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帆足委員 本件の採決にあたりまして、最終討論論を社会党を代表していたします。
日本は
アジアにおける技術的に進歩した国でありまして、また
アジアで最初に目を開いた国でありますから、工業国としても大きな使命をになっているわけでございます。したがいまして、私
どもは
アジア諸国が長い間植民地の
状況に苦しんでおり、その影響を受けて、低開発国として貧乏に苦しんでおる、貧困と欠乏に苦しんでおることに対して、何とかして助けたいという友情と熱意を持っておりますことは、皆さま同様でございます。したがいまして、このたびのこの
アジア開発に協力する
銀行の設立につきましては、何とかしてこれに協力する
方法はないかということで、わが党内においても非常に慎重な
論議が続いたわけでございます。しかし、次に述べるような
状況によりまして、遺憾ながら賛成いたしがたいという結論に到達いたしましたので、その
理由を明らかにいたしまして、
国民の皆さんの前に野党たる
日本社会党がなぜ反対せねばならぬかという論理を明らかにし、また与党の議員各位に対し、われわれの
発言を
参考にしていただきたいと思うのでございます。
第一に、今次の
アジア開発銀行はいかなる環境のもとに、いかなるいきさつのもとにこれが進みつつあるかといえば、やはりジョンソンの
アジア極東政策に対する構想、それから過般開かれました
アジア経済会議、またやがて開かれます
アジア外相
会議等と一連の連関があるように私
どもは
考えております。
なお
日本のいま
アジアに置かれております地位は、敗戦のあとに、アメリカの過当なる支配のもとに置かれましたので、その惰性が今日も強く残っておりまして、そして資源の貧弱なる
日本が、そして
アジアにおいて特殊の軍国主義支配の過程を経ましたために、心から
アジアの友となるということに対していろいろな障害が残っておる今日の
日本の現状におきまして、そこに
アジアに対する、
日本に対するアメリカの資本の重圧、極東政策の影響が深刻に加重いたしまして、たとえば
日本経済の発展の過程におきまして朝鮮戦争が逆に
日本経済に対する悲劇と喜劇の影響を与えた。一方ではたくさんの南北朝鮮の民衆が犠牲になり、アメリカの兵士が犠牲になる、その基地に身を提供して、
日本はどうすることもできない立場に置かれていた。しかも
経済的には朝鮮景気と申して軍需景気で
利益を受けた。いましかもベトナムの
状況に対して心痛まぬ者はありませんけれ
ども、同時にまた、ベトナムの軍需の影響を受けまして、
国民としては心ならずもその
利益は
利益として享受しておるというような
状況でございます。これを称して英国の一漫画
雑誌が、
日本はアメリカの軍需残飯に依存する極東における軍需残飯
資本主義という名前をつけましたのを見まして、私は心痛む思いがいたしました。好むと好まざるとにかかわらず、多くの
歴史におきまして、人間は一定の環境のもとに置かれるのでございますが、その環境はかくのごとく矛盾に満ちたものでございます。
その中の一環といたしまして、今次の
アジア開発銀行案が生まれまして、その長所は
アジアの低開発国に対してとにもかくにも
経済技術援助を行ないたいというのが長所でありますけれ
ども、その短所といたしましては、ただいまのような環境のもとに行なわれるのでございますから、その結果どういうことになるかといえば、私
どもは
アジアの国々はいま
植民地状況から解放されまして、そして
独立国として生きようとしつつあります。植民地という国がどういうものであるか、経験したことのない私
どもにほんとうの
意味でわかるはずはありませんけれ
ども、それはほんとうに国全体が奴隷にせられた
状況でありまして、もう実に深刻きわまる
歴史の悲劇の一こまでございます。それらの国がいまやっと解放の過程にあるのでありまして、私
どもはそれらの国々が真に自立、自主
独立の精神を振起して、みずから
経済計画を立て、それに対して、すなわち私心なき援助を与える条件であるならば、この案に賛成するでありましょう。しかしながら、残念ながら今日の
状況のもとにおきまして、まず、この
銀行に出資した国々の多くは、少なからざる西欧の国々は、植民地解放宣言があの
国際連合を通過いたしましたときに、これに反対投票または棄権投票をしておって、今日でもなおかつ植民地を一部支配しておりまして離そうとはしていない国々でございます。一方の手において植民地政策をとにかく消極的にしろ支持し、積極的には一部にまだ植民地を持っておる国々が、平和的開発に真に力を貸すと口で言うてみましても、私は鬼の念仏の疑いを持たざるを得ないのでございます。
第二には、現在
アジアにおきましては戦争が行なわれておりまして、その背景にアメリカが大きな支柱をなしておることは御承知のとおりでございます。中南米に旅行された皆さま方はだれしも御存じでしょうが、中南米におきましても同じような事態が起きまして、「アメリカよ、北米に帰れ」と、こう言うております。そのアメリカの内部だけの問題ならば一それにもわれわれは反対ですけれ
ども、まだ間接でありますけれ
ども、
アジアまでアメリカが出てきて主人顔をする必要はないのでありまして、この南ベトナムのデモンストレーションに「アメリカよ、主人づらするな」というスローガンが掲げられておるのを見まして、私はかつて沖縄を訪れたとき同じ印象を受けたことを思い出したりいたしました。アメリカの軍事費は、現在、皆さま御承知のように、年間六百五十億ドルに達しておりまして、アメリカ総予算の六割五分近くでございます。
日本の金にいたしまして約二十四兆円でございます。個人の
意思から
独立してこの二十四兆円の軍事費というものが流れ出しておるのでありますから、アメリカの今日の姿は、その社会機構として、
意思から
独立して、客観的に見ますならば、二十四兆円の血をきばの間から流しながら燎原を走っておる、
人類の野原を走っておる恐竜のごとき姿になっておるのでありまして、アメリカのからだの六割五分は紫色に変色し、その肝臓は軍需爬虫類的肝臓硬変症を起こしておるというのがアメリカの病状でございます。この病状に対して、アイゼンハワー元帥が、その辞職にあたって、いかにこの
状況を憂え、若きケネディ大統領に告別の
ことばを残したかということは、前回の
外務委員会でも私はその一節を読みましたから皆さま御承知のとおりでございます。私
ども、アメリカ映画等を通じて、アメリカの西部の開拓者
時代の物語や、最近公開されました「アンクル・トムズ・ケビン」など、アブラハム・リンカーンの娘やむすこ
たちのその言動に対して尊敬することは人後に落ちないものでありまするし、ホイットマンが「草の葉」を書いて、口笛を吹きながらブルックリンの橋を渡った日のことなどを思えば、ニューヨークに対してすらわれわれは少年
時代からの一種の愛着を持っており、また、マーク・トエーンの「トム・ソーヤの冒険」、あの小説はわれわれの少年
時代の愛読書の
一つであったことを思うならば、今日かくのごとき議論をすることは感慨無量でありますけれ
ども、われわれの
意思から
独立して今日のアメリカというものが二十四兆円の軍事費を使い、そして精神的にも混乱
状況になっておるという危険な
状況にあることは皆さま御承知のとおりでありまして、そのうち約百億ドルを極東の軍
事情勢に使っておるのでございます。百億ドルの金を使い、最近は農村に対して農薬、毒ガスをまき、催涙ガス、窒息ガス等をばらまきまして、至るところで破壊工作をいたしております。百億の軍事費をもって破壊しておるアメリカが参加いたしまして二億ドルの建設とはこれいかに。一方の手でこわしながら他方の手で十億の金を出して建設というのは、偽善もはなはだしいものであると私は思
わざるを得ないのでございます。われわれの良心が今日の
段階においてはこの法案に賛成することを許さない
理由を同僚議員各位は御
了解くださると思います。
結論に入りますと、こういう次第でありますから、私
どもはこの法案に賛成することができません。しからば、われわれは積極的にどういう要望を持っておるかというならば、こういう金融
機関ができるならば、まず第一に、
国際連合が正常な
状況になること、その背景として公正な
国連憲章の創立当初の精神に戻ること、またそれを実行し得るような組織、運営が確立されること、同時に、このような融資をしようとするならば、アメリカのみならず、ソ連も中国も北朝鮮も北ベトナムもすべての国々が
思想を越えてこれに参加するような条件をつくるようにわれわれは
努力すること、そしてこの金融
機関が動くならば、まず第一に平和建設に徹するということを、組織、運営、機構等においても明確にすること、今日平和建設と申しましても、今日のような極東の情勢のもとでは、港湾の修築、鉄道、電力、道路等はすべてこれことごとく軍需と結びつく
可能性があることも私
たちは心配しておるのでございます。また、特に
日本といたしましては、技術援助に重点を注ぎ、東南
アジア諸国からの留学生は主として技術留学生のほうに重点を置きまして、技術的留学生に対しましては思い切って友として援助し、かつて
日本が朝鮮や中国等で植民地政策において犯したあやまちの償いといたしましても、東南
アジア諸国の子弟等に対してできるだけの便宜と物心両面の援助を注ぎ、そして民族的偏見のないように
日本国民を教育する、こういう点に力を注いでいただきたいのでございます。
以上が
日本社会党を代表いたしましての私の
気持ちでございまして、この法案には遺憾ながら反対をせざるを得ないということでございます。