運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1966-05-13 第51回国会 衆議院 外務委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年五月十三日(金曜日)    午前十一時六分開議  出席委員    委員長 高瀬  傳君    理事 安藤  覺君 理事 鯨岡 兵輔君    理事 三原 朝雄君 理事 毛利 松平君    理事 戸叶 里子君 理事 西村 関一君    理事 穗積 七郎君       菊池 義郎君    濱野 清吾君       森下 國雄君    帆足  計君       松平 忠久君    竹本 孫一君       川上 貫一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 椎名悦三郎君  出席政府委員         法務事務官         (入国管理局         長)      八木 正男君         外務政務次官  正示啓次郎君         外務事務官         (アジア局長) 小川平四郎君         外務事務官         (経済協力局         長)      西山  昭君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         外務事務官         (国際連合局         長)      星  文七君  委員外出席者         総理府技官         (科学技術庁原         子力局次長)  武安 義光君         外務事務官         (北米局外務参         事官)     中島 信之君         外務事務官         (条約局外務参         事官)     大和田 渉君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    堀込 聡夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  アジア開発銀行を設立する協定締結について  承認を求めるの件(条約第二号)  国際情勢に関する件(中国核実験及びヴィエ  トナム問題等)      ————◇—————
  2. 高瀬傳

    高瀬委員長 これより会議を開きます。  アジア開発銀行を設立する協定締結について承認を求めるの件を議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。帆足計君。
  3. 帆足計

    帆足委員 アジア開発銀行趣旨といたしまする低開発国諸国に対して、公正、合理経済協力を、工業力技術力を持った国々中心になっていたし、あわせてアジア諸国は相互に経済協力をするという趣旨そのものはだれしも異存のないところであると思いますけれども、しかし、過去において、一方のアジア諸国は一方において植民地諸国であり、他方において投資をしようとする国々は、とにもかくにも資本主義並びに過去において植民地政策責任者であり、現在においてもまだその植民地政策を払拭していない、こういう状況でありますから、私ども開発銀行基本性格について、また将来の運用について疑いの念を持たざるを得ない。そこでこの法案についてはやはり慎重な審議をする心要がある、こう考えておるものでございます。  そういう観点から質問いたしますが、アジア開発銀行の結局貸し付け方針ということになるのですが、根本の方針というものは一体どこに置かれておるか。世間ではジョンソン構想とこれは関係がある、その延長である、こういうふうに言うておりますが、今日国際連合自身アメリカの過大な圧力によってゆがめられておるということが至るところで指摘されておるのでありまして、世界大戦が済んだあと国際連合ができましたときのその精神は、ちょうど新日本憲法精神のように、公正、合理かつはつらつとして人類の進路を示した偉大なスピリットが見られておりました。しかし現実の運用の過程において、もうきわめて卑俗な、きわめて簡単な例一つ見ましても、中国国際連合に加入していない。そしてたった人口一千万人の台湾が安保理事会地位を僣称しておる、こういうようなことは、とにもかくにも論理的に見て背定し得ないことであると思いますが、そのように国際連合の現在の運営がゆがめられている状況のもとで、アジア開発銀行構想が持ち出された。とするならば、やはりアジア開発銀行にも同じようなひずみがありはしないかということについて注意をすることは、これは外務委員の職責の一つであろう、こう思って御質問するわけです。したがいまして、ジョンソン構想から出発したといわれるこの関係をまずお尋ねしたいと思います。
  4. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 アジア開銀構想は、エカフェを中心にして、ジョンソン構想の発表以前からある問題でありまして、それに何ら関係するものではございません。
  5. 帆足計

    帆足委員 ジョンソン構想の中には十億ドルのアジア開発国に対する投資という構想も盛られておりますが、アジア銀行貸し付け資金というものは資金十億ドル、きわめて限られておりますので、その他信託基金とか、低金利のソフトローンとか、いろいろな性格資金を使うと唱えられておりますが、動員し得る資金はどういう種類のものでありますか。またアジア国々資金が不足でありますし、ヨーロッパの国々アフリカのことで追われておりますから、アメリカからどういうような資金がその他出るようになっておりますか。
  6. 星文七

    星政府委員 御承知のとおり、アジア開発銀行域内域外からの資本を動員するというたてまえになっておりまして、日本アメリカが二億ドルを出すことになっております。そのほか、現在のところ、日本を含めまして域内国では十九カ国がそれぞれこれに加盟するという意思を表示しております。域外国では、スイスもおそらく入るだろうと思いますので、十三カ国になる、こういう状況でございます。
  7. 帆足計

    帆足委員 そういたしますと、動員し得る資金総額は当面どのくらいになりますか。
  8. 星文七

    星政府委員 アジア開発銀行授権資本は十億ドルでございまして、ただいまのところスイスが入ると仮定いたしまして、約十億ドルを少しオーバーするというような状況でございます。
  9. 帆足計

    帆足委員 ただいまのは資本金でありますけれどもアジア開発銀行運営と連関して動員し得る金額の総額はどのくらいを見通しておりますか。
  10. 星文七

    星政府委員 ただいまのところ、授権資本以外に、先ほど仰せになりました特別基金とかあるいは信託基金というような申し入れば、アメリカが一億ドルということで申し込んでおりますが、これは他の国が同様の特別基金というものを行なった場合に、アメリカとしても一億ドル出すということを言っておるだけでございまして、おそらくことしの秋に銀行が発足するような事態におきましては、授権資本十億ドルということで発足するということになります。御承知のように十億ドル全部払うわけじゃありませんで、半分は請求があったときに払い込む資本、半分は払い込み資本ということになっております。しかもその払い込む資本のうちで、金または交換の可能な通貨が半分、あと自国通貨で納めるということになっておりますので、金または交換可能な通貨によって五回に分けて払い込みいたしますと、大体資金が三億から四億ドルくらいのところに落ちつくんじゃないかというふうに考えております。
  11. 帆足計

    帆足委員 この銀行の歴史的な意味考えるにあたりまして、一方でアジアアメリカベトナム内政干渉をし、そして激しい戦争をしておる。アメリカ軍事費は今日六百億ドル、二十四兆円、アメリカの総予算の六割五分に達している。ですからアメリカ経済機構個人意思から独立して、肝臓硬変症を起こして、からだの六割は紫色にただれて、極度のノイローゼ状態になっておること、あたかも満州事変のときの臨軍費の比重よりひどくなっておる状況であります。これは個人の意志から独立した歴史の一こまでありまして、経済学者であるならば、アメリカは肝臓硬変的資本主義、こう定義づけても別に科学性を欠いておるとはいえないと思います。  専門家の調査によりますと、低開発国アフリカ、中南米を含め、ほんとう人類が総力を尽くして助けようとするならば、二百億くらいの年間投資が必要であろう、貧苦に悩む十数億の人口を救うためには、それくらいの規模が必要である。東南アジアだけでもその一割として二十億くらいの投資が必要である。したがいまして、ほんとう意味アジア開発をしようとするならば、軍備を縮小し、核兵器全面禁止協定を行ない、そしてその資金を振り向けて、国際連合を正常な状況に置くと同時に、開発銀行にはソ連も参加し、中国も参加し、すべての国々が参加するという方向に向かうべきものである。しかし一方では非常な破壊的戦争が行なわれながら、そしてわずか十億のうち何がしかを建設に使う。そのアンバランスのあまりにもはなはだしきことにわれわれの大脳は驚くのであります。ベトナム戦争で使っている金が六百億ドルの総軍事費のうち百億ドルも使っておる状況で、そしてアジア開発銀行は十億ドル、正常な理性を持っておる者がこの数字を見て心痛まぬはずもありません。それのみか最近アメリカ毒ガス戦争に使いまして、きょうの新聞によりますと、嘔吐ガスを大量散布しております。さらに毒性農薬を農地また山林に散布いたしまして、甚大な被害を一般市民の間に与えております。御承知のようにアメリカ軍の駐とんしておるところは点と線でありますから、この毒用農薬をまきますと、ベトコンの諸君の住んでおる村も、ベトコンでない人の住んでいる村も一様にやられるわけであります。この非人道行為に対して日本農学者はみな奮起いたしまして、獣医学専門家作物学農芸化学土壌肥料学水産学植物病理学林産化学こん虫学育種学、東大はじめ各大学全部網羅した農学者が、このような非人道的行為はやめてもらいたい、こう言うておるのであります。私はいま同僚諸兄とともに平和のための、低開発国援助のためのアジア開発銀行のことをこうして論議しながら、他面においてこのようなことが行なわれておるということの矛盾のはなはだしさに、がまんできないものであります。  さらにきょうはハノイを爆撃したアメリカ軍雲南省に入りまして、そうして練習飛行中の中国機を撃墜し、そしてさらに反撃を受けてまた逃亡したということがラジオで伝えられておりますが、私はこれはきわめて危険なことであると思います。アメリカの、もちろんアメリカ立場から発言している政治家でありますけれども、私どもとは立場は違いますけれども、それはそれなりに尊敬すべき、理性的立場を持っておるフルブライト・アメリカ上院委員長は、これらのことを次々と事例にあげて、そして大統領に助言し、勧告しておるという姿を見て、私は肝臓硬変症アメリカの中に、まだその開拓者的精神が一方で残っておる。一面尊敬に値するアブラハム・リンカーンの子、他面肝臓硬変症になって、そしてもう半ば発狂状況になっておる、かの満州事変当時の日本さながらの姿——アイゼンハワー大統領がやめられたときに、若いケネディ大統領が後任になることを予想して、告別の辞を発表いたしました。その告別の辞の中に、もし今日のアメリカ軍事予算比重がそのまま続き、それがアメリカ職業軍人及び軍需工業と結ぶならば、大統領府の政策硬直状況になってしまうであろうということを余はおそれる。何者もこの圧力団体を押えることができなくなるのではないかということをおそれる。自分はきょう大統領の職を退くにあたって、このことを後継者のために助言しておく、こう述べておるのでございます。まさにその風景満州事変から盧溝橋に広がるときさながらの風景でありまして、いわば日本近衛公に当たるのがケネディ大統領とするならば、宇垣陸相のような立場アイゼンハワー立場であったろうと想像されますが、椎名外務大臣は当時商工次官として沈着に事に当たられた方でありますから、当時を思い出して、(「沈着なんてものじゃないよ」と呼ぶ者あり)非常に落ちついていたことは事実なのです。私は外務大臣の人柄をよく知っております。くそ度胸はある方です。とにかくみだりに興奮しないという美徳を持っておられることは敬意を表しますが、しかし、おもむろに当時を回顧して、そしてあの宿命あらしは小規模のあらしではありましたけれどもアメリカが同じ宿命に入るとするならば、もっと大きな災害を人類に与えるわけですから、そういうアメリカ軍事政策とこのアジ銀の発想との間にどういう連関があるかということを、やはり私どもは警戒しているような次第です。前回の政府当局の御答弁に、とにかく毒ガス禁止協定技術的にはアメリカだけが署名国になっていないにしろ、今日の国際連合並びに国際法の常識からいって、毒ガスを使うことは、それはとがめらるべきであるという御答弁をいただきました。だとするならば、この最近におけるアメリカ毒ガス戦状況、これに対してついに日本農業科学者がほとんど——これはイデオロギーや政党から離れて、学者の良心においてこの抗議を発しておるということについて、私は、外務省当局はこれに心をとめられて、この抗議文アメリカ大使館に取り次ぐくらいの御熱意はあってもいいと思いますが、最近における毒ガスの使用、それからエスカレーションの拡大、この二つのことについて外務大臣はどのようにお考えか。  さらに、最近ラスク長官は、どういう意味か知らぬが、ハノイはすでに聖域ではない、こういうことを発表しております。そして、ハノイの周辺は全部まる裸にしてしまうとも伝えられております。昨日行なわれた中国越境事件もその一環であるとするならば、私はおそるべきことであって、ハノイ聖域でないならば、今度は北ベトナム側沖縄聖域でないぞと言ったらわれわれはどうするか。まことに祖国のため、沖縄百万の同胞のために憂慮にたえぬ次第でございます。どうか、野党は三分の一ですから、与党の半分の地位しかないなどとお考えにならずに、国会議席の三分の一の勢力の代表がこうしてこもごも立って、事態を憂慮して警告をしておるわけであります。満州事変時代ならば、こういう警告をすれば直ちに巣鴨の刑務所に楽しからざる旅行をいたさなければなりませんけれども、いまは言論の自由がありまして、この言論の自由が最大安全保障であって、こうして申しておるわけであります。もうおとぼけ答弁などということにはわれわれはあきあきしておりますから、誠意を持って、こういう憂うべき状況に対して日本政府は自主的に日本の安全を守るために配慮する、やはり毒ガスを使うことはならぬという科学者声明は、これをアメリカ大使館に取り次ぐというくらいの御答弁あってしかるべきと思いますが、いまの三点についてひとつ大臣からお答えを願いたい。
  12. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 人命にかかわるようなものでなくて、警察が使う催涙ガスの程度であるということを言っておりますが、実際どういうものであるか、科学的に証明された結果についてまだわれわれは何も聞いておりません。ただそれだけの根拠でいまアメリカ大使館を通じて抗議するという考え方は持っておりません。  それからエスカレーションですか、結局北からの侵透がとまらなければ、あくまで南越の自衛上、軍事行動をやらざるを得ないというたてまえをとっております。いろいろ軍事行動ですから波があるだろうと思います。反対にディスカレーションの場合もあるだろうし、状況によってはエスカレーションの場合もあるだろうし、これは軍事行動の常でございまして、それを一々取り上げて外部からかれこれ言う必要はないと私は考えます。  それから、ラスク長官が、もはや聖域ではないという声明をしたそうでございますが、私まだはっきりこれは承知しておりません。一体聖域とは何ぞやということに対してもいろいろあいまいな点がたくさんあるのでありまして、一体国際的に聖域というのを認めるのか、認むべからざるものか、そういう点について私あまりよく勉強しておりませんので、お答えができません。
  13. 帆足計

    帆足委員 エスカレーションが進んで、聖域がないというような表現が使われれば、それでは逆に北ベトナムから言えば、沖縄軍事集結地帯最大場所一つになっておりますから、沖縄聖域でないぞという反論がなされ得ることが論理的になることを私どもは憂慮して申し上げておるわけです。エスカレーションが広がると、今度は沖縄に逆エスカレーションが来ることを心配するわけです。それについて、いま日本平和憲法の守りから、われわれの行政権から離れている核兵器基地沖縄のことを心配しているわけですが、外務大臣はどうお考えですか。
  14. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ただいまのアメリカ軍事行動沖縄とは、直接の関連性はないのであります。沖縄が直接作戦行動を起こす発進基地にはなっておらないのであります。したがって、北越が、アメリカ北爆をやると同じような趣旨において沖縄を攻撃するということは、私はこれは筋違いである、こう考えておりますし、それからまた実際問題としてもそういうことはあり得べからざる事柄だと考えております。
  15. 帆足計

    帆足委員 国際ガス協定には、戦争に使う場合の殺人的毒ガスと、ふらふらになって先般五名の豪州兵が死にましたけれども、そういうみな殺しにはならないけれども致死量にほとんど接近しているという毒ガスとの間に区別をつけておるでしょうか。
  16. 大和田渉

    大和田説明員 実は、毒ガスを禁止する条約の条文をただいま手元に持っておりませんので、正確な御答弁ができないことをまことに申しわけないと思いますが、あの条約のたてまえとして、いわゆる毒ガスと申しますのは、それ自身が有毒であって、直接人馬を殺傷するというものをいうことになっておると思います。したがって、ただ有害であるというのと有毒であるというのとの差があるのではないかというふうに考えております。
  17. 帆足計

    帆足委員 よく調べていないけれども、思います、われ思う、ゆえにわれあり、そういう議論は私は聞いても意味がないと思います。これは条約ですからお調べくださって、後刻正確な御返答をお願いします。またこういう毒ガス戦が広範に行なわれて、もう写真グラフまで出ている時代に、きょうのような会合のときに、野党の議員がこれを質問せぬはずはありませんから、もう少しそういう重要な問題に対しては直ちに答えられるように平素から御準備もし、必要な処置もとれるようにしていただきたい。同時に、外務大臣は、殺人的毒ガスまたは先般は直接軍需すなわち武器が輸送されるならば、それはとめる、また対ベトナム直接作戦はただいま沖縄で行なわれていないというおことばがありました。私はそのことばどおりであるならば、まだ不幸中の多少なりとも幸いであると思いますが、もし殺人的毒ガスまたは直接軍需、または沖縄から直接の作戦行動が行なわれるとすれば、外務大臣はこの委員会に対する答弁そのままに、これに対して否定的態度に出るという、そういう一貫した態度でいまお答え願ったのかどうか伺っておきたいと思います。
  18. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 私は事実に基づいて申し上げたわけでございまして、あの遠隔な沖縄が直接ベトナムに対する軍事行動発進基地ではあり得ないし、またそういう事実もない、こう考えております。
  19. 帆足計

    帆足委員 ですから、そういう直接に殺人ガスが使われ、また直接的兵器が輸出され、直接的軍事発進が行なわれるならば、日本政府としてはそれに反対である、だれしもこうとるのが普通なんですが、議会という場所は多少人語が混乱する場所でございますから、ひとつ正確な御答弁をいただきたい。
  20. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 沖縄には、そういう作戦用ガス製造能力はないと思います。したがって、直接の作戦行動が起こされたかどうかということと離れて、沖縄においてさようなガスを製造するというようなことは、今日においてはあり得ない、こう考えております。
  21. 帆足計

    帆足委員 これを称して顧みて他を言うということになるわけでありまして、私が申し上げておるのは、殺人的毒ガスベトナム戦争で使われたならば、これは違法である、直接軍需ベトナムに運ばれるならば違法である、また沖縄から直接的作戦が行なわれるならば日本政府の意に反することであるという原則はひとつ貫かれるものであるかということです。端的に言えば、日本から直接武器が出るならば、それはよろしくないと外務大臣はお考えですか、こういうことです。
  22. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 一般の補給の意味において、日本からいろいろな物資を調達するということは、これはどこの国でもできることでございます。ただ、法律論としてでなしに、政治論として、直接殺傷兵器というようなものが、今日の戦争に関連して日本から輸送されるというようなことがありますれば、これは法律上の問題でなしに、政治的な意味において必ずしも私はこれを適当とは思わない。しかし、さような事実は、いまのところ日本に関する限りにはございません。  それから沖縄からの直接作戦、これは施政権日本にございませんから、これまた法律的な立場からこれに対してとやかく言うべき筋合いではございませんけれども、実際問題として、そういうことはあり得ない、こう考えております。
  23. 帆足計

    帆足委員 アメリカにおける六百億ドル、二十四兆の膨大な予算の中で軍事費が余り過ぎたために、CIAにそれが流れまして、そうしてCIAは二万五千のアジア虐殺部隊をつくっておるということです。大統領ロバート・コーマー特別補佐官をその長に任命したと言われております。さらにまたニューヨークタイムズ記事等によりますと、ミシガン州立大学当局は、ゴ・ジン・ジェムの時代に、南ベトナム技術援助をするという名目で二千五百万ドル、九十億円にのぼる技術援助をしたけれども、その中に五人のCIA要員が含まれていたということが数日前に発表されました。ミシガン州立大学は、まことに恥ずかしいことに、南ベトナム政府警察官や政府職員の養成にまで口を突っ込み、秘密警察の強化、そのための武器、弾薬の供給まで行なった。カトリック系月刊誌ランパーツの四月号、ニューヨークタイムズ海外版四月十七日号、四月二十六日号等にそれが詳しく出ております。そうして、ついにワシントンからの通信によりますと、情報活動に利用されるあらゆる科学技術手段がますますCIAによって広範に使われるのみか、殺人、逮捕、誘拐等々いやしい手段が広範に使われるようになって、アメリカの名誉を傷つけておるということがニューヨークタイムズに出ております。CIA年間予算は約五億ドル、千八百億円、職員の数は一万五千人、そのうち二千二百人が海外勤務といわれております。  先日ソ連一等書記官身元不詳コロンビア人及び身元不詳の米人二名に誘拐されようとした事件がありまして、目下これは検察当局で取り調べ中でありますけれども、かれこれ思いあわせますと、まことに憂慮すべきことでありまして、この問題については、英国労働党内閣もこれに警告をし、またアメリカ国務省良識派の方々もこれに警告しているような状況でございます。こういうことを一方で行ないながら、他方平和部隊と申しましても、まことにつじつまの合わぬことではあるまいかと私は憂慮するのでございます。  ここで、アジア開発銀行株主投票権は、一体どういう割合になっておりますか。
  24. 星文七

    星政府委員 アジア開発銀行の株式といいますか、投票の問題でございますけれども、これは協定にも書いてございますように、基本的な票数とそれから出資に応じた比例票という二つからなっておりまして、比例票のほうは一株が一万ドルということになっておりますので、授権資本が十億ドルでございますので、全部がこれに応募すると仮定いたしましたときには十万株の比例票数というものがあるわけでございます。しかし協定の中には、比例票数のほかに基本票数というものが出ておりまして、基本票数の数が全体の票数の中で二〇%を占めるということに規定しております。
  25. 帆足計

    帆足委員 いま表がありませんでしたならば、次の機会に、株主一覧表と、それから銀行運営票決できまるわけですから、その票決一覧表をいただきたいと思います。また現在お持ちでありましたならば、その票決権をひとつ御発表願いたい。
  26. 大和田渉

    大和田説明員 いま星局長から御説明申し上げましたように、票は基本票と比例票に分かれております。お手元にお配り申し上げました協定本文の付属書に、現在までにこれに署名した国の応募額というものがきまっております。ただ、先ほど星局長から御説明申し上げましたように、ここに書いていない国でさらに入る可能性のある国、たとえばスイスでございますが、現在三十一カ国が署名しておりますが、もしスイスが入って三十二カ国になりますと、比例票票数が変わってまいるわけでございます。同時に基本票も変わってまいります。したがいまして、いまの段階では、まだ銀行が発足いたしておりませんので、各国について何票ということを確定的には申し上げられないと思います。  ただ、申し上げられますことは、仮定の問題としてかりに授権資本十億ドル全部に応募があって、その際基本票が何票になるかという点は、その際は基本票は二万五千票になります。したがいまして、かりに日本の例をとりますと、日本は二億ドル出資を予定しております。したがいまして、二万票、それにプラス基本票の二万五千票を加盟した国の数で割った数ということになります。したがいまして、もし十億ドル応募がありまして、基本票は二万五千票ということになりますと、日本票数は、かりに加盟国が三十一カ国であるといたしますれば、二万票プラス三十一分の二万五千票——約八百票になりますか——という数字になります。現在はまだ発足いたしておりませんし、また、今後入る可能性のある国もございますので、その表というのはいまの段階では提出できないわけでございます。
  27. 帆足計

    帆足委員 私は、この銀行が真に公正妥当に運営される種類の公団的性格を持つならば、資本のわずかばかりの大小によってきめるのでなくて、各国同じ票数を持つべきものでなかろうかという疑問を持っております。アメリカが二億ドル出し、日本が二億ドル近く出すとすれば、これは日本アメリカで牛耳り、日本アメリカに対して強い発言権がありませんから、アメリカ開発銀行を牛耳るということになりはしないかと思って質問するわけでございまして、この投票率については追って検討を必要とすると思うのでございます。  それから、このアジア開発銀行の参加国は、当然アジア諸国を今後平和な独立国として育成していくという方向に理解がなくてはならぬと思いますけれども、その参加国または理事国の中に、国際連合の植民地廃止宣言に反対投票をし、また反対とまではいかぬからせめてごまかそうと思って棄権投票した国が何カ国、どの国とどの国があるか、私は伺いたい。  と申しますのは、植民地の廃止は国際連合の規定するところ、国際連合の圧倒的多数で決議されたところ、この自明の理に対して反対をし、または賛成し切らないで棄権をした国々に私はこの開発銀行に参加してもらい、発言してもらうことは、きわめて危険であると思う。これはだれしも言うことです。したがいまして、この参加国の中で植民地廃止宣言に対して反対をし、または棄権をした国の名前を列挙していただきたい。
  28. 星文七

    星政府委員 銀行の加盟国の中には、先ほども申しましたように、域内国域外国とございまして、域内国につきましては、これはエカフェ地域はほとんど全部でございますので、先ほどの植民地独立宣言、国連総会の一五一四という決議案に対して反対した国は、日本も含めて一国もございません。域外国になりまして英国、米国、その他西欧の先進国もございますが、このうちで英国、米国あたりが棄権をしたのではないかというふうに記憶しますが、詳しいことは追って調べた上、お伝えいたしたいと思います。
  29. 帆足計

    帆足委員 大切なことになるとたいていお調べになってない。すなわち現代史課題の中核となると、これに対して不感症というか、御関心がないというのはまことに遺憾なことであります。  私の正確な記憶によりますと、アメリカはみずから英国の植民地支配を受けまして、かつて独立戦争を起こした。ちょうどいまのアジア諸国のように、新興国として独立戦争を起こした。その後奴隷解放のために、ちょうどベトナムのように南北戦争を起こした。偉大なワシントン、偉大なアブラハム・リンカーンの子であるわけです。そのアメリカでありますから、植民地解放宣言が上程されましたときには、われわれは植民地の苦しみを知っておる国であるから、だからこの宣言の趣旨はだれよりもよく知っている。植民地の定義は、他国の継続的支配を受け自治権を失っておること、こういう定義までつけ加えたのです。しかるに、最後には竜頭蛇尾になりまして、さあ投票というときには、こそこそとトイレットの中に隠れて、そうして棄権をいたしております。残念ながら、たぶんイギリスもそれからベルギーも棄権いたしたものと記憶しておりますが、ひとつ正確な御報告を願いたい。  植民地廃止に対して積極的理解がない国が、どうしてアジア諸国に対して友好の手を差し伸べ、そして共存共栄の世の中をつくろう、金まで出そうと言われるのか、それではそういう金の借り方ならば、吉原から解放されて、そうして赤線地帯のバーにつとめて前借りしたような結果になるわけですから、このアジア開発銀行並びにそれをめぐる最近の日本での東南アジア経済閣僚会議、またやがて開かれる外相会議に対して、ソ連中国、北朝鮮などの新聞論調がきわめて警戒的であって、一歩誤ればこれはアメリカの誤った極東政策に追随した東亜共栄圏の新版ではあるまいかというような疑惑の目をもって見られておるということは御承知のとおりで、問題はそこにあるのではあるまいかと思うのでございます。したがいまして、少なくとも植民地廃止宣言に対して賛成しなかった国は、アジア開発銀行理事たる資格はあるまい。少なくとも前非を悔いて、そして悔い改めのざんげを行なったあとでなければ、どうもそれにふさわしくないと私は思うのでございますが、これについて外務大臣の御答弁を求めたところで、どういう御答弁があるかはもう推察されますから省きます。  この東南アジア経済閣僚会議に次ぎまして、最近アジア外相会議が開かれようとしておる。低開発国開発に力を貸すということが純真に非政治的に一貫しておるならば、だれしも明るい思いをもって迎えるのですが、以前に閣僚会議がありましたときに、そのときの宣言に、「政治問題とかかわりなく」ということばが原文に入っていたのに、その宣言書の中から削られたと新聞は伝えておりますけれども、前の東南アジア経済閣僚会議のときにはそういういきさつがあったのでございますか。
  30. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 まだこの問題が海のものとも山のものとも世間では迷っておる時期におきましては、なるべく世間の誤解を受けないようにその性格をはっきりしておく必要があるというので、これは純粋に経済問題を取り扱う会議であって、一切の政治的色彩を全部排除してやるのだということを強調する必要があった。それでそういう文句も入っておったわけであります。その後だんだん世間の考え方も変ってまいりまして、当の招請を受けた国も全くそういう疑いを解消して、そして出席することを拒んでおった、がえんじなかったカンボジア、インドネシア、これがオブザーバーで入るということになったわけでございます。ビルマだけは入らなかったのであります。これは特別な政策を持っている国でありまして、多数国会議は、もう事のいかんを問わず一切国際会議には出ない、こういう鉄則を守っている国なんですから、これはどうにもしようがない。でありますから、これを除いては全部やってきて、そしてオブザーバーでも自由な発言を許した。そういうわけで純粋の経済建設の問題が、時間も短いのでありますが、相当突っ込んだ論議がかわされたわけであります。そして最後に共同コミュニケを発表するという段階になった。そこで、もう事実によってこれを証明しておるのであって、政治問題を離れてなどということばをいまさらつける必要はないじゃないか、そういうふうに行なわれているのだから、そういう発言があって、なるほどそうだ、これからやろうという場合には一切の政治問題を離れてやるのだというプロパガンダをする必要があったのだが、やった結果、共同声明のとき、何の必要があってそんなことをつけ加えるか、かえってつけ加えることがおかしいじゃないか、こういう議論がありまして、なるほどもっともだというのでこれは削除した、こういういきさつでございます。
  31. 帆足計

    帆足委員 懇切な御説明にあずかって恐縮ですが、しかし政治問題を離れてというそのことば自体が煙幕ではあるまいかというのが私どもの憂慮するところでございます。  そこでやがて開かれる外相会議のほうですが、この外相会議のスポンサー、ほんとうの提唱国はどこであるか、どこの国と相談して始めておるか、それから日取りはいつごろを予定しておりますか。
  32. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日取りは六月十四日、十五日、十六日の三日間でございます。  スポンサーというのは、一体どういうことなのか、よくわかりませんが、提唱者は韓国でございます。場所はやはりソウルで開かれることになっております。
  33. 帆足計

    帆足委員 会議の性質がそういうふうになる。私どもはこれを、アメリカが緩和政策をとりまして、イギリスのマレーシアに対する対策のように、新植民地主義的傾向であるまいかと一応歴史的に考えておるのでございますが、そうなったとしても、韓国は開催地としてあまりに刺激の強い場所ではあるまいかと思いますが、そのお答えを願いたい。もし公正におやりになるならば、どうも韓国はちょっと行き過ぎではあるまいか。これは余分です。だから余分の意見を申すわけですけれども、そういう感じがするというだけのことです。  それから、アジア開発銀行の貸し付けの基準はどういうふうになっているかをお尋ねしておきたい。と申しますのは、国内が二つに分裂している国の一方にだけ貸すということになれば、一方だけを奨励して他を差別待遇するというようなことで、間接的には一種の内政干渉、すなわち民族統一の悲願を撹乱するという結果を招来する。これは雑誌の論文や新聞の社説などでもよく指摘されておる一点でございます。もう一つは、内乱や戦乱のありますところに貸し付けをいたしますと、港湾の修築にしましても海底ケーブルにしましても、道路、ジープの修理、電力等にしましても、これは一種の歴然たる軍事援助性格を持ってくる。したがいまして、この開発銀行が真に国連憲章の精神に基づいて、出資した国は一国一票、アジアの福利を第一、そしてこれには、国連の外にある機関として、ソ連も加入し、中国も、北朝鮮も、北ベトナムも加盟しておる、ビルマも加盟しておる、こういう形になれば、これはもうだれしも異存のないところですけれども、今日のような形では、いま申したように、第二には民族統一の阻害になるおそれあり、第三には軍事と結びつくおそれがある。現にバンディ国務次官補はカリフォルニアのポモナ大学の演説におきまして、アジア開発計画と軍事援助とは解き離し得ないくらい、現在からみ合っておる状況であると語った。それは私は真実を語っておると思うのです。したがって、アジ銀が真に平和のためにあるアジ銀ならば、どういうような貸し付け基準をお考えになっておるか。この法案に賛成するかいなかの審議をするにあたってぜひ確かめておきたい。それを一つ伺いまして、あと一つ、時間もありませんから……。
  34. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 今度のいわゆる外相会議というのは、これは外相会議という名前も適当でない、こういうので相当論議がかわされまして、とうとうこれを変えることにいたしまして、アジア地域の協力のための閣僚会議、こういうことになったわけでございます。  その閣僚会議の開催地としてまず第一にソウルを選んだということは適当でないように思われるというお話でございますが、問題はむしろ議題、運営のその実態いかんに準備会議においては集中されておりまして、前からの提唱国であった韓国のソウルで開くということについて多数の賛成があったので、これをしも反対するというのは少しおとなげないというようなわけで、これに賛成したように聞いております。私は、開催地がソウルであるからどうのこうのということは、そういう重大な意味はないと考えるし、これはこのまま認めて差しつかえないもの、こう考えたわけであります。  あとは国連局長からお答えいたします。
  35. 星文七

    星政府委員 アジア銀行の貸し付けにあたってどういう基準でやるかという御質問ですが、これは銀行が発足しないとわからないわけでございますが、銀行協定の中には「貸付け又は貸付けの保証を行なうにあたっては、利率、手数料及び元本の償還計画は、銀行が当該貸付けについて適当であると認めるものでなければならない。」ということを規定しているのみでございますので、実際は銀行が開設されまして総務会なり理事会でこの銀行の貸し付けの利率その他についての基準というものがきまっていくんだろうということをいま申し上げる以外にはないということでございます。
  36. 帆足計

    帆足委員 この一問で済ましたいと思いますが、いま貸し付け基準を私が申しましたのは、アジアがいま混乱の状況の中にありますから、軍需と結ぶようなことになればまことに趣旨に沿わない。私どもがこの法案に賛成であろうとまた反対であろうと、とにもかくにもこの銀行はできるでしょうが、それが軍需にからみ合うことは私は望ましくない。現に日本の直接特需の場合にいたしましても、航空機の修理、これは昨年八百八十七万ドル、船舶、これはLSTの修理、その他ジャングル・シューズ、土のうなどやはり戦争に直接、間接に非常に深入りし過ぎております。一方では何十億ドルの金を使って破壊しながら、他方で建設協力とは何ぞやと、こういうことになりますから、貸し付け基準の中には平和的目的のものに限るというようなことばが当然入るべきであるまいかと私は思います。  さらに日本としてアジア諸国にただいま非政治的にできることは、技術協力でございましょう。留学生諸君の優遇などは最も大切なことと思います。日本では七百数十人と聞いておりますが、西ドイツではその何倍か、倍以上の——十倍と聞いております、西ドイツの東南アジアアフリカ諸国の技術留学生を受け入れる数は。先般の経済閣僚会議ではアジア大学をという提案もあったそうですが、私は、もしそういう提案が実現するならば、それは技術大学であることが望ましい、政治問題でなくて技術大学であることが望ましいように思います。  最後に、椎名外務大臣が政経分離の観点から——政経分離という意味には私二つあると思うのです。すなわち、他国の内政干渉や政治的雑音にわずらわされずに、経済のことは、島国日本として経済のこととしてたんたんとやってまいりたい。これはだれしも干渉すべきことでない。こういう意味における政経分離ということば意味ならば、私はうなずき得る一面があると思うのです。他面、私どもが政治と経済とは不可分であるというのは、一方で戦争をしかけながら他方で貿易をすることはできませんから、かつて自由、平等、博愛ということばが貿易の背後の哲学でありましたように、隣邦と政治組織その他が違いましても、相互理解、友情、平和への努力、そういうことを背景としながら経済の発展が進むことが正道である、そういう意味でございます。しかし、いま内外の雑音の激しいときに、とにかく政治的雑音は排除して、そして経済経済として生きようというならば、それもまた善意に基づくものならば一面の真理があるものと私は思います。大臣が、条件が許すならば、中国に対してもその他に対してももっと貿易を拡大し、また純粋に貿易技術の要務員であるならば入国も通産省と相談して認めよう、たんたんとして認めようという御努力を続けてこられている経過はわれわれも外務委員として承知しておりますけれども、最近また韓国政府がヒステリーを起こしまして、重大な決議があるというようなどうかつをいたしております。これに善処するタイミングというものについては、行政当局の御苦労のあるところと思いますが、われわれ外務委員としてはそういうようなまるで女の子のやきもちのようなどうかつは、経済のために、またいわゆる善意の政経分離の原則から見ても望ましくないことと思います。したがいまして、せっかく外務大臣にはその点について理性に狂いのないようにひとつ御努力願いまして、国内における世論というものは、経済貿易国日本としては、とにかく貿易のことは貿易として貫いてもらいたいという声が圧倒的であるということを、御激励をかねて外務委員の気持ちを申し上げておきたいと思います。  先ほどの留学生の問題並びにただいまの問題につきまして、せっかく激励いたしましたことがまた雑音としてはね返ることでも困りますから、日本の国益になりますような方向において御答弁を願えればしあわせと思います。
  37. 大和田渉

    大和田説明員 先ほどの先生の御質問の毒ガスの問題でございますが、私手元に条文がないということを申し上げたわけでございますけれども、この条文、具体的には、大正十四年ジュネーブで署名されました「戦争における窒息性、毒性又はその他のガス及び細菌学的戦争方法の使用禁止に関する議定書」これによりますと、「窒息性、毒性又はその他のガス」ということは書いてございますが、このねらいといたしますのは、人間を窒息させる、あるいは人間に毒性をもたらすというのが趣旨であると思われます。したがいまして、たとえば植物を毒によって枯らすというような趣旨のことは、この議定書の規定の範囲外であるというふうに考えております。
  38. 西山昭

    ○西山政府委員 御指摘のとおりに、ドイツ等に比べまして、日本に受け入れます留学生の数は少ないのでございます。これは言語の関係だとか収容能力の関係とか、その他いろいろ事情がございますが、最近の日本政府の努力の方向といたしましては、技術協力に非常に重点を置いておりまして、これらの施設の拡張をはかるとともに、待遇を改善し、かつ従容の人員も増加するように努力しておる次第でございます。
  39. 帆足計

    帆足委員 これが最後ですが、留学生の受け入れ態勢につきましては、外務省の外郭機関にアジア留学生の協会のようなものもございますし、それから穂積議員の御令兄がやはり留学生受け入れの、よい仕事をなさっております。私は、留学生の受け入れに対してはもっと予算を使って、技術留学生のほうに重点を置いて、来年はもっと多くの予算を組んでいただいて、しかるべき待遇をしてさしあげて、そして外務省の老朽淘汰の場所でなしに、やはり留学生の教育について一見識のある人に理事長になっていただいて処置していただきたいと思います。これは与党野党一致することでございますから、来年度の予算においてひとつ格別の御配慮をお願いしたいと思います。  最後に、アジ銀に本来ならばソ連中国、全部入って、公平なものをつくる、それならば私は与野党何も意見の違いがないのじゃないかと思います。ジョンソン構想が最初スポンサーになったと世間は言うておりますが、それはとにかくといたしまして、ソ連中国、その他の国々がこれに参加してない、そういう点においては両方の対立を激化する一面があると思いますが、それに対する御意見なり経過なり、一言だけお聞かせ願いたいと思います。大臣もお急ぎですから……。
  40. 星文七

    星政府委員 アジア銀行域内の加盟国だけに開放されているわけではなくて、域外の先進国であって、しかも国連及び専門機関というものに開放されているわけでございます。ビルマが加盟の意思を表明しておりませんのは、ビルマ独自のいろいろな国内事情によるものではないかというふうに思っております。それから、ソ連はエカフェの域外国でございますが、これはむしろ、こういう銀行というものに対しては域外の国が資本を出すということは少しいけないのじゃないか、それからまた、域外資本を出すにしても、それは特別基金というふうなものによってやったほうがいいのじゃないかということを言っております。これに対してアジア銀行そのものに対して積極的に反対しているものではないということを申し上げたいと思います。それから中国でございますが、エカフェの域内国と申しますときには、中国は、国連総会の決議によりまして、国府が中国を代表しているというたてまえをとっておりますので、台湾、いわゆる国民政府がこれに入っている、そういう状況でございます。
  41. 帆足計

    帆足委員 私はこれで質問を終わりますが、普通の常識でいうならば、アジア開発銀行に、だれしも表面だけを見るならば、たいして論議なしに賛成し得るわけでございますけれども、しかし、アジアの動乱が今日のごとく深刻であり、アメリカの極東政策は今日のような重大なひずみを持っておる段階において、先ほどのバンディ次官補が正しく指摘をしておりますように、軍事援助とこんがらがってしまうという点を私どもは非常に憂慮しているわけでございます。したがいまして、その点をもっと突っ込んで検討したいと思っておりますから、さらに質問は順を追うて審議が続くことと思いますから、きょうは時間のお約束どおり、これで終わります。
  42. 高瀬傳

    高瀬委員長 竹本孫一君。
  43. 竹本孫一

    ○竹本委員 私は簡単に、アジア開発銀行アジアの問題、開発の問題、銀行の問題等に分けてお伺いをいたしたいと思います。  第三条によりますと、加盟国のことが書いてあるわけでございますし、先ほどまた、三十一カ国が参加を予定しておるというふうなお話でございましたし、スイスが入れば三十二カ国になるというようなお話がありました。それらの範囲から考えまして、特に幼稚な質問になりますけれどもアジア開発銀行といって東南アジア開発銀行といわない、あるいはそういうものでなかった理由はどんなものであるか、伺いたいと思います。
  44. 星文七

    星政府委員 アジア開発銀行を設立する協定の目的の中に、「銀行は、アジア及び極東の地域における経済成長及び経済協力を助長し、並びに地域内開発途上にある加盟国の共同的な又は個別的な経済開発の促進に寄与することを目的とする。」というふうに書いてございまして、このアジア及び極東の地域というものはエカフェの付託事項によるところの地域ということを意味しているわけでございます。
  45. 竹本孫一

    ○竹本委員 私が聞いているのは、問題は、エカフェがそういう範囲であり、それを受け継いだというような御説明でございますけれども、特にアジアと言って東南アジアと言わなかったという理由としては、いまの御説明は十分でないと思いますけれども、もう一度それも伺いたいし、特に、ビルマ、モンゴル、インドネシアについての加盟の問題についても御説明をあわせて伺いたいと思います。
  46. 星文七

    星政府委員 先ほども申しましたように、この協定はエカフェの事務当局が中心になってやりまして、エカフェの総会がイニシアチブをとってやるという関係で、東南アジアとしないで、アジア及び極東の地域、つまりエカフェが取り扱っている範囲の地域のためにつくられたというふうに考えております。  それからもう一つは、インドネシアは、御承知のように国連から脱退いたしまして、エカフェから脱退したという事情がございまして入っておりませんけれども、しかし、これにつきましても、インドネシアは国連の専門機関にはなお入っておりますので、インドネシアのほうで入ろうと思えば入れる、決してとびらを閉ざしているものではないというふうに御了解願いたいと思います。  モンゴルにつきましては、先ほど申しましたように、おそらくソ連と同じような考え方で入っていないのではないかというふうに考えます。  それからビルマにつきましては、ビルマの特殊事情から加盟の意思を表示していないわけでございまして、私たち仄聞するところによりますと、ビルマは、国際連合、そういう大きな会合と申しますか、そういう団体には入るけれども、地域的なそういったリージョナルなものには入らないというような施策をとっているようでございます。しかし、その意図が何であるかということは憶測の域をこえないということだけ申し上げておきます。
  47. 竹本孫一

    ○竹本委員 これも幼稚な質問でありますが、エカフェということでわかるのですけれども、また、事実エカフェを利用するということがいまの段階で具体的には非常に適切な方法であるということもわかりますが、同時に、こういう新しい構想日本も参加して考えるということになれば、必ずしもエカフェのワク内だけにとらわれないでもいいではないか、あるいはそれの例外を認めて、範囲を広げることも考えてよかったのではないか。その点をもう一度ちょっと伺っておきたいと思います。
  48. 星文七

    星政府委員 アジア開発銀行と類似の機関が御承知のようにアフリカにもございますし、それから米州開発銀行もございまして、そういった銀行は大体地域内の国の参加ということだけを認めているわけでございますが、このアジア開発銀行につきましては、何しろアジア自体が資金の供給という点については非常に不十分であるというところから、外域まで広げてまいったという事情でございまして、域外からは先進国が入る。つまり、域外の地域からは、それだけの追加的な資金をたくさん得るようにという配慮から域外にまで広げているわけでございまして、この協定に書いてある範囲というものは、大体大きくいって、将来すべての域外の先進国を包含し得るような非常に大きな範囲を設定しているというふうに私は考えております。
  49. 竹本孫一

    ○竹本委員 もう一つ伺っておきたいのだけれども、この協定を見ますと、「アジア及び極東の資源」と書いてあるし、至るところに「アジア及び」と書いてある。アジアと極東の概念規定はどういうふうになっているのですか。
  50. 星文七

    星政府委員 「アジア及び極東の地域」というものは、エカフェ自体のエコノミック・コミッション・フォー・エーシア・アンド・ファーイーストということから来ているのでありまして、したがって、「アジア及び極東の地域」というふうに書いてございますけれども、エカフェの付託条項をそのままとってきたということだけでございます。
  51. 竹本孫一

    ○竹本委員 そのままはよくわかっておるのですけれども、「及び」ということばを特に入れているのはどういう意味かということを聞いておるのです。
  52. 星文七

    星政府委員 これは何べんも申しましたように、エカフェの付託条項そのままをとっているわけでございまして、「アジア及び極東の地域」と第一条に書いてございまして、「(以下「地域」という。)」というふうに書いているわけでございます。
  53. 竹本孫一

    ○竹本委員 いまの答弁では納得できないのですが。私の聞いているのは、英語ではアンドで結び、日本語では及びということばを入れて、何か「及び」であり「アンド」であるように書いているけれども、この概念規定自身がおかしいじゃないかということを聞いているのです。何か御説明はありませんか。
  54. 大和田渉

    大和田説明員 エカフェの付託条項によりますと、そこに具体的に地域名が載っております。その地域の中には、たとえばアフガニスタンであるとか、あるいはイランであるとか、つまり極東以外の国も入っているわけでございます。そういうことを考慮してエカフェ自身がそのような名前になったのではないかと思っております。  それから、この条文にそれを援用いたしましたのは、それはエカフェ地域を意味するものだという意味でエカフェの名前そのものをとった。それでその後にその条文での引用は、その地域をいきなり「地域」という式なことばを使っておりますけれども、その地域はいわゆるエカフェ地域を意味するものであるというふうに規定されておるわけでございます。
  55. 竹本孫一

    ○竹本委員 そこで本質論に入りたいと思いますけれどもアジア開発銀行という、非常にアイデアとしてはおもしろいアイデアだと思いますけれども、具体的に考えてみた場合に、アジア開発銀行ができて具体的に成果をあげていくためには、アジアの連帯感というものがもう少しつちかわれていないとだめじゃないかと思うのです。先ほども外務大臣からもお話がありましたように、アジア外相会議だとかあるいは東南アジア開発閣僚会議とかいっても、たった一回やっただけじゃないかと私は思っておるのです。その程度の連帯意識あるいは連帯関係の実情の中で、この開発銀行というものが、アイデアとしてはわかりますけれども、生きた具体的な政策として効果をあげる政治的な基本条件があると考えられるのかどうか、その点私非常に心配でありますが、外務大臣からお伺いをいたしたいと思います。
  56. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 先般の東南アジア開発閣僚会議のあの地域につきましては、いまの御質問に関連して私からやや補足的に説明する必要があると思いますが、結局経済開発のねらいとしては、その地域内一つの緊密な連帯感で結びつき得る要素を持っておる必要があるのじゃないか、これよりもっと広げますと、どうもいろいろな気候風土それから文化あるいはその他いろいろな関係からいって共通点が非常に薄らいでくる、そこで経済開発の上において連帯感を強め、そしてお互いに助け合う、協力し合うという気持ちが生まれてくるようなところ、しかも現状は非常におくれておるというところをねらったのが先般の東南アジア開発閣僚会議でございます。この際にもインドその他から、一体どうしてわれわれは加わることができないのだという説明を求められたのでありますが、開発の段階があなた方と違うのだというようなことを言っておきました。やや納得して別れたわけでありますが、韓国それから台湾、これにつきましても、ことに台湾なんかフィリピンのすぐ隣にありますから、いろいろな意味において共通要素があるわけでありますけれども、これまた開発の段階が違う、こういうことでこれから省いたというわけでございまして、アフガニスタンや何かからはそういう不審の質問はございませんでしたけれども、やはりアジアの、多少薄くとも連帯感というものを持っておるので、どうしてわれわれを入れないんだというふうな気持ちを持っておるそれ自体が、やはり古くから同じアジアに属するということで連帯感なり近親感なりを持つ、そういうことがどうもあるわけであります。ただ、その濃度いかんによって、問題によっては区別しなければいかぬ、こういうことに考えております。中近東のほうもアジアということになっておりますけれども、これはまたやはりアジア人としての意識を持っておるクウェートあるいはサウジアラビアあたりの人たちであっても、同じアジア人であるというような意識のもとに発言がございます。どういうふうにとらえるかということは、そのときどきの具体的な問題点によって違うと思いますが、エカフェが広くアジアというものを対象にして国際連合の一環として、地域機関として働いており、そのエカフェの中からこういうアイデアが生まれたということでございますから、それを踏襲していくのが自然じゃないか、こう考えております。
  57. 竹本孫一

    ○竹本委員 いま大臣もお認めになっておるようでありますが、政治的な連帯感が薄いということでありますが、薄いからこれから厚くしていくのだということであれば、これまたいろいろ考え方が変わってくる。先ほども帆足委員からも御意見、御質問がありましたけれども、やはりこれから、われわれのアジア平和外交の基本的な考え方からいえば、それこそ薄いものを厚くしていくのだということになれば、あるいはソ連の問題あるいは中共の問題についても、もう少し展望をきめこまかく考えていく必要があったのではないかという感じがいたします。これはしかし先ほど御意見が出ましたので私はこれ以上触れませんが、問題は、いまお考えになっておる範囲について限定して考えてみましても、連帯感が弱いんだ、これを経済開発で厚くしていくんだ、濃くしていくんだ、濃度を増していくんだということになりますと、私その考え方としては賛成できると思いますが、その場合に銀行という形でいくことがいいかどうか、これがだいぶ問題だと思います。これはしかしあとで触れてまいりたいと思います。  そこで次に進めますけれども、この銀行の出資の面等におきまして、日本アメリカが特にリーダーシップを持っておるような感じを持ちますが、そういうことがはたしてアジアの全体の信頼と協力をかち得るのにいいのかどうか、あるいはそうではなくて考えられておるのか、あるいはさらに新しい構想アジアの全地域の国々からほんとうにこの開発銀行に信頼も期待も持たれるような形が整えられていくのかどうか、その点若干心配でありますので、大臣からお考えを伺っておきたいと思います。
  58. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 先ほどもお話がありましたが、モンゴルとビルマとインドネシアのほか、あとはほとんど全域入っておるわけでございます。これはやはり連帯感という点から言うと、決して強固のものではないけれども、これを強めていくという努力をすべきだと思いますが、御質問の趣旨がこれで尽くせるかどうかわかりませんが……。
  59. 竹本孫一

    ○竹本委員 第二の問題に入ります。  時間がありませんので、大急ぎでどうも趣旨を尽くせませんけれども開発の問題であります。この経済開発の主体は、一体この銀行はどこを考えておられるか、国であるか会社であるか、あるいはそれぞれの地域における銀行中心に押し立てていこうというのであるか、それらに対する基本的な考え方を伺いたいと思います。
  60. 星文七

    星政府委員 主体はやはり加盟国でございまして、しかし、加盟国の公的機関あるいは私的機関というものに対しても将来援助できるという道をあけております。
  61. 竹本孫一

    ○竹本委員 それにつきましては、国がやる場合、あるいは加盟国の銀行にただ金を貸してやる場合、あるいは会社にやらせる場合、いろいろの利害得失が従来もありましたし、今後もあると思うのですけれども、その辺につきましてはどういう検討を加えられたものであるか、伺いたいと思います。
  62. 堀込聡夫

    ○堀込説明員 大蔵省からお答えいたします。  これは協定の十一条にございますが、受益人は国から私企業まで全部一応並列的に書いてございまして、それをどういうふうに運用するかはやはり今後の総務会、理事会等で逐次決定されていくべきものであるというふうに考えます。
  63. 竹本孫一

    ○竹本委員 十一条は私も拝見いたしましたけれども、そのどこに重点を置くか、また重点を置く理由はどういうわけか、利害得失いろいろあります点をどういうふうに政府は検討された結果、どこの機関、どういう形でそこに重点を置くということになっておるかという考え方を質問したわけであります。
  64. 堀込聡夫

    ○堀込説明員 その点につきましては、世銀におきます先例その他がいろいろの参考になろうかと思うのでございますが、現在までのところ、どの主体に重点を置いて貸し付けを行なうというふうな考え方は、日本の政府内ではまだきめておりません。今後の各種の状況を見まして、総務会、理事会等で検討していくべきものだというふうに考えます。
  65. 竹本孫一

    ○竹本委員 私はいまの答弁はちょっと不満であります。従来金を外国につぎ込んだ場合に、その受け入れる主体のいかんによってずいぶん効果が違っておると思うのです。それらの問題については、これから日本も二億ドル出すわけですから、どこへ持っていくのが一番効果があるかということについて、もう少し具体的な検討があってしかるべきではないかと思いますから、これは希望を申し上げておきます。  次に、金を貸す場合にしても出す場合にしても、東南アジアでなくても、アジアということでございますが、アジア開発の全体的な総合的、長期的な、基本的な計画がないと、やはり問題はまずくなると思うのです。ところが、先ほどもお話がありましたように、EECと違いまして、格差も非常に違う、条件も非常に違うということでありますので、これがまた非常な心配なのでありますけれども、ただ言ってきたものに思いつきで、つまみ食いみたいな形で次々に出ていく、やらないよりはやったほうが若干ましであるという程度においては、このアジア開発銀行の機能も評価できますけれども、しかしせっかく日本が腹を据えてアジア政策、特にアジア経済開発、低開発国開発の促進ということに力を入れようということであるならば、日本日本なりにアジア経済のあるべき姿について一つのビジョンなりマスタープランなりを持って、それの一環として個々の具体的な貸し付けが行なわれるべきではないかと思うのでございますけれども、もちろんいまはないのですが、これは一体将来アジア経済開発に関する総合的長期的な計画というものを政府は考えようとしておるのであるか。考えるというならば、どこでどのように考えようとしておるのであるか、その点をひとつ、これは前提条件になる問題でございますから、伺っておきたいと思います。
  66. 西山昭

    ○西山政府委員 現在、御指摘のとおりに、全般的なアジア全体の開発計画というものはないのでございます。たとえばアジアのハイウェー計画だとか、その他若干ございますけれども、全般的な各国を網羅したような計画は遺憾ながらないのでございます。また将来におきましても、全般の国を網羅した総合的な地域的な開発計画ができるかどうか、なかなか問題だろうかと思います。ただし各国ともいろいろ経済開発計画を持っておりまして、これを実行いたします場合に、所要の財政の面と、あるいはそれに伴います外貨の不足分の調達とか、いろいろ問題がございまして、そういうものを各国独自で検討してやることはもちろん必要でございますが、これが効果的に実行されますためには、広く世界銀行あるいはその他の国際機関とも連絡しまして調査を行なう。それからまた計画の遂行を行なうという機運にございまして、このために世界銀行あたりでは地域内の若干の国を取り上げて、特別に関係国が研究の対象にするというような方向に向かいつつあります。そしてまたそういうものに関連いたしまして、OECD等におきましては、いろいろ作業が重複しないように、あるいは効果的な提携ができるようにいろいろの面から検討しておりますし、また検討する機運にございます。これらの問題は将来の方向としてますますそういう検討が強化されて、そういう統一的と申しますか、総合的な見地からむだを省くような方向に行くことになると思いますけれども、現状におきましてはまだはっきりした計画があるわけではございません。アジア開発銀行一つの大きな機能として私ども考えておりますのは、そういう経済計画の技術的な面におきまして、アジア開発銀行あたりが将来におきましては地域の中の機関として重要な役割りを果たす地位にあるのじゃないか、こういうぐあいに考えております。
  67. 竹本孫一

    ○竹本委員 お考えは大体わかりますが世銀の話その他も出ましたけれども、やはりアジア開発に関する長期、総合的な基本計画がなければならぬという必要については、一応政府もお認めになっておると思うのでございますが、まだそこまで段階が至っていない機運にあるということでございます。  これは具体的な話でございますが、結局アジア開発銀行は、この間私がアメリカに参りましたときにも、渡辺さんがちょうどアメリカのガルブレイスその他の学者に会って、これはいろいろのアジア投資に関するコーディネーションができるという説明をしておるのだというお話がございました。そこで具体的な問題になりますが、そのアジア開発銀行は各国のいろいろ考えておる投資あるいは開発の計画、そういうものに関する情報の収集をすることができるたてまえになっておるかどうか、その点はどうでございますか。
  68. 星文七

    星政府委員 そういうことができるたてまえになっているというふうに承知しております。
  69. 竹本孫一

    ○竹本委員 ちょっといまの御答弁はよくわからなかったのですけれども、同時にその基礎に立って、あるいはそのデータの上に立って十億ドルというのはどういう計算をされた結論であるか、この十億ドルあるいは二十億ドル、これは先ほどもお話が出ました一体アジアの停滞性を打破していくためにはどのくらいの金が要るか、これも大きな問題でございますが、それらとにらみ合わせて十億ドルというのはどういう計算の上に立ったものであるか、それを伺いたいと思います。
  70. 星文七

    星政府委員 先ほど申しましたのは、いろいろな情報というようなものを銀行でとれる、そういう態勢にあるということを申し上げたわけでございます。  それからただいまの十億ドルというのは一体どういう根拠でつくったかということなんですが、これは世銀とか、あるいは米州開発銀行であるとか、あるいはアフリカ開発銀行というようなものの先例に徴しまして、大体域内国の国民所得の〇・五%というところで押えていくと、十億ドルというふうなことが出てくる。そこで、アジア性格でございますから、アジア域内で大体六億ドルくらい、そうなってくると、域外から四億ドル、六対四の比率でいこうということで、十億ドルという大きな線が出てきたというふうに考えております。
  71. 竹本孫一

    ○竹本委員 今度はその金を貸してあるいは援助協力をする。先ほど主体は国であり、あるいは公の機関であり、あるいは私的な会社である、いろいろな話がありましたけれども、今度経済的に考えた場合に、これからの援助協力というものは、道路、港湾、電力といったような外部経済中心考えておるのか、重化学工業を東南アジア等の低開発国にどんどん興していこうというのか、あるいは軽工業を中心に興していこうというのか、その融資のねらいはどこにあるかということをひとつ具体的に伺ってまいりたい。特定のプロジェクトをあれするのだといっても、いろいろな基本的な考え方によって結論が変わってくると思います。こういうことをお伺いする理由は、先ほども社会党のほうからいろいろお話がございまして、特に軍事援助経済開発とが直接結びつくというバンディさんの考え方や発言もあったようでございますけれども、そういうこととの関係、それは別問題といたしましても、日本の産業資本あるいは日本の独占資本、そういったような立場から、この問題はいま言った外部経済の充実というところに重点を置いて考えていくのか、重化学工業を興すというほうに持っていくのか、軽工業を興すというのか、その辺について、将来の日本の産業とのいろいろの関係もありますし、特に具体的なねらいはどの辺にあるのか、伺っておきたいと思います。
  72. 星文七

    星政府委員 この問題はいますぐお答えできるような状態にないわけでございまして、銀行が発足いたしまして総務会あるいは理事会等でいろいろな具体的な方針をきめていくのだろうというふうに思いますが、この協定の上では、「地域の全部若しくは一部又は一国を対象とする事業計画及び総合計画であって地域全体としての調和のとれた経済成長に最も効果的に寄与するものを優先させ」るということになっていることは御承知のとおりでございます。それから同時に、銀行はその業務の運営にあたりまして、「健全な銀行経営の原則をその業務の指針としなければならない。」ということを書いてあることも御承知のとおりだと思います。したがいまして、銀行創立の当初の期間におきましては、あまり条件のゆるいようなそういう業務というものはやりにくいのじゃなかろうか。特別基金でも入ってくれば別でございますが、銀行の自己資本からそういうことをやっていくのにはむずかしいのじゃなかろうかというふうに考えております。  それから、先ほどの軍事的な目的云々というお話がございましたが、これもこの銀行協定の中には、「銀行は、銀行の目的又は任務を阻害し、制限し、ゆがめ、又はその他の方法で変更するおそれのある貸付け又は援助を受け入れてはならない。」あるいはまた、その「関係加盟国の政治的性格によって影響されてはならない。」というふうなことが書いてございますので、そういう面から政治活動が禁止される。銀行の国際的性格というものがそういうところから生まれてくるのじゃないかというふうに考えております。
  73. 竹本孫一

    ○竹本委員 私が聞きましたのは、いま御答弁のありましたようなことはもちろん必要でありますけれども、もう少し具体的な産業経済の実態に触れた問題をお尋ねしているわけでございますけれども、時間がありませんので、個々の問題についてはあらためてまた審議をさしていただくことにいたしまして、きょうは次にまいります。  そこでひとつ経済開発について、大臣もおられますので、一つ伺っておきたいと思いますが、こういうように金をやるあるいは金を貸してやるということも大事でありますけれども、低開発国の場合に一番問題になりますのは、ぼくは技術だと思います。そこで、先ほどアジア大学の話や留学生の話がありましたけれども、私も東南アジアを回りましたし、あるいはアフリカに新しく独立国をつくった青年の諸君とお会いしたこともありますが、そのときこういう話を聞いたことがありますので、ついででありますからお尋ねをしておきたいと思うのでございます。  産業発展の水準段階等の問題を考えますと、東南アジアあるいはアフリカ、AA諸国の国々は、日本に行って技術を勉強するのが一番有効適切であると思うけれども、残念ながら日本語が一番ふえてだ。そこで、ほんとう意味で後進国の経済開発日本が乗り出そうというならば、何といっても技術に対して具体的な協力をしてもらうことだし、その技術を覚えさせる、日本でいいますならば大学ではなくて工業高等学校をつくってもらいたい。英語だけはわれわれとにかく独立国の武器としていまもう勉強しておる。この英語で技術を教えて習得をさしてくれるそういう工業高等学校みたようなものを日本につくってもらいたい。そこにわれわれ独立の意欲に燃えた青年が行って、英語だけは勉強していくから、講義は全部英語でやってもらう。そして技術を習得さしてもらえば日本もいいだろうし、われわれも助かるのだ。アメリカやドイツに行ってもあまり役に立たない。ちょうどいわゆる中心国の先輩である日本が一番いいのだというような話を聞いて、私は非常に印象を深くしたのでありますけれども、その点で、そういうものについては外務省は何らか具体的な、アジアの後進国の技術を指導してやる日本立場において、英語で教える高等学校でもつくるというような考え方はないかということが一つ。  それから、時間がありませんのであわせて伺いたいのですが、日本の海外技術協力は非常に不徹底である。予算の規模においても非常に少ない。さらにやり方がドイツやよその国と比べてみるとばかに遠慮し過ぎて、日本の産業発展に具体的に結びついたような形で生きた協力をやっていない。私はタイその他を見て回りましたときにそういう印象を受けました。そこで第二の問題として、海外技術協力をこの辺でもう少し思い切った、予算の面だけでなくて、やり方についても、日本の産業発展あるいはアジア経済開発といったものにもう少し魂の入ったものに海外技術協力を切りかえていくお考えはないか、あわせて伺っておきたいと思います。
  74. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 大綱的に私からお答え申し上げます。  いま技術研修につきましては、かなり東南アジア——特に東南アジアのほうから来ております。また日本といたしましても、技術者の派遣あるいは諸般の技術のセンター、そういったようなものはやはり東南アジア中心にして配分されておるような状況であります。  そこで、それをもっと効果あらしめるために、語学の点について考える必要はないかというお話でありますが、この点は言うべくしてなかなか行ない得ない事柄でございまして、十分にひとつ——そうかといって、日本人が一緒にまた英語を勉強してそれから教えるというのよりも、若い連中がまず日本に来て日本語を覚えるというほうがいいのか、そこらのかね合いもなかなかむずかしい問題であります。いずれにしても、共通の語学というものがちゃんとはっきり確立されておりませんと、教習の効果を十分にあげることができない。その点については十分に研究してもっと効果のあがるようにいたしたいと思います。  それから予算、これは当の機関を扱っておる人たちからもやかましく言われておりますし、この面こそ非常に力を入れなければならぬ問題である。先進国の例からいうと、非常にみみっちい規模でございます。これを極力拡張するようにつとめておるのでありますけれども、何しろ帰り新参と申しますか、急にまた国際社会の一員として返り咲いた日本でありまして、なかなか思うようにいかないという点が一つの大きな悩みであります。今後ともひとつ皆さんの御協力を得まして、この方面の予算獲得につとめたいと考えております。
  75. 竹本孫一

    ○竹本委員 いまの問題は二つとも前向きに大臣の御検討を希望いたしておきまして、次にまいります。  銀行ということでございますが、アジア開発銀行ということになったのはどういうわけかということであります。私はこれは先ほど一番最初にも申しましたけれども、今日のような政治的な連帯感が十分でない、それから経済の発展の格差が非常に激しい、非常に入り乱れております。こういうところに銀行というような形で援助協力の手を差し伸べるのがいいか、あるいは経済開発を直接担当する、いまのはやりのことばで言えば公社か何か、そういうようなもののほうがいいのか、その点についてどういう御検討を行なわれたのか、お話しいただきたいと思います。
  76. 星文七

    星政府委員 この銀行の問題は、先ほども申しましたように、エカフェのいわゆる地域閣僚会議というところから持ち出してきた問題でございまして、アジアには銀行がない、ほかの地域には銀行があるということから来たのではないかというふうに思っております。もちろん経済開発を行なうのに銀行ではなくて、もっといろいろソフトローンでやれるような機関があればそれに越したことはないわけでございます。しかし何しろアジアの中での資本の能力というものは非常に限られている。ですからまず銀行をつくって、それからアジア域外国からも銀行に対する協力を得ようというところで、銀行というアイデアが出てきたというふうに思っております。
  77. 竹本孫一

    ○竹本委員 いまの御答弁で納得できないのですけれども、たとえば日本の農村でも、おくれたところにまっ先に銀行を持っていって建てるというような乱暴なことは、経済政策から見ればむちゃくちゃだと思うのです。やはりそこに、いま日本で言いますならば、たとえば農協ができ、そして生産を担当し、あるいは流通過程においていろいろ役割りをなす、それがまた信用組合あるいは信用協同組合といったようなものから発展して、さらにそれが信用金庫となり、あるいは相互銀行が出てきて、そのあとに今度は銀行が出ていくのです。経済の発展というものを段階を追って、極端に言うならば最後の段階で銀行というものは大きな機能を果たすことができる。先ほど来お話のありましたように、東南アジア日本で言うと農村地帯、山岳地帯みたいなものでありますから、このところのまん中へ銀行を持っていって建ててみても、その銀行は一体どれだけの役割りを具体的に果たし得るか、なぜ初めから銀行に持っていったのか、あるいはまたなぜ銀行でなければならなかったのか、ほかの代案、方法を考えられたのであるかどうか、考えられたとするならば、どういう理由で銀行になったか、その点を伺いたい、こう言っているわけであります。
  78. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 資金の出場がこれだけに限られるということであるといろいろまた議論が分かれてまいりますが、政策的な資金援助経済協力、こういったようなものは同時にあるという前提のもとにこれを考えないと、私は実際的じゃないと考えます。でありますから、このアジア開発銀行は一応とにかくある用途が起こってさあ金だという場合に、そこらじゅうかけめぐるのではとてもいかぬので、やはり一つの基金的な存在がちゃんとあって、そしてそこから一定の基準によって金を引き出す、こういうことが非常に便利な場合があると私は思うのです。これだけだと、私はこれは確かに問題だと思う。もう少し政治的な政策的な意味で、ある国からある国に対して経済援助が行なわれる場合もあります。それからまた貿易政策によって資金が流れる場合もある。いろいろな形で所要資金は流れてくるのでありますが、そのうちで事業としてかなり成り立ち得るというようなものがあった場合に、国内の金だけではとても追っつかない。そこでどこかへかけ込むが、しかしそれだけでもいかぬという場合に、やはり地域内の基金というものがちゃんとありますと、そこでまずそれを弁ずることができる。こういう便宜がある。そういう意味の地域開発銀行ではないかと考えます。でありますから、この銀行を何か非常に政治的な目的あるいは軍事的な目的に使うなんということは、これは銀行というものを知らない人の発言でございまして、そういうものはまた別に調達すればいい。こういったようなものはあくまで純経済的な立場において運営されるということを前提にして、しかも基金的なものがちゃんと存在するということは非常に便利である、こう私は考えております。
  79. 竹本孫一

    ○竹本委員 私はどうも開発銀行の具体的な内容についてきめのこまかい検討がなされていないで、ただアジア開発銀行をつくるというと、時局柄、アイデアとしてちょっとおもしろい、金も何とかその辺からかき集めるとかいったようなものであって、いま大臣のおっしゃったように、むしろ案自体がしろうとの思いつきみたいな感じを受けるのです。もう少し総合的、具体的な産業経済政策の裏づけといったようなものが考えられて、その中でこれが取り上げられるべきだと思います。そういう総合的な視野がむしろ前提になければならぬのだということを強調いたしまして、次にまいります。  先ほどもちょっとお話の出ましたソフトローンの問題でございますが、ソフトローンとはどういう意味で言っておられるのか。またそれを一〇%に限定をしておるようでございますけれども、それは一体どういう基準で考えておられるか、伺いたいと思います。
  80. 堀込聡夫

    ○堀込説明員 アジア開発銀行がある事業に融資をいたします場合に、事業の立場からいけば、できる限り金利の低い、償還年限の長い、いわゆるソフトな条件の資金が望ましいわけでございます。   〔委員長退席、三原委員長代理着席〕 そういうふうな各国がやりたい事業がいろいろある。そういうものに対してやはり資金が要るのではないか。たとえば世界銀行が通常の貸し付けをやりますけれども、そのほかにIDAと申します長期の、利子の非常に低い貸し付けをやります国際機関がございますが、そういった関係において、やはりアジア開銀の一部の資金をそういった長期の資金が必要な部門に供給すべきではないかという考え方から特別基金ができておるものと考えます。これは米州開発銀行の場合も同じでございます。そのような考え方のもとにできておるものだと考えます。  一〇%という考え方をとりましたのは、やはり銀行でございますので、ソフトローンは場合によれば貸し倒れになりあるいは長期に返ってこないということで、銀行の健全性という見地からいきまして、ある程度の限度を設ける必要があるのではなかろうか、いろいろの議論がございましたが、一〇%くらいが適当であろうという諮問委員会の段階の結論になったわけでございます。
  81. 竹本孫一

    ○竹本委員 一〇%論はこの銀行の本質にも関係する問題で、もう少し論議をいたしたいと思いますけれども、時間がないので、最後の問題で一つだけ伺っておきたいのがあります。  それは、この協定が効力を発生したならば三十日以内に日本は金を出すということになっておると思うのでございますが、そうでございますか。
  82. 堀込聡夫

    ○堀込説明員 日本の出資は、二億ドルでございます。そのうち一億ドルが払い込みでございまして、残りの一億ドルは請求に応ずる資本でございます。したがいまして、一億ドルを現実に払い込むわけでございますが、これを協定によりまして五回に分けまして払い込むことになっております。  ただいま御指摘の第一回は、その五回の第一回分でございます。二億ドルは七百二十億円でございますけれども、これを、半分の三百六十億円を五回に分けますと七十二億円になります。そのうち半分の三十六億円は交換性の通貨で払い込み、残りは国債で払い込むことができるというふうになっております。したがいまして、四十一年度の予算措置としましては、七十二億円のうち三十六億円を出資のための予算として大蔵省の所管に計上してございます。残りの三十六億円の国債は、別途お願いしておりますアジア開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律によりまして国債を発行しまして、代用国債で払い込むという形に相なるわけでございます。
  83. 竹本孫一

    ○竹本委員 この三十六億円の問題でございますけれども、本年度は外為会計法が改正されまして、外為の資金から一般会計に百四十二億九千二百万円が繰り入れられておる。その中で三十六億円がアジア開発銀行に回るということらしいのです。そこで外為会計の予算書を見てみましたところが、どこにもその金が出ていない。私ここに二冊予算書を持っておりますが、一体一般会計の予算、それから四十一年度の特別会計のどこに三十六億円をここから出しますという御説明があるか、その辺をひとつ伺いたいと思います。
  84. 堀込聡夫

    ○堀込説明員 ただいま予算書が手元にございませんのでございますが、外為会計のインベントリーを含めまして一般会計の歳入に入れまして、それから別途大蔵省所管の三十六億円を計上しておるという形になっていると思います。
  85. 竹本孫一

    ○竹本委員 大体そういう筋であると私も思うのですけれども、これは外務省の方もはたして三十六億円がどの辺に入っておるかということをごらんになったかどうか、これは一つ予算書のつくり方の問題にも関連をいたしますけれども、なかなかわからない。私が調べてみてもよくわからない。それでいま伺っておるのでございますけれども、三十六億円の大金が外為会計の、これは特別会計予算のつくり方の問題に関連いたしますが、ほかの特別会計を見れば、われわれがくって見てもぱっとそれが大体わかるのです。この三十六億円に限って全然わからない。こういうつくり方自身に大きな問題があります。これは外務委員会よりも予算委員会の問題にもなりますが、この三十六億円について、外務省はここから入る金だという納得ある理解を持たれたのかどうか、その辺をひとつ具体的に伺いたいと思うのです。
  86. 星文七

    星政府委員 本件につきましては大蔵省所管ということでしておりますので、私のほうの要求はそれをチェックしておりません。
  87. 竹本孫一

    ○竹本委員 これは非常に重大な問題で、ぜひあとで御答弁を願うまでお待ちすることにしますが、その間に、これは最後でありますが、南北問題でよく問題になりますプレビッシュ報告というものについて、イギリス、アメリカソ連、中共、たとえば中共は、これは新植民地主義の策動である、政治革命がなければ問題にならないといったような立場で全然問題にしません。しかしいろいろの国からいろいろの反応が出ておりますけれども日本の政府は南北問題が重大になってくるこの段階において、このプレビッシュ報告というものをどういうふうに受けとめておられるのか、どういうふうに考えておられるのか、その辺のお考えをひとつ伺いたいと思います。
  88. 星文七

    星政府委員 御承知のように、プレビッシュ報告は一昨年の貿易開発会議の前に出たわけでございまして、非常に低開発国側にとっていろいろな面について問題を網羅しているわけでございます。たとえば一次産品を特恵にするとか、あるいはまた、いわゆる補償措置と申しますか、一次産品が値段が下がったときのいろいろの補償の問題とか、あるいは補足融資とかいうふうな点でいろいろな点を強調しておりますし、それからそのプレビッシュ報告全体を通じまして、どうも援助よりもむしろ貿易であるというところに非常に重点を置いているのじゃないかということでございまして、第一回の貿易開発会議におきましては、このプレビッシュ報告というものをもとにいたしまして、低開発国の先進国に対する要求というものがかなり極端なものが出てきたというのもプレビッシュ報告に基づいたからではないかというふうに見ておりますが、しかしほぼ二年もたちまして、その後第一回貿易開発会議あとでいろいろな委員会というものをつくりまして、低開発国と先進国の側でいろいろの問題について協議をしておりますが、最近の傾向といたしましては、第一回の貿易開発会議に見られたような低開発国の非常な性急な解決の方向というものがやや穏健になってきたんではないかというふうにわれわれは見ております。しかし国連の開発十年という低開発国に対する援助問題につきまして、プレビッシュ報告というものの果たした役割りというものは、やはりかなり大きいと評価していいんではないか、そういうふうに私は見ております。
  89. 堀込聡夫

    ○堀込説明員 私、この外為会計を直接所管いたしておりませんので、資料を手持ちいたしていないのであれでございますが、結局外為会計の予算は損益部面が歳入歳出になっております。ただいま一般会計に繰り戻します金はインベントリーでございまして、いわゆる資金という名前が法律上使われております。これはいわゆる歳出歳入外になりまして、貸借対照表には載っておりますが、歳出歳入外に計上されております金でございます。これを取りくずして一般会計に入れるということでございます。外為会計の歳入歳出予算書には載っていない。しかし一般会計のほうの受け入れのほうでは歳入として載っているという形になっておるのでございます。
  90. 竹本孫一

    ○竹本委員 大体いま御説明のとおりのようですけれども、しかし予算審議も済んで、予算委員会を通ってしまったわけで、いまさら問題にするのはおかしいとも思いますけれども、しかしそれで一般の理解をはたして得られるかどうかという点はどう思われるか。たとえばいまの政府のこの予算書の立て方、あり方を見ると、おまえたちどこかで計算してみろ、損益計算でどこかきっと三十六億円減っているはずだ、それだけなんですね。それ以上の説明がこの中にありますか。ないでしょう。ただ受け入れたということは書いてある。どこから出たかは書いてない。出たのは貸借対照表を見れば、つぶさに計算してみれば三十六億円減っているようだからその辺から出たかなということならばややわかる。しかし、それ以上のことは全然書いてない。そういうことで一体重要な問題の審議の一番大事なデータとなる予算書がいいのかどうか。これは非常に私問題だと思うのです。おそらくどなたも三十六億円という話は聞くけれども、その三十六億円がどこから出てきているか、それは書いてないのです。これでわかるかどうかということについて、これは大蔵大臣に追及すべき問題だと思いますけれども、そういう予算書のあり方、立て方はこれは重大な問題であると思うが、大蔵省はどう思われるか。
  91. 堀込聡夫

    ○堀込説明員 ただいまの資金の増減が予算書のどの何ページに詳しく出ているか、ちょっとつまびらかにいたしませんが、特別会計の立て方といたしまして、資金会計というものは、概して資金部面は歳出歳入外の運用という形をとりまして、損益部面が歳出入予算というたてまえをとっているのが通常のように記憶しております。ただ資金運用部特別会計、財政投融資の一番中核をなします資金運用部特別会計がございますが、これも資金運用部が開発銀行に幾ら貸す、道路公団に幾ら貸す、そういった資金面の運用は御承知のとおり歳入歳出外になっておりまして、資金運用部の利子が幾ら入ってくる、経費が幾ら入って利子を幾ら払うといった損益面が歳出入になっております。この点は私主計局のほうでなくて専門家でございませんが、資金会計のたてまえがそういうふうになっておるということかと思います。
  92. 竹本孫一

    ○竹本委員 大体事務的にいま御説明になっておるわけでございますけれども、一体外務省は、それじゃ三十六億についてはどこからか金が出てくるらしいという以上に問題を吟味されていたのかどうか、私は吟味する材料が全然ないということをいま問題にしているのです。外務省はそれじゃ大蔵省から三十六億出す、どこから出るか知らぬけれども、もらうことになっているという以上に具体的な検討をされたかどうか、私はそれを伺いたい。
  93. 星文七

    星政府委員 私どもいま国会の審議を仰いでいるところでございますけれども協定には九月三十日までに批准をしなければならないということになっておりますし、それからこの銀行の準備にあたりまして大蔵省の方々の非常な参加を得ましてここまで持ってきたわけでございますので、当然三十六億という金はどこかでちゃんと予算についているということを確信しているわけでございます。
  94. 竹本孫一

    ○竹本委員 これは確信の問題ですけれども、確信をせられなければ出さないわけでございますが、確信をされた根拠が全然示されていないではないか。確信は当然でございますけれども、確信するについては、なるほどこの外為会計なら外為会計から出るというのだから、外為会計の中身は一ぺんぐらいはやはり外務省として見ておかれる必要があるのじゃないか、見られたかどうかということを伺っておるのです。見てもこれじゃわからぬじゃないかということを言っているわけです。大臣いかがですか。
  95. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 どうもおっしゃるのが筋のように考えます。私も専門外でございますので、よく承っておきたいと思います。
  96. 竹本孫一

    ○竹本委員 この問題は機会をあらためて予算制度のあり方とも結びつけてもう少し論議したいと思うので、きょうはこのくらいで終わりますが、しかしいずれにしても、やはり外務省としても確信をされる場合に、これは事務的良心からいってもこの会計のここから出るのだというくらいは、三十六億の金ですから、これは私も自分でやってみたら、計算してみるとなるほど最後にバランスシートから三十六億落ちているからこの金はこちらへ来たのだろうという想像以上はできないんですね。先ほど特別会計のあり方についても御説明がありましたけれども、特別会計の中にもちゃんと詳しく説明したものもあるのです。だからやはりこれは予算の立て方からいえば、すべての特別会計において、われわれの国会審議でごまかすという意味に、私はそんな悪くは思いませんけれども、少なくとも明確にするだけの親切と配慮があってしかるべきではないかと思いますので、強くこのことを希望して私の質問を終わります。      ————◇—————
  97. 三原朝雄

    ○三原委員長代理 次に、国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。西村関一君。
  98. 西村関一

    ○西村(関)委員 三点ばかりお伺いをいたしたいと思います。  まず最初に、去る九日の夜、中国が第三回目の核実験を行なったのでございます。このことにつきまして政府はどのような見解をお持ちでございますか。きょうの新聞の報ずるところによりますと、自由民主党の長老松村謙三氏が十二日、昨日の夕方北京に到着せられまして、記者会見をなさって次のような発言をしておられるということでございます。中国核実験はどしどしやられると日本はまことに迷惑である。が、しかし、周総理も中国の核保有は平和のためであり、核兵器の徹底廃棄のためだと言っているのだからやむを得ないだろう、もともと米ソが核を独占しているということがおかしい、中国の実験が平和のためというならば一時的にしかたがないだろう、こういう発言をしておられるのであります。このことにつきまして政府の御見解をまずただしておきたいと思います。
  99. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これにつきましては、政府の見解としてはまとめて官房長官談としてすでに新聞に発表しておるとおりでございます。でありますから、松村さんの中共における発言として伝えられておるものとは違います。
  100. 西村関一

    ○西村(関)委員 官房長官談話として発表されております内容を、この機会にこの国会の外務委員会の席上で明確にお答えを願いたいと思います。
  101. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 趣旨は存じておりますが、やはり正確を期する意味において、発表した談話をそのまま——ただいま取り寄せておりますから、後刻申し上げます。
  102. 西村関一

    ○西村(関)委員 その趣旨外務大臣はどういうふうに理解しておられますか。
  103. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 部分的核実験停止条約というものがすでに国際の世論として条約にまでもうでき上がっておるわけであります。それをもちろん、条約締約国ではございませんけれども、それに反した行為は明らかに国際世論に反するものであり、かつまた世界平和のためによろしくない、できるだけこの点を反省して、自後この国際世論に順応してもらいたいというような趣旨であったと思います。
  104. 西村関一

    ○西村(関)委員 われわれも中国核実験を手放しに許容するものではございません。こういうことが再々繰り返されるということは、日本国民としても非常に困ったことであるということにおいては大臣と同じ感じを持っているのであります。しかし、それだけではこの問題は解決がつかないと思うのです。ただ、部分核停の問題をお述べになりましたが、部分核停だけで世界の平和が保たれるとはもちろん考えられません。中国が国連のらち外にある。しかも、アメリカ中国封じ込め政策というものが極東及び東南アジアの諸地域に張りめぐらされておる。その中にわが国も安保条約によって入れられておるという現状におきまして、ただ、部分的核停が世界の世論であるから、これに反する実験をやるということは、これは平和の敵だと言わんばかりに言われるということ自体は、私は、外務大臣としてはまだ十分な御認識を持っておられないというふうに言わざるを得ないのでございます。中国核実験についてはまことに遺憾でございますが、しかし、なぜこういう事態に追い込まれざるを得なかったかという客観情勢について、国連には加盟させないという方針日本政府はとっている、そういうことだけで中国核実験を責めるということは、私は筋が通らないと思うのであります。こういう点につきまして、もう少し外交的な見通しの上に立って、どのようにするならば中国核実験をやめさせることができるかという見地に立って、一国の外務大臣としての御所信を述べていただきたい。いまお話しになったようなことだけでは、中国核実験問題に対する日本政府態度としては十分であるということが言えないばかりか、非常に片手落ちな言い分だと私は思うのでございます。そういう点、重ねて大臣の御所信を承りたいと思います。
  105. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 中共の言い分は、特定の大国が核兵器を持っておる、そういうことが非常な脅威を与えておる、その脅威を取り除く意味において、対抗的に核を開発して、そうしてその脅威を薄らげる必要がある、そういう意味の核開発であって、自分は、ことさらこれを用いて自分の政治的意図を達成するためにこれを使おうという、あるいはこれを利用しよう、そういう気持ちはないのだ、こういうことでございまして、われわれとしては、とにかく、核所有国が核兵器による戦争をやろうということはもはや断念しておる、そうしてこの世界の平和を乱す乱暴者と申しますか、そういう平和を撹乱するような行為に対して、これを抑止するという意味における核戦力であるということを言っておるのでありまして、これがどうしても信用ができないというので、自分だけはそれを減殺する意味において持つのだ、こういうことのようであります。もしみんながこういう意見を持つようになり、そしてそれぞれ、その能力に応じて核を開発するということになると、世界は非常な混乱を巻き起こすことになる、そういうことになるのでございますから、私は、中国の言い分は決して説得力がない、そう考えております。
  106. 西村関一

    ○西村(関)委員 私は、一昨晩西ドイツの大使の招待を受けまして、いま日本に来ております西ドイツのマルチン・ニーメラー博士と親しく会談する機会を持ったのであります。ニーメラーさんはどちらかといえば西側の陣営の人である。そうしてまた徹底した平和主義者でありますけれどもアメリカに対しても理解のある平和主義者だと言われている人でございますが、ニーメラー博士は、もしこのままの状態が推移するならば、やがて世界じゅうのすべての国が核兵器を持つようになるだろう、そういうことになったならばたいへんなことになるということを心配しておりました。中国を孤立さしておいて、中国だけ核兵器を持ってはいけないということを言うこと自体は、これは世界の平和に逆行することでもあるし、また、アメリカとソビエトだけが核兵器を保有して、現在の現状を認めて、そうして大臣ことばを借りますならば、平和を撹乱するところの世界の無法者に対してにらみをきかすのだというようなことで、一体だれが現在の核保有国に対してそういう権限を与えるか、そういうことはどこの国のだれがどういう機関でそういうことを認めたかということが問題だと思うのであります。このことに対して、世界の趨勢は、核兵器を含むところの全面軍縮というところにまでいかなければならないということが論議されているとき、中国及びその他の国だけが核兵器を持ってはならない、それを持つことは平和の趨勢に逆行するのだ、米ソの二大強国だけに現在の核兵器の保有を認めておいて、ほかの国はいけないのだということは、これは筋が通らないと私は思うのであります。まず中国を国連の中に入れて、そうしてその中においてみんなで話し合って、核兵器を含むところの全面軍縮に持っていくということをしなければ、このままでほったらかしておくならば、ニーメラーさんが指摘いたしますように、世界じゅうの国がやがて核兵器を持つに至るであろう。科学というものは秘密がないのです。中国アメリカソ連援助を受けて核を開発したのじゃございません。独自の力で核を開発しておる。やがて来年になれば射程一千キロに及ぶところのミサイルを開発するということがいわれておる。そういう状態で、中国だけを孤立さしておいて、その中国核実験をやり、核兵器を持つということはいけないのだということだけでは問題の解決にならない。むしろ、アメリカの世論の中におきましても、中国を国連の中に加盟さして、その中においてお互いに話し合って、全面軍縮への道を行くべきではないかというような議論も出ておるやさきでございますが、にもかかわらず日本外務大臣はそういうことを全然認めないし、中国核実験はあたかも無法者がかってなことをやったと言わんばかりの言い方をしておられるということは、私は非常に遺憾に思うのであります。もちろんさっきも申しましたように、われわれが死の灰の被害を受ける、放射能の被害を受けるということに対して、特に世界における唯一の核被災国であるところのわが国の国民感情から考えても、これを許すことができない非常に遺憾なことであるということは言うまでもありませんけれども、しかしそれだけでは、そういう感情論だけでは問題の解決はつかないと思うのでございます。そういう点につきまして、大臣いかがでしょうか。松村謙三さんの御発言もある。これは政府を代表した発言ではないと言われますけれども、自民党の長老であられる。私の立場中国を訪問しておられるといただしましても、一つの見識をもって発言をしておられる。そういうことに対して、アメリカにおいても世論が変わってきておるのに、いつまでも古いアメリカの世論に追随するという行き方では、私は外務大臣としての職責が全うされると思わぬのであります。もう少しく高い見地に立ってこの事態を直視していただきたいし、そういうことに対する御見解を承りたい。これ以上大臣にこの問題についてお伺いをいたしましても、同じことの繰り返しになるだけだと思いますから、私は重ねてこのことについて大臣の御答弁を求めませんけれども、これは非常に大きな問題でございます。このことについてはぜひひとつ外務省においても十分な検討をしていただきたい。アメリカの上院外交委員会の記録等もよく検討していただいて、日本としてとるべき態度、特に隣邦中国中国の七億の民に対するところの友好を深めていくという上においては、ただ貿易だけの問題じゃなくて、現実の国際政治の場においてどのように手をつないでいくことができるか。むしろ進んで日本政府中国の北京政府と国際政治の問題について心を開いて話し合うというところまで行っていいのじゃないか。そういうことがやがて米中の問題の解決への橋渡しにもなると思います。  そういうことに対して、ただ一つだけお伺いをいたしておきたいのですが、中国の問題に対して外務省はアジア局を中心として検討しておられると思うのですが、どういう機関を持っておられるか。中国問題に対する研究をどのように進めておられるか、それを承っておきたいのであります。私は昨年の七月にアメリカに参りまして、アメリカ中国問題研究所各所をたずねました。ずいぶん膨大なスタッフを持ち、予算を持ち、資料を駆使して研究をしておる。しかしその研究の成果は、その資料が多いのにもかかわらず、的をはずれておる。その結論は必ずしも的を射ておるとは私は考えなかったのでありますけれども、相当深く立ち入った検討をしておる。日本政府がこれに対して、ただアメリカの言い分だけに従って、国連の場においては重要事項指定方式によって中国を国連の場に入れないようにしようとするほうに加担をしているということだけでは、私は済まされないと思うのでございます。そういうことに対して外務省としてはどういう状態でありますか、伺っておきたいと思います。
  107. 小川平四郎

    ○小川政府委員 外務省におきましてはアジア局が中心になって中国問題は検討しております。特別の機関は設けておりません。ただし、アジア局におきましては、省内の関係の各部局、特に国際資料部におきましては比較的長期的な研究をしておりますので、これと連絡をとりまして進めております。部外の研究機関、研究所あるいは研究所にも属さない個人専門家、この方々とも常時意見の交換をいたしまして研究を進めております。この問題はアジア局の責任でございますので、特別の機関はつくっておりませんが、アジア中心に進めております。
  108. 西村関一

    ○西村(関)委員 この機会に、今回の中国の実験によってわが国土に降ってきた放射能の実態について、科学技術庁当局にお伺いをいたしたいと思います。  それからまた、これに対する今後の対策についてどういうふうにお考えになっておられますか、お伺いをいたしたいと思います。
  109. 武安義光

    ○武安説明員 中共の行ないました核爆発実験による放射性降下物は気流に乗りまして日本のほうへ流れてまいります。そこで、従来の例でございますと、実験後数日からぼつぼつわが国の環境放射能がやや増加いたしまして、特に雨が降りますと雨の中に非常に多くまざって落ちてくるということになります。これにつきましては、放射能の調査というのを各省分担してやっておりまして、今回も気象庁、科学技術庁あるいは防衛庁等の各機関におきまして迅速にその状況を把握する調査をいたしております。現在までのところにおきまして、九日に実験が行なわれまして、十一日——二日後に一部の地域におきまして多少比較的大粒の放射性降下物が得られた。また十一日にかけまして各地に降りました雨の中で放射能の若干の増加が見られたという状況でございます。これは従来の例から見ますと、おそらく一週間くらいの間にピークに達しまして、それから下りまして、一カ月以内くらいにはもうほとんど平常に戻るというようなことでございます。したがいまして、今回の状況につきましてはまだ最終的に状況把握ができておりませんわけでございますが、従来の二回の核爆発実験におきまする状況等から見ますると、われわれのほうで原爆の実験の影響を当面把握いたしますのは、雨水及び霧の落下じんによりまする地面に落ちてくる放射性降下物の量を測定して判断するわけでありまして、全国各地で十三カ所の気象庁観測所において調査しておるわけでありますが、前回二回の場合について見ますと、一番多いところで一カ月間に約四百ないし五百ミリキュリーのものが落下してきておる、こういう状況でございます。これにつきましては、おそらくこの程度のものでありますれば、国民の安全上ほとんど影響のない数字でありまして、現に何らかの措置を要する基準として学識経験者の意見を聞きまして定めております基準に対しまして、はるかに下回る数字でございます。  その基準を申し上げますならば、毎平方キロメートル当たりの降下物約二千五百ミリキュリー、大体前回見られましたものの六、七倍程度の量でありますが、その段階になりましたら厳重に推移を注意して、必要により対策を講じ得る措置をする必要があるという段階、それから二万五千ミリキュリーぐらいの量になりましたならば、多少天水の飲用者その他についての措置を講ずるといったような基準でありますが、それらの数字に比べまして、はるかに少ない数字であります。  現在の環境放射能の変化の状況でございますが、まだごく一部でありまして、一部の地域において十一日に雨が降りまして四十ミリキュリーあるいは九十ミリキュリーといったような数字——これは秋田及び米子でありますが、そういった程度の数字の降下物があったという程度でございます。  放射能の対策につきましては、すでに昭和三十六年に閣議決定によりまして内閣に放射能対策本部というのが設けられておりまして、これは科学技術庁長官が本部長になっております。それで副本部長に官房副長官、科学技術事務次官、本部員に関係各省の局長クラスのメンバーが入っておりまして、それぞれ密接な連絡を講じまして、この放射能の把握それからこれに基づきます対策に遺憾なきを期するごとく体制をとっております。今回の実験に際しましても、つとに準備体制をしきまして、放射能の把握を厳重にやる。それから昨日も放射能対策本部の会議を聞きまして、状況の的確なる把握につとめる。それからその推移によって必要なる措置が講じ得るようにそれぞれ協調して行なうことを連絡した次第でございます。
  110. 西村関一

    ○西村(関)委員 核熱爆発物いわゆる原子力の兵器としての使用がいかに危険なものであるかということは、申すまでもありません。いま外務大臣のお話では、これを保有しているところの国は、平和維持のために、安全保障のために保有しているのだということでございます。いわゆる日本アメリカの核のかさのもとにあるから安全だ、こういう考え方にお立ちになっておられるようでございますが、もしそうだとすると、今日の変転きわまりない国際情勢のもとにあって、ベトナム戦争がこれ以上エスカレーションするならば、あるいは不測の事態が起こらないとも限らない。米中戦争にまで発展するという可能性も全然皆無だとは言えない。その場合に日本は一体どうなるか。中国封じ込め戦略体制の一環として、沖縄の基地は、また日本国内の米軍の基地は、全部そのほこ先を中国に向けておる。そういう状態において、先ほども帆足委員が指摘いたしましたように、アメリカの戦闘爆撃機のファントムが中国領を侵犯して、中国のミグ戦闘機に撃ち落とされた。中国政府の抗議にあってそれに対するアメリカ側の回答が——現在までにあったか、なかったか、よく知りませんが、まだ何にも言ってない、こういう状態ですね。ベトナム戦争であれだけの北爆をやっておるそのアメリカの戦闘爆撃機が、もし中国領まで入っていって中国領を爆撃する、あるいはそこにおいて空中戦が行なわれるというようなことになった場合に、中国が黙ってこれを見ているはずがないし、また当然自国の主権を主張することになるわけでございます。そういうところから、いま大臣核兵器を持っておる国は戦争なんかできっこないのだと言っておるから、その核のかさの中に入っておれば日本は安心だというような意味のことを言われましたけれども、しかし戦争というものは、戦争の歴史を見ましても、不測の事態から起こる。米中戦争が全然あり得ないということは、これはもうだれも断言できないと思うのでございます。そういう場合に、沖縄は言うまでもなく、米軍の強力な基地、しかも中国に向けられておる基地になっており、最近はまたアメリカの原潜が沖縄に入港しておる、いろいろな意味において、沖縄を含むところの日本アメリカの極東戦略体制の中に置かれておる。この現実においてもし不測の事態が起こった場合において、アメリカの核のかさの下にあるから日本は安全だということは言えないと思うのでございます。こういう事態に対して、日本政府としても少し考えを改めなければならない事態に立ち至っておるのではないか。中国核実験を責めるとともに、日本政府としては中国政府とも接触を保って、そして核兵器を含むところの全面軍縮への道を開拓する、そういう努力を日本がやるべきではないか、アメリカ中国に対して接触することがむずかしければ、日本がそれをやるべきではないか、こういうことを思うのでございますが、こういう問題に対して現在の深刻な事態と関連して外務大臣はどういうふうにお考えになっておられますか、伺っておきたいと思います。
  111. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 お断り申し上げておきますが、大国の核保有をどう解釈するかという点を申し上げたのでありまして、それを別に肯定するとか、そういう判断を私は加えたわけではありません。御承知のとおり、米ソはお互いに核を非常に極度に発展させて、相手をやっつけようとすれば次の瞬間には自分がやっつけられる、つまり極度に核兵器の発達した国の間の戦争というものは勝ち負けがない、共倒れであるということがもうはっきりしておって、それで、全面戦争はもちろんのこと、局部戦争でも全面戦争、核戦争に発展するおそれがあるので、それはもう全然しかけることは間違いであるという域にいま達しておる。そんなら、しかけることができないというのなら全部やめたらよさそうなものだと思うのでありますが、しかし、国は、そのほかにもいろいろな国があって、そして世界の平和を撹乱するというような戦争暴力を用いて政治的な意図をたくらむ場合に対する一つの抑止力という点が唯一の核保有の口実ではないかというふうにわれわれは考えておりますが、そういう状況についての私の所感を申し述べておるのであって、日本としてそれに対する判断を申し上げたわけではございません。でありますから、大きな見地から言うと、核の所有ということは大国でも所有するということがもう既成事実——もういつの間にかそういう既成事実ができ上がった。いわゆる悪の既成事実であると言いたいぐらいのものじゃないかと思う。ともかくいずれにしましても力の均衡ということが平和維持に、何といっても現在の世界は、そういう状況に置かれておる、こういうことでございまして、日本立場から核の保有を肯定しておるわけでもございません。ただ現実の問題としては、日本の安全ということを考えると、日米安保条約体制というのが日本安全保障意味において最も効果のある、そして犠牲の少ない、いわば一番能率的な方法である、こう考えざるを得ない、こういうわけであります。それでそういう状況なんですが、中共は、核全面廃止のために核の開発をするという妙なロジックでございますけれども、そういうことをいっておる。そういう気持ちもわからないではないけれども、現状においては、とても米ソのあの膨大な核戦力というものを全廃せしめるだけの発言力はない、はるかにそれよりも低いものである、私はこう考えます。しかし、核兵器のみならず、すべての軍縮を全面的に撤廃するということは理想としてはまことにけっこうなことでありまして、各国ともほんとうに真にそういうことを考えるなら、日本としてもそれに喜んで同調すべきものと私は考えますが、なかなか言っていることとやっていることとはだいぶ違いますので、そういうことばだけでこれを信ずるわけにいかない、こういう状況だと思います。
  112. 西村関一

    ○西村(関)委員 言っていることとやっていることと違うということは、どこをさして言っておられるのですか。また、非常に平和をかき乱すようなものがいるから、力の政策、力のバランスを保っていかなければいけないんだと言われますが、あなたはいつも、仮想の問題に対しては答弁しないということを言っておられるのですが、すべてそれは仮想に立っておられるのじゃないですか。事実に即してものを言っておられるとは思わないのですが、いま大臣がおっしゃったような事実が一体どこにございますか。
  113. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 核を全廃せしめるために、自分は核を開発するんだという考え方は、私は中共のほんとうの真意であればたいへんけっこうだと思いますが、それならば核を開発するものは、すべての国に対して一緒に核を開発しようじゃないかということも一つ考え方だと思います。ほんとうに世界の核というものによって生ずる動揺、不安、そういうものがもうとにかくないことを期するというならば、みずからまず核の開発をおくべきじゃないか、こう私は信ずるわけでございます。
  114. 西村関一

    ○西村(関)委員 どうも私の質問に対して的を射た御答弁でないように思うのでございますが、中国核兵器開発していくということはどうも何か無法なことである、平和に逆行することであるというような考えを持っておられるようでありますけれども、その前に米ソの二大強国が膨大な核兵器を持っておる、この現実をそのままにしておいて、中国もまたほかの国も、現に中国核実験によってインドネシアにおいてもその他の国においても核兵器を持つべきだという議論が出ておるということを報道されております。そういう連鎖反応が起こってきておる。ですからニーメラーさんが指摘するように、このままの状態を放置するならば世界じゅうの国が核兵器を持つようになるだろう、そういう心配があるわけであります。そうなった場合に一体どうなるかということを考えますときに、ただ米ソの力の政策だけに依存をして、しかも日本は日米安保条約のもと、アメリカの核のかさの下で安全が保障されるという考え方だけでは、私は特に非武装、平和憲法を持っておるところの日本としては理が通らないと思うのであります。もう少しくアメリカに対しても、ソビエトに対しても、中国に対しても、核兵器を含むところの全面軍縮へのイニシアチブを日本がとるという気がまえが日本政府にあってほしいと思うのであります。ただ、さっきの大臣ことばじりをとらえるようでございますけれども、いかにも言っていることとやっていることとが違っておる。いかにも平和を撹乱する侵略国家がどこかにあるというふうな仮定のもとに立って大臣はお考えを述べておられるように思いますが、それは私は間違いではないかと思うのです。そういう点に対していろいろ論議をいたしたいのですけれども、時間がありませんからこれは他日に譲りたいと思うのですけれどもベトナム戦争の行くえを考えますときに、どういう不測の事態が起こらぬとも限らぬ。現にアメリカはサイゴンにおいて南ベトナム解放民族戦線の攻撃をしばしば受けておる。アメリカの大使館までやられておる。この間はサイゴン市内において解放民族戦線がしかけた爆発物の爆発によって、そこに解放民族戦線の者がいないにかかわらず、アメリカの憲兵はめったやたらに機銃を掃射した。そして無辜の市民を傷つけた。朝の仕事に出かけようとするトラックの労働者がばたばたやられた。これはアメリカの現在の周章ろうばいぶりを如実にあらわしておる光景だと思うのです。こういうことが進められていきますと、ベトナム戦争が早期に解決するとか平和が来るとかいうことはとうてい望めない。政府は横山移動特使を派遣なすって、いろいろとベトナム戦争平和への道を探求しておられる。まことにけっこうでございますが、政府に一定の方針なくして、確信なくして、ただ横山さんが世界のあっちこっちへ行っていろいろ工作をなさるということがあっても、政府が一つのき然とした方針なくしては、そういうことはむだなことだ、国費のむだづかいだといわざるを得ないのであります。一体どのようにして政府はベトナム戦争を終息させる見通し、めどを持っておられるか、その点をお伺いしておきたいと思います。
  115. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これはたびたび申し上げたと思いますが、結局無条件にまず武器を両方で置く、そして軍事行動を中止する、そして平和のテーブルを囲む、こういうこと以外にないと私は考えます。たびたびアメリカがそういう提案をして四十数日にわたって北爆を停止したことがありますが、ついに北越はこれに同調しなかった。それでまた再び軍事行動が開始されておる。北からの浸透も依然として行なわれておる、こういうのでございまして、結局平和をどうして持ち来たすかということは、まず軍事行動をやめて、穏やかな話し合いに入る、そしてお互いに言い分があるわけでありますから、その言い分を主張し合って、そして第三者が入るなりあるいは入らないなり、とにかくそこにおのずから話が帰するところに帰する、その努力をするということ以外に、これは平和を収拾する方法は私はないと考えております。でありますから、どうすればそういう効果をあげる方法、糸口が見つかるか、どうすればそういうことがなし遂げられるかということに問題はもう集中しているはずでございます。各国ともその問題について努力し、いろいろな方策をめぐらしておるのでありますが、とにかく当事者が依然として勝利を予想して武器をおかないということであれば、いかなる周囲の努力もこれは徒労に帰するというわけでありまして、現在まではそういう状況である、こう考えます。
  116. 西村関一

    ○西村(関)委員 大臣は、去る一月二十八日、二月四日、八日、十日、十七日、十八日に行なわれましたアメリカの上院のベトナム問題の公聴会の議事録をしさいに点検なさいましたか。
  117. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 しさいということになりますと、私もそう確信がございませんが、大体の筋は承知しております。
  118. 西村関一

    ○西村(関)委員 それによりますと、小手先でベトナム政策の失敗や見通しの悪さを追及していくということでなしに、大所高所から情報の暗さを十分カバーして、リベラルな議員たちのジョンソンベトナム政策に対する批判は、非常に鋭いものがあったというふうに私はこれを読んでおるのであります。非常に膨大な資料でございますから、全部を読み切るということはなかなか時間がかかりますけれども、このジョンソンベトナム政策というものはアメリカの民主主義革命の伝統に反する、ベトナムの軍事干渉というものはアメリカの民主主義革命の伝統に反するという点が深く掘り下げられておると思うのでございます。こういう点につきましても、私はわが外務委員会がアメリカの上院公聴会の議事録を一つのよりどころとして、アメリカの世論の動きをもう少し掘り下げて検討する必要がある。いま大臣の言われたような北越からの浸透があるから、攻撃があるから、そうしてまた戦闘行為が続けられておるから、平和へのきっかけがつかめないのだという、一体だれが軍事的干渉に最初に乗り出したのであるか。北と南の関係は一体どうなのか。一九五四年のジュネーブ協定というものはどういう内容を持っているか、これに対して、アメリカ南ベトナムは調印をしなかったけれども、単独宣言を出して、ジュネーブ協定精神を是認しておる。そのジュネーブ協定を最初に破ったのはだれであるかというような点が掘り下げて検討されないと、ただアメリカベトナム白書だけにたよってものを言っておられたんでは、私は問題の核心に触れることができないと思うのであります。この点についていろいろ申し上げたいことがございますが、これは他日に譲らせていただきます。  きょうは残っておるわずかな時間に、最後にもう一つの問題についてお伺いをいたしておきたいと思います。  それはすでに申請が行なわれておりますところのベトナム歌舞団の日本公演に対して、政府はベトナム歌舞団の入国を拒否する方針をとられつつある、まだ最終的な決定になっていないようでありますけれども、今朝の新聞を見ますと、拒否する方針を固めたというような報道が出ております。私はもしそうだとすれば、これは非常に遺憾なことだと思うのでございます。政府のベトナム歌舞団の入国を拒否する理由として伝えられておりますることは、いずれも万人を納得させるような根拠を持っていないと私は思うのであります。もし私の理解が間違っておるならば教えていただきたいと思いますけれども、これはそう軽々に結論をお出しになるということがあっては、私はある意味において日本の恥になると思う。芸術の分野にまで日本政府は不当な弾圧を加えるというようなことを天下に公表する、それを暴露することになるわけでございます。そういう日本政府であってはならないと思うのでございますが、この点に関しまして、外務大臣はどういうふうにお考えになっておられますか。まだ結論は出ていないようでございますから、確定的なことはお話しいただくことはできないと思いますけれども、私は御承知のとおりベトナムに参りまして、南ベトナムにも参り、北ベトナム、いわゆる民主主義共和国にも二度参りました。竹と詩の国といわれる美しい国が、いまはアメリカの不当な爆撃のもとに、悲壮な決意を固めて祖国を守っておりますが、もともと静かな平和な、詩と竹の国といわれておるその詩の国ベトナムにおいて長い伝統のもとに生まれてまいりましたベトナムの歌舞団が、その芸術を日本にも見てもらいたいということで、日本の全国労音が中心となって、歓迎実行委員会がつくられ、その歓迎実行委員の中には各階層の著名な人たちが名前を連ねておられる。そうしてぜひともこの歌舞団の日本公演を実現したいということで、非常に努力をしておられるのであります。これは全く政治的な意図によって行なわれておるのじゃなくて、きわめて自由な、自然な姿で芸術の交流ということで行なわれようとしているのでございます。その公演の題目を見ましても、どこにイデオロギー的なものが含まれておるか、そういう疑いを持つこと自体が、先入観を持ってこれに臨んでおると言わざるを得ないのでありまして、従来、ベトナム民主共和国からの入国に対しては治安当局としても何らの心配はなかったというふうに、過去においてこれが入国のあっせんをいたしました私も、そういう経験を持っておりますが、いままでベトナムから日本に来られた方でトラブルを起こした例は一つもない、何にも問題はなかったということを、いつも聞かされておるのであります。今回に限って、これが何か別な、政治的な意図を持って行なわれるのじゃないかという心配を政府は持っておられるような印象を受けるのでございまして、こういう点に対して、これは進んでこれらの方々をお迎えするということが、むしろ大国日本としてのとるべき道ではないかと思うのでございますが、この点に対して外務大臣はどういうふうにお考えになっておられますか、お伺いをいたします。
  119. 小川平四郎

    ○小川政府委員 本件は御承知のとおり法務省の主管でございますが、私どもにも関連がございますので、その部分をお答えいたします。  本件につきましては、昨年末に一回申請が法務省に出されたと記憶しておりますが、その際には、現在の状態においてはあまり訪日することは適当でないという判断で、申請者にその旨が伝えられたと承知しております。その後最近に至りましてこの問題が再び申請をされたという状況でございまして、現在、法務当局において検討中であると承知しております。  私どもも意見を求められておりますけれども、私どもといたしましては、現在のベトナム紛争の状況からいたしまして、多数の歌舞団、歌及び踊りをする人たちが北ベトナムから入ってくるということは好ましくないと考えておりまして、その意見を伝えてございます。
  120. 西村関一

    ○西村(関)委員 紛争が行なわれておるから、ベトナムから日本に多数の歌舞団が入ってくることは好ましくないと言われるのですが、しかし南ベトナムからは、かつて歌舞団が入ってきた事実がございますね。南からは入ってきてもいい、北からは入ってきてはいけないということも、これまたおかしいことだと思うのですが、その点はどうですか。
  121. 小川平四郎

    ○小川政府委員 日本南ベトナム政府と外交関係を持っておりまして、友好関係にございますその国々の文化交流のために参ります者を入国せしめることは当然であるかと存じます。わが国と友好関係を持っております南ベトナム政府に対して敵対的な立場にあります地域からの入国というものは別に考えるべきである、こういうふうに考えます。
  122. 西村関一

    ○西村(関)委員 入管当局にお伺いをいたしますが、入管当局としては、この件についてどのようにお考えでございますか。
  123. 八木正男

    ○八木政府委員 お答えをいたします。  私どものとっております立場は、国交のない国のほうからの入国の申請は、原則として許可をしない。特に日本の利益になるという例外的な場合には許可をするというのがたてまえでございます。  それで、北ベトナム舞踊団の問題は、これは現在審議中の段階でございますが、もちろん決定にあたっては、関係各省の見解を十分に取り入れまして、それに対して法務大臣が最終的な判定を下すという形で現在審議中でございます。
  124. 西村関一

    ○西村(関)委員 国交のない国からのこの種の芸術団体の入国を許可された例がございますか。
  125. 八木正男

    ○八木政府委員 私、資料を持っておりませんけれども、私の記憶では、ございません。共産圏からはたくさん来ておりますが、国交未回復の共産圏からこの種の団体はないように記憶しております。
  126. 西村関一

    ○西村(関)委員 全国労音連絡協議会が招聘いたしました海外演奏家の一覧表がここにございます。この中に明らかにあるのですね。国交のない国からの入国を許可しておる例がたくさんあります。今回のベトナム歌舞団だけに特殊な取り扱いをするということは、いま戦争状態にあるからというのだけれども、一体アメリカベトナムと宣戦を布告した事実があるか。宣戦を布告もしていない、しかもそれはいわばベトナムの内乱の問題です。内輪の内戦の問題です。それにアメリカが最初は軍事顧問団という形で介入をし、現在においては二十五万人、本年中には四十万になんなんとする大軍を投入しようとしておる。そういうこと自体が間違っておる。そういうことをたな上げしておいて、アメリカベトナムに投入しておるところの費用というものは年間百三十五億ドル、わが国の国家予算の一・四倍ぐらいの金をあの狭いベトナムにぶち込んでおる。こういうことをやっておるのをそのままにしておいて、たな上げにしておいて、全くイデオロギーを抜きにして、芸術の交流をやろうとしておる。しかも全国労音という団体が各階層の歓迎実行委員会をつくって、これが公演を実現しようとしておるのに対して、これだけどうも好ましくないというふうにアジア局長は言われるが、それは万人を納得させるところの理由にはならぬと思う。戦争をやっておるからといったって、戦争をやっておることは、一体だれがやりかけたか。この問題を論ずると、また前の議論に返りますから、この問題はともかくといたしまして、これはぜひひとつ、もう時間がありませんから、私はこれ以上お伺いをいたしませんが、これはひとつ十分に前向きに御検討をいただきたい。いろいろな角度から政府は御検討になり、各関係各省との協議をなさることはもちろんでございますが、これがもし拒否されるというようなことになりますと、これは国内及び国際的にも日本政府の信用を落とすことになるということを私は心配する。イデオロギーを越えて、こういうベトナム中央歌舞団の日本公演を日本政府が不当に拒否したということになりますと、これは私は日本のためにならぬと思う。日本の国益からいっても、私はこのことはよくないと思うのであります。だから十分にひとつ外務省においては検討をしていただいて、前向きの姿勢で解決していただきたいということをお願い申し上げて、私の質問を終わります。
  127. 三原朝雄

    ○三原委員長代理 本日はこれにて散会いたします。    午後二時二十分散会