長野あるいは九州の中津というようなところで、比較的地方の病院は大体赤字でございます。
  24. 長谷川保

    長谷川(保)委員 問題は、そういう赤字の原因というのはどういうところから出てきているのであろうか。言いかえれば、国立病院がまじめに医療をしているので赤字になるのか、それともなまけておってふまじめにやっているから赤字になるのか、いろいろな原因があるだろうと思うのですが、厚生省は、国立病院がそういう赤字になるのについては、一体どういうところにその原因があると考えているか、その原因と思われるもの、要因と思われるものを示していただきたい。
  25. 若松栄一

    ○若松政府委員 赤字の直接的な原因が、病院が一生懸命やっているか、なまけているかというきわめて単純な見方もあろうかと思います。確かに、国立病院であっても経営的に非常な努力の目ざましいところもありますし、私どもが実際見ていて、努力が足りないと思うところもございます。したがって、確かに努力の厚薄ということも一因ではございますけれども、もう一つ本質的な面は、やはり国立病院というものは、比較的内容を充実することに努力しているということが一つあろうと思います。内容を充実することに努力しているといいますのは、少なくとも医師あるいは看護婦その他の職員についても医療法の基準をできるだけ充足するようにいたしておりますし、大都市の病院等におきましては、はるかにそれを上回っているところが多数ございます。そういう意味で、医療従事者の充足というものが一般の病院に比べて若干いいということはございますし、また、そのほかに医療機械等の投資が一般民間病院等に比べまして相当比率が高いということもあり得ると思います。また、大病院等におきましては一もっとも大病院は比較的黒字になっておりますけれども相当高額な機械等も装着するというようなこともあろうと思います。  なお、いなかのほうの病院等も比較的赤字が多いという点につきましては、大都市ほど利用率がなかなか高くならない。大都市の外来等に比べていなかのほうの外来の比率も少のうございますし、入院ベッドの回転率等も、いなかのほうがどうしても少なくなってまいります。そういうような意味で、利用率というような形で若干赤字になりますし、もう一つ大きな問題は、国立病院においては、戦後二十年を経過しておりますために職員の老齢化ということがあります。看護婦等におきましても、五年程度の平均年齢で老齢化しているというような点が、人件費を一般病院、他の公的病院と比べましても、かなり比重が高くなっているという点が、かなり大きな理由になっていると思います。
  26. 長谷川保

    長谷川(保)委員 私は、ふまじめにやっているところがあるというなら、これは厚生省、大体国の税金でやっているのですから、そんなことはさせてはならぬと思うのです。もっともあまりそれをきびしくやったら医者がみんな逃げていって、看護婦もいなくなってしまって、閉鎖しなければならぬということになるかもしれぬけれども、しかし、およそ国の名前においてやっている、税金を使ってやっておるというようなことでありますから、ふまじめにやっておるということは許してはならぬ。まじめにやっているけれども、赤字になる。いなかだから赤字になる。これは普通の病院も、私的病院もいなかに幾らもあるのでありまして、国立が特別に採算の合わないところに、たとえば無医地区などに医者を派遣し、看護婦を派遣して診療していくという話も、特別なことは聞いたことがありません。私のところでも、見たこともありません。みんな同じような状況でやっている。また、職員の老齢化という問題でも、看護婦等におきましては、社会的需給関係の困難な職種におきましては、もう何でもかまわぬ、どこでも雇い入れておるというような形になっておりますから、これは一般病院と比べて、それほど特記すべきものでもないというように思うのであります。   〔委員長退席、竹内委員長代理着席〕 でありますから、私は、こういう点を考えてまいりまして、国立病院の経営の実態をおつかみになれば、もうほとんど医業経営の実態はつかめるのではないかと思うのでありますが、あわせて公的病院−御承知のように、この間もお話が出ました公立病院、これは大臣、独立採算になじまないものというような立場で公共企業体関係を処理なさったということで、たいへんよろしいと思いますけれども、また、一般会計から入れるものについては、その計数をはっきりさせていくということもけっこうだと思いますけれども、今日は公共企業体関係の病院とか、あるいは日赤とか、済生会とか、厚生連病院とか、社会事業協会の病院とか、いろいろあるわけでありましょう。これらのほうは、大体どういうような傾向にあると厚生省はつかんでおるのか、その実態を伺いたい。あまり詳しいことはできないでしょうから、大体のことでけっこうであります。
  27. 若松栄一

    ○若松政府委員 公的な病院につきましては、それぞれ決算が報告されますので、この決算に基づいて私どものほうで検討してみますと、三十九年度におきましては、労働福祉事業団の病院におきましては黒字が九施設、赤字が二十三施設、日赤におきましては黒字が八十施設、赤字が八施設、済生会におきましては黒字が五十九施設、赤字が十一施設、厚生連におきましては黒字が八十七施設、赤字が三十七施設、全社連におきましては黒字が三十八施設、赤字が十八施設、厚生団におきましては黒字が四施設、赤字が二施設、船員保険会では黒字が二施設、赤字が一施設、共済連の病院では黒字が十六施設、赤字が十二施設、それに先ほど厚生省数字を加えまして、以上の総合計といたしまして黒字が三百二十九施設、赤字が百六十四施設、これを大体大ざっぱな比率で申し上げますと、三分の二が黒字、三分の一が赤字ということになります。
  28. 長谷川保

    長谷川(保)委員 厚生白書の一六〇ページを見ると、赤字、黒字病院の率が三十八年度までのが出ています。これを見ると、地方公営企業病院の四〇%は赤字である、その他の公的病院は三〇%が赤字である。緊急是正した前とあとと、ほとんど改善されておらぬということになりますね。この白書の一六〇ページには、それまでは赤字だったが、緊急是正したので云々というようなことが書いてあるのですけれども、ほとんど前とあとと改善されておらぬ。いまのは三十九年ですね。四十年、四十一年とさらにそれから物価が上がり、人件費が急速に上がっておる。こういう状況ですから、少なくともこれは悪くはなってもよくはなっておらぬ、こういうように想像できるのであります。昭和三十八年七月十七日に、厚生省は全国の一斉医療調査をなさった。このときのがやはり白書の一六〇ページに載っておりますけれども、この日に医者にかかった者は五百四十八万人と推定され、公的医療機関にかかっておった者が五〇%、私的医療機関にかかっておった者が五〇%、こういうように書かれております。そうすると、いままでのをずっと見てまいりますと、日本のある日において医者にかかっている半分の状況というものは、いまので推測できる。そうして、あと半分の私的病院のものがよくわからないというように推論していいと思うのでありますけれども、しかし、この私的医療機関の状況というものは、診療報酬支払基金事務所の支払い調査というものを考え、さきに大臣がおっしゃいました、この前いたしました医業の実態調査の計数等をも考え、この三十八年、三十九年の調査をさらに推し進めていくということになれば、私的医療機関のものも大体わかるのじゃないかというように私思うのです。でありますから、厚生省が声を大にして医業の実態調査ということをしなければと、社会保障制度審議会あるいは社会保険審議会がそういうことをおっしゃるけれども、実際は、厚生省はほとんど実態をつかめているのじゃないかというように推測せざるを得ないのです。理論的にはそうなると思いますけれども、いかがでありましょうか。
  29. 若松栄一

    ○若松政府委員 確かに、ただいま申し上げましたように、公的病院あるいは公立の病院におきましては経営の実態がわかります。したがって、しかも患者の相当数をここで扱っておるという観点からすれば、医療の経営実態というものはわかるというふうに一応考えられることでございますけれども、実は先ほど申しましたように、日赤、済生会あるいは厚生省というような病院でそれぞれやはり収支の率が違っております。といいますのは、厚生省におきましては、予算を編成いたします場合にも、国立病院のあるべき姿にできるだけ近寄せようということで、必ずしも収支をとろうといたしておりません。ところが日赤、済生会等におきましては、もし赤字が出たといたしましても、これを補てんすべき何らの財源がございません。したがって、それらの病院は、当然収支のバランスをとることに非常な努力をいたすことと思います。そういうようなことは、このような他からの財源の補給のない病院と、厚生省の病院あるいは地方公共団体の病院等の赤字の率にある程度あらわれていると思います。そういう意味で、この実態をもってあるべき姿、望ましい姿というふうに考えることは、必ずしも適当ではないと思います。そういう意味で、他からの補給のできないような経営主体におきましては、収支を何とかバランスさせるために、機械の購入をおくらせることもございましょうし、人件費を押えることもございましょうし、あるいは設備の補修を見送ることもございましょうし、そういう意味で、真にあるべき実態というものをむしろできるだけ調査いたす、そういう意味で、既存の病院あるいは診療所におきましても、むしろ実情というよりは、あるべき姿に比較してどういうことになっているかというようなことが実態調査として非常に必要なことではないか。そういう意味で、これらの既存の実態から、直ちに医療のあるべき姿を推測するということは、必ずしも適当ではないと考えておるわけでございます。
  30. 長谷川保

    長谷川(保)委員 御承知のとおり、たとえば日赤病院などは、全く独立採算という形をとりますから、非常な努力をしているわけです。そこにいい面が出てくれば悪い面も出てくるという形もありましょう。けれども、いまのお話のように、歯にきぬ着せずに申し上げますと、たいへん恐縮でありますけれども、まあ国立病院は、例外的な存在を除いては実はおんぼろの病院がその大部分でありまして、近代的な病院としての名に値するかどうかということについては、多分に疑問を持ちたいようなものが多いのであります。だから、国立病院があるべき姿に持っていこう、そのために投資をしていくということはけっこうなことでありますし、またそうでなければならぬ、それができて初めて近代的な医療機関としての面目を発揮するのであります。したがいまして、私的医療機関のほうはのんきなことば言っていられないので、とにかく何でもそういうようなお客さん、患者さんが満足するようなものにがむしゃらにでも持っていこうという形になり、その中間にありまする公的な日赤その他の病院も、これはまごまごしておって赤字になってはたいへんだということで非常な努力をしているわけです。それにもかかわらず、これらの公的病院というものの相当数が赤字になっておる。そうすると、どこに原因があるかということになれば、それは今日の医学薬学の非常な進歩、それを取り入れていく。   〔竹内委員長代理退席、委員長着席〕 ところが、それに対する診療報酬が正当でない。一生懸命やっても赤字になるという形になっている。そうなってまいると、これをどうやって埋めるかという問題、そこに焦点がしぼられてくる。私、昨晩手にしてびっくりしたのでありますけれども、国保新聞に、不正保険費の行政処分が国保だけでも百十六人というのがありまして、これを見ると、厚生省がこのほど、昭和四十年度第一−三・四半期、つまり四十年四月から十二月までの社会保険の医療担当者の指導、監査をしたことが載っています。これは驚くべきことでありまして、監査実施数が、保険医療機関でございますと医科百十、歯科四十四、薬局が五、計百五十九件もありまして、そのうち取り消しは医科五十、歯科三十二、薬局三、計八十五件、戒告は医科三十九、歯科十一、薬局二、計五十二件、注意は医科四、歯科一、計五件、百五十九件のうちで実に百四十二件、九〇%、保険医におきましても八〇%がそういう処分を受けておるのであります。監査をした数は少ないのでありますけれども、しかし、監査の対象となったもののうちで、そういうひどい処分を受けたものが九〇%あるいは八〇%ということになっておるのでありますけれども、これはどういう実情で監査をなさるのであるか、そういう監査、指導のやり方、実情というものを教えていただきたいと思います。
  31. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 保険医療機関並びに保険医の指導、監査につきましては、現地におきましてそれぞれ出先の各県の保険課が担当してやっておるわけでございますが、原則としてまず指導する、再三指導をしてなおかつ実績上指導の効果があらわれないという場合に、当該県の医師会の方々と相談をして、それで直接監査をするということで実際の監査が始まるわけでございます。監査結果によりましてそれぞれの処分がきまってくるわけでございますが、現在の実情といたしましては、大体指導でもって、あらかじめ法規的にふなれであるとか、あるいはこの程度のものはいいんではなかろうかという点で、未然に防ぐということを主体にいたしましてやっております。したがいまして、実際直接監査になるケースといいますのは、相当その県の医師会におきましても、その医療機関なりあるいは医師の場合に、ある程度やむを得ない実態があるであろうということを推測いたしましてやるわけでございますから、大体監査対象になった場合には、不正の事故といいますものが、ほとんど架空の請求が多い。つまり実際に診療をいたしておらないのに、診療したような形にしまして、架空請求をする。その架空請求も、一件、二件ということじゃございませんので、やはり二、三十件程度は必ずあるといった場合にこれを取り消しの対象にするということで、しかも取り消しをやる場合におきましても、先生承知のように、各都道府県にあります地方医療協議会の議に付しまして、その上で取り消しの決定をする、こういうことになっておるわけでございます。したがいまして、最近の監査対象になります保険医療機関につきましては、かつての監査取り消しの対象になりました施設数に比べまして、数は少ないと言えるかもしれませんが、しかし、監査になっておる場合には、何といいますか、相当程度が悪いということで、御指摘のように九〇%近くは取り消しの対象になるという事態になるように私どもは判断いたしております。
  32. 長谷川保

    長谷川(保)委員 いずれにしても、今日皆保険の状況下で保険医療機関の取り消しをされる。大臣承知のように、今日は二重指定でありまして、保険医の取り消しをされるとなると、これは医者としては働けないということになる。全く死刑にあったということになる。それにもかかわらず、こういうような事件が、全国の保険医療機関及び保険医の数から見れば、ここに載っている数はもちろんわずかなものでありますけれども、しかし、それにしてもそういうような死刑の処分にあうようなことを承知の上でしていくということでありましょうか、あるいは知らずしてそういう形になっていったのが多いのであるか。つまりその請求書を書きまする人が、十分な知識なくしてやったのが多いのであるか。いずれであるか私はよくわかりませんけれども、いずれにしても、指導、監査をしましたものの九〇%あるいは八〇%もがそういうことになる。取り消しをされたものだけでもたいへんなパーセンテージでありますが、そういうようなことになるのには、そのもとである診療報酬というもの自体に問題が相当ある。この問題をやはり考えないといかぬ。先ほど来議論してまいりましたように、国立病院があるべき姿にいこうとして赤字になっている。大赤字になっている。これは、いままであるべき姿になかったというのは厚生省の怠慢だし、政府の怠慢です。国立病院ともあろうものが、いわば日本の医療機関のモデルとなるべきものが、おんぼろぼろでまるっきりなっておらぬ。そのあるべき姿にいま一生懸命で急速に返しておるので金が要るのだ、経営が赤字になるのだ、こう申しますけれども、これはあるべき姿に返しても赤字になるものが大部分であろうと私は予想するのであります。公的医療機関においても必死になってやっているけれども、赤字のものが相当にある。まじめにやっていてもそうなるのだということになると、これは非常に大きな問題がそこにはらまれてきておる。最初に申しましたが、しょせんは医療に対する政府当局及び大蔵省、ことに大蔵省の認識が足りないというところから出てくるのではないかと思います。結局は、赤字にしないためには神風ドクターになるか、あるいは長時間の労働をするか、あるいは不正をするか、こういう形に追い込まれていくという今日の医業の実態というものは、これは実に容易ならぬことであり、この際、根本的に考える必要があるし、しょせん国庫が大きな負担をして、国民生命を守るということに持っていかなければならないと思うのであります。こういう問題を論じてくると、厚生省は医業の実態というものがほぼわかっておりながらわからぬ顔をして、そうして根本的な医療の立て直しというものを考えないで、社会保障制度審議会等が指摘しておりますように、前を合わせることにきゅうきゅうとしているいまのような態度では、この間主計官がおっしゃったような、四十二年度を目途として根本的な改正はできません。もっとふんどしを締めてかからぬと、言いかえれば、国民生命に対する評価を考えてまいりませんと、根本的な改革というものはできない。いつまでたってもこの混乱は続いてしまう。鈴木厚生大臣は誠実な人として、敵も味方も非常に尊敬しておるのであります。橋本龍伍君は、かつて遺族のお灯明問題でもって厚生大臣の地位をなげうった。彼のは死んだ人のお灯明の問題です。これは生きている人間の生命の問題です。それくらいな態度でこの問題に立ち向かってもらいたい。何も支払い団体をおそれる必要はない。医療団体をおそれる必要はない。社会党をおそれる必要もない。自民党をおそれる必要もない。日医をおそれる必要もない。これらの団体は何者であるか。これはみんな国民に奉仕すべき団体である。でありますから、そんなものに引きずり回される必要はない。堂々として、国民生命発展をこいねがって、地位をなげうつくらいの覚悟をしてもらいたいと思う。そしてこの問題の解決に向かってもらいたいと思うわけであります。  さらに議論を進めまして、各都道府県によって医療給付が非常にでこぼこである。これは社会保障制度審議会勧告でも五割の開きがあるということを申しております。各都道府県別の一人当たりあるいは一件当たりでもけっこうでありますが、医療給付の実態というものはどうなっておるのか、全部言うていただくことは困難でありましょうから、最高のほうに部類するグループと、最低のほうに部類するグループと、まん中のグループと、大体教えていただけばいいのでありますが、私の持っている資料は、おたくで出している厚生の指標の昭和四十年のものしか私には新しいものはないのでありますが、これは昭和三十八年度の統計しか載っておらない。私はこれを見ておるのでありますけれども、もっと新しいものがあるのではないか。昭和三十八年度なんという、こんなものを出しているのは怠慢であると私は思うのでありますが、一体どういうふうになっておるか、伺いたいのであります。
  33. 加藤威二

    ○加藤(威)政府委員 政管健保の都道府県別の一人当たりの医療給付費の実態でございますが、昭和三十九年度の実態について御説明申し上げたいと思います。  一人当たりの医療給付費の全国の平均は一万七千二百九十九円でございます。一人当たりの医療給付費が全国で一番高い県は佐賀県でございます。佐賀県が、一人当たりの医療給付費が二万六千六百九十二円。それから二番目に高いところが京都府でございます。二万五千六百四十七円。三番目が高知県、二万四千九百七十八円でございます。五番目くらいまで申し上げますが、四番目が熊本でございます。熊本が二万四千二十九円でございます。それから五番目が岡山、二万三千六百八円でございます。これが高いほうからの上から五番目まで申し上げたわけでございますが、今度は、一人当たりの医療給付費の安いほうから五県ばかり申し上げますと、一番安い県が静岡県でございます。これが一人当たり一万二千六百二十八円でございます。それから二番目が東京都でございます。一万三千三百二十四円。三番目が山梨、一万四千三百四十七円。四番目が山形、一万四千六百二十七円。五番目が福井で、一万四千六百四十三円。こういうような実情でございます。
  34. 長谷川保

    長谷川(保)委員 これを見ますと、高い佐賀県は二万六千六百九十二円、一番最低の静岡県は一万二千六百二十八円、驚くべき差があるのである。一体この原因はどこにあるか。同じ政府管掌健康保険医療給付でもって、どうしてこういうような大きな開きが出てくるのであるか、その原因を承りたい。
  35. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 各都道府県に一人当たりの医療費につきまして差がありますのは、いろいろな原因があると思うのでありまして、きめ手になる解明というものはなかなか困難であろうと思いますが、しかし、統計の作成上、こういう点が大きな原因というのが一つあると思います。つまり医療機関への支払い部分は医療機関の所在地である。それから被保険者等の数は、被保険者の所属する所在地によって算出される。したがいまして、たとえば東京が低いということは、東京には被保険者の数が多いことは間違いございません。しかし、千葉、埼玉その他周辺の都市から通勤している人が多いわけでございまして、その方々は、家族を含めまして、病気になったときには東京以外のところで受診をされるわけでございます。したがいまして、被保険者の分母の数はふえてくるわけでございます。しかし、頭の分子のほうは減るということで、東京は非常に低いということは言えると思います。それからまた、佐賀等が非常に高いということにつきましては、これは御承知のように、佐賀県は結核の死亡率が最高のグループに入っております。それからまた、人口に対する病床数が非常に多い。つまりベッドが多いということ等も、一応一つの要素ではないかと思います。また、受診率の点におきまして、佐賀県は最高のグループに属しております。この辺が、やはり相当医療費が高くなっておる理由ではないかというふうに推測されるわけでございます。それから静岡の最低の場合につきましても、これもいろいろ原因はあると思いますが、受診率がきわめて低い。これは気候、風土その他の関係があると思いますし、またもう一点、政府管掌の場合には、標準報酬をやはり考えていかなければならない。東京あたりが標準報酬が高いということは当然想像できるわけでありますが、標準報酬が高いと、結局一人当たりの医療費は減ってまいります。静岡の場合におきましても、受診率は最低でございますけれども、平均より上の標準報酬のグループに入っておるというような点も想像できますので、その辺、いろいろと原因はあると思いますが、地域的に分析いたしていきますと、やはりそれなりの一応の理由はあるのではなかろうかということを私どもは想像いたしておるわけでございます。
  36. 長谷川保

    長谷川(保)委員 そのほかにも私はまだ原因があると思いますが、もう少し先に進んで議論いたしましよう。  政管健保の府県別の黒字、赤字をこの間滝井君が聞きまして、黒字は東京、神奈川、大阪、埼玉、兵庫、こういうお話だったと思うのであります。また、その原因としては、健康な若い労働力と大企業のあるところが黒字だというお話でありました。赤字県は、ひどいところはどこでありますか。そのひどいのをひとつ教えていただきたいと思います。
  37. 加藤威二

    ○加藤(威)政府委員 最初にちょっとお断わりいたしておきますが、先般滝井先生の御質問に対して私が答弁いたしました県に若干間違いがございましたので、いま先生がおっしゃられましたのも、私の間違った県の名前があがっておりますので、最初にそれを訂正させていただきます。  黒字県は五県ございまして、東京、大阪、神奈川、静岡、埼玉でございます。兵庫は赤字県に入っております。以上の五県が黒字県でございます。  それから、赤字の県は、これも三十九年度の実績でございますが、一番赤字の多い県から順に申し上げますと、福岡、北海道、京都、岡山、広島、五県申し上げますと以上が赤字の多い県の順序でございます。
  38. 長谷川保

    長谷川(保)委員 私は、先ほど局長があげましたもののほかに、たとえば診療に対する過酷な査定あるいは正当ならざる干渉、あるいは県によって診療のしかたに対しまするいろいろな差があるというようなことがあるのではないか、こういうように思うのであります。たとえば、この間も滝井委員からちょっと話が出ましたが、胃ガンの診察という場合に、東京の癌研では、何枚のエックス線写真をとることが許されておるのであるか伺いたい。
  39. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 詳細は、私専門家でございませんので、つまびらかにいたしておりませんが、がんセンターあたりになりますと、非常に権威ある機関でもございますし、受診する患者も非常に不安な気持ちで来ておりますので、最終的に診断を確定するという点に慎重を期さなければならない点もございまして、私が聞いておりますところでは、普通二十枚ぐらいはとるというふうに聞いております。
  40. 長谷川保

    長谷川(保)委員 この間名古屋のがんセンターに行ってきましたが、ここは九枚です。同じ権威あるがんセンターで、二十枚と九枚と違っている。われわれの県に参りますと、いま静岡は黒字県で、しかも一人当たりの医療費は最低だという話を聞いて私もびっくりしたのでありますけれども、われわれの県へ参りますと、二枚もしくは三枚しか写さない。それ以上は削っちゃう、ひどい話になると。これは実際のことを申し上げるのでありますから、しかたありませんけれども、六つ切りでもって、それを四分の一ずつのスポットにして、そして写真をとる、それも切ってしまう。一体どうして胃ガンの胃のレントゲン写真が、二枚ないしは三枚でわかるのか。それがわかるという確信があるのなら、医務局長は専門家でありますから、ひとつ教えてもらいたい。しかたがないから、六つを四つに割ってスポット写真をとっても、それを切ってしまう。それでわかるのかどうか。どうもわれわれの病院の医者は困り果てておるのでありますけれども、そういう過酷なことをしておる。つまり診療のできないようなことをさしておるのです。お医者でありまする医務局長、ひとつそういうことが正しいと思われるのかどうか、伺いたいと存じます。
  41. 若松栄一

    ○若松政府委員 胃ガンなら胃ガンの診断をする場合に、どの程度のレントゲン写真をとることが適当であるかということは、これはそれぞれの症例によってそれぞれ違うことだと思いますけれども、先般来問題になっておりますような、たとえば健康人の胃の集団検診というものをどの程度やったらおおよその見当がつけられるのであろうかということを、たとえば標準的なやり方ということで、学者の先生方に御依頼をいたして検討したこともございます。これはもちろん、多いほど的確であるということは当然でございますが、少なくとも、いわゆる集団検診でも四枚程度はとる必要があるということを言っております。できれば精密検診等で六枚程度をとりたいという考え方が出ております。しかし、これを四つ切りなり六つ切りなりでやるか、あるいはスポットでやるかということになりますと、たとえばエックス線テレビジョンみたいなもので、目で見ながら的確なところでスポットをやるというようなことになりますと、これは比較的小さなもので集約的にやるということも可能であろうと思いますので、それぞれの設備、技術によって、また症例によって相当の幅があるものと解釈をします。   〔委員長退席、澁谷委員長代理着席〕
  42. 長谷川保

    長谷川(保)委員 私は、いまちょうど静岡がここへ出てきましたから申し上げますけれども、ずいぶんひどいことをしている。どうも見ているに、大学病院の所在地のところは、そういう県は審査員の方がそういうものを援助してというか、あるいは程度が高いというか、そういうことでわりあいゆるやかだ。けれども、それがないようなところは実にひどいことをして、そしてやるのです。私は九十八億円の行政努力というものを非常に心配しているのです。そこへ集中していきはせぬか。いろんな理屈をつけてあります。こういうことで、行政努力、こういうことで行政努力と、四つ、五つあげておりますけれども、そこに集中していきはせぬかということを非常に心配しているのです。たとえば、これは私の関係する病院に、静岡県の社会保険診療報酬支払基金事務所の相澤正雄という幹事長の名前ではがきが来ております。昭和四十一年二月二十三日付です。これにはこういうことが書いてある。「本月の審査委員会に於て貴殿御提出の診療報酬請求明細書を審査の結果下記の点につき今後特に御留意あるよう注意がありましたので御連絡申上げます。消化管XPの症例がめだちます。症例をえらび行うよう自粛して下さい。」私の関係している病院は、おそらく全国でも例がないでありましょうが、成人病検診車一台で七千人の成人病検診をしております。静岡県下全体を走り回っておる。そればかりではなしに、向こう様の要求に応じて、ときには東京へも出てくる、ときには大阪にも出ていくというほどのことをいたしております。したがいまして、消化管のXPレントゲン写真をとらなければならぬところの症例というものは、相当にたくさん出てくるのは当然である。症例が多いから気を  つけなさい、これはどういうことですか。この医療は間違っていますから直しなさいと言うならばわかります。おたくの病院にはその症例が多過ぎるから、自粛するようにしてください。患者が来るのをどうして自粛するのか。私はこれを受け取って、これは実に驚くべきことを言ってきたと思った。一体、症例がある病院に集まるから、気をつけなさいというようなことを言えるのかどうか言ってよいのかどうか。そういうことをして静岡県が全国最低だということであり、黒字県であるというならば、実にこれは不明朗である。かつて私どもは奄美大島へ行政調査に行ったことがありますが、そのとき、奄美大島のあの町で国民健康保険を調べたら、非常に大きな黒字であった。それでわれわれはすぐ言った。こんなばかなことがあるか、保険税で取り上げておって、おそらく受診率は非常に少ないに違いない、出してみろと言って、あそこの役場ですか、市役所ですか、あそこへ全部持ってこさせて調べてみた。そうしたら、受診率が非常に低い。つまり、医者を呼びたくても往診料がかかるから呼べない。離島、僻地、ハブの住んでいるところで呼べない。それだから、保険税だけは全く徴収されますけれども、それを使うことができない。全くやらずぶったくりにふんだくっている。先ほども静岡は受診率が低いという話がありましたけれども、こういうようなことが奄美大島にあった。私はがく然としたのであります。それで黒字とあると得々としているなんて、とんでもない話である。こういうふうに大病院にそういう患者がたくさん行くと、症例が多過ぎる、自粛してくださいと言う。こういうばかなことを言ってくるところに非常な問題があるのであります。私は、こういう形で、行政努力で持っていかれたんではたまったものじゃないというように考えるのでありますが、今日の健康保険の診療報酬は、はたしてどれだけ一体合理的であるかということにつきましては、私ども非常に考えなければならぬものがあるのであります。  これは先ころあった事件でありますけれども、浜松のYという警察医をしている病院であるが、交通事故の救急の患者を、便利の点もあるのでありましょうけれども、よくそこへかつぎ込む。救急車が連れていく。私の友人の長男、これは女房があり、子供が三人ほどあるが、オートバイに乗っておって、そうして交通事故をやって頭をぶっつけた。脳出血で意識不明でその病院にかつぎ込まれたが、ほとんど何もしない。ほったらかし、ついに、四十日ほど生きておりましたけれどもそのまま死んでしまった。同じ少しあとに、これまた私の知り合いである子供さんが二人おりまする奥さんであります婦人が、オートバイに今度ははね飛ばされて歩道へたたきつけられて、頭を打ちまして脳内出血、同じ病院に救急車で運ばれた。私は知り合いでありましたから三日目に行ってみて、何もしないので、それを私の関係しているS病院に連れていった。目が見えない。意識が全く不明であります。半身が明らかに不随であります。重大な脳内出血をしているということは一目りょう然であります。目が見えないのでありますから、たぶんこの辺に重大な脳内出血をしているのであろうというので、ここに穴をあけてそうして中の血を出した。出すと一緒に今度は血がほとばしり出した。それはずっと下の、もっとこの辺でもって脳の動脈が切られておった。たいへんなことだということで、今度はもう、一方から出るだけひとつ輸血をしよう。輸血をじゃんじゃんいたしまして、そうしてもう一つここに穴をあけて脳の動脈を結んで、ふたをして、麻酔がさめると一緒に目も見え、半身不随もなくなる、意識も返ってくる。そうして三十日後には何の後遺症もなく帰っていった。一方では、なるほど何もしないのでありますから、診療報酬、医療給付は非常に低い。一方では、それだけするためには非常な努力をしている。手術後においても輸液その他あらゆる努力をしている。一体どっちをとるべきであるか。もし健康保険の赤字だけを気にしていて、それを何とか埋めようとするならば前者のY病院に行きましょう。人の命を助けなければならぬということになりたら、幾らかかってもS病院をとるという形に私はなると思う。ことに、この間も私は私自身が開腹手術をいたしました。胆嚢の壊疽。開いてみたら胆嚢が溶けてなくなっておった。一巻の終わりというところでありましたけれども、まああらゆる努力をしてくれて、そうしておかげさんで助かって、きょうここでこうやって質問をしておる。私の手術を見ておると実に一まあ私の病院でありますから、特別にやったのだろうと思います。金はずいぶんかかったろうと思うのですが、私は払わぬから幾らかかったか知りませんけれども、とにかく開腹をして、そうして手術をして、もう胆嚢が溶けてなくなっている。わずかの残存物と膿と胆汁が幸いにして脂肪の袋の中に包まれてこぼれずにあったということで、手術中はもちろん輸血をしながらやっておるわけでありますが、その他あらゆる手を打って、そのあとの処置、輸液等の処置等もたいへんなことで、一生懸命でやっておる。私は年来糖尿病を持っておりますから、ブドウ糖の注射はできない。そこで、金はかかるけれども、フルクトンという果糖の輸液をさんざんやってくれた。これにビタミン剤その他必要なものをたくさん入れて、毎日二回ずつずいぶんたくさんやってもらった。そのおかげで私はもう手術後三日目には医者の命令でベッドの上に起きなさい、四日目にはベッドの回りを歩きなさい、五日目には病室じゅう歩きなさい、六日目には少し離れました便所へどんどん行ってやってきなさいということで、どんどんよくなってしまいました。ずいぶん金がかかっただろう。何十万円かかったか知りませんけれども、ずいぶん金がかかった。けれども、こうやって生きているのであります。だから問題は、いまのような静岡県は最低であるというようなことを喜ばれてはたまったものではない。こういうことを標準にされたのではたまったものではないのでございまして、私のやつをひとつ査定して切ってきたかどうかまだ聞いておりませんけれども、切ってきたらこれはただことではない、こう思っておるわけであります。ずいぶん進歩しておりますから、その進歩したものを取り入れなければいかぬ。たとえば私も、最近の医学進歩しておるのにほんとうにびっくりするのでありますが、病院を経営しておるという責任上、私もときどきどういう手術をするのかと思って手術室へもぐり込んで見てみる。最近やっている手術をこの間見ておりますと、定位脳手術というのをやっている。いわゆるステレオという手術であります。これを見ていると、レントゲン写真を三十枚くらいとっている。その手術をしながらとっている。これは脳の中枢のある細胞の核、そこを固定いたしましてそのところをさがし出す。見ていると、非常な熟練した医者が三人ほどそろい、そこで脳波計や筋電計やその他いろいろな新しい機械、レントゲン等を全部組み合わせまして、そしてその中枢の細胞をさがし出す。見ていると、そのところをさがし出すだけで四時間かかっている。さがし出しまして、そこに大きな針を入れて、そして電気で核を破壊したりあるいは薬剤を注入しまして氷結をしたりして、そうしてなおす。私が見ていたのはパーキンソン氏病という、からだがふるえる病気でありますが、その病気の細胞をさがし出して破壊することあるいは氷結することによって、その次の朝、その患者の病室に行ってみるときれいになおっておる。からだがふるえて、最後は精神病で死んでしまうパーキンソン氏病がなおっておる。あるいはまた、非常に狂暴性のあるてんかんの者が、細胞の核を破壊して狂暴性がなくなってしまっている。こういうようないろいろな非常に高度の手術がなされる。そのことによってその人間が生き返ってくる。でありますから、診療報酬が上がっていくのはあたりまえなんだ。これは喜ぶべき現象であります。でありますから、そのことばかりにひっかかると、一番やらなければならぬ中心の目的を失うのです。私の関係している病院も、よく心臓の外科手術をするのであります。いま心臓の外科手術になくてはならぬものはヘパリン血です。ヘパリン血というものを口の中に入れまして、つまり人工心肺というものを使いますから、心臓をとめて手術をします。心臓と肺臓にかわる機械を運転しなければならぬ。それにはヘパリン血というものがなくてはならぬ。このヘパリン血というものが、健康保険の診療報酬の中では認められない。あるいはこれは数が少ないのでありますけれども、Rhマイナスの血液、この血液代というものは認められない。それがなければその人を生かすことができないのに認められない。いまの人工心肺を使い、ヘパリン血を使って手術をする。それによって心臓の中隔欠損症その他心臓の中の壁に穴があいているという先天性の奇型児、こういうたぐいの子供をたくさん助けてきておるのでありますが、このへパリン血が認められていない。これはなぜ認められないか、経済が先立って生命が先に立たないからです。この間、私は、河野一郎君のあの御不幸のときに、榊原仟教授が別府に学会で行っておられた。あそこから特別飛行機でもって一人で呼び寄せられて、そして河野君のうちへ行って診察をした。ところが、動脈瘤破裂だから、もし開腹したら即死するから手がつけられない。でも自分がみずから河野家におり、大学から医局の者や看護婦や、あるいは機械を持ってきておられた。あの事件があった後にお目にかかりましたときに、長谷川先生、一度国会でこういうことをちょっと追及してください。私どもがそれだけのことをやって、そして健康保険で幾らになるか調べてみようとしたら一万七千円でございます。だから私は、大学病院当局にとるな、そんなものは請求するなと、こう命じました。つまりどうしてこうなるかというと、いまの往診料は患者のうちに一時間おって八十三円、だれがおっても、榊原仟がおろうと河野正がおろうと、だれがおろうと患者のうちへ行って、とにかく一時間患者のうちに往診に行って患者が危険だからそこで診察をして、それが八十三円ですよ。一体、われわれが働いてもらっておりますお医者さん、どのお医者さんであろうと、勤務時間外のそういう勤務をしてくださる、患者のうちへ行って危険だからそこにいてくださる、どんなにしても五百円以上の給料を払っていますよ。どんな学校出たての医者であってもそれが一時間おって八十三円、榊原仟が河野一郎のうちにおっても八十三円、こういうようなことでは私はいけないと思うのです。だから何よりも先に、まず命を大事にするという考え方がないと一そうしてそのためには国がやる。たとえば救急病院の指定でもそうです。静岡県ではいまでもまだできないのです。なぜできないか。厚生省のほうはいい気なものです。ちゃんといつでも入れる病室を用意しておけ、いつも医者と看護婦は待機しておけ、ただし、それに対しては金は一銭も出しませんよ、これではやれないですよ。こんな救急病院の関係などは、当然国がこれは背負うべきである。いろいろ実情を申し上げたのでございますが、静岡県がいま一番低いというお話が出たから、私は静岡県の実情を申し上げ、あわせてまた政管健保の問題に触れているのでありますけれども、こういうようなことをされたんではたまりません。赤字になるのがあたりまえで、私的な病院や診療所は、どうしても赤字にするわけにいきませんから神風ドクターになるか、あるいはただいまお話しのような不正なところに追い込まれるということになってくる。これは、いまの受診率の低いところややある政管建保が黒字になる府県は、特に当局としましてはこれを監督して、そういうような不当な診療が行なわれているのではないかということをお考えになる必要があるし、絶えず医学進歩薬学進歩に合わせて、ことに政管健保というようなものは改善していく必要があるというように思うのです。一体こういうような低い県、黒字の県はこれでよろしいと思っていられるのか、そういうような大きな致命的欠陥というものが陰に伏在しているということをお考えになるか、ちょっと大臣、局長の御意見を伺いたいと思います。
  43. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 最初に支払い基金の審査等で相当各県によって取り扱いが違うのではないかというふうに承れる御発言がございましたが、支払い基金の審査といいますのは、赤字、黒字にかかわらず一定の基準に従って行なわれておるわけでございまして、特に静岡県の審査がほかの県に比べてきびしいとか、そういうことにはなっておりません。大体支払い基金の審査のいまの査定率といいますのは、全国平均で〇・九九二ないし三でございまして、静岡は大体それにならっておる程度の審査でございます。  それから行政努力九十八億につきまして、支払い基金の審査によって九十八億の中の行政努力の数字が出てくるのではないかというふうな御指摘でございますが、これは再三申し上げておりますように、審査事務によりまして医療費を浮かせるとかというようなことを私ども考えておるわけではございませんで、九十八億の行政努力につきましては、標準報酬の的確な把握あるいはレセプトの点検調査を励行するとか、保険料の収納率を向上する、あるいは現金給付の適正化をはかるということになっておりまして、審査によって相当金額を浮かせるというふうな金額の積算になっていないわけでございます。  それから、ヘパリン血につきまして請求ができないという御指摘でございましたが、これはヘパリン血としてきまった形ではございませんけれども、一応ヘパリン血を使う場合には新鮮血でございますから、新鮮血の場合には療養費払いができることになっております。その場合には、ヘパリン血につきましては、別途注射として請求できるという取り扱いになっておりますことを御承知いただきたいと思います。  その他御指摘の点につきましては、ごもっともな点も多々あると思いますけれども、ただ診療報酬関係根本にわたる問題もございまして、この点につきましては、私どもも現行の診療報酬体系がいいものであるとは決して思っておりませんので、やはり現在、中央医療協議会の公益委員の会長以下皆さん方、熱心にひとつ診療報酬体系の適正化、合理化に取り組もうということで御審議をしていただいておるところでございますので、その方面の検討を待って、私ども今後改善したいと考えております。
  44. 長谷川保

    長谷川(保)委員 先ほど申しましたように全国で、たとえばいまのように胃ガンのレントゲン写真をとるのが違っておるのは変ですよ。これは同じ癌研でも、私が行って聞いたことに間違いなければ、こっちでは二十枚、名古屋では九枚、一般の病院ではずいぶん権威のある病院でも二枚か三枚、スポットも許さない。そんなことは変ですね。およそまじめな医者がやるとすれば、そんな二枚や三枚でもってできるはずがない。だから、そんなのは変ですし、先ほど申しますように、病院にこういう症例が多過ぎる、こういうのが来ると、こっちに要求して切ってくる。切ってくる前に予告なしです。こういう大きな診療の根本に触れるようなこと、あるいは医療機関のいわば内政干渉というようなところまで診療支払い基金事務所がやるべきではない、こういうことは当然お認めになるだろうと思いますが、この点はいかがですか。
  45. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 だんだんお話を伺いまして、まことにごもっともな御意見だと思います。皆保険下におきますところの医療給付は、国民全体に適正に、また不公平のないように提供されなければならないと思うわけでありまして、そういう意味合いからいって、御指摘のような点につきましても不公正なことがないように今後十分指導してまいりたいと考えておりますし、滝井さんにも御答弁申し上げたのでありますが、医療機関の配置あるいは医師その他の医療従事者の確保、こういう面にも特段の努力を必要とするように思いますし、また努力をしてまいりたいと考えております。  また、診療報酬体系の適正化の問題につきましても、技術を十分尊重し、これを正当に評価するというような方向で、今後できるだけ早い機会にこの診療報酬の適正化ができますように努力をしてまいりたいと思っております。
  46. 滝井義高

    ○滝井委員 ちょっと関連して。私が質問をしたいと思った点、二点、いま長谷川さんが質問されましたので、関連して資料を要求しておきたいと思うのですが、まず第一は、レントゲンの一つの疾患に対する枚数の問題です。特にいま長谷川さんが、ガンの問題を出しましたけれども、これはガンと診断がついてしまいますと、それはレントゲンの枚数はそうよけいには要らないと思うのです。問題は慢性胃炎なんです。慢性胃炎という診断を医者がつけるためには、まず何をしなければならぬかというと、ガンでないということと、胃かいようでないということとの指定をやらなければならぬわけです。これを指定すると、恒久的にずっと胃の悪いというような、慢性胃炎だという診断がつくわけです。そこで、そのレントゲンをとるためにいろいろの角度からとらなければならぬ、こういう問題が出てくるわけです。そうしますと、いま東京のがんセンターでは二十枚、名古屋で九枚、それから長谷川さんのところで二、三枚、それ以上とると削られる。若松医務局長は精密検査で四枚から六枚、こうおっしゃったわけですね。東京とかこの付近でけっこうですから、一体どの程度のものが請求として出て、どういう削り方をしておるかという——慢性胃炎でけっこうです。ひとつ資料として、基金を調べて出してもらいたいと思う、私その削られた資料をもって質問をするつもりですから。それから学界の意見も持っておりますから、質問をしますから具体的な資料をひとつ出してもらいたい。いままでわれわれは社会保険審議会とか社会保障制度審議会にまかしておりましたけれども、こういうこまかい学術上の問題をやはり国民の前に明らかにする必要がある。そうして医者の審査員が官僚化し、ミイラ取りがミイラにならぬように、公正にやれる形をつくってやらなければいかぬと思うのです。そうしないと、たいへんなことになる。だから、これをひとつ資料として出してもらいたい。何だったらわれわれが基金に乗り込んで審査の実態を見せてもらいます。これは見せてもらわなければだめです。秘密だ秘密だといって、秘密のべールに包んでおいてはだめなんで、基金において月の初めの十日ごろからずっとやりますから、健康保険を上げる前に一ぺん見る必要があると思うんです。いかに多くのものを少ない審査員でやっておるか。この前、審査事務嘱託の問題も出ておりますが、社会労働委員全員にその実態を知ってもらう必要があるので、これをきょう委員長に要求しておきますから、いずれ健康保険の上がる前に見てもらいたい。  それからいま一つは、先天性の心臓弁膜症なり心臓の中隔の欠損症に対する手術の問題です。これもまあ一番多く症例を扱っておるのは、東京女子医大の榊原さんのところです。これは保険医療機関だと思います。そこで、最近行なった心臓手術の請求書の実態を全部国会に出してもらいたいと思います。そうしてそれが一体幾らの差額微収を取っているか。榊原さんのところはわんさとつかえておって、半年か一年待たなければ番がこないのです。ある人が私のところに言ってきたのでは、心臓の手術は八十万円かかるというのです。それからまあちょっと軽いところで四十万円だと、こういうわけです。いまのへパリン血の問題もありますので、実態を明らかにする必要があると思うんです。  それからいま一つは、準要保護、生活保護のすれすれのところ、これは育成医療としてやるわけです。これは一体いま予算的には幾らかかっておるのか、そうして、その実績は全国的にどの程度行なわれておるのか。これはいま言ったように、わずかな金だと順番があと回しになって回ってこないんです。なぜならば、金が少ないから、病院としてはそんなものはやるひまがない。いま重要精神薄弱児とか重度の心身障害児問題等がいろいろ問題になっておりますけれども、こういうようなところが、健康保険ですらすらとやれる形をつくらなければいかぬわけです。そうしないと、二十万、三十万の差額徴収を取られたらとてもやれない。私はいつかここで角膜移植術のとき取り上げた。これは人間の目の玉を一つもらうと十万円かかるんですよ。そうすると、健康保険ではそれは時価になるわけですね。当時この問題、お願いをして、できるだけうまくやってくれというので、当時医療課長だった舘林さんがうまくやるようにしますということだったんです。その三つの資料をひとつ出していただきたい。一番最後の点は、いま育成医療の実態がどういうようになっておるのか、答えられれば答えてもらってもけっこうです。前の二つの資料は、ひとつ出してもらいたいと思います。十例ずつくらいの症例を出してもらったらいいと思います。
  47. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 できるだけ努力して御要望に沿うようにつくってみたいと思います。
  48. 澁谷直藏

    ○澁谷委員長代理 滝井委員から御要求のありました事項につきましては、後日理事会で相談の上決定したいと思います。  午後一時二十分まで休憩いたします。    午後零時三十八分休憩      ————◇—————    午後一時二十五分開議
  49. 田中正巳

    田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続けます。長谷川保君。
  50. 長谷川保

    長谷川(保)委員 薬剤の問題でありますけれども、近年保険財政の悪化の最大原因医療費増高の最大の原因は、医療費の中に占める薬剤費であるということが各方面で指摘されておりますが、その薬剤費がどういうように増高してきているか、それを伺いたいのであります。
  51. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 社会医療調査によります総点数中に占める投薬、注射の材料費の割合数字を申し上げます。  三十五年、三十六、三十七、三十八、三十九年と五年間にわたりまして、総数におきまして三十五年当時が二一・五%、三十六年が二五・一、三十七年が二八・七、三十八年が三一・九、それから三十九年が三六・八ということになっております。これは入院、外来を含めた分でございまして、そのうち入院のほうは、途中を省略いたして恐縮でございますが、三十五年が二二・三でございましたが、三十九年になりますと二三・六、大体二倍近いあれになっております。それから外来のほうは、三十五年が一七・一、それが三十九年になりますと四三・五、外来の率が非常に高くなっております。  あと甲表、乙表によりましてそれぞれ率は違うようでございますが、甲表につきましては、総数が、三十五年が二〇・二、三十六年が二四・〇、三十七年が二六・一、三十八年が三〇・〇、三十九年が三六・六。これを入院、外来に分けますと、入院が三十五年が一四・七、三十九年になりますと二七・三になります。それから外来は、三十五年が三四・六、それが三十九年になりますと五二・七。甲表の外来の率が非常に高くなっております。  乙表を申し上げますと、総数、三十五年が二二・二、三十六年が二五・六、三十七年が二九・九、三十八年が三二・八、三十九年になりますと三六・九。甲表に比べますと若干乙表のほうが多いわけでありますが、これを入院、外来に分けますと、入院が、三十五年が一〇・九、非常に低いのでありまして、それが三十九年になりますと一八・一でございまして、外来になりますと、三十五年が二五・六、それが三十九年になりますと四一・五、途中省略さしていただいておりますが、甲表の外来のほうが一番高い、こういう形でございます。
  52. 長谷川保

    長谷川(保)委員 この薬剤費が非常に上がってまいりました理由は、どういうところにあると当局はお考えになっておりますか。
  53. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 ちょうど三十五年に相前後いたしまして、医薬品工業の非常な高度成長を遂げ始めた時代になっておりまして、そのころから、医薬品につきまして新しい医薬品の開拓、新技術の導入によりまして、新薬が——新薬といいましても、これは外国から入ってきた薬が多いわけでございますが、新薬が登場いたしまして、治療効果もあがるということで非常に大量に使用されたのではないかというふうな考え方がございます。  それからもう一つ、これは中央医療協議会、社会保険審議会等でも申し上げておることでございますが、薬価基準の改定が三十五年以来行なわれておらないというふうな点も、ある程度影響があるのではなかろうかというふうな推定を私どもいたしております。
  54. 長谷川保

    長谷川(保)委員 薬価基準の改定が行なわれなくても、それ自体は同じ薬価でもって治療していくのでありますから、特別量をよけい使うということ以外には、それが高騰していく理由にはならないと思うのです。新しく外国でできましたもの、あるいは日本でできましたいわゆるクロマイとかカナマイシンとかいうたぐいのものが新しく入ってきて、それが非常に高価であるというようなものが使われ出した、それで治療効果はあがった、言いかえれば死なないで済む人がたくさんできた、長く病気になっている人も早くよくなる、こういうことであれば、薬剤費が高騰しても少しも問題はない、先ほど申し上げましたように、ことに非常に高度の手術等が行なわれるようになったということになりまして、私もその前後にずいぶんと高価な薬を使ってもらったのでありますけれども、そういうことなら別に薬剤費が上がっても問題はないと思うのでありますけれども、そこに当局が問題にしておりますのはどういうところにあるか、伺いたい。
  55. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 問題は、薬価基準と実勢薬価との間の差額が相当開いてまいりますと、そこからいろいろな弊害が出てくるおそれがあると思います。従来でありますれば、二日ないし三日分ぐらいの薬を渡したものが一週間分ぐらいまとめてそれを支給するとか、いろいろそこに、実勢薬価と保険薬価との間の差額が開いてまいりますといろいろな問題が出てまいります。これは現実にそういう事例があがりまして、その適正な運用につきまして私ども指導をいたしておるところでございます。それで薬価が下がりました場合に、薬価基準を実勢に合うように引き直すということは、今後も私ども努力をいたしたい、毎年少なくとも一回は薬価基準の改定を行なう、また薬価に大きな変動がありました場合には、その都度薬価基準の改定をいたしたい、このように考えておるのでございます。
  56. 長谷川保

    長谷川(保)委員 薬価基準を実勢価格に合わせて改定なさることはいいことだと思います。が、先ほどのお話ですと、薬価基準を改定しなかったから上がったのだ、それが一つの大きな原因だというのが私にはわからないのでありまして、いまの大臣のお話のように、多量のものを患者に持たした、この間の滝井先生のお話では、ふろしきに包んで持って帰るというほど出したから薬剤費が上がったのだということならわかりますけれども、それではひとつ伺いたいのは、いまお話を伺いました甲表の外来と乙表の外来とでは、甲表の外来のほうが割合が多いんですね。甲表の外来は、いま伺ったところによると、五二・七、乙表の外来は四丁五、これはどういうことを意味しておりますか。
  57. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 甲表の外来といいましても、甲表採用病院といいますのは公的医療機関が大部分でございますので、つまり病院の外来が非常に多いということではないかと思います。
  58. 長谷川保

    長谷川(保)委員 私が聞いているのは、甲表は物と技術と分けたわけでしょう、乙表はそれをある程度ぐるにしてある、だから甲表ならば、薬をよけい出したからといってもうかるわけではありませんから、甲表のほうが医療費のうちの薬剤費が減ってくるのではないか、ところがいまのお話では、甲表のほうが多くて、乙表のほうが少ないというのはどういう意味ですか、こういうことをお伺いしているわけです。
  59. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 もともと甲表、乙表に分かれましたのは三十三年からでございますが、その当時におきましても、やはり甲表の外来の場合には薬剤費のほうが高かったわけでございます。それで増加率を見ますと、過去五年間の増加率につきましては、大体甲表、乙表につきましても、外来については増加率はパラレルにいっているわけでございまして、当初から、やはり甲表のほうの外来につきましては、薬剤、注射の使用量が多かったという実態があるわけでございます。  それから、先ほど薬価基準の改正が行なわれなかったためにある程度ふえたというふうに私申し上げましたが、説明が足りませんので補足させていただきますと、薬価基準が毎年毎年順調に改定されておるとするならば、大臣先ほどお話し申し上げましたように実勢価格に合っている。ところが、過去五年間近く実勢価格に合わない薬価基準がそのまま放てきされておるということになりますと、やはり薬の購入につきましては、医療機関は——その後薬品工業が高度成長を遂げておりましたために、コストが安くなっておりまして、購入価格が非常に安くなっているわけでございます。安く買って、薬価基準としては古い薬価基準で、ものによっては二倍、三倍、あるいはそれ以上の薬価基準で請求できるというふうな実態がございましたので、どうしてもそこに、ある程度薬の使用というものを余分に使うことによって、苦しい台所をある程度カバーしていくというふうな考え方も出るということで、やはりこれは実勢価格に合わせていくほうがかえって実態に合うことで、あたりまえのことではないかということで今度踏み切ったわけでございまして、それが一応のある程度要因にもなっているだろうという説明を私落としましたので、補足させていただきます。
  60. 長谷川保

    長谷川(保)委員 いや、だから甲表を採用している国立病院をはじめ、公的病院をもって代表させることができる、それは物と技術を分けてやる、乙表のほうは、一般の開業医あるいは私的病院というものがわりあいに使っている、その物と技術とを分けて、本来甲表では一切もうけないようにしてある、そういう甲表の病院というものが、外来において薬剤費がこんなに大きくなっているという意味は何ですか。それは伸び率などは何の関係もないのでありまして、三十九年なら三十九年の時点、つまり医療費の緊急是正をしたあとの時点ということになりましょうが、この時点で、つまり今日の現状というものを把握する時点において、そういうように乙表よりも多くなっているのでは、物と技術を分けるという意味をなさぬじゃないか。それが甲表だということが意味をなさぬじゃないか。こういうように私は不審に思うので、それならば、むしろ全部乙表でやったほうがましじゃないか。どういうことだ。どうしてこの国立、公的病院がする医療の中で、薬剤費の中で占める割合が五二・七というような大きな割合を占めるのだ。私どもの病院でもそんなには占めておりません。だから、甲表をつくった意味というものがないじゃないか。変じゃないか。いまの薬価基準の実勢に合わせることとは別の問題です。関係のない問題です。だから、薬価基準を合わせるのはいいと思うのですよ。合わせるのは決して悪くないと思うのです。ただし、その場合には技術料というものをまず前提として正しく算定しないと、ただ医療機関というものを貧窮に追い込み、満足な医療ができないようにさせる、医療の荒廃を来たさせるだけであります。技術料を十分正しく算定するということをしておいてでなければいけませんけれども、それを一方において十分になさる、こういう御趣旨であり、それが実行されているなら、私は、物と技術とを分けて、薬は薬、薬で医者は決してもうけないという考え方は正しいと思うのです。それは正しい方向を向いていると思うのです。ただ、いま言ったように、せっかく物と技術を分けてしまったって、国立病院、公的病院のほうが、むしろ薬剤費が医療費の中では大きくなっておるんだ。それには甲表をつくった意味がないじゃないか。全部乙表にしたらどうだ。そうしてもっと甲表のいいところの技術料を乙表に添加していけば、お医者さんはこれならやっていけるということになりますから、そういうようにしたらどうだ。だから、甲表のほうの外来が五二・何%、これは普通の病院では、私は四〇%内外だと思うのです。薬剤費は、診療報酬、医療収入の中ではそのくらいのものだと思います。それがこういう数字が出てきた。それじゃ甲表をつくった意味がどこにあったんだ、こういうことを伺っているわけです。
  61. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 御指摘のように、甲表、乙表につきましては、物と技術をある程度、甲表のほうが分離しておるという形になっておるわけでございますけれども、これは必ずしも、そういう考え方で甲表も完全に分離できておるという形になっていないことは、先生御存じのところだろうと思います。ただ、甲表の病院につきまして、外来のほうがふえてきたという実態は先ほど申し上げましたけれども、もともと三十五年当時のそれ以前のものを見ましても、外来の薬剤費の占める分野というのは甲表のほうが高かったので、ふえ方についてはある程度パラレルでございます。しかし、率は確かに四十何%、五〇%、非常に高いわけでございますが、それは、もう一つの乙表につきましては、さっきの議論と逆にいたしますと、薬と分離できない面が乙表のほうには残っておる。ところが甲表のほうは、はっきり分離できるようになっておりますので、これが統計上出てまいりますと、薬剤費の使用は医学技術の進歩によって非常にふえてまいっておりますから、それが直截に数字に出てまいりまして、それで甲表の薬剤費の量がふえてくる。ところが乙表のほうは、完全に分離できないものが残っておりますので、この分は薬剤費という形で数字には出てこないという点もあろうかと思います。しかし、結論から申しますと、新しい薬学進歩に伴いまして、薬剤費も、使用は医療機関のほうと患者側もこれを希望したということが実態ではなかろうかというふうに思っております。
  62. 長谷川保

    長谷川(保)委員 そういうことであれば、薬剤費がふえることは何も非難されることはない、もしいまお話しのとおりであれば。国立病院をはじめとして、公的病院が中心になって採用している甲表というものが、薬剤の進歩によって、それをどんどん使うから薬剤費が上がります。それなら当然のことで、薬剤費がふえることを何ら懸念する必要はない。けっこうだ。乙表のほうをどんどんふやしたらどうか、こういうことにならざるを得ない。だから、そういうことじゃないのじゃないか。何かほかに理由があるのではないか。国立病院関係はどうですか。医務局長さん、そこのところはどういう理由なのか。いまこの数字を伺って、私には理解できないのです。どうして甲表の病院がそういうことになるか。また私に考えられる点は、たとえば甲表に集まってくる方に診察その他のことは一貫して、そして先ほどお話しのように、二週間分も三週間分も一カ月分もの薬を持たしていくから全体の医療費の中で薬剤の率が多いのだ、こういう解釈が少しはできる。それもしかし、事実考えてちょっと無理がある。でありますから、外来の問題をとりましてもどうしても理解できないけれども、これを解明しないと、いまの診療報酬の問題で医療費増高の問題は解決できませんよ。甲表を援用する公立病院等で五二%余の薬代である。それなら、何と申しましてもこの医療費の問題をどう合理化するかという点で、この問題に食いつかなければこれはできません。しかも私の知っている限りにおきましても、たとえば私の付近の市町村にありますいろいろな病院を見てまいりますと、国立病院に入っている薬が一番安いのです。これは何と言ったって厚生省のほうが大口でありますから、薬屋さんのほうもこわいし、へたに憎まれたら困りますからできるだけ安くする、少し赤字でもけっこうだ。私どもの付近の数市町村を見ると、その次に安いのが私のところの病院だそうです。それで公共企業体でやっておりますある病院は、この間、病院の薬剤師から文句が出てきた。各薬屋やメーカーのプロパーを全部集めてお説教があった。どういうわけでわれわれのところは高いのが、それから国立や長谷川君のところはああいう値段でどうしてくれるのだ、それであったら全部ボイコットしてくれるというようなことで、この間大騒ぎがあったのですけれども、国立病院が一番安いのです。その安い病院が、医療費の五十何%というものが薬剤費である。これを解明しなければ、この医療費の問題は解決できませんよ。だから、もっと私の納得のいく説明が出てくるはずだ。国立病院を実際に経営していらっしゃる医務局では、当然これはおわかりになると思うのですが、いま保険局長のおっしゃった以外に何かこの問題に含まれている問題があるのか、これを解明しなければならぬと思うのです。どうですか。
  63. 若松栄一

    ○若松政府委員 現実的に一番大きな問題は、最近の薬学発展によりまして非常に多種多様な薬ができてまいりまして、それに非常に薬が高価になってまいりました。そういう点がやはり一番大きな原因だろうと思います。  もう一つ原因は、やはり国立病院の外来等におきましては、外来が非常に多過ぎるために、軽症の患者については、昔であれば二日後に来いといったものを一週間後に来いということで、薬を七日分出させることがあります。これがどの程度響いておるかということは数字の上で明らかにできませんが、ごくわずかでありますが、若干はあろうかと思います。
  64. 長谷川保

    長谷川(保)委員 だから、この問題はやはり解明する必要がある。厚生省国立病院課はひとつ大いにこの問題を解明してもらいたい。そうしないとまじめな審議はできませんよ、これは一番急所でありますから。国立病院必ずしも——なるほど、東一とか東二とかいうような国立病院はたいへんしっかりやっていらっしゃるけれども、いなかの国立病院は必ずしもしっかりしているとは思いませんし、先ほどのを見ましても赤字が相当ある。そうしてそこでは、必ずしも、そういう患者が蝟集して動きがつかぬから、たくさんの薬を出すというようなことではありません。でありますから、なぜこうなったのか。いまのお話のとおり、高価な薬品を、高度の治療を行なうために使うということが大きな理由であります。また、高度の外科手術等をする前後に患者の体力をつけ、あるいは健康を早く回復するために、輸液やあるいは輸血、そういうものを相当十分にし、そうして手術前後においてクロマイその他の高価な薬を十分に使っている。こういうことが行なわれて、こういうような公的病院、物と技術をすっかり分離したと考えられておりますところにおいて、なおこういうことが起こる。そうすると、医薬分業をいたしましてもこの問題は解決しない。つまり高度の治療をしていく、それで国民の命が助かる、国民寿命が長くなる、こういう筋道になっておるわけでありますから、国立病院の医者や公的病院の医者は、私的病院の医者などと違って、診療報酬を査定で切られるというおそれはありませんから、そういうことでどんどんお使いになる。この使うほうがほんとうなんです。使わないほうがどうかしているという形になる。医薬分業してもこの問題は解決しない。この薬剤費の増高というものは解決しないし、今後薬学がどんどん進歩し、医学進歩していけば、いよいよこれを使うという筋にもなりかねないということになります。ですから、政管健保においてその医療費医療給付が非常に大きくなっていく、この問題をどこで一体解決したらいいか。当然のことをしておるならば、そして国民の勤労者の負担力が限界であるということになれば、国で出す以外にはない。国庫負担をする以外にはないわけです。でありますから、まず薬剤が正しく使われている——では、国立病院では正しく使われておって、決してむだはしておらぬというように厚生省当局は言い切れるのかどうか。言い切れるならその線が正しいのでありますから、そういう線を乙表に向かっても勧奨していくべきだ。それでなければ、医療費医療給付率で薬剤費が非常に高騰していったということをチェックする意味がないわけです。もう少し進めなければならないということになっちゃう、こういう論理になっていくと思いますけれども大臣いかがでしょうか。
  65. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 この医療費の問題を適正にしてまいるということは、今後の医療保険制度改善にあたりましては一つの大きな、重要な課題である、こう考えるわけであります。長谷川さんが御指摘のように、そこに濃厚診療も行なわれていない、また薬が適正に、適量に使われておって必要以上に使われていない、しかし医薬、医学進歩によって治療は非常に高度になってきた、内容がそれだけ充実をしてきた、そして国民の健康はそれだけ保障されてきた、こういうような形であって、そういう正しい姿において医療費がふえていっておる、こういうことでありますれば、私は、その正しくふくれ上がったところの医療費、これをどうやってまかなうかという財政対策、あるいはその負担をどう適正に配分するか、こういう問題に今度はなってくると思うのであります。そこへまいります前に、長谷川さんが御指摘になりますような、現在、理想の正しい姿にあるのかどうか、合理化を要する点があるのではないかどうか、こういう点も、私はやはり今後制度根本的改正をやります場合にもう一ぺん洗ってみる必要がある、こういうことを申し上げておるのでございます。  そこで、今後の保険財政におきまして、受診料の上昇であるとか医療給付内容向上であるとか、そういうことで医療費がだんだん増額されてきておりますから、これをどうやってまかなうかという問題につきまして、保険主義かあるいは保障主義か、こういう根本的な議論がそこにあると思います。私は基本的には、やはり保険制度として関係者がこれを適正に負担をし、この制度を自分らの医療保障制度として守っていく、こういうことが必要であると思いますが、しかし、長谷川さんの御指摘のように被保険者負担等が限界に達した場合としては、これはどうしても国のほうで大幅な財政的な助成措置を講じなければならない、かように考えるのでありまして、ここで保険主義とか保障主義とか、そういう観念的な議論をやるよりは、現実に対処して国民のための医療制度を守っていかなければならぬ、私はかように考えておる次第でございます。
  66. 長谷川保

    長谷川(保)委員 さっき申しましたように、この医業の経営実態というものは、この前の三十八年の厚生省の調査によって、七月十七日の日の病院等にかかっております患者の数が、公的なものと私的なものと、五〇%、五〇%であるというのが先ほど午前中に申し上げましたように出ているわけですね。そうすると、その中の国立病院の比重というのは非常に大きいわけです。それは厚生省で、その医業の経営実態というものはちゃんとつかんでいなければならぬじゃないか。つかんでいないなら変なものです。これはもう実に厚生省の怠慢です。そんな経営者はどこにもありません。私も経営者の一人でありますけれども、常に、私がやっています三つばかりの病院の経営実態は、毎日朝、私が理事長室におれば、少なくとも前々日の報告書は全部きている、全部つかんでいる。だから、厚生省がつかめないのは変です。そんな経営者なんてありません。どういうように一体行なわれているか。私は全くのしろうとでありまして、門前の小僧にしかすぎませんけれども、やはり一応経営者として経営の実態をつかんでいる。厚生省がそれをつかんでいないのは実に変なんです。つかんでいなければならぬ。つかんでいるならば、この五二・七%、五三%にもなるという−私はいま聞いてびっくりしましたよ。私の病院では大体四〇%。ずいぶん高度の治療をいたしますけれども、四〇%くらいです。時によってはそれを下がったり上がったり、大体下がります。でありますから、それが五二・七%というように外来で出ておる、もちろん平均が三六・六%でありますが、こういうのを見てびっくりするのですね。平均が三六・六%でありますけれども、外来にこんなに出るのであろうか。それが乙表の四一・五%とあまりにもまたかけ離れている。一一・二%も離れておる。これをどうしても解明しないといかぬ。入院にあっても乙表一八・一%と甲表二七・三%と、約一〇%違っている。だからこれは、国立病院の医療というものが間違っているのか正しいのか、その実態の調査把握、こういうものはどうなんです。一体国立病院の治療というものは、現状において正しいのであるか正しくないのであるか、当然経営者であります厚生省医務局はわかってなければならぬのでありますが、どうでありますか。
  67. 若松栄一

    ○若松政府委員 厚生白書の一六〇ページの記述が引用されておりますが、実はあらためて昨日検討いたしまして、これはどうも非常に残念ながら不確定な記述でございまして、まことに申しわけありませんが、この「五〇%程度が私的医療施設の患者である」といいますのは、入院患者についてでございます。外来患者につきましては、一般診療所がほとんど大多数でございます。九五%程度が一般診療所における外来でございます。したがって、ここで入院患者についてというように分けてはっきり書けばよかったのを、手落ちがございまして、その点申しわけございません。  なお、国立病院における医療が正しいのか間違っておるのかという、まことにむずかしい問題でございますが、私どもは、できるだけ日本国民のための医療の、標準的な医療ないしはより高度の医療ということを心がけておりまして、できるだけむだのない、しかもある程度採算を無視しても高度の医療をやりたいということを念願しておりますので、間違った医療をしているとは存じておらないわけです。
  68. 長谷川保

    長谷川(保)委員 これは将来お互いに、やはりここのところは急所ですから、十分に調査をし、討議をして——国立病院のやり方が間違っていない、そして甲表を使っておる、そうすると薬剤費は乙表よりもふえる、それが正しい高度のむだのない医療である、こういうことになりますとそういう傾向はさらに進み、乙表全体にもそれを及ぼすべきであるということになるのでありますから、医療給付全体の約四〇%を占めます薬剤費の問題は、非常に重要な問題ですから、なお将来にこの問題に対する討議を留保しておきたいと思います。どうかひとつ厚生省当局においてもこの問題を十分に研究してもらいたい。そうでないと、正確な、正しい医療給付のあり方というものが出てこないと思うのです。  それでは、それは一応次の段階に譲るといたしまして、今日医薬品の最終製品の生産額は、三十九年度で四千百七十七億円というように拝見しておるのでありますが、実にそれは前年度に比べまして七百六十六億円の増であり、二三%の増であるというように伺っておるのであります。この膨大な薬剤費、薬品の価格というものは適正と考えているのかどうか。今日の日本で生産いたします医薬品の——いま申しました数は部外品でなく医薬品でありますが、医薬品の製造、販売値段、こういうものは適正なものと考えているのかどうか。この問題をきめませんと、医療給付の問題の大きな部分を占めます問題が、適正であるかどうかがわかってこない。だから、厚生省薬務局としてはずいぶん研究されていられると思うのでありますが、現在のものは適正価格であるかどうか、それを伺いたいのであります。数多いことでありますから、いろいろあることでありましょうけれども厚生省としては……。
  69. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 非常にむずかしい問題でございます。私ども考え方といたしましては、現在の医薬品の価格というものは、先生御存じのように、いわゆる自由主義経済体制のもとにおきまして自由な競争にまかせている、こういうことで医薬品の価格が形成されているわけでございます。したがいまして、需要供給のバランスをとりながら、おのずからそこに一定の医薬品価格というものが自然的に形成されていく、こういうような現状になってきていると思います。したがいまして、医薬品の現在の価格、つまりたとえば実勢価格といわれている各医療機関が現実に購入する価格、こういうようなものが適正であるかどうかということについては、いろいろな見方がおありだろうと思いますけれども、私どもとしましては、現在の経済体制下において自由主義競争というものが相当激しく行なわれている現段階におきまして、この医薬品の価格というものはほぼ適正な価格におちついている、こういうふうな判断をしているわけでございます。
  70. 長谷川保

    長谷川(保)委員 それでは伺いますけれども、有名製薬会社の利益配当というものがどういうようになっているのか。もちろん、たくさんのことをあげていただくこともできませんでしょうから、たとえば武田とか大正とか三共というようなところ、これらの会社の、利益配当は外部に出すだけでありますから、内部留保の状況、この問題を……。私は、製薬会社もどんどん研究をして、どんどんいい薬をつくっていってもらわなければなりませんから、相当な利益をあげるのは当然だと思います。けれども、この利益配当をどのくらいしているか、それから内部留保はどうなっているのか、株価の状況はどうなっているのか、こういうものを見れば、べらぼうにもうけているものであるか適正なもうけをしているものであるか、大体わかると思うのです。大体の想像がつく。もちろん、企業経営の手腕も技術もいろいろありますから、一がいに言うことはできませんけれども、一般論としては議論の根拠になると思うのです。だから、厚生省が適正だと思われるとしましても、一般的にはどう考えたらよろしいのか。いまの大きな、医療費全体の四〇%を占めますような薬剤費というものが、どうしたら正しくなるかということを追及してまいりますのに、やはり大きな参考になると思いますから、それを教えていただきたい。
  71. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 主要医薬品のメーカーを十二社取り上げまして、日本銀行の主要企業経営分析という調査の資料がございますが、これに基づきまして私どものほうで調べましたところ、いまお尋ねの配当率というものは、大体二二%から一五%の範囲内であるようでございます。それで、これを一般の製造業の平均と対比してまいりますと、大体製造業の一般の平均は一〇%ないし一二、三%ぐらいのところにあるようでございます。したがいまして、医薬品の主要メーカーの十二社の分の統計だけで見ますと、少なくともそこに二ないて三%くらいの開きがあるわけでございます。その分だけ医薬品メーカーのほうが配当率がいい、こういうような結果に相なるかと思います。  ただ、申し上げておきたい点がございますが、この傾向は昨年ぐらいから徐々に低下する傾向にあるようでございます。配当率の過去の趨勢をながめてみますと、昨年、四十年の三月決算の上期で見ますと、従来一六%ぐらいあったものが、一三・何%というふうに逐次下がってきております。これは先生御存じのように、昨年来のアンプルかぜ薬の事件等がございまして、一般の大衆薬の国内需要というものが停滞をしてまいりまして、頭打ちの傾向になってきております。そういうようなことが一つの大きな要因となりまして、医薬品の生産額も四十年は非常に減ってきております。それがこの配当率にも関係して、若干低下の傾向を示し始めてきている、こういうことが一口に言えるかと思うのであります。  それから、第二のお尋ねの剰余金処分額の内部留保の問題でございますが、この内部留保の割合が、はたしてどの線が適正であろうかということについては、いろいろまた御意見なり御批判があろうと思いますが、現在の医薬品の同じ十二社の主要メーカーの内部留保の率を見ますと、大体二四%から最高二七%ぐらいのところにあるようでございます。これを一般の製造業の平均と対比してみますと、大体製造業の場合は一七%から一九%というようなところにありますので、この面から見ましても、内部留保の率というものは、医薬品の場合は少し製造業以上に高い、こういうことは言えるかと、かように考えております。
  72. 長谷川保

    長谷川(保)委員 前にも国会でずいぶん問題にしたことがあるのですけれども、この医薬品の広告料ですね。これはテレビ、新聞、ラジオ、雑誌、ずいぶんたいへんなことだと思います。それにプロパーが持ってまいります。病院、診療所等に置いてまいります見本、こういうものを入れ、それらに要します費用等を入れますならば、これはたいへんなことになると思うが、これを厚生省は年額どのぐらいと見ておるのか、お調べになったことがあるかどうか、伺いたい。
  73. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 実は私どもの役所のほうで広告費の調査をしたことはございませんで、もっぱら、御存じのように、電通等の民間のほうで広告の調査をやっております。そういうデーターから推測をしているわけでございますが、三十九年は、いま問題になっております医薬品の広告費は三百三十億でございます。新聞、雑誌、ラジオ、テレビ、こういうようなおもな広告媒体によって広告された広告費の総額は、三十九年度は三百三十億ということでございますが、四十年、昨年は、つい最近電通のほうから一応の発表がございましたが、それによりますと三百三十八億ということで、わずかではございますが、前年よりもふえております。八億ぐらいふえておりますが、これは医薬品だけでございませんで、一般経済界の不況とかいうものが反映しまして、広告費の全体の総額、総広告費の額が全般的に伸び悩んでいるということが一部医薬品の場合でも当てはまっている、こういうふうに考えているわけでございます。  こういうような医薬品の広告の現状でございますが、いまそれに関連して御指摘のございました宣伝用のサンプル等の実態でございます。これははなはだ申しわけないわけでございますが、私どものほうで詳細なデータはつかんでおりませんので、その中身について御説明はできないわけでございますが、ただ、私どもが医薬品の業界あたりからいろいろサンプルの問題について話を聞いているところによりますと、大体売り上げの総量の三%から五%ぐらいが、いま業界でサンプルの範囲内ということで話し合いをしている線だということを聞いております。
  74. 長谷川保

    長谷川(保)委員 医薬業というものがある程度もうかっていいということは、私は先ほど申し上げたのでありますけれども、こうやっていろいろ見てまいりますと、相当にこれはもうかっているものである。厚生省は、医療費の問題についてはずいぶん真剣にいろいろ手をお入れになる。診療報酬支払基金事務所等でもずいぶんきびしい査定をするのでありますけれども、また、要らざる内政干渉までしてくるのでありますけれども、しかし、製薬会社のこういうような利益等について、あるいは広告等について、あるいはサンプルの配給等について、これを合理化するということをせられたことがあるのかどうか。もちろん、自由企業でありますから、利益のあるのは当然です。けれども、そういうことをしたことがあるのかどうか。これも実は私が聞きますのは、数年前にやっぱり薬の問題をわれわれ取り上げまして、そうして、たまたま読売新聞、朝日新聞等もこの問題を社会部で取り上げたことがあるのです。そして、製薬会社のコストをずっと追っていくということをしてまいりましたところが、途中でぴたっとその記事がとまってしまった。そのときに私ども耳にいたしましたのは、製薬会社のほうから非常に強い抗議が読売新聞、朝日新聞等に出たために、この企画をやめざるを得なくなった。それで、そのときのうわさによりますと、読売の社会部の記者はついに地方に転出させられた。もし続いてやるならば、今後読売とか朝日とかいう新聞には製薬関係の広告は一切しない、こういうことになったのだといううわさがありました。うわさでございますから、真偽はどうか存じませんけれども、また、そのためにある新聞はその記事を一切載せないということで、それきりやめてしまったというようなことが起こってきたのであります。  たいへんえげつないことを申して恐縮でありますけれども、人の口には戸がたたれないものでありまして、厚生省は製薬会社には手を入れられないんじゃないか、その理由というのは、たとえば厚生省のお役人さんたちが海外に行かんならぬというときには、製薬会社が相当のものを出さんならぬ、あるいはまた、いろいろな会合等をするのに、製薬会社に、悪いことばで言えばたかるということをするんだ、そのために厚生省は手が入れられないんだという、えげつないうわさもあるのです。だから、これは厚生省自体のためにも明らかにしておいてもらいたいし、それから、もしそういうようなことで手が入らぬということであれば、もう医療費の問題を論ずる資格はないのでありまして、これらの点は当然この合理化のために相当の手を入れるべきだと私は思うのでありますけれども、そこらの点は事実いかがであるか、この際、ちょうどいい機会でありますから、厚生省自体のためにも明確にしておいてもらいたい。
  75. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 医薬品行政に関しまする私の考え方をこの機会に申し上げておきたいと思うのであります。  先ほど薬務局長からお話を申し上げましたように、近年薬品工業の非常な成長発展に伴いまして、四千百億というぐあいに大きな生産をあげるようになってまいったのであります。化学工業の中でも、この医薬品工業が占める比重というものは非常に大きいものがあると私は思うのであります。  また、政府におきましては、御承知のように、ほとんどの医薬品につきまして自由化を行なっておるのであります。したがいまして、製薬業界におきましては、国内的にのみならず、国際的にも公正な競争ということが行なわれておるわけでありまして、私どもは、今後、こういうような正しい競争の中に適正な価格というものが形成されるように、こういうことを期待いたしておるわけであります。統制経済でございませんから、それぞれの企業に、経営の中にまで入ってあれこれ規制をする、あるいは統制をするということはいたさぬのでございますけれども、国内的、国際的な競争を通じて適正な価格が形成されるように、こういうことを私ども期待をいたしておるのであります。  ただ、そのために誇大な宣伝、過度な宣伝、広告というようなことが行なわれておりますことは、御指摘のとおりであります。そういう宣伝、広告等に三百三十億とか、三百億をこえるようなばく大な経費が使われる。それが消費者である国民の薬の値段の中に、やはり負担として価格の上に乗せられるわけでありますから、こういう面につきましては、もとより薬事法上誇大広告というようなことを禁じておるのでありますが、それに触れるものについては厳正にやっております。その他の医薬品と大衆薬とをできるだけ分離をいたしまして、そうして、医薬品につきましては医療機関で使われることでありますから、過度の広告等をする必要がないということで、そういう医薬品につきましては、業界においても広告、宣伝等を極力自粛しておる、こういうことだと私は承知をいたしております。大衆薬等におきましては、なお宣伝、広告等が相当行なわれておることは事実でございますけれども、製薬業界あるいは販売業界等に対して、国会の当委員会あるいは予算委員会等で、委員各位から国民の名において表明される薬等の誇大宣伝等に対する非常な自粛の警告があります。私は、こういうことを製薬業界等におかれましても十分耳を傾けて、自粛をしてやっていただいておるものと思うのでございます。一部の方々からは、厚生省は少し権力的に広告の規制、統制を業界に強要しておるではないかというような御批判があるそうでございますけれども、決して薬事法ののりを越えておりませんが、業界の自粛を期待しておるということは事実であるわけでございます。私は、そういう面に使う費用は、これを新薬の開発研究にできるだけ多くの費用を向けてもらいまして、今後わが国でほんとうに効果のあるりっぱな新薬が開発をされ、国内の医療事情に応ずるのみならず、国際的にもこれが海外に進出をする——全体の状況を見ておりますと、わずか二%程度の輸出しかなされていない、こういうことは、日本の製薬技術が非常に開発がおくれておって外国の特許等に依存しておる、こういう姿は一日も早く脱却すべきものだ、そういう意味合いからいって、私は、広告、宣伝等は、適当なものはけっこうでございましょうけれども、過度にわたってそういうものがなされることなしに、むしろ研究開発のほうにそういう費用を多く使ってもらいたい、こういうことで私は業界の指導に当たっておるつもりでございます。  なおまた、薬の流通過程におきまして、あるいは要指示薬であるとか、あるいは劇薬であるとかいうような薬が、いろいろ消費者に渡る段階において適正を欠くというような面もありまして、そうして薬による副作用、事故等もあるようでありますが、こういう面につきましても、今後流通の面、販売の面、あるいは使用にあたっての面におきましてなお一そうの努力を要するんじゃないか、かように考えておるのであります。  私は、薬務行政に関しまして平素私が考えております点を率直にお話し申し上げた次第でございます。
  76. 長谷川保

    長谷川(保)委員 もう一つ、製薬会社と厚生省との関係について。
  77. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は、就任いたしましてから十カ月余りになりますが、さようなことはないものと確信をいたしております。
  78. 長谷川保

    長谷川(保)委員 私もぜひそういうことにしてもらいたい。ところが、いまのお話の中でも二つなかなかむずかしい問題があるのです。一つは、企業と広告の関係です。これはなかなかむずかしい問題があるわけです。ただ広告量が多いからといって、必ずしも不当だとばかりは言えません。要するに、多量販売をするという立場から、まあどちらが合理化であるかということはなかなかむずかしい問題をはらんでおります。しかし、私は、どうもこの医薬品の広告は少し度が過ぎておるというように常識的に考えておる。まあ、この医業ということの実態からいたしまして、どうしてもサンプルというようなものがある程度診療所、病院等に送られなければ、それを使っていくという体制ができないでありましょうから、これもまた必ずしも全部否定することはできない。けれども、いまのお話で、サンプルのほうだけでも二百億円からという勘定になるわけです。むだも相当にあるのではないか。過度のそういうものもあるのではないかということが一つであります。  もう一つは、やはりどうしてもこういう企業と役人の結びつきというもの、ことに製薬会社などは、私も病院を経営していてわかりますけれども、医局を非常にねらってくるわけです。何とかかんとか言いながらプレゼントを持ってくる。それは全部うちの買い入れるものに入ってしまうぞ、私はきびしく言うのでありますけれども、ずいぶん露骨であります。したがいまして、そういう面で、私は厚生省にもとかくくされ縁がつくと思う。くされ縁がつくだけならいいけれども、そのことが医療給付の中の四〇%にも及びまするもの、それをチェックすることができないというようなことになりますれば、これはたいへんなことでございます。わずかのくされ縁が、日本健康保険医療給付その他の医療給付、総医療費一兆三千億というようなものに対して、これをチェックすることができなくなるということになりますと、われわれが幾らここで議論しても、騒いでも、それは末梢のほうだけやっているのであって、一番根本、根源を正すことができないという形になりますから、どうかひとつ厚生省当局におかれてもこのことの重大さ、重要さをお考えいただいて、あくまでそういう点についてはきれいにしてもらいたいと思う。私は決算委員もしているわけでありますけれども、こういう問題についてもなかなか突っ込んでいけないのです。突っ込んでいけない事情があります。なかなか製薬企業等にも突っ込んでいけないという点があるわけでありまして、社会労働委員としても決算委員としましても、そういう問題をどこから一体突っ込んでいくかということ、具体的にはなかなかつかめないのです。でありますから、どうかひとつ非常に、大きな、総医療費の中の大きな割合を占めまするところの医薬のこういうものに対して、われわれ幾ら騒いでも、末梢のほうだけやっていてもしようがない。その根本がつかめなければならない。その根本をつかむのに適正薬価というものを考えなければならぬのでありますけれども、それがもう何年もやっておりますけれども、少しも進まない。進まないということは、先ほどのような人の口に戸をたてられないような、えげつないうわさが出てくるということになるわけです。しかし、もし事実がそういうことであるとすれば、これは私どもが、ここできよう一日、病後のからだを押してこうやって議論をしておることは全く末梢のことをやっているだけであって、私は全く道化役者にしかすぎないということになってしまうのでありますから、どうかひとつ厚生省はこの点をあくまでもきれいにして、大臣はひとつ役人を督励し、この薬価が正しいか正しくないかということに手を入れてもらいたいと思う。これは私ども、ここでもうすでに数年間やっています。数年間やっておりますけれども、一歩も前進しない。およそわれわれの関係している行政の中で一番進まないのが適正薬価の問題、全然製薬会社はいじれない。うわさでありますから何とも申しかねますが、事実は確かに、製薬会社の記事は途中でとまってしまった。記者がどうなったかということは、うわさでありますから私は追及しておりませんから何とも言えませんけれども、数年前にそういうような事態があった。しかし、ここも手を入れなければならぬ急所です。この正しい医療費の問題を解決していく、したがってまた、今日われわれの議題としております健康保険の料率をさらにふやして上げ、あるいはまた、今後出てくるであろうと考えられ、予想されております一部負担の問題その他、これを適正化するところの一つのキーポイントです。でありますから、この問題について、厚生大臣が局長以下を督励して、この医薬品の適正であるかどうかということをひとつ十分に検討してもらう。それから後に、本来ならば保険料率の引き上げその他をすべきです。保険料率を引き上げて、今度得られます健康保険の収入と、薬品の適正価格というものを追及していって浮いてくるところのものとをはかりにかけたら、そのほうが大きいだろうと思うのです。いま広告料だけでも三百億、プロパーのサンプルだけでも二百億というものだけを考えましても、常識として考えられるのであります。でありますから、大臣はこの問題にも取っ組んでもらいたいと思のですが、その御決意いかがでしょう。
  79. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 先ほど薬務行政につきましての私の基本的な考え方を率直にお話を申し上げたのでありますが、長谷川さんのお考えと私の考えには何らの相違がございません。私も、この医薬品が医療保険の今後の改善を要する一つの大きなポイントである、重要な課題である、このように考えておりますので、真剣に取っ組んでまいる所存であります。
  80. 長谷川保

    長谷川(保)委員 もし製薬会社にこのような利益配当その他内部留保等を許すということであれば、同様に、国民の医療に携わっております医療機関にもこれを当然許すべきであって、先ほど来お話しのような赤字の病院が非常に多数ある。三分の一もある。国立病院という公的医療機関を見ましても、三分の一もあるというようなことに置いておきますことは、きわめて片手落ちのことである。同じ国民生命を大事にする、健康を守る、国民のしあわせの根本をなします生命を扱う事業が、一方は十分な利益がある、一般の製造会社よりも大きな利益がある、一方はそれが赤字である、こういうような事態を許しておくべきではない。先日滝井委員の御質問におきましても、単純再生産と拡大再生産のお話がありました。拡大再生産どころではない、赤字である。こういうようなことはきわめて片手落ちであって、厚生行政としては深く反省していかなければならぬと思うんですよ。そういうことをして、なお健康保険関係の収支というもののバランスをどうやって正していくかという問題に入っていかなければならぬと思うのです。この点は、大臣はどうお考えになりましょうか。
  81. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 医師に対する診療報酬、あるいに医療機関に対する診療報酬をどういうぐあいに適正なものにするかという問題は、今後、制度の抜本的な改正をする場合の一つの大きな柱であるわけであります。私は、一方におきまして各種医療保険制度の総合調整、あるいは将来一本化へのいろいろな具体的な検討をいたしますと同時に、診療報酬体系を適正化する、ことに物と技術を分離をし、そして技術を正当に評価をする、そういうことで健全な診療機関の経営あるいは医業の経営というものを確立し、それを基盤にして正しい医療給付が確保されるようにする必要があるという考えを持っております。そういう意味合いで、今後、診療報酬体系の適正化にあたりましては、そういう考えで臨んでいきたいと考えております。
  82. 長谷川保

    長谷川(保)委員 私はなお、おそらく五、六時間質問をしなければならぬ問題がこの健保問題だけであるわけでございますけれども、すでに長時間にわたって御質問申し上げましたし、このあと同僚淡谷委員が御質問なさるそうでありますから、次の適当な機会に残余の質問を譲りまして、きょうの私の質問はこれで終わります。(拍手)
  83. 田中正巳

    田中委員長 淡谷悠藏君。
  84. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 厚生大臣にお伺いしたいのでありますが、健康保険法などのたてまえは、国民の健康管理、特に病気がかなり重くなってから医者にかかるよりは早くかかったほうがいい、そのためにさまざまな保護の措置をとるというのがたてまえでございましょうが、ほんとうのところが、病気をなおすというより、病気にかかる前に押えるのが一番いい。その予防医学の面が進んでいない状態ですが、健康保険はかなり苦しい経営の中で、今度はまた料金が値上げになるというのですが、この料金を幾ら値上げしましても、次から次へと病人がふえるようでは、今度の改正の理由が全然ないと思うのです。病気のふえる原因につきましては、最近のようにさまざまな公害が出てきまして、たとえば排気ガスの問題だとか、さまざまありますが、こういう環境の整備についてもひとつ配慮をしませんと、幾ら病気をなおしてやってもどんどん病人がふえるといったような矛盾が起こるだろうと思うのですけれども、この公害に対して、大臣のお考えは一体どうでございましょうか。
  85. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 御指摘のとおり、近年産業公害も相当激化してきております。また、大気の汚染、水質の汚濁、また自動車等における排気ガスによる汚染度も非常に強くなってきております。また、騒音でありますとか、そういうわれわれの生活環境を害するところの公害が、御指摘のとおり非常に激化しておるわけであります。私は、そういう意味合いからいたしまして、昨年の十月、公害防止事業団の発足を機会に、また行政面におきましては公害防止の審議会を設置いたしまして、そして公害問題について政府としても民間の知のうを動員して対策を強化してまいりたい。また近年は農薬の被害、水銀剤、こういう問題も一日も早く触決をしなければならない、放置できないような段階にきているわけでありまして、淡谷さんの御指摘になりましたように、国民の命を守る、健康を守るという観点から、私はこの公害問題と真剣に取っ組んでいきたい。あるいは産業の立場において、あるいは交通の立場において、いろいろな行政の分野からはそれぞれ御議論はあると思います。しかし私は、この公害問題につきましては、国民の健康を守るという立場、こういう立場で公害問題とは取っ組んでいくべきもの、こういう基本的な考えを持っております。   〔委員長退席、齋藤委員長代理着席〕
  86. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 いろいろ公害がございますが、私はきょうは、この間小林進議員によってここで取り上げられました農薬の被害について、さらに伺っておきたいと思うのであります。  あの当時の御答弁では、現在もう、米の中に含んでいる水銀剤の溶度というものは、人の命を保っていくための許容量を越えておるという事例が明らかにされた。こういう事実があるのに、なぜすぐにこの危険な水銀剤の禁止ができないのか。これは非常にはっきりしているのですね。アメリカではすでに禁止している。日本では、害が明らかになって、その米を食べたら人の健康が著しくそこなわれることがわかっているにかかわらず、なぜこの有害な農薬の使用を禁止することができないか、私はふしぎにたえない。その点についての大臣のお考えをお聞きしたい。
  87. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 農薬の中で、特定毒物あるいは毒物を含んでいるところの農薬、それから低毒性の農薬、こうあるわけでありますが、昭和三十五年当時におきましては、この低毒性の農薬と毒性の高い農薬とは、生産量におきましても大体半々ぐらいを占めておったようでございます。政府におきましても、できるだけ早く低毒性の農薬の開発を促進して、そして毒性のある農薬と置きかえていくというような方向で今日まで研究開発を進め、また業界を指導してまいったのでありますが、その結果、昭和三十九年度におきましては、低毒性の農薬が大体七割程度を占めるようになってきておるのでございます。しかしながら、淡谷さんがいま御指摘になりましたように、いもち病等の駆除のために水銀剤農薬をいまだに使っておる。これにかわるところの有効な、また農民の負担にたえるような適正な価格の農薬が、遺憾ながらいまのところまだ十分開発をされていない、こういう問題が一面あるわけでございます。この水銀剤等の農薬の残留量の問題につきましては、昭和三十九年ごろから厚生省におきましても各種農産物につきまして研究を続けてきたのでありますが、ようやくその研究調査の結果のデータがだんだんそろってまいっておるのであります。私はできるだけ早い機会に、この残留量の規制の問題につきまして早く結論を出して、農薬による人体への影響を未然に防止できるよう、またそれと同時に、低毒性の農薬を早く開発し、また生産をして、水銀性農薬等を使わなくてもいもち病が克服できるように、そういうような対策を、農林省、通産省とも緊密に連絡をとりましてこれを推進してまいりたい、こう考えておるわけでございます。
  88. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 いもち病のために水銀剤が非常に有効なことは私も知っていますが、しかし、稲を育てるのは、食べられる米をつくりたいから稲を育てる。幾らいもち病がなくなって米がたくさんとれましても、この米が食糧よりも毒になるといったようなものは無意味だと思うのです。何かそこに、とめられない特別な理由があるのじゃないですか。これは三十九年から水銀剤が入ったというのですが、仮谷政務次官にひとつうんちくを傾けてもらって、水銀剤の入ってきた経過、いつから使用されているか、これについて農林省としてのお考えをお聞きしたい。
  89. 仮谷忠男

    ○仮谷政府委員 詳細な問題はひとつ参事官から答弁させますから……。
  90. 河原卯太郎

    ○河原説明員 水銀農薬は二十七、八年ごろから使用されております。それで、だんだん使用量がふえてきておるわけでございます。ただいま先生指摘のように、いもち病にとりましては非常に特効薬的に効果があるということで、非常に広がってきております。
  91. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 私がお聞きしたいのは、水銀剤の入る前のいもちの発生にはどういう薬を用いたか。それから、水銀剤が入る前に、有機燐剤が別なほうで入っていますね。したがって、水銀剤は病気のために使う量が多いか、あるいは害虫駆除のために使う量が多いのか。有機燐済等は一体どうなのか。本来言いますと、終戦後の産物なんですね。終戦前はこういう特効薬が入ってこない。特効薬と称して水銀剤、有機燐剤を入れまして、それが人体に非常に大きな影響を与えるということになれば、入ってきた意図が私にはわからない。これはこの間の御答弁では、くだものにはあまり吸収量がない、こういうのです。くだものの場合は、食べて毒にならなくてもかけて毒になります。あの広い果樹園に振りかける、それで通った者はみんな害を受けている実情なんです。特にひどいのは、毒物に対するはっきりした認識を与えないために、管理の面で命を落とす者がたいへん多い、簡単に手に入りますから自殺者もふえる。こういったような影響が一体何年ごろから始まっているか、その前の事情とあわせて、日本農業の病害虫駆除における水銀剤と有機燐剤との持っている意義を解明していただきたいと思います。
  92. 河原卯太郎

    ○河原説明員 御承知のように、水銀剤が入ります前のいもち病防除としましては、大体合成剤とボルドー液、これは御承知のように、水銀剤に比べますと毒性がないだけに、いもち病に対する効果という点では、数十回もかけなければならぬというような状況でこざいましたのが、有機合成農薬が開発されましてから非常に効果が高くなるということで、合成剤はほとんど使われなくなりました。水銀剤は病害防除の農薬でございますけれども、殺虫剤としては使っておりません。一方、御指摘の有機燐剤の殺虫剤のほうでございますが、殺菌剤でございませんのでいもち病には使いません。
  93. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 これは今後の病虫害の駆除に対する農林省の基本的な方針に関する問題ですから、病害の駆除と虫の駆除、これは同じ農薬でもはっきり分かれております。一番苦労されておるのはどっちのほうですか。虫のほうですか、病気のほうですか。
  94. 河原卯太郎

    ○河原説明員 稲の一番大きな病害はいもち病でございます。害虫は二化メイ虫でございます。局部的に、あるいは年によりましてウンカのようなものが異常発生いたしまして、非常に被害を及ぼすことが。ございますが、最近は、これもマラソン剤といったようなものによりまして、ウンカの被害は近年ほとんどございません。ただ、二化メイ虫の被害は依然ございまして、二化メイ虫に対して有機燐剤が特効薬的に非常にきくというようなことで使用されておるわけでございます。
  95. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 虫を殺す場合には有機燐剤という毒性の強いものがきく、病気の場合には水銀剤がきく、この人体に影響を与える二つの薬が、現在使用されているのですか、いないのですか。これは非常に重大な問題ですが、果樹の場合も有機燐剤は入っております。果樹の場合は、むしろ、水銀剤も入っておりますが、有機燐剤が相当多い。この二つの薬品というものは、将来ともに使用していいのか悪いのか。私ははっきり悪いと思う。少なくとも生産したものが人体に害を与え、生産の過程で人体に害を与えるものなら、何らか早く別の駆除剤に転換する必要があると思いますが、その方針なり御研究がありましたらお聞かせ願いたいと思います。
  96. 河原卯太郎

    ○河原説明員 水銀の許容限度等につきましては、厚生省と連絡いたしながらいろいろ御検討いただいておりまして、それで、それがわかりますれば、こちらといたしましては行政上の何らかの措置を考えていきたい。ただ、水銀の農薬にいたしましても、たとえばいもちで葉いもち病の防除に使いました場合には、玄米に対する残留毒性というものは非常に減っております。ただ、出穂後穂首いもち病の防除に使いました場合には、相当玄米に水銀剤が移行するということがわかっておるわけでございますので、それがはっきりいたしますまでの間におきましての指導といたしましては、穂首いもち病の防除にはできるだけ水銀農薬は使わせないといったような方法で指導してまいりたい。  それからもう一方、これは低毒性農薬なりあるいは非水銀糸の農薬の開発もだんだん進んでまいっております。昨年の実績で申しますと、まだ量的には五%くらいでございますけれども、たとえば抗性物質剤とか塩素剤とかいったようなものの開発が進んでまいりまして、これが水銀農薬にかわりまして、いもち病防除に使われるという見込みが立ったわけでございます。できるだけその使用量をふやしまして、たとえば穂首いもち病のような非常に危険のある場合には、そういうふうな非水銀糸の農薬を使わせるといったように指導してまいりまして、玄米の中の残留毒性がないように配慮していきたい、かように考えております。
  97. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 少し農林省、のんきじゃないですか。この間の小林質問を速記録で、ごらんになればわかりますけれども厚生省のほうでは有害であるときめているのですよ。現在のままでいくならば、米の中に入っておる水銀は人体に危険があると見ておる。しかもいまは何月です。三月です。これから最も農薬を使用する時期なんですよ。いまこれをとめませんと、ことし生産する米が全部そういう毒米になってしまう。もう研究の段階ではないと思うのです。  この水銀剤というものは、最初日本に来た場合は一体どこの製品でしたか。
  98. 河原卯太郎

    ○河原説明員 ドイツでございます。
  99. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 そのバイエルンの水銀剤がだんだん国産されているのでしょう。その入って使わせるときに、もっとはっきりした研究が必要だった。きくから使うというのだけれども、人間の病気にきくからといって飲ましてみたら、病気はなおったが人間は死んだということになったらどうなりますか。いもちはなおったけれども、とった米は毒のために食えないといったような実情——使っていいか悪いかは、はっきりしているじゃないですか。特に園芸局長お見えになりましたからお聞きしたいのですが、果樹における有機燐剤を禁止している県も相当あります。おわかりだったら、その数並びに県をお知らせ願いたいと思います。
  100. 小林誠一

    ○小林(誠)政府委員 その県の数につきましては、存じ上げておりません。いまここへ持っておりません。
  101. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 私、聞こえませんからもう一ぺん。
  102. 小林誠一

    ○小林(誠)政府委員 資料を持ち合わせておりません。
  103. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 この間の質問でぼくは非常に遺憾に思ったのは、厚生省が禁止したことも、農林省は製薬会社の手前とめないのじゃないか、こういう質問さえ出たのですよ。いわばその農産物に対しては、農薬の被害については厚生省が従ですよ。むしろ直接指導するのは農林省でしょう。もうすでに、数県においては有機燐剤の危険性を考えて禁止していますよ。私の青森県なんかもそうです。もう自発的にとめておる。こういう点について、農林省はもう少し緊急の事態として、この農薬問題に取っ組む意思があるのかないのか。これはひとつ次官から御答弁願いたい。本来ならば私は大臣から御答弁願いたいのですが、大臣以上の仮谷次官がお見えでございますから、ぜひお聞きしたい。
  104. 仮谷忠男

    ○仮谷政府委員 この問題は、議会でも先般来たいへん論議を重ねておる問題で、私どもも真剣に、しかも早急に取り組んで善処しなければならぬという考え方を持っております。率直に申し上げまして、私は、政務次官になった当時、すでに水銀剤問題について農民もいろいろ不安を持っておるのだから、これに対して何らかの対策を今後立てておくべきであるということを実は省内でも申したことがありまして、そういうことから関連をいたしまして、いわゆる低毒性の農薬というものの研究も、全力をあげて努力をするということで進めてまいったわけでありますが、いまそういったものも出ておりますけれども、ただ量産の場合、いろいろ資金の問題とか設備の問題とか、直ちに間に合わないということはまことに残念でございますが、しかし、でき得るならば早急にこういう代替品をつくって、そうして、少しでも農民あるいは一般消費者に不安を抱かせないようにすることは当然のことでありまして、私どもは、決して人命軽視で水銀剤をうやむやに使っておるという考え方ではございません。ただ、いまの場合、直ちにこれを禁止してしまうということはいろいろ農業生産上にも支障を来たしますので、現段階においてはできるだけ使用を制限するという程度で、農薬の低毒性のものを早急に進めて、一日も早く御期待に沿えるような努力をしなければならない。積極的な考え方のもとに努力をしていきたい、こういうように考えております。
  105. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 仮谷次官は非常に新進気鋭の次官で、あなたがただ漫然と日を過ごしていると私は申しませんが、有機燐剤の危険について私が警告申し上げましたのは六年前なんです。あるいは七年前だったかもしれません。当時の農林水産委員会の速記録を調べてみますと、有機燐剤の害について事こまかに申し上げたはずです。その場合に農林省は、検討いたしますと言っておるのです。今度は水銀剤を新しく使う。この水銀剤がまた有機燐剤以上の害を及ぼす。国会で答弁したことが何年たっても実現しないというところに、今日の国民政治の不信がある。もう耐え切れないで、各県は自発的にこれを禁止しておるのです。ただし一方、安い、しかも特効のある水銀剤を売り出す、あるいは有機燐剤を売り出しておりましたならば、これは大体三分の一ぐらいで薬効が出ますから、当然いまの時代では安い農薬を使います。自分たちが食べるものは使わなくても、あとは平気で使うという悲しい現象がある。そこにやはり農政指導面の重大さがあると思うのです。  園芸局長、お聞きしますが、この有機燐剤が入ってから、日本の果樹の害虫状態に非常に変化が起こっておりますが、お調べになったことがありますか。
  106. 小林誠一

    ○小林(誠)政府委員 詳しいことは調べたこともございませんので、その点については申し上げられません。
  107. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 人がかわるたびにそう全然知らないじゃ、私は幾ら議論してもむだだと思うのです。非常に強い有機燐剤が入った場合、新しい害虫がそれに応じてまた出てきているのです。従来の害虫は死にましても、また別な害虫が出てくる。これはうそみたいですが、ほんとうなんです。  私は青森県ですから果樹について申し上げますと、あのホリドールその他は何に使ったかというと、これはアカダニ駆除のために使っています。アカダニというのは、DDTが入るまではそんなに繁殖しなかった虫なんです。DDTを使って他の害虫を駆除した場合に、このアカダニは発生してきている。調べてみますと、アカダニの中に寄生するごく小さなカブトムシも全部殺してしまうほどDDTは強かった。天敵はなくなっているが、アカダニはそのために非常にふえてきている。このアカダニをなくするためにだけホリドールはおそらく使われている。そこに、この防虫あるいは病害駆除につきましても、あまりに手っとり早く、安く、猛毒のある薬を使う前に、何とか方針をかえて考えたらどうかということを私は前に警告申し上げた。ことしは、幸いに、農業白書なんかを見ますと、天敵に対する研究の費用を若干組んでいるようです。園芸局長、この天敵に対する研究はそろそろ進んでいるのじゃないですか。あの農業白書をあなたは御存じないのですか。
  108. 小林誠一

    ○小林(誠)政府委員 実は果樹の天敵に関する研究につきまして、私まだ存じ上げておりません。
  109. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 園芸局は何をする役所ですか。私はやはり果樹を主体とした、しかも生長部門である果樹の生産を主としてやるところが園芸局だと思っていますが、農政局長、これはあまり園芸局をあなたは見てあげてないのです。人もいないし、予算もつけないし、一体看板だけあればそれで済むという考え方なんですか。
  110. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 ただいまホリドールについてのお話がございましたが、先生承知のように、昭和三十五年ごろには全体の農薬の使用量の中で一七、八%を占めておったと思いますが、いろいろ毒性が強いというようなこともございまして、低毒性の農薬の開発を進めまして、三十九年では、全体の農薬使用量のうちの六%くらいに減少いたしておるわけでございます。なお、今後とも低毒性の農薬の開発につとめまして、毒性の高い農薬は逐次使用を低いものに切りかえていくように、先ほど政務次官からもお答えがありましたように努力をしてまいりたいと思います。あわせて、昭和三十六年に厚生省と農林省との共同通牒を出しまして、特にホリドール等の毒性の高い特定毒物につきましては、収穫前三週間ないし五週間使用を禁止するような措置もとりまして、食べるものへの毒性の残留については、十分留意はいたしておるつもりであります。  いまの天敵等につきましては、技術会議の試験研究の所管であろうと思いますので、私も詳細はよく存じませんけれども、全体としては、農薬が逆に天敵をも殺してしまうというような例もないではないことは御指摘のとおりかと思いますが、いずれにいたしましても虫なりあるいはばい菌なりを殺すわけでございますから、水をかけるというようなわけにはまいりませんし、相当の毒性を持った薬でなければ効果がないと思いますが、お話しのような点も今後考慮しながら、技術会議あるいは科学技術庁とも打ち合わせをいたしまして、低毒性の農薬の開発には積極的に努力をいたしたいというふうに思っております。  特に本年、水銀剤についていろいろ問題がございますので、水銀剤の使用を、でき得れば本年は葉いもち等の成育の初期の段階に使用をいたしまして、それで、穂首とかあるいは技梗いもちというような成育の後期の段階には、水銀剤ではない低毒性の農薬が使えるような方向で、本年はとりあえず指導し、さらに進んでは、会社の設備の増設等について、金融制度その他を活用いたしまして、低毒性の農薬になるべく早く切りかえられますように、行政指導も進めてまいるように考えておる次第でございます。
  111. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 どうも私、その御認識、少し不足なんじゃないかと思うのですがね。毒性の高いホリドールが一七%使われたということ自体が、これは非常に大事なことなんです。しかもくだものをとる前にとめておるからいいとか、そういうことは、私はあまりに知らな過ぎると思う。これは次官もよくお聞き願いたいのですけれども、一体アメリカあたりの農場と日本の農場とはてんで違っているでしょう。住宅を離れた山の中で、多少毒性の強い薬を散布しましても、直接収穫物に影響がなければそれでよろしい。果樹地帯におけるホリドール使用の状況をよく見てごらんなさい。散布するときは、ちゃんと赤いきれをつけて、立ち寄るべからずというのです。そこに入らなければいいんです。入っただけで参りますから、それはいいけれども、両方の果樹園から技が伸びて、道路をおおっている赤い札をさげた技の下を平気で人が歩いているじゃないですか。これが一体禁止になりますか。くだものを食ったときの毒性だけじゃなくて、散布による毒性というものが非常に強いのです。これからそろそろ禁止をするなんて言いますけれども、禁止をするならいまですよ。ただ、いまになってくればむしろおそいんです。使用期に入りますから、農薬会社がたくさんつくっているでしょう。いま押えるのと秋押えるのでは、農薬会社の利益にはたいへん影響があるのです。農薬会社の利益と人体の危険とどっちを一体重大に考えるか、あえて言うまでもないことです。これは私、もう少し真剣に、この水銀あるいは有機燐剤の人体に及ぼす影響については、農林省本気になってやってもらいたい。現在有機燐剤は、舶来のもの、つまり輸入したものよりも国内でつくっているものが多いと思いますが、その比率はどうですか。
  112. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 詳細具体的な指数はちょっとお待ちをいただきたいと思いますが、大体ほとんど国内産だけで、輸入は非常に微々たるものだというふうに理解をしております。
  113. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 この有機燐剤で、なお使用されております薬品の、これは学名は要りませんが、市場に出ている場合の名前はどういうものです。これは明らかに人体に害を与えるような有機物です。
  114. 安尾俊

    ○安尾説明員 ただいまおっしゃいましたのは、ホリドール、パラチオン、それから最近低毒性のスミチオン、EPN、そういうたくさんの品目がございます。
  115. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 製造会社はどこですか。
  116. 安尾俊

    ○安尾説明員 パラチオン剤は、主として住友化学で国産をしておりまして、これがいろいろな商社から名前をつけられて出ております。それからEPNは、日産化学から出て、それぞれ商社系統にわたっております。また一部は外国から入っております。
  117. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 これは大体、「年の使用量はどれぐらいですか。
  118. 安尾俊

    ○安尾説明員 申し上げます。  パラチオンの粉剤として七千五百トン、それから乳剤として九百キロリットル、そのほかパラチオンとBHC粉剤、こういう混合剤が六百五十トン、それからEPN粉剤が約一万トンでございます。そのほか、最近特に低毒性の燐剤として使われていますマラソン剤が九千五百トンであります。
  119. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 大臣、いまお聞きのとおりですね。実にばく大な、トンをもって数える薬が有機燐剤だけでも要っています。水銀剤はどうですか。量は全体でどれぐらい要っておりますか。大臣お急ぎのようですから簡単にしますけれども……。
  120. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 昨年度のいもちに使いましたのが十一万トンだったと思います。
  121. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 これぐらいの量の毒物が、日本の畑にあるいはたんぼにまかれておる。そこでとった米が有毒だ。これは会社の利益なんということではなくて、やはり国民の健康上重大な問題として、ひとつ厚生大臣考えを願いたい。農林省もむろんこれは真剣にお考えを願いたい。一方で病人をつくり死人をつくっておいて、一方で健康保険の改良をしてもだめです。これはどっちが先かという問題に対して、十分御認識願いたい。  なお申し上げたいことはありますけれども大臣予算委員会のほうにおいでのようですから、もう一つの問題について、大臣がいらっしゃる間に聞いておきたいことがある。目に見えないところで苦しんでおる人たちの話ですが、例のハンセン氏病の問題であります。このハンセン氏病は、だいぶ治療方法も進み、薬も進みまして、最近は非常にきれいに——と言っては語弊がありますけれども、醜さが減じておるのです。同時に、従来の遺伝病といったようなものから伝染病という観念に変わり、また療治のしかたも、隔離し、いわば社会からも投げ捨てたといったような政策が漸次改まりまして、治療を加え、また社会復帰をさせるというところまできているようだし、また特殊伝染病から一般伝染病にするといったような状態に変わってきているようです。これはたいへんけっこうなことです。このハンセン氏病に対する考え方の変化に伴って療養所の施設なり機構なりがどういうふうに変わったか、この問題をひとつお聞きしたいのです。政策が変わり、治療方法が変わっても、同じようなことじゃ、これは患者がかわいそうです。
  122. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 ハンセン氏病の収容しております患者は、全国で約一万人でございます。そのほか在宅で療養をしておる方が約千人程度、合わせまして一万一千人程度、こういうことであります。そしていま施設に収容されております方もだいぶ快方に向かっておりまして、療養所内で農耕その他の仕事にも従事できる、そういう状態にあるわけであります。したがいまして、今後は療養をしながら更生、授産の仕事に従事できるように、また社会復帰に備えましてリハビリテーションその他の施設も今後強化いたしまして、社会への復帰に備えての諸施策を進めてまいりたい、かように考えております。
  123. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 大臣予算委員会のほうへ呼ばれているようですから、要項だけひとつお聞きしますけれども一つの問題は、患者が数もだんだん少なくなってくるようだし、特定のところに場所を限っているものですから、外部からしないで内部でいろいろ治療をやっていますね。この治療をやるのに、看護婦とかあるいはお医者さんとかでなくて、患者同士やらしているところもまだ相当にあります。しかも看護のために非常に安い賃金でやっているという例が、まだ相当にありますね。それから、いろいろ援護の方法なんかもやっているようですが、あまり低額です。この間、私は偶然な機会から患者自体が書いた論文を読みました。これによりますと、実に読むにたえないような悲惨な状態がいまでもある。御承知のとおり、あの病気は手の指が麻痛します。これはまことにびろうな話ですが、一番困るのは、便所に入ったときだそうです。一体ふいているのかふいていないのかわからぬ。そのために紙を何枚も何枚も使って、どうなっているかわからぬぐらいということまで、これは正直に書いている。しかも、なおよくとれない。そのために、しょっちゅうべたべたするのが不愉快で、何よりもふろへ入るのが楽しみなんだが、そのふろも一週間に一回しか入れない。これはこの人たちの切実な訴えなんですね。あと一息で、こういう人たちもだんだんいろいろな外部からの遮断された形もなくなるでしょうし、社会復帰の日もあるでしょうけれども、そこらまでひとつ、苦労の経験の豊富な鈴木厚生大臣ですから、そういうところまで手の届くような施策をやっていただきたい。それから同時に、この病気の因果なことには、なおっても後遺症が残る。病気はなおってもかたわは残る。したがって、長い間の社会の一つの慣習によって、社会復帰をしましてもそれはきらわれるのです。一たん出てみても、やっぱり帰ったほうがいいと帰ります。したがって、あの病気の本質や今後の社会復帰に備えて、この際、人数は少ないのですから、格段な予算も必要はないと思いますが、そういう行き届いた御配慮を願いたいと思うのですが、その点はいかがでございますか。
  124. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は先般沖繩に参りました際に、ハンセン氏病の方々の病院にお見舞いに総理にかわりまして参ったのでありますが、短時間で、親しく患者の人たちの御要望なり意見なりを聞くことができなかった。先般衆議院の予算委員会の分科会で山花さんからも、ぜひ一ぺん施設を見て、そうしてはだでもってこの方々の生活に触れてもらいたい、また要望を聞いてもらいたい、こういうお話がございまして、私も、予算が上がりますればできるだけ早い機会に東京近郊のそういう施設を見て、そうしてその方々のなまの御要望なり御意見も聞きまして、いま淡谷さんが御提案になりましたような問題につきましても十分検討してまいりたい、こう考えております。
  125. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 これはもうなかなか訴えることにも機会のない人々でございますから、その点は進んでやはりお世話を願いたいと思います。また、この養護——養護よりは看護ですがね、これなども、不自由な患者同士がやっているということは、相当困った問題が起こっているのです。どうぞ十分御配慮を願いたいと思います。  なお、この問題で私、一つひっかかっているのがあるのですが、いまの毒薬の問題じゃありませんけれども、去年私、この委員会で質問しました軍人恩給の問題なんです。病気が出る前に軍隊へ入っておった人が、戦争から帰ってきてから発病しまして、それから遺族年金などの申請をしたのですが、去年で大体三、四年たっておって、まだ切りがついていない。だんだんこれを聞いてみますと、それはハンセン氏病の場合は十分その対象になるから、手続から漏れるはずはないというのですがね。どうもこれはまだ解決がついていない。これは援護局なりあるいは恩給局なりでどうなっているのか。名前をはっきり申し上げますが、中田常蔵という人であります。
  126. 実本博次

    ○実本政府委員 いまお尋ねの件、確かに昨年の三月の委員会で承ったわけでありますが、これは遺族年金ということで援護局のほうからいろいろお答え申し上げたわけでございますが、その後よく調べてみますと、これは軍人恩給の請求になっておりまして、恩給局のほうに私のほうから連絡を申し上げておりまして、その後の関係につきましては、いま恩給局長見えておられますから、恩給局長から……。
  127. 矢倉一郎

    ○矢倉政府委員 ただいまの件についてお答え申し上げます。  確かに昨年の委員会で先生からの御質問がございまして、中田さんの傷病恩給につきましてどういうふうな処置になっているかというお尋ねでございました。この件につきましては、御承知かと存じますが、一応傷病恩給の請求がございまして、そうしてその実態が、いわゆる軍を退職されてからかなり長期になりましてハンセン氏病が治療されましたので、したがって、この件については、御承知のように、傷病恩給は公務による相当因果関係ということが一つの課題でございますので、この相当因果関係があるかどうかということについての判断が、結局その公務との因果関係が明確に認められないということでひとまず棄却されたわけでございます。その後具申をされまして、その具申に対してもさらに棄却になりまして、また再び審査請求の要求が出まして、これにつきましては、本年になりまして、やはりこの審査の要件が認められないということで棄却になっておるのが現状でございます。   〔齋藤委員長代理退席、委員長着席〕
  128. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 棄却になったのは何日ですか。
  129. 矢倉一郎

    ○矢倉政府委員 本年の二月でございます。
  130. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 これは去年の三月三十一日の速記録を持ってきておりますが、本人からまだ棄却になったとは言ってきておりません。早く進めてくれと言っております。また恩給局のほうでも、私が行ったとき、早くきめよう、これは事情を聞いてみれば理由もあるから、十分審査をいたしますと約束しております。これは公務かどうかということですが、昨年私の質問関連しまして河野委員からのお話でありますが、入隊する場合は、ハンセン氏病の傾向があるとこれは入れないんですね。ですから、軍隊へ入る前はかかっていないことは事実じゃないかということは、確かめられております。潜状期間が十年ないし十五年かかるということは、鈴村政府委員が答えておる。しかも南方その他に非常に多いハンセン氏病患者、感染の可能性が十分あるから、ハンセン氏病の場合はこれは入るんだということをはっきり答えているんですがね。援護局はそういうふうな考えを持って、恩給局が別な結論になるということは、私はどうも納得がいかない。しかも何年かかりましたか、この審査を全部やるのに。あの療養所に入っている手足の不自由な患者が、棄却されても次々と出してくるというこの心情をお察しいただければ、もう少し親切な、受情のある処置をとられていいんじゃないですか。棄却になったことは私は初めて聞きますがね、けしからぬ話だと思う。その点はどうですか。
  131. 矢倉一郎

    ○矢倉政府委員 ただいまの件につきましては、確かに先生のお話のごとく、中田さん個人としては私たちは十分御同情もし、また気の毒だという感じは持っておるわけでございますが、この傷病恩給の請求書は青森県に三十三年に初めて提出されまして、その請求書が厚生省経由の上で昭和三十四年の六月に恩給局に受理されました。これに対しまして、三十五年の五月に公務否認の理由で棄却されておるわけであります。次いで三十五年七月に異議申し立てをされまして、その異議申し立てに対しましては三十五年八月に棄却になっておるというふうな状況で、これの審査につきましては、恩給局としましては、経由庁の関係もございましたが、できるだけこの措置を早めていくということも必要でありますし、また反面、実はハンセン氏病につきまして、どの程度に公務との因果関係を認めていくかという点が、それぞれについて一件一件慎重な審査を要するところでございますので、したがって、再度の審査請求につきましては、恩給局の顧問医の何回もの鑑定を受けつつ、実は最後には恩給審査会の議を経て一応本件のごとく請求が棄却されるというふうな状態に相なったわけでございます。
  132. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 大体申請してから八年ですよ。八年の間、いろいろなところでも問題になり、しかも恩給局自体が言っているじゃないですか。気の毒なことなんだけれども、いまの法令じゃどうもちょっと困るということを言っているでしょう。そういうことならば、法令を変えるのが正しいんじゃないですか。八年間黙って待っておったものをすげなく断わってしまうということは、これはどうですか。去年ここでやった各委員質問、私自身やった質問は全然認められていない。援護局、どうなんですか。あなたは、ハンセン氏病は入ると言ったじゃないですか。ちゃんとあなた方の言ったことが書いてある。ところが恩給局は入らないと言っておる。同じ国家の施設が、ハンセン氏病という特殊な病気に対して、一方は棄却、一方は容認というように百八十度違うということは、一体どういうことになりますか。
  133. 実本博次

    ○実本政府委員 援護局のほうで扱っておりますケースといたしましては軍属の場合が多うございまして、いままで取り扱いました軍属のケースにつきましては、潜伏期間か長いという問題はございますけれども、ケース、ケースによって違うとは思いますか、一応私たちの判定の結果としては、大体認定か行なわれておるといったような状態でございます。ケース、ケースによって違うのではないか、こう考えられます。
  134. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 次官にお伺いをいたします。  いまお聞きのとおり、ケース、ケースで違うそうだけれども、軍属のほうは入るんです。片方は軍人ですよ。しかも気の毒なことに、ハノセノ氏病になって、帰ってきて国立の療養所に入っているのですよ。原因か回しならば、これはこういう違ったケースで処断されるということはおかしいしゃないてすか。どうなります。
  135. 佐々木義武

    ○佐々木(義)政府委員 この問題は、先ほど来説明がございましたように、やはり公務に基づく相当因果関係ありゃなしやという認定の問題でございまして、原則といたしましては、お話しのようにハノセノ氏病の潜伏期間か長いということからいきますれば、これは公務に基づくものでありますれば対象になると思います。しかし、医師のケース ハイ ケースの認定によりまして、それは違うという認定か下った場合には、なかなか判定かむずかしいのじゃなかろうか、こういうふうに考えます。
  136. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 恩給局に伺いますか、いまお聞きのとおり、援護局では、軍属の場合でも、多少の違いかあっても一応ハンセノ氏病は認めると去年も言っておる。中田君の場合、どこか違うのです。ケース・バイ・ケースと言うけれども、軍人ですよ。入ったときには発病してないて、帰ってきてから発病して、国立の療養所か療養を加えているのです。このはっきりした事実かあるのに、どうしてこれは入らぬのですか。
  137. 矢倉一郎

    ○矢倉政府委員 ただいまの先生の御発言でございますが、実は援護局長の答えましたことと恩給局の取り扱い関係は、先生お話しのようなそれほど大きな違いはございませんでして、公務に基づくかどうかということの認定のしかたというものは、軍属の場合にも軍人の場合にも、考え方といたしましては、ケース ハイ ケースと申されておりますのは、結局相当因果関係かあるのかどうかということの認定か、実は一つのケース・バイ・ケースの関係になるのでありまして、したがって、恩給につきまして傷病恩給を給するかどうかという点につきましては、いわゆる戦地てこのハノセノ氏病になられたような場合とか、あるいは退職後比較的早い時期にハンセノ氏病か発病したような場合におきましては、やはり公務性という問題の認定のしかたかかなりはっきりと出てまいるわけてございますか、それかかなり長期になりました場合、先年御指摘のごとく確かにその潜伏期間の長さということか問題ではございますか、一応との程度においてそれの相当因果関係を認めるかということか、認定のしかたになって出てまいることかと考えます。
  138. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 これは一人のことですか、その一人の不幸か非常に深刻なものかあります。特に去年の鈴村政府委員のお答えでは、こういうことをはっきり言っているんです。「ハノセノ氏病について、との程度にこれを公務として扱っておるかという問題でございますか、事変地とか戦地勤務期間か相当長くて、そうして在職中あるいは退職後比較的短い期間に発病しております場合には大体公務的な傷病ということで扱っておる次第であります。」とはっきり言っておる。軍属の場合にそうであるものか、戦地へ行っているときにはハノセノ氏病てはないか、帰ってきたら発病しているものかどうして認められないのか。それでは、戦争そのものは公務じゃないのですか。あれは私の用事なんですか、金もうけなんてすか。あのとき戦争くらい大きな公務はなかったしゃないてすか。いやでもおうても引っぱっていったでしょう。そうして向こうで戦ってきて、帰ってきてハノセノ氏病になった。それが八年間も投げておかれて、おまえは公務性か怪しいなんて、そんな冷酷な話かありますか。
  139. 矢倉一郎

    ○矢倉政府委員 ただいまの先生の御指摘でございますか、われわれも、先ほどお読み上げいただきました鈴村政府委員の答えと回しような判断て、このハノセノ氏病については見ております。ただいま厚生省の側の御意見を伺いましたところか、軍属の場合にもほとんど在職中だそうでございまして、私のほうのこの問題は、すでに退職後、実際にこのハノセノ氏病としての診断は、国立松丘療養所に入所されて昭和二十九年にこの診断を受けられたというふうに出ております。
  140. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 それはしかし、おかしい話ですよ。この病気の性質からいって、初めのうちはなかなかはっきり言わないのです。隠しておくのです。しかも五年ないし十年間の潜伏期間か認められる。ある場合にはもっと長いだろうといわれておる病気か、診断を受けて、それてその診断てそうだときまったときか発病という考え方か一体正しいのですか。また戦争か終わって二十年でしょう。しかも入ってから何年になると思うのですか。申請してからでももう八年しゃないてすか。因給局というものは、あの戦争に引っぱっていかれた人たちの境遇、特にハノセノ氏病という特殊な病気にかかっておる人を、もう少しあたたかい目て見てやる必要はないですか。私は、棄却されたということはいま初めて知りましたよ。これては全く血も涙もない処置と言わざるを得ない。八年間家族は黙って待っている。本人はそれを心配して、中でしょっちゅう気をもんている。しかも八年間です。少しくらい怪しいところかあっても、事情を酌量したら適用していくのかほんとうじゃないてすか。それを、このとおり戦地へ行ったことも確実です。発病したことも確実です。入隊したときはハノセノ氏病でないことはわかっている、このはっきりした事実かあるのに、多少法律がどうだとかこうだとか言っておいてこれを棄却するという態度は、私は少なくとも恩給法というものの基本的な観念とは相当逸脱しておることたとだいいますか、あなたに幾ら言ってもしようがないてしょうから、これはまとめて時を待ってやりますか、私はおさまりません。
  141. 河野正

    ○河野(正)委員 関連。いま局長のお話を聞きますと、診断か確定した日か初めて発病したときだ、こういうふうな認識を与えるような御発言てございました。しかし、たとえばこのハノセノ氏病でなくて、胃カノなら胃カノにしても、長い間疑いでまいる場合もございます。そうして一定の時期に、いよいよこれは胃カノたったというふうな認定なり診断の確定か行なわれる。診断の確定か行なわれたときに初めて発病の時期かというと、必ずしもそうじゃない。ですから、私は、いま淡谷委員と局長との間でいろいろ問答かなされましたか、静かに伺っておって、どうも局長の御発言は非常に非科学的な印象を与える御発言であって、これは淡谷委員も納得できませんか、特に私は医者でございます。医者である私はなおさら納得できない。これは診断か確定したときか発病じゃないのです。少なくとも疑いかあって、そして確定をするということになれは、当然疑いか起こったときから発病なんです。ところが、その診断か確定した日から発病である、それかおくれておるから、これはどうも認定することか、裁定することか疑わしい、こういうことでは全く——それはまあ、その方面にかけては必ずしも淡谷先生は、農政について詳しくはあっても、その方面の権威者であるとは言われぬかもしれぬけれども、しかし、私とも実際科学に携わる立場から聞いておると、これは納得できない。特に恩給裁定というのは、非常に科学性に立却しなければならぬわけです。そういうような四角四面の文章によって、法律によってこれは適用すべきじゃないので、やはりその根底に流れるのは科学性だ。そういう点から見て、どうも局長の御発言はわれわれ納得するわけにまいりません。ですから、そういう認定の根拠というものか、要するに診断の確定した日であるのか、あるいはまた、疑いかあればそれへさかのぼるべきものであるか、この点はやはり明確にしてもらわなければいかぬ。
  142. 矢倉一郎

    ○矢倉政府委員 ただいまの先生の御指摘でございますが、実は私は経過としていま申し上げましたように松丘療養所にお入りになって、そのときに正式にハンセン氏病という認定を受けられたわけでございまして、御本人は、その以前にやけどしたときに痛さを感じなかったというふうなお話がございます。その以前の状態というものが、実は御本人の出された書類だけでは明確ではございませんでした。したがって、その御本人がいっこのハンセン氏病になられたかという点については、現在お出しになっておられます資料だけからは判断が非常にしにくいのでございます。そこで私たちのほうでは、一応認定のしかたといたしまして、戦地において発病された、あるいは退職後比較的早い時期に御発病になったという場合には、これはもう公務という見方をしていくべきだと考えておるわけでございます。したがって、本件のごとく、かなり長期にわたりました点につきましては、われわれのほうでは、裁定庁として恩給局でまず実は明確な感染の経路がはっきりいたしませんので、一応私たちとしては請求を棄却するという裁定をいたしたわけでございますが、この件につきまして、先生の御専門の立場からはいろいろ御意見もおありかと思いますが、われわれのほうも、実は私たちのようないわゆる事務屋だけの判断では決して正当な判断に到達するとは思えませんので、そこで医学的な所見というものを専門医の方々にお願い申し上げますとともに、今日の一応の制度の実態といたしまして、そういった行政庁の判断に誤りというものがかりにあるということになれば、それは当人にとってまことに実は御迷惑なことになりますので、この件につきましては、御承知の、ごとく恩給審査会の議を経るということに相なっておりますので、その恩給審査会の結論が、同じく本件のいわゆるハンセン氏病に関する問題としては公務性が認めがたいという認定に達したわけでございます。
  143. 河野正

    ○河野(正)委員 これは国会の論議ですから、私どもは、いま局長がおっしゃったことに対して疑問を持っておるわけです。しかし、局長としてはそういう疑問に対してはお答えしなければならぬという義務があると思うのです。そこで私どもはその点に対してのお尋ねをしておるわけですが、いまの局長のお話を聞きますと、審査会等に通じても局のほうからそれぞれ資料が出されたと思うのです。その際の資料の出し方にも私は問題があろうと思う。私どもはいま局長の話を聞いて疑問を抱いておるわけですから、そういう疑問を抱くような資料の提出のしかたにも私は問題があろうと思う。中身は私はちょっと承知いたしません。ですけれども、少なくともこの席上での論議の中では、私どもは疑問を持たざるを得ない。というのは、やはり診断が確定した日が発病日であるかのような印象を与える答弁がなされておるわけですから、私どもはそれらについては納得ができないということなんです。やはり診断日が発病日だという断定によってこの問題の裁定の可否が決することになれば、それはまことに一方的だと思うのです。ただその発病の時期というものが本人の供述書だけではどうにもならぬということだけで、裁定に対して否認をされるということはいかがなものであろうかというように私ども思うのであります。そこで、やはり淡谷委員もいろいろおっしゃっておるわけですが、私どもも疑問を持つ。それはやはり、いわゆる病名が確定した時点が発病の時点だというふうな断定には、私は問題があると思う。そこで私は、診断を受けて病名が確認されたというならば、そのハンセン氏病がいつから起こってきたかという点について、もう少し血の通った調査というものがあろうと思うのです。やけどがどうだこうだという御発言もございましたが、発病したことはもう現実の事実ですから、したがって、要はいつから発病したかということが非常に大きな問題になるわけですね。単に患者の発言なり患者の供述書というものが不十分だということだけで否認されるということは、いかがなものであろうかというように私どもは申し上げておるわけです。そこで、局長のお話の中にも審査会云々がありましたけれども、やはりいま申し上げておりますように、局長の御発言については私どもも疑問を抱く、そういう疑問を抱くような資料の提出のしかたでは、やはり審査会においてもいろいろ誤った裁定というものが行なわれざるを得ないだろう、私はこういうふうな疑問を持つわけです。この問題については、淡谷議員が長年かかって取り上げておる問題でございますので、それほど深刻な問題だろうと思うのです。深刻な問題でなければ、たびたび国会でなんか取り上げる必要はないと思う。それほど深刻な問題であり、しかもハンセン氏病になったということは確定的な事実ですから、したがって、このハンセン氏病はいつから起こってきたかという点についてもう少し血の通った調査というものがとらるべきではなかろうか、こういうように考えますが、その点いかがでしょうか。
  144. 矢倉一郎

    ○矢倉政府委員 確かに専門の立場での先生の御意見、私たちはありがたく拝聴いたしておるわけでございますが、実は恩給請求は、先生も御承知かと存じますが、御本人がこういう時分には戦地における勤務に関連して傷病が起こっているということで請求をなさいまして、その請求を待って結局その認定がなされた上で恩給権があるかどうかがきまってくるわけでございますが、その個別の請求をなさるときに、御本人はこれこれの事情であるというその事情の説明、それから関係資料というものをお添えになりまして、そうして非常に多数の件数がございますので、恩給の裁定につきましては原則として書類の審査という形になっております。したがって、お出しになりましたいろいろな資料というものをもとにいたしまして、この経過書を拝見いたしますと、たとえば斑点が出てまいった、あるいは知覚が鈍麻してきた、そういう時期をお出しになっておりまして、それについて御本人の御主張があり、そうしてそれについての資料というものが、本件の場合にはこういうふうな認定をしていくという点について、御本人の御主張は確かにいつごろということはあるのでございますが、書面の審査ということになりますと、やはりそれをある程度裏づけてくれる資料を実は私たちのほうは求めるわけでございまして、こういう点につきまして御本人のいろいろな資料というものは、全部お出しになりましたものを、私たちは決してそのうちの部分を抽出するということでなしに、恩給審査会には全部関係の書類としてお出しをし、そうしてそこで関係先生方の御意見によって公務性を是認するかどうかという決定をいただいておるわけでございます。
  145. 河野正

    ○河野(正)委員 関連ですから、たびたびは申しませんが、いまの局長の答弁を聞いておりますと、まことに機械的な、事務的な答弁だと思うのです。実は私も召集されて外地に長いこと行ってまいりました。そうして終戦後復員してまいった一員でございますが、いまのような御答弁を聞きますと、ほんとうに外地で生活した人たちなんかは全く納得するわけにはまいらぬと思うのです。というのは、そもそも応召された当時の状況なり、また当時の国民の持っておりまする感情から言って、とにかく復員して傷病恩給をもらおうとか、あるいは年金をもらおうというふうな感情を持った人はほとんどおらなかったと思うのです。また、特に今度の第二次大戦というものが勝ちいくさということになれば、これはまた別でしょうけれども、特に敗戦という非常に混乱を控えてまいっております。そういうことで、軍側も当然整えるべき書類についても整えることができない、あるいはまた、実際召集を受けた方あるいは軍務に服した方も、当然整えなければならぬ書類にしても整えることができなかった、あるいは整えておっても実際に内地に復員するときに持って帰ることができない、あるいはまた、軍が内地におる留守隊のほうに送付することができない、こういういろいろ複雑な事情がある。ですから、いまのような局長の答弁では、特に今度の負けいくさに参加をして非常に大きな犠牲をしいられた国民にとっては、全く納得いかぬだろうと私は思うのです。いまの答弁は、当時の軍の状態を全く無視した、全く機械的な、事務的な答弁だというふうに私は理解したい。その証拠に、私どもは今日に至るまで、かつて軍隊に服務をし、また内地に帰ってまいりまして戦病死した、あるいは在郷死したというふうな方のいろいろな苦衷を、われわれは数限りなく訴えられておる。ところが、そのほとんどが、いまのような全く官僚的な、機械的な、事務的な恩給局の措置によって、何らその人の犠牲というものが報いられない。こういう実情というものが、私の知っておる範囲でもかなり多い。だから、全国的に見たらおびただしい数だと思うのです。その一例が、いま淡谷委員が取り上げている具体的な一例だと思う。ですから、なるほど局長のおっしゃるような書類審査の面について、私どもは全然無視するものではありません。わからぬわけではありません。ですけれども、少なくとも応召してあの過酷な軍務に服務をして、そして生活上の環境の変化も急激でございましょうし、あるいは当時の軍の栄養状態から申し上げましても、これは非常に体力を消耗するような実情にあったろうと思う。そこでいまのような事務的な、官僚的な、機械的な処理では私は納得できぬ。要するに泣き寝入りせざるを得ない国民というものが非常に多いということを、私は身をもって痛感いたしております。ですから、なるほどそれを整えなければならぬということは、これはお役所仕事、公の仕事ですからわかります。しかし、それにはいま私が申し上げますような背景というものを、十二分にしんしゃくされる必要があると思う。審査会の人は、そんなことを知りはしません。審査会の人は専門家ではあるかもしれぬけれども、ほんとうにそういう背景を御存じであるかどうか、私は大きな疑問を持っています。審査会の人が私の言うことが無理だとおっしゃるならば、一ぺん国会に来てもらって論議してもいいと思う。非常に無理があると思う。だから、ある程度その辺の事情というものを勘案して裁定を行なわるべきだ。その意味恩給局長の答弁は非常に間違いだと思う。全く冷酷無比な感じを持たれるだろうと思う。関連ですからあえて申しませんけれども、そういう背景のあることを御承知の上で、これらの問題、いま具体的に御指摘でもありましたけれども、そういうもろもろの問題については、十分ひとつ配慮を願いたいということを申し添えて、一応私の質問を終わりたいと思います。
  146. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 私はこれ以上恩給局長とは議論したくありませんけれども、このあげました例は最もひどい一つの例であります。まだまだあります。恩給局というのは非常に恨まれています。いまの調子がこのままいくならば、戦地へ行った人だけでなく、いろいろこの後の処置について私は不安を感じます。このことは、あらためてさらに別な資料で責め立てるのはたくさんありますから、そのことをはっきり申し上げておきます。私には承服できません。  それから農林省の方、たいへん御退屈でしたでしょうが、いまのわれわれのやりとりを聞きまして、ひどいこともあるものだなという感じを持っただろうと思う。厚生省のほうは、同じような感じを農薬の問題で持っておる。これは毒性がわかっておりながら、またこれだけたくさん出る米に毒性のある薬を散布するという時期なんですが、いまとめるのと秋とめるのとでは非常に被害の度合いが違うことは明らかだと思うのですが、農林次官、その点で、水銀剤並びにこれに類する薬品について、農林省としてのお考えをはっきり出されるのはいつですか。
  147. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 水銀剤をいもちに使用するのをとめるのはいつかという御意見でありますが、御承知のように、昭和二十七年ごろからいもちの対策として水銀剤、酢酸フェニル水銀剤が有効であるということがわかりまして、その後の使用量が逐次ふえてまいりましたわけでありますけれども、毎年のいもちによります稲の減収量というのは、先生承知のとおり、非常にいもちの大発生をいたしましたときの平年七十万トン余り、気候条件がよろしゅうございまして減収いたしませんときでも、二、三十万トンといういもちによる被害があるわけであります。日本の米は、言うまでもなく国民の必要な食糧でございますから、やはりいもちをどのように防除するかということは、食糧需給の面からも、農政面からも基本的に大問題であろう。先ほどアメリカのお話も出ましたけれども、私ども考えますのに、アメリカのような広大な国土を持っておりますところと違いまして、国民一人当たりの平均的な土地の面積も著しく低い日本のことでございますから、やはり反当収量というのは、食糧の需給面から相当重大な意味を持っておると私は考えざるを得ませんので、今後やはり、いもちの防除対策というのは、農業行政上欠くことのできない非常に重要な課題になるだろうと思います。現在、水銀は二つの面で、一つは残留毒性の問題として、一つはそれ自身を使用いたしますことに伴いますいろいろなかぶれ、そういう二つの面で問題がございます。ことに後段のかぶれその他の問題につきましては、使用の際の取り扱いの注意とか、そういうことを厚生省とも協力をいたしてまいりましたので、年々そういう取り扱い上の過誤による事故というのは非常に激減をいたしておるわけであります。一方、水銀が農薬として扱われました場合に米の中にどの程度入るかという問題につきましては、三十一年ごろからいろいろな研究をいたしておりますが、一〇〇の水銀をまいたといたしまして稲の原体に付着をするのはそのうち一〇%、さらにそれが稲の体内に吸収をされていきますものが、そのうちの半分でございますから約五%、それが種もみの米の粒の中に入ります場合にはさらにそれの五%ということで、〇・二五%というような数字になってまいります。先ほど十一万トンという水銀の使用を昨年いもち対策としておるということを申し上げましたけれども、水銀の原体としては総量として三百トンくらいでございますから、米の収量等から換算をいたしますれば水銀の中に入っております量はごく限られたもので、アメリカが現在採用しておりますような分析方法では、ほとんど残留水銀の分析もできかねるような数量でございます。と申しましても、それが長い間国民の体内に蓄積をしていくということがあれば問題があるということでございますので、厚生大臣先ほどお答えになったと思いますが、残留毒性の基準を厚生省のほうで早急におつくりをいただくということももちろん必要なわけでございますけれども、私どもも、でき得る限りにおいてその切りかえということを考えておるわけでございますが、水銀剤にかわるいもち対策の有効な薬品は、三十九年ごろからいろいろ努力をいたしました結果開発をされまして、現在五種類が登録をされております。そのほかに現在三、四種類のものが開発をされておりますが、それが、いもちに対する効果がどの程度あるかということを現在判定いたしておる段階でございますので、まだ販売をさせるところまでは至っておらないわけでございます。ですから、米がいますぐ直ちに害を及ぼすということではなくて、長い間蓄積をされれば問題があるということでございます。また他面、いもち病の農政上の対策というのはきわめて重要な問題でもございますので、でき得る限りなるべく早く水銀剤にかわる低毒性の農薬の開発を今後とも積極的にはいたしますけれども、本年直ちにこれの使用の禁止をいたすというようなことをいたしますと、やはりいもちの防除対策が、本年に関する限りは十分にはできない現在の生産量でございます。したがいまして、私どもとしては、現実には長い間こういう米を食べるということが人間の人体にも影響もありましょうし、それからさらに、それを使用することによるかぶれ等の事故も事実あるわけでございますから、先ほど来政務次官からもお答えを申し上げておりますように、切りかえることそれ自体は積極的に努力をいたしたいと思いますけれども、ただ、本年直ちに水銀剤の使用を禁止するという措置は行政措置としてはとりがたい、こう思います。
  148. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 これはたいへんな答弁をあなたされていますよ。日本の農家が全部残らず水銀を使っていれば、あなたのような話になる。使っている農家と使っていない農家とあるでしょう。それを全部の米の生産量に平均して答弁しようなんというのは、少しあなたはずうずうしいですよ。特に、これじゃ私は厚生省はおさまらぬだろうと思う。この間の答弁では、玄米の含有量は〇・一とはっきり言っている。そんな数字の上で平均してみたり、割ってみたりなんかして害がないなんと言うが、現に害があるということをこの間はっきり言っているのです。しかも将来これはとめることもあるだろうというならば、ことしからもう方向をきめなければだめなんでしょう。この猛毒性の水銀剤じゃない、いもちの予防薬は、まだ発見されていないのですか。いないならばやはり発見するほうに重点を置くべきであり、いるならばそれに切りかえるべきだと思う。
  149. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 私が先ほど申し上げましたことを、先生若干誤解されたのではないかと思いますので、もう一度申し上げますが、私は、米に含んでおる水銀の残留量が総農家や総収穫量でどうこうということを申し上げたのではございませんで、いもち対策として、非常にいもちは稲の減収を来たす、そういう意味で、やはりいもち対策というのは農政上重要な問題でございますということを一つ申し上げたい。  もう一つは、厚生省からも答えたと思いますが、私どもの、アメリカで使っておる方法でない分析方法を使いますれば、〇・〇二PPMという残留性があることは承知をいたしております。PPMと申しますのは百万分の一ということでございますから、私申し上げましたように、そう多いものではないということは事実でございます。ただそれだけで、だんだんと蓄積をしていけば問題があるという事実を、私も否定を申し上げたわけではございません。ですから、切りかえる努力はやりまして、いろいろ試験研究等も進めて、現在販売している、水銀剤でないいもち対策の薬が四種類あります。それ以外にも三種類ほど近く開発されたので、それの薬害とかあるいはいもちに対する効果というのを現在検定をしておる。その検定が終わりましてから、それが有効だということになれば販売の許可をすることになるだろうと思います。ただ、いずれにいたしましてもまだ開発の時期が浅うございますので、本年予想されますいもち病対策の農薬として、新しい薬だけですべてを満たすような設備にまだなっておりませんので、それに対しては開発銀行の融資のあっせんをするとかその他の措置をとって、できるだけここ一、二年のうちにそういう新しい農薬に切りかえる努力はいたします。ただ、とりあえず本年においては、いもちの段階には水銀剤を使わなければならない状態だと思いますし、収穫の時期が近づくにつれて低毒性の農薬が使えるような措置をいたしますということを申し上げたわけでございまして、直ちに本年から水銀剤の使用を禁止しろとおっしゃられても、いもち病対策ということが農政上重要な問題でもあるので、本年直ちにはできません、しかし、切りかえることの努力を惜しむつもりでは、こざいませんということを申し上げたので、誤解のないように願いたいと思います。
  150. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 何だかわかりませんね。結局いもちを退治しても、そのとった米が、ことしはいいとしても、また悪くなるのだというあなたの結論でしょう。毒米を生産するために一生懸命病害駆除をしているようなもので、これはやはり毒のある薬を使うというのは、さっきも言ったとおり値段が安いからですね。だから、本気になってやれば、まだまだ農家が自発的に毒性の低い薬を使いますよ。米なんというのは農政局長も食べるのですから、あまりのんきにしないで早くその対策を立ててもらいたい。百姓のことだなんて思っておったら、やはりあなた方自体の問題になりますからね。特に日本のことしの食糧事情にかんがみても、非常にこれは真剣にやっていただきたい問題なんです。農林次官、その点をひとつ十分考えていただきたい。さっきの恩給局長の話といい、いまの農政局長の話といい、大体これでよく健康保険法の改正案なんか出すものだというぐらい環境衛生に対する配慮が乏しい。このことだけはっきり申し上げまして、私きょうの質問を終わります。
  151. 田中正巳

    田中委員長 次会は明二十四日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時九分散会