○西村(関)委員 私は、一昨晩西ドイツの大使の招待を受けまして、いま
日本に来ております西ドイツのマルチン・ニーメラー博士と親しく会談する機会を持ったのであります。ニーメラーさんはどちらかといえば西側の陣営の人である。そうしてまた徹底した平和主義者でありますけれ
ども、
アメリカに対しても理解のある平和主義者だと言われている人でございますが、ニーメラー博士は、もしこのままの状態が推移するならば、やがて世界じゅうのすべての国が
核兵器を持つようになるだろう、そういうことになったならばたいへんなことになるということを心配しておりました。
中国を孤立さしておいて、
中国だけ
核兵器を持ってはいけないということを言うこと自体は、これは世界の平和に逆行することでもあるし、また、
アメリカとソビエトだけが
核兵器を保有して、現在の現状を認めて、そうして
大臣の
ことばを借りますならば、平和を撹乱するところの世界の無法者に対してにらみをきかすのだというようなことで、一体だれが現在の核保有国に対してそういう権限を与えるか、そういうことはどこの国のだれがどういう機関でそういうことを認めたかということが問題だと思うのであります。このことに対して、世界の趨勢は、
核兵器を含むところの全面軍縮というところにまでいかなければならないということが論議されているとき、
中国及びその他の国だけが
核兵器を持ってはならない、それを持つことは平和の趨勢に逆行するのだ、米ソの二大強国だけに現在の
核兵器の保有を認めておいて、ほかの国はいけないのだということは、これは筋が通らないと私は思うのであります。まず
中国を国連の中に入れて、そうしてその中においてみんなで話し合って、
核兵器を含むところの全面軍縮に持っていくということをしなければ、このままでほったらかしておくならば、ニーメラーさんが指摘いたしますように、世界じゅうの国がやがて
核兵器を持つに至るであろう。
科学というものは秘密がないのです。
中国は
アメリカや
ソ連の
援助を受けて核を
開発したのじゃございません。独自の力で核を
開発しておる。やがて来年になれば射程一千キロに及ぶところのミサイルを
開発するということがいわれておる。そういう状態で、
中国だけを孤立さしておいて、その
中国が
核実験をやり、
核兵器を持つということはいけないのだということだけでは問題の解決にならない。むしろ、
アメリカの世論の中におきましても、
中国を国連の中に加盟さして、その中においてお互いに話し合って、全面軍縮への道を行くべきではないかというような議論も出ておるやさきでございますが、にもかかわらず
日本の
外務大臣はそういうことを全然認めないし、
中国の
核実験はあたかも無法者がかってなことをやったと言わんばかりの言い方をしておられるということは、私は非常に遺憾に思うのであります。もちろんさっきも申しましたように、われわれが死の灰の被害を受ける、放射能の被害を受けるということに対して、特に世界における唯一の核被災国であるところのわが国の国民感情から
考えても、これを許すことができない非常に遺憾なことであるということは言うまでもありませんけれ
ども、しかしそれだけでは、そういう感情論だけでは問題の解決はつかないと思うのでございます。そういう点につきまして、
大臣いかがでしょうか。松村謙三さんの御発言もある。これは政府を代表した発言ではないと言われますけれ
ども、自民党の長老であられる。私の
立場で
中国を訪問しておられるといただしましても、
一つの見識をもって発言をしておられる。そういうことに対して、
アメリカにおいても世論が変わってきておるのに、いつまでも古い
アメリカの世論に追随するという行き方では、私は
外務大臣としての職責が全うされると思わぬのであります。もう少しく高い見地に立ってこの
事態を直視していただきたいし、そういうことに対する御見解を承りたい。これ以上
大臣にこの問題についてお伺いをいたしましても、同じことの繰り返しになるだけだと思いますから、私は重ねてこのことについて
大臣の御
答弁を求めませんけれ
ども、これは非常に大きな問題でございます。このことについてはぜひひとつ外務省においても十分な検討をしていただきたい。
アメリカの上院外交
委員会の記録等もよく検討していただいて、
日本としてとるべき
態度、特に隣邦
中国、
中国の七億の民に対するところの友好を深めていくという上においては、ただ貿易だけの問題じゃなくて、現実の国際政治の場においてどのように手をつないでいくことができるか。むしろ進んで
日本政府は
中国の北京政府と国際政治の問題について心を開いて話し合うというところまで行っていいのじゃないか。そういうことがやがて米中の問題の解決への橋渡しにもなると思います。
そういうことに対して、ただ
一つだけお伺いをいたしておきたいのですが、
中国の問題に対して外務省は
アジア局を
中心として検討しておられると思うのですが、どういう機関を持っておられるか。
中国問題に対する研究をどのように進めておられるか、それを承っておきたいのであります。私は昨年の七月に
アメリカに参りまして、
アメリカの
中国問題研究所各所をたずねました。ずいぶん膨大なスタッフを持ち、
予算を持ち、資料を駆使して研究をしておる。しかしその研究の成果は、その資料が多いのにもかかわらず、的をはずれておる。その結論は必ずしも的を射ておるとは私は
考えなかったのでありますけれ
ども、相当深く立ち入った検討をしておる。
日本政府がこれに対して、ただ
アメリカの言い分だけに従って、国連の場においては重要事項指定方式によって
中国を国連の場に入れないようにしようとするほうに加担をしているということだけでは、私は済まされないと思うのでございます。そういうことに対して外務省としてはどういう状態でありますか、伺っておきたいと思います。