○
西沢参考人 ただいま御
紹介をいただきました
長野県知事の
西沢でございます。
本日、当
委員会におきまして、
松代を
中心として
発生いたしております
地震関係につきまして
陳述の
機会をお与えいただきまして、まことにありがとうございます。
なお、
松代地震につきましては、
国会におかれましても、また、
政府におかれましても、いち早くこの問題を大きな問題として取り上げられ、
中央の、あるいは
国会における
論議、あるいは
中央防災会議においてそれぞれ
論議、検討をされ、あるいは各省の
連絡会議等をおつくりいただく等、また、
現地にはそれぞれ代表の
方等を御派遣いただきまして、
現地民に対して親しく慰問をされ、激励をされ、また
対策等を講ぜられるという、もろもろの施策、あたたかい手を差し伸べてもらっておることに対しまして、
地元の
関係者を代表いたしまして、この
機会に心からお礼を申し上げる次第でございます。
松代地震の
発生いたしましたのは、御
承知を賜わっておると思いますが、昨年の八月の初めでございます。順次拡大をいたしましたけれ
ども、十一月ごろを一つのピークといたしまして、その後また順次下り坂になったのでありまして、昨年の末ないしは本年の一月ころの
予想では、これは
観測所等の
予想でありますけれ
ども、大体三月から四月ころになると終息を告げるであろうという、そういう
予報と申しますか、それがもっぱらでございました。私
どもも、このことを信じたり、また、そういうふうにありたいものだというふうに念願いたしておったところが、
事態は全く逆でありまして、横ばいどころか、最近においては非常に活発になってまいった次第でございます。このことは、
観測所等の報告によりますと、新たなるエネルギーが加わったのだ、こういうことで、
事態は非常に危険な
状態であると、こういうことでありまして、
地元民といたしましては、終わりを告げるであろうというふうに思っておりましたやさきでありまするので、非常に驚いておるというのが
現状でございます。それに裏打ちをするように、符牒を合わせるように、実は四月の五日には、
松代の隣の、やや東北にあります若穂町というところを
中心にして
震度五という
地震が
発生をいたしまして、
相当の
被害を及ぼしております。
松代を
中心にいままで
発生しておったものが隣へ移ったので、
松代から
中心がそれたのかというふうに思っておりましたところ、今度また逆戻りをいたしまして、
松代を
中心にして十一日にはやはり
震度五という
地震が
発生をいたしまして、また
相当の
被害を与えておるというのが
現状でございまして、しかも、
震度五はもちろんであるが、今後
震度六も起こりかねないという非常に危険な
状態であると、こういうことで、私
どももそれに即応するような
対策というものを立て直さなくちゃいけない、いままでの
松代地震対策というものを改めていかなければならないという決意を新たにいたしておるというのが
現状でございます。
そこで、いままで
松代地震は最高が
震度五くらいであろうというふうにもっぱらいわれておりましたので、そういう
対策でありましたけれ
ども、今度は
震度六も起こる
可能性もあるということでありますので、したがいまして、いままでの
地域の
対策を強化することはもちろんでありますけれ
ども、
対策すべきところの
地域というものも広げる必要がある。これはお
手元の「
予想される
被害地域」という資料をごらんいただけばおわかりいただくのでありますけれ
ども、
松代を
中心にしていままでは二十
市町村というものを
被害が
予想される区域として
対策を講じておったのでありますが、さらに今回は十六
市町村をそれに追加いたしまして、三十六
市町村というものに
対策を立てていかなければならないという、そういう
事態になった次第でございまして、これも容易ならざる
事態であるというふうに思う次第でございます。
ここで、県の
地震対策につきまして簡単に御
説明を申し上げたいと思いますが、御
承知のように、
防災会議というものがございまして、その中に
地震部会というものを設けた次第でございます。専門の
委員等をそれぞれ任命いたしておりましたやさきに
松代地震が
発生をいたしまして、直ちにこれによりまして
松代地震の
対策というものを立てたのでありまして、お
手元に、非常に大冊なものになっておりますけれ
ども、「
松代地震対策計画」というのを差し上げてありますが、これが
松代地震対策の全貌でございます。ただいま申しましたように、いままでは二十
市町村でありましたけれ
ども、三十六
市町村ということで
手直しをいたしたのでありまして、順次
手直しをいたしまして、最近の
計画というものは、お
手元に差し上げてございますこの
計画でございまして、これには、県はもちろんでありますけれ
ども、
関係協力機関といたしまして、国鉄であるとか、あるいは営林局であるとか、あるいは
電電公社であるとか、あるいは
電力会社であるとか、その他それぞれの
機関も加わりましてこの
対策を立てたのでありまして、特に
警察、
自衛隊等も非常に
協力体制を緊密に確立されておりまして、
自衛隊などは、この
事態に対処いたしまして、
師団長がみずから県へこのごろ参られまして、万一の場合には四千人を動員するというような、そういう
対策もできております。それから
警察は、すでに
震度五の
地震がありましたので、それに従いましてこのごろ八百名ぐらいすでに動員をされておるような次第でありまして、そういう
体制はすっかり確立いたしておりまして、一々御
説明は時間の
関係で申し上げませんけれ
ども、二十項目にわたりまして、それぞれ、食糧をはじめとして、
飲料水、あるいはけが人が出た場合にはどうするとか、あるいは
救援物資はどうだというようなことを全部ここに規定してありまして、これによって進めてまいる所存でございます。
次に、
地震対策についての私
どもの
陳情といいますか
要請でございますが、それも、お
手元に差し上げてございます
陳情書をごらんいただきたいのでございますけれ
ども、それが私
どもの
対策についての国に対する
要請でございます。これは県の
対策と、それから先ほど申しました三十六
市町村それぞれ
対策を立てておりますが、三十六
市町村がまちまちであるということではよろしくないから、三十六
市町村が一本になりまして
対策を立てていったり、お互いに
連絡協調をし、助け合っていこうという、こういう
体制を確立しておりまして、
協議会というものをつくっております。その
協議会長には私がなっておりまして、そこで統制をとっていこうという、そういう
体制でございます。その
陳情書と、それから付属の書類に
金額等が出ておりますけれ
ども、大体今回ただいまの時点における
対策として、
県関係で二億
余り、
市町村の
関係で五億
余りという、そういう
金額が出ておりまして、これは
事業費でありますけれ
ども、これに対してそれぞれ国のほうで財政的な
援助措置等をいただきたいというのが、私
どもの
陳情の要旨でございます。このことにつきましては、もうすでに昨年国においてたいへん心配をされておるのでありまして、この点、私
どもたいへん感謝をいたしておる次第でございますけれ
ども、しかし、
地元の者から申しますと、まだまだ十分ではないというような点もないではございません。
さらにまた、いままでの
事態を継続するということ以外に、新しい問題として特に
発生いたしましたのは、
個人の
住宅に対してやはり守ってやりたいという、そういうことが新しい
事態でございます。いままでの私
ども行政を担当している者の常識としては、こういう
災害に対しては
個人の
住宅はもう
個人の
責任において守るべきものであって、そこまで手が回らない。もっとも、
生活保護家庭とか、そういう特殊なものはもちろんいままででもやっておりますけれ
ども、それ以上のことは
行政の手の及ぶところではないということになっておりましたけれ
ども、今回の
地震はやや趣を異にしておる。ややといいますか、大いに趣を異にしておるというふうに思います。
地震が
発生いたしまして
火災が生ずるということは——私
どもは
火災を防ぐということが一番重点でありまして、人命と
火災を防ぐということでこれは日夜警戒をいたしておりまして、先ほど申しました
震度五という
地震が
発生いたしましても、
火災は一件も
発生いたしておりません。これはもう非常に
地震に対する訓練をしておるというそのたまものであるというふうに思って、私
どもたいへん喜んでおるのでありますけれ
ども、そういう
事情でありまして、
火災を防ぎたい。そこで、
危険家屋が
倒壊をするということになると、
火災が
発生するおそれがある。そこで、
火災防止というそういう公の見地に立っても、やはり
個人の
住宅にちょっと突っ
かい棒をするとか、あるいはかすがいをするというようなことで
倒壊を防ぐ、そのために
火災防止にもなるということで、
ボーダーライン層以下といいますか、その
程度のところは、
個人の
住宅に対しても自治体においても崩壊を防止してやりたいということがもっぱらでございます。そこで、国のほうへ新しい
事態としてこれを
お願いしたい。国がやっていただかないといっても地方自治体としてはやらないわけにはいかないんじゃないかということが、ただいままでの空気でありまして、それらが新しく
発生した
事態でございます。
そのほかにもいろいろございますけれ
ども、特に私はこの際
お願いをいたしたいことは、国も、いろいろ
法規等がございまして、
財政支出等にあたってもそれぞれ制約がございますけれ
ども、こういう
非常事態でありますので、ひとつそこのところは弾力ある運営、できますならば、
現地における
財政支出とか判断とかいうものを大幅に
知事に委譲するといいますか、私にまかせるというくらいなことをやっていただければ、たいへんありがたいというふうに思います。各
市町村でもって
地震対策はどういうことをやればいいかということがいろいろありますけれ
ども、一々国に相談をし、その承認を得てというようなことであると、間に合わないということもありますし、また適切でないということもありますので、
知事が
責任をもってやる、
知事を信頼し、
知事にまかせるというくらいにやっていただければ、たいへんありがたいと思います。私は、まかされたからといって、決してでたらめなことをやろうというようなことは毛頭も考えておりませんし、国と十分に
連絡をしつつやりたいと思いますけれ
ども、少なくとも、いま
地震で非常に
恐怖にかられておるところの
住民が、国のほうでも
知事に
相当の権限をまかせて、
知事の腹でもってやれということになったとなれば、そのこと自体で非常に安心するというか、そういうことになろうというふうに思うのでありまして、これはたいへん無理なことでありますけれ
ども、そのようなこともでき得ますれば、たいへんありがたいというふうに思います。
私
どもは、この
地震に対して、見えざる敵との戦いというように言っておりまして、
震度六がはたして起こるのか起こらぬのかわかりませんけれ
ども、しかし、五というものがいま現実に起こっておって、
前ぶれがあるのでありますから、
前ぶれがあるにもかかわらず十全なかまえをしなかったということになれば、これは天災ではなくして人災であるというそしりを受けるというふうに思う次第でございます。したがいまして、この際、多少過剰であっても、過剰防衛的なことをやらないと、
住民はおさまらないではないかというふうに思います。
現地においては、何か
特殊地帯の
指定とか
激甚地の
指定をして、一切そういうものを特殊な
ケースとして国が引き受けるというようなことをやってくれという要望がございますけれ
ども、私が申しました
精神と相通ずるものであろうというふうに思います。特殊な
ケースでありますので、国としても
方針決定等はなかなか困難なことがあろうと思いますけれ
ども、私が申し上げました
精神をおくみ取りいただきまして、特にそういうことに御
配慮をいただければ、たいへんありがたいと思う次第でございます。
なお、
最後に申し上げたいことは、いま
国会で
地震に対する
保険について審議をされておるということでありますから、これもぜひ成立をさせていただきたいということ、それから原子力の
時代、
宇宙旅行の
時代であるのに、
地震の予知といいますか
予報といいますか、これがどうもできないということでありまして、この点、科学的にさらに
研究を進めるということ、これは国においても検討されておるということで、私ありがたく思っておる次第でございますけれ
ども、そういう方面もさらに強力に進めていただくことを
最後に
お願い申し上げまして、時間の
関係等もございましたので十分意を尽くしませんけれ
ども、私の
陳述を終わらせていただきます。(
拍手)