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1966-06-08 第51回国会 衆議院 外務委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年六月八日(水曜日)     午前十時十九分開議  出席委員    委員長 高瀬  傳君    理事 鯨岡 兵輔君 理事 永田 亮一君    理事 三原 朝雄君 理事 毛利 松平君    理事 戸叶 里子君 理事 西村 関一君    理事 穗積 七郎君       愛知 揆一君    稻葉  修君       内海 安吉君    菊池 義郎君       濱野 清吾君    森下 國雄君       岡  良一君    帆足  計君       松本 七郎君    竹本 孫一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 椎名悦三郎君         国 務 大 臣 永山 忠則君  出席政府委員         内閣官房長官 橋本登美三郎君         警察庁長官   新井  裕君         法務事務官         (入国管理局         長)      八木 正男君         外務政務次官  正示啓次郎君         外務事務官         (アジア局長) 小川平四郎君         外務事務官         (北米局長)  安川  壯君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君  委員外出席者         外務事務官         (経済協力局外         務参事官)   吉野 文六君         通商産業事務官         (貿易振興局経         済協力部長)  高橋 淑郎君     ————————————— 六月八日  委員池田正之輔君辞任につき、その補欠として  濱野清吾君が議長指名委員に選任された。 同日  委員濱野清吾君辞任につき、その補欠として池  田正之輔君議長指名委員に選任された。     ————————————— 六月一日  所得に対する租税及びある種の他の租税に関す  る二重課税の回避のための日本国ドイツ連邦  共和国との間の協定の締結について承認を求め  るの件(条約第六号)(参議院送付) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 高瀬傳

    高瀬委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。穗積七郎君。
  3. 穗積七郎

    穗積委員 きょう実は私は緊急に、中国記者二名の人が横須賀統一デモに参加したという、事実に反する報告がなされて発表がありましたから、そのことについてお尋ねをいたしたい。それからもう一点は、近くソウルの外相会議外務大臣自身もお出かけのようですが、その前に北との関係についてお話を伺っておきたいと思うのです。あと中国記者問題については関係大臣の御出席を待ちまして、それに先んじて、この前の委員会関連質問でいたしました中に、時間がなくて途中で打ち切りましたけれども、重要な問題が残されておりますから、その点についてお尋ねをいたしたいと思います。  時間がありませんから率直にお尋ねいたしますが、まず第一に、ベトナム戦争について、日本中立ではなく、アメリカ側に立つものである。そして、安保条約によるものである。そして、この戦争段階を見て、理論的には相手交戦国からの日本に対する攻撃があり得る。ただし、地域的に遠いので、ただいまのところはその心配がないという御発言、外務大臣自身の数次にわたる国会における答弁で、そういうことが明瞭になってまいりました。これは当然なことでございまして、私はこの前もそのことについて関連お尋ねをいたしましたが、すでにベトナム戦争に参加しておる、少なくともアメリカの第七艦隊、あるいはまた第五空軍、これらは作戦行動に参加しておる部隊です。それが第一線に立って、まだ戦争はしないという部隊もあるかもわからぬけれども、それはいずれの戦争の場合も同様でございます。その戦艦または戦闘機偵察機等戦闘を交えていないということによって、戦争に参加してないとは言えない。アメリカの今日の作戦から見ますというと、少なくともいま申しました極東アジア、太平洋における作戦計画の中に入っておる第七艦隊所属艦隊、それから第五空軍指揮下にあります戦力、これらはすべてもう作戦行動に入っておると思うのですね。そうなりますと、日本基地を利用し、または通過してこの戦闘に参加するすべてのこれらのアメリカ戦力というものの行動に対しては、事前協議対象にしなければならない段階に来ておるのではないか。そうでありませんと、われわれが安保条約審議のときに指摘いたしましたように、協議というものはかご抜けになっておるわけでありますから、その点について大臣の秩序立った御答弁最初にお願いをいたしたいと思うのです。
  4. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 寄港しておるアメリカ艦船ベトナム戦争に参加するといなとを問わず、これを認めることは条約上の義務でございます。そして、その場合に事前協議の必要はありません。
  5. 穗積七郎

    穗積委員 なぜないのでしょうか。
  6. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 直接作戦行動を起こすということがないからであります。
  7. 穗積七郎

    穗積委員 作戦行動の中へ、これらの戦力というものは入っておるではありませんか。
  8. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 艦船が、船員休養あるいは補給のために日本の港に寄港するということは、作戦行動を起こす事態ではない。
  9. 穗積七郎

    穗積委員 外務大臣にちょっと御注意申し上げますが、安保条約審議のときの経過はあなたも御存じのとおりですね。そして、事前協議の問題がなぜ重要になったかということは、これはアメリカ作戦行動に従って、そして日本基地を貸与し協力しておる。一方の側に立っておる。中立ではないということのために、相手交戦国から敵性を持つものとして攻撃を受けることが当然あり得る。すなわち、日本意思によらずして戦争に巻き込まれる。こういうことは一体どうして防ぐのかと言ったときに、事前協議という歯どめがあるから心配は要らぬと言った。それに対して、事前協議の「協議」とは一体何だと言うと、実はあれにはコンサルテーションと書いてありまして、日本の合意を必要としない。アグリーメントは要らないようになっておる。その点をわれわれが強く指摘いたしますと、少なくとも日本の安全、日本日本意思によらずして戦争に巻き込まれるというようなことは、事前協議によってすべてこれを食いとめることができるのだ、日本意思によらずして日本攻撃されたり、戦争に巻き込まれたりすることはないのだということを言ったわけですよ。それが事前協議の重要な、国民に対する歯どめになっておったわけですね。そうすると、いまのお話ですと、先ほど言ったように、いまの作戦行動段階においてすでに日本相手国から敵国とみなされて、いつ攻撃されるかもわからない状態に入ってきたとあなたは言っておる。それに対して、アメリカ側作戦行動に対してはすべて事前協議対象にならないということになると、これはもうわれわれが当時指摘し、国民心配したことをありのままに証明するものである。すなわち事前協議とは、日本の安全すなわち戦争か平和かの問題に対して何らの歯どめになっていないということを証明するものじゃありませんか。それはあなた自身答弁の中でそのことが証明されておるでしょう。
  10. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 非常に何か私の言ったことに対して、拡大も超拡大をして言われておるようですが、まずベトナムアメリカとは交戦状態にある。これに対して、この両国に対して日本中立的な立場であるかということでありますから、それはそうではないのであります、アメリカとは日米安保条約というものを取りかわしておって、その条約上の義務を負っておる関係もあり、両国に対して中立立場に立っておるものではないということだけを言ったのであります。それをあなたはまるで交戦国の仲間入りをしておるように解釈されるのでありますが、これはとんでもないことであります。それで、そのときも申し上げたように、それならば北ベトナムが第三国からいろいろ補給を受けておる、それから場合によっては、日本どころの騒ぎではない、武器まで援助を受けておる、そういう場合にアメリカは、補給を許しあるいは武器を供給しておる国を敵国とみなすかということになると、どうも国際法戦時国際法の観念では、それは敵性を帯びた戦争相手国ということにはならないという解釈のようであります。でありますから、そういうことをお互いに言い合ったら、何か食いものを補給するとか、あるいは直接の兵器でなくても、その他の物資補給しているものは全部敵性である、それで戦争に参加しておるというような解釈をとったら、たちまち地球全体が源平に分かれてけんかしておるということになるのです。そんなばかなことはあり得ないということを私はこの前申し上げたのです。でありますから、交戦しておる両国に対して中立という立場ではあり得ないということは、それだけの解釈であって、中立ではあり得ないからアメリカと一緒に戦争しておる、そういうことにはならないという答弁を申し上げたのでありますから、どうぞそういう御了解を願います。  それで、今度は事前協議の問題でありますが、事前協議の場合は、核兵器を持ち込むというような場合は事前協議対象になります。(穗積委員「それはわかっています、御説明しなくても。時間がありませんから……。」と呼ぶ)あなたが間違った解釈をしているから、それを申し上げるのです。  それから、日本基地を使って、そして直接作戦行動をそこから起こすという場合には事前協議対象になるが、何も軍艦が日本寄港して艦員休養をとるとか、あるいはその他の物資補給をしたということは作戦行動を起こしたことにはならないのですから、事前協議対象には絶対ならない、こういうことを申し上げたのです。
  11. 穗積七郎

    穗積委員 こういうことですよ、外務大臣事前協議の問題は、日本アメリカとの権利義務関係を規定するよりは、日本立場から見れば、アメリカ作戦行動に対して日本中立ではない立場に立っておる、そのときにアメリカだけの意思によって、日本意思関係なく行なわれた作戦行動によって日本の安全が脅かされ、戦争に巻き込まれる危険があるかないかという点が一番当時問題になり、国民心配したところです。ところがいまのアメリカベトナム作戦行動に伴って、日本はすでに中立ではない。したがって、相手国からの攻撃があり得るということをあなたも認めているじゃありませんか。そういたしますと、日本の平和、安全の問題が日本意思によらずして事実上決定される結果になる。そこが問題なんです。事前協議法律上並びに政治上の効用というものはそこに眼目があるわけですよ。それを私は言っている。しかもあなたはこの前言われたが、基地を貸与しておるだけで何が敵性を持つかというようなことを暴言まで吐かれましたが、これは安保条約によるまでもなく、国際法通念からいたしまして、そういう同盟関係を結んでない国でも、いままで非同盟状態をとっておる国でも、交戦国の一方の軍隊を、その国内、領土内を通過せしめただけで、もうすでに一方の側に立つ、すなわち相手国からは敵性を持った国として攻撃される資格が生ずる、条件が生じてくる。これは国際法上の通念です。まして日本のように基地を置き、しかも物資その他における全面的なる支持協力条約の上でもしており、行動の上でもしておる。これに対してはむろん報復攻撃が行なわれる条件を整えておる。それはあなたも認めておるじゃありませんか。
  12. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いろいろな寄港を許して補給するという、そういう立場にあれば、場合によっては事実上とばっちりを受ける危険性はあるということは言いましたけれども法律アメリカ敵側からの攻撃が当然あり得るなどということは、私は話しておりません。それは法律上は絶対にあり得ないことだ。あり得ないけれども、実際問題としてはとばっちりを受ける危険性はあり得る、そういうことを言っただけの話です。絶対に、ただ補給を許したからといってベトナム敵国になるわけじゃないのですから、そんなことは、どこまでいってもそういう理屈は通りません。
  13. 穗積七郎

    穗積委員 第一、問題は、国民の生活から見ると、事実が問題なんです。しかもこの戦争は世界の世論から孤立し、反対を受けておるにかかわらず、アメリカ作戦本部はこれを事実上大陸にまでエスカレートしていこうとしておる。そうなりますと、極東地域における沖縄並び日本の軍事的、経済的な地位というものが、非常に拡大されることの予想される戦争において重要な地位を占めてくるわけです。言いかえれば、この戦争の一つの重要な軍事的、経済的なアメリカ側基地になる。しかも、日本安保条約によって縛られておる、政府はそれを拡大解釈して、歯どめもなしに、一方的に支持協力をしておる、こういうことですから、いつどういうことが起きるかわからぬ情勢になってきた。したがってそれは何によって食いとめることができるかということを聞いておるのです。それはまず条約の上でいえば、当時の論争を思い起こしまして、当然事前協議対象にすべきである。アメリカの全陸軍、空軍、海軍、それを私はこの際言っておるわけではない。そうではなくて、少なくともベトナム戦争または拡大されようとしておる戦争作戦計画の中に入っておる第七艦隊所属部隊、あるいは第五空軍部隊が、日本基地通過であろうと、あるいはその根源の作戦基地にしようと、それは問わざるところでありまして、戦争日本が事実上巻き込まれる危険が生じてきたから、これに歯どめをするには、条約の上からいえば当然事前協議の条項を適用すべきである。それがないというならば、国民心配しておるとおり、政府みずからがそれを証明して、日本意思によらず、アメリカの一方的作戦によって日本攻撃をされるかもわからぬ、される可能性が出てきたということをあなたは証明しておるようなものではありませんか。はなはだしき矛盾でございます。はなはだしく危険な政策でございましょう。だから言っておるのです。
  14. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 北ベトナムに対しては近代兵器をどんどん供給しておる国すらある。それに対してアメリカはそれを敵性を帯びるものではない。——あるいは少なくとも敵国の一部である、そういうふうに解釈しておりません。実際問題としては大陸のほうにエスカレートするようなことは絶対にしておらない。日本の場合は遠く離れておって、船員休養とか食い物その他の一般の物資補給するという場合ですから、これを戦争に巻き込まれる危険があるなどというのはとんでもない話であって、平地に波乱を巻き起こすような議論ではないかと私は思う。絶対にそういうことはございませんから……。  そしてまた、いままでの事前協議対象という場合には、そこから作戦行動を起こすという場合のみに限っておる。補給をするということは、作戦行動発進基地にするという場合ではないのであります。
  15. 穗積七郎

    穗積委員 アメリカがどう解釈しようと、国際関係行動というものはすべて国際的な条理に従って解釈すべきでしょう。先ほど私が指摘いたしましたように、非同盟国であっても、交戦国の一方の軍隊通過を認めること自身でもうすでに相手国に対しては敵性を持った国としてみなされる。それに対する攻撃はあり得る。まして日本のように恒久的な同盟条約を結びまして、基地あるいは物資、労力の便宜供与を与えておる、しかも最近の佐藤内閣は手放しでこれに積極的な協力をしておる。そういうことになりますと、事実上——相手が幸いにして、ベトコンにいたしましても、北ベトナムにいたしましても、日本に対して攻撃をしない、戦争拡大をしないといっておるけれども、という態度をとっておりますけれどもアメリカ側侵略戦争拡大によって戦争大陸に及びましたときには、これは当然日本攻撃される条件を整えてきておる、こう言わざるを得ないと思うのです。だから、それの歯どめは一体何であるかということを聞いておるわけです。
  16. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 それよりも、歯どめ、歯どめとおっしゃるけれども日本物資を売っておるのです。ただ供給しておるのではないのです。戦争に直接役立つかどうかわからぬけれども、ともかくアメリカのほうに物資を売っておる。売っておる国は日本だけではない。おそらく方々の国から買っておるでしょう。その売っておる国が全部敵性を帯びて、そうして戦争に巻き込まれるということをあなたは言っているのだけれども、これはとんでもない話なんだ。
  17. 穗積七郎

    穗積委員 理事会の申し合わせによりまして、外務大臣に対する質問あとにいたしまして、永山公安委員長、非常に時間が制限されて御出席いただいているようでございますから、順序を変えまして、先ほど申しました中国在日新聞記者人民日報の陳さんと、それから中国青年報の高さん、二人がこの間の横須賀における原潜寄港反対統一行動に参加をしたという事実に反することを報告をされて、しかも閣議では、それに対して、調査の上、措置をとらなければならない重大な問題であるという、不確定条件の上に、しかもマスコミ発表をしておる。これは国際関係上重要なことであるし、それから北京に行っております日本新聞記者の今後の地位に対しましても重大な影響を与えますし、日中関係が微妙な状態の今日でありますから、これは日中関係全体に影響を与えると思うのです。そういう意味で非常に私は外交上重要な問題になりつつあるというふうに考えますので、以下まず報告責任者である永山大臣からお尋ねをいたしますが、この事実は——これは政府を代表してにしていただきたい。このことについては外務大臣も外務省も、あるいは法務省も何らかの意見を言っておる。総理大臣閣議で何らかの意見を言われたようです。そこで問題は事実ですから、これは内閣全体を代表したものとして責任のある事実をまず第一明らかにしていただきたい。それに従って私ども意見を言い、それに従って外務大臣、法務大臣、あるいは内閣としても措置をとられるわけですが、その措置をとるということの前提になる事実について、まず責任のある報告最初にしていただきたいと思うのです。
  18. 永山忠則

    永山国務大臣 事実を御報告申し上げます。  中共の人民日報陳泊微君とさらに中国青年報の高地君の関係でございますが、両氏は六月一日午前九時四十五分から五十五分までの間、海上デモをやりました関係者約四十人が臨海公園の船着き場に着きまして、上に上がった者を中心にして集会、約百名ばかりがその報告会を開いたのでございますが、その際、両名はその会合の中央よりやや後方におったのでございまして、当時雨が多少降っておりましたから、その中で約十名ばかりかさを持っておりました。その一人に、陳記者が洋がさをさしておったのであります。そうして高記者はこれに入っておりました。高記者ベレー帽をかぶって、そうしてレーンコートの上から左の腕にプレスという腕章をはめておりましたので、所在は容易に確認をできたのでございますが、その際、原潜帰れ、アメリカ日本から出ていけというシュプレヒコール全員が行ないまして、集会者全員が一斉に唱和いたして、そうして洋がさを持っておる者はかさを上に上げ、さらに残りの者は一斉にこぶしを上げたのでございます。その際にそのかさを上げたことを確認をいたしたのでございまして、(「だれが確認した」と呼ぶ者あり)この確認は、警察官確認をいたしたのでございます。その警察官は、身辺の保護の任に当たっておる二名の警察官でございまして、その記者より約二十メートルばかりのところから見ておりましたのであります。その確認した事実を報告を申し上げた次第でございます。
  19. 穗積七郎

    穗積委員 それは国際上の問題ですから、大臣責任を持ってそれが事実であると確言できますか。
  20. 永山忠則

    永山国務大臣 絶対に事実でございます。
  21. 穗積七郎

    穗積委員 それでは順を追うてお尋ねいたしますが、最初警察庁は、この両氏海上デモに参加したという情報を、公式か非公式か存じませんが、流された事実がありますが、これは御存じですか。
  22. 永山忠則

    永山国務大臣 さような事実はないのでございます。
  23. 穗積七郎

    穗積委員 これはあなたが知らぬだけで、流されているのです。それはお認めになりますか、なりませんか。
  24. 永山忠則

    永山国務大臣 さような事実は認めません、ないのでございますから、私はもちろん報告いたしておりません。ただそのデモ隊を囲んでの集会の際に、シュプレヒコールに呼応いたしたということは厳たる事実でございます。
  25. 穗積七郎

    穗積委員 それから両記者は、二十九日から一日まで四日間、連日電車で朝または午後に向こうに出かけて、夕方または早く——日によって時間は違いますけれども、私ども全部調査いたしておきましたが、その間における両記者に対する護衛と称する警察当局の諸君がどういう態度取材妨害を加えたか、どういう状況であったかということは、大臣は全部把握しておられますか。
  26. 永山忠則

    永山国務大臣 当時両名は、十時三十分の横須賀発の列車でこちらへ帰って参っておりますが、これは身辺の警護に当たっておるのでございまして、断じて取材妨害するというようなことはないのでございます。
  27. 穗積七郎

    穗積委員 それは非常な牽制または妨害の事実があります。これはきょうは時間がありませんから、いずれあらためてお尋ねすることにいたしまして、国際関係の部分に触れてしたいと思うのです。  これはちょっと地図が悪いのですが、実は私はこの事件を聞きましたときに——この両氏のみならず、中国人々というのは、政治家でも新聞記者でもその他の団体の役員、文化人でも、日本の者と一般的に比べますと非常に国際的な訓練を経ておるのですね。その点は、私どもよく外国の人と接する機会を得て、中国の人のそういう国際的なマナーあるいは訓練というものは非常にすぐれたものだということを考えておりました。それでこの事件を聞いたので、そういうことはちょっと考えられないと思ったんですね。それですぐあなたの部下の警備局長を通じて事実を確かめました。それから直ちに、一方ではいけませんから、両記者に直接来ていただきまして、事情をよく、四日間の行動と実情をよく聞いたわけです。いま警察が問題にしておる、政府が問題にしておる一日の第一回海上デモ報告会でございます。これについては、私どもが調べました事実を報告いたします。  実は、この日は十そうの船をチャーターして出たわけですね。そのうち一そうはマスコミのために開放された船であったわけだ。ところが、この両氏乗船を希望すれば取材活動として乗船ができたわけです。日本の他のマスコミ人々は、このマスコミのために提供された一そうに乗っておられる。だからあの遠い海上における写真というものがとれておるわけですね。それで翌日発表になっておるわけです。ところが、この両氏は、われわれは外国記者である、そこで乗ることを希望すればできるけれども、乗ってもし海上で何か事故があったときに日本側影響を及ぼす、あるいは中国側に誤解を生ずることがあってはいけないというので、そのことを意識して、偶然ではない、意識的に乗船をやめたわけです。  そして、その地図がありますから申し上げますが、ちょっとこれを見てください。——地図が小さくてなんですが、この地点からずっと——原潜がここにおるわけですね。ずっと海上を渡りまして、こっちに来た。いまの問題になるのはこの広場です。ここへ出発したので、この両君はすぐに報告の行なわれるといわれるこの広場へ来て待っておった。この広場の下は海岸になっております、あなた御承知のとおり。そうすると、その下の波止場へ着いたわけだ。そこで、ここに待っておった地元の統一集会責任者の一人がここに来て、その様子を見、報告を受けるということでこの会場で待っておったわけです。だから司会者海岸のほうを見て、こっちを向いている。それから、報告を受ける者はごく少なく、あなたの報告よりもっと少ないのです。そうしてここへ着いておるのは、名前がわかっておるのは金子満広氏、これは統一戦線部、すなわち国民運動の副部長でございますが、これが登ってきた。それで雨が降っておりますから、かさをさす者、ささざる者もおった。そこで、報告が行なわれるというので、この両記者取材のために——日本語がまだ十分わかりませんし、広いところですから、比較的前のほうの右側の列に加わって報告を聞いておったということなんですよ。そうして司会者が簡単な報告を受けるというあいさつをして、それですぐ金子氏が一人登ってきて、ここで海上はどうであった、どんな様子であったという報告をした。それまで聞いて、そのうちに司会者が、それではこれで終わる、終わるにあたってシュプレヒコールをやってもらいたいということを言われたので、そこで、この両記者は、もし前におって、取材ではなくてこの行動に参加したように受け取られてはいかぬというので、すぐ列を離れようとしたわけですね。列を離れるときに、かさをさしておりますから、陳記者は人のかさを避けるためにかさを高く上げてすぐうしろに出たわけです。それで列のずっとうしろの中央の広場へ来まして、乗船をしてあとから上がってきた者に、一体何人くらい乗船になりましたか、それから原潜は目で見ることができましたか、海上において事故はありませんでしたかという一、二の質問をここでしておるわけです。そのときのことでしょう。何か初め伺いますと、政府は写真その他を持っておる、動かざる確証があるということを広言しておられましたが、それがあるならば見せていただきたい。
  28. 永山忠則

    永山国務大臣 お説のように、とにかく集会の際にその中央の後方におりまして、いま穗積委員の言われるごとく、かさを上げたということがやはり行動に呼応いたしたものであると考えるのであります。そうして写真をとるという問題につきましては、身辺警護でございますから、捜査をするとかこれを事件にしようとかいうのではございません。こっちのほうはただ警護をしているのだから、写真を持って歩いて、そうして証拠を集めてやるというようなことはやらないのでございます。そういうことでなしに、軽く情勢を上司に報告をいたしておるということでございまして、これを計画的にやったものではないのでありまして、警護に当たる警察官が写真を持って歩いて、そうして身辺をつけてやるというような考え方に立っておりません。警察は全部身体警護ということが目的でございます。
  29. 穗積七郎

    穗積委員 私が秦野警備局長にただしましたときに、日本人と中国人とは区別がつかない、それで何人おったか知らぬが、多数の中に多少おったとすれば、彼がその名前をあげておる二人であるかどうかなかなか判定しがたい、誤認によるものではないかと言って聞いた。そうしたら、そういうことはありません、なぜかといえば、常に尾行をしておって、そうして両記者の顔は見誤るようなことはない者が随行をしておりましたということ、それから確実なる証拠がありますと言われた。それから向こうの記者の諸君は、当然高碕事務所、廖事務所の間の話し合いによる覚え書きによって来ておるわけですから、窓口としては高碕事務所ですから、直ちに事実を報告して、そうして政府の回答を求めておられるのです。そのときに高碕事務所の人が政府と接触したときには、何と弁明しようが動かすことのできない確証があるかのごとく政府は言っておるがということを言っておる。そのときは写真のことだと思うのです。あるいは録音のことだと思うのです。いま言いましたように、いままでの在日中国記者行動というものは、そういう点の言いがかりをつけられない、誤解すら招かれない、——あるいは悪意に満ちた言いがかりをつけられる心配も多少持っておったかもしれません。そういうことですから、実に注意深く、取材を制限されながら、取材活動には十分な権利がありながら、それをしないで遠慮をしておるという事実がある。この場における事実はいま申しましたとおりです。わかりましたか。あなたはこういう事実を高碕事務所を通じて責任者から聞きましたか。にもかかわらず、それは列を離れるためにかさを上げたんではない、シュプレヒコールをするためにかさを上げたのだ。……だから写真がもしあればそのことは判定できるわけです。握りこぶしから上をカットしてやれば手を上げたように見えるかもしれない。そうすれば、握りこぶしの形でわかります。それから多くの者はここの地図で言うように、中央の壇に向かって、海に背を向けてその報告を受けておる。両記者はうしろに出ようと思ったから向きが違いますよ。それはかさを上げたとしても向きが違う。それは他人のかさを避けるために上げた。その事実をあなたは信用しないのですか。これは佐藤政府として、この事実があるということを責任を持って言えると言えますか。それなら事実が問題ですから、黒白を明らかにしましょう。そのようなあやふやな一方の言うことを調査もせずに——どういうことであったかを両君について調査しましたか。大臣、その事実から伺いましょう。
  30. 永山忠則

    永山国務大臣 集会の場におったことも事実でございますし、またシュプレヒコールをやるときに……。   〔穗積委員「聞いておるか聞いておらぬか、私の質問に答えてください。時間がないから……。」と呼ぶ。〕
  31. 高瀬傳

    高瀬委員長 穗積君に申し上げます。  大臣答弁が一応済んでから発言してください。   〔穗積委員「断定するから、事実をお聞きになったかどうかを聞いておるのです。それにイエス、ノーをもって答えていただきたい。」と呼ぶ〕
  32. 永山忠則

    永山国務大臣 そこでわれわれといたしましては、現場の事実を御報告申し上げるということを言っておるのでございまして、事実はもう集会の場におったということと、そうしてそこでシュプレヒコールをやる際に本人もおったし、その際にかさを上げたということも厳たる事実でございます。これはいま穗積委員が言われるとおりの事実でございます。かさを上げたということと現場におったということも事実でございます。集会の中におったということも事実なんでございます。したがいまして、その事実を報告いたしたのでありまして、さらにこれを証拠を突き詰めて、そうして何とかしょうというような考え方に立っておるのは警察ではございません。警察といたしましては、ただ身辺を保護している立場におりますので、そういうことを写真をとったり尾行したりして、一々行動報告するというような任務を持っておらぬのです。うちのほうは、身辺をいかに擁護するかという立場でございますから、したがいまして、さらに追及をいたして、そうしていろいろの証拠を集めてどうするというようなことまでいたす必要はないと考えます。
  33. 穗積七郎

    穗積委員 これは国際上の問題であるし、在北京日本記者地位にも関係することですから、軽率きわまるそんな不確定な、訓練されざる一警察官の事あれかしの報告大臣が事前調査もしないで、そしてすぐ内閣報告をする、そしてそれをすぐマスコミ国際的に発表する、こんなばかな話がありますか。特にあなたの答弁で非常に私はつかえるところがある。何かといえば、その集会に参加したのではなくて、その集会の現場に取材活動として行っておること自身があなたはおかしいというように言うが、これは取材活動の自由の範囲を逸脱するものですか、どうですか。
  34. 永山忠則

    永山国務大臣 逸脱したのではないのでありまして、取材活動ということなら、その会合の中央よりやや後方におったのでございますから、そしてそのシュプレヒコールをやる際は当然離れておらなければならぬはずでありますが、その中におって、そしてかさを上げたという事実を認めたならば、現認の警察官報告をそのままやはり報告することが私の責務であると考えます。
  35. 穗積七郎

    穗積委員 公開されたデモの会場に行って、そして取材することは、取材活動の自由の権限の範囲内である、それから雨が降ってかさをさすことは当然だ、それで人のかさにじゃまにならないように、列を出ようとしてかさを上げた、これは日本のマナーでも、かさをさしておるときにはみなそうやるじゃありませんか。これがシュプレヒコールであり、統一行動である、行動に参加したとなぜ早計に言えますか。一方の言うことを聞かないでそう言うことは事実に反しますから、これは国際上の問題であるから、私は特にやかましく言うのです。  そこで、今度は橋本官房長官に……。   〔小林議員「事実に反することを言うな」と呼ぶ〕
  36. 高瀬傳

    高瀬委員長 小林君、静粛に願います。
  37. 穗積七郎

    穗積委員 官房長官に簡単にお聞きしますが、いまお聞きのとおり、これは事実に反するのです。シュプレヒコールに参加したなんて事実は全然ありません。意識的にこれは抜けなければいかぬというので、かさを上げて、人のじゃまにならないように列外に出たわけです。その手を上げたから一緒にやったのだろう——あなた方は警察に追われた経験がないから知らぬかもしれぬが、戦時中にわれわれは警察に尾行されたり、ことばのはしをつかまれたりした経験があると、第一線の——動物の犬はえものしか追いません。ところが人間の犬はえものでないものをえものと言いたてて、ほえたり、たてついたり、追いかけたりする、そういうような習性があるのですよ、間違った日本警察は。特にそういうものを、軽率に国内の記者の問題でない、国際的な記者に対して、しかも微妙な関係にあるいまの日中関係に対して、こういう調査の不確定な事実によって一方の言うことも聞かないで——私の言うことは事実ですよ。私は主観を交えず、ありのままにあなたに報告しておるわけです。国民報告しておるわけです。これはもう何らそういう事実は主観的にも客観的にも証明するものはございません。そういうことが明らかになりましたが、当然官房長官としては、そのときの報告は確固不動な事実であることはお考えにならなかったと思う。だからよく調査した上でどういうふうにするかは検討しようという態度であったと思うのです。にもかかわらず、あなたは当時の閣議としてこういう不確定な片手落ちの妄想的調査に従って——こういう問題が事実あったとしても、もし御報告を取り上げなければならないのなら取り上げて、事実調査をして、その上でやるべきことであって、これを軽率に対外的に発表したということは——あなたの主観には、対中国敵視の悪意はない、中国日本を切り離そうという悪意もあえてないと私は感じます。それから、このことによって日本におる記者取材活動を制限しようという悪意があるともあえて思わない。しかしながら、客観的に見ますと、こういうことを、国際的にも重要な影響を与える問題を閣議の終了後直ちに、しかも責任あるあなたの口からマスコミ国際的に流されたということは、私はちょっと聰明なあなたにしては手落ちではなかったかと思います。   〔小林議員「ちっとも聰明じゃないよ」と呼ぶ〕
  38. 高瀬傳

    高瀬委員長 小林君、静粛に願います。重ねて御注意申し上げます。
  39. 穗積七郎

    穗積委員 そういうふうに私ははなはだ遺憾に思う次第でございます。事実に反することがだんだん明らかになってまいりました。  そこで、私は過去のことについては、そういう点ははなはだ遺憾である、それに対してあなたは何か弁明なりお考えがあったら回答していただいて、時間がありませんから、あなたに対する分は一括してお尋ねいたします。  いま言いましたように、両方の言うことをよく聞いてみますと、主観的にも客観的にもデモ行為に参加したことはない、しかも意識的にそういう疑いを持たれてはいかぬという配慮すら行なわれて二人の行動は行なわれている、そういう事実がありますから、その点については、これを慎重によく調査した上で、相手方に対しては、高碕事務所を通じて回答を求められておりますので、したがって、それに対する回答。  もう一つは、これは内閣として重要な問題であるから措置をしなければならぬと閣議で佐藤総理が発言されたそうでありますが、その内閣としての措置は一体どう考えておられるか、一括して、再質問しないで済むようにお答えを願いたいと思います。
  40. 高瀬傳

    高瀬委員長 官房長官、ちょっとお待ちください。  穗積君に申し上げますが、永山国務大臣が時間の関係上退席いたします。  なお、質問時間が十一時までということになっておりますから、その点を頭にひとつ置いてください。
  41. 永山忠則

    永山国務大臣 ちょっと申し上げますけれどもシュプレヒコールの際は、いま穗積委員の言われたように、本人がそこにおったのですから、出ようとしたということはしたかもしれませんが、そこにおってかさを上げたということは厳たる事実でありますから……。
  42. 穗積七郎

    穗積委員 かさを上げたのは、シュプレヒコールに唱和するためではない。いま言ったように人のかさにじゃまにならないように上げたのだ。
  43. 高瀬傳

    高瀬委員長 二人の間のやりとりはおやめ願います。
  44. 永山忠則

    永山国務大臣 出ようとしたことは——現実にそこにおってかさを上げたということは厳たる事実でございますから、事実に間違いないということをこの際はっきり申し上げておきます。
  45. 橋本登美三郎

    ○橋本政府委員 ただいまの穗積さんの御質問でありますが、閣議というところはどういうところかということをひとつ申し上げたいと思います。  閣議というのは、大体短いときで一時間かかりますし、その間あらかじめ議題をきめることが原則であります。それからあらかじめ議題をきめませんが、必要に応じて各大臣から、こういうことについて報告をいたしたい、これが大体原則です。したがって、閣議の主宰者としての私の考え方は、いわゆる前もって予定された正式の議題並びに予定することはなかったためにこういう発言をいたします、こういうことを事前に官房長官に通知したものをもって議題といたす、これが原則であります。当然そうでなければならぬと思います。したがって閣議で自分が言うこと、これは一億の日本国民の生活、安全その他を保障するといいましょうか、それらに対して重大な関係のある閣議でありますから、重要な意見の交換が行なわれる場合もありますが、必要によっては必ずしも重大な案件だけがかかる場合もない、比較的に議題の少ないときもあります。そのときには、いわゆるわれわれの言うところ雑談のかわされる例もある。この点は皆さんもおわかりだろうと思います。  そこで、いまのお話ですが、実はこれはいま申したように、当初から予定された議題でもなく、また事前に官房長官までにかようなことについて報告をするという議題でもなかった、そういうために先ほど何か穗積さんは私がこの件を発表したように言われておりましたが、私は記者会見の席上ではこの点については触れなかったということは、正規の議題でもなし、かつまた準正規の議題でもなかったということで、私は実は記者会見の際も触れなかった。これは実情を申し上げるのですが、そうすると記者の中から、こういうことが自治省で話が出た、こういう話があったわけです。それはあったようだけれども、これは目下実情を調べておるという性質のものであるから、あらためて自分はここでは言わなかったのだ、こういうことを記者会見で言うたわけであります。したがって、これは正式の閣議の議題もしくはそれに準ずべき議題として報告されたものではないという見解を私は当時とっておったから、この問題は私からは正式に記者会見では言わなかった、こういう性質であります。私、その後におきましても、正式に、あるいは非公式にといいましょうか、具体的な報告を自治当局から受けておりません。その程度に、いわゆる実態というものは私はまだ知っておりませんが、ただ、先ほど来自治大臣等がその事実を皆さんにお話をなさっておるようでありますから、その事実については、所管大臣、いやしくも国務大臣であり国家公安委員長の職にある者が皆さんに申し上げておるのですから、その中におったとか、そういうような事実はそのとおりであろうと思いますが、そのことをどうしようという考え方は、実は官房長官としても、あるいは内閣としても特にこの問題について考えておらない。ただその際総理が言われたことは、さような疑いがあるならば調べておく必要はあろう、こういう閣議での発言のようであったようであります。ただそのことは私は記者会見で申しておりません。かようなことでありますから。またこれを広く考えれば、人間というものは、ちょっとしたことからいろいろな誤解を生みやすいものであります。いわゆる警察官がそう見たとか、あるいは第三者がどう見たとかいうことはありましょうけれども、いろいろな形の上から見ればいろいろな誤解があったり何かすることはあり得ると思います。ただ総理としても私といたしましても、佐藤内閣全体がとにかく未承認国の間といえどもできるだけいわゆる仲よくやっていくことが日本の国是である、こういう見解を明らかにしておるわけでありますから、したがって、この問題を何か考えて特別に問題をこんがらがすとか、あるいは特殊な状態にまで考えるという考えは、もちろん先ほどの永山国家公安委員長意見でもこれはないと思います。ことにこの日本は、御承知のように、言論界等においては原則として自由の国である。おそらく世界最大に自由であろう。しかし、ただ外国人の記者に対しましては、旅券法もしくは話し合いの上で、こういう範囲までは自由にできる、こういう範囲までは一応届け出をするなり了承を求めてもらいたい、こういう考え方はあるようであります。これは当然で、外国に行っても日本人の記者は制限といいますか、そういうことに従っておるわけでありますが、それ以外はやはり自由な立場取材する。御承知のように、中共の記者諸君もこの国会にも入ることができる。これはおそらく各国に例がないことだろう。ここまで皆さんも、いわゆる国会自身も、たとえそれが未承認国であれ、中共であれソ連であれ、そういう希望があればこれを入れるということから、国会にいわゆるそういう記者団の人が入って書くことができる。これはおそらく世界的に見て最大の自由が許されておると私は考えます。また官邸記者クラブにも中共記者団は入会、これはオブザーバーでありますが、したがって首相会見にも出席ができる、こういうことになっております。さような意味で、大局的に見れば、お互いに人類愛といいますか、人類の平和のためにできるだけ誤解を少なくし、そうしてよりよき社会建設のために努力をしておるという善意は御了承を願いたいと思います。  したがって、この問題に関しましても善意の措置をもっておそらく関係当局はやっておるだろう、ただ穗積さんは私に御質問内閣はどう考えるかといえば、いま申したような基本方針で対処しておる。もちろん私どもには具体的にこの問題についての報告がまだ来ておらないということは、いかに関係当局がこれを善処しようという考え方でやっておられるかということを御了解願って、いわゆるこの誤解がまた誤解を生むということのないように処理していきたい、かように考えておるわけであります。
  46. 高瀬傳

    高瀬委員長 穗積君に申し上げます。質問時間が切れておりますから簡潔にお願いします。
  47. 穗積七郎

    穗積委員 時間がありませんから結論だけ二点。  私はあなたが名誉あるマスコミ出身の在野人であったということで、また早稲田の出身でもあり、在野の精神を摩滅しておるとは思わない。しかし政治行動というものは客観的にこれを見なければならない。そういう意味では、これがあなたの口から漏れたようにして外に報道されたことに対しては、はなはだ遺憾であります。したがって、この事実は事実でもうすでにマスコミに乗っておるわけですから、そういう意味で二点について私はここで明らかにしていただきたい。  第一点は、向こうは礼を尽くして、政府に抗議書を申し入れるなんということをしないで、順序を通して高碕事務所を通じて、これは一体どういうことでしょうかという政府の回答を求める態度をとっておるわけですから、言うまでもなく高碕事務所を通じて政府としての考え、経過を相手の納得のいくように説明をしていただく必要があると思うから、これはぜひお願いしたい。  それからもう一つ、今後のことについては、心配したような大したできごとではなかったようだという大体の状態に立って、今後これを内閣として荒立てる何かの処置をとるというようなお考えはないという、この二点についてもう一度はっきりイエスをもって回答していただきたいと思います。
  48. 橋本登美三郎

    ○橋本政府委員 一つ、私の口から漏れたということはどこから出たか知りませんが、新聞をごらんになっても、私は申しておらないわけであります。先ほど申し上げたように、閣議はこうこう、こういう順序で行なっており、官房長官はその正式の議題に関してのみ、その範囲内においてのみ発表するということで、その点は官房長官の関知せざるところであった、こういうことは御了承願いたいと思います。  それからいま一つの、いわゆる高碕事務所を通じて、これはそういうような申し入れがありますれば、当然政府の窓口である法務省なりもしくは外務省なり等において善処せられることであろうと思う。  第二の、今後の問題でありますが、もちろん先ほど申しましたように、われわれは七億五千万の中国というものは重大な関心を持たなくてはならぬ国であり、また長い間の日本との関係から考えましても、これと争うことはもちろんだれも考えておらない、かような事情でありますからして、今後の中共記者の正規の活動、いわゆる取材活動記者活動については政府はこれを制限する考えは持っておらない、ただお互いにこういう問題について誤解を生まないように善処することが当然でありますから、お互いに、いわゆる中共の記者諸君もこういう疑いのない行動をとっていただきたい、かように考えておるわけであります。
  49. 穗積七郎

    穗積委員 外務大臣にこの問題についてお尋ねします。結論だけでけっこうです。  四日に外務省は幹部会を開かれまして、これがもし事実であるとすればこれに対して措置をとらなければならない、措置については、一つは新聞協会を通じて勧告をする、もう一つ強い意見は国外退去をしてもらう、この二つの意見が出されたということが新聞で報道されております。これが事実とすれば、いまお聞きのとおり、中国記者行動は主観的にも客観的にも何ら取材活動の領域を逸脱することではない、むしろなるべく誤解を招かないようにという配慮が終始一貫して横須賀においてはとられておる事実もあります。これらの点をあわせ検討なさいまして、今後の措置については一体——幹部会決定があったようですが、今後これをどう処理されるつもりであるか、その点だけ具体的に伺っておきたいと思います。
  50. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 あなたの言われた幹部会の決定などというようなことはありません。それから外務省としては、大体いま官房長官が言われたことでいいだろうと思います。
  51. 高瀬傳

    高瀬委員長 穗積君、簡単にお願いいたします。竹本君の質問がございますから、理事会の打ち合わせのとおり……。
  52. 穗積七郎

    穗積委員 在ペキンの日本記者地位にも関係をする重要な国際関係の問題であるから特に重視したわけですが、先ほど私の質問の中で申し上げました趣旨で外交窓口の外務省の御理解がいったと思う。したがって、軽率な措置、言動は厳に慎んでいただいて、無用な誤解、対立あるいは悪化を来たさないような格段の配慮をしていただきたいということを強く要望いたしておきます。  時間がちょっと大臣の御都合で——実は一点だけ伺っておきたいのです。あなたは近くソウルへ行かれますが、私がきょういろいろお伺いしたいのは、北との関係でございます。そのうち時間がありませんから一点だけにしぼってお尋ねいたしますと、いままで国会におきましてもそうであり、非公式には総理もあなたも北朝鮮の技術者の入国問題は前向きで処理をしたいというお話でございましたが、できればソウルの会議に行く前に決断をして、ひとつこの問題はあっさりきめていっていただきたいと思うわけです。もしそうでなければ、かの地へ参りまして、われわれの憂えますことは、吉田書簡のような事件が、文書ではなくても口頭ででも向こう側に取りつけられることの不安を持っております。したがって、その点について一括してひとつ具体的に、技術者入国問題に限りますから、御答弁をいただきたいと思います。要望をかねて御質問いたします。
  53. 高瀬傳

    高瀬委員長 簡単に……。
  54. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 本件はかねて申し上げるように、ケース・バイ・ケースで慎重に対処、処置したいと思います。
  55. 高瀬傳

    高瀬委員長 竹本君の発言を許します。   〔穗積委員「それで時期はどうですか。時期についてあなたは約束したのだからちょっと言ってください」と呼ぶ〕
  56. 高瀬傳

    高瀬委員長 外務大臣、それはお答えにならぬでいいですから……。  竹本君の発言を許します。   〔椎名国務大臣「発言を許されておりませんから発言いたしません」と呼び、穗積委員委員長横暴だな」と呼ぶ〕
  57. 高瀬傳

    高瀬委員長 やむを得ません。理事会の打ち合わせどおり——竹本君。
  58. 竹本孫一

    ○竹本委員 私は、インドネシアの三千万ドルの援助の問題を中心に若干の質問をしたいと思います。  最近アジア外交が積極的に取り組まれたような形で、その方向としてはわれわれ賛成でありますが、しかし先ほどのアジア開銀の場合でも今回のインドネシア緊急経済協力の問題の場合でも取り組み方がきわめて慎重を欠いておるように思います。経済開発の場合にもはたしてそれの効果があるのか、へたをすれば政治的な逆効果になりはしないかという立場で、われわれは政府のなさっておることにいろいろ心配を持っておるわけであります。特に今回のインドネシアの緊急経済協力の問題にいたしましても、援助の量、方式、時期、それらの問題につきまして事前の両国協議というものがきわめて不十分に行なわれておる。これではかえって逆効果になりはしないかというような点を非常に心配をいたしておるのであります。  そこで質問の第一点は、今回の三千万ドルの問題はいかなる性質、いかなる目的のものであるかということについてお伺いしたい。  時間がありませんので具体的にもう少し申し上げますが、これは経済協力という形になっておるようでございますが、経済協力の名に値するものであるかどうかという点についても、含めて御説明をいただきたいと思います。
  59. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これは短時間ではございましたけれども、十分に関係当局が集まって協議した結果、これはただいま対外的に貿易がすべてストップしておる。それで国際的な会議、コンソーシアムを開いてそのコンソーシアムの結論によって処理するのは九月以降であります。それで、この六、七、八月の三ヵ月の間、この状態ではますます事態が悪化するのみだから、緊急に経済立て直しのために必要な物資、すなわち食糧増産の方法、つまり肥料であります。それからほとんどの各工場が操業しておらないわけであります。二、三%の操業状態ということは操業しておらぬという状態なんです。これは原材料が足らないためだ、あるいはこれに必要な機械器具等の補給の問題もございます。そういった問題をまずとりあえず手をつけて車が回るようにしたいというので、金額も非常に切り詰めたのでありますが、これは緊急な一つの経済協力としてこれを取り上げるのに値する問題である、こう判断して、これを実行したわけであります。
  60. 竹本孫一

    ○竹本委員 大臣のいまの御答弁は、緊急ということの御説明としてはよくわかります。私が伺ったのは経済協力で、協力ということばの意味からいうと、これは若干政治的考慮がありまして、援助と言うたのでは向こうのメンツが立たないというような点についての政治的配慮もおありであろうかとも思いますけれども、しかし経済協力と言う以上は、インドネシアの政情が安定して、インドネシアの経済については再建計画が立っておる、そして出した金は必ず生きて日本のためにもプラスになる、こういうギブ・アンドテークでなければ協力になりません。いまのインドネシアの政情等につきましては、時間がありませんのであとで事務当局に少し伺いたいと思いますが、大臣に伺いたいのは、緊急援助であって緊急協力でないではないか、協力の名に値しないではないかということを伺ったのであります。
  61. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 その点でございますれば、これまた十分に研究した結果、協力に値する使途に使われるものである、しかも償還であるというような点についてはこれは十分に見込みがある。つまりどぶへ捨てるような金ではない、経済が立ち直るために必要なものであって、これはほんとうの協力である、こう考えております。
  62. 竹本孫一

    ○竹本委員 ことばのやりとりになりますからこれ以上いたしませんが、私は大臣の御説明を承っておりますと、ますますこれは緊急援助であって、援助に値するという御説明ならばわかりますけれどもあとでインドネシアの問題をいろいろと具体的に承りますが、協力の名に値するだけの体制あるいは受け入れ体制がインドネシアにはないのではないかということを申し上げておるわけであります。  時間の関係で急ぎますけれども、インドネシアには今日対外債務は一体どのくらいあるかということと、この援助あるいは協力をするにいたしましても、やはり私は債権国会議というものが先に立つべきであると思う。ただいまなるほど六月、七月等の緊急性を話されましたけれども、いかに緊急な事情があるにもかかわらず、国民の税金あるいは一国の政府が経済援助をやるといった場合に、その金がどれだけの意味と役割りを持つかということについて十分な検討や見通しがなくしてやるということは、どうも納得ができません。そういう意味からいうと、やはりいかなる場合といえども債権国会議というものが前提になるべきである。そうしなければ、一体どれだけのものをたな上げして、どれだけの長期援助体制の確立ができるのかということについての具体的な見通しがつかないじゃないか。それにもかかわらず、ただぽんとつかみ銭をやる。アジア開発銀行の場合にも、アイデアとしてはわれわれ賛成であるけれども、あまりにも案の内容が具体性を持たないことについて私は本委員会においても御質問をいたしましたけれども、今回の場合にも、ただインドネシアが困っておる、アジアの一角である、急にひとつ助けておこう、それには値するのだ、これだけのきわめて簡単な方式で問題が取り上げられているような心配をいたすわけであります。なぜ債権国会議を待たずしてやられたのであるか、たとえ三千万ドルにせよ、百八億の金というものが十分見通しを持たないままにつかみ銭方式で、場当たり方式で出されるということには、国民として納得できないのではないかと思いますが、この点について大臣のお考えを承りたいと思います。
  63. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 まず債権国会議の問題を申し上げますが、これはできるだけ早く債権国会議を開く提案をしたのでありますが、しかしハメンク・ブオノ副首相は一応帰国して、そして緊急の職務を済ました上で、さらにヨーロッパ方面に自分が出かけて、そして各国の責任者に会って十分に事情を説明し、それから要請すべきものは要請し、そうした上で検討を加えてもらってコンソーシアムを開いてくれ、そういう要望がございましたので、どうもこれはやむを得ないというのでこれに同意をいたしました。  それから、いやしくも国民の税金あるいは財政投融資は税金でありませんけれども、そういったようなものをただあなたのいま言われるようにつかみ金でさあ持っていけというようなことは、そういうことはいやしくも責任者としては考えられぬことでございまして、十分に向こうの緊急性を考え、経済的な判断も十分やりまして、そして三千万ドルの借款というものに応じたわけであります。九月以降におきましては旧債の再延期、償還延期、それからまたとりあえず若干の新借款というものコンソーシアムでこれを協議することになっております。十分に御趣旨の点は慎重にしかも機を逸せず、タイミングを十分にとって実行してまいりたいと考えております。
  64. 竹本孫一

    ○竹本委員 政府のお考えも債権国会議が前提になるべきであるというお考えのようでありますが、私はそれを貫いていただきたかったと思うのであります。先ほど御説明もありましたようですが、もう一度承りますが、そうすると債権国会議というのは、いまの見通しでは何月ごろに大体行なわれる予定、見通しでありますか、これをお伺いいたします。
  65. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 正式の債権国会議は、これは幾ら急いでも少なくとも七月の半ば以後になるのではないか、下旬になる公算のほうが大きいと思います。
  66. 竹本孫一

    ○竹本委員 外務省では先だって何か西側の九カ国だけを集めて説明会みたいなものを西山局長がおやりになったように新聞で承りましたが、債権国会議の前提というようなものを考えてみますと、西側だけに片寄っているのはどうもおかしいと思いますし、それからまた外務省の意向としては、東独やソ連といったようなものは、やる場合にも別に債権国会議をやりたいというようなお考えもあるようでございますけれども、その辺についてのお考えを伺いたいと思います。
  67. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 対外債務が約二十七億ドル、それで半分がソ連を中心として東独——つまり共産圏の借款でございます。そしてその内容は、武器、軍事援助、軍事供与、そういう色彩が非常に強い。それでございますから、これはやはり軍事協力というような意味となりますと借款の内容がよほど違ってきている。そこでやはりこれは一緒じゃないほうがよかろうということになっておるのであります。別にしいてとびらを閉ざすというような意味はございません。これを処理する上においておのずから債権の性質が違いますから、そのほうが能率的である、こう考えておるわけであります。
  68. 竹本孫一

    ○竹本委員 これは私の希望と意見でありますけれども、なるほど債権の性質はソ連を中心として武器その他でございますので、違うから別にするということで一応の説明はわかりました。しかし、結果として見れば、ことさらに東側を除いてやったということは、今度のインドネシアの援助の問題が取り上げられた政治的背景についても、いろいろと政府の本意でないと思いますけれども、誤解が生まれております。そういう誤解を一そう強くするような取り上げ方ではなかったろうか、要するに今回のインドネシア援助というものはきわめて政治的な考慮からなされておる。端的に申しますと、インドネシアが中共路線から離れようとしておる、この際だということで、西側の感覚で問題を取り上げたのだといったような、デマか想像かあるいは真実か、いろいろ議論がありますが、うわさが流れております。それにぴたり合うような形で、債権国会議にしても説明会にしても、東側をオミットするというようなことは、政治的な逆効果を生みはしないかというような点を心配いたしますので、債権の性質が違うならば違うように、それは債権国会議の中で取り上げればいい問題であって、会議におまえたちは呼ばないといったような取り上げ方は、かえって日本の真意を曲げて伝えるような結果になりはしないかという点で、私どもとしては反対であります。一度政府においても十分その点は検討をしていただきたいと思います。  それから金額の問題でありますが、緊急ということの御説明だけございましたけれども、三千万ドルというのは一体どの辺から出てきた数字であるか。われわれがうわさで聞いておるところによりますと、これは先ほど外務大臣の御説明にもかかわらず、大蔵省等の感覚では、これはもう取り返して役に立つようなお金じゃない、まあ極端に申しますとグラント、贈与にすぎないものだ、それで最小限度で一千万ドルくらいでけっこうだというような意見が支配的であったというようなうわさも聞いておるわけであります。援助するということには値しても、協力という名には値しないのだ、こういうような感覚でございまして、これはあまり経済的にはプラスにならぬというような感覚で大蔵省は一千万ドル、外務省は四千万ドルというようなお考えだったというような話も聞きました。米国あたりではもっと大規模のものを期待したというような話も聞いておりますが、三千万ドルというのは総理の裁断ということになったようであります。それはそれなりに何らかの根拠がなければならぬと思いますけれども、どういう見解で三千万ドルというところに落ちついたのか、経過の御説明を伺いたいと思います。
  69. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 大蔵省は一千万ドルくらいのことを言いましたが、予算のときも初めはゼロ回答をやる、これはお家芸でございまして、結局大蔵省が三千万ドル程度がよかろうというようなことで、今度向こうからも大蔵大臣が参りまして、両国の大蔵大臣同士で話し合いをしてこの数字がきまったわけであります。向こうは三ヵ月間の緊急事情として二億ドル程度はどうしても要る、そしていままで動かなかった工場を動かし、あるいはたんぼには肥料をやるとか、その他緊急の立て直しのためにヨーロッパその他対外貿易をこの際再開して、そして幾らでも為替をかせぐ、こういうような観点から二億ドルという数字を持ってきたわけでありますが、これはいろいろな検討を加えまして、両方で三千万ドルということになったわけであります。アメリカは全然この問題には関与しておりません。
  70. 竹本孫一

    ○竹本委員 ゼロ回答から始まりまして三千万ドルまで上げたお話はわかりましたけれども、それにしても三千万ドルというものの性格、役割りというものがよくわかりません。聞くところによりますと、インドネシアでは、いま大臣は二億ドルと仰せられましたけれども、これは当面の問題でございまして、大体一九六九年末までには十三、四億ドルの緊急援助がなければ、インドネシアの経済は成り立たないという考え方のように承っておりますが、事実どうであるか。そうすれば、一体、向こうが必要だという十三、四億ドルの金を、ただそれを値切るだけが能ではありませんので、日本が三千万ドル今回出す、あと、どういうふうな長期総合的な計画の中でこの第一発として三千万ドルを出されたのかどうか、今後の援助の構想についてもひとつ伺いたい。  それから、これと関連をいたしまして、この三千万ドルは、いわゆる再建分担金として日本は五千万ドル予定されておる、あるいは期待されておる、これはその内ワクであるというような大蔵大臣のお考えのようでございますが、外務大臣は、それは別だ、プラス・アルファだというようなお考えのようにも承っておる。そこで私は、一つは、一体、インドネシアへの援助協力と申しますか、全体としてどのくらいのものが考えられて、日本はそのうちのどの程度のものを負担しようという考えであるか。  それから、日本の負担する金額の中で、三千万ドルは、いわゆる五千万ドルなら五千万ドルという分担金の内ワクになるのか外ワクになるのか、この二点を伺っておきたいと思います。
  71. 吉野文六

    ○吉野説明員 インドネシアが将来長期的に見てどのくらい経済援助を必要とするかという点につきましては、まだ確固たる数字がございません。一応、単に過去の数字をころがして、たとえば一九六九年に十三億とか十四億というような数字があるといたしましても、これは何ら根拠があるものではなくて、将来コンソーシアム、国際債権国会議が開かれまして、その結果、インドネシアが経済再建計画をしっかりと立てて、それを何年でやっていくかということをきめた上でないと、このような数字は出てまいりません。そこで、十三億とか十四億とかというような数字は単に紙の上の数字でありまして、われわれとしては何ら考慮していない数字であります。  その次に、ことしの末までに五千万ドル要るという考え方は、これは、インドネシアはことしの九月から十二月まで輸入を大体二億ドルくらいするであろう、そのうち五千万ドルくらいを日本から買いたい、その意味で五千万ドルくらいの日本からの輸入需要がある、こういうことでありまして、これが直ちに援助の数字と結びつくわけではございません。  なお、三千万ドルの緊急経済協力は、先ほど大臣が申しましたように、この九月までの緊急の需要を満たすためでございます。
  72. 高瀬傳

    高瀬委員長 外務大臣は大蔵委員会出席を要求されておりますから……。
  73. 竹本孫一

    ○竹本委員 いまの問題で、三千万ドルというのは、大蔵大臣外務大臣の見解が非常に違うように伝えられておりますけれども、その三千万ドルは、いわゆる五千万ドルを期待しておるといった場合に、あと二千万ドルを日本協力すればいいのか、いやそれは別でプラス・アルファであるから、あらためて五千万ドルなら五千万ドル出すということになるのか、その辺についての外務大臣のお考えは大蔵大臣と食い違いがあるのかないのか、その一点だけ伺って最後にしておきます。
  74. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 結局、ただいまとなっては、食い違いはございません。初め、いろいろ向こうの説明を聞くまでは、多少食い違いがございましたけれども、いまはございません。それで、九月から十二月までの緊急新借款の総額がいま幾らでしたか、そのうち、向こうが期待しているのは九月からのものは日本に対しては五千万ドル期待しておる、こういう話は受けております。これはコンソーシアムによって十分に討議をされ、決定を見るはずであります。
  75. 竹本孫一

    ○竹本委員 大臣はお帰りになりましたけれども、それではひとつ具体的に借款の使途についてお尋ねをいたしたいと思います。  私どもは、先ほども申しましたように、コンソーシアムがあって、その後に具体的な総合的な計画の中でこういう協力はすべきだ、それを待たずして、いま大臣の御説明にありました緊急ということだけで取り急ぎ三千万ドルということで与えられたようでありますけれども、その金が一体生きるのか死ぬのかということについて心配であることも、先ほど私は指摘いたしました。さらに少し具体的にそれでは伺ってみますけれども、この三千万ドルで何を買うのかということ、それからこの三千万ドルで、工場がとまっているのを動かすとか、食糧増産とかいうようなことを抽象的に言われましたけれども、何をどういうふうに建設していこうというのであるか、要するに使途についての見通しを外務省は持っておられたのかどうか、伺いたいと思います。
  76. 吉野文六

    ○吉野説明員 インドネシア側は、緊急にとりあえず輸入しなければならない物資のリストを出しまして、それらの中には、たとえば肥料だとか機械のスペアパーツだとかあるいは衣料というように、彼らとしては緊急に必要な物資を含めていたわけであります。たとえば肥料はこれからつくる二毛作の米の水田に入れるための肥料であるとか、スペアパーツは動かなくなった機械なりトラックなりそういうものを動かすために必要なスペアパーツだ、こういうように説明しておりました。
  77. 竹本孫一

    ○竹本委員 インドネシアのインフレについてはもう常識になっておりますが、これも、三千万ドル、それだけのものを与えれば与えただけの効果が絶対ないとは思いませんけれども、しかし、先ほど申しました経済協力でございますし、経済的な観点から問題を考えると、ただ緊急であるということと、衣料が要る、肥料が要る、要るらしいということで三千万ドル出したということでは、ぼくは説明がきわめてざっぱくだと思います。  そこで少し伺いますけれども、インドネシアの経済のインフレを克服していくために一番必要な問題の第一は公共投資が足りないということである。したがって、農村に物があっても、道路が悪く、港が悪くて都会のほうへ物が出回らない。これを解決しなければインフレの克服にはならぬといわれておりますが、そういう問題についての話し合いはどうなっておるのか。見通しはどうなっておるのか。次に、軍事費につきましても、予算の四〇%を占めておるという。これはマレーシア問題が片づけばだいぶ様相が変わってくるだろうと思いますけれども、一体その軍事費をどういうふうにこれから削減をしていくつもりであるか。裏から申しますならば、経済建設計画というものによってインドネシアの経済ははたして再建できるという見通しを持っておられるのかどうか。見通しがなくて、ただ緊急だ、必要らしいからというのでいわゆる私の言うつかみ銭を出されたのではたまらない。その点について、具体的に、軍事費について、人件費について、公共投資について、経済の成長率について、これらを総合して、これだけの援助をし、さらにあとこれだけの援助をすれば、インドネシアの経済は、まあことばは悪いかもしれませんが、破産しないで、アジアの一角において協力体制ができるという見通しがあったのかなかったのか。その辺が一番キーポイントだと思いますけれども、その辺も伺いたいと思います。
  78. 吉野文六

    ○吉野説明員 先ほどの説明を補足させていただきますが、いずれにせよ、三千万ドルの緊急物資につきましても、今後両国の間でその品目及び額を十分協議してきめることになっておりまして、もちろんその際には、先ほど指摘されましたとおり、インドネシアの経済再建計画ということを目当てにしてあくまでも品目を選ぶことになるわけであります。  なお、インドネシアが公共投資が足りなくてこれが一つのインフレの原因になっておるということは、まことに仰せのとおりでありまして、これらの面につきましても将来各国の協力が要るのではないかと思われるわけであります。しかしながら、いずれにせよ、これらは相当大きな金もかかるでありましょうししますから、日本一国のみで引き受けるわけにいきません。その意味でも一日も早く国際会議を開いて、インドネシアの債権の支払いについて合議し、さらに新たなる経済協力について各国と協力してやっていく、こういうような態勢でやっていかなければならないと思います。  次に軍事費でございますが、この点につきましても、マレーシア紛争がやんだ後は、大幅に削減されるだろうというのが先方の見通しでありました。いずれにせよ経済再建計画それ自体がいまだ彼らとしては確固たるものがなく、これもまず債権国会議においてある程度債権の繰り延べをしてもらってから、確固たるものを立てようというのが先方の意向でございました。
  79. 竹本孫一

    ○竹本委員 先ほど大臣は、大事なお金をつかみ金で渡すというようなばかなことは、責任ある立場において考えられないことだとおっしゃいました。そのとおりだと思うのですけれども、これは私の先ほど来指摘していますように、承ってみると何もかもこれから、これからで、再建計画も何にもありはしないじゃないか。ただ向こうが困っているらしいから、緊急だから金をやる、これだけの話では、私の言うつかみ金になってしまう。  それでは具体的に伺いますけれども、経済成長率といったようなものは、私の考えでは、二%以下の経済というものは、どこの国の経済だってやっていけるものじゃない。インドネシアは現在幾らで、来年は一体幾らくらいになるような見通しを、外務省あるいは政府は持っておられるか。  それからもう一つ、この取り上げ方が、先ほど来言っておるのですけれども、たとえば一つの中小企業の会社を例にとりますと、この会社が破産、倒産しそうだ、だめになったという場合に、もうあとこれだけ、一千万円ほど金を貸してくれと言った場合に、関係銀行の中の一つ、たとえば大和なら大和、三菱なら三菱が、ほかの銀行とも相談なくして、それじゃ何か困っているらしいから、緊急必要があるらしいからということで、たとい一千万円でも、自分だけ先に金を貸す、しかも再建計画も立ってないのに金を貸す、こういうばかげたことは常識では考えられません。やはり国の場合でも大体同じで、先ほども申しましたけれども、債権国会議をやって、どれだけのものをたな上げをして、どれだけの援助、協力によって再建計画はできる、それによって経済成長率がこのくらいまでいけばインドネシアに協力のしがいがあるだろう、こういう見通しがあり、そしてまたよその国々も協力しながら日本はその一部を受け持つ、こういうことでなければ、金を出す根本のルールに反すると思うのです。今度の場合には、泣きつかれたらよろしいというわけで、ぽんと三千万ドル出した。しかし再建計画については、いま承っているように、軍事費も若干減るだろう、公共投資も必要だろう、だろう、だろうだけで、具体的な見通しがない。あれば経済成長率がどのくらいまでいくか、ことしと来年について承りたい。  またもう一つの根本の考え方として、日本だけ先へ出ていってみても、とうていインドネシアの二十七億ドルもある対外債務を、こういう苦しい条件の中で日本だけが協力すると言ったって、とてもたいへんな問題だ、その点は一体どうなのか、その辺も承りたいと思います。
  80. 吉野文六

    ○吉野説明員 経済成長率につきましては、御存じのとおり、従来インドネシアの経済は残念ながらこのような数字を一切持っていないわけでございます。そこでわれわれとしても数字上の手がかりがなくて、具体的な数字を申し上げるわけにいかないわけでありますが、想像では大体アジアの経済は五%くらいずつの成長率はある。ただし人口が三%くらいずつふえているから、結局それをマイナスすると二%くらいしか成長率がない、これが一応の目安になっておるわけであります。ただし、インドネシアの場合には、軍事費その他の関係がありまして、その成長率がこれよりもやや落ちていたのではないかと思われるわけであります。しかしながら今後このコンテンションが終わり、経済再建に彼らが全力を注ぐということになれば、御存じのとおり資源は豊富でありますし、人口は一億以上もございますし、彼らがその気持ちにさえなれば、再建は比較的容易に行なわれるのではないか、こういうように見通しておるわけであります。  次に一種の破産状況にあった場合に、債権国会議なくしてなぜ日本だけが先に援助の手を差し伸べたかということにつきましては、実は日本のみならす、外国もすでに各国ともインドネシアに対して緊急援助をやっておるわけであります。オーストラリアにしても、インドにしても、あるいはアメリカにしても、それぞれ物資ないしは金額によって相当多額のものをすでに提供しております。日本におきましても三千万ドル先方に約束するに際しましては、将来インドネシアの援助国となるであろう国々、及びインドネシアに対して債権を持っておる国々と相談いたしまして、日本はこのくらいの協力をするけれども、このことを了承してほしい、こういうことを言ってあるわけでありまして、これに対して各国ともこぞって日本態度を称賛しているような次第でございます。そのような雰囲気でございますから、決して日本だけが先がけてインドネシアを援助したということではございません。
  81. 竹本孫一

    ○竹本委員 大臣が帰られたので残念ですが、先ほどつかみ金ではないと言われた。いまの参事官の御答弁では、数字上の手がかりはないというお話でございます。私どもに言わせますと、数字上の手がかりや根拠がなくて金を出すのが場当たり主義でつかみ金だと言うわけなんです。この点はどうですか、つかみ金だと言われませんか。
  82. 吉野文六

    ○吉野説明員 何と定義するかという問題もあるだろうと思いますが、われわれとしては、三千万ドルの数字は、日本の現在の経済状況において、かつ日本の東南アジアに占める経済的なあるいは政治的な地位から見まして、また日本とインドネシアとの経済的、政治的な関係を見まして適当だという考えで、この額にきめた次第でございます。
  83. 竹本孫一

    ○竹本委員 私は三千万ドル出すなと言っているのではないのです。ただ出し方が、事前の協議、事前の検討というものがあまりないという点をいま警告しておるわけなんです。この点をひとつ十分にお考えおきを願いたい。大体先ほど申しましたアジア開発銀行にしても、だんだん追及していくと、何のことかわからぬ。ただそんなものがあったほうがよさそうだというだけなんです。われわれも基本的な考え方では賛成だから、やむを得ず賛成しますけれども、とにかく最近の政府のやられることはどうもあまりにも乱暴で、ずさんです。もう少しきめこまかい検討、良心的な再検討がなされるべきではないかという点を、いま私は強調いたしておるわけであります。  特にいまの経済成長率の問題にしましても、先ほども五%で人口が三%だから実質二%だというお話がありましたけれども、二%台の経済というものはどこの国だってだめなんですよ。御承知のように韓国の経済の成長率だって、われわれが日韓条約に賛成した理由の一つもそこにあるのですけれども、とにかく韓国の経済はもう破産寸前、あるいは定義のしかたによればもう破産しておる。そのときの経済成長率は二・何%でしょう。アメリカでケネディが出たときだって、やはりアメリカの経済は二・二%の成長率で参ってしまったときなんです。大きくても小さくても経済成長率が二%台のときには、その国の経済はまあ破産状態なんです。だからそれをどう立て直すかということについての具体的な再建計画というものがなければ、しかもそれを待たずして、それを検討せずして、ただ金を出すという金はやはりつかみ銭になる。この点は私としては特に強く指摘しておきたい。十分御検討を願いたいと思うのであります。  時間がありませんので次にいきますが、この金額三千万ドルの償還計画というものは、一体どういうふうになるのか。ただやることはやった。それでいつか経済は成長して何とかうまくいくだろうということだけなのか、あるいは償還についての一つの見通しがあるのか、その点はどうなんですか。
  84. 吉野文六

    ○吉野説明員 その三千万ドルの経済協力の金額につきましては、実はまだ先方とその償還計画、金利その他について具体的な交渉に入っておりません。ということは、今後事務当局で十分償還計画その他を練った上で、先方に対してわがほうの案を提案し、先方がこれに対して応ずるかどうかということで合意に達するものでありまして、いまだ金利それから償還計画、それらについては先方と交渉に入っておりません。
  85. 竹本孫一

    ○竹本委員 質問をしていると、だんだんにつかみ銭になってしまいます。貸し出すのに、債権国会議も開かない、再建計画も聞かない、貸し出しの条件も聞かない、償還についての見通しも持たない、あとは全部何とかその辺でなるでしょうということは、これは私どもの言う場当たり方式だということです。もう少しこれはまじめに、事前の真剣な討議や研究協議というものがなされなければならぬということを、きょうは私はこの場合でありますから、実は強く指摘しておきたいと思うのです。全く極端に言うとふまじめだ。あるいは思いつきにすぎない。もう少しアジア政策も考え、あるいはインドネシア経済の再建計画も考えて、慎重に政府はやるべきではないかと思います。  そこで、もう一つ最後に伺っておきたいが、融資の方式はどうされるつもりでありますか。
  86. 吉野文六

    ○吉野説明員 先ほどの償還計画について先方とまだきめていないということは、先方と具体的な合意に達していないという意味でございまして、わがほうがどのような腹案を持っているかということは、事務当局としてはあるわけであります。しかも、このわれわれの提出する条件につきまして先方がこれに合意しないならば、借款は成り立たないのでありまして、決してわれわれが先方に無計画で金を貸してやるということにはならないわけでございます。  次に、この償還をいかなる方式で先方に提案するかということにつきましても、最終的な結論にわれわれとしては到達していないわけでありますが、おそらく従来わが国が経済協力の一環として先方に対して供与してきたと同じような方式、すなわち円借款の方式で先方に提案することになるだろうと考えております。
  87. 竹本孫一

    ○竹本委員 ただいま非常に重要な御発言がありましたが、われわれのほうには案がある、考えがある、それで話がまとまらないときには貸してやらぬ場合もあるということでございますが、そうすると、三千万ドルというのは、一応条件が整えば貸してやるという停止条件つきか、解除条件つきであって、場合によっては貸してやらないことが考えられるわけですか。
  88. 吉野文六

    ○吉野説明員 経済協力というものは、すべて受けるほうと供与するほう、両方がありまして、両者の合意が成立しない場合には不成立に終わることがあり得るわけであります。しかしながら、従来わが国が行なってきました経済協力の協定につきましては、幸いにしてそのようなことはございませんでした。
  89. 竹本孫一

    ○竹本委員 不成立の場合があり得るということで、心配もするし、安心もするわけでございますが、とにかく条件が、インドネシアは困っておるものだということで泣きついただけで、具体的な再建計画その他の、要するに具体性のある交渉というものはほとんどなかったんじゃないか。ただ政治的に泣きつく。だから、一方においては、これはアメリカが圧力を加えてやらしたんだろうとか、アメリカのやつを肩がわりしたんだろうというような新聞、雑誌等の記事が出るというようなことになるので、非常に残念に私は思います。いずれにしても、日本の金を三千万ドル出すということについては、もう少し総合的、具体的な検討を願いたいと思います。  それから、融資の方法について伺いたいのですが、私は考え得る方法は三つあると思う。一つはただでやってしまうということで、グラント——贈与する場合、一つは海外協力基金を利用する場合、一つは輸銀を利用する場合——輸銀からもおいでいただいておると思うので、輸銀にも伺いたいのです。それから通産省の経済協力部長さんがお見えになっておるようでございますからお伺いいたしますが、まず最初に、この三千万ドルは輸銀でまかなえる筋合いのものではないと思うのです。なぜかと申しますと、一つは、インドネシア自身が、去年の暮れから輸出保険をとめてしまっておる。そういうことで、ビジネスの相手としてはもう失格者になってしまっているという点が一つ。それからもう一つは、先ほど来指摘しておりますように、これでインドネシアの経済が再建されて、この金は必ず返ってくるんだという確実なる見通しの点。輸銀法の第十八条の二の一項の二号によると、輸銀の金を出す場合には、その金が確実に返ってくる、だいじょうぶだ、確実であると認められる場合というのが二号にちゃんと入っております。インドネシアの場合は、いままで何度も金を払えなくなっておる。今度もインフレの最中で、マレーシアの紛争がかりに片づいたにしても、インドネシアの経済が再建される見通しはほとんどない。あっても非常に困難で、少なくともこの三千万ドルについて、そういう普通のビジネスの計算角度において確実に返ってくるという保証はない。従来はもう失格者になっている。この金については見通しが十分確実でない。この二つの点から考えて、輸銀の利用一本でいくということを、政府の一部では希望意見が出ておるようでございますけれども、輸銀法のたてまえからいって、輸銀の本質からいって、それは無理であると思いますけれども、その点について協力部長さんのお考えを伺いたい。
  90. 高橋淑郎

    ○高橋説明員 先生御指摘のように、インドネシアが昨年の暮れに中央銀行の支払い遅延という事態を引き起こしました。ただし、その後の状況と申しますのは、債権国を中心といたしまして国際会議を持ち、いわゆるコンソーシアム結成の見通しが非常に強くなってきた。またインドネシアの政府責任ある方々からお話を伺いますと、経済再建の意欲が十分にあり、また債務の返済についても必ず返す、こういう強い確信のある態度でございますので、確かに輸銀法十八条との問題はあろうかと思いますけれども、こういうような情勢を考えますと、輸銀をかりに使うといたしましても、解釈上これは可能であろうと私は関係省の一員として考えております。
  91. 竹本孫一

    ○竹本委員 これは私は可能でないと思うのです。私は先ほど来、場当たり方式のことをだいぶ強く指摘しておるわけですけれども、そういうことを先にやってしまって、あるいは総理が先に約束されて、そしてあとはしりぬぐいといったような形で、とにかく輸銀法も何もみんな曲げてしまうというようなやり方は、これは政治の最もだらしのないやり方で、慎むべきだと思う。輸銀法はいまもお話がありましたように、とにかくこれはたな上げすると言っても、そのたな上げも、はたして債権国会議で全部できるものかどうか、またたな上げしてもあとの再建計画の見通しがつくかどうか、これは重大な問題だと思うのですね。もしそれが見通しがつくとおっしゃるならば、これはあらためてまたその経済問題を本格的に私ども論議したいと思うのですけれども、私はいまのところこれはほとんど不可能だと思う。問題はインドネシアを経済的に救わなければならぬと思いますが、とにかく救うのは全くそれは政治的なべースで考える以外はない。したがって、輸銀のべースや普通のビジネスのコマーシャルベースでやろうということ自体がどだい無理なんだ。   〔委員長退席、永田委員長代理着席〕 無理なことを先に出しておいて、ルーズに法の解釈を曲げたり広げたりしてやるということは許されない、そういう意味で私はもう一度伺いますけれども、輸銀方式によってやるということは、まだ決定していないのですか、決定しておるのですか。  それからもう一つは、輸銀方式でやるということに決定するということは、債権国の会議が開かれ、再建計画ができるまではぼくは絶対無理であると思いますが、その点についてはどうであるか。
  92. 高橋淑郎

    ○高橋説明員 円借款の形をかりにとるといたしまして、そのときに輸銀を使うかどうかということの最終決定は私はまだだろうと思いますが、きわめて近い将来に、いかなる機関を使うかということは決定されると思います。それからかりに輸銀が借款の供与機関になるという場合を考えました場合に、先生のおっしゃいますように、一〇〇%おまえは債務が返ってくることを確約できるかと言われますと、私も一〇〇%ということは申されませんけれども、しかし、先ほど申し上げましたような状況から判断して、代金を回収する見通しというものは私は十分あるというように思いますので、繰り返しになりますが、輸銀法の解釈上、可能であろうと私は思います。
  93. 竹本孫一

    ○竹本委員 政府としては、じゃ、なぜ海外経済協力基金によらないか、その点を伺いたいと思います。あるいは海外経済協力基金による場合のメリット、ディメリットはどういうふうに判断しておられるか。私の考えでは、これは通常の条件ではまかなえないものを海外経済協力基金でまかなうというと、インドネシアの経済の実態を見ると、通常のビジネス・コマーシャルベースには乗らない話なんだから、通常の条件に乗らないということになっておるのであって、それを何か期待ができるというようなこじつけで輸銀方式によるということは、初めから無理がある。むしろ通常の条件ではだめなんだけれども、海外経済協力基金とかいったようなものもあるんだから、その政治的な判断で、あるいは政治的なベースで協力をしていくんだ、しかし、これはもう通常の経済条件ではそろばんの上に乗らない話だという性格をはっきりすべきじゃないかという点が一つ。  それからもう一つは、衣料だとか食糧だとか、いろいろお話が出ましたけれども、そういうものに三万ドルやろうが五万ドルやろうが、これはほとんど役に立たない。いわば焼け石に水なんです。もしどうしてもインドネシアの経済を再建しようというならば、やはり開発事業について、もう少しプラスな生産性のあるものについて協力をすべきである。ただ困ったからやろうということでやれば、Aのものをやったら次にはBのものがほしくなるというだけのことであって、そしてAのものも数量的に切りがない、食糧にしても衣料にしても。でありまするから、それはまた別途方式を考えるべきであって、日本の先ほど来大臣が言われた経済協力ということであるならば、やはり開発的な、あるいは生産性のあるものに協力をすべきで、単なる緊急食糧その他等をやることを幾ら積み重ねてみても、それでインドネシアの経済が再建されるとは思わないが、海外経済協力基金を使うということについては、政府はどういうお考えを持っておられるか承りたい。
  94. 高橋淑郎

    ○高橋説明員 基金の所管につきましても、私どものほうは関係省の一員でございますので、その立場でお答えさしていただきます。  後段のいわゆる開発事業に大いに基金を使ってはどうか、この点については、全くそのとおりであろうと思います。現にインドネシアとの間には、PS方式、生産分与方式という方式で開発に日本側としても協力をいたしておりますが、インドネシアの経済の安定あるいは再建ということが進むにつれて、このPS方式の充実拡大ということが行なわれていくと思います。その場合に協力基金が大きな役割りを果たす、このように思います。  それから前段の、今回の借款供与の機関として基金を考えることはどうかという点につきましては、今度の借款供与の内容がインドネシアの必要とする緊急な物資ということでございますし、また基金の役割りと申しますのは、開発プロジェクトを主体として融資をするということにありますので、両者の関連からいきますと、基金を協力機関とすることにはいささか難点があるのではないかというように私は考えます。
  95. 竹本孫一

    ○竹本委員 難点の問題につきましては、むしろ協力基金の場合には予算措置の問題のほうが難点であって、問題の性質からいえばむしろ輸銀方式による場合のほうが難点が多いと思います。しかしこれはまだ決定でないので、私のそういう意見を申し上げておくにとどめたいと思います。  最後にもう一つだけ伺いますが、この三千万ドルは、先ほど来のお話は全部インドネシアに協力をするんだ、そういうたてまえでアジア外交の一環としての位置づけで議論をいたしておるわけでございます。ところが町では全く逆なうわさが流れております。御承知と思いますけれども、今回のこれを決定するについては、インドネシアの視察団が来た場合に日本の商社はものすごい過当サービスをしたとか、過当競争をしたとかいう話も聞いておる。それから何よりもインドネシア向けの品物の中に滞貨が非常に多い。自動車にしても綿糸にしても非常に多い。これをはかすのが目的であるかのごとくにいわれ、あるいは解釈されておる面があります。一体現在インドネシアでなければ売れないとかあるいは買ってくれないという品物は何と何で、滞貨はどのくらいありますか。
  96. 高橋淑郎

    ○高橋説明員 滞貨の問題でございますが、インドネシアにしか売れない品物という意味が、もしいままでにインドネシアから発注があって昨年の暮れ、向こうの中央銀行が支払い不能におちいったために滞貨になってきておるものでインドネシア以外に振り向けられないものというような意味でございましたら、この点はどの程度在庫、仕掛りになっておるかというのはなかなか調査が困難でございまして、総額につきましてもはっきりつかめないわけでございますが、いま一例としてお出しになりました綿糸というものにつきましても、これはそう多くの滞貨があるわけではございません。おそらく一万コリくらいのものだと思います。それから自動車につきましては、これは先方からの注文によってインドネシア向けのハンドルの取りつけ方になったということで、これまたそのハンドルの取りつけを変えなければよその地区に出せない、こういう例は確かにございます。ただし私どもが考えておりますのは、決して国内対策として滞貨をさばくということではございませんので、先ほど来御説明のありますように、インドネシアがほんとうに緊急に必要とする物資をわれわれとして借款の形で出そうということでございまして、ものによって、向こうが先般緊急に必要だということで発注したもので積み出せないものが結果的に出ていくということはあるかもしれませんけれども、あくまでも先方の緊急に必要とするということが骨子になりまして、もちろんそれがわれわれとしてもほんとうに先方の役に立つかどうかということも十分検討した上で、品目の内容を協議の上決定する、こういうことになろうかと思います。
  97. 竹本孫一

    ○竹本委員 時間がありませんので、最後に希望だけ三点申し上げて終わりにいたしたいと思います。  先ほど来いろいろと議論をいたしておりますように、やはりこの問題は債権国会議も開き、何よりもインドネシアの経済再建計画が総合的に樹立される、これが前提条件であるということをひとつ忘れないようにやっていただきたいという点が一つ。  第二には、その融資の形式は輸銀によるというような考えが強いようでございますけれども、これは輸銀法の本質的な性格からいって無理である。これは十分再検討していただきたい。  第三に、最後に指摘しましたが、通産省あたりでは、インドネシア向けあるいはインドネシアに向けることが最も有利である品物はあれこれ四千五百万ドルぐらいある。したがって通産省は今度の場合も援助は四千万ドルにというような考えが強かったというふうにわれわれは聞いておりますが、そういう滞貨一掃といったような考え方でこの問題を取り上げては困るし、また事実、いまもお話がありましたけれども、この援助協力をめぐって黒いうわさがあまり立つということは日本政治の名誉でありませんので、黒いうわさは絶対に立つ余地のないようなまじめな取り組み方をしていただきたい。  以上三点、希望を申し上げて、きょうのところは質問を終わります。
  98. 永田亮一

    ○永田委員長代理 本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十二分散会