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1966-05-06 第51回国会 衆議院 外務委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年五月六日(金曜日)    午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 高瀬  傳君    理事 安藤  覺君 理事 鯨岡 兵輔君    理事 三原 朝雄君 理事 毛利 松平君    理事 戸叶 里子君 理事 西村 関一君    理事 穗積 七郎君       内海 安吉君    大石 八治君       菊池 義郎君    小坂善太郎君       森下 國雄君    岡  良一君       帆足  計君  出席国務大臣         外 務 大 臣 椎名悦三郎君  出席政府委員         法務事務官         (入国管理局         長)      八木 正男君         外務事務官         (アジア局長) 小川平四郎君         外務事務官         (北米局長)  安川  壯君         外務事務官         (経済局長)  加藤 匡夫君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         外務事務官         (国際連合局         長)      星  文七君     ————————————— 五月六日  委員愛知揆一君辞任につき、その補欠として大  石八治君が議長指名委員に選任された。 同日  委員大石八治君辞任につき、その補欠として愛  知揆一君議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件(日中及び核拡散防止問題  等)      ————◇—————
  2. 高瀬傳

    高瀬委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について、調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。穗積七郎君。
  3. 穗積七郎

    穗積委員 椎名外務大臣に久しぶりに二、三の点についてお尋ねをいたしたいと思います。  第一は、最近、政府与党の中で、共産主義アジア侵略に対する脅威が増してきたという情勢分析をされまして、それに対抗するために、安全保障調査会を中心にしていろいろ、むしろアジア緊張を、緩和するというよりは、激化をせしめるような、促進をするような、たとえば核の持ち込みの道を開くとか、あるいは日米間における協議会共同防衛委員会に切りかえるべきであるとか、あるいは現在の安保条約を十年間、——自動延長でなくて、十年間の長期にわたる期限を付して延長すべきである、こういうような、われわれとしては、むしろ日本アジア情勢に対して緊張緩和の努力をすべきにかかわらず、逆なような態度分析方針を打ち出されつつあるわけですが、これに対して、政府は一体どういう受けとめ方をしておられるのか、まずアジア情勢分析から、続いて安保条約の内容並びに期限に対する改定の問題について、ひとつ大臣からお答えをいただきたいと思います。
  4. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 何も直接私は聞いておらないのです。そういうことのほんの片りんを伝聞したという程度にすぎません。
  5. 穗積七郎

    穗積委員 それじゃ外務省自体分析はどうですか。その日、その日で何となしに無方針に生きておるわけではなかろうふと思うのです。
  6. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 最近になって、そういう情勢が著しくなって、これに対して何か考えなければならぬというような情勢の基本的な変化は、別に感じておりません。
  7. 穗積七郎

    穗積委員 それでは具体的にお尋ねいたしますが、私は、この機会に、最近の政府並びに与党の一部におきまして、情勢を非常に激化せしめて、共産主義侵略危機が迫ってきたというふうなことを言い、仮想的に国民を誤らしめて、そしてわが国における防衛力の増強であるとか、あるいは核の問題であるとか、あるいは海外派兵問題等をジャスティファイするような動きがあり、そういう非常に危険な情勢に対しまして憂うる一人でございます。したがって、それについてこの機会にそういう情勢分析や、それから政府の今後アジア情勢に臨むべき方針について、この際まとめて外務大臣から国民に向かって所信を述べられる機会をむしろここに求められたほうがよくはないかという趣旨で総括的な質問をしたわけです。ところが何ら変化はないのだ、しかも党の——政党政治で、自民党の内閣がつくられておるにかかわらず、党内における重要な外交問題に対する討議がもうすでに成文化されようとしておるときに、外務大臣は何も聞いていない。こういうことではちょっとやはり納得がいかないように思うのです。  そうおっしゃるなら、しかたがありませんからまず聞きますが、中国侵略性についてはどうお考えになっておりますか。そういうことが好んで使われておるわけですけれども中国侵略危機脅威、これについてはどういうお考えですか。
  8. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 あまりそういうふうに質疑応答するということがまた平地に波乱を起こすような場合もありますので、あまりお答え申し上げたくないのですけれども、しいてとおっしゃるなら……。(穂積委員平地なら平地とおっしゃってくださればいい、情勢分析は」と呼ぶ)とにかく平和共存趣旨に対しては、これは共産主義本来の趣旨からいうと堕落だ、こういって激しい非難ソ連にやっておる。これによって中共がどういうことを考えておるかということは、われわれは推察するにかたくない。それからまた従来の近隣諸国に対する実績からいいまして、やはり膨張主義をとっておるのではないかというような懸念をわれわれは解消するわけにはいかない。そんなことは初めからわかっておることで、ここへきて急にそのために危機が切迫したというふうに考えるのは適当ではない、私はこう考えておるだけです。
  9. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、中国平和共存原則を否定をし、膨張主義に立っておると規定されるわけですか。
  10. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 立ってないとは言えないと私は考えております。
  11. 穗積七郎

    穗積委員 それは何をもってそういうふうにおっしゃいますか。他国侵略主義膨張主義であると言う以上は、具体的な事実に基づいてでなければいけないでしょう。わが国防衛力あるいは反中国政策を強化するために、ありもしないことを言ったのでは、それは他国を誹謗して、誤った政府政策を正当化するための言いがかりにすぎないわけですね。そういうことは国際関係上おもしろくない。膨張主義とは一体何をもって膨張主義と言われますか。
  12. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これ以上は見解の相違になると思いますので、具体的に一々これが膨張主義だ、これがそうじゃないというような論議は、ここで私は繰り返したくない。
  13. 穗積七郎

    穗積委員 御承知のとおり、平和共存の問題は、終戦後のアジア外交においては中国がまっ先に主張したのです。その場合における平和五原則というものは、これはもう内外に明確になっておるわけです。それを放棄して、至るところに革命を輸出して内政干渉をやり、あるいは間接侵略を行ない、そしてその共産化を策動をやるというようなことは、いままでの中国の言動の中にどこにもございません。それよりむしろ枚挙にいとまのないのは、内政不干渉独立尊重、それから領土侵略、互恵平等の原則というものは、あらゆる機会に主張されておる。そして革命は輸出すべきものではない、おのおのが社会主義をとるか資本主義をとるかは、その国の大衆のみが決定すべきことである。これはむしろくどいほど幾たびか、平和五原則の提案以来、あらゆる機会に最近までずっと主張し続けられておるところであります。それをそうでなくて、膨張主義である、間接侵略あるいはまた内政干渉を意図しておるということを言う以上は、具体的な何か根拠がなければなりません。認識の問題ではないのです。私は事実を聞いておるのです。そういうことで日本を再び軍事体制警察国家に持っていこうとするようなことに対しては、これはもう何といいますか、誤りのみならず、その卑劣な態度に対してはわれわれ黙認するわけにはまいりません。そうであるなら、中国平和共存をいつ一体放棄したのか、それで膨張主義をいつとっておるのか、間接侵略内政干渉をいつやっておるのか、やろうとしておるのか、具体的にお示しをいただきたいのです。
  14. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これ以上は意見の相違といいますか、基本的な考え方相違ですから、私は申し上げません。
  15. 穗積七郎

    穗積委員 それじゃそんな、示すことができないで膨張主義だなんということを言うなら、それを取り消してください、事実を示すことができないなら。
  16. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 絶対取り消しません。
  17. 穗積七郎

    穗積委員 それでは問答無用ですよ。中国に対しては、それは遠い国で、ここで東京で言っていればかってだということかもしれぬけれども、われわれに対して、国会政府との関係から見て、そんなでたらめなことを言って、黙ってわれわれが引き下がっておるわけにいきません。これからの日本外交路線の重要な前提になる大きな問題です。あなた、何を言っているのですか。
  18. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ソ連平和共存趣旨に基づく外交の基本的な考え方に対してまっこうから反対している。これは同調しているわけではない。その一つでわかる。平和共存ということばはいつかどこかで使ったかもしれないけれども現実政治体制の異なる国と平和共存して、お互い立場を尊重して、そして内政干渉がましいことはしない、そういう態度ソ連はいまとっておる。それに対して非常な鋭い批判を浴びせておる。こういうことは一体どういうことなのか。それでもなお平和共存だ、こうおっしゃるなら、もうこれ以上の論議は無用だと私は考えます。  それから、膨張主義を捨てないということは、いまのベトナムの問題、あるいは対印政策その他あらゆる部面において、あるいはインドネシアの最近の情勢からこれを分析してみても、結局やはり膨張主義を捨てておらぬということが言えるのでありまして、これを……。(「そんなことは抽象論ですよ、概念論ですよ」と呼ぶ者あり)概念論とおっしゃるけれども、それじゃ、どこのだれそれが何をしたというような証拠でも持ってこなければいかぬとおっしゃるなら、それは私はいまそれだけの準備はしておらぬけれども、まあこれはほとんど事実だと私は考える。
  19. 穗積七郎

    穗積委員 あなたに対して説教するつもりはなかったのですけれども、あなたは非常に誤った問題の提起をしておられるので、この際ちょっと、そういうことを、日本を代表する外務大臣がそういう認識不足というか無知による言いがかり外国に向かってつけるということになりますと、事は重大でありますから、御注意を申し上げておきますが、それは平和共存ということです。平和共存は、社会主義資本主義との間において共存があり得るのだということですね。思想または社会制度の違った国々が同じ地球の上に共存し得るのだ、そして互恵平等の関係経済、文化、人事の交流がなし得るのだ、こういうことなんです。ところがその場合においては、大事なことは、つまり独立と主権が認められておるかどうかということなんです。すなわち、帝国主義または植民地主義の国と被植民地国との間においては平和共存はあり得ない。民族解放、すなわちその民族解放されて、そして対等、平等な立場に立っておるものの間においてのみ平和共存はあり得るのであって、それが押えられておる関係の中においては平和共存はあり得ない。これは当然のことなんです。われわれ社会党外国へ出ますときに平和共存を主張いたします。積極中立も主張いたします。そのための基礎は、平和共存基礎になっている。ところが、帝国主義国家または植民地主義政策をとろうとする国とその被圧迫民族との間においては、平和共存は絶対に成り立たない。こういうことなんです。したがってソビエトまたは西ヨーロッパ諸国の言っておる、あるいはアメリカが言っておる平和共存というのは、現在の国際関係における支配のシェアを現状維持で持っていこう、こういうことなんですよ。そこに誤りがあるわけです。その点が誤りだということが指摘されておるわけです。われわれも、その西ヨーロッパ的な平和共存論は非常な誤りであるということを指摘しておりますし、今日もその考えを持っております。それは平和共存の正しい意味を曲げて解釈するものであり、利己的に解釈するものであり、それを利用するものであって、真の平和共存を理解してない。社会主義または資本主義を問わずその先進国が、軍事的または経済的に強い力を持ったものが他の民族支配関係に置いておる、あるいは隷属関係に置いておる、あるいは植民地または半植民地状態に置いておる、そこの中において、その現状維持平和共存があれば、これは何も起こらないでしょう。国内における階級もそうです。独占資本労働者との間において平和共存はあり得ない。もしそれをやるなら、農奴的な小作人も黙っておる、被植民地国も黙って現状に満足しておる、そうすれば世界紛争はない。ごたごたはない。まことに静かでよろしい。それは支配国のための平和あるいは平和共存であって、真の平和共存とは似ても似つかないものでございます。そういう意味に解釈すべきなんです。  すなわち問題は、中ソの論争の中におけるものは、平和共存そのものを否定するのではなくて、平和共存が、一方の強力な大国が弱小国を半植民地状態または支配関係あるいは隷属関係に置いておる、それを継続すれば、現状維持すれば、そこに紛争はないという、大国または帝国主義あるいは植民地主義国の一方的な利己のために現状世界支配のシニアを維持しよう、そういうものは平和共存ということばを使っておっても、それは平和共存の精神に反する非常な誤りであるということを言っておるにすぎないのです。そのことを否定するのが何が悪いのですか。われわれ日本社会党もその考えです。そういうものが平和共存だなんということを幾らことばの上で使っても、そういう大国帝国主義植民地主義国現状支配を維持しようとするために、抵抗するな、民族解放要求をするな、そういうことは誤ったものであって、平和共存ではない。似ても似つかないものである。むしろ反対のものである。われわれも同様に考えております。あなたの平和共存とは一体どういう平和共存ですか。先進国大国の一方的支配現状をそのままにしておけばいい、民族独立闘争をやるな、そうすれば世界は平和ではないか、そういう意味ですか。それは誤りですよ。そんな幼稚な認識不足、無知によって、平和共存平和共存でないかなんということを議論されて、しかも日本と最も関連の深い中国を一方的に誹謗する。それとの対決、場合によっては武力的対決すら強行しよう、こういう誤った政策が導き出されるということになれば、日本はすでに帝国主義または軍国主義の段階に入ったといわれることをあなたの発言は証明するにすぎないのであって、これは非常な誤りです。御注意申し上げて、御所感を伺いたい。
  20. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 私はあなたのような高邁な理論はあまり存じませんが、とにかくソ連アメリカ平和共存を唱えるということに対して非常な悪罵を加えておる。こういうのはどういうわけなんだろう。あなたの高邁な理論でひとつ聞かしてもらいたい。
  21. 穗積七郎

    穗積委員 それにお答えいたしましょう。  古くスペインからフィリピンを盗み取ったりキューバをスペインから盗み取ったその罪業はやめておきましょう。終戦後の状態で見てどうですか。いま問題になっているベトナム平和共存を否定して、侵略しているのはアメリカですよ。その侵略をやめろということなんですよ。朝鮮に対してもそうです。統一を宣言して、統一朝鮮ということを言いながらあそこに坐り込んでおる。台湾についてもそうです。沖縄についてもそうです。台湾は、最近二つ中国問題がアメリカ日本政府の間で出だしておりますからあとで伺うつもりですけれども台湾についてもこれは中国領土である。したがってこれは日本が盗み取ったものであるから返すべきであるというので、樺太とともに元の国ソ連並び中国に返させられた。それから沖縄についてもそうじゃありませんか。平和条約に反しておる。(「盗み取ったとは暴言だな。」と呼ぶ者あり)盗み取ったと書いてある。読んでごらんなさい。沖縄についてもそうじゃありませんか。アメリカアジアに何の関係があるのですか。それこそ自分の資本主義体制あるいは独占利潤を守るためにアジアに対する不当な干渉をし、支配を維持しようとしておる。あるいは支配を広めようとしている。これこそが膨張主義です。侵略主義です。これこそが平和共存を否定しておるものなんです。アメリカ中国は誹謗するのではない。台湾を押え、あるいは南ベトナムを押え、そして集団自衛権の名のもとに、南ベトナムの人民ですらいやがっている戦争を無理やりにやろうとしておる。そういう政策帝国主義政策であるからそれはやめてもらいたい。それがアジアから引っ込むまではわれわれはあくまで戦うのだということを言っているだけなんです。平和共存を破っておるのはアメリカですよ。内政干渉間接侵略をやっているのはアメリカですよ。その点についてはわれわれも同感です。同じ判断を持っております。それが何が悪いか。アメリカ平和共存を破っておるから真の平和共存立場に帰れ、それを言っているのです。これは私どもの主張でもあります。わかりましたか。
  22. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ちっともわからない。私の聞いているのは、ソ連アメリカ平和共存を唱えておる、それに対してどういうわけで非難するのだろうか、あなたの説によると、どっちもりっぱな独立国であって、アメリカソ連も、どこの勢力のかいらいでもない。それがお互い平和共存をやっていこう、こういう考え方に立つのに対して、これはもう共産主義堕落であるという非難を鋭く加えておる。あなたもやっぱりそういう非難のほうに非常に賛成のようですが、どういうわけで賛成なのか、それから聞かしてもらいたい。
  23. 穗積七郎

    穗積委員 ぼくとあなたと位置をかわろうか。あなたは議員席へ来て、私がそっちへ行くから、ちょっとかわりましょうか。  それはこういうことですよ。帝国主義侵略をやることがいけないと言っているのです。平和共存を否定しているのじゃない。アジアにおける民族支配を強化しようとしたり、民族独立闘争武力をもって押えようとしておる、あるいは他国領土条約に反してこれを基地化して、あくまでもこれを占領しておる、そういう政策が悪いと言っているのです。それを帝国主義政策と言っている。平和共存を真に実現するために、その上に真の平和を打ち立てるためには他国領土のそういう不当な支配を継続するとかあるいは民族独立要求解放要求の正しい要求武力でもって押えるというようなことはやめさせなければならない。それをもし許すならば、それは平和共存ではない、誤った利己的な、平和共存という名前を利用しておるにすぎないというので非難をしておるわけです。少なくともいまアジアに局限をして、われわれのアジアとして事実を見れば、アメリカのそういう膨張主義あるいは侵略主義あるいは帝国主義あるいは新植民地主義政策というものとわれわれとの間においては妥協はありません。アジアにおける民族解放の、そして真の意味対等、互恵、平等の平和体制をつくろうということのためには、この政策誤りであり、じゃまでございますから、それとはあくまで戦うべきである。もし戦いを放棄する、妥協するものであるなら、これは社会主義者としては堕落である。そんなことは当然なことでしょう。ただ、ソビエトがそれとはたして妥協するものであるかどうかということは、これは中国認識によることであって、それがどうであるかは別の問題です。いやしくもアメリカ帝国主義と妥協するもの、アメリカ帝国主義侵略の事実の現状維持を認めるもの、その上に立って和平工作をやるもの、これは社会主義者としては認められない、こういう意味です。わかりましたか。
  24. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ずいぶん持って回った議論のようで、平和共存そのものに対して解明ができないから、あなたはアメリカのやっておる帝国主義がいかぬとか、侵略主義がいかぬとかいうことを言っているようだが、アメリカそれ自身ソ連それ自身共存するという立場に立っておることが一体なぜいけないのか。それがちょっとも解明されておらない。  それからもう一つ、私はいまのなまの問題はしばらく避けて、朝鮮戦争の問題を取り上げてみたいと思いますが、結局三十八度線は、ソ連日本領土であった朝鮮に対して進撃してまいりまして、三十八度線のところで戦争が終結した。それから三十八度以南はアメリカがこれを実際問題として治めておった。お互い占領区域を一応固定化して三十八度線というものができ上がって、二つ政権が事実上でき上がった。これを一緒にしよう、統一しようという工作が行なわれたのだが、いろいろな理由でそれができ上がらなかった。しかしもう戦争も済んだことであるし、アメリカ南鮮から撤兵したのです。そうしたところが、何らの理由なしに、北鮮及び中共がこれを支持して南鮮に攻め入ったというのが朝鮮戦争現実です。どういうふうな経過をとってああいう戦争になったかということは、これが現実なんです。これに対して、武力でいやおうなしに南の政権がこれを屈服させられてはたまらぬというので、国際連合に実際問題としては救援を頼んだ。それによって今度は国連の軍隊がその侵略を排除したというのが朝鮮戦争の私どもの見方です。これがなぜ侵略であるか。一体侵略とか帝国主義とか言いますが、これは領土的野心もない、ただその民族あるいはその民族の一部が自由な独立、平和というものを望んでおる際にこれを支援するということがなぜ悪い。そしてそれが済んだ場合には、何ら危険がなければこれから撤退するということでありますから、私は、帝国主義とか、侵略だとかいうのはどうもおかしいと思う。もっとも共産主義には侵略というものはなくて解放というのだそうですが、まあやっていることは同じことなんです。それを帝国主義あるいは新植民地主義というような非常にきわめてあいまいな概念で片づけようというのが大体おかしい。もう少し実態を見てものを言わなければいかぬのじゃないかと私は考えます。社会主義のためにも、もう少しはっきりしたことを言ったほうがいい。
  25. 穗積七郎

    穗積委員 具体的事実をさっきから言え、言えというのに、あなたは言わぬじゃないですか。われわれは具体的事実に基づいてその政策分析をやりましょう、こう言うのに、あなたはさっぱり言わないのです。具体的事実に反してやっているのはあなたですよ。つまりこういうことです。中国ソビエトも、アメリカ資本主義体制をとっておっても、それとの間に共存はあり得る。ただ問題はアメリカが事実として後進民族解放を抑圧しようとしておる、あるいは内政干渉しようとしておる、それは絶対に妥協するわけにはいかない、それを排除しなければ、やめてもらわなければ平和共存はあり得ない、これだけのことです。アメリカを攻めようとか、あるいはアメリカ資本主義をつぶすために内政干渉をやろうとか、間接侵略をやるとか、そういうことは毛頭言っても考えてもしてもいないということです。いまのお話については、朝鮮の事実については事実に反します。これはいままでの日韓条約予備審議以来、朝鮮の問題についてはいままで幾たび議論をしてきておる。それからさきにあなたが例にあげられた中印国境の問題についても、これはアメリカ国会あるいはカナダの学者等の間においても議論が行なわれて、そしてそこにおいてはこのことが中国膨張主義侵略主義を証明すべき事実は何もない、こういうことは歴然たる事実ですよ。朝鮮の場合においてもそうです。マッカーサーの鴨緑江を越えてという作戦に入ったので、中国は初めて出てきておるのだ。  そこで私も一々アジアにおけるいろいろな事実を踏まえた上で、その分析あとにいたしまして、並行してひとつそれを踏まえた上で実はお尋ねをいたしますけれども、それでは、あなたのほうの安保調査会中間報告の文章によりますと、ソビエト並び中国、両方とも世界に対する共産主義革命侵略者であるという規定をしておりますけれども、これは政府としておとりになりますか、なりませんか。
  26. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 まあ、実際私はそういうものはまだ見ておりません。
  27. 穗積七郎

    穗積委員 だから私は言ってあげた、その文章を。
  28. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 あなたのことばだけでは、全体の意味をくみ取ることはできない。
  29. 穗積七郎

    穗積委員 もしあるとすればどうしますか、賛成ですか、反対ですか。
  30. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 そんな仮定にはお答えできません。
  31. 穗積七郎

    穗積委員 ソビエト膨張主義または侵略主義認識なさいますか。
  32. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 具体的な政策に関連したことをひとつやっていただきたいと思います。そんな討論会みたいなことは私はやりません。
  33. 穗積七郎

    穗積委員 それではこれはあとで、今後の国際情勢をどう見るか、日本関係のある諸国外交政策をどう見るか、それに依拠しておるわけですから関連して出てくると思いますから、それじゃ政策の側からお尋ねをいたします。  まず第一、先ほど言いましたように、安保改定の時期がまだ四年の後にあるのに、しかも情勢は流動または激動しておる。にもかかわらず、いまから、十年の固定延長をすべきであるというようないろいろな意見を出すことについては、これは不当ではないか。検討中だというならまだ流動する情勢分析して——田中幹事長の談話発表のように、まだ国際情勢は動いておる、議論をするのはいいけれども、決定すべき段階ではない、これはまあ当然なことですけれども、ところが一部におきましては、外務省まで含んで、安保条約を、四年後に迫る改定期、この期限を前にして十年間の固定延長をやるという考え方、それから第二に、われわれが見のがすことのできないのは、特に特徴的なのは、アメリカの核持ち込みを認める、その道を開くべきである、第三は、いままでの日米協議会を切りかえて、共同の作戦のための共同防衛の委員会に切りかえるべきであるということ、これは安保改定を控えましてわれわれとしては非常に重要な政策上の問題であるというふうに考えております。これがもうすでに新聞に党を通じて発表される段階に来ておるわけですね。幾たびかもう発表されつつある。これに対して外務省はどういうお考えを持っておられるか。この問題は具体的にもう提案されつつあるわけですね。
  34. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 そういうことはちらっと聞いただけの話でありまして、党のほうの責任ある当局からそういう申し入れがあるわけでもない。まあ論議は自由でございますから、これは大いに論議したほうがいいだろうと思います。ものによってはあまり論議することは適当でないという政治的な考慮を加える必要のある場合もありますが、論議は、これは自由なんで、党としてもまだまだ決定の段階にはいかないだろうと思います。そういう場合に特にこれに対して特別の考慮をいま払う時期ではない。いわんやここで御質問がありましても、その問題は全くただ自由に論議している場合でございますから、私はこれに対してどうこうという論評は加えたくございません。
  35. 穗積七郎

    穗積委員 外務大臣アメリカベトナム・エスカーレーション政策以後、アジア情勢分析について、並びに日本の安全保障問題についての具体的な政策、いまの安保条約を延長するのに、その内容を強化、改悪しようとするのもその一つ、さらに自衛隊の海外派兵の問題、あるいは核のかさの問題、これらについてむしろわれわれが取り越し苦労をして質問をして問題をアジテートするのではなくて、実はそれは与党または政府当局からそういうものが進んで国民に投げかけられて、国民はびっくりしておるわけです。問題を提起しておるのはすべてあなたのほうですよ。それに対して聞いておるとかおらぬとかいう問題ではなくて、それにはそれ相応の情勢分析と、それ相応の意見を持って、いまの問題を積極的に提案されておるわけですから、具体的に答えていただきたいのです。意見を出しておるのはそっちなんです。
  36. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 むしろこの問題をほじくり出したのは野党のほうなんで、これは安保条約は絶対に粉砕すべきであるということを言っておるのはあなたのほうです。それだから今度はこれに対するいろいろな論議が出てくる。ですから国民がもしこの問題について関心を持つならば、やはりある程度論議を自由にして、そしてその実態というものを十分に理解するという必要があるいはあるかもしれない。そういう意味でございまして、私はこれに対して別に政府としての見解を述べるという段階ではない、こう考えております。
  37. 穗積七郎

    穗積委員 あと委員の質問も予定されておりますから、いまの問題についてのお答えは私ははなはだしく不誠意、不満足でありますけれども、留保して次の機会にいたすことにいたしまして、前に進みたいと思います。  国連における中国の代表権問題に関して、アメリカの一部においても二つ中国が出だした。そうすると、日本の外務省も口移しのようにそういう意見がもやもやとし始めたわけですが、国連代表権問題に対する態度、これは今年度の問題ですからもう具体的でございます。それから二つ中国の問題、これを一括して、関連して外務大臣から政府を代表してこの問題に対する外交方針をひとつこの際明らかにしていただきたい。私はあまりごねごねしたことをお尋ねいたしませんから、相手が大臣であるから大臣に敬意を表して問題を提起いたしますから、それに対して何べんも応答をしないで済むように、ちゃんとした一括した方針をこの際明らかにしておいていただきたい。もう会期も余すところわずかでありますし、そして国連総会はどんどん迫ってきております。したがって、この事前工作というものが行動の中にあらわれるわけですから、この際会期末のこの機会にぜひ国連における中国代表権問題と、二つ中国問題に対してどういう方針で臨まれるつもりであるか、その二つについて一括してお尋ねいたしておきます。
  38. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これは二つの問題とおっしゃるけれども一つの問題なんです。でありますから、国連の代表権問題は、中共を新たにこれを台北政権と置きかえて、そうしてこれを代表し台湾及び中国大陸両方を代表するものとしてこれを認め、同時に中国を国連から追放する、こういう問題なんです。これに関しましては、ただいまのところ従来と政府方針は変わっておりません。
  39. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると、重要事項指定方式で臨むわけですか。
  40. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 さしあたりこの方法にかわる良案はないと考えております。
  41. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると、それで臨むということですね。その可能性についてはどういう見通しを持っておられますか。
  42. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ただいまのところはこれでいく、こういう考え方でございます。
  43. 穗積七郎

    穗積委員 これに対する政府の見通しはどうですか。
  44. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 この問題は重要問題として大多数の国際世論の背景においてきめる問題である、こういう考え方については変わりはない。
  45. 穗積七郎

    穗積委員 いや、私の第二に関連して聞いておるのは、重要事項指定方式で臨むのだ、こういうことであるなら、その見通しはどうですかと言って聞いているのです。
  46. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 見通しは、いろいろ情勢は変わりますから、そのときによって見通しというものも内容が多少変わるでしょうと思いますが、ただいまのところはこれでいける、こういう考え方でございます。
  47. 穗積七郎

    穗積委員 その問題について公式または非公式にアメリカの機関と意見の交換または連絡をされましたか。
  48. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 まだそういう意見の交換はしておりません。とにかく見通しと、こういいますと、これでどっちかにきまるわけですが、その場合に日本のかねての主張と相反する結果が生まれるか、それともその反対であるかということなんでありますが、とにかくこの国連代表権の問題は重要事項として国連の大多数の世論によって決定すべきものである、こういう認識においてはこれは変わりようはございません。ただその見通しいかん、日本立場において見通しはどうだということになりますと、これはまたこれと問題は別でございますが、ただいまのところは去年どおりの結果を生むのではないか、こう考えております。
  49. 穗積七郎

    穗積委員 この問題に対するアメリカの最近の動きについて報告していただきたい。
  50. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 別にアメリカと打ち合わせているわけじゃございませんから、あなた方と同じように判断していくよりしかたがないと思います。アメリカの責任ある首脳部の考え方は私は変わらないと思います。ただアメリカのこの問題に対する一般の論議というのが、過去十六、七年の事実というものに基づいた論議が目立ってきておるということだけは言えると思います。
  51. 穗積七郎

    穗積委員 この問題についてはもう少しやはり実はわが国外交関係のものは、政府または国会といわず、討議する価値のある情勢になってきたと思うのです。それと大臣との間に、私どもの見ておる情勢判断、それから政府のとっておるいろいろな情報等も伺いたいのですけれども、時間がありませんので、これもできれば、もし会期延長にでもなりますれば次の機会にと思っておりますが、安川さん、アメリカの最近のこの問題に対する動きで何かいろいろな大きな流動が始まっているように見えますけれども、ごく簡単でいいですから、最近の状況をちょっと国会に報告していただきたい。
  52. 安川壯

    ○安川政府委員 先ほど大臣がおっしゃいましたように、アメリカ政府部内でどうこうという問題でなく、一般のジャーナリズムその他特にアメリカの議会で中国問題というものが大きく取り上げられ、それに対して非常にインテンシブリな討論が行なわれたということは御承知のとおりだと思います。それについて一々御説明するあれはないと思いますが、政府の動きとしまして、私は特に新しい動きがあるとは思っておりません。ただ議会の証言にラスク長官が出席いたしまして、下院のたしか極東委員会でアメリカ中国政策というものについて全般的な説明をしておりますから、これが現時点におけるアメリカ政府の公式の中国政策の表明であると私は理解してよろしいんではないかと思います。  この内容を読みまして、特に従来のアメリカ政府政策が、政策それ自体が変わったとは私は感じておりません。ただ変わったところありとしますならば、一口に申しますと、確かに旧ダレス時代と申しますか、その時代の中共政権に対する考え方の基本が、これは悪い政権であっていずれは倒れるんだという一つの前提があったのではないかと思います。したがって、当時はそういう前提に立ちまして、もちろん米中会談というものは当時ございましたけれども、それ以外にいわゆる非公式の折衝というものも一切しておらなかったわけでございます。むしろそれに対して非公式の接触、みずからもやらないばかりでなく、他の国に対しても中共との接触というものに対してはアメリカはむしろ否定的な立場をとっておったと思います。ただ、現在のアメリカ政府中共に対する政策それ自体、国連の代表権その他につきましては従来と変わっておらないと思いますけれども、しかし一応中共政権というものが現在あるという事実認識に立ちまして、そうしてこれとの接触と申しますか、民間の接触というものはアメリカ政府としてはむしろ積極的にやっていくのだということが、過去の考え方と変わっておるといえば変わっておると言えるところではないかと思います。しかし政策それ自体が変わったかと申しますと、いまの中国代表権問題にいたしましても、私は現在のところ少なくとも変わっておらないというふうに思っております。
  53. 穗積七郎

    穗積委員 私は冒頭に、きょうの質問の趣旨は、ソビエト中国侵略膨張主義である、特にアジアにおいては中国がその根源であるというふうにきめつけ、そうしてそれとの対決を深めていく、そういう態度、それで米中の対決というものをむしろこれを緩和せしめる、あるいは日本中国との間を接触に持っていく、相互理解を深め、そうして緊張を緩和する方向へ持っていこうという努力が、政府等を中心にして逆になりつつある。もとより自民党の中においては、松村、藤山両氏をはじめとするいわゆるAA研究会の良識ある文書の中においては、そういう対決ムードというものに対して反対の態度を示すようになっておられる、これは大いにわれわれ尊重いたしておりますけれども、しかし政府政策そのものの態度については、池田内閣時代には経済合理主義の一応の路線があった。ところが佐藤内閣になりまして、あなたは経済官僚出でありながら、実はその合理主義を乗り越えてしまって、そうして反共対決ムード、軍人か右翼と同じような考え方が露骨にさっきからの問答でも明瞭になっている。われわれはきょうのことでますます日本の佐藤内閣の外交路線というものは対決を強化していく、対決を深刻化していく、力の対決でいこうという方向へいきつつあるということを非常に憂えるとともに、憤りを感ずるものでございます。したがって、いまのアメリカにおける多少の流動、これについては、特に政府部内にはマクナマラのこの間の発言にもありますように、ベトナム戦争に対して立ち往生してしまって、そこでそれの打開の逃げ道として中国との接触、孤立なき封じ込めとかあるいは中国との何らかの接触を始めていったらどうか、これは窮余の策だと思うんです。そういう動きがあるということは事実なんです。そのアメリカ中国認識なり中国に対するいかにもやわらかいような融和的な態度というものは戦術から出たものであって、私は本物ではないと思っておる。しかしながら、これは一つのチャンスでありますから、日本は、少なくともあなたのほうの党の中で松村さんなり藤山さんなり、その他AAグループの良識ある人々が考えておるように、アメリカ中国との対決を強化、激化したときに、一番の被害者は日本であるし、その渦中に閉じ込められることは免れない。したがって、われわれのなすべきことは、平和路線をとってアメリカ中国との間のちょうつがいになるべきではないか、橋渡しになるべきではないかという意向が一部には——むしろあなた方が反動化するとともに、その橋渡し的な意見というものがまたまとまりつつあるし、強くなりつつあるのが現状だと思います。したがって、アメリカも動揺しておる、日本の政界も、与党である保守党を含めまして動揺を始めておる、これが事実だと思うのです。そのときに政府のとるべき具体的な個々のこまかい外交政策、たとえば出入国問題一つにいたしましても、これから延べ払い問題一つとってみても非常に大事な影響を与えると思うのです。ところが、きょうのところは、私どもが危惧いたしておりましたことが事実となってあなたの答弁の中にあらわれてきておる。これははなはだしく遺憾であります。安保条約の取り扱いについてはまだ発言の時期でないから、議論は自由だけれども政府としてはもう少したってから意見を述べたいと言われる。中国問題については、この緩和をもし願うならば、アジア対決強化を欲せられるんでなくて緩和を願われるならば、この際は安保条約の改定問題、あるいは改悪問題を論議する前に、中国の国連における代表権問題はぜひ取り上げるべき前向きの態度政策の転換をはかるべきであると私は強く思うわけです。ところが、相変わらず重要事項指定方式で臨むんだ、そしてアメリカにおいてすら始まっておる動揺に対しても何ら考慮しようとしていない。その流動的な動きをつかもうとしていない。そして見通しはどうかといえば、見通しに対しては自信がない。これではアメリカどおりだということですね。おそらくは重要事項指定方式はアメリカが放棄したときに日本はそれに追随するでしょう。あくまで重要な問題だから重要事項だと言う、これを固執して通す自信はあなたにはないでしょう。答弁を求めるまでもなく、アメリカに追随しか出てこない。これでは国民は非常な不安を抱く。このごろはいつか来た道ということばが——あなたはあまり地方にお出にならぬからわからぬかもしらぬが、いつか来た道という非常な警戒と不安と憤りを含めたことばが大衆の間に出だしてきております。それはそのことを言っている。  以上の私の質問を締めくくりましたときに、そういう期待を政府にかすかながら持ちながらお尋ねしたわけですが、それを申し上げまして、総括してあなたの対国連、対中国問題についての御所見を伺っておきたいと思うのです。どういう方向を進もうとしているのか。
  54. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これは非常に広い、全アジア、ひいては全世界に非常に大きな影響を与える問題でございまして、そういう問題だけに、日本一国の単独の力でこの問題に立ち向かうべきものではない、やはりこれは世界の大多数の世論に基づいて決定せらるべき問題である、こう言うのでありまして、いかにあなたが私に対して日本政府がどういう態度をとるかということを言われても、これはもともと日本が単独でやるべき問題じゃない、国連の舞台において大多数の世界の世論というものに立脚してやるべきものである、こう考えておりますので、従来と少し変わった答弁を求められるようでありますけれども、遺憾ながら従来と同じでありますということを申し上げておきます。
  55. 穗積七郎

    穗積委員 時間がまいりましたから、具体的な問題で二つばかりお尋ねいたしまして、岡委員にかわっていただきたいと思います。  八木入管局長にわざわざおいでいただいて恐縮でございますが、実はあなたもごらんになったと思いますが、これはあなたの入管の機関の神戸でございますけれどもアメリカの医学の学者が夫妻で阪大に来ておるわけですが、そのおかあさんのやはりアメリカの老婦人カール・テルザーギという婦人が息子夫婦をたずねて日本に立ち寄った。それに対してあなたのほうの機関が、これはあり得べからざることだということで驚いたのですが、思想調査に類する尋問や家庭訪問をやっておる。これは内容も間違いであるとともに、やり方も非常な間違いではないか。この婦人は、私どもの知る範囲におきましても、由来非常な長い期間にわたる平和運動、そうしてベトナム戦争を反対して早く終結をすべきであるということで始めましたPAX——パックスと略称はいいますが、その平和運動の表面に立っておる人でありますが、そういうことで平和を唱える者に入管が圧力を加えるかのごとき尋問をするというような、あるいは観察をする、尾行をする、報道の制限を加えようとする、こういうことは不当な警察国家化した危険な状態でございまして、このことは、国内における問題は内閣の所管かもしれませんが、たまたま外国の人にまでそれが及びましたので、この際外務委員会の委員として無関心でおれないので、その事実と、その不当なることの事実を解明していただいて——私どもははなはだしく不当だと思いますので、今後こういうことの起こらないようにお取り締まりを願いたいということで御質問するのですから、両方あわせて御答弁を承っておきたいと思います。
  56. 八木正男

    ○八木政府委員 お答えいたします。  新聞に出ましたのは四月二十三日の毎日新聞の朝刊に御質問のことが出たわけでございますが、私どももちろん思想調査をやる意思もありませんし、その必要もないわけで、ふだんからそういう訓令も出しておりません。  そこで、どういう経緯でこういう問題が起こったか、さっそく現地に調べさせましたところが、その結果判明しましたのは大体こういうことでございます。  この問題になりましたPAXという運動のメンバーであるルース・B・テルザーギという未亡人ですが、この人が観光客として日本に参りまして、日本に着いたときに、神戸で毎日のデイリーニュースの新聞記者との会見がありまして、そのときにその新聞記者からPAXという運動の性質についていろいろインタビューがあったようであります。それを読んでみますと、たとえばこんなことがあります。この運動は一九六二年にアメリカの上院議員の選挙に出馬したスチューアート・ヒューズという人が落選した。しかし、その選挙の支持者たちが集まってこういう平和運動を始めたというようなことが説明に入っております。  実はこの問題になりました私どもの二人の調査に行った入管の職員でありますが、これは両方とも入国警備官でありまして、違反調査をやっておる担当者であります。こういう人間の一番の関心の一つは、日本に入国しました外国人が、与えられた在留資格を逸脱した行為をしているかどうかという点でございます。というのは、資格外活動をしますと強制退去の対象になります。そこで、たまたまこの二人の警備官が英文毎日の新聞記事を読みまして、軽く読んだのでしょう。選挙に立候補した人の選挙を支持した人たちがつくってそういう運動をしているということが書いてあったので、政治運動じゃないかと思ったらしいのです。もし政治運動だということになりますと、観光を目的としてやってきて政治活動をしたとなると、これは資格外活動ですから、そこで、どういう性質の運動なんだろうということを——実は二人ともPAXという運動について何も知らなかったようでございまして、そういう点を聞こうというので、二人でその未亡人をたずねたわけであります。ところが、たまたまそのとき未亡人は外出中でありまして、その子供さん、ただいまお話のありました大阪大学で医学部の教授をしております交換教授でありますが、ドクター・テルザーギという人の家へ来ましたところが、その教授の奥さんが家におられた。そこで、実は入管の者で、こういうわけでお話を伺いに来たのだと言いましたところが、非常にあいそうよく、上がりなさいというので上がって、家族と一緒に、子供なども一緒にいて、そこで非常に親しそうな雰囲気のうちでいろいろ雑談をしたそうです。そのとき、PAXという運動はどういうものだということを聞きましたら、その教授の奥さんがいろいろ説明をしてくれたそうです。そのときに、もちろんその二人は全然メモなどもとりもしないし、いやしくも尋問するというような感じで応待したことは全然ありません。この二人とも法務省から日米会話学院に二年間研修に行っていた人間でありまして、非常に英語がじょうずであります。本人もそういう和気あいあいとした雰囲気で話をしまして帰ってきた。もちろん政治運動ではないということがわかったので、自分としてはそれだけの問題だと思っておったようであります。ところが、たまたま問題になった未亡人が帰ってきまして、奥さんから、入管の職員が来たということを聞きまして、何か非常に心配したらしいのです。というのは、このPAXという運動は、ジョンソン大統領の政策を批判をするのだそうでありまして、私は政策の批判など一向に問題がないと思いますけれども、その観光に来た未亡人は、何か自分がアメリカ政府から監視されているのじゃないかと思った。そこで、日本へやってきたについて、アメリカ政府から日本政府が本人の言動について調査するような依頼を受けているのだというふうに誤解をしたようであります。そこで、いろいろ話してしまったので、そのあと、かっこうがつかなくなったらしいので、いろいろ考えた末、今度は話をしたお嫁さんが毎日新聞に投書をしたかっこうで、入管の職員がやってきて尋問された。そこで政治的な迫害のようなものを受けたといったような趣旨の投書をしたのだそうであります。これはてれ隠しだろうと思いますが、そこで問題が出ましたので、私どもとしましては、一応その点をもう一回入管によく調べさせまして、そういった尋問するような調子で聞いたのかどうか、そのときの雰囲気はどうであったかということをよく調べさせましたら、結局いま申し上げましたような報告が来ております。現地の所長も非常に心配しまして、職員を集めまして、そういう外人を訪問するときには、アポイントをとらずにいきなり訪問してはいかぬというようなことを説教したそうですが、私としては、この際、こういうことが新聞に出たからといって、職員があまり縮こんでしまって、せっかく一生懸命やろうと思っているのに水をかけられてはいかぬというので、所長には、訪問していろいろ聞きにいったことは大いにけっこうだ、そういうことは大いにやってよろしい、しかし外人を訪問するときにはアポイントをとらぬで行くというのは非常に非常識だから、そういう点については所長からみんなに伝えておくようにとは言っておきました。したがって、問題は実は全然誤解でございまして、その話を聞いた結果、PAXという運動の性質について、実はこういうものであったといろ報告すら別によこすに値しないような結果でありまして、私どもは新聞記事を見て驚いたのでありますが、入管としましては、こういう問題はまだ政治的な観点からは全然扱っておりません。あくまで、在留資格外活動という点では関心々持ちますけれども、観光客が政治運動をしに来たということになればもちろん強制退去の対象になりますけれども、たまたま船を訪れた新聞記者に自分の属している話をしたという程度で、一々政治運動とは考えませんから、この点は何も問題ないと考えております。ただ、そういうことが新聞に出たり何かして騒がしたということについては遺憾であると思うのでありまして、今後十分気をつけてもらいたいということで訓辞してございます。
  57. 穗積七郎

    穗積委員 実は、この婦人をよく知っている人が、近く東京へ来たらその実情を訴えたいと言っておりました。連休が続いたので私はまだ会う機会がないのですが、いずれ会いまして、いまの局長の御報告のとおりであるかどうか、よく実情を聞きたいと思っております。いまのやつは、おそらくはその係官の主観による報告だと思いますが、向こうのお嫁さんは、初めは単にアメリカの事情をいろいろ聞きに来たというようなことで、プライベートなアンオフィシャルな立場でやった。ところがだんだん尋問に、あるいは思想調査に等しい強い印象を与えたようです。そこで婦人は不当をなじって投書をし、または談話を発表しているのですね。だから、これは、そういう目的外の調査に名をかりて、調査のしかたが少し不当ではないかと私は思うのですよ。相手にそういう脅威を与え、あるいは抑圧を与えるような方法でなくて、幾らでもそういう事実調査はできるわけです。その点はひとつきびしく注意をしておいていただきたいと思います。  まだ二、三あったのですが、時間がありませんから割愛をいたしまして、もう一つだけお尋ねをいたしますが、この間佐藤総理出席のときに私も伺いまして、経済取引を目的とした朝鮮の技術者の入国問題については、すでに、佐藤総理並びに官房長官から、必ず入れます、それで条件はこれこれでどうでしょうかということで、われわれの側と合意に達しているわけです。   〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕 人数の点について、滞在期間の点について、二つの使節団を一体にすることについて、それからその他、国内における政治活動の心配があるならば、丁寧に念を押して、われわれが保証をしてもよいということで、政府と、特に佐藤総理と私どもの間で、非公式ではありましたけれども、合意に達している。それで、この間私がここでお尋ねしたら、それは近くやりますということを言われたわけです。その後、官房長官からの発表によると、入国を許可するに踏み切るという記事が出たら、すぐ韓国の大使館から外務省下田次官に向けて抗議的な申し入れをしたわけですね。それでまた再び動揺して停滞しているわけですが、それに対して、政府を代表して外務大臣から、入国を許可する、約束どおりにやってもらうということについて、まさかほごにはしないと思いますけれども、この際明らかにしておいていただきたい。
  58. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ただいま検討中でございます。
  59. 穗積七郎

    穗積委員 前向きの検討中ですか。
  60. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 できるだけそういう線に沿うて処理したいという気持ちで検討しております。
  61. 穗積七郎

    穗積委員 そこで、実は向こうは、御承知のとおり経済計画がありまして、もしこれが時期を逸しますと、向こうは日本を放棄しなければならなくなるわけですね。それで西ヨーロッパにこの契約はとられるわけです。したがって、前向きで検討中ということは、悪い答弁ではありませんけれども、問題は時期がありますので、これはぜひひとつ速急にやっていただきたい。総理並びに官房長官のお約束は、少なくとも三月末までには何とかしょうということであったのが、もう一カ月以上たっておるわけです。ですから急いでいただくことを強く要望いたしますが、よろしゅうございますね。もう一ぺん。
  62. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 まあよく検討いたします。
  63. 毛利松平

    ○毛利委員長代理 岡良一君。
  64. 岡良一

    ○岡委員 私は、外務大臣とあまり時間のかかるイデオロギー論争は全然いたしたくない。ただ当面する問題について、若干所信を明らかにしていただきたいと思います。  まず第一の問題は、やがて京城でアジア諸国外務大臣会議が開かれるということでありますが、この会議の性格は一体どういうものなんですか。
  65. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 一応準備会におきまして、議題等に関してその本国の政府に対して勧告をする案をきめたのでありますが、それによりまして、空虚な、ただ気勢を上げるというようなことでなしに、お互いに協力し合って、そしてそれぞれの国益増進になるような点に関して会議を意義あるものにする、こういうような結果のようでございました。この外相会議という名前も適当でないというので、閣僚会議ということになったのでありますが、その成果を今日から私がここで申し上げることは、きわめて早計だと考えます。とにかく単なる気勢を上げる政治的な国際会議ではない、お互いの国に実際に寄与し得るような点をねらって論議が進められる模様であるということだけは申し上げることができると思います。
  66. 岡良一

    ○岡委員 別に成果をお聞きしたわけではなく、性格がどんなものかということをお聞きしたわけです。  それで、その会に集まる顔ぶれというものは、どこの国とどこの国ですか。
  67. 小川平四郎

    ○小川政府委員 正式の招待状はまだ出ておりませんが、準備会議に集まりました国は、オーストラリア、ニュージーランド、マレーシア、ベトナム、フィリピン、タイ、国民政府、韓国、日本でございまして、ラオスがオブザーバーで出席しております。
  68. 岡良一

    ○岡委員 それらの国々をいまお聞きすると、いずれもアメリカとあるいはANZUS協定によって軍事同盟を結んでおる、あるいは相互防衛条約によって軍事同盟を結んでおる、しかも現在南ベトナムにそれぞれ具体的な軍事的支援を与えておる、これらの国々が集まって、そこで意義ある成果をとおっしゃるか、ベトナムの軍事的支援に関する議題は出ませんか。
  69. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 そういう安全保障とかいったような問題には触れないという申し合わせをしたようでございます。
  70. 岡良一

    ○岡委員 いわゆるベトナムの軍事的支援問題は、この会議においては取り上げられない、そろいうことですか。
  71. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ベトナムに対する軍事的支援というような問題は、そういう形において論議された模様は私まだ承知しておりませんが、とにかく安全保障の問題であるとか、保安の問題であるとか、公安の問題であるとか、そういったような問題は会議の議題から除外すべきであるというような主張が出て、そのとおりになったように聞いております。
  72. 岡良一

    ○岡委員 はっきり答えていただきたいのです。それじゃ、アジア局長ベトナムに軍事的支援という問題は議題には出ませんね。
  73. 小川平四郎

    ○小川政府委員 出ておりません。
  74. 岡良一

    ○岡委員 いま集まって何か意義ある成果を得たいと言っておられるが、こういうことがある。この前に東南アジア開発閣僚会議というものがあったときに、やはり日本のほうからは、それぞれの政治的立場の違いを越え工経済開発に協力しようという一項を織り込もうとした。ところがいま参加するフィリピンあるいはベトナム、タイ、これらの国々が反対で、とうとうこれが削られておるという事実がありますか。条約局長あるいは国連局長に……。
  75. 小川平四郎

    ○小川政府委員 政治的立場を越えてということがすなわち若干政治的だというような考え方から、政治的な問題は一切議論されなかったので、そういう一項は加える必要がないという議論が出たわけでございまして、そのとおりになったわけであります。
  76. 岡良一

    ○岡委員 現在の米中の対決アジアにおける危機はそこに発しておることは申し上げるまでもないと思うが、その場合に日本とすればやはり中国の周辺の国家に対するきめのこまかい周到な対策がなければならぬ。いま外務大臣は気勢を上げないと言っておられたが、この会議は反共的な気勢を上げるというようなものでは断じてあってはなるまいと思うが、政府としてもその方向を堅持して、そうしてそのような気勢を上げない会議たらしめる自信と決意があるか、大臣からひとつ御答弁を願いたい。
  77. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これは日本が主催する国際会議でもございませんし、そういう少しオーバーな、ここで決意を申し上げる私は立場でないと思いますが、日本といたしましては、そういうただ単なる対立を、空疎な対立を激化するような会議であってはならないというかたい方針のもとに発言をして、各国がそのとおりであるということで同調するということになったわけでございまして、私は本格的な会議においてもこの方針は必ず貫かれるものである、こういう確信を持っておりますが、そうやってみせるという決意をここで私が示す、そういう立場にはございません。
  78. 岡良一

    ○岡委員 米中の対決を激化せしめるようなものたらしめないように、日本政府としては極力努力したい、こういうことでございますか。
  79. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 そういう米中の対決について、特に気勢を上げるというような、そういう性格のものでないはずでございます。万々あるまいと思います。
  80. 岡良一

    ○岡委員 万々にもあってはたいへんだと思うので、心配して私は聞いておるので、米中対決を激化するようなものたらしめない、したがって、もしそういうものであれば、日本はいさぎよく脱退して引き揚げてくる、これくらいの決意を持って臨まれるかどうか、その点をもう一ぺんはっきり承りたい。
  81. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 米中対決、こうおっしゃいますが、とにかく反共的な色彩をそこに出して気勢を上げるというようなことは一切やめようじゃないか、そういうことは、その会議のふくらみと申しますか、いわば品を悪くする、そういったことは反対である、こういうことを言っております。米中対決というふうに問題を局限しておっしゃられると、そういう問題は当然そういう政治的な問題に包含される問題でありますからそういうことはあり得ない、ないと考えております。
  82. 岡良一

    ○岡委員 それから、アメリカ日本経済閣僚の相談が近いうちにある。それでソウルの閣僚会議なりアメリカとの経済閣僚の合同委員会ですか、日本として提出する議題は予定されておりますか。
  83. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日米合同会議の問題は、まだ、いま研究中でございます。それから、ソウルの会議の議題は、先ほど申し上げたとおり、両者の間に何ら関連性はございません。
  84. 岡良一

    ○岡委員 私は外務大臣の人柄を若干存じあげておるから納得し得るかもしれませんが、それだけでは国民の持つ懸念というものを氷解させることは私はできないと思う。  それはそうとして、私が心配するのは、朝鮮戦争のときに日本のいわば過剰物資が総ざらいに全部さばかれて、いわゆる神武景気というような状態を起こした。さて戦争が済んだとたんに日本が非常な不況に落ち込んだことは、皆さん御存じのとおりだ。よく俗に言うが、アメリカがしゃっくりをすると日本は気を失う、それくらい日本経済というものはまだ浅いといわなければならぬ。したがって、日米間における経済閣僚の相談の場合、ベトナム戦争の推移というもの、あるいはベトナム戦争の終結に対するアメリカ態度変化というもの、これは重大な意味を持っている。御存じのように、日米間においてはこれといって具体的に取り上げなければならないような純粋な経済問題というものはほぼないと言ってもいい。したがって、そういう意味においては非常に政治的な背景を持った、あるいはそれぞれの国の国策的な背景を持った会議たらざるを得ない、そういう性格になってくると思う。こういう点についての外務大臣としての見通し、あるいはまたその態度方針については、明確なものを国民に示す必要があると思うが、あなたはどういう所信を持っておられるか。
  85. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日米経済合同会議は今回五回目でございますが、両国の懸案の問題それから両国の関心のある国際問題等につきまして——国際問題と申しましても、政治的なものよりもむしろ経済的な問題を取り上げることが多かったようでございますが、そういう従来の実績に徴していま申し上げるようなことが言えると思うのでございますが、今回も大体従来と同じような形で行なわれるものと考えております。また、これは相手方のある問題でありますので、とにかくよく協議をした上で、大体論議すべき議題の範囲等はきまると思います。ベトナム戦争終結というような問題は、直接この合同会議においては取り上げられない。議題外の事項として、もし必要があれば別に両国の間で協議される問題である、こう考えております。
  86. 岡良一

    ○岡委員 ベトナム戦争に対してわが国がどうあるべきかということが直接議題となるということを私は申し上げておるわけではない。ベトナム戦争によって御存じのようにアメリカの景気はある意味においては過熱の状態にある。であるから、先月の二十九日には金利の引き上げまでやった。おそらく大統領とすれば増税をしたいかもしれないが、中間選挙だからそれは控えようというふうなことも聞いておる。そういうふうに金利の引き上げをやれば、日本アメリカとの金利格差が少なくなるから、やはり短期のドル資金の流入というものも少ない、あるいはドルユーザンスというものも減少する。これは直接日本の外貨収支に響くじゃありませんか。いわんやベトナム戦争が、現在、アメリカの要人が言っておるように、南ベトナムのああいう状況の中で非常に大きな変化があった場合には、日本経済というものはまたそれに応じたような大きな変化を受ける。こういう点について外務省としてはやはり一つの見通しと、見通しの上に立った対策の用意がなければなるまいと私は思う。それでお聞きしておるのです。どうなんです。
  87. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 よくベトナム特需という名前で論議がございましたが、今回のベトナム戦争によって日本経済が直接の影響を受けておるというふうな状況はございません。ただアメリカベトナム戦争に対するいろいろな消耗が間接に日本に影響を与えておるということは、これはあるかもしれません。しかし、日本がこれによって朝鮮戦争の場合と同じように直接の影響、効果を受けておる、こういう状況ではございません。
  88. 岡良一

    ○岡委員 現在のところ、ベトナム特需というものは、日本経済に影響を持つほど大きなものではない、それは私も存じております。しかしそのベトナム戦争の結果として、周辺の国々がやはりベトナム戦争特需の形における生産を始めており、そのための設備その他の日本に対する発注というものは相当に大きくなろうとしておるということが伝えられておる。それが日本経済が順調なときならばいいが、こういうなべ底以下の状態の中でそういうショックがどういう反応を起こしてくるかということは、やはり政府当局としては十分計画をしておかなければならぬ。何もない、そんな影響はないと言い切れますか。
  89. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ベトナム周辺の国々がこのベトナム戦争によって経済的な影響を受けておる、それがまた間接に日本にいろいろな影響、効果を与えておるという点は、これはたいした目に見えたものではないと私は考えます。
  90. 岡良一

    ○岡委員 考え方が違いますから一応それで打ち切りましょう。  それから私非常にけげんに感じておるのは、先月の二十三日にある新聞に核拡散防止条約に対する日本態度あるいはアメリカの核戦略に対する参加云々の問題というようなものが公表されておる。この記事によれば、この試案は国連、欧亜、北米の各局がそれぞれつくった案をもとに下田次官を中心として関係幹部間で練ったもので、これを基礎として云々となっておる。星国連局長、条約局長なりあるいはアジア局長なり、アメリカ局長はこれに参画されたのですか。
  91. 星文七

    ○星政府委員 この新聞の報じておるような事実はございません。
  92. 岡良一

    ○岡委員 これはしかし非常に重大な問題をはらんでいます。それではこの新聞のことは全然間違いでございますか。
  93. 星文七

    ○星政府委員 国連、欧亜、アジア局その他が集まって、次官のところでそれがきまった、そういう事実はないということを申し上げておるわけでございます。
  94. 岡良一

    ○岡委員 何もこれには集まって相談をしたとは書いてない。各局がつくった草案をもとに、下田次官のもとで練ったものである、こう書いてある。何も次官室にあなた方が集まったり、あるいは外務省のどこか別の部屋に集まって相談したとは書いてない。あなた方が関与しておられたかどうか。あなた方の間で案をつくって次官に提出するという手続をとられたのかどうか。
  95. 星文七

    ○星政府委員 関与しておりません。
  96. 岡良一

    ○岡委員 それではこの新聞に発表されておるこの試案なるものは、これは全然事実無根のものと、大臣、言われますか。
  97. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 私は、かような事実を全然知らないわけであります。
  98. 岡良一

    ○岡委員 したがって、外務省として全然事実無根だというのですか。
  99. 星文七

    ○星政府委員 そういうことはございません。事実無根だと思います。
  100. 岡良一

    ○岡委員 大臣、これは事実無根ですか。大臣として。
  101. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 事務当局の間ですらそういう協議をしたことがないというのですから、そういうことになると思います。
  102. 岡良一

    ○岡委員 これは「日本経済」の四月二十三日の新聞の一面に出ておる記事です。しかもこれは重大な問題です。であるから、こういうアドバルーンというものは、それが個人的なものであるならば、当然、外務省としては取り消すべきじゃないですか。これは取り消される用意がありますか。
  103. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いままでは一々こういう問題に対して取り消しを要求するというようなことをやっておりません。
  104. 岡良一

    ○岡委員 しかし、ものはものによりけりです。たとえばこの試案なるものの中においては、アメリカの核戦略に対して日本が参与する権利を持たなきゃならない。「核保有国と安全保障条約を結んでいる非保有国が核計画の立案、目標の選定、核の使用および使用拒否について関係国と協議することは当事国の外交上の権利である。」こういうことをいっておる。しかもこのことは私は先般の委員会で外務大臣に、こういう協議に参加せられるかどうか聞いたら、あなたは、されないと言っておられる。ところが、一月を経ずして参加するといっておるじゃないですか。あなたはそれに対して、かまわない、関知せず、それで政治的責任は済むのですか。
  105. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 新聞の記事に対してとやかく私が申すことはいかがかと思います。一々、これに対して私が、国会で答弁したことと違ったようなニュアンスの新聞記事が出るたびに、その責任を明らかにする上において、特別の手段を講ずるというようなことは、従来もやっておりませんし、また将来もそれをやる煩にたえないと私は考えております。
  106. 岡良一

    ○岡委員 しかしながら、国会においてあなたが明確に発言をしておられる趣旨とまるきりうらはらなことが、あなたの下僚によってしかも新聞紙を通じて公表されておるときに、それが事実無根であるならば、あなたは国務大臣としての責任において、当然取り消すべきじゃありませんか。ものが違うじゃありませんか。どうなんですか。
  107. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これは公表も何もしておりませんので、おそらく非常に頭のいい人が推測記事として書いたものであろうと思います。
  108. 岡良一

    ○岡委員 それでは簡単にこの事実だけについて承っておきましょう。核拡散防止条約に対して日本中共が参加しない場合は態度を保留する。態度を保留すると書いてありますが、態度を保留するのかどうか、まずその点を承りたい。
  109. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 まだそこまで核拡散防止条約というものは進んでおりません現在の段階において、こういったような考え方をうちで固めておりません。
  110. 岡良一

    ○岡委員 もし核拡散防止条約が米ソ両提案のようなものに——両提案が何らかの妥結点に到達をして、そしてその線において核拡散防止条約がまとまる、いわば現在の核保有国が非核保有国に対しては核兵器、核装備の一切の便宜を供与しない。核兵器そのものを渡さないというような条約に固まったときに、日本中共の核武装のゆえをもってこれに参加する態度を保留されるかどうか、具体的に承りたい。検討もへったくれもない。
  111. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 まだ日本態度をきめる段階ではないと思います。
  112. 岡良一

    ○岡委員 第二点の問題だが、日本アメリカの核戦略計画の中に参与をし、そして何らか具体的な計画、立案について協議をする、こういうことをしますか、しませんか。これは仮定の問題ではなく、事実問題としてひとつはっきり御答弁願いたい。
  113. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 核戦略の計画に日本が参加してほしいというような具体的な申し入れも何もございません。また日本はその申し入れの有無にかかわらず、ぜひこれに参画すべきであるというような、いま確定的な固定的な意見を持っているわけでもない、この問題に対しては何らきめておらない、こういう現状でございます。
  114. 岡良一

    ○岡委員 先般ハンフリー副大統領と朝日新聞の秦外信部長がお会いになったときに、日本アメリカの核戦略計画に対して参与せしめる用意があるというように受け取れる発言があった。そこで問題は、そういう核戦略計画の中に参与をしろというような要請があっても断わりますか、断わりませんか。
  115. 安川壯

    ○安川政府委員 ハンフリーの発言は私も拝見いたしましたが、これは非常にばく然としておりまして、具体的に何を意味しているか必ずしも明確でないと思いますが、しいて想像いたしますならば、やはり核不拡散条約というようなものは、非保有国の安全保障という問題もあわせて考慮すべきである、そういう一般的な意味日本の意見も当然取り入れられるべきだというような一般論を私は意味したものであると思います。したがいまして、あの発言をもって直ちにアメリカの軍事的な意味の核戦略について日本の参画を求めるというような意図があったとは解釈していないのであります。
  116. 岡良一

    ○岡委員 ハンフリー副大統領の意図がどこにあろうと、問題はアメリカ側から核戦略体系の中に日本の参加が求められたときに外務省が拒否するかどうかということをお聞きしているわけです。
  117. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 核戦略の計画に積極的に参画しなければならぬという考え方はまだ日本は持っておりません。もしアメリカのほうからこういう申し入れがあった場合には、十分にこの問題については研究をして、そして日本態度を決定すべきものである。いま先ばしってそういう場合には参画するとか、しないとかいうことは、申し上げられない段階でございます。
  118. 岡良一

    ○岡委員 それでは政府アメリカ側からその申し入れがあったときには、核戦略に参画することもあり得ると言われるのですか。
  119. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 あり得るとかあり得ないとかいうことすら、まだ申し上げる段階ではございません。
  120. 岡良一

    ○岡委員 それは非常に無責任な話なので、問題は核戦略の計画に参加をしろという申し出があった場合に、少なくとも日本には核戦略、核問題については一つの基本的な方針があるはずだから、そういう立場から、参画をするかしないかということはいまはっきり明言されなければならぬ。明言され得るし、またしてもらわなければならない問題だ。そうではございませんか。まだそのときになってみなければわからないというような御答弁では納得できない。
  121. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 すでに日本国家安全保障の問題については日米安保条約というものが現存しておりまして、これをあくまで今日の情勢においては堅持すべきものである。この点は日本自身の安全の問題にきわめて緊切な関係のある問題でありますから、はっきりしておる。進んで核戦略の計画に参加する必要ありやなしやということは、いまそういう積極的な必要を日本は感じておらないということだけははっきり申し上げ得ると思います。ただ将来——将来といっても、一、二年あとも将来だし、四、五年あとも将来である。将来どうだといまいわれても、その問題について参画する用意がありとか、ないとかいうことは、ただいまの段階では申し上げられません、こう申し上げておるわけです。
  122. 岡良一

    ○岡委員 その次には、松井代表が昨年の国連総会政治委員会において発言をせられておられたいわゆる大国の核軍縮、これは絶対的な条件とするものではない、こういうようなことが書いてあるが、核拡散防止協定に対する政府態度としては、あくまでも大国の核保有国の核軍縮を一義的な要件とされるのかどうか。もちろんそれが協定の案文に明確にうたわれる、うたわれないにかかわらず、そのような趣旨が明確に取りつけられなければならないという従来の方針に変わりはないのかどうか。
  123. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 条約案文に明記するとかしないとかという事実上の問題はしばらくおいて、大国の核保有を固定化するという考え方は、これをこのまま認めるということは日本としても適当ではない、こう考えております。
  124. 岡良一

    ○岡委員 それでは、核拡散防止協定に日本が参加する場合には、どうしても核保有国の核軍縮というものが何らかの形において取りつけられねばならないというのが政府の変わらざる方針でございますか。
  125. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 とにかく核保有国の現状を固定化するというたてまえでは、この拡散防止の条約というものはどうも成立しにくいんじゃないか、私はこう考えております。
  126. 岡良一

    ○岡委員 成立しにくいかどうかということを聞いておるのじゃない。日本政府としては、核保有国が核軍縮についての何らかの取りきめをこの条約の過程において、条約成文においてではなくても、取りつけなくては、日本としては賛成しないのかどうかという現在の政府方針を私は聞いておる。
  127. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 核非保有国の手足を縛って核保有国は現状のままこれを固定的に認めるということになるのでございますから、その趣旨日本としてはのみにくい、こう申し上げておるのであります。
  128. 岡良一

    ○岡委員 のみにくいという非常にぼやけた表現であって、これもあなたのお人柄でしょうからあれでしょうが、しかしあなたは先ほど日米安保条約によって云々というようなことを言われ、またがってそれこそ明確に外務省の見解として発表された文書の中においても、アメリカのいわゆる核報復力——あなた方は核抑止力というような非常に政治的な表現を使っておられるが、原子力潜水艦は攻撃潜水艦であるというアメリカの熟語も、通常潜水艦だということで国民をまやかしておるのと同じ筆法を用いておるが、いずれにしましてもアメリカの巨大な報復力に日本の安全を依存する。一方しかし核拡散防止協定においては大国の核軍縮を条件としなければならない、こういう政策は矛盾しませんか。
  129. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 結局いま核軍縮という狭義の軍縮のみならず、軍事一般に関して終局は全面軍縮をすべきであるということが、これは世界の常識だと思うのであります。しかしこれは理想であって、現実はなかなか理想どおりにはなっていない。現実と理想との食い違いというものは何にでもあるわけであります。でありますから、この食い違いは食い違いとしても、理想としてはすべての国が全面軍縮に向かって進行すべきである、こういう理想はやはり掲げておかなければならない。しかし現実はまた現実として、われわれは理想にあまり酔って現実の国の安全をまるきり度外視するというわけにはまいりません。一見矛盾のようでありますけれども、これはしかたがない、運命と申しますか……。
  130. 毛利松平

    ○毛利委員長代理 岡委員大臣の御都合でぽつぽつ時間がまいりますので、十二時半には打ち切らせていただきますので、どうぞよろしく……。
  131. 岡良一

    ○岡委員 椎名外務大臣から修身の講義を聞こうとは私は思っておりません。しかしおそらく政治のあり方というものは現実を踏まえて理想を追求することが正しいと思うのです。現実に屈して理想を没却するということは、ぼくは正しい政治ではないと思う。してみれば、たとえば日本国憲法が理想であっても、これを追求する努力が当然政府としてなければならない。ところがいま大臣のおっしゃるところでは、どうも現実に屈して、核抑止力によって日本の安全を保障するとあなたは言われますが、核地下実験が除外された結果、アメリカソ連がどれだけの地下実験をやっておると思われますか。
  132. 星文七

    ○星政府委員 私も実は米ソともどれくらいの地下実験をやっておるか、詳細に存じておりません。
  133. 岡良一

    ○岡委員 アメリカが公表したものだけでも七十回やっておるではありませんか。ソ連も探知されたものだけでも五回以上やっておる。しかも現実の科学的な技術段階では、地下核実験は、いわゆる威力比の高い、破壊力の強い小型の戦術核兵器の実験だけではない。メガトン級のそういう大型の水爆に関しても実験が可能だといわれておる。これはオフィシャルなレポートとして出ておる。だから現在においてそうした大国の核抑止力に依存するということは、米ソ両大国の核兵器の開発の競合を促進しておることなんだ、そうではありませんか。そうして一方では大国の核拡散防止協定の重要な要件として日本は強く要求したいなどという、そういうあなた方の態度自体が矛盾しているということを申し上げたい。そうではございませんか。
  134. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 理想に酔うことも必要でございますが、現実を忘れてもいかぬ。そういうわけで、現実と理想が一致するのはまことにけっこうでございますけれども、一致しないのが現実だ、こう思います。
  135. 岡良一

    ○岡委員 まあ、お忙しいだろうし、私も精神病の専門医で、煙幕性おとぼけ症というような患者とお相手して時間を空費したくないから、ようございます。お帰りください。  それでは局長に少しお尋ねしましよう。
  136. 毛利松平

    ○毛利委員長代理 外務大臣、退席してけっこうですから……。
  137. 岡良一

    ○岡委員 星国連局長にただしておきたいと思うのだが、一体日本が核実験をするためには科学的にどういう条件が必要か、また、制度的にどういう改革が必要であるか、ひとつこの点をはっきり言ってもらいたい。
  138. 星文七

    ○星政府委員 私もそういう技術面には非常にうといのでございまして、御質問に応じられないのですけれども、ともかく原子力の平和利用というものをうたっている以上、実験というようなことはちょっと考えられない、そういうふうに考えます。
  139. 岡良一

    ○岡委員 核保有の能力を持ちながら核保有はしないんだ、こういうことを日本はよく言っている。おそらく国連総会や国会答弁におけるああいう発言を見れば、日本は核保有の能力を持っているという印象を国の内外に与えることは必至ではございませんか。そうではないのでしょうか。
  140. 星文七

    ○星政府委員 私はそうだと思います。というのは、日本にはたくさん原子炉もございますし、また学者もおりますし、いろいろなそういう要件が整っておるということは、日本だけではなくて、外国から見て、日本がやはり核開発能力があるというふうに見ておるのが常識じゃなかろうかというふうに考えております。
  141. 岡良一

    ○岡委員 そうではないのです。私がお尋ねをしておることは、政府みずからが、そういう条件を持っておる、日本政府みずからが進んで核保有の能力がありながら核保有をしないんだというようなことを言っておることは、日本現実に核保有の能力を持っておるということを裏書きするにひとしいことではないか、こう私はあなたに聞いているのです。そうじゃないのですか。
  142. 星文七

    ○星政府委員 一般に日本が核保有の能力があるということは、これは言えるのじゃございませんでしょうか。ただ、それを開発するかどうかという問題は別といたしまして、能力の問題からいくと、ほかの非保有国とだいぶ違うんじゃないかというような感じがいたします。
  143. 岡良一

    ○岡委員 ほかの保有国と違うか違わないかということを私は聞いておるんじゃないのです。日本自体が持てるか持てないか、だから、持つためにはどういう科学的な条件が必要なんですか。
  144. 星文七

    ○星政府委員 実は私はそういう点においては非常に知識を持ち合わしておりませんので、ちょっと御答弁できないわけでございます。
  145. 岡良一

    ○岡委員 たくさん局長はおられるが、ひとつどうだね。何も知らないで保有できるなんて言うことを、核保有の能力があるなどということを言えますか。無責任もはなはだしいと思うんだが、どうなんですか、たくさんおって……。条約局長どうですか。−それでは椎名大臣にかわって私が教えてあげましょう。まず、天然ウランが豊富になければならぬということです。ウランの濃縮設備がなければならぬ。プルトニウムを生産する設備がなければならぬ。同時に実験場がなければならぬ。同時にその科学的能力がなければならぬ。いいですか、日本に天然ウランがありますか。プルトニウムの生産設備がありますか。濃縮ウランなんていうものはできっこありません。実験場がありますか。一体この現状において日本があたかも核保有をし得るがごとき態度を示すことは絶対に避けるべきだと思う。こういう問題は外交のかけ引きの問題として取り扱うべき問題じゃない。厳重な公正な科学的な立場において立論さるべき問題だ、そうではありませんか。核保有をする能力は日本にないでしょう。これは確認されますか。
  146. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 核保有能力といいますか、核開発能力といいますか、これはいま先生がおっしゃったように、現にそれにあすからでも取りかかれば、つくる設備を持っているとかいうわけじゃなくて、やろうと思えば何年か先にはそういう工場からつくっていってやるだけの知識水準なり、科学水準に達しておるという一般的な判断として申し述べているわけだろうと思います。
  147. 岡良一

    ○岡委員 しかし、核保有の能力がありながら核保有をしないということですね、国際的な発言においてですよ。核保有の可能性は持っておるが、核保有はしないということは、大きな私は違いだと思う。そうではございませんか。これはやはり慎重にそういう面において考えてもらわなければならぬ。  それでは、条約局長がおられるからもう一つ。この場合、一体日本外交的にどういう手を打たなければなりませんか、日本が核保有をしようとすれば……。
  148. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 核開発能力の点については、むしろ日本が先に言い出したというよりは、国際的に、常識的にそう認められておるということが、われわれのそういうことを申しておる第一の理由でございまして、別に特に科学的な根拠に基づいて申し上げておるわけじゃないのでございます。  それから日本が核保有をしようと思えば、外交的にどういうことをしなくちゃならぬかということについては、そういう意思を持っておりませんので、全然検討いたしたことはございません。
  149. 岡良一

    ○岡委員 とにかくいま原子力に関する平和利用協定を結んでおる国々はどことどことありますか。
  150. 星文七

    ○星政府委員 私の記憶では、アメリカ、カナダ、英国、これだけだと思います。
  151. 岡良一

    ○岡委員 現在われわれがそれらの協力をする相手国から導入するものが軍事的に利用されているかいないかということの査察はどこでされますか。
  152. 星文七

    ○星政府委員 御承知のように、一般的な査察を国際原子力機関にゆだねておるということは先生御承知のとおりだと思いますし、また日本は原子力の平和利用というだけに限って利用しているということは周知の事実であるというふうに考えます。
  153. 岡良一

    ○岡委員 原子力基本法という法律が十年前に制定された。これは与野党一致で議員提出立法として全員一致で採択した法律です。これにはどう書いてありますか。
  154. 星文七

    ○星政府委員 私、存じておりません。
  155. 岡良一

    ○岡委員 その第二条には、わが国における原子力の研究開発並びに利用は平和の目的に限ると書いてある。  それでは条約局長も若干法律の専門家だろうが、核兵器というものは一体自衛のための兵器でありますか、自衛でないものですか、どう考えられますか。
  156. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 これは憲法論議に関連して法制局から国会でも御答弁したことがあるように私記憶しておりますが、私の直接の所掌じゃありませんので、十分正確にお答えできないかもしれませんけれども、その趣旨は、要するに核であるから自衛の範囲外になるというように断言的には言えない性質のものである、そういうことであったと思います。
  157. 岡良一

    ○岡委員 星国連局長は情報を集めておるかもしれないが、いま最小限の小型な戦術兵器はTNTに換算して何キロトンの破壊力を持っていますか。
  158. 星文七

    ○星政府委員 存じておりません。
  159. 岡良一

    ○岡委員 大体二キロトンといわれておる。広島に落っこちた爆弾と同じですよ。こういうものが法律的な見解で云々——自衛のワク外にあるかないかという問題よりも事実問題じゃないですか。一体あなた方は、外務省当局としては、こういうものが自衛のための装備として許されるものだと思われますか。
  160. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 自衛とかなんとかという法律論になりますと、お互いに攻撃に対して防衛する必要ということでございますから、攻撃の能力にもかかわるわけでございまして、その爆弾の爆発力だけで、何キロトン以上は自衛の範囲外というぐあいに、数理的には結論が下せない性質のものであろうと思います。
  161. 岡良一

    ○岡委員 私はそういう答弁はまやかしだと思う。二キロトンもある、広島の原爆に匹敵するような膨大な破壊力を持っておるものが、仮定としても、自衛に役立つものだ、そういう論議がどこから出てくるのですか。これは憲法問題に触れる問題だ。日本が核保有し得る能力を持ちながら持たないということは、憲法問題に触れる問題として重要な論議が当然巻き起こってくる。私は第九条の解釈において、持つべきだということは許されないと思いますが、これは論外としましよう。原子力基本法を変えなければならぬ、国際原子力機関から脱退しなければならぬ、アメリカやイギリスやあるいはカナダとの原子力の平和利用に対する協力協定というものも全部これを根本的に変えるかどうかしなければならぬ、こういうものくさぐさな法律的な手続がなくては日本は核武装できない。科学的条件においても核武装の条件というものはない。法律的な手続においてもこれは不可能なことです。こういうことを軽々しく、核保有の能力があるのだということを言われては、私は外務当局として非常に不謹慎だと思うのだ。これはもう一ぺん——外務大臣がいないからしかたがないけれども、ひとつあなた方から外務大臣によく言っておいてもらいたい。国連演説なんかでもそういうことを堂々と言っておる。不謹慎きわまる話だ。宣伝としてもそういうことを言うということは、核軍縮に対する誠意がない証拠なんだ。外務省はとにかく、ときどき事実無根だとかなんとか言われるが、アドバルーンを上げ過ぎる。むずかしいことばで言うと下剋上だ。アドバルーンを上げ過ぎる。アドバルーンを上げ過ぎるが、しかし、私は最後に皆さんによく注意をしておきたい。  私はたくさん質問を持っているから今度あらためてするのだが、一番大事なことは、日本国民がいわゆる核アレルギーになっておるということを思っちゃいかぬということです。広島、長崎のあの爆弾の経験があるから核過敏症になっておる、こういう判断は間違いです。考えてごらんなさい。これは防衛庁の責任者がはっきりこの席上で言ったではございませんか。千三百五十億トンの原水爆というものが米ソの間にあるわけだ。あなた方は背中の上にみんな四十トンほどの爆弾をかかえているのですよ。世界一つの火薬庫といってもいいのだ。だから、人類の一人一人が核アレルギーになるのはあたりまえなんです。それを国民の核アレルギー症状を直そうなんという不敵な考えを持ったとしたら、とんでもない話だ。  もう一つ、核過敏症というものは、これは病気の場合でも過敏症は直しやすい。しかし、そういう不逞な考えというものは、あなた方自身が核免疫体になってしまう。これが一番直りにくいのだ。結核の菌にしたところで、ペニシリンができた。それでも直らなくなってマイセチンができた。マイシンができた。これでも抵抗功をつけてきた。淋病の菌にしたってそうだ。ペニシリンに抵抗力を持ってきた。梅毒のスピロヘータにしてもそうだ。砒素じゃきかない。水銀じゃきかない。ペニシリンがきいておったのだが、十五年の間に受け付けなくなってきた。みんな免疫を持ってきた。この免疫性があるということが私は一番危険だと思う。だから、外務大臣によく言っておいてもらいたい。過敏症なら直すことができるかもしれないけれども、核免疫になったら、それが一番危険だ。いま青年の梅毒が非常に心配されておるが、不潔な接触を慎むことから始めなければならない。  椎名外務大臣にかわって私が講義をすることになってしまったが、あなた方は手をよごしてはいかぬ。手をよごさないこと、日本の憲法を守るという大きな精神に立って、そういう国民の核アレルギーを云々するなんというのは、とほうもない不逞な考えであるから、むしろ政府の、あるいは外務大臣の核免疫的性格、考え方、思想というものに対して厳重な警告を発しておったということをひとつ機会があったら言っておいてもらいたい。  これでやめます。
  162. 毛利松平

    ○毛利委員長代理 次会は来たる十一日、午前十時理事会、理事会散会後に委員会を開くこととし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十六分散会