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1966-03-22 第51回国会 衆議院 社会労働委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年三月二十二日(火曜日)    午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 田中 正巳君    理事 齋藤 邦吉君 理事 澁谷 直藏君    理事 竹内 黎一君 理事 松山千惠子君    理事 伊藤よし子君 理事 河野  正君    理事 吉村 吉雄君       伊東 正義君    熊谷 義雄君       坂村 吉正君    地崎宇三郎君       西村 英一君    橋本龍太郎君       藤本 孝雄君    粟山  秀君       山村新治郎君    足鹿  覺君       淡谷 悠藏君    滝井 義高君       辻原 弘市君    長谷川 保君       八木 一男君    吉川 兼光君  出席国務大臣         労 働 大 臣 小平 久雄君  出席政府委員         総理府事務官         (防衛施設庁労         務部長)    江藤 淳雄君         労働政務次官  天野 光晴君         労働事務官         (大臣官房長) 辻  英雄君         労働事務官         (労政局長)  三治 重信君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      村上 茂利君         労働事務官         (職業安定局         長)      有馬 元治君  委員以外の出席者         労働事務官         (大臣官房労働         統計調査部長) 大宮 五郎君         労働事務官         (労政局労働法         規課長)    青木勇之助君         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 三月十八日  国民健康保険法の一部を改正する法律案内閣  提出第五二号) 同月十九日  戦争犯罪裁判関係者の補償に関する請願(大坪  保雄君紹介)(第一九〇九号)  興行場法の一部改正に関する請願亀山孝一君  紹介)(第一九一〇号)  社会保険診療報酬支払期日法制化に関する請  願(五島虎雄紹介)(第一九一一号)  同(河野密紹介)(第一九一二号)  同(春日一幸紹介)(第一九五三号)  同(滝井義高紹介)(第一九八一号)  老後の生活保障のため年金制度改革に関する請  願外三件(田川誠一君紹介)(第一九五四号)  栄養士法第五条の二改正に関する請願床次徳  二君紹介)(第一九五五号)  旧令共済組合期間国民年金通算に関する請願  (秋山徳雄紹介)(第一九九七号)  療術の新規開業制度に関する請願藤本孝雄君  紹介)(第一九九八号)  同外二件(山本勝市君外一名紹介)(第二〇五九号)  保育所拡充強化に関する請願八木昇紹介)  (第二〇四三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  労働組合法の一部を改正する法律案内閣提出  第一〇四号)      ————◇—————
  2. 田中正巳

    田中委員長 これより会議を開きます。内閣提出労働組合法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。質疑の申し出がありますので、これを許します。吉村吉雄君。
  3. 吉村吉雄

    吉村委員 労働組合法が制定をされて以降、種種問題はありながらも、この組合法日本労働運動の上でいろいろの役割りを果たしてきたのですけれども、この組合法改正審議に先立って、初めに若干、雇用上の問題でひとつお伺いをしておきたいと思うのです。  職安局長がまだ来ていないそうでありますけれども、実は労使関係の中でも、あるいは労働者福祉という面から見ましても、あるいは日本の将来の雇用問題等から見ましても、最も大切だと考えられますのは、特に日本の場合には不完全労働者潜在失業者といわれる問題が非常に重要だというふうに私は考えます。そこで、潜在失業者の問題については、当委員会あるいは参議院の社会労働委員会等でもずいぶん長いこと問題になっておりましたが、労働省の考えるところの潜在失業者のとらえ方と、それから雇用審議会の考える潜在失業者というものとの意見が不一致で今日に至っておるのではないかと思います。したがって、私は、この潜在失業者把握のしかたについて、労働省あるいは雇用審議会等での考え方はどういうふうになっているのかということをまず初めにお伺いをしたいと思います。
  4. 大宮五郎

    大宮説明員 お答えいたします。  先生御存じのとおり、雇用審議会におきましては、昭和三十三年に不完全就業に関する答申を作成いたしまして、そこでは、不完全就業者は、所得就業時間、さらに若干意識の面も加味いたしまして、数字把握したのでございます。それによりますと、三十三年当時は、不完全就業者は六百八十七万という数字が出ております。これに対しまして労働省は、主として雇用労働力として対策の対象になり得るような不完全就業者はどのぐらいになるかという観点から、意識の面に重点を置きまして把握しております。したがいまして、その数字は、三十三年の三月では三百十三万という数でございましたが、昨年の三月では百五十七万となっております。どこが違うかと申しますと、先ほど申しましたように、雇用審議会のほうは、いわば副業的な形でしか就業ができないような人まで全部、現実不完全就業状態にあるならばそれを把握するという形になっておるのに対しまして、労働省が主として把握しておりますものは、仕事を主とし得る者、また本業として仕事をしたいという意識を持っておる人を中心に把握しておるわけであります。その辺が数字の違う点でございます。もちろん、不完全就業につきましては、どちらの把握が正しいかということは一がいに言えないわけでございまして、目的によりまして、いろいろな把握方法があるというふうに言えるのではないかと思います。
  5. 吉村吉雄

    吉村委員 いまの答弁によりますと、雇用審議会不完全就業者に対するとらえ方と、労働省のとらえ方とは違っておるということです。実はこの点は、雇用審議会でも相当長い間議論をされて、御存じのように、いま発表された六百八十七万人の数字をはじき出した。私がこのことを問題にしますのは、数字のこと、あるいはとらえ方のことを問題にしようとするのではないのです。実は、当委員会におきまして、前の石田労働大臣の当時でありましたけれども、私の質問に対しまして、労働省としては、とにかく雇用審議会労働省潜在失業者に対するとらえ方が違う、こういう状態のままでは、雇用対策というものは立案も何もできないじゃないか、こういうことに対しまして、それはそのとおりであるということを認められて、雇用審議会労働省潜在失業者に対する把握のしかた、定義、こういうものについて統一をするようにしますという言明をなされてから、すでに一年有余を過ぎておる。事務当局もその経過については御存じのとおりのはずです。あなたは、いま私の質問に対して、同じような答弁しかなされていない。国会大臣答弁をされたことについては、責任を持って処理をしてもらわなければならぬだろうと特に私は考えます。しかも、あなたのほうでも御存じだろうと思いますけれども完全雇用というのは、これはわが国の将来の眼目であるはずなんだ。潜在失業者がどのくらいいるのかということについて、政府労働省見解と、それから政府一つ機関ともいうべき審議会、非常に重要な役割りを果たしておる雇用審議会見解とが異なったままで、一体あなた方が雇用対策というものを樹立できるのですか、できないであろうからこそ、労働大臣は、この見解については統一をする、あるいは定義一つにする、こういう言明をなされたはずです。その後の経過は一体どうなっていますか。
  6. 大宮五郎

    大宮説明員 以前に、年月は正確に覚えておりませんが、先生からただいま申されましたような御指摘がございまして、一昨年私どものほうで、不完全就業実態をこの際新たにひとつ調査して、その調査結果によりまして、もう一回この把握の問題を考え直してみようということにいたしまして、三十九年に雇用動向調査及び小企業就業状況調査というのを行なったわけでございます。その結果が昨年出まして、その後、私ども統計調査部職業安定局のほうでその内容に検討を加えておるところでございます。一方、雇用審議会のほうは、その間別な問題をお願いしておりましたので、そのほうの問題に引き続きまして、いずれはこの不完全就業者の問題を、もう一度新しい資料に基づいて考えていただくという段取りになるのではないかと思います。ただいま、はなはだ申しわけありませんが、そのほうの主管局長であります職業安定局長が参りますれば、雇用審議会との関係をもう少し詳しく申し上げられると思いますが、一応経過としては、そのような経過をたどっておるわけでございます。
  7. 吉村吉雄

    吉村委員 局長まだ来ませんか。——来ても同じぐらいの回答しかできないだろうと思うのですよ、やっていないのですから。  大臣に、ここで私はお伺いをしたいのです。実は、労働省ばかりではないと思うのですけれども、とにかく大臣言明をされ、約束されたことが全然実行されていない。そういう状態で、一体あなた方が雇用の問題についてりっぱな対策ができるか。その政治責任というものを負えるような対策ができるか。私はできないだろうと思うのですよ。大臣がかわってしまえば、もう前のことも何も報告もしていない。そういう状態がこういう現実になってあらわれてくると私は思うのです。しかも、雇用の問題というのは、国全体の大きな目標であるはずですよ。所得倍増計画の中でも、完全雇用というものを目標にしている。そうでなくたって、完全雇用というものが国の目標であるのが当然だと思うのです。その中で最も大切な事柄は、いわゆる潜在失業者というものはどのくらいの数がいるのだろうか。その把握のしかたについて、雇用審議会のほうでは、最低の生活を維持するだけの収入がなければ、それは潜在失業者という、そういう把握のしかたをしておる。労働省のほうはどうかといいますと、一日一時間でも働けば、それは就業者という認定のしかたをしている。こういう全く食い違った調査方法あるいは把握のしかたをしますから、先ほど数字発表になりましたけれども片方は七百万人もおる、片方は三百何万人しかいない、こういう状態で、一体完全雇用対策ができるかというのですよ。できないでしょう。ですから、私はこの前難聴の問題についても少しく申し上げましたけれども、十年もかかってようやく今度ああいうことになった。再三にわたって言っておっても、なかなかこれはやらない。こういうことでは、労働省は、本来雇用の問題について責任を持った官庁のはずなんですから、それをやっていけないじゃないか、私はこのように考えるのです。局長来ないようでありますけれども経緯は先ほど部長のほうからお話があったので、大臣もわかったと思います。日にちを言えというならば、大臣がこのことについて雇用審議会労働省見解統一をします、こういう言明をした日にちについても、議事録を持ってくればすぐ明らかになります。しかし、これは読んでいただければすぐわかることですから、こういう経緯について、責任者である大臣は一体どう考えるか。それから、非常に重要な雇用の問題ですから、このような事実をそのままにして雇用対策は確立されないだろう、私はこう思いますけれども、一体、そういう点について大臣はどのように考えられますか。
  8. 小平久雄

    小平国務大臣 まず第一に、大臣国会を通じて言明をいたしたことが、その実施がおくれておる、そのとおり実施されないのは不都合である、こういう御趣旨と思いますが、その点は私も全く同感でございます。大臣がかわりましても、特に現在のいわゆる政党内閣政党政治のもとにおいてはなおさらのこと、言明されたことが直ちに実行に移される。問題によりましては、努力はその間いたしましても結論がなかなか出ない、こういう問題ももちろん現実にはあると思いますが、できるだけすみやかにこれを実施に移す、こういうことは当然の責任でございますから、先生のおっしゃるとおり、あまりはなはだしく、その結論といいますか、実施がおくれておるということは遺憾でございます。私も就任以来、幾つかの問題で、労働省関係のことでそういうことをお聞きしまして、私もできるだけすみやかに何事も実施に移す、こういう決意で臨んでおるわけでございます。今後十分気をつけたいと思います。  第二の、潜在失業者把握の問題でございますが、これについて、労働省雇用審議会把握のしかたが違っておるということが具体的な問題となり、それが原因で潜在失業者の数ということも変わっておる、こういうように相なっておるわけでございますが、もちろん、先ほど来申しますとおりの決意で私はやっておりますから、従来おくれておったところは、これはどこまでもおわびしますが、今後なるべくすみやかに統一した見解にいくように私も努力をいたすつもりでありますし、また、現在のような状況では、雇用対策が十分立てられぬじゃないか、こういう御趣旨と思いますが、そういう面も確かにあると思います。これは、関係機関がみんな同じ具体的な数をとらえておるということが一番合理的であることは言うまでもないことでございますが、しかし、一面また、いわゆる大勢とでも申しますか、あるいは傾向とでも申しますか、そういう点は、これは相当程度わかるわけでございますから、この数字が食い違っておっては全然対策が立たぬということでもなかろう。潜在失業者傾向というものは、大体において一つ傾向としてはとらえ得るわけですから、そういう見地からいたしまして、やはり雇用対策というものは、十分その範囲において立て得る、また当然、私どもとしてはそれを立てていかなければならぬ、かように考えておるわけでございます。
  9. 吉村吉雄

    吉村委員 大臣、この点は先ほど申し上げましたから、くどくは申し上げません。とにかく潜在失業者をどういうふうに把握するかということは、雇用対策上の根本問題です。ですからこそ、雇用審議会のほうでも、長年月にわたって調査をし、このような把握のしかたに立ってこういう数字が出る、こういうことを発表されてからもう約七、八年になるのです。労働省労働省考え方に従ってやっている。もちろん、国際的にも把握のしかたはいろいろ異なっておる。ただ、私は、日本の国が、雇用政策を立案し、これを実施していく場合に、日本の国の政府考え方だけは統一しなければいけないであろう。野党と与党、野党政府意見食い違いがあってもいい。しかし、政府は、一定の政府機関の中での意思統一がなければ、具体的な対策というものは立てられないであろう、こういう私の意見に対しては、三治局長もうなづいておるごとくでありますけれども、これは局長、前にあなたが職安局長をやっておった当時からの問題です。それで先ほど申し上げましたように、前大臣が、これは審議会を設けるということは無理かもしらぬけれども雇用審議会のほうと十分連絡をとった上で、できるだけ早急に見解統一をはかる、こういうような言明をして以降もう一年有余になっておるけれども、まだ同じような状態にしか至っていない、こういうことが問題ではないかと思うのです。これは、職安局長、どうですか。
  10. 有馬元治

    有馬政府委員 不完全就業数字が、雇用審議会がかつていわれた数字と、それから就調の数字が若干食い違っておると思います。この点については、従来からの経緯もございますし、私どもとしましては、不完全就業実態を的確に把握する必要がありますので、雇用審議会とも今後十分緊密な連絡をいたしまして、数字食い違いのないように調整をはかってまいりたい、かように考えております。
  11. 吉村吉雄

    吉村委員 局長のいまの答弁を聞けば、まさにいままで何もしなかったということがきわめて明瞭になる。これからやるということにすぎないのです。   〔委員長退席松山委員長代理着席〕 従来まで問題になっておった事柄について、すでに雇用審議会労働省のほうでは、その見解統一、でき得るならば、定義あり方、こういうことについて意思統一するということの言明をしてからすでに久しいのです。そういうようなことで放置をされたのでは、いかに雇用対策法などをこれから出してみたところで、りっぱな雇用対策法というものは出てこない、こういうことになるであろう。  この点については、これ以上議論をしてもしようがないと思いますから、とにかく大臣、そういうことで、そういう経過があり、しかも経過を問題にする以前に、きわめて重要な問題でもありますから、これは早急に両者見解統一をはかるための何らかの具体的な措置をとってもらいたい。そうでないと、このあとの国会でも同じような議論を繰り返すにすぎない。これでは政策は前進をしていかぬ。こういうことになるのでございますから、何らかの具体的な対策というものを立てる、こういうふうにしてもらいたいと思いますけれども大臣決意を明らかにしてもらいたい。
  12. 小平久雄

    小平国務大臣 先ほど申しますとおり、統一的な見解が出ることが一番望ましいわけです。先生の意のあるところは十分しんしゃくいたしまして、それに沿い得るように私も努力をいたすつもりでございます。
  13. 吉村吉雄

    吉村委員 労働省は、労働者福祉労働条件向上等について十分関心を持ってやっていかなければならない官庁のはずです。しかも、雇用の問題は、労働問題の中のきわめて根本的な問題です。いま農村の問題にせよ、中小企業の問題にせよ、その他多くの問題を突き詰めていけば、私は、雇用問題だと思う。その雇用問題についての根本的な対策を樹立するにあたって、労働者がどういう状態に置かれているかという把握しかた——私は十万、二十万の違いならばそう問題にしない、片方やり方でいけば七百万人もおる、片方は、同じ政府機関である労働省やり方でいけば、三百万人、半分になってしまう。そういう状態のまま放置しておいたのでは、とても雇用対策というものはできないはずだ、こういうことを強調しているわけです。ぜひひとつこれは具体的に両者見解統一をして、そうしてまるいものはまるく見る、そしてこれをどうするかという方針を確立するように、特にこの点は強く注意をしておきたいと考えます。  それから次に、労政局長にお伺いしたいのですが、これは労働組合法との関係でございますけれども、現在政府、通産省の指導によって企業合併といいますかそういうものが逐次進められている中で、たいへん労働界をにぎわしておる特異な事例があるわけですけれども、それはプリンス自動車日産企業合併によって、それぞれの組合もまた一つになっていこうとする動き、あるいは二つの組合の中のプリンス労働組合の中で種々問題が起こっておる、こういうようなことがありますけれども労政局長はこの問題について把握をされておりますか、把握をされておるとするならばその概要をひとつ説明していただきたい、こう思います。
  14. 三治重信

    三治政府委員 プリンス日産との合併発表以来、両社組合も相互に連絡をとって、合併に対処する組合あり方について一緒にやろう、話し合いをしていこうというふうな話し合いの糸口から始まって、それがいろいろともつれて、現在あるいは裁判所あるいは東京都労委に、不当労働事件あるいはその他の問題として提起されている、こういうふうに承知しております。  そこで、先生も具体的な成り行きについては御承知と思いますが、われわれのほうも記録は持っておりますが、こういうふうな企業合併に伴っての組合動きにつきまして、労働省当局としては何か対策なりあるいは方針なりというものがあるかというのも一面含まれているかと思いますが、私たちは、企業合併につきまして労働組合についてどういうふうなことを指導するとかいうようなことにつきましては、従来とも一貫して何ら対策は別にとっておりません。これは三菱三重工が合併したときも同じでございまして、最近では大きな企業としてはそういうところであります。今度につきましても、具体的に私たちのほらが企業合併に伴ってどうのこうのというふうな組合処置のしかたについての指導というようなことについては何らいたしておりません。
  15. 吉村吉雄

    吉村委員 何やらいろいろ問題が起こっているらしいという説明でありますけれども、具体的には全然承知してないのですか。
  16. 三治重信

    三治政府委員 具体的には最近争いになっておる問題といたしましては、全国金属プリンス自動車工業支部に対する支配介入の問題、それから全国金属組合員に対しての差別待遇を行なう旨の言動に対する謝罪というふうな問題が具体的に提起されております。  なお、それまでに至った経過について御説明を若干申し上げますと、まず最初にこの合併が発売されまして、その後、日産自動車のほうからプリンス自動車のほうに、また、どちらが提起したかについてはつまびらかでございませんが、いずれにしてもこの両社組合について協議をする話し合いが進められたのでございます。それが具体的には日産自動車連合会長である塩路さんが、プリンス自動車大会に出席して、積極的にこの合併問題を両社組合で討議をしよう、これについてプリンスのほうがなかなか積極的にやろうとしないというのは、自分たちとしては非常に不満である、この合併問題について両社組合がほんとうに真剣に取り上げて両方の組合との関係を解決していくように努力すべきだ、こういうふうなあいさつをした。それからがこの問題になる、プリンス自動車内部執行部についての批判勢力が出てきた。ことに中央委員会のほうでこの問題を討議すべく大会の招集なんかを執行部に要請したところが、執行部にはその上部団体である全国金属のほうから、やはりこの合併についての全国金属プリンス自動車との団体交渉をやって、よくそれを煮詰めてから大会を開くべきであって、それまで大会を延期しろ、こういうふうな指示支部のほうへ来たわけですが、そういうふうなことで大会を延期しようとしたのに対して、プリンス中央委員会はこの問題を討議すべく独自に大会を開いて、執行部の不信任をやる、しかもこの新しい臨時大会のもとにそういう中央委員会決定によって執行部はやるべきであって、上部全国金属指示どおりにじゃなくして、むしろ自分たち組合意思でやるべきだ、こういうふうな決定をして、それから非常に問題がこじれております。  いずれにしても、こういう問題になりますと、プリンス自動車支部内部の問題でございますので、従来ともこういう問題についての争いは、具体的には労働委員会争いになれば処理されるべき問題で、あるいは労働委員会で処理されるべき問題でない場合には裁判所での問題、こういうふうになります。しかし、具体的に労働委員会といたしましても、不当労働行為というような問題については労働委員会でございますが、その他組織の内部の問題の、その大会決定あるいは執行部処置の適、不適、こういう問題になりますと、現在の労組法上では処置は困難と申しますか、行政機関指導監督ということとは別でございますし、そういうふうになりますとどうしても、内部争いで有効無効というようなこと、あるいはそれの法的な処置の要求ということになりますと、これは裁判所以外に解決の方法がないのではないか、こういうふうに考えるわけでございます。もちろんわれわれのほうが、その組合の運営の問題についていろいろ御相談、あるいは何らかの見解の表明ということを特に求められればやらないわけではございませんが、従来ともそういう問題につきまして、われわれのほうから積極的に入るというような事例はございません。
  17. 吉村吉雄

    吉村委員 大臣大臣方針を少しお伺いしたいのですが、このごろ各企業合同といいますか、そういうものが政府方針等もあって非常に進められている。企業合併あるいは合同ということは、当然資本と労働力とが一つになるというふうに一般的には見なければならぬと思います。  そこで、通産省のほうでは、資本の合併については、企業合同の方向についてはこれを推進し、いろいろの指導、あるいは政府として何らかの意図を持って指導に当たっている。資本の側はそれでいいかもしらぬ。しかし、企業というのは資本だけで成り立つものではないのですから、労働というものも当然にして付随的に、あるいは同時的に起こってくる。労働省はこの種の問題について労働者側の利益というものがそこなわれないようにするためにはどうあるべきかということについて、通産省が企業の側の資本の合同についての指導に当たると同時に並行的に労働省として何らかの方針を持って対処をしていかなければ、いろいろ労働者同士の内紛問題というものが今後継続的に起こってくる、そういうふうに予測されるのですけれども、このような事態の中で労働省としては、労働力合同の方向について何らかの指導方針あるいは見解、こういうものがあってしかるべきではないかと思いますけれども、この点は一体大臣、どういう方針ですか。
  18. 小平久雄

    小平国務大臣 企業合併というのは、単に資本の合併でなくて労働力というか労働の面での合併、こういうことであるから、労働省も積極的に何かその間見解を表明するなり指導するなりせよ、こういうことだと思うのです。   〔松山委員長代理退席、委員長着席〕 企業合併に伴う労働問題について、先ほど来労政局長から御説明申しましたとおり、現在の組合法なりその他の労働法上、行政官庁たる労働省がこれに積極的に介入すると申しますか、俗なことばでいえばくちばしをいれるとか、そういうたてまえにはなっておらぬと思いますが、先生御指摘のとおり企業は、言うまでもなく資本あるいは経営、労働、これらがほんとうに一体となって運営されるところに企業の生産性も上がることであり、もちろん企業合併ということは本来そういうことをねらいとして行なわれるものであると私は考えますので、企業合併問題が起きた場合等においては、もちろんそれぞれの当事者は、単に資本的にあるいは形式的に合併すればそれでいいというような、そういう考えを持った経営者なりあるいはさらに会社の最終的な決定機関である株主総会等を通じての株主の考えというものも、そういう資本の面だけを考えておるというものはおそらくいまあまりないのではないか、かりにあっても私はむしろ例外的存在じゃないかと思います。でありますので、私は、もし労働の面に無関心で、ただ単に形式的に資本面だけを重視して合併するというような経営者がかりにあるといたしますならば、そういう方面に対しましては、もちろん労働省としても、これは一般的な問題としてそういうことのないように十分啓蒙と申しますか、指導をしていくということはあってもしかるべきだ。私もまたかりにそういう点があるならば、そういう点は十分注意し、合併によって労働者福祉も一そう向上する方向においてひとつ合併を考えてもらう、こういうことは機会を得て十分啓蒙、指導してしかるべきものであろう、かように考えております。
  19. 吉村吉雄

    吉村委員 大臣答弁は抽象的で、どうも私もよく理解できません。何かそういった資本の合併だけを考えるような資本家はないでありましょうが、あった場合にはよくその点は指導します、こういう趣旨答弁でありますが、あくまでもあなたの答弁は資本の側について労働大臣としてはかくしたい、こういう意見のようです。先ほどの局長答弁によりますと、労働問題であるので、組合内部の問題についてはわれわれはなるたけ関与したくない、こういう趣旨答弁がありました。  そこで、私が申し上げたいのは、いままではそういうことで済んでおったかもしらぬ。しかし、企業企業との合併というものが政府方針によってどんどん進められつつある今日の状況あるいは今日以降の動向の中では、労働の問題についての最高責任者である、あるいは労働の問題を扱うところの労働省は、そのままの状態で傍観をしていいということではないであろう。従来と違った立場でこの点については労働省の任務に沿って何らかの方針というものを打ち立てて対処をしていかなければならないのではないか、こういうふうに私は考えるのです。申し上げるまでもありませんけれども労働省設置法にはそういうことが書いてありますね。労働者福祉あるいは労働条件の向上、労働者の保護、労働組合に関する事務、労働関係の調整、こういったことは労働省の任務だ、労働大臣はその任務を遂行する最高責任者だ、こういうことになります。企業合同ということは労働者にとってどういう影響を与えますか。これはもう福祉の問題、労働条件の問題、死活の問題です。そういった問題がいま起こっておる。将来起こる可能性は非常に強い。この場合に労働大臣としてはこれは拱手傍観、関与しない方針でございます、そういうことでいいのかどうかということなんです。そういうことで一体労働大臣労働省としての役割りを果たすことになるのだろうかという疑問を私は持たざるを得ない。したがって、この際、今後の方向について大臣にどういう方針で進んでいくかというような明確な態度、こういうものを求めておる。資本家のやり方について云々という問題じゃないのです。労働者がそういう立場に追い込まれつつある、そういうことについて一体労働大臣はどう対処しようとするのかという方針を明示してもらいたい、明示をすべきでないか、こう思います。
  20. 小平久雄

    小平国務大臣 私は先ほどの御質問に対して私の考えを述べたわけですが、ただいまの先生のお話を承っておりますと、私の受けた感じが間違いなければ、企業合同というものは一切関係労働者にとってマイナスなんだ、大体そういう前提に立たれておるように——私が間違っていますならば御訂正願いますが、しかし先ほど申しますをおり、企業合同するという以上は、合同することによってより生産性も上がるように、また当然労働者福祉も向上するように、こういうことが私は最高のねらいであろうと思います。したがって、労働者福祉向上等の面で考慮をかりに払わない経営者があるならばそれらに対しての啓蒙は当然やってまいりましょう、私はさように申したのでありまして、企業合同する場合に、私はいろいろな場合があると思いますが、しかし関係労働者にとっても必ずしもマイナスでない場合も私はあると思うのです。極端な例かもしれませんが、それぞれ独立してやっておったのではどうも会社の今後の発展が望めないというような場合には、むしろ発展の望みある会社と一緒になったほうがこれは事業自体としても、あるいはまた労働者にとってもそのほうがむしろ望ましいという場合もある。したがって、もちろんこれはどういう条件で、あるいは合併した後において関係労働者がどういう待遇を受けるかというようなことは、これは重大な問題に違いございません。ですから、それらについても、合併後存続する会社はそういう被合併会社の労働者についても、もちろんこれは今度は同じ自分の会社の従業員になるわけですから、十分配意をして、いままでよりも少なくとも悪い条件になるようなことのないように、これは経営者としては当然配慮をいたすべきものであろう、かように私は考えておるわけです。
  21. 吉村吉雄

    吉村委員 私の言っていることは、合併によって必ずしも労働者労働条件が悪くなるとか、よくなるとかいう、そういう認識の上に立って議論をしているのではないのです。そういう時点に立っての議論ではないのです。私の言っているのは、二つの企業一つになるということは、一つ企業一つ労働組合との間に結ばれておったであろうところの労働協約、他の一つ企業とその企業の中にある労働組合との間に結ばれてあったであろう労働協約、こういうものが一つになるということなんですよ。その場合、同じ条件のもとで同じような条件の労働協約が結ばれておれば、これはたいした問題ではないでしょう。ところが、ほとんどといってもいいくらいこれは異なっていると見なければならないのです。異なっておるのに、資本の側は通産省の指導によって、あるいは国自体が金融その他について援助をしながら資本の合併を進めている、こういう形をとっておる。労働者、資本と全く対等の立場に立つところの労働については労働省は全く介入しない態度でございます、こういうことでは、いま私があげたような例の場合には一体どういうふうになるのですか。あなたの先ほどの答弁のとおり理解をするとするならば、それはいいほうの労働協約を指導するというように理解をしてよろしいのですね、それでは。
  22. 小平久雄

    小平国務大臣 それは、その点は私はいいほうの労働条件をそのまま必ずしも適用するということになるとは断言できないのじゃないかと思います。というのは、それは合併の際の条件にもよりましょうし、それは原則として少なくともいままでよりも悪くならぬように、こういうくらいの配慮は当然経営者としてあってしかるべきである、こういうことを先ほど来何回も私は申し上げているわけです。
  23. 吉村吉雄

    吉村委員 その場合には、労働省はそういう方針に従って経営者の側の指導に当たるということのように聞えるわけですけれども労働組合には、これは局長も非常に慎重を期しておりますけれども、介入と目されるのであまりものを言いたくない、こういうことのようでございますけれども、とにかく資本の側が合併をするということは労働者にとっては全く死活の問題なんですよ。その場合に、労働者福祉労働条件向上、そういうものを役割りとするところの労働省は、一定の方針を持って、これはかくあるべきである、合同にあたっては労働の問題はかくあるべきである、こういう方針を示すことは、私は関与だというふうにはならぬと思うのです。介入だということにはならぬだろうと思うのです。むしろそういう方針というものを明確に示してやることが労働省役割りではないか、こう考えるのですけれども、この点はどうでしょうか。
  24. 三治重信

    三治政府委員 企業合併の場合にことに問題になりますのは、その被合併会社の従業員の組合との関係になるわけでございますが、被合併会社とその従業員が組合員である組合との労働協約あるいは個々の労働者と会社との労働契約というものは、特約がない限り、合併前に特別の約束がない限り、そのまま合併吸収会社との契約になるわけですから、したがって労働法上は、特約のない限り身分あるいは労働条件の変更は全然ないものである、これが労働法上のたてまえですし、私のほうはその点は堅持しておるわけでございます。  ただ、先ほど申し上げましたのは、その従業員組合の所属する上部団体が違う。したがって、そこに労働運動としての方針あるいは団体交渉上の、また労働条件の維持向上をはかる方法についての労働運動方針が違うというふうな組合上部団体がある。そういうふうな場合に、両方にはそれぞれ違った主義主張があるわけですから、それをどうのこうのというふうな指示あるいはこういうふうにしたほうがいいんじゃないかというふうなことを労働省はやるつもりはございません、こういうふうに言っているわけであります。   〔委員長退席、渋谷委員長代理着席〕 ただ、その被合併会社とその組合あるいは労働者との契約あるいは労働協約というものは、合併に伴って事前に特別な約束がない限りはそのまま従来の会社があったと同じように処遇されるべきだし、労働法上の地位はそういうものだということは周知徹底さしているつもりでございます。
  25. 吉村吉雄

    吉村委員 いまの労政局長答弁は法理論的にそのとおりで、そういうような指導をしてもらわなければいけないと思うのです。ただ、この場合予測されますことは、一つ企業の中で当然労働条件の異なった状態が起こるということを是認しなければ、いまの解釈というものは生きてこないということになります。そういうためにいろいろ問題が起こるということになりますから。したがって、従来は二つの組合でそれぞれの協約を結んでおって、それが有効という形でくる。そうすると、労働条件が違ったままで同一人の雇用主に雇用されるという労働者ができるわけですよ。しかし、これは法理論的にはそういう形で進んでいかなければならぬ。これは経営上は確かに問題になるでしょう。そういう問題が具体的に起こるでしょう。その場合に、指導あり方として一体どうすべきかということを考えて、先ほど大臣答弁をしたものと私は理解をしたのです。だから、その場合には労働条件のいいものの方向に進めていくという指導をしなければ、一つ企業の中に、かつて企業が違うからといって、今度はある人は平均賃金四万円である人は三万円だ、こういう状態が一体そのまま継続するか。継続しっこないのです。これは必ず内部の大きな問題になる。労使の問題となると同時に、労働組合内部の問題になるのですよ。そういう場合に一体どのような指導をしていくかということが大切であろう、こう私は考えるのです。それを、労働組合内部の問題だから、それはもう組合同士の話し合いにまかせておく、あるいは労使の交渉だけにまかせておく、こういうことを言っておれた時代もあったけれども企業合併というものがどんどん多くなってくるというこの段階においては、どっちかの方向に指導方針というものをきめなければ、内紛というものは年じゅう起こってきますよ。したがって、そういう内紛を予測して、今度の組合法改正が、労働委員の数をふやすということかどうかわかりませんよ、しかし、そういうことではないだろうと思うのです。問題は、やはりそういうようなことが予測される今日の段階においては、一定の指導方針というものが労働省になければ、労使関係あるいは労働問題というものは混乱してしようがないであろう、こういうふうに思うのです。そこで大臣、いまの局長答弁をされましたけれども、先ほどの答弁のような内容になるわけです。二つの状態が生まれてくるのです。ある労働者は同じような仕事をやっておっても賃金が高い。ある労働者は賃金が低い。こういう状態が法理論的には可能になるわけでしょう。その場合に、一体労働省指導の方向としてはどらあるのが望ましいと考えますか。
  26. 小平久雄

    小平国務大臣 法のたてまえから申しますならば、いまの局長から御説明申し上げたとおりの形になると思います。そこで先ほど来、先生がどういう考えで臨むのかということでございますから、私は少なくも、合併前よりも労働条件あるいは福祉問題等が悪くならぬように、あるいは、できるだけよくなるように、やはりそうなることが望ましいのであり、経営者としてもそういうことは当然考えるべきであろう、こういうことを先ほど来申し上げておるわけです。ただ、しかし、合併する場合は、概して被合併会社のほうが成績も悪い、あるいは労働条件も悪いという場合が、両者を端的に比べれば多いと思う、実際の例からいえば。そういう際に、その成績の比較的劣っておるほうの会社を合併して単一の会社になった場合に、存続する会社がしからばすぐにも全部同じに単一の条件にできるかどうかということは、もっぱら存続する会社の経営能力と申しますか、それによることであって、私は、会社の側からいっても、違う組合が二つあるとか三つあるとかいうことは、いろいろな面で、労務管理その他から考えても、あるいは会社全体の成績をあげる上からいってもおそらく望ましいことじゃなかろうと思います。さればといって、すぐにもみんな同じになるかということは、もちろん合併の際の特約にもよるのでありましょうし、あるいは存続する会社の経営能力にもよることでございますから、それを何でもかんでも、もう同時に存続する会社と同じにすべきだとまでは私は言い切れないと思うのです。ですから、私の考えとしては、先ほど来申し上げておるとおり、少なくともいままでよりも悪くなるということのないように、できるだけよくなるように、そういう方向で経営者の諸君にも考えてもらいたい、こういうことを繰り返し申し上げておるわけです。
  27. 吉村吉雄

    吉村委員 大臣がとにかく従来よりも悪くならないような線で指導をする、このことは、具体的にいいますと、一つ企業のもとに二つの組合一つになるという場合に、具体的に起こってくる私の質問に対する答弁でございますから、具体的に申し上げますならば、たとえばプリンスの自動車に働いている労働者の平均賃金が四万円なら四万円、日産自動車のほうはそれよりも若干下回っておるという場合に、プリンスの自動車の労働者に適用されたような労働協約、あるいは賃金等の労働条件、こういうものに沿うように指導をしていくというのが労働省方針でございます、こういうふうに理解をしてよろしいと思いますが、これは間違いはございませんね。
  28. 小平久雄

    小平国務大臣 いまの先生のお話、これは具体的に日産プリンスの場合と思いますが、日産プリンス合併をして存続するほうは日産である。しかし労働条件プリンスのほうが、逆に吸収されるほうが——吸収か対等合併かよく知りませんが、とにかくそのほうがむしろいいんだから、逆に今度は、日産のほうの、存続をするほうの労働条件プリンスと同じように指導しろというのか、指導するという考えかというお尋ねだと思いますが、私は、これはなかなかそう簡単にはいかぬと思います。というのは、合併に伴ってどういう労働条件にするかということは、言うまでもなく団体交渉でやることでございましょうが、それを役所のほうから具体的に、プリンスと同じように日産のほうもみんな上げろ、よくしろ、こういうことまで言うということは、これはいわば会社の経営権と申しますか、それにそれこそ介入することになるわけですから、私は、そう先生の御指摘のように、日産のほうをプリンスと同じにしろ、そこまで引き上げろ、こういうようなことは言いかねると思います。
  29. 吉村吉雄

    吉村委員 どうも答弁をあとになって変えられることは困るのです。私は一般論の指導あり方質問したわけですよ。指導あり方質問したのに対して、異なった労働協約がある場合の労働組合一つ企業合併されていくという場合には、それは当然その好条件の労働協約というものは法理論的には生きるのであるからして、したがってそういう方向にしていかないと企業の中というものがうまくいかない、こういうことを前提として話をしましたら、あなたのほうの答弁は、その場合には条件のいいところにこれは引き上げていくという指導方針が当然でありましょう、こういう答弁であったでしょう。ですから私は、具体的な問題として一般論に該当するような問題があるから、こういう場合はどうですかと言えば、それは違います、それでは先ほどの言明は一体どうなるのですか。こういう議論は、私は、具体的な問題を提示しようとしまいと、一般的な指導方針のワクの中の問題だと思います。ただ、それと異なるような場合というのは、具体的に問題が起こってきている場合には、これは違うというのであるならば別ですけれども、一般の指導理念というもののワクの中であったら、それはそのまま適用するという方向でなければ議論にならぬじゃないか、こう思います。そこでこの点は、あなたは参議院のほうに行かなければならぬという話ですから、非常に重要な問題だと思いますので、私はこの議論をいつかの機会まで留保することにします。それで、とくとこれは考えておいていただきたいのは、あなたの言明されていることが途中から変わるようなことがあったのでは、これは幾ら議論しても何もなりませんから、その好例みたいなことをいま言われましたから、この点はきつく私は注意をしておきたいと思います。この点の議論はあとまで留保しておきたい。あなたがもっと議論するというなら、まだやります。
  30. 小平久雄

    小平国務大臣 先ほど申し上げたときには、私はこういう前提を置いて申し上げたのです。一般的にいえば、合併の結果存続する会社と合併される会社とを比べますと、合併されるほうが大体成績も悪いし、労働条件も低いということがむしろ通例であろう。ですから、そういう場合に、合併されるほうの会社の労働条件などが合併によってさらに悪くなる、少なくともさらに悪くなるということのないように、むしろそれがよくなるようになることが望ましいことであるということを申し上げたので、今回の具体的にプリンス日産の場合はむしろプリンスのほうがいいんだ。そこで日産のほうをプリンスと同じようにしろとか、先生はそうおっしゃるのですが、先ほどの私の考え方からすれば、今度のこの具体的な場合でも、合併によってさらに日産のほうを悪くするということはもちろん論外でございます。ですから逐次同じレベルに持っていくということは、これは私は会社の経営上からいっても望ましいことであると思いますが、そういうことはもちろん会社の経営能力から考えなければなりませんから、なかなか一挙にはいかぬであろう。いずれにいたしましても、合併によって労働者が従前よりも不利になるようなことはないように、経営者にも十分考えてもらいたいということを先ほど来申しておるのでありまして、先ほど私が申し上げたことと前回申し上げたことが自分で考えを変えたとか、矛盾しているとか、さようには私は考えておらないのであります。   〔渋谷委員長代理退席、委員長着席〕
  31. 吉村吉雄

    吉村委員 大臣時間がありませんから、あとでまたこの点は明確にしたいと思いますけれども、私のほうで説明をし、私のほうで質問をした事柄は、企業合併ということは、資本を合併すると同時に労働力合併なんです。この場合、労働組合が二つのものが一つになる、こういう状態が起こるのです。いいですか、こういうことを再三私は説明したでしょう。その場合に、雇用条件というものが異なったものが二通りできます。こういうことについては当然労使の問題になると同時に、労働組合内部の問題になります。こういう前提を置いて質問をしていたのでありますから、したがってあなたの答弁は、吸収合併をされる企業とかあるいはそうでないとかという話は、いま初めて言っているのです。企業の場合には吸収合併もあるでしょうし、対等合併もあるのです。問題は格差があるような状態のままの企業合同あるいは労働条件というものが一つになる、こういう場合に、一体労働省としてはどういう指導で臨んでいくかという質問を反復しておったのに対して、あなたの答弁は、一般論的であったと思いますけれども、それはいいほうに持っていくという趣旨答弁がありましたから、たとえばそれではプリンス日産の場合はどうなりますかという質問をしましたら、具体的な問題になったらあなたの態度はがらりと変わった、こういうことになるわけです。これは議事録を調べてみればわかると思います。そこでこの点は非常に重要な問題なので、私はあなた方の方針というものを今後明らかにしていきたい、こう思いますから、これで大臣に対する質問は保留をしておきたいと思います。  労政局長にお尋ねをしますけれども労働組合法の第五条にいうところの労働組合というのは一体どういうものですか。
  32. 三治重信

    三治政府委員 第五条にいう組合は、労働委員会という労働組合の救済機関でございますが、それの援助を受けるためには、この第五条の第二項にきめてあることをきちんと規約に書いてある組合でないと救済が受けられませんよ、こういう間接的な規定でございます。
  33. 吉村吉雄

    吉村委員 そこで、先ほど労政局長プリンス労働組合の現在の状況日産労働組合との関係、こういったことについてやや抽象的ではありましたけれども、一般的にあなたのほうで把握をされている報告がありましたが、ここで私がお尋ねしたいのは、プリンス自工支部というのですか、正式には全国金属労働組合プリンス自動車工業支部、こういう組合があって、これは組合法上の第五条に認められた組合、こういうふうになっていると思いますが、間違いありませんか。
  34. 三治重信

    三治政府委員 これは第五条に適格な組合かどうかというのは、一般的にはその組合労働委員会へ提訴して、その資格審査で通らないと何とも判定のしかたがない。ただ、先ほど申し上げましたように、この第二条と第五条の二項のことを形式的に備えている組合は、ことに第五条の二項につきましては、組合の規約にそのことがずっと書いてある組合は一般的にはそういう適格性を持った組合である。しかし具体的にその組合が必ずその五条に該当する組合であるかどうかというのは、具体的な提訴で労働委員会が資格審査としてきめたものでないと合格したものと厳密には言えない、こういうことでございます。
  35. 吉村吉雄

    吉村委員 労働省ではこれは把握していないのですか。いま私があげたところの全国金属労働組合プリンス自動車工業支部、これはどうなんですかということです。
  36. 青木勇之助

    ○青木説明員 お答え申し上げます。  どういう組合労組法五条の適格組合であるか、一つ一つは私どものほうといたしましては、そのつど把握いたしておりません。と申しますのは、いま局長申し上げましたように、労組法労働組合の設立行為が完全なる自由設立主義をとっておりまして、問題が起こりました際に不当労働行為の救済を受けるとか、あるいは労働委員会委員の推薦手続をやるという、そのつどそのつど労働委員会が資格審査をやりまして、労組法二条の実質要件及び労組法五条二項に書いてございます規約必要記載事項を充足しておるかどうかということを審査して決定いたしておりまして、現時点においてプリンス労組が五条適格労組であるかどうかということは、ちょっとここでは私どもとしては把握いたしておらぬわけであります。
  37. 吉村吉雄

    吉村委員 現時点というのは、何か特別な意味がありますか。
  38. 青木勇之助

    ○青木説明員 お答え申し上げます。  かつて具体的な個別事案においてプリンス労働委員会の資格審査をパスしたかどうか、この点も私、はっきり把握いたしておりませんので、現時点においてはと申したわけでございます。
  39. 吉村吉雄

    吉村委員 いや、私が現時点ということを問題にしたのは、このプリンス組合の中で組合運営上いろいろ問題がある、こういう状態なので、あなたのほうは現時点とこういうことばを使ったのかと思ったのですが、そうでないという話ですから、一般論的にいってこの組合は第五条にいうところの組合法の保護を受ける組合、こういうふうに理解をしていいだろうというふうに私は思います。  そこで、先ほど局長が若干の説明をしましたけれども、この組合の持っておる規約の中では、大会でなければ執行委員長以下執行委員、執行機関というものを選出することができない、こういうことが明記されておる。決議機関としては中央委員会というものがある。この中央委員会が、大会大会の選任事項であるところの役員を選んだり、あるいは大会の日時、大会招集手続、こういったことをしておる。大会招集というのは、この組合の規約によれば、これはほかの組合と同じですけれども委員会が招集をする、こういうふうに規約に明記されておる。ところが、組合の運営の中でいろいろ日産労働組合との合併ということで意見の相違を来たして、そうして執行機関とそれから決議機関であるところの中央委員会との意見というものが分かれた。分かれたということはいいと思うのですけれども中央委員会の名において大会を招集したり、あるいは執行委員長の代行者、こういうものを選んだりした、こういうことを私ども知っておるのでありますが、こういう場合には、一体労働省としてはこういう点については内部問題として全然関与しないという方針なのか、それとも労働組合法上の労働組合というものはかくあるべきであるというくらいの指導はなされる方針なのかどうか、この点は一体どうでしょうか。
  40. 三治重信

    三治政府委員 組合の運営の問題が著しく非民主的な運営のしかたになっていく、アメリカなんかではよくそういうのがあるわけなんですけれども日本においてはまだ労働省として組合の運営が非常に非民主的で、これは組合の運営のやり方をもっと民主的なやり方に直さすためにはこういうふうなことを指導しなければいかぬというふうなことで検討し議論して、また一般的な通達というようなものについては具体的には出したことはございません。ただ、一度、組合の労働教育の指針というふうな形でいわゆる三権通達といわれるようなものは出した。これも直接的に組合の運営というものについての指導じゃなくて、組合の労働教育というかっこうで間接的な方法指導してきた、こういうふうなかっこうでございます。したがって、私たちはおもに組合のそういうふうな運営の具体的な問題あるいは組合内部の運営についての争いについて、具体的に指導するとかいうことはなくて、従来はいわゆる一般的な労使関係というものを労働教育という姿で指導し、訓練をしてきた、こういうことで、現在においてもそれを直ちに変えるというふうな考えは持っておりません。
  41. 吉村吉雄

    吉村委員 局長、規約というものがあって、その規約が適法であれば、これは組合法上の組合として組合法の保護を受けるということになるわけですね。——あなたもうなずいておられますように、このプリンス自動車工業支部というのは一般論的にいって適法組合である。ところが、その組合の運営の過程で規約違反というものが随所に出てきておる。先ほどのあなたの説明の中でも、中央委員会大会を招集して、その大会の中で役目代行者というものを選んでいる——大会の招集者というものは規約上は執行委員長である。その規約の中には、上部機関指示、指令には従わなければならないということも明記されておる。そういうような規約を持った組合が、中央委員会という決議機関が役員代行者を選んだり、大会を招集したり、こういうことをしている事例について労働省としてはどういう見解ですか。
  42. 三治重信

    三治政府委員 これは組合内部の問題でございますので、私たちとしては、特別、見解なりまたは指導を求められれば、見解なりあるいは御意見を申し上げることはあるかもわかりませんが、ただそういう存在があるからといって、私たちのほうが進んで規約違反の組合運営をやめろとか、そういうふうにしてはいけないというふうなことを個別的に指導するという考えはございません。
  43. 吉村吉雄

    吉村委員 私は労働省見解をいま求めておるのです。
  44. 三治重信

    三治政府委員 こういう個別的な組合内部争いにつきまして、特別指導するとか、どういう指導をするとか、あるいは援助するということについては、方針としては不介入の方針でやっていきたいというふうに思っております。
  45. 吉村吉雄

    吉村委員 いや、指導してくれとか、しないでくれという問題じゃないのです。あなたもお認めになっておられるように、中央委員会のほうで大会を招集したり役員の代行者を選んだりしている。明らかに規約違反の状態の中で今日ある。こういうような組合というものに対して労働省見解は一体どうですかと聞いておる。指導云々の問題じゃない。
  46. 三治重信

    三治政府委員 若干御質問を誤解しておりまして申しわけございません。そういうものは、組合の運営として規約違反の運営あるいはいろいろの議事が行なわれておることは決して好ましいことではございません。
  47. 吉村吉雄

    吉村委員 そこで、好ましい状態ではない。本来適法組合の場合には、その規約が労働委員会提出され、それが承認されて、初めて労働組合法の保護を受けるということになる。ところが、その組合の一部の人たちが規約違反をして、それで労働組合とまぎらわしいような行動をいろいろしておる、こういうことはきわめて遺憾だというあなたのほうの見解の表明でありますが、そういう見解を持っておるとするならば、正常な状態に戻すための努力をするのが労働省の任務じゃありませんか。
  48. 三治重信

    三治政府委員 決して好ましい状態ではないと思いますが、しかし、そういう問題につきましては、先ほど申し上げましたように、それぞれ内部の事情についてまでわれわれが入って、その是正方についてとやかくやるという意思はありません。
  49. 吉村吉雄

    吉村委員 非常に消極的な態度だと思うのです。それは組合運動に対する介入と見られるからという懸念でしょう。しかし、正しい労働組合法に基づいた規約を持った適法の組合がある。その組合の運営について部分的に組合規約に違反するような行動があって、労使の問題が紛糾したり、あるいは労働者の内紛があったりするという場合には、労働省労働者福祉を守ったり向上させたり労働条件を改善したり、あるいは労使の労働関係の調整をやっていく、こういうことをやっていくのが任務だとするならば、そういう好ましくない状態にあるものは正常な状態に復させるような努力をしていくということは当然じゃないかと思うのですけれども、不介入というのは一体どういうわけなんです。それで労働省としての役割りはつとまるのですか。
  50. 三治重信

    三治政府委員 組織の問題につきましては、われわれ、再三申し上げましたように不介入の方針でございますし、個々の組合内部の運営につきましても従来とも特別申し出がない限り、こちらから積極的に入る、その内部の規約違反とかいう問題あるいは運営の問題についての欠点の是正という問題については、特別相談があれば別として、こちらのほうから、そういう事実がありそうだ、またあるらしいということで積極的に入るということはございません。ただ、第三者あるいは時の動きによって労働省のほうでそういうふうな問題について特別調査なり、あるいはそういう問題についてよく事情を聴取して、あるいはまた意見も出してほしいというふうなことが特別あれば別でございますが、こちらから、先ほど来申し上げておりますように、そういう事実のあることは私たちも十分承知しておりますけれども、それについて積極的に入るということはいたしません。これは従来、そういう具体的な問題については、たくさんそういう事例があると申しましては悪いですが、いろいろ言われた問題はずいぶんございますけれども、こういう問題について私たちが積極的に、行政機関意思としてそういう問題の是正について立ち入るということはやらない。これは一応いま先生が若干の疑問の一つとして出された、いわゆる組合運動の組織の中の勢力争い内部へ入りたくないというのが率直に言った意見でございます。それで、はたしてそこへ入っても、うまくいく場合もあるし、うまくいかない場合もあるでしょうし、あるいはそれが行政機関の不当介入と言われる場合もあるでしょうし、こういうのは、やはりわれわれとしては労働組合の、何と申しますか、自主性といいますか、組合内部の問題については内部で片づけていただくのが原則であり、それに特別の事情があれば、その両当事者、あるいはそれに特別の関心を持っておる方、利害関係者というものが特別われわれ行政機関に何らかの意見、要望というものがあれば別でございますが、それ以外のときには具体的に私たちは入りたくない、こういうことでございます。
  51. 吉村吉雄

    吉村委員 これは委員長に要望しますけれども、いまの局長答弁によりますと、特別の相談がない限りという前提がついているようです。特別の相談があれば労働省としては何らかの指導なり何なりの対策、意向表明なり、そういうことをしたい、こういう答弁でございますので、この現在起こっておるプリンス自動車工業支部組合状態、これに関連する日産労働組合との関係、それから対資本との関係、これは今後の日本労使関係と労働問題にとってきわめて重要な影響を与える問題だと思います。しかも、この種の問題は予測でき得ない問題ではない、こういうふうに考えられますので、いま局長からの答弁によりますと、特別相談があればというのですから、この特別相談の内容はどういうものなのか私はわからないけれども、本社会労働委員会として、この問題の重要性にかんがみて、このプリンス労働組合の置かれている実情、労働組合法から見てどういう状態になっているのかというようなことについて、適切な調査、あるいは結論、こういうものを出す必要があるのじゃないか、調査すべき必要があるのじゃないか、こう思いますので、この点は委員長のほうで何らかの方法で実情を調査するようなことを考えてもらいたいと思いますけれども、どうでしょうか。
  52. 田中正巳

    田中委員長 ただいまの吉村君の発言については、後刻理事会で相はかりまして、結論を出したいと思います。
  53. 吉村吉雄

    吉村委員 ぜひひとつ、先ほど申し上げましたように、他に与える影響が大きいものですから、わが社会労働委員会としても実情を把握して適切な結論を出し得るように調査ができるように、特にこれは委員長に要望しておきたいと思うのです。  それから、これに関連をしますけれども、このプリンス労働組合の中で、先ほど言うたような事情で中央委員会というものが執行機関でないにもかかわらず、執行機関的な役割りを果たしておる、こういう現実一つございます。これは私は悪いと思いますけれども現実としてそういうのがある。ところが、他の一面、全国金属労働組合が、日産の経営者、プリンスの経営者に対して、いろいろ内紛があるので団体交渉をしたいという申し入れをした。ところが、この団体交渉の申し入れに対して、会社側から拒否の回答が来ました。その理由の中にどういうことが書いてあったかといいますと、私のほうの組合団体交渉を望んでいませんから、こういう趣旨で拒否をしてきた。私のほうの組合というのはどういうものかということで調べてみたところが、規約違反をしているところの中央委員会意思表明——中央委員会が選んだところの執行委員の代行機関、こういうものが団体交渉はただいま必要ではありませんということを前もって会社のほうに申し入れをしておった。これを口実にして団体交渉はできませんと言うてきた。これは明らかに不当労働行為ではないかと私は思うのですけれども、この点は一体労政局長見解はどうでしょうか。
  54. 三治重信

    三治政府委員 先生のいまおっしゃったことの中心は、全国金属団体交渉申し入れに対して、プリンス自動車のほうが拒否をしたのについて不当労働行為じゃないか、こういうことですか。
  55. 吉村吉雄

    吉村委員 違います。いま少し説明いたします。プリンス労働組合は遺憾ながら執行機関が二つのような状態になっておる。一方は組合規約に違反をした中央委員会が選んだところの執行機関、これは明らかに規約違反の状態である。なぜならば、組合員の直接投票によって役員が選ばれるような規約になっているにもかかわらず、中央委員会がかってに招集をした——招集すべき権限のない中央委員会がかってに招集した臨時大会で役員の代行者というものを選んだ。これは規約上からいいますならば、執行機関としてのそういう機能は与えられていない、こういう状態にあるといわなければならない。一方、このプリンス自動車工業支部が加盟をしているところの上部団体である全国金属労働組合から、プリンスの経営者、それから日産の経営者に対して、いろいろ問題があるから労働条件等について団体交渉をしたいという申し入れをした。これに対して経営者の側は団体交渉に応じがたいという回答をした。応じがたいという理由の書面回答の中に、私のほうの労働組合団体交渉をしたいといっておりませんから、上部団体だけとは団体交渉はいたしかねる、こういう拒否の回答であった。その場合、会社側のいっている私のほうの労働組合というのは、先ほど申し上げたいわゆる中央委員会で選任をした規約違反の代行執行機関、この意思表示をもって理由としている。これでは規約違反であると同時に、その規約違反によって選出をされているような執行機関というものを認めたような態度をとっている会社のあり方というものは、明らかにこれは組合法に対する違反であると同時に、これは不当労働行為ではないか、こういう質問なんです。
  56. 三治重信

    三治政府委員 この不当労働行為に対する考え方先生御承知のように非常に複雑になっております。一般的に不当労働行為というのは、使用者側が団交拒否とか支配介入という問題でございます。この問題の場合には、団体交渉拒否が不当労働行為の問題ではないかというふうに思うわけなんですが、この新しい日産プリンス自動車執行部がいま団体交渉をやる必要はないというふうにいっておるから、その上部団体全国金属団体交渉を申し入れてきたのに対して、プリンス自動車の経営者のほうが団体交渉を拒否したという不当労働行為の問題であるわけなんですが、これは従来、労働委員会不当労働行為についての、ことに団体交渉についての不当労働行為の問題の判決の例を見ますと二とおりございます。従来上部団体が常にその従業員組合の代表と一緒に団体交渉をやっていた、また上部団体の代表も入れてやっていたという場合には、大体において上部団体だけで団体交渉を申し込まれてもそれを拒否するという場合には不当労働行為になる。しかし上部団体があるけれども、従来とも労働協約なりその他労働慣行として従業員組合の代表とのみ団体交渉をしていたという慣行があるのに、上部団体団体交渉を申し込んできたのに拒否したという場合には、一般的にはその従業員組合と会社とは、従来それだけで団体交渉をやっていたんだから、特別その団体交渉上部団体にまかしてそれを特別にやらなければならぬという特別な根拠がない限り、そういうものについての団体交渉拒否の不当労働行為は成立しない。こういうふうなニュアンスであるようであります。したがって、この場合におきましての日産プリンスの場合におきましては、従来とも先生がおっしゃるのは、新しい執行部、新しい中央委員会のもとにある執行部は違法な組合と申しますか、その規約違反の組合だからというふうなお話もありますが、それは別といたしまして、従来日産プリンス自動車組合日産プリンス団体交渉をやっていた、全国金属の代表者が団体交渉の席上に従来入った慣例がないということからいくと、従来の中央労働委員会不当労働行為の裁定から見ますと、これは非常に疑問のあるところで、一般的には不当労働行為にはならぬじゃないかというふうにも考えられますが、これは具体的にはいま都労委に提訴になっておりますので、その裁定を待ちたいと思います。  それからまた日産自動車のほうとの関係につきましては、これは日産自動車そのものが全国金属にも入っておりませんし、独立組合でございますし、現在まだ合併するとはいっても、実際において合併をしておるわけじゃないわけですから、従来の不当労働行為というものはその従業員の組合、自分のところの従業員が、全然関係のない組合から不当労働行為、あるいは団体交渉を申し込まれて、それを拒否したからといって不当労働行為になる、こういうふうには従来の慣例からないわけであります。日産自動車の従業員組合、あるいは日産自動車の従業員が何らかの形で入っている組合上部団体、あるいはその組合からの団体交渉でない限り、合併の前でございますので、直接従業員という関係にまだ入っておりませんので、この関係については、全国金属日産自動車団体交渉を申し込んで日産自動車のほうがそれを拒否しても、それは不当労働行為にならぬことは明瞭でございます。
  57. 吉村吉雄

    吉村委員 不当労働行為関係の問題は労働委員会の管掌でしょうから、あなたのほうもきわめて慎重であることはわかるのです。ただ、私はこの問題をこの委員会で取り上げようと考えておるのは、実は、不当労働行為以前の労働行政上のあり方の問題に関係している、こういう理解なんですよ。と申し上げますのは、先ほど来、申し上げておりますように、あなたのほうでもお認めになっておられるように、規約違反の代行執行機関がある。これは明らかに規約違反であるということはあなたのほうもお認めになっておるとおりです。なぜならばこの組合の規約によれば、役員というものは全組合員の直接無記名投票によって選ばなければならなくなっておる、その手続が省略されておるということが一つ。いま一つは、大会の招集権というものは執行委員長にあるということも明瞭に書いてある。この執行委員長が招集しない大会で代行執行機関というものを選んだ、こういう状態になっておる。この代行執行機関というものは組合法上明らかに保護を受けない組合であろう。組合と名をつけることも問題であろうと私は思うのです。組合法上の組合でも何でもない、そういう違法な集団といいますか違法な状態にある人たちの意向を経営者側が認めて、そして団体交渉には応じないということは、私は組合法上から見ても提訴する以前の問題としてそういうことはいけないことではないか、こういう理解をしておるのですがどうですか。
  58. 三治重信

    三治政府委員 プリンス自動車組合が適法か適法でないか、あるいは労働法上の組合であるかないかという問題はさておきまして、またその組合と新しい組合と申しますか新執行部と、その会社との団体交渉の問題がトラブルになっておるわけではないのですから、私は、その全国金属組合日産プリンスとの団体交渉拒否の問題に集約できるのではないかという先生の御質問ではないかと思うわけです。だから、その問題につきましては、従来の慣行からいけば、上部団体団体交渉拒否の問題は慣例上労働委員会としては従来ともときどきその組合上部団体も入って会社当局と団交をやっていた実績があれば、それを拒否という問題になると不当労働行為になる可能性があるけれども、従来とも単位組合と会社とのみ団体交渉をやっていた場合に、それが何らかの理由で上部団体から団体交渉を申し込んできても、それを断わるのにいかなる理由をもってしても、それを固執したからといって直ちに不当労働行為になるというふうには、労働委員会は従来していないということを申し上げているだけなのであります。したがって私は、先生よく引き合いに出されます先生のことばをかりれば、違法な労働組合と申しますか、あるいは労働組合の実体をなしていない労働組合という問題、その組合と会社との不当労働行為とか団体交渉拒否の問題は何もないのではないかと考えているわけでございます。
  59. 吉村吉雄

    吉村委員 もう少しあなたのほうは事情を知っていると思って質問をしておったのですが、まだ知られていない分野があるようですから、実は全国金属労働組合プリンス自動車工業支部というところでは、プリンス社の経営者に対してすでに団体交渉を申し入れをしている。企業合併に伴うところの労働条件について団体交渉の申し入れをしておる。ところが先ほど言うたように、組合の内紛というものがあって、そして正規な執行機関に対して執行機関の権能のないところの中央委員会が選んだ代行執行機関といいましょうか、そういうものでは今度は団体交渉の必要がないといっている。ですから、労働組合法の保護を受けるべき組合というのはあくまでもそれは全金属労働組合プリンス自動車工業支部であって、あなたの表現をかりれば新たな組合というのですけれども、新たな組合という第二組合ができているわけではないのですよ。これは自動車工業支部というその組合の中の一つのトラブルなんですよ。   〔委員長退席、竹内委員長代理着席〕 第二組合であれば私は別な議論を展開するのですよ。そういうことで規約違反をしておるような代行執行機関、こういうものは規約上何もあり得ないのですから、あり得ないものが会社に対して申し入れをした。それを会社が信用をして団体交渉を拒否する、私の質問は、こういうことがあり得るかということです。
  60. 青木勇之助

    ○青木説明員 お答え申し上げます。いま先生が申されました事実関係は、合併問題とからんでプリンス支部労働条件等について交渉の申し入れをすでにやっておった。その後、いま先生が御指摘のような組合内部の問題が起こって、中央委員会招集の臨時大会のもとにおいて執行機関の代行機関が設けられた、こういう事実関係になっております。その後全国金属のほうから団体交渉の申し入れをプリンス会社と日産のほうへ申し込んだ、こういう事実関係だと思います。それで上部団体の団交申し入れというものを拒否した場合に不当労働行為になるやいなやという問題は——従来の中労委の全鉱事件とか合化労連の事件は、いま局長がお話し申し上げたような事実認定になっております。この問題、ある団交拒否が不当労働行為になるやいなやという点につきましては、一般論として申し上げますと、当該会社の従業員が加入している組合上部団体、これも労働組合であります限りは、当然労組法上の団交権を持っておるわけであります。したがいまして、下部組合の委任なりあるいは下部組合が団交を全然やっておらずに従来とも上部団体が団交をやっておる、こういう事実関係がかりにありました場合、これを拒否いたしますれば、これは当然、一般論としてではありますが、団交拒否の不当労働行為になるわけであります。  それで、日産プリンスの問題につきましては、いま先生申されましたように、従来の執行部について批判派が起こりまして、内部で問題が起こって、本年の二月二十八日でございますか、中央委員会招集の臨時大会が開かれて、その場において執行機関の代行機関というものが設けられた。この点従前の執行機関と新たなる代行機関との関係がどういう関係にあるのかという点は、これは具体的な事実認定を要する問題でありまして、もちろんいま先生が申されましたように、規約の文面、こういう点から見ますれば、規約違反の手続下においてそういうものが選ばれたということに相なろうかと思います。しかし、労働組合という一つの生きた社会的組織というものの内部において、どういう事情でどういう経過を経てこういうふうになってきたかという具体的な判断をいたしません限りは、当該執行機関というものが違法なりやいなやということは、われわれ行政機関としては直ちに判断できないわけでございます。冒頭、局長から申し上げましたように、そういう組合内部の執行機関なり決議機関決定、そういうものが有効なりやいなやという問題は、あげて裁判所が具体的認定に基づいてこれを判断する、こういうことに相なっておりまして、先ほどから局長が申し上げておるのもそういう趣旨でございまして、結局、今回の団交申し入れがはたして不当労働行為なりやいなやという問題は、その組織内部の問題、いま申し上げましたような問題、それら諸般の事情を具体的に認定して判断されるべき問題ではないか、こういうふうに考えております。  もちろん、一般論といたしましては、先ほど冒頭申し上げましたように、上部団体からの団交申し入れを正当な理由なくして拒否すれば不当労働行為になるわけでございますが、具体的にそれがある個別事案になるかどうかという問題に相なりますと、諸般の事情を具体的に調査、審問して判断する以外にない、こういうふうにお答えせざるを得ないわけであります。
  61. 吉村吉雄

    吉村委員 それでは少し角度を変えて、あなたのほうの見解だけをお伺いしておきますけれども、たとえば日産労働組合の——今度は日産ですよ。日産労働組合大会に、日産の経営の責任者である社長が来て、合併問題について、労働組合合併についてはかくかくあるべきであろう、こういうような発言を一時間有余にわたってしているという事例がある。労働組合というのは、いい悪いは別にして、資本と対等の立場でいろいろ交渉をしたりその他の関係を持っているものだと思うのですけれども日産のこの組合の場合には、対等の関係者である立場にあるところの社長が——一時間有余といえばこれはまさに異例のことだと思う。経営者が大会に来てあいさつをすることも異例だと思いますけれども、長時間にわたってこうあらねばならないであろうというような話をする、そういうような関係の中でこのプリンスの問題が起こっておる。言いかえますと、具体的になかなか把握はできないかもしらぬけれども、経営者の意図というものがあって、今日のプリンスの内紛が起こっておるということは客観的に把握できる問題だと私は思うのです。そういうような状態の中で起こったいまの問題、私は、労働委員会ではっきりと結論が出るだろうと思うのですけれども、少なくとも労働省としては、今日の段階における把握のしかたとしては、組合規約というものが現存をする以上は、組合規約にのっとった手続によって、すべてのことが運営され、組合を保護していくというそのあり方を伸ばしていくという態度を貫かなければ労働組合というもの、労働関係というものは、混乱に混乱を重ねるばかりだと思うのです。いまの説明のように、それは生きた人の組合の問題でございますからと、こういうことであったとするならば、非常にめちゃくちゃな状態になっていくのじゃないだろうか、こう思うのです。少なくとも行政官庁としては、やはり形式的であるかどうかは別として、規約というものは順守をしていく、順守をさせるという、そういう立場についての運営、こういうものを指導していくという態度が必要ではないか、こういうふうに私は考えるのですけれども、この点は、どうも内部干渉にわたりやすいのでということで、あなた方はきわめて消極的になっておる。しかし一面、あなた方はきわめて積極的な分野もあるのですよ。それはたとえば、公労法なら公労法で、実力行使をする場合に、これもいけません、あれもいけませんという次官通達を労働省自体が出しておる。それもすでに問題になったことがあるでしょう。ある一面においてはきわめて積極的である。私の見るところは、労働組合の運動というものが、これがあなた方に不利、いわゆる政府の側に不利なような問題については規制がきわめてきびしい。ところが会社側なら会社側に不利になるような状況については、あなた方はきわめて消極的だ、こういうような態度がうかがわれてしようがない、こう思うのですけれども、こういう点は一体どうお考えになっておりますか。
  62. 三治重信

    三治政府委員 労組法の五条の二項では、組合の民主性確保のためにぜひ民主的な手続をとるように規約に書きなさい、そういうことになればその規約どおりに組合が運営されることが望ましいことは当然でありまして、その事実問題は別といたしまして、規約のとおりに組合が運営され、執行機関が出され、その執行機関大会あるいは中央委員会決定を執行する、こういう姿が望ましいことには間違いないし、われわれはそういうふうな民主的組合の運営について、常々労働教育をやってきているつもりでございます。したがって、その点については、先生と十分御意見は一致することと思います。ただ先生のおっしゃるように、われわれは政府の不利なこと、あるいは会社の不利なことについては、非常に積極的だけれども、そうでない場合には消極的だ、こういうふうな御意見もあったかと思いますけれども政府に不利、有利というよりか、われわれのほうとしては法に定められたことを組合として守ってほしい、やはり民主的な組合として法を守って、法の限度内で労働運動をやってほしいということが一つ。それから組合の組織の内部の問題については、具体的に言えば、組織争いとか、そういう組織の問題については、われわれのほうとしては不介入で行ったほうが、実際問題として、結果は——途中は若干のむだ足があるかもわかりませんけれども、組織の問題については、これはやはり政府としては不介入のほうがいいんじゃないか、こういうふうに申し上げておるわけでございます。ただ、組織の問題が運営上民主的に行なわれて、労組法に規定してある必要最小事項のことが守られるということは、これはわれわれのほうとして望ましいし、またそういうふうに常々教育をしていく、こういうことについては変わりはございません。
  63. 吉村吉雄

    吉村委員 いま局長答弁をすなおに理解すれば、いまのプリンス組合の実情については、やはり中央委員会のやっていることは明らかに規約違反だということになるわけです。ですから、そういう規約違反の行為をしているようなことをこれはなるたけやめさせるような指導を、あなた方が労政上やっていくべきじゃないか、こう私は思うのです。そういうことについてどうも組合介入だというような考え方、そういうことを口実にして、どうも消極的になっているように見えてしようがない。だから、組合運動のあり方ですからいろいろな形が起こる。起こるけれども中心になるものは規約だ。この規約違反というものがあった場合には、それはいけないという立場をとらなければ行政官庁指導の方向というものはなくなってしまうだろう。今度のプリンス問題等についても、私はもっと労働省が積極的な態度をもって、規約違反の状態についてこれはいけないならいけないというような方向というものを打ち出していけばこれほどまでに混乱をしないで済んだのじゃないかという気さえするのですよ。それを放置しておいたためにもう労働委員会に提訴をする、あるいは裁判に提訴をする、こういう問題になっています。これはそれぞれの機関結論を出すでしょう。しかし出す以前に、第三者機関にかかる以前に、あなた方のほうとして当然規約を守ったところの民主的な運営というものを指導し、それを進めていくというそういう態度がなくてはならぬのではないか、こう私は思うのです。今回の労働組合法の一部改正問題等についても、幾ら労働委員をふやしてもあるいは任期を二年にしても三年にしても、労働行政の最高責任者の方向というものがはっきりしなければ問題が促進されるどころか、かえってあなた方の期待通りにならないようなことになるだろうと私は思う。もっと労働組合法の問題について考えるとするならば、いま労働運動の中で一番根本的に問題になっている第二組合が発生をして混乱をさせている、労使の関係を混乱させておると同時に労働運動全体が混乱をしておる、こういうことのないような指導あり方をあなた方は考えるべきだ。組合法の中で考えなければならない。あるいは企業合併という問題がこれから予測をされるという場合については、労働省としてはこれらについてどういうような方向で臨んでいかなければならないのかというようなことこそむしろ根本的な問題としては緊急ではないか、こう私は思うのです。  私の質問は以上にして、最後にあなたの見解をお伺いをしておきたいと思います。
  64. 三治重信

    三治政府委員 先生の御意見われわれもうなずけるわけでございますが、従来そういう先生の御意向みたいな方向は労働教育という手段をとって、一般的な問題として組合幹部なり経営者の幹部なり、そういう人たちを集めて教育をしていく、そうしてこの労使関係の安定と組合の民主的な運営の確保をやってきたわけでございます。ただ具体的なそういう争いの問題に入りますと、とかくこれはすぐどちらかに有利なほうがあれば必ず反対側のほうは非難する、こういうふうになって、結果としてはそういう具体的な問題に入って是正される場合よりか悪くなる場合のほうが多いんじゃないかという判断のもとにそういうふうにわれわれはやってきたわけであります。従来のやり方は非常に間接的ではあるけれども、やはり労使の幹部や経営の各段階のそれぞれの労使の幹部をそういうことのないようにいろいろの場合を想定しあるいは労働法、労働経済あるいは労使関係の問題として労働教育を通じてその改善方をやっていくという大方針のもとにあるわけであります。ただ先生が、具体的な問題という場合にも積極的にやはりそういうものを是正する方向というようなことを打ち出されておりますが、いまにわかにそういうふうにやりますとはわれわれは申し上げかねるわけでありまして、私個人としては、そういう問題についてはむしろ行政機関よりか労働委員会があるわけですから、そういう争いの具体的な問題については、不当労働行為とかその他賃金、労働条件の紛争事件として個々にあげてくる前の問題でも、やはり労働委員会としてそういう組織の問題とかいわゆる特別な問題についてももっと積極的に入れるようにしたほうがいいのではないか、行政機関の積極的な指導という線を先生が打ち出されるならば、私は労政局系統の機関が直接やるよりか労働委員会がやれるような法体系にしたほうがいいんじゃないかというふうに常々思っておりますけれども、また運用上においても、法改正の以前においてもしも先生のおっしゃるような意見政府がやるとしても、私は労政機関が直接やるよりか労働委員会にそういう問題について入ってもらうんなら入ってもらう方法がいいんじゃないか、そういう方向で検討してみたいと思います。
  65. 吉村吉雄

    吉村委員 これで終わりますけれども、私がもっと労働省が積極的なということを申し上げるのは前提があるわけです。それは、あくまでもほんとうの意味での中立的な姿勢に立って指導に当たるという前提がなければ私は申し上げません。いままでのように経営者の側に立ったような、日経連の総会には労働大臣が行ってあいさつをするというようなやや一方的なような立場で積極的になられることは困るのです。いま具体的な例で私が申し上げているのは、二つの企業合併の中で組合がいま大きな問題に逢着している。当然そこには組合運営上のいろいろな内紛なり指導あり方についての意見の相違が起こってくる。こういう場合に規範として持たなければならないのは、労働組合の場合にはそれは規約であろう。この規約というものを守っていくという方向で指導をしていかなければ労働行政そのものが混乱してしようがないのではないか。今度のプリンス問題等についても規約違反の事例がどんどん起こっているのですから、したがってそういう場合にはこの規約を守るという立場に立った指導をするのは、これは労働委員会の問題以前に、労働行政上の問題としてもっと積極的であっていいのではないかということを私は強調しておきたいと思うのです。  先ほど委員長のほうにも要望しておきましたが、この日産プリンス企業合併によるところの労使関係と労働問題というのは与える影響がきわめて大きいと思いますから、ぜひ委員会として正規な調査をして、委員会としての結論をまとめるように再度要望をして、私の質問は終わります。
  66. 竹内黎一

    ○竹内委員長代理 淡谷悠藏君。
  67. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 私は、同じ労働組合の中にあります駐留軍労働組合について少しお聞きしたいと思うのであります。時間も迫っておりますから簡潔に要点だけ申し上げます。  この問題は次官にいろいろお答え願ったのですが、防衛施設庁関係の方においでを願ってからというので、きょうはおいでを願っております。駐留軍から労務の提供を要請された場合に、これを受けて日本側はどういうふうな手続でこの労務を提供するのか、簡単に御説明願いたいと思うのであります。
  68. 江藤淳雄

    ○江藤政府委員 お答えいたします。  現在、駐留軍労務者は日本政府雇用いたしまして、これを労務提供の形式で地位協定十二条に基づきまして提供いたしております。
  69. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 そこまではわかっているんです。どういう具体的な手続をするか、この提供に当たるものはだれか、それからその場合、駐留軍のほうから報酬の点あるいは労働条件のことなどいろいろ話し合いがあるだろうと思うのですが、これを受けて折衝するのは一体どこかというような問題です。直接にはあなたのほうでおやりになるのではないでしょう。これはやはり地方地方に基地がありますから、その各地方の自治体などがやっているようですが、その点を明確にひとつ御説明を願いたいと思います。
  70. 江藤淳雄

    ○江藤政府委員 具体的には県のほうに事務を委任しておりまして、おのおの基地ごとに労務管理機関がございます。具体的には渉外労務管理事務所でございます。その渉外労務管理事務所のほうにおきまして、具体的に労務者を雇用しまして、これを米軍に提供するわけでございますが、いろいろな就業関係の定めというものは、基本労務契約に基づきまして、実際には現地の米軍の人事担当者と渉外労務管理機関との間で協議し、打ち合わせております。
  71. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 駐留軍が労務の提供を受けましてから、いろいろ要求が変わってくることもあるだろうと思う。それからまた労働組合側が待遇改善について要求を持ち出す場合もあるだろうと思う。この場合に、受けて立つ労管事務所なり、あるいはあなたのほうなりが、労働組合との折衝の中ではまずいいとしましても、米軍との交渉の中にたびたびストップすることがある。米軍の意向とあなた方の意向とが必ずしも一致しない場合があると思うのです。この場合に、日本労働組合法あるいは労働基準法などが、米軍の基地内で十分にその趣旨を貫徹するようなことになっているかどうか、その点をひとつ聞きたい。
  72. 江藤淳雄

    ○江藤政府委員 地位協定の十二条の第五項によりまして、基地内の労務者に対しては、日本の労働法規を米軍側が尊重するように規定されております。具体的には、現地の渉外労務管理機関が米軍の基地の人事担当者と交渉いたしておりますが、さらにその問題が具体的に解決しないというような場合には、県のほうで米軍と交渉し、さらにそれが解決しない場合には、私たちが直接に統合司令部等と交渉いたしております。なおかつそれが紛争事案として解決しない場合には、日米合同委員会において決定するというような段取りにいたしております。
  73. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 そこが私にはわからない一点なんです。雇用したのはあなたのほうが雇用する。雇用する場合には米軍とちゃんと話し合いができている。日本の労働法規は基地内の労働者にも適用できる。そうなりますと、あなたのほうでさえ、労働者の主張が正しいと思えばそれで法規上はできるわけなんですね。それをあらためて、日本の労働法規あるいは基準法等で許される主張が、もう一つ米軍との折衝が要り、さらに日米合同委員会まで要るというのは、日本の労働法あるいは労働基準法に準拠する前に、米軍あるいは米国の法律慣行が基地内の労働者には影響を及ぼしているんじゃないか、この一点なんです、私のわからないのは。
  74. 江藤淳雄

    ○江藤政府委員 駐留軍の従業員は、具体的には米側が使用者になるわけでございまして、われわれが日本労務者を雇用しまして、その使用者である米軍に提供いたしておるというようなことになっております。したがいまして、具体的には使用者は米軍でございますので、提供いたしております労務者の労務管理というものは、日米共同管理で行なうというような規定になっております。したがいまして、駐留軍従業員のいろいろな労務管理というものにつきましては、常に日米で相互に協議しながら共同管理の形式で進めておる。したがいまして、いろいろな米側の都合により、いろいろな意見が出てまいりますが、その場合の日本労務者の側の労働組合の要望というものとの間にそごがあり、あるいは問題が解決しないというような場合におきましては、当然日米双方で共同管理の原則に基づきまして協議をするということになっておるのでございます。
  75. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 その日米協議する場合に、原則として、基地内でも日本の労働法、労働基準法を貫けますか、この一点です。労働基準法にはこうあるんだけれども、米軍のほうにはさまざまな慣行もあるだろうし、こうなんだから、極端にいえば、日本の基準法が曲げられるような心配はないかというような問題です。
  76. 江藤淳雄

    ○江藤政府委員 地位協定の十二条によりまして、米側も日本の労働法規を尊重するということが定められております。しかしながら地位協定の第三条におきましては、基地の管理権というものは米軍側が持つということになっております。御承知のように、何と申しましても、在日米軍というものは外国の軍隊でございます。基地内あるいは施設内における軍機の保持というものが必要になるのでございます。その意味におきまして、基地の管理権という問題と十二条にいう労働法規の尊重という問題とは若干競合する場合も出得るのでございます。しかしながら、われわれといたしましては、軍の要請もさることながら、何とかして日本の労働法規を完全に尊重してもらうような線で米側に交渉いたしておるのでございます。
  77. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 やはりそうでしょう。軍事基地という性格上、あそこに働く労働者には日本の労働法、基準法一本では貫けない場合が多いのです。それをただ協議の段階で何とかまあつじつまを合わせるだけの話で、それではやはり日本の労働法、基準法は貫いていないのです。しかも、いまおっしゃったことばの中には軍事基地だからという、軍事基地であれば、やはり日本の労働法、基準法に優先する地位協定であり、あるいは米軍との協定だということになってくるのですが、労働者にしてもちょっと普通の労働とは違った労働ということになりますから、特に有事駐留の場合と常時駐留の場合、条件が違ってくるのか違ってこないのかという問題です。
  78. 江藤淳雄

    ○江藤政府委員 現在の方法というものは、米軍が具体的に使用する労務者を日本政府で十分保護しようという趣旨で、日本政府が直接雇用主になって米側に提供いたしておるということになっておるのでございますので、これは有事駐留とかあるいは常時駐留とかいうことによりまして、現在のやり方を変える必要はないというふうに私は考えておるのでございます。
  79. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 あなたは変える必要はないと言っても、米軍が変えなければならないということも出てくるのではないですか。あくまでも直接使用者は米軍だ。米軍のさまざまな行動によっては、これはやはり変えてくる必要が多分にあると思う。それを受けて立つあなた方の姿勢なんですが、これはあくまでも、米軍の要求があっても、日本の基準法あるいは労働法によって日本労働者を保護する義務があると思う。その場合に、どうしても日本の労働法、基準法に違反する場合は、労働者を引き揚げてもこれを保護するだけの腹がまえができているかどうか、あるいは地位協定その他日米合同委員会の協定によって、多少は日本の労働法、基準法に違反しても米軍の要求にこたえるという態度か、そのどちらかという問題です。
  80. 江藤淳雄

    ○江藤政府委員 現在の規定によりましても、日本政府が米側に労務を提供する義務を負っておるということにはなっておりません。したがって、米軍が直接雇用することを禁止いたしておるのではございませんけれども、先ほど来申し上げますように、基地に働く日本人労務者を十分に保護していこうという趣旨をもちまして、現在のような間接雇用形式になっておるのでございます。そのような意味におきまして、米側が現在直接雇用を特にいたしたいというような意向も出ておりませんけれども、基地従業員の権利を保護すると申しますか、そういうような角度から見まして、現存のやり方が最も適当であろう、またこれを変えるようなことは考えておりません。
  81. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 やり方を変えろというのではないのですよ。さっきあなたは、日本側の労働者の主張、あるいはあなた方の考えと地位協定や日米合同委員会話し合いによっては競合する場合もあり得るとはっきり言っているのですよ。極端に言って、いまベトナム戦争なんかの急迫事態に応じて相当の基地が常時駐留から有事駐留に切りかえられています。その場合に、米軍がやっぱり雇用するのですから、今度は情勢が変わってきたからというわけで、労働条件なり待遇なりが、あるいは機密保持の関係から相当きびしい条件も生まれてきていることも事実なんです。この場合に、あなた方の言う労働法や基準法が基地内の労働者にも貫かれているならば、さっき私の設問しました競合した場合に、やむを得ない場合は基地労務者を引き揚げてまでも日本の労働基準法を守り抜くだけのお気持ちがあるかどうかというのが問題です。
  82. 江藤淳雄

    ○江藤政府委員 先ほど、軍隊という特殊性から見まして、基地管理権という問題と日本の労働法規を尊重するという問題が若干競合する面があると申し上げましたのは、日本の労働法規が一言一句そのまま適用されるということはかなり困難な場合もあるわけでございます。しかしながら、現在の間接雇用形式におきましては、日本従業員の立場を保護するという意味でわれわれは間接雇用形式をとっておるし、それが妥当であろうと思っておるわけでございますが、もし米側におきまして、基地労務者に対して、かなり日本の労働法規に違反するようなことを申し出てまいりまして、日本政府といたしまして基地従業員の立場が保護できなくなるというようなことになりました場合、われわれがその自信がなくなるというような場合におきましては、この間接雇用形式というのはとうていとり得ないのでございます。もちろん日本政府としては責任が持てない事態になりました場合には、その労務者を提供するということはいたしかねる次第でございます。   〔竹内委員長代理退席、委員長着席〕
  83. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 有事駐留というのは、常時駐留よりもいわば軍事の緊迫性がはなはだしくなったということを考えなくてはならない。すでにこれは有事駐留に切りかえられているのです。そうしますと、軍隊における労務者ですから、普通の平常時の労務とは違います。これはひとつ次官にお聞きしたいのですが、平時における日本の労働法、基準法が、憲法上いろいろな問題がありましようけれども、具体的には一つの軍隊における勤務条件、しかもその軍隊が有事駐留に切りかえられて戦争に非常に密着した形で出てきていますけれども、この場合に、平時の労働者に対する保護、待遇で、はたして公平が保てるかどうかという問題が起こってまいります。次官、この点はどうお考えになりますか。
  84. 天野光晴

    ○天野政府委員 法的な問題ですから局長から答弁させます。
  85. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 先生御指摘のようにいろいろな軍の事情があり得ると存じまするが、私ども労働基準監督機関といたしましては、労働者労働条件を個別に考えまして、たとえば、そういった事態によって労働時間が長くなるか、あるいは安全衛生がおろそかになるか、労働諸条件の中で影響を受けやすいものとそうでないものがあるわけでございます。したがいまして、この種問題に対しましても、先ほど来施設庁といろいろ質疑応答があったようでございますが、問題の困難性はありますけれども、影響を受けやすい労働条件がどれだけあるかといったきめのこまかい配慮をいたしまして、先生が先ほど来いろいろ御指摘の点につきましても今後とも十分配意してまいりたいと考えております。基本的な法律的構造については先ほど来質疑応答がございましたので私は省略させていただきたいと思います。
  86. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 これはひとつ次官にお願いしておきますが、具体的にはかなり緊迫した問題になりますので、あらためてまた大臣御出席の上でお聞きしたいと思います。  もう一点はLST乗り組み員の問題です。これは基地労働者よりももっときびしい条件下に置かれておるのですが、これは、いずれ運輸省からでも出てもらいましていろいろお聞きしたいと思うのですが、基準局長助け舟を出されましたついでにもう一つ助け舟を出してもらいたいのですが、大体基地内の労働者に対して基準局のほうからいろいろ実際上の監督や調査をされたことがあるかどうか、ひとつお聞きしたいと思います。
  87. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 従来の調査、検査等の実績を見ますると、基地によって多少おもむきを異にいたしておりますが、いろいろな調査実施いたしております。ただ、当然やるべきことで件数としては比較的多くないと思われるものに、たとえばボイラー検査とか、そういった種類のものがございます。御承知のように、ああいった施設につきましては、米軍関係者の中でも安全担当者は相当な地位の高い人でございまして、セーフティ専任の方がおる。かなり綿密な検査をみずから実施してやっておるというような事情もございます。しかしながら、先般横田基地内におきまして特殊な石油格納施設で災害が起こりました。施設内のことでございますので、はなはだ遺憾でございますが申告がございまして監督を実施する、こういう手順になったわけでございます。施設内のできごとで、ことごとくこれを知るということは非常に困難であるという体制は遺憾でありますが、そういった申告に基づきまして、これは施設庁の了解を得て監督、調査をいたした、こういうケースがございます。そういうことで、定期に行ないます、と申しますか、常時の監督、調査とそういった申告に基づくものとございますけれども、率直に申しまして基地ごとに多少の差はございます。差はございますが、実施は必要に応じていたしておるということでございます。
  88. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 もう一点お聞きしたいのですが、常時駐留から有事駐留に切りかえた場合の労働条件あるいは待遇の変化というものを基準局は一体どうとらえておいでになりますか。あわせて施設庁としてもそういう変化は具体的にあらわれておるかどうかお聞きしたいと思うのです。
  89. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 労働条件の上に実態的にどのような変化がいま起こりつつあるかという点につきましては、具体的な資料はいま私持ち合わしておりません。ただ考えられますことは、第一には労働時間の問題であろう。次には諸物品の取り扱い等に関連いたしまして、一般の事業場と同様に仕事の多忙に随伴いたしまして災害が起こるといったような問題もあり得ることではないかと思います。先般の横田基地における石油格納タンクの事例どもございますので、私どももそういった災害発生と労働時間の問題、労働時間の問題に関連いたしまして超勤の支払いといったような問題が随伴してまいります。そういった点を今後予想され得る問題として十分注意をいたしてまいりたいと考えます。
  90. 江藤淳雄

    ○江藤政府委員 お答えしますが、有事駐留とか常時駐留ということは、これは解釈の問題でございまして、現在どちらであるかということは、申し上げかねるのでございますが、いずれにいたしましても、労働者の保護という立場から見まして、現在日米双方の間に基本労務契約というものが結ばれております。この規定に基づきまして、常にわれわれとしましては日米双方の共同労務管理で行なっておるのでございますので、その意味におきましては、どういう事態がまいりましても、この協定が忠実に実施されてまいるわけでございまして、特に有事駐留とかあるいは常時駐留、あるいは戦時、平時ということを問わず、現在の労務管理方式に変わりはございません。
  91. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 河野委員からちょっと関連を求められておりますので、お許し願いたいと思います。
  92. 河野正

    河野(正)委員 この駐留軍労働者の地位という問題は、これは今日までも長い間いろいろ国会でも論議されてまいった点でございます。その中から、私どもは、政府が米軍に対して労務を提供するわけですから、したがって、その身分については、当然政府責任を持たなければならぬ、こういう要求を掲げてまいっておるわけであります。その際、必ずしも駐留軍労働者の地位というものが保護できておらぬ状況というものが、私はしばしばあったと思うのです。そこで、私は今日までそのような基地労働者の地位というものが保障されぬという際には、やはり政府も労務提供を拒否すべきじゃないか、こういう要求をやってまいりました。その間終始この国会で言われてまいりました回答というものは、労務提供の拒否というものは、日米間の協定に基づいてできぬのだ、こういう意味の答弁がなされてまいったというふうに私どもは記憶をいたしております。きょうはたまたま労務部長のほうから、労働者の保護が十分でない、その点について自信をなくした場合には、労務提供というものは拒否するんだ、こういう意味の御答弁があったと思います。これは非常に前進した答弁だと私は思います。しからば、どういう条件であるならば、労務提供というものが拒否されるのか、ひとつこの点について明らかにしていただきたいと思います。
  93. 江藤淳雄

    ○江藤政府委員 お答えいたします。  具体的には、どういう場合に拒否するかということは、その問題が出た場合でないと、何とも申し上げかねるわけでございますが、先ほど来申し上げますように、日本の労働法規が尊重されない、あるいはいろんな待遇の面で、たとえばLSTのような場合もございましたが、待遇の面で日米双方の話し合いがうまくつかないといった場合におきましては、当然監視する雇用契約というものは、われわれとしては責任は持てないわけであります。そういう場合には、労務提供をお断りするしかないというふうに考えております。
  94. 河野正

    河野(正)委員 私は具体的にはいろいろあると思うのです。たとえば、一例を取り上げますと、基地における騒音問題がございます。これは協定によって当然騒音手当を出さなければならぬという協定でございますけれども、アメリカ軍はがんとして騒音手当を出そうとしない。これはしばしば私ども国会で要求してまいりましたけれども、これが一向前進しない。それは当然労務提供を拒否すべきだと思うのです。そういう協定をアメリカ軍は守らぬという場合には、私は、当然これは労務提供を拒否するだけの理由というものが、いまの施設庁の見解では、あると思う。
  95. 江藤淳雄

    ○江藤政府委員 現在日米双方が協議している段階におきまして、特に基本労務契約なり諸機関労務契約に違反しているようなことを米軍がやっているというようなことは、私のほうは考えておりません。いま資料はございませんけれども、労務者に騒音手当を支給するというような規定は、私の記憶では、ないように思っております。
  96. 河野正

    河野(正)委員 あったとするならば、どうされますか。しかも、この問題は、すでにいままで私ども国会で取り上げてきた問題です。その際に、あなた方が、そういう協定はないんだということで、御答弁になっておるならばけっこうですけれども、それについては善処するという御答弁をなさっておる。それを今日になって、そういう協定はない。それはあなたが、さっき淡谷委員質問に対して、もし労働条件が満たされない、それらについてどうも安心がいかぬという場合には、労務提供を拒否する、こういう発言があったから、そのような非常に慎重な答えというか、何かいままでの答弁と食い違ったような答弁をされたと思うけれども、そういう騒音手当という協定はないということならばないということで、いままでの国会答弁の中で、終始そういう態度をとってこられなければならぬ。ところが、それらについては善処をする、アメリカ軍と交渉する。いまさらここで、ないというのは、聞こえませんよ。もしあったらどうしますか。これは国会審議を冒涜するもはなはだしい。このことは重大ですよ。その点、いかがですか。
  97. 江藤淳雄

    ○江藤政府委員 先ほどお答えいたしましたのは、間違っておりましたので、訂正いたします。  私も、現在のポストが比較的短い関係上、すべての手当につきまして十分な勉強をいたしておりませんでしたが、基本労務契約の中にジェットエンジン騒音下作業手当というものがございます。具体的には、一定の騒音を越える場合、そのもとで行なわれる作業については、騒音手当を支給するという規定がございます。失礼いたしました。
  98. 河野正

    河野(正)委員 私は、そういうことを、ただ訂正いたしますでは、事は済まぬと思うのです。騒音手当という協定はないんだという答弁をなさった以上は、私は、防衛施設庁というものは、そういう態度で今日までアメリカ軍との交渉に臨んできた。もしそういう手当という協定があることを御存じになっておれば、当然アメリカ軍に対して、なぜ実行しないか、こういう交渉というものは積み重ねてこられなければならぬ。しかも、これが新しくきょう提起したものならばけっこうですけれども、今日まで、この問題は、しばしば国会で問題になった問題です。しかも、直接労務担当の最高責任者が、そういう協定はないんですと言い、それをいまさら、それは間違っておりましたというようなことでは、私は了承することはできません。これは重大な問題ですよ。これはいままでこういう問題が提起されておらなければいいですよ。長年この問題はこの国会で提起され、しかも、その実行については、政府が鋭意努力してまいったという経緯があるわけです。それを労務部長が、そういう協約はありません。しかも、こちらから指摘されて、それは間違っておりました、これは誤りでございますということで、訂正すれば済むような問題ではないですよ。そういう協定がしてある場合に、労務提供は拒否されますかどうか。
  99. 江藤淳雄

    ○江藤政府委員 お答えします。  ジェットエンジン騒音下作業手当というものは、いろいろ規定がございまして、中の手当の支給の基準というものがございまして、この基準を越えた場合に一定の手当が支給されるというふうになっておるようでございます。具体的には、その解釈、判断というものをめぐって日米双方で討議が行なわれておることと思いますが、まだ現在具体的には作業手当は支給されていないものと思っております。そのような場合に労務者の提供を拒否するかどうかという問題でございますけれども、手当を支給するという問題は労働条件一つでございますけれども、具体的にどういう手当をどの範囲支給するかという問題につきましては、これは日米双方で協議中の問題でございますので、完全に協議が整わなくて、あるいは日米合同委員会等でこれはやはり支給すべきであるというふうに決定したにもかかわらず米側が支給しないというような場合になりますと、これは問題があろうかと思いますけれども、現在の段階におきましてはまだそこまで至っておりませんので、特に労務の提供を拒否するという事態ではないというふうに考えております。
  100. 河野正

    河野(正)委員 あなたがそういう協定があることを十分承知しなかったということならば、それでけっこうだと思うのです。今後勉強していただけばけっこうだと思うのです。ところがそういう協定があることを知らぬと答弁しておいて、いまさら鋭意交渉中でございます、ところがその結論はまだ出ておらぬというようなことでは、私どもは納得するわけにまいりませんよ。そういう協定があることは知らぬという前提に立ってあなたは答弁しておいて、そしていままでの経過をおっしゃっても、そういう経過が真相であれば、あなたはそういう協定があるということを肯定されなければならぬでしょう、そうじゃないですか、あなたはそういう協定がないとおっしゃっておいて、そしてそういう経過がありましたというのは、何ということですか。少なくともあなたはそういう協定があることを御存じなかったわけですから、今日までの経過については不勉強で十分承知しておりません、ですからその点は鋭意調査をしてお答えいたしますならけっこうですよ。そういう協定があることを知らぬと言っておいて、いままでの交渉経過というものはこういうものです、そういろ答弁がありますか。国会審議を冒涜しておりますよ、あなたは。それはあなた、何ですか。そういうことではわれわれは審議を続行することができません。ばかにしておるですよ、あなたは。そういう協定はないと言っておいて、経過報告をするということがあるか。
  101. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 これは非常にむずかしい問題なんです。たとえば、協定がなかったと思ったのがありましたというのは、答弁としては成り立つでしょう。けれども、いままでやった実績が許さぬのです。それは答弁はそれでつじつまが合ってきたかもしれぬが、協定があると思ってやった行動と、ないと思ってやった行動ではたいへん違う。しかも、私はさっきからの質問で申し上げているとおり、米軍が常時駐留から有時駐留に切りかえた場合には、いろいろな新しい事態が出てまいります。これは決してこの委員会答弁を取り消したとか取り消さないとかいう問題ではなくて、将来にもわたる大きな問題ですから、いま河野委員から発言があったように、この審議はここで保留しまして、あらためて施設庁の長官なり、防衛庁の長官なりあるいは労働大臣にもぜひ御出席を願ってこの問題を審議したいと思いますから、きょうはこのくらいにして保留していただきたいと思います。
  102. 田中正巳

    田中委員長 次会は明二十三日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時十五分散会