○吉田(賢)
委員 根本的に
考えるならば、
接収された人、供出した人は戦争の被害者です。戦後
接収とはいえ、戦後
処理の一つの行政業務として
接収を命ぜられた、だからいわば戦争の被害者です。戦争の被害者には、当然人知の限りを尽くして被害者に
返還するというのが、これは条理上一番正しい、一番望ましい姿でなければならぬと思う。この点は、その他の戦争によって被害を受けた者が、あらゆる方法で国家によって補償せられておるという、諸般の立法並びに財政措置の政策の実行から見ても、これは当然であろうと思うのです。
そこで、
接収貴金属等の
処理に関する法律が三十四年にできております。この法律の趣旨を読んでみましても、第一条は、やはり、占領軍から
政府に引き渡しされた
貴金属について、公平適正かつ迅速に、
返還その他の
処理をすることを目的とする、これが
接収貴金属等の
処理に関する法律の目的であるわけなんです。だから、公平に適正に迅速に、被
接収者に
返還するというのが本来の目的でなければならぬ。そういたしましたら、それの線に沿うということが一つの大きな使命でなければならぬと私は思う。十七億六千万円の金が入ったら一般歳入に繰り入れて、それを何かに使うんだというような、それはその後、第二、第三の問題であります。いかにするならば国民に対してその目的を果たし得るかということが、行政の当局としての最高の使命でなければならぬと私は思います。不幸にして、この法律によって、
返還請求者があって、これに適当に
返還し得ないで、今日の
処理の段階に来ておるということは実に遺憾であります。でありますので、そういうふうな観点から見るならば、一体どこでそれをやるのか。たとえば
東京だけでやるのか、
大阪でもやるのか。あるいはまた百貨店といえども、百貨店というのは、
東京の甲乙丙丁という百貨店だけでやるのか、あるいは長崎でもやるのか。長崎の人も供出をした、
接収もせられた。北海道の人もしかり、町の人もそうであろうが、農村の人もそうであります。未亡人もそうであろうが、あるいはまた戦争の未亡人も出しておるかもわからぬというように、あらゆる地域にわたっていわゆる被害者があるわけなんだから、だからそれはやはり売却を実行する場所の問題も大事であります。外国人に取られるというようなことは、単に国民感情だけでなしに、それはとんでもないことになります。全くこの法律の趣旨を無視したところの
政府のやり方ということになって、それはもうごうごうたる非難が集中するおそれがあると私は思います。ですから、その辺のことも考慮しなければいけませんので、単に財政の資金のためというのじゃなしに、また競争入札とかいう方法だけじゃなしに、場所のことも
考えたその方法のこともあるし、いかにすればできるだけ公平にいき得るかという点から、あらゆる角度からこれは検討していただくべき筋ではないかと思います。ですから、その辺につきまして、九月ごろを目標とおっしゃっているのは、さらにこれが延びるとも可なり、というようないまの御
意見らしい、しごくもっともなことであります。私はやはり
政府は全力をあげて、この責任は、いまのような線に沿うて果たしてもらわなければいくまいと思います。でありまするから、方法につきまして、いろいろな角度から検討がされることを望みたいのであります。
それから、この法律の二十二条によりますると、
接収貴金属についての
処理の審議会というものができておりますね。これは
返還等に際して、そういう場合の保管金属類の評価などの審議会のようでありまするが、この審議会の権限に所属するかどうか、この条文の全体を私はまだ十分につかんでおりませんので、はっきりいたしませんが、いずれにいたしましても、これは単にあなたの局、あなたの課、少数の人だけでこの方法を御決定になるのではなくして、やはり広く衆知を集めて、そうしてこの物の由来から立法の趣旨から、また
日本の今日の国民感情から、利害から、またこれが
ほんとうに後日問題を起こさないところのいろいろな念を入れた方法を講ずるという配慮等、幾多の面から検討して、方法を立案せられることが、私は絶対に必要だと思いますので、ぜひそういうふうにしてもらわねばいくまいと思います。これはやはりあなたの局だけの問題ではありませんから、現
政府の問題であります。だから、これにつきましては、やはり省議としても御方針をきめて、十七億円のものだからたいしたものじゃないという頭は、とんでもない頭であります。これはぜひそういうような方向に推進していただきたい、こう思うのであります。いかがでしょう。