運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1966-05-25 第51回国会 衆議院 外務委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年五月二十五日(水曜日)     午前十時四十四分開議  出席委員    委員長 高瀬  傳君    理事 鯨岡 兵輔君 理事 永田 亮一君    理事 毛利 松平君 理事 戸叶 里子君    理事 西村 関一君       愛知 揆一君    稻葉  修君       内海 安吉君    菊池 義郎君       小坂善太郎君    野見山清造君       増田甲子七君    森下 國雄君       淡谷 悠藏君    岡  良一君       黒田 寿男君    帆足  計君       松平 忠久君    松本 七郎君       竹本 孫一君    川上 貫一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 椎名悦三郎君  出席政府委員         外務事務官         (北米局長)  安川  壯君         外務事務官         (欧亜局長)  北原 秀雄君         外務事務官         (経済協力局         長)      西山  昭君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         外務事務官         (国際連合局         長)      星  文七君         水産庁長官   丹羽雅次郎君         海上保安庁次長 岡田京四郎君  委員外出席者         外務事務官         (アジア局外務         参事官)    広瀬 達夫君         外務事務官         (経済協力局政         策課長)    御巫 清尚君         外務事務官         (経済協力局賠         償課長)    安井 芳郎君         外務事務官         (条約局外務参         事官)     大和田 渉君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    堀込 聡夫君     ――――――――――――― 五月二十五日  委員濱野清吾君及び松平忠久辞任につき、そ  の補欠として増田甲子七君及び淡谷悠藏君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員淡谷悠藏辞任につき、その補欠として松  平忠久君が議長の指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  アジア開発銀行を設立する協定の締結について  承認を求めるの件(条約第二号)  国際情勢に関する件(原子力潜水艦寄港問題  等)      ――――◇―――――
  2. 高瀬傳

    高瀬委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。戸叶里子君。
  3. 戸叶里子

    ○戸叶委員 最近、原子力潜水艦日本寄港するということがいわれておりますが、政府に何らかの通告があったかどうか、この点を伺いたいと思います。
  4. 椎名悦三郎

    推名国務大臣 まだ通告がございません。二十四時間以前に通告があることになっております。
  5. 戸叶里子

    ○戸叶委員 二十四時間以前に通告があるということで、まだ通告がないそうですけれども、近いうちに原子力潜水艦横須賀入港するということは事実と政府はお認めになりますか、そんなことはあり得ないとお考えになりますか。
  6. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 かねて横須賀佐世保両港に二十四時間の前の通告によって入港するということに了解を与えております。あり得ることでございます。
  7. 戸叶里子

    ○戸叶委員 先ごろ、今度は横須賀入港するというようなことがあったので、政府としては、いま入港しては困るというので要請か要望をしたということが伝えられておりますけれども、そういうことのいきさつについて、説明をしていただきたいと思います。
  8. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 さようないきさつはございませんでした。
  9. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、原子力潜水艦がごく最近――いままで入ってきたのは別ですけれども、最近原子力潜水艦日本寄港するということは、どういう形で政府は御存じになったわけですか。
  10. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 それは別に確かな根拠があるわけではございませんが、佐世保にすでに数回来ておりますので、場合によっては横須賀入港するかもしれぬということはかねて予想しておるのでありまして、常にそういう場合に備える心組みを持って、いろいろな技術的な調査等をやっておる状況でございます。
  11. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いまの外務大臣の御答弁ですけれども、これまでは佐世保に数回入ってきた、そのうちには横須賀にも入ってくるだろう、これではちょっと根拠が薄いような気がするのですけれども、横須賀に今回は原子力潜水艦が入ってくるんだというようなことを直接お考えになった動機というものはどういうところにあるのでしょうか。
  12. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 別にそう考えておるというわけじゃないのでありまして、新聞でそういうふうにやるだけの話です。
  13. 戸叶里子

    ○戸叶委員 新聞でそういうことになったとすると、やはりある程度根拠があると思うのです。政府は、新聞でそういうふうに書いてあるからどうもそうらしいということでいろいろ研究するのですか。逆じゃないですか。
  14. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 政府はこの両港のどちらでもいらっしゃいという準備をしておるのでございますから、いまさら新聞横須賀横須賀といって騒ぐのはどういう根拠かよくわかりませんけれども、これはどちらでも向こうの好きなように入ってくればいいのであります。
  15. 戸叶里子

    ○戸叶委員 日本外務大臣として私はいまの御答弁国民が聞いたら少しおこるだろうと思うのです。なぜならば、原子力潜水艦寄港ということに対して大部分の国民がたいへん心配をしております。いまの外務大臣の御答弁では少しも心配の色があらわれておらない。むしろ横須賀佐世保にいつの日か原子力潜水艦がお入りになってくるでしょうと言って、まるで歓迎しておるようなことばだと思うのでありまして、私はこれはとんでもないことだと思うのです。外務大臣は、原子力潜水艦が入ってきたらたいへんだという国民のあの心配の声、ことにベトナムにおいて今日非常な混乱状態におちいっておる中に原子力潜水艦が入ってくることに対して非常に心配しておりますこの国民感情というものを全然無視して、いまのような御答弁で一体いいものでしょうか、私は非常に心配になるのです。  そこでお伺いいたしますのは、佐世保にいままでは入ってきたけれども、今度は横須賀に入ってくるだろう、こういうふうな簡単なものじゃない。もしも横須賀に入ってくるなら、一体どこから入ってくるのか、そうしてどういう型のものが入ってくるだろうか、いつ来るだろうかくらいのことは、私は日本外務大臣としてわかっておらなければいかないと思うのでありまして、通告があるなしにかかわらず、そのくらいのことは調べておくべきだと思いますけれども、この点はどうお考えになりますか。
  16. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これは軍事行動でございますので、遺憾ながら外務大臣としてそれを照会することは立場にないのでございます。いずれにいたしましても、原子力潜水艦の科学的な被害のあるなしに関する調査は十分にやっております。その点は責任を持って政府としては事前に調べております。
  17. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私たちは、今日のベトナム情勢から考えまして、科学的に被害があるかないかということよりも、むしろ軍事的な面で心配をしているわけです。政府自身は軍事的な問題では何も考えておらない。ただ二十四時間以内には通告があるだろうから、今度はどこかから横須賀へ入ってくるらしい、こういうことを新聞情報で知って、それでは通告がそのうちあるだろうということで、ただ手をこまねいて待っていらっしゃるわけですか。もう少し何か情報をつかんでいらっしゃるのじゃないのですか。たとえばどういう形の原子力潜水艦が来るかとか、あるいは大体いつごろ来るかとか、あるいはまた、どこから来るんだろうかということぐらいのことは知っていてしかるべきだと私は思いますけれども、二十四時間以内にならなければ、そういうことを聞く考えもないし、また調べる考えもないということなんでしょうか。またそういうことは知っていても言えないということなんでしょうか。その点をはっきりさせていただきたいと思います。
  18. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 原子力潜水艦に対する国民の心がまえは、もうすでにきまっておるのではないかと思うのであります。もう数回佐世保入港いたしましても、何らの損害はないのであります。いわゆる原子力による推進力を持った潜水艦が、同盟国である日本特定の港に入るということは、何ら事新しい問題でもございません。それからベトナムの今日の状況とは何らの関係はない。われわれは、申し合わせのとおり、二十四時間前の通告によって両港のいずれに対しても入港を認めるという腹がまえがちゃんとできております。条約上そういう権利向こう側が当然持っておるのでございまして、これはいまさら問題にする必要はごうもないのであります。
  19. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私は、日本外務大臣がそういうお考えを持っていることをまことに遺憾に思います。しかし事務的にもう少し伺っていきたいと思いますが、佐世保に入ってきても、横須賀に入ってきても、どっちに入ってきてもいいという準備をしているということですが、今回は大体横須賀に入ってくるということじゃないのですか。  それからもう一つは、外務大臣の二十四時間前に通告がないからわからないということは、それでいいにいたしましても、それでは一体どこから入ってくるかぐらいのことは調べていらっしゃるのじゃないのでしょうか。どんな型のものかぐらいはわかっていらっしゃるのじゃないですか。この点を伺いたい。  それからもう一つは、具体的に大体今月中に入ってくるのじゃないかという見通しを立てていらっしゃるのか、それとも全然いつだかわからないというお気持ちなのか、その点を伺いたいと思います。
  20. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 私が申し上げる以上は、ただ、感じや当てものみたいな気持ちで申し上げるわけにいきません。確かな根拠がなければ申し上げるわけにまいりません。その確かな根拠一つもない。どこからどういう形の船が入るかということは、これは軍事行動でございまして、私の立場としてこれを詮議するわけにもまいらぬのであります。
  21. 戸叶里子

    ○戸叶委員 日本アメリカとの関係というのは、そんな情けない問題なのですか。日米親善ということをよく口にされていらっしゃるのですから、たとえ新聞でも何でもいいですから、外務大臣が、今度は原子力潜水艦日本の港に寄港するらしい、こういうことをお聞きになったら、アメリカに対して、どこから来るのでしょうか、あるいはどういう型のでしょうか。二十四時間以内に通告があるにしても、正式通告と申しますか、向こうからの通告があるにしても、その前にそういう情報をキャッチされたら、そのことを非公式でも話し合えないような日米関係なんですか、それともかまわないから話し合わないという態度なんですか、その点をはっきりさしていただきたい。
  22. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 その必要を認めないのでございます。
  23. 戸叶里子

    ○戸叶委員 必要を認めないということは、二十四時間以内に通告があるだろう、あるまでは、もう何が入ろうが、どうしようが、アメリカの言うとおり信頼して、そうして何もしないでいいということですか。
  24. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日米安保条約のたてまえ上、さような次第でございます。
  25. 戸叶里子

    ○戸叶委員 じゃ、私たちからお願いします。もしもそういう情報が入ってきたら、一体どんなものがどういう形で入ってくるかという情報を聞いて、そうして国会ではっきりさしていただきたいと思いますが、これに対するお考えはいかがでございますか。
  26. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 それは別に両国関係を害するものでなければ、もしそういう情報が入って、その情報をお伝えすることに両国の間に何ら支障がないということであれば、これはいつでも発表いたします。
  27. 戸叶里子

    ○戸叶委員 発表して差しつかえないものならばそういうふうにいたしますということですけれども、日本外務大臣として、しかも国民原子力潜水艦日本寄港するということに対して今日これほど心配しているときですから、そういう情報が入ったならば、しかも日米友好関係にあるというならば、そういう問題について事前にいろいろと話し合いをする必要があるじゃないか、私はこういうことを考えますけれども、外務大臣は、日米安保条約関係からそんな心配の必要はない、こうおっしゃるので、私はあきれ返る以外の何ものでもないと思うのです。外務大臣日本の国を考えないもはなはだしいといわざるを得ないと思うのです。  そこで私たちは、原子力潜水艦が何としても入ってきては困るという立場に立っておりますけれども、外務大臣立場にかわって考えたときに、二十四時間以内に、原子力潜水艦がいついつ入る、こういうことを伝えてきた場合に、外務大臣は、それがどこから来たかということとか、あるいは日本寄港するまでにどういう行動をとってきたかということをお聞きになるべきだと思います。たとえば、ベトナムのほうで戦争に参加してきて、日本へ来るかもわからない。そういうことについて確かめる御用意があるかどうかということを伺いたいと思います。  もう一つ、先ほどの答弁の中で落ちておりました、外務大臣としては今月中に大体寄港するというふうに考えているかどうか、ずっと先のことだろうというふうにお感じになっていられるかどうか、この点をもう一度伺いたいと思います。
  28. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 それを予告するだけの材料を私は持っておりません。
  29. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いま私は二つ質問をしました。一つしか答えていただけないので、もう一つ答えていただきますが、予告するだけの材料を持っていないということですが、しかも今度の原潜寄港については新聞によって知ったということでございますが、それではその新聞をお信じになるとするならば、新聞では大体二十九日ごろ入港するのではないかということを伝えておりますが、それは信頼なさいますか。
  30. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 それは根拠のない記事だと思います。  それから、原子力潜水艦入港するということが、一体日本の国益に非常に害があるような前提でお話しのようでございますが、私は根本的にそういう考え方に同意できません。日米安保条約は御承知のとおり極東の安全及び日本の安全、そのために結ばれておる条約でございまして、その趣旨においてアメリカ軍艦が、原子力推進力にしようがしまいが、そういうものが特定の港に自由に入港するということを認めておるのであります。特に一般の軍艦と違うところは、原子力を用いておるかどうか、原子力推進力にしておるかどうかということだけが違っておる。その点についての安全性というものが確認されるならば、それ以外の軍艦と何ら違わないのでございます。それを何か毒虫か毛虫でも入ってくるように考える、私は全然基本的にあなたのお考えと違うのでございます。
  31. 戸叶里子

    ○戸叶委員 外務大臣のいまの御答弁では、まるでこの間から問題になっているアメリカ・シロヒトリが入ってくると同じような扱いをしておりますけれども、これでは、私は日本の国の外交を誤るもはなはだしいと言わざるを得ないと思います。そこで、先ほどから外務大臣安保条約のたてまえからしかたがない。これは政府のばかの一つ覚えみたいな答弁で、私ももう聞きあきました。  それはそれといたしまして、原子力潜水艦が入ってくるのに害がない、害があるというあなた方の見方は間違いである、こういうふうにおっしゃいますけれども、それじゃ、日本にとってはどういう利益になるのですか、この点を伺いたいと思います。
  32. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日米安保条約というものについて十分な知識を持たれておるあなたに対して、私は条約趣旨をいまさら説明する必要はないと思うのであります。そういうたてまえからアメリカ軍艦入港を認めておる、こういうわけでございます。
  33. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私の伺いました日本にとってどういう利益になるのでしょうか。たとえば、いままで佐世保に入ってきて今度は横須賀に入ってくる。それが日本にとってこういうふうにプラスになる、こういうことを具体的に述べていただけたら、私の害になるというふうな考え方と対峙的なものであるという証明になると思いますが、その点を説明していただきたいと思います。
  34. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 一々アメリカ軍艦が出たり入ったりする事実をつかまえて、これは利益になるか、これはどうなると、こういうことでなしに、日米安保体制というものによっていかなる利益を受けておるかということを考えれば、私はお答えになるかと思うのであります。戦争に巻き込まれるという御心配が非常にあったようでありますが、日米安保条約を結んでわれわれはまくらを高くして、国の安全に対しては何ら心配することなく、一意専心経済の復興に努力することができて非常な成果をあげておるというこの事実を考えればそれでよろしいのではないかと考えます。
  35. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私は、ここで安保条約の問題で外務大臣と議論しようとは思いませんけれども、ただ、外務大臣のいまの御説明に対してちょっと申し上げておきたいことがあります。それはなぜならば、今日ベトナムにおいて非常に激しい戦いが戦われております。しかもアメリカが先頭に立って、ベトナムにおいての解放戦線を抑圧しておるわけです。それに加えてベトナム国内において、いわゆる政府のやり方に対して憤慨している僧侶を中心とした人々が戦っているわけです。こういうふうな非常に混乱した中にあって、アメリカがおりおり第一線に立って政府軍を助けているわけでございますが、そういうふうな行動をとったアメリカ軍艦なり飛行機なりが日本にそのまま帰ってくるということになったり、あるいは日本基地からベトナムに向かって出ていくということになれば、当然日本の国は報復攻撃を受けるではないか、こういう点を日本国民は非常に心配しておるわけです。しかし、その報復攻撃ということに対して、外務大臣は、いや、そんなものはないのだ、まくらを高くして、アメリカ軍艦さえいればいいのだ、こういうお考えでは少し甘過ぎるのではないか、こう私は考えますけれども、この点だけはいま外務大臣のおっしゃったのと私は違うもはなはだしいですし、また今回の情勢において大事なことですから、一ぺん伺っておきたいと思います。
  36. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 北越のほうでは解放するという意味において国内破壊分子を助けておる、アメリカはこれに対して南越の政治の独立と平和のためにその要請を受けてこれを排除しようとしておる、こういう考え方が基本的にあるのであります。何でもとにかくアメリカが悪いのだという考え方はきわめて一方的な見方であって、われわれはいわば正しい意味における極東東南アジア独立と平和のためにアメリカが協力しておるというふうに考えておるのでございます。日本としても東南アジアの動揺というものに対しては非常な関心を持たざるを得ない。ひいては日本の安全にも関係があるのであります。正しい形においてこの問題が収拾されることをわれわれは望んでおる。そのためにアメリカが非常な犠牲を払っていまやっておる、こういうことでございまして、この問題の解決は戦いの当事者が両方とも武器を置いて、そうして平和の話し合いに入るという以外にないと思う。一方だけ抜けということは間違いである、そういう趣旨でございます。その軍事行動に参加した船がたまたま日本寄港することがあるかもしれない、あるいはそういう飛行機日本補給のために来ることがあるかもしれない。そういうことは日本戦争に直接介入するのではないのでありまして、これはいかなる側面から考えても戦争に巻き込まれるというのではない。むしろ極東東南アジアの安全と平和のために非常に大きな貢献をしておるものだ、こう思うのでございます。それからまた、一面において日本がこれに巻き込まれるというような事実は毛頭ありません。
  37. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いま外務大臣日本戦争に巻き込まれることは毛頭ありませんというふうに断言されましたけれども、私は、日本が直接戦争に介入するとかなんとか言っているわけではないのです。アメリカがそういうところで戦ってきて、日本にその軍艦なり飛行機なりが来た場合に報復攻撃を受ける可能性が多いのじゃないか。たとえば逃げてくるのに対して、帰ってくるのに対して追いかけてくるわけですね。そういう形で日本戦争に巻き込まれる可能性があるのではないか、こういうことを聞いているわけでございまして、いま外務大臣のおっしゃったのは、直接介入するかのような考え方で言っていられるので、私は念のためにただしておきたかったわけでございますが、その点の御返事をいただきたい。  そこでさらに追加して伺いたいのは、五月十九日の報道で、アメリカ側作戦遂行エンタープライズ日本寄港は絶対に必要だ、こう言っているわけでございます。この作戦遂行上というのは当然ベトナム戦争のことを言っているのではないかと思いますが、この点についてはどういうふうにお考えになりますか。
  38. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 エンタープライズが第七艦隊に配属されたということは、過般アメリカがこれを公表しておりますので、われわれも承知しておりますが、作戦遂行上――どこの作戦であるかよくわかりませんが、日本寄港しなければならぬというような記事がどこに出ておったのか、私のほうは全然存じません。
  39. 戸叶里子

    ○戸叶委員 五月十九日の毎日に出ておりましたけれども、じゃ、これは御否定になりますか。
  40. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 十九日の記事はどういうふうに書いてありますか知りませんが、第七艦隊ですから日本寄港することはもちろんあり得ることです。これは日米安保条約上そういう取りきめがございますから、これは寄港権利がある。しかしエンタープライズ作戦遂行日本寄港しなければならぬということは、たとえ大新聞記事であろうと、そのままわれわれは、どうもそうですかというわけにはいかぬように思われます。
  41. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それは、いま記事を持ってきませんでしたが、そういう意味じゃなくて、アメリカが言っているわけです。作戦遂行上、エンタープライズ日本寄港を必要とするということを言っているわけです。これを私は非常に心配するわけです。作戦遂行上といえば、今日まず第一に考えられるのは、ベトナム戦争だと思うのです。そういうところに行くエンタープライズというものの日本への寄港というものを認めると、日本は当然この戦争局外漢としていられなくなると思うのですが、こういう点はどうお考えになるか、伺いたいと思います。
  42. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 作戦遂行上と、こう言いますが、第七艦隊は必ずしもベトナム作戦に全部が従事しているというわけではございません。これは極東のいわゆる安全のためにいろいろな行動をしておる。これを作戦というなら、あるいは少しことばの使い方が適当かどうか、私はどうも疑問を持っておりますけれども、非常に広い意味における作戦遂行上、こういうことが言えるのかもしれません。そういう極東の海域を哨戒するということがもし作戦であるならば、これも一つ作戦かもしれない。そういう必要上、日本寄港する必要がある、こういうことなら、これはごく普通なことであって、何もこれをわざわざベトナム戦争に関連してそういうことを考える必要はないと思うのであります。
  43. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それではいまの外務大臣の御答弁で、エンタープライズ日本寄港することも、安保条約上当然であるということにお考えになるわけですか、それが一つ。  もう一つは、それが日本補給して、そして日本で休息して再び戦争に参加するために出ていくのは、だれが何と言っても、これは戦時における局外国であり得ないし、また日米安保条約によっても、出港の際は事前協議対象になると思いますが、この点はいかがでございますか。
  44. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日本基地を使って直接作戦行動に出るという場合は事前協議対象になりますが、そういう空母が補給をして日本の港を離れるという場合には、直接その港を発進地として作戦行動を起こすということにはならぬのであります。
  45. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それじゃ、エンタープライズならエンタープライズ日本補給してベトナム戦争に参加しても、日本事前協議を受けなくてもいい、こういうことになるわけですか。
  46. 安川壯

    ○安川政府委員 安保条約上は、日本基地を戦闘作戦行動基地として使う場合に事前協議対象になるわけでございます。従来、何回も御説明しておりますように、その典型的な例は、日本の飛行場から直接爆撃機が飛び立って、直接敵地を爆撃するというような場合がそれに該当するわけでございます。航空母艦で申しますならば、航空母艦から搭載した飛行機が飛び立ちまして敵地を爆撃するというのはまさに戦闘作戦行動でございますけれども、航空母艦それ自体が日本の港に入って補給を受けて、そして出港するという場合には、航空母艦自体が日本基地作戦行動基地として使用するという場合には該当しないわけでございますから、したがいまして、事前協議対象にはならないわけであります。
  47. 戸叶里子

    ○戸叶委員 ずいぶん安保条約の解釈というものも、大きくといいますか、拡大解釈されてきた感が私はいたします。安保条約の審議のときにはそれほど拡大解釈はされていなかったように思うのです。そんなことをしたならば、日本に航空母艦がいて、そこから飛行機がぽんぽん飛んで行かなければ事前協議対象にならない、航空母艦が出ていって途中から飛行機が飛んでいくならば、これは作戦行動じゃない、だから事前協議対象にならないのだ、こんな解釈をしていたならば、日本はもう全く基地化してしまうことは当然だと思うのです。そういうふうな日本政府考え方というものが、私は自主性がないというか、日本の国の平和を案ずる考え方がないということを心配するわけなのです。もし、そんな解釈をしておって、拡大解釈をしていったならば、今後においてそれこそ日本ベトナムなどの戦争基地になってしまうじゃありませんか。こういう考え方外務大臣いいのですか。
  48. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 あなたの解釈が拡大解釈で、われわれのほうが縮小解釈です。それで直接作戦行動を起こす、こういうことは、これはもう、そこでどこそこの敵をどういう味方が一緒になってたたくというか、一つ作戦命令を授けられて、そこからすぐ戦闘行動を起こすというのがこれが正解、これは拡大解釈してはいかぬのです。われわれはあくまでやはり狭義に厳格に解釈しておる。でありますから、エンタープライズではなくても、普通の軍艦日本に来ていろいろな物資を調達して、ずっとはるばる南シナ海に行くというような場合に、それは作戦行動日本基地から起こしたというようなことはこれはとんでもない拡大解釈で、われわれはさような拡大解釈をとっておりません。
  49. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私と外務大臣との考え方はぐっと違います。ただ、私はこの問題で議論しても時間がございませんからいたしませんけれども、非常に残念に思いますことは、この外務省の考え方が、アメリカの原潜入港日本の安保上、あるいは日本アメリカとの間の安保条約がある以上は、アメリカが当然の権利としてあるのだというようなことで、国民がこれほど心配しているにもかかわらず、涼しい顔をして、当然のことです、二十四時間以内には通告があるでしょう、こういう態度に非常に不満を持つものでございます。だから私がこの間読みましたエコノミストの中にも、白洲さんが何と言っていますか。終戦のときのことを書いた白洲さんの文章を見ますと、内務省の役人はたいへんにアメリカに対して強かった、外務省の役人が一番だらしがなくて、文部省の役人が一番ばかだ、こういう言い方をしているのです。白洲さんがそう言っているのです。やはり国民は、これを見ると、今日の外務省というものに対しても非常に不満を持つと思うのです。安保条約上は原子力潜水艦寄港というものはしかたがないかもしれない。しかし、国民感情としてこういうものは寄ってもらいたくない。しかもベトナムにおいてこれだけの戦いが行なわれているときに、日本が非常に不安な状態に置かれるじゃないか、だから国民的な立場に立つならば、アメリカにどうか寄らないでもらいたいということぐらい言うのが、今日の外務省の態度でなければならない。日本を憂える外務省であるならば、そういう態度を示してもらいたい。それならば、やはり国民はさすがにりっぱだといってついてきてくれると思うのです。これぐらいの気概なり、それぐらいの考え方アメリカにぶつけてもらいたいということを私は心から要望いたします。日本の平和を語るならば、そのぐらいのことは発言してもらいたい。これを心から要望いたします。そしてこのことに対する御意見を伺った上で、次に入りたいと思います。
  50. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 御要望でございますからお答えする必要はないと思いますけれども、考えを言えというお話でありますから申し上げますが、結局日本は消極的な軍備以外には持てない。しかし今日日本は、日本を取り巻く環境からいいまして、決して国家の安全が一〇〇%保障されていない。そのために日米安保条約を結んで、そして外部からの脅威――侵略はもとよりのこと、脅威があってもその脅威に十分に対して安心して日本がいられるというこの体制がいわゆる日米安保条約体制でございます。その相手国、同盟国であるアメリカ軍艦寄港する場合にも一々非常にむずかしい手続のもとに入ってこなければならぬというようなことは、これはどこの安保に関する同盟国の間でもとられていないところであります。それを一々これは許可をしなければ入れないというような体制は、どこでもこれはとられていないところでございまして、特に同盟国に対して信頼を持って、そして日本日本として尽くすべきことは尽くし、向こう向こうとして遂行すべき義務は遂行する、こういうことで初めて条約というものは成り立つのであります。さような例は私は聞いたことがございません。
  51. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いまの外務大臣の御答弁ですから、私はやはりもう一言、言っておきたいことは、ほかの国の安保条約と同じ形の軍事同盟では、日本のようなことを言わないかもしれません。しかし、それは国柄が違うということと、もう一つは置かれている客観情勢が違うということ、ベトナムにおいて戦争が行なわれているということ、アメリカがそこに第一線に立って戦っているということ、こういうようないろいろな客観的情勢からながめてみれば、日本の平和ということを考え立場からいうならば、私は当然そのくらいのことをアメリカに言ってしかるべきである、こういうふうに考えるわけでございまして、この点外務大臣と違いますから、これはこの程度にしまして、あとでまたこの問題は追及したいと思います。  そこで次の問題に移りたいのですが、先ごろ韓国の張基栄副首相が日本に来られて、そして日韓の経済協力を推進するために年に一、二回両国の経済閣僚懇談会を定期的に開くということを言われて、八月下旬にソウルで開くことがきまったということを聞いたわけですが、それは事実かどうかということが一点と、それからこの委員会で日本が韓国へ約束した経済協力の内容について主として話し合うのが目的か、それとも当分の間の計画はもうすでにきめられてしまっていて、そしてこの経済閣僚懇談会というものではいままでの経済協力の内容を審議するのではなくて、何を審議するのか、この辺のことを伺いたいと思います。
  52. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これは私も詳しく聞いておりません。とかく今度の日韓条約において一部をなしておるこの経済協力の問題、これも何となくおくれがちである、そういったような事柄をときどき是正して、そしてこれを推進する意味において直接経済閣僚間で話し合うということが必要だということが、会談のうちに話として出たということは私は聞いております。これを定期的にやるとか非常にフォーマルな形でやるとかいうような性質の話ではなかったというふうに私は聞いております。
  53. 戸叶里子

    ○戸叶委員 経済協力の内容について話し合うのには、日韓間の経済合同委員会というものがあるわけでございますので、さらに閣僚会議を開くというのは一体どういうところに意図があるか、この日韓合同委員会との関係はどうなんだろうかということを私は疑問に思ったわけですが、この間のことについてはどうなっているんでしょうか。
  54. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いま申し上げたように、とかく、――大綱においてはさまっておる、合同委員会においても議論した、しかしいろいろな手続上おくれがちであるというようなことをときどき是正し、推進するという意味における閣僚間の懇談というように私は聞いておるのであります。それ以上のものではない、こう私は了解しております。ですから、八月にやるというようなこともまだきまっておらないようでございますし、定期なんということばも用いてなかったようでございます。私はそういう趣旨のものならたいへんけっこうじゃないか、そうして閣僚はもとよりスタッフの人たちもまあわざわざソウルまで出かけて、そうして実情を呼吸しながら問題の推進に当たるということは、これは非常にいいことだと私は考えております。
  55. 戸叶里子

    ○戸叶委員 日本と韓国の間に正規の委員会があって、さらに閣僚会議とかあるいはアジア外相会議とかいろいろな会議を持たれることになりますと、やはり日韓条約というものがああいう形できめられただけに、ことに韓国がいろいろと太平洋アジア軍事条約のようなものを考えているというようなことが伝えられているときでございますので、どういう会議を開くのだろうということを非常に疑問に思うわけでございます。それがまだあんまりはっきりしていないということでございますので、そこいら辺で軍事条約の問題なんかも話が出るのかということを心配したので私は聞いたわけです。  そこで、日韓経済協力の件でございますが、日本政府が四月二十六日の閣議で、請求権、経済協力協定に基づく第一年度の計画を九千三百五十九万五千ドルと決定したというふうに私は了承したのですが、そうでございますか。
  56. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 実施計画としてこれをきめたわけであります。
  57. 戸叶里子

    ○戸叶委員 条約の審議にあたりまして私が了承しているところでは、本年度は、協定によって無償が三千万ドル、有償が二千万ドル、それから焦げつき債権の分を引いて四千五百万ドルであるはずだと思います。協定による金額の二倍以上を支払うことになる。九千三百五十九万五千ドルというのは、ことし払おうとしている内容の二倍以上を支払うことになるわけですけれども、それはどういうわけでございましょうか。
  58. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 一つのプロジェクトとして九千何がしをきめたのでありまして、これを一年間に全部支払うという、そういう性質のもんじゃありません。ことし一年間で支払うのは、御指摘のとおり四千五百万ドル前後のものであります。
  59. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、ちょっとわからないのですが、ことしは四千五百万ドル払って、プロジェクトとしてその倍以上のものをきめておく、そうすると来年はどうなるのですか。
  60. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 来年は来年でまた一つの実施計画をつくりまして、はみ出した分はもちろん翌年に繰り越して、そうしてまたその翌年のプロジェクトの中にそれを包含して実施計画を立てる、こういうことになると思います。
  61. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると、プロジェクトだけは総額幾らときめておいて、そうして年々出すお金は四千五百万ドル、それで十年間で繰り上げの支給はしない、こういうことになるわけですか。
  62. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 大体そうでございます。
  63. 戸叶里子

    ○戸叶委員 何とおっしゃったんですか。
  64. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 そのとおりでございます。
  65. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それでわかりました。  それからもう一つ、張基栄氏との懇談の席上で、北朝鮮からの技術者の入国について話が出た。それに対して総理が、池田内閣からの懸案事項であるから、あまり気にしないほうがいいというようなことを言われたように新聞では了承したわけですけれども、北朝鮮からの技術者の入国を許可するということは、先ごろ大体きまったように思いますが、その後韓国がたいへんにとやかくうるさく言うので、またその圧力に負けて、そしてこれを延期しているかのようにも見受けられるわけでございますけれども、貿易の振興という意味からも、当然北朝鮮からの技術者の入国というものは許可すべきであると思いますが、その後どういういきさつになっているかを伺いたいと思います。張基栄氏に佐藤総理があまり気にしないほうがいいと言われたことから見ても、当然早急に入れるべきではないかと思いますが、この点はどうお考えになりますか。
  66. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 私もその席に立ち会ったわけではございませんが、話が出たようでございます。いずれにいたしましても、これはケース・バイ・ケースで慎重に扱いたい、こう考えております。
  67. 戸叶里子

    ○戸叶委員 だいぶ前から外務大臣の御答弁は、いろいろ審議をいたしまして、ケース・バイ・ケースで慎重に扱いますという答弁を伺っておりますけれども、それから全然前進しませんか。前進も後退もせず、ただケース・バイ・ケースでということですか。
  68. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 前進するように考えております。
  69. 戸叶里子

    ○戸叶委員 前進するように考えているとおっしゃいますので、なるべく早く実行に移していただきたい。これを要望したいと思います。  それから、私はまだいろいろ伺いたかったのですが、あとの議員の方の時間をとっても悪いですから、この辺で打ち切ろうと思いますが、もう一点だけ伺いたいと思います。それは、近いうちに外務大臣が韓国の提唱している外相会議に出席されるということが大体きまったようですけれども、その問題とは別にしましても、韓国へいらっしゃるので、そのときにやはり私はある程度問題の解決をしてきてもらいたいということは、この三月十四日の韓国の艦艇によって不法に捕獲連行された第五十三海洋丸に対するその後の措置でございます。漁船の不法抑留の抗議をするとともに、賠償を要求する口上書を韓国政府に渡すというととでございますが、その間どういうふうなことをやっていらっしゃるか。今度行ったときには、この問題を必ず解決すべきだと思いますけれども、補償の問題なり拿捕の問題なり、この問題をどう考えていらっしゃるかを説明していただきたいと思います。
  70. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これは新聞にも発表されたところですから、御承知のことだと思いますが、口上書を向こうに渡しまして、そしてその後漁業協定上の共同委員会にこれをかけて、そしてこれを論議しておる、こういう状況でございます。
  71. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると、補償の問題等もじきに解決するというふうに、韓国側に請求しているというふうに了解してよろしいわけでございますか。
  72. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 口上書にもございましたが、賠償の権利を留保して、そしてこの問題全体に対して厳重抗議をしておる、こういう状況であります。
  73. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そういう問題にいたしましても、最近ニュージーランド、カナダ等でいろいろ起きております問題にいたしましても、専管水域とか領海とかの設定のしかた等にいろいろ問題がありますので、そういう問題を含めて私はきょう質問したかったのですが、時間がないので他の議員に譲りたいと思います。ことに漁船拿捕の問題で淡谷議員が関連質問で聞きたいそうですから、淡谷議員にお譲りしたいと思います。
  74. 高瀬傳

    高瀬委員長 関連質問の申し出がありますので、これを許します。淡谷悠藏君。
  75. 淡谷悠藏

    淡谷委員 まず海上保安庁にお伺いしたいのですが、去る二十日に日本海でサケ・マス漁業に従事中の第三政栄丸という日本の漁船が北朝鮮の漁船に船長以下一人が連行され、危うく自分たちの船にのがれたあともかなり長い間追跡され、かつ銃撃を受けておる事件ができておるようでありまするが、海上保安庁の接受しております情報について、詳しく御報告を願いたいと思うのであります。
  76. 岡田京四郎

    ○岡田政府委員 事実関係について御報告申し上げます。  昭和四十一年五月二十日十七時二十分、午後五時二十分でございますが、第九管区本部の通信所で水産庁の監視船からの情報を受け取っております。  その内容は、北緯四十度十五分、東経百二十九度五十七分の地点において、第三政栄丸の船長が北鮮の漁船らしき船三隻に連行され、二時間経過するも帰ってこない旨の緊急通信を発信してきた、それを傍受したわけでございます。この第三政栄丸は、青森県下北郡大畑町馬場鉄蔵という方の所有の小型サケ・マス流し網漁船でございまして、総トン数は二九・九八トン、船長は川島敏男という人でございます。乗り組み員はそのほか十一名乗り組んでおりました。五月十三日の午前零時、十四日から二十日の間この地点で操業するという目的でもって新潟港を出港しておりましたが、五月二十日の牛後二時三十分ごろに先ほどの地点で漂泊しておりましたところ、別の漂泊中の三隻の北鮮の漁船に会合、その北鮮の漁船から旗を振って合い図しましたので、第三政栄丸が停船いたしましたところ、接舷されて船長が連行されたのでございます。その連行されました船長からの連絡によりますと、相手の船は北鮮の漁船でございまして、朝鮮半島組織本部の許可がなければ釈放しないとのことであり、相当時間がかかるようでございましたが、その後北鮮の漁船から船長が自船に戻ってまいりました。そしてその船は直ちに現場を離れ、全速力で逃走いたしたのでございます。その逃走したのを見て北鮮の漁船三隻が追跡いたしまして、そのときに一隻から銃声二発が聞こえたのでございますが、無事にのがれまして、逃げて帰ることができたわけでございます。  この情報を知りましたので、海上保安庁といたしましては、日本海のほうに出ておりました第二管区の所属の「みくら」という巡視船を差し向けまして、第三政栄丸の保護のために現場に急行さしておりますが、この船が翌二十一日の朝八時ごろでございましたかに当該第三政栄丸と会合いたしまして、巡視船「みくら」がその船からいろいろ一応の事情聴取をいたしたわけでございます。ところが、この漁船は、さらにその後操業を続けたいということでございますので、一応の事情聴取をいたしたところでまた漁場のほうに出てまいっております。この船が帰りますのは六月二日でございまして、新潟港に帰ることになっております。そのときになお詳しい事情を聴取するということにいたしているのでございます。  いままでわかっております事情は、ただいま申し上げたようなことでございます。
  77. 淡谷悠藏

    淡谷委員 重ねてお尋ねいたしますが、この船長が連行され、かつまた追跡を受けたというのは、どういうところに原因があったのか。それからもう一つ、この北緯四十度十五分、さらに東経百二十九度五十七分という位置は、朝鮮の沿岸をどれくらい離れておる地点であるか、お調べになっておりますかどうか。
  78. 岡田京四郎

    ○岡田政府委員 この地点は、距岸大体三十マイル程度のところでございますが、第三政栄丸の船長が北鮮の漁船に臨検を受けましたときに、向こうの船の言い分では、七十海里までが北鮮の領海であるから、それ以上入ってはいけないというふうに言ったということでございます。
  79. 淡谷悠藏

    淡谷委員 水産庁にお聞きいたしますが、との船はサケ・マス漁業の許可証を与えられている船のように聞いておりますが、この許可証の内容を詳しくお話しを願いたい。特に、漁業ができる範囲がどの程度のものであるか、その点々御答弁願いたいと思うのであります。
  80. 丹羽雅次郎

    ○丹羽政府委員 お答えいたします。  日本海小型サケ・マス流し網漁業として許可をいたしております船は二百二隻ございます。許可証の内容といたしましては、青森県の船については青森県地先ということでございますが、海の境目がございませんので、日本海は全部操業して差しつかえないことにいたしております。ただし、日本海は時期を押えておりまして、出漁期間は三月一日から六月十五日まで日本海で操業する、こういう許可証でございます。  それからなお、共同規制水域に出漁いたしております船につきましては、別に共同規制水域の出漁証明書を与えております。それは八十三隻でございますが、これについては、四月の二十五日から五月の三十一日までという条件をつけております。  許可証の面では以上でございますが、運用の問題といたしまして、鬱陵島周辺での操業はトラブルを起こすおそれがありますので、鬱陵島の北三十マイル程度の以北のほうには自分のほうで操業しないという趣旨の自発的な申し出を受け取っておるわけでございます。
  81. 淡谷悠藏

    淡谷委員 この船の所有者に会って聞いてみたんですが、この許可証は三十八度以北となっているということを言っておりますがね。これは変わりありませんか。
  82. 丹羽雅次郎

    ○丹羽政府委員 許可証は、先ほど申しましたとおりでございます。サケ・マス流し網漁業としては日本海全部、それから、共同規制水域の出漁証明書は共同規制水域の全部でございます。ただ、三十八度ということではございませんで、鬱陵島の北という意味におきまして、三十八度十分と記憶しますが、以北において操業をしませんという念書を本人のほうからいただいております。
  83. 淡谷悠藏

    淡谷委員 水産庁長官はこのたびの事件をどういうところから生じた事件とお考えになっておりますか。また許可証の内容にこの船が違反しているのかどうか。その点に対する御認識はどうでございましょうか。
  84. 丹羽雅次郎

    ○丹羽政府委員 許可証の条件には違反いたしておらないと存じます。それから、漁業でございますので、デリケートな海域でございますので、やはり操業上大事をとって操業してもらいたいということで指導いたしておりますが、先ほども海上保安庁からお答えしましたとおり、今回の事件の発生いたしました地点は距岸三十八ないし三十九マイルの地点でございます。したがいまして、操業上におきましても船については粗漏はなかった、かように存じます。  それから、事件の実態が、向こうの取り締まり船ではどうもないようでございまして、漁船のようでございます。向こうの漁船との一種の紛争とも考えられる面がございます。  結論的に申しまして、今回の操業は私どもの許可証並びに指導に違反しているとは思いません。実態はどうかといえば、向こうの漁船とこちらの漁船との間のやはり一種のトラブル、かように存じます。
  85. 淡谷悠藏

    淡谷委員 従来この種の事件が発生したことがあるかどうか。また、許可証の規定にそむいていない漁業をやりながら非常なあぶない目にあっているということは、将来における安全操業の上からも非常に重要なことだと思うのであります。特に詳しくこの船主について聞いてみましたら、逃げる場合も全くすれすれのところで逃げているようです。最初は、つかまえられるはずがないと思ったので、船長に呼び出しがかかっても何の不安もなく向こうの船に移った。しかし、移ってから、領海の七十マイルを主張するし、それからさまざまな無理があったらしいので、何かの合い図をしまして、こっちの船が衝突するようなところまで行って、危うく接舷して飛び乗ったというようなことを言っているのであります。そうしますと、許可証をもらいましても、実にその点では安心して操業ができない。何らかこの事件を契機に安全操業の手を打たれるのが当然と思うのでありまするが、それができますか、できませんか。これはあとで外務大臣にお聞きしますけれども、水産庁長官としての御意見をまず伺っておきたいと思います。
  86. 丹羽雅次郎

    ○丹羽政府委員 北鮮との関係におきましては、実は昭和三十八年以来拿捕その他の事件が一件も起きておりません。私どもとしましては、やはり漁業間で非常な刺激を与えるということは望ましくないということで、操業上向こうの船との同じような漁場での操業というようなものは極力避けるようにという指導をやってまいっておりまして、今日までなかったわけでございます。今回の事件につきましては、先ほど海上保安庁からも答弁がございましたように、私のほうの漁業取り締まり船からの電報は入っておりますが、なお帰りました際によく事情を調査したい。この事件のために急遽帰らせるということも、サケでございますので、盛漁期を失うのもやっていられる方々にお気の毒だと思いますので、操業を続けたいと言われるならば帰ってから調べたい、かように存じます。  今後の安全操業の問題でございますが、申すまでもなく北鮮との間は国交関係がございませんので、非常に処理がむずかしいと思うわけでございますが、今後外務省ともよく相談をいたしまして検討させていただきたい、かように思います。
  87. 淡谷悠藏

    淡谷委員 問題は、農林省が出した許可証の内容に全然違反せずして、生命にも及ぶような危険なことになっている。ここにも重点があると思うのであります。これは御承知のとおり領海の規定というのは非常にむずかしいのですが、船主のほうでは、沿岸から七十マイルを領海だと主張されたと言っておられますが、さっきの長官の御答弁では七十海里になっている。これはかなり違いがあるのですね。これは船が来てからお調べになるでありましょうが、七十海里にしましても、七十マイルにしましても、こういう領海の事例があったかどうか、十二海里くらいまでは聞いていますけれども、七十海里を領海として主張するというのは、これは単なる漁船の放言であるか、あるいは北鮮側の言い分であるのか、これはひとつ外務大臣からお聞きしたいと思うのであります。
  88. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 北鮮の当局がそういうことを言っているということは承知いたしておりません。
  89. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これまで漁業協定について北鮮側と何らかの交渉があったのでございますか。
  90. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 何らの接触もございません。
  91. 淡谷悠藏

    淡谷委員 従来こういう例がなかったといま水産庁長官も言っておりますが、今後こういうふうな事例が起こるおそれがあるとお感じになっておりますか、全然ないと思われますか。当事国との間に漁業協定が結ばれないで水産庁の見解で許可証などを出しますと、正直な漁師は、お役所の許可証ですから、それさえ守っていれば安全操業ができると思っている。それがこういうふうな銃撃を受けるような事件が起こりますと、この水域は大体北海道、青森、秋田、山形、それから新潟ですか、石川、富山といったような一道六県にわたる大きな水域なんでございまして、今後の操業に非常な不安なり、また万一起こった場合には取り返しのつかない事態になると思うのでありますが、大臣、これに対してどういう御見解をお持ちでございますか、はっきり御答弁願いたいと思うのであります。
  92. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 まあかようなことが再び起こり得ないということは言えないと思います。今回の相手の船がどうも北鮮の公の船でなしに、向こうの漁船である。それがかってにかような乱暴をして、そして七十海里を領海ということを話したということは、何ら向こうの――そのこと自体が国際法上合う合わぬの問題を離れて、無責任な一方的な放言であるということもあるいは言えるのではないかと思うのであります。これらの今度の事例にかんがみまして、今後の対策としては、国交のない北鮮の政権でございますので、政府間においてこの防止策というものをとることは不可能な状態でございますが、両者の間の民間同士の間の話し合いによって一応の秩序を立てるということは不可能な問題ではないと考えております。なおよく研究してみたいと考えます。
  93. 淡谷悠藏

    淡谷委員 民間同士で話をつけるというのですが、一体できますか。政府間の話し合いがない間にどこを相手に一体交渉を進めるつもりなんですか。それから、二十日の事件ですからもう大体一週間近くなろうとしておりますが、その間外務省としては何らかの手を打たれたのかどうか、この点などもはっきりさせておきたいと思うのであります。
  94. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 今回の事件は、何ら根拠のない一つの偶発的な事件のようにも思われる。よくその点を確かめてみなければならぬと思いますが、国交がなくても、たとえば中共と日本の漁業者との間においては一応の取りきめが行なわれておるというように、一応の秩序を立てるということは必ずしも不可能ではない、こう考えております。
  95. 淡谷悠藏

    淡谷委員 従来なかったような事件が起こったというのは、例の日韓条約の締結に際して北鮮のほうが非常に不満だったということも伝わっております。したがって、こういう事件の出ないためにも、早急に北朝鮮側とも何らかの国交を回復するような御意思があるのかないのか、これは非常に重大な問題でございます。これは大臣としては当然そういう手をとられるのが正しい道だと思いますが、いかがでございますか。
  96. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ただいまそういう考え方は持っておりません。
  97. 淡谷悠藏

    淡谷委員 きょうは関連でございますので長くは質問いたしませんけれども、今後の日本海の漁業のためには、国交の回復していない国との関連が非常に強いのであります。中国にせよ、北朝鮮にせよ、こういうトラブルが起こるようなおそれが非常にある。いま大臣は北鮮との国交回復を考えていないと言っていますが、これはいずれ席をあらためて御質問いたしますけれども、非常にあぶない考え方だと思うのであります。特にこの船は三十トン以下の船であります。こういう小さい船は拿捕保険さえついていないのです。万一こういう事件が起こりましたら、全部の漁民に対して大きな不安を与え、また日本の精神上にも物質上にも多大な損害を与えることだと思うのでございまして、水産庁あるいは農林省だけでは解決のつかない問題でございますので、外務大臣としてもその点は慎重に、あなたの好きなことばで言えば、前向きの姿勢で外務省としてもお取り組みを願いたいと思うのです。  海上保安庁のほうにさらに伺っておきますが、今後の出漁に対して、この種の事件に対する不安はございませんか。もしあった場合には一体どうなさるおつもりですか。
  98. 岡田京四郎

    ○岡田政府委員 今度のような事件がございましたので、漁船に対しては注意をしてもらうということで考えておりますが、特別にどこまで出たらいけない、こういうことにつきましては、よく水産庁のほうとも今後協議いたしまして、指導の点で十分な措置をはかりたいというふうに考えております。
  99. 淡谷悠藏

    淡谷委員 お聞きのとおり、これは今後の出漁に対して非常に不安の多いケースなのであります。水産庁としては許可証を出したが、許可証を守っておる漁船がこういう目にあっている。外務省としてもいまのところ朝鮮の政府とは何らの交渉の余地もない。民間団体で何とかしなければならない。これまたおぼつかない話です。海上保安庁のほうでも非常にむずかしい取り締まりあるいは注意ということになっているらしい。これで一体安全操業ということが望めますか。大臣、この点についてもう少し愛情のある措置がとられてもいいと私は思います。実際に不安な海上で、不安な情勢のままで漁をする漁師の気持ちにもなってもらいたい。そういうふうな不安な状態のままに捨てておいていいという態度は、政府としては許しがたい態度であると私は思うが、どうお考えでございますか。これは真剣に考えているのです。私は青森の県庁にも行って聞いてきましたが、どうしていいかわからない。いま質問してみて、御答弁を聞いて、これじゃ県でもあるいは海上保安庁の配下にある保安部でも、むろん現地は非常な不安を持っておること、これは事実なのでありまして、どう打開されるつもりですか。それだけは、現にまだ出漁していることですから、はっきりした御決意のほどを伺っておきませんと、ちょっと引けないのであります。
  100. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 北鮮の政権のほうで何らかの公権力の行使として行なった行為によりまして、日本の漁船なり乗り組み員が被害を受けたというような事件でございましたら、たとえ政府間では現在の状況では協定等ができないにいたしましても、先ほど大臣から御答弁がありましたように、民間ででも何か取りきめていただくということもその救済策になるかと思いますが、今度の事件のように、北鮮に属する一、二の漁船が、いわば一種の海賊行為的なことを突発的にやったというわけでございまして、これは日本の漁船に対して非常に不安感を与えることは事実でございましょうけれども、いかなる政府間のレベル、民間間のレベルでも、規制することによって救済できる問題ではないんじゃないか、ざっくばらんに言えば、日本側の保護の措置を強化する以外に手はないような事例ではなかろうか、かように今度の事件については考えるわけでございます。
  101. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは重大な発言を聞いた。海賊行為的だと言うのですが、海賦行為だと認定し、断定するような、もしくはこれを証明するような何らかの情報があるのですか。これは重大な発言だと思います。もし海賊行為であるならば、これはとるべき手段があるのじゃないですか、海上保安庁がやはり何とかしなければならない。これはどういう根拠があってそう言われるのですか。
  102. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 国際法上、私有の船舶というものは、ほかの国の船舶に対して暴力とかあるいは抑留とかいうようなことはできないわけでございます。もし、先ほど来伺っていることが事実でございまして、向こうが一漁船にすぎなかった、そういたしまして、それが公海で行なわれたとすれば、公海に関する条約の第十五条、海賊行為とは次の行為をいう。「私有の船舶又は航空機の乗組員又は乗客が私の目的のために行う不法な暴力行為、抑留又は略奪行為」に該当しはしないかと思ったわけでございまして、これは私も事実を確認したわけじゃございませんので、海賊的な行為であろうと申したわけでございます。その趣旨は、つまり北鮮の政権の公権力の行使としてとられた措置のようには伺わなかったという意味で申し上げたつもりでございます。
  103. 淡谷悠藏

    淡谷委員 事実は私からだけじゃなくて、海上保安庁のほうからも報告を受けているのであります。これは明らかに七十マイルあるいは七十海里を領海だという主張をしておることは事実なんです。これはお聞きになっているでしょう。向こうが領海だと誤認、あるいはどういう根拠か知りませんけれども、言っておる場合、その中で行なわれた行為なんです。これも海賊行為になりますか。あなたは公海とこう言う。これは少なくとも国会における答弁ですから、まだ事実を確認しないままに単なる海賊行為である、けしからぬというふうにきめつけられるのは、そうでなくとも悪化しておる北鮮の感情をさらに悪化をさせることは、何らか日本の漁民たちに得になりますか、利益になりますか。これは外務省の御答弁としては、はなはだ不穏当じゃないかと思う。取り消しなさい。
  104. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 私は何も感情を込めて申しておるわけじゃないわけでございまして、ある外国の船に対して公船でないものが強力的な行為を行なったとしたら、これは国際法上の用語といたしましてそういうふうに名づけられておるものでございますから、もしそれが外国の漁船が日本の漁船に行なった行為であるとすればそういうふうに呼ばれておるわけでございまして、何か海賊ということばが普通に使われる意味で、非常に特別の意味合いを込めて申し上げたわけじゃないのでございます。その点御了承いただきたいと思います。
  105. 淡谷悠藏

    淡谷委員 了解はしませんけれども、これは非常に注意すべき発言だと私は思うのであります。  それから、まだこの船が監視船であるか漁船であるかの確認もできていないのですよ。しかも、向こうの主張する七十海里あるいは七十マイルの領海の主張に対して、外務省は交渉すべき手を持っていないじゃないですか。かりに北朝鮮の領海が七十マイルあるいは七十海里ということになれば、いままでの例にはなかったでしょう。しかし一応の主張です。これを政府間の交渉ができないとなれば、この事件に対しては、日本の外務省は全くお手あげであるというふうに断定せざるを得ないのであります。水産庁も今後許可証を出すのに困るじゃないですか。漁民も水産庁の許可証をとれば、これでりっぱに安全操業ができるんだと言っておるのです。許可証を出すときに、きみたちはいつ連行されるかわからないし、いつ拿捕されるかもわからぬ、あるいは銃撃を受けるかわからぬといって出さないでしょう。にもかかわらず、船主は三十八度線以北と聞いたときに非常に不安を感じましたと言っておる。その不安を押して出漁しておるのですから、もう少し漁民の気持ちになってこの問題の解決をはかってもらいたい。  さらに、この第三政栄丸が四月二十二日に北緯三十七度四十七分、東経百三十度二十七分の地点において網五十反を切り去られておる。盗難にあったといっております。それからやはり出漁しておりました第十六宝永丸という船が、四月二十五日に北緯三十八度、東経百三十度四十分の地点において七十反の網を切られておる。ひんぴんとしてこういうふうな問題が起こっております。これに対して全然手が打てない。民間で何とか話をしなければ手が打てない。情けないじゃないですか。もう少し外交なら外交らしく漁民を保護する立場から遂行すべきが義務だと思うのですが、大臣、どうお考えですか。あるいはこのまま出漁しておる船が帰ってくるまでは事態がわからぬと言いますが、事態を確かめた上で何らかの措置をされるかどうか、これは不安を一掃するためにもはっきりした御答弁を願いたい。
  106. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 国交のない北鮮のことでございますので、先ほど申し上げたように、民間同士のある秩序を考える、これがさしあたりの方法ではないかと思いますが、十分に事情を調査いたしまして、これに対する対策を考えたいと思います。
  107. 高瀬傳

    高瀬委員長 淡谷君にちょっと申し上げます。次の質問者が控えておりますので、簡単にひとつお願いいたします。
  108. 淡谷悠藏

    淡谷委員 あと一問で終わります。  私は御答弁を聞いてみますと、こういう事例は今後非常に起こる可能性もあるし、また非常な不安を与える問題だとも思うし、外務省はむろんのこと、海上保安庁も水産庁、農林省も困るじゃないですか。みんな困っておる問題です。それに対してさっき外務大臣の、どうも北朝鮮とは国交を回復する気持ちがないなんという答弁では、これは本日は追及しませんけれども、まことに無責任な、国民を思わざるもはなはだしい外交方針だと思う。どうかすみやかにそういう誤りはお取り消しになって、安心して操業できるような措置を講じてもらいたい。これは水産庁、海上保安庁にもお願いいたしますけれども、この事件の本質をできるだけ早く究明しまして、少なくとも安全操業だけはしたいというこの漁民の悲願にだけは明確にこたえていただきますように、これはほんとうに切望いたしまして、質問を終わります。
  109. 高瀬傳

    高瀬委員長 なお、淡谷君の質問に対し、操業地点について岡田海上保安庁次長より訂正したいという申し出がありますので、これを許します。岡田君。
  110. 岡田京四郎

    ○岡田政府委員 先ほど御説明申し上げました事実の点で、ちょっと不明確な点がございましたので補足をさせていただきたいと思います。  実際に向こうの船に調べられた地点のことは申し上げましたが、操業地点のほうをちょっとはっきり申し上げませんでした。その点について申し上げますと、うちの巡視船が船長から調べましたところ、操業地点は北緯四十度十五分、東経百三十度五十六分のところで操業していたんだ、操業を終わったのだ、こういうふうに申しておりました。それから、実際に調べられた地点は距岸三十八海里でございます。私は先ほど三十海里と申し上げたかと思いますが、三十八海里でございます。その点だけ、ちょっと補足並びに訂正をさせていただきます。
  111. 淡谷悠藏

    淡谷委員 わかりました。
  112. 高瀬傳

    高瀬委員長 帆足計君。
  113. 帆足計

    ○帆足委員 ただいま淡谷委員から、漁民の立場を代表いたしまして、適切な要望並びに質問がありましたが、実はこのことに関連して思い出しますのは、いまから十二、三年前のことです。当時、中国との間に民間の接触がありませんでしたころ、同じような問題が次々と起こりまして、特に当時は朝鮮戦争の最中でございました。私は明らかな証跡をあげることができますが、今次の問題よりもさらにもっと深刻でありまして、アメリカ駐留軍の内命を受けまして、漁船の一部で、天候その他の状況を米軍に諜報するというようなことが歴然として当時行なわれておりました。朝鮮戦争のさ中でありますし、アメリカの駐留軍の支配下の時代でありますから、当時の情勢としてはやむを得なかったこともあったかと思いますけれども、民間の漁船にそういうような強制、強圧が加わって、一そう事を複雑にしていたというような状況があったのでございます。しかし、当時、政府はこの問題にかんがみまして、ただいまの外務大臣の御答弁のように、何とかこれは漁民の保護並びに無用のトラブルを避けたいということで、漁業中央会を中心といたしまして、漁業使節団を構成せしめまして、そして中国の漁業代表との間に、民間同士でこのトラブルを合理的に解決しよう、お互いに無用なことで傷つくことはやめようということで、民間の申し合わせができまして、その後幾たびか懇談を重ねまして、ただいま比較的円滑にまいっておりますことは、外務大臣の御承知のとおりでございます。私はこの事例にかんがみまして、このたびの北朝鮮沿岸の問題につきましても同じように、直ちにこれは政府が存在する国と接触を保つべきでありますけれども、それがどうしても直ちに困難であるとするならば、漁業団体同士の間で話し合いをしておくことは、当時を顧みてやはり適切であると思うのでございます。ただいま外務大臣は、そういう問題の解決については、それでは民間ベースで話し合うという機会も考えようというお話でございましたから、そのように公正妥当な立場から、無用な摩擦を避けようという善意に基づいてそれの研究が行なわれ、また北朝鮮側の民間漁業機関と接触をいたしますような場合に、政府はこれに対しまして適切な御理解を持たれるかどうか。先ほどそういう方法がよかろうという御発言でございましたので、重ねて外務大臣の御答弁を聞かしていただきたいと思います。
  114. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 今回の事件をできるだけ詳細に調べまして、必要があれば、両国の民間漁業団体同士の話し合いによって、一応の解決をつけるようにしたならばよろしかろう、こう考えております。
  115. 帆足計

    ○帆足委員 ただいまの善意のある外務大臣の御答弁は、条約局長答弁と全く異なりまして、私ども満足でございまして、条約局長のように、ただ――これは一属僚官吏でございますからやむを得ないことでございましょうけれども、ただ法律解釈でもって海賊行為ときめつけ、そして保護を強化する――保護を強化することは武力を強化するというような意味にもなるわけでございまして、話し合いを十分にしないで、ただ海上保安庁にしっかり頼むぞというようなことでは、海上保安庁も迷惑でありますし、条約局長としても御発言の手順があまりじょうずでなかったように思うし、誤解を招くおそれがあると思います。したがいまして、ただいまの外務大臣の御答弁のように、民間ベースで話し合うということも事情を調査した上で研究しよう、私はそこから出発することが当然でありまして、そうして海上保安庁というものは、その話し合いと友好のワク内において国民を保護する、これがよい順序でなかろうかと思うのでございます。条約局長に対してはまことに失礼なことを申し上げましたけれども、条約局長もまた、われわれのかんにさわることを申しましたから、これはどうぞ互恵平等の立場から御理解願いたいと思うのでございます。  それから、先ほど戸叶議員から原子力潜水艦のことについて、国民気持ちを代表して外務大臣に要望がありました。特に婦人議員から切々として私どもに訴える、心に響くものもありましたけれども、どうも外務大臣の御答弁は少しそっけないように私は承りました。と申しますのは、このたびもし新聞に伝えられますように、原子力潜水艦が東京湾に参りますと、海上汚染の問題はもとより――その問題は幸いにして今日まで事なきを得ましたとしても、佐世保に比べまして船舶交通の錯綜した場所でございますし、それから東京都に近い、すなわち日本の中央心臓部に近い場所でございますし、また横須賀市長も事を憂えまして、何とか佐世保だけで済ましてもらいたい、レクリエーションなら、スモッグの多い横須賀にいらっしゃらなくてもよいではないかと言うし、そのほかに、昨今の非常に深刻なベトナムの戦乱の渦中でございますから、その戦乱の渦中という政治、社会的状況を背景といたしまして、この際このとき原子力潜水艦が東京都の周辺に入港してまいるということは、私は時を得たものではなかろうと思う。保守党の立場から申しても、また安保を肯定する立場から申して毛、どうも時を得たものでなかろうと思うのでございます。  そこでお尋ねいたしたいのは、もう時間がありませんから一括して申しますと、原子力潜水艦には最近ポラリスすなわち核兵器及び発射装置を載せたまま寄港せられるかどうか。というのは、B52でしたか、ジェット機に核兵器を載せたままスペインの沖合いを巡遊いたしまして、その核兵器が落っこちた事件があるのでございます。最近はこういう飛行機に核兵器を載せたまま走っておるという事例が非常に多い事態でございますから、原子力潜水艦に万一核兵器を載せて停泊されるようなことがあればまことに迷惑でございます。政府はそういうことはないと言いますけれども、日本政府調査権を持っていないかのごとく聞いておりますが、これはただいまの現状でどうなっておりますか。  第二には、停泊期間が非常に長いと、東京湾に新たな基地ができたようなことになるのでございます。したがいまして、レクリエーションでの停泊ならば大体何日以内というふうに外務省ではお考えになっておりましょうか。  それから第三には、わざわざ東京周辺にいまごろおいでになるというのは、重ねてお尋ねしますが、何の目的でおいでになるのか、これを伺いたいと思います。
  116. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 核兵器を持ち込む場合には、責任を持って向こう日本政府に協議するということになっております。一方、これを強制的に日本が取り調べる権利は持っていない。これは各国とも、どこの国にいたしましても、外国の軍艦を臨検するという権利は持っていない。そういうわけでございまして、もっぱらこれはもう信頼の関係である。同盟国であって相手方を信頼できないというならば、同盟は初めからやめたがいい。私はそういうように考えております。  それから期間の問題でありますが、これは北米局長から申させます。  それから、何がゆえに東京周辺でなければならぬのかということでありますが、その前に、東京周辺の横須賀と、佐世保、この二港を指定して、向こうの欲するところに寄港を許しておるのでございまして、東京周辺ということを特に考えておるわけではございません。
  117. 安川壯

    ○安川政府委員 滞在の期間は、従来の実績を申し上げますと、佐世保に八回入っておりますが、一番短い場合が三日間。一番長い場合が九日間。あとは大体その中間でございまして、まあ寄港の目的が補給ということでございますから、大体この三日から九日という範囲内で滞在するのが大体の常識かと思います。
  118. 帆足計

    ○帆足委員 滞在期間が九日以上にわたりまして、かりに一週間以上にわたって二週間もおるということになると、基地ができたような感を抱かせますから、期間についてどういうことに、さらに限界がきまっておりますかどうか。  それからもう一つは、補給と申しますけれども、補給並びに休養、レクリエーションというふうに承っておりますが、補給並びにレクリエーションならば、従来経験のある佐世保で事足りるのではないかと思いますが……。  それから第三には、現にサイゴンでは三十万近くの米軍が上陸いたしまして、サイゴン市は一大売笑窟になっておる、こうフルブライト氏が述べております。さもありなんと思いますが、売春禁令が行なわれておるこの国におきまして、多少の日本国民同士の間では恋愛関係などもあって、長く暮らしておりますといろいろなこともありましょうけれども、一週間、九日間まいりまして、降るアメリカにそではぬらさじでなくて、ぬらすということになりますと、これは衛生上も非常に憂慮すべき問題が発生するわけでございます。これはすでに基地において強く指摘されておることでありまして、特に戦争の最中には心が乱れまして、衛生状況も悪くなりますし、一種の混乱状況の延長がまいりますから、この点については売春禁令その他の、日本の特殊飲食店の法規を米軍に対しても厳重に実施をしておられるかどうか。それらの点をひとつお答え願いたいと思います。
  119. 安川壯

    ○安川政府委員 滞在の期間につきましては、日米間で何日以内あるいは何日以上はしないというような特別の取りきめはございません。ただ先ほども申し上げましたように、目的が目的でございますから、たとえば原子力潜水艦補給と申しましても、原子炉の燃料を取りかえますとか、あるいはオーバーホールをいたしますとか、そういう補給活動はしないことになっておりますから、常識的に見て、そう長期間滞在するということは実際上は私はないと思います。ただ何日以上になってはいかぬというような取りきめはございません。  それからいまの売春関係の法規でございますが、これは当然日本の法規が適用されるものと私は考えております。
  120. 帆足計

    ○帆足委員 最近の風評によりますと、南ベトナムの戦乱の影響で疫病が入ってくるおそれがあるということがいわれておりますし、また悪質の性病の中には、大事な宝物が溶けてしまうような悪質の病気も蔓延する傾向があるということが沖縄からも伝えられております。そういうことに対しまして外務省当局の渉外部におきましては、ひとつ格別の御注意を国民保健上お願いいたしたい。そして基地がちょうどサイゴンのように駐留軍の売笑窟と言われることのないように、これは日米両国のために必要なことですから、そういうことのないように厳重にひとつ衛生上の防疫措置をお願いいたしたいと思うのでございます。  もう一つお尋ねいたしたいことは、最近ベトナム状況はまことに深刻な混乱状況でありまして、仏教徒の反政府運動が起こりますと、御承知のように南ベトナム政府は軍隊を派遣して弾圧しようとしました。それが困難だと見ますと、今度は直ちに選挙をいたす。五カ月以内に、または三カ月以内に選挙をいたすということで反政府デモを緩和しようといたしました。しかしそのデモがちょっと静まりますと、半カ月を経ずして、今後一年間は現政府が政権を担当する、議会による民主政治はそのあとのことである、こう言うて国民を怒らせました。これに対して御承知の仏教徒のチ・クアン師が、キ首相が居すわりを策するならばわれわれは断固として反対する、こういう声明を発しますと、今度は突如軍隊と警察力によりまして北方の都市を弾圧いたしておりますこと、御承知のとおりであります。いまやそれがはね返りまして、サイゴンの町は物情騒然たる状況になっておること、御承知のとおりでございます。当然アメリカはこの際自分の過去のやり方の誤りを反省いたしまして、そしてジュネーブ会議に戻るべきだと私は思います。日本政府としても、隣国の近所のことでございますから、かつてモスクワに参りまして、そしてベトナム問題について和平のことにあっせんできるならば何か任務を果たしてもいいというような意味のことが日本政府の善意であることが新聞に伝えられましたけれども、一方米軍に加担し、各種の軍需関係物資を南に送りながら、他方そういう意図を漏らされることは、まあ第三国から見ると鬼の念仏のようにとられはしないかというような感も強かったのでございますけれども、事ここに至りましては、日本政府としてはやはりジュネーブ会議の基本に戻れというくらいの発言があってしかるべきだと思います。外務大臣立場は非常に困難かつ苦痛に満ちたものであろうと思いますけれども、どのようにお考えでしょうか。ライシャワー大使も近く交代すると伝えられておるような深刻な状況を前に、日本政府としてはもう少しベトナムの平和に対してはっきりした態度をおとりになることを私どもは希望するのでございますが、御意見のほどをお聞かせ願いたいと思います。
  121. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 結局何べんも申し上げるとおり、一方的に解決はできないのでありまして、両方とも武器を置いて終局的な和平の話し合いに入る、これが問題解決のかぎであります。一方的にアメリカだけが撤退すべしということは問題の解決にはならない。  それからジュネーブ協定に帰るべし。ジュネーブ協定は御承知のとおり数項目書いてある。そして自分の都合のいいところだけをつかまえてこっちが言えば向こうも言うということを言うておりますが、あのジュネーブ協定の根本に流れる一貫した思想は、政治的な目的を達成するために力で抑圧をするということはよくないという精神だろうと思います。そういう基本的な精神に立ち返って和平の話し合いに入るということは、日本がかねて機会あるごとに唱えてきておるところでございます。今後もそういう適切な機会があれば、日本はこの主張をするつもりでございます。
  122. 帆足計

    ○帆足委員 外務大臣の御説明にもかかわらず、外務大臣よりもっと深くアメリカ国内の事情を知っておるフルブライト外交委員長は、ジュネーブ協定を最初に破壊したのは実はアメリカ自身であった、そしてゴ・ジン・ジエム首相をそそのかし、ジュネーブ協定に反対させ、途中で混乱が起こってジュネーブ協定の暗殺に手をかしたのもアメリカ政府部内の一部であった、こうまでフルブライト外交委員長が申しておるのでございます。それらのことを勘案いたしますと、外務大臣の前半の御説明に私は納得いかないのですけれども、後半のジュネーブ協定の平和の路線に日本政府は賛成するということを、おことばだけでなくて実行において示される方向に前進することを私どもは切に要望する次第でございます。  実は、きょうは、北海道の北において起こりました漁船の問題と、それから上海の沖合いでありました例の漁船の問題につきまして、両方御注意を促したいと思ったのですが、一言だけ申しますと、それは北につきましては私は稚内に参りました。稚内でソビエトの漁船が難破いたしましたときに稚内の病院であらゆる看護をいたしまして、多くのソビエト市民に感謝されたという美談がたくさんございます。また、間宮林蔵があそこから脱出した場所でございますから、南樺太は指呼の間に見えますが、日本の漁船が潮流に乗せられて悪意なく善意で領海を越えまして、あるいは難破し、その他の事件が起こりまして、大泊、豊原等のソ連の病院で非常に手厚い看護を受けてこちらへ帰ったという美談も多いのでございます。またその間、海上保安庁の皆さんも緩急よろしく事に処して、いろいろ問題が起こりましても、延髄、小脳を興奮させることなく、大脳で冷静に事に処したという例もたくさん聞きました。このたびの事件はそういう美談の中における一つの遺憾な事件でありまして、ソ連の下級官僚に一種の官僚主義がありまして、船が衝突して数名の人が遭難いたしましたことを責任のがれのために通知しなかったということがあったとするならば、たくさんの美談の中の一つの遺憾なこととして、やはり厳重にソビエトの注意を促すことが私は適当であると思います。同時に実情をよく調べまして、一小事件であるとするならば、今後を戒めまして、二度とこういうようなことの起こらないように互いに戒心して、しかし言うべきことはやはり言うということがわれわれソ連に対しても中国に対しましても、野党たる社会党の立場から申しましても、どこの国に対しても自主的に対処せねばならぬ。敷島のやまとの国の野党であり、敷島のやまとの国の与党でありますから、やはり自主性と自尊心は失いたくないものと思っておる次第であります。しかし、こういうトラブルが起きましたときに、他方幾多の美談があるということもよく御勘案くださって、安っぽく興奮することのないように、交渉委員はビタミンのBとCを十分召し上がって、交渉なさることが外交上必要であろうと思います。  中国沖合いの問題につきましては、船員諸君は非常な優遇を受けて帰ってきた。ただ中国は文章の国であります。同時に教育の国でありますから、その文章、パンフレットを読んで、中国の制度がりっぱになっていることに大いに感激して、それを語って一部にショックを与えたと伝えておりますが、これは中国の出しております文章はたいへんりっぱでありますから、従来思っておった中国と違うということであろうと私は思っております。ただ船長が自殺した問題につきましては、実は私は十三年前にこの漁業の問題で折衝をいたしましたときに、やはり幾つかのスパイ事件が実際にあったのでございます。したがいまして、今次の問題にスパイ事件が関連しているといたしますと、罪なきかよわき船長や一等機関士が死に、そういう特殊の命令を与えるような暗い機関があるとするならば遺憾なことでございますから、そういうことが以後ないように気をつけていただきたいし、また誤解であるとするならば誤解を解くように漁業団体相互の間で今後とも接触が続けられるいい関係になっておりますから、中国に対しまして特に漁業団体同士で十分に話し合いをしてもらいたいと思う次第であります。しかしスパイ事件が過去においてあったことは深刻ながら事実であって、(発言する者あり)――私は鯨岡さんにお話をしてもけっこうです。ひた隠しに隠されておりました当時――当時は米軍進駐下でありますから、私はやむを得ず口をつぐんでおりましたけれども、そういうこともありました。したがいまして、こちらもそういう汚点がないとは私は言えないと思っております。あえて政府の御答弁を伺って水かけ論をするには、わが委員会の与えられた時間も短か過ぎますから……。  最後に、横山特使という方が――実は一向御経歴等を存じない方ですが、政府の特命を受けてベトナム問題に対してあっせんにつとめたというふうな新聞記事を読みました。私は横山さんという方の御経歴も存じません。しかし外務委員といたしまして、ただ新聞の端でちょいちょいそれを、まるで辻参謀が南ベトナムにときどき隠顕された、隠れたり影を見せられたと同じような形で横山特使がうろちょろされたという記事につきましては、どうも納得いたしかねるものの一人でございます。どういう事情かわかりませんでこういうことを申し上げますことも失礼でございますから、あえて事実を知らない批判は差し控えますけれども、あちらこちらお歩きになって、そして、南ベトナムの人に接触したとか、どこやらで北ベトナムの代表に接触したとかというような思わせぶりのことを言われておりますが、発表なさるならばちゃんとしたものを発表なさるし、発表しないなら、沈黙は金なりの格言を守られたほうがよくはあるまいか。外務大臣と特別の御関係で、どういう資格でどういうふうな任務を帯びてあちらこちらお歩きになって、どういう報告書を出されたか、ひとつその要点だけでも伺います。まるでさまよえるオランダ人のごとく、あちらこちらを歩かれた大使がおる。しかもその人自身、われわれあまり耳にしたことのない人物であって、学識、教養、学歴、経歴、識見、どういう方であるかということを知らないものですから、無知なる者は不安を感ずる。こういうことで、多少与野党を問わず、この問題にはあまり愉快な思いをしておりません。すなわち、よくわからないものですから、つい不安を感じておる実情でございます。したがいまして、この際、外務大臣からひとつその概要だけお伺いいたしたい。きょうの質問は以上で打ち切りますから、ひとつお知らせを願いたい。
  123. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 横山大使は外務省の大先輩でございまして、外交官としても相当なベテランでございまして、ただいまは現役を退いております。インドシナ関係では特別の知識を持っておる人でありまして、フランスを中心にしてヨーロッパ、中近東及び東南アジアを歴訪いたしまして、そしてベトナム問題の解決の糸口を探求する、その素材を提供する、こういう意味で、いろいろな立場のいろいろな人に会って会談をして帰ったのでありまして、この詳細についてはいまのところは申し上げることはできません。これは現時点においていろいろな立場のいろいろな国の人々がどういう考えを持っておるかということを知るだけでも、私は非常に貴重な資料であると考えております。まあ考え方はいろいろありまして、もちろん同じようなものではありません。しかし、各国の首脳その他野にある人でもベトナム問題に関する和平実現に対しては非常に大きな関心を持って、それを中心にいろいろな意見を聞いてきたようであります。しかし、概して、紛争のいまの時点における早期解決はきわめて困難であるというのが大体の結論であるようであります。  それから、東欧の共産圏諸国は、これはもちろんまた特殊な見方をしておるのでありまして、一様に北越ベトコンの立場を支持するというのが共通の意見であった。これは当然のことであります。しかしそれにしても、いろいろ人によって、あるいは所属する国によって幾らかずつでもニュアンスが違う、こういうようであります。  大体一口に申し上げますと以上のとおりであります。
  124. 帆足計

    ○帆足委員 最後に、その横山大使という方は、どういう正式の資格であちらこちら御調査に参ったわけですか。
  125. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 横山特使、こう言っておりますが、正確に言いますと外務省顧問として、そうして出張中は大使の名称を使ってよろしい、こういう資格であります。
  126. 帆足計

    ○帆足委員 特命全権大使というわけですか。
  127. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 そうではない。
  128. 高瀬傳

    高瀬委員長 午後一時三十分に再開することとし、この際休憩いたします。    午後零時四十六分休憩      ――――◇―――――    午後一時五十分開議
  129. 高瀬傳

    高瀬委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  アジア開発銀行を設立する協定の締結について承認を求めるの件を議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。西村関一君。
  130. 西村関一

    ○西村(関)委員 アジア開発銀行の質問に入ります前に、午前中の原潜寄港に対する戸叶、帆足両委員の質問に対する外務大臣の御答弁が私は意に満たないところがありましたので、この点やはりアジアの問題に非常に関係がございますから、一言だけ触れて、本論に入りたいと思うのであります。  外務大臣は、アメリカ原子力潜水艦寄港の問題に対する質疑について、これは何ら国益に反しないというふうにいとも簡単にお答えになっておられたのであります。そしてまた国民も数度のアメリカ原子力潜水艦入港に対してもうなれてきておる、何ら心配をしていない、大多数の国民心配をしていないというような御答弁でございましたが、当初この原子力潜水艦入港につきましては国論が非常に沸騰をいたしまして、本院におきましても、湯川秀樹博士をはじめ有力な原子科学者を参考人として、意見を聴取したりなどいたしましたし、また科学技術振興特別委員会では、与野党一致いたしまして決議をしたこともあるのでございます。いろいろないきさつがあるのでございまして、そう簡単に何ら心配するところがないのだということには、私はそういう外務大臣のお考えでは、これは国民は納得しないと思うのであります。先ほど戸叶委員の御質問の中には、軍事上の見地からの御質問もあったのでございますが、そればかりでなしに、科学者の心配いたしておりまするところの原子力潜水艦の持つ性能から安全性の問題についての心配がなお残っておると思うのでございまして、特に人口樹密な都会地周辺に入港するということは、アメリカ原子力潜水艦の父といわれておるところのリッコーバー海軍中将でさえも、それはできるだけ避けるべきだ、こういうことをアメリカ原子力委員会の聴聞会で言っているのであります。しかし国防上どうしても必要がある場合には入港を認めるべきであるけれども、人口稠密な都会の近くには危険があるからできるだけ入港さすべきではないということを言っておりますし、さらに、これも当初国会において問題になったのでございますが、原子力委員会におけるいろいろな議論の経過もありましたが、結局日本原子力委員会はこれをとめるべきだという結論を出さなかったけれども、一九五八年、アメリカ原子力潜水艦スケート号がコペンハーゲンに入港を申し込んだときに、デーマーク政府は、同国の原子力委員会の勧告をいれまして、これを断わったというような事実もあるのでございまして、そういう点からもやはり全然危険がないということは言えないと思うのでございます。特に普通の原子力商船と違って原子力潜水艦でありますから、かなり構造上の無理をして原子炉を使っておるということから考えましても、もし万一東京湾において衝突事故でも起こったならば、東京湾は半永久的に使えなくなるというような事態さえ考えられるのでありまして、横須賀入港ということについては、政府は非常に慎重に考えなければならぬ点があると思うのでございます。日米安保条約のたてまえから、第七艦隊に所属しておるところのアメリカ原子力潜水艦が特に核兵器を装備してないということをアメリカが言っている。それを日本政府は信用して、核兵器んを積でいるものは入れないけれども、積んでないならばこれを入れることは差しつかえない、こういう日本政府の基本的な態度、それは一応政府としてはそうおっしゃることはわかるのでありますけれども、しかし多数の国民がそういう安全性の問題から心配している。もちろん午前中、戸叶委員の質問されました戦争の危険、報復爆撃を受ける危険ということも非常に大きな問題でございますけれども、そういうことから考えても、外務大臣はやはり慎重に考えてもらいたい。きわめて事もなげに、何でもないことだ、国民も安心しているし、心配も何もしておらぬ、こういうような言い方をなさることは私は少し軽率じゃないかと思うのでございまして、この点外務大臣の慎重な御配慮を願いたいということを私は要望するものでございます。この点につきまして初めに伺って、本論に入りたいと思います。
  131. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 原子力潜水艦入港を認めるかどうかということは、海水汚染の面から安全性ありやいなやの問題が最も大き点でございます。この問題につきましては、日本といたしましてもすでに佐世保で数回経験をしておる。海水汚染の危険はないものと認定をいたしまして、自来数回にわたってアメリカの原潜が佐世保入港しておるのであります。かりに横須賀になりましても問題は同じでございます。その点に関しましては、この二港のうちいつどちらの港に入ってきてもだいじょうぶなように、十分に事前調査をしておる次第でございます。  それから、コペンハーゲンにかつて原子力商船が入港を拒否せられたことがありますが、その後原子力商船、原子力推進力とする船の入港については非常に一般化しておりまして、かようなことはコペンハーゲンにおいても再び起こらないのではないか、こう考えております。港の大きさからいいましても、コペンハーゲンは非常に小さな港であります。横須賀はその港の規模から申しましても、またその港の性格からいっても、そう船舶がふくそうしておらない、東京の周辺だからといって必ずしもそう込み合っておらない、そういう事情にございますので、この両面につきまして私は支障ないものと認めておる次第でございます。
  132. 西村関一

    ○西村(関)委員 政府は確信を持って支障がないという見解をとっておられるから、一応外務大臣の言明を信頼するほかないと思うのでございますが、しかし、多数の国民心配しており、そしてまた事故も皆無であるということはだれも断言できないと思うのであります。そういう点は、少なくとも政府としてはそういう十分な配慮をしながら、しかし日米安保条約上、入港を二十四時間前に申し入れてきた場合には許可せざるを得ない、こういう態度をとられるならば、これは、われわれは反対ですけれども、政府としてはそういうようなことを言われてもやむを得ないのじゃないかと思いますが、しかし、あまりにも事もなげに、あたりまえのことだと言わぬばかりに取り扱われるということに対しては、国民は納得をしないという点から、私はあえてこういうことを伺ったのであります。これ以上の御答弁をこの問題について求めないことにいたしまして、直ちに本論に入りたいと思います。  まず第一の点につきましては、アジア開発銀行の運営方法の問題についてであります。貸し付けば、特定の一国というよりは、数カ国を一丸とした地域主義をとるというふうにいわれておりますが、これはまだ具体的にどういう地域をさしているかということがきめられておるわけではないと思いますけれども、かりに想定するならば、数カ国を一丸として地域主義をとっていこう、こういう方針になっている、それは一体どこをさしているのだろうか。たとえば、メコン川の開発をさしているのであるかどうか、そういうような点について何か具体的なお考えがおありであれば伺っておきたいと思います。
  133. 大和田渉

    ○大和田説明員 この銀行の融資、貸し付けを行ないます対象としまして具体的にどういうプロジェクトを考えるかという御質問と了解いたしますが、御承知のように、この銀行そのものは地域的な開発、バランスのとれた経済発展というものを目的としておるということは協定第一条からも出てまいるのでございます。ただ、実際に貸し付けを行ないます際に、そういう多国間にまたがるプロジェクトに直接という場合もございますでしょうし、あるいは個々の国に対して、あるいはその国の下部機関に対して行なうという場合もあり得るわけでございます。ただ、銀行が貸し付けを行ないます際に、特定の国のみを重視するという式のことは避けなければならない、あくまでこの地域内のバランスのとれた、調和のとれた開発というものが目的にならなければならない、こういうことでございます。実際に銀行が発足いたしまして、貸し付けという問題が起きてまいりますけれども、その際どういうプロジェクトについてどういう申請が行なわれるかという点は、いま先生がおっしゃいましたたとえばメコン川下流の開発計画という式な数カ国にまたがるようなプロジェクトについて共同で申請するということもあり得るわけでございますし、あるいはそういう共同のプロジェクトであっても個々の国が申請するということもあり得るわけでございます。ただ、銀行として考える場合にバランスということを考えなくちゃならない、こういうような考え方になっております。
  134. 西村関一

    ○西村(関)委員 そのバランスを考えてまいりまする場合に、たとえばの話でございますが、いまのメコン川の下流の開発に対するプロジェクトが出てきた場合に、メコン開発調整委員会との関係はどうなるのでございましょうか。そしてまたこれに対する日本の役割りはどういう役割りを持つのでございましょうか。
  135. 星文七

    ○星政府委員 これは将来の問題でございますが、おそらく、そういう場合には、アジア開発銀行としてはメコン開発委員会と密接な関係をとって事業を進めていくということになるのではないかというふうに想像しております。
  136. 西村関一

    ○西村(関)委員 メコン開発事業は非常に大きな事業だと私は思うのでございまして、またこれが東南アジア特にインドシナ諸国の経済、社会の事情を一変するような大きな画期的な事業になると思うのでございます。それだけにわが日本としてもこれに積極的な協力をしていかなければならぬと思うのでございますが、もしこのアジア開発銀行が融資を行なうということになる場合に、十億ドルの資本金ではあまりにも少な過ぎやしないだろうか。ほかのこともたくさんやらなければならないのでありますが、そういう非常に大きな事業であり重要な事業であるだけに、もしそのことに取りかかるということになれば、この十億ドルという資本金はきわめて少ないという感じがいたしますが、いかがでしょうか。
  137. 大和田渉

    ○大和田説明員 お説のとおり、十億ドルでもちろん十分であるとは考えられません新ただ、この地域の開発のためにこの銀行だけが活動しているのではなくて、銀行の規定にも、ほかの経済開発計画と協力する、あるいはほかの国際機関と協力するという規定もございます。  ただ、授権資本十億ドルは確かにそのとおりでございますが、この銀行には、御承知のように、特別基金、信託金のような制度がございまして、この銀行の十億ドルの授権資本とは別個に、銀行とその受託国との契約によりまして資金を獲得できるということも規定されております。それから、さらに銀行が具体的には借り入れを行なうあるいは銀行債を発行して資金を調達するというようなことも考えております。したがいまして、十億ドルで十分であるとはもちろん申しませんですが、十億ドルに限定されることなく、この銀行は活動資金を調達し得る仕組みになっております。
  138. 西村関一

    ○西村(関)委員 融資の対象となるべき事業でありますが、それは水利とか工業、農業、自然資源の開発ということに向けられておるというふうに承知いたしておりますが、域内貿易の振興についての金融と申しますか、こういう点についてのバランスはどうなっておりますでしょうか。
  139. 堀込聡夫

    ○堀込説明員 アジア開銀の協定上は、銀行の融資は特定の事業計画に対してやるというふうな表現がございまして、主として特定の開発事業というものが貸し付けの対象になると考えますので、そういう特定の開発事業を主体としたものに金を貸すという形になろうかと思います。
  140. 西村関一

    ○西村(関)委員 その開発という事業の内容の中に、域内資本財の輸出に対する中期の延べ払い金融、こういうものは入らないかどうか。低開発国の非常に要求しているところは、資本、技術の援助もさることながら、やはり貿易の振興ということに漸次その重点が指向されてきておるときに、この銀行はそういう方面には全然見向きもしないのかどうか、そういうことを伺っているのであります。
  141. 堀込聡夫

    ○堀込説明員 このアジア開銀の協定によります特定の事業計画といいますのは、従来のこういった条文の解釈といたしましては、特定の開発事業という性格を通常常識的にいっておりますので、低開発国の資本財輸出のための輸出資金の供給というふうな貸し付け事業は、通常の概念では入らないのではないかというふうに考えます。
  142. 西村関一

    ○西村(関)委員 低開発国の経済の近代化ということを考える場合には、特定の開発事業というものを援助するということも非常に大事でございますが、と同時に、これは国連の貿易会議の決議を見ましても、貿易の振興ということがこれらの域内諸国の強い要望である。そういうものが全然除外されるということは、私はこの銀行の性格からいっても少し片手落ちと言ってはなんですが、やはりその要望に十分にこたえてないというような気がするのですが、そういう議論はいままでの過程においてなかったのでしょうか、どうでしょうか。
  143. 堀込聡夫

    ○堀込説明員 一昨年の専門家委員会の段階からいろいろ議論がございましたが、私ども聞いている範囲におきましては、そういった問題を当銀行の融資対象にしようという具体的な提案が、いずれの国からも出たというふうには聞いておりません。そういったいわゆる輸出金融、輸出延べ払い金融といったような性格のものは、後進国の輸出産業の振興上必要であるということはお説のとおりでございますけれども、一般的に後進国の開発資金というものに対してより多くの金を供給するということにより、全般に後進国の開発資金をより多くするというふうな方向で問題が考えられているのではないかというふうに考えます。
  144. 西村関一

    ○西村(関)委員 それはわかりました。  そういたしますと、その具体的な開発計画については、いま私は若干の具体的な事業をあげましたが、それらのほかにどういうことが考えられておりますか。私はいま水利、工業、農業、自然資源の開発ということばを申し上げましたが、それ以外にどういう事業が考えられておりましょうか。
  145. 堀込聡夫

    ○堀込説明員 アジア開銀ができまして運用の方針その他が考えられていくことでございますので、想定の域を出ないわけでございますが、同じような性格のものといたしまして世銀がございます。あるいは米州の地域銀行でございます米州開発銀行がございますが、そういったようなところの過去におきます貸し付けの実績を見てまいりますと、やはり電力等の基礎部門でありますとか、あるいは運輸、通信等の基礎部門でございますとか、そういったようなものがかなり大きい部分を占めておるように数字的には出ております。そのほか製造工業、そういったようなものもございます。そういったような過去の世銀ないし米州開発銀行等の例を見ますと、アジア開銀の運営も、現実問題としてはおそらくそういったような方向で展開されるというふうに想像されるわけでございます。
  146. 西村関一

    ○西村(関)委員 道路とか鉄道とかは対象に入っておりますか。
  147. 堀込聡夫

    ○堀込説明員 IDBの例はちょっと詳しくは存じませんが、世銀等の例で見ますと、もちろん道路、鉄道等は入っております。
  148. 西村関一

    ○西村(関)委員 もちろんこれは経済開発ということが主眼としてなされる融資であります。私は先般の本会議における質問におきましても触れたのでございますが、当初の銀行側の考え方も、また融資を受ける側の考え方も、全く経済開発という点から出たことでありましても、結果から見ると、それがいま東南アジアにおけるところの東西の関係あるいは南北の関係でいろいろ紛争が起こっている、そのどちらかの一方を利するというような結果にならないかという心配をあえてするものであります。そういうことになったんでは、これはやはり本来のこの銀行を設立する趣旨と相反する結果になると思いますが、そういう点についてよほどの注意が払われなければいけないと思うのでございます。これは私の杞憂であれば幸いだと思いますけれども、しかし一応国会でこの協定の批准を求められておりまする際でございますから、そういう点についてはひとつはっきり外務当局の御見解を聞いておきたい、こう思うわけでございます。
  149. 星文七

    ○星政府委員 協定の第三十六条に、「政治活動の禁止及び銀行の国際的性格」という条がございます。第一項に、「銀行は、銀行の目的又は任務を阻害し、制限し、ゆがめ、又はその他の方法で変更するおそれのある貸付け又は援助を受け入れてはならない。」二項に、「銀行、総裁、副総裁並びに役員及び職員は、いずれの加盟国の政治問題にも干渉してはならず、また、いずれかの決定を行なうにあたっては、関係加盟国の政治的性格によって影響されてはならない。その決定は、経済上の考慮のみに基づいて行なわれなければならない。これらの経済上の考慮は、銀行の目的及び任務を達成し、かつ、遂行するため、公平に比較衡量を加えられるものとする。」こういう字句がございます。したがいまして、運営上いま先生のおっしゃったような懸念というものはおそらく私は起こってこないのじゃないかというふうに考えております。
  150. 西村関一

    ○西村(関)委員 表向きはそのとおりで、少し心配し過ぎるというふうに言われるかもわかりませんが、いまアジアの情勢は非常に複雑、微妙な段階にありますから、あえてそういうことを伺ったのであります。  特に先ほどの御答弁では、道路も融資の対象になるというお話でございましたが、私の承知しているところでは、本銀行の融資対象の中には道路とか教育施設は入っていないように聞いておったんです。ただ農耕、工業のプロジェクトに限る、多角的な経済協力に役立つものであるというふうに私は承知しておったのですが、その点どちらが正しいのでしょうか。
  151. 堀込聡夫

    ○堀込説明員 銀行の運営の原則に償還の確実性ということがかなりうたわれておりますので、やはり融資の性格といたしまして、道路と採算性というような点がいろいろ問題になり、検討される問題はあろうかと思いますけれども、開発効果の高い道路でありますれば、当然融資対象になるというふうに考えられます。
  152. 西村関一

    ○西村(関)委員 道路が対象になるということになると、これが軍用に使われるという場合も当然考えられる。紛争がなければ、それは全然問題ないですけれども、そういうことがありますと、先ほど国連局長の言われた点とそごするような結果が不幸にして生ずる場合もあり得る、こういうふうに思うのでございますから、その点を伺ったわけでございまして、そういうことはない、この協定の性格からいって、内容からいって、そういうことはない、こういうふうにおっしゃるのでありますから、一応それを私はそのまま受けとめさせていただきたいと思います。  次に、受け入れ側の態勢でございますが、域内各国の開発計画の相互調整の問題でございます。マレーシアとインドネシアとの政治的不和は漸次和解の方向に向かいつつあるということで、これはまことにけっこうだと思うのでございますが、しかしなお、インドとパキスタンの国境の紛争の問題もある。そういう東南アジアにおけるところの国と国との紛争が融資の問題に響いてきやしないか、こういうことを心配するのであります。特にインドシナ諸国、ベトナム共和国、ベトナム民主共和国あるいはカンボジア等の国々との関係の各国平等の原則という本銀行のたてまえと、地域的見地からの優先順位というような点がどういうふうに調和するか、この点でございますね。この点はどういうふうにお考えになっておられますか。
  153. 大和田渉

    ○大和田説明員 いま先生が御指摘のように、確かにマレーシアとインドネシアの問題がある、あるいはその他二国間あるいは三国間でいろいろ紛争その他の事態があって、その調和に非常に骨を折るだろうという御質問だと思いますが、事実そういう問題は起こり得ると思います。ただ、銀行としては、具体的には第二条に規定があるのでございますが、銀行としてはその第二条の三項に「地域内の加盟国が、その資源のより良い利用を達成し、その経済をより相互補完的なものとし、及びその貿易、特に域内貿易の秩序ある拡大を促進するため開発に関する政策及び計画を調整する場合において、当該加盟国の要請に応じて援助を与えること。」具体的にどういう援助を与えるかということは、そういう要請が加盟国からあった場合に行なわれることになると思いますが、いずれにいたしましても、この銀行の基本原則の一つとして、先ほど私が御説明申し上げましたような、域内の調和のとれたということを目的としておりますので、その観点から具体的な要請に応じて調整を加えるということになると思います。
  154. 西村関一

    ○西村(関)委員 そうすると、つまり、紛争のあるところはあと回しということになりますか。
  155. 大和田渉

    ○大和田説明員 事実問題としてはそういう結果になる場合が多いのではないかと思います。ただ、紛争がある場合には融資をやってはいけないという式な規定は別にございませんので、融資を行なう場合には、やはり経済建設ということのみを考えてやるという規定になっております。ただ、実際問題としては、紛争があって、片方を立てれば片方がおこるというような式の実際問題があると思いますので、そういう場合には、銀行といたしましても、そういう問題があるということを認識して考慮するものと思います。
  156. 西村関一

    ○西村(関)委員 東南アジアへの経済協力の機関としては、海外経済協力基金、海外投資保証制度等がありまして、政府、民間の投資の促進が行なわれているわけでございますが、わが国といたしましては、このアジア開発銀行に協力するということも、その中の一つとして、いま協定の批准を求めておられると思うのでございます。  これも先日の本会議におきまして私が質問に及んだのでございますが、アジア開発銀行の本部が当然東京に誘致されるものだというふうに政府考えておられたようでございますけれども、それがマニラにきまったということにつきましては、いろいろな原因があろうかと思います。そのとき政府の御答弁もございましたが、私、あの質問のときにも申し上げたわけでございますが、アジアの諸国の諸民族が日本に対して信頼感よりもむしろ一種の警戒心を持っている、そういうことのあらわれが、東京に本部を誘致することができぬような結果になった、端的に言うとそういうことが反省されると思うのでございます。もう一つは外務当局の見通しが非常に甘かった、こういうことも言えるかと思いますが、この点に対して、政府は現在どういうふうにお考えになっておられるか。  また、アジア開発銀行の総裁についてはどのようにお考えになっておられるか、この際お伺いいたしておきたいと思います。外務大臣にお伺いします。
  157. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日本といたしましては、東南アジアそのものの中には日本は入っておらない、しかし、政治的にも経済的にも非常に関心を持っているところであり、また、きわめて近接しておる。そして、日本は、交通、通信という観点からいいましても、あるいは経済の網ですな、世界経済網という点からいっても、きわめて恵まれた地位に位するという、そういう点からいって、東南アジア開発地域の中にはないけれども、それの開発のために、東南アジアだけじゃございませんけれども、アジア開銀の本店として場所的にきわめてすぐれた特性を持っているのではないか、こう考えておったわけであります。しかし、問題はそれだけで決定するものではもちろんないことは言うまでもございませんが、アジアの国々はやはり開発される地域の中で選ぶべきものであるという考方えが相当多数の国の考えの中にあったようであります。それと、マニラが非常に意欲的にこの問題で動いたということ、それからまた本店も東京、総裁もまた日本という、二つをねらっておるというような宣伝も相当に行なわれたということを聞いておりますが、そういうことで、必ずしも、日本に対する不信頼感であるとか、あるいは対日警戒心であるとか、そういうようなものにつながるものではない、こう私は考えております。しかし、一面において、日本としても相当これに関心を持ち、かつ相当な出資をしておる。それから世界経済に対する関係において、日本がすぐれた地位にあるというようなことについてあまりにたより過ぎておったという点もあるいはなくはなかったのではないか。いろいろ考えられますが、御指摘のような、対日警戒あるいは対日不信頼感というようなものでは必ずしもないと私は思う。
  158. 西村関一

    ○西村(関)委員 総裁の問題は……。
  159. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 総裁の問題につきましては、むしろ非常に積極的に、日本からという声が大きいようでございます。したがって、この際、いたずらにしり込みをする必要はない。アジア開銀の発達のために、あるいはアジア繁栄のために、もしみんながこれを承認するならば、日本としては積極的にこれに寄与するという考えのもとに総裁も立候補すべきである、こう考えて踏み切ったような次第でございます。ただいまの情勢では、おそらく日本に結局落ち着くのではないか、こう考えております。
  160. 西村関一

    ○西村(関)委員 具体的にどなたを考えておられますか。
  161. 星文七

    ○星政府委員 現在、大蔵省の顧問をしていらっしゃいます渡辺武さんを考えております。
  162. 西村関一

    ○西村(関)委員 私は、本店がどこであれ、総裁がだれであれ、そういうことはあまり大きな問題だとは考えておりませんが、要は、このアジア開発銀行の性格についていままで質問してまいりましたような心配が杞憂であるということを望むのでありまして、真にアジアの経済の発展のために、アジア諸国の共同連帯性を深めていくことのために寄与できる、そのために日本が協力するのだということでありたいということを願っておるわけなのでございます。  次に、お伺いいたしたいと思いますのは、国際的開発援助機関の複雑性、または重複性についてであります。開発途上にある諸国家を援助、協力する機関といたしましては、非常にたくさんあると承知いたしております。金融機関としては、先ほどお話のございました世界銀行あるいはIFC、国際金融公社でございますか、及び第二世銀といわれておりますところのIDA、また地域的経済協力機構といたしましては、コロンボプランあるいはアジア生産性機構といったようなものがございます。また国連の技術援助機構といたしましては、通常技術援助計画、拡大技術援助計画、その他国連の特別基金、国連の貿易開発会議、エカフェ、OECDのDACといった種々さまざまな機関がありまして、非常に複雑多岐にわたっておる。また、あるものは重複しておる。そういうさまざまな機関の中で、どの機関がどのような事業を行なうのであるか、また、このアジア開発銀行との関係はどこで結びつくのであるかというような点、これはどなたからでもけっこうでありますが、伺っておきたいと思います。
  163. 西山昭

    ○西山政府委員 ただいま御指摘のとおりにいろいろの機関が多いわけでございますが、世界銀行におきましては、御承知のように、世界銀行、それから第二世銀、それからIFCというのがございまして、これはそれぞれ異なった機構で特徴のある活躍をやっております。それからOECDのDACは現実に経済協力の実体をなすものではございませんで、これらの世界的な、なかんずく自由諸国の経済協力のあり方をいろいろ検討しておりまして、後進国の開発にどのような形で経済協力をやれば最も効果があがるかという内容的な面の検討を進めている機関でございます。  それから御指摘のラ米諸国の開発銀行もありますし、それからアフリカの開発銀行もできました。今度アジア開発銀行もございまして、これらの機関は、性質におきまして、世界銀行と内容も同じような機能を果たすわけでございますが、後進国の経済開発に要しまする資金が現在非常にばく大でございまして、年間大体百億ドルぐらいでございますが、これは大部分が二国間の経済協力によって推進されておりまして、国際機関によりまする経済協力は、国連の諸機関を通じまする協力を含めまして、それからまた、ユニセフその他の厳格な意味の経済協力といえないような意味の経済協力も全部含めまして、約十億程度でございます。そういたしますと、これらの機関が重複するようには見えますけれども、相互に連絡をとりながらお互いに機能を発揮しつつやるという現在の段階でございまして、これらのものが同じような重複する、むだな金の使い方をしているというような状況にはまだ至っておりませんし、また、近い将来に、そういう意味で金がダブって使われるということは予想できないと思うのでございます。
  164. 西村関一

    ○西村(関)委員 その点は、協定の第二条の五項に、銀行は、「国際連合、その機関及び補助機関、特にアジア極東経済委員会、並びに公の国際機構その他の国際的機関」等と協力し、云々というふうに規定されておりますから、いま局長の言われたようになっていくと思うのでございますが、しかし、きわめて多種多様な機関がありますから、それがうまく運営されていかないというと、重複されたり、むだができたり、また必要なところに行かなかったり、いろいろなことがあるということを思いますので、これに当たられる向きは、十分協定の二条の五項の精神を生かされることが望ましいと私は思うのでございます。  次にお伺いをいたしたいと思いますことは、アジア開銀に真にアジア地域の経済開発を期待するということでありますならば、政府はまずアジア地域における平和を招来するということが前提となってこなければならないと思うのでございます。もちろんその努力をやっておられる。佐藤総理は平和に徹するということをしばしば申されるのでありますし、外務大臣ベトナム戦争については極力戦争の一日も早くおさまるようにということを念願しておる、そのために横山特使も各国に派遣しておるのだというふうにおっしゃる。しかし、現状は残念ながら、戦争はなかなかやまぬどころか、ますます拡大されていっておるというような状態であります。一方においてはアジア開銀の設立、アジア地域の経済開発ということが大きな期待を持たれておる。一方においては戦争が行なわれておる。そういう現状に対して、まず平和を招来するということを重点的に政策としては打ち出していくことが必要じゃないか。だからといって、もちろんこういう経済協力、経済開発がどうでもいいということではございませんけれども、その点が、私、特にこの際政府のお考えを伺っておきたい点なのであります。何と申しましても日本はこのアジア開銀の大株主でございますから、東南アジアの諸国の信頼をかち得るためには、日本は真に平和愛好国である、真に平和のためにあらゆる犠牲を惜しまないものであるということを事実において示していかなければならぬと思うのでございます。しかし、残念ながら私どもの見るところでは、政府は一方的にアメリカの見解を支持しておられるし、そしてまたベトナム戦争は北からの南への侵略があって、南の撹乱分子が治安を撹乱しておるから戦争がやまらないのだというような見解を固持しておられる。そういうことを考えている国もあるにはあります。しかし東南アジアの国が全部そういう考え方日本政府の見解を支持しているかというと、私はそうじゃないと思うのでございます。手近なインドシナの国々を考えてみましても、必ずしも日本政府考え方に全部賛成しているとは言えないと思うのでございます。一方においては破壊が行なわれておる、一方においては建設をしていこうということは、両立しないと思うのでございます。  そこで、これは午前中の国際情勢の質疑の中にも出たことでございますが、どのようにして、アジア諸国、諸民族の切なる希望であるところの、アジアに平和を来たらせるかということに対して、もう少し前向きな政府の姿勢が望ましいと思うのでございます。今朝の帆足委員の質問に対して、横山特使の報告は非常に有益であるが、まだ公表する段階でないというようなことでございます。新聞等の報ずるところでは、青い鳥はどこにもいなかったというような表現で報告されているようでございますが、しかし、政府は非常に有益であったということをきょう外務大臣は言われました。努力をしておられるという点は私も認めるにやぶさかではございませんが、特に横山特使の報告の点について、何か政府が前向きに、アジアに平和を来たらせる、特にベトナムに平和を来たらせるということのために、特に参考といいますか、そういう点がもしあったならばひとつこの際お聞かせを願いたいと思います。
  165. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 横山報告はいわゆる資料でございまして、ベトナム戦争終結のためにどういう手がかりをつかんで、そしてそれをいかに活用するかという、それを活用すべきものは結局横山特使自身ではないのでありまして、横山氏はそれらに必要な資料の収集をしてきた、こういうふうに見るのが私は適当であろうかと存じます。でありますから、ただ資料をなまのままでかりに御報告申し上げても、それだけでは直接に戦争終結のためにこうすればいいという解決方法というもの、解答はそれによって得られない。解答をつくり出す一つの資料である、こういうふうにわれわれは考えております。なまの報告は、どこそこのだれがどういうことをしゃべったということをずっと書いてありますが、その問題はしばらく公表は控えたいと考えております。  先ほど申し上げましたように、結局、結論としては、いま時期尚早であるというのが大勢である、こういうことでございます。しかし、また共産圏の諸国を回ったところによりますと、またこれとニュアンスが違いまして、北越及びベトコン支持というものと共通の色彩が浮かんでおるのでございます。しかし、これとても、見方、言い方、それぞれ異なっておりますが、それらの問題、資料をそのままここで公表するということは適当でない、こう考えます。
  166. 西村関一

    ○西村(関)委員 私は、横山特使の報告をなまのままここでお聞かせ願いたいというようなことは申しておりません。外務大臣としてその報告を受けられて、何らかの参考にせられた、それを外務大臣がどのように消化せられたか、そしていままでの御見解に何か変わったものをつけ加えられるようなものがあったか、外務大臣の御見解を伺っておるのでございまして、何も横山特使の報告をいま直ちにそのままここで聞かしてくれというようなことを申しておるのじゃありません。そういう努力を続けておられる政府として、今日の非常な破局に近い状態におちいっているベトナムの紛争をどのようにして解決したらいいかということについて――きょう午前中、大臣は、ジュネーブ協定の精神を尊重するということを言われたのでありますが、このジュネーブ協定の精神を尊重するということは一体どういうことかということをもう少し深めていくことによって、東西の対立やベトナム戦争の問題の解決への糸口を納得のいく形でつかむことができるのじゃないかというふうに私は思うのでございますが、その点、外務大臣としてはどのようにお考えでございましょうか。
  167. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ジュネーブ協定の条項は幾通りもございまして、その中にはいろいろなアイデアがあります。外国の軍隊に対して基地を提供しないとか、あるいは引き揚げろとか、あるいは何年以内に自由選挙をするとか、いろいろな条項が書いてありますが、都合のいい条項だけを拾って、そしてジュネーブ協定に従えということを両方で言っているような感じがいたします。結局この協定の全部にわたって一貫しておる思想は、外部から力をもって政治的な意図を達成するということはいけないということを言っておるのではないかと私は考える。それがジュネーブ精神の一貫した思想ではないか、そういう点からいいまして、私は、ジュネーブ精神によって和平の収拾をすべきものである、こう考えております。
  168. 西村関一

    ○西村(関)委員 その問題について外務大臣といまここで議論をするつもりはありませんが、一体ゴ・ジン・ジェム政権をつくったのはだれであるか、これはもう天下周知の事実であるし、しかもジュネーブ協定の中にある二年後に民主的な選挙を行なうということをやらせなかったのもだれであるかということ、これも明らかな点なのであります。そしてまた軍事顧問団と称する軍隊を送ったのもアメリカであるし、そしてまた北からの浸透があるからという理由で二十五万に及ぶところの軍隊をいま南ベトナムに派遣しておるのもアメリカであるし、これはどうひいき目に考えてもジュネーブ協定をじゅうりんしているのは――それはもちろん北のベトナム民主共和国も、現在の時点においては、全然北から南へ入ってないということは言えないと思いますが、しかしどちらがより先に、より多くジュネーブ協定をじゅうりんしたかということは明々白々であります。しかもあれだけの強力な軍事基地を南ベトナムにつくっている、そして今日は軍事顧問団じゃなくて、実に二十五万からの大軍をベトナムに送り込んでいる。一体北のベトナム民主共和国に中国の軍隊やあるいはソ連の軍隊が入っているか、全然そういうものはないわけです。その軍事基地もないわけです。そういうことと考えて、一体どちらがジュネーブ協定をじゅうりんしているか。ジュネーブ協定の精神を尊重すると大臣が言われるならば、やはりそういう点をはっきりアメリカに言うべきじゃないか。アメリカ国内においてさえも、午前中の帆足委員の質疑の中にもありましたように、その点が問題にされておるのでありまして、外務大臣はよくその点を御承知だと思うのであります。もしほんとうにベトナム戦争をやめさせようと思うならば、アメリカの間違いは間違いとして、アメリカを友邦と大臣がお考えになるならば、勇気を持ってその間違いを正していかれることが私はなさるべき道じゃないかと思うのであります。そういうことをしないで、それをそのままにしておいて、経済協力、経済開発ということを言っておっても、一方においては破壊に協力するような言論をし、一方においては経済協力ということを言っても、これは私はアジアの諸国の民心をつかむことはできないと思うのです。その点、いかがでございましょうか。
  169. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 一九六〇年のころに、国際監視委員会の大多数と申しますか、三国からなっておるのですが、そのうちの二国は、明らかに北からの浸透が先である、五四年のジュネーブ協定の以後アメリカは主として経済援助等をずっとやっておった、しかるに、武力、実力によって南越の政権を倒そうというふうにしかけたのは北であるという判定が下っております。しかし、その問題は水かけ論争になりますので、これはしばらくおくといたしまして、現在の時点において、武力にものをいわせようとしておるのはどちらか、こういうことを考えるのが一番正しい見方ではないか。アメリカは、お互い武力を捨てよう、そして平和な話し合いにいつでも入る、こういうことを言っておるにもかかわらず、北越は、ゲリラ戦術で必ず勝てるのだ、そして、そういう破壊力いわゆる武力というものにものをいわせようという希望をあくまで捨てない、これが北越のいまの態度であります。一体どちらが先に手を出したかということをいま言っても、これは水かけ論争になりますから、それはしばらくおいて、現在の時点において、力――武力、暴力、破壊力というものにものをいわせよう、こういう野望を捨てないのはむしろ北ベトナムの態度である、そのために戦争の終結がなかなか見られないのだ、私はこう考えております。
  170. 西村関一

    ○西村(関)委員 奇怪なことを伺うのであります。私も国際監視委員会の記録をしさいに検討いたしました。英語とフランス語、両文で書かれております非常に膨大なものであります。私も昨年七月にアメリカ合衆国にベトナムの問題で参りまするときに、それに目を通しておかなければものが言えないと思いまして、相当努力をして監視委員会の報告書を読んだのでありますが、いま大臣の言われたことは一部であります。それと逆な報告もたくさん出ております。アメリカ合衆国のベトナム白書なんかでも、自国に都合のいいところだけを抜粋しておる。しかもその中のアメリカが北からの浸透があるとしてあげておる事例なども、アメリカがジュネーブ協定を侵犯しておる点から考えまするならば、これは非常に微々たるものである、私はあれを読んでそういう感を深めたのであります。――もうあとの川上委員が待っておられますからこの論争はまたの機会にいたしたいと思いますけれども、こういうことを大臣がいま言われるということでは、私はどうも納得がいかない。実際に力を持っているのはどちらか。それは比較にならない力をアメリカは持っているのです。そしてまたアメリカが南ベトナムにおいて、あるいは北ベトナムにおいてやっていることは、ゲリラ戦を戦っている解放民族戦線の人たちのやり方と比べてみて、一体どちらが力を行使しているかということを考えるならば、私はむしろ力を持っている者が力を持っていない者をおそれている、そのおそれておる結果がああいう戦争になっておる、こういう感を抱かざるを得ないのであります。  私は昨年の一月にホー・チ・ミン大統領に会いました。ホー・チ・ミン大統領は、インドシナ全体を中立化地帯にするということに対して平和会議を招集されるならば、いつ何どきでもそのテーブルに着く用意がありますということをはっきり私に言明いたしました。しかも、それには条件がある、それはアメリカがジュネーブ協定の精神によってベトナムから全部引き揚げることだ、アメリカが引き揚げるなら、いつでも私はインドシナ全体を中立化するための平和会議のテーブルに着く用意があるということをはっきりホー・チ・ミンさんは私に言ったのであります。私はホー・チ・ミンさんといろいろ話をしておりますうちに、北京からの援助も受けない、モスクワからの援助も受けない、われわれはわれわれの手でベトナムの問題を解決しますということを言っておりました。私はそういう点等を考えますと、もう少しく事態の真相を日本外務大臣としてははっきり見きわめてものを言っていただきたい。いまの国際監視委員会の報告なども、少なくとも外務大臣は全部に目を通していただきたい。一部だけじゃなくて、全部に目を通していただきたいということを要望いたします。この点についてはこれ以上きょうはここで論議をいたしません。  それで私は最後に、このアジア開発銀行協定がエカフェ加盟諸国に開放されるという規定がありますにかかわらず、ソ連、フランスといった大国が加盟してない、加盟の見込みがないということから、この銀行の性格があまりにも一方的な色彩の強いものになっていくのじゃないか、そういう運営に流れていくのじゃないかという心配をいたしておりますので、先ほど来いろいろお尋ねをいたしておりますように、東西の対立または南北の離反というものを、この銀行の運営を誤りましたら、一そう激化させるような懸念があると思うのでございまして、そういうことに対して真に政府東南アジアの諸国の開発に協力をするということでありますならば、情勢の推移を十分に見きわめてこれに当たっていただきたいということを重ねて強く要望をいたしまして、私の質問を終わります。
  171. 高瀬傳

    高瀬委員長 川上貫一君。
  172. 川上貫一

    ○川上委員 私はアジア開銀について外務大臣に二、三のお尋ねをしたいと思うのです。時間の制約がありますから、答弁外務大臣だけにお願いします。ほかの方の御答弁はよろしい。もう一つ椎名さんにお願いしておきたいのですが、私は少しく聴力が衰えておりますので、はっきりと明瞭に答えてください。  アジア開発銀行、これは率直に言うてアメリカのアジア侵略政策の一環である。同時にこれに追従する日本政府の侵略的海外進出政策とも関係がある、われわれはこう考えております。そこで、まず最初に一つの質問をいたしたい。最近政府アメリカの核のかさのもとで日米安保条約を長期固定化するという意向を明らかにしております。さらに佐藤総理はさきの衆議院の本会議で、安保条約を核安保と言うのならそう言ってもよろしい、こういう発言をしておられる。これは非常に重大な総理大臣の発言だと思う。これは第一に、この条約が口では何と言おうとも、事実上核戦争条約であるということを公然と政府が認めたことです。また第二に、これを永久化することを公言したのです。言いかえれば、核戦争条約を永久化する、これを公言しておるのです。  そこで私は、この危険きわまりない条約並びにこれに対する政府の見解、この問題についてまず一つの質問をしたい。政府はこの安保条約が軍事条約ではない――外務大臣聞いておりますか、何か書いておりますが、(「メモだ」と呼ぶ者あり)メモですか、メモならまことに熱心でよろしい。――またこの条約によって戦争に巻き込まれる危険は絶対にない、こう繰り返しておる。そこで外務大臣にお聞きします。外務大臣はまじめにそう考えておりますか、本気でそう考えておりますか。軍事条約ではない。戦争に巻き込まれることはない。これが一つです。もう一つは、アメリカもそう言っておりますか。この二点をまずお聞きしたい。率直に答えてください。
  173. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 お答えいたします。  安保条約は軍事条約でないと思っておるか、私は軍事条約だと思っております。軍事条約でございます。  それからこの軍事条約によって戦争に巻き込まれないと思っておるかという御質問、この軍事条約を結ぶことによって自分の意思に反していや応なしに戦争に巻き込まれるということはないと私は考えております。  それから、アメリカがどういうように思っておるかという御質問でございますが、私はアメリカからこの点を聞いたことがございません。しかし軍事条約であるということはアメリカだって承知しておるものと考えます。  それから、また条約を結ぶことによって、日本がその意思に反して外部の攻撃を受けるというようなことはおそらくない、またもしそういうことがあったならば、アメリカが責任を負ってこれを排除するということを考えておるだろうと思います。
  174. 川上貫一

    ○川上委員 外務大臣は、安保条約は軍事条約である、こう思うておる、こう言われました。同時に、しかしながら戦争に巻き込まれる危険はない、こう考えるのだ、アメリカもおそらくそう思うているだろう、こういう答弁だと思うのです。ところがアメリカはそう言っていない。アメリカは、初めから安保条約を侵略的な戦争条約考えておる。これは私がかってに言うておるのじゃない。証拠がある。すなわち、ロバートソン国務次官補はずっと以前に、すでに早くからこう言うておるのです。常に中国周辺から武力攻撃の脅威を与え続けなければならぬ、こうはっきり言うておる。またその当時のダレス国務長官ですか、これはこう言うておる。朝鮮、日本、台湾及び東南アジア、この三つの戦線の一カ所の戦争は、いつでも全アジアの戦争に拡大し得るとはっきり言うておる。特に最近――これが大事です。マクナマラ国防長官、これの言明があります。それは去る三月の三日です。上院外交委員会公聴会における秘密証言に先立って行なわれた冒頭声明です。これは公式に発表されております。ここに声明のプリントがあります。これにはどういうことを言うておるか。こう言うておるのです。日米安保条約がある限り中国との戦争の危険はいつでもある、こう言うておるのです。ちゃんと言うておる。これは冒頭声明です。アメリカ上院の外交委員会の秘密公聴会での冒頭証言、それがちゃんとここにあるのです。出所も明らかにしてあるのです。必要があれば、何でもこれをごらんに入れます。これはどういうことですか。日米安保条約がある限り中国との戦争の危険はいつでもある、こう言うておるのです。あなたは、戦争に巻き込まれる危険はない、アメリカの国防長官は、あると言うておる。安保条約戦争条約であることをアメリカ政府自身がはっきりと言明しておるのです。正式に声明しておるのです。これはあるのです。これでもあなた方は、この安保条約戦争条約じゃないと言い切ることができますか。これが一つです。  もう一つは、この確かなアメリカの声明を間違いだと、外務大臣、この席で言われますか。マクナマラ長官はうそを言うておるのだ、外務大臣、この席でこう言い切ることはできますか。これは日本人民にとってまことに重大な問題です。外務大臣からはっきりとした御答弁を承りたい。
  175. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 第一点は、私は、日米安保条約は軍事条約であるということを申し上げております。軍事条約でないとは申し上げておりません。  それから第二点、日米安保条約締結によって、日本戦争に巻き込まれるとは考えない、ほかの人がどういうことを言っていようと、私の考え方をはっきり申し上げておきます。
  176. 川上貫一

    ○川上委員 それだけ聞いたのじゃないのです。アメリカの言うておることをうそかということを聞いたのです。国防長官の言うたことは、あれはでたらめか、でたらめだと思えば、でたらめだと言ってください。これを聞いておる。
  177. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 やはり自分の信念を言っておるのだろうと思います。私は私の信念を言っておるのであります。
  178. 川上貫一

    ○川上委員 外務大臣の信念を聞いておるのじゃない。日本政府アメリカ政府の政策を聞いておるのです。あなた個人の信念を聞いておるのじゃありません。この国会における質疑というものは、質問する個人と答える個人との信念の言い合いじゃありません。国の政策、日本政府アメリカ政府の政策、これについての質疑を私はしておるのです。これに対する答弁をお願いします。
  179. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 でございますから、私は、外務大臣として、日米安保条約に加盟することは、それだけで戦争に巻き込まれるということはあり得ない、こう考えております。それが外務大臣としての所信でございます。
  180. 川上貫一

    ○川上委員 外務大臣は、この席でも、あくまでも議会と国民を欺こうとしておる。この条約の締結の相手国、アメリカ自身が、中国に対する戦争条約であるという意味のことをはっきり言うておる。私は具体的に聞いておるのです。証拠がありますと、こう言うておる。それなのに、私の信念だとか、外務大臣としての考えだとか、これは、私は国会を侮辱し、国民を愚弄するものだと思う。またこの証言については、前後大部のものでありますが、日本の外務省、外務大臣が御承知でないはずはないです。また事実において、日本政府は、この安保条約によって戦争をやっておる。戦争に巻き込まれる危険はないと言うが、事実はどうです。日本政府安保条約の義務と言うて、アメリカベトナム侵略戦争に全面的に協力をしておる。これは安保条約の義務だと言うておる。アメリカに軍事基地の使用を許して、物資を供給する、役務を提供する、原子力潜水艦寄港を許す、安保条約によって許すのだと言うておる。原子力艦隊寄港さえ許そうとしております。そうしておいて今度は、安保条約によって、日本アメリカの核のかさの中にあると公言しておる。アメリカの核戦略に組み込まれておることを公然と認めておる。事態は明瞭なんです。これでもこの安保条約は、戦争条約ではない、戦争に巻き込まれる危険はない、こういうことが言えますか。  私が、いままで短い時間に述べたこと、これが日米安保条約の本質だと思う。国民もそう考えておる。このことをまず明らかにしないで、アジア開発銀行なるもののほんとうのねらいと本質を明らかにすることはできない。これをごまかしておいたら、アジア開発銀行の本質、性格は全部ごまかされてしまう。そこで私は、これを聞いたのです。きょうの質問は、アジア開発銀行に対する質問でありますから、いまの問題については、これ以上質問はしません、あなた方の腹の中はわかっておるから。しかし私はいいかげんなことを言うておるのじゃないということだけは、ここではっきり言うておきます。このアジア開発銀行が、いま私が質問した問題、アメリカのアジアに対する侵略政策、これに追従する日本独占資本と日本政府の海外進出政策、これだということは、本年二月の十二日にアメリカのバンディ国務次官補がアジア開銀について明確に言うておるのです。すなわちアジア開発銀行の創立など東南アジア開発援助は、アメリカの軍事政策と相互に関連しておる。その目標は中国封じ込めである、こうはっきり言うておるのであります。それだけではありません。さきごろあなたの与党自民党の安全保障調査会がまとめた安保問題に関する中間報告案というものがある。これにはどう言うていますか。経済協力は単に経済的基盤でのみ考慮してはならぬ、安全保障といった観点からも検討しなければならぬと、こうはっきり書いてある。このようにアジア開発銀行が日米安保条約や米韓条約、米台条約、SEATO、それにUNZAS条約、これなど合わせて、アメリカのアジア侵略政策と、これに追従する日本独占資本の野望の一環であることはまことに明白である、われわれはこう考えておる。そうでないというなら、その点について外務大臣答弁をお聞きしたい。
  181. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 全然見解を異にいたします。アジア開発銀行は、あくまでアジアの低開発諸国を経済的に引き上げようという目標をもって設立されたものでございまして、戦争経済を推進しようというような機関ではございません。全然あなたと見解を異にいたします。
  182. 川上貫一

    ○川上委員 それならこのアジア開発銀行はどういう経過をとってきましたか。アメリカのさしがねによってできたのと違いますか、簡単に言うてください。
  183. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 アメリカのさしがねによっておりません。
  184. 川上貫一

    ○川上委員 椎名外務大臣はだいぶ心臓が強い。大心臓であります。一体アジア開発銀行なるものは、事実上アメリカによってつくられた。これもいいかげんなことを言うておるのじゃない。すなわちアジア開銀は、一九六〇年以来エカフェで検討されてきたことは事実です。ところが昨年三月のエカフェの総会ではアメリカが出資を拒んだ、そのために事実上この設立は挫折した。ところがそれがその後一カ月もたたないうちに、四月七日にジョンソン・アメリカ大統領がベトナムの無条件話し合いという欺瞞的提案とからめて、十億ドルの東南アジア開発援助構想なるものを打ち出した。それと同時にアジア開銀への二億ドルの出資を約束した、これで初めてできたんです。その設立が具体化したのです。これは世界周知の事実です。この経過から見て、アジア開銀なるものが、アメリカのアジア侵略のための道具でないと言えますか。明白じゃないか。  続いてこのことは明らかにしますが、率直に言うと、このようなアメリカの道具をつくり上げるために、日本政府はいまアジア開銀を設立する協定をやっておる、これを国会に承認させようとしておる。そうしてひたすらアメリカの要求にこたえる、同時に一面では日本独占のアジアに対する侵略的経済進出の野望にもこたえようとしておる。これがアジア開発銀行の本質ではないですか。私がいま言うたこの経過、この事実、これはそうでない、間違いだとおっしゃるのなら、その点を答えていただきたい。
  185. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 私が答えるまでもなく、この問題は、先に提唱したのはエカフェでございます。すなわちアジア極東の諸国が自分らの繁栄のために、どうしてもアジア開発銀行が必要であるということを、エカフェを舞台にして論議をいたしまして、結論を出した。初めは域外国として有力なアメリカはこれに対して賛意を表しなかった。しかしついに賛意を表したということは、エカフェによってアメリカが大いに引きずり回された、そういうことを事実が物語っておるじゃありませんか。それをあなたはさかさまにごらんになって、これはアメリカが引きずり回してつくったんだとおっしゃるが、そうじゃない。エカフェが論議をして、エカフェの結論がちゃんとできておって、そしてアメリカがその後になってこれに賛成をしたのでございますから、これはもう終始エカフェがこれを指導した、それにアメリカが追随して賛意を表した、こういうことなのです。事実を事実のように解釈されれば、それが正論でございます。
  186. 川上貫一

    ○川上委員 私がいま述べたとおりに、エカフェでこういうお話が出ておったことは事実だと言うておる。それが去年挫折しておる。ところが今度これができたのはアメリカのてこ入れやということを言うておる。エカフェが関係がなかったとは言うておらぬのです。これはアメリカの道具であるという証拠は何ぼでもある。外務大臣のいまの弁は、私の質問には実は答えていない。アメリカのてこ入れとアメリカ考え方で、アジア開銀はいよいよできることになったんだ。そのうしろにアメリカがおらなかったらできなかったのだということを聞いておる。そのアメリカの腹の中は何かということもあわせて私は言おうとしておる。  時間が十分にありませんから、この問題についてさらに続けて聞きますが、一体このアジア開銀は資本十億ドルのうちで、実際に開発のために貸し付けられる資金はどのくらいありますか、どのくらいの予定ですか。外務大臣にお聞きします。
  187. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 約半額でございます。
  188. 川上貫一

    ○川上委員 五億ドルぐらいですか。
  189. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 約半額、だんだんそれがその必要によってふえてまいりますが、とにかくいまのところ十億ドルが資本金で、もう少したって満額になると思いますが、さしあたりそれの約半分が融資される、こういうことでございます。
  190. 川上貫一

    ○川上委員 そんなにございません。実際に使える金は。銀行資本の応募額の半分が払い込み資金で、その半分が金または交換可能通貨です。残りの半分は自国通貨です。しかも自国通貨のうちで銀行が実際に使用できるものはアジア以外の国と日本の出資だけです。したがって実際に使用できるものは金または交換可能通貨十億ドルの四分の一プラス使用可能な自国通貨、日本と域外国の分の合計約三億六千万ドル、これだけしか使える金がないのですよ。これで後進国の開発とか東南アジア諸国何とかといっても、そんなことができますか。このうしろにはアメリカの信託基金をあてにしておるのです。ここに問題があるのです。わずか三億六千万ドルで仕事はできはしません。しかもこれがいま使えるんじゃないのです。五年かかってこれだけなんです。これはできっこないのです。そこでアメリカの信託基金をあてにしておるのです。これがありますから、アメリカがうしろに入らなければできなかった。アメリカはなぜ信託基金をここに出すのか、ここに問題があるのです。アメリカアメリカのアジア政策とアジア開銀との関係についての問題があるのです。この点について外務大臣はそうでない、こうお考えになりますか。
  191. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 妙に何か悪だくみをするような考え方を前提にしてアメリカの信託基金を云々されますが、そういう考え方は私は持っておりません。それで実際に交換可能な金は四億足らずでございますが、あとは自国通貨とかいったようなものでございまして、これをいろいろ繰り回しすることによって、大体五億近いものが運用され得るのではないか。  それから信託基金は他の国が出せばそれと同額ぐらい出す、こう言っておるのでありまして、信託基金はアメリカだけ出してそれが幾ら幾らと確定的な金額にはまだなっておらない、そういう状況であります。
  192. 川上貫一

    ○川上委員 まじめに聞いておるのですから、外務委員会ではもっと率直に答えてもらいたいと私は思うのです。外務大臣、よく知っておるはずなんです。これはアメリカの信託基金というものをあてにしておるのです。これがなかったら運用ができないのです。現に昨年の六月にバンコクで開かれたアジア開銀設立のための諮問委員会にオブザーバーとしてユージン・ブラック米大統領特別補佐官が出席しております。このブラックはその直後に日本に来ておる。そのときにどう言いましたか、あなたは聞いておるはずであります。アメリカは米州開銀に信託基金の運営をゆだねているが、アジア開銀についても同様のことをやる計画である、こう述べておるのです。これを外務大臣は御承知のはずなんです。これがアジア開銀のほんとうの資金なんです。ここに問題があるということを私は指摘しておるのです。  そこで、時間がたちますから質問を続けますが、ここでこう言うておるのです。米国は米州開銀に信託基金の運営をゆだねておるが、アジア開銀についてもそれと同様のことをやる計画である。そこで米州開銀のアメリカの信託基金、これがどういうぐあいにどういう条件で使われておるか。このとおりのものをアジア開銀にもつくるんだと言うておるのですから、米州開銀におけるアメリカの信託基金はどのように使われておるかをちょっと答えておいてください。外務大臣にお願いします。
  193. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 米州開発銀行は御承知のとおり主として中南米開発のために設立された銀行でございまして、これに信託基金として約二億ドル以上アメリカが預託しております。そして使途は一様に社会開発のために使われております。
  194. 川上貫一

    ○川上委員 やはり外務大臣は正直に答えぬといかぬと思いますがな。米州開銀のアメリカの信託基金はキューバ封じ込めか、そうでなかったら反共政策を約束しないところには一文も貸しておりません。これは事実です。すなわちこの信託基金は、出資国すなわちアメリカの承認を経ない限り使用できない。これはここの定款にも書いてある。アメリカのひもつきです。具体的にはどうなっておるか、一、二の例をあげます。米州開銀融資の例です。ベネズエラやコロンビアがキューバと断交した。そこで初めて二千万ドルの借款を受けた。アルゼンチンはどうですか。アルゼンチンは米州外相会議でキューバに対する集団制裁に反対した。そこで米州開銀の資金を受けることができなかった。ところがアメリカの圧力でキューバ断交に踏み切ったとたんに一億五千万ドルの借款を受けておる。一事が万事です。これがアメリカの信託基金の性格なんです。これをアジア開銀にも持ってこようとしておるのです。アメリカのひもつきによってアジア開銀が運用されるのです。この一事をもって見てもアジア開銀なるものがアメリカの道具でないということが言えるはずはない。  またつけ加えて言うておきますが、あなた自身が出席した昨年七月の第四回日米貿易経済合同委員会でアメリカははっきりとこう言うておる。信託基金を拠出すると約束しておる。約束する、こう言うておるのです。これも私のでたらめじゃないです。ここに資料があります。これはアメリカ提出の資料です。米国側交換用資料、ここでちゃんと信託基金を出すと言うておるのです。これは外務大臣も出ておる第四回日米貿易経済合同委員会です。これをあてにしてアジア開銀は動こうとしておるのです。この本質を明らかにしないでどうしてアジア開銀の性質がわかりますか。このアメリカのアジア侵略政策の道具としてのアジア開銀に日本アメリカに追従して肩を入れておることは、アメリカのアジア政策の片棒であると同時に、日本独占の海外進出へのこの要求にもこたえようとしておるのだ。アジア開銀というのはこんなものだ。ほんとうにおくれた国々の人民を助けようとする本質から出たものではないのだ、政策なんだ、こう聞いておるのです。これでどうして外務大臣はそのとおりだと言えないのですか。見解が違うというのじゃなくて、私の言うておることにもし違いがあれば、それは川上委員はこう言うけれども、そこは違うというように言うてもらいたい。国会は見解が違うとかそうではないとかいう抽象論をするところではない。外務大臣、どうですか。
  195. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 信託基金の問題は、信託するときに契約がありまして、その内容についてアメリカの了解を得るということになっているのです。これは普通の預金じゃありませんからしかたがない。そしてキューバとかそういうところに貸さないのは、危険なああいう独裁国には普通の産業資金を流すということは、回収上からも、あるいはその機能からいたしましても、適当でない、こういうようにアメリカが判断すれば、アメリカの意見によって貸すことができない。これは初めから信託基金を設定する際に、そういう約束で米州開銀というものは信託基金を預かっているのですから、これは当然のことだと思います。
  196. 川上貫一

    ○川上委員 私が聞いておるのは、出資国であるアメリカに相談しないで使えるというようなことを聞いているのじゃない。これはきまっている。定款にそう書いてある。ところがこれはどういうことかというと、いま私は例をあげたのだ。米州開銀と同じようなアジア開銀に信託基金を提供するとアメリカは言っている。米州開銀はキューバ封じ込め政策をとるか、もしくは反共政策をとる国でない限り一文も貸してないのだ。したがって、アジア開銀の信託基金も米州開銀と同様の信託基金を提供するとアメリカは言うておるのですから、この信託基金もアメリカは反共国かもしくはアメリカのかいらい政権以外には承知しないはずです。ここにアジア開発銀行の本質があるのだ、こう私は言うておるのです。これに対して外務大臣は答えておらぬでしょう。――委員長、時間ありますか。
  197. 高瀬傳

    高瀬委員長 どうぞごゆっくり。
  198. 川上貫一

    ○川上委員 まことにけっこうな委員長だな。  私はこれ以上いまの問題については外務大臣にお聞きしません、答弁は同じことだから、ほんとうのことを言わないのだから。  もう一つ重要な問題がある。それは信託基金だけじゃなしに、銀行の運営における決定権の問題です。投票権の問題であります。これはつまりこの定款によっても、アメリカアメリカの言いなりになっておる日本及び韓国、台湾、南ベトナムなどアメリカのかいらい政権、それとベトナムに出兵しておる国々、これだけで全投票権数の約六〇%を持つ、こういうことになっておるのです。これはどういう結果になりますか。これは信託基金だけじゃない。銀行の運用そのものをアメリカの思うとおりにすることができることは明白です。この点については外務大臣はどうお考えになりますか。
  199. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 金融機関でありますから、あくまで回収であるとか、その資金が経済的に有効に働くという点をねらってこの資金の運用をするわけでございまして、そうあなたの言うようにまるきり機密費でも取り扱うような、そういうことは金融機関の性格上できるものじゃない。それはあなたはよく金融機関の性格を御存じないからそういうことを言うのでしょうが、そんなことはありません。
  200. 川上貫一

    ○川上委員 そんなことを聞いているのじゃないのです。これは重要な問題です。金融機関のことを知ろうが知るまいが、これは普通の常識があればわかるのです。現に米州開銀ではどうだ。約四〇%の投票権で、これだけでアメリカが全運営を掌握しておる。これでアメリカは思うとおりに米州開銀を動かしておる。この投票権は全体の約四〇%。アジア開銀はどうです。アメリカアメリカの言いなりになる日本、それから韓国、さきに言いました台湾、その他アメリカのかいらい政権、ベトナムに出兵しておる国、これはアメリカの言いなりになる。これだけで六〇%持っておる。このアジア開銀がどういうように運用されるか、アメリカの指図どおりに運用されることは明らかじゃないか。アメリカは何を考えておるか、アジアに対する侵略政策を展開しておるのです。ベトナムの例は典型的な例であると同時に、はっきりと中国封じ込めをやっておるのです。これがアメリカのアジア政策なのです。このアジア政策の一環、これとしてのアジア開銀なのだ。そこにアメリカは投票権と信託基金をぶち込んで、これをアメリカの思うままに運営しようとしておる。低開発国の開発、こういうきれいなことを言いますけれども、そのうしろにあるこの隠された、率直に言うたら陰謀ですよ。このことがアジア開発銀行については大事なのです。このねらいは何か。アジア開銀はアメリカがアジアに新しい反共同盟をつくろうとしておる、この反共国家の強化育成、再編成、これにはどうしても経済援助が要るのです。そのためにアジア開銀というものを力を入れてもり立てようとしておる。アジアにおけるその守役には日本がなれというておるのです。また外務大臣、あなたがそれになろうとしておる。ここに危険があるのです。このようなアジア開銀に日本、あなた方は二億ドルを出資するのでしょう。こういう約束をしておる。国会の承認を求めて、その設立に力を尽くそうとしておる。これはどういうことですか。日本政府の反共の戦争政策と一連のものです。日本政府の中国敵視、朝鮮の敵視、南ベトナムへの強力な戦争への援助協力、これはアメリカ戦争政策すべてに協力しておるが、日韓条約にも関係がある。さらに日米安保条約の最初に言いましたような固定化、しかも核のかさのもとで。自衛隊の海外への派兵、アメリカの核戦略のもとでの第三次防をごらんなさい、あれは戦争計画なのだ、これをやっておる。中国やベトナムや北の朝鮮に対する公然たる敵視、さらに言えば、あなた方がさきに開いた東南アジア開発閣僚会議、またアジアの反共外相会議に参加させようとしておる。これと切り離してアジア開銀を考えることはできないのです。すなわちこのアジア開銀の設立に力を尽くしておることは、これらの反共政策の一環であると私は断言してもよろしい。これこそアメリカのアジア全域に対する帝国主義的侵略に一そう加担する、とりわけ中国をはじめとするアジアの社会主義国と広範な民主勢力に敵視するアメリカ戦争政策の片棒をかつぐものだ。これがアジア開銀への日本政府の全力をあげての協力です。われわれはこのようなアジアにおけるアメリカ戦争政策の一環としてのアジア開発銀行の設立に賛成することはできません。  きょう質問した私の短かい時間のわずかな指摘、これが間違いであるという証拠は外務大臣一つも出していない。考えが違うとか、われわれはそう考えない、こういう答弁、これは国会の答弁ではありません。  私は時間がありませんから質問をこれで切りますが、私は外務大臣に特に申し上げたい。あなたも日本人だ。いま外務大臣の席にすわっておられるけれども、いつ外務大臣の席を去られるかわからぬ。そうしたら一日本人です。静かに考えてごらんなさい。こんな政治をやっておって日本の将来がどうなると思うのです。それは政府のいすにすわっておる間は大きいことを言えるでしょう。一日本人になってごらんなさい。子孫のことをどう考えるのですか。民族の将来をどう考えるのですか。日本の祖国と人民は日本政府のものでもないし、外務大臣のものではありません。あなた方は国会でいいかげんな答弁ばかりしておられますが、もしほんとうの日本人としての良心があるならば、夜寝てからじっくり子供の顔を見ながら考えてごらんなさい。あんな答弁が正しいかどうか、あれでいいかどうか。私はいいかげんなことを言うて外務大臣を追及しておるのではない。祖国の将来、日本の進路を心配するのです。これは私の意見であるとともに、共産党の政策です。  時間がありませんからこれに対する答弁は要りません。私は外務大臣にほんとうの心のある考え方に改めてもらいたいということを申し上げて、私の質問を終わります。
  201. 高瀬傳

    高瀬委員長 次会は来たる二十七日午前十時理事会、理事会散会後に委員会を開くこととし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十三分散会