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1966-02-23 第51回国会 衆議院 産業公害対策特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年二月二十三日(水曜日)    午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 井手 以誠君    理事 奥野 誠亮君 理事 小山 省二君    理事 丹羽 兵助君 理事 保科善四郎君    理事 重盛 寿治君 理事 中井徳次郎君    理事 野間千代三君       川野 芳滿君    熊谷 義雄君       堀川 恭平君    村山 達雄君       山本 幸雄君    和爾俊二郎君       實川 清之君    肥田 次郎君       吉川 兼光君  出席政府委員         厚 生 技 官         (環境衛生局長舘林 宣夫君         工業技術院長  馬場 有政君  委員外出席者         議     員 中井徳次郎君         議     員 吉川 兼光君         警  視  長         (警察庁交通局         交通調査官)  綾田 文義君         厚 生 技 官         (環境衛生局公         害課長)    橋本 道夫君         通商産業事務官         (企業局産業立         地部長)    中川理一郎君         運 輸 技 官         (自動車局整備         部長)     宮田 康久君         運 輸 技 官         (船舶技術研究         所交通技術部         長)      副島 海夫君     ————————————— 二月二十三日  理事鯨岡兵輔君同日理事辞任につき、その補欠  として小山省二君が理事に当選した。     ————————————— 二月十八日  公害対策基本法案中井徳次郎君外二十二名提  出、衆法第一四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  公害対策基本法案中井徳次郎君外二十二名提  出、衆法第一四号)  公害対策基本法案吉川兼光君外一名提出、衆  法第八号)  産業公害対策に関する件(ばい煙及び自動車排  気ガス対策)      ————◇—————
  2. 井手以誠

    井手委員長 これより会議を開きます。  中井徳次郎君外二十二名提出公害対策基本法案及び吉川兼光君外一名提出公害対策基本法案議題とし、順次提案理由説明を聴取いたします。     —————————————     …………………………………      理 由  公害国民の健康、日常生活財産等に著しい影響を及ぼしつつある実情にかんがみ、公害発生防止に関する企業責務を明らかにするとともに、国及び地方公共団体による総合的かつ基本的な公害対策樹立を図り、国民公害から保護する必要がある。これが、この法律案提出する理由である。     —————————————    理 由  公害国民の健康、日常生活及び財産等に著しい影響を及ぼしつつある実情にかんがみ、公害発生防止に関し、国及び地方公共団体等責務を明らかにするとともに、総合的かつ基本的な公害対策樹立を図り、国民公害から保護する必要がある。これが、この法律案提出する理由である。     —————————————
  3. 井手以誠

  4. 中井徳次郎

    中井議員 私は、ただいま議題となりました公害対策基本法案提案理由並びにその趣旨につきまして、日本社会党を代表して説明申し上げます。  戦後日本経済は目ざましい発展を遂げ、とりわけ昭和三十年以降の高度経済成長政策は急速な企業の繁栄をもたらしました。しかし、この目ざましい企業発展は、同時にかつては山紫水明の地であった日本国土を荒廃させ、重大な公害問題を引き起こすという事態発生せしめたのであります。この公害問題がわが国においてやかましく論ぜられ、重大なる社会問題となりつつあることは、天下周知の事実であります。  大都市住民は、ばいじんによごれた空気を吸い、亜硫酸ガスのために気管支炎、ぜんそく、肺ガンなどで苦しんでおります。かつては魚をつり、遊泳ができるほど澄んでいました川の水は、工場廃液や家庭の汚水が流れ込んでどぶ川と化し、ガス発生して悪臭を放っている状態となっております。また基地のジェット機や交通騒音のため、一人々は絶えず神経を過敏にさせていなければなりません。そして工場地域住民は、地盤沈下のために浸水やガス爆発の危険にさらされております。このような公害日本全国至るところで発生し、健康を害したり、生活権まで奪われているという重大な事態にまで問題が深刻化しているのであります。公害の大部分は、企業利潤追求だけに追われて、適切な公害発生予防措置を講じないため、ばいじん亜硫酸ガスを含んだ煙を出したり、有毒な廃液をまき散らしたりする等のために起こっているのであります。でありますから、公害とは、不可抗力の自然災害とは違って、適切かつ有効なる法的措置を講じれば絶滅できる災害であります。しかるに、この対策につきましては、ばい煙排出規制等に関する法律公共用水域水質の保全に関する法律工場排水等規制に関する法律等、二、三の法律があるのみでありまして、問題の重要性に反して、その法的措置がはなはだ不備であります。したがって、それに基づく行政もてんでんばらばらで、効果の見るべきものはありません。政府は、さき国会におきまして、わずかに公害防止事業団法案提出してその成立を見ましたが、これも公害が起こってしまってから、わずかの予算でそのあと始末をしようとするのでありまして、事実は微々たる対策にすぎないのであります。公害につきましては、もっと大局的見地より、抜本的、基本的立場に立って基本法を制定し、それを出発点として、各種の具体的な法案をそれに付属せしめて、その体系を整え、もって公害対策の完ぺきを期さねばならぬと私どもは考えます。そこで、日本社会党はここに公害対策基本法案提出いたしました。公害対策基本についてその立場を明確にして、国民生活公害から守り、これを排除し、風光明媚、白砂青松のみごとなこの日本国土を温存していきたいと考えているのであります。  以下、その内容のおもなるものを説明いたします。  まず第一に、公害に対する企業責任を明確にしろとうたっていることであります。公害に関するこれまでの各種調査報告等によりますと、その原因が明らかであるにもかかわらず、この対策企業がのがれ、またはのがれんとする傾向がはなはだ強いのであります。逆に原因を不明確にするようにつとめたり、明確であっても責任をのがれて時間かせぎをいたしたりする傾向さえ強いのであります。そこで公害に関する企業責任をここに明確にいたしたいと存じた次第であります。  第二は、したがって、このうらはらとして、場合によりましては企業営業停止操業停止等々まで考えているのでありまして、それを法文化いたしておるのであります。  第三は、公害によって生じた損害の賠償その他については、その対策といたしまして、司法的処置にゆだねる前に第一次的に処置し得るごとき前進的法文をうたいました。  第四には、公害に対する国の施策はもとよりでありますが、地方住民の代表であります地方自治体すなわち市町村及び府県にも公害排除に対する行政的責任を負荷して、これに対する財政的措置は、国が責任を負うことにいたしました。すなわち、地方自治体の国と異なる面、たとえば都市計画汚物処理上下水道等の本来の諸計画を通じて、その行政的施策責任を明らかにいたしております。  第五には、国はこれらの施策を進める上に、もちろん総合的かつ財政的施策を行なって、それに対する基本的事項を掲げておりますけれども、さらに、その実施機関といたしまして、若干名の委員よりなる行政委員会を設置することといたしました。そのもとに各地方分局あるいは研究所を置き、さらに専門のコンサルタントを常置いたしまして、国の公害排除の万全を期したいと考えております。そうしてこの機関の構成その他については、別に法律にゆだねることにいたしておるのであります。  第六に、国は公害に対する十カ年計画を作成して、これを広く公表し、毎年その経過、実績等国会に報告する義務を政府に課しております。  以上が、われわれの提出いたしました公害対策基本法案概要でございます。何とぞ慎重御審議の上御可決あらんことをお願いいたす次第であります。
  5. 井手以誠

  6. 吉川兼光

    吉川(兼)議員 私は、民主社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました公害対策基本法案提案理由並びにその内容概要につきまして御説明申し上げます。  今日の公害は、特定の都市のみに見られるというような特別の現象でなく、いまやその程度に差こそあれ、全国普遍のものとなっていると思います。この公害による生活環境の悪化は、単に地域住民の生命並びに財産をそこなうだけでなく、それが産業自体に与える経済上の損失、さらに社会全般にわたる被害という点ではかり知れないものがあるのであります。したがって、公害防止は、国民のよき生活環境を維持する上で、何をさておいても早急に解決されなければならない国政上の最重要課題一つであると確信いたしますが、現実は、その施策の裏づけたるべき法の整備が不十分なため、公害を全国的に野放しにする結果を招いているのであります。  すなわち、現行法制においては、第一に、公害と認定する統一された定まった基準がなく、どれが公害で、どの程度以上が規制対象になるのか全く明らかにされておりません。  第二に、公害防止に関する最終責任は、国か、地方公共団体か、あるいは企業等発生源にあるのか、その責任所在が明らかでなく、そのため公害防止対策被害に関する苦情処理等が円滑に処理されない事情にあります。  第三に、公害に関する基本的事項が定まっていないため、現在の公害関連法律はすべて事後法であり、事前にこれを防止するという十分な法的措置がとれない状態にあります。  以上の観点から、今日の事態は、公害を抜本的に防止するための基本法案の制定を切実な問題として要請しており、本案提出する理由もまさにここにあるのであります。  次に、法案内容についてその概略を御説明申し上げます。  第一条では、ただいま申し述べましたことも含めまして、国及び地方自治体中心的責任をにないつつ、公害防止公共福祉確保にあたることをこの法律の目的といたしました。  第二条は、今日、公害の概念がきわめて不明確である現状にかんがみ、これを一、大気汚染、二、水質汚濁、三、悪臭、四、騒音、五、振動、六、地盤沈下と六種類に分類規定し、それぞれが多数の住民の健康並びに動植物の生育を害し、もしくは日常生活の障害、経済上の損失等を招き、またはそのおそれのあるものと定義づけた次第であります。  第三条では、公害防止措置実施を国の責務とし、そのための施策を国の責任において総合的に講ずべきことといたしました。  さらに四条におきましても、この国の施策に準じて地方公共団体もこれに協力する責務があることを明らかにした次第であります。  第五条は、事業者がその事業活動について、公害発生防止するための装置施設設置等、その必要な措置のとるべきことを責務とし、そのため国及び地方公共団体施策に協力すべきこととしました。  なお、これら装置施設の普及については相当の費用を必要とするものもございますので、事業者責務の円滑な遂行を期するため、第七条、第十七条におきまして、法制上、税・財政上、金融上等政府の行なうべき助成の基本をここに明らかにいたしました。これら政府の行なうべき施策具体案とその結果につきましては、第八条におきまして、これを毎年国会に報告すべきこととしております。  第二章は、国の行なうべき行政基本を明らかにしたものでございまして、第九条では、現在公害対策上最もおくれております、公害実態調査公害防止科学技術研究開発等政府が率先して積極的に行なうべきこととしました。  第十一条より第十六条までは、さきの定義で述べました六種類公害について、それぞれの公害許容限度を定め、それに伴って、個々の排出及び放散等についての必要な規制基準を設けるべきことといたしました。  第十八条では都市計画の策定に際しての公害防止配慮、第十九条では公害にかかわる救済制度整備と、その必要規定を明らかにしてございます。  第三章では、公害防止行政の総合的な一元化のため、総理府の外局として公害防止庁を設置することといたしました。防止庁の組織並びに権限等具体的内容につきましては、別途法律で定める一こととし、本法でその詳細を規定することを避けましたが、その基本的性格につきましては、防止行政総合企画と立案、公害実態調査並びに通産、厚生の両省をはじめとする各省間の権限事務連絡調査を行なうことによって、行政総合性積極的推進の原動力とすることが、本法にいう防止庁趣旨であることをここに明らかにしておきたいと存じます。  以上が本案提案する理由並びに法案概要でございます。何とぞ慎重審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  7. 井手以誠

    井手委員長 以上で提案理由説明は終わりました。      ————◇—————
  8. 井手以誠

    井手委員長 この際、おはかりいたします。  理事鯨岡兵輔君から、理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ございませんか。
  9. 井手以誠

    井手委員長 異議なしと認めます。よって、辞任を許可するに決しました。  これより理事補欠選任を行ないたいと存じますが、これは先例によりまして委員長において指名するに御異議ございませんか。
  10. 井手以誠

    井手委員長 異議なしと認めます。よって、小山省二君を理事に指名いたします。      ————◇—————
  11. 井手以誠

    井手委員長 産業公害対策に関する件について調査を進めます。  ばい煙等対策並びに自動車排気ガス対策について、厚生省、通商産業省、運輸省及び警察庁からそれぞれ説明を聴取いたします。  まず、ばい煙等対策について、通商産業省中川産業立地部長
  12. 中川理一郎

    中川説明員 大気汚染防止関係行政概要と現況並びに今後の通産省考え方につきまして、ごく概略説明をいたしたいと思います。  大気汚染防止法律的規制といたしましては、ばい煙規制法による規制昭和三十三年から進められておりまして、ただいまのところ、京浜、阪神、北九州、四日市、千葉、名古屋・知多地区大牟田地区釜石地区姫路地区、宇部・小野田地区といった地区規制区域といたしまして、それぞれ規制を厳格に行なっております。  そのことの結果、効果といたしましては、降下ばいじん量が目立って減少しております。ただ反面、亜硫酸ガス濃度漸増傾向にございます。これは昭和三十年から三十九年の期間をとりますと、重油の消費量が七倍にふえているというようなエネルギー革命状況から出てきた結果でございます。したがいまして、ばいじん量減少等につきましては、今後も努力を続けるつもりでございますが、今後の大気汚染防止関係の重要なる問題といたしましては、この亜硫酸ガス漸増傾向をどうやって効果的に押えるかということでございます。  御承知のように、これにつきましては前々から通産省が考えておりました拡散希釈効果等につきましては、高煙突を建てる等のことで大いに努力をいたしております。これらの効果は、たとえば四日市等につきましても、かなり高煙突による企業努力等によりまして亜硫酸ガス濃度が昨年よりも減ったというような効果があらわれてきつつあるわけでございます。ただ一方、川崎地区のように漸次亜硫酸ガス濃度が高くなってきておるといろ実態もございまして、川崎地区等につきましては、個別の調査表工場に配付いたしまして、その対策の検討の準備を目下やっておるわけでございます。  もう一つは、新しく工業地帯になりますところにつきまして、前回予算で御説明いたしましたように、総合事前調査ということで、現地実験風洞実験を重ねまして、拡散の計算その他を行ないまして、新しく立地する工場の配置、煙突のあり場所といったものを適当に選び、計画的に工場を配置するという考え方によりまして、地域社会に対しての亜硫酸ガス被害をなからしめることを努力いたしております。四十年度におきましては、調査対象地域といたしまして、大分県の鶴崎地区、岡山県の水島地区、茨城県の鹿島地区と、三カ所をやりまして、四十一年度は、いま御審議中の予算におきまして四カ地域にこれをやりたいということで考えておるわけであります。  亜硫酸ガス防止問題につきましては、次いで一番問題でございますのは、的確なる防止技術開発でございます。これにつきましては、後ほど工業技術院長から詳細お話をいただくことになろうかと思いますが、ばい煙防止技術に関します研究資源技術試験所中心にいたしまして、いろいろとくふうをしてもらっておるわけでございます。特に四十一年度におきましては、大型プロジェクトということで、大気中の亜硫酸ガスを回収する研究を、民間技術を総動員いたしまして集中的に解決したいという考えでおるわけでございます。なお、大気汚染に関しまして、自動車排気ガスの問題も漸次問題になってきておりますが、これらの点につきましても、技術開発進展を期待しておるわけでございます。  その他、私どもでやっておりますことといたしましては、大気汚染防止に役立つ意味合いにおきまして、規制法による規制を行ないますことと相関連いたしまして、それぞれの企業工場側におきまして的確なる排出基準確保をはかるために、技術指導書施設基準書といったものを作成いたしまして、技術研修会講習会等を行なっておるわけでございます。また、四十一年度におきまして、これも予算のときに御説明いたしましたが、四日市におきまして、係留気球による拡散条件調査を新しく行なって、亜硫酸ガス濃度の多くなりそうなときに予防的な措置が講ぜられることを期待した研究をやってみようと考えておるわけでございます。  いずれにいたしましても、漸次規制強化の上でくふうをすべきことはくふうをいたし、積極的に取り組んでいきたいと思っておりますけれども亜硫酸ガスの問題は、世界的に見ましても的確なる技術開発がまだ解決されておらないわけでございますので、効果があがり、かつ経済的な脱硫技術開発ということに当面最も力を入れて研究すべきではないか、かように考えておるわけでございます。  概要を申し上げました。
  13. 井手以誠

  14. 馬場有政

    馬場政府委員 私から、いまの排煙の中から脱硫する問題につきまして、技術的な御説明を申し上げます。  ただいまのお話にございますとおりに、ただいまこの排煙中の亜硫酸ガス大気汚染に対しまして非常に大きな問題となっておるわけであります。私どもといたしましては、この問題の技術的な解決のために力を尽くしておる次第でございます。  初めに、この亜硫酸ガスを取ることにつきます簡単な御説明を申し上げたいと思いますが、この亜硫酸ガスを取りますのに大分けいたしますと大体二つの方法がございます。一つは、液体を使いまして煙を洗う。これを湿式と申しております。それから固体を使いましてそのままいろいろな形で煙の中から亜硫酸ガスを取る。このほうを乾式と申しております。湿式のほうは、非常に完全に取り得る可能性があるわけでございますが、何分にも液体を使いますために、あの膨大な量の煙を冷やさなければならないというような問題がございます。また、そのためにそういう液体の薬液の損失その他もございます。そのほか煙の温度が下がりますと、比重が空気よりも重いものでございますから、それが急速に地面に向かって降下するというような問題もございます。湿式は一般にこういった欠陥がございますので、私どもといたしましては、乾式のほうの方法開発に主力をそそいでおるわけでございます。現在ある段階にまで達しました方法としては大体四つの方法がございます。  その一つ、最も開発段階が進んでおりますものは活性酸化マンガン法という方法でございます。これは昭和三十七年度の鉱工業試験研究補助金というものを私どものほうから出しまして、それ以来ずっと研究が続けられ、現在ある程度規模テストプラント四日市の火力第三号につけられて試験をやっておるものでございます。この原理を簡単に申し上げますと、酸化マンガンを煙の中に吹き出しまして、結局硫酸マンガン亜硫酸ガスを変えまして、後にそれをアンモニアその他で加水分解をいたしまして、硫安に持っていく。そうして再び酸化マンガンを使って亜硫酸ガスを取る、こういった方式でございます。この方法は、現在のところまだ実用段階までなっておらないわけでございますが、もう少し大きな規模試験をいたしまして、もし私ども予想どおりになるならば、相当安い値段でこの亜硫酸ガスを除くことができるのではないかというふうに考えておりまして、先ほどの説明にございましたとおりの大型プロジェクト研究開発プロジェクト一つに取り上げている次第でございます。  それからその次の方法活性炭吸着法というものでございます。これは活性炭の中を亜硫酸ガスを含みました煙を通すわけでございまして、この分も昭和三十八年度に私どものほうの資源技術試験所と、それから工業開発研究所と協力をいたしまして、共同研究を行ないまして開発をしたものでございます。この原理は、亜硫酸ガス活性炭の表面で無水硫酸の形になります。それを後に水で洗浄いたしますと硫酸でとれる、その活性炭をかわかして再生して使う、こういう原理のものでございます。これに類似した方法はドイツにございまして、これはラインルフト法と呼ばれているものでございますが、ラインルフト法は、吸着をいたしまして、それを熱的に追い出すという方式でございます。そのために活性炭損失がわれわれのほうでやっておりますのに比べまして多く、そのために費用がかかるという状況でございます。なお、この研究開発段階は、現在のところ一時間にまだ千立方メートル以下の程度のものでございます。したがいまして、これをさらに一時間数千立方メートルくらいの処理をするようなテストプラントをつくりまして進展をさし、さらにそれをもっと大規模なものに完成するというような計画を持っておりまして、これも先ほどの大型研究開発プロジェクト一つに加えておるわけでございます。  その次に考えられますのは石炭吹き込み法というのでございます。これは当院の資源技術試験所昭和三十八年以来集中的に研究をしておるものでございまして、この方法は石灰石の粉末を燃焼しているところに吹き込みまして、そうしてこれを硫酸石灰に変えまして、そのダストを集じん器で捕集するというやり方でございます。これはきわめて安価な方法でございますが、その脱硫をいたします脱硫率と申しますか、中に含まれております亜硫酸ガスのうちでどの程度のものが取れるかという脱硫率がなかなか十分にいかない。大体三〇ないし四〇%という程度のところが現在の状況でございます。完全には亜硫酸ガスが取れませんけれども応急対策として実用化可能性が十分にあると考えられておるわけでございます。したがいまして、この点につきましては、私ども特別研究費というものがございますが、そういう特別研究費によってこの問題の解決をはかっておる次第でございます。  それからもう一つ方法といたしまして、この亜硫酸ガスバナジウム酸化物その他の触媒によりましてSo2をSo3に変えまして——So3というのは水あるいはアルカリ性の溶液に非常によく取れます。そういうことから、一たんバナジウム触媒を通しました後にあらためて取るというような方法がございます。この方法はまだ研究初期段階にございます。これは東京工業大学の清浦先生その他がお考えになりました方法でございます。この点につきましては第一の、非常に小型なパイロットプラントをつくって、まずこれをやってみようというような——これは今後の問題でございますが、四十一年度にはそういった方法、たとえば補助金のようなものによってこれを進めていきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。  なお、予算の関係でございますが、逐年この公害関係には相当な力を入れておるわけでございまして、古いことは別といたしましても、三十八年度には一億三千七百六十三万六千円というものを公害関係の技術開発に投入しておるわけでございますが、その大体半分が大気汚染関係、半分が産業排水、騒音その他の関係になっております。四十年度は総額におきまして大体それの二倍というかっこうになっております。総計にいたしますと三億三千七百五十八万円というような金額を投入いたしまして、そのうちの約半分がやはり大気汚染関係でございます。四十一年度の計画といたしましては、総額におきまして約七億ということで計画をいたしておる次第でございまして、この場合に主として増加しておる部分は、先ほど御説明申し上げましたとおりの、特に亜硫酸ガス排煙から取るという方法に約三億というようなプロジェクト費用を投入しておりますので、それが増加しております。したがいまして、三十九年度以来、年々研究費用といたしましては倍またさらに倍というふうな、二倍、二倍というふうな傾向を持っておる次第でございます。  以上、簡単でございますが御説明といたします。
  15. 井手以誠

  16. 舘林宣夫

    舘林政府委員 お配り申し上げてございます資料を開きながら御説明申し上げます。  最初に「全国の大気汚染」という横長いやや厚い資料がございます。この資料の二ページをお開きいただきたいと思います。  この表に示してございます測定した場所は、ばい煙規制法地域指定をされた、すなわち比較的汚染の進んでおる地域についての資料を図示したものでございまして、その後、この資料をつくりましてからあと釜石なぞが加わっておりますので一部抜けておりますが、これをごらんをいただきたいと思います。  大きいほうの輪は降下ばいじん、空から地上へ降ってくるちりの量であります。一平方キロに対して一月間に何トンちりが降るかということでございまして、例を東京にとりますと、一平方キロに二十一トンほこりが落ちてくる、こういうことでございます。一番多くほこりが落ちるところは、この表では大牟田でございます。中の輪は亜硫酸ガスの量でございまして、酸化鉛を使いまして亜硫酸ガスの量を固定して百平方センチに一日に何ミリグラム亜硫酸ガスが捕捉できるかという数値をここへ書いてございます。それで川崎が非常に大量に亜硫酸ガス大気中にあるということがわかるわけでございまして、この表で見る限りは、しばしば問題になっております四日市はそれほど大きな数値ではございません。ただ、この表を見る場合に、一応問題点としましては、どこをはかった数値であるかということがかなり問題でございます。東京の平均値というのはどことどことどこをはかった東京の空のよごれぐあいであるかという、その測定点の問題がございまして、これはそれぞれの都市がくふうをして、その都市の平均をあらわすような測定点をそれぞれ都市が選んで測定したものでございまして、これが世界の方程式があるとか、日本方式がきまっておるとかいう平均化がまだ行なわれておりませんので、この測定値が確かにすべて、たとえば東京の平均の空をあらわすかどうかについては、問題がございますことを一応申し上げておきます。  次の三ページをごらんいただきますと、これらの都市のものを総平均して加えまして、三十九年で月別に何月が一番亜硫酸ガスが多いかというと、六月から八月が多い、夏場が多いということでございます。それから都市別に、さっきの輪をわかりやすく示したのが右の柱でございまして、川崎がずば抜けて非常に高いわけでございます。これに対して、東京はこれらの中ではそれほどまだよごれたものではない。斜線が平均値でございますので、斜線の高さでごらんをいただきますと、これでおわかりいただけるかと思います。この場合に、ニューヨークはどのくらいよごれておるかと申しますと、平均二であります。東京の倍くらいのよごれ方であります。ロンドンは平均が〇・九であります。おおむね東京に近いよごれ方でございます。  なお、ロンドンとニューヨークの数値は容量法で、測定方法が違います。容量法は量のほうで測定しますが、その内容はこまかい問題でございますので、後ほど御説明します。  七ページをお開きいただきます。年次的に空のよごれがどう変化してきたかというのがここに示してございます。亜硫酸ガスでございます。大気汚染の一番害毒を人間に及ぼすであろうと推定しております亜硫酸ガスでございますが、川崎、名古屋、千葉というのが非常にふえ方がひどいわけであります。それに比べて東京、四日市などはやや減りぎみ、との表では減りぎみでございます。  次のページをお開きください。いまのが平均値でございますが、次のページは最高値で、一番よごれたときでございます。大体似たような数値でございます。  その次は一二ページをお開きください。いまの表は亜硫酸ガスでございますが、今度は地上に降ってくるちりでございます。ちりのほうの月別変化、溶解性というのが人体に害がより多いといわれておるわけでございます。  次のページに都市別がございます。この表にはございませんが、降下ばいじんの量から申しますと、釜石、それから札幌などは、大牟田よりは降下ばいじん量は多いと推定されております。  次は二六ページをごらんいただきます。降下ばいじんの年次的な変化でございます。これはほとんどがだんだん減ってきております。これは従来は、この降下ばいじんの根源は多くは石炭をたいた場合のすすが多かったわけでございます。このごろ石油に切りかわっておりますので、どの都市も非常な勢いで減っております。  次は三三ページでございます。いわゆるスモッグがこのごろふえておるのか減っておるのかということでございますが、スモッグに対しましては、ばい煙防止法の法律に基づいて、スモッグ警報を知事が発動するということがございます。その場合に、一定の基準量を越えた場合には、スモッグ警報を出すという法律の規定になっておりまして、厚生省からその基準を示してあります。ところが、その厚生省から示した基準よりはもう少しきびしい基準——きびしいというのは、もっとよごれ方の少ない基準で、各都市がそれぞれ自主的に警報を出しております。この三三ページの左の上から六行目くらいに、法二十一条の事態発生はないと書いてございます。ここに書いてございますのは、厚生省がこれ以上になったら警報を出すようにというほどひどい状態のスモッグになったことはないということであります。ところが、自主的にやっておるものは、次に書いてあるように、すなわち基準をもっと低くしまして、空のよごれ方はもう少し少ないくらいでもはや警報を、それぞれここに書いてあるように横浜、大阪などは出しておりますが、その警報の回数がここに書いてございます。これは自主的基準でございますから、各都市まちまちであります。大阪はかなり昔から自主的警報を出しております。この表からごらんいただきますように、スモッグ警報の出るのは冬場でございます。  以上で、この統計の御説明を終わりまして、次が「ばい煙影響調査報告の概要」というのがお配り申し上げてございます。これが二つに分かれておりまして、一つが二ミリくらいの厚さのとじたもの、いま一つそれの要約が、一枚刷りの紙を二つに折った「ばい煙影響調査結果要旨」というのがございます。この二ミリくらいの厚さのばい煙影響調査報告の概要と書いてございますのを結論的に要約して、ごく簡単に一枚刷りの紙に書いたものでございます。  最初にこの要旨のほうを先に申し上げます。大気汚染が一般住民の健康にどのような影響があるかということを調べるために、三十九年度に大阪と四日市で、よごれたところとよごれないところの住民を平均的にとりまして、四十歳以上の男女について、せきが出るとか出ぬとか、アンケートで訴えをまず聞きまして、そして何でもありませんという者もありますし、せきが出るという者もある。その訴えのあった者から、今度は実際に診察をいたしまして、気管支がやられておるかどうかという調べと両方をしたわけでございます。その結果によりますと、まん中ごろに書いてございますが、大阪、四日市とも、汚染地区においては、せき、たん等の呼吸器系症状を訴える者の頻度が非汚染地区に比べて二ないし三倍多いということであります。さらに、感冒その他の一時的な感染等による影響を除くために、せき、たん等が長期間にわたる慢性気管支炎症状を有する者についてみても、汚染地区では非汚染地区に比して高率である。また、慢性気管支炎症状の発現には、喫煙の有無、年齢等が関与するので、これらによる影響を除外するための補正を行なって汚染、非汚染地区間の比較をしてみても、前者は約二ないし三倍の高率である。医学的検査によって調べてみまして、閉塞性障害といいまして、気管支が厚くなって詰まってしまう。これはだんだんひどくなるとぜんそくを起こしてくるわけでありますが、そういうふうな器質的に変化を起こした者については、汚染、非汚染地区間における有症率は大阪、四日市で多少差があるが、いずれにおいても汚染地区では非汚染地区に比して多い、こういうことでございます。この関係は、なおただいまも継続して調査中でございます。  そこで、少し厚いほうで、図表について御説明申し上げます。まず厚いほうの一三ページ、この調査地区対象となったところの、これは四日市の塩浜南というところでございますが、それの降下ばいじん、塩浜北というよごれた地区の代表としてとったところの降下ばいじんと、その次のページの磯津というところの降下ばいじんの量と、今度非汚染地区の四郷というところと比較していただきますと——富州原というところもございます、桜というところもございます。汚染地区と非汚染地区とではこれだけの違いがございます。一六ページは、大阪の汚染地区と非汚染地区の降下ばいじんの違いでございます。非汚染地区の池田についてはごく短期間の調査しかございませんが、そこで一七ページをごらんいただきますと、降下ばいじん量は左側が大阪でございますが、此花地区では、この二重マルのようなものが平均値でございまして、それから棒がありまして、一番上が最高の一番よごれた日の濃度の高いところ、一番下が最低の濃度のところ、それに対して、対照にとりました池田地区はこのようなものでございます。右側が四日市でございまして、左側の三本が汚染地区でございます。右側の三本が非汚染地区でございます。次の一八ページに、その降下ばいじんの中でも、からだに害のあるといわれる溶解性の成分についても同じような関係があるということをお示ししたわけであります。  いまはばいじん、ほこりでございましたが、次が亜硫酸ガスでございます。汚染地区と非汚染地区を比較してございます。二一ページにそれをさっきのような棒の形に直してございます。  次は少し省略しまして、二四ページをお開きいただきます。一番上のCBと書いてございますのが、せきやたんが慢性に出ておる人たちということでございます。こまかく申しますと、三カ月以上せきやたんが続いたような、そういう病状が二年以上続いておる、要するにかなり慢性病的になっておる症状の訴えを示す人たち。C3、S3というのが次にございます。このC3、S3という人たちは、二年とは続かない、一年か一年前後というような人たち、そういう症状。CSというのは、三月は続かない、ごく短期間せきやたんが出た人たち、急性症状の人たち。一番下は、何も症状のない、健康だと自分では思っておる人。そういたしますと、斜線が汚染地区でございますから、左側の男だけで申しますと、慢性症状のある人たちが六・三%、それから非汚染地区では四・八%、健康人が六六・二%で、非汚染地区では七〇・二%、こういうことでございまして、慢性症状と急性症状の者が汚染地区のほうが多い。ただし、亜急性症状の人たちは汚染地区のほうがやや少ないというような資料であります。  次は四日市でございますが、大阪に比べて四日市はかなり顕著でございまして、慢性症状、亜急性症状、急性症状を呈する者は、汚染地区でははるかに非汚染地区より多い、二倍ぐらいである、こういうことでございます。  これを年齢別に見ますと、二六ページの広げた図表でございますが、汚染地区の年寄りほどひどくやられる、こういうことでございます。  二七ページはたばこの関係ですが、これは省略いたしまして、二八ページをごらんいただきますと、二八ページにこれを数字にして示してございます。カッコの中に書いてある数字をごらんいただくといいかと思いますが、病気を持っておる、症状を訴える人々は、大阪の男では、非汚染地区に比べて三割多い。一三〇・八%である。女では三八〇・〇%、女が特に四倍も多い。四日市でも、女は非汚染地区に比べてほぼ四倍もせきやたんが出る人が多い。男は二・八倍症状を訴えている。  そこで次の二九ページをごらんいただきますと、いままでは訴えでございましたが、実際に診察してみた結果はどうか、こういうことでございます。そういたしますと、先ほど慢性症状があると言いましたが、その慢性症状がある人のうちで、大阪地区では三割一分が実際に気管支に変化を起こしてきておる。それから非汚染地区で見つかった慢性症状がある人、これは何も公害のために起こったわけではなくて持ち前のぜんそくとかいろいろある人があると思いますが、そういう人が実際に気管支に変化のある人は二一%である、こういうふうにごらんいただくとわかるわけでありますが、大阪地区ではわりあい器質的変化が多い。これは、これからはそう簡単に推定はできないかもしれませんが、大阪のほうは、いままで何年も何年も積み重ねた影響が来ておって、すでに気管支の変化を来たしておる人がわりあい多い。四日市では、慢性の症状を訴える人などはかなり多いけれども、それらの人々の中で器質的変化を起こしておる人は、大阪に比べればまだそれほど多くない。すなわち、最近汚染が始まったということが推定できるように思われるのであります。  以上で、大気汚染影響に関する御報告を終わるわけでございますが、いま一つ一枚刷りで「大気汚染の当面する基本的問題について」というのをお配りしてございます。これは大気汚染対策を立てます上においての重要な問題点をここへ書きまして、先般公害審議会に提出した資料でございまして、これについて、大気汚染対策を立てる上でいろいろ問題になってまいります点について一、二御説明申し上げますと、第一点は、現在の法規制は不十分である、そういうことでございます。したがって、今後何らか法規制を考える必要がありはしないか。その法規制をする場合の基礎にもなる問題点でございますが、第二番は、排出基準及び環境基準でございますが、現在地区指定をしまして、先ほど来御説明申し上げましたように、測定をいたしておりますと、スモッグが依然として出ておりまして、地区指定をしただけではなかなか防げない。汚染もだんだん亜硫酸ガスなどは進んでくる一方でございますし、スモッグの警報の数もふえてくるという状況にあるわけでございますので、これを防ぐには、いままでの規制基準よりはもっときびしくしなければならないかもしれないというのが一点でございます。しかし、そのようにして基準を締めたところで、施設の数がふえていけば依然として空気はよごれるかもしれないので、一定の環境基準を定めて、それ以上はよごさないという終点をつくる必要があるかもしれない。すなわち、それ以上よごれるおそれがある、東京の空がこれ以上よごれれば困るという基準を一応定めたら、それ以上は工場などはつくらせない、あるいは増設はさせないというような、そういう考え方を持つかどうか。もちろん、そういう考え方を持たないでも、既設の施設により強固な防除施設——先ほど来通産省からいろいろ御説明のありましたような防除施設の徹底を期するということで、これ以上よごさないように防げるかもしれません。とにかく何らかの措置を講じて、これ以上よごさないという一定基準をつくることができればつくりたい。その場合に、その一定基準というのをどこらに線を引くか。きょう今日でも、先ほど御説明申し上げましたように、汚染地区と非汚染地区とは呼吸器の患者の差があるということでございます。どこらでこの線をきめるかというような基本問題がございます。  それからこの一枚刷りにはございませんでしたが、あらかじめ——すでに公害が進んでおる地域ではなくて、これから新しい都市に対してはどのような法的な規制趣旨の徹底を期していくか。現在でも新産都市、工特、それぞれ法律がございまして、ある程度都市計画に対しては計画的に指導ができることになっておりますが、具体的にこれ以上指導を強化していくには、いま少し法的規制が必要かどうかというようなことも考える必要があるわけでございまして、その際に、かりに緩衝地帯をつくるとか、あるいは公害で出てきた患者の治療をするとかいう場合に、それらの費用の負担をどのようにするかというような問題がある。かように考えておるということで、先般公害審議会に御説明したわけでございます。  現在、国のとっております対策を要約して申しますと、ばい煙防止法によって地区指定をして、これ以上工場からきたない煙を出してはならないという基準を示して規制をしておる。現在それらの地区をどんどんふやしておるという現状であるわけであります。その規制を受けた工場に対しては、通産省が防除施設の指導ないし技術開発をおやりいただいておる。それから大気がかなりよごれた場合には、スモッグ警報を知事が出して、工場側がこれ以上そのときには悪い煙を出さないように、質のいい燃料に切りかえるとか、あるいは燃料を燃やすのを少し差し控えてもらうというような措置をいま講じておる。それから新産、工特などの都市計画にあたっては、公害防除ということを頭に入れた計画を立てるように、現地調査通産省と厚生省でやりまして、指導をしておる、こういうことが現在私どもがやっておる対策でございまして、それらの対策を進める上において必要な調査をしたり、あるいは自動記録ステーションを各地につくったりということをしておるのが、私どもの現在の対策でございます。     —————————————
  17. 井手以誠

    井手委員長 次に、自動車排気ガス対策について調査を進めます。舘林環境衛生局長
  18. 舘林宣夫

    舘林政府委員 次は、自動車についての現状の御説明を申し上げます。  これも細長い資料で「自動車排気ガスに関する調査」というのがございます。この調査は東京で行なったわけでございまして、この一ページに書いてございますが、非常に自動車の多いと思われる環状七号線と甲州街道の交差点、それから対照地区として、非常に自動車影響のないと思われるところとして世田谷の用賀町にあります国立衛生試験所付近というところで調査をいたしたわけでございます。その結果、一ページの「調査結果」と書いてございますところの三行目に、一酸化炭素は、非汚染地区では検出はなかったのでございますが、汚染地区では平均濃度四・一PPMであるということでございます。それから下から七行目の右のほうにございますが、交差点の中心部では平均五五PPMである。交通巡査の立っておるところは、一酸化炭素の量が非常に多いわけでございます。それから幹線道路ばたより二十五ないし五十メートル離れた住宅地区でも一酸化炭素が数PPM検出された。すなわち幹線道路沿いの家は常時一酸化炭素におかされておる、こういうことでございます。  下から三行目をごらんいただきますと、その一酸化炭素が血液と結合してできます一酸化炭素ヘモグロビンの量を調べてみますと、汚染地区住民は平均して四・二七%血液のヘモグロビンが一酸化炭素と結合してしまっておるが、非汚染地区では二・七九%である。一酸化炭素ヘモグロビンが全然なかったというのは、汚染地区では三十七名中三名、非汚染地区では十六名中五名ということでございます。  次に二ページをごらんいただきまして、上から五行目をごらんいただきますと、一酸化炭素に暴露された急性の影響は、警察官及び学生の測定値で見ることができる。すなわち、作業前の一酸化炭素ヘモグロビン量は平均二・六二%であったが、半日作業でそれは三・七五%にふえておる。一酸化炭素ヘモグロビン量が五%以上の高い値を示したのは、環境中一酸化炭素濃度が道路ばたで自動測定器で測定した場合の一時間平均値一〇PPMをこえたときに見られた。この一時間の、平均値が一〇PPMをこえるという状況が、私どもとしては衛生上よくない状況、かように考えております。面接の結果、騒音、振動による精神症状と排気ガスによる目やのどの刺激感が、汚染地区では高率に訴えられたということであります。  次の三ページをごらんいただきますと、大阪の調査でございます。これは大阪市立衛生研究所昭和三十六年から三十七年にわたっての調査でございますが、上から七行目をごらんいただきますと、暖期において交通係員に一酸化炭素ヘモグロビンが一四%をこえるものも認められた。また一〇%以上の一酸化炭素ヘモグロビンを示すことが多く、自覚症状としては、特に明らかな訴えは認められないが、身体に影響を与えているものと考えられる、こういうことであります。  それからまん中ごろに、昭和三十九年一月から二月にかけての調査と書いてございます。それにつきましては下から五行目をごらんいただきますと、勤務前が三ないし七%であったものが、勤務後は九ないし一一%と増加しており、一〇%以上のものが六〇%に達しておる。すなわち、血液の中の一割以上が一酸化炭素と結合してしまって血液の働きをしないというような状態におちいっているものが六割も交通巡査にはある。白バイ係員については、一酸化炭素ヘモグロビンが勤務前二ないし七%、平均四%であったが、勤務後六ないし一四、平均八%と増加しており、そのうち二〇%の人員においては一酸化炭素ヘモグロビンが一〇%をこえた、こういうことでございます。  こまかくなりますが、次のページをごらんいただきますと、これは神奈川県であります。横浜市で調べたものでございますが、上から三行目をごらんいただきますと、高島町、東横線ガード下を調べた結果、先ほど危険量と申しました一〇PPM以上の記録を示したのが四〇%、平均濃度一〇PPMである、こういうことでございます。  なお詳細もございますが、ごく概略を申しますとそのようでございます。したがって、今日の自動車排気ガスによる一酸化炭素の量というのは、非常に交通の激しいところでは危険量といわれる一〇PPMをこす場合がかなりある、こういうことでございます。  以上でございます。
  19. 井手以誠

    井手委員長 次に運輸省船舶技術研究所副島交通技術部長
  20. 副島海夫

    ○副島説明員 私は、資料を差し上げてございますので、それの要点と、それから私ども実際に車に即して研究をいたしておりますことに関しての所感、その両方について簡単に御説明申し上げたいと思います。  自動車の排気関係の対策といたしましては、わが国の場合は、外国と少し事情も違いますけれども、大体五つばかりの技術的な焦点があるというふうに考えられます。  その五つと申しますのは、まず第一が、国産車の有害ガス排出状況を正しく把握するということでございます。二番目には、自動車のエンジンを改造しなくてはなりませんけれども、この改善の方向をどういうふうに持っていくかということでございます。第三番目に、排気ガスの実際の試験とか検査の方法を統一しなくてはいかぬ、そうしてきめなくてはならぬということでございます。第四番目には、測定あるいは検査する機械を改善開発しなくてはいかぬということ。最後に、自動車からのガス拡散、これはごく車に近い、至近距離でございますけれども、普通どういうふうに道路上でガス拡散していくかということ。この五つに焦点がしぼられるというふうにわれわれは考えております。この五つのことを実際に解決するということは、これは非常に深い研究が必要でございまして、われわれは、こういう面では実際には、現在のところはアメリカなどに学ぶものが多いのでありまして、アメリカなどのこういう面で非常に厚みのある、また実際の車に即したような研究というものを私どもは高く評価しておるのであります。こういった体制は、日本でもできなければ、将来社会の害を除くことはできないのじゃないかというふうにわれわれは考えております。  この五つのことでございますけれども、これに関する要点をごく大ざっぱに簡単に御説明をいたしたいと思います。  まず一番最初の排気状況の把握でございますが、これは現在までに、私どものところではいろいろな種類の車を数多く実測いたしましたけれども、大体こういうものを平均いたしますと、小型自動車——日本は大体小型でございますけれども、小型自動車では一酸化炭素が大体三%ぐらいに落ちつく、それからハイドロカーボン、炭化水素、これが約五〇〇PPMぐらいに落ちつく、そういった線が一応締めくくり的に第一段階としては出てまいります。日本には車の小さいものもありますし、いろいろな種類の車がありますので、その車によって多少の違いはございますけれども、その中でも排気面で非常に不利な車種というものについては、この技術的な改善という問題が残っているわけでございます。これらの現在の実績というものは、これをアメリカが今度規制しようとしている基準値というものと比較しますと、アメリカなんかの試験方法というものは、私ども日本が考えている試験方法と若干違いますけれども日本の国産車もこれから大いに研究を進めて改善をしていかなければならぬというような気がいたします。  それから第二番目の、今度は自動車の改善の方向をどういうふうに持っていくかということになります。これは気化器及び点火装置、こういったものの改造、もう一つは吸排気系統の改造、これには排気口に空気を噴射するような装置も最近問題になっております。こういったことが考えられますけれども、たとえば気化器の改造とか、あるいは点火装置の改造、こういったものはわりあい早く日本でも実際に改善されていくのじゃなかろうかというふうに考えられます。こういった車の改善につきましては、去年日米技術会議の際に、私どももアメリカの研究とは別に、小型のエンジンにつきまして日本独自の研究を進めまして、できたらばことしの、ことしの五月にございますけれども、五月の会議にその第一報を行なう希望を申し述べたのでありますけれども、われわれの研究体制、そういったもののいろいろな制約から、残念ながら現在はまだそこまでいっておらない状態でございます。非常に残念に存じておる次第でございます。  それから、これらの面で現在世界的にも最も高く評価されておる一つに、クライスラーの考え方がございます。このクライスラーの最も新しいエンジンを最近入手しましたので、これを徹底的に試験をしまして、そしていいところは日本に取り入れるように実際にしたいというふうに、いま準備中でございます。  それから第三番目でございます。これは試験方法でございます。排気ガスを消化するにしましても、試験方法がいろいろございまして、わが国としてはどういうふうな方法にするかということを統一しなければなりません。この関係は、現在はわが国の場合にきまっておりませんけれども、私どもがずっとやっておりますのは自動車試験台、シャシー台と申しますか、この試験台で実際の道路の走行状態一つの標準的なモデルを再現いたしまして、試験を行なっております。自動車の走行状態、これは御承知のようにアイドル、エンジンだけが動いておる状態、それから加速の状態、それから速度が一定の状態、速度が減っていく減速状態、この四つのモードの組み合わせあるいは繰り返しになるわけでございますけれども、この四つを適当な時間比に組み合わせまして、そして日本の国情に合う走行モデルといいますか、走行型あるいは走行サイクル、そういったものを一応まとめて実施をしております。この試験法がアメリカなどの場合とは非常に異なってまいりまして、自動車の速度も違いますし、運行のしかたも違いますので、こういうモードをどういうふうにするかというようなことを技術的にはアメリカと共同研究しておるような状態であります。  まあ一例を申し上げますと、私どもが使っておりますモードは、アイドルが全時間の三〇%、加速が二五%、一定速度が三〇%、減速一五%といったようなモードを標準にわれわれはとっております。これは実際の道路に引き直してみますと、ちょうど新宿から東京駅ぐらいまでの間で、朝夕のピークの時間を少しずれた時間における走行状態に相当いたします。もちろん私ども新車の試験をやりますけれども、これはこの試験法で実施しております。  それから四番目に、今度は測定の機械の関係でございますけれども、これは自動車の排気状態をチェックするために車検場とかあるいはいろいろな町のサービス場、こういうところで実際に用いられる普及簡易型と申しますか、こういったものの開発あるいはそういうものをどういう設計にするかというようなことが非常に問題でございまして、こういう点につきましては工業技術院、資源技術試験所の方々の御指導、御協力を得まして、共同で研究を進めておる次第であります。  最後に五につきましては、この拡散の関係でございますけれども、これは排気ガスが実際的に自動車の至近距離の周辺へどういうふうに広がっていくかということを、私どもは四十一年と四十二年の二カ年でやる計画ができておりまして、さっそくこれは取りかかることになっておる次第であります。  なお最後に、現用車についてでございますが、実際に現在使われている車に対しましての排気ガスに対する有効な処置というものは、やはり一番は自動車整備でございます。これはエンジン各部の整備状態が実際に有害ガス排出に及ぼす影響というものにつきまして、私どもはさらにこれから研究の度を進めまして、いわゆる整備技術の改善の方向に進んでいく方針で進めておる次第でございます。  以上、御説明申し上げます。
  21. 井手以誠

  22. 綾田文義

    ○綾田説明員 排気ガス関係につきまして、警察の関係を御説明申し上げます。  まず排気ガスの取り締まりにつきましては、現在道路交通法六十三条の二によりまして、ばい煙などとともにそれを多量に発散さして、そうして他人に著しく迷惑を及ぼす場合には、運転者あるいはその責任者を追及できるということになっておりますけれども、現在その多量という科学的な基準がはっきり定まっておりません。したがいまして、ばい煙の場合には目に見えますので、もしそれの迷惑を及ぼされた被害者がおった場合には取り締まるということで、現在取り締まっておるわけでございますが、排気ガスにつきましては、そういう状況で取り締まる方法がございません。おそらくこれは科学的に基準がきまりましても、技術的に警察で取り締まるということはむずかしいのではないかというふうな感じがいたします。この問題は、むしろ警察行政よりも、一般の行政の分野で解決すべき問題ではないかというふうに思います。特に車両の装置、車からいかにして排気ガスを少なく出すかという、先ほど運輸省から御説明がありましたけれども、その問題が一番中心ではないかというふうに考えております。  ただ御参考までに、これは本題とは離れますけれども、先ほども厚生省から御説明がありましたように、一方取り締まる警察官が、この排気ガスのいわば被害者になっておるというふうな実情につきまして、簡単に御説明申し上げます。  警察官が排気ガスのため血液中の一酸化炭素へモグロビンが非常にふえておるということにつきましては、先ほど厚生省のほうから説明がありましたので省略いたしますが、とにかく白バイの隊員あるいは交通パトカーの乗務員、あるいは中心街の交差点において交通整理に従事する警察官のそういった健康上の危険度は、非常に高まっておるのは事実でございます。そういう関係で、先ほども説明がありましたが、警視庁におきましても、昭和三十七年以来東京大学に依頼して、大阪府警本部におきましても大阪市立研究所に依頼をして調査を進めているわけですが、先般警視庁で、九月に中心街の交差点勤務の警察官について酸素吸入を実施してみたところ、非常に一酸化炭素ヘモグロビンの減少度合いが高く、したがって疲労度の回復が早いという結果が得られましたので、このたびさらにこれを試験的に実施するという意味におきまして、警視庁では二月十二日から市内十カ所、十所属につきまして、主として新宿あるいは銀座、その他中心街の交差点の整理員あるいは白バイの隊員等につきまして、勤務後にその酸素吸入を実施するということをやっております。大体酸素の使用量は一分間二、三十リットル、一回五分間吸入させるということで実施をしております。これはまだ現在試験実施中でございまして、その成果ははっきり出ておりません。それから、その他大阪府警などにおきましても、あるいは白バイの隊員に一酸化炭素を吸収しないようなマスクをつけさすとか、その他いろいろな方法で現在警察においても対策研究中でございます。  以上でございます。     —————————————
  23. 井手以誠

    井手委員長 質疑の通告がありますのでこれを許します。中井徳次郎君。
  24. 中井徳次郎

    ○中井委員 時間もなんですから、きょうは簡単に通産省の皆さん、特に工業技術院の馬場さんにお尋ねをいたします。  先ほど亜硫酸ガスの排除につきまして、工業技術院とされましては熱心に御研究を願っておりますることを承りまして、敬意を表する次第でございますが、その点につきまして、私は、先ほど社会党の公害対策基本法案提出いたしました中にもあるのでございますが、いずれにいたしましても公害対策基本は、やはり公害を出すもとを見きわめまして、それを排除することにある。厚生省の皆さんからも、いま詳細な御報告、御説明もいただきましたが、どこにおればどの程度のものである、どこへくればどうだ、一年のうち夏場はどうだ、冬場はどうだという、これはやはりそのとおり、実際はもっとひどいと思いますが、結局は、結果でございますから、そのもとを見きわめるのが根本であるというので、私ども法案も、初めて公害については企業責任がある、事業主に責任がある、それが責任を持って排除をするというのでなければ、この公害問題の基本はなかなか改まらないし、姿勢ができないということもうたってあるわけですが、これは自民党あるいは現政府皆さんも、全部その基本の点については、昨年本会議等の質疑等を通じましても、責任があることは明らかでありますという答弁を、当時の大蔵大臣、通産大臣、厚生大臣がいたしておるところであります。  そういう意味から言いまして、じみではありまするけれども、やはり科学技術的な基盤に立っておやりになっておる、敬意を表して承ったのでありますが、この亜硫酸ガスの排除をいたしまする方法といたしまして、液体で流す方法は、具体的にはなかなか困難性があるので、いまのところは固体でやっておる。そうしてそれは大体四つあるというふうに先ほど御説明を承りましたが、この四つのうちで、現状におきましてどの方法が一番現実的であり、かつ有効であるとお考えでありまするか、その辺のところをまずお尋ねをいたしたいと思います。
  25. 馬場有政

    馬場政府委員 お答えいたします。いまの四つは、現在ある程度の進捗を示したものということで御説明申し上げたわけでございます。そのうち技術的に一番現在進んでおりますのは、酸化マンガンを使う方法でございます。それに次いで活性炭を使う方法というような順序になっておる次第でございます。  それならば可能性はというただいまのお尋ねでございますが、たとえば進捗度から申しますと、酸化マンガンを使う方法が一番進んでおりますが、この方法は、先ほど御説明申し上げましたとおりに、あとでアンモニアを必要とするわけでございます。したがいまして、アンモニアの入手の比較的容易な場所におきましては、非常に実現性が高いわけでございます。ところが、アンモニアを入手するのに、たとえばアンモニアの製造工場が離れておるというような地帯におきましては、それを運搬してまいらなければならないというような問題点がございますので、そういう場合にはアンモニアを使わないという方法、先ほど申しました活性炭を使いますような方法、こういった方法のほうがそういう地点におきましては有利であるわけであります。こういった意味ではそれぞれの方法に特徴がございまして、やはりその立地されておりますいろいろな工場あるいは設備によりまして、それぞれの方法が最も適しているということになるわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、一つ方法の完成のみならず、そういった意味では現在の四つの方法の完成に力を入れておる、こういう次第でございます。
  26. 中井徳次郎

    ○中井委員 いまのお話で、酸化マンガンを使うのが、いまのところは第一に出ておるように私は拝察するのでありますが、いまのお話の中にもありましたように、たとえばアンモニアを入手せられるのに非常に便利な地点であるとかどうとかいうふうな御説明がございましたが、私どもの承り方といたしましては、公害対策というのは、いまきわめて国民的な世論になっておる問題でありますから、政治といたしましては、あまりこんなことを企業の人に言うと異議が出ると思いますが、バランスだとかなんだとかいうことは、まず第二義に考えていってもいいのじゃないかというふうな考え方を実はいたしておる。そういたしますと、一体こういう方法でやって、まあお話で二つばかり、あとは、第四番目のはまだ研究段階と承ったが、こういう方法でやってそろばんがとれるのかどうか、新聞などで伝えるところによりますと、実はとれるのだ、とれないというけれども、私どもしろうとが考えておるほどとれなくはない。たとえば運営費は出るのだ、ただ施設費——二億や三億の施設費ならいいが、十億、二十億となるとちょっと困るんだという程度の問題であって、私どもが考えておりますように、全然とれないというのでは決してなさそうに了解をいたしておるのですが、その辺のところはいかがですか。この点は通産省のほうから……。
  27. 中川理一郎

    中川説明員 これは、いずれにいたしましても非常に相対的な問題でございまして、亜硫酸ガス排出いたします発生源といたしましては、業種、業態それぞれ千差万別でございます。先生も御承知のように、重油の使用が非常に一般化した現在におきましては、非常に利益の薄い、そして経営の困難な状態企業経営をやっております中小企業といえども、相当に重油を使っておるわけでございます。それから、これはいわゆる工業側だけではございませんで、ビルの暖房用その他につきましても、重油の使用ということがきわめて一般的になっておるわけでございます。したがいまして、いまの公害防止施設をつくり、かつ、それを運営することが当該企業にとってどういう影響があるかということは、一般的には言えないわけでございます。大企業の、比較的収益力の強い企業に対しては、これは技術開発段階に応じましてアプライできて、その企業が使える、そしてまた企業の経営状態から見てもそれくらいのものは使ってかまわないといったものにつきましては、指導を加えて一生懸命やっておるわけでございますが、底辺のほうに存在しておりますものにこれを強制することが可能であるかどうかということになりますと、非常に大きな問題があるわけであります。  また、これを一般的に申しまして、産業側が公害防止施設に負担し得る経費の支出の限度というものをもう一つ別の観点から見ますと、日本の産業と申しますものは、これは構造的に輸出によってささえられている産業でございますので、国際競争力という観点から見ましたときに、それがどのような分岐点になるのかということは、実は社会福祉という、健康な生活という立場だけではなくて、国民全体の幸福という意味合いにおきまして、日本経済成長がどうなるか、あるいは公害防止施設をつけることによって、成長どころかダウンするということでは困るわけでございます。実はその辺の数字につきましては、技術がいま流動的に動いておる段階にあり、確定した技術がございません状態でもございますために、必ずしも一般的には言えないのでございますが、私どもといたしましては、ただいま御審議中の四十一年度予算によりまして、工場側が現在適用できる公害防止施設をつけ加えることによって、どれくらいの経費負担になり、それがいわゆるコストの上でどういうウエートになるかという、いわば原単位調査というものを、比較的公害型の産業、業種から逐次調査をいたしたい、かように考えておるわけでございます。  先ほどの中井先生の御意見にもございましたが、私どもの役所といたしましては、やはり産業の進歩と申しますか、産業の健全なる発展ということと国民生活の健康さというものとは、やはり調和を保たなければならぬものだ、かように考えまして、できるだけ可能なことはやらせる。しかし、角をためて牛を殺すようなことになっても、国民的な利益という点でいかがかという感じがいたしております。ただ、いまの御質問には、的確にどれがどうということをお答えできない状況でありますことは、公害問題の発生が非常に歴史が新しゅうございまして、かつまた、その対応する技術というものも逐年変わりつつある状態でございますために、的確にはお答えできませんけれども、中小企業問題その他がございますということと、産業問題だけではなくて、実は先ほどの厚生省の御説明にございましたように、降下ばいじんの例をとりましても、札幌にございますように、住宅の暖房用の降下ばいじんというようなものをどうするか、これはやはりバランスをとって考えなければいかぬ、それにはもう少しく検討さしていただきたいと思います。
  28. 中井徳次郎

    ○中井委員 中川君、非常にじょうずに御答弁をなさっておるが、ぼくは、そんな中小企業までやれなんて言ってやしない。札幌や旭川へ行けば冬は石炭をたくだろう。しかし、これは行政として何かやはり具体的にとらまえて、ひとつ具体的なものを対象として、者ども続けという中央突破をやらないと、日本公害対策は片づきません。あなたのように問題をあっちへ持っていったり、こっちへ持っていったり、これは大企業はできるかもしれませぬが中小企業はむずかしいとか、日本の産業は輸出にたよっているから、どうもそういう利益率が具体的に減ったら困るとか、そういうことを言っておってはだめです。あなたの立場はよくわかるが……。  先ほどの馬場さんの御説明の中にあったが、中部電力とあなたのほうはタイアップされて、それで何かいまテストケースでいよいよやられる。これをやると硫黄がたくさん出るのですね。何かほかにまた生成品ができ過ぎて、日本の硫黄ががた下がりをする。大きな各産業でみんなそれをやると硫黄業界が困るから、その辺のところの調整もはからなければいかぬというようなことさえ私は聞いておるのです。だから、それはやはり勇気を持ってどこかやって、硫黄が安くなればけっこうなことだ。それは大いに硫黄専門の会社に対する措置や手当てはあなた方で考えるとして、そういうところでどうです。いまの法制の中では勧告はできる。たとえば中部電力に、おまえさんのところは、これは成功したからこの施設を全部受けろ、そういう命令はできないのですか、いまのところ。しかし、勧告はできるわけでしょう。どうです。
  29. 中川理一郎

    中川説明員 私はプリンシプルと問題の広がりについて少し申し上げ過ぎましたので、実際の行政指導で私どもが考えておりますことと、多少御理解の上で混同があったような、へたな言い回しをしたかもしれませんが、いまの状況でございますと、先ほど来お話の出ております排気からの脱硫技術と申しましても、まだ中間プラントの段階でございまして、確立した技術とは言いがたいわけであります。大型の新鋭火力発電所にいま直ちにつけ得る装置というわけではございません。ただ、この技術が、工業技術院の研究開発等進展によりまして、ある程度確立したという段階になりまして、そしてまた全体の重油の使用量から申しますと、たとえば火力発電所の使用量は全体の三分の一くらいでございます。これをひとつきれいにするということは、全体の大気汚染問題につきましての貢献度が非常に高いわけでございます。しかもなお、それらの企業が九電力という非常に限られた企業によって行なわれておるわけでございますので、これは行政指導をもって十分にやり得ることだと私は考えております。ただいまのところは、法律的には、大気汚染の関係の規制法は、場所を指定することと、それから施設を指定することにいたしまして、ボイラーその他平炉というような施設を指定いたしまして、この施設で現状の技術でやり得る装置というものは強制できる形になっております。ただ、いまの脱硫技術等は、そこまで確立した、固定した設備ではないということでございますので、かようなものにつきましては、実行の難易、それから効果の大小ということを考えまして、行政指導をもって十分に対処していけると私は考えております。またその気持ちで、工業技術院の技術開発もいま電力会社等に協力をしてもらってやっておるわけでございます。
  30. 中井徳次郎

    ○中井委員 いまの話わかりましたが、実はきょうの日本経済新聞にそのようなことが出ておるわけであります。公益事業局あたりで、これがいいということになれば、早急にひとつ内部指導をやってもらいたい。いま電力会社は——日本で一番いま利益率を上げているのは日本銀行で、その次は関西電力と違うのですかな。次は中部電力。もう何百億という大きな会社でありますから、五億や十億のことは何でもないはずでございます。それでこの点は、私の気持ちを申しますと、先ほども説明にあったが、今秋から予算をおとりになって着工して、来春からテストということになりますと、四十三年に試験結果を出すというように新聞には出ておりますが、馬場先生、これをもっと早くやっていただきたい。いいものはどっと……。  いま舞鶴で問題が起こっております。関西電力が百八十万キロくらいの火力発電を舞鶴と宮津の間でやろうとする前から猛烈な反対が起きておる。この問題が片づきますと、そんなのは飛んじゃうのです。非常に急ぎます。たびたびどうも四日市の話で恐縮ですが、四日市の火力発電は、知事も、市長も、時の政府も非常なでたらめをやりました。反対者は私だけのようなありさまで、町のまん中へ火力発電所を置いた。それは火力発電を運行するために、船が横づけになるという利益だけで、町のまん中に、東西十六キロくらいの海岸の八キロ目に置いて、そこから亜硫酸ガスをどんどん出して、まことに醜態なんで、私も同郷の者として恥ずかしいのです。その都市計画のときに私に相談してくれれば、そんなことやらなかったのだけれども、非常に安易なバランスを追ったことをやっておりました。というのは、たまたま県や市の埋め立て地であったわけです。埋め立て地を高く買ってもらって、ということと利益が合いまして、それでいま大問題になって、四日市の人は騒いでおりますが、原因は国が悪いと必ずしも言えない、そういうところにもあるわけです。これは余談ですけれども、したがいまして、これをきれいにしてもらいますることは、全くこの付近住民の熱望なんですから、早急にやっていただきたいし、また、そういうことでもしテストをやる経常費等で不足がありましたら、どんどん言ってください。私は国会の一人の議員として、中部電力あたり、そういう経費くらい何ぼでも出させるというふうなつもりでいま承っているわけです。  そこで、同じきょうのことですが、もう一つ記事が出ておりまして、科学技術庁の資源調査会が、内田俊一といわれる方が会長だそうですが、いまの「重油の低硫黄化に関する調査報告」というのをまとめまして、その中では、先ほどから御説明のありましたものよりもっと徹底しまして、ガスになる前に抜いてしまうんだ、重油の段階亜硫酸ガス原因となる硫黄を除く方法、こういうことについて水素化法とかいうもの、これがいいじゃないかというので総会に報告をされ、上原科学技術庁長官にそういう報告書を提出されたという記事がきよう出ておるのであります。しかしながら、これにも最後のほうでバランスのことが出ておりまするので、調査会の報告書で、水素化脱硫法を石油精製メーカーに奨励すると、政府に建設資金、金利、税金、償却などに対する優遇措置を望むとか、重油の含有率による価格差の設定が必要だという、かなり具体的なことまで新聞は報告をいたしておるのであります。したがって、私どもが当初聞いておりましたように、亜硫酸ガスを取るということは非常に技術的に困難で、とてもバランスに乗らないというふうなことが、話はどうやら少しあやしい。災いを転じて福となすで、じょうずにやればかえっていいんじゃないか。昔肥料をつくりまするときに、尿素をたれ流しておりましたのを、最近は尿素が有力な肥料になる。そういうような形で、ガソリンと硫黄は違うでしょうけれども、こういうような感じで私、新聞を見ておるわけです。これは井手委員長もごらんになりまして、これはどうだというようなことでありますので、井手委員長のかわりに質問するような気持ちも持ってきょうお尋ねいたすわけです。水素化法がどんなものであり、どういうことでございますか、一応ここでお話が伺えればと思います。
  31. 馬場有政

    馬場政府委員 お答えいたします。ただいま御指摘のとおり、最も徹底的な対策といたしましては、燃料の中の硫黄分を除去していけば一番いいわけでございます。これはもう御指摘のとおりでございますが、その方法といたしましては、結局、油でございますと、炭素と水素が結合しておるわけでございますが、硫黄分が骨組みの中に入っておるのが重油の中の硫黄分の形でございます。したがいまして、これを何らかの方法で取るということで、一つは、いま水素添加というお話がございましたが、比較的温度を高くいたしまして、圧力を上げて水素で処理をいたしまして、たとえば硫化水素のような、ガス状の硫黄化合物にいたしまして油から除去する。これが水素添加法、水素処理法の要点でございます。  こういう水素添加をいたします方法というのは、これはかって石炭なんかを油に変えるというようなときに、こういった類似の方法が使われたわけでございまして、日本といたしましては相当な技術的な蓄積を持っておるわけでございます。これを油に応用すれば、より容易に簡単にできる方法でございますが、大体いま一キロリットルの油に対しまして千数百円の処理費が、現在の技術段階ではかかるわけでございます。これを何とかしてもっと下げたい。もっと技術を向上いたしまして——燃料の代金というものは工業のいろいろな生産費の中で相当大きな部分を占めておりますので、この値段が上がるということは、製品その他に対して相当値段が上がるということになるわけでございまして、できるだけ安くやりたい。目標といたしましてはキロリットル当たり五百円くらいのところでやれないかということで、いま私どものほうの研究機関におきましてはもちろん、あるいは石油会社なんかにおきましても、いろいろ研究をいたしておる次第でございます。そういたしますと、先ほど御指摘のように、相当な量の硫黄分を多く含んでおる油を輸入しておるわけでございますけれども、それから硫黄として使えるようなものが取れることになるわけでありますが、何分にも現在のところ千数百円というようなコストがかかる。しかもその大部分は水素の値段でございます。その水素を安くする、あるいは比較的少量の水素消費量で目的を達する、こういった研究技術的にはそういった研究が非常に重要なんで、これは私ども研究機関でも、従来もやっておりますし、四十一年度においてもさらに強力に推進したい、こういうふうに考えております。
  32. 中井徳次郎

    ○中井委員 きょうは科学技術庁の方は見えていないのですが、そういう記事が出ておりますから、ひとつ御連絡を賜わりたい。大体いま御説明のとおりでございますが、五百円程度でできるそうだということがちょっと出ておりますから、そうなると、商業ベースに乗るのじゃないかと思いますが、御検討を願いたい。  あといろいろありますけれども、きょうはこの程度にしておきます。
  33. 中川理一郎

    中川説明員 中井先生のいまのお話でございますが、資源調査会をきのう開きましたときに、科学技術庁の資源局長から私のほうに連絡がありまして、私は行けなかったのでありますけれども公害課の担当官が出席しておりました。いまの新聞記事の中に一つ先生の誤解される要素がございますので、参考のためにつけ加えておきますが、いまの五百円は一%について五百円かければ取れるという話だったように私聞いております。ですから、いまの評価ではあまり変わらないのではないかと思います。
  34. 中井徳次郎

    ○中井委員 それじゃ、やはりアラビア石油のなにでは、あれは二・八だから千五百円か、それではそろばんとれませんか、だけどどうなんですか、そのそろばんとれるとかとれないとかいうのは。  これは参考に聞くのですが、施設費の償却が相当な金額になる。だから施設費は他の方面でくめんするということになれば、運営費ということになればどうですか、やはり水素の値段、それを相当下げないといけないのですか、その辺のところをちょっと。
  35. 中川理一郎

    中川説明員 私、技術屋でないしろうとの説明でございますので、間違いがございましたら、また工業技術院長のほうから御訂正願うことにいたしまして、施設費もさることでございますが、やはり水素が非常に高いというふうに私は聞いております。アメリカあたりで比較的そういう研究が進んでおりますのは、比較的豊富低廉に水素源があるということのようであります。実際に日本の石油精製工場におきましても、精製のプロセスの上で、軽い油の段階になりますと、実は油の中から脱硫をしているわけでございます。石油工場等でごらんになった硫黄は、その段階のものでございます。これはどうも工程全体のバランスからいいますと、その段階ではそれに見合うような水素が比較的容易にとれるということのようでございますが、油が重い段階でやります水素、これがどうも高いものにつくというのが、いま経済的になかなか見通しの立たない根本的な点であるように私は承知しております。
  36. 中井徳次郎

    ○中井委員 もうこれでやめますが、そういたしますと、やはり技術よりも経済の問題が非常に隠されておるし、しかも、その経済のバランスのとれるとかとれないというようなことも相当相対的なことであるように私は感じとったわけでありますが、ひとつどうですか、一つ企業なら企業をとらまえて、それが、いろいろな方法がありましょうが、こういう方法があってやった場合に、一年どれくらいの欠損になるか。私ども政治側の者としては、赤字の絶対額が問題であろうと私は思うのです。ただ、その点で赤字になる、トン三百円赤字、そうするとどうなるかという、総体の量を知らしていただきますると、私、公害対策にしろうとでありながらいろいろ判断をいたしておりますが、もとをとめる以外に方法はないし、そうしてもとをとめることはそうむずかしいことではない。やはりこれは国民の意識を高めて、そうして国家の財政の援助も積極的につぎ込めばできる。特に日本のようにこんな狭いところで一億もおりましては、とてもソ連やアメリカの許容度とかなんとかいったり、あるいはどこへ工場を建てるとかいったところで、そんなものはどうもあまり参考にならぬ。自動車ども、あと二、三年すればたいへんな数に私はなると思うので、交通巡査はひっくり返るどころじゃないというふうに思いますが、その根本をやはり思い切っていま考えていく段階ではなかろうかと思いまするので、この次の機会でも、私、また具体的に尋ねますが、AならAという企業は、この施設をすればどれくらい金がかかって、一年間どれくらいの欠損になるかというふうな問題について質疑討論をいたしたいと思いまするから、あらかじめ御準備だけをお願いしておきます。
  37. 井手以誠

    井手委員長 この際、委員長から当局に申し上げておきますが、ただいまの中井委員の発言はきわめて重要な質問であろうと思います。重油の段階脱硫するということは、かなり開発もされておりますし、きめ手にもなろうと思いますので、いま御要望があった点に関連して、昨日の二十二日の報告の内容、それから工業技術院における技術開発段階、その経費、原価、それの及ぼす重油の価格、いわゆる経済性の問題、そういった資料を次回の委員会までに提出をしていただくようにお願いいたしたいと思います。  次に肥田次郎君。
  38. 肥田次郎

    ○肥田委員 だいぶ時間も過ぎておりますから、簡単に二、三の質問をいたしたいと思います。  まず運輸省が急いでおられるようですが、これは結論は、例の排気ガス被害を——被害というなりも排気弁の改良というようなものに対して、規制するような段階に至っておるかどうかということ。それから技術上の問題、これを二つ聞きたいのです。いま私は資料をここに持っておりませんが、もう五、六年にもなりますか、探しても見つからなかったのですが、こういう資料を私の手元まで送ってきた人がありました。それは自動車の排気弁の中にたまっておるコールタールようのものを耳かきに一ぱい、ネズミになめさしたところが、それでネズミはころりと死んでしまった。これは非常な有害だと思うから、ぜひこれの規制措置を考えてくれ、こういうふうなものが来たんです。  それから、先ほども警察庁のほうから話があったように、大阪ではパトロールの警察官に酸素タンクを使用さすとか、こういうふうなことも実は新聞で見たことがありました。私も去年の春ごろでしたか、私の孫が鶴見におりますが、これは相当大気環境の悪いところでございます。特に自動車に酔うというようなこともない。それを鶴見から九段の私の宿舎まで連れてきました。たまたまスピッツの四カ月くらいのちっこい子もおったのです。ところが、川崎の橋を渡るころから、それまではしゃいでおったのに、急にあくびをし出しまして、最初は、これは自動車に酔ったのかな、しかし平生は酔わないのにと思っていたんです。ところが、それが車をとめても直らない。結局、自動車酔いじゃない、船酔いみたいなものじゃないとわかったものですから、窓をあけて走ってきた。ところが、窓をあけるとよけいあくびをして、目から涙を出しだした。原因は、やはり自動車排気ガスだろう。そうしているうちに、今度はそのちっこい犬まで何か粘液のようなものを出して、そうしてぐんにゃりしてしまった。これは酔っぱらったんじゃないと思うんです。結局、自動車排気ガスにやられてそういう状態になったと思います。  こういうような状態ですから、一般都市におけるところの自動車排気ガスの有毒性というものは相当なものだろうと思うのです。いろいろ資料を見せてもらいまして、いよいよその感を深くしたのです。したがって、排気ガスの浄化装置あるいは消音器のいろんな改良、こういうことが検討されておるようですけれども、これは金がかかるということで、アメリカあたりでもまだなかなか思うようにいっていない、こういうことを聞きましたが、技術的にこれは困難なのかどうか。そうして可能なら、これは少しも早くいわゆる規制措置を講じて、そういう機械の取りつけというものを強制もしなければならぬ、こういうふうに思うのですが、ひとつお答えいただきたいと思います。
  39. 宮田康久

    ○宮田説明員 先ほど私ども研究所のほうから御報告いたしましたが、一昨年、昨年にかけまして、日本でつくられております国産車につきまして、いろいろ調査をいたしましたその結果を見ますと、非常に排気ガスの性質のいいものもありますし、また非常に悪いものもある。非常にばらつきがあります。そこで、実は基礎的な測定をする装置自体が、現在カー・メーカーにほとんどないといったような実態でございまして、幸い昨年国産でも基礎的なよい測定装置ができまして、これを急速にカー・メーカーに入れさせまして、まずその測定をやるということから始めなくちゃならぬわけです。先ほど御説明申し上げましたように、アメリカでは、排気ガス問題をだいぶ昔から長く取り上げておりまして、経験も十分積んでいるわけでありますけれども、その結果を見ますと、先ほどお話ございましたように、排気ガスが出たあとで——出たあとでと申しますか、エンジンから出ましたあとで清浄装置的なもので処理するという方法一つ方法でありまして、それについての考案、試作品もたくさん出たようでありますけれども、結局もとへ戻りまして、現在では、エンジンの本体それ自体の設計、構造、いろいろな装置、それによって排気ガスが非常にきれいにできるというほぼ結論が出てきております。一番もとからきれいにすることが、一番肝要なことでございます。  そこで、先ほど申し上げましたように、日本のメーカーのつくっております車につきましても、非常にきれいなものもあります。また一酸化炭素等非常に多いものもあります。したがって、私どもといたしましては、ただいま申し上げましたように、もとのエンジンそれ自体の設計、構造、装置を、極力排気ガスがきれいな状態で出るように、まず製造メーカーにやらせることが第一と考えまして、急速に測定装置を入れさす、ある一定の線まで極力追い込むということを、いま強力に行政指導している最中であります。おそらく、一つの目標を与えまして、今年から来年にかけて、ある一定の線までは新車につきましては措置ができるだろうといま考えております。ただ個々のエンジンについての措置をいたしませんと、万能的な措置がございませんので、その点は私どもも大いにプッシュをいたしましてメーカーに努力さしたいと思っております。一定の線にある程度そろいましたところで、先ほどお話がありましたような法律に基づきますいろいろな規制基準値等も、実態の測定あるいは諸外国の規制状態等見まして、われわれとしても国際的にあるいは国内の実情に十分適した基準値をきめまして、最終的には規制をいたしたい、そう考えております。まず新車からきれいな排気ガスが出るようなことにさせるということが一番肝要じゃないかと思って、いま努力をしている最中でございます。
  40. 肥田次郎

    ○肥田委員 技術的な問題については、また本業のほうで聞かしてもらうことにいたします。せっかくひとつ検討してもらいたいと思います。  それからもう一つ、二つお伺いしたいのです。  警察庁のほうにちょっとお伺いしておきたいのですが、警察庁のほうでは、たしか取り締まりの対象にあったと思うのですが、単車だとかスポーツカーで、消音器というんですか、それをはずして走っているやつがございますね。こういうのは取り締まられたことがありますか。たとえばすごい音を出して飛ばしているのですが、騒音的な問題があるし、それからなまでガスを吐き出していくのですから、これはだいぶ問題がある。これを走りっぱなしにほっておくという手はないのですが、しかし、あっという間にすっ飛んでしまうから、交通警官もなかなか取り締まれない、こういうことが実際にあるのではないかと思うのですが、この点についてお伺いします。  それからもう一つ通産省の関係で、先ほど中川さんがああいうふうに言われたので、私もあとちょっと質問するのに気がひけるのですが、私は思いつきじゃなしに、いろいろと昨年も公害地を回って見て、結局亜硫酸ガスの毒性と、それから、これの多量に使用されておる現状を見て、何とかせなければならぬだろうと思っておったのです。ところが、ああいうふうに言われると、経済と人の命とのバランスというものになってくると、これはむずかしいのです。私が現在ぽっと頭に浮かんだことは、規制をしようとしてもなかなか困難な面もあることは事実なんです。それから中井さんが質問されておったように、いろいろ複雑な中身もあるようですから、そういうことを前提にして、重油を大量に使用するものについては、重油量じゃなしに、有毒ガスを出すのだから有毒ガスの目的税を取って、その税金で厚生施設をやったらどうだということも当然考えられるのですが、しかし、あなたのほうでそういうふうに言われると、これはとても問題にならぬだろうという気がして、これに対する答えは要りませんが、そこで三分の一は火力発電が使っておるということです。これは年間でけっこうなんですが、現在大体年間重油はどれくらい使われておるのかという数字と、それからもう一つは、一般自動車関係、交通機関関係でガソリン、重油あるいは軽油、こういうようなものがどれくらい使用されておるのか、この総使用量について、手元に数字がありましたらお知らせを願いたいと思います。
  41. 綾田文義

    ○綾田説明員 先ほど御質問の点にお答え申し上げます。警察庁では、特に二輪車などの消音器の関係、それからばい煙も若干関係がありますが、その点につきましては、一つの取り締まりの重点として、ちょっと日付は忘れましたが、警察庁からも取り締まりをするようにということで通達を現実に出したこともございます。統計数字といたしましては、道交法の六十三条の二に基づく消音器装置不良ということで、概数を申し上げますと、年間大体一万五千件以上の、これは送致をいたしております。数を申し上げますと、これは非常にこまかい分類でございまして、三十九年七月だけで全国警察について統計を調べましたところ、消音器等の装置不良が千四百二十六件という、これは送致でございますが、現在における指導、警告をも含めますと、これの倍以上になると思います。したがいまして、おそらく私は、昨年あたりでは年間二万件以上のそういう送致をいたしておるのじゃないかというふうに推定をいたしております。そういう点で、この問題につきましては、特に音の関係で一般の人に非常に不快の念を与えますし、いろいろ問題がございますので、重点的に取り締まっております。
  42. 中川理一郎

    中川説明員 重油の全国における消費量でございますが、四十年度では五千万キロリットルという見込みでございます。なお、参考までにその前の三十九年度の実績を申しますと、概数でございますが、四千三百万キロリットル、三十八年では三千五百万キロリットル、大体そういう数字になっております。全体で見ますと、三十年から三十九年で、先ほどお話ししましたように七倍ぐらいにふえております。  四十年度の揮発油の需要見通しは千二百三十万キロリットルという数字でございます。三十九年度の実績が大体千八十万キロリットルで、三十八年度が約千万キロリットル、そういう数字が出ております。  軽油でございますが、軽油は、四十年度の見込みといたしましては六百二十五万キロリットルでございます。
  43. 肥田次郎

    ○肥田委員 ありがとうございました。この数字でちょっと勉強したいこともありますから……。  それからもう一つ、今度は厚生省のほうにお伺いしたいのですが、私、お医者さんの関係のほうは全然しろうとでわかりませんので、そこでお伺いするのですが、例の大阪あたりでは、ばい煙その他、大気汚染に対して、いわゆる慢性的になれっこになっているというようなことを前提のお話がちょっとあったのですが、人間の対応性と、それから自然発生的な後天的にできるいわゆる抵抗力、こういうものとの限界点というようなものを、お医者さんのほうで研究された何かがありますか。
  44. 舘林宣夫

    舘林政府委員 先ほどちょっと御説明申し上げてございます自動車排気ガス——資料の御説明は省略した部分でございますが、汚染に絶えずさらされている人は、汚染自体、すなわち昼と夜とではそれほど差がないということで、多少その汚染に対する敏感度が鈍ってくるという資料は出ております。それから先生が例に引かれました大阪地区の例は、私が申し上げたのは、せきとかたんとかいう自覚症状を呈している人々の中で、実際的に医者が見て肺に変化が起こっているらしいというもののあらわれる率が、四日市よりは大阪のほうがひどいということを申し上げたわけでございまして、これは大阪のほうが、長い間汚染にさらされておる間にだんだん変化が起こってきておるのではあるまいか、四日市のほうは、その期間が比較的最近でございますので、長期の慢性の器質的変化がまだ大阪ほどは起こってはいないというような説明ができるわけでございます。そういう根拠はあまりはっきりしないが、ということを申し上げたわけでございます。  いまのお尋ねの、長い間にそういうことになれるかということは、これは正確ではございませんが、私の記憶では、従来ハツカネズミのようなものを使いまして、ガード下で騒音調査などをしたことがございます。そういうもので、初めてそういうやかましい所に持っていったものは、食欲がなくなるとか、早く死んでしまうとかいう変化があるのが、相当それになれると、それほど影響がないというような調査のことを聞いたことがございますが、系統だてて、そういう大気汚染のようなものについて、なれればそれほど影響がなくなるかどうかというような調査は、現在のところございません。
  45. 肥田次郎

    ○肥田委員 いずれまた、あらためて質問することにして、きょうはこれで終わります。
  46. 井手以誠

    井手委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後零時五十五分散会