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1966-03-18 第51回国会 衆議院 外務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年三月十八日(金曜日)    午前十時十二分開議  出席委員    委員長 高瀬  傳君    理事 安藤  覺君 理事 鯨岡 兵輔君    理事 永田 亮一君 理事 三原 朝雄君    理事 毛利 松平君 理事 戸叶 里子君    理事 穗積 七郎君       内海 安吉君    菊池 義郎君       濱野 清吾君    増田甲子七君       石野 久男君    岡  良一君       田原 春次君    帆足  計君       松本 七郎君    竹本 孫一君       林  百郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 椎名悦三郎君  出席政府委員         防衛庁参事官         (防衛局長)  島田  豊君         外務政務次官  正示啓次郎君         外務事務官         (大臣官房長) 高野 藤吉君         外務事務官         (アジア局長) 小川平四郎君         外務事務官         (北米局長)  安川  壯君         外務事務官         (中南米移住          局長)    廣田しげる君         外務事務官         (欧亜局長)  北原 秀雄君         外務事務官         (中近東アフリ          カ局長)   力石健次郎君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         外務事務官         (国際連合局         長)      星  文七君         文部事務官         (調査局長)  蒲生 芳郎君         厚 生 技 官         (医務局長)  若松 栄一君         中小企業庁長官 山本 重信君         郵政事務官         (電波監理局         長)      上田 弘之君  委員外出席者         総理府事務官         (経済企画庁総         合計画局参事         官)      竹内 直一君         外務事務官         (中南米移住         局移住課長)  太田 新生君         農林事務官         (農政局参事         官)      横尾 正之君         通商産業事務官         (貿易振興局経         済協力部長)  高橋 淑郎君         労働事務官         (職業安定局業         務指導課長)  佐柳  武君         参  考  人         (海外移住事業         団理事長)   廣岡 謙二君         参  考  人         (海外移住事業         団理事)    丸山 幸一君         参  考  人         (海外移住事業         団総務部総務課         長)      増田 甚平君         参  考  人         (海外移住事業         団業務第一部啓         発課長)    永田 良三君     ――――――――――――― 三月十一日  委員竹本孫一辞任につき、その補欠として春  日一幸君が議長指名委員に選任された。 同日  委員春日一幸辞任につき、その補欠として竹  本孫一君が議長指名委員に選任された。 同月十六日  委員増田甲子七君辞任につき、その補欠として  早川崇君が議長指名委員に選任された。 同日  委員早川崇辞任につき、その補欠として増田  甲子七君が議長指名委員に選任された。 同月十七日  委員川上貫一辞任につき、その補欠として林  百郎君が議長指名委員に選任された。 同月十八日  委員松平忠久辞任につき、その補欠として石  野久男君が議長指名委員に選任された。 同日  委員石野久男辞任にっき、その補欠として田  原春次君が議長指名委員に選任された。 同日  委員田原春次辞任につき、その補欠として松  平忠久君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 三月十五日  航空業務に関する日本国政府ソヴィエト社会  主義共和国連邦政府との間の協定の締結につい  て承認を求めるの件(条約第三号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 三月十八日  国際連邦国家建設に関する陳情書  (第二一二号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  海外移住事業団法の一部を改正する法律案(内  閣提出第八九号)  国際情勢に関する件(核拡散防止問題等)      ――――◇―――――
  2. 高瀬傳

    高瀬委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。岡良一君。
  3. 岡良一

    岡委員 この間私は下田次官の御発言に関連をいたしまして、核軍縮あるいはまた核拡散防止条約等、現在世論注目の的になっておる問題についての政府統一見解の御提出を要求いたしました。ところが、私どもがいただいたものは単なる資料であって、資料では、読む者のいわば主観的な判断によって左右されるので、この際あらためて政府統一見解を要望いたします。
  4. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 下田発言は、要旨は、二つの部分から成っております。第一は、核拡散防止の問題は、これはその必要性を認めておる。認めておるけれども、ただ核所有国現状のままで、そしてこれから開発しようとするものを押える、非核所有国に対する制約だけをうたうというような趣旨ではどうも適当でない。やはり核所有国もみずから自制して、だんだんにはこれを全廃するという方向姿勢をとるということでないと説得力が弱い。そしてみずからも自制し、それから非核所有国に対しても、今度開発なりその所有というものに近づくべからずということを言うなら、それは説得力があると思う。だからして拡散防止の問題に関しては、そういう構想でいくべきものであるということを言っておるのが一つと、それからもう一つ、核のかさの問題、日本が核のかさに入るというようなことは考えておらぬと、こういうことを言ったそうでありますが、問題は核のかさのほうにあるようであります。拡散防止の問題については、下田発言趣旨はきわめて明確でございますから、これに対しては世間の批判というものはほとんどない。問題は核のかさの問題であります。ところが、核のかさということばは、これはいわば俗語みたいなもので、正確な内容を持っているものではない。それで、下田次官としては、米国に新しい核の基地を許すとか、あるいは核の持ち込みを許すとか、あるいはまた北大西洋条約加盟国の間でいま論議されておる多角的核戦力体制アジアにおいてもつくる、こういうようなことを核のかさに入るというのであるとすればという前提をちょっと落としたものだから、それでちょっと不明確なところができてきたわけです。それで、下田君の言うのは、現状米国核抑止力というものに日本安全保障が依存しておるという関係を言うのであれば、それは核のかさにもうすでに入っておる。しかしながら、そうじゃなくて、多角的核戦力体制というものをつくって、そうしてその中に加盟するとか、あるいは核基地を許すとか、新しく核持ち込みを許すとかいうことが核のかさに入るということであれば、そういう必要はないし、そういうことは考えておらぬ、そういう趣旨のことを言ったのであります。これはもう平生われわれと話し合って、十分に一致点を見出しておる問題でございまして、別にいまさら統一する必要もない。見解の相違というものは一つもなかった。ただ見解の発表のやり方が少し不明確であったものだから、それで誤解を生じたのであって、統一見解を出す必要はない。ただ明瞭にしておこうというので、先般こういう趣旨予算委員会において明瞭にしておいた次第でございます。さよう御了承願います。
  5. 岡良一

    岡委員 私は、下田次官の御発言にはプラスの面もあり、また誤解を招きやすいマイナスの面もあると思う。したがって、政府としての統一見解を私は求めた。ところがいまの外務大臣の御発言は、単に下田発言に関する政府補足説明にすぎない。これでは政府統一見解ではないではありませんか。統一見解というものを持っておらないのではありませんか。
  6. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 初めから乱れていないのですから、これは統一見解といえば統一見解、でありますから、拡散防止の問題については政府見解はすべて一致しております。  核のかさの問題については、かさということばを使うと非常に不明確になります。もしもそういうことを言うのなら、いまの日米安保体制というのは核の抑止力というものを取り入れておる。しかし、それ以外に新しく持ち込みであるとか、核基地を許すとか、あるいはアジアにおいて多角的戦力体制をつくるというようなことは、その必要は認めない、こういうことでございます。
  7. 岡良一

    岡委員 私は、核のかさなどという、いわば軍事評論家の文学的な表現なんかについてとやこう言おうと思っているのじゃないのです。また、多角的核戦略基地アメリカに与えるとか与えないということを聞いているのじゃない。もっと基本的な、今日世論注目の的になっておる核拡散防止条約、しかもその逐条審議にさえ入ろうとしている、しかも政府のほうでは、われわれには核保有の能力があるが核保有をしない、道義的な力をもって云々というようなことさえ言っておるならば、政府のほうに独自な方針がなければならぬ。それが何もないじゃありませんか。もともと政府のこの核問題に対する対策というものは全く首尾一貫しておらない。たとえば一九五四年三月のあのビキニ事件のとき、私自身外務委員会において外務大臣に御質問申し上げたときに、アメリカ水爆実験協力をするのは日本としても当然であるという趣旨のお答えさえしておる。そうかと思えば、イギリスが南太平洋で水爆実験をやるといえば、今度はわざわざ政府が特使を派遣をしてその中止方を要請しておる。国会では三回も原水爆の実験禁止に関する決議もやっておる。ところが政府は、国連加盟をした最初の総会のときにどんな提案をしておるか。核実験国連に登録をしようという提案を、ノルウェーなどと一緒に共同決議案で出しておる。これは明らかに、国会核実験を停止しろといっておるのに、核実験の存続を認め、ただ単にそれを国連に登録しよう、こういうように政府の核問題に対する対策には首尾一貫性がない。したがって、いま国際世論がこのように、おそらくかってないまでに盛り上がって、そうして核軍縮問題、あるいは核拡散問題が、ジュネーブの軍縮委員会において真剣に取り上げられておるときに、唯一の被爆国たる日本として、独自の統一政策というものを、確固たる方針というものを私は打ち出すべきだと思う。この考え方から要求しておる。いまの外務大臣の御答弁は、何ら政府統一見解たるに足らないと私は思う。
  8. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 下田発言に関連してと、こうおっしゃるものでございますから、発言はいろいろやっておりますけれども、この間の核拡散防止の問題、あるいは核のかさ云々の問題だと私は思ったものでありますから、そのことを申し上げたのであります。核問題についてただいまでは政府考え方は確定しております。すなわち、核兵器拡散防止の問題については、今後の軍縮審議における最も重要課題一つと考えられるのでありますが、この問題は先ほど申し上げたように、単に核兵器の譲渡の問題あるいは取得の問題というものを目的とする協定を締結することによって簡単に解決し得るものとは考えない。その拡散防止趣旨には日本としては賛成でありますが、核所有国核軍縮に対する明確な姿勢を示すべきである、そして核非保有国安全保障についても十分な措置がとられ、しかる後に核拡散防止条約というものが全体から支持されるというのでなければ、この問題は片づかないであろう、こういう考え方を持っておる。これが政府考え方であります。  ただ条約の形としてどういう条項にまとめるかということについては、これはまたそれ以上細目に入る問題でありますから、情勢いかんによっていろいろ検討すべき問題が出てくると思いますけれども、大体の根本の姿勢としては、以上申し上げるとおりであります。  それから、核軍縮問題についての政府考え方でありますが、被爆国としての体験を持っておるわが国としては、核軍縮の実現を衷心から希望しておる。ただし、核軍縮実施の第一義的な責任は、やはり核保有国にあるのであって、核保有国の自覚並びに決断を強く要望しなければならぬ。  それから、核軍縮措置実施は、何と申しましても有効な国際管理のもとに行なわれなければならない。そしてまた通常兵器軍縮措置とも関連いたしまして、逐次全面軍縮方向に進む。その一環としての核軍縮でなければならない。かように考えております。
  9. 岡良一

    岡委員 どうやら、政府統一見解らしきものがほの見えたようであるが、どうも外務大臣発言は聞き取りにくいので、また私が要求いたしましたら、国連局長がお隣におられるから、通訳をしていただきたいと思う。  それから、いまの御発言は、ぜひひとつプリントでいただきたいと思う。プリントでいただかないと、私は重要な質問ができません。ただ私が判じ取った限りにおいて、まず核拡散防止協定については二つ条件がある。一つは、核保有国自体が一義的に核軍縮等において誠意を示すということが条件である。第二は、この条約加盟する国の安全保障というものが責任ある形において保障されなければならない。それでは、私どもは、核拡散防止協定に関しては、やはり中国加盟ということが重要な要素ではないかと思うが、ただいまの御説明にはそれがない。一体核拡散防止中国加盟という問題については、外務大臣はいかがお考えでございますか。
  10. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 もちろんこれは中国加盟が必要であると考えます。
  11. 岡良一

    岡委員 そのことはあとでお尋ねをいたしますが、それではいまおっしゃられた核拡散防止協定条件として、核保有国核軍縮が伴うべきである。同時にまた、非核保有国安全保障が、この拡散防止協定の中において、何らかの方法においてしっかりと保障されなければならない、これが条件でございます。したがって、これが落ちれば核拡散防止協定には賛成ではあるが加入し得ない、こういう政府方針でございますか。
  12. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 非所有国安全保障ということばは少し広過ぎるのではないか。やはり核兵器に対する限り、核攻撃に対する安全保障、そういうふうに解釈しないと、少し広過ぎると思います。  それから、これを条件にしないと、加入するかしないかという問題については、必ずしも私はそういうことばかりとははっきりは言えないと思います。その一つ条約に全部盛り込んでいなければならぬ、すなわち条件としてこれを主張するのか、あるいはまたこれと関連する一つの何らかの協定なり申し合わせなり、そういうことを一つ加えて、そしてこの核拡散防止条約条約としてこれをまとめていくべきかというようなことは、その情勢いかんによるのであって、必ずしも条約条件として、これを主張するかしないかという点については、確約はいまからできないと私は考えております。
  13. 岡良一

    岡委員 昨年の国連の第一委員会における中立八カ国の決議案、これは総会においても九十二票の賛成、反対零票、棄権五票と出ておる。この五原則の中には、明確に十八カ国軍縮委員会核保有国核軍縮という問題をうたっておるではありませんか。それからまた安全保障の問題についても、松井国連代表は、昨年の十月二十二日の政治委員会において、核兵器拡散防止条約には非核保有国が個別的あるいは集団的に、核攻撃あるいはその脅威保障としての、必要と考える防衛取りきめを結ぶことを妨げないという趣旨の規定が含まれるか、その旨が明確に了解されることが必要である、こう申しておる。してみれば核拡散防止協定日本が参加する、これは明らかにその場合における日本安全保障というものが何らかの形において保障されなければならないという、条件ではございませんか。
  14. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 条件と申しますと、核拡散防止条約の中に明確に一つの項目があるというようなことになるのでありますが、私は必ずしもその条約加入条件とすべきか、あるいは他の事柄によって大体そういったようなことが保障されるという見通しがあればそれで満足すべきか、これらの問題については、具体的にこの核拡散防止中心とする国際会議の進行の状況によって判断すべきものではないかと私は考えるのであります。
  15. 岡良一

    岡委員 具体的に申せば、日米安保条約がある限り、日本核保障あるいは核の脅威ないし攻撃から日本の安全が保障されておる。したがって、核拡散防止協定の中に、必ずしもこの非核保有国安全保障条約の成文において明文化されなくてもよろしい、こういう御意見でございますか。そのように私は理解をいたします。
  16. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これは日本の場合どうということよりも、つまり国際社会一員として核拡散防止条約というものをまとめ上げるためには、日本としての意見をちゃんと持つべきである、こう考えて、その国際会議というものに臨むべきものである、こう考えます。日本に関する限りにおいては、日米条約があるから、その問題はもう全然必要ない、日本に関する限りは必要ないから、したがって、この問題については、もうよけいなことは言わないというような態度はとるべきじゃないと思います。やはりこれは全体の一員として言うべきことは言うという態度でもって臨むべきものである、こう考えます。
  17. 岡良一

    岡委員 そうすると、国連政治委員会における松井代表発言、いわゆる核非保有国の個別的あるいは集団的な安全保障の取りきめという問題は、これはきわめてばく然としたものであるが、とにかくそういうものがなければならないという主張をする御意思でございますね。そういたしますと、現実当面の問題として、白米安保条約というものは、すでにその範疇に属するものである、こう考えていいのじゃございませんか、先ほどの核のかさの御説明から類推いたしますと。
  18. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 まあ、そう考えてよろしいのではないかと思います。
  19. 岡良一

    岡委員 そうすると、日本の平和と安全というものは、つまり結論として言えば、アメリカの巨大な核報復力に依存しておるとこう政府は申されるのでありますか。
  20. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 それはもう論議をまたないところであると思います。
  21. 岡良一

    岡委員 防衛局長おられますか。――現在アメリカ一体核兵器はどの程度の蓄積をいたしておりますか。
  22. 島田豊

    島田(豊)政府委員 アメリカ核兵器保有状況でございますが、これはもちろん高度の秘密事項でございますので、われわれとしては明確なことは承知しておりませんけれども、いろいろな諸資料から推定いたしますと、核兵器として数万発、TNT火薬に換算して約九百億トンといわれております。その中で戦略兵器として考えられておりますもの、ICBMにつきましては、タイタンが五十四基、ミニットマンが八百基、それからポラリスミサイルが、現在三十四隻就役しておるといわれておりますので、基数にいたしますと五百四十四基程度戦略爆撃機といたしましては、B52を中心といたしまして約九百三十機程度を保有しておるということでございます。
  23. 岡良一

    岡委員 いまの防衛局長の御説明によると約九百億トン、まあ人類一人当たりに配給すると、大体一人が三十トン程度爆弾を配給されるということになる。おそらく全人類が何回でも繰り返し絶滅をされるような、まことにおそるべき巨大な報復力アメリカは持っておる。そうして大臣は、この巨大な報復力日本の平和と安全は依存するのである、こうおっしゃいます。憲法一体前文でどう言っておりますか。憲法はその前文でこう言っておるではありませんか。「日本國民は、恒久の平和を念願し、人間相互関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸國民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」とあります。ところが、いま政府の言われるところによれば、諸国民の公正と信義ではない。大国の相互不信に発した、人類を何度でも繰り返し絶滅できるような巨大な破壊力わが国の安全と生存を依存しよう。一体これではまことに憲法精神に私は違反するものだと思うが、大臣見解を伺いたい。
  24. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日本憲法理想はまことに崇高なものであると思います。しかし、日本憲法においても、自衛力をまで否定しておらない。外部侵略に対してみずからを守る権利というものを否定しておらないのであります。この自衛権利を、あくまでこれを実際的な、実効のあるものにするということにわれわれは目をおおい、そういう問題から離れて、そして国家の安全をただ祈るというような態度ではいかぬのでありまして、何といっても実際の現実というものに目をおおうことはできない。それに対する自衛権利というものは十分に確固たるものにしておきたい、こういうことを考えております。
  25. 岡良一

    岡委員 大臣は、いま私が読み上げました憲法前文理想である、しかし現実に即して、日本自衛というものも考えていかなければならぬ、こうおっしゃいます。私は何も第九条の解釈をめぐって堂々めぐりをしようとは思わないが、大臣の言われたことは、憲法にうたわれていることは理想である、しかし、現実はそれを許さない、そこで日本の安全と生存を保持するためには、その巨大なアメリカ核報復力に、憲法精神に違反しても依存せざるを得ない、これが政府見解でありますか。
  26. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 そうじゃありません。憲法自衛ということについてはこれを許しておる。つまり自分の安全を確保するという点は憲法においても許されたところでありますから、その点が、日米安保条約に見るようにつながるわけであります。
  27. 岡良一

    岡委員 問題は、日米安保条約を通じて日本の安全を維持されようとしておるということが、ことばをかえていえば、アメリカの巨大な核報復力日本の平和と安全を依存するということになるじゃありませんか。
  28. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 巨大であるかないかはいろいろななにがありましょうが、とにかく日本は絶対に集団安全保障条約によって国の安全を守り得るのでありますから、その守り得る力というものが弱いよりも、やはり強いほうがいい。これは決して憲法精神に違反しておるものではありません。
  29. 岡良一

    岡委員 他国の公正と信義に信頼すると言いながら、相互不信に発したこの巨大な――巨大であるかないかわからぬというが、九百億トンということになるとどうなるか。あなた自身が背中に三十トンの爆弾を背負っているのですよ。こういう相互不信に発した巨大な破壊力日本の平和と生存を依存しておるということになれば、明らかに憲法違反ではありませんか。
  30. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 憲法違反ではございません。しかも、これは侵略的なものでなくて、外部侵略を排除する、いわゆる自衛のための報復力であるのでありますから、それが弱いよりも強いほうがいいと私は考えます。
  31. 岡良一

    岡委員 大臣は非常に現状のいわば世界の力関係現実に即して発言をしておられるから、一応政府の立場としては私は了としましよう。しかし、それでは、万一核戦争が起こったらどういう被害の状態になりますか。これについては、アメリカ等においてはいろいろ両院の公聴会等を通じて検討されておる。国連局長、御存じであるなら伺いたい。
  32. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 核戦争がどういう場合にどういうふうに起こるか、これはおそらく千変万化するものであろうと思うのであります。少なくともいまのアメリカ核戦力は、戦争抑止力であるとわれわれは信ずるのでございまして、核戦争一体どうなるかというようなことにつきましては、私は、はなはだおあいにくでございますが、あまり研究したことはございません。
  33. 岡良一

    岡委員 核報復力というものは、攻撃をする意思があるという、そこに報復力というものの意味があるじゃありませんか。それが正式な報復をする意思のない抑止力であるならば、そういうものは全面的にいつでも取り払えるが、キューバの事態をごらんなさい。一触即発、攻撃する意思がある。そこに戦争の抑止力として働いたのじゃありませんか。それでありますから、アメリカにおいてもやはり思い切って、万一の場合に備えてのいろいろな損害の評価をやっておる。また先制攻撃を有利にするためには、ずいぶん多額の金をつぎ込んで迎撃ミサイルの開発をやっておるじゃありませんか。ところが、一体核戦争が起こったらどんな被害があるかわからないと言われる。ここにちゃんと資料がある。これはマクナマラ米国防長官が一月二十五日の下院軍備委員会第二小委員会で行なった証言といわれておるが、米国は「一九七〇年代にソ連が全ミサイル部隊をもって米国戦略部隊を攻撃しても、米部隊の非常に大きい部分は生き残り、これらの部隊の五分の一だけでもソ連の都市に攻撃を加えれば、ソ連人口の三分の一、産業能力の半分を破壊できる。攻撃部隊を倍加すれば、ソ連の被害はさらに三分の一弱まで増加する」と、一方アメリカの場合、「七〇年にソ連が第一撃を米本土に加えて核戦争が始まれば、米国の死者は一億三千万人から一億三千五百万人にのぼる。現在、米国が計画中の損害限定計画」これは十年間で六百八億ドルをつぎ込もうとしておる計画であるが、「七五年には七千五百万人から一億人に減らすことができるが、それでも米国民の死者を五千万人台以下に減らす希望はほとんどない」と、これは国防担当の責任者であるマクナマラ長官の発言です。国会における証言なんです。この証言の中には、すでに核戦争を用意した配慮というものが十分に見えるではありませんか。こういうばく大な六百億ドルをこえるいわゆる損害限定計画をやってみたり、とにかく核戦争というものを前提とした核開発をやっておるのが事実です。おそらくソ連もやっておるでしょう。したがって、核抑止力という全く制止的なもので、報復の意図がないものであるというふうな考え方は、根本的に間違っている。私は報復の意図があると思う。そこに抑止の働きが初めて出てくるわけなんです。であるから、こういう大きな破壊力日本の平和と安全というものを依存することは憲法精神に違反するんじゃないか、こうお聞きしておる。そうではありませんか。
  34. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 非常に巨大な破壊力をお互いに開発しなければならなかったというところに、まことに現実の世界の悲しさがあるのでありますが、その破壊力に対して、もし攻撃があれば、これを排除するためにどれくらいの力を発揮することができるかということを知らずに、ただ一生懸命開発するという、そういう無定見な計画は私はないと思う。これぐらいになればどれくらいの破壊力があるか、どういう攻撃に対してはどれくらいの防御力があるかということを、絶えずはかりながらお互いに核の開発をやってきたのが現状であると思うのであります。これが、つまり何もないところにこっちからしかけるのではなくて、もし攻撃を受ければ、これだけの報復力がある、こういうことを言うことが、すなわちそれが抑止力になると私は考えます。そういう現状の世界に日本が位しておる以上は、やはり集団安全保障条約の締結によって自分の国の安全を守る以外にはない。こういう世の中であればあるほど、これに対する一定の考え方なり、かまえなり、そういうものをしなければならぬ、こう思うのであります。これは憲法に決して違背するものではないと私は思います。
  35. 岡良一

    岡委員 まあ一口に申せば、万一にも全面的な核戦争が起これば、これは共倒れの戦争になる、勝者のない戦争になる、廃墟になる。しかしながら、大臣説明によると、行きがかり上、現実にはそういう方向に動いておるのは、これはいたし方がない。したがって、日本としてもそのいずれか一方の側の核報復力に依存をしなければならない。これは日本自衛を認められている以上は当然なことであって、憲法違反ではない、一応そういう論理になっておるわけです。核報復力抑止力の形においていま暫定的な平和の均衡というものが行なわれておる。それは具体的に言えば、きわめて暫定的なものである。現実にはとにかく圧倒的な核攻撃による大量破壊力、この攻撃兵器は相手の先制攻撃にも不死身としておるミニットマンのように高い破壊力を持ち、しかもその核攻撃に対して防御の方法がない。こうした核報復力相互抑制の形で暫定的な安定をもたらしておる。これがいわゆるダレス流の平和の哲学というか、力の均衡による平和維持というフィロソフィになっておる。しかしこのフィロソフィの根拠である力の均衡というものは、きわめて不安定だ。今日のような科学技術の発展の著しい時期において、もしいずれか一方で迎撃ミサイルが開発されたら一体どうなるか。均衡は瞬間に破壊されてしまう。しかもこの迎撃ミサイルの開発のためにはアメリカはすでに二十億ドル、今後百億ドルの巨大な資金をつぎ込んでこの開発に努力をしておる。おそらくソ連とても同様な措置をとっているだろうと思う。いずれか一方がもし迎撃ミサイルの開発に成功し、実用化に成功したならば、もはや力の均衡による平和の維持という、古いダレスの平和哲学というものはくずれてしまう。こういう暫定的な力の均衡に日本の平和と安全というものが依存しておる。ここに私は問題があると思う。政府はこの現実を見て、一体どう考えておられるか。
  36. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 そういう果てしない破壊力の開発ということに反省が起こって、すなわち平和共存という新しい観念が生まれたのであると私は考えます。でありますから、この平和共存の大国間の考え方が、だんだん世界の平和の新しい一つの原理として、これからいろいろな問題について積極的な建設的な考え方が出てくることは、まことにけっこうだと思うのでありますが、一方においては、必ずしもそうでない現象もあらわれてきておることはまことに遺憾であります。とにかく日本といたしましては、現実に観念や憲法だけが残って国が滅びてしまったのでは何にもならないので、やはりわれわれとしては、その現実に処して、そして日本の安全をはかっていく以外にはない、こう考えております。
  37. 岡良一

    岡委員 私はさっきからそこを問題にしておるわけです。  防衛局長にお尋ねをするが、部分的核停協定は、なるほど米ソ間における平和共存への大きな前進ではある。しかし、地下核実験が残されておるが、その後地下核実験は米ソにおいてどの程度に行なわれておるか、またその地下核実験における実験規模はどのようにまでいわば向上し、どの程度の規模の核兵器の実験も可能となっておるか、これらの点について、あなた方の資料があったら御報告を願いたい。
  38. 島田豊

    島田(豊)政府委員 ただいまの御質問の点につきましては、私ども資料を持ち合わしておりません。
  39. 岡良一

    岡委員 それではこの資料が手に入るものなら、われわれの重要な参考でありますからできるだけ提出を願いたい。  ただしかし、新聞の伝えるところでは、アメリカは公表されたものでも七十回、またソ連は探知されたものでも五回以上というふうな数字が出ておる。おそらくそれは最低の数字だと思います。こういうわけで、この部分的核停ができても、やはり地下においては新しき核兵器の開発が進められておるという現状なんです。そのような悪循環を一体どうして断ち切るか、これが今日世界の人類に与えられた大きな使命でなければならぬ。特に唯一の被爆国である日本にとっては当然な権利ともいえる、崇高な義務ともいえる。ところが、これを安易に現実に堕して、しかもその現実というのは、万一戦いが起これば廃墟にならなければならない、こういう核戦争核報復力に依存をする、そうして人命を守る、これでは私は政府対策方針というものは、基本的に大きな内部矛盾を持っておるんじゃないか。唯一の核被爆国であれば、いわゆる核報復力ことばをかえていえば核抑止力、これらはもう紙一重なんです。こういう日本が長崎やあるいは広島の大きな犠牲を払ったこの核兵器、これを日本の平和の守り神として神の座につけておる。こういう矛盾した政策、方針態度というものが、一体政府としての国民に納得の与え得る姿勢であるかどうか、ここが私は問題にしたいところだ。それが正しい方法だと外務大臣は言われるのですか。
  40. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 核兵器のおかげで日本が万一にも繁盛しておりますというような、朝晩お灯明をあげて拝むというような気持では私はないと思う。ただ外部の圧力があった場合にこれを排撃するという、いわば番犬――と言っちゃ少し言い過ぎかもしれぬけれども、そういうようなものでありまして、日本の生きる道はおのずから崇高なものがあって、そしてみずからは核開発をしない。そして日本の政治の目標としては、人類の良識に訴えて共存共栄の道を歩むという姿勢でございます。ただ、たまたま不量見の者があって、危害を加えるという場合にはこれを排撃する、こういうための番犬と言ってもいいかもしれません、番犬様ということのほうが。そういう性質のものであって、何もそれを日本の国民の一つの目標として朝夕拝んで暮らすというような、そんな不量見なことは考えておらないのであります。
  41. 岡良一

    岡委員 しかし大臣の先ほど来言われたことは、核兵器を神の座につけると言ったのに対しあなたはお灯明と言われたが、核兵器日本の安全を依存せざるを得ないということを認められておる。したがって、依存しておる、こういうことだけは間違いはないのでしょう。
  42. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 遺憾ながら現実の世界においては依存せざるを得ない、こういうことであります。
  43. 岡良一

    岡委員 そこで私は、さっきもし核兵器の戦争が起こったらどうなるかということを申し上げた。むしろ現実はそこにあると思う。大体核兵器のいわば報復力に依存する、巨大な報復力を双方が持つ、しかし報復力というものは、報復する意思を伴うものであり、抑止力であると言ったって、科学の発展とともに、いつそれがくずれるかわからない。迎撃ミサイルがもし開発されたら、もうすでにその瞬間にこわされてしまう。こういう不安定なものに日本の平和と安全を依存をする、これが長崎やビキニやあるいは広島でもう身近に切実な犠牲を払っておる日本のあり方として正しいかということを私は申し上げておる。ところが大臣は、これはいたし方のないことだ、こう言われる。  そこで、それでは私ははっきり申し上げておきますが、それは日本のとるべき態度ではない。もう今日の段階になったら、やはり日本は、唯一の被爆国としてのとうとい義務なり責任感の上に立って、科学の進歩といういわば人間の英知の力で、人間の生命や文化を破壊しようという今日のこの矛盾をいかにして克服するかというもっと次元の高い立場に立って、日本は独自な平和政策を進めなければ私はうそだと思う。しかしこの問題はあなたと幾ら話をしたって、これは果てしのないところだけれども……。  防衛局長にお尋ねいたします。中国がもうすでに二回核開発をいたしました。その核開発の実情、また今後の見通しはどういうふうに見ておられますか。
  44. 島田豊

    島田(豊)政府委員 先生の御指摘のように、過去二回中共は核実験をいたしておりまして、その状況からいたしまして、技術的にも能力的にもかなり高い評価をされておるわけでございます。第一回が三十九年の十月、第二回が昨年の五月でございますので、もう第三回の実験を実施できる能力は十分に持っておるというふうに考えられております。しかもその基剤といたしましてウラン二三五を使うこともできますし、プルトニウム二三九を使うことも可能であろうと考えられておりますが、ただこれが実際に核装備として、核兵器として装備されるというまでには、なおやはり相当な実験改良を重ねなければならないというふうに見られておるわけでございまして、近い将来におきましては爆撃機に搭載するところの核爆弾あるいはMRBMに搭載するところの核弾頭を開発するということがいわれておるわけでございますが、ただこれがいつの時点においてそういうMRBMの展開が可能であるかということにつきましては、私どもは的確な資料を持ち合わせておりません。ただ、昨年十二月十五日でございましたか、NATOの理事会におけるマクナマラ国防長官の報告その他各種の資料を総合いたしますと、MRBMという中距離弾道弾の展開というものが、二、三年後には可能になるのではなかろうかというふうに見ておるわけでございます。
  45. 岡良一

    岡委員 われわれはこの中国の核能力を別に過大に神経質的に評価する必要はちっともないと思う。といって何しろ一衣帯水の中国のことでありますから、その国防力、いま御説明の核能力というものはやはり正確に評価しておかなければならぬ。大体いまの御説明によると、これはNATOの理事会におけるマクナマラ長官の発言はここにも、ございますが、とにかくここ二、三年のうちには比較的射程距離の短いおそらく千二、三百キロ程度までの核弾頭を持った中距離というよりは短距離弾道弾の実戦化にはなるかもわからぬ。六八年から九年には何発かを実戦的に装備し得る段階になり、一九七六年には数ダースを配備する。一九七〇年までにはアメリカに届くICBMの配備が始まるし、兵器用の核分裂物質は二年以内に少量の貯蔵ができ、やがてミサイル、航空機に装備するに十分な貯蔵を持つ、ミサイルの潜水艦も持つことになろうというようないろいろな説明をも加えているようであります。  それで、きのうでございましたかの予算委員会で、この中国の核開発に対して日本は非常な脅威を感じておる、そして何か迎撃ミサイルのようなものでも考えようかというポンチ絵的発言を防衛庁長官はしておられたようだが、こういう事態に対する防衛当局としての考え方はどういう考え方なのですか。
  46. 島田豊

    島田(豊)政府委員 松野長官も言っておられましたように、中共が現に核装備をする、しかもそれが攻撃能力を持ってくる。わが国もその圏内に十分入るというふうなことになりますれば、わが国の防衛体制といたしましては何らかの考慮をしなければならないということになるだろうと思います。それは外交上あるいは心理的な影響のみならず、現に軍事的な脅威というものも出てくるということにつきましては、われわれとしては十分考慮しなければならないというふうに考えておるわけでございます。  これに対処する方策といたしましては、先ほど来外務大臣が繰り返しお述べになっておりますように、やはり日米安保体制のもとにおきまして、米国の核抑制力というものを背景にしてこれに対処していくということでございますので、基本的にはそういうことでございますが、わが国の防衛体制といたしましても、これに対してただ米軍の抑制力に完全に依存し切るというわけにもまいらないということも考えなければならないわけでございまして、現実に今日の段階におきまして、これに対処する防衛手段としての具体的なものというものはもちろん考えられておりませんけれども、しかしながら将来何らかのこれに対する対処手段というものにつきまして、やはり現在の段階からすでに検討をしなければならない、そういう段階に来ておるのではないかというふうに考えておるわけでございます。松野長官の一昨日の発言も、そういう趣旨であろうと私は理解をしておるわけでございます。
  47. 岡良一

    岡委員 一九六三年の十月、中共の陳毅外相がこう言っておる。これは日本人記者団との会見のときの発言であります。「原爆ミサイルがなければ、国防上十分とはいえない。」と、そうして中国は核開発に乗り出しておる。国防上安全ではないので、中国が核開発に乗り出さざるを得ないようにせしめたものは一体何なんです。だれが中国をしてそうせしめたのです。どう判断されますか、外務大臣
  48. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 中国中国考え方があろうと思いますが、われわれから見ると、大体平和共存の線がだんだんはっきりとしてまいっておる今日の情勢において、中国一体何をとらえてさような判断をしておるのか、よくわかりません。
  49. 岡良一

    岡委員 いま申し上げたように、陳毅外相をして、国防上原爆ミサイルを持たなければ十分ではない、こう言わしめておる。そうすれば、中国現実に核脅威を感じておるということなんです。それはたとえば沖縄における核基地の問題もございましょう、あるいはまた第七艦隊に万一戦爆両用機があって、原爆投下ができるかもしれません。こういうように、B52が沖縄を回って北ベトナムを爆撃しておるという事情もある。こういう核兵器戦略兵器なり戦術兵器をもってするこういう中国封じ込め政策が、中国外務大臣をして、国防上原爆ミサイルを持たざるを得ないと言わしめたのではありませんか。もちろん政治的な意図、いろいろな意図もございましょう。しかし軍事的に考えてみた場合、国防上脅威を感ずると陳毅外相をして言わしめたのは、このような核兵器をもってする中国封じ込め政策というものが、中国を核開発に追いやった一番大きな直接の原因であると私は思う。外務大臣の御見解をお聞きしたい。
  50. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 やはり自分の判断ということは自分の身に引き比べて世の中を判断する、これは一般にそういう傾向があるのであります。武力革命の理論を信奉する中共といたしましては、やはり自分もそうであれば人もそうであろう、そういうふうに考えて、いわれなき恐怖を持つのではないか、私はそう考えます。
  51. 岡良一

    岡委員 問題は、アメリカはいわゆる力の政策、パワーポリシーのエリートだ。これだけ激しくアメリカと対決をしておる中国であるから、やはり核開発をやって、同じくパワーポリティックスの上に核開発を進めるということも考えられると思う。しかしまた一衣帯水の隣国においてこのような事態が起こる、アジア核兵器の引き金がふえるということは断じて好ましい事態ではない。とすれば、日本とすれば、政府がしばしば言うように、東西の接点であるというならば、今日のきびしい米中の対決の中において何らか独自な役割りを持つべきではないか。政府はそれを全然なまけて、そしてただいたずらにアメリカ核抑止力たる大きな報復力日本の安全を依存する、これでは米中の対決というものはますます危機化しても緩和するはずがない。この点に日本としての独自な米中の対決を緩和する道を見出すということが日本に与えられた重要な使命ではないか。こういう問題についての政府の基本的な考えがあったらこの機会に率直にお聞かせを願いたい。
  52. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 身の安全もさることながら、やはり何を目標としていかに生きていくかということも大事なことであります。日本といたしましては、階級独裁制というようなそういう国柄に同調することができない、やはり自由民主主義のたてまえで政治、経済を運営する、この基本は変えるわけにはいかない、そういうことから日本としてはただ安全を守れればそれでいいという立場に立つわけにはいかない、それが一つ。  もう一つは、今日の米中の考え方があまりに対立が先鋭化しております。へたに手を出しても、これは絶対に成功する見込みはない、こう考えております。
  53. 岡良一

    岡委員 見込みがない、見込みがないとあきらめて手を出さない、そうなればますますアジアには核兵器の引き金がふえて、そしてこのことはひいては日本の平和と安全にもかかわってくる、こういう悪循環を断ち切るべきことが日本としての当然のつとめであると私は思うが、いたしかたがないから拱手傍観をしておる。アメリカの内部ででもごらんなさい。これは新聞報道であるが、昨年の十一月末に国際協力のためのホワイトハウス会議、ここで元ケネディ大統領の科学特別顧問をしておられたウィズナー博士が議長になってこういう結論を出しておる。「いずれは米国中国も軍備の管理について話し合わなくてはならない、しかもこの討議は早く始めるほど有効である」こういうような結論を出しておるわけであります。アメリカの良識を代表する人たちがこのような結論を出しておる。これはベトナム戦争においてもそうなんです。アメリカの国内は、国内の世論においても、またアメリカ国会においても、非常に流動的であることはいまさら私が申し上げるまでもないと思う。こういう状態の中にあって、アメリカ国内においてさえもそうであるのに、日本は、とても米中対決が先鋭であるから手出しをする余裕がないということで責任を回避することが許されるか。これは日本の外交としてきわめて当面重大な問題と思うが、あなたは対決が先鋭であるから日本は手出しをすることができない、こうあきらめて断念をしておられるのでありますか。
  54. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 永久に対立が先鋭であると言うことも、これはできないと思います。いずれは対立がお互いに解けるという時代が来なければならぬはずであります。ただいままでは、へたに手出しをすべき段階ではない、こう判断します。
  55. 岡良一

    岡委員 世界軍縮会議が来年開かれることになっておることは言うまでもない。しかも世界軍縮会議は中共を除いては軍縮を論じ得ないという段階に来ておるので、ぜひ中共を加えようという――私は中共がたとえアメリカの一部の人が言うように侵略的であり、好戦的であるとしても、やはり一つのテーブルに着くということが何よりも好ましき大きな前進であると思う。ところが現状においてはなかなかその可能性がないようにも見受けられる。アメリカは世界軍縮会議の参加についても賛成をしながら、基本的な点においては保留をつけておる。中国はその後に全然参加はしないといったふうなかたくなな声明を出しておる。こうあってはいけないのだが、世界軍縮会議中国を参加せしめるために政府として積極的な具体的な考え方方針というものを持っておられますか。
  56. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 軍縮会議はこれは私は理想であると思います。それで国連に加入するといなとを問わず、広く全世界に呼びかけて、軍縮会議をするという趣旨は、きわめてけっこうな考え方でありまして、それに中共を招請することは日本としては賛成しております。
  57. 岡良一

    岡委員 大臣が所用があるそうですからお帰りになったらまた質問することにして、最後に一言お聞きしたい。  中国一つのテーブルに着かしめる、これは隣国たる日本として当然のあり方であり、責任であるというのならば、やはり中国国連代表権の問題について、これを重要事項指定方式などを持ち出して、一つのテーブルから着くことを締め出すような、政府は、昨年の国連総会においてそういう態度を示しておる。これでは中共を一つのテーブルに着かしめることが望ましいとあなたが言ったところで、あなた方は外交的には締め出しをはかっておることになる。一体今度の国連総会等において、中共というものが国連という一つのテーブルに着くように、重要事項指定方式なんていうものを持ち出さないで、あなた方が責任を持って中共の国連加入に協力をされる、まずこういう外交的な思い切った手を打つべきだと思う。この点について外務大臣一体どういう方針をもって今度の国連総会に臨まれるか。
  58. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 中共の国連加盟と同時に、台湾政府を追放するということはきわめて、アジアひいては世界の平和に非常な影響を与える問題でございます。したがって、やはりこの問題はただ単純表決によらずに、世界の大多数の世論というものによって決定するのが望ましい、こう考えております。
  59. 岡良一

    岡委員 世界軍縮会議は非常に重要な意義を持つと私は思う。しかも、これは先ほども申しましたように、どうしても中国加盟させなくては意義がない。そのときにまだ政府が、いま外務大臣発言のような、こだわって独自な政策を持ち得ない、そのことは当然日本の平和と安全に対しても外務当局は責任を持たないということとも言えると思う。  外務大臣が帰ってから私はまた質問いたします。
  60. 高瀬傳

    高瀬委員長 岡君に申し上げます。外務大臣は参議院の本会議に出席を要求されておりますので、たいへん失礼ですが、退場いたしました。この際、暫時休憩いたします。   午前十一時二十五分休憩      ――――◇―――――    午後零時三十九分開議
  61. 高瀬傳

    高瀬委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  参考人出頭要求に関する件について、おはかりいたします。  海外移住事業団法の一部を改正する法律案の審査に際し、必要を生じた場合には、随時、海外移住事業団の関係者を参考人として招致することにし、人選及び手続等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  62. 高瀬傳

    高瀬委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。      ――――◇―――――
  63. 高瀬傳

    高瀬委員長 国際情勢に関する件について調査を続けます。岡良一吾。
  64. 岡良一

    岡委員 椎名外務大臣、きょうお昼前、初めて私はあなたと討論をいたしましたが、実にあなたはおもしろいお方だと思いました。核兵器は番犬であるとか――番犬というものは大体やはりどろぼうが入ってこない前に飛びかからなければならないのです。それから核兵器にお灯明を上げるなんて、核兵器にお灯明を上げたら大爆発をしてたいへんなことになってしまう。実におとぼけ居士もはなはだしいものだと思いましたが、きょうはまだあとに質問の方もいらっしゃいますので、簡単にイエスかノーかだけお答え願えればけっこうだと思います。  まず午前の最後に申し上げた点、世界軍縮会議について中共が参加することを希望する、こうおっしゃいましたね。
  65. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 すべての国が参加しなければ十分の効果を達しないのではないかと考えております。したがって中共も参加すべきである、こう思っております。
  66. 岡良一

    岡委員 世界軍縮会議アメリカ賛成の票を投じておりまするが、留保条件がある。要するに国連加盟のすべての国が参加するということが留保条件になっている。そうなれば当然台湾政府も参加するということになる。さっき私がお尋ね申し上げたときにも、台湾政府関係もあるから、ことしの国連総会でもやはり重要事項指定方式をとる。事実上外交的には中共を締め出すというふうな方針をとられるのであれば、これは参加を希望するというだけのことで、日本政府は実態においてはこれを裏切る行動をやるということになるが、これに対する率直な、端的な御答弁をひとつ願いたい。
  67. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 国連の参加問題とは離れて、国連の問題を離れて世界軍縮会議を開くのでありますから、おのずから問題が違うと思います。
  68. 岡良一

    岡委員 しかし、いずれにしても外交的には国連の場から中共を締め出すという方向に、これまでどおりの方向で参られるなら、なることは、これは当然だと思う。  そこで大臣にお尋ねをしますが、たしか二十二日の参議院の予算委員会で岩間委員の質問に答えて、核戦略に関して日本アメリカが協議する、しないということは、核のかさに入る、入らないという問題とは別問題である、こう答えておられる。この真意は一体どういうことなんですか。
  69. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 アメリカ側で、非核所有国である日本、核を持たない日本としても、核の問題については十分協議する用意があるというような声明がございました。そういう場合に日本がこれを拒絶する理由はないということを考えております。
  70. 岡良一

    岡委員 拒絶する理由がないというのは参加するという御意向でございますか。それからまたもう一つ、それらの協議というものは安保条約の第四条でございましたか、随時協議というものの範疇に入るものですか。
  71. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 たしかハンフリー副大統領が新聞記者に対して、核戦争、そういうものに対しての発言権は日本にもあるというようなことを言ったように、正確なことばでは記憶しておりませんが、そういうことでございまして、必ずしも私は核戦略に参加するとかしないとかという問題ではない、もっとばく然たる話であったと思うのであります。
  72. 岡良一

    岡委員 この二月二十三日にバンディ国務次官補が下田次官と会見された新聞報道がある。これを見ると、ソ連の新提案、これは核拡散防止条約の新提案であろうと、あるいはまたコスイギン提案を含めておるものと思いますが、ソ連の新提案あるいは中共の核装備などの新しい国際情勢の進展に対応して、今後日米間で安保体制下の核政策に、核軍縮など長期的展望について意見を交換することについて意見が一致した、こう新聞は報道されている。はたしてこういう事実があったのですか。
  73. 安川壯

    ○安川政府委員 下田次官とバンディ国務次官補との話し合いは、ただいまおっしゃいましたように、むしろ長期的な観点に立って、今後主として、当面の問題は核不拡散条約でございますけれども、さらに長期的に核不拡散という問題に関連しまして、いわゆる核軍縮問題につきまして下田次官から、けさほど大臣がおっしゃいましたような基本的な日本考え方というものを説明したわけでございます。これに対してバンディ次官補のほうからは特に意見の表明はなかったと承知しておりますけれども、いずれにしてもそういう長期的な問題は今後も日米間で十分話し合っていこう、こういうことでございまして、具体的に安保条約でございますとか、いわゆる言われました核安保、そういうことは全然話題にのっておりません。
  74. 岡良一

    岡委員 それではこの新聞に伝えられるバンディ国務次官補と下田次官との間において安保体制下の核政策について長期的展望について意見を交換することに意見が一致したということは、これは誤報でございますか。
  75. 安川壯

    ○安川政府委員 安保体制下の核政策ということが書いてあるとすれば、それは明らかに誤報でございます。
  76. 岡良一

    岡委員 安保体制下であるということを抜いて、アメリカの核戦略についてやはり協議をするということについて意見の一致を見ましたか。
  77. 安川壯

    ○安川政府委員 先ほど申しましたように、これは主として下田次官のほうから日本方針と申しますか、核不拡散条約、それに関連する核軍縮というものに対する日本の基本的な考え方を話した、それについて今後も話し合っていく、こういうことでございます。
  78. 岡良一

    岡委員 それではアメリカの核戦略について随時協議をするという意向は政府にないのか、あるいは向こうから申し出があればそれを受けて協議に入るのか、その政府のはっきりしたところをひとつお示しを願いたい。
  79. 安川壯

    ○安川政府委員 核戦略と申しますのは、たとえばヨーロッパにおきますいわゆる多角的核戦力でございますか、いわゆるMLFというようなものをかりにアメリカ提案してくるというような場合に――私はそういうものを提案すると考えておりませんけれども、かりに提案してきても日本はそういうものについては入る意思もございませんし、したがって協議に応ずるということもないというのがいまの政府方針であると思っております。ただ核戦略と申しますと、いろいろまたこの意味のとりようになりますので、いずれにしましても核軍縮と申しますか、そういう全般的な、何も核戦略ということに限らずに、もっと広い意味の核軍縮というものについては、これは相手はアメリカだけではございません。現にほかのいろいろな国とも日本はいろいろな意見の交換をしておりますから、そういう意味でアメリカとも十分話をしていきたいというのが現在の政府方針でございます。
  80. 岡良一

    岡委員 アメリカは一昨年から中共の核装備に備えて西太平洋における核戦力体制というものを強化していることは、これは私が言うまでもない。グアムにおけるB52大隊を二個大隊にふやす、あるいはポラリス潜水艦を七隻にする。現にその第一号はグアムに来ておる。エンタープライズ号も来る。また、B52をポラリスに代替しようという意見もほの見えている、こういうような状態で、核戦略体制というものは西太平洋において漸次強化されようとしている、アメリカの西太平洋における中国の核脅威に対する戦略体制の強化、こういう問題はいわゆる戦略協議の中に入るのですか、入らないのですか。
  81. 安川壯

    ○安川政府委員 たとえばアメリカがいわゆる核主力の主体をなしておりますB52をどうするか、あるいはポラリス潜水艦を何隻どこに配置するかというような問題は、私はおそらくアメリカ側も日本に協議する意思はないと思います。また、こちらもそういう問題についてこちらから申し入れるというようなことは全然考えておりません。
  82. 岡良一

    岡委員 私は、何もそんなものを受け入れる、受け入れない、そういうことを聞いているのじゃないのです。大臣、こういう問題もいわゆる核戦略、核政策の討議の中に入るか、入らないか、大臣ひとつお答え願いたい。
  83. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 そういうものをどこに配置するか、どれくらいの程度にするか、そういったようなことは、いわゆる核戦略の中には入ると思います。
  84. 岡良一

    岡委員 実は私は、さっき来ておられた防衛局長に、午後御出席がないということで、確かめました。こう言っておられる。現在の核兵器下における防衛体制というものは、在来兵器から、戦術核兵器から、戦略核兵器へと切れ目のない一貫した体系というものが現在における防衛体制の実相である、こう言っておられる。したがって、核政策の戦略討議に日本が参加するということになると、こういうことが懸念をされる。その一つ一つについて政府態度をひとつお示し願いたい。  まず第一には、沖縄の核基地としての強化が当然予想される、そういうことになれば、沖縄の返還というものはますます遠のくという結果にもなろうかと思う。沖縄の核基地の強化について政府はどういう態度をもって臨まれますか。
  85. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 私は、B52なりあるいはポラリス潜水艦の量とか、配置とか、あるいはその運営の計画であるとかいうようなものが核戦略という概念の中に入るかどうかということをあなたに尋ねられたので、私の頭で割り出したところによれば、そういうものは核戦略の中に入るべきものと思うということを申し上げたのであって、核戦略の協議に日本が参加するかしないかということは、これは全然触れていない問題でございますから、したがって、沖縄の核基地としての強化とかなんとかいうことは、これは全然従来の例をもってすれば、これはアメリカの固有の戦略である。これは日本と協議するというたてまえのものではないのでございますからお答えはできません。
  86. 岡良一

    岡委員 アメリカ戦略の協議に加わり得ることもあると先ほどおっしゃった。そうすれば、アメリカの核戦略というものは、当面やはり中国の核脅威に備えての西太平洋における戦略核兵器体制の強化ということになる。この協議に参加をすることもあり得るというならば、当然こういう問題についても了解を与えるというようなこともあり得るわけだ。したがって、そうなれば沖縄の核基地の強化ということも当然予想される問題となってくる。これに対して、一体政府は参加しないならしない、するならする、はっきりそこを言ってもらいたい。
  87. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 どだい向こうから呼びかけられもしないのに、参加するもしないもないのでありまして、この問題については、日本は白紙の状態でございます。
  88. 岡良一

    岡委員 安保の第四条には、こういうことが書いてある。いわゆる随時協議、「締約国は、この条約実施に関して随時協議し、また、日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときはいつでも、いずれか一方の締約国の要請により協議する。」となっておる。しかも、アメリカにおいては中国の核開発は非常な脅威ということを当然責任者がそれぞれ口々に機会あるごとに言っておる。したがって、アメリカから求められるならば、安保第四条の随時協議のこの条項に従って協議に加わりますか。
  89. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 仮定の問題でございまして、どういうことで相談があるか、いまから予見するわけにはまいりません。
  90. 岡良一

    岡委員 いまから予見する――私も専門は精神病の医者でして、大臣をどう診断しようかと思って迷っておるところなんですが、しかしあなたもそうおっしゃるのだから、敬老の意味でそうお年寄りを追求することはやめましょう。  ただ昨年の一月米下院の軍事委員会でマクナマラ国防長官はこういうことを言っておる。「日本と韓国とはその重要利害において相互補強の関係にあることをますます認識するようになっており、両国の関係がさらに進展することをわれわれは期待している。」これは国防担当のマクナマラ長官が言っておられることだから、したがって日韓の軍事協力というものも予想されるわけなんです。こういう問題が、先ほども申しましたように、現在における戦略体制というものは在来兵器から戦略核兵器までを貫いた切れ目のない体制ということになってくると、やはりこういう問題が当然討議の対象になり得るわけなんです。それも仮定の問題だからあなたは答えられないとおっしゃるでありましょうが、こういう問題については、これはわれわれとしても重大な関心を持っていることを申し上げておきたい。沖縄の核基地の強化、それから在来の兵器と、そうして戦略核兵器まで一連の切れ目のないこの一貫的な体制を持つということが今日の戦略体制における常識的なかまえであるということからいえば、日本自衛隊の増強ということが、もちろん政府も隠密のうちにやっておるようであるが、これが現実の問題としてはっきりやらなければならないという情勢が出てくる。こういう問題についても、あなたは仮定の問題と言われるから御答弁はないでしょうが、しかしわれわれ社会党としては重大な関心を持たなければならぬ。  特にこの際私が注意を喚起しておきたいと思うのは、先ほどもいわゆるMLFに参加しないとか聞きもしないことに御答弁がありましたが、私は何も日本がMLFに参加しますかというようなことを一度もお尋ねしたことはないのです。このMLFの問題において西ドイツが非常に核兵器について強い執着を持っておったことは、あなたは御存じだろうと思う。ところがこれがいわゆるマクナマラ委員会というものになり、このマクナマラ委員会が二月中旬二日間にわたって会議を開いている。この会議には、新聞の報道でありますが、とにかく欧州に展開されておる戦術核兵器戦略核兵器の性能や、使用に関するアメリカの基本的な構想、その立案の過程、使用決定の過程、目標選定などを明らかにしておる。そこで西ドイツは核戦略の立案に関する積極的発言権を増大してきたと見られている。こうした事実が出ておるわけです。これも新聞の報道であり、あなた方がそういうことを知らないと言われればそれまでだから私は申しませんが、ここには要するに目標の選定、アメリカの核戦略兵器や核戦術兵器の目標の選定などというものまでが戦略討議の中にNATOでは含まれておるという事実、であるから、うかつに戦略討議なんかに加わって――別問題であるなんと言いながら加わって、そうしてこういうところまで話が進む、参加してくるということになると、それは日本の意思でなくても、結果においてそうなりますれば、国連への加盟は外交的に阻止する、軍事的にはますます中共封じ込め政策の先頭に立って音頭をおとりになるというようなことでは、これは日本の将来の大局的な立場における平和と安全というものにはたして寄与するかどうか、外交的にも締め出し、軍事的にも封じ込める、こういう態度は、私は政府はとるべきではないと思う。この点について、ひとつ椎名国務大臣の率直なところを簡単に、簡潔にお答えを願いたい。戦略討議に参加しないならしない、将来あり得てもしない、また、こういうような中国核兵器による封じ込め政策に協力するような結論は出さない、こういう点についての政府の所信をひとつ承りたい。
  91. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日米安保条約のたてまえは、あくまで防衛を中心として考えられておるのでございまして、さらに日本自衛権の立場においてかような核兵器戦略について日米の間に討議がかわされるというようなことは、われわれとしては全然予想しておらないのでございますから、さよう御了承を願います。
  92. 岡良一

    岡委員 カエルの顔に水をかけるようなことをしておってもしようがないから、先を急ぎます。  国連局長、コスイギン提案に対してあなた方外務省はどういう評価をしておられますか。
  93. 星文七

    ○星政府委員 二月二日にコスイギン首相がジュネーブの軍縮委員会に対してメッセージを送ったことは御承知のとおりであります。従来は、この軍縮委員会で核拡散の問題につきましてはアメリカ案とソ連案というものと二つ出ております。両案とも非核保有国の安全と申しますか、保障に対する問題が取り上げられておりません。そういう意味で、コスイギン提案というものが非核保有国安全保障というふうな点について触れたということは、私は一歩前進ではないかというように見ております。
  94. 岡良一

    岡委員 私は、この点特にまじめに外務省に取り組んでいただけるかどうかということをひとつお尋ねしたい。それは、コスイギン提案というものが、まず自分は最初の核使用はしない、非核保有国には核攻撃は加えない、こういう条項を含めることについていわば提案をしたのですね。ところが、たとえばアメリカ一体これに対してどういう反応を示しておりますか。
  95. 星文七

    ○星政府委員 十八カ国委員会委員メンバーの受け取り方はいろいろ区々でございまして、ともかく一応こういう非核保有国に対する保障というものが打ち出されたということについては、先ほど来申しましたように、一応はまあ一歩前進というふうに見ておりますけれども、はたしてどういうふうに条約の中に取り入れるのか、あるいはまたその意味がどういうふうなことなのか、まだソ連側の詳細な説明を聞いていないものですから、十八カ国の委員会のメンバーも非常に留保的といいますか、リザーブした態度をとっているということが言えるのじゃないかというふうに思います。
  96. 岡良一

    岡委員 アメリカは、フォルスター代表は、コスイギン提案を歓迎する、慎重に検討したいという発言をしたということが新聞に伝えられておる。ところが、二月六日のニューヨーク・タイムズはこういっておる。「ジュネーブにおける前進」、こういう標題で、「ソ連のコスイギン首相は、ジュネーブにおける核兵器拡散防止条約の交渉を進捗させるため制限付の、しかし積極的な手段をとった。米国とその同盟国はこの重要な条約を締結するため進んでそれに続いた措置をとる機会を有しているのである。」こういって、先ほどからあなた方の言っておられるいわゆる米国のMLF構想のようなものは、核非拡散条約成立に対する主要な支障等から除去される必要があるであろう。いいですか、これはニューヨーク・タイムズの記事ですから、あとでお読みいただいてけっこうです。こういうふうにアメリカ世論はコスイギンの、まず最初に核兵器は使わない、核を持っておらない国には攻撃は加えない。この提案に対しては、少なくともニューヨーク・タイムズをもって代表されるアメリカ世論は非常な支持を与えていると私は見る。  その次には、アメリカについていうと、米国の上院の外交委の議事録、これは日米安全保障条約の改定に関する議事録であるから、もう五年前のものです。この中でこういう問答がある。共同防衛という問題について、日本憲法第九条との関連で上院の皆さんが議論をしておられる。その中でロングという上院議員が、「米国日本攻撃したとして、もしソ連が同様に、日本防衛義務を引受けるとしたら、米国はそれに反対するだろうか。」こういうそれこそ椎名大臣のお得意な、まさに仮定な、仮空な質問をしておる。これに対してハーターは、「日本憲法の規定上、相互防衛の保証を与えることはできない。」こう答弁をしておる。そこでロングさんが、「私は、日本がソ連のような外国から同様の保証を受けることに、米国が反対するかどうかと聞いておるのだ。」ハーターいわく「純然たる防衛協定だったら、反対しないだろうと思う。」これは、この核保障の問題については、たとえ五年前の記録であろうとも、非常に重要な私はアメリカ態度を示唆するものだと思う。  その次に、中国が二回の核実験をやった。その実験後の声明を、これは政府声明として出しておる。それを見ると、やはりコスイギンの提案したように、第一の核兵器使用国にはならない、非核保有国には核兵器をもって攻撃をしない、同時に非核武装地帯には核兵器を使用しない、こういう声明を中国政府声明として出しておる。二回の核実験のあとで政府声明を出しております。こういうように、現在アメリカもコスイギン提案を歓迎しておる。いわば核保有国が第一撃の核攻撃を加えない、非核保有国には核攻撃はしない、こういう提案を出しておる。中国もそれに非核武装地帯を攻撃しないという一項目を加えただけで同様趣旨提案をしておる。アメリカ世論も非常に歓迎をしている。MLFというふうな構想を破棄しようとまでの強い意向をニューヨーク・タイムズの論説で漏らしておる。私はこういう米、中、ソのこの核保有国としての態度というものは、非常に私どもとしては検討する必要がある、高く評価する必要があると思う。核軍縮が急速に進み得るということは――御存じのように、二十年間、国連総会やその他の委員会で何百、何千、何万回開かれながら、なかなかこれは容易に進まない問題である。したがって、これにからませて、これをわれわれは強く段階的な縮小から全面廃棄を希望するけれども、しかしこれはなかなか容易に進まないとしても、世界的に核保有国がこういう声明を明確に打ち出しておる、またその国の世論がそれを支持しておる。こういう条件の中で、たとえば日本安全保障をどう取りつけていくかという可能性がここに出てくるのじゃないかと私は思う。この点についての外務省の見解を聞かしてもらいたい。
  97. 星文七

    ○星政府委員 いま先生のおっしゃったことは一々ごもっともな御意見だと私は思います。しかし、軍縮措置実施にあたりましては、これは何べんも申し上げておることと思いますけれども、米ソ両国が合意している大きな原則というものがあるわけです。一つの原則はいわゆる軍事均衡の原則。すべての軍縮措置というものはいかなる国または国家群に対しても一方的に軍事的に利益を与えるものであってはならない。またすべての国の安全保障は平等に確保されるものでなければならないといういわゆる軍事的均衡の原則。それからもう一つは、一番大事なことでございますが、国際管理の原則。つまりすべての当事国がその義務を忠実に履行しているとの確信が得られるように、すべての軍縮措置は有効な国際管理、査察もしくは検証、こういうもので行なわなければならない。こういう原則がございますので、いまお述べになりましたようないろいろな点につきましても、こういった大きな二つの原則に照らし合わせて慎重に考慮していかなければならない、そういうふうに私は考えております。
  98. 岡良一

    岡委員 私はそういう原則の問題をお聞きしているのじゃない。それは米ソ両代表が一九六一年に国連において共同の決定として発表し、提案をした八原則です。しかしその後八原則というものがちっとも動いてない。私はそういうことを言うのじゃなくて、アメリカもさっき申し上げたように申しておる。ソ連はすでに率先して申しておる。中国核実験のあとで申しておる。共通するものは、自分たちは初めに核攻撃を加える国にならないということ、核を持たない国は攻撃しない、これは共通していることなんです。であるから日本がお灯明を上げるような、アメリカ核兵器に依存するのじゃなくて、アメリカの上院の会議録においても、日本の核の安全に関する論議がこういう形でかわされておるのだから、アメリカからもソ連からも中国からも、いわば核攻撃をしない、あるいは核攻撃を第一にしないというような安全保障の取りつけを考え得る条件がここにあるのではないか、私はそう思うので、そういう点について外務省としては積極的に善処すべきだと思うが、外務大臣の御意見をひとつ聞かしてもらいたい。
  99. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 自分から攻撃をしないということは、これは一歩前進であると思います。しかし核を持たないということとはたいへんな違いがある。ことにその国の対外政策がどういうものであるかということと照合いたしまして考えますと、ただ先制攻撃をしないということだけでは、私はその隣国として脅威が全然ないということにはなるまいと考えます。
  100. 岡良一

    岡委員 であるから、もしそういうことがあった場合には、またいろいろな条件が付されてもいいから、米中ソがこのような提案をし、このような考え方に立っておるならば、日本の安全と平和を核兵器から守るためには、このチャンスにこれらの国々からはっきり核不使用の誓約を取りつけ、この三つの核保有国によってかえって日本の安全と平和が核脅威から免れ得るというような積極的な姿勢で、ぜひそういう構想をすべきではないか。外務大臣の言うように、そういう約束をしたところでやるかもしれないからという考え方でいったのでは、これはもう核軍縮そのものがぶちこわしなんです。今日は核保有国非核保有国の対決の姿だ。人類は原子力でもって対決をしている。東の陣営や西の陣営、資本主義や共産主義という問題ではない。そういうせっぱ詰まった段階においてこういう提案があるのだから、こういうものを積極的に取り上げ、また相手国の真意も打診しつつ、まず日本安全保障というものをこれら三国の核不使用協定をとりつけることによって守ろうとする方向に政策を打ち出すべきであると私は申し上げている。それに対して、そういう約束をくれたってやれるかやれないかわからないなんて、そういうことでは、日本の平和と安全を守る責任感と誠意がないといわれても過言ではないと思う。どうなんですか。
  101. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 一種のユートピアと申しますか、そういうことは一つ理想としてはけっこうなことでございますが、しかし現実問題としてはその前にいろいろ踏むべき段階が多々あるように考えます。今後、まず十八カ国の軍縮委員会でただいま核拡散防止の問題に手を染めておる、それからまた核実験の禁止条約のもっと拡充強化も必要でありましょうし、いろいろな問題がまだたくさん残されておるときに、ただ日本核保有国あるいは保有せんとする国とどういう条約を結んでも世界の環境はなかなかこれに相応した状態ではないということを考えるのでありまして、その御指摘のアイデアそのものに対して私は別に反対はいたしませんけれども、実際問題としてはその前にとるべき段階が多々ある、こういうふうに考えております。
  102. 岡良一

    岡委員 私はそんなに簡単にそういうものが取りつけられるというのではない。しかし現実問題とあなたはおっしゃるが、現実にそういう提案をしているのだから、日本だけがそういう核不使用の協定を取りつけられなくても、拡散防止条約の中で日本が個別的あるいは集団的安全保障の権限を確保し得るか、あるいはまたその了解を取りつけ得るというような条件をつけるよりも、こういう核保有国の核不使用という取りきめをこの核拡散防止協定の中に織り込むことが当面核軍縮の前に必要な問題である。すでにそれを向こうから提案しているのであるから、これに対して外務大臣のような、そういう疑心暗鬼でおられては困る。  最後にお尋ねしておきたいと思う。外務省は核探知クラブとかいうことについてなかなか意欲を持っておるような新聞の報道になっておるが、どういうことになっておるか。
  103. 星文七

    ○星政府委員 昨年の国連総会におきましても核実験の全面禁止問題につきまして、科学的な方法でもって、いままで抜かれておりますいわゆる地下爆発というものを今後なくしていこうじゃないかという趣旨決議が出たわけでございます。スカンジナビア、特にスエーデンがそのイニシアチブをとっていろいろ進めております。私たちも、各国がおのおのその国の地震測定というものを開発していきまして、そして実際の核地下爆発が起こったか、あるいは地震の現象であるか、こういうようなことを見分けるような仕組みができれば、おのずからここに、核実験の全面禁止という、われわれが日ごろ非常に念願しておりますことができてくるのじゃないか、そういうふうに考えておりまして、スエーデンの提唱しております探知クラブという構想には、これは従来外務大臣国連で言われましたし、松井大使もそういうことを述べられたのでありますが、こういう行き方については、政府としては賛成でございます。
  104. 岡良一

    岡委員 最後に私の希望をかねて一点だけ質問いたします。   〔委員長退席、永田委員長代理着席〕  それは核実験の探知クラブをつくって――なるほど部分核停は査察問題で行き詰まって、とうとう地下実験が許されることになったのだから、そこで米ソの領土以外のところで核探知クラブをつくって地下核爆発実験を探知する。何カ国かが組み、お互いに共同探知する。しかし探知されたという事実は、それだけでは全面的な核停に通ずるかどうかということはわからぬ。私が聞きたいことはどういうことであるかということであるが、時間も過ぎましたので、私は一つの御提案を申し上げて、外務大臣の御所見を承りたいと思う。  それは先ほども申しましたように、いま世界は、いわば人類は原子力と対決をしておる。そのことは具体的に言えば、核保有国と核非保有国との対決ともいえる。その中において、特に核を保有し得る能力を持った核非保有国が核を持たないという決意の上に立ったときに、国際世論に対して非常に大きな道義的な力を持つことは当然予想されると私は思う。であるから、探知クラブを一歩前進をさせて、そうして非核クラブをつくる。イタリアなり、インドなり――インドは、この間もガンジー首相みずからがつくらないと言っているのだから、つくり得る能力を持った国が非核クラブをつくる。これらの国々が核非保有の共同宣言をする。スウェーデンも入るでしょう、イタリアも入ると言っているのだから、すでに国連総会提案しているのだから、入る。インドも、日本も、そうしてこれらの国々が能力を持ちながらつくらないという決意を明確に共同宣言の形で打ち出しながら、核兵器に対して非常な脅威を感じ、恐怖を感じ、そしてその全面的廃棄を願っておる国際世論の先頭に立つということが核軍縮を進めるゆえんである。同時にまた実験の全面禁止を進める大きな具体的なステップだと私は思う。そういう決意をあなた方は持っておるのかどうか、この際ひとつ明確な御答弁を願って、私の質問はこれで打ち切りたいと思います。
  105. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 非核クラブの結成そのものは、私もアイデアとしてはけっこうだと思います。しかしもし現実に非核クラブを結成するという段になりますと、核保有国というのはそのままでいいのかということの批判が当然出てまいりまして、実際問題としてその問題を放置しておいて、能力があってもつくらない国だけがそういうクラブを結成するという考え方になかなか同調してこないのではないか、こう私は考えます。でありますから、何らかその点の調整ができるならば、これは研究に値する御提案だと思います。
  106. 永田亮一

    永田委員長代理 石野久男君。
  107. 石野久男

    石野委員 私は、ただいま岡委員の質問になりました核拡散の問題に関連してお尋ねしたいと思います。  まず最初に、政府国連軍縮委員会に参加して、核拡散の問題についていろいろと論議に入っておりますが、その日本政府核拡散防止の問題についてどういう基本的な考え方をしておるか、このことをまず最初に私は尋ねたいと思うのです。このことを私が尋ねるゆえんのものは、先般の科学技術特別委員会で、星国連局長に核拡散について政府はどういうふうに考えているかという質問をいたしました。そのとき国連局長からこういうような御答弁があったわけです。核保有国が核の引き金を持ったまま非核保有国核兵器を持っていくということは、いま当面はアメリカとソ連の核拡散防止条約という中には含まれていない。その引き金の権利を他の非核保有国に移すということが核拡散になるというふうに了解しております。こういう御答弁があったわけで、私はソ連やアメリカがそういう解釈をしているならともかくも、日本政府が核拡散についてどういうふうに考えるかという問題について、星局長はそういうふうに考えると最初は答弁なさった。しかしあとでは、アメリカとソ連がそういうふうに考えておると思います、こういうふうに訂正なさいました。  私はここで外務大臣にお聞きしたいのは、日本政府国連軍縮委員会に参加して、核拡散防止協力するという場合の核拡散ということをどういうふうに理解しておるか、どういうふうに考えておるかということについて、まず最初にお聞きしておきたいと思います。
  108. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 科学技術の進歩は非常に進みまして、核兵器の開発が比較的容易になってきておるように思います。そういう段階において、核兵器の拡散を無制限に放置するということになりますと、核兵器がだんだん広がってまいりまして、局地的紛争の解決の具に供せられるというようなことになり、結局これが世界的規模における核戦争にまで発展する可能性、危険が予想されるという段階にだんだん発展してくるものと考えられます。したがって、早期にこの核拡散防止措置がぜひとも講じられるべきである、こう考える、これが核拡散に関するわが政府の基本的な考え方であります。
  109. 石野久男

    石野委員 核拡散防止の基本的な考え方は、なるべく拡散を防止したいということで、それはよくわかるのです。ただ、拡散という問題について、私ども国連局長からこの前聞きましたのによりますと、ただ核兵器のキーを渡さなければ、核兵器が各地に敬らばっても、それは拡散にならないのだという見解なんです。それは米ソの考え方であるということは私も承知しております。いいか悪いかは別ですよ。しかし日本政府も同じようにお考えになっているのかどうかということをここで外務大臣からはっきり聞きたい。私の尋ねたいことは、キーは保有国が持っておりますけれども核兵器の装置、装備を他の諸外国に配備してもそれは核拡散でないというふうに日本政府も考えているのかどうか、このことを私は聞きたいのです。
  110. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 この問題が多角的戦力体制問題のまさにキーポイントだ、しかしこれには引き金に手をかけさせなければ拡散にならないという立場をとる国もあります。しかし核兵器に近づくそのこと自体が拡散である、こういう意見の国もあり、なかなか問題がややこしくなっておる現状でございます。日本といたしましては、直接日本関係する問題ではございませんので、いまどっちか意見をきめろ、こう言われておるわけでもないので、この問題を明確にお答えすることは差し控えさしていただきます。
  111. 石野久男

    石野委員 これは差し控える、差し控えないじゃなくて、そういうことであるならば、政府国連におけるところの軍縮委員会に対して態度を留保する、あるいは全然参加しないという意味ですか。
  112. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 そういう差し迫った問題を突きつけられておらない段階でございますから、いまこれを仮想に政府見解として述べることは差し控えたい、こう申し上げておるわけであります。
  113. 石野久男

    石野委員 であるならば、この前国連局長は科学技術特別委員会で、核拡散の場合に、ソ連案でもアメリカ案でも、これは核保有国が他の国へ引き金を渡すことを核拡散というわけでありまして、持ち込み持ち込みでまた別の話でありますという答弁をしております。こういうふうに政府は考えておるわけですか。
  114. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 引き金に手をかけることが許されるというのならば、これは拡散だと思います。引き金の問題だけは抜きにして、ただどう核の運営等を行なうべきかというような協議に参加することすらもこれは拡散であるというような主張の国があるということを先ほどから申し上げております。
  115. 石野久男

    石野委員 協議に参加することさえもそれは核拡散であるというふうに主張する国もあるということですが、そういう国もあることは私も知っておりますが、日本がどういう立場をとるかということを私は聞いているんです。というのは、国連決議が一九六五年の十一月十九日に行なわれた。その国連決議の2のA項におけるところの考え方政府賛成したわけですが、どういう考え方でこの決議に参加したのですか。
  116. 星文七

    ○星政府委員 それは、たしか核拡散ということに対して抜け穴があってはならないということだと思います。つまりそれは、核拡散によって、核拡散ということが、核兵器の使用権、参加権というものを含んではいけないという点でそういうことが提案されたのではないかというふうに考えております。
  117. 石野久男

    石野委員 この抜け穴という問題は、使用権とかただそういうような問題だけでなかろうと私は思うのです。このことの意味するものは、あとでC項に書かれております「同条約は、全面完全軍縮、特に核軍縮達成への第一歩とされること。」こういう意味を含めてこのA項ができておるものだ、こう思います。こういう態度政府がとっておるということは、いま外務大臣がこの核拡散に対して政府の答弁を差し控えさしてもらいたいということとは、私はいささか理解しにくい矛盾があると思うのです。政府は、そういうように国会に対しては政府態度を明確にすることを差し控えさしていただきたい、こういうふうに言っておいて、外国に行った場合には、この問題に対していろいろな所見を述べるというようなそういう矛盾した態度、国民にはほおかぶりしておいて、外に対しては処置をするということじゃよくないと思うのです。この際核拡散に対して私どもは疑義を持っておる、この点について政府態度を明確にしてもらいたいと思うのです。いま一度申しますると、核兵器の保有について、国がキーを持っておる、そのキーを渡さなければ核拡散にならないのだという考え方アメリカやあるいはソ連が持っておることはよく知っております。けれども、われわれからすれば、キーを幾ら持っておっても、その装置、兵器が現実になければキーは作用しないのです。だから装置をどこかに配備する、配置するということがなければキーの作用は起こってこない。だから装置、装備がどこかに配置されている場合には、キーは完全にその作用を開始し得る、その場合、キーを使うか、使わぬかの問題は、キーを保有している国だけの問題で、装置された国の意思は入ってこない。その装置がされていなければ、核兵器の被害あるいは活動することから排除されるべきものも、装置されておるということによってキーの作用を受けることになってくる。だから、われわれは核兵器が配置される、あるいは配備されるということ自体が拡散だ、核兵器の拡散の問題については、これは切り離すことのできない問題だと考えております。  特に原爆の被害を受けた日本の国民感情として原子爆弾というものは絶対に許してはいけないのだ、だからこそ日本には核兵器を持ち込んではいけないということを言っているわけです。そういうたてまえからすれば、核兵器の配置という問題はきわめて重要だし、またその問題を問題にしないで日本政府国連に行って軍縮に参加するということは、日本の国民の意思を代表していないものだと言わなければいけない。そういう意味で私は聞いた。だからその点について外務大臣に、その核兵器の配備の問題は、この拡散の問題とどういう関係があるかということを明確にしていただきたい。
  118. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 ことばの観念の規定の問題として、ちょっと私から先に申し上げますが、従来拡散防止ということばで一般に観念せられていたのは、その核兵器をコントロールするものが広がることがぐあいが悪い、そういうものを防止しようという意味に使われていたと思います。先生の言われるように、核兵器の配置が地域的に広がることがぐあいが悪いことは、これも当然でございまして、その問題も核軍縮一つの題目ではあると思いますが、あれは非核武装地帯というような表現で理解されていたと思います。先ほど大臣国連局長が拡散ということばの定義づけを控えましたのは、実は拡散防止協定というものができているわけではない、できない、そこでどういう定義が下されるかわからないから控えたわけでございまして、一般に従来この問題で拡散ということばが理解されているところは、先ほど私が申し上げましたように、兵器を使用するものの範囲が広がることを防止する、そういう意味合いであると思います。
  119. 石野久男

    石野委員 国連条約ができれば、その条約の中で核拡散というものはどういうふうに規定されるかもわからないから、それで答弁を留保したのだ、こう言われました。  大臣にお尋ねしますが、外務大臣は、日本の国が国連に参加して軍縮の協議に入る場合、日本の国の意思を持たないで入るのですか。諸外国が、たとえばアメリカならアメリカが、あるいはその他の国がこう言うからそれに入るのだという立場でお入りになるのですか、どうですか。
  120. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 あまり会議をしないうちに自分の考えだけをこちこちに固めて、だれが何と言っても言うことをきかないというのなら、あまり会議なりいろいろな仲間同士に入ることが大体間違いである。そこはやはり流動的な考え方を持って、そしていろいろ仲間同士で話し合いをして、漸次考え方が固まっていくのではないかと思います。
  121. 石野久男

    石野委員 あまり子供だましのような答弁をするのはやめたほうがいいと思う。われわれが自分の意見を持たないで入っていって、それで向こうと仲よくして行けるというような考え方は、それはいかにも穏やかに見えるが、しかし民主主義というのは、自分の意見を持っていって、他の意見とぶつかり合わす、そのぶつかった中で協調し、話し合いをしていくというのが民主主義であると思います。だからどういう意見があろうとも、その意見を持ち込むことが大事なんですよ。日本の外交にはそういう意見を持って行くという意思はないのですか、外務大臣。そういう意見を持っていくという意思はないのですか。外務大臣にお尋ねします。
  122. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ですから、大体の問題を十分に研究して、そしてあらゆる場合に準備を整えて出かけるということが必要だと思います。
  123. 石野久男

    石野委員 研究して準備をしていくということは、これは会議に参加する前の準備段階の態度なんです。すでに会議には参加しているのです。そして決議も行なわれているのです。意思が反映しないで、この決議が行なわれるはずはない。だから、日本政府にそういう意思がないのかどうかということを聞いているのです。国連局長がこの前からたびたびわれわれに答えていることは、キーさえはずさなければ、それは核拡散にならぬのだ、だから兵器はどこへ配備をされても、それはいまのところ米ソの関係では問題でありませんという答弁なんです。確かにそのとおりです。しかし、こういう答弁は、これは大国が、持っておるものだけが自分の威力をそこに保存することにもなってくるし、それからまた、われわれが憂えるところの核拡散の本質的な内容というものは、それで防げるわけじゃないのです。だから、私たちのいま考えている、特に日本が原爆を受けているそういう立場からする核拡散に対する態度というものは、核兵器の拡散に対する態度というものは、常にそのキーをどのように数多くしないようにするかということももちろん問題なんだけれども、それ以上に兵器それ自体と配備の場所を多くしないことが大事だと思います。それどころか、完全に、全面的にこれを廃棄することを望んでおるのが、われわれは日本国民の感情だと思うのです。世界のどの国よりも日本はそれを主張し得る条件を持っておると思うのです。外務大臣はその条件をなぜ使わないのですか。それを使うことが日本の外交に不利になるのですか。私は、こういう問題については、もっと国民の知りたいということに対して、まじめな答弁をしてほしいと思う。私たちは、いまこの軍縮会議の中で、核兵器の拡散という問題については、コントロールする国がふえなければいいだけだというような米ソの考え方に反対です。私たちは、それはそれだけでなしに、兵器そのものがあっちこっちに配備されないことを望んでおるのだ。政府はそのことを国連の中で言わないのかどうか。そのことを私ははっきりしてほしいというのです。
  124. 星文七

    ○星政府委員 私、石野さんに別の機会でお話したことは、いま大体御指摘のとおりなんですが、アメリカ案とソ連案というものが、二つジュネーブの十八カ国軍縮委員会に出ている。それの大体の考え方は、つまり核兵器の管理ということが問題だと思います。それが通常われわれが考えている核拡散の防止ということなんだということは、いま先生もたびたびおっしゃったとおりなんです。これと、それじゃ、核兵器が方々にいろいろ配置される。管理ということを離れて、いわゆるキーというものを離れて核兵器が世界各地に配備されている。これも実際だれも否定し得ない事実だと思います。こういう状態というものは、戦後の冷戦の結果出てきたことは御承知のとおりであります。各国の安全保障問題と非常に密接な関係を持っていることもおっしゃるとおりだと思います。したがって、こういうふうな事情を考慮することなく、直ちに核兵器の配備というものを禁止する単独の措置をとるということは、これは実際あまり現実的な方法ではないのじゃなかろうか。東西の核兵器及び通常兵器のすべてに関する実質的な軍縮措置の一環として、こういうことがとられていくべきであろうというふうに考えておりまして、拡散防止というものとちょっと観念が違うのじゃないかということを考えております。
  125. 石野久男

    石野委員 それじゃお尋ねしますが、国連決議のA項によって書かれております「核兵器を拡散しうるようないかなる抜け穴も設けない」ということのこの「抜け穴」ということの中には、配置は入っていないのですね。
  126. 星文七

    ○星政府委員 私は入っていないものと思います。ただ、核の使用に参加する、そういうことを許してはいけないのだということが、欧州多角戦力というものを頭に置いての規定であるというふうに考えております。
  127. 石野久男

    石野委員 MLFに参加するとか参加しないという問題は別にして、私どもは、いま日本政府軍縮委員会に参加する態度というものの中に、この「抜け穴も設けない」ということの意味は非常に重要だと思っているんです。この重要な意義づけを特に日本などが積極的に主張しているということの中には、そういう配置の問題について積極的な意見がなければならぬと思います。しかし、ただいまのお話を聞いておりますると、日本政府は、コントロールをするということだけで、数をふやさなければ、配置の場所が各所にふえても、そのことは核拡散としては今日では考えていないんだ、そういう考え方国連に参加しているんだというふうに私は理解をいたします。それでよろしいですね。大臣に聞きます。  そうしてそのことは、同時に、国民の考えている核兵器を持ち込むという問題については、防衛の手段がなくなるということにもなります。先ほどからたびたびあなた方がおっしゃっておるように、日本には核兵器を持ち込むような場はないんだから、心配せぬでもいいということを言っておるけれども、そうじゃない。この軍縮委員会で出ているところの「抜け穴も設けない」ということの意味は、国連局長の言うような意味であり、ただコントロールだけだということになりますと、配置というものはどこへしてもいいんだ、日本だけは配置されることは拒否するけれども、世界の各国に配置することは日本賛成しますということになる。こういう態度になっては私はいけないと思います。だから、そういう意味で、私は配置の問題については積極的な国連におけるところの発言政府はすべきであると思います。大臣にその点をお聞きしておきたい。
  128. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日本は唯一の被爆国として核兵器持ち込みを許さない、事前協議の対象としてこれを指定し、その持ち込みを許さない、こういう考え方を今後も続けていくのでございます。  他の国がこの持ち込みを許すか許さぬかというような問題は、その国が自主的に考えるべき問題であって、核拡散の定義をする場合に、これをコントロールする力を持っておる、そういうことが眼目でなければいかぬ、こう考えます。
  129. 石野久男

    石野委員 私は、時間がありませんから、あまりお尋ねできないのですが、この問題については、いまの外務大臣の答弁は私は非常に不満足だし、実を言うと、理解もしにくいんです。  核兵器持ち込みは、その持ち込まれる国の自主的な立場によるんだ、こういうようなお話です。それでは、拡散という問題についての危険性というものの排除は片手落ちになる。コントロールするという、数をふやさないということも、一つ拡散防止の方法だと思います。けれども、先ほど私が言いましたように、コントロールするのは、装置、兵器があるからコントロールするのであって、兵器がなければ、幾らボタンがあっても作用しないんですよ。だから、そのボタンの作用が起きないようにするためには、装置を置かないことが大事であり、兵器を持たないことが大事である。拡散防止がそういう核兵器拡散防止をねらいとするならば、その装置配置というものを排除するような立場でなければいけない。そうでなければ、米ソ間で片方が配置をすれば、片方も配置をする。全世界が核の兵器でおおわれてしまうという結果になる。そのことを日本外務大臣はよしとしているかどうかということです。私はそういうことはよろしくないと考えているんですが、そういう問題についてはっきりした態度を言うべきである。それでなければ、日本の国の自主的な立場がない。これはアメリカの言うとおりのことを外務大臣は言っているんですから、それじゃよくないと思うのです。
  130. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 それは今日の世界情勢下においては、やはり力の均衡ということが必要であります。それは各国の選ぶところにまかせなければならぬ、こう考えます。
  131. 石野久男

    石野委員 それじゃ私はこれで終わりますが、いまの答弁は非常に不満です。そして、この問題は今後わが国が軍縮会議に参加するにあたっての基本的な態度として、もう少し煮詰めなければならぬ問題だと思います。この問題については、他日私は外務大臣または総理の所見も承りたいと思っておりますので、きょうは時間がありませんから、これで終わります。
  132. 永田亮一

    永田委員長代理 戸叶里子君。
  133. 戸叶里子

    戸叶委員 いろいろな問題は次の機会にいたしまして、わずかな時間に、韓国に日本の漁船が拿捕されておりますが、この問題について二、三お伺いしたいと思います。  去る十四日に日本の漁船の第五十三海洋丸が韓国に拿捕されて、この問題は国会でもたびたび取り上げられておりますけれども、どうも政府態度に、どうするのかというようなはっきりとした態度が見えられませんので、私はその点について、はっきりきょうはお伺いしたいわけです。  まず第一にお伺いしたいことは、韓国のほうは専管水域であったということを言っておりますが、政府がはっきりさせておることは、共同規制区域に日本の漁船がいたのだ、これを韓国が不当にも拿捕したのだ、しかもその中に乗っていた人たちで逃げて来られた人の話を聞いても、非常にひどいことをしている、今回韓国のとった行為は不当なる行為である、これはまず第一として言われますね。
  134. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 なお、事実を十分に突き詰めたいと思っておりますが、わがほうでは韓国の漁業専管水域の区域から四マイル半離れたところより中へ近づいておらない。そこで初めて向こうの巡視艇に臨検を受けた。この場所は前から変更がないというように報道されております。もしそのことが事実であるとすれば、これは韓国はいわゆる協定違反を犯しておるということになると思います。
  135. 戸叶里子

    戸叶委員 まず協定違反を犯している、これが第一点です。  そこで、私どもが日韓条約を審議しておりますときに、日本のあの条約に対する解釈のしかたと、韓国があの条約を解釈しているしかたとが、非常に解釈においての違いがあったということで、私どもはあの条約に反対をしたわけです。それも一つの理由であったわけです。反対の理由の一つとしては、お互いの国会においての速記録を見ても、条約の内容の解釈が違っているということがあったわけです。そういうことがだんだんにあらわれてくることを私どもは遺憾とするものですが、漁民の人たちは、今度の条約を結べばもう安心して漁獲ができるのだと思っていたやさきにこういうことがあっただけに、その打撃は大きかったと思うのです。私どもがあの条約を審議しておりますときに、韓国では共同規制区域内での旗国主義というものについては反対であるというような意思表示をしたことがございました。これが新聞に出たことがあったのですが、まさか韓国の人たちは、旗国主義ということについては反対の気持ちは持っていないのでしょうね。この点は徹底しておりますか、どうですか。
  136. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 旗国主義の問題にも触れますけれども、向こうは専管水域内である、こう言っておるのであります。でありますから、旗国主義に対する考え方が食い違っておるとは私は認めておりません。
  137. 戸叶里子

    戸叶委員 旗国主義に対する考え方は違っていない。そこで、韓国のほうではあくまでも専管水域であると言い、日本は正しいデータに基づいて共同規制区域の中であったということを言っている。こういう争いをしているうちには私はなかなか解決はつかないと思うのです。そこで新聞を見ますと、韓国のほうは韓国の国内法によって日本の拿捕した漁民を裁判にかける、そして韓国の国内法で処罰すると言っておりますけれども、これに対してどういうふうに対処なさるおつもりですか。こういうことを言わしておいていいのですか。   〔永田委員長代理退席、委員長着席〕
  138. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これは報道だけでありまして、どうも韓国の当局においてはさようなことを考えておらないようでございます。
  139. 戸叶里子

    戸叶委員 韓国のほうでそういうことを考えて発表しているというのは、それじゃうそですか。韓国はそう考えておらないのですか。
  140. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 こちらのほうでもその点が非常に問題でございますから、その点を調査をさしたのでありますが、さような気配はないということであります。
  141. 戸叶里子

    戸叶委員 韓国で裁判をするというようなことを言っていない、その点だけでもはっきりしたことはよかったと思いますが、ただ問題は、拿捕された漁民を一体いつまでに帰してもらうおつもりなんですか。早く帰せ、早く帰せと言っても、ああいう国ですから、なかなか帰さないかもしれない。いま外交交渉で万全の措置をとっているということを政府はおっしゃっていらっしゃるようですけれども、外交措置で万全の措置というのは、具体的にどういうようなことをやっていらっしゃるのでしょうか、お伺いしたいと思います。
  142. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 腕ずくで奪い返すということはいたしません。あくまで外交的措置でやって、問題の究明はそのあとからでもいいのだ、とにかく漁民を釈放してもらいたいということを、あらゆる段階の当局に対して厳重に申し入れてあります。
  143. 戸叶里子

    戸叶委員 それだけではなかなか片づかないのじゃないですか。何日までに帰せとか、すぐ帰してほしいとかというような話し合いをしなければ、そういうことをしている間、やはり留守家族の人の苦しみということも考えてみたら、私どもはやりきれない気がするのです。不当なことをしないのに引っぱられているということに対しては、私たちはほんとうに憤りを感ずるものです。だからやはりもっと政府は強くなって、こういう不当な行為はやめるべきだということをなぜはっきり言えないのでしょうか。
  144. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 はっきり申しておるのであります。
  145. 戸叶里子

    戸叶委員 それで、言っても何とも解決がしないということなら、どういうふうな手段をおとりになりますか。
  146. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 まさか実力で奪い返すというようなことはいたしませんが、昨日も金大使が見えまして、――ぜひ即刻釈放してもらいたい、そして今度の問題の究明をして、今後これが起こらないように、そしてまた今回の事件についての善後措置及び将来の防止方法というような問題を逐次やっていかなければいかぬけれども、とにかく早期に釈放してもらいたいということは、もうソウルの大使館から外務部に申し入れてあります。何回も申し入れてある。決してなまぬるいような折衝をしておるわけではない。ただ所管は民政部だそうであります。民政部の中に非常に強硬な意見があるということを聞いておりますが、どういうふうに強硬なのか、その点まだ確かめておりませんけれども、その点は万遺憾なきを期して向こうにかけ合っておるわけであります。
  147. 戸叶里子

    戸叶委員 政府としては万遺憾なきを期していらっしゃるでしょうけれども、相手の国はやはり専管水域であったという、そういう判定のもとに日本の交渉を受けているわけですから、なかなかそういう形では解決がしないのじゃないかと思うのですけれども、金大使は、まず第一に漁民を帰してほしいと言ったときにどういう返事をされたのでしょうか。
  148. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 一々だれがどう言って返事がどうだったということは、これを詳細に申し上げることは控えさしていただきますが、決してただぼんやりしておるわけじゃないのでありまして、こちらのほうにはちゃんと計器が備えてあって、その計器の上からいって東経百何十度、北緯何十度、その地点は何時現在においてどこであったというようなことについて十分に証明を出して、そうして向こうの返事を迫っておる、こういう状況でございます。向こうのほうが多少かたくなって、柔軟な態度で判断をしておるのかどうかちょっと疑わしいような状況にもありますので、その点はあまり短兵急に、大声を出してやったからといって努力したということになるわけでもない。そこはひとつおまかせ願いたいと思います。
  149. 戸叶里子

    戸叶委員 おまかせしたいのですけれども、なかなかはかどらないのと、政府が少し弱腰だという空気がちまたにあふれておりますので、それもお伝えしておきたいと思うのです。  そこで、最後にもう一点伺いたいことは、今回は当然その形で一両日中にぜひ片づけていただきたいのですが、どうしても片づかないときは、漁業協定の紛争に関する条文が九条にございますね。仲裁委員を三人設けて解決するということがございますけれども、それまでいかなければならないような事態が起きないかしらと思うのでございますが、この点の政府の見通しはいかがでございますか。
  150. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 そういう仲裁裁定にかけるというようなことになると、これはますます長くなるので、そういうことのないように即刻解決をしたい、こういうことでまずその解決の端緒として、釈放してくれということを言っておるのです。それからどっちが悪いかというようなことはゆっくりやろうじゃないか、こう言っておるのです。
  151. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは要望として、日本側の探知した科学的に調査した方法によってみても、日本が間違っておらなかったということがはっきりしておるのですから、その点をもっとはっきりと韓国に知ってもらって、そして日韓条約政府は批准したといわれておりますが、批准した最初のお祝いとしてこんなばかなことが贈られたなんということはとても許されないことですから、こういう問題を一刻も早く解決していただきたい。これを要望いたしまして、時間がありませんので私の質疑を打ち切りたいと思います。
  152. 高瀬傳

    高瀬委員長 本会議散会後再開することとし、暫時休憩いたします。    午後二時二分休憩      ――――◇―――――    午後三時三十九分開議
  153. 高瀬傳

    高瀬委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  海外移住事業団法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますのでこれを許します。永田亮一君。
  154. 永田亮一

    永田委員 最初に大臣にお尋ねいたしたいのであります。それは海外移住考え方と申しますか、あるいは今後のあり方についてお尋ねをいたしたいのですが、移住というものが日本で行なわれましてからごく最近までの考え方は、何といっても日本は人口が多過ぎる、余った人口のどこか有効な使い道はないかというような考えがあったと思うのです。たとえば農村の次男とか三男とかいう人たちが職がない、その失業救済というような意味で、いやなことばですが、よく棄民ということばを使われておったと思うのです。ところが最近の日本の情勢を見ますと、いまはもうそういうことは当てはまらなくなってきたように思われます。人間が人手不足で、農村の二、三男をさがそうとしても、いまは農村はからっぽになっておる。そういう時代でありますので、人口問題につながる移住という考え方は、今日では当てはまらなくなってきたと考えるのであります。  そうすると、これからの移住考え方、今後の移住のあり方をどういうふうにお考えになっていらっしゃるか、大臣、最初にお答えを願いたいと思います。
  155. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 御指摘のとおり、ごく近年に至りまして、日本の高度経済成長の結果、労力がだんだん不足してまいっております。したがって、従来のように海外移住をしようという希望の者がきわめて少なくなって、現在激減しておる。しかし全然それでは海外移住の希望者がなくなるかというと、そういう様子ももちろんない。やはり細々ながら移住の希望があり、また海外の日本移民に対する需要も決して衰えておらない、こういう情勢でございます。したがって、この段階にまいりますと、ただ食うための移住、過剰人口のはけ場を求める移住というような考え方を捨てて、新しい理念に立った政策を立てなければならぬということになるわけでございます。われわれとしては、量よりも質、そういう意味に移住政策を立てざるを得ないのではないか、またこれが移住先の各国の希望を満たすゆえんでもある、こう考えまして、農業に限らず、工業その他の技能をもって移住先の国の諸種の建設に積極的に貢献する、協力する、そういうたてまえをとっていこう、こういう考え方に変えなければならぬ、かような方向に施策を進めているという現状であります。
  156. 永田亮一

    永田委員 時間が午後になって、もうだいぶおそくなったのですが、まだ田原先生から御質問があるようでありますから、私はきょうの質問の核心の問題をお尋ねしたいと思います。  それはどういうことかといいますと、この移住事業団に対しては政府もずいぶん金を使っておるのです。われわれも予算をとるときに一生懸命走り回ったわけであります。この予算を見ましても、これは去年の分でありますが、外務省の予算で、交付金が十億二千五百万円ある。産投の出資金も六億、運用部の借り入れ金も六億あるというようなぐあいで、予算の総額が二十八億幾らという金を事業団が使っておるわけであります。私どもはこの相当な金額が有効適切に使われておればもちろん歓迎すべきことであるし、われわれもそれを期待いたしておるのでありますが、最近、私は妙なうわさを聞きました。それは、去年の十一月ごろに、去年の七月にさかのぼって大幅な昇給、ベースアップあるいはレベルアップを行なったということであります。そういう事実があったのかなかったのか。しかも、そのやり方が、聞くところによると、部長、課長クラスの上のほうに非常に厚く配給があって、下のほうの職員は一号か二号上がった者もあり、上がらなかった者もあるということを聞いたのであります。廣岡理事長にそのベースアップなりレベルアップをしたかどうかということの事実をまずお尋ねいたしたいと思います。
  157. 廣岡謙二

    廣岡参考人 昨年の十一月に、ただいまお話のありましたベースアップというような意味でなくて、事業団内部の均衡をはかるとともに、ほかの公団、事業団等との不均衡を是正するという意味におきまして、格づけの変更ということを実施いたしました。
  158. 永田亮一

    永田委員 それはどこにそういう金があったのですか。そしてアップした金額の総額はどのくらいでありますか。ちょっとお聞かせをいただきたい。
  159. 廣岡謙二

    廣岡参考人 お答えいたします。総額はただいま調べさせて御返事いたしますが、財源は人件費であります。
  160. 永田亮一

    永田委員 私ども国民の一人として常識的に考えるわけでありますが、一般の民間の会社なんかで考えてみますと、事業が非常に順調に発展をして、利潤も上がるという場合には、職員の給料を上げたり重役の給料も上げる、あるいはボーナスも上げるということはけっこうでありますが、移住事業団の成績というと、こればかりじゃないと思いますけれども、最近の移住者の数だけを考えてみましても、昨年、ことしあたりは非常に減ってきておると思うのです。これは政府から発行された統計を見てみてもおわかりと思いますが、戦後の移住者は、二十七年度に始まりまして、五十四人と書いてある。二十八年度が千四百九十八人、二十九年度が三千幾ら、三十年度も三千幾ら、三十一年度は六千幾らに上がってきまして、三十二年、三十三年、三十四年は七千人台の移住者があったわけです。三十五年度が戦後の最高でありまして、三十五年度には八千三百八十六人と書いてある。ところが三十五年度をピークにしてあとは減る一方であります。三十六年度は六千幾らに減ってしまい、三十七年度は二千人台になる。三十八年度は千五百人、三十九年度は千人内外、こういうように千人を割ってきたわけであります。これは普通のわれわれの常識で考えますと、三十五年度に八千幾らもあったものが今日では千人を割ってしまうとなると、これを一般の会社等の売り上げ高と比べるのはちょっと適当じゃないかもしれませんが、五年前のピーク時代に八千人あったものがいまは千人以下になっておるということは、それだけ事業が不振と考えても差しつかえないと思うのです。普通の会社で売り上げ高が八分の一に減ってしまったというようなことになれば、大会社ではおそらく重役はボーナスを返上するだろうし、職員のベースアップもやらない。そういうことをしなければ、会社は保っていかない。中小の企業であれば、八分の一に売り上げが減れば、あるいは倒産をしておるかもしれない。こういうときに事業団が、これは親方日の丸だからといって、逆にベースアップも普通にやるし、ボーナスも四・二カ月と書いてありますが、理事以下職員みな四・二カ月もらって、その上に部課長連中が五号俸も一ぺんにアップした。これはどう考えてもおかしいのじゃないか。椎名大臣、ちょっとお聞きになっておってどうお考えになりますか。これは外務省が監督官庁でありますので、事業団のこういうやり方を事前にお聞きになって認められたのか。あるいはこれは事業団内部でかってにやれることかと思いますけれども、こういうことを監督官庁としてあとでお聞きになってどうお感じになるか、ちょっとお漏らしを願いたいと思います。
  161. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 移住事業団の場合は特殊な事情があるのでありまして、他の事業団と比較してもともと著しく均衡を失しておった。こういう状況にあったのを是正の意味でやった、こういうことでありまして、これは理事長の権限でできることでございますから、問題は、程度問題としてこれがはたして適当であるかどうかという問題に落ちつくわけであります。  数字上の問題については、所管局長からお答えいたさせます。
  162. 廣田しげる

    ○廣田政府委員 事業団が昨年の十一月にいわゆる給与の格づけをいたしまして、部課長のところで五号俸までアップしたということでございますが、全部が全部五号俸アップしたわけではなくて、先ほど事業団の理事長から御説明があったとおり、ほかの事業団との振り合いで、特に経験年数の高い者が五号俸までで、もちろんその振り合いをとれば五号俸以上にもなる人がいたそうでありますが、最高限を五号俸にしてやったということで、それ以下あるいは二号俸、三号俸で調整された者もいるようであります。
  163. 永田亮一

    永田委員 さっきちょっとお尋ねして御返事があったかと思いますが、どこにその金があったのか、もう一度廣岡理事長に伺いたい。
  164. 廣岡謙二

    廣岡参考人 人件費から出しております。
  165. 永田亮一

    永田委員 人件費といいますと、一番初めに振り当てた人件費の中に余分があったわけですか。
  166. 廣岡謙二

    廣岡参考人 欠員分とかそういうようなものから捻出すれば、それだけ引き上げるだけの財源があったということで実施したのであります。
  167. 永田亮一

    永田委員 それでは、総額どれだけ上げられましたか。
  168. 廣岡謙二

    廣岡参考人 ただいま調べましてすぐ御返事いたします。
  169. 永田亮一

    永田委員 最高五号俸アップとおっしゃいましたね。五号俸アップですか。
  170. 廣岡謙二

    廣岡参考人 その間の事情を簡単に御説明いたします。  ただいま廣田局長から大体のところ御返事がありましたように、この海外移住事業団が三十八年七月に発足いたしまして、従来ありました海外協会連合会と振興会社、この二本が一本になりましてその業務を引き継いで発足いたしたわけでございます。その両者から引き継ぎました職員の給与は、当時まだ給与規程がございませんでしたので、とりあえずその当時におけるその人たちの格づけできめたわけであります。その後、振興会社と海協連との間にも給与の不均衡がございましたので、この点を是正いたしまして、またその後給与規程が、三十九年の四月だったと思いますが、きまりましたので、この給与規程から見ますと、先ほど局長から御説明がありましたごとく、事業団の内部においても不均衡な点がある、またほかの事業団、公団の関係を見ましても著しく不均衡な点が見受けられたわけであります。特に五等級とかあるいは四等級の比較的若い職員、新規採用の諸君、そういう人たちは、ほかの事業団、公団と比べましてもさしたる格差はございません。ただ経験年数の長い、したがって比較的上級の幹部の諸君の給与を比較いたしますと、これは著しく安いというような状況になっております。したがいまして、この際にこれを是正しておく必要があるということ、しかも新規に採用して入ってきた人が五年たち十年たち二十年たった際に、これらの上級の人たちと比べてみますと、それよりもはるかに高い号俸の給与になるというような内部の事情もございましたので、彼此いろいろ勘考いたしました結果、部課長、調査役、それから在外の支部長の者につきましては最高五号俸の範囲内でこれを調整する。その以下の四等級の者、五等級の者につきましては、在職年限また海外の在勤年限等を考慮に入れまして、四等級の者につきましては二号アップ、五等級の者につきましては一号アップというようなことでもって、総体的な調整をいたしたわけでございます。
  171. 永田亮一

    永田委員 ほかの事業団との比較というのは、どういう事業団のことを言われるのですか。
  172. 廣岡謙二

    廣岡参考人 海外協力事業団、これが比較的この事業団と発足を前後いたしましたので、この事業団、あるいは雇用促進事業団等の事業団との関係を考慮いたしました。
  173. 永田亮一

    永田委員 この金は、民間のものと違って、税金を使っているのですから、私はやかましく申し上げるわけなんですが、ほかの事業団と比較をして部長は同じようにするとか、課長は同じようにするとおっしゃいますけれども、これは民間のもので考えてみると、たとえばAという紡績会社が非常に成績がいい、鐘紡なら鐘紡が非常に成績がいい、そうなれば鐘紡の重役はボーナスをたくさんもらい、職員は給料をたくさんもらってもいいですよ。ところがBという紡績会社は業績がよくない、よくないけれども、鐘紡がいいから重役はみな同じにする、部長クラスは鐘紡が十万円取っているからこっちも十万円だ、そういうことはちょっと常識では考えられないわけですね。この移住事業団というのは、ほかの事業団に比べてさっき申しましたように、民間で言えば事業不振なんですよ。もう倒産寸前にあるような状態だと私は思う。それがほかのものと同じようにしなければならぬ、これはどういうことなんですかね。
  174. 廣岡謙二

    廣岡参考人 お答えいたします。  なるほど実数の上から見ますと、海外移住渡航者数は逐年減っております。先ほどのお話のとおりであります。しかしながらそれが減る一方であるかということを考えますと、昨年の総理府の世論調査におきましても、移住希望者は逐年漸増の形にありますし、それからまたこの一両年の顕著な事例といたしまして、私どもが感じますことは、青少年層、特に青年層の海外に対する関心というものが非常に向上してまいっております。また、事実、船で渡航いたします者を見ますと、従来は家族が非常に多かったのでありますが、最近は単独青年の渡航者というものが非常にふえてまいっておる。数が著しく減ったといいます一つの理由は、従前は家族数として一家族五人、――七、八人というものが渡航いたしておったのでありますが、家族数はなるほど減りましたけれども、単独青年の数はこれに比較いたしましてウエートが非常に高まりつつあるというこの事実。それからまだブラジル等に渡航いたします技術移住者が逐年激増いたしております。昨年と比べましても、この両三年の実績を考えてみましても、この技術移住者の渡航というものは数において非常に飛躍的にふえているという事実がございます。  また、御承知のようにカナダとかアメリカにおける移住の道が非常に大きく開かれまして、特にカナダ移住につきましては、これが軌道に乗りつつあるというような事実を見ますと、私は、先ほど大臣のおっしゃいますように、なるほど量におきましては減ったかもしれませんけれども、その質におきましてはかなり、この質的転換によって海外移住の新味というものがあらわれつつあるのではないかというような見方を私はいたしておるのであります。しかも今回渡航費が補助金に切りかえられましたことなんかも、今後移住に対する関心のムードを盛り上げてまいるものじゃないかと考えます。  また、現地におきましても、何と申しましても移住者の定着、将来への安定ということを施策の中に十分考慮してまいらなければならぬのでありますから、来年度の四十一年度の予算におきましても、定着、安定のためのいろいろな施策を盛り込みまして、そうして内外ともに、移住者の定着、安定のための施策を講じてまいりたいと努力いたしておるのでありまして、私は、先ほどお話にありましたような、移住というものがすっかり姿を消してしまうというようには実は考えていないのであります。今後もそういうことで努力いたしてまいりたいと思っておる次第でございます。
  175. 永田亮一

    永田委員 先ほどベースアップをされた、最高五号俸アップとおっしゃいましたが、部長さん、課長さんはみんな五号俸のアップだということですか。課長補佐あたりは三号俸ぐらいですか。その基準をちょっとおっしゃっていただきたい。
  176. 廣岡謙二

    廣岡参考人 担当課長から説明いたします。
  177. 増田甚平

    増田参考人 それではお答えいたします。  部課長につきまして五号俸アップというのは、一律に五号俸アップというわけではございませんで、部課長の中でも不均衡の著しい者は五号俸の範囲内で調整する、格づけのし直しをするということでありまして、全部が全部五号俸上がっているわけではございません。中には一号俸の調整にとどまったものもありますし、二号俸の調整にとどまったものも部課長の中にもあるわけでございます。  それから部課長に厚くということでございますけれども、これは先ほど理事長から説明がありましたように、うちの格づけといいますのが、事業団発足当時まだ給与規程が、これは外務大臣の認可を受けてつくるわけでありますけれども、できておりませんでしたので、とりあえず、従来の海外協会なりあるいは会社の月給といいますか、それをもとに大体金額をはじいたわけでございます。その後給与規程ができまして、その給与規程から、たとえばこれは基準がきまっておりまして、大学の新卒は五等級の一号である、それから毎年一ぺん定期昇給をやっていくというようなことに当てはめてみますと、だんだん上に行くほど開きが大きくなってくる。下のほうほど薄くということでございますけれども、新入職員、大学を新規に出て格づけられました職員は五等級の一、これは大体他の公団、事業団等々とも給与規程のバランスがとれておりますので、極端に言いますと、新規採用職員についてはそういう調整の必要は全然なかった。それがだんだん五年たち、十年たちするうちに、従来もらっておりました会社、海協連の給与をもとに格づけた格づけが、給与規程から照らしてみますと、違いが大きくなってきたということでございます。したがいまして、部課長といいますか、三等級くらいになりますと、いま言いました最高は五号俸の範囲内くらいで調整いたしたわけでございますけれども、それに伴いまして、四等級、五等級というのもそれぞれあわせて、二号俸なり三号俸あるいは一号俸というのもありますが、そういう調整を行なったわけでございます。  それから先ほど調整に要した金額は総額幾らかという御質問がございましたけれども、これは総額で二百五十三万三千円、これは七月からさかのぼってやりなおしたので、単純に月割りといいますか、七月から三月までの分がそれだけでございまして、月に直しますと、約二十八万円程度という金額になっております。ちなみにわが事業団の人件費の月の総額は約一千五百万円程度でございますから、その金額から見ますと、そのパーセンテージといいますか、調整に不当に多くの金額を使ったということはないのではないかと思います。  それから他の事業費から人件費を持ってきたということであればあれですけれども、これは先ほど言いました予算単価で大体人件費は定員何人とはじかれているわけでございます。ところが先ほど申しましたような関係で、うちの事業団の職員の格づけが相対的に低くなっておりますので、現給といいますか、予算単価との間に開きがございまして、その開きの範囲内で調整を行なったもので、他の費目からの流用といいますか、そういうことはないわけでございます。
  178. 永田亮一

    永田委員 私、おたくの事業団の人から手紙をもらったんです。それはアップのやり方が非常に不公平だという意味のことが書いてあるのです。私はいま伺って大体わかりましたけれども、氏名は避けて、この手紙をちょっと読んでみます。  初めのほうはずっと省略して、「全く何が基準になっているか判らないものばかりで、本部ではこの度の給与調整を称して「山賊の山分け」と呼んでいるそうです。本部の責任者は事の意外に驚き、騒いでいるのは一部だけだと言っている模様ですが、九州、四国、近畿、中国等の一部を除いて、大部分の県は二月八日、九日の所長会議当日まで全然その事実すら知らされず、当日初めて事の次第を耳にして、あきれ果てて言う言葉を知らず、呆然としてる間に会議の幕切れとなり、不平たらたらで帰って行ったというのが実情です。会議における本部側の説明で全員了解云々などというのは全くの詭弁で、午前十時から本件の特別討議という緊急動議は本部側から一方的に蹴られ、僅かに十一時半から正午まで本部側から一方的な説明があっただけで、質問には全然返答らしい返答もしない中に時間切れというのが真相です。」「本部は、予算に限度があるから先ず本部を上げておいて、次第に地方に及ぼすというのを言訳にしておりますが、その本部の昇給自体が個々に見れば何の基準もなく、全くのお手盛りで、うるさ型とか迎合タイプ、一部出向組だけに五号俸もの昇給を認めたというずさんさです。当初は七号俸一挙昇給の計画だったというから、その無茶さ加減には驚かざるを得ません。」「本部の役員、幹部連中はそれについての責任を感ずべきであると愚考致します。」これはおたくの事業団の中の人から来た手紙なんです。このほかにもう一つ、これはきょう読むのをよそうかと思ったけれども、いろいろ言いわけをされるので、もう一つ別の手紙がありますから、ちょっと聞いてください。これはそれよりだいぶ前のものでありますが、「去る十一月六日」これは去年のことです。「去る十一月六日、突然、一部職員と管理職にある者に対し、七月に遡り人件費予算残額の配分がありました。」――「人件費予算残額」と書いてある。「もらった人達も私の見た範囲ではケゲンナ面持ちで」、「いうなれば、金で横面を叩かれたような変な気持ちであったことと思われます。数日後の課長会で昇給基準として、人件費予算四百万円を事業団限りで配分、管理職は他の公団、事業団並にレベルアップするため、五号アップ、職員は、在職五年、海外歴二年以上ある者に対し五等級の者は一号、四等級の者は二号アップとのことでした。」「管理職五号アップも海外歴二年も四等級と五等級を区別するのも変に思われ、こんな昇給をするなら、今後帰国する二年以上の海外歴保持者も対象にされねばならず、人件費に余裕を生じたからといって管理職にだけあつくするのもどうかと思われるし、七月に遡って特定者に配分するなら、もっと広く浅く一人でも多くの職員に公平に均てんされるとともに、いままでにアンバラとなっている者にこそこの際調整してやるべきだと思った。十一月八日午後」――ここは人の名前が書いてあるからちょっと読みませんが、「A課長に、人間の能力はそう差のあるものではない。移住の仕事はケース・バイ・ケースで処理することが多い。職員が気持ちよく働ける状態におくには給与とポストで公平を期するべきだ。今度の配分基準は何か。勤評的性格が加味されているならば現地で問題のあった人間はまさか二号アップというようなことはなかったでしょう。また今回昇給洩れの分はどう措置するかという意味のことを質問したところ、特別昇給で今回洩れた人のことを考えている旨回答がありました。不十分な回答でしたが、一応趣旨はわかってもらえたものと考え引下って来たところ、その夕、私の申出内容がB氏からCに伝えられ、現地で問題のあった職員イコールCとむすびつけ」云々、こういうのです。これは何か暴力事件が関係しておることが書いてある。この問題が不公平であったということを理由にして暴力事件があった。このベースアップが不自然であるという意味と同時に、内部のあつれきが表面化したものだと私は思うのですが、内部の分配がよくなかったかどうか。これは私がいま特にここで強調することではございませんが、ただこういう給料のベースアップなり格づけをいきなり五号俸上げるというようなことは、いままでには官庁関係の事業団なんかでも行なわれなかったことじゃないかと思うのです。こういうことを事前に監督官庁である外務省に相談をされてやられたのか、外務省のほうとしてもこういうことをどういうふうにおとりになるか、廣田局長、監督者の立場としてこういう異例なベースアップというものをどうお考えになるか、外務省の立場としてひとつお尋ねしたいと思います。
  179. 廣田しげる

    ○廣田政府委員 お答えいたします。  今回の格づけの調整につきましては、事前に私どものほうに御相談はなかったのでございます。もちろん格づけそのものは理事長の権限にあることでございますのであれでございますが、ただ今回のように相当大幅な調整をなさる前には、ちょっと事前に相談していただきたかったと考えております。  それから予算の範囲内でいろいろやられたわけですからその点はいいのでございますけれども、しかし少なくも一部に不平があったとすれば、今回の措置を事前に周知徹底させないでやったために起きたことだと思いますが、一部にでもそういう不満の人がいたということは、やり方としてはなかなか手ぎわが悪かったという点を考えておりまして、その点は理事長に私からそういう意味で注意を喚起してございます。
  180. 永田亮一

    永田委員 私は与党の立場でありますし、実は私があるいは政務次官をしておったころのことかとも思いますので、監督不行き届きがあったかもしれません。以後誤解のないように、こういうことは世間で考えて常識的ではないと私は思うのです。こういうことを十分に外務省は監督をしていただきたいと思います。以上で終わります。
  181. 高瀬傳

  182. 田原春次

    田原委員 私からも海外移住事業団の職員の給与の問題について、大体永田さんが御質問になったような線に沿って一、二申し上げたいと思います。  それは私のところに来ておる投書もありますし、人も来て言ったのですが、それは現地重点主義になっていないという意味の不平なんです。中央本部に各省から来ておる部長級だけが五号俸上がっている、それから各省から来ている課長級が四号か三号上がったが、現地は全国北海道から九州まで、各県に行って実際に移民を募集する仕事をやっておる者に対してはまことに薄い、そういう点の不平なんです。私は、労働組合がありますから、労働組合に話して、もし必要とあらば総評等に加入してもいいから検討するようにと言っておいたわけです。ですからいま永田さんの質問で大体わかりましたが、いまからの処置を聞きたいと思います。そういう不平があるならば、今後の移民募集上もなかなか成績が上がらぬと思います。しかしながら物価も上がっておりますから、最下級の職員の給与を上げるということ、それから最高の部長級の給与を遠慮するという方法はないか。国会議員も一昨年の九月から歳費が上がったわけでありますが、われわれは一年半遠慮いたしました。そういう美談もございますから、調整方法としては、問題になった以上、また外務省も忠告するというのでありますから、何か調整をして、百人からおる職員みんなが気持ちよく働けるような方法を講じてもらう、そのことについて、事業団の理事長、それから外務省の局長の御答弁を願いたいと思います。
  183. 廣岡謙二

    廣岡参考人 今回の格づけの問題につきましては、われわれ実施いたしましたことにつきましていろいろ御批判もございました。私も今度のことでもって必ずしもこれが完ぺきだとは考えておりませんし、また将来なるべく早い機会にこのアンバラを是正していくということに努力いたしたいと考えております。
  184. 廣田しげる

    ○廣田政府委員 ただいま理事長から御説明のありました点を、われわれも監督官庁といたしまして十分徹底させるように、今後ともやっていきたいと思います。
  185. 田原春次

    田原委員 これが調整としては、先ほど触れましたように、昇給漏れあるいはほかの団体に比べてはなはだしく低い条件にあるわけで、これの引き上げをやることが一つの方法だと思いますから、至急四月一日から実施できるように、新年度の予算で調整ができるようにしてもらいたいと希望いたします。  次は海外移住事業団法の一部改正に際しまして、私は日本社会党を代表して二、三の質問をしたいと思っております。  第一は、事業団または移住局、どちらからでもいいのでありますが、最近三カ年における海外移住の実績の数字を出してもらいたい。実績を三つに分けまして、イが拓植農民の数、三年間でも二年間でもいいですから、出してもらいたい。ロは技術移住者の数、これは国別でも総計でもいいです。ハは一般の呼び寄せ、花嫁その他の数、これをお尋ねいたします。
  186. 廣田しげる

    ○廣田政府委員 移住が再開いたしましたのは二十七年でございますが、本年までにいわゆる渡航費を貸し付けて出た移住者の数でございますが、全体で五万七千八百三十八名となっております。そのうち、農業関係、いわゆる拓植移住者の数でございますが、これが五万六千三百一名、技術移住者が九百十三名、その他、その他の内訳はございませんが、大部分が呼び寄せ移住でございますが、六百二十四名、こういうことでございます。  ごく最近の三年間を申し上げますと、三十七年度が、農業移住が二千百四名、技術移住が七十一名、その他が二十六名、合計二千二百一名でございます。三十八年が、農業移住が千四百十五名、技術移住が八十九名、その他二十二名、合計千五百二十六名、それから三十九年が、農業移住が七百六十一名、技術移住が百八名、その他が二百三十六名、合計千百五名でございます。ことしはまだ三月末までのあれはございませんが、この表で申し上げますと、一月末ごろの表でございますが、四十年が、農業移住が四百二十八名、技術移住が百四十五名、その他百五十四名、合計七百二十七名となっております。
  187. 田原春次

    田原委員 御答弁の最近三年間の数字によりますと、農業移住がずっと激減してくるのはどういう原因であるかということです。一面、わが国の農業構造改善事業で約七割の農民が農村から離れていく傾向になっておるのであります。したがって、ふなれな都会の重労働につくか、あるいは農業を生かしてどこか適地をさがすか。さがす場合に国内に適地をさがすか、国外か。一応構造改善事業の一種の犠牲者の心境になっておる。そういう場合に海外移住ということが始終知られておれば、それじゃひとつ行ってみようかという気持ちになると思うのですけれども、そういう努力が足らないのじゃないかと思うのです。努力が足らぬということは、農林省と外務省との間、もしくは海外移住事業団と地方の農協との間の横の連絡あるいは協力が足らないのじゃないかと思いますが、農業移住の減った理由をひとつ知らせてもらいたい。
  188. 廣田しげる

    ○廣田政府委員 一番初め大臣から御説明がありましたように、この十年間、三十五年をピークにいたしまして、ずっとこのところ減っているのでございますが、当時大ぜい出ましたころは、まだ満州とかそういうところから引き揚げられた方方、ある意味で言えば、海外でそういう農業あるいは拓植等に御経験のある方が内地に引き揚げられてたくさんいらしたものですから、再び戦後海外移住の道が開けましたときに、わりあいに気軽と言っちゃなんでございますけれども、経験がございますので、そういう方々が特にブラジルでございますが、中南米方面に出られたと思います。そういう層がいわゆる出尽くしたというのが最近の姿じゃなかろうか。しかし若い人の間に再び、別の意味でございますけれども、自分の能力を大いに海外において伸ばしたいという気持ちがございますので、むしろ若い青年の間にそういうものがふえた。したがってまた技術移住者の数が昨年とことしを比べますと、倍近くになっておるということも、そういうもののあらわれかと思います。
  189. 田原春次

    田原委員 私は必ずしもそう思いません。やはりこれは努力の足らぬせいじゃないかと思います。ともかく農業離村者が相当ふえておることは事実なんですから、したがってそれをとらえて心機一転させるような努力が足らなかったのじゃないか。それはいろいろ努力の足らぬ点については理由があると思います。地方に配置した職員が足らないという面もありましょう。また宣伝、啓蒙の方法が足らない点もあると思うのです。そういうことに対する反省と対策がなければならぬ。この数字で見ますと、年々農業移民が減り、それからわずかな数で技術移住者がふえている程度でありまして、それも三年間に八十九名から百八名、百四十五名、まことに驚くべき貧弱な数字だと思うのです。  そこで、対策について第二点の質問をしたいのは、移住者を増加するにはどういう対策があるかということ、具体的な対策を聞きたいと思います。
  190. 廣田しげる

    ○廣田政府委員 農業移住の点につきまして、たとえば北海道であるとか東北のいわゆる開拓農の方々のうちで、集団的に出たいというあれもございます。特に岩手県を中心にいたします東北六県は相当具体的に計画も進みまして、イグアス移住地に行く計画が現在立っておりまして、五年間に三百戸。来年度、四十一年度にはもちろんそのうちの一部分でございますが、そういう計画もございます。そういう国内の開拓農の、北海道、東北地方のそういうものに働きかけたい。事業団としてもこれを熱心にやっております。  それから何と申しましても、現地の移住地の事情が芳しくなければ後続部隊が続かないわけでありますので、現地の、特に事業団直轄の移住地について、向こうに行かれてから定着しやすいように、移住地の改善をする。あるいは農事試験場をつくるとか、あるいは畜産センターをつくって、そういう畜産のほうの指導もする、いわゆる営農指導。それにやはり教育とか医療の点も、診療所、病院、学校等の施設もだんだん増設いたしまして、現地に行かれて、向こうで定着できるような施策もやっております。また今後ともこういう努力を続けたいと考えております。
  191. 田原春次

    田原委員 私は現地の施設についてはあとでまた質問いたします。移住者が増加しない、もしくは思うように増加しない、もしくは予定より減少している理由の一つとして、中央各省の関連事項に対する積極的な協力が足らないのではないかと思いますので、以下各省別にお尋ねしたいと思います。  まず第一に労働省にお尋ねします。労働省は失業者の職業訓練等をやり、国内向け就職並びに海外に行きたい者は海外に出していくというお考えでしょうか、どういうお考えでしょうか、何か施設をやっておりますか。
  192. 佐柳武

    ○佐柳説明員 お答え申し上げます。労働省といたしましては、海外移住の希望者の中において、技能を身につけて就職をしたいという者については、公共職業訓練所の施設を利用いたしまして、その施設の中における六カ月間の訓練を経ました者についての指導によって、海外への移住を援助いたしておるわけでございます。
  193. 田原春次

    田原委員 その職業訓練所の訓練生の募集数もしくは方法、あるいは訓練所内の訓練中における生活費等の問題、それから終了後海外に何名くらい出したか。最近三カ年くらいの数字はわかりますか。
  194. 佐柳武

    ○佐柳説明員 訓練所の所在は秦野一カ所でございます。ここにおいて用意いたしております訓練職種は、機械と仕上げ、この二職種でございます。そうして定員はそれぞれ一期十五名といたしております。  なお、この訓練所に入所いたしております者の訓練の手当につきましては、失業保険の受給者であります者につきましては、その者の給付期間を、訓練期間延長して支給するということをいたしております。  それから出発をいたした数字は、期別に申しますと、現在まで一期から八期まで終了いたしておりますが、この間においてこの訓練所の訓練を終了し、海外に渡航いたしました者の数は七十九名でございます。
  195. 田原春次

    田原委員 失業者の数は本年でどのくらいと見ておりますか。炭鉱労働者等を合わせての概数でけっこうです。
  196. 佐柳武

    ○佐柳説明員 日本におきます失業者の総数は、毎月の労働異動調査によって把握いたしておるわけでございまして、毎月の調査時点の過去一カ月間におきまする、就職の意思があり、労働能力があったにもかかわらず収入のなかった者という定義のもとに把握しております失業者の数は三十八万となっております。
  197. 田原春次

    田原委員 非常に厳格な規定によって算出した数字が三十八万であります。実際に職業訓練所に入っている者は一回が十五名であるというのは、数の上ではほんの申しわけ的なものじゃないかと思います。神奈川県の秦野の訓練所に入る者は、大本関東地方といわなければならぬ。関西中小企業の倒産等は、御承知のように負債一千万円以上とみなして、昨年一年間で六千件の件数になっておるわけであります。その推定従業員数も数十万人だといわれております。それがあなたの言われた数字に入っておるかどうか知りませんが、いずれにいたしましても、職業訓練をして、国内での再就職もしくは海外に移住するとすれば、関西に一カ所と、炭鉱閉山の産炭地、たとえば山口、福岡、佐賀、久留米に一カ所くらいは当然つくるか、あるいは県の設備に委嘱してやらせるか、委託してやらせるべきじゃないかと思うのです。そういう方針をなぜ立てなかったか、申しわけ的じゃないかと思いますが、いかがでございましょう。
  198. 佐柳武

    ○佐柳説明員 ただいま先生御指摘のように、現在ございますのは神奈川県の秦野でございますけれども、ここに入所いたします者は、全国各地から入所いたしますように、本省からも入所期におきます各県への指導、各県下の安定所の窓口におきます適格者の募集、この面について協力をいたさせておるわけでございます。
  199. 田原春次

    田原委員 国内の失業労働者の数に比較して、はなはだしく少数でありますので、やはり地方公共団体に委嘱するなり、各種の民間団体に委嘱するなり、あるいは本省直接に経営するなりして、少なくとも年間一万人くらいは訓練所を出て、その大半が国内で再就職でき、そうして最小限二千人くらいは海外へ出すようにすべきだと思う。そういうような御努力をされる御意思があるかどうか、ひとつお尋ねしておきたいと思います。   〔委員長退席、三原委員長代理着席〕
  200. 佐柳武

    ○佐柳説明員 先生も御承知のことと存じますが、現在労働省でとっております海外移住者の求職受け付け、あるいはその取り次ぎにつきましての仕事は、海外移住事業団の地方支部に対する協力とともに、私ども協力を密接にいたしまして、鋭意その希望者のありましたものについての相談、選考等を努力いたしておるわけでございます。しかしながら、海外移住におきましては、それぞれの、たとえばブラジルの場合で申しますれば、職種において限定がございます。あるいはまた、技能者としての資格上の要件がございます。たとえば年齢は二十歳以上であるとか、実務経験が五年以上であるとか、その他の資格要件も定められております。したがいまして、これらの資格要件を備えております者が現実には非常に少ないというのが現状でございます。と申しますのは、昨今のわが国の労働事情は需要供給関係がアンバランス、要するに供給が少なく需要が大きい、このような面から、国内における特に技能労働力の不足が目立っておるわけでございます。昨年二月に調査をいたしました全国調査によりましても、現在わが国の産業内において約百八十万の技能労働者が不足しておる。産業において切実にこの数が要望されておるはずである。このような面からも、技能労働者が海外に出て就業を希望する方の意思を決してとどめておるというのではなく、国内における大きな需要、これがまた適格条件等とからみ合いまして、現実の海外移住状況になっておるものと考えるわけでございます。
  201. 田原春次

    田原委員 われわれが見ておるところとはなはだしく異なった、まだまだ及ばない点が多いようでありますが、今日のところは一応その程度にしておきます。  次は農林省の方にお尋ねいたします。最近二、三年間における数字をまず出してもらいたい。その数字は、第一は農業改善による離農者の推定の数字です。それから第二は、終戦後引き揚げて練兵場などに入りました開拓農民、これの最近の傾向はどうなっておるか、一戸当たりの負債額等もわかればこの際承りたいと思います。
  202. 横尾正之

    ○横尾説明員 最初に御質問のございました最近におきまする離農者の数でございますが、一九六五年のセンサスの結果によりますと、最近五カ年におきまして年率一・三%の農家の減少を来たしております。一方、新設農家がございますので、差し引き計算をいたしますと、離農家数は年率一・五%になるかと存じます。その数は年平均で、これは大体の数字でございますが、八万戸になろうかと思います。  それから第二点の入植農家の状況でございますが、入植農家のうち離農をする、一応入植をいたしましてまたその入植をした農家が離農をするというような農家戸数は、一応の推定戸数でございますけれども、三十九年六月、若干古い時点での推定戸数でございますが、北海道で四千五百程度、北海道以外で六千五百程度、合わせまして一万一千というようなことが推定をされます。これはいまも申し上げましたように推定戸数でございます。
  203. 田原春次

    田原委員 合計推定一万一千戸は今後ともやっぱり続いていくのか、さらにそれが減少していく傾向であるか、どうでしょう。
  204. 横尾正之

    ○横尾説明員 開拓者の離農につきまして推定戸数を申し上げましたのは、三十九年六月現在の状況から推しまして、今後この程度の離農農家があろう、こういう数字でございます。
  205. 田原春次

    田原委員 離農したらあとは知らないのですか。離農者に対して自分の先祖代々の土地でやっていけるように他の方法を指導するか、あるいは都会に出て子供が就職するか、あるいは一家ぐるみで海外へ出るか、ただ数字だけ出ておってもどうにもならぬ。対策がなければならぬと思います。農林省としての限度はあるでしょうけれども、それならば、これだけの離農者が出るから、これを海外移住事業団等と連絡をとってやっていくとか、何かそこに対策がなければいかぬと思うのですが、どういう対策を持っておりますか。また移住問題に関連してどういう対策をやっていますか。
  206. 横尾正之

    ○横尾説明員 移住関係をいたします対策を分けて申し上げますと、第一点は、海外に移住しようとする方々にその機会を提供し、かつ合理的な移住が可能になるように、啓蒙、相談、募集、推薦等に関する事務に関することでございますが、大まかに申し上げまして二つの組織を使いまして、その二つの組織の相互間の緊密なる連絡のもとに、海外移住事業団等とも連絡をとり、推進をする、こういう考え方に立っております。  その二つの組織と申しますのは、一つは拓植農業協同組合連合会の系統組織でございます。これは御承知のとおり三十七県に県の連合会ができております。その上部組織といたしまして全国の連合会があるわけでございますが、この組織におきまして、海外移住のために必要な諸知識を付与いたしますと同時に、海外移住に関します事務を扱います農協の職員につきまして研修をいたしまして、海外移住の事務が末端で進みますような手続きをいたしますと同時に、コチア独立青年等の入植につきましては、募集選考の仕事を海外移住事業団等とも連絡をとりつつ進めるという形でありますが、この組織とタイアップをいたしまして、これは農家労働力対策事業という名前で呼んでおりますし、これは海外移住のみでなく、もっと広い相談活動の場を提供するということでやっておるわけであります。これは県の段階の農業会議所及び末端の農業委員会中心になりまして、連絡、相談活動をする。このいま申し上げました二つの組織、二つのパイプの相互連携のもとに可及的に合理的な海外移住が可能になるようにしてまいるということを考えております。  それから第二点でございますが、海外移住にあたりまして必要な資金の確保に資するという点から、開拓基金協会というものを設けまして、それにつきましては国の補助と地元の資金の造成、これを軸にいたしまして基金を造成いたしまして、必要な資金について借り入れをする場合にその債務保証をする。これにつきましても必要な資金額につきましての一人当たりの限度額を三十九年に若干改善をいたしまして、できるだけ海外移住者のそうした要請に即応するように努力をしてまいっておるわけであります。  もう一つ申し上げたいのは、先ほど申し上げました入植者であって海外に移住する関係の方々に対する措置でございます。離農補助金を国が補助金として出しておりますが、一般の内地で職場を求めるという形での離農者に対しましては四十五万円単価でございますけれども、海外移住の方に対しましては五十万円。そのための予算額を申し上げますと、四十年度におきましては九千万円、四十一年度におきましては九千九百万、これは総ワクでございます。その一環といたしまして、海外移住の方のために普通よりは若干単価を上げまして補助金を出すというような措置を考えております。  ごくかいつまんで要点を申し上げますと以上のとおりでございます。
  207. 田原春次

    田原委員 その程度のことは私も知っておるのですが、あなたの所属する農政局の中で構造改善事業課と拓植課とがお互いに連絡がないのです。それは参事官がやるべき仕事じゃないかと思います。構造改善課は構造改善だけをやっておる。そこで八万人からの農業構造改善で出てくる者は、離村すれば海外移住しかないと思います。なぜならば、開拓地の北海道その他が状況が悪くて借金などしておるのですから、国内の他の開拓地に出すことは総体的にはむずかしくてできないと思います。しからば都会に出て、なれない自由労働に一家ばらばらでやるか、あるいはなれた農業で海外で生活するか。その資金の点は知っています。四十五万が五十万になったのは知っています。もう一歩同じ農政局の中で努力が足らぬというのがみんなの批評です。お互いの課に何の連絡もない。そういう仕事は参事官の仕事じゃないかと思います。あなたの答は実にきれいだけれども、やっておることは農政局の中の課がお互いの連絡が切れておる。もう少しつなぐ方法はないか、立体的に解決する方法はないか、こういうことです。
  208. 横尾正之

    ○横尾説明員 御指摘の点につきましては、同一の局内の仕事でもあります関係上、これは関係の各課が緊密に連絡をとって円滑に仕事を進めるということにつきましては私ども責任を負っておるわけでございます。いままでも努力をしてまいったつもりでございますが、御指摘のごとく今後なお努力をいたしたい、こういうふうに存じております。  なお、これは蛇足になるかもしれませんが、先ほど申し上げました組織を通じまして、御承知のごとく近年におきましては青年移住者のウエートが非常にふえております。質的にも向上いたしております。そういうところも一つのポイントにしながら、可及的に合理的な移住が促進し得るよう、今後さらに努力をいたしたい、こういうふうに存じております。   〔三原委員長代理退席、委員長着席〕
  209. 田原春次

    田原委員 関連して大臣にお尋ねいたしますが、大臣の就任以前の問題でありますが、かつて移住局の場合、農林省から課長を入れて、お互いに総合的に仕事をやらせるようなこともあったわけであります。ところが、やはり外務省型と農林省型と違うと見えてうまくいきませんで、また元の本職に帰っております。海外においての仕事は外務省一本でわかると思います。国内で移民を募集する場合、特に先ほどの参事官の答弁のように八万戸からの離農者が出るという場合は、これは外務省一本では国内の募集はむずかしい。海外移住事業団も地方にはありますが、定員等の関係もあって、たとえば私の県あたり七名くらいしかいない。そのうち所長、会計、庶務なんかのけますと、四人くらいでとても一つの県をあちらこちら回るということはできない。最末端の農協を動かすようにするにはやはり農林省がほんとうはその気にならなければならぬ。ところが激しい一本化か二本化かという問題がありましたために、どうも私が見るところ、感情的に農林省が引っ込んで、いまの話のように農業構造改善で八万戸の離農者が出るけれども、海外移住に向けようとしない。外務省やってみろ、お手並み拝見というようなかっこうとしか見えない。こういうことじゃいかぬと思う。したがって、もう一回考え直して、海外における行政は一本になっておりますから、あとは人事の交流をして、専門家をそれぞれ、たとえば移住局に参事官を農林省から入れるとか、現地の農業地帯、たとえばパラグアイその他に対しては農林省、あるいはところによっては労働省の人を、単に伴食の駐在官でなく、領事や総領事にするというように有機的にやったらどうかということがわれわれ海外移住支援者の仲間で問題になっております。これは政治的な外務大臣としての処置になると思うのですが、何か移住者数の減少に対する対策の一環として、行政各官庁間における積極的な協力体制をつくる必要があるんじゃないか。途中ですが、あとでまた質問しますけれども一つお尋ねしておきます。
  210. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 事業団には各省から人が入ってその舞台でチームワークをとっておるのでありますが、しかし、実際問題としてまだ十分に実績があがっておらぬとすれば、やはり何らかそれをもっと拡充、充実させる必要がありますので、その点から考えると、いま御指摘のようなことも十分考えてみなければならぬのかとも考えております。十分研究いたします。
  211. 田原春次

    田原委員 先ほどの質問でお聞きになったか知りませんが、たとえば農林省の農政局の中でも、移住問題と関連なしに技能者を出しておるのですから、したがって、事業団に農林省から派遣することはそれはそれでいい、それは実施部隊ですから。しかし、企画、立案、法制、あるいは予算というような面で外務省の中に従来ありましたのですけれども、従来は移住課長が一人おったのが、非常にもめごとをして、出てしまったようなことになっておる。そういうことではいけない。外務省にも一人置くように前向きに考えてもらいたいという希望を申し上げておきます。  次は通産省の中小企業庁の方に御質問をいたします。私どもが知っているところによりますと、借金千万円以上の中小工場が昨年だけで六千件倒産があったといいますが、借金千万円以下のものも入れて概数どのくらいあったか。それから、それらの中小工場の従業員のいまの状況はどうなっておるか。失業者のままになっておるのか。倒産中小企業の従業員の概数と、それから現在の再就職もしくは失業のままになっておるか、その数字をひとつ示してもらいたい。
  212. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 昨年の一月から十二月までの負債金額一千万円以上の倒産企業が、御説のように六千百四十一件ございます。それ以下の倒産につきましては、実は的確な資料がございませんので、中小企業庁及び政府関係の金融機関を動員いたしまして、いろんな角度からサンプル調査をいたしておりますが、私の推測では、おそらく一千万円以上の倒産の件数にやや近いくらいのものが、それより小さいところにあるのではないかという推測をいたしております。  それから、そこで働いておる従業員の数でございますが、実はその点は遺憾ながら現在調査資料がございませんので、はっきりは申し上げられないのでございますが、先生御指摘のように、おそらくそこに働いていた人の数は何十万という数に一応はなろうかと思います。ただその際、申し上げておきたいのは、倒産企業の中にもいわゆる会社更生法によりまして操業をそのまま継続しておるところが相当ございますので、倒産企業に働いた者が全部失業して、職を失ったという状況ではないのでございます。たいへんに残念でございますが、ただいまその調査がまだできておりませんので、その数字は申し上げられないのでございます。
  213. 田原春次

    田原委員 私どもの聞いている範囲では、やはり数十万というばく然たる数字でありますから、これは失業保険の問題や訓練、再就職の問題等もありますでしょうが、ちょっと立場を変えて中小企業庁の方に聞いてもらいたいのは、南米各地へ移民が行きまして、間もなくそこをまた離村してほかの国へ移る者があるのです。たとえば。パラグアイを見ますと、パラグアイに農民で行って、そこでうまくいかぬで、隣のアルゼンチンに行った者が推定八百戸と言われておる。つい二、三日前にテレビに出ておりましたけれども、それはどうであるかというと、テレビの談話を聞いておりますと、自分たちで農作物をつくっても売るところがない、マーケットが足らないというのです。たとえばパラグアイを一例にとりますと、南のほうのエンカルナシオンという第二の都会が人口四万で、その周辺に日本の農村がございます。それから北部のほうのアスンシオン、首府でありますが、これが人口三十万足らずである。したがいまして、町工場らしいものもないのです。そこで、農業移住者を出すほかに、また技術者を出す。ほかに町工場ぐるみの移住というものが考えられるんじゃないかと思うのです。たとえば板張り工場であるとかトタン工場であるとか、何かそういった日本の中小企業、零細企業でも入るような、手工業関係のものでも向こうは非常に歓迎されるはずです。いままであまり力を入れておりませんが、それらの人の負債を肩がわりしてやるとか、現地における営業資金を低利で貸してやるとか、ちょうど農林省のほうで全拓連にやっているように――拓植農業資金というのは、農地を売って海外に行く者に対して農地を買い取る人に金を貸すという制度になっている。だから、町工場のほうも、こっちで小さな工場があってつぶれたとする。土地ぐらいありますから、そういうものの換金に対する援助をする。あるいは現地において、ちょうど日本における国民金融公庫か中小企業金融公庫的な国家機関による低利長期のものを融資をする。そこまで親切にすれば、多少は中小企業が出ていくと思うのです。出ていきますと、エンカルナシオン市やアスンシオン市に定着しますから、したがって、農村に行って農業をやっている者は、つくった物が売れるということになる。ただ農業ばかりやっているのもへんぱ、技術者だけというのもへんぱであります。やはり工場が行かなくちゃならぬと思います。少なくとも工場はあなたの所管だと思う。これをもっと積極的に、海外移住に関連した中小企業対策というものを立ててもいいじゃないか。そういうことについて今後の対策らしきものがあれば聞いてみたいと思うわけであります。
  214. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 中小企業の海外進出につきましては、広い意味の経済協力の推進というような観点からも、私は今後推進していく必要があるというふうに考えております。よく大企業だけ進出しまして、そのために必要な関連中小企業が周囲にない。したがって能率が十分に発揮できないというようなケースが間々あるようでございますので、そういう場合に、大企業だけでなく、中小企業も進出していくということが必要であろうかと存じます。現在、実は中小企業庁自体では、その海外の問題までなかなか手が届きませんので、正直に申しまして、私のほうと、それから外務省あるいは通産省の中の経済協力機構と連絡をとって、主として海外問題はそちらへお願いしておるというのが実情でございます。しかし、今後のことを考えますと、中小企業者の中でも海外に出たいという人もございますので、そういう人たちがより安心して行けるような仕組みを充実していくことが必要であろうかと存じます。現在まで行なっておりますのは、ごく一般的な、輸出入銀行の金融とか経済協力基金とか、あるいは日本商工会議所等での技術者のあっせんとか、先生御存じのことでございますけれども、そういうようなことをいたしておるのでございます。その辺をより突っ込んで、またきめこまかく、行きたい人が安心して行けるような制度をつくっていくことが必要であろうかと存じます。
  215. 田原春次

    田原委員 これは必要を認めるだけでなくして、具体的に何か行動を起こしてもらいたいと思う。たとえば、先ほど言いましたような、かりに海外移住事業団の中に中小企業庁からも人を出してやるとか、それから国民金融公庫、中小企業金融公庫に海外支店のようなものを設けることができるかどうか。いままで海外経済協力基金は、どちらかというと大企業に融資している傾向が強い。それでもまだ資金が相当余っている。ですから、この際倒産中小企業の肩がわりをして、海外に出す機会が来ていると思う。ですから、もう少し積極的に総合的に考えるべきじゃないかと思います。これは希望しておきます。  次は第三の質問でありまして、先ほどお答えの中にもありましたように、現地にいろいろな施設をすることが、海外に移住者がふえることになると思います。そのことについて、私はさしあたり最低次の三つについて、各省の協力を得てやるべきじゃないか。第一は病院であります。第二は小中学校であります。第三は金融機関であります。いずれもこれが足らないと思う。たとえばアマゾンの上流あたりに四十代で家族を連れていった者が、最初の十年間はむやみやたらに働いているけれども、子供が十を越してくると、その付近に学校がない。移住者はたった二十家族だ。はなはだしきは六家族であるというようなところもあります。まるでばらばらです。子供がまるで土着民と同じような性能に低下するのを非常に憂えまして、せっかく成功しておっても土地を売ってサンパウロやその他に出てくるのです。向こうにおける一種の離村傾向があるのです。これは終戦直後、外務省がアマゾンの周辺に非常に積極的な方針を立てて、二十部落くらい出したわけです。出したけれども、後続部隊が続かないためにそのままになっている。向こうのことばでカボクロというのですが、土人ですね。何か全く気の毒な状態になっておるようです。これについて定着したと報告をしておるものがありますが、これはとんでもないことで、あきらめて無力になっている。ですから、問題としては、後続部隊を送ること、後続農民を送ること、そのためには、やはり小学校、中学校、日本式に言うと小中学校程度を建ててやらなければならぬ。サンパウロやブエノスアイレスや、そういう大都会には在留民の共同拠金によりまして学校をつくっておりますけれども、むしろそういうところは、当然それは商社の代表などもおりますから資金面でも楽なんですけれども、ばらっと散っておるブラジルの奥地にもっと学校等をつくってやらなければいかぬと思います。このことについて、外務省と文部省との間には話し合いがあるのかないのか。たとえば、学校をつくるといっても、資金の問題、それから次は教師の問題があります。小中学校の教師は、現地を見ますというと、有資格者は半分くらいで、あとは無資格者です。日本の高等学校を出たとか、私立大学を出た者が農民で行って、農業ができぬから先生になった者もおります。これは決して悪いとは言いませんが、やはり専門家の、日本での訓練を積んだ教職員が行ってほしいと思うのです。しかし、行くとすると、休職になって行って、復職も問題であるし、休職間は給与も上がらぬというようなことで、だれも行き手がありません。これはやはり文部省と外務省というものが、もっと国策として、教師の派遣、それから校舎の建築に対する資金の問題、それから教科書――日本で使っている教科書というわけにはいかないが、雪も全然知らないところで雪の話をしてもわからぬようなもので、向こうでの教科書をつくる必要があるわけです。それもブラジルあたりは父兄が金を出し合って教科書をつくっております。もっと小さい国、ボリビアであるとかアルゼンチンであるとかパラグアイとか、商社の日本人が行っていても、小さい国にはそういう方法がないのです。ですから総合的な海外在留子弟に対する日本語の普及、これに対する文部省と外務省との協力の体制、こういうことをこの際聞きたいのですが、文部省からでもいいし、外務省からでもいいから、それぞれ聞かしてもらいたいと思います。
  216. 高野藤吉

    ○高野政府委員 外務省といたしましては、在外におられる子弟の教育ということは数年来非常に力を入れております。それで具体的には文部省と話をして、教科目、それから現地で校舎を借りる借料、それができない場合には、現地における適当な先生をお願いしまして講師をお願いする、そういう三本立てでやっておりまして、現在までは主として東南アジアに力を入れております。しかし、来年度の予算におきましては、中南米におきましても講師の謝金ということを考えておりまして、逐次各国に人数がふえます。さらに子弟がふえた場合には文部省と協議いたしまして、教官を各地に送るようにいたしたいと思うのであります。
  217. 田原春次

    田原委員 外務省の在外勤務者の子弟についても、何か東京に寄宿舎学校をつくるという予算かなんか取れたようですが、これも一つの方法ですけれども、行ってみますと、たとえばソビエトにおける大公使、参事官等の子供は、ある人は小中学校課程はオーストリアのウィーンに留学さしておるのです。それからスウェーデンのある大使の子供さんはゼネバに行っている。こういうふうにヨーロッパだけを見ましても、新聞通信員、それから在外研究員、商社あるいは外交官等の子弟の教育機関というものがないのでございます。これも西ヨーロッパに一つとか、中近東に一つとか、東南アジア一つとかはやはりつくって、小中学校程度は自宅から毎日通学できないまでも、土曜、日曜ぐらいはうちへ帰れるようにすることが第一、第二は、そこで勉強した者が日本に転勤した場合にトランスレートができるということ。小学三年の課程をやった者が日本に帰ると小学一年の実力しかないということで二年も落第することがある。だから、公認された学校であるならば日本に帰っても公認扱いすれば、家族ぐるみ向こうへ転勤できるわけです。この間文部省の話では、東京へボーディングスクールをつくるというが、東京に外国から帰してもいい者は帰してもいいが、現地におりたい者はそうはいかぬ。だから、ひとり中南米だけではなく、大体海外各地に拠点拠点を設けて、日本の小中学校課程の寄宿舎学校をつくるべきではないか。それを外務省でやるか、文部省でやるか。外務省でやって、人のほうを文部省でやる、こういう話し合いをやるべきだと思うのでありますが、やっておりますか。どうですか。今後どういたしますか、お聞かせいただきたい。
  218. 高野藤吉

    ○高野政府委員 いまお話し申し上げましたとおり、現在アジア地域を主眼としてやっておりまして、それを逐次各地方に及ぼしているわけでございます。ヨーロッパにおきましても、現在、ハンブルグとデュッセルドルフとで、これは講師を雇いまして、そこで教育しているということでございまして、ある程度人数がまとまりますと、逐次講師をふやし、ないしは文部省と話をしまして教官を派遣するということで、外国におきましては、主管は外務省で、文部省と協力してやる。国内におきましては文部省が主としてこれをやっております。それから、先ほどのお話のように、外国から帰って日本ですぐ学校へ入れるかという場合がございますが、これは小学校、中学校の場合には義務教育でございますから当然入れるわけでございまして、高等学校以上になりますと若干入学に困るということで、そのためには日本においてある程度勉強しなければならぬということで、御指摘の子弟寮というものを新年度の予算に組みまして、調査費ということで、子供の国内における教育についても文部省とも協議をいたしまして考えておる次第でございます。
  219. 田原春次

    田原委員 実例を申しますと、たとえば西ドイツのデュッセルドルフに三百人くらい日本人の商社員がおって日本語学校でやっておりますけれども、私立です。先生も日本の文部省ないしは日本の地方庁から派遣されたものではない。何年おりましても昇給というものがないし、それから日本に帰ってもその職業につけるということがないわけです。ほんの間に合わせに日本語を教えておこうかという程度です。そうでなくて、もっと組織的に小中学校と関連があるように、国内へ帰ったらいつでも適当な学年に進学できるようにすべきじゃないかと思いますが、とにかくそういう努力が足らないと思うのですけれども、これに対しては文部省はどういう意見でありますか。
  220. 蒲生芳郎

    ○蒲生政府委員 お答えいたします。文部省といたしましても、外務省で計画を立てております海外のこうした教育機関につきましては、特に先生のおっしゃいます教官の点が一番問題がございますので、先ほど官房長からもお話がありましたが、特に最近東南アジア方面のそうした在外子弟の教育のための機関につきましては、現在のところ五カ国に対しまして、身分は文部教官で、外務事務官を兼任いたしている人を派遣いたしております。四十一年度におきましては、さらに三カ国の増加を考えておりますが、逐次外務省のほうでそうした機関がつくられましたならば、文部省といたしましても、教官のあっせん派遣について御協力申し上げる、かように考えております。
  221. 田原春次

    田原委員 文部省のほうにもう一つお尋ねいたしますが、海外出生二世の内地留学の場合、向こうで生まれたものですから向こうの人間なんですね。ところが国立大学等に入るについては、たとえばアメリカ人が日本に来て試験を受ける場合と差があるわけです。アメリカ人が来ると、国立大学でもワク外になっておるのです。ところが二世は試験を受けなければならぬでしょう。そういう弊害があることは、父兄にとっては非常に耐えがたいことで、向こうで高等学校まで終わった者、あるいは大学の低学年を終わった者は日本の適当な大学に入れて、日本そのものを知らせたいと思っておるのに、入学の上における便宜が一つもない。逆にフルブライト法その他でアメリカの留学には非常に便があるのです。日本から行く場合には。海外から来るのには、特に中南米から来るのに対してはまことに不便なのですが、これをもう少し打開する方法はないでしょうか。そしてかりに必ずしも東京の学校ではなくてもいいから、地方の国立大学に定員の一割くらいは海外の二世をワク外で入れてやる、そして実力があったら卒業さしていけばいいのです。何かそういうような積極的な便宜がほしいというのが海外日本人一般の空気なのです。これを文部省で何とか扱ってもらえる方法はないのかということです。
  222. 蒲生芳郎

    ○蒲生政府委員 私費の場合は、二世であろうと、純然たる外国人でありましょうと、別に区別はいたしておりません。ただ特に先生のお尋ねの点は、日系人には何か特別なワクを設定してはどうかというふうな御趣旨かと思いますが、これは御趣旨は私ども十分了解できます。しかしこれを特に国立大学へ入学させますためには、大学等の受け入れの関係もございますので、今後関係機関と協議いたしまして積極的に検討いたしたい、かように考えます。
  223. 田原春次

    田原委員 実例を申しますと、九州大学に私費でブラジルから入学志望者が来たのです。ところがそれは入れないのですね。ところがアメリカ人はワク外で正規の学生で入れる。そんなばかなことはないというので、これは憤慨軽蔑して帰ってしまいました。こういうような例があるので、海外生まれの二世に対しては地方の国立大学で定員の一割くらいは特別入学を認めるようにすべきだと思うのです。語学なんか見ると劣ります、日本語を書いたり何かするのは。顔が日本人であるからというたって、気持ちも国籍も向こうの人なのですから。ただ日本に留学させて、日本のいいところを知らせて帰そうという父兄の熱願を単なる一律一体の試験の制度で拒絶することはよくないと思う。だから、もっと積極的に大胆に、たとえば全国全部の国立大学ではいかぬにしても、ある特定地の国立大学に対してはブラジルからの学生は入れてやる、あるところはアルゼンチンの学生を入れてやる、あるところは北米の二世を入れてやるという試みをやるべき時期が来ているのじゃないかと思うのですが、もう少し積極性を持ってやってもらいたいと思いますが、いかがでしょう。
  224. 蒲生芳郎

    ○蒲生政府委員 受け入れ大学の意向等もよく聞きまして、そしていまおっしゃいました九州大学の実例なども検討いたしまして、積極的な研究を進めたい、かように考えております。
  225. 田原春次

    田原委員 次は金融に移ります。先ほど申しましたように学校、病院、金融と、三つがそろわないと移住地というものは完全でないのですが、金融面がはなはだしく高利であったり、金融機関がなかったりして不便を感じておるのです。これは大臣にお尋ねしたいことでありますが、ブラジルには五千万ドルくらいのこげつき債権があるのです。アルゼンチンにも三千万ドルくらいのこげつき債権があるのです。そういうふうですから、これをいま日本国内で取り立てようとしても、外国為替法その他の関係があって、また向こうの財力の関係もあって、なかなか返せないのです。だからそれはむしろ現地の通貨で受け取って、そして在留邦人の農業、工業、中小企業等のための事業的素地にしてはどうか。たまたま東京銀行も各地に行っております。ブラジルでは富士銀行系統のものもあるし、住友銀行も行っておるし、三菱系統の銀行もできておる。だからそういうところに預託して、商業ベースによる融資をするとか、あるいは不動産融資をするとかいうふうにすればいいのじゃないか。ブラジル側にとっても、米ドルにして六千万ドル日本に送金するということよりか、自分の国のクルゼーロで自分の国の国内にある銀行に預けて日本人の定着者が使うのならいいんじゃないかと思うのです。こういう交渉を、あなたが外務大臣である間に大蔵省その他と交渉して、せっかくのこげつき債権を有効に動かす方法はないかと思うのですが、ひとつやってみたらいかがでしょう。
  226. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 私も五千万ドルなり三千万ドルの資金のこげつきがあるということはわかっておりますけれども、内容等もよく調べてみまして、これは所管が大蔵省ですから、大蔵省の意見も聞いてみたいと思います。
  227. 田原春次

    田原委員 大蔵省の意見を聞くことはいいです。しかしこちらで確たる方針を立てて大蔵省に勧告して協力さすようにしてもらいたいと思います。時間の関係でその程度にしておきましょう。  次は病院の点でありますが、これは外務省にまず伺いたいのですが、北米、中南米各国その他の外国では、日本人の医者、歯科医師、薬剤師等の者で、日本の免状でもって直ちに開業できるというところが何カ国ありますか。ほとんど封鎖的で、向こうの試験を受けなければ開業できぬようになっているところが相当多いと思いますが、日本の免状だけでできるところがありますか。
  228. 廣田しげる

    ○廣田政府委員 実は何カ国あるか存じておりません。ただ大部分の国が先方の医師資格試験というようなものを受けなければならぬというように了解しております。
  229. 田原春次

    田原委員 そこで問題は二つあると思うのです。一つは、医師、歯科医師、薬剤師、看護婦双務協定というようなものを外交的方法において結んではどうか。たとえば同数開業主義ですね。かりにブラジルの医者との間に、ブラジルから日本に十人開業するならば日本も十人できる。これは外交的方法でできるのじゃないかと思うのですが、そういうことを少し努力してもらって、御承知のようにパラグアイだけが日パ移住協定で、日本の医者で日本の免状を持った医者は主として日本の移民を診察するものはいいことになっているのです。しかしブラジルもアルゼンチンもボリビアもそういかないのですね。それじゃ日本人の入っている僻村に向こうの国人の医者がおるか、なかなかいい医者がおりません。おりましてもことばがわからぬために、同じ痛いと言っても、針を刺すように痛いのかどうかということの説明ができないのです。それは行っている移住者には全くの生命の問題なのです。そこで問題の第一は、双務協定でも結んで日本人の移住者のおるところには日本人の医者が主として見られるように、向こうの開業試験を特認をさしていくというような努力をすべきじゃないか。これは私の議論ですが、そういう方向にいけるかどうか、ひとつお尋ねしたい。
  230. 廣田しげる

    ○廣田政府委員 ただいまのお話は、ブラジルのお医者さんが日本に来る、あるいは日本のお医者さんが向こうに行くというお話かと思うのですが、そういうことはまだ交渉したことはございませんが、ブラジルのほうで日本に来るという希望者があるかどうか、それからこちらからの問題も、先ほど申し上げましたように向こうの医師資格のあれを受けなければなりませんので、ことばの問題等もありますので、早急に実現するかどうか、研究してみたいと思います。  なお、移住者の入っておりますところにつきましては、まだまだ今後ともそういう医療施設を増加しなければならぬと思っておりますけれども、現在、たとえばブラジルにおきましては、ベレンに診療所があるとか、あるいはパラグアイにおきましてもアルトパラナと、こうありますが、そういうところにはいわゆる事業団の移住地の中で日本から医者を派遣いたしまして、開業とともにことばの上でもかゆいところに手が届くように徐々にやっております。もちろんまだ完全ではございませんが、そういう点は現在増加に努力しております。
  231. 田原春次

    田原委員 ブラジルのベレンで開業しているのは日本人ではありますが、向こうの試験を受けた近藤先生というのがやっておるのです。わずかにパラグアイだけが日本から行ける。私が言うのは、パラグアイのように、各国、アルゼンチンやボリビアやメキシコ、コロンビアと協定を結ぶ意思はないか、この点について厚生省医務局はどうでしょうか。日本と諸外国との対等相互開業協定というものを結ぶことはどうか。実際にボリビアから日本に来て開業する人はいないので、日本からのほうが多いのですから……。
  232. 若松栄一

    ○若松政府委員 お話のように、現在のところ日本の国内において医療開業を行なうためには、日本の医師免許を受けた者、諸外国においてもそれぞれの国の医師免許を受けた者だけが医療を行なうことになっております。したがって、それぞれの国の医師の交流というものは事実上ほとんど世界的に禁止されているのが実情でございます。これらのものを例外的に扱うとすれば、ただいま先生のお話のありましたように、外交上の条約なり協定なりによって特例を開き、それで国内法に修正を加えていくほかはないと思っております。したがって、そのようなことをそれぞれの国内の調整をはかった上で協定をするかしないかという問題が先行する問題であろうと思います。
  233. 田原春次

    田原委員 それは厚生、外務両省に希望しておきます。  次は、しからば向こうで医者を養成する方法はないか。私はこれはやり方によってはあると思います。御承知のように、今度のこの事業団法改正で、従来旅費として貸し付けた金が五十数億円あって、これをやがて取り立てることになっておりますが、なかなか実際問題として日本にいる場合のようなわけにいかぬと思うのです。取り立てできぬ場合に差し押えでもできるか。それからアマゾンのように、東京からシンガポールまでくらいの距離のところをよちよち集金に行けるか。行けないと思います。したがって、これは五十数億の金を南米各国で受け取った場合に、それは諸君ら移住者のために使うのだ、さしあたり一番足らない病院のために使おう、病院のために医者が要るから医者の教育機関に使おう、たとえば、アマゾンの下流に日本の官公私立大学医学部の共同経営の医科大学をつくる。もちろん修業年限七年はたいへんですから、最初の三年間くらいは日本でやって、教養課程をやったものを向こうへ四年間くらいやる。そうすると向こうの法律にも適するわけなのです。そして向こうの医科大学を卒業し、向こうの医科試験を通ったものを開業させる。したがって、この五十億円の海外移住民に役に立つ使い方は、金融か学校建設か、あるいは病院かと思うのですけれども、金融については焦げつき資金の問題のほうが額が大きいからそっちに譲るといたしまして、とりあえず事業団としてこれからの集金する金の使い方として、いま厚生省の医務局長の言うように、なかなか開業試験がむずかしいとすれば、むしろ医学部をどこかにつくって、そこに百人なら百人の日本の学生を収容して、一生懸命ブラジルのことを勉強させる。そして卒業後向こうの国の試験に通るようにさせるべきじゃないか。これは私の一案ですけれども、何か五十数億の資金の活用を外務省としてもお考えになっておるか、お聞かせ願いたい。
  234. 廣田しげる

    ○廣田政府委員 ただいま御指摘のとおり、すでに貸してございます五十数億につきましては、その使途については、ただいま御指摘のように、これをさらに現地の移住者の福利厚生のために使う予定にしてございます。したがいまして、具体的にはただいま仰せになったような病院であるとかあるいは教育施設であるとか、こういうものに使いたいと思っておりますので、具体的につきましてはさらに研究したいと思っております。
  235. 田原春次

    田原委員 次は海外移住事業団に二問質問いたします。  第一は、新移住国の発見交渉につとむべきじゃないか。たとえばすでに日本人の行っておりますところのコロンビアあるいはエクアドル、ベネズエラ、ウルグアイあるいはニカラグア、こういうところは、農業計画移民は別といたしましても、技術者の移住は相当の余地があるし、また先住移住者の家族の呼び寄せもできると思います。しかるにそういうところには事業団の出張所とか駐在員というのがいません。私はサンパウロに大勢の駐在員がおるのは無駄だと思う。サンパウロは民間にまかしてよろしい。むしろこれは南米各地の新しいところに駐在さして、一人でも二人でも新移住者をあっせんする。外交機関もありますけれども、出先の定員が少ないとかということで、なかなか移住の問題まで手が伸びないようでありますから、これはやっぱり事業団から駐在員を派遣してやるべきじゃないかと思います。予算の範囲で、国内で俸給を五号俸上げたりして喜ぶのではなくて、海外に駐在員を出してやる考えはないか。ドミニカその他南米各国別に、いま名前をあげました範囲のところでやってもらいたいと思います。
  236. 廣岡謙二

    廣岡参考人 御趣旨はよく了承いたします。現にコロンビアとかエクアドルとか、そういうところからも日本人の移住技術者を入れてくれという要望のあることも聞いておるのでありますが、今日までは計画移住として入っておりませんで、単に呼び寄せで入っておる人が三々五々おるということでございます。ただいまのお話のような趣旨でもって駐在員を駐在させるか、いろいろ方法があると思いますが、この点につきましては今後の問題といたしまして外務省の意見も伺って検討したいと思います。
  237. 田原春次

    田原委員 官房長や移住局長にあわせてお尋ねしますが、たとえばカナダでは最近技術移住者を非常に歓迎するといっております。それから北米も移住法を改正して移住者を入れる段階が来ていると思うのです。あるいはメキシコは表面的には移住者は入れないことになっておりますが、特殊技能者は入れるような方法があるわけです。ですから先ほどあげましたコロンビア、エクアドル、ベネズエラ、ウルグアイ、ニカラグア、ドミニカのほかに、カナダ、北米、メキシコ等にも、外務省でだれか担任者を置く手もありましょうが、そうでなくて、事業団として、ことばのできる者を置かせる手もあると思う。以上のような問題についてどういうふうにお考えになっておりますか。
  238. 廣田しげる

    ○廣田政府委員 カナダにつきましては、先生御案内のとおり、いわゆる計画移住はございませんので、こちらでスクリーンいたしまして向こうに行きまして、それぞれ職がきまる。いわゆるカナダ側の受け入れ体制というものが非常によくできております。したがいまして、もちろん大使館、総領事館で向こうの移民当局と連絡をとっておりますので、特に事業団が行かなくても、現在東京に向こうの移民官も来ておりますし、近く事務所も開かれるようでございますし、希望によればそういう方法でいくと思います。それから、アメリカのほうの今度の新しい移住法の改正によりまして、いわゆる国籍が無差別になりましたが、これはいわゆる向こうにすでにおる者の呼び寄せでございますので、これもまた事業団があらためて行く必要はないもの、こういうふうに考えております。南米につきましては、先ほど理事長からお答えいたしましたとおり、今後研究していきたいと思います。
  239. 田原春次

    田原委員 カナダも、行ってみますと、なるほど東京に駐在員がおっていろいろ調べてくれますけれども、トロントならトロントに入った者が、事情によってバンクーバーに行きたいとか、そういうのがあるのです。したがいまして、これはやはり技術移住者のアフターケアを担任官がおってやる必要がある。予算との関係もありますからすぐにできぬとは思いますが、やはり移住問題を扱うならば、技術移住者として海外事業団で一、二名置いて、大使館の仕事を補完させたらいいと思うのです。これは私の意見ですが、どうでしょう。
  240. 廣田しげる

    ○廣田政府委員 先ほど申しましたように、カナダ側のそういう各地方の組織は非常によくできておりまして、あるところに就職してまた他のところに行きたいというのも、その事務所に参りますればその表がちゃんとできておりまして、どこどこならあいておるというようなことがございますので、向こうのいわゆる移民事務所といいますか、そこに当人が出頭していろいろ自分の希望を述べれば、あいたところならば行ける、こういうような仕組みになっておりますので、ただいま御指摘の、事業団のいわゆる支部なり何なりを置く必要はないのじゃないか、現在私はこう考えております。
  241. 田原春次

    田原委員 事業団に対する第二の質問は、これが最後でもありますが、国内での募集上の方法として既存の民間団体を活用する手はどうであろうか。確かに事業団が全国に組織を持ち、また全拓連も組織を持っておりますけれども、それではやはりくつを隔ててかくような、もうちょっと足らない点があるのです。それであればこそ移住者がだんだん減ってくるのです。したがって、ここに現存する移民関係の民間団体では日本カトリック移住協議会あるいはプロテスタントでは日本カ行会というものがありますし、最近設立を計画されておるのは、海外技術移住者協議会のごときものも設立が考えられている。それは何といっても事業団は役所ですから、もうちょっとというところで足らぬというような場合がある。たとえば土曜日午後二時に行ってもだれもおらぬ。土曜、日曜、仕事の合い間にいろいろ聞きたいのです。それから、たとえばダムで水没するところがある。そこにだれかが行って勧めてくるというようなことですね。こういう方法からすると、既存の宗教団体や、正式にいろいろな民間団体を、下請と言うとことばはおかしいけれども、外郭といいますか連絡といいますか、もう少し民間団体を奮起さして、気持ちよくやらせるような手はないか。必ずしも補助金とかそういうことではなくて、協力体制をつくれないか。これは理事長及び移住局長、両方から答えてもらいたい。
  242. 廣岡謙二

    廣岡参考人 私のほうの事業団の出先機関として各都道府県に地方事務所を持っておるのでありますが、何ぶんこれは予算の面におきましても、人数の上から申しましても、きわめて不十分であります。したがって、こういう啓発あるいは宣伝、相談というような問題につきましては、とうてい私どものところだけでできないことはもうわかり切ったことでございます。したがって、中央におきましては関係各機関、各省等と十分な連絡をとりつつ、また地方におきましては、ただいまお話のありましたカトリック移住協議会あるいはカ行会その他の協力機関と常に密接に連絡をいたしまして、あるいは県、市町村あげて一体となってこの移住の振興について御協力願いたいということが私どもの希望でもございますし、方針でもございます。まだまだ不十分な点があると思われますが、どうしてもこういうものは実際の活動に待つことがきわめて大きいのでありますから、今後御意見のとおりさらに一そう強化、連絡を密にいたしまして、振興につとめてまいりたい、こう考えております。
  243. 廣田しげる

    ○廣田政府委員 私の考えも全然同じでございます。何と申しましても全国的に広がっておるものでございますし、事業団も各府県に地方事務所がございますけれども、少人数でございますし、先生が御指摘のような諸団体に大いに御協力を願ってやっていかなければならない、こう考えております。
  244. 田原春次

    田原委員 以上で私の質問は終わりますが、かつて戦前には年間に二万五千人も中南米だけでも移住者が出た時期もあった。ですから、それが外務省に移住局ができ、それから事業団ができたのに、だんだん行き手が少なくなった。先ほど来いろいろ各省の話を聞いても、言いわけはあります、国内の事業が盛んであるとか、いろいろ言っておりますけれども、結局どこかに欠陥があると思うのです。だから、この欠陥を克服するのに、反省すべきところは反省する、それから聞くべきところは聞く、こうやって、来年は少なくとも三千人くらい出す、再来年は四千人出す。一面人口はふえる。先ほどの最初の話で人口問題の解決じゃないと言いましたけれども、人口問題の解決にもなってちっとも差しつかえないことですから、そういう意味においては気がねなく、量とともに質も、両方ともよい者を出す、こういうようにいたしまして、一人でも多く出すように希望いたします。  なお、今度の事業団法一部改正の後にくる回収資金の用途については、いずれ自民党のほうとも相談して、附帯決議なり何なりする用意があります。  以上、私の意見を申し上げて、きょうの質問を終わりたいと思います。
  245. 高瀬傳

    高瀬委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十七分散会