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1966-03-18 第51回国会 衆議院 社会労働委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年三月十八日(金曜日)    午前十時四分開議  出席委員    委員長 田中 正巳君    理事 藏内 修治君 理事 齋藤 邦吉君    理事 澁谷 直藏君 理事 竹内 黎一君    理事 松山千惠子君 理事 伊藤よし子君    理事 河野  正君 理事 吉村 吉雄君       伊東 正義君    大坪 保雄君       亀山 孝一君    熊谷 義雄君      小宮山重四郎君    坂村 吉正君       地崎宇三郎君    橋本龍太郎君       藤本 孝雄君    粟山  秀君       足鹿  覺君    淡谷 悠藏君       小林  進君    栗林 三郎君       滝井 義高君    辻原 弘市君       長谷川 保君    八木 一男君       吉川 兼光君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 鈴木 善幸君         農 林 大 臣 坂田 英一君         労 働 大 臣 小平 久雄君  出席政府委員         文部事務官         (社会教育局         長)      宮地  茂君         厚生事務官         (大臣官房長) 梅本 純正君         厚 生 技 官         (環境衛生局         長)      舘林 宣夫君         厚生事務官         (薬務局長)  坂元貞一郎君         厚生事務官         (保険局長)  熊崎 正夫君         農林政務次官  仮谷 忠男君         農林事務官         (農政局長)  和田 正明君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      村上 茂利君         労働事務官         (婦人少年局         長)      高橋 展子君         労働事務官         (職業安定局         長)      有馬 元治君         建設事務官         (計画局長)  志村 清一君         消防庁次長   川合  武君  委員外出席者         厚 生 技 官         (国立衛生試験         所長)     石舘 守三君         農 林 技 官         (農政局植物防         疫課長)    安尾  俊君         農 林 技 官         (農薬試験所化         学課長)    伊東富士雄君         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 三月十八日  委員堂森芳夫君及び長谷川保辞任につき、そ  の補欠として栗林三郎君及び小林進君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員栗林三郎君及び小林進辞任につき、その  補欠として堂森芳夫君及び長谷川保君が議長の  指名委員に選任された。 同日  理事小沢辰男君同日理事辞任につき、その補欠  として松山千惠子君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  厚生関係基本施策に関する件(水銀性農薬の  環境衛生に関する問題)  労働関係基本施策に関する件(出かせぎ労務  者に関する問題)      ————◇—————
  2. 田中正巳

    田中委員長 これより会議を開きます。  厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。小林進君。
  3. 小林進

    小林委員 私は、ただいまから、新たに原爆病ともなりかねないおそろしい農薬薬禍の問題について、国民の健康と生命を守る立場にありまする厚生大臣に、次の諸点をお伺いいたしたいと思うのでございます。  このところ毎年のように豊作が伝えられ、この豊作農薬効果によるところがはなはだ甚大であるといわれているのでありまするが、その反面、農薬保健衛生上見のがすことのできない問題を引き起こしている事実も注目をしなければならないと思うのであります。三月九日の衆議院科学技術振興対策特別委員会においても、学者を招いて参考の意見を徴せられたようでございまするが、最近の新聞紙上にもこの問題はしばしば報道せられまして、農薬薬禍について、特に水銀を含む農薬禍については警鐘さえ出されておるのでありまして、いまや農民は農薬効果とおそるべき薬禍のギャップに悩んでおるというのが実情でございます。しかるに、この農薬はいまだ野放しのままになっておるのでございまして、しかもこれがふんだんにばらまかれておる田畑から取れる米を主食としている一般国民もまた、この問題にきわめて重大なる関心を寄せておるのでございます。  ごく最近の例でございますが、われわれの身近のところで例のコウノトリがこの水銀農薬におかされたえさを食べたことを原因として続いて死んだ、こういう問題も報道せられておる現状でございまして、これは「特別天然記念物コウノトリが昨年中に三羽も死んだことから、文化財保護委員会武藤聡東京教育大教授に依頼して死因を調べていたが、十五日「死んだコウノトリ二羽から多量の有機水銀が検出され、これが間接的な死因になっている」と正式に発表した。武藤教授は「残った十一羽のコウノトリを守るためには、農薬で汚染されていないエサを与える以外に方法はない」といっている。問題のコウノトリは、昨年六月二十二日、兵庫県豊岡市でメス一羽、同月二十六日に福井県小浜市でメス一羽、十二月二十二日に豊岡市でオス一羽がそれぞれ死んだ。同教授化学分析によると、小浜で死んだコウノトリ肝臓、ジン臓一キロ当りに一九・四ミリグラム、豊岡のそれには一四・〇ミリグラムの水銀が含まれていた。同教授の説明では、この量はほとんど致死量に近い含有量だという。水銀鳥類に与える影響については、まだはっきりした研究結果は出ていないが、同教授は「ホ乳動物より鳥類水銀に弱い」といっている。」日本文化財がだんだん失われているということも、われわれは非常に注意しなければならぬのでありますが、問題はコウノトリだけじゃない。われわれの身辺にはトンボがいなくなった、ホタルがめっきり減った、コイが育たない、蚕がどんどん死ぬ、こういう声を聞くのでございまして、これがみんな農薬と何らかの関係を持っているというから、問題は実に深刻なのであります。しかもその上に、 コウノトリ、これはまあ特別天然記念物でありますから大切でありますけれどもコウノトリドジョウだけで問題がおさまるならまだしも、その上人体にまで悪い影響を与えているとあっては、これは私は一日も放置をしておくことができないのではないか、かように考えておる次第でございます。こういう問題については、厚生省農林省行政が非常に緩慢でございます。  私は人間の問題に移る前に、まず第一にお伺いいたしたいのは、この特別天然記念物コウノトリを、一体どう守られる所存か、いま一つは、わが新潟県の阿賀野川の水銀中毒の問題について、もはや一年有余を経過しているにもかかわらず、まだその結論が出ないという、こういう問題に対する厚生省考え方からまず伺ってまいりたいと思うのでございます。
  4. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 農薬、特に水銀を含みますところの農薬が、いま御指摘になりましたように、ドジョウであるとかあるいはホタルであるとか、あるいはフナとかコイとかいうようなそういう動物、あるいはそれを食べたコウノトリのような鳥類等が、水銀禍によりまして死んでいっておる、またその農薬を使っておりまするために、そのとれる米を常食としております日本人人体残留をする、それがだんだんわれわれの健康をむしばんでいる、そういうような危険にさらされておるという御警告は私どもも同様に心配をいたしておるところでありまして、その残留量等につきまして、鋭意調査研究を進めておるところでございます。また、そういうような特定毒物、あるいは毒物等に類するところの農薬をできるだけ製造しないように、そして低毒性農薬開発研究をして、そういう低毒性農薬に移向してまいるように指導しておるところでございます。これは数字事務当局から具体的に御報告申し上げておきたいと思うのでありますが、大体におきまして、昭和三十五年当時におきましては、特定毒物あるいは毒物系統に属する農薬と低毒性農薬とは生産量が半々であった。ところが昭和三十九年には、低毒性農薬開発が進んでまいりまして、生産量もふえまして、低毒性農薬が七〇%を占めております。こういうようなぐあいに、私どもは今後水銀等毒性の高いものを含んだところの農薬を一日も早く低毒性農薬に置きかえられるように、農林省とも緊密に連絡をとりまして、業界を指導し、そういう方向に進めてまいる考えでございます。
  5. 小林進

    小林委員 大臣水銀の中に毒性の強いのと弱いのと差別があるということをおっしゃいましたが、そういう問題に入る前に、まだ今日に至るまでの農林省厚生省のこの水銀剤農薬に対する考え方、これが非常に緩慢であることを私はまず申し上げなくちゃならないのでありまして、いまコウノトリ農薬死をしたということで初めてこういう大きな記事になってあらわれてきたのでありまするけれども、その前にこういう例が幾つもある。たとえば、桑一グラム当たり〇・〇〇一グラム付着しただけで全部蚕が縮んで死産をした、繭が軽くなる、こういう例がいままで幾つもあらわれてきている。そういうことを農林省が取り上げて問題にしたことがありますか。農林大臣はどうしました。農政局長では少し荷が重い。農林大臣がだめなら政務次官とか事務次官ぐらいいるだろう。−委員長、大体要求大臣はきょう始まったことじゃないのだ。私は先日からちゃんと要求しているんです。これは一小林進の問題ではなくて、委員長も少し軽量視されている問題で、あなたの名誉に関する問題ですから、どんどん大臣ぐらい呼んできなさい、要求しているのは……。
  6. 田中正巳

    田中委員長 小林君に申し上げます。後刻参ることになっておりますから、暫時お待ちを願いたいと思います。
  7. 小林進

    小林委員 一番の問題点ですからね。そういうわけで、そういうような蚕が死産したり繭が軽くなるとか、一番いい例ですけれども、長野県の明科町では、たんぼや畑にまいた新農薬が雨に洗われて、それが小川や池に流れ込み、この死の水を受けたニジマスがわずか二時間で三十万匹も全滅をした、こういう例があるのだ。あなたはそういう例は御存じですか。
  8. 和田正明

    和田(正)政府委員 お答えを申し上げます。  農薬ニジマスその他魚介類に対する被害、あるいは蚕等に対します被害については、私どももそういう本来の目的外に害を及ぼしませんように、散布の時期でございますとか、たとえばヘリコプター等防除をいたします場合にも、風向でございますとかそういうことについて十分指導してやっておるわけでございますが、お説のようにときおりそういう事態が発生をいたすことは事実でございます。ただ、一昨年でございましたか、九州の有明海におきまして、同じように散布をいたしましたあとの大雨のために、農薬を含みます水が川を通って有明海に流れ込みまして、それだけが原因ではなかったようでございますが、貝類が多数死んだ事実もございます。   〔委員長退席澁谷委員長代理着席〕 それで、農薬取締法改正をいたしまして、そういう被害水産業に特に強く及ぶような危険のある場所につきましては、一定区域を知事の指定禁止区域にいたす等のことができるような法改正をいたしまして、そういう被害の絶滅を期するべくいろいろ努力をいたしておる次第でございます。
  9. 小林進

    小林委員 あなたたちは、こういう水銀農薬剤が危険だということはわかっておるから、風向きを注意したり、風の強い日にはまくな、あるいは一定地域指定してそこのところだけは使用するな、こういうことでこの危険が守られると一体考えていらっしゃるのですか。私は、問題は、その危険であるかどうかということを承知しておりながら、そういうような地域指定風向きだけで問題を解決していこうなどという、この農林省考え方が間違いで、これは重大問題だ。非常に重大問題だ。まあ大臣が来るまでひとつ待っていましょうけれども、一農政局長の答弁じゃ満足しない。そんなことじゃ……。  そこで、問題のいもち病の特効薬である水銀製剤農薬について、特に私は掘り下げてお聞きいたしまするが、農林省農薬関係者によって結成された水銀問題対策委員会というのがございますな。その対策委員会研究ですよ。あなたのほうの発表によれば、水銀農薬を使った玄米の中には金属水銀として〇・二PPM、これは一千万分の二の割合で残りている。一方、水銀農薬を使わない田地からとれた米には〇・〇五PPM、一億分の五しか水銀残留していない。毒性残留していない。実に四倍だ、いわゆるいもち病のために水銀農薬を用いた米の中に残る残留量と、水銀農薬を用いないところの米と比べると、水銀を含む残留量は四倍だ。その水銀剤を用いて、四倍もよけい残っている玄米白米にしても、なおかつ水銀剤というものは六〇%残る、こういうことが研究発表されておりますね。その六〇%残っている白米人間が食ったら一体どうなるか。すでに日本人は、欧米人に比べて水銀の血中濃度が高い。頭髪の水銀含有量に至っては実に五倍から十倍だ。こういう高い比率を示すデータが出ておりますね。今後人体に一体どういう影響を及ぼすのか。これほど明快なデータがあらわれているんだが、これが人間のからだに一体どういう影響を及ぼしてくるのか。農林省研究できているでしょう。その人体に対する影響力をお伺いいたしたい。
  10. 和田正明

    和田(正)政府委員 有機水銀剤を、特に稲のいもち殺菌剤として非常に有効であるということで使用開始をいたしましたのが昭和二十七、八年からでございまして、御承知のように、いもちは非常に稲の生産数量マイナス要素として強く働く病気でございますから、これをやはり殺菌いたしまして、いもち病の蔓延を防ぎますことが米の生産量を確保する上に非常に重要でございますので、二十七、八年ごろから使用開始をいたしまして、相当広範囲に今日使われておりまして、昨年あたりでも、いもち防除用には約九割が有機水銀剤使用されておることは御承知のとおりでございます。そこで、ただいま先生のおあげになりましたような玄米あるいは白米中に含みます有機水銀の量の検定についての数値は、私も承知をいたしておりますが、水銀分析方法と申しますか、非常に微量なものでございますから、方法論のいかんによってはなかなか残留分も出てまいりませんとか、その他のものとの化合の割合でございますとか、口から入りました場合の排せつの度合いでございますとか、私の承知しているところでは、九〇%は体外に排出をされるということでございますが、そういうような関係もございまして、どの程度に継続して口からそれを食べたらどのような害が起こるかというようなことについては、厚生省のほうで最終的に基準をおきめいただかなければならないことだというふうに考えております。ただ、その基準ができませんこと、それから米の生産を確保いたしますることが国民食糧の安定上非常に必要でありますこと、それらの点もございますので、いま直ちに有機水銀剤使用を禁止してしまうということは、米の生産上いろいろ問題がございます。一般的にすべての農薬を通しまして、先ほど鈴木厚生大臣からお話もございましたように、なるべく毒性の低い農薬に置きかえていくということは一般的に指導をしておりまして、三十五年ころには五割以上が毒性の高いものでありましたが、最近は七割以上が毒性の低いものに置きかわっているというふうに、一般的にそういう置きかえを指導いたしております。有機水銀剤につきましては、特に今後も、水銀を使いませんいもち用農薬がすでに幾つ開発をされておりますので、それの生産の増加のためにいろいろ手を打ちますとか、使用を逐次置きかえていくとかいうような方向で、できるだけ早目に有機水銀剤でない農薬に置きかえるように強力に指導してまいりたいというふうに考えております。
  11. 小林進

    小林委員 私はあなた方のそういう言いわけを聞こうと思ってきたわけじゃない。いま少し科学的に問題の重要性を掘り下げて、それに対する対策を聞こうとする。三十五年から指導してきましたなどという甘っちょろい言いわけでこの場所を通されたのではたまったものじゃありません。そこで、あなたは、水銀対策委員会研究でも九〇%はいわゆるふん尿として排出をすると言われた、それはそのとおりなんです。いまのいわゆる対策委員会研究では、同位元素である放射性水銀を使って収穫した玄米ネズミに食わせてみた。そうしたら、なるほどあなたのおっしゃるとおり、九〇%がふん尿として排出されたけれども、五ないし一〇%は臓器の中にたまった。その一割前後のものがたまった結果はどうなったか。特に肝臓やじん臓の中に蓄積が多い。ある実験によれば、水銀農薬によってそのわずかに一〇%足らずのものが残っておるにもかかわらず、ネズミ神経細胞を侵されて、ドルフィンキックという典型的なけいれんを引き起こして、ついには死んでしまった。大体人体影響を及ぼすときに学者が用いるものは、ネズミかウサギなんです。そのネズミに一割の残留分をとどめているにもかかわらず、それがけいれんを起こして、気違いのようになって死んでしまった、こういうような事実があらわれているのですよ。厚生大臣、一体この実験の結果を人体に当てはめて、あなたはどうお考えになりますか。こういうデータはあがっているでしょう。
  12. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 厚生省におきましても、いま小林さんから御警告になりましたような事態を非常に憂慮いたしまして、昨年来農産物水銀残留量の実態の調査を急いでやっておりますし、また  一面、ただいま御指摘になりましたように、動物及び人体の中に残留蓄積されるところの水銀というものの影響等調査いたしておるのでありますが、すでにアメリカ等におきましては、お話がありましたように、水銀を成分としたところの農薬製造使用は、これを禁止いたしております。また人体残留許容量−これ以上残留するようなことになると人体に重大な影響があるという許容量というものをはっきりときめまして、そして食品衛生等につきましては万全の対策を立てておる一わけでありますが、私もこの問題につきましては事柄の重大性というものを十分認識いたしておりますので、できるだけ早い機会に日本におきましても許容量をきめまして、そして食品衛生の面の十分な取り締まり、また万全の体制をやってまいる考えでございます。
  13. 小林進

    小林委員 私はそのネズミ実験の結果が人体にどう影響するかということを聞いたのですけれども、あなたはお答えがなかった。あなたは、いま人体の中にその許容量がどこまで許されるべきかという問題で研究しているとおっしゃったが、それじゃその問題について私はお伺いいたしまするけれども、国際的に有害農薬人体摂取許容量というものは、一生涯摂取した場合でも、従来の治験から何らの障害も認められないと考えられる量であって、通常体重キロ当たりのミリグラムであらわされている。   〔澁谷委員長代理退席委員長着席WHOです。国際保健機構の中では水銀農薬の場合、キロ当たり〇・〇〇〇〇五ミリグラムを許容量といたしております。これは体重六十キロの人間の場合にあてはめてみますと、〇・〇〇三グラム、三ミリグラムですよ。体重六十キロの人間か、先ほど私が申し上げました白米を一日四百グラム食へたと仮定いたしますると——これはみな四百グラム以上食べております。最低まず四百グラムと踏んでみても、水銀摂取量はわれわれは〇・〇四八ミリグラム、これだけのものを毎日体内に入れているという勘定になる、米食をしております上は……。これはWHO許容量と称するもののちょうど十六倍です。この十六倍に当たる毒性のものをわれわれは毎日食わされている。この事実をお認めになりますか。こういうような十六倍の毒性のものを食べていることが明白なのにもかかわらず、その許容量をこれから研究していこうなどという厚生行政の緩慢なあり方が重大ではないか。  なお、申し上げまするけれども厚生省が、実は大臣、あなたは研究中とおっしゃいましたが、一昨年度から野菜など十一品目について水銀含有量調査をなさっているでしょう。一昨年度からやっておるその研究の結果がまだ出ていないのですか。ネズミが気が狂って死んでしまうような、その許容量の何十倍のものを毎日日本国民に食わしておいて、そして研究中でございますなどと言ってまだ結論をお出しにならぬところに、どうもおかしなところがあるじゃないですか。巷間にはいろいろの評判があるのですよ。その評判は私は申し上げないけれども、非常に国民はこれを疑問に思っている。どうですか。一昨年以来の研究の所産をひとつ明確に、資料データ数字をもってお示しをいただきたいのであります。
  14. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 まだ結論的な調査結果が出ておりませんが、中間的な調査結果を事務当局から御報告させていただきます。
  15. 舘林宣夫

    舘林政府委員 各種農産物におきまする農薬残留量、特にその中の水銀残留量につきましては・三十九年度以来調査を続けております。ただいままでに判明いたしました数値によりますと、先般農林省衛生試験所調査をした結果とほとんど同じでございまして、玄米におきましては平均〇・一四、それから、キュウリ、トマト、リンゴ、ブドウ等におきましては、ゼロないし〇・〇四という程度に含有されておる事実がわかっております。
  16. 小林進

    小林委員 ちょっとお待ちください。それの人体に及ぼす影響はどうなっておるのですか。
  17. 舘林宣夫

    舘林政府委員 先ほど小林委員の仰せられましたとおり、先般WHOに各国の専門家が集まりました際に、酢酸フェニール水銀許容量についての討議がございまして、その討議の結果、体重一キログラム当たり〇・〇〇〇〇五ミリグラム以内であることが、動物実験における安全量の百分の一という数値で計算すると、そういう数値であることが明らかといいますか、それらの委員発表になったわけであります。これを一日四百グラム、六十キロの体重人間で換算をいたしますると、米の中の許容含有フェニール水銀量ば〇・〇四八PPM程度以下でなければならない、こういうことが推定せられるわけであります。そこでこれも小林委員から先ほどお話がありましたように、今日の米の現状は、水銀農薬をまかない米でありますと、〇・〇五PPM程度でございまして、先ほどの基準かつかつでございまして、まいた場合には、〇・一八PPM程度にまで上がるというデータがございますので、もしも今日このようにして研究せられる米の中の水銀量が全部酢酸フェエール水銀でありとすれば、かなり危険な量である。先ほど先生が仰せられましたように、危険量の十数倍であり——危険量というほどでないかもしれませんが、動物実験安全量の百分の一の許容量、そういう量を越しておる、こういうことになるわけでございますので、先ほど来いろいろお話がございましたように、またこれも農林省研究にも明らかでございましたように、酢酸フェニール水銀は、これが散布せられますとかなり早急に分解いたしまして、大部分が無機水銀になるわけでございます。そこで、しからば無機水銀有毒量はどうかといいますと、まだこれに対しては定説がございませんけれども、一応一九四一年にギブスという人が発表いたしました資料によりますと、米で一日三百五十グラム程度を摂取するとして計算いたしまして、米の中の含有量が一四PPMくらいまでは許容量以下である、こういう計算になりますので、もしも無機水銀でございますと、今日の程度の米の含有量でも許容量よりはるかに少ない、こういうことになるわけでございます。今日、米の中の水銀がいかなる形であるかということが大きな問題でございますが、各般の資料から大部分は無機水銀とは思われますけれども、さらに微量分析を続けまして、これの中に有機水銀が多量に含まれますと許容量を越えることになりますので、目下調査を急いでおるところでございます。
  18. 小林進

    小林委員 いまもお話のありましたとおりに、日本農薬有機水銀を使っておるのですよ。あなたたちは、先ほどから盛んに、いまそれを指導しているなんとおっしゃいまするけれども、われわれにはそれは一つの言いのがれとしか考えられない。だから、有機水銀については、先ほどからも許容量の十数倍のものが含まれて、人体の中に毎日摂取せられているということをあなたは言われた。私の質問をそのまま肯定をせられた。こういう状態ですから、先ほども厚生大臣が言われたように、もはやアメリカにおいては、ミラー法という法律が実施をせられて、ケネディ大統領みずからの命令に基づいてこれは厳格に禁止せられているのです。絶対に使用しちゃいけないという非常に厳格な命令が出されてやられているのでありまするから、もしいま日本で行なわれているような、あなた方が厚生省農林省でおやりになっているようなことが、これが現実にアメリカであるとすれば、監視員を全部配置しているのですから直ちに発見をせられて、これはアメリカの国内をゆさぶるような重大問題になっていると私は思う。ところが、日本においては、それがいまも言うとおり野放しだ、単なる注意を喚起する程度で、これを厳格に禁止し、あるいは中止せしめるというような指導が少しも行なわれていないのでありまして、私はここに問題があると思う。アメリカだけじゃありません。イギリスにおいても一、もはや十年前から本格的な検討と対策が実施をせられている。そして、たいていの農薬について、食品にそうした水銀農薬が残らぬような使用方法というものが厳重にきめられている。そういう諸外国の例がちゃんとまともにあるじゃないですか。そういうことがあるにもかかわらず、あなたたちはアメリカにも右へならえしなければ、英国の実施を学ぼうとしないで、いまも答弁せられているように、研究中でありますとか、指導中でありますとか、まるで国会答弁をうまく逃げればよろしいという、なおざりの形でおやりになっている。  私はここでひとつお伺いしたいのでありまするけれども農林省の安尾植物防疫課長——これはいまでもおられますか、その人がこういうことを言っておられるんだ。多くの農薬関係者農薬使用の規制はできない。この有機水銀使用の規制はできない。事故の実例もそれほど顕著なるものはない。彼はこう言っている。コウノトリが死んだりドジョウがなくなったり、蚕が萎縮をしたり、コイが何万尾と死んだり、というような事実を見ながらも、著しい実例は出ていない、これを禁止すると影響が大きい。私は禁止しないところに影響が大きいと思うのでありますけれども、反対にこれを禁止すると非常に影響が大きい、だからこの恐るべき農薬を使うことのプラスの面と人体に及ぼすその被害影響のマイナス分とを比較対照して、いまだこれを禁止するわけにはいかない、こういうようなデマの発表をしておる。この見解は農林省全般を代表すべきものなのかどうか。これは副大臣にお願いいたしましょう。副大臣もし何でしたら、ここへ来てあらためて答弁ができないならできない、政府委員をして答弁せしめるなら答弁せしめると言ってください。あなたは、そんな手をあげたり足をあげたり、そういうようなぶざまな答弁のしかたはいけません。
  19. 仮谷忠男

    ○仮谷政府委員 農林省の課長からいろいろ発言があったようでありますけれども、これは私は直接本人から聞いておりませんから、よく確かめてみなければいかぬと思いますけれども、私ども考えるのには、人体影響を及ぼすという点では大体考え方は一致をいたしておるのじゃないか、心配する点では一致をいたしておるのじゃないかと思うのですが、ただ、水銀剤をいま直ちにやめるということは、いもち病等の対策との関係から影響が非常に大きいので、いま直ちにやめることは非常に困難だろうという意味の発言ではなかったか、こういうふうに思っておるわけであります。  なお、この機会にわれわれも水銀剤の問題については真剣に取り組んでおるのでありまして、先ほど厚生大臣からもお答えをいただいたと思いますが、早急に結論を出すべく最善の努力をいたしておるわけであります。それと同時に、水銀剤にかわるいわゆる低毒性のものを一日も早く生産をするということが必要で、メーカーとも十分に連絡をとっているわけでありますが、いま一応五種類程度のものはできておりますけれども生産費も非常に高いし、まだ一般的でないわけでありまして、これを大量生産するための施設の改善とか金融の問題とかにつとめまして、できるだけ低毒性のものを早急に実施して、そうして水銀にかわる方策を考えていきたい、こういうふうに思っておるわけであります。
  20. 小林進

    小林委員 私は政務次官の御答弁を聞いておりますると、一体人体を犠牲にしてもいもち病対策が重要なのだ、そういう意味にしかとれない。もっと言いかえれば、いもち病対策が大切なのではなくて、そういう毒性水銀を製造しているいわゆる農薬の独占のほうがかわいいから、この諸君の営業をどうも禁止するわけにはいかぬ、独占の側を守るためにもこれは禁止するわけにはいかないというふうにしかとれないようなあなたの言い方。私はこの問題は実に重大だと思っておる。そこで、厚生大臣にお伺いしたいのでありますけれども、先ほどからも環境衛生局長が答弁をせられて、それは、国際的な研究の所産から見ても、日本人の常食をいたしまする米の中にそれが含まれて、許容量の十数倍も多くの毒性国民が毎日体内に吸収しているという答弁があった。この際、厚生省としては、少なくともそういう農薬の製造を禁止する前に、一体この有機水銀というものが人体の中にどれだけの許容量を許さるべきであるか、それ以上のものはこれを許さるべきではない、そういう許容量をせめて科学的に決定をした発表を明確に行なうべきではないか。この問題はどうですか。おやりになる意思はありませんか。
  21. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 先ほど申し上げましたように、アメリカ等におきましては許容量をすでに決定いたしまして万全の法的規制をいたしておるのでございます。私も、この水銀禍のきわめて深刻な影響重大性というものを認識いたしておりますので、できるだけ早くわが国におきましてもこの許容量を決定をいたしまして、それによってあらゆる規制、また行政上の指導をやってまいるようにいたしたい、かように考えております。
  22. 小林進

    小林委員 科学的に米の中にいわゆる有機水銀がどれだけ許されるかということを直ちに決定する、それをすぐおやりになる意思があるかどうか、これをお聞きしているのであります。
  23. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 科学的に許容量の限界を決定いたしまして、そしてそれに基づいて今後の規制並びに行政上の指導をやってまいる所存でございます。できるだけ早くやりたいと考えております。
  24. 小林進

    小林委員 もはや国際的にも数字が出ているのでありますから、やろうと思えばすぐやれることであります。いつごろまでにこれがお願いできますか。
  25. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 先ほど来申し上げますように、調査もだいぶ進んでおります。私どもは最終的に結論的に調査の結果を取りまとめ、またその人体に及ぼす影響等も科学的に検討いたしまして、できるだけ早く、いつということはここで明言できませんが、御趣旨に沿うようにできるだけ早く決定をいたす考えでございます。
  26. 小林進

    小林委員 すみやかに出していただいて、早く国民にひとつ警告を発するようにしていただきたい。  次にこれに関連してお伺いしたいのでございまするが、政府の毒薬に関する対策保健衛生に関する薬事監視の制度が私はきわめて不備だと思う。この問題ばここだけの問題ではございません。これはあらゆる薬事行政について私どもが何回もこの委員会で叫んだことでありまするけれども、どうも政府はこれに対して熱意を示そうとはされない。国立衛生試験所では毎年のように毒性部の設置を希望しておられるようでありまするが、国立衛生試験所の所長さんいらっしゃいますか、その毒性部の設置に対するあなた方の要望、これに対する政府の態度がどうなっているのか、同じ政府間でございまするけれどもお答えを願いたいと思うのであります。
  27. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 私からいままでの厚生省のとっている態度、考え方を最初に述べさしていただきます。  毒性部の設置の問題でございますが、これにつきましては先生も御存じのように、昨今の情勢がこの毒薬問題について非常に関心が高まっておりますので、私どもの省におきましても、去る昭和二十九年から、国立衛生試験所に毒性部というものを設置して、わずかの人員ではございますが、現在まで種々の毒性研究をやってきているわけでございます。ただ、昨今の情勢は、御存じのように、この毒性問題というのは非常に広範囲に、しかも多種多様にわたり、問題も非常に複雑な問題を呈してきておりますので、現在の衛生試験所におきます毒性部というものの機能だけでは時勢に即応できないという面があるわけでございますので、ここ数年来、毒性部をさらに機能を拡充するような方向でいろいろ検討を集めている、こういう段階でございます。
  28. 小林進

    小林委員 数年来拡張しようと思っているとおっしゃるけれども、ことばだけで、ちっとも拡張されていないじゃありませんか。これは前にも質問がありましたけれども、だいぶ激しい督促がありました。他の委員会で質問を受けてからもう一月足らずになっているのでありまするから、例の阿賀野川の水銀中毒結論ぐらいはもう出ていると思いますが、薬務局長結論出ましたか。
  29. 舘林宣夫

    舘林政府委員 お尋ねのように阿賀野川の事件が発生いたしましたのは三十九年の秋口でございました。その発見がややおくれまして、明確にこれが水銀中毒と判定できましたのが翌年の四十年五月でございます。当局といたしまして直ちに調査班をつくりまして、昨年の七月以来調査を続行いたしております。この調査の非常にむずかしい点は、従来から有機水銀の微量の分析が技術的に開発されておりませんことが進歩をおくらしておるわけでございまして、金属水銀水銀量といたしましてはかなり詳細に資料が集まったわけでございます。問題は、この中毒の原因として考えられますメチル水銀分析方法の探求にあったわけでございまして、先般ようやくこのメチル水銀分析方法がわかりまして、それをもとにいたしまして目下必要な個所の詳細な分析を進めておるところでございまして、その分析の結果がわかりますれば原因も明確になり得る、かような見通しで目下分析を進めておる段階でございます。
  30. 小林進

    小林委員 どうもあなた方は、不景気が来たの、山一証券が倒れたのというと、旬日も経ずしてこれに手入れをして、そうして独占の側の擁護には瞬時を待たずして手を打ちながら、こういう、市民の生活が脅かされたり、国民全般の生命身体に影響するというような重大な問題になりますると、いまも言われたように慎重に研究中でございますの、やれ集約地区をどうのこうのと言ってじんぜん日を延ばすことだけしか国会の中で言いわけをしない。それが一体正しいことなのですか。そんなことで国民に正しく奉仕している行政といわれますか。事は生命の問題なんですよ。先ほども大臣が言われましたように、アメリカにおいてはケネディ大統領の存命中、レーチェル・カーソン女史の「生と死の妙薬」(サイレント・スプリング)が出版された際、国をあげて薬の害が大問題になった。ケネディ大統領はさっそく大統領の化学諮問委員会というものを設置して対策を協議し、FDAでは直ちに基準をきめ、全国に監視員というものを置いて取り締まっている。このくらいの措置を講じていられるのです。いま至るところに農薬被害がある。いまわが日本に起きているのはアメリカの被害に比較すればその実害というものは何十倍、何百倍ですよ。その中には農薬に基づく事故もありましょう、あるいは軽率な扱い方によるものもございましょうが、いずれにしても被害はアメリカの比ではない。しかるに、あなた方はそれに対する特別委員会を設けようともしなければ監視員を設けようともしない。ただ、せんずるところは研究中でございます。研究中でございますということで、じんぜん日を過ごしている。そんなことで一体いいんですか。厚生大臣、いま少ししんの入った行政の手を直ちに打たないのかどうか、お聞かせを願いたい。
  31. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 新潟の阿賀野川の水銀禍の問題につきましては、小林委員が地元のことでもあり、一番御承知のことでございますが、新潟大学をはじめ国立の衛生試験所その他を動員いたしまして鋭意調査並びにその究明に当たっておりますことは御承知のところでございます。また、その調査と解明がだんだん進んできております。もう結論が出る段階にきておると私は思うのでありまして、今後そういう科学的な厳粛な結論を私ども十分尊重いたしまして、再びそのような事態が起こらないように万全の手配をいたす考えでございます。  問題は、いま環境衛生局長から御報告申し上げました点も科学的に非常にむずかしい点であるのでありますが、また無機水銀からどうして有機水銀に転化していくかというような問題等も科学的な究明が非常にむずかしかったのでありますが、これらも相当の実験研究によりましてようやくその事情も明らかになってきておるようでございます。研究研究ということでなしに早急に結論を出したい。またそういう段階に至っておりますので、今後十分な措置を講ずる考えであります。
  32. 小林進

    小林委員 先ほどから申し上げておりまするように、もはやアメリカにおいても、イギリスにおいても先進国は十年も前、あるいはこういう機敏な処置を講じてそれを厳然として禁止している中に、同じものを用いながら、しかもまだ研究中だ。なおあなたのことばによれば、有機水銀から無機水銀に至るまで、その研究の成果があがるまでは依然としてそれは人体の中に被害がある。にもかかわらず、それをそのまま放任していこうということばしかない。問題はかわりに新しいものができるまで待とうなどという緩慢な事態じゃないということを私は申し上げておる。私の調べたところによりますると、これはいもち病水銀農薬というものが用い始められたのがたしか昭和二十七、八年でございますか、七、八年ごろからきて、普遍化したのが二十九年といたしましても、その後毎年一体どれくらいのものが使われているかというと、まずこの水銀使用量が二百トンから四百トン、最近は年間四百トンぐらい使われておりましょう。これが全部たんぼの中に使用されているのでございまするから、十年と換算をいたしましても、まず日本の水田の中には三千トンから四千トンの水銀がばらまかれたかっこうになる、計算になる。しかも、これらの水銀は決して分解はされない。毎年毎年土の中に、たんぼの中に、畑の中に、これが蓄積をされているという勘定になるのであります。諸外国の専門家は言っておりましたよ。水銀の鉱脈をさがしたかったら日本の田畑を掘れと言うんだ。水銀の鉱脈があるといわれているんだ。そういうような危険な中にわれわれは生きて、その米を食わされているのでありますから、これは笑いごとじゃありませんよ。特にこの有機水銀が中枢神経を侵し、侵した結果が水俣病になったり、先ほどもいう新潟の阿賀野川の中毒の例等を引き起こしているのでありまするから、これは単に水俣や阿賀野川だけの特殊なケースじゃないんですよ。日本国民全般がそういう状態に、米を食っておる限りはみなそういう危険に侵されるすれすれの線にあるといったって過言ではないんですよ。それをあなたは、かわりに新しい農薬ができるまで鋭意研究いたしましょう、その間は、第二、第三、第四の水俣病ができようと阿賀野川の中毒が起きようとノーコメントでやむを得ないということでは、ことばはきれいだけれども、これほど無責任な残酷な行政はないと言わなければならないのでございまして、佐藤首相は人間尊重の政治をやるなどと言っておるけれども、こういう重大な問題については一つもこれを直視しようとはしていない。こういうような大きな問題を放任しておいて一体どこに人間尊重の政治があると言われるのですか。一億の国民が総水銀中毒にならないうちに、政府から早急な、しかも果敢な処置をとってもらわなければならないと私は思っておる。その一つの具体的な策として、先ほどからいろいろの盲点を追及いたしましたが、いま一つつけ加えておきたいことは、農薬の監督官庁がばらばらであるということも言えると私は思う。一体農薬ができた場合、メーカーは毒物及び劇物取締法によって厚生省に、農薬取締法農林省に届け出をする、厚生省は、データに基づき薬務局と衛生試験所実験し急性毒性、つまりその場で起きる毒性だけを調べておる。長期のものではない。そうして一定基準以下であればこの新薬の使用を認めるという結果になっておる。一方農林省は、農薬検査所でさまざまの植物に実験をして不良農薬であるかないかだけを中心にしてこれを調べておる。一口で言うと、厚生省は急性毒物だけを試験所で調べておるし、農林省は品質のよいか悪いかだけの調査をしておるという形であって、そこにはちっとも一貫した、しかも基本的な科学的な長期的な展望に立った総合の研究というものは何もない。私は、その意味において、こういうような官庁のばらばらの機構も、この際有機水銀等を扱う場合には全く不完全でありますから、これも根本的に改めてもらわなければならぬと思うのでありまするけれども、この点いかがでございますか。厚生大臣農林政務次官のお二人からそれぞれ所見を承りたいと思うわけです。
  33. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 先ほど来るる申し上げておりますように、農薬、特に水銀剤農薬人体に及ぼす影響ということがいかに深刻であり、重大な問題であるかということは私も痛切に認識をし心配をいたしておるのでありまして、早急に人体に及ぼすところの最低限の許容量を算定いたしまして、それに基づいて今後の農薬の製造許可あるいは農薬の取り扱い方につきまして十分厳重なる規制を加えるようにいたしまして、国民保健衛生を守るように努力をいたす所存でございます。
  34. 仮谷忠男

    ○仮谷政府委員 ただいま厚生大臣からもお答え申し上げましたように、厚生省では、毒物性あるいは激物性等を担当され、農林省ではその有効性という問題、確かにそこに分離されていることは事実であります。われわれとしてはより緊密な連絡をとりまして、毒物性の多くないものを使用することを考えなければならぬと思っておりますが、この問題については両省が十分に一体になって問題の処理に当たらなければならない、こういうように考えておるわけであります。
  35. 小林進

    小林委員 もはやこの問題は研究の域を過ぎて、これを実行の問題あるのみだと考えておる。そこであらゆる専門家学者の意見等を徴しますと、どうも、厚生省のほうはまだしかしこの毒性に対しては、ある程度問題の深刻性を考えて、できればひとつ早急に処置したいというふうな意向なきにしもあらず、けれども、そこへいくというと、農林省のほうはやはり米の生産が主体になりましょう。病虫害の問題が中心になりましょう。そこで、こういう毒性を知りながらも、こういう水銀農薬を禁止することは、直ちに米の生産影響をしていく。先ほどの話じゃありませんけれども、それを製造している農薬の独占企業に対しても重大な影響を与えるということから、何とかこれをのがれていこうという、むしろ厚生省のものの考え方農林省は非常に規制をして、それをやらせないような傾向があるというのが、世間一般の風評です。それが事実でなければ幸いだ。そういう疑いを取り除く意味においても、農林省は積極的にこの農薬の問題に取り組んで、早急にひとつ国民が安心がいくような処置を講じていただきたいと思うのであります。  まだ質問が残っておりまするけれども、竹内君が関連質問があると言いますから、関連を竹内君に譲ることにいたします。
  36. 竹内黎一

    ○竹内委員 関連してお尋ねいたしたいと思いますが、ただいま主として小林委員から玄米あるいは白米につきまして、有機水銀剤残留毒性についての懸念が表明されたわけでございますが、私はくだもの、リンゴ、ナシ、ミカン、ブドウ、そういった大衆に親しまれているところのくだものについて、実はそういう心配がないかということをしろうとながらに考えるものでございます。御案内のようにリンゴ、ミカンの黒点病あるいはミカンの瘡痂病のようなもの、あるいは土壌殺菌剤としてのPMAが使用されているわけでございますが、そういったくだものについては、米について心配されているような毒性の問題があるのかないのかをひとつ御教示願いたいと思います。
  37. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 昭和三十九年以来、農産物残留いたします水銀残留量調査研究をやっておりますので、中間報告でございますが、事務当局から……。
  38. 舘林宣夫

    舘林政府委員 先ほど小林委員お答え申し上げました際に一部申し上げましたとおり、昭和三十九年度以来、残留農薬各種農産物について調べておるわけでございますが、お尋ねの野菜、くだもの等におきまする残留農薬の量は、米に比べてかなり少量でございまして、多くの場合、ゼロあるいは〇・〇幾らという程度でございまして、その摂取量を勘案いたしますと、現在のところ米よりははるかに水銀摂取量は少ないものと思われるわけでございますが、従来しばしば米の水銀を、単独で有毒量考えておるわけでございまして、米以外にも、このように野菜等に微量ではございましても摂取せられるという点も、十分配慮して、許容量考えていく必要がある、かように考えております。
  39. 竹内黎一

    ○竹内委員 いまの御答弁ですと、くだものそれ自体についてはさしあたり心配はないというようなぐあいに私は受け取るわけでありますが、先ほども、これまた小林委員指摘の点ですが、アメリカはミラー法によりまして水銀はゼロ、こう規定しているわけですが、そういたしますと、たとえば日本から輸出するミカンのかん詰めなんかにやはり残留水銀があるんじゃないか、こういった関係は、現実に何か問題は起きておりませんか。
  40. 舘林宣夫

    舘林政府委員 アメリカがミラー法によりまして、残留農薬ゼロという規定をいたしましても、この現在用います検査法によります検出能力といいますか、鋭敏度は、〇・〇五以下はかかってこないという検出方法でございまして、したがいましてその検出方法をもとにした場合にゼロということでございますので、別の言い方をしますと、〇・〇五以下はかりにありましてもかかってこないわけでございます。先ほど来お話しておりますように、日本のくだもの等は、たとえばリンゴを例にとりますと、それよりはるかに少ない量でございますので、現実にアメリカでそれが基準にかかってこない現象になっておるわけでございます。なお御参考に、アメリカはゼロということになっておりますが、オーストラリアは〇・一が許容量でございます。
  41. 竹内黎一

    ○竹内委員 いま残留毒性として、主として有機水銀剤が議論になっておるのでございますが、学者指摘するところによりますと、たとえば、アメリカあたりでは、DDTの残留毒性というものが非常に問題になっている。あるいはまた有機塩素剤のクロルデンあるいはケルセン系統のものがアメリカあたりでは注目されている、こういうことでございますが、日本におきましても、こういったDDTの残留の問題、あるいは有機塩素剤関係の問題についての懸念はないものかどうか。これをまた御教示願いたいと思います。
  42. 舘林宣夫

    舘林政府委員 先ほど申し上げました調査におきまして、水銀のみならず、DDT、有機塩素剤、燐剤等、各種の農薬残留量を調べておるわけでございます。まだ最終的な結論ではございませんけれども、ただいままでに判明いたしました調査結果によりますと、許容量のはるか以下の含有量であることが判明いたしております。
  43. 坂村吉正

    ○坂村委員 ただいま水銀剤の問題で、特に先ほど来から米の残留の問題について小林委員からいろいろ御質疑がございましたけれども、これは非常に大きな問題だと思うのです。特に最近のように、新聞なんかで、非常に水銀が米に残留して、それで人体影響を与える、こういうことで非常に不安を与えておる事例があろうと思うのでございますので、いまの段階でも私は国民に対して、あるいは農民に対して、ある程度どういう現状にあるのか、そこをはっきりさせておく必要があるのではないかと思うのです。先ほど鈴木厚生大臣の最後の御答弁で、人体に対する許容量をできるだけ早くきめたい、こういう御答弁がございましたが、実はその許容量についてきめたいといいましても、やはり相当研究の時間がかかるのじゃないかというふうな感じもしますし、現在の段階では、たとえば、諸外国等においても、許容量がどういうような状態になっておるのか、それから、それもまた残留する水銀があるいは無機の場合もありましょうし、有機の場合もありましょう。ですから、無機についてはどういうような状態であるか、有機についてはどういう状態になっているのか、そういう点をいまの段階ではっきりさせることができれば、ひとつはっきりした御答弁をいただいておきたいと思うのです。
  44. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 水銀残留量につきましては、いろいろ水銀の形態によって違いますことは御承知のとおりであります。アルキル水銀の形におきましては残留量が一番大きい、それからフェニール酢酸水銀の形態におきましてはそれに次いで残留量が大きい、無機につきましては残留量はきわめて少ないというようなぐあいに、水銀の形態によって残留量も違うわけでございます。一番人体影響のありますのは御承知のように有機水銀でございまして、これにつきましてはアメリカでは許容量ゼロということをきめて、きわめて厳格に食品取り締まり等をやっておるわけでございます。なお、諸外国の事例等につきましては、事務当局からお答え申し上げます。
  45. 舘林宣夫

    舘林政府委員 残留許容量はアメリカは大臣が仰せられましたように水銀はゼロでございますが、種の消毒に今日日本でメチル水銀を使っておりますが、アメリカでもやはりメチルの水銀を使っておるわけでありまして、したがいまして許容量ゼロでございましても水銀剤が皆無であるというわけではないのであります。先ほどお答え申し上げましたとおり、オーストラリアにおきまする水銀剤許容量は〇二でございますし、ニュージーランドは〇・〇五でございます。したがいまして、必ずしもすべての国が許容量ゼロであるわけではなくて、許容量をある程度認めておる国もあるわけでございます。従来日本では許容量の設定がなかったわけでございます。  なお、御参考までに、この場合の許容量と申しますのは、それを越えれば有毒になるという意味合いではなくて、動物実験を行ないました場合に障害を起こさない最大量、すなわち、それを安全量と言いますが、動物実験安全量のさらに百分の一の量をもって許容量といたしておるわけでございまして、許容量を多少越えたからといって直ちにそれが危険量であるという意味合いとは意味が違うわけでございますので、御了承いただきたいと思います。
  46. 坂村吉正

    ○坂村委員 ただいま外国の許容量の御説明がいろいろありましたが、日本で米の中に、先ほど小林委員の御質問のように、二回散布すると〇・二PPM入っている、こういうことでございますが、そうすると〇・二PPM残留している米を食った場合に、これは人体に対してほんとうに危険な状態を招くのか、あるいはこれは非常に不安で食えない状態なのか、そういう点は私は国民が一番不安に思って知りたいところだろうと思うのです。こうして新聞でいろいろ騒がれてくれば、どうも米を食うと不安だという感じが起こるのじゃないかと思うのです。もちろん、いろいろ今後の対策をずっと至急にやってまいらなければいかぬと思いますけれども、いまのところ別の農薬をつくるといっても、なかなかそう簡単にすぐには代替されるものはないというような状態であれば、いまのところ国民に対して、この米を食っておって不安であるのか不安でないのか、それだけを一応はっきりさしておくことが私は国民に対する親切じゃないかと思うのです。もちろん、このままほっておくというわけではございませんが、至急に対策を講ずるけれども、いまの段階ではそう別に心配しないでもいいのだ、こういうことが言えるのか言えないのか、その点をひとつはっきりさせておいていただいたほうがいいのじゃないかと思うのです。
  47. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 外国で生活をしておる人間の毛髪に対する水銀残留量と、日本人及び日本に帰ってきてから米食等を中心にして生活をいたしました結果毛髪に検出できる残留量というものとの間には、相当の開きのありますことは、調査の結果はっきりデータが出ておるわけでございます。そこで、現在日本人の毛髪に検出される残留量というものが直ちに人体に大きな影響を与えておるかどうかという点につきましては、今後なお医学的にも研究を要すると思うのでありますが、水銀がとにかく体内に残留するというようなことは、これは歓迎すべきことではない。やはり保健衛生上、そういうものがないほうがいいことは明らかでございますので、厚生省といたしましては、農産物が与えるところの人体への水銀剤残留量調査と、それから人体に及ぼす影響というものを鋭意調査を進めておる段階でございまして、先ほど申し上げましたようにだいぶ調査も進んできておりますので、できるだけ早くこの許容量というものをきめたい、こう考えておるわけでございます。
  48. 坂村吉正

    ○坂村委員 できるだけ早くそういう許容量をきめていただきたいと思うのでございますが、その許容量をきめると同時に、私は農林省のほうでも一緒に対策考えて、そうしてできるだけ早く、許容量がきまる段階においては別の農薬開発されておるということに一緒に持っていっていただかなければいかぬと思うのです。たとえば米の問題なんかも、御承知のようにいままで政府の見方では大体十年後に余るのだ、一応そういうムードがあったのですけれども、最近においては米がだんだん不足して、おそらく今年あたりは百万トンも入れなければ間に合わない、こういう状況になっておるのではないかと思うのでございます。そこで、いもち病防除というのが非常に大事な問題でございます。ですから、これを一日もおろそかにするわけにはまいりません。ですから、そういうことと両々相待って、かみ合わせて、農林省でも新しい農薬開発をする。その農薬開発をするといっても、おそらくコストの問題等で非常にむずかしい問題があろうと思います。そういう点もできるだけ早くやってまいる。と同時に、それがきまるまでの間は、水銀剤の実際の散布方法、施用方法、時期、そういうものを考えてできるだけ水銀残留量の少ないような、そういう農薬の使い方を指導する、こういうことが非常に大事なことじゃないか。たとえば、この新聞にありますような委員会ですか調査会ですか、その結果を見ましても、稲に入りましてから五十日たって穂のほうに大体水銀剤が移行しておる、こういうようなことで、施用時期によって米に対する残留量というものが非常に違う、そういうデータが大体出ておるわけです。いもちは御承知のように大体非常にあとになって出てくる穂首いもちもありますし、穂の出ない前の葉いもち、そういうようなものもあるわけでして、そういう場合に施用方法について、どういう時期になるべく使わせるとか、そういうようなこともひとつ御指導いただく。両々相待って、しかも、日本の一番大事な主要食糧の米の中に水銀が入っておって、日本人の体位、健康に害があるのだという、そういう不安を一日も早く国民から払拭することが非常に大事なことじゃないか、こういう感じがするのでございまして、ひとつ政務次官農林省としての御答弁をいただいておきたいと思います。
  49. 仮谷忠男

    ○仮谷政府委員 水銀剤等の取り扱い、今後の対策につきましては、先ほど厚生大臣お答え申し上げたとおり、全力をあげて、一体になってつとめてまいりたいと存じます。ただ、それと並行して、水銀剤にかわる低毒性農薬開発、それが一日も早くこれを普遍化していくという問題につきましては、すでに私どももそういった面で努力を続けておるわけでありまして、これは早急に解決をしていきたいと思っております。  なお、水銀剤自体の使用方法等につきましては、十分留意をして今後の事故防止に最善を期してまいりたいと思っております。
  50. 小林進

    小林委員 私の与えられた時間がちょうどまいりましたので、残念ながら質問をこれで中止をいたしまするけれども、特にこの際、厚生大臣に決意を承っておきたいことは、許容量データ資料が出るまでこういう危険な農薬は禁止をする、こういう決断力がおありなのかどうか。  それから農林政務次官にもお伺いいたします。これにかわるものをつとめて研究したいとあなたはおっしゃっているけれども、もはや諸外国ではこの研究が非常に進んでおりまして、いもち病に対しては、においとか音によってそれを撃滅をするという、いわゆる誘惑戦法と称するような新しい防虫害処置が講ぜられておったり、あるいは細菌戦術といいますか、病虫害をなくすビールスを発明をして、細菌戦術というような形でこれを撲滅する、そういう処置が講ぜられておるのでありますけれども農林省のほうは、いまも申し上げているように水銀の害毒というものは重要視されていないから、片方からのこれにかわるような研究がさっぱり進んでいない、こういうことなんであります。そういうような水銀にかわる防虫害を研究する特別のセクションといいますか、組織を早急に確立せられる意思ありやいなやを承っておきまするとともに、私がこの問題を質問するといいますると、私の知らないような方面からいろいろの被害を受けている問題が殺到してきているのです。資料が非常に集まっておりまするから、私はこれらの問題も整理いたしまして、またあらためてこの問題をむし返し、政府の決意を承るために質問をいたしたいと思いまして、きょうはいまの二つの問題に対して御答弁をいただきながら私の質問を終わりたいと思うのであります。
  51. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 小林さんがこの水銀剤を含む農薬の問題につきまして非常に詳細な研究をされ、また建設的な御意見を聞かしていただきまして、私どもたいへん参考になったのでございますが、先ほど来申し上げますように、水銀農薬人体に及ぼす影響というものは国民も非常な関心を持っておる問題であり、私ども各国のこれに対する行政措置等を考えました場合に、日本といたしましても、できるだけ早くこれに対する確固たる対策を確立する必要がある、かように考えておりますので、十分善処する所存でございます。
  52. 仮谷忠男

    ○仮谷政府委員 農林省が人命を軽視して水銀農薬を使っておる、こういう意味では決してございません。ただ、水銀剤自体の問題点が十分にまだ解明されていない、それにかわる農薬ができないのに一挙に水銀剤をやめてしまうということになりますと、農業生産にもたいへん影響するものですから実は断を下だしかねておるわけでありますが、かわるいわゆる低毒性農薬につきましてはすでに相当研究を進めまして四、五種のものができておるようでありますが、直ちにこれを実施する場合においても、生産コストも非常に高いものですから、そうなれば、それに従って設備の改善、設備の改善に必要な資金の供給といったものも十分検討して今後早急に先生の御趣旨に沿うような努力をしなければならない、こういうように考えております。
  53. 小林進

    小林委員 いまちょうど水銀剤の輸入価格も非常に高騰いたしておりまするから、だんだんこの水銀農薬の原価も高まってきておる。転換をする非常に好機だと思いまするので、どうかひとつこの問題に対しては格段の熱意をお示しあって、画期的な方策を至急に講じていただきますことを要望いたしまして私の質問を終わることにいたします。      ————◇—————
  54. 田中正巳

    田中委員長 この際、おはかりいたします。  理事小沢辰男君より理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  55. 田中正巳

    田中委員長 御異議なしと認め、そのように決します。  これより理事補欠選任を行ないたいと存じますが、その選任は委員長において指名することに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  56. 田中正巳

    田中委員長 御異議なしと認めます。よって、松山千惠子君を理事指名いたします。      ————◇—————
  57. 田中正巳

    田中委員長 次に、労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。足鹿覺君。
  58. 足鹿覺

    足鹿委員 私は、主として出かせぎ問題に関する質疑を関係各省大臣並びに当局にいたしたいと存じます。  大臣の御出席の都合もあるようでありますので最初に農林大臣に伺いたいのでありますが、御承知のように昨年二月二十三日日比谷野外音楽堂において、また本年二月二十三日久保講堂において、また、この三月十三日大阪中之島公会堂におきまして出かせぎ者大会を私どもは開催をいたしました。特に三月十三日の大阪中之島公会堂には約二千人の出かせぎ者が集まりまして、関西としては初めて西日本出かせぎ者大会を開いたわけであります。その出席した人々からみな意見を聞くわけにまいりませんので、代表して各職場の実態等の体験発表をやっていただいたのでありますが、その一人の出かせぎ者は、できることなら親子夫婦一家そろって一つ屋根の下で暮らしたい、それが最低の人間生活であるということを出かせぎしてしみじみと痛感しておりますと涙ぐんでおりました。満場は人ごとならずわが身のこととして拍手を送っておりましたが、私どもがここに出かせぎ者アンケートというものをつくりまして、これを全部に配って、そうして現在回答を求めておりますが、一応の仮集計をしたところによりますと、その回答にも、一家そろって暮らしたい、そのために若干賃金は安くても地元に職場がほしい、こういう回答が圧倒的に多いのであります。このような切実な問題が回答されてきておるところを見ますと、要するに、農民は好きこのんで出かせぎをしておるわけではない。それを余儀なくされておるということだけはよくわかると思うのであります。次に出かせぎの理由をアンケートしてみたものによって見ますと、県によって若干違いますが、借金の返済が第一位で圧倒的に多い。第二が生活費が足りないから。第三が子供の教育費に充てるため。第四が営農資金がほしいから、等になっておるのであります。これを一言で申し上げますならば、農業政策の貧困が悲惨な出かせぎを余儀なくしておる根本的な原因であると言っても私は言い過ぎでないと思うのであります。したがって、農林大臣に伺いますが、農林省はこの出かせぎ問題に対してどのように今日まで取り組んでまいられましたか。いささか軽視しておられるのではないかと私ども考えておるものでございますが、少なくとも出かせぎ農民の実態を調査してすみやかに対策を立てるべきであると考えますが、農林大臣の御所見を承りたいと存じます。
  59. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 お答え申し上げます。  足鹿委員の申されるとおり、確かにこの出かせぎというものをなくしていきたいということはお説のとおりであると存じます。私どもは決してこれを軽視いたしておるのではありません。ただ、最近の情勢を調査いたしました農林省の農家動向の調査によりますと、三十九年においては三十万——これはお調べであろうと思いますが、四十年は二十九万、三十九年は三十万ですから、一万ばかり一年のうちに減ってはおるわけでございます。これは減ったからといって非常にいいということも考えられないので、むしろ働き場が減ったとも解釈できるのでありますから、これをもって解決の一歩を踏み出したとは考えておりません。そこで、これらの面について、なお私どもいろいろと調査をいたし、また各県の調査も参考にいたしておるのでございますが、最近、三十三年以後、三反歩以下の小さな農家の出かせぎはあんまりふえずに、三反から五反、あるいは五反から一町、むしろ一町から一町五反、一町五反から二町、二町五反というほうのがふえていくという傾向も見られるという点から見まして、これらについて考えますと、もちろん出かせぎせざるを得ないという生活の問題もありましょうし、いまお指摘になりましたように資金の関係とか、また子供の教育費とか、そういう面もありましょうし、それからまた農業生産の近代化が進んでいる米作地帯においては、特に米作プラスアルファ、そのアルファの要求において、そのアルファが適当な労働を消化し得ない関係があったりして、それらの問題等が関連しているものであると、こう思います。そういうような関係考えまして、この出かせぎの問題については私ども決して軽視いたしておるのではないのでございまして、十分これらの問題を検討いたしまして、そして対策を講じてまいりたい、こう考えておるわけでございます。
  60. 足鹿覺

    足鹿委員 先日の予算委員会の際にも私はちょっと触れまして、時間がありませんので割愛しておりますが、最近の農家経営の場合は反収が減少してきつつある。農業の近代化によって投下労働時間は確かに減ってきておりますが、その結果は農地の生産性というものが低下しておる。労働の生産性が向上したからといって、それが直ちに農家所得につながるものでないことは農林大臣もよく御承知のとおりである。逆に所得は減る場合が多い。そこでこの余剰労力を何かに振り向けていかなければ問題は解決しないのであります。ところが農民の場合は企業的な能力といいますか、また能力があっても信用がないというふうに、個別投資ができないから、家計を維持するために、あるいは借金を返すために出かせぎということにならざるを得ないのであります。先ほど農林大臣は一万人ばかり減ったということをおっしゃいましたが、これはあとで詳しく申し上げますが、なるほど職安の窓口を経たものはあるいはそういう数字が出ておるかもしれぬ。しかし、職安の窓口を経ない出かせぎ労働者のほうが多いのであります。われわれは、職安の窓口を通じて出ることが、行くえ不明になったり、悲惨な状態を未然に防止する方法だと考えておりますけれども、またそれにはそれのいろいろな悩みがあります。たとえば課税上の問題等の悩みがありまして、好ましくはないが縁故就職ということになり、またいろいろな条件に欠けた飯場関係の仕事にやむを得ず出ていくというような結果になっているのでありますから、あなた方が、いま二十九万で一万減ったというような、そういうことで気をゆるめたり、あるいは大した人数でもないのだというふうに考えられるとするならば、これから何をやろうと考えておられるか私は知りませんが、実態を知らざるもはなはだしいと思います。  大臣が時間がないそうでありますから、結論をそのものずばりで申し上げますが、この出かせぎ問題については主管省は農林省か労働省か、どこですか。また、いま大臣は出かせぎの実態を踏まえてこれから対策を検討すると言っておりますが、この出かせぎが一番多くなってきたのは三十八年ごろからですよ。今日まで三年も経過しているのに、農林省が出かせぎ対策に具体的に手を打ったということは聞いておりませんね。どういう手を打ったか。また今後どういう手を基本的に打とうとしておるのか、また、関係各省とはどういうふうに連絡協議をしてこの問題を総合的に取り上げようとしておられるのか、その点をつまびらかにしていただきたいと思います。
  61. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 ごもっともでございます。私が  一万減ったからと言って、別にこれで解決のほうへ向かったとは申しませんので、むしろ雇われ口が減ったのじゃないかと思うくらいのことを申し上げたのでございます。  それからこの調査は御存じのとおり農家動向調査で農業団体を通じて調査をいたしておるわけでございます。別に労働省の職業紹介所を通ったものだけではないわけでございますから、その点御了承願いたい。私どもといたしましては、先ほど申しましたとおり、根本的にはやはり農業全般の施策を推進することが一番大きいと思います。特に、先ほども申しましたように、米作地帯のごときはプラスアルファという問題、このいわゆる近代化が進めば進むほど、先ほど御指摘のとおり、むしろ労働力が出てまいるのでありますから、それをプラスアルファ、主として農業面に使いたいと思うのでございますが、そういう方向に向かっての努力を払わなければならぬ、こう考えておるものであります。そういう意味合いからいたしまして、この農村の近代化をはかる、あるいは構造改善をはかる、そういう面においても、また昨日のいろいろの選択という面からいきましても、畜産の奨励あるいは園芸、蔬菜の作付の奨励といった面から見てさような方面に力を入れておりますし、さらにその点を考えていかなければならぬ、こう存じております。  それから、こういう問題は一つだけでいくわけではありませんから、もちろん地方に働きの場所が要るわけでございます。そこで、地方開発の問題については農林省だけでなしに各省と相協力して十分進めていきたい。地方の格差是正という問題はもちろんでありますが、これらの出かせぎ問題の解決のためにも、地方開発という問題に力を入れなければならぬことは言うまでもないと思います。これらの方面にも力を注いでまいりたい、こう考えております。  また、現実に起こっておる問題をどうするかということにつきましては、つまり、現に起こっておる出かせぎ者のいわゆる労働条件とかまたそのために起こるいろいろの問題の解決といったようなことについては、これは主として労働省等にいろいろやっていただかなければなりませんので、それらの関係において十分協議を進めていく必要があると同時に、農林省といたしましては出かせぎのいわゆる相談員を設置して、結局農業委員会を中心にいたしまして、出かせぎの多い町村−いまここに的確な数字を持っておりませんが、千町村以上だと思いますが、それらに対しまして大体農業委員会を中心にして六、七名の相談員というものを置きまして、その村から出かせぎに行く人々との間にお互いによく話し合いを進める。そしてその話し合いを進めたことによって、これはやはり職業紹介所等を通して就職いたしますならば、日給の不払いにあったりいろいろなこともないようにしていく必要がありますので、そういう方向に進む意味においてこれらの人が仲介に入ってその労をとるということにいたしておるわけでございます。なおその後における就職その他の問題につきましては、労働省において、本年においても特にいろいろの問題解決の道を講じておるわけでありますが、それらにつきましては農林省も十分労働省とも連携をとりまして進んでおる。こういうことでございます。大体は現在そんなことで進んでおるわけであります。
  62. 足鹿覺

    足鹿委員 いま大臣が御答弁になりましたが、ここに吉村委員もおられますが、昨日のあなたの本会議答弁の趣旨とは違っておる。あとで関連で吉村さんからもやっていただいてけっこうだと思っておりますが、要するにあなた方は農業委員会を通じて実態を最近把握した程度にすぎないのではないですか。根本的には単作地帯におけるプラスアルファ、これはけっこうなことでありますけれども、私が先ほど指摘いたしましたように、それは言うべくしていまの農政ではなかなか期待できない。ですから、勢い基本的な問題が解決する間は、労働省と農林省が、さらに自治省、文部厚生省等いわゆる各行政機関が一体になってこの問題を取り上げられなければならぬはずだと私は思う。あなた方は新国際空港を千葉県富里に設けるためにはあれだけ大がかりの閣僚会議をつくって、そして推進本部長を置いて——結論から言うならば空港をつくるために理想的な農家二千戸を追い出すことにきゅうきゅうとしておるではありませんか。百万といわれ百五十万といわれる故郷を離れて遠隔地に出る者は、あるいは職安を経た者は農林大臣が言われた程度数字かもしれません。しかし付近町村の職場で働いておる者、あるいは近郊地で働いておる者等を加えますと、実態は百万ないし百五十万といわれておる、季節的な農業労働者というものは。しかも、それが先ほど指摘したような悲惨な労働条件のもとに非人間的な生活をしいられ、そして夫婦が半年も一年も別居をし、そのうちに行くえ不明になるという人道上社会的な大問題が起きて久しいのにいまだ関係省との連絡閣僚会議も開かない。そういうことで一体的な農業労働者の、出かせぎ農民の対策がとられたと言えるのでしょうか。私は実際にこの間西日本の大会に行ってみましたが、ある地域の職安の所長さんはなまの声が聞きたいといって留守家族に付き添って、そして大会にまで二人も来ておりました。私はその熱意を非常に高く評価したいと思う。農林省のだれがこの大会に出ておりましたか。われ関せずえんではありませんか。何を調査し、何を行なったのでありますか。ほとんど何もやっていない。すみやかに、あなたと労働大臣と二人が中心となって、関係閣僚会議を設けて、そしてこの出かせぎ農民の労働問題について、まず当面の問題を——基本的な問題はあなたの専門でありますから、あなたの責任において当然とられなければならぬと思いますが、それをおやりになる用意があるのかないのか。ただ、連絡をとってやろうとしておる、そういう答弁で私は引き下がるわけにはまいりません。しかと御答弁を願いたい。農民追い出しの空港に、あなたはあれだけ熱意を入れておるじゃないですか。なぜこのような問題に対して真剣な取り組みができませんか。やれないならやれない、やるならやる、この際はっきりここで言明を求めたいと思います。
  63. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 お答え申し上げます。  お答えする前に、さっき申し上げた文字がちょっと違いますので、御訂正願いたいと思いますが、農家動向調査と申しましたが、農家就業動向調査と、こういうのでございまして、農業団体を通じてではなくて、農林省の統計調査部でやっておるわけでございます。この点を御訂正を願いたいと思います。  それから先ほどの問題について申し上げますと、さっき申しました相談活動の強化をやっておるということを申したのでございます。  それから労働省との関係においては、会議も開き、そして常に密接な連携をとっておるのでございまして、特に今年においては、出かせぎ者に対する職業紹介及び職業訓練の充実、それから労働条件の改善等につきましても、今年度から出かせぎ者に対して特別な施策を講じておられるのでございまして、これらにつきましても密接な連携の上に立ってやっておるわけでございます。  なお、出かせぎ問題に関連して、文部省その他全体との協議はどうかという問題でございますが、これらについて、必要のある場合においては閣議等において十分主張いたしたいと思っておりまするので、特別にそういう機関を設ける必要もないほどに、いままで労働省その他との関係を十分進めてやっておるということだけを申し上げておきたいと思います。
  64. 吉村吉雄

    ○吉村委員 少し関連して大臣考え方をただしておきたいのですが、昨年の一月だったと思いますけれども、総理の施政方針演説に対する私の代表質問の中で、実は出かせぎの問題に触れまして、これほどまでに大きな社会問題になっているこの出かせぎの問題について、労働省が主管となってこの対策を立てるのか、あるいは農林省が主管となってやっていくのかという端的な質問に対して、当時の赤城農林大臣が明確に答弁をされましたことは、それは農政の中で解決をしていきます。こういう答弁でございました。   〔委員長退席澁谷委員長代理着席〕 私は、本会議でもありますから、それ以上突っ込んだことは言えなかったのでありますけれども、その答弁の趣旨というものは、大体のところ、いま足鹿委員が触れましたように、非常に大きな問題でありますから、したがって農林省が主体になって、関係するところの労働あるいは厚生、文部その他の関係各省との間の連絡なり何なりをしていく中心としての対策の素案、根本、こういうものを樹立するという所管官庁が農林省である、こういう理解を持って今日まで至ったのでありますが、先ほどの農林大臣の答弁を聞きますと、現実する問題については、労働省という言い方をしましたけれども、その答弁の内容全体については、どちらかというと、農林省よりも労働省のほうに重きを置いて現在対策を立てているかのごとき、そういう印象を受けるのでありますけれども、これは昨年の赤城農林大臣答弁から考えますと、違いがあるように私は受け取れました。そこで、この際明確にしていただきたいのでありますけれども、根本的な対策樹立の中心の所管の官庁は、一体あなたのほうなのかどうなのか。ここのところを明瞭にしていただきたいと思います。
  65. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 私のことばが足らぬためにえらい誤解を起こしまして、たいへん恐縮でございますが、私の先ほど申し上げましたことは、この出かせぎの起こる根本の原因につきましては、先ほど足鹿委員からも御指摘のあったような事柄、その他私どもにおいて、大体において同様の調査もいたしておるのでありまして、これらについては、根本的にはどうしても農政の問題であることは言うまでもないのでございます。したがって、−農業の近代化を進め、また経営の改善を進め、それからして労働の生産性はもちろん高めてまいるのでありますが、それと同時に土地の生産性も増大していく、さらにまた経営の改善等のうちで重要な問題は、単作地帯のごときところにおいては、米作プラス・アルファ、この要求は以前から多いのであるが、近代化が進めば進むほどその必要が多くなるのでありますから、その面についての努力を払っていく、こういう問題でございますから、これはやはり根本的には、農政の面に入っておることであって、この点は、少しも違ったつもりではないのでございます。ただ問題は、そういうふうにいたしましても、なお問題が残るというわけでありますので、それに加えて、地方開発の問題が必要になるということもありますから、それらの問題についても、この出かせぎ問題については、地方開発という問題が進められることも必要であるということを申したのでございます。ただ現実において、出かせぎに出ておりまする人々の間に起こる労働条件とか、いろいろな問題、現実に起こっておる問題を放置するわけにいかないのでございますがゆえに、これらにつきましては、労働省と相協議いたしまして、密接な連携のもとにおいてこれらを解決いたしていく、こういうことを申し上げたわけでございまして、ことばが足らぬためにいろいろ誤解を招きまして、たいへん恐縮でございます。さような意味でございます。
  66. 吉村吉雄

    ○吉村委員 まあ大臣が言い直しましたので、私もそのような理解に立っていきたいと思うのですが、だとしまするならば、先ほどから足鹿委員も触れられておりますように、農林省が主体になって、関係各省との間に何らかの対策会議を定期的に持つとか、あるいは時期的に出かせぎの多い時期に対処策を考えるとか、こういう措置をあなたのほう自体が立案をし、関係各省との間の連携を密にしていく役割りを果たさなければ、実際はばらばらの行政の中で処理をされてしまう、こういうことになってしまうと思うのです。現にそういう状態だからこそいろいろの問題が起こっておる。そうして先ほど来一万人くらい減ったとかいう話がありましたけれども、実際には三反、五反の農家よりも、むしろ一町とか一町五反あるいは二町、こういう農家の方々が出かせぎをしなければならないということは、実は以前よりももっと農家経営が深刻な状態におちいっているという、半面のことを物語っていると見なければならぬだろうと思いますから、そういう点で、私は関連ですから長くは申し上げませんけれども、ぜひひとつあなたのほうが中心になって、総合的な対策を立てる、そういうための機関を設置をしていかなければ、問題解決にならない。労働大臣がいま出ましたけれども、労働省の予算だけで私は一言申し上げておきますと、出かせぎの問題についての予算はわずかに六百万円ですよ。こういう状態で、一体どういうことがやっていけるというのですか、約八十万人にものぼるといわれるこの出かせぎ者の問題について。そういう状態では、幾らあなたが本気になって取り組んでいます。軽視はしておりません、こう言っても、それはことばだけであって、実のある対策は成り立っていない、こういうふうに言わざるを得ないと思いますから、ひとつ農林省が主管の省であるということを言明されましたので、責任者である農林大臣は、今後もっと積極的にこの問題の解決のために努力をされるように強く要望をしておきたいと思うのです。
  67. 足鹿覺

    足鹿委員 ただいまも、関連質問で同僚吉村委員からも強い御要望がございましたが、にもかかわらず大臣のただいままでの答弁を聞いておりますと、実のある答弁とは私は受け取れません。農家就業動向調査をやったということでありますが、これはもともとある農林統計の中の一項目にすぎない。いわゆる出かせぎの実態がどうかということについては、労働省その他と一体的な総合的な見地から取り組まれなければ実態も私はつかめないと思います。  それから、相談員を設置した。相談員はどういう基準でどこどこに設置して、どういう具体的な相談員が活動して成果があがったか、資料としてお示しを願いたい。どういうことをやりましたか。とにかく私どもの見たところでは、現実の調査をした程度ですよ。それから先一歩でも進んでおる地域は、ないとは言いませんがきわめて少ないと思います。  いま一つ聞き捨てならぬことは、必要があれば閣議で協議してやるのだから、別に閣僚会議というようなものを持つ必要はない、対策協議会というようなものを持つ必要はないということでございますが、それならば、私の質問が済むまで農林大臣はこの席におってもらいたい。徹底的にあなたに認識をさせます。あなたは認識しておられないからそういう無責任なことを言う。いまも話がありましたように、出かせぎの農民対策農林省だということであるならば、出かせぎをしないで済む農政を確立していくということを主軸としながら当面生じておる出かせぎ地におけるところの各種の労働条件をはじめ、あるいは社会保障制度の適用、いろいろな問題を取り上げていくということについては、労働省の真剣な協力なくして何ができますか。  また、留守家族の問題を取り上げていった場合、最近の傾向としては夫婦が出かせぎをしておる例をこの間の西日本大会で見て私はびっくりいたしました。私の知っておる御婦人の人々が私の県からも来ておる。あなたはどういうわけだと言ったら、夫婦で来ているんだと言うから、あとはどうしていますかと言ったら、八十近いおじいちゃん、おばあさんがおるので、中学校の子供をかしらにそこで細々とやらしておるということです。もし一朝何か事変が起きたらどういう事態が起きるのですか。最近の出かせぎ農民の実態というものは、それは農林大臣がお考えになっているようななまやさしいものではありませんよ。青少年の不良化が問題になっておりますが、私が指摘したような環境に置いて青少年が不良化しないという保証がどこにありますか。住みよい環境をつくるようなことをあなたは就任のときに言っておられますが、それが住みよい環境と言えるのでしょうか。もっと突っ込んで考えてもらいたいと思う。  特にあなたは閣僚会議等を設ける特別措置を講ずる必要はないと放言をされましたが、対策協議会というものは、行政官庁のことでありますから、設けて一体どういう弊害がありますか。文部省、厚生省、自治省、これらに呼びかけてこの問題と取り組んでいく、そういうことをしてどうして悪いのでありますか。従来いろいろの問題もっと軽微な問題で対策協議会が持たれた事例はたくさんあるのではありませんか。どうしてその必要がないのでありますか。成果があがっておらぬから私は言っておるのであって、成果をあげておいでになるならばしつこくこんなに申しません。成果があがっておらぬから私は申し上げておるのです。就業動向調査をした程度や相談員を置いた程度でこれが当面の対策になるはずはない。先ほども申しましたように、どこでだれが主宰するということは別として、重大な関心を持てば、職安の所長みずから夜行のバスにゆられて出かせぎ者の留守家族の人々を見守りながら実地の見学に出るくらいの熱意を持つ人たちのあることを私はこの際労働大臣もおいでになったから申し上げておきますが、農林省は一体何をしましたか。農林省の、あなた方の出先には農政局というものがあるのじゃありませんか。東京には関東農政局があり、京都には近畿農政局があって、その星川の大阪で大会が開かれておった。きめのこまかい農政をするはずの農政局がどういう連絡をし、どういうことをやったのでありますか。相談員の設置などということよりも、そういう会合のあることはあらかじめよく承知しておるはずである。あなた方が真剣にこの問題に対して取り組んでおらない証拠には、末端が動いておらぬではありませんか。むしろ熱意を持っておる者は地方の出かせぎ者をかかえる県知事、市町村長である。彼らはなけなしのさいふの中からいろいろな活動費も出しておりますが、では農林省がこの問題に対して何ほどの経費を計上し、活動し、今後も活動しようとしておるか。あなたが必要でないと言われますならば、私はあなたをこのまま解放するわけにはまいりません。私の質問を最後まで労働大臣と一緒になって聞いてください。
  68. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 私のいろいろ申し上げている点にことばの足らぬ点が常にあるのでたいへん恐縮ですが、私がこの出かせぎ問題を非常に重視しておることは前もって申したとおりであります。ただ、根本の問題のほかに一もちろん根本の問題はあるが、しかし現実の問題としてはいろいろいま御指摘のような問題があります。それらにつきましては、労働省等と十分協議をいたしましてこれらの問題に取り組んでおることは、これは言うまでもないのでございまして、これらの問題について何も打ち合わせしておらないということは思っておられないだろうと思いまするので、私は閣議もあることでありまするし、この出かせぎ問題については十分話し合いをいたしておるということを申し上げたのでございます。さらに、これらの問題について必要がありまするならば、いま御指摘のようなことは、これは特に建設の方面に出てきておりまする出かせぎが多いということもありますので、いろいろそういう点から見まして、必要のある場合においては、特にそれらの問題についても協議会を起こすとか、協議をさらに進めるとかいう問題について、何も消極的なつもりではないのであります。ただ、いままでもこれらの問題について、十分ということはできぬにしても、相当突っ込んでいろいろ相談をいたしておるということを申し上げたわけでございます。
  69. 足鹿覺

    足鹿委員 要は、大臣、姿勢ですよ。閣議というものは恒例的に行なわれることでありまして、国政の全般について、しかも短時間に持たれるものであります。でありますから、関係閣僚の中でも最も関係の深い労働省等と一体となられて、そうして、言うならば、あなたは百姓のおやじではありませんか。その子供が人道上の悲惨な立場に置かれておる場合には、他の省に率先して協力を求めて、そして対策協議会等を持って姿勢を正して、この問題と取り組むという姿勢をあなたが示ししてくれれば、勢いあなたの部下や出先機関もそういう気持ちになってくるでしょう。しかし、いまの答弁からはそういうものは私は感得できません。具体的に答えてください。相談員がどういう活動をして、どういう実績をあげておりますか。農家の就業動向調査というものは、これは従来の農林統計の一環なんですよ。出かせぎ対策として特にこれを取り上げたものでもありますまい。どうしてそれで実態が推定できますか。私はこういうことで押し問答したくなかった。もっと率直にあなたがこの問題と取り組んで必ず善処するということを、私は日ごろの坂田さんの人柄もよく知っておりますし、そう言うことを期待しておったにもかかわらず、閣議以外のものは設置する必要はないと断言されるに至っては、その認識の程度を私は疑いたい。前言を修正されるか、少なくとも前向きでこの問題と取り組むために、ただいま私が指摘したような関係各省との間に、特に取り組む対策協議会のごときものを設置して、真剣にこれの処理に当たる、こういうお考えがないならないと言ってください。やるならなると言ってください。あなたのいままでの答弁は弁明にすぎません。相談員や農家の就業動向調査などということでは解決のつく問題じゃないのです。そのことが一つと、いま一つは、出かせぎをしないで食える農政というものについてあなたは異存はありますまいな。主管省でありますから、関係省と連絡を密にしつつ対策協議会を設けるか設けないか。いま一つは、出かせぎしないで済む農政の確立について確約をされますか。この点をはっきりさせない限り、私は私の質問の終わるまで実際を認識させてあげますから、ここにおっていただきたい。
  70. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 この問題について申し上げておるのでありますが、巡回的に相談をやる相談活動の問題については、ちょうど農政局長が見えましたから、その実態を申し上げたいと思うのでありまするが、この出かせぎの現状についての問題としては、先ほども申し上げましたとおりに、農林省、労働省、建設省、それから自治省その他関連官庁が一緒に協議をいたしておるのでございまして、それで、さらに私どももそれらについて常に前向きにこれの解決を主張しておるのでありまするので、特別に力を入れておるだけに、またさらに別に二元的にそれを置く必要もないと、かように思っておるのでございます。もちろん私どもはこれについて前向きにその解決の努力を払うということは、十分ここで申し上げておきたいと思うのでございます。
  71. 足鹿覺

    足鹿委員 私の聞いておることの答弁になってないですよ、大臣。連絡をしておやりになることは、あなたたちが行政上必要と認めておやりになることは、それは私はしてないとは言っていません。だから姿勢の問題として、これだけ人道上の問題を起こしており、社会問題化しておるのですから、この問題と取り組む政府の基本姿勢をあなたが中心となって打ち出すべきである。そのためには関係各省との間で十分打ち合わせをし、実績のあがる具体的な施策を打ち出すための何らかの措置を講ずべきではないかということを言っておる。だから、いままでもやっておるのだからという御趣旨のようでありますが、おやりになってないとは言っておりませんけれども、成果はあがっておりません。ですから、この際率直に反省をされて、前向きの姿勢で対処していただきたい、これですよ。  いま一つは、先ほどからあなたが言っておられますように、経営自体の中でこの問題は解決していく、そのために必要な農政をやるのだということはけっこうなんですけれども、これも実績はあがっておりません。兼業農家はふえる。出かせぎをしていかなければ食えない農家がふえつつあるわけでありますから、この際、出かせぎをしないで済む農政の確立について、今後一段と主管省として努力をする、こういう御答弁があってしかるべきだと私は思うのです。いかがですか。
  72. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 根本的にはさような問題でありまするので、農政問題として解決すべきであるからして、その問題については真剣に努力をいたすということは前にも申し上げたのでありまして、さらに努力をいたしたいと思います。  ただそう申しましても、なかなかこれはそう簡単にいかないということも、私は正直に申します。そう簡単にはいかない、こういうので、したがって現実の問題については、先ほど申しましたように各省とも連携をとって、そして協議をし、進めておるわけでございまして、なお、さらにその効力をあげる必要がある場合においては、特別にまた考えてみたい、こう申しておるのでございます。
  73. 足鹿覺

    足鹿委員 少し答弁の風向きが変わってきたようですが、どうしてそういうことがもう一歩進められぬのですか。では、各省の間に、重要な問題については建設省とこういう連絡をして、対策はこういうふうに講じておる、労働省との問題については、これとこれとこれを進めておる、自治省はどうかというふうに、とられた措置について詳細に御報告を願いたい。
  74. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 農政局長からその点を詳細に報告いたさせます。
  75. 和田正明

    和田(正)政府委員 お答えを申し上げます。  昭和四十年度の予算で九千三百万円ほど、また現在御審議をいただいております四十一年度予算で一億五百万円ほど農家労働力対策のための経費を、四十年度が新規でございますが、計上いたしたわけでございます。先ほど大臣が相談員云々というお答えを申し上げましたのも、いま申しました農家労働力対策の中の一部でございますが、この経費を主として農業会議あるいはその末端にございます農業委員会等を通しまして、出かせぎの問題ばかりでなく、農業労働力全体につきましての実態の把握、さらに就業機会の経路の正常化と申しますか、そういうようなことについてもそれぞれの段階に応じて関係者間の協議を密にするようにいたしておるわけでございます。あわせて全国段階には労働省、農業団体等にも入ってもらいまして、会合を開いて努力をいたしてまいりたいと思っております。   〔澁谷委員長代理退席委員長着席〕 なお、直接の出かせぎの現実問題としての就業経路の正常化あるいは就業条件の改善、そういう面については当然労働省の御尽力が必要でございますので、私どもの間でも担当者間でしばしば連絡もとっておりますし、局長間で話し合いをする機会等もこしらえまして、いろいろ具体的な話し合いを詰めてはおるわけでございますが、御指摘のように必ずしも十分ではないではないかとおっしゃられれば、そういう点もまだまだ多々あろうと思いますので、御趣旨のように今後とも連絡を密にいたしまして、この問題の解決が一歩でも二歩でも前進をいたす方向に強力に推進をしてまいりたいというふうに考えております。
  76. 足鹿覺

    足鹿委員 いまの農政局長の答弁はしろうとにする答弁ですよ。それが何が出かせぎ農民対策になっておりますか。農業会議にいわゆる労働力調整のための予算を交付した趣旨は違うのですよ。それは高度成長政策がとられて農協体制が進んで、若年労働力が都市に流出するという深刻な状態となり、中高年齢層はさらにまた出かせぎが起きた。そうして主として地方の農業会議でやっておるのは、農繁期における労働力調整、それを中心にやっておるのです。何を言っておるのですか。それが特別の前向き姿勢の予算だろうと、一億円組んでおるなどということは、何がそれが出かせぎ農民の今日の悲惨な状態に対応する積極的な取り組み姿勢の裏づけとなりますか。相談員を設置したということでありますが、相談員はどういう活動をし、出かせぎ留守家族のめんどうや相談をやっておりますか。やっておるのは市町村ですよ。あなた方の出先で何ほどのことをしていますか。だから取り組みが足らないと言っているのです。私は決して架空のことを言っておるのではありません。これから材料がありますから、農林大臣はまた時間がすいたらお越しになってよろしかろうと思いますが、いまの農政局長の答えたものは、重大な段階の出かせぎ農民対策の予算ではない、このことだけははっきり申し上げておきます。そういう答弁で満足するようなわけにはまいりません。もっと根性を入れ直して出直してもらいたい。そういう予算が今日の深刻なこの問題に何の役に立ちますか。立たぬとは言いませんが、主管省としての取り組みの浅さ、弱さ、熱意のなさを告白するにすぎないということだけを申し上げておきます。
  77. 和田正明

    和田(正)政府委員 私の答弁の際にも申し上げましたように、農家労働力対策として計上いたしております経費は、御指摘のように全部が出かせぎの問題ではございませんが、そのうちに出かせぎに関する対策の部分も含んでおるということを先ほど申し上げたつもりでございます。もちろんこれが全部出かせぎの問題ではございませんし、いろいろなお効果をあげていないという点につきましては、御指摘の点も重々よくわかりますので、先ほども申し上げましたように、労働省と連絡、会合等もいたしておりますが、さっき大臣から御答弁がございましたように、今後一そう前向きに努力をいたしてまいりたいという趣旨をお答えした次第でございます。
  78. 足鹿覺

    足鹿委員 農林大臣は私の質問をお聞きになる気持ちがあればおいでになってよろしいし、なければ熱意がないものと私は判断をいたしますし、どうあろうとお好きなようになさってよろしかろうと思います。今度こられるときまでに少し頭を冷やして、私が先ほど申し上げたことについて、趣旨にかなうような答弁を考えておいてもらいたい、かように思います。  それでは、労働大臣も先ほどからお待ちでありますので、出かせぎの実態に触れながら労働大臣を中心にお伺いをいたしたいと思います。  まず出かせぎ者の賃金などの労働条件についてでございますが、これは同僚委員からもいろいろといままで予算分科会等でもお話があったと思いますが、なるべくそれと重複を避けまして、具体的な事例に基づいて伺ってみたいと思います。賃金の不払いの問題でありますが、出かせぎ者は大体三月末から四月上旬にかけて国へ帰るのが通例でございます。ところが、問題の賃金不払い事件が起こるのはちょうどこのときに起きてくる。そこで賃金の支払いが毎月二十五日締め切り、翌月の二十日支払いという場合が多いということになっておりまして、これはこの間の中之島公会堂における各地の体験発表も全部そういうことに報告がございました。一々くどくどと申し上げることは避けますが、根拠ははっきりございます。たとえば、三月末でやめた場合に、三月分の賃金は四月二十日でないともらえないということに相なるわけでございます。そこで、農作業の都合もありまして、出かせぎ者はその日まで便々と待つわけにまいりませんから、帰っていく。あとで送金をしてくださいよということで約束をして帰ってくるが、いつまでたっても送金してこない。こういうケースの賃金不払いが非常に多いことをこの間の大会でも告白をしております。しかも、ことしは去年の大会に比べてわれわれが考えさせられたことは、不払いの多発が予想されるということであります。これを非常に心配しております。というのは、昨年まではあまり見られなかった十月−三月までの間に発生した賃金不払い事件がことしは多発しておる事例を私どもの手元に持っておるからであります。私どものほうに出かせぎ対策の実行委員会というものがございますが、参考までに昨年の十月以降に発生してこれに持ち込まれました不払い事件をあげますと、たくさんありますけれども、大体代表的なものを申し上げますと次のようになるわけであります。  長野県佐久市の農民十七名は、鉄道施設株式会社の下請の山口某のもとで国鉄新潟駅構内引き込み線工事その他に就労したが、十月十二日から十一月六日までの賃金が十二月に入ってももらえなかった、わが党議員の努力で年末ぎりぎりに解決したという事例もございます。第二の事例は、青森県の出かせぎ者でありますが、二十一名は愛知県で道路公団の仕事をしたが、十月−十二月までの賃金が不払いとなった、わが党議員が元請会社に交渉したが、すでに下請に支払い済みということで誠意を示さなかった、そこで道路公団とも交渉し、同公団を通じて元請の責任を追及した結果、不払いの責任を元請が負うことで解決した。第三の事例は、秋田県矢島町の出かせぎ農民二十五名が十二月から一月にかけて働いた賃金が不払いとなった、われわれの同僚議員が横浜市の協力を得て、元請業者が責任を負って解決したというふうに、これは一例にすぎませんが、私どものところにはひんぴんとしてくるのです。それをやはり人ごとと思わないで、みんな親身に世話をして解決に努力をしておる。あなた方のほうでもなさっておるでありましょうが、これは一体となって解決に当たらなければできぬことでありますから、決してこのことを誇るわけでも何でもありません。その点はよく私の真意をくみ取っていただきたいと思いますが、これらの実例から見ますと、これは相当多人数の就労者の場合であってもこういうことが起きる。いわんや一名、五名というような小さなグループの訴えが無数にあります。これらはなかなか解決がつかないままに、こちらも手が回らないままに泣き寝入りで帰っていく場合もありますし、そのままになってしまう場合が相当あるのであります。こういう関係から見まして、事例は、いずれも工事を請け負った業者が下請に出す、それがまた下請に出す、何段階も下請させる、いわゆる重層請負の場合にこれが当てはまるわけでありますが、その末端の賃金不払いが多発しておるのが実情でございまして、これは労働大臣すでに御承知のとおりであります。下請業者は建設省や都道府県の登録業者ではないのです。そこに登録されておりますものならば、これはまたある程度相手にしやすい面もありますが、どっちかというと飯場の棒がしらといいますか、そういう立場の人が重層請負の末端の請負をやっておる。ですから資力その他の面について力がないことは言うまでもない。したがって、このような重層下請が現在建設業界の一般的な傾向になっておるところに問題の根本原因がひそんでおると私は思うわけであります。この点等につきまして建設省と労働省はどういうふうに対策を講じておいでになるでありましょうか、労働大臣から御答弁を願い、かつ建設省当局を代表する方でけっこうでありますので、ひとつ所見を明らかにしていただきたいと思います。
  79. 小平久雄

    ○小平国務大臣 賃金の不払い問題特に出かせぎ労働者に対する賃金の不払い問題ということにつきましては、予算委員会をはじめ社労の委員会等において各委員から非常に御熱心な御指摘等もちょうだいいたしておりますし、私も実は就任後この問題に非常な関心を持ちまして、申し上げるまでもなく、賃金は労働者にとりましては生活の根源でありますから、大体これが不払い事件等があるということは、大きく申せば人道上も許さるべきものではない、こういう見地から私は労働省の当局を督励をいたしておることはもちろんのこと、また特に出かせぎ労務者は建設業務に従事することが御指摘のとおり多いわけでございますから、建設大臣とも直接話し合いをいたしまして、とにかく業界の指導ということになりますれば建設省所管でございますから、建設省のほうでもぜひひとつこの問題に関心を持って善処してほしい、こういうことを建設大臣にも私は直接話しました。建設大臣もこれまた非常に関心を持ってくれまして、自来両事務当局においても再三にわたってこの問題について打ち合わせをいたしておるわけであります。  そこで問題は、いま先生が御指摘のように、賃金の支払い日の関係というものが一つ大きくあろうかと思います。これもかつて委員の方から御指摘もございましたが、現在の労働基準法では、先生も御承知のとおり、第二十四条で「賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。」こういう規定もございます。そこで常識的に見ますならば、毎月一回以上払え、その月に働いた分はその月に払えというのが本来の趣旨であろう、常識的にさように私自身は考えておりまして、このことも事務当局にも話しておるのでありますが、しかし先ほど例にあげられましたように、今月二十五日で締め切って来月の二十日に払うというような場合も現実にはあるようであります。しかし、それがはたしてしからば法に違反するか、こういうことになると、いまの法の解釈上必ずしもそうも割り切れない、そういうことに従来解釈をいたしておるようであります。いずれにいたしましても、法の解釈としてはそういうことも成り立つかもしれませんが、本来の精神は、その月の分はその月のうちに払うというのが当然たてまえであるべきだ、こういうことで、そういうたてまえで監督署等を通じて指導するようにということを、実は事務当局にも命じておるのでございます〇  それからもう一つは、先生が御指摘のように、いわゆる元請の業者というような大きな業者につきましてはあまり賃金不払いというような事態はないようでありますが、その下の下のといったような要するに下請の、あるいはその最末端の業者がとかく不払い問題を起こしやすい、また現に相当起こっておる、こういうことでございますので、この点につきましては、先ほど申しました建設省との打ち合わせにおきましても、労働省の立場から申しますならば、とにかくそういった賃金不払いを起こすような下請——何段階かあるかしれませんが、いずれにしても基本的にはそういうものを使うようにしたことは元請に責任があるのであるから、少なくとも社会的な責任はあると思われるから、そういう場合には元請がひとつかわって払うようにしてほしい、こういう希望を私のほうは建設省に申し入れておるわけなんであります。しかし、これも法律的にはなかなか問題があるようでございまして、そう簡単には割り切れぬという問題であるわけでありまして、そこで建設省のほうでもいろいろ御苦心をくださいまして、これは建設省のほうから御説明があるかと思いますが、昨年の十二月の二十日の中央建設業審議会の勧告もあったようでありまして、同月二十七日には建設事務次官通達を発しまして、建設工事の入札参加者の資格審査について賃金不払いの状況を査定要件に加えることとした。下請の賃金不払いについて元請に実質的な責任がある場合には、元請の不払いとみなして査定されるよう関係機関の配慮を要請しておる。こういうことで、建設省のほうでも非常に協力をしてくれておるわけでございます。なお私は、先般来当委員会において各委員から非常に強い御叱正もございましたので、今月の二日だったかと思いますが、建設業労働問題懇談会といったような名前にしまして建設業界のおもなる諸君、関係者に来ていただき、建設省あるいは自治省にもお立ち会いを願って、この賃金不払い問題それからいわゆる飯場の問題、これらを中心にいたしましていろいろ懇談をいたしたのでございますが、その趣旨とするところは、いろいろ法的な問、題もありましょうが、しかし何と申しましても、建設業界自体がこういう問題について重大な関心を持ってもらい、こういうことが未発に終わるように、自主的に処置してもらうということが一番基本であろう、こう思いましたので、その点について強く注意を喚起をいたしたのであります。業界におきましても、それはもっともであるからということで、近々のうちに具体的な施策をつくりまして労働省のほうにも相談がある、こういうことに相なっておるのでございます。
  80. 足鹿覺

    足鹿委員 十二月二十七日付の建設省の次官通牒につきましては私も承知をいたしております。ただいま労働大臣からその趣旨なり内容の一端についてお触れになりましたが、建設省に伺いますけれども、この程度でよろしいとお考えになっておりますか。私は、まだ不十分ではないか、もっと踏み込んでいくべきではないか、かように思いますけれども大臣もおいでにならぬのでなんですが、あなた方の率直な御見解を明らかにしていただきたい。
  81. 志村清一

    ○志村政府委員 お答えいたします。  ただいま労働大臣から詳しくお話があったとおりでございますが、その一環として、先生指摘の次官通牒も出しておるわけでございます。特にその中で補足して申し上げますと、不当な重層下請施行をそのままにしておくというようなこと等で下請管理が不適当な場合には元請が責任を負わねばならぬ。指名あるいは資格審査において非常に減点をし、指名からはずすという措置を講ずるということまで一応次官通牒では盛り込んであるわけでございますが、これらの問題につきましては、建設業の全体の体質の問題にも関連いたしておるものでございますから、私どものところに中央建設業審議会という機関がございます。そこにおきまして建設業全体の問題の一つの関連といたしましてただいまいろいろ検討をしていただいておる状況でございます。その結論によりまして逐次政策を打ち出してまいりたい、こう考えております。
  82. 足鹿覺

    足鹿委員 私どもの言わんとするところはこういうことなんです。賃金不払いを起こすような下請業者を使用した元請業者にも重大な責任があるということを中心に、下請業者の賃金不払いの責任を元請が負うという趣旨の法律化を求めておるわけです。これは同僚議員の栗林さんからですか、華山さんからですか質問があって、速記録によりますと、それはなかなかむずかしいという予算委員会における御答弁なんです。そうだとするならば、むずかしいけれども、ぜひひとつがんばってみたい、こういう一歩前進の姿勢と熱意のほどを示してもらいたいと思いますが、その際、政府は重層下請を規制する、そういうことをなるべく排除していくという方針をやはり明確に出して、そして法律措置等がとられるまではやはり強力な指導をしていくということも考えられると思います。この点についてどういうふうにお考えになっておりますか。何事もそれは一ぺんにできればけっこうでありますけれども、むずかしい問題はケース・バイ・ケースでいかざるを得ないことは私どももよく承知いたしております。当面の対策としては、少なくとも下請業者との賃金契約は元請業者が保証をするというような措置を明らかにすべきでないかと思うのです。これは法律を制定するというところまでいかなくても、ある程度実効のあがる施策ではないかと私は思う。あるいはこれはちょっときびしいのですけれども、もしその保証をしないような元請業者は、政府関係機関や自治体の仕事には入札に指名してやらぬというくらいのことをやれば、これは業者もやはり仕事がなければやれぬわけですから相当反省もし、きき目もあるのではないか。とにかく先ほど並べたケースは元請業者は知らぬと言うのです。そうは通さぬというのがいつも争いのもとなんですから、いま私が述べたような点について検討し、措置をされるという御意思はないか、具体的にひとつ御答弁願いたい。
  83. 志村清一

    ○志村政府委員 賃金不払いを生じました場合に、先生も先ほど御指摘になりましたように、元請業者がその部分をカバーするという例が多うございます。あるいは公共団体等にそういう案件が持ち込まれ、労働省とも相談してやる場合に、そういう方向で解決を見ておる例が多いわけであります。私どもといたしましても、先ほどの通牒におきましても、元請が下請についての責任を相当重視してまいろうという方向を打ち出しておるわけでございます。今後法制化の問題、あるいは先ほど先生指摘のような具体の行政措置の問題等につきましても、私ども前向きに考えていってみたいとも存じておりますが、これらの点につきましては、先ほど申し上げましたように、建設業全体の問題にからむ下請の問題、いろいろからむ問題がございますので、中央建設業審議会の場におきまして十分御審議をいただきまして、その線に沿って改善措置を講ずるように努力いたしたい、こう考えております。
  84. 足鹿覺

    足鹿委員 ひとつ具体的に詰めて早急に結論を出していただきたい、期待をいたしております。  そこで、労働大臣が先ほど三月二日に建設業界の代表を集めて話し合ったということについてその内容の一端をお示しになりました。当委員会における同僚議員の質問等の趣旨を組まれ、また独自の立場も考慮されて手を打たれたことに対しては敬意を表します。だがその実効がどのように今後あらわれるかということは業界の協力体制いかんにあると私は存じますが、話し合いの内容を伝え聞いたところによりますと——これは大臣がそこにおいでになりますので率直に答えていただきたいのです。説示という形で行なわれておると聞いておるのですが、説示というものはどの程度の力を持つものでしょうか。労働大臣が部下に対して説示をされるのは相当きき目があるが、業界に対してはなかなかきき目がないのじゃないかというふうに思うのですが……。
  85. 小平久雄

    ○小平国務大臣 足鹿先生どこから説示したという情報を得られたか知りませんが、私は、労働大臣の立場というものは別段建設業界に説示するなどというそういう権限もないし、立場にないと思います。したがって、私はあいさつしたのであります。ただし、その内容は先ほど申しましたような点についての要請を申し上げた、こういうことでございます。
  86. 足鹿覺

    足鹿委員 よくわかりました。何か新聞でそういうふうに読んだように思ったのですが、御真意のほどもわかりました。もっととにかく前進をしてもらいたいのですが、先ほど建設省の志村計画局長さんが私の質問したことに対して御答弁になったように、何らかの規制措置ということを建設省のほうでも検討しておるということでありますので、労働省のほうも歩調を合わせて、いまのごあいさつのあとをひとつ締めくくっていただきたいと思いますが、いかがでありましょうか。
  87. 小平久雄

    ○小平国務大臣 先ほど申しましたような点について要請をいたす、これもいわゆる単におざなりの要請のしつばなしでは、私は効果がない、こう思いましたので、これも先ほど申しましたが、早急に、少なくともここ一、二カ月のうちには具体的な業界としての案をぜひ持ってきてひとつ相談してくれ、こういうことを申しまして、そうしましょう、こういうことでお別れをいたしたのであります。その要請のうちにも、先ほども申しましたが、私は法律もさることながら、とにかく業界自体がこういった話題をまかぬようにしてもらうことが、これは一番よろしいことであるから、ぜひ業界自身が考えてほしい、どうしても業界が改まらぬということであるならば、これは法をつくることにもいろいろ問題はあるが、われわれとしても法的な処置についても当然考えなければなりませんよということまで、実は率直に申してあるわけであります。
  88. 足鹿覺

    足鹿委員 了承いたしました。熱意のほどよくわかりましたので、業界の協力態度を見て、ただいまの御答弁の線に沿って御善処をお願いいたします。  労働条件の問題の中で賃金問題はこの程度としまして、飯場の問題について、これは栗林委員が現地をよく御存じでありますので、私は前座的にちょっと触れておきます。あとで関連があるそうです。  労働大臣や建設省当局は、大臣はなかなか無理でしょうが、飯場の実情を調査になったことがございますか。
  89. 小平久雄

    ○小平国務大臣 私自身は遺憾ながらまだ見ていません。しかし、局長以下再三見ているようですから、その間の事情は局長から説明申し上げます。
  90. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 建設現場に直接付属いたしましたような寄宿舎と称せられる、俗称飯場もございますし、かなり遠隔地に設けられた寄宿舎、飯場もございますが、いずれにいたしましても、労働基準法上は第二種奇宿舎であるものが多うございますが、届け出を要するものとされております。そういった手続を背景にいたしまして、労働基準監督署におきましては、現場の姿なりそういった状況について把握することに努力いたしております。ただ、現場を見たことがあるかどうか、私も若干はございますが、かなり格差がある、よいもの、悪いものございまして、一律にはまいりませんけれども、特に劣悪なものに対しましては、これを改善する要があるということを業界に対しても強く改善方を要請しておる次第でございます。先ほど大臣からお話がございました業界に対する要請の中にも、飯場改善というのが非常に大きな事項になっておるわけでございます。
  91. 足鹿覺

    足鹿委員 実情は御存じないはずはないと思いますが、私も一、二現地を見て知っておりますが、飯場とは労働基準法に基づく労働省令の二種宿舎をいっておるようでありますが、建設業の場合には、その仕事の性質上、二種宿舎がほとんどであるように見受けるのです。その一般的な状態については局長もただいま若干触れられましたが、建物は普通プレハブですね。中にはまだコンクリートの型ワク材で、周囲をベニヤ板で囲ってトタンを乗せただけといったものが見受けられます。まことにひどいものでありますが、中は二十畳ないし三十畳くらいの広さで、入り口が三尺くらいのドアが一カ所、入り口を入ったところに踊り場があるのですが、大体これが三尺ないし三尺余りの四方のもの、火事でもあった場合にはなかなか逃げ場がないという構造になっております。山梨の飯場の火事で焼死したということについては、同僚栗林議員がわざわざ現地を見ておられますので、これからお話があろうと思いますが、この間の西日本出かせぎ者大会で涙ながらに現地の人が言っておったことは、とにかく十二畳からまあ十四、五畳くらいの広さのところへ、二十ワットの電灯が一つぶら下がっておる。ですから郷里へ手紙を書こうにも暗くて書けない。疲れてしまう。そのうちに寝てしまう。そういうことが重なっておるうちに音信不通となって郷里で心配をする。ですから、手紙でも書こうと思えば一日休む。一日休めば大きな収入減になる。ですから、明るいうちにやらなければならぬが、ちょうど出かせぎの期間が日の短いときである。そういう実情を訴えておりました。まことに今日の世の中にあり得べからざることが現存しておるということを示しておる。ふろは、ないものもあるし、あるものもありますが、あってもドラムかんのものが多いということでございます。押し入れもない。物を片づける場所がないから、勢い万年床になってしまう。せい、ぜい整理をしてみましても、片すみにたたんでおく程度でありますから、掃除が行き届かずして、ほこりとごみで不潔そのものである。食事をする場所には、木の長いすがあって、テーブルが置いてある。ほとんど立ち食いにひとしい。これが普通であります。便所は堀っ立てで、中には炊事場と隣合わせのところや、ひどいものになると炊事場とくっついているという非衛生的なものがたくさんある。食事は一食一菜一汁の程度で、カロリーはとてもいかぬ。これは笑えない話でありますが、もっと栄養をとらぬとからだをこわすではありませんかと言ったら、栄養をつけたら困ることがある、あまりつけられぬと苦笑いをしておった。あとで私、出かせぎ者の諸君といろいろ話してみたしたときも、たまにはそういうことでなしに栄養をつけなさいと言ったら、いやひとりおってそんなに栄養をつける金もないし、またつければ困るのでほどほどにしておる、こういうことで苦笑いをしておった。全くそれは私ども見るにつけ聞くにつけ悲惨のきわみだと思いますが、もちろん休憩、慰安の施設などはない。こういった安全性のない非衛生な、そして生存を一応認められておるというような非人間的な飯場の実態というものに対して、政府は実態を把握するためのどのような調査をしておられるか。なかなか困難なことでありましょうが、社会の日に日に進んでいく中にあって、大きな建設の人柱的な存在としてうごめいておるこの人々に対して、何らかの改善の措置をとることは喫緊の要務だと私は考える次第であります。安全管理、環境衛生、労務者の健康管理等についても、具体的な指導等は行なわれておりません。これらも行なわれなければならぬと思います。あまりにも現代社会の縮図というか、この東京やその他のはなやかなネオンの陰に、このような動物的な生存を余儀なくされておる人々によって、近代建築が、あるいは近代的な交通機関が「その他のものが築かれているということを考えるならば、もっと愛情のある手を差し伸べていくべきではないか。とするならば、この飯場改善ということがまず当面なされていかなければならぬと思います。  そこで、労働大臣に伺いたいのでありますが、政府は、少なくとも出かせぎ者が帰郷する四月の初めまでに、全国一斉の飯場の実態調査を行なってもらいたいと思います。十分とは言えないまでもが、できる限りの努力を払っていただきたいものだと存ずる次第でございますが、この点について労働大臣の御所見を承りたいと思います。
  92. 小平久雄

    ○小平国務大臣 飯場の問題につきましても、先般、栗林先生をはじめ、華山先生等からもいろいろお話を承りました。そこで、先ほども申しましたとおり、建設業界との懇談会でもこれを一つの大きな焦点として取り上げて、業界の注意を喚起し、あるいは要請をいたしたのであります。  元来、飯場の悪いところというところは、先般栗林先生もおっしゃっておられましたが、とかく元請等の場合には非常に感心するほどいいところもある、しかし、資力のない下請等の場合には、えてして非常に悪い飯場のところがある。こういうことでございますので、私は、懇談会の席上でも、少なくとも飯場くらいは、元請だからいい飯場に住まわせるとか、下請だからひどいところでがまんさせるとか、そういうことがないくらいのことは何とか業界でできぬものだろうか、何かそういう施策をひとつ具体的に考えてくれということを実は率直に申しておいたのであります。  そういう業界の協力も、これは当然求めなければなりませんが、一面また、もちろん監督の立場にある労働省といたしましても、できるだけ厳重な監督指導を行なわなければならないわけでありまして、またその前提として、先ほど局長からもお話し申し上げました現在の、いわゆる飯場を規制いたしております事業場付属の寄宿舎規程ですか、これなども、特に第二種については、今日の国民生活の状況から考えますならば必ずしも十全ではない、こういう面もあるようでありますので、労働省としましても、その点は改むべきものは改めよう、こういうことで目下検討をいたしておるのでございます。  それから、さらにお示しの査察の件でございますが、これも、先般の懇談会に引き続いてこの際、主要な地点だけについてでも早急にひとつ一回総ざらいにやってみよう、こういうことになりまして、すでに三月の十四日から関係監督署に命じまして実行に取りかかっておる、こういうことでございます。
  93. 足鹿覺

    足鹿委員 たいへんけっこうでありますが、その結果がわかりましたならば、また当委員会にひとつお知らせをいただきまして、万全を期していただきたいと思います。先ほども申し上げましたように、飯場を全廃していくのが一番いいのですが、そうもなかなかいかない。これが実情だろうと思うのです。だとするならば、最低限の二種宿舎の規程を根本的に改正する必要があるのではないか。一種宿舎にまで引き上げるべきではないか。これがやはりとるべき具体的な措置ではないかと思うのです。協力を求めると同時に、やはり基準を示してそこに誘導し、それを実現せしめていくということが実現可能な具体的な施策ではないか。ぜひそういうふうにしていただきたいと思います。  ここで委員長に、あとで栗林委員からこの問題について関連がございますが、お願いをしたいのです。理事会等で御検討願いたいと思いますが、一ぺん当委員会としまして、幸い労働省のほうでも去る十四日から関係都道府県の実態調査を進めておるということでありますので、理事会の御協議をいただきまして、飯場等の現地を調査して、そしてお互いが認識をして、共通の認識に立ってこの問題の改善に努力をしていくべきではないかと思いますので、そういう点について御配慮をいただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  94. 田中正巳

    田中委員長 ただいまの足鹿委員の御提案につきましては、後刻理事会においてはかって結論を出したいと思います。
  95. 足鹿覺

    足鹿委員 よろしくどうぞ。
  96. 栗林三郎

    栗林委員 足鹿委員の質問に関連して、特に飯場改善の問題につきまして若干お尋ねしたいと思います。  その前に、私は明るい事実と暗い事実を二つ持ってまいりました。最初に明るい事実を皆さんに申し上げて、ここに不払いで苦しめられた労働者、出かせぎ農民の代表も傍聴されておりますから、私はその方々にかわりまして、解決がつきました不払い事件について一応感謝の意を表したいと思います。  先ほど足鹿先生がちょっと触れましたが、この問題は、予算委員会の際に、不払いの実例として私はたびたび取り上げてまいった問題であります。工事場所は横浜市であります。発注者は横浜市であります。工事は平方埋め立て地の道路建設工事であります。これの発注を受けた元請は、横浜市に本社を持つ馬渕建設であります。これの下請が、やはり横浜市に事務所を持つ井上組でございます。この井上組に雇用された秋田県の労務者二十一名、宮城県の季節労務者七名、二十八名が昨年の十二月一日から今年の一月十七日まで働きましたが、一銭も賃金の支払いを受けなかった。そのために、私どもこの解決方を訴えられたわけであります。私どもは、直ちに労働省の監督課を通じまして地元の神奈川労働基準局及び南監督署等に連絡していただきまして、役所を通じてこの解決方の努力をお願いしたわけであります。さらに、発注者である横浜市にもこの解決の協力を要請いたしました。要請したその根拠はどこにあるかといいますと、昨年十二月二十七日に建設次官の通牒で、それぞれ各所管省及び業者に通達された文書、これを一つのよりどころとして横浜市には協力を求めたわけであります。先ほど来足鹿先生の質問の中で明らかにされておりますが、この建設次官の通牒は、今後不良業者を下請に使う場合には所管省の工事発注は差し控える、こういう意味の内容の通牒であります。したがって、非常に微温的な通牒ではございますが、これを一つのたてにし、もう一つは、三月二日に労働大臣が業界の代表を集められて懇談をされた、そのあいさつの中に示されておる、親会社としても不払い等につきましては善処するようにという要望がございます。これらをたてにして横浜市から、その元請である馬渕建設に解決方を申し入れてもらったわけであります。私は、これらの二つの問題は、非常に微温的な内容のもので満足するわけではありませんが、それでも、この程度のものでありましても大きな力になったことは間違いございません。横浜市から強く解決を要請された馬渕建設は、直ちに井上組の不払いについては馬渕が責任を負って解決するという返事をいただくことができました。そうして昨日、元請である馬渕建設関係者二十八名の総賃金百十五万八千七十六円、全部解決をすることができたのであります。私はこの問題を解決するために、毎日のように労働省の監督課に電話をかけました。うるさいほど電話をかけたのであります。さらにまた、地元の監督局あるいは地元の監督署にもうるさいほど、くどいほど連絡をいたしましたが、それにもかかわらず熱心にこの解決に努力をしてくれました。さらにまた、横浜市当局も非常な努力を払われまして、円満に解決することができたのでありますが、この労務者の諸君は、ほんとうに涙を流して喜んでおるのであります。きょうここで傍聴しておりますが、私を通じて労働省の皆さんあるいは市役所の皆さん、心配をして協力をしてくれた皆さんに対して厚く御礼を申し上げてくれ、そういう依頼がありますので、この際、朗らかな事実でありますから、私も感謝の意を含めて、また元請馬渕建設に敬意を表しつつ、この事実を御報告申し上げたいと存じます。  さて、次は暗いニュースであります。御承知のように、去る三月十二日に甲府において飯場の火災があったのであります。この火災で三人が焼死したのであります。詳しく申し上げますと、ここに働いておりました、この飯場に寝泊りしておりました労務者は、いずれも宮崎県出身であります。佐藤春季さん、二十歳へ金田一洋人さん、二十歳、甲斐昭一さん、二十三歳、この三人が、一人は二階で、二人は下で逃げおくれて焼死したのであります。そこで私は、これら焼死をしました三人の罹災者に対して、現場で死んだのではありませんが、現場の延長とみなされる飯場内の事故死でありますから、もちろん労災適用になると思いますが、これらの三人の方々に対する労災の手続はどうなっておるのか。さらにもう一つ、法的な措置以外に、この雇用者が日立工事株式会社でありまして、かなり経済力の強い、資力も強い相当の業者であると聞いております。   〔委員長退席、竹内委員長代理着席〕 したがいまして、これから私が申し上げますが、ひとつ会社側においても使用者側においても、法律以外の道義的な弔慰金を遺族の方々に贈呈されるものと私は思いますが、これらのことにつきまして、地元監督局並びに監督署はどういうような助言なり指導を与えておられるか、まずこの点をお尋ねいたしたいと思います。
  97. 小平久雄

    ○小平国務大臣 お話しのように、三月十二日に甲府市におきまして、寄宿舎が焼けて三人の方が焼死をされたということは、はなはだ遺憾なことでございます。そこで、お尋ねの第一点は、労災保険の関係がどうなっておるか、こういうことでありますが、労災保険につきましては、元請であります日立が保険料等は支払いをしておりまして、手続上問題はございません。したがって、三名の方の遺族に対しまして、すみやかに遺族補償給付を行なうために目下手続を進めておるところでございます。ただ、賃金の算定につきまして、住み込みでございましたから、給食の実物給与の評価などに問題がございますので、それらについて検討をいたしておるところでございます。  それから会社の弔慰金の関係でございますが、とりあえず日立工事において五万円、それから直接この三名が雇われておりました安永動力工事において四万三千三十三円、もっともこれは告別式に集まった香典を均分に分けたもののようでありまするが、それだけをやっておいた。その他の弔慰金につきましては、両者、すなわち日立工事と安永動力工事の両者においても弔慰金を払おう、こういうことで目下検討いたしておる、こういうことでございます。当局としましても、できるだけ多額の弔慰金を出してもらうように配意をいたしたいと思います。
  98. 栗林三郎

    栗林委員 次のことは、時間がありませんから答弁はよろしゅうございますが、この三人の給付基礎日額が一応出ております。その基礎日額によりますと、甲斐さんの場合は九百三円、それから金田一さんの場合は七百八十二円、佐藤春季さんの場合は八百六十九円、こういうような数字が基礎賃金として一応出ておるわけであります。しかし、いま大臣から御報告がありましたように、食費などは現物給与のところのように私も見受けてまいりました。現物給与ということであれば、これは当然基礎日額の中に算入してしかるべきだと思いますので、ぜひともひとつ、その現物給与の分はこの基礎日額に算入するように、最善の努力と御検討を御要望申し上げておきたいと存じます。  さて、次が問題なんですよ。この飯場は、端的に言って違法の飯場であります。それでたいへんなのでございます。まず、この飯場の建っておる位置を申し上げますと、甲府市飯田町天神二三二四、日立工事株式会社甲府作業所飯田町寄宿舎であります。もちろんこれは二種の宿舎であります。この宿舎は、五間の三間、十五坪の二階建てであります。この棟が三棟全焼である。その他の建物も焼けております。ところが、この飯場は、出入り口は一カ所しかないのであります。二種であれ、一種であれ、出入り口は万一の避難に備えて二カ所以上設置しなければならないという省令の規定があるはずであります。本法の九十六条を受けて、省令第三十九条の五号であります。出入り口は二つ以上設けなければならないと明確に規定しておるわけであります。ところが、この焼けた飯場は、いずれも出入り口は一カ所しかなかったのであります。階のほうは、階下から二階に出入りするというはしごつきではございません、簡単なはしごを外部からかけて出入りする、そういう出入り口になっております。下のほうは、これまた一カ所の出入り口しかないのであります。私は端的にお尋ねしますが、こういう飯場、こういう宿舎は、法九十六条、省令三十九条第五号に違反する飯場であると思うものでありますが、この点に対しての率直な御意見をひとつ御表明願いたいと思います。
  99. 小平久雄

    ○小平国務大臣 問題の焼けました宿舎が、先生の御指摘のとおり、事業附属寄宿舎規程第三十九条の第五号に違反をしておりまして、出入り口が一つしがなかったということを当局でも承知いたしました。したがって、目下その点につきましては捜査をいたしておるところでございます。さらに明確になりますならば、法の命ずるところによって手続をいたします。焼け残った宿舎につきましても、やはり違反しておりましたので、、これは直ちに出入り口を二カ所以上設けるように、すでに変更命令を出したところでございます。
  100. 栗林三郎

    栗林委員 出入り口をもう一つ設けておらなかったということで、幸いに災難はのがれることはできましたが——というのは、逃げおくれて三人が焼死したのでありますが、その中で、同じく逃げおくれたが幸い窓を破って脱出して、災難をのがれた労務者が一人おるわけであります。これも私は貴重な資料になると考えておるのでございますが、大体飯場の窓の外のほうは、金網を張っておるのが非常に多いのです。もしも金網で窓をおおっておったならば、この労務者は逃げることができなかった。幸いにしてビニールの網でございましたから、それを破って脱出することができたわけであります。もしも避難をするもう一つの出入り口がありますならば、私は、これらの犠牲者を出さないで済んだんではないか、こういうふうにも考えるわけであります。しかし、この現状は、彼らは相当泥酔しておりました。そうして夜中の一時ごろ帰ってきまして寝込んで間もない火事でありましたので、ついに目ざめることもできなくてそのまま焼け死んでしまった不幸な事件でありますが、しかし、一人の労務者は窓を突き破って逃げておるのであります。こういう貴重な経験、実例資料がここに出たわけでありますから、どうかこの際、飯場に対しましては、第二種宿舎に対しましては、必ず法に規定されているとおり、省令の規定どおり二カ所以上の出入り口を設置するよう厳重な命令を出してもらいたいと思う。これは単なる一例じゃないのです。私は二百幾つの飯場を調査した資料がありますが、その中で、いままで議論をしてきた内容は、清潔、整とんを中心にして飯場の改善を要望してまいりました。しかし、今回はそうではなくて、第一種の規定は三十カ条にわたる綿密な規定がなされておるわけでありますが、飯場の規定、第二種の規定は、わずか三カ条の規定しかない。そのわずか三カ条の規定の中の一つ、との大事な規定が、どこの飯場でも無視されておるというこの事実であります。東京から神奈川にかけてある何百何千の飯場の中で、正規の出入り口を二つ以上設けておる第二種寄宿舎は幾つありますか。大半は違反の飯場であります。したがいまして、法律違反の飯場を黙認しておるこの責任は、私は、労働省は真剣に考えてもらわなければならないと思う。少なくとも直接の監督、指導の衝に当たる基準監督局長としましては、明らかに法律に違反しておる飯場がたくさんあるのですから、これは直ちに適切な命令を出して改めさせてもらいたい、こういうように強く要望するものであります。先ほど労働大臣は、飯場の改善の必要は認める、したがって十四日から調査を開始したという御報告をいただきました。どうかこの調査をもっともっと積極的になされまして、この調査の中に違反の飯場がたくさんあることを認識されて、こういう事実にぶつかったならば直ちに命令を出して、再びこういう災害を発生せしめないよう事前の措置を講じていただきたい。このことを強く私は要望して質問を終わるものでありますが、この際、この点について労働大臣のもっと強い意思表明をお願いいたしたいと思います。   〔竹内委員長代理退席、委員長着席
  101. 小平久雄

    ○小平国務大臣 先生の御指摘、まことにごもっともでございまして、先ほど申し上げました、この十四日からすでに開始しました飯場の一斉監督におきましても、これは大体南関東で約二千の飯場をやることになると思いますが、特に規則に違反しておるかどうかというようなことは、もちろん厳重に監督をさせますし、なお、御承知のとおり、この規則では直接火災予防といった観点からの規定はないわけですが、そういう点にも十分配意をして監督するように、こういうことをすでに命令を出しておるわけでございます。
  102. 足鹿覺

    足鹿委員 まだ私の質問は残りがあるわけでございますが、きょうは本会議の時間も切迫してきておりますので、委員長のほうで、次のなるべくすみやかな機会に私の残余の質疑を行なえるように、御配慮をお願い申し上げたいと思います。そういう意味におきまして、きょうの質疑は、一応あとは留保いたしたいと思っております。よろしくお願いいたします。
  103. 田中正巳

    田中委員長 次会は来たる二十二日午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。    午後一時四十一分散会