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長谷川(保)
委員 たとえば話を技術者の養成に限って議論を進めてまいるにいたしましても、今日、僻地医療の問題がずいぶんと問題になってきている。今回の予算書を拝見いたしましても、巡回診療車、あるいは船、あるいは
患者の運搬車というような予算が、ごくわずかでありますけれど
も見えております。しかし、考えなければなりませんことは、僻地に診療所をつくりましても行く医者がないのです。私
どもの少し近くの山奥に参りますと、そう遠く都会を離れておらぬと思うのでありますけれ
ども、そういうところでも直営診療所というのはつくっておりますが、医者がおらぬ。どんなに村民が骨を折っていたしましても、行く医者がないのです。看護婦もないという形になっておる。今度、都会のほうを見ましても、本省の直接の責任を持ちます
保健所を見てまいりましても、
保健所の医者や看護婦、保健婦の充足はどうか。これまた、めちゃくちゃと言うほかないのであります。よく
保健所の諸君が
病院の監査に来る。そうすると、これでは医師が一人足りませんとか、薬剤師が一人足りませんとか、看護婦がどうですとかいうことを、よくこごとを言うのでありますが、私はよくその
あとでその諸君に言うのです。
自分たちのところを見てみろ、
自分たちのところの
保健所に医者がいないじゃないか、大きなことを言うなと言うのでありますが、彼らは彼らとしての役目柄言うのでありますけれ
ども、実際
保健所にも医者がない。この三十九年の厚生白書で
保健所のところを見ますと、
保健所は、「技術
職員なかんずく医師の充足
状況は非常に悪い。」と書いてある。非常に悪い。本来の非常に広範多岐にわたります衛生行政をやっております。監督しております
保健所自体に医者がない。僻地だけじゃない。町でも、ないんだ。では、本省の直接おやりになっている国立療養所、国立
病院等の医師の充足率はどうか。これまたずいぶんひどいもので、この間もだれかが予算
委員会の分科会で
質問しておりました。山形県のある国立療養所の二百二十人の
患者を
院長一人で見ている、そういうようなひどい話です。これは
精神病院の実態を見てもそうです。これだけ
精神病
患者がふえ、また大きな社会的な危害をしばしば与えておる。そのときには、
新聞だねになると大騒ぎするのでありますけれ
ども、いつの間にかこれまた消えてしまう。そうして
精神病者を
病院に入れられない。建てるほうは、建てることはできましょうけれ
ども、医者がない。この前も、何とか
精神科をひとつ開いてくれませんかということを、私に会うと、よく私の近くの
保健所でも言うのです。けれ
ども、
精神科を開いたところが
精神科の医者があるか。御
承知のように、ないのであります。大学に行っても、
院長としては二十万円以上の手取り、平医員としてでも十二万円以上の手取りでなければ出せませんというような
状況で、
精神病者はどうしようもないという
状況であります。なるほど、
保健所の勤務の医者に七五%の給与のアップを断行なさった。私は、
厚生省としては、
大蔵省としてもそう思いますが、よくもこれだけ思い切ったなと思って感心しておるのでありますけれ
ども、しかし、そういう技術者を養成せずに、この
厚生省の直系のいろいろなところにつとめる医者の給料を上げる結果はどうなるか。民間のものからひっこ抜く以外にないという形になってくる。そうすれば民間のほうではたまりませんから、それよりも少し高い給料を出すという形になって、また引き抜きっこになる。だから、問題は絶対数が足らぬということになってくるのでありましょう。あるいはまた、医療行政
制度というものがゆがんでいるというところからきているのでありましょうから、その根本を直すということに努力をしなければならぬ。
血液問題も、今日非常に大きな問題になっている。きょうは大臣にぜひその点を、ここにおって聞いてもらわなければならぬと思ったのでありますけれ
ども、血液問題でも閣議決定で売血を禁止する、けっこうな話です。日赤一本でやるという考え方はけっこうでありますけれ
ども、それじゃ血液技術者を養成してあるか、その養成に手を出しているのか、何にもやっておらぬ。それでありますから、まず日赤自体が幾ら努力しても、たちまちそこにはいろいろな間違いが起こってくる。実際この間あった事実でありますけれ
ども、日赤でつくりました保存血液をうちでも使ってみたパイロットと本体とがAとBで全く違う。
〔小沢(辰)
委員長代理退席、
委員長着席〕
これは一般の開業医が、緊急の場合、十分に血液型の
検査をせずに使えばたいへんなことになる。
患者は死んでしまう。パイロットがAであって内容がBであるというようなことが、三つも起こっている。この間、私の
関係でありました。それは血液を扱う技術者の養成をせずにあわててやるからです。一方ではどうなったかというと、もう血液が不足しちゃって、昨年末から今年にかけて、私の近所の多くの大
病院はもう手術ができない。ついに手術がおくれて
患者が死んだというような事件が起こって、
新聞だねになった。静岡県だけでなく、愛知県でも同様であります。とうとう愛知県では、血液行政をやり直してもらいたいという申し入れをしたということが
新聞記事に載っておる。そのほか重症心身障害児の問題でも、重度精薄の問題でも、救急医療の問題でも、ことごとくそのときの
事情に追われて、政策だけは立てるけれ
ども、それに対する技術者、人材の養成ということをしませんから、そこにそういう間違いが起こってくる。
昨日発行された週刊朝日を見ると、
厚生省御自慢の小児
病院に看護婦さんがない、かわいそうな子供だという記事が出ておるようであります。私はまだ見ておりませんが、広告を見ると「看護婦さんやーい」というので、小児科
病院の記事が大きく出ているようであります。これらは何とかこの三月の卒業期を控えて、
厚生省としては小児科
病院の問題は充足するのでありましょうけれ
ども、こういうところに今日の
厚生行政の非常なひずみがある。間違いがある。そういう技術者の養成というようなことに当然十分な力を入れるべきであると思うが、それらの点について一体どういうようなお考えを持っているのか。これこそ大臣に伺いたいと思ったのでありますけれ
ども、私は今日の
厚生行政の非常な弱点だと思いますから、十分なお考えを承りたいと思います。