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舘林政府委員 お配り申し上げてございます資料を開きながら御
説明申し上げます。
最初に「全国の
大気汚染」という横長いやや厚い資料がございます。この資料の二ページをお開きいただきたいと思います。
この表に示してございます測定した場所は、
ばい煙規制法で
地域指定をされた、すなわち比較的汚染の進んでおる
地域についての資料を図示したものでございまして、その後、この資料をつくりましてからあと釜石なぞが加わっておりますので一部抜けておりますが、これをごらんをいただきたいと思います。
大きいほうの輪は降下
ばいじん、空から地上へ降ってくるちりの量であります。一平方キロに対して一月間に何トンちりが降るかということでございまして、例を東京にとりますと、一平方キロに二十一トンほこりが落ちてくる、こういうことでございます。一番多くほこりが落ちるところは、この表では大牟田でございます。中の輪は
亜硫酸ガスの量でございまして、酸化鉛を使いまして
亜硫酸ガスの量を固定して百平方センチに一日に何ミリグラム
亜硫酸ガスが捕捉できるかという数値をここへ書いてございます。それで川崎が非常に大量に
亜硫酸ガスが
大気中にあるということがわかるわけでございまして、この表で見る限りは、しばしば問題になっております
四日市はそれほど大きな数値ではございません。ただ、この表を見る場合に、一応問題点としましては、どこをはかった数値であるかということがかなり問題でございます。東京の平均値というのはどことどことどこをはかった東京の空のよごれぐあいであるかという、その測定点の問題がございまして、これはそれぞれの
都市がくふうをして、その
都市の平均をあらわすような測定点をそれぞれ
都市が選んで測定したものでございまして、これが世界の方程式があるとか、
日本で
方式がきまっておるとかいう平均化がまだ行なわれておりませんので、この測定値が確かにすべて、たとえば東京の平均の空をあらわすかどうかについては、問題がございますことを一応申し上げておきます。
次の三ページをごらんいただきますと、これらの
都市のものを総平均して加えまして、三十九年で月別に何月が一番
亜硫酸ガスが多いかというと、六月から八月が多い、夏場が多いということでございます。それから
都市別に、さっきの輪をわかりやすく示したのが右の柱でございまして、川崎がずば抜けて非常に高いわけでございます。これに対して、東京はこれらの中ではそれほどまだよごれたものではない。斜線が平均値でございますので、斜線の高さでごらんをいただきますと、これでおわかりいただけるかと思います。この場合に、ニューヨークはどのくらいよごれておるかと申しますと、平均二であります。東京の倍くらいのよごれ方であります。ロンドンは平均が〇・九であります。おおむね東京に近いよごれ方でございます。
なお、ロンドンとニューヨークの数値は容量法で、測定
方法が違います。容量法は量のほうで測定しますが、その
内容はこまかい問題でございますので、後ほど御
説明します。
七ページをお開きいただきます。年次的に空のよごれがどう変化してきたかというのがここに示してございます。
亜硫酸ガスでございます。
大気汚染の一番害毒を人間に及ぼすであろうと推定しております
亜硫酸ガスでございますが、川崎、名古屋、千葉というのが非常にふえ方がひどいわけであります。それに比べて東京、
四日市などはやや減りぎみ、との表では減りぎみでございます。
次のページをお開きください。いまのが平均値でございますが、次のページは最高値で、一番よごれたときでございます。大体似たような数値でございます。
その次は一二ページをお開きください。いまの表は
亜硫酸ガスでございますが、今度は地上に降ってくるちりでございます。ちりのほうの月別変化、溶解性というのが人体に害がより多いといわれておるわけでございます。
次のページに
都市別がございます。この表にはございませんが、降下
ばいじんの量から申しますと、釜石、それから札幌などは、大牟田よりは
降下ばいじん量は多いと推定されております。
次は二六ページをごらんいただきます。降下
ばいじんの年次的な変化でございます。これはほとんどがだんだん減ってきております。これは従来は、この降下
ばいじんの根源は多くは石炭をたいた場合のすすが多かったわけでございます。このごろ石油に切りかわっておりますので、どの
都市も非常な勢いで減っております。
次は三三ページでございます。いわゆるスモッグがこのごろふえておるのか減っておるのかということでございますが、スモッグに対しましては、
ばい煙防止法の
法律に基づいて、スモッグ警報を知事が発動するということがございます。その場合に、一定の
基準量を越えた場合には、スモッグ警報を出すという
法律の規定になっておりまして、厚生省からその
基準を示してあります。ところが、その厚生省から示した
基準よりはもう少しきびしい
基準——きびしいというのは、もっとよごれ方の少ない
基準で、各
都市がそれぞれ自主的に警報を出しております。この三三ページの左の上から六行目くらいに、法二十一条の
事態の
発生はないと書いてございます。ここに書いてございますのは、厚生省がこれ以上になったら警報を出すようにというほどひどい
状態のスモッグになったことはないということであります。ところが、自主的にやっておるものは、次に書いてあるように、すなわち
基準をもっと低くしまして、空のよごれ方はもう少し少ないくらいでもはや警報を、それぞれここに書いてあるように横浜、大阪などは出しておりますが、その警報の回数がここに書いてございます。これは自主的
基準でございますから、各
都市まちまちであります。大阪はかなり昔から自主的警報を出しております。この表からごらんいただきますように、スモッグ警報の出るのは冬場でございます。
以上で、この統計の御
説明を終わりまして、次が「
ばい煙等
影響調査報告の
概要」というのがお配り申し上げてございます。これが二つに分かれておりまして、
一つが二ミリくらいの厚さのとじたもの、いま
一つそれの要約が、一枚刷りの紙を二つに折った「
ばい煙等
影響調査結果要旨」というのがございます。この二ミリくらいの厚さの
ばい煙等
影響調査報告の
概要と書いてございますのを結論的に要約して、ごく簡単に一枚刷りの紙に書いたものでございます。
最初にこの要旨のほうを先に申し上げます。
大気汚染が一般
住民の健康にどのような
影響があるかということを調べるために、三十九年度に大阪と
四日市で、よごれたところとよごれないところの
住民を平均的にとりまして、四十歳以上の男女について、せきが出るとか出ぬとか、アンケートで訴えをまず聞きまして、そして何でもありませんという者もありますし、せきが出るという者もある。その訴えのあった者から、今度は実際に診察をいたしまして、気管支がやられておるかどうかという調べと両方をしたわけでございます。その結果によりますと、まん中ごろに書いてございますが、大阪、
四日市とも、汚染
地区においては、せき、たん等の呼吸器系症状を訴える者の頻度が非汚染
地区に比べて二ないし三倍多いということであります。さらに、感冒その他の一時的な感染等による
影響を除くために、せき、たん等が長期間にわたる慢性気管支炎症状を有する者についてみても、汚染
地区では非汚染
地区に比して高率である。また、慢性気管支炎症状の発現には、喫煙の有無、年齢等が関与するので、これらによる
影響を除外するための補正を行なって汚染、非汚染
地区間の比較をしてみても、前者は約二ないし三倍の高率である。医学的検査によって調べてみまして、閉塞性障害といいまして、気管支が厚くなって詰まってしまう。これはだんだんひどくなるとぜんそくを起こしてくるわけでありますが、そういうふうな器質的に変化を起こした者については、汚染、非汚染
地区間における有症率は大阪、
四日市で多少差があるが、いずれにおいても汚染
地区では非汚染
地区に比して多い、こういうことでございます。この関係は、なおただいまも継続して
調査中でございます。
そこで、少し厚いほうで、図表について御
説明申し上げます。まず厚いほうの一三ページ、この
調査の
地区対象となったところの、これは
四日市の塩浜南というところでございますが、それの降下
ばいじん、塩浜北というよごれた
地区の代表としてとったところの降下
ばいじんと、その次のページの磯津というところの降下
ばいじんの量と、今度非汚染
地区の四郷というところと比較していただきますと——富州原というところもございます、桜というところもございます。汚染
地区と非汚染
地区とではこれだけの違いがございます。一六ページは、大阪の汚染
地区と非汚染
地区の降下
ばいじんの違いでございます。非汚染
地区の池田についてはごく短期間の
調査しかございませんが、そこで一七ページをごらんいただきますと、
降下ばいじん量は左側が大阪でございますが、此花
地区では、この二重マルのようなものが平均値でございまして、それから棒がありまして、一番上が最高の一番よごれた日の
濃度の高いところ、一番下が最低の
濃度のところ、それに対して、対照にとりました池田
地区はこのようなものでございます。右側が
四日市でございまして、左側の三本が汚染
地区でございます。右側の三本が非汚染
地区でございます。次の一八ページに、その降下
ばいじんの中でも、からだに害のあるといわれる溶解性の成分についても同じような関係があるということをお示ししたわけであります。
いまは
ばいじん、ほこりでございましたが、次が
亜硫酸ガスでございます。汚染
地区と非汚染
地区を比較してございます。二一ページにそれをさっきのような棒の形に直してございます。
次は少し省略しまして、二四ページをお開きいただきます。一番上のCBと書いてございますのが、せきやたんが慢性に出ておる人たちということでございます。こまかく申しますと、三カ月以上せきやたんが続いたような、そういう病状が二年以上続いておる、要するにかなり慢性病的になっておる症状の訴えを示す人たち。C3、S3というのが次にございます。このC3、S3という人たちは、二年とは続かない、一年か一年前後というような人たち、そういう症状。CSというのは、三月は続かない、ごく短期間せきやたんが出た人たち、急性症状の人たち。一番下は、何も症状のない、健康だと自分では思っておる人。そういたしますと、斜線が汚染
地区でございますから、左側の男だけで申しますと、慢性症状のある人たちが六・三%、それから非汚染
地区では四・八%、健康人が六六・二%で、非汚染
地区では七〇・二%、こういうことでございまして、慢性症状と急性症状の者が汚染
地区のほうが多い。ただし、亜急性症状の人たちは汚染
地区のほうがやや少ないというような資料であります。
次は
四日市でございますが、大阪に比べて
四日市はかなり顕著でございまして、慢性症状、亜急性症状、急性症状を呈する者は、汚染
地区でははるかに非汚染
地区より多い、二倍ぐらいである、こういうことでございます。
これを年齢別に見ますと、二六ページの広げた図表でございますが、汚染
地区の年寄りほどひどくやられる、こういうことでございます。
二七ページはたばこの関係ですが、これは省略いたしまして、二八ページをごらんいただきますと、二八ページにこれを数字にして示してございます。カッコの中に書いてある数字をごらんいただくといいかと思いますが、病気を持っておる、症状を訴える人々は、大阪の男では、非汚染
地区に比べて三割多い。一三〇・八%である。女では三八〇・〇%、女が特に四倍も多い。
四日市でも、女は非汚染
地区に比べてほぼ四倍もせきやたんが出る人が多い。男は二・八倍症状を訴えている。
そこで次の二九ページをごらんいただきますと、いままでは訴えでございましたが、実際に診察してみた結果はどうか、こういうことでございます。そういたしますと、先ほど慢性症状があると言いましたが、その慢性症状がある人のうちで、大阪
地区では三割一分が実際に気管支に変化を起こしてきておる。それから非汚染
地区で見つかった慢性症状がある人、これは何も
公害のために起こったわけではなくて持ち前のぜんそくとかいろいろある人があると思いますが、そういう人が実際に気管支に変化のある人は二一%である、こういうふうにごらんいただくとわかるわけでありますが、大阪
地区ではわりあい器質的変化が多い。これは、これからはそう簡単に推定はできないかもしれませんが、大阪のほうは、いままで何年も何年も積み重ねた
影響が来ておって、すでに気管支の変化を来たしておる人がわりあい多い。
四日市では、慢性の症状を訴える人などはかなり多いけれ
ども、それらの人々の中で器質的変化を起こしておる人は、大阪に比べればまだそれほど多くない。すなわち、最近汚染が始まったということが推定できるように思われるのであります。
以上で、
大気汚染の
影響に関する御報告を終わるわけでございますが、いま
一つ一枚刷りで「
大気汚染の当面する
基本的問題について」というのをお配りしてございます。これは
大気汚染対策を立てます上においての重要な問題点をここへ書きまして、先般
公害審議会に
提出した資料でございまして、これについて、
大気汚染の
対策を立てる上でいろいろ問題になってまいります点について一、二御
説明申し上げますと、第一点は、現在の法
規制は不十分である、そういうことでございます。したがって、今後何らか法
規制を考える必要がありはしないか。その法
規制をする場合の基礎にもなる問題点でございますが、第二番は、
排出基準及び環境
基準でございますが、現在
地区指定をしまして、先ほど来御
説明申し上げましたように、測定をいたしておりますと、スモッグが依然として出ておりまして、
地区指定をしただけではなかなか防げない。汚染もだんだん
亜硫酸ガスなどは進んでくる一方でございますし、スモッグの警報の数もふえてくるという
状況にあるわけでございますので、これを防ぐには、いままでの
規制基準よりはもっときびしくしなければならないかもしれないというのが一点でございます。しかし、そのようにして
基準を締めたところで、
施設の数がふえていけば依然として
空気はよごれるかもしれないので、一定の環境
基準を定めて、それ以上はよごさないという終点をつくる必要があるかもしれない。すなわち、それ以上よごれるおそれがある、東京の空がこれ以上よごれれば困るという
基準を一応定めたら、それ以上は
工場などはつくらせない、あるいは増設はさせないというような、そういう
考え方を持つかどうか。もちろん、そういう
考え方を持たないでも、既設の
施設により強固な防除
施設——先ほど来
通産省からいろいろ御
説明のありましたような防除
施設の徹底を期するということで、これ以上よごさないように防げるかもしれません。とにかく何らかの
措置を講じて、これ以上よごさないという一定
基準をつくることができればつくりたい。その場合に、その一定
基準というのをどこらに線を引くか。きょう今日でも、先ほど御
説明申し上げましたように、汚染
地区と非汚染
地区とは呼吸器の患者の差があるということでございます。どこらでこの線をきめるかというような
基本問題がございます。
それからこの一枚刷りにはございませんでしたが、あらかじめ——すでに
公害が進んでおる
地域ではなくて、これから新しい
都市に対してはどのような法的な
規制で
趣旨の徹底を期していくか。現在でも新産
都市、工特、それぞれ
法律がございまして、ある
程度都市計画に対しては
計画的に指導ができることになっておりますが、具体的にこれ以上指導を強化していくには、いま少し法的
規制が必要かどうかというようなことも考える必要があるわけでございまして、その際に、かりに緩衝地帯をつくるとか、あるいは
公害で出てきた患者の治療をするとかいう場合に、それらの
費用の負担をどのようにするかというような問題がある。かように考えておるということで、先般
公害審議会に御
説明したわけでございます。
現在、国のとっております
対策を要約して申しますと、
ばい煙防止法によって
地区指定をして、これ以上
工場からきたない煙を出してはならないという
基準を示して
規制をしておる。現在それらの
地区をどんどんふやしておるという現状であるわけであります。その
規制を受けた
工場に対しては、
通産省が防除
施設の指導ないし
技術開発をおやりいただいておる。それから
大気がかなりよごれた場合には、スモッグ警報を知事が出して、
工場側がこれ以上そのときには悪い煙を出さないように、質のいい燃料に切りかえるとか、あるいは燃料を燃やすのを少し差し控えてもらうというような
措置をいま講じておる。それから新産、工特などの
都市の
計画にあたっては、
公害防除ということを頭に入れた
計画を立てるように、現地
調査を
通産省と厚生省でやりまして、指導をしておる、こういうことが現在私
どもがやっておる
対策でございまして、それらの
対策を進める上において必要な
調査をしたり、あるいは自動記録ステーションを各地につくったりということをしておるのが、私
どもの現在の
対策でございます。
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