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1966-02-22 第51回国会 衆議院 社会労働委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年二月二十二日(火曜日)    午前十時四十六分開議  出席委員    委員長 田中 正巳君    理事 小沢 辰男君 理事 藏内 修治君    理事 齋藤 邦吉君 理事 澁谷 直藏君    理事 竹内 黎一君 理事 伊藤よし子君    理事 河野  正君 理事 吉村 吉雄君       大坪 保雄君    熊谷 義雄君      小宮山重四郎君    西岡 武夫君       橋本龍太郎君    松山千惠子君       粟山  秀君    山村新治郎君       足鹿  覺君    淡谷 悠藏君       滝井 義高君    八木 一男君       本島百合子君    吉川 兼光君       谷口善太郎君  出席国務大臣         労 働 大 臣 小平 久雄君  出席政府委員         労働事務官         (大臣官房長) 辻  英雄君         労働事務官         (労政局長)  三治 重信君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      村上 茂利君         労働事務官         (婦人少年局         長)      高橋 展子君         労働事務官         (職業安定局         長)      有馬 元治君         労働事務官         (職業訓練局         長)      和田 勝美君  委員外出席者         専  門  員 安中 忠雄君     ――――――――――――― 二月十六日  委員賀谷真稔辞任につき、その補欠として  長谷川保君が議長指名委員に選任された。 同月十七日  委員藤本孝雄君及び八木一男辞任につき、そ  の補欠として荒木萬壽夫君及び小松幹君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員石橋政嗣君辞任につき、その補欠として八  木一男君が議長指名委員に選任された。 同日  委員荒木萬壽夫君及び小松幹辞任につき、そ  の補欠として藤本孝雄君及び石橋政嗣君議長  の指名委員に選任された。 同月十八日  委員小宮山重四郎辞任につき、その補欠とし  て西村直己君が議長指名委員に選任され  た。 同日  委員西村直己辞任につき、その補欠として小  宮山重四郎君が議長指名委員に選任され  た。     ――――――――――――― 二月十五日  駐留軍労働者雇用の安定に関する法律案(中  村高一君外十三名提出衆法第九号)  国有林労働者雇用の安定に関する法律案(吉  村吉雄君外十二名提出衆法第一〇号) 同月十七日  中高年齢者雇用促進法案吉川兼光君外一名提  出、衆法第一三号)  失業保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第六七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 二月十六日  国民年金国庫負担増額等に関する陳情書  (第一四号)  国民年金制度改善に関する陳情書  (第一五号)  同外一件(  第五八号)  国民年金法改正に関する陳情書  (第一六号)  公衆浴場法等の一部改正に関する陳情書  (  第四二号)  各種医療保険制度の一本化促進に関する陳情書  (第五〇号)  医療費支払い審査方法等法制化に関する陳情  書  (第五一号)  重症心身障害者(児)収容施設等整備拡充に  関する陳情書  (第五二号)  失業対策事業改善に関する陳情書  (第五三  号)  成人病予防対策に関する陳情書  (第五四号)  予防接種費全額国庫負担に関する陳情書  (第  五五号)  清掃施設整備事業に対する国庫補助増額に関す  る陳情書  (第五六号)  国民健康保険制度改善に関する陳情書外二件  (第五七  号)  水洗便所普及促進等に関する陳情書  (第五  九号)  小規模水道法的規制措置に関する陳情書  (第一〇一号)  簡易水道に対する国庫補助金増額等に関する陳  情書  (第一〇三号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  労働関係基本施策に関する件(労働災害に関  する問題)      ――――◇―――――
  2. 田中正巳

    田中委員長 これより会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。河野正君。
  3. 河野正

    河野(正)委員 政府は常に人間尊重それから社会開発、こういう点について特に力を注いでやっていくというようなことを言明されてまいったわけです。そこで、それらの基本的な点についてはいずれあらためてお尋ねをしたいと思いますが、きょうは参議院との関連で多くの時間できぬということでございますから、一、二点にしぼってお尋ね申し上げたいと思います。  その一つは、昨年の二月は、北海道夕張炭鉱で大爆発がございまして、六十二名の死亡者を出したことは御承知のとおりです。さらに続いて四月には、長崎の伊王島においてこれまた同じような大爆発が起こって三十名のとうとい人命を奪った。さらにまた同じく二カ月おいて六月におきましては、福岡県の山野鉱業所において、これは実に二百三十七名という非常に膨大なとうとい命を奪った。こういうふうに昨年は全く終始災害の一年だった、こういうふうなまことに悲しい結果に終わったわけです。ところが、これはまあ労働省努力もあると思いまするけれども、しかし現実には業務上災害発生率というものは、パーセンテージからいきますとやや減少しつつある。しかし、実数においては増加をいたしておる。これは労働人口がふえてまいりますから、パーセンテージとしては減っておる、発生率としては減っておるけれども実数においては増加の傾向がある、こういうことでございます。  そこで、それらについてはいろんな原因があろうと思いますが、その細部についてはいずれいろいろお伺いする機会もあると思いまするけれども、一応それらの現状に対する労働省の方針なり、また見解なり、そういう面についてのお答えをまずもってひとつお願いを申し上げたい、かように考えます。
  4. 小平久雄

    小平国務大臣 河野先生指摘のように、昨年じゅうにおきましても非常に多数の労働災害犠牲者を出し、さらに今年に入りましても御承知のとおり最近、昨年ほど大規模ではございませんが、相当また事故が続発しておるということははなはだ残念であり、ほんとうに遺憾に思っているわけでございます。労働省としましては御承知のとおり事故防止のための推進計画等も立てまして、それぞれ業種によりまして、事故率をどのくらいにするという一つの目標を立てて、これが達成のために、民間協力をお願いして努力をいたしておる。民間組織につきましても、御承知のとおり、特に事故の多いような業界につきましては、事故防止のための団体等もおつくりを願って、事故防止の諸施策を強力に進めていただいておる、こういうことをやっておるわけでございますが、いずれにいたしましても、御指摘のとおり、率においては若干の減少をしておりますが、絶対数においてはむしろ若干ふえておる、こういう現状でございます。このうち、炭鉱等鉱山保安につきましては、御承知のようないきさつになっておりまして、直接は通産省のほうでその所管をいたしておるわけでございますが、もちろん労働省としても、これに協力をいたしまして、昨年の山野爆発事故の後は、労働大臣から通産大臣あて勧告等も出しまして、相協力して事故防止につとめておる、こういったことをやっておるわけでございます。最近の事故を見ますと、ガス爆発的なもの、あるいはそれに伴って火災事故が起きて、そのために思わざる多数の人が一挙に、あるいは死亡し、あるいはけがを受ける、こういったようなものがどうも多いように見受けられます。こういう点は確かに作業の内容といいますか、そういうものが逐次改まってきておる、あるいは材料等もいままであまり使いなれなかったものを使っておるとか、こういう面が非常に多い、そういうことであろうと思いますので、労働省としましても、特に来年度におきましては、もう少し、例の安全研究所などにつきましても、特に試験場ですか、屋外の実験場等も郊外に移しまして、そういう点についての研究を実際に即してできるようにいたそう、こういうことで予算でもすでにその処置をとっておるわけでございます。  それからなお、事故関係では、従来基準監督署等でずいぶん監督をいたしましても、単に注意を喚起する、あるいはどう改めなさいという勧奨を行なうに大体とどまったようでありまして、そのいわば裏づけに欠けるところがあったように見受けられます。そういう点で、これは主として中小企業関係になると思いますが、勧奨する以上は、その裏づけとしての金融等めんどうも見てやる必要があるであろう、こういうことで、来年度におきましては、十五億円の予算をもちまして、特に中小企業等安全衛生施設改善を要する向きに対しましては、金融めんどうも見てやる、これも六分五厘という低利でひとつめんどうを見よう、こういうことで、いずれにいたしましても、全体として、積極的に事故防止対策を従来にも増してやってまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  5. 河野正

    河野(正)委員 昨年の場合は主として鉱山保安の問題でございますから、これは監督行政を一本化しろとかいろいろな意見もございますけれども現状においてはやはり通産関係ということでございますから、一応この点については差しおいておきたいと思います。  そこできょうは、主としてその他の事故災害ということになると思いますが、その中でも、いま大臣からいろいろ御説明お答えがございましたが、一つには、安全研究あるいはまた事故対策をどうやっていくかという技術的な問題だろうと思います。それからもう一つ、私は行政上の指導監督という面があると思います。そこできょう私は、特に最近問題となりました例を取り上げて、行政上の点から、この点についてのいろんな御見解を承ってまいりたい、こういうふうに考えます。  その顕著な一つは、十六日に名古屋タンカー事故が起こりまして、そして十五名というとうとい犠牲者を出した。ところがこの点については、どうも行政上の処置に具体的な手落ちがあった。行政上の処置手落ちがあって、そういう不幸な災害を繰り返すということになるとするならば、これは非常に労働省としての責任も大きいと思うのです。そういう意味で、事故防止対策というものが今日非常に大きな問題となって爼上にのぼってまいっておるわけですから、若干私どもも建設的にこの問題についての御見解を承っておきたい、こういうふうに考えます。
  6. 小平久雄

    小平国務大臣 名古屋におきまして先般タンカー事故で十五名の生命を失ったということは、まことに遺憾にたえません。その間、石川島播磨名古屋造船所に対して、従来労働省関係における行政においてどういう指導をしておったか、その詳細につきましては後ほど基準局長から御答弁申し上げたいと思いますが、あの事故が起きましたので、労働省といたしましては、さっそく労災部長を本省から現地に派遣いたしまして、安全研究所職員等も帯同させまして、現地基準監督署も直ちに原因その他の調査に当たったわけでございます。そこでこれは、先ほども申しましたが、結局、発火による一酸化炭素中毒が死因であろう、こういうことになっておるようでございますが、その発火原因そのものが、いろいろ推測はされておるようですが、実はまだこれといった結論には至っておらないようでございます。また造船所等は、申し上げるまでもなく、いわゆる下請等作業が非常に多い。今度の場合も下請明星工業というものが作業をしておる、その従業員事故にあった、こういうことでございますが、いずれにしても、そういう複雑な作業体系にあるところでは、統括的な安全管理者というものを設けて、下請業者等安全管理について統括的にやる、こういうたてまえになっておるのですが、その統括責任者等も選んであったようでありますし、そういった管理面組織という点では欠くところがなかったというように私も報告を受けておるのでありますが、問題は、組織ができておったにしても、それがはたして十分に活動しておったものかどうか、役目を果たしておったものかどうかという点がむしろ問題なのではなかろうかと私は思うのでありますが、その辺のところも、実はまだ調査中でありまして、判然とはいたしておらないわけでございます。こういう事故につきましても、発火原因自体とともに、せっかくの安全管理の機構が十分に働いておったかどうかという点も十分今後検討をさせまして、今後の事故対策上の貴重な資料にしたい。そういう点での当局監督が不十分であったといたしますならば、これらに今後十分気をつけて、せっかく組織ばかりつくりましても、これが動かぬのでは実際何もならぬと思いますから、そういう点についても十分注意を払って監督をしていく、こういうことで対処してまいりたい、かように考えております。
  7. 河野正

    河野(正)委員 この石川島播磨造船名古屋造船所におきましては、大臣も御承知だと思いますけれども、昨年の八月、今度と同じような事故発生をしておった。結果的には、このことが非常に参考になるというふうなことのようです。ところが、今度の十六日の事故が起こった際に、現地基準局関係者は、昨年の八月も今度と同じようなケース事故ですが、そういう事故がわかっておったならば、今度の事故というものは防止できたかもわからぬ、そういうことを、今度の事故の当初、基準局側が言っておった。ところが、実際には、昨年の八月の名古屋造船所事故というものは、事業主側のほうから基準監督署に対して報告されておったところが、その報告書が、この監督署の机の中に放置されたまま何ら調査されなかった。局側は、何か昨年の八月の事故事業主側がほうかむりをしておった、そういうために今度の事故が起こったんだというような発言がなされて、結果的には非常に関係者からひんしゅくをかった、こういうぶざまなかっこうが出ておるようでありますけれども、こういう点についてはいかように御理解願っておりますか、御見解を承っておきたいと思います。
  8. 小平久雄

    小平国務大臣 はなはだ申しわけございませんが、私は、昨年八月の事故について、現地監督署なり、あるいは基準局なりがどういう扱いをしたか存じませんので、報告に接しておりません。が、その点は、いずれにしましても、そういう、いま先生お話のような取り扱いであったのだ、それが事実であったとしますならば、これははなはだ遺憾なことでございまして、いずれにしても、行政として、極端に言えばはなはだどうも不届きなやり方だと思います。ですから、今後そういうことのないように、これは十分関係方面注意を喚起いたしたいと思いますが、昨年の事故について、当時どういういきさつがあったのか、それは基準局長のほうからひとつ説明を申し上げさせます。
  9. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 御指摘の点は、昨年の八月四日に石川島播磨名古屋造船所におきまして同様な火災事故発生した。ただ、幸いなことに死傷事故ではなかった。そこで、監督署のほうにおきましては、従来、労働者死傷を伴うような案件については、当然これを重視いたしまして、監督もし、調査もし、諸般の手続をとるのでございますが、たまたま労働者死傷を伴わなかったケースであるということで、御指摘のように比較的軽く見たようでございます。大臣からいま御答弁がございましたように、その点私どもも遺憾に存じております。しかも、この名古屋造船所に対しましては、八月四日の火災がありましたあと、八月二十四日、九月八日、十一月十日、十一日と、その後昨年じゅうに三回監督に行って、災害関係監督指導をやっておるわけでございます。そういったように数回参りまして、災害防止上の監督をしておったという実績があるにもかかわらず、八月四日のポリウレタンの火災事故というものについて、それとの結びつきを十分行なわなかったという点については、技術的にも適当でない点がございますので、ただいま大臣からお答え申し上げましたとおり、私ども行政上これをさらに十分注意いたしまして、今後そのようなことのないように処置していきたいと思います。
  10. 河野正

    河野(正)委員 いまの局長答弁を伺いますと、ますます私どもは不可解な感じを持つわけです。というのは、現地名古屋南労基署長は、造船所から——これは昨年八月四日の火災事故でございますが、現地では、いま私が御指摘申し上げますように、「造船所から報告書が出ていたが、書類の中にうずまり、目にとまらなかった。私の方の怠慢で何とおわびしてよいかわからない。」こういうふうに監督署長がおわびをしておるわけです。ところが、いまの基準局長お話によると、事故が起こったのは八月四日でしょうが、その後八月二十四日、九月八日、十一月十日、十一日に災害関係監督を行なったと言うが、こういう監督を実際にされておれば、八月四日の報告書については当然目にとまらなければならぬ。それなら、この数次にわたる監督というものは一体どういう形の監督を行なわれたのか、ちょっとこれはつじつまが合わぬです。それが出ておった後にこういう現地指導監督を行なっておれば、当然八月四日の提出書類の問題については認識されておらなければならぬ。ところが、監督をその後やったと言いながら、現地署長は全然知らなかった、まことに申しわけない、こういうことを言っているわけですから、かえって、やぶへびじゃないけれども局長のいまのことばを聞くと、私どもは、あなた方の指導監督がいかなるものであろうかというような非常に不可解な感じをますます持ちます。そういうことで、監督をやっても、出ておった書類がわからぬというような監督指導ならやらぬほうがいいです。そこで、極端に言うと、現地へ行ってごちそう攻めにあったとか、いろんなことがあったとか、いろんな誤解まで生じてくると思うのです。ですから、やるならやはりそういう行政上の手落ちがないように健全な監督指導というものをやってもらわなければいかぬ。この点大臣いかがですか。
  11. 小平久雄

    小平国務大臣 いまお話しのようなことがあったとしますならば、これは行政上はなはだ遺憾なことでございますから、その間の事情も十分取り調べまして、せっかく監督しながらその目的を果たさぬというようなことでは何にもならない、そういう点も十分今後注意させるように処置いたしたいと思いますので、御了承願います。
  12. 河野正

    河野(正)委員 時間がございませんから、大臣にわたる点だけ一言、それからあと伊藤先生がそれに関連して一言あるそうですから、その点まで大臣御了承願いたい。  この災害報告によりまする義務が基準法に定められておりますことは御承知のとおりだろうと思います。ところが死傷者がなくても——昨年の八月の事故については死傷者がなかった。死傷者がなくても、火災爆発など特殊な事故があった場合には労働安全衛生規則の五十八条で、遅滞なく労働基準監督署長報告しなければならぬ。それに違反した場合には労働基準法の百二十条で五千円以下の罰金に処せられるのですね。ところが今度は実際書類を出したけれども、その書類がわからなかったという当局側についての責任はかなり大きいと思うのです。事業主が出さなかった場合には罰金に処せられるわけですから、今度は出しておいて監督署側がほうっておいたということになりますと、その罪というものはそれ以上に私は厳重な罪状に値するというように思うのです。私は建設的に、こういう事故が繰り返されぬという意味で率直にお尋ねをしておるわけですから、こういうふうな法律違反を犯すようなかっこう基準局側がやっておるということは、私はまことに残念なことと思います。それについて一言お答えを願いたい。
  13. 小平久雄

    小平国務大臣 この点、先ほど来申しておりますように、先生の御指摘のような事情が事実存在しておったとしましたならば、これはどこにそういう責任があるのか、いずれにしても全体として、労働行政全体から見れば、私は怠慢のそしりは少なくとも免れないと思います。ですから、よくその間の事情を役所としても調べまして何ぶんの処置をいたしたいと思います。
  14. 伊藤よし子

    伊藤(よ)委員 大臣が時間がおありにならぬそうですから、あと局長に伺いますが、ただこの人たち遺族補償の問題につきまして、特に身分が下請作業員などでございますので、そういう点について、ひとつ十分なる御配慮をいただいて万全を期していただきたい、それだけをお願い申し上げまして、あと局長に御質問したいと思います。
  15. 小平久雄

    小平国務大臣 労災補償の点につきましても、先生承知のように、遺族に対しては今度は年金制になったわけでございますが、遺族希望によりましては四百日分までの一時金も差し上げられる、こういうことのようでございますから、その遭難者のうちの遺族がすでに現地に見えておられた方等につきましては、その場でどういう方法を御希望かというようなことも御相談申し上げておりますし、遺族現地に見えられない向きに対しては、郷里の御遺族等に対しましてそれぞれ御連絡を申し上げて、なるべくすみやかに補償ができるように万全の処置を現に講じておるわけでございます。なお今後ともさようにつとめてまいりたいと思います。
  16. 伊藤よし子

    伊藤(よ)委員 ただいま大臣から遺族補償の問題で大まかな御答弁がありましたが、私は今度の労働災害につきまして、先ほど河野委員からもお話がございましたように、昨年は特にたびたび大きな労働災害がありまして、最近こういう記事が載りますと、私たちはまたかという思いで一ぱいでございます。しかし、その中でも今度の名造船タンカーの火事の問題につきましては、いまちょっと私が触れましたように、この災害を受けられた方がほとんど全部下請作業員犠牲にあわれたということでございます。新聞によりますと、二十人の中で十五人なくなって、あとまだ二人がガス中毒にかかっておられるというようなことでございますけれども、これらの人たち雇用関係でございますね、いま大臣から大まかな御答弁がございましたけれども雇用関係がたいへんあいまいであるというようなことが、現場の新聞記者会見記事として載っておりますが、労働省のほうの御調査によりますとどういうことになっておりますか、ちょっとお聞きしたい。
  17. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 御指摘のように、下請関係労働者雇用の態様につきましてはいろいろ問題があるところでございますが、この名古屋造船所明星工業事故にあいました労働者につきましては、明星工業臨時工ということで保険料明星工業が出しておるという事実がございます。したがいまして保険料は納めておりますので、労災保険給付につきましては、大臣お答え申し上げましたとおり、遺族に対しては年金として支給されるわけでございますが、多少まとまったお金がほしい、四百日分前払いしてもらいたいという遺族に対しましては前払いの処置も講ずる、どちらをお選びになるかということを遺族の方々に個別に御相談申し上げまして処置をいたしたい、かように考えておるわけでございます。
  18. 伊藤よし子

    伊藤(よ)委員 そういたしますと、名造船の正式な社員と申しますか、雇用関係にある方と変わりない労災保険による適用が受けられるということでございますね。
  19. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 さようでございます。
  20. 伊藤よし子

    伊藤(よ)委員 その中に四人、これは昨日の朝日でございましたが、下請作業員十五人の中に四人は出かせぎの農民であったということが出ておりますけれども、この四人の人たちも同じ条件の適用が受けられるのでございますか。
  21. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 御承知のように、労災保険の場合は臨時工でございましょうと、常用工でございましょうと、その事業として適用がございますので、明星工業が自己の事業における臨時工といったような考えのもとに労災保険料を支払っておる事実がございまするので、労災保険給付を行ないます場合には、明星工業労働者ということで処理いたすわけでございまして、先ほど答弁申し上げたとおりでございます。
  22. 伊藤よし子

    伊藤(よ)委員 その労災の点はわかりましたが、私はこういう場合に非常に下請人たち災害を受ける率が多いように思いまして、またその人たち災害を受けた場合には、一般の正式な雇用関係にある人よりも、たとえば会社から受けるものがいただけなかったり、退職金ということはありませんけれども、いろいろ弔慰金等においても一般の正式な雇用関係にある人と比べてもらえないわけでございますね、下請とか、いまのような出かせぎで出ていたような人の場合には。そういう点をちょっと伺いたいのです。
  23. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 法律上の災害補償先ほど申し上げたとおりでございますが、御指摘のように形は直用の形になっておりますけれども、いわば縁が薄いので、本来の社員、常用工のような形で法定基準以上の会社としてなすべきいろいろな処置が十分でないじゃないかという点については、私どももそういう点があるという点を考慮いたしまして、現地におきましても法律上の問題としてでなくして、できるだけのあたたかい措置をお願いしたいということでいろいろ話をいたしておるような次第でございます。
  24. 伊藤よし子

    伊藤(よ)委員 その点はぜひひとつ、特にこの災害なんか受けられた場合に、単に労災保険だけでなくて、出かせぎの農民の方なんか、ここにもございますけれども、二月になってとうちゃんが帰るというのを待っていらっしゃるという家庭がこういう災害を受けられて、そうしてその補償も、いまの単なる法的な労災保険だけだったということになりますと、遺族の方はほんとうに悲惨だと思うわけでございます。そうしてまた、どうも最近の災害の中で、とかく下請の常雇いの人たちであっても、本雇いの人と違った、そういう臨時的な方が災害を受ける場合がたいへん多いように思いますので、そういう点の御監督を十分にしていただきまして、ぜひできるだけの補償が行なわれるように監督指導していただきますようにお願い申し上げまして、関連でございますから簡単でございますけれども、私の質問を終わります。
  25. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 御指摘のように、特に出かせぎ労働者あるいは臨時工常用工に比較いたしまして仕事に熟練いたしておりませんために災害を起こすという事例が多うございます。したがいまして、そういった労働者に対して災害防止上特段の注意を払わなければならないというのは御指摘のとおりでございまして、一般的なことを申して恐縮でございますが、安全教育と申しましても、特にそのような臨時工であるとかあるいは下請労働者といった方面に特段の努力をいたさなければならないというふうに存じておりますが、補償問題につきましても先生指摘のとおり、できるだけのあたたかい措置をという心持ちで、法律問題は別といたしましても、できるだけごあっせんその他の努力をさせていただきたいと思います。
  26. 河野正

    河野(正)委員 この石川島播磨重工業の名古屋造船所というものは、基準監督署管内の特別査察作業所に指定されておった、こういう話であります。この特別査察作業所に指定をされますると、少なくとも月に一回は係官が巡回をしなければならぬ。ところが、今度の爆発事故が起こるまで、この造船所内でやっておりまするタンカー船槽内の断熱材吹きつけ作業、この現場というものが非常に危険な環境に置かれておった。それが実は今度の事故まで十分認識されておらなかった、そういうことになりますと、さっき私が局長にも御指摘を申し上げたわけでございますけれども、なるほど事故の後、何回か巡回指導監督をやられたということでありますけれども、それならば当然この造般所の現場というものは可燃性材料を使って非常に危険な環境にあるということが認識されておらなければならぬ。初めて認識したということを現地の所長が告白をしておるわけです。こういうことでは、きょう大臣からもいろいろりっぱなお答えをいただいたわけでありますけれどもお答えどおり実際現場というものが実行されておるのかどうか、私どもはそういう点に非常に不安を持たざるを得ないと思う。特に、今度の名古屋の場合には現地では監督署関係に非常に不信の念が強い、こういうことも承っております。これらの点についてどういうふうにいまお考えになっておりますのか。いま具体的に事実をあげておりますので、これらの点もお含みの上お答えをいただきたい。
  27. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 まず先に事実関係を申し上げさしていただきたいと思いますが、いわゆる特安事業所という名称で過去において災害発生率が高い事業場をマークいたしまして、いま先生指摘のとおり月一回は必ず行って監督をするといったような事業所指定を、この名古屋造船所下請についてこれを特定して行なっておりました。しかし、名古屋造船所におきましては常時下請会社として二十数社が入っておったようでありますが、その中で特別安全事業所として指定しておりますものの数は少ないわけでございまして、これは私ども承知いたしておりますが、数は少なかった。しかも今度の災害発生いたしました明星工業は十二月から作業を開始、着工いたした、こういうような事実関係になっておりまして、したがいまして昨年八月、九月、十一月等に実施いたしました監督の際には、まだ明星工業はその対象になっていなかった、こういうようなのが事実関係でございます。しかしながら、先ほど先生が御指摘になりました点については、私ども監督をやります際に、いわゆる定期監督と申しまして、事前に計画を立て、定期に回りまして監督をするという方式が基本になっておりますが、その定期監督実施の際に監督事項としてどのようなものを取り上げるかという監督事項の取り上げ方その他がございまして、せっかく事業場に行きましても、つい三週間くらい前にあった火災関係監督事項に取り入れてないというようなことでございますと、計画がいかにも硬直しておりまして、現状に合わない、こういったような問題があるわけでございます。今回御指摘になりました問題は、私ども今後における監督実施の計画策定その他具体的内容につきまして前車の覆轍とでも申しますか、参考となる点が多々ございまするので、今後監督実施につきましては技術的な面からも十分検討いたしまして、十分注意をしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  28. 河野正

    河野(正)委員 どうもいろいろお答えを聞いておりますと、できるだけ労働省側に責任がかぶってこぬようにということで、責任回避的なお答えのような印象を受けます。ですから、建設的に過去の事故は過去の事故として率直に聞き入れて、要は今後の事故を防止するということが主目的でございますから、そういう意味で、私は過去の反省すべき点は大いに反省するという謙虚な態度というものがなければならぬと思うのです。たとえば、いま明星工業の話が出ましたが、これらが十二月から事業を始めて、そこで指導監督の機会がなかったような話ですけれども、しかし十二月もございますし、一月もございます。二月十六日のことでございますから、その間どう見ても二カ月間の期間はあるわけですから、少なくとも名古屋造船所というものが可燃性材料を使って危険な環境であるということであるとするならば、やはりそういう監督なら監督指導なら指導というものがあってしかるべきだろう。これはもう現実にそういう事故が起こったわけですから、そういうところに手抜かりがあったということならば、謙虚にそれを認めながらそして今後はそういう手抜かりがないようにというふうな配慮、努力というものが行なわれて初めて私は災害というものが防止されるというふうに考えますので、その辺は十分ひとつ謙虚にこの事実というものに対する反省というものをされる必要があろうと思います。ですから、それは反省を求めることにして、次の問題に移りたいと思います。  そういう考え方からいま一つ問題として取り上げてまいりますと、昨年の八月四日、同じような火災事故が起こった。その当時三日後に書類提出された。ですけれども事故発生後、直ちに電話で報告をされた。もちろんその書類が出ておるのがわからなかったというくらいですから、電話で報告するくらいのことは早くにとっくに忘れられたと思いますが、ところがその際いわれたことは、労災保険の問題があるから、そこで人身事故が起こった場合には調査するんだ。昨年の八月の場合は、火災事故が起こりましたけれども、幸いにして人身事故が起こらなかった。負傷者や事故者が起こらなかった。この点はけっこうだったわけですが、ところがそういうふうな人身事故が起こらなかった、したがって、労災保険も払うことはいらなかった、そういうことで調査が怠られたというようなことも現地で話題にのぼっているわけです。金を払うから調査する、金を払わぬからこれは調査する必要はないというようなまことにあさはかな——これは局長がそういう考え方だと思いませんよ、しかし要は、現地の係員の言動が問題になるわけですから、これはいかに労働大臣がりっぱな方針をお示しになっても、現地がそれを着実に守らぬことには、それは全く絵にかいたもちに終わるわけですから、私は現地がそういう全くあさはかな考え方で行政の運用をする、しかもそれが今日の十五名の死者を出すというまことに不幸な悲惨な災害が起こった原因の一端を負うとするならば、私は、そういう現地の係官の考え方については、これはもう許すことはできない、こういう感じを持つわけですが、そういう傾向と申しますか、あるいはそういう事実があるのかないのか、この点は小さい問題であるようですけれども、しかし行政の運用の中におきましては、いま申しまするように突発的にどういう事故が起こってくるかわからない、その事故原因すべてではないかもわからないですけれども、一部怠ったことは事実ですから、それについての御見解を承っておきたい。
  29. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 行政上の安全の指導の面と、実はその統計調査の問題がございまして、労働災害として件数を調べます場合には、労働者の人身事故つまり労働者の生命、身体に障害があったといったような人身事故について労働災害統計というものを考えているわけです。産業災害と申します場合には、必ずしも労働者死傷等を伴わないものも数え得るわけでございますが、労働災害と申します場合には、いま申しましたような立て方をいたしております。それがややもすれば先生指摘のような、労働災害統計上の件数としてはこれは当たらないものだというような観点からせっかく報告書を受け取っていながら安全指導上にそれが活用できなかった、こういうことでありますれば、これははなはだ残念なことでございまして、先生指摘のように、私ども率直にそういう点も反省いたしまして、統計数字の扱いと災害防止対策上の扱いというものはこれは必ずしも同一でないわけでありますから、統計調査上の事務処理に拘泥して、それを閑却する、ないがしろにするということのありませんように、今後十分注意をいたしまして反省して処理していきたいと考えております。
  30. 河野正

    河野(正)委員 いずれにしても、今度重ねて名古屋造船所事故が起こってまいりましたことは、私どもまことに遺憾とするところでございます。犠牲者の皆さん方に対して御同情申し上げますが、今度の場合は従来のケースと違ってかなり役所側に問題点があった。従来の例でございますと、いろいろ監督の点もございますけれども、概して事業主側に欠陥があった、こういうケースが多かったと思うのです。ところが今度の場合は、たまたま昨年の八月と同じような事故が起こって、同じような事故を繰り返した。その間、当局側調査手落ちがあったということですから、今度の名古屋造船所事故の場合はかなり従来の災害とは異なった意味を持っておると思うのです。そういう意味で私どもは今度の事故はかなり重要視をいたしております。しかし、真の原因その他については十分つまびらかでございませんし、また伊藤よし子委員のほうからもいろいろあらためてお尋ねを申し上げたいとの御希望等もございますから、きょうは一応この辺でとどめて、そしてさらにあらためていろいろ御見解を承りたい、かように考えます。
  31. 田中正巳

    田中委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は来たる二十四日午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。    午前十一時四十四分散会