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1966-03-23 第51回国会 衆議院 外務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年三月二十三日(水曜日)    午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 高瀬  傳君    理事 安藤  覺君 理事 鯨岡 兵輔君    理事 永田 亮一君 理事 三原 朝雄君    理事 毛利 松平君 理事 戸叶 里子君    理事 西村 関一君 理事 穗積 七郎君       岩動 道行君    菊池 義郎君       小坂善太郎君    小山 省二君       田澤 吉郎君    谷川 和穗君       野田 武夫君    濱野 清吾君       森下 國雄君    赤路 友藏君       岡田 春夫君    黒田 壽男君       楢崎弥之助君    帆足  計君       竹本 孫一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 椎名悦三郎君  出席政府委員         総理府事務官         (特別地域連絡         局長)     山野 幸吉君         外務事務官         (アジア局長) 小川平四郎君         外務事務官         (北米局長)  安川  壯君         外務事務官         (中南米移住         局長)     廣田しげる君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         水産庁次長   石田  朗君  委員外出席者         外務事務官         (中南米移住         局移住課長)  太田 新生君         参  考  人         (海外移住事業         団理事長)   廣岡 謙二君         参  考  人         (海外移住事業         団理事)    丸山 幸一君         参  考  人         (海外移住事業         団総務部総務課         長)      増田 甚平君     ――――――――――――― 三月二十三日  委員愛知揆一君池田正之輔君稻葉修君、内  海安吉君、増田甲子七君、岡良一君及び松平忠  久君辞任につき、その補欠として岩動道行君、  田澤吉郎君、小山省二君、谷川和穂君、亘四郎  君、赤路友藏君及び楢崎弥之助君が議長指名  で委員に選任された。 同日  委員岩動道行君、小山省二君、田澤吉郎君、谷  川和穂君、赤路友藏君及び楢崎弥之助君、辞任  につき、その補欠として愛知揆一君稻葉修君、  池田正之輔君内海安吉君、岡良一君及び松平  忠久君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  海外移住事業団法の一部を改正する法律案(内  閣提出第八九号)  国際情勢に関する件(沖繩及び日韓問題)      ――――◇―――――
  2. 高瀬傳

    高瀬委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。竹本孫一君。
  3. 竹本孫一

    竹本委員 私は、本日は特に沖縄船籍、船の問題について大臣にお伺いをいたしたいと思います。  まず最初にお伺いしたいことは、沖縄の船はD旗を掲げておるが、インドにおいてもフィリピンにおいてもインドネシアにおいても、あるいは国籍の不明な船として、あるいは極端な場合には海賊船として、最近におきましてはヤシどろぼうと間違えられて、ある場合には拿捕された、ある場合には銃撃をされておりますが、大臣はその事実を御存じでございますか、お伺いをいたしたいと思います。
  4. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 私あまり詳しくは存じておりません。
  5. 竹本孫一

    竹本委員 そこで、D旗犠牲になって死亡した人もありますし、重傷を負った人もおるようでございますが、どの程度のものであるか、私数字をつまびらかにしておりませんので、もし外務省のほうでお調べになっておれば、従来何隻ぐらい船がおって、何隻ぐらいつかまえられたか、また、何名ぐらい犠牲者が出ておるかという事実についての御報告を願いたいと思います。
  6. 山野幸吉

    山野政府委員 お答えいたします。  昭和三十七年インドネシア銃撃された沖縄船舶が一隻ありまして、これが漁船第一球陽丸でございます。この銃撃によりまして、一名の船員が死亡いたしました。それから三名の船員負傷をいたしたのであります。負傷者につきましては、現在は、私どもの知る限りではほとんど治癒しておると聞いておるのでありますが、これらの被害を受けた人たち補償につきましては、当時から米国民政府が中心になられましてインドネシア側と交渉してまいったのでございますが、現在に至るまでまだこの補償の問題は解決しておりません。  それから、ことしの二月十九日に第八恵洋丸という船がインドネシア海域で領海を侵したということでインドネシア側に拿捕されまして、現在港において取り調べを受けておるという事情でございます。  私どもが正式に聞いております事故といたしましては、この二つの問題があるわけでございます。
  7. 竹本孫一

    竹本委員 そういうことの起こりました原因になりましたのは、D旗のところに問題があると思うのです。私も実はD旗というのはよくわからないので、ここに現物を取り寄せてもらったのでございますけれどもD旗というのはこれなんです。お見せしてもいいですけれども、これはごらんになって皆さん驚かれると思うのですが、こんなものであります。こういうあやふやなものです。大臣ごらんになったことがありますか。これが問題のD旗です。先のところはちょっと切ってある。こんなものを沖縄の船が掲げて航行するわけですね。  私はそこで外務省伺いたいのは、このD旗には国際的にはいかなる法的な意義根拠があると外務省はお考えになっているか。われわれから言えば、いわゆるD旗はちょっと切っただけで、全くナンセンスなものだ。それがために、ある場合には海賊船といわれたり、ある場合にはヤシどろぼうだといわれたりするわけですから、禍根D旗にある。このD旗は国際的にいかなる権威のあるものとお考えになっておるか、またその法的な根拠はどんなものであるか、お考えを承りたいと思います。
  8. 山野幸吉

    山野政府委員 御案内のとおり、沖縄におきましては、府令船舶規則というのがございまして、その船舶規則沖縄船籍のある船については、いまお示しになりましたデルタ旗を掲揚しなければならない、こういうことに規定されておるのでございまして、御案内のように、船舶が航行する場合にはいずれかの国の国籍を示す国旗……
  9. 竹本孫一

    竹本委員 時間がありませんから、ポイントだけ言ってください。国際的にいかなる権威があるかということです。
  10. 山野幸吉

    山野政府委員 このデルタ旗は、国際的には国籍を示す旗ではないのでございまして、あくまで琉球に籍のあるということを示すためのしるしとしてのデルタ特殊旗、こういうぐあいに私どもは了解いたしておるのであります。
  11. 竹本孫一

    竹本委員 外務大臣、ただいまお聞きのとおりに、このデルタ旗というのは琉球の船であるというおしるしで、それを意味するだけだ、したがいまして、この船がインドネシアやその他国際場裏に出ていった場合には、そのおしるしはあまり役に立たない、そこに問題があると思うのです。したがいまして、沖縄の船のいろいろな問題、トラブルを解決するためには禍根である。このデルタ旗は国際的に意義を持たない、ただ単に沖縄琉球の船であるという、沖縄の中では意味は持ちますけれども、国際的には何らの意味は持たない、そういう旗を掲げておるというところに誤解があり、あるいは間違いが出てくるわけでございますが、外務大臣としては、この問題を今後どういうふうに考えていかれるつもりであるか、お考えを承りたいと思うのであります。
  12. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 国際的に権威のない表示ということでいろいろな紛争の原因になっておるのでございますので、この問題については、なおよく研究いたしたいと思います。詳細は政府委員から……。
  13. 山野幸吉

    山野政府委員 御案内のように、沖縄におきましては、施政権アメリカにありますが、しかし日本の領土の一部であり、そういう特殊な環境に置かれておるのでありまして、したがいまして、この沖縄船舶には日本船舶行政権は及んでいない。むしろこれは、沖縄船舶には米国民政府船舶行政権が及んでおるという特殊な状態にあるわけでございます。したがいまして、直ちに日本国旗を掲げるというわけにもまいらない。そうかといって、アメリカ国旗を掲げるわけにもいかない。そういう沖縄の置かれておる特殊な立場がいわゆる現在のデルタ旗、こういうものになってあらわれておると思うのでありまして、これらのデルタ旗を掲げておるために、たまたま昭和三十七年にそういう銃撃にあうというような事故も生じたと思うのでありますが、これらの救済策等については、現在総理府外務省のほうとで十分検討を加えておるようなわけでございます。
  14. 竹本孫一

    竹本委員 ただいま御答弁になりましたように、経過はよくわかります、施政権アメリカにある、したがって、沖縄の船は日本日の丸を掲げるわけにもいかないし、アメリカの旗を掲げるわけにもいかない、やむを得ずこういうわけのわからないものを掲げておるという経過はわかりますが。しかしそのことのために、銃撃をされたりつかまえられたりしておるという大きな問題が次々に起こってきておるわけですから、私が外務大臣にお伺いをいたしたいのは、経過はよくわかりますが、しかしこういう国際的に意味がない、したがって、よその国のインドネシアでもどこでも間違えて銃撃をしたり、取っつかまえたりする。そういう問題をこのまま解決をせずに、日本政府が見ておるというわけにはまいらないだろうと思うのでございますが、何とか相談をしたいという程度では解決はつかない。いつまでにどういう程度の話をまとめていかれるお考えであるか。ときどきつかまえられて――二月十九日にもやられておるのですから、問題は具体的なんです。したがいまして、ただ何となく相談をしましようということでは済まされない。いかなる方法で、いつまでにどういう線に沿って解決をするお考えであるか、その点をお伺いしたいと思うのであります。
  15. 安川壯

    安川政府委員 ただいま特連局長から御説明いたしましたように、いわゆるデルタ旗につきましては――陸上の家に事実上日章旗を掲げるというわけにまいりませんので、それに応じまして、国際法上も国内法上も法律的な効果というものが生じますので、その点非常にむずかしい問題を含んでおりますけれども、まあいままでのいろいろ事故が起こったという前例、それから国民感情というようなことも考慮いたしまして、何とか法律問題を含まないで、事実上、日本国旗を立て得る方法について目下いろいろ検討しておる段階でございまして、何とかそういう便法と申しますか、事実上日章旗を掲げ得る方法を見出しまして、その上でアメリカ側とも協議いたしたいと、こういうふうに考えております。  そこで、ただいまいつ、具体的にどうするかという御質問でございますけれども、そういうことで目下検討いたしておる段階でございますので、いつまでにどうするかということをここではっきりとお約束いたすわけにはいかない段階でございます。
  16. 竹本孫一

    竹本委員 外務大臣に特にお伺いいたしたいのでございますが、いまの御答弁では、全く事務的な御答弁であって、問題の解決の力強い前進にはならないと思うのです。しかもいま申しましたように、二月十九日に現に起こった問題もある。そういうわけで、次々に危険はあるのですから、もう少し前向きの力強い御発言がなければ――あとで申し上げますけれども船員自分たち安全保障がなければ船に乗らないと言って、去年の十二月でございましたか、乗船を断わった例もあるのですよ。そういう問題が次々に起こり始めたならば一体どうなるかという具体的な問題があるのですから、いまのような事務的な答弁では済まされない。大臣としての力強いお考えを承っておきたいと思うのであります。
  17. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 アメリカ側と折衝いたしまして、至急にこの問題の解決策を見出したい、こう考えます。
  18. 竹本孫一

    竹本委員 大臣から至急に問題の解決に取り組むという御発言がございましたので、一応それを信頼いたしまして、若干まだこれに関連する問題を簡単にお伺いをいたしたいと思いますが、たとえば海員組合が、乗り組み員の安全のためにこのデルタ旗を掲げるべきではないということで、四十年の十一月十七日にライシャワー大使に申し入れましたところが、アメリカ大使は、これは大使館が取り扱うべき問題ではないというような理由で、ワトソン高等弁務官あてに文書を一応送った旨の連絡を受けております。直接的にも海員組合沖縄支部のほうから高等弁務官のほうに申し入れをいたしておりますが、そういう折衝の経過、事実を当局は御存じでございますか、お伺いいたしたいと思います。
  19. 山野幸吉

    山野政府委員 私どもは詳細承っておりません。
  20. 竹本孫一

    竹本委員 御存じないのはいささか残念に思いますが、それぞれ自分の身体の安全に関する問題ですから、深刻に問題を取り上げてやっておるわけです。その点は、ひとつ今後も注意をしていただきたいとお願いしておきます。  特に外務大臣にお伺いいたしたいと思うのでございますが、佐藤総理は、去年の八月十九日、沖縄に行かれましたときだったと思いますが、日の丸のこの問題は日米協議委員会で取り上げて解決していきたいということを言明されたようでありまして、この言明については地元は非常な期待を持ち、関心を持って、その成り行きを注目いたしておるということだと思います。一体去年の八月十九日に佐藤総理のそういう言明があって以来、政府は特に何らかの手をこの問題について打たれたのであるかどうかということが一つ。  次には、第二番目に、日米協議委員会は――時間がありませんからまとめて申し上げますが、四月に行なわれるというふうに聞いておりますけれども、そういうことになっておるのかどうか。  三番目は、その四月に行なわれる日米協議委員会には、この問題を具体的に提案されるお考えであるかどうか。  四番目、その提案をされ、解決をされる前に、こういう問題がまた起こる可能性があるが、もしそのときは一体どういうふうな処置をされるつもりでありますか。  四点だけお伺いをいたしたいと思います。
  21. 安川壯

    安川政府委員 総理訪問後に行なわれました協議委員会で、船舶の旗の問題を直接取り上げたことはございません。と申しますことは、先ほどから御説明いたしましたように、いろいろ法律的にむずかしい問題がございましたので、これをいきなり協議委員会議題にいたしましても解決するという確信が持てませんでしたので、取り上げることを控えたわけでございます。  それから、四月の開催問題につきましては、まだアメリカ側相談する段階に至っておりません。わがほうでどういうものを議題にするかということをまだ日本政府部内でこれから検討するという段階でございます。  それから、四月に開くことになりますかどうかまだ確定しておりませんけれども、もし開く場合に、この旗の問題を取り上げるかという御質問でございますけれども、これにつきましては、先ほど大臣から申し上げましたように、至急検討いたす――すでにもう検討いたしておりますので、できるだけ早く成案を得ましたならば、この協議委員会にかけるということも考慮したいと思っております。  それから、それまでに問題が起こったらどうかという御指摘でございますけれども、もちろんこういう問題が起こらないことを希望するものでございまして、またこの旗につきましては、一応各国に周知はされておると思いますので、私どもとしましては、事故が起こるという可能性は比較的少ないと思っておりますけれども、万一起こりました場合には、これに対する救済策と申しますか、そういう問題につきましては、直接アメリカ施政権を持っておりますけれども日本政府としましても、日本政府としての立場からできるだけのことをすることは当然であると考えております。
  22. 竹本孫一

    竹本委員 ただいまの御説明には非常に納得のできない点があります。たとえば、このデルタ旗は国際的に周知されておるから問題は起こらないだろうとおっしゃるけれども先ほどお尋ねしましたが、外務大臣もおそらくこれは初めてごらんになったようだし、わが権威ある外務委員会の皆さんも、これが日の丸のかわりだということは、おそらくこれは大部分の方がきょう初めてごらんになっておると思う。そういうふうに、わが国の外務委員会においてさえ周知徹底されていないのに、インドネシアその他の国が知らないのはあたりまえじゃないですか。どうですか、これは周知されておりますか。だから、周知されておるという前提で、おそらく問題は起こらないだろう、そんなのんきなことを言っておったら、これはたいへんな問題になる。  そこで、外務大臣にもう一度念を押してお伺いをしておきますが、日米協議委員会については、私もいろいろ調べてみましたけれども沖縄の人々のウエルビーイング、福祉に関する問題は何でも、経済的な問題以外にも取り上げるということがちゃんと協議委員会の中にあるようですから、これは重大な生命に関する問題、重大な財産に関する問題でございますので、日米協議委員会においてはぜひとも、この問題が解決されていない場合は取り上げていただくということについての大臣のはっきりしたお考えを承っておきたいと思います。
  23. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 それ以前にも解決したいと思いますけれども、少なくとも次回の日米協議委員会においてはこの問題を取り上げたいと思います。
  24. 竹本孫一

    竹本委員 大臣から力強いお約束をいただいたと思いまして、関係者も非常に安心をするだろうと思いますが、ぜひひとつこれは前向きに、しかも早急に解決をしていただきたいと思います。  なお、先ほどちょっと補償の問題についてお話がございましたけれども、私が知っておるところによれば、第一球場丸のときには、先ほどお話しのように、一人死にまして、三名が重傷を負ったということでございまして、特に死んだ方に対して――大城重男さんというのでありますが、スカルノさんが沖縄に来たときも陳情までやったけれどもわけのわからないような、まあ返事がなくて結局終わった。その後最近において琉球政府が本年度の予算補償のために四万四百十六ドルを計上したということを聞いておりますが、事実そうであるか。これが第一点です。  まとめて聞きますが、次に、その四万四百十六ドルというのは、要求においては四万六千五百九十八ドルであったようでございますが、補償の問題はそういう場合には高等弁務官なり琉球政府なりが一方的にきめるものであるかどうか、その点についてのお考えを承りたい。  それから次には、これは三十七年四月からですから、もう四年越し問題が残っておる。そういうふうにとっつかまって撃ち殺されて、そうして補償の問題は四年かかってもまだ片がつかないということではたいへんな問題だと思いますけれども、今後支払いの計算は一方的にやるのかどうか、また支払いは四年越し、五年がかりでやるような形で今後も続けていくのかどうか、これは非常に重要な問題でありますので、具体的にお伺いをいたしたいと思います。
  25. 山野幸吉

    山野政府委員 その第一球陽丸補償の問題につきましては、昭和三十七年六月に、球陽水産から琉球政府行政主席あてに、高等弁務官を通じてインドネシア側賠償請求をしてもらいたい、その請求額が四万六千五百八十九ドルと聞いておるのであります。その後高等弁務官から、インドネシア政府と交渉をした結果、インドネシア政府はこれを支払うという回答が一時なされたようであります。しかしその後この具体的な解決が一向に進みませんで、聞くところによりますと、昭和三十九年十二月ごろと思いますが、インドネシア政府から賠償額を再検討してもらいたいという申し出があったように聞いておるのでございます。それに基づいてさらに検討をして、約四万ドルの請求をあらためてインドネシア側に出した。しかしその後高等弁務官のほうから支払い方の促進を折衝されてきておるようでございますが、現在に至るまでまだ補償が実施を見ていないのでございます。私どもも最近聞くところによりますと、御指摘になりましたように、インドネシア側賠償が進まないので、琉球政府といたしましてこの補償について目下予算査定をやっておるように聞いておりますが、御指摘になりました四万ドルであるかあるいは何万ドルであるか、その額についてはまだ承知をいたしていないのでございます。御案内のように、この予算琉球政府自体で決定される問題でございまして、これは日本予算査定と同様でございまして、琉球政府予算編成の過程において決定していくものと承知いたしておるのでございます。
  26. 竹本孫一

    竹本委員 長引く問題はどうですか。
  27. 山野幸吉

    山野政府委員 御指摘になりましたように、こういう死亡あるいは負傷事件補償問題が四カ年にわたって解決を見ていないということははなはだ残念でございますが、御案内のように、インドネシア側の政情の不安定というような問題もございまして、この賠償の問題が円滑に促進されないということを折衝された側ではおっしゃっておられるようでございます。何といたしましても、この問題は米国民政府琉球政府で直接御解決になる問題だと私ども承知をいたしておるのでございます。
  28. 竹本孫一

    竹本委員 時間がありませんから、あと二つだけ簡単にお伺いしておきます。  一つは、沖縄の船はかような旗の問題でもたいへん問題がありますので、一部には沖縄船籍のものを日本国籍に移したらどうかという意見も出ておるようでございますけれども、それにはそれに伴うメリットもあれば、ディメリットもあると思うのでございますが、政府のほうでは何かお考えがあるのか。  また問題の施政権にもつながります重大な問題を、一方から言えば真正面から取り組むことを避けて、日本国旗を掲げさせて、便宜問題を片づけるということは、他の一般の沖縄の問題の解決にはむしろプラスにならないで、当面事務的に便宜手段日本国旗を掲げさすということによって問題のむずかしいところは避けていくというような考え方にもなって、国会全体の問題として正しいかどうか、私は疑問も持っておりますが、いずれにしても命にはかえられない、また問題はなかなかひまが要るというようなことから、日本の籍に移して日本日の丸を掲げるということにしたらどうだろうかという意見が有力に出されていることも事実でありますが、この点についての政府のお考えを承りたいと思います。
  29. 山野幸吉

    山野政府委員 沖縄籍の船を日本籍に移せば、国旗の問題につきましては解決はすると思うのでございますが、現実に船舶行政を行なう面から考えますと、沖縄の籍の船を日本のどこかの海運局の籍に移すということは、きわめて無理があるだろうと思うのでございまして、従来まで政府といたしましてはそういう点についての検討はいたしたことがございません。
  30. 竹本孫一

    竹本委員 そこで最後の問題になるわけですが、私も、なかなか無理がある、むずかしい点があると思うのです。そうすると、なおさら問題はこじれてまいりまして、旗はどこの旗かわけのわからない旗以外は掲げることができない、日本船籍に移して日の丸を掲げるということにもいま御答弁にありましたように無理がある、こういうことになりますと、問題がますます複雑怪奇になってまいりますが、これは根本的な解決を急がなければならぬのじゃないかということを特に強調しておきたいと思います。  重大な問題ですが、最後一つだけ。それは予算委員会等においても問題になりました問題で、政府の御見解を承るにとどめたいと思いますが、平和条約第三条、国連憲章第七十八条の関連で一つだけお伺いをいたしたいのですが、沖縄県の祖国復帰協議会等におきましても、沖縄施政権返還に関する請願書というものが出されておる。先般来論議を呼び起こしました沖縄の防衛の問題にいたしましても、ただいまの船の旗の問題にいたしましても、根本はやはり施政権の返還ということがなければだめだと思うのです。そういう意味から一つだけきょうはお伺いをするにとどめますけれども政府のお考えでは平和条約第三条を改正するというか、あるいは撤廃すると申しますか、そういうことを考えられておるのかどうかということが一つ。  それからもう一つ。第三条の解釈の問題になりますけれども、信託統治の提案があればこれに賛成すると、こう言うのですね。しかし、信託統治の提案をアメリカがしない場合、しかもアメリカ施政権を放棄したとすれば、これは譲るんでなく放棄したという場合には、第三条は一体どうなるか。  この二点であります。すなわち、沖縄の祖国復帰協議会あたりは第三条を撤廃しないと問題の解決にならぬということを言っておるようでございますが、撤廃もしくは改正の運びをするお考えがあるのかどうか。それから、第三条の解釈として、信託統治もしない、施政権も放棄しない、あるいはした場合はどうするか、しない場合はどうするか、しない場合は永久に沖縄は祖国復帰ができないのかどうか、その辺の第三条の解釈の問題としての政府の態度を承って終わりにいたしたいと思います。
  31. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 条約の撤廃もしくは改正ということは、実際問題として不可能であろうと思いますが、第二点の第三条の解釈、この問題につきましては条約局長から申し上げます。
  32. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 いま大臣からお答えしましたように、第三条の条文を改正し撤廃するというようなことは、これは日本国と連合国との間の条約でございますので、理屈の上から言えば、サンフランシスコ会議と同じような会議を開けばできないことはありまませんわけでございますが、実際上不可能であろうということでございます。ただ、奄美大島の返還のようなことを沖縄全部についてやるということは可能であろうと思います。つまりサンフランシスコ条約の条文をいじるという形じゃなくて問題は処理し得るであろうということでございます。  それから、施政権の放棄の場合にはどうなるかということでございますが、これも全く現実の可能性はなくて、そういうことならば日本に返還されるような協定ができるわけだろうと思いますけれども、かりに理論の問題として放棄すれば、当然潜在主権がある日本に復帰するものと理論の上では考えるべきだろうと思います。
  33. 竹本孫一

    竹本委員 最後にもう一つだけ念を押しておきますが、そうしますと、第三条の解釈として、外務省のお考えでは、法の解釈の問題ですが、施政権をかりにアメリカが放棄した場合には、第三条の前半のほうの信託統治の問題は一切なくて、そのまま直ちに潜在主権が顕在化して日本に祖国復帰ができる、こういう解釈ですか。
  34. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 そうでございます。施政権を放棄するということの含みとしては、まだ信託統治も行なわれていない、施政権者であるアメリカ施政権を放棄した、そうすれば当然日本の主権がそのまま顕在化することになる、こういうことでございます。
  35. 竹本孫一

    竹本委員 この問題は重要な問題でございますので、機会をあらためて論議を深めることにいたしまして、きょうは一応この辺で終わります。
  36. 高瀬傳

    高瀬委員長 鯨岡兵輔君。
  37. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 きわめて時間が限られておりますので、簡単に御質問申し上げたいと思いますから、政府の見解も簡単に要点を御答弁を願いたいと思います。  五十三海洋丸の事件についてでございますが、今日までの政府の努力は十分に認めるわけですが、新聞では、外務大臣は、参議院の予算委員会において、見通しは必ずしも明るくないというようなお話があったようであります。そこで、これが正しいとすれば、二、三日うちには無事に返還があるんだというふうにわれわれは考えておっただけに、その御見解はきわめてショックであります。そこで、五十三海洋丸事件について今日までの経過並びに現在の見通し、それから今後の処置、それらについて簡単にひとつお答えを願いたいと思います。
  38. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 外交ルートを通じて非常に執拗に折衝を進めた結果、やや明るくなりつつある現在の状況でございます。しかし、いうまでに釈放されるかというその日限の点等については、まだどうも申し上げる段階に達しておらない。だんだん向こうの了解もわが方に近づきつつある、このことだけは申し上げて間違いない、こう思いますが、なお一そうこの船と船員の釈放について激しい折衝を進めつつありますので、しばらくお待ちを願いたい、こう思います。
  39. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 何かだんだん明るくなってきたというようなお話でございますが、この事件が起きたのは御承知のとおり三月十四日のことであります。しかも、新聞等の伝えるところによると、釜山あたりの情報では二、三日うちに船は無事に返されるというようなことも伝えておったので、ややわれわれとしては安心をしておったのでありますが、ややこのごろは明るくなってきたような見通しだというようなことが外務大臣の口からいまの時点において出てくるということになれば、これはやはりわれわれとしては穏やかな気持ちではおられないわけであります。特にわれわれ自民党としては大韓民国と仲よくするのだ、けんか腰でいていいものではないの、だというようなことで、まあいろいろ不満な点も必ずしもなかったわけではないですけれども、それをきめたわれわれとしては何か裏切られたような気持ちが本来しているわけです。このわれわれの気持ちは率直にひとつ大韓民国に対して伝えてほしいし、それが日本国民の気持ちであるということをひとつ外務大臣は大韓民国に強く伝えてほしいと思うわけです。  それから、内容にちょっと入ってお伺いをしたいと思いますが、一体いま問題になっているのは共同規制水域の中におったか、おらないかということでありますが、これはまあ一応おくとして、漁業専管水域の中でかりに間違いでいたか故意であったかそれは別として、やっていた場合には、ああいうような拿捕、それから裁判権というようなものが彼にあるとするのが正しいとするのですか、正しくないのですか。
  40. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 向こうの巡視船に接触した地点がすなわち問題の場所のようであります。漁業しておって見つかって、そうして追跡をして接触をした地点があの地点であるというのでなしに、当初からあの地点で漁業をし、そこへ巡視船があらわれて交渉が始まった、こういうのが事実のようでありますが、これは、わが方に備えつけた計器からいって明らかに専管水域外であるということがわれわれのほうとしてはわかっておる。それをまあ主張しておるのであります。専管水域内の場合には、日本の入り会い権というものは認められてないのでありますから、排他的な地域でありますから裁判権も向こうにある、こういう解釈をとっております。
  41. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 そうすると、もしかりにいまわれわれが考えていることと違って、漁業専管水域の中で漁業をしておったということになれば、裁判権その他は先方にあるんだ、だからああいうふうな拿捕状況はしかたがないのだ、こういうふうにおっしゃるわけですか。もう一ぺん確認をいたします。
  42. 小川平四郎

    ○小川政府委員 ただいまの御質問は、韓国の漁業水域の中で操業をしておってかつ漁業水域の中で拿捕された場合ということであろうかと思うのでありますが、その場合には先方の逮捕その他の手続は正当なるものと思います。
  43. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 そうするとこれは日韓条約のときの話をまた蒸し返すようですが、領海というのと専管水域というのとはどういうふうに違うというふうに考えておられますか。専管水域すなわち領海というふうにお考えですか、どうですか。
  44. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 領海と申しますのは低潮線から三海里の範囲内で沿岸国が外国の船舶に無害航行を許すこと以外につきましては、自分の領域と同じように取り扱っていい水域であるわけでございますが、専管水域と申しますのは、この漁業協定に基づきまして、この協定上の関係のみで、つまり漁業に関してのみ韓国が排他的な管轄権を行使することを日本が認めた、それだけの水域でございまして、領海という一般国際法上の制度とは全然本質的に性質を異にするものでございます。
  45. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 専管水域の中であったと仮定すれば、ああいう拿捕の状態はしかたがないというふうに日本政府はお考えですか。
  46. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 先ほどアジア局長がお答え申し上げましたとおりでございまして、ああいうふうにとおっしゃると非常にあいまいになりますから、専管水域内で操業しておって専管水域内で臨検拿捕されたものならば、それならばしかたがない、そういうことでございます。
  47. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 ああいうふうにと言うとあいまいになるとおっしゃいますから、それじゃああいうふうにをはっきり言いますが、鉄砲の台じりでもってひっぱたいたり何かするというようなことも含めて、そういうことは友好的な関係にある両国として遺憾であるとは思いませんか。
  48. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 それは専管水域内とか外とかいうことを離れたもっと根本的な別の問題だろうと存じますが、私が先ほど申し上げましたのは、最近追跡権とかなんとかいろいろこの事件と関係ないことで問題になっておりますので、操業をしておったが最初に発見された場所と臨検拿捕された場所との両方ともが専管水域内であることが必要である、そういう主張をはっきりすることが必要であるという趣旨で申し上げたわけであります。
  49. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 それでは話を進めまして、かりにもそんなことはないことを期待しますし、またそんなことはなかったというふうに私たちも思いますけれども、これからもあることですが、専管水域の中で魚をとった、そこを今度は見つかって追っかけられた、逃げてくるのをどんどん追っかけて共同規制水域の中にまで入ってくることは許されるのですか。
  50. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 そういうことは許されません。
  51. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 許されないといってもあれでしょう。それが許されなければ向こうは承知しないのではないですか。それじゃ、どんどん中でやっていて追跡が許されないんだ、そうするとよくテレビ映画でやっているみたいに、アメリカで、ピストルを撃って悪いことをして国境へ逃げればいいんだということで、苦労して国境に逃げてくる映画がよくありますが、そんなようなことが実際上行なわれることになりませんか。そういう矛盾を感じませんか。
  52. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 まず、専管水域内に入っていくこと自体がいけないわけでございますが、追跡権の問題につきましては、国際法上はっきりしたいわば規則があるわけでございまして、公海というものは自由であるということが大原則でございますから、それに対する例外といたしましては、こういう場合だけに追跡してよろしいということがはっきりきまっておるわけでございます。そうしますと、この協定ではっきり追跡権のことがきめてでもあれば別でございますが、この協定には何も書いてない。そうすると一般国際法の規則に従って考えると、当然追跡権はないはずである、そういう法律解釈になるわけでございます。
  53. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 韓国のほうでは追跡権はあるのだというふうに解釈しているのではないですか。いかがでございましょう。
  54. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 私どもは、公式に向こうの責任の当局者からそういうことが言われたということを承知いたしておりません。
  55. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 そうすると、韓国のほうでも追跡権があるのだというふうに解釈しているのではないと考えて間違いありませんか。
  56. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 どうも反対は必ずしも真ならずでございまして、そういうふうにも言っているとは承知いたしておりません。
  57. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 そうすると、日韓条約はずいぶん詰めて御協議をなさったようですが、この追跡権の問題については話し合ったことがないのですか、あったのですか。
  58. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 どういうレベルかで、あったかもしれませんけれども、あまり公式の場ではその点を詰めて交渉したことはないように了解しております。
  59. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 そうすると、追跡権の問題については、はっきり両国の間で合意はなされていないというふうに解釈してよろしゅうございますか。
  60. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 そうじゃございませんで、この協定上追跡権がないことが非常に明確である、かように考えております。
  61. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 局長のお話は、国際法上その他常識から考えて追跡権はないというのが明確であるというふうな御見解でございましょう。
  62. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 先ほど申し上げました、協定にないことは一般国際法によるのだ、そうすると、一般国際法ではそういうことはきめられておらないというのが理論の本筋でございますが、さらになお、この協定の文言の上から言って、何かこちらのそういう議論の手がかりになるようなものはないかというならば、第四条で取り締まり及び裁判管轄権の分配を地域的にきめまして、漁業に関する水域の外側における取り締まり及び裁判管轄権は旗国のみが行なうという明文の規定がございますので、これからもはっきるするということが申せると思います。
  63. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 くどいようですが、それは共同規制水域内でのことでございましょう。
  64. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 共同規制水域内とか外とかに限らず、専管水域の内外の問題でございまして、外では全部旗国であると地理的に分けてあるわけでございまして、共同規制水域における暫定措置に対する違反のみをどうする、こうするというような問題じゃございません。
  65. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 この問題は追跡権の有無、それから漁業専管水域内においては排他的権限を持つかどうかということについて詰めていなかったところにも難点があったのではないかというふうにわれわれも考えわけです。これは外務大臣にちょっとわれわれの見解を申し上げてひとつお考えを願いたいと思うのですが、かりにそういう多少の不備があったとしても、この条約は両国ともに不満な点があったことは事実なんです。それをお互い仲よくしてやっていこうということで始まったのに、始まるや三カ月くらいでこういうような事件が起きたことはまことに遺憾しごくなことでございますが、これは外務大臣もそう思っておられるに違いない。だからたいへん御苦労なさっておられることをわれわれは十分に認めるのですが、もし向こうがこれを起訴するというようなことになったら、日本政府としてはどういうことをお考えでありますか、外務大臣、もしお差しつかえなければひとつお述べを願いたいと思います。
  66. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 せっかく両国仲よくやろうということでありまして、こういうような問題が二度と起こらない――ほんとうのもののはずみと申しますか、そういうことで起こったということにしてしまいたいと思うのでございます。かりにこういうようなことがもし起こったとすれば、所在しておるその地点がはたして専管水域の中であるか外であるかということが基本的には大きな問題になると思います。これはこちらのほうの船が計器類を備えておって、そして明確に専管水域の外側四マイル半離れたところで向こうの巡視船に接触しているわけですから、向こうのほうでどういう主張をするにしても、こちらの主張は正しいものだと考えられる、そういう立場からこの問題を、向こうの主張がどこにあるか、それと戦うということになると思います。
  67. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 それは私のお尋ねしたことに対してお答えをいただいたようには思えないのであります。というのは、私は共同規制水域の中でやっていたのだ、おまえのほうは専管水域の中でやっていたと言うけれども、そうではないのだ、おれのほうは計器を備えておるのだから間違いないのだと言っても、それはそんなことのないことを希望いたしますが、それは水かけ論になるのではないかという疑いもあります。ですからわれわれは共同規制水域の中でやっていたものを追跡して共同規制水域でつかまったのですから、つかまった地点は共同規制水域に違いないのだから、もしそういうことから追跡権があるというようなことで、最悪の場合、向こうが起訴した場合は、そういうときには日本政府はどうしますかということなんです。
  68. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 向こうのほうでも追跡の事実はないということを認めております。つかまった場所がすでに専管水域内である、こういうことを言っておるのですから、追跡権の問題はこの問題には入ってこない。でありますから、ますます明瞭でございます。向こうがはたして正確な計器類を備えておったかどうかということが問題になると思います。
  69. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 そうするとますます、つかまったのもお魚をとっていたのも規制水域内だということです。それなのに起訴するということになればなおさらのことですが、向こうの魚族保護法ですか、それに基づいて起訴をするというようなことになったらどうしますか。
  70. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 何と申しますか、そういうようなことはどだい無体、無法であるということになるのであります。両国の合意によって漁業上の秩序というものははっきりきめられております。それを守らぬということになるわけでありますなら、重大な問題になるわけであります。
  71. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 大韓民国はりっぱな独立国でありますし、われわれも尊敬しておる国でございますから、そんなばかなことはないと思いますけれども、これは自民党の見解というよりも私個人の邪推かもしれませんが、もし何か反対給付のような、あらゆる問題を含めて、たとえば経済援助を十年間のものをひとつ二、三年分一ぺんに援助してくれないかというような、すでにきまったことを変更するようなことを条件としてこの問題を解決――完全に条件でなくとも、それとこれとを取引しようというような話がもしあったら、仮定の問題ですからお答えにならなくてもけっこうですが、こういう邪推の考えに対して外務大臣はどう思いますか。
  72. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 万々そういうことはもちろん向こうもするはずはありませんが、かりにそういうようなことを申し入れてきましても、これは断固としてことわるべきである。やはりどこまでも筋を通して、こういったような問題は先例になりますので、筋を通して厳密に事実に基づいてわれわれはどこまでも主張したい、こう思います。
  73. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 当局は非常に大努力を払っておられることをよくわかっております。日に日に国民の世論は高まってまいりまして、このようなささいな問題でも両国の間に非常に悪い結果を及ぼすことは予想せられるわけでございますから、どうかひとついまおっしゃられたそういうことを基盤にして、強硬な態度でひとつ交渉を進めて、一日も早く妥結してもらいたい、このことを希望して、あとあるのですけれども、何か関連の質問があるそうですから……。
  74. 高瀬傳

    高瀬委員長 菊池義郎君。
  75. 菊池義郎

    ○菊池委員 関連して――世界各国の実例を見まするというと、国と国との国境の海域については、必ず両国とも艦艇をもって漁業を防護する、おのれの国の漁船を防護するという例になっておるのです。ところが日本は、艦艇をもって国境の海域の漁船を守らないで、いつも巡視船を用いている。そして逃げることばかりを教えて、守ることをせぬ。こういう変則的なおかしなやり方をしておるのです。これをどうして改めないのか、世界各国並みになぜ艦艇をもって守るというようなことに切りかえないのであるか、これをいつまで続けるのであるか、これについて外務大臣の御意見伺いたいと思います。
  76. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 向こうも軍艦を使っておりません。巡視船でやっておる。でありますから、こっちが率先して巡視船以上のものを使うということは、これはやはり適当ではないと私はかように考えております。
  77. 菊池義郎

    ○菊池委員 向こうは巡視船ではなく、警備艇をもって守っておる。日本は巡視船、そういう違いがある。これはたいへんな違いです。その点をお伺いしたい。なぜこれをこちらも警備艇と同じような艦艇をもって守らないか、こういう変則的なやり方をいつまで続けるのであるか、その点をお伺いしたい。
  78. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 警備艇とおっしゃるけれども、これは向こうの内務部長官の管轄下にあるいわゆる水上警察の程度のものであります。こちらとしても海上保安庁の巡視船、でありますから、特に向こうのほうが特別の実力を備えておるということではないと思います。
  79. 高瀬傳

    高瀬委員長 濱野清吾君。
  80. 濱野清吾

    ○濱野委員 関連して要点だけ聞きますから、簡単にお答え願いたいと思います。  当時わが国の、あの事件のときに巡視船が出ておったが、しかも事件が起きて十時間内外の折衝を相手国としたそうでございます。わが国の巡視船のうちに計器はついておるのかないのか、と申しますのは、今度の事件は専管水域で起きた事件だと先方は、主張しておるに違いない。わが国は共同水域内において起きた事件であると主張しておる立場をとっておるのでありまして、事実上の認識がこの問題を解決する要点だと思います。そこで、わが国の事件を起こした漁船がレーダーを持っておったかどうか、要するに計器を持っておったかどうか、漁船が持っていないにしても、わが国の巡視船は当然計器序持っているはずであります。と申しますのは、あの複雑した海洋の中で、専管水域、共同水域というものがはっきりすることは、計器以外にはなかなか実際問題としては、容易ではないので、それですからわが国にもし巡視船があって、しかもその巡視船が十時間内外折衝したというなら、どの根拠に基づいて一体折衝したのか、計器以外にはああいう海洋でははっきりした線は出ないはずであります。ですから、この二点をお伺いしておきたい。
  81. 小川平四郎

    ○小川政府委員 拿捕されました五十三海洋丸には、海上保安庁の報告によりますと、レーダーが備えてあったそうであります。巡視船にはもちろん備えてあります。
  82. 濱野清吾

    ○濱野委員 備えておって、その計器の示すところによると、それは共同水域だ、こういうわがほうの主張でございますね。
  83. 小川平四郎

    ○小川政府委員 拿捕された地点が共同規制水域であったのは、そのレーダーによって観測した結果であります。
  84. 濱野清吾

    ○濱野委員 そうしますと、世の新聞なども報じておりますように、明らかに先方の違法行為でありますが、しかしその後の調査において、わがほうの巡視船のレーダーに記録したその事実をもって先方に折衝をしていらっしゃるのかどうか、そういうことがはっきりすれば、この問題の解決点というのは容易であろうと思うのでありますが、その点はどうでございますか。
  85. 小川平四郎

    ○小川政府委員 仰せのとおり、ただいまレーダーによりまして観測いたしました地点、その他その前後の観測によります地点、詳細に当方の資料を提出いたしまして、当方の事実が間違いない旨を先方に通告いたしまして、事実の突き合わせをやっているところであります。
  86. 濱野清吾

    ○濱野委員 その地点の説明じゃなくて、計器上の証拠物件というものを提示すれば、かりに向こうが一つの取り締まり権を不法に発動したとしても、いまの国際的な常識ではこれを否定することはできないと思いますが、その点どうなんです。
  87. 小川平四郎

    ○小川政府委員 地点のみならず、どのようにして、どういう計器で観測したかという事実もあわせて説明しております。
  88. 高瀬傳

    高瀬委員長 この際暫時休憩いたします。    午前十一時三十八分休憩      ――――◇―――――    午後三時十九分開議
  89. 高瀬傳

    高瀬委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を続けます。戸叶里子君。
  90. 戸叶里子

    戸叶委員 午前中に韓国に拿捕された漁船の問題についての質問がございましたが、私は、伺いたいことが深く伺えませんでしたので、それらの点についてお伺いしたいと思いますが、それに先立ちまして、韓国にも関係のあることでございますから、まず問いただしておきたいことは、政府が、在来、韓国の提唱いたしますアジア外相会議に参加するということについては、多少の逡巡を示していたように私は考えておりました。ところが、けさの新聞によりますと、今回は参加するということに踏み切られたようでございますが、今回、韓国の提唱するアジア外相会議に参加するということをおきめになった最大の理由は何であるかを伺いたいと思います。
  91. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 新聞はどういうふうに書いてあろうとも、まだ外相会議に参加するという決定はいたしておりません。
  92. 戸叶里子

    戸叶委員 それではまだ決定しておられない、そうすると、近々何か準備会議が行なわれるようでございますが、それには参加されますか。
  93. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 外相会議というものは、一体何を議題とし、いかなる運営をするのであるかということについての詳細の説明を受けておりません。したがって、参加といなとはまだ決定しておりません。  いまお尋ねの準備会議でございますが、これはバンコクにおいて四月に開催するということになっております。ここで外相会議というものの運営なりあるいはまた会議議題等をどうするかというようなことが論議されるのではないか、こう思うのでございます。したがって、参加するかしないかということは、議題なりあるいはその運営なりというようなものとにらみ合わせて決定したい、こう考えておりますので、準備会議にはぜひ代表を出してくれというようなことでもございますので、現地の粕谷大使を代表として出席させるということにいたしております。そして、ここでいろいろな具体的論議が行なわれるようでありますから、その状況によって参加するかしないかということを終局的に決定したい、こう考えております。
  94. 戸叶里子

    戸叶委員 多少はっきりいたしました。四月に行なわれる準備会議に出席して、議題なり運営の方法なりいろいろ見た上で、出席するとかしないとかということはその上できめるということでございますね。そうしますと、どういうふうな議題で、どういうふうな場合には出席しない、こういうふうな原則があると思うのですけれども、それはどういう場合に出席しないという態度をおとりになるか、伺いたいと思います。
  95. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 どういうことが一体そこで行なわれますか、それを見た上で決定したいと思います。それをあれこれ推測していま論議することは少し早いかと思います。
  96. 戸叶里子

    戸叶委員 一応招請された国、参加国はどことどこでありますか。
  97. 小川平四郎

    ○小川政府委員 韓国が招請しようとしております国は、ニュージーランド、オーストラリア、マレーシア、タイ、ベトナム、フィリピン、国府でございます。
  98. 戸叶里子

    戸叶委員 外務大臣、いまお聞きになったような国々に対して招請状を出しているわけです。そういう国々というのは、どういうふうなアジアにおいて態度をとっている国かということは、おのずからおわかりになると思います。その中で特にこの韓国にいたしましても、ニュージーランド、オーストラリア、いずれもベトナムに対しては軍隊を送って協力をしている国です。また中国に対しても非常に批判的な国でございます。こういうふうな国々だけを招集した中に日本が行くということは、アジアの平和に決して役立つものではない、こういうふうに考えますけれども外務大臣はいま招請を受けた国々の性格から見ても、これは少し警戒すべきものであるというようにお考えになりませんか。
  99. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 集まる国だけで内容を判断するということはいささか早計ではあるまいか。何を一体論議をしようとするのか、会議の目的はどこにあるか、そういったような問題についてまず十分にこれを観察いたしまして、それから参加するかしないかを決定する、こういうことがやはり必要ではないか、こう考えております。
  100. 戸叶里子

    戸叶委員 いま発表されたような国々で議論をすることになると、おのずからどういうことになるかということは、外務大臣もおわかりになると思うのです。しかし、議題もはっきりしないから、準備会議に出て議題もはっきりした上で態度をきめる、こういうことでございますので、私はそれではたとえば中国を刺激するような問題、これはそういう問題が表に出なくても、当然この会議の性質から、集まってくる国々から見ても、そういうふうな問題が出てくることは当然だと思うのですけれども、そういうような場合には、当然日本としても出ていかないとか、あるいはベトナムが来ますけれども、ベトナム問題の、戦争の拡大に協力するような形の国々が多いわけですが、そういうような議題についてもし触れるならば全然出ていかないとか、こういう点をはっきりしておいていただきたいのです。もう一度その点についてお伺いしたいと思います。
  101. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 中共を刺激する、何が一体刺激することになるかわかりませんけれども、中共あたりは絶えずほかを刺激するようなことを言っておるようでございますが、まあ、ひとはどうでも、自分としてはなるべくそういうことは、慎んだほうがいいと思います。いたずらに他を刺激するようなことのためにわざわざどこかへ集まるというようなことは、日本としては少なくとも避けたい、そう考えます。しかし、まだやってみもしないうちから、国の名前だけで中身を判断するということは少し早計ではないか、こう思います。
  102. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは準備会議に臨んで、その内容を見た上で日本としてもやめる可能性は十分にある。私たちから考えるならば、一方においてアジア閣僚会議というものも開こうとしているときでございますので、これとの関連等も考えていただいて、この反共国との会合に出て、いたずらにアジアにおいての波紋を起こすような中には入っていただきたくない、このことを強く要望したいと思います。  そこで、午前中から問題になりました日本の漁船の第五十三海洋丸がまだそのまま拿捕されておりまして、きのうは佐藤総理からも早く釈放方についての努力をせよというふうな指示もあったというふうに新聞は伝えているわけでございますが、国民としても、韓国との間に一応政府がたいへんに宣伝をされて友好条約を結んだんだ、こういうことを言っておられたにもかかわらず、その友好というのは、一体こういうことが友好なのかと非常に不信の念を抱いているわけです。そこで、午前中、鯨岡さんが、これまでどういうふうな手続をとってきたか、こういうことをお聞きになりましたのに対して、外務大臣は、外交ルートを通じて執拗に韓国に申し入れをしてきた、こういうふうな答弁でございましたけれども、私は、これだけではちょっと満足ができないと思うのです。そのことはどういうことかといえば、たとえば金大使に申し入れをするとか、それから韓国の公使を呼ぶとか、あるいは韓国においての大使が韓国の政府に対して申し入れをする、こういうことであったのでしょうか。この点、もう一度具体的にお聞きしたいと思います。
  103. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いまあなたがおっしゃるようなことはすべてやっております。一回のみならず、やっております。
  104. 戸叶里子

    戸叶委員 日韓の条約に調印する前にもいろいろな問題がございました。そのときにも大使館を通じて申し入れをしております。口上書を渡しております。賠償は保留をさせるとか、早く釈放をしなさいとか、こういうふうな手続をとっておられましたけれども、条約を結んだ後と結ぶ前との交渉のしかたが、一体どこが違ったのですか。
  105. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 大使を交換しており、わがほうの大使館はもうすでに向こうで開かれて活動しておる、こういう状況でございますから、従来の交渉とはもう全然程度が違う、こう考えております。
  106. 戸叶里子

    戸叶委員 程度が違うというのは、どういう程度が違いますか。
  107. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 私が申し上げたように、大使を交換して、わがほうの代表者が向こうに行っておるのです。それで、向こうの政府に直接抗議を申し入れておる、釈放を早くしてくれ、そういうことでございます。こちらでも、ちゃんと権限のある大使と私がみずから会いまして、この問題の話し合いを強く申し入れておる、こういう状況でございます。
  108. 戸叶里子

    戸叶委員 条約が締結される前にも、韓国が日本に対していろいろ不法なことを行なったわけです。そうしましたときにも、口上書なりあるいは申し入れなりはしましたけれども、今回も結局同じことだと私たちは考えわけです。しかも、先方は、間違ったことをしながら、なおそれを自分たちが正しいというふうに理論づけようとしている。それにもかかわらず、政府自身がいろいろ申し入れやら外交ルートを通してやっていらっしゃるということはわからないでもないですけれども、何か日韓条約締結前と後と、やっていることが一つも変わらないのじゃないかというように思うわけで、もっと、こういう点が、日韓条約を締結したので、あなた、こんな間違ったことをしているの、だから、こういうふうにしているのですよ、というようなものがないのかしらということを、たいへんふしぎに思うわけなんです。それともう一つは、口上書なり何なりをお渡しになったり申し入れをしていらっしゃるのでしょうけれども、韓国からは、何らかの書いたものでの意思表示なり何なりあったのですか。ただ政府なり外務大臣が申し入れていることを、かしこまりました、何とかいたしますという程度のものでしょうか。この点もお伺いしたいと思います。
  109. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 書いたものというような、そんなことじゃなしに、もう直接ひざ詰めで話をしております。大体こちらの主張は、あらゆる主張はしております。これ以上は、もうあとは実力行使以外にはないくらいにやっております。それまでやれとおっしゃるのではないと思います。その点は十分に申し入れてありまして、その反応もあらわれてきておる、こう私どもは確信をいたしております。
  110. 戸叶里子

    戸叶委員 十四日に拿捕されて今日まで相当日がたっているものですから、私どもとしても気が気じゃないわけです。しかも、日本では間違ったことをしていないという論点に立って交渉していらっしゃるのですけれども、いつまでたってもらちがあかない。ですから実力行使をしろということは私は言っておりません。けれども、何か前進があっていいのじゃないかどいうふうに思うわけですけれども、ちっとも進んでおらないものですから、その点を伺うわけです。  そこで、先ほど鯨岡さんに対して、ほのかなあかりがだんだん見えかけてきているというようなことをおっしゃったように思うのですけれども、どういう点が明るい見通しなんですか。たとえば、こういう点は少し明るくなってきましたというような具体的なものがなければ、だんだん明るくなってきていますと言っても、私どもが韓国で出されている新聞などで拝見いたしますと、何かだんだん、だんだん悪いほうに進んでいるみたいなのです。外務大臣は相変わらずだんだん明るいほうに来ているとおっしゃるのですが、明るくなってきたというようなことがあったら、お示し願いたいと思うのです。
  111. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 向こうにもやっぱりいろいろな説があるのですね。政府のほうとしては、この問題は、友好をそこなうようなことでなしに、日本の要請というものをいれるように、その方向において十分に努力しているということはわかるのでありますけれども、いまその内容をこまかに申し上げることは少しまだ早いような気がいたしますので、大体……(「確信がないのだろう」と呼ぶ者あり)確信はあります。確信はありますが、いまこういう状況であるということをはっきりまだ言えない段階にあるということを御了承願いたいと思います。
  112. 戸叶里子

    戸叶委員 どうも納得のできないことなのですけれども外務大臣は確信を持って明るい方向へ向かっているとおっしゃるので、もう一日、二日待ってみますが、どの程度に明るさが出てくるかを期待したいと思うのです。  そこで、専管水域への違反に対しては双方に裁判権があるわけですね。日本の場合には日本に、韓国の場合には韓国に、双方に専管水域の裁判権はあるわけですけれども、そのためにはどういうふうな処置をするかという法律があると思うのです。韓国のほうには韓国、日本のほうには日本のほうにそれを取り締まるべき法律があると思うのです。これは日本ではどういうのがありますか。韓国では漁業資源保護法だろうと思いますが、そうでしょうか。これも念のために伺いたいと思います。
  113. 石田朗

    ○石田政府委員 ただいまお話がございましたが、まず日本のほうから申し上げます。日本の専管水域は、長崎その他島根から九州にわたります各県のそこの十二海里の区域に設定されております。これに関しましては、先国会におきまして、日本国と大韓民国との間の漁業に関する協定の実施に伴う同協定第一条1の漁業に関する水域の設定に関する法律を制定いただいておりまして、その法律及びその関係政令によりまして、韓国民に対しても、この漁業水域に入りました場合に、その禁止規定を適用する、こういうようなことに相なっておるわけであります。
  114. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 大韓民国のほうにつきましては、漁業資源保護法でございますか、あれについてその後別段の措置がとられていない模様でございますので、私どもの推測としましては、専管水域を侵犯したような船を処罰するというような場合には、あの法律の適用としてやるのではなかろうか、かように考えております。
  115. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、いま農林省のほうでお読みになったのは法律ですか、省令ですか。
  116. 石田朗

    ○石田政府委員 ただいま申し上げましたのは法律でございます。その関係の政令及び省令がございます。
  117. 戸叶里子

    戸叶委員 日本のいまおっしゃった法律の刑と、それから韓国での漁業資源保護法に違反をした場合の刑との関係はどうなっていますか。量刑はどうなっていますか。
  118. 石田朗

    ○石田政府委員 日本の、ただいま申し上げました法律及び政令、省令に規定されておりますところでは、この規定に違反いたしまして韓国の人が日本の漁業水域内で漁業を行ないました場合、「二年以下の懲役若しくは五万円以下の罰金に処し、」かつその「犯罪に係る漁獲物、漁船及び漁具で犯人が所有するものは、没収することができる。」ということに相なっております。
  119. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 これは先ほど申し上げましたように、韓国の国内法のことでございますから、あくまで私どもの推測としてお聞き取りをいただきたいのでございますが、第三条に「前条に違反した者は、」つまり管轄水域内で漁業しようとする者は「主務部長官の許可を受けなければならない。この条に違反した者は三年以下の懲役、禁錮または五十万園以下の罰金に処し、その所有または所持にかかる漁業、漁具、採捕物、養殖物及びその製品はこれを没収する。」こういう規定になっております。
  120. 戸叶里子

    戸叶委員 外務大臣、いまお聞きのように双方の専管水域を侵した者に対する刑というものがきめられているわけです。日本にも日本の刑、があり、韓国にも韓国の刑があるわけですが、そこでいまお聞きのように、日本の場合の量刑は二年以下の懲役または五万円以下の罰金、またはこれを併科するとある。ところが韓国のほうは三年以下の懲役あるいは禁錮、そして五十万ウォン以下の罰金と書いてある。これで一体平等の法律ということが言えますか。対等の立場に立って結んだ条約に付随する法律、条約は対等でなければいけないのですが、それに明らかに付随した法律ですから、私は、当然対等でなければいけないと思うのですけれども、こういう点は一体お話し合いになったのですか、お話し合いにならなかったのですか。韓国のほうがたいへん重いようなんですけれども……。
  121. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 国内法でございますから、お互いに干渉すべきものでもないし、また干渉したからといってそのとおりやるということにもならないと思いますが、なお法律の問題でございますから、条約局長から御説明いたさせます。
  122. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 これはそれぞれの国内法の問題でございますから、いま法律上の理屈といたしましてはそれぞれ一方的にきめられることでございます。ただそれに関連いたしまして協定に基づいて設置される委員会の一つの仕事としまして「この協定の違反に関する同等の刑の細目の制定について審議し、及び両締約国に勧告する。」こういうことはございます。
  123. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、藤崎さん、それは国内法なんだから、国内でかってにきめればいいんだ、こういうことをおっしゃいますけれども、しかし協定というものは両方関係があるんですよ。日本と韓国との間に結ばれた協定なんですね。その協定で、日本の場合には韓国が侵したときはこれだけでいい。しかし韓国のときに日本が侵したらこんなに重くするのだというふうなことを黙っていてもいいのですか。それが正当なる一つの協定の精神に基づいての法律だということが言えましょうか。こういう点は全然お話しにならなかったのですか、そういうことは国内法で、どんなに不平等でもかまわないという立場をとっていらっしゃるのでしょうか。
  124. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 協定の立て方が、先ほど私が申し上げたようになっておるわけでございまして、つまりお互いに相手国の近海である専管水域についてはそれぞれ排他的管轄権を持つ、排他的管轄権と申しますのは、その沿岸国だけが管轄権を持ち、他国は、少なくとも日韓間においては、他方の国は何らの管轄権を持たないということでございますので、法律上の理屈としては私が申し上げたように解するほかはないわけでございます。
  125. 戸叶里子

    戸叶委員 そういうことを聞いているのではないのです。排他的管轄権を持つ地域が両方にあるわけですね。それで片方が片方を、たとえば間違って違反するようなことをした場合、そのときには、日本がした場合にはたいへんに重くて、韓国のほうが日本に対した場合は軽い、こういうことでもいいものでしょうかということを伺っているのです。これは国際法上なりそれから外交上から見ても、韓国の国内法できめるのですから、これはしかたがありません、かってですということになれば、これからよその国との――こういう問題じゃないかもしれませんけれども、条約を結んで、そうしてたとえばこれと同じような性格を持った問題が出てきたときに、あなたのほうは国内法でおきめなさい、私のほうでも国内法できめますといって、量刑がたいへん片方が重くて片方が軽いという場合が出てくると思います。そういうのもしかたがないのでしょうか。
  126. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 あくまで法律論として私は申し上げておるわけでございまして、専管水域ということの意味は、私が申し上げたように、沿岸国が国内法で一方的に処置ができるという意味合いの水域なわけでございます。それ以上にわたりましてあまり不均衡なのは好ましくないじゃないかということになりますと、いわば政治論になりますので、私の分野以上になるかと思いますが、そういうことは別にしまして、法律論としては私が申し上げたようなことでございます。
  127. 戸叶里子

    戸叶委員 藤崎さんは法律論とおっしゃるのですけれども、しろうとが考えても非常に不平等だと思います。専管水域、排他的区域というものをお互いにつくったわけでしょう。そしてお互いに量刑を持っているわけですね。ほかの国は入らないわけです。双方が排他的水域というものを持っていて、そして間違ったことをした場合には双方が量刑をするわけでしょう。そのときに韓国は韓国の排他的地域に対してすることなんだから、法律的にはどんな法律をつくってもかまいません、こういってしまえばそれまでであって、これは両方ともあくまでも関係があるのですから、双方がもし刑を科するならば平等にしなければいけない問題じゃないですか。政治的に考えなければならない問題だとおっしゃるなら、それでは外務大臣、いまもお聞きになって、韓国のほうが重くて日本のほうが軽くてもしようがないでしょう、こういうふうにお考えになりますか。
  128. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 まあ両方とも二年三カ月なら二年三カ月、罰金はこれこれというふうにつり合いをとってやるということはあまりないそうでございます、国際的慣習として。これが片方が死刑、片方は罰金というような非常な違いがあると、これは政治的に問題にすることもできるかと思いますが、二年と三年くらいの違いはどういうものでしょうね。どうもそういうことをつり合いをとってやっているという例は、いま聞いたのですが、あまりないようでございます。
  129. 戸叶里子

    戸叶委員 つり合いをとってやっている例なんて、いまあまりないはずです。なぜならば、お互いに専管水域を設けて、ここは排他的専管水域、こっちも排他的専管水域といって、こっちの場合はこうしますなんということはいままでにあまりないと思うのです。あったらあとで知らしていただきたいと思うのですけれども、これは一つのテストケースだと思うのです。  それで、こういう場合に、外務大臣としても、農林省にしても、一体ここまでお話にならなかったのですか、それともなったのか、そうしてなった上で日本はまあしかたがないというふうに納得されたのですかどうですか、その辺のいきさつをはっきりさせていただきませんと、条約を締結して三カ月もたたないうちにこんな問題が起きてくるのですから、やはりこの点ははっきりしておいていただきたいと思います。
  130. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 これは共同規制水域の暫定措置というのと本質的に違うわけでございまして、お互いに相手方が一方的にやることを認め合うというのがこの専管水域の本質でございますから、これについて、この中で行なわれる国内法についてそれぞれが合意するというようなことは、この専管水域というものの性質からしてあり得ないことでございます。
  131. 戸叶里子

    戸叶委員 合意を認めなくてもいいですけれども、その間話し合って、紳士的に、あなたのほうがこうなら、こちらもこうくらいなことは当然やるべきじゃないですか。両方に関係のある国内法ですよ。両方に関係がないというなら別ですけれども、両方にお互いに専管区域があって、お互いにこっちを侵したとき、こっちを侵したときという問題があるのですから、当然話し合って紳士的にきめるべきじゃないですか。合意をしないまでも、こういうふうに私のほうはします、こういうふうにします、まあしかたがないでしょうという合意はあるべきじゃないですか。せめてその点はあるべきだと思うのです。
  132. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 私はいま協定交渉の段階においてのお話かというふうに承ったものでございますから、あのように御答弁申し上げましたが、将来、先ほど大臣からもお話しがありましたように、非常に均衡を失するというような場合に、何かその点について注意を喚起して、お互いに紳士的に話し合いをするということが封ぜられておるというような性質のものではないわけでございまして、それがただ法律上の権利として主張するとかなんとかいう性質のことじゃないということを申し上げておるわけでございます。
  133. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると、外務大臣は、これは不平等であるけれども、片一方が死刑で片一方が罰金何万というふうなことじゃないのだから、まああたりまえでしょうというお考えなんですね。その点は念のために一応伺っておきたいと思うのです。
  134. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 問題が国内法上の処罰にいま進展しているわけでもございませんので、この問題についてはそう突き詰めてここで論及するだけの切迫した事情にもありませんので、この点はひとつ後日の研究として、どういうふうに考えたらいいのか、私ども研究してみたいと思います。
  135. 戸叶里子

    戸叶委員 大体条約が結ばれてから研究するなんというのはおそいですよね。結ばれる前にこういうことは当然十分審議し、研究した上でやっていただきたいものだと思います。  ここだけにおられませんから先に進みますが、この韓国の漁業資源保護法というのは李ラインの裏づけとして決定をされたものである、私どもはこういうふうに了承しているわけです。だからこの法律に対しての何らかの意思表示がない限りは、李ラインというものはどうも消えないのじゃないか、こういうふうに考えわけでございますけれども政府のこれまでの答弁を聞いておりますと、条約というものは国内法に優先するのだ、だから日本と韓国との間の条約を結んだ以上は、韓国の国内法よりも条約が優先するのだ、こういうふうなたびたびの御答弁でございました。それでは一体韓国のほうでは、条約と国内法とを比べて条約のほうが優先をするという理解のもとに今回の条約が締結されたかどうか、これは国際法的にはきまっていないと思います。条約が国内法に優先するとかしないというのは話し合いできめるものだと思いますけれども、韓国とのこの漁業交渉の過程において、条約は国内法に優先するものですという話し合いがされているかどうか、日本の国がかってに考えているだけでないかどうかということを、念のために外務大臣にお伺いしたいと思います。
  136. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 国際法上の問題でございますので私から答弁させていただきますが、条約が日本と韓国との間においては唯一の法規範であるわけでございます。韓国にしましても日本にしましても同じでございますが、それぞれの国内法を理由にして、協定、条約上の義務を免れる、それに籍口して条約上の義務を免れるということはできないのでございます。これは国際法上確立されている原則であって、もし法律でいかようにも条約上の権利義務を曲げられるものならば、幾ら条約を結んでも意味がないことになりますから、この点は国際法上疑問の余地のないところであろう、かように考えております。
  137. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは韓国が漁業資源保護法によって日本に対していろいろと不法なことを言ってくるということは許されないと日本は解釈しておりますけれども、韓国はどう解釈しているのですか。
  138. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 私は韓国がどう解釈しているか、正確には存じませんが、何かで、この条約があとにできた条約であるから、本質的には、韓国の国内法上同等の効力のものであるにしても、後法が先法に優先するとかいうような理屈があるというようなことを何かで読んだことがございます。
  139. 戸叶里子

    戸叶委員 条約が国内法に優先するということですか。
  140. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 そういう意味であろうと思いますが、これは向こうの責任者から私が直接聞いたことじゃございません。しかし、向こうがどういう法理論、説明をとりましょうが、そういうこととは関係なしに、日本はただ協定上の権利を主張すればよいし、協定上の義務を守りさえすればよいわけでございます。
  141. 戸叶里子

    戸叶委員 条約局長はそうおっしゃいますけれども日本の解釈と韓国の解釈とが違っていたときに――いや、条約というものは両方の解釈が一致しなければいけないのですよ。ところが、日本でこう解釈しても韓国が同じに解釈しない。その間に合意を見てないからこういういろいろな問題が起きてくるわけなんですよ。だから私は、向こうがどう解釈しようともこう思いますというような答弁では納得できないのです。そうしますと、私はこれからいつでもいろいろな問題が出てくると思うのです。この漁船拿捕の問題だけじゃないですよ。漁船拿捕だって今後私はまだ問題が出るのじゃないか、経済協力だって問題が出てくると思うのです。お互いに条約を結ぶときにしっかりと合意してあれば問題はないのですよ。ところが韓国の国会の速記録と日本の議論とが違っているという、そういう悲劇を持った条約であるだけに、いろいろな問題が起きてくるのです。だから条約局長がどんなにいま口をすっぱくして、韓国がどうあろうとも私たちは国際法上こう思います、なにを思いますと言ってみても、相手がそれに乗らなければどうにもしようがないわけなんです。  そこで私がもう一度念のために伺いたいことは、なぜこういうことぐらいははっきりさせなかったのですか。あの条約を結べばあなたのほうの国内法よりも優先しますよぐらいの同意がなぜ得られなかったのですか。それくらいのことはしておいてしかるべきじゃなかったかと思うのです。
  142. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 今度の事件の場合でも、向こうは専管水域を侵したということを言っておるわけでございまして、李承晩ラインを侵したとは言っていない。だからその点について、今度の協定が漁業資源保護法との関係で不明確である、食い違いがあるという問題ではないわけでございます。
  143. 戸叶里子

    戸叶委員 そんなことないですよ。その辺のことが韓国のほうでははっきりしていないのです。専管水域ということを言いながら、漁業資源保護法というものをたてにとって、李承晩ラインはないとこちらのほうで言っても、韓国のほうではあるというふうに頭の上で判断しているからいろいろな問題が出てくるわけなんです。  それじゃ伺いますが、きのうの参議院の予算委員会で、藤崎条約局長だと思いますけれども、専管水域だけにはこの漁業資源保護法が残る、こういったようなことを答弁されておられますね。その辺のことをもう一度詳しくおっしゃっていただきたいと思います。
  144. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 そのときの御質疑が、専管水域を侵した場合に韓国のほうではどういう法律によって処罰するのかという御質疑であったわけでございます。日本国内法のことは、先ほど水産庁当局から説明がありましたように、はっきりいたしておりますが、韓国のほうは、協定成立後特別の立法措置をとったということを承知しておりませんので、おそらくは漁業資源保護法の規定によって処罰するのではなかろうかということを、わざと推測と言って断わって申し上げたわけでございます。
  145. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、漁業資源保護法というものは、韓国はやはりそのまま残しているんだ、これによって処罰するということになるわけですね。
  146. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 そのままとおっしゃるとまた語弊があるわけでございますが、私どもは、先ほど来申し上げておりますように、漁業協定というものが効力を生じました今日におきましては、これと矛盾する限りにおいては漁業資源保護法というものが効力を持つということはあり得ない。したがいまして、これと矛盾しない限りにおいては、つまり、専管水域内においてはこれによって処罰されることが考えられる、そういうことを申しておるわけでございます。
  147. 戸叶里子

    戸叶委員 そういうことは韓国とお話し合いになっているんですか。こちらで一方的に解釈をしているわけですか。
  148. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 推測で、私がそう考えたということにすぎません。
  149. 戸叶里子

    戸叶委員 もしも専管水域内の事件に対して漁業資源保護法で罰するということになりますと、漁業資源保護法は生きているということになりませんか。その部分だけ生きているということは、こっちでかってに解釈するだけであって、向こうではそういうことは考えられないのじゃないのですか。
  150. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 先ほど来申し上げておりますように、向こうも李承晩ラインがそのまま生きておるとは考えてない、つまり李承晩ラインを越えてきたからつかまえたという立場はとっていないわけでございます。ということは、漁業資源保護法がそっくりそのまま生きておるという立場じゃないだろうということでございます。
  151. 戸叶里子

    戸叶委員 外務大臣、いまの藤崎条約局長のお話を聞いておりましても、向こうは漁業資源保護法がそっくり生きているということじゃないだろうと言われる。ないだろうという、推測しかできないのですね。やはり両方で友好条約と政府が宣伝されるからには、そういうことをもっとはっきりさせておいたほうがいいとお思いになりませんか。向こうに対しては、何か探りを入れるような形で年じゅう発言していて、日本だけはきちんとしたものを持っている、こういうふうなやり方で、ほんとうの外交ができましょうか。ちょっとそういうところを心配するのですけれども、この点を伺いたいと思います。
  152. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 協定はもうはっきりしていて、日韓の漁業秩序というものはもうはっきりしている。ただ専管水域内の問題は、向こうの国内法の問題になりますから、人のうちの内部のことでとやかくあまり言うべきものじゃないので、そういうことで何かはっきりしないような印象をお受けになると思いますが、漁業協定に関する限りにおきましては、両国の漁業上の秩序は非常にはっきりしております。
  153. 戸叶里子

    戸叶委員 はっきりしていないから、あっちこっちで問題になるんじゃないですか、大臣。しかし、その問題はそれくらいにしますけれども大臣が内閣委員会で、この漁業資源保護法は、個人の意見ですけれども、改廃したい、改廃を望むというようなことをおっしゃったわけですけれども、どういうところを改廃したいというふうにお思いになったのか、伺いたい。これを全然なくしてしまいたいというお考えであったろうと思いますけれども、この点を伺いたいと思います。
  154. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 従来からあったものを間に合わせに使うというようなことじゃなしに、新しい漁業秩序に即して、従来のものはこれを廃止して、そして新しい漁業協定の秩序に従ったものを新しくつくるということのほうが非常にはっきりするのではないかとも考えたものですから、適当の機会に一これは私的勧告ですね。日本の当局者が向こうの当局者にものを言うというようなことになると、内政干渉になりますから、そうじゃなしに、そういう希望を述べてみたい、こう申し上げたことがあります。
  155. 戸叶里子

    戸叶委員 従来日本の国会では、条約がよその国との間に結ばれますと、私などいつでも、この条約を締結することによって国内法を変えなければならないのは何と何ですかということを聞いて、非常に紳士的にやっていたつもりだと思うのです。ところが、韓国との間は、条約を結んでも、それに関係のある国内法でも何でも、その協定なり条約に従っての秩序ある法律に変えなければならないにもかかわらず、それをそのままにしているというところにやはり問題があるわけでございます。そういう点を、いまおそいと思いますけれども、もっと根本的な問題としてお話し合いになっていただきたい、こう思いますけれども、この点はいかがでございますか。
  156. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 国と国と話し合うことはもう尽きておるのですから、あと国内法の問題ですから、これは私的勧告の程度で申し述べたいと思います。
  157. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 関連をしてお伺いをしておきますが、いまも戸叶委員指摘をされましたように、外務大臣はせんだっての内閣委員会で私の質問に対して、大臣個人として、韓国の漁業資源保護法は廃棄されるように勧告をしたいとおっしゃいました。その根拠は、漁業資源保護法が日韓漁業協定と矛盾する部分を含んでおるから、全体として漁業資源保護法の廃棄を勧告されるつもりなのか、それとも矛盾しておる部分のみの改正を言われるつもりですか、どちらですか。
  158. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 それは向こうの選択にまかしても、いずれにしても、漁業協定に反する、あるいはまぎらわしい点、そういうものをはっきりと取り除いていかれるほうが間違いが起きないからいいのではないか、こういうふうに考えますので、そういう趣旨の勧告をしたい、こう考えております。
  159. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうしますと、昨日の参議院予算委員会の答弁とも合わせまして、日本政府としては、もしかりに専管水域で違反が起こった場合には、専管水域内の問題であれば韓国が漁業資源保護法で措置してもやむを得ないというお考えですか。
  160. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 権限としてこっちから言うわけにいかぬと思うのです。向こうの専管水域内の違反をどういう法律に照らしてこれを処罰するかということについては、向こうの国内法の問題でありますから、権限を持って有権的にこっちから主張するわけにはいかないのであります。
  161. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 昨日はそういう答弁ではなかったでしょう。専管水域内の問題であれば、漁業資源保護法が生きるようなことをあなた方は答弁したじゃないですか、はっきりしてください。
  162. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 どういう法律で処罰すると考えるかというわけでございましたので、わかりませんと言えばそれきりの話ですが、そうも言えないから、漁業資源保護法というものを活用しておるのでないかと、推測して申し上げたのです。
  163. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうじゃないのです。わからぬことはないのです。韓国のほうは内務部長官がはっきり言っておるじゃありませんか。今度の事件は日韓漁業協定の第一条と韓国の漁業資源保護法によって処罰する、そうはっきり言っておるのです。つまり漁業資源保護法がその措置の対象になっているのです。根拠になっているのです。しからば、あなた方がこの漁業資源保護法のうち、専管水域内における犯罪については、この漁業資源保護法が適用されるであろうとおっしゃいましたが、適用されてもやむを得ない。どこからそれが出てきますか。この漁業資源保護法のどこからそれが出てきますか。専管水域内であればやむを得ないという考えはどこから出てきますか。あるいは、専管水域内であればこれで処罰をするであろうという根拠は、これのどこから出てきますか。条約局長は、政治的な問題を抜きにして、法律上の解釈をえらい得意とされた答弁をされますが、法律的に見て、どこからそれが出てきますか。
  164. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 そうあらねばならぬということを言ったのではないのです。何が適用されるであろうかというような御質問でありましたから、あるいは新しく立法措置をとらなければ、漁業資源保護法というものを使ってやるということもやはりあり得る、こう考えたからそういう答弁をしたまでにすぎないのです。そうすべきだとか、必ずそうだろうとかということでなくて、一種の想像を述べたまでのことでありまして、いずれにいたしましても、先方の国内法の問題でありますから、推測の域を出ないつもりで答弁をしたまでであります。
  165. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは関連ですから、あと一問だけ問います。  これはやがてはっきりすることですが、もし起訴された場合に、その起訴の根拠が漁業資源保護法である場合には、日本政府としては不当であるという抗議をされますか。それは二つあります。いいですか。念のために言うが、二つあります。専管水域内で違反を起こしていないからという抗議のしかたもありましょうが、もし違反をした場合、違反しておるという仮定になればどうされますか。この二つの場合。
  166. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 仮定の問題ですから、私はお答えいたしません。(楢崎委員、「やがてはっきりする」と呼ぶ。)やがてはっきりしたら、その場合にいいか悪いか、もちろん申し上げたいと思います。
  167. 赤路友藏

    赤路委員 関連して。――いままで大臣をはじめ政府当局の答弁を聞いておりまして、こういうふうにしてもらいたいと思うのですが、法律論でいけばこういうことになる、しかしながら、政治的判断によってこうしておるのだ、こういうようになると、法律論的な規定というものと、そうして政治的な配慮というものとが混同しないわけなんです。いままでの質問に対する御答弁を聞いておりますと、その点がどうも混同しておる。だからなかなか質問するほうでも納得のできない点が出てくるのだと思うのです。そういう点で、ひとつ答弁に対して十分御注意を願いたいと思うのです。
  168. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 さっきの大臣答弁は、これははっきりしておいてください。漁業資源保護法で今度の起訴を行なうとすれば、これは不当であるのかどうか、はっきりしてください。そのときにならぬとわからぬでは困ります。はっきりしてください。
  169. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 専管水域を侵していないのでございますから、起訴というようなことは考えられない。
  170. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは、私は関連ですから、私の本番のときにさらにこの問題を発展さしたいと思います。
  171. 戸叶里子

    戸叶委員 いまも楢崎委員からたいへん重大な質問をしているわけでございますけれども、おそらく私がそれを繰り返しても大臣はお答えにならないと思いますので、私は繰り返しませんけれども、いま赤路委員の言われましたように、政治的な問題で多分に解決しなければならない問題でも、何か法律的に逃げようとしていらっしゃる条約局長答弁というのは、少し親切がなさ過ぎると思うのです。そういう意味で、大臣を含めてどうぞこれは考え直していただきたいということを要望します。  そこで、追跡権の問題なんですけれども先ほども午前中に出ました専管水域から共同規制区域への追跡権というものは、国際法上これは許されておらない。そしてまた、しかも韓国と組んだ協定の中にも追跡権というものがあるということは話し合っておらないし、その協定の中のどこからも出てこないから追跡権はありません、こうおっしゃったのですけれども、そのとおりですね、大臣
  172. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 そのとおりでよろしいと思います。
  173. 赤路友藏

    赤路委員 関連。――違う。それは大きな違いがある。それは藤崎さん、あなたが、日韓特別委員会で、十月二十九日に、民社の春日さんの答弁に答えておられますね。その答えは、「領海及び接続水域に関する条約、公海に関する条約でございます。公海に関する条約の第二十三条によりますと、お示しのとおり、領海で沿岸国の法令に違反した場合、それから、ある限定された場合に、接続水域内で法令違反があった場合に追跡権がある、これは公海にまでも及ぶ、」こういうふうに言っておられます。私が内閣委員会であなたにこの点の答弁を求めたときに、やはり追跡権がないとあなたは答弁された。私はそうではないと言って、このことをよく調べてみますと――これは議事録ですから間違いない。あなたはそう言っている。けさ鯨岡君が質問したときにもあなたはないと言った。間違っている。どちらがほんとうなのか。どちらかを取り消しなさいよ。
  174. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 私が、追跡権の問題について、全般的に説明しないで、部分的に説明したためにあるいは誤解を生じたかと思いますが、接続水域から追跡を開始する場合に目的が限定されておる、それは四つだけであって、関税上、財政上、入国上と衛生上、これは赤路委員の御質疑のときにはっきり申しました。  それから先ほどお読み上げになりました日韓特別国会のときも、そういう趣旨で、接続水域から限られた場合にと申しましたのは、抽象的に同じ趣旨で申したつもりでございまして、その間にそごはないと存じております。
  175. 赤路友藏

    赤路委員 これは少し議論になりますが、私はやはり関連ですからあまりそう深くはいたしません。  それではあなたにお尋ねしなければならぬが、財政上とは一体何か。接続水域の第二十四条ですか、あれにある財政上というのは、これは一体何なのか。そうすると財政上というのは海の上のことです。海の上のこと、あるいは海面か、あるいは海中か、このところの財政上ということになれば、かなりいろいろなものが入ると思うのですよ。あなたはどういうふうにこれを理解されていますか。
  176. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 この規則の違反が起こるのが海の上というふうには限定されておらないのでございまして、領土内または領海内において、関税上、財政上、入国上または衛生上の規則の違反、そういうものが起こるのを防止する。その防止を接続水域で行なえるということであります。  財政上というのはどういう意味かという御質問でございますが、私いま、この条約を採択したときの会議の記録など持っておりませんから、あまり正確なことは申し上げられませんが、想像するに、おそらく為替管理の規則その他のことを念頭に置いてのことばではないかと存じます。
  177. 赤路友藏

    赤路委員 そうすると、いま接続水域の中におる魚をとって沿岸国に損失を与えるというような場合はどうなりますか。財政上にならぬですか。
  178. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 そういうことを念頭に置いてのことばではないと考えます。
  179. 赤路友藏

    赤路委員 これはまあ見解の相違だと思うわけなのです。あなたは内閣委員会のときから大体それをたてにとっておられるわけです。あなたは石橋質問に答えておられる。できれば私は見せていただきたいと思うのだが、国際法の教科書によって云々ということをおっしゃっている。だからあなたの国際法の教科書というものがあるだろうと思うが、できれば私は見せてほしいと思うのですが、どうですか。だから私の言いたいのはこういうことなのですよ。今度の場合、私たちがどう言おうとこう言おうと、一応国と国との間で条約のできておることは厳然たる事実なのです。それがいいか悪いかは別だ。できておるということは事実なのです。その事実の上に立ってこうした問題が起こったのだから、その起こった問題を解明しながら、再びこうしたことを起こさないようにするというのが、私は政府の役目だと思うのです。私たちがどう反対しようと、どうこれにけちをつけようと、それは別だ。あなたたちの立場としては、二度とこうしたものを繰り返してはならぬ、そのことを中心にして、だからわれわれはこういう解釈をしておった、法律的な解釈はこうなんだけれども、政治的判断を誤ったからこういう事態ができたのだということであるなれば、それはそれなりに正直に言えばいい。そうして今後間違いのないような方向に持っていくということが私は役目だと思う。ここで質問することばの一つ一つの、私もことばじりをとっておるかもしれぬが、そうしたことをなんぼ繰り返したって、これは前進しないのですよ、率直に言って。そうでしょう。だから、われわれがなんぼ言ってみたって、いまの専管水域の中の排他的管轄権、裁判権まで全部向こうに渡していることは事実なのです。これが国際法根拠がなかろうが、前例がなかろうが、そういうことは別だ。渡しておることは事実なのですよ。その前提の上に立ってわれわれはこれは間違っておるでしょうと、こう言っているわけだ。間違っておっても、これはもうできてしまっている。どうにもならぬでしょう。だから私のほんとうに言いたいことは、先ほどもちょっと触れましたけれども、この場だけを何とか答弁すればよろしいというようなその考え方はやめましょう。そうしてやはり根本的に考えていく、そういうふうな気持ちで戸叶委員質問に対しても御答弁願いたい。私はよほどけさ、鯨岡君の質問に対してあなたがあんな答弁をしたから言いたかった。しかし私が関連質問するのは失礼だと思ったからやらなかったわけです。だからとにかく、どちらにいたしましても、その場のがれの答弁でなしに、やはり自信を持って、私たちが間違っておったら遠慮することなくたたいてください、かまいませんから。われわれが間違ったことを言って、たたかれなければ、自分の言ったことが正しいのだと思って鼻を高うすれば困りますからね。やはりわれわれだって勉強していきたいのですから、そういう点はひとつまじめにやっていただきたいと思うのです。それだけ希望します。答弁は求めません。
  180. 戸叶里子

    戸叶委員 それで、念のためにはっきりさせておきたいことは、いまも議論がありましたように、追跡権というのは領海及び接続水域に関する条約の二十四条、それから公海に関する条約の二十三条、こういうふうに限られた場合にはあるけれども、ほかの場合には追跡権がないというのが国際法上の解釈である。そこでさらにもう一つの点は、日本と韓国との条約の中にも追跡権の問題は触れておらない、こういう点から見て追跡権がないのは当然である、こういうふうに解釈していいわけですね。
  181. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 そのとおりでございます。さらにそれにつけ加えて申し上げますならば、協定の第四条に「漁業に関する水域の外側における取締り(停船及び臨検を含む。)及び裁判管轄権は、」とございます。それはいわゆる旗国のみが行なう。はっきり地域的に分割しておるわけでございます。この規定からも、さらに根拠を示せと言われれば類推することができるといえると思います。
  182. 戸叶里子

    戸叶委員 そこで、先ほど質問の中にも、はっきりと向こうから追跡権のことは云々言ってこなかったというふうに外務省の御答弁があったと思いますけれども、ともかく私たちは、韓国の新聞などの報道で追跡権云々、あるというような発言を見ているわけです。したがってやはり追跡権はない、限定されたものだけしかないのだといういまのおっしゃったその基礎に基づいてどこまでもそれを向こうに知らせるようにしていただきたいということが一つです。  それから先ほどちょっとわからなかったのですが、藤崎条約局長が、この船の発見されたところと、臨検拿捕されたところとははっきり分けることが必要である、何かそういうふうなことをおっしゃった。藤崎さんじゃなく、小川さんでしたか、おっしゃったのですけれども、今回の場合は臨検拿捕されたところと、それから船が発見されたところとはどういうふうに違っていたのですか。そしてまた違うということによってどういうふうに解決が違ってくるのですか、これを伺いたいと思います。
  183. 小川平四郎

    ○小川政府委員 船が発見されたところということばはちょっとあいまいでございますが、事実関係を申しますと、事実が逆にさかのぼるわけでございまして、拿捕された地点があるわけでございます。それ以前に操業した地点があるわけでございます。そこで拿捕された地点が専管水域の中であったかなかったかという問題と、それ以前に操業していた地点が専管水域の中であったかなかったかという問題に分かれるわけでございます。発見ということばをもし申しましたら、そういう意味で……。
  184. 戸叶里子

    戸叶委員 で、日本の解釈は両方とも専管水域外であった、こういうふうに言っていいわけですね。
  185. 小川平四郎

    ○小川政府委員 そのとおりでございます。
  186. 戸叶里子

    戸叶委員 それで韓国のほうは、操業が専管水域の中でやって、そうして拿捕し、そうして殴打したり、いろいろ暴力を加えたところは共同規制区域であるというふうに解釈していいわけですね。
  187. 小川平四郎

    ○小川政府委員 韓国側の説明は、当初いろいろなことを言っておりまして、はっきりいたしませんでしたが、釈放交渉に移りましてからは、操業も専管水域の中であるし、かつ拿捕をしたのも専管水域の中であると言っておるわけであります。
  188. 戸叶里子

    戸叶委員 今回の行為に対して日本政府は、計器なり何なりではっきりしているわけですから、この問題については条約上の観点からもぜひとも強く、いまのようななまぬるい形でなくて、もっと強く臨んでいただきたいと思うわけです。  そこで先ほど韓国が不法行為を認めないで、自国の立場のみを主張して起訴をしたときにどうするかというような鯨岡さんの質問に対して、最初のときには、外務大臣が、二度は起きないようにいたしますと、こういう答弁であり、二回目には、そんなことは無法であり、両国の合意でできた漁業上の秩序を守れないのでは重大なことでありますと、こういうふうにお答えになっていらっしゃるわけです。私はそのおことばを別にとらえるわけではございません。ただそういうことだけでは、ちょっと納得がいかないのじゃないかと思うのです。韓国のほうがどこまでもがんばって、そして起訴でもするようなことになったときに、二度行なわれないようにいたしますとか、あるいはそれは重大ですと言うだけでは済まされないのであって、あくまでもそういう不法なことを主張するならば、もっとき然たる態度で日本も臨んでいかなければならないと思うのですが、この辺の決意のほど、そしてどういうふうなところまで、自分はそういうふうに韓国が出るならばどうするのだという決意のほどをお示し願いたいと思います。
  189. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 起訴はあり得ないと思います。だいぶこちらは事実関係を相当にはっきりと向こうに説明もしておりますし、ある程度向こうにわれわれの説得力がある反応を示してきておるのじゃないかというように思われますので、起訴はあり得ない、こう考えております。
  190. 戸叶里子

    戸叶委員 絶対にないという確信を持って臨まれていられるわけですか。
  191. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 まあ、ひとのすることでありますから、自分で引き受けるわけにまいりません。しかし、これはあり得ないと思います。
  192. 戸叶里子

    戸叶委員 だから私は心配するのです。ひとのすることだから心配するわけなんで、しかもいままでそういうことはありません、だいじょうぶですと言って答弁されたことがみんな裏、裏と返されて出てきておりますので、今後のことについても心配だと思うのです。だからもしも万一そういうことがあったらば、経済協力の面でも何でも考え直すというようなところまでの決意を持って臨んでいただけるかどうか、この点も伺いたいと思うのです。
  193. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 あまりそういうことを先走ってここで論議することはよろしくないと思います。私は仮定の御質問ですからお答えしない、こういうことであります。
  194. 戸叶里子

    戸叶委員 しかし、相当重大な決意を持って臨まないと、なかなかこの問題は解決しないんじゃないですか。そうだとするならば、この日本の国会で、仮定の質問ですから、仮定の質問ですからというような、なまっちょろい返事であってはならないのであって、それこそ経済の問題でも何でも重大な決意を持って臨みます、このくらいの決意を持っていただきたいと思うのですが、いかがですか。
  195. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 非常にこれは大事な問題でありまして、これをうやむやに解決すべきではない。ことにこういう問題をうやむやにいたしますと、続いてまた第二、第三の問題が起こってまいります。協定は十分にすきのないように、漁業秩序はあらゆる場合を想定して、間違いのないようにできておりますけれども、これに従がわないということになると、これは問題は無限に今後生まれてくるわけでありますから、そういうことのないようにこの際は十分にけじめをつけて解決したいと思います。
  196. 戸叶里子

    戸叶委員 もう一点だけ伺いたいのですが、経済協力の問題で、まあ協定からいえば五千万ドル、そのうちの五百万ドルは焦げつき債権を引くことによって四千五百万ドルは一年間に向こうにやることになるのですが、それに対して韓国のほうは九千五百万ドルというふうに発表しておるわけです。それに対して参議院の予算委員会では、これは九千五百万ドルと韓国が言おうと、日本は五千万ドルと考えております、こういうふうにはおっしゃっておられますけれども、こういうふうに韓国のほうでそういう発表をするというからには、何らかの根拠がなくてはならぬと思うのですが、これは一体どういうことなんですか、この点はっきりさせておいていただきたいと思います。
  197. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 まあ、希望を率直に提出したのだろうと思います。むろん内容によっては日本で調達しにくいものもあるだろうし、いろいろあるでしょう。いずれにしても四千五百万ドルというところに落ちつくわけでございます。その中から四千五百万ドルが選択される、そういうことになると思います。
  198. 戸叶里子

    戸叶委員 韓国の希望を言っただけにすぎないというふうに政府がお答えになりますので、そういうふうにすなおに受け取りますけれども、ただ協定の中を見ても、日本の合意さえあれば繰り上げの支給もできるということになっておるわけでございまして、おそらく韓国ではそういうようなことも言ってくるのじゃないかとも考えますけれども日本政府としては絶対に繰り上げてほしいというふうなことを言われても繰り上げないというふうなお考えを持っていらっしゃるかどうか、この点もちょっと伺っておきたいと思います。
  199. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 協定の上では、多少の出入りはあり得ることになっておりますけれども、現実の財政状況からいたしまして、とてもここれを変更するというようなことは考えられない、こういうふうに考えております。
  200. 戸叶里子

    戸叶委員 私はこの問題に関しての質問は終わりますけれども、ともかく国民が非常に不安に思っておりますし、政府が日韓との間の友好条約であるということを宣伝したにもかかわらず、日わずかにしてこういうことが起きたということは非常に問題がございますので、一日も早くこの釈放を要望し、船も返してもらい、そうして間違っていた点は指摘をして、はっきりさせていただきたいということを要望いたしまして、一応の質問は終わりたいと思います。
  201. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 関連して――理事会の決定によって、私、本番の質問ができないそうですから、関連で少しばかり先ほどの問題を詰めたいと思います。  漁業資源保護法の問題は重大ですから、私はあいまいにはできないと思うのです。これだけは明確にしておいていただきたい。そこで韓国の漁業資源保護法が専管水域に限ってはそれは有効であるというふうに考えられますか、それは不当であると考えられますか、はっきりしてください。
  202. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 専管水域内のことは、向こうの国内法の問題でございますので、先ほど来推測であるとか、そうであろうと思いますとか、いろいろ間接的な表現をいたしておるわけでございまして、私どもといたしましては、立場上有権的にかくかくあるべきものというふうには申し上げられないわけであります。
  203. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは現行の韓国の漁業資源保護法は局長御存じでしょう。この現行の韓国の漁業資源保護法と日韓漁業協定との関連において有効であるところがありますか。
  204. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 これは向こうの国内法でございますから、一々の条文について申し上げるわけにはいきませんが、抽象的にはたびたび申し上げておりますように日韓漁業協定に矛盾する限りにおいては、そういう部面においては、この法律は効力を有し得ないはずである、こういうふうに考えております。
  205. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 念のために、私は絶対にそういうことはあり得ない、日韓漁業協定とこの漁業資源保護法は完全に矛盾するものであると指摘しておきたいと思うのです。なぜならば、この韓国の漁業資源保護法は、専管水域並びに共同規制水域にもこれは関係はありますね、そういう意味では。この韓国漁業資源保護法は、許可を要する部分には関係があります。だから、専管であろうと共同規制水域であろうと、この韓国の漁業資源保護法は日韓漁業協定とは全然矛盾するものである、そうはっきり日本政府としても認めるべきであろうと思う。あいまいさは許されませんよ。
  206. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 韓国の専管水域外の水域におきましては、日本の漁船に漁業資源保護法というものが適用されることはあり得ないという意味ならば、お説のとおりでございます。
  207. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私が心配するのは、向こうは漁業資源保護法の観念できておるから、共同規制水域の地点においても拿捕し、連行し、あるいは起訴の問題がいま中心になっておるではありませんか。それは韓国の漁業資源保護法が生きておるという観点から見ればそうなるでしょう。共同規制水域もこの関係からいけば含まれますよ。だから、この漁業資源保護法は日韓漁業協定と全面的に矛盾する。したがって無効であるという立場をとらなくては問題の解決にはなりませんよ。
  208. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 今度の事件につきましては、先ほどアジア局長が申し上げましたように、先方の立場は専管水域内のことであるという立場でございます。したがって、共同規制水域は関係がないわけでございます。この共同規制水域内における取り締まりは、当然専管水域の外側でございますから、第四条によって旗国にあるということは協定上はっきりいたしておるわけでございます。
  209. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 日本政府としては、どうしてもこの漁業資源保護法は無効ということを強く向こうに宣告する必要があると思うのです。  それでは、関連ですから、いま一点だけお伺いをしておきますが、もし起訴をされるようなことがあれば、第九条による外交上の経路を通じて解決するものというこの項から見れば、もし起訴された段階では、外交上の経路による解決ということは、ほとんどできないというふうに解釈してよろしゅうございますか。
  210. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 先ほど大臣から答弁がありましたように、今度の事件につきまして、現在の段階においてそういうことを仮定して御答弁申し上げることは差し控えたいと存じます。
  211. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 仮定の問題ではないんです。関係漁民は非常に関心を持って、どうなるか、起訴されるのじゃないかと心配している。まだ帰ってこないじゃないですか。それを仮定の問題だなんて言って、日本政府の態度を明確にしないのは、私はまことにけしからぬと思いますよ。もう少し事態を真剣に見てもらいたいと思います。いま私のところには、関係漁民からたいそうな陳情が来ております。要求書が来ております。日本政府の態度はまことにけしからぬ。なまぬるい。かつて漁業協定の審議の最中に、十月二十九日の戸叶委員質問に答えて、条約というものは解釈の合意ができていないといけないと言ったときに、佐藤総理は何とおっしゃいましたか。実際上支障が起こらねばあまり問題はないんだということを言われました。ところが、漁業問題についてはこの合意ができてないということは、さっそく安全操業の問題、人命の問題にかかわるんです。だから、漁業問題においては寸分も解釈の相違なんということは許されないんですよ。したがって、私はもう少し真剣にこの問題は考えてもらいたい。仮定の問題じゃないんですよ。現実に拿捕されている。帰ってこないじゃないですか。したがって、もし起訴されるというような事態になれば、あなた方の外交上の円満な解決というものはできない段階だと私は判断をすべきであろうと思う。第九条による外交上の経路を通じての解決は、もはやできない段階であろうというふうに日本政府としては判断をして、では次にいかなることをすべきかということを私は真剣に考える必要があろうと思うのです。
  212. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 先ほどから言っておるように、私どもは決してなまぬるいとか、あるいは真剣にならぬとか、そういったような御批判を受けるような、そういう問題を軽視して、ただ向こうの措置を待っておるというような状況ではないのでありまして、ほんとうに真剣にこの問題については交渉を進めておるが、その反応が見えてきたと私は信ずるのでございまして、起訴はあり得ない、そういう心境でこの問題の処理に当たっております。
  213. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それは私もそう望みます。しかし、いまあなたは確信をもって言われましたが、もし起訴されたら、あなたは責任をとりますか。重大問題です。
  214. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 どういうふうに責任をとればいいのですか。
  215. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それはあなたがおっしゃてください。
  216. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 起訴はあり得ない、かような確信のもとにこの問題を処理しております。
  217. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうありたいと思います。もうこれ以上は私は押し問答はいたしません。そこで、もし重大事態になれば、先ほど戸叶委員が言われたように、何らかの経済的な制裁の措置――日韓の合同委員会は明日ではございませんか。船舶の輸出の問題もピークにきておる、こういった問題も考慮して対処なさるべきであろうと思うし、いま一点は、もし重大事態になれば、第九条に基づいて仲裁委に持ち込んで問題をはっきりすべきであろうと私は思うが、その点はどう思われますか。
  218. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 第九条に持ち込まないで問題を解決したいと思っております。
  219. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうありたいということは私も言っておるんです。もし重大事態になったならば仲裁委に持ち込むということも含めて、日本政府としては対処されるべきであろうと思いますが、いかがでありますか。
  220. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 軽々にあまり問題を仮定して論議するということは、この問題の解決のためにあまりいい影響を与えるものではない、こう考えております。
  221. 高瀬傳

    高瀬委員長 鯨岡兵輔君。
  222. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 先ほど午前中に、私から第五十三海洋丸の事件について質問をいたしましたが、事はやはり国民が憤激している問題でございますから、詳細にわたっていい質疑応答が繰り返されましたが、どうか当局としては重大な決意を秘めて、言うことを聞かなければこれをこうするんだとか、ああするんだとかいうことをここで論議し合うことは百害あって一利ないことですし、賢いことだとも思いませんから、そんなことを言うほどやぼではありませんが、重大な決意を秘めてひとつ厳重に抗議をしていただきたいと思います。  特にこの際委員長に申し上げておきますが、このごろは、アジアの問題は非常に流動ただならぬものがあります。特に迫られておる中国に対する日本考え方、さらには核兵器を持たない安全保障をどうやるかというようないろいろな問題があって、アメリカあたりでも、フルブライト提唱によるところの委員会みたいなものを開かれておるようですが、ひとつこの国際情勢の、審議にあたっては、もう少し時間をとって外務委員会でもって十分にやりたいと思うのですが、予算委員会等の関係もあって大臣の御出席がなかなか得られない。まことに私どもは残念に思っておる。きょうはこれからもいろいろお尋ねしたいことがあったのですが、条約審議の問題もありますから、私の質問は後日に保留をいたしますけれども、どうかそういう心組みで大臣からもいろいろお考えになっておることを述べていただきたい、そういう機会をこの委員会でもどんどんつくっていただきたいということを委員長にお願いを申し上げて、私の質問を保留いたします。
  223. 戸叶里子

    戸叶委員 それに関連して、いま鯨岡さんから、私どもの望んでいたことに対しての発言があったわけでございますが、場合によっては金曜日の条約審議の日にも一部の時間をさいて国際情勢の審議をするということも考えるなり、あるいは国際情勢の、審議に対してもう一日ふやすということもあと理事会でおきめを願いたい、こういうことを委員長に要望したいと思います。
  224. 高瀬傳

    高瀬委員長 ただいま鯨岡君から非常に適切な御提案がございました。戸叶委員も御賛成のようでございますから、他日理事会等において率直に意見を交換して、何らかの具体策を考えたい、かように考えております。      ――――◇―――――
  225. 高瀬傳

    高瀬委員長 次に、海外移住事業団法の一部を改正する法律案議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。戸叶里子君。
  226. 戸叶里子

    戸叶委員 先ごろの委員会で、田原委員からこの移住事業団法についての質問がございました。私は、この田原委員質問とかち合わないように少し質問をしておきたい思うのですが、まず最初に、事業団の役員の欠格条項から国会議員等を削った理由はどういうわけでしょうか、その点を伺いたいと思います。
  227. 廣田しげる

    ○廣田政府委員 お答えいたします。この欠格条項から国会議員と地方公共団体の議会の議員を削りましたのは、海外移住事業団法ができましたあと政府の方針が変更されまして、すべての事業団についてそのつどそういうふうに、これと同じように改正するという方針になりました。その理由は、要すれば事業団等の役員につきましては、各界から役員に出ていただきたい、いわゆる清新の気といいますか、そういうものを吹き込むべきである、したがって、どうしても欠格とすべきであるという一部のものを除きましては、これを広く開放する、そういう意味におきまして、国会議員及び地方公共団体の議会の議員はどうしても欠格にしなければならぬという理由に乏しいものですから、これを今回この欠格条項からはずしたわけでございます。
  228. 戸叶里子

    戸叶委員 国会議員とそれから地方公共団体の議員以外にも欠格条項からはずした人たちはありますか。別にありませんか。
  229. 廣田しげる

    ○廣田政府委員 いままで欠格条項にありましたのは、その方々と、それからあと政府又は地方公共団体の職員」でございます。そのほかに「国務大臣」と「地方公共団体の長」がございましたが、今回その第一号を除きましても、ただいま申し上げた国務大臣と地方公共団体の長は第二号の「政府又は地方公共団体の職員」に含まれると考えられますので、結局、今回の改正で削られたのは、先ほど申しました二つの範疇だけでございます。
  230. 戸叶里子

    戸叶委員 事業団の余裕金の運用方法に「金銭信託」というのを今度追加したようですけれども、その理由はどういうところにあるのでしょうか。
  231. 廣田しげる

    ○廣田政府委員 現在までのところ、事業団の余裕金の運用方法は、三つ運用することができます。その一つは「国債その他外務大臣の指定する有価証券の取得、「第二は「資金運用部への預託」、第三は「銀行若しくは外国銀行への預金又は郵便貯金」この三つでございました。このいずれも非常に安全確実でございますけれども、その利率は相当低利である。したがいまして、特に外国において余裕金の効果のある運用ができませんので、今回「信託業務を営む銀行若しくは外国銀行又は信託会社若しくは外国信託会社への金銭信託」というものを一項目入れまして、余裕金の効率的運用をはかったわけでございまして、この今度入れました金銭信託による運用の方法は、他の事業団にも多うございまして、移住事業団もこれにならったわけでございます。
  232. 戸叶里子

    戸叶委員 政府は、事業団に対して既往の貸し付け金の返済を免除しているわけですね。移住事業団が移住者に貸し付けた分はどうなりますか。
  233. 廣田しげる

    ○廣田政府委員 これはそのまま残るわけでございます。事業団が移住者に貸し付けた既往の債権は、今回事業団の債権として残るわけでございます。
  234. 戸叶里子

    戸叶委員 事業団の債権として残るというのですから、借りたほうからすればやはり返さなければいけないということになりますか。
  235. 廣田しげる

    ○廣田政府委員 そのとおりでございます。
  236. 戸叶里子

    戸叶委員 移住事業を発展させるためには、いろいろと、今度のような貸し付けを無料にするとかいろいろ骨を折られなければならないと思いますけれども、いままでやっていたものと、貸して今度返さなければならないところを無料でやるというようなところとの間の摩擦とか、それから何か混乱とかいうようなものが起きやしないかということを心配いたしますけれども、そういうようなことは絶対に起こり得ないでしょうか。
  237. 廣田しげる

    ○廣田政府委員 確かに御指摘のとおり、いままで渡航費を貸し付けてもらって出ました移住者と、今後この法案が通りますれば、いわゆる補助金になる移住者との間の若干のアンバランスはございます。したがいまして、われわれといたしましても、できれば既往の債権も、最終的第三者、いわゆる最終的に借りている移住者に対する分も免除しようということも考えましたけれども、そのことは、たとえば内地の開拓農等にいろいろ政府のほうから貸している金もございまして、そういうものに対する影響あるいはさらには渡航費だけではなく、現地に行きますと、営農資金等も貸しておるわけでございます。そういうもの等に対する影響等も考えまして、いわゆる既往の債権はそのまま残す。ただし、先ほど申し上げましたようなアンバランスを防ぐ意味におきまして、すでに貸している人たちに対しましては、営農等の融資もいろいろ必要でございましょうし、その返納については、いわゆる取り立てにつきましては、これを無理をしない。それから余裕が出てきた場合に返す人もあるわけでございます。それはさらに移住地の移住者の保護、福利厚生の費用に使うというような、用途のほうも考えまして、なるべくアンバランスを少なくしたい、こう考えております。
  238. 戸叶里子

    戸叶委員 渡航費の交付金として四十一年度の予算に計上しているのは約五千万円ですね。それから四十年度予算の渡航費の貸し付け金に繰り越しが約七千万円ですかある。それを交付金に充てるお考えのようですけれども、一億二千万円でもしも過不足を出したような場合  これは両方の場合が考えられますけれども、どういうふうに対処なさるか伺いたい。
  239. 廣田しげる

    ○廣田政府委員 実は非常に残念な現象でございますが、最近移住者の数が相当減りまして、本年度は千名を切るのではないかと思われます。そこで先ほど指摘のような四十年度のいわゆる貸し付けのための交付金が余ったわけでございますが、これが先般いろいろ調査、試算いたしましたところでは、七千万円ぐらいでございましたが、いよいよ年度末になりまして、もう一度計算しましたら、それが九千万円ぐらい残りますので、繰り越しが九千万と今回の五千万で一億四千万ぐらいになると思いますが、一応本年の実績によりまして、来年度は少しは伸びるという見込みのもとに、千五百名という数を一応考えております。したがいまして、一応一億四千万でまかなえると思いますけれども、足りない場合は予備費等から支出していただくことを考えております。余った場合は来年に繰り越すということになります。
  240. 戸叶里子

    戸叶委員 渡航費の貸し付けを至急に改めるのに事業団法の一部を改正するだけで行なうのは妥当とは言えないのではないかと思うのです。すなわち、移住者に対する国の施策を規定した法律がまず存在して、それに基づいて事業団に業務の実際を行なわせていくというのがいいのじゃないか、こういうふうに考えますけれども、この点をどうお考えになるか。なぜ私がこれを言いますかといいますと、昭和三十八年の六月十四日だったと思いますけれども、この外務委員会で決議した海外移住事業団法の附帯決議にもその第一項に、たしか田原委員が提唱してやられたことだと思いますが、「政府は海外移住の基本理念及び振興策を明らかにした「海外移住法」を次期通常国会に提出すること。」そういうふうにあったと思います。現在まだそれが何の動きにもなってあらわれてきておらないわけでございます。こういうことに対しては、一体どういうふうにお考えになるのか。附帯決議までつけておりますにもかかわらず、そのままになっておりますので、これに対するお考えのほどを伺いたいと思います。
  241. 廣田しげる

    ○廣田政府委員 ただいま御指摘移住基本法、国会における附帯決議、私よく存じております。したがいまして、その法案等も内々研究しているわけでございますけれども、最近になりまして、御承知のとおりカナダ移住であるとか、あるいは米国の移民法の改正等もありまして、例の国籍の無差別の制度にもなりましたし、こういう最近の新しい制度も頭に織り込んで、さらに最後的には移住基本法をつくったほうがいいと思いまして、実は私のほうで研究中でございます。ただ、いままでの渡航費の貸し付け金を補助金に切りかえるというのはなるべく早いほうがいいと思いましたので、事業団法の一部改正でお願いしておるわけでございます。
  242. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、この附帯決議にあるように、移住法というようなものを近いうちにお出しになったほうがいいというお考えでお出しになる御計画があるかどうか、伺っておきたいと思います。
  243. 廣田しげる

    ○廣田政府委員 先ほど申し上げましたような意味合いにおいて研究中でございますので、この研究の結論が出次第、法、案を提出するような運びになると思います。
  244. 戸叶里子

    戸叶委員 この附帯決議は昭和三十八年で、だいぶ前のことでございますので、その御研究もなるべくお急ぎになっていただきたい、こう思います。  次に農林省の移住関係の予算昭和四十一年度ですけれども、それに全拓連に対する補助金の中でガタパラに拓植青年訓練所を設置する費用として四千万か何か見込まれておりますけれども、これは本来移住事業団が直接行なうべきものじゃないですか。やはりこれは別々にこういうふうに分けておいたほうがいいのですか。分けている理由は一体どこにあるのか、伺いたいと思います。
  245. 廣田しげる

    ○廣田政府委員 ガタパラの移住地は、御承知かと思いますが、実は現在の形式は、全拓連が始めた事業でございます。その後移住会社、その後身である現在の事業団の共同事業というような形になっておりまして、すでに全拓連の農場が現地にございまして、すでに試験的な農作もやっております。ところが、いわゆるガタパラの移住地につきましては、全拓連に対して約二億八千八百万円ございますが、その分担金を出しました関係七県からの移住者だけがそこに入ることになっておりますので、いろいろな関係もございまして、なかなか全移住地に補助がつかない。そのために工事費等にも響きまして、残念なことでございますが、移住地全体の経営としてはうまくいっておらないわけでございます。そして、しかも全拓連は県拓連からいまの二億八千八百万円を借りているわけでございますが、そちらのほうから期限もきたということで返還の督促を受けている。したがいまして、こういうような諸般の情勢を考えまして、今回事業団の交付金に二億円の予算を計上しまして、今後は全拓連のやっているいわゆる全拓連の分担金をある意味でいえば政府のほうが肩がわりするというような計画で、そのかわり、関係七県のワクをはずして全国的に応募できるようにするというようなことにいたしまして、ガタパラ事業というものを、移住地の再建をはかろうと考えております。ただ、ただいま申しましたように、すでに全拓連では現地に農場を持っておりますので、一応若干の土地を全拓連も所有いたしまして、いわゆる事業団の扱う移住者ではございませんが、こちらから行っている全拓連の職員があそこで農場経営に従事しておりますので、その農場が今回日本から若い青年を呼んで現地で訓練する、こういう事業を始めたい。全拓連は御承知のとおり農林省の管轄でございますので、全拓連に対する補助金として先ほど指摘の四千万円を出しまして、そして青年を訓練する機械その他の器具を購入する、こういうことでございます。
  246. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、こういうふうな全拓連関係で行く移住者もこの渡航費の恩恵に浴するのかどうかということが一つと、もう一つは、今後においてもやはり全拓連の施設なりなんなりということになると、これは農林省予算として組まれて、こちらに関係ないのかどうか、こういうことも念のために伺いたいと思います。
  247. 廣田しげる

    ○廣田政府委員 参ります青年がいわゆる永住の目的を持って移住者として参りますなら、今回のこの渡航費の対象になるわけでございます。ただ、一、二年行ってそこで訓練してくるというようなことは、これは移住者でありませんのでこの対象にならない。  それから、今後この農場を運営いたします限り、私の承知します限りは農林省のほうでめんどうを見る、こう考えております。
  248. 戸叶里子

    戸叶委員 四十一年度の運輸省の予算に計上されている移住客船運航費補助金の一億七千七百九十万円のうちで、移住者の運賃差額補助の二千六百五十万円というのがあるのですけれども、これは今後渡航費の交付金に含めて一本化すべきものではないかと思いますが、やはりこういうふうな形で今後も残されるかどうか、そして一本化されない理由は一体どこにあるかということです。
  249. 廣田しげる

    ○廣田政府委員 いまの運賃の補助の問題でございますが、これはもちろん例の大阪商船のぶらじる丸とあるぜんちな丸を移住船に改装いたしましたときに、その際に運輸省から出たもので、そうして移住者が全部乗らないであきがある場合には、私もこまかいことは知りませんけれども、一定の計算によりましてこれを補助しているということで、運輸省のいわゆる外航船の政策によるものでございますので、運輸省のほうに予算が計上されております。したがいまして、そちらのほうから渡航船舶の航海の補助のほうが一部出ておりますので、その限りにおきましては、渡航費の支給は、その額を引いた額だけ事業団のほうから支給する、こういうふうに考えております。
  250. 戸叶里子

    戸叶委員 いま伺っていても、何か事業団と運輸省にまたがるということになりますと、やはり複雑な手続やらいろんな問題が出てくると思うのですけれども、これはやはり一本化しないほうがいいのですか。されたらいいんじゃないでしょうか。なかなかむずかしいのですか。
  251. 廣田しげる

    ○廣田政府委員 いわゆる補助をいたしておりますのは、運輸省の外航船の政策によりますので、そちらのほうの計算でやっていただきたい、そうすると、その額がはっきりいたしますので、その余った分――というと語弊がありますけれども、その他の分は渡航費として支給するということで、事務上支障はございません。
  252. 戸叶里子

    戸叶委員 最後にもう一点伺いたいのは、パラグアイの移住者が、最近だいぶアルゼンチンのほうに流出しているというようなことを聞くのです。パラグアイの移住に対しては、政府も相当力を入れているんじゃないかと思いますけれども、それがどんどん流れていくということは、やはり何かそこに大きな問題があるんじゃないかと思います。その大きな問題あるいはそれの理由、それから今後において流出をとめる何かの施策というものがおありになったら、それを伺いたいと思います。個々の面で、私も移住者からお話も聞いておりますし、それからまた移住地からの手紙もいろいろもらっておりますし、いろんな問題のあることもほかにも知っておりますけれども、きょうは時間もございませんから申し上げないで、いつのときかゆっくり移住問題と取り組みたいと思っておりますが、この点だけいまはっきりさしておいていただきたいと思います。
  253. 廣田しげる

    ○廣田政府委員 御指摘のとおり、大部分がパラグアイでございますが、一部ボリビアからも流れているようでございます。アルゼンチンのほうに流れていくその数は、実はある意味では不法入国なものですから、はっきりはっかめませんけれども、約八百名くらいではないかという報告を受けております。不法入国と申しましたのは、入国するときは実は不法じゃないので、例の観光ビザで行きまして、三カ月ならビザが要りませんものですから、それである意味では正当に入国しておるわけですが、三カ月たちまして、帰らない。むしろ不法滞在と言うほうが正確だと思います。そういうことで、アルゼンチンのほうにだいぶ流れているようであります。これにつきましては、この流れをとめることが一番大切でございます。そこで特に来年度の予算に計上してございますけれども、パラグアイの南のほうのアスンシオンを中心とする移住地では、永年作物としてアブラギリを栽培しているわけでございますが、これがもう二、三年たちますと、いわゆる生産量が相当多くなるに従いまして、からつきのままですと値段が非常に上下いたしますので、移住者の生活が安定しないということで、これをむしろ油にして、やれば、値の悪いときは保存もできますし、それから遠く海外にも輸出できますし、値段も安定しているということもございますので、来年度の予算では事業団の交付金から一億円を出資しまして、かつ、これまたいろいろ販売等の面もありますので、民間の企業にも参加していただきまして、大体二億円ぐらいの資本金で現地にアブラギリの搾油工場をつくるという施策を考えております。したがいまして、あの方面で最も主要作物であるキリ油のそういう販売方面が確立すれば、長い目で見ればあの地の移住者も定着するのではなかろうかと考えております。  さらに北のほうにイグアスという移住地がございます。初めはこれにもアブラギリを永年作物として採用させようという計画でございましたが、先ほども申しましたような事情もございますので、むしろイグアスにおきましては畜産を導入したい。来年度はそういうものをだんだんに指導するという意味におきまして、畜産センターをあの地につくるように計画しております。それから同時に植林も非常に有望である。ただこれも、さっそく始めましてはどういうことになるかわかりませんので、まず事業団が試験的に、イグアスの移住地のまん中を国際道路が通っておりますが、その両側何メートルかは向こうの政府の方針でいろいろな作物をつくれないということもございますので、国道沿いに植林を計画して、来年度ぐらいから始めたい、こういうふうに考えております。いずれにいたしましても、パラグアイにおける移住者の定着施策ということを前向きでやってまいりたい、こういうふうに考えております。
  254. 戸叶里子

    戸叶委員 私はこれでやめますけれども、やはり一つの目標なり夢なりを持って行った人が、相当夢なり希望なり期待なりにはずれたことがなければ、よそへ流出するということはあまりないと思うのです。外地においてのそういったいやな思いをされるという人の身になれば、私どももこっちにおりましてもやりきれない気持ちがするわけでございまして、やはり十分な親切な、そしてまたそういうところに定着できるような方法考えてあげていただきたいということを要望いたしまして、この質問は打ち切りたいと思います。
  255. 高瀬傳

    高瀬委員長 西村関一君。
  256. 西村関一

    ○西村(関)委員 私は海外に出張いたしておりまして昨晩帰ってまいりましたので、田原委員の質疑応答についても十分よく検討いたしておりませんが、ただいま戸叶委員からの御質疑もあり、御答弁も承ったのでありますが、若干問題と感じておりまする点をお聞きいたしまして、政府の所信を伺いたいと思うのであります。  冒頭に、海外移住事業団法の一部を改正する法律案、この案件につきましては、内容的に、いままで貸し付けを受けておった者が無償になるということでありますから、原則的には賛成であります。しかしこの際、わが国の海外移住に関する基本的な姿勢について政府の所信を伺っておきたいと思うのであります。  いまも戸叶委員指摘されましたように、この海外移住事業団法ができましたときに、旧日本海外協会連合会と旧日本海外移住振興株式会社とが一本になるということで事業団が発足をしたのでございますが、その後この事業団を一本の窓口として、わが国の海外移住を振興しようという意図的な法案をわれわれは国会において通したのであります。ただその後の経過を見ますると、依然としてわが国の海外移住政策は実を結んでいない、非常に不振であるということを残念ながら言わなければならぬのであります。私は急いで外務省から出されました「日本人の海外移住の現状と戦後における推移」という文書を見まして、十分に深い検討は加えておりませんけれども、この報告書を見ましただけでも、成果が上がっておるとは言えないと思うのです。諸外国の事例に比べてどこに一体海外移住の不振の原因があるか。そのことにつきましては、戸叶委員指摘されましたように、海外移住法あるいは海外移住基本法なるものを政府はすみやかに制定するということが移住事業団法案を通しますときの附帯決議になっておる。それさえも草案ができかかっては日の目を見ないということで、今日に及んでおる。そのことにつきましては、移住局長はいろいろその後のカナダその他の情勢の変化もあって、十分に検討を要するからということでございますが、少なくともこの機会に政府の海外移住に対する基本的な方策についてはっきりしておいていただきたい。いままでの不振がどこに原因があったかということ等をも含めて、外務大臣の御所信を承っておきたいと思います。
  257. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 移住に関する国内の指導も決して完全であったとは言えません。移住事業の不振の一因をなしておると思われますが、しかし最近の移住事業の不振は、やはり国内の経済的な変革によりまして労力が不足しておる。それで移住の数も非常に激減しておる、こういうところにあるように思われます。そこで、この趨勢はやはり今後も続くものと考えるのでありますが、しかし先ほど申し上げましたように、移住事業に関する国内の指導と申しますか、そういう点にやはり欠けるものがあるのでありまして、その点を十分にこの際、改善を加えて、これを強化すると同時に、今日以後においては移住の政策をやはり量よりも質という方面に重点を置きまして、そして移住先の国のいろいろな経済建設の方面に従来の日本人よりももっと役に立つ、向こうの需要にぴったりと適するような適格者を養成して送る、こういう考え方が適当であろうということになりまして、さような方向に着々歩を進めておるような状況でございます。結局従来の過剰人口を海外にはかすというような意味でなしに、積極的に移住先の国の諸建設に役立つ人種を送ろう、そしてこれに協力しよう、こういうたてまえをとってまいりたい、こう考えております。
  258. 西村関一

    ○西村(関)委員 外務大臣のただいまの御所信の基本的な点については、私も賛成であります。いまおっしゃったような意味において移住政策を推進していくということに対してわれわれも協力するにやぶさかではございません。ただ、現実がそうなっていないというところに私は問題があると思うのでございます。それは移住事業団法案を審議いたしましたときにも問題にしたのでございますが、当時海協連なり振興会社なりの運営のあり方、また人事のあり方等について万全を期することができない。むしろ多数の移住者に不信感を与えた面が多かったということが、一つ移住の不振の原因になっておったということも指摘されたのでございます。その後、事業団が発足いたしましてからそういう点は改められ、また内容が充実されて機能がよく発揮されておると思いますが、これはさっきも大臣のおっしゃったように、人間のやることでありますから、問題が起こるということはあり得るのですが、いまのパラグアイの問題でも、出先の事業団の監督が不十分であるということも考えられる面が起こっておるし、要は直接移住民に接触する事業団の職員の人の問題が非常に大きいと思うのです。また、外務省の出先の移住民に対するところの親切な、深い配慮に基づくところの指導もしくは援護が必要だと思うのであります。そういう点に対しまして移住局長はどういうふうにお考えになっておられるか。
  259. 廣田しげる

    ○廣田政府委員 ただいま御指摘のとおりでございまして、移住行政というものはいわゆる人に対する問題が非常に重要でございますので、特に現地におきまして事業団の支部の職員、それから外務省の在外公館の職員、これがいわゆる移住者に対して親切心を持ちまして、これを側面から援助していくということが一番大切なことだと思っております。それにつきましては、いわゆる移住者が母国を離れて遠いところにいるわけでございますので、特に奥地に入りますので、いろいろな慰安の関係等もなかなか不自由しております点もございますので、もちろん営農の指導、いわゆる農業の発展ということに対する援助というものが一番大切でございますが、それ以外に生活環境をよくしてやるということも非常に重要だと思いますので、医療であるとか教育であるとか、先ほど申しましたような慰問品と申しますか、書籍を送るとか、そういう点も考えて前向きの施策を進めてまいりたいと考えております。
  260. 西村関一

    ○西村(関)委員 今度の法案によりますと、もちろん性格が違いますからあれはございますが、派米短期農業労務者のことが除外されておる。これは性格が違いますから私も当然だと思うのでございますが、この機会に派米短労の問題はどうなっているか、お伺いをいたしたいと思います。
  261. 廣田しげる

    ○廣田政府委員 派米短期労務者制度が始まりましてことしで十年になると記憶いたします。その間、私の記憶によりますと大体四千百人ぐらいの者が送り出されております。ところが、明けて一昨年の暮れくらいから、いわゆるメキシコの季節労働者がカリフォルニアに出かせぎに行っておりますが、それが米国国内の労働力を圧迫するという問題がございまして、いわゆる外国労務者のそういうことを規定しておりましたアメリカの公法、パブリックアクト七十何号か何かちょっと記憶しておりませんが、それが失効いたしまして、その後にはそういう労働ができなくなるという事態が起こりました。日本から行っている先ほど申し上げました短期労務者は、数は少ないのでございますが、そのあおりを食って、これも労働できなくなったという状況が起こりました。しかし、この制度は十年間やりまして、帰ってまいりました若い青年の方々は、アメリカで習ったいわゆる近代的な農法を、自分の村に帰りまして、彼らが中心になってそういう日本の農村の近代化をはかる、あるいはその方々の中には、海外の経験、アメリカで短期ではありましたけれども覚えました経験に基づきまして、南米のほうに移住する者も出てくる、あるいは最近の東南アジア方面に対する日本版のいわゆる平和部隊にも加わる人も出てくるというような意味合いにおきまして、非常に効果があるわけでございます。したがいまして、何とかしてこの制度を続けたい。しかしアメリカの国内事情もございますので、現地の大使館を通じまして、アメリカの国務省、労働省と折衝いたしまして、少し制度を変えましたけれども、それはいわゆる労務者ということじゃなくて、研修生ということにいたしまして、期間もやや短くなって二年、毎年派遣する、人数も二百名ということでございますけれども、少なくもこの制度を続けるように交渉した結果、ごく最近話し合いが成立いたしまして、いまその細部を詰めておる、そしてことしの七月からは、旧制度にかわりまして、新しい今度の派米農業研修生制度というのを発足させるべく現在計画中でございます。
  262. 西村関一

    ○西村(関)委員 十年の歴史を持っている派米短労の問題につきましては、政府の御努力によって心配を切り抜けて、新しい性格を持って再発足するということがアメリカの移民当局との間に話ができたということは、まことに喜ぶべきことだと思います。今後これが成果に対して私は大きな期待を持つものでございます。  なお、海外移住の不振につきましては、従来政府は一カ年一万人を目途として海外に移住者を送り込むのだということを言っておられたのですが、今年度は千名を割るというような状態でありまして、これには受け入れる側の海外の諸国の経済情勢やら、また国際情勢一般やら、わが国の国内の情勢やら、いろいろなものが相からまり合っておると思いますけれども、一番の問題は、日本政府移住政策の主体性の確立の問題だと思うのでございます。この点が、先ほど大臣が言われたような高邁な精神が、事業団を通じて各地方の支部なり海外の支部なり、またなお残っております地方海協連なり全拓連なりその他の各関係団体なりに十分に趣旨が徹底し、そしてそのような、大臣がいま言われたような高邁な精神に立つところの基本的な移住に対する考え方が十分に浸透していく、そしてそれがひいては相手方にもよく理解されて、日本移住政策がどんどん伸びていくということでなければならぬと思うのでございますが、そういう点に対して、事業団の理事長が見えておられますが、御見解を承りたいと思います。
  263. 廣岡謙二

    廣岡参考人 ただいまお話のありましたごとく、また先ほど大臣からも御答弁のありましたように、現在は移住者の数は減っておりますけれども、一方若い世代の諸君が、先ほどお話しになりましたような高い見地から移住を信念として持つという立場から、非常に関心を高めてまいっております。これが、家族の渡航者としては減っておりますけれども、単身の移住者として南米各地に渡航する人の数が逐年増加してまいっておるということで、成果を見ることができると思います。私ども移住審議会の答申によりまして、この海外移住の理念、政策のあり方というものが明示されておりますので、この趣旨、精神のもとに、事業団といたしましても、また在外の各支部の職員にも十分この徹底をいたさせまして、渡航する移住者自身の福祉向上はもちろんでございますけれども、その結果としてこれが国際的に世界の繁栄と平和に寄与するような経済協力という立場から、これを十分に理解していく、そういう面から適切なる指導をやらしていくということに常に努力をいたしてまいったのでございます。
  264. 西村関一

    ○西村(関)委員 二つの団体が一つになって事業団になったときに問題にされました人事の問題、運営の問題等については、その後問題は解消され、円満にいっておりますか。
  265. 廣岡謙二

    廣岡参考人 三十八年の七月に事業団が発足いたしまして、翌年の七月に地方事務所も設置をいたしたわけでございます。地方事務所を設置するにあたりまして、各県の海外協会、地協の職員もある程度吸収をいたしたのでございます。発足当時、振興会社、海協連との寄り集まりというところで、当初は何かなじめないような機運もございましたけれども、だんだんとこれが解消いたしまして、そういう方面一致して、ただいま申したような移住のほんとうの理念に燃えて目的を達成していこうというふうな方向にだんだんと固まってまいっておるというふうに私は見ております。
  266. 西村関一

    ○西村(関)委員 海外移住審議会の答申というものが出ております。これは当時も、われわれはこれを土台として政府なり新しく発足する事業団に対して要望したのでありますが、今後ますます移住の理念、また移住の実際について、この答申に基づいた運営がなされることを要望するものであります。問題は、私は、事業団はもちろん単なる営利会社ではないし、もちろん官庁ではない。これはサービス機関、移住者に対するサービス機関でありますから、サービス精神をいよいよ深められまして、親切な、懇切な、あたたかい配慮ある運営をやってもらいたい。それにはやはり人材の養成が大事でありますし、経験ある人材を大切にして、これをよく用いるという配慮が事業団にないと成果をあげることはむずかしいと思います。その点を強く要望いたすものでございます。  最後に、先ほど来問題になりました海外移住法あるいは海外移住基本法の制定については、政府は作業をしておられると聞いておるのでございますが、その点どのような現在の状態であるか、局長の御答弁を願いたい。
  267. 廣田しげる

    ○廣田政府委員 大体の成案は得ているのでございますが、先ほど申しましたように、なおもう少し検討を要する点もございますので、さらに検討を続けている、こういう段階でございます。
  268. 西村関一

    ○西村(関)委員 いつごろまでということまで私はここで聞きませんが、これは非常に大事な点だと思うのでございます。こまかいことについては、私は資料をたくさん持ってきておりますけれども、きょうはそういうやぼなことはいたしません。しかしこれは非常に大事な点でございますから、ぜひひとつ国民の前に明示できるりっぱな海外移住法を出していただきたい。われわれも協力するにやぶさかではございませんので、ぜひそれを急いでいただきたいことをお願いいたします。  大臣、いままで委員各位からの質問があり、私も質問をいたしましたが、わが国の移住は不振でございます。何と申されても不振でございます。大臣先ほど非常に高邁な海外移住に関するお考えをお述べになりました。私も賛成をいたします。これを推し進めるために事業団を鞭撻し、また各関係方面に、海外及び国内の各関係団体に十分緊密な連絡をとって移住を振興させるということが非常に大事だと思う。今日のこの国際情勢下においても非常に大事なことだと思うのでございます。最後大臣の御所見を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  269. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 先ほどからいろいろ御質問を伺っておりますが、きわめて適切な御所見でございまして、特に私の申し述べました量は減っても質でいく、そしてしかも各国とも自国の建設にみな競っておるような状況でございまして、こういう平和建設に協力する、こういう希望を持ち、またそれにふさわしい資格をみずから備えて、純真な気持ちで海外に行って働こうという青年が最近はふえつつあるということもまことに喜ぶべき現象であると思うのでございまして、新しい移住政策のもとに、事業団の理事長以下御奮発を願いまして、真に移住先の期待に沿うような移住政策の実行を今後とも着々と進めてまいりたい、かように考える次第でございます。
  270. 高瀬傳

    高瀬委員長 本案に対する質疑はこれにて終了いたしました。     ―――――――――――――
  271. 高瀬傳

    高瀬委員長 これより討論に入りますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  本案を原案のとおり可決すべきものと決するに御異議ありせんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  272. 高瀬傳

    高瀬委員長 御異議なしと認めます。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  おはかりいたします。  ただいま議決いたしました本案に対する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  273. 高瀬傳

    高瀬委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。   〔報告書は附録に掲載〕
  274. 高瀬傳

    高瀬委員長 本日は、これにて散会いたします。    午後五時四十五分散会