○黒田委員 私はきょうは佐藤総理に対しまして、現内閣の対中国政策の最近の動向、またそれに関連いたしました
アジア政策について
質問をしたいと思います。
時間が非常に制限されておりますので、残念に思います。その
質問に入ります前に、ひとつ別の問題でぜひとも総理に御
質問申し上げたいと思います。これは実は、私個人と申しますより党を代表して御
質問を申し上げるのであります。これは先般社会党が招請しました中国人民外交学会の使節団の入国拒否に関することであります。
政府は入国拒否の理由とするところをいろいろとあげられましたが、私どもどうも
納得することができない。大局的に見れば、アメリカの中国敵視政策に組み込まれました中で、
日本政府は最近中国に対して硬直した政策を進めておるように考えられる。そういうことが今回の入国問題を否定的に取り扱いをさせた根本の原因であろうと私どもは考えます。しかし、
政府は拒否理由といたしまして、個々的に幾つか論点をあげておられます。それにつきましても私ども承服できませんから、
政府の拒否理由を
一つ一つ取り上げまして、その理由にならぬことを私どもとして明らかにして再考を求めたいと思います。この要求をかちとるという運動は、御承知かもわかりませんが、社会党は断念しておるものではないのです。これからも目的を達成するまでこの運動を続けよう、そういう決心をしておりますので、そういう立場に立ちまして、きょうは党を代表いたしましての発言ということでお聞き願いたいと思います。私のほうからいままで承っております
政府の入国拒否の理由を
一つ一つあげまして、それに対する私どもの意見を申し述べまして、そして総理の御見解を承りたい、こういう方法でやりたいと思います。
第一は、中国人民外交学会の社会党に示した入国目的の中から内政干渉になる点が認められるので入国を拒否した、こういう理由を私ども聞かされておるのであります。しかし、私どもから見れば、アメリカ帝国主義に対して戦うという共通の課題について話し合うということが、どうして内政の干渉になるのか、そう思うのです。中国としてアメリカ帝国主義と戦うというのは一体何を言うのであるか、これはよくわかるわけです。御承知のように、中国はその不可分の領土であります台湾をアメリカによって分断せられておる。その台湾は中国本土に対する
攻撃的な包囲網の強力な一環と、いま、なっております。そこで、アメリカ帝国主義のこういうやり方に対しまして、台湾解放の課題を果たすというそういう大きな問題を中国はかかえておる。これはアメリカ帝国主義に対する中国人民の戦いでありまして、これは
一つの側にすぎない。他方
日本の側について、ことに私どもの考え方を申し上げてみたいと思いますが、
日本も沖縄がアメリカによって占領された形になっております。
アジア最大のいまや軍事基地にされておりまして、
日本国民ひとしくその返還を望んでいないものはないという状態であります。平和
条約の、これは私どもの解釈でありますが、平和
条約の規定に反して沖縄を占領し続けておるアメリカのやり方に対しまして、
日本人は大多数いま沖縄返還という闘争を行のうておるのでありまして、これは
日本国民のアメリカ帝国主義に対する戦いであります。このように国の完全独立、民族解放のためのアメリカ帝国主義に対する戦いという共通の課題について話し合おうというのが外交学会の訪日の目的として表示されておる、こういう目的で話し合いをしよう、こういうのであります。相手の国のことは、むろん実際問題としてはそれぞれの国が自主的にやりますので、社会党が台湾解放運動に物理的に力をかそうというようなことは全然考えておりません。また外交学会使節団は社会党の運動に対しても同じことを考えていると私は思う。
そこで、
政府は内政干渉ということを言われますが、なるほど国際法から見れば、内政不干渉の義務ということが近代国際法の重要な原則の
一つにはなっております。しかしこれは国家は他の国家の内政に干渉してはならないということ、そういう義務を一般的に負うておるということでありまして、それでは干渉というものは一体どういう場合を言うのであるかということを考えてみなければなりません。これは国家または国家群が一定の状態を維持しまたは変更するためにその意思を他国に対して強制的に押しつけることだ、こういうように私どもは理解をしておる。そこで干渉ということになるためには強制または威嚇が背景となっておるということが必要だ、こう私どもは理解をしております。具体的に、それでは、どのような場合が干渉になるか。これは武力による威嚇を前提として何か相手の国に他の国家がむずかしいことを言いかけたり、あるいはそれ以外の強制的措置もありましょう。たとえば外交や通商
関係の断絶というようなことをほのめかして、相手国を屈服させるような申し出をするような場合、そういうように何らかの形で相手の意思を拘束するような強制もしくは強制による威嚇があれば、そこに干渉があった、こう言われるのだ、私どもはそういうようにいままで理解しておったのです。
そこで問題になりますアメリカ帝国主義反対の戦いと申しましても、それは話し合いをするということです。国家としての強制力を伴うというようなそういう大げさなものでも何でもないわけです。個々に例をあげてみれば、平和
条約に反して沖縄を軍事的にも政治的にも押えておる、そういうアメリカ帝国主義のやり方は私は内政干渉ではないかと思うのです。台湾を占領しておるアメリカが中国の内政に干渉しておるのではないか、こういうことが私は干渉だと思う。ベトナム戦争こそベトナム人民に対するアメリカの干渉じゃないか、そういうように私は考えます。干渉というものはこういうものを言うので、中国人民外交学会の社会党との話し合いは決してそんなものではないのです。それを
政府が非常にこう大げさに内政干渉などと言われまして、入国を拒否されたのは、もの
ごとを実際以上に大げさに取り扱って、あまりにもおとなげない、また一方においてあまりにも硬直的で弾力性がないやり方だと思います。こんなことを
政府がやられると、私どもはあえて言いたいのです。沖縄問題で
日本に干渉しているアメリカへ追随したものの言い方を
政府はしておる、私たちはそういうように言いたくもなる。干渉といえば、一体どこに干渉があるかということをよくきわめていただきたいと私どもは思います。だから、私どもは内政干渉というようなことを理由にして、今回
政府が外交学会の入国を拒否されたことは、どうしても合点がいきません。これが私どもの再考を求めたいと思う理由の
一つです。御答弁をお願いします。