○福本
参考人 時間の制限もございますので、一応原稿をまとめてまいりましたから読ませていただきたいと思います。
昭和三十六年に計画
決定されました
新大阪駅
周辺土地区画整理
事業は、おくれにおくれて完了時期はいつか全く予想できず、地区住民の間では幹線
道路さえつけばあとはほうっておかれるのではなかろうか、あるいはあと十数年かかっても完了すまいという声が高くなっております。これを裏づけるものとして、大阪市の戦災復興の
区画整理でもいまだに立ちのかない家が五千戸もある状態です。地区住民の中で、よく聞いていただきたいのは、町づくりそのものまで否定する人は一人もおりません。
ごね得をしようとする人もないといって過言ではないと思います。しかし
区画整理法のみによる町づくりは地区住民に大きな犠牲をしいるもので、反対せざるを得ないという現状をよくお知りいただきたいと思います。
市当局は、反対する者はほんの一部だと言っているようですが、では昨年の秋にどうして審議会
委員のリコールが圧倒的な差をもって成立したかということをよくお
考えいただきたいと思います。反対する住民の数の多さが理解していただけるものと確信いたしております。また、
区画整理に賛成という住民でも決して無条件ではなく、その条件が満たされない現在は、一部大地主や
土地会社以外はみんな反対という結果でございます。
ではなぜ私たちは反対しなければならないかということをよく皆さんに御了解いただきたいと思います。
区画整理は減歩という名目で
道路、公園などの
公共用地を地区住民に無償提供させるので、
憲法で保障されている
財産権の侵害だというのが
根本的な
考え方でございます。市当局は、減歩によって
土地の面積がたとえ減らされても、
道路、公園ができることによる地区民の発展になり、残った
土地の価値が上昇するから
財産権の侵害にはならないとの見解に立っているようですが、これは
憲法でいう公正な
補償とは言いがたく、
道路、公園は別な
方法でもできるでしょう。地区住民は都市計画税も払っております。もちろん高い市民税も、所得税も払っております。別な
方法による
道路、公園づくりを熱望するものでございます。減歩はだれがいかに理由づけようとしても、
土地のただ取りでございましょう。したがって、本
委員会の議題でございます。部
改正される
土地収用法にかかって、第三者の認めたいわゆる公正な
補償をしていただくほうがよいとの
考え方を持っている住民のほうが多いということをよく御認識いただきたいと思います。
区画整理の場合
土地収用法にかける必要がない、なぜならば
区画整理法はそれ自体が強権的な性格を持っていると市当局はかつて明言いたしております。また、大阪駅の
区画整理は町づくりというよりも
道路づくりといったほうがよく、それを裏づけるように、市当局は町づくりの現実的な計画をいまだに発表しておりません。
道路づくりということを
考えてまいりますと、幹線
道路はあくまでも通過
道路でございます。特に四十五年度に開かれます万国博覧会に必要な
道路づくりならば、地元負担という形ではなく、当然、府あるいは市、大きくは国家の手でやるべきだと思います。地区住民で自動車を持っている人はごく一部分しかおりません。幹線
道路の地元
利用率はきわめて低く、万国博覧会会場や大阪空港への通過
道路を地元負担にすることは納得ができかねます。
この点から見て幹線
道路は完全買収への
要求の声が高くなってくるのは当然と思います。とりわけ万国博覧会に必要な新御堂筋は、淀川までは買収方式をとり、私たちのこの区域のみが
土地を無償提供させられるわけでございます。淀川までの買収地域でさえ猛反対いたしております。私たちの地区がそれ以上に不利な無償提供ということになるわけでございますから、納得ができないわけです。しかも同一の
区画整理区域内でありながら、御存じのようにオリンピックに間に合わせるために大阪駅から
新大阪駅までつけました地下鉄一号線の
用地は、ゴボウ抜き買収の形式をとりまして坪三十五万円も出して地価暴騰の
原因をつくり、市当局がみずから
区画整理の進行をはばんだような結果になっております。そしてその買収費用は年々の
区画整理予算で返していくという納得いきかねることをやっているのでございます。この点からして、今後
新大阪駅から万国博覧会まで延長される地下鉄
用地も、
区画整理で生み出すことはなく、買収にしてほしいという地区住民の
要求をお聞きいただきたいと思います。
新大阪駅
周辺地区住民の多くは、御存じのように建て売り
住宅に住む零細な勤労者が大多数でございます。苦労してたくわえたお金、あるいは勤務先で借金したお金で購入いたしました過小
住宅でございます。ほとんど借地権者です。借地権者の数がざっと三千数百人もあり、二十人の審議
委員中十一人も借地権者が選出した
委員でございます。したがって、地区住民の大多数は減歩によるはね返しで地代を値上げされ、また地区発展といいましてもそれに伴う地代の暴騰で
生活ができなくなり、いずれはこの地区から追われる運命にあることを私たちはよく知っております。勤労者にとっては、
区画整理があってたとえいかに地区が発展しましょうとも、給料が決してふえるわけではございません。支出
増加という結果になって私たちの
生活はますます追いやられていくことでございます。
現在、
区画整理の進行に伴いまして、驚くなかれ地代の坪当たり九百十三円という訴訟問題まで起きております。地主側から坪九百円、千円という
要求も出されてきました。さらに地主は、さら地にするほうがもうかるので、その欲望の犠牲になっている借地権者あるいは借家権者も出てまいっております。そこで、何としてでも
区画整理区域内での地代・家賃の抑制策をお
考えいただきたいと思うわけでございます。
その上に、減歩にかわる清算金、これは市当局は当初はとるといっておりましたが、現在はとらないと言っております。しかし、第四十八回の本
委員会の
会議録の十八号を見ますと、鮎川政府
委員はとるとはっきりと申しております。その点明確にして、地区住民のこの清算金に対する不安を一掃していただきたいと思うわけでございます。
しかし、市当局は、
土地の価値上昇に伴うバランスをとるための清算金はとると言明いたしております。地価が、現在の呼び値が坪百万もするというところがございます。ゴボウ抜き買収の平均の値段が十万円という点から見まして、この清算金の額にも非常な不安が持たれております。何万、何十万というような清算金をどうして私たち庶民が支払える能力があるでございましょうか。
区画整理法でもっと清算金というものの
考え方を明示してくださいまして、そしてぜひともその減免措置を何とかしてで毛講じていただきたいと思うわけでございます。できるならば移転の前にある
程度この清算金に対する金額を明示していただかなければ、私たちはどうにもしようがないという現状でございます。
区画整理の
対象は
土地でございますが、数万坪の大地主も、あるいは十坪の宅地借地権者にも、全部同じように減歩は
義務づけられておるわけでございます。しかし、
区画整理によって大もうけをする大地主と
土地会社にもっときつい条件を出していただいてもけっこうだと私は思うわけでございます。
いまは借地権者のことを申し上げましたが、借家権者に至っては、
区画整理法ではその存在は全然無視されておる現状でございます。審議会
委員にすら送る
権利もなく、そうして仮換地の通知もなく、移転も非常に不安がられております。家主が換地先に家を建てない場合はどうなるのか、また営業権者の営業権の問題はどうなるのか、あるいは得意喪失のその
補償はだれがしてくれるのか、このような不安を持っておる借家権者の数が七、八千にものぼっておる現状でございます。こういうような私たち地区住民、ほんとうにその数の多いこういう人たちを無視しては、
区画整理のスムーズな進行はあり得ないと確信いたしております。
新大阪駅
周辺は御存じのように密集地帯が非常に多く、すでに市街地のかっこうを形成いたしております。現在建築制限を実施中でございますが、それが守り切れないほどに自然の勢いで膨張いたしております。密集地帯の
区画整理の無理なことは、小山元建設
大臣も四十年五月十八日の本
委員会で発言されておることを議事録で私たちは読ましていただきました。
区画整理区域の
決定にも、よくお
考えいただきたいと思います大きな矛盾がございます。大企業、公団
住宅、公営
住宅を除外しておる点が地区住民をますます刺激しておるわけでございます。
区画整理区域と除外地区との接近地帯では、減歩率あるいは清算金という点で大きな矛盾を持っております。へい一つで同じ
利益を受けるとしても、片方は減歩あるいは清算金というかっこうで
義務があります。そして、区域
決定の矛盾から、
道路計画そのものも、
区画整理らしくなく、地図を見ていただけばよくおわかりいただけると思いますが、非常に曲がりくねったところも多いのであります。
最後に、施行者である市当局の
区画整理行政の
姿勢の悪さが、
区画整理を遅延させている点を指摘さしていただきたいと思います。スムーズな
事業の進行は、地区住民を納得させることが先決でございます。この努力が不足していることと思います。万国博覧会の
用地買収には大阪府知事が現地まで出向いて説得されております。ところが
新大阪駅
周辺の
区画整理には、市長はおろか局長も現地へは来られず、地区住民とは地区内での
話し合いは持っておりません。課長さえも容易に来ず、係長くらいでその場を間に合わしております。
審議会
委員のリコール成立の前日に審議会を招集し、そうして、強引に仮換地案の答申を出させました。会長、病欠者を除きまして、そのときの
出席者十八人の
委員中、答申日のまずさを認めた者は、何と半数の九人もあった現状でございます。
また、審議会
委員リコールに伴う借地権の申告に際しまして、二坪の借地を認めたり、あるいは大地主、
土地会社が自分の
土地を細分化したように見せかけまして、家族や従業員を架空の借地権者として自分たちの
利益を守ろうとしたことに対し、市がこれを認めるどころか、共謀したというような疑いすら私たちは感ぜざるを得ないのであります。
こうして、しゃにむに通過いたしました仮換地案に基づきまして、五月十三日、先ほど局長の申されましたように、一口きりで仮換地の審議会発表をして、それを答申させたのであります。換地先はハス池や湿田があり、はなはだしいのは背も立たないような沼があるわけでございます。りっぱな宅地に住んでおる者を、背も立たない池に移転せよというのは、これは人道無視だと思います。五割もの減歩もございます。自分の家が自分の意思を少しも反映せずに、市当局の意向に従って、まるで犬小屋をあちらからこちらへ移すように移されたら、たいへんなことになります。あまりにもむごい仕打ちだと思います。
いま、地区住民は仮換地をめぐりまして大騒ぎをいたしております。近代的に高層化した立体換地の構想も全然考慮されておりません。
道路はできても町はできないという結果になることは、あまりにも明白でございます。大阪市の副都心づくりは、全大阪市が当たることはもちろん、国家的
事業でございます。万国博覧会を控え、都心部とその会場の中間地帯で行なわれるこの
区画整理を円滑に進めるため、まず地区民の不安を除き、犠牲をなくするように、諸先生の御協力を心よりお願いいたしまして、私の、皆さん方の
参考人としての証言にかえさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。